衆議院

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第4号 平成24年4月5日(木曜日)

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平成二十四年四月五日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 大畠 章宏君

   幹事 小沢 鋭仁君 幹事 逢坂 誠二君

   幹事 宮島 大典君 幹事 山花 郁夫君

   幹事 鷲尾英一郎君 幹事 中谷  元君

   幹事 保利 耕輔君 幹事 赤松 正雄君

      阿知波吉信君    網屋 信介君

      磯谷香代子君    稲見 哲男君

      今井 雅人君    緒方林太郎君

      大泉ひろこ君    川越 孝洋君

      川村秀三郎君   木村たけつか君

      篠原  孝君    辻   惠君

      辻元 清美君    中屋 大介君

      橋本  勉君    鳩山由紀夫君

      浜本  宏君    村越 祐民君

      山尾志桜里君    山崎 摩耶君

      吉川 政重君    笠  浩史君

      井上 信治君    石破  茂君

      木村 太郎君    近藤三津枝君

      柴山 昌彦君    田村 憲久君

      棚橋 泰文君    中川 秀直君

      野田  毅君    平沢 勝栄君

      古屋 圭司君    大口 善徳君

      笠井  亮君    渡辺浩一郎君

      照屋 寛徳君    柿澤 未途君

    …………………………………

   衆議院法制局法制企画調整部長           橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 窪田 勝弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     橋本  勉君

  楠田 大蔵君     中屋 大介君

  近藤 昭一君     吉川 政重君

  中野 寛成君     村越 祐民君

同日

 辞任         補欠選任

  中屋 大介君     楠田 大蔵君

  橋本  勉君     岡本 充功君

  村越 祐民君     中野 寛成君

  吉川 政重君     近藤 昭一君

    ―――――――――――――

四月五日

 憲法九条を守ることに関する請願(笠井亮君紹介)(第八〇五号)

 憲法九条の改悪反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第八八二号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(憲法改正問題についての国民投票制度等)


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     ――――◇―――――

大畠会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に憲法改正問題についての国民投票制度等について調査を進めます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、自由討議に入ることといたします。

 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

橘法制局参事 衆議院法制局の橘でございます。

 本日は、幹事会での御協議に基づきます大畠会長からの御指示に従いまして、憲法改正国民投票法附則第十二条に定める憲法改正問題についての国民投票制度等をめぐる諸問題につきまして、御報告させていただくことになりました。

 もとより、拙い御報告にすぎませんが、衆議院憲法調査会設置以降十年余りにわたりまして、与野党の多くの先生方から御教示をいただいてまいりました。そのようなことを思い起こしながら、衆議院の憲法調査会及び憲法調査特別委員会の議論の経過と概要を中心に、本日の先生方の自由討議の素材を御提供申し上げる観点から御報告をさせていただきたいと存じます。

 早速ですが、お手元配付の資料を含めまして、内容に入らせていただきたいと存じます。

 我が日本国憲法は、その前文の第一項第一文の末尾で、「ここに主権が国民に存することを宣言し、」と述べ、また、第一条の天皇の地位に関する条項におきましても、「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と規定して、この憲法が国民主権の原理に基づくことを明確にしております。

 この国民主権の意味するところにつきましては、憲法学説上大いなる御議論があるところではありますけれども、その最大公約数的なところを申し上げるとするならば、国家の政治のあり方を最終的に決める力、すなわち権力あるいは権威が国民にあることを意味するものと理解されているところでございます。

 ただ、そのような力を国民がどのような形で行使することができるのかについては議論がございます。すなわち、憲法第十五条において保障されている成年者による普通選挙のもとでの選挙権の行使、すなわち、国民代表でいらっしゃる先生方、国会議員を通じての国政参加の方法以外に日本国憲法が明文で認めているのは、第七十九条に定める最高裁判所裁判官の国民審査、第九十五条に定める地方自治特別立法における住民投票、そして第九十六条の憲法改正国民投票の三つであるというふうに言われております。

 これら以外の場面において、国民主権の原理に基づいて、法律でもって国民投票のような直接民主制を創設することができるのか、できるとすれば、それはどのような条件のもとにおいてであるのかといった問題が本日のテーマの基底にある問題であるかと存じます。

 と申しますのも、前文第一項の冒頭におきまして、「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」とあることや、憲法第四十一条の、国会は、国の唯一の立法機関であるとの規定から導かれます国会単独立法の原則、すなわち、法律の制定については国会のみが関与し得るとの原則でありますけれども、これに鑑みますれば、日本国憲法は、代表民主制、間接民主制の原則を採用しているのだ、そういう解釈が一般的になされているところだからであります。

 ところで、このような現行憲法下における一般的な国民投票制度をめぐる問題は、実に古くて新しい問題であると言っても過言ではないと存じます。

 例えば、新憲法施行の息吹がまだ残っておりました昭和三十年代に内閣に設置されました憲法調査会でも、この論点につきまして活発な御議論がなされており、その報告書においては、わざわざ「国民投票制度」と題する独立した一節が設けられて、賛否両論の概要がまとめられておるのでございます。

 お手元配付の資料一に若干詳細な引用を参考につけておきましたけれども、そこでは、特定の問題に対する国民投票制度について、次のような両論があったことを紹介しております。

 すなわち、一方では、代議制ないし議会政治のもとにおいては、国民の意見は国会議員の選挙という形式においてのみ表明されるほかないのであるが、選挙権の行使という方法とは別に、特定の問題に対して、直接に国民の意見を表明するための国民投票制度を拡充すべきであり、それによって重大な政治問題を国民自身が決定することができるとともに、また議会政治を補完することができるとする積極論でございました。ちなみに、この見解を強力に主張しておられたのは、若かりしころの中曽根康弘先生でございました。

 他方では、特定の問題に対する国民投票制度は民主主義に反するものであるとし、または国民投票制度には種々の欠陥があり、むしろ議会政治、議院内閣制の育成を図るべきであるとし、したがって、新たに国民投票制度を設けるべきではないとする見解も述べられております。

 そこでは、国民投票制度は決して民主主義的なものではないとし、その理由として、デモクラシーとは、合意を目指しての努力としての討論や説得の過程にこそその本質があるのだ、だから、みずから討議、審議をなし得ない多人数の国民に、単にイエスかノーの結論だけを問うという国民投票制度は決してデモクラシーとは言えないのだ、そういう趣旨のことが述べられております。

 なお、内閣憲法調査会においては、この後者の消極論が大多数の意見であったと総括されておりました。

 以上の先行する議論を踏まえまして、衆議院の憲法調査会におきましても、この論点に関して活発な御議論が繰り広げられました。最終報告書においては、「直接民主制」と題する独立した項目が設けられ、その中の一項目として、この国民投票制度に関する論点が取り上げられております。お手元配付の資料二にその部分を抜粋してまいりました。

 そこでは、積極、消極の両論が併記されておりまして、いずれの見解も多数意見となるには至らなかったとされております。

 すなわち、一般的な国民投票制度を導入すべきであるとする積極論の立場からは、価値観が多様化する中で、さまざまな国民ニーズや意見を反映させていくべきこと、あるいは議会政治の補完の必要性ということが述べられる一方で、これを導入することに慎重な立場からは、民主主義の本質は討議の過程にあるのに、政策の是非を判断する手段を必ずしも有しない国民に対して、直接にその意思を問うことは危険であるとか、議会制民主主義を健全に機能させていくことこそがまずは重要であるといった意見が述べられております。

 参考人の意見陳述におきましても、大東文化大学の井口秀作先生や京都大学の大石真先生のように、直接民主制の導入自体は、憲法前文の「代表者を通じて行動し、」という文言と必ずしも矛盾するものではないとか、民主主義にとっては、人を選ぶことも重要だが、それ以外に、我々のことは我々で決めるという要素を取り入れることも重要であるとする積極的な御意見もあった一方で、東京大学の森田朗先生のように、国民の要望を的確に酌み上げて政策に結びつけていくのは、基本的には国会議員の仕事であるとする慎重な御意見もございました。

 憲法調査会が最終報告書を取りまとめてその調査活動を終了した後、平成十七年、二〇〇五年の八月のいわゆる郵政解散・総選挙後に召集されました第百六十三回特別国会におきまして、憲法改正国民投票法制の整備のために設置されましたのが衆議院の憲法調査特別委員会でございました。この特別委員会において、今御紹介申し上げましたようなそれまでの御議論を踏まえつつ、いよいよ国会の場で本格的に国民投票制度に関する御議論が開始されたのでございました。

 同特別委員会におきましては、国民投票法制の制度設計をするに際して、網羅的な論点整理をまずは行うべきという観点から、諸外国の国民投票法制を含めた広範な調査を行うこととされました。

 お手元に、資料三として、二度にわたります欧州各国の国民投票法制に関する調査のうち、本日のテーマでございます国民投票の対象範囲に関する部分を抜粋した資料を配付してございますので、御参照いただければと存じます。それぞれの各国のより詳細な内容は、衆議院の憲法審査会事務局におきまして整理していただきました、お手元配付の衆憲資第七十五号の二十六ページ以下にも整理されておりますので、あわせてごらんいただければ幸いでございます。

 これらの資料の概要を、誤解を恐れずに大ざっぱにまとめてみますと、まず、調査対象となった国々におきましては、基本的に、憲法改正以外の事項についても国民投票の対象としている、まずこのことを指摘できるかと存じます。もちろん、そのような諸外国においては、そのような一般的国民投票ができるという旨の根拠規定は、憲法の中に明文であるわけであります。

 次に、国民投票の対象とされている事項につきまして、国民投票を行うことが義務的か任意的か、あるいはその国民投票の結果に、議会や政府を拘束する、そういう法的拘束力を持たせているのかいないのかといった論点は、制度設計上大変重要であると存じますが、国民投票の対象範囲を考察されます本日の先生方のテーマに照らして示唆的であると思われるのは、一つ、国民投票に付するかどうか及びその案件を誰が決めるのかといった発案権の所在、二つ、国民投票に付してはいけない案件というようなものをあらかじめ想定しているのかどうかといった論点も大変重要であるかと存じます。

 例えば、前者の発案権、発案者に関する論点につきましては、いずれの国も、大体におきまして、議会が発案のイニシアチブをとることを基本としているように存じます。しかし、一覧表で見ていただきますとおわかりになられますように、スペインやフランスのように、政府提案を認めている国もございます。さらには、イタリアやスイス、スロバキア、さらには、一定の限定つきではございますけれども、二〇〇八年憲法改正後のフランスなどのように、一定数以上の署名をもってすれば国民に発案のイニシアチブを認めている、そういう国もございます。

 また、後者の国民投票の付議禁止事項に関する論点につきましては、イタリア、エストニア、オーストリア、スロバキア、デンマークのように、租税や予算などを対象外とする国が少なくございません。

 また、そのほか、特に調査派遣団の先生方を驚かせたのは、スロバキア憲法におきまして、最も憲法事項であります基本的人権に関する事項、これが国民投票の対象外とされていることが大変注目され、目につきました。

 そのような背景として考えられることは、租税や予算などにつきましては、特定の利害を離れた全国民的見地から、議会制民主主義の過程の中で国会議員の先生方こそが決められるべき事項であるといった思想が、また、基本的人権につきましては、基本的人権の本質は少数者の人権保障、いわば異端の自由にあるといったことに鑑みれば、そもそも多数決で決めるべき事項ではないといったような思想がそれぞれ読み取れるように存じます。

 なお、イタリアにおいて、憲法改正以外の国民投票の対象は、法律などの廃止であって法律などの制定ではないとされることにつきましても、海外調査の中では、あくまでも、一旦議会制民主主義のルートに乗せた上で、その行き過ぎを補正するのが直接民主制である、だから、法律の廃止のみが国民投票の対象なのだといったヒアリングの調査を頂戴してございます。

 この海外調査におきましては、法制度面のみならず、その実際の運用における課題や問題点につきましてもさまざまなヒアリング調査を行っておられますけれども、例えばスイス、これは世界でも最も国民投票について豊富な経験を持つ国でございますが、その背景には、民族や言語のみによっては国民統合を図ることは困難である、そのため、国民投票の頻繁な実施によって、これが国民を統合する作用を果たしているという面もあるのではないのか、そのような指摘もございました。

 以上のような調査を踏まえまして、平成十八年の四月に至りまして、憲法改正国民投票法制に関する論点一覧表が取りまとめられました。そして、これに基づきまして、全会派参加のもと、理事懇談会の形で行われました実務者協議の場で、七回、合計十時間にわたる活発な御議論がなされました。そこでの御議論のうち、国民投票法案の対象範囲に関する部分を抜粋したものが、お手元配付の資料四でございます。

 そこでも、一方では、一般的な案件に関する国民投票制度の構築は、憲法改正にかかわる大きな問題である、現時点においては、やはり憲法改正国民投票に限定した議論をすべきである、あるいは、欧州各国の調査でもたびたび指摘されていたように、国民投票は、往々にして、その時々の政府に対する信任、不信任を問うものとなってしまう危険性があるといった見解が述べられました。

 他方では、欧州各国の調査によれば、各国は、憲法改正の場合以外にも直接民主制の手法を、限定的にではあるけれども採用しているではないかとして、我が国も、間接民主制を補完するものとして、また、憲法四十一条の、国会が唯一の立法機関であることに反しない形での諮問的な国民投票制度としてこれを導入すべきである、あるいは、国民投票の経験がない我が国においては、まずは一般的な政治課題について諮問的国民投票を行い、その経験を踏まえて、国の最高法規である憲法についての国民投票を行う、そういうプロセスを踏まなければ、民主主義の誤作動につながりかねない危険性を感じるといった意見も述べられたところでございました。

 以上のような、約八カ月に及ぶ調査を踏まえまして、一般的国民投票制度に関する消極、積極それぞれの考え方から立案、提出されたのが、第百六十四回通常国会の会期末近くの同年、平成十八年五月二十六日に提出されました自民、公明両党の日本国憲法の改正手続に関する法律案と、民主党の日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案でありました。

 すなわち、両法案の題名に端的にあらわれておりますように、自民・公明案は憲法改正国民投票だけを対象とする一方、民主党案は、憲法改正国民投票に加えて、国会自身が発議をし、かつ、その結果に拘束されないという制度設計のもとに、国政における重要問題に係る案件につきましても国民投票を行うことができるものとしておりました。

 両法案は、提出直後の六月一日に、大変珍しいことではございますけれども、議員立法両案が本会議で趣旨説明、質疑が行われました後、同年九月召集の第百六十五回臨時国会におきまして、両法案審査のための小委員会が設けられ、そこで活発な議論及び一本化を目指した修正協議が行われました。

 以下につきましては、衆憲資第七十五号の四ページに非常に的確にまとめていただきました「法案・修正案の推移」の表がございますので、あわせ御参照いただければと存じます。

 一見、対極にあるように見えます両法案でありましたけれども、議論の過程では、双方から柔軟な意見が述べられておりました。

 特に、民主党側からは当初より、国政における重要問題に係る案件として想定しているのは、皇室典範のように憲法問題に準ずる事項、自衛隊のイラク派遣のように国家全体の運命に関する事項、安楽死などの国民の死生観、生命倫理に関する事項などであるとした上で、もし、国民投票に付すべき案件について明確に限定をかけておく必要があるというのであれば、今後の議論の中で、これを法律上限定することも含めて柔軟に検討、対処していきたい旨の御発言が、提出者のお一人でもありました鈴木克昌先生から明確に述べられておりました。

 他方、保岡興治先生初め自民・公明案の提出者からも、一般的国民投票制度の中でも、憲法改正に関連する問題に限った諮問的、予備的国民投票制度を念頭に置くのであれば、それは検討に値する、そういう旨の御発言がたびたびなされておりました。

 ちなみに、ここで言う諮問的というのは、国民投票の結果に法的拘束力がないことをいうもので、特段の御説明を要しないかもしれませんが、予備的というのは少々わかりにくいかもしれませんので、一言御説明を加えておきたいと存じます。

 この予備的国民投票制度の発案者は、私の記憶では、現在も委員でいらっしゃり、ここにもおられる赤松正雄先生だったと存じます。その赤松先生の前で私が解説するのは、何か非常に面映ゆいのですけれども、間違ったら後で御指摘いただくとして、赤松先生は次のように言っておられました。

 国会で詳細な憲法改正原案を作成していきなり国民投票に付するというのでは、いささか国民の間に戸惑いもあるだろうし、また、その憲法改正のテーマの選び方や内容に国民の意思が十分に反映しない場合もあるかもしれない、こうされた上で、むしろ、あらかじめ国民の意思を推しはかるという意味で、まずは予備的にアンケート調査的な国民投票を行い、しかる後に、国会は、その全体的な国民の意思を踏まえた憲法改正原案の立案に着手する、それで詳細な条文をつくる、その後に、憲法第九十六条で要求されている正式の国民投票を行うといった慎重な手続が有効な場合もあるのではないのかということを述べられていたと記憶してございます。

 以上のような両法案のそれぞれの立場からの歩み寄りが頂点に達したのが、平成十八年十二月十四日、その年最後の憲法調査特別委員会での、双方の提出者から示されました修正要綱とこれに基づく修正発言でございました。

 まず、自民・公明案の提出者を代表して船田元先生からは、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、その意義及び必要性の有無について、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずる旨の検討条項を設けたいとの御発言がございました。

 他方、民主党案の提出者を代表して枝野幸男先生からは、国政における重要問題に係る案件というだけでは確かに広過ぎるかもしれないということを念頭に置かれつつ、憲法改正以外のこのような国政問題に係る国民投票については、現在、修文を検討中であるとされて、次の三つの案が提示されたのでございました。

 すなわち、A案、国政問題に係る案件について一定の限定を付する、B案、その限定については、船田修正発言のとおり、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題に限定する、C案、憲法改正以外の国民投票法制の是非とその具体的制度設計については急がない、船田修正発言のとおり、検討条項とすることも考える、そのような三案でございました。

 ここに至って、両法案の最大の相違点について合意点が見えてきたのではないかという期待が一気に高まったのでございました。

 しかし、年が明けました平成十九年以降、さまざまな政治的あるいは政局的な環境の変化があり、両法案の一本化に関する合意に至らなかったことについては、昨年十一月十七日の本審査会における中山太郎先生の御報告で言及されているとおりでございます。

 しかし、このような両法案の提出者から述べられたそれぞれの修正発言は、誠実にその後法案化され、まず、自民、公明提出の併合修正案では、今ほど述べました船田先生の修正発言どおりの検討条項が設けられました。これが、現在の附則十二条そのものでございます。

 他方、民主党提出の全部修正案におきましても、枝野先生の修正発言のA案の線に即して、国民投票の対象範囲が限定されることになりました。

 すなわち、国政における重要な問題のうち、一つ、憲法改正の対象となり得る問題。例えば女性天皇問題などは、法律的には皇室典範の改正でも済むわけでございますけれども、これは憲法改正の対象ともなり得る問題である、そういうものでございます。

 二つ、統治機構に関する問題。例えば、これにつきましても、一院制の問題などは、むしろ国会議員の先生方からの発議を必ずしも期待し得ないのではないのか、そのような問題について、まず国民の意思、意向を聞くことが必要なのではないのか、そのようなことが想定されたものと推察されます。

 三つ、生命倫理に関する問題。このような問題は、政党政治を超えた、国会議員、国民の皆さんの死生観、倫理観に関する問題であり、まずは国民の意向を伺うべきではないのかといったことが考慮されたものであると推察されます。

 この三つを例示した上で、そのより具体的な内容については、国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定めるというふうに、別法の検討に委ねられたのでございました。

 したがって、現在の附則十二条が直接に規定している検討対象範囲よりも、この民主党の全部修正案の想定されていた一般的国民投票の対象範囲の方がやや広い、あるいはやや広いかもしれないということになっているように存じます。

 なお、現在の附則第十二条の検討には、選挙権年齢などの十八歳への引き下げや公務員の政治的行為の制限に関する法制上の整備条項、いわゆる二つの宿題のような特段の期限は付されておりません。この三つ目の宿題については、特段の期限は付されておりません。

 しかし、民主党の最終的に御提出されました全部修正案におきましては、今申し述べました具体的な国民投票の対象範囲について別に定める法律、これも、二つの宿題と同様に、本法施行までに整備するもの、そのように規定されておりましたことを最後に付言申し上げます。

 以上、拙い御報告ではございましたが、本日の先生方の自由討議の素材を御提供させていただきました。

 御清聴ありがとうございました。

大畠会長 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

大畠会長 これより自由討議を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後に発言をお願いします。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようにお願いいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただきますようにお願いいたします。

 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの持ち時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願いいたします。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 本日のテーマ、いわゆる三つの宿題の一つである憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討について、若干の質問と私の意見を表明いたします。

 私は、現行憲法が国会を唯一の立法機関と定め、基本的に、議会制民主主義と呼ばれる間接民主制を採用しているとの前提に立っても、諮問的国民投票と呼ばれる一般的国民投票制度の導入を認めるべきだと考えます。

 参議院憲法調査特別委員会では、一般的国民投票は、日本の統治原理である議会制民主主義そのものを崩壊、形骸化させることにつながるとの参考人の意見表明もあったようですが、私はそのようには思いません。むしろ、一般的国民投票制度は、間接民主制と呼ばれる議会制民主主義のもとで、幅広く多様な国民意思を政治と国会に反映させるものだと考えます。

 特に、衆議院における現行小選挙区制度にあっては、各党の得票数と議席占有率の著しい乖離もあり、その結果として国民意思と国会意思との乖離も生じているだけに、間接民主制を補完する役割を担うものと思います。

 配付資料、衆憲資第七十五号によりますと、参議院憲法調査特別委員会では、私と同じ意見の参考人陳述も多かったと理解をしております。

 質問の第一点は、自民党、公明党の憲法改正手続法提案者が、諮問的国民投票制度について、憲法九十六条の周辺に位置するものと考えられると述べております。一方で、配付資料、衆憲資第七十五号の九ページによりますと、自民党保岡興治議員は、「憲法問題に限った諮問的、予備的国民投票制度というのは、憲法改正事項に直接民主制を取り入れた憲法九十六条そのものの趣旨からすると、憲法の許容するぎりぎりの範囲内とも考えられる」と述べております。その点について、議論の経緯、詳細をお教えください。

 質問の二点目は、日本国憲法の改正手続に関する法律附則第十二条では、国は、必要な措置を講ずるものとするとなっております。憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討主体は、国なのか、それとも憲法審査会なのか、参議院における附帯決議一との関連を含めて伺います。

 以上です。

橘法制局参事 照屋先生、御質問ありがとうございます。

 二問頂戴いたしました。

 一問目は、憲法予備的国民投票に関する御議論であったかと存じます。

 自民・公明案の提出者の先生方が基本的に考慮されましたのは、先ほど御報告申し上げました、日本国憲法は間接民主制を基本的に採用しているということでございました。

 例えば、憲法学者の宮沢俊義先生のコンメンタールによりますと、「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」とは、憲法は、主権を有する日本国民が直接にみずから国政に参与するという原則を採用せずに、国民によって正当に選挙された国会議員を通じて、いわば間接的に国政に参加、参与することを原則とする、すなわち、代表民主制または間接民主制の原則を採用することを意味する、国民が直接に国政に参与する場合として、憲法は、憲法改正の場合の国民投票を認め、また、公務員の選任に参与する場合として、国会議員の選挙のほかに最高裁判所裁判官の国民審査などを認めているけれども、しかし、原則としてはどこまでも代表民主制をとり、国会をもって国権の最高機関としているのだというような、もちろん別の学説はございますけれども、このような一般的な学説を念頭に置かれたものと考えております。

 その上で、自民、公明の法案の提案者の先生方が、対象を広く、民主党案のように国政上の重要問題とするのは、このような憲法の採用する間接民主制に反するおそれがあるけれども、しかし、憲法改正については九十六条があるので、これに関連する、そういう範囲内であればぎりぎり許されるのではないのかというふうに言われたものと存じます。それが、個別の憲法問題、憲法関連問題に限定し、かつ諮問的で、あるいは予備的なものであれば、憲法上許容されると。冒頭、先生引用されました、九十六条の周辺に位置する、これは、このようなことを比喩的に述べられたものであろうかというふうに拝察いたします。

 あともう一点、附則十二条の検討条項の主体が「国は、」となっている点でございます。

 これは、先生方からたびたび議員立法で御指示をいただいてまいります際に、数々の検討条項を私どもお手伝いさせていただきました。検討条項には一般に、国はという主語で書く場合と政府はと書く場合とがあり、また、主体を書かずに受け身で書く場合などがありますけれども、一般に、国はと書く場合には、これは国の統治権を有する三つの機関、国会、政府、あと裁判所を観念的には含むわけですが、ただ、裁判所が意味内容上主体になることはありませんので、国はと書く場合には、通常、政府と立法府である国会を指すことは自明であります。

 ただ、この附則十二条に関しては、制定時の議論では、政府に検討を命じたり法案提出を求めることは全く想定されていませんでした。あくまでも、この検討の主体は国会であるということがたびたび、当時の与党案、自民・公明案の御提出者からも民主党案の御提出者からも言われておりました。

 例えば、最も端的なのが、両案の当初の法案から最終的に修正されたそれぞれの案で、実はこの憲法審査会の権限が変えられているのです。当初の案では次のようになっておりました。この憲法審査会の権限は、憲法改正原案の審査権と日本国憲法の改正手続に係る法律案の審査権というふうになっていたんですが、実は、修正の最終局面でして現在の国会法ですが、憲法改正原案の審査権のほか、日本国憲法に係る改正の発議または国民投票に関する法律案の審査権というふうに変えられているわけです。

 この趣旨につきましては、船田元先生は、予備的国民投票の検討もここでできるようにする、こういうことを取り込んだ形で修正したのだというふうに、憲法改正に限らない国民投票制度の制度設計もこの憲法審査会の権限なのだというふうに言われていますし、他方、枝野幸男先生の御発言でも、憲法審査会の権限についてでございますが、先ほど来、一般的国民投票などについての議論も行っていこうという与党からの御提起もございまして、私どもの一般的国民投票についての法案を可決していただいた場合であっても、これについて、今後、改正等を行う審査機関が必要でございます、すなわち、それは個別の、例えば内閣委員会とかそういうことよりも、むしろ憲法のところであろうということで、今私が申し述べたような、そういう条文にさせていただきたい、そんなことをおっしゃっておられるところでございます。

 先生が御指摘いただきました参議院の憲法調査特別委員会での附帯決議におきましても、「国民投票の対象・範囲については、憲法審査会において、その意義及び必要性の有無等について十分な検討を加え、適切な措置を講じるように努める」というふうに、主体の国の中身は国会そのものであるということが明確になっているかと存じます。

 冗長で申しわけございませんが、最後に付言するならば、それであれば、この検討条項の主語を国はじゃなくて国会はと書けばよかったじゃないかと。ただ、私どもがお手伝いしている限り、検討条項の主語を国会はとした立法例は、少なくとも私の記憶の中では見当たりません。何でだろうかというのはちょっと不思議なところもありますが、先生方がつくられる法律において、自分たちはこう検討しろというのは少しおかしいのではないかという、そういうのがあるからかもしれません。

 以上でございます。

柴山委員 私は、現時点では、自民、公明の附則十二条の案を中心として、緩和をするにしてもぜひ検討をしてほしいというように思っております。

 直接民主制については、今の御報告の中にはなかった視点として、リコールですとかあるいはカウンティー、シティーマネジャー、そういった形で、直接民主制を広く導入している地方の案件と国の案件を同一に扱ってよいのかという問題意識も必要ではないかなというように思っております。やはり国民は、自分から遠い、国の、特に、さっきイラクの問題についても言及がありましたけれども、専門的かつ非常に継続的に検討を加えなければいけない案件について、どうしても判断が十分できないのではないかという懸念が私としては拭い切れません。

 先ほど照屋委員の方からは、国会を唯一の立法機関とし、また代表民主制を導入している現在の憲法の中でも、こういった補完的な国民投票の意義を積極的に評価するというような御発言があったのですが、私は、やはり国レベルの問題については、代表民主制をとっているということをむしろ積極的に評価するものであります。

 そういう意味では、従前、伝統的に言われております国民主権、人民主権、ボロンテ・ゼネラルなどの、かねてから検討されていたさまざまな論争については、現代社会にあっては、やはり間接民主制というものにより積極的に評価をする、国レベルの問題では評価をするというような形で検討を開始するべきだというように思っております。

 欧州では確かに、橘さんから御指摘いただいたようなさまざまな任意的な国民投票の仕組みもあるんですけれども、思い返してみれば、昨年十一月のギリシャにおける歳出削減等について、これを国民投票にするということを検討した瞬間に非常に大きな危機が顕在化しかねない状況だったように、やはり運用の実態というものを精査する必要がこれらの国々においてもあるのかなというように私は思います。

 法制局においては、最近実施された国民投票が諸外国においてどのようなものであり、そしてその結果、どういういろいろな反応というものが出てきたのかということをぜひお伺いしたいなというように思っております。

 それと、イラクの派遣については、先ほど申し上げたように、これを例えばさまざまな外交、防衛についての専門的な知見なく、裸の形で国民投票に付することによって、それが、政権交代の後、普天間の問題もいろいろありましたけれども、あるいは給油支援の問題もありましたけれども、本当にしっかりとした責任を持った結論というものが導き出せるのかということについて、やはり不安に思う部分があります。

 それから、最後になりますけれども、迷惑施設について、これを例えば住民投票や国民投票に付した場合に、結局、ロケーションの設定ということについて、最終的に決まらないことによって非常に大きな損失というものが生じてしまいかねないのではないかということも、これは先ほど申し上げた外交、防衛の問題とはちょっと異質の問題ではありますけれども、付言をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 質問については、ぜひ御答弁をお願いします。

橘法制局参事 御質問ありがとうございます。

 諸外国の国民投票の実施例については必ずしもつまびらかにはいたしませんけれども、先生方、お手元配付の衆憲資七十五号でございますと、事例は決して網羅的ではございませんが、二十六ページ以下のところに若干の最近の国民投票の実施例も載っております。

 世間の耳目を集めましたものでございますと、例えば、イタリアにおけます新たな原子力発電所の計画、建設の廃止に関する国民投票、これは三十ページでありますが、昨年の六月に実施されたということが一つ載ってございます。

 あと、少し旧聞に属することになりますが、スイスの、スイスは年に四回定期的に国民投票をやっているという国でございますけれども、日本でも大変問題になりましたのは、三十六ページに掲げてありますような、二〇〇九年十一月に、国民のイニシアチブ、国民発案で国民投票に付され、当時、スイスの政府は、政府としては反対だ、反対投票を投じてくれというふうに言ったにもかかわらず賛成されてしまったというような、ミナレット、イスラム教寺院の塔の建設禁止、これが憲法に規定されるというような事例もあったかと存じます。

 憲法調査特別委員会におけます海外調査で専ら議論になったのは、先生には釈迦に説法でございますが、EU憲法に関する国民投票の事例を中山太郎先生から大変御教示いただきながら、フランスやオランダなどでのEU憲法改正に係る国民投票、否決に至るそういう過程については、先生方と一緒に勉強してまいりました。

 以上でございます。

緒方委員 民主党の緒方林太郎でございます。

 一般的国民投票制度について、諸外国、いろいろなケースがあるわけですけれども、よく、きょうもスイスの例が取り上げられておりますが、スイスは非常に、歴史的にも国の成り立ちにしても特殊なところがあるので、余りスイスの、国民投票制度が日本にそのまま導入できるかどうかとか、スイスでやっているからというのは議論の前提として成り立たないのではないかというふうに思います。

 私はフランス憲法を勉強したことがあるんですけれども、フランスにおいては、この国民投票制度、憲法事項と法律事項がありますけれども、これは何かというと、あの国においては議会不信がそもそも根底にあるツールであります。今の憲法、シャルル・ドゴール大統領のときにできたものでありますけれども、議会がごたごたしているときに、うるさいとやって、直接国民に聞くんだということで、議会不信のツールとしてこの国民投票制度が存在する国があるということについては、私、強調させていただきたいというふうに思います。

 そういうときにどういうふうに使われるかというと、統治のあり方として、君主的統治を行うときのツールとしてまさにこの国民投票制度がある。議会との関係がうまくいかない、なかなか法律が通らない、そういうときに、もういい、国民に直接聞くんだということで、そういうふうに使われるということがある。ここは国によって、政治文化によってそれぞれ適用の仕方が違うと思いますけれども、念頭に置くべきかと思います。

 そして、これをもう少し政治的文脈に置きかえてみると、一般的国民投票制度といいますけれども、これは恐らく、政権が満を持して提出した案件で否決されたときには、最低でも内閣総辞職だと思います、日本の制度においては。さすがにその状態で解散・総選挙に出ることはないと思いますけれども、それすらあり得る。いずれにせよ、政権が崩壊することに直結する可能性が非常に高い案件、考え方によっては解散・総選挙と非常に似たような制度として運用されることがあり得る政権信任のツールであるということも考える必要があると思います。

 フランスにおいては、これまで二回否決されたことがあります。シャルル・ドゴール大統領のとき、一九六九年、上院改革をしようとして否決された。このときは、シャルル・ドゴール大統領は辞任をしています。そして二〇〇四年、まさに先ほど橘部長からもありました、欧州の条約が否決をされた。このときは首相が辞任をしています。

 フランスは大統領と首相で政治的権力を分有しているので、どっちがやめるかというのはそのときの政治情勢によって違うわけですけれども、日本みたいな制度で政治的権力が分有されていないケースにおいては、間違いなく総理に責任が全部来て、内閣総辞職、場合によっては解散・総選挙というふうになるということについては、これはよく考える必要がある。政治的文脈に置きかえたときによく考える必要があるだろう。

 そして、さらに言うと、私は首相公選制というのは日本ではなかなかうまくいかないのではないかと思いますけれども、仮に首相公選制を導入してこの一般的国民投票制度を合わせたときに何が起こるかというと、首相を選んでいる勢力と議会の多数派が異なるとき、法律が一本も通らない。私がそのときの総理大臣であれば、ばんばん国民投票を打つと思います。もう議会に諮るのが面倒くさいから。そういうふうなツールとしてもあり得るということ、これも強調させていただきたい。

 最後に一つ。この問題、国民投票をやるときにもう一つ考えなきゃいけないのは投票率との問題でありまして、実は、例えば、国にとって重要な案件だけれども特定の集団または特定の地域に非常に利害が集中するような案件である場合、このときは投票率が上がらない可能性があるんですね。

 フランスでも一回こういうことがありました。一九八八年、ニューカレドニアの独立の問題について、国民投票を一回打ったことがあります。本土からすると地球の真裏にある話、全く投票率が伸びなかった。可決はされたけれども投票率が全く伸びないと、何となくその案件自体が、その案件そのものが不信任を受けたような感じがあって、可決はされたけれども敗北感が漂うみたいな話が出てくるかもしれない。こういうことも問題として提起をさせていただきたいと思います。

 最後に、これをまとめて申し上げさせていただきますと、仮にやるとしても、仮にこの一般的国民投票制度というか、やるとしても、テーマを絞る。そして、できれば政府提案は避けた方がいいと思います。先ほどありました、議会が提案する国が多いということでしたが、政府提案を避ける。そして、最後は、投票率の問題についてまとめる。この三点を強調させていただきまして、発言を終わります。

 ありがとうございました。

近藤(三)委員 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 国民投票法は、憲法改正に限定した法律です。本日議題の国民投票法附則第十二条は、憲法改正問題についての諮問的国民投票として、次の二点について速やかに検討するように定められています。

 その第一が、憲法改正を要する問題についての国民投票です。これは、憲法改正についての予備的な民意の動向を探るための国民投票であるというふうに言われています。

 私が伺いたいのは二点目について。衆議院法制局の橘部長に伺わせていただきます。

 お伺いしたい二点目の国民投票は、憲法改正の対象となり得る問題に関する国民投票について。この憲法改正の対象となり得る問題とは、具体的にどのような事項、事柄などを想定しているのか、どのような国民投票なのかということ。これまでの国会での議論、憲法の論文などを使ってお答えいただけないでしょうか。橘部長、よろしくお願いします。

橘法制局参事 御質問ありがとうございます。

 先生から頂戴した御質問は、憲法改正の対象となり得る問題とはどのような問題を具体的に想定されていたのかということでございます。

 提案者の先生方におかれましては、一言で言いますれば、憲法改正は必要ではないけれども、しかし憲法に明記することもできるような問題ということを想定されていたと思います。先ほどは、皇室典範の改正でも対応することができるけれども、諸外国の憲法典に考えれば憲法で明記することもあり得る、例えば女性天皇といった問題を挙げました。

 提出者の先生のお一人でいらっしゃいます船田元先生の参議院での御答弁を引きますれば、例えば次のように述べられています。

 今御指摘の点につきましては、統治機構に関する問題、それから生命倫理に関する問題というものも、これは、私個人の考えからしますと、当然に憲法改正を要する問題でなくても、憲法改正の対象となり得る問題という中には含まれる、こういうふうに述べられています。そうなりますと、結局は、民主党が言われていた事柄と近づいているのかなと思います。

 あと、先生、諸外国の事例あるいは憲法に関する論文でもそのようなことは言われているのかということを、質問を頂戴してございますが、大変不勉強で、諸外国で、改正の対象となり得るとか、あと、憲法の論文におきまして、憲法改正の対象となり得る問題はこういうものだといった文献を直接参照してはおりません。当時、立案のお手伝いをした場合も、こういうことが国民投票の対象として考えられるのではないのかということを、まさしく国会議員の先生方がこの場で考案した概念であって、それを、まさしくこの憲法審査会で検討してほしいということであったかと存じます。

 後段の御質問にお答えできなかったものですから、先生がおっしゃいました前段について、生意気ですが一点御報告させていただきますと、憲法予備的国民投票については、予備的の意味については赤松先生から御教示いただいたことを先ほど御紹介申し上げましたが、具体的にどういう問題かということについては、必ずしも先生方の中でイメージが共有されていたのではないようにも思われます。

 ただ、余りに具体的な、例えば個別の法案についての賛否を予備的国民投票で問うのだということは、これは違うというふうには、例えば枝野先生の御答弁などでは言っておられました。個別の法案についての賛否は、これは国会議員の仕事だ、その前に至るもう少し抽象的なものだと。ただ、抽象的であればいいのかというと、では、今の憲法の改正に賛成ですか反対ですかということを聞く、これは抽象的で余り意味のない事柄だと。

 当時の先生方で最大公約数的に想定されていたのは、例えば、具体的に国会答弁の中に残っているわけではありませんが、先生方から私どもが立案の過程で御教示いただきましたのは、多分次のようなことであったかと存じます。

 例えば、早急に憲法改正の対象とすべき問題はどういう問題ですか、一、九条改正、二、環境権創設、三、憲法裁判所創設。国民の皆さん、どれに興味がございますかといって、そこで例えば、環境権だ、当面環境権でやってくれということになると、では、環境権については、環境の権利として規定するのか、それとも国または国家の環境保全の責務として規定するのか、それを国会で制度設計を詰めて、いよいよもって最終的に九十六条で発議していく、そんなイメージなのだということであったと拝察いたします。

大畠会長 赤松委員のお名前も出ていましたが、何か付言することがございましたらと思いますが、いかがでしょうか。

赤松(正)委員 先ほどから聞いておりましたら、何か発言しなくちゃいけないなという気分にはなっておりました。

 先ほど橘部長の方から私の発言等の引用がありましたが、幾つかの点があるんですけれども、一つは、憲法改正をめぐる議論というのが、やはり戦後長きにわたって特定の政党の間でかなり細かくいろいろな議論がされてきたという経緯はありますけれども、それに対して、国民全体における個々の具体的なことに対する空気といいますか傾向というものは大体余り出てこない。世論調査というふうな格好で出るにせよ、余り明確に出てこないということがあります。

 そういう状況の中で、憲法改正という形で発議をされて、三分の二という条件がありますけれども、九十六条に基づいて発議をするということでは、国民のふだん考えていることとの大きな乖離が出てくる可能性がある。そういう意味で、那辺に国民の関心があるのかということについて、予備的に、政党が考える憲法改正の方向性と大きな乖離がないように事前にそういうことをキャッチする必要があるんじゃないか、そういう点が一つあります。

 もう一つは、三分の二という壁はなかなか大きいものがあるわけで、ある意味、逆の観点かもしれませんけれども、国民の意見を聞くということによって、その非常に高い壁というものが、ある意味で実質的に壁を下げられるんじゃないかという思い、つまり、国民の要望が強ければ、いわゆる政党間の差異というか、そういうものを超えて合意をつくっていくことに寄与できるんじゃないか。そういうことも含めて、今の、ある種、憲法をめぐる硬直したというか逼塞した状況を打破していくためにも、国民の皆さんの考えるところをあらかじめ予備的に聞いておくということはあっていいんじゃないか、こういうふうな考え方で、先ほど引用していただいたような発言につながっていった、こんなふうに今思い起こしているところでございます。

柿澤委員 柿澤未途でございます。御指名をいただきまして、ありがとうございます。

 私たちみんなの党は、首相を国民が直接選ぶことを求める声が世論調査で七五%に上がっている、こういうことも踏まえて、憲法改正によらずに諮問的な国民投票で総理大臣に誰がふさわしいかということを国民に推薦をしていただく、内閣総理大臣の指名に係る国民投票制度の創設にかかわる法案を今立案中でございまして、今国会に提出をする、こういう方針でございます。

 国民投票の結果を国会議員が参考にし、あるいは尊重して投票行動を行う、こういうたてつけであれば、国会を唯一の立法機関としている現行憲法には矛盾をしない、こういうふうな理解をしております。

 ましてや、先ほど橘部長からもお話がありましたとおり、この国家は国民主権であって、国会議員が主権者であるわけではないわけですから、ある意味では、国民の意見を直接聞いて、そして国会議員がそれを取り入れて立法を行っていくということについては何らの問題、阻害をするに当たらない、こういうふうな理解をしております。

 そうした観点から、一点御質問を申し上げたい基本中の基本でありますけれども、そもそも、諮問的国民投票、あるいは、今、赤松先生がおっしゃられた予備的国民投票でも結構ですけれども、いずれにしても、この諮問的な国民投票というものを制限する根拠があるとすれば、それは一体何なのか。これまでの議論の経過を踏まえたある種の立法政策ということであるのか、あるいは、そもそも法律的な根拠を持ってこの諮問的国民投票を制限しなければいけない、こういう認識であるのかどうか、この点をお尋ね申し上げたいというふうに思います。

 私たちの理解では、これは立法政策の問題であって、憲法周りならよくて、そのほかではだめだということではないのではないか、こういうふうに思いますが、その理解でよいのかどうか、あわせて、これまでの経過も踏まえて橘部長から見解をお示しいただきたい、こういうふうに思います。

 以上です。

橘法制局参事 先生、御質問ありがとうございます。

 まさしく、現行憲法下でも、一般的国民投票制度を諮問的という形で位置づければ当然憲法問題はクリアできるというのが一つの御見識であり、現に立案され国会に上程された民主党案でございました。その意味では、先生がおっしゃられた問題は、これは立法政策の枠内だと。

 これに対する反論として国会でなされたのは、次のようなことでございました。

 一般的国民投票制度は、仮にその効果が諮問的なものであるとしても、事実上の拘束力があり得ることは否定できない、国民がこうだというふうに言ったことについて、幾ら国家機関が拘束されないといっても、これに事実上の拘束力がある、これを大変に当時の自民、公明両党の提案者は重く捉えられ、この点、現行憲法が定める議会制民主主義の根幹にかかわる重要な問題であるというふうに指摘されていたところかと存じます。

 他方、民主党の御提出者でいらっしゃいました枝野幸男先生も、最終修正案で、国政における重要問題というものを限定されました。限定されたときも、事実上の拘束力があるという指摘を受けたので限定したのだという御答弁をされているように思います。

 もちろん、これは先生方のそれぞれのお立場からする解釈でございますので、それ自身が立法政策、憲法解釈問題なのだとは存じます。

橋本(勉)委員 衆議院議員の橋本勉でございます。

 このテーマについて、ちょっと一言述べさせていただきたいのと、質問も一つさせていただきたいと思っております。

 私は、個人的な見解としまして、もっともっとこの国民投票法というものを積極的に導入してもいいんじゃないかなと思っています。ここに、一般的国民投票に規定すべき、諮問的、一般的国民制度が書いてありますが、もう一つ上のランクとして、もっともっと積極的に導入していただきたいと思っております。

 というのは、いろいろと直接民主制ということで慎重な意見というのは、民主主義の本質は討議の過程にあるのに、政策の是非を判断する手段を必ずしも有しない国民に対して直接問うことは危険であるというふうなことで反論がありますけれども、現実どうなのかということですね。

 今、一つは、我々も国会に所属して、国会というものをいつも見ております。一期生として私もいつも眺めておりますけれども、現実は、本当に自由な意見を言える場所になっているかどうか、これが問題だと思います。間接民主制というのは、少し限界にあるんじゃないかなと思っているんですね。

 というのは、本当にセレモニックな国会になっているということとか、あと、党議拘束に縛られたり、支援団体に縛られた利権が、選挙を意識した代表が、どうしてもここでゆがめられてしまう、政策がゆがめられてしまう。こういうことが本当に、間接民主制が限界を持ってきているんじゃないか、そういうことを私は思わざるを得ません。

 そういう意味で、憲法論上のもう一つの理由として、ただこういうテクニカルな間接民主制か直接民主制かといって、それ以上に大切なのは、国民主権そしてまた基本的人権の尊重であり、平和主義である、それが憲法の大切な主張であると思います。そういったものが逆にゆがめられてしまうような事態になれば、むしろ私は、間接民主制というのは非常にまた疑問としなければならないと思います。

 そういう意味で、今ここの、もっともっと直接民主制的なシステムというのを導入した方がいいんじゃないかと思います。いろいろなテーマについてヨーロッパも導入してきていると思いますので、しっかりとこの辺は積極的な導入を考えていただきたいと思います。

 ただし、一つ論点として上がってきていないものがあるんじゃないかなと思っております。それは何かというと、コストであります。コストというのは何かというと、例えば、聞くところによると、一人当たり大体八百円から千円かかる。これが一億人にかかるとなると八百億円から千億円かかると通常言われておりますので、それだけのコストをかけなければならないかどうかということについてちょっと質問をしたいということと、ヨーロッパの場合、インターネットとかそういったものがあればもっともっと安い投票ができるんじゃないかなと思っておりますので、その辺についての質問をさせていただきたいと思っております。

 総合的に言うと、すべからくもし重大なテーマで衆議院の解散をしなければいけないとかいうことになってしまうと、もっと大きなコストがかかってしまって、国民の皆様に対して大きな御迷惑をおかけするならば、こういう国民投票法で、拡大することによって直接民主制を補っていくようなシステムこそ、むしろ我々は望むべきところではないかなと思っております。

 参議院は解散というのがないのでありますので、そういった意味でも、ぜひともこの拡大路線というものを主張しながら、コストの面で制約条件が若干あるんじゃないかということで質問させていただきたいと思っております。

 以上です。

大畠会長 なかなか難しい課題でもありますし、きょうは中山太郎前調査会長も傍聴されておりますが、橘部長として答えられる範囲内で率直に御発言をいただきたいと思います。

橘法制局参事 会長、御配慮ありがとうございます。

 先生、御質問ありがとうございます。お答えできる範囲内でお答えさせていただきます。

 自民・公明両党案の国民投票法案に付された経費文書は八百五十億円でございました。民主党案の国民投票法案に付されました経費文書は八百五十二億円でございました。二億円の差は何かといいますと、民主党案におきましては当初から十八歳投票権でございましたので、この二歳分の投票事務費等として二億円をオンしたものでございます。

 ほとんどの八百五十億円につきましては中央選挙管理会などが使うわけですけれども、しかし、国民に対する周知広報は国会に設けられます国民投票広報協議会、つまり先生方が国会の事務局を使って全国民に全て周知広報するのだ、テレビでも新聞でもそうやって周知広報する、そのような費用として八百五十億円余が積算されたものと承知しております。

橋本(勉)委員 ちょっと追加で、ヨーロッパの、例えばインターネット投票とか国民投票とか、そういった手段のデータというのはあるんですか、それによってコストがどれぐらいかかるかとか。今の国民投票の八百五十億円程度というのは、これは通常八百円とかいう想定で出したものじゃないかなと思うんですね。いわゆる全部投票用紙を配って、インターネット投票というのを全く考えない想定の数字じゃないかなと思いますので、その辺はどうなっているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

橘法制局参事 失礼いたしました。おっしゃるとおりでございます。

 諸外国で調査をしたときには、中山太郎先生からも御教示いただきましたように政府がホームページで公表したり、インターネット投票まではちょっと記憶にありませんが、さまざまなツールは利用されておりました。

 先ほどの積算にはそのようなことは念頭に置いてございません。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花でございます。

 きょう傍聴にお越しになっています中山太郎前会長と、ルクセンブルクで国民投票が行われたときに一緒に視察に行ったという経験がありまして、そのときに、例えばカフェとかレストランなどでもその是非についてルクセンブルクの国民の方々が語り合っていたりとか、学生さんが授業が終わった後集まってそれについて語り合っていたりというような状況が起こっておりまして、先ほど柴山委員から、本当に判断能力あるのかみたいな御懸念が示されましたけれども、実際やると、そういったことというのは起こってくるのではないかというふうに思っております。

 また、事実上の拘束力ということについては、私、以前、参考人の立場で意見を申し上げたことがありますが、法的な効果がある国民の直接民主制を取り入れた制度というのは三つ、この国民投票と裁判官の国民審査、あと地方自治特別法ということになりますけれども、諮問的なものであればその三つ以外にもできるんだろうというのがもともと当初のプランでありました。

 例えば、法的な拘束力を伴うのか事実上のものかというのは、法律論としては極めて大きな違いでありまして、以前参考人として述べさせていただいたのは、例えば、判例の先例拘束性というのがあると言われているけれども、それはあくまでも事実上の拘束力であって法的なものではない。これはかなり大きな違いですし、また、法的効果を伴うという意味で申し上げると、衆議院で内閣の不信任案が議決をされると解散または内閣の総辞職という法的な効果を伴いますが、法的な効果を伴わない問責決議というのが参議院で事実上行われていることからも、法的な拘束力があるものだけ憲法に定められているので、それしかやっちゃいけないということには直ちにはならないでしょうということを申し上げたいと思います。

 また、そうはいっても、何でもかんでもやっていいのかというのは、これはまた話が別でありますし、どういったテーマがふさわしいかということについては、よくよく国会の方で判断をしてということだと思います。

 先ほど橘部長からもいろいろ御説明いただきましたし、私も以前から主張していたことなのでかぶってしまいますけれども、例えば、以前、小泉内閣のころに、女性の天皇を認めるかどうかのような議論が報道で出たことがございました。皇位継承順位というのは皇室典範という法律でありまして、憲法ではありませんから、国会で議決をしてしまえばそれで決まるということになるんですけれども、日本国民統合の象徴とされている天皇の地位にかかわることについて、本当に国会だけで定めていいんでしょうか。国民が、恐らく確認的なことになるのではないかと推測をいたしますけれども、そういった憲法典ではない事項についても必要ではないかということを従前から提起させていただいております。

 また、先ほど生命倫理にかかわることという話が出ました。長きにわたりまして、人の死というのは三徴候、自発的呼吸の停止、心臓の不可逆的停止、瞳孔の拡散というこの三つをもって死とするというのが恐らく国民の多くの方の意識だったのではないかと思いますが、例えば、人の死かどうかということを、脳死ということをもって人の死とするかどうかというのは、これは単純に法律だけで決めて本当にいいんでしょうか。やはり死生観にかかわることでありますし、あえて憲法上のものということでいうと、生命、自由及び幸福の追求の権利というのが憲法上認められておりますので、いわばその権利の享有主体としての終期をいつにするかという話でありますので、こういったことも対象となり得るのではないかというふうに考えているところであります。

 でき得れば、どういったテーマがふさわしいのか、法律上の限定をつけるということであれば考慮しましょうということを我が党としてもこれまで言ってまいりましたので、ぜひこの点について議論を深めていただければと思います。

 なお、従前も発言をさせていただいたことがありますけれども、国民投票についても、衆参三分の二で、かつ議会の側で発議をするということを想定しておりますので、何か解散に結びつくとか政府の責任になるというようなことは我々としては想定をしていないということを付言させていただきます。

小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁です。

 皆さん方から大変有益な議論を承って、先ほど来、いろいろな考え方があるんだな、こう思って聞かせていただいておりました。

 幹事の立場でありますので、若干進行めいた話を一点提案させていただきたい、こういうことでございます。

 もちろん、これは幹事会でやるべきことでありますが、全体の皆さん方にも申し上げておいた方がいいと思うものですから、発言をするわけでございます。

 まず、きょうで、いわゆる三つの宿題というそれぞれのテーマについては扱わせていただきました。きょうの議論もそうでございますが、先ほど橘部長からお話もあったとおり、この国民投票法に関しても、ほぼ与野党で当時合意ができていた、できつつあった、こういう話でございますし、現に今法律ができておりまして、その法律の附則のところで、これは自民党、公明党さんがおつくりになった案でありますけれども、先ほど近藤さんがお話があったような内容を決める、こういう話になってきているわけであります。

 民主党の方は、御案内のとおり三つの例示を申し上げて、さらに加えて、別の法律で定める、こういう話を提案として申し上げてきているわけでありまして、そろそろ、やはりそういったこれまでの調査会で、約十年、経過からすると十年を超える、こういうことでしょうか、それを積み上げてきた、そういった成果あるいはまた見解、そういったものに基づいて、我々はそろそろ話を詰めていく段階になっているのではないか、こういうふうに思います。

 先ほど来、中山前会長のお話がありますが、十年、ずっと頑張ってやってきていただいて、ここまで来たわけで、後は、ここは話をそろそろ詰めていかなければいけない。そして、詰める段階においては、もちろん皆さん方の御意見を本当に最大限尊重するのですが、これまでの経緯というものを踏まえた上で話を進めていかないと、なかなか建設的な話にならない、こういうことだろうと思っておりまして、幹事会ではそういった議論をさせていただきたいと思いますので、ぜひ委員の皆さん方にもそういったことを踏まえていただいて、御協力をいただきたいな、こういうふうに思います。

 以上です。

大畠会長 ただいまの発言は幹事会の中でもよく論議をさせていただきたいと思います。

柴山委員 二度目の発言ということでお許しをいただき、ありがとうございます。

 先ほど山花委員からお話がございましたルクセンブルクの事例ですけれども、スイスのお話もあったんですが、私はやはり、冒頭の発言で申し上げたとおり、地方における国民投票と、それから大きな国のレベルでの国民投票というものは、必然的にその求められる度合いというものが違ってくるのではないかというように思っております。

 やはり、サイズが小さくて、みずからの生活に身近なさまざまな事柄を扱う部分の判断というのは比較的容易にできるのではないかというように思いますし、ルクセンブルク、あるいは、先ほどお話があったように、さまざまな特殊な歴史を持つスイスと日本との間で、国レベルの国民投票が求められる度合いというのは違っているのではないかなというように私は思うのが一点目です。

 そして、二点目なんですけれども、先ほど橋本委員の方から御党の中でのいろいろな悩みについて率直な吐露がありまして、共感できる部分が多々あるんですけれども、議会制民主主義が機能しないということをそれで率直に結論づけてしまってよいのかなという疑問があります。

 むしろ、そういった事柄については、政党のガバナンス、場合によっては政党法の策定による党内民主主義の確立、そういったことも踏まえてやっていくべきだと思いますし、ねじれ国会が機能しないことについては、それこそ、それに即応した形でのさまざまな議論というものもなされるべきだと思いますので、今の現状で、物事が前に進まないから、では国民投票かということは、私はちょっと、一歩議論が飛躍をしてしまいかねないというような懸念を持っております。

 そして、三点目なんですけれども、確かに、先ほどお話があったように、国民投票が必ずしも解散等に直結しないというような御意見、それはそのとおりかと思いますが、たとえ諮問的であっても国民投票が持つ政治的な意義というのは、私は、場合によっては非常に大きいものがあるというように思っております。たとえ諮問的な国民投票であっても、先ほどお話があるように、政府が行うということにはやはり相当の政治的な意味合いが強いということから、これは慎重に行うべきであろうというように思っております。

 そして、最後なんですけれども、私は、憲法に準じる問題等については国民投票はなじむと思いますが、生命倫理にかかわる脳死等の問題、これは、検討の余地は十分あるかと思いますが、それこそ、先ほどお話が出たとおり、非常に微妙な問題であり、投票率の問題も結構考慮しなければいけないのではないかなというように思いますので、生命倫理等の問題については、もう少し検討を深めた上で採否を決定するべきではないかなというように思います。

 以上でございます。

笠井委員 きょうのテーマについては、先ほど橘部長からもお話があって、私自身も憲法調査特別委員会の時代のこと等含めていろいろと思い起こしながら伺っていたので、あえてきょうは発言、質問をするつもりがなかったんですが、先ほど小沢民主党筆頭幹事の方から発言があったものですから、あえて言わざるを得なくなったということでございます。

 先ほど橘部長が説明されたとおり、憲法改正問題についての諮問的あるいは予備的国民投票について検討するとした附則十二条については、憲法調査特別委員会の審議の過程で、自民、公明両党とそれから民主党の間で妥協点を探るという状況があって、いわば最終盤の局面の中で盛り込まれたというか出てきたものだということで、その経過からも、附則十二条というのは国民の要求があって盛り込まれたものじゃないというのが私自身の認識でありますし、経過だったなというふうに思っております。

 それで、前提として、先ほど小沢幹事の方から、国民投票法そのものについて言えば、ほぼ与野党で合意があるものであると言われたんですが、これはもう、違うということを言わざるを得なくて、野党の中には私たちもおりますし、それ以外にも内容的にも反対した会派があったはずでありますし、ほぼ合意というふうに言われた自公と民主の間でも、最後は民主党は反対をされたわけでありますから、そういう言われ方をすると、全然話が違ってくるということを言わなきゃいけないというふうに思うんです。

 その上に立って、話し合いを詰めていく段階だということで幹事会でも議論するがということも言われたんですが、私自身、きょうの話というのは、三つ目の宿題と言われている問題について、橘部長からも説明を受け、話を聞いて、質疑ないし討議で意見を述べるという場で、それを踏まえて、会長も先ほど幹事会で言われたように、来週予定している幹事懇の中で今後どうするかということを幹事の間あるいはオブザーバーを含めて議論しようということになっていたわけです。

 何かそれが、きょうまだ終わっていない段階で、詰める段階になっていますねということを与党の筆頭がここで言われて、やるということになると、ちょっと、この話し合いというか協議のルールからしても逸脱しているんじゃないかと。きょうはきょうで終わったところで次の幹事会でそういう話をしていただいて、それを踏まえてどうするかというのがルールであって、そういうやり方をされるんだったら、きょうも含めて、こんなやり方でやっていいのかというふうになってくるわけです。

 だから、そこはきちっと、幹事会あるいは幹事懇そして審査会ということでやっているわけですから、そして仕切ってきたわけで、きょうの幹事会でもそういうことは一切小沢幹事も言われていないわけですから、そこはきちっと守っていただかないと、きちっと参加するということになっていかない、そして実りあるものにならないと思います。

 以上です。

中谷委員 まず、民主党の国民投票法についての趣旨の確認ですが、橘さん、もしくは民主党の幹事の方もおられますので、発言という形でお伺いしたいんです。

 まず、国会自身が発案し、その結果に拘束されないものの制度設計というのは、これはアンケート的な拘束力のない国民投票と考えていいのか。先ほど山花委員が、問責決議のように、実質は法的効果があるもので拘束せざるを得ないというような趣旨だという御発言だったのか。

 伺いたいのは、何を目的とする国民投票で、どういう意味を持つのか。ワンイシューを国民投票に付したら、結果は事実上拘束力があるものとして無視できないものになるのではないかという気がするんですが、この点はいかがかということと、公明党の予備的国民投票の発案でございますが、これはやはり、憲法改正のための予備調査、準備としての提案であって、原発とかイラクとか沖縄の個別事項の意見聴取のアンケートは含まないというふうに考えていいのか。その点をお話しいただければいいと思います。

 それから、先ほど国民投票法の今後についての話がありましたが、早期に国民にこれを提案して、投票できる状態にしておく必要がありまして、この三つの課題におきましては、先ほど意見聴取をいたしましたが、やはり、この国会の会期内においても、結論が出る部分においては結論を出して、法律の修正もしくは改正をいたしまして、十八歳の年齢の問題、公務員の問題につきましては、合意を得て処理ができるようにしておく必要があると私は思います。

 そういう意味で、幹事会におきまして、今後、この問題を協議する場が必要でもありますし、各党の意見を集約するなら、幹事会の中で各党の代表者による筆頭協議会を設置して協議する必要があると私は思っておりまして、小沢幹事の提案に賛成をさせていただきます。

橘法制局参事 御質問ありがとうございます。

 民主党案の立案をお手伝いさせていただきました立場から、民主党案がどのように考えられていたのか、条文がどうなっているのかについて御報告申し上げます。

 まず、民主党の国民投票が諮問的なものである、これを法律案の中に盛り込んだ趣旨について、提出者のお一人でいらっしゃいます枝野幸男先生は、次のように衆議院の本会議で述べておられます。

 立憲主義にかかわる問題について、国会がみずからの意思に基づき、諮問的に国民の意思を問い、その主権者の意思を十分に考慮しながら権限行使することは、何ら憲法に反するものではなく、むしろその趣旨にかなうものです。こう考えると、法体系的には、国会が一般的に国民の意思を問う諮問的国民投票制度こそが基本にあり、特に、必要的で拘束力を持つ九十六条の憲法改正国民投票制度は、その特例的な制度として位置づけられます。一般法がないまま特例法を制定するのは不自然なことですと。

 それで、条文の中には、第百三十三条として、「国政問題国民投票の結果は、国及びその機関を拘束しないものとする。」このような形で憲法問題はクリアされているのだというのが民主党案の基本的なお立場であったかと存じます。

 以上です。

大畠会長 あと、後段のことにつきましては、先ほど笠井委員からもお話ありましたように、幹事懇談会の中で今後のことについては率直にいろいろと意見交換しながら進める、こういうことで引き取らせていただきたいと存じます。

赤松(正)委員 先ほど、中谷会長代理からの御質問と、それから、私も小沢幹事からの発言に対して少し申し上げたいことがありますので、二点ほどについて。

 まず、私どもが申し上げておりました諮問的、予備的云々という話につきましては、先ほども申し上げましたように、あくまで憲法改正にかかわる問題でございまして、原発問題を初めとする政治一般、全体的な課題ではない、そういうものを含むものではないということでございます。

 それから、先ほどの小沢幹事の発言については、恐らくちょっと言葉足らずだったんじゃないのかと。要するに、詰める段階に来ている、もう十年やってきたんだから詰める段階だとおっしゃったのは、ちょっと違うと思います。私も、笠井委員が言われたのと全く重なるわけじゃありませんが、例えば十年というのは憲法調査会も含んでしまうわけで、恐らく小沢幹事が言われたのは、この三つの宿題をめぐる問題について詰めよう、こういうふうに言われたんだと思います。それなら全くそのとおりでありまして、ただ、聞いている限りにおいては誤解を呼ぶ発言だと。何か、憲法にまつわる問題全体を詰めよう、こういうふうに言われたように聞こえました。

 それに付言して言うと、例えば、自由民主党、公明党と、それから民主党との考え方の違いを詰めるということに当たって、さっき中谷会長代理が言われたこととも若干絡むんですが、例えば一院制、二院制をどうするか。一院制云々なんという問題は、これは極めて、なかなか国会議員の方からは出しづらい。例えば、私どもの方でもそういう問題を党内で議論するとやはり、誤解もあるんですけれども、参議院側からの反発があるというふうなことがあるので、こういう問題は、民主党提案の中の課題は、大いに詰めるというかすり合わせをするというか、そういうものも取り入れるという可能性は十分にある、そんなふうにも思います。

 あわせて、三つ目としては、これもここで言うのはまだ早いのかもしれませんが、先ほど小沢幹事が幹事会云々ということを言われたのであえて申し上げますと、こうした三つの宿題の議論とあわせて、ぜひ、憲法全般をめぐって、憲法改正をする必要があるのか、いや、しなくてもいい、法律で対応できる、改正など必要ない、こういう意見と、いや、改正すべきだという意見をしっかりと両方対峙する格好で、この憲法審査会において、当初三年ぐらいかけてやろうと言っていた作業をやるべきである、こういうふうに申し上げさせていただきまして、私の発言とさせていただきます。

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。

 中谷委員から御質問いただきました。また、先ほど柴山委員からの御指摘がありましたルクセンブルクの話は、規模が小さいじゃないかという指摘は甘んじて受けますけれども、中身については、EU憲法の当否についての国民投票、これが本当に、町中でもいろいろなところでも議論をしているという姿が見受けられるような状況が出てくるんじゃないか、日本国憲法の場合も似たようなことがあるんじゃないかという、楽観論と言われるかもしれませんけれども、そういったことでございます。

 また、政府の都合でこの問題についてやってみようみたいなことは我々も想定しておりませんで、あくまでも、要するに、衆参で三分の二の会派が、よし、これでいこうというようなことが条件であると思っております。

 その上で、先ほどちょっと例えがわかりづらかったかもしれませんけれども、二段階に分けて考えていただきたいんです。

 そもそも、一般的な国民投票ということが憲法上認められるかどうかという話であると、認められますよね、それは事実上の拘束力しかないからですという話であります。ただ、事実上の拘束力がインパクトが大きいのではないかという指摘は、全くもってそのとおりだと思っております。

 ちょっと専門的な話になっちゃいますけれども、憲法典というのは、授権規範であるとともに制限規範です。国会に立法権というのを憲法が与えていますが、これは授権規範としての側面ですけれども、国の法律は国会以外の機関がやってはいけないという意味では、制限規範という意味が憲法四十一条にはあります。

 したがって、制度設計として、国民投票の結果に縛られる、これがなければ法律として成立しないというようなたてつけにするとすると、それは憲法違反になる可能性がありますので、諮問的なものでなければいけないという認識です。

 ただ、他方、先ほど問責決議の例を出したのは、そうはいってもインパクトは大きいですよねと。つまり、問責決議が出されたとしても、憲法上は、総辞職しなきゃいけないとか解散しなきゃいけないとか当該大臣は辞任しなきゃいけないなんてどこにも規定されていませんけれども、そのインパクトが大変大きいものですから、これまでもその結果として辞任をされてきた方がいますよね。

 同じように、拘束力がないとはいえ、国民投票で示された意思というのは、かなり政治的には重く受けとめる必要があるでしょうというような意味で先ほど申し上げました。

 以上です。

照屋委員 私も、小沢幹事がおっしゃった先ほどの発言内容には大きく違和感を持っておりますし、その点については、笠井委員からありましたように、会長において、当憲法審査会の運営については、幹事懇談会、幹事会等の議論を踏まえて慎重にお運びをいただきたい。これは要望でございます。

 あと一点は、私は書面でも意見書を出しましたが、いわゆる三つの宿題についてもいまだ議論は不十分である、もっと議論を尽くすべきだ、こういうふうに言いましたので、中谷先生からありました実務者協議会、これも非常に拙速である、当審査会でもっともっと三つの宿題などについても議論を深めるべきだという意見だけを申し上げておきます。

大畠会長 きょうの憲法審査会は、一般的な国民投票についての題材のもとに、これまでの調査会の事実関係を含めて橘企画調整部長から報告を聞き、それについて委員の間で議論をしようというのが目的でございますので、今後のこの審査会の進め方については、先ほど数名の方から御指摘がありますように、幹事懇談会で皆さんのお話を聞きながら進める、こういうことにさせていただきたいと思います。

 照屋委員からの御指摘は、私もそのとおりと受けとめておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

橋本(勉)委員 柴山委員から間接民主制のことで言われましたので、ちょっと反論させていただきたいと思います。

 一つは、間接民主制そして直接民主制という分け方で、柴山委員は、間接民主制に今なっているからということだと思いますし、今ねじれているから、今の現状だけを直すには別の問題だとおっしゃいました。

 私は、もともと間接民主制と直接民主制には根源的な問題があると思います。例えば、今、小選挙区制では、過半数をとる人が当選します。過半数をとった人が当選して、その中でまた過半数で決まっていくということは、二分の一掛ける二分の一で、要するに四分の一の民意があれば決まっちゃうんですね。それに対して、直接民主制というのは過半数ということで、もともと間接民主制に限界があるということを申し上げたいと思います。それを是としていくならば、これはどういうテクニック論で話してもこの溝は埋まらないということだと思います。

 では、選挙区の選挙制の問題だから直したらいいんじゃないのということになるでしょうけれども、これも、過半数というのはなかなか直せない問題だと思いますので、それはどうしても国民投票法で補っていかなければならない問題が本質としてあるんじゃないかなと私は柴山議員に反論させていただきたい。

 世の中には、ヨーロッパでも多くの国々で拘束力を持った国民投票制というものを既に持っているんですね。これによって、この間接民主制の限界を補っていく制度がもう既につくられているんです。日本だけが非常に出おくれて、この問題だけに何年もかかっているというのは非常に情けないと私は意識をさせていただいております。

 そういう意味で、早目にもっと拘束力のある国民投票法を導入していただいて、ギャップができてしまっているものをしっかりと埋めていかないと大変なことになると思います。八〇%がこの政策を否定しているのに国会で決めてしまうということが本当に民主主義なのかどうか、ここはしっかりと考えていかなければいけない本質的な問題があると思います。

 以上です。

大畠会長 直接民主主義と間接民主主義に関しての御発言をいただきました。一つの課題として受けとめさせていただきます。

山尾委員 発言の機会をありがとうございます。民主党の山尾志桜里です。

 お時間がまだあったので、済みませんが、発言をさせていただければと思います。

 私の立場は、この国民投票制度については非常に慎重な立場をとっておりまして、ただ、必ずしも意義が全てにおいて見出せないというものでもないと思いますので、この附則十二条に沿って議論を進めていけばよいと思っております。

 なぜ慎重かと申しますと、この国民投票制度というものも、その最終的な目的は、国家として決断をするに当たって意義を有するからだということになると思うんですが、国家としての決断をするに当たっては、もちろん、一方で多様な民意や価値観、意見を受けとめながら、最終的には大局に立った決断をすることが求められる。場合によっては、その大局に立った決断というのが民意の大勢とは一致しない場合もあり得るということだと私は思っております。

 国民投票を積極的に受けとめる御意見の中には、多様な民意を反映できるという言葉も出てくるんですけれども、恐らく、特定のテーマの是非を問うような国民投票であれば、むしろ逆に、結果としての数の力で国民の意見の多様性というのは捨象されてしまう場合というのが非常に多いのではないかと私は感じております。

 ましてや、国民投票で是非が問われれば、先ほどから御意見も出ていますように、実質的には、民意の大勢とは異なった大局に立った判断、決断をするということは、政治家にとっては、不可能とは言いませんが、非常に困難な状況になるというふうに思います。

 意義として、そのほかに国民の政治参加ということが挙げられておりまして、私ももちろん、キャンパスで学生たちが自分の支持する政党やあるいはさまざまな政策について議論をし合うというような姿が日本にも見られるようになればいいなと思いますし、そうしていきたいと思いますけれども、その第一歩として、前回のこの会議でもお話になりましたように、十八歳に選挙権を広げる、あるいはその前提をつくるための学生に対する政治参加への教育を深めていくということがまず先にあろうかと思います。

 もちろん、国民投票という制度ができれば、政治参加には資するとは私は思います。思いますが、ほかの手段もあるわけであって、この政治参加が国民投票を推進する大きな理由ということにはなかなかなりがたいのではないかなと私は感じております。

 そろそろ最後にいたしますが、そういった意味合いで、私は非常に慎重な立場ではあるものの、例えば一院制の問題などのように、憲法改正にかかわるテーマであって国会議員発議の推進力が類型的に弱いと思われるような場合については、この国民投票の諮問的、予備的な制度設計というものも、もしかしたら高い意義が見出し得るかもしれない。

 最後は非常に曖昧で大変恐縮ですけれども、そういった意味で、附則十二条に沿って少し具体的な議論を進めていけばよいのではないかと思っております。

 以上です。

近藤(三)委員 再び発言の機会をいただきます。

 先ほど幹事の小沢先生の方から、本件に関しましては、先ほど、話があったような内容を決めると私が発言したというふうに小沢幹事がおっしゃいましたけれども、私はこのように申し上げました。本日議題の国民投票法附則第十二条は、憲法改正問題についての諮問的国民投票として、次の二点について速やかに検討するように定められていますというふうに申し上げただけで、速やかに定めていくという私の考えを申し上げたわけではございません。附則十二条はあくまでも検討を求める条項ですので、私としましては、この審査会で十分に検討、議論するべき課題だというふうに考えております。

 以上です。

大畠会長 事実関係についてはっきりとしたいということで御発言をいただきました。

棚橋委員 短くちょっと質問をさせていただきますが、事前に通告をしておりませんので、法制局の方、もしお答えになれればということで結構でございます。

 私は、憲法改正規定、これが衆参それぞれの院の総員の三分の二の賛同をもって国民投票というのは、もともと、時代の変化の中で非常に硬直的なものであり、これをまず改正する必要があるというふうに考えておりますし、多くの委員の方々もそうお考えではないかと思います。一方で、憲法を制定する国民の主権あるいは国民の意思からして、憲法改正規定自体を、そういう形で国会が発議し国民投票にかけるということに対して、憲法の制定あるいは憲法制定権者という観点から、何らかの憲法上の問題点があるという指摘があるかどうか。もし御記憶にあれば、その点だけ教えていただければありがたいと思います。

 審査会長、どうもありがとうございました。

橘法制局参事 先生、御質問ありがとうございます。

 浅薄な知識ではございますが、先生御指摘の、九十六条自体が改正の対象となり得るかという点については、憲法学説上、両論ございます。まさしく改正規定はみずからの改正規定によって改正され得ないのだというロジックでもって改正不能という論者もおられます。ただ、どちらかというと、私が判断するわけにはまいりませんが、多数あるいは通説と言われる学説からすると、もちろん九十六条も憲法の中の一条項であるから、これは、三分の二を例えば過半数、今、先生方が検討しておられるような、そういうことは可能だという見解も強くございます。

 ただ、九十六条については、先生今おっしゃいましたように、国民主権の原理から基づく憲法制定権力、国民が持っておられる憲法制定権力というものがどのようなものであるのかという深遠な御議論があるかと存じます。九十六条はまさしく憲法典の中に制度化された憲法制定権力なのだという御議論がその賛否両論の背景にあるものと存じます。

 以上です。

大畠会長 ほかに御発言を希望される方はおられますか。

 他に御発言を希望される方がおられないようでありますので、これにて自由討議は終了いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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