衆議院

メインへスキップ



第5号 平成23年5月27日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十三年五月二十七日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 奥村 展三君

   理事 北神 圭朗君 理事 松宮  勲君

   理事 向山 好一君 理事 村上 史好君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 古屋 圭司君 理事 竹内  譲君

      磯谷香代子君    大谷  啓君

      櫛渕 万里君    長尾  敬君

      萩原  仁君    橋本 博明君

      花咲 宏基君    樋口 俊一君

      福島 伸享君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    谷田川 元君

      小里 泰弘君    坂本 哲志君

      高木  毅君    永岡 桂子君

      笠井  亮君    中島 隆利君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)     中野 寛成君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  熊田 篤嗣君     磯谷香代子君

  萩原  仁君     樋口 俊一君

  花咲 宏基君     橋本 博明君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     熊田 篤嗣君

  橋本 博明君     花咲 宏基君

  樋口 俊一君     萩原  仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

奥村委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。櫛渕万里さん。

櫛渕委員 民主党の櫛渕万里でございます。

 きょうは、拉致問題対策特別委員会で初めて質問をさせていただきます。松本大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。また、菊田真紀子政務官もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、先日の五月二十二日、菅総理は元赤坂の迎賓館で中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領と会談をし、日中韓の首脳宣言が発表されたところです。その中で、北東アジア情勢では北朝鮮のウラン濃縮計画についての懸念が表明されました。

 また一方で、松本大臣、この会談の中で菅総理は拉致問題の解決に向けても中国、韓国両国に向けてさらなる協力を要請したとお伺いしておりますが、どのような言及だったのか、そして両国の反応はどうだったのか、まず、お伺いいたします。

松本(剛)国務大臣 御指摘の二十二日の日中韓サミットにおきましては、総理から、拉致問題の解決に向けて韓中両国からのさらなる協力を要請いたしました。

 日韓の首脳会談では、総理から韓国の拉致問題への変わらぬ支持に感謝を表明いたしましたところ、李明博大統領からは、韓国にも拉致被害者が存在をすることに言及しつつ、理解と協力が示されたところであります。

 また、日中首脳会談におきましては、総理から、引き続き中国の理解と協力を得たいと述べた上で、中国から北朝鮮に対する働きかけを要請いたしたところでございます。

 中国側の反応について、詳細はやりとりがありますので申し上げられないところがありますが、拉致問題に関しては、これまで中国は、我が国の立場を理解し、拉致問題を含む日朝関係の進展につき北朝鮮側に働きかけを行っているというふうに承知をいたしているところでございます。

櫛渕委員 この時期は、ちょうど中国では北朝鮮の金正日国防委員長が訪中をされていた、そういう時期に当たるわけです。昨年の五月、八月に続けて、この一年間で三回目の訪中なんですね。相互訪問なしで続けて訪中している状況についてはさまざまな分析があるところですが、いずれにしても、大臣が今御答弁いただいたように、中国は北朝鮮に対して大変大きな影響を有していると認識しております。

 改めて、拉致、核、ミサイルの解決に向けて北朝鮮に求めていくよう中国に強く働きかけていくべきと考えますが、松本大臣、どのように進めていくとお考えか、今後についてお知らせください。

松本(剛)国務大臣 御趣旨のとおり、拉致問題を初めとする諸懸案の解決に向けた具体的な行動を北朝鮮に求めていく中で、北朝鮮に対しては大きな影響力を持っております中国の役割は大きいと私どもも考えております。

 このような認識のもとで、また、今おっしゃいましたように、同時期に北朝鮮の金正日総書記が訪中をしていたということは、当然、中国側はもとより、私どもも頭の中に入っていることであったわけでありますが、そういう中で、拉致問題の解決に向けて、日中首脳会談においても、総理から、中国から北朝鮮に対する働きかけを要請させていただいたところでございます。

 我が国としては、日米韓の連携を堅持しつつ、中国を含む関係国と引き続き緊密に連携をし、北朝鮮に具体的な行動を求めてまいりたいと思っております。これが進展に関してぜひとも行われなければならないことではないか、このように考えているところであります。

櫛渕委員 拉致被害者の家族の皆さん、特に横田滋さんからは、交渉を再開してほしいという声を何度となく伝え聞いております。

 そうした他国を通じた働きかけはもちろんなんですが、大臣、現在、政府独自に拉致問題の交渉再開に向けてどのような努力をされておられるのか、お尋ねいたします。

松本(剛)国務大臣 拉致問題の解決は、我が国の重要課題の一つである、最重要であるという認識は、私どもも共有をいたしております。

 その意味で、G8のサミットなど各種の国際会議や首脳会談を初めとするあらゆる外交上の機会をとらえて北朝鮮の問題を取り上げ、あわせて、拉致問題をしっかりと訴えて、提起をいたしてきているところでございます。この拉致問題解決の重要性とそのための我が国の取り組み、アピールは、諸外国から理解と支持を得ておりまして、これは北朝鮮に対する国際社会からの明確なメッセージとなっているというふうに考えているところでございます。

 先般の日中韓サミット、またそれに伴う日中、日韓の外相会談については、既に申し上げたところでありますので繰り返しませんが、私どもとしては、拉致問題については、二〇〇八年八月の日朝間の合意に従った全面的な調査のやり直しが早期に開始されることが必要で、これを拉致問題解決に向けた足がかりとして、拉致被害者の方々の一刻も早い帰国につながるような成果が早期に得られるように、引き続き、北朝鮮による具体的な行動を強く求めているところであります。

 私どもとしては、今お話をいただいたように、北朝鮮との対話を拒む考えはありません。しかし、他方で、対話のための対話、いたずらに時間がかかるというようなことではかえって前進が得られないということで、今私どもは、日中韓連携して、まずは北朝鮮に、約束を守る姿勢、具体的な行動を求めていきたい、このような考え方に立っているところでございます。

櫛渕委員 申し上げるまでもなく、日本国民の拉致問題は我が国特有の問題であります。大臣がおっしゃられたように、多国間の枠組みや他国を通じた働きかけ、これはもちろんなんですが、繰り返しになりますけれども、我が国がしっかり二国間による交渉の道筋をつけること、これは私、大変重要であると思うんですね。

 もっと言えば、核、ミサイルの問題、これも大変深刻でありますが、たとえこれの進捗がなかなかつかないような状況であったとしても、拉致問題については解決が図られる道筋がしっかりとついていること、これは私は重要だと思っております。

 小泉訪朝から九年もたっており、被害者初め、家族の御高齢化も進んでおります。また、特定失踪者の方々も、一日も早い政府認定と問題解決を待ち望んでおられるわけです。もう時間がありません。ぜひ大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、政府は、四月五日の制裁延長の官房長官談話において、平成二十年八月の日朝間の合意事項を履行する方針を維持する考えであることを表明いたしました。この合意事項は、齋木アジア大洋州局長が宋日昊朝日国交正常化交渉担当大使と取り交わした合意と承知しておりますが、この合意が実行されなかったのはなぜか、また合意の履行に戻るためには何が必要か、改めて大臣にお伺いいたします。

松本(剛)国務大臣 御承知のとおり、二〇〇八年八月の日朝実務者協議において、北朝鮮が調査委員会を立ち上げて調査を開始することと同時に、日本側も人的往来及び航空チャーター便の規制解除を実施する用意がある旨表明をしたところであります。

 しかし、北朝鮮からは、二〇〇八年九月四日、この協議の合意事項を履行するとの立場であるが、福田政権から麻生政権にかわったことを受け、新政権が協議の合意事項にどう対応するかを見きわめるまで調査開始は見合わせることとした旨の連絡があり、私どもとしては、我が国としては二〇〇八年八月の日朝合意を実施する我が国の方針に何ら変わりはない旨明らかにしつつ、北朝鮮側に早期に調査開始をするよう繰り返し要求しているところでありますが、今に至って北朝鮮からは具体的な回答はないというのが今の状況でございます。

 私どもとしては、本件合意の履行も含めて、北朝鮮側に、具体的な行動をとることによって諸懸案を解決することが北朝鮮自身の利益になるということを理解させていくという努力を重ねて、具体的な行動を求めてまいりたい、このように考えているところでございます。

櫛渕委員 再調査の早期開始を私もぜひ求めるものですが、そのときから間もなく三度目の夏がめぐってこようとしております。このまま長く膠着した状況がもしも続くと仮定した場合、重要なことは、合意事項の実行はもちろんのことですが、拉致問題の解決に向けて両国が厳しくも積極的に向き合う、この姿勢が私は大変重要であると思うんですね。

 北朝鮮にもしっかりそれを求めていくのと同時に、日本も、例えば三月二十五日に北朝鮮赤十字から東日本大震災に対する義援金十万ドルが寄附されていると聞いております。大震災に遭われた我が国の被災者に対する人道的配慮と考え、一つのメッセージと受けとめて、対話の糸口にしていくなど考えられるのではないかと思っているところでございます。

 こうした状況の中で、本当に再調査の早期開催を強く求めていくよう、そして積極的な姿勢を両国の間でつくっていく、そのことをぜひ大臣にお願いいたします。

 次に進んでまいります。

 大臣も聞いておられると思いますが、今月の五日、ウィキリークスの告発したアメリカ外交文書から、一昨年の九月、齋木局長が拉致被害者の一部は殺害されているとアメリカ国務省幹部に話した、このような報道がありました。

 松本大臣としては、このことを調査されたのでしょうか。齋木前局長は否定しているとの報道もありますけれども、しかし、拉致被害者の家族の心中の苦しみはいかばかりかと思うと、ここで大臣から被害者の家族の皆様へ明確なメッセージが必要と考えますが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 ウィキリークスにおける米国政府の外交文書の公開については、不正な方法によって外交上の秘密と称せられる文書が公開をされたことでありまして、極めて遺憾であります。報道されている米国外交文書とされている文書については、こういったことを助長もしかねないと私自身は考えますので、日本政府として、米国政府などと同様に、コメントも確認も一切しないこととしているところであります。

 しかし、その上で、本件については、今お話がありましたように、万が一にも看過できる話ではないと私自身も思っておりますので、あえて、御指摘の点については、齋木前アジア大洋州局長及びそのほかの日本側の同席者にも確認をいたしました。そのような発言を行ったという事実は断じてないということを確認いたしたところであります。

 拉致問題については、すべての拉致被害者が生存しているとの前提でこの問題を解決する必要があるというのが私どもの一貫した立場でありまして、引き続き、御家族の方々との意思疎通にも意を尽くしつつ、しっかりと一刻も早い帰国を実現するように全力を尽くしてまいりたい、このように思っております。

櫛渕委員 大臣、ありがとうございます。ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 さて、この四月から五月にかけて、中国の瀋陽の日本領事館で二年以上にわたって保護されていた脱北者五名が日本に向けて出国をいたしました。

 中国政府が日本に対して出国の許可と引きかえに今後脱北者を保護しないよう求め、日本もそれに応じて保護を控える方針であると報道で伝えられていますが、大臣、これは事実でしょうか。政府として、脱北者の支援、脱北者の保護を今後どのように行っていく方針なのか、お伺いをいたします。

菊田大臣政務官 我が国といたしましては、脱北者の問題については、関係国の意向も踏まえつつ、人道的観点から引き続き適切に対処をしていく考えでございますが、大変恐縮でございますけれども、御質問の点につきましては、関係者の安全、そしてまたプライバシー、関係国との関係などの観点から、この場で詳しくお答えできないことをぜひ御理解願いたいと思います。

 ただ、一般論といたしまして、北朝鮮をめぐる情勢につきまして、また、こうした脱北者の状況につきましても、政府として高い関心を有しておりまして、今後も引き続き、関係省庁、関係国とも連携し、情報収集そして対策を講じてまいりたいと考えております。

櫛渕委員 これは報道どおりだとすると、人権上、大変な問題であると私は思います。先進国としてもあり得ない対応と言わなければなりません。

 私は、今、拉致問題の解決を含めて、北朝鮮難民と人道問題に関する民主党議員連盟の事務局長をさせていただいております。

 会長の中川正春代議士によれば、もともとこの議連の発足は、二〇〇二年の中国・瀋陽の日本領事館へ駆け込んだハンミちゃん事件、御記憶されている方も多いと思いますが、保護を求めた一家五人の脱北者が無理やり連行されるといった映像が世界じゅうに衝撃的な映像となって駆けめぐったわけですね。

 二〇〇七年にはこの議連が主体となって北朝鮮人権法が成立しておりますが、その六条の第二項では「政府は、脱北者の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるもの」と書かれております。ぜひこれを強化していただきたい、私は、きょうはそのように申し上げていきたいと思っております。

 なぜ私がこのことを申し上げるのか、そのことをお伝えしたいんですが、人権問題と同時に、拉致被害者のための情報収集をすべきであると考えるからなんです。また、政府認定の被害者人数をはるかに超えた特定失踪者の情報も含まれている、その期待もあるわけです。

 被害者全員の救出に向けてあらゆる可能性を追求していくと政府はこれまでおっしゃってきているわけですから、脱北者からの情報収集にも力を入れ、その中で少しでも有益な情報があれば拉致問題解決の前進に役割を果たしていくことにつながると私は確信をしております。現地の人々の一次情報、そして脱北者支援に当たっているNGOを初め政府以外の外交プレーヤーのチャネルを活用した情報収集は、現在のような交渉再開が膠着している、そのような状況の中で私は特に大切であると考えるんです。

 現在、日本にやってきている脱北者は、民間団体の調査によると二百名を超えております。例えば、外務省ではこれまで何名の方からきっちり証言をとられているんでしょうか。松本大臣、人権法の六条の二項にある保護と同時に、支援の部分、すなわち日本受け入れ後の政府による定住支援もあわせてぜひ考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 先ほど御指摘のあった瀋陽の駆け込み事件は、私の記憶では、私自身がテレビ中継のある予算委員会で質問中に発生をした事件でありまして、質問の内容を切りかえて質問をした記憶がございます。

 その意味で、おっしゃったように私どもの役割も大変重要であると考えておりますので、先ほど大臣政務官からお話をいただいたように、脱北者問題については、関係国の意向を踏まえつつ、人道的観点から引き続き適切に対処していく、こう申し上げたところであります。

 その上で、情報収集についてのお話、また具体的にどれだけの方がどういう形でなっているのかというお尋ねであったというふうに理解をいたすところでありますが、今お話をさせていただいたように、引き続き人道的観点から適切に対処しなければいけない、ある意味で、進行中の脱北者問題というのが全体としては案件であることもありまして、関係者の安全、プライバシー、関係国との関係などの観点から明示的にお答えをすることは差し控えさせていただいていることを御理解いただければと思っております。

 また、情報収集のお話についても、個別に、具体的にお話、御報告を申し上げるということは差し控えさせていただけたらと思っておりますが、一般論ということで申し上げさせていただければ、北朝鮮をめぐる情勢については、さまざまな手段を用いて情報収集を行うことは我が方として当然のことであると考えているというふうに御理解をいただきたいと思います。

櫛渕委員 昨年、外務省は、第三国定住によるミャンマー難民の受け入れがスタートをいたしました。先ほど定住支援についてもぜひ考えていただきたいというお願いを申し上げましたけれども、このアジア初の第三国定住の受け入れ、私は大変高く評価をしております。

 大臣、こうした枠組みにこのような脱北者と言われる北朝鮮難民を入れていく今後の可能性、あるいはかつてのインドシナ難民定住センターを活用していく可能性はいかがでしょうか。

菊田大臣政務官 櫛渕先生が、また議連の活動として、このような取り組みをされておられることに対しまして、私からも大変ありがたく感謝を申し上げるところでございます。

 御指摘のとおり、脱北者の定住支援につきましては、政府としては、我が国に帰国をして、または入国した脱北者が自立した生活を送ることができる環境を早期に整えることが肝要であると考えておりますので、関係省庁の緊密な連携のもとで、関連の施策を円滑かつ迅速に実施いたしております。

 具体的には、脱北者に対しまして、個別にそれぞれいろいろなケースがあると思いますけれども、生活保護の受給のための支援とか、職業相談、精神的なケアの実施、あるいは日本語教育機関の紹介等も行っているところでございます。

 委員御指摘の民間団体への支援に関しましては、北朝鮮人権法において、「政府は、」「必要に応じ、情報の提供、財政上の配慮その他の支援を行うよう努めるものとする。」とされておりますので、今後も、各関係省庁とよく連携をとりながら、政府全体として前向きに検討してまいりたいと思っております。

櫛渕委員 もう時間となりましたけれども、政務官、ありがとうございます。

 ただ、生活保護の手法も一つではあるとは思うんですが、そこにどうしても頼ってしまう、あるいは寄生してしまう。やはり定住支援プログラムは、自立に向けた支援でなければならないと思います。語学教育を含めて、定住支援プログラムがしっかりと整備されている例えば中国残留孤児の定住センターなどの活用なども、今後に向けて、これは将来的には人数が減っていく、しかし、施設がしっかりと整備されて、職員の経験もあるわけですから、こういった活用なども御検討いただきたいと思います。

 最後に一言だけ、もう終わりますが、松本大臣、ぜひ、横田夫妻初め御家族の皆さんにお会いになっていただきたいと思います。この間、たびたび首相や大臣が交代され、心中大変つらい思いをしておられると思いますので、最後にそのお願いを申し上げ、私の質問を終わります。

奥村委員長 次に、長尾敬君。

長尾委員 民主党・無所属クラブの長尾敬でございます。

 まず、中野大臣におかれましては、四月二十二日の本特別委員会の中での質疑を受けまして、きょう我々委員に配られております、そのときの質問者は古屋筆頭でいらっしゃったと思いますが、いわゆる人権教育・啓発に関する基本計画ということで、各都道府県知事それから教育委員会に通知をしていただきました。閣議決定だけではどうしても実効性を疑問視する声があるということを受けて、直接指示をいただいたのだというふうに理解をいたしております。継続して、例の八項目については徹底的に実行できるようお願いと、また、感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 先ほどの櫛渕委員の質問と多少かぶる部分がございますので、ちょっと質問通告と違うニュアンスの部分もあったら、お許しをいただければというふうに思っております。

 今回の日中韓の会談の中で、先ほど外務大臣から、引き続き中国の理解、協力を得たい、韓国の拉致問題への変わらぬ支持に感謝しつつ、理解と協力は示されたという御答弁がございましたが、実際に、日本政府としてどのようなイメージで拉致問題にともに取り組んでいっていただけるのかということが、拉致家族の皆さんやあるいはその周辺、関係支援団体の方々にいまいち見えない部分がございます。

 そのあたり、御答弁をいただければと思っております。

中野国務大臣 昨日、各都道府県知事及び教育長へお願いをいたしました。前例のないことかと思いますけれども、あらゆる方途を通じて、やはり国民の皆さんの理解を深める努力をしてまいりたいというふうに思います。

 御質問ですが、皆さん、私もそうなんですが、結局、城を攻めているときに、その城の中に人質がいる、今回は拉致された被害者の方でありますが、我々の気持ちは、何か、城のお堀の周りをぐるぐる回っているだけで、城の中へどう突入していくか、または助けに行くかという姿が一つも見えない、そういうお気持ちを持たれるんだろうと思います。

 言うならば、相手に圧力をかけ、プレッシャーをかけて、そして本当に相手が誠意を持って拉致被害者を引き渡す、その意欲、誠意を示させるためにいろいろな形の努力をしているわけでありますが、それはいろいろな形で周囲からプレッシャーはかけております。ただ、相手がまだそこまでの積極的な姿勢を示さないものですから、こちらも隔靴掻痒の感を常に持たざるを得ない、こんな感じがしていると思います。

 基本的には、我々としては、相手のプレッシャーになることは、できるだけありとあらゆる圧力をかけていく、そのためには経済制裁も含めて努力をしていく。

 しかし一方で、それでは、その堀を渡って、どういうふうにして被害者の方を救出するかという方法論については、相手にこちらの手のうちを示すというわけにはいかないわけでありますから、先ほど来、脱北者の例もありましたが、いろいろな情報収集はしておりますが、具体的にどういうところからどういう情報収集をしているかという手のうちは、恐縮ですが、公開の場ではお許しをいただきたい。

 毎日、それこそ内外のあらゆる機会をとらえて情報収集をし、そして外務省と連携をとりながら、交渉事は外務省、情報収集その他いろいろな手だてにつきましては、また国民の皆さんへの啓蒙、教育というのは私どもの方でということで、連携を深めながらより一層努力をしていきたいと思っております。

長尾委員 公開できることとできないこと、大臣のおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、例えば、先ほどの質問にありましたように、在外公館で脱北者の方々にどのような接し方をしているのか、何人で、常勤なのか非常勤なのかというような部分についても、実際どうなっているんだというような問い合わせなり質問をたくさんいただいております。それは質問してもお答えできないという部分があるんですが、なぜこういう話が出るかというと、やはり関係者の方々に、すとんと心に落ちない部分があるというところはどうか御理解をいただければというふうに思っております。

 さて、外務大臣にお尋ね申し上げます。

 今回の金正日の訪中、外務省はどのように分析し、また拉致事件にどのような影響があるかということを御答弁いただければと思います。

松本(剛)国務大臣 御承知のとおり、金国防委員長は、二十日から二十六日まで、中国を非公式に訪問したという位置づけになっていると承知をしております。長春、揚州、南京などを訪問した後、北京に入って、胡錦濤国家主席と会談を行ったというふうに承知をしております。

 胡錦濤主席との会談においては、金国防委員長は、北朝鮮は安定した周辺環境を非常に必要としており、朝鮮半島情勢を緩和させ、朝鮮半島の非核化という目標を堅持することを希望している、六者会合のできるだけ早期の再開を主張しており、北南関係の改善についても一貫して誠意を抱いている旨述べたということを私どもも承知しております。

 この訪中目的について、政府として確定的なことを申し上げるというのは、私どもの立場からはなかなか申し上げにくいところでありますが、報道などの情報を踏まえて、日程や視察先なども踏まえれば、今回の目的として、経済開発を含む中朝協力関係の一層の強化、六者会合再開に向けた中国への働きかけ、食糧を含む対北朝鮮への支援引き出し、また、金国防委員長自身の健康回復を誇示するとともに、国内における権力承継プロセスを調整するなど、さまざまな見方が紹介されていることは、私どもとしても承知をしております。

 私どもとしても、関心を持って注視し、関係国とは緊密に連携をして、しっかり情報収集、分析を行っているところであります。

 今、拉致問題との関連ということでお話があったところでありますが、私どもとしては、北朝鮮がさまざまな合意の履行も含めて六者会合共同声明の完全実施に向けて前進をすることが国際社会との関与への道を開くものである、これらが北朝鮮自身の利益になるということをしっかりと理解させること、こういったことのためにさまざまな方策を通じて働きかけをしてまいりたい。そして、そのために、明確なメッセージを送る、関係国との連携を行ってまいりたい、このように考えております。

長尾委員 私も同じような理解をいたしております。

 中国と北朝鮮、とにかく今、経済的にも食糧支援的にも緊密にならざるを得ないという部分があり、また後継問題も、当時金正日が後継を受けたときと今と世界情勢は全く変わっておりますので、非常に不安定だということについて、金正日は非常な危機感を持っていると思います。

 日米韓の連携という言葉が何度この委員会で言われているかわかりませんが、やはりここは、中国と朝鮮の距離というものがいかにあるかということを慎重に考えつつ、政府としてもどうか取り組んでいただきたいなというふうに思っております。

 時間がなくなりました。

 まず、「本部長指示のフォローアップについて」、五月二十日のものが出ております。

 すべてに触れたいところでありますが、二番目の、北朝鮮側の対応を考慮しつつさらなる措置についての検討及び法制度のもとの厳格な法執行の推進。後者の方は非常に目に見えてくるわけですが、政府の中で、さらなる措置というものがどのような検討がなされたのか、あるいはこれからどのようなものが予定されているのか、御答弁をいただきたいと思います。

中野国務大臣 先日も、関連する各府省庁の副大臣等にお集まりをいただいて、今日までのこの八項目にわたる各省庁の取り組みのフォローアップをしたところでございますが、国際社会の動き等を踏まえ総合的に判断してという文言、まさにそのことを踏まえてそれぞれいろいろな御努力をいただいているところであります。

 さらなるということに当たるかどうかわかりませんが、先月五日には、北朝鮮籍船舶の入港禁止及び北朝鮮との輸出入禁止の措置をさらに一年延長いたしました。

 これは、変わっていないじゃないか、こう言われるところもあるかと思いますが、一年ごとに更新をするというところに意味があると私は思っておりまして、これをずっと無期限で、または問題が解決するまでというふうにしてしまうと古色蒼然となってしまいかねませんので、風化してはいけませんので、一年ごとにこのことをより明確に確認するということで考えております。

 もう一つ、意外に、私の場合は国家公安委員長を兼ねておりますので、警察から出した法案でありますけれども、マネーロンダリング対策の強化を図るために、犯罪による収益の移転防止に関する法律を改正いたしまして、これは特に対象としては北朝鮮が一番影響を受けると思います。これは、いち早く、この種の法案にしてはと言っては大変国会に対して失礼なのですが、早期に各党の御理解をいただいて、成立をさせていただきました。これも北朝鮮への送金等の監視に一定の効果があるというふうに思っておりまして、まさにそのためにということだけではありませんが、これはさらなる措置の一環としての役割を果たすというふうに思っております。

 そしてまた、諸外国、国連の特使を初めとして、あらゆる機会を通じていろいろな方々、先般は、今週火曜日でありましたが、イランの副大統領が公務員制度についての勉強だということでお見えになりました。公務員制度改革の担当をしているものですから、そのことで私にお会いにいらっしゃったんですが、公務員制度の話はそこそこに、ところで副大統領、ひとつお願いがあります、イランは北朝鮮と特に関係が深い、経済交流等を図っておられるのでお願いをしたいことがあります、よろしいかと言ったら、どうぞと言うので、私としては、ぜひ北朝鮮による日本人拉致問題について協力をいただきたいと、いろいろな英文の資料もたくさんお渡しをいたしまして、協力要請をいたしました。名前はフォルーザンデ・イラン副大統領でございます。

 そうしたら、この副大統領が、我々もこの問題は人道的観点から解決されるべき問題であると考えており、正式な御要請があれば協力する用意があるというふうにおっしゃいました。それで、正式な協力要請、外務省と相談をして、外交ルートを通じて正式にお願いをすることにいたします、こういうふうに申し上げましたが、そのように、ありとあらゆる機会をとらえて、言うならば、包囲網も含めて、あらゆる努力をしていきたいと思っております。

長尾委員 時間が参りました。

 政治行政の不作為によって行われた拉致事件でございます。ただ、一つだけ、拉致実行犯の引き渡し要求がまだきっちりと議論されていないというような印象を受けますので、それも含めて解決に向けて進んでいただければと思います。

 ありがとうございました。

奥村委員長 次に、古屋圭司君。

古屋(圭)委員 両大臣、御苦労さまでございます。

 まず中野大臣にお聞きしますが、今度、日中韓首脳会談がございましたけれども、これに先立って総理官邸に行かれまして、総理に直接、拉致問題についてしっかり取り上げるよう要請をされたという記事が出ています。総理は、できるだけ強調をしたいと語ったというふうに報道されています。それでよろしいのでしょうか。まず、事実をお伺いしたいと思います。

中野国務大臣 総理にお会いする前に外務大臣と打ち合わせをいたしまして、外務省の方でもいろいろな準備、段取りをしておられたので、そういう意味では、先に外務省の方でいろいろと御配慮をいただいたと思います。

 あわせて、外務大臣とお話しの上で総理にお会いをいたしました。日中韓サミットの機会をとらえて、ぜひとも働きかけを強めていただくように依頼をしてくださいと申し上げたところであります。このことは、五月八日の拉致被害者御家族との懇談、先生も御一緒でございましたけれども、強い御要請等もございましたし、そういう気持ちを持って臨みました。

 総理からは、自分自身もそのつもりである、サミットの場、いわゆる三カ国のサミットの場のみならず、日中、日韓それぞれとのバイの会談もあるので、その場においても要請を行うようにするというふうにお答えをいただいたところであります。

古屋(圭)委員 昨年の十二月に、家族会と総理が会われましたね。そのときに総理がこういうことを言っています。北朝鮮の韓国砲撃で南北間は米国も含めて一触即発である、万が一の場合、北朝鮮にいる拉致被害者をいかにして救出するのか、あらかじめあらゆる準備、心構えをいろいろ考えておかなくてはならない、韓国を通って自衛隊が出ていくことができるためのルールはきちんと決まっていない、いざというときの救出活動のための日韓間の決め事をしっかりしなければならない、そのため日韓の間で議論していきたいと、極めて具体的に、かなり思い切って発言をされているんですよね。

 もう半年近く前のことでございますけれども、この点について、こういう発言をした以上、日韓の今度の首脳間で、実際、このことについて具体的な協議はされたんでしょうか。また、これまで、外務省と韓国とどういう協議をこの件に関してしてきたのか、これは外務大臣にお伺いしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 緊急時の拉致被害者救出計画を準備し、関係国にも働きかける、この種のお話だろうというふうに思います。

 そして、それに関して、関係国との間をどういうふうにしていくかということでありますが、拉致被害者を含めて、邦人の安全確保というのは極めて重要でありまして、政府として、状況に応じて、対応に遺漏がないように努める、これに万全を期するように全力を尽くすのは当然のことであります。

 そういったことをぜひ御理解をいただいた上で、今お話をいただいたような件も含め、関係国とどのように協議をしていくかということを、具体的にいかなる検討を行っているかということを含めて、お答えをすることは、事柄の性質上、大変難しく、差し控えさせていただきたいというふうに御理解をいただきたいと思います。

 いずれにせよ、拉致問題の解決は待ったなしの課題であり、すべての方々の一刻も早い救出の実現に向けて最大限努力をいたしたい、このように思っております。

古屋(圭)委員 具体的なことは言えないという話ですけれども、実際、具体的に総理が言っているんですよ、日韓間で協議をしたいと、昨年の十二月。だから、具体的にこのことについて詳細な中身までは言えないというのは、それはインテリジェンスの関係があると思いますよ。だけれども、実際にしているのか、していないのか。

 今度の日韓首脳会談あるいは外相会談の中でこれについて言及しましたか、イエスかノーかで答えてください。

松本(剛)国務大臣 古屋理事のおっしゃっていることの意味、お気持ちはよく理解をいたしますが、相手国との関係もあり、しているか、していないかということも含めて申し上げることが、事柄の性質上、お答えを差し控えさせていただければという趣旨でお話をさせていただきました。

古屋(圭)委員 これじゃ押し問答ですけれども、総理が言ったんですよ。拉致被害者に対して、日韓でしっかり協議をしていきたい、こうはっきり言ったんですよ。それに対して、今、その答えじゃ余りにもばかにしたような話ですよね。

 もう一度どうぞ。

松本(剛)国務大臣 相手国との関係で今御答弁をさせていただいたようなことでありますが、私は、内閣の外務大臣として総理のお考えに従って行動するのが務めだ、このように思っております。

古屋(圭)委員 やはり、そういう協議をしているというぐらいのことは言っても、インテリジェンス上、何の問題もないと思いますよ。なぜそれを言えないんですか。もうこれ以上言いません、時間がないから。

 では、具体的にもうちょっと申し上げますけれども、今、アメリカと韓国はいわゆる作戦計画五〇二九というのをつくって、具体的に、いざ北朝鮮が有事というか混乱状態に陥ったときに、お互いに役割分担をしてやっていくということをもう既に議論しているらしいですよ。もう報道でもどんどん出ていますから、多分それは事実なんでしょう。それをどうかといっても、多分またごにょごにょという答えしか出てこないでしょうから、私はあえて聞きません。

 それで、そういった場合、在日米軍もこの作戦に参加をするとか、あるいは、米軍は核兵器の確保を担当して、韓国軍は治安の掌握とかを担当する、そして、もしかしたら日本に、これは同盟国ですから、いわゆる後方支援とか基地の整備だとか戦費の負担ということも含めて、要請が来る可能性は高いと思うんです。要するに、周辺事態ということになることもあると思うんですね。

 そうなったときに、じゃ、果たして、日本人、拉致被害者であるとか、いわゆる日本人の妻とか、そういった人たちにどういうふうに対応するのか。

 これは果たして含まれているんでしょうかね。それは当然含まれていると私は思いますけれども、やはりこういうことも日米韓が戦略的にしっかり議論すべきだと思いますよ。これについていかがですか。

松本(剛)国務大臣 まず、日米韓間の緊密な連携が必要であるということは、おっしゃるとおりだろうというふうに思います。

 その上で、御承知のとおり、米韓そして日米の間にはそれぞれ同盟の関係があるわけであります。日韓の関係も、大変発展をしていく二国間の良好な関係がある、このように理解をしているわけでありますが、三国のそれぞれの関係は、必ずしも同列に論じられるものではないというふうに思っております。

 しかし、最初に申し上げたように、連携が必要でありますし、個別具体的にどのような検討を行っているかということは申し上げにくいところがありますけれども、今お話がありましたように、さまざまなケースを想定して準備をするということが必要であるということは御指摘のとおりだろうと思いますし、また、その準備の中には、当然、邦人の保護というのは政府の重要な責務であるということは必ず含まれていなければいけない、そういうふうに考えているところであります。

古屋(圭)委員 邦人保護もこの戦略の中に含まれている、こういう答弁ですね。

 ということは、当然、拉致被害者についても含まれている、こういうふうに私は解釈させていただきますけれども、それでよろしいわけですね。首を振っていただければ結構です。そういうことですか。

松本(剛)国務大臣 先ほど申し上げましたように、何を、どのように、どこの国と検討しているかということについて私が個別具体的に国会の場で御答弁をするというのは御容赦いただきたいと思っておりますが、日本国政府として、さまざまな事態を考え関係国と連携をしていく中では、邦人の保護、これは邦人でありますから、今お話がありましたように、外国にいる邦人は対象になると私も考えておりますし、そういったことについてはしっかり念頭に入れ、また、その保護を行うことは政府の責務であることをしっかり肝に銘じて考えていかなければいけないということでお話をさせていただいたつもりでございます。

古屋(圭)委員 かつて、前の鳩山政権の一番最後の方だったと思いますけれども、我々自由民主党として、拉致問題に対して十七項目の要望書を出しました。当時、官房長官はたしか平野さんだったと思いますけれども、私も平野さんと直接会った。その中に、いわゆる北朝鮮が混乱状態になった場合のコンティンジェンシープランについてはしっかり日本としても計画すべしということで、当時の官房長官も、それをしっかり受けとめて、真摯に検討する、こう言ってもらいました。

 といったことは、こういったコンティンジェンシープランというのももう実際には考えているということが今の答弁からすると類推できますね。それは否定をされるものじゃないんですね。

松本(剛)国務大臣 一般的に、さまざまな事態に対して私どもとしてどのようなことができるかということは考え方を詰めていかなければいけないというふうに考えておりますが、同時に、今お話がありましたように、我が国にとどまらず、関係国も含めて整理をしなければいけない課題というのは具体的にどういった形で何を行っていくことができるか、具体的なことについてお答えをすることは、大変申しわけないんですが難しいということで御答弁させていただいたと御理解をいただきたいと思います。

古屋(圭)委員 この程度のことをそう言われるというのは、政治主導等を標榜している民主党の大臣としては、極めて残念ですね。やはりこれは、そういうことは検討しているんだ、中身は絶対言えませんと、何で言えないんですか。していないからじゃないですか。していたら言えるはずですよ。

松本(剛)国務大臣 繰り返しになって申しわけありませんが、相手国、関係国もある案件につきましては、している、していないも含めてお答えをすることが難しいということで、大変申しわけないんですけれども、今御答弁をさせていただいている次第でございます。

古屋(圭)委員 朝までやっていても同じだと思いますので、では、ちょっと視点を変えますけれども、実は、総理も自衛隊に言及しているんですよね。自衛隊を韓国を通って行かせるためには法律整備が必要だみたいなことを、昨年、総理大臣が言及していますよね。

 ということは、我々、実は、もう既に国会に自衛隊法の改正というのを出しているんです。これは全く審議もされないんですよ。政治主導を言われるならば、やはりこういった法律を一つ一つ整備をしていくということが、具体的な中身はともかくとして、そういうメッセージになるんですね。

 だから、ぜひそういったことを、いや、これは国対がやっていることだからわかりませんとかいうことではなくて、政府の強い意思、外務大臣の意思として、自衛隊の改正案、これについても検討をしていくということを提案されたらどうですか。その辺について、いかがですか。

松本(剛)国務大臣 自衛隊法は所管でありませんので、外務大臣として申し上げるのが必ずしも適切かどうかという点があることをあらかじめ申し上げておかなければならないと思いますが、私自身が議員として法律を拝見させていただいた中で、自衛隊にしっかりと邦人保護の使命を担っていただくというお考えそのものについては、基本的におっしゃるとおりではないかというふうに思っております。

 他方で、現在外務大臣をさせていただいているということもありますが、自衛隊も含めて、これは我が国に限らず、他国において外国の軍隊もしくはそれに類する実力部隊が行動する、他国領域内において行動するということに関しては、さまざまな整理を必要とする面というのはあるのではないかというふうに考えているところでございます。

古屋(圭)委員 ぜひ、我々が出している自衛隊法の改正案、審議をしない理由はないと思いますよ、そういったことをしっかり働きかけていただくように、外務大臣の指導力によって、リーダーシップによってお願いしたい、要望しておきます。

 それから、日中韓首脳会談の関連で、先ほどもどなたかからお触れになられましたけれども、金正日がこの一年間で三回中国へ行きましたね。中国首脳は多分、二〇〇九年から一回も行っていないから、ちょっと異例ですよね。それはいろいろ憶測があります。内容はほとんど公表されていないですけれども、自動車工場を見たりとか、太陽光発電の工場を見たりとか、スーパーを見たりとか、こんなような報道、それから最後に胡錦濤と会った、こういうことですよね。

 だから、常識的に考えるならば、支援の要請と、それからもう一つ、やはり中朝は仲よくしているんだぜということで、日韓米に対する牽制というか、こういうような意思が非常に常識的な見方だと私は思うんです。先ほどもそのような趣旨の答弁が大臣からありましたけれども、それをあえて聞きません。

 しかし一方では、日中首脳会談で温家宝と会談したのは二十二日だったですよね。それで、胡錦濤と金正日が会ったのは二十六日ですよね。四日後であります。このときに、やはりこの拉致問題について、ぜひ胡錦濤から北朝鮮の金正日にもはっきり言ってほしいというアプローチは、温家宝に総理大臣あるいは外務大臣から具体的にされたんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 日中の首脳会談において、総理から、中国側にはしっかりと北朝鮮への働きかけを行ってほしいということは要請をさせていただきました。その中には、先方はもちろんでありますが、我が方としても、現在北朝鮮の国防委員長が中国を訪問しているということは十分に念頭に置いて要請をさせていただいたというふうに理解をしております。

古屋(圭)委員 外務省の報道によっても、総理が北朝鮮関係についていろいろお話をされたということは聞いています。しかし、総理が中野大臣と会ったときに、拉致問題についてしっかり強調したいと言ったように、そこまでのメッセージは私たちに伝わってきていないんですよ。

 一方では、外務大臣と中国の外務大臣とも会談していますよね。そのときには、総理が北朝鮮問題についていろいろ言及したから、さらっと触れた程度というふうに報道には書いてあります。それはやはり、何といっても迫力不足じゃないですか。

 外務大臣は今、拉致対策本部の副本部長ですよね。総理の直属の下にいる人間でありますよね。なおかつ、二十二年の十一月二十九日に閣議決定をした文書にも、拉致は人権侵害であり、主権侵害であり、断じて許すことはできないと、冒頭にそう書いてあるじゃないですか。

 ということは、私たちが言っているように、拉致問題というのは国家の最優先課題の一つなんですよ。だったら、総理大臣が、首相が言ったから、自分は控えたなんて、こんなばかな話はない。それは完全に向こうに足元を見られるということじゃないですか。外務大臣は、実際にそのことについて言及されましたか。

松本(剛)国務大臣 拉致問題を軽んじられるような対応をしたというつもりはありません。

古屋(圭)委員 私が今聞いたのは、その問題について外務大臣が中国の外務大臣に言及したかと聞いているんです。イエスかノーで答えてください。

松本(剛)国務大臣 同日に日中の首脳会談と外相会談は行われておりまして、私自身、また楊外務大臣も首脳会談に同席をいたしております。

 その意味で、首脳会談が行われた後に外相会談が行われておりますので、外相会談は首脳会談で行われなかった主題、また首脳会談で具体化されなかった主題について、詰めて成果を得ることが役割であったという位置づけであったことは申し上げられるかというふうに思っておりまして、北朝鮮、拉致の問題については、首脳会談において取り上げられたというふうに理解をしております。

古屋(圭)委員 首脳会談でも、儀礼的な感謝とか一般的な協力というようなことは言及したと思いますよ。だけれども、では具体的な問題で何かあったか、私はなかったと思う。やはりこれでは、こういった問題はどこに伝わるかというと金正日に伝わるんですよ、要するに、日本の政府は完全に弱腰だと。せっかく中野大臣がわざわざ訪ねて、強調してくださいよと言ったにもかかわらず、政府の中で一致していないという話じゃないですか。

 中野大臣、今のお話を聞いていて、中野大臣として思いを込めて、総理にも、本部長に進言をしたと思いますけれども、今の対応で満足ですか、今度の日中韓会談。

中野国務大臣 それぞれに御努力をいただいたというふうに思いますし、これからもなお一層、あらゆる機会をとらえてより一層働きかけを進めてまいりたいと思いますし、また、政府全体としてもそういう取り組みをお願いしたいと思っております。

 今回につきましては、会談の中身につきまして、かなり主張していただいたとは思いますが、その雰囲気その他会話の内容については、外交交渉の中で、相手国との立場や、またそれぞれ申し合わせもあるのでありましょうから、そこに一つの公表できる限界というものもあるのだろうというふうに思っております。

古屋(圭)委員 大臣としては苦しい答弁ですよね、本当に極めて不本意だなと思っているんでしょうけれども。

 実際に、外交機密だから言えないなんという範囲じゃないと思いますよ。今のは大体、特に今外務大臣が言及したのか、していないのかということ、結局答えは、しておりませんということを言ったに等しいわけですよ。これではやはり、主権を守るという気概を国内外に示すという意味では極めて不足していますよ。

 主権という問題で、今、新たな二つの事件が起きていますよね。北方四島に韓国の国会議員が上陸した、あるいは竹島に閣僚が不法上陸した。この問題、特にロシアの問題、いろいろ、ほかの委員会で明らかになっていることは、姜国会議員四島訪問計画が明らかになったのは二十日ですね。日韓首脳会談が行われたのが二十日、昼にははっきりしていて、二十日の十六時からであったにもかかわらず、どうもそれを言及していなかったということがわかってきました。

 韓国外務省が正式に便宜供与の申し出をした。それから、何の金で行ったかといったら、国会の予算で行った。国会の予算というのは要するに税金ですよ。税金ということは、政府が関与しているということ。これはもう完全に、強引な行動に対して厳しく厳しく対応をとらないから、結果として、二十五日のあの竹島の訪問を許してしまったのではないでしょうか。四月一日にも、教育大臣が竹島に上陸したときに、大使館の参事官に抗議したという何か本当にしょぼい対応をしたわけですよね。

 こういう一連の動きを見ると、私は、例えばこういう事件があったとき、これは外務委員会でやることですから、あえて私はここで答弁を求めませんけれども、例えば大使を引き揚げるだとか、それぐらいの強い行動をとってしかるべきなんですね。要するに、拉致問題も主権問題でございますから、こういったことに余りにも煮え切らない態度をとるということは、完全に北朝鮮、ひいては金正日に足元を見られてしまう、私は、そういうことだというふうに思います。

 最後に一つ、若干は評価することも一言言っておきましょう。

 今どなたかから質問がありましたけれども、きのう、中野大臣が、四大臣で署名いただいたそうですね。私が前回質問したことに対して、関係大臣で署名をして、具体的にとる、これは私は評価させていただきたい。ペーパーに書くだけではなくて、実際に行動をとり始めた。

 その中で、大臣は、前回の質問でも、教育問題で、児童生徒の発達段階に応じて、正しく拉致問題を理解させるということがはっきり記されましたね、四月一日の文言の中で。文部大臣ともやった。

 実際に私が、六〇%の採択率を誇る教科書と、今度新たに検定に合格した教科書、両方を見せて、どちらがふさわしいですかと言ったら、いや、大臣としてはなかなか言いづらいけれども、しかし、踏み込んで言っていただきましたね。どう見ても、政府の方針は、この新しい、具体的に言うと育鵬社の教科書の方を評価する、よくここまで書いていただいたと高い評価をします、こういうようなことを言っていただいた。

 ということは、これから学校でいよいよ採択のシーズンが始まるわけでありまして、もちろんどの教科書を採択しろなんて命令権は一つもないと思います。しかし、文部科学大臣と連携をして、そうやって中身もしっかり生徒児童の発展段階で正しく拉致を認めるためにはどの教科書がふさわしいかということをよく考えてほしいと教育委員会に、これぐらいのことは、文部科学大臣と拉致担当大臣がしっかり連携して可能だと思いますけれども、このことについて最後お伺いしたいと思います。

中野国務大臣 お触れをいただきました、きのう、それぞれの都道府県及びそれぞれの教育長に要請をいたしました。これは珍しいケースだと思いますが、四大臣がそれぞれ自分で署名をして出した。こういうケースは珍しいんだろうと思います。しかし、我々の意のあるところをやはり各地方自治体にもしっかりと受けとめていただきたい。もちろん、これに対して、先般閣議で決めました四月一日のこのことも添付をしてそれぞれへの示達をするわけでありますので、内容については、当然その内容を見て各教育委員会も御判断、また意のあるところをお酌み取りいただけるものだと思います。

 教科書の採択についてはちょっと、私が実際にコメントするところが難しいところでございますが、あわせて、例えばアニメの「めぐみ」でありますとか、映画の「めぐみ」でありますとか、これらのことについても上映をより一層活発にやっていただきたいということもお願いしております。これらは教科書以上の効果を発揮するということもあるんだろうというふうに思いますし、教科書等についても、私どもとしてはできるだけ詳しく触れていただけるようにという希望を持っておりますので、そのことは明確に申し上げたいと思います。

古屋(圭)委員 もう時間が来ましたので、ぜひしっかりフォローしていただきたいと思います。

 以上で終わります。

奥村委員長 次に、坂本哲志君。

坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。

 先ほど民主党の議員の方から質問がありましたけれども、同趣旨の質問になりますが、確認のためにもう一度御質問をさせていただきます。

 齋木アジア大洋州局長の〇九年におけるキャンベル・アメリカ国務次官補との会談の中で、北朝鮮が日本人拉致被害者の一部を殺害したが、一部は生存していると考えていると述べたということをウィキリークスが公表した、あるいは一方で、そのことについてニューヨーク・タイムズも報道したというふうにあります。

 その発言の内容について、事実であるかどうであるか、もう一度お願いします。

松本(剛)国務大臣 先ほど申し上げたところでありますが、ウィキリークスについてコメントも確認も一切しないこととしている。これは、不正な方法によって外交上の秘密と称せられる文書が公開をされたことであり、極めて遺憾だからであります。

 しかし、その上で、本件については、私どもとしても、万一にも誤解を与えるべきでないというふうに考えたところでありまして、齋木前大洋州局長及びそのほか日本側の同席者にも確認をいたしました。確認をしたところ、そのような発言を行った事実は断じてないということを申し上げられるということで御答弁をさせていただいたところでございます。

 日本政府の立場は、すべての拉致被害者が生存しているとの前提でこの問題を解決する必要があるということであることを改めて申し上げたいと思っております。

坂本委員 アメリカ側のキャンベル国務次官補あるいは同席者、こちらの方には確認をされましたか。

松本(剛)国務大臣 私どもとしては、発言をしたとされているわけでありまして、その発言者並びにその同席者に確認をすることで、そのような事実はないということを十分に確認できたというふうに考えております。

 なお、米国側に対しましては、ウィキリークスについては一切確認もコメントもしないというのが米国側の立場でありますけれども、あえて一般論で申し上げれば、日米間については、あらゆることについて緊密な連携をとらせていただいているということは申し上げられると思っております。

坂本委員 ウィキリークスにつきましては、不正な手段あるいはその他で非常に世界が迷惑をこうむっているところもありますけれども、しかし一方で、国民やそれぞれの世界あるいは外交問題に与える影響もそれだけ大きいと思います。

 私は、ただ単に無視するということではなくて、アメリカあるいは日本、それぞれに調査をした上で、政府として否定するなら否定する、しっかりとした政府見解を出すべきであると思いますけれども、いかがですか。

松本(剛)国務大臣 私どもとしては、本件を除いて、現在、ウィキリークスについて確認、コメントをするということは考えておりません。

坂本委員 今後その姿勢が貫かれるかどうかわかりませんけれども、ウィキリークスによって大きな問題が生じた場合の対応策、あるいは混乱に対する対応、こういったものはやはり考えておくべきである、一つ一つのコメントについては別にいたしましても、考えておくべきであるというふうに私は思います。

 次に、今回の東日本大震災が今後の日朝交渉にどのような影響を与えるのか、お伺いをいたしたいと思います。

 〇二年の平壌宣言では、国交正常化を実現させるためにはあらゆる努力を傾注する、正常化後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力等の経済協力を実施し、具体的な規模と内容を誠実に協議すると書かれております。つまり、北朝鮮側にとって、やはり経済協力、経済援助がすべてであります。ですから、これがなくなれば、日朝交渉の必要もないというような姿勢に転ずるわけであります。

 今回の震災で復興予算が膨大なものとなります。経済支援の余裕が日本にないというふうに北が受けとめるならば、当分は拉致問題に対して北朝鮮は何らの回答もしない、何らの動きもしないということが十分考えられます。そこを十分考えた上で、どういうシグナルを今後出していくのか、お伺いいたします。

松本(剛)国務大臣 今回の大震災を受けて、我が国政府の方針、財政状況を北朝鮮側がどのように受けとめているかということは、私からお答えをする立場にはないというふうに考えているところであります。

 その上で、我が国の外交においては、今回の震災に対する各国の支援や今後の復興の支援については感謝の気持ちを伝えつつ、私としては、復興においては、ある意味では開かれた復興として、各国とウイン・ウインの関係になっていくことが望ましいと考えているところであります。

 北朝鮮の拉致、核、ミサイルの問題につきましては、私どもの一貫した方針は何ら変わることなく、現在は日米韓の連携をしっかりしていくことによって、関係国にも、北朝鮮の約束を守る姿勢、具体的な行動が必要であるというメッセージを送り続けているところでありまして、このメッセージは関係する国々にも十分に伝わりつつあるのではないか、このように考えているところであり、今後北朝鮮と対話を拒むものではないとお話をしてきておりますが、これが対話のための対話にならないような、そのような状況をつくっていくことが何よりも今必要なことだということで、交渉活動を続けているところでございます。

坂本委員 一貫した姿勢でメッセージを送り続けている、これはこれで大切なことでありますけれども、相手が、それに対して無視をする、あるいは東日本大震災の膨大なる復興予算に関してますます交渉を閉ざしてしまう、そういうことであるならば、日本はシグナルあるいはメッセージを送り続けているつもりであっても、それは結果として成果を見ないということになってまいりますので、私は、逆に、この東日本大震災を一つのきっかけにして、ばねにして、何らかのメッセージなり何らかの対応策を、それは水面下でも結構ですから、やるべきであるというふうに思います。

 それについて答弁を下さい。

松本(剛)国務大臣 私どもの姿勢は一貫をしておりますが、おっしゃったように、相手側、関係国のさまざまな動静を見きわめなければいけないということは、おっしゃるとおりであります。

 この間、各質問者からも御指摘がありましたけれども、一年の間に三度にわたる北朝鮮からの訪中がなされるなど、これまでにないことがあるということもどのように考えるべきかということも踏まえて、我々として、具体的にどのような対応をしていくことが望ましいかということを考えなければいけないという御指摘は、しっかり受けとめてまいりたい、このように思っております。

坂本委員 次に、金正日の訪中についてお伺いをいたします。

 いつの時点で、金正日が訪中した、あるいは重要人物が訪中をしたという情報をつかまれましたか。二十日の何時の時点ですか。

松本(剛)国務大臣 さまざまな情報を得ていく中で、私のところにもいろいろな情報が入ってくる仕組みにはなっておりますが、二十日のお昼前後には、何らかの動きがあるという情報はあったような記憶がありますが、申しわけありません、ちょっと今手元に、正確な、黒塗りのようなものも含めて、持ち合わせておりません。

坂本委員 韓国聯合ニュースは、九時四十六分に、三男の金正恩が訪中したと報道しているんです。これは結果として誤報なわけですけれども、今、昼前後と言われましたけれども、九時四十六分には、要するに何らかの動きがあっているということが韓国聯合ニュースの方で報道されているわけですけれども、その時点でどういう情報をつかんでいらっしゃいましたか。

松本(剛)国務大臣 金正恩国防副委員長が訪中をしているのではないかという報道があったのは御指摘があったとおりでありますが、情報を総合して、少なくとも、おっしゃったように、だれか重要人物が訪中をしていると考えるのが正確なところではないかと私自身が考えるに至ったのがお昼前後ではなかったかというふうに思っております。

 ちょっと今手元に正確な記録がありませんが、金曜日は、午前中は私はたしか委員会で答弁をしていたのではないかと思いますので、幾つかの情報が断片的には入ってきたと思いますが、情報を総合して考えをまとめるにはその時点では至っていなかったのではないかというふうに思っております。

坂本委員 だれが訪中したかというのは、金正恩が訪中したと韓国聯合ニュースが一たん報道した後、夕方の五時五十二分に韓国メディアが一斉に、それは金正日だったというふうに報じているんですね。

 私がなぜこういうことを聞くかといいますと、やはり情報の把握が遅いと思うんです。これはたまたま金正日の訪中でしたけれども、テポドンの発射の準備があるのかもしれない、あるいは核実験があるかもしれない。いろいろな意味で、少なくとも韓国のメディアが報道する前には、それは青瓦台あたりとも連絡をとりながら、やはり事前に情報をキャッチしておくべき、そういうシステムが当然でき上がっていると思いますけれども、いかがですか。

松本(剛)国務大臣 大変申しわけないんですが、私どもが個別に獲得した情報に基づいてのお話というのは、いつ公開でお話しできるかということは、すぐにお話をできることもあれば、かなりたってからでないとお話をできないことがありますので、私自身が御答弁でお話をさせていただくことは、報道などに基づいて情報を、ないしは確認をされたことでお話をせざるを得ないというふうに思っているところであります。

 少なくとも、報道等を総合いたしましても、二十日の午前中には、動きがあることは間違いないわけでありますし、金正恩副委員長というのは幾つかのメディアが報道していたことは拝見をさせていただきましたが、他方で、それを見る限り、どこまで確認をされているかというのを判断するのは、必ずしも正確に判断できるかどうかということで私の頭の中を整理したという趣旨でお話をさせていただきました。

坂本委員 いかに大臣が委員会に出席されていたとはいえ、既に九時過ぎには列車が出発し、そして訪中が確認されている。そのことについて昼前後にそれを知るというのは、私は、外務省の情報収集能力としてやはり疑わざるを得ません。これは、ぜひもう一度いろいろな形で改善を願いたいと思っております。

 そして、韓国聯合ニュースが金正恩であるというふうなことを報道いたしましたが、誤報でした。誤報については、その後、聯合ニュースは長々とその言いわけをまた報道しておりますが、しかし、焦点は、次の訪中があるならば、それは金正恩であるというようなことをみんな待ち受けていた、思い込んでいた節があるんです。しかし、それが金正日であったということであります。

 ですから、私は、今回の訪中は、なぜ金正恩でなかったのかというのが大きなポイントであるというふうに思います。その辺のところをどう分析されておられますか。

松本(剛)国務大臣 外務官僚をかばうわけではありませんが、当然、聯合ニュースなどで報道されたことは私のところにも逐一メモが入ってくる、そこまで外務官僚は怠慢でないということは申し上げたいというふうに思っておりますが、単に報道が来ただけでそれをそのままうのみにするわけにまいりませんので、そのように話をさせていただきました。

 今お話があった点、訪中の意図について、私どももさまざまに情報を収集し分析をしておりますが、私どもから確定的なことを申し上げることは必ずしも適当でないというふうに思っております。

 その上で申し上げれば、権力調整プロセスの調整なのではないかという指摘があることは私どもも承知をしているというふうに申し上げたいと思っております。

坂本委員 中国の次世代の指導者、習近平氏あたりによりますと、やはり世襲というのは、認めてはいるものの、共産主義の中でそれはいいことではない、しかも三十前の若い三男坊が次の指導者になる、そのことについても、なぜ対等に会談をしなければならないのか、そういう思いがあると思います。ですから、次の世代、あるいはこれからの日朝関係や中国の動向も含めて、そういう動向も含めて、なぜ金正恩でなかったのかという分析が私は必要であるというふうに思うんです。

 もし答えられるならば、これからもっと分析して、そして次の機会にきちっとしたお答えを出すということであるならそれでいいですけれども、大臣、もう一度お答えいただけますか。

松本(剛)国務大臣 一つの御指摘であると考えておりますし、私どもも情報を収集していろいろな見方、分析をさせていただいているとまでは申し上げられるのですが、政府としてこのように分析をしたというのは、いずれにせよ、お答えしがたいという点をぜひ御理解いただきたいということでお話をさせていただきました。

坂本委員 今後、ぜひその分析をしていただきたい。そして、結果として、いろいろな形でこの特別委員会の議論の中で大臣としての見解を言っていただきたいというふうに思います。

 最後に、先ほど対処方針の八項目の質問がありました。そして、古屋議員の方から、日本人救出計画の策定のこともありました。その前に、菅総理は、朝鮮半島有事の際の対応として、日本人拉致被害者への連絡手段として、韓国民間ラジオ局へ協力を要請するというふうに表明をされております。そして、ラジオを風船につけて散布するというようなことも出ております。これは、より具体的な民放への働きかけでありますので、どこまで行っているのか、あるいはやったのかどうか、お答えいただきたいと思います。家族会の飯塚さんは、具体的に期限を決めて、そしてきちっとやってほしいということを言っていらっしゃいますので、当然、こういうことに対しての行動はもう示されていると思いますけれども、いかがでしょうか。

中野国務大臣 一部報道で、政府は、有事の際、日本人拉致被害者への連絡手段として、対北朝鮮放送を行っている韓国の民間ラジオ局への協力を要請する方向で検討に入ったと報道されているのは承知をしているのでありますが、このことについては、特に菅総理が発言したということは全く私は承知をいたしておりませんのと、これらのことについて、いわゆる有事の際の検討というのは、大っぴらに申し上げて検討するものではないんだろうというふうに思います。

 一般論としては、拉致被害者の方はもちろんのことでありますが、日本人妻、そしてまた特定失踪者、ありとあらゆる邦人を救出するためにいかなる手段を講ずるか、その方々への連絡はどうするか。それらのこと、あらゆることを想定して検討する。それは、民間シンクタンクも含めて、いろいろな知恵を、国民全体の知恵を集める。また、ここの中でもいろいろ御議論をいただき、御提言をいただければ、そうするとかしないとかという答えにくいことであっても、十分認識をしてそれを検討させていただくとかということは十分にあり得ることでございますので、そういう視点で、我々としては、あらゆることを除外しないで検討を続けていきたいというふうには思っております。

坂本委員 大っぴらに公表することではない、それはそうだと思いますが、しかし、ここに書いてあるのは、この前表明されたのは、民間のラジオ局に協力を要請するというのでありますので、古屋議員に対しても、なかなか大っぴらにできないというふうに言われましたけれども、民間のラジオ局に協力を要請したのかどうか、相手は民間ですから、このくらいは言える。そして、それを言っていないと、国民の方はますますいら立ちが募るだけであります。

 どうか、できる限り、これから情報、あるいはその他、北朝鮮の動き、そして日本国政府の方針や動き、こういったものは、この委員会を通して、あるいは政府見解として、しっかりと国民にメッセージとして発していただくことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野国務大臣 いわゆる韓国において対北朝鮮放送を行っている放送局、それから日本の場合には、短波放送で「しおかぜ」と「ふるさとの風」をやっておりますが、これはそれぞれに日本政府が企画したものも放送していただいております。そういうことを日ごろからやっておくことによって、いざというときの連絡に役立つ。また、そういうものを日ごろから被害者の方々が聞いてくださっているように、聞いてくださるようにという、いろいろな形で常に心がけておくという意味では大切なことだ。あらゆることを積極的に考えていきたいと思います。

奥村委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 時間も限られておりますので、端的に質問させていただきたいと思います。

 前回の質疑のときは中野大臣に質問をいたしましたので、きょうは外務大臣に質問をさせていただきたいと思っています。

 前の大臣の前原大臣が所信だけ述べられてすぐにおかわりになったものですから、私どもとしては、やはり外務大臣への質疑というのは非常に重要だというふうに思っております。

 特に、拉致問題解決のための政府の司令塔は、中野大臣なのか、それとも外務大臣なのか、どちらが政府としての戦略を立てるのか、両大臣の役割分担はどうなっているのかということをまずお聞きしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 御案内のとおり、今回の本部においては、総理が本部長というのはこれまでの拉致対策本部と同じでありますが、副本部長に、中野拉致問題担当大臣と枝野内閣官房長官、そして私の三人ということになりました。従来は官房長官と拉致問題担当大臣であったということは御承知のとおりであります。基本的に四人で構成をし、必要に応じて本部長が関係大臣などの出席を求めることができるという機動的な対策が推進できる体制といたしたところであります。

 拉致問題担当大臣が本部の事務局長も兼ねておりまして、事務局を総括するとともに、各大臣と協力連携しながら、拉致問題の解決に向けて取り組んでいるという位置づけだと理解をいたしております。

 私、外務大臣としては、北朝鮮当局との交渉及び関係国との協力などを担っているというのが私の立場だと考えております。拉致問題を含む、北朝鮮をめぐる諸懸案の一日も早い解決に向けて最大限努力をしてまいらなければならない、このように思っているところでございます。

竹内委員 総理を本部長、それはわかりますけれども、副本部長が三人いらっしゃって、拉致、核、ミサイルというのはまさに外交交渉でありますから、私の考えでは、拉致の事務局長はむしろ外務大臣がなさった方がいいのではないかなと思います。そうしなければ、本当にこの問題は前に進まないというふうに考えている次第であります。そういう意味で、外務大臣の役割は極めて重要であるというふうに思っている次第でございます。

 先ほどもお話がございましたが、民主党政権としては、やはり北朝鮮が日本と交渉しなければならない、そういう事態をつくり出すということが非常に大事だと考えておるわけでありますけれども、改めて、松本大臣としては、解決に向けて、どのように戦略を描いて交渉していくのか、ここをもう少し踏み込んで答えていただけませんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 まさに今竹内先生がおっしゃったように、北朝鮮の約束を守るという姿勢、具体的な行動というのをどのように引き出すかということが大きなポイントではないかというふうに考えております。

 これまでも対話の機会というのはありました。幾つか成果が上げられたときもあるわけでありますが、他方で、対話のための対話という言葉を今私どもが使っておりますけれども、結果としては、時間を使ってしまったということもあったのではないかというふうに率直に思っております。

 そのような意味で、昨年一年間、北朝鮮側からは挑発行為があるなどさまざまなことがあったわけでありまして、昨年の後半以降、改めて日米韓の協力体制というのを強固に固める、そしてこの連携をしっかり崩さずに、北朝鮮に対して明確なメッセージを送ると同時に、関係国に対しても、三カ国の連携のもとから働きかけを強力にしていくという考えに基づいて、対北朝鮮の政策を展開してきたというふうに理解をいたしております。

 その意味で、ちょうどそういったことをし始めてまだ一年に足らない中で、先ほどからの質疑の中でもありましたけれども、幾つかの動きが出てきているところでありますが、私どもとしては、さらに、直接はウラン濃縮の問題になりますけれども、国連の安保理などでも明確な姿勢を示されるように、関係国にも努力をお願いしているところでありまして、国際社会のメッセージというのもさらに明確にしていく中で働きかけを行い、また、先ほどの御答弁でも申し上げたように、大きな役割を果たすと考えられる中国にもしっかり働きかけを行っていくことで、実効的な対話になるような状況をつくり出すことに今全力を挙げていると御理解をいただけたらと思っております。

竹内委員 それで、北朝鮮情勢につきまして一、二質問いたしますが、昨年の十一月二十三日に北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃いたしました。

 まず、改めて、この背景には何があるとお考えでしょうか。

松本(剛)国務大臣 申し上げるまでもないことでありますが、北朝鮮は対外的に閉鎖的な体制をとっておりまして、挑発行為を行う意図についても、これはそういった体制であるということと、また、いわば我が国ではないところの北朝鮮の考え方というのを私どもが申し上げるという立場にないところはあるわけでありますが、北朝鮮自身は延坪島砲撃については、北朝鮮が韓国軍の軍事演習実施に対する措置等行った旨説明していることは御案内のとおりであります。

 これらの挑発行為の背景には、当時、金国防委員長の健康問題やいわゆる後継者問題などがあるという見方があったことは私どもも承知をしている、このように御答弁を申し上げてまいりたいと思います。

竹内委員 私はむしろ核の存在が大きな意味を持っているというふうに軍事的に思っております。おどかし、脅威のレベルを上げても大丈夫だというふうに北が思い始めたのではないか。みずからの核兵器能力に一定の自信を持つようになったために、韓国から本格的な軍事力行使に踏み切れないというふうに読んだのではないかというふうに私どもは分析をしております。

 時間がありませんので私どもの考えを述べさせていただきますけれども、北朝鮮の三度目の核実験というのがどういう意味を持つかということでございますが、私どもは、もしも三回目の核実験をされれば、確実に核兵器の小型化に成功するということを意味している、すなわちミサイルの弾頭、核弾頭の装備を可能にする、ノドンミサイルを使って、日本全域が北の核攻撃の射程内に入るという深刻な事態を意味するのではないか、こういうふうに思っているわけでございます。

 しかし、そういう意味では、三回目の核実験というのは我々としては防がなければいけないと思っていますが、かといって、北側もこれに簡単に踏み切れない事情があるんだろうというふうに思うんですね。恐らくそこで、今回のこの訪中が、金正日が一年に三回も訪中するという異常事態、これは今までの外交の中ではあり得ないことでありますから、そういう切迫した事情があったのではないかなというふうに思っています。そういう意味では、拉致、核、ミサイルを前進させる一つの大きなチャンスがめぐってきているのではないかなというふうに思っておるんですね。

 この背景には、もちろん北の国力の問題、経済問題が非常に深刻であるし、中国は今回、改革・開放政策をやれというふうにかなり言っていますけれども、とてもできない、いろいろなところを見て回っているけれども、やれないというのが本音であります。そして、食糧事情は極めて深刻になってきましたし、経済の見通しはない。そして、先ほどからお話がありましたが、金正恩を連れていけない、まだまだ中国のパートナーにはなり得ない。そういう中で、金正日としてもさまざまな心配、不安の中にあるのではないかなというふうに思っています。そういう意味では、大きなチャンスがめぐってきているというふうに私どもは思っているわけです。

 その中で、一つは、家族会の横田滋さんが、北朝鮮への制裁だけでは解決は難しい、ぜひチャンスをとらえてもっと交渉を実施してほしい、このようにおっしゃっておられるんですが、改めて、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。

松本(剛)国務大臣 対話も制裁も手段である、このような考え方が一つあると思いますし、さらに申し上げれば、制裁も使い方によっては効果のある対話のための手段であるということも申し上げられる、このように思っております。その意味で、私自身、所信で、対話を拒むものではないということをお話をさせていただきました。

 先ほどの坂本委員の御答弁でも申し上げましたが、他方で、これまでの対話ということについて、確固たるメッセージ、また、北朝鮮に対する状況をしっかりつくっていかなければ、効果のある対話というものが期待できないのではないかということも我々学んだところだろうというふうに思っております。我々に時間が無限にあるとは考えていないわけでありますけれども、日米韓の連携というものも今、国際社会においてもかなり認知をされ、その意義というもの、またその強固な連携というものも理解をされ始めてきているのではないかというふうに考えております。

 そういった状況を見きわめながら、おっしゃったように、諸般の情勢を見落とすことなく対話の機会というのをしっかりとらえるべきだということについては、私どもも御意見をしっかり受けとめてまいりたい、このように思っております。

竹内委員 前提条件として、六者協議というのがあると思うんですね。

 六者協議を再開したいというような話も金正日側からも出ておりますけれども、しかし、そうはいきませんですね。あれだけの砲撃事件をやって何の謝罪もなく、それから、ウランの濃縮計画の即時中断を初め五項目を我々としては要求しているわけでありますが、そういうことに何の譲歩もなく、六者協議復活というのはあり得ないというふうに思います。六者協議というものを前提とした上で、北朝鮮と日朝協議に入る何かのきっかけをつかむ必要があるんだろう、こういうふうに思うんですね。

 その条件というのは、私は事前通告していますけれども、いかがですか、大臣、北朝鮮と日朝協議に入る条件をどのように考えるか。

松本(剛)国務大臣 私どもとしても、所信でも同旨のことを申し上げたというふうに思いますが、拉致、核、ミサイル、この諸問題の解決に向けた前向きかつ誠意ある対応を見せるのであれば、日米韓で緊密に連携しつつ、我が方としても同様に対応する用意がある、この立場を明言しておりますことは、このようなことが関係の皆様にも伝わるという意味で、私どもとしても思ってまいってきたところであります。

 具体的な条件とかいったものをあらかじめどのように申し上げるかということは、必ずしも交渉を行うに当たっては適切でないというふうに考えているところでありますけれども、先ほどお話がありました、同じ考えではないかというふうに思いますが、前向きかつ誠意ある対応というのは、私どもにとりましては六者会合のことであり、また休戦協定であり、そして日朝平壌宣言であるというふうにお考えをいただいていいのではないかというふうに考えております。

竹内委員 時間があと五分になってきましたので、二点ほど求めておきたいと思うんですね。

 実は、アメリカの下院外交委員会は、六月二日に北朝鮮による拉致事件を中心に人権問題に関する公聴会を開くことを決めた、こういうふうに伺っております。その背景には、アメリカの民間人権擁護組織北朝鮮人権委員会が北朝鮮の外国人拉致の具体例を集大成した調査報告書を五月十二日に公表したことがあります。この発表の会見では、同人権委員会のリチャード・アレン議長を初めとして、韓国拉致被害者家族、米国国務省のロバート・キング北朝鮮人権問題特使、各国外交官が出席したわけですが、日本の拉致被害者家族会の増元照明事務局長が英語でお姉様のるみ子さんが拉致された悲劇を話された上で、被害者救出には国際的な連帯が不可欠だと訴えられているわけでございます。

 少なくとも、アメリカ議会としては、北朝鮮の拉致を国際的な課題として糾弾する姿勢を見せているというふうに思います。日本政府としても、今回の公聴会や、あるいは米国政府に今までにないものを要求していく必要があるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 私は、一つは、改めて北朝鮮が米国国務省のテロ支援国家リストに再掲載されるべきであるということを米国に要求すべきではないかということを一点申し上げておきたいと思いますが、外務大臣の見解はいかがですか。

菊田大臣政務官 先生御指摘のとおりでございまして、きょう、この公聴会の開催が発表されたというふうに承知をいたしております。

 本件公聴会における議論では、拉致問題に関する我が国の立場が正しく反映されることが非常に重要であると考えておりまして、我が国としましても、証言予定者や議会の関係者などに対しましてしかるべき働きかけを行う考えでございます。

竹内委員 大事な点だと思うんですね。

 それと、テロの再掲載。

松本(剛)国務大臣 テロ支援国家の再指定については、御家族を初めとして、我が国の国内で強い要望があることは私どもも十分に認識をしております。政府としてはこれらのことを念頭に置きながら、米国との間で北朝鮮から具体的な行動を引き出すための取り組みについてしっかり連携をしてまいりたい、このように御答弁をさせていただけたらと思っております。

竹内委員 引き続き、声を大にして要求していただきたいと思います。

 もう一点は、今回の報告書では十四カ国の国民が拉致、拘束されている事実も明らかになっているんですね。これは重要なことでございまして、この十四カ国が連帯して即時解放を要求していくということは非常に大きな圧力になるのではないかなというふうに思っているわけでございます。外務省のホームページにも最近中国人拉致の件が掲載されておりますけれども、それだけではなくて、この十四カ国の連帯、そういう行動に向けて、ぜひ松本大臣にリーダーシップをとっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 拉致は人間の尊厳、人権及び基本的自由の重大かつ明白な侵害であり、これは、日本人以外でも、拉致の被害者ということについては同じ問題だというふうに私どもは考えております。

 率直に申し上げて、必ずしも、各国における位置づけとか受けとめは、それぞれの国の制度や考え方で、一様でないことは事実でありますけれども、関係各国との間で、情報交換も含めて、しっかりと緊密に連携協力をするということが必要だろうというふうな御指摘は、私もそのとおりだというふうに思っております。

 先般、日韓の首脳会談で、李明博大統領が韓国の拉致被害者にも言及をされたということもあります。また、私どもとしては、国連人権理事会などの国際的な連携というものもしっかり行っていくということで、関係国の連携と、国際社会からのメッセージというものをあわせ持って努力してまいりたい、このように考えております。

竹内委員 結びですが、本当にこの問題は、外務大臣の役割は非常に重要であるというふうに思っておりますので、ぜひともよろしくお願いします。

 終わります。

奥村委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 松本大臣に質問いたします。

 先ほど来ありましたが、さきの第四回の日中韓のサミットにおける首脳宣言では、北東アジア情勢に関連して、北朝鮮が主張するウラン濃縮計画に懸念が表明されるとともに、真摯なかつ建設的な南北対話が必須なまでに重要である、また、六者会合、六カ国協議の再開に資する環境を醸成する上での具体的な行動の重要性、このことが強調されております。同時に、日中韓の三カ国は、二〇〇五年の六者会合の共同声明、この目標を実現することに対するコミットメントを再確認した、こうございます。

 そこで大臣に伺いますが、北東アジア情勢に関連して、日本政府としても、真摯なかつ建設的な南北対話が必須なまでに重要、このように位置づけるに至ったのはなぜか、その理由についてお答え願いたいと思います。いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 南北対話については、御承知のとおり、昨年、天安号沈没事件や延坪島の砲撃事件といった挑発行為が発生をしております。その後、韓国は北朝鮮の誠意ある措置を求めているところでありますが、いまだ進展がありません。

 私どもとしては、このまま両者の間に信頼が築かれないままでいることは、実りある対話が望めないと考えております。であるからこそ、北朝鮮との対話がまず南北間で行われるべきだということを主張してまいりましたし、この立場について、日米韓で一致して申し上げてきたところであるということでございます。

笠井委員 松本大臣も、先週五月二十日に韓国の金星煥外交通商部長官と会談をされて、南北首席代表会談を出発点とする三段階の六カ国協議再開案などについて意見交換したそうでありますけれども、具体的にどういう中身だったんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 個別のやりとりをすべてお話し申し上げることはできませんが、日米韓の連携をしっかりと維持していく中で、北朝鮮に対しては、先ほども申し上げてまいりましたように、これまでの合意をしっかり履行する前向きの姿勢、そして、具体的な行動を引き出すべく、日韓で力を合わせ、米国との連携も保っていこう、このような趣旨でございました。

笠井委員 菅総理は、さきの日中韓サミットで、今後、北朝鮮は速やかに南北対話において昨年の二度の挑発行為や非核化についての前向きな姿勢を示した上で、六者会合でのみずからの約束を真剣に実施する意思を具体的行動で示さなければならない、こう述べられましたけれども、日本政府としては、どのような主体的な戦略を持ってこのことに臨んでいくんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 私どもとしても、拉致、核、ミサイルといった問題は、進行中もしくは目前の看過できない課題であるということは十分に認識をしているところであります。他方で、六者会合、また日朝、さまざまな交渉がこれまで行われてまいりましたけれども、残念ながら、時間を要しつつ、成果を大きく上げることができなかった、こういう経過もあります。

 そういったことを踏まえて、現在のところは、まず、しっかりと約束を履行する前向きな姿勢と具体的な行動を北朝鮮側から引き出したい、そのための日米韓の連携であり、関係国への働きかけであり、関係国との連携であるという位置づけで、今進めているところでございます。

笠井委員 菅総理は、さきの日中の首脳会談で、北朝鮮が非核化等に向けた意思を具体的行動で示す必要があるとしながらも、日本政府としては、引き続き、中国から北朝鮮に対する働きかけに期待する、六者会合の再開のためにも中国の積極的な対応を期待するという旨で述べられております。

 では、日本政府自身としては、北朝鮮から具体的な行動を引き出すためにどのような働きかけを行っていくということなんでしょうか。

松本(剛)国務大臣 やはり、北朝鮮との問題での中国の役割は大変大きいということから、私どもとしては、中国への働きかけというのを一つの大きなものとして、しっかりと総理から行う、こういう位置づけをしているところであります。

 私どもとしても、私どもにとっての問題である拉致、核、ミサイルを解決するために、中国を初めとする関係国に働きかけをする、連携をとるということそのものが、私どもにとっての戦略であり、また活動であるというふうに考えておりますし、国際社会に訴えていくということも、そのような位置づけの中でおとらえをいただけたらというふうに思っております。

 日朝の間で話し合うということについては、かねて申し上げているように、直接対話を拒むものではありませんけれども、これまでのことにかんがみ、北朝鮮に、まず約束を守る姿勢、具体的な行動をということを求めているということでございますし、同時に、先ほど委員からも御引用がございましたけれども、まず南北対話という、昨年来の経過に基づく関係国との連携、信頼関係の中での位置づけということもあわせて申し上げてまいりたい、このように思っております。

笠井委員 日本政府が主体的な外交戦略を持って六者会合にイニシアチブを発揮することは、私は拉致問題の解決にとっても重要なことだと思います。

 北朝鮮は二〇〇八年八月の日朝協議で合意した拉致問題の解決に向けた全面的な調査のやり直しをいまだに実施していない状況だと先ほどありました。まさに、そういう点では、事態打開のために仕事をする。イニシアチブは大事だと思うんですが、外務大臣としてどう臨まれるか、最後に伺いたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今お話がありました二〇〇八年八月の合意というものを足がかりに、ぜひこの問題を解決してまいりたい、こう考えているところではありますが、いまだにこの合意については何ら具体的な行動がないということも事実であります。

 私どもとしては、こういったことを含めて、約束を守る具体的な行動を示すことが北朝鮮にとっての利益になるということを理解させられるように、さまざまな形でメッセージを送るなど、私どもの考え方が向こうに伝わるように努力をしていく、また、関係国との連携を深めていくことで、ぜひ具体的な行動をとることに向けた状況づくりということを推し進めていきたい、このように思っているところでございます。

笠井委員 今大臣からありましたが、私は、やはり、日朝問題を解決するためには、日朝平壌宣言の履行と六者会合の枠組みを通じた諸懸案の解決を図ることであって、そのためにも、政府が主体的な外交戦略を持って臨むことが大事だと思います。そのことを前回の中野大臣との質疑でも私は述べさせていただきましたけれども、改めて外務大臣にもそのことを求めて、質問を終わりたいと思います。

奥村委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本日は、松本外務大臣、御多忙の中、御出席でございますので、大臣にお聞きしたいと思います。

 最初に、この間のG8外相会合、日中韓サミットについて、これまで各議員からも質問され、御回答されておりますが、私からも再度、この二つの会合についてお尋ねをしたいと思います。

 松本大臣あるいは菅総理は、北東アジア情勢、拉致問題について、どのような提起を行い、どのような評価を得たのか、端的にお答えをいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 G8の外相会談では、私が参加をいたしまして、拉致、核、ミサイルといった北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けて粘り強く取り組んでいくという我が国の方針を説明いたしたところでございます。また、国際社会が一致して、引き続き安保理の関連決議を着実に実施する必要ということも指摘をさせていただきました。これらの、ウラン濃縮活動や、また拉致問題についてもしっかりとお話をさせていただいたところでありまして、各国からは、基本的な理解、協力が得られたものと考えているところでございます。

 日中韓のサミットにおいては、菅総理は議長であったわけでありますが、先ほどお話をさせていただきましたように、地域情勢、国際情勢についてというテーマを設け、その中で、北東アジア情勢を主要な議題の一つということで、設定、提起を議長としてさせていただきました。

 具体的には、重複をするところがありますが、安保理決議、六者会合共同声明違反である北朝鮮のウラン濃縮活動に対する懸念の表明、諸懸案の解決に向けた具体的な行動を北朝鮮から引き出すための三カ国の連携、そして、六者会合の再開には南北対話で北朝鮮が前向きな姿勢を示すことが重要というような認識で一致をしておりまして、また、総理から、拉致問題については中韓両国のさらなる協力を要請したところでございます。

中島(隆)委員 恐らく、外交問題としては中東、アフリカ情勢に、日本の問題では特に先日の東日本の大震災等あるいは原発事故に世界の目が向く中で、北東アジアの安定や拉致問題の解決に向けて国際世論を喚起する努力は今後も強化をしていただきたいと思います。

 そこで、関連してお尋ねをいたしますが、外務省のホームページでドービルでのG8外相会合の概要を見ますと、松本大臣は、北朝鮮問題について、対話のための対話は不適切であるということ、それから、北朝鮮が南北対話で非核化を含め前向きな姿勢を示し、みずからのこれまでの約束を真剣に実施する意思を具体的行動で示すことが必要と指摘をされています。ここで言う対話のための対話、約束を実施する具体的行動とは、具体的には何を指しておられるのか、お尋ねをいたします。

松本(剛)国務大臣 対話のための対話というのは、北朝鮮が、非核化なども含めた諸問題の解決に向けて具体的な措置をとる意思、用意がないままに、ただ話をすることだけを目的として六者会合や二国間を含む対話の話し合いのテーブルに着くということ、こういったことを対話のための対話というふうに表現いたしております。結果として、成果のないままに時間が空費されるおそれがあるということを懸念してのものであるというふうにお考えをいただきたいと思います。

 具体的な行動というのは、ある意味では条件ということになりますので、条件を列挙したりすることは、これから交渉していくためには必ずしも適切ではないというふうに思っておりますが、あくまで一般論の例ということで申し上げれば、非核化については、北朝鮮がウラン濃縮活動などの核関連活動を停止するとか、北朝鮮の実際の行動措置があれば、それは具体的な行動と私どもとして評価をすることができるのではないかというふうに考えております。

中島(隆)委員 北朝鮮の拉致問題は対話と圧力という二つの課題で対応されておりますけれども、最終的な解決は、やはり日朝の対話をどう道を開いていくのかというのが重要であります。向こうの対応のあり方もありますけれども、日本としても、対話に向けてのきっかけをどうつくるか、これについてもひとつ努力をしていただきたいと思います。

 次は、三点目ですが、北朝鮮は、衝撃的な事件や国際社会を緊張させる事案を引き起こした上で、米国との直接交渉の機会をうかがう手法を繰り返しています。ですから、米朝交渉につながる南北対話がそのための踏み台になるような事態は、確かに憂慮しなければなりません。哨戒艦沈没事件や、あるいは延坪島砲撃事件、あるいはウラン濃縮問題については、北朝鮮が誠実な姿勢を示すべきだと私も考えています。

 他方、北朝鮮の核、ミサイル、拉致問題を包括的に解決するとなると、やはり対話の機会は大変重要な課題であります。日中韓サミットの首脳宣言で、六者会合の再開に資する環境を醸成することの重要性が指摘をされています。

 そこでお伺いしますが、南北対話、あるいは米朝対話、六者協議の順番での対話再開に向けての現状はどのような位置にあるのか。水面下では対話再開に向けた動きが進んでいると外務省は考えているようでありますが、その点についてお尋ねをしたいと思います。

 仮に六カ国協議再開の動きが具体化した際には、再開に当たって日本政府としては何らかの条件を設定することになるのかどうか、その点も含めてお尋ねをいたします。

松本(剛)国務大臣 御承知のとおり、六者会合は二〇〇八年の十二月以来開催をされておりません。先ほどから申し上げてまいりましたように、六者会合を対話のための対話としないようにということで、まず、北朝鮮が非核化を初めとする、みずからの約束を真剣に実施する意思を具体的行動により示す必要があるというふうに申し上げてまいりました。また、これも先ほど御答弁を申し上げたところでありますが、昨年の挑発行為を踏まえて、南北間での対話がまず行われるべきだということも日米韓で一致をしてきたところであります。

 このような日米韓の連携の動きも含め、私どもの働きかけ、そして各国の動静も含めて、最近では、韓国の李明博大統領によりまして、核セキュリティーサミットに金国防委員長を招待するといった発言があったり、今まさに行われているところだと思っておりますが、北朝鮮の食糧事情を調査する米国調査団の訪朝があったり、また、つい先日終わりましたが、金国防委員長の訪中があったりということで、さまざまな動きが今あるということは私どもも注視をし、情報を収集しているところであります。

 ただ、現時点で北朝鮮が先ほど申し上げたような具体的な行動をとっているかといえば、今とっているとは判断できないのではないかと私どもは考えており、六者会合を再開できる状況にあるとまでには至っていないというふうに思っているところであります。しっかり日米韓と連携をしながら、そういった状況ができるようにと考えております。

 私どもとしては、六者会合は有効なツールだという考え方は引き続き持っているということも申し上げてまいりたいと思います。

中島(隆)委員 北東アジア地域をめぐる緊張は、第一義的には北朝鮮に原因があると考えます。解決に向けては、最終的には対話が頼りになると考えますが、米韓はもちろんですが、中国、ロシアなどとも連携を深めながら、的確な対応を期待したいと思います。

 拉致問題解決に向けては、八項目の本部長指示のフォローアップ会議が五月二十日に行われていますが、これらの問題についても、調査のやり直しの要求について、外務省は今後どのような機会にどのような形で要求していくのか、非常に重要だと思いますので、この点についても対応を図っていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、質問をこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.