衆議院

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第6号 平成18年11月30日(木曜日)

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平成十八年十一月三十日(木曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 園田 康博君 理事 赤松 正雄君

      新井 悦二君    伊藤 公介君

      越智 隆雄君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    柴山 昌彦君

      棚橋 泰文君    谷  公一君

      渡海紀三朗君    中野 正志君

      野田  毅君    葉梨 康弘君

      早川 忠孝君    林   潤君

      平田 耕一君    深谷 隆司君

      藤井 勇治君    二田 孝治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      安井潤一郎君    逢坂 誠二君

      岡本 充功君    玄葉光一郎君

      鈴木 克昌君    田中眞紀子君

      筒井 信隆君    中川 正春君

      長妻  昭君    平岡 秀夫君

      古川 元久君    石井 啓一君

      大口 善徳君    福島  豊君

      笠井  亮君    菅野 哲雄君

      辻元 清美君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           加藤 勝信君

   議員           葉梨 康弘君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           小川 淳也君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           赤松 正雄君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月三十日

 辞任         補欠選任

  辻元 清美君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  菅野 哲雄君     辻元 清美君

    ―――――――――――――

十一月十七日

 憲法改悪のための国民投票法制定反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第四七四号)

 憲法改悪のための国民投票法案反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第四七五号)

 国民投票法の制定反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第五二四号)

同月二十四日

 改憲手続法の制定に反対することに関する請願(阿部知子君紹介)(第六四〇号)

 同(辻元清美君紹介)(第六八六号)

 同(笠井亮君紹介)(第七三四号)

 国民投票法の制定反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第六四一号)

 国民投票法制定に関する請願(志位和夫君紹介)(第六八五号)

 国民投票法の制定に反対することに関する請願(石井郁子君紹介)(第七三三号)

 国民投票法案の反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第七六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外五名提出、第百六十四回国会衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、第百六十四回国会衆法第三一号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日の議事について申し上げます。

 本日は、去る十六日に行われました小委員会での両案中の憲法審査会その他国会法改正部分に係る事項の審査について、小委員長からその経過及び概要の報告を聴取し、小委員である委員から発言していただいた後に質疑を行い、小委員以外の委員各位にも小委員会における議論について認識を共有していただければと存じます。

 それでは、まず、小委員長から報告を求めます。日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員長近藤基彦君。

近藤(基)委員 それでは、日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会における審査の経過及びその概要について御報告申し上げます。

 本小委員会は、去る十六日、会議を開き、参考人として、慶應義塾大学法学部教授・弁護士小林節君、上智大学大学院法学研究科教授高見勝利君及び大東文化大学法科大学院助教授井口秀作君をお呼びし、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案、特に憲法審査会その他国会法改正部分について御意見を聴取した後、懇談を行いました。

 会議における参考人の意見陳述の内容を本委員会全体で共有するために、その概要を簡潔に申し上げますと、

 小林参考人からは、

 まず、憲法審査会に憲法改正原案の起草、提出権限に加えて調査権限を付与していること、憲法審査会の議事手続の特則として、会議の公開、公聴会開催の義務づけ、会期不継続の原則の不適用、合同審査会による勧告等を予定していることは妥当であるとの意見が述べられました。

 次に、憲法に関する基本問題についての国民の理解が十分ではないことから、憲法審査会が国会内合意だけでなく国民合意を形成するための中心責任機関の役割を果たすべきである、広報協議会の名称は国民投票広報協議会の方が適当であり、その構成は両院対等であるべきである、憲法に関する論点整理の一助として、国会による有権的世論調査ともいうべき予備的な国民投票を用いることも一考に値するとの意見が述べられました。

 また、民主党案における国政問題国民投票について、間接民主制を原則とする現行憲法体制にそぐわないものであり、反対するとの意見が述べられました。

 高見参考人からは、

 まず、憲法審査会の権限及び憲法改正原案の審査に関して、憲法審査会は日本国憲法に密接に関連する基本法制についても広範かつ総合的に調査を行うものとされており、既存の委員会との間で競合が生ずる可能性がある、憲法改正原案の審査を閉会中にも可能とする特例があるが、この特例を憲法改正原案に限るのであればその根拠を示す必要がある、各議院の憲法審査会は憲法改正原案に関し合同審査会を開くことができるものとし、その上で合同審査会に各議院の憲法審査会への勧告権を付与しているが、両院の意見調整は本来両院協議会で行うべき事項であり、憲法の両院制から導かれる独立活動の原則のもとで合同審査会の国会法制上の位置づけを議論する必要がある、憲法審査会が基本法制等の憲法適合性を審査することは憲法保障の観点からも望ましいが、この審査のみを行う機関であるとすれば国会に一つ設置すればよいとの意見が述べられました。

 次に、広報協議会のあり方に関して、憲法改正案の発議において賛否を表明した議員が公平中立が要請される広報活動の責任主体となることは適切ではなく、第三者機関を立ち上げるべきではないかとの意見が述べられました。

 井口参考人からは、

 まず、国民投票はあくまでも発議された憲法改正案に対する承認にすぎないので、その否決は発議された案に対する否決の意味しか持たないことから、大多数の国民が改憲を望んでいないという改憲反対派の主張を実証するためには国民投票で否決するのが筋であるとの一部の主張は誤りであるとの意見が述べられました。

 さらに、条文と現実との乖離を埋めるための発議は意味のない国民投票をもたらす、少数派にも憲法改正原案の提出権、修正権を認め、国民に多様な選択肢を提供すべきである、憲法改正原案の個別発議原則に関しては、内容において関連しない問題を付加しないという限りにおいて支持したい、国民投票における無料の意見広告を政党等にのみ認めることの根拠は不明であり、そのような制度には疑問を持っているとの指摘がなされました。

 最後に、憲法改正手続法の制定に必ずしも反対というわけではないが、現状では誤った憲法論や国民投票論につながるため賛成できない、憲法改正は現実の政治、社会状況の中で行われるものであり、憲法が不完全だから変えるというものではないとの表明がありました。

 このような参考人の意見を踏まえて、小委員及び参考人の懇談が行われ、小委員及び参考人の間で活発な意見の交換が行われました。

 特に、今回のテーマである憲法審査会その他国会法改正部分について申し上げますと、まず、総論的事項として、憲法改正国民投票制度の整備と発議に係る国会法改正を同じ法案で行うことの是非に関して、これに疑問を呈する意見が述べられた一方、参考人からは、一連の憲法改正手続をどの部分から整備するかは問題ではないとの意見が述べられました。

 憲法審査会を国会に常置することの是非に関して、立憲主義の原則のもとで国会議員に憲法尊重擁護義務が課せられていることとの関係で疑問視する発言があった一方、憲法改正原案の審査権限を担う憲法審査会の常置は、立憲主義、憲法尊重擁護義務に反するものではないばかりか、民主主義の原則及び憲法九十六条の存在からしても、あってしかるべきとの意見が述べられました。

 憲法審査会等における憲法改正案の議論の進め方に関連しては、与党案提出者から、ポスト憲法調査会において改正を前提にして現行憲法を徹底的に調査すべきであるとの発言、憲法審査会は少なくとも当初の二年間、憲法改正案の発議権を凍結して憲法や基本法制の調査に専念することを本法案の附則に明記すべきであるとの発言、二年間の凍結期間後も改正手続は拙速を避けて進めるべきであるとの発言がなされました。

 次に、憲法改正に関する予備的な国民投票の実施の是非に関して、与党案提出者から、ポスト憲法調査会の議論が一定の形を持った時期における予備的な国民投票の実施に前向きな意見も述べられました。他方、民主党案提出者からは、そのような予備的な国民投票を行うためにも一般的国民投票制度の創設が必要であるとの発言、一般的国民投票の対象を憲法にかかわることに限定することを党内で議論したい、その際には選択肢を柔軟にすることも考えたいとの発言がなされました。

 次に、各論的事項として、憲法審査会の憲法に密接に関連する基本法制の調査権限と他の委員会の権限との関係に関して、常任委員会等とは別に設置し、憲法改正の観点から日本国憲法及びそれに密接に関連する基本法制の調査をするのは当然であるとの意見が述べられた一方、憲法に関する調査はそれぞれの委員会で日常的に行っており、それで足りるとの意見が述べられました。

 将来的に憲法審査会が法律の憲法適合性の審査権を持つことの是非に関しては、与党案提出者、民主党案提出者から、現時点では憲法改正案の審議、発議や、憲法やそれに密接に関連する基本法制の調査の権限のみを想定しているが、諸外国にも見られるように、将来的には憲法適合性の審査権を持つことも考えられるとの意見が述べられました。

 合同審査会とその勧告権については、参考人から、衆参両院の意見が合致しない場合に合同審査会で調整を試み、調整が整った部分について勧告を行うことが想定されているとすると、異なる視点から二度の審議を尽くすという憲法の両院制の趣旨からして疑問が残るとの意見が述べられました。

 これに対して、民主党案提出者からは、憲法改正原案の起草は実質的に衆参両院の合同審査会において行い、それを両院においてそれぞれ十分に時間をかけて議論するという形にしないと現実的なプロセスとはならないことから、このような制度を設計したとの説明がなされました。与党案提出者からも、同じ意見である旨述べられました。

 憲法改正原案が一院で否決された場合に両院協議会を開催する規定を設けることの是非に関して、参考人から、九十六条が衆議院の優越を認めていないことから、一院で否決された場合は発議の不成立と理解すべきであるとの発言がなされました。

 これに対して、与党案提出者から、そもそも両院協議会は、衆議院の優越の有無とは別に、およそ国会の議決を要する案件について両院の意思の調整を図るものであり、憲法改正の場面においても両院が任意に協議して意見の一致を図ることは否定されるべきではないとの発言がなされました。

 発議の単位としての「内容において関連する事項」の意味に関して、その解釈によっては国民の意思が適切に反映されないことになるのではないかとの疑問が提起されました。

 これに対して、参考人からは、「内容において関連する事項」の意味を個々の改正項目が有機的関連を有する場合と解するとの発言、具体的な関連性の有無は条文では決めようのないことであり政治の判断であるとの発言等がなされました。

 国民投票で否決された憲法改正案の再発議に関しても、一回否決されているのだから同じ憲法改正案が再発議されることは考えられないとの意見が述べられた一方、参考人から、国会における一事不再議原則と同様、憲法改正案の内容が異なる場合や事情変更があった場合には再発議が認められるとの発言がなされました。

 会議を通じての小委員長としての感想を申し上げれば、今回、第三回の小委員会において、これまで比較的議論の少なかった国会法改正部分について、参考人をお招きして議論を行い、かなり議論が深まってきたと感じております。

 日本国憲法の改正手続において、主権者たる国民の意思を憲法に適正に反映するためには、国民投票の対象となる憲法改正案を発議する国会における手続が適正なものであることが不可欠である点については、各小委員に共通の認識であったと考えます。

 また、国民の理解を得ながら憲法改正手続を進めるという観点から、与党案提出者から、憲法審査会は少なくとも当初の二年間、憲法改正案の発議権を凍結して憲法や基本法制の調査に専念することを本法案の附則に明記し、その後も改正手続は拙速を避けて進めるとの大きな歩み寄りの発言があったことは特筆すべきことであると感じました。

 さらに、与党案、民主党案において態度が異なっている一般的国民投票制度の創設の是非について、民主党案提出者から、一般的国民投票の対象を憲法にかかわることに限定することを党内で議論したいとの発言があったことも、今後の議論に向けての大きなステップになると感じました。

 主権者国民の意思に沿った憲法改正案が発議できるよう、国民の負託を受けた私たち国会議員が議論する際の適正なルールづくりが重要との認識に立ち、各委員の知恵を出し合うことにより、必ずや合意形成を行うことができると確信した次第であります。

 今回のテーマである憲法審査会その他国会法改正部分については、国民投票において国民の判断を仰ぐための憲法改正案を発議する手続を定める重要な問題であると考えております。本委員会におかれましては、小委員会における議論を踏まえて、提出されている法律案の審査をさらに深めていただければと思っております。

 以上、御報告申し上げます。

中山委員長 次に、小委員である委員から小委員長の報告に関連しての発言をそれぞれ十分以内でお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、まず、船田元君。

船田委員 先ほどの近藤小委員長の御報告でほぼ尽きていると考えておりますが、私なりに現在考えていることを少し補足したいと思います。

 まず、小林参考人から、憲法審査会が国会内の合意を形成するだけでなく、広く国民合意を形成するための中心責任機関の役割を果たすべきであると。この御指摘は大変傾聴に値するものと思っております。

 私ども、何回か諸外国の事例の研究に参りましたけれども、例えば、EU憲法が各国において、国会においては多数を占めながらも国民投票において否決をされるケースが相次いだ、このようなことにかんがみまして、また現地でのさまざまな意見を聞いておりますと、やはり国民が十分に理解していない案件については一概にノーという反応を示すことが多いということを教訓として聞かせていただいたわけであります。こういった事態を考えた場合にも、憲法審査会が国民合意を形成するという役割、また国民に周知をさせるという役割がいかに大きいかということを改めて認識いたしました。

 また、同様に、小林参考人は、憲法に関する論点整理の一助として、国会による有権的な世論調査ともいうべき予備的な国民投票も有用ではないか、こういう御指摘をいただきました。この点については私も大変頭を悩ませているというのが現状でございますが、一つは、一たび投票の行動が行われるとなりますと、我々民主主義の国家でございますので、その投票の結果が、予備的とはいえ当然ながらその後の議論に反映をする、あるいはその結果が後の議論を拘束する、こういうことにもなりかねません。したがって、取り扱いが大変難しいなということを一方では感じております。

 しかしながら、また一方では、国民投票をいきなり実施するということになりますと、国民の間に戸惑いもあるでしょうし、また、国民世論が、あるいは国民の意思が十分には反映しない場合があるかもしれない。こういったことを考えますと、予備的なことも場合によっては必要であるかもしれません。また、あらかじめ国民の意思を推しはかるという意味で、予備的な国民投票を行うことも有用ではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、この扱いにつきましては、今回提出をいたしております法案、あるいはそれの修正という中で議論するよりも、今後、憲法審査会が実際にスタートしたときに、その運用の問題として、あるいは議論の中で慎重に検討すべき一つの課題である、このように認識をしております。

 さらに、高見参考人から、憲法審査会が基本法制の憲法適合性を審査する機能があってもいいではないか、憲法保障の観点からは望ましいことである、こういう指摘もございました。私は、この御指摘には同感でございます。

 内閣には、内閣法制局が有権的解釈を行います。司法の分野においては、これはまだございませんけれども、これから将来、憲法裁判所というようなものを設置することも検討がされるであろうと思っております。と同時に、国会においてもやはり憲法審査会という機関において憲法適合性を審査する、こういったことはしかるべきであると考えております。

 これまで調査をいたしましたヨーロッパ諸国にもその例は多いわけでありますけれども、ただ、最初からこの機能を法律上明記するというのではなくて、審査会が発足した後、国会を構成する各政党間で慎重に話し合いを進めながら、またその運用を実践しながら、少しずつこのような機能を身につけていくということの方が私は得策ではないかと考えております。

 最後に御指摘申し上げたいのは、憲法審査会が発足をしたからといって、いきなり改正原案を提出したり審査したりするということは望ましくない、このような観点から、私は、少なくとも当初の二年間は憲法改正案の発議権というものを凍結して、改正を視野に入れながらも憲法や基本法制の調査に専念するということを本法案の附則に明記すべきである、このように発言をいたしたわけであります。しかしながら、その後、枝野委員や赤松委員等々の御発言、お考えを承りながら、いわゆる第二段階というのを、私は、さらに相当丁寧に段階を踏んでいかなければいけない、また国民の幅広い理解を深める役割をもここで果たすことが必要である、こう考えた次第でございます。

 そのような観点からしますと、二年という期間はあるいは短いのかもしれない、場合によっては三年間に凍結期間というものを延長する必要があるのではないだろうか、このように考えるようになってまいりました。したがって、今後の話し合いの中でも、二年か三年かということで、私自身は三年を主張しながら、また合意を得られるように努力をしていきたいと考えております。

 以上でございます。

中山委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 私からも先般の小委員会における補足的発言という形で発言をお許しいただきたいというふうに思っております。

 まず、今船田委員からもお話がありましたとおり、憲法審査会のあり方、議論のあり方、あるいは進め方につきまして、私どもも、いわゆるポスト憲法調査会、すなわち当法案で設置を考えております憲法審査会、当初二年間審査権限の凍結ということに関しましては、やはり国民投票の準備期間、これは周知期間と言ってもいいのではないかというふうに思っておるわけでありますが、そういう期間であると同時に、現行憲法の問題点について、冷静かつ徹底的に改正の検討のための調査というものを行うべきであるというふうに考えて御提案をさせていただいた次第でございます。したがって、この間の調査につきましては、いわば憲法そのものに対する国会内での共通認識の形成、そしてさらには国会と国民との共通認識の形成に努力をする、そういう期間という形で位置づけていかなければならないのではないかというふうに考えております。

 したがって、さらに今第二段階での議論という形になれば、柔軟に二年から三年という期間をという御指摘もあったわけでございますけれども、その中においてまだ調査に重点を置かざるを得ない、そういう現実がまだこの憲政の中にはあるんではないかという認識を持たせていただいている次第でございます。したがって、二年という期間がたったらすぐに次のステップへ移行するという形ではなくて、憲法に対するあらゆる角度からの調査を行い、議論を深めることができたときにようやく次のステップが見えてくるのではないのかなというふうに考えている次第でございます。したがって、慎重な調査を要するという御指摘があれば、その期間についても私どもも柔軟に考えたいというふうに思っておる次第でございます。

 さらに、一般的国民投票制度、私ども民主党案として提案をさせていただいているわけでありますけれども、これに関しても先般の小委員会で御議論があったわけでございます。その中で、先ほども御指摘がありました与党からのお話では、憲法審査会の中での運用で考えてはどうかというような、国民予備投票でございますけれども、これに関して、まず私どもの考え方は、国民投票の対象事項として、憲法改正のみならず、国政重要問題である一般的、いわば諮問型というふうに呼んでおりますけれども、この国民投票を認める案という形に対しては、憲法が間接民主制、代議制を前提としておって、例外的に憲法上明文している直接国民投票のみが許されるというところからするものでありますけれども、本案に対する消極的な御意見をちょうだいしたところでございます。

 ただ、一方、憲法に関する論点整理の一助として、国会による有権的世論調査ともいうべき予備的国民投票を用いることも一考に値するという御指摘、御提言があったわけでございます。この国民予備投票に関しましては憲法改正にかかわる投票を行うことを想定しているというふうに受けとめさせていただいたわけでありますけれども、憲法改正というものは憲法の例外分野であって、憲法上明文されているものでございます。したがいまして、憲法改正に関連する限りの直接国民投票というものは原理的に認められるという論理であろうというふうに理解をいたしました。

 このような議論、御意見をいただきますと、やはり強く思いましたのは、私どもも一般的な国民投票というものを御提起させていただいているわけでありますけれども、これが何らかの形で今後必要になってくるのではないのかなというふうに考えた次第でございます。すなわち、国家の意思形成に当たって国民の意思を参考にするという私どもの考え方、そして現行の憲法は一方で憲法改正の部分以外のところは間接民主制という原則をとっているという、この両者間の考え方を、憲法にかかわることに限定しての諮問的国民投票制度という形で折り合いをつけるということ、柔軟かつ広範に諮問的国民投票を取り入れていくということが可能となるかどうか、これを私どもも積極的に議論を行っていきたいというふうに考えている次第でございます。

 そして、憲法審査会の調査対象につきまして若干参考人の皆様方からも御意見をちょうだいいたしましたので、ここで付言をさせていただきたいというふうに思います。

 憲法審査会では、その調査対象として、憲法に加えて憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うということといたしております。その基本法制には、皇室典範から国会法、内閣法、行政組織法等々、教育基本法、今現在も一方で審議をされておりますけれども、このようなことも憲法関連法律にまでわたるというふうに考えているわけでございますが、これはあくまでも憲法についての議論との関係において基本法制に対する調査権限を有するというふうに考えているものでございまして、従来の常任委員会が有している個別の法律の具体的な立法と絡む調査というふうには私どもは考えていないというふうに思っております。

 そして、合同審査会とその勧告権についての御議論もございました。いわゆる衆参両院合同での合同審査会というものを開いて、共通の土俵の上で憲法改正原案というものを起草し、そしてそこから衆参両院に対し勧告をするというふうな制度を考えた次第でございます。

 これは、両院の意見の調整の場というふうなものが理念的に考えられるわけでありますけれども、その調整の場というような位置づけよりは、原案の作成に当たっては、いわゆる各政党あるいは当該の政党から原案というものを持ち寄るというところを想定しているのではなくて、超党派で原案を作成、起草するという仕組みを考えたときに、衆参おのおので作成し合ってお互いに持ち寄るというよりは、この合同審査会という場において原案を起草して、そしてそこから衆院、参院各院において議論を行っていただくという形式の方が、現実の憲政のプロセスの中においては有用ではないかというふうに考えた次第でございます。そして、そこにおいて、それから両院の共通の認識の上でしっかりと時間をかけて議論ができるのではないかというふうに考えている次第でございます。

 以上、私なりに何点か補足をさせていただいた次第でございますけれども、今回、これまでの議論を含めて私見的な感想を申し上げさせていただくならば、今回議論になっております審査会が設置される、国民投票法案が成立をするということになれば、調査を含めて憲法について常時議論されて、そしてその結果によっては改憲原案を審査、提出することにつながるのではないかという御懸念を一方で表明されていらっしゃるところもございますけれども、私は、憲法そのものに、まず九十六条に改正規定が設けられていることの趣旨にかんがみて、あるいは、私ども国会議員には九十九条に憲法尊重擁護義務というものがあるわけでございますので、これに従って立法府の中で特別の常設機関として役割をしっかりと果たす、これによってまずは私ども国会議員の中において国会内合意をしっかりとつくり、そしていわば国民的合意の責任ということに、こたえていくということにつながっていくのではないかというふうに期待をしているところでございます。

 そういった観点でいきますと、この憲法審査会の役割というものを十分に御理解いただきたいなというふうに思っております。

 以上でございます。

中山委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 私の方からも、先ほどの近藤小委員長からの御報告に若干補足的な意見表明をしたいと思います。

 先般の小委員会の各委員の発言の中で、私は、当たり前のことでありますけれども、中山委員長が発言されたことに再確認をしたといいますか、当然の事実に改めて思いをいたしました。

 それは、委員長はこう発言をされております。「調査会の結論として、各党参加の上で意見を求めましたところ、憲法は改正すべきであるというのが過半数の議員の意見でございました。これは本会議でも報告をしております。」と。

 つまり、五年間の憲法調査会の結論として、憲法は改正すべきだ、当初の、スタートの思いは別にして、あえて問わずとも結論は改正すべきであるというのが多数を占めた、このように中山委員長がおっしゃったということの意味を改めて私は感じるわけでございます。

 実は、平成十七年、去年の四月に、憲法調査会がそのような結論を出した。実は、それからもう既に一年七カ月がたっているわけですけれども、ある意味で、この一年七カ月の間に、憲法を改正すべきだという多数の意見の上において、どこをどのように変えるべきか、あるいは変えなくていいのかというふうな、現行一九四六年憲法というものをありとあらゆる角度から憲法改正すべし、じゃ、どうするのかという細かい議論を実際はやっていなければならない。

 しかし、それが、国会の仕組み上といいますか、さまざまな問題点もあって、それはある意味で棚上げにされた上で、現状ここでこうやって行われているような、憲法調査特別委員会という場において憲法改正のための国民投票法という、もちろん関連はしているわけですけれども、ある意味で違った角度の話に我々国会議員が時間を費やしている。つまり、きょうの時点で言えば一年七カ月空白期間があって、憲法改正について国民に提示する論点整理というものがある意味で詰めた議論がされないでいるということは、いささか残念な気がするわけであります。つまり、恒常的にそういった議論をどこかの場でしっかりする必要があるなということを痛切に、この間中山委員長の話を聞きながら思ったわけであります。

 今、船田委員また園田委員からもお話がございましたように、私どもは、今議論をいたしております与党案そして民主党案、この憲法改正のための国民投票法が成立いたしましたら、やはり急ぎ、先ほど言った、今空白になっている、どこをどう変えるのか、変えなくていいのか、法律で対応できるのかというふうな論点をしっかり国民に提示するための議論をしていかなくちゃいけない。それは、この新しい法律が実際に動き出すための期間の単なる消費時間、時間がたっていく、周知期間の間に合わせ的な過ごし方ではなくて、しっかりと積極的な意味合いを持った調査、議論というものをしていかなければならない。そんなふうに考えまして、現在行われているこの臨時国会冒頭の調査特別委員会の議論でも、私は、そういう場の必要性、そして時間の必要性ということを強調させていただいたわけでございます。

 でき得べくんば、この憲法審査会という名前のもとにおいて、要するに、新たなる憲法を発議してということと、それからその前段階としての、先ほど来申し上げております現行憲法の課題というものを、同じ審査会という名において二つに仕切るというよりも、何か違う名称のもとに議論をする場を設けるのが筋ではないのかなという気はいたしておりますが、これは皆さんいろいろな御意見があろうかと思いますので、議論にゆだねたいと思います。

 いずれにしても、先ほど船田委員から意見がございましたように、二年というのは短いのではないか、やはり事の重大性にかんがみて、二年と三年にどれだけ違いがあるのかというお話もあろうかと思いますけれども、より慎重に、より着実に議論をする期間というものを設けるべきではないか、そんなふうに思う次第でございます。

 それからもう一点、先般の参考人の中の小林参考人からのお話があった、今お二人からもお話がございましたけれども、国会による有権的世論調査ともいうべき予備的な国民投票は一考に値するという発言がございました。

 これは、もともと私が発言をしたことに端を発しているのではないのかということを小林参考人もおっしゃっておりましたけれども、私も、明確な、固定的な考えがあって言ったわけではなくて、ある種、若干イメージに左右された部分が強いわけでありますけれども、それは先ほど船田委員がなかなか悩ましいと言われたこととも関連するわけでありますが、やはり一発勝負で、国会が発議したものを国民に国民投票という格好で判断を迫っていくというのは少し無理があるのではないかというふうな思いが強くするわけでございます。

 ある憲法学者が家と設計図の関係に例えて言っております。つまり、新しく家を建てる、それは新築か、あるいは、私どもが言っておるようなのは恐らく増築ということになろうかと思いますが、家に例えれば増築あるいは改築、そして全く家を建てない考え方をお持ちの方もいらっしゃるわけですけれども。

 そういう家を建てるのと設計図という関係に立った場合に、施主が、施工主があらかじめどういうふうな格好の家にするのかという設計図を提示し得ないでいて、いきなりでき上がっちゃった家を見せられたら、我々の考えていたものと違うじゃないかという話になる。この場合、家を建てる、発注する施工主というのは国民でありますから、国民の側から見て、大筋こういうふうな家を建てたい、それは新築かあるいは増改築か、その辺のことも含めて、国民の大きな一つの方向性というものは我々国会議員の方は事前にしっかり認識をしておく必要がある、そういうふうなことをある憲法学者は言っておりますが、私もそれには非常な共感を覚えるわけでございます。

 そういう意味で、この予備的な国民投票ということについてはなかなか難しい側面もあろうかと思いますけれども、工夫をいたしまして、例えば、自由民主党の皆さんがおっしゃっているような全面改正でいくのか。あるいは、私どもの言っているような部分的な加憲、先ほど言いました、家で言えば増築あるいは改築、こういったことで、既存のものをしっかり生かした上で新たなものをつけ加えていくのか、あるいは全く変えないのか。

 この全く変えないということについては、先ほど冒頭で申し上げました中山委員長の発言にもありますように、私どもが五年かけた一つの結論としての、改正すべきであるという者が多数を占めたということからすれば、全く変えないというのは問いかける材料としては不適切なのかなという気もいたしますけれども、いずれにしても大筋の方向性というものを国民にあらかじめ諮るというふうなことが何らかの形で工夫されて実施されることは考えられていいのではないか、そんなふうなことを考えている次第でございます。

 以上です。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 十一月十六日の小委員会についての補足的発言として、幾つか感想を述べたいと思います。

 第一に、改憲原案を審査、提出する権限を持つ憲法審査会なる機関を国会に常置するという両法案に対して、井口参考人から常設である必要はないとの意見が述べられました。同感であります。

 両法案によれば、憲法審査会は日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制についての調査、憲法改正原案、日本国憲法の改正手続に係る法律案を審査、提出する権限を持ち、しかも、会期中、閉会中を問わず改憲原案を審査することができるものとされております。このように国会に常時改憲についての調査、審査する機関を設けることは、公権力の行使を制限する立憲主義の原則のもとで甚だ疑問であり、私は許されないことだと考えます。

 この点で、井口参考人から、個別にそれぞれ国会の中でいろいろな審議があって、これは法律の問題ではなく憲法の問題だというときに初めて憲法の議論をするということがあるわけで、仮にその場合に憲法審査会のようなもので議論することになったとしても、常設である必要は全くない。憲法上問題があるかどうかは通常の委員会で普通に議論すればいいことであり、むしろ、その方が健全な憲法が根づくと指摘があったことは重要であると考えます。

 また、小林参考人は、常設機関は必要との御意見ではありましたが、国会には違憲審査機能があるとも述べられました。そうであるなら、現状でもそうした機能を果たしているということであり、常設化は必要ないということを感じました。

 第二は、両案にある改憲原案の発議の規定ぶりは、主権者である国民の意思を酌み尽くせないものになり得る重大な問題を含んでいるということであります。

 国会法改正案の第六十八条の三として、「内容において関連する事項ごとに区分して行う」との規定を置いておりますが、これについて、井口参考人は、いわゆる個別投票、個別発議の原則というのは国会が国民に対して問題を投げかけるときに個別的でなければいけない、それが憲法九十六条一項の意味での発議の場面での要請であると述べられました。

 そして、憲法九条を例に、現行の自衛隊を憲法上何らかの形で位置づけるという問題があった場合、自衛のための必要最小限度の実力としての自衛隊を置くとするのか、自衛のための戦力として位置づけるのか、いろいろな可能性のある中で一つの案として国会が発議を行う。そこで位置づけられた自衛隊がどういう活動をするかについても、集団的自衛権を認めるというもの、あるいは国連指揮下のもとでだけ認める、あるいはそうではない形のものを認めるなど、いろいろな改正案がある中で、一つの改正案ができ、提示されるということであるから、これはそれぞれ別の問題に対する改正案と理解すべきであると。自衛隊を位置づける規定と海外での活動の規定をワンパッケージにすれば、海外活動は反対という人は困る。これは不適切な発議で、国民にとって明確な問いになっていないということである。不適切な発議について棄権をすることに一定の意味を持たせなければならず、最低投票率などで対処すべきものと主張されました。これは重要な指摘だと考えます。

 第三に、広報協議会を国会に設置するとする両法案に対し、憲法九十六条の理解とかかわって疑問が出されたことについてであります。

 高見参考人は、憲法改正に関して、日本国憲法上、国会は憲法改正案の発議機関であり、国会の役割は国民に対する発議で尽くされる。しかも、既に、国会の構成員である議員は、憲法改正案の発議においてその原案に対する賛成または反対等の意思を表明することでみずからの立場を鮮明にしている。その旗幟鮮明な議員が、同時に、その提示した憲法改正案についてこれから賛否いずれかの意思を形成しようとする国民に対する広報活動の責任主体となり、改正案の賛否に公正中立が要請される広報という作用に携わるのは、余りにも色がつき過ぎていてふさわしくないのではないかと指摘されました。

 その上で、高見参考人は、むしろ、国会議員は身を引いて、国会から独立した第三者機関を立ち上げる努力がなされてしかるべきではないのか。この広報活動は発議された憲法改正案の普及活動ではないはずであり、国民に対して投票の際の判断材料を公平に提供するのがここでの広報である。したがって、国民に伝える広報の内容をどうするかという以前の問題として、その広報の責任主体について、そもそもその主体は公正中立な構成員から成るものでなければならないと強調されました。

 井口参考人も、国民投票における国会の位置づけは、あくまでも発議機関としての国会ということである、そこに徹するべきである。イメージとして、国民投票で、護憲派と改憲派という二元論的な対立があって、そこで闘うというイメージを持っているかもしれないが、まずは国会と国民が向かい合うということになっているはずであると述べられました。

 これら両参考人の指摘は、憲法九条の理解にかかわる問題として重く受けとめるべきであります。

 なお、先ほどの近藤小委員長の報告の中で、各小委員に共通の認識とか、必ずや合意形成を行うことができるなどと述べられましたけれども、少なくとも私は立場が違うということを表明しておきたいと思います。

 繰り返し明らかにしているように、我が党は現行憲法でいいと。今、家を建てないという人がいるかもしれないと言われましたが、新築、改築ではなくて今の家でいいと言っているわけでありまして、今現実に出されている改憲の動きに反対であって、そのための手続法は必要ないという立場で本委員会の法案審議に臨んでいるのであって、法案提出者や政党と共通の認識を持つためでも、ましてや本法案について合意形成をするためでもありません。その前提をきちんと踏まえていただくことを重ねて求めておきたいと思います。

 最後に、前回の小委員会を通じて、憲法審査会の設置を含む国会法改正案のねらいが私はよくわかりました。

 要するに、改憲を目的とした憲法の調査、改憲原案の審査を常時行い、そしていつでも改憲原案の提出ができる、そのような機関を国会に設けること。改憲原案についても、両院の意思が異なれば廃案になるべきものを、そうさせないために合同審査会で原案を起草して両院におろすという仕組みをとって、両院の議決が異ならないようにその審査に枠をはめる。そして、仮に議決が異なった場合にも、両院協議会を開いて、本来は廃案になるべき改憲原案を復活させる。まさに、入り口でも出口でも、両院での三分の二以上の賛成を何が何でも形成することになるということじゃないか。このような仕組みは、憲法が定める両院制の原則、そして憲法九十六条の趣旨に反するものだということを指摘して、補足的発言を終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 本日は、憲法審査会その他国会法改正部分についての小委員会の報告及び補足的発言をいたします。

 これまで、私は、本委員会でも国民投票法案と国会法の一部改正が一つの法案としてまとめられていることについての問題点を再三指摘してまいりました。そして、国会内の機関のあり方や発議の仕方という、いわば院内のルールと、発議された後の国民投票という、いわば公共空間における院外のルールとは明らかに性質を異にするものであり、別々に取り扱うべき種類のものではないかと発言してまいりました。

 この点について、まず、私は井口参考人の著作を引用しました。ここからは井口さんの著作ですけれども、今回の提出された法案は、憲法改正手続法案と呼ぶべきものである。このような法案を国民投票法案と呼ぶことは、その基本的性格をあいまいにさせるものである。法案の重点は国会法改正にあるとも言える。その中核は、憲法調査会を憲法審査会に改組することにある。国会法改正さえ成立すれば、憲法審査会において改憲論議は着実に進行することになろうという部分を引用し、これらの点について井口参考人の御意見を改めて求めました。

 井口参考人は、国民投票法と国会法という議論は本来切り離されているべきものであると明言されました。その上で、今まで国民投票を表に出してきたのは、偶然ではなく、意図的な演出ではないかと述べられました。例えば議案の審査対象について、日本国憲法改正国民投票となっているはずが、今度の国会法改正案では、「日本国憲法の改正手続に係る法律案等」となっており、巧みなすりかえが行われているのではないかという指摘もありました。また、国会法改正部分だけはすぐに行い、あとは二年間置くということ自体、やはり別物であると制度設計者も考えているあかしにほかならないという指摘もありました。

 私は、本法案が何か違和感を持つ法体系になってしまい、今の議論をややこしくしている原因は、改憲ありきのところから逆算した立法過程にあると主張いたしました。政治的に前へ前へと進ませるために、世論に訴えやすい国民投票というところに着目し、ただの中立的な手続法ですよ、改憲とは直接関係ありませんよと言いながら、実は、憲法改正にまつわる一連の制度設計を逆算するように進めているのではないかという指摘です。

 法律の専門家である参考人が、発議と国民投票による承認という原理の異なるものを一つの法案に入れ込むことで、制度設計上、問題のある場面が多いのではと懸念を述べられたことを、私たちはぜひ真摯に受けとめていただきたいと訴えたいと思います。

 法制局よりも強力な憲法解釈をさせたり、改憲原案をつくることもできるという憲法審査会なるものを国民投票法案という名前の法律の中に置くことは、やはり法案として問題があるとさらに認識を深めましたので、立法府の責任としてこの点を解決すべきであると改めて申し上げたいと思います。

 広報協議会のあり方につきましては、国民投票とは何かという根本的な問いから、現状の議論に対する重要な疑問が呈されました。高見参考人は、国民投票とは、国会が発議した憲法改正案について、主権者たる国民が最終的にその成否を決める法的作用であるとした上で、国会は憲法改正案の発議機関であり、国会の役割は国民に対する発議で尽くされていると発言されました。この国会の位置づけについては、井口参考人も同じ意見でした。

 さらに、高見参考人は、広報活動とは、発議された憲法改正案の普及活動ではなく、国民に対して投票の際の判断材料を公平に提供するものであるため、広報協議会については、国民に伝える広報の内容をどうするかという以前に、公正中立な構成員から成るものでなければならないとも述べられました。そして、憲法改正案の発議において、既に賛否の立場を鮮明にしている議員が、これから意思を形成する国民への広報活動にかかわるのはふさわしくないのではないかという疑問も投げかけられました。さらに、明治憲法の制定過程を例にとり、国会の役割は国民に対する発議で尽くされるのだから、国会から独立した第三者機関を立ち上げるべきとの発言もありました。

 また、井口参考人は、国民投票法案で向かい合うのは国会と国民であり、国会内で対立する賛成派、反対派ではないと述べられました。その上で、無料の意見広告枠について、政党のみを優遇する今の議論について、全会一致で憲法改正案が発議されれば、全政党が賛成になり、賛成派だけに無料の広告枠が与えられることになるのはおかしいとも発言されております。

 国民投票というのは、改正案が一回否決された場合、また一定の期間をかけて同じ案がかけられるということは考えられるのかという私の質問に対し、井口参考人は、一院で三分の二を集められず成立しなかった場合は発議の不成立であると理解すべきで、国民投票で否決された場合も同じ理由で再度すぐかけるということは許されないと述べられています。高見参考人は、全く同じものであれば、事情変更がない限り一事不再議の原則にかかってくるだろうと述べられました。

 さらに、憲法改正原案の審査に関して、閉会中の審査手続が不要とされ、会期中、閉会中を問わず、付託された原案を審査することができるものとされるという点について、なぜ通常の案件と違って憲法改正原案についてのみかかる特例とする必要があるのか、その根拠が示されなければならないと指摘され、この点についても専門家の間ですら周知されていない、本委員会での審議もございましたけれども、周知されていないような状況であったと認識いたしました。

 参考人の発言の中で、私が特に傾聴に値すると感じたのは、国民投票法をめぐる議論についての指摘でした。

 個別投票の原則について、個別の単位は問題ごとであると井口参考人は主張されました。そのとき、例に、例えば自衛隊の位置づけや自衛隊の海外での活動については、それぞれ別の問題に対する改正案であると理解すべきであり、そこを、両方とも安全保障にかかわる問題であるから、内容において関連するものとしてくくってしまうことはできないと発言されたのは、憲法改正の手続を考える上で重要な指摘だと思います。同様に、全面改正の場合は、区分して国民投票にかけられないので難しいのではないかという指摘もありました。

 そしてさらに、押しつけ憲法だからこれはよくないという議論では、制定過程ということを問題にしていると。ですから、象徴天皇制はいいが九条は嫌だというのは、実は個別の話であって、制定過程そのものを問題にした憲法改正ということはおかしいんじゃないかというような、個別の問題についてはあるが、過程そのものを問題にして改正案をつくっていくということはおかしいのではないかという疑問も呈されました。

 さらに、井口参考人は、「大多数の国民が改憲を望んでいないという改憲反対派の主張を実証するためには、国民投票で否決するのが筋である」という発言を取り上げ、憲法改正案が否決された場合であっても、それはその案が否決されただけであり、否決した人も別な案だったら賛成かもしれないとか、大多数の国民が改憲を望んでいないことを実証したということにはならないと述べられ、また、条文と現実が乖離しているから解釈改憲によって憲法改正をする、これをこのままほうっておくとどんどん憲法がなし崩しになるという議論も取り上げられ、そうした改正案が仮に承認されたとしても、現実は変わらず、否決されたからといって、国民の否決の意思を、もっと解釈改憲をやっていいという意味にとるのはおかしいので、今の憲法、改憲論議についていろいろ吟味する必要があるというような示唆に富む御発言もされております。

 さらに、小林参考人が、権利と義務の関係とか、憲法の本来的意義であるとか、そういう憲法の基本前提が整理されていないし、理解されていない、そういう調査啓蒙活動を続けるべきだと求められたことは、私たちはこれを正面から受けとめるべき指摘だと感じました。

 最後に、現実の情勢の中で立法化を進めて、それがどういう政治的な効果とか歴史的な意味を持つのか、それを常に反すうし続けてこの議論を進めていくことがまだまだ大事だなというように思いました。特に、国会法の一部改正の部分についてどのように扱うかということは、本委員会でも法案提出者の中からも慎重な意見も出ておりますので、この点についての議論をさらに深めるために参考人の方々の御意見は非常に有益だったと思います。

 以上です。

中山委員長 これにて小委員である委員からの発言は終了いたしました。

 この際、委員長として一言申し上げておきたいと思います。

 先ほど赤松委員から、当委員会の運営について、一年半無為に過ごしてきたのではないかという御発言がございましたが、委員会の運営については、各党も参加の上で理事会ですべて御協議を申し上げて、理事会の合意のもとに運営をしておりますので、その発言については、私は後刻の理事会で一応御相談申し上げたいと思います。

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中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。越智隆雄君。

越智委員 自由民主党の越智隆雄でございます。

 本憲法調査特別委員会において質疑の機会を与えていただきましたことに、まずは心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 本日は、十一月二日、九日に続いて三回目となりますが、日本国憲法の改正手続に関する法案等審査小委員長より、詳細にわたり御報告をいただきました。また、小委員会における議論の内容については、日を置かずに議事録の速報版を各委員に配付いただいているものと承知しております。委員長初め理事の皆様の本委員会運営に関する御配慮に改めて感謝を申し上げる次第でございます。

 また、本日の質疑に係る小委員会は十一月の十六日に開催されましたが、当日は、国会審議が一時不正常になった時期と重なりましたが、当委員会では整々と小委員会を開催し審議を進めたことに、本委員会の存在のあり方と、さらには政党間の政治対立の道具にしてはならないといった気概のようなものを感じさせていただいた次第でございます。

 さて、本日は、特に憲法審査会その他国会法改正部分についてお話を伺いました。この部分について与党と民主党の法案を比較いたしますと、正直申し上げて違いがございません。もちろん、国政問題国民投票の条項の有無はありますが、それ以外は基本的に条文まで同一で、差異がありません。

 憲法改正にかかわる手続法は、憲法改正の内容とは切り離して冷静に議論し、公正中立なルールをつくるべきとの精神で与党案及び民主党案ともに策定されたものと思います。

 憲法審査会に関して、両法案ともに、公聴会、閉会中審査、合同審査会による勧告など同様に規定されたことなど、公正中立な手続というものは、吟味していくとおのずと一つの方向に収れんするものだと改めて納得をいたした次第でございます。

 それでは、ここから小委員会の報告を踏まえて、与党案及び民主党案の提出者に幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めの質問でございますが、憲法審査会における憲法改正原案の審査が開始される時期について質問をさせていただきます。

 この点については、先日の小委員会では参考人から、主権者国民の合意形成のために国民投票法の周知期間を二年間設けることに加えて、憲法審査会で公開で調査を実施し、国民の理解を図ることが重要であるとの御指摘をいただきました。

 それに対して、その当日、法案提出者からは、憲法審査会は少なくとも当初二年間、憲法改正案の発議権を凍結して、憲法や基本法制の調査に専念することを本法案の附則に明記し、その後も改正手続は拙速を避けて進めるという発言があったわけであります。また、本日は、与党また民主党から、凍結期間について二年を超えて三年をめどに検討を進めていきたいとの発言がありまして、積極的な議論が展開されているものと思います。私も、国会内合意、国民合意の形成にかんがみ、これは極めて妥当な考えであると思った次第でございます。

 そこで、今後どのような形でこの期間について議論を深めていくのか、あるいは適切な期間についてどのように判断していくのか、この辺の御見解について両法案の提出者に御所見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

船田議員 越智委員の御指摘、ごもっともな点が多く、拝聴させていただきました。

 先ほども私は補足説明ということで申し上げたものでございますが、憲法審査会には確かに憲法改正原案の審査権あるいは当然議決権も付与される、こういうことでございますが、現在は憲法特別委員会ということで主に国民投票法案の審議をしているわけでありますが、これが終わりまして、この法案が可決をされて、公布ということになったその時点でいきなり改正原案の審査をしようということは、これはなかなか想定しにくいし、また現実の問題としては無理だというふうに思っております。

 すなわち、いわゆる一般的調査というこれまでやってきた我々の役割、そして第二段階目として、まさに改正を念頭に入れながらも、あるいは改正を視野に入れながらも、しかしさらに深い調査を行う第二段階、そして、実際に改正原案について議論をしていこうという三つ目の段階、大きくは三つのレベルといいますか、レイヤーがあると思っております。

 そのうちの第二段階をどう位置づけるかということについては、さまざまこれまでも議論がありましたけれども、これまでの委員会の中あるいは小委員会での議論を踏まえていきますと、やはりこの第二段階というのも非常に重要である。時間がすべての問題ではありませんけれども、やはり二年ないし三年はこれを議論する、そういう時間に充てるべきだというのが私どもの考え方でございます。

 二年というふうに置いたのは、国民投票本体の部分、これは公布から二年間は施行されないということと平仄を合わせたものでございまして、これは言うまでもなく、国民投票の周知期間であり、また準備期間である。あるいはまた、その投票権を持つ範囲の人々がかなり拡大をするということを考えておりますので、そういった名簿の調製ということも相当な時間がかかるということで、二年間としたわけであります。それに凍結期間を合わせたわけであります。

 これは、これまでの議論を踏まえると、場合によっては二年ではなくてやはり三年は少なくとも必要ではないかということで、これを、今提出をしております法律案の修正を行いまして、具体的に附則などに明記をするということで三年間は凍結ということをはっきりさせる必要があるんだ、このように私は考えるようになりました。今後、また与野党間で議論を進めてまいりますけれども、ぜひその方向で修正部分についてもまとめていきたいと考えております。

園田(康)議員 越智議員にお答えをさせていただきたいと思います。

 私ども民主党も、今与党提案者の方からもお話がありましたとおり、この二年間という期間、これに関してはやはり柔軟に前向きに検討をしてまいりたいというふうに思っております。それが二年でいいのか三年でいいのかという、その部分に関しては三年という具体的な案が出てまいりましたので、それを受けまして私どもも少しその期間というものを検討したいというふうに思っております。

 ただ、三年が来たからそれですぐ憲法改正原案の議論に入るのかというようなことではなくて、私も先ほど補足的発言のところでお話を申し上げたように、まず憲法そのものに対する共通認識をしっかりと国会内で持たなければいけないのではないか。その調査あるいは憲法一つ一つの課題に対してもまだ誤解などがあるのではないかというところで、まず国会議員内、国会内と言った方がいいですね、国会内において憲法に対する共通の認識、土台というものをしっかりとこの間議論していく場としてこの審査会というものが与えられるのかな。

 その中においては、先ほど特別の常設機関というものは必要ないという御意見もいただいたところでありますけれども、私は、そういう会期に縛られるような形、あるいはさまざまな制限が課せられている国会法における委員会、常設の委員会とは切り離してといいますか、特別な機関としてこの憲法審査会というものが設置をされ、その中で冷静かつ慎重な、あるいは会期に縛られることなく、しっかりと議論がなされる場が必要ではないのかな。その中においては、やはりこの議論においても超党派の議論というものが必要になってくるんだろうというふうに私は思っている次第でございます。

越智委員 ありがとうございました。

 それでは、次に、合同審査会について質問をさせていただきたいと思います。

 ここでは、合同審査会の機能、具体的な運用イメージについて伺ってまいりたいと思うのですが、時間もございませんので、中でも、特に憲法改正原案提出までの、いわば起草段階における合同審査会の役割について御教示いただきたいと思います。

 この点については、先日の小委員会で枝野議員から、原案起草に際して両院合同原案起草委員会をつくって、そこでつくられた原案を合同審査会が各議院の憲法審査会に勧告するとのアイデアも示されたと思いますし、また、本日も園田委員から説明があったと思います。ただ、その中で、起草について憲法審査会で行うというような説明もあったと思いますけれども、実際起草作業がどうやって行われていくのかという具体的なイメージがまだ私もわいてきておりませんで、両院合同起草委員会というようなところでやるのか、あるいはそうじゃなくて憲法審査会というようなところでやるのか、その辺ももし具体的なイメージをお持ちでございましたらば、ぜひ教えていただきたいというふうに思います。

加藤(勝)議員 越智議員にお答えしたいと思います。

 どういうイメージかというのは、いろいろなパターンがもちろんあるのだろうと思いますが、憲法改正は両院の三分の二が必要だということでありますから、通常の法案のように、ある党が出して、それをそのまま賛否を問うというよりは、いろいろな形で合意形成を図っていく。例えば、議員から提案されて、超党派である案を出す、あるいは個々の憲法審査会で案を練る。さらには、両院が集まってまず基本的なところは決めて、そして各審査会が、多分会長発議という形になるのだと思いますが、案をつくって出す。幾つかパターンがあろうかと思いますが、一般的には一番後者の例が想定されるのではないか。

 そういう意味で、両院の憲法審査会が共通で議論できる場としての合同審査会を開こうということを設けたわけでありまして、さらには、その成果を勧告という形でそれぞれの審査会に出しまして、そしてその審査会が、もちろんそれに拘泥される、法的に拘束されるというわけではありませんけれども、尊重しながら原案を固めていく、つくっていく、こういうようなプロセスを考えております。

 また、具体的に合同審査会をどうするかというのは、その中で個々に議論されていくことだと思いますけれども、基本的な大綱、骨子といったようなものについて一つの方向性を出す、そういう形で運営されていくのではないかなというふうに考えております。

園田(康)議員 これにつきましても、私どもも同じようなイメージを持っております。

 ただ、現実のプロセスということを考えますと、各院、ハウスにおいて提案をされてから、あるいはその中においてある政党が原案を提出して、それをもんで、さらに両院で話し合いをというのでは、各院、ハウスにおいても少し議論が出てくるのかな。あるいは衆議院と参議院、これもそれぞれによって、まあメンツと言ったらちょっと語弊があるかもしれませんけれども、どちらが先に出した云々というような話にも発展しかねないのではないかという懸念が出てまいりますので、現実的なところでいきますと、両院の合同のこういった小委員会という、人数がそのままガッチャンこと二つが一緒になるというよりは、お互いの小委員会の合同形式なところの中で、委員長からの提案という形の原案が提出をされ、その中で原案の骨子的な部分をもんでいくのかなというイメージを持っております。

 そして、その合同審査会から両院に対してそれが示され、それも勧告という形で出ておるわけでありますけれども、先ほど法的な拘束力というお話がありましたけれども、そういった強いイメージを持っているというふうには解釈はしておりませんで、あくまでも、それぞれの院、ハウスにおいて、合同審査会から提起された原案についてさらに時間をかけてしっかりと議論していくというイメージを現段階では持っております。

越智委員 ありがとうございました。

 そうしたら、最後に……

中山委員長 短く、予定の時間が来ておりますので。どうぞ。

越智委員 それでは、最後に一言だけ申し上げます。

 予備的国民投票について質問させていただきたいと思ったのですが、この点については、船田委員の方から憲法審査会設置後に検討するという、きょう御発言があったと思います。また、園田委員の方からはより積極的に、憲法に関することに限定する形であれば、間接民主制、国民の意思を大切にする、この両立がよりしやすくなるのではないか、そういう意味で予備的国民投票は前向きに検討できるのではないかというような趣旨の御発言があったというふうに思います。

 私としては、一般的国民投票と予備的国民投票の意味合いが、どういう形でその議論が整理されていくのかということに今関心を持っておりますが、きょうは質問の時間もございませんので、これからまた議論を深めさせていただければというふうに思います。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 おはようございます。

 久しぶりに質問をさせていただきますが、小委員会という形式で参考人も含めて非常に積極的な議論を進めていただいていますが、この形式というのは本当にいいと思うのですね。議員同士の率直な意見交換ということも含めて、大いにこれを発展させて、本来のコンセンサスがここから生まれてくるような形でぜひ完結をしていただきたいというふうに思っています。

 この両案、両党案のポイントの一つに、一般的な国政問題に係る国民投票ということがあるんだと思います。私は、各国で行われておる国民投票の状況、それから日本の国内でも、各地方自治体レベルでは住民投票になるわけですが、それのいわゆる間接的な民主主義を補てんしていく意味での役割というものを具体的に見ていくと、日本が議院内閣制であるだけに、ワンイシューで国民の意思を問うということからいけば、この方法というのはぜひ導入をしていくべきだというふうに思っております。

 例えば、喫緊の話でいけば、臓器移植なんかの問題。これは、国民の生命観とか倫理観なんかも含めた、いわゆる個々の価値観に立った形で、もし私たち議員だけでこれを議論していくとすれば採決になっていくんだろうと思うんです。それは間接民主主義でやるような話じゃなくて、国民に直接問うていくというようなプロセスが例えばこんな問題には必要なんだろうということをつくづく感じながら議論に加わっているわけですが、そういう問題であるとか、あるいは、将来、この国の人口構成が深刻な状況になってきているだけに、移民の問題とか外国人労働者をどのような枠組みで受け入れていくのか、この国の体質をどうしていくのかというのを国民に問わずになし崩しで今どんどん変えてきているわけですが、それでいいかどうか。これは立ちどまって、例えば直接国民投票に付していくというふうなことがやはり必要なんだろうなという思いが今ますますしておりまして、そんな意味合いで、ぜひこれを、どんな形でもいいからとにかく積極的に話を進めるべきだという観点で、ちょっと質問をしていきたいというふうに思っております。

 民主党に対してなんですが、本来なら独立した形ででも一般的な国民投票の議論があっていいんだろうと思うんですが、今回はこの憲法改正手続の中で一般的な国民投票も入れよう、そのレンジを広げてやっていこう、こういう意図がここにあるんですね。これは私は賛成なんですよ。ひょっとしたら、憲法自体を国民投票で問う前に、そうしたほかのテーマで予行演習をやってみようというふうなことも十分効果のあることだと思います。そういう意味でも賛成なんですが、どういう意図でこの組み合わせを考えられたのかということ。

 それから、今回非常に遠慮していられるように思うんですね、法的拘束力を持たさないということで。どのようなテーマで国民に問うかというのも国会が決めるわけですし、結果に対して法的拘束力を持たすか持たさないか、これも国会が決めたらいいと思うんですね。そういう意味でいけば、こうした弾力性のある規定をその中に入れてもいいと思うんですが、今回は遠慮されて、参考意見にしますよという程度でおさめられているということなんですが、もっと積極的にやってもいいんじゃないか、こういうふうに思っておりまして、そこについての意図をお聞かせいただきたいということ。

 それと、発議なんですが、これはそのまま読んでいくと、憲法と同じような形で三分の二以上みたいなイメージがあるんですが、これは多数決でいいんじゃないかなというふうに思うんです。そこのところ、三分の二以上なのか、それとも多数決なのか、どちらの意図でこれをつくっておられるかということをまず民主党の方に聞きたいというふうに思います。

鈴木(克)議員 三点にわたって御質問がありました。私の方から御答弁をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、憲法改正手続の中に組み込んだ意図は何かということでありますが、御案内のように、今、EU憲章をめぐるヨーロッパの国民投票や、市町村合併、米軍基地問題等々、本当に今住民投票で国民が直接意見表明をする機会がふえてきた、これは御指摘のとおりでございます。

 そういう中で、私たちは、国民投票は間接民主制の例外としての直接民主制を具現化したものだ、このように考えておりまして、その中に憲法改正国民投票が位置づけられているわけでありますけれども、結論としては、海外派遣や文献による調査によって、多くの国々で直接民主制一般に関する法制があり、その特則としての対象事項が限定された憲法改正の国民投票があるのが通例だというような実態から、今回の法案ではそれをモデルとして一般的国民投票の規定を盛り込ませていただいた、こういうことでございます。

 国会がみずからの意思に基づいて諮問的に国民の意思を問い、その主権者の意思を十分に考慮しながら権限を行使するということの中で、今回この国民投票を憲法改正の手続の中に組み込んだというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

 そして二番目の、法的拘束力を持たせていいんじゃないか、遠慮し過ぎておるんではないか、こういう御指摘でございますが、御案内のように、憲法では国会を唯一の立法機関と規定をしております、間接民主制を採用しておるわけでありますが、投票の結果が国やその機関を拘束するような拘束的国民投票制度を導入することには憲法上慎重な議論が必要だ、このように考えております。

 御指摘のように、国会の事前の容認があるということから、国会の自己抑制として、国民投票の結果に拘束力を持たせても、ぎりぎり憲法上の問題はクリアできるのではという御指摘はまさに検討に値するわけでありますが、正直言って立案時にはそこまで踏み込んでいなかったということでございます。

 そこで、本法律案では、間接民主制の原則に反しないよう、国政問題国民投票の結果は、国やその機関を拘束しないというものにして、国家の意思の形成に当たって事実上参考とされるにとどまるものとさせていただいたというふうに御理解いただきたいと思います。

 三番目の多数決ということ、それがどこで迷うのかということでございますが、民主党案では、一般的国民投票の発議は国会の議決によることとしておるのは御案内のとおりであります。憲法五十六条二項によれば、両議院における議事は、憲法改正の発議のように憲法に特別の定めのある場合を除いて出席議員の過半数によるのを原則としております。したがって、憲法の原則にのっとって、一般的な国民投票の国会による発議に関しては、委員御指摘のとおり多数決によることとなるというふうに考えておるところでございます。

中川(正)委員 自民党の方に聞いていきたいんですが、まだ直接民主主義にいかないんだと思いますね、この民主党案の中にある一般的な国民投票というのは。どっちにしたって、間接民主主義を補てんしていくような形の、国民が直接参加をして一つのイシューに対して一緒に考えていくという、国民参加の一つのツールとしての国民投票というふうな意図だと思うんですよね。にもかかわらず、大分議論が重いようなんですが、どこにこだわっておられるのかというのをまず聞きたいというふうに思うんです。

保岡議員 確かに、主権者であって、憲法について言えば制定権者である国民の意思というものを、できるだけ正確にとらえて憲法改正ないしその他国政の案件に対応していくというのは、我々国会議員あるいは国会の当然の責任であると思いますので、その点はみんな共通なんですが、先ほど鈴木議員からもお話があったとおり、一つには、中川先生もお認めのとおり、憲法は国会を唯一の立法機関として間接民主制を基本にしていて、憲法上、直接民主制は例外的に位置づけているというようなところがありますので、なぜ民主党のように一般的国民投票法をそういう範疇で考えても許容できないかという御指摘については、従来からも申し上げているように、一たん国民投票で投票した結果は国会は事実上これに拘束される、これは重い事実だと思います。

 そういうようなことで、我々としては、この際は、一般的国民投票と憲法に限定した国民投票とは本質を非常に異にしている点があると思っておりまして、また、海外の調査をしましても、確かに直接民主制としての国民投票を実施している、制度化している国も多くありますが、そこで聞いた話の中でも、国民投票というのは非常に有効である反面、それを多用すると、なかなかそれを適切にコントロールすることが難しくなって、議会がいろいろな機能を薄くしていくようなことになって、それを制御というんですか、適当にコントロールするということが非常に難しくなる、そこはやはりよく慎重に考えた方がいいという意見もありました。

 やはり、国民の意思を正確に反映させるためにはどういう形で国民投票を行うかというその内容にも非常に幅がありますし、先生御指摘のような、いろいろな点で国民に意思を問う形態が考えられるところであり、かつ、先生も御指摘のように、民主党の一般的国民投票法もそうなっていますが、単純な普通の議決でできるということにしていいのか、あるいは、その他事項をもう少し性質に分けて考える必要はないのか、こういったことなど、検討することが多々あると思います。

 ただ、憲法国民投票法制とは切り離して、別途この一般的な国民投票法制について将来検討していくということは、予備的な憲法に関する国民投票についての御議論も先ほどありましたけれども、そういうことも含めて憲法審査会の運営の中で議論を尽くして答えを得ていけばいいんじゃないだろうか、そう考えているところでございます。

中川(正)委員 ぜひ日本の民主主義を健全なものにしていくためにも幅広くこれは考えていただきたいというふうに思うんです。

 ちょっと皮肉を込めて言えば、一つは、さっきの議論は与党だからそんな見方になるのであって、与党だからということは、政権担当者から見たら、ある意味で、住民投票でもそうですけれども、住民の直接の声あるいは国民の直接の声が邪魔になるときがある。そういう意味合いに聞こえるんですね。そういう狭い心を持たないようにということが一つですね。それが一つ。

 それからもう一つは、イシューについて、何を国民に直接問うかということについては、これは国会の意思で決められるわけですから。自動的に全部国民投票にかけるわけじゃない。何を直接国民に問うべきかというのは、国会の多数でもって決めていくわけですから。そこについて、やはり間接民主主義なんですよ。だから、やはり参考にしていくべきなんですよ。そこについて、出てきた結果が拘束するというのは当たり前のことなんです。間接民主主義においてこのイシューについては国民に直接一遍問うてみようじゃないかという、結果について責任を持たなきゃいけないということは同じこと、これは国民投票であろうがそうでなかろうが、我々はその上に立って民主主義というのを運営しているわけですから。それもどうも議論の根拠にならないということですから、どうぞひとつ心を広く持っていただいて、ちょっと広げていただいたようですよね、憲法に関連することについてはというところまでちょっと広げていただいたようですけれども、そこはぜひこの機会にこの議論をもって一般的な国民投票を入れていただきたいというふうに思います。

 時間が足りなくなってしまいましたが、以上です。

中山委員長 次に、福島豊君。

福島委員 私からは何点かお尋ねをしたいと思います。

 小委員会の議事録を読ませていただきましたが、その中で、小林参考人から、憲法改正についての国民投票に先立って、国民の憲法への理解、また改正の必要性等についてどのように理解を深めてもらうのか、非常に大切な課題だという指摘がありました。集団的自衛権の問題についても、小林参考人の発言をおかりすると、いわゆる一般の人々に集団的自衛権を、もちろんこれは憲法問題なんだけれどもと問いかけてみますと、実は、ほとんど何が何だかわかっていない、それを国民に知らしめるためにこの公開の憲法審査会はお仕事をしなければならないと指摘をされております。

 個別の論点についてはさまざまな立場があるというふうに思いますけれども、国民がそうした問題点について正確に認識をしていただく、その上で投票していただくということが最も大切なんだろうというふうに思います。

 この委員会におきましても、船田委員の方からは、国民合意を形成する役割がある、こういう御指摘もございましたし、ここのところは、憲法審査会の役割として、より具体的なイメージ、どのようにこれを担っていくのかという議論が深められるべきであろうというふうに思っております。

 その中では、例えば予備投票をどのように活用するのか、拘束するということもありますけれども、幅広く世論調査的なことを投票行動にやっていただくということになるのかもしれませんが、こうした点について、与党提出者、また民主党提出者の方々、それぞれにお聞きをしたいと思います。

葉梨議員 お答えいたします。

 やはり小林参考人がおっしゃられていたように、国会がしっかり仕事をするということが大事だろうと思います。そして、まず国民の理解を深めるという意味では、御党の赤松委員も小委員会でもおっしゃられていたんですけれども、当初二年、あるいは先ほど船田委員から三年というお話がありましたが、現行の憲法についてしっかりとたたいてみるということも非常に大事だというふうに思います。家に例えた話は先ほどありましたけれども、いい家なのか悪い家なのか、あるいは耐震診断をしっかりしてみるという中でいろいろと理解は深まっていくんだろうと思います。

 そして、審査会としていろいろと仕事をしていくということは、開かれたわかりやすい言葉で国民に語りかけること、あるいはどういう形で国民の意見を吸収していくかということも含めて、多面的に議論を深めていくことが国民の理解を深めることにつながってくるんじゃないかというふうに思われます。

小川(淳)議員 今与党の方からのお答えと同趣旨でございますが、時に扱っているテーマが非常に抽象的でしたり、あるいは専門的であったりといったようなことがあるのも事実でございまして、これに対しては簡単で早い道のりというのはないんだと思います。とにかく国会でしっかりと本筋にのっとった議論を深めていくことに尽きるということかと思います。

 それから、憲法審査会においては、先ほどもございました、とにかく投票法案本体施行までの二年ないし三年、ここは個別の条文ですとか技術的なことに陥ることなく、例えば憲法調査会での最終報告などを出発点にして、具体的な論点あるいは改正の要否そのもの、こうした深い調査に専念をして深めていくということ、こうした地道な取り組みを通じて国民の皆様の理解を深めてまいりたいと思っております。

福島委員 確かにそれはそのとおりなんだと思うんですけれども、率直なことを申し上げると、現に、例えば国会でどういう議論がなされているのかということについて国民がどれだけ知っておるかというと、ほとんど知らないというのが私は現状だと思いますね。これは投票に先立ってどの程度国民に広報するのか、これは相当コストもかかる話なんだろうなというふうに思うんですね。公開でやるということもそのとおりなんですけれども、公開でやっていればそれが伝わるかという話もありますし、ただ、コストをかけてやるとなったときに、どういうやり方をするかとか、これはよくよくそういう面も含めて考えていただく必要があるなというふうに思っています。

 いざ、いきなりこうやりましてどうなるのかな、国民がどう反応するのかな、思いもよらない反応もあるかもしれないなとか、いろいろ心配な点があるわけでありますけれども、凍結して助走期間、助走期間というのは単に国会だけでやっていればいいというわけではない。タウンミーティングにしても、やり方は大変難しいわけでありまして、そういうことを考えると、いろいろと考えなきゃいけないことはたくさんあるなというふうに私は思っております。

 二番目。各論で恐縮なんでございますけれども、両案とも基本法制という言葉が出てくるわけであります。日本国憲法に密接に関連する基本法制の広範かつ総合的な調査と。ここは定義の問題なんですが、小委員会等でも、いろいろと説明がありましたけれども、どのような範囲の法律を密接に関連する基本法制として規定するのか。また、これは枝野委員からだと思いますけれども、小委員会での御発言では、どういうことまで考えるのかということで、憲法の改正に関連して、結果として違憲とか合憲とかということが出てくるので、そういったところまで調査する必要がある、こういう御指摘だったと思うんですけれども、実際に審査会で一つの案をまとめていくわけでありますけれども、そういう場合に、既存の基本法制も関連してやはり変えなきゃいけないという部分は当然出てくる。そういうことを審査会ではどの程度まで、何を担うんだろうか、このあたりの考えについて両提出者の方から御説明いただければと思います。

船田議員 福島委員にお答えいたします。

 御指摘のように、この法案におきましては、与野党ともに、基本法制に関して憲法審査会に調査権限を付与する、こういうことにいたしたわけでございます。これは、憲法と密接に関連をする基本法制についても、当然、憲法を変える場合には影響が出てまいります、いろいろな意味で影響も出ますし、また、現在の基本法制がどうなっているかによって憲法の改正の中身も影響を受ける。相互に影響し合う。そういう実態があるというふうに考えておりますので、真摯な憲法改正論議を行うときには、このことは当然不可欠だというふうに思っています。

 ただ、前回、高見参考人から、憲法附属法規ということで、例えば皇室典範であるとか教育基本法を含めまして、大体三十七本の法律を列挙していただきました。そのすべてについて網羅的に調査するということはなかなか時間的にも難しいことでありますし、我々としては、憲法の改正の方向に向けて、それと密接に関連をする基本法制を抽出して調査をしていく、こういうことになると思います。

 また、さらに、その調査が進んだときには、今御指摘がありましたように、憲法改正の方向に向けて、では、基本法制はどのように影響を受けるのか、また、場合によっては基本法制についてここはこう変えた方がいいのではないか、こういった意見も出てくると思います。それは、既存の委員会がそれぞれ基本法制を所管しておりますので、そことの間でのいろいろなやりとりということはあると思いますが、それについては権限を奪い合うという、つまり衝突をするイメージではなくて、お互いに調整をし合うといったことがいずれはあるのかもしれない、こう考えております。

 ただ、あらかじめ、どういうふうにこの権限を分け合うのかとか、そういうことについては、実際に憲法審査会が発足をして、それを運用する中で、各政党がお互いに議論し合いながら一つずつ問題を決めていくべきものだ、こういうふうに思っております。

小川(淳)議員 そもそも、憲法が最上位に位置する最高法規でございまして、あらゆる法律案がその価値観にのっとった格好で体系的に整備されているわけですから、憲法の改廃を議論するということであれば、当然、さまざまな影響について調査するということは基本的な要請だと思います。

 ただ、一方で、船田委員も御指摘なられましたとおり、例えば、講学上、憲法附属法規という概念があり得るとしても、それに限定をするとか、あるいは個々の改正案について具体的な立法論として議論をしていくというところまで踏み込んだイメージではございません。あくまで憲法秩序、憲法的な価値観と各法規に具体化されているさまざまなテーマとが矛盾のないようにですとか、あるいは体系的なそごを来さないようにですとか、そういった観点からの調査にとどまるものだと考えております。

 いろいろな、例えば天皇制についてはどうか、あるいは私学の助成制度についてはどうか、その制度の趣旨そのもの、そして制度設計、そういったところについて必要な基本的な調査という観点から憲法審査会において議論を進めていくということになろうかと思います。

福島委員 高見参考人の御指摘を読ませていただいて、例えば国旗・国歌法であるとか生活保護法であるとか、こういうものも関連する基本法規ですよと言われると、いろいろな考え方をする人がいるんだなと思ったりしまして、こういうことは概念整理がもう少し要るのかなというふうにも思った次第で、御質問させていただきました。

 三点目は、広報協議会の問題でございます。

 小委員会の参考人の方々は、小林参考人は衆参両院の同数の議員で構成されるのは当然だと、高見参考人は基本的に議員ではなく第三者機関にゆだねるべきだと、全く違った意見が提示をされておりました。

 与党案と民主党案、それぞれ名称は異なっておりますけれども、構成は共通である。私は、議員みずからが発議し、行うべきであるというふうに思うわけでありますけれども、第三者機関といっても一体どこが担うのかね、この第三者機関というのはどういう位置づけになるのかね、こう思いますと、甚だ頼りないなと私は思うんですが、議員みずからで行うべきであるということについての考えをさらに確認した上で、十名ずつということなんでありますけれども、この場合に、少数会派の意見というものは、この広報協議会、名前は民主党案は違いますが、どういうふうに反映され、尊重していただけるのか。このあたりのことについて御説明をそれぞれいただければと思います。

加藤(勝)議員 私どもも、当然、発議をした議員がきちんと広報すべきであるということで、全く同じ意見であります。

 国会が発議したわけでありますし、その間にわたっていろいろな議論をしてきた経緯をよく知っている者が行うべきであるし、また、議員御指摘のように、第三者機関という、それは一つの考え方だと思いますけれども、観念的にはわかりますけれども、具体的にどうするんだということを考えると、なかなか難しいのではないかという思いがしております。

 それから、少数会派の意見の反映。もちろん、広報においては賛否両論それぞれバランスをとって行う、そして、そもそもの改正案について、必要な事項について客観的、中立的に説明をしていく、これは当然なわけでありますし、さらに、広報協議会の構成については、法案にも書いてありますように、基本的には所属議員の比率に応じてということになるわけでありますけれども、反対会派の方がそこに入ってこれないといった事態の場合にはその方を入れるようにという配慮をしろ、こういう規定を設けているわけでありますから、実際的には、そういう方を入れた中で原則の比例配分に応じてやっていくということになるんだというふうに思います。

小川(淳)議員 発議をした当事者が最も経過、内容をよく知る者としての責任を果たしていくという意味で、国会議員、国会そのものが広報協議会を構成していくという立場に立っておるわけでございますが、ただ、高見参考人御指摘のようにそれぞれの議員は採決において旗幟を鮮明にしているわけでございますから、その点についての留意が必要だという御意見、見解はあり得ることだと思います。

 その意味で、だからこそ広報協議会は、もちろん比例配分になるわけですが、少数会派に委員御指摘のとおりその構成には十分な配慮をもって臨むこと、そして、広報紙の作成等に当たっても、賛否両論、公平に公正に扱っていくこと、あるいは、現在既に議論になっております有料広告の配分についても、できるだけその賛否を平等に扱っていこうという方向が出てきているわけでございまして、こういった点、そういったお声を十分お聞きしながら、やはり発議機関としての使命を果たしていくという立場に立っております。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。幾つか質問をしたいと思います。

 まず、両法案は改憲原案を審査、提出する権限を持つ憲法審査会なる機関を国会に常置するとされているわけですが、なぜ常設の機関とする必要があるのかということなんです。

 法案提出者の説明では、憲法審査会に、憲法だけではなくて憲法に関連する基本法制についても調査権限を付与してはいるけれども、その調査はあくまで憲法本体との絡みで調査しなければならないことに限るのであって、個々の法律の具体的な法案と絡むものではないということでありましたが、こういう調査であれば、もちろん角度はいろいろあるといっても、憲法とそれに関連する基本法制の調査というのは、小委員会の議論でもありましたが、現在ある常任委員会の中でも十分可能だというふうに考えられると思うんです。

 それからまた、国民が憲法改正を必要とすれば、そのときにそのための機関を設ければいいのであって、発議に必要な機関を常に国会に置く必要性というのはないというふうに思うんです。

 改めて両案の提出者に伺いますけれども、なぜ常設機関としなければならないのかという点について、いかがでしょうか。

赤松(正)議員 今、なぜ憲法審査会を常設の機関としていかなければいけないのかということについて改めて聞きたいということでございますが、原理的には、もう既に過去においてお話があったかもしれませんけれども、国家の基本法制である憲法の改正という極めて重要なものを議論する場ということにおいて、各党共通の場を設けて超党派で議論する必要があるということがまず第一義にあります。そして、慎重かつ十分に行わなくてはいけない。

 先ほど笠井委員は常任委員会でいいじゃないかというふうに言われたと私は聞きましたけれども、常任委員会ということは、今、日本の国会にある常任委員会という性質上、それこそのべつ幕なしにさまざまな議論をしているということがあるわけで、私のイメージでは、憲法審査会は、常設の機関として置くということは必要なときに議論をするということであって、開店休業といいますか、必要ないときはやらなくてもいいというふうなイメージでありますので、常設にしておくことによってあらゆる可能性に対応できる、こんなふうに考えております。

 お立場がちょっと違いますので、そんなのは必要ない、基本的に必要ないという立場に立っておられるからそういうふうな御質問になろうかと思いますけれども、よく言う、余計なことかもしれませんけれども、憲法を不磨の大典としないという言い方をかつて私なんかは言ってきたことがありますけれども、不磨の大典というのは、磨かない、もうずっとそのままにしておくというイメージでとっておりますけれども、先ほど家の例え話もいたしましたけれども、やはり、どうなのかということを常にチェックするという部分からいいましても、実際やるかどうかは別にして、常設の機関として置いておくということが必要ではないかな、そんなふうに感じる次第でございます。

枝野議員 私どもも、憲法についての調査を行うということは日常的に常にやっていくべきではないか、しかも、同じことを個別の法律案という視点から見るのと憲法という視点から見るのとではやはり視点が違いますので、憲法という視点から常に調査を行うという意味で、常設ということが自然ではないかと思っております。別に発議を常に行うように常設にするわけではなくて、調査は常に行っていくべきではないか。

 それからもう一点、多分これは共産党さんとの立場、考え方の明確な違いかと思いますが、必要に応じて、例えば憲法改正のための特別委員会をつくるとか、そういうことは適切ではないと思っています。

 というのは、残念ながらと言うべきだと思いますけれども、六十年間、改憲の是非という入り口のところで憲法の議論はとまっているというか行われてきましたが、本来そういうのはおかしいのであって、どの部分についてであれば変えることに賛成、反対、いろいろあるわけですし、あるいは特定の部分に限っていっても東に行くのか西に行くのかで賛成だったり反対だったりということになるのであって、特別委員会を設置するみたいな話でありますと、そういうことの議論の前に、まず変えることの是非ということの結論を出すみたいな話をせざるを得なくなるというか、政治的にはそういう状況になる。それはやはり間違いだろう。変えることも含めて議論をしていく中で、この部分のこちらの方向への改正なら賛成だとか、改正も含めた議論をしてきたけれどもこの部分のこちらに向かっての改正なら反対であるとか、こういう議論の結果として、ある部分のある方向への改正について三分の二が形成されたときに発議をされるということなので、これは、何か必要に応じて特別委員会が設置されるとかそういうイメージとはちょっと違うなというふうに思っていますので、常設機関であるべきだと考えています。

笠井委員 今、両提出者からそれぞれあったんですが、私は伺っていて、答弁された中身のほとんどは、別に憲法に関する特別の機関を常設しなければできない話ではないというふうに改めて感じたんですが、現在ある常任委員会等でも、もともと国会や国会議員というのは、立法ということで言うと、常に憲法との関係ということで法律を考えるわけですし、できた法律についても常に憲法との関係は念頭に置くわけですから、そこでできるということになると思いますし、国民が改憲を必要とすれば、発議の際に必要とされる機関というのはその都度できていくものだろうということで、常設する必要性は全くないんじゃないか。結局、具体的な改憲ということを念頭に置いて、そして改憲ありきでレールを敷いていくということになっていく話になるんじゃないかということを今伺いながら改めて感じたところであります。

 次に、改憲原案の起草を合同審査会で行うということについて議論がありました、そして、きょうもありましたが、この合同審査会でやることの理由についてです。

 これは、小委員会の中で枝野提出者の方から、どこかの党が原案を国会に提出して、それを修正して合意が形成されるということは政治的にはあり得ないだろう、また、衆議院のもとの原案起草委員会とか、参議院のもとの原案起草委員会とかということでは、これまたどちらが先にやったとしても、別のハウスの方が政治的メンツがあるという問題でなかなかうまくいかないだろう、だから合同審査会でという説明もされたと思うんですが、船田提出者、船田委員の方も、そのとおりだというふうに言われたわけです。

 しかし、私はこれを伺っていて、憲法改正問題で、なぜ政治的思惑とかメンツなどということが問題になってくるのか、政党あるいは院の政治的思惑あるいはメンツなどと懸念するような改憲原案の起草というのは一体何なんだろうと。だから、結局そこには国民不在ということになるんじゃないかというふうに思うんですが、そういう意味では合同審査会で起草する理由というのは成り立たないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

枝野議員 確かに、政党の思惑とかメンツとかということで左右されるのはおかしいというのは、それは委員の御指摘のとおりであります。

 ただ、政治の現実、プロセスを考えていったときに、例えばそれぞれの政党が、うちはこれです、うちはこれですということで議論をしていった方が合意形成しやすいのか、あるいは、衆議院はこうです、参議院はこうですという、全く別のスピードで、別の視点で常に走っていく中で、片方でまとまったから、もう片方で一から議論をしてくださいというのが議論の詰まり方としていいのかといえば、私は、広範かつ真摯な合意形成という観点からは、そうではないんだろうと。

 それぞれの政党や議員、あるいはハウスのそれぞれの視点や立場というものは、それぞれ当然持ちながらでありますけれども、まずはそれぞれのハウスにおける審査会においての調査というものが先行していくんだろうと思いますが、そうした中で、例えば、この点についてのこうした方向での改正はかなり多くの人たちの共通認識になっているなという状況になったときに、それを踏まえての具体的な条文の書き方とか進め方などということについては、どこかの政党が主導するとか、どちらかのハウスが主導するとかということではなく、両院を通じての、なおかつ超党派での場における議論がリードをするということの方が円滑な合意形成に向けて有意義であるのではないかというふうに考えまして、それを若干はしょった言い方をして誤解を与えたかもしれませんが、そうだとすればその部分は撤回をいたしますが、今のような視点で政治プロセスというものを考えていくならば、もし合意ができる場合においては非常にスムーズではないか。

 念のため申し上げますと、合意をつくることが目的ではなくて、もし合意ができる場合にはスムーズではないかというふうに、こういった仕組みも可能であるということを制度として設けたということであります。

葉梨議員 今、枝野委員がおっしゃられたこととほとんど同旨でございます。

 私たちも、党利党略で憲法の改正原案について審査するということは毛頭考えておりません。ただ、それぞれのハウス、それぞれの政党、いろいろとよく話し合いをしながら超党派で結論を出していくということは非常に必要なことだろうと思いますし、ヘーゲルの弁証法的な言い方をすれば、アウフヘーベンということもあろうかと思います。

笠井委員 今御説明がそれぞれあったんですが、それが合同審査会でやるんだというふうにはならないんじゃないかというふうに私は思うんですね。

 前回の小委員会の中では、誤解があればというふうに言われたんだけれども、枝野委員の方からは、結局は改正原案の起草というのは実質的に合同審査会において行って、それを両院においてそれぞれ時間をかけてやっていくという、そこからスタートするんだというプロセスだという話もありましたし、だから、そういうこともあるのではないかということでそういう場所を設けたというニュアンスではなかったのではないかと思うんです。つまり、こういう憲法改正問題について、各党それぞれ意見がある、議院がある、各院もそれぞれのいろいろな経過があるということであったとしても、真摯な議論をするということについて、やり方としては、やはり二院制があり、九十六条があるわけだから、そこを踏まえてやるのが当然だろうと。だから、今真摯な合意形成には合同審査会なんだというふうにはならないんじゃないかということを改めて感じたところであります。

 次に、保岡提出者、保岡委員はいらっしゃらないのですね、提出者なので、言われたことで聞いちゃっていいですかね。

 十六日の小委員会で、両院協議会という話がある中で、「およそ国会の議決を要する案件について両院の意思の調整を図るものとして設けられている」というふうに両院協議会の位置づけを保岡提出者が答えられて、やりとりの中で言われたんですが、両院協議会について憲法でどう規定されているかということになりますと、五十九条と六十条だと思うんですね。五十九条は法律案で、六十条は予算です、もう御案内のとおりですが。それぞれについて、要するに法律案と予算について衆参が異なる議決を行った場合に開くことができるという規定であって、そこには改憲原案とか憲法改正という問題は含まれていないわけです、憲法上、両院協議会ということでは。

 改憲原案に対して両院の議決が異なった場合も両院協議会は開くことができるとする憲法上の根拠はどこにあるのか、これをお答えいただきたいんですが、自民党の提出者、与党の提出者で結構です。

葉梨議員 憲法上の根拠ということですけれども、それぞれ両院において三分の二以上の議決ということですが、先ほどの小委員会、笠井委員も出席されていたかと思いますけれども、一事不再議の議論がいろいろとあったわけですが、一つの議論について両院の意見が異なったときに、立法政策の問題として、それについて両院が話をした後で、その後でそれぞれまた両院が議決をするということは、私自身は可能であるというふうに思っています。これは、一に立法政策の問題であろうかと思いますし、また、そのために、この憲法改正の場面において議決が異なった場合に、新たに国会法の改正というのを付加するという形のものをしているわけです。

 そして、先ほどの合同審査会の議論においてもありましたけれども、あくまで、やはり国会、国民の代表としてよく話し合いを持つということが必要であろうかと思います。そして、あらゆる場面、いろいろな場面が考えられるわけです。両院において三分の二の議決というのが、決定的な内容ということで片方が反対ということになれば、どんなに両院協議会を開いたって、もう一度、賛成ということにはならないでしょうし、あるいは、一事不再議の原則が適用とならないような手続的な事項、これについてたまさか片方が三分の二以上とれなかったという場合もあり得ましょうし、いろいろな場合が考えられると思います。

 いずれにしても、よく話し合いを持って、最終的にそれぞれの院が三分の二になるかならないかということを結論づけていくということは、私自身は立法政策の問題であると考えています。

枝野議員 憲法上、両院協議会を立法政策として置くことについて否定する根拠はないというのが正確な法的位置づけだと思います。

 その上で、憲法上の制約は、両院協議会を法的に置いたとしても、両院協議会で成案を得たからといって、それで発議が成立するわけではない。発議が成立するためには、あくまでも、憲法上の要請に基づいて、両院協議会での成案に基づき、両院でそれぞれ三分の二以上の賛成の議決がないと発議にはならないという意味での憲法上の制約は、立法政策で両院協議会を置いても変わらない、こういうことだと思います。

笠井委員 いろいろ両者から説明があったんですが、要するに、両院協議会を改憲についてやるという憲法上の根拠についてはお答えがないわけです。否定する根拠はないとかということですが、憲法上の根拠というのは、葉梨委員も一つの議論について異なったときですがというふうに言われましたが、憲法にあるのは法律案と予算についてということであって、それ以外については根拠がないわけですから、ここはやはり一つ重大な問題だと私は思います。

 関連して、両案の提出者に伺いますが、両案の国会法の改正部分では、八十六条の二として両院協議会の規定を設けているわけです。しかし、憲法九十六条は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会が発議しというふうになっていて、この規定からすれば、各議院のおのおので三分の二以上の賛成を得ない限り国会は発議できないということであって、両院の意思が異なった場合に協議の余地はないというのが九十六条の趣旨だというふうに考えます。

 これは、憲法には、先ほど指摘しましたように、法律と予算について両院協議会の規定を設けていますが、憲法改正については一切そのような規定は設けていない。やはり憲法改正という重大性にかんがみて、いわば各議院の一部しか代表していない者の協議にゆだねるわけにいかないからだというふうな指摘もあります。両院協議会を設けるということは、私は九十六条の趣旨に反するんじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。

枝野議員 私の先ほどの答弁がそれに対する答えかなと思うんですが、九十六条は、あくまでも最終的には衆参両院の三分の二以上の賛成がなければ発議はできない、これは絶対譲れない、動かせない憲法上の原則だと思います。

 ただし、その三分の二の合意形成をどういうプロセスで行っていくのかということについては、憲法の明文に反しない限り国会の自律にゆだねられている、立法政策の問題であると思います。

 その中で、笠井先生のお立場からは憲法改正の発議に対しては賛成か反対か二つに一つになってしまうのかもしれませんが、そうだとすると、両院協議会を開くことの意味は余りないかもしれませんが、しかし、例えば片方の院で三分の二で他院に送った中身について、大筋は三分の二以上のメンバーが賛成なんだけれども、若干の字句の修正が必要ではないかというような観点から否決をされるということも十分にあり得るわけでありまして、それは修正してもとの院に戻すというやり方もあるし、否決をして両院協議会でこういう修正をして両院それぞれ持ち帰ってみましょうというやり方もあるし、そのことを憲法上否定しているという根拠は、私はどこからも読み取れないというふうに思います。

葉梨議員 さきにも私お答えさせていただいたかと思いますけれども、決定的に、その内容について三分の二が片方でとれて片方でとれないというような状況であったら、そもそも両院協議会を開いたところで結論を得るということはできないはずです。ですから、両院協議会が開かれるということであれば、今枝野委員がおっしゃられましたけれども、片っ方の院で三分の二だ、でも、ある非常にささいな部分において多少の修正が必要である、それを両院の意思として共同でこういう形でやっていきましょうということを示すということが、片方の院だけで修正ということになるよりも、先ほど合同審査会のお話もありましたけれども、両院がよく話し合ってつくるということが憲法上問題があるということが私は理解できないのです。

    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕

笠井委員 時間になりましたからもう終わりますけれども、先ほども伺って根拠を言われなかったんだけれども、もともと憲法改正における両院協議会というのは憲法上根拠がないプロセスなのでありまして、つまり、否定されていないというようなことじゃなくて、もともと何を根拠にやるかというのは非常に大事な問題なんですよね。

 しかも、両院で三分の二以上ということで一致しなければというので、ささいな問題とか若干の修正とか若干の問題と言うけれども、憲法というのはやはり一つ一つの字句そのものが大事であって、だからこそ憲法問題というのは、それぞれ、各党もそうだし、国会もそうだし、国民も非常に慎重に大事な問題として考えているわけなので、九十六条を厳格に読んでいった場合に、どういうあり方なのかということを考えると、やはり成り立ち得ない問題だろうというふうに思うんです。

 私は、先ほど補足的意見の中でも言いましたけれども、結局、そういう中で見えてくるのは、改憲を目的とした調査や改憲原案の審査を常に行いながら、いつでも原案が出せる。そして、そういう機関を国会につくりながら、改憲原案についても、両院の意思が異なったら、本来はそれで廃案になるべきことを、入り口でも出口でも、両院で三分の二以上の賛成でやれるようにということで何が何でもやっていくというような話になっているわけで、これはやはり憲法が定めている二院制の原則と九十六条の趣旨に反するということを改めて感じております。

 きょうの質問はこれで終わります。

愛知委員長代理 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 与党、民主の両案ともに、憲法改正の手続法案の中に国会の院の構成にかかわる国会法改正を含んでおります。なぜ憲法調査特別委員会が院の構成にかかわる案件まで審議できるのか。本来は議院運営委員会で議論することでもあり、議会制度協議会という制度もつくっている中で今こういうふうな議論が進んでいるわけでございます。本来のところで議論すべきだというふうに私は思っております。

 先ほど辻元委員も意見表明しておりますが、憲法調査特別委員会の中でこのことの議論がなされて、本来の議院運営委員会なり議会制度協議会で議論なされるような方向に持っていくべきだということが表明されております。私はそういう立場を表明しながら、ただ、その前段として本特別委員会で粗ごなし的な議論がなされて深められていく、そういうことは許されるのかなというふうに思いながら、そういう立場に立ってきょうは質問に入らせていただきたいというふうに思っています。

 まず最初に、与党提出者に伺いますが、国会法改正案の六十八条の三、憲法改正原案の発議に当たって内容が関連する事項ごとに区分して行うとなっていますが、国民投票に付される憲法改正案も関連する事項ごとに賛否が問われるものと承知いたしています。なぜ条文ごとの改正原案発議にしなかったんでしょうか。その理由をごく簡潔にお伺いいたします。

船田議員 菅野委員にお答えいたしますが、個別発議という点につきまして、関連する事項ごとに区分する理由いかんということであります。

 基本的に、国家の基本ルールの変更に当たっては民意を正確に反映させようということが必要でありまして、例えばの例でありますけれども、第九条の改正と環境権の創設という全く別個の事項について、それを一括して国民投票に付するということは明らかに好ましくないというふうに思っております。この法案は、そういうことのないようにということで明記したものであります。

 問題は、二つの要点があると思います。一方で、個別の憲法政策ごとに民意を問うという要請があると思います。これは、今菅野委員も御指摘をいただいた部分であります。しかし、一方では、相互に矛盾のない憲法体系を構築する、つまり、条文ごとに問いかけていって、ある条文は半数を超えた、しかしある条文においては半数を超えないということになって、その二つの条文が内容的に密接に関連をしている場合には、当然、そこに矛盾、虫食いというものが生じる危険性がございます。したがって、やはり相互に関連をするというものについてはなるべくワンパッケージとして国民に問いかける必要があるということでございます。

 ただ、全体を全く一つのものとして、全部が関連をするからということで一つにまとめるということはなかなか想定しにくいのかもしれません。このあたりは、今後の憲法審査会におけるさまざまな議論の中で、どのように問いかけるか、関連する事項ごとに区分するといってもどこまで区分をしていくのかということは、まさに超党派による議論にゆだねられるものである、このように考えております。

菅野委員 先ほどの小委員会の報告の中でもこの部分は議論になっています。時の政治的な状況によって決められていくものというふうなことが示されているわけですが、それでは、今日的な政治状況を考えたときに、例えば、自民党の新憲法草案第十二条に、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負うという規定が置かれています。

 これは、私から見れば自由や権利の制約以外の何物でもありませんが、権利という観点から、この規定と、環境権や知る権利など、いわゆる新しい人権の創設を仮に一くくりにするようなことになれば、国民は賛否の選択肢が非常に狭められるというふうに思います。関連する事項を一くくりにするような改正原案というものは、投票のあり方については、私は賛成できません。反対いたします。ただ、本当に、条文ごとに国民投票にかけていくというのを原則にしっかりと据えるべきだということを申し添えて、次の質問に移っていきます。

 先ほど隣の笠井委員も議論しておりましたが、両議院の関係に関する事項です。与党案、民主党案の双方の提出者に対して、国会法改正の両議院関係の項目に関連して質問するんですが、両案とも、憲法改正原案を後議の議院が否決、あるいは後議の議院の修正に対して先議の議院が不同意だった場合など、両院協議会を設置して成案を図ることが可能となっています。衆議院の優越性こそないとはいえ、他の法案と同様にわざわざ両院協議会の設置を求めた理由について、先ほども議論なされていましたけれども、改めてそれぞれ御答弁願いたいというふうに思っています。

葉梨議員 既に、先ほど笠井委員に対してお答えをしたことと同旨ですけれども、ある院においてある憲法改正原案が可決された。そして、例えば文言的な問題とかいろいろとございましょう。次の院では、こういう文言がいいだろうというような議決がなされた。しかし、その文言と似たような文言でどういうのがいいんだろうかと両院の意見が異なるのであれば、よく話し合いを持ってよりよい言葉というのを考えることは、当然、必要な場面も出てこようかと思います。そういった場面でこういった両院協議会というのは機能を発揮するものだというふうに思います。

枝野議員 恐らく、両院協議会の規定をつくっておいても、これが機能する場合というのは本当にレアケースだろうと思います。大方の場合は、両院で意見が異なれば両院協議会を開いたとしたって一致するはずがないわけでありまして、今、葉梨議員がおっしゃられたようなレアケースについて、しかし、そうした場合に建設的な解決ができる可能性を否定する理由はない。

 それで、憲法上の根拠がないというふうに笠井先生は先ほどおっしゃっていたわけなんですが、となると、例えば、憲法改正発議に当たって両案とも公聴会がマストである、絶対必要であるということを提起している。これは重要性からかんがみて当然だと思うんですが、憲法には、憲法改正発議に当たって公聴会をやれだなんて、公聴会だなんて一言もない、憲法上の根拠がないわけでして、憲法上何か明文の規定が置いていないとやってはいけないということではなくて、繰り返しますが、ただ両院でそれぞれ必ず改めて三分の二の議決がないと発議できない、これが憲法の求められている手続の担保だというふうに思います。

菅野委員 レアケースというふうに今答弁されていますし、先ほどの笠井委員の議論の中でもそのことを強調されているというふうに思うんですが、憲法九十六条を素直に読むことが私は必要なんだというふうに思っています。

 一方では、後でも触れますけれども、憲法審査会というものを設置して、ここでも勧告を行うことを可能とするようなものも設置しておいて、改めて両院協議会というところまでなぜ必要なのかということだと思います。先ほど立法政策の問題というふうな答弁がなされておりますけれども、私は、憲法審査会と両院協議会ということをてんびんにかければ、両方議論していけば、両院協議会の設置というのはおかしいというふうに思っています。

 それで、これは、先議のところ、後議のところ、それぞれ異なった議決がなされた場合ということでありますから、九十六条を素直に読めば、両院で三分の二の賛成を得られるまでの発議の段階でいろいろ議論されていって、結果として三分の二が得られないときには、私は素直に廃案にすべきだというふうに思うんです。このことは、これからも多く議論がなされていくというふうに思います。ぜひ、このことはお互いにこれからもしっかりと議論していく事項ではないのかなというふうに思っています。

 次に、憲法審査会に関する事項について質問いたします。

 まず、法制局にお伺いしますが、民主、自民両案ともに、憲法改正原案の提出を可能とする憲法審査会を新設することにしています。さらに、憲法審査会は、衆参両院にまたがった合同審査会を開き、憲法改正原案について各院の憲法審査会に勧告を行うことを可能としています。大変強い権限を持っているわけでありますが、このように両院への勧告権を付与された委員会等は現憲法下でこれまであったのかどうか、このことを確認しておきたいと思います。

    〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕

橘法制局参事 菅野先生に御答弁申し上げます。

 両院に対して勧告権を持つような委員会は現憲法下において存在したかというお尋ねでございますが、昭和二十二年から昭和三十年までの間、両議院に対する勧告権を有する両院法規委員会という組織が設置されておったと承知いたしております。

 当時の国会法によりますと、三つの勧告権を有していたようでございます。一つ、国政に関し問題となるべき事案を指摘してこれを勧告すること、二つ目、新立法の提案または現行の法律及び政令に関して勧告すること、三つ目、国会関係法規を調査研究してその改正について勧告すること。この権限に基づきまして、昭和二十三年の第二国会から昭和二十七年の第十三回国会までの間に十二件の勧告を行っているようでございます。

 以上です。

菅野委員 今の答弁でも触れられていましたけれども、戦後、両院法規委員会が存在して、そして各議院に勧告を行うことができたというふうな今の答弁でございますが、大きな役割を私は果たしたというふうには思えません。

 それで、昭和三十年の国会法改正で両院法規委員会がなくなったものと承知しておりますが、なぜ両院法規委員会がなくなったのか、それから、両院法規委員会の消滅後、両院に対して勧告権を持つような委員会の設置の動きがなぜなかったのか、もしおわかりでしたら、法制局から答弁願いたいと思います。

橘法制局参事 菅野先生に御答弁申し上げます。

 先生御指摘のように、先ほど御説明申し上げました両院法規委員会は、第十四回国会、昭和二十七年以降実際に開会されていないという状況などにかんがみまして、昭和三十年の国会法改正で廃止されたと承知いたしております。

 現在まで、両院に勧告権を持つような委員会等は存在していないものと承知しておりますが、その理由についてはつまびらかには承知いたしておりません。

 以上です。

菅野委員 私は、昭和二十二年から昭和三十年まで、実際には昭和二十七年までですか、機能したというのは、戦後混乱期を乗り切るために、まだ日本においては民主主義がしっかりと定着しない時期にこのような制度を設けたという、一定の、ある程度の理解はあります。

 ただ、戦後、民主主義が発展してきて、衆議院と参議院の両院の独立性というものがしっかりと担保されるようになったときに、こういうものは私は存在し得ないというふうにとらえていて、幾ら憲法改正といえども、衆議院と参議院の独立性というものはしっかりと担保されていくべきだというふうに思っております。

 そこでお伺いしますが、憲法改正原案の提案は、衆議院で百人、参議院で五十人の賛成で可能となっています。これが一つですね。また、両案とも、憲法審査会もまた改正原案を提出できるようにしています。そこに加えて、改正原案について両院に勧告を行えるような強い権限を合同審査会に与えるのか。私には、先ほど言った両院の独立性という観点からいって、よくわかりません。

 与党案、民主党案、双方の提出者から、この点について、なぜこんな勧告権という強い権限を合同審査会に与えるのか、答弁願いたいというふうに思います。

葉梨議員 憲法改正という手続、両院の三分の二以上の賛成を必要とするわけですけれども、やはり両院、両ハウスがよくいろいろな話し合いを持って、先ほどの両院協議会の問題もそうですけれども、よりよいものをつくっていくという姿勢が私は必要だというふうに思っています。

 そして、合同審査会の役割については、既に我が党の加藤委員からも御答弁させていただいたんですけれども、両院がよりよいものをつくるために話し合いの場を持つ、そしてその勧告というのも、先ほど加藤委員からもありましたけれども、大綱、骨子、こういったものを示していくというわけですから、決して私どもは両院の独立性を損なうものとは考えておりません。

枝野議員 勧告というのは決して強い権限だとは思っておりません。それぞれのハウスの独自性というのは委員御指摘のとおりでありまして、そこでどんな勧告をしても、まさにそれぞれ六十年間にわたる衆参両院、二院制の歴史の上に基づいて、それぞれのハウスが独自の責任と権限に基づいて議決をしていくわけでありますので。

 ただ、両方の院で共同していろいろな作業をする場合があるとすれば、そういう余地を残し、なおかつ一定の方向性について合同審査会においての一致があるのであるならば、それはそれぞれのハウスにおける議論において十分に考慮をしてほしいという当たり前のことを条文にすると、勧告ということで少しきつく聞こえているのかもしれませんが、両院の自律性というものが前提になっておりますので御懸念のことはないというふうに考えております。

菅野委員 二院制の意義、役割は、チェック機能の強化、有権者の多様な価値観の反映などにあると考えます。したがって、衆参の各院は、お互いの院での審議を補完していく重要な役割を担っています。これに対して、合同審査会が両院に対して勧告権という強い権限を持つことは、二院制の持つ機能や、それぞれの院の独自性まで損ねるのではないかという強い危惧を持たずにはいられません。

 憲法審査会の新設、合同審査会への勧告権の付与については、これは賛成できない旨を申し上げますとともに、まだまだ問題点が多くあると思っております。十分な審議を尽くしていただきたいことを申し上げて、私の質問を終わります。

中山委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党・無所属の会の糸川正晃でございます。

 まず、国民投票法と国会改正法との関係について双方の提出者にお伺いしたいのですが、まずは基本事項の確認をさせていただきます。

 国民投票に関する手続を定める部分と、憲法改正の発議にかかわる手続を定める国会法改正部分を国民投票法案の中で一本化した理由は何なのか。あわせて、議院運営委員会の所管である国会法改正部分に関する審査を本委員会で行う理由についても、双方の提出者からお伺いしたいというふうに思います。

赤松(正)議員 今糸川委員お尋ねの、二つの違う種類のものを一つにした理由はということですが、確かに、名称は、憲法改正にかかわる国民投票の実施に関する部分と、それから発議手続のための国会法の改正に関する部分ということについて、違う種類というふうに一見見えますけれども、御承知のように中身は全く一体不可分のものでありまして、一連の手続の流れの中でとらえるものである、そういうふうな観点から、内容的にも政策的にも密接に関連をするということから、両者の整合性を図る意味でも同一の法律案の中に規定することが望ましい、このように考えた次第でございます。

 また、議院運営委員会の所管事項、判断でどの委員会に付託するかということが決められるわけですけれども、憲法調査特別委員会が法案の中で最も中核的な内容を所管する委員会であって、それを審査するにふさわしい委員会である、そのように判断された、こんなふうに受けとめております。

小川(淳)議員 民主党案も同様でございまして、実質的に発議と投票という一連の手続を整備するものでございますから、法形式上も今回の法律案で一体的に改正していく、実質に合わせて形式を整えるという趣旨でございます。

 所管委員会も同様でございまして、国会法が議院運営委員会に所属をするという形式よりも、国民投票の一連の制度を実質的に議論をしていくことが憲法調査特別委員会に所属をしているという、その実質を重視した御判断を議運の方でいただいたということになろうかと思います。

糸川委員 それでは、今回の法案で新たに憲法審査会として他の委員会と異なるこの審査会を設置された理由というものをお聞かせいただけますでしょうか。これも双方の提出者にお伺いをしたいと思います。

船田議員 糸川委員にお答えいたします。

 憲法審査会は、憲法それから憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行って、憲法改正原案あるいは憲法改正手続法案を審査するための常設機関であるということでございます。とりわけ、憲法改正原案につきましては、もちろんほかの委員会もそうなんでございますが、特に憲法につきましては、国民に開かれた形で、特に慎重かつ十分な審議の必要性がある、こう考えております。

 したがいまして、私どもとしては、公聴会の開催を義務づけること、それから、会期をまたがって慎重な審議がなされる議案であるということにかんがみて、閉会中審査についてもやはり他の委員会とは違って特例を設けなければいけないということ、それから、先ほど来話が出ておりますように、衆参両院の自主性を尊重しながらも、やはり衆参両院の意見の調整をいろいろな段階で行わなければいけないということで、合同審査会を規定しなければいけない。

 以上のように、他の委員会と異なる取り扱いをする必要がありますので、これは、他の委員会とは別に憲法審査会という特別の国会の機関として置かせていただきたい、こういうことでございます。

小川(淳)議員 民主党案も同様でございます。

 この憲法改正に関する投票ということの重みに事は尽きるんだと思います。とにかく、公開で慎重に十分な審議を要する、相当長期の審議に臨まなければならない、そして国会での特別多数決に備えなければならない、こういった要請から、特別の審査会としての位置づけを要すると判断をいたしたものでございます。

糸川委員 その憲法審査会というものは日本国憲法に密接に関連する基本法制について調査を行うというふうに説明をされたわけですが、では実際、具体的にはどのような調査を想定されているのか、また、それが既存の委員会の権限と衝突するおそれがないのか、双方の提出者にお伺いをしたいと思います。

船田議員 お答えいたします。

 憲法審査会においての権限の大きなものとして、基本法制についての調査も行うということでありますが、やはり憲法、そしてその附属法といいますか、下位法ではございますけれども憲法に密接に絡んだ基本法制との関係は、当然、憲法を調査する、そして改正するのであればどこをどう改正すべきなのか、こういうときには当然関連をすることでございますので、慎重な審議をする上においてもこの規定はとても重要である、こう思っております。

 ただ、前回の小委員会におきまして、高見参考人が、三十七本ほどのいわゆる憲法附属法規ということを列挙されて、それを対象とするのかしないのか、こういった議論もありましたけれども、これは、網羅的にこれを調査するというのではなくて、やはり憲法改正の方向性あるいは内容に応じて、関連する基本法制というものがおのずから取捨選択をされるものというふうに思っております。

 それから、具体的な調査といいますか方法でございますけれども、確かに憲法は上位法であります。最高法規でございまして、その下に基本法制が並んでいるという形でございますけれども、現在の基本法制がどのような運用をされているのか、あるいはその運用の中で問題があるのかないのか、そういった調査をすることで憲法の改正に結びつけるという部分もあります。また、その逆に、憲法改正をこういう形でやっていく上において、基本法制にどういう影響が出てくるのか、あるいは基本法制のどこかを変えなければいけないのかといった、影響が逆に及んでいくという場合もあるわけでございますので、それは相互に関連をしておりますので、そこを慎重に調査、調整をしていくという必要があると思っております。

 ただ、それは、この憲法審査会が所管するのか、あるいは、これまで所管をしていた既存の委員会が所管するのかということで、お互いに衝突をし合う、あるいは権限をお互いに奪い合う、そういう事態は私は想定できないし、また、そういうふうにしてはいけないというふうに思っております。おのずから、その調査の中で既存の委員会との調整は事前に慎重に行われるべきである、このように考えております。

小川(淳)議員 民主党案も同様でございます。

 とにかく、最高法規をさわるわけですから、それが下部の法規、法体系にどういう影響を及ぼすかということについては、基本的な調査を進めていくというのは必要な要請だと思います。

 ただ、一方で、憲法的な価値観からする基本的な調査は必要ですが、個々の法律案の個々の具体の改正案、ここまで審議しようということではございません。その意味では、そうした要請があれば、当該の個別の委員会においてきちんとした審議をしていただく。当然、これを憲法審査会の基本的な調査が妨げるものでもございません。

 そういう意味でも、両者の要請がむしろうまく、衝突するというよりもかみ合うような形で審議がうまく進めば一番いい形じゃないかと思っております。

糸川委員 私も、実際に衝突というのは想定していないんだろうなとは思ったんですが。ただ、万が一権限の衝突等があるおそれがあるということであれば、事前にぜひ他の委員会との調整をきちっとしていただいて、進めていっていただきたいというふうに思います。

 次は、与党の方のみにお答えいただきたいんですが、憲法改正案の議論の進め方について、与党提案者から、憲法審査会は少なくとも当初二年間の憲法改正案の発議権を凍結して、憲法や基本法制の調査に専念することを本法案の附則に明記したいんだ、こういうような発言があったというふうに思います。

 では、憲法改正までにどのようなスケジュールというものを描いていらっしゃるのか。与党案の提出者にお伺いしたいと思います。

船田議員 お答えいたします。

 今、もう糸川委員も大体御指摘をいただいたところでございますけれども、私どもはこれまで憲法の現状について、あるいは憲法のあり方について、調査を真剣に続けてまいりました。

 これから法案が通りましたらば憲法審査会というものができる予定でございます。次の第二段階というのは、確かに憲法審査会そのものには原案によりますと改正原案の審査あるいは議決権まで与えられているわけでありますけれども、いきなり改正原案の提出や審議ということでは、やはりなかなか国民の理解も進みませんし、政党間の調整、話し合いというのもまだまだ進んでいかないと考えておりますので、今申し上げましたように少なくとも二年間は凍結という形にして、もちろん改正ということを前提としながらも、あるいは改正すべきでないという方々もおられますから、それを前提としてさらに深い調査を行う、その第二段階というのが非常に大事だというふうに私どもは考えております。

 だから、それが時間的に二年間で済むかどうかということについては、若干それはもう少し時間をかけた方がいいのではないか。私は三年というのが望ましいと考えておりますけれども、今後、三年を軸に調整をしていきたい、こう考えております。そして、三年後には、今度は凍結が解除されまして、具体的に改正原案について提出もされるでしょうし、審議もされるでしょうし、また議決という方向にもなっていくと思います。

 しかし、これもいきなり原案がぱっと出るということは想定しにくいわけでありまして、調査に基づいて各政党がそれぞれ原案というものを温めて、そして、できれば両院における三分の二を超える方々が賛成できるような、そういう原案を徐々に出していく、こういう方向になっていくと思っております。

 やはり、今後、まず三年という凍結期間があり、そして改正原案というものを慎重に審議をしていくために、なおある程度の時間が必要であると思っております。

糸川委員 ぜひ、これは議論を深めなきゃいけない問題でもありますし、調査にも時間がかかると思いますので、時間を区切らないで、しっかりと充実するまでよく御検討いただければありがたいというふうに思います。

 各議院の憲法審査会、これはほかの議院の憲法審査会と協議をして合同審査会を開催できる、こういうふうにされておるわけでございますが、いかなる場合の開催というものを想定されていらっしゃるのか。また、この合同審査会は各議院の憲法審査会に対して勧告権を有するものだというふうにされておりますが、どのような勧告を想定されているのか。これは双方の提出者にお伺いしたいというふうに思います。

葉梨議員 先般来お答えしていますので、簡潔にお答えいたします。

 両院で共通の土俵を持つために両院がそれぞれ知恵を出し合う、そういう場を考えています。そして、勧告の仕方というのも、先般お答え申し上げましたように大綱、骨子という形で、あくまでこれは両院の自律性を損なわない形で勧告を行うということを考えています。

小川(淳)議員 民主党案につきましても同様でございまして、とにかく国会の総議員の三分の二という特別多数決を要請されているわけでございますから、それを意識した、例えば意見表明、意見交換、そして意見集約という運びの部分についても、相当その特別な要請に対応した形をイメージする必要があると判断した、その結果がこの合同審査会でございます。

 実際の勧告につきましては、もちろん事実上尊重されることになるとは思いますが、両院の自律権を損なうような拘束力を持ったものではないこと、そして、基本的な勧告のイメージについても、まだまだ内容に踏み込んだ審議には至っておりませんが、例えば改正原案についての大綱とか骨子のような基本的な構成を示唆するようなもの、そういったイメージが想定できるのではないかと考えております。

糸川委員 ありがとうございます。

 では次に、憲法審査会の将来像についてお伺いをしたいんです。

 憲法審査会の権限に関しまして、与党案提出者、民主党案提出者からは、現時点では憲法改正案の審議は、憲法やそれに密接に関連する基本法制の調査の権限のみを想定されているというふうに思いますが、諸外国でも見られるように、将来的には憲法適合性の審査権を持つことも考えられる、こういうような発言があったと思います。主権者の国民の代表たる国会議員が憲法解釈についての第一義的な責任を有することは当然であるというふうに考えますが、いかがでしょうか。これは双方の提出者にお伺いしたいというふうに思います。

保岡議員 先ほど船田議員からもお話がありましたけれども、この憲法審査会の権限に関しては、やはり一般的に現時点で憲法適合性審査機能を持つ、憲法審査会がそれを果たすということは必ずしも想定できないと考えているところでございます。

 ただ、将来像ということでお尋ねでございますけれども、憲法改正の要否とか方向性等を具体的に論じていくときに、先ほどもありましたように基本法制とかいろいろなことに関連して議論をしていかなきゃならない。そういうことを通じて、結果としていろいろな法律の合憲、違憲について論議をするということはあろうと思います。

 これから憲法審査会が、適切な運営をしながら、そういう議論を適切に行いながら、いろいろ審査会の活動というものを充実したいいものにしていくプロセスで、だんだんこの憲法審査会が将来的に議院が一義的に個々の法律の合憲性をチェックする機能を果たしていくということを、またみんなでそういう方向性を合意できていけば、またそういうあり方を求めることも可能だと考えております。

 個人的には、先般諸外国を見て回りました際にも、違憲審査をする機関が国民の代表としてしっかり機能を果たそうという制度もありますし、先般の小委員会における参考人の方々のお話にもあるとおりで、これは一考に値する、将来の大きな重要な課題だと認識しております。

小川(淳)議員 私どもといたしましても、将来的にこれはあるかといえば、あり得ることなんだと思っています。

 ただ、現在には現在で、やはり三権分立ですとか、それから司法による違憲審査とかいう現在の体系があるわけでございまして、今、国民投票制度について審議をしているその延長線上に、憲法解釈、憲法適合性の審査というところまで直ちに出てくるというには余りある議論であろうと考えております、現段階では。

糸川委員 ありがとうございます。

 もう時間でございますので質問を終わりますが、いろいろな質問がきょうもございました。憲法を改正するこういう手続を行うには、本当に国民の意見というものを正確に酌み取りながら、十分な調査を行っていただきたい。そして、環境づくりにしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思いますので、基本的な原理というものを忘れないで、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 終わります。

中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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