衆議院

メインへスキップ



第8号 平成18年4月13日(木曜日)

会議録本文へ
平成十八年四月十三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 古川 元久君 理事 斉藤 鉄夫君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      石破  茂君    小野寺五典君

      越智 隆雄君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    柴山 昌彦君

      高市 早苗君    棚橋 泰文君

      渡海紀三朗君    中野 正志君

      野田  毅君    葉梨 康弘君

      早川 忠孝君    林   潤君

      平田 耕一君    二田 孝治君

      松野 博一君    森山 眞弓君

      安井潤一郎君    山崎  拓君

      吉田六左エ門君    岩國 哲人君

      小川 淳也君    逢坂 誠二君

      北神 圭朗君    鈴木 克昌君

      仙谷 由人君    園田 康博君

      筒井 信隆君    平岡 秀夫君

      石井 啓一君    太田 昭宏君

      笠井  亮君    辻元 清美君

      滝   実君      

    …………………………………

   参考人

   (日本放送協会理事)   石村英二郎君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟理事・報道委員長)   堀  鐵藏君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

四月十一日

 憲法九条改悪のための国民投票法案反対に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第一三二八号)

 同(重野安正君紹介)(第一三二九号)

 同(辻元清美君紹介)(第一三三〇号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一三六九号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一四二四号)

 同(横光克彦君紹介)(第一四二五号)

 同(阿部知子君紹介)(第一四八三号)

 同(郡和子君紹介)(第一四八四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一四八五号)

 国民投票法案反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第一三三一号)

 憲法改正国民投票法案反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第一四八六号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一四八七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件(日本国憲法改正国民投票制度とメディアとの関係)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件、特に日本国憲法改正国民投票制度とメディアとの関係について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として日本放送協会理事石村英二郎君及び社団法人日本民間放送連盟理事・報道委員長堀鐵藏君に御出席をいただいております。

 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただいて、まことにありがとうございます。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、石村参考人、堀参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと思います。

 御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、まず石村参考人、お願いいたします。

石村参考人 日本放送協会の石村でございます。よろしくお願いいたします。報道担当の理事を務めています。

 憲法改正に関しまして、国民投票制度とメディアの関係について意見を述べさせていただきます。

 このテーマに関しましては、既にこの特別委員会の場で各党の委員の皆様がさまざまな角度から議論されていると承知しております。マスコミにとっても非常に新しい課題でありますので、委員会での議論の参考になれば幸いだと思って意見を述べさせていただきます。

 まず初めに、概括的なお話をさせていただきます。

 憲法問題に詳しい委員の皆様に申し上げるまでもなく、憲法は基本的人権の尊重など最も基本的な事柄を定めている国の最高法規です。戦後六十年が過ぎて、憲法改正に関してさまざまな議論が交わされていることも承知しております。

 憲法改正問題と、改正にかかわる国民投票制度を論じるに当たっては、主権者である国民の多数の意見が幅広く反映される必要があると思います。そして、仮に今後、憲法改正を国会が発議されて国民投票が行われるなど、具体的な動きになってきた場合には、公共放送としまして、また報道機関として、自主的な判断のもと、公平公正な立場で国民に幅広く情報を提供して民主主義の発展に資するよう努める考えでございます。

 放送事業者に関する基本的なあり方については、放送法にさまざまな規定があります。現代社会の中でマスメディアの影響力、とりわけ我々テレビの影響力が次第に大きくなっていることを十分に踏まえながら、事前の段階はもとより、いわゆる運動期間中でも報道は原則として自由であるということが望ましいと考えております。自由で活発な議論や意見交換を通じまして、国民の意識が高まり、日本にとってどういう憲法がふさわしいかという合意形成がなされていくものと思っております。

 次に、NHKと放送法の関係について、ちょっと御説明をさせていただきます。

 NHKは、放送法によって設置されております。放送法の第三条の二は、国内放送の放送番組の編集に当たって、四つの基本的な考えを示しております。一つは、「公安及び善良な風俗を害しないこと。」「政治的に公平であること。」「報道は事実をまげないですること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」以上の四点でございます。NHKは、これまでもこれら四つの規定を遵守して取材、制作、放送に当たってきました。今後ともこの立場は変わらないつもりです。

 こうした放送法の規定を受けまして、ではNHKがどのように日々取り組んでいるかを具体的に申し上げます。

 NHKは、放送法に基づいて国内番組基準を定めて公表しております。この中では、全国民の基盤に立つ公共放送の機関として、何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、放送による言論と表現の自由を確保し、豊かで、よい放送を行うことによって、公共の福祉の増進と文化の向上に最善を尽くすことを表明しております。

 その上で、一つ、政治上の諸問題は公正に取り扱うこと、もう一つ、意見が対立している公共の問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにし公平に取り扱うことなどを定めて、日々放送に取り組んでおります。先月末に発表しました新放送ガイドラインでも、政治や選挙の報道に際しての留意点を記述しております。NHKが日ごろから自主的な取り組みを継続していることをぜひ御理解していただければと思います。

 次に、こうした原則にのっとって、NHKが選挙報道にどのように取り組んでいるかについて、委員の皆さんよく御存じだとは思うんですが、簡単に述べさせていただきます。

 NHKの選挙報道は、報道機関の立場から、正確な取材と公正な判断によって自主的に行っております。放送法やNHKの国内番組基準に従い、公職選挙法で保障された選挙放送の番組編集の自由に基づいて行っております。視聴者の要望にこたえまして、国民の政治や選挙への関心を高めて、政治意識の向上に役立つ質の高いニュース、番組を適宜編成しております。これとは別に、政見放送、経歴放送というものがありますけれども、これは自主的にやる番組とは明確に区別されております。

 去年九月の皆様方の衆議院選挙においても、こうした方針で対応いたしました。開票日当日は、NHK独自の判断で全体の情勢とか当確の情報を伝えて、迅速かつ的確な報道ができたものと考えております。今後の選挙報道についても、これまで積み上げてきたノウハウの徹底、取材体制を充実させることによって、より一層迅速で的確な報道を行うことができるよう、今後とも努力していく考えでございます。

 ここまでは、放送や報道についてのNHKの基本的な考えや取り組みの現状についてお話をしました。この後は、この特別委員会での論議を踏まえて、幾つかの論点について現状での考え方を述べたいと思います。

 まず、放送メディアに対する規制の問題についてです。委員会の議事録を拝見いたしますと、報道は原則自由である、ただ、影響力が強い放送に対しては何らかの規制が必要ではないかという趣旨の意見が出ていることも承知しております。

 一般論ですが、同じマスメディアでありながら放送と活字で大きな違いがあるのは、放送メディアの方は放送法の適用を受けているということです。この点は既に申し上げました。放送法に規定されている内容以上の規制を放送メディアだけに課すということであれば、我々としては、表現の自由、報道の自由との兼ね合いで問題が生じる懸念があるのではないかと思っております。この点は委員会の中で十分議論をしていただければと思っております。

 次に、いわゆる自主規制について申し上げます。

 委員会の論議の中で、何らかのメディアの規制が必要だとしてもメディア側の自主的な規制にゆだねてはどうかというような意見が出ていることも伺っております。しかし、報道についてみずからが規制することは、極めて慎重に考えざるを得ません。

 例えば、誘拐事件に際しては報道協定というのがありますけれども、これは、被害者の生命の安全を最優先に報道各社が自主的な判断で行っているものです。広く国民的な論議が欠かせない憲法の問題について、規制という考え方がなじむのかどうか、これについては疑問を感じております。

 また、放送事業者の自主的な取り組みという意味では、NHKと民間放送が共同で設立しましたBPO、放送倫理・番組向上機構があります。放送をめぐる視聴者からの意見や苦情を受け付けて、場合によっては仲介やあっせん等を行い、第三者の立場で判断して解決につなげるためです。自主的な規制ではありません。

 もう一つ我々が懸念を持っているのは、第三者機関についてであります。

 委員会で議論されている第三者機関の具体的な内容について十分承知しているわけではございませんが、どのような権限を持って、どのような人によって構成されるのか。仮に虚偽報道を認定するとして、何をもって虚偽報道と定義し、どのような手続、方法によるのか。争いがある場合にはどう対応するのか。従わない場合はどうするのか。強制力があるのか云々、多くの課題があるのじゃないかと思っております。日本では、こういう制度というか第三者機関というのはこれまでに例のない機関ですし、表現の自由、報道の自由との兼ね合いで、極めて慎重な議論が必要ではないかと考えております。

 それから、放送メディアに対する規制問題の最後に、国民投票法に訓示的な規定を置いてはどうかという趣旨の意見について述べさせていただきます。

 既に述べたことですけれども、放送法の三条の二では、「報道は事実をまげないですること。」と規定しております。原則としてこの規定で足りるのではないかなと私は考えております。

 次に、公職選挙法との関係について申し上げます。

 人や政党を選ぶ選挙には現在公職選挙法が適用されていますが、政策を選択する国民投票とはその立法の趣旨が異なるものと思います。現状の公職選挙法の規定をそのまま国民投票に適用することがなじむのか、別の考え方も十分成り立つのではないかなと思っております。国会でこれから十分議論していただければと思っております。

 それから、公職選挙法との関係でこの委員会で議論されているのが、いわゆる虚偽報道の禁止についてだと理解しております。御承知かとは思いますが、公職選挙法百五十一条の三には、「この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定は、日本放送協会又は一般放送事業者が行なう選挙に関する報道又は評論について放送法の規定に従い放送番組を編集する自由を妨げるものではない。ただし、虚偽の事項を放送し又は事実をゆがめて放送する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。」このように規定されております。

 放送法の規定を持ち出すまでもなく、虚偽の報道を行うということは、我々報道機関にとってはあり得ないことです。とりわけ重要な政治課題において虚偽報道を行うということは、仮にあったとすれば、もう国民の信頼を失うことになりまして、NHKとしても考えられないことになると思います。現状の公職選挙法の規定をそのまま国民投票に適用することがなじむのかと先ほど申し上げましたけれども、公職選挙法とは別の趣旨や考え方で国民投票法が制定されるとすれば、こうした虚偽報道禁止の規定をあえて盛り込まなくてもよいのではないかと考えております。

 最後に、NHKは、公共放送として、また報道機関として、自主的な判断のもと、公平公正な立場で国民に幅広く情報を提供し、民主主義の発展に資するよう日々努めてまいります。NHKを初め、放送事業者に関する基本的なあり方につきましては、放送法にさまざまな規定があります。また、今の社会の中で、マスメディアの影響力、とりわけテレビの影響力が大きいことは我々も十分に認識しております。だからこそ、きょう申し上げましたように、自律的な取り組みを不断に行っております。

 報道は原則として自由であり、自由な報道を通じて、国民の間で活発な議論、意見交換が行える環境が整えられると思っております。

 不十分な点もあろうかと思いますけれども、憲法改正に関する国民投票制度とメディアとの関係について意見を述べさせていただきました。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

中山委員長 次に、堀参考人お願いいたします。

堀参考人 本日は、発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 私は、日本民間放送連盟で報道委員長を務めております堀鐵藏と申します。

 きょうは、憲法改正の手続を定める国民投票法案について、表現の自由、報道の自由の観点から意見を申し述べたいと思っております。

 今、NHKの参考人の方から、さまざまな放送上の我々の立場、あるいは法律上の考え方といったものについては既にお話しをいただいたので、なるべく重複を避けながらお話しできたらというふうに思います。

 憲法は、言うまでもなく国の最高法規でありまして、国の骨格を定めるものでございます。そして、施行以来間もなく還暦を迎えようとしていますが、国民の間に深く根をおろし、定着していると考えております。ただし、その生い立ちを含めて、憲法改正の是非をめぐっては、日本が第二次世界大戦後に独立を回復しました一九五〇年代から、鋭い政治的対立を含みながら議論が展開されてまいりましたことも承知しております。

 きょうは、改正の是非について申し上げる立場ではないので、意見を留保させていただきます。しかし、この改正作業を進めるに当たって、国民投票法案を発議し国民に問うとすれば、幾つかの前提があるのではないかと考えております。

 一つは、国民主権の原点に立っているのか、立っていただきたいということでございます。憲法改正は、我が国で初めて行われるであろう国民投票によって行われることになると思います。その国民投票がどのように行われるべきか。それを定める法案は、我が国の憲法の基本理念である国民主権、基本的人権が保障されるものでなければならないと考えています。

 二つ目は、発議の方法あるいは投票方法が投票者の意思を正確に反映するものであるかどうかということだと思います。

 そして三つ目に、マスコミの評論、報道に対しては、これを規制すべきではないと考えております。国民投票には、自由な評論、報道によって国民に考える材料をいかに多く提供できるか、そして多様で多元的な言論を展開させるかが大事であり、まして罰則などによって表現の自由、報道の自由を萎縮させる可能性を生じることは、憲法改正が目指す民主主義、立憲主義の高みに逆行するものではないかと考えております。

 こうした前提に立って憲法改正を考えるときに、繰り返しになりますが、主権者である国民自身がその権利を行使するに当たって、一人一人の意思を正確に反映できる内容でなくてはならないと考えます。

 この場合、意思というものを既にあるもの、固定的なものと考えるべきではないと思います。我々報道に携わる人間も含め、国の政治に身近に接している人たちはつい忘れがちになるのですが、大多数の国民は日常的に政治のことを考えているわけではありません。自分の生活でも、年金問題あるいは耐震偽装問題などが起こって初めて身の回りを振り返る人たちが多いと思います。憲法改正というような重要なテーマでも、何らかのきっかけがあって初めて考え始め、情報を集め、周囲の人間と話し合って考えを固めていくものだと思います。

 こうした現実を踏まえ、最近、皆さんは当然御承知だと思いますが、政治学では、デリバラティブデモクラシー、日本語で熟慮型あるいは討議型民主主義と呼ばれる考えが提唱されています。民意というものは固定したものではない、ある瞬間の世論調査の結果がイコール民意ではなく、あるイシュー、主張あるいは提案について十分な討議が行われた後初めて民意があらわれるという考え方です。重要問題であればあるほど、この熟慮ということが不可欠であると考えます。

 それでは、熟慮、討議が行われる前提となるものは何でしょうか。

 第一に、精神の自由、表現の自由がなければならないと考えます。人々が何らの束縛を受けずに自由に考え、考えたことを自由に表明できることがすべての前提となります。もちろん、そのために十分な期間が必要であることは言うまでもありません。

 第二に、考えるための材料が必要となります。その材料を提供するのがメディアの重要な役割であります。テレビや新聞は毎日のニュース、評論などで、事実や、それが人々の生活に与える影響をわかりやすく伝えています。

 また、放送メディアの役割は単なる材料の提供にとどまりません。やや手前みそになりますが、私の所属するテレビ朝日系列では、深夜の「朝まで生テレビ」、あるいは日曜朝の「サンデープロジェクト」などの討論系の番組を放送しております。こうした討論番組は、一つのイシューについてもさまざまな見方があることを伝えて、人々の議論を誘発する役割を果たしております。また、電話、ファクス、Eメールなどを使って、国民の声を直接番組の中で紹介することも積極的に行っております。フォーラムとしての役割も果たしているわけです。

 この放映に当たっては、問題にもよりますが、賛成、反対の意見が十分に反映されるよう、論議に参加していただくメンバーあるいは発言の時間などについて、十分な準備と配慮によって行われております。

 放送法第一条に「目的」というのがございますが、その二に、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」と定められています。ここに放送の自律、みずから律するという言葉がございます。

 理解していただきたいのは、放送局の自律ではないということです。つまり、単に放送局がみずからを律するということを規定しているわけではなく、放送というコミュニケーションの場が自由であり、その場でさまざまな人がさまざまな意見を交わすことを通して、よりよい判断、よりよい結論が見出されていくことをこの法律は期待しているというふうに私は理解しております。

 一方、放送局の自律性とは、こうした放送による表現の自由の場、言論・表現の自由市場という言い方もございますけれども、こうした放送による表現の自由の場を支える自律性であると思います。

 放送界は、自律性を発揮するために、個々の番組への参加だけでなく、視聴者の意向をフィードバックするための仕組みをつくっております。各放送局は、視聴者によるモニター制度、視聴者センターによる意見の吸い上げ、定期的に、あるいは選挙などの大きな国事のときに実施する世論調査などを通して、常に世論を把握する努力を続けています。

 ほかにも、各局には放送法によって義務づけられた放送番組審議会というものもあります。また、数字だけを問題にして、良質な番組の制作に結びつかない、あしきといいますか、視聴率主義というのは問題でございますけれども、視聴率調査も視聴者の意向を客観的に把握する意味では重要なツールだと考えております。

 こうした各社単位の取り組みに加え、放送倫理・番組向上機構で、視聴者の意見を放送界全体として受けとめています。これは、先ほど石村参考人がお述べになっているので少し割愛しますが、さまざまな形で受けとめられた結果、BPOから放送局に対する意見や見解、場合によっては勧告の形で伝えられるさまざまな例について、放送局は真摯に検討し、番組内容を改善していくことになっております。現に、行き過ぎたバラエティー番組の表現について青少年委員会から見解が出されたときには、その番組の特定のコーナーが打ち切りになったこともございます。

 冒頭申し上げましたとおり、人々が熟慮するために必要なものは、精神の自由であり、表現の自由でございます。この意味で、憲法改正に関して人々が考え、議論することを妨げるような規定を憲法改正国民投票法案に一切置くべきではないというのが原則と考えます。

 委員の方々の中にも、報道、評論の公正さを確保するために、監視委員会を設け、過度に偏った報道があれば是正勧告できるようにすべきである、あるいは公正を確保するための制度を設けるべきではないかなど、フランスなど欧州流の厳しい規制、制度や第三者機関を必要とするというふうにお考えになる方もございます。あるいは、虚偽まがいの報道には真実の報道で対処し、国民に対しての一定の周知、広報期間をとることによって国民の良識で判断してもらうことが大切であるといった、報道の自主規制に任せるべきであるというお考えもおありのように伺っております。

 我が国の新聞、放送など、いわゆるジャーナリズムを標榜するメディアは、長い間の経験と現場の闘いの中から報道の自由の実際をかち取ってきたと考えております。もちろん、先ほど述べましたように、過去に不幸な過ちを犯したことがなかったわけではありません。しかし、憲法改正の国民投票という重大な局面で、虚偽の事項を放送する、事実をゆがめて放送するといった、想定しにくい上、大変あいまいな表現で述べられた事態を理由に重い刑罰を科すことは、自由な討議を通じて国民の良識が浮かび上がってくるという民主主義のあるべき姿を矯めてしまうおそれがあります。

 これは、これらの罰則、規制が公職選挙法を参考にしているとすれば、日弁連の言うように、候補者のうちから当選者を選ぶための、あるいは政党を選ぶための公職選挙法と、国の最高法規である憲法改正の是非を問う国民投票とは概念的に全く異なるものであるということからくる当然の帰結でありまして、その意味からも、我々は放送局に対する新たな規制は一切あるべきではないというふうに考えております。

 本日は、私の意見を申し述べさせていただきまして、大変ありがとうございました。(拍手)

中山委員長 以上で両参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 本日は、石村参考人、堀参考人には貴重な御意見の開陳を賜りました。本当にありがとうございます。

 これまで、当日本国憲法に関する調査特別委員会では、専ら、憲法改正のための国民投票を実施するという、その実施者の観点から審議をしてまいったところであります。しかし、きょうは、こういった国民投票制度を担うメディア、その中でも特に放送事業者のお立場からの貴重な御発言がありまして、私も、基本的には、報道の自由あるいは放送の自由というのは守らなければならないという立場に立っているわけであります。

 ちなみに、当委員会においては、マスコミに対する規制の関係では、新聞、雑誌、テレビ等の虚偽報道の禁止の是非、さらには新聞、雑誌の不法利用等の禁止の是非という論点について議論をしてまいりました。

 一つは、言論、表現の自由を害さないような厳格な運用を基準とした上で、あくまで虚偽や不法利用のような報道、評論規制は維持すべきである、このような考え方と、罰則で担保するような規制ではなくて、国民投票の公正を害することのないよう自主的な取り組みに努めるものとする等の訓示規定を設けて自主規制にゆだねるべきである、このような二つの考え方が委員から開陳をされているところであります。

 ところで、きょうの石村参考人のお話からいたしますと、自主規制ということに対しては大変抵抗感が強いというお話を承りました。現行憲法が制定された当時、テレビというのはなかったと私は理解をしております。そういう意味で、表現の自由の中に規定されています報道の自由というのは、どちらかというと新聞、雑誌等を利用した形態での報道を想定していたのではないか。そういう意味では、テレビというのはまた別の観点からの検討を必要とするものではないだろうかと思っております。

 特に、テレビの影響力というのは大変大きゅうございます。限られた電波を利用するという公器性、さらには、限られた時間での編集のいかんによってそのメッセージが大きく左右されてしまう、こういったあたりから考えますと、放送法に述べております「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」という「目的」との関係で、特に第三条の二に定めております「政治的に公平であること。」「報道は事実をまげないですること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」このような放送番組の編集等の一定の基準というものが定められていても、これをどのように具体的に実行していくのか、大変難しい問題があるのではないかと思っております。

 このたびの質疑に当たって、改めて、放送のあり方、特にテレビの放送のあり方を検討するについて、どのような形で具体的に報道を行っていけばいいのか。これも、単なる報道ではなくて、言ってみれば番組の提供の中でさまざまな討論番組、あるいは、さまざまな政治的な争点を明らかにした上で特集番組を放送する、こういった場合にどのようにして政治的な公正性、あるいは意見が対立する問題についてできるだけ多くの角度から論点を明らかにすることが実現可能であるのか。いわゆる放送の中立性と言われることについて、それぞれ、石村参考人、堀参考人はどのようにお考えであるか、お聞かせを賜りたいと思います。

石村参考人 今、早川委員がおっしゃいましたとおり、放送の特殊な立場というか、不特定多数を対象に、同時性も伴って放送を伝えていくということで、先ほど冒頭私も述べましたし、先生もおっしゃいましたけれども、放送法には非常に細かい規定を活字の場合と違って規定している、先ほど四つほど述べましたけれども。

 そういうことを踏まえますと、とにかく中立性については、不偏不党の立場から、さまざまな政治上の諸問題の報道におきましてもやはりこの基本精神をしっかり守っていくということが重要でありまして、これは個々のそれぞれの報道機関が日々研さんしていることでもありますし、これはもうまさに放送業界の基本憲法みたいなものですので、それに基づいてやっていくということが中立性を確保する最大の道ではないかなと思っております。

早川委員 今の点について、堀参考人はいかがでしょうか。

堀参考人 私も、放送法三条、先ほど早川議員が言われたことについては、これを遵守すること、放送局にとってのまず憲法のようなもの、基本原理だというふうに思っております。さらに、こうした規定とともに、それに基づいて我々放送局が定めた放送基準というのがございますけれども、それぞれの放送局がどちらにも偏らないという中立性を保つべく努力をしているのが現状でございます。

 実際、先ほど申しましたように、政治的なトーク番組などをする際にも、その制作者は常に、放送法三条の規定というものを頭に入れながら、出演者のバランス、放送時間の中での双方の露出比率、そうしたものを公正に保つように努力している次第でございます。

早川委員 この放送の中立性の担保というところで、私どもは、自律的な規律にゆだねるといった場合であっても、やはり自主規制というものがどうしても必要になるのではないかと考えております。特に、これは民放連についてお伺いをしたいのでありますけれども、いわゆる受信料収入ではない、スポンサーの広告費等によって賄っている民放連において、こういった憲法改正についての報道あるいは特集番組の放送の中立性の確保のための自主規制ルールとしてはどんなことが考えられるでしょうか。

堀参考人 もちろん、我々は民間放送でございまして、スポンサーによってその経営が成り立っているわけでございますが、さまざまな番組あるいは報道を行っていく際に、スポンサーの方々からこれまで大きな圧力とかそうしたものを受けたことはさほどございませんが、たとえあったとしても、やはり放送局が受け持つべき社会的な役割というものを前面に出しまして、もし我々の放送法三条というものを矯めなくてはならないというような場合には、それを下げていただくというか、我々の方から放映はお断りするというふうなことであろうかと思います。

 ただし、そういうことが現実に起こったということは、私、朝日新聞の時代からテレビ朝日、現在の名古屋テレビまで、およそ十年間にわたってこの放送の業界に携わってまいりましたが、不幸にしてというか幸いにしてというか、そういう事態はあったことがございません。

早川委員 昨年、当委員会が海外調査団を派遣いたしまして、海外におけるメディアの報道のあり方あるいは規制について調査をしてまいりました。堀参考人から言及がありましたとおり、フランスではオーディオビジュアル高等評議会、CSAという独立機関が設置されている、国民投票における公平な放送を担保するために偏った放送がなされた場合の勧告等を行っている、このような報告でありました。

 先ほど、堀参考人からは、このような強力な権限を持つ第三者機関の設置については疑問が投げかけられたところでありますが、しかし、憲法改正について公平な放送が現実に行われるかどうか、放送局の独自の取り組みだけで本当に国民が安心できるかどうか、それについて若干の危惧を持っているところでありますけれども、石村参考人に、この点についてどのようにお考えであるか、お聞かせをいただきたいと思います。

石村参考人 今先生がおっしゃったようなフランスの制度については、その国独自のいろいろな文化的な背景とか、いろいろな形のものがあると思います。

 ただ、私、冒頭でも、堀さんも申しましたけれども、日本の放送業界の場合は、まず放送法にのっとってきちんとやるという、それは独自に、それぞれ個々の放送局で懸命に取り組んでいるわけですが、それに加えてBPOという第三者機関というのが設立されていまして、ここにいろいろな形で、第三者機関が視聴者からの苦情等に対応して自主的に解決する仕組みもつくってある。そういった中で、特別に国民投票だけに絞ってこういう第三者の監視機関をつくることがいいのかどうかということについては、私は極めて慎重な議論がまだ必要ではないかなと考えています。

早川委員 憲法の改正案についての国民の間のいろいろな議論を進めていくためには、まずは国会審議の段階での報道があろうと思います。さらには、国会の発議から投票までの間の報道、そして投票当日における報道、こういった三つの段階に分けられるのではないかというふうに考えますが、報道機関の立場として、憲法改正案についての報道のあり方というのは、この三つの時点においてそれぞれ違いがあるのか、どのような報道が予想されるか、お聞きをしたいと思います。

 これは石村参考人と堀参考人のお二方にお願いいたします。

石村参考人 憲法の改正問題、国民投票の法律の制定の問題も含めまして、今、傍聴席の方を見ましても非常にマスコミの方もたくさんいらしているということを見ても、けさの新聞にも憲法改正の国民投票に関するいろいろな報道もかなり大きく載っていたというようなことを見てもわかりますとおり、個々のマスコミの判断ですけれども、やはり憲法の問題に対していろいろな動きが出てくるということは、当然、一番国民に関心のある政治的な重要事項だという認識だと思います。

 これは、期間を区切って、国会審議の段階、投票まで、投票中ということじゃなくて、あらゆる機会をとらえて、各報道機関が自主的に、この問題の多面的な、多方面でのいろいろな議論を、やはり公平中立の立場で伝えていって国民の理解を得る、そういったマスコミ活動というのがこれから十分行われていくのではないかな、私はそう思っております。

堀参考人 今、石村参考人もお話しになりましたけれども、段階ごとにということになりますと、まだ手続が具体化していない状況ではなかなかお答えしにくいと思います。

 ただ、先ほどから申していますように、我々の中立公正というものを担保していくためには、我々が放送法の定める、あるいは憲法の定める、そして我々自身が放送局ごとに、あるいは系列ごとに、あるいは民放連で決めている、放送を中立的に公正に行っていく、そういう考えのもとにすべての報道を行っていくというのが基本的な態度でありまして、それは、それぞれの場面場面で変わるというものではなくて、一貫した姿勢というものはずっと貫いていくというふうに考えております。

早川委員 今の点でありますけれども、憲法改正の国会における審議の報道、あるいは国民のさまざまな階層からの意見の開陳というものと、既に国会で衆議院、参議院それぞれ総議員の三分の二以上の賛成によって発議した憲法改正案について、一方において改正案を国民に十分に周知させよう、そのために賛同する国民をふやそう、こういういわゆる憲法改正を実現しようという運動と、あるいは逆に国会で発議した憲法改正案を否定的にとらえて反対する運動、この二つのいわゆる運動としてのとらえ方が出てくると思うのであります。

 その段階でマスコミが完全に中立性を担保して、発議された憲法改正案に対して一定の方向性を全く示さないでいることができるかどうか。恐らく新聞、雑誌等では、それぞれの論者の立場からの意見の開陳がなされると思いますけれども、放送番組の編集者の立場から、そういった結果的に政治的な中立性が十分確保された形での放送が本当に可能かどうか。可能にするための内部的な取り組みというのはどうあるべきか。

 そういったことについて、石村参考人と堀参考人に再度お伺いをいたします。

石村参考人 ちょっと繰り返しになりますけれども、我々としてはやはり放送法の規定が放送業界にとってはまさに憲法のようなものですので、今、早川委員が御指摘された御懸念の点については、放送業界としては公平に中立に取り扱っていく。いろいろな形で、番組、ニュースでもそういう形で取り扱うということが基本になるのはもう間違いないと思いますし、それが変わるのかという御懸念については、変わらないと私は申し述べたいと思います。

堀参考人 石村参考人と同じようでまことに申しわけないんですけれども、同じような立場でございますが、しかし、やはり国会が発議された事柄については、周知、広報についても、恐らく広報のあり方などについて、発議された国会の方が中心になってやることもあるのではないかと思います。

 その場合にも、我々はやはり中立公正の立場をとるということでございまして、それは具体的にはどうかといいますと、もしその周知、広報が賛成というところに偏っていた場合には、これをチェックするのもやはり中立的、公正な立場だというふうに報道機関の我々としては考えております。

 国会において三分の二以上の賛成で発議をされた、その上で、その賛否は国会の場でございまして、国民主権ということからいいますと、我々はその賛否のバランスを報道の中できちっととっていくというのが、これもまたやはり中立公正な報道の立場ではないかというふうに考えております。

早川委員 最近、政治家が出演する討論番組が多数見られるわけであります。このような番組の政治的な中立性を確保する仕組みが現在どのようにしてとられているか。私自身も、言ってみれば、限られた映像を繰り返し流されてしまうということの中で、結果的には誤ったメッセージが流されやすいのがテレビ番組の現状ではないだろうかと思います。

 そういうことで、特に民放の場合においては、いわゆる視聴率競争というものがございます。おもしろく番組をつくりたい、つくらなければならない、そういった要請がどうも背景にあって、すべての論点にわたって公正に報道する、あるいは放送するということができない。言ってみれば、論争点が極めて明確な部分だけ繰り返し放送され、重要なその他の論点が国民の前には開示されないまま終わってしまう、こういう危険性があるのではないだろうかと危惧をしておりますけれども、これは堀参考人に、その危惧の点についてお答えを賜りたいと思います。

堀参考人 我々やはり、国民の皆さんが現在国会あるいはさまざまな場面で問題点を考え情報を収集しという状況にあるときに、最もそれをよく知る立場の方、あるいはその論点について明確にお話のできる立場の方、その方に番組に出ていただいて国民の皆さんにお知らせするというのは、報道番組を行っている放送事業者としては当然のことだと考えております。(発言する者あり)

中山委員長 静粛にお願いします。

堀参考人 ただ、そのメンバーの選定、あるいはこの前の欧州各国の調査の中でもスイスの方が言っておられるようですけれども、やはり放送時間あるいは発言の時間といったものの公平性、その公平性というのはどうも欧州の場合は時間のことを重視しているようでございますけれども、我々もやはり中立性、公平性を考えるときに、メンバーの人選、そして皆様の発言の時間、さらにそれは生番組の場合ですとなかなか難しいときもあるかもしれませんが、きちっと発言の時間も公平になるように考えていきたいというふうに考えております。

早川委員 生番組についてのお話がありました。

 事前に収録をして編集した番組である場合には、今のようにそれぞれの出演者の発言を公平に報道することが可能になる、そういうふうに思いますけれども、現在報道されておりますさまざまな政治番組等の討論番組を見ますと、実に見苦しいやりとりもしばしば見受けられるところであります。結果的には国民一般に誤ったメッセージを残したままに終わってしまうという危惧があります。

 その点で、放送番組の編集についてお聞きをしたいのでありますけれども、これは石村参考人と堀参考人双方であります。

 テレビ番組の制作を外注する場合が多くなっているというふうに伺っております。政治番組の外注については現在どのような状況にあるのか、さらには外注した政治番組の中立性を確保する仕組みはどのようなものを用意されているか、お聞かせを賜りたいと思います。

石村参考人 NHKの場合は、政治番組の外注ということは一つもありません。

堀参考人 もちろん、テレビ朝日を含めた民放各社の場合も、すべて外注というケースはございません。すべて共同制作の形になっております。したがいまして、もし何かそこで過誤なり過ちがあった場合には、我々法人としての放送会社が責任を負うという立場になっております。

 なお、先ほど生番組のお話がございましたけれども、基本的には、そうした対立の激しい政治的な課題などに対する討論番組は生でやるということが原則になっております。ただ、今議員のおっしゃるように、なかなかうまくいかないじゃないかというのは、これはやはり生ということもありまして、出演者、発言者の方の熱の入れ方とか、あるいは司会者の腕とか、さまざまな要素がありますが、そこにはやはりベテランを配して、あるいは番組の制作のさまざまの場面で、きちんとした放送ができるような仕組みをそれぞれ我々は考えているところでございます。

早川委員 政治番組についての編集の責任でありますけれども、しばしば、現場のプロデューサー等にすべてその責任をゆだね、組織として責任を負う体制にないということがあるのではないかというふうに危惧をしております。

 民放の場合に、共同制作という形でありますけれども外注したものもある、その場合でも共同制作だというお話でありますけれども、私としては、いわゆる特集番組等の場合においては、番組の制作に関与した関係者がすべて名前を表示して、その番組について責任を負う、責任を問われた場合に直ちに是正措置がとれるという体制が必要になるのではないかというふうに考えておりますけれども、こういったことについて堀参考人はいかがお考えでありましょうか。

堀参考人 特にそうした政治的なテーマに関する番組については、ほとんど固定したメンバーでやっていると思います、若干広がりはあるかもしれませんけれども。

 それはどういうことで選ばれるかというと、やはりきちっとしたカメラワーク、それから司会の腕、それからさらにそれをサポートしていくアシスタントたちの顔ぶれ、こうしたものを含めて全体として公正な形にすることになっております。もちろん、コメンテーターの皆さんについては、番組に出ているわけですから顔は出ておりますし、我々は、その放送をするに当たって、だれがプロデューサーでだれがディレクターかということはきちんと把握しております。

 ただ、問題は、いろいろな問題がもし不幸にして起こったときにだれが責任をとるか、そういうお話であるとすれば、もちろん現場は現場のとり方、そして放送局の経営者としてのとり方というのは、それぞれテーマごとにあるいはその起こった出来事によってあると思いますが、基本的にはやはり社長にあるというのが私の考えでございます、これは個人的かもしれませんけれども。

早川委員 最後に、スポットCM等についてお伺いをいたします。堀参考人にお願いいたします。

 当委員会では、国民投票運動におけるスポットCM、番組の提供を行わないCMのあり方が論点の一つになっているところであります。そこで、最近政党が政治活動においてスポットCMを利用する例がふえておりますけれども、スポットCMの発注方法やその制作過程についてお聞きをしたいと思います。

 あわせて、政治的なスポットCMに対しての各放送局としてのチェックというものが今まで行われているのか、いないのか。あるいは、投票直前のスポットCMについて、その効果をどのように考えておられるかどうか。

 私としては、このスポットCMというのは投票行動に極めて大きな影響を与える、そういった可能性があるものだというふうに理解をしております。特に、海外調査によりますと、投票前の一定期間はスポットCMを禁止している国もあるということであります。このような規制に対してどのようにお考えであるか。一括して堀参考人にお答えを賜りたいと思います。

堀参考人 政党のスポットコマーシャルについては、このような形で対処させていただいております。

 まず、普通、スポンサーが広告代理店、この場合でいいますと各党が広告会社、コマーシャル制作会社に発注いたします。それで、完成された素材が放送局に持ち込まれるわけでございます。その間は、基本的には放送会社は局外者ということになります。しかし、実際に各党から要請を受けた広告会社などは、絵コンテなどでラフなアイデアを放送局に持ち込んで、これはおたくの考査、審査を通るかということを内々に聞いてくる形になっております。

 そこで、我々はそのコマーシャルが視聴者にとって適正な表現がなされているかどうかということを割に厳しく判断することになっております。もし、我々放送局の持っている考査基準、審査基準に合わないと考えれば、変更を求めるか、変更できないということならばお引き取りを願うということになります。

 特に、政治的なコマーシャルについては、この中身がだれの意見であるか明白になって、それに対して一般の意見を求めるといった意見広告の形をとった場合には、その体裁をとっていただくことを条件に、お引き受けするケースもございます。

早川委員 今の、スポットCMの効果ということと、それから投票前の一定期間はスポットCMを禁止するという考え方について、民放連としては何かお考えがございますでしょうか。

堀参考人 投票直前とかそういうことでのスポットコマーシャルというお尋ねでございますけれども、今ある公職選挙法などでは選挙コマーシャルは認められておらないわけでございます。ただ、それを法律によって禁止するということを国民投票法案の方に盛り込むということについては、やはり反対をさせていただきたいというふうに思っております。

 コマーシャルによって意見の強弱、賛否の強弱といったことに非常にアンバランスが生じた場合には問題もあるでございましょうが、各放送局が日常に運用している放送基準やコマーシャル考査の中で判断することになるのだと思います。ただ、放送業界の自主的な取り組みとして何かできるか、あるいはすべきことがあるんじゃないかというお尋ねならば、今後検討してみたいと思っております。

早川委員 私自身が民放のテレビ番組に出演したときに、たまたま耐震偽装の事件の関係で、自民党のある議員の証人喚問について賛成か反対かという問い合わせがあったときに、立場上お答えができないというようなお答えを繰り返したことがあります。ところが、その報道がテレビでなされたときに、会館の事務所には電話が殺到したそうであります。そういう意味では、テレビの影響力がいかに大きなものであるか。

 新聞等でいろいろな発言をし、あるいはさまざまな政治活動をしても、それはごくごく一部の方が目にする程度であって、特に強い意見を求められることはないわけでありますけれども、こういったテレビ番組等における発言等に対しては瞬時に国民の皆さんが一定の反応を示されるということから、その巨大な力ということについて十分我々は認識をし、国民投票制度、あるいは公的な器材としての、いわゆる公器としての放送メディアの公共性の担保といったものを十分考えていただかなければならないというふうに改めて私は思っているところであります。

 いずれにしましても、きょうは放送事業者の皆さんからのお話を賜り、今後の我々の委員会審議に大変参考にさせていただく御発言を賜ったと、深く感謝を申し上げる次第であります。

 少々時間を余らせて、ここで終了させていただきます。ありがとうございました。

中山委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 きょうは、両参考人におかれましては、本当に貴重なお時間をこうして割いていただきまして、御意見を賜りますことを重ねて感謝を申し上げます。ありがとうございます。また、委員長には質問の機会をいただきましてありがとうございました。

 まず冒頭、私ども民主党の立場を鮮明にさせていただきたいと思っております。私どもは、この国民投票法案に関連をしたメディア規制、報道規制のようなものについては非常に慎重であるべき、むしろ、自由にいろいろな立場から報道いただいて、国民の皆様の実り多い判断にぜひとも資する対応をしていただきたい、そういう立場であることを冒頭鮮明にさせていただきたいと思っております。

 その上で、きょうは審議の場でございまして、せっかくの御意見をいただく場でございます。その意味で、少し慎重な観点から御意見を賜りたいと思っております。

 今のような情報化社会では、かつてマスメディアというのが第四の権力と言われた時代から、実質的には第一の権力じゃないかという議論があるぐらい、それほどに影響力を増した時代に入っていようかと思います。それは先生方もそういった認識をお持ちの方は多いと思いますし、報道界でお勤めの方、皆様が感じておられることではないかと思います。

 特に、一口にメディアといいましても、やはり映像音声メディア、テレビの影響力は、重ねての議論になりますが、大変大きなものがございます。例えばスイスでは、国民投票に関連した報道について、テレビ、ラジオにのみ非常に大きな規制をかけているというような実態があるそうであります。これはいろいろな要因があろうかと思いますが、非常に速報性が強く、また、一たん口にしたことを引き取ることもできませんし、あるいは映像という、百聞は一見にしかずという大変強い伝達力を持った媒体であります。さらに言えば、私はここが一番大きいんじゃないかと思いますが、情報を受ける側が非常に受け身である。積極的に活字を読み込んだり、欲しいと思う情報を探したりという作業を非常に省略することができます。この受動性が強いこと、これらが相まって大変大きな影響力を持っているんだと思います。

 先ほど来、報道、特に選挙あるいは政治報道に関して、公正であること、中立であることを旨としておられることがよく伝わってまいりました。放送法に書いておりますとおり、公安及び善良な風俗を害しない、政治的に公平である、事実を曲げない、意見が対立している問題については多くの角度から論点を明らかにする、この四原則、これは本当にそのとおりだと思いますが、実は、口で言うほど簡単なことじゃないということではないかと思います。

 私どもも、曲がりなりにもいろいろな取材をいただく立場に立ちまして非常に強く感じたのは、例えば私どもが一次情報の発信源だとすれば、国民の皆様に伝わるのは報道機関にお勤めの方が加工された二次情報、そこにはどうしても、こういうふうに報道したい、あるいはこういうふうに報道すれば国民の皆様に受け入れられる、この意思が入ること、この意思と加工という作業を経由した二次情報であるということを、すごく、こういう立場に立って初めて感じるようになりました。

 その意味で、まず最初のお尋ねなんですが、公正中立ということを旨としておられることを現実のものとするための具体的な努力を、日ごろどうお努めでおられるか。もちろん、各社を乗り越えた、放送倫理・番組向上機構ですか、こういった外部機関をお持ちだと思いますが、むしろこういった作業、こういった営みを社内的にもお努めいただく必要があるのではないかと思いますが、その点に関して、両参考人、それぞれお答えをいただければと思います。

石村参考人 まさに、放送法で定めている大目標を達成するというのは、日常の仕事の中では非常に難しい局面とかいろいろな形が出てきます。

 それで、私どもとしては、当然、先ほどから言っています国内番組基準とか新放送ガイドラインとか、そういった放送に当たってのいわゆる取材側、制作側のいろいろな心構えについて、これは日々の仕事の中で覚えさせていくということがまず基本なんですが、それに加えて、新人になって会社に入ったとき、三年たったときとか、それからデスクというか指導、ある面では管理職の部分になったときとか、さまざまな場面でやはり研修とか、そういう場を利用して学んで新しい知識も吸収していく。

 それに、先ほど先生がおっしゃいましたBPOとか、外部からNHKだけではなく全放送機関についていろいろな問題点等が指摘されますので、そういった報告書等の徹底をするためのいろいろな倫理委員会等も定期的に開いたり、そういうことで日々向上を目指しながらやっているというのが実情です。

堀参考人 こうした御批判にこたえるために、我々はどういうことをしているのか。

 まず第一に、先ほどのお尋ねとは逆になるかもしれませんが、良識のある、見識のある記者、ディレクターを育てる、人材を育成するというところが一つ大きなテーマになると思います。第二には、さらにそれを各放送局が番組の内容のチェックも含めて仕組みを設けること。そして第三に、放送業界全体で取り組むこと。

 先ほど言いましたBPOという組織などは、きょうお配りしました放送倫理手帳の中にも含まれておりますが、大体、ことしの三月に三万部ぐらいつくりまして全放送事業の従業員に配ったということがございます。取材報道にかかわる指針あるいは放送倫理規範を一冊にまとめて、持ち歩けというふうな形での一つのやり方。

 さらに、第二の、各放送局はどうしているのかということでございますけれども、これは報道現場において報道のあり方について毎日のように議論が闘わされています。ちょっとしたミス、これでもしかしたら人権を傷つけたかもわからない、あるいは、これは肖像権には違反しないのかと。そうしたことは、一つ一つのニュースを処理する段階あるいはそれを放送局の中に持ち込まれた段階から幾つかのチェックをしているのが日常でございます。

 ただし、それでもミスは起こってしまうというのが現実でございまして、さらにそのもとになる記者あるいはディレクターという、本当に現場に出ていく人たち、これを育成していくということが非常に大きなテーマになってくると思います。

 名古屋テレビ放送では、BPOで例えばこれは人権侵害になるよという勧告が出たというふうなことがありますと、顧問弁護士の方をお呼びして社員の研修会をして、どういうところに間違いがあったかというふうなことを現実のいわゆるケーススタディーとしてやることを行っております。

小川(淳)委員 ありがとうございます。

 まずはその影響力の大きさと不偏不党というのがいかに難しいことかということを御自覚いただくことが恐らく出発点、それをもちろん研修とか良識、社員教育に充てていただく、さらには、やはり仕組みの問題としてお考えをいただくという順序立てになるのではないかというふうに感じます。

 その上で、それだけ日ごろ気をつけておられながら、さきの総選挙で、これもいい悪いは除いてお聞きをいただきたいと思いますが、小泉劇場あるいは刺客騒動という形で非常に報道がヒートアップした、そういう経験を私たちは実際に持っているわけであります。こういうことがなぜ起きたのか。これは、いい悪いはいろいろな判断があろうかと思いますが、ああいう過熱報道に至った、あるいは、それが国民の判断にどう影響を与えたか。その点に対する、これは中立的な御所感で結構なんですが、特に堀参考人、お聞かせをいただいてよろしいでしょうか。

堀参考人 昨年の総選挙の報道にありましては、刺客というふうなことがありまして、これは非常に、すべて注目される選挙区で起こっているものですから、どうしてもそこにスポットを当てざるを得ないという、これは報道の側の一つの目の置きどころとしての考え方としては、そういうことがございました。ただし、その過程において一部過熱し過ぎじゃないかというふうな御批判をいただいたことも事実でございます。

 ただ、国政選挙でございますので、やはり注目される選挙区での選挙というものにスポットを当てた報道というのは避けて通ることはできないわけでございまして、一部御指摘のようなことがあったかもございませんが、総体としてはバランスがとれていたのではないかという評価をしている次第でございます。

小川(淳)委員 ありがとうございます。もちろん、そうお答えにならざるを得ないことは、よく理解できます。そして、そうなることに関して、私は、恐らく視聴率の獲得という放送業界にとっては至上命題が大変大きな影響力を及ぼすのではないかというふうに想像いたしております。

 そこで、両参考人にお聞きをしたいんですが、この視聴率という一つの指標ですね、これが番組編成あるいは番組内の演出に与える影響度の大きさ、これは受信料に支えられているNHKさんとそれ以外の民放放送局の皆様では、ひょっとしたらその影響度というのは違うかもわかりません、その点も含めてお聞かせをいただきたいのが一つと、この視聴率という数字を、日ごろどうやって情報をとって、それをモニターしておられるか、その日々の営み、両方あわせて、両参考人、ぜひお教えをいただきたいと思います。

石村参考人 NHKの場合は、視聴率というのも、これはどれだけ多くの人に見てもらっているのかということで、有効な指標の一つとしてあることは間違いありません。

 視聴率にこだわる番組も、番組というか、NHKの場合、例えばドラマとか芸能番組みたいな、例えば演芸番組なんかにつきましては、できれば多くの人に見ていただいて楽しんでいただきたい、そういう気持ちで放送を出しております。ただ、ほかの、例えばいろいろなドキュメンタリーとかそういった点については、これは視聴率というのはこだわらずに、要するに質の高い番組をお届けしたい、そういう気持ちの方を優先して、これは視聴率がどうこうということは問題にしておりません。一つの指標ではあると思うんですけれども。

 ですから、日々の、日常的には、それでもやはりある程度客観的な材料として、モニターとかいろいろなほかの制度もとっておりますけれども、毎日、大体朝九時過ぎにはそういう数値が出てまいりますので、一応、編集会議等の朝の会議の参考資料としては配付して、それぞれの番組現場が参考にしているというような状況でございます。

堀参考人 先ほど最初の意見を述べさせていただいたときにも少し触れましたけれども、視聴率というのは、我々が番組をどんな方々に見ていただけるか、あるいはどの程度視聴者の方々に受け入れられているかというふうなことをはかるための客観的なデータとしては、やはり捨てがたいものがございます。

 特に、最近、視聴質といいますか、我々のところにも特選委員会というのがありまして、視聴率とは関係なく、番組審議会とは別に、この番組がどこがいいか悪いかということをかなり外部の方々に議論していただく場面も設けているのでございますけれども、視聴質といいましても、例えばあるアニメの番組でいいますと、昔で言うPTAのアンケートだと最も見せたくない番組というふうに出ているんですけれども、実際にその番組は放送文化賞というふうなものをある団体からいただくというふうなことで、質ということに関しては、やはり主観的な要素というのは非常に強くなってくるというふうに私は考えております。ただ、御意見として伺うときに、それぞれさまざまな御意見を我々の参考にするということは、とても大事なことだと思っています。

 ただ、視聴率というものも、これまで東京、大阪に比べて名古屋は二百五十とサンプルが非常に少ない、今、昨年の四月から六百になりまして、実は、そのことによるさまざまな視聴率の中身の分析でございますね、どんな方がこの番組を見ているかだけではなくて、毎分ごとに、どういう方々のチャンネルの切りかえが行われているかというふうなことも我々は見ることが可能になりつつあります。

 しかし、その中で、我々がその視聴率をどういうふうに使うかといいますと、もちろん番組の制作、あるいは、テレビ朝日の場合は、こちらの東京でいいますと、朝の「やじうま」から始まりまして、「スーパーモーニング」、「スーパーJ」、そして最後の「報道ステーション」というところまで一貫してニュースを中心にした番組編成があるわけでございますけれども、そこでもどういう方々が見ていられるかということについてのデータは、番組をつくっていく上でなかなか重要なものだというふうに思っております。

小川(淳)委員 ありがとうございました。

 私が下調べでお聞きした範囲ですと、関東地方で六百世帯がモニターされているということだそうですね。前日の一分ごとの視聴率が翌朝開示をされるということで、これは非常に、よく言えば速報性が高い、速報値が高い、細かい分析ができる、悪く言えば毎日その前日の視聴率に追われ続ける、そういう循環を生む可能性もあろうかと思います。この点もよく御自覚をいただくということがまず出発点だろうという気がいたします。

 今おっしゃったように、視聴率以外にいかに多角的な観点からその番組の内容を評価していくか、そういう仕組みを手にしていくかということが非常に大事だと思いますし、もっと言えば、国民との関係でいえば、視聴率のみに引きずられれば、これはマスコミの国民に対する迎合になりかねない。視聴率以外で何か国民に訴えて、いわば国民とマスコミとの間でお互いにはぐくみ合っていくような、政治文化とか成熟した価値観をお互いに育て合っていくような関係が理想ではないかと思います。

 そこで、これから憲法改正に関する国民投票法案、国民投票について議論をさらに深めていくわけでありますが、私たちはこれを経験したことがありません、私たちの国では。ですから、本当に試行錯誤だと思いますが、予測、観測、直観でも結構です、日ごろ大変経験を積んでこられた国政選挙に関する報道と、この特定、個別のテーマを取り扱って、ある程度の期間をかけて国民の判断を求めていく、促していくこの国民投票に関する報道とは何が同じだと感じられますか、考えられますか。何が本質的に違う、この点は選挙報道にもさらに増して気をつけなきゃいかぬ、あるいは気をつけなくてもいい、何が同じで何が違うと感じられるか。御所感を両参考人からいただきたいと思います。

石村参考人 一つは、報道する立場では、政治的公平性とか中立性というのは、この面では普通の国政選挙とそう変わらないかな、同様の部分があるんじゃないかと思っております。ただ、憲法改正の国民投票をする場合は、別に人を選ぶ選挙ではないわけですので、政策について是非を問う形になるということになりますので、これはできるだけ多くの方が御理解できるような形の報道というのを、かなりの時間を割いてやっていくということが必要になってくるんじゃないかなと思います。

 とにかく、これは政策についてさまざまな、多方面の、いろいろな立場の人の意見をかなり多く伝えて理解を深めていっていただく。それから、まだこれは決まってはいない、今論議されているところでしょうけれども、普通の国政選挙の選挙運動期間より長さが多分長くなるとは思うんですけれども、どの程度になるかによっても、伝え方の部分とかそういうところでもまた考えていかなきゃならない問題が多いかなと思っております。

堀参考人 今、立場としては石村参考人が言われたとほぼ同じ考えでございます。

 ただ、やはり考え方として、特定の候補者の中の優劣といいますか、どちらが議員としてふさわしいかという選び方と、国の最高の法律をどうするか、変えるのか変えないのかということを国民に問うときとは、仕組みも違うし、それから考え方も違うし、我々が日常的に考えている報道の分野からいえば大変未知の分野が多いと思います。

 したがいまして、我々は、公職選挙法のものをそのまま持っていくということには大変反対をしております。先ほど申し述べたとおりでございます。ただ、未知の部分に対して、これからどういう姿勢をとっていくのかということについては、今後やはりさまざまなことを考えていかなくてはいけないのではないかと思います。

 特に、一番大きなことは、私が先ほど申し述べましたように、国民の一人一人の主権というものがきちっと評価されているかどうかとか、あるいはそれを十分論議していく時間があるのかどうか、あるいはその投票の仕方はどうなのか、こうしたものはまだまだ我々にとっては未知のものでございまして、さまざまな問題について現在検討をし、かつ、それに向かって我々がよいと考える方法をこれから探っていきたいというところだと思います。

小川(淳)委員 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。

 本当に、私ども選挙をやっておりますと、もちろん政策も大事なんですが、これに加えてさまざまな人間関係がせめぎ合うわけですね。そうすると、ある種の熱情を持って、勢いを持って、一気に短期間を駆け抜ける。それに伴って報道の皆様も、できるだけ相対立する候補者を、同じように時間をとって、同じような角度からお伝えをいただくというふうに御苦心されているのはよくわかるわけなんですが、そこでももちろん冷静な御判断を国民の皆様にいただかなきゃいけないわけですが、多分それ以上に、極めて冷静に、極めて客観的に、できるだけ冷えた状態で御判断をいただく要請が強いんだろうなという気がいたします。

 その意味で、今おっしゃった、どのくらいの期間をとればいいのか、どのくらいの時間を割けばいいのか、そういうことに加えて、例えば諸外国でも工夫をしているようですが、両当事者の意見を平等に取り扱うだとか、また、そこに放送局としての主観が入るのか入らないのか、いろいろ論点はあろうかと思いますが、とにかく国政選挙にも増して冷静で客観的な冷えた頭が求められるのではないかと思います。一方で、それほど個人的な利害とか人間関係がせめぎ合う世界ではないでしょうから、そういう意味での引きずられ方とか影響のされ方とかいうことからは、少し距離を置けるのではないかという気がいたします。

 その意味でも、最近、例えばヨーロッパ諸国で、EUへの加盟の是非を問うような国民投票ですとか、大変盛んでありました。そのときの、例えばイギリスであればBBC……。イギリスはやっていないんですね。例えばフランスの放送局だとかオランダですとか、ぜひ機会があればそういうところとの情報交換もこの場をおかりしてお願いしたいな、いろいろ示唆に富むことがあればぜひお教えをいただきたいなと思います。

 国民投票自体は日本では経験がないわけですが、少し実例でお伺いしたいのは、過去に十数本、地方自治特別立法に関する住民投票を我が国は経験しております。加えて、例えば合併の是非、それから、つい先日も岩国での米軍基地をめぐる住民投票。そういう住民投票はかなり経験を積んでまいりました。

 これに関連して、放送業界、放送御当局として、住民投票が行われているまさにその地域の放送局との間でのさまざまなやりとり、あるいは御指示、あるいはその現場におけるいろいろな取り扱い、どんな工夫なり御苦心がおありだったのか。わかる範囲で結構です、実例という観点から両参考人にお尋ねをしたいと思います。

石村参考人 今小川委員からお話がありました、岩国の最近あった住民投票の例があると思うんですけれども、NHKの報道の基本方針としては、選挙報道と同様、不偏不党、公平中立ということで報道を進めてきたんですが、岩国の住民投票については、岩国の現地を中心に、たしか決まったのが二月の初めぐらいだったと思うんですが、その時点から、告示日になる三月五日、投票日の三月十二日まで、それぞれ知事とか議会の動き、知事の発言とか、それから住民団体の賛成、反対のいろいろな動きとか、主張も含めてそれなりに節目節目に伝えてきました。それで、全国放送の方では、告示になってから、企画ニュースも含めた形で、開票日、開票結果という形で住民投票の報道をやってきました。

 それで、これまでやってきたのと違ったのは、NHKもここ十年以上投票日に出口調査というのをやっておりますけれども、今回の山口の岩国の住民投票では出口調査はやりませんでした。これは、移転受け入れの立場の人たちが投票に行かないという戦術をとられたので、どちらかといえば我々は投票率の方の取材に力を入れてやったということで、これについては出口調査は実施しなかった。

 あとの部分では、情勢といいますか、要するに政策一本に、移転計画であるということ自体にテーマが絞られていたものですから、ローカル放送で特に中心的にやったのは、このいろいろな背景とか経緯とか、とにかく具体的な移転計画の内容をできるだけわかりやすく説明していこう、その姿勢でやったというふうに聞いております。

堀参考人 私どもの方でも、中部国際空港の近辺で町村合併の住民投票というのがございまして、それについては冷静にということで、随分、過熱しない報道に終始したと思っております。それは、住民の方々が、町村合併をするかどうかという、そこに自分たちの生活を含めた非常に大きな価値を見出すかどうかということですので、報道機関が、例えば選挙のように、あるいは今話題になっている国民投票法案のように、彼ら自身が考えるということを主体に考えたからでございます。結果的には、住民投票は非と出たと思います。

 それで、町名のアンケート調査でも南セントレア市とかという、中部国際空港の名前をもじった、あれが第三位ぐらいに入っていたと思いますけれども、結局そうしたものも我々が報道をしあるいはしなくても、この欧州の調査の中でも、たしかスイスですか、活字の方が我々メディアはほとんど賛成といってやったんだけれども住民のあれはノーだったということをお話しになっている部分がありますけれども、やはり住民の方々が最終的には結論を出すというふうにどう我々が報道をやっていくのか、中立公正を目指すのかということが、住民投票においても必要なことなのではないかというふうに思っております。

小川(淳)委員 ありがとうございました。大変参考になりました。本当にありがとうございました。

中山委員長 次に、太田昭宏君。

太田(昭)委員 公明党の太田でございます。

 両参考人、大変ありがとうございます。

 私は、国民投票法案において、いわゆるマスコミ規制などと言われるんですけれども、マスコミ規制というよりもマスコミ協力、投票をできるだけ国民に丁寧にしていただくためにむしろマスコミの皆さんには協力をしていただく、そういうことが憲法は国民が決めるものということからいって大事なことだというふうに思うんです。

 マスコミとは全然別なんですが、例えば上司が部下と一緒に仕事を終わってから飲む、それで憲法論議になる、大いに論議して、おれはこう思うよと上司が言って、最後におれが金を払うよと。公選法でいきますと、これは非常に危うい。しかし、こういうことは、対価性ということは考えなくちゃいけないけれども、基本的にいいんじゃないか。あるいは、渋谷の駅前で憲法改正についてティッシュペーパーをばあっと配る。投票に行きましょうというなら大いに結構。そうじゃなくて、ある程度の対価性ということはありますけれども、その辺も、かなり盛り上げる効果があるという要素が強い場合は、単なる公選法とは違う判断になるだろうというようなこともありまして、マスコミで自主規制であるとかあるいはマスコミ規制というよりも、マスコミ協力ということが、この国民投票においてぜひともそういうことで取り組んでいただきたい。その上での自主規制というようなことが今回のこの国民投票法案におけるマスコミとの連携であろう、私はそう思っています。

 第一問ですが、その上で、虚偽報道禁止の是非ということが問題になるわけですが、その前提として虚偽報道とは一体何であるのか、どちらの方でも結構です、お答えください。

石村参考人 明らかに虚偽であるということを知りながらあえて報道するようなことを虚偽報道というのではないかというふうに私どもは思っております。

太田(昭)委員 イメージ的に、どういうものを虚偽というふうにイメージされていますか。

石村参考人 例えば、事実誤認というか虚偽であるかどうかはよくわからなかった、しかし、結果的には誤報というかうその報道になったというような場合と違って、事前に完全に虚偽であることを知ってあえて報道したというあたりが虚偽報道だと私自身は考えております。

太田(昭)委員 二番目ですが、マスコミ規制と言われる、私どものマスコミ協力という言葉で言えば、自主規制ということだというふうに思います。

 そこで、マスコミ側として、自主規制というならば、どういう仕組みを考えていらっしゃるのか、どのような自主的な取り組みをされるつもりか。NHKならNHKでどういう体制をつくり、民放なら民放でどういうふうにするのか、自主規制ということをどういうふうに担保されようと。今ここで結論をお話しされるかどうかわかりませんが、どうお考えでしょうか。お二人、お答えください。

石村参考人 我々としては、規制ということ自体に若干アレルギーというか、行われるべきではないというのが基本的な立場なんですよね。

 それで、これから国民投票の制度をどのようにやるかということについても、基本的には個々の報道機関の判断にゆだねていただきたいというのが、これは先ほどから繰り返しておりますけれども、我々の立場だということをぜひ御理解いただければと思います。

堀参考人 我々は、規制という概念ではなくて、自主規制という、言葉としてはそういう言葉はあるのかもしれませんが、間違えないための仕組みを我々が持つということだと思うんです。

 そのために、先ほど申しましたBPOだったり、あるいは記者やディレクターの教育だったり、あるいは個々の局の中で番組審議会以外にさまざまな外の声を聞く場面をつくって、その中で自分たちの日常的な行動に対する検証を行っていく、間違いがあればそれを正していくという、自浄能力というんでしょうか、自主規制というよりは、我々は自分たちを間違わないようにするための仕組みをどれだけ持っているかということと考えております。

太田(昭)委員 私は報道被害ということについてずっとかかわりをしてきまして、これは被害を受けた方にとりましては大変な問題がこれまでもございました。BRCがもう少し力を発揮されるようにというようなことを十年ほど前から要請したりということを繰り返してきたわけですが。

 今お話のあったBPOあるいはBRC、こういうたぐいのものを第三者機関として第三者機関の設置ということを例示するとか努力義務化とか、この国民投票法案というものの関連でお二人からお答えいただきたいと思います。

石村参考人 これは先ほどもちょっと御質問に答えたんですけれども、この国民投票だけに限ってやる第三者機関がどういうことをイメージされているのかがちょっとはっきりしない部分がありまして、どのような権限を持たせていったり、どのような人によって構成されるのかというのはちょっとイメージ的にわきません。

 ただ、基本的な形としては、BPOとかの組織を我々としてはもう既に設置して持っておりますので、あえてつくる必要があるのかなというのが基本的な立場でございます。

堀参考人 私も同様なんでございますけれども、BPOというものが三つの委員会を設けて、青少年あるいは人権、そうしたさまざまな面から我々の日常の行動に対して視聴者の御意見あるいは訴えを聞いて、自主的に間違いを正すような努力をするということをやっております。

 ただ、第三者機関といいますと、そのほかに何があるのかなと。恐らくもう少し大きな権力的なもの、そうしたものをもし目指しておられるのだとすれば、私たちは不要だというふうに考えている次第です。

太田(昭)委員 貴重な御意見なので、よく受けとめて、勉強したいと思っています。

 スイスとフランスでは、先ほどお話があったと思いますが、放送メディアと活字メディアを区分けする、放送メディアだけを規制しているということがございます。

 確かに、瞬時に流れてくる放送メディアというものは、今、日本の社会、またこれからの社会の中で、活字はかなりとどまるわけですが、次から次へと押し寄せてくるということで、投票権者にとりましては影響はかなり大きいものがあるというふうに思います。悪い言葉ですが、どうしても扇情的になるということもあったりするということもあります。活字メディアは各メディアの思想的傾向がもともとはっきりしているというようなところも、NHKさんははっきりしているわけですが、いろいろなことがございます。

 バランスというようなことは非常に、いろいろなこと、先ほどありましたが、熟慮、討議の材料をメディア全体としていい形で国民に提示できるかどうかということが私は大事だというふうに思っていますが、放送メディアと活字メディアの違いということについて、私自身は日本ではちょっとぴんとこないんですが、お二人はどういう印象を持っておられるのか。

石村参考人 今太田先生がおっしゃったような、いわゆる伝わり方の問題とかでは、例えばテレビと活字メディアというのは、一方が不特定多数に同時に伝わる、活字は読みたい人が選んで読むという部分があると思うんです。

 ただ、これは共通の部分で私ども同じ組織なんかをつくっておりますけれども、ジャーナリスティックな面では、我々は新聞業界と同じ形で日本新聞協会に加盟したりしてやっておりますので、例えば活字メディアと放送メディアを規制の対象と考えて区別をつけるとかというのは妥当ではないんじゃないか。やはり同じ報道機関という立場では、同じ立場にいるんじゃないかというふうなことを私は思っております。

堀参考人 私は、先ほどちょっと申し述べましたように、朝日新聞に三十五年ほどおりまして、その後、その最後の方の期間も含めまして放送とかかわるようになりましたけれども、両方を体験しまして、あるいは番組とかいろいろなことがございますけれども、先ほど石村参考人も言われたように、報道というところに限って言えば、ほとんど能力的にもあるいはその持っている力からいっても遜色はないというか、影響力という点では、先ほど言われましたように、テレビの方が大きな影響力を持つというふうに言われております。我々も若干そういうところはあるのかなという気はいたします。

 ただ、活字とラジオ、テレビを分けるという考え方の中には、もともと放送というものが希少な国民の財産である電波というものを割り当てられて、それを使って放送をしていくということがございますので、そこに放送法という大きな枠組み、もちろんその前には憲法があるわけでございますけれども、枠組みを課せられているのだなというふうな気がいたします。

 なお、欧州の調査団の報告書を見せていただきますと、例えばスイスなんかの場合には、これまでテレビもラジオも国営放送の期間が長かった、それしかなかったんだという特殊な事情があるというふうなことをお答えになっていたようですけれども、同じように、やはりそれぞれの国の文化的なあるいは歴史的な成り立ちというところで考えますと、さまざまなことで我々が学ぶこと、これはとても大事なことだと思いますけれども、果たしてそうしたものを、もう既に放送法という大きな枠組みを受けている我が国において必要なのだろうかということを考える次第でございます。

太田(昭)委員 予想投票の公表の禁止についてですが、公選法とは違いまして禁止しない方向であるわけですが、世論調査はもちろんオーケーでありますけれども、模擬投票、テレゴング、こういうものはどうお考えでしょうか。

石村参考人 予想投票、本来の投票と同じような形式でやるような投票かなと思っています。それから、模擬投票というと、どこか、例えば大学とかで、規模は少人数だけれどもそういうのを想定して投票をやってみるというようなことだろうと思うんですけれども。

 これは、候補者を選ぶ選挙ではないということを考えますと、国民のいろいろな関心を高める上ではそれなりの効果も期待できると思いますし、そういう意味では、こういった予想投票とか模擬投票、テレゴングまで含めるかどうかは別にしまして、国民のいろいろな関心を高めるという意味合いからは、公職選挙法の普通の選挙とはちょっと違った扱いがあってもいいのではないかなというのが私の考えです。

堀参考人 私も、実は、先ほども申しましたように、この国民投票法案の中でどういう形で何を考えておられるのかまだ不分明なところがございまして、我々としてそこにどういう姿勢で臨むかということについては、まだまだ検討あるいは勉強しなくてはいけないことが多いと思っております。

 ただ、世論調査そのものを規制するのではないかという、ちょっと不安もあったのでございますが、今、太田議員のお話を伺って、まずそれはないということですので、それはほっとしたということが一つございます。

 さらに、世論調査とか現在の国民の投票行動に対するその時点での趨勢というんですか、先ほど言いました熟慮型の民主主義でいえば、ある時点ある時点でやはり違ってくる民意というものをどうはかるかというのについては、世論調査という方法が我々は大事な方法であるというふうに思っています。特に、人々が、今、日本じゅうがどう考えているのかというふうなことをつかむために、把握するために、そうしたものを我々が提供していくということは、大変重要な、不可欠なことなのではないかというふうに思っております。

太田(昭)委員 最後になりますけれども、メディアの協力があって運動が盛り上がるんだという私の考えですが、広報の主体として憲法改正案広報協議会というようなものをつくりまして、それでやるわけですが、それをいろいろな形で、メディアで論争したり、いろいろなことを自由に意見を述べるということは結構ですが、その広報協議会と一緒になって、いろいろな、タウンミーティングをやったり広報のパンフレットとかいうことを、むしろ国民の関心を高めるためにメディアがそこで協力して公的な働きを、自由な論争というだけでない、そういうことも私は大事じゃないかと思いますが。

 これはNHKさんにお願いをするということになるでしょうから、堀さんだけお答えいただきたいと思います。

堀参考人 先ほどもちょっとお話をしましたけれども、発議された国会が中心になってさまざまな広報、周知活動をされるということについては、大変大事なことだというふうに思っています。

 ただ、我々としては、そのすべてに賛成する、あるいは、協力といいましても、すべてに我々が一緒に活動するというのは、我々の中立性そのものを疑われるということにもなりかねませんので、我々は、やはり我々の立場というものが鮮明にできるような形で、偏らない形で御協力をするということは当然のことながらあると思います。

 ただ、先ほども言いましたように、我々は、もう一つチェック機能という大事な機能を持っておりますので、それが公正中立という我々の持っている基本的な概念に外れないように注意しながらやっていきたいと思っております。

太田(昭)委員 ありがとうございました。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、石村参考人、堀参考人、お忙しいところ本当にありがとうございました。

 この問題をめぐっては、既に御案内のとおり、我が党は九条改憲の条件づくりの国民投票法案はつくるべきでないという立場でありますけれども、その上に立ってきょうお話を伺って、両参考人からそれぞれ、国民に深く根をおろして定着している憲法という問題や、それから国民主権、基本的人権の立場に立ってということでメディアの役割、いろいろ問題を御指摘されているわけですが、そういう中でも発揮するために努力されているという姿勢は大変大事だというふうに受けとめました。同時に、国民投票制度、メディアとの関係をめぐって、マスコミ規制をすべきでない、まして罰則などあるべきではない、自主規制もなじむものではないという趣旨のお話があったのを、私も同感として受けとめたところであります。

 そこで幾つか伺いたいと思うんですが、まず、放送の公共性という問題です。

 両参考人に伺いたいと思うんですが、既にありましたが、放送はメディア一般と比べても高い公共性が求められる。やはり有限希少な電波の周波数を使うという点で一定の手続によって公正な利用とか交通整理が要るという技術的な問題と、それから放送が国民に与える社会的影響力の大きさということがあると思うんですが、このいただいた放送倫理手帳にある、冒頭の放送倫理基本綱領でも重視されていると思うんですけれども、放送の公共性とは何か、なぜそれが重視されるのかということで、端的にで結構ですが、両参考人からいただければと思います。

石村参考人 難しい言い方はいろいろあると思うんですけれども、これは私が職員なんかに言っている言葉ですけれども、放送の公共性というのは、人のため、世のため、社会のため、世界のために役立つことだというふうな言い方をよく言っています。

 これは、人のためというのは、いろいろな問題について情報のよりどころとなる判断材料を皆さんに与えること、それから、世のためというのは、そういうことを通じて貢献できるというようなこと、それから、社会のためというのも似たようなことですけれども、また、国際的にも日本のいろいろな姿等を発信して国際理解にも努めること、そういう言い方をしていますけれども、難しく言えば放送法云々ということでまた繰り返しになりますので、私の考えとして端的にはそういうことをよく言っております。

堀参考人 公共性といいますと、いろいろな考え方があると思います。我々が求められているのは、市民にとっての公共性だというふうに考えております。それはどういうことかといいますと、多様な放送、多様な情報の送り手として、視聴者との対話の回路を常にあけておくということが非常に大きなことなのではないかというふうに考えております。

 また、先ほど申しましたように、我々は希少な電波をお預かりして事業を営んでおるわけでございますから、これについて我々の持つべき社会的責任というものが当然伴っていて、それが放送法に、まあ、具体的な言葉ではありません、抽象的な言葉でございますけれども、我々が目指すべきものとして挙げられている。

 ただ、その中で、私が重視したいことは、表現の自由、言論の自由というものの多様性を確保するということ、これが電波を預かる我々の責務ではないだろうかというふうに思っているわけでございます。豊かな文化の醸成あるいは健全な民主主義の発展というものに尽くすことこそが、我々の言う公共性だというふうに考えております。

笠井委員 ありがとうございました。

 今お話がありましたが、私も、日本国憲法が保障した国民主権の原理とか基本的人権、表現の自由、言論の自由と、それから、やはり放送というのはいわば国家のためではなくて国民のためにあるということが基本にされるのが大事だなというふうに感じております。

 そこで、関連してなんですが、放送の政府からの自立といいましょうか、こういう問題についてちょっと伺いたいんですけれども、放送が憲法の定める表現の自由の実現の場、それから国民の立場からの世論形成の場として機能するために、自立という問題は不可欠じゃないかというふうに感じております。

 それは、戦前に国家の介入によって放送が日本のいわば侵略戦争に協力、加担する宣伝機関とされたということがあって、その反省から、戦後、放送が権力からの独立ということを重視してきたと思うんです。

 例えば、私、感銘を持って読んだんですけれども、戦後の新生NHKの高野岩三郎初代会長が、このことで、ラジオを通じる新日本建設の事業は、それが民主日本の建設である以上、その対象は非常に広範な国民大衆であり、勤労大衆がその中核である、したがって、ラジオはこの大衆とともに歩み、大衆のために奉仕せねばならぬ、太平洋戦争中のように専ら国家権力に駆使されて、いわゆる国家目的のために利用されることは厳にこれを慎み、権力に屈せず、ひたすら大衆のために奉仕することを確守すべきである、確かに守るべきだと。有名な言葉を残されたというふうに、私も読みました。

 そこで、古くから放送番組をめぐってはいろいろと政府との関係ということで、ここでは私も具体的には述べませんが、いろいろと政府あるいは政治家からの介入問題ということも言われたりもしておりますが、そもそもの戦前からの教訓、その精神というのがNHKの場合にどう生かされているかということで、大きな意味でのお答えで結構ですが、伺えればと思うのと、民放の場合は戦後ですから、戦前の経験はないわけですけれども、そういった戦前のラジオといいますか放送メディアの果たした役割との関係で教訓をどういうふうに受けとめていらっしゃるかについて、それぞれ伺えればと思います。

石村参考人 委員おっしゃるとおり、我々としては、その辺の歴史的な部分の詳細については、なかなか、ちょっと承知していない部分もありますけれども、基本はやはり自主自律できちんとした放送をやる、この精神というのは戦後ずっと受け継がれているものと私は確信しております。

堀参考人 放送法の第三条に、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」という一項目がございます。

 そもそも放送局というのは、特に民放の場合は戦後できたものでございますが、戦前のことは寡聞にしてわからないところも、新聞の場合はよくわかるんですけれども、わからないところもございますが、そうした条文からいえば、放送局が大きな過ちをしない限り、政府からもその自律性を保障されているというふうに我々は考え、行動しております。

笠井委員 ありがとうございました。

 これはちょっとあれですが、戦争と平和の問題に関する報道ということなんですけれども、具体的なことですが、放送倫理基本綱領では、平和な社会の実現に寄与するという形で放送の使命の一つに掲げております。なぜそれを放送の使命の一つに掲げておられるのか。

 それから関連して、ちょっとこれは気になることでありますけれども、実際にそういうふうに掲げられる一方で、例えば、これはいろいろ意見が分かれるところはあるでしょうが、イラク戦争をめぐってとかということで反対の集会やデモがあるということでやられるわけですが、最近でも、例えば三周年で欧米の取り組みについては報道で紹介されるけれども、日本で、ある意味人数的には少し、もっと多いような参加があったとしても、その扱いが小さかったり、ほとんど出ないということがあったりして、問い合わせやいろんな電話とかが寄せられたときに、編集権の問題ですからというお答えもあったりするようなこともあるわけです。

 先ほどあった放送法の三条の二ということで、「政治的に公平であること。」と「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」という規定もあるわけですが、そして、基本綱領でもそういうことが言われているわけですが、放送としては戦争と平和の問題をどう取り上げて平和な社会の実現に寄与しようとお考えなのか、その点について伺えればと思うのですが。

石村参考人 NHKの場合は、特に平和の問題は力を入れていると自負しております。とりわけ終戦の八月前後につきましては、毎年相当な労力、要員、そういうのをつぎ込んで特集番組を放送することにしております。ちなみに、去年の六十年という節目には、八月六日から十四日まで九夜連続という終戦特集を組みましたし、そういう意味では、八月だけでなく、平和の問題についてはさまざまな形で取り組んでおります。

 それで、指摘がありましたイラク問題についても、NHKは、日本の報道機関で今バグダッドにいるのはNHKだけだと思うんですが、前線の記者が体を張ってさまざまに見てきたイラクの情勢、今苦しんでいる姿というのは、どこの放送局よりも詳しく伝えていると自負しておりますし、それに関連するさまざまな動きも、例えば、ある時間帯のニュースを限ってみていえば、日本国内の動きが出ていないじゃないかとおっしゃるところもあるんですが、放送時間の枠ということでいえば、多分、一日とかそういう形でごらんになっていただければ、日本の動きについてもきちんと伝えている時間帯があるというふうに思っております。

 ちょっと詳細は、三周年のときはどうだったかと言われればあれですが、私どもとしては、反対デモの動きとかいろんなことが起きた場合には、その時間内にはなかなか全部を紹介できなくても、ニュースの一日の構成の中でやれるところにはきちんと放送していく、これが基本姿勢でやっております。

堀参考人 平和ということをなぜ綱領にということですが、我々の持っている憲法の大きな柱の一つに平和主義というのがございまして、当然のことながら、平和ということに対して我々はきちっと取り組まなくてはいけないということだと思います。

 全国に百二十七の民放がございまして、それぞれ取り上げ方はさまざま違いますので、私のところだけでいいますと、最近でいいますと、パグウォッシュ会議のその後、あるいは、生き残っている方々、科学者たちの今の世界に対する発言というようなものを、ドキュメンタリーで昨年からことしにかけまして三本放送いたしました。

 そうしたものは、数は何だということかもしれませんが、常に、平和、あるいは戦争のない社会というものに対する我々報道機関としての責務でございまして、NHKさんのようにたくさんやることは、可能な部分と不可能な部分がございますけれども、我々の自主努力でできる範囲、かなりの時間を割いているというふうに自負しております。

笠井委員 私も関心を持って平和問題というのは拝見していまして、被爆二世でもありますので、NHKでも平和アーカイブスというのでやられたり、民放でもドキュメンタリーということで、そういう意味では平和を大事にするというお取り組みをされているなという印象を非常に持っていますし、また大いにそういうこともやっていただきたいと思っているんですが。

 報道でいいますと、一日を見るとというので、例えばイラクの話でも、深夜の時間帯には日本の話がちょこっと出る、ただ、多くの方が見る時間帯にはなかなかそういうことがなくて、政府の立場がかなり出るなというようなことが、多くの意見を聞いておりますので、そこはまた大いに検討していただきたいなという気はいたしております。

 次に、国民投票制度におけるマスコミに対する規制について私は伺いたいと思うんです。

 私も、去年の秋、欧州の調査に行きまして、両参考人からお話があったように、それぞれやはり文化的、歴史的な成り立ち、経過が違う中でのことだというのが一つ。それから、あちらの方も、私の印象としては、必ずしも規制という話としてやっているのかというのが、今日本で議論されているような話とはまた違う意味があるのではないかということもあって、国民主権や基本的人権ということとのかかわりで個々に経過があるのではないかというふうに思っているんですが。また向こうのことも調べてみたいとは思っております。

 本委員会で、先ほどありましたが、マスコミの報道に虚偽があった場合に罰則をもっても規制するかどうかということも議論になってきたことはお話があったとおりなんですけれども、そこで、これまでNHKあるいは民放の関係それぞれで、もちろん国民投票以外のケースなんですが、虚偽報道だという指摘を受けたことがどれぐらいあるんでしょうか。それから、それに対してどういう対処姿勢で臨んでこられたかということについて伺いたいと思うんですが、どうでしょうか。

石村参考人 これは政治的な問題ということでよろしいんでしょうか。

 虚偽報道について、特に何か申し立てがあったというようなことは、私の記憶ではほとんどありません。

堀参考人 ちょっと、全体の民放を調べてというお答えはできませんが、少なくともやらせとか、そういった意味での指摘を受けたことは何回かあったように記憶しております。

 しかし、意図的に虚偽の報道を流すとか、あるいは意図的に何か国民を惑わすような報道をしたとか、そうした意味での、特に大きなテーマでもってそういう指摘を受けたことはなかったように私は思っていますし、ないというふうに言えるんではないかと思いますが。

笠井委員 大体、この虚偽というのは、何をもって虚偽とするのか、先ほど参考人からお話もありましたが、あいまいな部分があるというふうに思うんですね。

 それで、例えば、九条を改定する憲法改正案は戦争をする国づくりである、こういう主張を紹介することが、それ自体が虚偽の報道をしたというふうに規制されるということになれば、まともな議論がこの問題で成り立たないことになるんじゃないか。自由な報道で、いわば賛否双方の意見を公正に報道するというのがやはり大事になることは言うまでもないと思うんです。

 ところが、議論の中では、国民投票の公正を害することのないように自主的な取り組みに努めるものとするということで、そういう規定を法律に、国民投票法案に盛り込むという主張があります。それで、先ほどもお話があってのことなんですが、こういうことは、お話も伺いながら、それこそ放送業界が、既にある、放送業界の憲法と言うべきというお話がありましたが、放送法や放送倫理基本綱領などがあるわけで、それこそ自主的判断ということ、それから、間違えないための仕組みを業界がお持ちになるということで、それに基づいて自主的にやるべきことなのかなというふうに思うんです。

 それを、あえて自主的な取り組みに努めるという形で法律に書き込むということについてどういう御感想をお持ちかということで、それぞれ御意見を伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

石村参考人 私、先ほどから何度か、同じことになりますけれども、国民投票をどのように報道していくかについては、あくまでも個々の報道機関の判断にぜひゆだねるべきだというのが基本です。

堀参考人 私も同様に考えます。

笠井委員 最後になりますが、メディアの取材や報道のあり方が、時として国民の名誉毀損やプライバシー侵害として批判されて、そうした過熱した取材、報道から、被害者の救済とか人権の保護という名目でメディアに対する規制の立法の動きも続いている。一方で、メディア側の取材や報道のあり方の見直しということも、国民の声が起こるのも当然だと思うんですが、しかし、メディアに対する規制の強化が憲法が保障する表現、報道の自由とか国民の知る権利を抑制してしまう懸念も少なくないと思うんです。

 それで、メディア側からも既に幾つか法案をめぐっての御意見も出ていると思うんですけれども、今日のメディア規制に対する動きについてどう見ていらっしゃるか、時間もありませんので、端的に、こういうことを感じているということでもあれば伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

石村参考人 個人情報保護法とか人権擁護法案の関連でのそういう法律の規定については、私どもメディアの方では、新聞協会で我々一緒になってやっておりますけれども、できるだけメディアの自主的な判断にゆだねることを基本にいろいろなことを考えていただきたいなというのが、これは新聞協会の中でも一致した意見として御要望等を国会等に出しているというふうに承知しております。

堀参考人 我々の側も、新聞協会、NHKさんも一緒になって、それぞれの条文の中で規制ということに関しては反対であるということをきちんと申し述べてきたつもりでございます。

笠井委員 ありがとうございました。

 終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 本日は、石村参考人、堀参考人、お越しいただきまして、貴重な御意見ありがとうございました。

 私も、メディアと政治、メディアと人権、メディアと中立性、メディアと権力と、さまざまな問題について自分自身いろいろ考えてまいりました。私自身も、討論番組などに出る機会も多く、また、この放送倫理手帳を拝見いたしますと、その中には、集団的過熱取材の問題などという表記もございまして、自分ではそのように感じるような渦中に入ったという経験もあります。その中で、メディアと政治というようなことについても深く考えさせられることが多かったんです。

 そこで、今回は憲法をめぐる国民投票制度について、まず最初に確認させていただきたいのは、放送法で既に規制がかけられているのでこの国民投票制度の中に改めて規制を入れる必要はないという御両人のお立場であるか、最初にもう一度確認をさせてください。

    〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕

石村参考人 先生おっしゃったとおりです。同じ考えです。

堀参考人 新たな規制は必要ないと思っております。

辻元委員 私たち社民党も、改めて規制を入れる必要はないという立場です。その上で、いろいろ、メディアの持つ特徴がありますので、そのことなどについて御意見を伺いたいと思います。

 先ほどから出ております中立性という問題なんですが、一つの例として、例えば一つのテーマを挙げた討論会で、賛成、反対を同数にしたり、多様な意見を入れるということはわかったんですが、それ以外に、中立性ということへの配慮で具体的にどのようなことをされているのか、また、考えていらっしゃるのかを両参考人にお聞きしたいと思います。

石村参考人 討論番組の場合は、すべての、いろいろな立場の方々を人選の上で呼んで、なおかつ、時間にも配慮する、それが一つだと思います。ほかに、中立性といった場合、例えばさまざまなニュースの動き、先ほど笠井先生がおっしゃったような話ですね、例えば何かをめぐる運動が起きている場合に、これは国内だけじゃなく国際的な部分も含めて幅広く伝えていくということも一つの中立性の確保になっていくのじゃないかなというふうに考えています。

堀参考人 政治的な中立性の番組づくり、あるいはトーク番組というふうなものでいえば、先ほど申しましたように、メンバーの選定から、放送する際の発言をどういうふうに平等にするかといったこと、技術的なことと言ってはあれかもしれませんが、そういう、公正あるいは中立を保つべき手だてというのは経験則でいろいろ持っていると思います。

 問題は、その中立性ということについて常に考えていく習慣、教育、そうしたものが行き渡っているかということが一番大事な中立性の確保ということなのではないかと思っております。

辻元委員 もう一点、今と関連して堀参考人にお伺いしたいんですけれども、それぞれ個々の番組の中で、討論番組だけではなく、ワイドショーもあれば、バラエティーもあれば、さまざまなものがあります。そうすると、この前の選挙の例が出ましたけれども、どの番組も同じようなことをずっとやってはるわけです。そうすると、全体の量として、放映された量が圧倒的に変わってしまうということがあるわけですよ。

 先ほど集中的な取材ということも申し上げましたけれども、各番組が、番組ごとの競争があるので、例えばTBSとかテレビ朝日とか、民放で一社来られるのではなくて、各番組が全部来て、それぞれ同じようなことをやるということになると、結局、全体の、トータルなバランスを欠くという局面があるのではないかというふうに思うんですね。そういう意見についてはいかがお考えでしょうか。

堀参考人 貴重な御意見として検討させていただきます。

辻元委員 わかりました。

 それではもう一点、ちょっと関連してなんですけれども、何を選択するかなんです。ですから、今の延長線で申し上げますと、例えば憲法をめぐる議論でも、どういうところを選択して議論を進めていくのかということも、これは個別課題としてもありますが、一般的にニュースや番組で何を選択するのか。

 一例を挙げます。私、これは率直にがっかりした件を一例申し上げたいと思うんですけれども、ちょうどイラク戦争などの社会的な問題がクローズアップされているときに、ずっと一日じゅうピアノマンというのが報道されていたんです、ピアノマンのなぞとかいうふうなのが。本当に、一般のニュースまでそれがトップニュースのような形だったんですね。そういうときに、局としてどういう基準でニュース及び話題の選択をされているのか、非常に疑問に思いました。

 堀参考人にお伺いしたいんですけれども、こういう疑問、意見、いかがお考えでしょうか。ちょっと私はやはりバランスを欠いていると思うんですね。

堀参考人 バランスを欠いているかどうかという点については、私、個人的な意見はありますが、ちょっと置かせていただきまして、ピアノマンという不可思議な男の出てきて消えるまで、正体がわかって消えるまでというのは、メーンを張るかどうかは別にしまして、視聴者の中である程度知りたいという要望のあるニュースだったのではないかというふうに考えています。

辻元委員 個別のことについては申し上げないんですけれども、そのバランス、何を選択するかや、その中立性のトータルなバランスということも私は気になっております。

 そういう中で、もう一点、中立性と、それからもう一つ、報道機関には権力をチェックしていく、権力の暴走というものの見張り番と言ったらちょっと大げさですけれども、そういう役割としても重要なポジションだと思うんです。これは先ほどの笠井委員からもありましたけれども、私たちの歴史の中でも、翼賛的な体制の中に報道が組み込まれた、または大本営発表というような言葉も戦前はございましたけれども、そのようなことになってしまっては、それこそ憲法をめぐるどころか民主主義の根幹が崩れてしまうと思います。そういう、権力をチェックしていくということと中立性ということについての関係といいますか、お二人にお伺いしたいと思います。

石村参考人 なかなか、非常に難しい問題で、絶えず我々が突きつけられている問題でもあると思います。

 権力側へのチェックという意味では、これはかなりの部分、個々の記者とかディレクターの資質とか視点とか、そういう部分にかかわる部分が非常に多いと思うんですよね。それで、いかに多角的な複眼的な目を持って物事の実相を追求できるかという、資質の研修とかそういう部分を私としては重要視して、そういう育成をしていきたいというのが日常での仕事の中では考えております。

堀参考人 中立ということと権力へのチェックということは、必ずしも対立する概念ではないというふうに思っております。

 我々が日常的に何を放送するかということを決め、ラインアップを考えていくというところでは、先ほど石村参考人が言われたように、個々の記者の資質あるいはディレクター、あるいは新聞で言えばデスクの考え方というのがある程度尊重されるということはありますが、そこに中立というバランスの問題を我々は常に考えていくことが大事なのではないかと思っています。

 そのときに、その中立は、振り子がどっちへ振れているかというそのバランスを見ながら、我々の本来の報道あるいは番組を提供するという業務の中で、バランスをとっていくということが可能だということをお話ししたいと思います。

辻元委員 石村参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど、この国民投票制度をめぐっては、何を世に問うのかというところで、政策についての是非を問う、選挙とは違うというような、お話の中にそういう発言がございました。私は、果たして政策なのかなと思うんですよ。これは、要するに主権在民で、要するに国会や政治、政党がマニフェストを出して、これはどうですかというようなものではない。主権者がその政策をどの範囲でつくっていいかという最高の規範をつくるものであるというように思いますので、ここはちょっと政策ということと違うんじゃないかと思います。

 なぜそういうことを申し上げるかといいますと、報道する側が、例えば憲法という最も重要性の高いものを報道したり、それから、さまざまな形で討論などをしていく場合に、憲法とは何かというところをきちんとつくる側も御認識いただかないと困るなと思う。よく個別政策について記者の方とか取材に来られる場合に、その政策についてほとんど知らない方が、担当になったからといって飛んで来られたりする場合があるわけですが、事憲法となりますと、そういうそれぞれの報道に携わっている人たちのものでもあるわけですから、政策の是非というのはちょっと違うと思うんですが、いかがでしょうか。

石村参考人 公職選挙法との違いの部分を強調するということで、ちょっと言葉足らずだったかなと思います。

 公職選挙法の方が候補者を選ぶというところに重点を置いているので、予想投票とか模擬投票という比較のときに、そちらの方はどちらかと言えば、今度の憲法のは政策というふうな言い方をしましたけれども、先生の御認識と私はほとんど一緒ですけれども、今度の国民投票法案というのは、まさに国の形、基本を決めるあれなので、ふだん何とかの法案に賛成、反対という意味で言ったつもりはございません。ちょっと言葉足らずで、補足をさせていただきたいと思います。

辻元委員 堀参考人にお伺いしたいんですが、先ほどの御発言でちょっと気になった部分がございまして、それは、国会で三分の二で発議された、そのバランスの上に立って中立性という御発言があったんですけれども、御本人は覚えていらっしゃらないでしょうか、そのことについてなんです。

 三分の二の規定については、本委員会でもちょっと議論があったんですが、これは要するに、憲法の立憲主義の意味から考えると、多数の専制を防ぐという憲法の中での大きな意味であって、国会で三分の二で発議されるというのは、二分の一で法律が通っても、三分の二という歯どめで何でも多数をとった者が決めていいことではないよというルールで、それで発議は三分の二でされるわけですが、それが公共空間に出たときは、やはり賛否対等な扱いであるというのが原則であると私は考えておりますが、この認識は同じでしょうか。

堀参考人 全く同じでございます。

 先ほどもしそういう誤解を受けましたとしたら、発議をされたからといって、三分の二でございますね、我々は賛否のバランスをとって考えたいということを申し上げたつもりだったんです。

辻元委員 といいますのも、例えば議会で少数である、私たち社民党は少数な立場が多いわけですが、憲法改正については反対の立場なんですね。ただ、やはり公共空間とこの憲法というものの扱いについては、国会の議席配分というのはちょっと違う性質のものではないかと思っております。

 ですから、選挙の折などは議席配分によって政見放送、NHKの場合はですよ、この時間配分が違ったりするわけですが、そういうものではないというふうに、異質のものであると考えておりますが、石村参考人はいかがでしょうか。

石村参考人 その部分については、これから具体的に、例えばこれまでの選挙と同じ時間割りとか、そういう形でやるのかどうかというのは、これは国会の方でいろいろ議論をされる話でもあると思うんですが、私たちとしては、私の頭の中にありますのは、例えば日本記者クラブなんかでやるような、政見の、各党の代表の記者発表とか、ああいうのがありますよね、ああいった形で、何か広く公開の場で、できるだけ多くの機会を持って、特に国会に議席のある政党は全部参加してやるというようなことが想定されるのかなと。そういうのはどんどん放送して国民の理解を得る努力をした方がいいのではないかなというふうに、現状では、ちょっと明確なことはわかりませんけれども、想定しながら今考えております。

辻元委員 最後にお二人に御質問したいんですが、きょう、お越しいただきまして、メディアの方々の直接の御意見を伺えたのは本当に貴重だったと思います。そういう中で、御発言の中で熟慮という言葉がありました、十分な討議の場を提供するということで。この国民投票制度をめぐっても国民参加の十分な討議が必要だと思うんです、憲法をどうしていくかということはもちろん大切なんですけれども、それを自分たちの手で変える方法についても十分な主権者の間での討議と熟慮の時間、そして、どういうような形の方法を選んでいくのかという。参加が必要ではないかと思っております。

 私は、そういう意味では、この議論はまだ始まったばかりかな、メディア的にいっても始まったばかりの段階かなと思っております。お二人はいかがでしょうか。

石村参考人 これまでも節目節目ではお伝えしてきたつもりですけれども、全体の、これは私の個人的見解ですけれども、憲法をめぐるさまざまな動き、それから国民投票の法案の動きについても、我々としてはこれからが始まりかなという気持ちではおります。

堀参考人 我々にしても、まだ国民の皆さん、視聴者の皆さんに対して十分な情報が提供できたとは思っておりませんし、まだ私自身が不分明なところもありますので、そうしたことを十分議論し、何をするためにどのぐらいの時間が必要なのかというふうなことも含めて、きちっと対応していきたいというふうに思っております。

辻元委員 本当に貴重な御意見ありがとうございました。

 私たちも本当に、早急に何か国会だけが先導していくような形で議論を進めていくということに対して、私はずっとこの場で危機感を訴えてまいったんですね。やはり主権者がどういう方法を選ぶかということを十分討議し、熟慮し、その上でプロセスをも決定していかないと、憲法という最も大切なものをどのようにしていくか、私たちは反対の立場ですけれども、そういう取り扱いについて大きな間違いを犯してしまうのではないかと思いますので、きょうのお話を伺いまして、ぜひ各委員の皆様もこれから熟慮をしようということを訴えて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

保岡委員長代理 次に、滝実君。

滝委員 国民新党・日本・無所属の会の滝実でございます。

 きょうは、朝から大変長い時間、ありがとうございます。

 先ほど来、参考人からいろいろ意見をお聞きいたしまして、半分は安心をいたしました。なぜ安心したかといえば、賛成、反対、全く平等の立場からマスコミとしては当然取り組む、こういうことですね。したがって、国会で、当然、憲法改正を発議するときには三分の二以上の議決ということが前提ですけれども、それにとらわれない。要するに賛成、反対、改めて国民の意思を問うんだ。こういうスタンスだということを明確に、当然のことながらお述べいただきましたので、すべてそれによってマスコミが活動していただければ物を申すことは全くないと思うんですけれども、そこで、気になりますことを何点かお尋ねしたいと思います。

 問題は、公平中立ですね。そうはいっても公平中立ということを社内的にそれぞれどういう格好でチェックするんだろうかなということが私どもにはわからないわけです。参考人も、具体的なチェックの方法は、恐らくはっきりしたことはお答えいただけないんだろうと思うのでございますけれども、先ほど来お聞きしておりますと、それは人の問題、どうやって人材を育てるかというようなことにもあらわれておりますように、社内的な基準と申しますか、チェックの基準と申しますか、そういうものはどういうふうにお考えになっているのかをお尋ねしておきたいと思います。両参考人、順番にお願いいたします。

石村参考人 公平中立をどうやってチェックするかということなんですけれども、これはさまざまな、それぞれの立場といいますか、制作現場、その上には当然それを見る編集者、その上には直接やる編集長とか、いろいろな形でチェックする部門はあります。

 その中で、番組自体をどうやってつくっていくのか、番組ができたのをどう判断するかというのは、それぞれの段階で一つずつチェックするということ、内部的にはそうですし、それから外部からは、番組審議会とか、内部に設けた外部の方が参加したいろいろな機関、それから、先ほどから言っていますけれどもBPOのような第三者機関によっていろいろ判断をしていただく。そういうのを日々の日常業務の中ではやっているというのが実情です。

堀参考人 今、石村参考人も言われましたように、まず、社内的にどういうチェック機関があるのかということが一つあります。それは、番組の取材からそれを放送するに至るまで、当然のことながらディレクター、プロデューサー、そして部長、局長という形で、それぞれが大きな問題についてチェックしていくという体制はできております。そのさらに外側に、外部の方の御意見を聞く社内の組織がございます。さらに、BPOというふうな形で、外部の方たちだけでやっていただく機関がございます。

 その三重の中で一番我々が日夜苦労しておるのは、大きな問題では皆さんの目が光っているので余り起こらないんですが、非常に、新聞でいえばべた記事のようなところに、実はこれまでもわずかですが過ちが起こったりすることがあるわけです。それは、さっき言いましたように、日常的な記者教育あるいはディレクターの教育ということでつぶしていくしかないのかなというふうに思っています。

滝委員 ありがとうございました。

 私は、地方のテレビ局の番組審査会のメンバーで数年間おりましたから、今、堀参考人がおっしゃるように、大きな問題は、番組審査会と申しますか、そこで話題になるんですよ。ところが、日常の問題について、そこに集まってくるメンバーが一つ一つ自分で統計数字を持ち、自分でストップウオッチを持ってやっているわけじゃありませんから、そういうことの意識は比較的薄いんですね。

 ですから、私は、社の中でそこのところを、モニターをどうしているのかなということが一番大事なように思いますので、その点については、特に国民投票ということでマスコミの活動が自由だというようなことになってくれば、余計、恐らくこれをコントロールする、モニターする人というのはいないと思うんですね。そういう意味で私は一番大事だと思うんです。

 これが公職選挙ですと、お互いに相手陣営がクレームをつけてくるわけですから自動的にモニターされるわけですけれども、この国民投票で本当にそういうことが起こるかどうかというのは、これはちょっと違うという点で、私は別の意味で関心を持たないといけないんじゃないのかな、こう思うんです。

 そこで、次の問題は、当然、国会が発議するんですから、賛成、反対は国会がつくった資料というのがベースになると思うんです。先ほどの堀参考人の御意見でございますと、必ずしもそれにとらわれずというようなニュアンスもございましたし、自主的に報道は報道の立場からおやりになるということになると、どういうスタンスになるのかなと思うんです。

 賛否両論が、賛成、反対の立場がはっきりしているんですから、報道の立場からすれば、賛成、反対の立場の人たちだけで議論をしていけばいいように思うんですよ、例えばテレビ放映でも。ところが、それではおもしろくない、それでは深みがないということになると、別の角度からおやりになるんだろうと思うんですけれども、その辺の、国会が提示する賛成、反対の論点整理あるいは訴え方と、別の角度から掘り下げるということがどの程度出てくるのかなという感じがありますので、両参考人からお述べをいただきたいと思います。

石村参考人 まだちょっと具体的なイメージは自分で想定できませんけれども、憲法ということをテーマにしていくなら、改正点の部分の賛否だけを問うんじゃなくて、例えば日本国憲法とはというもっと大きな命題を掲げて、いろいろな角度から番組をつくっていくとかニュースをつくっていく、そういうことは可能だと思うんですね。

 それで、では、国会のこれまでの経過も、どうやってこういう形になってこういう結果が出ましたかというようなことをまた伝えることの意味もあるし、だから、さまざまな意味で、憲法そのものを考えるいろいろなテーマの番組がふえるということは想定できるんじゃないかなと思います。

堀参考人 先ほども申しましたように、国会の発議は三分の二でされる、これは、国民の、有権者の代表の皆さんが発議をしたという意味において、当然のことながら、それは国民投票にかかりますよという、しかし、国民投票にかかるときは、候補者を選ぶときとは全く別の価値観でもって恐らく国民の方々は自分たちの主権を行使されるのではないかというふうに思います。

 その場合に、それじゃ、我々はどういう報道の仕方があるかといえば、やはりそこに中立公正、要するに国民にとって中立公正ということを先ほど石村参考人も言われましたが、憲法の成り立ちから、憲法の論議、そして改正の論議、そしてそれが国民投票法ではこうなっていますよということをきちっきちっと報道していく、これがバランスのとれた報道というふうに考えております。

    〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕

滝委員 私は、当然そうあるべきだというふうに今理解をさせていただきました。

 しかし、考えてみますと、なかなかこれは難しいんですね。その背景事情、掘り下げた議論、それが結果的にどっちにプラスになるか、マイナスになるかということは必ずついて回るような問題でございますから、よほど深い掘り下げをしていただかないと難しい。

 ただし、余り表面的ではこれはおもしろくないんですね。現在、町村合併の住民投票をあちこちでやっていますけれども、住民の方が理解をするような資料がほとんどない。それから、時間的にも大変短い。そういう中で住民投票をやって、結果的に、いや、もっとわかっていたら賛成するんだったとか反対するんだったとかいうのは後から出てくるんですね。私は、住民投票ですからマスコミも個別の問題として取り上げることが余りないものですからおわかりにならないと思うんですけれども、特にそういう問題が出てくると思うんです。

 それから、昨年の選挙でも、小泉総理は、郵政民営化法案について国民投票的な選挙をやるんだ、こう言っていますね。したがって、そのときの論点は本来二つであるべきだ。

 一つは、国民投票的なことが選挙を通じて許されるか。要するに、衆議院、参議院という正式の代表制度を通じてやった判断をもう一遍ひっくり返すということは、これは憲法上の問題ですけれども、憲法論議がマスコミでもって堂々と取り上げられてきた形跡は余りないと思うんです。

 それからもう一つは、では、郵政民営化法案の中身を本当に詳しく報道したかというと、必ずしもそれはおもしろくないからやっていない。やはり、選挙は選挙というおもしろい方向に行っちゃう、そういうことだろうと思うんです。要するに、賛成か反対かだけが表面に立った運動として国民に意識される。

 したがって、先ほどおっしゃったような、もう少し掘り下げて、本当の問題点あるいは今までの経緯、そういうものを掘り下げて取り上げたというものができてこないと、これは国民投票として公選職を選ぶような感覚と違うということが恐らくそこにあるんだろうと思うんですけれども、そういう観点の問題として、ぜひとも意識を、マスコミとしても深く掘り下げた対策をおとりいただいた方がよろしいんじゃないだろうかな、こういう感じがいたします。これはやはり、その場になってマスコミも対応するのは難しいでしょうから、私は、今からやっていっていただいた方がいいんじゃないだろうかな、こう思います。

 それからもう一つ、次の問題に移りますけれども、スイス、フランスのテレビ規制の問題は、私は二回ぐらいこの場で発言をさせていただいたんですけれども、要するに、新聞とテレビの違いは二つあるんですね。

 一つは、当然のことながら、テレビというのは瞬間的にイメージがインプットされる。したがって、テレビコマーシャルというのを大変高いお金を払ってもおやりになるのはそこに原因があると思うんですね。瞬間的なんですよ。したがって、ある番組で賛否両論の公平な議論が出にくいと、次の瞬間に、別の離れた時間帯にやっても、それはイメージとしてどこまで定着するかわからない。しかも、一般の有権者、国民の中に、見るチャンスというのは限定されていますから、一たんチャンスを逃したらなかなか批判ができない、こういう問題がありますね。活字は、やはりある程度、新聞なら新聞を一日ほっておけば、あるいは朝見損なったらまた夜見るという点もありますから、かなり持続性がある。

 そういう点で違いがあるということを前提にすると、もうちょっとこの辺のところは、実際にスイス、フランスの問題というのは、先進国で既にやっている国としていろいろな経緯があるんでしょうけれども、私は、その辺のところをマスコミはマスコミでもって研究をしていただいた方がよろしいんじゃないだろうかなと。特に、マスコミもスイス、フランスに当然取材陣を平素から派遣しているわけですからそういう感じがするんですけれども、これについて、御両人、どうでしょうか。

石村参考人 私もちょっと諸外国の事情について詳細にまだ存じ上げておりませんので、今、滝委員がおっしゃったように、これから少し勉強してみたいと思います。

堀参考人 先ほども申しましたけれども、やはりこうした問題については、それぞれの国の歴史的、文化的な背景というものを尊重していかなくてはいけないのではないか。そのまま輸入することには、私個人としては余り賛成できない。しかし、この前の青年層の就労の話からいいますと、政府の方針が大規模なデモによって変わってしまうというふうな国と、日本という現実とを余り重ね合わせたくないなという感じはいたします。

滝委員 確かに、これは、いろいろ今日に至るまでの事情があると思いますよ。フランス革命でも街頭革命と言われるぐらい街頭行進から革命が起きる、こういうことを重ねてきた国でございますから、日本と違うんだといえば違うんでしょうけれども、やはりそれはそれとして、テレビ放送、放送の持つ力というものはやはり放送局が一番御存じなんですから、そういう意味で、もう一遍謙虚に私はそういう事情を独自で調査をしていただいた方がよろしいという感じがいたします。

 次に問題になりますのは、実際の討論型の番組編成にいたしましても、だれが登場するかということは国民のイメージとして大事な問題なんですよね。

 選挙であれば、政党の責任者が出る、あるいは候補者本人が出るということになるんでしょうけれども、こういう番組になってくると、今度は学者が出てくるとか、あるいはもうちょっと国民的な人気のある人が出てくるとかというと、そういうイメージというものも公平中立という観点から、だれがその討論会に出てくるかというのは大切な問題だというふうに思うんです。こういった点についても、私は、放送局は放送局として検討をしていかれるんだろうと思うんです。その辺の問題を平素からどういうふうにお考えになっているのかを両参考人にお伺いしたいと思います。

石村参考人 やはりさまざまな立場の方が多角的に論点を出し合える、そういう番組になって、国民の皆さんの理解の、判断の一助になるというのが討論番組等の場合はやはり基本だと思います。ですから、それに合った形の、ふさわしい人選等をいろいろこれから考えていきたいと思いますし、基本の部分の、先ほども申しましたけれども、そういう討論部分以外では、やはり日本国憲法そのものを考える幅広い番組をつくっていく必要があるんじゃないかなと考えております。

堀参考人 これも先ほども申したとおりでございまして、討論型の番組については、テーマの選び方、それからそこに出ていただく方、それぞれの選択に経験者を充てて考えていくというのはこれまでもやってきたことでございますけれども、今御質問が国民投票法案についてだということになりますと、それは、もっとさらに、我々としてはきちっとした考え方に基づいて行っていきたいというふうに思っております。

滝委員 ありがとうございました。

 なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますと、憲法という問題になってくると、例えば、討論会に登場する人として予想されるのは、憲法学者ということはまず意識されますね。本当に登場するかどうかは、それはそのときの局の判断でしょうけれども、一般的には憲法学者が出てくるのかなと。

 そうすると、憲法学者は、国立大学であれば国家公務員、公務員法の適用を受けます。大学法人といえどもみなし公務員ですから規制される。それから、私学の先生の場合には、これは当然教育者ということで、多少の制限は同じようにあると思います。したがって、その辺のところを、今まで放送の立場から、人の選択についてどういうふうにお考えになっているのか、それらは許されるというふうに考えておられるのか。その辺のところもお聞かせいただきたいと思います。

石村参考人 ちょっとその辺のところの、選挙運動の範囲等々については想定していませんので、明確な回答になるかわかりませんけれども、やはり、具体的な人選についてはこれからのことですけれども、中身自体はいかに公平中立にやるかという形のところを基本に人選は進めていくということになると思います。

堀参考人 その点についてはまだちょっとわからないところもございまして、本当に公務員の運動が規制されるのかどうかとか、そうしたことについても十分検討した上で考えていきたいと思います。

滝委員 ありがとうございました。

 私は、公務員の規制も公選法の規制等は外して、公務員だからといって禁止、規制の対象にするというのはどうだろうかな、こういうことを思っているものですから、あえてお聞きをいたしました。

 本当にきょうはありがとうございました。これで終わらせていただきます。

中山委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。委員会を代表して、心から御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.