衆議院

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第8号 平成16年4月23日(金曜日)

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平成十六年四月二十三日(金曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      江崎洋一郎君    遠藤 利明君

      大村 秀章君    金子 恭之君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      塩谷  立君    菅原 一秀君

      田中 英夫君    谷  公一君

      中西 一善君    中山 成彬君

      仲村 正治君    西野あきら君

      蓮実  進君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    山口 泰明君

      大畠 章宏君    奥村 展三君

      鎌田さゆり君    篠原  孝君

      末松 義規君    田島 一成君

      武正 公一君    筒井 信隆君

      中川 正春君    長島 昭久君

      楢崎 欣弥君    細野 豪志君

      松崎 公昭君    松本 剛明君

      渡辺  周君    上田  勇君

      大口 善徳君    桝屋 敬悟君

      赤嶺 政賢君    塩川 鉄也君

      吉井 英勝君    照屋 寛徳君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   法務副大臣        実川 幸夫君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (消防庁長官)      林  省吾君

   参考人

   (独立総合研究所代表取締役社長兼首席研究員)   青山 繁晴君

   参考人

   (軍事アナリスト)    小川 和久君

   参考人

   (早稲田大学大学院教授) 小尾 敏夫君

   参考人

   (日本弁護士連合会有事法制問題対策本部本部長代行)            村越  進君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  植竹 繁雄君     西野あきら君

  林田  彪君     金子 恭之君

  鎌田さゆり君     篠原  孝君

  川端 達夫君     田島 一成君

  赤嶺 政賢君     吉井 英勝君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     林田  彪君

  西野あきら君     近藤 基彦君

  篠原  孝君     鎌田さゆり君

  田島 一成君     川端 達夫君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     植竹 繁雄君

  塩川 鉄也君     赤嶺 政賢君

  山本喜代宏君     東門美津子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件を一括して議題といたします。

 本日は、各案件審査のため、参考人として、独立総合研究所代表取締役社長兼首席研究員青山繁晴君、軍事アナリスト小川和久君、早稲田大学大学院教授小尾敏夫君及び日本弁護士連合会有事法制問題対策本部本部長代行村越進君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、青山参考人、小川参考人、小尾参考人、村越参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知をいただきたいと存じます。

 それでは、青山参考人にお願いいたします。

青山参考人 おはようございます。青山繁晴でございます。

 本日は、自由民主党の御推薦をいただきましてこの機会を与えていただいたわけでありますけれども、なるべく不偏不党といいますか、主権者の立場で申したいと思っております。

 理由は二つございまして、一つは、私の属しております独立総研は、日本の政府機関やアメリカやヨーロッパ諸国、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、スイスと連携して安全保障の実務を行っておりまして、実務といえどももちろん党派色ある場合もありますけれども、基本的には実務は不偏不党でございますから、その立場で話させていただきたいと思います。もう一つは、この独立総研は、どこの団体、企業グループなどからも支援を受けておりませんので、そういう意味でも公正中立なお話をさせていただきたいと考えております。

 本日は、事務局の方から、理事会において、緊急事態対処基本法に重点を置いて意見を述べよというお話をいただいております。緊急事態対処基本法につきましては、まさしく、原理原則のところも含めまして基本的な考えを述べさせていただき、その後、国民保護法制につきましては、現在、私どもが自治体あるいは総務省と連携して国民保護法制の整備の実務を預かっておりますので、一部担っておりますので、そこは詳しく、具体的な話を少しさせていただきたい。

 それから、FEMA、日本版FEMA云々の話、緊急事態管理庁ないし危機管理庁のことにつきましては、アメリカのFEMAと一緒に仕事をしておりますので、その実態を含めてお話をさせていただきたいと考えております。

 まず、緊急事態対処基本法についてでございますが、憲法につきましてお話ししたいと思います。憲法につきましては、先生方に意見を申し上げるのは僣越でございますが、あえて申し上げたいと思います。

 日本国憲法、今憲法調査会を含めて改正論議が盛んになっているわけですけれども、基本的には、国民の安全と国家の平和を具体的にどう守るかという定めがないものと私は理解しております。この憲法が平和憲法であることは疑いを挟む余地はありませんけれども、その平和の理想について具体的な定めがないのではないかと考えている次第であります。

 第九条の第一項に、武力の行使、それは武力の威嚇も含めて行わないと明記し、第二項において、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と。さてその上で、ではどうやって国家の平和と国民の安全を守るかについては、いわば第三項が抜けているわけであります。唯一、憲法の前文に、「諸国民の公正と信義に信頼して、」それによって平和を守るという趣旨のことが書いてあるわけでありますが、この憲法前文の定めにつきまして、議員先生方の間にも、現実と合っていないのではないか、例えば朝鮮半島の現状をかんがみるに、公正でなく信義も持てない国があるから、この前文が現実に即していないという議論も聞くわけでありますが、私はそれではまだ不十分だと思っております。

 肝要なことは、いつの時代、どこの時点におきましても、どの国家におきましても、当該政府は自分たちの国家が公正で信義であると確信しているわけです。現在の北朝鮮における、いわゆるテロ国家と名指された国家であっても、あくまでその指導部は自分たちの公正と信義に基づいて行動しているわけでありまして、そうしますと、国際社会の現実は、常に諸国がそれぞれの公正と信義を掲げるということがございますから、この前文をもって平和を守るための具体的な策があるとは考えにくいと考えております。

 さてその上で、どうしてこういう憲法になったかを考えますと、事実は明白であると思っております。さっき申しました、九条の第三項があるかわりにアメリカにお任せする、アメリカ合衆国との同盟関係において我が国の安全を保持するということが明白に今まで続いてきたわけであります。

 しかし、それが既に、冷戦構造が崩壊した後、アメリカにすべてをお任せする時代でなくなっていると考えておりまして、今回のイラクへの自衛隊派遣についても、アメリカの言うがままに送ったというよりは、我が国が独自の判断をして、アメリカと協議をして現在の派遣も継続しているのではないかと私は考えておりますので、この第三項を補う、ないしはアメリカとの新しい同盟関係、つまり、アメリカの一部として活動する防衛力を持つのではなくて、すなわち、具体的に言いますれば、海上自衛隊は通常戦力としては世界有数の戦力と考えなければなりませんけれども、例えばアメリカの第七艦隊に潜水艦部隊が実質的にないのは、日本の海上自衛隊の優秀な潜水艦能力に依存しているからであります。

 そういう米軍の補完である防衛力の変更も今始まっているわけでありますから、そういう意味において、緊急事態対処基本法、ないしは本来議論されてきた安全保障基本法のような、最もベーシックな法体系が必要だと考えております。

 さてその上で、そのあるべき性格を考えますときに、特に所管庁におきましては、安全保障基本法ないしは緊急事態対処基本法を策定する際には、災害対策基本法やあるいは原子力災害対策特別措置法、いわゆる原災法と重なる部分があるから、これを統廃合する手間が大変であるという声もよく聞かれるわけであります。私のところにも官庁からその声は届いております。さらには、自衛隊法や防衛庁設置法との絡みでも整合性を図るという議論が聞かれるわけであります。

 まず前者について言いますと、災対法や原災法との統合を当面進める必要は特にないと思います。何となれば、さっき申しましたように、この緊急事態対処基本法のあるべき姿というものは非常に基本的なものでありますから、災対法や原災法と矛盾しない限りは、基本法ができたからといって直ちに統合すべきものであるとは考えにくいと思います。

 ところが、自衛隊法、防衛庁設置法に関しては、実はこのままですと基本的な整合性に問題が生じる、矛盾が生じる点があると考えております。何となれば、現在の私たちの自衛隊には、世界の先進国の軍隊ないし軍事組織、防衛組織にない、極めて特徴的な問題点が二つあるわけであります。

 一つは、市民社会との整合性、市民社会におけるルールとの混同であります。

 自衛隊は軍隊であるのかないのかという論議が延々とこれまで繰り返されてきたわけであります。国際法上は軍隊として扱われています。例えばアメリカの国防総省から見ますと、通常戦力においては、米軍を除けば世界第一位の戦力に近いという判断もなされているわけでありますが、しかし、それでもなお法的には自衛隊は軍隊ではあり得ないと考えております。

 どうしてかといえば、それは軍法会議を持っていないからであります。自衛隊が軍法会議を持っていない理由といいますのは、察するに、我が国の戦前の歴史におきまして、旧帝国陸軍、海軍の軍法会議というものは、軍内のルールを確立するためというよりは、軍内の不祥事を国民の目から隠したり、あるいは軍がいわば勝手に行動できる基本として存在していたから、その反省に基づいて、軍法会議が現在否定されて自衛隊が存在しているわけでありますが、これは本来は、帝国陸軍、海軍というものが崩壊し民主国家となった段階で、市民社会とは違う軍法会議を持った国軍が創立されるべきであったと考えております。

 軍法会議というものは、基本的には市民社会と違うルールが厳然と存在するということをむしろ主権者市民の側に見せるものであると思っております。

 私たち普通の市民生活においては、例えば私の家族が傷つけられても、その復讐として人を傷つけたり、あるいは私の財産が傷められたからといって、相手の財産を傷つけてはいけないわけでありますけれども、国際社会においては、国家の間において、相手の兵員を殺傷することもあり得るし、戦車や軍艦のような相手の器物を損壊することもあり得る。そのために、市民社会と違うルールが厳然と存在することを示すのが本来の軍法会議であると思っております。

 そういう意味で、実は私たちの祖国というものは、戦争の反省といいながら、本当は、例えばすべて旧軍に押しつけたり、戦前の体制に問題を押しつけたのであって、私たちの民主主義における新しい、国軍を含めた体制というものをつくってこなかったんじゃないかと思っております。

 したがって、緊急事態対処基本法ないし安全保障基本法を策定した際に、この市民社会とルールが混同されている部分の矛盾が残ってしまう。

 第二の点は、自衛隊においては、その行動のすべてにおいてポジティブリストしか持っていないわけです。つまり、してもよいリストだけが存在する。

 ところが、日本を除くすべての先進国の防衛組織、軍事組織ないしは軍隊においては、すべてネガティブリストであります。してはいけないリストが存在する。現実に敵と向かい合うことを想定しなければいけない。つまり、命のやりとりをする組織において、これはしてもよかったのか、これはしてもよいリストに入っているかということを確認するということは至難のわざでありまして、至難のわざといいますか、実際は不可能だと考えております。

 現在のイラクに派遣されている自衛隊だけではなくて、実は、防衛出動が発令された後においても、自衛隊の中にはこういう疑問点も存在していなくもないわけであります。

 したがいまして、このポジティブリストしか持っていない問題というものをそのままにしますと、安全保障基本法や緊急事態対処基本法が生まれた際に、矛盾が拡大する形で残ることを懸念しております。

 持ち時間十五分ですので、非常に立て板に水で基本の部分を話してしまいましたが、この後少し具体的なことをお話ししたいと思います。

 次に、緊急管理庁の創設の問題であります。

 これにつきましては、私を含め、私のような安全保障にかかわる人間ないしは与野党の先生方におかれましても、基本的な必要性というものは多分御異存がないところだと思います。しかし、やや懸念しておりますのは、特にアメリカのFEMAについて、緊急事態管理庁、アメリカのFEMAにつきまして、やや幻想といいますか、思い込みといいますか、誤解があると考えております。このFEMAと私どもは常日ごろ連携して仕事をしているわけでありますが、その機能というものは極めて限られております。

 まず、少し整理しますと、このFEMAは現在、御承知のように、九・一一同時多発テロの後、アメリカの国土安全保障省に統合されました。一たんFEMAという名前を消したんですけれども、単なる一部局の名前に変わりましたが、アメリカ国民に理解されずに、国土安保省の中に再びFEMAという名前の組織が復活した状態になっているわけであります。

 ただし、この国土安保省についてまず幻想があって、実際は、御承知かと思いますけれども、FBIもCIAもこれに入っておりません。国防総省の情報に関する部分、たった九十一人しかいないスタッフのところは国土安保省に統合されましたが、それ以外のところは統合されずに、アメリカの国土安保省に情報部門は置かれましたけれども、CIAやFBIないしDIA、そういったところの情報が統合されているとはとても言いがたいわけであります。

 したがって、FEMAについては、緊急事態をすべて統合して、それに対応して、いざとなればFEMAに機能が統合されるというのは、はっきり言いますと甚だしい誤解であると思っております。

 これは実際に、例えば重大テロに関して言えば、重大テロを未然に防いだり、それから、テロが起きた場合に、そのテロリストの行動を抑止したりという機能は持っていないわけであります。あくまで、起きた災害がそれ以上広がらないように、住民の避難や、あるいは化学兵器ですと、ガスの拡散、例えば服にしみ込んだガスを、それ以上二次被害を与えないために、FEMAの権限において、被害者であっても裸にしてその服を遺棄する、廃棄するというようなことについてはFEMAは権限を預かるわけでありますが、部分的な活動にすぎないというところを考える必要があります。

 したがって、日本版FEMAをつくるという話がよくされるわけでありますけれども、それはアメリカを参考にするのではなくて、一から、日本版といいますか、日本独自のものを考える必要が存在していると思います。

 その際にぜひ先生方にお考えいただきたいのは、さっき軍法会議のところで触れました問題と同じなんですけれども、安全保障にかかわる諸機関、防衛庁・自衛隊以外の機関を考えましても、警察を考えても、実は、警察庁というものは国家警察とは国際社会においては呼ばれないわけであります。あくまで日本の警察は自治体警察でありまして、警察庁は、調整機能は持っているけれども、直接の指揮権は実質持っておりません。

 なおかつ、国家警察じゃありませんから、直轄の部隊を一切持っておりません。警察の特殊急襲部隊、SATも各自治体警察に属しておりまして、例えば、原子力発電所で何か重大な事態があったときにも、福井なら福井にSATを派遣されても、それは福井県警本部長の指揮下に入ることが原則であります。この国家警察を欠如している先進国というものも、私の知る限り、ほとんど見当たらないわけであります。

 これも恐らくは、推察するに、戦前に特別高等警察、特高警察があって、それが国民の正当な権利を甚だしく侵害したから、とりあえずその特高警察を復活させないところでとまっていて、私たちの新たな民主的な国家警察をつくるところに及んでいないという問題が、戦後五十九年間にわたって営々として残ってきたと考えております。情報機関、あるいはさっき言いました国軍といいますか国民軍についても、実は同じことであろう。

 そうしますと、危機管理庁を創設する際に、内閣官房にそれを置くだけではなくて、こういう国家警察の不在を含めた、私たちの歴史の本当の総括、戦前の総括というものを行った上で、この日本の危機管理庁をぜひ創設していただきたいと考えるものであります。

 もうそろそろ時間ですね。お時間が近づいてまいりましたので、あと二点だけ申し上げます。

 一つは、国民保護法制についてでありますが、例えば鳥取県のように非常に先進的に取り組んでいるところがありますけれども、鳥取県においては、県民に対してどういう脅威が存在するかを説明するのに苦労している現状があるわけであります。

 それは、例えば、鳥取の砂丘から着上陸侵攻した敵が京阪神に向かう途中に鳥取県に危害を及ぼすという想定になっておりまして、それはそれで非常に工夫された想定だと私は考えております。しかし、実際の重大テロというものは、実際の脅威というものは、そういう形で起こることはもはやほとんど考えられない。実際は、例えば天然痘ウイルスのように、姿なきテロで起こるわけでありますから、国民保護法制に取り組まれる場合に、現実の脅威というものをもう一度洗い直す作業が必要であると考えております。

 最後に、憲法の問題に戻りまして、憲法九条と前文の問題だけではなくて、憲法第六十五条には「行政権は、内閣に属する。」と書いてあるわけであります。これは、アメリカ合衆国においては、先生方御承知のように、合衆国憲法第二条において、行政権は合衆国大統領に属すると、ただ一点の責任に帰することが明記されているわけであります。

 内閣というものは基本的に調整機関でありますから、閣議も調整会議でありますから、そこに行政権が属するという体制自体が、実は危機に対する対処の弱さというものをつくっているものだと私は考えております。

 済みません。お時間、超過しました。ありがとうございました。(拍手)

自見委員長 ありがとうございました。

 次に、小川参考人にお願いいたします。

小川参考人 おはようございます。小川でございます。きょうはお招きいただきまして、ありがとうございます。

 私は、本日は、緊急事態対処に関する基本法を中心にちょっとおまえの考えを述べてみよということでございますので、これまで政府の危機管理の末端で実務者としてかかわってきた、そういった経験を踏まえまして、若干の問題提起をさせていただきたいと思っております。

 私自身、危機管理ということでいいますと、おととしまでの二年間、内閣の情報集約センターあるいは危機管理センターの能力を向上させるための研究会の主査をやってまいりました。そこで目の前に展開された状況というのは、惨たんたるものであります。関係省庁から優秀な上級職のキャリアが集まり、しかも、能力は持っていながら、そこにおいて、情報の収集の基本すらわからない、集約の仕方もわからない、ただ単に座っておる。そして、そこで時間がたっていって、おれはこの後出世できるんだろうかという心配ばかりをせざるを得ない。そういった状況が繰り返されてきたわけであります。

 やはりそういった問題を乗り越えていかなければいけないということでございまして、とにかく我々は、法律や制度をつくるとき、それをつくることを自己目的化し、それができれば一段落ということになってしまう。それが機能するかどうかをチェックすることがなく過ぎてきた国民性を持っております。

 そういったことから、私は、法律や制度を絵にかいたもちにしないための条件ということにおいて、やはりこの緊急事態基本法というものを考えたいと思っております。

 つまり、縦割りを克服するためには、条件が二つある。一つは、緊急事態基本法のような法律である。そして、もう一つの条件は、この基本法を機能させるための組織であるということなんです。

 概念図的にここに図をかきました。これは、国家安全保障会議、モデルになるといいますか、それをそのまま、まねするわけではありませんが、アメリカのホワイトハウスのナショナル・セキュリティー・カウンシル、こういったようなものが一つある。そして、それのもとに、危機管理あるいは国の防衛、安全保障に関しては二つの柱がきちっと存在しなければ、国の安全というのは図れないわけであります。

 当然ながら、軍事に関しては、防衛庁・自衛隊でございます。これが一つの柱です。

 ただ、いま一つ、これは軍事にかかわるところもあるし、あるいはテロや災害や、そういったものにかかわるところでありますが、ここにおいて、消防、警察、自治体が実は縦割りで、消防と警察の間で本音の話し合いができないんですよ。たまたま同期の課長がいて仲がいいという場合には、ひっそり話ができる。しかし、セカンドトラックをつくれと言ったって、ではやりましょうと言うけれども、全然機能しない。そういう中で、お互いの言葉の統一も、装備についての知識もないわけであります。

 だから、消防、警察、自治体などを束ねるという意味で、日本版のFEMAという言い方を私はいたしましたが、緊急事態管理庁あるいは危機管理庁のような組織をつくるべきだろうということで、ここにかいております。

 ただ、先ほど青山さんの方からありましたように、日本版のFEMAといっても、アメリカのFEMAを誤解しているようなことではいけない。統合するとか、そういう話じゃないんです。FEMAの、やはり我々が学ばなければいけない機能の一つは、コーディネートでございます。そういったようなことがきちっとできれば、国の安全というものは、相当レベル高く維持されるだろうと思います。

 まあアメリカの場合は、今も青山さんのお話にありましたように、このFEMAも含めて、国土安全保障省、DHSの中に入ってしまいました。私もことし三月までに三回アメリカにセキュリティーの関係で行って、DHSのリッジ長官とも会いましたけれども、やはりまだばらばらです。ただ、アメリカはアメリカなりの歩みを進めている。ただ、日本では、このDHSのような組織をつくるというのは、時期尚早も尚早。

 ネットワークのセキュリティーについて、私は今かなり深くかかわっておりますが、日本はアメリカと比べると大体二十年おくれですよ。IT戦略本部なんてつくらない方がいい。韓国に比べて十年おくれ、その自覚がないわけであります。IT戦略本部は、本部長は総理大臣、副本部長は総務大臣と経済産業大臣。それで何をやっておるのか。いや、IT化社会があれば便利ですという先生がずらっと並んでいる。

 だけれども、最初のときのIT戦略本部に関する文書には、セキュリティーという単語が三回しか出てこない。こんなばかな話がありますか。セキュリティーは、選択肢じゃないんですよ。必要不可欠なものなんです。まずそこから考えないと、国家の安全なんて図れない。

 その意味で、この条件の一、緊急事態基本法、それから条件の二、基本法を機能させるための組織というものを、きちっと我々は備えていかなければいけないのではないかなと思います。

 そういう中で、一つだけ前もって申し上げておきたいのは、危機管理庁あるいは緊急事態管理庁のような組織をつくろうということになりますと、行政改革に逆行するという声が、結構出ていた。

 ただ、私は、いろいろなところで日本の政府のお仕事にかかわる中で、むだなものはいっぱいあるんですよ。例えば、一つの審議会や委員会に私が出るとしても、連絡するだけで、一人の職員が八回も電話してくる。一回で済むんだ。では八分の一に減らせるじゃないかというのは、いっぱいあるわけです。そんなことをちゃんとやればいいんですよ。そういう中で、不要なものはどんどん削り、なくすものはなくす、そして必要なものをつくっていくというのはスクラップ・アンド・ビルド、これが行政改革であります。そういう中で、この緊急事態管理庁というものもお考えいただきたいなと思っています。

 ただ、私は、軍事問題の専門家の一員でありますし、本当の、自分自身で自信を持っているのは日米安保なんです。ただ、私は、消防審議会の委員をやったり、あるいは住基ネットの調査委員会をつくってもらって委員をやったり、そういうことをやっている。あるいは医療の危機管理についてもかなりかかわりがあるんですよ。だから、数年前には九州大学の医学部の大学院の教授になるかと言われたぐらい深くかかわっている。

 何で軍事と離れたところでやっているのかというと、応用問題と基礎問題という問題があって、日本人は、応用問題である国家の安全保障をきちっとした形で答案を書くために、基礎問題からできるようにならなきゃいけないのに、基礎問題である防災能力を高めようとか医療ミスから国民の命を守ろうとか、そういったようなことについて余りにも手薄な状態で来たからだ。基礎問題をきちっとできるようになるのはこれは間違いないんですが、そこに取り組んで基礎問題ができるようになれば、必ずや高度な応用問題である安全保障問題についても相当高いレベルで健全なものを日本国民は維持できるだろう、そういう期待があるから、そういう基礎問題のところにかかわっているわけであります。

 その中で、私は、縦割りの現実としてお手元のレジュメに書きましたのは、道路問題であります。私は道路族のお友達でもないし敵でもないんです。猪瀬直樹の友達でも敵でもない。まあ、あいつは二十五年ぐらい友達ではあるんですけれども。ただ、縦割りの現実を象徴するものとしてちょっとお話をさせていただきたい。同じような現実は、大規模テロや不審船対処の問題でもあるんですけれども、まあ、ひどいですよ。

 ここに書きましたのは、おととしの九月、国土交通省のナンバーツーである大石技監と道路の研究会をやったときの話です。私が指摘をしたメモの一部でございます。これは、もちろん大石技監、道路局長から来た人ですから、道路のエキスパートでありますが、そのとおりであるということを言っていました。そこのお話を申し上げたい。

 私は、そこで話をしたのは、国家建設、国づくりの目標は、国民に安全を保障すること、あるいは国民に繁栄を保障すること、もちろん一番大事なのは、国民に自由を保障することであります。その国家建設の目標の中に道路整備が位置づけられたことが一回でもあるのかという話でございます。

 結論から言いますと、一度もないというお答えでございます。このときは、委員長は東大の岡野名誉教授がやってくださいましたので、これは自民党の道路部会の方で報告をしていただいたはずでございます。ただ、その中で、私は、もう安全保障といったようなところは、危機管理といったようなところ、国民の命にかかわるところでも何にもないじゃないかというのを具体的には挙げざるを得なかった。

 例えば、ここにあるように、国の防衛については、ハイウエーストリップはあるのか、つまり道路を飛行場に使えるような格好になっているのか。先進国だったら常識であります。韓国だって八カ所ある。航空地図を見ればばっとわかりますよ。北朝鮮はアメリカ製の航空地図だと十三カ所ありますよ。日本の場合一カ所もない。これは韓国のケースでいうと、大体直線四キロ、上下二車線、そして厚さ一・五メートルの強化コンクリートでできております。そして、中央分離帯も照明灯もない。だから、有事には戦闘機が発着できるし、大災害や大事故のときは輸送機や大型ヘリがどんどん発着できる。日本であるのか、一カ所もないですよ。公共事業の金はこんなところでどこに行っちゃったんだという話になるわけであります。私は、公共事業はこういったことをちゃんと正すために使ってほしい、そういうお金として公共事業のことを考えてほしいという立場であります。

 あるいは、軍用車両の通行に耐える設計になった道路が一カ所でもあるのか。これは、重量物に耐えるというのは大型トレーラーがいっぱい通るからいいんですけれども、例えば、災害や何かのときでも戦車や装甲車を高速道路を使って移動しなきゃいけない場合があるわけですよ。戦車の前にブレードをつけてタンクドーザーという格好でブルドーザーに使わなきゃいけない場合もあるでしょう。装甲車だって、普賢岳のときにはキャタピラの車両しか入れないから溶岩流のところに入ったでしょう。

 そういったことで考えると、高速道路を使えなきゃいけないのに、日本の高速道路で自衛隊の持っている新しい戦車とか新しい装甲車が通れる料金所を持っているのは、東名の東京バリアの一番端っことか限られたところだけですよ。

 首都高速道路なんて入ろうと思ったら、サダム・フセインの銅像を倒すみたいに料金所を引き倒さなきゃ入れないんだから。だって、九〇式の戦車というのは幅が三メートル四十センチあるんですよ。新しいタイプの装甲車は三メートル二十センチあるんですよ。皆さん方が乗っていらっしゃるクラウンは一メートル八十センチ台ですよ。倍あるんですよ。そんな広いものをつくらなきゃいけないのは何だという議論はあるかもしれないけれども、これはこれで理由はあるわけであります。だったらこんなものを考えて道路を設計せいよと。

 ところが、国土交通省の人、旧運輸省の人あるいは建設省の人はこんな知識なんかないし、こんなものを聞こうという意識もない。自衛隊の側は道路建設にはかかわっていないわけであります。かくして、日本の道路は何にも使えない。

 あと、これは「上陸適地周辺の防御的設計」なんて難しいことを書いていますけれども、鳥取県の海岸に大規模地上部隊が上陸するなんということはあり得ない。これは、鳥取県で五年間新聞記者をやった私がよくわかっているし、上陸適地というのはあるわけです。つまり、一個連隊三千名ぐらいの各国の軍隊の一個歩兵連隊が上陸するためには、幅二キロの海浜が必要だとか、ちゃんとあるんですよ、ちゃんと軍事の公式というのが。だから、そういったもので考えれば、別な話を片山知事はしなきゃいけないわけであります。

 ただ、この上陸適地というのはちゃんとありまして、北海道においては、北方脅威論の時代にあった。でも、上陸適地が明らかなのに、その周辺で国を守るために道路をどう使うのか、あるいはトンネルを例えば戦闘機のシェルターとして使うのか、そんな発想なんか全くない。じゃぶじゃぶ金を使ってむだな道路やトンネルをつくったと言われてもしようがないわけです。私は、クマしか通らないところでも道路が必要だったらつくれと言っているんです。ただ、高規格道路をつくるようなワンパターンなばかなことをやる役人は首にせいと言っているわけであります。だから、その辺はちゃんとしていただきたい。

 あるいは、防衛計画と住民避難路の整合性なんて、考えられたことはないわけであります。これは次の防災の問題にもかかわるので、そこでお話をいたしますけれども、「防災計画と住民避難路の整合性」ということで書いておりますが、防災を考えた道路もないんです。一番日本で欠けているのは循環という発想なんです。

 阪神・淡路大震災の現場でいいますと、神戸があり大阪がある、大都市がある。それを結んでいる道路、高速道路はちょっと除外いたしますが、国道二号線が山側を走っている。そして海側を国道四十三号線が走っている。それを発災した地点によって融通無碍に組みかえて、一方通行で必要な流れができるような計画を持っていなかったら、何の意味もないわけであります。

 だから、ある事態においては国道四十三号西行き一方通行、国道二号は東行き一方通行、そして交通の流入点はわかっているから、陸上自衛隊は五百機のヘリコプターを持っていますので、その半分ぐらいは輸送にも使えますから、例えば白バイを三台ずつぐらい載せていって、そして交通の流入点におろして赤色灯をつけるだけで、日本人は従順だから、むちゃくちゃやじ馬が入ってくることはないんです。そこにおいて緊急車両の通行は確保できる。そんな発想が全くない。

 だから、鳥取県が住民避難の話をしても、これは自衛隊側にもプレゼンテーション能力がないという問題はあるんだけれども、例えば、あそこで幹線道路が、国道二十九号線、五十三号線など山陽方面に向かっている道路があります。海の側で、例えば津波が来るかもしれない、だから住民を避難させようでもいいじゃないですか。

 そうすると、片側一車線の幹線道路を使って住民が避難してくる。ただ、自衛隊は逆方向に行って災害の対処のための行動をしなきゃいけないとする。あるいは作戦行動の場合もある。往復二車線で動けるか。装甲車や何か大きな車両を持っていけば持っていくほど、路肩に寄れば崩れるんですよ。だから、センターラインを大きくまたいで前進しなきゃいけない。そうすると、前から来る住民を乗せたバスは二メートル五十ある。通れない。だから、完全に循環というのを考えなかったら、これは絵にかいたもちだよという話ですよ。そんなものをちゃんと考えているのか。

 これは、縦割りの中にいたら全然そういう発想は出ないんです。私のように、食いぶちは自分で稼ぎ、その分どこの役所にも手を突っ込むというやつじゃないとだめなんですよ。だから役人にならないんだ、なれと言われたって。その役所の何かポストの中でしかできないからですよ。でも、そういったことをちゃんと考えながらやっていただかなければいけないという話なんです。

 これは、津波と高速道路網の問題なんかは象徴的ですが、東名の由比のあたり、あるいは北陸道なんかは何カ所もありますが、ちょっと波が高ければ普通の車は走れない。何でこんなところに道路をつくるんだよという話でしょう。何も考えていない。

 あるいは、こればかり言っていると大変なことになりますが、あと、救急救助の問題なんかも考えていないんですよ。私はドクターヘリの実現に若干かかわった人間でありますが、あの救命効果の高いシステムを、我々は、西ドイツがスタートさせてから三十年間やらずに来た。その間に、救えるはずの国民の命を、例えば、二十五万人ぐらい殺してしまったと言えるぐらい問題はあるわけであります。これは厳密さを欠く話ですから、例え話でございますが。

 ただ、ドクターヘリが実際に動き始めてみたら、高速道路におりられない。だって、そういう設計になっていない。しかも、防音壁はあるわ照明灯は出ているわ。だから、私の自衛隊時代の後輩のパイロットが一人、ドクターヘリのパイロットがおりますが、もうぎりぎりで事故現場にドクターとナースをおろしたら、すぐまた離陸して、田んぼの上でホバリングしているんだそうですよ。それでまた迎えに来るとか。それはそれで運用できればいいけれども、やはり、道路の設計というのはきちんと考えなきゃいけないだろうという話でございます。そんなことだけじゃありません。だから、道路というのは、本当に三つ、四つ、五つの役所がきちっと調整されて、機能を発揮する中で国民の安全のために建設できるという話なんです。象徴的なケースなんでお話をいたしました。

 この縦割りの現実につきましては、大規模テロの問題、不審船の問題、挙げていけば三日三晩ここでしゃべってもいいぐらい例はあるんですよ。

 例えば大規模テロにつきましても、自衛隊、警察、海上保安庁、消防という組織、それぞれに機能しなきゃいけないけれども、武器一つとっても、自衛隊が普通だと思っている武器に関する知識を警察が持っていない、海上保安庁が持っていない、どうするんやという話ですよ。だから、海上保安庁にとってはRPG―7は重装備だそうですけれども、自衛隊にしてみれば重装備とは言わないですよ。それは、軽いか重いか、重火器という場合の分類には使いますけれども。そういうところから始まる。

 だから、一発迫撃砲弾がおっこってきたらびっくりする。戦場だったらどうなるんですか。一カ所の陣地をねらうのに、迫撃砲弾が百発ぐらい降ってきますよ。そんな中で戦わなきゃいけないんですよ。あるいは国民がびびるから、自衛隊もあんな避難しなきゃいけないわけですよ。そのための軍事組織なんだから。だから、やはり基礎知識だけはきちんと持とう、持たなければシビリアンコントロールはできないぞという話であります。

 あるいは不審船の問題も、あと一分以内に話しますが、武器に関する知識の格差が、自衛隊、海上保安庁の間にもあります。同時に、ずっと指摘をしてきた結果、新しい船についてはそんなことはないようにしようということで両方の役所が一致しましたが、同名異船、同じ名前の船がいっぱいある。「なだしお」事件のときは、四十九組九十八隻あった。この間の不審船の事件のときは、四十三組八十六隻あった。

 私は、海上保安庁の委員をやっているけれども、海上保安庁の委員会に行くと、主な船だけで、数少なく見せようとして悪知恵を使って出してくるから、違う、小船まで入れて同じ船がいっぱい並んでいるじゃないか、こんなばかな国がほかにあるのかと言うと、そうでございますと。海上自衛隊は、今、古庄さんという大変優秀な幕僚長がいまして、こんなばかなことはないと言っているから、何とか進んでいるんですよ。これを許してきたのは、我々国民ですからね。やはり反省しなきゃいけないだろう。

 私は、最後にお願いを申し上げたいのは、緊急事態基本法は国家生存のために不可欠な法律である。基本法を機能させるための組織、国家安全保障会議あるいは緊急事態管理庁のようなものを忘れずに備える形で、この法律をぜひ高度なレベルで制定していただきたい。そして、この基本法については、改正が融通無碍にできるような内容にもしていただきたい。それをお願いいたしまして、私の話にかえたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

自見委員長 ありがとうございました。

 次に、小尾参考人にお願いいたします。

小尾参考人 早稲田大学の小尾でございます。

 今、お二人の参考人のお話を私も聞きましたけれども、基本的には御両人と緊急事態基本法並びにFEMAに関して同じスタンスかなというふうに思います。ですから、余り長々としゃべらないで、偶然かもしれませんけれども、三人の意見が割と近いなということをまず私自身、認識しております。

 それから、緊急事態基本法に関してですけれども、日本国憲法に有事あるいは緊急事態に対して明確な考えが示されていないということであれば、この基本法は必要であるというふうに私は思っております。その場合に、具体的なアクションを基本法を通してとるとすれば、国民保護法制等現在の七法案というのが対象になるでしょうけれども、その中での連邦緊急管理庁とアメリカで言っているFEMAというのがかなり大きな意味を持っている。つまり、緊急事態基本法が成立するならば、当然、FEMAもその抱き合わせだろうという認識を私は持っております。

 それで、いろいろな問題点をここで指摘しながら考え方を述べたいんですけれども、いろいろ資料を見ていますと、この間、消防庁の資料で、国民保護法制が実際にまだできていないわけですから、現実に平成十五年度に都道府県が国民保護の専任職員を何人置いているかという資料がありましたけれども、五県でたった十人なんですよね。ですから、あしたテロが起きれば、日本じゅうが大混乱、パニックになるのはもう目に見えている、そういうお寒い状況であって、それを考えると、できるだけ早くこの対策は練らなきゃならないというのは基本的に必要だと思います。

 それから、実際に自然災害のような、地震とか台風とかあるいは大規模な火災に対する措置は、確かに災害法が四十三年前に、昭和三十六年ごろですか、できていますから、それはそれとしてありますけれども、余りにも古過ぎる。その後に冷戦時代からポスト冷戦、テロの時代へ移ったわけですから、当然、それを超える大きな法体系ができなきゃいけないということで、国民保護法制などを含めたきょうの議論になっているというふうに認識しております。

 具体的な幾つかの事例で考えていきたいと思うんですけれども、国民の生命財産を守るということを前提に今の国のあり方を見ますと、例えばどこかの地域でテロが起きた、その場合の指揮系統とかそれに対する情報収集、手続等はまだまだ迅速とは言えない段階ですね。総理大臣、官房長官、危機管理センター、そして閣僚会議、それから対策本部、都道府県、市町村、市町村の中でも消防と市長あるいは村長との関係、それが数分の間にできるとはとても思えないですね。テロが起きてから数時間たってやっと動き出すなんというようなことではしようがないわけで、そういう現実の問題からすると、危機管理庁的なものが常設されていて、二十四時間そのことを責任を持ってやっていくということに行き着くんじゃないのかなというふうに思います。

 それからもう一つの視点は、大震災があったりあるいは台風で大変な被害が起きたり、いろいろなことが、自然災害があった場合に、非自然災害である人災が同時に起こるリスクというのはあるわけですね。ですから、大震災のときにテロが発生するとか、あるいはテロも武力テロだけではなくて、サイバーテロ的に日本じゅうのコンピューターが破壊されるような危機的な状況も含めて、複合危機というのは必ず起きると思うんですね。そういうことを想定した国家的な情報収集なり、それを分析して市町村そして国民に伝えるというコミュニケーションだけとっても、決して十分とは思っていません。

 我々専門家の間で議論したときに、例えば携帯電話が非常に役立つとか、インターネットがあるとかありますけれども、携帯電話一つとっても、実際、無線基地局が破壊されてしまったら使えないわけですね。パソコンといっても、発電所が破壊されてしまったら電気が通らないという非常に脆弱な近代国家になっているわけですから、やはりそれに真剣に対応しなければ国民は納得しないだろうというふうに思います。

 その観点から、私から思うと、国が本当に地方地方の村まで含めた市町村、地方自治体を熟知しているかというのはなかなか難しいものがあると思うんですね。ですから、当然、地方分権の方に移っていく。そうすると、村や町の役場で専任の方はほとんどいないわけですから、そういうことになると、民間での自主的な防災組織とかいろいろなことも出てきますけれども、これとて、国民が国を本当に信用して、自分たちの財産あるいは生命が守られるという段階において自主的に行われることが多いわけですから、決して、国、政府というものが本当に日本じゅう隅々まで危機に対して十分対応できるとは言いにくいのかなというふうに思っております。

 そういう意味で、危機管理庁のような、全国的なネットワークを有し、特に調整機能を持っているところが大事だというふうに思います。

 それで、先ほど両参考人の方からアメリカの例を出していらっしゃいます。私も、アメリカの国土安全保障省やFEMA、長年研究してまいりましたけれども、確かに、日本とアメリカは全く同じということはないわけで、ブッシュ大統領がリーダーシップをとってできた、このFEMAあるいは国土安全保障省に関しても、二〇〇一年九月十一日の大規模テロがなければここまで急速な組織化はなかったかもしれません。二〇〇一年の九月から翌年の六月に国土安全保障省の構想が出て、そして十二月にはもう議会を通ったわけですね。そして、二〇〇三年一月に発足。つまり、半年の期間に、十七万人の職員を擁する、アメリカで三番目に大きい役所が二十二の官庁を統合してできているわけで、これは、アメリカに大規模テロがあったという現実の中で、議会も国民も納得した結果だと思うんですね。これは大統領のリーダーシップももちろんあると思います。

 それで、私たちが学ぶべきことは、そういうこととともに、日本との関係で考えますと、アメリカというのは五十の州が非常に独立してもともと地方分権の強い国、その国においてでさえも、国土安全保障省という、国民の隅々までネットワークを張る組織ができたということですね。連邦だけでやっていても何もできない国ですから、そういう意味では、日本はこの組織から学ぶものがあるのだろう。

 先ほど、FBIやCIAは入らないと。FBIは多少入っているんですけれども、これは、半年間という非常に短い期間に、アメリカで三番目の官庁ができる過程で、CIA等がかなり抵抗して、入りたくないという意思表示の中で、多少見切り発車した面もあると思うんですね。これは、三年も四年もかけていれば別な形の組織になったかもしれません。

 ですから、今回、我々が、日本の状況の中で危機管理センターのような内閣官房の組織をより充実させて、願わくば危機管理庁のような、市町村までネットワークが張れるような国民の理解を得る組織をつくっていった方が、実際にテロが起きたりあるいは武力攻撃があったときに対応できなければ国民はその内閣を信用しないわけですから、そういう意味ではぜひとも必要かなというふうに思います。

 そういうことに関しては、僣越ですけれども、七月の参議院選挙のような、国民、有権者の審判というのが、当然、この問題について、どの政党が本気で国民の生命財産を守るのかということで意思表示をしていくのかなというふうに思っております。

 それから最後に、日本の総理大臣に関してですけれども、二つ三つ、ちょっと付言しておきたいんです。

 まず、六月の初めに行われるG8サミット、ジョージア州のシーアイランドで行われます。テロ問題に対して、国連も非常に大事だということはもう何度も言われているようですけれども、でしたらば、サミットにアナン国連事務総長をお呼びして、ブッシュ大統領と世界の画面ではっきりと、協力体制を必要とするということを言っていただきたいなと。私も、以前国連の国際公務員をやっていましたけれども、アメリカが国連の最重要プレーヤーであることは間違いないわけで、そのぐらいの協力体制を日本から言っていただきたいなと。

 それから、危機管理庁のみならず、アメリカの国民が心配しているテロ、災害等に対するオペレーションセンターというのは、やはり日本のリーダーが見ていただきたいなと。いかに効果的にやっているか、あるいは逆に何が問題なのかということを、せっかくジョージア州まで行くんですからワシントンに寄ってというようなことも、私あえてこの場でお願いしたいと思っています。

 最後に、こういう法案、国民保護法制にしても基本法にしても、これは国民全体の問題意識の中で議論をしているわけで、政権与党と野党第一党が、国民を代表して、ぜひすばらしい案をまとめ上げていただくということをお願いして、私の方の見解といたしたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

自見委員長 ありがとうございました。

 次に、村越参考人にお願いいたします。

村越参考人 日本弁護士連合会、日弁連の有事法制問題対策本部本部長代行をしております村越と申します。

 本日は、有事法制関連法案、特に国民保護法案等につきまして、参考人として日弁連の意見を述べさせていただく機会をいただきましたこと、大変ありがとうございます。

 共産党の推薦ということで参っておりますけれども、もとより日弁連は特定の政党と何か連携関係があるわけでは全くございません。国会の場に来て意見を言えと言われれば、どのような形でも積極的に参加して発言をさせていただく、そういうことで本日参っております。

 日弁連は、申すまでもございませんが、全国の約二万名の弁護士が全員加入しているところの法律家団体でございます。法律家団体として、弁護士法に定められた人権の擁護そして社会正義の実現というものを使命としておりますし、また、法律制度の改善に努めることもその職責であります。

 日弁連は、そうした立場から、現在国会で関連法案が審議されております司法制度改革、これに総力を挙げて取り組んでいるところでございます。

 また、有事法制問題につきましても、政治的、政党的立場からではなく、あくまで法律家団体として、憲法と人権の視点から検討し、これまで見解を表明してまいりました。その基本的なスタンスは、有事法制そのものの是非あるいは必要性については会内でもさまざまな意見がありますので、その点については態度、判断を留保し、提案された具体的な法案について検討して意見を述べるというものであります。

 日弁連は、そうした検討の結果といたしまして、昨年の通常国会で審議、採択された有事法制関連三法案につきましては、一つは、武力攻撃事態等の範囲、概念があいまいであり、国会の関与が事後承認であり、政府の恣意的な判断を許すおそれがある。二つは、さまざまな私権の制約、社会生活の規制等が基本的人権の侵害につながるおそれがある、殊に、国民は国等の措置に「必要な協力をするよう努める」との規定は思想、良心の自由を侵害するおそれがある。三つ目として、周辺事態と武力攻撃予測事態が重なり合うことにより、集団的自衛権行使の危険性が高まる。四つ目として、内閣総理大臣に強大な権限が集中し国会等による民主的コントロールが弱まり、民主的な統治構造や地方自治が形骸化するおそれがある。五つ目として、NHKや民放を指定公共機関として政府の統制下に置くことは報道の自由や国民の知る権利を侵害するおそれがある、ひいては国民による政府の民主的チェックを不可能とするおそれがあるというふうに考えまして、日弁連として法案に反対するとの見解を表明いたしました。

 全国の四十六の単位弁護士会も、同様の見解を表明しております。

 現在審議されております七法案についても検討しておりますが、本日、時間がありませんので、国民生活に最もかかわりが深いと思われます国民保護法案についての意見を述べます。

 国民保護法案には、幾つかの問題点、疑問点がございます。

 第一は、緊急対処事態の問題です。法案は、第八章において、「緊急対処事態に対処するための措置」を定めています。緊急対処事態は、手段としては「武力攻撃の手段に準ずる」とされ、行為は「多数の人を殺傷する」とされている点で、武力攻撃事態等とは全く性格が異なりますし、その定義は甚だあいまいであり、その範囲はかなり広範にわたるものと考えられます。

 そもそも、テロ等は、原則として警察、海上保安庁等が治安問題として対処すべき事態であり、武力攻撃事態等における国民保護措置に関する法案にこのような緊急対処事態に対する措置をも含めて規定することには疑問があります。

 しかも、法案は、緊急対処事態においては、武力攻撃事態等と異なり、対処方針についての国会承認を不要としながら、武力攻撃事態等における対処措置の多くを準用しています。このような規定の仕方は、重大な武力攻撃事態等に対する対処措置を、全く性格や規模の異なる緊急対処事態にもそのまま準用するものであり、立法のあり方としても、また人権保障という観点から見ても、大きな問題が存在します。

 さらに、緊急対処事態は、「後日対処基本方針において武力攻撃事態であることの認定が行われることとなる事態を含む。」とされております。これは、国会の関与を排除しつつ、事実上、武力攻撃事態等の範囲を拡大し、あるいは時間的に前倒しすることにつながりかねず、そもそもあいまいであった武力攻撃事態の定義や範囲をさらにあいまいにし、政府の恣意的判断を許す危険性を有するものであります。

 次に、避難についてですが、法案では、住民避難というものが保護措置の中核に位置づけられております。しかし、この住民避難というのは、国民の保護措置として有効かつ適切に実施し得るのか、機能するのかということについては疑問があります。

 先ほど来触れられております鳥取県のシミュレーション、この現実性ということを考えましても、その非現実性あるいは困難性というものは明らかになっているのではないでしょうか。適切で実効性のある国民の保護とは何か、もっと議論が必要であると考えます。

 三番目に、立法事実の有無についてですが、言われているところの想定される有事事態は、弾道ミサイル攻撃、航空機や船舶により地上部隊が上陸してくる攻撃(着上陸侵攻)、航空機による攻撃(空襲)、ゲリラや特殊部隊による攻撃の四つでございます。国民保護法制の必要性、立法事実の有無という視点から見ますと、法案が予測しているそうした事態が発生する可能性の程度、それに対処する保護措置の現実性、実効性、さらに経済的、社会的合理性の有無等を勘案し、総合的な判断が不可欠であると考えます。

 次に、平時における作用ですが、法案では、指定行政機関の長及び知事は、あらかじめ内閣総理大臣と協議し、基本指針に基づき国民保護に関する計画を作成するとなっております。市町村長もほぼ同様でございます。それから、指定公共機関は、やはり基本指針に基づき業務計画を作成し、内閣総理大臣に報告する。内閣総理大臣はこれに対する助言権があるとされています。それから、地方公共団体は、平素から国民保護協議会を組織するということになります。さらに、国民に対し訓練と啓発に努めなければならないという規定が存在しまして、指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関に、平素から国民保護措置を的確、円滑に実施するための組織整備と住民訓練の実施を義務づけております。

 つまり、平時において有事に向けて準備を怠らないということではありますが、これは一方で、我が国の統治構造あるいは社会のあり方を平時から大きく変えていくということにもなるというふうに考えます。

 それから、日弁連として最も大きく考えております人権侵害の危険性ですが、法案の四条一項で、国民は、協力を要請されたときは、必要な協力に努めるようにするというふうな規定がございます。これは強制ではないということにはなっております。しかし、実際に、自主防災組織、ボランティアということが強調されております。そういう地域ぐるみの協力活動が平時から行われ、盛り上げられていく中で、本当にこれが強制にならないのかという点には疑問が存在します。国民の協力は、あくまで一人一人の自主的判断にゆだねられるべきものであります。

 さらに、協力を超えた具体的な強制措置としては、運輸の強制があります。運送事業者は、正当な理由がない限り拒否できない。物資の保管命令、売り渡し要請、収用もあります。違反に対して、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金です。土地、家屋、物資の強制使用、これも、立入検査を拒む等には三十万円以下の罰金刑があります。医療の実施指示ですが、医師、看護師その他の者に医療を行うよう要請することができ、正当な理由なく拒否したときは、医療の実施を指示できることになります。

 つまり、実際には、かなり広範な国民が、自発的な協力だけではなく、強制の対象となります。強制の根拠、要件は何か、拒否できる正当な理由とは何か、だれがどのように判断するのか、不服申し立てはどうするのか。財産権、営業の自由、幸福追求権等の人権にかかわるだけに、より明確な規定が必要であり、そうでないと、基本的人権の尊重を幾ら総則に書いてあっても、それが画餅に帰する危険性があります。

 最後に、報道の自由、知る権利についてですが、先ほど言いましたので簡単にいたしますが、指定公共機関にNHK、民放がなることにより、放送事業者は、放送の根幹にかかわる体制や報道姿勢について業務計画として作成し、これを内閣総理大臣に報告する義務を負い、かつ助言を受けるということになります。

 以上述べましたとおり、法案は、有事法制三法に至る過程では必ずしも十分に議論されていなかった、そして定義も明確でない緊急対処事態をも対象とするものであり、立法事実の有無や国民保護措置の現実性、実効性についても大きな疑問があります。さらに、基本的人権を侵害し、知る権利を制約し、地方自治を含む我が国の民主的な統治構造を平時から大きく変容させる危険性をはらんでいる、そういうふうに言わざるを得ないと考えます。人権と民主主義にかかわるこのような重要法案については、十分な国民的議論を尽くした上で、慎重な国会審議が求められていると思います。

 したがいまして、日弁連は、ただいま指摘しました問題点を解消するような抜本的な見直しがなされない限り、この法案には反対せざるを得ないと考えております。殊に、大変審議期間の限られた今国会において、この法案を、拙速と言ってはなんですが、審議、採決するということには強く反対するものであります。

 以上でございますが、なお、日弁連は、他の六法案についても四月十七日に意見を取りまとめておりますが、基本的には同じような考え方でございます。

 大変駆け足の意見陳述になってしまいましたが、御清聴ありがとうございました。(拍手)

自見委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

自見委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村誠吾君。

北村(誠)委員 私は、自由民主党の北村誠吾でございます。

 本日は、参考人の先生方、また随行者の皆様方には、御多忙の中おいでいただき、本当にありがとうございます。なお、ただいまは、それぞれ参考人の皆様方から大変示唆に富む御意見を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

 時間もございませんので、これから質問をさせていただきますが、まず、青山参考人と小川参考人に三問ほど同じ質問を、失礼ですが、させていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、我が国の安全保障政策に欠けている視点とは何かという観点からお尋ねをさせていただきます。先ほど来のお説の中にいろいろお話はいただいておりますけれども、確認も含めて、改めてお話を聞かせていただきたいと思います。

 と申しますのは、冷戦終結後、我が国は安全保障に関する法令や組織を急速に整備してまいりました。いわゆる五五年体制の時代と比較すれば、驚異的な動きであるとさえ言えると思います。例えば、法令面では、周辺事態関連法や昨年成立した武力攻撃事態対処法、そして現在審議されている国民保護法案など、有事関連法案が次々と、我が国またその周辺において発生する武力紛争等に対処するための法が議論されたほか、PKO協力法、テロ対策特別措置法及びイラク人道復興支援特別措置法といった、国際貢献に関する法整備が行われました。組織につきましても、テロ対策のための部隊、例えば特殊作戦群が陸上自衛隊に設けられるなど、冷戦時代のような、大規模な着上陸侵攻を主眼とした編成から変化をしてきておると言えると思います。

 このように、安全保障に関する法令や組織が整備されてきているとはいえ、我が国の安全保障政策は、世界各国の安全保障政策と比較して不十分な点があるのではないかと思われます。また、ただいままでお聞かせいただいた話の中でもそのことを強く感じます。

 そこで、我が国の安全保障政策に欠けている視点は一体何なのかということについて、主なことについて、重ねて、参考人お二人からお聞かせをいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

青山参考人 お答えをさせていただきたいと思います。

 欠けている視点は随分あり過ぎて、なかなか短時間では言いにくいのでありますが、まず第一には、やはり予算のあり方の問題であろうと思います。

 防衛予算は御承知のように年間五兆円にも達しているわけですけれども、その多くの部分が後年度負担に費やされておりまして、後年度負担について、中身はいろいろありますけれども、非常に国民にわかりやすく言えば、ツケ払いの一種だということになろうかと思います。そうしますと、冷戦が終わった後、戦力の転換というものが最もおくれている国の一つになっているのも、後年度負担で購入した正面装備の武器の調達を続けたり、あるいはその整備を続けることに費やされていて、柔軟な、例えば重大テロへの新しい対処といった武器体系の導入というものも難しい、そのあたりが一番大きいのではないかと思っております。

 その防衛予算を考えますときに、もう一つ、一番大事なことは、私たちの国の平和と国民の安全をだれが守るのかという最も基本的な問題でありまして、私は、日米同盟を強く支持する立場でありまして、日米安保条約も支持しておりますが、日米安保条約の基本思想というものをもう一度主権者の立場から考える必要があると思っております。

 さっき言いました米軍の補完としての戦力のあり方、それは実はこの正面装備の問題とも絡んでいるわけでありますが、米軍ないし同盟国と連携しつつも、重大テロについては、例えば米軍の来援を待つということは現実には不可能でありますから、自力で重大テロのような新しい脅威に対応するための戦力をつくれる予算、柔軟な予算というものに変更することが第一であろうと考えております。

 ありがとうございました。

小川参考人 大変重要な御質問をありがとうございました。

 私自身は、安全保障の専門家の端くれといたしまして、常々、国会の場で時間をかけて審議をしていただきたいと思っていることが実はあるんです。それは、我が国には外交安全保障の構想がないという問題であります。それを憲法に則した形で、もちろん、憲法は改正をずっと重ねなければ育たないわけでございますが、そういったことも含めてやはり描いていくことが必要である。それがないところでは、どんなに国防費を注入したとしても単なる装備品の買い物リストに終わってしまう。それではだめだ。今度の総理のところの懇談会はそんな話ができるメンツがおるのかと言ったら、おまえは官房長官に嫌われているからだめだよとか言われてしまったんですが、まあ、いいです。

 ただ、とにかく、外交安全保障構想というのは、一つの国が安全と繁栄を実現していくための構想だと考えればいい。その実現していくための構想の一番大もとに来るのは、これは、世界から信頼をかち取るための営みなんです。その土台があって初めて、軍事力にしろ、例えば政府開発援助、ODAにしろ、生きてくると言えるし、もっとリアリティーのある政策として打ち出せるだろう。それを諸政策として踏まえながら、最後の段階で、私自身は平和国家モデルという言い方をしておりますが、適切な同盟関係を選ぶべきだという位置づけなんです。

 同盟関係の選択が最後に来るというのは、それ以前の段階で、うちはどことも同盟関係を組まないでいくという選択もあるからです。もちろん、私は、アメリカとの同盟関係は、日本にとっては極めていい相手で、いい選択だと思っています。ただ、初めからアメリカとの同盟関係ありきで、それによってすべてが規定されるようでは、これは国際的な信頼をかち取ることはできないだろう。そこら辺まで含めてアメリカと話できるのに何で日本の我々はできないで来たのかという問題が実はあるんですね。

 そういう中で、一つ申し上げなきゃいけないのは、例えば、我が自衛隊の戦力構造の問題であります。これは戦力じゃないとかあるとか、そんな議論は私はするつもりはありませんが、構造から見た場合、幾ら国防費をたくさん使おうとも、戦力投射能力ゼロであります。つまり、本来的に、戦力を投入して外国を占領するだけの構造の軍事力ではないんです、パワー・プロジェクション・ケーパビリティーといいますが。

 これは、どこか遠くまで飛ぶ、航続距離のある飛行機を持てば侵略になるなんていうのは、もう五十年前の議論で終わりにしましょう。やはり、五十万人、百万人の陸上部隊を例えば朝鮮半島に投入して、その国の軍隊と戦って、勝利をして、戦争目的を達成する、そのことが可能なように、海軍も空軍もその構造でなければ、戦力投射能力があるとは言わない。外国が脅威を感じるパワープロジェクションじゃないんです。自衛隊、どこを切ってもそんなものないですよ。

 つまり、アメリカにとってやはり望ましいところは、ある程度高いレベルで整備されているけれども、一本立ちはできない構造になっています。これは、アメリカがいい悪いじゃなくて、戦後の再軍備の過程で、西ドイツと日本の軍事力はやはり自立できない構造にするのがいいだろうという選択をしたんです。それは、自分の国と対等以上に戦った国だから、まかり間違って、ひとり歩きを始めて敵に回ったらまた厄介だなという話ですよ。それは当たり前の話であります。

 その構造にあるということをきちっと踏まえて、これは、税金の使い道を通じて日ごろから検証していれば、シビリアンコントロールを貫いていれば、一目瞭然なんです。そして、その現実を周辺諸国に説明して信頼してもらうということも大事だし、その構造のまま、誇り高く、手を縛っていく中で、周辺諸国の信頼を外交の力にしていくという選択もあるだろう。あるいは、これはおかしいから、やはりひとり立ちできる構造の軍事力にしていくということが望ましいだろう、ちょっとアメリカと激論を交わさなきゃいけないけれどもそっちに行こうか、そういう選択も出てくる。

 ところが、その戦力投射能力がない。これはまさに憲法九条を絵にかいたような構造の軍事力であります。それを、持っているということすら知らずに、憲法改正だと言うし、軍事力の整備は、防衛計画の大綱はと、やっていられないよ、おれ、税金払うのやめようかなと思っていますよ、本当に。という考えを私はここでちょっと述べさせていただきまして、こういう基本的な部分を、ぜひ国会で審議をいただきたいと思っております。

 どうもありがとうございました。

北村(誠)委員 どうもありがとうございます。もうあふれるようなお二人の情報量でありまして、私が質問で用意しましたことではとても間に合いません。

 次に、緊急事態対処基本法、先ほど来、すべての参考人の先生からお話、言葉が出てきた基本法でありますが、これで定義すべき緊急事態ということの内容について、触れられましたけれども、確認の意味も含めてお尋ねをさせていただきたい。ただいまの青山参考人と小川参考人にお答えをお願いいたします。

 緊急事態対処基本法で定義すべき緊急事態、これの内容及び基本法に盛り込まれるべき項目のあり方、例えば、すなわち基本法の中に、理念だけじゃなくて、手続面まで踏み込んで規定すべきかどうかということなどについて、どのようにお考えであるかということをお教え願いたいと思います。

青山参考人 この問題を考えますときに、やはり一つ参考にした方がよろしいかなと思いますのは、ドイツの制度であろうと思います。

 ドイツは、御承知のように、憲法じゃなくて基本法ですけれども、基本法の改正を重ねながら緊急事態対処基本法を定めております。その中でそれに対応すべき事態というものを類型化しているわけであります。その中には、いわゆる防衛事態、それから、そうではなくて、防衛まで至らないけれども緊迫している事態、それから、同盟、これは特にNATOのことを指しているわけですけれども、同盟関係の上で軍事力の必要な場合の同盟事態、それからさらに、災害事態というものを基本的には類型化しているわけであります。

 同様の手続が日本においても緊急事態対処基本法を策定する場合にはやはり必要になってくるかと思います。

 先生お尋ねの後段の部分、手続の部分まで基本法に盛り込むべきかについては、私は、先ほど申しましたように、日本国憲法の改正がやがてあるとしても、現在の危機の、あるいはテロが世界に蔓延するような状況においては間に合いませんから、憲法の改正を行わずに、第三項としての基本法でありましょうからといいますか、それが望ましいと考えますから、手続まで必ずしも盛り込む必要はないと考えております。

 ありがとうございました。

小川参考人 これは、国民の生命財産にかかわるような事態で、しかもそれぞれの担当の省庁が単独では対処できないような事態というふうな考え方を私は持っております。

 ですから、これは戦争も含まれますし、大規模テロもありますし、あるいは大規模災害、大規模事故、そういったものがすべて、考えられる限りのものが含まれる。ただ、それをすべて国家としてまとめて見ていくというのは、やはり国家安全保障会議のようなものがあり、そのもとに、やはり戦争であれば中心になるのは自衛隊である、大規模テロにおいても自衛隊がメーンにならなきゃいけないものもあるだろうし、あるいは、これは警察との協力関係でやっていかなきゃいけないものもあるだろう。そういったものをきちっと分けるために、防衛庁・自衛隊と、それから緊急事態管理庁という二本柱で考えているということになっております。

 とにかく、国民の生命財産の危機、単独の省庁では対処できない事態はすべて緊急事態というふうにここで定義をした方がいいだろうと思っております。どうもありがとうございました。

北村(誠)委員 時間が参りましたので、私の質問を終わります。ありがとうございました。

自見委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 きょうは四人の参考人の先生方、大変貴重な御意見を開陳いただきまして、心より感謝申し上げます。

 御承知のとおり、自民、公明、民主、三党におきまして、緊急事態基本法制を整備しようということで合意をいたしております。きょう、三人の先生方はそれにつきまして賛成意見というふうに承知いたしますが、ぜひ基本的なことにつきまして御意見を伺いたいと思っております。

 既に、緊急事態の定義並びに類型については、今の北村委員の質問に答える形でお話がありましたもので、これはもう省略をしたいと思います。

 一点だけ、類型の中で、いろいろ含めていかなければならないと思っておりますが、例えば石油危機のような事態、あるいはまた北欧の一部の国では食糧危機なんかもこういった緊急事態に含めていると思いますけれども、日本の場合、こういったものを含めるべきかどうかということなんです。この点につきまして、三人の先生方にお聞きしたいと思います。

青山参考人 これは多分異存の少ないところではないかと思いますけれども、我が国においては、エネルギー、食糧、いずれも自給率が低いないしは自給が難しい状況でありますから、当然、テロだけではなくて、今後の新しい危機のあり方として、例えば、日本への食糧の流れ、エネルギーの流れをとめることもあり得るわけです。ですから、当然、私は基本法の中にはその考え方は含めるべきだと考えております。

小川参考人 重要な御質問、どうもありがとうございました。

 私も、石油の問題あるいは食糧の問題等はすべてこの緊急事態の中に含めて克服できるような体制を組むべきだと思っております。

 例えば、エネルギーの問題一つとりましても、日本は中東にエネルギーの九割以上を依存しているということをどこへ行っても言う。そのくせに、中東のエキスパートをどれぐらい育ててきたのか、いないじゃないかという感じがするぐらい手薄なんですよ、一部優秀な先生方はいらっしゃるけれども。外務省に聞きましても、きょうも午後に行くのですが、本当に流暢なアラビア語の通訳をできる人間は何人いるんだと言ったら、三人おりましたと言うんですね。過去形とは何だと言ったら、一人死にましたと言う。これで、中東で、アラビストかという感じですよ。

 これはやはり、外務省が悪いんじゃなくて、我々が中東の重要性というのを国家の緊急事態という格好でとらえていくという発想がなかった結果でございます。

 ですから、当然ながら、御質問にありましたような分は全部含めていきたい、そう思っております。ありがとうございました。

小尾参考人 結論から言いますと、私もお二人の意見と同じであります。総合安全保障という視点で考えているということです。

 特にエネルギーに関しては、日本は石油一〇〇%を海外依存で、それも中東ということで、一九七〇年代に第一次石油危機、大変な国民的パニック、それから経済危機があったわけですし、また、食糧に関しても、以前、大豆の輸入ができなくて、あるいはお米の不足の問題があって、国民的な経済的損失も非常に大きかったということを考えまして、総合的な視点で危機を考えるというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 大変ありがとうございました。

 この質問をしたのは、今後、緊急事態法制を整備していくに当たり、国民に御理解をいただくためには、何が緊急事態かという明確なコンセプト、これをしっかりと定義をすること、それからさらに、抽象的な定義だけにとどまらず、具体的な類型を示して、ビビッドに国民の方々に必要性を理解していただく、そういった意味で御質問したわけでありまして、ぜひとも今後ともさらにまた御指導を賜れればと思っているところでございます。

 続いて、第二点なんですが、なぜ今緊急事態基本法なのかという、これも国民に対して説明責任が重要な点でございます。

 確かに、今までもずっとこういった危機管理のことは叫ばれてきましたが、今ここに来て、二十一世紀初頭に当たって、なぜ今これから取り組まなきゃならないかということを国民の皆様によく理解をしていただく必要があると思っておりますが、そういった意味では、さまざま新しい要素、新しい環境、新しい状況に入ったということも一応きちっと強調しなければならないと思っております。

 例えば、私なんか個人的に見ると、冷戦が終了して、逆に地域紛争や非対称型の紛争がふえてきた。特にテロの蔓延という大きな事態がある。さらにもう一つは、手段の面で、新しい、大量破壊兵器の拡散ということであり、NBC、核や生物あるいは化学兵器、鳥インフルエンザなんかも生物兵器と類似していますので、いろいろな形で新しい手段、形態がふえてきている。さらにまた、ネットワークスキャンというような、文明社会という新たな脆弱性が逆に突出してきて、そこをねらえば社会が麻痺するといった事態もふえている。

 こういった環境の変化、時代の変化に応じて、ぜひともこういった緊急事態対処は確立しなければならないということは必要だと思っておりますけれども、そういった点について、なぜ今緊急事態法制なのか、この点につきましてやはりお三人の御意見を伺いたいと思います。

青山参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 重大テロという新しい脅威につきましては、国民の関心も一番高くて、今、遠藤先生からも御指摘ありましたので、私から繰り返す必要は余りないと思うんですね。

 先生のお言葉の中でとても大事なキーワードがありまして、全く新しい事態、新しい時代になったと。それを主権者に理解していただくために、二点申し上げたいんです。

 一点は、先ほどの話と実は関連する、あるいは百八十度違う面もあるんですけれども、今までは、日本に資源が全くなくて、日本が中東を初めとする遠くの地域にエネルギーをとりに行ったときにそれが阻害されるという想定だけだったわけですけれども、実は今現在、中国の海洋探査船が、日本に事前通告なく、繰り返し参っていることでも推察できますように、日本の近海には実はメタンハイドレートという、天然ガスよりも効率がよく、さらには埋蔵量も非常に多いものが、既に日本の近海、南海トラフだけではなくて、日本の領海内、EEZ、排他的経済水域も含めて、多量に埋蔵されていることが既にほとんど確認されているわけであります。

 そうしますと、私自身も子供のころから、日本は資源がない国だということだけ教わってきたわけでありますけれども、実は、日本のエネルギーが奪われる、ないし襲われる事態もあり得る。特に、中国においては、人口爆発が続いていて、エネルギーが足りなくなっているわけでありますから、それぐらいのコペルニクス的転回のような時代の変化が起きていることが一点。

 それから、在日米軍の役割について、在日米軍が実際に果たしている機能について主権者としてよく知る必要があると思いますのは、例えば、三沢のF16、嘉手納のF15の近年の主要な任務といいますのは、イラク戦争前のイラクの飛行禁止区域の南部のところに飛来してそこを攻撃するということも行っていたわけであります。

 したがって、在日米軍は、この北東アジアの周辺の安全に寄与するだけじゃなくて、世界全体を見ているわけです。例えば、イラク戦争が始まりまして、今のような状況になりましたら、沖縄にいます海兵の四個大隊のうち三個までが出払っている。そうしますと、世界展開している米軍と日本の関係ということをもう一度主権者として考え直さねばならない。アメリカの世界戦略との絡みで、日本の防衛協力をどうなすかということをもう一度考えるべきである。

 今までの常識が、エネルギーについてもアメリカとの関係についてもすべて通用しなくなっているということを主権者に理解していただくのが、まずこの基本法の策定には必要かと考えております。

 ありがとうございました。

小川参考人 なぜ今かという話でございますが、遠藤先生が総理大臣であれば、今までなかったのがおかしいから今だと多分答えられるでしょうね。

 つまり、これは状況が変わったからということではなくて、本来国家が国民に対して負わなければいけない責務の中で、やはり安全というのは一番大きいわけですよ。それにとって、やはりこういったものがなければおかしいというのに、なかった、だから私が政権をとったからやるんです、あるいは、我々が国会を動かしている中で実現したんです、これは野党であろうと与党であろうと同じであります。そういった考え方で国民に説明をしていくというのが恐らく正攻法ではないか。

 ただ、その場合、国民の理解を得やすいということでいいますと、戦争というのはイメージがわかないんですよ。というのは、まず、自衛隊、ほとんど行ったことないでしょう、武器をさわったことないでしょう。だから、カタログデータ的な話をする人はいるけれども、実際にわいているイメージというのは幼稚園のレベルなんですよ。だから、これはアメリカあたりでイメージされているものとこんなに差があるわけです。そこで理解してくれといったって、無理なんですよ。

 だから、さっき、応用問題、基礎問題と言いましたけれども、同じ税金を使って国民の生命財産を守るといっても、やはり、防災能力を高めようとか、そういった面であれば反対する人は基本的にいない話で実現しやすい、そこから入っていこう。だから、大規模災害あるいは大規模事故、そこから入っていきながら、今我々を取り巻く環境の中で、非常に国民がニュースに接して危機感を持っている大規模テロなどに入っていく。そういった形で順序を踏んでその理解の度を上げていけば、本当に高度な応用問題であると言って差し支えない国防の問題についても、健全な議論とそれを支える理解が生まれてくるんじゃないかと思っております。

 どうもありがとうございました。

小尾参考人 遠藤先生の質問の中に、もう既に答えが十分入っておりました。あえて申し上げれば、国内的に、国民の不安というのは、治安が非常に悪化してきたとか、あしたにでもテロがあるんじゃないかとか、そういうような国民に対する国家の責任というのはあるでしょう。それから、対外的に、二人の参考人が言ったような状況変化。また、特に私、気になっているのは、やはり日米関係、日米安保条約の中での位置づけが変わってきたのかな、日本に対する大きな責務というのが出てきたのかなと。それには、日本国民が十分理解できる基本法がこの時期にはぜひとも必要、そういう時代の流れというのがあると思っております。

遠藤(乙)委員 それでは、次の質問に入ります。

 日本はなぜこういう危機管理体制が弱いのか。先ほど小川先生からも御指摘があったように、非常に縦割り型、分権的な意思決定といいますか、あるいはボトムアップの意思決定、こういう長い、風土に根差した、あるいは歴史的、地政学的環境に根差した意思決定過程が根本にあって、非常にそれが根深い問題だというふうに感じております。

 そういった中で、有効な危機対処のための意思決定過程をつくっていくためにどうしたらいいかということなんですが、一つは、機構型、FEMAのようなかなり権限を集中した包括的な機構をしっかりつくっていくのか。あるいはまた、今の日本がやっています、内閣危機管理監を中心にネットワークを広げて、そのネットワークをしっかりとつくり上げていく、こういった、ネットワーク型と言ってもいいような形があるかもしれませんが、この二つの類型に即して、当然、行政改革という要請もあるわけですけれども、日本型の有効な意思決定過程、特に危機管理に対する意思決定過程にするにはどうしたらいいのか。ずばりひとつお聞かせいただきたいと思っております。

青山参考人 三問目はなかなかに難しい御質問だと思うんですけれども、先生御指摘のように、私たちの祖国というのは、二千年の歴史の中で、気がついたら税金を納めていましたし、気がついたら天皇陛下もいらっしゃった。私は、天皇制をこの国の安定の基本として高く評価していますけれども、いずれの制度も、私たちが自覚的につくったものではない。反面、アメリカは、二百三十年の歴史しかありませんから、納税制度も、それから大統領制も、全部手づくりの国であります。ですから、さっき申しましたように、アメリカの制度は、FEMAにしても、そのまま援用することはできないと考えているわけであります。

 先生がおっしゃった、あるいは私も共通認識を持っている、日本の特有の構造を持ちながら危機というものに有効に対処するためには、まず責任を一点に絞ることが肝要であろうと思っております。

 さっき申しました、行政権がどこに属するかということもそうですけれども、私たちは、戦前の歴史をかんがみますときに、天皇陛下は統帥権をお持ちでしたけれども、しかし、帝国陸軍、海軍の指揮権は実は持っていなかった。あれだけの大戦争が起きながら、直接の最終責任者はだれであるかということは、ついに明治憲法下においてあいまいであったと私は考えております。そういう意味では、もちろん天皇陛下に戦争責任はなかったと私は考えておりますけれども、もともと責任の所在が明確にされていなかった。

 そうしますと、さっき先生の方から、機構型、ネットワーク型というお話がありましたけれども、ネットワーク型になるためには、まず責任の所在が一点に絞られた機構があって、そこから横にネットワークを広げていくものでありますから、まず、私たちの国においては、機構をはっきりさせ、責任をただ一点に絞る、ただ一個人に最終的には帰結させるというシステムをつくることが先決であろうかと考えております。

 ありがとうございました。

小川参考人 私自身が若干かかわったことでお話しできることを通じて、お答えしたいと思います。

 私は、小渕内閣のとき、野中官房長官といろいろな仕事をさせていただきましたが、あの中で、やはり政治とはこう機能しなければならないんだなということを改めて思ったのは、ドクターヘリの実現なんです。

 先ほどもちょっとお話ししましたように、お医者さんがヘリコプターに乗って事故現場まで飛んでいって治療をする、これは大変救命効果が高い。一九七〇年に西ドイツがスタートさせた。先進国は当たり前の状態になっている。日本もそれをやらなきゃいけないというので、一九七五年以降、お医者さんが声をかけて、国に四回、委員会をつくった。でも、六つの役所プラス道路公団とか何かが絡んできて、どこかが反対するから、全部空中分解。その間に国民はどんどんどんどん死んでいって、警察の統計の範囲内の交通事故の死者は三十万人を超えちゃった。その半分は助かる。統計の後、死んでいる人は五十万人。その半分は助かる命。

 私は、九八年の秋に野中さんとしゃべっていて、こんな救える命で、前例も実績もあるようなことをできない日本が先進国なのか、民主主義国なのか、人道とか人権とか人命とか言える国かと言ったら、野中さんは、縦割りにならないようにと内閣内政審議室に委員会をつくってしまった。だから、大規模にはまだ進んでいないけれども、そこでいっちゃうんですよ。

 だから、私が申し上げたいのは、危機管理においては特に政治が、どの段階であれ、みずからがどう機能しなければいけないかということを自覚してきちんとやっていくということがまず大事であろう。それから、世界のレベルはどこかということを常に意識して、そこに到達することをやはり常に目指し歩いていく形にすべきであろう。

 そこにおいては、日本の官僚機構に幻想を持ってはいけないということなんです。優秀な人が集まっていて、確かにすぐれた人はおりますけれども、私は、九〇年以降、上級職の国家公務員の研修をやっていますけれども、すぐれた人間を集めてきて、だめにしちゃうシステムなんです。だから、局長、審議官クラスになると、かなりな部分が世界に出すと通用しないんですよ。それを言っても、自分のことじゃないと思っている人も随分いますね。

 だから、やはり彼らを機能させるためには、政治がみずからの責任と職務というのを自覚して、その組織の頂点で号令をかけていく、動かしていくということが大事だろうと思っております。

 ありがとうございました。

自見委員長 小尾参考人、質疑時間が終わっていますので、恐縮でございますが、簡潔に。

小尾参考人 国内的には、行政改革ということで、重複がないようにするということで、機構型をどういうふうにしていくかということですね。それからもう一つ、地方分権ということとの絡みで、ネットワークでいいかどうかということ。それから、武力攻撃のような非常にグローバルな場合には、やっぱり日本に一つの中心点があった方がいいというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 大変示唆に富む貴重な御意見、ありがとうございました。

 以上で終わります。

自見委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 四人の参考人の皆さん、きょうはお忙しい中お越しをいただきまして、また、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。御礼を申し上げます。

 まず、村越参考人に一つお伺いをしたいと思います。

 日弁連ということで、法の番人で、憲法あるいは具体的な法律の中身をいろいろチェックしていただくということは、私は非常にありがたいことだというふうに思っております。

 しかし、政治の世界にいる、また国民の負託を得てこの議席を得ている我々にとって、起きてはいけないこと、万々が一のことに対しても備えをしておかなければいけないのはこれまた責務だと思っております。

 むしろ、備えをしていなくて、そして、しかしそういう事態が不幸にも起こってしまったときに、それを裏づける法律がなかったがゆえに超法規的、法律にないことをやってしまうことはまさに法治国家としての自殺行為ではないか、私はこのように思っております。

 そういう意味で、今の憲法が有事を想定していなかった、そしてまた、当時の吉田茂内閣総理大臣の国会での発言を聞いていれば、自衛権そのものを制約していたということで、しかし、それが時代とともに解釈が変更されていったということでございますけれども。

 今申し上げたような観点から、法治国家としてやはり万々が一のことを想定して、そしてそれに対する備え、つまり、有事法制の必要性というもの自体は日弁連さんとしてお認めになるのか。そして、憲法上問題があるということであれば、むしろ憲法そのものに有事の規定を設けて、そして法治国家としての体裁を整えるということが私は必要だというふうに思っておりますが、その二点について日弁連でどういう御意見をお持ちなのか、お答えをいただきたいと思います。

村越参考人 法治国家である以上、きちんと法律を整備しておく必要があるということについては、そのとおりであるというふうに考えております。

 ただ、では、どういう事態が想定されて、それに対してどういう手当てが必要なのかということは、もう少し国民が納得、理解できるようなものを提示していただく必要があるんではないか。やや、ムードといいますか、確かに危機感とかそういったものは国民の中に広がっているわけですが、そういったものに乗っかって漠然とした形で、端的に言えば備えあれば憂いなしという議論で雑駁に進んでいるというところには危惧感を感じざるを得ないということでございます。

 それから、有事法制はないないというようなことが言われているわけですが、自衛隊法というものもありますし、その中に百三条もあるわけであって、もちろんそれが十分に機能し得るかどうかというところには議論がありますし、その点の手当てが必要だということはよくわかりますけれども、何か、全く有事対応がないからとんでもないんだ、だから大急ぎでつくらなきゃいけないんだという議論はいかがかなという気がしております。

 有事法制そのもの、日弁連の中に、先ほど言いましたさまざまな意見がありますが、恐らく、あらゆる意味で有事法制が必要ないということではない。どういう事態に対してどういう法律が必要なのかということをもっときちんと考えるべきだということが大枠の一致点ではないかというふうに考えております。

 それから、憲法に国家緊急権の規定がない、手当てをして云々ということはわかりますが、個人的意見はありますけれども、日弁連としてはそこはなかなか議論がまとめづらいところで、ちょっと統一した見解を申し上げられる段階にはございませんので、御了承ください。

前原委員 また、ぜひそういった、本当に法の専門家の方ばかりでございますので、もちろん我々がつくった法律のチェックをしていただくと同時に、どうあるべきかという御提言もいただければありがたいとお願い申し上げます。

 さて、緊急事態基本法の範囲について、青山参考人、小川参考人、小尾参考人、お三方にお伺いしたいわけであります。

 先ほどから同僚委員が御質問されておりますので、ポイントを絞って、青山、小川両参考人、お二人にまずお伺いしたいのは、小尾参考人は、いただいた資料あるいは御説明をいただいた中に、自然災害というものを基本法の範疇に入れておられます。お二人について、この自然災害をどう考えておられるか。

 それで、青山参考人がお話をいただいた中には、災対基本法、原子力災害特別措置法などの統廃合はすぐ行わずともということではありますが、この自然災害、あるいはそういった原子力災害も含めてでありますけれども、私どもは基本法に含めるべきだというスタンスでおりますけれども、どういうふうにお考えなのか、お二人からお伺いできればと思います。

青山参考人 お答えいたします。

 現代の脅威、特にテロについては、一番の特徴は、初動段階からかなりの間、これがテロなのか、それとも災害によるものなのか、区別がつかないケースが間々見受けられる。そうしますと、基本法をつくる際に余りに類型化にこだわって、例えば災害を外す、防衛問題だけにしますと、国民に深甚な被害が及ぶこともあります。

 それから、先ほどのアメリカのFEMAについても、参考にすべきは参考にすべきであって、FEMAの大事なポイントは、初動段階において、これがテロであるか災害であるか、あるいは他国の武力攻撃であるか分けないということが大事なポイントになっております。そういう意味から、当然、災害の問題もこの基本法の中に入れるべきだと思っております。

 ただし、先ほど来から私申しましたように、この基本法はあくまで基本的な性格を強調すべきものであって、手続法についてはその後でもよろしいかと思いますので、災対法や原災法と必ずしもバッティングしない。屋上屋を重ねる部分もないではないですけれども、少なくとも矛盾はしない。ですから、基本法を災害も含めて策定していただくことを急がれる方がよろしいかと私は考えております。

小川参考人 私も、自然災害それから原子力災害等、とにかく国家の大事、つまり国民の生命財産にかかわるものはすべて含めて考えるべきだと思っております。

 自然災害につきましても、阪神・淡路大震災級の地震だけじゃなくて、今スーパー広域災害と言われていますね、東海地震、東南海地震、南海地震が同時に起きたら、もう西日本壊滅だなんて言われている。これは国家を挙げて救援に駆けつけ、あるいは復旧に取り組まなきゃいけない。これはやはりこの法律できちっと検討を行われていなければ、そういった対策は組めない。

 それから、原子力災害の問題、これは原子力事故という言い方でもいいんですが、起きたときに被害をどう局限していくかということだけではなくて、それが起きないための備えが必要なんですね。

 これは、日本国ということではないんですが、私自身、今ネットワークのセキュリティーをアメリカで調査をずっとやっているんですけれども、アメリカのケースでいいますと、原子力発電所にネットワークから侵入するのに、まず、SCADAという監視制御システムを突破するのに二分かかっていないですね。原子力発電所をとめる段階まで入り込むのに、とめたり制御不能にする段階まで入り込むのに九分ぐらいで入っています。

 ただ、その能力を持った連中が、まだ悪意がないから悲惨なことになっていないというのが国土安全保障省なんかの認識ですよ。悪意を持っているアルカイダや何かは、能力を上げようと思って、能力のある人を一生懸命リクルートしているという段階であります。

 そうであれば、やはりこういった法律で、そういった事態が起きない備え、あるいは守りを固めることまで視野に入れながら取り組んでおかなければ、起きてからではやはり、ダメージは幾ら局限できたとしても相当人命が失われるということであります。だから、ぜひ含めていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

前原委員 ありがとうございました。小尾先生は、お話しいただいたので、その点については結構です。

 次の点について、お三方にお答えをいただきたいと思います。

 基本法については、今お話がありましたように、青山参考人から特にございましたけれども、特定すべきじゃないと。私もそのとおりだと思います。初め、現象が起きてもそれは特定できないわけでありまして、その部分についてはおっしゃるとおりだと思います。したがって、自然災害も含める。そして、小川参考人がおっしゃった大事なポイントは、やっぱり予防、これについても基本法にもしっかり取り込んで、そして予防に万全を期すことを国の責務にするということは、本当におっしゃるとおり必要なことだと思いました。

 そこで、日本版FEMAあるいは緊急管理庁、対処庁のようなもの、時間もありませんので、まとめて質問させていただきたい思います。

 つまりは、どこまで取り込んでいくのか、どのような今の日本の組織を取り込んでいくのかということが一つと、では、人員規模はどのぐらいのことを考えればいいのかということが二つ。そして、先ほど小川参考人が同僚委員の質問にお答えされて、内閣官房の充実がある程度図られたと。私も、以前よりは機能が強化されていると思いますが、しかし、内閣官房副長官補付でも、法制担当を除けば四十人ぐらいの非常に脆弱な、しかもいろんなところから来て、腰かけ人事ということで、これでは対応できないなと思っておりますけれども、その場合に、内閣官房との関係をどのようにしていくのかということ。この三点です。

 もう一度申し上げます。どのような組織を取り込んでいくのか、警察とか消防とかいろいろあると思いますけれども、それから人員規模はどう考えたらいいのか、それから内閣官房との関係、この三点について御質問させていただきます。

青山参考人 お答えいたします。

 非常に言いにくい、お答えしにくい質問でありまして、つまり、これは基本的に矛盾するんですね。現状の官僚機構の上に、システムだけ、つまり手足を持たない危機管理庁をつくっても、はっきり言いますと、現在の内閣の危機管理監と同じように、あるけれども動かないという存在になることは目に見えている。しかし、みずから手足を持つならば、その中に情報部門も持たなければいけません。それから、警察官や自衛官と違う動きをする救助員も必要になるかと思います。

 そうしますと、膨大な官庁にならざるを得なくて、先ほど、参考人の側からお話があったかと思いますけれども、国土安保省のようなものを日本につくるのは時期尚早というお話がありました。つくるならば、本当は、そうやって手足を持った大きな省庁をつくらざるを得ず、いずれも行政改革に余りにも逆行し、金と手間もないということがはっきりするわけです。

 そうしますと、現実の問題として、内閣官房に置くということは言われているわけですけれども、私は、これは個人的な意見として、内閣官房に置くという発想は安直であろうと思っております。内閣官房に幾ら置いても事態が変わるはずがないと思っております。

 そうしますと、落としどころといいますか、どうにか達成できる中身を考えるのであれば、現在の、まず警察庁を国家警察といたし、それから防衛庁も、最近、地方の組織の充実なども叫ばれておりますけれども、防衛庁と防衛施設庁を統合した新しい防衛省として発足させ、それをすべてまとめて、これは危機管理庁にはならないと思うんですけれども、今の内閣の危機管理監の新しい姿として、しかも、警察という特定の省庁から出た人でない人を、つまり政治家を持ってきて、国務大臣としてそれを統合して、それぞれの、既存の国家警察となった警察庁、それから防衛省となった防衛庁、それぞれから人員も集めて、手足ととりあえずはいたすということ以外には本当はないと思っております。

 ありがとうございました。

小川参考人 大変重要な御質問で、しかも時間がかかりそうでちょっと困ってしまったんですが、まず、緊急事態管理庁については、警察、消防、海上保安庁、国土交通省、厚生労働省、総務省、緊急事態にかかわるところは全部入れなきゃだめなんですね。あるいは、防衛庁・自衛隊のリエゾンも入れておかなきゃいけない。連絡担当の人員たちもですね。

 ただ、これを各省庁から持ってくるという格好になりますと、前も、緊急事態管理庁、危機管理庁をやると言ったら、警察庁の人が、うちのポストはどれぐらいになるでしょうかねとまず聞いてきた。いや、おまえはだめだという話をしたんですけれどもね。だから、そういうことになるのは当たり前なんですよ。だから、この役所に呼ばれたら、もう二度と親元には帰れない、ここで出世する以外にないということをする。

 それからもう一個は、必要な分野については世界レベルのエキスパートを日本人に限らず集めてきて、それを各分野のヘッドに置き、それぞれの役所や専門家が異を唱えられないぐらいの体制にしていく。

 それからもう一個は、規模としては、大体最初は僕は千五百ぐらいから始めたらいいのかなと思っていました。やっぱりこれは一つの役所としてつくっちゃった方がいい。

 それで、これは、内閣官房との関係はちょっと非常に難しいんですが、内閣官房を核としてやったっていいじゃないですか。ただ、今度はもう出稼ぎじゃないよ、君はもう帰れないから、ここで役所をでかくすることを考えろ、予算をとることを考えろ、出世することを考えろということで、引導を渡してやっていくというのが一つ現実的かなと思っております。

 どうもありがとうございました。

小尾参考人 非常に重要な質問で、実際の役所をつくるかどうかという議論に入っているわけですから、アメリカのFEMAの場合、五千人もいますけれども、私は、そんな大きなものが日本で必要かどうかという、そこから始まらなきゃいけないですね。

 そこで、基本線は両参考人と同じなんですけれども、出向組のような、とりあえずのようなものは絶対意味ないだろうと。要するに、これは行政改革そのものですので、別に逆行するわけじゃなくて、行政改革をしよう。要するに、むだや重複が多過ぎて国民があきれ返っている部分が幾つもあるという前提で話をしているわけですから、例えばの話ですけれども、内閣官房にしても、警察、消防、国土交通、総務、関係するところがたくさんありますね。その課とか班をそのまま持ってきてもらうということで、人員は一人もふえるわけではありませんし、むだや重複がなくなれば予算の削減になるわけですから、こんなにすばらしい行政改革はないというのが私の考えであります。

 規模に関しては、どれだけの人数があれば足りるかどうかというのは、これは権限にかかってくるという、逆に、法律が人数を大体決めていくだろうというのが私の考えです。

前原委員 どうもありがとうございました。

自見委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、大変ありがとうございます。

 私は、大体、緊急時にどう対応するかという問題については、自然災害であれば、これは、大規模地震その他にしても、災害対策基本法など法律そのものをきちっと整備すること、それから、何といっても、防災に強い国をつくっていく、万一どこかで地震等が起こっても小規模な被害に抑え込めるような、そういう防災に強い国土をつくるということが一番の基本だと考えております。

 それで、武力攻撃、テロについては、これは、武力攻撃を招かない国をどうつくるか、この点では、外交の力を成長させていくこと、それからテロについては、それが生まれる不安定な社会をつくらないという、政治の水準を引き上げていくというここがやはり大事なところで、軍事的、政治的、経済的な力による対処という古い時代から、やはり、有事を招かない取り組みが最大の有事対策なんだということを踏まえた取り組みが大事だと考えております。

 そこで、きょうお話を伺った中で、村越参考人に伺いますが、レジュメをいただいておりますが、米軍支援に関する法律に関してです。

 これは、予測事態段階でも米軍支援を発動するという形になっておりますが、行動関連措置によって米軍を支援する、そして、支援対象を、武力攻撃事態等ということですから、その等の中には日米安保で必要な準備のための行動も含むということになっておりますが、そのときに、この支援する米軍の行動を日本の国内法では規制することはできないと思うんですね。

 そうなると、支援を受ける米軍の行動というのは非常に無限定なものになってくるではないかと思うんですが、この点について、日弁連で検討しておられる中でのお考えというものを伺いたいと思います。

村越参考人 米軍支援に関する法制、法案でございますが、支援ができる局面の拡大ということと、対象行為の拡大というものがあると思います。米軍と自衛隊がより一層密接に連携して事態に対処していくということにならざるを得ないわけで、その評価はいろいろあると思いますけれども、日弁連としては、かなり今までの枠がさらに広がるということで、武力行使と一体となるおそれ、さらには、集団的自衛権の行使となる危険性というものがあるのではないかというふうに考えております。

吉井委員 次に、ACSA改正案の中で、武力攻撃事態にも予測事態にも物品、役務提供を拡大するということになっておりますが、その中で、「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、」という言葉が出てきます。この抽象的規定で、米軍への物品、役務の提供などについても無限定に拡大していくのではないか。これは、法律が無限定にしてしまうというのはやはりおかしいということになると思うんですが、この点についてどのように日弁連の中で検討しておられるか、伺いたいと思います。

村越参考人 ただいまおっしゃられた点は、ACSAという協定の問題ということではなくて、法案の方の問題かなというふうに考えております。

 ACSAは決済をどうするかということのその対象の範囲等を決めるものだと思いますので、具体的な物品、役務をどうするかということは自衛隊法改正法案の方で定められているんではないかという気はいたしますが、先ほど来言っていましたけれども、無限定とまで言えるかどうかわかりませんが、その範囲が広がっていくということの問題性は、日弁連としても認識しておるところでございます。

吉井委員 次に、自衛隊の米軍支援措置について、地理的限界を定める、そういう特段の規定がないわけですね。予測事態という認定が下ると、自衛隊はどこでも米軍支援ができるという仕組みになっていると思うんです。地理的無限定で、広範な支援活動に際して武器の使用が認められる、そういうことになると、これは先ほども少しお触れになられたかと思うんですが、集団的自衛権の行使に当たるという問題が出てきて、憲法上も問題になってくるということで、この点について日弁連の中でどういうふうに検討されたかということを伺いたいと思います。

村越参考人 先ほどの私の意見陳述でも、国民保護法案について主に触れさせていただきました。七法案について日弁連は当然検討しておりますが、やはり、私どもが法律家団体として一番関心を持っているのは、国民の生活や権利でございます。そういう点で、国民保護法案について、より重点的に検討しているというのが率直なところでございます。

 大変膨大な法案と三条約案件が出ておるわけですが、それにつきましては、基本的に、きょうお配りしております意見書の要旨というのがございますが、この範囲ということで御理解をいただきたいと思います。

吉井委員 さらに、少し憲法にかかわってお聞きしておきたいと思います。

 海上輸送規制法で、要するに臨検ということが入ってまいりますが、ここには交戦権という問題が出てまいりますね。それから、捕虜法にしても、人道法にしても、ジュネーブ条約附属議定書でも、交戦を前提にしてのものになりますが、憲法体系に有事体系を持ち込むということは、そのこと自体がやはり問題になってくるところで、そもそも交戦とか交戦権の持ち込みということが憲法上許されるのか。この点について、日弁連の方での御検討を伺っておきたいと思います。

村越参考人 申すまでもなく、憲法九条二項は交戦権を否定しておるわけでございます。通称臨検法案と言われておりますが、この法案で認められている自衛隊の行為が自衛権の行使として認められる範囲なのか、そうではなくて、交戦権の行使というふうに言わざるを得ないのかというところの問題であると思います。

 日弁連としては、自衛権の行使という範囲を超える交戦権と言わざるを得ない局面も起こり得るというふうに考えているところでございます。

 ジュネーブ条約等につきましては、日本として当然批准すべき国際条約であるというふうに考えております。

吉井委員 次に、国民保護法にかかわって、先ほどもお話があったことですが、要するに、四つの攻撃類型ということを政府の方も言っておりますが、実際に上陸してくる地上戦ということになったときに、国民が保護され得るのか。

 これは、沖縄戦の経験など、私たちは、実際には保護はされなかったということを経験しておりますし、では、航空機による空襲を考えたときに、これは、東京大空襲にしても、大阪大空襲にしても、そもそもそういう事態に対して住民がどこかへ避難する、自治体が避難・誘導する、そういう空襲という事態になったときには保護はされない。そして、ミサイルの例もありましたが、これも、発射して大体十分で到着するわけですから、発射したころに幾ら情報をもらったところで逃げようもない。

 この間、井上大臣は、要するに、外へ出るより家の中にすっ込んでじっとしている方が安全だというお話でありましたが、テロというのは、やはり治安の対策としてきちっとやる、テロそのものが生じないような安定した社会をどうつくるかということが最大の問題だと思うんです。

 そういう点では、そもそも発生の可能性、それから保護措置の現実性ということについて考えて、実は保護法制だということで住民避難だと言っていても、そのことよりも出てくるのは、平時に自衛隊がかかわってくる中心的役割を担う体系、有事を持ち込む体系になってくるのではないかという、そちらの方がこの議論の中でやはり一つの大事なポイントだと思いますが、この点についても日弁連の中ではどういう議論をされたのか、伺っておきます。

村越参考人 先ほども少し述べましたが、住民避難ということが柱になっている保護措置なわけですが、我が国の近代あるいは現代の歴史において、戦争被害を避けるために地域ぐるみで大規模な避難が行われたということはないと思います。やったこともないし、できたこともないわけです。これだけ人口がふえて、あるいは都市化している中で、本当にそんな何万、何十万という人が避難できるんだろうかということが大変疑問でございまして、鳥取のフォーラムでも、鳥取市の十何万人が避難するということもとても想定できないというような発言もあったと思います。

 そうしますと、それは一応言っているけれども、実際にこの法案がどういう局面で機能していくのかということになると、やはりそういう有事に備える態勢整備ということを国を挙げてやる、国民の意識の中にも、強く、啓発というか何というかわかりませんが、定着させていく、そういうような国と国民のあり方をつくっていくということに非常に大きな役割を果たす法案ではないかというふうに理解しております。

吉井委員 憲法では、財産権の保障をうたっているわけです。ですから、例えば、土地、家屋にしても、収用については非常に厳密な手続を、都道府県知事、市町村長が行う場合にしても、きちっと定めているわけですが、米軍支援のための強制使用をする権限、これは総理の方に持たされて、それで国民の財産がきちんと守られなくなってくるということになると、これは憲法の規定の否定ということになるのではないかと思うんですが、時間が参りましたので、最後に、このことを日弁連の中でどういう議論、検討をしておられるかを伺っておきたいと思います。

村越参考人 国民保護法制におきましても、いわゆる公用令書の発付というようなことで、そういう収用なりなんなりが行われていくというふうに書かれておりますが、やはり適正な手続が履践される必要があるし、それに対する不服申し立ての手段というものもきちんと確保されている必要があるというふうに考えております。

吉井委員 どうもありがとうございました。

自見委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。

 きょうは、参考人の皆さん方の大変貴重な御意見を拝聴することができました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 短い時間でございますので、大急ぎで質問いたしますけれども、最初に村越参考人にお伺いいたします。

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律、いわゆる国民保護法制でございますが、確かに参考人が指摘をしておりましたように、第八章の百七十二条以降に「緊急対処事態に対処するための措置」ということが定められていることは私も承知をしておるわけであります。

 おっしゃるように、緊急対処事態とは、この法案では、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」であり、武力攻撃事態とはその性格というか概念を異にしているという御指摘もよくわかるわけであります。

 それで、日弁連としては、「緊急対処事態に対処するための措置」というのが、この国民保護法制の中に組み込まれているというか規定をされている、異なる概念じゃないか、立法事実というか、それ以前の、そういうことを問題にしているんでしょうか。それとも、法案の中で、国会の関与の問題、そういうことを、緊急対処事態における国会の関与と武力攻撃事態における国会の関与と違うんじゃないか、そういうあたりを問題にしているんでしょうか。もう少し詳しくお聞かせください。

村越参考人 この国民保護法案の基本法といいますか、親法といいますか、武力攻撃事態対処法では、二十五条でしたか、この緊急事態について触れていると思いますが、この国民保護法案の八章がその二十五条を受けたという形でいいのかどうかということでございます。私どもとしては、それはやはり、武力攻撃事態についての法律は、そういう事態に限って物事を定めるべきであって、緊急対処事態は本来は別の法体系として整備すべきではないかというふうに考えております。

 ただ、現実の法案にこの第八章があるわけですから、その問題点として、まず、その定義、範囲が極めてあいまいであるということと、国会の関与がない、閣議決定だけで認定して、武力攻撃事態の対処措置と準じたものが発動していくというところの問題点を指摘しておるわけでございます。よろしいでしょうか。

照屋委員 小川参考人にお伺いいたします。

 私は、小川参考人の著書を何冊か読ませていただきましたし、また、沖縄にも、安全保障の問題、地位協定の問題等で幾たびか御講演にもいらっしゃって、講演も直接聞いたことがございますが、小川参考人に二点お伺いをいたします。

 一点は、今、村越参考人からありました国民保護法制の法案の中で言っている緊急対処事態の認定に国会がどう関与すべきか、国会は全く関与は要らないのか、あるいは政府の恣意的な判断を許す危険性があるんじゃないか、こういう御指摘については小川参考人はどういうお考えなのか。

 それともう一点は、この国民保護法制の中で、「住民の避難に関する措置」、それから「避難住民等の救援に関する措置」などが定められております。私、基地の島沖縄に住んでいるわけですが、小川参考人御承知のように、膨大な米軍基地が存在をするわけですね。地域によっては、本当に住民地域と混然一体とまでは言わなくても、すぐ住民地域のそばにフェンスが張りめぐらされている。こういう実態の中で、この国民保護法制の中で予定をしている住民の避難あるいは避難住民等の救援はうまくいくのかなという、米軍基地とのかかわりですね。

 それから、沖縄戦のときにも、離島県、島嶼県でありますから、学童疎開を含めて、海を渡って、台湾だとかあるいは宮崎だとかに疎開をしていったわけですね。その途中で、有名な対馬丸のように戦時遭難船舶による犠牲者というのがたくさんおるわけですね。いまだに船体も引き揚げられないという悲劇も続いているわけですが、小川参考人に、住民避難との関係についても御意見をいただければありがたいと思います。

小川参考人 大変大事な御質問、ありがとうございました。

 私自身は、有事法制につきましても、最初の政府原案については国民の保護に関して明確になっていない、後回しになっているからやめてしまえと、かなり注文をつけた立場でございます。

 そういう立場からいいまして、この問題については、国民を挙げてよりレベルの高いものに持っていくことが必要なんですが、やはり事態の認定に関しましてはスピードが要求されるということは常にあります。だから、国会の関与というものはやはり事後ということにならざるを得ないという面があると思いますね。

 ただ、その恣意的な認定といったようなものが行われるかどうかは、やはり我々の民主主義のレベルが問われる問題でございますので、その辺はやはり国会を中心にそういったことがないように取り組んでいく必要がある問題だと思っております。

 それから、住民の避難とか救援、特に米軍基地とのかかわりで、うまくいくかどうかは、私のような乱暴な考え方の持ち主から申し上げますと、うまくいかせるのですという話なんです。

 それは、もうはっきり言いますと、アメリカの世界戦略の中で日米同盟の重みというものを、税金の使い道を通じてそれなりに我々が事実とデータでもって押さえておき、アメリカ側と常に共通認識を持っておれば、アメリカは相当なところまでは日本の言うことに耳を傾けるということははっきりしているんです。だから、そこのところでうまくいかせるということを考えなきゃいけません。

 だから、例えば嘉手納基地とかあの辺の基地の、それから普天間基地のあたりでも、救急車の問題で、迂回しなきゃいけないとか中を通らせてくれたら人の命が助かるのにとか、いろいろな議論がありますね。これはやはり、向こうが受け入れれば、こちらがきちんと取り組んだ結果であろうというふうに受けとめるべきことであろうと思います。

 ただ、先ほど来、第二次大戦中の対馬丸の悲劇とおっしゃいましたけれども、やはりあれは成算なき戦をやらせてしまったという問題であります。だから、やはり国家国民を挙げて、そういった事態を起こさないような、先ほど来、諸先生方からもお話がございましたが、外交をやるということが恐らく基本でございます。そういう中で、計画的に備えておけばそれなりの住民の保護ができる、救援ができるということであれば備えるわけでありますが、一番大もとのところを怠っていては、どんな計画も絵にかいたものになってしまわざるを得ないだろう、そんな感じがしております。

 どうもありがとうございました。

照屋委員 次に、村越参考人に、NHKやあるいは民間放送局などの指定公共機関または指定地方公共機関の指定と知る権利、報道の自由との関連でお伺いいたします。

 私は、知る権利は、表現の自由の前提として民主社会を維持発展させるために極めて重要かつ基本的な権利であり、最大限尊重されなくてはならないというふうに思っております。

 かつて、私たちは大本営発表と言われる時代を経験しているわけでありますが、知る権利あるいは報道の自由、これは武力攻撃事態等の有事においてこそ最大限に保障されなくてはならないというふうに思いますけれども、この国民保護法制の中で、知る権利、報道の自由との関係で、日弁連はどのような問題点があるとお考えなのか、お聞かせください。

村越参考人 先生がおっしゃるとおり、私どもも、有事においてこそ国民に正確な情報が提供されなければならない、その正確な情報をもって国民が政府の判断なり行動を適切に評価しあるいは批判して、誤りがあれば正していくということ、それが民主主義だというふうに考えております。

 しかるに、この法案では、放送事業者はNHK、民放も含めて指定公共機関ということになっております。指定公共機関にする必要性がどこにあるのか。警報の発令とかそういったことであれば、そのような指定公共機関にしてどうのこうのということがなくても、NHKも民放も当然に国民の安全のために実施していくということを言っております。

 それを、あえて指定公共機関にして業務計画を提出させる、その内容について総理大臣が助言をしていくということをシステムとしてつくるということは、やはり報道機関に対する公権力の関与を強めるということで、一連のメディア規制等と言われているような流れがありますが、それとも相まって大変好ましくない方向であるというふうに考えております。

照屋委員 最後に、村越参考人にあと一点お伺いいたします。

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案というのが今審議をされているわけでありますが、この法律による臨検あるいは停船命令、警告射撃、危害射撃ができるようになりますね。

 そうすると、戦時国際法における交戦権の行使の問題と憲法九条二項の交戦権の否認というか、それが問題になってくるんだろうと思います。先ほども共産党の委員から質問がありましたけれども、この法案における臨検、停船命令、警告射撃、危害射撃、これから、日弁連は、憲法九条二項の交戦権の行使につながるおそれがある、こういうふうなお考えなんでしょうか。

村越参考人 先ほども申し上げましたが、憲法九条二項が我が国の交戦権を否定しているということから考えますと、この法案で認められている一連の行為というものは、自衛権の範囲を超えてこの交戦権の行使に当たるという局面、そういう事態があり得るのではないかということで、その点は大変危惧をしているということでございます。

照屋委員 時間ですので、終わります。

自見委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、また、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

自見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大石利雄君、防衛庁長官官房長北原巖男君、防衛庁防衛局長飯原一樹君及び消防庁長官林省吾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松崎公昭君。

松崎(公)委員 民主党の松崎公昭でございます。

 きょうは、私は、担当しておりますのが総務省関係でありますので、主に自治体を中心としたお話、質問をしよう、そういうことでありました。

 ただ、その前に、午前中の青山さん、小川さん、小尾さん、大変有意義な参考人の意見がありましたものですから、少しその問題にもお話をしてみたい。

 特に、お三方はFEMAのことを非常に重要視していたと思います。特に今回、この法案が、いろいろ憲法上の問題からいっても、いわゆる国家の緊急権等がまだないわけでありますから、非常に法体制的にも不備だ、そこで今回の法律が制定に至ったわけでありますが、同時に、大きな柱としてFEMAのことを強く言っておりました。

 実は今まで、おととしでしょうか、地下鉄の大邱市の問題やらあるいはSARSの問題、幾つかの問題で、日本の危機管理が非常に弱い、そして、内閣におります危機管理監にいたしましても一人、そしてその下の三人の副官も危機管理は一人しかいない、そういうような状態の中で、私は、やはり危機管理庁的なものを早くつくるべきだということで、今回、与野党で合意をしつつある基本法の中にもうたわれていくのではないか、そう思っておりますが、このFEMAの設置という方向性は、これは今どの程度本気になって内閣では考えているか、お答えをいただきたいと思います。

井上国務大臣 有事の対応の組織につきましては、武力攻撃事態法の附則の第二項で、検討していくということになっているわけであります。

 有事の対応は、一つには、縦割りの組織ですね、各省庁それぞれ権限がありまして、都道府県なり市町村にまで権限があるわけでありまして、そういう縦割りの組織を通じて対処していく、そういう仕方が今までは基本だったと思うのでありますけれども、しかし、そういった各省庁の末端に至るまでの措置が、横の連絡がとれますし、よく連携のもとに適切に、しかも迅速に対処できる組織、そういう組織、つまり、縦横の調整が十分にとれて、なおかつ的確な対処ができるような組織が一番いい組織なんだろう、こんなふうに私は思うのでありまして、そういうような視点から、今の日本の危機管理の組織について勉強しているということであります。

 概括的に申し上げますと、阪神の大震災でありますとか、あるいはその他の事件を通しまして、内閣官房を中心にした組織がだんだんとでき上がってきておりまして、今のところはおおむねそれで対応できるような組織ができ上がっている、こんなふうに考えておりまして、さらにこういった機能を強化していくということが課題だろうと思うのでありますが、せっかく武力攻撃事態対処法の中で組織の検討がうたわれておりますから、もう一度改めて検討をしていきたい、こんなふうに考えております。

 また、今、基本法の議論がございます。そういう基本法の議論、与党と民主党の間で進むと思うのでありますが、それはどういうことが取り上げられるのか、我々はよくわかりませんけれども、恐らくそういったことも一つのテーマとして議論がされてくるんじゃないか、こんなふうに考えているわけであります。

松崎(公)委員 この法案の必要性、そして一番大事な補完の国民保護というその根本は、日本の憲法の中にそれだけの緊急事態、有事に対してのあれがないということでありますから、これだけ、今さら私が申し上げるまでもなく、世界の緊迫、そして今までとは違うまさに状況が、イラクをひょっとしたら導火線として、あるいはアフガンもそうでありましたが、そういう状況ですから、私は、総体的にきょうの参考人のお話を聞いていても、何でこんなにのんびりしているんだと。それは、原因はいろいろ、戦後の憲法の問題やら戦後の日本の状況にあると思いますから、一概に政府を責めるというだけではいけない。国民全員がやはりこの辺で自覚をしていく国民全体の問題でもある。

 そこで、この法律ができて今審議しているんですけれども、現実にいつテロがあるかどうかわからないという状況の中で、今あった場合には、この法案ができておりませんし、まだそれだけの体制ができていません。また、FEMAに関しても、あるいはFEMA的なもの、そういう一元化したもの、そういうものができていないわけであります。

 確かに、今、内閣の中にあります。でも、危機管理監が一人で、そして、この下にいらっしゃる方々も、副の方が三人いますけれども、たった一人ですね、危機管理、安全保障担当は。外政、内政、安全保障。これでは、この前も私ども民主党の若手の議員が集まって、危機管理のことで各省庁に来てもらいました。それぞれ皆さん、今の段階では対応策を持っていますけれども、全然そこは、横につなげて一気に指揮をとるというようなことは、残念ながら危機管理監一人ではまず難しいだろう。しかも、二十四時間態勢でやらなきゃならない。

 そういうことですから、ぜひ、このFEMAの問題は、そういう形をしっかりとつくり上げる、この法案が通った暁にはそれをしっかりつくっていくというのが私は基本だろうと思っております。

 さて、私は、自治体の問題等をきょうは中心にしてみたいと思うんですが、きょうの参考人の話で、総合的に一番言えることは、国民の意識ですね。

 国民の意識、つまり、私も戦後の教育を受けていますけれども、いわゆる紛争の問題やら戦争の問題やら、ましてやジュネーブ条約の問題やら、戦争にルールがあるなんてことも教えてくれませんでしたね。社会生活をしていると、安全保障、安保か何かわかりませんけれども、のうてんきな国民としてここまで生きてきた。ですから、まさに国民が、恐らくこの法案ができたり、有事という言葉だけでも敏感に反応する人たちが多いわけですから、ですから、これからやっていった場合、一番大事なのは国民意識ですね。

 その国民意識をどのようにこういう問題に対して、一番いいのは、憲法の問題にがさっと入り込むのが一番早いんですけれども、なかなかそうはいかない。そうすれば、国民の意識をどのように醸成していくか、同時に、今回の国民保護法の中心であります自治体、職員、首長、こういう方々の意識の喚起というものをどのようにこれから仕組みとしてつくっていくか、お聞きをしたいと思います。

井上国務大臣 有事に対処する意識というのは大変おくれているというのですか、有事についての認識、しかも、それに対する対応の認識というのは非常にまだ初歩の段階にあるということでありまして、今、国民保護法制が議論をされまして、ようやく県知事さんとか、さらにその次の市町村、市町村もまだ全体的にそういったことが議論されているようには思いませんけれども、しかし、ようやくそこまで来たという感じがいたすわけであります。

 これからは、制度が成立をいたしますれば、この制度の説明とか、特にこの制度につきましては運用が大変大切だと思います。基本指針というものをつくりまして、細部にわたりましてこの指針となるべき事項を定めていくわけでありますけれども、そういった説明をしていくとか、あるいは、各自治体におきまして、各自治体の計画に基づいた訓練、そういったことを通しまして、皆さんに対する意識の啓発でありますとか、あるいは実際の訓練というようなものをやっていきたい。そんなことを通しまして、この危機対応の意識もだんだんと向上してくるんじゃないか、こんなふうに期待するわけであります。

松崎(公)委員 だんだんと向上じゃ間に合わないと思うんですね。いつテロが起こるかわからない。どこに起こるかわからない。ですから、今私が御質問したのは、大臣のおっしゃるように、それは一般論でそうなりますよ、でも、それをシステムとして本気に考えないとだめじゃないかということを私は言っているんです。

井上国務大臣 もとより、どういうような危機が想定されて、どういうような対応をするのかということ、そういうようなことをきちっと見まして自治体に対する啓蒙をしていくということでありますし、具体的には訓練の場でどういうように対応していくのか、こういうことになろうと思うのでありますが、そういう訓練のマニュアルなんかもつくりまして対応していく以外に、これは確かに委員のおっしゃるように、すぐさまそういう態勢になれば一番望ましいことではあると思うのでありますけれども、できるだけ時間をかけないでその危機にどう対応していくか、そういうような啓蒙をしていくことが必要だ、そんなふうに考えます。

松崎(公)委員 しつこいようですけれども、国民全般に対してどうかということなんですね。こういう有事だとか緊急事態、これに対して、これからはこういう法律をつくってこうやりますよ、一番大事なのは国民の理解と協力ですよ、そういうことなんですね。それを私は、このままじゃ全くのうてんきな国民のままでいきますから、一部の政府とか政治家が騒いでも現実的には何もならぬ、現実に起こったときにはもうどうにもならないということがあるから、通り一遍の今までのお役人的な発想ではいけませんと。

 井上先生は政治家でありますから、そこは、おれはこうしたいんだ、国民にこうしたいんだということを言っていただきたい。どういうやり方でその意識を喚起するか。

井上国務大臣 有事に対応するというのは、国が責任を持って対応するということでありますから、国が先頭に立ちまして意識を喚起していく、啓蒙していく、こういうことが大切だと思います。

松崎(公)委員 この国民の保護の法案の中で、四条で、国民には、協力するよう努め、「強制にわたることがあってはならない。」と。

 先ほども青山先生が、日本のなぜこういう状況かは戦前のさまざまな体制がいろいろ国民に影響を与えていると。おっしゃるとおりですね。ですから、これは確かに、今、日本という国の現状でいけばこの程度かもしれませんけれども、私は、余りにも、災対法よりも抑制的だと。これは民主党の主張とちょっと違うなんて言われるかもしれませんけれども、私は、義務の問題やら、そういうことをもう少ししっかりと出すべきだと思っています。

 ですから、その辺の問題を、義務とか、それはうたってもいいんじゃないか。もちろん、基本的な人権を侵しちゃいけませんよ。だけれども、平時とは違うんですから、そこは、そういう法の中にも本来はもう少ししっかり書くべきだ、私はそう思っています。

 そこで、教育の問題なんですけれども、この問題だけですから、文科大臣は。やはり教育が大事だ。先ほど私が言いましたように、戦後教育、何もそういうものを受けておりません。ですから、特異な国のままいったのではだめなんですね。

 ですから、この辺、戦争にもルールがあるんだよというようなこと、一般的な、世界で通用することはしっかり教えていかなければならない。あるいは、グローバリズムでありますとか国際社会のこと、協力のこと、NGOのこと、戦争やテロや紛争の地域のこと、そういったことを教えることの中で自分の国はどう守るかということを、自分の国を守ることだけを言ったのではいけませんけれども、その辺で、教育の分野ではどんな取り組みを今後本気にしていただけるかどうか。

河村国務大臣 日本の安全、防衛、そういう問題、これはやはり児童生徒たちにきちっと理解させる、あるいは国際法の意義を理解させる、大事だと思います。今日のように、毎日のように世界のニュースがどんどん入ってくる時代でありますから、その基礎知識を持っていく、これは大事なことだと思います。

 現在でも、中学や高等学校の学習指導要領の中にも、世界平和の実現のために国家間の主権の尊重であるとか協力が大事である、そういうことを認識させながら日本の安全、防衛問題を考えさせることになっておるわけでございます。また、いわゆるジュネーブ条約と言われる国際法、さっき戦争にもルールがあるとおっしゃいましたが、そういうことも理解させる、こういうことになっておるわけであります。

 学習指導要領、中学校の中でも、我が国が自衛隊を設置するに至ったことや、日米安全保障条約が締結されるに至ったことなどに触れながら、平和主義を原則とする日本国憲法のもとで、我が国の安全と、アジア、ひいては世界の平和をいかにして実現すべきかの問題について考えさせる、こうなっておりますし、また、高等学校等におきましても、戦後の日本の安全保障政策あるいは我が国の防衛の基本方針、自衛隊、日米安全保障条約などの基本的事項について理解をさせながら、国際社会における平和と安全を確保しようとする各国の努力と協調しながら我が国の平和と安全をいかに実現していくか、広い視野から考察させる、こうなっておるわけでございます。

 最近の中学校の教科書等にも、PKOに自衛隊を派遣する法案が国会で出されて、そして、これが今成立して現実に行っているようなこと、自国の平和のみの追求から脱して世界の平和への貢献をすべきこと、そういうようなことも、広い視野から日本の安全と防衛、そして世界への協力、そういうものを考えさせるということになっておるわけでございまして、この点、さらに学校教育において、まさに発達段階に応じた指導が大事だと思いますから、そういう発達段階に応じた指導をしっかりやっていくということで対応してまいりたい、教育においても今そのことは非常に問われているという意識のもとでやってまいりたい、このように考えております。

松崎(公)委員 この分野は本当に大事だと思います。これからの日本を支えていく日本国民の基本的な教育であります。ぜひとも、九条の平和主義、そういったことを基本にしながら、自分の国は自分で守る、そういうことも含めてしっかりと教育の分野でお願いをしたいな、そう思っております。――どうぞ、結構です。

 それから、自治体の問題にまた戻らせていただきますけれども、きのうも私の方の民主党のNCの川端大臣が、地方分権という、地方自治の本旨ということで議論をされました。ですから、大枠はあちらでやられましたのでそれ以上のことは言いませんが、自治体の職員の意識、これは本当に大事なんですね。これは、先ほど国民への問題を言いましたが、自治体の職員も、もっとかもしれません、ある意味ではのうてんきではないか、そう思っております。

 それはきょうの午前中でも担当職員がまだ非常に少ないということが出ておりましたけれども、この辺で、これは総務大臣でしょうか、自治体の職員、ここが一番これから国民保護の点ではかなめになりますけれども、ここは相当意識を変えないといけないんですが、総務省としては何か手だてを考えておりますか。

麻生国務大臣 まことに正しい指摘だと思っております。

 基本的に、職員の上に立ちます首長、市長、知事等々にその意識がないとなかなか下には行かないというところもあろうかと思いますし、別の仕事はしょい込みたくないというところもありますでしょうし、上の方の意識がしゃんとしておらぬといかぬところなんだとは思います。

 少しずつではありますけれども、少し意識が出てきたかなと思っておりますのは、今、三十何団体、国民保護に関する関係機関との連絡協議会等々を設置しております都道府県は、少なくともゼロから十八団体にふえております。それから、フォーラム等を開催する予定のあるところが約十一団体ということになってきて……(松崎(公)委員「市町村ですか、県ですか」と呼ぶ)県です。やっておりますし、各県を見ましても、国民保護法制の担当部署というものをきちんと、危機管理室とか防災第一課とか、いろいろな形で、新しくつくられたり担当の課を決めるところが始まっておりますので、認識としては、この法案が提出されたのを境にというわけでもありませんけれども、この数年間、いろいろな意味でこの種の意識がかなり出てきたという感じがいたしておりますが、まだまだという点に関しては、私もそう思っております。

 この点につきましては、機能的に実効あらしめるものでないと意味がありませんので、置いたからそれでいいというわけのものでは全くありませんので、今後、この法案が通りましたのを契機に、いろいろ実地の訓練等々が必要になってくるんだと思いますが、そういったものを含めて、さらに意識が浸透していくように努力をしていく必要があると存じます。

松崎(公)委員 それは普通の回答なんですけれども、普通、自治体が、例えば介護保険でありますとか、大きな制度変更をしたりする場合には、法案の中身とか考え方というのはあらかじめかなり伝わっていって、結構早目に準備をしていきますよね。

 この有事やら緊急事態の場合は、いつ起こるかわからないから、なかなかできないかもしれない。しかし、それは、そのために日ごろ計画をつくって訓練をするというわけですから、そういう意味では、同じように、自治体は、こういう法案ができるのである、こういう体制ができるのであるとなれば、もっと早目に準備ができていいはず。それが全然できていないというのは、これはにわかに起こったとは思いませんけれども、政府の体制としては非常ににわかみたいな形だからそうなっている。

 ですから、これをどうやって詰めていくか。今おっしゃったように、普通の法律ができての対応では、いつどうなるかわからないという、緊急事態が迫っているかもしれないわけですから、これは少しのんびりし過ぎている。ですから、職員の啓蒙とか研修、教育、こういったことを今から総務省としてもしっかりつくっていかなきゃいけないと私は思うんですね。ぜひその辺は早速やるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 ごもっともな御指摘だと存じます。

 一つ申し上げさせていただければ、何をしていいかようわからぬというところが、ほかのものと少し、介護のときとは少し違っておるところだと思います。

 そういったものに関係して、例えば福井県あたりですと、たしか退役の一等陸佐を県の職員にしてとか、いろいろなところでそういったOBを使うということを考えられ、やられ始めているところもありますが、基本的には、有事に何をすればというところが余りようわかっておられなかったというところが、何となく、いま一つ何をしていいかわからぬというような雰囲気になっておる一つの大きな背景だとは存じますが、そんなことも言ってもおられませんので、過去、ほかの県でしておられる例を他の県に知らしめる等、いろいろな形でこの対応を、急いでおる状況にきちんと対応してまいりたいと存じます。

井上国務大臣 国民保護法制というのは、国民の権利や自由をいかに守っていくか、最大限守るという法律でありまして、この制度の大体の枠組みとか仕組みは、少なくとも各県知事部局の人は理解をしておられると思うんです。これはもう一年数カ月にわたりまして地方自治体等の方と意見交換をやっておりますので、それはわかっておると思うんです。ただ、知事部局以外のところにどの程度理解されておるか、それはわかりませんが、少なくとも知事部局については理解されている。

 ただ、御理解いただきたいのは、非常に具体的な措置でありますので、この法律にありますように、国民保護の基本指針を国がつくらないと県は計画をつくれないんですね。この指針といいますのは、これまた相当膨大なものになると私どもは思うんです。ただ避難していいというような話じゃなしに、避難もかなり細かく書きますし。

 そういうことでありますから、今の段階では、私どもで、できるだけ早くこの基本指針をつくるということです。つくるにつきましても、地方公共団体とか指定公共機関の御意見も伺わないといけないということでありまして、そこなんですね。だから、そこの細部ができておりませんと、具体的に訓練しようといったって訓練のしようがないわけでありまして、今そういう段階にあるということを御理解いただきたいと思います。

松崎(公)委員 それは当然だと思います。だから、私が言っているのは、意識の問題だと。つまり、知事部局のところに一年以上も前から話をしていた、しかし、県だって実際にやっているのは福井とか鳥取とかほんの二、三が、鳥取はちょっと突出して進んでいますけれども、そのほかはまだ、ようやく始めたというのが、それでも一つ、二つの県なんですね。

 だから、具体的に指針ができて、具体的にこうやるんだよという計画まで入るのは、それは当然無理ですよ。私が言っているのは、国民全体が意識がないんだから、まして、自治体が率先して意識を持ち――県でこの状態では市町村はどうなっていますか。

 ですから、今のお答えでは、日本は永久にどこからも攻められなかったりテロがないという前提でいけば、まさに政治家はのんびりしているなということを言われてしまうんですね。だから、私は危機意識が強過ぎるのかもしれませんけれども、私は、そこは政府の、特に政治家の皆さんが必死になって、国民にどう働きかけるかということを知恵を絞って行動を起こすとき、そして、それは県なり市町村なりに、まず一番末端で、実際に避難でありますとか誘導とか、本当に末端に、一番そこに比重がかかるんですから、やはりその意識、国民そして自治体の職員の意識、そういったものをやるべきだというのが私の主張なんですね。

 そこへ持ってきて、麻生大臣はよくわかっていらっしゃいます。きのうまでも合併法だとか、つまり地方分権の話で、今、地方は大変なんですね。三位一体、小泉さんがことしから、これは方向性ではいいんですけれども、大変な財源を切りまして、約三兆九千億円も切って、そして実際は四千五百あるいは六千七百と、それだけしか財源を渡さなかったということで、てんやわんやの思いで、地方は今ようやく予算を何とかつないだ。

 ただ、来年から、来年、再来年で補助金を三兆円また削るんですね。これは、私どもの政党は十八兆削れと言っていますから、やり方は違いますから。でも、この補助金体制を変えて地方に財源を渡すことはいいんですよ。だから、そういうさなかにありまして、そこへ合併法が来年三月に切れて、今度、少しあめがなくなっちゃって、その次の五年間はかなり厳しいということで、知事がもう合併しろとかいろいろな勧告をする、そういう制度になるということで、今、総務委員会でも議論中であります。

 ですから、自治体は、まず合併だとか三位一体で財政の問題を何とかしなきゃいかぬから、とてもこんなところまで頭が回らないというのが今の現状なんですね。しかし、それでは国民の命、財産を守ることはできないわけですから、そこを、いわゆるベクトルが反対なんですね。片方は、この緊急事態なり有事法制は、あるいは国民保護は、むしろ国に、集権とは言いませんが、国を一本にして、国を中心にしながら、総理を中心にしながら、緊急のときにはもう一気にまとめていこう。片方は、地方分権で、そこから逆の方向へ行こう。

 だから、今、一番大変なときにこの二つの問題が出ている。これはなかなか総務大臣も、政調会長をされた方ですから総合力のある方でありますから、そこをどうやって地方自治体に、分権やら、それも進めながら、しかも片方ではまとめていくという、二律背反するような、それをどう指導していきますか。

麻生国務大臣 全くおっしゃるとおりで、これは一番難しいところで、今、多分、市町村合併、ほぼ目安ついたところは、もう頭は三位一体の話で、その次がこれですから、三番目、意識の中としてはよくて三番目ぐらいのところが通常だと思っております。

 ただ、今言われましたように、おかげさまで、おかげさまでという表現はいかがなものかと思いますが、不審船のおかげで、拉致のおかげで、日本海沿岸の県の方は当然のこととして反応が早かった。それはもう鳥取県に限らずと思いますけれども、やはり地域差もかなりありますし、その上に立っておられる長の方々の意識も大分違ったんだと思います。

 先ほど、都道府県で専任の担当職員という話で、三十二都道府県で約百十人、それから、併任ではありますけれども担当職員を置いてあるところは二十八道府県で百十三人ということになっているんですが、そのほかにも、指定都市とか県庁所在市におきます専任職員等々、担当職員というのは少なくとも十八市百三十八人ということになっております。

 そういった意味では、阪神・淡路大震災までに自衛隊と県で共同の防災訓練、非常訓練をやっていた県はたしか四県だったと記憶するんですが、今はほとんどすべての県でされるようになった。いろいろな意味で、この数年間、意識としては随分変わってきておられるんだと思いますが、イラクの話にしても、人質の話を含めまして、何となくこういったようなものが、この戦後六十年弱の間、ほとんど余り気遣われて、注意が払われてこなかった。

 島国だったせいもありましょう。日米安保もありましたでしょう。東西冷戦の結果、いろいろな意味で、そういった戦争等々に直接に巻き込まれることもなくここまでやってきたおかげもありまして、先ほど、平和ぼけという言葉がありましたけれども、そういうのを含めまして、恵まれたといえば恵まれた環境に来たことは間違いないと思います。

 しかし、反面、その分だけ、一たん事が起きたときにどうやって対応するかという訓練、意識等々には多々問題があることはもう御指摘のとおりだと思いますので、こういったことはなかなか急にはいかぬと思いますけれども、急に意識が変わるというところは、いずれにいたしましても外からの、外的な話で変わってきたのであって、これは、我々政治家が努力してここまで意識を変えさせたかといえば、それはとてもおこがましくてそんなことは言える立場にもありませんので、私どもの意識としては、そういった外的な要因によって随分このところ変わってきたとは思いますけれども、この法案が通りました後は、いろいろ、実際問題として、訓練をさせていく、しかも、物事のわかった、そういった経験のある人たちに指導してもらう等々のことを得て、何が起きるであろうかということを実際やってみて初めて、机上訓練とは違って、実地訓練をさせる等々の時間と手間というものをきちんとかけないとなかなか身についてこないものだと思っておりますので、気長に、辛抱強く、しかし、事は急ぎますので、結構やっていかなければいかぬところだと思って、一番この問題は頭の痛い問題と理解をしております。

松崎(公)委員 ちょっと角度を変えますと、いわゆる法定受託事務、きのうも川端さんの議論にありましたね。法定受託事務として有事法制等を受けるとすると、やはり人ごとなんですね、地方自治体は。

 ですから、その辺で、地方自治そのものの本旨じゃないですけれども、いわゆる戦前じゃないですけれども国家緊急権みたいなものがあればまた別なんですけれども、これはないわけですから、その中で、対等の関係だよとどんどん今それを植えつけて、しかも分権分権。私どもは地方のことはきちっとやりますよ、それは法定受託事務ですから、では、もう少しきちっと指導しなさいとかいうことで、やはり受け身になっちゃう。

 そこは、これはちょっと違うよ、受け身ではいけないんだよというところで、国が、総務省が、自治体に対して、その予算の、費用のことも含めてどう指導していくか。しかも、根本には、さっき言った、ベクトルは違う方向に行っているわけですから、これは中央集権的な有事法制、そしてこちらは分権、それを、何か仕掛けがないといけないのか。そこはやはり、総務省、何か考えなきゃいけないんじゃないかと私は思うんですよ。その一番大事なところをもうちょっと考えていただきたいと思うんです。

麻生国務大臣 基本的に、今までやった経験がないというところが、意識はあっても、いま一つ何していいかわからぬというところもあるというのが正直なところだと思っております。

 ただ、何となく自衛隊というものに対する認識も昔と違って、自衛隊員の子供は学校に来させない等々のところもあった時代もありましたけれども、少なくとも、今、自衛隊のOBやら何やらに私どものところで指導してもらうわけにいかぬかというような話が地方の方から出てきている県も市も散見されるところまで来ました。

 そういうのが出て、実はうちはこうやっておるということが具体例として出てまいりますと、他の県も、それでやればいいのかということにもなりましょうし、井上大臣からお話がありました一応のマニュアル、プランみたいなもの、基本計画みたいなものが出てきますとそれに合わせてやるということにもなりましょうが、やはり、そこにいる人が、だれがどう指導するかというのは非常に大きなところだと思いますし、その指導する人を首長さんが全面的にバックアップして応援してやるというところも非常に大事だと思います。

 また、地域として、消防団等々いろいろボランティアなグループも含めまして、こういった事態のときに関しては、自分たちの役割、また消防署の職員としての役割、警察署の職員としての役割等々はきちんと明確にして、自衛隊といっても、それは主に戦闘にかかわる可能性が多いので、退避等々の部分につきましては、いろいろな形での、消防とか警察とか、地方自治に頼るところが多々あろうかと思いますけれども、そういった役割がまだ明確にわかっておられぬと思いますので、そういったところを含めて丁寧に意識を植えつけていくというのはかなりな労苦を要するところだとは思いますけれども、一たんわかればそんなに、私はこの国の国民の意識というものの高さを結構信じている方なのかもしれませんけれども、そういった一たん緩急あるということになった場合には、対応に関しましては、自分のことでもありますので、私どもとしては、結構それなりの対応をしていただけるものが、私どもは今いらいらしておるところではありますけれども、対応をしていただける組織が早くでき上がるものだと期待をいたしております。

松崎(公)委員 先ほどの青山さんのお話でも、危機の想定を説明しづらいと、鳥取県のことを想定してお話しになったんですね。ですから、結局、要は何をしていいかわからないなというようなことで、説明で行くと指針が出ないからというのは、これはお役所的な発想ですね。でも、それでは、現実はいつ何があるかわからないということですから。

 そこで、職員は、地方は特に専門家なんかいないですよね。ですから、そこで、アメリカのFEMAの場合なんかはトレーニングセンターがあったり、欧州でもそうですね。もちろんこれは、国の成り立ちと法制度が違う、意識が違うから一遍にはできませんけれども、でも、ある意味では、今三千二百、いずれ千八百か何かの自治体かもしれませんけれども、これがそれぞれの地区で計画を立てたり専門家として常に訓練をするということは、膨大な作業量と同時に、よほどの体制を組んでいかないとできないですね。

 だから、普通、今までの日本の役所でしたら、もう法案がここまで来ていたら、何となく、大体こういうようなものが、青写真が出てきてしかるべきですよね。だって、これは、法案が通ったら三カ月か四カ月で動き出すわけでしょう、指針がどのくらいかかるかわかりませんけれども。そんな遠い日じゃないんですよ。そのときに、では、すぐにその計画を各地域、市町村でつくれと。そうすると、今までみたいに、防災計画は消防庁の提出用で、金太郎あめみたいな計画をみんなつくってきたというようなことが日本の自治体の常であったんですね。

 確かに今、先進的な自治体が随分出てきましたから、意識が随分変わってきたことは確かです。でも、これだけの難しい問題でしたら、よほど国なり総務省が指導性を持っていかなければいけないんですけれども、そのお金の問題を含めて、もう具体性があっていいはずなんですね。

 麻生さんは、いつも委員会で言うように、民間出身の一つの力をしっかり示す政治家だろうと信じておりますので、ある程度アウトラインを出されたらどうでしょうか。

麻生国務大臣 これは、国、県、市町村と多分三つ――先ほどのFEMA、今、FEMAはDHSに変わっておりますけれども、もっと巨大な組織に変わっておりますのは御存じのとおりなので、DHSは、やはり九・一一のあの話以後、ああいったものに組織がえをしたんだと思います。

 いずれにいたしましても、想定問答として、仮に私の住んでいるような日本海側から入ってきた場合は、内陸部に逃げる人と内陸からそこに出ていく自衛隊との間の交通はどうやって確保するのか、避難民をどうやって誘導するのか等々は、自衛隊員を乗せた車が走る道路と分けてやらぬとなかなかうまくいきません。

 もし、何かいろいろなことで、そこで細菌・生物兵器が使われたときに、それを退避、誘導、搬送するに当たっては、どの病院がアトロピンを持っている、PAMを持っているというような話も全部知っていないと、とてもではないけれども対応できません。

 道路は、緊急車両として、避難していく人とほぼ同じ方向に走る場合においては、そちらを優先して走らせる等々のことは、通常、私ら素人でも思いつけるところではありますけれども、実際になりますと、もっといろいろなことがプロから見たら多分出てくるんだと思いますので、そういったようなものをどのように対応させるかというのは、これは図上プラス実際にやってみないとなかなか混乱を来しますので、大変必要なものだと思っております。

 また、誘導というところは、多分、国民保護という面でいけば誘導というところでしょうけれども、誘導する人につきましても、見たこともない自衛隊員とか警察職員といった場合は、何となく、それは日本の国の言葉をマスターした対日潜入工作員かもしらぬ、別のところに誘導されちゃかなわぬという意識は、逃げる方も当然考えますので、その意味では、顔見知りの消防団員が案内してくれるのと全然知らない人に案内されるのとでは、安心感が全然違うと思います。

 そういったことを一つ一つ挙げていきますと、膨大な想定問答なり、それに伴う訓練が必要だと思っておりますので、こういったことを考えていく必要として、私はやはり、みんなでというのじゃなくて、まずどこかで一つやってみて、その例を一つのモデルにして自分の市に当てはめてみる、自分の町に当てはめてみるという作業が一番現実的ではないかなという感じはいたしておりますので、検討してみたいと存じます。

松崎(公)委員 それで、この法案の中には、どうなんでしょうか、民間防衛という概念は言葉としては入っていないのかな、ただ実際は、避難・誘導、救援、こういったところには民間防衛の考え方が入ってきているわけでありますけれども、民間防衛という概念に対しては、今後、この法案を含めてどういうスタンスをつくっていこうと思っていらっしゃいますか。

井上国務大臣 有事の事態に対処するというのは、もとより国が中心になりまして、地方公共団体でありますとか指定公共機関、こういったものが対応するのでありますが、しかし、広く国民の協力がなければ本当の国民保護というのはできないわけでありまして、そういう意味では、政府も自治体も国民も一体になりまして有事に対処しないといけない、こんなふうに思うのであります。

 今の、民間防衛という、その言葉を使うことの適否はございますけれども、例を挙げれば、例えば消防団、こういった組織につきましてもできる限りの協力をお願いいたしたい、こんなふうに思います。ボランティアの、NPOの組織なんかもそうでございまして、こういった民間の団体、人々に期待するところも非常に大きいと思います。そういう意味で、こういった民間の組織なり団体あるいはそれらの活動をしている人々に対する支援もできるだけ考えていかなくてはいけない、こんなふうに思います。

 ただ、そのために新しい組織を別途考えていくとかということは考えておりませんけれども、広く、現実にあります組織の協力を仰ぎたい、そのように考えております。

松崎(公)委員 自主防災組織というのは、今私もちょっと手元に数字がないんですが、今かなりありますよね。こういったものも当然生かさなければいけないとは思うんですけれども、やはり問題は、すべて、有事それから緊急事態という基本的な考え方をしっかりやっておかないと危ないですね。ただただ国の力で云々みたいな形になるといけませんので、基本は、国民が認識をするというところでありますね。

 その民間防衛の一つでもあります避難だとか誘導、これは皆、消防団を含めて民間関係もやるんですけれども、この前、資料を見ていましたら、これはドイツですから若干異質かもしれませんけれども、市民保護再編法というのがあって、つまり、動かないようにしようと。何かあった場合、緊急の際には、もうそこに、滞在場所にとどまれと。動かないことをまず最初、その先にいろいろ対応していくんだと。そうしませんと非常に、ただ右往左往しちゃうとかえって危険が大きくなるということで、緊急事態が確認、確定されるまで許可なく退去させないというのが、ドイツの場合は強いですから、そういう法律もあるんですね。

 だから、私は、直接こういうきつい言葉かどうかは別としても、こういう法案の中にこういったものも、緊急事態が起こり始めたときにむやみに動いてはいけない、そんなことも書くべきだと思いますが、いかがでしょうか。

井上国務大臣 まさに今御指摘の点、ごもっともでございます。

 何も移動することが避難の一番いい方法だとも思えませんし、余り大きく遠くまで行くことが最善の方法でもないわけであります。要するに、状況に応じましてどのような避難をしていくか、どのような避難をすることが一番適切か、一番安全なのか、こういうことでありまして、今お話しになりましたようなことを含めまして、それは国民保護の基本指針の中で記述をいたしたいと考えております。つまり、この避難の対応につきまして幾つかの対応があるということでございます。

松崎(公)委員 ぜひ、この辺も、指針がこれからどうなってくるかわかりませんけれども、いろいろ議論の中で積み上げていっていただきたい、そう思っています。

 先ほど、麻生大臣からのお話で、自衛隊員の問題もございました。私は、今、この何年間かで自衛隊への意識が国民の中で大分変わってきたことは確かだと思いますけれども、各自治体の協議会のメンバーの中に自衛隊員が全部入るんですか。

石破国務大臣 これは条文にもございますが、都道府県あるいは市町村にできますところの協議会には自衛隊員を参加させることができる、こういうふうに記しておるわけでございます。マストではございません。

 これは、先生の千葉県もそうですが、全部の自治体に自衛隊が所在しておるわけではございません。しかし、先ほど来の御議論にございますように、自衛隊員が参加していろいろな議論に加わって、どうすれば適切に国民が保護できるかということは考えなければいけないと思っております。

 私ども、全国に所在します部隊、もちろん防衛庁長官が事前にそれを認めた上でのことでございますが、できるだけ効率的に配置をいたしまして、この国民保護協議会に自衛隊員が参加できるようにと思っておりますし、そしてまた、市町村長の方々と都道府県知事の方々、私は鳥取県ではございますけれども、やはりその首長の方々の御熱意というのもとても大事だと思っております。それにきちんとこたえられるような体制というのを考えてまいりたいと思っています。

松崎(公)委員 その自衛隊との問題なんですけれども、日ごろ交流を持つべきだという意見があるのでありますけれども、具体的に、自衛隊としては各地方自治体との関係、私どもは観桜会だ何だというのはありますけれども、そういう形式的なことではなかなか難しい。特に、この法律ができて、計画を立てるための協議会ができてくればまた別かもしれませんけれども、もう少し自衛隊のプラスの面を発揮させていくためには、急に、この法案ができたから自衛隊がということになると、いろいろ違和感を感じる方々も出てくる。県の場合はかなり違うと思いますけれども、市町村に関してはかなり、日ごろないわけでありまして、その辺、どのようにこれから考えていくか。

石破国務大臣 先生の御指摘のとおりだと思います。

 先ほど来お話がありますが、市町村主催の防災訓練に対する自衛隊の参加は平成十四年三百五十件ということですが、それは全体で何%かと言われると、かなりまだ低いと言わざるを得ません。

 私、大臣になる前のことでございますが、自民党の部会で、例えば防衛白書というのをつくりますよね、これはもう全部の三千三百市町村にみんなこちらから出向いてきちんと説明をしてくれということを申しました。その実績表もつくっています。私どもは、求めに応じてということも大事ですが、我々の方から何らかの機会をとらえて市町村長さんに、自衛隊が所在していない市町村の方が多いわけですから、こちらの方から行かなければいけないということだと思っています。

 鳥取のあの西部大震災があったときに、一人も死にませんでした。それは、もうきちんと事前にいろいろなシミュレーションをやっておったことが非常に大きく功を奏したと思っています。その後の反省会のときに鳥取県知事が言っていましたが、何かあったときに名刺交換するようで本当にできるかということを言っていました。

 日ごろから市町村長あるいは防災担当者と自衛隊員が、こんなことがあったらどうしようと、こんなことがあったらどうしようと、そのときに意思の疎通をしていない限り絶対にきちんとした態勢はとれない、そういう認識は強く持っておるところでございます。

麻生国務大臣 今、松崎先生の御指摘の中で、おっしゃるとおり、自衛隊の部隊の派遣というものは市町村、地方自治体からの要請に応じてなされるということに基本的になっておりますのは御存じのとおりでありますので、そういった意味では、例の国民保護協議会、今言われましたあの保護協議会への自衛隊員の任命について規定するというようなことは法律のところに書いてありますけれども、その他、都道府県対策本部へ防衛庁の職員の出席を要請する等々のことを今考えておりまして、かつ、地方団体の訓練には自衛隊が参加する。

 そういった意味で、平素からの連帯協力、石破長官が今言われましたように、平素からの連帯協力がどうしても欠かせぬところだと思っておりますので、今回の、地方団体に示すことにいたしております国民保護モデル計画におきましては、自衛隊との連絡、連携協力について必要な事項というものをきちんと書いて、必要な支援をそれに対して行ってまいりたいと私どもとしては考えております。

松崎(公)委員 それで、各自治体の協議会のメンバーに加わる自衛隊員というのは、自衛隊の隊員はたしか三十数万でしたか、制服は二十五万ぐらいでしょうか、どのくらいの、例えば土木の作業をやる自衛隊員がそこへ行ってもしようがないわけで、どういうレベルの人たちが、今の三千二百とすれば、地方自治体を含めて、これは置くことができるですから全部が入れるかどうかわかりませんけれども、私はやはり、これは地方の小さい町になればなるほど結構大変だと思いますから、それは県が指導するというお話になるのかもしれませんけれども、一定程度の自衛隊員の派遣というのがあるんですね。そうすると、どういうクラスの、どういう能力のある人たちが入っていくのか、ぜひこれは聞いておきたいなと思います。

石破国務大臣 例えて言いますと、先生の千葉県で、千葉県の防災会議委員には第一空挺団長がなっておるわけでございます。ところが、これが三千三百という話になりますと、それくらいの連隊長クラス、一佐クラスになりますが、それを全部やりくりというわけには、これはまいりません。そうしますと、二佐、三佐クラス、いわゆる幹部自衛官という者が行くことになるだろうと思っています。

 ただ、どこの市町村も全く同じにやるわけじゃございませんし、開催日も変わるということもあります。一日で午前と午後に分けることもあろうかと思います。ですから、自衛隊に入隊したばかりの若い人を出しても仕方がありませんし、職種として全くそういうことに得ていない人を出しても仕方がありません。そういうことがわかる人を、きちんとローテーションを組みながら、あるいは適切な配置を見ながら、単に出しましたということではなくて、有効な対策を樹立するに足る人を出してまいりたい、私どもとしても真剣にそれは考えてまいりたいと思っております。

松崎(公)委員 それから、有事の場合に自衛隊は本来業務にほとんど集中すると思うんですが、その場合に、避難・誘導でありますとか、各地域での要請があった場合に、これはどういう振り分けをするのか。何か派遣の基準だとかを持っているのかどうか。

 本来、有事の場合は本来業務の方にやはり自衛隊は集中しますよね。その場合に、今の災害なんかの場合はもちろん自衛隊の派遣を要請するわけでありますけれども、具体的に、そういう場合には、地方自治体でも要請はありますよね、誘導でありますとかいろいろな作業に対して。そういう場合はどういうふうに分けるのか、あるいは何かそういう基準をつくっておくのか。

石破国務大臣 それは、おっしゃるとおり、敵の侵害排除というのは自衛隊しかできませんから、これは支障のない範囲においてということになろうかと思います。

 自衛隊というのは、頼めばすべてできるのかといえば、もちろん能力に限りはあるし、敵の侵害排除に全力を尽くさねばならない、その支障のない範囲において国民保護を行うということに相なります。ですから、何がどれだけできるのかということをきちんとお互いが知っていなければ、そして、このケースはどうか、このケースはどうかということについてきちんと知悉をしておかなければならないことなんだろうと私は思っております。

 私どもとして、本当に支障のない範囲で行いたいということ、それじゃ何もわからぬというふうに言われるかもしれませんが、各市町村、各都道府県で、どのようなことが考えられ、どの近くにどのような部隊があるか、そして輸送能力はどうなのか、そういうことをまずベースとしてきちんと押さえた上で適切な対応をしてまいりたいと思っております。

 いずれにしても、相互の能力の理解というものがまず必要かと思います。

松崎(公)委員 総務大臣に、ちょっと一つ忘れまして、地域自治区というのがありましたね。これは、今、合併法の中でも、よさそうだけれども危ないということで、きのうも議論がありました。これは、地域をまとめていくのにはかなり有効な、新しく、今までもあるんですけれども、今度はもっと、さらに法的に地域自治区というものを各市町村にも置けるようになった。これは、こういう有事の場合に物すごくある意味では発揮する単位になるんですけれども、しかし、この使い方を間違えますと大変なんですね。戦前みたいになっちゃう。

 ですから、この辺は、総務大臣として、地域自治区の問題では、多分、有事の問題はまだ私も含めて余り考えていなかったんですけれども、これは幾らでも使えてしまう、いい活用もできるし危ない。この辺、何かお考えありますか。

麻生国務大臣 地域自治区につきましては、その内容は、昨日の総務委員会等々、いろいろ御党の委員からもお話があっていたところです。

 この協議会の中に人を入れるとか、その地域自治区からの方々が入れられるものとして、例えば、法案では、国民保護協会の委員の中に、都道府県の知事または市町村長、副知事等と書いてありますけれども、そういった中で、その地域で、例えばOBの議員さんという方もいらっしゃいましょうし、そういった方々は、立場上、「国民の保護のための措置に関し知識又は経験を有する者」という一項目がありますので、地方議員、議会の議員のOBの方とか現役の方というのは、これは命令系統は少し違うとは思いますけれども、それと同様に、地域自治区の方々で、その種のことをきちんとできる、ある程度体力も要りますでしょうけれども、そういったことをできる方を入れておいて、あらかじめ、きちんとした対応ができるように訓練しておいていただけるということは非常に有効だ、私どももそう思います。

 ただ、これは使い方を間違えますと今おっしゃるとおりなことなんだと思いますので、十分に検討していくに値する話題だと思っております。

松崎(公)委員 どうもありがとうございました。

自見委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆です。

 きょうは、まず、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律、これについてお聞きをいたします。

 この法律は、結論を言いますと、必要ない、こう言わざるを得ない内容だというふうに判断をしております。そもそも、日本においてあり得ないことを規定している、あるいは、あり得たとしても現在の刑法典等の規定で十分対処が可能である、だからこの法律は必要ない。それを今度提出しているわけでございまして、その内容について、一つ一つその点を明らかにしていきたいと思います。

 最初に、この法案に、占領地域に入植させる罪というのが規定をされております。しかし、日本が一時的にしろ外国の領地を占領するなんというのはそもそもあり得ないことなので、だから、この罪を規定する必要性もない。そして、占領地域からの文民の出国を妨害する罪、これも規定をしておりますが、これも今言ったのと同じ理由で、占領自体、日本はあり得ないわけですから、そこから文民の出国を妨害させる罪ということも発生するはずがない。

 今言った二つの罪の規定について、どうですか。

井上国務大臣 確かに、我が国は外国へ出ていきまして占領するということはないと考えておりますので、我が国が主体になりまして、今指摘されましたような犯罪の当事者といいますか、そういうものになるというようなことはないというふうに思います。

 ただ、国際人道法といいますか、広い意味でそのように表現しておりますが、そもそも、こういう法律を制定するに至りましたのは、武力攻撃事態法の流れをくむものでございまして、その一環としてこの法律を提出したということであります。

 しかし、考えてみますと、この国際人道法の場合は、人道に対する罪をできるだけ抑えていこう、なくしていこうという趣旨の条約だと私は思うのでありまして、各国が協力しないとなかなかこういう人道に対する犯罪を抑えていくことができないわけでありまして、そういう一翼を我が国としても担うということは我が国にとって大変大切なことだというふうに思うんです。

 それで、それじゃ全く関係ないかといいますと、必ずしもそうじゃありませんで、この条約では、紛争当事国じゃなくても、締約国に、こういう重大な違反行為をした者につきまして公訴を提起する義務を課しているわけでありまして、その限り、我が国も一定の責任を持つということでございます。

 しかも、このジュネーブ条約に加入する、そのことによって、重大な違反行為に対する処罰の法律を立法することを義務づけられるわけですね。反射的にまた、こういうジュネーブ条約によりまして、我が国の一般の人民といいますか文民が守られることにもなるわけでありまして、そういう広い意味でこの国際人道法の実施の処罰行為の法律をつくったということでございまして、確かに、おっしゃるように、我が国が直にかかわるような、そういうような違反行為は余りないんじゃないか、そんなふうに私は考えます。

筒井委員 今、余りないんじゃないかと言われましたが、わけのわからないこと、いろいろなことを長々言われましたが、まず、日本が外国の領域を占領する、これはあり得ないですね。それは、余りないんじゃなくて、あり得ないですね。

井上国務大臣 そういう事態は全く想定されないということであります。

筒井委員 だから、それはあり得ないということなんでしょう。想定されないって、どうも、石破長官の場合もそうだったんだけれども、そういう逃げ方をしているので、厳密に確定しますが、日本が外国の領域を占領する、これは一時的な占領にしろあり得ないということですね。

井上国務大臣 我が国が外国へ出ていきまして外国を占領するなんというようなことはあり得ないことであります。

筒井委員 そうしますと、この二つの罪を規定している趣旨は、要するに、日本を外国が占領した場合、これはあり得ないとは言えないでしょうね。それと、外国同士の占領、外国が別の外国の領域を占領した、その二つの場合があり得るわけですが、外国が他の外国の領域の一部にしろ全部にしろ占領した、その場合には、入植させる罪あるいは出国を妨害する罪、それは条約上犯罪だということになっていますから、そういうことをやった人間が例えば日本に来た場合にそれを処罰する。こういうことが考えられるわけで、そうしますと、今の二つの罪を整理すれば、日本が外国から占領された場合あるいは外国が他の外国を占領した場合、その場合について限定された規定である、こういうことですね。

井上国務大臣 この法律が適用されるというのは多分その二つだと私は考えます。

筒井委員 多分とか余りとかというのは私としては困るので、わからないならわからないでいいです。多分なんですか、それとも、はっきりその二つに限定されるんですか。

井上国務大臣 今考えるのはその二つだということであります。

筒井委員 そうすると、今、二つの場合に限定される、そのことはこの法文上規定されていますか。法文上はそのことはわかりませんね。どっちですか。

井上国務大臣 これは、条約の規定の解釈からそうなっているということであります。

筒井委員 またわけのわからないことを言った。条約の解釈からじゃないでしょう。日本はそういう交戦権を放棄しているから、だから外国を占領することはあり得ないと先ほど言われたので、条約上、そんなことが規定されていますか。

井上国務大臣 例えば日本国内の占領なんかの場合は、これは解釈として出てくると思うんですね。解釈として出てくる。外国の場合、紛争当事国がある場合ですね、外国におきまして紛争当事国、つまり日本が当事国ではないような場合、これは条約上もはっきりと規定しているところでございます。

筒井委員 いや、だから、私が聞いているのは、日本が占領することはあり得ない、それじゃない他の別の二つの場合に限定される、そういうふうな答弁だった。そのことが条約上出てくると言われたから、私、それはわけがわからないじゃないかと。そのことは条約上出てこないんですよ。

 先ほど大臣も言われましたように、日本は交戦権を否定しているから、だから外国の占領はあり得ない。条約から出てくるものではないでしょう。まず、その点の確認。

井上国務大臣 それはそのとおりでありまして、私が申し上げたのは、日本が占領される場合はあり得るんだろうというので、そこの関連で申し上げたわけであります。

筒井委員 だから、私も先ほどから認めておりますように、日本が占領されることはあり得ないとは言えない。断定はできない。だから、そのことが入るだろう。しかし、その二つのこと、日本が占領された場合あるいは外国間の占領の場合、この二つのことにこの法律の対象は限定されているんだということは先ほど確認したんですが、その限定されていることは法文上そう規定されていますかという質問なんです。規定はされていないでしょう。

井上国務大臣 今提出しております法律上は、法文上は規定をしていないということであります。私が申し上げましたのは、追加条約の解釈でそういったことが言えるということを言っているわけであります。

筒井委員 今の答弁もちょっとわけがわからない。まあ、それはいいや。

 それと、もう一つの罪として、重要な文化財を破壊する罪、これが規定されておりますが、これはあり得ないことではないんですけれども、器物損壊罪、建造物損壊罪、こういう刑法典等の規定でもって十分対応できるんじゃないですか。

井上国務大臣 これは日本の刑法の方でしかるべき対応はできますけれども、ここで言っております重要文化財に対する犯罪といいますのは、国際的な取り決め、枠組みの中で指定される特別な物、それに対する破壊を重要文化財に対する重大な犯罪というぐあいに規定しているわけでございまして、一般論として、重要な文化財を破壊するというのとは異にしている犯罪でございます。

筒井委員 条約の中で規定されるものに対しての罪だ、それはそれでいいですよ。それでも、それは器物損壊罪、建造物損壊罪で十分対応できるんじゃないですか。

井上国務大臣 これは、日本の場合、一般的にそういう規定はありますが、こういう国際的な取り決めによる指定された重要文化財につきましては、特別な規定を設けないとその条約に対応した規定にはならないということであります。

筒井委員 今もまたわけのわからないことを言われた。特別な規定を設けなければならないって、どこに何を設けるんですか。

 これは質問事項をもちろん前もって出しているので、私、物すごい技術的な複雑なことを聞いているんじゃないですよ。日本の刑法典等で対処は可能だろう、この文化財を破壊する罪は器物損壊罪、建造物損壊罪、十分重い罪がある、これで対応できるだろうという質問なんです。それに対して、今、何かわけのわからないことを言われた。

井上国務大臣 これは、日本の国内で行われた犯罪につきましてはそうでありましょうけれども、これは国外犯も処罰する、こうなっておりますので、そこまでは日本の刑法は及ばないわけですね。

筒井委員 そうすると、これは、国内犯については従来の刑法典で対処になるけれども、国外で犯されたものに対して罰するために規定したんですか。わけがわからない。もしそうだとすれば――まあいいや。ちょっと説明を受けてから。答えてください。

井上国務大臣 それは、器物損壊という点につきましてはそうでありますけれども、ですから、国外犯を対象にする、こういうことでございます。

 ただ、対象にします場合は、いわゆる器物損壊の一般的な器物損壊ではなしに、それは対象を特定しているということですね。

筒井委員 そうすると、今の答えは、さっきの答弁と一緒で、国内犯に関しては器物損壊罪、建造物損壊罪で対処する、しかし、この規定は国外で犯された罪に対して対処する規定である、こういう趣旨ですか。今そういうふうに答えられましたが。

井上国務大臣 これは、一般的なそういう文化財とは違いました国際的な枠組みで保護されるものでありますから、つまり保護法益が違いますから、そこは刑罰の程度その他によって差がおのずと出てくる、こういうことであります。

筒井委員 さっきのと混同した答えだと思うんだけれども、そうすると、今の答えは、保護法益が違うんだから国内犯も対象にするという意味ですか。さっきの答弁、訂正ですか。訂正なら訂正でもいいですよ。訂正するんだと思いますよ、本当は。

井上国務大臣 保護法益が違うということでございまして、これは別途の犯罪になる、こういうことでございます。

筒井委員 今のも、その背景を説明しないで言っているから、聞いている人は全然わけがわからないと思いますよ。要するに、言いたいことは、保護法益が違うんだから、国内犯についてもこの刑罰の対象にする、建造物損壊罪とは保護法益が違うという趣旨なんでしょう、今事務局が説明したのは。とすれば、先ほど言った答弁は訂正するんですねということなんですよ。

井上国務大臣 保護法益が異なりますので、犯罪としては別途の犯罪になる、こういうことでございます。もし私が先ほど答弁いたしましたことと違っておりますれば、ただいまのが正しい答弁でございます。

筒井委員 そうすると、大臣の言う答弁を善解して私の方で解釈してあげれば、要するに、国内犯に関しても国外犯に関してもこの罰則は対象になる、それは建造物損壊罪や器物損壊罪とは保護法益が違うんだから別の犯罪なんだという趣旨ですね。

井上国務大臣 そういう趣旨でございます。

筒井委員 初めからそう言えば、そんな大して時間かからないんです。

 ただ、これの対象は、条約の登録簿に規定された場合に今大臣が言われた保護法益の対象になるんでしょう。そうでしょう。

井上国務大臣 これはハーグ条約に基づいて一定のルールがありまして、そこに登録されたものが、これの保護法益といいますか、保護法益の対象になる重要文化財でございます。

筒井委員 その関係では、まだ日本は批准していませんね。批准してないから、今、保護対象物は何もないという状況ですね。

井上国務大臣 日本の文化財では、この保護の対象になるものはないということであります。

筒井委員 だから、なおさら、この法律が通ったって、この法律が発動されることはあり得ないんですよね。

 しかも、今までずっと批准していなかった理由として、これは外務省の方が答弁しているんですが、京都とか奈良など文化財集中地域に関して、重要な軍事目標から妥当な距離を置くことは困難だから批准の予定なしというふうに今まで答弁しているんですよ、政府は。批准の予定がないならば、こんな保護対象物なんてずっとないわけですよ。ない状況がずっと続くんですよ。それでも何でこの意味のない罰則を規定するんですか。

井上国務大臣 これは、先ほどから答弁いたしますように、我が国が直に関係はなくても、つまり、締約国の中でそういうような違反行為が行われた場合には我が国として処罰できるということでございます。我が国自身の文化財が破壊されて、それに基づいて処罰をするということはないということです。

筒井委員 そうすると、これもさっきの占領地と同じことですか。国内犯に関して、さっきの答弁に戻るのかな、国内においては保護対象物件はないんだから、しかし、国外において犯された場合にこれは対象にするんだと。今の大臣の答弁、さっきに戻ったんですが、そうしますと、これは日本の国内の重要文化財を対象にするんじゃない、国外でこういう犯罪を犯した者が日本に来た場合に罰するための規定である、さっきの占領地域の場合と同じ趣旨になるわけですか。

井上国務大臣 当面はそういうことでありますけれども、もし将来、日本がハーグ条約に加入するようなことがあり、そういったハーグ条約の枠組みで日本の文化財もこの重要文化財になれば、もとよりそういう面での関係も出てくるということであります。

筒井委員 今も、批准する予定は現在のところなし、それで、先ほどの答弁に戻って、やはり国内犯は対象外、対象にしている規定ではないということで、ちょっと重要なのでもう一度確認します。それで、その解釈でよろしいんですね。

井上国務大臣 はい、そのとおりでございます。

筒井委員 そうしますと、これは、今私は、これらの犯罪はあり得ないし、また、あり得たとしても日本の刑法典で十分可能であるというふうに申し上げてきましたが、刑法典でも、ちょっと専門的になるかもしれませんが、もしこれはわからなければわからないでもいいですが、条約に基づく国外犯の規定というのがあって、条約上の犯罪に関して、日本でもすべての犯罪を刑法典の対象にできるという規定があって、それでも十分、犯罪を罰することができるんですね。

 これはちょっと、これに限定して聞くというふうに前もって通告してなかったので、わからなければわからないでいいですが、今まで言ってきたことを前提にしますと、まさにこの法律は必要ない。それで、政府も、今までそう答弁してきた、ずっと何十年にもわたって。ジュネーブ四条約はあるし、我が国は署名しているけれども、しかし、あり得ないし、あったとしても刑法典で十分対応できる、だからこういう特別の法律を別に規定する必要はありませんというふうに答弁してきているんです。

 法務省、来ておられると思いますが、まず、法務省に確認しますが、そういう答弁を四十三年以来ずっと一貫して続けてきていることは、これは認められますね。

実川副大臣 先生御指摘の、たしか平成十二年三月に山本政務次官が答弁のことだと思いますけれども、ジュネーブ四条約に規定します重大な違反行為が我が国の国民により犯されることを前提としてその防止を目的とした国内法令は設けられていないこと、また、仮にこれらの行為が我が国におきまして犯されたとしましても刑法等の既存の国内法によります処罰が可能であるとの認識を示されたものと思います。

 この点につきましては、今回の法整備に当たりまして特に認識を変更するものではないというふうに思っております。

井上国務大臣 今まで法務省が答弁いたしておりましたのは、ジュネーブ条約の第一、第二、第三、第四条約の関連だと思うんですね。これにつきましては、確かに、殺人だとか幾つかの犯罪がありますけれども、これは大体、既存の日本の刑法でもって対処できるのでありますが、今度は附属議定書でありまして、これにつきましては、これは今までの刑法の規定では適用できない、刑法の規定にないものがあるということでありまして、その部分について新しく法律をつくったということであります。

筒井委員 今、法務省の方で認められた、あり得ないことであるという、その部分をちょっと読んでみますと、「我が国は、憲法第九条により戦争を放棄している関係上、これらの重大な違反行為が我が国民により犯されることはあり得ないと思料するので、右諸条約違反の行為の防止を目的とした国内法令を特段制定していない、」そして、これは、今、平成十二年三月の政務次官の答弁を法務省も認められたんですが、その前ずっと、四十三年から刑事局長を初めとしてずっと同じ趣旨の答弁をやってきた。それも認められますね、法務省。その点を一つ。

 それからもう一点は、この「あり得ない」ということは、具体的な中身は、先ほど私が申し上げた占領地、日本が外国を占領する、これはあり得ない、このことも含むわけですね。この二点、法務省。

実川副大臣 今御指摘の、これまで法務省といたしましては、見解を統一していたとは承知いたしておりません。

筒井委員 今の答弁はちょっとよくわからないけれども、法務省としては見解を統一していたとは言えませんという答弁だったのですか。これは、山本政務次官のときに答弁で、当初、法務省の統一見解だと言って、その後で訂正しています。刑事局長が四十三年からずっと答弁していることであって、統一見解という点は訂正しますと言っている、その趣旨を言っているのかな。私、そんなことは何も聞いていないですよ、今言っているのは。

 私が今聞いているのは二点であって、平成十二年に答弁しただけではなくて、四十三年以来同じ趣旨の答弁を刑事局長や何かが繰り返してきましたねという確認が一点、それと、今読み上げた答弁の中にある、戦争を放棄しているので「我が国民により犯されることはあり得ない」という中身は、日本が占領することはあり得ない、こういうことを含めて言っていますねという、この二点を確認しているんです。

実川副大臣 法務省といたしましては、ジュネーブ四条約に関しましては、これまで答弁した例は見当たりません。

井上国務大臣 今、重大な違反行為があった場合に国内法で対処できるのかということでありますが、ジュネーブ条約、第一条約から第四条約、これにつきまして、殺人とか拷問等々、重大な違反行為の中身がずっと書いてありまして、これにつきましては国内法で担保されているわけですね。

 ですから、今まで批准をしておりました四つの条約につきましては、これは特別な立法をしなくても国内法で担保できたということでありますが、このたび、第一追加議定書と第二、これの批准につきまして国会の方にお願いをしているわけでありますが、その第一追加議定書の中でも、国内法で対処できるものもあります。ありますけれども、その八十五条の四項では、今、法案として提出しておりますその関連のところが、重大な違反行為のところが国内法では担保されていないということでありまして、新しく立法をする、こういうことであります。

筒井委員 先ほどから、私、質問していないのに二人が続けて答弁していますが、ちょっと規制というか、ちゃんと順番を守っていただきたいと思います。

 最初、法務省が今おかしなことを言いましたね。ジュネーブ四条約についての答弁を一切していませんと言いました。これは、ほんの先ほど言った平成十二年の山本政務次官の答弁はジュネーブ四条約に関係ない答弁だということですか。

実川副大臣 以前はないということです。

筒井委員 そうすると、今のものも善解すると、平成十二年の山本政務次官の答弁はジュネーブ四条約に関する答弁である、しかし、その以前はそういう答弁はないということを言っているんですか。

実川副大臣 山本政務次官は平成十二年三月二十九日に法務委員会でそのような答弁をしておりますけれども、その以前は、法務省といたしましては答弁した例は見当たらないということでございます。

筒井委員 そうしますと、今の山本政務次官のその同じ日の答弁の部分を今ちょっと読み上げますが、「先ほど御答弁申し上げました四条約についての担保法について、私が法務省統一見解と申し上げましたが、刑事局長が四十三年ぐらいからそのような答弁をしているということに改めさせていただきたいと思います。」こういう答弁をしているでしょう、法務省として。では、これはうそなんですか。

実川副大臣 刑事局長はその委員会ではそういう答弁はいたしておりません。

筒井委員 そうすると、今言った日に山本政務次官が法務省の答弁として今言ったような答弁をしていることは認められますね、私が読み上げたような答弁。今、議事録を見せてもいいけれども。

実川副大臣 議事録に載っておりますので、認めます。山本政務次官が答弁したことは認めます。

筒井委員 これは、山本さんも法務省としての答弁ですよね。個人としての答弁じゃないですよね。法務省としてそういうことを答弁していて、今、それを否定した。法務省としての意見が全然わからないじゃないですか。ちょっとはっきりさせてください。

自見委員長 きちっと答弁してください。わかりやすく簡潔に。

実川副大臣 十二年三月二十九日、先ほどから御指摘ありますように、法務委員会で、山本政務次官の答弁でありますけれども、そのときには、先生御指摘がありましたように、ジュネーブ四条約の重大な違反行為が我が国国民により犯されることはあり得ないと思料する中で、右諸条約違反の防止を目的とした国内法令を特段制定していないけれども、仮にこれらの行為が我が国におきまして犯されたとしても、これらの各違反行為はいずれも既存の刑法内において処罰し得る、そのように答弁をいたしております。

筒井委員 今、答弁したことを認めたのは、山本政務次官が答弁したことを認めたんですが、その前、四十三年以来、刑事局長もそういうふうに答弁していると私がさっきから聞いていることを認めたんですか、どっちですか。

実川副大臣 山本政務次官が答弁したことは認めておりますけれども、それ以前のことは法務省といたしましては認めておりません。

筒井委員 そうすると、その以前から答弁していると山本政務次官が言った法務省としてのこの答弁は間違いですね。(発言する者あり)

自見委員長 後刻理事会で。事実を調べて、速記録を調べてください。――後刻理事会で協議いたしまして、しっかりした答弁を、また精査の上、事実関係を調べることもございますので、ぜひ改めて時間をとらせていただきたいというふうに理事会で決定をしたいと思っております。

筒井委員 もう一度、今のものは後にして、確認できるものを確認しますが、では、山本さんが法務省として答弁した、それは「戦争を放棄している関係上、」「あり得ないと思料する」と言った中身には、日本が占領するということ、これについて言っているわけですね。占領するということはあり得ないということですね。

実川副大臣 それも含めて答弁しているというふうに思います。

筒井委員 今の方が正確で、それも含めて答弁していると思います、「あり得ない」ということの中にはほかにもあるから。

 ただ、占領するということがあり得ない、これも含めて答弁している、そうすると、占領することがあり得ないからこういう法律は規定していないんだ、あり得ないことは規定する必要はないんだというふうに今まで法務省は、今までと言うとまたさっきのあれかな、山本さんはそういうふうに法務省として答弁した。しかし、今度はそれを規定した。この法律で提案している。そうすると、法務省のその見解は、これも訂正ですか、撤回、変更ですか。

井上国務大臣 今度の法律で新しくやっておりますのは、国外犯につきましてやっている部分が新しいのでありまして、あとは従来と一緒ですね。第一条約から第二、第三、第四条約の重大な違反行為については国内法で対応していくということでありまして、今新しく規定をしておりますのは第一追加議定書の八十五条の四項に関連するものでありまして、先ほど問題になりました占領国による占領地域への自国民等の移送でありますとか、あるいは捕虜または文民の送還の不当な遅延だとか、それから歴史的建造物とか芸術品、礼拝所の破壊、こういったものについて国内法で規定をした、こういうことであります。

筒井委員 さっきのものにみんな関係してくるので、ちょっとそれでは後でまた質問することにします。

 今、人道法について規定しておりますが、捕虜法についてもジュネーブ条約の規定がありまして、これについても、先ほど言った委員会において、法務省として山本さんが答弁をしております。

 捕虜法に関する答弁をしている部分をちょっと読み上げてみます。

 「ジュネーブ条約の「第六章 紀律」三十九条」「「各捕虜収容所は、抑留国の正規の軍隊に属する責任のある将校の直接の指揮下に置かなければならない。」という条文がございまして、」「あくまでも憲法九条をいただいておる我が国といたしましては、自衛隊を正規の軍隊というかどうか、大変疑問なしとしないところがございますので、」「捕虜の扱い、あるいは捕虜として特別にその人を別の法律の傘下に置いて遇するということが必ずしも適切ではない」

 こういう答弁が法務省としてなされていたこと、これはまず法務省、認めますね。前もってこれも通告していますが。

実川副大臣 今御指摘の先生の御質問ですけれども、法務省といたしましては通告を受けておりません。

筒井委員 きのう、正規の軍隊と答弁している問題について、これが変わったのか変わらないのか、質問取りのときの答えは、前もって私が言っちゃうのはおかしいけれども、国際法上は正規の軍隊で、国内法上に関しては今までと同じ対応ですというふうな、ちゃんと質問取りのときのそういう答弁もあるんですよ。(発言する者あり)いやいや、法務省もきのう一緒に来ていたんだから。一緒にいる前でみんな聞いているんだから。

石破国務大臣 済みません。先生がどの役所に御通告になったか、これは政府の問題で、不行き届きがあったらお許しをいただきたいと思います。

 結局、ジュネーブ諸条約に言います軍隊とは何かといえば、武力紛争に際して武力を行使することを任務とする組織一般であるというふうに考えております。このことは、何度か国会におきまして答弁を申し上げておるところでございます。

 そういたしますと、このジュネーブ条約におきまして、自衛隊は、ここに言いますがところの軍隊ということに相なります。ただ、その概念と陸海空軍その他の戦力というものは、それはまた別のものということになりまして、自衛隊はジュネーブ条約上の軍隊に当たるということは、今まで政府としても答弁を申し上げておるとおりでございます。

筒井委員 私は、軍隊であるかどうかをここで議論するつもりはないんです。私自身も、個人的には軍隊だと思っているんですよ。国内法上も軍隊だと思っている。それを今ここで議論するつもりはないんです。

 ただ、私がここで確認したいのは、今私が読み上げたそういう考え方で、こういう捕虜収容所とか何かの特別な法律は規定するのは適切でないと言っていた、それがどうして変わったのか、そのことを問題にしているんです。

 だから、そのために、今まず第一に、こういう答弁を法務省がしたかどうかを確認しているんです。今、議事録を持っていますから、もし必要なら見せますよ。(発言する者あり)

自見委員長 後刻協議を、両筆頭が申しましたように協議をいたします。

 それでは、筒井君、質疑を続行してください。

筒井委員 では、今のものに関連した質問は今回は全部やめます。

 別の質問に移ります。

 今度の捕虜法案は、「武力攻撃事態における」という形で、武力攻撃事態における場合に限定をしている。しかし、人道法案は限定をしていない。まず、これははっきりしていますね。こんなのは確認するまでもないと思っていたけれども、先ほどからの答弁だと、どうもちょっとこれも確認した方がいいな。人道法案は、武力攻撃事態の際に限定しておりませんね。

井上国務大臣 これは限定しておりませんで、外国の場合も入りますから、いわゆる武力攻撃事態等とは事態の状況は異なるということであります。

筒井委員 そうしますと、この法案が成立した場合には、例えば今回のイラクのような場合も適用対象になるわけですね。

井上国務大臣 具体的にイラクに適用されるかどうかは別にいたしまして、一般論として、その関係国が締約国になっております場合にはそういった関係国は適用対象になるということです。

筒井委員 またわけのわからないことを言っている。締約国になっている場合ですか。そこに限定されるんですか、適用されるかどうかは。

井上国務大臣 もとより、これは締約国間の約束でありますから、条約でありますから、そのようになります。

筒井委員 イラクが締約国になっている場合だけ、イラクにおける行動についてこの法律が適用されるんですか。もう一度質問します。

井上国務大臣 ですから、締約国間ですね、締約国間でこれは問題になるわけであります。締約国間の問題として処理される。ですから、イラクが締約国になれば、それはイラクに対しては適用されることだと思います。

筒井委員 今、事務局の方はそういうふうに説明したの。ここでいろいろな幾つかの罪が規定されておりますが、さっきの、占領地域に移送する罪とか、文民の出国を妨げる罪とか、これがイラクにおいて犯された場合には、イラクが締約国になっているかどうか関係ないでしょう。それでも適用されるんでしょう。何で締約国になっていなきゃ適用されないんですか。

井上国務大臣 条約というのは、これは締約国間を縛るものでありますから、締約国でなければおよそそういう義務は発生しないということ、これは国際条約の常識だと思います。

筒井委員 そうすると、最初の答えとまた違ってくるんだけれども。

 国外犯も全部対象にするために、例えば、さっきの占領地に関する規定は、日本が外国を占領することはあり得ない、だけれども、そんなものを対象にしているんじゃなくて、国外で犯された場合に、それを適用対象にしているんでしょう。それは締約国でなければ適用対象にしないんですか。

井上国務大臣 それは、もとより国外犯でありましても、締約国に関係するものでなければ処罰の対象にならないということであります。

筒井委員 そう言われるので、それじゃ確認しておきますが、要するに、締約国である外国において犯された犯罪のみ、この法律の犯罪の対象になるという意味ですね。それでいいんですね。

井上国務大臣 ですから、この条約は締約国間で効力を持つものでありますから、締約国間におきましてそれは効力を持つ、そういうことであります。

筒井委員 締約国間とかと言うけれども、私が聞いているのは、イラクがこの条約に参加しなければ、加盟しなければ、イラクにおいて犯された犯罪もこの対象にならないという趣旨ですね。

井上国務大臣 場所というよりも国ですね。国だから、締約国ですよ。締約国の行為について縛るということであります。ですから、場所がどうだということよりも、締約国の行為であるかどうか、こういうことが、そのもののその行為が対象になるということであります。

筒井委員 では、締約国、締約した国が犯した場合のみ、この犯罪の対象になるという趣旨ですか。締約していない国がどんなにこれと同じことをやってもその犯罪の対象にならないという趣旨ですか。

井上国務大臣 ですから、締約国が関係するそういう重大違反行為が対象になるということであります。

筒井委員 それもまた確認しますが、今、そういうふうな答弁として聞いておきます。

 きょうは、本当は石破長官とこの前の予算委員会の続きをしようと思っていたんですが、もう時間がほとんどなくなりましたので、この前のときに、予算委員会のときに確認できなかった点、時間切れになった点だけ、まず最初に確認しておきます。

 イラク特措法で非戦闘地域を規定した。この非戦闘地域というのが今おかしいんじゃないかという声が上がっておりまして、自民党の元幹事長もそういうふうな発言をされておられるようです。

 この非戦闘地域について、なぜ規定したか、これを石破長官は答弁しておりまして、こういう非戦闘地域の規定を入れた趣旨は、自衛隊が憲法に反するような行為をしたという評価を受けないためにわざわざそういう条文を入れた、こういう答弁。つまり、非戦闘地域という規定を入れたのは憲法違反という評価を受けないために入れたんだ、こういう答弁をされていることは認められますね。もう一度確認してください。

石破国務大臣 間違いなく、そのように答弁をいたしたものでございます。

 このような限定は、我が国が憲法九条の禁ずる武力の行使をしたとの評価を受けないよう、他国による武力の行使との一体化の問題をというとおりに答えておろうかと思います。

筒井委員 そこで、その非戦闘地域について確認したいんですが、もちろん、もう何回も言われていることですが、非戦闘地域については法律で、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」、こういうふうに規定されております。

 そこで実施される活動の期間というのは、今回の場合、平成十六年十二月十六日までですから、それから、今までの政府の答弁のことを言うと、国または国に準ずる者による国際性、組織性、計画性のある攻撃があった場合に非戦闘地域でなくなるんだと言っているので、そのことをまとめますと、こういうことになりますね。国または国に準ずる者による国際性、計画性、組織性のある攻撃が平成十六年十二月十六日までないと認められる地域、これが非戦闘地域ですね。

石破国務大臣 「活動の期間を通じて」「ないと認められる」ということでございますから、当面、先生のおっしゃるようなことに相なります。

筒井委員 だから、それは、ないだろうと予測される地域じゃないんですよね。武力対処法でも、予測される場合とそうじゃない場合とはっきり区別しているので。法的にはっきり、予測される場合とそうじゃない場合と区別しているんです。今の場合、まさに認められる地域ですから、ないだろうと予測される地域、こういう規定ではない。ないと断定される地域、しかも、それは一つの瞬間とかなんかじゃなくて、あるいは今の時期に限定してじゃなくて、少なくともこの十二月十六日までずっと継続して、ないと断定できる、こういう地域を非戦闘地域と言うわけですね。

石破国務大臣 言葉の遊びをするつもりは私はございませんが、ないと断ずる地域ではございません。ないと認められる地域と申し上げております。

筒井委員 認められる地域と断定される地域と、違いがあるんですか。

石破国務大臣 それは、いろいろな諸情報あるいは私どもが得ております知見、そのようなものから考えまして、活動の期間を通じて行われることがないというふうに認められる地域でございます。

 しかしながら、では、それは、そこにおいて期間を通じてそういうことは全くないとおまえは断言できるのかと言われれば、そういうことが起こった場合には一時中断、休止するなどして、「前項による措置を待つものとする。」それは、認めてはいるけれども、そういうことが起こった場合には、当然、休止、中断するなどして、前項の措置、すなわち実施区域の変更等を待つというふうになっておるわけですから、それは条文の中で完結をしておるものでございます。

自見委員長 質疑時間が終了いたしました。簡潔にお願いいたします。

筒井委員 今の答えは、ないと断定することと、ないと認めることとの違いを一切説明しておりません。

 私は、認められるというのは断定されることなんだ、そのことを、この後、引き続いて、だからそれは断定できないんじゃないかということを聞くんですが、時間がなくなりましたので、これで終わります。

自見委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 私は、国民保護法案と報道の自由、取材の自由の関係について質問させていただきます。

 そこで、井上大臣にお伺いいたしますが、NHKは指定公共機関になっておりますけれども、民放は指定公共機関になるかどうか、その点を確認させてください。

井上国務大臣 こういう有事でありますから、その事態を迅速に国民に伝える場合はそういう手段を活用しないといけませんから、テレビのような、あるいはラジオのような、そういうものを使って迅速に伝えるということでありますから、NHKだけではなしに、民間の放送機関も含めて対象にすることを考えております。

塩川委員 指定公共機関は、政府がつくった基本指針に基づいて業務計画を作成する義務が生まれます。作成した場合には、内閣総理大臣に報告することになります。この業務計画に対し、内閣総理大臣は「必要な助言をすることができる。」とあるわけですが、この助言というのはどういうものか、少し具体的に御説明いただけますか。

井上国務大臣 この業務計画をまず指定公共機関がつくるのでありますけれども、どういうような業務計画をつくるかにつきましては法律に規定をしておりますが、さらにこの詳細につきまして、指針なんかの中で規定を明らかにしていきたいと思いますが、この業務計画ができれば報告をしていただくということになります。

 その報告自身につきましては、もう送れば結構でありますけれども、参考になるような助言ですね。業務計画の中には、放送のこともありますし、例えば、有事の場合の社内の態勢の話もありましょうし、あるいは避難とか訓練とか、そういったことも含まれると思います。そういったことで、参考になるようなことにつきましてアドバイスをするということであります。

 業務計画自身をこう直してくれとか、ああ直してくれ、そういうことは一切考えておりません。

塩川委員 そうしますと、参考になることをアドバイスされるということで、アドバイスということであれば、聞いても聞かなくてもいいというふうに判断してもよろしいわけですか。

井上国務大臣 私どもは、国民の保護を考えましていろいろな対応をするわけでありまして、そういう上で、また、指定公共機関の安全の確保というのも必要でありますから、もろもろのことを考えまして助言をするわけでありまして、必ずや参考になるような助言をするんだろうと思いますが、それじゃ絶対に助言に従わないといけないんだとか、従わないと何かの規制をする、そういうことは考えておりません。

塩川委員 聞かなくてもいいということはあり得るわけですね。

井上国務大臣 私は、助言ですから、こうした方が参考になるんじゃないかとか、よりスムーズに例えば退避できるんじゃないかとか、そんなようなことを言うわけですから、恐らく参考にされる方が多いと思いますよ。

 聞かなくてもいいというようなことを頭から言うのじゃなしに、まず聞いて、なるほどなと思われるようなことは参考にされた方がよりよくなるんじゃないかと私は思います。

塩川委員 放送事業者にとりまして、放送内容について意見を言われることは大変重いわけであります。その点で、助言の中身として、放送内容とか放送方法、あるいは取材内容とか取材方法とか、そういうことについても助言をされる、その中に入るというふうに考えてよろしいですか。

井上国務大臣 私どもが放送してほしいのはしかじかという、放送ですから、そう長々と放送してほしいというようなことは到底かないませんので、簡潔にこれこれのことを放送してほしい、そういうことを依頼するわけでありまして、我々は、それ以上のことを、こうしろ、ああしろというようなことを言う考えはありません。

塩川委員 そうしますと、放送内容ですとか取材内容についてアドバイス、助言をするということはないということですね。

井上国務大臣 そんなことはないと思います。

塩川委員 助言というのが法律の条文でどういうふうに出てくるかといいますと、かなり具体的に規定しているわけですよ。これは放送法の関係ですとかいろいろ見ましても、こういう場合について助言と。そういう意味では、極めて助言の対象がはっきりして限定されているものですから、こういう形で、業務計画、その基本となる基本指針という大きな枠組みの中について、漠とした中での助言の規定というのは大変あいまいだということを感じております。あわせて、放送事業者にとって内閣総理大臣からの助言というのは極めて重く受けとめられるだろうということも思うわけです。

 その上で、報道の自由、取材の自由が現実にどうなっているのかということを考えたいんですが、そこで、防衛庁長官にお伺いしたいと思うんです。

 イラクでの自衛隊の取材活動について、防衛庁が作成した文書で、「イラク人道復興支援活動に係る現地取材について」という文書を作成されたと思うんですけれども、よろしいですか。

石破国務大臣 御指摘のとおりです。

塩川委員 この文書では、「防衛庁は、自衛隊の活動を国民に知らせる防衛庁の説明責任を自由公正な取材及び報道を通じて適切に果たすことと、自衛隊員及び報道関係者の安全並びに部隊の円滑な任務遂行を図ることとの両立を追求」した結果、「イラク及びクウェートに所在する自衛隊部隊に係る立入制限区域への立入取材申請書」を作成したとあります。

 こういう申し合わせを防衛庁と報道機関が交わしたということは、過去にはあるんでしょうか。

北原政府参考人 塩川先生にお答えいたします。

 こうした申し合わせをしたのは、今回、初めてでございます。

 これは、先生御承知のように、まずはイラクでの人道復興支援活動、これが国民的な関心が大変大きいわけでございます。そうした中で、現地取材の枠組み、そういったものをやはりきちっとつくっておくことが、報道機関にとりましても、また防衛庁にとりましても、隊員、部隊の安全あるいは報道機関の皆さんの安全、さらには任務の適切な遂行といった観点からも必要であるといった観点からまとめたものであります。

 一番、先生も思い出されるかと思いますが、一月の、先遣隊が現地に行きましたときに混乱がございました。御承知のように、部隊の車列を報道の方々が追っかけたり等々のことがございまして、これはやはり、安全のために、整々と情報発信をしていただく上できちっとした現地の取材の枠組みをつくろうということで、双方が真剣に取り組んでまいりまして、先生が引用されましたのは三つの柱のうちの一つだと思います。

 三つから成っておりまして、一点は、取材機関の申し合わせ、もう一つは、その申し合わせの趣旨を踏まえた防衛庁と取材機関との確認事項、そして、それらの結果として、今先生が御指摘になったような立入申請書、その三本柱から成っているものでございまして、現在、この枠組みが機能している、そのように考えているところであります。

塩川委員 この防衛庁が作成した申請書では、「安全確保等に悪影響を与えるおそれのある情報については、防衛庁又は現地部隊による公表又は同意を得てから報道します(それまでの間は発信及び報道は行われません)。」ということを約束する文面になっているわけですね。

 そこで、文字どおり読めば、自衛隊の同意なしには報道できないということだと思うんですが、そのとおりでしょうか。

北原政府参考人 繰り返しになりますけれども、ここで合意をしております文書につきましては、安全確保等に悪影響を与えるおそれのある情報については、防衛庁または現地部隊による公表または同意を得て報道いたします、それまでの間は発信または報道は行われません、そういうことが決まっているわけでございます。

 いずれにいたしましても、繰り返しになりますが、防衛庁・自衛隊といたしましても、今回のオペレーションを大変重要視し、また、これを安全の中に整々と実施していく、その上で、適切な情報発信、また報道メディアの方々から国内外に向けて発信をしていただくといったことは重要と考えております。

 しかし、先ほど来申し上げましたように、そうした中で、部隊の安全、隊員の安全、ひいては報道機関の皆さんの安全にもかかわる、そういった事項等につきましては、先生が御引用されました中に例示として幾つか掲げております。そういったものにつきましては今申し上げたような配慮をしていただくということで、今日に至っているわけでございます。

塩川委員 この申請書の、いろいろ遠慮してもらいたいという項目の一覧表があるんですけれども、その中を見ますと、例えば「地元の宗教・社会・文化の観点から特に反感を持たれるおそれのある隊員の日常の行動」、これについても事前に同意が欲しいというふうになっているんですね。これはこういう安全の確保とはちょっと関係ないんじゃないかと思うんですが、その点、どうですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今御指摘の点につきまして、その合意をいたしました「安全確保等に影響し得る情報の例」として、また、この「等」につきましては、先ほど来繰り返し申し上げておりますが、部隊の円滑な任務遂行ということも含まれているわけであります。

 そこで、先生がおっしゃいました「地元の宗教・社会・文化の観点から特に反感を持たれるおそれのある」ような情報につきましては、自衛隊の人道復興支援活動については、私ども、地元との、現地イラクの皆さんとの円滑な関係の維持、発展、これが非常に重要だと認識いたしております。

 また、サマワとか、そういった特定の地域にこれから長い間駐留をしていくわけでございますので、そうした場合に、服装等、あるいはその習俗の違い、あるいは宗教云々といったことで、これまで各軍隊等もいろいろな経験があるわけでございます、反発を買ったとかいろいろなことがあるわけでございますので、そういったことがないように明文化したものでございます。

 せっかくの機会でございますので、こういった点の具体的な中身として私どもとして考えておりますのは、今先生が言われた宗教上のといったものにつきましては、例えば、営舎内で、女性自衛官も現在行っておりますが、女性自衛官の皆さんが腕まくりをしたり、あるいは休んでいるときにTシャツの姿でいるとか、そういうこともあるかと思うんですね。そういったことはあり得ることなんですが、それを取材して、取材したけれども、それを外に発信するといったことにつきましては御配慮いただきたいということを申し上げているわけでございます。

 さらに、イスラム社会におきまして、例えば、宿営地の中での、男子の自衛官と女子の自衛官がいろいろ親しく会話をしている、そういったことは我々にとっては大変ほほえましい面もあるわけでございますが、それを外に発信することについては、これは控えていただきたい。

 それからまた、文化ということになりますと、左手が不浄だとか、そういったこともございますので、もろもろそういった点につきましては、しかるべく配慮していただき、自粛をしていただきたいといったきめ細かなことを考えているわけでございまして、この点につきましては、マスコミサイドも御理解をいただいているところでございます。

塩川委員 一部の報道の記事を見ますと、例えば、記者会見の際に、では、お酒を飲んだときには報道できないんですかと聞かれましたら、それは遠慮してほしいというふうに言われた、そういう記事もあるわけですよ。豚肉なんかもどうなるんでしょうかね。

 要するに、自衛隊員の不始末とか不祥事であっても報道できないというのでは、ちょっと筋が違うんじゃないですか。

北原政府参考人 誤解のないようにぜひともお願いしたいと思いますのは、自衛隊員の不祥事等についても報道できないということは間違いでございます。つまり、ここの申請書の中にも書いてございますけれども、今先生が引用された中に、私どもとしてありますのは、犯罪ですとか服務規律違反だとか、その他我が国の法令に違反する隊員の日常の行動、そういったものにつきましては、これはもうしっかりと報道していただいて結構でございます。

 ただ、私どもが先ほど来申し上げたようなものにつきましては本当に御配慮をいただきたいということで、話し合いをし、その旨合意をしているところでございます。

塩川委員 この項目の中に、(10)というところで「部隊及び隊員に係る練度、士気その他の無形の要素であって、実際に発揮し得る能力の低下又は要求水準以下での停滞を惹起しているもの」という言い回しもありますけれども、これも安全確保というのと直接かかわりがないんじゃないかと思いますが。

北原政府参考人 お言葉でございますが、非常に安全確保に関係があります。

 例えば、今先生が言われたものにつきまして、私どもの立入取材申請書の中には次のように書いてございます。「部隊及び隊員に係る練度、士気その他の無形の要素であって、実際に発揮し得る能力の低下又は要求水準以下での停滞を惹起しているもの」という表現をしております。

 これにつきましては、具体的には、例えばということでございますけれども、これから申し上げることは万が一にもあってはならないわけでございますけれども、例えば、多くの隊員が風邪などによって体調を崩してもう寝込んじゃっている、それで、万々一、今攻撃を受けた場合にはとても対応できないような状況であるというふうな、そのようなものにつきましては、安全確保にかかわるものとして報道は自粛をしていただきたい、そういうものでございます。

 もちろん、私ども防衛庁・自衛隊、現在におきましても、非常に健康には留意をし、あるいは高い士気、練度等を維持しているわけでございますが、そうした中で、今申し上げたような、私どもの能力の低下その他著しいもの、ただ、例えば風邪を引いている人が非常に多いとか、そういった程度の話はまた別でございますが、今のようなまさに部隊の警備、安全にかかわるものにつきましては御配慮をいただきたい、そのように考えております。

塩川委員 安全確保という名のもとでの解釈がどんどん広がっていくというのが、今私が聞いていても率直に思います。

 それで、例えばこういうものに同意を得ずに報道したら、立入取材員証を取り消されたりする場合というのも当然出てくるわけですね。

北原政府参考人 それは、違反の状況に応じて、そういったこともあり得ます。

塩川委員 取材員証の取り消しも含めて、事実上の報道が規制される場面も出てきます。現に、クウェートのアリアルサレム空軍基地内の取材に対して、防衛庁は誓約書の提出を求めております。防衛庁が作成したこの誓約書には、基地所在関係部隊に関する一切の情報については「報道を自粛することを誓約します」とかいうことも書かれています。その際に、日本テレビに対し、自衛隊側は、C130輸送機の到着の際の生中継に当たり、原稿を提出してほしいという要求をされている、こういう指摘がありますけれども、このことは事実ですか。

自見委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

北原政府参考人 そういった事実は確認をいたしておりません。

塩川委員 これは、アンケートでそういう回答があるわけですから、そういう点でも極めて重大です。今でも、お願いで事実上の強制となっているわけで、内閣総理大臣の助言では事実上の放送への介入となる、このことを指摘して、終わります。

自見委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本でございます。

 本日は、武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案について質問いたしますが、その前に、石破長官がお見えですので、今、国務大臣の国民年金の未納の問題が出されておりますけれども、これに関する石破長官の御見解をお願いします。

石破国務大臣 貴重な委員会の時間を煩わせて、まことに申しわけございません。

 これは、けさほどの記者会見で申し上げましたが、今調べておりますが、防衛庁長官になりまして、手続のミスがございまして、それから今日に至るまで、つまり、おととしの九月以降、今、何でこんなことになったか調べておりますが、それまでは支払いをいたしておるわけでございますけれども、その期間、これが納入がされておりません。これは即刻納入をするように、今、手続をとっておるところでございます。

山本(喜)委員 即刻手続をとられるということでありますが、国務大臣としての責任といいますか、そういうことについてはどう考えますか。

石破国務大臣 続いて恐縮でございます。

 これは本当に、いずれにいたしましても、事務的なといいますかミスでございまして、大変に申しわけないことだと思っております。これはきちんと納入をいたしまして、これは時効に係りませんものでございますから、二年以内でございますので、これはきちんと納入をして国民としての義務を果たさなければならないと思っております。

山本(喜)委員 では、本題に入ります。

 この海上輸送規制法案ですけれども、この法案は、武力攻撃事態に際して、日本の領海または周辺の公海において外国軍用品等の海上輸送を規制するための手続を定めた法案でありますが、この場合、海上自衛隊が停船検査をする、いわゆる臨検でありますけれども、これは、国際法上、交戦権の行使の一形態というふうに言われておりますけれども、この点についての政府の見解をお願いします。

石破国務大臣 これは何度か御説明を申し上げましたが、では国際法的な根拠は何かといえば、国連憲章五十一条だと思っていただいて結構でございます。したがいまして、国連憲章の五十一条に認められております、これは先生御案内のとおり個別的、集団的自衛権を認めているわけでございますが、我が国としてはその個別的自衛権の行使として行っておるわけでございます。

 したがいまして、交戦権とはその根拠を異にし、内容を異にしております。

山本(喜)委員 自衛権ということで交戦権とは違うということでありますが、一九八〇年十月二十八日付政府答弁書、交戦権とはということで、この交戦権の定義で「中立国船舶の臨検、敵性船舶のだ捕等を行うことを含む」ということで、こういう行為は交戦権である、そういう見解ではなかったのでしょうか。

石破国務大臣 これは、ですから臨検でもなければ拿捕でもないということを、この委員会で、私、るる御説明を申し上げました。

山本(喜)委員 臨検でもない、拿捕でもないということですか。それはどういうふうに受けとめればいいのですか。

石破国務大臣 たびたびお時間を煩わせて恐縮でございます。もう一度答弁することをお許しいただけるといたしますと、交戦権に基づきます臨検でございますれば、中立国の領海、領域を除くすべての海域でこれが可能でございます。ところが、本法案に基づきます停船検査でございますと、我が国領海または我が国周辺の公海において、第四条の規定に基づき告示をし定める実施区域内に限られている。まず、地域が違います。交戦権と、それから私どもが行おうとしております今回の措置というのは。停船検査は、まず、地域が違うということでございます。

 次に、対象船舶でございますが、交戦権であれば、いわゆる敵国商船は直ちに拿捕できるということになっております。ところが、私どもの場合には、旗国のいかんを問わず、常に停船検査を実施、その上で、法の要件を満たす場合のみ回航措置をとるということになっております。

 今度は、物品についてでございますが、交戦権に基づくといたしますと、相手国の軍事基盤の喪失を目的とするようなものまで対象とし得たわけでございますが、本法案につきましては、相手国による武力攻撃の遂行に直接資するものしか対象といたしておりません。

 また、法的効果につきましては、交戦権に基づきます拿捕の場合には、拿捕した船舶は自国の権力下に置かれ、回航することになりますが、これは占有権の取得を伴うものでございます。しかしながら、今回の回航措置はそのようなものを伴っておりません。

 お時間をとりまして恐縮でございます。

山本(喜)委員 次に、外国軍用品等を押収した場合、新たに設置する外国軍用品審判所、ここで審判し、廃棄等の処分を決定するということでありますけれども、この外国軍用品審判所、これは国際的にはどういうふうな扱いに、位置づけになっているのか。

飯原政府参考人 お答え申し上げます。

 交戦権の場合でございますと、英語で申しますとプライズコートと申しますが、これに類する審判所があるわけでございますが、本法に定めます我が国の場合は、これは交戦権の行使ということではございません。廃棄の審決、輸送停止の審決、航行停止の審決という審決を行うわけでございますが、正当な相手方の権利を守る観点から、より慎重な手続、適正な手続によって、憲法で保障されています財産権の保障等の規定もございますので、そうした慎重な手続を行うという観点から設けているものでございます。

山本(喜)委員 この審判ですけれども、刑事訴訟法を準用するとか、あるいは刑罰も科すわけですよ、懲役とか。こういう場合、国際的な裁判所というところで扱われているところもあると思うのですが、これは事実上裁判ということで理解していいんでしょうか。

飯原政府参考人 御高承のとおり、我が国憲法上、独立した行政裁判所というのは認められておりませんので、あくまで行政手続の中での審判ということで、不服があれば一般的な司法裁判所に審決の取り消し等の訴えができるというものでございます。

山本(喜)委員 次に、自衛隊の武器使用についてお伺いします。

 外国軍用品等を輸送していると疑われる船舶、これが停船検査に応じない場合、対象船舶が武器を使用しなくても自衛隊の武器使用というのは認められるのかどうか。

飯原政府参考人 お答え申し上げます。

 この制度、停船検査の制度の目的が、端的に申し上げますと、我が国に武力攻撃をしかけている敵国に補給ないしは兵員の補充を行うようなことを第三国ないしは相手国の商船が行う場合にその輸送を停止するというのが主たる目的でございますので、当然のことながら、それを妨げるに必要な合理的な限度の範囲内で武器を使用するということはございますし、また、法律で認められております。

山本(喜)委員 その際、必要最小限度の武力を行使するということですね。それは結果的に撃沈ということもあり得るのかどうか。

石破国務大臣 撃沈を目的とすることはございません。

山本(喜)委員 結果的に撃沈ということもあり得るわけでしょう。

石破国務大臣 それは、結果的にということは全く排除するものではございませんが、かじをねらうでありますとか、そういうふうに必要にして合理的な範囲内において行うものでございます。そういたしますと、撃沈ということは極めて考えにくいことだと思っております。

山本(喜)委員 日本を攻撃していない中立国の船舶、これが停船しないための危害射撃ということもあり得るわけで、その場合は自衛権の行使ということになるのかどうか。

石破国務大臣 この措置は自衛権の行使において行うものでございます。そのような船に対しましても、ここにおいてこういう検査をやるよということは告知をしておるわけでございまして、そこにおきまして、何らの怪しい情報もなく、そして、普通に航行しており、態様も正当なものでありということであれば、そのようなことには相なりません。

 これは自衛権の行使に基づいて行っているものでありまして、そういうものについて全部見逃すということになりますと、これは自衛権の行使を全うしたことには全く相ならないものでございます。

山本(喜)委員 しかしながら、第三国の場合、疑いというだけで攻撃することが果たしていいのかどうか。この場合、臨検ということ、あるいは危害射撃によって、さらに国際紛争を拡大するという懸念はないのかどうか。

石破国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、ここの海域でやりますよということはきちんと告知をして、どの国も知っておることでございます。そこにおきまして、単なる疑い、おい、こらみたいなことで、とまれ、撃つなどということはいたしません。

山本(喜)委員 そこで、区域を指定するということでございますが、我が国の領海または我が国周辺の公海、これは相当広い範囲というふうになるのかどうか。その範囲の問題をどういうふうに規定していくのか。

飯原政府参考人 大臣の方からも先般お答えをしたところでございますが、「我が国領海又は我が国周辺の公海」という表現でございますが、事態の具体的な態様によりまして、あらかじめ地理的に場所を特定するということはできないわけでございますが、今大臣からもお答え申しましたとおり、その場所については、自衛隊法施行令第百七条で、内閣総理大臣が自衛隊の行動の地域を告示いたしまして、また、その範囲で防衛庁長官が告示をした実施区域内に限られている、また、その対応も自衛のために必要最小限の範囲においてこの活動を行うということでございますので、その事態に応じて、当然、必要最小限ということの範囲にとどまるということでございます。

山本(喜)委員 国連憲章の場合は、先ほど五十一条の話がありましたけれども、自衛権の発動は武力攻撃が発生した場合というふうに限定されているわけでございますが、この場合、臨検が可能になるのは、おそれのある事態、切迫した事態ということではないわけですよね。

石破国務大臣 おっしゃいますとおり、武力攻撃が発生した場合でございます。おそれ、予測ではこのようなことにはなりません。

山本(喜)委員 指定した区域において、例えば海上自衛隊の船が威嚇をして、結局、その指定区域内から逃げ切ったということもありますよね。指定区域内から逃げ切った、そういう場合はどうなるのか。そこから外れたわけだから、それ以上ないということなんですよね。

飯原政府参考人 法律上、当然、その範囲の外になりますので、この行動は許されないということでございますが、逆に言えば、そういう地域に逃れたということは、まさに敵国に兵員の補充ないしは補給する目的が果たせなくなったときということになろうかというふうに思っております。

山本(喜)委員 時間が来ましたので、これで終わります。

自見委員長 次回は、来る二十六日月曜日正午理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十五分散会


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