衆議院

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第3号 平成21年4月15日(水曜日)

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平成二十一年四月十五日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 後藤田正純君 理事 新藤 義孝君

   理事 中谷  元君 理事 長島 昭久君

   理事 鉢呂 吉雄君 理事 佐藤 茂樹君

      あかま二郎君    秋葉 賢也君

      新井 悦二君    石原 宏高君

      浮島 敏男君    江渡 聡徳君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      木原  稔君    北村 茂男君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      中森ふくよ君    永岡 桂子君

      葉梨 康弘君    橋本  岳君

      松浪健四郎君    松本 洋平君

      三原 朝彦君    矢野 隆司君

      安井潤一郎君   吉田六左エ門君

      大島  敦君    川内 博史君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      武正 公一君    平岡 秀夫君

      松野 頼久君    三谷 光男君

      渡辺  周君    石井 啓一君

      冬柴 鐵三君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君    下地 幹郎君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   国土交通大臣       金子 一義君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   内閣官房副長官      松本  純君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   外務副大臣        橋本 聖子君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  横畠 裕介君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川眞喜雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            別所 浩郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      秋元 義孝君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局次長)      中原  徹君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            大口 清一君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  伊藤  茂君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   岩井 良行君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  渡部  厚君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  赤城 徳彦君     永岡 桂子君

  石原 宏高君     安井潤一郎君

  伴野  豊君     篠原  孝君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  永岡 桂子君     赤城 徳彦君

  安井潤一郎君     石原 宏高君

  篠原  孝君     伴野  豊君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

    ―――――――――――――

四月十五日

 自衛隊の海外派兵恒久法に反対することに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一九八九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、内閣法制局第二部長横畠裕介君、法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、外務省大臣官房審議官石川和秀君、外務省大臣官房審議官宮川眞喜雄君、外務省大臣官房参事官香川剛広君、外務省総合外交政策局長別所浩郎君、外務省北米局長梅本和義君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官秋元義孝君、文部科学省科学技術・学術政策局次長中原徹君、国土交通省総合政策局長大口清一君、国土交通省海事局長伊藤茂君、海上保安庁長官岩崎貞二君、防衛省防衛参事官岩井良行君、防衛省大臣官房長中江公人君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、防衛省運用企画局長徳地秀士君及び防衛省人事教育局長渡部厚君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。

 これから、政府提出の海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案につきまして質疑させていただきます。この法案は、国際社会における海上交通の確保、海賊対処という、我が国の経済や海運、漁業に携わっている人々の命や財産を守るということのみならず、世界の海の安全保障に日本がどうかかわるのか、緊急かつ重要な問題への対処でありますので、各党、党派を超えた本質的な議論と建設的な修正の協議など、実のある審議をしていきたいと存じます。

 この法律の必要性は、第一に、今そこにある危機であります海の安全保障ということでありますが、この海の安全保障というのは日本の国の存立にかかわることでありまして、自国の船舶の安全を期するというのは国の当然の責務でございます。

 現在、ソマリア沖、これはヨーロッパとインド洋をつないでいるスエズ運河、そして紅海、その入り口のソマリア沖、ここを通過する船舶は二万隻あると言われておりますが、その一割が日本関係船舶でございます。年間約二千隻、一日平均四、五隻の日本に関係する船が通過して、いわゆる日本とヨーロッパ航路の大動脈、日本からの自動車輸出の全体の二割が貨物船で運ばれているということでございます。

 今、その海上航行が大変危機的な状況になっていると伺っておりますが、この海域の海賊の被害の状況につきまして、外務大臣から伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 ソマリア沖・アデン湾の海賊の事案につきましては、特に昨年の夏以降急増いたしておりまして、委員も御承知かと思いますが、昨年は百十一件で、全世界の約四割、一昨年の約二・五倍の事案が発生をいたしております。ことしに入りましても、この海賊事案は、四月十四日現在で七十四件発生をしておりまして、まだ三カ月半でございますが、昨年の約七割近く発生しているということでございます。ハイジャック船舶はそのうち十五隻もございます。そしてまた、十三隻が抑留をされておりまして、約二百三十名の乗員が人質となっております。

 昨年は日本人が人質になりました事件も発生をしておりまして、日本関係船舶への襲撃事件が三件、ことしに入りましてからも一件が発生をいたしております。

 現状は、いつ海賊の襲撃を受けてもおかしくない状況でありまして、大変懸念すべき状況でございます。

中谷委員 このような状況の中で各国が海賊対策に乗り出しておりますが、この海賊対処の根本にあるものが、国連海洋法条約であると思っております。

 国連海洋法条約の第百条にこう書いております。「すべての国は、最大限に可能な範囲で、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する。」とあります。この条約は、一九九四年に発効して、日本は一九九六年に批准をしておりますが、もう批准をして十年以上たっております。批准されて以降、なぜ現時点まで法整備をしなかったのか、この理由につきまして海洋本部の方から説明をいただきたいと思います。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 国連海洋法条約は、海賊行為の抑止につきまして、ただいま委員御指摘のとおり、国内法令の範囲内で最大限に可能な範囲での協力義務について規定をいたしておりますが、これは、各国ができる限りの協力を行うことを義務づけるという趣旨でございまして、海賊行為の具体的な取り締まりを条約上の義務として課したものということではございません。そのようなものと承知いたしております。

 また、政策的にも、我が国が、国籍を問わず海賊行為を処罰し、抑止し、取り締まるという現実的な必要がなかったということもございます。

 したがいまして、この条約を批准する際に、海賊行為の処罰、取り締まりのための国内法を整備することが必ずしも求められていたわけではなかったことから、批准時点では法の整備をしなかったという経緯がございます。

 いずれにいたしましても、近時発生しております海賊行為は、海上における公共の安全と秩序の維持に対する重大な脅威となっております。日本国民の人命、財産の保護の観点から、我が国にとって喫緊の課題でございます。このため、今国会において本法案の早期成立に向けた御審議をお願いしたいと存じておるところでございます。

中谷委員 今説明をいただきましたが、この条約は義務はないということで、求められていなかったということでございます。しかし、私は、国家の戦略というか経営方針というものがこの国にあるのかと逆に問いたいわけでございます。

 というのは、やはり日本は海洋国家でありまして、同時に貿易立国でもございます。我が国の貿易に占める海上貿易量の割合は、九九%海上輸送に依存をしておりまして、金額ベースでも全体の七五%が海上輸送にかかわっております。海上輸送が途絶えたら国民生活は途端に大変なことになるわけでありまして、このことを再認識しなければならない。みずからの国民を守れないようでは、国としての求心力がもたないということで、海賊対処をするというのは当然のことでございます。自国民や自国船を守るということを逡巡するようでは、海洋国家として世界をリードする資格はないのではないか。いたずらに議論ばかり重ねて、国としての明確な方針が定まらない日本の現状を外国から見れば、異様な姿と映りまして、国としての責任放棄ともとらえられかねません。

 そして、伺いたいことは、この条約につきまして、公海上の船舶については旗国主義、これが原則でございました。しかし、この法律においては、外国船籍に対する海賊行為も法律の対象といたしておりますが、これはどういう理由であるのか、再び海洋本部から伺いたいと思います。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 国連海洋法条約におきましては、すべての国が最大限に可能な範囲で海賊行為の抑止に協力するとされておりまして、公海における旗国主義の原則の例外といたしまして、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所において行われる海賊行為、人類に対する犯罪行為であるとされておりますこの海賊行為につきまして、海賊船舶等の国籍を問わず、いずれの国も管轄権を行使することができると規定されているところでございます。

 また、海に囲まれ、かつ主要な資源の大部分を輸入に依存しております我が国にとりまして、船舶航行の安全確保は極めて重要でございますけれども、その担い手であります我が国の商船隊、約二千三百隻に占めます日本籍船は九十隻余りにとどまっておりまして、その他は外国籍の船でございます。

 貿易量の大部分を外国籍の船が輸送しているという現状、これを考慮いたしますと、我が国といたしましては、これらの外国籍船も保護すべき重要な利益を有しているということは明らかでございます。

 このような現状及び国連海洋法条約の趣旨にかんがみまして、海賊行為の処罰及び海賊行為への適切かつ効果的な対処について法整備をいたしたいと存じておるのでございます。

中谷委員 ただいまお話しいただきましたように、いずれの国も抑止に協力をするという観点で、すべての国の船を世界みんなが守りましょうということでございます。だれがやるのか、これは日本もやっていかなければならないということでございますが、最近の国際情勢を見ますと、米国の一国主義というものが終えんをしまして、世界の安全保障が今流動化をしている。そして、各国の自己主張というものの激しさが増しております。北朝鮮がミサイルを開発し、核放棄のための六カ国協議、これも脱会しようとしております。また、イランの核開発もとめられない状況でもございます。

 そして、このソマリアの海賊、現在どんどん活動範囲を拡大させまして、昨日は、人質を救出するために犯人を射殺したアメリカ、フランスに海賊側が報復を宣言したということがCNNでも報道をされました。

 これは四月の七日でございますが、アフリカのケニア向けの援助物資を積んでいてソマリア沖を航行していた米国の船籍、コンテナ船のマースク・アラバマ号、一万七千トンが海賊に乗っ取られ、その後、積み荷を含む船体は船員が自力で奪回しましたけれども、米国の船長が同船の救命ボートで海賊とともに連れ去られたということでございます。これに対して、アメリカの海軍特殊部隊シールズが派遣されて、逃亡する犯人を急襲、海賊四人のうち三人を射殺、残る一人を拘束しました。船長はけがなく健康で、海軍の強襲揚陸艦に収容されましたけれども、これは、海軍第五艦隊の司令官によりますと、オバマ大統領が船長の生命に危険が及ぶおそれが高まったために救出命令を出したということでございます。

 この米国のとった措置というのは、国際法上どう評価できるのか。国連海洋法条約百五条でも、いずれの国も、海賊によって奪取され、支配下にある船舶内にある人を逮捕し、財産を押収、刑罰を決定できるとありますし、国連決議の一八五一では、国連憲章第七章のもと、海賊との闘いに参加せよとありますけれども、今回の米国の人質救出の事例はどう判断されるのか、お伺いをいたします。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 米海軍の発表によりますと、ソマリア沖三百マイルの地点を航行中であった米国船籍の貨物船マースク・アラバマ号でございます。まさに今委員がおっしゃられたとおり、四名の海賊に乗っ取られたということでございます。

 同船に乗船をしておりました約二十名の米国人の船員が海賊に抵抗し、海賊のうち一名を拘束し、船を奪還したということでございますが、船長は残りの海賊三名が人質として連れて逃走したということのようでございます。同船からの連絡を受けた米海軍が救出に当たって、十二日、船長は無事に救出をされたということでございまして、海賊一名は米海軍によって拘束をされ、残る三名が死亡したというふうに米側は発表しておるところでございます。

 国際法上、海賊によって誘拐された人質に関する規定というものは特にあるわけではございませんけれども、公海上の海賊行為の防止、取り締まりのために、海賊の人質となった人の救出のため、旗国等が必要な措置をとることは当然認められているというふうに考えております。

中谷委員 先ほど質問で、国連決議一八五一があるのではないかということを申し上げました。この一八五一では、国連憲章第七章のもとに行動し、そして各国は、すべての軍隊及び機関を通じて海賊との闘いに参加せよ、また、ソマリア海域の中に入ってもよろしいというところまで決議をされていますが、この決議と米国の行動の関係はどう考えればよろしいですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 この国連決議は、あくまでも、ソマリア沖の海域において海賊がばっこしておるということについて、国連として、国際社会としてこれに共同で取り組むということを各国に求めているわけでございますが、その国連決議と今回の米軍の行動の具体的な対応については、特に国連決議がそこまで定めているというふうには考えておりません。

 いずれにしても、必要な措置をとるということ、その必要な措置をとる中で人質の救出のために米海軍が行動したということだというふうに理解をしております。

中谷委員 この米国の船は、ケニアのモンバサ港に陸揚げをされる予定の、国連の食糧計画、WFP、これに基づいて援助物資を積んで航行中だったわけですね。つまり、国連の活動の一環であるのにもかかわらず物資を奪われて、国連がこのような決議をしているわけでありまして、私は、これは容認ができることではないかと思っておりますし、先ほど御説明のあったように、海の上の人命尊重という点でも合理性があると考えております。

 しからば、もし日本船及び日本人が人質になったと考えたら、一体どうするかという話でございます。

 今回、新法が提出されておりますが、逃亡する犯人から人質を救出することができるのか、だれがどこまで救出をすることが可能になるのか、この点について法案の提出者から伺いたいと存じます。

大庭政府参考人 提出いたしております海賊対処法案におきましては、人質にする目的で航行中の他の船舶内にある者を略取するという行為につきましても、海賊行為として処罰及び対処の対象ということにいたしております。したがいまして、お尋ねのような件についても、海賊行為として同法案の規定によりまして対処することが可能であるというように存じております。

 いずれにいたしましても、個別の事例において、御質問の事例を含めてどのような対処を行うべきか否かについては、その具体的な状況によって判断される事柄であり、あらかじめ一般的なこととしてお答えすることは難しいというふうに存じております。

中谷委員 あわせてお伺いをいたします。

 この法律では、海賊行為への対処に係る活動海域としてどこまで想定をしておられるのか。つまり、公海上及び我が国の領海のみならず、他国の領域において自衛隊が活動できるのかどうか。国連の決議一八四六におきましてもソマリアの領域内での活動が国連としては容認をされておりますが、国連海洋法条約に照らしますとどうであるのか。

 そして、先ほどお話ししたケースでありますが、やはり人質を連れ去られたわけですね。それで、オバマ大統領が自国民を救出せよという指示を出されたわけでありますが、この追跡権というもの、これは国連海洋法条約では認められております。国連決議一八五一でもそれが可能になっております。この法律によりますと、どこまでこの追跡ということが認められているんでしょうか。

金子国務大臣 外国の領海におきまして、当該沿岸国が、その領域主権に基づき、みずから取り締まりを行っているのが常であります。したがって、我が国が警察行動のために立ち入ること、これは基本的に想定はしておりません。

 他方で、当該沿岸国の同意を得た場合または要請を受けた場合、公海などから海賊行為を行った者を追跡して当該沿岸国の領海内に立ち入ることは、先ほど答弁をさせていただきましたとおり、本法案の規定上も可能であります。

 国際法上は、公海または我が国領海等において行われた海賊行為への対処として、当該海賊船舶が他国の領海に逃げ込んだ場合には、当該国の同意あるいは要請、これを受けまして、もしくは関連の国連安保理決議、今御指摘の一八五一でありますが、これに従って我が国が当該国領海の中にまでこれを追跡して取り締まりを行うことは、国際法上は問題がないという理解、認識であります。

中谷委員 御答弁では、主権に基づき主権国が行うということでございますが、このソマリアのケースで考えますと、現在、ソマリアはほぼ無政府状態でありまして、大統領と議会と閣僚はいるようですが、首都の主導権は反政府勢力が握っているということでございますし、当該国の同意が得られたとしても、当該国はそれを取り締まりすることができない。すなわち、海賊がばっこしているわけでございます。

 したがいまして、日本人の人質がこの領域に入った場合に一体だれがこの日本人の救出をするのかなという気がいたしますが、先ほどの御答弁で、入れるのか入れないのか、少しあいまいな部分もあったと思いますが、これは領域まで追跡をしてもいいということでしょうか。政府委員でも結構ですが。

大庭政府参考人 国連安保理事会は、決議第一八五一号主文六におきまして、ソマリア暫定政府、TFGが国連事務総長に事前通知をすることやTFGの要請に従うなどさまざまな条件を付した上で、ソマリア沖の海賊、武装強盗行為を抑止するために、ソマリアにおいてTFGに協力する各国等が適当なすべての必要な措置をとることができるというように決定をしていると承知をいたしております。

 他方また、先ほど大臣から御答弁ございましたように、この海賊対処法案において、基本的には、領海内においてはその当該沿岸国においてその主権の行使として取り締まりが行われることが原則でございますけれども、当該国からの要請等があった場合には、この法案としてはそういうことも可能であるというふうに措置しているというものでございます。

中谷委員 この可能性は海賊被害の十分の一だと私は思います、日本は。つまり、この海域を走っている、航行している船の十分の一は日本の船舶ですから、確率は十分の一であると。では、だれが親身になってくれるのかといいますと、やはり各国の協調と協力しかないと思います。

 また、IMO、これは国際海事機関でありますが、今、地域会議を主催して大変大きな役割を果たしています。周辺国が海上保安庁などの協力によってコーストガードという体制を強化していくということでございますが、現実に、IMOがソマリア周辺国会議を開催しておりますが、我が国として、この会議に出席をされまして、地域の安全を守るという観点で一体どのようなことを主張し、どのような貢献をしようとしているのか、外務省から伺いたいと思います。

宮川政府参考人 本年一月、ジブチにおきまして、国際海事機関、IMOの主催によりまして、ソマリア周辺海域海賊対策地域会合が開催されまして、そこで、海賊防止のための協力や海賊情報共有センターの設置などを規定しました行動指針がソマリア海域の周辺十六カ国とソマリア暫定連邦政府によって採択されました。

 今御指摘のとおりでございますが、IMOは、こうした取り組みを通じて、海賊対策、海賊取り締まりのための地域協力の枠組みづくりに大きな役割を果たしております。我が国といたしましては、ソマリア沖の海賊の根絶に向けて、周辺沿岸国の海上取り締まり能力の向上、それから地域協力などの取り組みを一層進めてまいりたいと考えております。

 そのため、我が国は、IMOと緊密に連携することを重視しておりまして、ジブチの会合にも、これまで我が国が東南アジアにおいて行ってきました海賊対策に関する支援の経験を踏まえて積極的に参加いたしましたし、今後も、我が国としてIMOの活動に対していかなる貢献ができるのか、積極的に検討してまいりたいと思います。

中谷委員 IMOとかの国際協力というのは当然やるべきでありまして、大いにこれからも進めていただきたいと存じます。

 しかし、問題なのは、いざとなったときに、ではIMOとかほかの国が日本人を救出してくれるかということでありますが、やはり日本人が人質になった場合には救出するのは祖国日本じゃないかと思います。

 まして、世界はまさに、暴力の抑止とか法秩序、これを失いつつありまして、このような時代は沈黙する国家は新たな国際社会の谷間に埋没をしてしまうのではないか。同時に、コストを負担するだけでは国際社会の中で存在感を持ち得ない。発言権はリスクを共有して、分担して初めて得られるもので、まさに世界の中で何ができるのかと問われている時代でありまして、日本は行動しなければなりません。

 日本は、戦後六十年間、日米同盟のもと、アメリカの後方支援に徹すれば、経済大国とかODA大国としてそれなりの安定感と存在感を示しましたけれども、今日、この手法は通用しなくなりました。

 シーファー前駐日大使は、離任に先立つメディアとの懇談会で、海賊は国家ではなく犯罪者の集団であり、集団的自衛権の問題や憲法九条とは別だと述べまして、日本が国際社会の海賊対策に積極的に参加するように求めました。日本がみずからを守る用意がなければだれが守るのかと離任時に疑問を投げかけております。

 また、ゲーツ国防長官も、せんだっての北朝鮮のミサイル案件の時期に、アメリカに飛んでくるミサイルは撃ち落とすとしか発言をしませんでした。暗に、日本に飛んでくるミサイルぐらい日本で対処しろと言っているようでございますが、米国でさえ、やはり自国の関心というものがありまして、国益や関心の低い地域から逐次撤退をしてまいります。

 好むと好まざるとにかかわらず、日本が独自で対応せざるを得ない地域、分野は拡大をしており、まして、グローバル化の進行で、海外の企業で活動している日本人もたくさんいます。国として、海外で活動している日本の企業や人々の安全はどう考えているのでしょうか。自国民や自国船が現実の脅威にさらされているときにどう守るかということを真っ先に考えるというのが国際常識でございますが、この考え方につきまして、閣僚の方から御意見を伺いたいと存じます。

中曽根国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、自国の船舶等が航行している、それが海賊等によって襲われるということは、その船に乗っている船員やあるいは船舶、我が国の国民の人命あるいは所有する船舶、これにかかわることでありますから、当然、我が国自身がこれにしっかりと対応するということが大事でありますが、同時に、そこを通過する船には多くの商品等も載っておるわけでありまして、そういう経済的観点からも、いろいろな観点からも、自国でしっかりと対応するということが大事だ、そういうふうに思っております。

中谷委員 政府としても全力を挙げていただきたいと思います。

 しかし、政府には限界、足かせがあるわけですね。それは憲法でございまして、これまで、こういった邦人救出に際しまして、いろいろな法案を通しましたけれども、常に憲法九条の制約というものが問題になっていました。しかし、この問題に対処しないと命は守れないということと同時に、国際社会というものは容認をしないという状況になっております。

 日本が憲法の制約をどう説明しようと、各国から見れば、しょせん自分たちと関係のない、日本の特殊事情にすぎないわけでありまして、懸命に取り組んでいる国から見れば、汗もかかないで金もうけだけやっているんじゃないかと映ります。まして、日本は世界で一番海運の船を有している国家でありまして、便宜置籍船や、外国人の乗組員を雇用しております。日本はこういった外国の人たちの命も守らなければならないということでございますが、そのことについて、ちょっと現実論から質疑をさせていただきます。

 四月四日でございます。午前三時四十分、「さざなみ」は、タンカーから七キロ離れた地点で無線を受け、十分後に約五・五キロまで接近したところ、小型ボート三隻と母船のような船の計四隻が確認をされました。そこで、真夜中でありましたので、約十分間サーチライトを照射したり、長距離音響発生装置を用いて、大音量で、現地語を使い、こちらは海上自衛隊だと呼びかけ、海賊らしき大型船舶を追い払いました。

 タンカーに近づいた船は、はしけの後ろに三隻の小型船をつなげて航行していたが、武器を持っているかどうかということについては不明でございますが、その後、この船舶が何だったのかということを確認したかということをお伺いしたいと思います。

 また、無線を発してきたタンカーが海上警備行動による護衛の対象外であるシンガポールの船籍であったにもかかわらず、不審船を撃退したのは、私は、助けを求められて対処した指揮官の判断としては的確であったと思いますが、この根拠についてお伺いをさせていただきます。

 私が調べましたら、これは船員法第十四条に基づいた、きちんとした根拠による全く正当な行為ではないか。この船員法第十四条は、「船長は、他の船舶又は航空機の遭難を知つたときは、人命の救助に必要な手段を尽くさなければならない。」と定めておりまして、まさに突発的な異常事態の発生、SOSに関して定めた船員法第十四条が、これは特別法でありますが、一般法、これは自衛隊法八十二条でございますが、それに優先するという一般原則に従って、今回このような事態に適用されるというふうに考えております。しかも、不審船の行動と護衛艦の対処に著しい不均衡があったわけでもないし、厳しい制約のもとで適切に対処した海上自衛隊には惜しみない称賛を送るべきでございます。

 しかし、この海上自衛隊の行動と法律が一致しているのかというと、私は、やはり過度の気遣いを海上自衛隊に与えているという気がいたしまして、この状況を一刻も早く正さなければなりません。

 防衛大臣に伺いたいと思いますが、これの警護をした、また救出した根拠と、この船の確認について伺いたいと思います。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 四月四日の日本時間で二時四十分ごろ、護衛活動を実施中の護衛艦「さざなみ」が、護衛対象外の船ではございますが、シンガポール船籍のタンカーから、小型船舶が接近しているという旨の通報を受信いたしまして、これに対しまして、サーチライトを照射するですとか、先生御指摘の指向性大音響発生装置、LRADによる呼びかけを実施いたしております。

 それで、相手方の小型船舶、これは確かに小型ボート三隻を曳航していたということは現場で確認をいたしておりますけれども、海賊船であったかどうかということの確認は今のところとれておりません。

 それから、この活動につきましては、護衛対象外の船舶から国際VHFで通報を受けましたので、人道的な観点から、強制力の行使を伴わない行為といたしまして、先ほどのLRADによる呼びかけでありますとかいうようなものを実施しておりまして、法的な根拠ということで申しますと、船員法の十四条ということになろうかと考えております。

中谷委員 根拠は、先ほど言った根拠でよろしいですか。

 それも加えて伺いますが、非常に苦労しながら対処しているという現実でございますが、そのためにも海賊対処法案の迅速な可決が強く求められますが、防衛大臣、いかがお考えでしょうか。

浜田国務大臣 根拠につきましては、先生のおっしゃるとおりだというふうに思っておるところでございますが、今先生から御指摘のありました対処、特に気遣いという点については、やはりこの新法に基づいて考え、対処できればというふうに思っておるところであります。

 それは、今回の対象については、日本関係の船舶のみならず、我が国と関係のない外国船舶についても海賊行為からの防護が可能となりますし、また、海賊船による民間船舶への接近を阻止するための武器使用権限が付与されることになりますから、自衛隊がより適切かつ効果的に海賊対処を行うことが可能になるというふうに考えておりますし、自衛隊による海賊対処については、新法を整備した上で対応するのが基本であるというふうに私ども一貫して申し上げてきたところでございますので、法案の早期成立を心からお願いするところであります。

中谷委員 そこで、大変苦労しながら海上警備行動で任務をしている海上自衛隊について伺います。

 三月三十一日からこのオペレーションを開始しておりますが、これまでの活動実績、成果はどうなっていますか。実施海域の距離とか海路を通過する時間、またこれまで護衛をした隻数について伺います。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のために、新法整備までの応急措置といたしまして、三月十三日に海上警備行動が発令をされまして、護衛艦二隻、「さざなみ」「さみだれ」が派遣をされております。そして、三月三十日からアデン湾において日本関係船舶の護衛が開始されております。

 この派遣されております護衛艦二隻は、これまで、本日の朝までの状況でございますけれども、合計七回の護衛を実施しております。アデン湾において、西側に向けて航行したり東側に向けて航行するということを繰り返しておるわけですが、けさまでで七回実施をしております。そして、七回の合計で、日本関係船舶合計二十一隻の護衛を実施しておるところでございます。

 それから、先生も先ほど御指摘ございましたけれども、四月四日それから十一日には、護衛対象外の船舶から国際VHFで通報を受けましたので、人道的観点から、強制力の行使を伴わない行為ということで一定の対応をいたしました。

 それから、護衛艦が護衛を実施している海域の距離でございますけれども、約九百キロメートルでございます。この海域を通過するのに要する具体的な時間ということでございますけれども、これはその時々の速度によって異なるわけではございますけれども、大体十数ノットというようなことでございますと、一日から二日程度ということで大体通過するというふうなところでございます。

中谷委員 今後P3Cを派遣する予定であると伺っておりますが、準備命令、準備指示はいつごろ出されるのか、その活動の内容、理由、また、派遣隊や本隊、先遣隊の規模、派遣時期はいつを考えておられるのか、伺います。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾におきまして、日本関係船舶の護衛を効果的に実施するためには、固定翼哨戒機のP3Cによりまして広域の哨戒活動を空から実施するということが大変重要であるというふうに考えておりまして、これまで、現地調査でありますとか、ジブチ政府等の関係機関と調整を行うなどの必要な準備を進めてきたところでございます。

 それで、具体的なその活動内容等については今も検討中ではございますけれども、できる限り早期に派遣できるように、現在、一生懸命準備を進めておるところでございます。

中谷委員 加えて伺います。

 今後、この海賊対処の活動は長期化をするのではないかと思いますが、今、中東、アフリカには、テロ支援特措法の補給支援のために、バーレーンを拠点としたところに連絡官を派遣いたしております。

 今回の海賊対策は、恐らくジブチが拠点になるのではないか。これに加えて、スーダンのPKO、そしてゴラン高原にもPKOを派遣するなど、現在我が国は複数の地域において自衛隊の海外協力活動等を実施しておりますが、オペレーションはすべて統合幕僚監部が行っているということですが、各国にばらばらに連絡官を出すよりも、これは束ねて管理をした方がいいのではないか。したがって、統合運用のための組織として、現地の司令部や、事務所を出した方がより効率的、効果的に運用できると考えますが、この点、防衛省はどう考えておられますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘になりましたように、現在、各種の活動をいろいろ地域で行っておりまして、統合運用を支える基盤の充実ということは非常に重要であるというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、まず、インド洋における補給支援活動がございます。それから、ソマリア沖・アデン湾の海賊対処の活動もございます。こうした活動、それにいろいろPKOの関係もございますので、直接の活動に従事する派遣部隊の隊員はもとより、派遣部隊の活動を、関係国の政府、あるいは軍との調整、それから後方支援にかかわる調整、いろいろな面から支えている連絡官等を複数派遣しているところでございます。

 これらの連絡官等の果たす役割はそれぞれ非常に大きいわけでございますけれども、今後とも、統合運用体制のもとで、これらの活動をさらに円滑なものとする観点から、どういった形が派遣のあり方として望ましいかということについては十分検討してまいりたいというふうに考えております。

中谷委員 加えて、やはり統合運用として全体の運用も考えてやってほしい。今回、テロ特措法で出ている補給艦が、海賊対処のために派遣された日本の護衛艦にも燃料補給ができるということでありますが、私は当然のことであると考えております。

 日本の国際貢献には変わりがありませんし、海賊対処の船の移動の時間を短縮すると、それだけ部隊も休憩もできるし、次の任務もできる。非常に部隊の運用の効果にとってはいいことであって、ぜひ、このテロ特措法の補給艦を活用すべきであると思いますが、伺うところによりますと、これまで一回だけしか実施したことがないと聞いております。外国に提供する燃料も自衛隊の船にする燃料も、同じ観点でいえば同じものであるが、何か制度的、財政的な制約があると考えておられるのか。この根拠についてもお伺いしたいと思います。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾のような広い海域で効果的に海賊対処活動を実施するためには、洋上で補給をするということは、我々としても大変重要なことだと考えております。

 他方で、現在、補給支援特措法に基づきましてインド洋に派遣されている海上自衛隊の補給艦、これは、インド洋上で、テロリストあるいは武器等の移動を阻止、抑止するためにテロ対策海上阻止活動に従事する諸外国の艦船に対しまして補給を行うということを目的として派遣をされているものでございます。

 そして、この補給に当たりましては、諸外国から継続的にニーズが寄せられておりまして、現在、補給艦一隻、それからこれに随伴をいたします護衛艦一隻といった最低限の規模で、諸外国からの給油の要請に継続的に対応しているところでございます。

 それから、海賊対処に当たる海上自衛隊の部隊につきましては、基本的には、ジブチを根拠地として定期的に補給を行うということとしております。

 それから、このような状況の中で、今回の海上警備行動の発令におきましては、補給支援活動を行う部隊に対しまして、必要に応じまして、補給支援活動に支障を生じない限度におきまして海賊対処に当たる護衛艦に燃料等を提供するということを命じたところでございまして、この趣旨を逸脱しない範囲内で現地の部隊同士の協力を行う、こういうような考え方でございます。

中谷委員 日本の自衛隊の補給艦から同じ日本の海賊対処の護衛艦への燃料補給でありますから、これはどう考えても、外国から見ても当然のことでありまして、まして、税金の使い道云々からしましても非常に、効率、効果からしても当然のことであります。諸外国も一つの船にたくさんのオペレーションを与えて勤務をさせていますので、これはぜひ任務の一つとして大いにやっていただきたいと思っております。

 次に、手続の点についてお伺いをさせていただきます。

 今回の民主党のこの法案にかかわることでも大いに関心のあることでございますが、三月十三日に、内閣総理大臣の承認を受けまして、防衛大臣が海上警備行動を発令しました。翌十四日に、海上自衛隊の護衛艦二隻がソマリア・アデン湾に向けて出航しましたが、なぜ政府は、海上保安庁では対応できないと判断をして海上警備行動を発令しましたか。この過程について伺います。

金子国務大臣 ソマリア沖・アデン湾の海賊対策として海上保安庁の巡視艇を派遣すること、日本からの距離、海賊が所有する武器、現地では各国海軍の軍隊が対応していることなどを総合的に勘案し、現状では困難と判断したものであります。海上保安庁のみで対応できないということで、既に国会答弁もさせていただきましたし、政府部内の調整の過程におきましても、繰り返し説明を行ってきたところであります。

 こういう過程を経まして、防衛大臣は、内閣総理大臣の承認を得て、本年三月十三日に海上警備行動を発令したわけであります。私自身も、閣議の構成員として、今般の海上警備行動に係る内閣総理大臣の承認の決定にかかわっておったところであります。

中谷委員 そこで、加えて伺いますが、このとき、政府、内閣内でどのような協議をして結論的に防衛相に海上警備行動ということを発令させるという結果になったのか、このプロセスについてお伺いさせていただきます。

金子国務大臣 海上保安庁が保有している装備、それから、ソマリア沖・アデン湾で海賊が使用している武器、ロケットランチャー等々の武器、これに海上保安庁の装備が十分に対応できるのかが一点。二番目が、航続距離が非常に長い、海上保安庁が装備している船艇は「しきしま」級一隻でありますものですから、こういうソマリア沖で継続的に活動をするというのには不十分である。もう一つは、既に各国海軍が出てきて連携をとりながら行動をしているということを総合的に判断し、協議をしたところであります。

中谷委員 そこのプロセスを伺っているわけでございますが、そのような判断で、まず海上保安庁、国交大臣が結論を出した上で官房長官か総理にお諮りになったのか、それとも防衛大臣が、現行法においては防衛大臣が総理の承認を得て海上警備行動を発令するとなっておりますが、国交大臣としてそのような結論を得たことをもって防衛大臣に説明をし、そして要請を行ったかどうか、それとも、何となく内閣でむにゃむにゃと協議をして決めてしまったのか、その点について伺います。

金子国務大臣 今般は海警行動でありますので、防衛大臣が決めたものであります。ただ、それを決めるに当たって、国土交通大臣として要請手続はとっておりませんが、国会での数次の答弁等々で、あるいは内閣での議論として、そういう、防衛大臣が海警行動を発令する客観的な状況はでき上がっていたんだと思います。

中谷委員 非常に大事な問題でありますので、現実的には国交大臣が現状を防衛大臣の方に話をして、当然のことながら要請をした形で、防衛大臣が今回の海上警備行動を決断したと私は理解しております。

 続きまして、このプロセスで、武器の使用でございますが、先ほど、各国の軍が出ていると。また、武器の状況もそうだというふうに思っております。私は、これは一つの国家のメッセージでありまして、軍を出す、最高のレベルにあるものを出すということは非常に大きなことでありまして、抑止力やプレゼンスという言葉もありますが、やはり国家としてこれだけの対応をするという姿勢は各国にも伝わりますし、現に、海賊自身も非常に重く受けとめをします。EUの海賊対策の司令官に伺いましたが、海賊は灰色の船を見ると、もうそれだけで逃げ出すんだと。今回も、真夜中でありましたが、音響と、日本国の自衛隊ですという言葉を理解して退散をしました。

 やはり軍隊を出すということは非常に意味があることでありますし、最初に申し上げましたが、日本は海洋国家ということで、一つの国家戦略で、世界の海の安全を日本がきちっと守っているということを日本の国策の中心に据えて、そのような国を目指して、国際社会において確たる地位を築くということが、私は日本の新しい力にもなることではないかというふうに思っております。

 そこで、ぜひこれから、第一義的に海上保安庁が行うというふうになっておりますが、その思考過程の一つといたしまして、この自衛隊の派遣ということにおいては私が申し上げた大変大きな大きな意味がありますから、自衛隊だからだめだと言う前に、国家としての最大の力をもって国民に安心を与えることが何かということで、私は、国家のありとあらゆる組織や力をここにささげるということでありまして、今回も、海上警備行動においては、海上保安庁の職員が自衛隊の船に一緒に乗って、非常に緊張感に包まれて勤務をいたしておりまして、これは戦後の日本の歴史上始まって以来のことだと思うんですね。海上自衛隊と海上保安庁が一緒の目的で一緒に勤務をする、非常にそれによって両省のいい面が生かされた派遣でございます。

 大臣に伺いますが、これからの、この法案においてもそうでありますが、派遣する際の考慮事項とか基本的なお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと存じます。

金子国務大臣 既に三月に海上警備行動によりまして、今、自衛隊艦船がエスコート業務をやっております。そういうさなかに外国籍船からもSOSを受ける等々、現場の事態は非常に緊迫している状況であると思っております。

 そういう今の海上警備行動における海上自衛艦の活動の不備というものをやはり少しでも早く補って、そして、先ほど御指摘いただきましたが、我が国は、海に囲まれた、かつ、資源のほとんど、九九%を輸入に依存するという、貿易依存度が高い国であります。海上を航行する船舶の安全の確保は大事な課題であります。国連海洋法条約に基づきましても、すべての国が最大限に可能な範囲でその抑止に協力するとされておりまして、関係者や関係船舶の国籍を問わず、いずれの国も管轄権を行使するということが認められておる。その海洋法条約にのっとりまして、今度の海賊対処法案を今回御提案させていただいたところであります。

 そういう意味で、海上の安全航行を守る、秩序を守る、そういう観点から、一刻も早くこの法案を通して、その安全に資するように、与野党、御論議いただきながら、法案を通過させていただきたいと思っております。

中谷委員 そのような考え方でぜひお願いを申し上げます。

 きょうは、この法案の基本的なところを質問させていただきましたが、これは国にとって非常に重要かつ緊急の法案でありまして、ぜひ、私は、与野党を通じて、この国会で早急に成立をさせるべきではないかという意を強く持ちました。

 話を終えるに当たりまして、こういう話を紹介いたします。

 今から百三十年前に、和歌山県の串本の沖で、トルコの船舶でありますエルトゥールル号という船が難破しました。そこで、和歌山県の地元の方々が、台風で大変食糧難でしたけれども、自分たちの食料を与えて生存者を介抱し、本国に送り届けました。

 それから百数十年たって、イラン・イラク戦争のときに、テヘランにたくさんの日本人が取り残されました。日本は法律がなくて、彼らを救出に行けませんでした。そのときに行ってくれたのが、トルコの勇敢なパイロット二名がみずから志願して、日本人の救援に協力をしてくれました。なぜなら、トルコの教科書にこのエルトゥールル号の事故に対してきちんと書かれていまして、それを読んだ国民が、ああ、日本はこういう国だということを理解して、その恩を忘れなかったという話でございます。

 今回、海賊対処でいろいろな国とともに行動するわけでありますが、ぜひ、今だけではなくて、将来の時代にも日本の国際貢献が生きていくんだということを考えて、我々もしっかりとした後世に残る法案をつくりたいと思っておりますので、これから政府の方も大いに頑張っていただきたいと思います。

 以上で終わります。

深谷委員長 次に、小池百合子さん。

小池委員 小池でございます。

 ただいまの中谷議員からの数々の重要な御質問に加えまして、できるだけ重複しない形で関係の方々に質問させていただきます。

 私の場合は、特に、そもそもなぜ海賊がソマリアで出没するようになったのか、その根本問題なども伺ってまいりたいと思います。

 その前に、中谷議員も再三指摘されておられましたように、我が国は海洋国家であり、そして貿易立国であります。シーレーンの安全の確保というのは、我が国にとりましても文字どおりの死活問題であり、生命線であるということが言えると思います。このたびの海賊対処の法律をしっかり整えるということは、この我が国の生命線を確保し、そしてまた公の海の安全を守るその一員であるということを確実にするものであり、一日も早い成立を期待するところでございます。

 そもそも、我が国はよく小さな島国ということが刷り込まれているわけでございますが、ちっとも小さな国ではないと私は思います。国土面積は三十七万平方キロメートル、これは世界で第五十九位だと思いますけれども、領海それからEEZを含めますと、この広さは世界で第六位という、大変大きな広さをカバーするわけでございます。

 ちなみに、人口の面で見ましても、一億二千七百万人というのは、こちらの方は世界第十位ということでございまして、いつの間にか、小さな島国という刷り込みが余りにも日本はされ過ぎていて、そして、本来担うべき国際的な役割から逃げている、逃避しているという場面がしばしばあるわけでございますが、この海賊の問題につきましても、我が国は、我が国みずからの国民の生命そして安全、財産を守るという観点と、それから国際的な貢献をするという、その両面が必要なのではないかと思います。

 また、海賊というイメージは、「カリブの海賊」というディズニーランドの有名なエンターテインメントもございますし、また、ピーターパンに出てくるフック船長とか、日本でいうならば村上水軍、その末裔の方もこの国会におられますけれども、それから北欧のバイキングと、どこかちょっと、何というんでしょうか、激しいけれどもどこかでファンタジーの世界なども勝手に抱いてしまうということがありますけれども、ファンタジーの世界とは全く違うのがこのソマリアの海賊でございます。

 御承知のように、RPGなど最新鋭の重装備をし、そして兵器を持ち、さらにはGPSを操りながら、標的をぱっと定めると、そこに船団を組んで巧みにシージャックをする、海の九・一一と言われているところでございます。さらには、人質を押さえて、船を押さえて多額の身の代金を奪い取るということで、ニュービジネスになってしまっている。現在のソマリアにおける唯一の産業はこの海賊産業ではないかなどと言われているわけでございます。

 かつて私は、ソマリアでの内戦、そして、それに対しての国連PKO、PKF、それからアメリカの関与、これに関しての映画を見て大変な衝撃を受けました。有名な「ブラックホーク・ダウン」という映画でございます。映画以上に現実はもっと激しかったのではないかということさえ想像するわけでございます。米軍兵が市中引き回しに遭って、それがアメリカがソマリアから撤退をするというきっかけにもなったわけでございます。つまり、反乱軍それからミリシアといっても、ロケット砲を駆使して米軍のヘリまで落としてしまう、そういう能力を持っていた。それが今度は、いろいろな関連があると言われておりますけれども、海の場で同じようなことをやろうとしているということでございます。

 さて、今回の海賊への対処でございますけれども、それに対処する形で海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」「さみだれ」が出航をしたわけでございます。ことしの三月十三日、内閣総理大臣の承認を受けて防衛大臣が海上警備行動を発令し、そして翌日に二隻が出航したということでございます。先ほど中谷議員からも指摘がございましたけれども、これはある意味戦後初めて、日本船主協会から政府に対しての依頼があった、加えて日本船員組合の方からも自衛隊を派遣してくれという要請があったと伺っております。このこと自体がまずは歴史的であるということでございます。

 さて、既にこの「さざなみ」と「さみだれ」、優しい名前のようでございますけれども、大音響を発するという形で、ちっともさざ波、五月雨ではないような存在をしっかりと果たしてくれているようでございますけれども、このところ、海賊の出没する地域も刻一刻と移動しているように聞いているわけでございます。スエズ運河に入っていくところの入り口であり出口であるアデン湾に集中して発生していた海賊でありますけれども、これはどうも最近はばらけているということも聞いているわけですが、最新の状況について御報告ください。

大庭政府参考人 最近の海賊の発生状況についてというお尋ねでございます。

 国際商業会議所の国際海事局の報告によりますと、海賊などの事案は、全世界で二〇〇三年には四百四十五件発生をいたしておりまして、その後減少傾向にあったものの、二〇〇六年を底にして再び増加に転じておりまして、二〇〇八年には二百九十三件が発生をいたしております。

 これを海域別に見てみますと、東南アジアにおける海賊等の事案の件数は、二〇〇三年には百七十件と全世界の四割弱というウエートを占めておりましたが、二〇〇八年にはこれが五十四件と二割弱まで大幅に減少いたしております。

 その一方で、この問題になっておりますソマリア周辺海域における海賊等の件数は、二〇〇三年には二十一件と五%弱にすぎなかったものが、二〇〇八年には百十一件と四割弱を占めるまでに最近大変に増加をしてまいっているわけでございます。さらに、ことしに入りましても、四月十四日現在で七十四件発生し、十五隻が乗っ取られており、既に昨年の半分を大きく上回っているというような状況にございます。

 そのソマリア周辺海域における海賊等の事案を見てみますと、昨年はアデン湾で九十二件と集中的に発生をしておりましたけれども、ことしに入りましてからはソマリアの東海岸沖での海賊等の発生件数が報告されておりまして、一月は〇件、二月は二件でありましたけれども、三月に十五件と急増いたしております。そういうことが報告されております。

小池委員 月によって発生の状況が違うというのは、海の状況なども勘案されているんだろう。勘案というか、海賊はそういうふうに気候なども考えながらやっているのではないかなと思いますが、いずれにせよ、アデン湾のところに集中していた部分がほかの地域にも広がっているということは最近の情勢で聞くところでございます。

 そうすると、それだけまた海域が広がっていくということは、我が国自衛隊、海上自衛艦二隻が派遣されているわけですが、さらによく国際的な連携を図っていかなければならない、このように考えるわけでございます。EUの本部、それからアジアの諸国など、それぞればらばらだったり、まとまっていたりということでございますけれども、それぞれの活動する際の連携、国際的な連携がどうなっているのか、報告してください。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾におきまして、日本関係船舶の護衛を自衛隊が効果的に実施するためには、関係国あるいは関係機関との連携協力というものを行っていくということは大変重要であると考えております。したがいまして、アメリカそれからEUを初めといたします関係国、関係機関との間で、現地の海賊の状況でありますとか、あるいは各国の活動状況などにつきまして、情報交換など各種の連携協力を行っているところでございます。

 それで、具体的には、バーレーン等に派遣されております連絡官などを通じまして各国の状況等につきまして情報交換も行っておりますし、それだけではなくて、護衛艦と外国の艦艇との間でも、現場の海域における海賊の状況でありますとか、あるいは各艦艇の活動状況につきまして、通信によって情報交換というものを行っておるところでございます。

小池委員 海はとにかく広いです。私もスエズ運河などに何度も参り、まあスエズ運河はどちらかというと狭いというか、広い海とはまた違いますけれども、それがだんだん活動範囲が広がっていくと、それだけうまく連携をとらなければ効果が出てこないということだと思いますので、これからますますその国際連携を強めていくことが効率的かつ実効ある海賊対策ができるものだと思います。さらなる工夫をされるようにお願いを申し上げます。

 それから、今回、二十一年度の補正予算が組まれているわけでございますけれども、経済対策にあわせましてこのソマリア沖の海賊対策への手当ても計上されているところでございますが、それは幾ら計上になり、またどのようなコンセプトに乗った形でその計上が行われたのか、お願いします。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖におきます海賊対策の強化といいますものは、日本関係船舶の安全の確保に貢献し、我が国の経済社会及び国民生活の安定、ひいては国民の安全、安心の確保に資するものでございます。そのような観点から、今般の経済危機対策の内容の一つであります安全、安心確保等の具体的な施策といたしまして、ソマリア沖・アデン湾における海賊対策の強化というものが盛り込まれたところでございます。

 一方、ソマリア沖・アデン湾の海賊対処のための経費につきましては、既定経費による対応に加えまして、新たな財源措置が必要であるというふうに考えているところでございまして、現在政府において作業が進められております補正予算に当該経費を計上する方向で財政当局と調整を行っておるところでございます。

 このため、大変申しわけございませんけれども、総額それから内訳につきましては現在精査中でありまして、お示しできる状況にはございませんけれども、予算化に向けまして調整を加速してまいりたいと考えておるところでございます。

小池委員 調整の過程ということでなかなか数字を言いにくいということなんでしょうが、ざっくり百億ではないかとも言われているわけでございます。海賊に対して我が国の納税者のお金が使われているという認識を持たなければならないわけでございまして、それだけに実効性ある活動をしていただきたいと思っております。

 それから、今回の新法でございますけれども、その中には、海賊を逮捕した際のその後の刑罰について、細かに日本の法律とも照らし合わせながら記されているわけでございますけれども、そもそも海賊を逮捕するに至るまでの活動ができれば、これは一つ大きな成果にはなることだろうと思います。しかしながら、では逮捕した後、一体どういう形で犯人を、海賊を連れてき、そして拘束し、それをどういう形で日本に移送し、するのかしないのかも含めて、どういう形でやっていくのか。欧米などではケニアで裁くという例が見られるようでございますけれども、我が国はそういったことも想定しているのかどうか、お答えください。

金子国務大臣 仮に、我が国の刑罰法令が適用される行為があった場合、捕縛して、日本に護送し、国内法で対応できますので、護送して処罰する。あるいは、被害船舶の国、例えばイギリス船が被害に遭った場合には、被害者がイギリス人であったとすれば、イギリスに引き渡す。つまり、被害船舶の旗国、それから被害者の国籍国等に引き渡すという方法。または、今御指摘のソマリア周辺の国に、官憲に引き渡すといった方法が考えられます。

 ただ、当然でありますけれども、日本船舶に乗船している日本人が死亡した、殺されたというような凶悪な海賊発生であれば、原則として海賊の身柄を日本に護送してまいる。経由はジブチ地位協定を、これはまた後ほど外務省から話があると思いますけれども、経由して、日本に護送するということになっていくと思います。

 ただ、軽微なことであれば、今申し上げた船舶が多少被害に遭った程度というような話であれば、費用と手間暇をかけて日本に身柄を連れてくるということが適当なのかどうなのか。やはりこれは、人命、財産に対する被害の程度、あるいは犯罪の態様、それからもう一つは、今度の自衛隊の活動、海賊の活動に、どの程度の影響がそれによって行われるかという現場判断で判断をすることとなります。

 身柄をどこに引き渡すのかという最後のお尋ねでありますが、これについて、ケニアなのかイエメンなのかということについて、まだ決まっておりませんが、少なくとも事前に協定を結ぶということは必要ありませんので、逮捕して、そして周辺国に身柄を引き渡して、その後の処罰については、その国の、周辺国の官憲に任せる、ゆだねるということは念頭に置いておるところであります。

小池委員 今回、海賊という行為に対しての刑罰が明確に定められたということでございます。そしてまた、海賊を逮捕するに至るまでの活動ができれば、かなりのその後の抑止効果にもなろうかと思うわけでございます。このあたりは、毅然とした形で進めることがその後の日本の海上自衛隊の対海賊活動というのが功を奏してくるというふうに思っておりますので、今後、まだ決まっていない部分なども早急にお詰めいただいておいた方がいいのかと思っております。

 それから、今も幾つかの国の名前が出ましたけれども、アデン湾というのは、アフリカ側にはソマリアそしてジブチ、アラビア半島側がイエメンそしてオマーン、こういう地理関係にあるわけでございます。周辺国の取り締まり能力ということも、これも一緒になってやっていかないといけないわけでございますけれども、そういった能力については、残念ながら、多くが期待できていないというのが現状でございます。これまでも、ソマリアに対して、また沿岸諸国に対しての取り締まり能力の向上という形で、日本政府も取り組んでこられたわけでございます。

 ちなみに、ソマリアに対してといっても暫定連邦政府、TFGでございますけれども、これがなかなか功を奏していないからこそこういう海賊がばっこしている状況でございますので、なかなかそれも困難な部分はあろうかと思います。

 しかしながら、まず周辺国を固めていくということが肝要だと思うわけでございますが、どのように日本としての協力をこれまでやってきたのか、そして今後どうやって進めていくのか、その方針をお聞かせください。

橋本副大臣 先生御指摘のように、ソマリア沖の海賊の根絶に向けましては、やはりソマリアの安定も含めて、周辺国の海上取り締まりの能力というのを向上させなければいけない、これは大事なことだというふうに思っておりまして、今、一生懸命に取り組んでいるところであります。

 具体的に申し上げますと、イエメン及びオマーンの海上保安機関の職員の招聘や研修などを行いまして、取り締まりの能力向上に努めているところであります。

 また、外務省と海上保安庁の政府の関係者及びJICA等で構成される調査団をそれぞれ派遣する予定にしております。イエメンにつきましては、四月の中旬から五月の上旬にかけて、今調整をしておりまして、また、ジブチに対しては、四月の十九から二十三日、この日に調査団を派遣しまして、今後いかなる協力ができるかということ、そしてどのようなものが適切か、そしてまた可能かということを幅広い観点から調査していきたいというふうに思って、努力をしたいと思います。

小池委員 また、そういった周辺国の能力向上のために、かつて日本からさまざまなハードな支援も行ってきたと思います。今後、そういった考えについてあるのかどうか、また、どういう方向に進むのか、御報告ください。

秋元政府参考人 かつては、海賊対策のためにインドネシアに対して巡視艇を寄贈したこともありますけれども、今現在、イエメン、ジブチからも巡視艇を供与してくれないかという要請は来ております。

 ただ、果たして現地の海上警備当局がどういう能力を持っていて、実際どういう警備艇を運用することができるのか等々、調査しなければならないことが多々ございますので、先ほど副大臣から申し上げましたように、今月の中旬以降、ジブチとイエメンには調査団が出ますので、その結果を踏まえて検討したいというふうに考えております。

小池委員 あらゆる可能性を模索し、そしてまた、最も効果的な方向性で対応していただくようにお願いをしたいと思います。

 これはそもそも、海賊というビジネスが成り立つということを学習効果させてしまいますと、それによって得た身の代金が、また次なる新鋭のグラスファイバー製の新造船を確保したり、またさらなる高性能の武器の調達をするということで、これは悪循環に陥ってしまう。海賊側からすれば好循環という形になりますので、それをどうやって断ち切っていくのか。

 先ほどから御紹介のあります、アジアの海賊対策の地域協力でReCAAP、こちらの方が日本が主導で行ってきたわけでありますけれども、これが功を奏していることがマラッカ海峡あたりの地域での海賊の出現をかなり抑えてきている、そういったことも認められると思います。こちらでのノウハウをうまく生かしていくということは必要だと思うわけであります。

 ただ一方で、今巡視艇の話も出ましたけれども、あの地域、ソマリアは、「ブラックホーク・ダウン」のころもそうでありますけれども、アルカイダの拠点の一つでもあったわけでございます。そしてまた、御承知のように、アフガニスタンで、タリバンとの連携の中でアルカイダが大変な力を持ってしまったわけでございますけれども、アルカイダ系の動きというのは、あのアデン湾の周辺もかなり広がりがある。

 実は、ソマリアの海賊も沿岸警備などを強化するということで、前の政権といいましょうか、内戦状態にある中でも、例えばイギリスのセキュリティー会社が随分沿岸警備のやり方などを教えちゃったがために、それを逆手にとって、今度はそれで海賊のビジネスをしている。だからこそGPSが使えたり、武器が使えたりするということでございますし、今、ソマリアの海賊の人たちは、みずからボランティアのソマリア沿岸警備隊だと皮肉を込めて称しているようでございます。

 ですから、どういう提供をしていくのかというハードの提供の仕方などについても、十分な注意も必要であろうというふうに思います。

 なぜ海賊になったかということでございますけれども、これはよく言われていることでございますけれども、もともとソマリアの漁民たちは大変伝統的な素朴な漁をしていたということでございます。そこにアジアの国々からのトロール漁法を導入した漁船がソマリア沖で操業して、その結果として乱獲が起こった。それによって漁民たちの漁法が完全に負けてしまうといいましょうか、それで生計を立てるすべがなくなってしまった。それから、内戦が続いて貧困という現象が起こってきているということから、手っ取り早い方法で、ソマリアにおけるビジネスもしくは雇用の場として海賊になったという例が多々あるわけでございます。そして、これらの、特に二十歳から三十五歳ぐらいが多いと言われているんですが、今、海賊であることが、村で最も美しい女性と結婚ができるとか、それから大豪邸が建つとか、本当にある意味大変な盛況をもたらしているというような現状でございます。

 でも、そもそも漁民だった人たちが生きるすべがなくなってというところから物語が始まるという説があるわけでございますけれども、政府としての認識はいかがなものでございましょうか。

橋本副大臣 国連の報告書等が、ソマリア沖における海賊行為について、かつては、ソマリア領海内における外国船による違法操業や有害物質の不法投棄を受けて経済状況が悪化する中で、地元漁民によって行われるようになったという側面があるということを指摘しております。

 このように、ソマリア沖での海賊行為が、もともと漁民による自衛的な性格を有していたとの指摘がなされていることは承知をしておりますけれども、最近のソマリア沖の海賊事案の多くは、このような性格のものから、人質の身の代金を目当てにした襲撃や乗っ取りへと変化したと認識をしております。

小池委員 ですから、魚がとれなくなった漁民たちがかわいそうに海賊をやっているという話はもう超えているということを認識しなければならないと思うわけでございます。

 また、今副大臣からの御答弁の中にも入っておりましたけれども、環境が悪くなってきたということでございます。二〇〇四年にスマトラ沖で津波が起こって、その影響を、各国の沿岸国での調査をUNEP、国連環境計画が行って、報告書をまとめております。その中に、ソマリア沖に沈められていたというか、そのままじっとしていた有害廃棄物が打ち上げられて、その影響で住民が健康被害を受けているということがるる語られているわけでございます。

 また、これはヨーロッパではドイツの緑の党などが大変追及していた案件でありますけれども、有害物質の投棄の問題でございます。欧米の企業、スイスの会社であるとかイタリアの海運会社が、アデン湾に入るときに、その前にぽんぽん物を捨てていっちゃうんですね。その中には核の廃棄物などもほったらかしにされたという話。それから、一九九〇年代の初期に、ソマリアの当時の政治家が軍指導者たちと一緒に投棄の協定に署名をしているということで、その署名書が出回ったりもしているということでございます。

 そういうことを、やはり環境、これはバーゼル条約などで海上投棄というのは厳しく取り締まられているわけでございますけれども、これらのことについても、より明確に違反した企業であるとか国については罰せられなければならないというふうに思っています。先ほど少しお話がありました、この環境が破壊されているという認識についてはどのようにとらえられておられるでしょうか。

秋元政府参考人 委員御指摘のとおり、国連環境計画、UNEPの二〇〇五年の報告書におきまして、ソマリアというのは、沿岸において多数の有害廃棄物が不法に投棄されたということが報告されている国の一つであるということと、それから、一九八〇年代の初頭以来、ソマリア沿岸で投棄された有害廃棄物は、ウラン、放射性廃棄物、鉛、水銀、産業廃棄物、病院廃棄物などから構成されていたということが報告されているわけでありまして、このような不法投棄が環境破壊を行っていることは恐らく間違いないんだろうと思います。

 ただ、その程度がどれぐらいであり、かつ、どういう会社が、どういう国がこういう不法投棄を行っていたということにつきましては、ソマリアにおきましても、あるいは関係国際機関におきましても、いずれもきちんとした調査がなされておりませんので、正確な実態は把握してございません。

小池委員 今申し上げましたように、海上投棄については、国際的にもバーゼル条約という取り決めがあるわけでございますから、こういったことをしっかりと、今後起こらないように国際的にも連携していくべきではないかと存じます。

 しかし、そもそもこういったことが起こったのは、ソマリアという、本来国家であるべきところが政府の機能を失って、内戦状態の中で、経済は疲弊し、国民は疲れ、生きていくすべがなかったということが根本問題にあるわけでございます。

 これからこの海賊対策に、我が国が我が国の納税者のお金を毎年百億ずっとつぎ込んでいくというわけにもまいりません。それはまた、ソマリア国民にとっても不幸な話になろうかと思いますし、地域の安定にもつながっていかない。であるならば、このソマリアの情勢をしっかりと考えて、国際的にこのソマリアという国をもう一度再興させるということが、遠いようですけれども、一番近い道ではないかと思うわけでございます。

 そういう中で、最近のアフリカの諸国の情勢もなかなか複雑でございます。

 例えば、スーダンのバシール大統領が国際司法裁判所において有罪であるということが、その判決が下ったわけでございます。これについては、アラブ諸国はかなり同情的に見ている節がございます。

 それから、ソマリアでも、これまで力を持ってきたイスラム法廷連合、現在ではイスラム法廷会議と称しておりますけれども、その中でも活動を続けているアッシャバーブという、これはアルカイダとも近いと言われている存在があるわけでございますが、そのあたりが微妙に連携をし合っているというのが昨今のアフリカの状況でございます。

 と同時に、そこには、このところ見え隠れするのが中国の存在でございます。スーダンの問題は、これはひとえに中国との関連でありまして、中国の影を抜きには語れないという状況であります。また一方で、海賊の対処として、中国も昨年の暮れに海軍の派遣を決めて、四日後には出航させているということで、非常に迅速な対応をしているわけでございますけれども、一方で、中国にはそれなりの思惑があるであろうと考えられるわけでございます。

 この複雑なアフリカ情勢でございますが、ソマリア安定のためにも、こういった状況に対して日本はどうやって対応していくのか、また、現状をどのように認識しておられるのか、伺わせてください。

橋本副大臣 中国の問題についてでありますけれども、中国は、原油輸入の約六%をスーダンから輸入しておりまして、スーダンにとって最大の貿易相手国となっておりますので、経済的な結びつきを強めているというふうに認識をしております。

 また、政治面でも、ダルフール和平の担当特使の任命ですとか、スーダンに展開する国連PKOへの多数の要員の派遣等を通じた関与を強めている国でもあります。また、中国は、ソマリアにおきまして、御指摘の艦船の派遣に加え、アフリカ連合ソマリア・ミッションに三十万ドルの資金援助を行っております。

 こうした中国の関与自体というのは、スーダンやソマリアにおける治安の改善、復興、発展等に資する面もあるというふうに考えておりますが、中国のこの関与が、これらの国がより民主的で安定した国家となることにつながるということが、最も必要で重要なことだというふうに我が国も思っておりますので、そういった観点からも、我が国として中国との対話をしっかりと行っていき、そして、今後、対話を行っていく中で、我が国としても、どのような援助がしっかりと必要かということも含めて、早急に対応をしていくべきというふうに考えております。

小池委員 中国は、国家戦略においてこういった活動を、一つ一つの地域でやることをやってきている、それも、ODAと絡めたり、時には軍事的な部分の支援をしたりということで、あの手この手なわけでございます。

 松本副長官にお越しいただいておりますが、日本の安全保障のためには、私は、より総合的に、また中長期的に、目の前のことに対処するということだけでなくて、やはり中長期的に、国を挙げての安全保障政策、そしてそのための戦略を描く部門というのを確立すべきではないか、これはかねがね考えてきたわけでございますし、また、NSCという、国家安全保障会議というものを設けることによって、そういった機能を果たせるようにするべきだということから、安倍政権の時代にもNSC法案をまとめさせていただいたところでございます。

 現在、どうやら冷凍庫に入っているようでございますけれども、これについて、我が国の安全保障を確立するためにも、このNSCを設立すべきと考えるわけでございますが、現在の政府の対応というのは、温度はどんなところにあるんでしょうか、解凍できるんでしょうか。

松本内閣官房副長官 政府といたしましては、我が国の安全保障について、官邸の司令塔機能の強化を図るということは大変重要な課題であると考えております。

 そのために、既存の安全保障会議の機能を生かすとともに、内閣総理大臣のリーダーシップのもと、官房長官、外務大臣、防衛大臣が安全保障に関する諸課題について従来にも増して機動的、効果的に協議することにより、官邸の司令塔機能の強化を図ってまいりたいと考えているところでございます。

小池委員 まだ余りチンができないような状況だなと思ったわけでありますけれども、そこの肝の部分は、そうやって多くの大臣と報告会を開くという意味ではなくて、やはり事務局がしっかりとして、そこで世界からの、各国の情報も集約し、そして、我が国としてどうあるべきなのかを文字どおり戦略的に描いていくというところなんですね。

 官邸は、日々のことに対処するのは大変なことであります。しかしながら、やはり中長期的なビジョン、それを実現するためにはどうするかということを、日々それを養っておかなければ、即座の対処もできないということが言えると思っておりますので、これについては、改めてしっかりとお取り組みいただきたい。

 そして、新法に戻りますけれども、改めて整理しておきたいと思います。

 海賊対処の主体は、第一義的には海上における法執行機関である海上保安庁である、それから、海賊対処法においても同様の内容が明記されているところであります。また、一方で、保安庁による対応が困難な場合など特別の必要があるときには、防衛大臣が総理の承認を得た上で自衛隊に海賊対処行動を命じることができる、このようにしたわけでございます。

 この新法の制定によって、海上自衛隊と海上保安庁との任務と役割の変化、これをちょっと整理していただけませんでしょうか。

金子国務大臣 整理させていただきます。

 海賊行為への対処は、第一義的には、海上における人命、財産の保護または治安の維持について責務を有する海上保安庁の任務であります。

 現行の自衛隊法第八十二条では、防衛大臣は、特別の必要がある場合、海上保安庁のみでは任務達成が不可能であるといったような特別の必要がある場合は、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊に海上警備行動を命ずることができる。

 今度、新法でありますが、本法案では、現行の海上警備行動の仕組みと同様に、先ほどと同じようなことを想定しておりますが、防衛大臣は、特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊に海賊対処行動を命ずることができることとしております。

 本法案によりまして、海上自衛隊と海上保安官の役割は変化することはないというようなことであります。

小池委員 私は、ポイントは、どのように連携をうまくし、そして、法律に書かれているこの運用をどうスムーズに行っていくかに尽きると思っております。

 能登半島沖の不審船の事案がございました、九九年のときでございます。これでいろいろと、連携が海自と海保は悪いじゃないかという指摘など、幾つかの問題が浮かび上がったわけでございます。そのときに、周波数でさえ連携がとれていないという指摘がございました。その後、どのように改善がされ、現状どうなっているのかという点が一つ。

 それから、これは非常に歴史的な話でございます。今回、海賊の対処で海上自衛隊が出向するようになったその背景に、冒頭に申し上げましたように、日本船主協会からの要請があった、それから日本海員組合からの要請もあった。これは、特に船主協会からの要請も含めまして、非常に歴史的なことでございます。

 かつての太平洋戦争の際に、商船、コマーシャルな船が徴用されて、そして、それによって多くの船が失われ、さらには、もちろんのことながら船員の方の多くが亡くなっているということ、これは船主、海運業からすれば歴史的な事実であり、それに対しての思いが大変大きいという一点。それを超えて、この海賊にはもうどうもならぬ、そういう思いから政府に要請があったもの、このように思うわけで、海上自衛隊ということで要請があったものと承知をいたしております。

 また、出自、戦後の海上保安庁ができるまで、そしてその後、海上自衛隊ができるまで、その中に、例えばY委員会でのさまざまな議論があり、そしてまた、アメリカ海軍との連携がありという、これだけでもすぐ一時間ぐらいたっちゃう話なんですが、そのところが、海上自衛隊と海上保安庁との間に精神的な、心理的な、ある種わだかまりのようなものがあるという指摘もございます。

 今、周波数のことについて伺いましたけれども、海上自衛隊と海上保安庁の周波数、これは、それぞれ担う人たちの心の周波数も合うことが海賊対策にも功を奏するのではないかと思いますが、伝統墨守と、かつての海軍の伝統を引き継ぎ、受けているとも言われている日本の海上自衛隊でございますけれども、教育の現場で、海上保安庁そして海上自衛隊、こういったわだかまりを解消されるような教育方法をとっておられるのかどうか。周波数の問題とあわせてお答えください。

徳地政府参考人 まず、私の方から通信の問題についてお答えをさせていただきます。

 平成十一年三月の、いわゆる能登半島沖の不審船事案の当時、海上自衛隊の船と海上保安庁の船との間で秘匿の通信ができないといったようなことがございました。このため、適切な通信が行われているとは言いがたいところがあったわけでございます。

 そして、これを教訓といたしまして、防衛庁・自衛隊と海上保安庁との間で作成をいたしました共同対処マニュアル等に基づきまして、相互に連携が図れるように、連絡体制の確保でありますとか通信機器の整備に努めてきたところでございます。

 具体的には、相互に使用をいたします通信機器でありますとか、秘匿の通信方法を取り決めまして、その後、秘匿の通信訓練を実施する等やってきておりまして、その改善は図られてきているところでございます。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 今教育の面に関して御質問がございましたけれども、防衛省におきましては、いろいろな変化に対応して教育をする必要がある、先ほど委員、伝統墨守と言われましたけれども、やはり変化への対応が必要であるということでございまして、海上自衛隊と海上保安庁との関係につきましても、それぞれの課程におきまして、必要な教育を行っているところでございます。

 また、その課程におきましては、例えば、海上保安庁の職員の方を講師にお招きするとかいうことで交流を図りまして、両者間の円滑な運用ということに資するように努力をしているところでございます。

岩崎政府参考人 海上保安庁の方でも、教育という意味では海上保安大学校、海上保安学校がございますけれども、そこで、先生今おっしゃった、その成り立ち、それから海上保安庁と自衛隊との役割分担の関係、こうしたものを含めて教育をしているところでございます。

 また、あわせて、実際に現場に出てからいろいろな事案に対応する中で、一緒に訓練をしたり、また、今回の例が一番典型でございますけれども、自衛隊の船に海上保安官が乗っていくといったことも通じて、連携活動をしっかりやっていきたい、このように思っているところでございます。

小池委員 両方とも、国民の安心、安全のためには、しっかりと連携し得るところはし、そして我が国の生命線を守るという共通の目的のためにしっかりと役割を果たしていただきたいと思います。

 今、教育面でのお話ございましたけれども、先ほど中谷議員の方から、和歌山沖でのトルコ船の話がございました。

 これもまた、伝統墨守の中で、例えば、海上自衛隊がこれからも有してほしいシーマンシップといいましょうか、サイレントネービーというんでしょうか、そのエピソードとして、太平洋戦争緒戦のインドネシア沖の海戦で、英国の艦隊が撃沈されて、そして、漂流者四百名以上の英国兵が海を漂っていたところを、当時の帝国海軍の駆逐艦である「雷」が一人一人を助けたというエピソードがございます。

 そのときに助けられた方が、その後スウェーデンなど、外交官になられて、九死に一生、敵である日本から攻撃を受けて撃沈をして、そしてその兵士を一人一人、その「雷」の乗組員でさえ十分な食料があるかどうかもわからないところを引き上げて、そしてまた、今や諸官は日本海軍の名誉あるゲストであるというふうにその当時の工藤という艦長に迎えられたということ、これを世界各国で、世界各国でというかあちこちで、日本海軍に助けられたエピソードとして披露をされておられるということであります。

 日本軍といいますと、非常にひどい、凄惨な話ばかりが今も伝えられるわけでございますけれども、こういった海軍の魂、伝統墨守のところこそしっかり伝えていくべきだと思いますし、先ほどは、和歌山沖の話がトルコの教科書に記されているということでございますけれども、まさに、これは海軍だけでなく、日本人の心として、こういったエピソードがあるということを日本でももっと知らしめるべきではないだろうかと。

 これは、こう言うと、すぐに、軍国主義が戻ってくるとかという、そうじゃないんですよね。こういう本当にあったことをもっと伝えるという努力を我々はしなくちゃいけないと思うんですけれども、浜田防衛大臣はどう思われますか。

浜田国務大臣 先生御指摘の旧帝国海軍の駆逐艦「雷」の艦長の工藤海軍中佐は、昭和十七年の三月に、南方での海戦中に撃沈された英国海軍艦船の乗員の四百名余りを救助し、またこれを厚遇したというふうに承知しております。

 日英外交百五十周年だった昨年十二月に、海軍中佐工藤俊作顕彰会によって顕彰の式典が開催され、防衛省としても、日英の友好関係等の観点から講演を行うなどの必要な協力を実施してきたところであります。

 先生の御指摘のように、私も、こういったことというのは、やはりシーマンシップというその精神をしっかりと残すためにも、広報というのはしっかりしていくべきだというふうに思っております。

小池委員 防衛大臣がお戻りになったので、ちょっと伺っておきたいことがございます。

 今、北朝鮮が例のミサイルを発射し、六カ国協議から離脱をするということを言いということで、北朝鮮の情勢もなかなか厳しい、日本にとっては特に厳しい。さらには、このところ中国海軍の動きが大変活発でございます。

 ということで、海賊対策で今回二隻を送っているわけでございますが、そしてまたインド洋上で給油活動を続けている。私は、日本の国の防衛というのは、やはり日本の国そのものを守っていくことだと思います。決して手薄ではないと思います。しっかりと日本の防衛は行われているものと思いますけれども、どういう対応をしているのか、これについて伺いたい。

 それから、今回海上自衛隊が現場に赴いているということが、距離的要因であるということを先ほども金子大臣の方からもお答えがあったわけですけれども、ソマリアという破綻国家が今回の問題を引き起こしているということなどを考えると、ソマリア沖での海賊対処というのは非常に希有なものだと思います。

 しかしながら、何が起こるかわからないという危機管理の要諦からいたしますと、もし近場でこれが起こったときもこの法律を援用して活用していくのかどうなのか、距離だけの問題で今回海上自衛隊を送っているのかどうかについて確認だけさせていただきたいと思います。

金子国務大臣 ソマリアの件については、確かに距離、しかも、距離と同時に、これに対応できる能力を持った艦船が「しきしま」一隻きりないという事情というので、海警行動あるいは海賊対処法でも自衛艦に出ていただきます。ただ、海賊対処法には距離の概念はありません。現実に、マラッカ海峡等々については、我が国巡視艇、巡視船艇が常時共同訓練に出かけておりますし、巡回もしております。

 そういう意味で、近場、今、近海というお話がありましたが、近海はもとより、第一義的に海上保安庁が海上の安全を守るということであります。ただ、近場であっても、武器等々の状況によっては、自衛隊に今度の海賊対処法における海上警備行動に出ていただくということもあり得ることだと思っております。事態、事態、どういう事案に応じてかなのかは判断をさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、この海賊対処法は距離という概念はありません。

浜田国務大臣 先生御存じのとおり、海上自衛隊は約五十隻の護衛艦を保有しておりまして、この海賊対処では二隻を派遣しておるところでございます。

 我々とすれば、周辺のあらゆる情勢も考えながらそれに対応してやってきているつもりでございますので、今回の海賊対処のための派遣によって我が国の防衛の任務に支障が生じることはないというふうに思っているところであります。

小池委員 これから新大綱を書いていかなければならないわけでございますけれども、世界の情勢も大きく変わっております。総合的に、戦略的に、そして実効ある安全保障を確立していかなければならない。そのためにも、今回の海賊対処法案の一日も早い成立を期するところでございます。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、冬柴鐵三君。

冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。

 我が国は、三十七万七千平方キロという小さな島国、これが小さいか大きいかは別としまして、そこに一億二千七百万人の国民が、世界でも第二位の経済規模で、他国から比べれば豊かな生活を営んでおります。陸地、領土ということで見れば小さいんですけれども、周辺には六千八百四十七という離島を擁しております。それらを中心に領海あるいは排他的経済水域というものを広げますと、四百四十七万平方キロという世界第六位の広い海域を領有する、いわゆる海洋国家であると私は自負しておりますが、であるからこそ、海の安全ということは非常に我々の生命線を握っているものだ、そのように思っております。

 特に、我々の生活に必須の原油の九九・七%は海を経て日本へ運び込まれておりますし、鉄鉱石等は一〇〇%、食料でも六〇%というようなものが海を経て日本に運び込まれているということに照らせば、我々は、シーレーンあるいは海の安全というものを確保することは我が国の国民の生活の安全、安心を確保するものであって、そこで行われる不法な行為というものを許すわけにはいかないわけであります。

 このような認識の上に立って、最近のいわゆる海賊行為、そういうものについて、特に今回、余り大きくしてしまいますとわかりにくくなりますので、ソマリア沖・アデン湾における海賊の実態、そしてまた、日本籍船ということになりますと非常に狭いんですけれども、日本向けの貨物というものを積載した船舶とかそういうものがどういう被害を受けたのか、またその乗員が人質にとられるというような悲惨な事故があったのかどうか、その点について、かいつまんでで結構でございますが、御報告をいただきたいと思います。

大庭政府参考人 ソマリア沖・アデン湾における海賊の実情について御説明をさせていただきます。

 ソマリア沖・アデン湾における海賊事案につきましては、武器としてロケットランチャーや自動小銃といった重火器を用いて、標的となる船舶に対して発砲、発射することがあるという凶悪なものであるというように承知をいたしております。

 また、その数が急増いたしておりまして、発生件数は、昨年一年間で百十一件が発生をいたしまして、四十二件が海賊に乗っ取られ、ことしに入ってからも、四月十四日現在で既に七十四件が発生し、十五隻が乗っ取られております。現在でも、十三隻の船舶とともに二百六十人の乗組員等が人質になっていると承知いたしておりまして、安全な船舶航行というものに対する重大な脅威となっているというふうに存じております。

 我が国の関係の海賊事案ということで見てみましても、昨年の四月に、日本籍船の原油タンカーでございます「高山」、これがアデン湾にて発砲を受けました。昨年十一月には、中国漁船の日本人船長が人質にとられました。また、本年三月には、日本の商船会社が運航する自動車運搬船、ジャスミンエースが銃撃を受けました。海賊の被害が急増いたしておりまして、主要な資源の大部分を輸入に依存いたしております我が国の経済社会、国民生活にとりまして、まことに大きな脅威であるというふうに認識をいたしております。

 政府といたしましては、ソマリア沖・アデン湾における海賊行為は凶悪な犯罪行為でございまして、我が国にとってはもちろん、国際社会にとっても大きな脅威であるというように考えております。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

冬柴委員 そうであれば、二〇〇八年十一月十四日ですか、天裕八号という漁船ですが、日本人が船長を務めます、その二十四人が人質になってしまった。これが解放されたのが翌年の二月二十四日、こういう悲惨なことが行われている。冒頭私が申し上げましたように、日本の生命線、シーレーンというものがいかに大事か。貿易立国でもあり、そして、食料までそのような船、シーレーンに仰いでいる日本にとって、こういうものを絶対に放置できないと思うんですね。

 後から伺いますけれども、そのような人命、身体、あるいは海洋における秩序維持ということは、海上における警察行為として海上保安庁の責務だと思いますけれども、同時に、海上自衛隊におかれましても、海上警備行動というものが認められていて、同じように、人命とか財産、あるいは海洋における秩序維持という使命を果たしていられるわけであります。

 しかしながら、そういうものを総合して、日本の国内法は、海賊行為の処罰、どういう行為を処罰するのかという法が整備されていませんでした。今回、この法案はまさにそこを扱うわけでございますけれども、こういうものについて、本法の整備というものにつきまして、必要性について、国際海洋法条約とか、あるいは関連する安全保障理事会決議等について、外務省の方から御答弁をちょうだいしたいと思います。

中曽根国務大臣 委員が今御指摘になりましたように、ソマリア沖におきます海賊というのは、日本を含めまして、国際社会への脅威でもありますし、これは緊急に対応しなければならない課題でございます。

 国連海洋法条約、これは第百条でございますが、すべての国が最大限に可能な範囲で海賊行為の抑止に協力する、そういうふうにされております。

 国連安保理は、昨年、ソマリア沖海賊対策に関し、四つの決議を採択いたしまして、各国に軍艦等の派遣などを要請しているところでございます。これにこたえまして、欧米それからアジア等、二十カ国以上の国々が軍艦などを派遣しておりまして、国際的な対応が行われておるところでございます。

 さらに、国連安保理決議の千八百五十一号に従って設けられましたコンタクトグループや、それから国際海事機関、IMOでございますが、これはソマリア周辺海域海賊対策地域会合、いわゆるジブチ会合でございますが、これなどで種々の取り組みが進められております。このジブチ会合では、海賊対策のための地域協力の枠組みであります行動指針が採択されているところでございます。

 この海賊対処法案におきましては、当面の措置としての自衛隊の海上警備行動に加えまして、海賊行為への適切かつ効果的に対処するためのものであり、我が国の国民の生命財産の保護と海上における公共の安全の秩序の維持のための重要な一歩である、そういうふうに考えているところでございます。

冬柴委員 我が国は長い間、海洋基本法というものを持ちませんでしたが、これは、多くの議員の御努力によりまして、すばらしい法律ができました。そしてまた、この海洋基本法に基づきまして、海洋基本計画というものが閣議決定されているところでございます。

 これらにおいて、海賊に対してどう対処する方針が決められているのか、そこの点について御説明をちょうだいしたいと思います。

金子国務大臣 冬柴委員は、ちょうどこの海洋基本法が策定されましたときの初代の海洋政策担当大臣でおられました。海洋基本法の制定に大変な御努力をいただいたと思っております。

 この海洋基本法二十一条で、我が国の平和及び安全の確保並びに海上の安全及び治安の確保、このために必要な措置を講ずるものとすると規定されておりまして、昨年三月に閣議決定されました基本計画においては、海賊行為などに対し、国際法に則して、公海上でこれらの行為を抑止し取り締まるための体制を整備する旨が規定されたところであります。

 海賊対処法案は、このような状況、及び、先ほど外務大臣からお話がありました国連海洋法条約などの趣旨にかんがみまして、海賊行為の処罰及び海賊行為への適切かつ効果的な対処について規定をするものであります。早急に成立させる必要があると思っております。

冬柴委員 私は、海上の秩序の維持ということになりますと、第一義的には海上保安庁である、これは疑いないところだと思います。

 そこで、海上保安庁の実態というか現実といいますか、これについて、保持している装備が、艦船についても航空機についても、約四〇%が耐用年数が過ぎて旧式あるいは陳腐化しているということを知り、非常に僕は衝撃を受けたわけでございます。そういうものについて、今代替整備を非常に急いでいるんですが、しかしながら、知れば知るほど、海上保安庁の職員、海上保安官というのは涙ぐましい努力を少ない人数で一生懸命やっているということを私は知っています。

 きょうは、皆様方のところに「国内治安機関との比較」という一枚のペーパーをお配りしております。これを見ていただいてわかりますが、海上保安庁の定員は一万二千四百十一名、これは二十年三月末です。現在は若干ふやしていただいておりますが、おおむねこういうところです。海上自衛隊の定員と比べていただければ、これは四分の一でございます。それから、警察とか消防と比べていますが、これは海のことですから、海上自衛隊だけで比べさせていただいたらそういうことです。

 職員一人当たりでどれぐらいの国民を、こういう安全、安心を確保しているかということになりますと、海上保安庁は職員が少ないものですから、一人当たりで一万二百九十五名の国民の安全を担っているということになりますし、海上自衛隊は一人当たりで二千七百八十九名の国民の安全を担っているということがわかります。

 問題は予算でございますが、海上保安庁では一千八百九十一億円でございます。それに対して、警察、消防は抜きましても、海上自衛隊につきましては、これは白書等の記載で、類推でございますので若干違うかもわかりませんが、一兆一千四百七十三億円と六分の一でございまして、そういうのが現実であるという、これがいいか悪いかを私は今言っているわけじゃありません、現実はそうでありますということを申し上げているわけでございます。

 装備もついでに申し上げておきますと、巡視船は百二十一隻ありますけれども、その四割は陳腐化しているということ、先ほど申し上げたとおりでございますし、うち、ヘリを搭載できる巡視船は十三隻であります。ほかは、たくさんありますけれども、乗員が五名というような巡視艇二百三十四隻が日本の領海、内水等の安全を担っていると言っていいと思いますけれども、そういうものでございます。

 海上自衛隊については、護衛艦は五十二隻、うち、ヘリ搭載は三十七隻ということでございまして、これについては、船の構造自体が、一部が例えば銃撃を受けて浸水してもほかへ海水が入らないような装置等が当然護衛艦にはなされているわけでございますが、巡視船については、ごく例外を除いてはそういうことは行われていないというのが実態でございます。

 さて、そういうことを前提に、海上保安庁が現にやっていられる日常の業務等をここで教えていただきたいと思います。

岩崎政府参考人 先生御了解いただいているとおり、海上保安庁は、海の警察あるいは海の消防、それとあわせて尖閣等の領海警備、こうした仕事を幅広くやらせていただいておるところでございます。テロの警戒あるいは密輸等の取り締まり、こうした業務、それから海難救助、それから災害が起こった場合の対応、こうしたことを幅広くこの人数でやらせていただいておる、こういう状況でございます。

冬柴委員 私は、国土交通大臣在任中に南鳥島まで行きましたけれども、ここにも十名ほどの海上保安庁の職員がおります。そのほか、気象庁も十名ほどおりましたけれども、海上自衛隊の隊員もここには十名ほどいられる。これがあるがゆえに、日本の領土面積を超えるようなEEZ、この一つの島、周囲五・五キロの小さな島を日本が領有するがゆえにこの広いEEZを確保しているという実態でございます。そのように海上保安官は、そういう離島、もちろん海上自衛隊もそうですけれども、そういう日本から何千キロも離れた海上、絶海の孤島で仕事をしてくれているということであります。

 今の答弁の中にはいろいろありましたけれども、深刻を増している海上における密輸、あるいは密入国とか、あるいは薬物の輸入、銃器等、こういうことも取り締まっているわけでありまして、海上保安庁は、一体一年間に何件ぐらいの船舶への立入検査をしていらっしゃるのか、それをちょっと言ってください。

岩崎政府参考人 平成二十年の数字でございますけれども、日本国の船舶あるいは外国籍の船舶を含めまして、三万六千件の立入検査を実施しております。

冬柴委員 一年に三万六千件ですよ。そうすると、一日百件を超える、三百六十五日ですから、もう盆、正月なしに百件以上の船舶に立ち入りをして検査している。こういうことを知っている日本国民はほとんど少ないと思いますよ。ごくわずかな要員でそれだけのことをやってくれている。

 その中で、犯罪を認知して刑事訴追したのは何件なんですか。

岩崎政府参考人 これも平成二十年の数字でございますけれども、八千二十一件の海上犯罪を送致しております。

冬柴委員 そのほか、これは日本国民みんな喝采した映画ですけれども、「海猿」というのがありましたね、海難救助。私も就任してすぐにあの鹿島沖で大きな三件の十万トン級足らずですけれども、船が続けざまに座礁をしましたね。荒れる海の中で、一番目の船にはたしか二十六人ぐらい乗っておられて、そのうち十六人ぐらいをつり上げて助けていると思います、二隻目は二十六人、三隻目は二十四人だったと思いますけれども。荒れる海の中から、座礁した船の中からそのように人命を救助しておる。これは海猿の活躍ですね。

 一体同じ年で何件ぐらいの海難救助をされたんですか。何人助けたんですか。

岩崎政府参考人 昨日も長崎で大きな海難事故がありまして、すべての海難について助けられるというケースも、すべてはなかなかできませんけれども、昨年の実績で申しますと、私どもが救助できたのは五百三十隻、千八百十九人でございます。

冬柴委員 これも余り知られていない仕事だと思います。

 日本は、先ほど言いましたけれども、離島がたくさんありますから、そこを中心に領土とかEEZを開けば、世界第六位の海洋大国だということを申しましたけれども、海岸線も長いですね。アメリカという大国と比較した場合、あるいはお隣の韓国と比較した場合に、この海岸線はどんなぐらいになるんですか。

岩崎政府参考人 正確な数字を私は今覚えておりませんけれども、領海及び排他的経済水域の面積も海岸線の延長も、日本は世界で六位だったと思います。

 アメリカもそれなりの海岸線は持っておりますけれども、日本の海上保安官の職員と日本の海岸線の長さ、アメリカのコーストガードの職員とアメリカの海岸線の長さを比べますと、日本の海上保安庁職員は六倍以上の長さのところを担務しているということになります。

冬柴委員 職員一人当たりでアメリカのコーストガードの六倍以上の海岸線を管理しています。それから、韓国のコーストガードの十三倍の海岸線を海上保安官は管理している、こういうこと、客観的事実だと思います。

 そういうふうな、物すごく多忙で、特にそういう中に、尖閣列島へ中国あるいは台湾から、尖閣は中国の領土であるというふうに主張している一群の人がおるわけですが、定期的に二隻または三隻の抗議船でもって、ほっておいたら上陸をしてしまうというような事態が生じますね。こういうものに対して海上保安庁はどう対応しているんですか。

金子国務大臣 尖閣に対しましては、巡視艇を複数常時配置しております。航空機も日々哨戒を行っております。また、竹島につきましては、周辺海域に対しまして常時巡視艇を配備しております。

 あと、沖ノ鳥島、これにつきましては、巡視艇は必要に応じて配備する、航空機は定期的に哨戒をさせる。その他、南鳥島、これは人員、物資の輸送に合わせて航空機を飛ばしておりますし、根室海峡につきましても、我が国の海上の安全という観点から巡視船を常時配備しております。

冬柴委員 四面環海であるがゆえに、非常に豊かではありますけれども、それを守るためには大変な努力がそこに払われているわけであります。

 今ソマリアで、こういうことがアデン湾で起こったということは放置するわけにいかないわけです。私は、海上保安庁としては、逃げるということは全くないわけでありまして、真っ正面に取り組みたいけれども、物的、人的設備から考えて、長期間そういう一万二千キロにも及ぶ遠隔地に派遣をする、そういうような艦船、「しきしま」ということがよく言われるんですが、これは全く例外でありまして、これは六千五百重量トンですか、こういう巡視船は世界一だと思います。これは一つの目的があって建造したものでありまして、これに対しては、それがあるから海上保安庁が原則どおりこういうものも対処すべきではないかという議論には発展することができないわけであります。

 もし、こういうことでアデン湾にもやれとおっしゃるんであれば、やる用意はありますか。そしてまた、やるとするならば、どれほどの物的、人的あるいは財政的、あるいは、それは今から船舶を建造しなきゃなりませんからね、そういうものにどれぐらいの時間がかかると考えられるか。概略で結構でございますが、御答弁をいただきたいと思います。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

岩崎政府参考人 ソマリア沖の方に常時巡視船を配備しようということになりますと、一隻体制で配備しようとする場合に、船のローテーションがございますので、「しきしま」が一隻ございますので、あと二隻、三隻必要でございます。それから、今自衛隊がオペレーションされておられるように、常時二隻を配備しようということであれば、合計六隻、「しきしま」が一隻ございますので、新しくはプラス五隻が必要だ、このようになります。

 一隻当たり、ヘリコプターも含めてでございますけれども、三百五十億でございますので、プラス二隻では七百億、それからプラス五隻では千七百五十億程度でございます。

 それから建造には、今、造船もなかなか受注残をいっぱい持っておりますので、約四年以上の期間を要する、このように考えております。(冬柴委員「人員は」と呼ぶ)

 人員は、「しきしま」級についてはやはり一隻当たり百名程度の人数が必要だと考えておりますので、プラス五隻でありますと五百名の増員が必要だ、このように思っております。

冬柴委員 海上保安庁で今回のものに対処すると腹を決めた場合には、それほどの大きな財政、あるいは期限がありますね。今そのように決断をしましても、四年以上の建造期間が必要となりますし、要員も、一隻に対して百名ということになりますと、数百名以上の定員をちょうだいし、そしてこれを訓練しなきゃならない。そういうことを考えますと、それができ上がるまで待っておるわけにいかぬ、これは当たり前の話ですね。

 そこで、いわゆる自衛隊法八十二条の、特別の、いわゆる人命、財産、海上秩序の維持という観点から、その海上警備をしなきゃならない必要性というものが特別の事情がある、こういうことを防衛大臣が判断をすれば海上警備行動というのがとれる、これはもちろん内閣総理大臣の承認をちょうだいするわけですけれども。そういうことを、昨年十月、野党の、野党と言ったら失礼でございますけれども、長島議員が具体的にそういう提案もされた。私は本当にすごいなと、議事録を読ませていただきまして、思いました。

 そういう経過はありましたけれども、防衛大臣、一月二十八日だったと思いますが、安全保障会議で、ソマリア沖の海賊対策に海上自衛隊を派遣するために自衛隊法八十二条の海上警備行動の発令方針を決めて、同日、海上幕僚長らに派遣準備を指示したという記事がありますが、それでいいですか。

浜田国務大臣 そのとおりでございまして、我々とすれば、判断をして、指示を出したということでございます。

冬柴委員 私は、第一義的には海上保安庁が担っているとはいえ、今私がるる相当時間をかけて検討しましたけれども、これにはいろいろな障害があるということを認識いただいて、もちろん国土交通大臣も入られた中で協議を重ねて、そして、浜田防衛大臣が海上警備行動というものを決断していただいたというのが、この海賊対策としての第一歩であったと思います。

 しかし、これはあくまでつなぎじゃないでしょうか。つなぎの措置だと私は思っております。なぜならば、この海上警備行動が予想することができないようなことに対処しなきゃならないことがあるわけであります。

 一つは、海上警備行動というのは、刑法に定められた、日本の国内法に基づく、そういう秩序を維持するということが私は一番大事なことだと思います。そうなれば、刑法の一条では、日本の領域ですね、領土、領空、領海、領域において行われる刑法犯というものに対処するということは、これはもちろんのことですけれども、公海上においては、日本船舶に対してそういうことが行われるような規定に一条の二項はなっております。

 もちろん、海上警備行動には、人命とかあるいは財産ということで、その頭には日本とかなんとかがかかっていませんので、そういう対処は可能かもわかりませんけれども、やはり刑法に定める罪を犯している人たちに対して放置できないということになれば、これは刑法一条の規定によって、日本の領土、領空、領海を出て公海上ということになりますと、日本の旗を上げた日本籍船ということに典型的にはなるんだろうと思うんですね。

 しかしながら、今ソマリアで起こっている、今さっき総合海洋政策本部事務局長から答弁がありましたけれども、大変たくさんなことが起こっているわけでございますけれども、日本籍船というのは非常に少ない、限られているんですね。

 日本が必要とするものを運んでいただくためには、これはちょっと古いですけれども、二〇〇七年では二千三百六隻の船舶が使われているわけでございますが、そのうち日本籍船、すなわち日の丸を掲げた船というのはわずか四%、九十二隻にしかすぎないんですね。ですから、疑うことなく海上警備行動の対象にできる、それだけに限るとは私、言い切りませんけれども、疑いなく対象にできるのは九十二隻なんですね。残りのいわゆる二千二百十四隻というのは日本の旗が上がっていないんですね。すなわち支配外国船とかあるいは単純用船、用船契約によって日本の貨物を運んでいる。

 しかしながら、日の丸が上がっているか上がっていないかによって、日本の生命線であるいわゆる原油とか鉱石、食料等の輸送がとまってしまうということは許されないわけですから、あらゆる部分について、あらゆる船について、これを取り締まらなきゃならないという要請があるわけですね。

 先ほど外務大臣が答弁いただいた国連の海洋法条約においても、国籍関係なしに、船舶が襲われたらそれをあとう限り救助しなきゃいけない、こういうことになっているわけでございますから、そうすると、そこに、つなぎの措置だからやむを得ない点もあるんですけれども、外国船に外国人だけが乗っているような場合は、救助を求められてもなかなか難しいですね。この四日とか十一日の勇気あるあれは、私は有形力を行使していないと思うんですね。サーチライトとか大音響ということでやっているわけであって、有形力を行使したりしていないわけでありますから。しかし、これは隔靴掻痒ですね。

 私は、そういう意味で、この法律が通れば海賊行為の範囲、これが明快になる。特に私が重視したいのは、凶器を準備した場合にも海賊として取り締まりの対象になる、ここは非常に大事な構成要件だと思いますし、それから異常接近、海賊と思われる船が襲われる船に異常に接近してくる、あるいはつきまとう、あるいは進路を妨害する、これは具体的ですね。こういうことがあり、凶器を準備しているというようなことになれば、これは海賊ですね。

 そういうものに対して、今、海上警備行動で有効に対処できますか。それで、相手が日本の旗じゃないんですよ。どこの船かわからないというようなものがそういう状況に遭っている場合にどうなんでしょう、防衛大臣。

浜田国務大臣 先生の御指摘のように、そういう意味では、基本的に今の海上警備行動の中で限られたものをというのがあるわけですから、それを出る、そこの判断のところで、大変、艦長等指揮官が悩むところがあろうかと思います。

 ですから、今回の法案によって、新法によって足していただければ、要するに、艦長自身、指揮官が迷うことのない部分が出てまいりますので、そういった意味においては、今回の新法ができるとかなりの部分がカバーできるというふうに私自身は思っておりますので、先生が御指摘のように、この法案を早く通していただければ、より一層やりやすくなるということだと思います。

冬柴委員 護衛艦二隻、二百人ずつ四百人の隊員が、大変厳しい自然環境の中で、緊張の連続、しかも相手はロケットランチャーとか機関銃を持っているんですね。そういう中で仕事をされるのに、法的に、今指摘したように、まだ足らない部分がありますね。八十二条だけではどうにも足らない部分があると思います。

 もっとはっきりしているのは武器使用の部分じゃないでしょうか。相手が撃ってこなければ、いわゆる刑法三十六条の正当防衛、あるいは三十七条の緊急避難というような、相手が撃ってきて、こちらがその生命身体等に危害が及ぶというおそれがなければ、こちらから発砲もできないというのが現状ですね。

 この護衛艦には海上保安官が八名搭乗させていただいているということですが、それでいいですか。

金子国務大臣 結構であります。

冬柴委員 なぜ四百人の中へ八名が必要なのか。これは、その八名は司法警察職員としての権限を持っているからなんですね。自衛隊の隊員の方はそれを持っていられないんですね。したがいまして、凶悪犯、例えば死刑または無期もしくは三年以上の懲役または禁錮以上に当たるような凶悪犯が、こちらへ向かってくれば、これはまだ公務執行妨害罪も公海上ではだめですね、自分の身に、すなわち自己または他人の生命身体等を防衛するためにやむことを得ざるという事態がないとこれは武器をもって対抗できない、しかも、司法警察職員としての立場がありませんので、そういう凶悪犯が今罪を現に犯した、そしてまた犯しつつある、逃げる、これを追いかけられないんですね。どうですか、防衛大臣。

浜田国務大臣 先生のおっしゃるとおりでございまして、これは我々は行政警察権でありますので、司法警察権を持っておりませんので、逮捕権がございませんから、先生のおっしゃるとおりであります。

冬柴委員 立法府としては、本当に一日も早く、こんな不正常な状態は、この立法を成立させることによって、安心して我々の生命線であるシーレーンというものが守られる、これは、護衛艦を中心にしますけれども、本来、一義的に権限を、責務を持っている海上保安官も同乗させていただいて、そしてそういうものを遺憾なく取り締まることができるようなことでなければならないというふうに思います。

 また、武器使用の問題で、今回、停船射撃という部分が警察官職務執行法第七条以外に追加されました。そして、六条後段、それから八条二項によって海上自衛隊の方もそういうことができる、そういうことでありますが、これは、そうは言うけれども、非常に要件が厳しいですね。

 それで私は、この法律で非常に工夫されたなと思うのは、停船射撃をする要件の中に、いわゆる異常な接近とかつきまといとかあるいは進路妨害という、本当に具体的なメルクマールをそこに要件として入れられたということ、私は、これは非常にすぐれた立法だと思うんですが、それ以外にもたくさん要件はありますけれども、そういう要件を満たしたときに停船射撃が許される、こう理解しているんですが、それでいいでしょうか。

大庭政府参考人 海賊対処法案におきます停船射撃に関するお尋ねでございます。

 海賊行為への対処は警察活動でございますので、その武器使用の基本は警察官職務執行法七条の規定でございます。同時に、ソマリア沖の海賊の実態というものを踏まえまして、さまざま検討をいたしましたわけでございますけれども、本法案において国内法上の犯罪として規定された海賊行為のうちに、特に海賊が船舶で被害船舶に接近する、つきまとう、進路妨害をするといったような行為につきましては、その後の重大な危害の発生、侵入して、さらに船舶を強取するというような、次に続く、より大きな危害の発生というものが容易に想像されますので、それを回避するためには、こういう行為を行っている段階で抑止するという必要性が高いんだ、こういう認識でございます。

 したがいまして、本法案におきまして準用する警察官職務執行法第七条の規定をいわば補完するものとして、本法案第六条などにおきまして、海賊船舶を停船させるための武器の使用に関して規定を整備したというものでございます。

 本条に基づきます武器の使用につきましては、個別の状況によって具体的に判断をしながら、効果的に、必要な範囲内で使っていくというようなことになると考えております。

冬柴委員 細かい話ですけれども、凶器を、例えばロケットランチャーとかをゴムボートの中に積んでいる、通信機とか機関銃、こういうものを現認して、そこへ海上保安官が乗り込んでいった場合、抵抗された場合に、公務執行妨害罪として武器を使用し逮捕する、本法が成立すればそれは当然できるんですが、成立する前はいかがですか。大庭さん、成立する前はどうですか、凶器を準備しているというとき。

大庭政府参考人 御指摘のように、この海賊対処法案が成立をいたしますと、第九条におきまして、我が国の公務員の職務の執行及びこれを妨げる行為につきまして、この海賊行為への対処に関する活動について適用ができるということになりますので、そういうことが可能になるわけでございますけれども、この法律が整備される以前におきましては、外国船の中に乗り込んでいって職務を行おうといたします公務員に関しては、その規定がないということでございます。

冬柴委員 恐ろしいですよ。ロケットランチャーとか機関銃を持っているところへ乗り込んでいって、こちらは武器を使えないんです。もうこんな状態は一日も早く、この法律が成立すればこれはできますし、逮捕、勾留できます。

 そのほか、逮捕する、これは現行犯逮捕は令状なしでもできるわけですが、逮捕して、その逮捕のままで置いておく、そしてまた、それを勾留するということになりますと、憲法三十三条で令状主義、裁判官の令状がなければ逮捕できない、あるいは勾留できない、憲法上、そういう規定があります。弁護人の選任を告知することも必要です。そこら辺は、この法律、公海上、ソマリア、一万二千キロも遠い船の上での話ですから、そこで逮捕し勾留した人たちをどういうふうにするのか、その点について法務省の方から答弁をちょうだいしたいと思います。

佐藤副大臣 釈迦に説法ではございませんが、専門家の専門家であります先生に。

 ただいまの御質問の点でございますが、これは他の事件と同様、日本におきまして被疑者の身柄とともに事件の送致を受けた検察官が、裁判官に対しまして勾留請求を行うということになります。

 具体的には、海上保安官が海賊を逮捕した場合、例えば沿岸国でございますね、ジブチになるのか、そういう近隣の諸国でございますが、を経由して、航空機で我が国に海賊の身柄を送致するなどして、できるだけ速やかに検察官に送致を行いまして、これを受けた検察官において勾留請求を行うなど所要の刑事手続を進めることになるわけでございます。

 以上でございます。

冬柴委員 そういうことになるんだろうと思うんですが、そのためには、今ジブチという名前が出ましたけれども、外務大臣、大体、そういうようなことの手法、逮捕してその身柄をこちらへ、日本へ送ってもらわなきゃしようがないわけですけれども、そのときの通過権等についての交渉とか、そういうことはやっていらっしゃるんでしょうか。

別所政府参考人 逮捕した者のほかの国を通過させるということについての話でございますが、もちろん、その時々の状況に従いまして、どの国を通過するのかということを判断して、その適当な国と協議するということが当然あり得るわけでございますが、御指摘のジブチについて申しますと、四月三日に中曽根外務大臣とユスフ・ジブチ外務・国際協力大臣との間で署名、書簡の交換を行った自衛隊等の地位に関する交換公文というものがございます。その第十五パラグラフでございますけれども、そこにおきましては、拘束した海賊の移送について、ジブチの権限ある当局と緊密に協力して、逮捕した者を護送するためにジブチの領域を通過することが認められる、あらかじめそういうことが認められるという規定があるわけでございます。

冬柴委員 それで安心いたしました。逮捕とか勾留とか、時間が限られておりますけれども、これはやむことを得ざる理由ということで、検察官が裁判官にそのことを疎明してこれは承諾は得られるだろうけれども、そういう手続がしていなければ、逮捕したって、これは船の上にそのまま置いておくわけにいかぬし、こういうことが必要だと思います。

 それからもう一つは、先ほども出ましたけれども、我が国には八十機以上のP3Cという非常に優秀な、対潜哨戒機ですけれども、哨戒機を保有していますね。こういうものを活用するということは、私は、護衛艦の働き以上に、非常に広い海域を知ることができるわけですし、海賊にとっても大変な抑止力になると思うんですね。こういうことについてお考えを伺いたいし、もしそうなれば、今のお話と同じように、その基地をそこへつくってもらわなきゃいけませんし、行政協定等も結んでもらわないかぬのだけれども、まずはそういう思想について防衛大臣から御答弁いただき、それについて、条約とか協定とかいうことについて外務大臣の方から御答弁をちょうだいしたいと思います。

浜田国務大臣 ソマリア・アデン湾における日米関係船舶の護衛を効果的に実施するためには、先生御指摘のように、固定翼哨戒機P3Cによる哨戒活動を実施することが重要であることから、現地調査やジブチ政府等の関係機関と調整を行うなど、必要な準備を実施してきたところでございます。

 具体的な活動内容につきましては検討中でありますけれども、できる限り早期に派遣できるように所要の準備を進めてまいりたいというふうに思っておるところであります。

別所政府参考人 先ほど冬柴先生が御指摘いただきましたジブチとの間では地位協定というものがあるわけでございますが、それ以外に、どういう活動を行うかによって、それぞれに適した約束の仕方、合意の仕方はあろうと思います。その場その場で、そのときに対応して相談して決めていく短期的な約束というふうなものもあろうと思いますし、ジブチのようなケースもあろうと思います。

 ただ、一般的な形で活動していくということでございましたら、必ずしも条約、協定的なものが常になければならないということではない、その場その場でいろいろ相談していくということによっても解決できる問題だろうと思っております。

冬柴委員 時間も迫ってきましたけれども、日本は海賊対策にはすばらしい実績を残している部分があります。

 それは、マラッカ・シンガポール海峡、マ・シ海峡に多発した海賊を、件数はまだありますけれども、減らしているということについて、過去の流れ等、海上保安庁長官がいいと思うんですが、御答弁をいただき、それと同じようなことがこの海域においてもやはり工夫されるべきだし、そしてまた、今後、その足らざるところは日本の支援等で、やはりそういうことができなければ、護衛艦をいつまでもそこへ出して、そしてやっているというわけにはいかないと思うんですね。

 根本的なところは小池さんからもいろいろなお話がありましたので深入りしませんけれども、マラッカ・シンガポール海峡について、海賊について、どういうことがあって、そしてどうなったのか、そこについて御答弁をちょうだいしたいと思います。

岩崎政府参考人 御指摘のとおり、十年以上前、マラッカ・シンガポール海峡を中心に非常に海賊が多発いたしました。海上保安庁では、そうした事案が発生するときに、巡視船等を派遣するといったこともやっております。

 それとあわせまして、今委員御指摘のとおり、沿岸国の海上保安能力を向上させるのが非常に重要だということでございますので、私どもの人員を長期に派遣する、あるいは一緒に訓練をする、それから、外務省の御指導も得ながら地域の情報共有センターをつくっていく、そうした周辺諸国の海上保安能力の向上というのに取り組んできたところでございます。そうしたこともあって、また沿岸国自体の努力ももちろん十分あったと思いますけれども、このような形で、東南アジアのマ・シ海峡の海賊は激減したという実績がございます。

 今回のソマリア・アデン湾周辺についても、こうした知見を生かしながら、外務省とも協力しながら、海上保安庁としても努力していきたいと思っております。

冬柴委員 インドネシアのユドヨノ大統領とも何回かお会いしましたが、このような話をしたこともありました。そのときに、日本から、巡視船といえばあれだけれども、巡視艇ぐらい提供して、そしてこういうことをやってほしいねという話もしたんですが、何かこれが武器輸出に当たるとか、えらい難しい話はあったんですけれども、こういうことも実現をして、そして今、岩崎長官が言われたように、見るべき、際立った海賊行為の減少というすばらしいことが起こったということは、これは今回の部分についても、長い目では参考にしなきゃならないというふうに私は思っております。

 ちょっと外務大臣から、どうぞよろしくお願いします。

中曽根国務大臣 今、海上保安庁から御説明がありましたけれども、委員がおっしゃいますように、マラッカ・シンガポール海峡における経験というものを生かすのは大変大事なことでございます。

 マラッカ海峡におきましては、アジア海賊対策地域協力協定、いわゆるReCAAP、これを主導するなどいたしまして、我が国としてはアジアの海賊対策において大きな役割を果たしたわけでございますが、ソマリア沖の海賊対策といたしまして、二〇〇九年、ことしの一月にジブチでIMOのソマリア周辺海域海賊対策地域会合というもの、いわゆるジブチ会合が開催されまして、我が国も、たしかオブザーバーとしてであったと思いますが、参加をいたしました。そこで行動指針などが採択されたわけでありますが、我が国といたしましては、アジア地域での経験というものもそこで御披露して、皆さんに参考にしていただければということで説明もしたことがございます。

 イエメンやジブチ等の周辺国の海上取り締まり能力をさらに向上させたり、今申し上げました過去の経験を生かして、今後もこの地域の海賊対策に役立てていきたいと思っております。

冬柴委員 どうもありがとうございました。

 どうぞ頑張ってください。

深谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十一日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑を続行いたします。照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。野党筆頭理事の計らいで、質問順序を、順番を変更していただきました。感謝を申し上げます。

 結論を先に申し上げますと、私は、自衛隊法第八十二条による海上警備行動にも海賊対処法案にも反対であります。海上警備行動は、憲法のみならず、自衛隊法三条にも明確に違反をするものだからです。そもそも、海上における治安の確保は海上保安庁の任務であり、海上自衛隊の任務ではございません。

 海賊対処法案も、憲法第九条に違反をし、集団的自衛権の行使に道を開くものであります。また、海賊対処法案では、保護の対象船舶に限定がないこと、ソマリア沖海賊対策を理由にして提出された法案でありながら、地域や期間の限定のない一般法、恒久法であること、海賊行為の定義が極めてあいまいであること、海賊行為を生み出す社会的原因の解決のための国際協力、日本の非軍人による平和的貢献策がないことなどの問題を多く含んでおります。

 さて、去る四月四日、海上警備行動中の護衛艦「さざなみ」がシンガポール船籍のタンカーから救助を求められたという事案について、事実関係を詳細に明らかにするよう、防衛省に尋ねます。

北村副大臣 お答えいたします。

 ただいま御質問の件でありますが、四月四日の日本時間で二時四十分ごろ、かねて護衛活動実施中の護衛艦「さざなみ」が、護衛艦の南約七キロメートルに位置する護衛対象外のシンガポール船籍のタンカー、オーシャン・アンバーから、小型船舶が接近している旨の通報を受領しました。「さざなみ」は、二時五十分ごろ、サーチライトを照射するとともに、二時五十二分ごろ、指向性大音響発生装置により呼びかけを実施いたしました。その後、二時五十九分ごろ、小型船舶が停止したことを確認いたし、三時二十九分ごろ、「さざなみ」はその対応を終了いたしました。

 以上であります。

照屋委員 いろいろなマスコミ報道によりますと、その際、はしけ船の後ろに三隻の小型船をつなげて航行していた、あるいは、報道では不審船四隻であったというのもありますが、どっちなんでしょうか。

北村副大臣 お答えいたします。

 報告によれば、小型ボート三隻を曳航していたというものであります。

照屋委員 去る四月十一日、同じく海上警備行動中の護衛艦「さみだれ」がマルタ船籍の商船から救助を求められたという事案について、事実関係を詳細に明らかにしてください。

北村副大臣 お答えいたします。

 四月十一日の日本時間で十五時八分ごろ、アデン湾の西方において待機いたしておりました護衛艦に対し、護衛艦の北西約十八・五キロに位置する護衛対象外のマルタ船籍の商船、パナマックス・アンナ号から、小型船舶が接近している旨の通報を受信し、護衛艦「さみだれ」が情報収集を開始しました。「さみだれ」は現場に向けて航行いたし、十五時三十分ごろ、指向性大音響発生装置により呼びかけを実施するとともに、十五時三十四分ごろ、艦載ヘリを発艦させ、状況確認を行い、十六時十五分ごろ、当該ヘリは「さみだれ」に着艦、帰艦をいたしました。

 本件につきましては、小型船舶が停止していたこと、商船との距離が離れていたことから、十六時四十分過ぎ、「さみだれ」はその対応を終了いたしました。

 以上です。

照屋委員 国際海事局の発表によりますと、四月の二日にも、マルタ船籍の商船に対して、日本とインドの派遣部隊のヘリが急行して不審船を追っ払ったということのようですが、事実関係はどうなんでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のような、四月二日に、マルタ船籍の商船からの救援要請に基づいて、海上自衛隊の護衛艦とインドの部隊が合同で救助に当たったというような事実はございません。

照屋委員 私は、自衛隊法八十二条による海上警備行動では、警備対象が、日本船籍、日本人、日本の貨物を運ぶ外国船など、いわゆる日本関連船舶に限られておると理解をしており、去る四月四日のシンガポール船籍のタンカーや、四月十一日のマルタ船籍商船への救援活動は、海上警備行動の警備対象外船舶への活動であります。

 こういうのが認められますと、自衛隊法第八十二条を根拠に派遣された海上自衛隊の警備活動の脱法的行為、なし崩し的な拡大行為になってしまうのではないでしょうか。浜田大臣の見解を求めます。

浜田国務大臣 四月四日及び十一日に護衛艦が実施した対応につきましては、海上警備行動の保護対象に該当しない船舶から、小型船舶が接近している旨の通報を受信したため、人道上の観点から、サーチライトの照射、指向性大音響発生装置による呼びかけ、状況把握のための艦載ヘリの飛行といった強制力の行使を伴わない行為として行ったものであり、海上警備行動の脱法行為、なし崩し的な拡大解釈といった御指摘は当たらないというふうに我々は考えておりまして、問題がないというふうに思っているところであります。

照屋委員 今、浜田大臣の御答弁を聞いていると、強制力を使っていないので問題はない、こういう趣旨でありますが、私は、停船命令などの強制力を発動しなければ自衛隊は何をやってもいい、こういうことにはならないと思うんですね。

 強制力の行使というのは、大臣、何を、どういう行為を指すんでしょうか。

浜田国務大臣 それは、いわゆる警告射撃等、いろいろな形のそういった警護任務にかかわること、そしてまた、今回の場合においては、そういった呼びかけがあったときに、我々として最低限できることをやったというふうに思っておりますので、先生のおっしゃるような強制力というか、呼びかけと、ヘリを飛ばしてそれを見ただけでございますので、その時点でとまったということでありますので、そういった意味では、本来我々の与えられている任務の範囲内でやったというふうに申し上げているところでございます。

照屋委員 昨日の本会議で、麻生総理大臣は、四月四日と十一日の行動について、その法的根拠は船員法十四条だ、こうおっしゃっておりました。

 国土交通大臣に尋ねますが、船員法十四条の構成要件と立法趣旨は何でしょうか。

加納副大臣 船員法十四条の立法趣旨並びに構成要件についてお尋ねがございました。

 船員法十四条は、「船長は、他の船舶又は航空機の遭難を知ったときは、人命の救助に必要な手段を尽さなければならない。」ということを規定しております。

 これは、海事分野でのシーマンシップといいますか国際慣習がございまして、遭難者の人命救助については船長の義務がある、船長は、人命は何よりもとうといからこれを救わなければならないということを規定したものでありまして、今具体的なことをお尋ねになられましたけれども、実際にどのようなことをやるのかという人命救助の手段は、その事案事案、個別的、具体的な事案によって船長の判断にゆだねられているというのが国際的な理解でございます。

照屋委員 船員法十四条の条文は私も存じております。その十四条で定める船舶の遭難というのは、いわゆる海難のことでありましょう。航海中の船舶に生ずる危難のことだと私は思います。

 我が国には海難審判法という法律もあり、海難と遭難、そういうことについては厳密な定義がありますが、私は、遭難、海難というのは、船舶の場合、例えば衝突だとか座礁だとか沈没、浸水、転覆、火災、機関損傷などをいうのではないかと思うんです。先ほどの防衛副大臣の答弁のように、小型船舶が接近をしている、そういう信号があり、無線があり、それだけの外形的な事実で船員法十四条が本当に根拠になるんでしょうか。

加納副大臣 お答えいたします。

 先生から、海難と遭難との関係、それから遭難の定義はどういうことかということがございましたが、船員法第十四条では、先生御案内のとおり、条文上、遭難の原因とか要因、こういうことであるということについては具体的に定めておりません。事件だとか事故等を引き起こした原因とか要因が何であれ、現実に大切なことは、船舶や航空機が急迫した危険に陥った状態にあるということを言っておりまして、この場合においては、当該船舶や航空機に搭乗している人員や漂流中の人員の救助を義務づける、こういう規定でございます。そういうふうに理解しております。

照屋委員 船員法十四条で定める遭難の場合に、遭難信号についての国際的な取り決めはどうなっておりますか。

岩崎政府参考人 遭難信号でございますけれども、船舶間の通信というのは、今でこそ電話でありますとか衛星電話でありますとか、いろいろ進んでまいりましたけれども、やはり通信がうまくいかないときには、モールス信号でありますとか手旗でありますとか、そういういろいろな手段を使わなきゃいけなかった時代がございます。そういうときにどういう共通のルールでやるかというのを、IMO、国際海事機関で定めておりまして、それが国際信号書という形で本にまとまっております。そうした無線電話でありますとか旗を使う場合でありますとか、そういうやり方を取り決めたものが国際信号書でございます。

照屋委員 国際海事機関が採択した国際信号書というものがありますね。そうすると、防衛副大臣、四月四日のシンガポール船籍のタンカー、四月十一日のマルタ船籍商船からの救助無線は、遭難信号の国際的な取り決めに従ったものだったでしょうか。

徳地政府参考人 お答えをいたします。

 四月四日それから十一日に護衛艦が行った対応につきましては、先ほど御答弁ありましたとおり、どちらも国際VHFで、小型船舶が接近している、こういう通報を受けて対応したものでございますので、まさにこれらの船が急迫した危険に遭遇しているというような判断で行ったものでございます。

照屋委員 これ以上議論はしませんが、私はやはり、遭難救助とはいえ、国際信号書に従ったものであるかどうか、そもそも、小型船が接近をしている、こういう通報を受けただけで、海上警備行動中の海上自衛隊が活動することは法律違反だ、このように考えております。

 さて、海賊対処法案の具体的内容についてただす前に、同法案の基本認識を浜田防衛大臣に尋ねます。

 この法案は、ソマリア沖海賊対策を立法理由にしておりますが、地域や期間の限定のない一般法、恒久法ではございませんか。

浜田国務大臣 基本的に、海賊の問題が起きてきて、それに対して、我々とすれば、一義的というか応急措置として海警行動を出させていただきました。しかし、それは、法律として、やはり我々、警護任務等々を含めて、極めて限定的な中で、この海賊に自衛隊を出すということも含めて、かなりの抑えをしながらこの法案をつくってきているところでございます。そういった意味では、海賊の定義等も含めて、海賊対処に対する法案をつくる必要があるということの中で、今回の法律を提出したわけでありますので、我々の、防衛省・自衛隊の一般法をつくるためにこの法律をつくったわけではございませんので、そういったところも勘案しながら、国際的な協力も含めて、やれる態勢をつくったということだというふうに思っているところでございます。

照屋委員 去る三月十三日に浜田大臣が発動をした海上警備行動では、ソマリア・アデン湾と明確に地域を限定しております。ところが、この海賊対処法案にはそういう地域や期間の限定はない、いわゆる一般法、恒久法ではありませんか。

浜田国務大臣 いや、これは、当然、一般法とかそういったたぐいのものではなく、我々とすれば、海賊に対処する法律案というふうに考えているところであります。

照屋委員 どうも大臣の答弁、要領を得ないんですが、私は、この海賊対処法案の全条文を精査すると、とても地域を限定した、期間を限定した特別法とは思いませんが、本当に一般法、恒久法ではありませんか。

金子国務大臣 今度の新法については、暫定法でもありませんで、恒久法として海賊対処法案、第一義的には海上保安庁がその責務を持たせていただきますけれども、どうしても対応できない場合ということで、海賊行為に対処するために特別の必要がある場合に、防衛大臣が、海警行動にかわって、今度は海賊対処行動と法律にさせていただきますけれども、そういう中で海の安全を図っていただくという、委員おっしゃるように、この海賊対処法は恒久法であります。

照屋委員 そうすると、国土交通大臣に尋ねますが、例えば、あの有名な反捕鯨団体のシーシェパードなど、これはこの法案で対象になりますか。

金子国務大臣 なりません。

 しかし、SUA条約というものが別途ありますので、捕鯨の場合には、やはり捕鯨というものを海賊対処、海賊行為ということは、世界的には位置づけられない。したがって、SUAという条約が別途ありますが、これでどう対応できるかということは、また政府としても考えたいと思っております。

照屋委員 あと一点の基本の質問は、保護対象船舶には限定は付しておりませんね、浜田大臣。

浜田国務大臣 先生、先ほどから、法律の関係で、要するに地理的要件その他いろいろなことが書いていないというふうにおっしゃっておりますけれども、しかし、対処要領をこれから策定して、法律ができたら対処要領をつくってその中で対応していくことになっていくわけでありますので、その点は御心配は必要ないのかなというふうに私は思っているところであります。

照屋委員 今度の海賊対処法案では、自衛官と海上保安官の権限には本質的な違いはありません。これは、海上保安庁法二十五条が定める軍民分離の原則に違反をすると思いますが、国土交通大臣の見解を伺います。

金子国務大臣 本法案で、海賊対処への行動、これは警察行動と位置づけております。本法案に基づいて、自衛官及び海上保安官が共同で海賊対処行動をしたとしても、その警察活動としての位置づけが変わるわけではありませんので、海上保安庁法二十五条で定める軍隊の機能を営むと認められるものと解釈してはならないと思っております。

照屋委員 国土交通大臣にあと一点お伺いしますが、これは防衛大臣でしょうか。現在、海上警備行動の発令を受けてソマリア沖・アデン湾に出動している護衛艦二隻を含む海上自衛隊の全陣容で、アデン湾を一往復するのに要する経費は幾らでしょうか。人件費、燃料費など、主要な項目別に詳細を明らかにしてください。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾に派遣されている二隻の護衛艦が日本関係船舶を護衛して一往復するためには、当然のことでございますが、人件費、燃料費等の費用が必要となります。これらの費用につきまして、護衛活動の状況によっても異なりますので、一概にお示しするのは困難でございますし、そもそも護衛活動にかかった経費全体の中から一往復分のみ、そこの経費だけを抽出してお答えすること自体、非常に困難であると考えております。

照屋委員 海賊対処法第七条で定める海賊対処行動と国会の関与についてお伺いをしますが、私は、自衛隊の行動をチェックしコントロールすることは、国権の最高機関たる国会の責務であると考えております。自衛隊の海外活動は、武力行使に当たる危険性があるため、シビリアンコントロールである国会承認が不可欠であります。

 ところが、海賊対処法七条を見てみますと、内閣総理大臣の権限は防衛大臣の対処行動に対する承認だけであり、防衛大臣は、急を要する場合は対処要項を提出せず、行動の概要を内閣総理大臣に通知をすれば足りることになっております。ここには、国権の最高機関である国会やあるいは内閣総理大臣に対する配慮さえ見られません。

 防衛省・自衛隊が国会や内閣総理大臣より優位に立つことを認める法案ではありませんか。大臣に伺います。

金子国務大臣 第七条で、御指摘のように記載されております。

 ただ、本法案に規定しております海賊行為というのはまさに犯罪行為でありまして、それへの対処というのは警察行動でありますので、海上警備行動、通称海警行動と言っておりますけれども、海警行動と同様に、国会の事前承認に関する規定は設けなかったものであります。

 ただ一方で、本法案では、内閣総理大臣が海賊対処行動を承認したときは、海賊対処行動の必要性、区域、期間等を定めた対処要項の内容を遅滞なく国会に報告することとしております。海賊対処行動では、自衛隊を的確な文民統制のもとで運用することを言うまでもなく求められており、これらの報告によりまして、国会への説明責任は十分に果たすことができると思っております。

照屋委員 終わります。

深谷委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 本日から海賊対処法案の委員会での議論がスタートをしたわけでございますが、私、この問題については、午前中、与党の先生方からは、あるいは閣僚からは、一刻も早く成立をさせてもらいたいという御発言があったわけでございますが、本法案では、防衛省・自衛隊の皆さんに任務遂行のための武器使用の権限を与えるという大変重要な条文が入っている。さらに、本来海上保安庁の任務である、これは政府もそうお認めになっていらっしゃるわけでございますが、海賊に対する海上保安庁の任務を海賊対処行動という形で自衛隊にお任せする、特別な必要がある場合はということでございます。

 非常にたくさんの議論をしなければならない課題があると思いますので、まず慎重に、十分に、国民の皆さんにも、なるほどね、そういうことなのかということがしっかりと伝わるように議論をしなければならないというふうに思います。

 その前に、実は横須賀のアメリカの原子力空母ジョージ・ワシントンについて非常に気になる報道がございましたので、一点、確認をさせてください。

 新聞報道によりますと、米海軍横須賀基地に昨年九月に配備された米原子力空母ジョージ・ワシントンから出た放射性廃棄物約一トンが、三月二十八日、米海軍がチャーターした貨物船に積み込まれ、米国に向けて搬出されたという報道がございます。これについて、外務省さんに事実を確認していただきたいということをお願いしてございますので、確認できた事実を教えていただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 ジョージ・ワシントンにつきましては、平成十八年四月に公表した米原子力艦の安全性を確認したファクトシートを含む、米原子力艦の安全性に関する米国政府の従来からのコミットメントの範囲内でいろいろなことが行われる、作業が行われるということを説明を受けているわけでございます。

 今般の作業につきましては、アメリカからもいろいろな説明を得ているところでございますが、二〇〇九年三月二十八日に、事前に搬送用ボックスに包装され特別の鉄製コンテナに移された約二千三百ポンドの低レベル放射性物質が空母ジョージ・ワシントンから軍事海上輸送コマンドの船舶であるノーブルスターに移されたが、これは処理のため米国へ移送するためである、コンテナ直近での放射線量は自然界に発生しているバックグラウンド放射線量と区別がつかない程度であった、低レベル放射性物質の量は、人の健康、環境または海洋生物に懸念を及ぼすものではない、この物質の移送は日本国政府と米国海軍との間で協議された手続に合致した形で行われたというような趣旨の説明を受けております。

 私ども、これは通常のメンテナンスの過程で出たそのようなものをアメリカ本国に移送するというために、今申し上げたようなことで作業が行われたというふうに理解をしているところでございます。

川内委員 御説明の前段で、ファクトシートを含む諸手続に従って行われるという御説明がございましたが、ファクトシートを含む、その含まれているものの中に、エードメモワールという手続も入っていますか。

梅本政府参考人 お答えいたします。

 ジョージ・ワシントンが横須賀に入る際に、まさに今、原子力艦の安全性を確認したファクトシート等について、いろいろな詳細な状況をアメリカ側から提供を受けているわけでございます。そして、これらのファクトシートあるいは今お話のありましたエードメモワールによりまして表明された累次にわたる安全性の保証等については、そのコミットメントが再確認をされている、こういうことでございます。

川内委員 エードメモワールも入っているということでございますが、エードメモワールには放射性廃棄物を船の外には出さないということが書いてあるはずですが、エードメモワールにはそのように書いてあるということを確認していただけますか。

梅本政府参考人 御答弁申し上げます。

 一九六三年だったと思いますが、そのエードメモワールにおきましては、「通常の原子力潜水艦の」、これはその後水上艦についても当てはまるということでございますが、「通常の原子力潜水艦の燃料交換及び動力装置の修理を日本国又はその領海内において行なうことは考えられていない。 放射能にさらされた物質は、通常、外国の港にある間は、通常の原子力潜水艦から搬出されることはない。例外的な事情の下で、放射能にさらされた物質が搬出される場合においても、それは、危険を生ずることのない方法で、かつ、合衆国の港においてとられる手続に従い行なわれる。」云々という記述がございます。

川内委員 今般の放射性廃棄物をジョージ・ワシントンの外に移したということについては、エードメモワールに反しているのではないかというふうに私は思いますが、外務省はどのように考えられますか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の物質は、アメリカ側の説明によりますと、ジョージ・ワシントンのメンテナンスの際に生じたふき取りのための布、ビニールシートなどだということでございます。

 そして、今回アメリカ側ともいろいろ確認をしておりますけれども、あくまでもファクトシートを含む従来からのコミットメントの範囲内で行われておるという説明があり、私どももそう理解しております。

川内委員 アメリカ側からの説明を理解しているということですが、船の外に持ち出さないよとエードメモワールに書いてある。しかし、持ち出されたということについて、外務省としてはアメリカの説明をそう理解しているというのは、ちょっと私にはよくわからないんですけれども、どういうことですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、今回運び出されたものは非常に低レベルの放射性物質であった。そしてまた、コンテナに入れておりますが、自然界に発生しているバックグラウンド放射線量と区別がつかない程度のものであったということは確かでございます。

 それでは、これが今申し上げたエードメモワールに言うところの廃棄物なのかということでございますが、これは、エードメモワールそのものにも「固形廃棄物は、承認された手続に従い、通常の原子力潜水艦によって合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に運ばれたのち包装され、かつ、合衆国内に埋められる。」というふうにありまして、このような固形廃棄物が出てくるということはエードメモワールにおいても想定をされているというところでございます。

川内委員 だから、それは、船の中にとどめ置いた上でアメリカに持ち帰って処理しますよとエードメモワールに書いてあるんでしょう。

 それから、非常に低レベルとおっしゃったけれども、非常に低レベル、非常にという言葉がつく。どういう根拠で言っているんですか。

梅本政府参考人 自然界に発生しているバックグラウンド放射線量と区別がつかない程度であったということでございますので、それを私がちょっと、非常にと申し上げましたが、その言葉は、非常にという言葉をつけなくても、今申し上げたようなことで……(川内委員「低レベルというならわかるよ。非常には抜いてくださいよ」と呼ぶ)低レベルということで結構です。

 それから、申し上げましたように、エードメモワールそのものにも「固形廃棄物は、承認された手続に従い、通常の原子力潜水艦によって合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に運ばれたのち包装され、かつ、合衆国内に埋められる。」ということでございますので、この固形廃棄物が先ほどのような処理を受けるということは想定をされているということでございます。

川内委員 押し問答になりますから、私も詳しく現場で見ていた人たちに話を聞いた上で、引き続き、また次の機会に質問をさせていただきます。

 それでは、海賊について国土交通大臣から御説明をいただきたいのですが、なぜソマリア沖の海賊に対処するためには海上保安庁ではできないのかということを、もう一度御説明いただきたいと思います。

金子国務大臣 第一義的に海上保安庁が海上の運航の安全の責務は負っておりますが、今度のソマリアの一件につきましては、距離が非常に長い。距離が長いということと同時に、海賊行為をしている者がロケットランチャー等々の重火器を使っている。

 これに対処するためには、ロケットランチャーの被弾を受けても、それに対応して海賊対処行動をするという能力がある巡視艇、これが、一そうじゃできません、複数そうで取り囲むように、あるいは、今自衛艦がやっていただくようなやり方、いろいろやり方はあるかと思いますけれども、重火器に対応できる装備、かつ、長距離でやりますので、常時継続的に行動をすることができる能力、この二点がやはり一番大きな点であります。

川内委員 海上保安庁には、海賊対処、海賊対策のための組織がきちんとありますか。

岩崎政府参考人 私どもの海上保安庁警備救難部国際刑事課の中に、海賊対策室という組織がございます。

川内委員 防衛省の中には、あるいは自衛隊の中にはあるんでしょうか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 防衛省・自衛隊の中におきましては、特に海賊対策のみ、これに専従する、そういうような組織は基本的にはございませんけれども、既存の能力なり組織を活用して、できることをやるということになっております。

川内委員 海上保安庁は、今まで民間船舶と協力してというか、民間船舶と合同で海賊対策のための訓練を行ったことがおありになりますでしょうか。

岩崎政府参考人 私どもの船、東南アジアの方に、年に平均すると大体一、二回、沿岸国との海賊対処の訓練のためにもありますけれども、その航海の途中に民間船舶と一緒になって海賊対処の訓練をするというのは通例やっております。

川内委員 防衛省・自衛隊は、民間船舶と協力して海賊対策、海賊対処のための訓練というものはやられたことがありますか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省・自衛隊におきましては、民間船舶と協力したような形で海賊からの防護ということを目的とした訓練というのは、これまで行ったことはございません。

川内委員 それでは、先ほど金子大臣は、ソマリアまで行く船が複数そうないのだということをおっしゃられました。ソマリアまで行って海賊対策を行える船艇としては、海上保安庁が所有する船、運用している船では、何という船があるんでしょうか。

岩崎政府参考人 長距離の航行能力を有して、それから、ロケットランチャー等の武装に一定程度耐えられる、これは「しきしま」という船が一隻ございます。

川内委員 私がこの前横浜にお伺いして「しきしま」を見せていただいて、その「しきしま」のそばには「やしま」という海上保安庁の巡視船もあったわけでございますけれども、この「やしま」と同じクラス、「みずほ」というのが何か名古屋にまたいるらしいんですけれども、「やしま」と「みずほ」というものの排水量はどのくらいあるんでしょうか。

岩崎政府参考人 私どもの船は、商船の、民間船舶の方に分類されておりまして、通常用いますのは総トンというのを用います。排水量トンというのは、普通、軍艦なんかに使われる概念でございますが、その「やしま」「みずほ」というものの排水量トンでございますけれども、これははかり方がいろいろございまして、排水量トンというのは、船が浮かんだ状態で排水をした、沈んだ面積をトン数換算するわけでございますけれども、どういう状態で船を浮かんだ状態と数えるかというのがいろいろやり方がございます。私どもの方で満載状態での排水量というのは計算しておりますけれども、それで今言いますと、「みずほ」「やしま」約六千トン程度でございます。満載状態での排水量トンなので、ちょっと多目に出る数字でございます。

川内委員 それでは、「やしま」「みずほ」もかなり大きな船なわけですけれども、今ソマリア沖に海上警備行動で行っていただいている海上自衛隊の護衛艦二隻の排水量を教えてください。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほども御答弁ありましたけれども、私どもは、通常、排水量で言っておりまして、基準排水量という概念、これは満杯に積んだところから燃料と水を抜いた概念で申すわけでございますけれども、この基準排水量についてお答え申し上げますと、「さざなみ」が四千六百五十トン、「さみだれ」が四千五百五十トンでございます。

川内委員 「やしま」「みずほ」と今御説明があった「さざなみ」「さみだれ」護衛艦と比べると、「やしま」「みずほ」の方が、素人ですからごくごく素人的感覚で申し上げますが、排水量が大きいから大きな船だなというふうに思うわけでございますが、「やしま」「みずほ」ではソマリア沖の海賊対策の任に当たれないのだというのはなぜでしょうか。

岩崎政府参考人 先ほど大臣からもお答えさせていただきましたけれども、海賊はロケットランチャー等で武装しております。そうした重火器等によって攻撃を受けた場合に、被害をある程度食いとめながら業務を継続するということが必要だろうと考えております。

 「しきしま」にはそういう能力がございますけれども、あるいは護衛艦にもそういう能力があると聞いておりますけれども、「やしま」「みずほ」には、そういう形での船体の設定にはしておりません。

川内委員 海上保安庁の設置法というんですか、海上保安庁法を読むと、海上保安庁が装備する船とか航空機は任務にたえ得る装備を持っていなければならない、こう書いてあります。一方で、海賊対策というのは、長年日本の政府が積極的に取り組んできた課題ですよね。だからReCAAPなども主導しておやりになられてきたし、そしてまた、小渕先生のころだったと思うんですけれども、ネットで調べると、アジア海賊対策チャレンジ二〇〇〇とか、こういうものを採択したりしながら、海賊対策をしっかりやるよということで取り組んできた。

 そこで、私、地元は鹿児島ですから、トカラ列島の沖合で、不審船に、我が郷土の誇る第十管区海上保安本部が対処されたときには、その不審船も重火器を搭載していたというふうに認識をしておりますが、ちっちゃな巡視船、巡視艇で見事にこれを撃退したわけでございますけれども、そういう意味でいうと、「やしま」「みずほ」にその被弾したときの能力がないのだという説明は、にわかに、ああ、そうですか、そういう能力はないんですかというふうには私はとても納得できない。その被弾したときの能力がないというのは、何をもって能力がないとおっしゃっているのかを御説明いただきたいと思います。

岩崎政府参考人 ロケットランチャーという武器は、御案内のとおり、対戦車にも使える武器でございますので、相当強力な武器でございます。したがいまして、そうしたロケットランチャーを撃ち込まれた場合、これは船には穴があいてしまいます。それを防ぐほどの武装、厚さの鉄板の船をつくるというのは、スピードが犠牲になりますから、そういうふうにはつくりません。一定被弾して穴があいても、それでもまだ船が運航できる、業務ができる、こういうことの能力が必要な船ということで、「しきしま」タイプの船はつくっております。「みずほ」とか「やしま」には、そういうことを考えてつくっているわけではございません。

川内委員 そうすると、あれですか、日本の海上保安庁の船は、海賊対策は海上保安庁の任務である、海上の治安を確保するというのは海上保安庁の任務であるというふうに法律上も規定されているわけですが、海上の治安を維持するというときに、相手から何らかの攻撃を加えられるということを全く想定せず船を建造しているということになるわけですか。

岩崎政府参考人 私どもの船の設計に当たりましては、どういう相手が武装しているか、それからそういう事案がどこで起こるかというのをいろいろ想定しながら船をつくってまいります。

 マ・シ海峡の例で申しますと、こうしたマ・シ海峡の海賊、これは、ロケットランチャーを持っているような海賊はおりませんでした。基本的には、小銃でありますとか、そういういわゆる重火器といったもので武装している海賊でございました。それに対応するのに適した船ということで船をつくっております。

 それから、先ほどお話ししていました北朝鮮の不審船、これはロケットランチャーを持っております。ただし、この船は、北朝鮮の不審船は日本近海で出没しますので、こうしたときには、私どもの船、多くの船を出すことができます。多くの船を出しながら、それから、ロケットランチャーというのは、余り長距離で使える武器ではございません。非常に短距離での武器でございますので、私どもの戦法としては、そうした北朝鮮の不審船については、多くの船を出して、それから、向こうのロケットランチャーの射程距離外から、私どものきっちりした銃が、ちゃんと当たるような性能のいい銃を装備してやっつける、こういう作戦で対応しております。想定される脅威を見ながら、必要な装備を持つ船をつくっている、こういう現状でございます。

川内委員 ちょっとまだ、にわかにああそうですかというわけにいかないのですが。

 これは防衛省にちょっと教えていただきたいのですけれども、ロケットランチャーというのは、射程距離からきちんと撃って当たった場合、どのくらいの鉄板に穴があくのか、教えていただけますか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 急なお尋ねでございますので、手元に資料を用意しておりません。検討いたしまして、後刻御報告をさせていただければと存じます。

川内委員 急な質問でございますからって、私は、海上保安庁がなぜできないのかということをあしたしつこく聞きますよと。なぜなら、海上保安庁が任務に当たるのは第一義であると政府も繰り返し言っている。我々もそう思っている。だから、海上保安庁がなぜできないのかということをきちんと聞いていきますよと。

 それは政府から累次の説明でいろいろな説明がされてきているわけですが、最後、やはりロケットランチャーにねらわれたときに鉄板に穴があくからであるということが出たわけですね。では、そのロケットランチャーなるものがどのくらいの鉄板に穴をあけるのか。そしてまた、「やしま」、「みずほ」の船体の鉄板が何センチなのか。だって、これは当然、政府の、海上保安庁では無理なのだということの検討の基礎でしょう。

 そんなものも答えられないようじゃ、突然聞かれましたからって、では、わからないんだったらわからないと言えばいいじゃないですか。何となく海上保安庁じゃだめだと思ったんですと言うんだったらわかりますよ。

 そんなもの、委員長、そう思いませんか。私の言っていることはおかしいですかね。いや、ちゃんと答えてもらわなきゃだめですよ。

徳地政府参考人 御指摘のロケット弾等につきましては、そもそも、諸外国等、いろいろなものを持っておりますし、またはっきりわからないところはありますけれども、大体、装甲の貫徹力で数十センチというようなものがあるというふうには承知をしております。

川内委員 数十センチというと十センチから九十九センチまであるわけですけれども、もうちょっと正確に教えていただけますか。

徳地政府参考人 我が方もなかなか、そのあたりにつきましては、明確にどれぐらいということは完全にはよくわかりませんし、まさに撃ち方とかそれぞれの弾の種類にもよると思いますが、今現在お答えできるところでは、数十センチという程度であろうというふうに考えております。

川内委員 戦車の装甲というのは数十センチもあるんですか。戦車の装甲というのは数十センチもあるんですか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 機種その他によっていろいろあろうかと思いますけれども、その程度のものは存在していると承知しております。

川内委員 その程度のものが存在していると承知しておりますと言われてもよくわからないですけれども、では、「やしま」「みずほ」の船体の鉄板の厚さというのはどのくらいあるんですか。一番厚い部分。

岩崎政府参考人 大変恐縮ですけれども、「やしま」「みずほ」もいろいろな警備事案にも当たりますので、その装備のどれぐらいの厚さかというのは、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

川内委員 いや、一番厚い部分だけでもいいんですけれども。数十センチあるところだけでいいんですけれども。数十センチと言っていただければ。

岩崎政府参考人 常識的に言う意味での数十センチというような幅のものではありません。

川内委員 与党の先生方からは、私の聞いていることは非常に評判が悪いみたいですけれども、海上保安庁が海賊対策を第一義的にやるのだ、しかし、海上保安庁ではソマリア沖の海賊対策ができないから、本法案では、海賊対処行動という項目を立てて、海上自衛隊にお任せするんですよということを法律で書くわけですね。さらに、武器使用のこともこれからしっかり議論しなければなりませんが、その前提として、なぜ海上保安庁ではできないんですかということを、ああ、なるほど、やっぱりできないんですねということがしっかり国民の皆さんにわからなければ、昨日、うちの山口委員から本会議の質問で申し上げたとおり、自衛隊派遣ありきではないんですかということに、国民の皆さんの疑問というのは払拭できないと思うんですね。

 私の持ち時間があと五分ほどでございますので、この鉄板の厚さについては非常に重要なものであろうというふうに私は思いますので、ぜひ、委員長、本委員会に、「しきしま」「やしま」「みずほ」、それから「さざなみ」「さみだれ」、そしてロケットランチャーがどのぐらいの鉄板を撃ち抜くのかということについて、関係省庁からの資料の提出を求めたいというふうに思います。

深谷委員長 理事会で検討させていただきます。

川内委員 それから、最後に一つだけ聞かせていただきますが、きのう、本会議で麻生総理が、ソマリアに対して人道支援として、過去二年間で六千七百万ドルの支援を実施しているというふうに御答弁されていらっしゃいます。この六千七百万ドルの内訳を教えてくださいというふうに申し上げましたらば、外務省アフリカ第二課から紙をいただいて、国際機関経由で支援をしておりますということで内訳をいただきました。

 では、実際に、この六千七百万ドルのうち、ソマリアに直接的に行っている支援というのはどのくらいになるのでしょうかということを教えてくださいということをお願いを申し上げてあります。教えていただきたいと思います。

秋元政府参考人 それぞれの国際機関によりましていろいろな形の活動をやっておりますので、一概に申し上げることは難しいんですけれども、例えば、WFP、世界食糧計画の場合には、主にソマリアの人たちに食糧援助を行っているわけであります。食料の代金も含めて食料の調達費が大体五割、輸送経費が二割から三割、それから現地における配布などの人件費が大体二割ということになっております。

 この輸送経費が高いのは、これはなかなかソマリアの中で調達するというのが不可能でございますから、近隣のところから調達しまして、これを、通常ですとケニアのモンバサ港に持っていきまして、そこから陸路で運んでいく。ただ、海上輸送でもってモンバサ港に持っていくこと自体がまた海賊行為のターゲットになってしまうという状況でございます。

 それから、現地における配布も、これはソマリアに実効的な政府がありませんので、ソマリア政府にお願いするというわけにはいきませんので、基本的には、国連の各機関の雇用しているソマリア人のローカルスタッフ、こういう人たちを通じて配布しているわけでありまして、こういうものも、広い意味ではソマリア人に裨益しているということが言えると思います。

川内委員 私が聞いたのは、六千七百万ドルのうちどのくらいが直接ソマリアに支援されているのですかということを聞いたんですけれども、わかりやすくこうですと教えていただけますか。

秋元政府参考人 委員のおっしゃっている意味が、直接ソマリアの暫定政府を通じてという支援であるかということであれば、そういうものはやっておりません。これは、ソマリア政府自身がそういう能力もございませんし、また、我が国として政府承認しておりません。

川内委員 いや、ソマリアの人々にという意味ですけれども。

秋元政府参考人 先ほど申し上げましたように、それぞれの国際機関を通じて行っていまして、それぞれの国際機関の中で、実際に物品・サービスを調達する費用と輸送経費と、それからそれを配布するための人件費、それが異なっておりますので、一概に申し上げることは困難でございます。

川内委員 国際機関から、何に幾ら使ったよと明細は来ないんですか。

秋元政府参考人 六千七百万ドルにつきましては、食糧支援としてWFP経由で一千四百万ドル、難民、国内避難民対策としてUNHC、ハビタット、UNFP等経由で二千万ドル、それから保健、水、衛生、教育等の分野の支援としてはユニセフそれからICRC、赤十字国際委員会ですけれども、経由で一千八百万ドル等々、それぞれの用途に応じて使っているわけでありまして、全部使用し終わった段階では、こういうことで使いましたという報告は当然しかるべくなされる。

川内委員 いや、だから、その輸送経費に幾らかかったとか、人件費に幾らかかったとか、そういうことをちゃんとわかっているんでしょうと聞いているんですよ。わかっているんだったら、その金額を教えてくださいと言っているのに、何でこんな時間をかけて、持って回ったようなことを答弁するんですかね。きのうちゃんと言ったじゃないですか。

秋元政府参考人 国際機関が現在実施中であるということと、それぞれの国際機関によって、サービスの調達費用、それから資材の調達費用、輸送費の費用等々違いますので、今現在、六千七百万ドルの中で、幾らがその物資の調達のためにかかったのか、幾らが人件費でかかったのか、幾らが輸送費でかかったのかということを申し上げることは困難でございます。

川内委員 だったら、何で、人件費が二割から三割とか、輸送費が二割から三割とか、そうやってさっき答えたんですか。何を根拠にそんなこと言っているの。きのうは、半分以上が経費に消えますと私に説明しているんですよ。だったら、半分以上は経費に消えると思いますが、正確なところはまだわかりませんので、わかったらお答えしますと、一言で済むことじゃないですか。何でこんなに何回もやりとりさせなきゃいけないの。おかしいよ。

 終わります。

深谷委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 海賊対処法案について質疑をさせていただきます。

 所管大臣が海洋担当大臣ということでありますので、通告はそれぞれ大臣にしておりますが、時々に法案の条文についての解釈等、所管大臣にも伺いたいというふうに思っておりますので、適時適切、お答えを求めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それで、最初からいきなり、ちょっと条文の解釈で恐縮なんですけれども、この二条七号でしょうか、いわゆる海賊行為、一から四、定義をしておりますが、その「海賊行為をする目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為」と。「凶器を準備して船舶を航行させる行為」というと、外から見ているだけだと、なかなかこれは海賊だということで見つけにくいのではないかなというふうに思うんですが、これは、どのようにしてこのことがわかるということで、まずは防衛大臣でしょうか、お願いいたします。

浜田国務大臣 いわゆる凶器準備航行については、本法案の第二条第七号において、同条第一号から第四号に規定された船舶強取、運航支配等の海賊行為を行う目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為であり、海賊行為の一類型と定義をされております。

 凶器準備航行に該当するか否かについては、船舶に積載された凶器の状況、船舶の外観、航行の態様、乗組員の挙動その他の周囲の事情等を勘案した上で判断することになろうと思います。

武正委員 多分、見ただけですとなかなかわからないということもあろうかと思いますので、二問目に触れておりますが、要は、周辺で同じように海賊対処行動をしている他国との連携とか情報共有とか、そういったものがやはり大きいのかなと。きょうも午前中から、先ほどシンガポール船籍あるいはマルタ船籍ですか、映像で見ていると、海賊船といいながら、洗濯物が干してありまして、あれが海賊船かなと。まあ、海賊船なんでしょう。後ろに何か曳航していましたけれども。

 ですから、見た目で海賊船ということで、特にこの七号というのは、凶器を準備して航行ということですから、そういった意味での情報共有というものがかぎになってくると思うんです。EUによるアタランタ作戦や、今お手元に資料を配付させていただきました、これは衆議院の調査局作成資料の中からの資料でありますが、コアリションバトルスペースということで、いわゆるCTF150、152、158のエリア、150はほとんどインド洋、それこそアデン湾、そして紅海、すべて含まれるという図であります。

 こういったCTF150と、あるいはまた、今度は海賊対策ということで、多国籍海軍部隊、これが、ここに書いてありますが、CMFですね。合同海上部隊司令部司令官のもとにできておりますが、こういったところとの連携、情報共有ということが行われているということでよろしいでしょうか。

浜田国務大臣 我が国の関係船舶の護衛を効果的に実施するためには、今先生御指摘のように、関係国、関係機関との連携協力を行っていくことが重要であるというふうに考えております。新法のもとでの海賊対処活動においても、現地の海賊の状況、各国の活動状況等について情報交換する等、各種連携協力を行っていく考えでございます。

 具体的には、連絡官等を通じまして関係国、関係機関との間で各国の活動状況について情報交換を行うほか、護衛艦等各国の艦艇との間でも現場海域における海賊の状況、各艦艇の活動状況等について通信による情報交換を行っていきたいというふうに思っておるところであります。

武正委員 資料の二ページには、今回のアデン湾においての海賊対処行動、今は海上警備行動での実際の活動について、これは防衛省さんの資料でありますが、具体的には今海上自衛官がバーレーンの連合海上部隊、CMFの司令部に二名駐在をしているということでよろしいでしょうか。

浜田国務大臣 そのとおりであります。

武正委員 CMFということで、連合海上部隊ということでありますが、このほか、CTF150あるいはCTF151という、先ほど触れました多国籍海軍部隊、この合同海上部隊司令部、CMF司令官の指揮下にあるこのCTF150、151との連携というか情報共有というものはいかがでしょうか。

浜田国務大臣 今回、海上警備行動に基づいて派遣された護衛艦がCMFの指揮下で活動するということはなくて、また新法に基づいて派遣される部隊についてもCMFの指揮下に入って活動するとは考えておりません。

武正委員 その話はこれから聞こうということだったので。

 ここに書いてあります、一ページ、資料をごらんいただきますと、CTF150ということで、これは多国籍海軍部隊ということですね。合同海上部隊、CMF司令部司令官の指揮下での不朽の自由作戦後、OEFの一環として海上治安活動、MSOを実施する多国籍海軍部隊、CTF150である。

 これについては、既にテロ特措法で、海上での補給活動についてはCTF150の指揮下にはないけれども、やはり情報共有をこのバーレーンの連合海上部隊、CMF司令部で、同じく海上自衛官二名駐在のもとやっているというお話だったと思うんですが、私が今聞いているのは、このCTF150との連携が今回の海上対処行動、海上警備行動であるのかないのか。

 また、今度、ことしの一月にCTF150から衣がえをしたと言われております海賊対処を目的としたCTF151、これと同じく連携あるいは情報共有というものがあるのかないのかを聞いております。

浜田国務大臣 大変失礼しました。

 先生のおっしゃるとおり、今後も情報交換を行っていくということであります。

武正委員 情報交換でありますが、先ほど、もう既に防衛大臣が答えられたように、指揮下にはない。指揮下にあるということは当然やはり日本の憲法のもとでは許されない、あるいは集団的自衛権のおそれも当然出てくるということで指揮下にはないということでよろしいでしょうか。

浜田国務大臣 そのとおりだと思います。

 それで、今回の法律自身もそういったことにも十二分に配慮しながら法案立ての仕方をしているというふうに思っているところであります。

武正委員 ただしかし、先ほどの二条七号のように、凶器を準備して航行している船、それを見分けるときに、司令部からの情報とか各国艦船との情報、これを共有しなければならないということがあるわけですので、やはりいわゆるその指揮下に入るか入らないかというようなところも極めて重要な、国会として関心を持たなければならないポイントだというふうに思っております。

 そこで、海上での補給活動について伺いたいんですが、ちょうどきょうも午前中、与党の委員からありました。これもやはり補給活動を、ここに書いてありますね、この二ページ目、三つ目の白丸のところの「任務を効率的に実施するため、必要に応じ、補給支援活動に従事する補給艦から、海賊対処の護衛艦へ給油を実施」ということで、今回それが実施をされたということであります。

 先ほど与党委員からは、いいじゃないかと、時間も短縮できるし、当然のこと、いいことだというお話がありましたが、やはり疑問に思うのは、テロ特措法で派遣をされた補給艦が、今度は海上警備行動で派遣をされた護衛艦に、幾らインド洋が同じエリアだといって補給をするというと、何か大丈夫かなと。特に今回の海上警備行動が国会の関与なしに、あるいは国会へのそうした事前の、何というんですか、承認とか報告、こういったものがなしに派遣をされているということを考えますと、本当に大丈夫かなというふうに思うんです。

 今回のこのテロ特措法に基づく補給船の補給活動、これについて、その根拠法、あるいはどういう理由で今回この補給支援活動ができたのか、これについてわかりやすく御説明いただけますでしょうか。

浜田国務大臣 三月十三日の海上警備行動の発令におきまして、補給支援活動を行う部隊に対して、必要に応じて、補給支援活動に支障を生じない範囲で、海上警備行動による派遣護衛艦へ燃料等を提供するように命じたところであります。当該補給は、自衛隊法第八十二条に基づく海上警備行動の一環として行われるものであります。

 海上自衛隊の艦艇同士が必要に応じて補給等の支援を行うことは、おのおのの艦艇が与えられた任務を適切かつ効率的に実施するためには当然のことであり、海上警備行動により派遣される護衛艦が給油等を必要としている際に、近傍の海域で補給支援活動を行う補給艦が補給支援活動に支障を生じない範囲で当該護衛艦に給油等を行うことは何の問題もないと考えているところであります。

武正委員 資料三ページ目をごらんいただきたいんですが、自衛隊関連法における国会関与規定ということで、活動の国会承認、国会への報告について、PKO協力法以来、今回の海賊対処法案、これも国立国会図書館に作成をいただいたわけであります。やはり国会が、この自衛隊の海外への派遣については、シビリアンコントロールの観点からきちっと関与をしていくべきだ、このように私も、そしてまた民主党も考えるわけなんです。

 例えば、今のお話ですと、新テロ特措法で、これは活動の国会承認、承認規定はないんですけれども、実施計画を報告ということなんです。この実施計画では、新テロ特措法の方から考えてみますと、今回の補給活動というものは、この新テロ特措法の実施計画には当初から盛り込まれていた、あるいは当然この実施計画で読み込めるということを先ほど大臣とすれば言われたということでよろしいでしょうか。

浜田国務大臣 海上自衛隊の艦艇同士が必要に応じて補給の支援を行うことは、これは先ほどもお話ししましたように、おのおのの艦艇が与えられた任務を適切かつ効率的に実施するためには当然のことであるということを私申し上げましたけれども、そういった意味では、今先生がおっしゃったように、我々とすれば、新たな命令で、海上警備行動の中の一環として、要するに、補給支援活動でも、今回警備活動で行っているものに対しても、海上警備行動で行っているものに対して給油を行うように命令を下したわけですから、そこで担保しているものと思っておるところであります。

武正委員 やはり、まずは海上警備行動が、国会への報告をこの八十二条で規定していないということは、我々考えますに、海上警備行動というものが日本の領海もしくは近海というのでしょうか、こういったところを想定していたので国会への報告などはあえて盛り込まなかった。まさか、それこそ一万二千キロかなたのアデン湾・ソマリア沖に海上警備行動で発令するということは想定されていなかったのではないのかというふうに考えるわけなんですね。

 ですから、今回の海上警備行動でのアデン湾・ソマリア沖への派遣、そしてまたテロ特措法で派遣をされている補給艦から補給を受けなければならないという、こういった、私からすれば、やはり国会に当初実施計画を報告されていた任務とは違う事態がここで突出をしてきた。そういったことを考えると、国会の関与というものを、あるいは国会への事前承認実施要領なり、これを新しい法案では盛り込む必要があるのではないかなというふうに考えるわけであります。

 そこで、せっかく補給活動ということに触れましたので、外務大臣にお聞きをしたいんですが、この新テロ特措法あるいは旧テロ特措法あわせまして、インド洋で補給活動をこれまでもあるいは今も行っている。以前も聞きましたけれども、この中で、ACSA、物品役務相互援助協定に基づいて、日本側から特に米側に対して、ACSAは米側ですね、米側に対して給油をされていると。その額についても以前聞いたことがあるんですが、改めて、今わかるところで結構ですが、合計、その量あるいは額、どの程度の援助あるいは役務の提供になったのか、お答えをいただけますでしょうか。

中曽根国務大臣 今委員の御質問というのは、インド洋においてということでございますか。(武正委員「はい」と呼ぶ)日米物品役務相互提供協定、ACSA、この枠組みに基づいて補給支援を行ったということはございません。

武正委員 インド洋ではないということですかね。

 それでは、多分イラクではあったということでしょうか。ただ、イラクについて、ちょっとここでお答えをと言うとなかなかきついかもしれませんので、また次の機会にしたいと思いますが。

 多分あるんですよね。いかがですか。

中曽根国務大臣 いわゆるテロ特措法におきまして、若干そのような補給が行われたと聞いております。

武正委員 テロ特措法に基づいて米側に対して給油をして、それについて、額、量というものを以前お聞きしたことがあったものですから、ちょっとそれを確認で改めてお聞きしたんですが。物品役務相互援助協定、ACSAに基づいて、これまでの実績、合計量あるいは合計額は幾らか、お答えをいただけますでしょうか、外務大臣。

中曽根国務大臣 ちょっと先ほどの私の答弁を少し訂正させていただきたいんですが、ACSAの枠組みに従って行われるこの補給、自衛隊による米軍に対するいわゆる物品とか役務の提供は、ACSAの付表の2に定めます日本国の法律、これの規定であって現に有効なものに従って行われるということになっております。

 このACSAの付表には、確かに今申し上げました旧テロ対策特措法、イラク特措法、これが掲げられておりますけれども、いまだこれに基づいて補給したのはないということで、訂正させていただきたいと思います。

武正委員 ちょっとまた私の方も、以前の議事録を精査したいと思います。

 そこで、防衛大臣、この補給については、自衛隊艦船であれば、海上警備行動に基づいて、今回派遣された護衛艦にテロ特措法で派遣された補給艦から補給しても問題ないんだというお話なんですけれども、例えば、これがインド洋で行っているように、他国の艦船に補給をしていますよね。同じようなことが、あの周辺には他国の艦船がいる、そして、先ほどのように情報共有もしている、おまけにバーレーンには二名の自衛官も派遣をしている、指揮下にはないけれどもというお話ですが、他国の艦船にも補給することはできるというふうに考えておられますでしょうか。

浜田国務大臣 先生、これは、我々とすれば、補給支援法にのっとって任務をしているわけでありますので、他国の艦船に入れるということは想定しておりません。

武正委員 そういうことをやり出すと、本当に泥縄というか、こういうことになってしまうから、お聞きをしたわけであります。

 そこで、やはり私は国会の関与を、自衛隊の艦船を派遣する以上、今回の補給についても、自衛隊艦船同士で構わないんだということではなくて、派遣の目的、そして派遣による活動地域あるいは期間、こういったものがきちっと国会に報告をされる、そして承認を受ける、こういった枠組みが、この三ページの表でいえば、PKO法、周辺事態法といった形で、事前承認なり、武力攻撃事態法もそうでしょうか、こういったことが必要なのではないのかなというふうに思うんですが、こうした国会の承認の必要性について、防衛大臣、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 先生、いろいろ御議論のあることは私も承知をしておりますが、今回の海賊対処法案における国会の関与につきましては、海賊への対処は、海上における公共の安全と秩序の維持を図ることを目的とする警察活動であるということ、そしてまた、当然、これは国会への報告、承認というものが必要となるものではないということ。その一方で、本法案における海賊対処行動については、自衛隊が長期間にわたり海外で活動することが想定されておりますし、また、自衛隊をより的確な統制のもとで運用することが求められている観点から、国会での御議論を踏まえて国会の意思を実施面に反映することが適当であることといった点を考慮して、内閣総理大臣が海賊対処行動を承認したとき等は遅滞なく国会に報告しなければならないということを規定したものと承知をしているところでございます。

 しかしながら、先生のおっしゃっている中で、国会の場においていろいろな議論をされるというのは、これは必要なことだと思っておりますし、前々からのいろいろな経緯等々も勘案しながら、この委員会で議論していただければというふうに思う次第であります。

武正委員 改めてもう一度聞きますが、CTF150、151と情報共有はしているということでよろしいですか。

    〔委員長退席、木村(勉)委員長代理着席〕

浜田国務大臣 そのとおりです。

武正委員 先ほども触れましたが、このCTF150は、資料は一ページにありますけれども、連合国艦隊、インド洋での活動であります。そして、先ほども申し述べましたが、米海軍の合同海上部隊、CMF司令部司令官の指揮下での不朽の自由作戦後、OEFの一環として海上治安活動、MSOを実施する多国籍海軍部隊であります。

 以前、テロ特措法で、給油をした艦船が、あるいは給油をした他国の艦船、特に、補給艦が補給をした艦船、これが、イラクあるいはまたアフガニスタンへの、特にアフガニスタンへの直接の空爆などに使われていたのではないのか、こういった疑義が出て、委員会でも、給油先あるいは給油艦船の公表を求めたわけであります。そのぐらい国会として厳しく、自衛隊の海外での活動、そして他国との関係、集団的自衛権という点において、我々はその点についてはすごく注目をしたわけであります。

 今回も同じように、バーレーンに事務官が置かれ、そして、先ほど言ったCTF150、151とも連携をしているということを考えますと、こちらは国会の関与は要らないんだ、そして海賊対処行動はあくまで警察活動なんだ、こういった形で言い張るというのはちょっと理解しづらいわけでありますが、所管大臣、海洋担当大臣、いかがでしょうか、このやりとりを聞いていて。

 やはり今回の補給活動が、テロ特措法で派遣された補給艦船が、いや、同じ自衛隊の艦船だから給油してもいいじゃないかというような先ほどの防衛大臣の話とか、それから、今回もテロ特措法同様バーレーンに事務官が置かれ、そしてCTF150、151という多国籍海軍部隊と密接な連携をしている。こういったことを考えると、これは警察活動です、だから国会の関与は必要ないんですときのうも総理は言われましたけれども、どうなのかなというふうに私は思うんです。

 この三ページ目のこういった一連の表を見て、やはり国会の関与を、この海賊対処法案、もっとかませるべきである、国会が関与をしていくべきであるというふうに思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

金子国務大臣 いろいろな議論があるということは浜田大臣からも答弁があったところであります。

 第一義的には海上保安庁がこの任務に当たるということは、本海賊対処法案第五条で定めております。特別な場合、つまり海上保安庁が対応できないというときに、この七条で、防衛大臣が、必要があるということで、内閣総理大臣の承認を得て必要な行動をとるということであります。八十二条の海警行動というのは、潜没潜水艦もそうでありますけれども、これは国会の関与を求めておりません。

 今度は、八十二条に一項を、自衛隊法を改正しまして八十二条の二項でありますけれども、こういういわば海賊行為に対しても自衛隊がその任に当たるんだということを改めて自衛隊法で定めるという位置づけで、同じ八十二条の扱いをしているということでありますし、同時に、先ほど答弁がありましたように、かなり細かい、具体的にどの地域で、どの部隊で、どの装備で海賊対処に海上自衛隊が当たるということについて細目を決めて、それを閣僚が協議し、総理大臣が承認し、遅滞なく国会に報告をするという手続を踏んでおりまして、我々としては、国会の関与、なるべく国会の文民統制がきちんとコントロールできるようにという意図で、この法案をこういう枠組みで出させていただいております。

武正委員 私は、この三ページの表を見ても、旧テロ特措法で事後承認だったものが承認規定なし、新テロ特措法になってしまったことなども含めて国会の関与が緩くなっているということも見てとれますと、特に今回、海警行動について、海警行動で一万二千キロ先まで海上自衛艦を派遣するといったことも非常に無理があるということもあわせて、今、警察活動だから報告はなくていいんですということも含めて、やはり国会の関与というものを新法ではきちっとかませていくべきだということを改めて提起させていただきたいと思います。

 そこで、海上警察の国際連携の必要性ということで、お手元の資料四ページをごらんいただきたいと思います。これは、民主党が政府の新テロ特措法への対案としてまとめたテロ根絶法案、この第二十八条で航行の安全確保ということをうたいました。

 読みますと、第二十八条、「政府は、公海上その他の海上における我が国の船舶の主要な航路帯においてテロリストによる攻撃等から航行の安全を確保することの重要性にかんがみ、海上警察の国際間の連携の促進に努めるとともに、航行の安全に関する条約その他の国際約束についての関係諸外国の誠実な履行の確保を働きかける等、公海における航行の自由の確保のための国際社会の取組に積極的かつ主導的に寄与するものとする。」ということを民主党のテロ根絶法にうたったわけであります。

 公海航行自由の原則、これを最大に享受してきたのがやはり日本であるという認識に立ってこうした条文を入れたわけでありますが、私は、今回の新法にもこの公海航行自由の原則、これが、それこそ世界的なインフラともいうべき公海を自由に航行できるんだ、この最大享受国日本として、国連海洋法条約を受けて国内法の整備をする以上、こういった規定をこの法案にも入れていくべきではないのかなというふうに思うんですが、これについて、海洋担当大臣、御所見を伺いたいと思います。

金子国務大臣 御党が提出されました二十八条、趣旨、意図するところは今回の法案の中にも相当に盛り込まれていると思います。

 特に、海上交通の要諦でありますマラッカ・シンガポール海峡を含みます東南アジア海域、これは平成十二年ごろから海賊事案が多数発生しました。これらの事案の大部分は、沿岸国の内水及び領海で発生したものであり、沿岸国の海上保安機関の法執行能力の向上が急務でありまして、そういう意味で、諸外国の誠実な履行の確保を働きかけていくということがそれなりに盛り込まれておると思います。

 さらに、海上保安庁では、沿岸国の海上保安機関の法執行能力向上を支援しますとともに、沿岸国の海上保安機関の連携協力を推進してまいりまして、具体的には、沿岸国の海上保安機関で構成される長官級会合に参加し、最大限の協力を行ってきました。また、アジア海賊対策地域協力協定、ReCAAP、先ほど先生御指摘されましたけれども、これに基づきまして、沿岸国の海上保安機関等の連携を図るために設置されました情報共有センター、ここに職員も派遣し、積極的に貢献をしております。

 そういう意味で、今委員御指摘の部分は相当取り込まれ、また実行されていると認識しております。

武正委員 私が言っているのは、この新法に具体的にそういった記述がやはりあってしかるべきではないのかなというふうに思うんですが、今盛り込まれているというふうに言われましたけれども、それをどういうふうに読み込んだらよろしいんでしょうか。

金子国務大臣 まさに第一条、この法律の目的のところに、今おっしゃられたことが書き込まれております。つまり、海上輸送の用に供する船舶その他の海上を航行する船舶云々の件、並びに、御党二十八条の部分は、多分、海洋法に関する国際連合条約においてすべてという条文の中に精神が盛り込まれているんだと思います。

 そういう意味で、足らざるところはまた、どういうことがということを御指摘いただきながら、一緒に考えてまいりたいと思っております。

武正委員 日本が海洋国家として、そして貿易立国として、世界の海が、特に公海が、無害通航権ですか、あるいは旗国主義、要は、船がどこへ行ってもそこは日本なんだという、これはすばらしい法律というか、お互いの共通のルールだと思うんですね、主権尊重ということも含めて。そしてまた、そうしたいろいろな港、港に立ち寄る、寄港するというのも、非常にどの国もオープンですよ、こういうシーマンシップの指摘もありましたが、こういったもののメリットというか、これを最大に享受している日本である。そしてまた、それゆえに、それができていない国、あるいはそれができていない地域に対して、国際貢献ということで、日本がそれを積極的に、主体的に果たしていくということは日本にとってでき得る、また、日本がそういった能力を持っている、知見を持っているということになるのであろうというふうに思いますので、ぜひそうした趣旨をこの法律に盛り込んでいくということが必要ではないかというふうに思います。

 そこでお伺いしたいんですが、ジブチ会合について先ほど来指摘がありますが、コード・オブ・コンダクト、行動指針、この署名が、たしか十六カ国中九カ国だけでしたでしょうか、七カ国ぐらい署名をしていなかったというふうに思うんです。

 例えば未署名のサウジアラビアとかオマーンなど、やはり財政的に豊かな周辺諸国は、いわゆる海上警察などの装備や人も持っております。私は、こういった国もぜひジブチ会合の行動指針に署名をしてもらって、先ほど来話があるReCAAPのような条約を早くアデン湾周辺諸国で締結をしてもらう、そういう働きかけがあっていいのではないかと思うんですが、外務大臣、そういう行動指針署名の働きかけを日本として主体的に担うということについてのお考えはいかがでしょうか。

中曽根国務大臣 議員御指摘のジブチ会合、これは、周辺諸国によります海賊の防止のための協力とか、また海賊の情報共有センターの設置など、そういうものを規定したもの、これが行動指針でございますけれども、お話しのように、ソマリア海域の周辺十六カ国及びソマリア暫定連邦政府によって採択をされたものであります。

 この行動指針には、ジブチ会合に参加した周辺九カ国が署名をしているところでございますが、これはソマリア沖の海賊対策のための地域協力の推進に資するものでございまして、より多くの周辺国が署名することが期待をされているところでございます。

 我が国といたしましても、関係の周辺国に対しまして、今後、種々の機会に働きかけを行いたいと考えているところでございますが、日本としては、側面的な支援を行って、まず、当事国といいますか周辺国がこれに署名するということを私どもとしては働きかけを行っているところでございます。

武正委員 一説には、なぜコード・オブ・コンダクトの署名、行動指針の署名をためらうかというと、各国の軍艦が当然ソマリア、暫定政府ではありますが、領海内に入っていくことなども含めて、やはり周辺諸国には、主権を各国の軍艦によって侵害されるのではないのか、そういう危惧があるのではないのかという指摘があります。これはたしか、インドネシアやマレーシア、あのときに、やはり津波の被害を受けて、各国の軍艦がマラッカ・シンガポール海峡に行ったときにも、やはり、インドネシアが特にそうだったというふうに聞いておりますが、各国軍艦が入ってくることについてのアレルギーというか拒否感がある、こういうのはやはり主権国家として当たり前のことなのかなと。だからこそ、コーストガード、海上警察、あるいは周辺諸国の海上保安能力の向上、こういったことが必要なんだというふうに考えるわけであります。

 そこで、外務大臣に伺いますが、先ほど来、ソマリアは無政府状態なんだという指摘を多くの委員がされていたと思います。ただしかし、ソマリアについては、ソマリランドが独立宣言をしたり、プントランド、つまりソマリアの東側の北側が自治地域化していたりということで、暫定政府は南西部でありますけれども、そういった意味では、ジブチ合意を経て、TFG、ソマリア暫定政府については、このジブチ会合に政府を代表して出たり、あるいは、累次の国連決議ではソマリア暫定政府と加盟国が協力をするようにという記載もあり、あるいは、国連には常駐代表が送られている、こういった経緯もあるわけです。

 日本政府としてはソマリア暫定政府を承認していないという立場は了解をしておりますが、このソマリア暫定政府への協力、先ほど川内委員からも、では、実際にその支援が届いているのかという話もありましたが、このソマリア暫定政府についての御認識、あるいは、例えばこれを承認する可能性があるのかどうかも含めて、御見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 ソマリアは、一九九一年以来、武装勢力間の抗争がずっと続いているわけでございます。二〇〇五年には、今委員からお話ありましたソマリア暫定連邦政府、TFG、これが樹立をされたところでございますが、この政府、いわゆるTFGも、いまだ国土全土を実効支配するには至っておりません。我が国は、そういうところからも政府として承認をしていないところでございます。

 なお、昨年の八月には、暫定連邦政府とソマリア再解放連盟の穏健派、これはイスラムグループ穏健派でございますが、との間で、武力行使の停止等を含むジブチ合意が成立をしたわけでございます。また、ことしになりまして、暫定連邦政府におきましては、新しい大統領それから新しい内閣が誕生いたしまして、新議会も誕生しつつあります。

 しかし、この暫定連邦政府には、すべての勢力が参加しているわけではございません。このような動きがソマリア全体の和平につながるかどうかということは、今後の動向を私どもとしては慎重に見ていく必要があると考えております。

 我が国といたしましては、実効的に支配をする政府が今は存在していない、そういう状況に加えまして、治安等の問題により、先ほどからお話ありますけれども、ソマリアへの二国間援助の実施も非常に困難な状況となっておりまして、そういう意味で、国際機関を通じた協力を実施してきているわけでありますが、今後も、ソマリアの安定化のために積極的に協力をしていきたいと思っています。

武正委員 中長期的には、やはりソマリアの国情安定、これが海賊対策には欠かせませんので、特に日本外交というものが、イスラム諸国とある面直接的な、武力行使というようなことは日本では認められておりませんが、そういったことが一切ないだけに、特にイスラム諸国に対して物が言える、こういったところをぜひ外交で活用する必要があるということを申し述べまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

木村(勉)委員長代理 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうのこの特別委員会の海賊対策新法の審議というのは、第一回目ということでもございますので、できる限り全体像がわかるような、そういう質問をしていきたいというふうに思います。

 特に、私は、今回の政府による海賊対策の進め方、海上警備行動の発令とか、あるいは、きょう審議しております海賊対処法案の内容等について、多くの国民の皆さんが不安に感じていることがある、その不安というものをしっかりと受けとめて質問をしていきたいというふうに思っています。

 その不安を、ちょっと典型的に三つほど挙げさせていただきますと、一つは、ソマリア沖で自衛隊が武力紛争に巻き込まれるというようなことにはならないんだろうかということ、二つ目は、今回の政府の対応というものが武力行使を伴う自衛隊の海外派遣への道を開くことにならないだろうか、三つ目は、海賊対策として自衛隊を含む実力部隊が海外に派遣されることにシビリアンコントロールが確保されているのか、このような視点に基づいて質問をしていきたいというふうに思っております。時間も限られておりますので、端的な答弁でお願いをいたしたいというふうに思います。

 まず最初に、ソマリア沖で自衛隊が武力紛争に巻き込まれないのかという問題についてでありますけれども、今回の海上警備行動の発令とか、あるいは総理大臣の承認、それから新法の趣旨説明なんかを聞いていても、もともとこの問題が非常にクローズアップされていたのは、国連の安保理決議一八五一等というのが出ておるわけですけれども、その国際的な動向というのがあったからではないのかと私は思っておったんですけれども、一言も触れられていないという状況なんですね。

 どうもこれは変だなというふうに私は思っていまして、それでお聞きするんですけれども、ソマリア沖の海賊対策に関する国連安保理決議一八一六、一八三八、一八四六、一八五一等があります。これは国連憲章第七章、つまり、平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動を規定した章でありますけれども、このもとでの行動として各種の要請をしているわけであります。皆さん方の言葉で言えば犯罪行為、犯罪行為と言っているわけでありますけれども、なぜそうしたものの対応が国連憲章第七章のもとでの行動要請になっているのか。この点について、外務大臣にお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今御指摘の累次の安保理決議、いわゆる一八五一号以下でございますが、これは、ソマリア沖の海賊事案が国際の平和及び安全に対する脅威となっているソマリア情勢をさらに悪化させている、そういうふうに認定をした上で、ソマリア暫定連邦政府、先ほどのTFGでありますか、それからの明示的な要請を踏まえまして、これらに対処するために憲章第七章のもとで行動するとして、種々の決定や要請等を行っているものでございます。

 このように、ソマリア沖での事態の深刻さにかんがみまして、安保理が非常に強い政治的意思を示すとともに、ソマリアの領域における各国の活動に対するソマリア自身の同意を補強するために、御指摘のこの安保理決議において国連憲章第七章への言及を行っているもの、そういうふうに考えられます。

平岡委員 それで、国連決議千八百五十一を見ますと、パラグラフの二に、ちょっと要約しますと、とりわけ軍艦及び軍用機を展開させることにより闘いに参加するよう求める、こういうような規定になっているんですね。私は、海賊対策というのは基本的には海上警察の話であるから、何でこんなに軍艦とか軍用機というものにこだわった決議になっているのかというのを非常に疑問に思っているわけであります。

 そこで質問でありますけれども、我が国が今回、海上警備行動で自衛隊を派遣した、あるいは、今度新法ができればまた新法に基づいて派遣するという位置づけになるのかもしれませんけれども、この行動というのは、国連の安保理決議千八百五十一号等の要請に応じて海上自衛隊を派遣している、あるいは派遣しようとしているという理解でいいんでしょうか、どうでしょうか。

浜田国務大臣 今回の海上自衛隊の派遣につきましては、ソマリア沖において海賊事案が多発、急増しており、日本国民の人命、財産を緊急に保護する必要があることから、新法の整備の応急措置として海上警備行動を発令したものであって、御指摘の国連安保理決議の要請に応じて派遣したものではないというふうに考えております。

平岡委員 要請に応じたものではないというと、国連決議というのは、一体、今回の一連の行動としては、どういう関係になるんですか。何か他人事みたいな話ですか。

浜田国務大臣 いえ、これはもう何回もお話ししているように、我が国の船舶協会あるいは船舶関係の協会の方々からも要請もありましたし、そういった客観的な事実の中で我々として判断したことだというふうに考えております。

平岡委員 私は、国連決議との関係が明確にされていないというのは、ちょっとやはり問題があると思います。

 そこで、重ねて聞きますけれども、先ほど言いましたように、千八百五十一号は、軍艦また軍用機を展開することを要請しているということですね。そうすると、例えば、我が国が海上保安庁の艦船あるいは飛行機で派遣をするという決定をする場合は、この国連決議に沿っていないというような評価を受けることになるんでしょうか。これは外務大臣でしょうか。

中曽根国務大臣 国連の安全保障理事会は、この一八五一号の主文二におきまして、各国等に対しましてソマリア沖の海賊対策に積極的に参加することを呼びかけているわけでございますが、委員も御承知のとおり、その中では、海軍艦船及び軍用機を派遣することなどにより、ソマリア沖の公海上における海賊との闘いに積極的に参加することを要請しているわけであります。

 したがいまして、この規定は、軍以外の主体が海賊対策に参加することまで排除しているものではない、そういうふうに考えています。

平岡委員 それで、一八五一を見ると、ちょっと気になるところがほかにもあるんです。というのは、パラグラフ六です。そこに、ソマリアにおける必要なすべての手段をとることができるというふうに新たに規定がされたわけでありますけれども、この規定の部分については、ソマリア領土内にある海賊基地に対する空爆とか、あるいは地上攻撃というものも認められるというふうに解釈をしている国があるというふうにも聞くんですけれども、我が国もそういう解釈をとっているんでしょうか。

中曽根国務大臣 パラグラフ六では、確かに、適当なあらゆる必要な措置をとることができることを決定すると書いてあります。

 ソマリア沖の海賊対策に協力をして、またソマリア暫定連邦政府、TFGが国連事務総長に対して事前通知をする各国及び地域の機構が一定の条件のもとに海賊行為を抑止することを目的として、TFGの要請に基づいて一定期間ソマリアにおいて適当なすべての必要な措置をとることができる、そういうことでございますから、そういう条件とか目的に合致している限りにおきましては、本件の安保理決議というものは、ソマリア沖の海賊行為を抑止するために、ソマリアにおいて各国等が必要な措置をとることが認められているわけでございまして、その中で空爆の可能性が排除されているわけではないと思います。

平岡委員 まさに、外務大臣が今答弁されたように、ソマリア本土に対して空爆をする、地上攻撃をするということもこの決議では容認をしているというような状況になるわけですね。もしそんなことが起こったら、私は、何かこれは海賊対策というよりは、やはり戦争状態に入っているんじゃないか、そんなふうな印象も受けるわけであります。

 今外務大臣が解釈を示していただきましたけれども、それでは、仮にソマリア領土内で空爆とか海賊基地に対する地上攻撃が始まっちゃったという場合、我が国はどうされますか。派遣した海上自衛隊については撤退させるとか、そういうような判断を下すことになるんですか。どうですか。そのままいて、活動させるんですか。

中曽根国務大臣 これは仮定の質問でございますので、仮定の質問にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ、その上で、国際法の観点から一般論として申し上げれば、御指摘のような事態が万一生じたといたしましても、我が国による海賊行為の取り締まりが犯罪行為の取り締まり、そういう性質にかんがみまして、国連憲章第二条第四項により禁止される武力の行使に該当することはありません。

 以上でございます。

平岡委員 犯罪行為に限定されるならばというその限定そのものが、私は、前提として正しくない前提になってきているということだと思うんですよね。その条件を付していけば、当然に、武力行使に当たらないというようなことには、それはなりますよ。しかし、実態としてそうであるのかどうかということについてはちゃんと検証していかなきゃいけない、そういうふうに思いますね。

 そういった観点からちょっと聞きますと、今回の海賊対処法案について言うと、海賊行為というのは定義がされているんですけれども、海賊というのは定義がされていない、そういう状況であります。

 しからば、ソマリア沖の海賊というのは一体何なんだというところが私は問題だと思うんですけれども、安保理決議一八四六号に従った事務総長報告がことしの三月十六日に出ているわけです。

 そこでは、ソマリア国内の海賊については、海賊民兵、パイレートミリシアというような言葉が使われ、さらにはこういう説明もあります。一部の海賊グループは軍事的能力及び物資供給基盤において、ソマリア当局、これは複数で書いている、オーソリティーズと複数で書いてありますけれども、ソマリア当局に匹敵するほどの勢力になっていると広く認識されている。

 こういう状況というのは、今が直ちにそうだということを決めつけるつもりはないんですけれども、そのおそれもあると思いますけれども、将来のおそれもあると思います。

 まさに、我々が武力の行使のときに論じている国または国に準ずる組織に対する攻撃という意味において、国に準ずる組織というふうにこの海賊がなっている、あるいはなっていく可能性があるというおそれがあるんじゃないですか。どうでしょうか。

中曽根国務大臣 ソマリア沖におきまして、国に準ずる組織が活動しているともいないとも判断しておりませんし、なっているとも、なっているようになる、そういうことについても私どもとしては判断をいたしておりません。

平岡委員 判断しないで自衛隊を動かすというのも、幾ら何でもちょっと無責任だと私は思いますけれども、この問題についてはまた後日やっていきたいと思います。

 そこで、私がなぜこんなにこだわるのかという点について言うと、今回の海賊対策の中で、新法の中に船体射撃というのがあるんです。これは私、一つは、これまでよく論じられてきた自衛隊の任務遂行を妨げようとするものに対する武器の使用というような概念に当たってくるんだろうというふうに思うんですね。

 これで、皆さんに聞けば、いや、これはあくまでも海賊行為に対する対応なんだから、これは国に準ずる組織に対するものではないということが法律の前提になっているんだから問題はないんだと言われますけれども、今の海上警備行動にしても、新法に基づく海賊対処行動にしても、実態が変わってくれば、その海賊というものが国に準ずる組織というふうに認識されてくる場合もあり得るんですね。

 そうだとすると、これは法制局にお聞きしたいと思いますけれども、海賊対策としての活動のうち、今私が指摘したような船体射撃というようなものを、相手が国に準ずる組織であるとしたならば、法的には、武力の行使または武力による威嚇と評価されるということになるんじゃないでしょうか。

 この点は、実は内閣法制局の参事官が書いた文章の中に、平成三年九月三十日の衆議院国際平和協力等に関する特別委員会の工藤内閣法制局長官の言葉を説明するような形で、こういうふうに言っています。

 「「自衛隊の任務遂行を妨げる企てを排除するための武器の使用」については、その内容のいかんによっては、相手が国又は国に準ずる組織である場合、我が国の「物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、すなわち、憲法九条の禁ずる「武力の行使」に該当するおそれがある。」こういうふうに説明をされております。どうでしょうか。

横畠政府参考人 お答えいたします。

 まず前提といたしまして、海賊行為への対処につきましては、国連海洋法条約に……(平岡委員「それは聞いてないです。もっと端的に答えてください。核心部分だけ」と呼ぶ)はい、済みません。

 端的に申し上げますと、海賊行為は、いわゆる公海上の犯罪行為であります。それに対して、御指摘の任務遂行のための武器使用という形でこれまで議論されておりましたのは、公海ではなく外国、日本から見れば他国、他国の領域における我が国の活動というものを前提として、いかなる武器使用ができるかという議論があったわけでございます。

 その違いから申し上げますと、海賊対処につきましては、国連海洋法条約によって、我が国の管轄権を及ぼすことができるとされている、その範囲の対応を我が国の警察権によって行うということで、我が国が武器を使用するもとの根拠というのが我が国の警察権ということで確立しております。

 これに対して、従前議論がありました任務遂行のための武器使用、すなわち我が国の管轄権が及ばない他国の領域での武器使用というものについては、これは我が国の法執行でもありませんし、その意味で我が国の警察権でももちろんないということを前提にして、どこまでの武器使用が可能かということが論じられてきたわけであります。

 その意味で、他国の領域における活動におきましては、まさにその武器使用の相手方が国または国に準ずる者であるかということが直接の問題ということで、メルクマールとして機能すべきものというふうに理解しておりまして、そのような場面に遭遇しないように、例えばPKOの五原則でありますとか、あるいは非戦闘地域というような、あらかじめ要件を定めまして、そのような場面に遭遇しないような仕組みをつくって派遣するという法の仕組みに組み立てておりました。

 それを前提といたしまして、今回の海賊行為に対する対処につきましては、若干繰り返しになりますけれども、御関心は海賊対処のための武器使用が武力の行使に当たることがないのかということと理解しておりますけれども、これにつきましては、これまでも政府側から御答弁申し上げているとおりでございまして、海賊行為であって、我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為を行った者に対し、法令の範囲内で武器を使用すること、先ほどお話ししたように警察権の行使ということになりますけれども、そういうものにつきましては、憲法第九条が禁ずる武力の行使等には当たらないものと考えております。

平岡委員 私の質問を聞いていたんですか、あなた。

 私は、公海の話を聞いているわけです、これは、今。それで、外国の領域の話でこれまで議論してきたということは、それはそうかもしれません。だけれども、公海上であったって、今までも、テロ特措法にしたって、それは公海で、インド洋で給油活動をしているときに武器使用をどうするのかという話は議論しているわけでしょう。だから、そういう議論をしていないわけじゃないんですよ。

 しかも、私が言っているのは、国に準ずるような組織というものと相手がなった場合に、それに対して、任務遂行のための武器の使用、任務遂行を邪魔しようとする者に対する武器の使用というのは、これは武力の行使になるんじゃないかということを端的に聞いているんじゃないですか。その部分についてちゃんと答えてくださいよ。

横畠政府参考人 端的にお答えさせていただきますが、海賊行為につきましては、私的目的による私人の行為としておりまして、お答えは同じになりますけれども、そのような私人の行為に対して我が国の警察権を行使することにつきましては、憲法九条の問題は生じないと考えております。

平岡委員 これは、私は警察権の行使を前提に議論しているんじゃないんですよ。きょうはちょっと温情で部長にしましたけれども、次は法制局長官とちゃんとやりたいと思います。

 そこで、次の不安として、今回の政府の対応は武力行使を伴う自衛隊の海外派遣への道を開くことにならないかという点についてちょっと御質問をしたいと思います。

 先ほど来、海上警備行動について、これまでは遠く海外まで派遣するようなことは前提としていなかったんじゃないかというような議論がされております。この点について、自衛隊法の前身となります保安庁法に関して、昭和二十八年の答弁でありますけれども、岡崎勝男外務大臣がこういうふうに述べています。

 海上警備隊、これは保安庁の中の海上を所管している警備隊ですけれども、海上警備隊は、普通の海上の警察の手が及ばない場合に出ていって、沿岸の治安の維持、密輸の取り締まり、その他の仕事に当たるのであります。これは公海と申しますか、沿岸から外に出て行動するのが本旨ではありません。要するに国内の治安維持の一つの方法、一つの部面を受け持っておるのであります。公海に出ていったりあるいは他国の沿岸に近いところまで出ていっていろいろなことをするのは、これは決して本旨ではないのであります。

 こういうふうに、自衛隊法の前身、これはそのままほとんど自衛隊法に受け継がれてきたわけですけれども、そういうふうに答弁をしております。

 もともと海上警備行動というのは、この岡崎勝男外務大臣が答弁したようなものじゃないんですか、どうですか。

浜田国務大臣 基本的に、今先生のおっしゃったこと、しかしながら、それを我々の中で、そういったものにその先生がおっしゃったところがあるのを、私自身、今まだ目にしておりませんけれども、しかしながら、その中に明確に地理的な要件に関しての規定というのはないような気が私はしておりますので、そういったものでは公海上の制約はないというふうに私は思っておるところであります。

平岡委員 それで、一九五四年六月二日の参議院での決議ですけれども、これは有名な決議ですよね。自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議というのがあります。この決議が出されたときに際して、初代防衛庁長官に就任した木村保安庁長官はこういうふうに発言をしております。

 申すまでもなく自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣などというような目的は持っていないのであります。したがいまして、ただいまの決議の趣旨は、十分これを尊重する所存でございます。こういうふうに言っているんですね。

 だから、国会としては、政府が、この木村保安庁長官、初代の防衛庁長官が答弁されたことを前提にして、海外、公海に発動するような場合については考えていないということだから、特別法をつくったりとかあるいは国会の承認とかということを法制上求めてこなかったんだろうと思うんですね。しかし、今やその前提が崩れてきている。その前提を何の手当てもしないで崩してきた、これは私はおかしいと思いますよ。

 防衛大臣、どうですか。

浜田国務大臣 従来より、いわゆる海外派兵とは、一般的に言えば、武力の行使の目的を持って武装した部隊を他国の領域に派遣することであると定義づけて説明されておりますけれども、このような海外派兵は一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えております。

 これに対して、今般の海上警備行動は、ソマリア沖・アデン湾の公海上において我が国に関係する船舶を海賊行為から防護するための活動であり、それが武力の行使の目的を持って行われる、いわゆる海外派兵に当たるものではないということは当然のことでございます。

 御指摘の決議については、その有権的な解釈は参議院によって行われるものであると考えますが、このような今般の海上警備行動によるソマリア沖・アデン湾での海賊対処までも想定したものではないと考えておるところでございます。

 なお、これに対する木村保安庁長官発言も、さきに述べた考え方に基づいて、いわゆる海外派兵を行わない趣旨を述べたものと考えております。

平岡委員 海外派兵、海外派兵と、何かあえてそっちの方に強調されましたけれども、決議では、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、木村保安庁長官の答弁も海外派遣という言葉を使っているわけですね。それを勝手に、これは海外派兵に限られるんだ、武力行使を目的として海外に行く場合に限られるんだ、そんなことはしないんだ、当たり前の話じゃないですか。そんなことをやったら憲法に反するわけじゃないですか。

 そういうことは当たり前でありまして、みんなが不安に思っていることに対してちゃんと決議をし、そして木村保安庁長官もそういう発言をしたということだよ。それをちゃんとやはり守っていかなきゃいけないですよ。これはおかしいです。

浜田国務大臣 我々は、あくまでも憲法の範囲内で今回やっているわけでございまして、法案に関しても、先生が不安だ不安だとおっしゃるところに我々はお答えをしているわけでありますので、そういった意味では、私どもがごまかして海外派遣、派兵とかと言っていることではなくて、我々とすれば、その違いをしっかりと今御説明をしたところでありますので、その不安をあおるということを解消するためにも我々は答えているというふうに思っているところであります。

平岡委員 あくまでも自衛隊が海外派遣されるということについて言えば、自衛隊法ではそういう事態は、特別に立法するとかというようなことを除けば予定していないわけですよ、先ほど来私が申し上げているように。だからこそ、特別法をつくったりしてきているわけです。国会承認をしていったりしているわけですよ。(発言する者あり)ここは国会承認はないじゃないですか。海上警備行動については国会承認もないじゃないですか。だから、それをちゃんとやらなければいけない、私は新法だけじゃなくて海上警備行動についても言っているんですよ。ちゃんとそのことを理解して答弁していただきたいと思います。

浜田国務大臣 当然、我々の提出した法案に対して御意見があるのはしかるべきことだと思っておりますので、その足らざるところを議論して委員会としてお考えになるのがこれは当然のことだと思っておりますので、我々とすれば、提案をしていただければと思います。

平岡委員 それでは、海上警備行動の海外派遣についても同じように議論をしてくださいということでありますので、それも含めてぜひ議論をさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、時間がないのでちょっと……

浜田国務大臣 その件に関しましては、当然、委員会が開かれているわけですから、我々は制限するものは何もございませんので、先生が御質問になることに対してはしっかりと答えさせていただきたいと思います。

平岡委員 何を答弁しているのかわかりませんけれども、私は実質的な内容を聞いているんですよ。海上警備行動について海外に派遣する場合には国会承認の対象にする、そういう議論を展開してもいいですねということを言っているわけであって……(浜田国務大臣「悪いなんて言ってない」と呼ぶ)いや、だから、その中身について答えてくださいよ。委員会で議論するのは当たり前の話じゃないですか。私が言ったのは、中身の話を言っているんです。

浜田国務大臣 その件に関しては、先ほど、我々とすれば、法案の中で国会承認は要らないということを御説明申し上げておるわけでありますので、その答弁についてもよくお聞きになっていただきたいと思います。

平岡委員 引き続き議論をさせていただきたいと思いますけれども。

 やはり自衛隊の海外派遣への道を開くことにならないかという問題について言えば、今回の説明が、海上警備行動も海賊対処行動も警察活動の一環なんだから、海外で行ったって憲法違反にはならないんだというふうに言っておるわけですね。これはテロ特措法のときも、OEFとかISAFの問題について私がちょっと質問したときに、これに協力するというのは、今、国連決議に基づいてやっているんですか、それとも自衛権の発動ですかと言えば、そうじゃなくて、それは外国当局の同意があるから、そしてこれは治安維持活動なんだから、外国の軍隊が入っても何の問題もないんだ、そういう説明でありました。

 国際的な評価としてはそういう評価もあるとは思うんですけれども、それでは、我が国の場合でも、ある外国において治安維持活動をするにおいては日本から自衛隊を派遣するというようなことが、そういうふうに拡大していくおそれがあると思うんですけれども、防衛大臣、そういう問題についての国民の懸念、心配についてはどうこたえますか。

浜田国務大臣 我々とすれば、当然、今回のこの法案に関して言わせていただくならば、船舶協会等の要するに要請もあり、そしてまた我々の、国民の生命財産を守るためにも必要な法的措置をしているわけでございまして、その意味では、今回の場合には、まさに実態として我が国民の利益というものを考えたときにこの海上警備行動をやったということでありますので、今回の事案に関しては、まさに我々とすれば必要不可欠なものをしっかりと政府の責任としてやったというふうに考えているところであります。

平岡委員 私の質問に答えられないんで、船舶協会等の要請がありました、外国からも要請がありましたと。だったら、自衛隊を治安維持活動のために外国に派遣するというようなことも、それはできるんだということを今答弁されたようなものですよ。そういう理解でいいんですか。

浜田国務大臣 それは、逆に言うと、わざとそっちの方にお話を持っていっていると思います。

 治安維持活動等に関しては、またこれは別の話でございます。今回の法案に関して言わせていただくならば、我々は国民の生命財産を守る責任を政府として持っているわけでありますので、かの地において我が国に対してそういった侵害が行われるということであるならば、当然それに対処するのは当たり前の話でありまして、今回の法律、私も前から申し上げているように、海上警備行動に関しては応急措置であって、その後に来る新法によってやれるものをしっかりとやってください、国会でも議論していただきたいということを申し上げているところでありますので、余り話をすりかえないでいただきたいと思います。

平岡委員 私は、この法律の制定が将来的にこういうことにつながらないかという心配を国民は持っている、そのことについて聞いているので、この新法そのものについて聞いているわけじゃないので、とりあえずいいです。大臣はこの新法のことしか答えられないということでありますから、いいんです。

 それで、今回、海賊対処行動において拡大された武器使用基準であります、先ほども議論になりましたけれども。これは、任務遂行を妨げる企てを排除するための武器の使用というような概念に今度は入り込んじゃったわけですよね。そうであるならば、私は、自衛隊が他の法律に基づいて、例えばPKO法であるとか補給新法であるとか、そういうものに基づいて海外に行く場合に、その武器使用基準を拡大することにつながりはしないだろうか、こういう不安があるわけですね。

 これについては本会議でもちょっと質問が出ていましたけれども、私があえて端的に聞きたいのは、任務遂行を妨げる企てを排除するための武器の使用ということが今回概念的に入ってきた。このことがほかに拡大しないのかどうか、このことについて端的にお答えいただきたいと思います。

金子国務大臣 結論からいきまして、他の法律における自衛隊の武器使用基準の拡大につながるものではありません。

 海賊行為への対処は警察活動でありまして、そのための武器使用に当たっては、本法案で準用いたします警察官職務執行法第七条の規定を基本としておりまして、さらに本条、第六条の規定で、ソマリア沖の海賊行為の実態を踏まえて、国内法上の犯罪として規定されました海賊行為のうち、特に海賊が船舶で民間の被害船舶に接近するなどの行為については、その後の重大な危害の発生を回避するために、これらの行為を行っている段階で抑止する必要が高いことから、警察官職務執行法第七条をいわば補完するものとして、停船させること、これを目的として武器使用に関する規定を新たに本法に盛り込んだものであります。

 冒頭に戻りますが、他の法律における自衛隊の武器使用基準の拡大につながることはありません。

平岡委員 最後のところはそれでいいんですけれども、先ほど私が心配しましたように、ISAFとかOEFのときに議論したような形で、治安維持活動ならば外国の要請があればそれで行ってもいいんだ、そういう国際法の位置づけの中で議論されている中で、やはりこの武器使用基準の問題が拡大されるというおそれがあるということで、あえてお聞かせいただいたということであります。

 次の不安として、海賊対策として自衛隊を含む実力部隊が海外に派遣されることにシビリアンコントロールが確保されているのかという問題について、ちょっと議論をしたいと思います。

 まず最初に、海上保安庁の存在ですけれども、これは後藤田正晴元官房長官が、例の掃海艇を派遣するときの話として、海上自衛隊の武装艦船も海上自衛隊の軍艦もこれは同じであるというような表現をしているということもありまして、あえて聞くんですけれども、一つは、海上保安庁の現在の通常の活動海域というのはどういう範囲になっているんでしょうか。

    〔木村(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

岩崎政府参考人 海上保安庁の活動海域でございますけれども、特に法律的にも地理的に限定されているわけではございません。海上保安庁は、日本の国民の人命、財産に危険が及ぶような事案が多く発生する日本の周辺海域を主たる活動の場としております。

 ただ、その周辺海域を越えてやった事例といたしましては、海賊に関しましては、再三申し上げておりますように、東南アジアでの海賊への対応、それからプルトニウムの海上輸送護衛につきましてはフランスから日本までというような護衛任務も実施したところでございます。

平岡委員 主として周辺海域であるということであろうというふうに私も理解します。

 そこで、今回の法律を見てみると、海賊行為というのが犯罪化されたんですよね。つまり、公海における海賊行為はすべて日本の国においては犯罪だ。

 しかし、犯罪ということになると、どういうことになるかというと、刑事訴訟法を見たら、司法警察職員というのは、「犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」海上保安庁法の三十一条では、海上保安官というのは、まさにこの司法警察官として刑訴法の規定の適用を受けなければいけない。

 これからは海上保安庁は、例えば、ソマリア沖で海賊がある、マラッカ海峡で海賊がある、南アフリカの方でも海賊がある、こうなったときは、犯罪があると思料するわけですから、すべて出かけていかなきゃいけないんです。そんなことになっちゃう、それは私はちょっとおかしいと思うんですね。そうしなければ義務が果たせないということになるのはやはりおかしい。

 そうであるとするならば、限られた海上保安庁あるいは自衛隊の能力で、今回の海賊対処法案で犯罪化されたものについて、取り締まりをする、抑止をするということについては、やはりだれかが、これは行ってやろう、これはやはり行かないことにしようという判断をしなければいけない、こういうふうに思うんですね。これは自衛隊だけではないですよ、海上保安庁だってそうですよ。そういう枠組みが今度はあるんですね、この法案の中に。

金子国務大臣 御指摘のように、海上保安官あるいは海上保安官補、海上保安庁法三十一条に基づきまして、海上における犯罪について刑事訴訟法の規定による司法警察職員として職務を行うこととされております。

 今回、この法案が通りました場合の、海上警備行動を発令中であります、自衛艦に同乗した海上保安官は、刑事訴訟法に基づいて当該行為に対する迅速かつ適切な初動捜査をすることとしております。

 ただ、実際に、日本人を死に至らしめるというような重大な行為に対しては、当然、身柄を逮捕してジブチ経由で我が国に護送し、我が国の国内法で起訴するということになりますが、被害の程度に応じては、最寄り国で他の国の官憲に引き渡すという、これも通常の刑事訴訟法、刑法の手続で行うこととしております。

平岡委員 ちょっと私の質問の趣旨を理解されておられないので困るんですけれども、私は、行って捜査して逮捕したなんとかという話については別に、別の問題として次の問題点があるんですけれども。そもそも、そういうところに、遠くの海に出かけていって犯罪の抑止をする、あるいは犯罪の取り締まりをするということについては、それは一海上保安庁だけが判断する問題じゃないんじゃないですかということを言っているんです。

 それで、時間が来ましたので、最後に聞きますけれども、今回の海上警備行動についていえば、新聞報道等によれば、昨年の十二月に総理が浜田大臣に対して指示をされたというようなことで始まったようなことも書いてありますけれども、そのとき、国土交通大臣に対しても同じように、海賊対処のために海上保安庁として何かやれないのかというような、そういう指示はあったんですか、どうですか。

金子国務大臣 昨年夏から月を追って海賊事案が多発してきたという現状にかんがみまして、昨年の二月に実は海賊法制の検討チームを立ち上げておりまして、そこで、どういう形態で、どういう法制で海賊法制をつくるかということについて議論が始まっておりました。

 そういう中で、夏になって急速に事態がふえてまいりました。しかし、ロケットランチャーを使うといったような現場の状況にかんがみて、海上保安庁の、先ほど来議論に出ております、実践的な、業務が継続できる「しきしま」一そうではなかなかこの現状にかんがみて無理だなという議論は閣内でしておったところであります。

 当然に、国土交通大臣も、海上保安庁の長官から状況を聞き、あるいは外務省から海賊現場の現状を聞いた上で協議してきたところであります。

平岡委員 国会承認の話もそうなんですけれども、ここで皆さん方が言っている、海賊行為への対応は第一義的には海上保安庁の任務だというふうに口では言われますけれども、それを担保する仕組みが全くないんですよ。

 今大臣にお聞かせいただきましたけれども、確かに政府の中でいろいろやりとりがあったのかもしれませんけれども、それは国民の見えていないところ、それは法的な担保があるものではないもの。そんなところで、もう海上保安庁はできないんだという判断のもとに、一方的に浜田防衛大臣に対して海上警備行動の発令を検討せいというふうな指示が出るということ自体、私は、これは制度としていかがなものかというふうなことを指摘して、私の質問を終わらせていただきます。

深谷委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 この委員会で初めて質問させていただきます。

 浜田防衛大臣、大臣就任おめでとうございます。できれば同じ海絡みでも魚絡みで御質問をさせていただきたかったんですが、ちょっときょうは違った質問で恐縮ですけれども、お答えいただきたいと思います。

 海賊・テロ特委の問題ですけれども、条文第一条「目的」を見ますと、いろいろ書いてありますけれども、ちょっと懐かしいような文言が出てきているんです。その文章はダイレクトに出てきておりませんけれども、皆さんは覚えておられると思います。シーレーン防衛、シーレーン防衛というのを盛んに言われたんです。そんなのに行くんじゃないんだ、海賊を退治しに行くんだというふうになっておりますけれども、やはり根底にはシーレーン防衛というのは私はあるんじゃないかと思います。

 今、海上交通路、海上輸送路の確保、その防衛というのは大問題だと思うんですけれども、この点については、政府部内ではどのような基本的な見解になっておるんでしょうか。

金子国務大臣 御指摘いただきましたシーレーン防衛という概念でありますけれども、政府部内で、この言葉、海に囲まれ、資源の大部分を海外に依存する我が国が、有事の際に、国民の生存を維持し、または戦闘を継続する能力を保持するために海上交通の安全を確保するもの、これがシーレーン防衛という位置づけをしておりました。

 今回は、海に囲まれ、かつ主要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い我が国の経済社会及び国民生活にとって、船舶航行の安全確保は極めて重要である、このような中で多発しております海賊行為は、海上における公共の安全と秩序の維持に対する重大な脅威というふうに位置づけさせていただいております。

篠原委員 金子大臣からお答えいただきましたけれども、防衛に深くかかわることです。

 それで、海賊の方が中心なんだということですけれども、シーレーン防衛という考え方はこの法律にはほとんど入っていないんでしょうか、いるんでしょうか。浜田防衛大臣からお答えいただきたいんですが。

浜田国務大臣 今回の法案は海賊にかなり特化した部分があろうかと思いますので、そこに集中していると思っております。

篠原委員 気持ちはそうだとしても、文章にはちょっと違うような感じになっているんじゃないかと思います。

 このシーレーン防衛というのはいつ出てきたかというと、日本の防衛についての考え方が変遷している中で出てきているんですね。専守防衛というのが盛んに言われていました。それが周辺事態に行き、それが今や国際貢献。そして、シーレーン防衛というものは、順序はちょっと違うかもしれませんけれども、日本の海外権益を守るというところまでだんだん来ているのではないかと私は思います。

 この考え方が突然出てきたのは、余りシーレーン防衛だとかなんとかというのは嫌がられた鈴木善幸内閣のときなんですね。一九八一年。それを引き継いだ中曽根康弘首相が、二年後の一九八三年にレーガン大統領と会談したときに、これを裏打ちするような発言をされた。日本列島を不沈空母というふうに例えられたんです。そして、そのころ、東西冷戦のころでしたから、三海峡を封鎖して、そしてアメリカの軍事的な面で、防衛でもって協力するというようなことで来たんです。そのころから比べれば、東西冷戦はなくなりましたし、海上封鎖とかいうのはなくなりましたので、私はシーレーン防衛というのはある程度なくなったんだろうと思います。

 ですから、それを素直に信じたいんですが、しかし、今、金子大臣がお読みになりました部分、「この法律は、海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い」「海上輸送の用に供する船舶その他の海上を航行する船舶の航行の安全の確保が極めて重要であること、並びに海洋法に関する国際連合条約において」と書いてあるんですね。

 私は、海賊行為だけだったら、単純に考えたら、「並びに」の後だけでも十分のような気がするんですけれども、その点、いかがでしょうか。

加納副大臣 今の御質問でございますけれども、海賊対処法第一条の、これこれと書いてあるところはなくて、その後の「海洋法」からでいいんじゃないかというお話でございます。

 これは、前の方に書いてあるのは極めて当たり前のことで、当たり前というか、共通の問題意識でありまして、日本が四海、海に囲まれていることは事実でございますし、日本の食料にしましても、エネルギー資源、これはもうほとんど外国に依存しています。一次エネルギーでいえば日本の自給率は四%しかありません。食料の四〇%よりもさらに低いわけでありますが、これが全部海上輸送でありますので、これは日本からの貿易の輸出品も海上輸送でありますから、海上の航行の安全が非常に重要だということは当然でございます。

 シーレーン防衛というのは私は違う話であって、これは有事の際に、日本に入ってくる、あるいは日本から出ていく航行の安全を守るということ、それがシーレーン防衛のポイントであります。シーレーン防衛というのは、有事の際に、国民の生存を維持し、あるいは戦闘を継続する能力を保持するために海上交通の安全を確保するというようなことが定義されているようでございますけれども、シーレーン防衛と今回のこととは直接は関係なく、シーレーン防衛はシーレーン防衛で重要なものとしてある。

 それからもう一つ、今回制定した理由というのは、日本の海上交通の安全の確保が極めて大事だということ、そして海洋法条約、こういうことで整理をしたというふうに理解をしております。

篠原委員 加納副大臣の答弁の中にエネルギーという言葉が出てまいりましたけれども、ずっとエネルギー問題に携わってこられた人の真情を吐露した御答弁だったと私は思います。エネルギー安全保障も大事ですし、そういうことをみんな頭の中に入れていかなくちゃならないんじゃないかと思います。

 答弁の仕方として、こういうふうに言っていただけたらと思うんです。余り広くなり過ぎるといけないから、日本の懐に深くかかわるようなところにしか行きませんよという限定を加える意味でつけ加えた、どこへでものべつ幕なし出ていくんじゃないというふうにお答えいただければ、平岡さんのような心配性の人たちも安心するんじゃないかと私は思います。

 私は、現にそういうふうに、ここら辺の問題はこれからいろいろ指摘されていくだろうと思いますけれども、期間も限定されていない、場所も限定されていない、これはこれでいいのかなというのがあるんです。その部分はよく考えていただいた方がいいんじゃないかと私は思います。

 しかし、現実問題として、海軍がどうやってでき上がったかというのは、私は軍事問題にそんなに詳しいわけじゃありませんけれども、自分の国の貿易を守り、海運業を守るためにでき上がってきたんです。そのときに、口実として、賊というのがよく使われるんですね。これも私の生まれる前の話かもしれませんけれども、満州、中国に進出していく、馬賊だとか匪賊だとか、これを退治するために関東軍が必要なんだといって出ていっているわけですよ。ですから、これはよく使われるんです。賊だ、賊退治だと。

 これは、そういうのは実際必要なんです、必要なんですけれども、極めて限定的にしないと大変なことになる。だから、慎重にも慎重を期さなければいけないんじゃないかと思います。

 それから、資料をお配りしたのでちょっと見ていただきたいんですけれども、資料は皆さんのお手元に行っておりますでしょうか。一番最初の資料、世論調査、これはちょっと日にちが書いてありませんけれども、三月十四日にやった内閣府の世論調査で、へえと思ったんですけれども、国民は、正直、海賊対処への取り組みについて、六三・二%もやっていいと言って支持しているんですね。見てください、これを。取り組んでいくべきだというのが二七・八、どちらかといえば取り組んでいくべきだと。取り組む必要はないというのはほんのわずかなんです。

 私は、これは日本人の気持ちとしてどういうのかなと。インド洋の給油だとか何かには結構ネガティブな反応があります、イラク派兵だとか、アフガンとか。何でかなと考えたら、我々はずっと桃太郎の童話を聞いて育ったので、鬼退治、海賊退治というと、いやあ、格好いい、やってくれというのが深層心理としてあるんじゃないかなという気がして、だからこれだけ支持率も高いんじゃないかなと思います。

 ですから、こういうものは、正義感とかいうのもあって、常識で判断していけばいいのであって、これは私は国民の正直な気持ちであろうと思います。ですから、これで変な方向にしないようにして、これをきちんとやるというのが国民の負託にこたえることにもなるんじゃないかと私は思います。

 これはぜひきちんとやっていただきたいと思いますね。海賊対策の名のもとに、馬賊、匪賊退治という名のもとにどんどんどんどん出ていくということがないように、海と陸、同じなんですね。それだけは気をつけていただきたい。これが端緒になったというようなことが絶対ないようにしていただきたいということをお願いしておきます。

金子国務大臣 篠原委員から、今度の海賊対処への取り組みに対して、国民の六五%以上の方が賛成をしていただいているということについて御紹介いただき、この民意を大事に受けとめろという御意見も今ちょうだいいたしまして、大変意を強くさせていただいたところであります。

 御指摘いただきました、どこでも行くのかという点については、海賊行為に対処するために自衛隊を派遣する特別の必要がある場合についてでありますけれども、これは、日本経済社会に与える影響の度合い、それから国民生活にとっての重要度、これを踏まえて判断していく必要があると思っております。

 それから、今度の実施要項の中では、細目として、どこに、どの期間、どういう部隊でということを明記させていただき、国会に報告をさせていただき、国民の皆様方に安心感を持っていただけるようにしたいと思っております。

篠原委員 ぜひそのようにきちんとしていただきたいと思います。

 浜田防衛大臣が当初心配されたとおり、何の法律もないのに、自衛隊員の皆さんに現場の判断だけで後でとやかく言われるようなことをさせたくない、だから法律がきちんと必要だというのは、私はそれはそのとおりだと思います。重要なのは、そこにとどめるべきであって、この法律をつくったからというので、どんどん出ていくというようなことは絶対ないようにということなんですね。それは今、金子大臣からちゃんと答弁をいただきましたので、それでやっていただけたらと思います。

 問題のソマリア沖・アデン湾の関係ですけれども、ここのところはいっぱい船が通っている。先ほどの答弁の中にもありましたけれども、海賊がいっぱい出てきていると。マラッカ海峡や何かの海賊と違って、武装の状態がひどい、非常にがっちりして、何か武器弾薬もいっぱい持っておる、大変だというんですけれども、一体ここのところを航行している日本船隊の内訳というのはきちんとわかっておるんでしょうか。

伊藤政府参考人 ただいま日本関係船舶の船籍別の内訳という御質問がございました。

 正確にアデン湾を航行している船舶の船籍別という統計はとっておりませんけれども、全体としてちょっと申し上げさせていただきますと、日本の事業者が運航しておりますいわゆる日本関係船舶、これは日本商船隊といってもよろしいかと思いますが、この船籍別の割合で申しますと、二〇〇七年の隻数ベースでございますが、約四%が日本籍船でございまして、外国籍船につきましては、便宜置籍国であるパナマ船籍がその商船隊の約七〇%を占めておりまして、また、次にリベリア船籍五%という状態でございます。

篠原委員 数字をいろいろ伺ったら、なかなか出てこないんですね。

 今も聞きましたけれども、新聞報道によりますと、ソマリア沖・アデン湾のところで航行しておって、日本に守ってほしいといって手を挙げてきた船が二千五百九十五隻ある。それだけ頼んできたんだったら、内訳もみんなわかっているんですから、ぱっと統計が出ていいはずなんですけれども、どうも出てきていないんですね。やはりこれはよくないなと思うんです。

 この問題というのは、これから資料でいろいろ問題点を指摘しますけれども、アデン湾に行っている船が一体どういう性格のどういう船だということもわからないぐらいなんです。全体でしか答えられないと言うんです。二ページから三ページ、四ページをちょっと見ていただきたい。私が調べました。私は、ずっと海のことに、漁業のことに十年ぐらい携わったので、その延長線上で船のこともいろいろ関心を持ってまいりました。

 まず二ページのところ、数字だけで細かいんですが、見ていただきたいんです。これは、皆さんちょっと老眼鏡が必要になりかけた人たちが多いので省きまして、次のページ、三ページを見ていただきたいと思います。

 これだとすぐにどなたもおわかりいただけるはずです。これは、日本籍船と外国籍船の数の推移です、見ていただきたいんです。棒グラフは実数です。先ほどお答えになりました、わずか四%ですね、パーセントでいうと。これだけですね。一九九〇年を見てください。大体半々だったんです。それが、これだけ外国籍船がふえてしまっている。一体なぜこうなるのか。

 この次、パナマ船籍とか言いましたけれども、四ページを見ていただきたいんです。これは、いただいた資料をそのままつけてあります。順序が後先になってしまいましたけれども、外国人船員が多いんですね。フィリピン人、インド人、中国人というのが圧倒的に多いんです。

 今度、五ページ。五ページは船員の皆さんの国籍です。見てください。十数年前と比べて、当然十数年前は日本人の方が多かったんです。それが、ずっと減って、八%から九%になっている。三千人ぐらいになっちゃっているんです。一万五千人の船員がいたのが、今三千人しか日本人がいない。こういう惨たんたる結果です。

 こういった数字を見ていると、何か、食料自給率か農業にそっくりなので、ちょっと哀れを催すんです、よくないなと思うんです。その関係の数字、商船隊というので六ページも見ていただきたい。

 次に七ページ。七ページが、今アデン湾に海軍を派遣している各国商船隊の自国船籍、外国船籍の割合です。

 日本は一番下にありますけれども、パーセントでいうと、終わりにありますが、一位がドイツですね、八六・四%が外国籍船、それに次ぐのが日本、そして海運国のギリシャ。西側先進諸国、ドイツは余り海にアクセスがないからこうなっているのかなとは思いますけれども、あとアメリカ、イギリス、フランスを見ていただきたいのですが、五割を保っている。この理由は後でちょっと触れ、日本との比較をさせていただきたいと思いますけれども。

 これは、非常に日本はいびつになってきているんじゃないかと思うんです。この十年、十五年の間にがたがたになってきちゃっているんですね。なぜ、こんなふうになっているんでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の便宜置籍船の割合が、他の主要先進国に比べまして高いというその原因は何かというお尋ねでございます。

 この便宜置籍化というのは、いわゆるフラッギングアウトと呼んでおりますけれども、便宜置籍国に先進国が自分の船の籍を置くということでございまして、これは、実は七〇年代より欧米主要海運先進国で、こういった便宜置籍国の税制面あるいは船員コストの面での国際競争力の観点から大きく進んだものでございます。我が国も、海運先進国として、こうした流れの中で進んだわけでございます。

 先生御指摘のとおり、比率が七七%、八%、こういう高い数字になっております。特に、我が国がこういった数字に至った理由の一つとして考えられるものがございます。八〇年代の半ばでございますが、正確に申しますと八五年のプラザ合意がございまして、このときに円高が急速に進んだわけでございます。船の運賃は主としてドルで徴収をいたしますので、この円高によりまして、我が国の外航海運企業の経営環境が大幅に悪化をいたしました。この内外の船員コスト格差の拡大で、日本人の船員の乗り組む日本船の国際競争力が非常に低下をしたことから、特に日本で大きく進んだわけでございます。

 結果といたしまして、最も多かった一九七二年、日本籍船は千五百八十隻ございましたけれども、二〇〇七年には九十二隻に減少したということでございます。

篠原委員 丁寧に経過を説明していただきました。別に農政の肩を持つわけじゃありませんけれども、農業の場合だと、アメリカは経営面積が二百ヘクタールだ、日本は一・二ヘクタールだ、勝負にならないんですよね。それから、工業の場合だって、原材料を外国から輸入して、この輸送船で輸入してくるんですけれども、そして輸出するというので、結構ハンディがある。

 海のことについては、広いですし、だれでもアクセスできるし、これが問題で、発展途上国も簡単に参加できるから、日本などはめためたになっていくんだろうと思いますけれども、しかし、手の打ちようはあるはずなんですね。何も手を打たなかったんでしょうか、今打とうとしているんですか。

金子国務大臣 御指摘のとおり、海運立国日本、この中で、国際輸送隊というんでしょうか、国際運送隊の力が、残念ですけれども、日本国籍船、日本人海員あるいは船長というのがだんだん減少してきていることは本当に残念なことであります。

 そういう意味で、我々として、何とか日本籍船及び日本人船員は、経済安全保障の観点からも、一定船籍あるいは一定人員は確保していくことが必要だと思っておりまして、税制の影響というのは、やはり非常に我が国はおくれていました、昨年、トン数標準税制を導入させていただきました。

 このトン数税制導入に当たりましては、目標も、ある意味、あわせて海運商船隊にお願いをいたしまして、目標として、日本船籍を五年間で二倍にする、それから日本人船員を十年間で一・五倍にするということを目標とさせていただいております。

 この三月末に、外航船社十社から日本船舶・船員確保計画が出て、トン数標準税制も適用されまして、第一歩、おくればせでありますけれども導入されてきた、まだまだこれからだと思っております。

篠原委員 大体、世の中が直っていくのは、何か問題が起きたりして、それでいろいろな不始末が露呈してというのを、例が悪いかもしれませんけれども、企業の献金なんというのもそうで、何か起こるたびにいろいろ変わってきているんだと思う。ですから、そういうとき、例は悪いかもしれませんけれども、そういうのを契機として私は直していくべきだと思います。そういう点では、この機会を活用していろいろやっていただきたいんです。

 次のページを見ていただきたいんです。「各国軍による護衛コンボイの概要」というのですね。これをちょっと見ていただきたいんです。

 これは、今、十七カ国派遣しているんですけれども、そういった国々は、私は知りませんでしたけれども、どの船を先に守るかという優先順位を公表しているんですね。日本は、みんな一緒に扱うと言って平等に扱って、何かわけのわからぬ、日本にかかわりある荷物を運んでいる船全部だと言っていますけれども、ロシアは戦略物資輸送船というのを一番最初にしているんですね、軍事戦略物資ですね。次にロシアの船籍、ロシア籍の船。それで、日本と同じように関係船ですね。インドも、まずインドの籍船、次にインド人が乗っている船、そしてインドの関係の貨物輸送船、これの定義はよくわかりませんけれども。中国も露骨です。中国籍船一番、二番目、香港、マカオ、台湾、そして、中国の船会社がコントロールしている船。私は、この船籍問題について日本は優し過ぎるような気がいたします。

 国籍問題というのは、いろいろこれもすったもんだしていますけれども、こういうことになると、何か俄然張り切る人たちが両側にいるんでよくないんですが、冷静に私は考えるべきだと思います。国籍問題については、私は日本というのはかなりうるさい国だろうと思います。それはそれでいいんだろうと思いますね、ほかの国と比べてですが。アメリカのように、カリフォルニア州が移民のるつぼとかになっているんじゃないんです。日本人は違うんですから、そういうのはいいんだと思うんですけれども。

 それを、こんなに、国籍についてはあれこれ言いながら、何か船籍についてはルーズなんですね。どこでもいいからやってやると。こういうときを奇貨としてというか、もうちょっと考えてくださいよ。海洋法条約を貫く精神として、旗国主義というのがあるんです、フラッグ。国を立てている。それを原則としてやっていくと。海賊の場合は、よくない行為だと。海は、海というか、コモン・ヘリテージ・オブ・マンカインド、人類共有の財産と言われていますけれども、海賊はその反対で、コモン・エネミー・オブ・マンカインドです、全人類共通の敵です。だから、それから守っていいというんですから。

 小池委員が先ほど午前中聞かれていました。日本国民の税金でもって遠くに行って守る、そのときに、何か税金払うの嫌だからといってほかの国に船籍を移している船も同じように守ってやるというのは、国民感情として、幾ら桃太郎にほだされて鬼退治、海賊退治が大事だと言っていても、それはおかしいんじゃないのと。これを機会に、ちゃんと日本船籍にして、そして日本人船員を使っている、そういう方向にしてもらわなくちゃ困るよということを私はしてもいいと思うんですが、今、こんな、どさくさに紛れて条件をつけるというのはよくないですけれども、これを奇貨としてよく考え直してくださいよ、日本国籍にしておいてもらわないと困りますよというのをやってもいいような気がするんですけれども、いかがでしょうか。

金子国務大臣 御主張のお気持ちはわからないでもありませんが、現実問題、我が国国際海運隊は大部分を便宜置籍船、外国船籍が占めております。先ほど来お話ししましたように、税制上あるいは人件費の経費等々ということの理由でこういう外国船籍にしているというのが状況でありますので、外国籍船も含めた日本商船隊の航行の安全というのは確保していく必要があるんだと思っております。

 国連の海洋法条約におきましては、船籍にかかわらず、公海上の海賊行為、最大限可能な範囲で協力するということは、もう委員御存じのとおりでありますけれども、現実的に我が国国際運輸部隊が置かれている立場というのはやはり考えていく必要があると思います。

 ただ、委員おっしゃることも、もとより一理あることではあると思っていますけれども、直ちにやることはなかなか難しいと思っています。

篠原委員 税金を払い日本船籍にすぐしろというのは、すぐはできないと思いますけれども、少なくともほかの国がやっているんです。

 五隻を守ったと。隊列を組んで行くそうです。十隻になったらどうするんですか。十一隻になったらどうするんですか。僕は何隻を一緒に護衛できるのか知りませんけれども、その順番として、ほかの国がやっているように、日本籍船第一番、次は日本人船員が乗っているのと日本関係船とか、法律にそういう順番を書いて公表して、実施計画の中にですね、やっていただいても僕はいいんじゃないかと。この点についてはいかがでしょうか。

浜田国務大臣 先生のおっしゃるように、やり方についてはいろいろなことがあろうかと思いますので、逆に言えば、今後いろいろな状況状況に対処していかなければならないというふうに思います。今後、このやり方についてはまた考慮していくべきだと思いますし、先生がおっしゃるように、それを対処要項の中で書いて出すというのが、これは表に出し過ぎてもまたいろいろと情報が流れてしまうというのもあろうかと思いますので、そこはちょっと、我々とすれば判断をしなければならないところだというふうに思いますけれども、今後十隻以上になったときにどうなのかという点については、また今後検討させていただきたいというふうに思っております。

篠原委員 これも最近は世論調査結果がすぐ出たりしますけれども、世論調査をしてみれば、国民はそういう順番をつけることについて何も疑問を感じないと思いますよ。全く関係ない国までそんなにお金をつぎ込んで何で守る必要があるんだと。

 優先順位は日本にかかわっている部分だというので、順番はこうですよと。だからといって、下の方にあるのを全部オミットするわけじゃないと思うんです。しかし、我々の気持ちとして、順番はこうだということを明記して私はいいのではないかと思います。

 そういう点では、今、俄然海の方にも出ていくということで、海賊対策をきちんとするところになってきているんですけれども、どうも日本の最近の安全保障の関係のを見ていると、跛行性がある、同じ安全保障といっても。加納さんは、さっき言いましたエネルギー安全保障、非常に関心がおありになると思います。私なんか、ずっと体に食料安全保障というのがしみついています。その観点からほかの安全保障を比べるんです。

 この一番最後の九ページを見てください。これはじっくりごらんいただきたいと思います。この表を結構使っているんですよ。金子予算委員長のときにもこれを使ったんですが、余り皆さん認識していただいていないので、よくじっくり見ていただきたいと思います。これは、今こういう言葉があるかどうかわかりませんけれども、軍事安全保障と食料安全保障と運輸安全保障というものです。

 それの一番左、「すべて自力で」と。「外国進出」というのはちょっと毛色が違うんですと。それと「自衛」、なるべく自分の国は自分で面倒を見ようというのが真ん中。それに対して、「外国に依存はしかたなし」、あるいは一番下は、「自国一国では考えず何でも自由化」でいいんだという考え方があるんです。

 軍事の方は、もう皆さん、ここにはそういうのをずっと議論されてきた方々ですから、おわかりいただけると思います。極端な人は、核兵器も自前で持つべしと言った元外務大臣、元政調会長がおられます。こういう考え方は、私はあってもいいんだろうと思います。

 それとパラレルな考えは食料完全自給ですし、運輸も、日本の輸出入は全部日本国籍の船でやるべきだ、日本人船員が乗ったのでやるべきだというふうになるんです。おわかりになりますか。

 一番真ん中の「自衛」でいったら、「なるべく日本籍船」というのは、九〇年ぐらいで、船籍が半分半分、船員は日本人の方が多くて、日本人が一万四千人で、外国人が六千人ぐらい。今どうなっているか。一番下、経営さえコントロールすればいいんだと。日本船籍は、もう九十二になっているそうですから、九十二隻、外国が二千隻、船員に至っては三千人と四万人。

 これを皆さん、食料安全保障のところで見ていただくと、意外に支持が多いのは、自由貿易のもと、何でも自由化したっていいんだ、これが非武装中立に当てはまるんです。

 日本人は論理的に考えられないんです。加納さんは、ここにエネルギー安全保障をやったら、こっちをもっと大事に、同じように考えていただきたい、パラレルに考えていただきたいということです。

 そういう点、私は、余計な話で恐縮ですけれども、自民党の防衛族は大したものだと思います。防衛族といいますと、玉沢徳一郎さんは防衛も大事、農業も大事と。浜田さんも同じです。中川昭一さんも、石破さんも、中谷さんも、これは同じになっているんです。残念ながら、こっちはちょっと聞いていないようにしてください、民主党には結構防衛族がいるんですけれども、農業に思いをはせる防衛族というのは余りいないんです、私一人ぐらいで。ちょっとまだ進歩がないんじゃないかと思います。

 それと同じように、運輸の安全保障も絶対考えていただかなくちゃいけない、いい機会ですから。なぜかというと、皮肉を書いてあります。時間がなくなっているので農業の方は省きますけれども、参考の三のところを見てください。これは大事なんですよ。今、金子大臣のお言葉にもありましたが、海洋国家日本の自国船籍率五%、船員率七%、食料自給率以下なんです。次、いざというときに、フィリピン人や中国人やインド人が日本船から逃げ出して、海上警備の対象もなくなっている可能性があるんです。おわかりになりますか。軍事ばかり突出しているんですよ。ここが大事。

 きょう、この議論をしてこの法案を通してやっていくんだったら、これとパラレルに日本の国家安全保障を考えて、船も、それはそのとおりなんです。九九%の貿易が、海を通じて原材料が入ってきて、輸出するのもそれで出ていくんです。飛行機で行くんじゃないんです。そのものは日本人が動かしていない、これは矛盾を感じるんですね。

 私は、農林水産省に入ってからシアトルに留学をさせていただいたんです。そこで同じ部屋になったアメリカ人がいました。尊敬されました。どうしてかというと、オリンピア半島というのは材木の集散地なんです。材木の港でアルバイトをしていたと。船が入ってくると、変な船がいっぱいいるので、ぶつけられるといけないから逃げるんだそうです。しかし、日本船が、日の丸を掲げてきた船が来るときだけは安心して材木をあっちへ移したりこっちへ移したりしていられたと。日本の船はきちんとルールを守って、きちんと真ん中しか通っていかない。ほかの国の船ときたら、あっち行きこっち行きで危なっかしくてやっていられなかったと言うんです。しかし、今そういう状態じゃなくなっているんです。

 そしてもう一つ。これは浜田大臣はおわかりだろうと思いますが、捕鯨にはやたらこだわるんですね。何と言っていますか。捕鯨の技術を維持するために調査捕鯨が必要だと。三千人なんて、実態は、陸上人員も加えて二千人切っているはずですよ。日本人で船をちゃんと動かせる人がほとんどいなくなってしまう、こういう事態になっているということをよく御認識いただきたいんです。

 アメリカはやはり大した国ですよ。ここの一番上、ジョーンズ・アクト。久しぶりにこのことを考えたので、事務方の皆さんには恥を知らしめまして、ジャクソン・アクトが、ちょっと同じように聞こえちゃったんでやっていましたが、ジョーンズ・アクトといいます。これは、アメリカは戦争遂行のために自国に船舶技術を残しておかなければいけないというので、内航海運はすべてアメリカ国内でつくること。これにまつわるいろいろな保護があって、常にこの自由化を言う人たちがいるんです。しかし、アメリカは頑として聞きません。アメリカの中にちゃんと船舶技術を残しておかなくちゃいけない、造船所も残しておかなくちゃいけない、いざというときに軍事調達するんです。

 フォークランド紛争を覚えておられますか。サッチャー首相はどうしたか。物すごい素早い対応をして、二カ月で戦争を終結させました。そのときに、クイーン・エリザベス2、客船まで徴用されているんです。

 日本は一体そういうことを考えているか。何か、軍事的に外へ出ていくところばかり熱心で、ほかのところが私は抜けちゃっているんじゃないかと思いますので、これを奇貨として、この部分もぜひ考えてやっていっていただきたいと思います。

 金子大臣、この点についていかがでしょうか。

金子国務大臣 篠原委員の大事な御指摘だと思っております。

 先ほど申し上げましたように、この三月末に日本の海運会社十社がトン数標準を申請してくれました。海運市況が急速に去年の夏から悪くなっておりますので、トン数標準することは、必ずしも、たった今の経営を考えれば海運会社にとってプラスではない部分はあるんですけれども、それでもトン数標準を受けてもらう、そして、その分、日本船籍と日本人船員の増加、先ほど申し上げましたような目標を達成してもらうということを海運十社がやってくれまして、それなりに民間の船舶会社もそういう方向に前向きに進めてくれ始めていると思っておりまして、我々としては、政府としては、それをさらにきちんと進められるような環境をつくってまいりたいと思っております。

篠原委員 今ので緊急の課題である雇用創出のことを考えても、かつて五万人もいたわけです。アメリカは、陸上の皆さんの賃金よりも船員の方が一・五倍高いんです。その差額は自国の商船隊を維持するためにアメリカ政府が補てん金を出しているんです。だから、そういうことをやったらいいんだろうと思いますよ。こんなことを手前みそで言うのもなんですが、農業では、農業は大事だからというので農業者戸別所得補償を一兆円払うというのは私がずっと言い続けてきているわけです。そういうことをやったっていいんですよ。それは安全保障のためなんです。全体を底上げする。そうやらないと、これだけ下がってしまったものをリカバリーは簡単にできないです。まずは船員、そして船籍、それで我が国の安全を一緒にきちんとしていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 まず、自衛隊による護衛活動について聞きます。

 海上自衛隊の護衛艦二隻が海上警備行動を根拠にソマリア沖に派遣されました。三月三十日から民間船舶の護衛活動を開始しております。

 防衛省に聞きますが、この二週間余りで、何回、何隻の船舶を護衛したのですか。

徳地政府参考人 お答えをさせていただきます。

 自衛隊は、先月の末から、現場におきまして護衛活動を開始して、西の方向へ航行、それからさらにまた東に戻るというようなことを繰り返しておるわけですが、けさまでで合計で七回やっております。そして、この七回の合計で二十一隻の船舶の護衛をしております。

赤嶺委員 国土交通省に聞きますが、民間船舶が自衛隊の護衛を受けるためには、国土交通省に、対象船舶となり得る船舶の基礎情報を事前に登録し、その上で個々の護衛申請を行うことになっている、このように聞いているわけですが、これまでに何隻の事前登録があったのですか。

伊藤政府参考人 ただいまの御質問のありました点でございます。

 私どもは、実は、一月二十八日に海賊対策の連絡調整室という訓令組織を設けまして、海上警備行動を発令された後に円滑にエスコートが進むように、事前に登録を募りまして、約二千六百隻強の登録がございました。

 ただ、一方で、現実にこのエスコートのスケジュールに合わせて申請をして実際にエスコートの実施に至った数は、先ほど防衛省の方から御答弁させていただいたとおりでございます。

赤嶺委員 当初の護衛申請二千六百隻強ということでありますが、これでいきますと、大体一日当たり七隻から八隻という計算になるわけですが、しかし、この二週間余りで実際に護衛したのは二十一隻ということですから、一日当たり一隻から二隻という計算になるわけですね。

 それで、防衛大臣に伺いますが、船会社からの要望は非常に切実だと思いますが、実際に護衛できる船舶ということになると、かなり限定的になっていくのではないかと思いますが、いかがですか。

浜田国務大臣 今先生の御指摘の点に関しましては、当然、数においての限界というのはあろうかと思います。

 しかしながら、我々、前後においてこれはヘリコプターも使いながら警戒監視を行い、そしてまた、その際には、当然、スピード調整等々いろいろな方法をとりながらやっていくことになっておるわけでございますので、その時期によって、今の経済、景気の状況等も含めて、またその船の隻数も変わってくるかもしれませんので、その対応については、今後いろいろなケースに従って対応していきたいというふうに思っておるところであります。

赤嶺委員 それでは、国土交通省、大臣にお聞きしましょうか。

 自衛隊が活動を開始して以降、自衛隊の護衛を受けていない船舶、今非常に限定的だと防衛大臣もおっしゃっておりましたが、受けていない船舶は、あの海域でどういう対応をとっているのでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 護衛対象になりました隻数は正確に把握をさせていただいておりますが、そのほかに、あの航路をこの期間で通過したものを正確に把握しておりませんけれども、四十から五十ぐらいあるような情報は手元には来ております。それで、そこが正確に日本関係船舶であるかどうかという検証は今進めている最中でございます。

 そういった船舶の中には、例えば、定期航路で、コンテナ船のように非常にリスクが低い、すなわち、乾舷が非常に高くて、スピードの速いような船は、エスコートに参加するスケジュールに合えば参加するでしょうし、合わなければ自力で航行するとか、そういう船があると推定をしております。

赤嶺委員 次は、外務省に伺います。

 ソマリア沖に軍隊を派遣しているのは自衛隊だけではありません。日本だけでなく、諸外国も含めた全体でどれだけのアデン湾の通航量があり、そのうち諸外国の軍隊はどれだけの船舶を護衛しているのでしょうか。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 どれだけの船が全体として通過しているかというのは、先ほど来国土交通省の方からも御報告ありましたけれども、では、警備といいますか、軍艦、軍用機等、どれぐらいの国が派遣しているということにつきましては、EU諸国、アメリカ、ロシア、中国、インドなど約二十カ国が海賊対策のために軍艦、軍用機などを派遣しております。そういった国々が情報共有など連携しながらやっているということでございます。

赤嶺委員 伺ったのは、どれだけの国が軍隊を派遣しているかということではなくて、派遣している軍隊はどれだけの船舶を護衛しているのか、こういうことです。

別所政府参考人 失礼いたしました。

 それぞれの国、活動の仕方はさまざまでございます。まさにエスコートみたいなことをしている国もございますし、パトロールという形で行っている国もございますので、一概に今のような形で数字を出すことは難しいと思いますし、私も今そういう数字を持ち合わせておりません。

赤嶺委員 外務大臣、大事なことですから、きちんと把握して、そして今回のこの審議の中で報告をしていただきたいと思います。

 各国軍隊の護衛活動に対して、海賊の側がどう対応するのかという問題もあります。日本の自衛隊は、アデン湾内に設置された安全回廊で護衛活動を行っておりますが、最近はこれとは別の海域で海賊による襲撃事件が目立ってきております。三月十日には、東京に本社がある船舶輸送会社が管理する貨物船がソマリアの東方約九百キロの海上で襲撃に遭いました。三月二十二日には、商船三井が運航する自動車運搬船がケニアのモンバサ港へ航行中、ソマリアの東方約九百キロの海上で襲撃に遭いました。専門家は、海賊活動が広域化している、このように指摘しておりますが、こういう実態について国土交通省はどのように把握していますか。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおり、ソマリアの東岸、ケニアに向けての、あるいは南アに向けての船舶の海賊事案というのも最近非常に多くなってきておりまして、私ども、実は、日本の関係の船社には状況把握のためにお話を申し上げて、それで、船社の対応も伺っております。マダガスカルという大きな島がございますが、ああいった南側を迂回する船会社であるとか、あるいは大きく沿岸から離れて航行する、こういった指示を各船に出して未然に海賊被害に遭わないような対応をとっているというふうに伺っております。

赤嶺委員 一種の自衛的な措置といいましょうか、そういうのも海賊の行動の広域化によってとらざるを得なくなっているのかなという感じで伺いました。

 防衛大臣にお聞きします。

 ソマリア沖で活動する各国軍隊の大半はアデン湾に集中しております。インド洋側は米軍主導の合同任務部隊の二隻だけという指摘もありますが、アデン湾で護衛活動を行ったとしても、海賊の側は体制の手薄な海域に活動の拠点を移すだけなのではありませんか。

浜田国務大臣 それは、逆に言えば、海賊の方も生活がかかっておるわけでありますので、そういう意味では、彼らなりにいろいろなことをお考えになっていることとは思いますが、我々とすれば、今回の海上警備行動においてはアデン湾を中心にということでございますので、今のところ、そちらに対処するだけの考えというのはないわけでありますし、また、護衛艦も二隻というところでございますので、そういった意味では、あと何ができるかというのは、これは今の時点では、前から申し上げているように、我々の哨戒活動ができる飛行機ということを考えているわけでありますけれども、しかし、それがどのぐらい役に立つかわかりませんので、今我々、アデン湾の中で精いっぱいなのかなというふうに今のところは感想を持っているところであります。

赤嶺委員 結局、活動そのものになかなか無理があると言わざるを得ないと思うんです。イタチごっこになっていて、なかなか問題は解決していない。

 これは安保委員会でも私、紹介したんですが、現地でCTF151という合同任務部隊を率いるゴートニー中将、国際的な海軍の活動では海賊問題は解決できない、このように発言していますし、それから、アメリカの国防総省のモレル報道官、世界じゅうの海軍の艦船をすべてソマリア沖に集めても問題は解決しない、このように述べております。

 自衛隊の派遣では問題の解決にならないと私は考えております。

 そこで、防衛大臣に伺いますが、一体いつまでこの活動を続けるのか、活動を終了できる見通しはあるのですか。

浜田国務大臣 今先生の御指摘の点に関しては、つい最近活動を始めたばかりでございまして、ではいつと言われても、これはなかなか難しいところであります。

 我々とすれば、今回の法律がもしも通していただけるものであれば、当然そこで切りかえということにもなろうかと思いますが、ただ、今回の海上警備行動を発令して、一般的に、部隊の方のサイクルからいけば、ある程度の日数、そしてまた、我々とすれば、安全保障会議において六カ月後にはまたこれを議論するということにもなっているわけでありまして、その幅、それからまた、自衛隊の活動する期間の限界というのは、大体三カ月か四カ月というのが一つの目安にもなっているところもありますので、そういったこともあわせて、我々、今後勘案してやっていかなきゃいかぬというふうに思いますので、今、ではどのくらいというのはなかなか言いづらいというところではあります。

赤嶺委員 なかなかしっかりした見通しが聞けませんでした。

 それで、外務大臣に伺います。

 きのうの報道ですが、「海賊再び活発化 二週間で十九隻襲われる」という記事がありました。三月末には、EUに任務を引き継いだはずのNATOが活動を再開したとのことであります。海賊による被害急増に対応し、EUとともに活動を強化する必要があるとNATOも判断したと報じられておりますが、こういう最近のソマリア沖の海賊と各国軍隊の状況についてどのように把握しているかを伺いたいと思います。

 去年から各国が次々と軍隊を派遣しながら、海賊事件が減らないんですね。それはなぜでしょうか。

秋元政府参考人 ここ数カ月で海賊が増加している原因というのを確定的に申し上げることは困難でありますけれども、考えられる背景としましては、御承知のとおり、ソマリアにおきましては法執行、司法機関が全く機能していないということ、それから、犯罪集団の組織化、分業化、こういうものが進んでおりまして、身の代金を目当てに船舶を襲撃、ハイジャックする行為が巨大ビジネス化しているということが挙げられるかと思います。

赤嶺委員 私は、ソマリア沖の海賊問題の解決のためにはソマリアの安定化が何よりも重要だということを安保委員会でも繰り返し述べてまいりました。そういう認識が必要だと思いますけれども、外務大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 委員のおっしゃるとおり、ソマリアの安定化というのが非常に大事でありまして、我が国といたしましても、そういう意味では、いろいろな支援を通じましてソマリアが一日も早く安定するように、人道支援、治安向上のための支援を行ってきているところでございます。

 また、国連安保理や、ソマリア情勢に関心を有する欧米、アラブ、アフリカ、そういう諸国から成るグループが和平進展への支援につきまして検討を行っているところでございまして、我が国も積極的に協力をしていく考えでございます。

 御案内のとおり、ことしの二月にはブリュッセルでコンタクトグループの会合が開かれて、我が国も参加をいたしまして、和平プロセス、治安情勢等の支援について熱心な議論が行われました。私も、ことしの三月、ボツワナに参りましたときに、ソマリアの暫定連邦政府のワルサム計画・国際協力大臣と会談をいたしまして、我が国といたしましてもソマリアの和平プロセスを支援していくとの立場を伝えたところでございます。

赤嶺委員 ソマリア問題についてはまた別に聞きますけれども、ソマリアと周辺国の海上警察力の強化への支援も必要であります。国土交通省と海上保安庁はそのためにどのような取り組みを進めていますか。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 海上保安庁そして国土交通省としましては、ことしの一月下旬に国際海事機関、これはいわゆるIMOでございますが、そこの主催の海賊対策についてのジブチ会合、こうしたところにおいてワークショップを共催しております。そういうところで日本主導で東南アジアの地域協力の枠組み等をつくった実績、あるいはまた海上保安取り締まり能力向上のために今までさまざまな支援をしてきておりますけれども、そうした取り組み、すべてそのノウハウを入れ込んだような提案をそうした場で積極的にしてきているところでございます。

 また、ソマリア周辺国に対して、海上保安機関の法執行能力、先生お尋ねの部分でございますけれども、イエメンの沿岸警備隊職員をJICAの海上犯罪取り締まり研修というものに招聘しました。これが昨年の十月でございます。そしてまた、昨年の末、十二月でございますけれども、海上保安庁の職員をイエメンに直接派遣しまして、人材の育成支援などに資するような情報収集、これを行いました。

 さらに、イエメンで開催されたイエメン沿岸警備隊主催のソマリア沖のアデン湾海賊対策にかかわる地域海上安全保障会議、これに、ことしの二月でございますけれども、参加するなどして、しっかりと取り組みをしているところでございます。

 今後とも、こうしたものについて、国土交通省、海上保安庁一体となって、各省庁とも連携しながら積極的に協力していきたいと考えております。

赤嶺委員 イエメンとの協力関係のお話でしたけれども、外務省、ソマリアには沿岸警備隊はありますか。

秋元政府参考人 ソマリアの暫定政府は、今、国内の治安を強化するために軍隊それから警察を強化しようとしておりますけれども、海上治安機関というものはございません。

赤嶺委員 さっき平岡先生もちょっと御紹介していた、三月十六日の国連事務総長の安保理に提出した報告に、二〇〇八年の九月と十月にプントランドの治安部隊がハイジャックされた船舶の解放のために少なくとも二つの作戦を行った、こういう指摘があるわけです。米軍が三月に海賊容疑者を証拠不十分で釈放する際にプントランドの沿岸警備隊に引き渡していたという報道記事もあります。これらについて把握しておられますか。事務総長の安保理への報告、きちんと把握すべきではありませんか。

秋元政府参考人 そういう報告書が出されていることは承知しております。

 他方で、プントランドもソマリランドも、要するにソマリアの中の一地域でありつつ独自に独立を宣言している、いわば自治を主張している国でありまして、そういうところの海上保安機関がどういう実態であるかということについては承知しておりません。

赤嶺委員 少なくともコミュニティーがあり、そこに今のような活動が行われているということを事務総長が安保理に報告しているわけです。

 それで、私は外務大臣と国土交通大臣に伺いますけれども、ソマリアの海上警察力を向上させ、海賊にも、外国漁船の違法操業や有毒廃棄物の不法投棄にも対処していくことが可能であるなら極めて重要な方向になると思います。実態をきちんと把握した上で対応を検討すべきだと思いますが、両大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 ソマリアの海上、沿岸等におきます海上警備能力というものを向上させるというのは当然必要なことでありますが、先ほどからお話ありますように、治安状況を初め、ソマリア自体の状態というものを改善していく、そして、しっかりとした政府をちゃんとつくっていく、そういうことがまず非常に重要だ、そういうふうに思っております。

金子国務大臣 国連あるいはIMOにおける地域的な連携また協力体制を構築する動きを支援すること、これは当然でありますけれども大事だと思っております。中長期的な観点から、周辺国の連携あるいは海上保安機関の法執行能力の向上も重要と考えております。

 いずれにしましても、ソマリア沖の海賊は日本を含めて国際社会への脅威でありまして、緊急に対応すべき課題であります。そのために、海賊行為へ対処するための法律を整備することは喫緊の課題でありまして、本法案の早期成立に全力を傾注してまいりたいと思っております。

赤嶺委員 国連で行われている議論もしっかりつかむということが非常に大事だと思います。

 それで、法案について若干聞いていきます。

 自衛隊による海賊対処行動ですが、今回の法案は、第五条で、海賊行為への対処は海上保安庁が必要な措置を実施するとして、第七条で、防衛大臣が、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合に、内閣総理大臣の承認を得て自衛隊に海賊対処行動を命令するという構造になっています。

 この点について、総理は昨日の本会議で、海賊行為への対処は、第一義的には、海上の法執行機関である海上保安庁の責務である、特別の必要がある場合とは、海上保安庁のみでは海賊行為に対処することができない場合、または著しく困難な場合のことであると答弁いたしました。

 金子大臣に伺いますが、海上保安庁のみでは海賊行為に対処することができない場合、または著しく困難な場合とは、具体的にどういう場合ですか。

金子国務大臣 今度の事例、ソマリア沖の事例に照らして答弁させていただければ、ソマリア沖で海賊が使っております重火器、ロケットランチャー等々を使っておりますけれども、こういう武器に対しまして、海上保安庁が所有しております船艇で対応できますのは「しきしま」一そうであります。これは、海賊対策としては、複数チームを組んで行動する必要があるという意味で、しかも継続して業務を行うという意味で、海上保安庁ではこの一件は不可能である、それをもって海上保安庁では著しく困難な事態というふうに判断させていただいているところであります。

赤嶺委員 海賊対処は第一義的には海上保安庁の任務であるとしながら、今回の場合は困難な場合に当たると。

 今回つくられる法律は海賊対処の恒久法になるわけですね。その点から見ますと、今回の法案を機に、仮にソマリア沖の海賊のような場合であっても対応できるような海上保安庁の体制整備は行っていくということですか。

金子国務大臣 海上保安庁は、ちょうど昭和五十二年に漁業海里、専管海域二百海里が制定されまして、五十四年にかけまして、多くの船艇あるいは航空機を新設いたしました。それが今、船舶につきましては二十五年、航空機については二十年の耐用年数でありますけれども、耐用年数が来ておる。現在保有しております船舶、船艇及び航空機の約四割が耐用年数が来ておりまして、今、緊急整備計画に取り組んでおりまして、何とか二〇一〇年代の初頭には設備更新を終わらせたいと思って今進めているところであります。まずはこれを最優先していくということが大事である。

 一方で、今回の事案で指摘されますような、やはり遠洋の海上の安全ということを御指摘いただいております。「しきしま」級というものをあと二隻ほど持っていかなければならないのではないかという御指摘、御意見もいただいておりまして、手おくれにならないよう、真剣に検討してまいりたいと思っております。

赤嶺委員 もう時間がありませんから続きは後でやりたいわけですが、先ほどの質疑の中でも、今回の法案は国連海洋法条約を批准した国々に体制整備まで求めているものではないという答弁がありました。

 今のお話を聞いていますと、結局、ソマリアのような事態が起きたら自衛隊が出ていかざるを得ない。海賊対処という大義を掲げて自衛隊が世界の海に出かける、そういう法律の仕組みになっている。その中身についてはこれから議論していきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

深谷委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 長時間にわたり、御答弁、御苦労さまでございます。

 最後に質問する人も大変なんですよね、同じ質問が重なる可能性もありますから。それでも丁寧にお答えをいただきますようお願いをさせていただきたい、できるだけ早く終わるように頑張りたいと思いますから。

 一九九二年にフランスからプルトニウムを輸送しましたけれども、当時の海部内閣において橋本大蔵大臣が、海賊・テロ対策は海上保安庁の任務であると主張して、海上自衛隊の艦船での護衛に真っ向から反対をした。そして、当時の工藤法制局長官はこのときに、護衛艦の派遣について、法的にも能力的にも問題がないかと問われて、自衛隊が海上輸送の護衛をすることについて、自衛隊法第八十二条の規定を発動した例はない、今回のプルトニウムの輸送の護衛を自衛艦が行う方向で検討しているわけではない、法律上なお慎重に検討すべきであるというふうに答弁しているんです。

 今回、海賊対策を自衛隊法の海上警備行動でやることになっているわけですけれども、内閣法制局は、この工藤法制局長官の答弁から今回に至るまでに、どういう経過をもってこういうふうに変わるようになったのかということをまず御説明いただきたい。そのことをぜひ御答弁いただきたいということと、政府が見解を変えるまでにどういうふうな会議をしたのか、そのことをちょっとお聞きしたいと思います。

横畠政府参考人 御指摘の国会答弁は、平成元年十月十六日の衆議院予算委員会における内閣法制局長官の答弁と理解しておりますが、これは、御指摘のあったとおり、当時、海上警備行動の規定の発動例がなかったことに加えて、プルトニウム輸送の護衛については、むしろ政府部内においては、海上保安庁の巡視船で行うということが検討され、自衛艦が行う方向ではなかったという答弁があったことを踏まえまして、一般論として、慎重に検討すべきであろうということを述べたものと思われます。

 一方、今回の海賊対処のための海上警備行動につきましては、政府として慎重に検討した結果、現行法に基づきまして派遣を決定されたものと承知しておりまして、当時の内閣法制局長官の答弁と矛盾したり、あるいは抵触する、あるいは法制局として何か見解を変えたということではございません。

下地委員 政府の見解も本当は聞きたかったんだけれども。

深谷委員長 だれにか聞いてくれないと。

下地委員 ああそうですか、では結構です。

 法制局にちょっとお伺いしますけれども、あなた、今みたいな、一般論として国会答弁でこんなことを言って、果たして今言ったような答弁で、本当に法制局たるものがこんな答弁でいいのかね。一般論としてそういうふうなことを言って、慎重というのは、これは反対という意味ですよ、文章的には。

 当時の橋本大蔵大臣が言ったことについて法制局は、時の政権の力のある政治家がこう言ったら法解釈はこうする、今回これをやったらこれを変えるという、そういう認識になりますよ、今の答弁を聞いていると。

横畠政府参考人 何せ平成元年のことでございまして、当時の記録が残っているわけでもございません。若干、議事録からうかがい知れる限りでお答えするほかはないのでございますけれども。

 やはり当時の議論としましては、既に政府部内においては、先ほどもお答えいたしましたけれども、海上保安庁の巡視船で護衛をするということが検討されている、そのような方向であるという答弁が繰り返された後に自衛艦についてのお尋ねもあったということで、当時としては、まさに海上警備行動の規定の発動例はございませんでした。また、既に海上保安庁で対応されるということもありましたので、この先は推測でございますけれども、特別の必要がある場合に当たるかどうかのようなものも当然議論されたと推測はされますけれども、実際に何が議論されていたかというのはうかがい知れませんので、その意味で、すべての意味で、一般論として、慎重な検討が必要であるということを述べたのであろうと思われます。

下地委員 これは長くは言いませんけれども、橋本大蔵大臣は、何度も海賊・テロ対策は海上保安庁の任務だと言って、そのことについて何度も話をして、それで法制局もその見解を示している。

 今回は逆の見解を示しているけれども、こうやって変わるときには、一般論として当時のことは余りわかりませんとかという話じゃなくて、こういう経過で変わりましたということをはっきり言わなきゃだめだということを言っているだけの話で、しっかりとこの部分はこれからも、法制局は我が国の骨格ですからね、こんな答弁をしていたら、本当に笑われますよ。そこをもう少しきちっとしてもらいたいというふうに思いますね。

 それと、二問目には、今回の法律、海賊行為に対して三つあるんですね。海賊行為の処罰法と、海上保安庁法の改正、それとソマリア沖の自衛隊と、これは三つ、この法律の中ではできているんですけれども、この前の私の本会議の代表質問で、浜田大臣から、今回の自衛隊の特別措置法、特措法は全く考えていないというふうなことを御答弁いただいたんです。この法律の形を見ると、海上自衛隊が行かざるを得ない、艦艇的にも、物理的にも、能力的にも行かざるを得ないとなった場合には、特措法をつくって、ソマリア沖に時限立法でも自衛隊を派遣するというふうな法律の方がわかりやすくて、自衛隊もやりやすかったんじゃないかと思うんですけれども、特措法をつくるということは全く検討なされなかったんですか。

浜田国務大臣 この法案に関しましては、海賊に特化してということもございましたし、先生のおっしゃるような法律の考え方というのも、これは確かにわかりやすかったかもしれませんが、我々の選択としては、今回は海賊に特化してこの法案をつくったということだと思っておりまして、あえて特措法を考えなかったということに関しては、私とすれば大変答えづらいところもございますので、逆に言えば先生のおっしゃるようなところもありますので、しかしながら、我々は今回の法案の形を選択したということでございます。

下地委員 なかなかわかりにくいんですけれども。

 だけれども、大臣がおっしゃるとおり、今この国でソマリアに行ける艦船の能力を持っているのは自衛隊だけなんですよ、能力的にも。能力的に自衛隊しか持っていないというならば、自衛隊から行けるような法律をやるべきであって、一義的には海上保安庁だけれども、海上保安庁はできないから自衛隊が行きますというよりは、初めから特措法をつくって自衛隊に頑張れと言った方がわかりやすかったんじゃないかなというふうに私は思っていまして、そのことをぜひ考えてもらいたいですね。

 それで、二つ目に、今回、二隻の船が何かSOSで海上自衛隊に来ましたけれども、サーチライトを当てたり、そして大音響をやって、その小型船は立ち去ったというふうなことでありますけれども、防衛省は、船員法の十四条の遭難船舶等の援助に基づく人道的な措置で問題はないと説明しておりますし、海上幕僚長は、法的にきちんと命じられた行為ではないというふうに言っていますね。こんな特殊な任務で、命がけの任務で行って、結局はサーチライトを当てるとか大音響で、向こうが立ち去ったからいいようなものの、それで、その根拠が何かといったら、今言った遭難船舶等の援助に基づく人道支援だといったら、何かこっけいですよね。かわいそうですよね、自衛官の方々。こうやって命がけで、向こうが撃ってくるかもわからない中で、サーチライトを当てて音響を当てて、向こうが本気で発砲してきたら大変だ、そういうふうな中で、彼らは何もできない状況にいるわけなんですよ。(発言する者あり)ほかの国がどうかというのは関係ない、ここは日本の国会なんだから。

 だから、そういうふうなものの法律でしか対処できないという中で自衛隊を出すというのはやはり問題があるんじゃないかと思うんですけれども、その辺はどうでしょうかね。

浜田国務大臣 今回のいわゆるアデン湾の海賊の問題に対処するすべがそこにないということもございますし、応急措置的な形としての海上警備行動を選択せざるを得なかった。ですから、我々としては一貫して、やはり新法をつくってこれに対処してもらいたいということを申し上げてきたところでありますので、そういう意味では、今回の海上警備行動に関しては、つなぎということを前から申し上げているとおりでございます。

 しかしながら、今回の対処の方法とすれば、指揮官が本当に頭を絞って、最低限、そして最高がこれ以上でもこれ以下でもないものをやってくれたというふうに思っておりますので、そういう意味では、先生のおっしゃるように、現場の自衛官が大変苦労しているというのは、これは私どもも実感をしているところでありますので、ぜひ新法を通していただいて対処できるようにしていただければというふうに思っているところであります。

下地委員 海上保安庁が行けない最大の理由に、向こうの持っている武器になかなか対応できないということを事例として政府は申し上げているわけですから、こういう武器を持っている人たちに対処しなければいけない自衛隊が、自分の国家の船じゃなければ助けられないということ、やらないというわけにいかないですよね、SOSが来た場合に。そういう中でサーチライトと大音響、少しどうかなというふうな思いがする。

 しかも、国内に言いわけをしなければならないとなると、遭難船舶の法律を持ってこなきゃだめだというのでは、余りにも、こうやって命がけで頑張る人たちに対して、私たちは、対処がちゃんとできていないというふうなことを指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 それと、今度、ジブチと地位協定を結びましたけれども、これは、国会承認は要らなくてやる、行政手続だけでやるんですか。

中曽根国務大臣 今委員がおっしゃいましたジブチとの間で締結をいたしました自衛隊等の地位に関する交換公文でございますが、これは、いわゆる法律事項とか財政事項、それを含む国際約束ではございません。

 さらに、これは、我が国と相手国との間の、あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定する、そういう意味において政治的に重要な国際約束でありまして、それゆえに発効のために批准を要件とされているものではない、すなわちこれは大平三原則に当てはまらない、そういうことで行政取り決めとして締結をしたものでございます。

 ちなみに、イラク特措法に基づく航空自衛隊の活動拠点となりましたクウェートとの間でも自衛隊などの法的地位を確保することを目的として交換公文を締結いたしましたけれども、その形式も行政取り決めでございました。

下地委員 これは、四十九年の大平三原則が今でも生きてこういうふうになっているわけですけれども、外務大臣、この前、グアム協定のときも、日本は国会承認をするけれどもアメリカはやらないというふうなことがありましたね。そういう意味でも、こうやって法律をつくって海外に自衛隊を出すというふうになってきたときに、地位協定を結ばないと安心して活動もできないわけでありますから、これに関してもやはり国会承認をもらってやる。

 今までの、四十九年の大平三原則をもう一回見直して、こういうふうな特殊なときの地位協定に関しては国会の承認をもらうというような、大平三原則の見直しをしていく、こういうふうな方向については、外務大臣はお考えになっていませんか。

中曽根国務大臣 これは、日本が海外の何か組織を受け入れる、そういう地位協定と違いまして、日本が派遣して先方で受け入れてもらうということでありまして、大体、今までの地位協定の内容というのは、例えば、ジブチの今回のものも、自衛隊や海上保安庁、外務省の連絡事務所の特権・免除、あるいは、自衛隊員あるいは海上保安庁の職員を含む日本政府職員の特権・免除ということで、先方に行っての日本側に対する優位的なものを取り決めるということでございますから、これは日本の国会の承認はいただかなくてもいいんじゃないか、そういうふうに思います。

下地委員 逆に、僕は、ジブチの政府に対して、国会で承認することで、日本の国会においてこうやってジブチ政府が地位協定において協力しているということになれば、日本側もジブチに対する見方は変わってくると思いますよ。やはり地位協定がしっかりしていないと活動できないわけですから。

 そういう意味でも、協力をしてくれる人たちのことがはっきりとわかるように、地位協定を結んでいることそのものもわからない人たちだっているかもしれませんから、そういうことをしっかりと国会の審議の中でやっていくというのが大事かなというふうに私は思っています。

 最後になりますけれども、これも金子大臣に申し上げる。

 船舶、一義的にというふうに言っておりますけれども、「しきしま」級をつくらないとなると、いつまでたっても海上自衛隊が行かなければならないというようなことになってくるし、今回は答弁者になられているわけですから、なられているということは、海上保安庁が一義的にということを将来はちゃんとできるようにするというふうなことになってくるのかなと思いますけれども、なってくるには船舶をつくらないとできないわけです。

 このことについて、何度も質問を受けていると思いますけれども、いかがですか。

金子国務大臣 五十年代初に大量につくられました巡視船艇、航空機、これが大量に耐用年数が来ておりますので、現在、集中的な再生、代替整備に取り組んでおりまして、これは最優先に取り組んでまいらざるを得ないところでありますが、引き続き、このたび海賊対処法案において海上保安庁の責務というのが極めて明確にされたものですから、将来の遠方海域における重大事案への対処のあり方についても真剣に検討してまいりたいと思っております。

下地委員 平成元年の橋本大蔵大臣は、「しきしま」をつくるときは補正予算でつくったんですよ。それから四年間で建造して将来の道筋をつくっているわけですから、あのころは法律がなくてもこれぐらいのことをしているんですよ。今度は十五兆円もの補正予算を組むんでしょう。二次補正も五兆円あった。それだったら二十兆円の中で、「しきしま」級をつくるというのは三百億程度の話ですから。二隻つくったって六百億、大きいような小さいような、あれですけれども。

 ぜひ、そういうふうな意味では、この十五兆円の中に予算を組み込むというふうなことを言って、一義的なことについても私はやっていきますけれども今回は海上自衛隊でどうぞというようなことを明確に言った方がいいんじゃないでしょうか。

金子国務大臣 政府全体の結論として、現時点ではまだ考えておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、海賊対処法案における海上保安庁の責任を改めて明確にされたことを踏まえまして、重大事案への対処のあり方について真剣に検討をしてまいりたいと思っております。

下地委員 この法律は早目に通した方がいいと思うんですよね。私は、そういう意味では、今の答弁では一義的にという言葉が全部に野党の中にはひっかかってくると思いますよ。それを解消しないで法律だけ先に通せと言っても、なかなか難しい。この法案がスムーズに通るかどうかは金子大臣の答弁にかかっているんじゃないかなと思っていますから。アフリカ沖で頑張っている自衛隊のことを思い浮かべたら、海上保安庁がどうするかということを明確に示した方が彼らがゆっくりと仕事ができると私は思いますから、この船舶をつくることに関して明確な答弁をこの審議の最中にお願いしたいなというふうに思います。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次回は、来る十七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十二分散会


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