衆議院

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第10号 平成25年6月13日(木曜日)

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平成二十五年六月十三日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 吉川 貴盛君

   理事 泉原 保二君 理事 大塚 高司君

   理事 永岡 桂子君 理事 西川 京子君

   理事 原田 憲治君 理事 郡  和子君

   理事 重徳 和彦君 理事 古屋 範子君

      秋本 真利君    穴見 陽一君

      今枝宗一郎君    小倉 將信君

      鬼木  誠君    金子 恵美君

      小島 敏文君    白須賀貴樹君

      田畑  毅君    田畑 裕明君

      武井 俊輔君    豊田真由子君

      比嘉奈津美君    藤丸  敏君

      堀井  学君    堀内 詔子君

      宮崎 謙介君    宮崎 政久君

      務台 俊介君    簗  和生君

      生方 幸夫君    大西 健介君

      篠原  孝君    若井 康彦君

      岩永 裕貴君    上西小百合君

      浦野 靖人君    東国原英夫君

      伊佐 進一君    浜地 雅一君

      椎名  毅君    三谷 英弘君

      穀田 恵二君    小宮山泰子君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            森 まさこ君

   内閣府副大臣       伊達 忠一君

   内閣府大臣政務官     亀岡 偉民君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     松田 敏明君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    川口 康裕君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     豊永 厚志君

   衆議院調査局第三特別調査室長           石川 晴雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     今枝宗一郎君

  務台 俊介君     簗  和生君

  三谷 英弘君     椎名  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     白須賀貴樹君

  簗  和生君     務台 俊介君

  椎名  毅君     三谷 英弘君

同日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     藤原  崇君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案(内閣提出第六〇号)


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     ――――◇―――――

吉川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として消費者庁次長松田敏明君、消費者庁審議官川口康裕君及び経済産業省大臣官房商務流通保安審議官豊永厚志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜地雅一君。

浜地委員 皆様おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 きょうは、与党側で質問に立たせていただくのは私のみでございますので、しっかりとやらせていただきたいと思います。

 この法案は、これまで被害が少額で、または、例えば高齢者の方で、被害回復をやるのは煩雑である、また、そこまでやらなくていいんじゃないかと泣き寝入りをしていました被害者を救うという部分では非常に重要な法案である、そのように私は感じております。特に、初めから被害者を食い物にしようという、いわゆる悪徳業者のような業者は市場から退場させる、そういう部分では非常に重要な法案であるというふうに感じております。

 しかし、ただ一方で、いわゆる民法の格言の中には、権利の上に眠る者は救わないといった格言もございまして、やはり、権利主張をするためにはそれなりの汗をかく、しっかりと自分の権利を主張していくということは、また一つの重要な格言でございます。

 特に、今回、この悪徳業者、最初から故意犯で、被害者を食い物にしようといったものだけではなく、今回の類型の中では、不法行為によって被害をこうむった場合、不法行為というのは、故意だけでなく過失もございます。ですので、例えば、製品をつくったときに、たまたまその性能に問題があった、最初からだますわけではなく問題があった場合にもやはりこの法案の対象になるわけでございますので、これまできちっと適正に営業しよう、または事業活動しようといった事業者までもやはり被告になることがございます。

 ですので、私のもとには、消費者団体の方から、早く成立をさせていただきたいという声もございますし、また、これまでも、自民党さん、また我々公明党の中でも、クラスアクションになる問題や、また濫訴の危険があるんじゃないか、それによって経済活動が阻害されていくんじゃないかということで、部会の中でも非常にもんだということを私も承知をしております。その中で、遡及効等の制限をするであるとか、また弁護士費用等、やはり弁護士だけがもうからないように費用の部分をしっかりとウオッチしていこうということで、部会の中で了承になって法案が出てきているという経緯でございます。

 その中で、これまで、いわゆる少額の被害者、十万とか二十万円の被害者で、自分の一人の力で訴訟するまでもない方がたくさんおったわけでございますけれども、しかし、そのような少額被害者の場合でも、例えば、弁護士会の方で被害者の緊急一一〇番みたいな電話相談をしまして、十万円の被害者を千名集めて一億円の被害総額にして、いわゆる併合請求をして裁判をするということは可能だったわけでございます。これまでも、いろいろな被害団体の方が、そのような電話相談をしまして、被害者を集めてやってきたわけでございます。

 そうなりますと、一億円の請求というのは、印紙代が三十二万円ということになります。千名集めると、一人頭の負担は三百数十円ということになりますので、経済的な負担も重くはないんですね。ですので、実際に、実務の運用の中で、少額被害者をたくさん集めて集団的に訴訟をしているということはこれまで行われていたわけでございますが、その中において、今回、この集団的訴訟の法案を提出される意義を、また必要性を、もう一度確認をさせていただきたいと思います。

 大臣の方に質問させていただきます。

森国務大臣 私、少額被害者を集めて、集団訴訟をたくさん起こしておりました弁護士でございます。

 これは物すごく大変でございます。しかも、一一〇番をやっても、一日や二日の一一〇番で、日本全国にいらっしゃる被害者の方に気づいていただけません。まず、一一〇番をやりますということを新聞になかなか書いていただけません。インターネットは高齢者の方は見ません。ということで、潜在的な被害者がたくさんいるんです。

 このような、詐欺商法でいいますと、桜前線のようにずっと各地を回ってきて、気がついて警察に検挙されそうになると別の地域に移っていくということで、同じ手口で日本全国をずっと回っていく。それを、消費生活センターの情報を共有して、国民生活センターを中心にして何とか予防しようとしているんですけれども、なかなか、そこは追いかけっこなのでございます。

 例えば振り込め詐欺という手法がはやったときも、一つの振り込め詐欺グループが捕まりました。スイスに五十億円送金していました。条約がありませんので、スイスと外交的に交渉して半額だけ戻してもらったんです。二十五億円が戻ってきました。私たち弁護団は、この二十五億円を被害者の方に戻そうと思って広報しましたけれども、名乗り出る方が大変少なかったんです。その被害金額の方を見ますと、やはり多くの方が、助けていただく機会そして被害金額が戻ってくる機会を知らずのうちに泣き寝入りをしてしまっている、これが少額被害の現状でございます。また、少額でない場合もございます。

 ということで、被害回復に要する費用ももちろんそうなんですが、先ほど、千名で割れば一人三百数十円、しかし、その千名に知らせるための広告費用もあります。千名の方に交通費をかけて来ていただいて、一つの部屋をお金を出して借りて説明をする、そのコストも私たち被害弁護団が持ち出しでやっている状況でございます。手間もかかるんです。そういう費用ですとか手間ですとか、それから専門的知識がない、こういったことを救済するための本制度の導入です。

 本制度が導入されることにより、消費者は特定適格消費者団体による一段階目の訴訟追行の結果を踏まえて二段階目の手続に加入することができることとなり、かつ、実際の二段階目の手続は、特定適格消費者団体に授権をして行うことになります。また、消費者に通知、公告がなされることにより、特定適格消費者団体の授権をする機会を確保することにしています。

 こういうことによって、多くの消費者が手続に加入できるようになる、被害回復に要する時間、費用、労力が低減される、消費者が訴訟手続を使うことをためらわなくなり、これまで回復されにくかった消費者被害を回復することができる、そういう実効性があるというふうに考えております。

浜地委員 ありがとうございました。

 大臣の実体験に基づくお話でございましたので、今、非常に私も説得力を感じながら聞かせていただきました。本当に、そういった必要性というのは私も高いというふうに個人的にも感じております。ですので、今回こういった法案を、特に、前回の国会の方から先輩方がしっかりもまれて、つくられてきたという経緯があるかと思うんですが、ただ、今回のこの集団訴訟というのは、やはり、一般の民事訴訟手続のかなり例外をなす規定が、当然でございますけれども、多うございます。

 一つは、原告の問題ですね。原告が、特定適格消費者団体というところが原告になると。民事訴訟法の大原則でいいますと、当然、権利義務の主体である、例えば被害者本人が本来は主体でなければいけないんですが、本当にこれは民事訴訟法の例外をなすものでございまして、原則の例外ということでございます。ですので、例外規定となりますと、その要件はやはりしっかりと吟味をしなければいけないというふうに思っておりますけれども、まず、この特定適格消費者団体の資格の要件、これをもう一度明確に教えていただきたいと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、特定認定のための要件につきましては、被害回復関係業務を適正に遂行し、制度の実効性、適正性を確保する観点から適切に定める必要があるということでございます。

 具体的には、特定適格消費者団体の要件としまして主なものを申し上げますと、一つ目として、適格消費者団体であり、差しとめ関係業務を相当期間継続して適正に行っていること、二つ目といたしまして、新たな業務となります被害回復に関係する業務について適正に遂行するための体制、それから業務規程、経理的基礎が整備されていること、それから理事に弁護士を選任していること、それから、消費者から支払いを受ける報酬または費用がある場合には、報酬等の額または算定方法を定めており、これが消費者の利益の擁護の見地から不当なものでないことなどの要件の全てに適合しているときに限り、特定認定、特定適格消費者団体として認定できるとしているところでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 今聞いて、ぱっと理解できるのは、理事に弁護士がいることだったりとか、または報酬規定がしっかり定められていることなんですが、適切な業務の体制という言葉があったんですが、少し抽象的なような気がします。そういった部分では、これから内閣総理大臣が認定をしていく上で、この特定適格消費者団体に関するガイドラインのようなものは、これからつくられる予定はあるんでしょうか。

川口政府参考人 先生御指摘のように、認定要件の内容につきましてはできる限り客観的にすることが望ましいということで、法案の成立後、政令、内閣府令、それから認定、監督の指針をガイドラインとして定めるということで要件の詳細を明らかにする予定としております。

浜地委員 そうなりますと、今現在、ほかの法令によって差しとめ請求ができる団体、適格消費者団体が全国に十一あります。こちらの方の団体は、今のこの要件を満たしますでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の適格消費者団体でございますが、これは差しとめ請求関係業務を行うところとして認定しているところでございますので、直ちにそれだけでは、新たな特定適格消費者団体の要件を満たすものではございません。

浜地委員 そうですね。特にこれまでは差しとめのみを適格消費者団体はやってきておりました。今後は、実際、訴訟の主体になり、実際は損害賠償請求を行い、自分たちがお金を扱う立場になるのが、次の特定適格消費者団体でございます。

 そういう部分では、財産的基盤という部分がしっかりしていなければ、お金を扱うわけですから、また、被害が大きくなれば大量のお金を使うことになりますので、そういったところの要は財産の管理状態というところをやはりしっかりと留意しながら認定をしていただきたいというのが私のお願いでございます。

 次の質問でございますが、訴訟費用のお話は先ほどございましたので飛ばさせていただきます。簡単に言いますと、私が質問しようと思っていたのは、訴訟費用が、財産権の請求にかからないので、印紙代が一万三千円で裁判ができてしまいますよということをお伝えしようと思いましたけれども、この件については、先ほどの大臣のお話で理解をしたところでございます。

 次に、これは相当多数の被害者から授権をこの団体が受けて原告になるわけでございます。この相当多数については、大体数十名程度いればいいというようなことを消費者庁の方から説明を受けておりますけれども、その中で、これは共通の権利義務がある、共通の権利義務を第一段の裁判の中で確定していくわけでございますけれども、これについてしっかりとグルーピングというのができるのかどうかというのを、実際に私もこれまで裁判実務をやってきた人間として感じるところでございます。

 例えば、ある支店では、パンフレットを説明せずにお客さんに売っていたと。もしくは、パンフレットの説明を、説明を受けましたという書面をとっていないというA支店があったとします。しかし、同じ会社の中でB支店があって、支店長が、これはまずいだろうということで、しっかりとパンフレットでの説明をし、または、書面で説明を受けましたというようなことをとっているB支店がある。そこに被害者が、例えばA支店に五十名、B支店に五十名いらっしゃる場合に、やはり被告はその会社になると思うんですね。当然、A支店、B支店両方あるその本店になるかと思うんですね。

 このような場合に、裁判の中で権利義務というのはどのように認定されるのか、具体的に教えていただきたいと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 対象消費者の範囲を、ある事業者につきまして、どの支店で契約したかを問わず被告と契約した消費者と仮に設定した場合には、先生御質問のように、ある支店では説明がおろそかであり、他の支店では説明をしていたということが判明した場合には、対象消費者に共通して金銭を支払う義務はないということになりますので、請求が棄却されるというふうに考えられます。

 ただし、このような場合に、対象消費者の範囲につきまして、ある支店で契約をした消費者と訴えの変更をいたしまして、その対象消費者が相当多数いるということになる場合には、請求を認める判決を得ることができるのではないかというふうに考えられます。

浜地委員 そうなると、共通の権利義務がないと、集団的訴訟の第一段階には行かないと思うんですね。共通の権利義務がないというふうにもし認定された場合は、これは他の団体にもその判決の既判力が及ぶような規定でございますけれども、要は、全国的にこの裁判ができなくなるといった規定ではございますけれども、判決が、例えば共通権利義務がないということで、却下じゃなくて棄却された場合は、他の団体も訴訟提起できなくなるんでしょうか。

川口政府参考人 この法案では、第一段階目の判決につきましても、判決の効力を拡張しております。先生御指摘のとおりで、他の特定適格消費者団体にも及びますので、それは訴訟ができなくなるということでございます。

浜地委員 そうなりますと、訴訟を提起する段階で共通の権利義務があるかどうかということを特定適格消費者団体の方がしっかりと調べて、ある程度予測を持ってやらないと、これは全国の特定適格消費者団体にもその判決の効力が及んで、裁判はできなくなるというような効力があるわけでございます。

 そういう部分でございますと、先ほど私が申し上げましたA支店、B支店というようなことはわかりやすいものでございますけれども、中には、二十人いる中で一人だけが不法行為性はある、しかし十九人は不法行為性は認められないといった場合にも共通権利義務が却下をされてしまうと、そうなるとほかの団体も訴訟提起ができなくなるということがございますので、そのあたりも含めて、この特定適格消費者団体が訴訟の対象を選ぶときに、しっかりと吟味をしながらやらないといけないということが言えると思います。

 ですので、いわゆる被害者を集めて、共通の権利義務があるかどうかがまだわからない段階で提起をするようなことがないように、運用の面でもしっかりとそのあたりのウオッチをしていただきたい、そのように私は感じております。

 次の質問に行かせていただきます。

 私が一番懸念をしているのが、事業者の側、被告側になるんですけれども、抗弁というのがよく出てきます。裁判をしておりますと、例えば、これは相殺をしましたとか、もしくは時効で消滅しておりますといったことがよく出てまいります。

 まず、こういった抗弁というのは第一段階で出せますでしょうか。

川口政府参考人 抗弁につきましても、対象消費者共通に及ぶものについては第一段階で出せる、個々の消費者のものについては第二段階で出していただくという考え方でございます。(浜地委員「個々の消費者ですね」と呼ぶ)はい。

浜地委員 そうですね。この抗弁、請求金額が一千万あると言っていますが、例えば、これは一部返したんだよということで相殺をしたり、または一部はもう時効が来ていて請求権がないといったことになって、主に損害額にかかわるところが多いんですね。今のお答えですと、第一段階でありますと共通の権利義務ということなんですが、第二段階で恐らく出てくることが多いと思います。

 例えば、この人に関しては、過失相殺というのがあるんです、ちょっと難しい言葉で過失相殺といって、例えば瑕疵担保でいいますと、この商品について自分はこういう機能をつけてほしい、こういう機能をつけて特別にこの機械をつけてほしいと言ってそれが壊れたといった場合には、よくあることが、瑕疵担保といって、もともとの性能が悪いんですけれども、いわゆる被害者の方がある注文を特別にしたのでさらに被害が広がったということがあった場合には、損害額が減額になったりするわけでございます。ですので、やはり第二段階でこういった過失相殺等々が出てくると思うんですね。

 本当に極端な例を言うと、ある高齢の人が、あんたから買う商品はもう何でもいいよ、あんたが気に入ったから買うんやからどうでもいいよということだってあり得るかもしれないわけですね、それを言わせたか言わせなかったかということもあるんですけれども。

 そういったことに関しましては、この過失相殺、被害者にどの程度過失があったかというのは、裁判の場でも証人尋問等を通してその事実を明らかにしていくわけでございますが、この第二段階で過失の抗弁が出たときに事業者側はどういった証拠が出せるんでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 第二段階手続における簡易確定決定をするためということでございますが、その際の証拠調べに関しましては、簡易かつ迅速な審理を実現する観点から、書証に限りすることができるということでございます。それから、当事者双方から審尋をしなければならないとしているところでございます。

浜地委員 そうなんですよね。よく法案を見ますと、さっきの過失相殺、言った言わないとなると、これは裁判実務では陳述書といって、自分がこのとき、どういう経緯でこれを話したかとかということになるんですね。そうなると、被害者側も事業者側も言った言わないの話になるのが裁判の通例でございます。

 そうなると、書面だけでは多分判定できないんじゃないかというふうに私は感じておるんですね。実際、これは証人尋問での雰囲気を見ながら、この人が真実を言っているかそうではないかということをやはり判断していくのが通常の訴訟でございます。

 ですので、そういった部分では、この法案がどうなるかわかりませんが、ぜひお願いとして、そういった書面審査、いわゆる書証だけでやったときに抗弁等が判断しにくい場合は、少しまた今後の改正のポイントとして頭に入れていただければ、非常にこの訴訟進行はうまくいくんじゃないかというふうに思っております。

 そうはいいましても、和解という手続がございます。この裁判の手続でも和解ができるということがございます。通常の裁判であっても、最後は判決に行かずに、かなりもんだ後に、大体これぐらいの金額で和解をしましょうということが多いわけでございますけれども、この和解の手続の重要性について、この法案の手続の中でどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 和解につきましては、第一段階につきましては、共通義務に関することについて和解ができるということでございます。一方、二段階目でございますが、簡易確定手続におきましては、当事者である特定適格消費者団体におきまして、届け出債権について相手方事業者との間で和解することができると、これは明確にしております。

浜地委員 今、第二段階でも和解ができるということでございます。

 やはり証拠だけではわからないということが大変多いのが裁判実務でございますので、この和解の手続の期日をしっかりととることによって、そこでは話し合いができるかと思います。ですので、話すことによって、また被害者も事業者側も自分たちの言い分を言ったということで、紛争を早く終わらせようという効果があるのが和解でございます。

 ですので、この和解の手続があることによって、やはり被害者の方も早く救われる。もしくは、事業者の方は、和解があって、ある程度の金額でおさまるのであれば、その和解に応じて、とにかく紛争を早く終わらせて、被害者の回復につなげ、また事業者としても次の事業に向かっていくという効果があると思いますので、この和解の期日というものについても、しっかりと、重要なものであるというふうな認識の上で運用をしていただければ、そのように思っております。

 次に、判決の効力についてお聞きします。

 これは九条の問題ですけれども、第一段階で共通権利義務があります。第二段階で被害者に通知をするわけでございます。その通知をして、それに届け出をしなかった人に対しては判決の効力が及びますでしょうか。

川口政府参考人 対象消費者であっても、第二段階で届け出なかった方、授権をしなかった方、これについては判決の効力は及ばないというふうにしております。

浜地委員 そうなんですね、及ばないんですよね。

 ですから、私、先ほどから、一番最初から申し上げておりましたが、本来は、権利義務を主張する方が汗をかき、自分でこの裁判手続に臨む。これがやはり非常に煩雑であるし、なかなかそれができないということで今回の法案になっておるわけですね。

 それで、第一段階、第二段階と分けて、第一段階の共通義務があるもの以外にも、業者の方に名簿が恐らく提出されることになるんでしょう。この契約にかかわる対象の消費者の全てがそこで明らかになって、その方々に、あなたはこういった権利がございますよということを通知するわけでございますよね。ですので、被害者の被害の回復という点では、特例を設けて非常に回復しやすいようになった制度なんです。

 その中で、これまでは、先ほど大臣の答弁にあったとおり、自分が被害を受けているかわからないという方も多いということでございますけれども、実際は、通知が届いて、あなたは届け出する権利があるんですよと言ったのに届け出をしなかった人は、また自分で後から裁判ができるということになるわけでございます。

 そうなると、この集団訴訟という部分で、一回的に大量的に回復するという点がやはり非常に弱くなるんじゃないかというふうに個人的には感じておりますので、仮に、もしこの法案が成立をしまして、運用が始まった後に、届け出をしなかった方々が自分でまた訴訟を提起されるようなことがふえてしまって、結果的に、この手続以外での裁判手続がふえた場合には、判決効の及ぶ範囲ということをまたしっかりと考えていただきたいなというふうに私は思っておりますけれども、この点はいかがでありましょうか。

森国務大臣 これは議論があったところでございますけれども、届け出をしなかった方にまで判決効を及ぼすという、予測可能性が低いところまで判決効を及ぼすかどうかという議論があると思います。ですので、この法律の五年間の施行状況を踏まえて検討課題を設定することとなるものと考えますので、その点も勘案して、今後の検討課題にしていきたいと思います。

浜地委員 ありがとうございます。

 私も、この法案が成立して運用が始まったときには、しっかりとまた実務の現場からも意見を聴取しながら、建設的な議論ができればと思っております。

 最後の質問になりますけれども、弁護士費用の問題でございます。

 私のもとに寄せられた、反対の側の方からの一番の意見が、弁護士だけがもうかって、私も弁護士でしたけれども、もうかって、被害者を食い物にすると。例えばの話、過払い金の返還請求なんということがありますけれども、二割ぐらいが大体相場なんですね。百万円、自分が高い金利に苦しみながら、時には取り立てにおびえながら、十年、二十年払って、百万円戻ってくると。正直、余り難しい裁判ではございません。それで二割弁護士が取るということになりますと、本当の意味での被害回復にならないということが一番の大きな声でございました。

 ただ、今回は、こういった過払い金請求ではなく、いろいろな類型がございます。瑕疵担保なんということになると裁判としては非常に難しいわけでございますので、そういった議論というのは、一概的に当たるとは私も思っておりません。しかし、やはり、弁護士が多額の報酬を取って結果的に被害者のもとに返らないということは避けてくださいという声が実は一番多かった声でございます。

 ですので、この多額の報酬の危険ということについては、今後ガイドラインをつくりながら運用されるということでございますけれども、ぜひ、この中に政治家の意見も、また現場の意見も取り入れていただきたいな、しっかりとここはやっていただきたいなと思っています。

 もう時間もありませんので、最後に御提案としては、大臣も御存じのとおり、法テラスというのがあるんですね。経済的に非常に困窮された方が弁護士に頼むときに法テラスというものを使うと、国の方が一時お金を立てかえてくれて、例えば、生活保護の方とか、もしくは非常に困窮している方は弁護士費用が免除になる、そういう制度がございます。

 ただ、一方、そういった国の税金を使うわけでございますので、弁護士の費用は大変安くございます。私も、去年まで実務をやっていましたけれども、本当に法テラスを使うとなると、弁護士も個人経営ですから、経費の中で、この人を救いたい、ただ、なかなかこの報酬では少ないなと思いながら、そうはいっても社会正義のためにやろうということでやっている、ちょうどいい基準でございます。その実感がございますけれども、ぜひ、この法テラスの基準も参考にしながら、この報酬のガイドラインをつくっていただきたいなという御要望でございますけれども、弁護士である大臣の御意見を最後にお聞かせいただければと思っています。

森国務大臣 法テラスの基準は個人の依頼者に対するもので、集団的に弁護士が弁護団をつくるときは、法テラスの基準よりももっと低い報酬しかいただかないのが通例ではございますが、法テラスの弁護士報酬基準等も参考にしながら、弁護士会の皆様、そして事業者の皆様、消費者団体の皆様、そして委員の皆様のお声も、各界各層の広い御意見を踏まえてガイドラインの策定に当たってまいりたいと思います。

浜地委員 ありがとうございます。

 今、大臣の実務経験で、集団訴訟の場合は法テラスより低いんだということがありましたので、恐らく大臣であれば、弁護士費用を、多額でない、しっかりとした適正なものにしていただけるんじゃないかというふうに確信をいたしました。ですので、この点についても、しっかりと私もまた意見を言わせていただきます。本当に皆様、ありがとうございました。

 終わらせていただきます。

吉川委員長 次に、郡和子さん。

郡委員 民主党の郡和子です。限られた時間ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

 内閣府の国民生活選好度調査、平成十九年度のものですけれども、消費者被害を受けたことがあるという人のうち三二・一%の方々がどこにも相談しなかった、この数字は私も驚きを持って受けとめさせていただきました。

 その理由としては、自分にも責任があるとか、申し出ても解決策があるとは思えないとか、どうしていいのかわからなかった、証明が難しい、気まずい思いをしたくないというような理由でありました。

 被害に遭った消費者が訴訟制度を使うということになりますと、裁判費用の問題ですとか労力、これらを考えると、どうしても後ずさりしがちです。また、消費者と事業者との間の情報の質、量、交渉力の差などがあって、みずから裁判を起こして被害の回復を図るというのが困難であって、いわば泣き寝入りが多かったわけですけれども、この泣き寝入りを少なくすること、これに対応できるということで、今法案、消費者に生じた被害を一括して実効的に回復させることを目的に設けられるという、消費者庁の悲願でもあり、この間、長い間検討をされてきたものであります。

 各自治体からも、あるいは消費者団体からも、一日も早くこの法律が成立することを望むという意見書も出されておりまして、国会はそれにしっかりと応えていかねばならないというふうに思っています。

 しかし、経済団体からは、依然として、この法案によって濫訴の危惧や、過度な負担が及ぶんじゃないかといった心配の声も静まらないという状況もあるように思います。

 大臣は、本会議の御答弁の中で、「本制度の活用により、相当多数の消費者に生じた財産的被害を適切に回復し、消費者が安心して経済活動を行うことができる市場を整備することは、消費者の市場への信頼を高め、消費の拡大、ひいては経済の成長を促すものであると考えております。」というふうに答弁されました。私もそのとおりだというふうに思っております。

 そこで、具体的に確認をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、制度の適用範囲なんですけれども、本法案の第三条第二項に規定する、いわゆる拡大損害、その他の損害については、共通義務確認訴訟の対象とはならないというふうに定められております。

 例えば、欠陥商品などによって人身またはほかの財産に拡大して及ぶ損害の問題は、被害を受けた消費者が適切、効果的な救済を実現される上での困難を排除し、欠陥商品に関してメーカー等の事業者に要請されている責任を明らかにして、多数の消費者被害を一回的に解決していくというこの制度に合わせてみますと、結構事案は多いんじゃないかなというふうに私自身は思っているわけです。

 この拡大損害については、集団的消費者被害救済制度専門調査会の報告書、二十三年の八月に出されたものですけれども、これについては、施行後の状況を踏まえて引き続き検討すべきとされております。また、個人情報の流出事案につきましても、基本的には本制度の対象となるべきものと考えられるというふうに指摘されたわけですけれども、今回は対象から外されました。

 これらの拡大損害、その他の損害について、附則第三条、施行後五年を経過した場合の制度の見直しなんですけれども、検討を加えて、必要があると認めるときには、その結果に基づいて所要の措置を講ずる、その検討課題に入れるべきだというふうに私自身は思っているんですが、どうでしょうか。また、その検討する仕組み、枠組み、これはどういうふうに考えているのか、お尋ねしたいと思います。

森国務大臣 いわゆる拡大損害や個人情報流出事案についてでございますけれども、現在の法案については対象とならないこととされております。

 そして、本法律案附則第三条に基づく検討課題は、この法律の五年間の施行状況を踏まえて設定することとなっております。委員の御指摘の平成二十三年八月の報告書においても、先ほど御指摘のような、引き続き検討すべきであるとされた事項がございます。そういったことも踏まえまして、検討をしてまいりたいと思います。

 検討の枠組み、検討の体制としては、消費者や事業者など、幅広い関係者の意見をしっかり反映できるようなものとしたいと考えております。

郡委員 さまざまな心配の声もある中で、まずは手がたく始めていこうということだというふうに思いますけれども、ぜひ対象を広げていくように御尽力をいただければというふうに思います。

 本法案の第三条第四項では、裁判所は、共通義務確認の訴えの全部または一部を却下することができるというふうに規定をしております。その判断は、本制度の第二段階の簡易確定手続において、対象債権の存否あるいはその内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるときとしているわけでございます。共通義務以外の個別個別の争点があるとすれば、二段階目の審理が、それぞれの消費者と事業者の間で相当程度多数の審理が必要になって、これは不合理である。だからこその条文だというふうに思います。

 それでは、これは具体的にどのような事案を想定しているのでしょうか。いかなる類型の事件が支配性の要件を欠くことになるのか。これは必ずしも明確ではないというふうに思っているわけでして、この制度を利用しようとする適格消費者団体、またその背後にいる消費者の皆さんたち、それからまた訴えを提起される事業者も、ともに予見可能性を欠くのではないかというふうに思うわけであります。この条文の解釈について明確にしておく必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

川口政府参考人 法案第三条第四項に関するお尋ねでございますが、二段階目の手続におきまして判断すべき個別の事情について、審理を適切かつ迅速に進めることが困難となるような個別事情がある場合には、本制度によって適切な判断あるいは速やかな被害回復を図ることが難しいということになります。また、時間がかかるということになりますと、消費者は手続追行の負担から二段階目への手続の加入をためらいかねないということも考えられます。

 そういう背景で、御指摘のような、簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認められるときには、訴えの全部または一部を却下することができることを定めたものでございますが、具体的には、例えば二段階目の手続におきまして、個々の消費者の損害や損失、因果関係の有無等を判断するのに、個々の消費者ごとに相当程度の審理を要する場合がこれに当たると考えられます。例えば、ある商品のふぐあいが瑕疵に当たるということを確認したとしても、個々の顧客の購入した商品に当該ふぐあいがあるかどうか、この認定、判断が困難な場合などが考えられると考えております。

郡委員 予見可能性を欠くというような指摘があることについても、丁寧に答えていかねばならないというふうに思っております。

 次は、和解についてちょっとお尋ねしようと思います。

 この法案の第十条では、共通義務確認訴訟において、共通義務があることを認める旨の訴訟上の和解をすることができると規定しているわけです。そして、この和解が第二段階目の対象債権の確定手続の開始原因となるとされているわけです。つまり、和解できる対象を共通義務の存否に限定した場合に、一段階目の和解は極めて限定される可能性も出てくるんだろうというふうに思うんですね。

 今お話にもありましたように、個別紛争はそれぞれによって続いて、早期に解決できないおそれも出てくるんじゃないだろうか。事業者にとっては、紛争の最終的な解決が確保されなければ、第二段階の手続の開始原因となる和解に積極的に応じるインセンティブが働かないんじゃないだろうか、こういう指摘もございますけれども、これについてはいかがでしょうか。

川口政府参考人 一段階目の手続で共通義務の存否について和解をすることができるというふうにしておりますが、それにより二段階目の手続を開始することができるということになります。これは、できるだけ多くの消費者を手続に関与させ、その被害回復を図るためのものということでございます。

 ただ、しかしながら、共通義務が存することを認める和解といたしまして、一部の事実についてのみ共通義務があるということを認める場合など、事業者が和解に応ずることにインセンティブが働く場合も考えられると思います。

 例を挙げて御説明申し上げますが、例えば、専門学校を経営する事業者を被告とし、被告の行った授業内容について、募集の際の説明と異なるということで、複数の事由の債務不履行責任が争われている事案におきまして、例えば、被告が特別講義を実施しなかったことは債務不履行には当たらず、共通義務はない、ただし、終日の授業を実施しなかったことは債務不履行に当たり、共通義務が存するということを認める旨の和解などが考えられると思っております。

郡委員 事業者の中には、これまで、必ずしも法的責任が明らかでない事案においても、自主的に消費者の苦情に、義務のあるなしにかかわらず対応しているというケースもあるわけで、この新たな訴訟制度ができることで、実は、早期解決というよりも、個別紛争が引き続きずっと続いていくんじゃないだろうか、時間がかかってしまうんじゃないだろうかといった、そういう声もあります。責任原因に係る事案の確認をあえて行わず、金銭及び金銭以外の給付を内容とする和解のルールも残すことというのについても、意義があるのではないかというような御意見もあるということも御承知おきをいただきたいというふうに思います。

 それから、ちょっと質問を飛ばさせていただきますけれども、濫訴の可能性についてであります。

 一段階目の共通義務確認訴訟で原告敗訴の場合でも、この段階では事案に係る消費者から当該の特定適格消費者団体への授権がないために、その既判力が及ばない個別の消費者が再度訴えを起こすことも可能である、先ほどもございましたけれども、このために、濫訴を招いて、企業側の訴訟対応コストを大きくさせやすいんじゃないだろうか、こういうような御心配の声もありますけれども、これに対してはいかがでしょうか。

森国務大臣 本制度では、確かに、個々の消費者は、共通義務の訴えで敗訴した場合には個別に訴えを提起できますけれども、もともと本制度は、個々の消費者が訴えを提起するのが難しい、この現状を踏まえて創設するものでございまして、第一段階目で敗訴したからといって、消費者が急に専門的知識、経験、そして費用負担を備えるわけではございませんので、やはり個々の消費者が訴えを提起するのが難しいという現状が厳然としてあるのでございますので、消費者がまた個別に訴えを提起して次々に濫訴をしていくということは大変難しいわけでございますし、第一段階で適格消費者団体が敗訴をしている、そういう前提があるのに、さらにまた消費者が個々に訴えて勝訴をするという可能性は非常に低いわけでございますので、濫訴のおそれはないものというふうに思っております。

郡委員 裏返して質問すれば、今、濫訴の心配はないということでしたけれども、一段階目の共通義務を確認する訴訟においても消費者からの委任を必要として、かつ、判決の効力が委任した消費者に及ぶものとすることの方が適当ではないか、こういう御指摘もありますが、これについてどうでしょう。

森国務大臣 委任をそれぞれさせるということは、手間をかけさせるということです。

 そもそも、本法案が出された現状というのは、消費者が泣き寝入りをしないように、泣き寝入りをしている理由は、費用もありますけれども、手間がかかる、それから専門的知識がない、そういうさまざまな原因で消費者が被害回復をすることが困難であるということでございます。そういうことで、消費者からの授権は不要といたしまして、手続に加入をしやすくしております。

 もっとも、本制度では、手続追行主体や対象事案を一定のものに限定するほか、手続追行主体となる特定適格消費者団体に対しては制度の濫用を禁止する規定を設けて行政監督を及ぼすなど、不適切な訴訟提起を防止する措置を講じ、事業者の活動に不測の影響が生じることがないような制度設計をしておりますし、さらに、団体は対象消費者が相当多数存在することを立証する必要がございまして、これが認められない場合は訴えが却下をされます。

 なお、団体は、一段階目の手続の係属中は消費者から授権を受けることがないことから、報酬等を受け取る機会がなく、一切の費用を団体みずからが負担しなければならないことになり、安易に訴訟を提起することは考えづらいのでございますので、相当多数の対象消費者から委任、授権を受けるような制度としなくても、濫訴など不適切な訴訟提起を招くことはないものというふうに考えております。

郡委員 ありがとうございます。

 次は、事業者の負担なんですけれども、一段階目の共通義務確認訴訟で対象となる債権の総額の範囲で仮差し押さえ命令の申し立てができることになっておりますけれども、この申し立てというのは、対象債権及び対象消費者の範囲並びに取得可能性のある債務名義に係る対象債権の総額を明らかにすれば足りるというわけですが、この時点では見込みの債権額であって、二段階目の対象債権の確定手続までは、事業者の債務額は確定していないわけですよね。このことから、過重な負担を課されることになるのではないか、事業経営にも影響を及ぼすんじゃないか、また、中小企業などでは資金調達にもこのことが影響を及ぼすんじゃないかというような心配の声も上がっております。

 この債務額の予測、第一段階の債権の総額ですけれども、根拠のあるものになるのでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度における仮差し押さえ命令の申し立てにおきましては、保全すべき権利につきまして、対象債権及び対象消費者の範囲並びに当該特定適格消費者団体が取得する可能性のある債務名義に係る対象債権の総額を明らかにすれば足りると条文に書き込んでいるわけでございます。

 この対象債権の総額を明らかにするためにはということでございますが、事業者が作成し公表した契約者及び契約金額に関する資料、あるいは特定適格消費者団体が収集した被害の発生状況に関する情報等を踏まえつつ、通常、対象消費者が少なくとも何人存在する、それからまた、一人当たりの債権額が少なくとも何円である、よってその総額は、少なくともその両者、何人、何円、この両者を掛け合わせた積となるという形で明らかにすることとなると考えられます。

 それから、一般の仮差し押さえと同様、民事保全法にのっとりまして、保全すべき権利及び仮差し押さえの必要性について証拠等によって疎明しなければならないということになっているため、対象債権の総額は根拠のあるものになると考えております。

 また、違法、不当な保全処分の執行を受けた場合の債務者の損害賠償請求権を担保するため、債権者に担保を立てさせて仮差し押さえ命令を発することができるということも、これも民事保全法に定められているとおりでございまして、一般の仮差し押さえと変わりないということから、事業者にとって過重な負担を強いるものではないというふうに考えております。

郡委員 被告事業者からの情報提供というのも本当に不可欠になってくるわけですし、また、さまざまな相談機関とが連携をしていく必要性もございますし、環境整備も大変重要だということをしっかりと認識していただきたいというふうに思っております。

 最後に、特定適格消費者団体の負担についてです。

 今お話にあったように、現行の差しとめ請求関連の業務と比べまして、一段階目、二段階目、これらの作業というのは膨大になりますし、また、仮差し押さえの担保等々、かなりの負担がございます。

 これらに対して対応できるようにするためにも、この団体に対する財政的な支援が必要だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

森国務大臣 適格消費者団体に対する支援としては、これまで、消費者団体訴訟制度の周知、普及、会費、寄附による収入の増加につなげるため、寄附金について税制優遇措置が受けられる認定NPO法人制度の活用の促進などを実施してきております。

 さらに、適格消費者団体は差しとめ請求関係業務において報酬及び費用の支払いを受けていないのに対し、本制度では、特定適格消費者団体が消費者から手続に要した報酬及び費用の支払いを受けることができることといたしました。

 今後も、適格消費者団体を含め、幅広く関係者から意見を伺いつつ、引き続き必要な支援について検討を行ってまいります。

郡委員 本会議でも、必要な支援について検討を行ってまいりたいという森大臣の答弁は聞かせていただきました。同じ御答弁を求めて質問したのではありません。より具体的に御検討をしていただく、その方向性というのでしょうか、それをお示しいただきたかったというふうに思います。

 もう時間ですけれども、私自身は、この訴訟制度で、泣き寝入りの人たちを減らしていくことはもとより、安易なリコールというのでしょうか、それも減らしていくことになるんだろうというふうに期待をしておりますので、ぜひいい法律にして世に送り出したいというふうに思います。

 ありがとうございました。

吉川委員長 次に、生方幸夫君。

生方委員 民主党の生方でございます。

 初めて質問をいたしますので、よろしくお願いを申し上げます。

 同じような趣旨の法律が既にアメリカとかヨーロッパの国ではつくられておって、日本でも、おくればせながら、集団的な訴訟が、この法律ができるということで、一日も早く成立をしてほしいというふうに思っております。

 アメリカでは、クラスアクションというんですか、一人の方が多数の方を代表して、個人が訴えることができるという方法がある。イギリスの場合は、個人が訴える場合と消費者団体が訴える場合、両方の道が開かれている。

 日本は、後発でこれから法律をつくるわけですけれども、個人ではなくて消費者団体が、適格団体として訴訟を担当する原告になり得るということになっているようでございますが、これは、個人にしないで消費者団体にした理由というのは一体何なんでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度の手続追行主体、原告でございますが、多数の消費者の利益を擁護する観点を有し、他の消費者の権利関係についてまで真摯な訴訟追行をするということが必要になりますが、個々の消費者には、こうしたことは必ずしも期待できないというふうに考えた次第でございます。また、事業者に対する不適切な訴訟提起を防ぐ観点からも、むしろ、消費者被害に関する知識経験を有し、消費者の利益を擁護する立場、事業者から独立した立場で活動ができるものとして認められる者のみに訴訟を追行する権利を付与することが適当であるというふうにしたところでございます。

 このため、本制度の手続追行主体については、消費者利益を擁護する立場で活動ができること、訴訟手続を安定的に行うことができること、本制度の信頼性を失墜させないよう、適切な業務遂行ができることが認められ、適正な活動を行っている者として、適格消費者団体の中から認定を受けた特定適格消費者団体に限るということにした次第でございます。

生方委員 今のは余りよくわからないんですけれども、個人にした場合のメリット、デメリット、消費者団体にした場合のメリット、デメリットはどのようにお考えになっていますか。

川口政府参考人 メリット、デメリットは裏返しでございますので、まとめて申し上げます。

 特定適格消費者団体に原告を限定するメリット、意義といたしましては、特定適格消費者団体につきましては、その適格性を行政が担保することができます。多数の消費者のための適切な訴訟追行を期待できるということでございます。また、行政による認定を受けた者である特定適格消費者団体を主体にすることにより、行政による監督を及ぼし、不適切な訴訟提起を防ぐことができるというふうに考えております。

 また、原告主体を特定適格消費者団体に限定することによる問題といたしまして、手続追行主体を特定適格消費者団体に限定することにより、担い手の数が少なくなるということがあります。これにつきましては、どの特定適格消費者団体においても全国で発生する消費者被害に対応できるよう、各団体の連携の促進、団体に対する国民生活センター等からの消費者被害に関する情報の提供などを措置する、それから適格消費者団体の設立等に向けた動きを支援するということを行っているところでございます。

 これによって、本制度による消費者被害の回復の実効性の確保を図ることができると考えているところでございます。

生方委員 今回の制度では、特定適格消費者団体というのは、今ある適格消費者団体の中から選ぶということになっておりますが、幾つぐらいの団体がとりあえず特定適格消費者団体になるのか、また、特定になるためにはどんな条件が必要かということをお伺いしたいと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、適格消費者団体が十一ございますが、この適格消費者団体の中から、さらに一定の要件が必要になるということでございまして、認定要件といたしましては、六十五条に規定しているところでございますが、差しとめ請求関係業務を相当期間にわたり継続して適正に行っていること、それから、体制、業務規程、経理的基礎等が被害回復関係業務を適正に遂行する、これは新しい業務でございます。それから、支払いを受ける報酬または費用がある場合には、その内容、額または算定方法、支払い方法などについて不当なものでないことなどを要件として認定していくということでございます。

生方委員 幾つぐらい最初に認定をする予定かということを聞いたと思うんですけれども。

川口政府参考人 申しわけございませんでした。

 初めから数を幾つということを決めているものではございませんで、適格消費者団体の方々が申請をしてまいりまして、その中で要件を満たすものであればそれを全て認定するということでございます。

生方委員 法律の運用について伺いたいんですけれども、特定適格消費者団体になったところはどのようにしてその被害を把握するというふうに考えればよろしいんでしょうか。

川口政府参考人 被害の把握の仕方でございますが、一つは、日ごろの活動におきまして、消費者被害を、消費者団体、消費者の方からの相談に応ずるなど、団体そのものが被害者から被害の実情を聞くというのがございます。そのほかに、法律で手当てをしておりますのは、国民生活センター、消費生活センター等に蓄積した消費者被害の情報をこの団体に情報提供することができるというふうにしておりまして、それによりまして、全国で起きている消費者被害について把握することができるように手当てをしているところでございます。

生方委員 そうやって把握できるものもあるでしょうけれども、例えば被害を受けていることがわかっていない事例というのがあった場合、自分がその被害を受けているということで、その被害者が特定適格団体に訴訟を起こしてくれということを言う窓口というのは開かれているんですか。

川口政府参考人 窓口ということにつきまして、特に法律の中で定めがあるものではございませんが、各団体において工夫されるものというふうに理解しております。

生方委員 窓口というか何というか。

 個人がこれはぜひ訴訟を起こしてほしいと。個人が直接訴えることはできないわけですからね。その場合、特定適格団体に行って相談をするというんですかね。特定消費者団体が訴えてくれない限りこれは訴えにならないわけですから、どういうふうにしたらその手続ができるのかということを伺っているんですが。

吉川委員長 消費者庁川口審議官。

 しっかり答えてください。

川口政府参考人 申しわけございません。

 特定適格消費者団体に認定されますと、法律上の訴訟を起こすという重要な責務、任務が与えられることになりますので、団体としては、消費者被害、この訴訟で起こす可能性があるような消費者被害につきまして、しっかりアンテナを張って調査をする、集めるということを行うことが当然期待されます。

 その過程におきまして、先生御指摘のように、被害者の方が団体に行って具体的に自分の被害を述べ、その訴訟を起こしてくださいということを聞くという場を設定するというのは当然期待されることでございまして、その上で、さらに、内部で専門的な検討の場をつくっていただき、これは法律に定めがございます、消費生活相談員あるいは弁護士等からつくる検討の場をつくっていただきまして、案件を絞り込み、さらに、弁護士が入っております理事会で決定をして、最終的に訴訟をする、提起をするということになることを予定しております。

生方委員 今回の集団訴訟の対象となるのは消費者契約による金銭請求のみというふうに記載をされていて、そのほかのものはなじまないというふうになっております。

 消費者契約といっても、ほとんどの方、私もそうですけれども、例えば旅行に行くのを旅行代理店に申し込んだとき、消費者契約をしたという認識は多分ないんだと思うんですね。だから、消費者契約による金銭請求のみというふうに言った場合、自分たちが被害を受けているのは本当にこの訴訟になじむのかどうかということが、多くの方にはわからないというふうに思うんですよね。

 これに似た法律ができている欧米諸国では、対象をこんなに絞らないで、もっと対象を大きく窓口を広く広げていて、訴訟になじむかどうかは、あとは特定適格消費者団体が決めればいいということで、窓口を最初から広く広げておいた方が、本当に泣き寝入りを許さないという法律の趣旨からすれば、私はいいと思うんですけれども、絞っちゃったのは何で絞っちゃったのか。

 消費者契約による金銭請求のみというふうに言った場合、一般の消費者の方がわかるかどうか。消費者契約というのが一体何なのかというのは、ほとんどの方はわからないと思うんですが、その辺、せっかく法律をつくって泣き寝入りさせないということであれば、国民にわかりやすく、窓口をもうちょっと広げるべきだというふうに私は考えるんですが、大臣、いかがですか。

森国務大臣 今の御質問の中に、二つの意味があると思います。消費者契約というものが何か、一般の消費者の方にはわかりにくいものとなっているということと、対象を消費者契約による金銭請求に限るかどうか、二つの論点があると思います。

 消費者契約が何かわかりづらいという御指摘はもっともでございますけれども、それが本件の訴訟になじむかどうかというのはまた別の論点でございます。消費者に消費者契約が何かということがわかるようにしていくというのは、消費者教育という観点から、広くこれから取り組んでいくものではございますが、通常、消費生活センターや市役所等の相談窓口にいらっしゃる方は、自分の相談が消費者契約かどうかということを考えていらっしゃるのではなくて、例えば振り込め詐欺に遭ったとか、布団を高額で買わされたとか、それから、押しかけてきて宝石を持っていかれたとか、個別の事案の内容を持ち込んで相談してまいります。

 その受ける方の側で、消費生活センターや市役所の窓口や、または適格消費者団体の窓口の方が、それは消費者契約ですよ、そして、その中の金銭請求については、今、全国に被害があって、適格消費者団体で訴訟が提起されることもあり得ますよということをしっかりと認知していただくようにしていくという取り組みが大事だと思いますので、委員の御指摘を踏まえて、消費者庁としては、そういったところ、消費者の方がしっかりとこの訴訟につながるようにしていく取り組みをしていきたいと思います。

 それから、もう一つの、この制度を消費者契約による金銭請求に限ったというその趣旨は、やはり事業者側の予測可能性という問題、濫訴のおそれという問題もありまして、対象、訴訟を一定程度に限定した、そういう趣旨でございます。

生方委員 この法律ができた場合、ほとんどの方が、新聞で見たとしても中身まではわからないわけで、消費者に対してきちんと、さっきおっしゃったような、認知をしてもらうということが一番最初の大事な仕事だというふうに思いますので、消費者庁としても、認知に向けて、広く国民には知らせてあげないと、せっかくつくっても生きた法律にならないというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 これは、訴訟の第一段階目では、被害者の方は裁判に直接かかわらない仕組みになっておりますよね。第二段階目で初めて、被害に遭った方も裁判に参加するようになる。これは、被害に遭った方たちに対してどのように適格団体は知らせるという形になるんですか。

森国務大臣 本制度では、一段階目の手続の判決が出された後、二段階目の手続に消費者が加入することが必要であり、消費者が実際に参加しないことには被害回復は進みませんので、この制度が機能するためには、消費者に手続の加入を促すことが重要です。

 一段階目の手続の判決の内容を広く周知するため、裁判所に加え、特定適格消費者団体、事業者、消費者庁が重層的に情報を提供する手段を法定しております。

 対象消費者への通知は、団体が書面の送付または電子メール送信などの電磁的方法により個別に行うことを義務づけております。また、この通知の実効性を図るために、本制度では、事業者が対象消費者の氏名及び連絡先等が記載された文書、顧客リストのようなものを所持する場合においては、団体の求めがあるときには、当該文書を団体に開示する義務を事業者に課しています。

 これに加え、本制度では、団体に、相当な方法、例えば団体のホームページに掲載する方法など、具体的な事案において適切な方法によって公告を行うことを義務づけております。また、この公告の実効性を図るため、団体による公告について消費者庁のホームページに掲載するなど、周知の実効性を高めるための環境整備を図ることを考えております。

 さらに、事業者にも、インターネットの利用、営業所その他の場所において公衆に見やすいように掲示する方法その他これらに類する方法により、対象消費者が二段階目の手続に加入するために必要な情報を公表する義務を課し、これらの措置を通じて、対象消費者に対する情報提供の実効性を高めることとしております。

 この周知をするということ、これまでの消費者弁護団の弁護士も大変苦労しているところでございます。私はニューヨークに消費者被害の留学をしたときに向こうのFTCという省庁で学んできたんですが、やはり一つ一つの事案に応じて、その担当者の知恵比べのようなものでございます。

 内職詐欺というのがございます。典型的な詐欺でございますが、これは海外にもございます。新聞チラシとか新聞そのものに、いい内職ありますよというふうにして、内職かと思って応募して、最初の登録費用とかでお金を取られちゃうんです。その大規模な被害が生じたときに、FTCでは、全く同じデザインの全く同じ広告を、内職あります、そして下に小さく、この広告でだまされた方は何番へというふうにしたら、やはり、私はこれでだまされたわという人は見るわけですね。それで被害者がたくさん名乗り出てきたということがございました。

 このように、一生懸命工夫をしながら周知を図ってまいりたいと思います。

生方委員 全員に知らされればいいんですけれども、それが不可能であって、被害に遭っていながら、訴訟が起こされていることも知らないで裁判が終わっちゃったという場合、その知らなかった被害者の方たちはどのように救済されるんですか。

森国務大臣 二段階目の手続に加入しなかった対象消費者について、本制度は、それらの消費者が本制度以外の方法によって個別に被害救済を図ることを妨げるものではございませんので、個別訴訟や裁判外紛争解決手続、消費生活センターのあっせんを活用すること等によって救済を図ることが可能です。

 消費者庁としては、国民生活センターの裁判外紛争解決手続や、消費生活センターや相談窓口の整備、消費者に対する周知などをして、消費者の被害回復を図ってまいりたいと思います。

生方委員 もともと個人では訴訟が起こしづらいということからこういう制度ができるわけで、直接知らなかった、裁判が行われていたのも知らなかったという被害者が個別に裁判を起こす道が開かれていたとしても、それは本意ではないですよね。

 だから、判決が出た場合、届け出た方だけが救済されて、出なかった方は救済されないというのは、法律の建前からすればそのとおりなんですけれども、それを一々、ではもう一回裁判を起こしなさいということを言うのは余りにも酷ですから、救済をするために、事業者側に対して消費者庁の方から、こういう判決が出ているんだよ、ただ、この方は裁判には参加をしていなかったけれども、同じように救済をしなさいという指導はなさるんですか。

森国務大臣 はい。その方法は考えられると思います。

生方委員 方法は考えられるというのじゃなくて、具体的にはどのようにするのか。これは判決じゃないですから指導という形になると思うんですけれども、どういうことを今大臣はお考えになっていますか。

森国務大臣 個々の消費者が事業者に対して裁判をするというのは非常に困難なんです。委員のおっしゃるとおりなんです。

 そこで、現状よりも多くの方が救済されるようにということでこの制度を設けましたので、まずはこの周知をしっかりと努めてまいりたいと思いますが、そこで届け出をしなかった方々に対しては、個々の事案にもよるとは思いますけれども、事業者に対して、しっかりと、やはり被害が生じているものについては企業責任において対応するようにという行政指導をしてまいることも検討したいと思います。

生方委員 法の趣旨に照らして、ぜひそのような措置をとっていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。

吉川委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 おはようございます。

 本日、本法案について、先ほどからいろいろな質問等ございました。かぶる部分もございますけれども、改めて質問をさせていただきたいと思います。

 本日は、大きな論点について幾つか質問させていただきたいんですが、まず最初に、この法案がどのような根拠に基づいて提出をされているのかということについて、少しその背景を整理させていただきたいと思います。

 消費者庁さんからいただいた資料によると、二〇〇四年には百二十万件を超える消費生活相談があった、それで、二〇一一年度にも八十万件を超える相談があって、誰にも相談をしなかった方が三六・二%いらっしゃって、それの理由を見てみると、相談しても仕方がないとか、恥ずかしいので言えなかったとか、どこに相談したらいいのかわからなかったんだよというようなことで、結果、訴訟を提起したとされるのが〇・八%しかいない。

 こういった方々を幅広く救っていくために、本法案の成立に向けてというような話なんですけれども、このあたりの背景について、大臣の方から改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

森国務大臣 委員が御指摘のとおり、最近の消費者被害は、全国の消費生活センター等に寄せられる消費生活相談の件数が平成二十四年度で約八十五万件、高い水準で推移しております。同様の被害が拡散的に多発するという特徴がございます。一方、消費者と事業者との情報の質、量、並びに交渉力の格差や、被害を回復するために要する費用や労力との兼ね合いから、多くの消費者が被害回復を断念してしまうという、いわゆる泣き寝入りの問題が生じております。

 こうした状況に鑑みますと、消費者の被害回復の実効性を確保することが積年の課題となっているところです。本法律案により、消費者の財産的被害の特性に鑑み、相当多数の消費者の財産的被害の集団的な回復を図るため、この二段階型の訴訟制度を設けることにいたしました。

岩永委員 ありがとうございます。

 背景の認識については大変よく理解もできますし、本当に必要な法案だなということも強く思うわけでございますが、いろいろな資料を拝見させていただいていると、まず最初に思うのが、昨日もちょっと消費者庁さんの方にお伺いをして、はっきりとしたお答えはいただけなかったのですが、いわゆる悪質な業者に対する相談というのが私はこの中でもかなり多いというふうに思っています。

 それで、その悪質な業者というのは、いろいろな悪知恵を働かせて、いろいろな法の目をかいくぐりながら消費者の皆さん方をだましてお金を奪い取るというようなものだと思いますけれども、こういった悪徳な商法とか悪質な業者に対して、本当にこの法律がしっかりと対応できるのかなという疑問をまずは持っています。

 要は、ダミー会社であったりとか、その会社の所在がわからなかったりとか、追い詰めていっても結局はお金がなくて最終的にはお金が取れないような体制を十分に整えているとかいうふうなことが十分考えられるんですけれども、こういった悪徳業者への対応という部分で、どういうふうにこの法案を適用して訴訟を起こしていくのかというところについて少し、議論がこれまでにありましたら、そのあたりについての経緯をお伺いしたいと思います。

川口政府参考人 先ほど御指摘の数字の中で、消費生活相談の中でも、悪徳商法あるいは悪質業者にかかわるものが相当数あるということでございますが、ただ、どの人が悪質事業者でどの人が悪徳商法なのか、はっきり具体的に詰めて数字を出すのはなかなか困難なところでございます。

 ただ、その結果、悪質事業者を対象にということでなく、悪質な行為をしっかり拾って救済ができるようにということで類型を列挙したところでございまして、具体的には、悪質商法で通常救う対象となりますのは、不当利得ですとか、あるいは不法行為、こういうものをしっかり類型の中に入れるというのが一つでございます。

 それから、財産の隠匿、散逸ということで、逃げてしまうということがあり得ますので、仮差し押さえという制度も入れまして、しっかり対応できるようにしたところでございます。

岩永委員 しっかり対応するということなんですが、その実効性という部分については、私は本当に難しいんじゃないかなというふうに考えています。これについては、実際、この法が運用、適用されてから、どのようにそこに対応していくのかというのは、本当に現場レベルでのいろいろな御努力等が必要になってくると思いますので、本当に見逃してはならない、そういった悪徳な、悪質な業者に対してしっかり切り込んでいくというようなところも、消費者庁さんの方からしっかりと指導をしていただきながら、全ては難しいんだとは思いますけれども、しっかり闘っていただきたいなというふうに、まずお願いを申し上げておきます。

 それと、いわゆる差しどめ請求という部分について、現在まで約三十件の差しどめ請求を行ってこられたということなんですけれども、この数字が多いのか少ないのかというところについて、少し大臣の方にお伺いをさせていただきたいです。

 要は、さまざまな案件があって、この三十件というものが、これまで十分対応した数字であるのか、それとも、金銭的、人的ないろいろな理由で、もっともっと差しどめ請求はこれまでしてこなければならなかったけれども、その辺の条件がなかなかかなわず、三十件ぐらいにおさまっているのか。多いのか少ないのかというところの評価を、大臣にお伺いをさせていただきます。

森国務大臣 消費者団体訴訟制度は、平成十九年六月の制度運用開始以降、十一団体が適格消費者団体として認定されまして、訴えが提起されたのは御指摘の三十件。このほか、訴訟には至らなくても、二百件を超える裁判外の申し入れが行われ、これにより、事業者が任意に改善をして解決をした例もあります。これは、本制度の抑止効が働いたというふうに、私は一定の成果が得られたのではないかというふうに考えております。

 なお、適格消費者団体は、差しとめ請求関係業務を適正に遂行するに足りる体制及び経理的基礎を有していることを認定要件としているところです。

岩永委員 では、大臣の方は、この三十件については一定の評価をしているというようなことです。

 ですが、いろいろな資料を拝見していると、なかなか、やはり人的であったり金銭的な負担というものがハードルになっているということも、一方では事実なんだと思うんです。

 それで、本法案について、その訴訟を提起する、しないというところの線引きとかガイドラインというのは今どのようになっているのか、教えてください。

川口政府参考人 特定適格消費者団体ということでお答えをいたします。

 本制度上、本法案において、特定適格消費者団体が訴えを提起するに当たりましては、みずから行う消費生活に関する相談や国民生活センター等から提供される情報等によって、消費者被害に係る情報をまず収集する、その上で、消費生活相談員や弁護士等による助言等を行う体制が整備された検討部門におきまして、収集した情報をもとに分析、検討を行い、理事のうち一人以上が弁護士である理事会において、被害回復関係業務の執行について議決するという手続を経ることになります。

 また、具体的な判断でございますが、特定適格消費者団体が訴えを提起するための判断基準といたしまして、当該事案が本制度の対象となるか否か、すなわち、多数性、共通性等の訴訟要件、対象となる請求または損害の該当性を満たすと判断することが必要となります。

 また、法律では、団体は、対象消費者の利益のために、被害回復関係業務を適切に実施しなければならず、不当な目的でみだりに訴えを提起してはならない、濫訴をしてはいけないということを規定しているところでございます。

 これらの訴訟要件、対象となる請求、損害の考え方につきましては、逐条解説等において法解釈を明らかにするとともに、団体の責務規定につきましては、監督の指針となるガイドラインを作成することとしたいと考えております。

 また、消費者や事業者に対する本制度に係る説明会を開催するなどして、制度が安定的に運用されるよう周知を図ってまいりたいと考えております。

岩永委員 ありがとうございます。

 恐らく文書で言うとそういうことになろうかと思うんですけれども、実際の現場を考えてみると、やはり団体がいろいろな部分でリスクを抱えるわけなんですね、訴訟を起こすというようなことについては。だから、金銭的にも、懐ぐあいなんかも判断の基準になってくると思いますし、そういったものが判断の基準になってくると、この法案というものが本末転倒になってくるんじゃないかというようなことも考えられますので、そういったリスクをできるだけ排除できるような形で、団体の皆さんへの何らかの応援というのも必要になってくるんじゃないかなというふうにも考えます。そのあたりについての、もし何かお考えがあれば、お伺いをさせていただきたいのですけれども。

川口政府参考人 やはり、訴訟を起こしまして敗訴するということになりますと、特に第一段階で敗訴して、授権がない形で敗訴いたしますと、団体の負担になります。ですから、しっかり、訴訟、第一段階をクリアして第二段階に行けるという意味で、やはり、法律の内容につきまして、しっかり各方面に周知いたしますが、団体の方にしっかり理解していただくということが非常に重要だと思っておりまして、そこにつきましては、消費者庁といたしまして、解釈あるいはガイドラインの中で、特に団体の方の御理解が進むように努めてまいりたいと思っております。

岩永委員 そういうことだと思うんですけれども、団体の方も、やはりリスクを抱える以上は慎重にならざるを得ない。そして、そのリスクが何が一番大きいのかというと、やはりお金のリスクというところが大きくなってくるかと思うので、そういったことがこの訴訟を起こす上での大きな基準にならないように、まずは消費者を救うというところで、スピード感を持って実行ができるような現場の体制というものをしっかりと応援をしていただければなというふうに思いますので、一つ提案をさせていただきます。

 それと、今回の法案の中身を見ていると、要は、消費者契約を交わした者に対する訴訟というようなことで、小売業者が訴訟の対象となるというようなことなんですね。

 例えば、製品なんかを考えると、その向こう側にいる製造業者なんかが、その製品に対してはより多くの知識を持っていて、つくった責任なんかもあるというようなことがよく言われているんですけれども、これを、小売業者というか、その契約を締結された業者というようなところに限定をされた理由というのを教えていただいてもよろしいでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度では、その目的に鑑み、消費者契約に関する債務不履行や不法行為に基づく損害賠償の請求などを対象とすることとしていることから、原則として、消費者契約の相手方を被告とするというふうにしております。

 これは、契約の相手方であれば、被告事業者が二段階目の手続で争われる消費者の被害額についておおよその見通しを把握できるということ、これは二段階目の新たな手続を定めるということから必要なものと考えたものです。また、消費者側としても、購入した商品等に何か問題があった場合は、当該商品の販売等をした事業者に対し苦情を伝えることが通常であるという実情をあわせたものでございます。

 このため、消費者と契約関係にない製造業者については被告とならないということでございますが、販売業者といたしましては、例えば製品に瑕疵がないことを主張するために、必要があれば、製造業者が訴訟に参加することを促したり、あるいは証拠の提出について協力を求めるという余地はあると理解しております。

岩永委員 こちらについても一定の理由を今お聞かせいただいたんですけれども、やはり突き詰めていくと製造者責任というのが出てくるでしょうし、でないと、なかなか問題解決に向けて最終的な結果に結びつかないんじゃないかなということはもう議論にもなっているところでございます。

 引き続き、ちょっと質問の方に移りますが、いわゆるフリーライダーというような言葉がよく聞かれます。そういう裁判が起こっているということを知って、その製品を買っていないけれども、それに便乗して自分もちょっと名乗りを上げてみようかなとかというような方も海外では多く出ているというような事例もありますけれども、こういったいわゆるフリーライダー対策というか、そのあたりに対するガイドライン的なものがありましたら教えてください。

川口政府参考人 フリーライドについてのお尋ねでございますが、二段階目の手続において、具体的に誰が幾らもらえるかということを決めていくことになりますけれども、対象消費者であっても証拠がない者と、本来請求権を有しないにもかかわらず本制度の手続に加入しようとする者、両方の問題があるわけでございますが、いずれにつきましても、二段階目の手続における審理過程及び裁判所の判断を通じて適切に判断がされ、両者の見きわめがされることになると考えております。

 すなわち、対象消費者であるものの、その証拠がない消費者が二段階目の手続に加入した場合には、先方が争わない、事業者が争わないということも考えますし、裁判所としても、当事者双方を審尋するなどの中で適切に判断すると思われます。

 また、先生御指摘のフリーライドの問題でございますが、本来請求権を有していない者が二段階目の手続に加入ということになりますと、相手方事業者は認否の段階で債権の存否を争うことができる、債権はないということを言うことができる。裁判所としても、当事者双方を審尋するなどによって、そのような者の主張と相手方事業者の主張や証拠等を踏まえて適切に判断するものと考えております。

岩永委員 ありがとうございます。

 今ちょっとお話も出ましたけれども、本当にその製品によって被害をこうむった、けれども、レシート等がなかったりとかというような、証拠がなく泣き寝入りをするケースもあるというようなお話であったろうかというふうに思うんですけれども、要は、そういったフリーライダーというものを対策するとか、そのレシートがないとだめだよ、証拠がないとだめだよということが、先ほどの生方委員の話にもつながってくるんですが、どこまで、消費者の方々がそういったことをしっかりと理解して、そういう証拠をずっと残しておく習慣をつけるとかというところについて本当に周知徹底できるのかなというところも、一つ心配になっているところです。

 それで、この法案が適用されることになれば、先ほどからも出ていますけれども、そのあたりの製品を買ったとき、その後に、まず訴訟に名前を連ねていく場合にはどういうふうな証拠が必要であってとかというようなところも、かなりきめ細かく消費者に対して告知をしておかないと、結局はこれまでどおり泣き寝入りをしてしまう、泣き寝入りをせざるを得ないというような状況にもつながってしまうんじゃないかなと思いますので、その告知なんかについても、積極的にというか、できるだけわかりやすく全国民にまずは伝わるようにしっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 それで、最後の質問になるんですけれども、これは企業側から見たレピュテーションの問題についてなんです。

 訴訟に至らなくても、団体が調査に入ったとか調査を始めるということだけで倒産をしてしまうとかということも海外の事例ではあるようです。そのあたりのレピュテーションリスク、企業側からのレピュテーションリスクというものについて何か対策があれば、簡単にで結構ですので、最後にお伺いをさせていただきたいと思います。

森国務大臣 そもそも、これで訴えられるような事案は、もう消費生活センターの窓口に相談が行ったり弁護士会の相談窓口に来ているんですよ。そのときに、もう弁護士や相談員から会社に問い合わせが行っているんです。良心のある業者は、大体そこで業務改善してくれています。

 ただし、御心配がございましょうから、本制度では、手続の主体を特定適格消費者団体に限るとともに、被害回復関係業務が適切になされるように行為規範、責務規定を設けつつ、内閣総理大臣による行政監督を及ぼし、適合命令、改善命令を出せるようにしております。

 また、行政監督の対象となる被害回復関係業務には、本裁判手続に関する業務の遂行に必要な消費者の被害に関する情報の収集に係る業務が含まれています。それゆえ、仮に訴えの提起前の調査の段階であったとしても、団体の不適正な業務遂行があった場合には、改善命令などの監督措置が可能であり、不当な影響が生ずることはないというふうに考えております。

岩永委員 ありがとうございます。

 時間となりましたので、終わります。

吉川委員長 次に、上西小百合さん。

上西委員 日本維新の会、上西小百合です。通告に従って質問させていただきます。

 去る六月九日、皇太子殿下と雅子妃殿下が御成婚二十周年を迎えられましたことが大きく報道されました。まさに御同慶の至りでございます。

 御成婚当時、私はまだ小学四年生で、突然学校が休日になってうれしかった程度の記憶しかないのですが、成人してさまざま勉強するうちに、その御成婚の直後、自民党が分裂し、宮沢内閣の不信任決議により衆議院が解散、最後の中選挙区制度による総選挙で細川連立内閣が成立して、日本の政治が大きく変わる契機となったころだと知りました。

 ちょうどそのころ、日本は、政治改革とともに、製造物責任法、いわゆるPL法が話題になり、総選挙後に可決、成立しているのですが、消費者が安心して買い物できるように、瑕疵があれば製造者の責任が追及でき、損害賠償責任を負わせるように消費者サイドに立つべきか、瑕疵担保責任を限りなく製造者ばかりに負わせていれば、万が一のことがあれば中小企業はたちまちに破綻してしまうから大企業に限るべきだなどの激論が交わされた模様です。立法する際には、立ち位置によりメリット、デメリット、表裏一体であることを如実に示す話だと思います。

 先般の本委員会での審議で日本維新の会が附帯決議を提案した上で可決、成立した食品表示法案も同様でした。国民が安心、安全に食生活を送るには、厳密な食品表示を生産者等に求め、厳しく対応すべきでありますが、過度の要求は小規模な生産者に過酷になるケースも考えられ、消費者と中小業者間のバランスが問われた事案でした。

 しかし、このたび、テーマとなっています消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案は、おおむね、善良なる消費者、しかも大体がまだ右も左もわからない若年層から高齢者対悪徳業者との闘いにおいて、弱者救済、すなわち消費者擁護の面に重きを置くべきことは疑う余地もありません。

 確かに、この法律が成立すると消費者訴訟が乱発するのではないかと心配する企業の話も伺いますが、やはり、悪は眠らせない、被害者の泣き寝入りはさせないとのスタンスで論ずるべきだと思います。

 先ほど岩永委員からも悪質業者のお話がありましたが、私は四月十一日の当委員会で、押し買い、オーナー商法などの数々の悪徳商法を例示し、被害弱者の救済法などを質問いたしました。そうした悪徳商法が摘発されると、必ずと言ってよいほど、ニュースでは、消費生活センターへの相談件数がふえ、その被害額は○○円に上るというのが常套句になっています。

 また、先般の本会議での我が党重徳議員の質問の答弁で、森大臣は、消費者被害に対し、消費者にとって最も身近であり、認知度も高い相談窓口と消費生活センターを位置づけていらっしゃいました。

 そこで、お伺いいたします。

 地方自治体が設置し、消費者の購入した商品、販売方法などの苦情を受けたり、商品テストをしたり、多重債務の相談を受け、助言や啓発などを行う消費生活センターは、決して独立行政法人国民生活センターの下部組織ではありませんが、国民生活センターで消費生活センターの相談員が研修するなど、両者は不離一体です。

 その国民生活センターを、二〇〇七年十月、時の福田総理が訪問し、消費者目線の政策を重視したあかしのように機能強化構想を打ち出し、その後、二〇〇九年四月には、重要消費者紛争を対象に、国民生活センター裁判外紛争解決手続の制度が始まるなどしています。

 しかしながら、福田内閣の前は第一次安倍内閣でした。その安倍内閣当時、国民生活センターのその後のあり方などを考える検討委員会が設置され、国民からの直接相談受け付けを廃止すること、商品テストは外部委託すること、テストをするための施設や設備、そして測定機器の更新ストップなど、国民生活センターの大幅な機能縮小を提言されていました。

 安倍総理の突然の退陣でその提言は実現せず、それに続いた消費者目線の福田内閣でむしろ充実し、機能強化したのが国民生活センターですが、その数年後、民主党政権下では、独立行政法人の事業仕分けの一環で大幅な見直しがなされ、現在に至っています。

 しかし、まだ第一次安倍内閣当時に出された提言が全て実行されているわけではありません。その安倍総理が再び登板された今、政府は国民生活センターを一体どのように位置づけ、そしてどのようにされようとしているのか、詳しい御説明をお願いします。

 また、自治体により名称がさまざまであるため、本会議の御答弁では、森大臣が、消費生活センター等の相談窓口と、等という言葉を使われて、その整備を支援し周知を図っているとのことでした。

 既に八一・七%の方が周知しているとも語られた消費生活センターをどのような形でさらに国民、消費者に啓発されているのか、どのような支援をされているのかを具体的にお願いいたします。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

森国務大臣 御質問ありがとうございます。

 国民生活センターの、それぞれの内閣の中で翻弄されてきたかわいそうな歴史を今披瀝していただきましたけれども、私も弁護士時代、この国民生活センターで働いていたこともございまして、この国民生活センターの直接相談機能というのがいつも要らないと言われたり、福田内閣のときにはそこを、私が提案して訪問していただいて、重要性を認識していただいたんです。

 直接相談というのは、まず、各地の消費生活センターに相談窓口があるから要らないと言うような方もいらっしゃるんですけれども、国民生活センターというのが、委員のおっしゃったように、消費生活センターと不離一体です。そして、政府に政策を提言する機能もあります。直接相談をすることによって、やはり全国の被害をいち早く知り、消費生活センターの方に指導をしたり情報提供したりすることもできますし、政策立案をして提案をするという機能も重要性があるんです。

 それから商品テストの方も、他省庁に同じような検査機関があるじゃないかとかもよく出される議論なんですけれども、消費者目線で中立的な立場で商品テストができる。そして、あそこに行ってみればわかりますけれども、非常にしっかりした設備でできるということは、ほかの省庁にはなかなかない施設でございます。例えば、赤ちゃんがベビーカーに乗っていて、ベビーカーを畳むときに手が挟まれて指が切断されてしまう、そういうものを、しっかり実物をもって商品テストをする機能を備えております。

 そのように、国民生活センターは、消費者行政における中核的な実施機関として、四十年以上にわたり消費者行政の推進に当たって極めて重要な役割を果たしてきたところです。今後も、国民生活センターについてはその機能をさらに充実強化させていくことが重要でございます。

 国民生活センターのあり方については、消費者庁、消費者委員会の機能の充実といった消費者行政全体のあり方を検討する中で、消費者庁創設時の理念に立ち返りつつ、しかるべき時間をかけてしっかりと検討をしていくことが必要と私は考えまして、大臣就任後に、平成二十五年度については民主党政権下に決まっていたことを一旦凍結させていただいてこのまま活躍をしていただくこととしまして、しかし一方で、さまざまな問題がございますので、一年かけてしっかりと検討をした後結論を出していくということで、三月より消費者行政の体制整備のための意見交換会を開催いたしまして、私も毎回参加をいたしまして、さまざまな立場の率直な御意見を伺っているところです。

 あらゆる選択肢を排除せずに検討した上で、今言いました国民生活センターの持つ機能の重要性、一体性を確保しつつ、その機能を充実させていく形で結論を出してまいりたいと思います。

 また、もう一つの御質問の消費生活センターの方ですけれども、私が消費生活センター等というふうにつけましたのは、役場等にもこの消費者の相談窓口がございます。また弁護士会にもございます。消費者庁では、どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制づくりを目指しており、その一環として、消費生活センター等の認知度を高めていくことが重要であります。

 このため、自治体の消費生活センター等をより一層国民に周知し活用していただくため、全国共通の電話番号で地域の消費生活相談窓口を消費者に案内する消費者ホットラインを運営しております。

 また、地方消費者行政活性化基金、これは私になりましても積み増しをさせていただきました。これによって、自治体によるホットラインや相談窓口の周知啓発活動のほか、消費生活センターやその窓口の新設、拡充、消費生活相談員の処遇改善やレベルアップを支援しております。

 また、消費者教育推進法が成立いたしましたので、それに基づく消費者教育を展開して、こういう相談窓口の周知も図ってまいりたいと思います。

上西委員 ありがとうございます。

 周知徹底を今後してくださるということですが、八一・七%、この数値は、五人に一人は知らないという状況であります。知らないとこの制度は意味がありませんので、ぜひともそういった対策をお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 福田内閣の機能強化構想を受けても、相談に来られた方、すなわち被害者の相手方である事業者には、あっせんや手続に応じるつもりなど毛頭ない例が多く、現行法では呼び出しをすることさえもできない。それゆえに、被害者が泣き寝入りをしないで済む法改正が必要で、今回この裁判手続特例法がまとめられたのだと認識しています。

 しかし、政府は本当にこの法案を成立させる意欲があるのか、私にはその真剣さが正直余り見受けられません。

 その証拠に、この法案は四月十九日には既に閣議決定されていながら、本会議で趣旨説明があったのは、会期が残り三週間余りに迫った六月四日のことでした。重要法案ですから、今後もこの委員会でも慎重な審議が続けられ可決されても、参議院の審議時間などを考えると、延長の可能性は薄いと言われる今国会中に成立するのは物理的に難しいという声さえ聞こえます。これだけの重要法案を一カ月半も審議しないままにしていた、これは理解に苦しむところです。

 そのあたりの経緯と、そして、もう一度、森大臣のこの法案成立への意気込みをお聞かせください。

森国務大臣 上西委員の応援の質問であると理解をさせていただきます。

 上西委員も国会議員でございますので、国会のシステムはよく御存じのことでございましょうけれども、私は、消費者大臣として、この法案の成立を心から願っておりますし、それに向けて全力を尽くしてまいりました。四月十九日に閣議決定をしまして、国会に提出をしたんです。この国は三権分立でございまして、国会があって、内閣があります。もう一つは裁判所です。内閣から国会へ法案を提出したら、あとは、その審議は国会の責任によって行われるものでございます。

 ですから、私は、この場で上西委員にお願いをいたします。私は、法案を提出し、そして早期の審議入りをお願いしてきました。ぜひ、国会の側で努力をしていただいて、この法案が早期に成立をいただきますように、御努力をいただきますようにお願いをいたします。

上西委員 私も、この法案は今国会での最重要法案だと認識しております。一日も早く可決、成立させるべきだと思います。

 次の質問に参ります。

 訴訟大国アメリカのクラスアクションとは似て非なる独自の制度設計をされていることに非常に注目しています。この法案では、裁判の原告や損害賠償額の算定を相当限定したものとなっていますが、国が認定する特定適格消費者団体が企業を相手にした訴訟を第一段として提起し、そこで勝てば、第二段目から初めて消費者が訴訟に参加する二段階方式をとり、消費者の敗訴リスクを低くし、訴えやすくしているものだと評価しています。

 しかし、訴訟要件は、相当多数の消費者に生じた財産的被害を対象とし、最低でも数十人規模の被害者がいないと救済の対象にならない模様です。

 しかし、例えば、大阪で、元タレントやプロボクサーにより行われた上場の見込みの薄い未公開株売買事件、事件そのものは恐喝でしたが、その発端は不条理な株売買事件でした。その未上場株式会社一社当たりの被害者も加害者も少なく、類似事案の被害者、加害者を合わせると社会問題化するぐらい莫大な被害者を生んだ事案でした。

 パチンコ必勝法、競馬の勝ち馬予想など、同業者が個人情報を共有して、一つの業者で損をした方に、その穴埋めをしましょうと次のインチキ話を持ちかけ、さらに大損をさせる、一種のシンジケートがあるようですが、そのような場合、訴訟要件を満たすのでしょうか。

 また、相当の数については、本会議の森大臣答弁のように裁判所の判断に頼っていては、訴えの利益なしとして門前払いをされる可能性もあります。一定の数や被害のボリュームなどを具体的に規定するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 また、未公開株やゴルフ会員権の預託金、集団食中毒による人身被害等々、消費者被害は山ほどあるものの、今回の法案の対象か否かの線引きが実に曖昧な気がいたします。どのように識別、区分されるのか、御説明をお願いいたします。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度では、法律の中で、多数性、共通性等の訴訟要件を明定いたしまして、その上で、対象となる請求または損害につきまして具体的に列挙をいたしております。その対象となる請求または損害の該当性を満たすものに限り対象となるということにしております。

 これらの訴訟要件や対象となる請求や損害の考え方につきましては、具体的に一体何を意味するのかということにつきましては、本委員会でしっかり御審議いただいた上で、それを踏まえ、逐条解説等において法解釈を明らかにするとともに、わかりやすい資料もつくりまして、消費者や事業者に対する説明会を開催するなどして、制度が安定的に運用されるよう周知を図ってまいりたいと思います。

 それから、質問の中で御指摘がございました。

 本制度は、消費者被害の救済を目指したものでございますが、多数の事業者によって同種の被害がもたらされているというような場合でございますが、本法案においては、特定の事業者ごとに相当多数の消費者が存在することが必要という考え方をとっておりまして、複数の事業者による同種の行為によって似たような被害が生じている事例であっても、各事業者の被害者が少数であるというときには、多数性の要件を満たさない、そういう考え方でございます。

 ただ、消費者庁としては、複数の事業者による同種の行為によって被害が生じているという場合においては、消費者に対する注意喚起等をしっかりいたしまして、被害の拡大の防止に努めてまいりたいと考えております。

上西委員 ありがとうございます。

 御回答いただいたのですが、対象要件がちょっと曖昧で、裁判所の判断に頼る、これはやはりいささか無責任な気がいたしますので、改めてこの部分の検討をお願いしたいと思います。

 今、差しとめ請求訴訟を行う認定消費者団体は、全国でわずか十一団体しかございません。それが、本法で定める特定適格消費者団体はさらに減ると予測されています。ただでさえ十一団体と少なく、しかも、東北や四国には存在しないなど、地域間のアンバランスが甚だしく、果たして実効力が発揮できるのか、その疑問もありますが、時間となりましたので、私の質問をこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉川委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 おはようございます。みんなの党の椎名毅でございます。

 昨年の十二月に初当選をさせていただきました。本日、消費者問題特別委員会に初めて出席させていただきまして、三十分の質疑時間を頂戴いたしました。

 ふだんは、法曹出身議員ということで、法務委員会を主に活動場所とさせていただいておりますが、今般、本委員会で審議される法案が、消費者の財産的被害の回復に関する集合訴訟ということで、民事訴訟法の特例をつくるということなので、質疑時間を頂戴したところでございます。まことに感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 また、森大臣におかれましては、尊敬する法曹の大先輩ということでございますので、若輩者ではございますけれども、どうぞお手やわらかに、よろしくお願いできればというふうに思っております。

 私自身は、大手の法律事務所に勤務しておりまして、基本的には企業の行うビジネス活動に対する法的助言、それから契約書の作成、こういったことについて弁護士として仕事をしてまいりました。主に、本法案で提案されている訴訟形態が事業者に対して過度な影響を及ぼさないかという観点から、本日は質問を申し上げてまいりたいというふうに思います。

 まず、本制度の日本経済に与える影響という点から伺いたいと思います。

 本年の三月二十五日、日本における集団訴訟に関する緊急提言という形で、経団連それから商工会議所、そして同友会、ACCJ、在日米国商工会議所ですけれども、などの団体から連名で、本法案の提出方針を再考して、拙速な立法による悪影響を回避して、ビジネスと消費者がウイン・ウインの関係を構築できるように支援してほしいという書面、こういった書面を発表したわけでございます。

 そこで伺いたいんですけれども、本法の施行によって、日本経済に対して、どの程度のインパクト、影響があるのかという点について、定量的な分析結果を教えていただけると大変幸いでございます。消費者庁及び経済産業省から伺えればというふうに思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度が適用された場合における日本経済への影響でございますが、これは正確な試算をすることは困難であるというふうに考えております。

 ただ、全国の国民生活センター、消費生活センターに寄せられました消費生活相談において、相談事案のうち、一年間で実際に支払った金額、これを合計した数字というものを毎年注目しておりまして、これは、直近の数字でいえば、一年間で約二千二百億円ということでございます。この全てが対象になるものでは決してございませんが、これが一つの目安になるというふうに考えております。

 なお、定量的なものではございませんが、被害回復の権利があっても事実上行使ができないことは、消費者に泣き寝入りを強いる結果となり、その結果、消費者が安心して消費を行えず、消費活動が萎縮することになるというふうに考えておりまして、本制度の活用により、消費者被害を適切に回復し、消費者が安心して経済活動を行うことができる市場を整備することは、消費者と事業者の双方の関係を良好にし、消費の活性化、健全な事業者の発展、公正な競争をもたらすものと考えているところでございます。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度の適用による日本経済への影響についてお尋ねがございました。

 当省といたしましては、現時点でお答えすべき試算を持ち合わせておりませんし、なかなか難しい課題と考えてございます。

 しかし、本法案の作成過程で、被害を受けた消費者への損害賠償に対する強い期待の一方で、事業者からは、御指摘のような、いわゆる濫訴や過大な賠償請求のリスクによる企業活動の萎縮や、訴訟の予防、対応、保険利用によるコストの増大を懸念する声があったと承知しております。また、実際、業界団体の提言があったことも承知してございます。

 私どもも、消費者被害の救済は極めて大事だと承知しておりますけれども、一方で、健全な事業活動が阻害されることは好ましくないと考えてございます。重要なことは、事業者にとりましても、消費者にとりましても、制度設計の段階で制度の目的や内容について十分な御理解をいただく、また、施行後に適切に利用がなされるよう努めることだと承知しております。

 経済産業省としましては、これまでも消費者庁の協力をいただきながら、経済界への説明や関心の高い事業者との意見交換を重ねてまいりました。平成二十三年に主要な六団体、平成二十四年に三十二団体に説明を行ってまいりましたし、本年に入ってからも断続的に各方面に説明を繰り返してきております。御審議いただいている法案は、こうした事業者からの懸念に対して相当配慮した内容のものとなっていると承知しております。

 いずれにしましても、本制度が施行される前に、さらに十分な関係者における周知を図りますとともに、施行後に適切に運営されるよう、政府としても取り組むことが重要であると考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 今の経済産業省の参考人のお答えというのが、まさに私の申し上げたいところでございまして、やはり制度設計の中で十分に消費者と事業者の側で理解をし合うということが物すごく重要だというふうに思います。やはり日本は資本主義の国ですから、消費者対資本家というマルクス主義的な二分法で語ることは基本的には妥当ではないということだと思います。基本的には、消費者と事業者にとって相互にウイン・ウインになるようなことを追求していかなければならないんだというふうに思います。

 そして、消費者庁の参考人の方が、年間二千二百億円の損害回復というのを、足していただいて試算を出されているということでございますけれども、これではやはり足りないんじゃないかなというふうに思います。

 先ほど経済産業省の方がおっしゃったように、企業がこういった訴訟が起きるときにどういった準備を、事前、そして訴訟中、それから事後に、どういったコストをかけているのかというところについて、最低限、見積もりを出すというのが、大きな制度を設計するに当たって準備することが必要なんだろうと私自身は思います。

 先ほど指摘もありましたけれども、訴訟の前の段階でいうと、例えば情報収集、品質向上、訴訟にならないように契約書をつくる、それから約款を準備する、そういったところにかける法的なリーガルコスト、保険といったようなコストがかかってきますし、訴訟の結果、敗訴すれば、リーガルコスト、賠償コスト、こういったところがかかってきますし、最終的に、敗訴をすると、訴訟後ですけれども、レピュテーションが下がることによる風評被害、それから、企業の中にあるお金のパイというのは限られていますから、賠償負担をすることによって、ほかのリサーチ・アンド・ディベロップメント、RアンドDといいますが、研究開発等に回すお金がなくなるということで、成長余力が減ってくるというようなことが想定されるわけでございます。

 こういったコストを支払うことというのは考えておくべきことですし、消費者庁としても、ぜひ、こういった事前の見積もりをきちんとした上で、経済団体と議論をしながらつくってほしかったというのが正直なところです。

 しかし、どうも、事前の検討委員会、メンバーを見ますと、経済団体の代表なんかも余り入っていないというところが正直なところです。制度設計に当たって、企業側に心配ないというふうに説明はしているのも知っていますし、制度設計の過程で大分修正がなされて、企業側に配慮をしているというのは十分承知はしておりますけれども、やはり定量的な数字で提示をするということが重要だというふうに思います。

 そんな中、本年の三月十五日ですけれども、慶応大学の特任教授である岩本氏という方が、本法案の経済的ポテンシャルインパクトシミュレーションというものを発表しております。これによれば、短期的に〇・三から一兆円、そして中長期的に、特定適格消費者団体がふえれば訴訟件数がふえるということで、六から二十兆円という金額を出しています。

 この試算については多少考慮が必要でして、最終的に本法案を今国会に提出される前に出されたシミュレーションでして、本法案附則二条で遡及的な適用というのが否定されておりますので、この遡及的な適用というものを除いて考えると、この試算、シミュレーションによると最大十一兆円の被害が想定されているということなんだそうです。

 これは一例でございますけれども、こういったビジネス側からの数字の試算が出されていることに対して、大臣、御所見を賜れれば大変幸いでございます。

森国務大臣 椎名委員のような企業側の弁護士の方に、ぜひ消費者特委のメンバーになっていただきたいなと思いながら聞いておりました。私も法務委員会にもおりましたけれども、消費者特委にもおりました。ぜひ、この法案審議、ずっと一貫して参加をしていただければ、この法案の趣旨もよく御理解いただけるのではないかと思います。

 とはいえ、委員が今おっしゃったウイン・ウインの関係であるということは、私も共通の理解でございます。この法案によって、泣き寝入りをしている消費者の方が救われることによって、先ほど出た、消費生活相談に寄せられている被害金額の合計が一年間で約二千二百億円というふうにありますけれども、この二千二百億円というのは、ほとんどが、悪質な業者が消費者からだまし取った金額であろうかと思います。

 ですから、経済団体に所属をしておられる良質な企業がこの金額を損失として出したということではないんです。ですから、逆にプラスなんです。この二千二百億が消費者の手に戻ることによって、消費者が正常な経済活動の中で良質な企業さんからのお買い物ができるということでございますから、この二千二百億は経済団体の損ではなくて利益の方なんです。

 ということで、この試算というのは非常に難しい問題であると思いますし、企業側の試算は、ぜひ委員のような方々にお示しもいただきたいと思います。逆に言えば、消費者側は、そのような試算をすることさえできない、非常に小さな存在でございます。

 事前の、この法案の構築の段階で経済団体の代表が入っていなかったという御指摘ですが、民主党政権時代のことではございますが、今見ましたら、経団連の推薦の方を含む複数の経済界からの方が入って、御意見もいただいていると思います。私の時代になってからも、経済団体の方とお話をさせていただきました。そして、この被害者、消費者被害が救われるということが経済団体にとっては利益なんですよということもよく御説明をさせていただいて、御理解をいただいたというふうに思っています。

 ただ、例えば、濫訴が行われるのではないかとかいうような御懸念があることも理解できますので、そういったことがないように、この法案の中ではさまざまな手だてを講じているところでございます。

椎名委員 まず、大臣、悪徳業者の損害二千二百億という話をおっしゃっておりました。この法案、法文上、どこをどう読んでも、対象が悪徳業者であるとはどこにも書いていないわけでございます。

 ターゲットにつきましては、基本的に、事前の検討会の審議の中では、悪徳業者による被害と少額多数被害というものが主に二つのカテゴリーでターゲットになっているという話があったかと思いますけれども、悪徳業者については、基本的には、巻き上げたお金を資産散逸させてしまう、逃亡、隠避させてしまうということで計画倒産等をしてしまうので、例えば本制度ができ上がったとしても余り役に立たないというのが、正直な、実務的な感覚だというふうに私は思っています。

 だからこそ、善良な事業者が少額多数被害を、期せずしてというか、起こしてしまうようなこと、こういったことについての懸念というのが物すごくあるというのが正直なところでございます。

 それで、事前の検討委員会のメンバーという観点で申しますと、一応、検討委員会は三種類あったと思います。内閣府検討会、それから消費者庁の検討会、そして消費者委員会調査会というところで、三つございましたかと思いますが、内閣府の研究会では、総員メンバー七人中、企業関係者はゼロ人、消費者庁研究会では、総員メンバー十四人中、企業関係者ゼロ人、消費者委員会調査会では、七人中二人が企業関係者だったということで、確かに複数はいたようでございますけれども、ちょっと扱いとしては弱いというか、少ないかなというふうに私自身は感じたところで、御指摘させていただいたところでございます。

 いずれにしましても、ぜひ今後とも、事業者側のニーズにも配慮しながら議論を進めていっていただきたいと思っております。今後も、参考人質疑等ありますけれども、事業者側の方を呼んでいただいて質疑をするというのは必要なことかなというふうに思います。

 時間もございませんので、次に伺いたいと思います。

 第二にですけれども、本法は、消費者庁及び消費者委員会設置法附則六項というところに基づく検討からなされているというふうに理解をしております。この附則六項については、政府は、「加害者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益をはく奪し、被害者を救済するための制度について検討を加え、」と書いてあって、基本的には、必ずしも集団訴訟というところにこだわってはいないわけでございます。

 訴訟外の解決制度、ADRなんかも充実させるということで集団的な被害回復ということがあっても構わないように読めますが、集団的な消費者被害の回復を図るためのADRに関する制度整備状況、検討状況について、消費者庁から伺えればというふうに思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 集団的消費者被害に係るADRということの検討は、現時点では行っていないわけでございますが、ADRにつきましては、先ほど御質問がございました国民生活センターのADRというものを設置いたしておりまして、その中で幅広い集団的な被害についても取り扱えるようにしておるところでございますので、本制度の対象から漏れてくるものにつきましても、先ほど御議論ございましたが、そういうものも国民生活センターのADRでしっかり対応できるよう体制整備をしていきたいと思っているところでございます。

椎名委員 国民生活センターのADR、集団で申し立てが行われている件数というのを集団での使い勝手という意味で伺いたいんですけれども、集団で使われている件数というのはどのくらいあるのでしょうか。

川口政府参考人 今手元に数字はございませんが、承知しているところによれば、集団でということでは今までほとんど例がないと聞いております。

 ただ、今回の法案がございまして、ADRの充実の必要性を御指摘いただいているところでございますので、国民生活センターの方で検討をしてもらうということを今お願いしているところでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 使い勝手という意味で、集団で消費者ADRが使えるように、もっと使い勝手をよくするということの方が先なのかなというふうに思います。

 基本的には、訴訟というのは紛争の最後の解決手段なわけでございます。訴訟外の解決ができるならば、その方が望ましいに決まっているわけでございます。順序が基本的には逆なんじゃないかなというふうに私自身は思っています。訴訟外の制度を準備して、そこで解決できない紛争がある場合には集団訴訟の制度を準備していくというのが順としては先なんじゃないか、順としてはそうあるべきではなかろうかなというふうに私自身は考えます。

 どうも、集団訴訟の制度を整備することが先にありきで、消費者の被害回復と事業者の利益の調和をさせるためにどういった結論が一番望ましいのかということを十分検討しているようにも見えないんですけれども、ぜひ、大臣の御所見を賜れればというふうに思います。

森国務大臣 議事録に残ってしまいますので、先ほどの委員の御指摘を、民主党政権のときのことではございますが、私、訂正をさせていただきます。

 委員の数、少ないとおっしゃったけれども、これは、民主党政権下の会でございますけれども、この法案をつくるための調査会ですよ、経済団体の方を二名入れております。それで、十二名のうちの二名なんです。先ほどはゼロ名とおっしゃったけれども、二名いるんです。この集団的消費者被害救済制度専門調査会という、この法案をつくるものですよ。

 先ほど御指摘になった内閣府のものは、消費者行政全体の会であったりいろいろするんですが、この法案をつくるためのこの調査会は、十二名のうち二名、経済団体の方がいて、そうすると残り十名が全部消費者側かと思ってしまうかもしれませんが、残りは、大学院の法務研究科の客員教授など学者の方がずっといらっしゃっていて、消費者の団体から出ているのが三名ですよ。ですから、そんなアンバランスな会でつくられたものではないと。民主党政権下のものではございますが、私、ここは議事録に載ってしまいますから、強調させていただきますよ。

 そこで、先ほど、訴訟外の解決方法とおっしゃいましたけれども、訴訟外の解決方法についても、現在ADRがあるんですから、訴訟外の解決方法なしに一気に訴訟に行っているというわけではございませんし、訴訟できる対象の事案も非常に限定をしております。私は、やはり、委員が経済団体にそういったことを逆によく御説明をしていただきたいなと思います。これは、消費者の方も経済団体の方も、お互いに不信感を持ってしまいますとうまくいかないと思います。

 これは、先ほど、委員が悪質な業者と書いていないじゃないかと言いますけれども、悪質な業者というのは定義できませんので、そういう意味では、私は、寄せられている被害の中のほとんどのものが悪質なものであるという認識の上に立って申し上げたのでございますが、そういう意味で、良質な業者の方は御心配いただくようなものではないと。対象も限られております。

 そして、特定適格消費者団体についてもきちっと行政上の監督がなされていきますということで、もちろん、訴訟をする前に、現在でも和解等の解決方法は図られているわけでございまして、良質な業者、良質な企業の場合は、大体がそこで、御相談によって双方解決に至っているわけでございます。

 どうぞそこを御理解いただいた上で、この法案、成立に御協力をいただけますように、お願いいたします。

椎名委員 ありがとうございます。

 数字の間違いは、それはありがとうございます。私の勉強不足かなというふうに思いますので、そこは理解いたしました。

 それで、今お話しのところでございますけれども、善良な業者とそれから悪質な業者という話ですけれども、基本的には、やはり、制度というのは、つくってしまうと基本的にはひとり歩きをし、そして、利用者の側が使い勝手のいいように使うものなんだと思います。

 一例、卑近な例を挙げますと、私自身が昔、仕事でよく使っていた有限会社という制度。有限会社という制度をつくったときには、あれが投資用のビークルになるとは誰も考えていなかったわけですよ。しかし、有限会社に匿名組合を入れて、これでノンリコースローンを引いて、それで投資をするという、こういうプラクティスがいつの間にか行われるようになるわけです。

 同じなんですよ。制度というのは、基本的には、つくったときの、当初の制度設計者の意図とは外れたところで利用者が使い勝手のいいように使っていくものなんです。

 法文上、悪質な業者と書いていない以上、将来的には、この法律の範囲内で、基本的には、良質な業者もターゲットになっていくということは理解をしなければならないことなんだというふうに私自身は考えております。

 時間もありませんので、次に伺ってまいります。

 第三に、既判力について伺います。

 本法案九条ですけれども、確定判決の効力が及ぶ者というものが定められております。

 この既判力ですけれども、基本的には、原告の特定適格消費者団体が勝訴した場合には、当該適格消費者団体と、それからそれ以外の特定適格消費者団体、それからオプトインした消費者、この三主体に及ぶというふうに理解をされています。しかし、原告が敗訴した場合には、原告の特定適格消費者団体と、それ以外の適格消費者団体に及ぶとされています。

 裏を返すと、何かというと、消費者には及ばないので、弁護士さんが消費者を取りまとめて、この制度の外で、今、現行、民事訴訟が行われているのと同程度のグループ化をした上で訴訟を起こすということ自体は、基本的には否定されないんだというふうに理解をしています。そうだとすると、既判力が完全にその事業者側に片面的に及ぶということでして、被告側の事業者については、再度訴訟を受けるというリスクをずっと抱え続けることになるということなんだというふうに思います。

 こういった片面的な既判力を定めるということによって、お試しの特定適格消費者団体が訴訟を起こす、いわゆるお試し訴訟というふうに新聞等でも表現されておりますけれども、そういった可能性が否定できないのではないかというふうに考えるところでございます。

 ぜひ大臣の御所見を賜れればというふうに思います。

森国務大臣 本制度では、一段階目の手続の判決において特定適格消費者団体が勝訴した場合のみ、二段階目の手続が開始され、裁判所に届け出をした消費者に対して、一段階目の手続の判決の効力が及ぶこととしております。

 しかしながら、本制度では、当事者ではなかった他の特定適格消費者団体に対しても一段階目の判決の効力が拡張されることから、一段階目の手続で団体が敗訴した場合、他の団体は同一事案について訴訟を提起することができなくなるため、団体は慎重な訴訟提起を行うことになります。

 また、一段階目の手続では消費者から授権を受ける機会がないことから、団体が訴訟追行に要する費用の全てをみずから負担することになります。

 さらに、本制度は、個々の消費者が訴えを提起するのが難しいという現状認識を踏まえて創設しようとするものです。そのため、相応の体制を備えて、専門的知識、経験を有する者として認定された団体が訴訟追行して敗訴した場合に、あえて個々の消費者が個別に訴えを提起することは、より難しいものとなると考えられます。

 以上により、団体によるいわゆるお試し訴訟などという安易な訴訟提起を招くおそれはないものと考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 消費者庁の見解としては、そうならざるを得ないのかなというふうに思います。私も実務家をやっていましたので、おっしゃっていることの意味は、基本的には理解はするんです。

 ただし、先ほども申し上げましたけれども、制度というのは基本的にはひとり歩きを必ずするので、要するに、当初、こういう問題が起きないと思うから大丈夫と理屈で詰めてあったところで、そこを外したところで利用方法が考えられるわけです。だから、そういったことを考えると、基本的には、訴訟の一回的解決ということが最低限、こういう集合訴訟を認めていくに当たっては考えたいところなんだと思います。

 やはり、企業側としては、集合訴訟というのは基本的に受け入れたくないものなんですけれども、それでもあえて許容するというのは、最終的には、訴訟を一回的に解決するというメリット、これを享受できるから何とか許容していくということなんだと思います。

 やはり、企業側も、一回的に訴訟が解決できないということによるデメリット、リーガルコストだったり、準備のための事務コストだったりするわけですけれども、こういったところに対してもぜひ御配慮いただきたいなというふうには思うところでございます。

 事前の検討の中では、B案、C案というのがございましたけれども、このB案、C案の中では、基本的にはオプトアウト型になっているので、こういったところについては、基本的には訴訟の一回的解決というのが望まれていたわけですけれども、ぜひ、本案についても、何とか、一回的に解決するための工夫というのを考えてまいりたいなというふうに思います。

 もし大臣からコメント等があれば、いただければと思います。

森国務大臣 制度というものが、一度つくられたら、当初の目的を超えた利用の仕方をされたりするということは、どの制度も全て同じでございます。ですので、これは、もちろん、社会情勢の変化等を見て、不断に見直しをしていかなければならないと思います。

 企業界は、集団訴訟というものを基本的に受け入れたくないけれども、一回で訴訟が終わるから受け入れるんだという話がございましたが、やはり、もっと企業界の方にお願いをいたしたいのは、企業というものは何のためにあるか、目の前の利益を追求するためにだけあるのではなく、やはり社会的な地位、社会的な役割というものも認識した上で、例えば、同じ同業者の中に消費者を苦しめる、悪質な、悪徳なものがありましたら、訴訟に頼らず、自分たちの業界の中の自浄努力でそういった被害もなくしていく、それぐらいのお気持ちを持って、消費者と一緒になって、良質な市場をつくり上げていただきたいというふうに希望いたします。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 時間もなくなってしまったので、これで終わりますけれども、企業と消費者というのを別に対立させて考えているわけではもちろんなくて、こういった、企業側でも受け入れ可能な制度をつくることが、日本の経済の発展のために望ましい、ひいては、日本の経済規模が大きくなることによって消費者に還元されていく、そういう基本的な発想をしているんだということだけ御理解いただければと思います。

 どうもありがとうございます。

吉川委員長 次に、小宮山泰子さん。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。

 本日は、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案について質問させていただきます。

 朝から大臣の答弁を伺わせていただいて、本当に、弁護士として活動されていたということ、また、その中での経験でこの法案が閣法として出されたということを、大変合理的にというか、非常に重く感じるようになりました。

 実務の中において、やはり大資本と個人という明らかなる資金力や情報力の差というものを目の当たりにしたからこそ、この集団的な訴訟についてやはり進めるべきであると考えられたんだというふうに捉えておりますが、それでよろしいでしょうか。

森国務大臣 そのとおりでございます。

小宮山委員 ありがとうございます。

 本当に、今回の法案に関しましては、この法案によりまして、情報力や交渉力の格差などで、これまで不十分であった被害者の実効的な被害回復の可能性を広げるものであると消費者団体も望んでいるものでありますし、また、国会におきましても、平成十八年のときの附帯決議、また、これに関係するものでいえば、平成十二年のときから、国会におきましても、関係の委員会におきまして、附帯決議という中で、この問題は取り上げられてまいりました。そういう意味においては、やっと実現をするということにおいては、国会側からの意思というものもあるんだというふうに思っております。

 それでは、具体的にどういった方が訴訟ができるのか、そして、その中での具体的なことを、まず初めの質問でございますので、確認をさせていただければと思っております。

 まず、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案で、被告、原告となり得る者についてお伺いさせていただきたいと思います。

 対象となる請求については、事業者が消費者に対して負う金銭の支払い義務であって、消費者契約に関するものとされ、法第三条一項の一号から五号に示されております。

 また、昨今では、国際化の中において、インターネットの通信販売や、さまざまなものが活用され、国境というものも、その中では見受けられないということもあります。

 この中で、インターネット通販等での海外の事業者は被告となり得るのか。日本に法人があれば、その所在地などで訴えられることと思いますけれども、昨今では、国内だけではなく、海外のまま、Eコマースなどで提供するということも可能だと思います。

 この点に関しての御見解をお聞かせください。

川口政府参考人 御質問でございますが、本制度において被告となり得る事業者として、海外の事業者を特に明示的に除くということはしておりません。ただ、訴えを提起することができるかどうかにつきましては、当該訴えにおいて日本の裁判所が管轄権を有するかどうかということによって決まるということでございます。

 お尋ねのケースのように、外国の事業者が、日本国内に事務所または営業所を設置することなく、日本在住の消費者とインターネット等を用いて直接取引を行った場合、当該事業者と日本の消費者との取引実績等の諸事情を考慮いたしまして、当該外国の事業者が民事訴訟法第三条の三第五号におきます日本において事業を行う者ということに該当すると認められるときには、その取引に係る訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することになると承知しております。

小宮山委員 ケース・バイ・ケースで、対象になるかならないかというのは裁判所の判断というようなことになるかと思います。

 それでは、例えば海外在住の者が訴えの原告となり得るのか、お聞かせください。

川口政府参考人 本制度におきまして、対象消費者は、二段階目の手続におきまして団体に授権をいたしまして、債権の届け出がなされるということになっております。

 二段階目の手続に債権を届け出ることができるかどうかにつきましては、消費者が海外在住者であるか否かにかかわらず、事業者の主たる事務所または営業所が日本国内にあるときには、消費者の主張する権利に係る訴えについて、民事訴訟法上、日本の裁判所が管轄権を有する限り、することができるということとしております。これは、条文上、第三十条の第三項に規定しているところでございます。

小宮山委員 海外のように、特にアメリカであれば、一九六六年からクラスアクションなどがありまして、もっと厳しい訴訟も起こせるんだとは思いますが、今回の法案はそこまでのことではないわけですから、この点に関しましては、恐らくは、海外に途中で赴任をしなければならない、転勤をされるとか、そういったようなことがあり得るんだと思っております。

 では、対象者でありますけれども、宗教法人、政治団体、NPO団体、金融機関は、訴えの対象、被告となり得るのか、お教えください。

川口政府参考人 まず、金融機関は事業者でございますので、これについては相違のないところだと思います。

 本法律案では、本制度による訴訟の被告となり得る事業者につきましては定義を置いておりまして、法人その他の社団または財団及び事業を行う場合における個人をいうものというふうに定義をしております。

 御指摘の宗教団体等につきましては、法人その他の社団または財団に含まれまして、事業者に該当するものであるということで、本制度による訴訟の被告となり得るというふうに考えております。

小宮山委員 恐らく、この点に関しましては、今までも、霊感商法であったり、また、NPO団体を名乗ってというものも、悪質な業者では、業者ですよね、多々見受けられます。

 本当に真面目にやっているところがそのおかげで大変イメージダウンになるとかありますので、この点に関しても、ぜひ多くの方には注意喚起をしていただきたいという点でございます。

 それでは、今までもありましたけれども、被告が既に破産または廃業、解散している場合、これは訴追の対象になるんでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 被告が破産あるいは廃業、解散している場合は被害回復を図りがたいということは、本制度のみならず、一般の訴訟制度でも同様であり、できる限り早期の対応が重要であると考えております。

 本法案では、被告が廃業、解散して財産が隠匿、散逸されるのを防ぐため、特定適格消費者団体が仮差し押さえをすることができるという制度を置いているところでございます。

 なお、被告が破産をした場合には、対象消費者は、破産手続においてみずから債権届け出をし、破産手続において債権の存否及び内容が確定されることになると承知しております。

小宮山委員 そういう意味では、被害が早くに明らかになり、多くの方が訴訟をできるような、そうしないと逃げられてしまうのではないか、個人に対してやるしかないということになりますと、それはそれで大変難しい、せっかくこの法案ができても難しくなるのかと思いますので、この点の対応に関しても、今後、さまざまな検討を加えられると思いますけれども、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 さて、最初のころにあったかと思いますけれども、今回、弁護士さんであったり特定適格消費者団体の報酬などについては、やはり適当でなければいけないんだというふうに思っております。六月四日の本会議にて、報酬また費用の算定方式について森大臣も答弁をされておりますけれども、その中での、消費者の人数、損害額、事件の規模等の勘案に当たっては、特定適格消費者団体がしっかりと責任を持って取り組むに見合った報酬額であることが重要であるということであります。

 基本的には、経済的な被害を受けられた消費者の立場に立った適正な価格で救済が受けられるように配慮をされる必要があるかと考えておりますけれども、どのような考えに基づいて検討されているのか、また、消費者の取り戻し分を一定額以上とするという意味、これにつきまして、もう少し詳しくお聞かせいただければと思います。

川口政府参考人 御質問のガイドラインにつきましては、条文の中では、「消費者の利益の擁護の見地から不当なものでないこと。」ということで第六十五条第四項第六号に定めるもの、これを具体化するというものでございます。

 本制度を設ける趣旨に鑑み、消費者の取り戻し額が不当に少なくならないよう、最終的には、消費者が個別に訴訟を提起して弁護士に依頼した場合の金銭的負担に比して相当程度軽減された合理的なものになるようにするということが一つの考え方でございます。

 また一方で、団体が業務を遂行するに当たり不可避的に生ずる一定の費用の支出を合理的な範囲内で回収するという考え方に基づいております。

 両者バランスをとって決めていく必要がございますが、具体的には、報酬及び費用の算定の基礎とすることができる費目を具体的に定め、その積算により算定することとしつつ、さらに、消費者の人数、損害額、事件の規模等を勘案し、これを定めるものとするということを考えておりますが、法案が成立いたしましたら、関係者の皆様の御意見をしっかり聞く中で、ガイドラインを適切な、この考え方を反映したものにしていきたいと考えております。

小宮山委員 ありがとうございます。

 法テラスも、前に、設置するときに私は法務委員会で質問をさせていただきました。また、その後もこの問題は追いかけているんですけれども、なかなかやはり報酬が、一般で弁護士活動をするなりすると、そういった専門職の方々に関しますとやはり下がるという意味において、大変な現場の困難はあるようにも思います。

 また、逆に言えば、それを周知ができているかというと、実は、利用者側にとっては有利なようにされても、逆に、される側に関してはなかなか困難もあるというのも聞いておりますので、この辺のバランスは難しいかと思いますけれども、ぜひ、双方、やはり被害者が出ない、そういった救済のための報酬であっていただきたいと思います。

 費用に関連しますけれども、ちょっと順番を変えます。仮差し押さえを求める場合の担保について、お伺いをまずは先にしたいと思います。

 特定適格消費者団体は仮差し押さえ命令の申し立てができるものとされておりますが、仮差し押さえ命令の申し立てに当たっては、担保を用意する必要がございます。これらの団体は、財政基盤的には十分とは言いがたいと思います。特に、今後ですけれども、経済的な被害者たちの弁護をする立場、また代理をするわけですから、当然、そんなに裕福な基盤が最初からあるわけではありません。勝訴してからは違うかと思いますけれども。

 そうなりますと、本来は必要な申し立てが、財政基盤が弱いがために、実際にはできない、もしくは困難になるという規模が考えられるのではないかと思います。担保軽減の仕組みや、また無利子もしくは低利での公的支援、融資の仕組みを用意するべきではないかとも思いますけれども、この点に関しまして、消費者庁のお考えを聞かせていただければと思います。

森国務大臣 御指摘のとおり、仮差し押さえに当たっては、通常の仮差し押さえと同様、裁判所の決定があれば担保を立てなければなりませんが、なかなかやはりその金額を準備するのが困難な場合もあろうかと思います。

 今まで、適格消費者団体に対する支援としては、消費者団体訴訟制度の周知、普及と、もう一つ、寄附金ですね。これについて税制優遇措置が受けられる認定NPO法人制度の活用の促進などを実施してきております。海外では寄附の制度が多く使われまして、例えば企業側が寄附をする場面なども数多くあるようでございます。

 さらに、本制度では、特定適格消費者団体が消費者から手続に要した費用及び報酬の支払いを受けることができることとしておりますが、これは仮差し押さえをする段階ではございませんで、後の場面でございますので、委員の御指摘を踏まえまして、引き続き必要な支援については検討を行ってまいりたいと思います。

小宮山委員 ぜひ検討していただいて、この法律が施行されるときには実効あるものになるようにしていただければというふうに思います。

 それでは前の質問に戻りますけれども、本制度では、民事訴訟に関する手続、事件の規模についてですけれども、人数、金額、総額として、どのような規模がされるのかであります。

 ADRの問題もきょうも出ておりますけれども、少額訴訟というものにおきましては司法書士や行政書士の方も入れるように、また身近な法律相談という形で、大変身近なところでそういった手続等、また市民の相談に乗っている皆様であります。そういった方々を考えますと、今回は大変この法案自体はオリジナルな法律というんでしょうか、今までにない発想かとも思います。しかし、法曹の改革の中では、多くの方が自分の被害などを早く取り戻せる、そういった方向に進んでいる中で、弁護士に追行させなければならないということが七十七条に付されております。

 多くの市民の方、また被害に遭われた方々は、法律の知識というものが必ずしも皆さんは豊富とは限りません。多くのところから、その情報や、またどこに行っていいのかわからないということをなくさなければならないんだと思います。

 というのも、国民生活センターや消費者庁の消費生活相談、また、そういう指標、二十三年度のデータによりますと、大体八十八万件ほどの相談がある、その中の多く、七十万件、約八割は取引に関するものであり、その大半の内容が契約、解約、また販売方法についてでもあります。そして、普通、少額だということを言ったのはなぜかといえば、それは、大体、その被害や相談の中身が、十万円未満が四五・六%。被害経験ありの三六・二%は誰にも相談していない。また、この額だから仕方ないと言って泣き寝入りをされている率も高くなります。

 また、この中には、さらには、知人だったり法律家にももちろん相談する方も出ますけれども、どこに相談すればよいかわからないという方々が九・四%、十人に一人近くいるということになってしまいます。これでは、やはり、せっかく制度ができても、相談する先というのはわからないかと思いますし、利用されないままになってしまうかと思います。

 そういったことに鑑みまして、消費者問題を取り扱っているのは弁護士以外にもいらっしゃいます。消費者に周知を図る観点から、さまざまなチャンネルを用意するべきだと思いますが、この点に関しましての御見解をお聞かせください。

川口政府参考人 先生御指摘のとおり、消費者問題につきましては、弁護士の方だけではなく、司法書士、行政書士あるいは各地の消費者団体、皆様、大変熱心に取り組んでいただいております。ですから、本制度の実効性を確保するためには、日ごろから消費者問題を取り扱っている司法書士、行政書士、各地の消費者団体等に対し、きめ細やかに本制度の内容を周知し、理解していただくことが重要なことと理解しております。

 そこで、また、消費者の認知度も高く、実際の被害に遭った消費者が相談する可能性が高いところ、国民生活センター、消費生活センター、地方公共団体、弁護士会、司法書士会を初めとする相談機関などに対しましても制度の周知を図るということで、消費者庁及び特定適格消費者団体と連携しつつ、関係各所に対する周知活動、みんなで周知活動をしていく。これは、施行前の周知期間にしっかり行うとともに、施行後も具体的な動きについて周知をしていくというふうに考えているところでございます。

小宮山委員 この法律は、また、二段階型の訴訟制度ということで、さらにわかりづらくなっているものでもございます。

 関係のところ、また消費者庁に来る相談など、また、弁護士さんが入っていくということ、要するに、簡易裁判所の対象ではないということと、地裁でやるものであるということ、こういったことも、区別が消費者においてはわからないんだと思います。

 この点、やはりしっかりとした周知徹底をすること、及び消費者が判断ができる、相談ができるような教育というか、消費者への周知等を二次被害を防ぐためにもやらなければならないと思います。この点に関しまして、大臣の決意を聞かせていただければと思います。

森国務大臣 二次被害について御質問をいただきました。

 特定適格消費者団体が対象消費者の個人情報を取得した場合に、当該情報を適正に保管することが必要で、被害回復関係業務の目的の達成に必要な範囲内で利用しなければならないこと、こう条文でもなっております。

 ただし、やはり、こんな特定適格消費者団体と紛らわしい名称を名乗って、被害回復しますというような、そんな二次被害が発生すること、これはあってはならないことでございますので、誤認されるおそれのある表示をすることを禁止するとともに、これに違反した場合には五十万円以下の罰金に処する規定を設けておりますけれども、委員御指摘のとおり、制度の十分な周知が重要でありますので、高齢者などにも制度を十分知っていただくように、関係各所と連携をしつつ努めてまいりたいと思います。

小宮山委員 ぜひ大臣、よろしくお願いします。ありがとうございました。

吉川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十九分散会


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