衆議院

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第7号 平成23年7月22日(金曜日)

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平成二十三年七月二十二日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿知波吉信君 理事 稲見 哲男君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 空本 誠喜君

   理事 津村 啓介君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      石田 三示君    石津 政雄君

      石森 久嗣君    磯谷香代子君

      小川 淳也君    大西 孝典君

      太田 和美君    勝又恒一郎君

      金森  正君    川島智太郎君

      工藤 仁美君    後藤 祐一君

      阪口 直人君    菅川  洋君

      平  智之君    中後  淳君

      豊田潤多郎君    中川  治君

      野木  実君    橋本 博明君

      平山 泰朗君    本多 平直君

      山崎  誠君    柚木 道義君

      河村 建夫君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    塩谷  立君

      吉野 正芳君    斉藤 鉄夫君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

    …………………………………

   参考人

   (総合科学技術会議議員) 相澤 益男君

   参考人

   (総合科学技術会議議員) 本庶  佑君

   参考人

   (総合科学技術会議議員) 奥村 直樹君

   参考人

   (総合科学技術会議議員) 白石  隆君

   参考人

   (総合科学技術会議議員) 廣渡 清吾君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           上妻 博明君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十二日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     後藤 祐一君

  熊田 篤嗣君     磯谷香代子君

  平  智之君     工藤 仁美君

  竹田 光明君     平山 泰朗君

  玉置 公良君     大西 孝典君

  河井 克行君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     熊田 篤嗣君

  大西 孝典君     橋本 博明君

  工藤 仁美君     平  智之君

  後藤 祐一君     中後  淳君

  平山 泰朗君     竹田 光明君

  北村 茂男君     河井 克行君

同日

 辞任         補欠選任

  中後  淳君     小川 淳也君

  橋本 博明君     玉置 公良君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(科学技術基本計画について)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に科学技術基本計画について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として総合科学技術会議議員相澤益男君、同議員本庶佑君、同議員奥村直樹君、同議員白石隆君及び同議員廣渡清吾君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川内委員長 参考人各位には、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人からそれぞれ十二分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。

 御発言の際は着席のままで結構でございます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず相澤参考人にお願いいたします。

相澤参考人 相澤でございます。

 それでは、着席のままで発言させていただきます。

 五月の二日に、科学技術政策大臣及び総合科学技術会議有識者議員名で「当面の科学技術政策の運営について」を公表いたしました。その冒頭に東日本大震災についての基本認識を示しておりますので、その一部を御紹介させていただきます。

 自然の脅威が科学技術による予測、制御の範囲を超える大きなものであるとの科学技術の限界を再認識し、また、原子力発電を初めとする技術システムやそのマネジメントに関し、重大な反省をするものである。この問題については、想定外や未曾有として棚上げするのではなく、専門にとらわれない俯瞰的な視点で、研究者、技術者、政策担当者がそれぞれの立場で真摯な姿勢で向かい合い、検証しなければならない。その上で、一丸となって、復興再生、そして新たな成長に向けた取り組みに貢献していくことが求められる。

 このような共通の認識に基づきまして、二〇一〇年十二月二十四日に総合科学技術会議の答申としてまとめました「科学技術に関する基本政策について」の再検討を進めたわけでございます。

 第四期の科学技術基本計画のポイントは、分野重点から重要課題達成への政策転換であります。なぜこのような政策転換が必要なのかということについて、その背景を中心に説明させていただきます。

 世界の国々は、持続可能性と成長を目指して非常に激しい競争を展開しております。しかし、その実現を脅かすさまざまな重要課題を克服しなければなりません。何が有効かであります。最も期待されておりますのは、重要課題に対応した科学技術・イノベーションであります。

 これまで、イノベーションは、技術分野を特化して政策展開してまいりました。最近、この政策が新たな方向に転換されようとしております。その方向性は重要課題対応であります。

 ここで、その重要課題とはということでありますが、技術課題ではございませんで、社会が直面する課題であります。

 地球環境、気候変動、大規模自然災害、資源、エネルギー、食料など、世界にとっても、それぞれの国にとっても重要な課題とか、あるいは少子高齢化など、日本が直面する課題でありますが、やがてほかの国々にもその課題が対峙されるものになっていく、こういうさまざまな社会が抱える課題があります。これが科学技術・イノベーションの新たな方向性として浮き上がってきているところであります。

 この新しい科学技術・イノベーション政策の展開は、EU、韓国、米国、英国、シンガポール、そのほかさまざまな国でかじが切られてきております。

 こうしたことについて、私どもも各国の人々と議論を重ねてまいりました。我が国においても、まさしくこういう方向性をリードしていかなければならないだろうという認識に立っているわけであります。

 これらの重要課題と申しますのは、科学技術はだれのためのものか、つまり、研究者のものでもなし、社会のためであるという方向性を明確に打ち出すことでもあります。

 それから、国際競争の激化した中でこのような科学技術政策をとろうとすることは、競争は激化しているけれども、協調なくしてこの方向性を進めることができないということも意味しております。

 そこで、第四期を想定する場合に、第三期の基本計画でどういうことが達成され、残された課題は何であるかということが重要になります。

 世界が注目する成果はさまざま出てまいりました。しかしながら、国際的には競争環境が極めて厳しい状態になっておりまして、我が国の国際的優位性というものは極めて危ういと言わざるを得ません。

 それから、これまでの成果というものが必ずしも社会的課題につながっていない、あるいはイノベーションの創出につながりにくい、こういう状況もあります。

 これらを十分に見据えて第四期の基本計画策定に向かわなければならないという認識であります。

 そこで、第四期の科学技術基本計画では何が変わるのかであります。

 一つは、新成長戦略あるいは復興基本方針などの国の進める重要施策と十分に連携した形で、国家戦略として進める位置づけであります。

 二つ目は、これまでの八分野重点推進から重要課題達成型に転換すること、これと同時に基礎研究及び人材育成を強化すること、この二本立てと申しますか、両輪として進めなければいけないということであります。

 さらに、今回、きちっとイノベーション政策を位置づけて、科学技術・イノベーション政策を一体的に推進するという点であります。

 大震災により、さまざまな課題が提起されました。これに対してどう対応するかであります。

 大きな方向性は、復興再生を一日でも早くなし遂げ、将来にわたり、持続的な経済成長と発展を実現することであります。

 第二に、原子力発電の制約下におけるエネルギーの安定供給を達成することであります。

 第三に、科学技術政策の検証及び強化を図る。

 以上の三点が、大震災からの特段の提起ということでございます。

 これらを踏まえまして、第四期科学技術基本計画の柱でありますけれども、大きく四つに分かれるというふうに考えております。

 第一は、将来にわたる持続的な成長と発展の実現であります。この中には、課題を設定して科学技術・イノベーションを推進する主要部が構成されております。一つは震災からの復興再生の実現、第二はグリーンイノベーション、第三がライフイノベーションであります。これらを、科学技術・イノベーション、一体的に推進するところでありまして、そのためには、システム改革を十分に行わなければ達成が困難であります。

 第二の柱は、我が国が直面する重要課題への対応でございまして、ただいま三つの柱を申しましたが、そのほかに、我が国が直面する重要課題が数多くあります。その中に、優先度を持って、何が重要な課題であるかということを設定し、科学技術・イノベーションを一体的に推進するということでございます。

 したがいまして、第一の柱、第二の柱が課題達成型の科学技術・イノベーションであります。

 第三の柱は、基礎研究及び人材の強化であります。基礎研究は、人類の英知を生み出す源泉であります。また同時に、科学技術のイノベーションを底支えする極めて重要な部分であります。また、それらを進めるのは、何といっても人材であります。これらを同時に強化していかなければなりません。

 それから、科学技術・イノベーションが社会にどういう位置づけになるのかということを先ほど申しました。そのことを中心にしたのが第四の柱でありまして、「社会とともに創り進める政策の展開」であります。

 これらの四つの柱を基本にして基本計画が構成されております。

 以上でございます。(拍手)

川内委員長 相澤参考人、ありがとうございました。

 次に、本庶参考人にお願いいたします。

本庶参考人 本庶でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、お手元の基本計画案に沿って私の考えを述べさせていただきます。

 まず、基本的な考え方でございますが、東北大震災、福島原発事故において、我が国の科学技術政策にシステム的欠陥があることが明らかとなりました。

 第一は、組織が分断され、総合的に全体像を掌握する仕組みがなく、危機対応体制がとれなかったこと。第二は、科学技術各分野がそれぞれにおいてタコつぼ化し、人事、研究資金まで含めた巨大な利害集団を形成していること。したがって、タコつぼを打破するために、異分野との交流をし、社会科学的視点も入れた全体像を見るべきであったと反省しております。

 次に、第三期までの科学技術基本計画の総括の中で浮かび上がったことは、一つ、十五年間、約六十兆円の政府投資によりまして、日本の科学技術の一般的なレベルが上がったことは間違いがありません。しかし、分野別推進政策の一つの弊害として、先ほど申し上げましたタコつぼ化を促進したことは否めない。この反省に立ち、社会の目指すべき方向を明示し、その実現のための科学技術・イノベーションが必要と考えたわけであります。

 科学技術を何のために推進するのか。一般には、経済成長につながる、あるいは国民の幸福度を向上させると言っておりますが、今回は、社会の発展という文言にいたしております。

 これは私の私見でございますが、科学技術は人類並びに国民の生存を守るための最大の武器ではないかと考えております。人類は、生物学的進化の原則、すなわち適者生存という法則からも逸脱しておりまして、ふえ過ぎて、自然の大きな力、地球上の限定された物質、エネルギー、食料の制約の中で、いかに生存できるのかという生き残りゲームになっております。

 このためには科学技術が不可欠であり、国際競争をしながら、自然との共生の中で生存をかけた自己防衛の手段として、国防を含めた包括的視点で活用すべきものと考えます。

 次の章でございますが、では、具体的な課題設定をいかになすべきか。生存を守るためには、経済的合理性に合わないことも少なくありません。日本国民の生存に必須の課題は何なのか、この決定には大きな価値観が入ることを認識すべきであります。また、この課題をだれがどのように設定するかが大切であります。

 例えば、現在、政府では、医師の数を増加させるために、新設医大をつくるべきか、既存の医学部の定員をふやすべきかということが審議会で検討されておりますが、私の考えでは、これは課題の設定が間違っている。まず、なぜ局所的な医師不足が起こるのかという全体像の把握がなければなりません。我が国では、このような矮小化された課題設定がしばしば行われます。これを防ぐためには、行政と独立した科学技術政策シンクタンクが不可欠であります。

 では、設定された課題をどのように解決するか。プロジェクトの提案があり、実行、成果の実証、さらにその実用化へと進行するのが常でありますが、これまでの仕組みではプロジェクトの提案に大きなエネルギーが割かれてきましたが、その後のところが手薄であったと言わざるを得ません。

 プロジェクトは、大きくトップダウン型とボトムアップ型に分かれます。トップダウン型というのは、例えば、世界一のスパコンをつくるといった具体的な目標を設定し、それにかかわるチームをつくり、省庁が研究資金を投入いたします。ボトムアップ型は、いわゆる科学研究費補助金がその代表例でありますが、研究者の自発的な創意でもって新たな分野を創造するものであります。一般に成功の確率は低いと言われております。

 しかし、ボトムアップ型は、失敗したときの責任者は明確であり、必ずペナルティーを受けます。次の研究費はもらえません。一方、トップダウンの失敗は、だれも責任をとりません。この点は、我が国の官僚制度の重要な問題点であると考えます。

 したがって、総体としてのコストパフォーマンスを見たとき、ボトムアップ型の研究の成果は決してトップダウン型に劣るものではなく、人材養成の観点も含め、国の研究費の少なくとも五〇%は投下すべきものと考えております。

 第四章では基礎研究と人材強化を述べておりますが、これは科学技術基本計画で初めて行われたことであり、言うまでもなく、科学技術は一朝一夕にして成るものではなく、基礎研究の層の厚みと幅広い人材の結集によってのみ新たな価値の創造が可能となるものであります。

 今日の大きな課題は、何といっても大学改革であります。護送船団方式から明確な研究重点大学と教育担当大学への振り分け、旧帝大への過度の集中を避け、地方分散的な投資、サッカーのJ1、J2、J3のような入れかえ戦可能な仕組みが不可欠であります。政治体制においても、東京一極集中では日本が脆弱であることは今回の震災体験で明らかになっております。科学の真髄は、多様な試みから新しい展開が始まることでありまして、戦艦大和一隻では決して勝てません。

 また、今後は、国際競争のみならず、国際協調の視点が大切であります。例えば、大型加速機器、ゲノムコホートのような、巨額、長期間にわたるものであります。

 第三番目に、産業政策とも関係いたしますが、日本は、ボリュームゾーンではなく、高付加価値で生き残るべきであります。科学の世界でいえば、定説追従型でなく、定説転覆型を大切にすべきであります。

 人材育成も重要であり、まず第一に、女性、若手の登用と彼らのキャリアパスを明示することであります。乳児保育施設の充実は不可欠であります。

 第二に、世界じゅうから人を引きつけなければなりません。米国の強みはここにありますが、その大きな理由は、成功すれば評価されるという仕組みがあるからであります。

 第五章におきまして重要なことは、課題設定の主体を総合科学技術会議とする改組により権限強化を行うことであります。現在は、連省国家と呼ばれるほど各省の権益が強く、総合的な科学技術政策の策定は非常に困難であります。既に韓国においては、今年度から科学技術政策は科学技術政策委員会にすべての予算を集約し、配分することを決定しております。

 第二に、科学研究補助金などの基金化による複数年度使用を可能にする制度は今年度から一部実施されておりますが、これをすべての種目に拡大し、効率的な運用を図るべきであります。

 第三に、各省庁が所管している研究開発独法の改革が不可欠であります。

 多くの独法は、研究資金としては大学よりはるかに恵まれております。しかし、多くの研究者は、必ずしも独法に行きたいとは思っておりません。なぜか。この問題を本質的に考え、独法の使命とは何か、その存在意義、また評価等について再検討することが不可欠であります。さらにつけ加えるならば、独法の理事長の任命方式が不透明であります。

 最後に、ライフイノベーションの重要性についてつけ加えさせていただきます。

 我が国の人口動態は、世界に先駆けて少子高齢化が進展しております。別添の新聞記事をつけてあります。その結果、現在、約四十兆円になんなんとする医療費がますます増大し、社会保障費が拡大しております。この中で、ライフサイエンス、医学研究への的確な投資により、国家存亡の危機を回避する正しい政策を引き出さなければなりません。この問題は、厚労医療行政とも密接にかかわるものであります。

 まず第一に重要なことは、予防医学の充実であります。このために、総合科学技術会議では、今年度から二十年間の予定でゲノムコホート研究を開始いたしました。福島での低線量被曝者の長期観察コホート研究も大切であり、全国統一基準のナショナルプロジェクトとして一体的に行うことが重要であると考えております。国家事業として、二十年間、ぜひこのプロジェクトの完成まで、まさに政治主導の御支援をお願いしたいと思っております。

 第二に、世界の医薬品開発は、各国、各社共通に大きな困難に直面しております。従来型の化合物スクリーニングによる新薬の開発は極めて効率が悪く、ここ数十年間、抗がん剤として画期的な新薬は、グリベック一件に限られていると言っても過言ではありません。しかしながら、近年、新たな原理に基づいた抗がん剤の開発がされる見通しが出てきております。ここにおいては、基礎的な研究の役割が多く、製薬企業と大学の緊密な連携が不可欠であります。このような産学連携の場を積極的につくる必要があると考えます。

 三点目、世界じゅうで新薬の開発能力のある国は、米、英、独、仏、スイス及び日本であります。しかし、日本では、新規医薬品機器開発を阻害する規制が多く、逆に、科学的安全性を検証する仕組みが弱いという弱点があります。

 第四、日本に製薬企業は七十社あります。残りの世界では三十社あります。イノベーション強化のためには集約が必要と考えます。

 まとめますと、第一点、何のために科学技術・イノベーションを推進するのかというと、人類、国民の生存のためであります。

 第二に、生存のために必要な根本的課題を分析し、適切な研究開発の方向性を示す仕組みと権能を持つ機関が必要であります。

 第三に、基礎研究と人材育成の強化は科学技術政策の一丁目一番地であります。国際的視野に立つ競争と協調が必要であります。

 第四に、大きな投資対象であります国立大学法人と研究開発独法の抜本的な改編、強化が不可欠であります。

 第五に、ライフサイエンスの推進は国家百年の計として極めて重要であります。

 以上でございます。(拍手)

川内委員長 先生、先生の発言メモの中で、四ページの「独法の理事長の任命方式が不透明である。」の後の「一部、政治主導の履き違いによる人事介入が行われているが、極めて問題が大きい。」というのはおっしゃらなかったんですけれども、読み飛ばされたのはわざとですか。はっきり言った方がいいですよ。

本庶参考人 読み飛ばしたというふうに御理解いただきたいと思います。

川内委員長 本庶先生、ありがとうございました。

 次に、奥村参考人にお願いいたします。

奥村参考人 それでは、私は、この第四期基本計画の科学技術政策としての意味づけを私の理解なりに御紹介させていただきたいというふうに思っております。

 この第四期基本計画は、大きく二つの点から見るべきだろうと考えております。

 一つは、これから十年間を見通した向こう五年間の国家戦略であるということが一つ、それから、一方で、これまで十五年間基本計画を実行して六十兆円使ったわけでございますが、その実績と課題を踏まえた見方の二点が要るであろうということであります。

 この第四期の基本計画の実効的な位置づけでございますが、最初に申し上げたいことは、今回、大きな政策転換が図られているということであります。それは、いわゆる分野別政策から課題解決型へ転換されたということでございますけれども、これの意味を大きく三点申し上げたいというふうに思います。

 その一点目は、施策推進組織、各予算元の役割、責任が従来以上に増大するということであります。

 研究開発の成果を社会の課題解決に結びつけるに当たっては、具体的な研究開発目標設定に加えて、目標達成に向けた適切なプロジェクト運営とその業務推進、及び、得られた研究成果を利活用を望む組織へ適切に移転する業務推進、この二段階が必要になります。とりわけ、今回は、イノベーション政策をうたっております関係上、この後段の業務が極めて重要であります。

 こういったことを考えますと、研究開発を実行する組織に加えて、まさにプロジェクトを企画、立案、管理する組織、それを施策推進組織と呼んでおりますが、より具体的には、下の注に触れておりますように、本省各部局、原課等でございます。この役割は極めて大きくなるということであります。

 しかしながら、私どもは、これまで原課の仕事のやり方というのは必ずしも注目してこなかった側面があり、むしろ、各原課の持つ個別の施策を検証したり、あるいは意見を述べるといったことをやってきた関係上、この原課の運営のあり方について、より注目すべきではないか、これが一点目でございます。

 それから二点目は、施策のPDCAサイクルを回すことによる研究開発力の強化ということを申し上げております。

 課題対応型の研究開発は、施策推進組織から研究実行組織に落とされ、具体的には研究者が実行するという階層構造で構成されておりますけれども、いわゆる施策推進組織は、施策の企画立案、その優先順位づけ、施策の推進、進捗管理及び成果の評価や活用まで、一貫した施策運営の立場にあるわけでございます。こういった姿で過去十五年間実施してきたことになります。

 しかしながら、御案内のように、一般的に研究開発では、当初計画に沿う形で順調に推移することは極めてまれであります。多くの場合、途中で何らかの変化を迫られることが間々あるわけでございまして、そうした変化に対応するプロジェクトの位置づけのありよう、あるいは設定した目標の適正さ、プロジェクトリーダーの指導力の適正さなど、国際競争力を確保できる水準の業務推進をもとにPDCAサイクルを回すことが施策推進組織には必要でありまして、それがまた同時に、その施策推進組織の研究開発能力、業務能力の向上につながるわけでございます。私は民間の出身でございますけれども、こういったことは通常の企業では当然のように行われているわけでございます。

 それから、もう一つ、三番目でございます。

 御案内のように、昨今の科学技術の進歩は極めて目覚ましいものがございまして、とりわけ、広範な科学や技術の知見を糾合して新しいイノベーションを生み出すという傾向は際立って強くなっております。

 一、二、具体例を御紹介しますと、皆さんお使いになっておりますGPS、これにはもちろんロケット、衛星も要りますけれども、アインシュタインの理論が使われているわけでございます。また、新しい、最新の科学、小柴先生のノーベル賞受賞のときにお使いになられた光電子増倍管、これは技術のたまものでございます。

 そういった意味で、科学と技術はお互いに相補的な関係にある、この傾向がますます強くなる。幸いなことに、日本ではこの両方とも国際的にそれなりの強さを持っているわけでございまして、私は、これをいかに政策的にあるいは現場でインテグレートしていくかということが日本の強さを発揮できる基本的な戦略であろうというふうに考えてございます。

 しかしながら、日本ではややもすると、科学と技術は違う、あるいは基礎と応用は違うということで、違いを強調するような風潮があるということは極めて残念であります。いかにこれを克服するかということが私は第四期を成功に導くかぎだろうというふうに思っております。そういう意味で、予算を握っております原課の責任は極めて大きいというふうに考えてございます。

 次のページをごらんになっていただきますと、それでは我々はどうであったのかということが一番目の最後に書いてございますけれども、私どもも、個別の施策を逐一見るというよりも、そういった施策を束ねて運営している原課の組織推進能力、業務推進能力をより精度高く見ていくことによって国際競争力を上げていくという方向性に転換すべきであろうというふうに考えております。

 それから、大きな二番目、これまで十五年間やってきたわけでございまして、1から5まで個別具体例を書いてございますが、ここでは一々申し上げません。

 ただし、一点申し上げるとすれば、日本の極めて特徴的な科学技術政策の一つは、この運営費交付金という制度であります。国立大学及び研究開発独法、この二つで国費の約三分の二を使っているわけでございます。毎年一%ずつ減らされるというのは極めて大きな問題ではございますが、逆に言いますと、中期期間中安定したお金がそれだけ使えるということは、企業出身の私から見ますと極めて重要な資金であります。安定的な資金であります。したがって、これをいかにその期間、安定して使い切るかという戦略が余り議論されないということは、極めて残念なことであります。やはり、これを改善することが四期の大きな課題だろうというふうに思っております。

 ぐっと下へおりていただきますと、2)で、したがって、この四期は、いわゆる三期まで網羅的に展開してきました各種政策の充実化を図り、その成果を収穫するタイミングであろうというふうに考えます。

 ということで、最後に結論といたしまして、やはり政府内における推進体制をより抜本的に強化するという意味で、科学・技術・イノベーション戦略本部の設置を早急に実行に移すようお願いしたいというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

川内委員長 奥村参考人、ありがとうございました。

 次に、白石参考人にお願いいたします。

白石参考人 白石でございます。

 まず最初に、科学技術・イノベーション政策というのは何なのか。ぜひ皆様にまず考えていただきたいのは、現在の日本の科学技術のポートフォリオというのはどうなっているのかということでございます。

 ごく簡単に申しますと、平成二十三年版の科学技術要覧を見ますと、日本には総数で八十四万人の研究者がおります。うち、国の研究機関、いわゆる独立行政法人等とそれから国立大学法人には十五万七千人の研究者がおります。研究者というのは、これだけが我々日本が持っている財産でございます。研究機関、装置、施設等についても、これまでの科学技術投資で、最先端の研究施設、装置等、随分整備されております。

 ですから、一言で申しますと、我が国の科学技術・イノベーション政策というのは、八十四万人の研究者、特に、そのうち、国の研究施設、大学におります十五・七万人の研究者と、国が持っている、あるいは国立大学法人等にある研究施設、装備等を使って、毎年三・五兆円から三・七兆円の資金を投入して、これによって、国として、我が国の国富、国力に資する課題、国民の安全で豊かで質の高い生活に貢献できる課題、さらには人類が直面するグローバルな課題の克服のためにどういう研究開発をやるのか、これが科学技術・イノベーション政策ということをごく簡単にまとめたことになります。

 ただ、二〇二〇年まで十年を見通しますと、少子高齢化の進展に伴いまして、日本の研究者の総数は確実に減少いたします。また、仮にGDP比で現在の科学技術投資の水準を国として維持したとしても、十年後には、世界の科学技術投資に占める日本の科学技術研究投資の割合は確実に減少します。

 この結果、世界的に見れば、これから十年、日本の科学技術が世界的に持つ重要度あるいは比重というのは落ちざるを得ない。そういう中で、どうやって、この財政の厳しいときに、科学技術政策というのをできる限り効率的に、めり張りをつけて実施していくのか。これが、私から見ますと、最も重要な科学技術政策の課題だと思います。

 それでは、これを基本計画の領域においてどういうふうに今回はまとめようとしたのか。

 もう既に三人の同僚の議員から説明がございましたように、大きく申しまして二つの点が震災前から大きな柱として立てられております。

 一つは、これまでの分野ごとの重点から課題解決型の設定になった。つまり、サプライサイドのロジックではなくて、ディマンドサイドから計画を考える。そこで、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、それプラス国として達成すべき課題というのを設定した、これが第一の大きい特徴でございます。

 もう一つは、当然のことながら、その基盤としての人材育成、それから基礎研究の充実ということを強調した。特にそこでは、国際的に競争力のあるすぐれた研究者の養成とすぐれた研究の実施ということが極めて重要なんだということを強調した。

 この二つが基本計画における重要なそもそもの柱でございまして、ここのところで資源配分におけるめり張りであるとか、あるいは投資の効率性ということを実現しようと考えた、こういう考え方になっております。

 なお、ここで一つ述べておきますと、現在の制度のもとで、これを具体的に方法のレベルで具体化したものが、昨年度から始まりましたアクションプランというふうに理解していただいていいんではないかと思います。

 次に、三点目に参りますと、では、震災の影響でどういうふうに科学技術基本計画の考え方を変えたか。大きくは変えておりませんが、四点ほどつけ加えた点がございます。

 一つは、ちょっとレジュメに書くのを忘れましたけれども、震災からの復興再生のために研究開発を行う、これは当たり前のことですけれども、これが第一点でございます。

 二番目に、エネルギー政策の見直しということで、特にグリーンイノベーションの政策の見直し、あるいはその強調点の移行ということがございまして、特に、再生可能エネルギーと分散型エネルギーとスマート化というところに強調点が置かれるようになっております。

 なお、原子力につきましては、エネルギー基本計画、原子力政策等の見直しを政府として既に決めておることを考え、これの展開を見て見直すという形で、判断保留というか、この部分については、基本計画には特に立ち入った書き込みは、私としてはしたというふうには考えておりません。

 三番目に、当然のことですけれども、国として安全にかかわる研究にもっと投資をする。

 四番目に、これは既に震災前からの基本計画の原案にもございましたけれども、ますます重要になったということで強調したこととして、社会とつくり進める科学ということをかなり書き込んでおります。

 ただ、そこでぜひ強調しておきたいことは、特に現在のような現代文明におきましては、科学技術というのはほとんど常に極めて複雑で高度に技術的なシステムとして存在しておりますけれども、それが一〇〇%安全ということは科学的にはあり得ないことですし、一〇〇%に近づけようと努力すればするほどコストは限界的に上がってまいります。したがって、この言葉は余り現在は評判のいい言葉ではないかもしれませんが、やはりどこかで思い切る必要はございます。この思い切りを間違うと、システムの持つ潜在的コストが顕在化する。

 だから、ここの思い切りというのは非常に重要でございますが、それにもかかわらず、科学技術政策あるいはこういう高度に技術的で複雑なシステムを現代文明として維持するのであれば、私はそれ以外の選択肢はないと思いますけれども、そのときにはこういう思い切りをすることが必要なんだと。一〇〇%安全ということはあり得ないんだということは国民の皆様が理解し、その上で、できる限りの信頼と支持を国として得るように努力することが重要だというのが、少なくとも私としては、社会とともにつくり進める科学ということで、重要な点であるというふうに考えております。

 なお、四番目に、これは当たり前のことですけれども、震災にもかかわらず、すぐれた研究者の養成、基礎研究の推進というのは、これは基本中の基本でございまして、ここのところは全く動かない。ただし、研究と教育のパフォーマンスに連動した形の資源配分、あるいはパフォーマンスを評価するときのグローバルな基準の導入、こういうことについては、いろいろとこれからまだエビデンスに基づいた政策あるいは評価のやり方というのはあるんだろうというふうに考えております。

 それから最後に、総合科学技術会議改組の問題にも少し入らせていただきますが、先ほど本庶議員の方から、研究のプロジェクトのレベルでの配分方針として、ボトムアップかトップダウンかという話がございました。そのときに、科学研究費補助金型のボトムアップのファンディングというのが非常に重要だというふうに指摘されまして、これは私も全く同じ考えでございます。

 ただ、ここで私が申し上げるボトムアップとトップダウンは、研究プロジェクトの組織の仕方、あるいはファンディングの仕方の問題ではなくて、むしろ、科学技術政策全体とそれにかかわる資源配分を政治としてどういうふうに考えていただきたいかということでございますが、仮にこれを現在のように各府省の課あるいはその下の単位で個別の施策をつくる、こういうボトムアップ型のシステムをこれからも維持しますと、リスクは非常に小さい、ただし、戦略性は低い。だから、いつまでたっても戦略性を上げようという議論が出てきて、にもかかわらず上がらない。そのタイプというのがこれからも続く。

 それに対してどうするかというと、仮に現行の政策形成の制度を維持するのであれば、私は、アクションプランというのはなかなかいい制度だろうというふうに考えております。

 それに対して、仮にトップダウンにして科学技術政策のめり張りを政治主導で決めるということになったときには、戦略性は極めて高くなりますが、リスクも高くなります。そのときには、間違ったときのコストというのは大変なことになりますので、いかにしてリスクヘッジをするかということをやはり考えていかなければならない。

 ここをぜひ、科学・技術・イノベーション戦略本部というもの、これはまさに先生方がつくられるわけですので、ここのところの戦略性とリスクの関係というのをよくよく意識して、その上で制度をつくっていただきたいというのが私のお願いでございます。(拍手)

川内委員長 白石参考人、ありがとうございました。

 最後に、廣渡参考人にお願いいたします。

廣渡参考人 廣渡でございます。

 私は、総合科学技術会議の有識者議員になってまだ何週間というところでございまして、日本学術会議の会長、エクスオフィシオ総合科学技術会議の議員ということで総理から指名を受けております。したがって、私は、第四期の基本計画の内容等について、これをディフェンドするという立場からではなくして、日本学術会議の会長として、第四期の計画をやや外から眺めた、そういう論点についてお話し申し上げたいと思います。

 学術会議については、皆さん御承知のとおりだと思いますけれども、一九四八年の日本学術会議法によって設置されまして、一九四九年の一月から活動を開始し、本年、六十二年目ということでございます。

 法によって課題や権限が明定されております。我々の課題は、科学者コミュニティー、日本の科学者を内外に代表して、その知を結集して、市民、産業、行政に学術の立場から助言、提言をするというのが法によって与えられた課題でございます。したがって、法は、学術会議に政府への勧告権という強い権限を与えているのは皆さん御承知のとおりでございます。

 直近の改正は二〇〇四年でございまして、二〇〇五年度から新しい体制に入っておりますが、従来の国立大学七学部の編成に対応して七つの部によって構成しておりましたものを、三つの部に編成し直しました。人文・社会科学、生命科学、理学・工学、この三つに大くくりしまして、二百十名の会員と約二千名の連携会員が学術会議のマネジメントと審議活動に参加をしております。

 同時に、学協会もまた、学術会議がその対象とする科学者コミュニティーの重要な担い手でございますので、学術会議の協力団体として、現在約千八百の学協会を協力団体として指定して、ネットワークをつくって活動しているところでございます。

 ただ、一つ問題なのは、学術会議の会員や連携会員は顕著な学術上の功績というものを選考の基準、唯一の基準にしておりますので、どうしても若い方を会員や連携会員に迎え入れることができません。三十代の会員がおりません。連携会員も、三十代、一、二というところでございますので、これでは科学者コミュニティーの中で次世代を担う若手科学者の意思やニーズを十分に反映することはできない、キャッチすることはできないので、現在、クオータ制、つまり一定の数を三十代の若手科学者から登用して学術会議の中にインテグレートして、そのニーズや意思というものを全体の学術政策の中に位置づけるという方向で、若手アカデミーと称する構想を推進しているところでございます。

 総合科学技術会議と学術会議の関係については、総合科学技術会議が設置されましたときから我々としては議論をしておりますけれども、日本の学術政策、科学技術政策を推進する車の両輪というように我々は位置づけて活動しているところでございます。

 東日本大震災に対応する提言、助言活動については、これはレジュメの二のところで細かく書いておりますので、ここは省略させていただきますけれども、学術会議のホームページですべて緊急提言等をアップしておりますが、先日の読売新聞の記者のインタビューで、十分にやったというふうにお考えですかと聞かれました。

 我々としては、かつてなくインテンシブな活動をやってまいりました。私自身もそのように自覚しておりますけれども、本当に国民から求められている学術の役割というものにこたえているかどうかというように問い詰めると、まだまだ足りなかったところがあるのではないか。まだこの問題は終わっておりませんので、現在進行形でございますので、一層努力をして国民の期待にこたえていきたいと思っております。

 第四期の計画について、我々の立場から拝見しますと、特に第五章の「社会とともに創り進める政策の展開」に示されている国民と科学技術のコミュニケーション、これはほとんど、我が日本学術会議の課題とそっくりそのまま一致するものであるというふうに考えております。

 つけておりますポンチ絵をちょっとごらんいただきたいと思います。私は文系の人間なので、すべての事柄が図によって示すことができるというふうには全く考えておりませんけれども、しかし、図は一定のイメージを鮮明に訴えることができます。

 実は、このポンチ絵は、七月の七日に日本学術会議の機能強化という文書を採択して、総会で承認をいたしました。二〇〇四年の改革以降の六年間を総括して、これから国民の期待に一層こたえるための日本学術会議のあり方について、機能の点検をし、改善すべき論点を整理したものでありますけれども、その際に、その文書の一番最後につけました図でございます。

 科学者コミュニティー約八十四万人の日本の科学者を代表する日本学術会議、これは自分たちのことでありますので、日本学術会議が真ん中に据えられているわけですけれども、役割は、一言で言えば、知の循環の駆動軸としての日本学術会議、このように位置づけております。

 日本学術会議は、知を生産するところではございません。知を生産する現場があり、科学者はそこで日夜さまざまな知の生産を営んでいるわけですけれども、それを受けとめて社会、行政に循環をする、その駆動軸であるという位置づけでございます。

 当然、国際的な発信もこの中に入りますし、科学政策、学術政策にかかわるさまざまな国内の諸機関との連携も踏まえて、日本社会全体の知の循環の駆動軸として日本学術会議を位置づける。それにふさわしい活動を展開しようというように考えているところでございます。

 したがって、この第四期の計画の第五章の国民と科学技術のコミュニケーションという課題にこたえる役割を我々は背負っているというように考えているところでございます。

 具体的には、お手元の見直し案の四十二ページのところには、日本学術会議を想定した具体的な指摘が行われているところでございます。

 ちょっと申し上げますと、「国は、学協会が、研究者による研究成果の発表や評価、研究者間あるいは国内外の関係団体との連携の場として重要な役割を担っていることを踏まえ、そうした機能を強化するとともに、」つまり、学協会の機能を強化するとともに、「その知見や成果を広く社会に普及していくことを期待する。また、国は、研究者コミュニティーの多様な意見を集約する機能を持つ組織が、社会と研究者との橋渡しや、情報発信等において積極的な役割を果たすことを期待する。」ということでございますので、私たちは、その期待を担って、これからも活動の質の向上と幅の広がりを追求していこうと考えております。

 学術からの提言というのは大変難しい性格を持っておりまして、我々は、学術から発信する声は、ワンボイス、ユニークボイスであることが必要だというふうに考えております。

 学術からさまざまな相矛盾する声が出ますと、それは国民にとって、もちろん国民の考える素材にはなるかもしれませんけれども、国民の議論をいたずらに混迷に導くことになりかねないので、我々はユニークボイスを形成することに努力を傾けたい。ただし、これは、一つの選択肢だけを学術の立場から国民に提言するわけではなくして、幾つもの選択肢がある。こういう提言も一つのユニークボイスのあり方ではないかと考えておるところでございます。

 最後に、第四期の計画については、二〇〇九年の十一月に「第四期科学技術基本計画への日本学術会議の提言」というものを総合科学技術会議に御提案いたしました。今回の案には、我々の考え方も多く取り入れていただいております。

 全体的に見ますと、政策的に、ある分野を強化し、ある課題を追求していこうという、これはある意味ではサイエンス・フォー・ソサエティー、社会のニーズ、社会の期待にこたえて、ある分野の強化やある課題の推進をする。それと同時に、これは基礎研究と言いかえてもいいかもしれませんけれども、サイエンス・フォー・サイエンス。この二つの側面は、科学の基本的な、本質的な契機でございますので、この二つの側面をバランスよく結合させて追求していくことがとても重要なことだというふうに考えております。

 この総合科学技術会議に提言いたしました日本学術会議からの第四期基本計画への提案は、実は二〇一〇年の四月の総会で「日本の展望―学術からの提言二〇一〇」というものを採択いたしましたが、内容的には、それに基づいております。

 この「日本の展望―学術からの提言二〇一〇」は、本体の報告は五十ページの報告ですけれども、この報告をつくるに際して、四十四のレポート、各分野からのレポート、それからグローバルな課題に対応したさまざまなテーマに関するレポートを踏まえまして、五十ページの「日本の展望―学術からの提言二〇一〇」というものを作成いたしました。毎日新聞の記者がレポートの総ページを数えましたら、千二百九十五ページになったそうでございます。私は全部読みましたけれども、千二百九十五ページ、全部読んだ会員がどれだけいるかというのは、ちょっと心配なところでございます。

 こういうボトムアップで、現場の科学者のさまざまなニーズや意見、それから将来の見通しというものを結集して、その上で中期的な学術からの展望を示したものがこの文書でございます。これは、六年ごとに改定しながら、日本の科学者コミュニティーに対する一つのガイドラインとして提起をしていくというシステムをつくってございます。したがって、科学技術基本計画は五年サイクルで回っておりますけれども、これとうまく対応させながら、ボトムアップの科学者の意見を国の全国計画の中に組み入れていくということが必要ではないかと考えております。

 最後に、もう一言だけ申し上げさせていただきますと、この「日本の展望―学術からの提言二〇一〇」をもとにしまして、二〇一〇年の八月二十五日に、政府に対して勧告を行っております。「総合的な科学・技術政策の確立による科学・技術研究の持続的振興に向けて」という勧告を行いました。

 一年以内に政府から何らかの回答をいただけることになっておりますけれども、勧告の骨子は、レジュメに書きましたように、二つございます。

 一つは、科学技術基本計画の根拠の基本法であります科学技術基本法は、その施策対象から、人文科学のみに係るものを除いております。したがって、基本的には、科学技術基本計画は、自然科学を対象にした国の振興計画でございます。日本学術会議は、これに対して、人文・社会科学をも学術政策の対象として国できちんと位置づけて、総合的な学術振興計画を立案すべきである、したがって、その点において、科学技術基本法の改正を希望するというのが第一点でございます。

 それから、これは総合科学技術会議の組織改編にかかわりますけれども、これに関連して、今後の、我々がイメージするところの学術の総合的な振興計画の立案に際しては、日本学術会議の意見を徴するという制度をぜひ設けてほしい。

 このことによって、ボトムアップとトップダウンの、先ほど白石委員がおっしゃいましたように、戦略性とリスクヘッジというふうに言いかえてもよいかもしれませんけれども、物事には絶えず二つの、これは相互に矛盾するけれども、しかし必ず相互にバランスよく二つの要素を組み入れなければ物事に適切に対処できない、たくさんのそういう場面や物事、問題がございますけれども、特にそういう点に留意をして政府に勧告をさせていただいたところで、回答を待っているというところでございます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

川内委員長 廣渡参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 参考人各位には、簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席で着席のままで結構でございます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊谷貞俊君。

熊谷委員 民主党の熊谷でございます。

 本日は、急な招集にもかかわりませず、本会に御出席賜りまして、本当にありがとうございます。

 議員各位からプレゼンテーションを承りまして、実は、私が質問しようとしていることもほとんどお答えになっていると思います。たった十分の時間しか与えられておりませんものですから、私の意見なり思いを述べるだけで過ぎちゃうんじゃないかなと思っておるんですが、重ねての質問になるかもわかりませんが、できますれば一点だけ質問させていただきたいと思います。

 まず、この委員会、今国会で設置されました特別委員会なのでございますが、これは歴史的に非常に意義があり、かつ責任の重い委員会だと私は思います。

 二つの意味でそう思うんですが、一つは、当然ながら、東電の福島原発事故に起因する非常に広範囲の放射能被害、事故、これを受けまして、実はこの委員会は、振り返ってみますれば、今から四十年ぐらい前ですか、科学技術振興特別委員会という名前で国会に設置されて、当時の中曽根康弘理事が原子力推進にらつ腕を振るわれた。原爆被爆国、人類で唯一の国である日本が、原子力の平和利用ということで、勇気を奮い起こして原子力発電の開発に乗り込んでいった、その推進をした大変大事な委員会でございます。

 たまたま、今、この現下におきまして、原子力科学、もっと広く言えば核科学の存続まで危ぶまれる非常に重要な岐路に立っているそのときに当たって、この委員会が開催されるというのは、これは本当に宿命的かなと思います。

 第二点目は、これは本日の議題の中心ではございますが、過去十五年にわたり、およそ六十兆の膨大な予算が投入されてきました科学技術基本法にのっとる科学技術基本計画、これがちょうど第三期を終了した節目でございます。第四期の策定に当たる今国会で、この委員会が特別に設置された。これも大変大事な節目であり、この二点で我々の責任は非常に重要である、こういうふうに思います。

 その中で、参考人各位から科学技術基本計画についての基本的なお話を伺いました。

 私も、実は三年前まで大学にずっとおりまして、電気、電子の分野で教育研究をやってきた者ですが、最後の十五年間は、実は科学技術基本計画のあおりを食らった被害者と言うとちょっと言い過ぎかもわかりませんが、研究者でございます。

 一般的に申しますと、日本の科学技術政策は一体何を重点に置くか。これは大変広い意味がございまして、科学技術振興施策というのは、議員各位もおっしゃったように、初等中等教育も含め高等専門教育に至るまでの科学技術のリテラシーといいますかテーストをはぐくみ、そういう自然科学あるいは学術一般に対して国民の視野を広げる。こういう基本的な、人材育成と言ったら簡単ですが、そういうものに対して、あるいはそういうところに携わる研究者の基盤の環境整備をするということが一つございます。

 もう一つは、産業施策、いわゆる科学技術を基盤とするさまざまな産業、現代社会におきましては、これを基盤にしないものはないと言ってもいいぐらいなんですが、その産業施策としての議論といいますか提言をするところが、議員諸先生がおられる総合科学技術会議なのかどうか、あるいは類似のJSTでありますとかございますが、ここが非常に日本は不分明であると思うんです。

 やはり、議員の中には、奥村議員を除いてはほとんどアカデミアの方であるわけですが、産業施策から見た科学技術のとらえ方とアカデミアとは違って当たり前でございます。これを両方同じように振興しようということをしますと、非常にアブハチ取らず、中途半端なものになる可能性がある。

 ですから、ここは完全に分けて、先ほど本庶先生がおっしゃったような国家プロジェクトというような名前のプロジェクトは、非常に限られた二、三のものに限り、そこに全資金を投入して、これは十年計画で、リスクもあるかもわかりませんが、アポロ計画のようにやる、こういうのと、やはり基盤を整備してやっていくところにほとんど大半のお金をつぎ込む、こういう二つの施策が私は大事だと思います。これは私の意見なんです。

 済みませんが、議員の先生方に、そういう考え方に対するのと、科学技術、日本における問題点は一体どこに一番問題があるのかということを一言ずつお答えいただけたらありがたいと思います。よろしくお願いします。

相澤参考人 ありがとうございます。

 それでは、私、その問題点というところで、最後に御指摘になった産業政策との絡みということでお答えいたします。

 今回、科学技術、イノベーションの政策を一体的に推進するというところにその答えがあります。

 今まで、科学技術だけに特化しておりました。産業政策は、総合科学技術会議の対象としておりません。そこで、そのちょうどはざまにあるところがイノベーションでありますので、イノベーションのところに特化して、全体、科学技術をリンクさせる、これが問題点であり、我々が考える解決の方向であるというふうに考えております。

本庶参考人 基本的に相澤議員がおっしゃったとおりでありますが、私は、産業政策というのは、これは国として極めて重要な仕事でありまして、科学技術・イノベーション政策とは違う視点が明確にあるはずであります。

 例えば、先ほど私、例を挙げました医薬品製造業の分野におきましても、これは産業政策としてどうするかということを厚労省なり担当省庁として明確な方向性を打ち出すべきであります。科学技術政策といたしましては、そのシーズをいかに効率よく生み出し、また産業へのつながりの場を構築するか、そこまでが基本的に総合科学技術会議の役目であると考えております。

奥村参考人 お答えいたします。

 まず基本的に、やはり産業政策は別であるというのが私の基本的な考え方であります。しかしながら、当然重なる部分があります。どう重なるか。

 日本の場合は、年間約十八兆円の研究費を使っております。これは官民合わせてでございます。そのうち、国費は約二割、二〇%でございます。したがって、産業が研究開発によってより国際競争力を上げるには、民間の競争力が上がる必要があります。

 そのために、科学技術政策で最も重要なのは、民間で働ける人材を供給することであります。次いで、その二割の中から新しい芽を出して産業界に移転して産業をより隆盛化する、そういう重さの順番だろう。したがって、国費でやる科学技術政策は、日本全体として見たときにはプラットホームの役割だろうというふうに私は考えております。

 以上です。

白石参考人 熊谷議員が指摘された産業施策的な政策ともっと基礎研究的なもの、この区別は、例えば科学技術基本計画案の中にも課題解決型と基礎研究という形で、この二つは非常にはっきりと区別されております。

 問題は、この間の資源配分をどうするかというのが一番難しいところでございまして、ボトムアップでこの資源配分をこれまでのように決めれば、徐々に徐々に変わることはありますけれども、目を見張る形で変わることはあり得ない。それに対して、トップダウンでやりますと、がらっと変わることはもちろんありますが、その分リスクも高くなる。まさに、そこは政府として決めるべきことだろうと考えております。両方とも重要です。

廣渡参考人 今、四人の先生方がおっしゃったこととほとんど変わりませんが、一つだけ新しいことをつけ加えさせていただきますと、日本学術会議は、先ほど申し上げたさまざまな文書の検討の中で、科学技術というつないだ言葉、これはサイエンス・アンド・テクノロジーではなくて、サイエンス・ベースド・テクノロジーのコンセプトになっているのではないか、つまり、技術について重点を置いたさまざまな施策の推進になっているのではないか、そうではなくて、学術全体、人文・社会科学から自然科学まで全部を抱合した、そして本当に日本社会の、国民の将来を展望するための学術の総合推進ということが必要であるという考え方でさまざまな提言を準備しているところでございます。

 以上です。

川内委員長 次に、馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩と申します。

 きょうはありがとうございました。

 まず最初に、本庶先生にお伺いいたします。

 私見として、科学技術は人類並びに国民の生存を守るための最大の武器であるというふうに表明しておられますが、よりよく死ぬための科学技術というのはないんでしょうか。というのは、ライフイノベーションのところでも出てまいりますが、自殺大国となった我が国において、どういう状況で死を迎えるかということは、やはり国民すべてにとっての大きな課題であると思います。

 したがって、本庶先生とともに学術会議の廣渡先生にも、人文科学の分野からというアプローチもおっしゃいましたが、私は、実は国会で尊厳死、自然死法制化の議員連盟のメンバーとして十年近くこの議論をしておりまして、あえて、よりよく死ぬための科学技術のあり方、そこへのアプローチ、こういう議論というのがなされているのか、そしてその必要性をどうお感じかということを、まず大所高所の観点から教えていただきたいと思います。

本庶参考人 お答えに関しては、短い答えはイエスであります。

 まず、私がサバイバルゲームでと申し上げましたのは、大きな単位としてのことであります。日本国が生き残るかどうか、あるいはある集団が生き残るかどうか。先生の御提起の、よりよく死ぬということは個のレベルの問題であります。しかし、個のレベルの問題は全体に影響を与えます。

 先ほど私が提起いたしました四十兆になんなんとする医療費、この問題の中において、よりよく死ぬということを国民全部が考えるということは非常に大きなことであります。なぜなら、一個人の一生涯に使う医療費の半分程度が最後の一、二年に使われるという統計的なデータがあります。つまり、ほとんど無駄なところに医療費が使われております。

 ですから、私どもは、いかに予防をして病気にならないようにするか、その方がコストパフォーマンスもよし、また個人のよりよく死ぬためにもいいということで、先生のお考えと私どもの考えは全く一致いたしております。

廣渡参考人 学術会議は、先ほど申し上げた「日本の展望」のいろいろな議論の中で、特に人文・社会科学を中心にして、学問の追求すべき原理的な出発点は何かということが常に問題になっております。

 今、私たちは、非常に平凡な言葉かもしれませんけれども、人間の尊厳と多様性の中の平等をいかに実現するかということが原理的な出発点ではないか、あるいは最終的な目標ではないかと考えておりまして、具体的な問題としては、既に学術会議の中でも、生殖医療の問題それから老年学、高齢者社会に個人としてあるいは社会としてどう対応するのかといったような問題を検討しております。

 それから、尊厳死の問題、脳死の問題、こういった死と生にかかわる問題は、二十一世紀の学問にとって根本的な最も重要な取り組むべき課題ではないかと思っております。

馳委員 私はあえて、うつ病とかアルツハイマーとか、加えて難病も入ると思うんですけれども、わからないことがわかるようになって、自分の死をどのようにして迎えるべきかということが明らかになると、覚悟というものが生まれるのではないかと思っているんですよ。

 たまたま私は、実は高校で古文と漢文の教員をしておりまして、一番力を入れるのは、やはり死生観の授業になるわけです。一番かけ離れた科学技術・イノベーションとこういった死生観という、精神世界の議論かもしれませんが、私は、いかに個人としての人間が安心して納得をして死を迎えるかということを、イノベーションと科学技術の分野からアプローチするということの必要性は感じてしまうんですね。

 したがって、改めて廣渡先生にお伺いするのは、科学技術者の倫理観、これについての議論というのは、学術会議から指摘はされないんでしょうか。

廣渡参考人 科学者一般についての行動の倫理規範等については、既にいろいろな学会でも、学術会議でも検討して、どういう立場で科学的な研究を進めるか、あるいは研究の発表の際についてはどういう倫理規範があるのかといったようなことについては検討を行っております。

 自然科学者と人文・社会科学者は、同じ科学者、サイエンティストという名前でくくられても、そのアプローチの仕方や発想の仕方においてはやや違うところがございます。例えば、安心というコンセプトは科学的にはかることができるか、つまり、どういう要件が満たされたら人々は安心ということを感ずるのかといったようなことは、なかなかエビデンスでは証明できない。

 したがって、私は、科学には、エビデンスベース、つまり、これまで人間が蓄積してきた知の上に立ってさまざまな見通しをつけると同時に、イマジネーションといいますか、人間の持っているさまざまな将来に向かっての予測力とか空想力というものも含めて、科学はそれを内在化して、人間のいろいろな問題に答える必要があるのではないか。

 今、馳委員がおっしゃったように、死生観というのは、死生学という学問によって、最近、文系の先生方を中心に、しかしこれは理系の先生方も含めて取り組まれている課題ではないかと思います。具体的にまだ、学術会議でこの問題についての提言が出たというふうに私はちょっと記憶がございませんけれども、いずれ取り組むべき課題ではないかと思っております。

馳委員 大震災の後に、アクションプランの四本柱の一つになりました、復興再生並びに災害からの安全性向上についてちょっとお伺いしますが、内容を見てみますと、どれも予算措置が必要な事業ともちろん思いましたが、科学技術の開発という観点からして、どんな技術開発あるいは国家戦略として想定されているのか不明です。

 放射性物質の除染技術の開発以外に、どういうふうな科学技術、あるいはポストエネルギーシフトの時代に備えた構想があるのか。例えば、太陽光発電にしても、安定性がないと言われていますが、だったら宇宙に太陽光パネルを設置して、宇宙ステーションにつくって日本に引っ張ってくれば、一年じゅう二十四時間太陽光を引き受けることができるわけで、こんな議論というのは京都大学の総長も既にしておられますよね。

 私は、そういう大胆で世界のどぎもを抜くような構想をぶち上げていくということも、プランの中にあってもいいのかなと思いながら、ちょっとお尋ねをしたいと思いますので、ここはやはり産業界を代表して、奥村先生にお伺いした方がいいかな。奥村先生、そういう議論があったのかなかったのか、また除染技術以外の科学技術についての議論、こういったことについて教えていただきたいと思います。

奥村参考人 それでは、お答えいたします。

 まず、御指摘の宇宙太陽光発電、これについても、私どもの方で議論もありました。また、この技術は、別に最近出てきたわけではなく、歴史の長い技術でもあります。

 私の伺っているところでは、解決すべき課題は、当然コストの問題と、それからあと、宇宙からどういうふうに地上へ伝送するのか。マイクロ波送電等が検討されているようでございますけれども、これもまた、何か、宇宙の電離層の状態とかに影響されるやに伺っておりまして、検討は進んでいるかと。私の理解でございます。

 御案内のように、エネルギーは、最も重要なことは、安定的に、かつ、コストがそれなりにリーズナブルに抑えられるということが必要条件でございまして、産業界としても、当然そういった安定的な電力というものは極めて熱心に探してございますし、また開発もしているところでございます。

 したがって、国として進めるべきは、御指摘のように、極めてハイリスクの研究、しかし、成功すれば産業界のみならず国にとって極めて有益なもの、そういったプロジェクトにむしろ投資していくべきだろうというふうに考えてございます。それが第一点。

 それから、復興再生に関する技術開発でございます。

 除染以外につきましては、具体的には、今回の、より耐震性のすぐれた建築物ですとか、何よりも、より早く津波の状態を検知できるような技術はないかとか、個々の技術開発については、まさに私ども、現在、アクションプランをベースに各省と議論をしている最中でございまして、まだ予算要求前ですので表へ出てきておりませんけれども、いずれ、このアクションプランのそれぞれの重点的取り組みの下に個別施策が並ぶといいましょうか、採用して推進する、そういうことになるかと思います。

 以上でございます。

    〔委員長退席、津村委員長代理着席〕

馳委員 ありがとうございました。

津村委員長代理 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 きょうは、参考人の先生方、御出席を賜り、また貴重な御意見を伺わせていただきまして、大変ありがとうございます。私、この答申、特に見直し案を軸に、感想と、御質問をしたいと思っております。

 私は、この答申、大変高く評価しておりまして、例えば、課題中心主義、それからまた科学技術とイノベーションを一体として扱うこと、それから、基礎研究、人材育成の重要性、大変私は高く評価する点でございます。

 また、この委員会自体が、科学技術・イノベーション推進委員会として、まさに、皆様の問題意識を踏まえて、行政府に先駆けてつくられたということもあります。この点もぜひお見知りおきいただければと思っております。

 他方、私は、この答申、案を見て、ややちょっと食い足りないと思うのは、今回の三・一一、この大震災を科学技術としてどう受けとめるのか、どういう本質的なチャレンジがあり、どういう課題が設定され、どういう方向に戦略を打ち出すべきかという点について、ちょっと踏み込みが足りないのではないかというふうに率直に言って感じております。

 各所に、この震災で非常に大きな被害があり、何とかしなきゃいけないというナレーションはあったとしても、このとらえ方について、より踏み込んだものが必要かと。先ほど本庶先生から、タコつぼへの反省という御指摘がありましたけれども、そういったことを含めて、今回の大震災が科学技術に対してどういう本質的なチャレンジ、どういう課題を突きつけているのかということについてお聞きをしたいと思っております。

 さらに、そういった基本的な質問を踏まえまして、二つの具体的な点で私が申したいのは、一つは、今回の震災を通じて、やはり日本列島が地球物理学上特異点に位置するということが改めて再認識された。要するに、四つのプレートがせめぎ合って、非常に特異な地点にある。それによって地震、津波がいつでも起こり得るわけであって、まさにこれは日本社会の大前提であると。

 そういったことを踏まえると、例えば、戦略的な方向性としては、予知ということ、さらに、分散、自立、ネットワーク化といったことは、あらゆることのシステム特性としてこれから強調する必要があるだろう、そういったものは、当然、科学技術に大きな問題提起をしていると思っております。これが一点。

 それからもう一つ、具体的に思っているのは、エネルギーシフトという話が今、馳先生からありましたけれども、確かに今回、原発は非常に重大な事故を起こしました。多分、報告書では、そこから急に再生エネルギーに飛んでいるんですね。私は、そこにもうちょっとクールな議論が必要だと思っておりまして、確かに、今の原子力エネルギーの技術は未完成であり、非常にリスクが高い。このままであれば、私は非常に、リスクとコストの点から日本にはなかなか厳しいと思っておりますが、もう一つ、問いかけとして、この核エネルギーについて、本質的に安全な技術体系があり得るのかという問いかけがぜひとも必要だと思っております。

 最近ちょっと読んだ本で、古川和男さんという研究者の書いた「原発安全革命」というのが非常に参考になったんですが、今の原子力エネルギー研究は、ウランを使う、それから固体燃料を使う、それから大型化するという大前提の中で、枠組みでやっているんですが、例えばウランのかわりにトリウムを使う、そうするとプルトニウムの発生が非常に少ない。それからまた、固体燃料でなくて液体燃料、例えばトリウム溶融塩などを使って七百度ぐらいの液体でやれば、非常にコントロールがしやすくなって危険性が大幅に下がる。また、小型化することによってリスクも下がるといったことで、非常に参考になることでございました。

 もう一つ、この科学技術の答申としては、再生エネルギー、これは非常に大事でありますけれども、すぐにそこに飛ぶだけではなくて、もう一度原点に返って、核エネルギーの研究開発のあり方についても、もう一度問題提起をしていく必要があるのではないか。もし、日本がこれに成功すれば大変これは世界的貢献になるわけであって、そういう提起も必要だと思っております。

 今、基本問題と派生する二つの問題を申し上げましたが、各先生方、簡単にお答えいただければと思っております。

相澤参考人 お答えいたします。

 第一の点は、遠藤議員が御指摘のとおり、私どもも、科学技術に突きつけられた基本的な問題として理解しております。

 そこで、先ほども私の冒頭に申し上げました五月二日付の科学技術政策担当大臣と有識者議員のペーパーに、その点を踏まえて、我々は深く反省するものであるということを表記いたしました。

 今後、この科学技術に突きつけられたことをどう検証していくかということも極めて重要になります。そのときに、科学技術者、関係者が検証するだけではなく、ここに広く、政策策定者も、あるいは一見関係がないように見える方々も含んで、分野を超えて検証することがまず第一であろうかというふうに思います。そこから何が本質的な問題なのかを抽出いたしまして、それをこれからどう対応していくべきか、こういう筋道で進めるべきであろうというふうに思います。

 第二点でございますが、エネルギーに関してでございます。

 ただいまの一挙に再生エネルギーにという点でございますけれども、この点は、そういうことをこの基本計画に盛り込んでいるわけではございません。エネルギーの中で基幹エネルギーとなる部分については、火力、原子力等の今進めております基幹エネルギーはこれを着実に進めざるを得ない。ただし、原子力の今回の発電所の事故による種々の制約、これに対しては、今後かなり中長期的に制約が続くであろう、その部分をどう回復していくか。

 二つあります。

 一つは、原子力以外の基幹エネルギーのむしろ充実であります。ただし、この場合には、エネルギーに関しては二つ大きな問題がございまして、低炭素化へ向かうこと、それからもう一つは、安定供給であります。

 低炭素化に関しては、基幹エネルギーについて今非常に大きな目標に進んでいるところでありますので、この過渡期は、現在の火力等の基幹エネルギーを、低炭素化を条件にしつつ、部分的に不足分を補足していくということをまず前提としております。

 そこに加えて、再生可能エネルギーは、もうこれは昨年度も重点項目として挙げているわけです。これはだから、一挙に基幹エネルギーに置きかわるというスタンスではありません。現在、再生可能エネルギーの大量導入の大きなバリアになっているところは経済性であります。この部分を技術開発によって何としても加速的に実現を図る、そういうことによって再生可能エネルギーの飛躍的な拡大を図っていくというところでございます。

 以上でございます。

本庶参考人 まず、日本列島の置かれた地政学的な状況というのは御指摘のとおりであり、これに対して最大限の配慮をした科学技術的な政策及び配備ということは、先ほど申し上げましたように、日本国民の生存にとって不可欠なことでありますから、これは重点的にとらえるべきであります。

 第二点目の、具体的なエネルギー政策に関しまして、これは私の個人的な見解ですが、原子力発電があしたすぐ不要になるという状況でないことは多くの国民が考えております。

 したがって、これは、一定の代替エネルギーが確実になった時点でなくなり得るものである、その間どうするかというところにおいて、私は、やはり米国の取り組みというのを非常に参考にすべきであると。

 私の持っております資料によれば、一九七〇年代、米国の原発の稼働率は約五〇%でありましたが、つい最近は九〇%であります。そして、ヒューマンエラーを含めた実際のアクシデントというのは、どんどんどんどん減っております。それから、日本と同じような地震地帯にありますディアブロキャニオン、カリフォルニア州にある原発の構造を見てみますと、津波に対しても地震に対しても非常に対応しております。上方に大きな水のダムをつくって、自然エネルギーで水がずっと来るような設計になっております。すなわち、アメリカは、スリーマイル島の失敗を糧に年々年々安全性を向上させていっております。

 ところが、東京電力は、二〇〇六年に論文を発表いたしておりまして、あそこにおきまして津波が起こる確率、五十年以内に五・七メートルの設計基準を超える津波の襲来する確率は四%と。四%というのはかなり現実的な可能性でありますから、これに対する手当てが不十分であったと言わざるを得ません。

 したがって、十分な安全性に対する配慮をしながら、我々としては、科学技術を総動員して生存のために必要なエネルギーを確保していくべきである、こういうふうに考えております。

津村委員長代理 大変恐縮でございますが、既に遠藤委員の質疑時間は終了しておりますので、簡潔にお答えをいただければと思います。

 奥村参考人、お願いいたします。

奥村参考人 それでは、お答えいたします。

 最初の御指摘に関しましては、私はどう考えるかと申しますと、科学技術の受けたチャレンジと科学技術者の受けたチャレンジとを明確に分けて、科学技術的にまずはきちっと検証することが先だろうというふうにお答え申し上げたいというふうに思います。

 それから、日本の地政学的なリスクに対応していわゆる分散自立型という御提案ですが、それは御説のとおりでございますけれども、同時に、このことはコストが上がるということをあわせて御発言いただく必要があるかと思います。国民にはそのことを御理解いただくということだろうと思います。

 それから、最後に御指摘の新たな原子力の、いわゆるトリウム溶融塩のお話かと存じますけれども、これにつきましても、既に日本でも過去議論されたやに伺っておりますし、また、現在でもよその国では研究が進んでいるやに私も聞いておりますので、日本におきましても、幅広く核の研究を進めていく必要があるだろうというふうに思っています。

 なぜならば、二十一世紀にとって、日本のみならず、核の平和利用は恐らくグローバルな課題になるだろうと思います。日本が原子力発電を仮にやめたとしても、どこかの国は原子力発電を続けるでありましょうし、そういたしますと、これはまさに地球規模の課題でもありますので、引き続き科学技術的に真摯に検証していくことは不可欠だろう、また、これは日本の責任でもあるだろうというふうに私は考えております。

 以上です。

白石参考人 どうもありがとうございます。

 震災からの教訓ということについてのみ、二点指摘させていただきたいと思います。

 一つは、今回の震災の前の調査を見ますと、国民の科学技術への期待は非常に大きかった。だけれども、今回、それとともに、不安、不信も非常に大きくなった。国民の理解と信頼と支持のないところで、長期にわたって国として三・五兆円も三・七兆円ものお金を投入して科学技術政策というのを一貫して行うことは不可能でございます。ですから、その意味で、国民に対してきちっと、できる限りオープンに説明し、信頼と支持をできる限り得るようにするのが非常に重要なんだということが、当たり前ですけれども、改めて学んだことの第一点です。

 それから第二点目は、私が先ほども、極めて複雑で高度な技術的なシステムとして現代における科学技術というのは存在しているんだと申しましたが、ここにおいては科学技術の問題とガバナンスの問題というのが両方ございまして、これから二度とこういう、例えば福島の原子力発電所の事故のようなものが起こらないようなシステムを設計するには、この科学技術上の知見と並んで、今回我々が学んだガバナンス上の知見というのを十分に生かしていかなければいけないというふうに考えております。

廣渡参考人 日本学術会議の議論ですけれども、一九五四年四月の会員総会で、先生方御承知のように、原子力平和利用についての三原則、公開、自主、民主というものを声明で出しました。それが日本のその後の原子力平和利用に対する学術の基本的な見地として、それから後も二回にわたってその声明を確認する声明等を出しておりますので、今回の事故の後に我々が最初に考えましたものは、これまでの日本の学術の、原子力の平和利用及びその安全を確保することについての我々の学術的な理論的な営為について、もう一度検証する必要があるということでございました。

 それから、エネルギー政策の問題について申しますと、既に学術会議は中間的な提言を出しております。電力供給源の選択肢について六つのシナリオがあるという中間的な提言を出しておりまして、今、その六つのシナリオについてそれぞれ、科学技術的にどのような根拠づけが可能か、データ、エビデンスを踏まえて、国民に対して、最終的に選択するのは国民である、科学技術の立場からは、この六つの選択肢についてそれぞれ、こういうエビデンスでこういうメリットとデメリットがあるということを整理して、最終的な提言を発表したいというふうに考えているところでございます。

津村委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 ちょうど、この基本計画のもとになります科学技術基本法、十六年前になりますが、一九九五年十月三十一日の衆議院科学技術委員会で、私も賛成し、全会一致で成立させたものが出発になっております。この法律をつくるときに、日本学術会議やら大学財政懇談会などさまざまなところから、要するに、基礎研究費が八〇年代ずっと横ばい、これをやっておったら、純粋基礎研究が大学の研究の本領なんだけれども、その大学においてこれがしっかり行われなかったら応用研究の基礎が崩れてしまう、非常にそういう危機感がいろいろなところから語られて、そして、何としても科学技術基本法をつくって予算をふやさなきゃいけないということが出発であったんです。

 しかし、その後、先ほどもお話がありましたように、国立大学の運営費交付金がどんどん減ってきておりますし、それから、一人当たりの研究費にしても、あの法案の後若干ふえたんですけれども、しかし大体において横ばい。

 それで、私は、最初に相澤先生と本庶先生にお伺いしておきたいんです。

 基礎研究費という問題について、ここをやはり、きちんとしたものを一定保障するといいますか、つまりそれは、いわば富士山のすそ野を広くして高い富士山をつくっていくのか、枯れたままで、ピーク値ねらいといいますか、プロジェクト研究にはどかんと出すんだけれども、ピーク値がたまたま当たったらうまくいくけれども、ピーク値が外れてしまったら余り成果は上がらなかったという結果も出てくるわけです。

 研究現場にいらっしゃる二人の先生から、基礎研究というものをどういうふうに重視して前進させていくかということについてのお考えを最初に伺っておきたいと思います。

相澤参考人 まず、基礎研究費というものがどこまでカバーしているかという定義が問題になるかと思います。今、御質問を伺って、基礎研究費なのか、あるいは……(吉井委員「経常研究費で」と呼ぶ)そうですね、そこの解釈がまず問題になるかと思います。例えば、国立大学法人の運営費交付金は、基礎研究であることに限定はされていないわけでありまして、応用も含むしという定義がまずございます。

 そこで、こういうような場合には、基盤的経費という表現の方が理解しやすいのではないかと思います。基盤的経費は本当にいろいろな分野のところを底から支えるというものでございますので、ここはもう徹底的に、現状維持どころか、さらにこれを増額していかなければ根っこが枯れてきてしまうという考え方でおります。

 そして、基礎研究費という意味で定義が明確なところは、もう一つは科学研究費補助金、こういうものが入っておりますけれども、これは競争的資金でございます。これは純然たる基礎研究へ向けられております。ですから、この部分もやはり拡大を図るというところでありますが、これはもう基本計画にも書いてございますし、現実にそこの部分は着実に増額をしております。

 もう一つは、御質問の、とがったところだけを目指すのか、あるいは基盤をしっかりするのかというところでありますが、これは両方しなければならないということでございます。

 それで、基礎研究の強化というところでは、基本計画に二つ出しているわけです。一つは、まさしく世界のトップを目指すようなとんがったもの、それからもう一つは、すそ野の広い、多様な分野にまたがる基礎研究を強化する、この両方でいかなければいけないんだという考え方でございます。

本庶参考人 私、先ほど申し上げましたように、ボトムアップ型の研究というのは非常に重要である、政府が決めるプロジェクト研究というものと一対一ぐらいの割合でもいいんじゃないかというふうに考えております。

 それで、先生が問題にされております、大学等の運営費交付金の減額によっていわゆる自由な研究のお金が減っているんじゃないか、こういう点に関しましては、一つは、すべての大学を一括して運営費交付金の中でとらえているというこのやり方自身に私は問題があるんだと思う。

 それから、競争的資金に頼り過ぎると、今度は、既に大きな設備とか人員を抱えているところに集中しがちである。やはり、サンショウは小粒でもぴりりと辛い、そういうふうな地方の中核的な人材、そういう拠点というものを育てていく、そういう形で透明性の高い競争的な雰囲気をつくりながら、その中でボトムアップの研究が全体として発展する、それが望ましいんじゃないかと思っています。

吉井委員 奥村先生と白石先生には本当は核にかかわってちょっとお伺いしておきたかったんですが、ひょっとしたら時間がなくなるかもしれませんので、先に廣渡先生にお伺いしておきたいんです。

 科学技術基本法の改正で人文・社会科学を明確に位置づけるようにという御意見でしたけれども、私もそうだというふうに思っているんです。

 具体的に、例えば今回の地震にしても、地震の考古学とかかなり学際的な分野になってきていると思いますし、それから、例えば日本の古代国家成立の歴史を調べるとなると、同位体分析の手法とか、これは、歴史ということでいけば、大学でいえば大体文学部にあったりしますが、同位体分析などで出土品を分析するとなると自然科学の世界になるので、そういう点では、先生のおっしゃったことは非常に意味があるなと思っているんです。

 こうしたことについて、先生自身の取り組んでいらっしゃることなどを含めて御意見をお聞かせいただければと思います。

廣渡参考人 おっしゃるように、私の友人に古代史の友人がいますけれども、古代史は読む資料が限られていますので、限りなく自然科学的な手法を採用して、一番古代史の研究者がパソコンにも詳しいというような状況がございます。

 学術会議の議論の中では統合的研究あるいは統合科学というふうに称して、最も大きく言えば、サステーナビリティーに向けて学術の総合的な研究をいかに進めるかということもございますし、今回の大震災との関係でいいますと、安全の統合科学ですね。統合科学という場合には人文・社会系の学問が全体の総合性を確保し、さらに、統合型の学問というのは社会のニーズにこたえるという点が非常に強うございますので、やはり、それは価値判断や将来に向けたある種の我々が実現を目指すべき目標といったものの選択にかかわる議論をしなくてはいけない。

 自然生態系に関する学問などは、最初から、これは地球、人類の保護、持続を図るための学問であるという価値的な立場から出発して自然科学を展開する、そういう学問も出てきているわけでございますので、統合型の学問研究というのはこれからますます重要になる。第四期の中に示されているいろいろな諸課題もそれに類するものがたくさんあると存じます。

 そうであるとすれば、一層、科学技術基本法は、自然科学のみを施策の対象にするのではなくて、全体を含めて国の計画、施策の対象にして、その中で、自然科学あるいは人文・社会科学の固有の領域の発展と、さらに、統合的な学問や研究の発展というものを全体を見通すような政策体系なり計画体系を打ち出すべきではないかというふうに考えております。

吉井委員 時間が参りました。ありがとうございました。

津村委員長代理 残りの質問は、ぜひ自由討議の方でお願いいたします。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日の参考人の皆様には、大変高度なというか専門的なお話も含めてお聞かせいただきました。

 まず冒頭、相澤議員にお尋ねいたしますが、総合科学技術会議の歴史を見ておりますと、二〇〇八年にノーベル賞学者との懇談というか意見交換というのがございました。今般の原子炉の事故を含めて、日本の科学技術、科学技術界が世界からどのように見られておるか、あるいは国民からもどう見られておるかということで、近々、例えばシカゴにおられる根岸英一さんとかあるいは野依先生もいろいろお書きでありまして、日本の知の代表であるノーベル賞学者と今回の事象をめぐって、震災並びに原発事故、意見交換の御予定が総合科学技術会議におありかどうか、お願いいたします。

相澤参考人 ノーベル賞受賞者の方々と公開の場で、フォーマルな意見交換というものは現在のところは予定をいたしておりません。

 ただ、今お名前が出てきたような方々とは、いろいろな機会に意見交換をさせていただいております。

阿部委員 私からは、ぜひ国民にも開かれた形で、自主、公開、民主ではございませんが、今やはり必要なことは、国民が科学技術のあり方と自分の存在を結び合わせていくところだと思います。専門的な、いろいろな難しい状況を理解しなきゃいけないということもありますが、ぜひその点にも開いていただけますようお願いいたします。

 二点目は、本庶先生にお願いいたします。

 科学技術会議が一九五九年にでき、総合科学技術会議が平成十三年にでき上がっております。先生は、このたび、行政と独立した科学技術政策シンクタンクというものを設置して、科学技術とある意味で国のこれからということを、より行政とは分離して、しかしもっと強力に進めようという御提案と受けとめました。

 たまたま私は一九九五年の新聞記事を見ておりましたら、これは科学技術会議の時代ですが、科学技術基本法などができ上がりまして科学技術と社会ということが大きく問われたときに、科学技術会議そのものが実は大変いい結果も上げている反面、すぐれた内容を評価する海外の政策担当者も、なぜか我が国のさまざまな科学技術の計画立案の達成度についての評価が全然ないんじゃないかという指摘をしておられました。

 具体的には、今回、三期目の基本計画の中で「もんじゅ」の推進というのが重点分野に次ぐ形で出てまいっておりますが、残念ながら、五年を経て、核燃料サイクルというのは非常に難しいところに立ち至っておると思います。

 私は、これを科学技術的に見てどうかというようなことも政策点検していただけると、より国民の考える土台になると思いますが、政策点検機能は今後どういうふうにしていったらいいとお思いでしょうか。

本庶参考人 これにつきましては私も簡単に触れましたが、従来、提案のときは、つまり予算をつけるときは一生懸命議論するのでありますが、その結果がどの程度達成され、社会にどのような効果をもたらしたか、ここの検証は極めて問題であったということを総合科学技術会議の議員全員が確認しており、それに向かっての新しいシステムを構築すべきである、そういうことを考えております。

 ですから、シンクタンクというふうに申し上げたのは、行政の各省庁につながりますと、先ほどちょっと申し上げましたが、日本の官僚システムは失敗したということを決して認めないというのが伝統になっておりまして、徹底的なレビューというのは不可能であります。ですから、そこから独立した形できちんとしたプランニングからレビューまで含めたことをやり、それと将来の総合科学技術会議に匹敵する新しいイノベーション戦略本部が密接な連携をする、それが望ましいと考えております。

    〔津村委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 ありがとうございます。ぜひ、検証ということも含めて今後の政策展開がなされるよう、私もお願いしたいと思います。

 次に、白石議員にお尋ねいたしますが、レジュメを拝見いたしますと、原子力利用については、判断保留という形で先ほども現状の御説明がありました。

 ドイツなどでは、今回の福島事故をきっかけに、簡単に言うと原子力倫理委員会のようなものをつくりまして、技術者だけじゃなくて、諸般のいろいろな国民の声を代表するような方を入れて、その中での論議で、ドイツは、国の政策として二〇二二年に脱原発を決めたということがございます。

 判断保留ということも、確かに総合科学技術会議のお立場としてはあり得ると思いますが、いつまでも保留もしていられないというところもあって、ここを補っていくための何か方策をお考えであるのか、あるいは、ドイツのこうした原子力倫理委員会などの取り組みはどう評価されますか。お願いいたします。

白石参考人 どうもありがとうございます。

 先ほども少し申し上げましたが、原子力の平和利用、エネルギー利用につきましては、国としては、科学技術・イノベーション政策だけではなくて、エネルギー政策あるいは原子力政策そのもの等々、極めて密接に連動しております。

 ですから、判断保留というふうに申し上げましたのは、国として、特にエネルギー政策をどうこれから見直し、新しいエネルギー政策の基本計画をつくっていくのか、それを見ながらでないと、科学技術政策としても、こちらだけが一方的に基本計画の中で何か長期的なことを言うわけにはいかないということで、判断保留というのが正確な言葉かどうかわかりません、むしろ、それを見据えつつ、我々としても柔軟に対応していくというのが基本的な考え方でございます。

 今回の大震災によって、この問題が非常に重要な政策課題であるということは、これはもう総合科学技術会議の議員全員が十分認識しておりますので、そこについては、真摯に、オープンに、できる限り情報を公開しつつ議論していく必要があるだろうと思います。

阿部委員 ありがとうございます。

 エネルギー政策への国民参加という意味で、これからまた御尽力いただかねばならないと思いますが、学術会議の廣渡さんにお伺いいたします。

 先ほど、六つのシナリオをおまとめいただきまして、私も拝見して、大変わかりやすいし、よくできていると思います。こうしたシナリオをどう国民とやりとりしていくか、そのための場の設定はどうなさるのかというのが一つと、あと、願わくば、私は、ここに使用済み核燃料の制約、置き場がない状況が続いていくということもございまして、世界的な問題になっております。六つのシナリオにはちょっと含まれていないようにも思いましたけれども、トータルに国民に選択肢をお示しいただけるのは学術会議かなと思いますので、このあたりも含めて、どのように今後御計画でありましょう。

廣渡参考人 現在、委員会で鋭意審議中でございます。三つの観点があって、一つは電力の安定供給、これは経済的なコストの問題、それからCO2に見られるような地球気候変動、地球環境問題、そして国民生活への安全、国民の生命身体の安全の問題、この三つがメリット、デメリットを考える判断基準だということで議論を進めております。放射性廃棄物の問題も議論の中に入っております。今後の、詳細なデータをつけた、エビデンスをつけた、国民に向けて最終的にお示しする報告書の中には、その問題も含めて提案できると思います。

 それから、国民とのコミュニケーションの問題ですけれども、委員会の審議の中でも、こういう問題に即してシンポジウム等を開催して、市民の皆さんとの広い討議を踏まえながら、さらに委員会の議論を深めていく必要があるのではないかという議論が出ておりますので、それは積極的に私の方でもサポートをして、そういう機会をつくっていきたいなというふうに思っております。

阿部委員 ありがとうございます。

川内委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終わりました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名を述べた上、お答えいただく参考人を御指名いただくようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は、おおむね三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 参考人各位には、重ねて、簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

阿知波委員 民主党の阿知波吉信です。

 私は、二つ質問させていただければと思います。

 一問目は、東日本大震災についての基本認識、これは相澤先生が御指摘されたところなんですが、この問題について、相澤先生、本庶先生、奥村先生、白石先生にお尋ねします。二問目の問題を廣渡先生に御質問いたします。

 まず、この中で、自然の脅威が科学技術による予測・制御の範囲を超える大きなものであると、科学技術の限界を再認識し、このようになっておりますが、例えば白石先生ですと、コストは限界的に上昇する、したがって、どこかで思い切ることが必要であるという御認識を示されております。それからもう一方で、本庶先生は、先ほど、津波の可能性が四%あって、これは無視してはいけないんだというお話もされておりますし、生存を守るためには経済的合理性に合わないことも少なくない、このような認識もされております。

 ですから、今回の地震、津波、原発の事故、地震の規模ですとか、津波の高さですとか、過去にあったことですとか、さまざま勘案しますと、本当にこれが科学技術の限界であったのか、ここを御質問させていただきます。

 単に、コストの話、経済合理性の話、人間の欲望の話、極めて人間的な問題ではなかったのか、このように感じておりまして、改めて、科学技術の限界であったのかどうかをお尋ねいたします。

相澤参考人 ただいまの御指摘は、極めて本質的な問題だというふうに考えます。

 まず、そこに掲げました科学技術の限界でございます。これは、科学技術そのものに、原理的なという意味での限界というものも我々はやはり認めざるを得ないであろうということであります。

 もう一つの視点が、その科学技術がどういうシステムとして構築されているか。これが、そこの文章では、技術システムという表現になっております。これは、科学技術そのものというよりは、システムという構築物になる。ここの構築に瑕疵があるのかないのか。これは全く別の視点であります。科学技術が本来持っている限界ということではなく、システム構築上の問題点というのがあり得る。これは検証しなければならないという点であります。

 もう一つ、そこに指摘しておりますが、今度は科学技術のマネジメントであります。科学技術が実際に行われている場、そこのところには、人的要素も含めて、いろいろなマネジメント、白石議員はそこのところをガバナンスという表現をとられました。ここの部分が、まさしく人的な瑕疵があるのかどうかという部分であります。

 私どもは、科学技術そのものにも限界があり得る、システム上にもこれは十分問題があり得る、それから、マネジメントにも問題があり得る、そのいずれもきちっと検証するべきだという意味でございます。

本庶参考人 今回のことは、二つの要素があります。

 まず、地震が起こったこと、それからその大きさ、それに伴う津波、これに関しての予測は、恐らく不可能に限りなく近かったであろうと想定します。したがいまして、あの被害をより少なくできなかったか、これに関してはまだ検討の余地があると思いますが、前もって予測することは非常に難しかった。

 原発に関しては、これは明らかに想定内に入るものであった、あり得る、それに対しての対処がとられなかったのは経済的な合理性を優先させたためであろうという指摘は各方面からされておりますし、私もそうではないかと考えます。

奥村参考人 お答え申し上げます。

 今回の大震災、今、本庶議員もおっしゃったように、地震、津波の話と原発の話はやはり分けて考えるべきだろうと思います。

 地震、津波につきましては、従来経験したことがないとはいえ、今回の地震、津波の予測に関しては多々科学技術上の不備があった。それは必ずしも科学技術上の本質的な限界を指すものではなく、今回間に合っていなかったというふうに私は理解しております。言いかえれば、今後さらなる検証によって、より安全サイドの知恵を科学技術上から得ることはできるというふうに考えてございます。

 原発の事故に関しましては、これは科学、技術の問題。この科学技術の問題についても、やはり二つの視点を取り入れないといけない。これが当初できた時点での科学技術のレベルの問題と、それから現在における原子力発電所の科学技術のレベルの話。言いかえますと、古くなったものに対しては科学技術上の本質的な劣化が起こっているわけでございます。したがって、これをマネジメントするのは人でございます。それは恐らく、今本庶議員の御指摘のように、経済合理性を優先させた面が大きいのではないかというふうに報道等から私も感じているところでございます。

 したがって、重要なことは、余り私どもが十分な検証をしないうちに科学技術の限界ということを言いますと、これから先への進歩を見失うおそれがありますので、このあたりは私どもも気をつけて言葉を使ってまいりたいというふうに考えてございます。

 以上でございます。

白石参考人 もう三人の方々の説明でほぼ尽くされておると思いますけれども、私が一〇〇%に近づけようとすればするほどそのコストは限界的に高くなると申し上げましたのは、仮に九九・九%のところを九九・九九%まで上げようとしたら、そこのコストは非常に高い、だけれども、どんなに頑張っても一〇〇%にはいかないんだということを国民的に理解していただくことが重要だということを申し上げたいというのが私の趣旨でございます。

 その上で、今回の原子力発電所の事故について申しますと、これは先生の言われたとおり、極めて人間的な問題というのがあって、それを、私は別に科学技術が一〇〇%完璧だとは思いませんけれども、それと同等かそれ以上にガバナンスに問題があったということで、ガバナンスという言葉を使ったのはそういう趣旨でございます。

阿知波委員 それでは、廣渡先生にお尋ねします。

 私は、日本学術会議の役割と権限ということについてお尋ねしたいんですけれども、これまでのこの委員会でも、例えば放射能の人体に対する影響ということについて専門家の方からお聞きしてきました。例えば二十ミリシーベルトがどれだけの影響があるかということについて、同じ問題について、ある専門家の方は、大丈夫です、マルです、ある方は、だめです、バツです、このようにはっきり分かれます。それで、最後は政治家が判断してください、そういうことだったんですけれども、より正しい決断、選択をするためにも、専門家の先生の中から、例えばこのような行政に対する助言、提言を行うですとか、政府に対する勧告権が与えられているということなんですから、学術会議としましても、自分たちはこう考えるんだと政府に勧告するなり提言するというようなことをしていただくと非常に政府の運営も助かるというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

廣渡参考人 まさしくそういう役割を期待されて、日本学術会議があると思います。

 さりながら、八十四万人の科学者の意見、もちろん、これは事実上八十四万人にアンケートをとってどうこうというわけではありませんけれども、それぞれ現場で知的な活動に従事している科学者がたくさん集まって議論いたしますので、全員一致という形で結論がまとまるというのは、事柄がシビアになればなるほどなかなか難しいということがございます。しかし、我々は、その中でもワンボイス、ユニークボイスを追求するということが重要だと思って努力をしております。

 例えば地球環境問題について、温暖化のリスクがあるかないかということについても、少数の見解は、これはまやかしであるという意見もあり、放射能の被害につきましても、どんな小さな、つまりどんな低線量であっても、あるいは低線量がむしろ大きな被害を生むというような意見もまだ存在しているといいますか、そういう見解の対立の中で、しかし最終的には政治が決断をして何らかの防護基準をつくらなくてはいけない、こういう問題ですので、非常に微妙な問題があるということは十分我々としてもカウントしながら対応せざるを得ないということになっております。

 御承知のように、六月に会長談話を出しまして、これは国際放射線防護委員会の考えている国際的にスタンダードになっている考え方を踏まえて、この考え方はどういう基準に基づいて防護対策をとっているのか、日本政府の対策は基本的にはこの国際的なスタンダードになっている考え方に基づいて行われているということを解説いたしました。したがって、この解説に対しては、国際放射線防護委員会の勧告の基礎になっている科学的な見解についての批判があって、そういう見地に立たれる科学者は日本学術会議の会長談話について批判をされております。

 けれども、これは日本学術会議の役割をどう考えるか。特に、こういう大震災後、福島第一原発の事故後の日本社会の状況の中で我々がなすべきことは何かという、我々としても一つの政策的なといいましょうか、政治的な判断を迫られている状況にあると思いますので、できるだけ果敢にやるということは一方で必要だと思います。しかし、それが国民の中でさらに一層混乱、コンフュージョンを起こすようなことであれば、我々の役目は一体何だったのかということにもなり、慎重かつ大胆に今後のこの問題を考えていかなくてはいけないかなと思っております。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳と申します。

 福島第一原子力発電所事故は私の選挙区であります。

 三月十一日、事故が起きる前の日本の姿は、身近に放射能はございません。そこで、平時のときに決められた放射能の基準、クリアランスレベル、これが平時のときにはあります。しかし、三月十一日を過ぎた後は、もう身近に放射性物質がある日本の国の今の姿なんです。身近に放射性物質のある今の日本の中で、どう放射性物質とつき合っていくか。平時の、ない時代につくった基準を、非常時、もう身近にある今のときに、平時の基準を非常時のときに使っていくということは、これはあってはならないことだと思います。でないと、私たちの生活を続けることができません。

 具体的に言うと、汚泥です。汚泥の焼却灰がかなり高い、これをどこにも持っていくことができない、こういうことでありますので、先ほど学術会議の先生の方からもお話ありましたように、まず、放射性物質を科学技術でどうやって取り除いていくか、どうかここの研究を、先ほどお話を聞いていると除染というところに余り力がなかったような形で聞こえたんですけれども、そういう放射性物質が身近にある世の中に対してどう科学技術が対応していけるのか、相澤先生にお聞きしたいと思います。

相澤参考人 お答えするのが大変難しい御質問でございますが、まず、平時のときと非常時の問題、これにつきましては、本当に御指摘のとおり、きちっとリスクをマネジメントするということを徹底していかなければいけないのであろうというふうに思います。ここのところが今まで明確になっていなかった部分もかなりあるのではないかと思われます。そこで、今回の基本計画の中にもリスクのマネジメント、リスクのコミュニケーション等のシステムを強化するべきであるということを明記しております。これは、御指摘のようなことにも対応するために、そういう基盤をきちっとしていかなければいけないという意図でございます。

 それから、放射性物質の除去の問題でございますけれども、これも今回の基本計画の中にもございますし、アクションプランの中にも入っているところでございます。ただ、ここの中に入っているのは、即実効性のあるもの、当面はこれを優先しようというところであります。したがって、これから先の問題としては、そういう技術をもっと開発していかなければいけないという要素がございますが、ここのところは優先度があるかと思います。現在のところは、即実行できるところにウエートを置いて優先的に進めるというところだというふうに理解しております。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 先ほどに続きまして、相澤先生と奥村先生と白石先生に一問お伺いしておきたいと思います。

 一九三〇年代末に、当時、物理学会というのは非常に国際的にオープンでしたから、情報が交換され合って、その中で核分裂とか核融合の発見というのは人類史上価値ある発見であったと思うんですが、問題は平和利用が可能かどうかということですね。何しろ巨大科学となってきますから、その点については、超ウラン元素の問題、プルトニウムのような核兵器材料になるものとか、それから放射能汚染の問題とか、高レベル放射性廃棄物の処分の問題とか、また、核融合でいいますと、ITERにしても炉材料の問題から、何しろ極高真空から液体ヘリウム並みの極低温に至るまで、非常に炉材料の問題で難しい問題があったり、トリウムの除染問題とか、そういうのが全体としてあるわけです。

 そうすると、今やっているような原発にしても、やはりサイクルとして関係するのかどうか。原発の部分だけはできたんだけれども、あとは関係していない場合に、それを商業化していいのかどうかということが科学技術の上では本来問われるべき課題であったと思うんですが、現実には突っ走ってしまっているんですが、こうした問題についてのお三方のお考えというものをお聞かせいただきたいと思います。

相澤参考人 御質問の点は極めて本質的であると考えます。

 科学技術の発展を考えてまいりますと、どうしても、要素技術から生まれ、そしてそれがすそ野をそのままにして広がっていく、逆三角形の展開であろうと思います。しかし、これは、要素技術が社会に実装されていく段階を考えますと、要素技術が点であってはいけなかったはずなんですね。それがそのまま広がっていってしまったということであります。

 ですから、先ほど御質問のあったときに、私が科学技術のシステムとしての問題というのがあり得るんだということを申し上げたのは、まさしくその点でございます。一つの要素技術だけでシステム全体を構築していくということが、大きな問題点をもまた醸し出すというところであります。

 ですから、ますます複雑なシステムを構築していくわけですから、非常に横断的かつ俯瞰できるシステム科学が非常に重要になってまいります。これは原子力発電所だけではなく、あらゆるところに今そういう問題があらわれてきております。

 ですから、科学技術の政策上の方針としてもそこのところを重視していかなければいけないということで、基本計画の中にもそういうところを指摘している部分がございます。これが極めて本質的な問題ではなかろうかというふうに考えております。

奥村参考人 ただいま先生御指摘の点は、今現在進めておりますいわゆるウランの核燃料サイクルの御指摘かと思います。

 御案内のように、プルトニウムも出てまいりますし、高レベル廃棄物も出てくるという中で、これらについて私が現在理解しているところは、何よりもまず、まさに科学技術的に将来ともフィージブルであるのか、可能性があるのかということを冷静に検証する。現在の、当事者というよりも、むしろ世界の知恵を集めて検証する。

 それぞれに技術的にトラブっているという情報は私も認識してございますけれども、それがまさに科学技術上の限界でトラブっているのか、そうではなくて、取り扱っている科学技術者、あるいは、先ほどの言葉で言えば、マネジメントはガバナンスの問題でトラブっているのか、このあたりをきちっと検証した上で答えを出すべきことだろうというふうに思います。

 まさに御指摘のとおり、今現在のウラン核燃料サイクルであれば、現在進めているような方向性がすべてうまくいかないと閉じないということは理解しているつもりでございますし、極めて重要な問題であるということでは先生との認識は一致しているのではないかというふうに思います。したがって、いかに透明に検証して結論を出していくのかという議論が必要かと思います。

 以上でございます。

白石参考人 先生の質問は極めて根本的な問題であると思います。

 今回のあの福島第一原子力発電所の事故で明らかになったことの一つは、原子力の平和利用の問題が、日本だけの問題ではなくて、まさにグローバルな問題であって、だからこそ、これだけグローバルにこの問題に対していろいろな支援の申し出等も来ている。ですから、先生が提起されました、サイクルとして果たして完結するのか。これは、サイエンティフィックにそれが可能なのか、それから技術的にそれができるのか、それについては、まさにグローバルに対応するということが必要であるというふうに考えております。

 そういうことで、先ほど、基本計画の中での原子力関係の研究開発についてはこれから見直しがまだ必要だ、エネルギー政策等の議論を踏まえた見直しが必要だと申しましたが、私としては、恐らくそのあたりが非常に重要な論点になっていくのではないかというふうに考えております。

吉井委員 ありがとうございました。

本多委員 民主党の本多平直と申します。

 参考人の皆さん、きょうはありがとうございました。

 各先生に、科学技術予算のあり方について、端的にお聞きをしたいと思います。

 政権交代をして、民主党政権、予算をどう編成していくかというのはいろいろ苦労をしているんですが、この科学技術の分野はかなり成果を上げているんじゃないかと私は思っています。今総理大臣をしていますけれども、理系の菅直人は科学技術の担当大臣をしておりましたし、今筆頭理事をやっている津村さんも政務官時代に相当努力をされて、例えば科学技術予算の大幅な増額であるとか、その編成過程の透明化、これはかなり先駆的だと思うんですけれども、複数年度で使っていけるように基金化をしたというような、これまでの政権ではできなかった成果を上げていると思います。

 これについて、できればポジティブに評価をしていただきたいと思うんですが、御意見をお聞かせいただきたいことと、今後もし課題があれば、科学技術予算の編成について一言ずつ御意見をお聞かせいただければと思います。

相澤参考人 科学技術予算の編成における改革を進めてまいりました。その改革の始まりのところが、まさしく菅直人科学技術政策担当大臣の時代でございました。そのことがもとになり、アクションプランという新しいツールを展開してきております。

 基本的な考え方は、各省が概算要求のプランニングに入る前に、総合科学技術会議が科学技術予算の重点分野はどういうふうなことなのかということを特定いたします。そして、その方向に政策誘導していくというのが基本的な考え方であります。来年度概算については、特に、もう科学技術関係予算の中の最重点化だというふうにアクションプラン対象を特定いたします。これは四本の柱であります。

 こういうふうなことをしていきますと、今まで省の中でいろいろと細分化されていたもの、あるいは省と省との間に本来だったらば一体化して進めなければいけないような内容、そういうものが全体が見えてまいります。こういうことで、私どもは予算の効率化等々を図っていくというところであります。

 ですから、そういうような方向で進めてきておりますので、できれば、要望といたしましては、科学技術関係予算については財務省との関係もありまして、この予算の枠のところを大枠として財務省も見ていただき、そして、その中の省の配分に相当するところは毎年入れかわりがあるくらいの構造的な変化がある、そういうことを可能にしていただくということが、これは全体の予算拡大にもつながるし、それから、それが効率的に使われるという道ではなかろうかというふうに考えます。

本庶参考人 重複は避けます。

 民主党政権になって、先ほどの基金化も含めて、よくなったことはたくさんございます。非常に問題点は、マニフェストにある総合科学技術会議の改組ということがいまだに実現していないことであり、これはかなり大きなことであり、ぜひ完成していただきたいと思っております。

奥村参考人 全体の予算、日本は三・五兆円です。アメリカは、私の手元にある文科省の資料では、二〇〇八年度で十一兆円です。つまり三倍。これはGDPに当たっているわけですが、ただし、アメリカは約半分が軍事費でございます。つまり、ノン軍事費の分野だけでいいますと、約五兆ないし六兆で、日本の三・五兆に対しては、相対的にアメリカは小さい、日本は大きい、そういう構造になっております。

 これからの科学技術予算は、より質の高いものにしていく必要がある。そのためには、まさにPDCAサイクルであり、むしろ予算ベースより決算を重視して、それを予算に反映する、そういう仕組みをぜひできたら一緒につくらせていただきたい。

白石参考人 基金化は極めて重要でございます。予算も確かにふえました。ですから、こういうところは非常に結構ですが、一つ申し上げますと、本会議は、震災もありましたけれども、昨年の十二月以来、一度も開かれておりません。できれば来週開いていただきたいと思いますけれども、科学技術・イノベーション政策が重要である、これが日本の将来にとって決定的なんだというふうに政権として考えるのであれば、その政治的意思をはっきり本会議の開催という形でぜひ示していただきたいと思います。

 それから、第二点目は、これは既に本庶議員からも指摘されたことでございますが、総合科学技術会議は改組するということがもう既に一昨年の九月に言われております。それ以来、総合科学技術会議というのは、事実上、制度としては宙づりになっております。これは、はっきり申し上げまして、科学技術・イノベーション政策を推進していく上では非常に大きなマイナスだということもぜひ認識していただきたいと思います。

廣渡参考人 特につけ加えることはございませんけれども、先ほど申し上げたように、私たちは昨年の八月に政府に勧告を差し上げておりますので、ぜひ御対応をお願いしたいと思います。

松野(博)委員 自民党の松野でございます。

 白石参考人と本庶参考人にそれぞれお聞きをしたいと思いますが、まず白石参考人に、今の予算づけの話でありますけれども、言うまでもなく、科学技術の推進に対して私たち政治家がする最大の仕事というのは予算をつけるということでありますが、お話の中にあったとおり、この作業のPDCAがうまく回っているかというと、うまく回っていないんだろうというふうに考えております。

 特に、PとCがうまくいかないのは、投資に対して、適正、必要な予算規模というのはどの程度のものなのかということを政治家が考える判断基準が、なかなか明確なものがないということでありますし、チェックに関して言えば、お話があったとおり、決算ベースでやるという話の中で、どういった基準でこれをはかればいいのかというのもまた不明確であります。

 白石先生のお話の中に、教育と研究のパフォーマンスに連動した資源配分ということと、パフォーマンス評価におけるグローバル基準の導入というお話がありましたが、私は不勉強で、こういった評価に関してグローバル基準がどのようなものがあって、どう導入することが今の日本に必要なのかという点に関してお話をいただきたいということと、本庶参考人には、研究投資の対象として一番大きい国立大学法人と研究独法の改革が必要だというお話をいただきましたけれども、具体的にどういった改革のイメージをお持ちなのかについてお話をお伺いしたいと思います。

 以上です。

白石参考人 例えば、大型の研究プロジェクトの場合であれば、現在でも中間評価それから最終評価は行われておりまして、そこではきちっと評価が点数の形で、点数というか、AだとかBだとかという形で実際に評価されます。ところが、最終評価が、次の、同じ人が代表者になってまた別のプロジェクトを始めるときになかなか反映されないなんということがよくございます。そういうところをうまくつなげるだけでPDCAのサイクルというのは随分回るようになるのではないか、これが一つの例です。

 それからもう一つ、個々の研究者のパフォーマンス評価ということで申しますと、これはそれぞれの分野におけるピアグループの評価であるとか、あるいはそれぞれの分野におけるリーディングジャーナルへのパブリケーションだとか、あるいはどのくらい引用されているだとか、こういうものを使えば、私は、それですべてだとは申しませんけれども、かなり、パフォーマンスのいい人と悪い人というのは、これは判断できる。それを何らかの形で資金配分にも生かしていくということは、これは先ほど私が述べましたエビデンスベースの政策の形成ということから、これから大いに進めていくべき課題であると考えております。

本庶参考人 まず、大学の改革の必要性につきましては私のメモの三ページ、それから独法に関しては四ページにかけてに記載しておりますが、特に大学が、これまで護送船団方式で、国立大学は全くつぶさない、例えば運営費交付金も一律に削減ということでありまして、そこにおいて明確な評価基準あるいは個々の特色の出し方ということが政策的には示されていない。大学法人化によって、各大学はどういうふうな給与体系をつくってもいい等々の自由度は与えられたにもかかわらず、依然として横並びであります。

 その一つの原因として、総務省による定数キャップというのがありまして、人件費が抑制されているために、大学ごとに運営費交付金を自由に配分したい、大学ではもっと若い人をたくさん採りたいと思ってもそういうことはできない等々の見えざる規制があるということも一方にあるかと思います。

 それから、独法に関しては、これは非常にたくさんの種類があり、十把一からげというわけにはいきませんが、非常に大きな問題は、各省庁が所管している独法の中における明確なミッションとその達成に対する評価というのを本来やれるはずでありますが、そこがはっきりしていない。また、先ほどちょっと申し上げましたが、人事体系に関しましてもはっきりした方針が見えない。

 これは一時議論いたしまして、独法を一つの国立研究開発機関というふうなものに一体化して、その中でそれぞれのミッションに向けたセクションなり部局に再編するというふうなこともあり得る選択肢ではないかというふうに考えております。

石津委員 民主党の石津政雄と申します。

 各先生方には大変ありがとうございます。

 私は、そもそものところで奥村先生と白石先生にお尋ね申し上げますが、お二人とも今までの研究のあり方を、各分野型から、これは基礎的研究というふうに読みかえてもよろしいのでしょうか、課題解決型、応用科学的なものにシフトすべきであるというふうに理解できる形になっております。

 そもそも私の理解では、どのような基礎的なミクロな研究であっても、そもそもの問題の設定は極めて複合的な課題を持っている。その研究の課題意識から多分入ってくるのかな、こういうふうに私は思うんです。

 そういう基礎的な研究のエビデンスの複合化、総合化が、結果として課題解決型の研究に膨らんでいくということでありますから、これはお互いにシャトルでありまして、両方ともお互いに高め合って、そして成果を出していく、こういうふうになっていくものだろう、私はこういうふうな理解があるのですが、そうではなくて、あえてここで課題解決型にシフトすべきだというふうに御提言されているということは、現在、どうもそういうふうには理想的になっていないというような背景をお持ちだからこそ、ここであえて指摘されているのかなと。

 もしそうであるとするならば、日本の科学技術の研究等々については、先進的な科学技術立国とされるような国々と比較してどういうところに問題があるのか。それをもしも政策的な、制度的な視点からあるとすれば教えていただきたいと思います。

 以上です。

奥村参考人 それでは、お答え申し上げます。

 そこに書いてございます、分野別から課題解決型へという中身におきます分野と申しているのは、必ずしもいわゆる基礎研究だけを含むものではございませんで、具体的に申しますと、例えば材料ですとかITですとか、ある技術領域別に言っておりますのが分野別ということでございます。

 御案内のように、現在、例えば具体例で申し上げますと、医療一つとってみましても、ITネットワークを使う時代でもあります。もちろん、薬の研究も必要でしょう。また、手術をするのにもロボットが使われる時代になっております。という意味で、例えば医療の質を上げようといたしますと、単に薬の研究だけではとどまらない、技術的には広がりが出てきているのが今の世の中である、あるいは、将来も恐らくこの傾向はより強まるだろうということがベースの認識にございまして、今回、科学技術の政策のあり方をより世の中の課題解決型へシフトする。

 ただし、御指摘のように、これが成り立つのは、それぞれの要素技術が世界的に競争力を持っているということが前提でございますので、この部分を捨象して見ていくということにはならないかと思います。

 これが、より進めていく上で、制度の問題かという御指摘もございましたけれども、私は先ほどのメモでもちょっと申し上げたんですが、一番大事なことは、現場における研究者の意識の問題でございます。ややもすると、言葉はきついんですが、ややタコつぼ的といいましょうか、さまざまな科学や技術の知恵が集まって世の中の役に立つにもかかわらず、科学者、技術者にはどうしても専門性があります。専門性を超えて、専門性を持ちつつ視点だけは広角に見る、こういう人物をこれから育てていく必要があるだろう。私は、それがまさに大学、大学院の役割だということで期待しているわけでございます。制度の問題というより運用の問題でかなりいけるのではないかというふうに考えてございます。

白石参考人 分野の重点化から課題達成型へというのは、まさに、既に今、奥村議員から指摘ありましたように、材料だとかITだとかナノテクノロジーだとかという、そういう分野から課題型に変えるんだと。

 では、そこでの課題は何かといいますと、例えば環境エネルギーについて申しますと、あるいは基本計画の言葉ですとグリーンイノベーションの課題について申しますと、日本としての非常に大きな課題は、低炭素社会の構築とエネルギーの安定確保だろう。では、この二つの極めて重要な課題を達成するには何をしなければいけないのかという形で問題を立て、それで基本計画をつくる。これが、分野重点化から課題達成型へということの転換の大きな趣旨でございます。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 本庶先生に二点、端的にお伺いさせていただきます。

 一点は、先生のレジュメの中に、人類は生物学的進化の原則、すなわち適者生存から逸脱しているという大変ショッキングな表現がございました。このことについてもう少し御説明をいただきたい、これが一点でございます。

 第二点は、先ほど松野委員からもお話がございましたが、いわゆる研究独法について。

 私たちも二年前に超党派で、研究独法の改革こそ重要であるという観点から、研究開発力強化法という法律をつくりました。本質は、研究独法がもう少し自由にいろいろできるようにという趣旨でございましたけれども、ほとんどその効果が出ていないようにも思います。

 今後、課題解決型の中で、研究独法の役割が、大学やまた民間の研究機関をある意味で統合していく中心軸になるべきだと私は思っておりますが、この改革について、先ほどお答えになりましたけれども、それにつけ加えてお考えを聞かせていただければと思います。

本庶参考人 私が申しましたのは、生物学的な適者生存という時代は、数万年前の、いわゆる人類が誕生してから何百万年かぐらいのところで終わって、その後、食料の備蓄ということが起こり、さらには、産業革命によってエネルギーそれから環境の改変という状況になりまして、地球上において人類はほかにかなう生物がない。そしてなおかつ、人間の中で、本来なら生物学的には淘汰されるような状況の人も含めて、人類として一体的に社会をつくっていこう、ヒューマニズムという考え方が出てきております。

 ですから、これは、生物学的な適者生存ではなくて、人類として一体的に暮らしていこうじゃないか、そういうことでありますから、そのためにはコストを払わなければいけないということになります。通常であれば死に絶えた個体も、仲間として一緒に生きましょう、そういうことを申し上げているつもりでありまして、決して悪い意味で申し上げているわけではありません。そのためには、我々はやはり科学技術に頼らざるを得ない。自然の中だけでは死に絶えてしまう危険性がある。

 それから、二番目の問題は、これは私も研究強化法の内容は存じておるのですが、一つは、国の研究機関をたくさん持っている外国の制度というものをある程度見てみると、一点、独法の大きな問題は、大学とのインタラクションが非常に少なくて若い人がなかなか来ない。だから、新陳代謝がなくて組織が固定されてしまう、そういう大きな障害があります。それから、人事体系が上意下達的でありまして、いわゆる研究者の自発性、たとえ課題があっても、その中で自発的な仕組み、そういう研究者の基本的な自由なものを大切にするところが少しないのじゃないか。非常に複雑な問題でありますけれども、やはり全体的にそこを徹底的に解明していく。それから、各省庁ばらばらにこれをやっているというところにまた大きな問題があるんじゃないか。ですから、かなりこれはじっくり時間をかけてやらなきゃいけない。

 当面まずやらなきゃいけないことは、投資効果に対してきちんとした成果が出ているのかどうか、これはまずきちんと検証すべきであろうと思います。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

豊田委員 民主党の豊田潤多郎でございます。

 本庶議員に一点だけお聞きしたいと思います。

 先生のレジュメの四ページの下の方の、ライフイノベーションの重要性についてというところに、我が国の人口動態の関係、高齢化が進み、ますます医療費が増大し、社会保障費が拡大してくる。その対応として、第一点に先生が挙げられている予防医学の充実ということなんです。

 これは私も全く同感でありまして、私もこの四十年来、社会人になってからずっと、このことは先生と同じ考えを持ってきておりました。といいますのは、簡単にちょっと申し上げますと、私も財政当局に二十年ほど勤務をいたしまして、当時から医療費の増大、社会保障費の増大をどう抑えるかというのが大変な問題になって取り組んだわけですが、やはり予防医学というのが大事であろうということで、そこへの医療費、予算の重点的投下というのをやってきたわけですが、余り効果が上がっていないというのが実情です。

 それと、現在、私は病院の理事長ということで、現場で医療の第一線の運営に携わっています。本庶先生にお伺いしたいのは、全くこのとおりで私も異論はないんですが、最近、これだけ高齢化が進み、そして終末期の医療というのがすごく高度化、高額化している。逆に、こんなことは大変失礼ですが、もう亡くなられそうな方でも、かなりの長期間、相当高額な医療行為を行うことによって、延命というか命が長く続けられる。これは結構なことなんですが、社会保障費あるいは医療費の増大という点においては、先生のおっしゃるように、予防医学を充実するとしても、最近私がちょっと不安に思っていますのは、医療費が余り減らずに、プラスアルファの予防医学の充実の分だけが上乗せされるというようなことになりかねないのではないか、そういう危惧をちょっと持っておりまして、先生の忌憚ない御意見、感想をお聞かせいただければと思います。

 以上です。

本庶参考人 先ほど馳先生から、よりよく死ぬということに関しての御質問がありまして、基本的にそのことと相通ずるものがあり、今御質問いただいた終末期医療の問題は極めて重要な課題である。これは国民的な合意形成、啓蒙という側面もあると思います。非常に重要でありますが、一方で、司法の問題も非常に大きい。

 と申しますのは、御承知のように、安楽死の問題、それから、医師が手を抜いたというふうなことで刑法で罰せられるという状況の中で、医師として、もうこれは無駄な医療であるということを家族に説得するのは非常に大きなエネルギーが要る、こういう状況が日本の社会に蔓延している。これも含めて、私どもは改善していかなきゃいけない。単にこれは科学技術政策だけの問題でないので、問題は非常に大きいと思います。

 それから、予防医学の推進で一言つけ加えますと、よく冗談で申しますが、車両保険は事故があるとだんだん料金が高くなるんですが、健康保険は何回病気をしても、民間保険は別ですが、社会保険は高くならない。健康診断に行っても全部自前である。これはやはり税制的に多少何らかの改革の余地があるのではないか。そういうふうなことです。

阿部委員 私は、先ほど奥村議員には質問ができなかったので、もう一回お時間をちょうだいいたします。

 企業のコンプライアンスあるいは社会的責任ということでございますが、ある業績を上げようと思った場合には、当然、データ捏造を含めて、あるいは、残念ながらこの前のやらせメールの問題などで、成果主義に立つときに起こりがちなコンプライアンスの低下というのがどうしてもあると思うんですね。

 総合科学技術会議では、そうしたことはどのようにお考えであるか。特に、先ほどお話しのように、十八兆円のうち、日本は民間投資が大変に多くて、国の投資は少ないわけです。これは私はもっと国は投資すべきという立場でもあります。

 いずれにしろ、今民間投資をたくさんいただいてやっているという中で成果を上げようと思えば、いろいろな操作ないしは不都合のあることを隠すということが起きがちですが、この点については、どのようにレギュレート、制御していかれますでしょうか。

奥村参考人 お答え申し上げます。

 極めて企業の本来的な営利活動の根幹にかかわる御指摘だと理解しております。

 御案内のように、たびたび不祥事が、企業の内部のCSRの不十分さによる問題が世間を騒がせているということは、私は企業人としても極めて残念に思っております。

 この問題と、いわゆる科学技術あるいは研究開発の成果という二つを重ね合わせて考えてみますと、研究開発の成果にかかわる不祥事はいずれ露見いたしております。これは過去からの事例でもそうです。つまり、世の中それほど偽りが長続きしないという、極めてこれも科学技術的に自明なわけでございますけれども、こういったことが一つの自浄作用になっているというふうに考えてございます。

 しかしながら、大事なことは、こういったことを起こさない、最初の問題でございますので、企業における研究者の倫理観、特にその上司に当たるマネジャーの倫理観というものが極めて厳しく問われておりまして、ここにおります私どもも、企業に対しては、科学技術の倫理の問題について、そういった姿勢をより徹底するように求めているところでございます。

川内委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 特に、本庶、白石両参考人から出ました、総合科学技術会議の改組がおくれていることが日本の科学技術の発展にとってマイナスだよという御発言については、当委員会としても重く受けとめさせていただきたいというふうに思うところでございました。

 しかし、吉井先生から指摘の出た原子力のサイクルの問題ですけれども、「もんじゅ」などは国民の皆さんの税金を一兆円使っているわけですけれども、PDCAサイクルが大事だとみんな言いながら、実は政策評価は、順調に進捗しているという評価になっているんですね。

 だから、PDCAサイクルを厳密、正確にやるということがこれから必要だろうなというふうに感じたところでございまして、科学技術が国民の信頼をしっかり受けるという意味においては、何をやっているか、そのやっていることに対する評価もまた厳密に、タコつぼ化せずやらないと、それこそ信頼をなかなか得られないということになるのではないかというふうに思うところでございました。

 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る二十八日木曜日午後零時十分理事会、午後零時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二分散会


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