衆議院

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第1号 平成21年5月13日(水曜日)

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平成二十一年五月十三日(水曜日)

   午後二時二十分開会

    ─────────────

平成二十一年五月十三日本協議委員は、衆議院議長の指名で次のとおり選任された。

     河野 太郎君     三原 朝彦君

     松浪健四郎君     松島みどり君

     小野寺五典君     山中 あき子君

     鴨下 一郎君     平沢 勝栄君

     西  博義君     伊藤  渉君

同日互選の結果、議長及び副議長を次のとおり選任した。

            議 長 河野 太郎君

            副議長 三原 朝彦君

同日本協議委員は、参議院議長の指名で次のとおり選任された。

     浅尾慶一郎君     池口 修次君

     石井  一君     一川 保夫君

     小川 勝也君     白  眞勲君

     広中和歌子君     水岡 俊一君

     井上 哲士君     近藤 正道君

同日互選の結果、議長及び副議長を次のとおり選任した。

            議 長 浅尾慶一郎君

            副議長 小川 勝也君

    ─────────────

 出席協議委員

  衆議院

   議 長 河野 太郎君

   副議長 三原 朝彦君

     松浪健四郎君     松島みどり君

     小野寺五典君     山中 あき子君

     鴨下 一郎君     平沢 勝栄君

     西  博義君     伊藤  渉君

  参議院

   議 長 浅尾慶一郎君

   副議長 小川 勝也君

     池口 修次君     石井  一君

     一川 保夫君     白  眞勲君

     広中和歌子君     水岡 俊一君

     井上 哲士君     近藤 正道君

 協議委員外の出席者

  衆議院事務局

        委員部長    山本 直和君

        外務委員会専門員       清野 裕三君

  衆議院法制局

        法制企画調整部長       伊藤 和子君

        第三部長    鈴木 正典君

  参議院事務局

        委員部長    諸星 輝道君

        外交防衛委員会調査室長    堀田 光明君

  参議院法制局

        第五部長    平田 佳嗣君

    ─────────────

  本日の会議に付した案件

第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件


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    ─────────────

   〔浅尾慶一郎君議長席に着く〕

議長(浅尾慶一郎君) これより第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件両院協議会を開会いたします。

 抽せんにより、私が本日の両院協議会の議長を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 この際、御報告いたします。

 衆議院の協議委員議長には河野太郎君、副議長には三原朝彦君が、また、参議院の協議委員議長には私、浅尾慶一郎、副議長には小川勝也君が選任されております。

 両院協議会は、国会法第九十七条の規定により、傍聴を許されないことになっておりますので、協議委員並びに協議会の事務を執る職員以外の方は御退席を願います。

 それでは、第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について、各議院の議決の趣旨を御説明願いたいと存じます。

 先ほどの両議院の協議委員議長及び副議長の打合会における協議に基づきまして、初めに衆議院の議決の趣旨について御説明を願います。三原朝彦君。

三原朝彦君 衆議院が本協定の締結について承認を求めるの件を承認すると議決した理由について御説明いたします。

 我が国を取り巻くアジア太平洋地域には、冷戦後も依然として不安定かつ不確実な状況が存在しています。このような安全保障環境の中で我が国の平和及び地域の平和と安全を確保するためには、日米安保体制の下で在日米軍が迅速かつ機動的に展開できる態勢を平時より確保することが必要不可欠であります。しかし、在日米軍の駐留の重要性を理解しつつも、長年にわたり過重な基地負担をお願いしています沖縄の実情は放置できず、日米同盟関係を維持強化していくためにも両国が協力してその負担軽減を図っていかなければなりません。本協定は、そのような沖縄県民の願いにこたえるべく、日米間の在日米軍再編に係る協議において、我が方からの要請により合意された負担軽減策でもあります。

 沖縄県民が強く希望する海兵隊要員の移転を促進し一日も早く負担軽減が図られる一方で、我が国及び極東地域の平和と安全のための抑止力は維持されるといったこれらの要素を総合的に勘案すれば、グアムにおける施設整備のための費用の一部を我が国が負担することを含めて本協定を締結することは妥当な措置であると考えます。

 本協定の実施により、現在定員一万八千人の在沖縄海兵隊の要員が一万人となります。これに加えて、市民生活に大きな危険や不安を与えている普天間飛行場の移設、そして嘉手納飛行場以南の基地の統合及び土地の返還は、沖縄にとって更なる負担軽減になるものと確信しています。

 もちろん、普天間飛行場の名護市辺野古沿岸域への移設に関しては、今後とも政府は地元の声に耳を傾け、理解と協力を得ながら進めるべきであり、また返還された土地の跡地利用に関しては、一義的には地主を含め沖縄側が検討するものでありますが、政府としても助成をしていく必要があります。

 以上、本協定の締結について承認を求めるの件を承認すると議決した理由について申し述べましたが、両院協議会といたしましては、衆議院の議決どおり意見の一致を見ますよう御賛同をいただきたく、お願い申し上げる次第であります。

 以上であります。

議長(浅尾慶一郎君) 次に、参議院の議決の趣旨について御説明を願います。一川保夫君。

一川保夫君 在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定の締結について承認を求めるの件を参議院側が賛成少数で承認しないと議決した趣旨を申し上げたいと思います。

 承認しないこととした第一の理由は、本協定の締結について政府が必要な説明責任を全く果たしていないことであります。

 本協定は、二〇〇六年に結ばれたロードマップを前提としていますが、日米政府間で様々な合意がなされているにもかかわらず、なぜ今、在沖縄海兵隊の移転のみ、しかも、いわゆる真水部分だけを協定にしたのか、十分な説明がなされていません。

 米国の前政権との合意であるロードマップを担保するため、政府は昨年九月になって国会承認条約が必要であると判断しました。我が国が多年度にわたって財政負担をすることはロードマップの段階で分かっていたことですが、どのような理由で国会承認条約が必要と判断するに至ったのか、また、新政権の国防政策が示される前に法的義務を伴う協定として確定させることは時期尚早ではないか、なぜ米側は議会の承認が必要ないのかということに関しても十分な説明がなされていませんでした。

 承認しないこととした第二の理由は、海兵隊員などのグアム移転をもって地元沖縄の負担軽減を図ることが移転の大きな目的であるにもかかわらず、本当に負担が軽減されるのか不明なことであります。

 ロードマップでは八千人の在沖縄海兵隊員がグアムに移転することが合意されましたが、これはあくまでも一万八千人の定員から八千人が移転することで、実際に移転・削減される数字ではありません。現在、沖縄に駐留する海兵隊員は約一万二千人と言われています。場合によっては、二千人しか移転しないこともあり得るのであります。これでは、沖縄県民の過重な基地負担の軽減策とはならないのであります。しかも、今年一月に発表されたオバマ・バイデン・アジェンダで二万七千人の海兵隊員の増員がうたわれた今、いったん八千人削減され一万人となる沖縄の海兵隊の定員が今後増える可能性さえあります。

 承認しないこととした第三の理由は、協定上、グアム移転等と普天間飛行場移設問題がワンパッケージとされていることであります。

 普天間飛行場の危険除去は、直ちに解決すべき問題でありますが、協定上、グアム移転等と移設問題がワンパッケージとされたことで、協定の受入れが普天間飛行場の危険除去の条件となってしまい、これでは本末転倒であります。

 また、普天間飛行場代替施設の建設予定地である名護市辺野古沿岸地域は国際的にも貴重な自然環境を擁する地域であり、ここを埋め立てることによる環境への悪影響は計り知れないものがあります。

 承認しないこととした第四の理由は、本協定に基づき我が国が巨額の経費を負担する理由が明確でないことであります。

 そもそも、日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢は大きく変化しており、在日米軍基地の役割も、日本の安全及び極東の平和と安全という所期の目的から、地球の半分近く、あるいはそれ以上に及ぶ米軍の世界戦略を担う目的へと比重が大きく変化してきております。北朝鮮の核開発・ミサイル発射など東アジアの安全保障環境の動向や、オバマ新政権の世界戦略を見据えつつ、まずは日本の安全保障戦略を再構築することが重要と考えます。その作業の中で、日米同盟の在り方を検証し、地位協定や分担すべき費用負担の在り方を見直すべきであります。巨額のグアム移転経費については、政府からその真水部分負担の内訳、五十年償還の家族住宅の事業主体プランがいまだに国会はおろか財務省、JBICにも示されていない中、我が国の厳しい財政状況を考えるとき、納税者の理解は得られないと考えます。

 両院協議会としましては、以上、参議院側が指摘した問題点を踏まえ、本協定を承認しないことについて、御賛同いただきたくお願い申し上げる次第であります。

 以上であります。

議長(浅尾慶一郎君) 以上で各議院の議決の趣旨についての説明は終わりました。

 これより協議に入ります。

 順次御発言願います。白眞勲君。

白眞勲君 民主党の白眞勲でございます。

 民主党・新緑風会・国民新・日本の立場から、本協定の承認案件に反対した理由を申し上げます。

 私どもは、日米同盟は、我が国安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域の平和と安定の礎と位置付けております。しかし、そうした基本的立場の下でも、以下の点で本協定の内容と政府の対応に問題があり、反対せざるを得ませんでした。

 反対の第一の理由は、本協定の締結についての政府の説明責任が十分でないことです。

 二年前の米軍再編特措法の審査の際、ロードマップを実現させるのに、国会承認条約が必要かどうか判断していないとのことでしたが、昨年九月には、政府は、国会承認条約は必要であるとの判断をしました。その間、どのような事情があって協定を結ぶと判断したのか、再三の質問にも明確に答えておりません。

 また、この協定は、日本は国会承認条約として上限二十八億ドルの資金拠出という法的な義務を伴うことになりますが、米国は議会承認条約となっておらず、法的な義務はありません。米国の資金拠出がなければグアム移転は立ち行かなくなることは明らかですが、なぜ米国では議会承認条約となっていないのか、政府から納得のいく説明がなされていません。

 反対の第二の理由は、沖縄の負担軽減を図るためにグアムに移転する海兵隊員などの実際の人数が明確でなく、本当に負担が軽減されるのか、不明なことであります。

 ロードマップでは約八千人の在沖縄海兵隊員及び約九千人のその家族がグアムに移転することが合意されましたが、海兵隊員の八千人という数字は実数でなく、定員であることが明らかになりました。現在、沖縄に駐留する海兵隊員は定員約一万八千人、実員一万二千人と言われています。場合によっては、実員レベルで二千人しか移転しないこともあり得るのです。これでは沖縄県民の過重な基地負担の軽減策とはならないのであります。

 また、定員が八千人削減されて一万人になるとの政府の説明についても、あくまでも現時点の話であり、協定には明記されていることではありません。今年一月のオバマ・バイデン・アジェンダで二万七千人の海兵隊員の増員が発表されており、本協定に基づいていったん削減されても、再び増員される可能性すらあります。

 反対の第三の理由は、協定上、グアム移転等と普天間飛行場移設問題がワンパッケージとされていることであります。

 現在の普天間飛行場の危険除去は直ちに解決すべき問題であり、既に一九九六年に返還が約束されていたことであります。しかしながら、今回の協定により、グアム移転等と移設問題がワンパッケージとされたことで、協定の受入れが普天間飛行場の危険性除去の条件となってしまい、これでは本末転倒であります。

 反対の第四の理由は、本協定に基づき我が国が巨額の経費負担を行う理由が明確でないことがあります。

 日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢の大きな変化に加え、東アジアの安全保障環境やオバマ新政権による米軍の世界戦略を見据える中で、日米同盟の在り方を検証し、地位協定や費用負担の在り方についても見直されるべきであります。このような手順を経ず、巨額のグアム移転経費の支出を約束し、わけてもその内訳さえ政府から一切明らかにされておりません。これは我が国の厳しい財政状況を考えるとき、納税者の理解を得られるものではありません。

 以上の論点について政府の説明責任は全く果たされておらず、民主党・新緑風会・国民新・日本は本協定の承認案件に反対したものであります。

 以上です。

議長(浅尾慶一郎君) 井上哲士君。

井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。本協定の承認に反対をした理由について述べます。

 反対した理由の第一は、日本政府が本協定に基づいて実施しようとする米軍のグアム新基地建設に対する二十八億ドルもの財政支出に何の道理もないことであります。

 日本の資金が充てられる在沖海兵隊のグアム移転に伴う施設等の整備は、すべて米国領内で行われる米軍の基地建設です。安保条約、地位協定に照らしても日本が経費負担を行う義務は全くないばかりか、米領内の米軍基地に他国政府が巨額の財政負担をすることは前代未聞のことです。

 そもそも在沖縄アメリカ海兵隊のグアム移転は、米国が自らの軍事戦略に基づいて、陸、海、空、海兵隊の四軍の部隊をグアムに集め、戦力投射の拠点にする計画の中心を成すものであり、日本国憲法に照らせば財政的に関与すべきでないことは明らかです。日本がこのような前代未聞の経費負担に踏み出せば、今後、米軍に対する財政負担が際限なく拡大する危険があります。

 しかも、本協定は、アメリカ側では議会承認が行われません。参議院の参考人質疑では、アメリカ側がこの協定は日本に対して資金提供を強要するものとしか考えていないからだとの指摘もありました。アメリカ議会では、グアム移転費用の確保の困難さが議論をされ、今後、移転計画を再検討すると米海兵隊司令官も証言をしている下で、日本側だけが従来計画を前提に負担額が決められることも容認はできません。

 反対した理由の第二は、政府がグアム移転への財政支援を行う理由に挙げる沖縄の負担軽減論が全くのまやかしであることです。

 沖縄からグアムへ移転する八千人が実数ではなく定員数である上に、その定員数には縛りが掛けられないことが審議を通じて明白になりました。にもかかわらず、日本が負担する隊舎や住宅の建設は移転の実数ではなく定数を基本に行われるとされ、沖縄以外から移転してくる海兵隊の入居についても政府は否定できませんでした。沖縄の負担軽減は、日本に負担を求めるアメリカ側の方便と言わなくてはなりません。

 沖縄の基地は、米軍が世界で戦争するための出入り自由の出撃基地として使用されてきました。本協定による措置は、その実態を何ら変えるものではなく、その下で起きてきた基地被害の根絶につながるものではありません。

 さらに、本協定は、多くの沖縄県民が反対する辺野古沖での海兵隊最新鋭基地の建設をパッケージとして明記しています。この計画が実施されれば、辺野古沿岸の海洋環境を始め、沖縄の貴重な自然環境を破壊するにとどまらず、周辺地域に新たな騒音被害や基地被害をもたらすことは必至です。

 沖縄県民は長年、米軍基地が存在するがゆえの耐え難い苦しみを受け続け、日米両政府はそれを放置してきました。これ以上、米軍基地の強化、固定化を押し付けることは、基地の苦しみからの解放と平和を求める沖縄県民の願いを真っ向から踏みにじるものであり、断じて容認できるものではありません。

 そもそも沖縄の基地は、米占領下で、住民を排除し、銃剣とブルドーザーで奪った土地の上に築いたものであり、直ちに無条件ですべて返還するのが当然です。日本政府は、辺野古沖の新基地建設計画は直ちに中止し、その責任において普天間基地の即時無条件全面返還を図るべきであります。

 両院協議会としては、参議院側が指摘をした問題点を踏まえ、本協定を承認しないことについて御賛同いただきたく、強く申し上げて、終わります。

議長(浅尾慶一郎君) 近藤正道君。

近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。

 在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定について反対する理由を申し上げます。

 反対理由の第一は、本協定が憲法前文と九条に反することであります。本協定の内容であるグアム移転は、沖縄の負担軽減というよりは、むしろグアムをアジア太平洋地域における軍事拠点とする米軍の再編計画に基づいております。米軍の世界戦略に日本が財政支出することは、平和主義の精神からいって許されません。

 第二に、多額の財政負担を強いられることであります。グアム移転経費百三億ドルのうち、直接提供分だけで二十八億ドル、総額で全体の五九%に当たる六十億九千万ドルに及びます。国民の血税を米領土内の基地建設費に提供するものであり、日米安保条約をも超えるものであって、諸外国に例を見ない異常なものであります。

 第三に、憲法九十五条、地方自治の精神を踏みにじるものだからであります。沖縄県議会は、昨年七月に辺野古の新基地建設反対決議を上げ、三月には本協定に反対する意見書が出されております。沖縄県にのみ過度の負担を強要する本協定は、特定の地方自治体に適用される法律は住民の過半数の同意を得ることを求める憲法九十五条の精神からいって許されません。

 第四に、グアム移転が辺野古の新基地建設とパッケージになっている点であります。辺野古に計画されている新基地は、代替施設とは名ばかりで、巨大な戦闘能力を有する空港、軍港に転用可能な岸壁、高江ヘリパッド、垂直離着陸機オスプレーの配備など、実態は米軍の総合的な最新鋭基地です。昨年七月には、県議会の新基地建設反対決議がありました。昨年の名古屋高裁判決において確認された憲法の平和的生存権は沖縄においては侵害され続けております。

 また、辺野古地区はサンゴやジュゴンの生息を始めとして沖縄でも特に豊かな自然を残す地域であり、埋立てによる環境破壊は深刻です。来年、名古屋で開かれる国連生物多様性条約第十回締約国会議のホスト国としての政府の姿勢も問われております。民意や環境への配慮を無視した新基地建設とセットになった協定を認めるわけにはいきません。

 第五に、本協定は沖縄の負担軽減につながりません。審議の過程で、沖縄に駐留する海兵隊員数は現在一万二千人であり、政府が言う一万八千人よりかなり下回っていることが明らかになりました。政府は、八千人が移転し定員一万人になると、沖縄県民の皆さんを始め国民に説明をしてきましたけれども、実際は二千人しか移動しないのではないかと言われております。

 また、米軍側資料によれば、普天間所属海兵隊のほとんどはグアム移転が予定されているにもかかわらず、なぜ普天間代替施設という名目で最新鋭基地が辺野古に建設されなければならないのか、説得力のある説明がなされておりません。これでは沖縄の負担軽減にはつながらず、したがって、我が国予算の支出を正当化することはできません。

 以上、社民党・護憲連合は本案に反対をいたします。

 条約承認の件が一院で否決されるのは、日本国憲法下では二度目のことであります。この歴史的な事実、さらには直近の民意を代表する参議院の議決であること、これらを是非重く受け止めていただき、尊重していただきたいと思います。

 そして、このような国の在り方、国家の基本的な方向を縛るような協定を衆議院選挙を前にして駆け込み的に承認するのではなく、一日も早く理性ある国会を取り戻すよう早期に解散・総選挙を行うよう求めまして、私の意見表明といたします。

 以上でございます。

議長(浅尾慶一郎君) 松浪健四郎君。

松浪健四郎君 参議院の方から本協定に反対の御意見が述べられましたが、本協定にかかわる衆参両院における委員会質疑を併せて、本協定への反対の御意見や御批判に対する衆議院側の見解につきまして、まず私から、続きまして公明党の西博義委員から御説明申し上げたいと存じます。

 まず、本件が国会承認条約となった理由についてでございます。

 グアム移転事業の中で、真水事業部分については、日米協議を通じて、多年度にわたる財政支出を行うに当たり権利義務を設定できることとなったため、政府はこの部分を国会の承認を求めて条約の形で提出したものでございます。

 民活事業部分については、日米協議が権利義務を設定できるまで深まったなら、国会に提出するか否かも含むものと思いますが、その段階で適切に判断するとの政府からの答弁があり、このような政府の態度は適当であると考えます。

 なお、米国が本協定を議会に諮るか否かは米国自身が決定すべきことであって、その上で、米国が議会の承認を必要としない行政協定として締結するとしましたが、このこと自体は、米国政府に対する本協定の法的拘束力に違いはない以上、問題はないものと考えます。

 次に、米軍のグアム基地強化のために我が国が財政支援することは不適切との御批判があります。

 グアムに移転した海兵隊の要員は移転後も我が国防衛の任務を担うこととなっており、引き続き我が国にとっての抑止力を構成する一部である一方で、グアムに移転することで沖縄県民が強く希望しています在沖縄海兵隊の削減となり、我が国がグアムにおける施設整備のための費用の一部を負担することにより沖縄の負担軽減が早期に実現することとなります。このような要素を総合的に勘案すれば、我が国の財政支援が日本国憲法の平和原則にのっとって許されない行為であるとする批判は当たらないものと考えます。

 また、在沖縄海兵隊の実際の削減規模が不明瞭であるという御批判もございます。

 在沖縄海兵隊の削減規模は、ロードマップにおいて、在沖縄海兵隊の定員一万八千人のうち八千人をグアムに移し、沖縄には定員として一万人が残ることが合意されました。

 四月六日に、衆議院外務委員会の沖縄視察団に対しジルマー在日米海兵隊司令官は、イラクやアフガニスタンでの任務のために一時的に沖縄を離れた要員が戻れば一万八千人という数字に近い規模となると述べられておられます。

 要するに、実員数は基本的には定員枠の中で増減するわけで、重要なものは定員数であって、これが一万人となるということは、平時において沖縄に駐留する海兵隊要員は最大で一万人、訓練あるいは任務のために沖縄を一時的に離れる要員を考えれば、実員数はこれを下回るということになります。これは明らかに沖縄の負担軽減につながる措置であると評価いたします。

 以上、私から三点について申し上げました。

議長(浅尾慶一郎君) 西博義君。

西博義君 私からも、引き続き衆議院側の見解を申し上げたいと思います。

 グアム移転事業計画について、政府はその詳細を示していないとの批判があります。

 在沖縄海兵隊のグアム移転事業に関する全体像は、米国政府が進めるグアム米軍基地の拡張事業と密接にかかわるため、軍事機密を理由に米側から満足のいく説明が得られないことや、移転事業経費についても、今後の日米政府間の交渉で必要経費を精査していく前に交渉のベースともなる数字を防衛省として国会に提示できないなどの理由から明瞭でないとの議論がありました。

 しかし、衆議院では、米国と更に協議するなどしてもう少し情報を開示できないかということで、外務省及び防衛省にぎりぎりの努力を要請し、この時点での最大限の情報をいただいたという経緯があり、決して政府の説明責任が果たされていないという評価はしておりません。

 最後に、本協定と普天間飛行場代替施設建設問題とのパッケージについて申し上げます。

 普天間飛行場代替施設の完成は本協定上の義務ではないということは日米両政府の共通認識であるため、本協定を理由として政府が代替施設の建設を強行するような事態はあり得ません。

 また、本協定にかかわらず、環境影響評価法や公有水面埋立法などの国内法上の手続はそれぞれの法令の定めるところによって進められることも衆議院審議の段階で確認しております。

 また、名護市辺野古沿岸域での新基地建設につながる本協定は沖縄の負担軽減にならないという批判も聞かれますが、辺野古沿岸域における代替施設の建設は、危険極まりない普天間飛行場は早く閉鎖したい、しかし抑止力の維持との関係から県外移設はできないという状況下でのぎりぎりの選択であり、新基地とおっしゃる方もおられますが、既存のキャンプ・シュワブの中、そして、この沿岸域を一部埋め立てて代替施設を建設することで基本的な合意が政府と沖縄県及び名護市との間で成立したという経緯があります。

 辺野古住民側から見れば負担増と思われるかもしれませんが、政府としては、住民生活の安心、安全、そして自然環境の保全への配慮という視点を忘れず今後ともこの問題に取り組む必要があることを強く認識しているものと理解しております。

 以上申し上げましたとおり、衆議院側といたしましては本協定は適切なものと考えております。参議院側におかれましても、本協定について御賛同いただきますよう、改めてお願いを申し上げる次第でございます。

議長(浅尾慶一郎君) それでは、これより懇談に入ります。

 御意見のある方は御発言願います。

 よろしいですか。懇談、発言、特に。そういたしますと、特に御発言がなければ、これにて懇談を閉じます。よろしいですか。

石井一君 発言をお許しいただきまして、本協定、いわゆるこのグアム協定の問題ではございませんが、両院協議会にとって非常に重要な問題を提起させていただきたいと思うのであります。

 実は、私、今国会で過去二度にわたりまして両院協議会に出席をいたしまして、この議論はそのときに行われてまいったわけでありますが、そのときに、衆議院側の議長衛藤征士郎君、鈴木副議長、よく理解をされておるところでございますが、実はこの両院協議会というのは憲法六十条で設置されておりまして、両院の議決が違った場合には衆議院の優越性が、三十日の期日が終わりますと、いわゆる予算案において、あるいは条約において、それが決定するということに相なっております。

 しかしながら、それ以外のすべての法案に関しましては、今現在は三分の二という条項がございまして、六十日経過しました後に三分の二条項で議決をすることによって法案が成立をするということになっておるわけでありますけれども、今のねじれ国会の構成が次の総選挙を経ましたときに恐らく変わるであろうと。その場合に、どういう形であれ、今の与党側がそのままそちらへお座りになる、あるいは参議院側がこちらへ座ると。まあ参議院側がこちらへ座ると思うんですけど。

 そのときに、三分の二の条項がなくなってまいりますと、要するに法案が成立しないという問題が起こるわけですけれども、恐らく、全部廃案になるということになりますと、立法府が機能をしないという深刻な問題が起こってくるわけでございます。たまたま五五年体制で、常に衆参両方が与党が多数を持っておりましたために、そういう問題はこれまで起こっておりませんけれども、現実に深刻な問題が憲法上から起こってくる、この両院協議会というものにのしかかってくるということは間違いございません。

 そこで、憲法六十条を改正するということは無理であって、憲法六十条は、お読みになったら分かるように、いわゆる予算と条約の衆議院の優越性ということを決めておるわけでありますけれども、そのほかの問題は、国会法あるいは参議院規則、それから両院協議会規程と、ここで規定をされておるわけであります。この規定が、もう実にいろんな面において機能不全になるという可能性があります。それはもう前の協議で十分御指摘をしておるわけであります。一回目の一月何日かに行いましたときには、その議論を延々とここでやったわけでございます。

 例えば、今日、一つの例として申し上げるんですけれども、たまたまくじ引をやって衆議院側がくじが外れたと言われて、そして与党側から声が出たということでありますけれども、くじが外れたからかえって有利という面もございまして、最終的には多数決で議決を決めるというふうに国会法の規定に書いてあります。そうなりますと、くじを引いてあたふた議長を取った方がマイノリティーになると、そして最終的に与党側はくじを引かなかったためにその議決が生きてくると、こういうようなことが起こりますと、一体どうなるのかという深刻な問題があるわけです。それ以外にもいろいろたくさんありますけれどもね。

 両院協議会を実は私も長いことやってまいりまして、過去機能したことが二つありました。

 一つは、政治改革のときに両院協議会でどうしても意見を合わさなければいけない、そのときは参議院側が自民党が優位であったために、時の河野総裁とそれから細川総理とが協議をして、いわゆる比例部分の数の妥協点を見出したということがあるんです。それから、もう一つありましたのは、金融国会のときに、いわゆる新人類族というのがその法案をいろいろ議論しました後に、小渕総理が丸のみしたと、その法案を、そうして国会で議決を通したと、そういうときには協議が与野党で調ったんですよ。

 それ以外のときには必ず与党側はAという衆議院の議決、野党側はBという参議院の議決をお互いに議長に報告をするという、こういう形骸的なことばかりやっておるんですけれども、ここにおりますメンバーが、それじゃ、その妥協点を見出して両院の違う議決を決定する権限を持っておるかということになりますと、必ずしもそうじゃないと思うんです。というのは、やっぱり充て職で来ておられるわけですから。そうなりますと、これはもう深刻な問題が提起されます。

 そこで、要約して申し上げますけれども、この機にこの国会法以外の両院協に関する規程を再整備しなければ、この次から国会は機能しない、こういう問題が起こってまいりますので、私はこの問題を前議長にも問題提起をしまして、よく理解をされた。しかし、その後、十分な審議が行われておりません。

 どうか河野議長なり三原副議長におかれましては、この問題を衆議院に持ち帰りいただいて議長に重ねて御報告をいただくとともに、この国会中に結論を出す必要があると思うんです。参議院の方は前回そのようにやっておりますし、江田議長はたしか議運の方へ下ろして相談をしておると思うんですが、相談をするというままで解散になだれ込んで次の国会で出てきたら、国会では法案ができないという深刻な問題が出てまいりますので、両院協を活性化するというよりも機能できるようにするために、衆議院、参議院、与党、野党で知恵を出して結論を出すと、そういうことを是非ともやってもらいたい。立法府の重大な責任を果たすためにそれをやっておかなければどうにもならないということを申し上げておきたいと思います。

 恐らくこの国会にもう一回両院協がございます、補正予算に関連をして。これは予算案ですから、またそのときにはそのときの三分の二なりそういうふうなことで結論は出るんですが、それから先は結論に対する展望が持てないという深刻な事態をしっかり受け止めていただいて、補正予算の結論が出るまでに一応の方向性なり結論を今日の議長、副議長の責任においてひとつやっていただきたいということを、国会に籍を置く一人として、あえて申し上げさせていただきたいと思います。

 以上です。

河野太郎君 石井先輩のおっしゃることは誠にそのとおりでございまして、私も両院協議会に出させていただくのは二回目でございますが、現状のこのやり方では機能しないというのをよく認識をしております。

 なかなか条約の場合には妥協案というのは難しいわけですから、これはちょっとわきへ置いておくにしても、それ以外のものについては、おっしゃるとおり三分の二がなければ全く衆参機能しないということでございますので、先輩のお話を今日持ち帰りまして、議長並びに本会議できちっと報告をさせていただいて、衆議院側も両院協議会改革のために何らかのアクションを取るよう議長にお願い申し上げてまいりたいと思います。

 先輩のおっしゃることは誠にそのとおりでございますので、しかるべき、こちらも動かせていただきたいと思います。

議長(浅尾慶一郎君) よろしいですか。

 じゃ、衆議院、参議院共に、両院協議会の在り方について各院の議長に今国会中にしかるべく結論を得るように努力をする場を設けるということを報告するというふうにさせていただきたいと思いますが、皆さんよろしいですか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(浅尾慶一郎君) では、そのことも含めて、それぞれの本会議で報告をさせていただきます。

 この際、参議院側、衆議院側双方から発言を求められておりますので、これを許します。小川勝也君。

小川勝也君 参議院としてのまとめの意見を申し上げます。

 参議院側としては、両院協議会において、本協定を承認しないことといたしたいと考えます。

 既に参議院側の趣旨説明及び意見表明で述べたところでありますが、本協定を国会承認条約とする必要性等について政府が説明責任を全く果たしていないこと、海兵隊員のグアム移転の実数が明確でなく、本来の目的である沖縄の負担軽減が実現できるのか懸念があること、グアム移転等と普天間飛行場の移設問題がワンパッケージとなっていること、厳しい財政事情の下で巨額の税金を負担するにもかかわらず、積算根拠や事業内容が明らかにされていないことなど、本協定を承認することについては多くの問題があると考えております。

 衆議院側から様々な意見表明で御説明をいただきましたけれども、私ども両院協議委員、参議院側が納得できるものではございません。

 以上、参議院側が指摘した問題点を踏まえ、参議院の議決どおり本協定を承認しないよう衆議院側に御再考いただきたくお願い申し上げる次第であります。

 まとめ意見も私、何度か読ませていただいておりますけれども、まさに河野衆議院側議長が御指摘をいただいたとおり、形式張った発言だけでは将来に展望が開けませんので、石井先生から御指摘のあった点、私も参議院側副議長としてしっかりと参議院側に持ち帰りまして、実効性のある両院協議会づくりのために汗をかいてまいりたいと考えております。

 以上、参議院側のまとめ意見とさせていただきます。

議長(浅尾慶一郎君) 次に、衆議院側松島みどり君。

松島みどり君 私は、本協定のことについてのみ申し上げさせていただきます。

 参議院側の御意見につきましては、るる承りました。しかしながら、先ほど私ども衆議院側の協議委員が明快に申し述べましたように、本協定は、日米同盟の未来のため、そのための変革と再編の一助として抑止力を維持しつつも、沖縄の負担軽減に確実に資する内容となっていると考えます。

 そのため、衆議院側といたしましては、到底参議院側の御要請をお受けするわけにはまいりません。

 また、二〇一四年までに予定される在沖縄海兵隊のグアム移転が一日も早く実現するためにも、本協定の早期発効が望まれるところであります。

 よって、憲法第六十一条の規定に基づき、国会法等の定める手続に従い、衆議院の議決どおり本協定の承認をお願いしたいと思います。

議長(浅尾慶一郎君) いろいろ御協議を願いましたが、意見の一致を見るに至りません。

 つきましては、本協議会といたしましては、成案を得るに至らなかったものとして、この旨を各議院に御報告するほかないと存じますが、御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(浅尾慶一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

 以上をもって、本協議会の議事は終了いたしました。

 本日は、協議委員の皆様の御協力により議長を無事務めさせていただきました。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

   午後三時五分散会



<注>本協議会の正式な名称は「第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件両院協議会」


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