衆議院

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第4号 平成18年3月16日(木曜日)

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平成十八年三月十六日(木曜日)

    午前十時十分開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 船田  元君 理事 保岡 興治君

   理事 枝野 幸男君 理事 古川 元久君

   理事 斉藤 鉄夫君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      今津  寛君    遠藤 武彦君

      越智 隆雄君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    河村 建夫君

      柴山 昌彦君    高市 早苗君

      棚橋 泰文君    渡海紀三朗君

      中野 正志君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    早川 忠孝君

      林   潤君    平田 耕一君

      松野 博一君    三ッ矢憲生君

      森山 眞弓君    安井潤一郎君

      山崎  拓君   吉田六左エ門君

      岩國 哲人君    小川 淳也君

      逢坂 誠二君    奥村 展三君

      鈴木 克昌君    園田 康博君

      田名部匡代君    田中眞紀子君

      津村 啓介君    筒井 信隆君

      柚木 道義君    鷲尾英一郎君

      石井 啓一君    太田 昭宏君

      桝屋 敬悟君    笠井  亮君

      辻元 清美君    滝   実君

    …………………………………

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     今津  寛君

  岩國 哲人君     奥村 展三君

  北神 圭朗君     鷲尾英一郎君

  仙谷 由人君     田名部匡代君

  平岡 秀夫君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     石破  茂君

  奥村 展三君     岩國 哲人君

  田名部匡代君     仙谷 由人君

  津村 啓介君     平岡 秀夫君

  鷲尾英一郎君     柚木 道義君

同日

 辞任         補欠選任

  柚木 道義君     北神 圭朗君

    ―――――――――――――

三月十三日

 憲法九条改悪のための国民投票法案反対に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第六七九号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第六八〇号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第七三五号)

 同(重野安正君紹介)(第七三六号)

 同(郡和子君紹介)(第七七六号)

 同(重野安正君紹介)(第七七七号)

 同(仲野博子君紹介)(第七七八号)

 同(重野安正君紹介)(第七九二号)

 同(郡和子君紹介)(第八一一号)

 同(重野安正君紹介)(第八二二号)

 同(篠原孝君紹介)(第八二三号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第八二四号)

 同(郡和子君紹介)(第八六一号)

 同(横光克彦君紹介)(第八六二号)

 国民投票法案反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第八二一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件について調査を進めます。

 本日の議事の進め方について申し上げます。

 まず、斉藤鉄夫君及び笠井亮君から、日本国憲法改正国民投票制度について、基調となる御意見を順次二十分以内でお述べいただきたいと思います。

 次に、各会派一名ずつ大会派順に十分以内で基調発言者に対する質疑または発言を行います。

 それでは、まず、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、憲法改正国民投票法制についての公明党の基本的な考え、また議論の状況をお伝えしたいと考えております。

 まず、憲法改正国民投票法という国民の参政権にとって最も重要なルールづくりの議論がこの憲法調査特別委員会の場で始まったことは、画期的なことであるという点を強調したいと思います。昨年までの憲法調査会での議論や海外視察の成果を踏まえ、論点が明確になってまいりました。その論点についての調整を特別委員会の理事懇談会で行うことになった点も大きな前進と受けとめております。委員会や理事懇談会など国民に見えるオープンな場での議論こそ、国民的な理解を深めていく上で大切なことと考えております。

 さて次に、この論点について議論を進めていく上での我々の基本的スタンスについて一言申し述べます。

 一昨年十二月に、日本国憲法改正国民投票法骨子案を自由民主党と公明党の与党案として提示させていただきました。したがって、この案が我々の基本的立場ということになりますが、しかし、公平なルールづくりという国民投票法の性格を考えれば、各政党がそれぞれに意見を出し合い、それぞれに受け入れられるものでなくてはなりません。したがって、公明党はこの与党案に固執するものではない、今後大いに議論して皆が納得するルールにしたいということを明確にしておきたいと思います。

 また、この特別委員会で議論が始まったことを受けまして、最近、党内で数度にわたり全国会議員に呼びかけての議論を行いました。そこでは与党案と異なる意見も多く出てまいりました。きょうは、それらの意見も紹介しながら、我が党の現在の大方の考え方を紹介させていただきます。

 内容に入らせていただきます。

 まず、総論的事項についてですが、初めに、憲法改正の国民投票と国政選挙との同時実施についてです。

 憲法九十六条に「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、」とある以上、同時実施を否定はできませんが、与野党が政権を争う国政選挙と、国会の三分の二以上の勢力が協調して国民合意を問う国民投票とは全く異なる性格のものであり、同時に行えば国民の混乱を招くとの観点から、両者の同時実施を念頭に置いた規定は設ける必要はないと考えます。

 次に、一般的な国民投票をも対象にすべきかどうかという点についてです。

 これは今回の憲法改正国民投票法とは別個に考えた方がよいという意見が主流を占めました。その理由は、一般的国民投票について、その意義は十分認めつつも憲法改正国民投票との間に大きな性格の差があるということです。すなわち、国民投票が絶対的に必要な要件であると憲法に定められ、かつその結果に法的拘束力がある憲法改正国民投票と、任意で諮問的な効果しか有しない一般的な国民投票とは、切り離して論じる方がよいと考えられるからです。

 次に、各論的事項に入ります。

 最初に、投票権者と投票人名簿の問題です。

 憲法改正の国民投票は何年に一回あるかないかの投票であり、国家の基本を定めるものであるから、できるだけ幅広く投票資格を認めるべきとの観点から、投票権者の年齢要件を十八歳以上とすべきではないか、選挙権停止中の者にも投票権を与えるべきではないか、三カ月居住要件は削除すべきではないか等の意見が出されております。

 まず、年齢については、国政選挙と一致させることを前提にして、公選法の選挙権年齢を速やかに十八歳以上に引き下げるべきである、そのための検討条項を附則に入れるべきではないかとの意見が主流を占めました。なお、公選法選挙権年齢十八歳というのは我が党のマニフェストでもあります。また、できるだけ幅広く国民の意見を聞く必要があるとの基本的考え方からして、選挙権停止者や、三カ月より短い期間で引っ越しを繰り返す人たちも救済されるべきであると考えます。

 この際考慮すべきは、投票人名簿の調製と実務の対応にかかる負担とのバランスです。実務上の問題、すなわち名簿の作成とその真正さの担保。現在、この真正さの担保のため、現行公選法の選挙人名簿については、毎年四回の定時登録と縦覧、さらに選挙実施時の選挙時登録と縦覧というシステムが構築されております。これらにかかる負担を考えれば、国政選挙と同一名簿を用いるのが現実的との意見が主流でありましたが、最終判断の前に、別名簿の作成や登録、縦覧にかかる事務量について、もう少し詳しい情報が必要ということになりました。

 次に、国民投票運動については、原則自由とし、投票の公正確保のための最小限の規制を課すことを大原則にしたいと考えております。

 その上で、選管職員等の特定公務員の国民投票運動については規定を置かざるを得ないと考えますが、特に論点となっている一般公務員、教育者等の国民投票運動の禁止の是非については、優越的地位を利用しての運動は禁止されるべきだが議論まで拘束されるべきではなく線引きが難しい、現実的には無理かとの意見も出され、両論ありというところでございます。

 外国人の国民投票運動については、組織的で弊害のある運動のみ禁止する方向についてはおおむね合意ができましたが、基本的には規制は最小限にするべきと考えます。特に、基本的人権にかかわる条項が国民投票の対象となっている場合、在日外国人の声は日本人と同等に尊重されるべきであり、その運動の自由は保障されなければなりません。投票そのものは日本人によって行われるので、その自主性が損なわれるものではないと考えられます。また、党内の少数意見ですが、基本的人権にかかわる項目については永住外国人にも投票権を付与すべきとの見解も出されましたことをつけ加えておきます。

 戸別訪問、飲食物の提供、予想投票につきましても、人を選ぶ公職選挙とは基本的に性格が異なりますので、基本的に規制しないで良識に任せるのがふさわしいと思われます。また、投票依頼など対価性のある飲食物の提供は買収罪で処理されます。

 次に、新聞、雑誌、テレビ等の虚偽報道、不法利用等の禁止の是非についてですが、基本的に報道側の自主規制に任せるという考え方です。虚偽報道、不法利用に対しては、それに対する反論によって国民の判断材料そのものになり得るので規制の必要はない、また、討論番組等における公平性についても自主規制に任せ、訓示的な中立条項等必要なしとの意見が主流を占めました。ただし、テレビ、ラジオのような国民への影響が大きい放送メディアについては、投票期日直前の一定期間はスポットコマーシャルの禁止等の規制は必要でしょう。

 次に、罰則による規制ですが、投票手続に関する罪、投票干渉罪、投票箱開披罪、詐偽投票罪等については規定を置く方がふさわしい。買収罪については、対価性、報酬性の明白なもののみ禁止するよう明文の規定を置きます。しかし、その運用において濫用されないように、本法の適用に当たっては国民の政治活動の自由等に配慮するべしとの解釈規定を設けることは必要かと存じます。ただ、例えば、駅頭で賛成、反対の意見を書いたティッシュを配る、うちわを配る等は運動の盛り上げと国民啓発の観点から許される範囲ではなかろうかとの意見もあり、どこまでが許容される運動かについて、具体的なイメージを共有することが必要であると考えます。

 投票の自由、平穏を害する罪について、国民投票事務関係者に対する暴行罪、国民投票の自由妨害罪、凶器携帯罪、投票の秘密侵害罪などは投票の公正さを担保するために必要でしょう。

 国民投票運動への公費助成については、国会に議席を有する政党に対し、テレビ、新聞の無料枠の提供などを考えるべきと考えます。

 さて、次の大きな問題は、投票用紙とその記載方法です。

 まず、投票用紙の様式等をどうするかですが、この国民投票法より一段下の個別実施法に任せず、一般的な枠組みはこの国民投票法に決めておくべきであると考えます。また、一括して賛否を問う投票方式ではなく個別条項ごとに賛否を問う投票でなければならない、このように主張しておりますが、投票用紙も個別条項の総数に等しい枚数だけ複数枚用意し、それぞれ別個の投票箱に投票するものとすべきである、このような意見が主流を占めました。つまり、改正を問う一条項について、それぞれ一枚の投票用紙、一つの投票箱となるわけです。その投票用紙には、この用紙はどの条項の賛否を問うものかが明白になるような説明文を書き込んでおくものとするという意見でまとまりました。

 次に、投票用紙への賛否の記載方法ですが、与党案の、賛成はマル、反対はバツとするのが望ましいのではないかというところが多くの意見としてありましたが、ここで問題なのが白紙の扱いです。個別条項ごとに投票を行いますので、関心のない条項については意思表示をしない態度表明としての白票が多くなる可能性があります。その白票をどう扱うかは大きな問題です。投票用紙に賛成、反対、棄権の三つの欄をつくり、そのいずれかに印をするというのも一案です。いずれにせよ、もう少し検討が必要であるということになりました。

 次に、過半数の意義について、有効投票総数の過半数か投票総数の過半数かという点ですが、有効投票総数の過半数とする。ただし、先ほど述べました白票の取り扱いの議論との関係もあり、今後さらなる検討が必要であると考えます。

 最低投票率制度を導入するべきかについては、棄権運動など種々の弊害が予想されるので、導入しない方向で考えるべきではないか。

 在外投票制度については、郵便投票制度の簡素化等ができないか等の意見がありましたが、基本的に国政選挙と同等の制度にすべきということになりました。

 次に、投票期日及び憲法改正案の周知、広報について、与党合意案で三十日という短期の期日を入れたのは公明党の主張でございましたが、国民への周知パンフレットの作成をする期間等を考えれば、六十日から百八十日程度が妥当かということになりました。また、この枠内におさまらないような改正案が出てきたときは、同時に特例法を制定すればいいのではないかということでございます。投票期日については、発議の際に、発議案の内容を熟知している国会の議決で決めるのがふさわしいと考えます。どのような事項を記載した資料を配布することとするかについては、憲法改正案の条文のみならず、改正の内容の要約や、賛成、反対の両方の立場からの解説まで記載したわかりやすいパンフレットが必要である。

 そのパンフレットはだれが作成するべきかについては、発議した国会に、賛成派、反対派両派の議員から成る国民投票委員会のようなものを設置し、ここが作成するのがいいのではないか。そして、この国民投票委員会の構成は、国会内の機関である以上は、基本的に議席数に応じた配分とするべきではないか。そうすれば、発議される個別項目ごとにこの委員会が幾つも設置されるというような不合理を避けることもできるのではないか。ただし、上記のパンフレットに反対意見を掲載するに当たって、それが反対会派の主張どおりに正確に掲載されるということは非常に重要なポイントであり、そのための措置、配慮が委員割り当てだけではなくオブザーバー参加等も含めてなされるべきである、このように考えております。

 次に、憲法改正国民投票法と同時に、それを発議する国会にかかわる国会法の改正が必要です。国会法改正案の主要論点について、次のような議論を行いました。

 まず、憲法改正案の原案の提案権を国会議員に限定するか内閣にも認めるかについて、内閣の提案権については別途内閣法の改正等にゆだね、まず国会議員に限定する国会法改正からスタートする。なお、国会議員提案の際の賛成者の員数要件については、それぞれの院の総定数の三分の一であるとか、衆議院百、参議院五十など、いずれにせよ余り小さくない数の方が望ましいという意見が出されました。

 国民請願による憲法改正案の提案のような制度を認めるべきかという点について、このような制度の拘束性を強くすると、憲法四十一条、議会制民主主義を前提とした国会の唯一の立法権に反するし、また、拘束性を認めないのであれば、現在の請願制度と大差ないものとなり、結果として認めるべきではないという意見が主流を占めました。

 憲法改正案の審議体制、手続については、五年から七年ごとに二つから三つの項目の憲法改正が発議されるとのイメージで考えますと、常設の委員会を置き、常に国会で議論されていることが大事で、従来の憲法調査会を改組したものとしたらどうかという意見があり、これに対して、常設機関とすると憲法の硬性さを軟性化してしまうのではないかとの疑義も呈されました。これに対しては、憲法の硬性さは三分の二という議決要件で対処するべきであり、議論をする場は常に設けられているべきであるとの意見が述べられたところでございます。

 また、憲法改正案の審議手続、議事手続の特則については、中央、地方公聴会の開催の義務づけ等の規定を置く必要がある、両院合同の審議については今後の検討課題であるということになりました。

 憲法改正案の発議について、憲法に規定される総議員とは、現在議員数ではなく法定議員数であると解する。また、個別項目ごとの発議、いわゆる個別投票の原則に関して何らかの規定を置くべきではないかとして、国民主権の趣旨に照らし、国会はできるだけ個別項目ごとの発議とするべきとの訓示規定を置いた方がいい。ただし、関係する条項で論理的な整合性が必要なものについて、まとめて一項目とする等の配慮は必要であるという意見が主流を占めました。

 以上、ここ一カ月の間に数度にわたって行った党内議論の様子を踏まえ、意見陳述をさせていただきました。

 もう一度繰り返しますが、公平なルールを決める国民投票法ですので、多くの政党間での合意こそ大切と考えます。公明党はそれに向けて努力していくことをお約束し、この場での発言とさせていただきます。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 初めに、国民投票法案をめぐる論点協議の問題について述べたいと思います。

 我が党は、本委員会の理事会、理事懇談会において、いわゆる憲法改正国民投票法制に関する論点協議を行うこと、そのことを初めとして、国民投票法案づくりの具体化の動きには、三つの理由から反対であります。

 第一に、憲法改正の国民投票法案は九条改憲の条件を整えることを目指すものであり、我が党はその審議を目的の一つとする憲法調査特別委員会の設置そのものに反対してきました。その後、自民党が九条二項を削除し自衛軍の保持と海外での武力行使を可能とする新憲法草案を党大会で決定し、民主党も九条改憲を方向づける憲法提言を発表されています。さらに、日米間で在日米軍基地の再編強化、自衛隊との一体化などを推し進めていることなど、この間の経過は何のための国民投票法案であるかを鮮明にしております。こうした中で、国民投票法制定の最大のねらいは、この改憲を国民投票の名で国民に押しつけることにほかなりません。国民投票法制の論点協議は、こうした憲法改悪の条件整備を一層進めるものであり、反対であります。

 第二に、改憲推進の立場が本委員会の多数を占め、現実に、自民党、民主党などがそれぞれ新憲法草案、憲法提言を公表し、公明党が加憲の立場を表明している今日においては、そうした協議が改憲案を通しやすい制度設計を行おうとするものになることになるからであります。

 本委員会でも、自民党の委員は、国民投票運動について、公務員や教育者がその地位を利用して行う国民投票運動、組織的で弊害がある、あるいは、何が組織的で弊害があるかはあいまいな外国人の国民投票運動は禁止すべきと主張されました。また、何らかのメディア規制も視野に入れている発言もありました。このような、国民の目、耳、口を封じることを主張しているところにも、できるだけ国民の投票運動を抑え込んで、何が何でも改憲案を通しやすいものにしようとする意向があらわれていると言わなければなりません。

 また、憲法改正と結びつけるのではなく、公正中立なルールをつくることが重要との主張もありますが、改憲推進勢力から既に改憲の提案が公表され、具体的な改憲の動きと憲法改正国民投票法制定の動きがまさにセット、二人三脚で進められている中で公正中立なルールづくりなどできるのかという批判の声が国民の間からも上がっていますが、まさにそういうことだと思います。

 第三に、九条を改憲して我が国を戦争をする国に変えてしまうことなど国民のだれも望んでおらず、そのことに道筋をつける国民投票法制の論点協議は国民の要求に反するものであるという点です。

 昨年の海外調査でも、欧州各国の国民投票は、国民がみずからの民意を反映するためのものと、権力の側が民意を統合するためのものと、両方の可能性を持っていることが明らかになりました。

 今日の一連の論議は、国民が民意を反映する形で起こっているのではありません。一昨日発表されたNHKの世論調査の結果を見ますと、改憲のための国民投票法案について、「よく知っている」は三%、「ある程度知っている」は二四%であり、「あまり知らない」は四八%、「まったく知らない」は一八%で、六六%の人がこの法案について知らない。これは、国民が主体的、積極的に改憲を望んでいないことの反映であります。「よく知っている」、「ある程度知っている」人でさえ、「憲法改正に必要な手続きを整えておくために早く法案を成立させるべきだ」が二三%に対して、「憲法改正に賛否両論があり、法案は時間をかけて議論すべきだ」、「今の憲法を改正する必要はなく、法案は必要ない」が合わせて七六%でありました。国民投票法制の論点協議を始めることによって国民世論を喚起する効果をねらっているとすれば、全く本末転倒だと思います。

 幾つかの論点について述べたいと思うんですが、以上三点述べましたが、この際、関連して、国民投票制度の整備は憲法改正の準備だけではなく国民に憲法改正を否決する機会を与えることでもあり、我々が一方的に憲法改正に向けたものと決めつけることは国民主権原理にも反するのではないかという御主張がありました、これに対して一言触れておきたいと思います。

 憲法九十六条が改正について国民の承認を義務的に求めていることからすれば、国民投票制度の整備は紛れもなく憲法改正の準備であります。しかも、憲法制定後約六十年間つくられてこなかった法律をにわかにつくろうとの動きが出ているのは、改憲案を準備し、改憲を政治日程にのせようとしている動きと歩調を合わせたもので、今日の客観的事実からも、改憲のための準備であることは間違いありません。

 国民投票法制の整備は国民に憲法改正を否決する機会を与えるではないか、こういう御議論もありますが、私はこれには違和感を覚えます。なぜなら、憲法九条改憲を望んでいない国民の立場からすれば、望まない改憲案を一方的に提案されるわけで、それを否決するための機会が与えられても、どれほど有益なのか疑問を持つのではないか。九条改憲案が否決されたからといって、戦後長きにわたって九条に反する政治を行ってきた自民党がその政治を変えるとは限らないわけで、そのようなことに労をとられるのは国民にとっては甚だ迷惑なだけではないか、こういう思いもいたします。改憲を望んでいない国民の意思の表明は、国民投票で改憲案を否決することだけに限られるものではありません。国会に改憲案を発議させないこと、国民投票を行わせないことも、国民が主権を行使する重要な内容の一つであると考えます。

 次に、与党委員からは、憲法改正がもう目の前に来ている、その中で手続法を整備する大きな責任がある、こういう御意見や、改憲に直結する大事な法案だ、さらには、九条を最大の論点として加憲論議を進めているが、その道筋を定めるべく早期に成立させたいという御議論もあります。国民投票法制と改憲内容が一体不可分とされていることは明らかだと思います。

 そこで、関連して、今日の憲法論議に当たっての基本的問題について幾つか述べたいと思います。

 まず、今日の改憲論議が憲法の基本的な原則を踏まえたものかどうかという問題ですが、新憲法の制定、新しい憲法の構想と言い方はさまざまですが、要するに、現憲法とは異なる新たな憲法をつくるという志向があらわれていると私は見ています。憲法九十六条二項は、憲法改正について「この憲法と一体を成すものとして、」を規定しておりますけれども、その趣旨は、現憲法の基本原理、基本的な価値を変更するような改正は許されないということであります。

 憲法学界においても、憲法改正権は憲法制定権の行使によって制定された憲法典の中に創設された権限であること、したがって、憲法典の同一性、継続性を前提とする権限であることから、日本国憲法の基本原理の否定は法的には不可能だとされております。ところが、例えば自民党の新憲法草案を見ても、立憲主義の問題でも、平和や人権の問題でも、現憲法の基本原理を丸ごと改変するものとなっております。

 憲法というのは言うまでもなく最高法規であり、授権規範であるとともに公権力を制限する制限規範であることは、憲法調査会でも繰り返し指摘されてきたことであります。この点で、日本国憲法は、例えば前文で、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と侵略戦争の反省と不戦の宣言をしておりますが、同時に、戦争を起こすのは政府であって、その政府の手足を縛るという考え方が示されております。

 ところが、自民党の新憲法草案では、前文を全文書き改めて、今引用した部分をそっくり落とす一方で、「帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有」という表現で国民の責務を盛り込んでおります。これは、権力への拘束を解除して国民に責務を強要するもので、日本国憲法とは全く性格の異なる憲法に改変することにほかなりません。

 日本国憲法の恒久平和の原則についてはどうか。

 これを見ますと、日本国憲法は、第二章を戦争放棄として、九条第一項で戦争と武力による威嚇または武力の行使を永久に放棄することを宣言し、それにとどまらず第一項の宣言を実行するために第二項で戦力の不保持と交戦権の否認を定めて、徹底した平和主義を貫いております。そして、前文で、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」として、日本国憲法のアイデンティティーに当たる、平和のうちに生存する権利、いわゆる平和的生存権をも述べております。これは、軍事力による平和ではなく、積極的な外交による平和を実現しようという高い決意に立ったものにほかなりません。

 しかし、自民党の新憲法草案にはそうした積極的な外交努力によって平和を構築しようとする思想は見られず、専ら軍事一辺倒と私は読みました。前文から平和的生存権を取り払い、侵略戦争の反省と不戦の宣言を落としてしまって、積極的な外交によって平和を構築しようという気概を放棄していると言わなければなりません。その上で、新憲法草案は、第二章も戦争放棄ではなく安全保障に書きかえて、九条二項を削除し、自衛軍を保持することと、自衛軍の活動として国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動というものを規定しております。これは、現憲法の平和主義の原理の根底そのものを変質させるものだと思います。

 この新憲法草案によって何が変わることになるか。

 現憲法のもとでさえ、違憲の存在である自衛隊を戦場であるイラクに派兵していますけれども、新憲法草案によって、今度は武力行使も含む自衛軍の海外派兵を可能にすることになります。しかも、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動としておりますけれども、内実は、専ら米軍が起こした戦争に日本が積極的に協力、加担することになる。さらに、テロとの闘いを口実に、今進められている米軍再編、米軍と自衛隊との一体化、日米同盟の地球的規模の拡大を後押しするだけでなく、憲法上も一層強力に推し進めるものとなっております。

 軍隊の保持とその行動だけでなく、人権や統治機構の分野でも軍事が貫かれている、私はそう読みました。七十六条で軍事裁判所を設置することや、社会的儀礼、習俗的行為の範囲という言い方で天皇や首相の靖国神社参拝を可能とする二十条の改変。二十九条の財産権の規定でも、例えば米軍用地の移転、整備、拡張を公益の名のもとに国民の財産権を制限して行えるようにすることまで規定しております。自民党は、新憲法草案によって新しい体系をつくると述べておりますけれども、これらの改変によって、まさに戦争国家体制を目指していると言わなければいけないと思います。

 加えて重大なことは、今出されている改憲議論や提案が、同時に国民主権、基本的人権、議会制民主主義、地方自治という日本国憲法の民主的原理の全般にわたって根本的な制約を持ち込もうとしていることであります。

 こういう中で、改正手続についても、新憲法草案は九十六条の要件を緩和することを提起しています。現在の改正手続は、言うまでもなく衆参の両方が一致して三分の二以上の賛成がなければ改憲案を発議できないわけでありますけれども、新憲法草案によりますと過半数で可能になる。しかも、衆議院、参議院のどちらかの過半数の発議から始めることができる。二回目、三回目の改憲の発議を容易にすることにねらいがあることは明らかだと思います。

 自民党委員から、新憲法の制定であっても現憲法の基本原則は引き継ぐという発言がありましたけれども、新憲法草案は現憲法の基本原理を大きく変えて変質させております。それを九十六条の改正手続に基づいて改憲をやろうというのはとんでもないことだと思います。そのような日本国憲法の改変は許されないことを重ねて強調しておきたいと思います。

 今、世界では、憲法九条を、国際社会の平和秩序をつくっていく上で指針にする、とりわけ東アジアでの平和と安定の秩序をつくる上での指針として評価する動きが広がっております。いろいろな動きがありますけれども、国連関係者からも高い評価が寄せられております。

 この間、国連開発計画、UNDPのマーク・マロックブラウン当時の総裁は、参議院の憲法調査会が国連を訪れた際に、日本の憲法が高い価値として示している平和や発展、人道的安全保障といったものは国連、UNDPでも高い価値として評価されています、こう述べました。

 国連安保理が設立した元旧ユーゴ戦犯国際法廷裁判長のアントニオ・カッセーゼ氏も、日本の外務省が開いたセミナーで、日本国憲法九条は戦争や戦争に関する行為に訴えることを禁止しており、すばらしい規定です、第二次大戦に敗戦したドイツ、日本、イタリアの中で日本の憲法がぬきんでてすぐれていると思います、第九条は非常にすばらしい規定であり、この規定が改正されないことを切に願いますと強調しております。

 開発を通じて平和構築に取り組んでいる国連機関の責任者や、民族間の集団殺りくを裁いた国際法廷の裁判長が、そろって憲法九条を高く評価していることは、重い意義を持つものだと考えます。

 私が強調したいのは、今世界で憲法九条への新たな注目と評価が寄せられているのは偶然ではないということであります。その根底には、世界の大きな構造変化があるということを指摘したいと思います。

 戦後、植民地体制が崩壊し、新たに独立をかち取った国々は、国連憲章に基づく世界の平和秩序を築く重要な担い手となりました。植民地体制が崩壊した後、世界各地にアメリカを中心とする軍事同盟体制がつくられましたが、この体制も、今ではその多くが解体、機能不全、弱体化に陥り、それにかわって仮想敵国を持たない平和の地域共同体が広がっております。さらに、米ソ対決の構図が崩壊したことが、世界の平和秩序、平和のルールを求める諸国民の運動の新たな発展の条件をつくりました。これらの世界の構造変化は、イラク戦争に際して地球的規模で沸き起こった空前の平和の波となってあらわれました。戦後六十年を経て国際政治の現実が憲法九条が掲げた理想に近づいてきている、ここに今日の世界の新しい特徴があることを申し上げたいと思います。

 最後に、改めて、国民は憲法九条改憲のための国民投票制度は望んでいないことを強調しておきたいと思います。私も紹介議員になりましたが、本委員会にはこの法整備に反対する請願が届けられております。また、各界からも意見書が寄せられており、このことを重く受けとめるべきだと思います。

 滋賀県弁護士会がことし一月三十一日に発表した憲法改正国民投票法案の国会提出に反対する会長声明は「今回の法案提出の動きは、憲法九条の変更を企図したものであることは明らかである。九条の改変と無関係に、中立的な意味で、法の制定の動きがあるわけではない。」と明確に指摘しております。

 また、中国新聞の社説「改憲への動き なぜ急ぐ「国民投票法」」の中でも「改憲の前提となる重要な法案なのに唐突すぎないか。国民を置き去りにして一気呵成に進む危険性を感じる。「平和憲法」の果たしてきた役割をじっくり考え、議論をさらに深める必要がある。」「「改憲ありき」で数の力を頼りに押し切ることがあってはならない。」こう警告しておりますが、まさに正論だと思います。

 最近の毎日新聞の世論調査では、日本国憲法が戦後の平和維持や国民生活の向上に役立ったと評価する人が八割に上っております。九条の会は全国四千五百を超える勢いであります。

 今日、憲法問題で問われていることは、日本国憲法の価値を再評価し、それを政治や社会などの各分野に生かすことであり、改憲の道筋をつけることではない、このことを重ねて強調して発言としたいと思います。

 ありがとうございました。

中山委員長 これにて基調となる御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 それでは、まず、葉梨康弘君。

葉梨委員 貴重な御意見をありがとうございました。特に前半、笠井委員に幾つか質疑をさせていただきまして、それから発言をさせていただきたいと思います。自民党の葉梨康弘です。

 一緒にヨーロッパに視察に行かせていただきましたので、余り感情的な論争にならないようにと思いますけれども、我が党の新憲法草案について、何か自民党が戦争に突っ込んでいるような、いろいろと詳細な御意見を承りましたが、まず冒頭、自民党は、今の憲法の基本原則、大変これは評価しておりますし、また平和国家日本が新しい時代を生き抜くためにどうしたらいいのか、こういうことを真剣に考えているんだということを申し上げたいと思います。

 そして、そういった新憲法草案、あるいは公明党が加憲を言い、そして民主党が創憲を言うということがあるので、この国民投票制度をつくっては改憲への道筋をつくる、そういうような御意見だったと思いますけれども、まず第一問ですが、各政党が、政治団体ですから、それぞれが憲法について立場を明らかにする、このこと自体について笠井委員はどのようにお考えになられますでしょうか。

笠井委員 御質問ありがとうございます。

 葉梨議員とは、欧州の調査も御一緒しまして、いろいろな点で共通に感じたこともありましたし、そして憲法問題あるいは国民投票法案ということについていろいろと意見交換もする機会がありました。そして、委員会で今御質問もいただきました。

 自民党の新憲法草案については、お立場ということで述べられましたが、私は先ほども述べたようなことで、実際に提案されていることが平和原則を守るどころかそれを根本的に変えるものだということは申し上げたので、それは私はこれ以上はお答えですので申し上げませんが、憲法問題についてということでいきますと、言うまでもなく国の基本問題であります。憲法について政党自身がそれぞれどういう見方をするか、そして憲法についてどういうスタンスをとるか、それは政党として当然それぞれ立場があっていいことだと思います。

 大事なことは、しかしやはり戦後六十年たつ中で、この日本国憲法がどういう形でできたか、どういう教訓に基づいてできたか、そういうことをきちっと踏まえながら、やはりその憲法を、どういうふうなことを国民の立場から大事にしていくということで、政党としては責任を持つことが求められているのではないかということを強く感じておりますし、国際社会の動きの中でも、戦後政治の出発点、土台があるわけですから、それとの関係でも、政党が責任を持って、憲法に対してどういう立場をとるか、このことはそれぞれが考えることだと思います。

葉梨委員 短くお願いいたします。

 それと、御意見の中で、九条の改正など国民はだれも望んでいないというような御指摘ございましたけれども、その根拠をお願い申し上げます。

笠井委員 さまざまな世論調査の中で、憲法九条が平和に役立ってきたという調査もかなり出ております。

 そして、私が申し上げたいのは、やはり憲法九条ということで、国民の多くの方々、戦争体験者も含めて、あるいはそれを引き継ぐ方々も含めて、九条を改変することによってこの日本を戦争する国にするということになりますと、これは明らかにそんなことはだれも望まないと、もう言下に答えるというのが明確だと思います。

 そういう点でいいますと、やはり新憲法草案の中身にかかわりますが、実際には、第一項を残しながらも、第二項を変えて自衛軍にしながら、そして海外に出ていく。そして、今、日米同盟という立場を自民党はとっていらっしゃいますけれども、そういう形でいきますと、これはやはり戦争をする国づくりになる、まさにそういうものだということで、私は、それに対して国民は望んでいないということは明確だというふうに思っております。

葉梨委員 民主主義でございますので、自民党の持ち時間の中で共産党さんにもしっかり発言をしていただきました。

 それで、申し上げますけれども、九条の改正などだれも望んでいない、各種の世論調査によればということですが、改憲を望むというような形での国民の世論というのが、六割が望む、そういうような世論調査があるということも指摘をさせていただきたいと思います。

 これから以降は、質問というよりも笠井委員がおっしゃられたことについての批評ということになりますが、否決をするために国民の労をとられる、これは非常に非効率な話であるというような御指摘がございまして、怒らないでいただきたいんですが、久しぶりに効率的民主集中制の議論を聞かせていただいたという感じがいたします。

 しかしながら、民主主義というのは、これはたしかチャーチルでしたか、やはりこれは大変無駄というか非効率なものです。本来、非効率なもの。そして、国民の声というのは丹念に丹念にやはり聞いていかなければならないだろうと思います。ですから、否決をするために国民に無駄な労をとらせるというのは、私自身は、今の民主主義の本当の原則からちょっと外れた発言じゃないかなというような感じを持っています。

 そして、次に、基本原則を変えるか変えないかということについてお話がございました。

 ともに笠井委員と一緒に欧州を回ってまいりまして、基本原則については、憲法上、明らかにほかの条項と違えた形で改正手続をつくっている国もございました。これは、スロバキアあるいはスペイン。スロバキアの場合は、むしろ基本原則を変えるに当たっては国民投票を用いない。スペインについては、基本原則を変えるに当たっては極めて過重な形で国民投票あるいは国会での議決、これを持つというような形です。

 それを当然ごらんになっての上だと思うんですけれども、このように、世界の憲法典においては、基本原則を変えないんだったら変えないで、これはしっかりとそこのところを書いているわけです。もしも今の笠井先生の御指摘のようなことであれば、やはりそこのところは、もしそのような改憲が必要ということであれば、九十六条自体をしっかり変えて、基本原則についてはより過重な改正の手続をとらなければならない、そういうようにしなければならないんだろうというふうに思っています。

 そして、もう一つ申し上げますけれども、憲法改正の国民投票、これについては九条の改憲を前提としてだというようなお話がございましたけれども、決して私どもはそうは考えてはおりませんということをもう一つ申し上げておきたいと思います。

 あと二、三分でございますので、制度設計に関する話として、私から幾つか発言をさせていただきたいと思います。

 自民党の中でもいろいろと幾つかの議論がありました。まず、最低投票率の議論について党内でもいろいろと議論をしていまして、最低投票率を設けるべきではないかというような御議論があるにはあったんです。しかしながら、私は、先ほど申し上げましたけれども、別にこの国民投票の制度というのは九条の改憲を前提としているわけではない、その意味からも最低投票率というのは設けない方がいいのではないかなというふうに思いました。

 なぜならば、諸外国を調査いたしましたところが、意外と、憲法といってもいろいろな形の多岐にわたるものがございます。したがいまして、条項によりましては、国民に余り関心のない条項について改正をするということも間々行われる。そのときに、投票率というのは、この間のEU憲法、これについて、これはスペイン憲法ではございませんけれども、スペインで国民投票をした折にはたしか三〇%程度の投票率であった。スイスにおいても、これも憲法ではございませんけれども、国民投票の投票率が大体四〇%台。これはイシューによって、イシューが非常に国民に関心の高いテーマであれば確かに高くなりますけれども、例えば統治機構に関する問題であるとかそういった問題について、必ずしも投票率が高くならない可能性もある。

 では、かといってそれで無効にしてしまったら、まさにそういう部分というのは日本の国の、特に統治機構ですから、本当に技術的な部分、これについての改正を非常にやりづらくしてしまう、そういうことで最低投票率という制度は私は設けない方がいいのかなというふうに思います。

 それから、前回も申し上げましたけれども、一般の国民投票の関係ですけれども、これはオーストリアにおいて、先にまず憲法改正の国民投票制度というのをつくって、そしてその後に諮問的国民投票というのを付加的につくった、このことは大変私は参考になると思います。直接民主制的な手法について私自身も個人的な誘惑はありますけれども、我が国の政治文化の中ではこの国民投票というのは行われていない。その中で、まず憲法改正というのを先にして、そして諮問的な国民投票を付加的につけた、そういう国もあるんだということを一つは指摘しておかなければならないというふうに思います。

 それから、笠井先生の御指摘の中で、与党がつくると何か改憲案を通したいような制度設計になるんじゃないか。(発言する者あり)いや、これは政治活動の規制ですね。それについてそういう御指摘があったかと思いますけれども、ただ、今ここで私どもがやっています議論といいますのは、今の政治資金規正法、それから公選法、そこら辺とのまさに調整の議論であって、非常に技術的な議論をさせていただいているんだということをつけ加えて、指摘をさせていただきたいと思います。

 以上で質問時間は終わりました。私からの発言は終わらせていただきます。ありがとうございます。

中山委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党・無所属クラブの鈴木でございます。

 私からも、今回の憲法改正国民投票制度について発言をさせていただきたいと思います。

 まず、国民投票制度制定の必要性について申し上げたいわけでありますが、そして、そのことについて笠井委員にちょっと御質問したいと思います。

 日本国憲法は九十六条に憲法改正を予定した規定を置いておるわけであります、このことは申し上げるまでもありません。ところが、憲法制定から六十年を経過した現在に至るまで具体的な改正手続を定めた法律を制定していない、このことも御案内のとおりであります。私は、国民主権原理から見て、憲法改正において主権者国民の意思が反映される、そういうことが最も保障されなくてはならない、したがって、そういう立場からいきますと、この国民投票法の成立というのは、やはり早期に図られるべきだと考えます。

 国民の目線に立って私は笠井委員にお伺いしたいんですが、先ほど委員は三つの点を指摘されました。その中に、憲法改悪の条件整備を進めるものだ、それから、改憲案を通しやすい制度設計なんだ、そして、戦争への道筋をつくる、こういうことでおっしゃったわけでありますが、先ほど申し上げましたように、九十六条に憲法改正を予定した規定があるわけですね、しかも、そのことについての法律が制定されておらないわけですから、私は、冒頭申し上げた国民の目線からいって、規定の中にあるものを制定するということに対して何でそんなにあれなのかなと。しかも、先ほどおっしゃったような、繰り返しませんけれども、こういうことに決めつけていかれるということについて、もう一度、短くて結構でございますので、お教えいただきたいと思います。

笠井委員 ありがとうございます。

 私は、平たく申し上げて六十年間なかったじゃないかという話なんですが、現実にこれまで国民がなくて困ったわけじゃないと思うんです。ないからといって、国民の側から怠慢だったじゃないかと国会に対して言われたということはなかったと思うんです。

 そういう点でいいますと、現実に、一回、一九五〇年代に当時の自治庁が国民投票法案を出そうとしたときがありましたけれども、それも九条を変えるためじゃないかということがわあっと問題になりまして、結局引っ込めるという事態がありましたけれども、国民の側から見れば、いよいよ憲法は、いろいろな状況を見たときに、ここは変えるべきだという国民の多くの気持ちがあるときには、その手続上、九十六条があって、国民投票法案ですから、手続の法案が必要だという声がわあっと上がるのは当然だと思うんですが、そうなってこなかったということは、国民の側からすると、そういう必要性というのが上がってこなかったじゃないかと。

 今なぜ上がったかというと、現実には政治の舞台で、政党の中から、先ほど申し上げましたけれども、憲法を変えようという動きや提案というのが出る中で、むしろ、そういう政党の側から憲法改正提案とあわせてその前提となる手続をつくろうじゃないかという議論が起こってきたという経過がありますので。国民の側からすると、今ないことで何か困っているのかというと、そういうことじゃないんじゃないかということでありますので。だから、それは必要なときに、国民が思ったら、九十六条に基づいて投票法案をつくればいいじゃないかと。それでいいんだというふうに思っております。

鈴木(克)委員 そこのところは少し見解が違うというふうに思います。しかし、このことは余り、限られた時間でありますので先に進めたいと思います。

 たくさんお伺いをしたいというか申し上げたいんですが、二つ目として、投票権者の範囲についてちょっと斉藤委員にお伺いをしたいと思うんです。

 言うまでもありません、この憲法改正の国民投票が主権者国民にとって最も重要な権利の行使であるということだと私は思っています。したがって、私は、十八歳以上の者に認めるべきだ、このように思っておるわけです。その理由は、十八歳といえば、仕事も持って、社会の構成員として立派に責任を果たしてみえる方もたくさん見えるわけですね。また、若者に政治参加を促すということで自己責任を自覚してもらうというような点もあるのではないかな、このように思っておるわけです。したがって、選挙権の年齢も、成人年齢も十八歳でいいじゃないか、私はこのように思っておる一人なんですが。

 海外の報告書を拝見させていただいても、大方の国が十八歳というような状況ですよね。先ほど斉藤委員は、党のマニフェストにも十八歳ということはうたってあるんだ、こういうことをおっしゃったわけでありますが、その辺をもう一度、十八歳でいいんだというところについて少し説明をしていただけるとありがたいと思います。

斉藤(鉄)委員 私個人の考え方も党の主流の考え方も、今鈴木委員がおっしゃったこととほとんど同じでございます、公職選挙法、選挙権年齢も含めてもう十八歳以上とすべきである。その理由は、先ほど鈴木委員がおっしゃったこととほぼ同じでございます。

 しかしながら、議論になりましたのは、その期間までに、成人年齢、民法との関係等の議論も当然必要になってまいります、したがって、やはり少し時間がかかるであろう。しかし、その時間をできるだけ短くすべく、今回、公職選挙法も含めて十八歳以上とするべく努力すべきだという附則を入れたらどうかという考え方が主流を占めました。

鈴木(克)委員 あと時間もわずかでありますので、投票の方式について私の考え方を述べさせていただいて終わりたいと思いますが、この投票の方式というのは、俗に言う個別方式か一括方式かということでこの委員会でも重ねて議論をされてきたわけでありますが、国民の立場から考えると、例えば九条の改正と環境権を一括して問われるということになりますと、どのように判断を下していいのかということで、これは当然迷うわけであります。戸惑うと思うんですね。

 したがって、私は、設問はできるだけ個別にすべきだというふうに思っています。ただ、内容的に不可分で一体の場合にはまとめて国民に問うということでもいいのではないかな、このように思っておるわけであります。この点については、先週の委員会の保岡、枝野両先生の基調発言も、そして、先ほどの斉藤委員の発言も、基本的に一致をしておるのではないかな、このように思っております。したがって、私は、ぜひこの委員会でそういう方向でまとめていただけたらと、このように思っております。これは私の考えを申し上げておきます。

 メディアに対する規制でございますが、これも平たく言えば、できるだけ最低限の規制で置いていただきたい、このように思っております。ただ、これも電波の問題とか、特にメディアの中でもマスメディアの問題等々、いろいろあると思います。その辺は、今後、当委員会でもしっかりとまた議論をさせていただけたらと、このように思っております。

 以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。

中山委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 本日のこの特別委員会、笠井委員の発言によりまして、一気に憲法の中身まできょうは議論が行ってしまったなと感じているのでありますけれども、今までのお二方の質疑、発言に続く話を笠井委員に確認させていただきたいと思っております。

 先ほどからお話を伺っておりまして、笠井委員は、憲法九十六条の改正規定にもかかわらず、こうした手続法、いわゆる国民投票法がつくられてこなかったのは、国民が憲法改正を望んでいないんだ、手続法を必要としなかったと。また、そこは言葉をつけられて、憲法九条改正を前提としたというふうにおっしゃったわけでありまして、そこは聞いている国民は若干違和感があるのではないかと私は思っております。

 私は、笠井委員に、国民が憲法改正を望んでいない、望んでこなかった、したがって手続法がなかったんだ、こういうことは認識論として、今日までの認識論として百歩譲って、そうなのかな、こう思っているわけでありますが、しかし、ただいまの現状、政党がとおっしゃったけれども、国民の皆さんも、先ほど話が出ました世論調査の中でも、憲法総体としては六割ぐらいの方が改正ということも必要ではないか、賛成だという声もあるわけでありまして、政治はやはり一歩先を見て議論をしていかなければいけない責務があるわけでありますが、憲法全体の改正は、九条に特化した、九条を前提としたという言い方で常に冠をおつけになるわけでありますが、憲法全体としてはどのようにお考えなのか、重ねてお伺いしたいと思います。そして、世論の動向をどう把握しておられるのか、感じておられるのか、伺いたいと思います。

笠井委員 ありがとうございます。

 私たちは、憲法について言いますと、憲法の全条項を擁護する立場ということでありまして、そういう点でいうと明確な立場をとっております。

 世論との関係ということで言われましたけれども、今、抽象的な議論ではなくて、現実に国民の前には九条という問題を核心的なものとする、自民党の案も、先ほど葉梨委員からお話がありましたが、実際にはいろいろやっても九条が焦点になるということでいろいろ御議論されているわけですし、それから、公明党でも加憲ということでいうと、斉藤委員も別の場所で九条を焦点にするということで、大いにそこは議論の焦点だと言われましたが、そういう問題が出てきている中で、実際には、憲法一般というよりも、具体的に言うと、憲法九条についてどうするかということが現実問題になっているわけですから、そういう中での問題としてきちっと見ていく必要があるし、基本原則という点でもそことの関係で申し上げたということであります。

桝屋委員 別の聞き方でもう一問だけお尋ねしてみたいと思います。

 先ほどの説明の中でも、手続法がなくて困っていない、困っていないんだ、こういう御説明をされたわけでありますが、この委員会でも、先週もありました、憲法九十六条の関係から立法の不作為の議論がなされましたけれども、恐らく笠井委員におかれては、困っていると、こういう表現でありましたが、まさに国民の権利が明白に侵害をされているというような場合は確かに立法の不作為ということは言うだろうけれども、状況はそうではないんじゃないか、こういう認識かと思いますけれども、戦後六十年、九条の問題を言われておりますけれども、例えばプライバシー権や地方自治、さらには環境権など、以前の国会で個人情報保護法の議論をしたときも私自身は最高規範としてのプライバシー権あたりがどうしても必要だなと感じた次第でありますけれども、そうした国民の権利を、より保護する、明白な侵害ということもあるんでしょうけれども、より保護するという立場から、最高規範として検討しなければならないテーマは既に存在しているというふうに私は思っておりますが、そのあたりのお考えを短くお尋ねしたいと思います。

笠井委員 立法の不作為と言われましたけれども、これは言うまでもないですが、この問題というのは国家賠償請求訴訟に関連して使われる法律用語でありまして、その意味するところは、ハンセン病訴訟などのように、国民の権利侵害の訴えがあるにもかかわらず国会が過失によって少数者の人権救済に必要な立法あるいは法改正をしなかったという場合であって、今日、主権者国民の間に改憲の具体的内容について合意があるわけでなく、国民投票制度がないことで国民の憲法改正権が侵害されているわけではないという点で、不作為というのは成り立たないんじゃないかというふうに思っています。

 それから、さまざまな権利の問題で、この憲法に対してさらにいろいろなことを書き込む必要があるじゃないかという御意見ですが、それについては、私、個々には時間がないとおっしゃっているので申し上げませんが、現憲法の中でその条項を生かす中できちっとやっていくということが基本だと考えておりますので、そういう中で、きちっと、大いに憲法を生かすという議論を国会でもやっていったらいいんじゃないかというふうに考えております。

桝屋委員 引き続きこの議論をさせていただきたいと思っておりますが、具体的な中身に若干入りたいと思います。

 斉藤委員にお尋ねをしたいと思います。

 斉藤委員の発言で、国会議員の提案の場合、先ほどの御説明では、員数要件というのは余り小さくない方が望ましいと。いわゆるこの手続、ルールにおいてもハードルを高くし、慎重な姿勢というものがうかがえたわけでありますが、逆に過半数の問題ですね、過半数の意義については有効投票の過半数というふうにおっしゃって、あるいは最低投票制度についても導入しない方がいいと。理由も言われましたけれども、これは逆にある意味ではハードルを低くしておられるような印象も受けるわけでありますが、党内の御意見あるいは御自分の御意見を開陳していただきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 国会議員の発議、その賛成者の要件でございますが、これは小さい数でない方がいいという議論が多かったのは、やはり三分の二の賛成がなければ発議できません、そういうことを考え、なおかつ、先ほども申し上げました、イメージとしては五年から七年ごとに二つから三つの項目について国民の皆さんに聞いていく、こういうイメージからいたしますと、ある程度まとまった議論があり、国会の中でまとまった意見の集約がなされているものについて発議されるべき、また、国会で議論されるべきである、こういうことから、数が少ないと乱発される、また、それが別の目的で使われるおそれもある、こういう議論があったからでございます。

 それから、別な項目についてはハードルを下げているような提案もあるではないかということでございましたけれども、基本的に憲法の公正性は国会議員三分の二以上の発議というところで担保されておりまして、その担保さえあれば、そのほかの要件についてはできるだけ壁は低い方がいい、こういう御議論でした。

桝屋委員 最後に一点だけ。

 私、山口県の出身でありますので、前回、岩国の住民投票を経験してまいりました。さきのこの委員会でも、いわゆる住民投票については劇薬というような議論もあったわけでありまして、私どもも国政に係る問題は慎重であってもらいたいと随分悩んできたわけでありますが、ああした結果でありました。

 先ほどの斉藤委員のお話の中で、一般的国民投票制についても十分意義を認めるという発言もされた上での御発言があったわけでありますが、制度としてこの一般的な国民投票制を議論することを容認されるのかどうか、私自身、個人としては非常に慎重な立場であるわけでありますが、確認をさせていただきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 ここで私が申し上げましたのは、一般的な国民投票制度そのものを否定する議論は党内にはなかった、その意義が認められるものもあるであろうと。ただし、今回の憲法改正の国民投票法案とは引き離して議論されるべきだ、このことを申し上げたところでございます。

桝屋委員 一分時間がありますから、あと一点。

 投票権者の年齢要件でありますが、先週の議論で、本則二十歳、そして附則で十八歳と規定する方向が議論されました。十八歳に向けて先ほど斉藤委員は検討条項をという話もありましたが、期限を付して検討するということについてはどういうふうにお考えなのか、端的にお答えいただきたい。

斉藤(鉄)委員 今後の検討課題だと思っております。期限をつけての検討ということについては、今後の検討課題だと思っております。

桝屋委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 私からは斉藤委員に幾つか伺いたいと思います。

 先日、大阪で民間の公開討論会の場がありまして、御一緒しましたが、その際に、公明党として、九条を最大の論点として加憲論議を進められている、そして、加憲の道筋を定めるべく早期に国民投票法案を成立させたいというふうにおっしゃったように私は記憶しておるんですけれども、そこで伺いたいんですが、加憲の道筋を定めるべくとおっしゃるのはどういう意味なのか。公明党が考えていらっしゃる加憲の実現ということと、そのための手続である国民投票法案の実現というのが一体的、連続的にイメージされているのか、その辺についてはどういうふうにお考えなのか、伺いたいんですが。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。

 笠井委員のその理解は間違っております。そのときに私が大阪で申し上げましたのは、我々は加憲の立場をとりますと。したがいまして、その加憲ということを考えれば、当然憲法改正についての手続法を定めなくてはいけないということをまず申し上げた上で、憲法改正で憲法九条が大きな論点になるというのは皆さん衆目の一致するところで、この憲法九条について加憲というのはどういう意味を持つのか、こういうお話をさせていただいたつもりでございます。

 一項、二項についてはこれを堅持し、三項について自衛隊の性格を明確にするもの、また、国際貢献について明示すべきかどうか、その議論を党内で行っている、このような道筋で話をしたと思っておりまして、憲法九条加憲のための道筋としての国民投票法案、こういう筋道で話をしたつもりはございません。

笠井委員 間違っているとおっしゃっても、私は今伺っていて、加憲を実現するということと、そのための手続である国民投票法案というふうに今もおっしゃったので、その流れは今おっしゃったと思うので、同じことを私も大阪で聞いたなと今思ったんです。

 では、さらに伺いますが、公明党が今九条の問題で加憲をいろいろ議論されているということでしたけれども、まず、現憲法について公明党は三原則ということを言われていますよね、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障が大事だと言われているわけですが、そのもとで九条の今日的意義についてはどのように考えていらっしゃるんでしょうか。

    〔委員長退席、枝野委員長代理着席〕

斉藤(鉄)委員 憲法の三原則についてこれを堅持するという立場でございまして、その一つの柱であります平和主義、その平和主義としての憲法九条を高く評価しているという基本的な姿勢に立っております。それでお答えになるかと思いますけれども。

 あと、先ほどの、前の質問に対しての補足をさせていただきますと、今回、憲法改正、我々は加憲という立場をとっておりますが、加憲の対象として憲法九条が一つの主要な議論の対象になる、これは先ほど申し上げましたが、最大の課題である、これこそ改正の眼目であるという意味では私は申し上げておりませんので、その点を確認させていただきたい。ほかにも重要な項目はたくさんあるということでございます。

笠井委員 いずれにしても、九条をも加憲の議論の対象として議論を深めていくと。慎重に検討されるというわけでありますよね。

 では、具体的には、九条を高く評価しながら何をつけ加えようという検討をされているのか。公明党の加憲ということでいいますと、それによって何が変わるというふうになるんでしょうか。

斉藤(鉄)委員 先ほど申し上げましたように、一項、二項、平和主義そして戦力不保持、これについては堅持をする。

 しかしながら、党内の議論で、この文章だけでは自衛隊が合憲であるとの明確な意味が少し出てこないのではないか、不明確であるのではないか、したがって、自衛隊の存在を明確にするという意味で第三項を書き加えた方がいいのではないかという議論があります。また、それに関連して、自衛隊の国際貢献ということについてもその中に書き加えたらどうか。また、集団的自衛権についても、これは有しないということを第三項で明確にするということについても議論すべきではないか等の議論があって、そこがまさに加憲の対象とすべきかどうかという議論の中心でございます。

笠井委員 今、自衛隊の存在の明記ということと我が国の国際貢献というお話で、あり方を書き込むという検討をされていると。自衛隊の存在と国際貢献ということで検討されていると言われましたけれども、例えばイラク戦争のような場合に、戦闘地域で米軍とともに武力行使するというようなことについても、場合によっては可能になるというような加憲ということなんでしょうか。

斉藤(鉄)委員 現在の自衛隊のイラク派遣が武力行使だとは考えておりません。国際平和貢献の一つとして考えておりますので、その点は明確にしておきたいと思います。

 そのことを確認した上で、海外での武力行使が可能になる第三項のつけ加えというようなことは全く考えておりませんし、それからもう一つ、これも明言したことですけれども、もう一度確認しておきますが、第三項を加えるかどうかということ自体も議論の対象になって、現在の第一項、第二項で十分だという議論もあるということもつけ加えさせていただきます。

笠井委員 今、日米安保とか日米同盟ということがいろいろ言われていて、その強化とか米軍再編という話もありますよね。それで米軍と自衛隊が一体的に位置づけられるという話も出てきているわけですけれども、公明党はそういう加憲という議論の中で自衛隊の存在を憲法に書き込むというようなことも検討されるということでしたけれども、日米安保とか日米同盟については憲法上どう位置づけようとされているのか。あるいは、どんなふうに考えていらっしゃるのか、憲法との関係というのを。

斉藤(鉄)委員 日米安全保障条約は我が国の憲法と矛盾しない、このように位置づけております。また、憲法と矛盾しない、また日米安全保障条約の中に位置づけられる自衛隊という形での自衛隊、それは当然憲法九条に論理的整合性を持つ存在、このように位置づけております。

笠井委員 一言です。

 矛盾しないというのはどこに根拠があるんでしょう、現在の憲法で日米安保というのは。

斉藤(鉄)委員 その矛盾しないという根拠……(笠井委員「憲法上どこに根拠があるんでしょうということなんですが、安保というのが」と呼ぶ)ですから、憲法九条の平和主義と自衛隊の持つ専守防衛という考え方と、そして、日米安全保障条約に基づいて、その憲法の許される範囲の中で安全保障条約の中の役割を担うということにおいて矛盾しない。そのことは、まさに憲法九条そのものに根拠があるわけでございます。

笠井委員 私は根拠ない話だなというふうにもともとこの問題で思っているんですが、この問題はいずれまた別の機会に議論させていただきます。

 時間になりましたので、きょうは前提の問題を幾つか伺いました、終わります。

枝野委員長代理 次に、辻元清美さん。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 きょうは、お二人、斉藤さんに特にいろいろお聞きしたいことがあります。

 特に憲法を議論するということは、私たち、非常に重い議論を、憲法にまつわる重い議論をしているんだなということを実感したことが先週ございました。それは、ある沖縄の方とお話をしておりまして、沖縄のある方が、無憲法状態に自分たちは生きてきた時代があったと。憲法がない状況でどれだけ人々の権利や人権が侵害されてきたかということを体験した中で、権力を憲法というのはきちっとチェックし縛るという性質がありますので、日本国憲法ができたときに沖縄の人たちは本当に心からうれしかったし、それから、どの範囲で権力が行使できるのかという、範囲をきちっと決めた憲法の役割というのを自分の人生と重ね合わせて実感を込めて語られたんですね。私は、そういう憲法を変える場合の手続法というのは、やはりそういう歴史を踏まえたきちんとした議論と、多くの人たちの声が反映されるべきものであると考えています。

 そこで、まずお伺いしたいんですけれども、先ほど笠井委員の方からNHKの世論調査の結果が発言の中にございました。私もこれに着目していまして、どの程度国民投票法案を知っているかという調査で、「よく知っている」が三%しかなかった、そして、「あまり知らない」と「まったく知らない」が六六%だった、「ある程度知っている」というのが二四%。「ある程度知っている」、「よく知っている」人のこの二七%の人に聞きまして、どういう形での成立を望むかという質問では、じっくり時間をかけて議論すべきが六〇%。それから、今の憲法を改正する必要はないので法案は必要ないが一六%、多分、社民や共産の立場はここだと思うんですけれども。これは今の実態をあらわしている数字だなというふうに、私もちょっと実感を持ってお聞きしていたんですね。

 こういう状況を踏まえて、この数字についてどのように率直にお考えになるかということ。それから、なぜ国民的な関心が低いんでしょうね。どのような理由があるとお考えでしょうか。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。

 辻元さん、最初に沖縄の方のお話をされて、私も広島でございます、超党派で御一緒に在外被爆者の問題も取り組まさせていただいております。そういう意味で、私もこの憲法に対して強い思いを抱いておりますので、その憲法を改正する手続ということの意味の大きさについては私も十分認識をして、一緒に議論をさせていただいているということを最初に申し述べさせていただきます。

 それから、先ほど世論調査の数字を引かれました。非常に関心が、知っているという人の数が少ないということでございまして、だからこそ大いに、この憲法調査会、また、具体的な論点についての真剣な議論は理事会でやりましょうということになっているわけですけれども、この議論を盛り上げていって、国民の皆さんに知っていただきたいし、また議論も深めていきたい、このように思っております。

 先日、大阪で公開討論会をやって、笠井委員も辻元委員も一緒に行きましたが、その後の、皆さんどう思ったかというアンケートがこちらに寄せられまして、非常によくわかった、理解できた、今後こういう議論を本当に幅広くしていけば憲法改正についての国民の理解も深まるのではないかというふうな御意見もございました。

 一緒に努力をしていきたいと思います。

辻元委員 今、ここでの議論も盛り上げてという御発言もありました。ここでの議論はある意味盛り上がっているというか、盛り上がれば盛り上がるほど国民はクールに見ているという側面もあるんじゃないかなというのが、やはり慎重に時間をかけて、大事なことだからじっくり議論してほしいというのが数字にあらわれているのではないかと思うんです。

 その意味を考えますと、私は、一つは時代状況に対する一般の方々の認識というものが挙げられるんじゃないかと思うんですね。特に日本の憲法の成り立ちというのは、歴史的に戦争の歴史を背負っておりますので、無視できない中で、一つはアジアとの関係がぎくしゃくしている時期である。それから、米軍再編をめぐっても、岩国の住民投票などもありましたけれども、日米の軍事的一体化が進んでいくんじゃないかという懸念を持っていらっしゃる方もいらっしゃると思います。

 ですから、単に関心が薄いというよりも、非常に賢明に今の時代状況を見て、日本の子供や孫の時代まで考えたときに、ここは一つの時代の曲がり角ではないかという危機感とともに慎重な議論をという意見が多いのではないかと思うんですが、斉藤さん、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)委員 この憲法改正の議論を慎重にという御意見については、拙速にやっていいという方は一人もいない、このように思います。

 しかし、議論というのは、ただだらだらやっていればいい議論ができるかということも真実ではなく、ある程度詰めて、集中して真剣に議論するということも、結果としていいものを得るときには必要なのではないか、このように考えております。

辻元委員 そういう中で、「憲法のひろば」というのがございまして、先日、この委員会の理事とオブザーバーの皆さんに、憲法調査会以来七年間さまざまな意見が寄せられている、その直近一年間にどういう意見が寄せられているかというものが配られました。これは国会への意見ということになるかと思うんですが、八カ月で百五十四件。一カ月十九件しかないんですね、残念ながら。百五十四件のうち、国民投票についての意見は十七件だったんです、制度について。十七件とも慎重審議という意見だった。

 だらだらと議論というわけではありませんけれども、この乖離ですよね。私たちが考えなければいけないのは、ここで、私たちは官僚じゃありません、官僚ですとさっさと議論して、一括か個別かとか、技術的にはどうだとか、公選法との関係でとやっていればいいわけですけれども、政治の場で、いつ、どういうタイミングで、どういうプロセスを経て法案を成立させるのかとか、議論をどういう形でやっていくのかというのは、非常に政治にとっては重要なことだと思う。その中で、この憲法にまつわる議論というのは、余りにも外との乖離があるんじゃないかという懸念を持っているわけです。

 ですから、そういう意味で、私は、もっと外の声を聞く、そのための工夫をどうすればいいかとか、多くの方々の声をどうやって吸い上げればいいかというようなことに特化した集中審議をするとか、各党から提案を出すとか、そういう議論も広く、テクニカルな話にちょっと偏っているように思いますので、時間をとってしっかりやっていったらいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)委員 そのように広く国民の皆さんの声を聞く場というのは必要だと思いますし、私自身も、週末帰ったときには、ミニ集会等で必ず、今回この特別委員会の理事になった、こういう議論をするんですけれども皆さんいかがでしょうかと、できるだけ意見を聞くようにしておりますし、そういう場を拡充していくということについては大賛成でございます。

辻元委員 昨日、新聞にたくさんこの委員会のことが報道されまして、理事会でも問題になりました。それは、この委員会の現場ではこうやって議論をしているわけですけれども、自公が民主党の幹事長に、何かこう、高いレベルでとか書いて、どこが高いレベルなのかと思うんですけれども、早く取りまとめるというような申し入れをするとかしないとかいう報道が大きくなされたんですよね。私は、これは密室やと思います、密室協議の一つだと思うんです。国民的議論をと表では言いながら、大急ぎでやる理由も見つからないし、しっかり議論してくれと国民が言っているのに、一部の動きで、密室で何か物事を進めようというようなことは一切やめていただきたいということを思っております。

 斉藤さんも同じ意見だと思うんですが、いかがでしょうか。最後にお伺いします。

斉藤(鉄)委員 この委員会、そして委員会の理事会の場で、オープンでしっかり議論をしていくべきだ、このように思います。

辻元委員 終わります。

枝野委員長代理 次に、滝実さん。

滝委員 国民新党・日本・無所属の会の滝実でございます。

 なかなか、議論があっち行ったりこっち行ったりして散漫的になるかとも存じますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 まず、笠井委員に、せっかく基調的な報告をいただきましたので、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 今も議論がございましたように、国民的な関心を呼ぶというのは、国民投票というある意味では枠組みのテーマでございますから、なかなか難しい問題だろうと思います。その中で、私は、中身の問題とこの国民投票制度とを混同させると非常に議論がややこしくなるという思いがいたしておったんでございますけれども、笠井先生が、いろいろ、最初から最後まで九条問題に絡めての議論はそれなりに国民的な関心を訴える一つのてこになるかなと思って拝聴いたしておりました。

 しかし、あくまでも国民投票制度というのは枠組みの話ですから、そこのところを中心にしてこれからどうやって理解を得ていくかということになってまいりますと、やはりある程度国民投票制度というものはどういう枠組みで行うべきかという具体的な案をお示ししないと、国民から見て一体何を議論しているんだろうかということだろうと思いますし、NHKの世論調査にもあらわれておりますように、全く国民はわけのわからないまま、取りまとめだけ急がれているというような印象を与えるんじゃなかろうか。私は、やはり、この投票制度の枠組みをある程度きちんとした上で、国民の皆さん方に、どう反応するのか、どう受けとめるのかということを問い直した方がいいように思うんです。

 今まで具体的に出ているのは、自民党、公明党でございますから、与党から出ております国民投票法案だけが出ているんですけれども、その国民投票法案も、前回、保岡委員から御提案がされていましたように、大分変わってくる。こういう中で、改めて国民の皆さん方の理解を得るためにはもう少し具体的な案を出していかないと、国民は全く関心を持たないし、国民不在で議論がされているという印象しか残らないと思いますけれども、そういったことについてはどういうふうにお考えでしょうか。

    〔枝野委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 ありがとうございます。

 今お話があった、手続法である国民投票制度と憲法改正の中身の問題を混同させるとややこしいというお話があって、私もややこしいと思うんです。私が混同させているんじゃなくて、私が非常に感じているのは、与党というか自民党は、民主党も提言という形ですが、出されちゃっているわけですよね、そういうことが全くないときに国会で議論するのであれば、ある意味やりようがあるのかもしれません。私自身の思いですからあれですけれども。

 ただ、現実に国民の前には、国民投票法案というよりも、それより先に改憲案、具体的中身が出て、九条という問題も含めて、中心としながらというふうに私は申し上げましたけれども、出ている中で、さて、制度はどうしましょうという話が出てくると、これは混同しちゃうというか、ややこしくなっちゃうのは国民の側だ。

 つまり、本当に純粋に制度ということで、とにかくこういうのは必要だということで議論するんだったら、それはまた中立公正にいろいろやりようはあると思うんですが、議論もいろいろやり方があると思うんですが、片や出しながらこの法案を提案するということになりますと、これは本当に公平中立のあれができるのかという、逆にそっちの方の疑問が国民からいっぱい出てくるし、混同するんじゃないか。

 国民から見れば、やはりこの憲法を変える必要があるなと。将来、いつの時期かわかりませんが、本当にそういう機運が高まったときに、私どもも例えば自衛隊や天皇制の問題だって、それはいずれ国民が総意や合意する中でどういう形にするかということで憲法を変えるという時期が来るかもしれない。変えようとなったときにはやはり必要な手続が要るよね、そのときに九十六条だからということでやればいいのかなというふうに思っているということです。

滝委員 恐らく率直な疑問は何遍も笠井委員には寄せられていると思うんでございますけれども、この九条の問題を何としても守りたい、守る必要があるということであれば、この際、基本的に国民投票でその賛否を問うということがなぜぐあいが悪いのかということが余り知られていないようにも思うんです。

 私は、今の日本国憲法が外から与えられたから悪いとか、そう言うつもりはございませんけれども、少なくとも、笠井委員がおっしゃるように、九条は国家の基本的な枠組みとしてこれを変えてはいけないというのならば、やはりそれは国民が判断をする機会を与えてあげてもいいのじゃないだろうかなという感じがあります。それについて、今までもいろいろ説明されていると思いますけれども、改めてお伺いしたいと思うんです。

笠井委員 先ほども、冒頭の発言の中で申し上げたのですが、国民が九条を変えてはならないと思っているのであれば、国民投票は必要と思っていないということになりますので、別にやらなくていいということになると思うんです。要するに、そういうことに尽きるんじゃないかと私は思います。

滝委員 九条の問題を、中身の問題を余り議論してもしようがありませんけれども、私は、自民党を支持する勢力の中にも九条は守った方がいいと思っている人もいるでしょうし、いろいろな意見があるだろうと思うんでございますけれども、しかし、それをうやむやにして、いつまでも放置するということの意味がよくわからないというのが率直な感じでございますから、そこのところをもう少し、国民は必要がないと言っているから国民投票制度をつくらなくてもいいのだというのはいかがなものだろうかなという感じがする。それだけ申し上げておきたいと思います。

 それから、斉藤委員が非常に詳細に、今回、国民投票の中身の話をしていただきました。今までの与党案とは違った角度から、あるいは保岡先生の意見とも通じる問題があったと思いますけれども、私は、そういう具体的なことを、きちんと、ある程度法案の形にして出していただくということが、国民に訴える一つの大きな必要があるんじゃないだろうかなという感じがいたします。

 そういう中で、公明党としておまとめになるのか、あるいは自民党と一緒に与党としておまとめになるのか、よくわかりませんけれども、もう少し早目にそういう案を出していただいて、たたき台というか、まあ、公党ですからたたき台もないと思いますけれども、はっきりさせていただいた方がいいのじゃないだろうかなと思います。

 その中で、私は、斉藤委員の中で基本として流れているのは国会がすべて決める、しかも、訴えるべき資料も国会の中に委員会をおつくりになっておやりになる、それから、その委員会の中には構成会派の員数割りでもって委員を選出するとか、ある程度具体的なイメージは出ていると思いますけれども、ぜひそういうようなことをもう少し国民の皆様方にわかるような格好でお示しいただいた方がいいのじゃないだろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕

斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。与党案というものが一応ございます。したがいまして、基本的な立場は与党案。しかし、民主党さんからも案が出されておりますし、共産党さんや社民党さんも理事懇談会の場で、基本的なルールづくりですから、中身ではない、ルールづくりですから、そのルールづくりの中には各党入っていただいて議論をするということこそが大事。その各党入った理事懇談会の場で、これまで基本的立場でありました与党案にこだわらず、一つ一つ粘り強く合意を得ていく作業を続けたい、そういう姿勢でございます。

 よろしくお願いいたします。

滝委員 ありがとうございました。終わります。

愛知委員長代理 次回は、来る二十三日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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