衆議院

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第5号 平成16年4月20日(火曜日)

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平成十六年四月二十日(火曜日)

    午前十時三十一分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩永 峯一君

      岩屋  毅君    江崎洋一郎君

      大村 秀章君    佐藤  勉君

      佐藤  錬君    塩谷  立君

      菅原 一秀君    鈴木 淳司君

      田中 英夫君    谷  公一君

      谷川 弥一君    谷本 龍哉君

      中西 一善君    中山 成彬君

      仲村 正治君    西野あきら君

      蓮実  進君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    山際大志郎君

      山口 泰明君    山下 貴史君

      稲見 哲男君    奥村 展三君

      鎌田さゆり君    川端 達夫君

      今野  東君    末松 義規君

      武正 公一君    筒井 信隆君

      中川 正春君    中塚 一宏君

      中山 義活君    長島 昭久君

      楢崎 欣弥君    細野 豪志君

      松崎 公昭君    松本 剛明君

      笠  浩史君    渡辺  周君

      大口 善徳君    桝屋 敬悟君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      吉井 英勝君    東門美津子君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         野沢 太三君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小野 清子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   総務副大臣        山口 俊一君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (消防庁長官)      林  省吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)  鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長)  荒木喜代志君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長  前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  植竹 繁雄君     西野あきら君

  江崎洋一郎君     山際大志郎君

  遠藤 利明君     佐藤  勉君

  大村 秀章君     山下 貴史君

  佐藤  錬君     鈴木 淳司君

  塩谷  立君     谷本 龍哉君

  岩國 哲人君     稲見 哲男君

  大畠 章宏君     中山 義活君

  楢崎 欣弥君     今野  東君

  細野 豪志君     笠  浩史君

  上田  勇君     丸谷 佳織君

  赤嶺 政賢君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     遠藤 利明君

  鈴木 淳司君     谷川 弥一君

  谷本 龍哉君     塩谷  立君

  西野あきら君     植竹 繁雄君

  山際大志郎君     江崎洋一郎君

  山下 貴史君     岩永 峯一君

  稲見 哲男君     岩國 哲人君

  今野  東君     楢崎 欣弥君

  中山 義活君     大畠 章宏君

  笠  浩史君     細野 豪志君

  丸谷 佳織君     上田  勇君

  吉井 英勝君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  岩永 峯一君     大村 秀章君

  谷川 弥一君     佐藤  錬君

    ―――――――――――――

四月二十日

 有事関連法案反対に関する請願(山口富男君紹介)(第一七五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案、武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案、武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件及び千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件の各案件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣審議官大石利雄君、消防庁長官林省吾君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長荒木喜代志君、外務省北米局長海老原紳君及び外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江崎洋一郎君。

江崎(洋)委員 自由民主党の江崎洋一郎でございます。

 本日は、与野党そろった委員会となりました。当委員会における議論が、今後、本日を起点に活発となることを望むものでございます。

 まず、イラクの人質事件につきまして、一言申し上げたいと思います。

 イラクにおける人質の解放は、我が国国民の生命が守られたという点におきまして喜ぶべきものでございます。自衛隊の撤退を求めた、武装勢力かテロリストというのか、これは承知しませんが、そうした一団の要求に屈しなかったことは日本人の一人として大変誇りに思っております。また、政府の対応に改めて敬意を表させていただきたいと思います。

 そこで、イラクの人質事件を教訓に、本日は、国家の主権と国民の私権の制限につき、きょう御出席の各大臣、また、川口大臣はきょう御欠席でございますので逢沢副大臣に、それぞれ御意見を賜りたいと思います。

 私の考えでは、国家の主権は、国民の生命と財産を守ること、また、領土を保全することだと当然考えます。これをあえてイラクの人質事件に照らして考えますと、今回のケースは、渡航自粛勧告は一時的な権利の制限ということになります。しかし、どちらが日本の国民、国土に影響が大きいかを考えなければならないというふうに感じるわけでございます。

 すなわち、国家の主権を守るために渡航の権利を制約、私権の制限をすることは、憲法上も国際法上も人道上も全く問題のない、むしろ民主主義の根幹を形成するものではないかと考えるわけであります。国家の主権は国益に直結するものでありまして、逆に、渡航自粛勧告を無視して渡航し人質になったということは、一歩間違えば大きく国益を損なうということにもなるからであります。

 こうした民主主義の根幹につきまして、各大臣の所管される省庁のお考えはそれとして、特に各大臣の御見解というものを、私の考えが間違っているのかどうかを含めてお聞かせ願えればと思います。まず麻生大臣から、済みません。

麻生国務大臣 御指摘のありましたところは、これは常に民主主義国家にとりましては大変大事な判断を要求されるところだとは思いますけれども、武力攻撃事態法、前にやりました有事法制のときにも、基本的人権は尊重されるということはあの中に、たしか三条だったかに書いてあったと記憶をいたします。

 しかし一方、公共の福祉のためとか国益のためとか、いろいろな表現はあろうかとは存じますが、いろいろな状況を考えて、一部の方々の無責任な行動等々によって国全体の国益が損なわれる等々の判断が行われるというようなことになった場合には、これは合理的な限度において基本的人権もある程度制限されるのはやむを得ぬということになろうかと思いますので、制約を加えることも状況下においてはあり得る、当然のことだと思っております。

井上国務大臣 政府の見解というのは、官房長官の発言なり、あるいは外務省が決めることになると思うのでありますが、私のある意味では個人的な見解をお尋ねだと思うのでありますけれども、このように思います。

 邦人保護の責任というのは本国政府にあるわけですね。それは当然のことだと思うのでありますけれども、しかし、なかなか外国においては日本国内におけると同じような保護ができないという、これは当然のことだと思うんです。制限があるということですね。片や、渡航する人はいろいろな状況下の中で渡航するわけでありますけれども、渡航についての自己責任のようなものがある、こんなふうに私は思うんです。

 そこで、今のお話の、渡航の制限ができるのかどうかということについてでありますけれども、憲法上はそれは制限できないという意見、これが強いように思うのでありますけれども、私はやはり、渡航して今回のような人質になったりいたします場合は、これは国益と非常に関係が出てくるわけでありますから、憲法の規定は規定として尊重しないといけないのでありますけれども、これに制約が加えられるのかどうか、もっともっと検討する余地があるんじゃないか、こんなふうに思います。

石破国務大臣 総務大臣また井上大臣のお答えのとおりだと思います。

 それで、これは先生御案内のとおりですが、最高裁で判決が出ていますね、昭和三十三年九月十日の最高裁の大法廷で。結局、憲法二十二条と旅券法十三条との関係です。これは当庁所管の法律ではございませんからあれこれ申し上げることはいたしませんが、この判旨で、「憲法二十二条二項の「外国に移住する自由」には外国へ一時旅行する自由を含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきである。」というふうになっておるわけでございます。

 「外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めた」というふうになっておるわけでございまして、私、この最高裁の判決というものをもう一回読み直してみて、先ほど来両大臣のお話にあるように、それはもう憲法との関係である程度整理をされたものである、あとはどのようにこれを規定していくかという問題が立法論としてはあるのかなという気が個人的にはしておるところでございます。

逢沢副大臣 御承知のように、政府は、イラク全土に対し、累次にわたり退避勧告の危険情報を発出いたしております。邦人に対しましては目的のいかんを問わずイラクへの渡航を延期するように、そして、既にイラクに滞在する邦人はイラクから速やかに退避するように呼びかけてまいりました。今現在もイラクはそのような状況にあることをまず確認しておかなくてはなりません。

 政府といたしましては、このような中で今回の人質事件が発生したことは、まことに残念だ、遺憾に考えております。今後とも、海外に渡航される方がみずからの安全についてはみずから責任を持つとの自覚を持っていただくということが何といっても大切である、みずからの行動をみずから律していただかなくてはならないということを強く申し上げておきたいというふうに思います。

 一方、渡航禁止等の強制力を持つ措置についていろいろ議論した方がいいのではないか、そういう議論が起こっていることは承知をいたしております。私自身も、アンマンにおきまして現地緊急対策本部の責任者として人質の解放のために努力をしながら、日本においてどういう議論が巻き起こっているか、そのことについては、報道等あるいはまた党からの連絡等によりまして、よく承知をいたしておりました。

 しかし、このような禁止措置については、憲法で保障されております海外渡航の自由、憲法二十二条には、御承知のように、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と明記されておりますし、また、渡航の自由を定めた国際法も御承知のように存在をいたしております。したがいまして、法的な面を含め、さまざまな観点からこの問題についてはある意味では慎重に検討する必要があろうか、そのように考えております。

江崎(洋)委員 各大臣とも、ありがとうございました。

 本当にこの問題、先ほど石破長官からもございましたが、昭和三十三年の最高裁判決以来、もう一歩踏み出した議論をこのイラクの人質事件を契機に行っていただければと考える次第でございます。解釈といたしましても、何人も移住ができるというところに渡航の議論が、解釈が入っているわけでございますが、しかしながら、現況、果たしてそのままの環境でよろしいのかどうかということも含めて、十分に政府としてまた御検討いただきたいと思います。

 また、逢沢副大臣におかれましては、アンマンでの対策本部の責任者として大変御苦労されたことに、改めて敬意を表させていただきたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、事態対処法につきまして、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、今回の事態対処法案の意義につきまして、若干、コメントをさせていただきたいと思います。

 昨年の武力攻撃事態対処法等三法とあわせて、我が国に対する武力攻撃事態における国家として対処する枠組みについては整備されつつあると私は認識しておるつもりでございます。また、今国会提出の七法案及び三条約は、国際法、特に武力紛争法及び安保条約を実効ならしめるための国内法制の整備というふうに考えるわけでございます。そして、昨年が主として国内における態勢整備という位置づけの法律と考えますと、今国会におきますこの法律案につきましては、対外作用としての国内法制が整備され、武力紛争時に適用される法令整備がおおむね完成しつつあるという状況かなというふうに考える次第でございます。

 今回、とりわけ、行政体制の中で国と地方公共団体、指定公共団体との間における役割分担というものが明確化したということは、大変評価すべきではないかと感じている次第でございます。しかしながら、一方で、この法案が実効性を持って有効に機能し得るのかどうかという点につきましては、私自身、若干、懸念、疑問点がございまして、その辺を主にこれから質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、国民保護法制につきまして、井上大臣にお伺いしたいわけでございます。

 本法案を実効せしめるには、対策本部における、相手側攻撃パターンというものがどのようにシミュレーションされるかということが大事ではないかと思います。例えば、攻撃の破壊力とかあるいは侵攻度合いとかによってこのシミュレーションのパターンも変わってくると思いますし、それによって対策本部における計画というものが変わってくるのではないかと思うわけでございます。

 それで、大事なことは、果たしてシミュレーションされたものが今各地方自治体に共有化されているか、情報が共有化されているかということが心配されるわけでございます。一つの前提というものがあって、それに見合った計画というものがつくられていくということがやはり大事だというふうに私は考えるわけでございますが、この事態に対する認識を現在共有しているんでしょうか。大臣、いかがでございましょうか。

井上国務大臣 この議論は各都道府県知事との懇談の席上で出まして、どういうような事態を想定するのか、その事態によりまして対応も違ってくる、避難の対応も違うだろうし救援の対応も違うということで、今お話しの攻撃の類型化というのをぜひ示してほしいという意見がありまして、そんなようなことも考慮に入れまして、我々、対応しようといたしております。

 基本指針におきまして、できる限りそういった事態を想定しまして記述をしたいと思っているのでありますけれども、今、想定しておりますのは、地上部隊による侵攻でありますとか、あるいは航空機による攻撃だとかミサイル攻撃だとかその他、そういったことを想定しているのでありますけれども、これは、もっともっと検討して、さらにその他類型化できるようなものがあれば順次類型化していく必要があろう、こんなふうに思います。

 率直に言って、これからの課題でありまして、類型化すると同時に、都道府県との意思疎通、検討なんかも十分やりまして、できるだけ早く事態の共有化といいますか、認識の共有化をしていきたい、こんなふうに考えています。

江崎(洋)委員 これからということではございますが、今、基本計画を各自治体で策定するに当たって、各自治体からは、どのようにつくったらいいんだろうという具体的な疑問点というものがやはり聞こえてくるわけでございます。

 そういった意味で、先ほどの種々の攻撃態勢というものに対してシミュレーションということでございましたが、しかし、ここにも中身に幅があるわけでございますので、ぜひ幾つもシミュレーションを重ねていただいて、適切な情報を各自治体に送っていただき、共有化していただくということをお努め願えればと思う次第でございます。

 そこで、関連してでございますが、国民保護措置計画策定の時期というものについて明示というものはあるんでしょうか。

井上国務大臣 これは、今、具体的にいつまでという期限を設定するということは考えていないのでありますけれども、ともかく法案が成立いたしますとできるだけ早く指針をつくらないといけない、そういう考えで今いろいろな作業をしているわけでありますが、ただ、これは地方の意見も聞かないといけませんし、関係のところともやはりすり合わせをしないといけないものですから、すぐにはできないのでありますけれども、できるだけ早くやりたい、こういう考えでおります。

江崎(洋)委員 ぜひ、また自治体もその辺は不安に思っているようでございますので、御指導のほどいただきたいと思うんです。

 今ちょっと御指導とは申し上げてしまいましたが、実は、本件に関しましては、各自治体にゆだねられている仕事だと思うんですね。

 しかしながら、一方で、さっき御質問しましたが、これらの計画に基づく研究、検討会等のシミュレーションがあって、そこからまたさらに訓練に派生していくと思うんですが、それに際して、やはりどこかが音頭取りをしていかないと、各自治体にゆだねるといっても、例えば災害に関して考えましても、二つの県、三つの県、もっと多くの県にまたがるケースもあるでしょうし、そういったときに、各県独自に個々に考えていきますよということでは、なかなかスムーズなオペレーションというのができないかと思います。

 そういった意味で、音頭取りというのが必要じゃないかな、それはやはり政府自身がやらなければいけないのではないかと私個人は感じておりますが、その辺は、井上大臣、いかがでございましょうか。

井上国務大臣 御指摘のとおりでありまして、国が中心になりまして、これからこういった国民保護措置を考えていかないといけないと考えております。

 まずは、基本指針をつくることですね。これは、今も御答弁いたしましたように、自治体の意見もよく聞いて、あるいは関係者の意見もよく聞いて、そういう意見を中に取り入れていくということ、それから、それをもとにしまして、県なりあるいは市町村が計画をつくっていくということになりまして、これはもう少し時期的には国の基本指針からずれてくるとも思うのでありますけれども、要するに、国と県、市町村あるいは国民が一体にならないと国民保護措置というのはできないものですから、だから、そういう考えのもとに、十分な連絡をとりながら我々は作業を進めていきたい、こんなふうに考えています。

江崎(洋)委員 そこで、所管の麻生総務大臣にお伺いしたいと思うんです。

 計画の策定に関しましても、今、具体的に各都道府県につきまして温度差が少しあるのではないかなと心配しております。石破長官の地元であられる鳥取県は非常に進んでおられるというふうにも伺っておるんですが、この温度差というものを今後どのようにお埋めになるというお気持ちであられるのか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 先ほど江崎先生の御質問の中にも、というより御指摘の中にもありましたように、仮に同じ情報が行っても、それを受けとめる側の人の感性、経験則等々によって、その事態をどう認識して、それに基づいてどう指示を出すかというのは、これは首長さんなりなんなりによってかなり温度差というか能力差が出てくるというのは否めないところだと思っております。

 そこで、基本的には各地方団体にお願いをしてつくっていただくことになっておりますが、御存じのように、例えば、井上大臣のところで起きました例の阪神・淡路大震災のときまでに、この種の大震災、大災害が起きたときのために自衛隊と共同訓練をやっておられた県は当時は四県しかなかったと記憶をいたします。今はほとんどやるようになりましたけれども。

 そういった意味では、ふだんからそういったことを前提として非常時に備えておられるというところと備えていないところが、これは地域によって差があるとは思います。しかし、その差があるために県民なり国民が被害の大きさが違うというのは、これはいかがなものかということになろうかと存じますので、基本的には、井上大臣言われましたように、国民保護のいわゆるモデル計画というものをつくろうと思っております。

 かつ、それは地域差がありますので、海岸のあるところ、ないところ、いろいろありますので、そういったところとは地域差を勘案して、そこにいらっしゃる方々に合わせて、ある程度意見は聞かせていただいた上で、おたくはこれというようなものをある程度案を差し上げる等々のことはやらなきゃいかぬのだと思っておりますので、策定の段階からそういった話をさせていただいて早急にこれはつくり上げていくべきものだと思っております。

 経験者が要ることははっきりしておりますので、私ども、福岡県に地震などというものは、炭鉱では地震はありませんから、地震がないから炭鉱は成り立つんですけれども、そういった意味では、地震がもし起きたときなんというのは経験則はないので、そういった人をいろいろ使っていただくなりなんなりのことは必要と思っております。

江崎(洋)委員 そこで、関連して御質問なんですが、モデルケースをつくったり、あるいは経験則に応じて、やはりまだ能力が足りない部分は中央からまた政府が補っていくということになろうかと思うんですが、ひとつ総務大臣のお考えを伺いたいんです。

 昨今、防衛庁は自衛隊OBの積極活用というものを推進しているわけでございます。都道府県では、各地区で検討が始まっている、また、採用したというようなことも聞いているわけでございますが、市町村レベルではまだまだ受け入れられるというレベルにもないかと思います。その点につきまして、アドバイスというか、地方行政を指導する立場からどのようにお考えか、お考えを聞かせてください。

麻生国務大臣 まことにごもっともな御指摘なんですが、私どもの持っております資料では、県におきまして部長級、次長級以上の防災・危機管理専門職を設けましたのは、平成十年までは九府県しかなかったんですが、現在におきましては、三十七都道府県に専任職員を配置するということにまでなっております。

 その中で、今回の場合は非常時、いわゆる天災ではなくて他国からの攻撃もある程度考慮した上でやることになりますので、そういったことの訓練というものは当然必要だということになります。

 たしか福井県は自衛隊のOBを採用しておられたりいろいろしていると思いますけれども、いろいろな意味で、私どもとしては、こういったものが実際的にやられて、しかも、小さな地域ではなくて広域にまたがる、数県にまたがる等々のことも十分に、北陸沿岸とかどこどこ沿岸とかいうようなことになろうということを前提にいたしますと、ある程度広域消防等々広域災害などということに経験のあるというのは地域消防とまた少し違ったことになろうかと存じます。

 そういったことも考えて、自衛官に限らず、例えば消防庁のOBとかまた警察のOB等々、いろいろその種のことに経験のある方を採用して、あらかじめシミュレーション等々をつくり上げた上で、かつ、実地に訓練をせぬと、何となくパニックの状況でいろいろ対応することになろうと思いますので、そのときの平時からの訓練というものは避けて通れないところだと思いますので、ぜひそういった訓練もあわせてやっておく必要があろうかと思っております。

江崎(洋)委員 ぜひ、経験者を登用し、また、知見のある方々とともにこの訓練を重ねて充実していっていただくということをお願い申し上げたいと思います。もし総務大臣、お時間がございましたら、どうぞ御退席ください。

 次に、国民保護法制に関する国民の協力について、お伺いを申し上げたいと思います。

 本法案において、前国会、「協力」という文言にとどめられたというふうに私は認識しております。しかし、イラクの人質事件によって、協力でよしとする前提条件というのが覆ってきているのではないかというふうに考えているわけでございます。状況によっては、協力ではなく義務もあり得べしという表現があってもおかしくないのではないか、そして、あらゆる事態に対処可能にしていくということも重要ではないかというふうに考えるわけでございます。

 そこで、お伺いしたいんですが、協力ではなく義務化が必要との観点から私は申し上げたいと思うんですが、例えば国民の避難地域として個人の私有地を指定したとしても相手方から拒否されてしまった場合には避難地たり得ないわけでございまして、避難地として確保もできないという事象が出てくるわけでございます。恐らく、個人の私有地を避難地に指定するということは余りないのかもしれませんが、そういったケースも想定されるわけでございます。そういった点についてどうお考えかということと、この法律案の中でもし協力と義務と整理ができるということであればまた教えていただきたいと思います。

井上国務大臣 国民の協力ということ、これは任意で規定をしているわけでありますけれども、今委員がおっしゃるように、義務化すべきだというような御意見もございますけれども、私は、イラクなんかの場合と武力攻撃を受けております事態とは多少違うんじゃないか、こんなふうに思います。

 国が、あるいは国民が生命の安全に危機感を抱いているわけでありまして、そういうようなときには、やはりみんなで協力してやっていこうというような気分は、私は、全体としては出てくると思うんですね。そんなことも考えまして法律の中では義務化はしなかったわけでありまして、したがいまして、我々は、こういう武力攻撃事態等におきましては国民の協力が得られるもの、こんなふうに期待をしているわけであります。

 確かに、避難の地域におきましては、避難する人を収容する、いるところ、家屋でありますとか場所が必要になりますけれども、こういう場所なり家屋の確保につきましては、その所有者に対して利用につきまして依頼をするというのが原則でありますけれども、どうしてもそれができない場合は、できない正当な理由がある場合はともかくとしまして、正当な理由がない場合は公正かつ適切な手続によりまして土地なり家屋なりを収用することができるような規定を置いておりますので、その避難先の土地なり家屋の確保につきましては、これで十分対応できるものと考えております。

江崎(洋)委員 同じく石破長官にもお伺いしたかったんですが、ジュネーブ条約につきまして、ちょっと先に進めさせていただきます。

 ジュネーブ条約の八十三条には、周知義務というものがうたわれているわけでございます。

 このジュネーブ条約そのものにつきまして、国際人道上、どのような対処をしなければいけないか。また、国民の協力を得る前提として、今後、この周知徹底を国民の中にしていくという義務があるわけでございますが、日本におきまして、今、当然、自衛官の中ではそういった教育が行われている、しかし、実際の教育現場、学校教育の中ではまだこれからという認識ではないかなと私は考えているわけでございます。

 しかしながら、EU諸国を見ますと、もう小学校低学年から、こういったジュネーブ条約を前提に人道上の問題というものを自分たちで議論をし、また、勉強していくということも行われているやに伺っております。

 そういった意味で、今後、教育という問題の中で、このジュネーブ条約、人道上の問題というものをどのように反映させていくべきか、少し、感想ということになろうかと思いますが、井上大臣から御意見を伺いたいと思います。

井上国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 恐らく、このたびの条約が承認され、しかも、関係法律が成立するようになりますと、自衛隊の方につきましては、かなりこういったことが自衛隊員に徹底されてくると私は思うのでありますけれども、問題はやはり学校ですね。

 このジュネーブ条約なんかにつきましては、今までだって、学校でもっと教科書の中に取り入れられても決しておかしくないわけですね。小学校から中学校あるいは高等学校に至るまで、今までそういうことがやられてこなかったということは、ある意味ではこれはちょっと特異な現象じゃないかと思うのでありまして、これから大いに、こういった規定、大変重要な条約でありますので、ぜひ小中学校等の教育の中に取り入れていただきたい、こんなふうに考えております。

江崎(洋)委員 井上大臣おっしゃるとおりで、ぜひ学校教育の中でも取り入れていただきたいと思っております。

 ジュネーブ条約とは、戦時下におけるルールを取り決めたものであって、そこには、守るべき条項は何なのか、また、戦争とはいかに日本人の想像を絶するものかというものがうたわれていると思います。日本人の不得意とする危機管理の重要性が行間に込められていると思います。日本では、人権教育というのは非常に進んでいるとは思いますが、公の秩序の維持を初めとする危機管理の重大性というものを早いうちに学ばせるということが大変重要だと思います。そういった意味で、周知徹底をお図りいただきたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

自見委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。与えられた時間、しっかり審議したいと思います。

 私は、きょうは、先ほどの同僚議員も随分時間を使って議論されましたが、いわゆる地方の立場ということからしっかり議論を進めていきたい、こういうように思っております。

 武力攻撃事態対処法が成立をしているわけでありますから、関連する国民保護法制、一日も早い整備が求められているというふうに私どもは考えております。もし、この法整備がおくれることになりますと、武力攻撃事態対処法に基づきまして、それこそ、そういうことはないと思いますが、一方的に地方団体の責務だけ、義務だけが生じるということになるわけでありますから、早急な法整備を急がなきゃならぬと思っておるんですが、そういう意味でも、きょう、民主党、野党の皆さん、おいでいただいて、心から歓迎したいと思いますし、与野党そろって、国民の関心事でありますこの議論をしっかりやっていきたい、こんなふうに思っているところであります。

 本題に入る前に、先ほども話がありましたが、逢沢副大臣、本当に御苦労さまでございました。心から御慰労申し上げたいと思います。

 先ほども話が出ておりましたが、今、国民の関心事は、本題に入る前の話でありますが、拉致、人質になりましたあの三人の邦人について、かかった費用についてはこれは当然本人に求めるべきだ、こういう声もあるわけであります。テレビ、報道等を見ておりますと、百万円という数字が出たり三十五万円という数字が出たり、いろいろ言われているわけでありますが、当然ながら、こうした場合は実費弁償については本人たちに請求をするというのがあるべき姿ではないか、こういうふうに思っているわけであります。

 どうでしょうか、我が党は、冬柴幹事長が、まずは、どれぐらいかかったのか、今回の三人を救出するためにどれぐらい国民の税金が使われたのかということを明らかにしなきゃならぬ、こう言っているわけでありますが、私もまさにそのとおりだと思っておりますが、この事態を国民の皆さんに正しく理解していただく意味でも、そういう数字があれば、整理ができておるのであればお示しをいただきたいと思います。

逢沢副大臣 今回の事件の解決に要した費用の全体像についてでございますが、まだ解決して日が浅いということ、また、率直に申し上げて、どこからどこまでをその範囲の中に取り込むかということについて、正確な規定があるものではございません。現在の段階で、その全体像、詳細はまだ明らかになっていない。しかし、いずれにしても、国民の税金がそれに充てられているということは事実でございますので、何らかの形でそれは明らかにしていく必要があろうかというふうに思っております。

 しかし、一、二、具体的に申し上げさせていただきますと、例えば、解放された三人の方々、結果的には政府がチャーター機を用意いたしまして、解放されたバグダッドからUAEのドバイに移っていただき、そこから帰国をいたしたわけでございますが、バグダッドからドバイに移送するために用いたチャーター機の運航費は約六千ドル、日本円にいたしまして六十六万円でございます。当然のことでございますけれども、解放された三名の方々には、この航空運賃を、しかるべく負担をお願いするという予定にさせていただいております。

 これまでの邦人保護のケースでは、こういった航空運賃また滞在費等の直接的な経費は、原則として自己負担ということであります。今回もその原則を貫いてまいりたいというふうに思います。

 また、三名の方は、ドバイに移られて、直ちに、メディカルチェックのためにアメリカン・ホスピタルに入りました。当然、そのアメリカン・ホスピタルにおいて必要となった経費は自己負担ということでございまして、既にこれは現地において家族の方々が精算を済まされたというふうに承っております。

 なお、つけ加えて申し上げれば、ドバイから帰国の費用、家族の航空運賃、滞在費、当然のことでございますが、自己負担という状況でございます。

桝屋委員 今の副大臣の御説明では、バグダッドからドバイまでのチャーター機、こうした費用、さらには病院にかかった費用、さらには宿泊費、あるいは帰着、日本に帰ってくる費用あたりは、当然ながら本人に負担をということであります。

 今回、我が党も対策本部を立ち上げて、ずっと事態の推移を見守っておりましたけれども、逢沢副大臣もすぐ、急遽飛ばれたわけでありまして、本来であれば、副大臣まであの地に赴く必要は、こういう事件がなかりせば必要なかったわけであります。もちろん、行っていただいたことは必要なことでありましたし、我々も注視をしておりましたけれども、そんな費用まで求めてもいいのではないかという国民の声があるのも確かであります。

 私は、余り時間をかけずに、あるいは面倒なことを言わずに、マスコミの報道でつまらぬ数字がぽんぽん飛び出すようなことではなくて、これぐらいかかったんだと大体概算で示せるわけでありますから、そういうものは、全体としてこれぐらいかかったんだということは国民の皆さんに理解していただく意味でも示すべきではないか、こう思っているわけであります。

 本題に入りたいと思います。

 先ほどの同僚議員もお話をされましたけれども、私は、この国民保護法制を議論する上で、入り口部分として極めて大事なのは、やはり基本指針、政府が今からおつくりになる基本指針、あらかじめ策定をする基本指針でありますが、この基本指針の中で武力攻撃事態の類型というものを、先ほどの同僚委員の議論でもありましたけれども、早く示すということが大事だろうと思っております。

 地方の皆さんが、地方団体の皆さんがしっかり今から具体的な対応あるいは国民保護に関する計画を策定するという上でも必要でありますが、もう一つは、やはり国民の皆さん全体に理解をしていただくという観点でも、ここは入り口部分として、認識の共有化、国民全体で共有化するという意味でも大事なことだというふうに私は思っております。

 策定する基本指針についてはできるだけ早く、類型についてもこれからの課題だと井上大臣はおっしゃいましたけれども、私は、国民の皆さんに理解をしていただく作業として、できるだけその類型を早目に国民の皆さんにお示しする、その方法も考えた方がいいんじゃないかというふうに思っておりますが、改めて認識を伺いたいと思います。

井上国務大臣 国民保護措置というのは国民保護の基本指針の策定から始まると言ってもいいと思うんですね。国が国民を保護する場合の基本の考え方をこの中ではっきりするわけでありますが、これは国だけで決めるというわけにはまいりませんで、やはり地方公共団体の意見とか関係者の意見を十分くみ入れましてこの中身をつくっていく必要があるわけでありまして、攻撃の類型につきましても、さらにいろいろな意見を伺いながら決めていきたいと思います。

 いずれにしても、できるだけ早くやりたいという、それはもう同じような考え方を持っているわけであります。それから都道府県なり市町村の計画の策定が始まる、国民の理解もそれによって深まっていく、こういうことに相なるわけでありますから、そのような考えでこれからできるだけ早くこの基本指針ができますように努力をしていきたい、こんなふうに考えます。

桝屋委員 その作業で、地方公共団体の参画も得ながら議論するということになるんだろうと思いますが、すべてが協議相調ってからということではなくて、議論の出発としていろいろな方法があるのではないかと私は思っておりますので、お取り組みをお願いしておきたいと思います。

 それで、きょう、どうしても麻生大臣もいらっしゃるのでこの議論をしたいんですが、国の財政的負担であります。

 武力攻撃事態における国の財政負担というものは相当明確に、住民の避難に要する費用であるとか避難住民等の救援に要する費用、あるいは武力攻撃災害への対処に要する費用、さらには損失補償等、こうしたものは国庫負担が明確になっているわけであります。そこはそれでいいんですが、問題は、平時における財政措置、この委員会でも大分議論があったところでありますが、ここがやはり不十分じゃないか、こういうことであります。

 せっかくこの百六十九条で、国民の保護のための措置その他国民保護法制に基づいて実施する措置に要する経費、この国庫補助金の根拠規定、これは置かれているわけでありますが、よくある立法例として、国庫補助まで規定するのであれば国庫補助負担金ということで一緒に整理をしておいた方がよかったんじゃないかと、法案審査の中で我々も随分悩んだのでありますが、そういう気持ちがいまだにあるわけであります。

 そこで、麻生大臣に伺いたいと思うんですけれども、やはり地方団体の皆さんの意見としては、住民避難のための社会資本の整備、例えば交通基盤の整備とか住民への警報伝達装置の整備など、この法律に基づいて改めて計画をつくる上でここはどうしても必要だなということは、どういうものを想定するかによりますけれども、今後明らかになってくることはあるだろう、そういう意味では、ぜひ国庫補助の規定だけではなくて国庫補助負担も含めて規定してもらいたい、こういう声が、総務大臣、地方から随分寄せられていた、こう私は思うんですが、そこは、大臣、どのように各地方団体とお話をされているわけですか。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、非常事態におきましては、今回のこの種の法律が現実的に実効あらしめるためには、ふだんから、平素の、平時におきます訓練、練習等々がないと、いざというときになると今までの机上訓練とはおよそ実態は違うということになり得る話はよくある話でもありますので、平時からいろいろ訓練をしておかねばならぬのは当然、したがいまして、それにかかります経費というものもいろいろな意味で従来とは全然違った形になろうと思いますので、この種の財政的措置をしておく必要があるということに関しましては、同様に、同じ考えを持っております。

 加えて、非常時ですから、新しい機材というものは、従来とは違ったものが要るかもしらぬ。よく言われるNBCとか、いろいろな表現がありますけれども、Nまではともかく、BとCぐらいのところはある程度考えておく必要があるのではないか。

 いろいろ地方から、原発を持っておられるところを含め、いろいろ地方によってこれまた違いますので、御意見をいただいておるところでもありますので、私どもとしては、対象になりますものを具体的なものにつくり上げました上で財政措置というものを検討していかねばならぬものだと思っております。

桝屋委員 恐らく、総務大臣のところには地方からのそういう声がたくさん来ていると思うんですが、大臣、もう一つ、確かに私もこの法案審査のときに一番悩んだ点なんですが、それでは、明らかに地方が行う措置に対して国が負担をしなきゃならぬというその具体的な想定は何なのかと具体的に事例を聞かれると、いろいろあるようでなかなか、今すぐ財務当局と議論する上で困難性があったのかな、こう思っております。

 もう一つ、大臣が今進めておられます、あるいは政府が進めておられる三位一体の改革が片方であるわけでありまして、いわゆる国庫補助負担金そのものを削減しよう、こういう話。特に国庫補助金については大変厳しい状況で、補助金については年々歳々削減をされる。あるいは、負担金なんというのは少々では認められない。国庫負担というものは、これからの時代、三位一体改革が進められる中で、私は、新たに国庫負担の制度を導入するというのはなかなか容易なことではないのだろうというふうに直感で感じているわけであります。

 そういう意味では、今回、国民保護法制、改めて整備をする中で、ぜひ国庫補助負担金という二つの制度を、内容はこれから考えていくんだということでよかったと思うんですが、そういうことも個人的には考えたかった、しかし今の状況の中で整理できなかったということだろうと思うんです。

 この上は、本当に必要が出てくれば、今大臣からも、原発を持っている地域、あるいは大規模な石油コンビナートあたりを持っている地域、そこは、国と一緒になって具体的な計画をつくるときに、これはというものは必ず出てくるんだろうと私は思うんですね。そのときに、それではこれはやはり国の負担において、補助金と負担金というのは天地雲泥の差があると私は思っておりますから、ぜひここは、必要であれば国の負担を明らかにするということで、そこは議論の中でぜひとも取り組んでいただきたいというふうに思っているわけでありますが、ここは、井上大臣、いかがでしょうか。

井上国務大臣 確かに、これは語感として負担と補助というのは違う印象を持つのでありますが、しかし、現実の制度を見ますと、違っているところもあるんですね。負担といって、厳密に本当に義務的に国に負担をさせている、義務づけているところもあれば、負担という言葉は使っているけれども、実際には補助と同じような、そういう制度もあるわけでありまして、要は、実際問題としては、どれだけの助成が負担という形にしろ補助という形にしろ行われるか、こういうことが大事じゃないかと私は思います。こだわられる理由はわからないでもないのでありますけれども、言葉だけで中身が特定されてしまうというようには現行の制度ではなっていないんじゃないかと思います。

 そういう意味からいいますと、できるだけ、こういう有事に際する準備といいますか備えというものについて、国庫支援が、国庫補助ができるようなことを考えていくということじゃないかと私は思います。

桝屋委員 井上大臣には政調会長時代に随分厳しい御指摘をいただいた一人でありまして、お顔を見ているだけでさらに食いつきたくなるところもあるわけでありますが、今の大臣の御答弁では、恐らく今後、負担金制度を検討するという、法案をつくる中でそういう合意があったと私は思っているんですが、井上大臣がいらっしゃる限り、この負担金制度を検討するということは困難ではないか、おやりになる気はまるでないな、こういう気がしたんです。

 確かに、大臣の言われることもわかるんですよ。しかし、同じく大臣は、私が言っていることも御理解されているだろう。負担金と補助金というのは、特にこの今の厳しい時代において、きょう財務大臣においでいただかなかったことは極めて残念、失敗したなと私は思っているのでありますが、ここに財務省の方がいらっしゃると、改めてまた、この国庫負担金制度を検討するというのはさらに困難な御回答が出てくるんじゃないか、こう私は思っております。

 麻生大臣、そういうことでありますから、ぜひとも、私は、これから先はより具体化したもので議論しなきゃならぬと思っておりますが、今の国、地方の財政状況からして新たに負担金制度をつくるということはなかなかに困難だ、特に今の井上大臣の答弁を聞くとさらに困難になったんじゃないか、こう思っております。

 大臣、私の気持ちも理解していただけますか。地方の声も理解いただいて、必要に応じてはという御答弁をもしいただけるのであれば、重ねてお伺いをしたいと思います。井上大臣、お願いします。

井上国務大臣 私どもが提案しておりますこの法律には「補助」ということが書いてあるわけでありまして、政府の見解としては、補助をしていく、こういうことでありますが、そういう態勢づくりにつきまして、できるだけ支援がいくような、それをやはり考えていくということじゃないかと思うんです。

 実は、県知事さんなんかとの話におきましても、負担と補助を区分けしまして議論されたような記憶は私は余りないんですが、あるいはあったかもわかりませんけれども、要するに、ちゃんと国は国として助成をしてくれ、そういう手厚い助成をしてくれ、こういうような意見だったように私は思うのであります。

 したがいまして、私どもとしましては、そういう趣旨を踏まえまして、できるだけ手厚い支援がいくようなことを考えていかなくちゃいけないのじゃないか、こんなふうに思います。

桝屋委員 次へ行きたいところですが、どうも気になるので、まだこの問題を。

 先ほどの同僚委員の麻生大臣との議論を聞いておりましても、特に地方においてはまだ差がある、格差がある、認識に差があるというような状況もありますし、できるだけ手厚い支援をするという発想ではなくて、武力攻撃事態対処法そのものが、私は、これはすぐれて国の責任において取り組まなきゃならぬ話だろうと思っておりますし、国民保護法制にあっても、私はやはり、国の負担と国の支援というものは――確かに、地方自治体がみずからの責任においてやらなきゃいかぬこともあるのはよく理解できます。そういう意味では補助制度でいいんだろうと私は思うんですが、これは、いろいろな計画の中で、少なくとも国が負担をしなきゃならぬ、こういう整理がされる分野というのは必ず出てくるんだろう。そのときには、その必要性が出てくれば、ここはぜひ検討、出てくるだろうと私は思っているんですが、そこは検討の余地あり、検討する可能性があるというふうに、井上大臣、考えてよろしいんですか。

井上国務大臣 例えば、警報をいたします場合に、市町村が住民に対して連絡する、そういう機器は必要なのでありますけれども、これは有事だけではなしに平時の場合にも使うわけですね。ですから、こういう場合に国が支援をする場合に、負担というべきなのか、補助というべきなのか。

 あるいは訓練におきましても、通常の消防の訓練だってあるわけでありますし、有事を想定した訓練もあるわけでありますけれども、どういうぐあいにこれを区分するか。

 ですから、国が一〇〇%負担をしないといけないとかということに必ずしもならないのでありまして、それは確かに、それぞれの状況に応じましてどれだけの支援をするかということは検討していかないといけないと思うのでありますが、さて、そのときに、負担というようなことが出てくるのかどうか。それは検討してみないとわからないじゃないかと言われれば、そのとおりだと思います。そういう意味では、広くそういう負担をしないといけないというような場合も想定できないわけではない、それは論理的にはそうだと思います。

桝屋委員 これ以上議論はいたしませんが、今の御回答を聞いておりましても、今、井上大臣が出された事例は、私も、もちろん補助でいい、支援をするという国の立場でいいと思いますが、今ここで私自身がこうした場合はという事例を出せないのが残念でありますが、しかし、これから基本指針、そして都道府県の計画をつくる段階で、ここはやはり国の責任において、国の負担において取り組むべき、こういう項目も出てくるだろう、こういうふうに私は思っておりまして、引き続き私も議論していきたいと思いますが、ぜひお願いをしておきたいと思います。

 それから、時間がなくなってまいりましたので、ちょっと質問を飛ばしまして、指定公共機関の考え方を若干確認しておきたいと思います。

 放送事業者については、特に指定公共機関の中で、NHKが今一応対象になっているんですが、民放に対してどういう扱いになっているのか、簡単に御説明いただきたいと思います。

井上国務大臣 民放につきましても、NHKと同じように指定公共機関として指定をしたい、こんなふうに考えている次第であります。

 といいますのは、やはり国民に対しまして、広く、しかも迅速に通知をしないといけない、そういうことについて指定公共機関に依頼をするわけですね。したがいまして、NHKだけではなしに、民放を聞いたり見たりしておられる方がたくさんあるわけでありますから、民放も広く対象にする、こういう考えでございます。

桝屋委員 今の大臣の御答弁では、私は民放についてはまだ検討の余地があるのかなと思っておりましたが、広く対象にするというふうに今大臣お答えになりましたが、そういう理解で、これは、例えば民放の中でも条件をつけるとかそういうことではなくて、できるだけ広く、こういう考え方でよろしいんですか。

井上国務大臣 放送の方につきましては、警報の発令とか、そういう特定のものに限定したものでありますので、しかも、できるだけ迅速に、しかも、多くの人が聞かれるような、そういう放送機関を対象にする必要がある、そういう趣旨から、NHKだけではなしに他の放送機関につきましても指定公共機関として指定をさせてもらう、こういう考えでございます。

桝屋委員 指定公共機関の業務計画について、特に放送事業者をどうするかという議論の中で、私の理解では、当初、それぞれの指定公共機関ごとに計画をつくるわけでありますが、これが事前協議という事前協議義務があった、これではさすがになかなか理解が得られない、今大臣からお話がありましたように、できるだけ広くということであればなおさらのこと、なかなか理解が難しいということで、ここは業務計画を事後に報告していただく、できるだけ速やかに、こういう規定になったというふうに理解をしておるんですが、なお放送事業者の皆さんからは、「必要な助言」という条文について、文言について、とかくいろいろ議論がされております。

 「必要な助言」というのは、これはもう最低限必要だなと私も思っているところなんでありますが、特に表現、報道の自由等の観点から議論される方がありますが、この点、井上大臣の御所見を伺っておきたいと思います。

井上国務大臣 国民保護措置におきまして基本的人権を尊重しないといけないということ、これはもう当然のことでありまして、そういうことも書いておりますし、特に言論の自由については特別な配慮が必要だ、こういうことを規定しているわけでありまして、言論の自由をとかく制限するなどは一切考えていないわけでございます。

 私どもが考えておりますのは、警報は、警報が出たというようなことはそのまま放送してもらいたいと思うのでありますけれども、例えば避難なんかにつきましては、これはかなり細かいことを国は言いますので、それをすべて放送するということは難しいと思うんですね。ですから、そういうのは、それぞれの報道機関の編集方針に従ってかなりダイジェストしたようなものを放送していただくことになると思います。そういうことで、我々としては、編集の自由とか放送の自由をこのことによって侵すとは全く考えていないわけであります。

 したがいまして、放送事業者の業務計画におきましても、単に報告だけでとどめて、必要な助言はするようにしておりますが、この助言も、業務計画は、御承知のとおり、放送することということだけではなしに避難の訓練なんかもすることになっておりまして、こういうようなことにつきまして助言をする場所もあるんじゃないかというようなことで広く助言と言っているわけでありまして、言論の自由にわたるようなことについて、この助言ということでもって介入していくなんというようなことは考えていないわけであります。

桝屋委員 今、大臣おっしゃった、この「必要な助言」という内容についてちょっと議論をしたいところなんですが、さすがに時間がなくなりました。本日は、まだ、国、都道府県、市町村の役割、さらには国民の協力などについて議論したかったわけでありますが、次回に譲りたいと思います。

 井上大臣、井上大臣は、一たびこうだと決められると、めったなことで変わりません。少々では変わらないということで有名な方でありますけれども、今の国庫負担制度については、心を広くお持ちいただいて、地方団体の声をしっかり聞いていただいて検討していただきますように。何かありましたら。

井上国務大臣 よく検討させていただきますので、余りそう偏見を持って見ないようにお願いいたしたいと思います。

桝屋委員 初めて大臣からそういうお言葉を聞いたような気がします。

 きょうはありがとうございました。

自見委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松義規でございます。

 きょうは、私にとって最初の質問ということでもございますので、概括的に質問をさせていただきたいと思います。

 その前に、人質問題、本当に解放されてよかったと思っております。その中で、またイラクで働きたいとか、あるいはジャーナリストの方等、現地の報道をしなきゃいけない、そういう使命感に燃えられてイラクに行く方、あるいはボランティアで行く方、おられますけれども、昨今言われていますけれども、政府として、一たびまたイラクに行って捕まったりしたらそれを見捨てておけない、邦人保護の義務があるということもございましょう。

 そういった意味で、イラクへの渡航禁止、今はそこまでは言っていないと思いますけれども、渡航禁止というような措置ということについてどういうお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。

逢沢副大臣 渡航禁止をいわゆる法的に担保する制度について、これは検討する必要があるのではないか、そういう強い議論が出ているということは承知をいたしております。先ほども申し上げましたが、私自身、今回の事件の解決のためにアンマンに参りまして努力をいたしておりましたが、アンマンにおきましても、そういった議論が国会や国民の間で巻き起こっているということについてはよく承知をいたしておりました。

 しかし、このような禁止措置につきましては、御承知のように、憲法二十二条の規定もございますし、国際法上の一つの規定もあるわけであります。海外渡航の自由等の関係もありまして、法的な面を含めさまざまな観点からやはり慎重に検討する必要があるのではないか。私どもとしては、国民の皆様にどんな声があるのか、また国会の議論を引き続き聞かせていただきたい、そのように思います。

末松委員 渡航禁止という形ではしないということ、私もそれがぎりぎりの限界なんだろうなという気はいたしております。

 もう一つお伺いしたいんですが、人質問題を含めて、このサラヤ・ムジャヒディンですか、彼らがサマワにおける自衛隊撤退を要求してきたということもあって、これがさまざまな武装勢力あるいは国際テロリスト等の一つの認識を示しているんだと思うんですね。幾ら日本が、自衛隊はいいことをやっているよ、人道的な措置をやっているんだという話をしても、アメリカ軍と同列の形で軍隊を送ってきているんだ、そういう位置づけがある限り、日本の国民に対して、東京あるいは海外でも、第二、第三といった人質事件あるいはテロ行為等がある危険性も出てくるわけです。

 そういった中で、サマワにおける自衛隊の活動におきまして、政府の方で戦闘地域、非戦闘地域という概念が定められておりますけれども、私が聞きたいのは、例えば、ファルージャで、ああいう武装ヘリとか、あるいは対戦車砲等さまざまな砲が飛び交う、そういったようなことがサマワで起こった場合、それは自衛隊の基地ということじゃないですよ、サマワの町で起こった場合に、それは非戦闘地域と言えるのか、あるいは戦闘地域と言えるんですか。そこを防衛庁長官にお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 ファルージャで起こっておることがどういうことなのか、テレビの映像ではわかります。ああいうことが起こっているというのはわかりますが、では、それが戦闘行為が行われているというふうに評価できるかといえば、それは、国または国に準ずるという例の政府の戦闘地域の概念に当てはまるかどうか、断定的なことは申し上げられないと思っています。

 いずれにしても、自衛隊は非戦闘地域でなければ活動しないということになっておるわけでございますから、ファルージャで起こっておることがそのまま起こったとしたらという御設問をいただきましても、ファルージャで起こっておることが何なのかということ、これが戦闘行為に該当するかどうかということを認識できるだけのものを持っておりません。

 いずれにしても、私どもは、非戦闘地域でなければ活動しないということであり、イラクのここは戦闘地域である、ここは非戦闘地域であるということを分けることは、この法律が求めているものでもございません。

末松委員 石破長官とこの件についてはいろいろとお話をしてきた経緯もございます。そういった中で、ファルージャのことはよくわからぬ、でもテレビでは視認したということでありまして、そういうことであれば、サマワで起こらないということは、防衛庁長官にも言えないし、だれにも言えない。では、それが起こった場合はどうするか、それは仮定の問題には答えられないということで、突き放すのに近いのが今の答弁でありました。

 では、ファルージャで起こっていること、あの人たちを見ていると、どうも一般市民も含めてかなり追い詰められて、米軍から皆殺しに遭うんじゃないか、そういうことで武装グループに参加してやっている人たちもいます。これらをテロリストとは呼べません。そういうことからいえば、ファルージャで米軍と対峙している人たちは国または国に準ずる者なんですか。

石破国務大臣 これも委員と法律を審議します際に随分と議論をさせていただいたことですが、国または国に準ずる組織とは何なのかということになりますと、国とは、例えば領土を持ち、あるいは統治機構を持ち、国民を持ちということになりますから、どうもファルージャはそれには当たらぬだろう。では、それに準ずる組織というふうに定義づけられるかというと、それはそうではないだろう。

 ですから、議論としては、国または国に準ずる組織、国際紛争を解決する、こういうような議論で持っていくのか、それとも、イラク特措法九条の、危険じゃないかという議論で持っていくのかの両方の議論はあるんだろうと思っています。ファルージャで起こっているものが国または国に準ずる組織かといえば、それはそうではないと私は思っております。

末松委員 それは、主体が国または国に準ずる者じゃないという話になれば、基本的に、イラクのどこであろうが、サダム・フセインの政権はもうないわけですから、そして、準ずる者じゃない者がいろいろと攻撃を行っているということですから、少なくとも主体に対しては戦闘行為ではないという位置づけですね。戦闘行為でなければこれは戦闘地域ではない、この認識でいいですか。

石破国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、この法律においてファルージャがどうであるとか、そういうことが判断が求められているわけではございません。我々が活動するのはすべからく非戦闘地域であるということが求められているわけでございまして、ファルージャについてどう思うかとおっしゃられましたので、それは個人的な見解として申し上げたので、ファルージャでは戦闘が行われているとかいないとかいうことを政府が申し上げる立場にはないわけでございます。

 先生のお尋ねの、ではサマワにおいてはそういう認識なのかといえば、それはそういう認識でございます。サマワにおいて戦闘行為が行われているという認識は、この法案に照らして私どもは持っておりません。当然のことでございます。

末松委員 今のサマワの現状については、私も、それは戦闘地域であるとは思っていない。ただし、戦闘地域に近づく危険性がある。ただ、そのときに、矛盾は、あなたが言ったように、国または国に準ずる者がイラクに実体的にはいないということであれば、幾らサマワが騒然となったって非戦闘地域のままなんですよ。であるならば、そんなばかな話はないじゃないかと。

 それで、今、防衛庁長官が言ったように、では安全性だと。防衛庁長官は、もとから言っているように、戦闘地域と非戦闘地域の区分けは違うんだ、安全性、安全でないか安全であるかとは。これはどうも非現実的ですよね。つまり、極度に危険な地域であっても非戦闘地域なんだという乖離が生まれることに対して、私は、おかしいと思うんですね。首をひねっておられますけれども。

 では、自衛隊に、サマワで、仮に武装勢力から、この前はロケット弾、被害がなかったからいいけれども、あれで、宿舎か何かにたまたま落ちていて、そして被害が生じた、この場合でも非戦闘地域という形になるんですかね。

石破国務大臣 なります。

 おっしゃいますのは、先生、それはもう戦闘行為の定義を変えよ、こういう御指摘になるんだろうと思います。戦闘行為の定義を変えて、それは、例えば、平たく言えば、弾が飛び交っているとか危険であるとか、そういうことを戦闘行為というふうに定義を変えるとするならば、それは議論は全く変わってまいります。

 しかし、これは、戦闘行為という定義をなぜこのように設けたかということは法案審議のときからるる申し述べておることでございまして、それは定義を変えよということの御議論でおっしゃっておられるとするならば、それはそれで一つのお考えです。ただ、政府の立場とは違うということを申し上げておるわけでございます。

末松委員 どんなに危険であっても非戦闘地域なんだという位置づけが、世間で、どこまで常識と乖離しているかな。私は、幾らサマワで不穏な状況になってもそれは非戦闘地域であると政府が言えば言うほど、それは、世界で見ても、ばかじゃないかというふうな評価は報道でのれば受けるんだろうということを危惧するし、また、非戦闘地域ですと言ってあとはテロに屈しないんだということを言えば言うほど、自衛隊がそこから撤退すべきタイミングでなかなか撤退し得ないんじゃないか。それは、安全という基準でそこは行きますという形であっても、そこのところは、私は、政府はそういう危険な状況になったときには速やかに、私ども民主党が言っているように、本来撤退をすべきだという声に耳を傾けるべきだと思っています。

 本来の質問がございますので、この件は引き続きさせていただきます。

 この有事立法の関係で、私、きょうは概括的にやるので、そこまでいろいろな形で深くは踏み込まないんですが、ちょっと気になるところで、どんなときが危機なんだ、特に武力攻撃のときなのかということについてさまざまな議論がなされてきました。

 私が聞きたいのは、例えば、幾つかケースを挙げるんですけれども、領土の係争地、例えば尖閣列島あるいは竹島とか北方領土で武力占領が行われた場合、これはどういう位置づけなのか。この法律の扱う所掌になるのか、そうじゃないのか。

 もちろん、北方領土なんかは、事実上占領されて久しいときがたっております。竹島も今、聞くところによると、きょうもニュースで、切手が韓国側で発行されて、竹島をイメージさせるようなものが出されている。それに対して日本政府は黙っているのかというような意見もあるわけですけれども、例えば、尖閣の方でこの前も事件がございましたが、あれが仮に武力で占領された場合、このときは武力事態法で言う危機といいますか、まさしくその時期なんだというふうに考えるんでしょうか。

井上国務大臣 従来、政府が答弁をしてきておりますことは御承知だと思うのでありますけれども、領土問題のような非常に関心度の高い問題について仮定の問題というようなことで答えていくというのはいかがかと私は思うのでありまして、やはり国際情勢とか、相手国の意図とか、攻撃の手段とか態様等、総合的に勘案して判断をされるということでありますが、尖閣の場合というのは明らかに日本の領土でありまして、日本がこれを実効的に支配しているわけでありまして、我が国に対する武力攻撃がいかなる状況のもとで認定されるかということでありますけれども、理論的には、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と考えられると認定されるような問題が起これば、そこはそういうような認識になる、つまり、武力攻撃があったと見られるんじゃないかと考えます。

末松委員 そうすると、尖閣については、大臣言われたように、あれがもし武力占領という話になったら、これは、武力攻撃かどうか知りませんが、でも、武力の行使があったという話になって、そのときにはこの法律が適用されるんだという、つまりは法律の位置づけなんですよ、法律が適用される事態なんだという位置づけですね。

井上国務大臣 これは、どういう状況のもとでそういうことが起こるかということで、現状のままで推移するのか、あるいは現状が大分変わって変化の中で状況が変わる、国際情勢が変わるとか、あるいは日本との、尖閣だったら中国でしょう、の間の話し合いがどのぐらい進むんだとか、そういう全体の中でこれは決まってくるんだろうと思います。

 ですから、一律に、今がこうだからそのまま占領が行われるとか、そういうことには直ちにはならないんじゃないかと思いますね。いろいろな条件を勘案して、そういう中で最終的に判断をされるというものだと思います。(発言する者あり)

末松委員 私も、今言っていることがわからないですね。

 つまり、武力占領ですよ。もし武力でもってそこで占領されたら、それは明らかなんですよ。そのときはこの法律が適用されるんですねと聞いているだけなんです。それは答えてくださいよ。

井上国務大臣 一般論としていろいろなことはそれは言えると思うのでありますけれども、そこの事態になりましたときに、その事態に即して判断をするということになろうと思うんですよ。ですから、事態がどう変わるか、どういう中でどう判断をするかというのは、それはその時点で判断すると思いますけれども、一般論から言えば、組織的、計画的な武力攻撃が行われた場合は、それは武力攻撃があった事態である、こういうことが言えるということであります。

末松委員 もうちょっと明確に言えば、尖閣列島で、自衛権が行使される三条件、あの条件がそろった場合にはまさしくこの法律が適用されるんだということを確認しているだけですよ。ちょっと言ってください。

井上国務大臣 状況が変わらないでそういったものがそのまま適用されるということになれば、それはその事態が武力攻撃の事態と認定されると思います。

末松委員 こういう領土問題は一番センシティブですから、逆に言えば、それから発展してこういった危機時に陥るというのが基本的な考えだから、そこで余りあいまいな回答をされると困ってしまうんですよ。

 では、竹島はどうなんですか。竹島も我が国の領土ですが、と少なくとも我々は主張してきた。それが今、事実上占領されている。これは危機時ではない、そういう認識なんですか。

井上国務大臣 竹島も、あるいは北方領土も同類の状況じゃないかと思うのでありますけれども、若干違うかもわからないけれども、まず、竹島につきましては、それは確かに支配はされているけれども、これは日本政府が話し合いで解決しようとしているわけですから、現時点におきましては、そういう話し合いによって問題を処理していく、こういう考えだと思います。

末松委員 ちなみに防衛庁長官の見解をお伺いします。一番その辺について関係してきますから。

石破国務大臣 それは、三要件をどう考えるかということと密接に関連をしてくるのだろうと思います。我が国の立場から申し上げれば、それは不正なものですね。だけれども、急迫という要件をどのように考えるか。そしてまた、先ほど来井上大臣がお答えになっておられますとおり、武力の行使というものをどのように考えるか。ですから、竹島で例えばこのようなことが起こったとしたらというふうな具体的なケースをそれぞれ論じてみなければいかぬことだろうと思っております。

 ですから、基本的には、先生も御指摘のように、三要件というものをどのように考えるかという問題だと思っています。

末松委員 きょうは概括的にということで、さらに危機のシミュレーションについて申し上げましょう。

 例えばミサイル、今、クルーズミサイルなんか、イラクの攻撃でも実際にありました。霞が関の省庁がミサイルを受けたということで機能不全に陥った、そういう場合は、この法律の根幹そのものが、前提が崩れていくわけですが、これについてはどういうふうな位置づけをされておられますか。

 例えば総務省なら総務省が攻撃されて甚大な被害で機能しなくなった、そういったときには、どういうふうにこの法律で位置づけされるのか。つまり、これで法律がワークしなくなるのかどうか。それを含めてちょっとお伺いします。

井上国務大臣 危機管理の体制の状況でありますけれども、例えば、今御指摘の、総務省が破壊されればということでありますけれども、今は、避難の場所等を設定いたしておりまして、漸次そういう体制が整ってきていると私は思うのでありますが、まだ完全なそういった体制ができ上がっているとは思いませんが、それはそういう努力がされてきているということは御理解いただきたいと思います。

末松委員 人格者と言われる井上大臣を責める気は私は全くありませんけれども、総務省ならいわば第二総務省と、もし総務省がやられた場合はやるのか。それは、そういう形の体制で臨むようなアイデアがあるのかないのか。あるいは、防衛庁がやられたら第二防衛庁的なものがあるのか。

 そういうふうなことが危機管理でしょう。それについて、例えば、防衛庁長官、どうなんですか、防衛庁がクルーズミサイルでやられたら、そこら辺は第二防衛庁として機能するようなことは考えていらっしゃるのか、いや、それは想定外だからそんなこと考えていませんというのか、どっちなんですか。

石破国務大臣 それは、先生、外交官でいらっしゃいましたからいろいろなことを御存じだと思いますが、では、第二国防総省みたいなものがアメリカにあるんだろうか。では、第二国防省みたいなものがイギリスにあるんだろうか。それは、必ずしもそういうものが存在しているとは私は承知をいたしておりません。

 問題は、先生今、クルーズミサイルのお話をなさいましたが、クルーズミサイルのような、要するに飛行機ですから、それが防衛庁を直撃するというような事態は極めて考えにくいことです。むしろ弾道ミサイルということはあり得るのだろう。したがって、だからこそBMDというものを私どもはお認めいただいたわけでありますし、そういうことがないようにするためにはどうするかということです。

 ただ、その場合に、ダメージを受けたときにどうやってそれをバックアップするかということは、第二防衛庁とかいう発想とは別に当然考えておかねばならないことで、機能不全に陥ったときに、それじゃ法律は動かないのかといえば、法律は法律としてこれは執行されるわけですから、役所が破壊されたとかなんとかいうことと法律が動くか動かないかということは別の問題だと思っています。

末松委員 本当にこの法律を機能させなきゃいけないんですよ。そういった意味から、別に私はおもしろがって聞いているわけじゃない。実際に頭がいなくなったら、では、だれがかわりに頭になるのか。やはり自治体なんかは、みんな、そう思うわけですよ。それに対して答えてくれということなんですね。

井上国務大臣 一番問題になりますのは内閣総理大臣ですね。内閣総理大臣につきましては、内閣総理大臣が欠けた場合、内閣総理大臣になり得る人の順位が決まっておりまして、これはこれで対応できると思いますし、各省大臣につきましては……(末松委員「省庁全体が攻撃を受けた場合」と呼ぶ)省庁全体につきましては、ですから、職務を代行するような、そこはすべて完備しているといいますか、きちっとした体制にはなっておりませんけれども、それは職務の代行者をきちっと決めることによって対応できると私は思うんです。

 問題は、人だけじゃなしに、基本的な資料をやはりどこかで保管しておかぬといかぬわけですね。だから、そういう体制はまだこれからでありまして、確かに御指摘のように、これから整備すべきところは多々あると思います。

末松委員 つまり、そういった発想そのものがないというのが私はわかりました。これからさらにここはきちんと追及していかなきゃいけないことかと思います。

 石破長官がおられるので。ミサイルへの対応、これは私も何回か言ってきました。ミサイルの攻撃を受けたとき、これは先ほど言った弾道ミサイル、そういった場合にどうするんだ、北朝鮮だったらわずか十分じゃないかと。そういうことで、見ていたら、最近、防衛庁の関係で新聞報道があって、ミサイル対応については、これは、この法律の枠組みとは別途、閣議とか安全保障会議をやっている暇がないので、総理の専権事項としてこれに対応できるようにするんだという報道が載っていました。これはそういうことなんですか。

石破国務大臣 これは、これでいくという方針をまだ決めたわけではありません。先生御指摘のように、防衛出動の手続にのっとっていたらばもう落ちてしまいました、たくさん死にましたということになりますと、これは一体何ですかということになりますわけで、白紙的にいろいろな議論はあるんだろうと思っています。

 だから、今先生が御指摘のようなやり方もございましょう。あるいは、ミサイル防衛出動というような類型をつくるんだという考え方もありましょう。これは、政府の中でというよりも、仮定のお話でこんな議論の立て方があるということを御紹介しているわけですが、あるいは領空侵犯措置類似の規定というやり方もあるでしょう。いろいろな形があると思います。これに絞ったという事実はございません。

 ただ、これをやります場合に、法的な根拠をきちんと定めなければいけない。もし今の防衛出動で足りないということであるならば法的な根拠をきちんとつくる。当然のことであります。

末松委員 私が聞いているのは、この法律の対象外なのかということを確認したいわけです。いいですか、今の前提としてはこの対象外なんですね。

石破国務大臣 このというのが何を指しておられるか……(末松委員「この事態特」と呼ぶ)この事態特ですか。それは、向こうが撃ってくるという、ミサイルを撃つという行為をどうとらえるかということでありまして……(末松委員「違う違う」と呼ぶ)いやいや、これが急迫不正な我が国に対する武力の攻撃だということになれば、当然、この法律の対象になる。これはもう当然のことであります。

末松委員 だから、この法律の手続にのっとったら間に合わないでしょうというのが今の防衛庁長官の認識でしょう。――何、この法律の運用でミサイルについて対応しますと言っているんですか。はっきりしてください。

石破国務大臣 私の理解が悪くて申しわけないのですが、今私が申し上げているのは、迎撃ミサイルを撃つ場合の法的根拠についてということを申し上げているわけであって、向こうが撃ってきた行為それ自体は、それが我が国に対する急迫不正の武力攻撃であるということになれば当然この法律の対象になり得るということを申し上げておるわけで、対抗して我々がどのようにしてBMDをメカニズムとして動かすかという法的な措置とこの法律の対象になるかどうかは別の議論でございます。

末松委員 そうしますと、迎撃ミサイルを撃つということについては、それは今の自衛隊法でできるということですね。そのかわり、落ちてきて、要するにそれに失敗した場合は、この法律が適用される手続が間に合わないんですよ。(発言する者あり)この法律とは武力事態対処法ですよ。この武力事態対処法の、ミサイルが落ちてくるときにその手続が間に合わないという根源的な問題についてどうするんですかと。

 要するに、この法律で対処すると。いや、それは迎撃はいいですよ。それはもう防衛として当然やらなきゃいけない。だけれども、それだったらこの武力事態対処法では間に合わないでしょうということを言っているんですけれども、それは全く問題ないという解釈なんですか。

石破国務大臣 問題ございません。

末松委員 ちょっと時間が参りましたので、また午後、問題を提起したいと思います。

自見委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十六分開議

自見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。末松義規君。

末松委員 先ほどの質問に続きまして、ミサイルに対する防衛、その緊急時の手続についてお伺いします。

 どうも質疑の結果、私の見るところは、政府としてまだそこについて手続がきちんとされていない。ミサイルが来たときにどう本当にきちんと対応するのか、その正当防衛の三要件がきちんと判断される手続を、十分以内というミサイルの到着、飛来の時間というのがあるわけですから、そこは、きちんと、また正々堂々と、そういった方針を打ち出すべきだと思いますけれども、いかがですか。

石破国務大臣 基本的には、先生の御指摘はそのとおりだと思っております。

 ただ、飛んでくるものが、先生の御指摘のように我が国に対する急迫不正な武力攻撃ということなのか、何だかわからぬ、わからぬものが飛んできておるという場合には、では、どう対処するのということも考えなければいけません。そうすると、防衛出動とは違う枠組みということもあるのかもしれません。そうなった場合に、まさしく武力攻撃事態法との関係をどうするんだ、武力攻撃事態の認定をどうするんだ、そういうような問題はさまざまございます。

 ですから、どちらにしても、きちんとした法的な根拠に基づいてミサイル迎撃を行うということ、そして、国民に対する被害を最小にするということ、あわせて考えてまいりたいと思っておる次第でございます。

 いずれにしても、法的根拠がないようなことはいたしません。

末松委員 今、私にとっては、四の五の言っているように聞こえるわけですよ。要するに、緊急時のこの法律をつくってくる前にそんなことは言うべき話だから、そこでも、この場でも整理していなきゃいけないことを、私は痛切に、結論を出すべきだということを申し上げます。

 ちょっとほかにも質問があるので、この辺についてはこのぐらいにしますけれども、あともう一点だけ聞かなきゃいけない。

 私は、二〇〇二年の五月ですか、これは小泉総理にも質問しましたけれども、アメリカで起こった九・一一のような、ハイジャックされた飛行機がこの霞が関とか国会を目がけてくる、あるいはビジネス街に向けて突っ込んでくるといったようなときに、この飛行機に対して、これを、言い方は悪いですけれども、より大きな被害を防ぐためにこれはもう所要の措置をとるということも、これは私の方で主張したわけですけれども、そのときに、検討するというお話がございました。総理自身は、そういうのは自分にはできないという情けないことを、危機管理の全くできていないことを露呈したわけですけれども、その検討はどうなっていますか。

石破国務大臣 あるいは、先生、同じ質問を私にも御下問になりまして、議論もしたかもしれません。

 それは、いろいろな場合分けがまずあるということですね。九・一一のような場合、その乗っ取られた飛行機が日本国籍なのかそうではないのか、乗っ取った人間が日本人なのかそうではないのか、突っ込もうとしている対象が国会であるのか、あるいは首相官邸であるのか、いろいろな場合分けがございます。

 いろいろな場合分けを分けて考えてみたときに、それが武力攻撃だと認定をされる場合というのも、それはひょっとしたらあるかもしれません。その場合にはどうなるんだということ、あるいは、武力攻撃だと認定されない場合に、それを、先生の表現をかりるとすれば、撃ち落とすということが仮に検討された場合にどの法的根拠でいくのというようなことは、いろいろと議論はしてみなければいけないし、私個人としてはそういう議論を整理いたしておるところでございます。

 しかしながら、まだ、先生からおしかりをいただくかもしれませんが、政府として議論をし、それに対する結論を得ているというわけではございません。

 いずれにしても、そういうことがまず起こらないように最大限の努力をするということになりますと、それができなかった場合にどうするんだというふうにおしかりをいただくことを覚悟の上で申し上げれば、そういうことだと思います。

末松委員 その答弁は基本的に二年前の答弁なんですよ。だから、それから二年たっているんですから、まだ結論が出ないというのはおかしいでしょう。しかも、この重要な、緊急時の法律が出される前にそれはやるべきでしょうということを私は申し上げたい。

 さまざまに議論しなきゃいけない、それは当たり前の話ですね。そこで結論を出していなきゃいけないときに全く出していないというのは、これはもう怠慢じゃないかという話を私は申し上げたいと思います。

 これについては、また私はしつこく聞いてやりますから、きょうは概括的な話をしますので、この辺にとどめておきます。

 さて、話を変えて、一般的に、私、非常に気がかりなことについて、クラリフィケーションというか、明確化を迫りたいと思います。

 まず、武力攻撃事態となった後ですけれども、在留外国人の取り扱いというのは、これは一般の日本の国民と違っていますか、それとも、一緒ですか。そのときに、仮に、敵性国家、つまり攻撃をしてきたというふうな国民が日本にいる場合、これは別に拘束とか、そういうことを受けるのか受けないのか、法的にはどうなっていますか。

井上国務大臣 外国人につきましても、私どもは、日本国民と同じように扱うというような観点で考えておりまして、やはり基本的人権を尊重していく、制限する場合は最小限の制限をするということでありまして、ごくごく常識的、普通に考えれば、今御指摘のようなことは考えていないということであります。

末松委員 あと、武力攻撃になりますと、日本が、通常から言われている、スパイ天国だということで、外国の諜報機関の活動もやたらめったらやられることになるわけですね。その場合に、スパイ、そういった諜報関係の活動について、何かここで規制をするようなことが行われるのか、それとも、全く今と同様にスパイ天国のような形で、ノーズロという形になるのか、その辺は法的にいかがですか。

井上国務大臣 スパイにつきましては、御指摘のような議論があることを十分承知いたしております。

 今の現行の制度の中でできる限り状況を把握して対処するということにしておりますけれども、しかし、スパイ防止法のようなものが必要ではないかという議論が強いのもこれまた事実でありまして、これをどうしていくかにつきましては、まだ、一つの結論を出すといいますか、具体的な、こういう制度でもってこうやっていくんだというところまでは議論が煮詰まっていないと思うんですね。

 したがいまして、むしろ、どちらかといいますと、国会の中でそういった議論がもっともっと深められるというようなことが行われないといけないんじゃないか。今の時点で、こういう非常に微妙な規制の面が出てくると思いますので、直ちに政府の方から案を出していくというのはいかがなものだろうかと思います。国会その他でもっともっと議論を深めていただきたい、そのように考える次第であります。

末松委員 次の話題に参ります。

 武力攻撃事態後、自然発生的な民兵とか自警団、自分で守ろうよという団ですね、今のイラクでファルージャなんかでも見られます。そういったものが、武器を持ったり、自分たちも国土を守らせてくれというふうになったときのこの位置づけというのはどうなっていますか。

井上国務大臣 国民保護の観点からいいますと、国それから自治体が中心になりまして、必要に応じまして、国民の協力を得ながら、国民の保護の態勢をつくっていく、こういうことにしております。法律にはそのように規定しているわけでありまして、今言われますような自警団を特別に組織していくということは想定をしていないわけであります。

 しかし、自警団なんかが自発的に行動していく、そして、救援活動とかあるいは避難の誘導なんかをしていくというようなことになりますと、それはそれとして、国民の保護の観点から見ますと大変望ましいといいますか、結構なことだと思うのでありまして、そういうような自警団、自発的に出てくる自警団というのは一種のボランティア活動とも言えるものでありまして、こういう活動については支援をしていかないといけないんじゃないか。支援も、今のこの法律の中で必要な支援をするという、そういう活動の対象になる組織じゃないか、こんなふうに思います。

末松委員 私が言っているのは、ある意味では、自警団あるいは民兵というのは、武装をしている場合、これはどうですか。これは防衛庁長官にもかかわってくる話なのかもしれませんけれども、そういった武装、ナイフとか銃刀とか、そういったものを持ってやっていくという場合、これは、日本の、そういうものを持っちゃいけないという形で武装解除を当然するのか、それとも、有事だということでそういうものを認めるようなことになるのか。あるいは、自衛隊と武装でもって一緒に戦いたいというふうなことになったときに、防衛庁としてはどうなのか。そこをあわせてお伺いします。

石破国務大臣 我が国の場合に、先生が御指摘のようなかぎ括弧つきで申し上げますと、民兵組織を使いまして防衛活動をする、防衛行動をするということは想定いたしておりませんし、また、あるべきだとも考えておりません。

 これは、先生御指摘のように、予備自衛官制度あるいは予備自衛官補制度とは全然違うものを指して言っておられるのだろうと思います。ですから、スイスのように、男子皆兵みたいな形で国民すべて訓練を行う、ですから正規軍は物すごく少なくて、わっと有事になって、いわゆる民兵というのかなんというのか知りませんが、それが戦闘行動を行う、そういうような形の国とは、我が国は防衛の設計をそもそも異にしておりますので、先生が御指摘のような形で防衛の行動が行われるとは想定をしておりませんし、そうあるべきだとも考えておりません。

末松委員 次に、きょうは概括的にお話を聞くということで質問を進めていきますけれども、財政面についてお話を申し上げたいと思います。

 朝も話が出ていました国民保護措置の実施について、この費用ですけれども、国費でという話が中心だと思いますけれども、これは、だれが、どのように、だれに対して、いつ支払うんですか。そこをまずお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今のお話は、国が直接やるべきものは国で負担をするというのは当然のことですが、主として、地方公共団体が武力攻撃事態等のときにその費用負担はどうするかと。

 これは原則として国で持つということになっておりまして、ただ、地方公共団体の職員の人件費とか、それから地方公共団体の管理及び行政事務の執行費用であるとか、地方公共団体が施設管理者として行う事務に要する費用、こういうものを除いて原則として国が負担する。これは百六十八条に書いてあるところでございます。

 ただ、これを具体的にしていくためには政令を定めなきゃなりません。これは、詳細をどうしていくかはこれからの議論でありますけれども、関係省庁とよく詰めていかなければならないことでございます。

末松委員 財布を預かっておられるのが財務大臣でしょうから、例えばこの法律が想定するような戦争なんという事態になってくると、日露戦争のときもそうだったし、ほかのときもそうでしょうけれども、戦時国債とか、大変な額の、膨大なお金がかかるという話になるわけですよ。とてもじゃないけれども、とんでもない額の話で、それは全くどんな戦争になるかもわからないから、雲をつかむような話でしょうし、それを積み始めたら、戦争なんてとても高くてやってられないよという話になるのかもしれませんけれども。

 例えば、イメージとして、日本が戦争をしかけることはあり得ないけれども、向こうがしかけてきた、向こうというか先方がしかけてきたという話になってきますと、そういった場合は、今の普通の財政では当然賄い切れないですね。予備費でも賄い切れない。そういった場合は、戦時国債とか、そういう形のイメージなんですか。そこをちょっと教えていただきたいんです。

 あるいは、こういった緊急時の法律ができたことをもって、ふだんから、積み立てとか、そういうふうなことを、本来は考えるべきなんでしょうが、そういうことを考えておられるのか。そこについてお伺いします。

谷垣国務大臣 これはどういう事態が起こるかによって著しく違いますので、お答えは難しいんですけれども、まず、緊急に対応しなきゃならないことは既定経費で出すということもありますでしょうし、それから、予備費を使うということもあると思いますが、そんなものではなかなか賄えないということになれば、補正予算を組むなり、あるいは、そのときに、その補正予算にあわせて法律もお願いしなければならないということもあるだろうと思います。

 そのとき何をやるのかというのは、これこそ、どういう事態によるかでございますけれども、今、戦時国債ということをおっしゃいましたけれども、戦時国債という特別なものがあるわけではありませんので、今の財政法の中で定められている手法を適切に使うということと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、場合によっては新たな法律を考えて国会でやっていただかなきゃならぬという場合もあるだろうと思います。

末松委員 金がなかったら年金の積立金なんか流用するのかなと、一瞬とんでもないことも考えてみたんですよ。でも、国があっての年金ですから、その国あるいはその憲法体制がもし例えば戦争に負けて吹っ飛んでしまうという話になったらそれこそ年金の出どころもありませんから、そういうふうなところぐらい検討をやはりするべきじゃないですかね。

 お金について私は何も知りません、緊急時にならないとわかりませんというのは、それは財務大臣としては無責任な話だと思うし、日ごろ、積立金ぐらい何とかできないかというぐらい、財務を預かる担当の大臣としては言っていいと思うんですけれども、その辺についての財務大臣の認識を改めて問います。

谷垣国務大臣 なかなか難しいお問いかけでうまくお答えできないんですが、一般論としていいますと、具体的使途の決まっていない積立金を積んでおくということは、財源の効率的使用という点から見ますと、今のような財政状態でやっているわけですから、これは余り望ましくないんだろうというふうに思います。

 ですから、今、年金を流用するというようなことをおっしゃいましたけれども、これは、今、私がそういうことを念頭に置いているわけではもちろんございません。いろいろ私どもも研究は必要かもしれませんが、今、年金ということを念頭に置いているわけではもちろんありませんけれども、いろいろな法的措置をお願いしなきゃならない場合も場合によってはあるのではないかと思います。

末松委員 当然、公にできないことが多いと思いますけれども、ただ、研究だけはやってもらわないと、準備していませんでした、こういうことは想定していませんでしたというのがこの法律はないよという法律ですから、そこの金目のことは財務大臣の責任になろうかと思います。

 さらに、ちょっと具体的な御質問をさせていただきます。

 例えば、どうも戦時になりそうだという話になった場合、人とか財産が海外に逃避していく場合がありますね。そういう場合、例えばそういった動きを制限するようなことというのは、政府は法律的には考えているんですか、いないんですか。

谷垣国務大臣 私からは、人の面ではなく、財政的な、あるいはお金の面で、資金が海外へ逃げていくとか、そういうようなことをどうするかということをお答えしたいと思うんです。

 これも場合によって違いますけれども、一応、外為法上は、国際経済の事情に急激な変化があった場合、緊急の必要があると認めるときは、主務大臣が外為市場の閉鎖などを命ずることができる。それから、我が国の国際収支の均衡を維持するために特に必要があると認めるときは、海外送金を主務大臣が許可制とすることができる。それから、我が国と外国との間の大量の資金移動によって我が国の金融市場あるいは資本市場に悪影響を及ぼす等の事態が生ずると認めるときは、財務大臣が資本取引について許可制とすることができるといったような規定が設けられておりまして、昭和四十年代にはこういった規定の一部が発動したこともございます。

 ただ、現在のいろいろなマーケットの構造等を考えますと、日本だけがやっても恐ろしく効果は少ないんだろうと思います。そのときは、やはり海外の事情もよく見て、ほかの国との協調体制というものをとるということが極めて大事ではないかと思っておりますが、そのようなことを含めて適切に対応しなければいかぬと思います。

井上国務大臣 今、渡航制限のお話で、きょうの午前中の話と若干関連するところがあるかもわかりませんけれども、この国民保護法制の中では、人権というのは最大限尊重されなくてはいけない、公益的に必要がある場合にもその制限は最小必要限度にとどめろ、こういう規定があるわけですね。

 そういう点から考えますと、渡航制限について、一般的に制限をしなくちゃいけないというようなことはなかなか出にくいんじゃないか、考えにくいんじゃないか、こんなふうに考えます。

末松委員 確かに、戦争期間だけ日本にいなけりゃいいということで、日本脱出組がたくさん出てくることも想定しながらやっていかなきゃいけないという、この緊急事態の非常に厳しい想定に基づく研究をやらなきゃいけないと思います。

 時間がありませんので、次に進みます。

 これは国民保護の関係なんですけれども、公的記録の保存義務というのはあるんですか。なぜこんなことを言うかというと、一般国民が自分の財産が何らかの法令あるいは政令によってこうやったから損害を受けたんだとか、そういうことをきちんと記録を保存しておかないと後で請求もできない。だから、ほかの国の緊急時立法では、公的記録の保存、これはもう義務になっているんですね。そういう国が多いです。そこは、この法律はどうなっていますか。

井上国務大臣 この法律というよりも、一般的に、公文書につきましては保存期間というのが義務づけられておりまして、これは各省庁で定めることになっております。

 内閣官房におきましては、これは最大三十年ということにしているわけです、最大の期限が。外務省なんかに聞きますと、三十年だけれども、ケース・バイ・ケースでそれが延長される場合もある、こういうことでありますので、私は、今の公文書の保存期間といいますのはこの法律を想定しての保存期間じゃないものですから、もう少しその保存期間につきましては検討したらどうだろうか、こんなふうに考えます。

末松委員 自治体はどうですか。

井上国務大臣 自治体については、詳細を把握しておりませんけれども、大体、政府に準じた措置をとっているんじゃないかと私は想像いたします。正確なことは申し上げることができません。

末松委員 一般的な記録の義務と、緊急時に対して、そこは各国の有事立法でも公的記録の保存義務というのが本当にうたってありますので、そこは、例えば戦災によって役所が公的な記録がなくなった、そういうことも想定して、その場合には、国民の所有権とか、そういった財産の保護、財産を守るためにどういった措置が行われることになっていますか。

井上国務大臣 各省庁におきまして、その文書の性質に応じまして保存期間が決まるわけでありますが、その後は、これも省庁の判断によりますけれども、国立公文書館に保管を依頼しているというのが実情でありまして、したがいまして、恐らく、最終の段階におきまして、もう一回精査をして、これはどうしても保存をしないといけないというものについては、国立公文書館に移管をするといいますか、保存を依頼している、こういうことであります。

末松委員 これはかなり厳密な議論が必要なので、私、また別途、これについて質問させていただきます。

 時間がなくなってきたので、次の質問に移りますけれども、防衛庁長官にお伺いしましょう。

 米軍が土地なんかを強制使用すると言ったら、そういう形になるんですか。

井上国務大臣 米軍自身が強制収用ということはありませんで、日本政府がかわりまして措置をとるということでありますけれども、土地とか家屋の使用につきまして、必要のある場合は原則的には契約によりましてその使用の権原を得るということでありますから、どうしてもそれができない場合は一定の手続によりまして強制的に使用できる、そういう権原を取得できる、そういう制度になっております。

末松委員 米側が軍事的に、このスポット、この地域に前線の基地をつくらなきゃいけない、例えば、何とか神社、神社がいいんだ、あるいはお寺がいいんだということで前線の基地をつくりたいといったときに、それはどうなんですか。要するに、米側の権利あるいは米側の主張に制限はあるんですか、ないんですか。

井上国務大臣 これは、米側が独自に、米側自身の手でそういうことができるということはありませんで、日本側とも協議があるわけですね。日本政府にそれを依頼するということでありまして、それは、その時点におきまして、日本政府として独自にそういった要求が妥当なのかどうかを判断して、妥当であれば、今申し上げましたような手続で使用権原を取得する、こういうことであります。

末松委員 日本側のだれが協議するんですか。

井上国務大臣 それは原則的には防衛庁だと思いますけれども、場合によりましては防衛施設庁ということもあろうと思います。それは事案によりまして、今みたいに基地として土地を使用するというような場合は、これは自衛隊の方で対処する、こんなふうに思います。

末松委員 これは防衛庁長官がやるんですか。防衛庁長官、そうですか。

井上国務大臣 内閣総理大臣ということになっておりますが、実際には防衛庁で行う、こういうことだと思います。

末松委員 内閣総理大臣がいつもそんなことをやっていられるわけないんですね。だれがやるんですか。もう一回問いますよ。

井上国務大臣 これは、「内閣総理大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、防衛庁の職員に委任することができる。」ということでありますから、防衛庁の職員にそれをさせる、こういうことであります。

末松委員 防衛庁の何、長官じゃないの。職員がそれをやるの。政治判断ですよね。その協議をして、いいか悪いかを判断するのはだれなんですかと言っているんですよ。

 つまり、米側が言ってきたことを何でもかんでも受け入れるわけじゃないでしょう。そのときに、日本側がきちんとした判断を示さなきゃいけないわけですよ。その判断を示す人は総理大臣ということなんですか。あるいは、何か協議をする協議体というのはだれがいるんですかというのが私の質問ですよ。

井上国務大臣 最終的な判断というのは防衛庁長官だと思いますが、具体的には、日米の協議を通しましてこれは決まるわけであります。

末松委員 最終的な判断が防衛庁長官と言われましたよね。そうですか、防衛庁長官。あなたがやるんですね。

石破国務大臣 処分を行う場合には、これは政府として行うということに相なります。

 なぜこうなりますかというと、合衆国軍隊に対する土地等の提供は日本国として国が国際的に負っておる義務ということに相なっておるわけでございます。これは安保条約ですが、地位協定に基づくものでございますが、その履行に直接かかわりますものですから、それは政府として行うということになっておるわけでございます。

 したがいまして、その権限者は内閣総理大臣ということに相なろうかと存じます。

末松委員 条約の担当であれば、最終的には内閣総理大臣だと私は思うんですよ。外務大臣がそこでやるんじゃないんですか。直接、防衛庁長官ですか。

川口国務大臣 日米地位協定の二条によりまして、日本国内の施設及び区域の使用を合衆国は許されているわけでございます。それで、個々の施設及び区域に関する協定、これは合同委員会を通じて両政府が締結をするということで、政府が締結をするということでございます。

末松委員 日米地位協定、それは平時の話じゃないですか。緊急時という話であれば、そうしたら、米側が、例えば相手国に対する防衛上、米軍がここに基地が欲しい、あそこを接収したいとどんどん言ってきた場合、これは一般国民の権利の制限になるんですよ。非常に重たい、ある意味では超法規的なところまでいく話になるわけですね。

 そのときに、例えばどこかの神社仏閣にしたいと言って、神社側が嫌だと言った場合、いや、これはもう米軍がどうしてもここに戦略上あるいは戦術上必要だからということで、そのときに、神社に合理的な理由がないといって実際にそこを徴用するようなことがあると思うんですが、その辺は判断的にどうなんですか。そういうところまで許される法律になっているんじゃないですか。

井上国務大臣 法律上の規定としては、正当な理由があればそれは行うことができるわけでありまして、その正当な理由の中に神社が入るかどうか。神社が入るという特別の規定がありませんから、それはおっしゃるような解釈もあろうかと思うのでありますが、一般的にはそういったことは起こらないだろう、そんなふうに考えます。

末松委員 有事で戦争という話になった場合、確かに米軍は我々と一緒に戦ってもらうであろうという、我々は期待を持っていますよね。そういった中でやっていかなきゃいけないんでしょうけれども、ただ、それが、米側の言うことが何でも法的には制限をされないという話も私は非常に奇異に感じるところでありますので、これについてはまた引き続き質問させていただきます。

 ありがとうございました。

自見委員長 次に、長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。

 せっかく外務大臣がお見えですので、少しイラク情勢について冒頭に御質問をさせていただきたいと思います。

 スペインが政権交代をいたしまして、選挙公約でありました軍の撤退ということを決めまして、当初は、六月三十日を待って様子を見るという話だったんですが、かなり前倒しをして、報道によると、もう撤退を開始した、こういうことであります。

 当初の方針は、新しい首相サパテロさんが選挙に勝って次期首相に指名をされることになって最初のスペイン政府のアナウンスメントは、たしか、今の米英中心ではなくてきっちりとした国連の枠組みができれば六月三十日の撤退も考え直すというような非常にリーズナブルなメッセージだったというふうに記憶しておりますけれども、しかし、今回、いきなり撤退を始めた。

 これはまさにコアリションの一角が崩れていくわけで、ホンジュラスも撤退する、あるいはポーランドはアメリカにだまされたと怒っている、あるいはポルトガルも撤退を表明するような状況に陥っている。

 川口外務大臣、今のイラクの米英を中心とした占領統治、そして今回のスペインの判断、撤退、どんなふうにごらんになっておられますか。

川口国務大臣 スペインが今おっしゃられたように撤退するということを決めた、それから、ホンジュラスもまた決めたという発表がございました。ほかの国については、撤退するということを決定したという情報には接しておりません。

 基本的に、イラクに対してどのような形でイラクの復興を支援していくか、人道復興支援をするか、あるいはその治安に貢献をするかということは、それぞれの国が主体的に決めるということであるわけですから、スペインが政権交代に伴いそのような主体的な判断をしたということであろうかと思います。

 ただ、スペインはいろいろな立場からイラクの人道復興支援には引き続き貢献していくというふうに考えていると承知をいたしております。

 それで、私は、イラクの治安の安定それから復興という意味では、今が山場であると思っています。

 六月三十日に向けて大事なことは、まず治安を安定化、ここでしませんと、六月三十日以降、暫定政権が主権を移譲された後、イラクの国内をまとめていくことができないわけでございまして、そのプロセスを邪魔しようというふうに考えている勢力は、まさに今から六月三十日までの間が最後の機会であるということで、今、その武力の攻勢を強めているというふうに考えております。そして、国連によって授権をされたコアリション側も、そういう意味では、六月三十日に向けて、今、治安を確保できるかどうか、非常に重要な山場に差しかかっている。両方が非常に厳しい状況で今の状況があるというふうに思っております。

 我が国は、これはずっと前から申し上げていますように、イラクの人道復興支援について、こういった形で行うということを主体的に判断をして決めたということでございまして、その判断を今変えなければいけない必要というのはないというふうに考えております。

長島委員 コアリションに参加している国は主体的にみずからの行動を決めるんだという極めて突き放した言い方をされましたけれども、しかし、スペインが抜けるということはかなり大きな衝撃的な出来事じゃないんですか。千三百人の軍隊が一気にいなくなるというのは、これは相当な大きな出来事だと思います。

 しかも、今、外務大臣は大変重要な時期に差しかかっているとおっしゃるんですが、私も同じ認識を持っています。

 と申しますのは、まさに、三月十八日に、CPAと統治評議会からの秘密書簡にこたえる形で、選挙を支援しようということをアナンさんが決められて、そして、ブラヒミさんがイラクにもう一度入る、そして、国連を中心とした枠組みづくりにスタートしよう、そして四月十四日に、イラク国民を代表する選挙管理暫定政府を五月中につくるんだとブラヒミさんがかなり踏み込んで新しい提案をされた。そして、七月一日以降、つまり六月三十日の主権移譲が終わった後、国民会議をつくるなど、主権移譲に向けた具体的なロードマップを発表したんですね。

 そして、ファルージャでもいろいろなことがあって、アメリカも、このままいつまでも意地を張っていたら逆に治安がおかしくなるということで、四月十六日に、まさに数日前ですが、米英首脳会議で、このブラヒミ提案をほぼ丸のみするということを決めたわけですね。

 つまり、CPAが人選をした統治評議会のメンバーにもうこだわらない、もうこれは解散してもいいんだ、そして、イラク暫定政権の主要な顔ぶれは国連が決めていいんだ、ここまで踏み込んだアメリカのメッセージがあったにもかかわらず、スペインは撤退を決めたんですね。

 何か違和感を感じられませんか、外務大臣として。

川口国務大臣 違和感を感じるかどうかという御質問ですけれども、スペインは、新しい政権が選挙でできた。政権といいますか、政権ができる以前ですが、選挙が終わった後、先ほど委員がおっしゃられたようなことで、国連の新しい決議があればということを言った。そして、その次に、さらにもっと踏み込んだ形で、私の記憶が正しければ、国連の決議またはそれにかわる国際的な何らかの枠組みといいますか、そのお墨つきといいますか、そういうようなことがあればというようなことも言ったわけで、その直後にこういった判断があったわけでして、スペインの内政の状況についてはまだいろいろ分析をしてみなければいけないと思いますけれども、いずれにしても、スペインは今そういうことを考えているということは事実であるわけです。

 それで、そのことが大きな影響を与えるかどうかということですけれども、もちろん、他のものにして等しければ千三百人の軍隊が引き揚げるということについて何がしかの影響はあるだろうと思いますが、現状としては、イラクの警察、イラクの国軍というのも今育ちつつありますし、アメリカの対応ということについても、それに呼応して違った考え方、方法というのをとっていくだろうと思います。

 ですから、結果的には、それがそれをうまく埋めるような形で、イラクにおいて、まさに今が最後の重要な機会ですので、そして、国際協調が非常に重要な時期でありますから、そういったことを目指して、今後、六月三十日までの間、国連の努力をみんなで後押ししながらイラクの主権移譲につなげていくということが大事だろうと思います。

長島委員 何がしかの影響が出るだろうと言ったら、まさに無責任な言い方だと私は思いますけれども、みんなで国連の枠組みをつくるのに努力する、こういうふうにおっしゃいましたね。

 日本も今、コアリションの一員になっているんですよ。もちろん、我々は、そういう日本の立場に対しては批判的に見ています。しかし、コアリションの一員の国の外務大臣として、こういうスペインの決定が下るまでの間に、何とかスペインの政府を説得しようとか、そういう外交努力をされないんですか。そういう思いになりませんか、日本国の外務大臣として。

川口国務大臣 国際協調ということが今非常に大事だと思っておりますので、我が方のいろいろな国の出先から、その国の政府に対しては、国際協調の必要性、我が国は安保理の決議というのは常に望ましいという立場をずっととってきましたから、そういったことを伝えております。

 それから、私は、今ちょっとまだ時間が調整し切れていませんけれども、今後の国連を中心としたといいますか国連の関与を十分に得た形でのイラクの復興支援に向けて、アナン事務総長とお電話でお話をしようということで、今、調整をしているところです。

長島委員 やはりコアリションを本当に維持したい、そして、このコアリションを維持することがイラクの治安の回復にとって大変重要なことであるという認識がもし少しでもおありだったら、外務大臣として、こういうスペインやホンジュラスやポルトガルやポーランド、みんな動揺しているわけですから、もうそのまま日本の国内にその動揺は波及をして、自衛隊を撤退しろという議論につながりかねないと思われませんか、政府の一員として。私だったら、そういう意味でもう少し積極的に動く必要があるんじゃないか、こういうふうに思いますね。

 安保理決議があると望ましい、こういうふうにおっしゃいました。今のところ、一応、政府の説明では、外務大臣も何度も答えておられましたけれども、決議一五一一というのがあって、それに基づいて復興支援が行われているわけですけれども、望ましい安保理決議というのは一体どういう決議ですか。

 一言加えれば、アメリカも今は、決議が望ましい、こういうふうに言っているようでありますけれども、今、外務大臣として、今のイラクの治安の情勢を安定化させ、しかも、フランスやドイツやロシアも巻き込めるような新しい、望ましい安保理決議、どんな構想を持っておられますか。

川口国務大臣 安保理決議の一四八三、一五一一は今イラクにおいてコアリションが活動しているということの法的に基盤を与えるということで今まで申し上げているわけですけれども、政治的にはまさに新しい決議があるということが望ましいということでして、それは国際協調をつくるという、その国際政治的な意味ということが非常に大きいというふうに思っているわけでございます。

 そういう意味で、国連の役割というのを明確化して、そして、それとの関係において連合のあり方、あるいは、治安を維持していくということが引き続き重要になるわけですから、そういうことについて明確な位置づけをする、そういうことが最小限必要なことであるというふうに考えています。

長島委員 国連の役割が重要だ、まさしくそのとおりです。それで、私たちも、今の米英を中心とした占領統治の枠組みは正当性が極めて薄いということで反対をしてまいりました。

 しかし、六月三十日を境に、仮に国連を中心とした枠組みができて、そして、イラクの暫定政府が、PKOでぜひ国連決議のもとにイラク復興のお手伝いをしてほしい、選挙監視のお手伝いをしてほしい、こういうことになればまた別のフェーズがつくられて、そして、それに基づいて自衛隊の派遣ということも可能性としては考えられる、こういう話もあるわけなんですね。

 だから、そういうものを日本の政府として、今はまさに与党だけでやっているけれども、民主党の部分も、あるいは野党の一部も本当に説得するつもりがあって、そして、出ている自衛隊の人たちに正当性の高いものを付与したい、こう思うのであれば、そういう国連決議ができるように努力されるのが、外務大臣、私は役目だと思いますけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まさにそう思っておりまして、そして、いろいろ取り組んでいるということを申し上げたわけです。

 どのような外交努力をしているかということをこういうオープンな場で申し上げるということが必ずしも適切であるというふうには思いませんけれども、あえてそういう御質問ですから一つ申し上げれば、例えば、米英首脳会談の前に、我が国はイギリスとコミュニケーションをきちんといたしておりまして、我が国の考え方もきちんと伝えているというようなこともやっております。

長島委員 ぜひしっかりやっていただきたい、こういうふうに思います。

 きょうは、武力攻撃事態の問題ですので、本題に入りたいというふうに思います。

 先週、民主党の前原議員と井上有事法制担当大臣との間で、緊急対処事態と武力攻撃事態との関係についてかなり長いやりとりがあったように記憶しております。そこでちょっと見過ごせない御答弁がありましたので、確認をさせていただきたいと思うんです。

 前原委員は、せっかく武力攻撃事態法の二十五条を受けて緊急対処事態という概念をつくって、そして今回の国民保護法案に盛り込んで、武力攻撃事態とともに緊急対処事態にも自衛隊の出動を含む対処措置を行えるようにした、であるから、この際、武力攻撃事態法にさかのぼって、武力攻撃だけではなくてテロや大災害も含めたより包括的な緊急事態対処法案に再構成をして、そういう中で、私権制限を伴う国家行為なんですから事態認定に国会を関与させる、そういう枠組みをおつくりになったらどうですかと何度か伺ったんですね。何度か質問した。

 しかし、井上大臣は、いや、そういうわけでもというような感じで、ちょっと渋っておられた。どうして渋っておられたのか、もう一度説明してください。

井上国務大臣 今回提出しました法案といいますのは、昨年成立いたしました武力攻撃事態対処法を受けての法律であることは御案内のとおりなんですね。

 その中で、一年以内に所要の法律の整備をしなさい、こういうことが書いてあるわけでございます。武力攻撃事態対処法の中にも、テロの規定というのはあるわけですね。第二十五条だったと思いますけれども、真っ正面からテロに対処するような規定ではないんですけれども、しかし、テロの対策もきちっとやりなさい、こういうことで検討の項目なんかもそこに規定されている、こういうことであります。

 我々としましては、そういった法律の規定がありますこととか、それから、知事会なんかも大変な要望がありましたので、できるだけそういう要望にも沿いたいということで、緊急事態対処関係の規定もここに盛り込んだ、こういうことでございます。

 私は、前原委員に申し上げましたように、そのような考え方があることは我々は全く否定しませんし、そういう考え方はあろうかと思うのでありますが、このたび、この基本法を与党と民主党の間でつくるという話でありまして、大体、スケジュールも合意をされたというように考えておりますので、恐らく、基本法という名が示すとおり、これは武力攻撃事態とかテロだとかあるいは大規模災害、そういうものを包括した基本法だろうと我々は考えておりまして、せっかくそういうところまで来ているわけですから、しかも、成立を次の通常国会の末までにと、ここまで合意をされているわけですから、ぜひそういう中でこういった問題も取り上げていただきたいし、恐らく取り上げられるだろうというように感じているわけであります。

 私どもとしましては、何も無関係だと言っているわけじゃなしに、私どもなりに検討をさせていただきますし、また、御下問があれば私どもの考えもその協議会の方へ申し上げたい、こんなふうに考えているわけであります。

長島委員 ぜひ、腰を引かないで、この問題は本当に基本法、私どもが要求をして、そして久間筆頭理事を初めとして与野党間で合意をしていますので、その中で、前回、井上大臣は治安出動のことにも言及されましたけれども、治安出動も、実は二十日以内に国会の承認を得るようになっていますので、これは国会承認という意味では同じレベルになる。それから、警護出動という問題も当然かかわってきますので、こういうものを整理しながら法律の方に、つまり、この前の前原委員の言葉をかりると親法、親法の中に書き込んでいく、盛り込んでいくということが必要だと思う。

 そういう意味では、ドイツのやり方というのは非常に参考になると思うんですね。英米法というのは、緊急事態に対して、行政にわっと権力を一時的に集中させてしまうけれども、ドイツの場合は、徹頭徹尾、権力分立を貫徹していく。我々の考え方に非常に近いと思うんですね。

 ドイツでは、御承知のとおり、防衛事態があり、緊迫事態があり、緊迫事態の中に部分的な緊迫事態と同盟事態、こういうふうに一つ一つ区分けをしながら、しかし、それぞれにいろいろな工夫を凝らして、国会、議会が関与するような、そういう民主的コントロールがきくような、そういう詳細な規定を盛り込んでいます。

 ぜひ、日本の法律も、この際、二十一世紀につくるわけですから、もう大分、四半世紀おくれてつくるわけですから、そういう意味では、世界に向かって、これは本当にいい法律だ、研究者も驚くような法律をぜひつくる、そういう責任者として井上大臣にはこの点をしっかり検討していただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。

 続きまして、あるべき危機管理組織という問題について、これも有事法制担当大臣に伺いたいと思います。

 民主党は、御承知のとおり、平時における縦割り行政、各省庁からの出向者による腰かけ人事では危機に対応できない、こういうことで、縦割りの弊害を克服するために、有事対処のために省庁横断的な総合調整権限を持った危機管理庁、これは仮称ですけれども、危機管理庁を設置すべきだ、その上で危機管理の専門家もプロパーのキャリアをちゃんと養成していこう、こういう提唱をいたしました。

 それは今後のまた与野党協議を含めぜひ参照していただきたいんですが、この民主党提案を受けて、昨年の武力攻撃事態法の附則で、重複しますけれども読ませていただきますが、「政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする。」こういうふうに盛り込んだわけですね。

 これを読むと、実は現状が迅速かつ的確に対処するに資する組織ではないようなニュアンスを受けるんですけれども、井上大臣、そういうふうにやはり思っておられますか。

井上国務大臣 これは委員よく御案内のとおり、危機管理の組織といいますのは、より充実した組織にしていくということは、それはいつの時代にも課題だと思うのでありまして、だから、よりよくしていくというような意味を込めた規定だというふうに私は理解をいたしております。

長島委員 それはよりよい方がいいわけでありまして、そこはやはり真剣に考えていただきたいんですよ。

 逆に言うと、どの辺が改善し得るポイントなんだろうか。大臣としてどうお考えですか。どんなところがよりよくなりそうなポイントなのか、少しお話しいただけますか。

井上国務大臣 我が国の危機管理の組織というのは、実力部隊というのは自衛隊でありますとか警察とか、それから消防もありますが、省庁からいいますと、これはほとんどすべての省庁に関係するんですね。本当に数が多い。省庁それぞれ権限を持っている、こういうことです。しかも、これが都道府県あるいは市町村にまでつながるわけですね。これは、外務関係と法務関係を別にすれば、ほとんどの役所が市町村までつながっているわけでありまして、そういうところにも影響してくる。そういう都道府県、市町村も巻き込んで機能的に対処できるような組織じゃないといけないわけですね。

 日本の役所の組織といいますのは明治以来の伝統がありまして、縦割りの組織については非常によく整備をされてきていると思うんですね。だから、問題は横の連絡調整ですよ。これについては、どちらかといいますと比較的おくれて対応してきた、そういう歴史があると思います。

 まして有事の場合は横の連絡調整が非常に大事であるのですが、そういった機能をだれが担うのかということなんですね。今のところはやはり内閣、内閣官房がそういう役割を担っているということだと思います。束ねているところはここでありまして、そういうことで、最近の経過を見ますと、内閣官房の組織、機能を強化してきた、こういう経緯があると私は思うんです。

 ですから、縦の組織それから横の組織、これをどういうような形にすれば一番有効に対応できるか、こういうことだと思うんですね。ただ単にある種の組織をつくれば、これは屋上屋になるような場合はかえって不効率になるわけでありますから、やはり効率的に、組織をすべて挙げて有事の事態に対処できるような組織としてはどういうのがいいのかということですね。

 それで、これは百点満点でありますというようなことはだれも言わないと思うので、やはりもっともっとよくしていかないといけないということでありますが、どういうのが組織としていいのか、本当に機能が発揮できるのか、これについてはもう少し検討しないと、これはすぐに今ここでこうだというような結論は出せない。ですから、もう少し検討させていただきたいということを申し上げているわけであります。

 そのときに、外国の制度なんかも参考になると思うのでありますけれども、しかし、外国の制度というのは、お話にもありましたように、やはり非常に歴史的な経緯に裏づけられておりまして、単にそれを持ってくるだけで日本でそういった組織がうまく機能するかというと、必ずしもそうでもないと思うんですね。そこはやはりもう少し検討しないといけないということでありまして、我々はあの附則の本旨に従ってさらに検討を深めていきたい、こんなふうに考えています。

長島委員 もちろん政府は自分たちとしてはこれは完璧だと思って出されるわけですから、まだ足りないと言われれば、なかなかお認めにならない気持ちもよくわかるんですけれども。

 今、外国の組織というお話がありましたから、アメリカのFEMAがよく引き合いに出されますけれども、FEMAに比べると、二つの点で大きく今の日本の制度というのは改善の余地がある。ずばり言えば、貧弱だと言えると思うんです。

 まず、人ですね。人の問題はもう圧倒的ですよ。FEMAの本部スタッフというのは八百人いる。そして、それに全国スタッフが二千人いて、十の管区に分かれていて、何かあったときには相互で連絡を取り合って、直ちに連絡調整官が行って全部調整をする、そういう仕組みになっています。

 人数が多いとどういう利点があるかというと、これはローテーションを組めるわけですから、一人に対する負荷が非常に軽く済む。ですから、日本みたいにいつも待機状態のような形でいるとやはり疲弊しますよね。そうすると、二年ぐらいたつと疲れ切っちゃって、別のもう少し楽な職場にというような、こんな話になる。

 しかし、FEMAの場合は、こういうふうにどんどんいつもベストの状態でワークしますから、そういう意味では、ずっとその場所で十年、二十年、専門的な知識を蓄えながら、現場の感覚も養いながらやれる。私は、これはやはり大きな差じゃないだろうかと。

 今は、聞くところによると、危機管理を担当する内閣官房の組織は八十数名だ、こういうふうに言われています。具体的にひとつお聞きしたいんですけれども、これをよりよくしていきたい、こういうお話なんですが、これを大体どのくらいの規模にしていくおつもりがあるのか、ちょっと構想を教えていただけますか。

井上国務大臣 それは、どういう組織にどういう機能を担わせるか、担当させるかによってこの人員は変わってくるものでありまして、まず本体のそういうところが結論が出ていないわけでありますから、人の規模というところまではいかないというのが現状でございます。

 ただ、アメリカの場合は、これはもう御承知のとおり、アメリカ合衆国は連邦です。これと州というのは、まさに国と国との間柄のような、非常にそれぞれの独立性の強い関係にあるわけでありまして、ここの調整というのは非常に時間がかかるのだろうと思うんですね。だから、恐らく、FEMAは連邦の関係の所管事項を実施していく、こういう役割もありますが、私は、州と連邦との調整というのに、これはよく調査してみないとわからぬのですが、その辺のところにかなりの時間が割かれる、したがって、ここの人員が多いんじゃないかと思うのであります。こう私は想像しているのでありますが、そういった点はもう少し検討させていただきたいと思います。

長島委員 調整に時間がかかる、調整が大変だ、だからこそ、そういう組織を参照しながら私たちの組織も改編をして、まさにブレークスルー、こういういいチャンスですから、ここで組織的なブレークスルーをするというのは一つのアイデアじゃないか、こういうふうに思うんです。

 もう一つは、連邦対処計画というのがあるんですね。フェデラル・レスポンス・プランというのを米国の場合は持っていて、そこには災害対処についての詳細な、政府の諸機関、いろいろな機関があるわけですけれども、その機関同士がどういう対応、コーディネーションをしていくかという詳細な規定がある。

 こういう国レベルの基本計画というのは、この法案によれば、国民保護に関する基本指針というのをつくって、そして、それを都道府県あるいは市町村に計画という形でつくらせる。一方でまた災害基本計画というのももちろんあるわけなんですけれども。

 一つ参照できるなと私が思うのは、あの「マトリックス」。多分、井上大臣もごらんになったことがあると思います。十二の機能があって、それのそれぞれについて、この省が、この機関が一番の責任者、あとはそこを支援する。有事になってからみんなが集まってきてどうするああするというんじゃなくて、もう類型化されていて、類型化の話も先週からずっと私どももお願いをしていますけれども、その類型化の中で、これは赤十字を中心にしてやろう、これは内閣官房を中心にしてやろう、これは防衛庁を中心にしてやろう、そういう「マトリックス」みたいなものをあらかじめつくって、そして、それに基づいて訓練をやり演習をやっていく。

 こういうことがやはり有事の際にばたつかない最大のポイントだと思いますけれども、いかがでしょうか。

井上国務大臣 まさにそういうことを考えているわけでありまして、この対策本部というのはそういうことを通しまして全体を調整していくということだと思いますし、また、訓練の場合も、そういう対策本部でまとまりました中身を実施していく、こういうことだと思います。

 ですから、日本の場合は、中央で大体調整を決めるということでありまして、あと、都道府県で調整を必要とするものは、それは都道府県知事が中心になりまして調整をしていくということでありますけれども、もとより国との関係もありますから、国の出先機関の職員が県の対策本部に入っていろいろな意見を申し上げる、あるいはいろいろな御意見を聞く、そういう中で調整をするという仕組みにしているわけでございます。

 だから、今おっしゃるようなことで、そこはそんなに認識の違いはないんじゃないかと私は思います。

長島委員 時間もないので次に行きたいというふうに思いますが、民間防衛組織の問題であります。

 これはいろいろな事情があって今回見送られたというふうに伺っておりますし、私も本会議で質問をさせていただきました。自主防災組織にある意味期待するんだ、それを国と地方自治体でバックアップしていくんだ、こういう話であります。

 あのときも申し上げましたけれども、自主防災組織というのは、例えば消防団なんかは、私も地元でおつき合いがありますけれども、どんどん高齢化している。それから、組織率もどんどん落ちていますね。全国的に、平均すると六〇%なんですけれども、すごく活発な地域と全くもう五%に満たないような地域、こういうばらつきというのは、非常に活発な地域をねらって相手が攻めてくるわけでもないし、そこに災害が起こるわけでもないわけですから、それが県境をまたいで一緒に協力するといったときに、こっちは非常にすぐれているけれども、こっちは極端に劣っている。

 これはやはり、今、こういうまさに有事法制を与野党一致して議論をしてつくっていこうという時期でありますから、しかも、この間、一年間でかなり地方自治体の首長の皆さんも関心を持ってきている段階なわけですから、これを機に、これまでの自主防災組織というのを再編、拡充していく。

 民間防衛組織というふうに銘打たなくてもいいと私は思うんですけれども、これでジュネーブ諸条約の第一議定書に加入するわけですね。そして、それは文民の保護ということを詳細に規定している。こういうチャンスを利用して、全国に、ある意味で訓練もやる、あるいは計画も立てる、人の手当てもする――例えば、よく言われるんですけれども、本当に武力攻撃事態になったら、災害だったら一カ所で阪神・淡路大震災があった、そこに自衛隊の人たちがわっとみんなで駆けつける、これはあり得るかもしれませんけれども、しかし、全国的な紛争になった、有事になったというときは、意外と、自衛隊の皆さんは侵略の排除ということに専念しなければなりませんから、避難や誘導に対しては自衛隊はほとんど人が割けない。消防も警察もごった返している。

 そういう中で、日ごろから、年間の中で何日か訓練を積んでいる、そういう民間の自主防衛あるいは防災の組織というものをもう一回この機につくり直していく、こういうことはお考えいただきたいと思うんですが、いかがでしょう。

井上国務大臣 今度の国民保護措置の中で、避難とか救援につきましては、消防団の果たす役割というのは非常に大きなものがあると私は思います。

 また、消防団の現状も今のお話のとおりでありまして、傾向としてはやはり弱体化してきているということでありまして、ですから、地域によりましては、特に都市部におきましては、婦人消防隊みたいな御婦人の組織が出てきているわけですね。ですから、そういうところでは、恐らく、救援の、食糧の配付だとかあるいは傷病者の手当てだとか、こういったことについてかなり大きな役割を果たされるようになるんじゃないかと私は思うのでありまして、この消防の組織をどのように機能を強化していくのか、これからの一つの課題だと思います。

 きょう消防庁長官が来ておられれば消防庁の方からお答えいただきたいと思うのでありますけれども、これからの国民保護措置の実施、充実については大きな一つの検討の課題である、そんなふうに考えております。

長島委員 一点、具体的なことを申し上げたいと思います。

 私も消防団は大変重要だと思うんです。今、消防団の皆さんとおつき合いをさせていただいて感じるんですけれども、もちろん、無線をいつも寝るときにまくら元に置いて、本当に御苦労されていると思うんですけれども、これは、FEMAの専門官が日本へ来て、日本の防災組織をずっと視察して、その結果をまとめたリポートを私は読ませていただいたんですけれども、どうも日本の消防団というのは、あらかじめ台本が決まっていて、その台本に基づいた演技みたいなもの、空手でいうと型みたいなものですね、これを、いわゆるポンプ操法みたいな、ああいうものを披露するような、そんな訓練をされていると。

 もちろん、それはそれで重要だと思いますけれども、しかし、本来、防災で必要な訓練というのは、即応計画に基づいて意思決定をどれだけ迅速にするか、そして、そういう混乱している中をどうやって迅速に避難・誘導していくか、こういうことでなければいけない。こういう訓練に対する効果測定みたいなものでないと、訓練そのものも、何度やっても意外と致命的な欠陥がそのまま見過ごされちゃって、いざというときに、ああ、どうしたんだということになりかねないわけですね。

 ですから、大臣、そういうことも含めて、充実させますという抽象的な言葉ではなくて、具体的な指針を示していただいて、訓練や計画にももう少し本腰を入れていただかないと、これはいつまでも、自然に自主防災組織が充実していくということは絶対あり得ないですから、今、財務大臣もいなくなってしまいましたけれども、予算措置も含めてこれは検討していただきたい。一言、決意のほどを。

井上国務大臣 私も消防大会によく出席させていただくのでありますが、大体が操法訓練ですね。操法ですよ。ああいう道具、機械というんですか、いかに操作をするかということでやりますが、やはりこれからの消防の訓練も、今のお話のように、例えば、どこに避難の施設があるのかとか、避難の経路はどうだとか、あるいは交通規制と一体として行うとか、現実にそういう災害あるいはそれに近い事態が起こった場合に対応できるような訓練、そういうことを極力していただきたいというようなことを私は消防庁の方にも申し上げているのでありますけれども、そういうより実態に近い訓練をするように消防庁の方ともよく協議をしていきたいと思います。

長島委員 それで、少し気になるのは、国民保護措置の実施手続なんですね。

 国民保護法案では、国民の保護のための措置を実施する際の手続を定めています。法治国家ですから、あらかじめ定めた手続に従って保護措置がなされる、これは当たり前のことでありますけれども、真っ先に避難・誘導に当たる市町村、この市町村が動き出すまでに幾つかのプロセスがあるんですね。

 これは役所につくっていただいた図ですけれども、国による対処基本方針というものが策定される。何か有事があったとき、あったのを受けて対処方針が策定されて、そして、対策本部長たる内閣総理大臣から警報の発令あるいは避難措置の指示が行くわけですね。そして、それを受けて、都道府県の知事さんが今度は避難の指示を出す。そこで初めて市町村が動き出すんですね。市町村が動き出すんですけれども、そのときに、関係機関の意見を聞いたり、あるいは避難実施要領をここで定めて、そして動き出すわけですね。

 確かに、細々と手続を規定するというのはいいんですが、本当にそれが迅速に、的確に避難・誘導の実行に結びつくのかどうかというのが、私、実はこの手続を見て心配になったんですけれども、事態の発生から避難の実施に至るまでの手続を円滑にするような努力、これを平素からもっと検討していただかなければならないなとつくづく思うんですけれども、その辺は、井上大臣、いかがでしょう。

井上国務大臣 これは、対処の基本指針というのを国がつくり、それから都道府県とか市町村が保護の計画をつくることになっているんですが、これはもう前もってつくるということです。ですから、たびたび御答弁申し上げているように、できるだけ早く国の方の指針をつくるということですね。だから、もちろん地方の意見を十分取り入れて、あるいは関係機関の意見を十分取り入れてつくりたいと思いますし、それに従って都道府県の計画をつくり、都道府県の計画に従って市町村がつくるという、これは前もってそこまではやっておくということであります。

 あと、警報の発令になりました場合は、すぐに避難ができるような、そういうようなことをしないといけないわけでありまして、まさに有事の事態には即時にそういった国民保護措置がとれるような、そういうことをしていかないといけないと考えております。

 また、やはり訓練ですね。一応、計画ができましても、訓練でどこまで実際問題としてフォローできるのかということでありますから、訓練につきましても、十分な訓練ができますように関係のところにお願いをしていきたい、こんなふうに考えています。

長島委員 次に伺いたいのは、現地対策本部であります。

 これも、私、本会議で質問させていただいたんですが、余り色よい返事をいただけなかったので、少し食い下がってみたいと思います。

 武力攻撃事態が起こりますね。それで、避難住民の誘導、第一義的責任は今申し上げたように市町村長が負うことになっていますけれども、必要な場合には市町村長が警察、消防、海上保安庁及び自衛隊に要請を行って、警察などと調整をして避難住民の誘導を行うというふうに法案に書かれておるわけですけれども、緊急事態の際に、消防も警察も自衛隊もそれぞれ異なった指揮系統を持っているんですね。

 そういう異なった指揮系統を持った実力組織を、平素動かしたことのない市町村長さんが中心となって、本当に指揮をとれるんだろうか、住民の避難・誘導の指揮をちゃんととれるんだろうかとすごく心配なんですね。しかも、市町村の役場というのは本来的に危機管理官庁ではありませんので、いわば素人、もちろん計画もある、訓練もしてきたわけなんですけれども、これが一たん事が起こったときにばたばたするのは目に見えている。

 本当に今の危機管理の仕組みというのは井上大臣としてベストな仕組みだと思っておられますか。

井上国務大臣 現行の制度を前提にして、そこでできるだけ調整をしながら、円滑に、それから迅速に実施をする、そういう組織としては、今、法律として提出いたしているものが一番よかろう、こんなふうに考えているわけであります。

 消防につきましては、御承知のとおり、消防事務というのは市町村の所管でありまして、これはもう十分に市町村長さんが実態を把握しておいていただく、あるいは、しかるべき指示ができるはずなんですね。できるはずでありまして、さらに訓練等を通じまして、そういったことを徹底していかないといけない、こんなふうに思います。

長島委員 消防についてはおっしゃるとおりなんですけれども、それに警察が入って、自衛隊が入ってごった返すわけですから、そこは、私は、政府主導の現地対策本部というものがあればなお総合調整は迅速、円滑にいくのではないか、こういうふうに思いますので、考えていただきたいんです。

 また、阪神・淡路大震災の教訓についても触れなければなりません。

 災害対策基本法で、改正をいたしましたね。ここに「逐条解説」というのがあるんですけれども、阪神・淡路大震災に際して被災地に設置された現地対策本部が、被災地の地方公共団体との連絡調整、被災地の情報及び支援要望の収集、国の施策に係る情報の被災地への提供、被災地の地方公共団体の施策に対する支援等に大きな役割を果たした経験を踏まえ、平成七年の法改正で、被災地と非常災害対策本部、これは政府にできるわけですけれども、その連絡調整及び被災地における機動的かつ迅速な災害応急対策推進体制の確立のため、法律上の機関として非常災害現地対策本部、国の本部を設けることが可能となった。

 同じように、原子力災害対策特別措置法では、これは東海村の臨界事故の後ですけれども、これも、その十七条で、「原子力災害現地対策本部を置く。」という規定が設けられたわけです。

 それぞれ、大きな災害の反省を踏まえて、いろいろな指揮系統の中で何とか総合調整を円滑に進めなきゃいけない、そういう知恵としてこういう現地対策本部がつくられた。

 大臣として、なぜこの現地対策本部が今回余り乗り気でないのか、もう一度明確に御説明いただければありがたいと思います。

井上国務大臣 災害の場合は、大体、一点に集中するわけですね。阪神・淡路の大震災でありますとか、あるいは風水害なんかも一点に集中する、大きな被害が集中するということでありますから、そこで国なんかの方針といいますか措置の中身を決めていけばいいわけでありますけれども、この武力攻撃事態の場合は、これは日本全国を見てないといかぬわけですね。一カ所だけで起こるということじゃありませんで、日本全国で起こり得る可能性があるわけでありますから。

 そういうのを見渡しておりますと、それぞれの現地にそういう対策本部を置くというよりも、中央にきっちりしたものを置きまして、それぞれの場所に応じた適切な対応をしていくことがより的確な対応ができるんじゃないか、こんなふうに考えるわけであります。

長島委員 今の、より広域だからという説明は、確かにそれは合理的だと思うんですけれども、しかし、それにしても、災害対策基本法の方では「非常災害現地対策本部を置くことができる。」つまり、置かなくてもいいわけですね。「置くことができる。」という規定になっております。原子力災害対策特別措置法の場合は、「現地対策本部を置く。」と書いてあるんです。あれはもう本当に、原子力発電所というのはピンポイントですから、もうそれは決まっているから、これは「置く。」という規定になっているんです。しかし、大災害や地震というのは、確かに一カ所なんだけれども、広域的なものであるから、これは置いた方が効果的な場合もある、そうでない場合もある。

 今の大臣のお話ですと、別に現地対策本部を完全に否定したお話ではないように承ったんですけれども、つまりは、「置くことができる。」という規定ぐらいは、総合調整機能ということを考えてその規定ぐらいは盛り込む知恵はあっていいんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

井上国務大臣 今、都道府県の対策本部は都道府県の職員を初め関係者がその部員になるわけでありますが、この中に国の出先機関の職員も入るわけでありますし、それから、自衛隊の方も隊員をそこに派遣することができるわけでありまして、言ってみれば、都道府県の対策本部の中で国との意見交換ができるようになっているわけですね。

 ですから、対策本部をそこにつくらなくても、国の機関の職員あるいは自衛隊を含めて意見交換なり調整なんかができるようなことになっておりますから、これは、現地対策本部とは言わないまでもそれに準じた意思疎通ができ、対応ができるんじゃないか、こういうふうに考えておりまして、そのような趣旨からも現地対策本部は設けなかった、こういうことであります。

長島委員 別に私は張り合うつもりはないんですけれども、よりよい制度を目指していきたいという思いがあるわけなのでこういうふうに申し上げているんです。

 本当に、「できる」規定はぜひ検討していただきたい、こう思いますし、この二十八条によると、今大臣おっしゃいましたけれども、自治体側が必要があるときに国の職員の派遣を求めることができる、こう書いてあるんですね。何かやはりちょっと受け身な感じがして、私は心配なんです。

 例えば、何度もアメリカの例を引いて恐縮なんですが、FEMAの場合は、緊急事態対処チームというものと緊急事態支援チームという、この二つが準備されていて、何かあったときには機動的にどんとそういう専門チームが、数十人から数百人の、まさにこれはエキスパンダブルになっていて、その災害の深刻度に応じて、深刻さに応じてそれが国からばっと派遣される。そういう受け皿にも現地対策本部というのはなり得るわけなんですね。

 ですから、やはりそこは、何度も申し上げますけれども、現地は恐らく、市町村長さんにしても都道府県知事さんにしても、もう大混乱の中だと思いますので、そこに、あるオーソリティーを持った現地対策本部が立ち上がって、そこに専門家チームが、今まさに危機管理庁は日本にないですから、専門家チームといっても一体今だれを派遣するのかという、そんな問題にもなるんですけれども、これは制度の問題として、そういう機動的なチームを派遣できるような制度をつくるという一つの目標を掲げながら、そこに向かって、ぜひよりよい制度をつくっていただけるようにこの際要望しておきたい、こういうふうに思います。よろしくお願いします。

 それでは、防衛庁長官、お待たせいたしました。

 二つ質問させていただきたいんですけれども、一つは、アメリカ軍の円滑化支援にかかわる問題なんですけれども、行動関連措置がありますね。行動関連措置に伴う自衛隊部隊による役務の提供というのがあるわけなんですけれども、これは円滑化法案の第十条に規定をされております。これは恐らく、武力攻撃事態対処法の法案審議の中でさんざんやったので、防衛庁長官としては、答弁はもう疲れたとおっしゃられるかもしれませんが、私、一年生なので、もう一回ちょっと確認をさせていただきたいんです。

 事態が幾つかありますね、武力攻撃事態法にある緊急事態の類型が。武力攻撃事態には二つありますね。まさに攻撃が始まっちゃった武力攻撃事態、それともう一つは、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態、切迫事態と呼んでいるんだと思うんですけれども、と同時に、その第三号で、武力攻撃予測事態、つまり、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態、この切迫事態と緊迫事態というのは、私たちが読むと、いまだに武力攻撃が始まっていないという点においては共通性を持っていると思うんですね。持っていますね。

 私がちょっと気になるのは、そういう共通性があるにもかかわらず、そこで――今申し上げているのは、攻撃予測事態のときに行動関連措置に伴い自衛隊の部隊が役務の提供をする、そのときの武器使用の権限と、いわゆる切迫事態に伴う武器使用の権限が、同じ、まだ有事が起こっていない、武力攻撃がなされていないという共通点を持っているにもかかわらず、この法案によると権限が違うんですね。そうですね。その違いがいま一つ、バランスといいますか、よくわからないので御説明いただきたい、こういうふうに思っておりますが、お願いします。

石破国務大臣 何が切迫で何が予測かというのは、これは普通の人が聞いてもよくわからぬ話なのだろうと思いますが、あえてもう一度御説明を申し上げますと、切迫というのは、例えて言いますと、ある国が我が国に対する武力攻撃の意図というのはもう明示しました、日本を攻撃します、こういうふうに言いました、艦船を集結させるとか航空機を集結させるとかいうことで、まさしくそういうような状況ではありますが、したがって、そういうことで防衛出動は下令しているわけです。下令していることがあります。それはおそれ出動みたいな形になるんでしょうね。しかしまだ我が国に対する武力攻撃はないという事態、これが切迫というものでございます。

 では、今度、予測ということになりますと、まだそこまでは来ていないが、そこまでは来てはいないのだけれども、例えて言いますと、予備役を招集しました、あるいは非常呼集を行いました、明白に日本を攻撃するとは言っていないのだけれども、我が国への武力攻撃の意図が極めて客観的に予測をされる、そういう場合であります。

 どちらも我が国に対する武力攻撃がないという意味では一緒なのですけれども、どちらがよりシリアスかということを考えてみましたときに、それはやはり切迫の方がシリアスなのだろう。そうなってきますと、どうしても先生が御指摘の武器使用権限には差が出てくるわけですね。

 つまり、切迫事態の方により広範な武器使用権限を与えている。それはなぜならば、状況がより緊迫した状況であるからだということで、事態の特性にかんがみてそこに差を設けておるわけで、これは不合理とか不均衡とかいう御指摘は当たらないのではないかなと私は思っています。

長島委員 よくわかりました。

 もう少し突っ込んでいきたいと思っているんですけれども、もう一つ聞きたいと思っているのは海上輸送規制の問題なんですね。

 これも用語の問題になってしまうんですが、今回は停船検査という概念が盛り込まれているわけですけれども、似たような言葉が、以前、周辺事態法と一緒に成立をした船舶検査法、これは船舶検査と言っていました。この船舶検査と今回の停船検査の違い、これをぜひ国民の皆さんにわかるように、目的、態様、武器の使用基準、この辺を踏まえて御説明いただければと思います。

石破国務大臣 これも本当に先生御指摘のようによくわからないので、きちんと御説明をしておかなきゃいかぬと思います。

 要は、今度の海上輸送規制というのは、根拠が自衛権です。自衛権の行使として行うものでございます。ところが、船舶検査の場合には、これは周辺事態法でございますが、そのように自衛権というものを根拠といたしておりません。これが行える場合は、国連の決議もしくは旗国の同意というものによって行うわけでございます。すべての相違は、結局は、自衛権を根拠として行うか、そうではないか、それにみんな由来をするものでございます。

 ですから、先生御指摘の武器使用ということでいえば、船舶検査の場合には、警告射撃とか航行停止のための船体射撃、これはしてはいけないということになっております。ところが、今回の法案の場合には、必要に応じ、航行停止のための船体射撃、これも可である、こういうことになっております。

 要は、実効性をより上げていかなければ我が国の自衛権というものはきちんと担保されないということでございまして、したがって、船長の同意などというものは要りません。旗国の同意などというのも要りません。実施の地域というのも、これは我が国領海または我が国周辺の公海というところ、排他的経済水域を含む、ここは一緒でございますけれども、根拠規定、つまり根拠になる権限あるいは武器使用の態様、そういうようなものは全く違う。それは、何に由来するかということにすべて帰着いたします。

長島委員 まさに今、自衛権というふうにおっしゃった。今の御説明を伺っていると、戦時国際法上、交戦国に認められている臨検、拿捕に何か限りなく近い概念のような気がするんですが、それは今の政府の解釈だと、憲法九条の第二項で、交戦国に与えられている権利は放棄している、こういう解釈ですから、あくまでも自衛権でいくんだ、その辺の差が出ているのかなと思うんですが。

 検査をして、まさに押収した外国軍用品、これの処理の仕方が、ちょっと私、不可解だなと思うのは、大量破壊兵器に該当する積み荷については廃棄処分にする、こう書いてありますね。ところが、その他の通常兵器、全部一くくりにしましょう、銃とかなんとか、銃砲とか、その他の通常兵器については輸送停止の措置をとると書いてあるんですね。何で廃棄の措置をとらないのかな、こういうふうに思ったのですが、いかがでしょう。

石破国務大臣 そこは、結局は政策判断なんだろうと思っています。

 なぜだと、こういうふうにぎりぎり言われますと、結局、そういうものは例えば国際条約等によって保有が禁止をされている。特にBとかCとか毒素兵器などというのはそうですね。そういう場合は国際条約上も保有が禁止をされておるわけであって、そういうものはやはり廃棄をしなければならぬであろうということでございます。

 しかしながら、いずれにしても物を返すのは変じゃないかという御指摘もあります。それは、交戦権であれば、返すなどという親切なことは起こらないわけですね。ところが、この場合には、親切かどうか知りませんが、お返しをするということになるわけです。でも、それは、もう保護の目的は達成している、武力攻撃事態は終了しておる、だとするならば、それは返してもいいではないかということになるわけでございます。

 ですから、その辺が交戦権との違いといえば違いでございますが、なぜ破棄するかということについて申し上げれば、保有すること自体が条約上認められているかいないか、そういうことを考慮した政策判断ということでございます。

長島委員 法的には今の説明はよくわかるんですが、やはり常識的に考えて、押収したものを返す、自衛権だからしようがないと言われても、その武器を使ってまた攻撃をしかけてくるかもしれないわけですから、これは憲法解釈の問題になるので私も気をつけて言わなきゃいけないんですが、憲法解釈も含めて検討しないと、これは我が国の存立を守れるんですかという話になりますので、法的な遊びはもうそろそろ石破防衛庁長官のところでやめていただきたい、このことをちょっと一言申し上げたいと思います。

 あと一点、外務大臣に伺いたいというふうに思います。

 ジュネーブ諸条約の第一議定書、ここにこういうことがあるんですね。この前、赤十字の方のお話を伺って教えていただいたんですけれども、第五十八条「攻撃の影響に対する予防措置」ということで、紛争当事国が遵守しなければならない、「自国の支配の下にある文民たる住民、個々の文民及び民用物を軍事目標の近傍から移動させるよう努めること。」「人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避けること。」こういう文言があります。

 つまり、軍民施設の分離努力をしなさいと。これは私、勘違いしているわけではなくて、これは有事が起こったときの話だ、こういう話なんですが、ところが、これは平時の努力も伴うんじゃないだろうか、こう思うんですね。それは、条約の解釈上、どうなんでしょうか。

 今、日本にも、例えば市ケ谷、これはもう民間の住宅に囲まれておりますけれども、あの市ケ谷をまさに攻撃されたら民間の人たちが巻き添えを食らっちゃう。それから、普天間飛行場なんというのはまさに住宅の中にある。私の選挙区の横にある横田基地もまさに住宅街にあるわけですね。これは、本当にジュネーブ条約を貫徹するんだとすれば、やはり平素からそういう努力を行っていかなきゃならないんじゃないでしょうか。

 この第一議定書の八十条には、「締約国及び紛争当事者は、諸条約及びこの議定書に基づく義務を履行するため、遅滞なくすべての必要な措置をとる。」と書いてありますね。それから、八十三条は、「締約国は、平時において武力紛争の際と同様に、自国において、」「諸条約及びこの議定書の周知を図る」これはやはり平時も努力しなさいと言っているように私には読めるんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 冒頭で、質問の中で委員がおっしゃっていただきましたように、この五十八条の(b)というのは、「紛争当事者は、」と書いてありまして、「実行可能な最大限度まで、」ということを書いてあるわけでございます。したがって、おっしゃられましたように、有事ということでございまして、平時において締約国に対して義務を課すものではないということであります。それから、武力紛争中にも、あくまでも紛争当事者に対して、実行可能な最大限度まで、攻撃の影響に対する予防措置をとるということを義務づけたということでございます。

 それから、おっしゃった周知徹底義務ですけれども、これはまさにそういうことを周知徹底する、そのジュネーブ条約の内容について周知徹底をするということについて書いてある、そういうことでございます。

長島委員 時間がないんですけれども、八十条の、「遅滞なく必要な措置をとる。」これは平時の条文ですよ。これはいかがなんですか。

川口国務大臣 人口の集中をしている地域ということで言いますと、これを定めているのは五十八条の(b)で、それは、攻撃を受ける側の「紛争当事者は、」したがって紛争が起こったときということですけれども、「実行可能な最大限度まで、」「人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避ける」そういう規定に尽きるということです。

長島委員 もう時間が来たので終わりにしますけれども、これは、紛争当事国じゃなくて、「締約国」と八十条は書いてありますので、もう一回これは明確な答弁をいただきたい、こういうふうに思います。

 また首藤委員が後でやるということなので、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

自見委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 この緊急事態法制といいますか武力攻撃事態といいますか、まだ現実には起こっていない仮想なもので、なかなかイマジネーションがわかないという問題がございます。そこで、私は、現実世界で起こっていることをベースとして、それとこの法制との関係をいろいろな点において考えてみたいと思うんですね。

 例えば、イスラエル、パレスチナで、最近、ハマスの指導者のヤシン師が暗殺された。その後、その指導者の位置についたのはランティシ氏なんですけれども、彼もまた、先日、ヘリコプターからのミサイル攻撃によって暗殺された。これは、常識的に言って、戦時国際法というか、ジュネーブ条約にも明確に違反すると思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、ランティシ氏の暗殺事件ですけれども、これについては談話を出させていただきましたけれども、イスラエルの行為を非難しております。そして、事態のさらなる悪化を防ぐように、イスラエルに対して最大限の自制を求めたということでございます。イスラエルに対しても、イスラエルにある我が方の大使館からも申し入れを行っております。

 それで、ジュネーブ条約との関係ですけれども、このジュネーブの第四条約でございますが、これは基本的に、武力紛争または占領に際して、みずからが属する国から保護を受けることができないような被保護者、具体的には、紛争当事国にいる敵国の国民ですとか被占領国にいるその国の国民等を保護するということを目的にしている条約であります。

 それで、国際社会は、パレスチナの占領地につきましては、ジュネーブの諸条約の規定が適用される占領の状態にあるという認識をしているということです。我が国もそのような認識を共有いたしております。

 それでは、この具体的な件が国際法違反かどうかということですけれども、先ほど申しましたように、ジュネーブの第四条約は、締約国の権力内にある被保護者を殺害することを禁止している、そしてまた、仮に被保護者を処罰する場合も正当な手続をとるということを求めているわけでございまして、ランティシ氏の殺害というのはこれに違反するということもあり得るかもしれない。

 ただ、我が国としては、この事件についての具体的なことを今知っているわけではありませんので、法的な評価ということを確定的に行うということは困難であるというふうに考えます。

首藤委員 ジュネーブ四条約に当然この問題というのは触れているわけですが、その後起こったさまざまな地域紛争において、指導者の暗殺ということが頻繁に行われるようになった。したがって、四九年の四条約以降、これに対する修正が行われていると思うんですね。

 例えば、今回政府が提出しましたジュネーブ四条約の追加議定書、第一議定書の例えば四十一条、「戦闘外にある敵の保護」というところで、四十一の2の(a)項に、「次の者は、戦闘外にある。」として、「敵対する紛争当事者の権力内にある者」、これには「戦闘外にある敵の保護」という形で、「攻撃の対象としてはならない。」と明確に書いてありますけれども、この号には対応するでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 四十一条「戦闘外にある敵の保護」ということで書かれておりまして、次の者は攻撃の対象としてはならないということで、戦闘外にある者として幾つか書いてあるわけでございます。

 それで、これが当てはまるかどうかということですけれども、イスラエルはまず第一追加議定書の締約国ではないということでございまして、したがって、適用されないということがまず第一番の答えです。

 それから、そう申し上げると、じゃ、仮にそうだったらどうかというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、あの件についての具体的な事実関係について我々は承知をしていないということですので、仮にそうであった、イスラエルが第一追加議定書を締結している国であったとしても、その件について法的にきちんと評価をするということは困難だと申し上げないといけないと思います。

首藤委員 外務大臣、それは異なことをおっしゃいますよね。外務大臣、イスラエルに対して抗議されたんじゃないですか。私はすばらしいことだと思って、もう胸ときめいて聞いていたんですけれども、今お聞きすると、何か、これは本当にそういう事件が起こったかどうかわからないということなので、すごいショックを受けたわけですけれどもね。

 これは、私の質問はそうじゃないんですよ。それは、イスラエルが入っていないとか、アメリカも入っていなかったり、いろんな問題があるんですけれども、これから日本が国際社会に入っていこう、有事法制を完備し、今まで本当の意味で、戦時国際法とは今まである意味で無縁だった日本が、五十年たって初めて国際社会とコミットしようというこの今の機会において、果たして精神をどのように理解するかということをお聞きしているわけですね。ですから、私は、大変、この問題に関しては、そのお答えは不満なわけですが、先に進みます。

 そこで、この問題の最初に戻りまして、イスラエルを罰することができるかどうかは別として、我が国のスタンスを私は聞いているわけですね。日本がこれから国際社会に向かって国際貢献もしていかなきゃいけない、国際平和のために一致団結していかなきゃいけない、小泉総理がしょっちゅう言っていることですけれども、そういう方向にある我が国が、このようなジュネーブ条約の精神あるいは具体的な個別な個条に関して反している行為に対して、そこで批判されたと。結構だと思いますね。それはしかし、それだけでは十分ではないのではないか。

 例えば、パレスチナへの日本の支援というのは、日本がアラブ社会に残している最後の日本への信頼のきずななんですよ。

 最近、インドネシアへ選挙監視でこの間行った友人などの話を聞きますと、何か日本人だといってつばをかけられたりするという人が、東南アジアのイスラム圏で多くなってきているらしいんですよね。ですから、今度のイラクへの自衛隊の派遣によって、五十数年間、あるいはむしろ明治維新からずっと培ってきた日本への名声とか評価というものが、もうこの一年ぐらいでがたがたと崩れてしまって、日本人だというとつばをかけられる、イスラム圏でつばをかけられるというような事態に落ち切っているわけです。

 ですから、パレスチナというのは日本にとって本当に重要で、パレスチナの人たちが日本を支援している限りは、アラブの社会において、あるいは中東全域においても、あるいはイスラム圏全域においても、日本はよくやっている、こういう評価につながってくるという点で、私は大変重要な対応だと思っております。

 そこで、抗議をされたわけですが、抗議はもちろん日本語で日本に向かってやるわけですから、これはぜひ、我が国のこのアラブ資産といいますかイスラム資産といいますか、この我が国の名声という貴重な無形資産を守るためにも、ぜひ三つのことをお願いしたい。

 一つは、アルジャジーラにもう一度出演していただいて、イスラエル非難をしていただきたい。第二は、この間、経済制裁を我が国単独でもできるということで法律もつくったわけでありますから、ぜひ単独でイスラエルへの経済制裁を考慮していただきたい。三番目に、そんなこともなかなかできないよというのであれば、少なくとも抗議を具体的に見せるという意味で、在イスラエルの日本大使を召還していただきたい。

 この三つの対策のうち、いずれをとっていただけるでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、外務大臣の談話というのは、日本語でもちろん出しましたけれども、英語でも同時に出ております。そして、この趣旨についてあるいは内容についての説明は、在京外国プレスに外務報道官も行っているわけでございます。それから、我が方としても、これについては在イスラエル大使館を経由してイスラエル政府には申し入れをしているということです。

 それで、経済制裁をするのか、あるいは大使を召還するのかということをおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、これのどちらも今考えておりません。

 それで、その理由は何かということですけれども、大事なことは、この中東和平の問題が前に進む、この談話の中にも書いてございますけれども、解決への道というのは、唯一ロードマップに戻るということしかないわけでございます。したがって、双方が暴力については自制をし、そして、対話、ロードマップに戻るということを我が方としては慫慂をしているということでございます。

 委員もおっしゃったように、日本はずっとパレスチナに支援をしていますけれども、その一つの大きな柱は、信頼醸成メカニズムへの支援であり、またもう一つは、パレスチナの改革を支援するということであります。もちろん、人道支援ということもやっております。そういったことをやりながら、両方の国を対話、交渉に戻す、そういうことを国際社会が足並みをそろえてやっていくということが重要であると思います。

 この際、経済制裁をする、あるいは大使を召還するということではなくて、むしろ現地に大使を置いて、そしてイスラエルの政府に対して慫慂をし続けるということが重要であると思います。

 それから、冒頭で先生が、日本人が例えばアジアのイスラム圏に行くとつばを吐きかけられるということをおっしゃいましたけれども、私どもはそういう事実については承知をいたしておりません。

 イラクにおいても、それから近隣のパレスチナ等の国においても、日本がアラブ、イスラエルの問題について中立的な立場で一生懸命やっているということについては、十分に認識を持ってもらっている。イラクに対しても、この前の世論調査で、日本への種々の期待というのは非常に高かったということからも御理解をいただけるように、日本に対しての期待は非常に大きなものがあると思っております。

首藤委員 この問題に関しては、そういう経済制裁、政策手段の問題もいろいろ言いたいわけですが、私は、最後の外務大臣のおっしゃったことに大変強い抗議をしたいと思っています。

 私は、二年前、十二月にイラクへ行って、その当時、また戦争になるかもしれないということで、当時のナンバーツーと言われたラマダン副大統領にも会って、戦争を回避する道はないかということを話しました。

 そのときヨルダンで私を出迎えてくれたのが、井ノ上さんという若い二等書記官でしたね。彼は何をやっていたかというと、彼が言うには、イージス艦をインド洋に送って以来の今のアラブ社会、中東社会における日本への疑惑の目と反発というのは物すごい勢いで広がっている、このヨルダンでももう危なくなってきていると。私は湾岸からずっと入っていったんですが、その湾岸でも、ドバイなんかで、地元紙の中には日本非難というのがたくさんあるので、驚いて、そういう話をしたんです。

 井ノ上さんは、本当にそのことを気にかけておられて、イスラム圏、アラブ圏において日本に対してどれぐらい反発が高まっているかということを、ずっとデータや記事を集めておられました。そして、私にも送っていただいた。それが、その後も何度も会いましたけれども、井ノ上さんに対する私の思い出ですよ。その車の中で話した会話を思い出すと、私は本当に胸が熱くなる思いがするんです。現場に行っている外交官が本当に日本の行く末を案じて、本当にいろいろ調査をしてやっているということに対してですね。

 それは外務大臣としてそうおっしゃるような言い方しかないのかもしれませんが、私は、違う、今、世界の中では、日本が築き上げた信用というもの、評価というものはもうがらがらと崩れてきていると。私自身も三十年前にはアルジェリアで働く商社マンでしたけれども、そのころと今ともう本当にさま変わりです。ですから、私は、まあ大臣、そういうふうに立場上おっしゃるんでしょうが、ぜひその点は事態を深刻に承知していただきたい、そういうふうに思います。

 なぜ私がこうしたパレスチナの問題を取り上げているかというと、実は、紛争地というのはこういうものなんですね。例えば、外国が攻めてきて、敵国、それからこちらは守っている国、こういう形ではなくて、そこでは、さまざまな理由で実は敵味方入り乱れるんです。これは体験してみないとわからないんですが、私が行った紛争地はほとんどそういうふうにモザイク状になってきているんですね。守っている方も決して一枚岩ではないんですよ。一つの民族として、同じ民族なのに、いろいろな理由で実はモザイク化していくんですよ。

 ですから、ある意味で、イスラエルのように、パレスチナとイスラエル、これはある程度民族も宗教も違うからはっきりしているんですけれども、民族も宗教も全く同じでも、実はいろいろモザイク化していくんですね。そして、そこには紛争があり、お互いにスパイがいて、非常に複雑な紛争が行われるというのが現実だというんですね。ですから、私は、その意味で、この国民保護法制などにこのイスラエルの現状を見ながら私たちの問題を考えるというのは、非常に有意義なことだと思っております。

 さて、中東において最近大きな問題がありまして、それは日本人の人質、特に武装勢力に拘束された三名の方がまず解放されたわけですが、この方々たちが帰られたら、自己責任、自己責任というふうにおっしゃる方が多くて、それから、お金がかかったんだからお金を賠償しろとか、賠償できないまでも幾らかかったかお金を出して突きつけろとか、こういう意見がたくさん出てくるわけであります。

 私は、これはちょっと違うんじゃないかと思うんですね。例えば、外務省の不作為というのは何か、外務省の自己責任というのは何かということも問われなきゃいけない。

 例えば、今まで私も、いろいろ邦人の保護にはずっと外務省と一緒に働いてきました。私たちの悲願は、領事移住部領事第一課とかそういうふうに言われていたものが、邦人保護課が出てきている、そしてやがてそれが局になる。これまで、私も微力ながら外務省の発展のために尽くしたつもりですが、ようやく外務省の構造改革によって領事移住部というものが領事局として取り上げられていこうと。

 それはなぜそうなのか。それは、今までは、小さい外務省で、余り邦人のことも面倒見られませんよ、皆さん、パスポートをなくしたとか、物をとられたとか、事故に遭ったとか、いろいろ言うけれども、外務省だってもう手いっぱいなんですよという話から、いや、そうじゃない、これからの冷戦後の外務省というのは、むしろ市民サービス、市民の国際化へのサービスだということで、領事移住局というものをつくろうという動きになってきたんです。

 ですから、まさに市民がいろいろな活動をして、それはある面ではリスクのあるところもある、そういうことをして、それも大きく取り込んでいくというのが領事局でありまして、これに対しては膨大な税金をつぎ込み、もしそういうことが、そんなことは自己責任で勝手にやれと言うんだったら、では、領事局はもうやめて、もう一回領事移住部に戻すなり、あるいは邦人保護課に戻すなりすればいいんじゃないかと私は思うんですね。

 退避勧告に関しても、何回も何回も出している、これはお上の発想ですよ。勧告を出せばいいというものじゃないですよ。やはり、実際にそういうふうに行こうという人をとめたら、それはその人へ向かって説得しなきゃいけない。例えば私なんかがイラクへ行こうとすると、わあっと人が来て、先生が行くんだったらCPAに通告しますよとか、いろいろおどしをかけてくるじゃないですか。

 だから、もしこういう、アンマンからバグダッドへ行こうという人がいたら、もうアンマンのタクシープールというのはどこか決まっているんですよ。アンマンの日本人が泊まるホテルというのは決まっているんですよ。あるいは国境で、そこを必ず抜けていくんですよ。バスのプールも決まっているんですよ。そこの人に連絡したら、大使館へ連絡してくれと言ったらすぐ連絡が来る。そこで、ちょっと待ってください、もう一週間待ってください、今ファルージャで作戦やっているんでしょう、あなたの通るところはラマディ、ファルージャ、バグダッドのルートですよ、だから一週間待ってくださいと言えば、それはとまらない人もいますよ、私もとまらないかもしれないけれども。今回の若い人だったら、それはやはりもうちょっと考えようということになるんですね。

 ですから、その意味では、外務省の不作為というものも非常に大きい。

 ですから、ぜひお願いしたいのは、退避勧告というのは、一般旅行業者、旅行に行く一般旅行業者には退避勧告で十分なんですよ。あるいは一般旅行会社には、ホームページに書いてあるじゃないかと言えばそれで十分なんですよ。しかし、今こういう社会の中で、CNNを見たり、アルジャジーラを見た人は、それはその地域と一体化するんですよね。そういういろいろな市民がいるところで、退避勧告だけやっているというのは私は大変問題があると思うんですね。

 それから、もう一つここでお聞きしたいのは、では外務省は、自己責任、自己責任とおっしゃいますが、どこまでその解決にやるべきかということですね。

 これは実は非常に興味深いのは、二〇〇四年度の外交青書において、人間の盾になられた方に関して、外務省の方がいろいろ、ちゃんとそのコーナーを設けて、外務省がどう対応するかということを書いてあるわけですね。ですから、外務省は、自己責任でいこう、もうそんなのは勝手にやりなさいと言いながら、一方では、最後の駆け込み寺としての役割があるじゃないか、ここに外務省の新しい役割があるじゃないかみたいなことを外交青書にちゃんと書かれているんですよ。

 ですから、これからも恐らく出てくると思いますけれども、こういうところの人質が、拉致事件があったら、一体どこまで、どの程度外務省は関与に努力すべきかという、その基準をぜひ外務大臣にお聞きしたい。特に、人質が解放されて、バグダッドに残りたいという方もおられましたけれども、そういう方も全部連れてきて、その飛行機代も払えというのはいかがなものかという考え方もありますけれども、その辺のガイドラインをぜひ外務大臣にこの際聞いておきたいと思いますので、よろしくお願いします。

川口国務大臣 今回の人質事件の後、国内に、今まさに先生が言われたことについて、さまざまな意見があるということだと思います。

 この事件が提起をした基本的な問題というのは、国と国民の関係、国と個人の関係がどうあるべきかという点であったかと思います。そのさまざまある意見のスペクトラムの中で、恐らく今委員がおっしゃられた考え方というのは、一つの極に、極端なところに位置する。国が手をとり足をとり、全部面倒を見るべきであるという考え方をお持ちでいらっしゃるというふうに推測をさせていただくわけでございますけれども、外務省において不作為の責任があるかどうかということですが、私はそのようなことがあるとは思っておりません。

 それはなぜかといいますと、この退避勧告、これは、昨年の二月十四日以来ずっと出している中で、三十回近くスポット情報を出しているわけでございます。二十八回ですか、正確に言えば。そして、単に外務省のホームページにそれを掲載しただけではないということでございます。

 例えば、新聞、テレビ等のプレス関係者にはこれを提供いたしております。都道府県のパスポートセンターのロビーにもこれを掲示いたしております。それから、旅行業協会、海外進出企業等に対しましても電子メールにより提供をしているということでございます。ヨルダンにおいて、日本人が頻繁に泊まると思われるホテルにおいて、この退避勧告、旅行の渡航情報を掲示してくださいというお願いもしています。

 それから、既にイラクに滞在されている方、これについては、現地の大使館から電子メールで情報の提供をしている。バグダッドの主要なホテルにおいては、危険情報及びスポット情報の提供をしております。そして、今までも、イラクから安全な方法で退避をしてくださいということをずっと促してきているわけでございます。直接に電話をしたりいろいろなことをやって、イラクから退避をしてくださいということを、バグダッドにおいてもサマワにおいてもやっております。

 人間の盾のことをおっしゃいましたけれども、そのときも、できるだけ、本当にそのバスの停留所等に赴いて、日本人らしい人に対してはそういったことをやったこともございます。

 基本的に外務省としてどこまでやるべきかということは、おっしゃるように一つの課題でございまして、外務省としては、これは邦人保護ということが業務の一つですから、できるだけのことはやりたいと思っているわけですし、それから、退避情報等の周知についても、これも可能な限り、できる限りのことをやりたいと思っております。

 ただ、なおかつそれでいてやはり基本的に基礎にあるのは、本人の責任についての感覚、みずからを律する能力あるいはその感覚、その意思といったことにあると思っております。

 私としては、今回の一連のことをめぐって、今まさに日本の中でいろいろな御意見があるわけですから、その中で、どういうことを国が行い、どこまで個人が責任を持つべきかということについての議論が深まっていくということが意味があることである、有意義だと思っております。

首藤委員 体系的なお話、ありがとうございました。

 自己責任というと、やはり重要なのは、本当に自己責任で、別に拉致されてもほっておいてくれと、危険な目に遭ってもほっておいてくれというのも、これも一つの考え方なんですよ。ですから、本当にどこまで外務省が関与すべきかというのを真剣に考える時期に来ているということですね。

 そこで問題なのは、今回、逢沢副大臣が現地に入られた。これ、過去に副大臣が誘拐人質事件、拉致事件で入られた方というのはちょっと余り記憶にないんですが、私も多少は、昔は危機管理問題の専門家だったんですけれども、一九七八年、エルサルバドルのインシンカ事件で、結局、そうした高いランキングの高官を送ったということが事件をフレームアップした。このときから実は高官を送らないようになっているんですよ、外務大臣とか政府特使とか。

 例えば、数十人が実はペルーで、これはトゥパク・アマルでしたかに幽閉されたときに、このときは高村政務次官ですか、が行かれたんだと思うんですけれども、バイス・ミニスターが行かれるということは、私は、果たして本当にどれだけの根拠があるのかと。そして、そのことに関して、当然のことながら、偉い、もう日本を代表するような副大臣でございますから、大変一流のホテルで一流の飛行機で行くわけですけれども、物すごいお金がかかる。

 ですから、そういうことに関しても、私は、今回のこの事件をぜひ奇貨として、その問題を真剣にとらえて、外務省なりのガイドラインをきちっと明示的に示していただきたいと思うわけであります。

 さて、そのイラクでございますが、防衛長官にぜひお聞きしたいんですが、これは御存じのとおり、もう何度も、耳にたこができるぐらい言われていることは、パトロール中に、オランダ軍のパトロールで戦闘になったとか、あるいは先ほどから同僚議員が指摘していますように、スペイン軍が撤退する。これ、どこから撤退するかというと、御存じのとおり、これはナジャフですよ、ナジャフ。

 これは御存じのとおり、バグダッドから南下してカルバラ、ナジャフ、サマワ、ナシリヤ、それからバスラ、クウェート、こうなるわけですよ。要するに、サマワの上の都市がナジャフなんですよ。これは宗教上の聖都なわけです。そして、その南はナシリヤです。これはイタリア軍が守って、これはもう爆破されて大変な犠牲者を出した。そうしてまた、バスラはどうかというと、これはシーア派の方が蜂起して、地方政府関係のビルを占拠するような事件があった。

 要するに、ここでスペインが撤退するということは、これはもう本当に、この一本しかないルートの真ん中で、六百人の自衛隊、我が国の若者が孤立してしまうという可能性を秘めているわけですね。ですから、こうした状態というのは大変危険なわけですよ。

 これは何が危険かというと、いざというときに撤退できなくなるわけですね。砂あらしがあって出られない。平時ならばピストン輸送して六百人を送り出せますけれども、緊急時で全員出なきゃいけないというときには、六百人が乗れる装甲車なんてどこにもないわけですよね。ですから、これをどうされて、どういうふうに計画されているのかと聞いても、恐らく、これは国家秘密だから答えないということだと思いますが、では、これなら答えていただきたいんですね。

 要するに、そこで孤立する、そこへやはり過激な、サマワにある例えばサドル派の方なんかがデモ隊を構成して、日本も出て行けという形で押し寄せてくる。そうすると、日本の自衛隊に残された手段は二つ。一つは、撃つ。撃って、威嚇してでもいいですよ、しかし、撃って、帰ってもらう。途中で当たるかもしれない。死ぬかもしれない。流れ弾で人も死ぬかもしれない。二つは、降伏する。

 こういう状況において、例えば自衛隊というのは、イラクにおいて交戦国でもなければ、イラク戦争の当事者でもないんですよ。何のためにあそこへ行っているかというと、これは復興のために行っているんです。これは結局何かというと、自衛隊というのは、要するに復興に関係しているNGOと同じようなジュネーブ条約上の扱いになるわけですよ。武装もしているじゃないか、迷彩服を着ているじゃないかと。では、武装NGOですよ。

 それにおいて、例えば何らかの形で自衛隊の方が拘束される。これはしょっちゅうあるんです。例えば、道を走っているときに子供をひいちゃったりする。そうすると、地域の慣習法においては、子供をひいたんだからこちらもひかせてくれ、こういうことを言ってきて、もうたくさん悲劇が、私たちも知っているわけですよ。技術者がブルドーザーでひいちゃって、逆に最後は自分もひかれて死ぬとか、そういう嫌な記憶がたくさんあるわけです。

 そういう慣習法の社会で、ジュネーブ条約によっても守られていないという状態の中でこうしたトラブルが発生したときに、どのように自衛隊のステータス、自衛隊員のステータスを守れるんでしょうか。防衛長官、いかがでしょうか。

石破国務大臣 自衛隊の法的地位につきましては、これはあるいは私からお答えをするのが適当ではないのかもしれません。

 ただ、これは、武装NGOという表現、これは委員は比喩的におっしゃったのだろうと思いますが、これは、私どもはイラク特措法という法律に基づいて行っておるわけでございますし、これは国連決議に基づいて行っておるわけでもございますし、これはCPAの承認も受けて行っておるわけでございます。

 したがいまして、現地におきます自衛隊の法的な地位というのは、そういう意味では、派遣をされておる他国の軍隊、そういうものと同じような法的な扱いになるという形を考えておる次第でございます。

 ですから、武装NGOとして特別に自衛隊が扱われて、先生が御指摘のようなことが生起をしたとして、自衛隊が特別な危険にさらされるというふうに私は認識しておりませんし、仮にそういうことが起こったときにどうするのかというときに、先生は二つの対応をお示しになりました。すなわち、降伏するかあるいは撃つかだというふうにおっしゃいましたが、私としては、必ずしもそうは思っていないところでございます。

 いずれにしても、そういうことが生起しないように、情報収集を密に行いたいと考えております。

首藤委員 いや、防衛長官、問題は悲観的に考え楽観的に行動するというんですよ。あなたみたいに楽観的に考えていたんじゃ、これは危機管理にならないわけです。それは確かに、CPAというものの範囲の中で治安ができるときに、CPAの範囲の治安のスコープの中で何かトラブルが起こったら、それは恐らくCPAが守ってくれる、米軍が守ってくれる、イギリス軍が守ってくれるということになると思いますね。

 しかし、現実に、自衛隊の方が現地の慣習法管理下で捕らわれたときに、果たしていかなる法理をもって説得できるか。まあ、お金で説得するというのもありますけれども。というと、これはジュネーブ条約上大変難しい問題があるということを理解していただきたいと思うんですね。

 さて、そのジュネーブ条約でございますが、このジュネーブ条約に、今回、四条約の国内法案、そして同時に、ジュネーブ条約追加議定書1、2、こういうふうに入るということでございます。

 これも代表質問のときに申し上げましたが、ジュネーブ四条約、これは、サンフランシスコ条約で日本が一年以内に加盟することを求められたこのジュネーブ条約でありますが、ここに加盟した。しかし、不思議なことに、これの国内法令は、対応法令はつくられなかった。それからまた、これもさっき同僚議員からも話がありましたように、このジュネーブ条約の非常に重要な義務の一つは、これは、啓蒙活動、教育、それから通告、周知、普及、こういうものが非常に重要な要件としてこのジュネーブ条約にあるわけですね。これもほとんどない。

 国会で一体どんな論議が行われたかということをずっと見ました。いろんなコードで検索しているんですが、ほとんど出てこない。出てくるのは、せいぜいが、例えば、捕虜でシベリアに連れていかれて働いた、捕虜で働いたけれども給料を払ってくれない、これはジュネーブ条約で払ってくれるんじゃないかというようなのがちょろっとあるわけですね。

 ですから、今度、ジュネーブ条約にいよいよ加盟して、加盟してというか国内法をつくって、国内でも法的効力をつくった。

 そうすると、このジュネーブ四条約上、例えば、かつて戦争中に日本に連れてこられたアジアの諸国の人たち、大陸とかあるいは朝鮮半島とか、そういう人たちが、今このジュネーブ条約に基づいて、さあ、いよいよ帰還させてください、戦争で連れてこられたけれども、いよいよ日本でも法律ができたので、さあ、本国に帰還させてくださいというふうになったらどうなるか。

 あるいは、ジュネーブ四条約上、個人求償権というのは、今までそれはもう片づいたと言っているんですけれども、今度これがいよいよ入る、今度いよいよ日本でも法的な効力はある。ではこれからだということで、個人が戦争損害や戦時賠償を求めてきたら、これに外務省としてはどう対応する予定でしょうか。あるいは、これは提案者ですか。――外務省。

川口国務大臣 いろいろおっしゃった中で、御質問は、個人賠償について政府としてどういうふうに対応するかということであったかと思いますけれども、どういう状況についての個人賠償を言っていらっしゃるのか、もう少しお話しいただけると幸いです。

首藤委員 いや、私の質問は、個人賠償ではなくて、まず、国内法をつくらなかった理由ですね。その内容として、例えばこういう話が伝えられていると言われているんですが、一体、五三年に加入してから国内法がつくられなかった、この間の不作為の本当の理由は何ですかということをお聞きしております。

川口国務大臣 これは、本会議のときにお尋ねがありまして、そのときにお答えを申し上げたということですけれども、一九五一年にサンフランシスコ条約に署名いたしましたときに、このサンフランシスコ条約の効力発生後一年以内に加入をするということを宣言したわけでございまして、それを踏まえて国内の立法措置を考えるということですけれども、この実施のために必要な国内立法措置、これの大部分がいわゆる有事法制に属するという判断がございました。それで、まさに必要と判断をされるときに整備をすべきという考え方を政府としては持っていたということでして、したがって、国内法整備が必ずしも十分に行われないままにこれに加入をしたということであったわけです。

 それで、有事法制を整備するときにということであったわけですが、委員も御案内のような戦後の国内の政治状況の中で、有事法制について、その整備をする機会に恵まれなかったという現実があったわけでございまして、したがって、十分に整備をされなかったということであるわけでございます。

首藤委員 ということは、有事法制ができなかったから、論議ができなかったので、ジュネーブ条約の国内法もできなかったというふうに今度言われたと思うんですけれども、それは前回のときよりも一歩進んできたわけですが、果たしてそうかなという問題がありまして、これはまた傍証を出して質問させていただきたいと思います。

 また、ジュネーブ条約において一番重要なことは、やはりこんな条約をつくったって効果がなきゃいけないということで、普及、告知義務というものがあるということを前から質問させていただいています。

 これは衆議院調査局が配付している参考資料でございますけれども、これはなかなかよくできていまして、質問もちゃんと書いてあるんですね。それの第一に、なぜこの普及義務をやっていなかったか、そして、これから、第一、第二追加議定書への加入後、この義務をいかに果たしていくつもりかと、ちゃんと想定質問まであるんですよ。すばらしい参考資料でございます。

 では、なぜ、例えば有事法制だけが問題だから国内法ができないというんだったら、ジュネーブ条約が日本の平和にとってどんなに重要か、そして大戦中これを無視したために多くの日本の兵士がどんなにもう涙を流しながら南海で朽ち果てていったか、当然言うべきじゃないですか。どうして、その周知、教育義務を徹底していないのか。あるいは、学校教育とか、あるいはそれをある意味で資格化させて、資格教員みたいな形でやっていかなかったのか。それはどういう理由によるんでしょうか、外務大臣。

川口国務大臣 その事務局作成の文書に質問が書いてあるということでしたら、多分答えも書いてあるのではないかというふうに思いまして、委員の方が答えは特にもう既に御存じであるのかもしれませんけれども。

 普及義務についてですけれども、政府としては、これまで、学校における教育を通じてこの努力をした。また、日本赤十字社が、これは国際人道法についての教育やその普及を精力的に行っていらっしゃるわけでして、その赤十字社と協調する形でジュネーブの諸条約の普及に取り組んできたところでございます。

 それで、学校教育については、これは外務省の所管ということではございませんので、私から申し上げるべきかどうかということですけれども、学習指導要領において、これは子供の発展段階に応じて指導が行われるということになっていると承知をいたしております。

 そして、外務省として何をするかということでございましたら、今回のジュネーブ諸条約の追加議定書につきましても、ジュネーブ諸条約と一緒にこれはその普及に努めていきたいというふうに考えております。

首藤委員 それでは、井上大臣にお聞きしますけれども、これをどういうふうに今後積極的に普及させていくか、その具体的なプログラムについて御説明をお願いしたいと思います。

井上国務大臣 ジュネーブ条約の基本をなすところの思想といいますか骨格の考え方、前の質問にも出ましたけれども、特に教育関係の中でそういったことをよく教えていくといいますか、教科書をよく整備したり、あるいは実際に教えていく、こういうことが一番大事じゃないのかな、こんなふうに思います。

首藤委員 いや、大臣、そこは違うんですよ。私はたまたま教育という話をしていますけれども、それは、小学生がというんじゃなくて、例えば全公務員がこの問題をよく知っていないといけない。緊急事態というのは全公務員が対応するわけですよ。ですから、具体的なプログラム、これはこの今回の一連の国会質疑の中でまた質問をさせていただきますから、それまでにはプログラムもきっちり回答できるようにしていただきたいと、ぜひ、切に切にお願いしたいと思います。

 私は思うんですが、この問題に関しても、防衛庁でもそれはきちっと教えていますという話を聞いています。しかし、有事は、ジュネーブ条約、プロトコールの追加議定書第一をよく民防条約というふうに訳す方もおられますけれども、それぐらい民間防衛の問題なんですよ。

 ですから、そこで重要となるのは実は警察官なんですが、我が国において、警察官はジュネーブ条約をどの程度告知され、それに対する警察における教育プログラムはどのようになっているかを国家公安委員長にお聞きしたいと思います。

小野国務大臣 一般教養の中におきまして指導させていただいているところでございます。

首藤委員 いや、それは違うんじゃないですか。これはもう本当に、今度有事になれば、警察官は最前線に立つんですよ。そこで、例えば戦闘になった場合、捕虜を扱ったり、あるいは非戦闘員、あるいはその捕虜に実は敵側に協力するという人も出てきたりする、あるいはこれを機会に何か犯罪をやったりする人もいる。

 そういういろいろなことがあって、まさに警察官はこのジュネーブ条約の最前線に立たされるわけですから、現時点ではどの程度まで周知が進んでいるのか、そして、それが足りないとしたら、どのような教育プログラムをつくられているのか、お聞きしたいと思います。

小野国務大臣 ジュネーブ条約に関してで、お答えはよろしゅうございますでしょうか。

 警察官は、敵国の戦闘員と戦闘行為を行う者ではありませんけれども、その職務を通じまして捕虜に接することなど想定されることでございますので、警察におきましては、今後、捕虜の取り扱い等について必要な教育を実施してまいりたい、そのように考えておるところでございます。

首藤委員 ですから、今まではほとんど教育も普及も進んでいないということがわかると思うんですね。

 ジュネーブ条約に加盟して国内法をつくっていくわけですが、今回、ジュネーブ条約の第二議定書に加盟するんですけれども、その部分の国内法は用意されていないように見受けられますけれども、その点はいかがでしょうか、外務大臣。

川口国務大臣 第二追加議定書ですけれども、これは、いわゆる内乱等の非国際的な武力紛争における敵対行為に直接参加していない者に対する人道的な待遇や傷病者、医療要員、医療組織、医療用輸送手段等に対する保護、これを定めているわけでございます。それから、軍事行動から生ずる危険から住民を保護するために、住民に対する攻撃を禁止するとともに、住民の生存に不可欠なもの等に対する保護等についても定めております。

 それで、こういった内容の第二追加議定書の規定ですけれども、憲法の基本的人権の保障に係る諸規定、刑法の関連規定及び国民保護法案の関連規定等の関係法令に基づいて実施をすることができるということでございます。

首藤委員 いや、それはちょっとおかしいんじゃないですか。そうなったら、第一議定書だって関連している法律はたくさんありますよ。わざわざ第二議定書を外す、国内法をつくらないのはおかしいんじゃないですか。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 第二議定書については今申し上げたとおりでして、第一議定書については、例えば処罰法案というのがございますけれども、重大な違反があったときにそれを処罰するというような規定があるわけですね。それに対応する国内法はないということで、第一議定書についても、もちろん既存の国内法制でカバーできる分もありますし、ないものについては、これはむしろ私よりも井上大臣の方の御所管で、私がお答えするのが適切かどうかですけれども、そういった必要な法制の整備を今回行うということであります。

首藤委員 ジュネーブ条約というのは、非常に重要なことは、一括の七法案三条約の中の重要な法案であります、米軍との協力関係において非常に重要なんですね。

 というのは、これはもう御存じのとおり、日本が敗戦後一時期、日本は自然権的な自衛権までも放棄しなければいけない、あるいは放棄すべきだという有名なマッカーサー書簡が出ておるわけですが、それが否定されて現在の九条になっているというのは御存じのとおりです。それでも、実際に有事になったときにどうするかというところで、日米安保というのが存立していたわけですね。

 その過程において、その存立の前提として、ジュネーブ条約というものは日本の安全保障においてそれほど重要な影響を及ぼしてこなかったわけですが、今般、この一連の有事法制をつくるに当たって、日本は果たして国際社会の条約に従うべきか、あるいはアメリカとの関係に従うべきかという非常に難しい問題が実は登場してきているんです。

 そこで、これは代表質問のときも申しましたが、これは提案者である井上大臣にもう一度お聞きしますが、有事において、アメリカ軍と日本軍とが共同して行動するわけです。当然、調整も行う。しかし、最後はだれかが決めなきゃいけない。これは、二人で一緒に手をつないでよいしょとやるわけじゃないんですよね。

 ですから、一元的な指揮権をだれがとるかということが明記できないと、この有事法制というのは機能しないんです。その一元的な指揮権はどちら側が把握するとお考えでしょうか、大臣。

井上国務大臣 一元的に行動をしていく、したがって、責任も一元的にとっていく、そういうことを想定していないわけでありまして、まさにこれは共同対処なんですね。十分に調整を図りながら、日本は日本として、米軍は米軍として行動するということでありますけれども、それはあくまで、お互いの意思疎通あるいは調整メカニズムを通して同じ目的のために協力をしてやっていく、こういうことでありまして、いずれが優位に立って行動を決定していく、そういうものではないわけであります。

首藤委員 いや、大臣、そういうごまかしは許されないんですよ、実際のこの法案において。

 一緒に共同歩調をとっていく。では、あるものがあって、それを撃て撃てと言うか、あるいはあれは撃っちゃいけませんと言うか、お互いにどうやって調整するんですか。そこで会議を開いて調整するわけにはいかないでしょう。

 なぜ私がジュネーブ条約をこれだけしつこく聞いているかというと、まさにジュネーブ条約というのは、今までの日米安保システム、そこと違うモードが入り込んでくるわけですよ。ですから、今ここで問題になっているのは、日本は、何か問題があったときに、国際社会の規範に従うか、あるいは日米関係の規範に従うかということなんです。そのコンテクストにおいて、一元的な指揮権をだれが握るかということなんですよ。それは大臣としてはどちらなんですか、いかがですか。

井上国務大臣 日米を拘束しますのは、日米間の条約ですね。これをもとにして日米が行動するということでありまして、その行動につきましてどちらかが一元的に指揮権を持つとかということになっていない、お互いがよく連絡調整をしながら共通の目的に向かって対処をする、こういうことになっているわけでございます。

首藤委員 ここは私は、もう避けて通れないところ、一番大事なところだと思いますよ。実際に、この法律の中で最も難しいところかもしれない。違う要素があるんですよ、違う系なんですよ、違う体系なんですよ。ハーグ陸戦協定から来て、そしてジュネーブ条約になって、これは人道条約になってきているんですよ。そして、さらに追加議定書ができてきている、人間の保障という概念が入ってくる、国際刑事裁判所ができてくる。こういう一つの系、システムと、日米のシステムというのがあって、さらに、それはある意味で単独行動主義という形で、アメリカ中心主義ということについて、また深化しているわけですよ。違う方向を持った二つの系があって、それを一緒にしているのがこの七法案三条約なんですよ。

 その中において、実際に、有事において一緒に協力してやりますとか、そういうのはできないんですよ。ですから、韓国においては、一元的な指揮権は当然アメリカ軍が握るわけですよ。当たり前のことです。そうしなければ軍事行動なんてできないんですよ。会社だってそうじゃないですか。社長が二人いる、会長が二人いるとか、人事部は二つあるところがあるかもしれないけれども、そんなことはあり得ないんですよ。いかなる組織、いかなる管理でも、それは一元的なものでやらなきゃいけない。

 だから、それをだれが握るかということが重要でありまして、それも、ただ重要というんじゃなくて、日米関係、日米安保、それから今度入ろうとしているジュネーブ条約において、この七法案三条約の中において、だれが最終的な責任をとり、だれが一元的な指揮権を握るのか。委員長、これに関して統一的な政府見解を求めます。

自見委員長 後刻理事会で協議をいたします。

首藤委員 さて、本当にこの法案というのは、私は難しい。代表質問の中で、こんな、七法案三条約を一遍に出すのは神を恐れぬ行為だというふうに言わせていただきました。本当に私自身も、これは専門家でないからいろいろ勉強させていただいていますし、毎日毎日少しずつ進歩してきたという、自分でも実感を持っています。

 しかし、これをやっていく上で、常に基本的なところでぶつかってしまうんですね。例えば憲法とこの法案との関係などがそうなんですね。

 憲法というのは、御存じのとおり、これは平時を予想している。平時どころか、もう恒久平和、もう戦争は関係なくて、日本が巻き込まれちゃいけない、もし巻き込まれるようなことがあれば、それは国連、国際社会が助けてあげますよ、だから自衛権だって本当は要らないですよという形でできている憲法と、現実に、いや、やらなきゃいけない、万一はアメリカと組んでやらなきゃいけないんだ、あるいは国際社会を動かしてやらなきゃいけない、やったことが国際社会で罰せられるかもしれないから国際社会に対してもいろいろ配慮しなきゃいけないという非常に難しい問題なんですね。

 いわゆる緊急権というものを世界的に考えていく。これはやはり、先ほども、この質問の中でも、何度も人権、人権ということがあって、それは平時における人権と、例えば、もう負傷者が目の前にたくさんいて、この人たちにランクをつけて、助かる人と助けられない人とを分けなきゃいけない人権と同じものかという質問を前にさせていただきました。回答は不明瞭。これもまたいろいろ詰めていかなきゃいけない問題があると思うんですね。

 そこで、いろいろ勉強しますと、やはり緊急時には思い切ってやらなきゃいけないということがある。それは何かというと、これは非常大権。大統領非常権限とか非常大権というものがありまして、これは日本の旧憲法にもありました。だから戒厳もあり、天皇の非常大権というものもあった。

 今、こういう非常大権を持っている国というのもたくさんあるわけでありまして、例えばフランスなんかそうですよね。フランスはプーボワールエクセプシオネールという非常大権、エクセプショナルなパワーということで非常大権を規定しているわけです。これがだれにあるかというと、これは大統領にあるんです、大統領にある。

 日本のこの今回の七法案三条約を見るにつけ、あるいはその前に成立した緊急事態法制を見るにつけ、全部内閣総理大臣なんですよ。最後は内閣総理大臣がやる、内閣総理大臣がやる、内閣総理大臣がやる、最後は内閣総理大臣、こういうふうになっているんです。

 内閣総理大臣というのはプライムミニスターですね。要するにミニスターの中の一番、諸大臣の中の一番重要な大臣が内閣総理大臣でございますね。考えてみれば、この方は元首でもない。ですから、元首でもない、その諸大臣、事務を扱っている行政の長であるところの大臣、その大臣の中においてちょっと頭一つ先んじている内閣総理大臣に、どうしてさっき言われるような非常大権というものがあるのか。元首でもない総理大臣に、大統領でもない内閣総理大臣に、どうしてこれが、権限が集中することができるのかということを、その法理を内閣法制局長官にお聞きしたいと思います。

秋山政府特別補佐人 お尋ねの大統領非常大権、これは法律学ではいわゆる国家緊急権という言葉で議論されるものでございます。すなわち、戦争とか内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処することが困難なような非常事態におきまして、国家の存立を維持するために国家権力が通常の立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限というふうに考えられております。

 それで、フランスでは、御指摘のとおり、フランス第五共和国憲法は第十六条でそういう規定があるわけでございます。それから、大日本帝国憲法でも、先ほど御指摘のとおりのものがございます。日本国憲法においてはこのような規定は存在しておらず、したがって、先ほど申し上げたような国家緊急権というものは現行の憲法下では認められないものと考えております。

 ただ、現行憲法下でも、大規模な災害とか経済的混乱などのような非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から合理的な範囲内で国民の権利を制限し、あるいは義務を課す法律を制定することは可能でございまして、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法など、既に多くの立法がございます。今回提案しております有事関連の法律も、そのような系列のものに入るものと考えております。

首藤委員 いや、内閣法制局長官、それは詭弁ですよ、あなたらしくない。

 恐らく、それはまだ法律の空白部分なのかもしれない、討議されていない部分かもしれない。しかし、災害が起こるというのは、例えばそれは長崎の雲仙岳でもそうですが、局所的であり、一部的であり、一過性のものですよ。しかし、ここで論議されているのは、我が国の独立を守るための法律なんですよ。ですから、対象は我が国そのものであって、それを個別的な、一時的な緊急権という形で災害基本法などと並列に考えるのは、法律家として認められる行為ではないと思いますけれども、もう一度お答えをお願いします。

秋山政府特別補佐人 累次、この国会に至る前にも政府側から答弁しておりますけれども、今回の法案は、現行憲法のもとで、基本的な人権の尊重に十分配慮しつつ、事態の特性に応じて必要な制約を加えるというものでありまして、これは、冒頭申し上げましたような国家緊急権の発動というものではないというふうに考えております。

首藤委員 おっしゃるとおりです。だから、これは、国家緊急権の発動ということは定義されていないんですよ、憲法では。だから、憲法の範囲内でやるしかない。しかし一方、必要としているのは国家緊急権なんです、何らかの形での。まさにそこで必要とされるのは、非常大権、プーボワールエクセプシオネールですよ、本当に。

 ですから、唯一私たちに残されたのは、その憲法と、沈黙している憲法と具体的な事例である国民保護法制をつなぐ基本法を前提としなければこの国民保護法は成立しない、それの前提がなければこの法案は本当に成立しないということを最後に意見として言わせていただきます。

 以上で終わります。

自見委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、担当三大臣にいろいろ質問をしたいと思います。

 国民保護法案というのは膨大な法案ですが、この法案は、政府は、武力攻撃事態等に至ったと判断すれば、武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針、これを閣議決定し、この対処基本方針と、それからあらかじめ策定する国民の保護に関する基本指針、これに基づいて、国はまず警報を発し、住民避難を行うのが基本的な柱になっています。住民避難に伴う一連の措置を決めたものですが、この措置の中身、書きぶりの方について、井上大臣に最初に伺っておきます。

 この書きぶりというのは、基本的に災害対策基本法や災害救助法の規定を準用するものになっていますね。この武力攻撃事態等の避難の法制度に災害の法体系というのを準用する、その理由というのは何ですか。

井上国務大臣 国民保護措置の中身で主要なものは、警報の発令でありますとか、あるいは避難の誘導、あるいは救援、あるいは武力攻撃事態によって生じた災害を極力最小化していく、そういう措置だと思うのでありますけれども、これはいずれも災害と共通するところがかなりあるわけでありまして、そういう共通する部分については、災害対策基本法の援用を初め、災害救助法なんかの規定も援用しているというところでございます。

 確かに、今申し上げました主要なところについては、事項としてはやはり共通するところがかなりあるんじゃないか、ただ、程度は違うかもわかりませんけれども。我々、そんなふうに考えまして、このような法律の制度をつくった次第でございます。

吉井委員 そもそも、外国からの組織的、計画的な武力攻撃というものといわゆる自然災害は、それぞれ原因も違えば事態の態様も異なるものなんですね。災害というのは、地震にしても、火山活動、台風、集中豪雨など、自然現象に起因して発生するものでありますし、一方、国民保護法案の方が対象としている武力攻撃事態等は、人間の努力で発生そのものを防止することができるというところに決定的な違いがあるわけですね。

 ですから、これを一くくりにして対処する仕組みをつくるということは、我が国の社会と国民生活のすべてに有事法体系を持ち込んでくるというものになり、これは人権侵害を拡大する、そういうものであります。戦争と自然災害は全く異なるものだ、このことをきちっと押さえた上で法律というものを考えなきゃいけないと思うんです。

 井上大臣にまた引き続いて伺っておきますが、ここで言っている住民避難とは、どういう事態を想定して避難するのかということが問われてくるわけですね。

 武力攻撃事態法の審議のとき、それから先日の本会議答弁でもそうですが、政府は四つの攻撃類型に分けて考えていますね。弾道ミサイル攻撃、航空機や船舶により地上部隊が上陸してくるような攻撃、航空機による攻撃、ゲリラや特殊部隊による攻撃の四つということを挙げておりましたが、今度の法律は、この攻撃を受けたときに住民避難を行う、こういう法律というふうにまず考えていいわけですね。

井上国務大臣 武力攻撃事態が発生いたしましたときに、その類型に応じましてそれぞれの措置をとるわけでございますが、いずれも避難が必要でありますけれども、その避難の対応というのは違うと思うんですね。

 例えば地上部隊が侵攻してくるような場合は、ある程度時間的な余裕もあるということで、かなり遠く離れたところに避難するというようなこともできますけれども、例えばミサイル攻撃なんかの場合は、そういうような余裕もありませんし、むしろ外に出るというよりもうちの中にいる方が避難のやり方としてはいい、より安全だという場合もあるわけでありまして、事態に応じまして避難の対応を考えていかなくてはいけない、こんなふうに考えています。

吉井委員 石破大臣の方に伺っておきたいと思うんですが、着上陸攻撃について、本当にそれを考えている、そういう立場ですか。

石破国務大臣 御質問の御意図がちょっとよくわかりませんが、着上陸攻撃は全くないなどということは私どもは思っておりません。そのようなことを完全に排除するような合理的な根拠はないものと考えます。

吉井委員 そうすると、上陸侵攻では海軍力が重要な要素となりますが、我が国の近隣国でそうした海軍力は有していないということが言われておったり、空からの陸上部隊の侵攻では空軍力が必要になってまいりますが、そうしたことを考えたときに、上陸侵攻を実行し得る意図と能力を持った国は存在するのかということが次に考えなきゃいけないことだと思うんですが、石破大臣の方は、上陸侵攻を実行し得る意図と能力を持った国は存在する、こういうお考えですか。

石破国務大臣 それは、防衛白書をごらんいただきましても、ミリバラをごらんいただきましても、何をごらんいただいてもいいのですが、能力というものは、つまり、日本に着上陸する能力とはどれぐらいを指していうのか、委員と私と見解が違うのかもしれません。

 しかしながら、能力というものをつくるのには物すごく時間がかかりますが、意図というものはある程度短期間に形成し得る場合があるのではないかと思っております。それはまたその国の政体のいかんにもよるわけでございますけれども、私どもとしては、どこがということをここで申し上げることはいたしませんが、そういうようなことを常に考えてやっておきませんと、国の安全保障政策というものは成り立たない。特にどこがということを申し上げることはいたしません。

吉井委員 上陸という攻撃があって、それで地上戦という想定は比較的イメージしやすいパターンなんですが、せんだって、赤嶺議員の本会質問への答弁では、本格的な侵略事態の生起の可能性は低下しているということを大臣は言っていて、国民保護法制本部の担当者自身がこのようなことは現実にはほとんどあり得ないと言っているわけですね。

 ですから、それで考えるわけですから、現在、上陸侵攻を実行し得る意図と能力を持った国は存在するのか、意図と能力を持った国。それをどう考えていらっしゃるかを重ねて伺っておきます。

石破国務大臣 低下したとは申し上げましたが、絶無になったとは申しておらないのでございます。全くゼロということではございませんし、この世の中、ずっと、先生も御専門でいらっしゃるかもしれませんが、戦争の歴史というものを見てきて、ある意味で不意打ちということがほとんどでございます。もちろん私どもは、情報収集を行い、そういうことが起こらないように予防に努め、外交努力をなしということではございますけれども、予期せざることというものはございます。

 先生は先ほど、災害と戦争というものを同列に考えてはいかぬ、戦争というものは努力によって避けることができるのだと。確かにそれはそうですが、それで一〇〇%回避できるかといえば、私は、残念ながら人間の歴史はそうでもないし、これから先もそうでもないであろうというふうに思っております。ゼロだとは思っておりません。特にどこがあるかと問われれば、ここということを申し上げないだけのことでございます。

吉井委員 ここと言わないが、あるということのようです。

 次に、航空機による攻撃、空襲、こういうものは想定しているわけですか、大臣としては。

石破国務大臣 想定をいたしております。つまり、それを想定してきちんとした備えをなすこと、それが抑止力の一部をなすものでございまして、それに対して全く備えをしていない、日本に対して攻撃をしても、自衛隊は整然と動かず、そしてまた国民に対して避難の指示も出せず、結局それが、日本に対して何かしかけようという国の、あるいは勢力のそういうようなよこしまな心を増長することになるのではないか。

 したがって、これは議論が委員とは逆さまなんだろうと多分私は思いますが、そういうようなことについてきちんと備えをしておくということが、そういうことから日本を守ることになるのだというふうに私どもは考えておる次第でございます。

吉井委員 近隣諸国で我が国を空襲できる空軍力を有する国は存在しないというのが軍事専門家の中で一般的な見解としてあります。しかも、空襲の対象は、攻撃する相手方の意図、判断により決まってくるものですね、仮にあるとすれば。これは不確定であり、それに対する対応というのは極めて困難であって、軍事常識に従うと、攻撃対象は軍事施設、産業地帯ないしは政治的に打撃の大きい中心都市と考えるのが自然ですが、そういう地域というのはいずれも避難が困難な地域なんです。

 そうすると、その場合に、井上大臣の方は、具体的にどのような避難措置が適切かつ有効と考えておられるのか、伺います。

井上国務大臣 避難の場合は、具体的な状況に応じまして避難の場所なり避難の経路が決められてくると思うのでありまして、今お話にありましたようなそれぞれ違うところにつきましては、それぞれの地域について責任を持ちます自治体が最善の対応をすると我々は期待をいたしているわけでございます。

吉井委員 結局、自治体が対応するということだけですから、後でこれに関連しては聞きますが、要するに、考えなしということになると思うんです。

 弾道ミサイル攻撃について、防衛庁はこれを強調しておりますが、仮にミサイルが発射される事態になったときにどこへ住民避難を行うのかと言ったら、さっきはその場ですっ込んでおいてもらうという話ですが、予測事態から避難するという体系なんですが、予測して避難しても、そもそもどこに飛んでくるかわからない。発射された中距離弾道ミサイルが我が国に着弾するまでの所要時間はせいぜい十分程度であるとされておりますから、このような短時間でどこへ避難するのか。

 住民避難の実施というのは、結局、さっきはすっ込んでおるというふうな話ですが、住民避難を考えても、そもそもこれは不可能ということになってくるんじゃないですか。

井上国務大臣 どういう攻撃があるかよくわかりませんが、いろいろな事態を想定いたしまして、どういうような避難が一番効果的なのかということを十分検討する必要があると思うんですね。

 そもそも、全く何の対応もできないんだというようなことで初めからギブアップするんじゃなしに、いろいろな可能性を考えて、その中で最善の選択肢をとっていく、こういうことじゃないかと思います。

吉井委員 近代戦、近代における戦争の性格、とりわけ弾道ミサイル攻撃などを考えると、住民避難による国民保護という対応というのは、そもそも保護措置としての実効性に大変疑問のあるものです。

 それから、これまでの戦争の歴史とともに人類の進化というものもあって、武力によって切り取り勝手の時代から、あるいは帝国主義戦争の時代から、やはりそういうものを許さない方向へ人類そのものが発展してきているという歴史の中で、これからどういう二十一世紀以降の社会をつくっていくかということを考えなきゃいけない問題があります。

 経験からしますと、例えば予測事態で避難といっても、沖縄戦のときでいえば、予測して学童疎開という避難を図った子供たちが乗船していた対馬丸が撃沈されて命を落とすとか、避難すれば安全ということにはならない。それがこれまでにおける戦争というものの実態であります。

 ゲリラや特殊部隊による攻撃についても、四つの類型のうち可能性として想定される事態、このタイプは、敵性国家がゲリラを日本に潜伏させたり、特殊部隊が不審船や特殊潜航艇で日本へ侵入する事態であろうというふうに言われておりますが、そのときに、予測事態から住民避難をするということにしても、本来、ゲリラや特殊部隊による攻撃に対しては、軍事力で対応するということはともかくとして、果たして大規模な住民避難は可能かどうかということが、問われてくる次の問題だというふうに思います。

 それで、上陸攻撃を受けて、あるいはその他の攻撃を受けた住民が避難した経験というのは沖縄戦ですが、鳥取県の住民避難シミュレーションによると、鳥取県東部の全住民二万六千人がバスで陸路兵庫県に避難するのに十一日間要するという。鳥取県主催の第一回国民保護フォーラムで鳥取市が、鳥取市民十二万人を避難させることは検討の余地を超えているということも言っていますね。あなたは今、地方自治体で考えてもらうという話ですが、地方自治体は既に考える域を超えているんですよ。

 この鳥取の国民保護フォーラムで陸上自衛隊連隊長が、沖縄戦の住民疎開の教訓で最も重要なのは、戦闘地域に住民を残さないことなど、戦闘地域からの住民の排除、避難の誘導に当たっては、軍事行動に住民避難が障害にならないようにすることに主眼が置かれておりました。これで国民保護を考えていると言えるのか。

 井上大臣、聞いておきますが、そもそも一つの県の規模で住民避難などは現実には不可能ということになるんじゃないですか。

井上国務大臣 鳥取県がどういうような想定でどういうような訓練をされたのかつまびらかには承知をいたしませんけれども、これは考えられる限り、都道府県の段階で、あるいは市町村の段階でよく検討する、国の段階でも検討するのはもちろんでありますけれども。そういう中で、一番効率的に、迅速に避難をする方法をこれからもよく検討していく必要があると思うんですね。

 たまたま鳥取県においてそういう結果が出たからすべてそうだというんじゃなしに、鳥取県だって初めての経験だと思いますので、訓練を積み重ねることによりましてもっと迅速な対応が可能になってくるんではないか、こんなふうに考えます。

吉井委員 井上さんも私と大体同じ世代に属しますから、委員長もそうだと思いますが、戦争中に生まれ育って、戦争というものを知っている、あるいは小さいながらも経験している世代ですよね。

 実際、上陸攻撃を受けて避難できるのか。それはできないというあの沖縄の経験があるわけです。空襲を受けたときに避難できるか。東京も大阪大空襲も、とてもじゃないがそんなことはありませんでした。

 鳥取県というのは過疎の県ですよね。第二次大戦のときは大都市部から過疎の方へ疎開したんですよ。過疎の……(発言する者あり)いや、失礼とおっしゃるかもしらぬが、大都市に比べれば少ないからなるわけです。特に兵庫県との境界あたりは決して人口密集地でないということはよく御存じですが、そういう人口の少ないところから大都市とか人口の多いところへの疎開というのはそもそもないんですよ。それでも想定を超えるという話なんですよ。

 弾道ミサイルだったら、あなたがさっきおっしゃったように、そもそも穴の中にすっ込んでといいますか、余り外へ出ないですっ込んでおるしかもう方法はない。ですから、国民保護ということを言っても、現実問題としては、それを地方自治体でいろいろな対応を考えてもらうといったって、考えようがないんですよ。住民避難ということを考えるとすると、結局、そもそもそれは現実的に考えることはできないというのが実態なんです。

 そこで、石破大臣、さっき国民保護フォーラムでの陸上自衛隊連隊長さんのお話を私しましたが、大体、戦闘地域に住民を残さないことだ、最も重要なのはこのことだということを話をしておられます。つまり、軍事行動に住民避難が障害にならないようにするという発想、これで国民保護を考えているというふうにあなたは考えているんでしょうか。

石破国務大臣 第八普通科連隊長が、前後のどのような議論の中でそういう発言をしたか、私、詳細には存じません、調べてみようと思いますが。

 要は、沖縄でもそうなのですけれども、日本に対して武力攻撃をしようという勢力がある、それと戦えるという資格を持った者、能力を持った者は自衛隊しかない。そのときに、国民の方々がその戦場におられるということはあってはならないことであって、やはりそういうような戦場からまず避難をしていただくということは重要なことではないか。それは、そうすることによって日本の独立と平和というものを守っていくためということもあります。そして、国民の生命財産を何よりも守っていかねばならない。ですから、軍事行動の障害になるから国民をそこから逃すのかといえば、その軍事行動は何のためにやっているかというと、これは国の独立と平和を侵そうとするよこしまな勢力に対して防衛出動としてやっているわけです。自衛権の行使としてやっているわけです。それがなければ、国民の自由も、そしてまた権利も、結局、守る日本国という主体がなくなってしまうということではないか。

 ですから、軍事行動を優先させるために国民をそこから逃す、排除する、そのような考えを持っておるわけではございません。

吉井委員 国民的経験というものは、私たち戦争の時代に育ってきた人間というものは、沖縄県民を見捨てたのが軍隊だった、がまに住民が逃げ込もうとすると、軍隊が先に占拠していて県民は中へ入れてもらえなかった、泣き叫ぶ赤子が軍の手で殺されていったりもしました。九万四千人の県民が命を落としていますが、この間もお話ありましたが、十五万人以上とも言われている民間人が犠牲になりました。

 ミサイル攻撃や空襲、上陸地上戦ということを想定すると、国民保護法を制定して国民を保護するということは、これは非常にバーチャルな発想であって、できない。

 だから、一番大事なことは、有事を生み出したら国民は守られないわけですから、武力攻撃を受けない国、有事を招かない国、それをどう実現していくかというところに外交の力を強化していくという、一番大事なことといえば、一番の有事というのはやはりこのことだと思うんですが、ここは川口大臣に伺っておきたいと思います。

川口国務大臣 紛争を予防するために外交努力を重ねなければいけない、これが重要であるというのは、まさに委員がおっしゃったとおりであるというふうに思います。

吉井委員 具体的に四つの攻撃類型を言ってきたけれども、それに対しては、実際には、住民避難というのは現実問題としてはできない、そういう状態を招くわけですから。ですから、大事なことは、そういう大規模な住民避難などということを必要とするか否かということ自体が大変大きな疑問になってくる問題で、私は、予測事態で住民避難、これが国民保護法制ですが、仮に立法者の立場に立っても、予測事態で住民避難というのは可能なのか、それは否ですね。

 現実に避難とはどういうことか。鳥取のシミュレーションを考えてみても、それは一つの県のシミュレーションということだけになるものじゃなくて、もっと大規模な都市になれば、もっとそれは現実からは遠くなります。沖縄戦の経験からしても、これは国民保護にはなってこない。

 やはり、最大の有事対策、国民保護というのは、戦争や有事を招かない外交の力、政治の力をどれだけ強めていくか、そのことが大事であって、そういう立場に立った、本当の意味での有事を招かない対策というものを真剣に考えなきゃならぬということを重ねて申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。よろしくお願いいたします。

 法案関連の質問に入ります前に、石破長官にぜひ質問をしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 SACO合意から八年が経過しました。当時アメリカ側の実務責任者だったカート・キャンベル元国防副次官補は、名護市辺野古沖への代替施設建設に時間がかかり過ぎるとして、既存の米軍施設への統合や県外移設など、柔軟に再検討すべきだという考えを示したというのが最近新聞で報道されておりました。そしてまた、橋本政権で沖縄担当首相補佐官を務められた岡本行夫氏も、辺野古案の行き詰まりを認めて、米軍再編と絡んで、沖縄の基地を本土に持ってくるしかない、これは十四日の毎日新聞に出ておりますが、というふうに話しておられます。

 それで、質問なんですが、今、アメリカのラムズフェルド国防長官は世界的規模の米軍再編に着手しておられます。最新兵器を導入して軍事力を維持しながら、在外基地の整理縮小、兵員削減に取り組む、その方針を明らかにしておられる。

 そういう中で、石破長官、ラムズフェルド国防長官ともお会いになって、そういうことに関してもいろいろお話をしておられると思うんです。沖縄の基地の問題、兵員、海兵隊削減に関して、ラムズフェルド国防長官との間でどういうようなお話があって、すべて明かしてくださいとは申しませんが、今、私たちは、やはり沖縄県からすると、一番のチャンスではないか、せっかくアメリカ側からこういう話が出ているときに、日本政府が一歩前に出れば、いや、半歩でも前に出れば動くことができるのではないかという思いがございますので、ぜひ、石破長官のそういう御見解、あるいはラムズフェルド長官とのお話し合い、そういうことをお聞かせいただけたらと思います。

石破国務大臣 米軍がトランスフォーメーションを進めているというのは、まさしく先生御指摘のとおりでございます。

 私とラムズフェルド長官が何度かお話をしておりますが、では、沖縄のこの基地についてどうなのだということを、具体的に向こうから提案があったことはございません。

 それはどういうことかといいますと、確かにおくれてはおります。おくれている事情は先生が一番御案内のことかもしれません。私どもとしては、SACOの着実な実施ということが沖縄の県民の方々の御負担を減らすことにもなるし、抑止力を確保することにもなると今考えておる次第でございます。

 したがいまして、このことにつきまして、米国と私どもとの間に認識の相違はございませんので、今現在は、SACOの着実な実施によって沖縄の県民の方々の御負担を減らす、このことはもう外務大臣も私も常に申し上げておることでございますし、そして同時に抑止力を確保する、それが現在のSACOの着実な実施だというふうに考えておる次第でございます。

東門委員 実は、昨日、辺野古の方では、環境アセスに向けての事前調査としてボーリング調査が始まろうとしました。しかし、地元住民がかなり、沖縄県民がと申し上げた方がいいかもしれません、かなり反対がありまして、なかなか着工できない、着手できないというところではあろうかと思うんですね。

 それに加えまして、一九九八年ですが、米連邦議会会計検査院、GAO報告では、普天間代替基地について、綿密な調査と分析に基づいて、膨大な建設費、維持費、環境汚染などが将来問題化するだろうと警告をしていたわけですね。そういうことが恐らくラムズフェルド国防長官の中にもあるのではないかと思うんです。

 昨日スタートしようとしたボーリング調査に反対をしているのも本当にそれなんです。膨大な建設費がかかる、あるいは、周辺海域とサンゴ礁などへの悪影響、それが指摘されている。ジュゴンの問題がある。そして、エコツーリズムで、しっかりとこれからツーリズムを伸ばしていこうとしているこの北部の皆さん、その住んでいる静かな住宅地、そこが米軍基地になっていくということへの不安、いろいろなのがある。

 それを見てとって、ラムズフェルド国防長官は、普天間基地を視察された際に、そういう発言、いわゆる、ここにあって事故がないのがおかしい、早くどうにかしろ、そのままの言葉じゃないんですが、そういうような趣旨のことをお話しになったということだと思うんですね。

 そういう意味で、では、普天間基地についてはラムズフェルド国防長官とはどういうお話があったか、そこもお聞かせいただけたらありがたいと思います。

石破国務大臣 GAOの報告というのを私はすべて読んでおるわけではございませんが、なぜお金がかかるか、なぜ時間がかかるかということは、まさしく、住民の方々のお気持ちにきちんと配意をし、そして環境も守りつつということで、時間がかかっても着実にステップを踏みながらやっていかねばならないと考えておるわけでございます。

 普天間についてラムズフェルド長官から何か話があったかということでございますが、私と会談をいたしました次の日にラムズフェルド氏は普天間へ行ったと思っております。ですから、私と会談をいたしましたときの前の晩、そしてまた会談の日と二日ございましたが、SACOの着実な実施ということを私どもから申し上げ、そして沖縄の県民の御負担を減らさねばならないということを申し上げ、それを踏まえた上で、ラムズフェルド長官が普天間をごらんになったということだと思います。

 その後、それを見て、今先生が表現をなさいました、危険だ、何とかしろとおっしゃったことを踏まえて、さらに私どもの方に、何か米軍として、SACOよりも、より以外の手段があるというような、そういうような提案があったかといえば、そういうことではないということでございます。

東門委員 今の防衛庁長官のお言葉、しっかりと承りました。

 ただ、SACOはもう既に破綻をしているということは、それは御存じだと私は思います。八年もたって、五ないし七年が、一年も過ぎているわけですね。そういう意味からしても、なかなかこれはできないでしょうということは申し上げておきたいと思います。

 それで、国民保護法案についてお伺いします。

 国民保護法案で言う国民とはだれを指しているのか。すごく簡単な質問なんですが、そこからお聞かせいただきたい。国籍法に言う国民なのか、それとも地方自治法に言ういわゆる住民を含むものなのか、井上大臣、お聞かせください。

井上国務大臣 国民というのは、厳格に解釈すれば、その国の国籍を持っている者ということだと思いますけれども、この有事法制法案では、実質的に、外国人につきまして区別をして取り扱うということは今のところは考えておりませんので、地方自治法で言う住民と同じような理解でよろしいかと思います。

東門委員 それであるならば、はっきりとそれは明記すべきじゃないでしょうか、例えば住民保護法案だとか。国籍法だけで国民保護法案というと、やはりそういう勘違いが出てくると思います。私は、しっかりとわかるように、在日外国人も結構おられるわけですから、その方たちが、私たちもいろいろな避難・誘導するときはその対象だということがわかるようにするべきだと思います。ぜひそうしていただきたいと思います。

 それから、五条の二項なんですが、その中に、「いやしくも国民を差別的に」取り扱ってはならない、そういう旨の規定がありますが、その「いやしくも国民を差別的に」取り扱う、これは具体的に、ちょっと読んで私はわからなかったものですから、お聞きしたい。だれがだれをどういうふうに差別をして扱うかということを、こういうことですよとおっしゃっていただければありがたいと思います。

井上国務大臣 それは憲法の解釈では、国とか自治体、含まれると思います。正当な理由がないのに差別をしちゃいけないというのが憲法の規定だと思いますので、私はそのように理解をしていただいていいと思うのであります。

東門委員 済みません、私、今のお答え、全然わからなかったんです。もう一回、何か自治体も含まれると思いますとかなんとかおっしゃったような気がするんですけれども、もう一度御答弁、はっきり明確にお答えを。

井上国務大臣 国も自治体も、つまり公の機関ですね、機関が差別的に扱ってはいけないということだと思います。

 それから、その前についておりました「いやしくも」ですか、これは、正当な理由がある場合に、区別をして、取り扱いを違えるという場合もあり得るものですから、そういうようなことを書いたんじゃないかと思うんですが、原則的に、同じような権利や自由を持つということとして取り扱いをなさい、こういうことでございます。

東門委員 わかったようなわからないような感じですけれども、いいと思います。

 再度同じ質問をさせていただきます。

 前回お伺いしました件なんですが、沖縄県、先ほど吉井議員からも御質問ございましたけれども、沖縄の状況はよく御存じだと思います。島嶼県であるということ、そしてそこに、本島でいいますと約二〇%近くが、本島の一九%ぐらいですか、一九%が米軍基地であるという現実。そういう中で避難、いざ何かあるときに、では避難をしなきゃいけない、そのときにどうすればいいんでしょうかと私お聞きしましたら、大臣のお答えは、県内での避難という場合もありましょうし、ほかの地域、九州その他への避難ということもあり得るというような御趣旨の御答弁でしたけれども、今申し上げましたように、沖縄県内は、本当に、どこに避難していいかわからないようなところだと思うんです。

 米軍基地が大き過ぎる。特に中部の主要都市あたりはそうなんですよ。交通網も遮断されている。どういうふうに避難をすればいいのかということ、どういうことが想定されるか。

井上国務大臣 米軍基地があるというのは現実でありまして、したがいまして、そういう現実を踏まえて、どういうような避難をするかというのを自治体が考えるということであります。

 国の方針も、そういうことを包含するような指針になろうかと思いますが、そういう指針を踏まえて、県なり市町村が具体的に避難の方法について、あるいは経路について考えていくということだと思います。

東門委員 あれだけの大きな米軍基地でしたら、国が指針を策定する、それを県に、あるいは市町村におろしていくということなんでしょうけれども、そう簡単にはいかないと思うんですね。やはり何らかの形で整理縮小していかなければ、沖縄県民は本当に、いざというとき、政府が想定しておられる、私たちは想定しなくても、こういう法律は要らないと思っている立場ですから、政府が想定しておられる有事というときに、また再度同じような、そっくり同じではないにしても、似たような悲惨な目に遭う可能性は大いにあると思うんですよ、あれだけの基地を抱えていれば。

 ですから、それに対しては、政府として、それに先駆けて整理縮小をしっかりやっていかなければ、県民はまたつらい目に、いや、つらいだけではないですよ、多くの犠牲者を出してくるということになると思います。そこは本当にしっかりと私は政府に考えていただきたい、これは強く申し上げておきたいと思います。

 時間がかなり迫っていまして、たくさん準備してきましたけれども、何か全部はできそうもないような感じですが、ジュネーブ条約第一追加議定書第五十八条、この件ですが、先ほども質問がございました。「攻撃の影響に対する予防措置」として、「紛争当事者は、実行可能な最大限度まで、」「自国の支配の下にある文民たる住民、個々の文民及び民用物を軍事目標の近傍から移動させるよう努め」、また「人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避ける」旨が規定されています。

 先ほどから申しておりますが、沖縄県には在日米軍専用施設・区域の約七五%が集中しています。そして、米軍基地のすぐ隣に住民が暮らしている状況にあります。それは、大臣、よくおわかりだと思います。本議定書に加入をするのならば、住宅密集地に存在する米軍基地、それにやはり、先ほどから申し上げております整理縮小が不可欠ではないでしょうか。これは外務大臣の御見解を伺いたいと思います。

川口国務大臣 これは先ほど別な委員の御質問にもございましたけれども、ジュネーブ諸条約第一追加議定書の五十八条、これは、攻撃を受ける側の紛争当事者が、実行可能な最大限まで、攻撃の影響に対する予防措置をとるということを定める規定であります。この五十八条の(b)ですけれども、(b)の規定も、武力紛争時において、「紛争当事者は、実行可能な最大限度まで、」「人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避ける」、その旨を規定したものであるわけです。

 ジュネーブ議定書の、第一追加議定書の五十八条との関係では、在沖の米軍の基地あるいは施設、この現状が問題となるということではないということでございます。

東門委員 いや、問題になり得るということはありませんか。

 これは、住宅密集地にいるわけです。米軍基地のすぐ隣に住民が暮らしているわけです。何かあれば米軍基地は無傷ということはないと思います。むしろ私どもが心配しておりますのは、米軍基地が余りにも大きくあり過ぎるために、何かあるとまず沖縄がやられるだろう、こういう不安が沖縄県民にあるということなんですよ。

 そういうことから、今申し上げているのは、やはりこのジュネーブ条約第一追加議定書もそうですが、先ほどお話ししましたことも、やはり整理縮小していかなければ沖縄県はまた同じような目に遭わされるという不安が大きくあるということを申し上げているんですが、大臣、よろしくお願いします。

川口国務大臣 五十八条(b)の規定ですけれども、繰り返しになりますが、これは、「紛争当事者は、」と書いてあるわけですね。それは、紛争が起こったときでなければ紛争当事者にならないわけです。そして、「実行可能な最大限度まで、」というふうに書いてある、できる限りということを言っているわけでございます。平時において密集地にそれがあるということがこの条約上問題になる、追加議定書上問題になるということではないということであるわけです。そこにおける義務を言っているわけではないというふうにきちんと申し上げた方がいいと思います。

 もちろん、これは言うまでもございませんけれども、沖縄において集中をしている、七五%が沖縄にあるという事実はあるわけでございまして、これにつきましては、私も防衛庁長官も繰り返し申し上げているわけですけれども、この御負担を減らすということが大事であるというふうに思っております。SACOの最終報告の着実な実施を行っていきたいというふうに考えております。

東門委員 いや、平時では関係ないとおっしゃるんですが、有事になればまだまだひどくなるわけですから、平時にこれは手をつけるべきでしょうということを私は申し上げているわけです。

 時間が迫っています。あと一問はできるかと思いますので、よろしくお願いします。

 今回の日米物品役務相互提供協定、これはACSAですが、その改正により、今後、新たな物品、役務を提供するためには、その根拠となる法律の規定を付表2に追加することになるようです。

 この付表2は、両政府間の交換公文により修正できることとされており、国会の承認対象とはなっていません。このように国会承認を得ないまま実質的に条約を改正することができるようにすることは、国会の条約承認権をないがしろにするものだと言えると思います。

 政府は、国会の条約承認権についてどのように考えておられるのか。これは外務大臣でしょうか。

川口国務大臣 一般的に申し上げまして、国会の条約審議権、これを十分に尊重するということは、政府の当然の責務であるということだと思います。

 それで、ACSAの改正協定ですけれども、これは、その発効後に米軍への物品、役務の提供権限を自衛隊に追加的に付与をする新たな立法措置、これを国会がとったといたします。とった場合には、改めて国会の承認を経てACSAを改正するということではなくて、政府間の交換公文、これによってその法律の関連の規定をACSAの付表に追記をするという修正手続を行い得るということが、この十二条に授権されているということであります。

 ということでございまして、一般論として、国会の条約審議権は十分に尊重されるということでございますけれども、このACSAのおっしゃった箇所については、それはそのような授権がなされているということでございます。

東門委員 いや、私が伺っていますのは、どうして交換公文でやれるようにするんですか、やはり国会の承認は必要なのではないかということを、そうするようにすべきではないかと申し上げているのであって、いや、これがどうなっていますということではないんですよ。やはり国会がちゃんと承認をする、それでなければ……(発言する者あり)そうですね。はい、では。

自見委員長 川口外務大臣、質問時間が終了いたしております。簡潔にお願いをいたします。

川口国務大臣 そういう規定はほかの協定でもございまして、例えばシンガポールとのFTAの協定もそういうふうになっております。

東門委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

自見委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案件審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十一日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十七分散会


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