衆議院

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第3号 平成16年4月14日(水曜日)

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平成十六年四月十四日(水曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      植竹 繁雄君    江崎洋一郎君

      遠藤 利明君    大村 秀章君

      佐藤  錬君    塩谷  立君

      菅原 一秀君    田中 英夫君

      谷  公一君    中西 一善君

      仲村 正治君    蓮実  進君

      鳩山 邦夫君    林田  彪君

      宮澤 洋一君    森岡 正宏君

      山口 泰明君    奥村 展三君

      鎌田さゆり君    川端 達夫君

      菊田まきこ君    末松 義規君

      武正 公一君    筒井 信隆君

      中川 正春君    長島 昭久君

      楢崎 欣弥君    西村智奈美君

      細野 豪志君    松崎 公昭君

      松本 剛明君    渡辺  周君

      上田  勇君    大口 善徳君

      桝屋 敬悟君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣        

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   総務副大臣        山口 俊一君

   外務副大臣        阿部 正俊君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局次長)   山内 千里君

   政府参考人

   (消防庁長官)      林  省吾君

   政府参考人

   (消防庁次長)      東尾  正君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長)        荒木喜代志君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     菊田まきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  菊田まきこ君     岩國 哲人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案、武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案、武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件及び千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件の各案件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大石利雄君、防衛庁防衛局次長山内千里君、消防庁次長東尾正君、外務省大臣官房審議官鶴岡公二君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長荒木喜代志君、外務省北米局長海老原紳君及び外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。植竹繁雄君。

植竹委員 私は、自由民主党の植竹繁雄でございます。党を代表して、質問をさせていただきます。

 冒頭に、今回のイラクに入りました三人の邦人の拉致問題につきましては、先般、解放声明があってから、六日になろうとしております。そして、現在、いまだに解放が実現しておりません。私は、この際、強く解放を求めると同時に、一刻も早くこれらの方々が解放されることを強く期待しておるものでございます。

 さて、このイラクの人質問題につきましては、考えさせられることもあるわけでございます。

 それは、バグダッドに入るためには、ヨルダンのアンマンから行くことが大変いい主要道路であると思います。しかしながら、このアンマンからバグダッドへの道は大変に危険が伴うものであり、これはいわばアリババ道路と言われておるくらいのところでございます。NGOの方々が、幾ら人道問題あるいは報道問題とはいえ、なぜこれを通ったか。これに伴ういろいろなことが考えられるわけであります。

 したがいまして、人質になったことによりまして、他のいろいろなNGOのグループがありますが、これに及ぼす影響というものはまことに大きなものがあります。私は、そういう意味におきまして、これらの方々の自己責任性という問題を強く訴えるものであります。

 そして、先般、新聞報道によりまして、この方々がとった行動に対して、NGOの今後のあり方について非常に危惧しておるということでこれが掲載されておりますので、これを申し上げます。

  アフガニスタンで医療支援活動をしておりますNGOの多田正毅理事長は「(事件は)起こるべくして起こった、という印象だ。危険が予想される地域でのNGOの活動は、自己責任でやるべきだと思っている。移動には必ず信頼できる現地の人と行動を共にし、交通手段の選択にも気を使うなど、二重三重にセキュリティーを考えることが必要。報道で知るかぎり三人の行動は安全対策の面で十分ではなかったのではないか」

さらに、

  「(政府は)三人の救出を最優先にしたうえで、テロには屈しないという毅然とした態度で臨むべきだ。そうしないと今後アフガニスタンなどでも同じような事件が次々と起こる可能性がある」

こう指摘しております。

 私は、これを強く今後NGOにつきましても求め、再考を促したいと思っております。

 そこで、外務大臣にお伺いいたしますが、現地を含め、今回のNGOに対する退避勧告をどう徹底していくのかをお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 政府といたしましては、昨年の二月の十四日以来、イラク全土に退避勧告の危険情報を継続して出しております。また、昨年の八月以降現在まで計二十七回のスポット情報、注意喚起のための速報ですが、これを出して徹底した注意喚起に努めてまいりました。

 外務省といたしましては、この事件を踏まえまして、引き続きイラクに残留をする邦人に対して、安全な方法で直ちにイラクから退避をするように改めて強く勧告をいたしているところでございます。また、一両日中にもさらに新しい危険情報、注意喚起情報、いわゆるスポット情報ですが、それを出すことも考えております。

 NGOでございますけれども、これまでもNGOの邦人スタッフに対してイラク国内に立ち入ることを控えるようにという申し入れを行ってきております。今回の事件を受けて、改めてNGOに対して勧告を行いました。人数がそれほど多いわけではございませんので、緊密にNGOの方々とコンタクトをしながら強い勧告をしたということでございます。

植竹委員 次いで、井上大臣にお伺いいたしますが、武力攻撃事態等におきます国民の保護のためには、国と地方公共団体が有機的に連携することが極めて重要であると考えられますが、武力攻撃事態等への対処につきましては、国民保護法案においては、地方の首長から国への要請によることが基本的な仕組みとなっております。このような仕組みで、緊急時に知事や市長がともに不在の場合などに迅速に対応ができるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

井上国務大臣 武力攻撃事態等の有事におきましては、先生御指摘のとおり、国と自治体とが緊密な連携を図っていくということが大変重要であることは言うまでもないわけでございますが、この武力攻撃事態等の場合、これは国が責任を持って対応するということにいたしております。したがいまして、警報の発令、それから避難の指示でありますとか、あるいは災害の防止、こういったことにつきましては、国の責任のもとに実施をしていくということでございます。

 ただ、御指摘にありましたような都道府県から国の方に対する要請も、必要な場合にはできるというような規定を置いているわけでございまして、いずれにしましても、国と地方公共団体との連携が緊密にいくように、円滑にいくように法案の中では規定をしているところでございます。

 知事でありますとかあるいは市長等の不在の場合にどうなるのかということでありますが、これは、職務の代理者というのは置くことになっておりますので、万一不在の場合にはそういった職務代理者を通しまして所要の措置ができるように措置をいたしているところでございます。

植竹委員 また、治安出動や防衛出動のための閣議決定に当たりまして、防衛庁長官はみずから閣議開催を要求することはできないのであります。ですから、内閣府の長たる内閣総理大臣にまず要請をしてから、内閣府の長たる内閣総理大臣が内閣の首長たる内閣総理大臣に要請するという極めて迂遠な手続を踏む必要があるわけであります。

 防衛庁を庁のままにしておくことは、いざという緊急事態への迅速対応という観点から考えても問題であり、我が国も、この危機管理体制の強化のためには、この今の防衛庁という体制を省にして、直接これができるような体制にすべきじゃないかと考えますが、防衛庁長官、いかがでございましょうか。

石破国務大臣 先生の御指摘のとおり、今、防衛の主任の大臣というのは防衛庁長官ではございません。防衛の主任の大臣というのは、先生御指摘になりましたように、内閣府の長たる内閣総理大臣が持っておられるわけであります。そうしますと、先生御指摘のような面もございます。

 要は、この国の独立と平和があって初めていろいろな国民の権利とかそういうものが守られるんだ。では、その大臣というものが内閣府の長たる内閣総理大臣、ほかにいろいろな仕事を抱えておられる、同時に内閣の長としての立場もあわせて持っておられる、そういう方がおやりになるということは、本当によいことなのであろうか。やはり、それは一省を設けてやるということが重要なのであって、これはシビリアンコントロールに反するものでも何でもないことは、先生御案内のとおりでございます。

 自由民主党におきましては、さきの総選挙の公約にも掲げていただいたところでもありまして、広く国民の御理解を得まして、防衛省という、名前はどうなるかわかりませんが、そういうようなものを設けていただいて、国の独立と平和とか、あるいは危機管理とか、そういうものに対して万全の対応をとる、そういうことが肝要であると思っております。

 ぜひともよろしくお願いを申し上げる次第であります。

植竹委員 今長官から話を伺いましたが、私もこれは本当に、一党ということじゃなく、これは全党的に考えるべき問題かと思いますので、早急にその実現をするように党を挙げても頑張ってまいりたいと思います。

 さて、国民の保護のためには国民みずからが努力することが重要であるということも考えます。国民保護法案におきましては、国民の協力はあくまでも自発的な意思にゆだねられておりますが、避難・救援の実効性を確保するためには、国民は協力することが義務だと考えるべきだと思いますが、この点については、御見解、いかがか。井上大臣、お伺いいたします。

井上国務大臣 武力攻撃事態等におきましては、国全体としての措置を講じていくということが大切でございますし、また、その場合に、国が責任を持って対処をしていく、また、国が地方公共団体ともよく協力しながら実施をしていく、こういうことでありますけれども、国民保護のための措置を実施する際には、どうしてもそれを補完する形で国民の皆さん方に必要な協力を要請していかなくてはいけない、こんなふうに考えております。

 この法案におきましては、国民の協力は国民の自発的な意思にゆだねられる、こういうぐあいに規定しているのでありますが、これは武力攻撃事態法の審議の過程におきまして、そういった議論の経緯をふまえまして、我々は、今回の法案におきましては、国民の自発的な意思にゆだねられるということにしたわけでございますが、住民の避難や被災者の救助、救援などの場面におきましては一定の国民の協力が得られるもの、こんなふうに確信しているわけでございます。

 この点につきましては、平素から意識の啓発や訓練を行いまして、国民の意識を高めておくということも必要なことだというふうに考えております。

植竹委員 また、この今回の国民保護法案の中には緊急対処事態ということがありますが、これは大規模テロということを念頭に置いておられることだと思います。しかし、どのような事態が発生すればこの緊急対処事態に該当するのか、具体的な事例をお教えいただきたいと思います。

井上国務大臣 緊急対処事態につきましてのお尋ねでございますけれども、これは、武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態、または当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態でありまして、国民の生命、身体及び財産を保護するために国家として緊急に対処することが必要な事態でございます。

 緊急対処事態の対象といたしましては、発生初期の段階では武力攻撃事態であるとの判断が難しい、困難な事態、または武力攻撃に準ずる手段を用いた攻撃によりまして甚大な被害が生ずる事態を想定しております。具体的な事例といたしましては、原子力発電施設の破壊、炭疽菌の散布、あるいは航空機による自爆テロなどの事態を想定いたしているところでございます。

 このように、緊急対処事態の認定は、住民の避難・救援等の緊急対処保護措置を講ずる必要があると考えられる、そういう事態を対象として行われるものでございます。

植竹委員 海上輸送規制法案におきまして、海上自衛隊による停船検査を実施できるというのは、我が国領海及び我が国周辺の公海、これは排他的経済水域を含むものでありますが、と規定されているが、我が国周辺の公海の範囲の限界というものはどういうふうに定めるのか、防衛庁長官にお伺いいたします。

石破国務大臣 それは結局、自衛権行使の範囲がどこまでかということと同じ議論でございます。

 要するに、船舶輸送規制法案におきまして停船検査を実施できるとしておりますが、きのうもお答えをしたと思いますけれども、これは自衛権に基づいて行うものでございます。したがって、交戦権とは違う概念になるわけです。

 そうしますと、これは、先生御指摘のように、排他的経済水域を含む公海ということになりますが、それではのべつ幕なしどこでもできるのかというと、そういうことにはなりません。おのずから自衛権行使はどこで行うべきなのかということによって分けられるものだというふうに考えますが、地理的にここまでということは明示することはできません。しかし、どこにおいて行うのかということは、それは防衛庁長官が本法案第四条の規定に基づき告示で定める実施区域内で行うということになり、当該区域は外務大臣から外国政府に周知をするということになっておるわけでございます。

 したがいまして、今ここで、ここということは申し上げられませんが、無限定に広がるということはあり得ない、それは自衛権に基づくものだからということであり、諸外国にもきちんと周知をするということになっておるわけであります。

植竹委員 また、この海上輸送規制法案の中には、航空機によります輸送という問題は、これは対象外となっております。有事におきましては、航空機による輸送も何らかの方法でこれは規制する必要があると考えますが、この点については、防衛庁長官、いかがでしょうか。

石破国務大臣 これは、理屈としてはそれも考えてみました。考えてみましたが、停船検査に該当するようなことが飛行機ではできない。飛行機をとめて検査するということはできない。それは、相対速度をゼロにして乗り移ればいいではないか、そんな議論もあるのかもしれませんが、なかなかそれは現実的には非常に考えにくいことであるとすると、パラレルにこういった議論をすることは極めて難しかろうということでございます。

 諸外国におきましてもそのような例はないということでありますが、実際に、ではどうするんだということであります。

 その点につきましては、これは、今後の国際社会の動き、つまり、日本だけでそれをやるということにはなりません。今回の停船検査にいたしましても、それは諸外国と平仄を合わせるということになっておるわけでありまして、どうしたらいいのかというのは、これは国際的なテーマであろうというふうに考えております。

 私どもといたしましては、現在実効性が非常に持ちにくいということ、あるいは、強制的に着陸をさせるような場合にも、従わなかったらどうするんだ、武器使用はどうするんだ、そういう議論が出てまいります。実効性の面からいっても極めて難しいし、国際性の面から見てもなかなか難しい。ただ、どうすればいいかという問題意識は持っておりまして、国際社会の動きもよく見てまいりたいと考えておる次第であります。

植竹委員 また、今の点につきましては、我が国のこの領空にはたびたびいろんな飛行機が飛来してくるわけでありますが、そういう点につきましても、今後、今長官が言われたように、輸送機ばかりじゃなく、ほかの方にもいかにしてこれに対処したらいいかというものをさらに研究し、これからも具体的な例を考えていただきたいと思います。

 そして、今後、日米協力のもとにこれがさらに進展する以外にも、例えば海を隔てた隣国である国々とも提携していく必要があると思いますが、その点、いかがでしょうか。

石破国務大臣 繰り返しの答弁になりましたら大変申しわけないのですけれども、そういうようなことは、どうすれば実効性があるんだということは諸外国とよく議論をしていかなきゃいかぬと思っております。いわゆるPSIという中におきましても航空輸送の阻止訓練というのは行われておるわけでございますが、このPSIも、どのような形で国内法で担保をしていくか、国連決議によるべきなのか、条約なのか、二国間協定なのか、そういうような問題をこれから詰めていかねばなりません。

 外国の国防大臣と話をいたしましても、このことはきちんと詰めようねということで、認識は一致をいたしておるわけでございますが、これは、どういう形をとれば一番実効性を持ち得るのか、特に国連との関係、あるいは、海の場合でいえば海洋法条約との関係、そのあたりをきちんと整理していかねばならぬだろうと思っています。

 これは、議論をしておっても、議論が議論のための議論に終わっちゃ仕方がないので、どうやって実効性を上げるかということについてきちんと問題を意識し、国会ともよく御相談をしてまいりたいと考えております。

植竹委員 また、海上輸送規制法案に基づきまして、外国軍用品のうち大量破壊兵器につきましては廃棄するものと規定されておりますが、この大量破壊兵器の範囲はどうなっているか、また、核兵器など、具体的にどのような方法で廃棄するか、この点について防衛庁長官にお伺いしたい。

石破国務大臣 範囲は、いわゆるNBC、核・生物・化学及び毒素兵器に該当する外国軍用品ということになっております。

 この無害化のための措置を講じなければならないということになっておるわけでございますが、これは六十二条におきまして、審決執行官は、五十二条第一項による廃棄の審決があったときは、無害化のための措置を講じた上で、これを廃棄しなければならない、こう書いてあります。

 では、この措置というものを審決執行官が全部自己完結的に自分がやらなきゃいけないかということになりますと、そう定めておるわけでもございません。その能力は、あるいは外国の方が有しているという場合もございます。

 したがいまして、この廃棄については、国際協力を得まして、アメリカも含むわけでございますが、それを委託するなどして措置を講ずるということも考えられるわけでございます。この点は、私ども、そのように理解をし、そのようにいたしたいと思っておるところであります。

植竹委員 また、有事の際につきましては、米軍が国内で移動する際には国民感情というものを十分に配慮する。法律ができたからといって、やはり地域住民の問題が非常に大きな要素であります。

 この地域住民に対して、米側においてもスムーズに移動ができるように、米軍としてもそれを守るように働きかけるということが必要でないかと思いますが、この点については、外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、武力攻撃事態、武力攻撃予測事態、これにおきまして、米軍は我が国に対する武力攻撃を排除し、そして我が国及び国民の安全を守るために行動することになるわけですけれども、このときに在日米軍は、一般国際法上、我が国の国内法、これを尊重する義務を持っております。また、武力攻撃事態等におきまして米軍は日米安保条約及び日米地位協定、国連憲章、国際人道法等の国際法に従って行動するということを考えますと、武力攻撃事態等において米軍の行動が国民の基本的な人権を不当に侵害するということは考えられない、想定されないということでございます。

 それで、他方で、米軍の行動によって国民は影響を受けることがある。これを考慮するということでいいますと、米軍行動関連措置法案において政府は三つのこと、一つは米軍の行動に関する状況等について情報の提供を適切に行う、そして二番目に地方公共団体との連絡調整を行う、米軍の行動についてですが、そして、損失を補償するということを定めているということで、手当てをしているということでございます。

植竹委員 この点についてはもうちょっと伺いたいことがありますが、ちょっとこれは省きまして、現在、本格的な武力紛争よりもテロの脅威が大きいものと考えられるわけでありますが、我が国に対してテロリストや武装工作員が攻撃をしかけてきた場合につきましては、この捕虜取り扱い法案により捕虜としてこれを取り扱うことになるのか、また、捕虜として取り扱われない場合には、自衛隊としましてはどういうような対応をするか、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 本法案は防衛出動が下令された場合に適用されるわけでございます。したがいまして、テロ等々が起こって防衛出動が下令をされておるとすれば、拘束した者は捕虜として取り扱うことになりますが、仮に防衛出動が下令しておらない状態、治安出動等々ですね、そういう場合に拘束をしたということになりますと、本法案によりましては捕虜として取り扱うことに相なりませんので、仮に拘束をいたしました場合は、それは警察機関等々に引き渡すということに相なります。

植竹委員 この法案の第四条によりますと、捕虜等を拘束できるのは自衛隊法第七十六条により防衛出動を命ぜられた自衛官のみということでありますが、これでよろしいでしょうか。また、もしそうだということになりますと、例えばイラクのサマワにある自衛隊宿営地が万一攻撃を受けた場合におきまして、現地の自衛官は攻撃した相手を本法案に基づいて拘束できないのか、もし拘束できるといたしましたら、それは捕虜扱いとなるか、この点に関して防衛庁長官にお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 先生御指摘のとおり、これは防衛出動が下令をされていなければこの法案は適用がないということです。

 おっしゃいましたケースで、サマワでそういうことが起こったらどうなるのかということでございますが、サマワにおいて防衛出動が下令をされるということは、極めて極めてまず考えられないことでございます。今の特措法に基づいて出ておるわけでございますから、当然非戦闘地域の要件を満たすということ、万が一、近傍においてそのようなことになった場合には活動の一時休止の措置をとるということになっておりますので、そういう事態が生起するということは想定をいたしておりません。

植竹委員 ただ、サマワにおきまして、これはあらかじめ伺っておかなかったんですが、サマワに攻撃をしかけられた場合、そしてこれがテロであった場合は、果たしてこれは捕虜扱いになるのかどうか、その点はどうなんでしょうか。

石破国務大臣 捕虜にはなりません。なぜならば、この法案が適用されないからでございます。

 仮にそういうことが起こったとして、そうすれば戦闘地域かどうかという議論になりますし、これはもう何度も同じお話をいたしましたが、近傍でそのようなことになれば一時中止するみたいなことになるわけです。しかし、その間に仮に身柄を確保するということがありとせば、それはオランダ軍でありますとか現地の治安を担当するそういうような組織に対しまして引き渡すということになるわけでございまして、いかなるケースにおきましても、いかなるケースにおきましてもというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、少なくともこの法案によって捕虜として我が方が拘束するということはございません。

植竹委員 サマワにおきまして自衛隊が今宿営しておるところでございますが、この国際法上の法的根拠及び宿営地の管理権の国際法上の根拠というものはどこにあるか、この点について外務大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 サマワにいる自衛隊はイラク特措法のもとで活動しているわけでして、国際法上は、イラクにおいて施政を行う当局、これは現在CPAでございますが、そこから同意を得て、安保理決議に従って活動を実施しているということでございます。

植竹委員 これにて質問を終わりますが、最後に重ねて、今後の日本の防衛、自衛のためには何といっても指揮系統がはっきりする、そのためにはどうしても防衛庁が防衛省となることが最も肝要かと思いまして、これを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

自見委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 まず、質問に先立ちまして、イラクで発生をいたしました日本人人質事件から間もなく一週間になろうとしているわけでございますけれども、膠着状態が続いておりまして、今日、まだ解放の見通しが立っておりません。これまでも政府として事件解決に向けましてあらゆる努力を払ってきたということは承知をしておるところでございますが、きょうは外務大臣も御出席でございますので、引き続き、内閣また政府を挙げて、一刻も早く人質となっている方々の解放と、また、事件の解決に向けまして全力を挙げて取り組んでいただくことを御要請させていただきたいというふうに思います。

 それでは、質問の方に入らせていただきます。

 きょうは、いわゆる国民保護法案を中心として何点か御質問させていただきますが、初めに井上大臣に、この国民保護法の必要性についてお伺いしたいというふうに思います。

 我が国では、自衛隊という防衛のために武力を行使することができる組織を持っている以上、そうした万が一の事態に備えておくというのは当然政治の責務であろうというふうに思っております。その際に最も大切であります国民の生命財産をどうやって守っていくのか、そのための法整備が重要であるのは当然のことだろうというふうに思っております。

 ただ、他方、これまでこうした法制度が整備されていなかったにもかかわらず、特に支障なく今日まで参りました。そのため、今回この国民保護法を論議するに当たりましていろいろな憶測もあるわけでございます。武力攻撃事態が発生する蓋然性がこれまでよりも高まっているのかだとか、あるいは、中には、こうした法律を制定することによってさらにそうした危険性がむしろ高まってしまうというような言い方もあります。

 そこで大臣に、さまざまなそうした憶測や意見がある中ですので、この国民保護法案、この時点で整備する必要性につきまして、ひとつわかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。

井上国務大臣 国の安全保障の体制につきましてきちんとした制度をつくっていく、きちんとした備えをしていくということは、これは当然のことでございまして、とりわけ、武力攻撃が行われるというような場合に備えてそのための制度をつくるということは、これまた委員御指摘のとおり当然のことだと思います。

 これまでこういった制度が整備されなかったのは、国際環境もありましょうし、あるいは国民の意識の方も、必ずしもそれに、今、安全保障の体制を整備しておかないといけないというようなところにまで高まっていなかったようなこともあるんじゃないかと思います。

 さきの国会におきまして武力攻撃事態法が制定をされまして、その中で、武力攻撃事態対処法の施行の日から一年以内を目途に国民保護法制の整備をするように、こういうような附帯決議がございまして、国民保護法制をつくっていくということはこれまた当然のことでありますけれども、一年以内というような期限を付されておりました関係をもちまして今国会に国民保護法制についてのいろんな法案を提出させていただいた、こういうことでございます。

上田委員 この国民保護法案に盛り込まれております計画の作成とかさまざまな措置の実施、これは主として都道府県や市町村が行うものでございます。その意味からは、この法案を作成するには、当然、そういう地方自治体、地方公共団体あるいは首長の意見がしっかりと反映されなければいけない、これは当然のことだろうというふうに思います。

 法案の作成に当たりまして、そうした地方公共団体、首長さんなどの意見を聞くためにどのような努力を行ってこられたのか、また、そうした意見がこの法案の中にどういう形で反映されているのか、お聞きをいたします。

井上国務大臣 御指摘のように、この国民保護法案を作成するに当たりまして、地方公共団体初めいろんな方の御意見を聞いてまいったところでございます。

 具体的に申しますと、一昨年から国民保護法制の輪郭、概要、「要旨」というのを順次公表いたしまして、その節目節目におきまして、地方公共団体あるいは関係機関に説明をいたしまして、意見をお聞きしてきたところでございます。

 特に、国民保護法制整備本部におきましては、「要旨」の取りまとめに当たりまして、あらかじめ昨年の八月に都道府県知事との意見交換会を行っておりますし、昨年の十一月に公表いたしました「要旨」につきまして、これまた都道府県知事との意見交換をいたしましたし、他の地方公共団体あるいは地方機関の代表者や有識者との意見交換を行ってきたところでございます。

 地方公共団体からの意見につきましては、基本的には法案に反映するように努めたところでございまして、具体的に、次に申し上げます。

 まず一つは、国の基本指針において想定される武力攻撃事態等の類型をきちっとしてくれ、その類型によって対応が違うから、この類型を示してほしいというようなこと。

 それからその次に、国、地方公共団体、指定公共機関の役割分担、それから、権限などをもう少し明確にしてほしいというような御意見もございました。これも明確化いたしました。

 次に、都道府県知事に対して、国の指示がなくても住民に緊急通報や退避の指示あるいは警戒区域の設定ができることにしてほしいというような要望がございまして、そのようにいたしたところでございまして、総じて都道府県知事の権限を強化いたした、そのように考えております。

 また、都道府県知事や市町村長が指定行政機関の長等に国民の保護のための措置の実施に関し必要な要請をできるようにした。つまり、県知事とか市町村長が国の機関に対して要請をする、こういったことも規定として織り込みました。

 また、原子力発電所等の生活関連等施設の周辺対策や放射能汚染等についての内閣総理大臣及び指定行政機関等が行う措置を新たに盛り込みました。これも、御意見にそういうことがあったからでございます。

 それからまた、大規模テロ等の緊急対処措置につきましても、武力攻撃事態等におきます国民の保護のための措置に準じた措置を講じてほしい、こういうふうな意見がございまして、これもそのように措置したところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 これまで地方の首長さんの方々ともいろいろと意見交換をされて、そうした意見もこの法案の作成の中には生かしてこられたということでございます。ただ、これからいろいろと具体的なことが決められていくわけでありますので、むしろ、これからそういった地方公共団体との意見のすり合わせ、これがさらに大切になってくるというふうに思います。

 法案が成立しますと、今度は国が基本指針を策定いたしまして、それに基づいて首長が国民の保護に関する計画を策定するというような段取りになっているわけでございます。

 もちろん、これはなるべく早い段階で地方公共団体にそうした方向性を示すという意味から、国として基本指針を早期に策定していただく、このことがまずは重要だろうというふうに思います。また、この基本指針を作成する段階においても、やはり実際に現場で、近いところでそういった措置の実施に当たる都道府県、市町村、そうしたところとの意見の調整が重要だろうというふうに思いますが、さらにそうした意見を十分反映させる必要があろうというふうに思います。

 そういう意味で、今後こうした地方との調整についてはどのように対応されていくお考えか、お伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、増原委員長代理着席〕

井上国務大臣 基本指針というのが国民の保護のために大変重要な役割を担っているということは、法律の中にそのように規定しているところでございまして、しかも、委員御指摘のとおり、これはできるだけ早くつくる必要がある、こんなふうに考えております。

 作成するに当たりましても、地方公共団体に大いに関係する、大変多うございますので、地方公共団体等の御意見をお伺いすると同時に、説明会とか意見の交換の機会等を設けまして十分な意見の拝聴をいたしたい、こんなふうに考えております。

上田委員 この法案の第三十四条、第三十五条で、それぞれ都道府県、市町村が計画を立てるということが決められているわけでありますけれども、法案の中では、いつまでに作成するとかという、その期日については定められてはおりません。

 伺うところでは、災害対策基本法で地方公共団体が作成する際などにもかなり時間が、年月がかかったということも承知をいたしております。まして、地方公共団体、こうした武力攻撃事態を想定するというようなことというのは経験もないことでございますし、ノウハウの蓄積もないわけでありますので、しかも、それは平常の業務と一緒に行っていかなければいけないという大変な負担もあるわけでございます。

 まして、武力攻撃事態関連の法案については、知事や市町村長さんの中にはいろいろな政治的な立場の方もおられるでしょうから、そうするとさらに難航することも考えておかなければいけないんだろうというふうに思います。

 一方、すべての都道府県、市町村でそうした計画ができなければ、この法律の目的とするところも達成できないわけでございますが、そうしますと、都道府県や市町村が、いつまでたってもなかなかそうした計画が立てられない、立てない、そうした事態になった場合にどうされるのか、それをなるべく早期に作成するために、確実に作成をしていくために、促すための対策としてどのような取り組みを考えられているのか、お伺いしたいと思います。

    〔増原委員長代理退席、委員長着席〕

井上国務大臣 確かに、都道府県なり市町村の計画ができなければ、現実にこの法律が動かない、国民の保護ができないということでありますので、できるだけ早くこういった計画をつくっていく必要があることはもう言うまでもないと思うのであります。

 国民の保護の計画でありますから、いろんなお考えの地方公共団体の長がおありだと思うのでありますけれども、国民を保護するという一点につきましては、そんなに大きな差がない、私はこんなふうに考えておりまして、都道府県なりあるいは市町村と十分な意見の交換をして、できるだけ早く、しかもスムーズにこういった計画ができるように努力をしていきたい、こんなふうに考えております。

上田委員 今、御答弁に、できるだけ早くということでございましたけれども、やはりこれは本当に、市町村段階でのそうした計画が作成をされて、そしてそれに沿って準備がされ、また必要な訓練も行われて、初めてこの法案の目的とするところが達成できるわけでありますので、その点、私もどうもいろいろな点でまだ懸念されるところがございます。ひとつ内閣としても、そうした促進に今後さらに努力をしていただきたいというふうに思うわけでございます。

 それで、ちょっとそのことについての関連なんですけれども、この三十五条の中には、市町村長が計画を作成するときには、あらかじめ知事に協議をしなければならないということになっております。

 これは、例えば知事がこの一連の法案に反対という立場であると、その県内の市町村全部が計画の作成ができないというようなことにもなりかねないのではないかというふうに思います。これは、そうしますと、幾ら市町村長の方々が責任を果たそうということを考えても、なかなかこの法律に沿っては計画を作成することができないというような事態になってしまうおそれもあるんではないかというふうに思いますが、その辺はいかがお考えでしょうか。

井上国務大臣 その計画自身はなかなか作成するのが難しいところもあるわけですね。

 といいますのは、必ず計画に沿って行動があるわけでありますから、単に計画をつくればいいというものでありませんので、時間のかかることだとは思いますし、また大変難しいことでもあろうと思うのでありますけれども、この点につきましては、それこそ政府を挙げまして、都道府県知事に十分な説明をいたしまして、市町村段階の計画ができますように努力をしていきたい、こんなふうに思います。

上田委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 それで、特に市町村でありますけれども、市町村に協力をしていただくためにもう一つ重要な問題というのが、やはり費用の問題でございます。

 地方公共団体が行う国民保護のための措置に要する費用については原則として国が負担するということにはなっているんですけれども、平時において、計画を作成したり、いろいろな資機材を準備をしたり、また訓練を行ったり、そうした費用については、これは市町村、特に規模の小さい市町村においては相当な財政負担になるんではないかというふうに思います。ここをどのように手当てをされるお考えがあるのかどうか。

 特に、法案の百六十九条の規定については、国は予算の範囲の中で補助することができるというふうになっておりますけれども、それについて今後どのように取り組まれるお考えか、お伺いしたいというふうに思います。

井上国務大臣 費用負担につきましては、平時の場合につきまして御指摘のようにきちっとした規定がないわけでございまして、有事の場合には国が持つ、これははっきりしているわけですね。

 平時の場合におきましてどのようにするかということでございますが、これは、経費の費目によりましていろいろと、国がより負担した方がいいような場合もありましょうし、あるいは地方団体が負担した方がいい場合もあろうと思うのでありまして、いずれにしましても、これは、国が助成をする、補助をする対象の経費としてはどういうものを想定するかということですね。

 どういうものに対して補助をするかということにつきましては、これは関係各省の間におきましてこれから詰めていくことだと思いますけれども、できるだけこういった平時におきましてのいろいろな準備ができやすいように、そんなことを念頭に置きながら努力をしていきたい、こんなふうに思います。

上田委員 もちろん、大臣のお立場で各省の予算について全部お約束をしていただくことはできないんだろうというふうには思いますけれども、ただ、先ほどから申し上げているように、やはり都道府県、特に市町村においては、この計画を作成するということについてもいろいろな難しい点があるわけであります。その上、費用の問題も出てくるということになれば、相当困難が伴うわけでありますので、ぜひ、費用の助成も含めて、できる限りの市町村に対する支援、援助をしていただくことを重ねてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 そして、もう一つ最後に大臣に、先ほど御答弁の中で、地方公共団体の首長さんたちの意見も踏まえて、緊急対処事態の措置が今度の法案の中に盛り込まれたということがございました。

 ここで言う緊急対処事態、先ほど大臣の方からも御説明がありましたけれども、かなり厳しく限定をされた要件となっております。この要件で考えますと、これまでに発生をいたしましたいわゆる不審船の事件であるとか、あるいは拉致目的のためなどに工作員が上陸するようなケースだとか、そういったことというのはこの事態には当たらないんだろうというふうに思います。そして、テロの中には、必ずしも多数の人を殺傷することを意図としていない、例えば建造物だとか交通網、人のいないような時間をねらっての攻撃というようなこともあるんじゃないかというふうに思います。

 もちろん、この事態の定義を非常に限定をしたという意義はわからなくはありません。ただ、この措置というのは、やはり首長さんたちとの意見交換会で提起されたものというのと、そうした首長さんたちの問題意識というのは多分もうちょっと広い範囲のことをおっしゃっていたんではないのかなというようなことも推察をするんですが、そうしたこと、こうした経緯も踏まえて、このように大変限定をした、厳しい要件で限定をしたその理由につきまして、お伺いをしたいというふうに思います。

井上国務大臣 これは法案の中に書いておりますように、閣議で認定をしまして、しかるべき対策をとり、それから、国民の保護措置をとるわけですね。したがいまして、そういう保護措置の対象になるようなそういう大規模なテロ行為、こういうことになるわけでありまして、日常に発生いたしますような、小規模と言っていいんですか、通常のテロにつきましては個別の法律で対処できるんじゃないか、こういう想定のもとに大規模なテロ等だけを対象にいたした、こういうことでございます。

上田委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

    ―――――――――――――

自見委員長 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、防衛庁防衛参事官大井篤君及び消防庁長官林省吾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 この七法案三条約の議論に入ります前に、冒頭、少しの時間をとりまして、イラクにおける人質の問題につきまして、主に外務大臣に質問させていただきたいと思います。

 まずは、一日も早い人質の解放に向けて政府を挙げて御尽力をされていることとは思いますけれども、現状認識につきまして、若干、話せる範囲でお伺いしたい。

 マスコミ報道によりますと、ファルージャの部族長らが武装集団との交渉のためのグループを結成したとか、あるいは昨日は、日本時間の昨日夜でございますけれども、逢沢副大臣がヨルダンの首相と会談をしたと。首相と会談をされるということは、何か大きな意味合いがあったんではないかと思うわけでありますが、お話しのできる範囲で結構でありますので、現状について御答弁ください。

川口国務大臣 現状でお話しできることをということで申し上げさせていただきたいと思いますけれども、今の時点で、三人の人質については確認は引き続きできておりません。

 それから、報道にいろいろなことが出ておりますけれども、それについて、これはこの前も前原委員に、別な委員会での御質問だったと思いますが、申し上げさせていただきましたけれども、これは、我が方が今どういうことをやっているかということを申し上げるということについては、これをやっている武装勢力にメッセージを送ることにもなり得ますので、恐縮なんですけれども、命の安全ということを考えまして、申し上げないということでやらせていただいております。御理解をいただきたいと思います。

 それから、逢沢副大臣がヨルダンの首相に昨日お会いになられました。これについては、基本的に、ヨルダンの政府からいろいろな便宜をいただいておりますので、そういったことについてのお礼を申し上げ、かつ意見交換をしたということでございます。

前原委員 先般、イラク復興支援特別委員会で議論をさせていただいたときに、私はこう申し上げました。チェイニー副大統領と小泉総理の会談において、イラクの情勢、特にファルージャの問題についてちゃんと議論したのかということを、おとついですけれども申し上げました。その質問については、具体的な地名を交えての話はなかった、こういうことでありました。

 しかし、今、イラクの状況というのはまさにファルージャに焦点が当たっていて、この動静が今後の、人質の問題のみならず、六月三十日の主権移譲も含めて大変大きなかぎを握っているのではないかというふうに思っております。そういう意味で、アメリカ側とこのファルージャの情勢について、つまりは、我々の認識では、これは政府の御認識も伺いたいわけでありますが、アメリカというのはだんだんだんだん敵と味方がわからなくなってきているのではないか、こういう気がするわけです。

 つまりは、フセインを倒した、そしてCPAをつくって、六月三十日に移行をさせるということで、いろいろな理由はあれ、やってきた。しかし、そのイラクの人たちを敵に回しているのが今のアメリカの状況じゃないか。つまりは、何のためにイラクの国を立ち上げるかという目的と手段の本末転倒が起きて、何をしたらいいのかわけがわからなくなってきている。つまりは、治安維持と、あるいはイラク人の反米感情を激化させることを混同してやってしまっているんではないか、そこがまさにファルージャの虐殺のような現状があるんじゃないかと私は思います。

 したがって、日本は、支援をするんだ、イラクの復興支援について能動的に役割を果たすんだ、お金も人も、そしていろいろな外交手段でもやるんだということを今までおっしゃってきたわけでありまして、そういう意味からすると、このファルージャでのアメリカの行動についての自制、あるいはこの問題の冷静化、鎮静化というものがむしろ六月三十日以降の政権移譲の道筋をつけるんだということを、なぜ日本政府としてアメリカに言わないのか。そのことについてもう一度答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 人質事件との関係で、イラクのどこの地域について政府として関心を持っているかということについては、申し上げるのを控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論といたしまして、イラクの治安情勢の最近の動き、これはもちろんファルージャの話もございますし、あとはサドル軍の関連でナジャフ等の地域というのもございます。そういった、暴力と申し上げていいと思いますが、それの広がりについては、六月三十日に向けてのイラクの国内の安定化、治安をおさめていくということの関連で、政府としてももちろん関心を持っております。これについても、情報をきちんととっているわけでございます。

 それで、アメリカのチェイニー副大統領がおいでになられたときにも、こういった広い観点でのイラクの状況についての議論を総理との間でしていただきまして、総理からは、チェイニー副大統領に対しまして、国際協調の確保が必要であって、そのためにも国連の役割が重要であるということを申し上げてきたわけです。そして、安保理の改革を含む国連改革ということも必要だということも、その関連でおっしゃったということでございます。

 これは、チェイニー副大統領も、六月三十日に向けてということが非常に重要であるということをおっしゃっていらっしゃいまして、我が国としても、こういった国際社会のさまざまな動きがございますので、できるやり方で支援をしていきたいと思っております。

前原委員 全く国会の議論の形骸化だと思うんですね。血の通った議論が全くできていないし、本当に、私は、人質を解放する意思があるのかどうかと疑いたくなるような答弁だと思います。

 つまりは、私が聞いているのは、いろいろなところで紛争が起きている、それは、ここだけじゃないよ、ファルージャだけじゃないよ、ナジャフもありますよ、そんな答弁を聞いているのじゃなくて、イラクにおいて今焦点化しているのはファルージャである、そして、そこの虐殺の問題というものがまさに象徴的に扱われて、人質の問題のみならず、六月三十日に向けての主権移譲というものも非常に難しくなってきている、その中で主体的に日本としてアメリカと話をしているのかどうかと聞いているんです。

 もういいです。もう情けなくなりますので、いいです、答弁は。

 では、事態特の話に移りたいので、最後に一つだけ。

 国連の関与の話をされましたけれども、新たな国連決議の必要性、つまりは、六月三十日以降、国際社会が、より多くの国々が関与する中で参加をしていくためには、私どもは、新たな国連決議というのは必要ではないかというふうに考えております。政府としての考え方、そしてまたその取り組みについて、ポイントを絞ったところで答弁してください。

川口国務大臣 六月三十日に向けての動きの中で、日本政府としては、新たな安保理決議があればあった方がいいというふうに思っております。それで、そのことについて、今、安保理の中でそういった決議の案文が具体的に議論されている、され始めているという状況ではまだないということでございまして、我が国としても、そういった動きを注視し、必要な働きかけはやっていきたいと考えます。

前原委員 外務大臣の口から、あればあった方がいいなんて、何かそんな人ごとみたいな話で、全く主体性とか意思とかは感じられないですね。まあ、しようがないですね。この問題は、いいです。

 では、事態特の問題について伺いたいと思います。

 まずは、緊急対処事態について質問をさせていただきたいと思います。

 これは井上大臣あるいは防衛庁長官、どちらでも結構でございますが、この緊急対処事態というもの、これは、武力攻撃事態対処法の二十五条に、今後整備が必要だねということで、いわば今後の検討課題として条文化されたものを具体化したものでありますけれども、まず私がお伺いしたいのは、この緊急対処事態の定義なんですね。

 このいただいた資料の中には、具体例として、原子力発電所施設の破壊、それから炭疽菌等を用いたテロ、それから航空機による自爆テロなどといった三つの事例が列挙されて、緊急対処事態、こういうことを言われているわけでありますが、これだけではなかなかイメージがわかないと思うんですね。

 つまりは、緊急対処事態というのは、この文言を読んでいただかなくて結構ですよ、そういう文言の書いてある定義をまた音読してくれという意味ではなくて、ここの緊急対処事態の定義の中にはどういうものが入り得るという整理を今のところ政府としてちゃんとやっているのか、そして類型化というものを考えているのか、その点について、どちらでも結構ですが、御答弁をいただきたいと思います。

井上国務大臣 緊急対処事態の定義につきましては、法律の方で書いてあるとおりでありまして、ここで改めて申し上げるまでもないと思います。

 これは、一つは、やはり国民の生命とか財産等に大変影響がある事態ということでありまして、そのような定義をしたのであります。また、この法律全体から見ますと、国民の保護措置が必要だということに相なりますので、逆に言えば、保護措置が必要となるような事態、そういったのが、もちろんこの定義に該当する必要はありますけれども、その定義の中で、では具体的にどういうものが対象になるかということになりますと、保護措置が必要になるような、そういった事態が対象になると思います。

 ただ、御指摘のように、原子力発電所に対する攻撃とか何かだけなのかとかということになりますと、私どもとしては、まだそこまで詰め切っていないわけでありまして、これから十分検討いたしまして、この点についてそごのないように考えていかないといけない、こんなふうに考えております。今後の検討課題の一つでもあるというぐあいに御理解をいただきたいと思います。

前原委員 私、今から検討課題というのはおかしいと思うんですね。やはり法案を出される前に検討しておいてもらって、ここでしっかり言っていただくというのが、私は本来あるべきだと思うんです。揚げ足をとるつもりはありません。建設的な議論をちゃんとしたいと思います。

 そういう意味で、保護措置が必要となる事態とおっしゃいました。これは皆さん方御承知のとおりで、釈迦に説法なところがあると思いますけれども、何かが起きた場合においては、単発か、それがきっかけとなって波状的に起こり得るのか、あるいは連続して起こり得るのかというのはわからないわけですよね。つまりは、一つの物事だけで、それが保護措置が必要となる事態かどうかということはわからないわけです。

 私、九・一一テロのときにたまたま夜ニュースを見ていまして、初めは何かニューヨークのマンハッタンのビルの火災だという報道があって、いや、それは飛行機が突っ込んだという話になって、そして今度はテロだという話になって、いや、ペンタゴンもだ、あるいはホワイトハウスの、議会の前でもだ、あるいはほかの飛行機も乗っ取られているというような、いろんな情報が錯綜して、つまりは、無限に何かこのテロが広がっていくんじゃないかという恐怖感を味わいました。これは皆さん方も同じことだと思います。

 ということは、例えばテロがきっかけで武力攻撃事態になるかもしれない、あるいはそれを想定した前ぶれかもしれないわけですね。つまりは、一発で終わりなのか、それが入り口なのかということは、一発目ではわからないわけです。危機管理の鉄則としては、初動が大切。つまりは、初めにどう動くかということが大切、そしてそれに対してどう対応するか、そして危険の広がりをどう抑えていくのかということが大切だと思うんですね。

 ということになれば、保護措置が必要となる事態というのでは余りにもあいまい過ぎると思うんです。緊急対処事態というものを、本当にしっかりと対応するための法的措置をまず行うのであれば、今の御答弁では私はまだ不十分だと思います。

 そのことも含めて井上大臣に御答弁いただきたいんですが、例えばスペインの列車爆発テロがありましたね。ああいうのは、もちろん結果的には単発で終わった、同時多発だったけれども単発で終わった。しかし、あれが導火線だったかもしれない。同じようなことは地下鉄サリン事件も言えますね。

 あるいは、私は京都ですけれども、鳥インフルエンザが起きました。あれは、別の考えようによっては、あるいは、防衛庁には特にあのときにはお世話になりましたけれども、生物テロを封じ込めると思って対処してほしいということで、災害出動も含めて協力をいただいたということでありました。ああいう場合はどうなのか。

 あるいは、今回のイラクの人質事件、まだまだ予断を許される状況ではもちろんありません。けれども、どうやら雰囲気としてはアルカイダではない。でも、これがもしアルカイダだったら、国際ネットワークテロ組織ですね。ということは、あれをきっかけにして国内でも何か起きるかもしれない、あるいは海外でも邦人の身に何か起きるかもしれないということで、無限に危機というものが広がっていくということが想定され得るわけですね。

 だから、こういう今申し上げたことについて、先ほどの前段階で申し上げた、緊急対処事態というのは、単発で終わるか、それがきっかけになるかわからないということにおいては、私はこういう問題もすべて緊急対処事態に認定をするということが必要なんだと思いますが、いかがですか。

井上国務大臣 確かに、緊急対処事態の認定の仕方としまして、ある種の事件が起きた場合に、その事件の深さをどう理解するかということだと思うんですね。だから、おっしゃるとおり、本当にそれだけで終わってしまうかもわからないし、それがきっかけになりまして次から次へと起こってくる、国民生活に大変大きな影響を与えるような事件が起こるかもわからない、起こる場合もあるわけでありまして、そういう意味におきまして、私は、その緊急対処事態の定義だけでもって、これはそれに該当するとか該当しないと決めてしまうというのは、そこは問題があるんじゃないかと思うんです。

 したがいまして、具体の認定につきましてはかなり慎重にやっていくということでありまして、例えばスペインなんかのああいう例になりますと、あれ自身非常に大きな事件だと私は思いますけれども、しかし、引き続き起こるかもわからないぞということで準備をしていくというのは、これは通常のことだと思うんですよね。したがいまして、ある種の事件が起きる、それが端緒となるのかどうかという判断につきましては、極めて慎重に、今言われるような意味も含めまして、私は、よく検討して判断をしていかないといけない、そういう問題だと思っています。

前原委員 慎重に判断をするのは、もちろんそれは政府としてはそうやられるべきだし、やられなければいけないと思うんですが、法律に基づいていろいろ動き出すわけです。その不備については後で質問をいたしますが、例えば私権制限なんかも出てくるわけですね。ということになれば、制限をかけられる国民からすれば、それについてはいろいろ考えられるんだよということで無防備に幅広に考えられても困る部分もあるわけです。これは非常にジレンマの問題だと思います。我々が政府だったらどうするかと同じような問いかけをされたら、なかなか難しい問題だと思うんです。

 しかし、緊急対処事態ということを認定して、そこからいわゆる対処方針をつくって、それから対策本部も設置するわけですよ。ということは、それからいろんな動きが出てくるわけですよね。となれば、どういったものが緊急対処事態になるのかということの整理はきっちりやはり出していただかなきゃいけないし、その場合、私は二つの整理が必要だと思うんです。

 だから、類型化する整理、あとは、レベルを、どういうふうにこれから進んでいくかという時系列的な整理というものも必要で、ひょっとしたら二次元だけじゃなくて三次元的な要素も必要になってくるかもしれません、別の要件として。したがって、私は、先ほど御答弁いただいた保護措置が必要となる事態だけでは、これは全く弱いと思うんですね、定義としては。

 したがって、検討中だということで、これ以上詰めても仕方がないと思いますので、政府の統一見解を出してください。類型化、そして事態認定の定義をもっときっちりとやってほしいということについて、政府の統一見解を求めたいと思います。そのことについて御答弁ください。

井上国務大臣 御指摘のように、緊急対処事態の具体例、類型といいますか、これにつきましても、今出しているもので十分だとか、そういうぐあいに考えておりませんで、もっともっとやはり研究しまして、いろんな類型化を考えていかないといけない、こんなふうに思います。

 また、レベルにつきましても、今お話しになりましたように、この辺はなかなか判断の問題としては難しい問題だと私どもも考えておりますが、できます限り、どういう事態においてはどういう判断をしていくのかというようなことにつきましての統一見解、総じて言えば、緊急対処事態についての定義をもう少し具体的にする、はっきりさせる、こういうことだと思いますので……(前原委員「類型化」と呼ぶ)類型化を含めまして、そういうぐあいにひとつ、これは初めてのことでありまして、問題意識としてはあるんですが、さあ具体的にどうするかとなりますと、なかなか難しい問題でありますけれども、ひとつ努力をしてそのようにさせていただきたいと思います。

前原委員 そういうことで、政府の統一見解を出していただくということですので、これからいろんな質問等を重ねていく、きょうはキックオフの委員会でありますけれども、ぜひ、委員長の責任でもって、そういった統一見解をまとめる責任を委員長もしっかりと認識をしていただきたいと要望させていただきます。

自見委員長 前原議員にお答えいたしますが、理事会で、今大変重要なことだと私もよく認識いたしますし、また、大臣の答弁もございましたので、理事会で引き取らせていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。

前原委員 そういう緊急対処事態、非常に難しい問題でありますが、では、その奥の深さが起きたものだけではわからない緊急対処事態において、この法律のスキームというものは私はいかがなものかと実は思っているわけです。これは井上大臣ももうお感じだと思いますけれども、国民保護法制に緊急対処事態が書かれているわけです。武力攻撃事態と武力攻撃予測事態においては、武力攻撃事態対処法という法律にそういう対処基本方針を策定して、対策本部も設置をして、そして国会承認という枠組みをかませて、そしてそのもとでまた今度国民保護法制に基づいていろいろな保護措置がとれるという、親法が、武力攻撃事態対処法というものがあった中でしっかりそれを決めて、国民保護法制の中に落としているというのが法律の書き方ですよね。

 しかし、この緊急対処事態においては、国民保護法制の中に入っているわけですよ。つまりは、親法がなくていきなり緊急対処事態という、非常に、今御答弁いただいたように難しいわけですよ、認定自体が。対処自体も難しい。初動にしっかりやっておかなきゃいけないということを考えたら、空振りであったって、そういうものを認定して構えだけつくっておくことは私は必要だと思うんです。それで、必要なかったらすぐ解散したらいいわけですから、そういうものについては。

 しかし、それが、入り口でどんどんどんどん武力攻撃事態にエスカレートしていくような問題についての取り決めが国民保護法制の中に入っているというのは、おかしいんじゃないんですか。つまりは、武力攻撃事態対処法に、やはり親法にこういう緊急対処事態、だって、二十五条にそういうものをやりましょうと決めているわけですから。親法にそういうものをしっかり決めた上で、国民保護法制の中にその緊急対処事態における国民保護措置についての形を、内容を決めるということが本来あるべき法律の立て方ではないですか。

井上国務大臣 委員のおっしゃるようなお考えも私は決して否定するものではございません。そういうお考えもあると思うのでありますけれども、二十五条につきましては、御案内のとおり、これは与野党で協議をいたしまして修正した条文でありまして、あの書き方というのは大変微妙な書き方になっていると私思うんです。

 つまり、武力攻撃事態に関する部分の規定ぶりと若干違っているわけですね。今回の国民保護法制の中で緊急対応措置、これを規定しておりますけれども、まさに私どもは二十五条の趣旨をそのまま具体化すればこういうような規定じゃなかろうか、こういうことでこのような法律をつくらせていただいた次第でございます。

 したがいまして、どちらかといいますと、国民保護法制、これを頭に置きまして整理をいたしておりますが、私は、二十五条の修正の経緯から見ますと、まず皆さん方、今回の国民保護法制の中で期待されておりますのは、政府が提案いたしましたような中身のものじゃなかろうかというふうに理解をしております。

前原委員 その理解は私はちょっと違うと思うんですね。よりいいものということで、与党と民主党の間で修正をしてきて、二十五条もあると。しかし、これは大臣御承知のとおり、武力攻撃事態対処法というのは、基本法的な要素がある、それから、対処に関する具体的な規定があって、そして最後は、今後整理すべきというプログラム的な法律が書かれているわけです。

 二十五条の規定というのは、全くそのプログラム法規定だと思うんですね。今後整理することについて問題意識を書いているというのが二十五条だと思うんです。

 ということになると、ちゃんと整理をするということになったら、二十五条も変えて、そういう親法のところに緊急対処事態の規定をしっかり設けて、そして国民保護法制に、まさに緊急対処事態における国民保護措置というものを落としていく。やはり武力攻撃事態対処法も三つの段階に分けて、プログラム法的なものは時間の経過とともに整理しなきゃいけないわけですから、ここに緊急対処事態というものを書いて、そして今申し上げたような、保護措置については国民保護法制におろすというのがあるべき姿ではないですか。

 そうしないと、井上大臣、要は、国民保護措置だけに矮小化されてしまうわけですよ。自衛隊をどう活用するのかとか、あるいは省庁間調整をどうするのかとか、あるいは市町村、都道府県を越えるような広域で問題が起きたときに関する調整事項なんというのは、僕は国民保護法制の中にそれが書いてあるだけでは対応できないと思うんですね、法の枠組みとして。

井上国務大臣 緊急対処事態における武力攻撃事態等を規定するその規定の準用だと思うのでありますけれども、法律としましては、それぞれの規定を準用するということでありますので、これはもちろん武力攻撃事態と緊急対処事態とは事態が違いますが、これは事態に応じてそれらの規定に基づいて対処できるものと私どもは考えております。

前原委員 いや、準用するものであればなおさら、武力攻撃事態対処法にそういうスキームがあるわけですから、それを準用する形だったら、武力攻撃事態対処法に準用した形で緊急対処事態を設けるのが普通じゃないですか。今のおっしゃるのは逆ですよ。

井上国務大臣 ですから、委員がおっしゃるような法律の立て方、制度の仕組みはあると思いますけれども、今政府が提案しておりますようなこういう規定、つまり本体の法律に基づく国民保護措置の規定を準用するというやり方も、決してそれはあり得ない対応じゃないと私は考えています。

前原委員 ここはちょっと真剣に議論させてもらいたいんですが、つまりは、法律の体裁とかそういうことで申し上げているんではないんですね。私はそう申し上げているわけです。

 つまりは、本当に、この国民保護法制の中で緊急対処事態という規定を盛り込むだけで、さっき申し上げたような、自衛隊をどう活用するかということが万全を期せますかということを言っているわけですよ。あるいは、各省庁間の調整というものが国民保護措置に矮小化されるんじゃないですかと。

 保護措置じゃないですよ。だって、問題は、事態の対処とかあるいは再発の防止、広がりをどう抑えるかということも含めて緊急対処事態にはやらなきゃいけないわけで、それは国民保護措置だけじゃないと思うんですよ、やるべきことは。ということは、国民保護措置にそういうものを矮小化して書くということになれば、私は、その効果が極めて限定されて、そしてその緊急対処事態にまさに対処できないんではないか。

 もう一つ大きな欠陥を申し上げましょうか。これは提出大臣ですからもちろん御承知だと思いますけれども、私権制限については武力攻撃事態対処法と同じようにできるわけですよ、しかも、そのことについては閣議決定で。武力攻撃事態という本当に日本が大変だというときには国会承認が必要で、予測事態、こういう緊急対処事態においての私権制限については閣議決定だけでできる、そういったひずみも出てきているわけですね。

 私権制限をやるということであれば、武力攻撃事態においてさえ国会承認をやるわけですよ。ということは、ここにおいても国会承認の枠組みをつくらなきゃいけないという本旨からすれば、シビリアンコントロールを働かせるとすれば、武力攻撃事態対処法に緊急対処事態の規定を設けて、そして親法から国民保護法制ができるような仕組みに変えるというのが本筋じゃないですか。

井上国務大臣 私は、前原委員のようなお考えがあるということは決して否定しませんし、そういうことも有力な一つの方法としてはあると思うのでありますけれども、要は、武力攻撃事態等と緊急対処措置の事態というのは違うわけですね。違うんです。

 違うことに応じてその対応が違うということは、当然あってもいいわけでございまして、武力攻撃事態等なんかの場合は、これはやはり国会とのかかわりが私は必要だと思うのでありますけれども、この緊急対処措置なんかの場合は、これは通常警察でありますから、自衛隊を動かす場合だって治安出動ですね、治安出動でもってこれはいいわけでありますから、それでもって対応していくということでありますから、事態の差異に着目して、例えば国民の権利制限なんかも当然そういうぐあいにあるわけでありますから、立場の相違とか考え方の相違はありましても、それはそれとして御理解いただけるところじゃないかと思うんです。

前原委員 大臣、立場の相違とかじゃないんですよ。緊急事態に対処できますかということの中で議論しているわけです。

 先ほど、一番初めに類型化の話あるいは定義の話で申し上げたように、これが入り口で武力攻撃事態に発展するかもしれないわけですよ。そうすると、武力事態の対処と緊急対処事態の対処が違うということは言い切れないんです。つまり、そこからエスカレートする可能性があるわけですね。

 つまりは、その連続性というものを担保しておくためには、逆に言えば、それを武力攻撃事態対処法という親法に載せておいて、国会承認もかけて、そして、私権制限の項目については閣議決定ではなくて国会承認だ、あるいは自衛隊をどう動かすなどということも対処基本方針に載せるというような大きな枠組みをつくることが、エスカレーションするかもしれないという危機の不確定性に対応するために必要なものじゃないか。見解の相違とかじゃなくて、私は、根本的にこの法律の欠陥だと言っているわけです。

 検討していただけますか。

井上国務大臣 それは十分に検討させていただきますが、ただ、緊急対処事態から武力攻撃事態等へ深化するといいますか転化する可能性はあるわけでありまして、その場合にはそれとしてまた措置をとるわけでございまして、緊急対処事態の措置でもってそのまま武力攻撃事態等への措置にするということではないわけでありまして、その点はひとつ御理解をいただきたい点だと思います。

前原委員 検討していただくということでありますので、これについては検討してください。これはきょうが初めてですので、ぜひここは検討していただきたいと思います。

 川口大臣、一つだけ、今の緊急対処事態について質問したいんですが、米軍はこの緊急対処事態においては協力できるんですか、できないんですか。

川口国務大臣 まず、安保条約、これに基づいて我が国を防衛する義務が米国にあるわけですけれども、それに該当するかということでいいますと、緊急対処事態というのは、定義上、我が国に対する武力攻撃が発生した場合というのが安保条約の五条ですから、それに該当しないということで、安保条約による権利義務関係というのは生じません。

 緊急対処事態というのはどういう事態かということですけれども、安保条約上の権利義務の関係ではないんですが、例えば、阪神・淡路大震災のときに米軍は行動をしたわけでございまして、そういった状態で我が国が米軍に対して協力を要請するかどうか、これについては、どういう事態でするかということは一概には言えないということでございます。

 ただ、権利義務関係ではないけれども、そういうふうに米軍が行ったという例はありますし、安保条約あるいは地位協定がそれを禁止しているということではないということです。

前原委員 では、日本が米軍に協力を求めることはあり得るんですか。

川口国務大臣 在日米軍による、日米安保条約、日米地位協定上、本来予想されている活動ではない活動につきましても、我が国の要請あるいは同意ということに基づいて行われ、そして、在日米軍の駐留目的、これに反しない、反しないというか損なわない活動につきましては、それはあり得るということでございます。

前原委員 あり得ると。先ほど大臣が御答弁されたように、条約上の権利義務関係ではない、しかし、同盟関係という中で協力を要請することもあり得る、こういうことですね。

 その場合の国内法上の根拠はどうなるんですか。例えば、今回は有事において動くという意味での米軍関連法案というのは出ていますけれども、その場合、緊急対処事態において米軍に協力してもらうという国内法上の要件は何になりますか。

川口国務大臣 おっしゃっている国内法上の根拠というのは、政府がそういった要請をする、その根拠をおっしゃっていらっしゃるわけでしょうか。(前原委員「はい」と呼ぶ)ということであれば、特段のそういった国内法は要らないということであるかと思います。

前原委員 要請をする場合は、国内法上の根拠は要らないということですか。もう一度確認。

川口国務大臣 政府が要請をする国内法上の根拠ということについては、特段の国内法上の規定は必要ではないということであると思います。

前原委員 では、米軍が緊急対処事態において国内で活動する法的根拠は何ですか。

川口国務大臣 これは、先ほど申しましたように、我が国の要請または同意に基づいて行われ、かつ、駐留をしている在日米軍の本来の目的、これを損なわない、駐留目的、これを損なわないという活動については、日米安保条約、日米地位協定によって認められるということであるということです。

前原委員 要は、地位協定から引っ張ってくるということですね。緊急対処事態においても米軍の協力を要請できるし、その活動においてのベースになる法律的な根拠というのは地位協定によって定められた法律に縛られる、こういうことですね。――はい、わかりました。

 これも、きょうは初めですので、今の御答弁をちょっと精査して、さらにまた質問をさせていただきたいと思います。

 さて次に、態勢、これについて、情報あるいは対処のあり方も含めて少し議論したいと思うんです。

 つまりは、今回は七法案三条約ということで法律の問題を議論していますけれども、私は、法律とあわせて大切なことは、態勢の整備だと思うんです。態勢がしっかりしていないとその法律がうまく動かないということになろうかと思います。

 その態勢の中に、私は二つの点を問題点として挙げたいと思うんですね。一つは、初動態勢というか、どのように総合調整を行うかという態勢です。もう一つは、情報収集をどのように行うかという態勢。この二つが極めて重要だと私は思うんですね。

 現在、例えば大規模自然災害、テロ、有事、それも含めて、どういう動きになるかということを少しシミュレーションでお互い考えていきたいと思うわけであります。

 内閣官房に官房副長官補室というのがありますね。それで、内閣官房副長官補室には今大体八十名ぐらいおられるということです。ただ、半分ぐらいは法制担当ということで、こういった今の法律なんかを一生懸命つくってこられた方々がおられるわけですね。その約半分については、それぞれの役所、警察とか防衛庁の内局あるいは陸海空から人が出てきて、そしてそれぞれの担当をしている、こういうことなんです。

 それで、私が伺いたいのは、この態勢で、例えば、先ほど申し上げた緊急対処事態というものの初動態勢、そしてそれを総合調整する態勢として本当にこれでうまくいきますかということを伺いたいわけです。

 危機管理体制においては、安全保障会議というのがありますね。これはしかし、大臣が集まってやる会議ですね。これは常設ではない。安全保障会議というのはあるけれども、安全保障会議に出席する大臣がいつもそんなことを議論しているわけではないわけですね。では、その下に事態対処専門委員会というのがあるわけですけれども、これは次官級でつくられている。これだって、大臣級の安保会議と同じように、しょっちゅう集まって、そんな危機のことばかり考えているわけじゃないわけですね。では、局長級の連絡調整会議というのがありますけれども、果たしてそういうものが恒常的なものかといえば、そうではないわけですね。

 となると、内閣官房副長官補室の、その法制面を入れたら八十名ぐらいで対処しなきゃいけないということですけれども、この態勢で本当に危機に対して、まさにエスカレーションしていく可能性のある危機に対して、この態勢で本当に対応できますか。

井上国務大臣 現在のこの態勢といいますのは、阪神・淡路の大震災の後、経験を踏まえて、今、態勢がつくられてきたと思うのであります。

 確かにおっしゃるように、組織の問題と運用の問題があるわけですね。日本の場合は、各省庁の権限がございまして、歴史的にそういうものが今日まで続いてきているわけでありますが、それらをいかに効果的に一体化して動かしていくか、こういうことでありまして、そういう機能を内閣官房が担っているということだと思います。そのために必要な情報も収集していかないといけないということでありますが、その情報収集につきましても各省庁が権限を持っておりまして、各省庁で収集をするということであります。

 したがいまして、内閣官房におきましては、そういったものを統括していくといいますか、そして全体の組織を効率的に動かしていくということでありますが、現状におきましては、まだまだやはり強化をしていく面は多々あろうかと思いますけれども、そういう現行の各省庁の体制を前提に、有効にそれらを動かしていくような状況になっているんだというふうに考えております。

前原委員 私は、人数の問題を申し上げているんではなくて、やはり、その機動性とかあるいはその役割の明確化というのが必要だと思うんですね。もちろん、ある程度のボリュームは要ると思います。私は、これでは絶対少ないと思います。

 それと、先ほど申し上げたように、それぞれ役所から出てきているわけですよね、ローテーション人事で、とにかく本省を見ながら。この危機管理の問題は、やはり縦割りをどう超越していくのかということだと思うんですが、内閣官房副長官補室を見ても、それぞれの本国をにらんで仕事をするような仕組みになっているわけです。それは、外からは見えないかもしれないけれども、実際に中で仕事をしている人の話を聞いたら、そうだと言うわけですよ、だれがとは言わないけれども、そうだと。

 その場合に、後でお話をします情報の問題も含めて、やはりしっかりとした連携がとれるような仕組みには到底なっていないと私は思うんですね。その組織のプロパーの人たちがやはり必要だと思うんですよ。

 例えば、危機管理監、それから今申し上げた内閣官房副長官補、この二人がいるわけですよ。この二人の役割分担はというと、これは御承知だと思いますけれども、結局、内閣危機管理監というのは、「国の防衛に関するものを除く。」ということで所管事項は決まっているわけですね。なぜかというと、内閣危機管理監は、これは警察庁のポストだからですよ。内閣官房副長官補というのは、三人おられますけれども、このいわゆる危機管理においての部屋は、今、柳澤さんですけれども、歴代、防衛庁がここを占めているということなんですよね。私は、こんな仕組みはおかしいと思うんですね、危機管理においては。

 では、そのエスカレーション、さっき、緊急対処事態から有事に至るまでのエスカレーション、どうなるかわからないところで、いつ有事になるかわからないのに、今の段階では一応、内閣官房副長官補というところに八十人ぐらいがぶら下がって、ぶら下がっていると言っては失礼だけれども、いるわけですけれども、それが有事になりそうだとなったら上司がころっとかわる、結局はそういう話になるわけですよ。

 実際に、杉田さんでしたか、前の危機管理監のお話を伺ったら、いつでもちゃんとコミュニケーションをとっていますとそれはおっしゃいますけれども、しかし、組織上は、上司が急にある時点でかわる、そういうわけのわからぬ仕組みになっているわけですよ。いかにこの縦割りの弊害をなくした組織にしていくのかといったことが、私は、法律だけ整えたってだめだ、この態勢をどうしていくのかということをやはり真剣に考えてもらわなきゃいけないと思うんです。

 そこで、きのう、我が同僚議員、長島議員からも質問を本会議でさせていただきましたけれども、そういった緊急事態に対応するための組織、危機管理庁という言い方を我々はしております。別にアメリカの危機管理庁をそっくりそのまま持ってこいなんて言っているわけじゃない。そういう縦割りの弊害を排して、そして危機に対して初動をしっかりやって、そして省庁間調整もちゃんとできる、そういう態勢をつくるべきだということで、武力攻撃事態対処法の附則にも載せて、検討してくれということですけれども、いまだに検討しているという話でしたね、きのう。一年たっているわけです。

 今のようなことも含めて、私は検討してもらわなきゃいけないと思うんです。大臣、御答弁ください。

井上国務大臣 組織の問題でありますけれども、総合調整をする分野と縦割りの分野が二つあるわけですね。確かに今、自衛隊でありますとか警察とか消防とかあるいは自治体、こういう関係につきましては、それぞれの所管の官庁がございます。やはり危機管理につきましてはそれらをうまく調整する必要があるわけでありまして、そういうことで、内閣官房でもってそういう機能を果たしているということだと思うんです。今の調整権限が弱いとか強いというあるいは御意見はあるかもわかりませんけれども、今の縦割りの行政組織を調整する組織としては、まずまず最善のものとしてあるんじゃないかと思います。

 今委員がおっしゃるように、それじゃ人事がそれに伴っているのかという、組織の問題と人事の問題があるわけですね。この人事の問題については、そこはよく検討していかないといけないと思います。まさに適任者がその任に当たるという、そこは必要だと思うんです。

 ただ、例えば、今、危機管理監とか何かおっしゃいましたが、こういうのは組織としてはやはり必要な組織じゃないかと思うんです。問題は、だから、そういう組織上与えられた任務がうまく全うできるかどうか、そういうことでありまして、全うできるような人事を考えていかないといけないんじゃないか、こんなふうに思います。

前原委員 人事に任せる組織というのはだめなんですよ。どんな人がやったって回るような組織にしなきゃいけない。

 それは、どういう人がなるかというのは大切ですよ。後でお話をするような情報の問題、各国を見ると、やはり、情報を集める、例えば日本でいうと外務省とかあるいは警察庁とか公安調査庁とか防衛庁とか、そういったところの情報が上がってくるだけではだめなんですよ。その情報をいかに、知識とかノウハウとか、あるいは危機管理に対する考え方を持つ人がしっかりとその情報というものを練り上げて、そして国家の危機に対して対応できるようなものに統一していくのか。

 皮肉を言うようですけれども、内閣総理大臣が、今回のイラクでの人質の問題に絡んで、どの情報が本当の情報かわからないということは、本当であったって、絶対人前で言っちゃだめなんですよ。内閣総理大臣たる人が、いろいろな情報が上がってきて、その情報がどれが本当なんだかわからないんだ、そんな話はないわけですよ。

 例えば、もう時間がないのであわせて情報の話もしますと、例えばアメリカなんかでNSCというのがある。NSCなんかでは、CIA長官とか国防長官とか、あるいは統合幕僚参謀、何だっけ、日本で言う統幕議長みたいな人ですね、それから国務長官、国務大臣、全部集まって、上がってきた情報、それぞれ持ってきている情報を、そういった、まさに政策決定もするし、大事な政策判断というものを加えなきゃいけない人たちが吟味して、そして、例えばアメリカだったら、政府としての考え方をまとめるわけですよね。

 いみじくも総理たる人が、いろんな情報があって、どの情報が本当かわからないということは、総理がそういうことをおっしゃることも総理の資質としては問題だけれども、そういう情報をまさに精査せずに、検証せずに上げる今の組織が大きな問題なんですよ。まさに、情報の今の日本の組織がなっていないということが、このイラクの人質の問題でも明らかになっているわけですよ。つまりは、情報でもしかり。そういうことは今ある組織で最低限は対応できると思いますよ。

 井上大臣、こういう法律を議論するときに、態勢をしっかり変えるいいチャンスなんですよ。こんないいチャンスはないんですよ。法律を議論して、今の日本の危機管理体制、あるいは情報収集、収集だけじゃなくて、それを分析して、そして政策にまで上げるような態勢が整っているかというと、整っていないんですよ。だから、そういうものを検討してくださいと。

 そして、組織については、まさに、与党と民主党との合意で法律の附則にまで盛り込んで、真摯に検討してくれと言っているわけですから、そんなゼロ回答みたいな答弁はないでしょう。

井上国務大臣 今お話がありましたように、アメリカにおきましても、大統領の諮問委員会ですか、それに各機関を代表する責任者が集まって協議をしてやっている、こういうことでありますから、当然、日本におきましても、関係する各省庁が集まりまして最終的な判断をする、こういうことになろうと思うのでありまして、今、日本の態勢というのは、そういうような態勢になっていると思うんですね。今度の場合も、対策本部なんかつくるわけでありますから、そういう中できちっとした情報を集めて判断していく、こういうことになると思います。

 組織につきましては、特に情報につきましては、これは、情報を集めたら問題だというのじゃなしに、これはますます強化をしていかないといけない分野だろうと思うんですね。幾ら強化されても強化をし過ぎるということはないと思います。

 今、附則に書いてあります組織の点につきまして、我々もまだ深い検討をしているというところまでいきませんけれども、一応の検討はしましたけれども、なかなか、例えばアメリカの組織なんか見ましても、現実にどう機能しているのか、よくわからないんですね。一応、文章上整理されたものを見ますと、それはそれなりにわかるのでありますけれども、組織といいますのは、そういう組織についての権限を書けばうまく機能するというものではありませんで、それは現実にアメリカなんかでどういうような機能を果たし得るのかというようなことも十分見極めないと、日本の組織としてこれがいいとか、あるいは、ましてや今の組織を変えていくんだというようなことにならないと思うんですよね。

 日本の組織は組織なりに、これはやはり歴史的な経緯がありまして、各省庁、持っております。私は、やはり日本の組織の問題というのは、各省庁の縦割りの権限をいかに横の方で縛っていくかという、ここだと思うんですね。やはりそういうような運用をしていくということだと思うのでありまして、組織を直ちに変えるというようなことじゃなしに、そういう運用の方でもっともっと強化をしていくようなことを考えていくべきじゃないか、こんなふうに考えているわけであります。

前原委員 そうしたら、附則に書いた組織の検討というのは、もう要らないと、今おっしゃった、そういうことですか。運用でいいということですか。今後の審議のあれに差し支えますよ、そんな、今結論を出されたら。基本法の中で我々言っているんだから。大事にそこは答弁してください。

井上国務大臣 これは、検討をするということになっていまして、今現在、我々が検討した結果のことを、検討の途中だと言っていいと思うのでありますが、そのような感じを持っている、こういうことであります。

前原委員 何度も言っていますが、党利党略でこういう問題を言っているんじゃないんですよ。今の日本の危機管理体制において、余りにも縦割りの弊害が大き過ぎると。だから、対策本部にしたって、だれを対策本部に送り込むんですか。やはりそういうプロパーの人をここに置かなければ、結局はだめなんでしょう。後で質問する現地対策本部、何でできないかということも含めて、やはりそういったプロパーをいかに育てるか、そればかり考えておく組織が必要だと思うんですよ。しっかりと検討してください、そこは。だって、それが我々の一つの大きな主張の柱なんですから、そこについてはしっかりと検討してください。

 あと、組織についてですけれども、財務大臣、せっかく来られているので、ほかのところでも質問させていただきたいと思いますけれども、つまりは、危機管理というのはいつ起こるかわからないということで、普通の予算要求とは違う形になり得ると思うんですね。起きてそれに対処すると。補正でやれるじゃないかという話があるかもしれませんが、私は、やはり、危機というものを例えば察知して、それに対応するための予算というものを、そういった、例えば今の組織でいうと、内閣官房副長官補室にある程度上げてもいいと私は思うんですよ。つまりは、プロジェクト申請ではなくて、ある程度与えておいて、使わなかったらそれはそれでいいと。

 例えば、ある情報が入ったとしますね。これはだれから聞いたとは言いませんけれども、ある情報が入った。何かの生物テロがあるかもしれない。では、そのためのワクチンは日本にちゃんと備わっているのかどうなのかということで調べたら、備わっていない、しっかり備わっていないと。それに対して予算要求をしたけれども、なかなか、そんなものいつ起こるかわからないということで、財務当局は突っぱねる。そういう、私は、起きてから、しかし実際問題、予算計上していなかったのでそういったものに対応できていなかったということではいけないと思うんですよね。

 予算の編成の仕方ということも、これから私は組織のあり方にかかわってくると思うんですが、使わなければ使わなくていい、無理やり使う必要はない。しかし、常に予算というものをしっかりと与えておいて、今申し上げたような何かテロ予告みたいなのがあって、それに備えるためのワクチンであるとか、あるいは防護服であるとか防護マスクであるとか、そういったものを、余り国民に言うと、それはパニックになるといけないので、しかし、予算措置があるために着々とそういうものについてはしっかりと整備ができるという、やはり私は予算も必要だと思うんですよ。

 使わなかったら使わなくてもいい、しかし、そういうものに予算が必要だと思うんですが、財務大臣、どうお考えですか。今までそういうものは財務当局が全部突っぱねてきたという話を聞いていますが。

谷垣国務大臣 ただいま御議論の財政措置をどうするかということですけれども、今おっしゃったような事前の準備というのは、私は非常に大事だと思います。ですから、資材とかあるいは備蓄、それから訓練というのももちろん入ると思います。こういうものに対してどうしていくかというのは、今後、防災担当大臣を初め、関係当局で検討されると思いますから、私どもも真剣に議論をしていきたい、こう思っております。どういう形での予算、財政が必要なのかということを、我々も真剣に議論していくつもりであります。

 それから、今の御質問の中にはなかったかもしれませんが、緊急事態が発生した費用については、これは、その規模とか、どんなことなのかというのは、事前に一般論として申し上げるわけにはいきませんので、それは、今、日本の財政のシステムが持っているいろんな手法の中から、その時点でやはり使える最善のものでやっていくと言うしか、お答えのしようは今の段階ではないと思います。

前原委員 今、財務大臣、御答弁されたように、予防措置、訓練、これについては、財政当局、国費で賄うというところをしっかりと位置づけていただきたいというふうに思います。

 さて、次の質問に移らせていただきたいと思うわけでありますが、情報について一言だけ、井上大臣、もう一点だけ申し上げておくと、こういう話というのはしょっちゅうある話でして、公安調査庁長官が総理にいろんな説明に行ったら、ほかの役所の人が嫌がるとか、警察庁が、では長官を応援に行かなきゃいけないとか、そんなくだらない話になっている。だから、さっき申し上げたように、どの情報が本当かわからないということを総理に言わせるような仕組みになっているわけです。

 だから、やはり情報というものについては、別に、アメリカみたいにCIAというようなものを、何かいっぱい人をつくれと。それも一つの検討材料かもしれませんが、そんな大々的な組織でなくても、ある程度、各、公安調査庁、警察、あるいは海保、外務省、防衛庁、ほかに経産省も、いろいろあるかもしれないけれども、いろいろなところから上がってきた情報というものを検討して、つまりは、データというもの、これはきのう、石破長官の部下の方に僕教えてもらったんですけれども、データというものがインフォメーションに上がって、インフォメーションがインテリジェンスになって、そして最後は、いろいろ議論した上でナレッジになると。

 だから、やはり分析をどう加えていくのかということは非常に大事なことで、その組織、仕組みというものが私はうまく機能していないんだと思うんですね。

 そういった組織の検討には、対処する態勢と同時に、その情報収集と分析。だから、そんなことが今ないから、ミスターXと外務省のだれかが、審議官がやって、それがどうのこうのなんて話になるんですよ。そんなことを本当は許しちゃだめなんですよ。まさに、そういう統括的に情報を上げて、そして、いろいろな専門家の方々、責任ある人たちがそれについて分析を加えて、そして国としてどういう判断を下すかというような仕組みがないと、全部総理に上がっちゃう、そして総理は判断できない、こういうことになっちゃいますよ。

 だから、そういう組織の中には、情報を、集めるという強化態勢も必要だと思いますが、それをどう分析していくか、そういうことも必要だと思いますが、その点について、一言だけ御答弁いただきたいと思います。必要性について。

井上国務大臣 情報を幅広く集めまして、十分に検討し分析をしていく、その結果をまた評価をする、これはもう当然のことでありまして、大変大切な御指摘があったと思います。

前原委員 ぜひ検討の中に入れていただきたいと思います。

 次に、武力攻撃事態等における米軍の行動支援に移りたいと思います。

 ここは、私は、我が党も日米安保条約は必要であると。日米安保条約の核になるのは五条と六条です。五条においては、もちろん抑止的な意味も含めてでありますけれども、実際何かが起きれば、米軍に対して期待をする点は大きいというふうに思います。したがって、日米安保条約が我が党も必要だという立場からではありますけれども、では、実際起きたときに、果たして国民が考える不安を払拭するようなものになっているのかどうなのかということについて質問をしていきたいというふうに思います。

 まず、外務大臣、先ほどの地位協定は有事においても有効かどうか、また十分だとお考えになっているか、その点について御答弁ください。

川口国務大臣 武力攻撃事態等におきましても、現行の日米地位協定が適用されることになっているわけでございます。政府といたしまして、現行の日米地位協定のもとで、米軍が武力攻撃事態等に対して円滑に、そして効果的な行動をとることができる、そして米軍の行動が適切に規律をされるというふうに考えております。

 それから、念のためですけれども、先ほどの安保条約五条の話について、最後に委員が締めくくられた言葉が若干気になりましたので、念のために申し上げたいと思いますが、私は、日米安保条約、地位協定上禁止されていないと申し上げているわけですね。認められ得ると申し上げていまして、それに基づいてというふうには申し上げていないということを念のため申し上げます。

前原委員 その点については、また精査をして、後日、質問をさせていただきます。

 地位協定においては、米軍は接受国である日本の法律を遵守する義務はない、しかし、尊重をしなければいけないと書いてありますね。それで、本当に尊重されるかということが最大の国民の関心事だと私は思います。どうそれが担保できるのかということなんですね。

 事例は違いますけれども、いろいろな海外での米軍の行動を見ていて、本当に米軍が、ああいう武力攻撃事態、日本有事という混乱した状況において日本の法律を尊重してくれるのかということについては、どうそれを担保するのかということはしっかりとここで議論しておくことが、私は、国会議員としての国民に対する説明責任を果たす最低限の責務だと思っております。どう担保しますか。

川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、一般国際法上、米軍は我が国の国内法を尊重する義務があるということでございますね。それから日米地位協定の十六条、ここにおいて尊重、義務というふうに書いてあるのは、そういう考え方に基づいているということでございます。そして、政府といたしまして、米軍が武力攻撃事態等におきまして国際法に従って行動するということについては、確信をいたしております。

 したがいまして、武力攻撃事態等において我が国の国内法令を尊重するという一般国際法上の義務、これを遵守するということは、これは当然であるというふうに考えております。アメリカは日本の同盟国であるということです。

前原委員 言葉じりをとらえるわけじゃありませんが、外務大臣が確信をしておられても困るわけです。私は、要は、どう担保するかという話をお伺いしているわけですね。

 それは、実際問題として、私は、日米間のさまざまなチャンネルの調整メカニズムが本当に大事だと思うんですよ。そこをうまくコミュニケーションさせて、そして、そこを徹底させるということが何よりも私は重要なことになってくると思うんですね。

 伺いたいことが幾つかあります。その調整メカニズムの中で伺いたいことが幾つかあるんですが、二つだけ聞かせてください。

 まず、そういう日本有事のときの米軍の行動、自衛隊の行動、どちらが指揮権をとるのか、とらないのか。その点について、まず一つ。確認です。

 それから、国民、自衛隊、米軍の利害調整が必要になるケースというのが出てくると思うんですね。つまりは、避難路と戦闘地域に向かわなきゃいけないというところがバッティングをするとか、あるいは物資のニーズ、あるいは医療提供、こういったもので、それぞれ三者の利害がぶつかる可能性というのがあるわけですね。その点について、調整メカニズムではどうするのか。

 まず初めは、自衛隊それから米軍、この指揮権の問題と、もう一つは、利害調整が必要になったときはどう調整するのか、そしてだれが優先されるのか、その点についてお答えください。

石破国務大臣 これは先生よく御案内のとおりで、どちらが指揮権をとるということはございません。共同対処行動ということになっておりますわけで、まさしくそこにおいて調整メカニズムがワークするということになっておるわけでございます。

 これは、例えば米韓のように、どちらが指揮権をとるというものではございせん。それが本当にワークをするかどうかということが調整メカニズムの中できちんきちんと平素から議論をされておらなければ、調整メカニズムがあるから大丈夫だなどというようなお話にはこれはならないと思っております。

 それはどのレベルでやるのかということですが、そして何が優先するのかということですが、まさしくそれは、日本を防衛する上においていかに共同対処をすれば有効かという、抽象的なお話をするようですが、それは、その場その場において何をやらなきゃいかぬかということは出てくるはずなんですね。そこにおいて、各レベルにおいてきちんと調整が行われるということであって、どちらが優先するというのは、その場においてのニーズによると考えております。

前原委員 もう時間ですので、一言だけ。

 では、一言だけお答えください。では、その可能性として、米軍が優先される可能性もあるんですか。

石破国務大臣 それは、可能性としては否定をいたしません。しかしながら、米軍が優先されるということは、別に、日米安全保障条約の中で、その場のニーズに対応すればあり得ることだと考えております。何か委員が問題意識があれば、ぜひ御教示をいただき、私どもの方としても検討させていただきたいと思います。

前原委員 時間になりましたので、終わります。

自見委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

自見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 質疑を続行いたします。松本剛明君。

松本(剛)委員 この事態対処の特別委員会で初めて質問を申し上げる機会をいただきましたが、冒頭、私どものトップバッターの前原委員から申し上げたように、ぜひ国民のためにいいものをつくっていきたいということで取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 若干、前原委員の方で予定をしていた質問で、例えば、米軍の行動関連措置の具体的内容、イメージがわくようなものはどういうことかといったようなこととか、現地対策本部についての質問が残っているかと思いますので、私の方から順次御質問の中に加えていきたいと思いますので、その旨、よろしくお願いをいたします。

 まず最初に、もう議論は先ほど行われましたので繰り返しませんが、イラクにおける邦人の人質事件、ぜひ三人の方が救出をされるように政府におかれても全力でお取り組みをいただけたらというふうに思います。

 この委員会の冒頭の審議で、ああいった地域に行くのは自己責任の問題ではないかというような御発言がありました。そのことについて、私自身は論評を避けたいと思いますが、やはり国会もある意味で政治の一員という中で、公式な場で今のような議論は、全力の救出、きちっと救出されてから行う形の方が御家族の気持ちにくみするのではないかなという私の思いを申し上げて、改めて、救出を、私どももできることはやる、そして政府にも全力を挙げていただきたいということをお願いして、案件の審議に入りたいと思っております。

 まず、私どもが求め、また、与野党三党の協議会の中で議論をされてまいりました基本法について、これは、与野党の協議会で議論を行い、また骨子についても詰めていくことになると思いますが、これをつくって、そして形にして、そしてまた運用するという意味では、同時に、議院内閣制でありますから、与党によって構成される内閣でありますから、基本法についてもできるだけ認識を共有してまいりたいというふうに私どもも思っておりまして、まだ基本法の骨子についてはこれから議論のあるところだろうと思いますし、今政府が御提出いただいている法体系との関係というのもあろうかというふうに思いますが、大臣として、また政治家として、基本法についての認識をそれぞれ各大臣にお伺いしてまいりたいというふうに思っております。井上大臣からでよろしいですか。

井上国務大臣 さきの国会におきまして、武力攻撃事態法の審議に関連いたしまして、当時は与党三党それから民主党、四党でありましたが、いわゆる緊急事態の基本法について検討するということだったと思うのでありますが、先般、これがさらに進みまして、基本法をつくるんだ、こういうぐあいになったと承知をいたしております。

 どういう中身にするのかについては、私ども、定かではありませんけれども、午前中の前原委員のお話を聞いておりまして、ああいった事項も検討の中に入ってくるんじゃないのかな、こんな推測をいたした次第でございます。

 政府といたしましては、有事関連七法案それから三条約、これをぜひ成立させていただきたい、こう考えておりますが、今後検討されることになります基本法につきましても、各党間の御論議を見守りながら我々としても必要な検討はしてまいりたい、こんなふうに考えております。

石破国務大臣 政府のスタンスは、今、井上大臣から答弁があったとおりでございます。

 私は、個人として申し上げますと、ドイツの緊急事態法というのがございます、これが一つのイメージなのかなという思いは、まだ大臣になります前等で有事法制の議論をしておりましたときに、一つのモデルはこれなんだろうとは思っております。それと我が国におきます災害対策基本法との関係をどのように整理していくのかという問題、それから、中央と地方との関係はドイツと日本において違いますので、そのあたりをどのように整理していくのかということですが、私は、一つのモデルはドイツの法制なのだろうなというふうに思っています。

 もちろん、憲法との関係もございまして、そのあたりもきちんと議論していかねばなりませんが、どういうイメージでいくのかということについて、民主党さんと与党あるいは政府、認識の共有をしていくということはやはり大事なことだというふうに考えておる次第でございます。

川口国務大臣 政府の考え方は、先ほど井上大臣もおっしゃられたとおりでございまして、そういうことだと思います。

 個人的に思いますことは、これは緊急事態に備えた基本法という考え方で、何をそういったことの対象にするのか、書き方であると思いますけれども、そういったことについてなかなかきれいに書けるのかどうか。必要性という意味では個人的には私は理解をいたしますけれども、なかなかそのつくり方、書き方が難しいというのが私の考えでございます。

麻生国務大臣 去る四月九日ですか、三党によります合意文書というのを拝見しておりますけれども、「次期通常国会会期末までに成立を図る。」と書いてありますが、「基本法の骨子案については、国民保護法制関連七法案、三条約の衆議院通過までに取りまとめることとする。」等々のことがここに合意として書かれておりますので、ここのところで、まずはこの法案が通らぬとどうにもならぬのでしょうけれども、そうなった後、骨子案をそれぞれで、我が党を代表されるような常識的な久間先生と、御党のこの種のことにお詳しい前原さんと、それで外務省出身という遠藤先生と、お三方で合意されておられますので、私どもといたしましては、三党を代表される常識的な方々がそれぞれサインをしておられるのでその協議を見守りたいと思っておりますが、基本的な考え方は井上大臣の言われたとおりです。

松本(剛)委員 例えば政治改革の関連法案とか、政党間で協議をして進めるものというのもあるわけでありますが、この基本法に関しては、緊急事態に対処するということで国民にも直結する問題でもあり、また同時に、政府の果たしていただく使命も大変大きい問題でもあるということで、今お話をお伺いしましたが、ぜひ、私どもの、また与党三党の協議会の問題意識と認識を共有していただいてお進めいただくことをお願いいたしまして、次の問題に移ってまいりたいと思います。

 これも先ほど前原委員の方からお聞きをいたしましたが、緊急事態に対する組織のあり方ということ、これは私ども大変重要な問題だというふうに思っておりまして、若干、井上大臣との質疑があったようでございます。御所管も井上大臣ということになるんだろうというふうに思いますので、できましたら各大臣にと思っておりましたが、時間も限られているようですので、井上大臣にお伺いをいたしたいというふうに思っております。

 これは、「政府は、」「検討を行うものとする。」ということになっておりまして、改めて、今の検討状況、御認識。もちろん、それぞれの組織の中にはいろいろな意見があることは私どもも承知をしておりますが、緊急事態に対応するためにはやはりこういうものが必要ではないか。いろいろな言葉の流れの中でおっしゃったんだろうと思いますので、一言一言揚げ足をとるつもりもないんですが、米国の組織も実態としてどう機能しているのかなかなかわからないと先ほど大臣がおっしゃったので、ぜひ深く検討していただいたらそういうことにはならないのではないかとちょっと残念な気持ちもいたしましたので、改めて、この組織のあり方に対するお取り組みの考え方を井上大臣にお伺いしたいと思います。

井上国務大臣 緊急事態にどのように対処するか、そのための態勢を整備しておくということは、これはもう国としては当然のことだと思います。

 日本のこの組織について言いますと、歴史的には縦割りの組織ですね、自衛隊でありますとか警察とか消防庁。この組織については、累次ずっと強化されてきたと言ってもいいと思います。いろいろな事故、事件が起こりますとその都度また見直されてきた、こういう歴史があると思うのであります。

 要するに、日本のこの組織で問題でありましたのは、それを横に束ねるという組織、調整をしていくということだと思うのでありますが、これにつきましても徐々に強化されてきたと言えると思うのであります。特に、阪神・淡路大震災を契機にいたしまして、こういった横の組織につきまして、きちっとしないといけないというようなことが一段と認識されたと思うのであります。

 附則に、この組織のありようにつきまして検討するということでありますけれども、要するに、縦と横との関係につきましては、なかなか難しいデリケートなものがたくさんあるわけですね。長い歴史があればあるほど難しいわけでありまして、そういったことについてさらに検討を進める。また、外国等の制度におきましても、参考になることがあれば、その制度なり運用の実態、そんなことをよく検討しまして、できるだけ万全の態勢をつくるというような目的のもとに組織の検討を進めていきたい、こんなふうに考えています。

松本(剛)委員 先ほど前原委員の方からも、こういった機会がチャンスだという言い方を申し上げたというふうに思います。

 井上大臣も、私もお隣、兵庫県でございます。阪神・淡路大震災の経験もある中で、緊急事態では強力な総合調整が必要であるということは、もう私から申し上げるまでもなく、よく御理解をいただいておるだろうというふうに思います。

 縦割りが問題だということを先ほどもおっしゃり、また今もおっしゃって、問題意識は共有をいたしているというふうに思います。わかっていながらなかなかいろいろあってできないということがこれまでも繰り返されてまいりましたけれども、特にこの緊急事態、まさにこういった形をつくるときがチャンスだろうというふうに思いますので、むしろ政治のリーダーシップを持って御英断をいただけるように私からもお願いを申し上げて、法制の中身の議論に移らせていただきたいというふうに思います。

 国民保護法制だけではなくて、関連する法案すべてにある意味では出てくるのでありますが、改めて、国と地方の関係、井上大臣と麻生大臣に確認をしてまいりたいというふうに思っております。

 地方分権の議論であったり、また憲法の中でも、先ほど、基本法も憲法の議論とも関連をすると石破大臣はおっしゃいました。当然だろうというふうに思います。この国と地方の関係も、平時における対等な関係という今の理念と、有事の場合の総合調整を行わなければいけない場合に、上下という言葉がいいのかどうかはわかりませんけれども、そういった形をとるといった場合、私どもは、そういう基本的な部分についても何らかの形をつくらなければいけないとしたら、そういうことも含めて基本法が必要ではないかというふうに考え方として持っているわけでありますが、改めて、この有事と平時、国と地方公共団体についての基本的な考え方を井上大臣と麻生大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今御質問の点は、有事と平時と違うということなんだと思いますけれども、有事におきまして、平時とは異なる仕組みになるのは当然だと思っております。

 したがいまして、国と地方との関係というのは、全体を見ております国としてはこれをしてもらいたいという話に、そこの県知事なりその地域の本部長をしておられる方と国の本部長をしております総理との間の意思疎通がすんなりいけば、それで別に不足はありませんけれども、そういかなかった場合におきましては、これは明らかに都道府県の所要の対処が実施されないという前提になった場合は、国の方で措置をできるようにしておかないととても対応はできない、これは当然のことだと思っております。

 ただ、一方で、国の方も、全国津々浦々、現状を全部わかっておるというわけではありませんので、地方の方からは、ちょっと待ってください、これはこうした方がもっとより効率的ではないかとか、県境になっておりますが、これはこっちから移した方がより効率がいい等々の御意見というのは当然出てくると思っておりますし、また、それを期待もいたしておりますので、そういった話は、これは素直に聞く耳を持って、おれが言ったからどうしてもこれにしてもらわぬと困るなどというような話では、これは危機管理を預かる長としての器を問われることにもなろうと思います。

 ただ、そういう器の人が常に上にいるという保証はありませんから、そういった意味では、あらかじめ、きちんとそういったことができるような法整備をしておく必要があるであろうと言っておられるんだと思います。

 私どもとしては、こういったものは、有事を想定して日々訓練をやっていくことになる中にあっていろいろ実施してみないと、机上だけではなかなかわからぬところもいっぱいあると思います。そういった意味では、私どもとしては、きちんとそういった訓練というものをやる、重ねるということによってきちんとしたものができ上がっていくというのをしないと、やはりこれは五十数年間やったことがない話でもありますので、各消防が一斉にわっとそこに行ったら消防のホースの径が違ったとか、電話が混線したとか、兵庫のときは予定外のことが数々起きたのは御存じのとおりです。

 そういったようなことは、あれ以後、大分改まってきてはおりますけれども、そういった非常事態というのを前提にした訓練というものを、地震に限らず、テロを含めて、いろいろ日々やってみる必要がある。その上での話だと思っておりますので、関係からいきましたら、事情によりましては上下関係ということになり得る可能性は十分にあると思っておくべきだと思っております。

井上国務大臣 いわゆる平時と有事は違うということはそうでありますけれども、平時におきましては、国と自治体ということでありまして、それぞれ主権的な立場に立っていると思うのでありますが、これは有事におきましても、基本的に自治体というのは地方自治の自治権を持っているわけでありまして、地方自治の原則はやはり尊重していかないといけない、こんなふうに思います。

 ただ、やはり有事でありますから、国全体として同じ方向で対処をしていく、こういうことに相なりますので、自治体の行動については一定の制約を加えるということもやむを得ないことじゃないか、こんなふうに思います。

松本(剛)委員 抽象的な議論としてはおっしゃるとおりだろうというふうに私もまた考えているわけであります。

 そもそも、こういった有事の法制というのは、いかにして国民を守るかという実効性を上げることと、公権力といったものがどこまで行使されるのかという規範的な部分との、両方をどういう形で定めていくのかということに最終的には尽きていくんだろうというふうに思います。

 その意味で、地方公共団体との関係も、実効性を上げるためにはどこまでするのか、一方で、今、井上大臣もおっしゃった、地方自治の本旨といったものを貫徹するためにはどうするのか、これを、まず理念も定め、そして基本原則も定めということが必要ではなかろうかなと。

 先ほど麻生大臣もおっしゃったように、ひょっとすると、訓練をしてみてまたわかるということもあるかもしれません。私どもも、神戸の阪神・淡路の大震災で、具体的にいろいろなことがありました。私は姫路でありますが、姫路の水を神戸に持っていったら、神戸市の水道局のオーケーをとった水かどうかと聞かれたというようなこともあったわけでありまして、現場の担当者はそういうことを常に考えているからそういうことになるのかもしれませんが、さまざまなそういった具体的なテーマも出てくると思います。

 同時に、今申し上げた地方との関係とか、ここでしっかり議論をする中でもまだ整理すべき点が出てくるのではないかというふうに思いますので、ぜひそういった議論に政府の皆さんもおつき合いいただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 若干順番が変わりますが、国と地方の関係、今、麻生大臣の方からも内容的なことも含めて少しお話をいただいたので、改めて、それぞれの地方がつくる計画ということについてお伺いをいたしたいと思っております。これは井上大臣と麻生大臣にということでお聞きをしてまいりますが、それぞれ両方か、ないしはどちらかにお答えをいただけたらと思います。

 この計画、今まで地方公共団体は、率直に申し上げて、国に対して、例えば補助金を申請するとか、そういった書類はいっぱいつくってきた。作文という言葉を使うのが適当かどうかわかりませんけれども、しっかりと国に理解をしていただく文章というのはこれまでたくさんつくってきただろうというふうに思いますが、この計画は必ずしもそれでは済まない話になってくるだろうというふうに思います。

 それぞれの地域の実情もあるだろうという、先ほど大臣のお話もありました。私もいろいろな方からお話をお聞きいたしまして、具体的に、手探りながらもやってみられた自治体もおありになるようでありますし、一方で、どことは申しませんが、ひな形ができないかなという声もちらりとお聞きしたりするという話がありました。

 具体的に本当に実効性のあるものをつくるに当たってこの中でどういった施策を考えておられるのか、今のお考えをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 松本先生、まことにごもっともな御指摘でありまして、これは、兵庫県等々、あの大震災を最近やった経験のあるところの知事さん、市長さん等々は、ついこの間の経験の話に基づきますので、非常に具体的かつえらく意欲的なところもありますけれども、まだそういうことのない県という方が多いわけですから、自衛隊と共同訓練をやったなんというのもあのころまでは四県ぐらいしかなかった話ですから、そういった意味では、正直申し上げて、地方からの要望も実は総務省の方にありまして、実践的な国民保護モデル計画というものを作成してくれという話は、私どもも、依頼はいろいろな県からいただいております。

 したがいまして、私どもは、計画を策定すると同時に、こういうのがモデルとしてということは申し上げますけれども、実際、いや、うちは海がないとか、いや、うちはそんなあれがないとか、湖がないとか川がないとか、地域によって違いますので、そういったところはそれによって違うことを考えなければいかぬところだと思っております。

 作成した上、なおかつ訓練してください、練習というか、机上だけじゃだめですよ、実践的な効果的訓練を実施していただかないとだめですよということ等々を申し上げて、実効性のあるということを言われましたけれども、これが一番大事なところで、実際、いざというときになったときに、全く戦闘員でない人たちを非戦闘地域に移動させるとか、被災地になり得る可能性のある、火事が類焼しそうなところはあらかじめよけさせる等々は、これはすごく大事なところでありまして、そういった風向き等々からこちら側に類焼する可能性ありと思えばそちらにあらかじめ退去命令を出す等々のことは、これは当然のことなんですけれども、そういった経験がないとそういった対応もなかなかしにくいところだと思いますので、計画のモデルをつくり上げるということは私どもいたしたいと思っておりますし、かつ、それに合わせて訓練もしていただきたいと思っております。

井上国務大臣 現実に動く、そのもとになる計画でありますから、実際にワークできる計画じゃないと使い物にならないわけですね。防災計画でも、ただ机上のものをつくっておけばいいじゃないかなんというような計画は現実にワークしないわけで、ましてや有事のときのこういう計画というのは本当に動く計画じゃないといけない、こんなふうに思います。

 そういったことで、今、総務大臣がお答えになりましたけれども、消防庁が中心になりまして、関係の各省と相談しながらこの計画のモデルをつくるということになっておりますので、そのモデルを中心にして、またいろいろな検討が加えられて、それぞれの市町村に適合した計画、それがつくれるようになるんじゃないかと思います。そういったきちんとした計画ができますようにこれからも努力をしていきたい、こんなふうに考えます。

松本(剛)委員 ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 最初にも申し上げたように、法に定められた計画をつくればそれで終わり、例えば、出ている項目をとりあえず満たしたものをつくればそれで終わりということではなくて、この緊急事態に対処する計画というのは、相当その地域地域の責任者の方が想像力を働かせて、いろいろなケースを想定して計画をつくっていただかないといけないということになるだろうというふうに思います。

 ですから、先ほど、ひな形、モデルケースのお話が出ておりました。そういったノウハウの交換という意味でのひな形を御提示されることも必要だろうというふうに思うんですが、ひな形をとりあえず満たしたら終わり、自分の所管はとりあえず終わったということにならないように、それぞれの、お互いの地方自治体と国の意識を持っていただく、これは国も計画をそれぞれごらんになるんだろうというふうに思いますので、そういう意識をぜひ持っていただくことを申し上げたいと思います。

 同時に、先ほども阪神・淡路大震災の話が出ておりましたけれども、そのときの経験から、災害対策基本法も、都道府県間の広域の相互援助といったようなものも計画の中に含めるようになったというふうに承知をしております。計画の中で総合調整をされるのかといったような問題も含めて、こういった広域のことについて、特に現段階ではまだ指示がないというか、この法律の中には定めがないようでありますが、そういったことも含めて、何らかの形で政府として総合調整をお考えになる予定があるのかどうか、伺いたいと思いますが。

井上国務大臣 当然、この都道府県、あるいは市町村もそうでありますが、それらの計画におきまして、広域調整をやる場合には、それに対応できるような計画をつくるということにいたしたいとしております。

 これは、自治体だけではなしに国の方もかなり関与すると思いますので、特に都道府県間の広域調整というのは国がどうしても入ってくると思いますので、国も含めましてそういった態勢づくりをしていくということであります。したがいまして、都道府県の計画の中におきましても、広域的な応援態勢といいますか、協力態勢についての規定を計画の中に入れていきたい、こういうことであります。

麻生国務大臣 今、井上大臣の御答弁のありましたとおりに、これは、武力攻撃事態に際しましては、地域において、国民、県民ですかね、県民に対して警報を発するとか、避難を勧告するとか、待避を指示するとかいうようなことに関しまして、実際の国民保護に当たることになりますのは都道府県、市町村ということになろうと思っております。

 その場合、何々県と何々県の間、伊豆、神奈川と静岡の間に上がってきたとかいうような話になると、いや、それはというような話ではとても話になりませんから、神奈川県、静岡県にまたがったところであれば、そこで地震が起きても同じことですけれども、そういったときには両方で一緒にということがうまく作動するようにさせておくということをしませんと、非常事態におきましては、当然のこととして、両方の県知事が仲がよかろうが悪かろうが県民のためにやらなければいかぬわけですから、そういったときにはきっちりやっていただけるようにしていただくのは当然のことだと思っております。

 私どもとしては、きちんとした保護法が制定されるということにしておかないといかぬし、かつ、練習、訓練をしておく必要があると思っております。

松本(剛)委員 今これを申し上げたのも、阪神・淡路大震災の教訓を生かして災害対策基本法も改正をされた点がある、ところが、残念ながら、この国民保護法に関して必ずしもその教訓が生きていない部分もあるのではないかなという感じがしているわけであります。

 もう一点、それについてお伺いをいたしたいと思います。

 阪神・淡路大震災のときの教訓として、現地に対策本部を置くという規定が設けられたというふうに理解をしております。前原議員の質問の中にあった項目でありますが、これからの予想される事態、これは武力攻撃事態または緊急対処事態、両方かもしれませんし、また、緊急対処事態のときと思うべきなのかもしれませんが、必ずしも全国的に事態が発生するというふうには限らないというふうに思います。

 その意味では、やはり現地に国の対策本部を設けるということは一つ有効な方法であろうかというふうに思いますが、この法律の中には残念ながら規定がないようであります。これについての、井上大臣にお聞きをしたらいいですか、お考えを伺いたいと思います。

井上国務大臣 災害基本法の中で言っております災害、自然災害につきましては、一般的に言えば、これは局地的なこと、ある特定の地域に限定されたことでありまして、したがいまして、現地対策本部などを設置しまして、そこでもって主として調整していく、いろいろな対策を実施していくということが有効かと思うのでありますけれども、武力攻撃事態等におきましては、何といってもこれは国の有事でありまして国全体としてこの対応を決めていかないといけない、そういう必要性が非常に高いものだと思うんです。

 そういうことで、現地にというのじゃなしに国として一元的な意思のもとに対処していく、そういう必要性があるとの判断から、現地対策本部は設置するというような規定を置いていないということでございます。

松本(剛)委員 最初に申し上げたように、ぜひ前向きにいろいろな意味で御検討いただきたいと思います。

 この国民保護の法制は、各都道府県が国民の保護に当たるということ、また、地域の指定などが場合によっては行われるということも含めて、当然、局地的なケースもあり得るということで法制が組み立てられているというふうに私は理解をいたします。

 ですから、そういう中で、もちろん、武力攻撃事態というのが国の有事であるというのも、そういったケースもあるだろうというふうに思いますが、いろいろなケースを想定するとすれば、現地対策本部の設置というものについても、法においても触れることをぜひ御検討いただくべきではないかということを私どもは御提案申し上げておりますので、政府においても御検討をお願い申し上げたいと思いますが。

麻生国務大臣 武力事態というのはどうしても広域ということになろうと思いますので、今、井上大臣のような御答弁になるということだと思いますけれども。

 局地的な場合という前提を言われましたけれども、今回、国民保護計画をつくります段階で、基本方針を策定いたします段階からいわゆる地方団体の方々と一緒にこういうのをつくり上げようということで、昨年末、各知事会等々、いろいろお集まりいただいたあれの前例に基づいて、地方自治体と一緒になってこの法案を作成していくというので、作成の段階から、ある程度、知事の意見を伺おうという方向を決めておりますので、御要望の趣旨に沿えると思っております。

松本(剛)委員 私ども、法律について申し上げたのも、災害対策基本法でもあえて書いたことにやはりそれはそれの重みがあるからだというふうに思っておりますので、そのことも含めてしっかり御検討いただきたいということを私どもから御提案いたしたいというふうに思います。

 少し質問の順番を戻って、先ほど申し上げた、規範というか、自由、人権を確保するという意味で幾つかの点についてお聞きをしていかないといけないと思います。

 昨日の本会議で、報道の自由についてお聞きをいたしました。報道の自由を侵すことにはならないというお返事をいただいたように見ておりますけれども、具体的に、例えば、国民保護法の三十二条の五項であったり、これは取材源との関係をどういうふうに整理するのかとか、また、首相の助言、内閣総理大臣が助言をするといったケースもあったり、また、五十条ですか、警報の放送をしなければいけないというふうになっております。

 もちろん、警報は放送等の手をかりてしなければいけないわけでありますけれども、場合によっては放送事業者側の判断というのが入る余地があるのかないのかといったようなこと、これは指針の策定ともかかわってくるんだろうというふうに思いますが、もう少し、こういったものに対してどういった担保をされるおつもりなのかという政府の姿勢をお伺いしたいと思います。

井上国務大臣 放送機関に対しまして国が要請するといいますか、お願いをしておりますのは、三つの事項なんですね。警報、避難の指示と緊急通報、これは県知事が行います緊急通報ですが、これを放送事業者であります指定公共機関に放送してもらいたい、こういうことを規定しているわけでございまして、いずれも緊急性を要する事項ばかりであります。放送が一番有効な手段でありますので、そういった趣旨から、放送事業者に対しましてこのような事項についてお願いをしている、こういうことでございます。

 したがいまして、取材源について云々というようなことは考えておりませんし、また、放送会社が、放送機関が、業務計画をつくりまして、こういう事項についてどういうような放送をするかということを決めるわけですね。それを、国としては、この事項についての放送をしてもらえばいいわけでありまして、放送はこうこうじゃないといけないとか、その方法等について規制をしていくというような考えはございません。

 ただ、法律の規定で、業務計画は指定公共機関がつくるようになっておるんですが、国として必要な場合に助言をするというんですか、そういう規定があるんですが、これも、報道の自由を制約するようなことを考えておりませんで、例えば、Aという放送会社がこういうような業務計画をつくっている、しかるべき計画をつくっているような場合に、B社に対しましてもそういうことを教えてあげるというような、その程度の趣旨のことでありまして、助言という名において報道の中身を規制していくということは考えておりません。

松本(剛)委員 申し上げて、お願いをしておきたいというふうに思います。

 大臣はお考えになっておられないだろうというふうに思うわけでありますが、先ほど、規範ということで、ルールづくりがこの一つの形だろうというふうに思います。さっきおっしゃった取材源の話にしても、例えば三十二条の五項、これは基本指針を定めるところでありますけれども、必要があると認めるときは指定公共機関に対して資料または情報の提供、意見の陳述などの必要な協力を求めることができるということになっております。こういったものに対して、どういう基準で、また、どの範囲でやるのか。特に、緊急事態であるだけに逆にきちっとルールを設けておくことが必要ではないかということを申し上げてまいりたいと思います。

 個々に具体的な内容、例えば、これから指針をどういう形でつくっていくのか、そういった場合の一つの指針づくりの際の基本的な考え方、そういったものも整理をいただく必要があるというふうに思っているわけであります。

 私どもも、例えば先ほどの警報とか、そういったものも、最初に私自身が申し上げたように、実際にきちっと国民を保護できなければいけないわけでありますから実効性が必要である、しかし、過去のいろいろな歴史を考えるとやはり何かの規範というものをどこかで定めておく必要がある、柔軟な範囲とのあれがあると思いますけれども、そういう意味で、この報道の自由というのは一つのポイントではないかなということで、本会議でも私どもの同僚の長島議員が質問をし、また、私もここでもう一度お伺いをしておるわけであります。

 具体的な内容についても、時間をいただけるものだと思っておりますので、法文、条文についてまた個々に御審議をさせていただく機会があろうかというふうに思いますので、次の話を申し上げたいというふうに思います。

 昨年の有事法制の際にも議論がありました被災の補償、これについてどう考えていくか。つまり、国民の保護に関する措置に関して失われた財産とか、そういったものの補償ということではなくて、何らかの緊急対処、テロなのか戦災なのかということ、この被災の補償そのもの、これは災害対策の支援、被災者支援ということでも随分議論になっているところは、井上大臣の方が私よりもよく御承知だろうというふうに思うわけであります。

 私もいろいろ調べてみましたら、一九四二年ですから昭和十七年ですね、十七年には戦時災害保護法というのができておりまして、これは戦争に関する災害の補償を行う。これは、建前としてはむしろ救済というような形になっておりますが、実際の運用をいろいろ見ていると、まさに、住宅に対する給付が行われたり、家財に対する給付が行われたり、当然、救助という意味での炊き出しや食糧のものも行われているわけでありますけれども、実態としてはかなり補償に近いものが行われてきたようであります。

 戦争中ということで、最終的に全部きちっと行われたわけではないというふうにも承知をしておるわけでありますが、基本的に、戦争の災害に対する補償ということについては、それぞれの国でいろいろな考え方があるようであります。国の方で全面的に補償するという考え方を、先ほどたまたま石破大臣、ドイツの基本法が考えの一つの参考になるのではないかと言いましたが、旧西ドイツではそういった考え方をとっておったということもあるようであります。

 この被災の補償について、これは今の法案というより、政治的にこれをどう考えるかということになるかと思いますが、ぜひ、同じ兵庫県の井上大臣にお考え方をまず伺いたいと思います。

井上国務大臣 これは、特別の事由があります場合にその人に対する損失補償をする場合と非常に違った性格の補償だとも思います。実際問題として、武力攻撃がどういう中身を持っているのか、どれぐらいの期間続くのか、したがって、被害がどの程度発生するのかというのは全く予測もできないということでありまして、あらかじめ、ある種のことを想定いたしまして法律をつくるということは、大変困難な状況だと思います。

 したがいまして、要するに、具体的にどう判断をするかということは、武力攻撃が終わりまして、復興施策といいますか、どのような方策によって復興していくかというような施策との関連において、政府全体で、国全体で考えていくべきものだろう、こんなふうに考えている次第でございます。

松本(剛)委員 財政上の理由もあるだろうと思いますし、今ここでこれ以上このことをお聞きしても、答えが出てくるというふうには思いません。今おっしゃった答えは、昨年も福田官房長官がお答えいただいたのと基本的に同趣旨だろうというふうに理解をいたします。

 いろいろなケースを想定していろいろな対策を立てるということを考えた場合に、国民に対するメッセージとしても、そして、残念ながら、第二次世界大戦は国民に対する大変大きな被害を発生させたわけでありますけれども、恐らく、この戦時災害保護法というのが制定をされた際にも、そこまで国民に被害を与えるというふうには、当然、政府としても思っていなかっただろうというふうに思いますし、我々としてもそれはぜひ避けていかなければいけない話の中で、国民に対してどういったメッセージを送るかという意味で、災害、震災の被災者にとっても、被災の支援というのをどういうふうにしていくか、まあ支援という言葉と補償という言葉は、若干、今申し上げたように、救済主義、補償主義のニュアンスが違うというふうに思います。今のところは我々も被災者支援と言っておりますけれども、どういった形の支援、これは終わってからの復興ということだけでいいのかどうかということを含めてぜひ御検討いただきたいということを私の方からも申し上げたいと思います。

 特になければ次の話へ進みたいと思いますが、よろしいですか。――では、話している途中ですから、そのまま行きます。川口大臣、よろしいでしょうか。ジュネーブ条約の関係についてお話を伺ってまいりたいと思います。

 昨日も、本会議で、国内法の整備がなぜ行われなかったのかといった趣旨の質問を首藤議員から申し上げたというふうに思います。大臣のお答えをもう一度ここで読むつもりはありませんが、大臣のお答えは経緯の御説明であって、実質的な回答をいただいたというふうには私も思わないわけであります。改めて、この経緯はもうお聞きをしておりますので、理由をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 昨日、本会議でも申し上げたことに、さらにつけ加えて申し上げればということでございますけれども、これは、ジュネーブ条約に加入をいたしました五三年当時に、政府といたしましては、ジュネーブの諸条約を実施するために新たに必要となる立法措置の大部分はいわゆる有事法制に属するものであるので、必要と判断されるときに整備するという考え方を持っていたということでございます。

 それで、その後、いわゆる有事法制、これについては整備をする機会に恵まれなかったということで、その諸条約の実施のための国内法の整備というのが必ずしも行われなかった、そういうことであったわけでございます。

松本(剛)委員 首藤議員の質問は、人道の考え方とか、そういうことの普及といったことも踏まえてお聞きをしておるわけであります。本会議での答えは、もう全文は読み上げませんが、経緯をおっしゃり、そして、いきなり、有事法制に定めろと言ったから今回は定めますというようなお答えになっているわけでありまして、ぜひ、しっかりとそれぞれ建設的な話でいくように、そして、今まで行われていなかったものはここで改めるという政府の姿勢をきちっと示していただくのが大臣のお仕事ではないかというふうに私は思いますので、お願いをしてまいりたいと思います。

 追加議定書の批准というのをこれまで求めてこなかった理由というのも同様ということでございましょうか。

川口国務大臣 追加議定書の方でございますけれども、これは、昨年成立をした武力攻撃事態対処法において、「事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施」、これを確保するということでなければならないという規定があるわけでございます。それで、事態対処法制の整備に当たりまして、したがいまして、ジュネーブ諸条約、これを含みます国際人道法の的確な実施のために必要な国内法制の整備を行うということで取り組んでいるということでございますけれども、多くのもの、そのジュネーブ諸条約と二つの追加議定書に――済みません。ちょっと違う答弁を申し上げていますでしょうか。

 いずれにいたしましても、その追加議定書でございますけれども、これについて今まで整備をしてこなかった理由というのは、これは各国の状況を眺めて、様子を見ていたということでございまして、近年に至って、主要な欧州の国、それが近年においてその批准を行ったということがあるわけでございます。そういった形で、これが規範として受け入れられるというような状況に今なっているということを見て、我が国としてそれを批准することにしたということでございます。

松本(剛)委員 お疲れのようですので、質問の順番を飛ばしたときには必ず申し上げて御質問を申し上げたいというふうに思いますが、御担当のところなので御理解をいただいているかというふうに思いました。

 残念ながら、今のお答えを聞いていると、みんながやるからやるというふうに聞こえてくるわけでありますが、この追加議定書の内容というのも大変大事な内容を含んでおるというふうに思います。

 これはもう既に、昭和五十六年の衆議院の予算委員会で、ジュネーブ条約の追加議定書を批准するべきではないかと小渕恵三先生が外務大臣に迫っておられる。人道的な考え方として大変重要なものだということで迫っておられるわけであります。そのとき、外務省の、当時は政府委員ですか、お答えは、国連憲章との整合性に問題というか、そういった点でこれらの条約の内容を完全に適用することに対してはちゅうちょすると。

 国連憲章との整合性はもう大丈夫なんですね。

荒木政府参考人 お答え申し上げます。

 追加議定書につきましては、第二次世界大戦後の植民地独立の動き、それから、軍事技術の発達等で武力紛争の形態が多様化してきたということで作成されたわけでございますが、相対立する議論の結果、妥協の産物という側面が強く指摘されておりまして、国際的に評価が分かれていたという状況がございました。

 こういう点にかんがみて、先ほど大臣も申し上げましたように、各国の動向を見定めるということで慎重に対処してきたところでございますけれども、一九九八年になってイギリス、二〇〇一年にはフランスということで、相次いで主要国が入るという状況になりまして、今や百六十カ国を抱える、主要な国際人道法上の条約ということになっております。こういう状況を踏まえて、今回、有事法の整備、事態対処法の整備ということを通じまして国際人道法の的確な実施を確保するということができることになったため、今国会で御承認をお願いしている次第でございます。

松本(剛)委員 国連憲章との整合性はそのとき限りの答弁だったんですか。小渕先生に対する答弁であったとすれば大変失礼な答弁ということになろうかというふうに思いますけれども、もうそれは、そのときはそのとき、今は今……。

荒木政府参考人 お答え申し上げます。

 国際条約との整合性でございますけれども、この追加議定書、確かに、四十四条というところで、戦闘員と文民との区別と若干技術的になりますけれども、そういう緩和する規定というのが置かれまして、文民の保護に悪影響を及ぼす可能性があるというような問題点が指摘されておりました。

 しかしながら、その後、多くの主要国がそういうところについては限定的な状況においてのみ存在するという宣言を行った上で入るという措置をとっておりますので、今回、我が国も同じ措置をとって入るということで、国際条約との整合性という点で特に問題はないと思っております。

松本(剛)委員 時間が限られていますので、残念ですが、またお聞きをしますけれども、では国連に加盟している国がすべて宣言しているのかどうか、こういう議論を詰めていくと、変わらなければいけないような答弁というのはぜひ避けていただいた方がいいわけであります。

 このときに、当時、小渕恵三先生が言われた。むしろ私は日本という国はこういう人道に対して先を行くと。このときも、実は、主要国がちゅうちょしているということもポイントになっているんですね。主要国が行ったから私たちも後から行くというのが、今お聞きしたことを整理したら残念ながらそういうことになってしまうわけでありますが、我が国の憲法の精神を考えても、また、国際社会の中における日本の地位というのを考えても、しっかりと政治が判断をして取り組んでいただく必要があるというふうに思っております。

 多くの人権にかかわる条約がいろいろ批准をされていない状況がある、これについてもお聞きしようと思いましたが、時間が限られてまいりましたので、ぜひこの辺も――例えばこの国会でサイバー犯罪に関する条約というものの承認をいたしました。この条約は、前文に、個人の情報の保護であるとかそういったものに留意しということで、人権に関する条約が随分と列記されておりますけれども、日本が批准をしていないものもまだ幾つか残っている状況なわけでありまして、しっかりとサイバー犯罪は抑えていかなければいけないのは当然でありますが、同時に、人権も保護していかなければいけない。

 これはまさにここの規範と実効性のバランスの議論と同じであろうというふうに思いますが、条約に関しては残念ながらバランスが悪いのではないかと私どもは認識しておりますので、外務省の人権に関する条約に対する取り組みの意欲をぜひ上げていただきたいということをお願いいたしたいと思います。

 ジュネーブ条約に関連してもう一点、これも昨日の本会議でも議論の出たところでありますが、米軍の行動、ジュネーブ条約の問題。

 昨日も、イラクのファルージャの例を挙げて申し上げました。川口大臣のお答えで、ジュネーブ条約には加盟をしているから当然遵守をする、追加議定書については締約国ではないから拘束はされないが、米国の軍事教範に取り込まれている、「国際人道法の基本的な原則については、米国の軍事教範に取り込まれていると承知をいたしております。」という答弁を昨日いただいたかというふうに思います。

 今まさに、イラクの、もちろんファルージャだけではない、先ほども同じ議論、近い議論が出ておりましたけれども、行われていること、これは私もいろいろな報道とか情報を集めてみました。日本の新聞やテレビではそれほど大きく出ておりませんでした。アラブ系のメディアでは大変いろいろ出ていることは承知をしておりましたが、アラブ系のメディアだけではなく、アメリカ、ヨーロッパのメディアでも相当いろいろな形のものが今もう既に出てきている。これは、アメリカであれば、ある意味、党派を超えて、共和党系、民主党系がメディアにもある国であるというふうに私は承知をしておりますが、その党派を超えてかなりのケースが出てきておる。

 そういった中で、米軍はいわば川口大臣の今のところ保証をいただいているというふうに、きちっと国内法を遵守し人道的に行動する、私はそう思っているという、いわば川口大臣の保証はいただいておるわけでありますが、ここでは法、規範の問題を決めているわけでありまして、米軍の行動に対して、またこのジュネーブ条約、人道的な行動に対して何らかのことをお考えになるつもりがあるのかどうか、川口大臣にお伺いをしたいと思います。

川口国務大臣 これは、私が保証しているのではなくて、日本国が米国と同盟関係を結ぶ、それはすなわち、絶対的にと言ったらちょっと言い過ぎかもしれませんが、米国に対して信頼関係があるからこそ同盟関係があるわけでして、一緒に戦おうという信頼関係を持っている国であるわけです。そういった国に対して信頼を置けないということであればそもそも同盟関係というのは成立をしないということでございまして、私が保証していることではない。まさに、日米安保条約を結び同盟関係にあるということで、我が国としてそういう判断をしているということだと考えます。

松本(剛)委員 ジュネーブ条約とかそういったものも、信頼をお互いにしている国であったら要らないということにそれではなってしまうじゃないですか。法治ということは――信頼できる相手だ、私はあの人を信頼しているんだからもう何にも要らないということにそれではなってしまう。

 米軍はそういうことはしませんと、川口大臣の保証という言い方が、外務大臣としておっしゃったんだろうというふうに思いますから、その意味では日本国政府としておっしゃったのかもしれませんけれども、今現実に我々が見せられているものを、残念ながら、ぜひ直視していただきたいというふうに思います。

 米軍が行っていることというのも、米軍自身も大変厳しい環境の中で、現場の指揮としてはそれしか方法がないという判断で恐らくされたのかもしれませんが、ジュネーブ条約といったものも、恐らく、戦争状態なりそういった状態、また、非国際的な紛争ということで内戦、まあ戦闘行為、非戦闘行為の議論をここでする気はありませんが、そういった武力、実力が行使をされる場合には必ずそういったことが起きてくるということ、それがいわば報復の連鎖になることを避けるためにも、傷病者であったり、人道であったり、復仇を禁止したりということでジュネーブ条約をつくってきたんだというふうに私は思います。いわば人類が積み重ねてきた知恵だろうというふうに思うわけでありまして、それをぜひ、どうしてもそういう極限の状態だから避けられないということで見逃していくと同じことの繰り返しに必ず陥ってくるというふうに思うわけであります。

 そのためにも、きちっとルールをあらかじめ決めておくことがまさに緊急事態に対する対処の基本的な考え方であろうというふうに思うわけでありまして、米国に対して残念ながらそれ以上は言えないというのであれば、それは一つの答えでありますけれども、改めてこれについて大臣の御答弁をいただきたいと思います。

林(景)政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘の問題というのは、国際人道法のあり方にかかわる問題でございます。

 国際人道法の流れというのは二つございまして、一つは、戦闘のルール、戦争をどうやってやるのか、残虐なことをしてはいけないといったこと、もう一つは、捕虜等の人たちを保護する、そういう流れでございます。

 ジュネーブの四条約、諸条約というのはその後者でございまして、戦闘のやり方について規律するものではございません。ただ、追加議定書につきましては、これは戦闘のルールについて規定している部分というのはございます。

 恐らく、今、具体的な問題との関連で先生が御指摘の部分といいますのは、いわゆる軍事目標主義、攻撃の対象というのは基本的に軍事目標でなければならないというところにかかわるものだろうと思いますけれども、アメリカは、大臣の答弁にございましたとおり、確かに第一追加議定書の締結はしておりませんけれども、軍事教範においてはこれは大部分を取り込んでいるということがございまして、実際の問題といたしましても、治安活動を含みます攻撃におきまして一般市民に対する影響を最小限にとどめるという形の行動をとっておる、こういうことを既に表明しておりますし、そのように行動しているものというふうに理解しております。

松本(剛)委員 ファルージャの問題も、モスクだったのか壁だったのかという一点だけをとらえてお聞きをしているわけじゃないんです。包囲をし、女性と子供は外へ出しながらも、男性に関しては戦闘員であろうとなかろうとというような状況も、現実に欧米のメディアからも伝わってきている。つまり、アラブ側のメディアからだけではない状態に今なってきているわけであります。

 そういったことを総合的に考えて、今置かれている状況に対してどういうふうに判断をするのか。そして、日本政府として、本当にアメリカがそれを進めていくことがアメリカにとって、世界にとっていいことなのかどうかということも言うことこそが真の同盟国の使命だというふうに私は思うわけであります。

 それだけに、しっかりと情報を集め、そして、言うべきことは言うと川口大臣はおっしゃいますけれども、何を言ったのかというのは、残念ながら、寡聞にして私は余り聞いたことがない。もちろん、幾つかは出ているかもしれませんが、こういう大事なところではしっかりやっていただきたいということを表明するだけ申し上げて、時間も少なくなってまいりましたので、少し飛びますが、一点ぜひお伺いをしたいことをお聞きしてまいりたいと思います。

 これも米軍の関連の法案でありますが、いわゆる行動関連措置というものが米軍の活動の円滑化の法案の中に定められているわけであります。これは井上大臣が担当でいいんですね。

 この法律を拝見いたしますと、この行動関連措置の中身、後半の方に出てくる、土地の使用とか、そういったものはもちろんイメージがわくのですが、その前の段階は、非常に抽象的な言葉で、あとはこれを地方に情報提供するとか、行動関連措置の中身がどうもイメージがわかずに、そして、何をそれに基づいて政府はするのかということのルールだけが書いてある。

 読みようによっては、むしろ、後半に書いてある、土地の使用とか、そういったことだけが行動関連措置なのかというふうにも読めますが、どうもそういうことではないのではないかというふうに思うわけで、具体的に行動関連措置とは何か、これをお示しいただかないと、米軍のやることに全部、日本の政府はついていくということになってしまうのかどうか。その辺の内容について御説明をいただきたいと思います。

井上国務大臣 行動関連措置法と一応略称いたしますと、それの目的は何なんだということ、そういうような御質問じゃないかと思うのであります。

 武力攻撃事態等におきまして、自衛隊とともに米軍が戦うということになるわけでありますけれども、米軍の行動がそういった日本を防衛するという趣旨に照らして有効に働くようにするということと同時に、国民の生活に対する影響を最小限にしていく、そういう目的のためにこの法律はつくったということでございまして、直に米軍の行動に関係するという部分もありますし、国民生活に関連する部分として、例えば情報を関係地方公共団体などに知らせるというようなことはまさに国民生活と関係ある部分でございまして、まさにそれが一体として有効な共同対処ができる、こういうことになっているわけでありまして、それに関連する規定の法律だ、こういうことであります。

松本(剛)委員 井上大臣や石破長官の中にはイメージがわいておられるのかもしれませんけれども、我々に一向にちょっとイメージがわいてこない。これではなかなか、この法案に賛成をするとも反対をするとも言いかねる部分が出てくるわけでありまして、もう少し、法案はこういうふうに書いてある、それで、この行動関連措置というのを、例えばシミュレーション的に、こういったケースにこういうことがあるというようなことをぜひお示しいただくということを私どもの方からお願いいたしたいというふうに思っております。よろしいですか、それをお願いして。

井上国務大臣 全体、ずっと説明をするということですか。そうじゃなしに、この法律を読んでいただきますと、大体、項目が書いてありますので、法律の目的なり、政府の責任なり、あるいは行動関連措置の基本原則等を書いているわけでございまして、いずれにしましても、共同対処措置をとる、その対処措置が有効にとれるということと、それを円滑かつ効果的に実施する、例えば物品、役務の供与等の規定がある、こういうことでございます。

松本(剛)委員 物品、役務の提供とかは法律に書いてある。後ろに書いてあることだけなのかどうかということを含めてお聞きしておりますので、ぜひその内容を出していただくように理事会でお取り計らいをいただきたいということを委員長にお願い申し上げます。

自見委員長 後刻理事会で協議をさせていただきます。

松本(剛)委員 まだ触れていない法案もありまして、お聞きをしたいことがたくさんございます。また、今お願いを申し上げて、政府の方からお示しをいただきたい案件もたくさんございます。私どもも、さらにしっかりと研究をいたしまして御提案いたしたいと思いますので、十分に質疑をさせていただいて国民のためにいい仕上げをしていきたいと思いますので、よろしくお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

自見委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今、松本委員の質問に対する井上大臣の答弁を聞いておりまして、私も全くイメージがわかなくなりました。

 それで、昨年、武力攻撃事態法がつくられて、これに基づいて、今度の米軍の行動円滑化法あるいは有事ACSA、特定公共施設利用法、こういうもので具体化を進めていくわけですから、今までの枠組みの具体化ということでは、もっとはっきり我々がわかるように答えていただきたいと思います。

 きょうは、その中でも米軍行動の円滑化法案、これについて、先ほどの質問とも関連しますが、お伺いをしていきたいと思います。

 今度の法案の眼目ですが、武力攻撃予測事態、この段階から米軍の軍事行動が円滑かつ効果的に遂行できるようにするための措置、いわば行動関連措置、この行動関連措置の実施を政府の責務としている点にあると思います。

 この行動関連措置についてですが、法案の第二条五号、そこを見ますと、二つあるんですね。一つは、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な米軍の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置、二つ目が、その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置ということになっています。

 そこで、お伺いをいたしますけれども、最初の、米軍の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置、そして二つ目の、その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置、これはどのような内容の措置ですか。これについて答えてください。

井上国務大臣 一つは、物品、役務の供与、これがございます。あとは、緊急通行なんかをいたします場合に生ずる損失についての補てんの規定、それから、道路の工事等をいたしましたときに通報の義務でありますとか、あるいは米軍の行動等につきましての都道府県等への通知、連絡、こういったことが主たる内容になっているわけであります。

赤嶺委員 ですから、行動関連措置は二つに分けて書いてあるわけですね。どれがどこに当たるのか、区別して答えていただけませんか。物品、役務の供与というのはどこに当たるのかとか、そこを区別して明確に答えてください。

井上国務大臣 各条文を説明するのが一番いいと思うのでありますが、くくって申し上げますと、米国軍隊に対する支援の措置としては、物品、役務の提供とか、あるいは施設だとか区域の提供などでございます。そのあとは、今申し上げましたように、合衆国軍隊の状況の情報の提供でありますとか、あるいは合衆国軍隊の道路工事に関する通知等、あるいは緊急通行について損失が生じた場合の損失補償等について書いてあるわけでありまして、これが、あとの部分が一つのくくりになるということであります。

 したがいまして、米軍に直に関係する部分としては、物品とか役務の提供でありますとか、土地とか施設・区域につきましての提供の部分であります。その他の部分は、関連する措置という御理解でいいと思います。

赤嶺委員 これは、時間のない議論ですから後で議事録を見ますけれども、それだけにとどまらない整理ですね。行動関連措置について、米軍の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置の内容、それから、その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置の内容、突っ込んでもっと聞きたいんですが、答弁のやりとりをしていても時間がありませんので、ここは委員会、理事会にきちんと整理をして資料を出していただきたいと思いますが、この点、いかがですか。

井上国務大臣 具体の措置につきましては、法案の第六条、第七条、第八条、第九条がまさにこの関連する措置であります。第十条それから第十一条、これが直に関係する部分の条文でございます。

赤嶺委員 その条文がどれがどこに当たるか区別されていないから、区別して出してくれということなんですよ。その資料を出していただけますか。条文だけだったら、だれでもわかりますよ。

井上国務大臣 区別してというその質問の趣旨がよくわからないので、質問の趣旨を十分に御説明をいただきたいと思います。

赤嶺委員 米軍の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置というのが行動関連措置の一つ目ですね。その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置というのが二つ目ですね。どれがどれに当たるんですかと。条文は、どれに当たると書いてないですよ、そんなの。ですから、そういう項目を具体的に挙げてください、資料として出してくださいと。そんなの簡単なことじゃないですか。資料として出してください。ここに来て説明を聞いてまた答弁するような時間がないんですよ、きょうは。

 委員長、そういうことで処理をお願いしたいんですが。

自見委員長 後刻理事会で検討させていただきます。

赤嶺委員 それはぜひそのようにお願いします。大臣もここに来て説明を受けているようですから。

 それで、法案では、行動関連措置というのは自衛隊だけじゃないんですね。指定行政機関も実施するということになっていますね。この指定行政機関が実施する行動関連措置、これの具体的な中身、どの省庁がどんなことを行うのか、これについて説明していただけますか。

井上国務大臣 具体的にわかっている、つまり、細かいところがわかっている部分もあれば、一般的な書き方で、それぞれの省庁の権限の範囲内で措置するところもあるということであります。

赤嶺委員 今の説明ではほとんど何もわかりません。聞いたことに答えられていない。

 これもきちんと整理をして当委員会に提出していただけますか。

自見委員長 委員長として申し上げますが、まず、審議の中がございますから、その中で審議を深めていただきたいというふうに思っております。

井上国務大臣 要するに、具体的に中身が定められているものもあれば、定められていない、つまり、省庁の一般的な権限の範囲でやる部分、二つあるわけですね。はっきりしておりますのは、防衛施設庁がやります部分、物品の提供なり役務の提供、これは明確になっておりますけれども、それ以外につきましては、そのときそのときの判断によって、各省庁の権限の範囲で対応していくということであります。(発言する者あり)

赤嶺委員 今、隣で久間筆頭理事も、答弁のイメージがわかない、例示しなきゃだめだというお声が聞こえました。これは、お声が聞こえたんです。

 それで、やはり具体的に例示をして出していただきたいと思います。いいですか、その点は。具体的になっている部分はあるとおっしゃっているわけですから、ある分をちゃんと出してください。

井上国務大臣 だから、明確になっている部分については提出をいたします。

赤嶺委員 次に、この法案で、指定行政機関が地方公共団体及び事業者に行動関連措置の要請を行う、このようにしています。この要請に基づいて地方公共団体が行う行動関連措置というのがあるんですね。――いやいや、あるんですよ、法律案の中には。そんな、首かしげないでください。その地方公共団体と事業者が行う行動関連措置とは何ですか。

井上国務大臣 行動関連措置といいますのは、行政機関が、国の機関が行う措置が行動関連措置でありまして、事業者が対応して行う措置はこの中に含まれておりません。

赤嶺委員 では、指定行政機関の行動関連措置に基づいて地方公共団体や事業者が行うのはどんなことですか。

井上国務大臣 それは、その時々の必要性に応じて行うと思うのでありますけれども、例えば、地方公共団体が持っている所有地がありますね、土地等についてその使用をお願いするというようなこともありましょうし、あるいは事業者につきましては、物品の調達等についてお願いする、こういうことがあると思います。

赤嶺委員 今、例示した以外に、ほかにもありますか。

井上国務大臣 これは、今すべてを特定するということは困難と思いますので、今申し上げたようなことが代表的なことだと思いますけれども、そのほかのことにつきましてもあり得ることだと思います。

赤嶺委員 そのあり得る中身というのは、我々が知るためには、あるいは国民が知るためには、いつどんな段階で我々は知り得ることができるんですか。今の国会での論議を通じて、具体的なしっかりした例示、これがないと我々は知る機会を失うと思うんですが、今の大臣の答弁で、どうなんですか、どうやって全体像を知るんですか、これについて。

井上国務大臣 武力攻撃事態でありますからいろいろな状況が想定されるわけでありまして、それをすべてにわたって、その前提のもとに、地方公共団体に何を要請するのか、あるいは事業者に何を要請するのかということを明らかにするということは、私は不可能だと思います。

赤嶺委員 これも、私たちは、こういう事態を想定していろいろな法律をつくって、決まったら、それによって国民が拘束をされるわけですから、国民の権利も制限されるわけですから、きちんと全体像を明らかにしていただきたい。これは今後も追及していきたいと思います。

 そして、ここで言う事業者というのは特定されているんですか。事業者というのは限定があるんですか。

井上国務大臣 事業をやっている人ということでありまして、サービスを提供したり物品を販売している人ということ、そういう事業者でございます。

赤嶺委員 そうすると、事業者には限定がないということですね。

井上国務大臣 特別に制限をする必要はないというふうに考えています。

赤嶺委員 次の質問に移ります。

 法案の中で、行動関連措置、武力攻撃の予測事態それから切迫事態、発生事態、それぞれの段階で行動関連措置の中身には違いがあると思うんですね。ところが、それぞれでどのような措置を行い、そして、事態によって措置の内容にどういう違いがあるか、法律を読む限りでは全くわからないんですが、これについてもちゃんと説明していただけますか。

井上国務大臣 先ほど御答弁いたしましたように、すべての事態について明らかにするということは、それは到底できないことだと思います。

赤嶺委員 そうすると、予測事態にはこういうことができてとか、あるいは切迫事態にはここまでしかできないとか、そういう限度だとかできる範囲だとかというのは、この法案では全く区別されていないということですね。

井上国務大臣 この自治体に対する要請なり事業者に対する要請、これはこの法律の範囲内でやるということでありまして、その中で特定の行為を制限するというものではございません。

赤嶺委員 法案上、措置の内容について何ら区別は設けていない、こういう理解でいいんですか。

井上国務大臣 法案は、自治体に対する要請あるいは事業者に対する要請を規定しているということだけでございます。

赤嶺委員 結局、予測事態や切迫事態、武力攻撃事態のいろいろな事態の段階で、できること、できないこと、区別されていないというお話でありましたけれども、これも今後の議論の問題にしていきたいんですが、きのう、私の本会議質問について、この限度の問題を聞きました。

 法案の第四条では、行動関連措置の基本原則について、「武力攻撃を排除する目的の範囲内において、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を超えるものであってはならない。」としているわけですけれども、これは限度を超えるものではないと。「合理的に必要と判断」というのがあるわけですから、予測事態において、そして切迫事態において、武力事態において、「合理的に必要と判断される限度」というのは、これはどうやって決めるんですか。

井上国務大臣 この法律に従って自治体なり事業者に要請するわけでありますが、その判断は合理的に必要と認められる範囲でありまして、それはケース・バイ・ケースで判断をされることだと思います。

赤嶺委員 ケース・バイ・ケースをだれが判断するんですか。

井上国務大臣 もちろん、国が判断するものでございます。

赤嶺委員 国のどこが判断するんですか。

井上国務大臣 これは、政府全体として判断する場合もありましょうし、あるいは指定行政機関が判断する場合もあろうと思います。

赤嶺委員 そうすると、合理的な判断というのをどこが判断するかという責任の所在も不明確で、限度も合理的という範囲だけなんですけれども、そうなってくると、この行動関連措置で、米軍が必要とする支援措置、これで、明確にこれはできないというのはありますか。

井上国務大臣 もちろん、いろいろな措置の中で、できますものもあれば、できないものもあると思うんですね。それは、だから、できるものにつきまして、しかも必要最小限度のものをする、しかも、その判断をする主体は明確にして判断をするということであります。

赤嶺委員 ですから、皆さんが国民に説明しなければいけないことは、できることとできないことなんですよ。その中身は説明は一切しないで、できるものもあればできないこともありますと言われたら、何を説明されているかわかりませんよ。まさに限度を設けていない、そういう措置がとられ得る、この法律の中身は本当に明確な制限を設けていないなというような感じを持ちます。これはいずれまた、引き続き追及していきたいと思います。

 それで、その場合に、一問ちょっとつけ加えますが、政府やあるいは指定行政機関が合理的に必要と判断すれば米軍が必要とする支援措置はできるという理解でいいわけですよね、大臣の答弁は。もう一度、確認をお願いします。

井上国務大臣 必要最小限度の判断は国全体もしくは指定行政機関が行うということであります。

赤嶺委員 時間も迫っていますけれども、時間の範囲内で、今度は、行動関連措置の対象になる米軍の行動について聞きます。

 行動関連措置の定義の中で、日本が支援を行う米軍の行動として、「武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動」という規定がありますが、これは具体的にどういう行動を指しますか。

井上国務大臣 これは、物品でありますとか役務の提供等の行動を指すものでございます。

赤嶺委員 大臣、質問をよく聞いてください。今のは、日本が米軍に対して行う行動ですね。私が言っているのは、米軍が行う行動なんです。つまり、武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動を米軍はとりますね、それはどんな行動ですかと聞いているんです。

井上国務大臣 これは、武力攻撃事態等に対応するために準備をすべき行動でありまして、例えば、物品の調達でありますとか、あるいは役務を必要とするというようなことだろうと思います。

赤嶺委員 つまり、物品の調達とかいろいろ言いますが、どんな準備の行動をやるかというのは米軍が決めることだと思いますが、いかがですか。

井上国務大臣 それは、要望は米軍の方から出ると思いますけれども、いずれ日本国がそれに対応するわけでありますから、当然、日米の協議に基づいてそんなことが行われるということだと思います。

赤嶺委員 それで、聞きますけれども、安保六条に基づいて米軍が極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために行動している場合、これは、武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動に当たりますか。

井上国務大臣 この法律は、あくまで、我が国に武力攻撃等がしかけられる場合でありまして、そのことにつきまして、それに関連する規定を整備した法律でございます。

赤嶺委員 もう時間がありませんので、最後の一問だけ。

 多分、六条と五条があると思うんですね。私は沖縄ですが、嘉手納基地から六条で飛び立つ戦闘機がずっとある、周辺事態に即してあるということがあり得るわけですね。一方で、五条に基づいて準備しているという場合に、物品、役務の提供について、これはどんな区分けをしていきますか。

 弾薬は提供すると言っていますよね、この法律で。六条で戦闘機が飛び立っていっている。そして、五条で偵察機が偵察をしている。一方には弾薬を提供し、もう一方には弾薬を提供しない、そういう切り分けが同じ嘉手納基地の中で可能ですか。

井上国務大臣 これは、我が国に対する武力攻撃事態等がありました場合、あるいは起こりましたときに対応する措置でありまして、そういう法律の枠組みの中でやるということでありまして、当然のこととして、今御指摘のような事案につきましては、切り分けてやらないといけないことだと思います。

赤嶺委員 どうもいろいろ疑問な点がたくさん出てきましたので、これから追及していきたいと思います。終わります。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子でございます。

 質問に先立ちまして、川口大臣にお願いがございます。

 イラクにおける人質事件の件ですが、もうそろそろ一週間にならんとしております。あそこで人質として拘束されている三人の健康状態もかなり気になるところですが、御家族の皆様もかなりお疲れのようです。それはもう精神的に、肉体的にひどいところに来ているのではないかと思うんですね。

 でも、その御家族の皆様の気持ちを思うとき、小泉総理大臣にぜひお会いしたいというお気持ちがとても強くて、私たちの方にも、ぜひその労をとっていただきたいという要望がありますが、それをぜひ川口大臣の方から小泉総理の方にも申し上げていただきたい。ぜひその旨をお伝えして、短い時間で結構ですから、お会いできるようなお時間をとっていただけないかと思います。

 この御家族の皆様の要望は、小泉総理にお会いして、お騒がせしている、これにまずおわびをしたいということ、それから、政府が一生懸命やってくださっていることに感謝を申し上げたいということ、三点目に、やはり家族の思いを伝えるということを要望書にしたためてきております。

 ぜひ、その点で、大臣に、小泉総理への面会、面談のお時間をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 政府といたしましても、人質の方々が一日も早く解放されるということを望んでいまして、そのために、今、全力を尽くしているところでございます。おっしゃるように、御家族の方も相当にお疲れでいらっしゃるようにお見受けいたしております。

 それで、御家族との関係でございますけれども、私は、前にお会いをさせていただきまして、そのときの御家族から伺ったこと、これについては、官邸にはきちんとお伝えをいたしております。それで、総理も、御家族のお気持ち、これについてはよくわかっているというふうにおっしゃっていらっしゃいます。

 御家族の方については、これは邦人保護という観点で、人質になった方の御家族でございますので、外務省が中心となって対応するということが政府の対策本部での仕切りに今なっておりまして、我々として、領事移住部を中心に、かなり密接に連携をとらせていただいております。

 総理のお気持ちとしては、気持ちはよくわかっていると。今、お会いをするということのタイミングではないだろうけれども、気持ちはよくわかっているというふうにおっしゃっていらっしゃるわけでございます。

東門委員 いや、タイミングもそうなんですが、ぜひ、短い時間でもいいですから、御本人たちも最初からずっとそれを要望しておられますので、何らかの形でお願いをしたいと再度お願いします。

 本日から審議入りをしました七法案三条約ですが、一括して審議をすることになっているようですが、かなり重要な法案、そして条約です。やはり審議時間をしっかりと確保していただきたい。国会での審議を通して、国民の皆さんが理解をし、そして納得できるような審議時間を確保していただきたいということを強く要望して、質問に入りたいと思います。

 国民保護法案等について伺います。

 小泉内閣は、発足以来、昨年成立した事態対処法などいわゆる有事法制の整備を進めており、また、改憲論議についても積極的です。しかしながら、私の出身地であります沖縄においては、さきの大戦末期に、我が国で唯一、大規模な地上戦が行われました。この沖縄戦では、ひめゆり部隊に象徴されるように老若男女の県民が動員されましたが、結局は軍に見捨てられ、鉄の暴風と呼ばれるほどの米軍の艦砲射撃の中で、友軍に、それは日本軍です、壕から追い出されたり集団自決を余儀なくされたために、沖縄県の推計で約九万四千人、一説では十五万人以上の民間人犠牲者を出すことになりました。

 また、沖縄は、戦後、米軍の統治下に置かれ、一九七二年に本土復帰を果たしましたが、この間、銃剣とブルドーザーにより米軍基地建設が進められ、現在なお県内に在日米軍専用施設・区域の約七五%が集中するという、過重な基地負担に苦しんでいます。私は、沖縄県の過去の経緯や現状から、小泉内閣の対米追従、軍事優先の姿勢に強い懸念を持つものであります。

 政府は、戦争が起こった際の準備をするのではなく、戦争が起こらぬように努力を傾注すべきであり、その点において、我が国がまずなすべきことは、平和外交を推進し、近隣諸国との友好を深め、信頼醸成を図ることです。小泉総理は、備えあれば憂いなしとおっしゃいますが、やぶをつついて蛇を出すという言葉もあります。政府が今、緊急性のない有事法制にやみくもに邁進することは、国民の危機意識をあおることとなるとともに、近隣諸国に不信感を与えるのではないのかと懸念する人も多いと思われます。

 政府は国民のこのような懸念に対してどのようにこたえるつもりなのか、そこから伺いたいと思います。

井上国務大臣 戦争が起こらないようにまずもって努力をしていくというのは、これは当然のことだと思います。特に、外交というのはそういったことを中心に据えまして行われるべきものと私は理解をしているわけでございます。

 ただしかし、そういうことをいたしましても、あるいは何か法律にそういうことを書きましても、それだけで平和が来るというものでもないと思うのでありまして、したがいまして、普通の国であれば、その国の安全保障につきまして通常の備えをしておくということは当然だと思うんですね。

 その具体的な形がやはり法律の制度だと思うのでありまして、やっと日本も、おくればせながら、昨年、武力攻撃事態対処法が成立をしたわけでございまして、今国会、それに関連する法案を、七法案三条約を提出させていただきまして補完をして、一つの、一応のまとまった体系としての有事法制を整えたい、こういうことでございます。

 決して、これは戦争するためにこんな法律をつくっているわけでも何でもないんですよ。だから、通常の国として備えるべき制度を備えるという趣旨のもとでやっておりまして、この法律全体を読んでいただきましたらおわかりのように、過度なものを、過度な攻撃をする、過度な行動をする、こういうことではないわけでありまして、国民の権利につきましても、最小限度我慢をしてもらうものを規定していく。それで、攻撃につきましては、対処につきましては効果的な対処をしていく。あるいは、国民生活の安定のためにはそれぞれ配慮をしていく。今お話になりました沖縄戦のことなんかも中に入れまして、例えば警報でありますとか避難の指示だとか、こういったことは、そういったことを参考にするといいますか、教訓にいたしまして、規定として取り入れたものでございます。

東門委員 戦争ができる普通の国ということかと思うんですが、これまで六十年近く、日本は、一回もそういうことに遭わずにやってきた、そういう歴史をちゃんと持っているわけですよ。むしろ、そういうことを尊重していくべきだと私は思います。

 私からは、この法律案は必要でないという立場をもって質疑をさせていただきます。

 昨年成立しました事態対処法が前提としているのは、冷戦下におけるソ連軍が大挙して北海道に上陸侵攻を試みるというようないわゆる大規模着上陸侵攻であるということは、事態対処法が審議されていた当時、指摘されていたことです。

 今回の国民保護法案の制定に当たり、昨年八月七日、内閣総理大臣官邸において開催されました国民保護のための法制に関する都道府県知事との意見交換会において、かつての戦争の概念とは様相が変わってきており、テロ、ゲリラ、武装不審船等の事案についても、住民を避難させる必要があることから、国民保護法制の一部を適用できるようにする必要があるとの指摘を受けて、国民保護法案に緊急対処事態への対処関連の規定が盛り込まれることになったと承知していますが、つけ焼き刃であるとの感はぬぐい去れません。

 現在の東アジア情勢の中で、我が国に対する大規模着上陸侵攻が起き得ると考えておられるのか、石破防衛庁長官の御認識を伺います。

石破国務大臣 そういう可能性は非常に考えにくくなってきたとは思っています。しかしながら、世の中には絶対にないということはないわけであって、そういうものにきちんと備えるということが抑止力になるのだろう。

 先生、先ほど、ずっと戦後、日本に対してそういうことはなかったじゃないかという御指摘がありました。でも、それは、もし日本が防衛力も持たず、日米安全保障条約も結ばずやっていたとしたら、やはりそうだっただろうか。やはり日本がきちんとした自衛力を持ち、日米安全保障体制があったからこそ、そういうことはなかったのであって、私どもは、そういうことにきちんきちんと備えておくことがそういうことがないようにする抑止力なのだというふうに思っておるところであります。

東門委員 時間が少しあるときにその件については議論をしていきたいと思います。

 国民保護法案に緊急対処事態への対処関連の規定を盛り込むに当たって、どのような状況を想定されて、どのような検討を行って国民保護法案に盛り込まれたのか、具体的に御説明いただきたいと思います。

井上国務大臣 緊急対処事態は、武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態または当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態でありまして、国民の生命、身体及び財産を保護するため国として緊急に対処することが必要な事態をいいます。

 具体的な緊急対処事態の対象としましては、発生初期の段階では武力攻撃事態であるとの判断がなかなか難しい、武力攻撃事態であるのかな、ないのかなという、そこの判断が非常に難しい事態、または武力攻撃に準ずる手段を用いた攻撃により大きな被害、甚大な被害が生ずる事態、そういったのを想定しているわけでございます。

 具体的な事例といたしましては、午前中もお答えしたと思うのでありますけれども、原子力発電施設の破壊、炭疽菌の散布、航空機による自爆テロなどの事態を想定しているところでありまして、このような事態の認定は、住民の避難とか救援等の緊急対処保護措置を講ずる必要があると考えられる事態でもございます。

東門委員 先ほども述べましたが、沖縄では、さきの大戦末期に、我が国で唯一、大規模な地上戦が行われて、多数の民間人の犠牲者が出ました。その原因は、軍には住民の保護という発想がなかったというよりも、住民を捨て石にしようとしたことにあると言わざるを得ません。県民は身をもって、軍隊が住民を守らないということをしっかりと学びました。

 今回、国民保護法案検討の過程で、先ほど井上大臣が沖縄戦の検証が行われたとおっしゃられておられましたが、沖縄戦の検証によってどのような結果が得られたのでしょうか。そしてまた、その検証結果が今回の国民保護法案にどのように反映されたのか。お伺いいたします。

井上国務大臣 沖縄戦におきましては、大変大きな犠牲を出したわけでありまして、先生御指摘のとおりでございます。

 こういった実態について検証いたしますとともに、こういった経験を踏まえまして、武力攻撃事態等におきましては、住民を安全に避難させることが大変重要だ、こういう考え方のもとに、警報の発令あるいは避難の指示、避難の誘導などの措置を適切に行えますように、必要な規定を国民保護法案の中に入れた次第でございます。

東門委員 その件についても、また後に回したいと思います。

 沖縄県内には、在日米軍専用施設・区域の約七五%が集中しております。きょうこれで、申し上げるのは二回目となりますが、米軍は、海兵隊員を中心として約二万五千人が駐留しています。本土のある地域で武力攻撃事態等が発生した場合には、在沖米軍及び在沖米軍基地はどのような役割を果たすと考えておられるのか、これは川口外務大臣の見解をお伺いいたします。

川口国務大臣 まず、当然のことですけれども、我が国に対して武力攻撃が発生をした場合には、安保条約の五条に従いまして、米軍は我が国を防衛する義務を負っているということでございます。

 したがいまして、在沖米軍も含めて米軍が実際に行動をとるということになるわけですけれども、それに当たっては、日米の防衛協力のための指針というのがございまして、それに基づいて、日米間で緊密な調整を行う、それぞれの能力に応じまして攻撃を効果的に排除するための行動をとるということになるわけでございます。

 それで、在沖米軍の役割といいますか、在沖米軍ですけれども、とりわけ海兵隊でございますが、高い機動力、即応性がございまして、在日米軍の中で重要な役割の一翼を担うということになるわけでございます。

 それで、そのときに具体的にどのような形で我が国に対して武力攻撃事態が発生するかということにもよりますので、そのときに在沖米軍がどのような役割を果たすかというのは、その時々によりますから一概に申し上げにくい、個別のそのときの状況に応じて判断をするということになって、あらかじめ、こうですと全部について横断的に申し上げるということは難しいかというふうに思います。

東門委員 時間がかなり迫ってまして、最後の質問になります。

 今回の国民保護法案においては、都道府県の区域を越える住民の避難についての規定を置いていますが、沖縄県は島嶼県であり、沖縄県が武力攻撃を受けた場合、島内で避難するか海上に避難するしか方法はありません。それ以上に問題であるのは、沖縄県内の広大な米軍基地、その存在が都市形成や交通体系の整備を阻害しており、特に町の中心部に基地を持つ沖縄本島中部の主要都市では、周辺集落間の交通網が遮断されているというのが現実です。

 このような状況において、島内で避難をしようとしても、避難経路を確保することは極めて困難だと言わざるを得ません。米軍基地の整理縮小を行わなければ、沖縄県内における国民の保護を実効あるものにすることはできないと考えますが、見解をお伺いいたします。

井上国務大臣 関連をしていると思いますので、その部分についてお答えしたいと思うのでありますけれども、沖縄県内での避難という場合もありましょうし、それは島嶼部を含めましてそういうことがあると思いますけれども、ほかの地域、九州その他への避難ということもあり得るわけでございまして、全体を含めて考えております。

東門委員 もう時間ですので終わりますが、今の御答弁、とても私の質問には答えておられない。沖縄の事情を全然御存じない。後でまたやりたいと思います。終わります。

自見委員長 次回は、来る十九日月曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十五分散会


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