衆議院

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第7号 平成25年4月25日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十五年四月二十五日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   会長 保利 耕輔君

   幹事 伊藤 達也君 幹事 中谷  元君

   幹事 葉梨 康弘君 幹事 平沢 勝栄君

   幹事 船田  元君 幹事 武正 公一君

   幹事 馬場 伸幸君 幹事 斉藤 鉄夫君

      泉原 保二君    上杉 光弘君

      衛藤征士郎君    大塚  拓君

      河野 太郎君    佐々木 紀君

      鈴木 馨祐君    高木 宏壽君

      高鳥 修一君    武村 展英君

      棚橋 泰文君    土屋 品子君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      徳田  毅君    西川 京子君

      西村 明宏君    野田  毅君

      鳩山 邦夫君    原田 憲治君

      松本 洋平君    武藤 容治君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本ともひろ君    大島  敦君

      郡  和子君    篠原  孝君

      古川 元久君    三日月大造君

      山口  壯君    伊東 信久君

      坂本祐之輔君    西野 弘一君

      松浪 健太君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    浜地 雅一君

      小池 政就君    畠中 光成君

      笠井  亮君    畑  浩治君

    …………………………………

   衆議院法制局法制企画調整部長           橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 窪田 勝弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  馳   浩君     佐々木 紀君

  山本ともひろ君    武村 展英君

  篠原  孝君     郡  和子君

  新原 秀人君     松浪 健太君

  鈴木 克昌君     畑  浩治君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     馳   浩君

  武村 展英君     山本ともひろ君

  郡  和子君     篠原  孝君

  松浪 健太君     新原 秀人君

  畑  浩治君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

四月二十三日

 日本国憲法九条を変えること反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第五五八号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第八章の論点)


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     ――――◇―――――

保利会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第八章地方自治の論点について調査を進めます。

 本日の議事について申し上げます。

 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの自由討議を行うことといたします。

 衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

橘法制局参事 衆議院法制局の橘でございます。

 本日は、第八章地方自治の章の主要論点につきまして、お手元配付の資料に基づき、御報告をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 日本国憲法では、地方自治と題する特別の章が設けられております。旧明治憲法におきましても、その起草過程においては地方制度に関する規定が構想されていたそうでありますけれども、しかし、当時はいまだ地方制度に関する規定は憲法制度上必ずしも必要不可欠のものとは考えられていなかったことなどから、最終的にそれが削除されたと言われております。

 また、旧明治憲法下の地方制度に関しましては、市や町村については一定の自治が認められていたものの、府県知事や郡長は国の行政官庁であるとされ、また府県や郡自体も地方公共団体の区域であると同時に国の行政区画としても位置づけられるなど、中央官治主義の色彩が強いものであったと指摘されているところでございます。

 これに対して、日本国憲法におきましては、当時のGHQが日本の民主化を進めるために分権化を重要視し、首長公選制や自治権の確立、地方自治特別法の制度等を設けるべきとしたこともあって、地方自治に関する一章が設けられることとなり、その憲法上の位置づけは格段に重要性が増したと言われているところでございます。

 さて、このようにして設けられました第八章ですが、条文数はわずかに四カ条でありますので、冒頭、この条文の構造につきまして、論点整理の観点から、ごく簡単に御説明をさせていただきたいと存じます。

 お手元配付の条文集と詳細資料、衆憲資八十三号の一ページ目のポンチ絵、表紙と目次及び論点表の三枚をおめくりいただいた四枚目が一ページ目になっておりますけれども、この下にある図表をごらんいただければと存じます。

 まず、冒頭の総則的規定である九十二条では、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定されております。ここでキーワードとなっている地方自治の本旨とは何ぞやということになりますが、これにつきましては、団体自治と住民自治という二つの基本原則から成る近代的地方自治の原則を意味するものと一般的に解釈されているところでございます。

 ここに言う団体自治とは、地方公共団体のことは当該地方公共団体自身が決めるという、地方公共団体と国との関係における原則であります。また、住民自治とは、地方公共団体のことは当該地方公共団体の住民自身が決めるという、地方公共団体と住民との関係における原則であります。

 そして、この住民自治の原則を定めたものが第九十三条であり、地方公共団体には議会を設置するとともに、その議員や首長はともに住民が直接に選挙するという、いわゆる二元代表制のシステムが定められているところでございます。

 そして、これに続く第九十四条が団体自治の原則を定めたものであり、地方公共団体は、みずからその財産管理、事務処理、行政執行の権能を有するとともに、法律の範囲内で条例制定権を有する旨が定められております。

 最後の九十五条は、地方自治特別法に関する特別規定でございます。

 それでは、以上の第八章の条文構造を前提に、いつものようにA3縦長の論点表をごらんいただきながら、以下、各論点につきまして、そのポイントをごく簡潔に御報告してまいりたいと存じます。

 まず最初に、第八章の規定全体については、日本国憲法による地方自治の章の創設を高く評価しつつも、地方分権が推進されてきた現状に照らすと、その規定ぶりは余りに簡潔に過ぎ、憲法改正あるいは立法措置によって、より一層分権を推進する観点からの基本的方向性を明確にすべきではないかとするAあるいはBの欄の御意見がございます。そして、その具体的な御提案が、個別の条において論点として掲げられている諸事項です。

 それでは、個別の条文に関する論点に入らせていただきたいと存じます。

 まず、九十二条に関する論点ですが、先ほど申し上げました地方自治の本旨につきまして、これが団体自治と住民自治を意味するものであることは十分に理解できるけれども、しかし、日本語としての地方自治の本旨という七文字をどう眺めてみても、そのような意味を読み取ることはできない、誰が読んでも理解できるように、端的にこの二つの原則を憲法に明記するべきではないかとするのがAの欄の御主張です。

 これに対して、解釈で十分に明確になっているのだから、その必要はないとするのがCの欄の御主張です。

 次に、国と地方公共団体の役割分担については、いわゆる補完性の原則、すなわち、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体に委ねることを基本とし、国は、外交、防衛などのような国家としての存立に関する事務や全国的に統一的に行うべきもの、あるいは全国的な規模、視点で行うべき施策などを重点的に担うことにとどめるべきであると説明される原則でありますけれども、これを憲法上の国と地方の役割分担の原則として明記するべきであるとするのがAの欄の御主張です。

 これに対して、このような事項は現在でも、例えば地方自治法の第一条の二などに明記されており、法律レベルで対応すれば足りるとするのがBの欄の御主張です。

 三つ目として、九十二条、あるいは第八章全体に関する最大の論点と言っても過言ではないと思われますけれども、道州制に関する御議論がございます。

 まず、道州制の導入と憲法改正の要否につきましては、道州にどのような権限を与えるのかといったその具体的な制度設計によっても異なるわけでございますけれども、その点はさておくとしても、現行の都道府県を廃止して道州を設置するというこの一点に着目した場合には、日本国憲法第八章の規定が保障している地方公共団体とは何か、現行の都道府県と市町村という二段階制、すなわち二層制の仕組みのどこまでを現行憲法が変えてはいけないものとして保障しているものなのかという点が問題となってまいります。

 この点につきましては、まず、憲法は、市町村といった基礎自治体の存在については当然の前提としているけれども、都道府県のような広域自治体を設けるかどうかは立法政策の問題にすぎないという立場がございます。古いものですけれども、詳細資料、衆憲資八十三号の二十五ページから二十六ページに掲げております政府答弁は、この立場の見解と思われます。

 これに対して、市町村のような基礎自治体を包括する広域自治体を含めた二層制の仕組み自体を憲法は保障しているとする見解もございます。この中には、憲法が保障する広域自治体とは都道府県制のことだとする説と、都道府県制を維持するかどうかは立法政策の問題であり、二層制の枠内において都道府県を統廃合した道州とすることも現行憲法上許されるとする説がございます。

 以上の憲法解釈を前提として、道州制の導入に積極的なお立場から、これを憲法改正によって導入するべきとするAの欄の御主張と、憲法改正を待たずに、法律を制定することによって導入するべきであるとするBの欄の御主張がございます。他方、そもそも道州制に消極的なCの欄のお立場もございます。

 次に、いわゆる団体自治の原則に係る第九十四条に関する論点ですが、まず、条例制定権の拡充に関する御議論がございます。

 現行憲法では、地方公共団体の条例は法律の範囲内で制定することができるものとされており、これを受けた地方自治法の第十四条第一項におきましても、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができるものとされております。また、憲法が第四十一条で国会を唯一の立法機関としていることとの関係でも、これに反するような条例制定はできないと一般に解釈されているところでございます。

 これに対して、地方の事務に関しては、逆に、法律よりも地方公共団体の条例こそが優先されるべきであり、憲法に条例の専属的、優先的な所管領域を明記するべきであるとするAの欄の見解がございます。まさに国家の立法権を国の所管事項と地方の所管事項とに区分して分有させるもので、その定義いかんにもよりますが、いわゆる連邦制に一歩あるいは半歩近づいた御主張と言えるかと存じます。

 これに対しまして、現行憲法の枠内でも認められる、条例による国の法令に対する上書き権をより広範に認めるべく法律レベルで対処すべきであるとするBの欄の御見解もございます。

 また、現在の個別の法律による委任あるいは解釈による上乗せ、横出し条例などの手法で足りるとするCの欄の見解もございます。

 もう一つ、九十四条の団体自治に関する論点としては、地方財政に関する御議論がございます。

 各地方公共団体の自主的、自立的な行政運営は、その財政基盤の確立いかんによって大きく左右されることは論をまたないわけでございますから、地方財政の問題は、地方自治の中核的論点と言っても過言ではございません。

 これに関して、地方公共団体の課税自主権や行政運営に必要な財源の確保に関する財政調整措置などの基本的事項につきましては憲法に明記するべきであるとするAの欄の御主張がございます。

 他方、Bの欄の御主張は、課税自主権等の地方の権限強化は、法律の制定、改廃により進めることが可能であり、憲法改正を論ずる前に法律による具体化の努力をこそ行うべきであるとするものであります。

 また、現行憲法の解釈として課税自主権等は十分に読み込めるから、特段の法的措置は必要ないとするCの欄の御主張もございます。

 大きな三つ目の論点である、九十三条の住民自治の原則に関する御議論では、まず、首長も議員もともに住民による選挙によって選ばれなければならないとする二元代表制のシステムに関して、地方公共団体の規模やその自主性を無視して一律に全ての地方公共団体に二元代表制を強いることは適切ではないとして、当該自治体の自主的な選択により、例えば、国のような、議院内閣制のような制度、あるいはシティーマネジャー制、すなわち、議会が政策の大枠を決定した上で、議会が任命したマネジャー、いわば雇われ支配人のようなものと存じますけれども、このマネジャーに市政の運営を任せるといった制度などを自由に採用できるようにするべきではないかといった主張がございます。これがAの欄の御見解です。

 他方、首長と議員とが融合することになれば、現在でも強大な執行権限を持つ首長に対して、議会の役割と権限が縮小することになり適切ではないとして、現在のままでよいとするCの欄の御主張もございます。

 次に、九十三条に関してはもう一つ、定住外国人の地方参政権に関する論点がございます。

 憲法九十三条二項は、地方公共団体の首長及び議員は、その地方公共団体の住民が直接にこれを選挙すると定めておりますが、この住民の意味については、一つ、国民主権の原理からすればあくまでも日本国籍を有する住民と解する見解、二つ、国政選挙の場合とは異なって、地方参政権については、国籍のいかんを問わず、当該地方公共団体の区域内に住所を有する者と解すべきであるとする見解とが対立しております。

 また、前者のように本条項の住民を日本国籍を有する者に限定した場合であっても、立法政策として一定の外国人に地方参政権を与えることは許されるとする見解と許されないとする見解とがございます。

 この問題に関して、平成七年の最高裁判決では、憲法九十三条二項の住民は日本国籍を有する住民と解釈するべきであるとしつつも、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められるものについては、法律をもって地方参政権を付与することは憲法上禁止されているものではないと述べられているところです。

 以上のことを前提として、まずAの欄の見解は、憲法改正をして、この最高裁判決のような解釈を封じ、定住外国人の地方参政権などは認められないことを明記するべきであるとするものです。

 これに対して、Bの欄の見解は、上記の最高裁判決を前提として、法律レベルで地方参政権を認める措置を講ずるべきであるとする見解です。

 そして、現在のままでよいとするCの欄の御主張もございます。

 最後は、九十五条の地方自治特別法に関する議論です。

 この規定は、特定の地方公共団体に対してのみ適用される特別法は、国会で議決されるだけでは制定できず、当該地方公共団体の住民投票を経て初めて制定できるとするものでありますが、この条項によって住民投票が行われた上で制定された法律は、詳細資料、衆憲資八十三号の五十四ページに記載しておりますとおり、昭和二十四年の広島平和記念都市建設法から昭和二十六年の軽井沢国際親善文化観光都市建設法までの十五件のみであります。

 しかも、この条項が適用される「一の地方公共団体のみに適用される特別法」の意味については、単に特定の地方公共団体の区域のみを対象とするという意味ではなく、その法律の内容が、その地方公共団体という組織、運営、権能自体について他の地方公共団体とは異なる取り扱いをするものに限られると解釈、運用されているところでございます。そうであるならば、そのような意味を憲法上に明記すべきであるとするのがAの欄の見解です。

 他方、現在の解釈、運用自体が問題であるとして、それを改めて、条文どおりにその要件を緩やかに適用し、住民投票を積極的に行っていくべきであるとするのがCの欄の御主張でございます。

 以上、駆け足で雑駁でしたが、第八章の御報告を終わります。ありがとうございました。

保利会長 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

保利会長 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。

 発言時間は七分以内とし、その経過については、終了時間一分前及び終了時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言の申し出がありますので、順次これを許します。土屋正忠君。

土屋(正)委員 自由民主党の土屋でございます。

 日本国憲法第八章地方自治につきまして、党を代表して意見を表明いたします。

 現行憲法における地方自治の規定は、極めて抽象的となっております。とりわけ地方自治の本旨の具体的内容、国と地方公共団体の役割分担と協力関係、地方財政などについては、六十数年積み重ねられてきた現行憲法下での地方自治の経験を踏まえて、規定の充実が必要だと考えます。

 自民党の憲法改正草案では、これらの点を中心に改正を提案しており、総論として、今御説明のあった論点表のAの立場に立っております。

 以下、その具体的内容を御紹介いたします。

 まず、地方自治の本旨の明確化についてであります。

 自民党案では、九十二条において地方自治の本旨に関する規定を新設いたしました。従来、地方自治の本旨という文言が無定義で用いられていたため、明確化を図ったものであります。また、自治の精神を明確にするために、地方公共団体という名称を地方自治体に改めております。

 以上、論点表のAの立場であります。

 次に、地方自治体の種類と、昨今活発に議論されている道州制についてであります。

 自民党案では、九十三条第一項で地方自治体の種類を規定いたしております。すなわち、「地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。」としたわけであります。現行憲法で言及されていなかった地方自治体の種類や、地方自治が二層制をとることについて言及したところであります。基本とするというのは、現在あります一部事務組合、広域連合、財産区などのことも踏まえたものでございます。

 道州制につきましては、憲法改正草案に直接盛り込まれていませんが、自民党は、原則として憲法改正を行わないで道州制を導入する法案を検討しているわけであります。道州を広域地方自治体として位置づければ、この草案のままでも道州制の導入は可能と考えておりますが、これは論点表におけるBの考え方であります。

 もちろん、道州制の規定の仕方によっては、憲法第二十五条の保障する社会保障の権利並びに第二十六条の教育を受ける権利、こういったことに触れてくる場合には、憲法にも触れてくる可能性もあるということを付言しておきたいと存じます。

 次に、国と地方の権限のあり方についてであります。

 国と地方自治体の役割分担や協力関係については、自民党案九十三条三項で、「国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。」と定めています。この条文により、国と地方自治体の役割分担は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施するという九十二条で明確化された地方自治の本旨に基づいて法律で定められることになります。これを前提として、国と地方自治体の協力関係と、地方自治体同士の協力についても定めております。

 以上、論点表におけるAの考え方であります。

 次に、条例制定権に関して申し上げたいと存じます。

 地方自治体の条例が法律の範囲内で制定できることについては変更しておりません。条例の上書き権のようなことも議論されておりますが、こうしたことは個別の法律で規定することが可能であり、国の法律が地方の条例に優先するという基本は、法の支配、法治国家として変えるべきではないと考えております。

 次に、地方自治体の組織、機構のあり方について申し上げたいと存じます。

 第九十四条で、首長と議会の議員を直接選挙で選ぶという現行憲法の規定は踏襲しています。しかしながら、選挙権を有する者の範囲については、「地方自治体の住民であって日本国籍を有する者」と規定し、外国人に地方参政権を認めないことを明確にいたしました。論点表のAの考え方であります。

 次に、地方財政について申し上げます。

 自民党案では、論点表のAの立場から、現行の規定を大幅に充実させ、九十六条として独立した一カ条を設けました。

 その第一項では、「地方自治体の経費は、」「地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。」といたしております。その上で、「自主的な財源だけでは地方自治体の行うべき役務の提供ができないときは、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講じなければならない。」として、国に財政調整措置を講ずる義務を課しております。さらに、財政の健全性の確保の規定を地方財政にも準用いたしております。

 最後に、地方自治特別法の住民投票については、適用要件の明確化を図った上で規定を存続させております。論点表におけるAの考え方であります。

 以上、自民党の憲法改正草案に基づいて意見を申し上げました。

保利会長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 憲法第八章地方自治に関しまして、二〇〇五年の憲法提言に沿って、民主党の基本的な考え方を御紹介する形で発言させていただきます。

 民主党の憲法提言では、「多様性に満ちた分権社会の実現に向けて」と題して、地方自治の章について詳細な提言を行っています。

 その冒頭の部分では、「分権社会の創造に向けた基本的考え」として、中央集権的な行政の形と政策展開の見直しや、地域みずからの創意工夫が生かせる仕組みをつくり出し、中央政府を地域の多様な自治体活動をサポートするものにしていくことを提言しています。

 国に対しては、地方に補助金を配分することに人材を投入し、自治体の箸の上げおろしまで指示するような管理をやめて、中央政府でしかなし得ない仕事に人材も財源も傾斜配分すべきとしております。

 このような基本的認識のもとで、補完性の原理を、国と基礎自治体、広域自治体の権限の分配に関する基本原理として採用することを明らかにしています。

 すなわち、コミュニティーにできないことを基礎自治体で、基礎自治体でできないことを広域自治体で、広域自治体でできないことを国でという補完性の原理を憲法原則として採用し、中央政府、国と、地方政府、自治体の関係を構築するという考え方です。

 民主党の考える分権型国家の具体像として、提言では、まず、「連邦制はとらず単一国家を前提とする。」として、その上で、「国と地方の役割分担を明確にし、中央政府は外交・安全保障、全国的な治安の維持、社会保障制度など国が本来果たすべき役割を重点的に担う一方、住民に身近な行政は優先的に基礎自治体に配分する。「補完性の原理」の考え方に基づき、国と基礎自治体、広域自治体の権限配分を憲法上明確にするとともに、基礎自治体ではなしえない業務や権限は、都道府県ないし道州に相当する広域自治体が担当する。」としています。

 道州制に関しては、先ほど少し触れたように、現在の都道府県のほか、道州制も、広域地方自治体の形態として想定しているところです。これを受けて、民主党の二〇一二年マニフェストでも、地方や国民の声を十分に聞きながら、中長期的な観点で道州制を検討するとしているところです。

 次に、条例制定権のあり方については、「自治体の組織および運営に関する事項や、自治体が主体となって実施する事務については、当該自治体に専属的あるいは優先的な立法権限を憲法上保障する。」としております。すなわち、中央政府は、自治体の専属的立法分野については立法権を持たず、自治体の優先的立法分野については大綱的な基準を定める立法のみ許されることとなります。

 地方財政については、「地方自治体が自らの事務・事業を適切に遂行できるよう、その課税自主権・財政自治権を憲法上保障し、必要な財源を自らの責任と判断で確保できるようにする。」とし、財政自治権と課税自主権を憲法に明記することを提言しております。

 その上で、課税自主権の具体的内容について、「各自治体が自らにふさわしいと考える税目・税率の決定権を含む。」としております。財政調整制度については、「現在の地方交付税制度に代えて、新たな水平的財政調整制度を創設する。」として、新たな財政調整制度の確立を提言しております。

 地方自治体の組織、機構のあり方については、現行憲法では、首長と議会を直接選挙で選ぶという二元代表制度を規定しているのですが、憲法提言では、このような二元代表制度を採用するか否かを自治体が選択できる余地を憲法上認めるとしております。その結果、議院内閣制あるいは執行委員会制、支配人制など多様な組織形態の採用、住民投票制度の積極的活用なども可能となります。

 地方自治に関連するその他の事項として、憲法提言には、外国人の人権保障に関し、「公的社会への参画の権利等について検討する。」としております。

 以上、二〇〇五年の憲法提言に沿って、民主党の考え方を御紹介いたしました。ありがとうございました。

保利会長 次に、松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 日本維新の会の憲法調査会の基本的方向性を踏まえて意見を表明させていただきます。

 まず、総則、総論的な話でありますけれども、現行憲法は地方自治の規定に関して余りに簡素過ぎるということでありますので、具体的な規定を追加する必要があるという認識は一致をいたしております。

 それに加えまして、今、与党でも道州制基本法を今国会にも提出されるということも報道され、そして我が党もその存在意義を道州制に大きく求めているものでありますので、道州制は現行憲法においても導入することは可能ということは、先ほど土屋先生が表明されたことと全く同じ立場をとっておりますけれども、それに加えまして、道州制をより強力に、国の形を大きく変える、明治二十三年以来の都道府県の枠組みも変えていこうということでありますので、我々は道州制を憲法にもしっかりと規定をして、明確に新しく国の形を打ち出していくということを求めているところであります。

 では、まず逐条で意見を表明いたします。

 九十二条についてでありますけれども、地方自治の本旨については、住民自治、団体自治ということを明記していくべきだと考えます。その上で、我々はあくまで国と道州の基本的な権限のあり方、補完性の原則なども含めて憲法に明記をしていくということであります。

 ただし、この内容、権限のあり方というものの区分けですけれども、内政においてはできる限り道州に主体的な能力、権能を与えようということを基本にいたしております。

 そして、補完性の原則なんですけれども、よく言われるのは、市町村でできないことを都道府県に、都道府県にできないことを国にと。この場合、道州にということでありますけれども、これが市町村でできないから都道府県にというようなものだけではなくて、本来どの領域でやるべきなのかという、できないから論からやるべき論というものも踏まえた上での補完性の原則というものも考えていかなければならないのではないか。これが今我が党でも行っている、大阪都構想で行われている新たな大阪市の再編、そしていわゆる大阪都のあり方についての考え方であります。

 そして、先ほど自民党さんの方では広域自治体ということを規定すると。今の地方公共団体は一層制、二層制、両論あるわけでありますけれども、我が党もこれを、明確に九十二条の中で二層制を明記する。そこにおいて広域自治体たる道州としっかりと、広域自治体というものは、これは道州のレベルになるんだと、今の国の出先機関の役割をほぼ都道府県に付加した形の広域自治体ということを明確にしていくということであります。

 そして、九十四条に移ります。

 こちらの特に条例制定権でありますけれども、補完性の原則に基づき、この論点表では「専属的・優先的な立法権限を憲法に明記すべき。」と書いていますけれども、現在の憲法四十一条を踏まえますと、国会が唯一の立法機関ということを踏まえますと、我が党は、補完性の原則に基づき、道州の専属的、優先的な立法権限を認める領域については別に法律で定める旨を明記する。つまり、この領域については道州でやるんですよと、国と道州のすみ分けをしっかりと書き込むということによって、新たな法体系、すっきりとした法体系に徐々に移行していく。

 つまり、いきなり道州制が入ると、これは十分国会答弁でもいただいていますけれども、河川などはかなり機能的に動く、しかしながら、医療などの分野は、先ほどから議論がありますように、国家的な部分が多いということで、徐々に道州制を力強く進めていくような方向をつくりたい。

 そして、司法権についてでありますけれども、これは国で一本化をする。つまり、連邦制国家とは異なって、道州に裁判権は帰属させない。我々は連邦制的なものはとるわけではないということは明確にしております。

 そして、地方財政でありますけれども、道州の課税自主権というものをしっかりと明記することは大事だと考えますけれども、財政調整措置についてはまだ議論のあるところであります。特に、国の財政調整措置と書くと、今までのように国が入ってしまう。今後は、道州制導入時は、道州間でやるような仕組みを、国がかかわるにしろ、あり得べし。

 また、道州によって、例えばインセンティブを与える。財政調整だけではなくて、小さな道州については、例えばですけれども、法人税を下げてあげるので、それを財政調整のかわりにするというようなインセンティブ調整というようなものもあり得るのではないかということで、あえて今回は、改革の方向性の中でこれを書き込むことはいたしておりません。

 そして、九十三条であります。

 二元代表制についてでありますけれども、現行憲法では、地方公共団体全てが二元代表制になっておりますが、市町村、基礎自治体については、さまざまな形態がとれるように、ここの部分は外した方がいいのではないか。逆に、我々は、道州に地方自治法をブレークダウンして、そして道州地方自治法でこうした仕組みを柔軟に決められるような制度設計にすべきだと考えております。

 道州が二元代表制をとることについては、これをどう入れるかはまだこれからの議論があると思いますが、二元代表制をとるという方向で話を進めております。

 そして、参政権でありますけれども、外国人参政権については基本的に認めない。国政も地方参政権も国民固有のものとする。

 そして、九十五条については、先ほど説明がありましたように、この条文は死文化をいたしております。かつて、これができたときには、国が無理やりに地方を変えてしまうんじゃないかということが懸念された。しかし、これは逆に、現在、地方のための法律をつくることが阻害されている。例えば、大阪都法案をつくるときに、これは憲法九十五条にひっかからないようにさまざまな工夫をしたわけでありますけれども、今となっては邪魔になっているこの条文については、我々は削除すべきだと考えております。

 以上です。

保利会長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 憲法第八章地方自治に関する諸論点につきまして、公明党を代表して意見を申し述べたいと思います。

 まず、地方自治の本旨の明確化等でございます。

 現行憲法の規定の充実の必要性についてでありますが、現行憲法は、地方自治について、わずか四カ条しか規定を置いていません。そういうことで抽象的な規定となっているわけであります。

 九十二条の地方自治の本旨についても、それが何であるかを憲法は規定しておらず、具体的な内容が曖昧であるとの意見も党内に多くございます。

 そこで、地方自治の原則として、国が地方自治体と地域住民の意思を尊重することや、地方自治体が自立と責任の原則に立つことを規定すべき等の意見が党内で大勢でございます。

 他方、憲法に規定するのではなく、地方自治基本法をつくって、そこに当面の課題を盛り込んではどうかという意見もあります。

 次に、公明党は、我が国の地方自治や国の統治の新しい形として、国、道州、基礎的自治体の三層構造による地域主権型道州制を提案しています。

 道州制の目的は、一、国、都道府県、市町村という統治構造を大きく改革し、地方分権を推進する。二、東京一極集中型の経済を地域ごとの特性を生かした経済へ転換する。三、国と地方自治体の二重行政を解消する。こういう目的のもとに、住民本位の行政サービス提供に寄与するものであると考えておりまして、公明党は、そのための第一歩として、道州制基本法の早期制定、内閣に道州制推進本部の設置を求めております。

 同時に、道州制への移行は国の形を大きく変えるため、国会だけで議論できるテーマではなく、国民的議論を喚起しながら具体像を練り上げていく必要があります。そのため、道州制国民会議を設置し、約三年間かけて幅広い議論を集約した上で、その後、二年を目途に移行に向けた法的措置を講ずるプランを道州制基本法の中において提示しておるわけであります。

 以上、述べましたように、道州制の導入は、憲法改正を行わなくても、現行憲法下での立法措置で可能と考えられます。現行憲法は、地方自治について詳細な規定を設けておらず、法律でフレキシブルに定めることができると思います。

 また、直接選挙で選ばれる道州の首長が内閣総理大臣を上回る政治力を持つことになるため、首相公選制の導入が必要という意見も今ありますが、国と道州はそれぞれの役割分担があります。例えば、道州の首長が外交や防衛の責任者となることはありません。地方自治体の首長が国政への関与をうかがうような特殊な政治状況を前提とした直観的な議論であり、憲法論議としては一般化すべきではないと思います。

 地方財政、九十四条でございます。

 地方財政については、地方自治体の財政的自立を地方自治の原則として憲法上明確にしたり、課税自主権を憲法に明記すべきとの意見が党内において多くございます。もっとも、具体的な財源のあり方については、例えば、消費税の地方税化のような税源の移譲のみで、大都市はともかく、多くの多様な自治体が自立できる財源確保をすることが課題であります。

 そういう点で、財政調整ということが大事でございますので、課税自主権の強化との関係で、やはり客観的で公平な財政調整の新たな仕組みを検討すべきであると考えます。

 また、条例制定権についてでございますけれども、最近議論になった事例として、東日本大震災の復興特区法案の制定時に、公明党が、法律上の規制を条例で上書きできる措置を求めたことがあります。また、道州制のもとでの条例制定権のあり方として、国の立法権と道州の立法権の関係が今後議論のテーマになると思われます。

 とはいえ、これらのいずれの場面でも、現行憲法のもとでの立法措置で、包括的、一般的に条例の上書きを認めるような方法をとり、その内容を検討する中で、国会を唯一の立法機関とする憲法との関係を整理していけばよく、憲法を改正する必要まではないものと思われます。

 九十三条の地方公共団体の組織、機構のあり方についてでございますが、二元代表制、現行のままでよいと考えます。

 外国人の地方参政権につきましては、相互主義により、国籍に限定を加え、日本国民に対して同等の地方参政権を付与する国の国民に限るべきです。また、条例制定やリコールなどの直接請求は認めないという考え方であります。

 特別法の住民投票でございますが、地方自治特別法の住民投票については、住民投票が行われた事例は昭和二十年代にあって以降ありませんが、今後、地方自治について大きな制度変更がある場合に活用されることもあり得ると思います。住民投票の制度を残しておく方がよいと考えます。

 以上、公明党を代表して、第八章地方自治の章に関する現時点での見解を申し述べました。ありがとうございました。

保利会長 次に、畠中光成君。

畠中委員 みんなの党の畠中光成です。

 憲法第八章地方自治に関して意見を申し述べます。

 皆様御存じのとおり、大日本帝国憲法には地方自治の項目がなく、全て法律で規定されていました。日本国憲法への地方自治の規定の新設は、大日本帝国憲法下の中央集権主義、官治主義を抑えて、地方自治という歴史的、伝統的な制度の保障を意味します。この考え方は現代でも不変のものであります。したがって、第八章は現時点においては改正の必要はないと考えます。

 さて、言うまでもなく、憲法に定める地方自治の本旨は、住民自治と団体自治であります。地方自治が住民の意思に基づいて行われるという住民自治は、ジェームズ・ブライスの地方自治は民主主義の最良の学校であるという有名な言葉にあらわされるように、住民一人一人が共同の問題に関して利益と義務を自覚し、的確、公正な処理を志向する、民主主義の根本にかかわる、決して欠くことのできない考え方です。一方の団体自治は、地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体みずからの意思と責任のもとでなされるという考え方です。

 一九四九年のシャウプ勧告は、このような視点から、地方、とりわけ市町村の財政力を強化する地方税法の改正を提言しました。しかしながら、その後の制度改正によりシャウプ勧告の理念は失われ、いわゆるひもつき補助金などで地方の裁量権が制限され、自治の独立性が損なわれてきました。国が細部まで定めた規定に従わなければ補助金が得られないわけですから、地方は特色を持った施策を打ち出すことができません。この過程で、日本国憲法において理念が打ち出され、シャウプ勧告で力を与えられたはずの地方自治は骨抜きとなり、中央集権化が進み、政府は肥大の一途をたどりました。

 みんなの党は、新しい国の形である地域主権型道州制を実現することで、中央集権体制の打破と地方の活性化、格差の是正を目指しています。

 以下、道州制について申し述べますが、大前提として、現行憲法下でも道州制の導入は可能であることを申し上げます。しかしながら、憲法の基本法典としての性格に鑑みると、道州制は本来、憲法に明確に位置づけられるべき我が国の最重要事項です。その観点から、みんなの党の見解を述べます。

 道州制は、ともすれば、国の出先機関の廃止や地方の組織見直しによる経費削減、さまざまな権限の移譲による地方自治システムの再構築といった、一部の側面のみで捉えられることもあります。しかしながら、道州制の本旨は新しい国の形をつくることであり、二千四百年昔にアリストテレスがアテナイの丘の上で望ましい国家の規模を思索したのと同様に、政治の本質を考えることであります。

 我が国の歴史を翻ると、地方の行政単位の見直しは、大きく二度にわたって行われています。すなわち、七〇一年の大宝律令の制定によって確立した律令制と、一八七一年の廃藩置県であります。これらはいずれも、対外的な脅威に対抗するため、豪族や藩から人的、物的資源を集約し、国家が管理、統制することを企図したものでした。その時代的背景は理解できますが、その結果生じたのは、官僚が全国を画一的に支配する中央集権体制であり、地方の衰退であったと言わざるを得ません。

 今、改めて日本地図を思い浮かべてください。北海道は日本地図の右上端、沖縄は左下端という地図が描かれたことと思います。今度は、それらの地方を中心にした地図を思い浮かべてみてください。北海道は、太平洋を挟んで米国に最も近い地点、沖縄は、東アジアに最も近く、台湾や中国とも近い地点であるということを思い出してください。

 これらの地方の人的、物的資源が、東京という中央に集約され、分配されているのが、今の我が国の政治経済体制です。これらの地方をそれぞれ中央とし、繁栄の拠点を複数つくることで、我が国全体を元気にし、力強くよみがえらせることが道州制の必要性の根本です。

 みんなの党の考える道州制は、一言で言うならば三ゲンの移譲です。現在の都道府県を人口規模などを踏まえて十程度の道州に区割りし、その道州に権限、財源、人間を移します。

 国は、外交や安全保障、通貨の発行など、補完性の原理に基づいて、道州及び基礎自治体に担えない役割を果たし、地方への干渉を極力少なくします。道州は、自治立法権や課税自主権などの大きな権限と責任を担い、その地方の発展をほかの道州と競い合うことで国全体に活力を取り戻します。また、道州制の導入に伴い、地方自治体の役割が飛躍的に高まることになります。

 みんなの党は、外国人の参政権には反対の立場ですが、これを憲法上の観点からも明確にする必要があるかどうかも議論の必要があるかと思います。

 このような道州制の制度設計は、国会の場で議論するのではなく、国と地方の協議の場などを通じて国民全体で考えていくべきものかと考えます。

 そのためにも、みんなの党は、昨年三月に参議院に道州制移行のための改革基本法案を提出するなどの取り組みを進めております。この法案には、道州制の基本理念と移行のための改革の基本方針などを盛り込んでおり、現在、さらに党内で議論を深め、法案の提出も予定しております。今後の国会審議においては、ぜひとも御協力を賜りますようお願いいたします。

 以上をもちまして、みんなの党の憲法第八章に関する意見表明といたします。

保利会長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 第八章地方自治で重要なことは、明治憲法下での官制団体ではなく、国民主権の具体化として、住民が主人公の地方自治を憲法に明確に位置づけたことです。

 その内容は、地方における主権者としての住民が地域的規模での政治を実施するということであり、地方自治体が、その地域に関する事柄について、住民の人権を保障するために必要な限りにおいて国から独立して決定し、活動するということです。

 ここには、地方が処理し得る事柄については基礎自治体である市町村が優先して権限を持ち、処理し得ないものについては都道府県、国が補完するという補完性の原理や、権限に対応する自主財源の保障、課税自主権の原則等が当然含まれます。この憲法のもとで、住民の福祉の増進という地方自治の目的を果たすために、地方自治法を初め、一連の法律、制度が整備されたのであります。

 こうした憲法の地方自治の原則にふさわしい役割を現実に果たしてきたのかといえば、さまざまな問題があることを指摘しなければなりません。

 三点述べます。

 第一は、住民の福祉の増進のために、地方自治体が役割、機能を発揮できているのかという問題です。

 それが最も問われたのが、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故です。あの大震災と原発事故によって、多くのとうとい命が奪われ、今なお多くの住民が不自由な避難生活を強いられています。被災者の生活となりわいの再建は見通せず、復興は遅々として進んでおりません。

 その要因の一つが、住民の命と安全を守るための地方自治体の機能、体制が歴代政府によって弱められてきたことにあります。

 もちろん、一人一人の自治体首長や職員は、みずから被災しながらも被災者の救援活動に懸命に懸命に働いてきました。しかし、広大な被災地の中で少ない職員での救援活動を余儀なくされ、その結果、地震直後の避難誘導や被災者の救出など、初動がおくれ、行方不明者の確認、瓦れきの撤去などの作業も大幅におくれざるを得なかったのであります。

 なぜこうした事態が起こったのか。その背景にあるのが、強力に進められた市町村合併と自治体職員の定数削減でした。行財政の効率化を口実に進められた平成の大合併と集中改革プランによる職員の大幅削減によって、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の市町村数は、二〇〇二年と比べて四〇から五〇%減り、職員数も、二〇〇五年比で一〇%前後、市町村によっては、石巻市など、二割近く削減されたところもありました。

 市町村合併と職員削減は、住民の福祉増進という地方自治の目的に逆行し、全国で住民サービスの低下をもたらしていますが、大災害という一大事にその弊害が最も端的にあらわれたということを指摘しなければなりません。

 第二に、そういう市町村合併と職員削減が強いられた背景の一つに、地方財政の危機があるということです。

 一九七〇年代後半、高度経済成長の終えんとともに地方財政が逼迫し始めますが、歴代政府は、八〇年代には、地方行革、市民の自立自助を口実に、地方自治体の財源確保、財政調整機能が弱められてきました。九〇年代に入ってからは、日米構造協議に基づく、総額四百三十兆円、後に六百三十兆円もの公共事業に地方自治体を動員しました。

 その結果、地方自治体は、国の大型開発の片棒を担がされ、箱物と莫大な借金だけが残り、今や地方財政の借入金残高は二百一兆円、GDP比四一%にも上っています。さらに、二〇〇〇年代には、三位一体改革と称して地方交付税を一方的に削減し、一層の住民サービスの低下を招いたのであります。

 こうして生み出された地方財政危機が平成の大合併に追い込んでいったのであります。今必要なのは、憲法が規定する地方自治の諸原則を実施させる改革にこそあることを強調したい。

 第三は、そうした中で、今、地方分権、道州制のかけ声でやられている方向は、本来の地方自治とは逆の方向を向いていることを指摘しなければなりません。

 道州制の考え方の根本には、国の仕事を外交、軍事などに限り、福祉や教育などのナショナルミニマム、全国一律の最低水準に対する責任を国が放棄して、道州あるいは市町村に全部任せるという仕組みをつくるという問題があります。

 さらに、道州制導入は、今の都道府県をなくし、単位を大きくし、それに伴い、無理やり合併して千七百余りに減っている市町村をもっと圧縮してしまうというものです。これでは、自治体にとっても、福祉、教育、暮らしに対するサービスの大幅低下になってしまいます。

 こうした道州制の狙いは、広域にした分だけ、国際競争力を題目にした巨大開発がやりやすくなる。これで一番潤うのは財界です。だから、日本経団連は道州制を一番熱心に求めています。

 我が党は、道州制の導入には反対であります。本当の地方分権というなら、この間、三位一体の改革と称して地方交付税の削減などで地方財源を切り縮めてしまったことを根本的に見直し、財源を戻していくことが必要です。

 この間、政府が、地方自治体が国の基準以上の福祉の施策をやったらペナルティーを科してきたことは重大です。こういう間違った中央統制こそ撤廃し、地方自治体が住民福祉の機関として、伸び伸びとそれぞれの特色を生かした仕事ができる保障をするということが、憲法のうたう本当の地方自治への国の責任であることを強調し、発言とします。

保利会長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 憲法第八章の地方自治につきまして、党内で検討中のものではありますが、現時点での考え方を申し上げたいと思います。

 まず、地方自治の本旨の内容の明確化についてでありますけれども、地方自治は、きょうの御説明にあったように、現行憲法はわずか四条しか規定を置いていない。地方自治の憲法上の保障の根幹をなす地方自治の本旨の内容も、条文上は明らかでありません。したがいまして、地方自治の本旨に関しては、その内実をなす住民自治の原則、団体自治の原則について、憲法に明記をすべきだと考えております。

 そして次に、国と地方の権限のあり方について、役割分担についてであります。

 地方公共団体が、住民の福祉の増進を図る観点から、真に必要な施策をみずからの判断と責任において策定して実行することができる必要がありまして、この点で憲法を改正する必要があると思っております。

 その反面として、国の役割は限定しまして、外交、防衛、司法、危機管理、治安の維持、基礎的な社会保障、根幹的な社会資本整備、そして、地球環境の保全、その他の国家の根幹にかかわる事務に限ることを憲法に明記すべきであると考えております。すなわち、国と地方の業務分担をしっかり憲法に明記して、その準則を定めるということで、論点表におけるAの考え方であります。

 次に、条例制定権についてであります。

 これは、地方公共団体が、今申し上げました住民の福利厚生や利便性の向上を図るために、地域における行政を一貫して自主的、自立的に実施することができるようにすべきであります。

 そのために、国会を唯一の立法機関と定める憲法第四十一条の規定を踏まえつつでありますが、地方公共団体の自主立法である条例で国の法律の特例を設けることができる制度、いわゆる条例の上書き権について、地方の業務の範囲内でしっかりと認める方向を憲法で位置づけるべきではないかと考えております。

 地方財政については、地方公共団体が地域における行政に要する費用を調達できるように、地方公共団体の課税権を憲法上明記すべきであると考えておりますとともに、地方公共団体の財源確保について憲法上に明記すべきであると考えております。論点表におけるAの考え方であります。

 次に、地方公共団体の組織、機構のあり方についてであります。

 地方公共団体の組織、機構のあり方については、現行憲法は二元代表制、首長と議会の議員を両方、直接公選で選ぶというやり方でありますが、こういう硬直的なやり方であれば地方公共団体の規模や実情に応じてということは難しく、さまざまな実情がありますので、組織、機構のあり方も憲法で一律に規定することは適切かどうかという問題意識があります。

 これは、二元代表制以外の形態も含めて、地方公共団体自身の判断で組織、機構の形態を選択できるような制度を導入するべきであると考えております。

 一つの方向性としては、例えば、これに書いてありますように、議会の議員は直接選挙で選ぶこととしつつも、首長については、議院内閣制類似の制度やシティーマネジャー制度など、必ずしも公選によらない制度を選択することができるようにすることも考えられると考えております。

 最後に、道州制についてであります。

 道州制については否定するものではありませんが、現行憲法の範囲内で実現可能な制度を検討するという方向性が適切だと考えております。本日お聞きした議論も、道州制についてはおおむね各党、法律でできる、法律の範囲内だということであろうと理解しております。したがいまして、道州制を導入することになった場合でも憲法改正は必要ないと考えております。

 道州制の導入について憲法改正が必要という考えはありますが、道州というのは、基本的には、連邦制をとらない以上は広域の自治体をどう組み立てるかという問題に帰着するものでありまして、法律マターであろうと思います。

 憲法は、地方公共団体の構成については、当然のことながら特に触れておりません。そして、時代の進展に伴って広域行政の必要性が高まっていることを踏まえれば、現行憲法は、広域の地方公共団体のあり方を、道州制の導入を含めて相当程度立法政策に委ねているものと理解しております。

 ちょっと危惧しますのは、昨今よく取り上げられる国の統治のあり方という観点の中で、道州の導入を憲法改正で実現するという主張がございますが、その前段階として、この議論のためにも九十六条を改正することとのパッケージという議論も聞かれるところであります。このような主張は、現行憲法の理念を、原則を踏まえた議論というよりは、道州制、国のあり方と絡めて憲法九十六条の先行改正の是非を政治的に争点化しようとするものだと私たちは考えております。

 憲法改正が必要かどうか、これは、統治機構も含めて道州制の具体的内容を検討する中で、その結果として出てくる議論であります。道州制の詳細な制度設計によってどうするかということで憲法の問題に結びつくかどうかという議論はありますが、この制度設計を固める前にまず憲法九十六条改正で広範な議論を呼び起こす、そういう主張は、憲法の論議としてはいささか冷静を欠くものと言わざるを得ないと考えております。

 とりあえず我が党の考え方を御説明させていただきました。

 以上でございます。ありがとうございました。

保利会長 これにて各会派を代表する委員の発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

保利会長 次に、委員各位による自由討議に入ります。

 本日の審査会におきましては、論点を、第一に、現行の地方自治の規定を充実させる必要性、「地方自治の本旨」の明確化、国と地方の権限のあり方及び道州制の導入に関する論点、第二に、条例制定権及び地方財政に関する論点、第三に、地方公共団体の組織・機構のあり方、定住外国人の地方参政権及び特別法の住民投票に関する論点並びに第一及び第二で議論の対象としていない論点の三つに分類いたします。

 なお、この三つの論点の分類はあくまでも目安でありますので、各委員の発言がその他の論点に及ぶことは結構であります。

 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。発言が終わりましたら、ネームプレートはもとへ戻していただきますようにお願いをいたします。

 発言は自席から着席のままで結構です。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただきますようにお願いいたします。

 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの発言時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前及び終了時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、現行の地方自治の規定を充実させる必要性、「地方自治の本旨」の明確化、国と地方の権限のあり方及び道州制の導入に関する論点について発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

船田委員 自由民主党の船田元でございます。

 この地方自治に関する憲法の規定でございますが、地方自治の重要性に鑑みても、現行憲法では四カ条しかございません、これは余りにも簡素過ぎるのではないかというふうに思っております。条項が多い少ないということだけで議論するつもりはございませんが、やはり基本的にこの四カ条では少ないということが私の認識でございます。

 そこで、具体的に申し上げますと、九十二条に関係するものでありますが、地方自治の本旨、これが、その意味するところが曖昧であるということで従来から指摘をされてまいりました。もちろん、学説的にいっても、また実際の行政の部分におきましても、地方自治の本旨は、まず住民自治、住民がみずから治めていくという、これが根本にあり、そして、住民がそれぞれ自治を行うというのが大変難しいのであれば地方の団体に委ねるという、団体自治というものがその次にあります。

 この住民自治そして団体自治という考え方を、地方自治の本旨であるということで憲法に明記する必要があるのではないかというふうに思っております。

 次に、国と地方の権限のあり方も、これもやはりきちんと書いておく必要があると思っております。

 いわゆる補完性の原則ということでありますが、団体自治における主役である地方公共団体がやはり地域の自治をまずきちんと行うということ、そして、国はそれを補完するという形で協力をする、こういう順番で権限のあり方を明確に整理して書いておく必要がある、このように思っております。

 そして三つ目に、道州制の導入についてであります。

 我々自由民主党としましては、道州制の導入を、前回の公約によりますと五年後の導入を目指しまして努力をしよう、このようなことで党内の議論を進めている状況でございます。

 道州制の導入そのものにおいては、現行憲法においても導入することは可能であるとは考えておりますが、ただ、現状では地方自治体の種類が明記をされておりません。私は少なくとも、いわゆる二層構造、すなわち広域の地方自治体とそして基礎的な地方自治体、広域というのは、これから導入されるであろう道州あるいはそれに類するもの、そして、基礎的地方自治体としては、現行の市町村、あるいは今後合併があるかないかわかりませんけれども合併された後の市町村ということで、二層構造というものをはっきり示しておくということが道州制の導入に、スムーズに移行できる土壌ができるのではないか、このように考えております。

 以上でございます。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 先ほど大島委員が述べましたように、民主党は、連邦制はとらず、単一国家ということをまずうたった上で、補完性の原則、これを憲法上もしっかり明記をしていくべきだという立場でございます。

 そうした中で、二〇〇九年、分権調査会という、党の方でまとめた中でも、基礎的自治体重視の地域主権を推進するという立場から、都道府県の役割を五年―十年後には現在の三分の一―二分の一に縮小していくというような方向性を出しております。

 その後、そうしたことの検討もしつつ、政権を担う中で、まずは一括交付金化、これを平成二十二年度、二十三年度と予算措置をいたしました。当初は都道府県、そしてそれを政令市へ拡大をしたわけでございます。あわせて、出先機関の原則廃止ということで取り組みまして、昨年十一月閣議決定に至っております。その受け皿としては、都道府県による広域連合という形での移行を目指したものでございます。

 道州制については、先ほど大島委員が触れましたように、それも選択肢のうちの一つということでありますが、あくまで基礎自治体重視ということで臨んでおりますのは、一番住民に身近な自治体が、国民主権の観点から、国民の参加あるいは行政のチェック、こういったことが働くという考え方からでございます。

 また、道州制の議論も当然起きているわけでございますが、まず、内閣法や国家行政組織法にありますような、国の各省各庁大臣による分担管理、これに横串を入れずして、それをまた先に道州に同じように渡してしまいますと、ミニ霞が関が全国に点在をするというおそれがございます。やはり、各省各庁の分担管理に横串を入れるという、これは統治機構の見直しにもつながろうかと思いますが、こうしたことがまず行われる必要があるのではないかというふうに考えるところでございます。

 出先機関の原則廃止では、既に、ハローワークにつきましては、特区ということで、佐賀市、さいたま市で実現をしていることや、あるいはまた、求職情報について、厚生労働省から地方自治体への提供などが行われております。

 こうした地方分権、地域主権改革、これは、国のみが一方的に決めてそれが実現できるものではございません。この間も都道府県、市町村からさまざまな御意見があり、国と地方の協議の場を通じ丁寧なそうした議論をしていかなければ、一方的に進められるものではないことは御承知のとおりでございます。

 そうした不断の取り組みにおいて進めていくということが必要、肝要かと存じます。

 以上です。

松浪委員 法制局に二点ほど確認をしたいと思います。

 我が党も、特に道州制において、二層制の部分なんですけれども、これを明記するということは大事だと思います。

 ただ、現行憲法では、地方公共団体は、例えば東京都は、前回の平成十二年施行ですか、地方分権推進一括法が通るまでは、東京二十三区は内部団体であって必ずしも基礎自治体と、それから都道府県が完全に二層制であったということは言えないとは思うんですが、これを二層制と言った場合に、例えば自由民主党の道州制第三次中間報告の中では、東京都においては、まだこれからの議論を要するというふうにあります。

 これは今後の議論に委ねるとするんですけれども、もし、東京二十三区ではなくて、東京の中心の千代田区とか中央区とか港区、この三区でテロが起きても、東京は今消防庁にお願いをする、この国会でも、テロがあれば警視庁と東京消防庁に守っていただくということになるんですが、よくあるのは、ワシントンDCのように独立化をさせるというような議論もあります。

 もしこれを二層制というふうにここで規定してしまった場合に、果たして、首都の中で一部を、特にこの国会周辺などを独立させてワシントンDCのようにすることができるのかどうかということに関する見解が一件。

 そしてまた、二点目は、肝心の条例制定権なんですけれども、今までの議論は、地方分権の世界では上書き権とかそういうのがずっと言われてきて、これが全然通らないと。当たり前でありまして、今までの発想の中で上書き権を考えていてもこれはダブるのは当たり前で、私たちは、今回初めて、補完性の原則に基づいて、先ほど申し上げました、道州の専属的、優先的な立法権限を認める領域については別に法律で定める旨を明記すると。

 つまり、すみ分けた方がいいんじゃないかと。上書きばかりじゃなくて、こういう新しい発想で、国は、ここは道州がやってください、ここは国がやりますということを法律で分けていけば、道州制を導入しても、それがだんだんだんだんと、最初は、この分野は道州に委ねます、そしてさらに道州制が成熟した段階でこれを法律で広げていくというようなことを我々考えているんですけれども。この条例制定権について、私たちの考え方、これは憲法上大丈夫なのかということを、四十一条にも絡めて伺います。

橘法制局参事 松浪先生、御質問ありがとうございます。

 いずれも大変難しい問題であるとは存じますが、まず第一点の、二層制と特別区に関する問題であるかと存じます。

 憲法上、二層制を明確に規定した場合に、特別区のような、いわゆる基礎自治体と必ずしも現行上解釈されていない、そういう団体を認めることができるかというのは、かなり難しくなるとは存じます。先ほど御紹介申し上げましたように、現行の日本国憲法の解釈としては、広域自治体を認めるかどうかについては立法政策上の問題であるとする政府解釈があるぐらいですから、特別区の区民の人たちについては、東京都という憲法上の地方公共団体があるだけだという解釈が導き出される余地があるということになると思います。もちろん学説上は、これは特別区内に住んでいる人と特別区外に住んでいる人との関係で非常に問題が大きいという御指摘もあるところでありますけれども。

 さて、もとに戻りまして、先ほど自由民主党の憲法改正草案についても言及されながらの議論であったかと存じますが、自由民主党の憲法改正草案の解釈については私は全く有権解釈するような立場にも権限もございませんが、条文として例えば読ませていただきますと、「地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、」というふうに書いておられます。そうすると、文言上だけですけれども、自由民主党の先生方が書かれたこの改憲草案の中身においては、「とする」というふうに言い切らない、「とすることを基本とし、」という中で、さまざまな憲法政策が盛り込まれているのだというふうに拝察するところでございます。

 もう一点、先生が先ほど御提言、御提案されました道州の条例制定権の拡充に関する御議論では、道州の専属的、優先的な立法権を認める旨憲法に明記するのではなくて、認める領域については別に法律で定める旨憲法に明記するのだと。

 この政策的な是非については私は論評する立場にありませんが、このような憲法に対する規定の仕方は一つの御見識であるとは思います。これは、四十一条を堅持されるのであれば、四十一条に規定する、国会が唯一の国における立法機関であるという国会の立法権限を、現在どおり、あるいは現在とほぼ変わらないまま認めた上で、その上で道州の自治立法権の範囲をできるだけ広範に認めようとするお立場と拝察されるからです。

 もちろんこれに対しては、それでは結局は法律の留保つきの自治立法権であって、道州の十全なる、完全なる立法権限は保障されていないじゃないか、結局国会の立法の傘の下じゃないのかという反論は当然あり得ると思います。

 ただ、現在の憲法解釈と先生の御提言が違うのは、国会が唯一の立法機関であるという現行憲法のもとでは、国会は、条例に対してでも政令に対してでも、個別具体的な形での委任はできますけれども、白紙的な委任はできないと解釈されています。それは、国会がみずから憲法によって与えられた立法権を放棄してしまうことになってしまうからです。これを憲法である領域を一定限確定しさえすれば、そこは丸ごと自治条例に、自治立法に任せることができるのだとする点においては、かなり幅広い条例への委任立法が認められるのかと思います。

 先ほど私の発言の中で、特別区は基礎自治体と解釈されていないとの趣旨の言及がありましたけれども、憲法上の地方公共団体ではないという意味で、地方自治法上は基礎的な地方公共団体であるというふうに、先生御発言のように規定されておりますので、その点は修正させていただきます。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうの審査会も、設定についてはいろいろ議論が、日程の調整があったと思うんですけれども、私が知っている限りでは、午前中そんなに、ほかの委員会とダブっている状況ではないと思うんですね、参議院予算委員会をやったりはしていると思うんですけれども。一番開催しようと言われている自民党が相当空席がある、私、そんなことはちょっと僣越かもしれませんが、自民党の幹事の方もお二人しか座っていらっしゃらない、こういう状況で毎回この大事な憲法の問題について議論をやるというのがいいのかというのは、この後幹事会もあると思うんですけれども、無理ならば日程設定するのをやめた方がいいと思うんですよ。ちょっとそこのところは、会長、改めて後でまた協議の中でよろしくお願いしたいと思います。

 一点だけですが、憲法の地方自治の章が簡素過ぎる、あるいは、地方自治の本旨の規定は抽象的だからということで、住民自治、団体自治での具体的な規定を明記すべきとの主張が出されておりましたけれども、私は、現実の地方自治にとって何が問題があるのかということは率直に申し上げたいと思うんです。

 地方自治の本旨については、住民自治、団体自治をその内容としていることはもう当たり前になっております。住民自治というのは、地方自治はその地域社会の住民の意思によって行われるべきということであって、団体自治というのは、地方自治は国から独立した地域社会みずからの団体によって行われるべきということであって、憲法九十三条、九十四条、九十五条の規定や地方自治法を初めとした法律、制度によってその具体化、実質化が図られてきたということだと思うんです。だから、憲法の規定が抽象的だから地方自治がうまくいかないという声はおよそ地方の現場からも聞いたことがありません。

 問題は、地方自治の原則をないがしろにしてきた歴代の政治にこそあって、憲法に基づいてそれを正すことが大事じゃないか、憲法八章においても、憲法の八章の各条項の厳格な実施こそ必要で、改憲は必要ないということを申し上げておきたいと思います。

 以上です。

保利会長 ただいまの御発言中、出席者の件につきましては、十分に与党側に喚起をいたしておきたいと思います。

 それでは、ほかに御発言はありますか。なければ、次の論点に移りたいと思います。

 次に、条例制定権及び地方財政に関する論点について発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

小池(政)委員 一の道州制について、最後に一点だけ確認をさせてください。

 自民党さんがこれから道州制の、進めていくという法案も準備されて党内で議論されているということで、その方針また党内の議論についてお聞きさせていただきたいんですが、道州制を地方公共団体の一つとして認めるかどうか。また、その際に、地方公共団体という形であればその長を住民の直接選挙で選ぶということになると思うんですが、当審査会でも首相公選制の際にいろいろな議論が行われまして、ねじれの問題ですとかまたは独裁制の問題等の議論があった際に同じような中身の議論というのが恐らく党内でも行われたのではないかと思うんですけれども、その点についてお聞かせいただければと思います。

船田委員 今、小池委員から御質問いただきました我が自民党の中での道州制の検討でございますが、もちろん、まだ案という段階で動いているわけでありますが、これまで私が把握しておりますことを申し上げますと、やはり道州、これについては、広域の地方自治体の一形態である、典型的な形態であるということで位置づけようといたしております。それから、道州の首長につきましては、これは都道府県の知事と同様に、地域住民の公選によって選出をされた者がその首長に当たる、こういうことで基本的には議論はほぼ集約されている、このように感じております。

保利会長 ほかに御発言はございますか。ただいま条例制定権及び地方財政に関する論点についての御発言を求めておりますが、なければ、次の論点に移りたいと思います。

 次に、地方公共団体の組織・機構のあり方、定住外国人の地方参政権及び特別法の住民投票に関する論点並びにこれまでに議論の対象としていない論点について御発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 私は、地方公共団体の組織、機構のあり方について、一言申し上げたいと思います。

 先ほど、我が党の大島委員からも、我が党としては、二元代表制以外の議院内閣制であるとかシティーマネジャー制度等の導入、そうしたものを可能とするべきだという発言をさせていただきましたけれども、このことは、やはり地方自治、地域で決められることは地域で決めていく、そうした、それぞれの地域の自主性を重視する意味でも非常に重要なことではないかというふうに私も考えております。

 特に、基礎的自治体などをできるだけ地域に密着した形にするためには、現在のように、全ての地方自治体と言われるところは二元代表で議会と首長がセットという形だと、やはりどうしても、先ほど来の、たしか笠井委員からの御発言でもあったかもしれませんけれども、この間行われました地方自治体の合併等で、大きくなっていく。人口が減少していくとかそういう状況の中で、どんどんと、そういった意味では、基礎的な自治体が今の仕組みを前提にしていくと、大きくしていかないと。逆に言うと、余り小さいと議会やあるいは首長両方の二元というのでは効率も悪いとか、またコストもかかるとかそういうこともあったりして、自治体自体が、基礎的自治体がこの制度を維持するということだと、逆に大きくなって、むしろ地域の住民の声というものはなかなか通りにくくなっていくということもあるんじゃないかと思います。

 そういった意味では、やはり、基礎的自治体については、できるだけ地域に密着して、その地域の規模等にも応じて柔軟に運営ができるということを考えますと、これは、全ての自治体が二元代表制ということではなくて、それぞれの自治体の住民の皆さん方の判断によって、考え方によって、議院内閣制のような形にしたり、あるいはシティーマネジャーのような形にしたり、そうした柔軟な、組織の、機構の形態を決められるということが、より身近で、そして声の反映される、そして住民にとって一番機能的な地方自治体のあり方として好ましいのではないかと思います。

 ぜひ、こうした地方公共団体の組織、機構のあり方については、現行憲法をもう少し柔軟にして、二元代表制以外のさまざまな形態がそれぞれの自治体において選べるような状況をつくっていくべきだというふうに考えております。

 以上です。

船田委員 自民党の船田でございます。

 地方公共団体の組織につきましては、現在、現行憲法におきまして、首長そして議会議員、それぞれ地域の人々の公選によって決まる二元代表制という形をとっております。これから先においても、これは変えてはいけないものであると思っておりますので、この二元代表制は維持する形で今後も憲法の運用をやるべきだと思っております。

 ただ、先ほど来、民主党の皆さんを初め、いわゆるシティーマネジャーというような制度の導入についても柔軟に考えよう、こういう話がございました。確かに、アメリカの地方都市などでは、このシティーマネジャーが相当大きな権力といいますか権限を持って、そして町づくりあるいは地域のさまざまな計画を立てている、こういった実態も我々もよく耳にするところであります。

 しかしながら、やはり地方自治の本旨というものを考えますと、このシティーマネジャーなるものが公の選挙を経ないで選ばれるということになりますと、やはりそこには、地方自治の民主制ということから見ていかがなものかという疑念も生じる可能性がございます。したがって、私は、このシティーマネジャーの導入などにつきましてはやや慎重に考えていくべきではないかというふうに思います。

 それから、地方自治特別法であります。

 これも非常に耳なれないといいますか、我々余りこのあたりは経験をしておりませんが、これは言うまでもなく、国会が、他の地域とは異なる法律を一自治体に課していくというときには、当然その地域の住民の意思を聞かなければいけないということで、地方自治を尊重する立場から、この地方自治特別法における住民投票という規定があると理解をしております。

 ただ、実際にこれが発動いたしましたのが、昭和二十四年から二十六年、ほぼ二年間の間で十五件しかございませんでした。その後は一件も該当するものがないということで、多分この役割というものは大変小さくなったのではないか、このように思います。しかしながら、今後、この憲法の中で考えていく場合には、場合によってはあり得る事態も想定をされます。したがって、要件についてもう少し明確に記した上で、この九十五条については存続をしておいた方がいいのではないかというのが私の考えであります。

 以上です。

松浪委員 地方公共団体の組織、機構のあり方についてなんですけれども、もし民主党さんの中でわかれば、ちょっと伺いたいんです。

 国の出先機関の改革法案を閣議決定されて、私はあの法律は非常にすばらしいものだなと。後半で、別表に出先機関がかかわる法律までを抜き出してきた、今までこういう作業をされたことがなかったわけで、こういうことからアイデアをいただいて、私は、さっきの条例制定権の、道州の専属的な立法権限を認める領域は別に定めれば本当に機能的にいくんじゃないかなということを考えたわけなんです。

 しかし、一方で、平成十二年に、道州制を掲げて、民主党は道州制でいくんだとおっしゃっていたときには、国の出先については道州とくっつける、非常にわかりやすい議論だったと思うんですけれども、正直申し上げて、国の出先を広域連合などに移管するということは、本当にそれは過渡的な措置であって、住民にとっても、それはずっと、直接選ばれた議員でない人たちが集まった広域連合、その広域のために出先をそこに丸ごと移管するというのは、あくまで過渡的な措置としてはわかるんですけれども、将来道州制を導入せずに、こうした広域行政、例えば一級河川の管理、それから国道、農政、空港、特に今はもうポートオーソリティーで、本当に港湾から空港から一括で、例えば関西なんかだったら一緒にやろうという時代に、道州制を導入しようということを判断しない理由がわからないんですけれども、そのあたり、もしわかれば教えてください。

武正委員 民主党の武正でございます。

 この間、維新さんからでしたか、こういう質問のやりとりがあったのは。その場は会長の判断で認めていこうということだったので、それぞれの党の考え方を憲法の検証で述べるということで、これは幹事会の方でも確認をされているという前提で、あえて御質問でありますので、お答えをさせていただきます。

 先ほども触れましたが、道州制に対する考え方として、民主党は、あくまでもやはり基礎自治体、住民に一番身近な基礎自治体を重視するという考えが根本にあります。その中で、三層制の中二階に当たる都道府県、この位置づけがやはりどうしても曖昧であるというようなことから、先ほど触れましたように、例えば、都道府県の役割を五年から十年で現在の三分の一から二分の一に縮小して、都道府県の枠組みを維持することは非効率になることも考えられますので、都道府県が自主的に合併、都道府県の枠組みをなくすこと、あるいは連合、都道府県の枠組みを残すことを組むことに加えて、自主的な集約による州、都道府県の枠組みをなくすことの形成を選択できるようにすることも検討すべきであるということを、先ほど触れました二〇〇九年の四月の段階でまとめております。

 実際、政権を担う中で、先ほど触れましたように、まずは国の分担管理という、統治機構が各省各庁で縦割りであります、これに横串を入れない中で何ができるのかということが、分権の中ではやはり問われるということが一つあろうかと思います。

 あわせて、分権される側の都道府県あるいは市町村、こういったところとのしっかりとした話し合い、これはやはり丁寧にやっていくべきだということで、都道府県の広域連合、これについては、九州、関西、そして中国、四国、こういったところから手挙げ方式で、自主的に手を挙げていただいて、具体的に整備局やあるいは経済局を移そうという形で、昨年の十一月に閣議決定に至ったことは委員御指摘のとおりであります。

 やはり、基本が基礎自治体であることと、そして、それぞれの自治体の自主性というものをおもんぱかるというか重視する、こういったところが考えにある中での選択肢の一つが道州であるといった考えになっております。

松浪委員 今の議論で基礎自治体の強化ということはよくわかるわけでありますけれども、今、これ以上市町村合併を国主導でやれる状況ではないと思いますので、我々は、将来的にはそれは道州のもとで、シティーマネジャー制云々というものも、先ほどの考え方によれば、それぞれの道州に地方自治法のかなりの部分を移管する形で、もっと身近なところで市町村のあり方とか道州のあり方を決められるようにすればいいと思うんです。

 今、なかなかわかりづらいなと思ったのは、例えば広域行政というものについて、五月雨で一級河川の予算とかそういうものをつくっていくということは、やはりかなり無理のあることで、どう考えても、道州なし、そして都道府県の力は、市町村合併をするのかどうかわかりませんけれども基礎自治体でというと、かなり一貫性というのがなくなってくるんじゃないかということは指摘をさせていただきたいと思います。

船田委員 自民党の船田でございます。

 実は、今、第三番目の論点を先に申し上げたわけですが、ちょっと第二番目の論点に戻ってもよろしいでしょうか。ちょっと時間が過ぎてしまいまして、申しわけございませんでした。

 第二番目の論点における条例制定権のところでございます。

 これにつきましては、これまでもさまざまな意見があり、地方公共団体の専属的あるいは優先的な立法権限を憲法で書いてはどうか、つまり、地方の条例制定の裁量を非常に広く見ていこう、こういう御意見がこれまでにも出されてまいりました。

 ただ、私は、例えば上乗せ条例、横出し条例、そういった法律の範囲を超える条例の制定というのは、これはやはり法治国家としてこれをそのままにしておきますと、国の役割あるいは法律の有効性というものが非常に損なわれる可能性がある、このように思っております。したがって、法律の範囲を超える条例の制定については、やはりこれは慎重に対応していきたいと思っております。

 なお、この上乗せ条例、横出し条例の適法性などについては、最高裁の判例など実際の裁判などによってもちろんこれはきちんと調整されると思っておりますので、この条例制定権を法律の範囲を超えて行うということについては極めて慎重に扱うべきである、このように考えております。

 以上です。

笠井委員 二点、手短に発言したいと思います。日本共産党の笠井亮です。

 今、条例制定権の話があったんですけれども、地方自治の本旨にかかわって、憲法のこの規定を受けて地方自治法があって、その中で九十四条との関係もあって条例制定権というのがあると思うんですけれども、問題は、憲法の規定どおり条例制定権に基づいて、例えば地方で大型店を規制して地域の商店街を守る、発展させるということができればいいわけですけれども、それが具体的にどうなっているかといえば、やはり日米構造協議の後に大店法の規制緩和がどんどんやられる、それで大店立地法の十三条で条例の制定権まで制約される条項が入るという事態が起こっていると思うんです。

 だから、国が地方自治を上位法によって侵害するという事態が、要するに、今、地方自治体で見ると、全国各地でシャッター通りとかそういう事態がどんどん広がったり、大型店の場合は競争の後撤退すればおしまいになるけれども、その後、地域を見ると、高齢化する社会の中で買い物の場がないということが広がる。

 だから、この点でいうと、地方自治の本旨ということを本当に受けてやるということでいえば、国が政策として条例制定権を縛るようなやり方はしないとか、憲法解釈とか憲法を変えるという話じゃなくて、憲法にのっとってやっていくならば、こういう問題は本来解決できる問題だということ。やはりその点でも厳格にやるということが大事じゃないかと思っています。

 それから、先ほども幾つか、最初の発言でもあったので、日本に永住する外国人の地方参政権の問題について、付与すべきだという要求は当然なもので、我が党としても当面の急ぐべき課題だと考えております。

 現在、我が国に六十万人を超える永住外国人がいて、さまざまな問題を通じて地方政治と密接な関係を持って、日本国民と同じように地方自治体に対して多くの意見、要求を持っている。地方自治というのは、本来、やはり全ての住民の要求に応えて、住民に奉仕するために、住民自身の参加によって進められなければいけないわけで、外国籍であっても我が国の地方自治体で住民として生活して納税する、そういう一定の義務を負っている人々が住民自治の担い手となることは、憲法の保障する地方自治の根本精神とも合致するものだというふうに考えております。

 そういう点で、日本共産党としても、憲法の保障する地方自治の原則の立場に立って、永住外国人の投票権だけじゃなくて、被選挙権などを含める地方参政権についての法案を既に一九九八年に提案しているところであります。

 以上です。

西川(京)委員 今の笠井議員の御意見に対して反論を申し上げたいと思います。

 地方参政権の問題ですが、今、日本は、国籍を取るための障壁というのは諸外国に比べて非常に低いです。ある意味では、本当に簡単に日本国籍が取れます。その中で、日本に永住して政治にも参画したい、そういう思いがおありなら、ぜひ日本国籍を取られて参政していただきたい、そのことだけに尽きると思うんですね。あえてそれを取らないでなおかつというのは、何かそこに日本のこの国に対しての思いがやや希薄なのではないかとか、いろいろな思いもありますけれども、そういう意味でそこは明確に反対しておきたいと思います。

 それから、地方分権、地方財政の課税自主権の問題ですけれども、ちょっと席をあけていましたので、前の委員の方がおっしゃっていたら恐縮でございますが、やはり地方自治体において完全に、課税できる対象があるかないかで日本の中でもう非常なる格差があるわけですから、課税自主権をどんどん進めていくということは大いに問題ありだと思います。

 その中で、きょう配られました、第八章、この資料の中の二十七ページ、大変象徴的だと思うんですね。全国の大都市と政令指定都市、そこの知事さんや関係者がみんな道州制導入を早くしてくれと。それで、全国のある意味では小さな市町村の団体が反対している。

 この辺のことは大変重いと思います。ややもすると地方分権というのは県レベルの段階で論議されがちでございますけれども、実は日本の国境を守る一番の最先端にいるのは小さな地方の市町村でありまして、そこの意見がややもすると軽視されがちな中で、この問題は非常に大きな問題を含んでいますので、この道州制論議は私は非常に慎重にしていくべきだと思っております。

 以上でございます。

笠井委員 西川委員から御指名いただいたので、一言だけですが。

 やはり、私ももう申し上げましたけれども、地方自治の場合は、全ての住民の要求に応えて、住民に奉仕するために、住民自身の参加によって進めるというのが本旨であって、外国籍であっても、実際に住民として地方自治体で生活して、納税の義務もあるわけです。一定の義務を負っている人が担い手になるということについては、憲法から見ても、先ほど橘部長からもありましたけれども、最高裁も憲法上禁止されるものではないということで言っているわけで、そこはそれぞれの意思との関係はもちろんありますが、そういうことで、保障されるべきものだというふうに思っています。

 もちろん国政レベルの話は別で、憲法でいうと、国民主権とともに対外的な側面として国家主権を明記しているわけですから、民族主権とする国家が世界の大勢であるもとで、国政レベルの選挙権の問題は別ですけれども、地方については、参政権についてはきちっとやはり保障するべきだ。そして、各国でもそういうふうに実施済みとか、それに向けた検討が積極的にやられている流れがあるわけですから、日本もそれに加わるべきだということは申し上げておきたいと思います。

西川(京)委員 最高裁の判決の論拠となった、中央大学でしたか、どこかちょっと忘れましたが、憲法学者の方が、自分は間違っていたと。要は、後年、何年か後にそれを発言しています。(発言する者あり)園部さんですね。自分はこれは明らかに間違っていたということを発言していることでもおわかりのように、ある意味ではこの最高裁の附則のところは論拠を失っているわけですから、地方自治の住人といえども、日本国民であるというこの二重性はやはり大切だと思います。

 まして、今の小選挙区制度では、地方の中でも、例えば政令指定都市の場合は、もう二つに分かれて、そこから二人国会議員が出るわけですから、そういう意味で、地方自治体とはいえ、参政権についてはやはり日本国籍が必要だと思います。

 以上です。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 この九十五条の特別法の住民投票、それぞれの地方公共団体にかかわる法律について住民投票で過半数をという、こういった規定はやはり存続すべきであろうというふうに考えるところであります。

 この憲法審査会でも、今幹事懇談会では、三つの宿題についても、特に十八歳、投票年齢について協議をしております。三つの宿題のうち二つ目は国民投票運動と公務員の政治的行為の制限について、そしてもう一つが国民投票の対象の拡大の検討についてということで、十八歳選挙権実現等のための法整備についてと、この三つが、本審査会でも三つの宿題として残っているわけでございます。

 国民投票の対象拡大の検討については、我が党では、平成十八年五月二十六日には、国政における重要な問題に係る案件も含めるという法律案を提示し、そして、修正要綱では三つの案を提示いたしました。国政における重要な問題に係る案件、そして憲法改正を要する問題または憲法改正の対象となり得る問題、そして具体的制度設計のあり方を憲法審査会で検討、三案を提示し、参議院に提出した対案、修正案では、一、憲法改正の対象となり得る問題、二、統治機構に関する問題、三、生命倫理に関する問題、その他、国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題ということを提示しております。

 こうした観点からも、広く国民に意見を聞くやり方、また、特に当該自治体の意見を聞くという観点から、九十五条は存続すべきであるというふうに考えます。

斉藤(鉄)委員 先ほど論議になりました定住外国人の地方参政権について、同僚の大口委員の最初の意見表明にもありましたけれども、我が党は相互主義という立場でございます。

 きょう配られました衆憲資第八十三号の五十一ページ以下に、諸外国における外国人への参政権付与状況という表がずっと載っております。地方レベルの選挙権につきましては、これを認めているという国がほとんどでございます。EUだから当然だという反論もあろうかと思いますが、EU以外の国におきましても地方レベルでの選挙権を付与されている。日本人がその国に行っても付与されているわけでございますので、相互主義に基づくべきではないか。これが一つ。

 それから、税ということを考えましても、地方税につきましては、いわゆる町内会費的な要素があるというのが通説でございます。したがって、地方税の中に一定定額部分というのが入っているわけでございます。町内会費は町内に住んでいる人たちがお互いに負担をして、その町内の運営については住民として話し合って決めていこうということでございますので、そういうことを考え合わせますと、地方税をどう使うかということを話し合う地方議会に対して選挙権を持つということも一定の論拠がある、このように私は考えておりますし、公明党はそういう立場でございます。

笠井委員 一言だけですが。

 憲法が規定する住民というのに国籍は全く関係ないというのが一般的理解で、国籍の取得を強要することの方がおかしいというふうに思っております。住民自治に日本への帰属は関係ないというのが一点、我々の考えです。

 もう一点は、九五年の最高裁の判決の園部元判事ですが、その後で発言をされていることについては私も承知しておりますけれども、判決文そのものに憲法上禁止されているものではないと書かれているのは間違いない事実でありまして、それ以外にも、二〇〇五年にも、別の判事がやった判決の中でも同趣旨のことがあるということは、事実として申し上げておきたいと思います。

 以上です。

松浪委員 定住外国人の地方参政権については、我が党の場合は、これを国民に限るということはもう先ほど述べたとおりでありますけれども、今、斉藤幹事がおっしゃったように、もし導入するんだったら、相互主義というのは非常に筋の通った話だとは思います。

 EUの例を出されましたけれども、EUでも、この定住外国人を認めるときに、国によっては憲法を改正したということを以前私も読んだことがありますので、もし、仮に定住外国人の地方参政権を認めるのであれば、我が国もそれは憲法に書き込むべきだというふうに我が党は考えます。

衛藤委員 定住外国人の参政権の問題ですが、私は、日本国籍を有する者が参政権を有すると、党の意見と同じなんですが、外国と違いまして、我が国は、国境離島というのをたくさん持っています。

 例えば、与那国島。ここに参りますと、議員の数はたしか六人か七人なんですね。そして百五十票ぐらいで当選と。そして、先般私が行ったときには、自衛隊のいわゆるレーダー移動基地をつくることは賛成と。今度行ったら、今度は微妙になっておりまして、同数になってしまうとか。そのときに、もし、国境離島の与那国にあって、日本国籍を持っていない者が百五十人でも二百人でもそこに移住して、そうしたら議会の、賛成、反対はひっくり返っちゃう。こういうことがちょっとあります。

 ですから、EU等のヨーロッパの国のように国境が陸続きのところと違いまして、我が国は領土、領海、領空の国境線がある。それから、さらに排他的経済水域の問題がある。非常にセンシティブな問題があります。そういう中にありまして、私は、いわゆる住民自治、地方自治というのは非常に重いものでありますから、党の言うように、定住外国人の地方参政権というものは国籍を有する者でなければならない、このように規定すべきだと思っております。

 以上です。

保利会長 他に御発言を御希望の方はいらっしゃいますか。

 それでは、ほかに御発言がないようでございますので、これで自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時五十七分散会


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