衆議院

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第1号 平成17年4月20日(水曜日)

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平成十七年四月二十日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

  法務委員会

   委員長 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 平沢 勝栄君

   理事 三原 朝彦君 理事 吉野 正芳君

   理事 津川 祥吾君 理事 伴野  豊君

   理事 山内おさむ君 理事 漆原 良夫君

      井上 信治君    大前 繁雄君

      左藤  章君    笹川  堯君

      柴山 昌彦君    谷  公一君

      早川 忠孝君    松島みどり君

      水野 賢一君    森山 眞弓君

      保岡 興治君    加藤 公一君

      佐々木秀典君    辻   惠君

      中村 哲治君    松野 信夫君

      松本 大輔君    富田 茂之君

  財務金融委員会

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 竹本 直一君

   理事 村井  仁君 理事 中塚 一宏君

   理事 原口 一博君 理事 平岡 秀夫君

   理事 谷口 隆義君

      熊代 昭彦君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    中村正三郎君

      永岡 洋治君    宮下 一郎君

      森山  裕君    山下 貴史君

      渡辺 喜美君    岩國 哲人君

      田村 謙治君    津村 啓介君

      中川 正春君    野田 佳彦君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

  経済産業委員会

   委員長 河上 覃雄君

   理事 河村 建夫君 理事 櫻田 義孝君

   理事 平井 卓也君 理事 松島みどり君

   理事 細野 豪志君 理事 吉田  治君

   理事 高木 陽介君

      嘉数 知賢君    小杉  隆君

      佐藤 信二君    坂本 剛二君

      竹本 直一君    武田 良太君

      谷畑  孝君    平田 耕一君

      森  英介君    大畠 章宏君

      奥田  建君    海江田万里君

      近藤 洋介君    渡辺  周君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   法務副大臣        滝   実君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   法務大臣政務官      富田 茂之君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           舟木  隆君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会社法案(内閣提出第八一号)

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

塩崎委員長 これより法務委員会財務金融委員会経済産業委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 両案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料により御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 私は、二十一世紀の日本は事前規制型の社会から事後チェック型の社会にどの分野も移行していくべきだと思っています。

 特に、この会社法の質疑をするに当たって、やはり投資家あるいは株主は保護しつつも、しかし、しっかりと自由度を高めて経済活動を後押ししていく、そういう法律をつくっていきたいなと思って質疑をさせていただこうと思っています。

 その具体的な例というのが、例えば最低資本金制度を撤廃するとか、あるいは株券の発行について、旧法よりもより積極的にあるいは適時適切な時期をつかまえて発行できるようにしよう、そういう仕組みを新法でつくっていく。それによって、また経済活動を支えていこう、そういう思いがこの改正案の中にはあると思っています。

 だから、取締役の裁量というのは最大限尊重すべきだと私も思うんですが、しかし、この数年随分事件も起きました。例えば雪印それから三菱自動車あるいはUFJ銀行の検査逃れ、この二カ月ぐらいをとっても、私の子供もカルビーのポテトチップなんか好きなんですけれども、あのカルビー製菓が線虫という虫のついたジャガイモを北海道の農家でつくらせて、それによって検疫制度を逃れて、農家にも今大打撃を与えているという事件もございますし、空から飛行機がきちんと滑走路におりてくればいいんですけれども、物体が飛行機からはがれて落ちるというようなことも何回もあるということで、私たちも積極的に会社の経営者あるいは経営判断を尊重しようという思いになっているのに、ちょっと事件が多い。

 つまり、事件を起こさない、コンプライアンス、法令遵守、しっかりとやっていきます、そういう仕組みをこの会社法の中にもしっかりと盛り込まなければいけない、そう思っているのですが、政府の考えはどうでしょうか。

中川国務大臣 企業についての御質問でございますから、私から答弁させていただきます。

 企業というのは、言うまでもなく、人的資本あるいはまた資金、そしていろいろな技術、設備等々から成り立っているわけでありますから、企業が独立して経済活動をするということはできないわけであります。また、お客さんとか取引先とかいろいろあるわけでございますから、そういう中で企業の社会性というものはもともとあるんだろうと思いますし、言うまでもなく、つくった製品あるいはサービス等のいわゆる付加価値が、社会に対して違法であったり、また不適切であったりということはそもそもあってはならない。

 これは、もともと企業に対しての評価にかかわってくる問題でありますけれども、現在におきましては、それ以上に社会に対する責任というものは大きいわけでございますので、雪印それからカルビー、いずれも私の地元に非常に関係のある企業でございますが、与えた影響というものは大変大きかったということで、私も関心を持っております。

 これは、一部は食品衛生の問題ということで法律違反にもなりますけれども、多分、委員御指摘の面というのは、法律違反あるいは事件、事故といった部分と、もっと根底にある、いわゆるCSRですか、企業の社会的責任という観点からも、最近そういうニュースが多いということであれば、そういういろいろな企業の果たすべき役割というものをきちっと自覚し、責任を持ってしっかりと対応していくのはもう当然のことだろうというふうに思っております。

山内委員 一つ一つの事件を通じて、そこにどういう問題があったから注目を浴びるような事件になっていったのかということを、やはり検証したり反省したりすることが必要だと思っているんですね。

 例えば、コーポレートガバナンスとかコンプライアンスという片仮名用語がもてはやされるというか、はっとするような事件というのは、やはり大和銀行のニューヨーク支店の事件だったと思うんですね。その支店の従業員が簿外で証券取引をやって大穴をあけてしまった。それによって、会社としても、取締役がしっかり企業統治をしていなかったんじゃないかということが問われて、株主代表訴訟が行われ、実に八百億とも九百億とも言われるような損害額が裁判所で認定された。

 まず、この事件を通して、政府としては、この大和銀行一つをとらえてもいいですし、今の企業を大まかにとらえてもいいですから、どういう点が欠けて、どういう点を直していこうと思っておられるんでしょうか。

寺田政府参考人 これは、個々の事件について一般的に取締役が具体的にどうすべきであるかということは、政府としてはお答えすべきところではないだろうというふうには考えておりますが、ただ一般論といたしまして、このような多額の損害を与えるという不正な会社の行為ということに対しましては、内部での統制ということについて具体的にどういう仕組みができているかということを、やはり会社法の立場あるいは投資家保護という立場からいろいろ考えていただかなければならない問題も含まれているだろうというふうに一般論としては考えております。

山内委員 銀行は、自分の会社を市場で評価してもらうということはもちろんですけれども、人のお金も預かっている商売ですので、やはり一般企業とは違う、また特別なそういう取締役あるいは監視役のチェック機能なんかも十分に果たしてもらわないといけないと私は思っています。

 この大和銀行の事件を通じて、法務省としては、取締役のそういった監視義務というんですか忠実義務、つまり、株主あるいは投資家に損をさせない、しっかりとした企業をつくっていく、そういう責任が厳しく認定されたと私は思うんですが、どうでしょうか。

滝副大臣 先ほど民事局長の方からもお答えをさせていただきましたけれども、基本的には、会社の内部統制と申しますか、そういうような観点から、改めて法務省としても会社法の問題として考えなければいけない、こういうふうに思っているわけでございますし、その中でも、法律的には、特定の会社につきましては社外取締役を置くとか、監査役につきましても、監査役会を設ける会社につきましては三人以上の監査役を設ける、あるいはその半分以上は社外から求めるとか、そういうようなことで、やはり制度的にかなり会社の内部統制という面からの強化を図っていく、そういう流れの中で今回の法律改正も考えてきている、こういうことでございます。

山内委員 後で社外取締役のことについてお聞きしようと思うんですけれども、それ以外でも、会計監査人の範囲あるいは責務を拡大したり、あるいは会計参与という仕組みを新しく導入することによって、外部からの話を聞こう、風通しのよく、透明性のある企業を形づくっていこうというような仕組みが今回の改正案で採用されたと思うんですが、財務大臣そして金融大臣として、こういう仕組みに参入あるいは参画していかれる公認会計士の皆さんや税理士の皆さんに対して、どういう思いを持ってこれからの企業統治の手助けをしてもらいたいのか、その辺の思いをお聞かせいただければと思います。

谷垣国務大臣 会計参与の仕組みは、会計に関して専門知識を持っている税理士であるとか公認会計士が、取締役と協力しながら会計書類、企業の書類をつくるということによって、その正確さを確保していこうというのがねらいだと思うんですね。それで、委員のおっしゃるコンプライアンスであるとか企業統治、外から見てもまた風通しのよいものにしていくことに役立てようということではないかと思いますので、私の立場から申しますと、税理士の方々に専門知識を生かしていただいて、企業というものが一般の経済社会の中で本当にいい主体として動いていくということに少しでもお役に立てばいいのではないかと思っております。

伊藤国務大臣 今財務大臣からもお話がございましたように、会計士のようなやはり専門的な知識を持っている方々が会計参与の仕組みの中でその能力というものを遺憾なく発揮していただいて、そして正しい正確な財務書類というものをつくり上げていく。また、経営においても、そうした情報開示というものを意識しながら、あるいはコーポレートガバナンスというものを意識しながら経営をしていくということは極めて重要なことでありますので、こうした仕組みの導入というものが、今後、企業統治においてもその向上がなされていくことを私どもとしても期待をいたしているところでございます。

山内委員 そういう外部の人たちが会社に入っていって、本当に自分たちの専門性を生かして健全な企業に取締役と一緒になってつくり上げていく、そういう仕組みができ上がればいいことだなと私も思います。

 しかし、取締役がしっかりしているかどうかがやはり最後には重要になってくると思うんですね。ちょっと細かい話になるかもしれませんけれども、例えばほかの取締役が会社に物すごく損害を与えようとしているというようなときに、それを発見した取締役がどう行動するのかということがやはり忠実義務とか監視義務違反では問われる問題だろうと思います。

 取締役に違法、不当な行為をやめろと言ってもやめない、そういうときに、顧問弁護士に相談をする、あるいは、代表取締役にかけ合って、例えば外部に公表するぞとおどすとか、自分の言うことを聞いてくれなくて、最後は連帯責任で自分も一緒になって何か監視義務違反で問われそうになるんじゃないかなと思ったらきっぱりとやめるとか、これからますますのコーポレートガバナンスが叫ばれる時代になってくると、取締役一個人がどう行動し判断していくかということが問われると思うんですが、そのあたりの仕切りというんですか、どういうふうに考えておられるんでしょうか。

寺田政府参考人 戦前の商法では、取締役というのは執行役、執行担当者でございましたけれども、戦後の取締役は、取締役会を構成することを基本といたしまして、その取締役会において取締役相互がお互いに他の取締役の職務の監視を行う、監督を行うというのが一つの重要な取締役の任務である、こういう考え方でできてございます。

 この新しい会社法におきましてもこの考え方が受け継がれておりまして、取締役会の設置がされている会社においては、個々の取締役が相互に、お互いの執行において責任を負っている部分とは関係がなく監督をし合うというシステムになっております。

 そういうことですから、一人の取締役について違法な行為がある、あるいは不当な行為があるということになりますと、その取締役は、業務執行の権限外のことについても、これについて監督義務を果たすことで、具体的に申し上げますと、その事実を監査役に報告しなきゃいけない、これは新しい会社法の規定でいいますと三百五十七条に当たりますが、そういう義務を負います。監査役は、その後、その行為が違法であるということを認定できますと、差しとめを行うということになります。

 また、もう一つの手段といたしましては、取締役会自体を招集いたしまして、その取締役会の中で、こういう事実があってこれはどうも違法に当たりそうだということで、その取締役に説明を求める等の調査をする、その結果、取締役会が責任追及をするために具体的な行為に向かう、こういうことになります。

 したがいまして、違法行為というものを発見した取締役の責任は極めて重いというふうに言えると思います。

山内委員 しかし、取締役がそういう義務に違反した場合には、やはり代表訴訟で判断していただくという機会もふえてくるんだろうと思います。事後チェック型社会を目指すということになれば、やはり代表訴訟制度というのはしっかりと充実したものにつくり上げていく必要があろうかと私は思っています。

 その代表訴訟制度で、この法律に書いてあることの中で、代表訴訟を制限する規定が盛り込まれました。これは旧法にない規定ですが、訴えを起こす株主が、自己もしくは他人の不正な利益を図り、または会社に損害を加える目的を持つ場合、この場合には、つまりは実体の審理に入らないで、株主代表訴訟としては提起することはできません、そういう法案だと思うんですけれども、これは具体的にはどういう場合を想定して考えられた規定なんでしょうか。

寺田政府参考人 代表訴訟は、先ほど申しました、戦後の昭和二十五年に、取締役の権限と総会の権限の分配が変わった際に、株主の権限として設けられたものでありまして、その後、たびたびこの代表訴訟を利用いたしまして取締役の違法行為をチェックするという機能を果たしてまいりました。ただ、この代表訴訟を濫用される方というのは、残念なことでありますけれども、全く皆無というわけではありません。

 その場合にどういう手だてがあるかといいますと、訴えられました取締役は、これは本来の代表訴訟のあり方からやや踏み越えていて、自分に多大な損害をこうむるということになりますと、担保の提供を申し立てるということがありまして、それは一定の機能を果たしているわけであります。ただ、この場合は、あくまで損害の対象というのは取締役に生ずるわけであります。

 問題は、例えば、一番あり得るケースでいいますと、代表訴訟を起こして、それについて会社の側から何らかの金銭の支払いを引き出すというような嫌がらせみたいなことが全くないわけじゃない。そういう全体としてみれば代表訴訟を濫用しているケースで、濫用される対象というのは会社であるという場合において、今までの訴権の濫用という構成で退けられることがないわけではありませんけれども、これはあくまで一般論でございますし、先ほどの担保提供というような措置というのは必ずしもぴったりそれに適しない。そういうことから、やや極端なケースを念頭には置いておりますけれども、会社に対して損害が生ずるような場合で、本来の代表訴訟からいいますと濫用に当たるというようなケースを典型的にここで二つの類型に分けて掲げている、こういうことで御理解をいただきたいと思います。

山内委員 民事局長、今のは二号も一緒に言われたんだと思うんですけれども、私は一号に限定して聞いたつもりなんですよね。

 その株主代表訴訟が、本店所在地を東京にしている会社が一流企業では多いと思うんですが、年間に二十件ほどだそうでして、例えばその中に仮に濫用にわたる訴訟が提起されているとしても、ごくごくわずかだと思うのが一点。

 もう一点は、訴権が濫用であるからということを理由として前もって規制をするというのなら、じゃ、裁判所も今まで、訴権の濫用にわたるような株主代表訴訟についてもほかの訴訟と同じようにまじめにしっかりと審理をして判決まで至ったかというと、そうじゃなくて、訴権が濫用にわたるような裁判についてはしっかりと認定して訴えを却下してきたりしているわけですよ。

 ですから、私も最初に言いましたけれども、事前にいろいろ規制をするんじゃなくて、皆さん、本当に会社に対して不正あるいは違法な行為があって損害を生じたような場合には、やはりチェック機能を働かせてください、私たち取締役あるいは監査役では不十分なので、株主の皆さんにもそういう権能を与えていきますよというのが株主代表訴訟の存在意義なわけですから、それをがちがちに、前もって規制をします、裁判所は全く取り上げませんよという社会というか仕組みは、やはり私は、はやりの社会じゃないなと思います。

 しかも、こういうことも私は一号を見て思うんですけれども、たとえちっちゃな、自己に利益を得ようとする意図が仮に少しあったとしても、しかし、大きく見れば、そのことを言うことによって会社の健全経営につながるという場合もあるわけでしょう。だから、そういう意味でも、この一号の規定というのはすごくあいまいで、代表訴訟を提起しようとする人たちへの萎縮効果を生んでいる、生むんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるように、一つは、余り事前にがちがちに規制するのはどうかというお話がございましたけれども、これは裁判所での訴えが起きた後にどう扱うかという問題です。

 一方では、ルールはできるだけ透明化するという問題もございますので、私どもとしては、できるだけ、訴権の濫用という一般論から、必ずしも裁判所に非常に御判断に御苦労をおかけするというよりは、ある種のものをやはり類型化して事前にわかるように、それももちろん限度はございますけれども、一定の範囲でわかるようにしたいということからこれをつくったものでございます。

 それで、おっしゃるとおり、類型が二つございます。第一のものは、一号というふうに今おっしゃったのは、どちらかというと、その人の行為自体が本来の違法を追及するというのではなくて、別の、自分の目的がそれ以外にあるという典型的な訴権の濫用のケースであります。

 むしろ委員が御指摘になられましたのは二号の方で、会社は確かに何らかの取締役の違法行為があった、なかったかもしれないけれどもあったかもしれない、しかし、いずれにしても、それを訴訟の場でさまざまな手続をもって論じていくことによる会社の損害が莫大である、こういうことがいいかどうかということであります。

 これは、おっしゃるとおり、なかなか難しい問題がありまして、では違法行為は見逃すのかということで、代表訴訟の機能の一部というものを軽く見ているのではないかという御批判ももちろんあり得ようと思っております。

 しかし、この二号についていえば、この条文にもございますとおり、あくまで著しく正当な利益が害される、あるいは相当な確実さをもって予測されるというふうに要件を積み上げているところで、そういうことから、この範囲内ではおっしゃるような御危惧というのは全体の利益からすると薄いと見てよろしいんではないかという判断になっているわけでございます。

山内委員 訴権の濫用にわたる訴えが提起されて、裁判所も迷惑するし会社も迷惑する、だから、その場合には、違法な訴え提起を抑止する効果として担保提供命令という仕組みがつくられているわけです。

 それから、会社が何か面倒な事件に巻き込まれてしまって損害が出た場合、あるいは早く事件を終わろうとした場合には、通常こういう訴訟で余り認められにくい和解という仕組みまで認められているわけですよ。

 だから、一定のそういう回復機能というか回復措置というものを法律はほかの条項で担保しているわけですから、私は、違法な訴訟がたくさん起きて何か混乱するんじゃないかというような懸念はやはり持つべきではないんじゃないかなと思います。

 それからもう一つは、民事局長が今おっしゃった、概念に絞りをかけているというか厳しくしているので不安はないような言い方をされたんですけれども、会社の正当な利益ということ自体何を指すのかなと思います。著しくという文言もよくわかりません。会社に過大な費用負担が生じる、これは何ですか。相当確実に予測されるというのはどういうことなんですかね。わからないですよね。

 ですから、こういう法律というのは、読んだだけで、ははあ、なるほどなというのが私は法律だと思って、これに違反してはいけないんだなとか、これに該当するから自分も保護してもらえるんだなというのが法律だと思うんですね。だから、そういう意味からすると、あいまいさにあいまいさを重ねたような法律になっていて、代表訴訟が行えない範囲というのを広くしているんじゃないかと私は思います。

 こういうことはないんでしょうかね。原告が勝訴しても、会社に被告から賠償される額は多くはない、弁護士費用にも満たない、そういう場合に、会社はたくさんお金を使って過大な出費が出ましたということになると、比較考量されて、代表訴訟は、あなた、だめよというようなことになると困りますし、そういうふうに思った途端に、みんなが代表訴訟の提起をやめるでしょう。

 ですから、私は、健全な会社として永久に存続する、そういう優良企業を育てるためにも、コーポレートガバナンスというのは積極的に認めるべきだし、代表訴訟制度というのはやはり育てていこう、こういう思いが必要だと思うんですけれども、どうでしょうか。

寺田政府参考人 先ほども冒頭申しましたように、代表訴訟というのは、株主総会の権限というのがある程度制約されざるを得ない、そうすると一株主ということが、会社の全体の運用、コーポレートガバナンスの観点から見てのさまざまな会社の実情、取締役の行為その他に対してどういう権限を持つかという点で認められた制度でありまして、その重要さというのは、今の会社の運用の全体の中から見ますと決して軽いものではございません。

 私どももそのことは十分に意識しておりますので、平成に入りましてからも代表訴訟の訴額等について相当の配慮をして、代表訴訟を機能するようにいわば育ててきたと申しますか、機能不全というものを回復しようということで、さまざまな試みをしてきたわけであります。

 しかし、その代表訴訟の機能というのが一部で非常にゆがんだ形で行われるということになりますと、やはり株主代表訴訟全体の重要さというものがむしろ傷つけられるんじゃないかという懸念も出てきていることもこれまた事実でありまして、そういう意味で、できるだけ明確化して、裁判所の一般的な訴権の濫用論というものはございますけれども、もう少しその訴権の濫用論というのをパラフレーズして、規定として置きたいというのが今回の意図でございます。

 担保提供、あるいは委員も御指摘になりました和解の制度はございますけれども、それらをもってはかえがたい機能をこの訴権の濫用による却下というのは持つわけでございますので、それほど適用の範囲というのは広いわけではございませんけれども、しかし、それなりに機能するものということで、全体の代表訴訟の機能をそれあらしめるためにもむしろ必要だという考え方でございます。

山内委員 時間が足りなくて、ちょっと用意していた質問ができなくなったんですけれども、午前中の参考人質疑で、私は、各参考人がおっしゃった中で共通していた話題に社外取締役という言葉が多く出てきたなと思ったんですね。この社外取締役のことで少しお話をお聞きしたいんです。

 私も、各参考人の意見を聞いていると、社外取締役にしっかりしていただいて、中にいて、いわば高給を取って、自己保身を考えて、できるだけ長くこの会社の役員として残っていたいな、代表取締役を終わっても相談役や顧問や会長としてずっとこの会社に残っていたいな、それが人情でもあろうかとは思うんですが、やはりそういう人たちに、外部からしっかりと、本当にいろいろ変化する社会に対応できるような会社にしていかなければならないし、常に自己改革をしていかなければいけませんよというようなことを言う人、つまり、そういう社外取締役がやはり最初に述べました不祥事を正していくためにも必要な仕組みだと私は思うんですが、まず、金融担当大臣、どう思われますでしょうか。

伊藤国務大臣 この社外取締役の問題につきましては、実は、金融審議会の第一部会で今投資サービス法をめぐる議論が行われております。その中で、上場企業のガバナンスのあり方について精力的に議論が行われており、また、この議論の中で、ニューヨーク証券取引所の規則というものが紹介をされ、そうしたことも参考としつつ、社外取締役のあり方について意見が交わされたものと承知をいたしているところであります。

 金融庁やあるいは証券取引所の社外取締役を含む上場企業のガバナンスへの関与のあり方につきましては、引き続き、投資サービス法をめぐる議論の一つとして金融審議会で議論が行われていくものと考えておりますが、まずは、金融審議会第一部会における議論というものを私どもとして注視していきたいというふうに思っております。

山内委員 その金融審議会の場で出ている議論、つまり、敵対的買収に対して適時適切にとれる措置については社外取締役も積極的に判断を加えていこう、そういう仕組みというのは、私は、そういう議論とか、けさの参考人の意見を聞きながら、なるほどな、いい仕組みじゃないかなとは思ったんですね。

 ただ、今の日本の会社というのは、人数合わせというか、取締役を何人用意しなくちゃいけないというふうに法律上なっているものですから、足りないと社外から呼んでくるとか、どちらかというと敵対的買収に対して適切な判断を下していこうという能力には到達していないような人もいるというか、そういう人がほとんどじゃないかと思うんですが、今後、金融審議会での貴重な御意見なんかを踏まえて、さあ、社外取締役制度を充実していこうと考えるときに、会社法としてはどういうことを用意しなくちゃいけないんでしょうか。どなたか。

寺田政府参考人 会社というのはさまざまな面で役割を持っておりまして、ただ、この会社法といいますのは、いろいろな会社、銀行も会社でございますし、商事会社も会社でございますし、あるいは航空機メーカーも会社でございますけれども、そういったあらゆる会社に共通のルールとしてつくられているわけでございます。

 それで、本筋から申しますと、やはり投資家の保護、潜在的な株主の保護あるいは債権者の保護ということを全体的に会社法としては考えざるを得ないわけでございまして、むしろ、会社がどう具体的によくなるかということは、個々の会社ごとに株主がいろいろ会社で置かれている環境というものをお考えになって、こういうことではこの会社はまずい、あるいはこうなった方がいいという御判断の上に取締役をお選びになり、そういう取締役が会社全体を健全化していくというのが本筋ではないかというふうにまず思うわけでございます。

 ただ、先ほど申しましたように、一定の会社、つまり非常に大きい社会的な影響が大きい会社、だれでも株主になって今申し上げた株主がどうこうということを考えるのが現実的でない会社、そういう会社にとっては一定の組織上の強制というものもやむを得ない、そういう考え方で全体ができております。

 私どもも、社外取締役ということの有用性については、これを評価することによって、例えば委員会設置会社について大きな役割を持っていただいているわけでありますけれども、これを全体の会社にどう強制するかについては、やはり非常に難しい問題があろうかと思いますし、それぞれの会社はそれぞれの会社なりの社外性というのもまた具体的に考えていくと出てくる問題でございますので、そういった全体を考えながら会社法としてはこの問題を考えていかなければならないと思っております。

山内委員 社外取締役にそれほど大事な責務を負わせるということになれば、今、会社法の中で責任制限が、社外取締役の責任については代表取締役の三分の一でいいとか、とにかく社外取締役はどなたでも入ってきていただいていい、責任も軽くしておいてあげていますよ、これじゃ、身をもって、責任を持って敵対的買収に、知識を遺憾なく発揮して適切なことを代表取締役に進言をするという責任感が生まれないと思うんですね。

 ですから、そういう甘い部分をできれば断ち切って、そして、今の会社の中におられる取締役や代表取締役に対して、それを例えば解任までできる、自分の言うことを聞かなければあなた方を会社の外に追い出しますよ、そういうような力まで与えなければ、本当に敵対的な買収に対処する、そういういい知恵も出てこないと思うんですが、そういうことも検討しながらこの会社法をこれからも眺めていくという思いで、政府としても御検討いただければと思います。

 それでは質問を終わります。ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、松島みどり君。

    〔塩崎委員長退席、河上委員長着席〕

松島委員 私は、法務委員会の委員として、先週南野大臣にもいろいろと答弁していただきました。それできょうは、経済産業委員会の委員でもございます、そしてせっかくの連合審査の機会ですので、南野大臣はもう結構でございますので、谷垣大臣、そして中川大臣、伊藤大臣に基本的なお考えを伺いたいと思っております。

 会社法制の現代化、これは画期的なことだと思います。しかしながら、この中に使用人という言葉が随所に出てまいります。私は、この政治の世界に入るまで十五年間、民間企業の社員、朝日新聞の社員をしておりました。そのうちの八年ほどは経済記者をやっていたんですけれども、自分が使用人と考えたことはございませんし、一般にどの企業の方々も余り使用人とは思っていらっしゃらない、社員とか従業員とか思っているんじゃないだろうか。ところが、この会社法では、社員というのは合資、合名、合同会社の株主のことを指すようなんです。現代化を進めたにもかかわらず、ここは非常にミスマッチと私は思っております。

 中川大臣はもちろん民間企業に勤められたことがあるし、伊藤大臣は会社を経営されたり、今奥さんが経営されて、従業員もいらっしゃるかと思います。谷垣大臣は法曹界におられたわけですが、その色にどっぷり染まらないでこられているなと思いまして、御三方から、この使用人という言葉が会社法に残っているということについて、御感想を伺いたいなと思っております。

谷垣国務大臣 確かに、法律は、今に使われている言葉をできるだけ使っていくのがいいという面があると思います。

 ただ、使用人という言葉も、これは商法の上では、あるいは民法も使われていたと思います、随分長い間使われている言葉でありまして、今、社員というのもおっしゃいましたね。これは、法律の場合は、やはり明治以来の法制がございまして、改めていかなきゃいけないんですけれども、例えば、社員という言葉を全部株主に改めてしまう、それで社員というのは普通の従業員の意味である、こういうふうにしますと、例えば明治の判例なんかを読んだときに何が何だかさっぱりわからなくなっちゃうということもあるんだろうと思います。

 ですから、できるだけ現代化は進めていったらいいと思いますが、他方、そういうような難しいこともあるなと。これは財務大臣として答えているのか何として答えているのかわからないなと思いながら、実は出てまいったわけでございます。

中川国務大臣 私は、法律家である谷垣大臣と違いまして、社会人になって五年弱、会社の中で上司から、文字どおり使用人のような立場で仕事をしておりましたので、実感として使用人というのはよくわかりますが、誇りとしては社員であります。

 そういう意味で、明治の初めの商法で、構成員を株主もしくは社員と呼び、社員とはそういう合名、合資、有限会社のことをいい、いわゆる会社に所属している役員、今でいう従業員を使用人と呼ぶというのは、明治の判例との関係においてはそういうこともあるんでしょうけれども、やはり現代においては若干違和感があるというふうに思います。

伊藤国務大臣 委員は、使用人という言葉に対する違和感があるという観点からの御指摘だというふうに思います。

 先ほど御紹介ありましたように、私も今の仕事をさせていただく前は零細なる企業を営んでおりましたので、そうした零細な企業といえどもやはり社員によって支えられているわけでありますから、社員がやる気を出して会社を支えてくれなければ、これは企業として成り立っていかないわけでありまして、その中で使用人という感覚を経営者が持っていたのでは、やはりなかなか企業としての実績というものは上げられないのではないか。そうした感覚からすると、法律用語として、使用人ということに対しては確かに違和感があるところであります。

 ただ、一般論として申し上げれば、やはりこの使用人というのはいろいろな法律にも使用されているところでありますし、また、法令用語については、その正確性とともに、定義の厳格化あるいは他法令との整合性、一貫性、こうした観点から、法制局とも相談をしながらその用語を選択されてこられているというところがあるのではないかというふうに思っております。

松島委員 私はやはりおかしいと思い続けております。明治の判例との関係でいいますと、我々日本人も、昔の古典を読むときには現代語訳がないと読めないぐらいですから、注釈をつければいいんじゃないか、そういうふうに思う次第でございます。これは、今後ともぜひ法務省その他の中で考えていっていただきたいテーマでございます。

 さて、会社というものの基本にわたります。

 おとといまで、九時、十時台にテレビをつけますと、白馬の騎士とかポイズンピルとか、一億三千万人の国民のうち一体何人がわかるのかなとか思いながら、でも、あれは毎日毎日見ていた人たちが多くいるわけでございます。結果としては、三十二歳の方の行動に対して、若い人たちが協調したり、どきどきわくわくして自分も何かやりたいと思ったり、そういうふうないいことが出たり、あるいは、企業の経営者たちも、自分たちの会社の配当比率、配当を高めるとかいろいろなことをやっていかないと、企業防衛しなきゃいけないという教訓を得たのはよかっただろうと思っております。

 そこで、最近よく言われる言葉、会社はだれのものとか、社会の中で会社はどういう存在なのか、そういうことを思いめぐらしまして、それで、この九百七十九条にわたります会社法の中で、私が注目している項目が一つあります。大会社における内部統制システムの構築の義務、三行とちょっとで短くて残念なんですけれども、そういうのがございます。

 それで、私、会社はだれのものということを自分でも考えていくと、会社の存在価値というのは、私なりの定義は、お客様に満足していただいた上で、社会に迷惑をかけないで利益を最大限上げる、そして、その利益を従業員と株主に適正に、バランスよく配分するということだと思っております。そうしたことによって、もちろん税金もしっかり納めて、社会にも責任を果たすことができる、そのように私は考えております。

 そういう立場の中で、最近、先ほども、コーポレートガバナンスとかコンプライアンスとか、CSR、企業の社会的責任という言葉も今あるようですけれども、こういった一連の言葉は、英語というかアメリカ語をそのまま入れてきているので、この言葉をそのまま使うのは私自身は嫌だなというふうに、ステークホルダーというのについても思っているんですが、企業、会社というものを人に置きかえた場合、簡単なことじゃないかと。

 つまり、人を傷つけたり安全を脅かしたりすることをしちゃいけない、うそをついたりだましたりしちゃいけない。もし、ミスというかちょっとした失敗で何か悪いことをしてしまったら、すぐに、気づいた時点で周りの人たちに非を認めて謝って、二度とやりませんと言いなさい。それは、会社にとっても基本として当てはまることじゃないかと思っております。

 しかしながら、そうした中で企業の不祥事というのが相次ぐ。きょうも午前中、国土交通委員会で日本航空の社長を呼んでの参考人質疑があったようでございます。日本航空の二度の管制指示違反や長年にわたる整備ミスなどが相次いでわかったからです。それ以外に思い出しますと、三菱自動車や雪印乳業、そして、一昔前になりますけれども、薬害エイズ事件のミドリ十字というふうに、安全を侵したり実際に人を死に至らしめたような事案もあるし、あるいは、うそをついたという意味でいうと、三井物産の一〇〇%子会社がDPFについて東京都に出す試験データを捏造していたとか、食肉などの産地偽装とか、あるいは、金融庁の関係でいいますと、UFJの検査忌避など、いろいろうそをついたりもあるわけでございます。もちろん、西武鉄道の事件やカネボウの粉飾決算もあります。

 そういう一連のことを考えておりますと、大会社における内部統制システムというのは非常に意味があると思います。と同時に、これも平時のことだけでなくて、雪印乳業なんというのは、本当に優良会社だったのが一万四千人の集団食中毒事件を出した。そして、そのときは、停電のときにどうすればいいかという危機管理のマニュアルができていなかったり、あるいは、事故が起きた後、社長にまで伝わるのに丸二日近くかかったり、そういうことがあった。そういう危機管理ということも一緒に考えなきゃいけないと思います。

 このことについて、大会社の内部統制のシステム構築ということをどうお考えになるか。そしてまた、これについて、現実には何か法務省令で定める体制の整備というようなんですけれども、法務省令で定めるというと、また法律家が考える仕組みになっちゃいますので、ぜひ、関係している、特に経済産業省や金融庁あるいはほかの、国土交通省も含めて、企業を見ているところ、生の経済、生の企業を見ているところと一緒になってそういうことをつくっていっていただきたいと思っているんですが、中川大臣、伊藤大臣、谷垣大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 危機管理とか内部統制については、私ども、企業価値研究会というもので三月に取りまとめをしていただきましたけれども、今後の検討課題としても必要な項目だと思っております。そういう意味で、この会社法現代化の法案の主務は法務省でございますから、法務省と、それから実体経済を担当しております私のところとで今後共同で検討していく必要があると思っております。

 内部統制、幾らルールを決めても、実際にその会社にいるトップの方、使用人ですか、経営者、従業員を含めて、本人たちの自覚がなければ意味がないことでございますので、実体を伴う形できちっとしたものができるようにこれから検討を進めていきたいと思っております。

伊藤国務大臣 今委員が御指摘になられたように、企業経営において、内部統制でありますとかあるいは危機管理というものは極めて重要なものであると私どもも認識をいたしているところであります。

 まず、コンプライアンスの問題からお話をさせていただきたいと思いますが、コンプライアンスの徹底を図る観点から、コーポレートガバナンスが有効に機能している、このことが不可欠なことであり、私どもが担当している金融機関について言えば、財務の健全性やあるいは業務の適切性を確保するためには、適切な経営管理というものを行い、そして内部管理体制というものを確立していくことを通じてガバナンスが適切に機能を発揮することが重要であるというふうに考えております。

 こうした観点から、昨年の十二月末に取りまとめました金融改革プログラムにおきましても、金融機関のガバナンスの向上に向けての諸施策を盛り込んだところであります。

 また、危機管理の問題でありますけれども、この問題につきましても、私どもとして大変重要な問題だというふうに考えておりまして、総合的な監督指針の中にも、危機管理体制については着眼点の一つとさせていただいているところでございます。

谷垣国務大臣 何を御答弁したものかなと思って立ち上がったんですが、私は、内部管理ですね、やはり企業というものが、国会で法律を決めます、そういうものをきちっと守ってくれなければ困りますから、そういう法を守って、そして、外部の社会に隠ぺいしておかしなことをしないような仕組みをつくってもらうことは極めて大事なことだと思います。

 ただ、危機管理になりますと、これは財務大臣を離れて一個人として思うんですが、危機管理をちゃんとやるかやらないかなんて国が言うべきことじゃなくて、それぞれの企業で、おやりになれるところはきちっと生き残れるし、できない企業は淘汰されるだけなんじゃないかというような気持ちがございます。

松島委員 全くそのとおりという部分がございます。

 ただ、その危機管理というのが、もちろん企業の生き残りということはそのとおりなんですけれども、しかしながら、それが人の安全にまで影響する。その企業が勝手に市場で見放されるのはそれでいいんですけれども、それで、社会的存在としての企業がやっちゃったことで、知らないうちに、つまり、悪いことをすぐ公表してもらえばいいけれども、そうでなかったら、どんどん気づかないままに、いろいろな人が危機に陥る、体が傷つく、食べ物でもそうだし、それから車やあるいは交通機関でもそうだ、そういう意味では必要じゃないかなと思っております。

 今、中川大臣、伊藤大臣からもお話がございましたけれども、こういうのをつくるときに、過去のこの事例、この会社、現実には固有名詞は出しにくいかもしれないけれども、この会社のこの失敗の例はこれで何とかある程度救えるんじゃないかとか、この会社のまずいことはこうじゃないかということを具体的なイメージをしながら、ぜひ各省力を合わせてやっていただきたいなと思っております。

 別の話に移ります。

 今、株式の持ち合いが減ってまいりました。金融庁においては、金融機関が来年の九月末までに自己資本の範囲を上回って株を持たないようにという法律もつくりましたし、株の持ち合いというのは減ってまいりました。安定株主の割合は、昨年三月末、平成十六年三月末の状況で二四%、これは十年前が四五%でしたから、半分強ぐらいまでこの十年間で減ってきたわけです。私は、このことは、会社のありようというか、会社のあり方、状況が株式市場で正確、適正に評価されやすくなるという意味でいいことだと思っております。

 その中で一つ、私はずっとこの一年近くの間疑問に感じて、私自身としては怒っていることがございます。

 三菱自動車でございます。先ほどの不祥事の中にも挙げたんですが、三菱自動車という会社は、リコール隠しを長年やってきた、そして欠陥車を世にそのまま放置していて、その欠陥車によって二度死亡事故が起きている。そしてそのときも、それこそすぐ謝るわけじゃなくて、運転の仕方が悪かったとか整備の仕方が悪かったとか、人様に、お客様に罪をなすりつけたという、罪の中でも本当に恥ずべき会社であると私は思っております。

 そして、この三菱自動車は、三菱という名前を冠していなければ、恐らくこの世からもう既になくなっている会社じゃないかと私は思っています。二つの市場、それは一つは商品、製品の市場、車の市場であり、もう一つは株式の市場によって抹殺されるんじゃないか、それが資本主義の正しい状況じゃないかと私は思っています。

 しかしながら、これを三菱グループで支えるということ、三菱重工業そして東京三菱銀行、三菱商事というこの三社で支えるということはいかがなことなのか。そして、私が見ている範囲では、経済産業省はそれを望んでいたんじゃないか、割と指導したんではないかというふうに見えました。私は、やはりこれはおかしいんじゃないかと思う次第でございます。この三菱グループのほかの三社の株主や従業員にとっても不幸なことだし、そして、三菱自動車というところに企業風土や業種が違うところからいろいろな人を取締役で送り込んでこられたって、それで経営がきちっといくと私は思えない。

 この私の考え方についてどういうふうにお考えになるか、三大臣から、中川大臣それから谷垣大臣、伊藤大臣から伺いたいと思います。

中川国務大臣 三菱自動車につきましては、去年、本当にいろいろな事故あるいはまたそれに対する対応ぶりについて松島委員御指摘のようなことがあって、これは企業としての、あるいは経営者としての文字どおり社会的な責任、あるいはまた会社のブランド力を必要以上におとしめた。まさに危機管理に対する対応が、もちろんきちっと対応したつもりだったと思いますけれども、受けとめられ方としては逆だったというふうなことは事実だろうと思っております。

 そういう中で、企業としてきちっとした再生ができるのであれば経済産業省としても支援をしたいということで、再生計画、これも一度、二度変更になったわけでありますけれども、その背景には、日本の製造業あるいはまた従業員、地域経済、いろいろな経済的な面も我々は考えなければいけないので、戻れるものであればきちっと心を入れかえてしっかりやってもらいたいという気持ちは、産業政策として、一般論としてとるわけでございます。

 三菱グループが云々という話については、先ほど、持ち株の解消というか、どんどん比率が少なくなっているというのは一つの流れだと思いますし、それはそれとして、やはり三菱に限って言えば、百年来の、ある創業者の方以来の、ルーツは同じとか、あるいはまたブランドとしても同じとかいうようなことがあって、そういう人たちがある意味で支援をする。でも、支援をする方も上場企業であり日本を代表する企業ですから、下手な支援の仕方をすれば、今度はそちらの方も社会的な責任あるいは株主訴訟等もあるわけでございますから、そういうことも踏まえながら、しかし、別に三菱じゃなくてもいいんでしょうけれども、特に三菱の場合、三菱というかグループの場合には、この会社に対して支援をしていこうということに関しては、私は、先ほどから出ておりますいろいろなルールをもとにした上でのそれぞれの個々の経営判断だろうというふうに思っております。

谷垣国務大臣 私は、委員がさっきおっしゃった、欠陥車を放置してそれで被害が広がっていったとか、こういう問題は刑事罰の問題であったりあるいは損害賠償の問題であったりするんだと思います。

 それはそれで適切にきちっと行われなければならないことでありますが、他方、その企業がどうなるのか、どうしていくのか。一つは、それでブランド価値を失った企業が衰退するのかどうかという問題であり、それをてこ入れしようかどうかというのはまたそれぞれの企業の判断で、閣僚として云々すべき問題ではないと私は思っております。

伊藤国務大臣 金融行政の立場からしますと、やはり個別の問題について言及するということは極めて困難なことだというふうに思っております。

 一般論として、株式の持ち合いについて基本的なことを申し上げさせていただくとするならば、やはり株式の持ち合いというのはそれぞれの企業の経営判断の問題であると認識をいたしておりますが、株式の持ち合いに当たっては、ガバナンスの問題等を惹起しないように、そのことについては十分留意する必要があるというふうに考えております。

松島委員 今、企業の社会的責任の中に従業員というお話がある、私もそのとおりだと思っております。

 雇用というものを確保することが企業にとって非常に大きなことであり、私は、新聞記者時代、非常に印象に残りましたことの一つに、三菱鉱業セメント、今は三菱マテリアルですが、この前身の会社が長崎県の高島炭鉱を閉山しました。炭鉱というのはずっと閉山の歴史だったんですが、労使ともに、解雇する人たちをどうするか、北海道へ移すとかいろいろやった中で、最後まで力を尽くした労働組合の長が、全部を、全員の身の振り方を見届けた後、自殺されたというのを、そしてそれを会社の社長も悼んでいたというのを非常に思い出すんです。

 今、利益を上げていながら、つまり、利益を出している、場合によったら増益だ、それにもかかわらず人を減らす会社があるわけです。私は、雇用を減らして配当をふやすというのは悪だと思っているんですけれども、どのようにお考えになるか、最後に三大臣に伺いたいと思っています。

中川国務大臣 一般的に、利益が出ればもっと仕事を拡大したい、そうすると雇用もふえるというのが一番単純というか自然な姿だろうと思うんですけれども、今の場合、具体的にどういう会社のことかは存じませんが、利益をふやして従業員をカットする、つまり人件費をカットするというのは、ある意味では珍しい例だなと思います。

 他方、アメリカの場合には、配当性向の方にやたらと行って、利益は目いっぱい配当に回している企業なんというのも時々聞くことがあります。これもまた、従業員にとっていかがなものかな、少し社内の方に回したらいいのではないかと思います。

 いずれにしても、そういう極端な例になれば、さっきのコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティーみたいな次元の話になって、あの会社はちょっと、こんなことをやっていいのみたいな議論になりますので、法令遵守はもとよりでありますけれども、社会から見た企業イメージ、企業ブランド、企業評価というものもあるでしょうし、その点も含めて、経営者であれば総合的に判断をして、いろいろな方法をとっていく中の一つであろう。

 個別については、私は詳しいことを知りませんので一概にいいとも悪いとも言えませんけれども、極端にそういうふうにしている会社があるとすれば、珍しいケースではないかというふうに思います。

谷垣国務大臣 企業の社会的責任の議論はいろいろございますけれども、私は一番基本は、きちっと利潤を上げて、そして税金を払っていただき、そして雇用を守っていく、維持していく。税金を払って雇用を維持していくのが企業の社会的責任の一番コアにあるものじゃないかなと私は考えております。

 ただ、利益を上げているから雇用を減らすのが一概に悪と言えるかどうかというのはなかなか難しゅうございまして、いろいろな技術革新とか、人件費がどのぐらいあったら経営が硬直化するかとか、いろいろなことを考えながら経営されるんだろう、それを全部悪と言うわけにはいかないだろうと私は思っております。

 ただ、財務大臣として申しますと、長い間の心配は、企業業績は上がってきたけれどもなかなかそれが家計に波及していかないというのが財務大臣としての悩みでございますから、やはり企業業績がかなりよくなってきたということが雇用者報酬にも向き、そして家計支出も個人消費も力強くなってほしいと財務大臣としては願っております。

伊藤国務大臣 利益の問題も含めて、会社と従業員との関係、あるいは他の、株主でありますとか取引先でありますとか、あるいは企業が活動している地域社会、こうした関係というものをどのように考えていくのか、あるいはその全体のバランスというものをどうとっていくのか、これは企業ごといろいろであると思いますので、一概にこうだというのはなかなか言えないところがあろうかと思いますけれども、その中でもやはり大切なことは、利害関係者、ステークホルダー、その全体の利益というものを最大化していく、そのことも大変重要なことの一つではないかというふうに思っております。

松島委員 どうもありがとうございました。

河上委員長 次に、谷口隆義君。

    〔河上委員長退席、金田委員長着席〕

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 先日、法務委員会で私はこの会社法の質問をさせていただきましたが、まず初めに、前回質問した折に、どうも私の質問と答弁がかみ合わなかったところがございますので、このことについて質問をさせていただきたいと思います。

 これは剰余金の分配手続でございまして、今回のこの会社法案、手続の加重要件がありますけれども、これは株主総会の特別決議で現物配当をしてもいいということになったわけであります。今まで、我が国の配当は金銭配当しかなかったわけでありますけれども、今回、この現物配当を認めるということになったわけであります。

 そのことについて前回お聞きしたわけでありますけれども、配当可能利益を算出いたします。これは簿価で算出するわけでありますけれども、この配当可能利益を超えるような配当をしますと、当然ながら、違法配当ということで取締役が責めに帰すわけであります。その配当が、今回の場合は現物で配当を行い得るということになったわけでありますので、この現物が、例えば含みのある有価証券、例えば不動産、このようなものを配当に回した場合に、この含みの分を簿価で配当いたしますと、配当可能利益を超えてしまうというようなことが起こり得るのではないか。

 そういう意味で、評価の問題、また商法上どういう規制がかけられておるのかということについて質問をさせていただいたわけでありますけれども、もう一度この答弁をお願い申し上げたいと思います。

寺田政府参考人 前回、私、多少説明が舌足らずでございましたので、改めて御説明申し上げます。

 配当可能利益の計算は、会計帳簿に基づいて作成される貸借対照表に基づくものでございますので、配当可能利益の額が簿価によるということは、これはその限度ではある意味では当然のことでございます。

 しかし、今回、現物配当ということがございますので、そこには当然、委員の御指摘になられたような含み益がある財産というものも配当の対象になるというわけで、その場合には、仮にその時価を勘案すると当然含み益が出て、それは全体の資産を押し上げるわけでありますけれども、しかし、同様に資本の含み益というものもそれで膨らみますので、結局は、配当可能利益の額の算出においては、差し引きといいますか同じことになるということで、私どもは、結論としては簿価で配当可能利益を計算するということを御説明申し上げたわけでございます。

 ただ、もう少し視野をいわば広げてみますと、会計処理として果たしてそれで皆さんにわかりいいかという問題を当然考えなきゃいけないわけでございまして、配当財産の時価評価あるいは会計処理をする場合の含み益が、外のものには全く出ないでただ簿価でやってしまっていいのかということは、これは会計処理上はなかなか問題がございます。

 そこで、現物配当そのものは会社法案で初めて認められるわけで、会計処理の問題をどうするかということはこれから検討すべき事項でございますので、仮にこの点についての会計基準の動向ということが明らかになりまして、それが、今私が原則として申し上げていることを修正しなきゃならない部分が出てくるということになりましたら、それは、省令委任の点もございますので、その点で対応させていただけるという考えでおります。

 したがいまして、原則はそのとおりでございますけれども、そういう対応も会計処理上の動向によっては考慮していかなきゃならないというのは委員の御指摘のとおりであろうかと思っております。

谷口委員 この法案の後になるのか一緒になるのかわかりませんが、商法計算書類規則もこれに準じた形で変更されるだろうと思うわけでございますけれども、その際には、今私が申し上げていることについて、時価はやはり時価の評価ということがまたつきまといますので、そのあたりも今局長がおっしゃった中に入っておるんだろうというように思っておるわけでございまして、これはまたよろしくお願いしたいと思います。

 次に、今回の会社法は中小企業に大変配意をされておられるわけで、私はそこを評価しておると何回か申し上げております。それで、お伺いをいたしたいわけでございますけれども、有限会社と株式会社の統合ということでございます。

 今、有限会社が百八十五万社我が国にあると言われておるわけでございます。この会社法が施行されますと、現行の有限会社が株式会社を選択するのか、また有限会社のままであろうと選択するのかというこの二つの選択肢があるわけでございまして、いただいた資料で見ますと、株式会社になられる場合と、また有限会社に残る場合とで相違点があると。例えば、取締役の任期だとか株主総会の特別決議要件だとか、株主による会計帳簿閲覧権、決算公告義務、休眠会社のみなし解散だとか株式交換、株式移転、こういうところに、有限会社のままでおられるか、または株式会社になるかということで差があるわけで、そういう観点で有限会社のままでいいという選択をしたところが当然出てくるわけでございます。

 そこで、今回の会社法制、会社法の内容を見ますと、会社の類型が、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社と、四つの類型の中で組織変更ができ得るということになっております。この中に有限会社がないということで、私が今申し上げた有限会社を選択されたところはどういう扱いになるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 これはややテクニカルな問題で恐縮でございますけれども、結論としては、有限会社も、合同会社、合名会社あるいは合資会社への組織変更が可能でございます。

 これはどういう構成になっているかと申しますと、この会社法が成立いたしまして施行されますと、現在の有限会社はどうなるかというと、実態は法的に見ても有限会社のままという説明がわかりやすいわけでございますけれども、法律上の構成としては、株式会社のうち特殊なものという扱いになります。

 したがいまして、株式会社が合同会社以下の会社に組織変更できるものでございますので、特殊有限会社という、本質的には株式会社の特殊なものというものも組織変更後の中のグループに含まれるということになります。

谷口委員 今おっしゃったように、特例有限会社というような名称のようでございます。

 よく理解できましたが、この法案の中で、そういう形の表現ぶりになるのか、株式会社の中に特例有限会社があるという形の読み方になるのか、もう一回御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、名称としては特例有限会社ということで、商号自体も有限会社という商号をそのままお使いいただいて結構でございます。ただ、会社の性質上何かということをあえてテクニカルに申し上げると、株式会社の中のグループに入る、こういうことでございます。

谷口委員 わかりました。

 その次に参りまして、有限会社が株式会社に移行する場合に、いろいろなパターンがありますけれども、現行の有限会社があってその資本金がある、この資本金を上回る純資産があるといった場合に、これを組織変更して株式会社になったときに、有限会社の資本金がそのまま株式会社の資本金になるんだろうと推測されるわけであります。

 ところが、現行の有限会社が純資産が現在の資本金を下回るような場合、また、これは本会議でも質問をさせていただきましたが、資本金があって純資産がマイナスといったような有限会社もございます。このような有限会社が株式会社に移行する場合に当該株式会社の資本金が一体どのようになるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、今の特例有限会社から株式会社へ移行するときに評価がえされることはございませんので、自動的にそれが変わるということはございません。そのまま、資産の部、負債の部、資本の部の計数が計上されるわけでございます。

谷口委員 この案が検討されておるときに、市中では、一体どういうようになるのかということを心配されている方がたくさんいらっしゃいまして、それで私は質問いたしたわけであります。資本充実の原則がここに適用されるのかどうかわかりませんが、純資産がマイナスのまま果たして株式会社になり得るのかどうかという観点で今質問させていただいたわけでありますけれども、このまま持っていけるという御答弁ですね。わかりました。

 今、大変細かい質問をさせていただいたわけでありますけれども、また初めに返りまして、ちょっと大きな問題を質問させていただきたいと思います。先ほどから出ておりますけれども、会社が一体だれのものなのか、また今回の会社法の企業観、どういう形で見ていらっしゃるのかということでございます。

 アメリカの企業の中には、ベンチャービジネスを起業いたしまして、このベンチャービジネスを上場いたしまして、これは企業価値を高めるということで高株価政策をとる、この高株価をてこにして企業買収を、MアンドAを進めていくというようなことがあります。それで、企業価値が高まった段階でその会社を売却いたしまして懐におさめる。ある一面、これがアメリカンドリームだと言われるようなところがあるわけでございます。

 私の問題意識は、先ほどから出ておりましたけれども、会社は一体株主のものなのか、またはステークホルダーのものなのか、こういうことになるわけでございます。また、債権者保護の立場に立つのか、または投資家保護の立場に立つのか、こういうようなこともございます。

 前回の法務委員会の審議のときにも申し上げたわけでありますけれども、そもそも我が国の商法はドイツ法をベースにした法律でございまして、債権者保護の立場に立った法律であるわけでございます。一方、アメリカの商法、コマーシャルローは投資家保護の立場、投資家といいますのは、現在の株主も、また将来の株主も含めた形で、この立場に立っておるわけでございます。その影響を受けて、我が国の証券取引法は投資家保護の立場に立っておるわけでございます。

 私は、従来から、証券取引法が投資家保護の立場に立ち、商法が債権者保護の立場に立つということで、相矛盾しているところがあるのではないかと言っておったわけでありますけれども、そういう状況の中で今回法案が改正をされまして、債権者保護の立場でやっていらっしゃるということでございます。

 それで今、現行商法で申し上げますと、現行商法は、株主の総員が同意すれば何でもできるということであります。ところが、今回の会社法で一部それがどうも変わっておるところがありまして、これを見ますと、違法配当の場合、違法配当をした取締役の財源規制超過部分について、総株主の同意があっても責任を免除することができないというようになっておるわけでございますが、この趣旨はどういうところがこの基になっておるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

寺田政府参考人 委員が最初に御指摘になられましたとおり、今、会社をめぐるいろいろな利害関係の中で、やはり債権者の保護というのは非常に重要な一つの柱でございます。

 今回の会社法においても、債権者の保護というのを特に後退させるというつもりは全くございませんで、むしろ、さまざまな面で会社の内部機構の設計の自由度は高めたわけでございますけれども、しかし、外部の債権者にとっては、やはり有限責任の会社というのはそれなりの仕組みであってもらいたいというお考えはおありでしょうから、それを反映させたものにしているつもりでございます。

 その一つのあらわれが今の委員の御指摘の規定でございまして、これは、違法配当が行われました場合に、配当可能利益を超える部分については、その違法配当に係る取締役等の責任の免除を一切認めない、仮に株主がいいと言っても認めない、こういうことで、規定の趣旨としては、あくまで債権者の利益というものを考えた、その意味での調整規定ということになるわけでございます。

谷口委員 私は、それは理念を一層明確化することであって、いいことであると思うわけでございますが、先ほどから申し上げておりますように、債権者保護と投資家保護といった立場が混在しておるところがあるわけで、そこは何とか整理していただきたいなと従来から申し上げておったわけであります。

 それで、先ほど申し上げましたように、会社が一体だれのものなのか。株主のものなのか、またはステークホルダーのものなのかといったようなことがあるわけでございます。

 先日の日経新聞の「経済教室」を見ておりましたら、慶応大学の榊原氏が、アメリカの株主至上主義に対して一定の限界がある、米国でも今このようなやり方に対して揺り戻しが起こっておる、今アメリカ流のやり方が短期の利益を獲得するという行動になりがちなところもありまして、そこで警鐘を鳴らしておるところがあるわけでございます。

 私ども日本の国民は、非常に勤勉で、株主のみならず、従業員、また利害関係者、地域住民との間で会社が社会的な実在としての存在感、これを念頭に入れた、皆さんこう思っていらっしゃったところがあるわけでございます。このような考え方について、法務大臣の御見解をお述べいただきたいと思います。

南野国務大臣 考えを述べさせていただきます。

 株式会社は、本当に純法律的には、営利法人として株主の出資によって成り立っているということでございまして、これによりまして株主が利益を得る仕組みとなっておりますので、第一義的には株主のものであるというふうにも申し上げることができるのかなと思っております。

 そのほかに、取締役というのがおられまして、株式会社の利益を最大化するために株主から経営を任されている人でございますので、株主と取締役というのが一体になっていかなければならないわけですが、任されているからといって、取締役の会社ではないというふうにも言えると思っております。

 もっとも、株式会社は我が国の経済活動の中の中核的存在でございますので、その活動が債権者等の利害関係人に重大な影響を与えるという場合も少なくございません。そういう意味から、会社法制は、株主だけの問題ではなく、債権者等の利害関係人の保護にも十分に配慮した制度になっていなければならないと思います。

 その意味では、株式会社は、株主のみならず、債権者等の利害関係の人たちのための法的な仕組みであるという面も整えているものと考えております。

 さらに、株式会社は、その経済活動において占める位置から、社会全般にとっても重要な存在と言えると思っております。

谷口委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、三つの委員会の連合審査ということでありますが、合わせて百十四名でありますけれども、まことに残念ながら、人数が少ないようでありまして、もっと真剣にやるべきだというふうに思っております。

 日本の企業に現在問われておりますのは、社会的責任を自覚することであり、それを明確にする法整備だと思っております。その場合、重要なことは、企業の存在形態をどうとらえるかということでございます。

 トヨタグループあるいは日立グループなど、巨大企業が親会社になりまして、そのもとに多数の子会社や関連会社を系列関係に置いているというのが実態だと思うんです。また、持ち株会社のもとに多数の企業がグループを構成している、これが実態だと思います。

 そこで、谷垣財務大臣にお聞きしたいと思いますが、二〇〇二年、平成十四年から連結納税制度というものを導入しておりますが、その理由は、大企業がグループとして存在をしているというふうに見ているからだと思います。その見方というのは、グループとしての見方というものは財務省としてしっかり押さえているのか。そして、実態として、その結果、連結納税制度の導入によってかなり減収が起こっていると思うんですが、幾らの減収になっているのか。税収が減っているということですが、その数字、お答えいただきたいと思います。

    〔金田委員長退席、塩崎委員長着席〕

谷垣国務大臣 今佐々木委員がおっしゃったように、平成十四年度の税制改正で連結納税制度を入れたわけですが、これは、当時、商法改正の分野では企業の柔軟な再編を可能にするようにしようという改正が行われましたし、それから会計の分野では、今おっしゃったことと関係があると思いますが、企業の一体的経営をやっていくという傾向が強まってきましたので、それに合わせた会計の改正がありまして、いわばそれと呼応するような形で連結納税制度を入れたというふうに理解をしております。

 それで、そういう一体的に経営されているという現実も視野に入れながら、企業グループを一つの課税単位として考えていくことによって、連結納税制度はそういうことを考えることによって、企業活動にとってゆがみの少ない中立的な税制ということになっているのではないかというふうにこの連結納税制度を私は理解しております。

 それで、減収という点では、グループ企業各社の所得と欠損を通算して課税する仕組みでありますので、減収がどうしても起きてくるわけですが、平成十五年度実績ベースでこの導入に伴う減収額は約三千四百億円ということであります。

佐々木(憲)委員 大変な規模の減税であります。

 そこで、南野法務大臣にお伺いしますが、今の財務大臣の答弁でも明らかなように、日本の企業法制というのは、グループ支配を認め、全体として一体的な経営が行われていると見て、連結会計あるいは連結納税ということを認めているわけですね。つまり、大企業というのは、そのほとんどがグループとして一体の行動が行われていると。

 南野法務大臣自身、日本の企業法制というのはやはりこのようなグループを前提として成り立つものであるというふうに考えておられるのかどうか、そこを確認したいと思います。

南野国務大臣 すべてが前提として成り立っているかどうかということについては、そうでない場合もあるというふうに思いますが、会社に関する法制といいますのは、基本的に、独立の法人格を有する単体の会社を前提としているものでありますが、連結会計制度や、今お話がありました連結納税制度、これは一定の関係を有する幾つかの会社をグループとして取り扱うものである。

 したがいまして、このような制度が適用される限りにおきましては、企業グループが法制上の存在であるということは、これは委員御指摘のとおりであろうかと思います。

佐々木(憲)委員 そこで、企業をグループとして見た場合、責任の所在というものがどこにあるのかという点が問題になってまいります。コクドと西武鉄道のように、親会社と子会社、あるいは持ち株会社とグループ企業全体の不透明な関係というものが明らかになっているわけです。企業グループの責任というものが、その所在が問われているわけです。

 そこで、法案では、それをあいまいにしたままで、経営におけるグループ支配を認め、経営者の自由を拡大する、こういう方向がとられていると思います。他方で、企業の責任ということになりますと、いや、それは親会社、子会社は別な企業なんだから、こういうことで別扱いをされる。

 例えば、親会社の指示によって子会社が不当解雇をやる、あるいは不当労働行為を行うという場合、子会社の労働者は直接の雇用関係にないということで、親会社の責任が問えない、こういう実態になっているわけであります。

 これはやはり、一方でグループの存在を認めて事実上の減税が行われていながら、他方で、雇用関係でいうと関係ない、こういう物のとらえ方というのはバランスを欠いているんじゃないかと思いますが、南野大臣、いかがでしょうか。

南野国務大臣 御指摘のとおり、親会社の経営者とそれから子会社の従業員は直接の雇用関係に立つものではないというふうには思いますが、現行法のもとにおきましても、親会社の取締役がその職務執行について悪意または過大な過失があった場合には、取締役は第三者に対して連帯して損害賠償責任を負うこととされている。この第三者には子会社の従業員も含まれるということでございます。

 また、子会社の労働組合に対する不当労働行為の意思を持って親会社が子会社を解散した場合には、親会社の行為を法人格の濫用と認め、子会社解散前に生じた子会社従業員に対する未払い賃金について親会社の支払い義務を認めた裁判例があるということでございますので、先生の御懸念もこの点でもあろうかと思っておりますが、このように、現行法下におきましても、子会社の従業員に関しまして親会社またはその経営者に責任を負わせる法的な枠組みはございます。御指摘のようなアンバランスがあるとは言えないというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 そういう答弁ではありますが、現実には、なかなかそれが機能していないというのが実態でありまして、その点よく実態を把握していただきたいと思います。

 次に、欧米の場合は、親会社と子会社の関係で会社結合法制というものが当然のルールでありまして、親会社の責任というものが明確になっております。今回の改正は、こういう企業結合、会社結合法制というものがとられていないわけですが、これは今後一切検討しないということなのか、それとも、今後、会社結合法制というものを視野に入れて検討していくおつもりがあるのか、その点をお聞かせいただきたい。

南野国務大臣 我が国におきましても、最近、企業グループの形成が進展いたしております。企業グループに関する適切な規制を行うという観点から、いわゆる先生お話しになられました企業結合法制の整備の必要性を唱えられる声があるということは事実であろうかと思っております。

 しかし、企業結合法制に対する対応といいますのは、これは国際的にもその手法及び内容がさまざまであるということも聞いており、急速な規制強化や制度の創設はかえって企業活動の妨げになるのではないか、そのようなおそれもあるというふうにも思っております。

 他方、我が国におきましては、これまで、親会社の株主による子会社の会計書類等の閲覧請求、親会社の監査役による子会社の業務調査など、企業グループをめぐる問題に対応するための措置を講じてきております。また、会社法案におきましても、株式交換等によりまして完全親子会社関係を創設する場合に、代表訴訟を提起していた子会社の株主が原告適格を失わないようにする措置を講ずるということにしているというふうに聞いているところでございます。

 もっとも、グループ経営の進展に伴う利害関係者の利益の適切な保護は重要な課題であると考えておりますので、今後とも、実務における問題の状況を勘案しながら適切な方策について検討を進めていく所存であります。

佐々木(憲)委員 検討を進めていく、いろいろなことを言いましたけれども、そういうことですね。

 それで、アメリカでは、エンロンやワールドコム事件を契機にしまして、不十分ながら、不正を働いた経営者への罰則強化、監査法人への監視の強化、情報開示の強化、こういうものが盛り込まれた企業改革法というものが成立しております。それから、集団訴訟、クラスアクション、あるいはディスカバリー制度、これはアメリカにおいて、一般投資家が経営者の責任を追及するために有効に機能している仕組みであります。

 それが日本で実現しなかった理由でありますが、これはやはり経団連などの財界団体の要請を受けてそれが盛り込まれなかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

南野国務大臣 まず、端的に申し上げると、先生の御懸念は当たっていないんじゃないかなと思うわけでございます。

 我が国におきましても、平成九年における、株主の権利の行使に関する利益供与の罪などの罰則の強化が行われております。また、平成十三年における、監査役会への半数以上の社外監査役の設置強制ということも行われております。また、平成十四年における、委員会等設置会社制度の導入が行われております。これはソニーなどでございますが、そういった会社法制の改正を行ってきているというのが現状であります。また平成十五年には、公認会計士等の独立性の強化も図られております。経営者に対する罰則の強化、監視体制の強化、透明性の確保に関する法制の整備、ここら辺も盛り込まれております。

 会社法案では、これらの内容がいずれも引き継がれておりますとともに、会計参与制度の創設、また、すべての株式会社に対する決算公告の義務づけなど、さらなる透明性確保の手段も講じているところでございます。

 他方、先生がお述べになりましたクラスアクションまたはディスカバリーの制度は、我が国の法制には存在しておりません。クラスアクションにつきましては、訴訟を関知しない者に対し、クラスの代表者が敗訴した場合の判決の効力をクラスの中で及ぼしていいかどうか等の問題点があり、また、ディスカバリーにつきましては、手続に費用や時間がかかり、また、嫌がらせや和解を強要するための訴訟戦術として利用されるおそれがある等の問題点がそれぞれ指摘されておりまして、我が国に導入するにつきましては慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 今、問題点が多いということを盛んに指摘されましたが、そういう問題点を指摘していたのが経団連でありまして、ことしの三月二十九日、経団連は、自民党と政策を語る会というものが経団連会館で行われまして、そこで意見交換が行われている。

 冒頭のあいさつで奥田会長は、政党の政策評価を参考に、企業が自主的に政治寄附を行う方式を日本経団連が推進していることを説明して、自民党の各種政策への取り組みに対する理解を深めていきたいと語った。この意見交換の中で、会社法改正の促進など経済界の要望や見解を述べている。それから、消費者団体訴訟制度に関しては、濫訴防止は重要であり、企業活動が萎縮することのないよう制度の検討を進めていく考えを明らかにした。それから、会社法制については、代表訴訟制度など、経済界の要望も盛り込んだ改正が進められている。今国会での早期成立をお願いしたい。

 これは、経団連が言っているんだから。こういうふうにはっきりと経団連のホームページで紹介をされているわけですね。そういう経団連の要望を受けまして、実際に会社法制について検討を行い、何度もその要望を聞いた上で、具体的には余り時間がありませんから紹介できませんけれども、こういう今回の法改正につながっているわけであります。

 ですから、経団連の要望と関係ないと南野大臣おっしゃいましたが、南野大臣は知らないのかもしれませんが、しかし、自民党の政策の中にまさに経団連の要望そのものが入っている、それが今回の法案として出されているということは事実経過からいって明らかであり、そしてまた、アメリカでやられていて当然日本でも取り入れられなければならないものが、そういう中で取り入れられていない、いろいろな理由で取り入れられていないということが事実だという点を指摘しまして、時間が参りましたので終わります。

塩崎委員長 午後四時から連合審査会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

塩崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 今回の会社法、大改正ということでございまして、この連合審査、質問の機会をいただきますことを大変光栄に思っております。

 今回の会社法では、企業というものの根本の考え方をもう一度一から見直しながら法案を作成したと聞いておりますが、私は、企業のあり方を考える上で、午前中の質疑でも議論になっておりますが、企業統治、コーポレートガバナンスについて、この論点に絞ってお考えを伺っていきたいと思っております。

 まず最初に、これは若干午前中とも重複して恐縮なんですが、大事な点なので改めて確認をしておきたいと思っております。今回の企業統治の論点の中で、会社はだれのものか、とりわけ上場企業におきまして会社はだれのものなのか、それと同時に、取締役はだれに対して責任を負うのか、この一番大事な論点につきまして基本認識を確認したいと思いますので、簡単で結構でございます、法案提出者である法務大臣、そして産業を所轄します経済産業大臣、それぞれから伺いたいと思います。

南野国務大臣 お尋ねの件でございますが、株式会社は、純法律的には、やはり営利法人でございますので、株主の出資によって成り立っておりますので、株主が利益を得る仕組みとなっている制度であります。お尋ねの上場会社というものは株式会社でありますので、これも第一義的には、上場会社はやはり株主のものと言うことができると思います。

 もっとも、株式会社は我が国の経済活動の中核的存在でありますし、その活動が債権者等の利害関係人に重大な影響を与える場合も少なくありません。そこで、会社法制は、株主だけではなく債権者等の利害関係人の保護にも十分配慮した制度になっているということでございます。

 その意味では、株式会社は、上場会社であるかどうかを問わず、株主のみならず債権者等の利害関係人のための法的な仕組みであるという面もあると考えております。

 また、上場会社は、一般的に規模が大きく、その経済活動において占める位置から、会社一般にとっても重要な存在と言えると思います。そういう意味では、ブランドと言えるかもわからないというふうにも思っております。

 さらに、取締役の役割はどういうものかというお尋ねでございます。

 上場会社における取締役の役割についてでございますが、株式会社における取締役は株式会社の利益を最大化するために株主から経営を任されている者でありますので、そういう意味では、上場会社においてももちろん変わるものではございませんけれども、上場会社は、株式が公開されて、しかも頻繁に変わる可能性があるために、株主の交代が少ない非公開会社と比較してみまして、株主による直接の監督が及びにくい面があるということでございます。そのために、会社法案では、経営に対する監督機能を強化するために、上場会社を含む公開会社に対して取締役会の設置を強制しているところであります。

 したがいまして、上場会社における取締役は、取締役会の構成員として、実質的には株主の代表としての性格を持つ立場から、代表取締役を含む他の取締役または執行役の職務執行を監督するという大事な役割を持っているものと存じております。

中川国務大臣 会社は、商法に基づいているわけですから、法律的に言えば、設立、あるいはまた最高議決機関であり、そしてまた資本金を出している株主のものであるということですけれども、それだけではとどまらないんだろうというふうに思います。

 先ほどの御議論でも社会的な責任とかいろいろありましたけれども、そういう意味で、会社で実際に仕事をしている取締役あるいは従業員、そして、その会社が活躍していくためには、仕入れ先ですとか、売れなければいけないわけですからお客さんであるとか、そういう方々も、だれのものかということについては会社の存在に関して重要な存在であるというふうに、これは実態上考えなければいけないんだろうと思っております。

 取締役は、これもまた法律的に言えば、会社に対して、つまり会社は株主のものだという前提に立てば会社のものでありますけれども、その経営あるいは運営に対して責任を持つという意味であれば、やはり従業員に対しても責任があるでしょうし、お客さん、取引先に対しても責任がありますし、上場企業といえばさらに厳しい基準のもとでいろいろな制約とメリットがあるわけでありますから、より社会的な責任、あるいはまた先ほど申し上げたような意味での責任も、より大きな責任があるわけであります。

 いずれにしても、会社はだれのものか、取締役の責任はどこに対してかということについては、先ほど申し上げたようなことではないかというふうに思っております。

近藤(洋)委員 両大臣とも、第一義的には、上場会社、株式会社は基本的には株主のものであり、もちろん、ステークホルダーとして、顧客なり、当然のことながら従業員なりさまざまな関係者もかかわってくる、基本的には同じ認識だと思っているわけでございます。私もそう思います。

 アメリカの二十世紀を代表する経営者でヘンリー・フォード、フォード自動車の創業者でございますが、このフォードさんが自伝の中でこういうことを書いています。「本物の企業は自らの顧客を創造する。」というふうに書いておる。資本主義の権化のようなアメリカの、しかもアメリカを代表する経営者の方が、本物の企業はまずは顧客を創造するんだと。そして、次いでこういうことも書いているわけです。「企業は、そこにいる多数の従業員の潜在能力の中から、企業を引っぱっていく才能と力とを充分に発揮させたときにのみ、成長することが約束される。企業は、企業が生み出す人間の活力と頭脳によって存続する。」と書いているわけですね。まさに、企業の原点というのは、無論株主もあり、しかしながら人もありなのかなということだろうと思っておるわけであります。

 このフォードさんが活躍した時代というのは、まだ株式市場がそれほど発達しておりませんでしたから、特にそこに重点が置かれたのかなと思っているわけですが、これを現代の上場企業風に翻訳すると、本物の企業は顧客と株主を創造するというふうに言いかえてもいいのかな。これは両方だろうというふうに思っているわけでございます。

 こうした基本認識に立って伺っていきたいんですが、今回の会社法の改正によって、日本における企業の買収なり合併なり事業再編の環境が整った効果があるというふうに受けとめられております。

 そこで、こういった企業の買収、合併などの資本取引が活発になるという、このこと自体は、日本の企業の体質にとって、そして産業にとって果たしてよいことなのか。私自身は、基本的にはよいことだと思っておりますけれども、決して悪いことばかりではないと思っておりますが、まず経済産業大臣、いかがお考えでしょうか。

中川国務大臣 今、近藤委員は資本の移動というお言葉をお使いになりました。MアンドAと言ったり、乗っ取りとか吸収とか合併とか、いろいろなことが実際上あるわけですけれども、企業の活力、ひいては日本経済の活力、日本の産業、物づくりあるいは経営、いいものを顧客に物としてあるいはサービスとして供給できるということの競争に勝ち抜いていくためには、そういう資本の移動というものがあることがさらにインセンティブになっていくんだろうというふうに私は思っております。

 ただ、今まで、つい最近も大変世の中で話題を呼びましたあの最近決着した出来事なんというときにも、先ほどの、会社はだれのものかなんて議論が随分ありましたし、あれについては、私は、法の不備といいましょうか、逆に言うと法の盲点といいましょうか、そういうところの応酬みたいなものがあって、どちらが正しいんだみたいな善悪論になってしまったということは、法制度が十分ではなかった、あるいはまた、関係者もまだまだ経験といいましょうか準備といいましょうか、そういうものが不十分であった。

 ということは、これからの時代にそういう目的を達成するために、一定のルールあるいはまた共通認識というものを持って、その上で、さあ競争だ、同じルールのもとで、さあ知恵比べ、力比べということが日本経済全体にとって必要なことであり、そういう前提で、資本移動をしようとする側も、それの相手方になる人も含めて大いに知恵を絞り、そしてまた頑張って日本経済の活力をいい方向に持っていっていただければ、私としてはありがたいなと思っております。

近藤(洋)委員 大臣おっしゃるとおり、資本の移動がそれぞれ行われ、それで知恵を絞るということ、緊張感を持ちながら経営者も経営すること自体は決して悪いことではないんですね。

 客観的な情勢を言っても、日本は今超々々低金利を続けているわけでありますから、考えてみますと、この超低金利政策の中で極端な金余りが生まれているわけですし、買収のファンドを組成しようと思ったら非常に簡単な地合いができているわけで、これまた別な観点からも、好むと好まざるとにかかわらず、こういった動きが出てくるということだろうと思うわけであります。

 また、資本取引の自由化ということについては、経団連も、そもそも自由にしてくれということを言い続けてきているわけです、過去において。ちょっとさかのぼれば、独占禁止法の改正の持ち株会社解禁も、ぜひ解禁してくれ解禁してくれということを言い続けてきたわけでありますし、また今回の会社法改正でも、少なくとも前半戦まではどんどんやれやれという旗を振っていたわけでございます。

 ところが、ライブドア・フジテレビ買収合戦ということでちょっと風向きが変わってきた。変な例かもしれませんが、経営者の方々は、楽しいアドベンチャー映画を見ようと思って出資して、チケットを出したんだけれども、見てみて、予告編が流れたら、何か最後は首をちょん切られるホラー映画だったみたいな、この予告編じゃとんでもない、本編はやはり差しかえだというような空気になったのかもしれません。

 その意味で、今回の会社法も一つ影響を受けているわけでございますが、いわゆる三角合併や現金合併を提起した合併対価の柔軟化でございますか、この点について、施行が当初から一年延期されておりますけれども、改めてその理由を伺いたいです、法務大臣。

南野国務大臣 いわゆる先生がお話しになられる三角関係、三角合併を可能にする、もう三角関係が多いものですから……。いわゆる三角合併を可能にする合併対価の柔軟化については、議員御指摘のとおり、一年間延長するということにしております。

 合併対価の柔軟化自体、これはいわゆる敵対的買収に役立つものではないと認識しておりますけれども、これが認められることにより、合併がより行いやすく、またその前段階として株式の買収を行おうという投資意欲が増大し、結果として企業価値を損なうような敵対的買収も増加するのではないかという懸念が一部に存在いたしました。

 そこで、会社法案中、合併対価の柔軟化の部分につきましては、我が国企業が定時総会を開催して、新しい会社のもとで定款変更により買収防衛策を採用する機会を確保するため、その施行を一年間おくらせるということにいたしたわけでございます。

近藤(洋)委員 やはり、伺っていても、いや、三角関係ならぬ三角合併を認める対価の柔軟化を実行しても、何も敵対的買収がふえるわけではないと大臣おっしゃるわけですね。にもかかわらず、一部に危ないというおそれがあるから入れましたというのは、どうも理由としておかしいと思うんですね。

 この辺は委員長に伺うわけにもまいりませんから、与党の法案の窓口に伺うわけにもいきませんからあれですけれども、相当、必要以上に過剰反応だったのではないか、必要ないのではないかということをあえて指摘させていただきたいと思います。

 そして、同時に、その必要ないことをあえて気を使い過ぎてやってしまったのであれば、それに応じてバランスをとる必要があるということをこれからの質疑で明らかにしていきたいと思っております。

 まず、先ほど中川大臣が、ライブドア・フジテレビ買収合戦によって、やや日本の企業社会が、そういった買収、合併に対しての準備がおくれていることが明らかになりましたという御発言がございました。それにあわせて、経済産業省は企業価値研究会を設けて、法務省と合同のもと、企業防衛ガイドラインというものを五月までにつくる予定、私も読みましたが、論点も公開をされたと聞いております。

 そこで、まず基本的な話ですが、敵対的買収というものがいわゆる適法かどうかという判断の基準は、どこに判断基準が置かれるものなのかということ、そして具体的な方策としてはどういうものがあるのかということを、当局の方でも結構ですから、お答えいただきたいと思います。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 企業価値研究会、三月に論点公開骨子を公表いたしましたが、その中で、敵対的買収防衛策が適法か否かを判断します基準としまして、企業価値基準、すなわち、敵対的な買収提案に関しまして、企業価値を損なう脅威があるか否か、それを防ぐための措置が過剰でないかどうか、防衛策の是非について慎重で中立的な判断を行ったかどうかといった基準が示されているところでございます。

 また、この基準を満たしまして、合理的な防衛策とするための具体的な方策としまして、防衛策に関する事前開示の徹底、それから委任状合戦によります株主の判断によりまして防衛策を解除できるような措置、それから防衛策を維持するか解除するかの取締役の意思決定について、第三者のチェックですとか客観的解除要件の設定ですとか株主総会の事前承認といった工夫を講じることが提案をされているところでございます。

 当省としましては、今後論点公開に寄せられるいろいろな御意見を踏まえながら、五月には、法務省と共同しまして、合理的な防衛策に関する指針を策定してまいりたいと考えているところでございます。

近藤(洋)委員 すなわち、敵対的という言葉がやはり世の中一般の誤解を生んでいると思うんですね。

 この敵対的というのは、おっしゃったとおり、企業価値に対して敵対的か否かということだと思うんですね。だから、現在の経営者に対して敵対的であろうが、それは関係ないわけで、また、もっと言うと、土足で足を踏み入れる態度が敵対的かというのも判断にならないし、いわんやTシャツがという、服装だとか、個人がどうであるか、翻って、それが企業価値を低めるのであれば問題になるわけでありますが、少なくとも企業価値というのが判断基準であって、その企業価値に対して敵対的かどうかをチェックする工夫が三つ必要だということをおっしゃいました。

 その三つの防衛策の合理性を高める工夫として、第三者によるチェックであるとか、サンセット条項のように解除される条件が決まっていることであるとか、株主総会の承認、この工夫が必要ですということをこの報告のレポートにも書いております。

 そこで、伺いたいのですが、この第三者チェック型というのは、この企業価値研究会の論点メモによりますと、「有事における、防衛策維持又は解除の取締役会の意思決定に、利益相反のない第三者が関与する。」こういうふうに書いていますね。すなわち、この行為が敵対的かどうか判断するのは取締役会である、その取締役会の決定に対して利益相反のない第三者が加わることが大事ですよということですけれども、では、この利益相反のない第三者というのはどういう、何を想定されているのか、まず経済産業省、そして法務省にも伺いたいと思います。

小此木副大臣 私がお答えをいたします。

 三月に公表した企業価値研究会の論点公開骨子では、有事の際の防衛策の扱いに関して、取締役の恣意的な判断を排除する工夫の一つとして、第三者によるチェック機能を働かせることが有効であるとしています。

 第三者は、経営陣から独立性が高いほど、また、経営判断事項を決定する権能と会社に対して責任を有しているほど合理性が高まると考えられて、例えば機関投資家の支持を集めるためには、社外取締役や社外監査役が防衛策の維持または解除の判断に関して明確に関与することが求められています。

 なお、我が国において第三者チェック機能を働かせるために、どのような形で利益相反のない第三者が関与したらよいのか、また、どのような者であれば利益相反がないと言えるのかについては、今後さらなる検討が必要であるかと考えています。

滝副大臣 利益相反のない第三者ということで、法務省の考え方、こういうことでございますけれども、今小此木副大臣からもお述べになりましたけれども、基本的には社外取締役、こういうことで考えているわけでございます。

近藤(洋)委員 そうなんですね。現状では、具体的に言えば社外取締役、場合によっては社外監査役というものが第三者になるわけです。

 ところが、実際は、日本の企業の場合、この社外取締役の実態が、利益相反のない第三者かどうか、極めて疑わしいと思わざるを得ないんですね。まず、そもそも社外取締役を置いているのは上場企業の三割ぐらいしかないということが一点。しかも、その大半は取引先の企業さんであったり親会社であったり、グループ会社の幹部、取引先の金融機関なわけです。

 これは、私の事務所の方で会社四季報をばあっと見て調べたので、どこまで正確かどうかは別にして、三菱金曜会、三菱グループを見てみますと、大体二十九社あるんですが、二十九社のうち、社外重役を置いているのは二十三社ありました。二十三社ありまして、社外重役は全体で三十四名、そのうち二十三名がグループ内ですね。すなわち、七割がグループ内の人、兼務でありました。住友グループ、住友グループ広報委員会所属の約四十社でありますが、ここでも、社外取締役の方は、八割の方がグループ内でありました。

 こういうことでありますので、果たして独立性がどこまで担保されるのかというところでございます。

 今回の法務省の新会社法では、社外取締役の要件については、その企業と雇用関係がない場合という、ここだけを定めておりまして、これは前回の旧法をそのまま踏襲しているだけなんですね。果たして、この会社法の改正で社外取締役が客観的な機能を果たせると思われているのかどうか、法務省の見解を伺いたいと思います。

滝副大臣 社外取締役につきましては、委員御指摘のとおり、これまでの、平成十三年に議員立法で導入された社外取締役、その考え方を踏襲いたしております。

 したがって、そういう意味では、現在あるいは過去においてその会社の取締役あるいは子会社の取締役でなかった者、こういうようなことでございますけれども、もう一つそこに要素として入ってきますのは、当然のことながら、社外取締役というのは会社のいわば執行役にはなっていないわけです。そういうようなこともあって、一応、利益相反のない第三者、こういうような考え方をとっているわけでございます。

 しかし、いずれにいたしましても、委員御指摘のとおり、グループ内で非常に多い、そういうような運用上の問題はあるものですから、私どもとしては、十三年にでき上がったところで、数合わせというような御指摘もありますけれども、今のところ、そういうようなことで運営されてきているということでございますので、問題は、本当に利益相反のない第三者、こういうようなことに改めてもらっていく、こういうことがこの制度の運用としては一番大事な問題だろうと思っております。

近藤(洋)委員 お言葉でございますが、これは、実態、グループ内でこれだけいると、およそ利益相反がないとは言えないと思うんですね、グループの中ですから。取引先も、三菱商事と三菱重工と三菱電機という、極めて取引がクロスしているわけですね。それで客観性が保てるのかというのは、極めて問題だと思うんですね。

 株式の持ち合いというのは、バブル崩壊後、金融界のまさにある意味で金融処理の過程の中で、一種副産物として持ち株というのは随分なくなったと午前中の審議でも御指摘がありました。株式の持ち合いはなくなったけれども、役員の持ち合いは一層続いているんですね。役員が持ち合っていれば、株式は持ち合わなくても、結局機能は同じなわけでございます。

 こういうことでは、はっきり言って、適性に対して極めて疑問があると言わざるを得ないわけでありますけれども、まあいいです、法務省の法令としてはしないというのであれば、先ほど企業価値研究会の話がございましたけれども、ガイドラインなり、どういうものがあるべきかということをどこかで示さなければいけないと思うわけでございますが、経済産業大臣、経済産業省としてはどうでしょうか。

 まさに、どのような形で利益相反のない第三者が関与したらよいか、また、どのような者であれば利益相反がないと言えるのか、「更なる検討が必要」とちゃんと研究会に書いていますから、さて、具体的にどういう要件が必要だとお考えなのか、お答えいただきたい。

中川国務大臣 敵対的買収に対抗するための正当な手段として、取締役会プラス社外取締役、社外監査役という役割を果たす、それを近藤委員はきちっとしたらいいのではないかという御趣旨だろうと思います。

 実態としては、今の金曜会等々の話のように、社外取締役というのは、もちろん取締役会の下請ではございませんけれども、ある意味では、金曜会なんというのは、冷静に緊張感を持って社外取締役をお願いしているというよりも、お互いにグループ同士の結束を深める手段として、資本関係がだんだん少なくなってきている中で、人的な、私は、ある意味では、これは近藤委員とちょっと考え方が違うかもしれませんけれども、グループとしての、特に、いわゆる長い百年以上続いているグループについては、やはりグループ意識とかブランドのもとでの共通意識というのは強いわけでございますから、そういう意味での社外取締役、社外監査役ということも実態としてあるんだろうというふうに思います。

 ですから、これは結論からいうと、各企業の経営判断で、やはり経営者がきちっと自己規律をして、利益相反にならないようにきちっとすれば、万が一のときにも裁判ででも勝てるということになるわけですけれども、それをチェックする機能として三つ、先ほど副大臣から答弁いたしました。

 その中の一つとして、社外取締役にきちっとしたチェック機能を与えるということを制度化するかどうかについては、まさに企業価値研究会の五月に向けての中で、現状、あるいはまた、あるべき姿に本当に社外取締役がなれるのか、あるいはそんなような人がなってくれるのか、つまり、チェック機能ということになると、やらないと今度は社外取締役の責任問題みたいなことになりますから、常にそういう問題についてチェックをしなければいけないという義務的な部分がますます強くなりますので、適当な人がきちっと責任を持って、また自覚をしてなっていただけるのかという議論もあります。

 また、具体名を挙げていいんでしょうか、有名な日本を代表するブランドメーカーなんかは、委員会を設けてきちっとした形で、常駐的な形で社外取締役が経営のかなり重要な部門についてチェックというかアドバイスというか、関与をしている企業もございますから、これから検討して、どういう方向にするか、議論を進めていきたいと思っています。

近藤(洋)委員 だけれども、これは大事な問題だと思うんですね。敵対的買収か否かの判断というのは非常に難しいことだと思うんです、何が敵対的なのかというのを判断するのは。最終的に裁判所に駆け込めばいいじゃないかというわけですが、裁判に一々駆け込むのは私は合理的だとは思わないので、やはり合理的な判断が下される土壌は必要。

 社外取締役が、現在の日本において、取締役市場というか、人材市場というのがなかなかないというのも実態としてありますので、一概に紋切り型に入れればいいとは思いませんが、しかしながら、残念ながら、私は別に三菱グループに恨みがあるわけでは全くありません。私の家内は三菱企業に勤めていた人ですから、別に恨みはないんですが、少なくとも、例えば三菱グループも社外重役の全員がグループで固めているわけですね。これはひどいではないかということでございます。しかも、エクセレントカンパニーと言われている三菱がそうであれば、いわんやをやということで、金融なんというのはもっとひどいですね、そういった役員の持ち合い構造というのは。ここはやはりしっかりすべきだと思うわけでございます。

 そこで、午前中も議論になりましたが、私も土曜日の日経新聞の朝刊一面頭を見て、おっ、金融庁もたまにはいい政策をやるのかなと思ってびっくりしたんでございます。社外取締役を義務づけという新聞の記事が出ておりましたが、金融担当大臣、いらしていただいておりますけれども、この記事の真偽については午前中もお話しになったので結構でございますが、今後の方針として、金融庁としても、こうした上場基準という形で、法令ではない、ガイドラインだとちょっと経済産業省としてもなかなかやりにくいという部分があると思うんですね。一つの上場会社の少なくとも構えとして、こういうものは必要であるというのは考え方としてあり得るのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 金融庁もたまにはいいことをやるなというようなお話でありましたけれども、金融行政の信頼性というものをしっかり確立しなければいけないなと、委員の今の御指摘を踏まえながら決意を新たにしたところでございます。

 先ほどの答弁の中でもお話をさせていただきましたように、この議論は、現在、金融審議会の第一部会で投資サービス法の議論をいたしておりまして、その中で、上場企業のガバナンスのあり方でありますとか、あるいは、ニューヨーク証券取引所の規則というものを参考にしながら、社外取締役のあり方について意見が交わされていたわけであります。

 今後、金融庁でありますとか、あるいは自主規制規則を持っている証券取引所が、その規則の中で、社外取締役を含む上場企業のガバナンスへの関与のあり方、こうしたものについては引き続きこの審議会の中で議論がなされていくものと考えておりまして、私どもといたしましては、こうした金融審議会の議論というものを今後注視していきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 注視をされるということでございますが、これは大変大きな影響を与えると思うんです、実際に入れるとなると。恐らく経団連は猛烈に反対するでしょう、大変なことになりますから。全部に上場基準の一つの要件とすると、これは大変なことになる。ですから、金融サービス法の部会でこの御議論をするというのもちょっと、果たしてその舞台として正しいかどうかはよくわかりませんが、相当覚悟を持って入れないとなかなか大変なのではないかと思うんですね。

 頭出しとして厳しく出して、実現は途中までという手法なのかどうか知りませんが、いずれにしろ、きちんと考えるのであれば相当な覚悟を持っていかないと、今回の会社法の一年延期のように、未来永劫この話は消されるという懸念も受けるわけでございます。大変な影響を与えると思うんですよ、実際にやろうと思いますと。ですから、政治でそれなりの覚悟を持たなきゃいけないと思うわけでございます。

 こういった社外重役の点というのは、これからの企業経営のあり方、何も敵対的買収の局面だけでないと思うんですね。あらゆる経営にとって取締役会の緊張感というのは重要だと思うわけであります。

 事ほどさように、不祥事を起こした企業の役員会を見れば、やはり役員会の緊張感がなかった、独裁が続いていたというのがほとんどなわけでございますから、企業のあり方を考える意味でも、社外取締役ないしは独立した取締役の存在というものは、日本なりにどういうものが正しいのかというのは政治のリーダーシップを持って考えるべきだと思いますが、重ねて、金融担当大臣、いかがでしょうか。リーダーシップを持って、法務省、経産省、一緒に連携をとって議論を取りまとめようという御決意はありませんか、この問題について。

伊藤国務大臣 ガバナンスを向上させていくというのは極めて重要なことでありますし、また、委員がその難しさ、あるいはこうした議論を進めていくに当たって政治的なリーダーシップが非常に重要だという御指摘がされたところでありますけれども、投資サービス法の議論の中でも、これはさまざまな観点から議論していく必要がある、会社法と証券取引法との関係、あるいは自主規制規則を持つ証券取引所が、その規則との関係の中でガバナンスに対する関与というものをどのように考えていくのか、海外の事例というものを踏まえながら引き続き議論をしていくということでありますので、私どももこうした議論というものを注視していきたいというふうに思っております。

 資本市場の発展のためにも、私どもとしても、関係省庁と緊密に連携をとりながら適切な対応をしていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 こだわるわけではないんですが、会社法の改正で、合併対価の柔軟化について一年間先送りしたんですね。そこをおびえる一部経営者、自信のない経営者の声に押される形で一年間先送りをされた。だとするならば、やはり緊張感のある取締役会をつくるという制度を政府としてこの一年間に形づくる必要があると思うんです。僕は、金融サービス法の部分で議論する話じゃないと思うんですよ、この話というのは。

 まあいいです、どの審議会でやっても、成果物がよければ。ただ、これはまさに法務省、そして実際に産業を所管する経済産業省も含めて、独立した取締役は何か、社外取締役が何か、そして、今の日本の現状においてどういうものが可能なのかというのを一年以内にきちんと示していくべきではないかと思うわけでございます。

 そうでないと、今回の会社法は、結局、そういった圧力に屈して、政府は本来あるべき姿を曲げたんだ。ということは、結果として、やはり日本というのは不透明だよね、わけわからないよねと言われて、これは長い目で見ると、私は、今回のライブドア、フジテレビもああいう形で、株価がどう反応するかですけれども、だんだんそういう形で日本全体の信用が失われていって、最終的には日本に投資が少なくなるということもあり得ると思うので、やはり、それぞれの企業がしっかりしたガバナンスができる体制を整えるということは、ぜひこの一年以内につくるべきだと思うわけでございます。

 四大臣いらっしゃいますけれども、一番産業がわかっていらっしゃると思っております中川大臣に、一年以内にこの問題にきっちりけりをつけて、少なくとも社外重役のありようをちゃんと政府として示されたらいかがでしょうか。

中川国務大臣 近藤委員のおっしゃっている趣旨は、私は大変理解ができるし、同じ考えだと思います。冒頭申し上げたように、日本の企業がきちっと競争力を持ってやっていく、社会的な信用、ブランドを高めていくためには、当然、企業の内部統制あるいはコンプライアンス等々、社会的責任等々が要求されるわけでありますから、そういう緊張感を持った経営をするために、取締役を初め、特に経営陣がきちっとやっていくことによって企業が健全に発展をしていくということは、極めてそのとおりだと思います。

 ですから、取締役なり内部できちっと自己規律ができればいいわけでありますし、他方、取締役は株主訴訟みたいな恐ろしいものもございますので、そこは慎重にやっていかざるを得ないことになるんだろうと思います。

 それから、敵対的買収という場合のその敵は一体だれなのかとか、だれにとっての敵なのかとか、その辺の議論ももう少し煮詰めないと、敵対的買収、そしてそれに対する防衛策というものが、もう少し我々も作業をして、またこの委員会の御議論を通じて煮詰めていかなければいけないというふうに思っております。

 それから、企業価値とは一体何ぞやという問題もこれまた難しい問題があって、企業価値と時価総額のギャップでもって三角合併なんかができやすいとかできにくいとかいうことで、今日本の経済界は大変神経質になっているわけでございますので、今御指摘のあったことも含めて、もちろんこの法律が成立させていただいた、そして施行するまでにはきちっとしたものをつくっておかないと、企業はそれこそ法のまたすき間みたいなことで不安になるので、時期を決めて十分検討しなければいけないことだと思っております。

近藤(洋)委員 社外重役の件についても、一年をめどに頑張っていくということと受けとめさせていただいて、また、それぞれこの法案、さまざまな問題点があるというのを、また機会があればチャンスをいただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 次に、村越祐民君。

村越委員 民主党の村越祐民でございます。

 私は、財務金融委員会の委員として、この会社法、連合審査会の質疑に立たせていただきたいと思っています。

 さて、先日、郵政民営化に関して、自民党執行部が政府との交渉について執行部一任を取りつけて、二十六日にも法案を提出するという報道がなされていました。

 私は、先日、四月の七日、代表質問でこの会社法の質疑に立たせていただいて、その際にもお話をさせていただいたんですが、郵政民営化の問題というのは、私はすぐれて会社法改正の問題と絡んでくるんではないかというふうに思っています。ですが、今のところ、いろいろ新聞なんかを見ていても、郵政民営化の話が出てくる中で、残念ながら、民営化するに当たってどういう株式会社形態、株式会社化するのか民営化するのかという形が、会社法の文脈の上で全く語られていないんじゃないかというふうに私は思っています。民営化を語る上では、会社法改正の議論をパラレルでしていくことが私は大事じゃないかと思っているわけです。

 そういった中で、会社法の改正というのが非常に重要な法案だということで、経済産業委員会あるいは財務金融委員会と合同で、まさに連合してこの審査が行われるということなんですが、これまでの議論を伺っていると、残念ながらいまだに縦割りで、先ほど南野大臣は三角関係とおっしゃいましたけれども、まさに経済産業省あるいは財務省、またがって議論しなければいけないのに、三角関係の三すくみで有機的な議論が行われていないんじゃないかと私は思っております。

 この会社法の問題に限らず、今の政府の政策の積み上げ方というのは、方向性だけ決めて詳細は後で決める、後は野となれ山となれという方針で、いいかげんな議論がなされているんじゃないかと思って、非常に私は憂慮をしています。例えば、具体的に言えば、後ほど詳細に触れますが、一円会社の恒久化の問題であったり、あるいは会計参与の問題であったり、結合企業法制の問題であったり、確実に複数の部門間でまたがる問題なんだと思います。そういったところが詳細に議論されていないということを、私はこの質疑を通じて浮き彫りにできればなと考えております。

 差し当たって、四月七日の私の本会議での代表質問の南野大臣の御答弁を踏まえた質問と、それから、その先日の代表質問で積み残した論点に関して、二段構えで御質問させていただきたいなと思っております。

 まず中川経済産業大臣にお伺いしたいと思っているんですが、いわゆる最低資本金制度の撤廃について、一円会社の恒久化についてお伺いをしたいと思っているんですが、平成十五年の中小企業挑戦支援法、いわゆる一円会社制度について、大臣は先日、私の質問への御答弁の中で、二万二千社が起業をして、その中で四万人の雇用が生まれたんだ、そして二一%ぐらいの女性起業家がいらっしゃるというようなお話をされていました。そうだとしたら、つまり一社当たり二人の雇用を吸収していることになりますが、二万二千社が起業したという中で、この人たちが満足のいく給料を払って、あるいは給料を得ているというようなきちんとした企業の体裁を今なしているのかどうか、実態はどうなのか、大臣、ぜひ教えていただきたいと思います。

中川国務大臣 そもそも、今御審議いただいている法律で資本金については制限がなくなるわけでありますが、この一円起業、つまり株式会社、有限会社の最低資本金以下でもいい、つまり極端に言えば一円でもいいという特例を設けたのは、日本の経済がデフレに直面し、非常に停滞し、そして経済発展の一つの大きな指標といいましょうか、活力の大きなポイントであります起業、業を起こす活動、それから廃業する数を比べた場合に、ここ二十年ぐらい廃業をしている数の方が多い。つまり、日本の経済は縮小しているという一つの典型的な事例だと思います。

 そういう意味で、最低資本金の特例制度というものを設けたわけでございまして、起業時に一千万とか三百万とか必要ありませんよ、一円でもいいですよというところに私は非常にメリットがあったんだろうと思います。ですから、今おっしゃられたように、去年の時点で二万社を超え、四万人の雇用、一円起業は一千社を超えるということであります。

 その後、スタートした後の次の問題点として、ではすべてが満足しているかというと、四割近い方は特に経営上問題はないとおっしゃっておられますけれども、僅差の第二位として、やはり資金面とかそれから営業面、どこに売ったらいいのかとか、そういった問題を指摘されている方も多いわけで、これはある意味では当然と言うと怒られますけれども、とにかく業を起こして、それに対して、それだけでも大変な商法上の特例になるわけでありますから、次にそういうことが予想されるわけで、これはベンチャー一般に言えることだと思いますけれども、そういう意味で、新事業支援とか新事業創造支援とかいったいろいろな諸制度はとっております。

 御質問に対して申し上げれば、特段問題なしというのと、資金面、営業面でちょっと困っているというお答えをする方が多いというのは事実でございます。

村越委員 今まさに大臣がおっしゃったように、非常に多くの起業家の皆さんがアンケートの中で資金難という問題があるというふうにお答えになっているというのは、私は非常に大きな問題なんじゃないかなと思っています。

 なおかつ、これは平成十五年にスタートをしたわけで、最初、五年間を想定されていた。そうだとすると、平成二十年になったときに、この一円で起業された方々には、本来非常に高いハードルが課されていたんだと思います。つまり、確認有限会社を目指す方々であれば五年以内に三百万ためなさい、確認株式会社を目指す方々であれば一千万円ためていなさい、五年間でその額をためられなかったら強制解散しなければならないという非常に怖い措置が待っていたかと思うんですが、要するに、今回の一円会社の恒久化によって、その五年後どうなっていたか、まさに中川大臣がイニシアチブをとっておやりになったこの政策の、言ってみれば適否の検証がなされないまま、恒久化によって全部チャラになってしまうんじゃないかと私は思うんですね。

 言ってみれば、これはちょっと諸先生方にはわかりにくい話かもしれませんが、我々ファミコン世代で、ゲームで遊んで育った世代なんですけれども、ある主人公を操作して強い敵をやっつけるゲームをやっていたときに、最初の方でしくじってしまうと、もうえいといって、最初からやり直してしまえといってリセットボタンを押すということをよくやったわけですけれども、言ってみれば、こんな状況なんじゃないかと思うんですね。もっとわかりやすく言えば、例えば将棋とか囲碁をされる諸先生方いっぱいいると思うんですけれども、旗色が悪いとか定跡から外れているという理由で、手で将棋盤をごちゃごちゃに途中でしてしまう、それでチャラね、最初からやり直そうよというようなものじゃないかと私は思うんですね。

 要するに、この一円起業というのは特別法として、テストケースとしてやったわけですね。その結果が出ないうちに、一般法として会社法を改正してしまって、全部なしよというのは非常にずるいんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、その点、大臣いかがでしょうか。

中川国務大臣 御趣旨はよくわかります。

 ただ、五年過ぎて、本当に一円から始めて、一生懸命頑張って、それなりに順調にいっているのに、三百万、一千万クリアしなかったから、さあ強制廃業というのもある意味ではかわいそうなので、したがって、今回の法の趣旨というのは、企業活動を資本の移動も含めて活発化しましょうというような趣旨で会社法の現代化の御審議をいただいているわけですが、その中にこれを取り込んだということは、やはり業を起こしやすい。

 これは一円からの話ですけれども、一般論として、日本というのは、一たん会社をおかしくしてつぶしてしまうとなかなか立ち上がれない、再チャレンジ、再々チャレンジができにくいということについて、法務省の方で破産法の改正なんというのも去年やりましたけれども、その一環として、再チャレンジしやすい。

 あるいはまた、私手元に御質問が来ると思って急遽用意した例なんというのは、御婦人の方たちの例二例が手元にありますけれども、家庭にいながら花屋さんをやったり、あるいはまた子供服の輸入、販売をやったりというような、子育てをしながらちょっと会社をつくるという成功事例も結構あるわけでございますから、そういう意味で、検証しないということは、御指摘のように無責任だと思います。しかし、五年たってから、あなたは惜しかったね、二百九十九万までたまったのに、あと一万でがしゃん、これもまたかわいそうな話でございます。

 したがいまして、しかるべき時点で、この制度がスタートする直前ぐらいに、最低資本金の特例を得た企業が、一体どのぐらい起こって、どのぐらいうまくいって、そして卒業していったのか、あるいはまだ順調に続いているのか、あるいは事業そのものがうまくいかなかったのかということを、せっかく特例として効果があると思っておりますので、きちっと総括をして御報告したいと思います。

村越委員 そういった総括ができたら、ぜひ資料をいただきたいと思います。

 子育てをしながら花屋さんを起業されたとか、そういう具体的な家庭のイメージが思い浮かぶお話をされると非常に私もひるんでしまうんですが、ただ、逆に一般論として、三百万円とか一千万円という額をためられない会社が、果たして社会的に評価をされるのかどうかという問題はあると思うんですね。

 そこから先の話はちょっと、伊藤大臣にお越しいただいているので、ぜひ伺いたいと思うんですが、南野大臣はあのとき、諸外国の動向なんかも踏まえて、要するに世界的に最低資本金のハードルというのはなくす方向にあるんだというようなお話をされましたけれども、日本の金融の実態として、果たして三百万円、一千万円ためられない起業家を評価する土壌がもうでき上がっているのかどうか、私は非常に疑問なんですね、だれがそういう人を信用するのかと。

 つまり、包括根保証の問題とかさんざん経済産業委員会でも議論されているようですけれども、個人保証もなし、それから、純粋に事業計画だけを評価して、起業家の資質だけをひたすら見きわめて、ある企業に金融をする金融機関が、直接金融だろうと間接金融だろうと、一体今どれだけ我が日本社会にあるのか。つまり、日本の金融の実態と今回のこの法制度の整合性の問題というのが私は出てくると思うんですね。その点に関して、伊藤大臣に御答弁をいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをいたします。

 委員から、日本の金融の実態と今回の新しい制度の整合性についてお尋ねがあったわけでありますが、一般に、金融機関が融資を実行するに当たっては、借り手企業の財務状況でありますとか、あるいは資金使途、そして返済財源等を的確に把握して、さらに、今委員からもお話がございましたけれども、目ききの能力というものを上げて、融資先の技術力、販売力、成長性等や、事業そのものの採算性、将来性というものをかんがみて、そして適切な審査を行うことが求められているわけであります。

 また、金融機関は、与信管理につきましても、債務者の現況の把握でありますとか、貸し出し要件の履行状況、事業計画の遂行の状況、こういった債務者の実情に合った適時適切な管理が求められているものと考えております。

 さらに、銀行におきましては、適切なリスク管理を行うことは銀行の業務を行う上では当然の責務でありますので、実際にもそのための体制構築がなされているものと認識をいたしているところであります。

 こうしたことから、貸出先企業につきましては、最低資本金の規制が撤廃されたからといって直ちに金融機関の融資行動が変化するとの関係に立つものではないと考えております。

村越委員 つまり、先ほど中川大臣がお答えになっていましたけれども、何回でも挑戦できる社会とか失敗した方々に優しい社会、そういう人たちを金融機関がちゃんと評価して融資するという金融の実態というのは多分まだないわけで、制度だけ先につくっちゃったんじゃないかという印象がどうしても私はまだあるんですね。そういったところに関して、やはり金融庁だったり財務省だったりがきちんと連携してこういった問題を扱っていかなければいけないんじゃないかと私は思っています。

 中川大臣と伊藤大臣はここまでで結構ですので、ありがとうございました。

 以下、ちょっと南野大臣と谷垣大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 要するに、今回の法改正で、機関設計が選択肢が非常にふえるということが一つ目玉としてあります。それによって、株式譲渡制限中小会社であったり株式譲渡制限大会社、幾つか類型がありますから、非常に混乱をするんじゃないか。特に、会社法制に関して余り知識のない中小企業の経営者の方々なんかは非常に混乱すると思うんですが、そういったところに対してどういった手当てをしていくのかという趣旨の御質問を四月七日に私は南野大臣にさせていただいたんです。ホームページでアピールをする、あるいは印刷物による広報による積極的宣伝をしていかれるというふうに御答弁されているんですけれども、やはり今私が申し上げたとおり、すべての会社の経営者が会社法制に対して精通しているわけではないですし、ホームページとかなんとかで広報活動をするという対応では甚だ不十分なんじゃないかというふうに私は思っています。そういったホームページとかなんとかを通じて広報活動をしてどんな実績を得たことがあるのか、過去に実績があればぜひお答えをいただきたい、教えていただきたいと思います。

 やはり今のところ、郵政の話というのは非常にいろいろ出ていたり、政府も非常に宣伝をされているので国民の意識というのは高まっているのかもしれませんが、この会社法の改正に関しては、非常に大事な問題であるのにもかかわらず、腰の据わった議論がなされていないというふうな印象を私は持っています。ですから、もっと積極的な取り組みが必要なんじゃないか、現場の混乱を避けるためにはそういったことが求められると思うんですが、その点、もうちょっと具体的に伺いたいと思います。

南野国務大臣 先生御指摘のとおり、これから、広報ということはとても大切なことだというふうに思っております。積極的な広報活動に努める必要があるということは真っ先にお答え申し上げたいと思います。

 そのための手段といたしましては、この前も御報告いたしましたように、ホームページへの掲載だとか、ポスター、パンフレット等々印刷物の配布ということを申し上げましたけれども、さらに、各種雑誌への解説、これはもう皆さん、専門家がおられますので、その専門家がちゃんと自分の解説をした形で執筆していく。それから、主要都市での説明会の開催等を行うほかに、やはり実際に制度を利用する企業関係の団体等の協力を得て周知徹底を図っていこう、自分たちのことだということで図っていこうということも大切なことであろうと思います。人が広報してくれるからいいのではない、自分もそれに乗っていこうという積極性がやはり欲しいのではないかな、そのようにも思っておりますし、本法律につきましても、さまざまな施策を講ずることによって内容の周知徹底がなされるということでありますが、これが不十分であれば、一生懸命頑張っていきたいというふうに思っております。

村越委員 では、タウンミーティングみたいな形で、大臣が積極的に、例えば中小企業が密集しているようなところへ出かけていって御説明をされるというようなこともお考えなんでしょうか。非常に大臣、私は、親しみやすいキャラクターで本当にいいと思っていますので、そういう活動がまさに必要なんじゃないかなと思っているんですが、いかがですか。

南野国務大臣 それが効果的であると思うならば、いろいろと検討してみることも必要かなと思っています。

村越委員 本当に、中小企業の経営者の方々、必ず混乱されると思いますので、そこはぜひお願いをしたいと思います。

 次に、敵対的買収への手当てについてお伺いしたいんですけれども、先日の代表質問の中で、大臣はLBOに対する規制は行わないという答弁をされました。ただ、このLBO規制に対する回答というのは、資金調達面一般に関するものだったと思うんですね。通常の企業の資金調達と買収対象企業を担保とするLBOとは明確に区別が可能かと思います。それでもそのLBO規制をすることは不可能なんでしょうか。

 また、友好的な買収のための資金調達を困難にする弊害がLBOにはあるんだという答弁をされていましたけれども、友好的買収のためにLBOが過去に用いられたことがあるのか、もしあったとすればお答えをいただきたいと思います。

南野国務大臣 先生の御質問にすべて的確かどうかはわかりませんが、そもそも、企業の買収は必ずしも企業にとってマイナスであるとは限らないということがございます。かえって企業価値を高める結果になる、そういうものをもたらす買収も存在するのではないかと思っております。友好的な買収のためのLBO、これにつきます資金調達に関することを困難にするということに対しても議論のあるところであろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、LBOにつきましては、行為規制をすることには慎重であるべきものと考えております。

村越委員 敵対的買収に対抗する手段というのは、勢い経営陣による制度の濫用の危険性をはらんでいると思います。言ってみれば、だめな経営者が自己保身のための便法にするおそれがあると思うんですけれども、こういったことに対するチェックはどうやって行われるんでしょうか。

南野国務大臣 お尋ねが、敵対的買収防衛策についてであろうかと、また、チェックについてどのようにするかということであろうと思います。

 敵対的買収に対する防衛策は、基本的には各会社がその事情に応じてみずからの判断で採否を決めるものである、自分たちのものは自分たちで考えていこうということに目をつけてほしいと思っております。

 また、会社法案における敵対的買収の防衛策、これは種類株式を用いる場合を初めといたしまして、定款変更を必要とするものがほとんどであろうということでございます。したがいまして、定款変更のための株主総会が必要となりますので、多数株主の意見を無視して買収防衛策を導入することはできないであろう、まず株主総会でいろいろな御意見を出し合うということが必要なことであろうというふうに思っております。

 また、取締役会の決議のみで発行可能な、話題になりました新株予約権を用いた防衛策につきましても、専ら経営陣の保身を図って実施した場合には、裁判所で違法と判断されるものとなると考えられます。この前も判断されたと思います。

 さらに、違法と判断されない防衛策であっても、濫用的な防衛策については、株価が大幅に下落することによりまして市場から厳しく評価されることになるだろうということでございます。

 このような敵対的買収防衛策の濫用につきましては、さまざまな形でチェックが行われるものと考えております。

村越委員 それでは次に、ちょっと郵政民営化のことに関してお伺いをしたいと思います。

 竹中大臣は、民営化に伴う会社の組織形態に関して、最適な機関形態を選択する、各会社の目的、営む事業等の性格、ガバナンスのあり方に応じ、経営判断によって最適なものが選択されるものと考えているというふうに答弁されました。

 西川副大臣にお伺いしたいんですが、最適な機関形態というのはどういうものなのか、およそ二十パターンあるというふうに資料があるわけですけれども、効率性を重視するのか、それとも暴走を抑止していく観点を重視するのか、どういった点を重視して、どのような機関形態を選択することをお考えになっているのか、ぜひお伺いしたいと思います。例えば、委員会等設置会社を選択した場合、非常に多くの社外取締役が必要になって、これから民営化の中身を詰めていくときに非常に膨大な時間がかかっていくというふうに思うんですけれども、現時点でどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

西川副大臣 以前にも竹中大臣が申し上げたところでありますけれども、今回の郵政民営化後の株式会社の先生お尋ねになりました機関構造の問題でありますけれども、特別な規制を設けることは予定しておりません。でありますから、会社法等の一般的規制を受けることになるわけであります。各会社の機関構造については、経営判断によって最適なものが選択されるものと考えております。

 したがって、郵政民営化後の株式会社の最適な機関構造は何かについては、政府として判断をお示しすることは適当でない、こう考えております。

村越委員 全然よくわからないですね。

 二十通りあるといっても、恐らく民営化後の郵政の形というのは、まず間違いなく公開大会社にカテゴライズされるわけです。公開大会社の類型というのは、これは二通りしかないわけですね。特別な規制を設けないというふうにおっしゃっていますが、会社法の射程には必ず入ってくるわけですから、この二通りのうちのどちらかになるわけです。それすらも検討していないという状況なんでしょうか。

西川副大臣 今国会の提出を目指して今法案策定を準備中でありまして、この内容についてどういう形になっているかということを今申し上げるのは適当でない、こう考えております。

村越委員 民営化しないのであれば別に問題にならないのでそのまま先に進もうと思うんですが、仮に本当に民営化をするつもりがあるのであれば、当然これはその根幹にかかわる部分なんだと思います。それすら答えられない、決めていない、検討中というのは本当に甚だ理解に苦しむところでありまして、早速民営化を断念された方がいいんじゃないかと私は思います。

 これ以上ここで議論してもしようがないので、ちょっと時間も押してまいりましたので、先に進みたいと思います。西川副大臣、ありがとうございました。これで結構です。

 我が谷垣大臣、ちょっとお待たせしてしまいまして、本当に申しわけございません。我が大臣です。会計参与制度に関してお伺いをしたいと思います。

 会計参与を入れるかどうかは任意なわけですね。差し当たって税理士の皆さんと公認会計士の皆さん、どちらかを会社が指定することができるようになると思うんですが、この会計参与の制度というのは、公認会計士の皆さんにフォーカスしたものなのか、税理士の皆さんにフォーカスしたものなのか、どちらを想定されているのかということです。

 要するに、この制度は差し当たって税理士の皆さんを対象に考えておられるのかどうかということですね。職能集団としての税理士というのはやはり国税庁であり財務省の管轄になるんでしょうから、この会計参与の問題に関しては、ぜひ財務省なり国税庁が、ぜひ大臣がイニシアチブをとって積極的に法務省と連絡をとって関与していくべき問題なのではないかというふうに私は思っています。

 ぜひ御答弁いただきたいと思うんですが、じゃ、仮に税理士の皆さんを差し当たって想定した制度であるのであれば、これも私の代表質問で御答弁いただいていることなんですが、どのように具体的に税理士の皆さんに周知徹底、働きかけをしていかれるのか、御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 私が会社法を勉強したのは大分前のことでございまして、そこにおられる松野委員と同じころ勉強したんです。松野委員はその後ずっと勉強を続けておられると思うんですが。

 ただ、今委員がおっしゃった税理士を対象としているのか公認会計士を対象としているのかというのは、これは、法務大臣がおられるのに横から出てこういう表現をしていいかどうかはわからないんですが、それぞれやはり、公認会計士も自分の職域を開拓したいというお思いをお持ちであったと思いますし、それから税理士の方もそういう気持ちをお持ちであった、長い歴史があったように思います。

 そういう議論をいろいろ経た末に、こういう会計参与制度という形で、主としてやはり中小企業だと思いますけれども、取締役と一緒になって、そういう会計制度に対する知識を十分発揮していただいて財務書類をきちっと的確なものにする、こういうことだろうと思いますので、これは南野大臣に御答弁いただかなきゃいかぬことだと思いますが、私は両方を対象にした制度だと思っております。

 それで、税理士についてどうなるのかということでありますけれども、今申しましたような背景がございますので、税理士会としてこれは積極的に周知徹底して、税理士の皆さんに自分の専門的な技能を発揮していただくような働きかけを当然されるだろうと私は期待しております。そして、私どもは、国税庁、税理士会に関係が深い監督官庁でございますけれども、当然その際に私どもお手伝いをすることがあるならば積極的にやらせていただいて、税理士の専門的知識が中小企業の会計水準が上がっていくということに少しでも役立つように我々はやるべきではないかと考えております。

村越委員 この制度を定着させていくために、どういったインセンティブを考えておられるのか。つまり、任意ですから、よくわからなければ、だれもこの会計参与を入れないという事態も出てき得るわけでして、既に、いろいろなマスコミなんか、雑誌なんか見ていると、非常に責任が重いから余りやりたくない、大変だというようなことも雑誌なんかに書かれているわけですね。

 例えば、会計参与を雇用した際に、その報酬を一定程度税金控除、税控除できるようにするとか、そういった優遇措置がないと、なかなか定着しない、会計参与を置くメリットというものを経営者の方々に感じてもらえないんじゃないかというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 これは任意でやっていただく制度でありますから、それぞれが御自分の会社にとって機関設計として何がいいのかというのを御判断いただくべきものですので、そこで税の優遇措置をとってインセンティブをつけるというような性格のものとは私は必ずしも思っておりません。

 あくまで本道は、こういう制度の趣旨を、例えば先ほども法務大臣が趣旨を周知徹底させるように努力するという御答弁がございましたけれども、例えば中小企業の相談にあずかっておられる商工会議所とか商工会であるとか、それぞれ勉強されて、関係の企業に周知していただくことが必要ではないかと思いますし、また、税理士みずからがやはりそういうことを勉強されて、今まで随分企業とのおつき合いがおありだと思いますから、積極的にその役割を推し進めていただくというようなことがやはり本道ではないかと思っております。

村越委員 時間が押してまいりまして、いっぱいお聞きしたいことがあるんですが、結合企業法制に関して、次にちょっとお伺いしたいと思います。

 完全親会社の株主が完全子会社の取締役に対して責任追及を行えるその旨の規定が、現行法上もないですし、今回の改正でも予定されていないということです。これを、親子会社が別個の法人格を持っているから別の問題なんだと形式的に判断するのではなくて、実質的に子会社の取締役に対してきちんとした牽制を行えるようにする必要があると私は思っているんですが、この点、南野大臣、いかがでしょうか。

 つまり、いわゆるUFJ問題のように、三菱東京フィナンシャル・グループに対してUFJ銀行が重要事項の拒否権条項つき優先株を発行したというような事例だったと思うんですが、そういった際に、完全子会社の取締役のミスを完全親会社の株主がチェックできないというのは非常に問題なのではないかというふうに思います。

 端的に言えば、こういった問題は、うさん臭い問題は全部子会社にやらせてしまえ、カネボウの粉飾決算のこともそうですけれども、借金は全部子会社に押しつけろというふうになってしまうかと思うんですね。こういった問題をクリアせずに結合企業法制を語ることはできないんじゃないかと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。

南野国務大臣 先生のお尋ねは、どのようなチェック機能が必要であるかということの御趣旨だと思います。

 本来、取締役に対する監督は、その株式会社のほかの取締役や監査役が行うべきであり、また、これらの役員の選任及び解任を通じて、その株式会社の株主が行うのが原則であると言われております。この点は、完全親子会社間における子会社の取締役の監督につきましても変わるところはございません。したがいまして、完全子会社の取締役の監督につきましても、一義的には、完全子会社の他の取締役及び監査役が行うとともに、親会社自身、すなわち親会社の取締役等が行うことになるものと考えられます。

 もっとも、子会社の取締役が適切に業務を執行するかどうかという問題は、その株式を保有する親会社の財産状況にも大きな影響を与えるものであり、親会社の株主の利害にも影響を与えるものでありますので、本来、監督すべき立場にあると考えられる子会社の他の役員や親会社の役員のほか、親会社株主による子会社取締役に対するチェック機能も重要であるというふうに思っているところです。

村越委員 時間が参りましたが、いろいろ積み残しがあるんですが、最後にちょっと一点だけお伺いしたいんです。

 株主総会の招集地に関する規制を撤廃する規定が盛り込まれることになっているかと思います。そうした場合、恣意的な開催地の設定によって株主に不利益が生じた場合の弊害防止措置をどのようにお考えになっているのかということをお伺いしたいと思います。

 つまり、固有名詞を出していいのかわかりませんが、この規定を盛り込んだ場合のメリットとして、例えば、ユニクロという会社、ファーストリテイリングという会社は、非常に日本的、世界的な企業になっているのにもかかわらず、山口県山口市に本社がある。こういう企業が、資本家のためにあるいは資金調達のために、株主総会を東京でやるということは非常にいいことだと思います。ところが、ある企業が、何かことしは暑いから、南極で犬ぞりに乗って株主の皆さん集まってくださいとかということをやられると困るということがあるかと思うんですが、こういったことに関してはどのようにお考えなのでしょうか。

南野国務大臣 先生がユニクロとおっしゃったので、何か山口県を懐かしく思い出しました。長い間帰っておりませんが。これは別な話でございます。

 近年、株主総会の開催場所といたしまして、株主の利便性を考慮するなどの観点から、株式会社の本店所在地以外の場所、今先生がおっしゃいましたいろいろな地域で株主総会の開催場所として用いる株式会社が増加しているもの、これはいろいろとそのように承知いたしております。

 そこで、今回の改正では、招集地が限定されてしまうことによりまして発生する不都合を回避するため、定款に別段の定めがない場合には株主総会の開催地を限定しないことといたしました。

 もっとも、開催地を恣意的に設定して株主の利益が害されるおそれがある場合には、定款で一定の開催地を定めることが可能であります。一部の株主を排除するために、現に著しく不都合な場所を恣意的に開催地としたような場合には、株主総会の取り消し事由になり得るものと考えております。

 以上です。

村越委員 ちょっといろいろお聞きしたいことがあったんですが、時間が参りましたので、これで終わります。

 最後に一言だけ。大臣、何か物の本で読んだんですが、イギリスなんかでは、法務大臣、司法長官をアトーニーゼネラルと言うそうなんですね。これは国王の最高の法律顧問ということで、国を代表して、重要な事件のときは何か裁判に出てきたり、あるいは政府に法律的な助言を与えたりする法曹の頂点に位置する非常に重要な役職であるというふうなことを伺っております。

 大臣は、医療とか看護で非常に経験をお持ちで、その点に関しては私は非常に敬意を払ってきょうも質疑に立たせていただいているんです。ですから、若干御専門が違うということは私もわかっております。ただ、やはりそういう非常に重要な役職についている方ということで、きちんと、また政治家としてビジョンを持って、方向性を打ち出して、この会社法の改正の議論にも当たっていただきたい。

 非常に重要な問題ですので、これは、一つの国会でさっと審議をして通すということではなくて、いろいろな意見がありますから、きちんと慎重に、慎重に議論をしていただきたいということをちょっと重ね重ねお願いをしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塩崎委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 会社法案

 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

は法務委員会議録第十一号(その二)に掲載


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