衆議院

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第4号 平成21年4月17日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十一年四月十七日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 後藤田正純君 理事 新藤 義孝君

   理事 中谷  元君 理事 長島 昭久君

   理事 鉢呂 吉雄君 理事 佐藤 茂樹君

      あかま二郎君    新井 悦二君

      石原 宏高君    江渡 聡徳君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      木原  稔君    北村 茂男君

      佐藤ゆかり君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君    冨岡  勉君

      中根 一幸君    西本 勝子君

      葉梨 康弘君    橋本  岳君

      松浪健四郎君    松本 洋平君

      三原 朝彦君    矢野 隆司君

      大島  敦君    川内 博史君

      後藤  斎君    田嶋  要君

      武正 公一君    伴野  豊君

      平岡 秀夫君    松野 頼久君

      三日月大造君    三谷 光男君

      鷲尾英一郎君    渡辺  周君

      石井 啓一君    冬柴 鐵三君

      赤嶺 政賢君    阿部 知子君

      保坂 展人君    下地 幹郎君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   国土交通大臣       金子 一義君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 知原 信良君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川眞喜雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            別所 浩郎君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           長田  太君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  伊藤  茂君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   岩井 良行君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     西本 勝子君

  吉田六左エ門君    佐藤ゆかり君

  大島  敦君     三日月大造君

  伴野  豊君     鷲尾英一郎君

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     吉田六左エ門君

  西本 勝子君     中森ふくよ君

  三日月大造君     大島  敦君

  鷲尾英一郎君     後藤  斎君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤  斎君     伴野  豊君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、外務省大臣官房審議官廣木重之君、外務省大臣官房審議官知原信良君、外務省大臣官房審議官宮川眞喜雄君、外務省大臣官房参事官小原雅博君、外務省総合外交政策局長別所浩郎君、外務省国際法局長鶴岡公二君、国土交通省総合政策局次長長田太君、国土交通省海事局長伊藤茂君、海上保安庁長官岩崎貞二君、防衛省防衛参事官岩井良行君、防衛省大臣官房長中江公人君及び防衛省運用企画局長徳地秀士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 おはようございます。日本共産党の赤嶺政賢です。

 ソマリア沖の海賊問題に関する国連安保理決議について聞きます。

 去年の六月以降、ソマリア沖の海賊問題にかかわって、一八一六、一八三八、一八四六、一八五一という安保理決議が採択をされています。いずれの決議においても、国連憲章第七章のもとで行動することに言及し、ソマリア沖の海賊問題が、国際の平和及び安全に対する脅威となっているソマリア情勢をさらに悪化させるものである、このように認定しているわけです。

 外務大臣に伺いますが、政府の説明によれば犯罪行為にすぎない海賊問題が、国際の平和と安全に対する脅威となっているソマリア情勢をさらに悪化させるとはどういうことですか。

中曽根国務大臣 御指摘の、今委員がおっしゃいました累次の安保理の決議というものは、これはソマリア沖の海賊事案が国際の平和それから安定に対しての脅威となっている、そういうソマリア情勢をさらに悪化させていると認定をした上で、ソマリア暫定連邦政府、いわゆるTFGでございますけれども、ここからの明示的な要請を踏まえまして、これらに対処するために、国連憲章第七章のもとで行動することとして、そして種々の決定や要請などを行っているものでございます。

 御指摘の安保理決議が国連憲章に言及をしておりますのは、ソマリア沖での事態の深刻さにかんがみまして、安保理が強い政治的な意思を示すとともに、そして、ソマリアの領域における各国の活動に対するソマリア自身の同意を補強するためと考えられるところでございます。

赤嶺委員 海賊の行為がソマリア情勢を具体的にどのように悪化させているのですか。

別所政府参考人 お答えいたします。

 安保理決議の内容についての解釈につきましては、もちろん有権的に解釈できるのは安保理そのものだけでございますが、この決議そのものに書いてございますのは、まさに、前文のところでございますけれども、こういう海賊行為があるということによって、これが、ソマリアの領海のものもございますし、その沖の公海のものもあるわけでございますけれども、今御案内のとおりに、ソマリアの内政自体が非常に乱れておりますので、そういった状況にかんがみれば、やはりソマリアの状況にとって決して望ましい状況ではない。むしろ悪化させる悪い状況に追加的な要素として加わっている。

 そういったことが、ソマリアが国際の平和と安定に脅威となっているということにかんがみれば、この海賊の行為がそういう事態をさらに招いているということを述べているということでございます。

赤嶺委員 ですから、先ほどの外務大臣の答弁の繰り返しになっているわけですが、私が聞きましたのは、海賊の行為が具体的にソマリア情勢の何を悪化させているかという、この悪化させている具体的な中身を聞いているんですが。

別所政府参考人 先ほど申しましたように、安保理の決議の内容については日本が勝手に有権的解釈することはできませんので、そこのところは御理解いただきたいと思いますけれども、この決議自体には、それを具体的な形での言及はございません。

赤嶺委員 例えば、海賊行為によって得た資金がソマリア国内の武装勢力に回る、あるいは、その資金で武器を調達するなどして内戦が悪化しかねないということもあるのですか。

別所政府参考人 まず、その事実関係については私ども必ずしも承知しているわけではございませんが、いずれにせよ、この決議自体でどういう趣旨で書いてあるということにつきましては、先ほど申し上げましたとおりに明示的に決議には書かれていないということでございます。

赤嶺委員 しかしソマリア情勢を悪化させるということで、国連憲章第七章のもとでということになっているわけですが、その辺の中身について、政府は有権的に解釈できないということで答弁を逃げるのではなくて、なぜ国連安保理決議が上がったか、海賊の行為がソマリアの情勢を具体的に悪化させると、それは国際的な認識を持つ上でとても大事なことだと思いますよ、委員長。

 この海賊問題を議論する上で、そういうようなものを、文言に書いてあるとおりだからそれを読めばわかるだろうぐらいの説明ではちょっといかがなものかと思いますけれども、もう一度具体的に答えてください。

別所政府参考人 一連の決議でございますが、例えば一八三八、先ほど引用されたものについて申し上げますと、この前文の中で幾つかのことが書いてあるわけでございます。その中で、例えばソマリアの内政関係につきましても、いわゆる暫定政府が和平を目指して努力しているというようなことにも触れながら、しかし、暫定政府としてさらにこの海賊の問題についても国際的な協力を要望しているというようなことにも認識を示しているわけでございます。

 そういった中で、先ほど申しましたような海賊の問題というものがソマリアの情勢を、やはり不安定なソマリアの情勢をさらに悪化させる要因になっているという認定をしているのだろうと思っております。

赤嶺委員 先ほどの答弁よりは私の理解は一歩前進しましたけれども、そうしますと、政府はソマリア沖の海賊問題は犯罪だ、あるいはそれへの対処は警察活動だと言ってきたわけですが、安保理決議はそれにとどまらない、つまり、ソマリア問題の一環としての海賊問題、このようにとらえているという理解でよろしいですか。

別所政府参考人 先ほどから申し上げているとおりでございまして、ソマリア情勢自体のこの現状が国際の平和と安定にとって脅威であるという認識を一方で述べておりまして、また、そういった海賊の存在というものがこれをさらに悪化させている、そういう形で決議では整理されているところでございます。

赤嶺委員 ソマリアの国内の情勢と海賊の問題は不離一体に結びついているという理解でよろしいですね、外務大臣。

中曽根国務大臣 今政府参考人から御答弁申し上げましたけれども、ソマリアにおける内政状況が非常に不安であり混乱をしているというところから、またさらには海賊行為が発生したこの経緯というものも、漁民の問題とかいろいろありますけれども、そういうものが影響してといいますか、一つの原因となって海賊行為というのがあると思いますし、またこの海賊行為というものが頻繁に行われることによってソマリアの情勢も不安定化している、そういうことだと思います。

赤嶺委員 非常にわかりにくい答弁が続いているものですから、もうちょっとわかりやすい質問をしたいと思うんですが、ソマリア国内のある武装勢力が武器の調達のための資金確保を目的として海賊行為を働いている可能性もあるということですか。その可能性は否定できますか。

別所政府参考人 いろいろなことが説として言われておりますけれども、私どもとして、具体的にどういう形で資金が流れているかということについて把握できているわけではございません。

赤嶺委員 単純に海賊問題だけではない、安保理決議に基づいて各国の軍隊が出動しているのは、ソマリア情勢の認識があっての上での第七章ということになっているのかなと思います。

 各国の軍隊が行っている海賊船に対する臨検や拿捕や武器の使用というのは、これは警察の活動とはとらえられなくなってくるのではありませんか。

鶴岡政府参考人 累次御答弁申し上げている点でございますが、国連憲章二条四項におきましては、一般的に武力の行使に対する禁止が国際法上かかっております。他方、今回行われているような各国の海賊対策というものにつきましては、二条四項に言われている武力の行使に相当しないという前提で各国に対する要請を安保理としては決議の形で決定したと承知しております。

赤嶺委員 なかなか本当に国連安保理決議をめぐってまだ私の理解が至りませんけれども、ただ、各国の軍隊があそこでやっているのは安保理決議に基づく行動で、単純に警察活動と言えるのかどうか、大いに疑問であります。

 防衛大臣に伺います。

 先日の質疑の中で、平岡議員の質問に対して、今回の海上警備行動は、日本国民の人命、財産を緊急に保護する必要があるから発令したものであって、国連安保理決議の要請に応じて派遣したものではない、我が国の船舶協会などの要請もあり、そういった客観的な事実の中で判断した、このように答弁しております。

 もちろん船舶協会などの要請もあったと思いますけれども、国連安保理決議を受けたものでもあるのではありませんか。

浜田国務大臣 当然その枠組みは、今お話にあるように、安保理決議というのは十分に我々の考慮の中にあるわけでありますけれども、しかし、我が国の政府の責任として、そういった要請等も踏まえて海上警備行動というのを発令したということでありますので、それは当然安保理決議もありということでありますし、ただ、我々とすれば、純然たる、そういった日本人の生命財産を守るということが一番の大きな理由だというふうには思っております。

赤嶺委員 つまり、もちろん国民の生命財産を守るということと、それから、安保理決議に基づいて出しているという理解でよろしいですね。

浜田国務大臣 当然、そういった海外からの意見、議論というのがあって、国連の方でもそういうことがあるということだと思います。

 ただ、今回の法案そしてまた海上警備行動というのは、あくまでも海賊に対する考え方というのが中心でありますので、我々とすれば、そういった船舶協会等の要請等に基づいて行ったということは当然のことだと思っております。

赤嶺委員 いや、今回の法案も安保理決議に基づいている、そういう面もあるということですよね。

浜田国務大臣 先ほど局長の方からも御説明がありましたように、国連決議の中で、武力の行使ではないということも含めて、これは国際法条約の中で認められたことになるわけですから、当然、先生のおっしゃるように、安保理決議もその中の、枠にも一つかかっているということだと思っております。

赤嶺委員 もうちょっとソマリア情勢と海賊の関係を、具体的にもっと説明すべきですよ。そういう説明抜きに、安保理決議に基づいて出ているというような……(発言する者あり)いや、安保理決議の中身を読めばわかるというのは国会じゃないんです。やはり説明しなきゃ、政府が。それが国会の審議ですから。そういうことを強く申し上げたいと思います。

 世界の各国も安保理決議に基づいて艦船を向こうに派遣している、ソマリア沖に派遣している、これは間違いありませんね。

別所政府参考人 各国、船を出します際に広報、公表をしていることもございます。そういうものを見ていく場合に、安保理決議を具体的に引いている場合もございますが、引いていない場合もございます。

赤嶺委員 それをちょっと具体的に説明してくれますか、各国。

別所政府参考人 例えばでございますが、中国などは国連安保理決議のことを引用して船を派遣するということを言っております。また、EUが一体として行っておりますアタランタ作戦の際にはそういった安保理決議の引用がございますが、それ以外には必ずしも引用していない場合も多々ございます。

赤嶺委員 アメリカはいかがですか。

別所政府参考人 アメリカは、以前から活動もしておりましたし、私、今承知しておる限りでは、引用しているとは承知しておりません。

赤嶺委員 自衛隊が今回ソマリア沖に派遣されることについて、国連には通知をしたのですか。

別所政府参考人 通知しておりません。

赤嶺委員 通知していないというのと、国連安保理決議に基づくというのとはどういう関係があるんでしょうか。

金子国務大臣 今、御提出させていただいております海賊対処法というのは、国連海洋法条約に基づいて構文されておりますので、国連安保理決議との直接の関係はありません。十分に引用、参考にはさせていただいておりますが、あくまでも国連海洋法条約が基準になっております。

赤嶺委員 さっき、浜田大臣は基づくとおっしゃったんですよ。金子大臣は今何を言ったか全然定かじゃないんですが、どういうことですか。

金子国務大臣 国連海洋法条約に基づくものでありまして、したがいまして、安保理決議で求めているような、ソマリアの領海にも進入するといったようなことは、本法案では含めておりません。あくまでも、そういう客観状況というのを踏まえてという意味で浜田大臣は答弁をされたものであります。

赤嶺委員 今の金子大臣の答弁が、浜田大臣の基づいて派遣したというのとどう違うのか、わかりませんけれどもね。

 それで、各国軍隊は安保理決議に基づいて艦船を派遣しているとさっきありました。アメリカは違う。違うんじゃなくて、アメリカは確認できないということですか。そこに日本も自衛隊を派遣しました。

 世界から見れば、金子大臣、やはり安保理決議に基づいて派遣したということになるんじゃないですか。

浜田国務大臣 先生、そこは、各国が自分たちの判断、そしてまた主権に基づいて、やはり自国を守るすべがないとうことでは困るので、自分たちで国益を守るために判断して出しているわけでありまして、そういう意味では、あくまでも、基づくとか基づかないとかということではなくて、そこに国連決議の要請はあるけれども、そこで主体的に判断するのは各国が判断することでありますので、いろいろな、現実として安保理決議があり、そして国連海洋法条約があり、そういった、すべてそれに引きずられているわけではなくて、やはり基本的には自国の、要するに艦船を守るということがまず一義的な目的であって、その中でできることを各国がやっているということだと私は思っております。

 先生の質問のあれでいくと、どこに基づいて出したということをおっしゃいますけれども、そういった数々の条件の中で我々が判断したということであって、足元がどこにあるかということではなく、我が国の国益にかなったことをやるということが一番重要なのではないかな、各国もそういった判断のもとに出しているものと思います。

 そこに、たまたま国連の安保理決議があるということでありますので、先生の御質問が、大変そういう意味では、国連安保理決議も関係があるという中で私は言ったわけでありますので。

 当然、それはたまたまと今お話がありましたけれども、それは事象としていろいろな問題があるわけで、それが重要な案件であるからこそ国連の安保理決議が出たわけでありますから、それは我々もよくわかっております。しかし、その中で、国連ですべてを統括して、いろいろなものを組織してそれに対処しているということではなくて、そういった意味では、国連が全部、主体的に物事を動かしているということではないと思います。最後は各国の判断で今やっているものと私は思いますので。

 先生が基づくのか基づかないのかと言われれば、いろいろなものがあるわけでありますので、それを勘案した中で我が国として対応したということだと思います。

赤嶺委員 長い答弁をいただきましたけれども、さっきの金子大臣とどこが違ってどこが共通項であるかということがはっきりいたしません。次回もまた同じような質問をすると思いますので、それまでに整理していただきたい、それでちゃんと報告していただきたいと思います。

 ところが、先日の質疑の中で、金子大臣は、当該沿岸国の同意を得た場合、または要請を受けた場合、公海などから海賊行為を行った者を追跡し、そして当該沿岸国の領海内に立ち入ることは、本法案の規定上も可能である、国連安保理決議一八五一に従って、我が国が当該国領海の中までこれを追跡して取り締まりを行うことは、国際法上は問題はないと答弁しておられます。

 この法律が成立をして、暫定連邦政府の同意や要請を受けた場合、安保理決議に従ってソマリア領域に進入することが可能ということですか。先日の答弁です、金子大臣の。

金子国務大臣 ソマリア領海での活動は想定しておりません。外国の領海におきましては、当該沿岸国がその領域主権に基づき、みずから取り締まりを行う、これがもう通常でありまして、我が国が警察行動のために立ち入るということは、基本的には想定しておりません。

 ただ一方で、当該沿岸国の同意を得て、または要請を受けて、公海等から海賊行為を行った者を追跡して当該沿岸国の領海に立ち入ることは、本法案規定上も可能ではあります。

赤嶺委員 可能ということになるわけですね。

 法案の第七条に、海上においてとありますが、これは公海と我が国領海、内水にとどまらない、法的に領海も含んでいるものだ、そういう理解でよろしいですね。

金子国務大臣 第七条の海上ですね。おっしゃるとおりです。

赤嶺委員 安保理決議に基づく権限について聞きます。

 決議一八五一は、海賊及び海上における武装強盗行為を制圧することを目的として、ソマリアにおいてあらゆる必要な措置をとることができると規定しております。外務大臣は、先日の質疑の中で、このあらゆる必要な措置の中身について、海賊の抑止という目的、暫定連邦政府の要請などの条件に合致しておれば空爆の可能性が排除されているわけではないと答弁しております。どういう経過があってこういう規定が入ったのですか。だれが提案したんですか。

別所政府参考人 先ほどの、必要なあらゆる措置をとることができる、これについては、先ほど先生も御指摘があったかと思いますけれども、明示的な形で、ソマリア暫定政府が、しっかりしたその国との話し合いの結果、こういった国がそういう行為を行うことがあり得るということで国連に対して事前通報するということが前提となっているわけでございますけれども、これはまさに、ソマリア沖の海賊につきまして、海の上での対応だけでは十分なことができないのではないかということが安保理の中での議論となりまして、その結果、必要な場合には、まさにTFGの了解のもとということでございますけれども、あらゆる措置をとることができるということにすべきであるということが安保理として決まったということでございます。

赤嶺委員 いや、そういうソマリア情勢ですから、陸までやらなきゃだめだと。私がもう一つ聞いたのは、どこがそんな提案をしたんですか。

別所政府参考人 この協議につきまして、まさに安保理の非公開協議の中でそういう形にまとまったということでございまして、一々の個々の国の発言については公開しないということになっております。

赤嶺委員 答えにくそうですから私が伺いますが、アメリカのイニシアチブですか。

別所政府参考人 申しわけございませんが、先ほど申し上げましたとおりに、安保理のこういう非公開協議の中での議論について、どの国がどういう発言をしたかということは外に出して言えないということになっております。

赤嶺委員 いずれにせよ、この決議は、外務大臣も答弁なさったように、空爆の可能性が排除されているわけではないと。

 海賊抑止のための空爆とは具体的にどういう場合を想定しているのかわかりにくいんですが、例えば、海賊が逃げ込んだ建物に空からミサイルを撃ち込むということ、これもこの決議では許されるということになりますか。

別所政府参考人 空爆云々というのは先生がお使いになったお言葉でございますけれども……(赤嶺委員「外務大臣が使っている」と呼ぶ)いや、御質問があったのでお答えしたのだと思いますけれども、具体的などういう場合ということについて必ずしもこの決議に想定されているわけではございませんで、必要な措置ということで規定されているわけでございます。

赤嶺委員 必要な措置は空爆も排除するものではないと外務大臣が答えていらっしゃるじゃないですか。

 時間がなくなって大変残念なんですが、私は、ソマリア沖・アデン湾で行われているのはあくまで犯罪行為である海賊、これを、国連海洋法条約の規定からして、海賊を働いた者は逮捕し処罰するというぐあいに当初は考えていたんですが、どうも、この間の議論、きょうのやりとりをしていくうちに、ソマリアの陸地まで空爆ができるような警察活動というのは一体何なんだ、これが警察活動だというような主張で通せるのかという疑問がわいてまいりました。

 次回、また徹底して質問をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

深谷委員長 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、お伝えしてございます質問に入る前に、冒頭、浜田防衛大臣に、私がきょう朝のラジオで聞きましたことにつきまして、少し御答弁をお願いいたします。

 恐らくNHKのラジオでございましたけれども、共同通信の配信でも流れておりますが、さきにクリントンさんがお見えになったときに、浜田防衛大臣から、日米の協力体制も五十年になる、ここの節目に何らかの、ここの言葉をお借りいたしますと、新安保宣言でしょうか等々をお出しになりたいというふうなお話を持ちかけられたというふうに報じられております。私は残念ながらこれは今まで聞いたことがなかったので、事態の経緯と、やはりこういうことは国民にも説明していただかないとならないので、アメリカ側はどのように対応されたのか等々をまず教えてください。

浜田国務大臣 二月十七日に行われましたクリントン米国国務長官との会談でのやりとりについては、米国との関係からも、その詳細についてお答えすることは差し控えさせていただきますけれども、その上で申し上げれば、会談では、私の方から、今後、大局的な観点から、日米同盟の意義、あり方を検討して、両国の意思を明確に示すことができる旨発言をさせていただいて、クリントン長官より、この考えに同意するとともに、日本の果たしている重要な役割に言及しつつ、両国は北朝鮮問題等多くの面で協力ができるとの発言がございました。

 この点については、会談後の記者ブリーフにおいても説明したところであります。

阿部(知)委員 報じられている限りにおきましては、いわゆる新宣言というようなものを出したいという意向について大臣がお話をされて、ヒラリーさんが明言を避けられたということでありますが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 常々先生はそういうふうにおっしゃいますけれども、我々とすれば、日米関係というのが極めて大切な、重要な部分もございますし、私なりに、宣言を私の方から提言したということではなくて、そうではなくて、やはり、クリントン・橋本会談以降、オバマ政権もできたことですし、日米のあり方というのをもう一度再確認ということも含めて、一般論として申し上げたところであって、具体的な内容で共同宣言ということではなくて、そういったこともありますねということをお話ししながら、そしてまた、要するに日米関係のあり方については先ほど申し上げたような形で、今後そういったものも含めて検討したらどうですかということを私からお話ししただけでありまして、具体的な中身、これこれこれをやるべきだと言ったわけではなくて、そういったものをやった方が、これからもっと明確に日米関係というものを理解していただくためにも重要なのではないかということを申し上げたところであります。

阿部(知)委員 随時政権等々が日本もアメリカもかわっていくわけですから、その時々に応じて日米の関係をよりよいものにしていく話し合いというのは、私は否定しないものであります。

 ただ、新宣言を発する等々であれば、その土台は、やはり国民的な理解と、もちろんこういう国会での論議であります。今、大臣も御承知のように、在沖米軍のグアム移転等々も、いろいろな問題が絡まって、沖縄県民の反対も大変に強い中でございますから、私ども、ただ単にこうやって新宣言を持ちかけたというふうに言われますと、それは、頭越しというか、内容はどうなっていくんだろうと大変懸念されます。

 しかし、今の大臣の御発言を繰り返させていただきますが、新宣言を持ちかけたものではない、お互いの意見を交換したというふうに理解してよろしゅうございますね。

浜田国務大臣 当然それは今先生のおっしゃったとおりでございます。

 私とすれば、そんな大それたことを自分自身で、国会のそういった議論、そしてまた沖縄県民の皆さん方の思い等々、いろいろな議論が今なされている最中に、それをやるべきだというようなことで言ったわけではございませんで、そういった思いで、逆に言えば、年数もかなりたちましたし、そういったこともあわせて再確認をする意味ではこういう方法もあります、あるんではないでしょうかということを申し上げたところであります。当然そういったことをやる場合には国会での議論というのがあってしかるべきでございますし、私とすれば、そんな大それた思いはないということだけは申し上げておきたいと思います。

阿部(知)委員 大それたかどうかはわかりませんが、非常に重要な事項ですので何度も繰り返させていただきますが、きちんと論議し、本当にいい着地点を図りたいと思います。

 では、本来の予告いたしました質問に入らせていただきます。

 この間、社民党では、今ソマリア沖で発生いたしておりますさまざまな海賊被害と呼ばれておりますもの、その実態は残念ながらなかなかつまびらかでもない部分もありますし、私はさっきの赤嶺委員と金子海洋担当大臣の質疑応答を聞きながら、これは例えばソマリアの領土、領海内にも踏み込むことも否定されない話にまで発展しているのであれば、ちょっと事実認識といいますか、そこが狂ってくるなと思っている次第であります。

 その点については後ほど金子大臣にお伺いいたしますが、冒頭、海の安全、海賊対策と呼ばれますものを考えます場合に、我が国の海上保安庁の果たしてきた役割、これは歴史的にもまた世界的にも実績としても高く評価されていいものだと私は思っております。そして、今回の事案も、軍事的な対応によらない海上保安庁の強化によってよりよい海の安全が得られるという立場で私は御質問をいたすものでございます。

 何人かの方がお取り上げでございますが、いわゆる東南アジアのマラッカ海峡、ここはアデン湾と並ぶというか、海賊の巣と歴史的にも言われてきたところで、日本の海上保安庁の取り組みが、ReCAAP協定等々の着実な対策等々も功を奏して、二〇〇〇年の二百四十二件からわずか八年で五十四件まで減ってきた。これは着実で、なおかつ地道で、なおかつ本当の意味で効果の上がっている取り組みであったと私は思います。

 この間、日本の海上保安庁を中心に沿岸諸国の海上法執行能力向上、この沿岸諸国の海上法執行能力向上というところがやはり一番肝だと思いますし、それはどなたも否定するところではないと思いますが、そうでありながら、はたまた、この間このことが十分評価されてきただろうかということで、私は冒頭お伺いをしたいと思います。

 このReCAAP協定にはさまざまな国がかかわっておられますが、まず、我が国の取り組みの経緯について海上保安庁の方にお願いいたします。

岩崎政府参考人 東南アジアにおける海上保安庁の取り組みでございますけれども、先生今御指摘のとおり、十年ほど前、非常に多くの海賊事案が発生してまいりました。

 大きく三つございます。

 一つは、沿岸国の法執行機関の治安能力の向上ということに対する協力でございます。東南アジアの海域、これは沿岸国の内水及び領海でございますので、そうした沿岸国の法執行機関が第一義的に対応することになります。このため、海上保安庁では、そうした沿岸国の法執行機関、こうしたところと共同で訓練を実施するでありますとか、あるいは人材育成プログラムを提供するでありますとか、指導助言をするとか、さまざまな形で支援策を実施してまいりました。

 それから二つ目は、アロンドラ・レインボー号ハイジャック事件等の具体的な事案がございました。こうした事案には、海上保安庁の巡視船をその海域に派遣いたしまして、捜索等に当たったことがございます。

 それからもう一つ、先生今御指摘のアジア海賊対策地域協力協定、これが二〇〇六年の九月に発効し、本協定に基づく情報共有センターというのが同年の十一月に設立されたところでありますけれども、海上保安庁としても、この情報共有センターに人を派遣するなどして鋭意協力をしてまいったという経緯でございます。

阿部(知)委員 海上保安庁は宣伝が下手なんだと思いますね。

 現在、このReCAAP協定は、十四カ国が協定を締結しておられますが、これとて一朝一夕ではなかったんだと思いますね。

 実は、この十六カ国のうち、タイ以外はそれぞれいわゆる日本の海上保安庁に当たるコーストガードというものを、それこそ日本が人的な支援をし、また、国内のいろいろな整備をしながらつくり上げつつ、今日のReCAAP協定に至っているわけですね。もちろん、最初からそうしたことがあったわけでなく、例えばフィリピンとマレーシア、ここでは軍とは別に沿岸警備隊あるいは海上法執行庁というのを立ち上げて、その中でこの協定がつくり上げられていくという経緯があったと思います。

 そしてなお、そうした経緯を持ちながらも、今現在、マレーシアとインドネシアがこの協定に参加はされておりませんけれども、締結はしていないけれども、それはシンガポールに情報が一元化されることに危機感を抱いてということであると思いますけれども、そこにも日本がアドバイザーを派遣している。すなわち、コーストガードをつくれるところはつくり、それでなおかつ参加していただけないところには日本が接着剤になってアドバイザーを送りと。私は非常に地道な、そして効果を上げた取り組みなんだと思います。

 そこで、次に、金子海洋担当大臣に伺いますが、お手元に、これは海上保安庁警備救難部管理課長の岩男さんという方がおまとめになりました「海洋の安全保障」という日本国際問題研究所から出版されている書物の中から一文を引いてまいりましたが、もともと日本の海上保安の取り組みは、例えばJICAの職員をインドネシアに送って、それは昭和四十七年であります、もう三十三年間もそうした地道な取り組みが継続され、さらに、この間ふえる海賊事案については、先ほど言った、いろいろな軍組織とは別にコーストガードを各国がつくれるように援助してきたという歴史があるわけです。中でも、囲っております部分を見ていただきたいのですが、「国対国の問題をはらむ案件解決においては、武力よりも法令執行という手段をとった方が、後々問題を大きくすることなく円満な解決が図られる、という有効性を各国が評価しているからに他ならない。」と。

 これは、日本の海上保安庁は占領下にできたということもあって、軍とはちょっと違う形態、組織をとりました。そして、そのことが逆に法令執行機関として、いわゆる海賊活動といういわば強盗のようなものですね、それに対処していくときに、軍事的なアプローチではないものが日本にあり、歴史があり、やってきたということで功を奏したという評価がここには述べられておりますが、さて、大臣は、今このことはどのように受けとめておられるでしょうか。

 そして、もう一点お願いいたします。

 先ほどの安保理決議の中では、ソマリアの領土内や領海内にも場合によっては入り込むことがある、否定はされないということでしたが、これまでの日本あるいは世界のさまざまな海賊取り締まりの取り組みの中で、大臣よく聞いていただきたい、こうやって領海、領土の中に入っていくような海賊取り締まりというのはあったんでしょうか。これは世界の全体のことを伺います。

 前半は、日本がこうした海上保安庁という組織を持ちながら取り組んできて、それがかえって、本当の意味で、各国、主権があり、主権の象徴は軍隊ですが、そういうものも乗り越えてコーストガードの連携をつくってきたということをどう評価されるかの二問です。

金子国務大臣 後者からお話し申し上げますと、この法律では領土は入れません。同意があった場合に領海の可能性ということを申し上げました。人質に遭った我が国船舶等を、どこの港に入港するかというようなことを見届けるといったような事例も、いろいろな事例が想定されますけれども、その国の、ソマリアの了解を得て、同意を得て、そういうこともあり得る。ただ、この法案で想定しているわけではありません。

 それから、前者の方の、海上保安庁の取り組みにつきまして、さきの衆議院本会議でもReCAAPを取り上げていただくといった、大変これに御支援をいただいておりまして、また御理解をいただいていることをむしろ御礼申し上げます。

 非常に大事な御指摘をいただきました。我が国はこれまで、沿岸国の海上保安機関からの研修生を招聘して、海上犯罪取り締まりを実施している。それから、JICAの長期専門家を既に東南アジア各国に派遣している。現在、過去三年間でありますが、長期の専門家八名、短期の専門家は、二十年では九名でありますが、派遣をさせていただいております。

 それから、巡視艇を派遣しまして、沿岸国の海上保安機関との間で海賊対策の連携訓練を実施しております。ちなみにでございますけれども、平成十二年度から、御指摘いただきましたマラッカ・シンガポール、きょう提示いただきました岩男さんの書にも書いてありますけれども、マラッカ・シンガポール海峡の沿岸国とは二十三回こういう共同訓練を、海賊対策連携訓練でありますけれども、させていただいております。

 テロ対策の無償資金協力のスキーム、これを活用して、インドネシアには巡視艇三艇を供与する等々の活動を行ってきておりまして、こういうことが、地域の連携あるいは協力体制を構築するということは海賊対策に対し極めて有効であると思っております。

 今回、ソマリア沖の海賊対策について、国連あるいはIMO、国際海事機関が主導的な役割を果たして地域的な連携協力体制を構築しようとしている、動きがあることは承知しております。

 ことし一月に、IMO主催のジブチ会合、ここで海賊情報共有のためのセンターを設置するなど、行動指針が合意されましたことは、我が国としても大変歓迎すべきことであると思っております。我が国は、ソマリア沖の海賊対策のため、こういう海賊情報センターがきちんと活動を開始し、有効に機能することを期待しておりまして、このセンターへの支援を積極的に検討してまいりたいと思っております。

阿部(知)委員 領土、領海、領土には立ち入らない、領海だけだというふうなお話でしたが、空爆ということも含んだ行動がそこで展開されているわけですから、海から領土を空爆して、それは領土に入っていないといったって、これは現実的には実態をとらえていない表現だと私は思います。

 実態として、そういう状況が、安保理決議もこれあり、あるいは、あそこで有志連合軍が展開している対テロ活動もあり、そこに現実に自衛隊が置かれているという中で、これから後どのような事態が起こり得るかという懸念の点が強いからこそ、やはり過去をよく見て、そして現状を把握した上で、過去に学んでいい方策を立ててほしいということでお伺いをしたわけです。

 そして、大臣がお答えでございました、一月にジブチで、海賊情報共有センターの設立、創設を柱とした行動指針というものが署名されるに至ったわけですが、実は、周辺十六カ国のうち八カ国しか署名をしておらないということがあります。これは一体なぜであろうかということ。

 済みませんが、時間の関係でもう一点。

 それから、紅海というエリアが外れて、アデン湾にすぐつながるところですが、ここの沿岸国が全く加わっていない、これもなぜであるかというところをお願いいたします。

宮川政府参考人 先生御指摘のとおり、この行動指針の対象海域については、採択された行動指針には確かに紅海は含まれておりません。これは、紅海では昨年の海賊の発生件数がゼロでありまして、アデン湾やソマリア沖といった海賊が最も多く発生している海域を行動指針の対象とするという点について参加国の間でコンセンサスが形成された、そういう結果であろうと理解しております。

 それから、第二に、この行動指針には、ジブチ会合で、周辺の八カ国とソマリア暫定連邦政府が署名いたしました。その他の参加国のそれぞれが署名していない理由につきましては残念ながらまだ推しはかることができませんが、いずれにしても、この行動指針には、引き続き周辺国の署名のために開放されておりますので、より多くの周辺国が署名してくれることを我が国としては期待しておるところでございます。

阿部(知)委員 紅海では海賊事案が発生していないから情報センターに加わらないというのは、海はつながって、移動しているんですから。すぐ横なんですよ、アデン湾だけぽこっと外れているわけではないのですね。

 そして、もともと十六カ国で情報を共有しないと物事の動きというのは見えないわけですよ。そんなのどかなことを言っていて、全く地球の反対側だったらまだ別ですよ。すぐ横。そして、情報が共有されないということが、逆に言うと本格的な対策になっていかないということなのではないですか。

 中曽根外務大臣に伺いますけれども、私が外務省から手元にいただきました、十六カ国及びソマリア暫定政府で幾つの国々がこの協定に参加したかというと、ジブチ、エチオピア、ケニア、マダガスカル、セーシェル、モルディブ、タンザニア、イエメン、あとソマリア。しかし一方、エジプトとか南アフリカ、スーダン、オマーン、サウジアラビア等々、ほかにもございますが、それらは協定を締結されておりません。

 果たして何が障壁で、そして、私自身の考えを言えば、先ほど来、赤嶺委員も御指摘のように、ここが対テロ戦争と今非常にリンクしていて、そうした政治背景のもとで、情報を寄せるということになかなかなれない状況があるのではないか。だからこそ、今後、非軍事的にもっともっと海上保安庁がリーダーシップをとってアプローチすべきでないかと言いたいですが、中曽根大臣は、締結国がここにとどまっている理由を、もっと外務省として情報収集されて、そしてどういう道がいいのかをお考えになるべきではないですか。いかがですか。

中曽根国務大臣 まず最初に、委員が、紅海のところが行動指針に含まれていないというようなお話でありますが、政府参考人から御答弁いたしましたように、事案が昨年は件数がゼロということでありまして、これについて、どうも拝聴しておりますと、日本がもっと働きかけてこれも入れろというように私は何となく受けとめたんですが。

 日本は、御案内のとおり、これはオブザーバーで参加しているわけでありまして、また、このマラッカ海峡のReCAAPの状況等を説明して、これを参考にしてもらう、そういう形でもこの会議で貢献といいますか支援の一翼を担っているわけであります。そういう意味では、紅海が入っていないということにつきましては、今御説明させていただきましたように、事案がゼロということなのではないかと思っております。

 それから、この署名国が少ないということでございますけれども、これも先ほど御説明いたしましたけれども、各国それぞれがそれぞれの国のお考えでこの署名をするしないということでありますので、私ども、それぞれどうしてかということは承知をいたしておりませんが、やはり多くの国が署名することが好ましいと思っておりますので、そういうような各国が署名することを期待しているということでございます。

阿部(知)委員 大臣のお手元にも、これは新聞の記事でありますが、関係諸国がなぜこの協定に締結できないかというようなことの背景を分析したものがございます。より詳しくは、やはり私は外務省がきちんと情報収集されるべきと。

 さっき大臣の御答弁は、国連安保理決議と国際海事機関がやっていて、日本はオブザーバーだからそこの紅海の云々ということについてはわからない、まあ、わからないとはおっしゃいませんでしたが、直接関与ではないというふうなお話でした。私はそこのところが、日本がもっともっと、今までだって、国連のスキームとかそれが可能でないとき、あるいはこのような軍事色を強めているときの対テロ戦争というところで、安保理決議が置かれている地域だということでかえって支障が高いのではないかと。だからこそ、日本が違うアプローチをすることが可能性を開くという意味で申し上げましたので、ぜひ検討していただきたい。

 恐縮ですが、お手を挙げていただきましたのですが、あと一つ浜田大臣にお願いがあるので、ごめんなさい、この次また御答弁をお願いします。

 浜田大臣には、実は、私は先回のこの委員会の議事録しか拝読しておりませんのですが、今インド洋で給油している船が、同時に、現在八十二条に基づいて送られている海上自衛隊の艦船に給油をしたということが中谷委員の御指摘であって、私は、本来インド洋での給油活動というものは、もう何回もこの委員会で審議いたしましたが、対テロ対策に従事する船に使うということと承っておりますが、これはなぜこのようなことが、給油が行われたのでしょうか。

浜田国務大臣 補給支援特措法に基づいて派遣された補給艦から海賊対処のために派遣された海上自衛艦に対し、三月二十八日、燃料補給が実施されましたが、これは海上警備行動の一環として行われたものであります。

 補給支援特措法に基づき海自部隊が実施する補給支援活動は、テロ対策阻止活動にかかわる任務に従事する諸外国の軍隊等の艦船に対し行われるものであって、今回の海賊対処のために派遣された海自自衛艦に対して行われた補給活動とは別の活動でありまして、このため、今回の補給が補給支援特措法を逸脱しているとの御指摘には当たりません。

 また、海上自衛隊の艦艇同士が必要に応じて補給等の支援を行うことは、おのおのの艦艇が与えられた任務を適切かつ効率的に実施するため当然に行われるべきことでありまして、補給支援活動のために派遣された海自補給艦が、補給支援特措法に基づく任務に支障を生じない範囲で給油を行うことに対して、問題はないというふうに考えているところであります。

阿部(知)委員 私は大変問題があると思いますが、引き続いて質疑をさせていただきます。

 ありがとうございます。

深谷委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。よろしくお願いいたします。

 テロ対策特措法に続きまして、この海賊対策、海賊行為への対処法ということで、日本から遠く離れた海の向こうのことでございます。大臣の皆様それぞれに、国民の皆様に向かってぜひわかりやすく御答弁をいただきたいというふうに思います。

 まず最初に確認ですが、きのう、おとといテレビや新聞等でも流れておりましたけれども、海賊行為に対しての米軍等の対応、そして殺傷も起きているということで、それに対して仲間の海賊からの報復宣言あるいはアルカイーダからの声明のようなものが流れている、そのようなニュースを目にしました。やはり、海賊とテロリストというのが混然一体とするというか、明確な線引きはできないんじゃないかなという感じを私も持っているわけでございます。

 この法律は、海賊行為というものは定義をしておるわけでございますが、海賊とは何かということは定義がございません。

 そこで、通告をしておりませんけれども、一つ確認でございます。この法律のもとでは、相手が海賊であるかあるいはテロリストであるかということに関係なく、実際には海上自衛隊が武器を使用することがあり得る、そういうことでよろしゅうございますか。金子大臣、御答弁……。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきます海賊行為の定義につきましては、第二条第一号から七号まで列記しておりますが、この行為、私的目的によるものということでございます。したがいまして、その行為が私的目的によるものかそうではないのかという判断基準によってこの法律の適用の有無が決まるわけでございまして、テロリストか否かというような判断基準ではなく、私的目的に当たるものかどうかというもので決まるというものでございます。

田嶋(要)委員 ちょっとわかりにくい言葉だと思いますので、ぜひこの私的目的というのがどういうことなのかということを、もう少し詳しく国民の皆様に御説明いただきたいと思います。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案で私的目的と言っておりますのは、私人の利得の欲望、憎悪、復讐その他の目的、そういう意味でございます。逆の方からいえば、外国政府が国家の意思によって行うようなもの、そういうものは入らないということでございます。

田嶋(要)委員 そういう目的が私的かどうかということをあらかじめ測定することは、通常非常に困難であろうと思いますので、そういう意味では、この新法のもとでは、行為に着目をして、この法律の中で書かれております行為、準備も含めて、あるいは著しい接近も含めて、そういった海賊行為があれば、状況の中で武器を使用することがあり得るということで、テロリストもその対象に含むということで、もう一度確認をさせていただきたいと思います。

大庭政府参考人 先生御指摘のテロリストというもの自体につきまして、国際的に例えば条約上定義されたようなものがあるというわけではございません。そういう意味で、テロリストというもの自体の定義が必ずしも明らかではないわけでございまして、さまざまな形態のものが想定されると存じております。

 いずれにいたしましても、本法の海賊行為に合致するかどうかという点につきましては、私的目的に当たるものであるかどうかということを判断して決まるわけでございまして、結果的に、テロリストと言われるようなものが合致する場合が排除されないかもしれない。いずれにしても、判断基準は私的目的であるということでございます。

田嶋(要)委員 はい、ありがとうございます。要するに、テロリスト相手でも、この法律のもとで武器の行使はあり得るということを確認させていただきました。

 それでは、この法律はソマリア沖ということでございますが、その一つ手前の話として、東南アジアの話を少しお伺いしたいと思います。

 今まで海上保安庁で目覚ましい活動成果が上がった、ReCAAPの話も先ほど来出てございます。そうすると、なぜ、これまでずっと東南アジアでこれだけすばらしい成果を日本がリーダーシップをとって行い得たのにもかかわらずここで改めてというふうに、やはり多くの方が思うのではないか。

 そこでお伺いいたしますが、なぜ、東南アジアの海賊対策の場合には、私の理解では、海上自衛隊の協力なくして、海上保安庁単独で目覚ましい成果を上げることが可能であったのか、その点を御答弁いただきたいと思います。

岩崎政府参考人 先ほども御答弁させていただきましたけれども、東南アジアの海賊が減ったというのは、やはり一つには、沿岸国の海上保安機関の能力が向上したというのが非常に大きな理由だと思っております。

 繰り返しになりますけれども、そのために、私ども海上保安庁もいろいろな形で支援をしてまいりました。それから、具体的な事案が発生した場合、これも海上保安庁の巡視船を派遣したこともございます。

 東南アジアの海賊の所有する武器でございますけれども、例外的に、インドネシアのスマトラ島の北部のアチェの海賊でロケットランチャーを持っていたのがおりましたけれども、それは極めて例外的でございまして、基本的に持っておったのは、自動小銃、通常はバールあるいは刃物、こういうものでございました。

 こうしたものでございますので、海上保安庁の巡視船も派遣をしながら対応していますということでございます。

田嶋(要)委員 昨日、私も資料をちょうだいいたしまして、割とくっきりと、確かに海賊が持っている武器がかなり違うということは私も理解をいたしました。特に、アデン湾、今回のソマリア沖の方では、大変重火器が多いということもこの表では示されてございます。

 東南アジアの場合には、ある意味、海賊が非常に原始的な武装であった。そういう状況であったので、海上保安庁で対処が可能であったというような理解を私はしておるわけでございます。そういたしますと、これは、一たん、ロケットランチャーのようなものを持ち出した海賊が今後またナイフに戻るようなケースというのは余り想像しにくいというふうに私は思っているわけですが。

 そこでお伺いいたしますけれども、徐々にそういった重火器に基づく海賊が当たり前のようになってくるのであれば、今後、やはり海上保安庁のみの対応では難しいという認識に立っておるかどうか、その点を御確認いただきたいと思います。

岩崎政府参考人 私どもも「しきしま」という船は一隻持っております。これについては、ある程度、重火器にも対応できます。

 今後、海賊がどういう形になるかというのはなかなか予測は難しいと思いますけれども、私どもの「しきしま」で対応できるようなものであれば、そうしたものは海上保安庁で対応していきます。

 それから、こうしたソマリアみたいな形態の海賊が今後とも世界じゅうでどんどん横行するか、これはわかりませんけれども、やはりあのソマリアという国自体が国として崩壊しているという、ある種の特殊な条件で生まれた海賊だということも評価できるかと思っておりますので、必ずしも、海上保安庁、これから海賊について、いろいろなことをすべて自衛隊にお任せするということは考えておりませんで、私どもで対応できることを今後ともきっちりやっていきたいと思っております。

田嶋(要)委員 私は、今回のこの法案の一番気になる点は、いろいろ皆さんも御指摘されている点でございますが、海上保安庁、その本気度が伝わってくる法案になっていない点ではないかなというふうに思っております。

 言葉としては、第一義的には海上保安庁の責務であるというふうに書かれておりますけれども、その法律の書きぶりからはどこにもその点が読めないという点がやはり気になる点でございますし、自衛隊との関係で、国民の間に不安もあるのではないかなというふうにお伺いします。

 今の関連で、もう一点お伺いしますが、今回、短期的に海上自衛隊がソマリアに出ていっておるわけでございますが、それでは、中長期的には、ロケットランチャーで武装している海賊に対しても海上保安庁が対応できるというふうに考えておられますか。

岩崎政府参考人 繰り返しになりますけれども、ロケットランチャーを持っているような海賊が、かつ遠距離で多発した場合に、継続的なオペレーションが必要となります。そのときに、私どもの海上保安庁の今の勢力で対応することは困難でありまして、今後考えていかなきゃいけない課題だと思っております。

田嶋(要)委員 そこで、対応が困難、したがって、短期的にはという話で今議論があるわけでございますが、中長期的に本当に海上保安庁が第一義的な責務を果たす意思があるのかどうかという点に関して、もう少し確認をさせていただきたいと思います。

 本会議での金子国務大臣の御答弁に関してお伺いをいたしますが、そのときに予算の話がございました。大臣の御答弁を読ませていただきますけれども、ソマリア沖海賊への対処を目的として、直ちに「しきしま」級巡視船を建造することにつきましては、その建造に長い期間と多額の費用が要されること、これらの巡視船の活動が可能になった時期にはソマリア沖海賊が鎮静化している可能性があること、現在自衛隊の艦船が派遣されていること等から、現時点においては考えておりません、こういう答弁があったわけでございます。

 しかし、この法律は、何度も強調されているように恒久法でございますし、そしてソマリアの海賊のみを視野に入れた法律ではないわけでございます。そう考えてまいりますと、ソマリアの海賊がやがて鎮静化をして、今からつくってももう間に合わないかもしれないというような理由は、どうも論理矛盾を起こしているような感じがするわけであります。その点に関して、もう一度、大臣からお考えを聞きたいと思いますが、いかがですか。

金子国務大臣 ソマリアを目的として「しきしま」級をつくるということは、これはもう現実的に、今からつくって、今そこにある危機というのに対応するという時間的余裕はありませんので、直ちにソマリア沖に派遣するという目的を持ってすぐ「しきしま」をつくるということは、政府として今想定はしておりません。しかし、御指摘のように、ソマリアだけではなくて、海上保安庁の役割、海上の安全を守る、秩序を守っていくというのは、依然として、何といっても海上保安庁の役割でありますから、そういう意味で、海域を決して限定しているわけではありません。

 これから起こり得る遠洋の対応、あるいは、我が国は、今度大陸棚も延長をするという、国連に今申請しておりますけれども、ある意味、EEZ、海域が広がっていくということで、これまで以上に我が国の海域を守っていくということも含めて、あるいは、遠方で、今ある危機の、ソマリアは別としまして、こういう海賊対策というのも第一義的な役割でありますから、「しきしま」級の艦船というものを建造していきたい。これは真剣に考えていきたいと思っております。

田嶋(要)委員 ソマリアは間に合わないというふうにおっしゃいますけれども、ピークはまだこれからではないかなというふうに私は思っております。東南アジアの状況を見ても二〇〇〇年前後がピークだったようでございますが、ソマリアは、ことしは去年に比べてももうはるかに多い件数が起きているわけでございます。建造に四年ぐらいかかるというような話がございましたが、私は今、即決断をすればソマリアにだって間に合うタイミングでつくることができるのではないかなというふうに思っております。

 そしてまた、この法律自体がソマリアだけを対象にしたものじゃないと大臣もおっしゃっているとおりでございますので、ぜひ、償却、古くなったものの設備投資ですか、いろいろあるからそちらをという話がございました。もう一度確認でございますが、検討ということではなくて、本当に実質的な意味でも一義的な責任を中長期的には海上保安庁が果たしていけるような巡視船の建造、ロケットランチャーを備えた海賊行為が今後ソマリア沖のみならず世界のほかの地域で起こってくることを想定しながら、そういった建造を行っていくということをもう一度お約束いただきたいと思います。

金子国務大臣 田嶋委員、大変いい御指摘をいただきました。

 一方、まずは、今御指摘いただきました、我が国の漁業専管区域が二百海里に広がった、これは五十二年でありますけれども、それでもって海域が一気に五十倍に広がりましたものですから、五十四年にかけて大量の船舶、巡視船艇、航空機をつくりました。それが今、耐用年数、船では二十五年、飛行機では二十年の耐用年数に来ておりまして、これを改修するという計画、緊急整備計画を今続行中で、まさにやっておる最中でありまして、二〇一〇年代初には何とかこれを完了させていきたいと思っておりますが、これを最優先するというのは、もう一つ、本当に今、北朝鮮状況等々、さまざまな点での問題も発生しておりますので、最優先しなければいけない。

 それに加えて、今田嶋委員からも御指摘ありましたように、こうやって海上保安庁の役割というのが改めて認識をされておる。そういう中で、私自身も、海上保安庁のこれまでの巡回航程あるいは活動でよかったのかどうか、今度こういう海賊法制ができるということも含めてどう対応していくかということもあわせて、きちんと考えなければいけない。単なる改修、緊急整備だけでとどまらずに、必要なものを整備していきたい。

 そういう意味で、「しきしま」級何隻というのはちょっと別といたしまして、今御指摘のような装備の増強というのは真剣に考えてまいりたいと思っております。

田嶋(要)委員 ありがとうございます。

 ぜひ一日も早くその検討着手をお願いしたいというふうに思います。そうすることによって、言葉でおっしゃっております、第一義的には法執行機関である海上保安庁の責務である、そのことが多くの国民の皆様に本気度として伝わるというふうに私は感じております。

 もう一つ、法案の条文に沿って御質問させていただきますけれども、一義的には海上保安庁なんだという、海上保安庁の責務なのだということを第五条の中でなぜ反映しないのか、あるいは反映しているのか、その点に関して御答弁いただきたいと思います。

金子国務大臣 第五条の御質問でありますが、第五条におきまして、「海上保安庁による海賊行為への対処」というところで、「海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとする。」と規定した上で、第七条におきまして、「防衛大臣は、」というくだりがございますけれども、海賊に対処するため特別の必要がある場合には、自衛隊が海賊対処行動をとること及びその際に必要な手続を規定しております。

 そういう意味で、第一義的には海上の法執行機関である海上保安庁の責務であるということの趣旨を法律上明確にさせていただいたつもりであります。

田嶋(要)委員 趣旨はいいんですけれども、やはり最後に残るのはこの法律だけで、言葉が命でございます。だから、なぜ、それをこの場所で何度も繰り返し答弁されながら、その言葉そのものを入れないのかというところが私はよくわからないんですよ。だから、第一義的には海上保安庁の責任なんだということを私は書いていただきたい。

 例えば、七条、確かに「特別の必要がある場合には、」と書いてございますよ。それでそこまで読み込めというのは、ここにいる関係者はわかっても、国民には伝わらないと私は思うんですよ。

 浜田大臣、いかがですか。

浜田国務大臣 それは、法案の、こちらの提出側からいえば、私がお答えすることかどうかわかりませんが、我々も、あくまでも第一義的にはということでございますので、海上保安庁の方がまず一義的に対応して、それが不可能な場合には我々ということになっておるわけでありますので、責任の所在というのは、これはもう海上保安庁そしてまた国土交通省、政府全体として対応していくということでありますので、私の方からは、法律の中身については、これは責任の所在ははっきりしているものと思っております。

田嶋(要)委員 それでは、金子大臣にもう一回お伺いしますけれども、やはりこれはどうも伝わらないんじゃないかなと思うんですね。五条をそういうふうに読めとおっしゃるんですけれども、どこにもそれがはっきり明言されていないじゃないですか。

金子国務大臣 先ほど御説明をさせていただきましたけれども、第五条におきまして、海賊行為への対処は、海上保安庁が必要な措置を実施するものとすると。そういう意味では、先ほどこれを一義的にという言葉で言っておりますけれども、非常にはっきりここでは明記をさせていただいていると思っております。

田嶋(要)委員 では、質問の仕方を変えます。

 一義的には海上保安庁の責務であるというその一言を入れると何か不都合ですか、大臣。

加納副大臣 この法案を担当しております副大臣、担当副大臣の加納でございます。

 今の先生の御質問でございますが、第一義的にと入れると何か不都合があるかということについては、いろいろな御議論があって、そういうことで不都合はないだろうという御意見もあるということも伺っておりますが、先ほど来大臣が繰り返し申し上げておりますように、今提案しております新法においては、まさに第一義的にということを言うために、これはそういうことを表現する一種の法文の技術的な問題でありますが、第五条でまず明確に宣言をする。海賊行為への対処は、この法律、海上保安庁法その他の法令の定めるところにより、海上保安庁が必要な措置を実施するということを先に宣言した。そして、第七条では、二つありまして、一つは、特別な必要がある場合に防衛大臣の出動命令、もう一つは、防衛大臣がその承認を受けようとするときは関係行政機関の長と協議してということでありますから、これは明らかに差をつけております。

 そこで第一義的というふうに私は読めるというふうに理解しております。

田嶋(要)委員 私は、別に今の書きぶりが全くだめだというふうに申し上げているつもりはありませんけれども、さらにより明快にするために提案を申し上げておるんですね。ここで各大臣が何度も何度も第一義的には海上保安庁の責務だというふうに答弁されているのに、そのストレートな表現がなぜ法案には入らないのかということがどうもすっきりこないんです、私は。

 何か都合が悪いんでしょうか。(発言する者あり)わかるじゃんじゃなくて、その言葉そのものをなぜ使わないかということを聞いているんですよ。何かこれは法律で使うには余りふさわしくない表現だという、そういうことなんですか。どういう理由かというのをもうちょっと教えていただきたい。

 だから、それを強調されているんだから、そこがある意味では一番重要な点ですね。だから、特別な場合が後ろで書かれているから、こっちは特別じゃない場合だというふうにおっしゃいますけれども、第一義的な責務なんだという、先ほど私が申し上げました本気度が伝わってこないというのは、こういうところにもあるんですよ。

 先ほど、予算のお話はちゃんとやるということをおっしゃっていただきましたので、これから海上保安庁の巡視船が、ソマリアには間に合わないかもしれないが、将来的には、ほかの地域でロケットランチャーを持った海賊行為が行われるときに出ていくことは十分ある、そういうふうに対策をとっていただけるという話をお伺いしましたけれども、この法案の中身として、本当にそういう本気度でいるんだったら、その一言を入れればいいじゃないですか。何が都合が悪いんですか、金子大臣。

加納副大臣 先生の御提案といいますか今の御意見というものは、私は真剣に伺いました。

 この問題は、第一義という言葉を使うか使わないかということよりも、第一義的にやるという意思が大事であって、それをどう表現するかということでありますので、私は正直言いまして、これを入れたから大変なことになるとか、入れなければだめだとか、そんな話では全然ない。この書きぶりは、我々は自信を持って、第一義的なものであるからこそ第五条で明確に宣言をして、第七条に、そうじゃない、例外的なもの、原則と例外というものを明確にしたわけでありますから、それをそう書くというのは、また貴重な御意見として、これは御意見はぜひ承っていきたいと思います。

田嶋(要)委員 もう一回確認しますけれども、イエスかノーかで結構なんですが、第一義的には海保の責務だという一点を入れることは不都合なんですか。イエスかノーかでお答えください。

大庭政府参考人 海上保安庁の位置づけでございます。

 海上保安庁の位置づけにつきましては、海上保安庁法の第一条において、海上において、人命及び財産を保護し、法律の違反を予防し、捜査し、鎮圧するため、海上保安庁を置くということが明確に規定されております。したがって、こういう警察活動を行う任務を負っている組織としてまずは位置づけられている。片や、自衛隊に関しましては、国の防衛に関する業務を主としながら、従たる仕事、必要に応じて、治安に関してという規定がある。そういう前提でさまざまな法律の規定がございまして、自衛隊法第八十二条の海上警備行動についても、このような規定ぶりにおいて、海上保安庁と自衛隊との分担ができているわけでございます。

 今回の海賊対処法案についてのみ、第一義的という言葉を使いますと、反対解釈で、それでは自衛隊法八十二条の規定は違った意味になるのかという誤解を招くおそれがありますので、これまで積み重ねてきた法文、その整理に基づいた規定ぶりが適当であると存じております。

田嶋(要)委員 私の質問に答えていただきたいと思うんですけれども、この第一義的にということを明確に入れてほしいと思うんですよ。これは海賊対処の初めての法律ですよね。金子大臣、これは海賊対処の初めての法律ですね。そうですね。

金子国務大臣 今、大庭事務局長から御答弁させていただきましたように、そもそも、海上保安庁法、第一条もそうであります、第二条においても、海上における犯罪の予防、海上の安全、治安の確保をすることを海上保安庁は任務とする、これはもう国民皆さんが知っていることでありますし、その上で、第五条、ここでは、海賊行為への対処は、海上保安庁がこれに必要な措置を実施すると明確に、そういう意味では非常にはっきりしていることでありますので、第一義という言葉を入れるということが他の法令上にどういう影響があるのかというのは、今、私の理解できないところもあるかもしれません。しかし、加納副大臣がお預かりすると言っておりますので、お預かりはさせていただきます。

田嶋(要)委員 政治家として、やはり国民が一番気になる点、そしてまた、大臣がこの場で何度も強調されているその文言がまさに最適だと思われているから、そういう言葉で答弁をされているんだと思いますよ。その言葉を法律に入れるのが一番素直じゃないですかね。私は、ぜひその点は強調させていただきたいというふうに思います。

 それと関連で、第七条の海賊対処行動の方でございますが、こちらを見ても、やはり同じトーンなんですね。本当に海上保安庁が第一義的な責務なのかなというふうに私は若干疑問を感じてしまうわけでございますが、海上保安庁と海上自衛隊のつながり、意思決定のつながりというんでしょうか、それが全く見える構造にはなっておりませんけれども、それはどうしてでしょうか。

金子国務大臣 つながりが見えないというお話でありますが、自衛隊法八十二条の海警行動と同様、第七条一項で、防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、海上保安庁からの要請手続がなくても、今、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海賊対処行動を命ずることとしております。

 これに加えまして、同条二項におきまして、内閣総理大臣の承認を得るに当たって、防衛大臣は、関係行政機関の長、これは当然でありますけれども国土交通大臣も入ります、関係行政機関の長と協議の上、自衛隊による海賊対処行動の必要性を対処要項の中で明記する。この海賊対処行動の必要性というところで、海上保安庁が対応が可能かどうかということが対処要項の中で記されている法案になっておりまして、そういう意味で、海上保安庁と自衛隊、防衛大臣とのつながりというのがここで明記されておる法案であります。

田嶋(要)委員 海上保安庁の要請というのは必要ないんですか。

金子国務大臣 今申し上げたような手続を経て行っていきます。そういう意味で、防衛大臣が、この海賊対処行動をとるに当たって、関係機関の長、つまり海上保安庁の長あるいは国交大臣と協議するという過程、プロセスを経てこれを決めるということであります。

田嶋(要)委員 だから、要請は必要ないということですね。

金子国務大臣 海警行動の発令についても、これは防衛大臣のということで、発令という要件にはなっておりません。

田嶋(要)委員 要請がないということですと、要するに、一義的な責務を負っている海上保安庁は、十分自分たちでやれているという判断をしているときでも、それとは独立に防衛大臣が特別な場合と判断をして出ていくことができるということですか。

金子国務大臣 先ほど来申し上げましたとおり、関係行政庁との協議の上ということでありますから、国土交通大臣が不必要となれば、総理大臣もイエスとは言えません。

田嶋(要)委員 私は、確かに閣議決定もされるという話もお伺いしておりますが、なぜ、海上保安庁が一義的な責務を負うと強調されるのにもかかわらず、ほかの大臣と、あるいはほかの役所と同列に置かれていますね、関係省庁ということで。なぜそういう扱いにとどまるのかなと。要するに、一義的な責務を負う海上保安庁がやれないというときに助けを求める形をとっているというのが私の理解なんですが、そうじゃないということですか。

金子国務大臣 繰り返しになりますけれども、自衛隊法八十二条の海上警備行動と同様に、七条一項で、「防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合」という規定が置かれておりまして、この特別の場合というのは、海上保安庁では、あるいは海上保安庁単独では対応が不可能であるという状況下で特別の場合というのが定義されておりまして、それゆえに、関係行政庁との協議を経ずして行うということもあり得ます。

田嶋(要)委員 では、今最後におっしゃった特別な場合というのは、海上保安庁では対応できない場合とおっしゃいましたね。何でそれを書かないんですか、ここに。特別な場合というのをなぜもう少し明確に、先ほどの、一義的な責務は海上保安庁にあるということも書かない、ここの特別な場合というのも非常に、明確に書いた方がわかりやすいんじゃないですか。

加納副大臣 「海賊行為に対処するため特別の必要がある場合」という表現は、今大臣が申し上げましたように、現行の自衛隊法の八十二条にある表現と、今回の私どもが提案しております新法の第七条の第一項の表現と同じでありまして、「海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、」ということで、明確にしております。

 「特別の必要がある場合には、」という場合にはどういうことがあるのかというのは、そのときの状況を判断すれば出てくるのであって、これは、現在の海上警備行動のときと全く同じ議論だと思っております。

田嶋(要)委員 だから、最後は残った言葉だけがすべてなわけでございますので、今、金子大臣がはっきりとここで答弁されましたので、私は、素直に、そういった答弁された言葉が法律に入る方がより明快ではないかというふうに思うわけでございます。大臣。

金子国務大臣 特別の場合ということでありますけれども、これはもう海上警備行動においても、他の一般的な海上警備行動においても、「特別の必要がある場合には、」という法律体系をつくっておりますので、今回は特に、他の法律の並びからいっても、これはこういう扱いで、「特別の必要がある場合」、それは、しかも、特別な必要はどういう状況かというのは、防衛大臣が対処項目の中にその必要性というのをきちっと書き込んで、総理に報告する、閣僚の協議を得る、そして国会報告もするということでありますので、そこは国民に対する説明責任は果たせると思っております。

田嶋(要)委員 では、今最後におっしゃった対処要項、昨日、でも、これを作成しない場合もあるとおっしゃっていましたよ。急を要するときには作成せずにやるんだ、事後的にも作成しません、昨日はそういう答弁をいただきましたけれども、いかがですか、大臣。

加納副大臣 法案担当の立場から私から申させていただきますが、今おっしゃっているのは、事前に出すことになっているけれども出さなくてもいいとおっしゃったんですが、そんなことはないので。法案で申し上げます、法案の第七条の第二項のところでございますが、「防衛大臣は、前項の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長と協議して、次に掲げる事項について定めた対処要項を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、」そのただし書きをおっしゃっているんだと思うんですが、「現に行われている海賊行為に対処するために急を要するときは、」出さなくていいというんじゃなくて、「必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りる。」という表現ぶりにしておりますので、概要はもちろん言わなければいけないということであります。

田嶋(要)委員 先ほど、金子大臣が対処要項をちゃんと作成するから大丈夫なんだというふうにおっしゃったから、私は、対処要項はつくらない場合があるというふうにきのう聞いていますということを申し上げたのであります。

 だから、私は一つこの点に関して申し上げるならば、急を要したために最初に総理大臣に通知をするということがあるとしても、事後的であったとしても確実に対処要項はつくらなきゃいけないと私は思っておりますけれども、大臣、その点はいかがですか。

金子国務大臣 御指摘のとおりであります。

 第七条の三項でありますが、ここで、内閣総理大臣は、海賊対処行動を承認した後に、対処要項に定める事項と同様の内容を遅滞なく国会に報告する。失礼、その前に、「通知すれば足りる。」つまり事後的に対処要項を作成することが不要だというようなことに対して、そういう場合であっても、対処要項に定める事項と同様の内容を、内閣総理大臣は、承認し、かつ、その後、遅滞なく国会に報告するということになっております。

田嶋(要)委員 ちょっとあいまいでしたけれども、作成はするんですね、常に。

金子国務大臣 七条第三項におきましてそれを規定しております。つくります。つくった上で、対処要項を国会に報告することになっています。

田嶋(要)委員 ではその点は確認させていただきましたけれども、繰り返しですけれども、非常に重要なポイントに関しては、抽象的に書くよりも明快に書いていただいた方が国民の皆さんにとっては安心感は高まるのではないか、そのことを最後に申し上げまして、私の質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 私もこの重要な海賊対処法案の質疑をさせていただきます機会をいただきまして、ありがとうございました。

 まず冒頭、このときも世界各国で、海上で海にかかわる仕事をしていただいているすべての皆様方に、敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 地球上、海上交通の安全を確保すること、また、それを壊して脅かす海賊に対処していくことというのは、私は、四面環海、海上輸送に多くを頼る我が国日本にとって非常に重要な課題だと思います。意義ある法律にするためにも、私は、慎重で、そしてしっかりとした議論を積み重ねていくというその決意を述べながら、きょうは、限られた時間ですので、現場で今も、例えば艦船で活動されている隊員、保安官、船員、その方々の現場での対応に迷いが生じることのないように、迷いを生じることになっていないかということについて確認をさせていただきたいと思います。

 まず、幾つか確認をさせていただきますが、防衛大臣にお伺いいたします。

 今行われている海上警備行動及び、どういう内容になるかは別にしろ、海賊対処法案が成立した場合、新たに武器使用基準を定めることになるのか。現状、武器使用基準を定めてあると思うんですけれども、その確認と、法制定後の武器使用基準を定めるか否かについて、まず端的にお答えをいただきたい。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 今、海上自衛隊の護衛艦二隻が、ソマリア沖・アデン湾に海上警備行動として派遣をされております。そして、これにつきましては、武器を使用せざるを得ない場合、自衛隊法によって準用をいたします警察官職務執行法第七条によって武器を使用することになるわけでございますけれども、当然、これにつきましては、細部の武器使用基準につきましては、部隊の判断に迷うことのないように、関係省庁と協力をして作成して示しております。

 それから、新法に基づいて派遣がなされる場合にも、その新法に基づく武器使用の考え方について具体的に部隊に対して示すということと考えております。

三日月委員 きょうは、内閣法制局長官も御出席をいただいております。

 ちょっと確認をさせていただきたいんですが、憲法九条で、「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」ことになっている「武力による威嚇又は武力の行使」、この「武力の行使」に該当する場合の要件として、まず一つ、第一に、国家の物的・人的組織体が、第二に、国または国に準ずる者に対して武器を使用するという二つの要件が必要であると理解をしておりますが、よろしゅうございますでしょうか。

宮崎政府特別補佐人 お答えいたします。

 憲法第九条第一項に規定しております「武力の行使」とは、御指摘のとおり、基本的には我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというふうに考えておりまして、このような武力の行使は、我が国自身が外部から武力攻撃を受けた場合を除いて禁じられているものと解しております。

三日月委員 済みません、今ちょっと抜けていたんですけれども、それを行使する相手の部分が、国または国に準ずる者に対して武器を使用するということは要件になるんですか、ならないんですか。

宮崎政府特別補佐人 御指摘のとおり、先ほど申し上げました場合の国際的な武力紛争につきましては、国家または国家に準ずる組織の間で生ずる武力を用いた争いをいうものであるというふうに考えてきております。

三日月委員 せっかく法制局長官に御出席いただいておりますので、もう一点確認をいたしますが、その武力の行使に該当するか否かを判断する場合において、武器を使用する物的・人的組織体は、これは軍隊に限定されるんですか。具体的に申し上げれば、海保はそれに当たるのですか、当たらないのですか。

宮崎政府特別補佐人 お答えいたします。

 これまでも答弁をいたしておりますけれども、一般論として申し上げますと、憲法第九条第一項に言う「武力の行使」とは、基本的には国家の物的・人的……ちょっと済みません。(三日月委員「それは前の答弁です」と呼ぶ)ごめんなさい。国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというものでございますので、行為の主体が自衛隊以外の機関であるということのみをもって当該行為が我が国による武力の行使に当たらないとされるものではないと思いますので、海上保安庁もそこから排除されるものではないと思います。

三日月委員 非常に重要な御答弁をいただいたと思います。

 それで、もう一点確認なんですけれども、この対処法案では、危害射撃の要件が緩和されています。第六条で、制止に従わずに、海賊行為をする目的で著しく接近する船舶等に対して船体射撃をすることが認められています。先ほどから議論になっていましたけれども、海賊行為を目的としているか否かを正しく判断することは重要なんですけれども、しかし、非常に難しいと思うんです。

 まず、確認させてください。国または国に準ずる者が海賊行為を行うことがあり得るのかどうか。この点はいかがですか。

大庭政府参考人 本法に定めております海賊行為は、私的目的でということで定めております。そのような目的によって限定をいたしております。

 そしてまた、二条各号に列挙しております具体的な行為に関して見ていただきますと、基本的にいずれも私人による犯罪行為の範疇に入るものと考えられると思っております。

三日月委員 海賊行為は私人によるとしておりますので、国または国に準じる者が海賊行為を行うことはあり得ないという趣旨の御答弁だったように思いますが、それでは確認をさせていただきます。

 これは現場で、現に行われている目の前の行為が海賊行為であるかどうか、その要件である私的目的であるかどうか。先ほど大庭政府参考人の御答弁で、私的目的とは、私人の利得の欲望、憎悪、復讐、その他の目的、そういう意味でございますとあったこの目的は、どのように見きわめるんですか。どういう基準で見きわめるんですか。

大庭政府参考人 海賊行為の定義、第二条一号から各号列挙いたしております。

 例えば、私的目的で、公海または我が国の領海等において行う次の行為。第一号、「暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為」というようなことで規定をいたしております。

 このような行為は、公海上、特にどの国の管轄にも及ばず、したがって取り締まり活動がなかなか行いがたい、そういう海域において、武器を持たない商船に向かって、いわば海上における強盗行為を行う行為でございます。そういう行為に関して、その背景事情を確認し、得られる情報によってさまざま判断されるわけでございまして、例えば、目的が身の代金の目的であるとか、小型船を使用して集合して襲撃をしているというような行為の態様とか、そういうようなものに照らして判断していけるものと存じております。

三日月委員 都合のいいことだけを例示されて御答弁されるのはちょっと控えていただきたいと思うんですけれども、これは大事な部分なので。

 現場で非常に迷いが生じることがないかの確認なんですが、二条の六号のところには、「第一号から第四号までのいずれかに係る海賊行為をする目的で、船舶を航行させて、航行中の他の船舶に著しく接近し、若しくはつきまとい、又はその進行を妨げる行為」が私的目的かどうかは、どうやって確認するんですか。身の代金目的で船によじ登ってきたりした行為は、明らかに海賊行為だとこの定義上断定できるかもしれませんが、例えばこの六号だったら、これはどうやって私的目的かどうかを判断するんですか。

大庭政府参考人 ここに規定しております目的の認定に関しまして、個別具体的な状況に応じて判断をしていくということでございますので、あらかじめ一概にお答えするというのはなかなか難しゅうございますけれども、一般的に申し上げれば、これまでの海賊事案を踏まえて、船舶の外観とか、航行の態様とか、乗組員の異常な挙動とか、その他の周囲の事情などを勘案して、合理的に判断をしていくということになると存じます。

三日月委員 ここは政府として、慎重にしっかりと議論しておいた方がいいと思うんです。大事なところですよ。これは、現場の隊員に迷いが生じるだけではなくて、国と国の争いに発展する、もしくは私たちが憲法で定めている武力の行使に当たるかもしれない、大いなる可能性を秘めている部分なんです。

 一点、具体的に確認しますけれども、先ほど田嶋委員の質問に対して、この海賊行為を行う人がテロリストであるということが結果として排除されないかもしれないという御答弁がありました。今の、この著しく接近する船舶がどのような基準で確認されるのかということも明確ではありません。その場合、第六条で認められている著しく接近する船舶に対して危害射撃を行った結果、実はこれが国または国に準じる者への射撃行為だった場合、その場合は、憲法で禁じている武力の行使だという法的評価を受けるということも免れないのではないかと思うんですけれども、この点、政府の見解はいかがなんでしょうか。

大庭政府参考人 先ほど来御説明をいたしておりますように、海賊行為につきましては、これまでの海賊行為として報告されている事例などを評価して、その行為を特定してこの規定にしているところでございます。

 先ほど見ていただきましたように、公海上における、いわば海洋の強盗行為でございます。各号に列記されているものは、基本的には、私人による犯罪行為の範疇に入る、そのような行為を列記しているわけでございます。

 ということでございまして、例えば国による行為が想定され得るようなものではないと存じております。

三日月委員 済みません、大庭政府参考人、きちんと聞いていただきたいと思うんですが。この第二条の各号に定められている基準に沿って海賊行為だと判断して、そして第六条で認められている危害射撃を行った結果、しかし、その確認が、さっき申し上げました第二条の六号、これは、船に侵入したり、人質をとったり、武器を持っているということ以外でもこの六号には当てはまると思うんですけれども、それが結果的に、例えばテロリストであったり、国または国に準じる者であった場合、これは憲法で禁じている武力の行使ということに当てはまるのではないんですか。これは法制局長官、お答えください。

宮崎政府特別補佐人 今回の法案は、海賊行為という特別な類型について着目しておるわけでございます。

 恐らく御案内のとおり、まず、軍艦でもなければ、各国政府が所有しまたは運航する船舶でもない、すなわち私的船舶によって行われる行為であることがまず第一点であります。二つ目に、私的目的で行われるということが明記してございます。三つ目に、基本的観点でいえば、公海上で行われるものでございます。

 さらに、そのようなものが船舶の強取、財物の強取、乗組員等の略取等の行為を行うというふうに定義しておりまして、これは古くから、いわゆる人類共通の敵として定型的に認められてきたような、卑劣で重大な犯罪というものを踏まえて、少し長くなりますけれども、海洋法条約におきましても、そういうものを対象にして規定をし、また、それを踏まえて今回の法案で海賊行為というものをきちんと定義いたしまして、それは私的な、私人による行為というふうに考えておるわけであります。

 したがって、この法案に言います海賊行為を行う船舶に対して、御指摘の法案六条を含め、所定の法令の範囲内で武器使用を行うことは、憲法の禁ずる武力の行使に当たるものではないということでございます。

三日月委員 ちょっと、では、質問の観点を変えますが、今回、アメリカ、米海軍は船長を救出されて、海賊三名が死亡したと。その死亡したことをもって、海賊組織側が米国に対する報復を宣言したと報じられているんですけれども、これは、この報じられていることから判断すれば、国家への攻撃の意思をあらわしたものであるように言えるんですが、報復を目的として民間船舶を攻撃した場合の行為は、これは私的目的と言えるんですか、言えないんですか。

大庭政府参考人 本法案第二条に定めております海賊行為に関する私的目的と申しますのは、国家等の意思とは無関係な私人の利得の欲望、憎悪、復讐、その他の目的という意味でございます。

 お尋ねの攻撃が具体的にどのような行為を指すことになるのか、それは明らかではございませんけれども、これが海賊対処法案による対処の対象となるような海賊行為に該当することになるのかどうかは、それは具体的事実関係に応じて判断されなければいけないと思います。

三日月委員 このような形で法文上定義づけはしているんだけれども、現場で例えば私人であるか否か、私的行為であるか否か、ついてはそれが海賊行為であるかどうかを判断することというのは非常に難しいと思うんですね。そのときに、私的目的であるかどうかを判断する最も確実な方法は、私は立入検査、船に行って調べることだと思うんです。

 そこで、資料を配付させていただいて、これは報道等で伝えられている、EUでEU軍がこのような形で臨検、立入検査を行っているというものなんですけれども、今回、海上警備行動及び海賊対処行動、これは、海賊行為であるかどうかを確認するために、はたまた六条で認められている武器使用を行う前にこのような対応、立入検査をするということでよろしいですか。まず確認させてください。

大庭政府参考人 お答えいたします。

 立入検査に関しましては、この海賊対処法案におきまして、海上自衛隊あるいは海上保安庁に対してその立入検査を行うことのできる権限を与えております。したがいまして、その必要な状況におきましてこの立入検査を行うということになるわけでございます。

三日月委員 防衛大臣にお伺いをいたします。

 現在行っている海上警備行動及び今後この法に基づいて行われる海賊対処行動の場合、自衛隊の護衛艦及び現場の自衛隊の隊員、これは海上保安庁の保安官も一部含まれるかもしれませんが、立入検査をどのような装備と能力、手順で行うことになるんですか。

浜田国務大臣 自衛隊による海賊対策につきましては、護衛艦による民間船舶の護衛や護衛艦、航空機による哨戒活動を実施することによって海賊行為の抑止や海賊を退散させることが基本的な任務として想定されております。

 他方、自衛隊は、海上警備行動においても海賊対処行動においても、海上保安庁法第十七条第一項が準用されておりまして、海賊船舶に対して立入検査を行うことは可能であります。

 自衛隊による立入検査の対応については、個別具体的な状況によって異なるため、あらかじめ一概に申し上げることは困難でありますけれども、例えば警告射撃等により海賊船舶を停止させ、特別機動船を用いて海賊船舶に接近し、接舷し、立入検査を実施するというような対応が考えられるところであります。

三日月委員 ここで確認ですけれども、先ほど来議論しております、これは例えば船によじ登っているとか、何か物をとっているとか、人質をとっているという場合は海賊だということはすぐにわかると思うんですが、例えば、たび重なる制止も聞かずに著しく接近する船舶が海賊行為を目的としている、私的目的で海賊行為を目的としているという確実な保証というのはとれないんですが、今の浜田防衛大臣のおっしゃった、例えば六条で武器の使用をする場合、今おっしゃったような手順や行動をとられた上で、具体的に言えば立入検査をやった上で、その確認をしてから、この六条で認められている使用に至るんだということでよろしいですか。

浜田国務大臣 そもそも、テロも海賊も、とにかく接舷しなければ、これはおのれの目的を達するわけにはいかないわけでありますので、我々とすると、それ以前に追い払い等の措置をするということになりますので、それが果たしてそこで逃げるか逃げないかということになります。

 ですから、正直なところ、その点については、立入検査に至る前に、追い払いという任務があるわけでありますので、それを実施しなければ意味がない。逆に言えば、取りつかれてしまえば、これはテロであれ海賊であれ、要するに、実際にそれが人質になってしまうということでありますので、我々とすれば、よじ登った段階でテロかどうか、海賊かということを確認するよりも、まずは、我々の任務としては、その追い払いをするということが一番のことだと思っております。

 ただ、今先生がおっしゃるように、もしもそういった場合にそれを特定するということになれば、当然それは、我々とすれば、今おっしゃったように、その本人たちを立入検査して、やるところまでやらなければならないということでありますので、そこのところは、とまるかどうかも含めて、実際にやって、そこで追い払いができれば一番いい。そこが我々の任務の本論でありまして、立入検査に至るまでの、とまるかどうか、逃げてしまうかもしれないわけですから。しかし、逃げた場合には、追いかけていってという任務は我々にはございませんので、そこは極めて実用的な話をするとそういうことなので、そこのところはなかなかはっきり申し上げられないというのがあります。

 ただ、手順としては、そういう先ほど申したような手順でやっていくということであります。

三日月委員 非常にいろいろな、多様な場合があり得ますし、かつ緊急事態で迅速な対応を求められているときの判断になると思うんです。しかし、これは、繰り返しますけれども、制止を聞かずに著しく接近してくる船舶が私的目的で、海賊行為を目的としているかどうかの判断というのは、これはできないんですよ。

 できない段階で、例えばよじ登ってこられる前に、六条で認められている武器の使用を行いましたと。しかし、この者が、海賊行為を目的としている私人ではなくて、国または国に準ずる者であった場合、これは憲法で禁止をしている武力の行使ということに当たる可能性もあるわけで、そこの判断を、冒頭確認しました、定めている、今後も定めるという武器使用基準の中でどのように定めていくんですか、示していくんですか、自衛隊員に対して。

徳地政府参考人 武器使用基準と申しますものは、相手の行為の態様に応じて、どのような場合にどこまで武器の使用が可能であるかということを、部隊の、実際に武器の使用に当たる隊員にわかる形で示す、こういうものでございます。

 では、その相手がどういうものであるかということにつきましては、その法の趣旨に照らして適切に判断をするということになるかと思います。

三日月委員 いや、あなたは現場に行かないからさらっとそんなことが言えると思うんですけれども、これは非常に難しい問題で、重要なところなので、引き続きまた確認をいたしますが、最後にお伺いをいたします。海上保安庁に伺います。

 田嶋委員のときにも、これは第一義的には海保が行う任務なんだということで、何度も法文上に明記すべきだという確認をいたしましたが、国として、政府として、海保として、これはどこまでの海賊行為を海保が担うべき第一義的な任務だととらえているんですか。

 現状、例えば距離が長い、ソマリア沖・アデン湾まで距離が長い、そして装備がない、他国が軍でやっている現状に対して、海保でできない、海上自衛隊に行ってもらうことにしたということはわかるんですが、今後日本として、海保が担うべき海賊対処というのはどこまでの範囲をどのような装備で想定していくんですか。

金子国務大臣 第一義的に海上の安全は海上保安庁で担う、このことは今度の法案でも明記されております。

 今回、ソマリア沖には、たびたび御答弁しているような事情で海上保安庁が対応できないという状況でありますが、今御指摘のように、第一義的には海上保安庁であります。したがいまして、海域は、海上保安庁の海域がどこかという特定はしておりません。すべての海域と。具体的にはそういう地理の概念、距離の概念というのはございません。しかしながら、そこで行われる行動が、海賊がどういう武器を持っているのか、どういう状況なのかによって判断をしていかざるを得ない。

 特に東南アジア海域につきましては、これは海上保安庁がやってまいります。既に東南アジア沿岸国とは、海上保安庁、海上保安機関同士での連携をとって、継続的な訓練も行っております。また、東南アジアを越えた遠方の地域におきましても、海賊がロケットランチャーのような強力な武器を持ってないような場合、つまり、個々のケースでありますけれども、そういう場合には海上保安庁で対応していきたいと思っております。

三日月委員 いや、冒頭申し上げたように、海上輸送は大事なんです。それを壊し、脅かす海賊には、やはり日本国もそうですし、世界各国で対応していくということが必要なんです。そのときに、海洋国である日本が主導権を持って、範を示して、平和的に海賊対処ができ得るルールをつくる、そしてチームをつくるということに、私はもっと決意なり意思表示があってもいいと思うんです。

 特に海洋担当大臣としての金子大臣のそういう御意思も聞きたくて最後の質問を申し上げたんですけれども、その意思も聞けなかったので非常に残念なんですけれども、引き続きこの法案の審議をさせていただくことを申し上げ、最後に大臣の決意を聞いて終わりたいと思います。

金子国務大臣 東南アジアとは、先ほど申し上げましたように、ReCAAPを含めて海上保安機関同士の連携というのをさらに強化してまいりたいし、また、外務大臣が答弁していただきましたけれども、ソマリア沖、イエメン、オマーン、コンタクトグループ、ここでこれから行われてまいります。そういう中で、イエメン、オマーン、こういう海上警察機能というのを強化していくという動きに対しては歓迎しておりますし、我々としても最大限の協力をしていきたい、支援していきたいということでございます。

三日月委員 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 きょうは、内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について質疑を行わせていただきます。機会をいただいた理事各位、委員の先生方に感謝を申し上げたいと思います。

 まず、今回、海自、海上自衛隊を派遣するに当たりまして、三つ、その理由として政府側は挙げております。一つは、遠隔地であるということ。一つは、海賊が最新の機器も含めて武装をしていること。そしてもう一つが、各国の軍隊がその海域に集まっているから、連携の必要性ということでございました。

 そこでお伺いしたいんですけれども、ソマリアの海域に各国の軍隊がどのような派遣のされ方、どういうような状況にあるか、軍隊がどんな状況に派遣されているかということについてお聞かせ願いたいと思います。

別所政府参考人 御質問の各国の派遣状況でございますが、何度か御答弁申し上げているとおりに、ヨーロッパそれからアメリカ、アジア、そういった国々、約二十カ国から、合計で大体三十隻以上が派遣されているというふうに理解しておりまして、それぞれの国が、一隻ないし三隻の、主としてフリゲートを派遣している、フリゲートないし駆逐艦、あるいは場合によっては補給艦を派遣している、そういう状況でございます。

鷲尾委員 そんな中で、国連海洋法条約、それから国連決議ということで、今政府には、できるだけ海賊退治に協力しろよということ、それからもう一つは、軍隊機関を通じて海賊を退治しろ、そういうような要請が来ているというふうに認識しておりますが、今までの議論も拝見をする中で、今回、政府は、国連安保理決議千八百五十一号等の要請に応じて海上自衛隊を派遣しているわけではないということで御答弁をいただいているわけですが、これは、国連安保理決議千八百五十一号等の要請に応じて派遣をしているというふうになると何か不都合があるのかというところについて、お聞かせを願いたいと思います。

鶴岡政府参考人 いわゆる海賊対策というものは、もともと一般国際法上も人類共通の敵という認識のもとに普遍的な管轄権を設定していい行為であるというふうに認識しております。公海上の、通常であれば各国が管轄権を行使できない場所におきまして、海賊行為に限っていえば各国がみずからの管轄権を設定していいということになっておりまして、その伝統的な国際法の規定が海洋法条約に反映をされております。

 海洋法条約におきましては、海洋法条約の規定といたしまして、各国が、海賊対策に対しては可能な限りの協力を行うということが義務として定められております。安保理決議は、そのような海洋法条約の枠組みのもとにおきまして、さらに安保理として各国に呼びかけを行ったものであります。

 もともと普遍的な管轄権が設定されております海賊行為への対策というものは、もともとの海洋法条約の、国際法上の枠組みのもとで各国が主体的に判断して実行することが可能な行為でございます。

鷲尾委員 私の素人感覚で恐縮ですけれども、国連安保理決議が出て、それに従って日本も国際貢献をしろとか国際協力をしろとか、非常にそういった議論が国内においてなされることが多うございます。

 そういった中で、国連決議千八百五十一号が出ているにもかかわらず、それを、逆に言うと何か認めたがらないような、そんな雰囲気を今までの議論として私は感じております。

 これは平岡委員の質問にもありましたけれども、国連決議との関連におきまして、今回の海上自衛隊の派遣というのは、その意義づけというのは政府としてどういうふうにやっているのか。今の答弁だとちょっとわからないんですけれども、もうちょっとわかりやすく教えていただけるとありがたいんですが。

別所政府参考人 先ほど来閣僚レベルでの答弁がございましたので、私が余りつけ加えるところはございませんけれども、国際法上、公海上の海賊については各国が管轄権を保有している、そして、それについて積極的にやっていくことが期待されているのは国連海洋法条約で既にあるわけでございます。

 そういった中で、各自、各国がみずからの意思として、どういう対応をとっていくかという非常に重要な主権的判断があるわけでございまして、それがまず、今回こういった新海賊法を提案している、そういう事由であろうと。

 もちろん、国連決議、安保理決議というものがその間出ているわけでございまして、事の重要性、事の緊急性についての国際社会としてのメッセージはあるわけでございますから、それは十分踏まえているわけでございますが、先ほど申しましたような、日本の船が襲われている、そういった状況もある中で、日本として、国家として、みずからしっかりとした対応をとっていく、そういう判断がまずあるということだろうと思います。

鷲尾委員 今の御答弁をお聞きする限りでは、国連安保理決議も踏まえて海上自衛隊を派遣するということを決定されているということだと感じました。

 それで、ちょっと視点を変えますけれども、今回、この海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律について、海上保安庁が有する巡視船の「しきしま」について議論されることが多くて、物すごい装備を持っているんだなというのを本会議の壇上の山口先生の代表質問で私感じました。

 その「しきしま」という巡視船なんですけれども、これは、建造の経緯としては、私は、プルトニウムの運搬の護衛であるという話を聞いてはいるのですが、この「しきしま」の建造経緯、その目的についてお話をいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 「しきしま」の建造経緯でございますけれども、今先生御指摘のとおり、プルトニウムの海上輸送が契機でございます。平成元年十二月、プルトニウム海上輸送関係閣僚打合会におきまして、プルトニウムの海上輸送の護衛船として海上保安庁の巡視船を派遣するという旨の申し合わせがなされました。このための船として、海上保安庁は「しきしま」というのを建造し、平成四年の十一月から平成五年の一月まで、プルトニウムを輸送するあかつき丸という船でありましたけれども、それの護衛を実施いたしました。

鷲尾委員 この「しきしま」を建造する、海保が、あかつき丸を護衛して航行していくんだということでありましたが、当時、「しきしま」という巡視船がない状態を考えたときに、プルトニウムを例えばヨーロッパから日本まで護衛していくということをする目的の一つとして、海上自衛隊の船というのは考えられなかったんでしょうか。

岩崎政府参考人 当時、このプルトニウムの護衛を海上保安庁が担うのか、あるいは自衛隊にやっていただくのかということについて議論があったということは承知をしております。議論がありましたけれども、先ほど申しましたように、平成元年十二月の関係閣僚打合会で、これは海上保安庁の巡視船でやるということが決定されたわけでございます。

鷲尾委員 では、海上自衛隊の船じゃなくて海上保安庁の船で行くというふうに決まった理由を教えていただけますか。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

岩崎政府参考人 当時の関係閣僚の打合会の申し合わせにも書いておりますけれども、「海上における犯罪の予防及び鎮圧は第一義的に海上保安庁の任務であるので、プルトニウム海上輸送の護衛船として海上保安庁の巡視船を派遣する」ということでございます。

 それから、あわせて、これは平成元年の十二月の決定でございますので、プルトニウムの輸送は平成四年からでございましたので、船艇を建造する期間があったということも一つの理由だろうと思います。

鷲尾委員 この「しきしま」をつくるに当たっては当時で二百億円以上かかるという、その中で、今岩崎長官がおっしゃったように、第一義的には、海洋上の治安維持のためには海上保安庁がやっていくんだ、そんな中で「しきしま」をつくるんだということでございました。ちょっと今までの委員の先生方の質問と重複する部分もございますけれども、この「しきしま」については、国土交通大臣をおやりになりました冬柴先生が、「しきしま」があるから今回アデン湾に海上保安庁が行けという話には単純にはならないよという話を議論としておやりになられているわけですけれども、その中の御質問の一つとして、海上保安庁が今後もこういった海洋に関する治安、海賊退治、具体的に言うと、例えばの話ですけれども、このアデン湾の海賊事案が何年か続くということを想定する中で、やはり改めて海上自衛隊がその任務につかなきゃいけないんだというようなお気持ちというか心構えを持っておられるのかどうかについて、お聞かせを願いたいと思います。

岩崎政府参考人 先ほど金子大臣が答弁させていただきましたように、このソマリアにつきましては、これから船を建造しても多額の資金もかかりますし、期間もかかります。したがいまして、ソマリアを念頭に置いては考えておりませんけれども、ただ、そうした同種事案について海上保安庁の巡視船が対応できないというのは事実でございます。

 具体的に、長距離で継続的なオペレーションをして、相手がロケットランチャー等の重火器を持っている、こうした事案に海上保安庁の今の勢力では対応できないというのは事実でございますので、こうしたことをどう考えていくのかというのは、金子大臣の指導も得ながら考えていきたいと思っております。検討課題だと思っております。

鷲尾委員 例えばですけれども、それは今年度とかの予算を含めて、長官も答弁されていますけれども、大分今、海上保安庁の船も老朽化というか陳腐化が進んでいて、巡視船百二十一隻のうち四割が耐用年数を過ぎているということでございます。また、そういう状況にある中で、「しきしま」級の巡視船をつくる必要があるのかどうかということも議論していかなきゃいけないと思います。その議論や予算の見積もり等々含めて、私は、こういう事態が起こっている以上、今すぐ始めなきゃいけないと思いますが、その点について、これから検討していくという話でございますが、具体的な何かお考えはありますでしょうか。

岩崎政府参考人 先生に御指摘もいただきましたけれども、今海上保安庁は、老朽巡視船、航空機の更新で、いわば目いっぱいの状態でございます。このまま老朽巡視船、航空機を更新しないと、もちろん海賊問題も重要でございますけれども、日本周辺の治安の確保をちゃんとしていく、あるいは海難を救助していくという課題にもちゃんとこたえなきゃいけないと思っておりまして、それはそれでやはり優先していかなきゃいけないと思っております。

 こうした「しきしま」級の船をつくるというのは巨額の予算を必要といたしますので、まだ先生のおっしゃっているような具体的な道筋とか検討のスケジュールとか、それは立っておるわけではございませんけれども、繰り返しになりますが、考えていかなければいけない課題だとは受けとめておるところでございます。

鷲尾委員 大臣、こういう具体的なところについては、やはり私は政治のリーダーシップが必要だと思うんですけれども、大臣の決意のほどは先ほどから私も聞いておりますが、具体的に考えるよ、今年度から着手したっていいじゃないかというところを含めて、大臣のお考えをお述べいただけたらと思います。

金子国務大臣 真剣に検討しようと思っているんです。ただ、予算の話でありますので、これは私は要求官庁になりますので、政府全体としてどういう方針でいけるのかということについての同意をとりながら進めていかなければならない問題であります。

 そういう中で、先ほど来答弁がありますように、とりあえず、海域がどんどん広がっていく、大陸棚も広げていくという申請を今国連に出しておりまして、それだけに、海域、そして十年以内にメタンハイドレートあるいは海底熱水鉱床、これはレアメタル等々を含んでいるものでありますけれども、こういうところの探査、調査というものをさらに進めていくということもありますので、現状の海上保安庁が持っている装備、今御指摘いただきましたとおり、四〇%が老朽化、耐用年数を過ぎている、これをできるだけ早い時期に対応する。今、緊急整備計画という中で行われております。やはり、これはこれで進めていく必要があると思っております。

 しかし、これに加えて、先ほど来答弁申し上げているとおり、今回、海上保安庁の任務ということで任務が新たにまた認識されてきておりますので、政府部内におきまして、新たに装備を、「しきしま」級を造成するということを真剣に検討してまいりたいと答弁しておるわけであります。

鷲尾委員 大臣、いみじくも要求する側だというお話がございましたので、要求する側だからこそ、しっかりとした決意と熱意を持ってやっていただきたいというふうに思います。

 この「しきしま」なんですけれども、当初、プルトニウムの輸送の護衛ということでございましたが、今後、プルトニウムの輸送護衛というのは、今、「しきしま」の運用上の計画としてあるんでしょうか。

岩崎政府参考人 プルトニウムの輸送でございますけれども、一回限りで、その後、中断をしております。平成七年十二月に、プルトニウムを使用した高速増殖炉「もんじゅ」でございますが、これが事故を起こしたため、停止をしております。まだ具体的なプルトニウム輸送を再開するという計画は私ども聞いておりませんけれども、もし仮にそういうことがあれば、これは「しきしま」で過去もやりましたし、今後もそうした任務は私どもでやっていくつもりにしております。

鷲尾委員 それで、ちょっと話をかえますけれども、今回の海上保安庁の任務について、海上自衛隊が行うということについては何も法律的に問題がない、ただ、抜け穴があるのでしっかりとそれを補充していこうというのがこの新法の趣旨だ、要約、そういう形で聞いております。

 一つ気になったのが、気になったというのは、この法律と少し関係ないことでもあるんですけれども、例えば、この「しきしま」というのは物すごい巡視船、護衛艦級の巡視船、これが、例えば有事がありましたよ、日本が、例えばの話、将来、あってはならないことでしょうけれども、攻撃をされました、されているというときに、歴史的な経緯を申せば、さきの大戦のときは、大分民間の商船も軍船として徴用された、そういう歴史もありますし、では、この護衛艦級の巡視船である「しきしま」が海上自衛隊の方に徴用されるということはあるんでしょうか。

岩崎政府参考人 私どもの「しきしま」は、海上保安庁の巡視船としてはそれなりの装備を積んでおりますけれども、護衛艦などのようにミサイル等の武器なんかを積んでいるわけではございませんので、そうした性質のものではございません。

 それからまた、有事の際に、自衛隊法八十条で、海上保安庁は防衛大臣の指揮下に入るということにはなっておりますけれども、その場合も、海上保安庁の任務は変更されるわけではございませんので、仮にそういう場合があっても、私どものやるのは、海上の治安の維持でありますとか海難救助でありますとか、こうした海上保安庁の任務をやっていくということで、性格は変わらないと思っております。

鷲尾委員 海上保安庁の船は非常によくわかりました。

 ちょっと話を広げまして、例えば民間の商船となると、これは今の現行法で考えて、先ほど申し上げたような軍隊として、軍隊としてというか軍船として徴用されることがあり得るんでしょうか。

浜田国務大臣 防衛出動時においては、自衛隊が我が国を防衛する上で実効的に対応するためには、これは、自衛隊の行動が円滑、効果的に行われるための措置が必要となります。

 このため、自衛隊法第百三条第二項では、都道府県知事は、防衛大臣等の要請に基づき、自衛隊の任務遂行上に特に必要なものがあると認めるときには、防衛大臣が告示して定めた地域内に限って、船舶運航事業者に対して輸送の業務に従事することを命ずることができる旨、規定しているところでございます。

鷲尾委員 そこで、一つ質問なんですけれども、政府としてシビリアンコントロールというのはどういった定義であるのかということを御答弁願いたいと思います。

浜田国務大臣 シビリアンコントロールとは、これは当然、民主主義国家における軍事に対する政治優先、または軍事力に対する民主主義的な政治統制を指すものと考えております。

鷲尾委員 今回の海賊新法において、シビリアンコントロールというのは具体的にどういった点にあらわれているとお考えでしょうか。

浜田国務大臣 それは先生、今回、そのシビリアンコントロールというのは、我々、海上警備行動という法律を含め、そしてまた海上保安庁法、そして警察官職務執行法、そういった法律に基づいて我々の活動が認められているわけでありますので、そういった意味からして、我々とすれば、そのことを遵守させることがシビリアンコントロールにつながるというふうに考えているところであります。

鷲尾委員 民主党の方では国会の承認ということを今想定しているということですが、立法論として、一般論としてお聞かせを願いたいと思うんです。例えば、今回のケースで国会の決議や承認を求めるということについて、これはシビリアンコントロールの観点からするとどんな意味を持っているのかということについて、少し行政府としてのお考えを伺いたいと思います。

大庭政府参考人 お答えをいたします。

 シビリアンコントロールといいますのは、ただいま防衛大臣から御答弁ございましたように、民主主義国家における軍事に対する政治の優先というものを意味するものでございますが、今回の海賊対処法案に基づきます海賊対処の行動は、軍事行動ではなく警察行動でございます。

 この海賊対処行動につきまして、その内容なり権限なりについて明確に法律上規定した上で、これを文民たる防衛大臣の命令に基づくものとし、そういう命令を出すに当たっては、対処要項を作成するなどした上で、文民たる内閣総理大臣の承認を受けなければならないというような定めにいたしております。

 またさらに、内閣総理大臣は国会に対して、当該承認をしたとき、あるいはその旨、それから対処要項の内容について報告をする、さらに、海賊対処行動を終了したときにはその結果について報告をするというふうな規定をいたしております。

 このように、本法案の海賊対処行動が、自衛隊の活動が我が国の領域外に及ぶとしても、軍事に及ぶことはなく、警察活動でございますので、この現行の案においてシビリアンコントロールは十分に確保されているというふうに考えております。

鷲尾委員 わかりました。

 最後に一つ、ちょっと関係ない点で、今シビリアンコントロールの話をしていますので、政府側のお考えをお聞きしたいなと思うんです。

 昨年だと思いました、元航空幕僚長の田母神俊雄さんが処分されましたけれども、これはシビリアンコントロールの観点から問題があるとお考えでしょうか。

浜田国務大臣 シビリアンコントロールというよりも、我々、自衛隊としての組織のあり方、そして当時の航空幕僚長としての地位、そして国家としての、政府としての承認というようなことを考えたときに、それに対して問題ありと判断しまして私が解任をしたということでございます。

鷲尾委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

中谷委員長代理 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 自由民主党の鈴木馨祐であります。

 きょうは、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案の審議ということで時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、今回のソマリアの事案を考えるときに、やはり原則として考えていかなくてはいけないことは、我が国のこれまでのあり方から考えて、自衛隊を海外に派遣するというのは相当特別な場合に限られるんだろうというふうに私自身は考えております。なぜ自衛隊を派遣しなくてはいけないのか、そういった点についていろいろな形で質疑を行っていきたい、そう思っております。

 恐らくその場合に考えていかなくてはいけない観点は、まず一つは、我が国の直接的な国益に資するのかどうか、当然そういった点があるんだというふうに思います。ほかの国とは違って、何か問題があったから軍隊をはるかかなたまで出していく、そういった国ではないのがこれまでの我が国のあり方だと思います。

 そして、そういったことを考えた上で、例えば自衛隊の派遣という形以外のもの、これはマラッカ海峡の事例を考えるまでもなく、そういったやり方で対処ができないのか、そういったこともきちんと考えていかなくてはいけない。その後で実際に日本の艦船を派遣するという場合、これを自衛隊でやるのかどうか。こういったところを一つ一つ詰めていって、それでなおかつ自衛隊でなくてはいけないということで、今回のことというものも決められていかなくてはいけないんだろうというふうに思っております。

 そういった中で、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、今回の対象海域、アデン湾の沖合でございますが、そこを通過する日本関連船舶、この数値と、あとは、日本以外の諸外国も含めてその相対的な関係をお聞かせいただければと思います。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のアデン湾を航行する日本の関係船舶の通過実績でございますけれども、これは、日本の船会社の団体でございます日本船主協会によりますと、二〇〇七年は二千百二十八隻、二〇〇八年は二千百三隻となっております。非常に多くの日本の関係船舶が通る極めて重要な航路でございまして、また、世界全体でアデン湾を航行する船舶は約二万隻と言われておりますので、我が国の日本関係船舶がその一割に相当しております。

鈴木(馨)委員 今の数値を踏まえた上で、実際、この海域というものが我が国にとってどういった意味というか意義があるのか、そういった点についてお聞かせいただければと思います。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今申し上げたとおり、アデン湾は、スエズ運河を経由いたしましてアジアとヨーロッパを結ぶ、我が国にとって大変重要な航路でございます。

 この位置づけをどういう観点から評価するかということでございますけれども、日本とスエズ運河を航行して貿易をする対象国の非常に大きなポーションといたしましてはヨーロッパがあると思いますが、ヨーロッパの例で申し上げますと、日本とヨーロッパの海上貿易額、これは平成十九年、二〇〇七年ベースでございますけれども、十四兆円でございまして、我が国の貿易額全体の、百五十七兆円ございますが、その約九%でございます。

 この海上貿易額十四兆円、そのほとんどがアデン湾を航行し、スエズ運河を経由しているということが考えられておりますので、当然、そういった観点からは、アデン湾の航路というのは我が国の経済社会にとりまして大変重要な海域であるというふうに考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃったとおりでございまして、この海域が非常に危険な状態にある。これはやはり我が国にとっても何らかの対応というものをきちんとやっていかなくてはいけない、そういった状況にあるということは明らかなのかなというふうに思っております。

 その次の論点で、今回、海軍及び自衛隊の艦船による警備、対策というものがとられているわけでありますが、ほかのやり方というものはできないのか、そういったこともきちんと考えていかなくてはいけないんだと思います。

 先ほどから何人かの委員の方からもございましたが、海賊の事案というのは、実はこれは初めて聞くような話ではないわけであります。例えば東南アジア、特にマラッカ海峡においては、こういった海賊の問題が非常に深刻な問題としてこれまでもあったわけでありますけれども、これまで我が国として、ここに対してもかかわってきたその対策の内容と、そしてそれに対する評価というものを政府の方からお聞かせいただければと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、マラッカ海峡の海賊問題は非常に大きな問題であったわけでございますけれども、このマラッカ海峡を中心とした東南アジアにおける海賊事案は、最近大幅に減少いたしました。二〇〇〇年がピークで、このときは二百四十二件、世界全体の約半分がこの地域ということであったわけですが、直近の数字で、二〇〇八年には五十四件ということで、世界全体の二割に減少したというわけでございます。

 この東南アジアの海賊の減少は歓迎すべきことでありまして、これは沿岸各国の能力の向上と関係国間の情報共有を通じた協力の成果と言えるのではないかなと思います。

 具体的には、マラッカ海峡沿岸国は、海上保安機関の取り締まり能力の向上や、人材育成による海賊対策能力の強化に取り組んできているわけでございまして、我が国も、インドネシアへの巡視船の供与、またマレーシアへの機材供与を含む無償資金協力や技術協力等を実施し、こうした取り組みを支援してきたところでございます。

 また、各国は、海上保安機関の間の連携強化に努めるとともに、我が国が主導して作成したアジア海賊対策地域協力協定、いわゆるReCAAPに基づき、条約の締約国間で情報共有を通じたさまざまな協力を行ってきております。

 今後とも、沿岸国による取り締まり能力の向上のためにReCAAPの有効活用に努め、我が国としても大きな貢献を続けてまいりたいと考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 このマラッカ海峡の事案と今回の事案、報道でもアルカイダとの関係などなどいろいろあるわけでありまして、多少のというか、実質的な性格の違いというものも確かにあるのかとは思いますが、確かに、これまで日本としてこうした東南アジアの海賊事案の取り組みを続けてきて一定の成果を上げてきているわけであるのも事実であります。

 そういった中で、今回、迅速性あるいは実効性という意味で、例えばこういった東南アジアで行ってきたような取り組みというものをソマリア沖のケースでもやる場合に、実際どういった障害というもの、あるいはどういった違いというものがあるというふうに認識をされているのか、御答弁をお願いします。

伊藤副大臣 どういった違い、どういった障害があるかという御下問でございます。

 実際、ソマリア沖における協力関係について御説明申し上げたいと思いますけれども、IMO主催により、ことしの一月末に開催されたいわゆるジブチ会合では、周辺諸国による海賊防止のための協力や、今御指摘のアジア海賊対策地域協力協定の枠組みを参考にしまして、海賊情報共有センターのイエメン、ケニア、タンザニアへの設置などを規定した行動指針というものが、ソマリア海域の周辺十六カ国及びソマリア暫定政府によって採択されたところでございます。

 我が国といたしましては、この行動指針のもとで協力を進めていくためには、沿岸国の取り締まり能力の向上のための支援も必要であると考えております。そのような観点から、今後、周辺諸国と具体的な協議、またその具体的な要請を受けて、可能な協力というものを行っていきたいと考えております。

 今のことを少しポイントを申し上げれば、この行動指針はジブチ会合に参加した周辺八カ国及びソマリア暫定政府により署名されておりますが、本行動指針はソマリア沖海賊対策のための地域協力の推進に資するものであると考えておりますことから、より多くの周辺国が署名することが期待されるものであります。

 なお、本行動指針はソマリア海域周辺国を対象としているために、域外国である我が国は署名していないということも申し上げておきたいと思います。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 いろいろなアプローチをやっていくこともこれは大事なのかなというふうに思います。

 しかし、ただ同時に、ソマリア、私も一時期開発援助の仕事もしたことがありますけれども、やはり内政というか統治機構がかなり揺らいでいるという状況にあるわけでありまして、そういった意味で、恐らく今回もこうしたソマリア自身の、言ってみればコーストガード、あるいはこういった能力というものをきちんと補完していくために必要だという整理をされているのかなというふうに理解しているところであります。

 そういった中で、国際社会の反応というところで、ひとつ国連決議のお話、先ほども委員からされていたことがありましたけれども、伺いたいというふうに思っております。

 基本的に、大きく今回の活動にかかわる国連決議が四本あるわけでございますけれども、特に最初の二本の一八一六と一八三八のところで、恐らく我が国との関係あるいは今回の活動との関係ということを考えれば、ここの主文の二というところ、これはどちらの決議についてもそうですけれども、そこが一つ大事な条文になってくるのかなという気もいたします。

 ここのところ、どういった記載がされているのか、外務省の方からお答えいただけますでしょうか。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、安保理決議の第一八一六、千八百十六号の主文の二でございますけれども、ここにおきましては、安保理は、ソマリア沖で海軍艦船及び軍用機を展開させている各国に対し、海賊行為等への警戒を要請するとともに、ソマリア沖の商業航路の利用に関心がある国に対して、海賊行為等を抑止する行動を監視強化及び調整するよう、そういうふうに慫慂しているところでございます。

 また、委員御指摘の、二番目に出てまいりました安保理決議第一八三八号の主文の二でございますが、ここにおきましては、安保理は、海上活動の安全に関心がある国に対して、特に海軍艦船及び軍用機を派遣することにより、ソマリア沖の公海上における海賊対策に積極的に参加するよう要請しております。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 先ほどからの議論でもありますが、一義的には我が国として主体的に出すんだと。ただ、そういった中でも、国際社会の議論という中で、こういった国連決議の要請というもの、これもある程度は勘案をしていく必要があるのかなというふうに思っております。

 そういった中で、今御紹介をいただきました二つのパラグラフでございますけれども、その中の、まず第一に、ソマリア沖の航路に関心がある国、これが特にそういった対策をとれということを言っているわけでありますけれども、最初、日本関連船舶の通過実績ということをお聞きいたしました。そういった中で、当然、これに日本もある程度入ってくるんだろうと。しかも、ここはたしか提案国の一つだったと思いますので、そういった文脈でこの提案もされているんだというふうに思いますけれども、日本も含まれるという理解でよろしいでしょうか。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど国土交通省からも御説明がございましたように、この地域、我が国の船舶、年間約二千隻がアデン湾を航行しているわけでございます。実際にソマリア沖・アデン湾を欧州との重要な輸送ルートとして我が国は利用しているわけでございますので、当然ながら、そういった国の中に日本は含まれるというふうに考えている次第でございます。

鈴木(馨)委員 もう一つの一八三八の方ですけれども、ここで、海軍艦艇を派遣することを要請すると。もとの英文だとネーバルベッセルズとなるんですか。ここに、いわゆる海上保安庁の艦船というものはこうした対象ということで考えられるのか。その言葉の定義を、一般として排除されないということではなくして、ここの海軍艦艇というところに含まれるのか、そこのところを伺えればと思います。

別所政府参考人 今委員がおっしゃいましたように、排除されるかどうかという話ではなくて、言葉の解釈として、ネーバルベッセルという言葉自体に海保の艦船が含まれるかという御質問でございますれば、海保の艦船は含まれないということだろうと考えております。

鈴木(馨)委員 続いて、艦船に関する質問をさせていただきます。

 今回、この国連決議を受ける形で、多くの国がこの海域に艦船を派遣しておるところでございますが、いわゆる海軍の艦船と、あとは、こうしたコーストガードというか海上保安庁的なそういった艦船と、いろいろな種類があるかと思いますけれども、各国から派遣されている艦船の中で、こうした海軍ではない艦船を派遣している国というのはどのぐらいあるんでしょうか。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしまして、現地にいる艦船について網羅的に完全に把握しているということでは必ずしもございませんけれども、私どもが承知している限り、海上警備あるいは海上の法執行機関に当たる機関の艦船を派遣しているのは、沿岸国、周辺国であるイエメンがそういうことをしていると伺っておりますが、それ以外には承知しておりません。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 基本的には、ほぼ海軍の艦船でのオペレーションがされているんだというふうな理解でよろしいのかと思います。

 ここで、今回実際に活動していく中で、確かに法律論も非常に大事な話ではございますが、もう一つ、現場の執行ということ、オペレーションに問題がないかということもきちんと考えていかなくてはいけない点なんだろうというふうに思っております。

 よくこういった国際協調の行動の中では、いわゆる軍対軍であるとかあるいは警察対警察、こういったお互いの立場が同じ中で情報共有がされるというケースもかなりあるんだというふうに思います。そういった中で今回のソマリア沖、基本的には海軍の艦艇で各国の活動がなされているわけでありますけれども、自衛隊の艦船ではない場合にそういったオペレーションの問題があるのか、あるいは、自衛隊の艦船であるがゆえにこういったオペレーションはスムーズにいく、そういった実態的なことがあるのか。そういった点について防衛省からお伺いできますでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 海上における人命、財産の保護あるいは治安の維持につきましては、第一義的には海上保安庁の責務ということではございます。自衛隊は、自衛隊法の第八十二条に基づきまして、海上保安庁によっては対処が不可能あるいは著しく困難であるとして、特別な必要がある場合に海上警備行動により対処をすることとなるわけでございます。

 それで、今回の場合につきましては、ソマリア沖の海賊対策に海上保安庁が当たることにつきまして、日本から現場までの距離でありますとか、あるいはソマリア沖の海賊が実際に所持をしている武器でありますとか、あるいは各国の軍艦等が対応しているということを勘案しますと、現状においては海上保安庁では困難であるということにつきまして、政府部内の調整の過程で国土交通省側から累次説明が行われたところでありますので、防衛省といたしまして、自衛隊法第八十二条の「特別の必要がある場合」ということに該当すると判断をいたしまして、総理の御承認をいただきまして、自衛隊法八十二条で可能な範囲で実際の護衛をするということにしたわけでございます。現地におきましても、各国の軍艦等あるいは各国のさまざまな機関等と情報交換等しながらやっておるところでございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 いろいろお話をさせていただく中で、やはり我が国としてもある程度きちんとこれはかかわっていかなくてはいけないオペレーションだろうと。そういった中で、恐らくは、海上自衛隊の艦船というものが今回の場合はベストな、やむを得ない選択なのだろうということも考えられるのかというふうには思っております。ただ、実際出航もしているわけでありまして、こうしたやるべきだという判断がある程度できる状況になった以上は、やはり現場のことを考えれば、これは一刻も早くきちんとした形で法整備ということもしていく必要があるんだろうというふうに思っているところであります。

 そういった中で、今、海上警備行動で一応出しているわけでございますけれども、今現在の状況を伺えればというふうに思います。

 まず最初に、今の海警行動の中では、保護の対象というものが日本船籍あるいは日本関係船舶に限られるということでよろしいでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 海上警備行動は、我が国の公共の秩序の維持という任務の一環として行う活動であるというふうに整理をされておりますので、その保護の対象は、基本的には我が国の国民の人命、財産というふうに考えられておりまして、この点につきましては、過去国会においても、通常、日本人の人命、財産であるというような答弁がなされておるところでございます。

 このため、海上警備行動による保護の対象となり得る船舶につきましては、日本籍の船、それから日本人が乗船する外国籍船のみならず、日本の船舶運航事業者が運航する外国籍船または日本の積み荷を輸送する外国籍船であって我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶というものについても該当するというふうに考えておるところでございます。

鈴木(馨)委員 ちょっと細かい話になりますけれども、ちなみに、この中で日本向けの積み荷というものがこれはあるんだというふうに思います。そういった中で、一般的には、例えばよくあるケースですけれども、日本企業と例えば中東であるとか外国の企業の合弁企業であって、日本の持ち分の割合が二〇%であるとか三〇%であるとか、そういった企業から日本の企業向けに輸出をされているもの。恐らくその場合は、日本企業の所有となるのはその引き渡しがされる場合というケースが契約上多いんだというふうに思います。

 そういった場合に、実際ソマリア沖を通過する時点でこの船に乗っているのは、所有者としては日本企業ではないという整理になると思うんですけれども、こういった点について今の海警行動の中で保護の対象となるのかどうか、その見解をお聞かせいただければと思います。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊法の八十二条に言います財産というものについてでございますけれども、これは法文上の限定はございません。一般的に財産と申しますと、物権あるいは賃借権等の金銭的価値のある権利であるとされておるわけでございます。したがって、この第八十二条に言います財産というのは、必ずしも我が国国民が所有権を有するものに限定されるものではなくて、金銭的な価値があって我が国の国民の財産と言い得るものであればよいということになるというふうに考えられております。

 他方、海上警備行動が実力組織である自衛隊によって行われるということからいたしますと、では、その保護の対象となる財産といいますものが、例えば債権のうちでも金銭債権のようなものでは足りないというふうに考えられておりまして、対象となるものが特定されて、かつ、その当該のものが損なわれた場合にその目的が達成できなくなるというようなものに限られるというふうに考えております。したがって、例えば特定物の引き渡し請求権などというものが入るというふうに考えておるわけでございます。

 そういうような財産についての基本的な考え方をとっておりまして、かつ、単に日本国民の財産であるというだけではなくて、そのものの重要性、つまり、損なわれることによって日本の社会、経済に与える影響などの観点から、この法目的であります公共の秩序の維持のために自衛隊によって保護するということの必要性が認められるというものを想定しております。

 したがって、今申し上げましたような範疇に入るものであれば保護の対象になるというふうに考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 時間も迫ってまいりましたので、ちょっと質疑をはしょりながらやらせていただきたいと思います。

 今御説明をいただきましたように、日本に関するものが一義的に保護の対象となっている。その一方で、国連海洋法条約の九十八条の一項あるいは我が国の船員法の十四条などにおいては、実際に危難に遭っている人については保護をしなくてはいけない、そういった規定もあるわけでありまして、実際、今の現状というものを考えれば、少なくとも海上警備行動の範疇であれば、これは現場の指揮官あるいは現場の人間が相当厳しい判断を迫られることになるということもかなりあるんだというふうに思います。そういった意味では、きちんとこれを法律的に整理して、一刻も早い成立というものを祈念いたすところでございます。

 もう一つ、その前に伺っておかなくてはいけないのは、やはり今回のオペレーションをするに当たって、出口戦略というものを考えていかなくてはいけないんだというふうに思っています。

 これまでの質疑を通じて、今回、やはり日本としてここに入っていかなくてはいけないんだ、そういったことを恐らくは整理をされてきているのかなというふうに思っております。しかし、これはいつまでやるんだとか、あるいはどういったものが達成されればこのオペレーションというものは成功裏に終わったというふうに判断をして、そこで、撤退をするとかそういったことを考えるのか、あるいはほかの手段に転換をするということを考えるのか、そういったことの議論の整理を同時にやっていかなくてはいけないんだというふうに思っております。

 そういった中で、どの時点をもって今回の行動というものが終わるのか、そういった認識についてお伺いできますでしょうか。

金子国務大臣 先ほど委員御指摘のように、アデン湾というのは、年間二千隻、日本関係船舶が通航する、アジアと欧州を結ぶ極めて重要な航路でありまして、そういう地域で今海賊行為が行われているということに対して今度の海賊対処法案を提出させていただいているわけですが、今の状況が解消していくかということを見て判断する。

 今の行為が我が国の経済社会や国民生活に与える影響、こういったもろもろの要素を総合的に判断して、今委員、言葉で言われましたけれども、出口というものは、また当然でありますけれども、検討してまいらなければと思っております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 出口がなければ入らないというのは、今の状況を考えれば、あるいは今の求められている迅速性というものを考えれば、そういった議論は当然ないわけでありますけれども、しかし、同時に、一回出したからには、これをどうやっておさめるのか、何をもって終わりとするのか、この議論というものは引き続ききちんとやっていかなくてはいけないんだというふうに思っております。

 特に今回のソマリアの件は、アルカイダの関与なんかもいろいろと話は出ておりまして、実際、アメリカも、アフガンのゴールというものをどうやって設定するか、その設定がなかなかうまくいっていないがゆえに、これは政権的にも非常に大きな影響を受けておりますし、しかも、このオペレーションが、なかなか目的がクリアになっていない、そういった状況があるわけであります。そういった轍を踏まないためにも、このことはきちんと我が国としても議論をしていかなくてはいけないんだというふうに思っております。

 最後に一点だけ、非常に実務的なことになりますが、お伺いをしたいと思います。

 海賊行為が実際に行われて逮捕に至った場合でありますけれども、これは、その逮捕の対象者というものをみんな日本に連れてくるということでないことも当然考えられるわけであります。沿岸国に引き渡される場合もあるという状況になると思いますけれども、その場合、これまでの法律的にこれはどういうふうな整理をされるのか、その点をお伺いして、質疑を終わりたいと思います。

大庭政府参考人 本法案に規定する海賊行為を行ったということで逮捕いたしました海賊について、その取り扱いについてでございますが、個別具体的な事案に応じまして、必要に応じ、我が国に移送して刑事手続を進めるという場合ももちろんあると存じますけれども、御指摘のように、引き渡しを受け入れる沿岸国などの外国の官憲に引き渡してその処分にゆだねるというような場合もあると存じます。

 外国に引き渡す場合には、まず、刑事訴訟法第二百三条などの規定に基づきまして当該海賊を釈放するという手続、そしてその上で、船員法二十六条、二十七条に基づく必要な措置ということで、沿岸国で下船をさせて、これを当該国に引き渡すというような手順になると存じます。

 このように、逮捕した海賊の引き渡しにつきまして、現行法の規定により実施することは十分可能であるというふうに存じております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 質問を終わります。

深谷委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時六分開議

深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。三谷光男君。

三谷委員 民主党の三谷光男です。

 ソマリア沖・アデン湾における海賊被害が最近特に急増をしていることに驚きを禁じ得ません。昨年秋から、海運業界の急速な冷え込みから運航される船舶は大きく減っているのに、被害は少なくなるかと思いきや、海賊事案は逆に急増していて、事態は悪化の一途をたどっています。ソマリア沖・アデン湾における海賊事案は、この半年で百二十一件、ここ最近は特にふえています。今月に入って、ほぼ毎日のように被害が発生をしています。

 この海域は、世界の重要な海上ルートの一つ。海賊が跳梁ばっこして、大変危ない海になっています。海洋国家である我が国にとって、大変深刻な事態であります。この海域の安全確保と秩序の回復のために、我が国は可能な限りの務めを果たさなければならないと考えます。そんな思いを抱きながら、質問をさせていただきます。

 まず、海上自衛隊護衛艦「さざなみ」「さみだれ」二隻による、三月三十日、第一回目の護衛の開始以来、現在までの活動状況の実績について、何回の護衛活動を実施したのか、何隻の対象船舶を護衛したのか、また、実施海域の距離などについて御説明を、防衛省にお願いします。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のために、新法整備までの応急的な措置といたしまして、三月十三日、海上警備行動を発令いたしまして、御指摘のとおり護衛艦「さざなみ」「さみだれ」二隻を派遣して、三月三十日より、アデン湾において日本関係船舶の護衛を開始しております。

 派遣されている護衛艦二隻は、これまでにアデン湾の約九百キロメートルの航路においてでありますけれども、合計で七回の護衛を実施しております。この七回の護衛、合計で二十一隻の日本関係船舶の護衛を実施したところです。

 なお、四月四日には「さざなみ」、それから十一日には「さみだれ」がそれぞれ護衛対象外の船舶から国際VHFによりまして通報を受けましたので、人道上の観点から、いわゆる強制力の行使を伴わない行為といたしまして、LRAD、指向性大音響発生装置による呼びかけ、それから艦載ヘリによる状況確認などの対応を実施したところでございます。

三谷委員 補給のためのジブチ寄港を除けばずっと護衛活動を続けています。海上自衛隊、海上保安官いずれにとっても合同の任務は初めての経験になりますし、それも海賊がばっこするルートで海上警備行動という制約の中で日本関係船舶の護衛という重い任務を背負ってもらっています。本当によくやっていただけているというふうに思います。

 また、今も運用企画局長がお話しになられました四月四日のシンガポール船籍のタンカー、また十一日のマルタ船籍の商船、極めて適切な行動で救助活動が行われたというふうに、制約の中で評価をしています。

 そして、護衛の申請は第七回の護衛で二十一隻、護衛を実施したのも二十一隻でありますので、これは、当初、要請がきっとたくさんあって全部護衛できないんじゃないかというふうに心配をいたしましたけれども、ここまでは大変順調に実施がなされております。

 そして、きつい任務をしていただいているといいながら無理を申し上げるのですけれども、ソマリア海賊の被害は、冒頭も申し上げましたとおり、今急増しています。そして、被害の発生地域は、アデン湾でも引き続き多発をしておりますけれども、南東海域へとエリアを広げています。

 現在の護衛艦が行う護衛の、エスコートのオペレーションの活動域を延ばすことはできないんでしょうか。防衛省、お答えください。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、現在は、アデン湾の約九百キロメートルの航路において護衛をやるということを基本としているわけでございます。そして、これは船主協会からの要請、それから関係省庁、とりわけ国土交通省との調整に基づきまして、このような海域で護衛を行うということを基本としておるところでございます。

 そもそも、今現在派遣をされております船は二隻でございまして、ジブチを補給のための基本的な港としてやっておりますので、おのずと護衛なりを行う海域というものは限られてしまいます。しかも、まだ始めたばかりでございますので、当面は、今の海域でこれをやるということを考えておるところでございます。

三谷委員 確かに、二隻という限られた資源の中で、それもまだ始めたばかりでありますので、ただ、自衛官の方々には大変きつい任務をより課することにはなりますけれども、ここは柔軟に対応をいただきたいというふうに思います。

 そして、防衛大臣がまだお見えになられておりませんので、引き続きまた防衛省に伺ってまいります。

 この海賊対処法が施行をされた場合に、現在、海上警備行動として任務についている海上自衛隊や海上保安官の活動は、同法による任務、活動に置きかえられる、施行された場合には置きかえられる、切りかわる、報道ではよくこういうふうに言われています。つまり、海賊対処法が施行されれば、防衛大臣あるいは海上保安庁長官から新たに命令が発出をされ、同法に規定されている海賊への対処も行い得る活動に切りかわることになっているというふうに言われています、おかしいなとは思うのですが。

 法律を置きかえることは、もちろんこれは可能につくっております。だけれども、任務に当たる、海上保安官はまだいいのですが、海上自衛官の活動はそう簡単にはいかないのではないかというふうに思います。

 実際に行われているこの派遣部隊の活動は、同法が施行されれば海賊対処ができるように変わるんでしょうか。あるいは、そのまま同様の活動を続けるのでしょうか。実際にはどのように運用をされるのか、防衛省、お答えください。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま派遣をされております二隻の護衛艦につきましては、当初より海上警備行動により派遣をされておるものでございまして、海上警備行動の権限によって海賊対処を行うという前提でございます。

 そして、新法が施行をされた場合には、保護対象船舶の範囲、それから武器使用権限が変更されることになりますので、適切な対処を行うためには新法に基づく権限、これによる対処に十分に習熟をさせる必要がございます。

 現在、海上警備行動によって任務に従事している部隊、つまり「さざなみ」と「さみだれ」、この部隊が同時に新法に基づく権限に習熟するための教育訓練をこれから実施するということは困難でございますので、新法が施行をされる際には、当初から新法に基づく権限について教育訓練を実施した部隊と改めて交代をさせるという方向でおります。

三谷委員 全くそのとおりで、新法による任務を帯びた新たな派遣部隊と入れかわるということでありますね。そうでなければいけないというふうに思います。今の部隊は、今も運用企画局長がお話しになられましたように、海賊対処に向けて、あるいは新たな武器使用基準、その習熟訓練を受けてきたわけではありませんし、大変難しい任務を帯びた現場で簡単に頭と体が切りかわるわけではありませんので、ぜひともそのようにお願いを申し上げます。

 次に、海賊対処法が施行をされた後の派遣部隊、今のお話からいたしますと、また新たな任務を帯びた新法による派遣部隊と交代をされる、その派遣部隊の活動とその内容についてお尋ねをいたします。

 現在、海上警備行動として行われている活動、その主たる活動は、御承知のとおり我が国関係の対象船舶あるいは船団の護衛、エスコートであります。護衛に従事していない場合は哨戒活動を行うということになっています。

 この基本的な活動の形、同法施行後、新たな部隊の活動は別の形に変わるんでしょうか。防衛省、お答えください。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回、海上警備行動によりまして、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処を実施している部隊につきましては、護衛艦で日本関係船舶の護衛を実施し、海賊行為の抑止あるいは海賊を退散させるということが基本的な任務となっております。

 具体的には、護衛艦は、護衛対象となる船舶との間で通信を行いつつ、アデン湾の海域をこれら護衛対象船舶と同航するということといたしまして、その際には、護衛艦に搭載をいたしました哨戒ヘリを飛行させ、周囲を警戒しつつ護衛を実施しているところであります。

 また、その他護衛艦は、我が国関係船舶の護衛に従事していない場合には、必要に応じまして、アデン湾における護衛艦による哨戒活動を実施しているわけでございます。

 そして、新法が施行された後につきましては、護衛の対象となる船舶あるいは権限等はもちろん異なってくるものではございますけれども、こうした船舶の護衛あるいは哨戒活動を行う、その意味では、基本的なところは変わらないものというふうに考えておるところでございます。

三谷委員 新法による新たな任務を帯びた派遣部隊においても、その基本的な活動の姿は変わらないということです。そして今度は、変わるのは、まさに海賊船への対処は変わることになります。

 施行後の海賊船への対処についてお尋ねをいたします。護衛艦が海賊船を見つけて、その対処に向かうのは、どのような場合でありましょうか。

 例えば、先ほども運用企画局長が例に挙げられました、四月四日、シンガポール船籍のタンカーのケース、これは、海賊に追いかけられて救難の信号も出された、あるいは求められた、こういうのは対処に行くのだろうと思います。

 こういうふうに、どういう場合に対処に向かうのか、見つけたら対処に向かうのか、できるだけ具体的にわかりやすく説明をしていただきたいと思います。防衛省、お願いいたします。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊による海賊対処につきましては、先ほども申し上げましたとおり、新法ができました後におきましても、護衛艦で民間船舶の護衛をする、それから、今後哨戒機が発出された場合には、その哨戒機等による哨戒活動というものを実施することによりまして、海賊行為の抑止でありますとか、あるいは海賊を退散させるということを基本的な任務として想定しておるわけでございます。

 そして、このような基本的な考え方に基づきまして、自衛隊が海賊行為に対処する状況といたしましては、海賊船舶が民間船舶に著しく接近してくるような行為でありますとか、あるいはさらに、海賊が民間船舶に侵入するといったような行為を確認したような場合というものが考えられるところであります。

三谷委員 少し次の問いかけの答えも言われてしまったのですが、今のお話をもう少し平たくかみ砕けば、対処をするのは、民間船舶が海賊船にもう既に襲われている、あるいは、先ほど申し上げた四月四日の「さざなみ」が助けたシンガポール船籍のタンカーのように、海賊船から追いかけられてもう間近に迫っている、SOSを告げる信号も出ている、こういう場合であるとか、あるいはそれと同じような、襲われる寸前の状態、それが多分対処に向かう、あるいは対処に行く場合なのだというふうに理解をいたします。

 そして、今お話しになられた、実際に対処に行く場合に、局長は退散させることが主体だという趣旨のお話をされました。では、対処に行って、実際に海賊船にどのような対処をするのか。さまざまな場合、ケースがあろうかと思います。

 基本的に、今、方針のような形で言われたのだと思います。退散させるということなのだろうと思います。あるいは、それぞれの場合において、例えばどのような対処をするのかということを、これも聞いている者にわかりやすく、局長、もう一度御説明いただけますか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 海賊行為の抑止、あるいは実際に来た場合の退散といったことにつきましては、現場の状況にもよりますので、なかなか具体的に申し上げるのは困難な面もございますけれども、相手の船に対しまして呼びかけるでありますとか、こちら側の存在を誇示するでありますとか、サーチライトを向けるとか、あるいは向こう側がさらに近寄ってくるといったような場合に警告射撃を行う、そういうような一連の行為をいたしまして抑止、それから、とにかく近づいてこないようにする、さらに、実際に近づいてきても追い払うというようなことが考えられると思います。

三谷委員 これまでもずっとこの御説明を聞き、また、今の徳地局長のお話を聞いても、退散をさせる、追い払うだけとしか聞こえません。つまり、襲撃の阻止、すなわち防護が第一義であり、防護が第一義というのは結構だというふうに思います。

 だけれども、その先にいろいろなケースがあって、どう聞いても、例えば逃げていく、もうほとんど襲っている、海賊行為をしている、だけれども逃げていく、それは追跡をしない、もちろんその先の臨検、逮捕はしない、これが防衛省の対処の基本的な考え方という理解でいいんでしょうか。もう一度御説明をお願いいたします。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 ちょっと繰り返しになってしまいますけれども、自衛隊による海賊の対処といたしましては、民間船舶の護衛、それから、哨戒活動を実施して抑止あるいは海賊を退散させる、こういうことによりまして民間船舶の安全を確保するということが、自衛隊の場合、基本的な任務として想定をされます。

 したがいまして、海賊がもはや民間船舶に対する侵害行為をやめて逃げていくといったようなものを、まさにその海賊を行った者を取り締まるというようなことを目的としてさらに追跡を続けるというようなことは、基本的に想定をされないところでございます。

三谷委員 お話はわかるんですよ。護衛艦は二隻しかいない。一番最初に私も申し上げたとおり、前と後ろについて、ずっとエスコートしながら一定の海域を、AからBへ、BからAへ、ずっと、よくやっていただいている。そして、その中で、たまたま、この四日の件も十一日の件も、折り返したところで遭遇をした。一つ申し上げたいことは、海賊船を追跡し、停船をさせ、臨検をし、海賊を逮捕するということは、大変危険が伴いますし、大変難しい任務だというふうに承知をしています。

 冒頭、海賊被害が今急増しているんですというお話を申し上げました。なぜ急増しているんでしょうか。このソマリア海賊問題、その解決に当たって、根本的な解決は、これは言うまでもなく、ソマリアの内情、ほぼ無政府状態でありますので、安定化させることであります。だけれども、それはとんでもなく難しいお話であります。

 また、中長期的には、これも皆さん御承知のとおりで、周辺国の取り締まり能力の向上を図ることです。それは、海上保安庁もついて、外務省もいろいろな働きかけをしながら、後でまた聞きたいと思いますが、それも中長期的なことであり、喫緊の課題があるとするならば、我が国もこうやって新法をつくって、あるいは海警行動でさきに参加をしておりますけれども、参加各国の海賊への対処、今、取り締まりは基本的にはしないのだという趣旨のお話をされましたけれども、まさに参加各国の海賊への取り締まりであります。

 ソマリア海賊にとって海賊行為というのは、これも皆さん御承知のとおりであります。あろうことか、ビジネスになってしまっているわけです。それもローリスク・ハイリターンのビジネスになってしまっているということであります。新たに参加をする我が国を含めて、参加各国が海賊を捕まえて処罰をしなければ、そのローリスク・ハイリターンの構図というのは変わらない、よりばっこをすることになりはしないかというふうに思うんです。

 浜田防衛大臣にお尋ねをいたします。

 追跡あるいは臨検をして逮捕まで行うのは、二隻しかないという制約もあります、また危険もあります。それにしても、海賊行為を働く者は捕らえて処罰をすることに努めるべきだというふうに考えますが、防衛大臣のお考えはいかがでありましょうか。

徳地政府参考人 先ほど申し上げましたように、自衛隊の場合には、抑止とそれから退散をさせるということを基本的な任務といたしておるわけでございます。したがいまして、もはや侵害行為が終了し、民間船舶に対する危難が去ったということであれば、それをさらに追いかけていくということは基本的に想定をしていないところでございます。

 それから、もちろん、法制度上、新法におきまして、あるいは海上警備行動においても同じでございますけれども、一定の限度において立入検査等を行うことは可能ではございます。ただ、海賊の逮捕ということになりますと、自衛官は、海上警備行動が発令をされていましても、あるいは新法のもとにおいても同じでございますけれども、司法警察職員としての権限が与えられておりませんので、まさに、逮捕ということになりますと、司法警察職員である海上保安官によってなされるものと考えています。

浜田国務大臣 先生、今運用企画局長から御説明したとおりであります。

 我々とすれば、打ち払うところというのは極めて重要だと思っておりまして、というのは、やはり船団護衛、護衛というのが我々の今回の任務でありますので、それを追っかけていってということになりますと、船団の方がどうしても手薄になるということもございますし、今の限定的な権限の中でやろうとすれば、今局長が申し上げたような態勢をとらざるを得ないということだと思っております。

三谷委員 先ほども申し上げましたように、お話をずっと、どのような対処をするのだということで聞いておりましても、要は、もし捕まえる、先ほども局長のお話の中にもありました、逮捕することだってあり得ると。だけれども、それはほとんどケースとしてないような、ただ、相手が降参をして逃げますよ、普通は。だけれども、それは追いかけないと。

 もちろん、限られた、二隻しかない、二隻しか派遣はされてないのですから、限られた対処、その対処の中での限られた行動ということになります。だけれども、どちらかというと、どうやって間違いなくこのエスコートしていく護衛のオペレーションを果たすか。

 もちろん、それは先ほど私が申し上げたように主たる任務活動でありまして、一番大事なことには違いはない。だけれども、もちろん、今こうやって、まだまだこれから緒につく話でありますけれども、今私が申し上げたことをこれからなれながらやっていかなければ、この海賊問題、喫緊の課題は、我が国も参加をして、一つも、一つもと言ったらよくありませんけれども、少しでもよくするためには必要なことではないかというふうに思います。

 そして次に、金子大臣に伺います。

 どうも逮捕ということは余りないようでありますが、その逮捕した海賊の身柄をどのように扱うのでしょうか、あるいは扱われるのでしょうか。日本への移送はどんな場合に行われて、また、周辺国にも引き渡すわけですね、あるいは引き渡し国は決まっているのか。これも明確に、なるべくわかりやすく御説明をいただきたい。

金子国務大臣 海賊を逮捕した場合、例えば、沿岸国を経由して航空機で我が国に海賊の身柄を移送するなどしまして、できるだけ速やかに検察官に送致を行い、これを受けた検察官において勾留請求を行うなどして、所要の刑事手続を進めることになっております。

 また、個別具体の事案に応じ、沿岸国等の外国の官憲に引き渡し、その処分をゆだねることも当然考えられると思います。ただ、具体的にどの国といったようなことはまだこれからでございます。

三谷委員 これからでございますか。(発言する者あり)本当に、これからまさに動こうとしているわけでありますので、あいまいなことが今のお話の中でもたくさんございますので、早くその対処を決めていくということをお願いいたします。

 次に、一昨日の質疑の中で、中谷議員から、海賊に襲われ日本船及び日本人が人質になった場合どうするのか、救出をすることができるのかという問いかけがございました。また、いざとなったときに他国が助けてくれるか、日本人が人質になった場合、救出するのは日本ではないかというお話がございました。私も全くそのとおりだと思いますし、また、人質になった場合どう対処するのか、これまでには何にも話はありませんでした。大変大事な問題だというふうに思います。

 この海域を通る我が国の関係船籍は大変多く、通過船舶の一割を占めています。海上自衛隊あるいは海上保安官が関係船舶の護衛に当たって、日本人が人質にとられるような事態というのは起きてはならないのですけれども、起き得ることだ、あるいは十分に、むしろ今まで起きなかったことがとても幸いな話だというふうに考えなければならないのではないでしょうか。

 先般の質疑での大庭総合海洋政策本部事務局長の御答弁で、同法案の規定によると対処することが可能だ、いろいろな制約、条件はございますけれども可能だということでありました。条件、制約はありますけれども可能だというふうに私も考えます。

 この法案、この法律の規定の中ではなかなか難しいことでありますが、我が国の場合、憲法の制約もございますし、人質の救出といった行動は容易にはとり得ない選択でありますが、救出に当たるという決断をするにせよ、するということは可能性としては大変低い、あるいは別の解決策を持ち得る判断をするにせよ、海賊に係る事案で日本人が例えば人質にとられるような重大事案が発生した場合に、どこが一元的に責任を持って対処に当たるんでしょうか。総合海洋政策本部でしょうか。その総責任者は総理でありますが、対処実施の担当大臣というのは金子海洋政策大臣ということになるんでしょうか。

 このように、まだ起きておりませんけれども、人質にとられるような、あるいはそれに準じるような重大事案がもし起こった場合に、その担当の器は総合海洋政策本部ということでよろしいのか。その実施の責任者はだれなのか。この法案の所管である総合海洋政策本部、その担当大臣の金子大臣、お答えをいただけますでしょうか。

金子国務大臣 その必要のケースにつきましては、政府全体で検討、決定をすることとなります。

三谷委員 政府全体で決定をする。何の本部もつくらずにでありましょうか。

 この場合、今私もこうやって指摘をしておりますように、あるいは中谷議員もこの審議の冒頭の質疑の中でお話をされたように、ソマリア沖・アデン湾でこれだけの頻度で海賊被害が発生をしていて、ここを通る我が国関係船籍、日本船籍は少ない、だけれども、日本人が乗っている船も多い。

 先ほど申し上げたように、今まで一人もそういうことがなかったのが本当に幸いな話でありまして……(発言する者あり)一人捕まりましたね。想定され得ることでありますので、だから、金子大臣、政府全体で対応するのは当たり前のことだと思いますし、また、例えばどのように対処を考えていくか。あるいは、金子大臣はその担当大臣ではないのでありましょうか。お答えください。

大庭政府参考人 海賊対処法案におきまして、公海上において人質にする目的で航行中の他の船舶内にある者を略取するという行為につきましても、海賊行為として処罰及び対処の対象といたしております。したがいまして、お尋ねのような件につきましても、海賊行為としてこの法律案の規定により対処することが可能なわけでございます。

 この対処の権限は、この法律に沿って海上保安庁あるいは防衛大臣が権限として与えられておるわけでございますから、こういう日本人あるいは日本船の安全を確保することは重要なテーマでございますが、具体的には、個別の事例においてどのように判断するか、その権限がある省庁を中心として政府部内で緊密な連携、調整の上、決定されていくものと考えております。

三谷委員 実際に起きれば、そういうようなことにはきっとならないのだろうと思います。要するに、今のお答えは、それぞれで判断をということなのでありましょう。

 民主党は、内閣総理大臣を本部長とする、まさに海賊対処のための海賊対処本部の設置を主張しています。私もそれがよいというふうに思います。

 海洋政策本部は、極めて多岐にわたる海洋政策の横ぐしを入れるためのいわば器のような対策本部でありますし、法制チームというのがありまして、法制化に当たっての枠組みづくりをまさに担ってまいりました。

 むしろ、海賊対処というのは大変重い事案だというふうに考えます。あるいは、重い課題だというふうに思います。先ほど申し上げたように、重大事案も起こり得る。海上自衛隊を海賊対処のために海外に派遣するのも初めてでありますし、海上保安官と、しかも海外で合同の任を担っていただくというのも初めてのことでありますし、この重い課題への対処のために、海賊対処本部の設置が適当だというふうに考えます。

 海洋政策担当大臣、ちょっと評価をしてください。お考えを聞かせてください。これを最後の質問にします。

大庭政府参考人 海賊対処本部というお話がございましたけれども、本件に関する設置目的や権限、組織等に関する具体的な考え方が正式に提示されていない現段階におきましては、当該本部の設置につきまして、政府としての見解をお答えすることは困難でございます。

三谷委員 時間が参りましたので、質問を終わります。

深谷委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 何番目かになっているので、若干ダブる部分がありますが、金子大臣、どうぞお許しください。

 冒頭、金子大臣にお尋ねをしたいんですが、新しい法体系になってから、繰り返し大臣は御発言をなさっているようでありますけれども、改めて確認をしたいんですが、海賊退治の今後の対応の主体というものは、海上保安庁が主体で対応していくということでよろしいんでしょうか。

金子国務大臣 おっしゃるとおり、海上保安庁が第一義的に、海上の安全、秩序というのを図る役割があると思っております。

後藤(斎)委員 その場合、今まで大臣は、今回は緊急避難的というよりも、三つのケースで海上自衛隊が行かざるを得ないということで、事実、現在、海上警備行動ということで二隻がソマリア沖で活動をしております。一つ目が日本からの距離、二つ目が海賊が所持する武器、三つ目が、各国の軍艦等が対応している等を総合的に勘案して、現状において実態上困難と判断ということになっています。

 大臣、このうち、まず、日本からの距離ということで質問をさせていただきます。

 日本からは六千五百海里、一万二千キロということで、途中下車というか給油をしなければならず、それだけ時間がかかるわけなんですが、今、それに相当する船は、海上保安庁が所有する船では「しきしま」しかないと。先週、私たちも「しきしま」に乗船をさせていただきましたが、なかなか実際の航続距離等は教えていただけませんでした。

 いろいろ調べさせていただくと、今、海上保安庁が所有をする船、「しきしま」以外でも、例えば「そうや」という船がございます。これは、総トン数が「しきしま」よりも半分くらいの総トン数、三千百トンであります。武器は、四十ミリ機関砲が一本と、二十ミリ機関砲が一つございます。これは、五千七百海里走るというふうに言われておりますが、海上保安庁はお答えができないということでありますが、いろいろな資料を見させていただくと、一回に四千七百海里走るということであります。

 普通、船を考えると、私は、余りたくさん、船は何度かしか乗ったことがありませんが、どこかに寄港して、そこで燃料を入れるということであれば、仮に「そうや」が、五千七百キロが巡航距離だとしても、このクラスが実は、例えば「こじま」という巡視船は、いろいろな資料を見させていただくと、巡航距離が一回に七千海里走るということのようであります。

 ですから、遠距離である、日本からの距離が遠いということは、必ずしも私は、「しきしま」一隻しかないから実質上無理なんだということは実態と違うというふうに言わざるを得ませんが、大臣、その点についてどのようにお考えでしょうか。

金子国務大臣 海賊対処行動をとるのに、一隻でやるわけではなくて、やはり複数隻で対応していくということが肝要であると思っております。そういう意味で、距離だけでなくて、やはりランチャー等々の武器に対応できる船艇があるかないかということも一緒にあわせて考えて、今回対応させていただいた次第であります。

後藤(斎)委員 では、大臣、大臣のお答えのように若干譲ったにしても、きょうの一部の報道によりますと、第二次補正予算案で今回、ソマリア沖まで長距離の派遣可能な新たな巡視船建造の予算要求をしないと。これは報道によりますと、海上保安庁岩崎長官が昨日おっしゃったというようでありますけれども、大臣、お金の、予算の確保というのは、海上保安庁の今までの言いぶりですと、老朽化した船を早期に新しいものに切りかえていくということを優先する、これは一つの組織であれば当然のことかもしれません。

 そうではなく、それは本当に必要であれば、政府全体、国全体でやはり考えていかなければいけないことだと思っています。大臣も何度か答弁をいただいているようでありますが、いやいや、実際、建造を意思決定しても四年くらいかかってしまうんだよということでありますが、それは、大臣、例えば六千五百トンの海上保安庁で一番大きな船であると言われております「しきしま」にしても、実際の建造期間というのはそんなにかかっていなくて、一年七カ月くらいというふうに言われていますし、三千トン級の巡洋艦であれば、実際の建造期間は一年くらいでできるというふうなこともあります。

 大臣、今の現状で仮に物理的に難しくても、これからの計画の中で、冒頭大臣がお答えいただいたように、あくまでも海上保安庁が海上の警備の主体であるというふうなことであれば、やはりそういう準備や検討にきちっとして政府全体で着手すべきというふうに思いますが、いかがでしょうか。

金子国務大臣 後藤委員の意見に私も賛成であります。

 周辺、北朝鮮問題等、不穏な事態も起こっております。また、改めて海洋対策として、排他的経済水域、大陸棚を延長するということも国連に提出させていただきまして、近々審査に入ってくれるものと思っておりますが、そういうEEZ付近に大変重要な、レアメタルでありますとかガス、メタンハイドレートというようでありますけれども、埋蔵されている。特にメタンハイドレートについては、十年後に何とか商業化できるようにしていこうという、いわば国の姿勢として取り上げさせていただいております。そういう海域、広がっていくものに対してきちんと対応していけるように、海上保安庁も新たな任務の広がりもあると思っております。

 この海賊対処法案につきましても、今回ソマリア沖に対しては自衛艦を派遣させていただくということでありますが、やはり海上保安庁の第一義的な任務として海上の安全を守るという、改めて認識もさせていただいておりますし、また国会もそういう御議論をいただいておりますので、ソマリアとは別にしても、ソマリアの、今すぐそれを目的としなくても、「しきしま」級のしっかりした新造船の製造というものは、今委員が御指摘されました老朽船の緊急整備というものは最優先しますけれども、その上に乗せて、何とか新しい装備が増強されるように真剣に検討してまいりたいと思っております。

後藤(斎)委員 大臣、もう一点ですが、先ほど、海賊が所有する武器、すべてロケットランチャーを積んでいるかどうか私よくわかりませんけれども、三点目にお話しした、各国が軍艦、要するに海軍が基本的にやっているということも一つの論拠になっています。

 これも、外務大臣も隣で聞いていただいていますが、要すれば、いわゆるコーストガード、海上保安庁的な組織を持っているのは、特にヨーロッパでは、すべての国が保安庁の組織を持っていなくて、もともと伝統的に海軍が国境警備を行っていたということから、実際的に海軍がほとんどソマリア沖で協力しながら海賊対策をしているというのが私は実態だと思うんです。そこは、外務大臣、この三点の整理というのは決して間違ってはいないと思いますが、私は、ある意味では、緊急避難的にこの三つぐらいとりあえず言っておけばいいやみたいな感じもなきにしもあらずのような感じがします。

 海上保安庁のお仕事と、日本でいえば海上自衛隊のお仕事が合致をする部分もありますけれども、目的と任務というものは当然違っているわけですから、そこをもって、現在、主体が各国は海軍であるから海上自衛隊が行けばいいというのが実際になっているというのはやはりおかしいので、そこは総合的に、先ほど、遠距離にも一回で給油もせずに行ける「しきしま」級の巡視船の建造については鋭意検討していただけるという金子大臣の御答弁でありましたが、この三つ目に、今海自を派遣している、各国が軍隊、海軍だからということは、私は、これはある意味では、自衛隊が、そもそもお国の実態がそうであるからだというふうに思いますので、ぜひ、きちっとした検証をしながら、もう少し国民の皆さん方に合理的で納得いく説明の形にしたいと思いますけれども、どのように金子大臣はお考えでしょうか。外務大臣でも結構です。

中曽根国務大臣 先ほどから金子大臣も御答弁されておりますけれども、現在の海上保安庁の持っている装備力、能力等々、また国連の安保理決議におきましても、各国が軍艦等も派遣しており、また海賊の、これはロケットランチャーでございますか、そういうような武器等々、いろいろ考えまして、我が国としても、重火器を使用するソマリア沖・アデン湾の海賊のそういう状況、事情から、総合的に考えて自衛隊の派遣については決定されたもの、私はそういうふうに思っております。

後藤(斎)委員 それでは、ちょっと法案の中身と現行の海上警備行動の関係について整理をさせていただきたいと思います。

 現在は少なくとも、護衛艦が行っていて、活動区域というものが、アデン湾沖で日本関係船舶の護衛等を実施というふうなことが、場所が明定をされております。そして、新しい新法になると、すべての国・地域に海賊対策、海賊退治に出かけていくということになります。この地域が非常に広がるというのが、現在の海上警備行動と新しい新法とここが違うというのが一点。

 もう一つは、今回、少なくとも活動内容ということでは、対象船舶も、日本船籍、日本人が乗船する外国船、さらには国民生活の安定的な活動にとって重要な船舶という三つのカテゴリーで対象船舶を絞り込み、あわせて、護衛要領ということで、防衛相がお出かけになったときにも、国土交通省を通じて船舶運航事業者に対して護衛計画を連絡させ、そして国土交通省は護衛を希望する船舶リストを作成し、防衛省に提出をし、さらには、防衛省は、国土交通省を通じて船舶運航事業者に護衛実施要領を連絡するということで、かなり明確にこの仕組みというものができ上がっています。それが新しい新法には、その旨、規定がございません。

 この点について、やはりある意味、遠距離だという一つの、今海上保安庁が行けない理由は、やはり今まで海上保安庁も海自も含めて、六千五百海里、一万二千キロというところに一回で給油もせずに行くというのは、当然、その時代の今までの背景から含めて、想定をしなかったものをこれから新たにこの新法によって決めていくということだと思うんです。

 やはりここは金子大臣、先ほどメタンハイドレートみたいな、排他的経済水域でこれから地下のいろいろな資源を海上保安庁の船が中心になって調査をし、それを商業化していくという重大な一つの任務もありますし、あわせて、どこの地域でも自由に行けるというのは、どう考えても非効率でありますし、基本は、海洋基本条約にもありますように、周辺国の部分が明確にまず一義的に対応するという、順番を派遣する地域についてもつけていく。あわせて、日本船籍、日本人の生命財産を守るという一義的な目的に合致した基本計画のようなものをきちっと政府の中で検討する必要があると思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

金子国務大臣 この海賊対処法案が通過しても、海上保安庁は第一義的に海上の航行の安全の役割を果たしますが、どこにでも出かけるということではありません。

 もちろんこの海賊対処法制の法案自身、地域を限定はしておりませんが、どこでも行くということではなくて、やはり我が国の経済社会に与える影響の度合い、また国民生活にとっての重要度というものが、当然でありますけれども、必要になってくると思います。

 ただ一方で、国際海運を担っている船舶の状況を見ますと、我が国関係船舶二千隻強に対して、九十二隻という日本国籍の船でありまして、これを少しでもふやしていこうということを努力しておりますけれども、しかし、そういう状況であります。

 我が国は非常に、海運によって輸入して、依存度が高いという状況を考えれば、外国船籍であるからということで排除をする必要はないんだと思っております。

後藤(斎)委員 ありがとうございます。

 それで外務大臣、次に、以前、外務省からソマリア沖の海賊問題に対する多層的な取り組みということで、現在の状況、喫緊の課題、中長期的な課題、そして問題の根本解決ということで、ソマリアの情勢の安定化へ向けた国際社会の取り組みという項があって、まさにこのとおりに進んでいけば非常にいいのかなというふうに思います。

 私はソマリアには行ったことがないんですが、ソマリアのお隣のエチオピアという国に二年ほど前に行かせてもらいました。国民生活、非常に貧しい国でありましたから、一人当たりの国内総生産百ドル、一万円余りの国。ソマリアも、百ドルという資料もあれば、いやいや、年間八百ドルくらいあるよと、いろいろな数字がありますが、いずれにしても、八百万から九百万のソマリアの国民の方々が、テロもこの海賊問題もそうですが、当然やはり貧困、貧しさ、衣食住がきちっと足りていないというところからくるのかなというふうに私は常々思っています。

 中曽根大臣、根本的な解決というところにもありますけれども、何がソマリアの海賊問題の原因で、その課題をどう設定して、日本国政府としたら、どのような対処方針を今検討し、やろうとしているのかということを総括的にまずお伺いをしたいと思います。

中曽根国務大臣 ソマリアの海賊問題の根本的な解決には、その原因を改善していかなきゃならないわけでありますが、今委員が御承知のとおり、ソマリアにおける貧困という問題もございますし、それから、今度はソマリアにおける海賊等の取り締まり能力が欠如しているということもありますし、あるいはガバナンス、こういうものがまた能力がない、そういうような総合的なものであろう、そういうふうに思っております。

 そういう中で、そのうちの一つが貧困問題等でありますけれども、我が国といたしましては、いろいろな支援は行っておりますけれども、今お話がありますように、海賊対策ということで自衛隊の艦船が出ているわけでありますが、食糧支援あるいは避難民支援、保健、水、衛生、教育の支援あるいは国境管理強化、治安改善支援とか警察支援とか、いろいろな形で支援をしてきておりまして、そのようなものによりまして、ソマリアにおける生活の改善、治安の改善につながるということも大変重要なことだ、私はそういうふうに思っております。

 先月、三月でございます、私は、アフリカのボツワナにおきまして、ソマリアの暫定連邦政府のワルサム計画・国際協力大臣と会談をいたしました。その際、ワルサム大臣は、軍や警察の整備、また公務員の育成などの治安改善、さらに避難民の帰還促進あるいは元戦闘員の雇用機会の創出、そういうような人道状況の改善が必要である、そのための支援をよろしく、そういうような期待が述べられたわけでございます。

 我々といたしましては、このソマリア情勢の安定のために、また引き続いて支援を行っていきたい、そういうふうに思っております。

後藤(斎)委員 日本も、江戸の最中か江戸よりも少し前なのかは別としても、倭寇という形で日本の私たちの祖先の方が、アジアの国でいわゆる海賊という形で、対応というとおかしいですね、行ったというふうに言われています。そのときも、多分食べるものが十二分に食べられなくて、何らかの形で生活をしなければいけないという生活の逼迫性だというふうに私は一つ思いますけれども、中曽根大臣、私は、ソマリアは、どうしても日本国政府がこれから、もちろん暫定政府ということではありますけれども、諸外国と協力してやっていただきたいことが、実は三つございます。

 一つは、農業生産というのがGDPの大体五〇%くらいだというふうに言われています。その際に一つネックになるのが、これも明確な数字が実はないんですが、地雷が非常にたくさん埋まっていると言われています。正確なデータがアンノウンということで、ないんですが、かなりの部分があるというふうに言われていまして、実際、地雷だけではありませんが、不発弾犠牲者ということで、〇六年では四百九十七人の方が犠牲になり、〇七年には、減少はしましたが、百七十一人の方が犠牲になっているという数字がございます。

 もう一つは、実はソマリア沖の海は結構海産物が非常に豊かだというふうに言われていまして、特にイセエビが五百トンほどとれる、二年くらい前ですね。ということは、日本の輸入が非常に少ないんですが、五百トンから六百トンとれるというふうな数字がございます。日本でも、イセエビというのは、私も余り年間にたくさん食べたことがないんですが、大体千三百トンくらいしか日本でイセエビがとれないんですが、産地の浜価格で掛け算をしていくと、大体六十三億か六十五億くらいの金額に、我が国の千三百トンはなります。ですから、漁業というのは、統計によりますと、GDP、総生産のうちの三%しかシェアはないんですが、ソマリア沖で、もしこのイセエビみたいな海洋産物を、きちっと高価格、ほかの例えば青魚よりも当然高額で付加価値があるわけですから、そういうことを通じて民生安定、特に、海賊になっている方のバックグラウンドはよく海を知っている元漁民の方だというふうに、この委員会でも何度か答弁をされておりますので、ぜひ、そういう中で、こういう養殖も含めた漁業協力をしていけば、前の所得が取れる。

 例えば、今回の護衛艦の対象はほとんどタンカーとかそういう船舶で、漁船がほとんどないんですが、水産庁にお聞きしたら、実はお願いをしたいところもあるんだけれども、実際、危ないところには漁船の方は行っていないんだと。要するに、実質的に、ニチロさんとかマルハさんとか大きな、アデン湾まで、通常だと公海で漁業をやられている会社の方は、避けて漁をしているということをお聞きしました。全部避けているわけにはいかないので、今回の二隻の護衛艦が行ったということで、私、その部分は、先ほど来お話ししているように、とりあえず緊急的なということで必要性は認めます。

 先ほど外務大臣にお答えいただいたように、やはり、農業と、ある意味では漁業というものにも着目して、日本のように何百万円も一年に所得がすぐふえるわけではありませんが、計画的に、例えばそういう漁業の方々がアデン湾のそばに行って、例えばまとまってイセエビが揚がればそれを日本の会社が買うというふうなことでプラスになっていく、いい循環をさせていくということが、今、海賊を積極的にやっているのか、やらざるを得ないのかよくわかりませんけれども、そういうものが少なくなっていくということが私は一番大切と思うので、ぜひ、外務大臣、もちろん日本だけではできませんが、農業、漁業という一次産業が、少しでもそこで飯が食っていける、それで頑張って子供を教育できるんだというベースをまずつくっていくことが私は一番大切な部分だと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

伊藤副大臣 地雷と漁業について、私の方からお答えさせていただきます。

 地雷の問題というのは本当に心を痛める問題で、特に、手や足を失った皆さんの姿を見ると、本当に何とかしなきゃならないなと私も思っております。こういうふうに、一般市民に大きな被害を及ぼすことから、人道上も、また紛争終結後の復興開発を阻害する要因としても、この地雷の問題は非常に重要な問題であると認識しております。

 我が国は、対人地雷禁止条約、これは九八年に批准しておりますけれども、これを通じまして、対人地雷の普遍的かつ実効的な禁止の実現に向け努力をしておりまして、また、アフガニスタン、カンボジア等で地雷除去、犠牲者の支援、また地雷回避教育等に精力的に取り組んできているわけであります。

 このソマリア本土での問題ですけれども、御存じのように、一九九一年以来、武装勢力間の抗争というのが絶えずありまして、国土全土を実効的に統治する政府が存在していないという実情もあるわけでございます。現在、治安状況が改善される見通しは立っておりません。また、外国人に対する殺傷や誘拐事件がソマリア各地で発生しているということでございます。

 こういう状況の中で、政府として、ソマリア領内における地雷の敷設状況についての調査というのを進めることには非常に困難がございます。正確な敷設情報を入手し得る状況にないということを、まず御理解いただきたいと思います。

 その上で、我が国としては、実効的に支配する政府が存在しない状況に加えて、治安等の問題により、ソマリアへの二国間援助の実施というのはなかなか困難なものがありますけれども、これまでも国際機関を通じた協力を実施しているところでございます。

 今後ともソマリアの安定化のために積極的に協力していく考えですが、ソマリアにおける地雷の問題については、現地における実情や要望を踏まえつつ、適切な支援のあり方について精力的に検討してまいりたいと思います。

 そして、漁業の問題でございますが、先生御指摘のように、国連の報告書等でも、ソマリア沖における海賊行為について、かつては、ソマリア領海内における外国船による違法操業や有害物質の不法投棄を受けて経済状況が悪化する中で、地元漁民によって行われるようになったという側面があるという指摘もあります。しかし、最近のソマリア沖の海賊事案の多くは、このような漁民等による自衛的な性格のものから、人質の身の代金を目当てにした襲撃、乗っ取りへと変化したというふうに認識しております。

 いずれにいたしましても、先生の御指摘を踏まえて、我が国としてソマリアの平和と安定のために積極的に努力してまいりたいと思います。

後藤(斎)委員 防衛大臣にお尋ねをしたいと思います。

 大臣、今、二隻の護衛艦、日本船籍が二千隻、関係船が通るということで、延べで二万隻ということで、この間の事案も、日本船籍でもないし、ア、イ、ウのいずれの定義にも当たらないというもので、当然助けを求められれば助けざるを得ないというのは、これはある意味では、防衛大臣、わかるんですけれども、先ほども金子大臣にお尋ねをしたように、余りに範囲が広くなって、なおかつ優先順位が、では、すぐ、SOSを出したところに優先的に行くのか、それとも隊列を組んで、大丈夫だからその隊列を外していくのか、やはり現場では臨機応変にやらざるを得ないところがたくさんあると思います。

 あくまでもこの警護対象、護衛対象船舶というのは、現行の海上警備行動という中では、日本船籍、日本人が乗船をする外国船、そして国民の安定的な経済活動のために重要な船舶、この三つをメーンでやるということでまず理解をしておいてよろしいんでしょうか。

浜田国務大臣 先生のおっしゃるとおりでありまして、その三つを中心にやっていくということだと思います。

後藤(斎)委員 もう一つは、日本だけではなく、アメリカやEUの各国、アジアの国も二十カ国以上の国が同様な海賊対策を行っております。各国、軍艦、海軍が多いということでありますけれども、そことの連携というものもやはり当然必要だと思うんですが、その連携については、現在、各国との情報共有も含めてどのような連携状況なのか、お尋ねをしたいと思います。

徳地政府参考人 日本関係船舶の護衛を効果的に実施するためには、関係国あるいは関係機関との間で連携協力を行っていくということが大変重要なことであると考えております。

 そこで、護衛艦と各国の船、艦艇との間で、現場海域における海賊の状況あるいは各艦艇の活動状況について必要な情報交換を行うとともに、連絡官等も派遣しているところもございますので、それら連絡官等も通じまして、さまざまな情報交換を行っているところでございます。

後藤(斎)委員 わかりました。ありがとうございます。

 今回の法案がいつ通るかというのは別として、例えば、新法前の現行の海上警備行動の中で、ソマリアの海賊の件数が少なくなっていくというような、これも一つの大きな要因ですが、どういうふうな状況になったら、今回のソマリア沖の海賊対策ということで、現行、海上自衛隊の二隻の護衛艦が行く部分が終了するんですか。いわゆる出口戦略について教えてください。

浜田国務大臣 今回の海上警備行動につきましては、六カ月後に安保会議を開いて判断をするということになっております。ですから、その時期を待って判断することになろうかと思います。

 ただ、我々とすれば、当然、今までいろいろな形で、自衛隊員を派遣していく場合には、六カ月というのは大変長うございますので、大体三カ月から四カ月で交代要員を送るというところもございますので、そういった意味においては、この新法が通った後はまたこれは別でございますけれども、今の時点で申し上げられることとすれば、海上警備行動についてはそのような判断になろうかと思っておるところであります。

後藤(斎)委員 では、新法になった場合、派遣決定は国土交通大臣が防衛大臣に依頼をしてということになるわけですけれども、そのときに、どのような状況になったら防衛大臣は戻ってこいというふうに、今回でその地域の海賊対策は終了だよということを発動というか命令するんでしょうか。

浜田国務大臣 今回、海上警備行動で自衛艦を派遣するに際しても、あらゆる事態を想定しながら、訓練を積み重ねて出ていっているわけでありますので、新法について、新たな権限が与えられた中で、習熟訓練を初め、いろいろなことをやっておくことが極めて重要でございますので、向こうに行っている者をすぐ帰ってこさせるということではなくて、やはり、当然、新法の命令で、命令というか準備をさせ、そして命令を出して、一応その形ができ、そして日本でその訓練をした後に、ソマリア沖までその船が行って、着いたときに、これは海上警備行動についての判断をするというような形になろうかと思っておるところであります。

後藤(斎)委員 もう一点、ちょっと原点に戻って、これは金子大臣にお尋ねをしたいんですが、三つのカテゴリーで護衛対象船舶というのが決まっていますが、三番目に明示をしてある日本の経済活動にとって重要な船舶というのは、これからは余りないように祈りたいんですが、どのような基準でお決めになるんでしょうか。

加納副大臣 三番目の基準についてのお尋ねでございます。

 我々日本の経済社会及び国民生活にとって必要不可欠な食料、資源等を輸入するような船、それから、日本から重要な輸出物資を運んでいるような船、こういったようなものが当たると思っております。

後藤(斎)委員 わかりました。

 いずれにしましても、トータル、金子大臣が新しい法律体系になったときの主務大臣ということでありますけれども、今の海上警備行動から地域が拡大をし、その護衛をする対象船舶も拡大をするし、ある意味では非常に海上保安庁の組織、能力の強化ということを、鋭意検討していただいていると先ほど話がありましたけれども、それをどう国際的に協力関係を結びながら、エリアは、例えば、アジアの国であればアジアの国がまず当然主体になってやるというふうなことでありましょうし、先ほどもお話ししたように、例えばアフリカ沖で、アフリカの南アフリカに近い部分であればアフリカや、近隣といってもなかなかないんですが、やはり近い国。ゾーンというものを限定というか区分しながら、効率的に対応するトータルとしての国際協力的な仕組みというものが、これからの海賊対策というものが多くならないようにもちろん期待をしていますが、どうしても海賊対策がまた改めて必要になってしまったときのためにも、そういうことをやはり予防的に準備しておかなければいけないと思うんですが、どのような形で、ゾーン分けをするようなことも含めた国際協力の仕組みをつくっていくおつもりなのか、お尋ねをしたいと思います。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 IMOという組織がございますが、IMOは、ソマリア沖・アデン湾の海賊問題に関するジブチ会合を主催いたしました。同機関では、全世界の海賊対策に資するような活動も行っております。

 例えば、一九九八年に開始された海賊対策プロジェクトの一環として、海賊問題の影響を受ける世界各地の政府代表が参加する地域セミナーやワークショップを開催しております。また、全世界で発生する海賊事案についての情報を月間報告にまとめ、文書で加盟国に周知するとともに、インターネット上に公開するといった取り組みも行われています。

 我が国は、IMO設立以来の理事国であり、主要海運・造船国としてIMOでの議論をリードしてきました。今後とも、これまでのアジア地域における海賊対策の経験を用いつつ、持てる力を生かしていきたいと考えております。

後藤(斎)委員 金子大臣、最後になりますけれども、「しきしま」も建造してもう十五年以上が経過をします。その中で、「しきしま」級という六千五百トンではないにしても、やはり、足の長い高性能な、遠距離も可能な装備の巡視船を早期につくっていただくという決断を政府内で一日も早くしていただいて、その着手に向けて最大限御努力をしていただく中で、海上保安庁が、この新法になったにしても、真に対応ができるような体制にしていただきたいと思います。

 最後に、簡潔で結構ですから御答弁ください。

金子国務大臣 今の御意見はしっかり承りながら進めさせていただきたいと思っております。

後藤(斎)委員 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。本日最後の質問者でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 この海賊対処法案は、ソマリア沖の海賊対策が契機になって作成された法案でありますけれども、今後、我が国の海賊対処の基本的な法律、一般法という形になりますので、私の方からは、ソマリアのみならず、一般的な内容、基本的な内容について確認をさせていただきたいと思います。

 まず、海賊対策の主体でございますけれども、法案では、第五条で、海賊行為への対処は、海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとするとされておりまして、第七条で、防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊に海賊対処行動を命ずることができる、こういうふうにされております。

 これまでの議論で、海賊行為への対処は一義的に海上保安庁が実施するということを法文上明確にしたらどうかという指摘もあったようですが、今回の法律案の構成を見れば、海上保安庁がこれを一義的にやるということは明確になっていると思います。その上で、「特別の必要がある場合」について確認をしておきたいと思います。

 この「特別の必要がある場合」というのは、海上警備行動と同様に、海上保安庁では対処不可能あるいは著しく困難な場合、こういうふうに解釈してよいのか、確認をしておきたいと思います。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生が御指摘されましたように、本海賊対処法案におきましては、防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において海賊に対処するため必要な行動をとることを命じることができる旨を定めております。

 この規定にあります「特別の必要がある場合」とは、自衛隊法第八十二条に基づく海上警備行動の場合と同様に、海上保安庁のみでは海賊行為に対処することができない、あるいは著しく困難な場合であるというふうに考えております。

石井(啓)委員 ありがとうございました。

 続いて、この特別な必要のある場合というのが、具体的にどのような場合を想定しているのか、想定されるのか、この点について確認をしたいと思います。

 ソマリア沖での海賊対策で、海上保安庁が対処できなかった理由としては、一つは、日本からの距離が離れていること、二つ目には、海賊がロケットランチャー等の重火器を所持していること、三つ目には、他国では海軍軍艦が出動していること、この三つの要件が示されておりますけれども、一般法である本法案の特別の必要のある場合についてもこの三要件で判断がされるのかどうか、ほかの要件あるいは事例というのは想定していないのか、この点について金子大臣に確認したいと思います。

加納副大臣 先生からの御質問は一般法としての場合でございますので、一般法としてお答えしたいと思っております。

 従来から言われておりますこの三つの要件は、ソマリア沖として理解できるけれども、一般法としても該当するのかということですけれども、一般法として理解する場合には、やはり装備面の問題だとか対処すべき場所、いろいろな事情がございます。海賊の特性とか、その地域の情勢ですとか、そういった事情を総合的に判断して、その上で、私は基本的には海上保安庁でやれるところは海上保安庁で当然やると思っていますけれども、今のような事情を勘案すると、海上保安庁のみでは海賊行為に対処することが不可能あるいは著しく困難な場合といったような場合を想定しているわけでございます。

石井(啓)委員 一般法でいえば、装備とか場所とか地域の情勢とか、こういったことのようでありますけれども、それでは、今回のソマリアで示された三つの条件についてちょっと確認をしたいと思うんです。

 海賊行為に海上保安庁が対処できない日本からの距離の目安というのがあるのかどうか。例えば東南アジアでは、海上保安庁は諸外国の沿岸警備隊との海賊対策連携訓練を重ねてきたという実績がありますから、東南アジアでは対処可能なのかなというふうに考えますけれども、それより遠くなると検討しなければいけないのか、そういった距離の目安というのはあるのかどうか、海上保安庁長官に確認をいたしたいと思います。

岩崎政府参考人 特に、距離だけをとった目安というのはございません。先生御指摘のとおり、東南アジアの海賊について私どもも対応しております。

 それから、今回のソマリア沖のような、重火器を持った、それも継続的にしなきゃいけないオペレーションについては自衛隊にお願いをしておりますけれども、東南アジア海域を越えた海域でも、私どもの持っている「しきしま」で対応できるような事案があれば、それはもちろん対応していきたい、このように思っております。

石井(啓)委員 距離だけの目安はないということであります。

 続いて、今「しきしま」という巡視船の名前が出てきましたけれども、海賊がロケットランチャー等の重火器を所持している場合に、海上保安庁では巡視船「しきしま」以外では対処できないのかどうか、また逆に、海上自衛隊の護衛艦はこういった重火器の攻撃に対処できるのかどうか、確認をしておきたいと思います。

岩崎政府参考人 ロケットランチャー等の重火器で攻撃を受けても、被害をある程度に食いとめて、業務を継続できるという意味での船は「しきしま」一隻でございます。

 ただ、例えば北朝鮮の不審船、これもロケットランチャーを持っておりましたけれども、こうした不審船については、日本近海での出没でございますので、私ども多くの船を出して、それを取り囲みながら対応できるということがありますので、ロケットランチャーの武器、これも先ほどの距離と同じでございますけれども、単に武器だけの問題で、私どもが対応できる、できないということで一概に決めているわけではございません。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 海上自衛隊の護衛艦がロケットランチャーなどの重火器を所有した海賊に対処する必要が生じた場合についての件でございますけれども、まずは、海賊が所有をしていると思われる重火器の射程とかあるいは威力などを考慮いたしまして、その射程外に適切な距離をとりながら対処していくということが基本ではあるわけでございます。

 万が一、護衛艦がそのような重火器の攻撃を受けた場合には、ある程度の被害を受けるということは、これはあり得ると思われるわけでございますが、隔壁等で浸水の区画を局限するでありますとか、あるいは、重要区画につきましてはその周りの壁の二重化でありますとか、さらには、重要な装置はできるだけ一カ所に配置しないで分散配置するというような、被害を最小限にとどめるような構造上の工夫がなされておりますので、直ちに任務遂行が不可能となるような重大な損害を受ける可能性というものは少ないと考えております。

石井(啓)委員 続いて三つ目の、他国が海軍軍艦で対処している場合ですけれども、海上保安庁では連携が困難なのかどうかということ、逆に、他国が沿岸警備隊で対処している場合、自衛隊は連携が困難なのかどうか、この二つを確認いたします。

岩崎政府参考人 海上保安庁は、他国の軍艦等とは実際的な連携行動の実績がございませんので、急迫した事態などにどういう形で他国の軍艦とオペレーションしていくかということについては、十分な経験がございません。

 それから、いろいろな形で情報共有しなきゃいけないと思っておりますけれども、特に秘匿でそれぞれ情報共有をするという事態も考えられますけれども、そうした秘匿通信による情報、これは、海上保安庁と他国の軍隊でこういうことはできないので、なかなか難しい問題だと思っております。

徳地政府参考人 各国の海上警察機関との関係についてでございますけれども、もちろん基本的には、日本の海上保安庁の方がこれら各国の海上警察機関との間のふだんからの連携というものはあるというふうに考えておりますので、そちらの方がより円滑な連携協力が可能であろうというふうには考えておりますけれども、他方、海上自衛隊の方でありましても、他国の沿岸警備隊などの海上警察機関との間で情報共有のための通信手段が確保されるというようなことを前提とすれば、これはできる限りの連携協力は可能であると考えられます。

石井(啓)委員 ありがとうございました。

 この特別な必要のある場合というのは、今何点か確認しましたけれども、やはり相当個別性があるな、いろいろな条件の組み合わせでやはり個別個別に判断していかざるを得ないのかな、こういうふうに答弁を伺って感じました。

 ところで、この特別の必要のある場合というのは、法文上は、一義的には防衛大臣が判断するもの、こういうふうに解釈をされますけれども、実態的には、これは海上保安庁だけでは対処不可能あるいは著しく困難な場合でありますから、海上保安庁が海賊行動に対処できないという判断が示された後に防衛大臣が海賊対処行動を発令するかどうかの検討がされる、段取りとしてはそういう段取りになるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

 金子大臣、お願いします。

金子国務大臣 海上保安庁のみでは海賊行為に適切かつ効果的に対処できない、そういう場合において、その必要性の判断は政府全体の判断によると。本法案においては、防衛大臣は、この特別の必要のある場合、閣議決定に基づく内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海賊対処行動をとることを命ずるという段取りでこの法案はできております。

石井(啓)委員 今、政府全体の判断、閣議決定のプロセスを経るということでありましたけれども、もう一つ確認しておきたいのは、仮に、こういったケースはあるのかどうかわかりませんが、海上保安庁と防衛省との判断が異なる場合ですね。例えば、海上保安庁では対処できないというふうに判断したけれども、防衛省の方は、いや、あんた、もう少し努力すればできるんじゃないの、こういう判断を抱いていたり、あるいは逆に、海上保安庁の方でできそうだという判断がありながら、防衛省の方が、いや、それはあなた、やはり防衛省がやった方がいいんじゃないのか、こういうふうに微妙にその判断が異なるというようなケースはどうされるのか。海上保安庁の判断が優先されるのか、あるいは政府部内で調整されるのか、この点についての手続を確認いたしたいと思います。

加納副大臣 お答えいたします。

 この問題は、法文の構成を見ていただくと答えが出るんじゃないかと思っております。

 法文の構成は、まず、第五条で、海賊行為への対処は海上保安庁である、必要な措置を実施するというのが前提にあります。そして、今先生がおっしゃったように、特別な必要がある場合に防衛大臣が命ずると。ただし、それはもちろん閣議決定に基づく内閣総理大臣の承認を得るということになっております。

 そこで、この文脈で読んでまいりますと、当然のことながら、海上保安庁では対処できないんだということを担当大臣が判断をしていくというのが普通のケースだろうと思います。そして、防衛大臣がそれを前提としてやるわけです。

 御質問は、判断が微妙に、微妙にというか、大きくかはよくわかりませんけれども、一致しない場合はどうするのかということですけれども、閣内の不一致は許されない話でありまして、これは当然のことながら、総理の力量にかかっております。当然、総理が十分に各大臣、私は大臣をやっていないので済みませんけれども、大臣をよく指導しまして、そして、海上保安庁の言い分、防衛大臣の言い分も聞いた上で、正式に意見が一致される、必ず一致すると思っておりますけれども、それに基づいて、特別に必要な場合は防衛大臣が命ずることができる。内閣総理大臣が閣議で、閣議ですから、閣議でいろいろな意見をまだ言う時間がございますけれども、その上で内閣総理大臣が承認することであるというふうに理解しております。

浜田国務大臣 法文上のとおりでありまして、逆に言えば、一義的に海上保安庁がこれを判断する。そして、特別な場合というのは、多分本当に判断を要することになるわけでありますので、私一人の判断で物事を決めるはずもございませんし、我々とすれば、海上保安庁の意見に沿って動くというのがまずこの法律のねらいだと思います。

 ただ、そういう意味においては、皆さん方が大変御心配をしている、海上自衛隊がそのまま行け行けで行くようなことではございませんで、極めて二重、三重の枠がかかっているということは事実でございますので、その点は一致しないはずがない。そしてまた、防衛大臣とすれば、そのような、それを尊重することが極めて重要だという認識のもとに今回の法律を読むことになろうかと思っておるところであります。

石井(啓)委員 今の答弁でよくわかりました。

 それでは、続いて、海賊行為の認定でありますけれども、法案の第二条で海賊行為の定義が挙げられていますが、第二条では、「この法律において「海賊行為」とは、船舶に乗り組み又は乗船した者が、私的目的で、公海又は我が国の領海若しくは内水において行う次の各号のいずれかの行為をいう。」ということで、私的目的ということが前提になっていますけれども、この私的目的というのは何なのか、その趣旨を確認したいと思います。

 この私的目的かどうかの判断の基準というのはどうなっているのか、他の目的、例えば政治目的との違いというのはどのように見分けるのか、まとめてお答えをお願いします。

大庭政府参考人 お答えを申し上げます。

 本法案におきます私的目的といいますのは、私人の利得の欲望、憎悪、復讐その他の目的という意味でございます。逆から申し上げれば、外国政府が国家意思に基づいて行うようなものは入らないということでございます。

 第二条に一号から七号にわたって具体的に行為を列挙いたしておりますが、例えば公海上の他の船舶を強取する、あるいは他の船舶内の財物を強取する、他の船舶内の人を略取する、あるいは略取した人によって例えば身の代金を要求するというような行為でございまして、まさに海上の強盗のような行為を列挙しているわけでございます。したがいまして、基本的に、これらの行為は私人による犯罪行為の範疇に入るものというふうに考えられるものでございます。

 もとより、海賊行為への対処に当たっては、この定義に照らして具体的に判断をすることになるわけでございますが、例えば、本来公海上で掲げるべき国旗を掲げず国籍を隠しているとか、身の代金目的といった動機、あるいは、小型船を使用して襲撃するというような行為の態様など、さまざまなそういう態様に照らして私的目的による私人の犯罪行為というようなことが評価されるというふうに認識をいたしております。

 また、政治目的との違いはという御指摘がございましたけれども、政治目的ということ自体が、なかなか一概に、難しい定義でございますけれども、いずれにいたしましても、この法案におきましては、私的目的のための行為であるかどうかという点によって判断をするということでございます。

石井(啓)委員 それで、この第二条の中で、特に第六号、第七号なんですが、第六号では「海賊行為をする目的で、船舶を航行させて、航行中の他の船舶に著しく接近し、若しくはつきまとい、又はその進行を妨げる行為」、第七号では「海賊行為をする目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為」、こういうふうに挙げられているんですが、他の船舶への著しい接近あるいは凶器準備航行について、その目的が海賊行為かどうかというのを外形上から判断するのはなかなか難しい面もあろうかと思うんですね。

 例えば、ソマリアでよく行われているような、母船に何か小さい船がくっついて航行しているというような場合は、もう海賊は頻繁にそういうことをやっているわけですから、恐らくそうだろうと判断されますよね。ですから、海賊行為が頻繁に起きている地域で、従来の海賊行為と同じような態様、行動を行っている場合は容易に判断がつくと思うんだけれども、そうでない場合はなかなか、接近してきたとか、あるいは、何かたまたま凶器を持っている、それは自分の身を守るんだなんて言いわけされたら、これはどういうふうにその目的を判断するんだろうかというふうに疑問に思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

大庭政府参考人 御指摘の、海賊対処法案第二条第六号及び第七号の海賊行為に関しましては、例えば、先ほど申し上げましたような、他の船舶を強取するといったような第一号から第四号の海賊行為をする目的で、船舶を航行させて、航行中の他の船舶に著しく接近する行為、あるいは、凶器を準備して船舶を航行させる行為について、海賊行為の一類型として定義をし、それぞれ第三条第三項及び同条第四項において処罰の対象といたしているところでございます。

 これらの行為の要件であります海賊行為をする目的の認定につきましては、個別具体の状況に応じた判断でございますので、あらかじめ概括的にお答えするのはなかなか難しゅうございます。

 例えば、陸が全然見えないはるか離れた海上、すなわち、陸からの守りの期待できないようなはるかな海上を航行している商船というものがあり、その商船に向かって高速の小型船が二隻、三隻と接近をしてくる。海上で船舶に接近すること自体非常に危険な行為で、通常はない行為でありますけれども、それが非常に近くまで接近をし、つきまとい、進行妨害して船をとめようとする。さらに、その船は国旗を上げず、国籍を隠している。さらには、武器を持った乗組員がいる。そういう状況。あるいはさらに、その海域で繰り返しそのような海賊行為があるということがあらかじめわかっているというような状況。そのようなさまざまな事情を勘案した上で、合理的に判断がされることになるというふうに存じております。

石井(啓)委員 ありがとうございます。

 それでは、時間も迫ってきましたので最後の質問にしようと思いますが、国会の関与について、最後に金子大臣に確認をしたいと思います。

 今回、海上警備行動とは異なりまして、海賊対処行動が発令された場合には、第七条第三項で、国会に報告を行う、こういうことにしましたね。海上警備行動とは異なって、国会報告をさせるということにした理由を一つ確認したい。もう一つは、今度は、事後報告にとどめて国会の事前承認を求めなかった、その点についての理由を二つ目に確認したいと思います。また三つ目に、日本の近海を離れて海外に長期間海上自衛隊を出動させるということについて、国会の事前承認を求めるかどうかというのは、ある意味で政策判断、立法判断の部類でもあるのかなというふうに考えますが、この点についていかがお考えか。

 三つ、お答えをいただきたいと思います。

金子国務大臣 本法案では、内閣総理大臣が海賊対処行動を承認したときは、海賊対処行動の必要性、区域、期間などを定めた対処要項の内容を遅滞なく国会に報告することとし、政策の判断、立法判断として国会の事前承認を求めないものとしたものであります。

 なお、海賊行為への対処は警察行動であり、海上警備行動と同様に、国会の事前承認に関する規定は設けなかったものであります。

石井(啓)委員 警察行動だから事前承認は求めなかったというのもわかりますけれども、海上警備行動の方は事後報告もしませんね。それをするというふうにしたというところは、今お答えはなかったと思いますが。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 海賊対処行動は警察行動でございます。海上警備行動と同様に警察行動ではございますけれども、自衛隊が長期間にわたり我が国の領域外で活動することが想定されますので、自衛隊を的確に統制するということが求められるというふうに認識をいたしております。

 そのような観点から、自衛隊法第八十二条に定めます手続以上に、具体的に、遅滞なく国会に報告するというようなことを定めておるものでございます。

石井(啓)委員 この法案に関する国会の関与というのは、今の答弁で示されましたように、私はある意味でバランス論だと思っております。従来の海上警備行動、あるいは、従来自衛隊を海外に派遣する場合の国会の関与とのあり方のバランス論で今回は事後報告という形にしたのかなというふうに理解しておりますので、ある意味で、バランス論というのはいろいろなバランスのとり方がありますから、ここら辺は多少柔軟に考えてもいいのかなというふうに個人的に考えております。

 時間が参りましたので、以上で終わります。

深谷委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十四分散会


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