衆議院

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第12号 平成25年6月13日(木曜日)

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平成二十五年六月十三日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   会長 保利 耕輔君

   幹事 伊藤 達也君 幹事 岸  信夫君

   幹事 中谷  元君 幹事 葉梨 康弘君

   幹事 平沢 勝栄君 幹事 船田  元君

   幹事 武正 公一君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 斉藤 鉄夫君

      安藤  裕君    泉原 保二君

      岩田 和親君    上杉 光弘君

      衛藤征士郎君    大塚  拓君

      河野 太郎君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    白須賀貴樹君

      鈴木 馨祐君    高木 宏壽君

      高鳥 修一君    土屋 品子君

      土屋 正忠君    中山 展宏君

      西村 明宏君    馳   浩君

      鳩山 邦夫君    原田 憲治君

      松本 洋平君    武藤 容治君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本ともひろ君    大島  敦君

      篠原  孝君    古川 元久君

      三日月大造君    山口  壯君

      伊東 信久君    坂本祐之輔君

      新原 秀人君    西野 弘一君

      三木 圭恵君    大口 善徳君

      浜地 雅一君    小池 政就君

      畠中 光成君    笠井  亮君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   衆議院法制局法制企画調整部長           橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 窪田 勝弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  棚橋 泰文君     安藤  裕君

  土井  亨君     白須賀貴樹君

  徳田  毅君     岩田 和親君

  西川 京子君     斎藤 洋明君

  山本ともひろ君    中山 展宏君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     棚橋 泰文君

  岩田 和親君     國場幸之助君

  斎藤 洋明君     西川 京子君

  白須賀貴樹君     土井  亨君

  中山 展宏君     山本ともひろ君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     徳田  毅君

    ―――――――――――――

六月七日

 憲法改悪反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八〇一号)

 同(笠井亮君紹介)(第八〇二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八〇三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八〇四号)

 同(志位和夫君紹介)(第八〇五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八〇六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八〇七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八〇八号)

同月十一日

 日本国憲法第九条を守り、日本と世界の平和に生かすことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一二三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一二四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一二五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一二六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一二七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一二八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一二九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一三〇号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の改正手続に関する法律における「3つの宿題」のうち国民投票の対象拡大)

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件


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     ――――◇―――――

保利会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の改正手続に関する法律における「三つの宿題」のうち国民投票の対象拡大について調査を進めます。

 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

橘法制局参事 衆議院法制局の橘でございます。

 本日は、三つの宿題のうちの三つ目、国民投票法附則第十二条に定められております国民投票の対象拡大に関する検討条項につきまして、その概要及び経緯について御報告させていただきます。

 まず、先生方、お手元配付の衆憲資七十五号、表紙と目次をおめくりいただきました一ページ目に、附則第十二条の条文を掲げておりますので、これをごらんいただければと存じます。

 この条文のポイントを三つに整理して御報告申し上げたいと存じます。

 まず、この条項におきましては、国は、この規定の施行後速やかにこれこれの事項について検討を加え、必要な法制上の措置を講ぜよと定めるだけで、特段にその締め切りを明示しておりません。この点、その締め切りが明示されておりました、さきの二つの宿題とは異なっております。

 次に、創設を検討すべき国民投票制度の対象として、憲法改正を要する問題と憲法改正の対象となり得る問題の二つを掲げていることでございます。これについては後ほど御説明申し上げたいと存じます。

 三つ目として、このような九十六条の憲法改正国民投票以外の国民投票制度の検討につきまして、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性などの観点から、その必要性の有無について検討するべきとしていることです。この点は、さきの二つの宿題が、十八歳に引き下げるべきこと、あるいは、賛否の勧誘などが制限されることとならないようにといったように、その検討の方向性を明確にしているのとは異なって、中立的な検討を命じているところでございます。

 さて、以上の三つのポイントのうち、一つ目についてはそれ以上の説明は不要かと存じますので、残り二つのポイントについて、以下、順次御説明申し上げさせていただきたいと存じます。

 最初に、議論の前提となる三つ目のポイント、すなわち、日本国憲法の採用する間接民主制との関係について御報告させていただきます。

 日本国憲法は、その前文の第一段落で「ここに主権が国民に存することを宣言し、」と述べ、また、第一条の天皇の地位に関する条項においても「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と規定して、この憲法が国民主権の原理に基づくものであることを明確に宣言しております。

 この国民主権の意味するところについては憲法学説上大いに議論があるところですが、一般には、国家の政治のあり方を最終的に決める力、すなわち権力あるいは権威が国民にあることを意味するものと理解されているところです。

 ただ、そのような力を国民がどのような形で行使することができるのかについては議論がございます。すなわち、憲法第十五条において保障されている成年者による普通選挙のもとでの選挙権の行使、すなわち、国民代表でいらっしゃる先生方、国会議員を通じての国政参加の方法以外には、日本国憲法が国政レベルで国民が直接に国家意思形成に参画することを認めているのは、一つ、七十九条に定める最高裁判所裁判官の罷免についての国民審査の場面と、二つ、第九十六条の憲法改正国民投票の二つだけであると一般に言われております。また、憲法第九十五条に定める地方自治特別立法の制定に関する住民投票を入れたとしても、わずかに三つでございます。

 しかも、前文第一段落の冒頭に「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」とあることや、憲法第四十一条の、国会は国の唯一の立法機関であるとの規定の存在など、日本国憲法の構造にも鑑みるならば、日本国憲法は、国民の国政参加の方法は、代表民主制あるいは間接民主制の方法によるべきものとしているとの解釈が素直に導き出されるところでございます。

 しかし、他方では、国家意思形成の参考に資するという趣旨で行われる助言的、諮問的な国民投票制度については必ずしも禁止されているとまでは言えないという見解も、一方では唱えられております。

 すなわち、価値観が多様化する中で、必ずしも代表民主制の過程で反映し切れていないさまざまな国民ニーズや意見を国民投票によって拾い上げていくことは、むしろ、議会制民主主義という原則的諸制度のもとでも、それを補完する観点から有用であるなどといった御主張でございます。

 もちろん、これに対しては、民主主義の本質は討議の過程にあるのに、政策の是非を判断する情報、手段を必ずしも十分には有しない国民に対し、直接その意思を問うことは危険であるなどといった反論も述べられてきたところでございます。

 さて、衆議院憲法調査特別委員会におきましては、以上のような賛否両論が活発に展開されたのでありましたが、そこでは、まず、国民に発議するのは、あくまでも唯一の立法機関とされている国会に限ること、もう一つは、国民投票の結果はあくまでも参考意見であって、国の諸機関はこれに法的には拘束されないこと、この二つの条件を前提とした上であれば、現行憲法の枠内でも憲法改正以外の場面での国民投票制度もあり得るのではないか、ただし、その対象は、間接民主制の原則との関係で、一定程度限定する必要があるのではないかといった観点から議論が繰り広げられたところでございました。

 すなわち、国民投票に付するにふさわしい問題とは何か、そのような問題は、何ゆえに間接民主制の枠内だけで処理させるにふさわしくないと考えられるのかといった観点からの御議論であったように思います。

 その議論の大ざっぱな過程を示したのが、お手元配付の衆憲資七十五号の四ページの「法案・修正案の推移」の表でございます。

 ここから、冒頭申し上げましたポイント二つ目の国民投票の対象についての御議論の御説明に入ってまいります。

 まず、当初の民主党案では、国民投票の対象は、国政における重要な問題に係る案件、すなわち国政重要問題という限定でございました。

 これに対して、当時の自民、公明の先生方は、国政重要問題というだけでは余りに広過ぎ、間接民主制の原則に反するとして、その対象を、憲法改正問題、すなわち、正確に申しますと、隣の五ページ目で附則十二条の条文にアンダーラインを引いてある部分ですが、先ほど申し上げましたように、一つ、憲法改正を要する問題と、二つ、憲法改正の対象となり得る問題、この二つの案件に限定するのであれば検討の余地はあると応じられたのでございました。

 なお、ここで憲法改正を要する問題を一般的国民投票の対象とした趣旨についてはこう述べられておりました。最終的には憲法改正国民投票の対象となるような事項であっても、予備的に、事前に民意の動向を探ろうとする場合はあり得るとのことであり、これを憲法予備的国民投票と呼ばれたのでございました。

 その上で、このような憲法予備的国民投票制度の検討の必要性については、さらに次のような御説明がなされておりました。国会で詳細な憲法改正原案を作成していきなり国民投票に付するというのでは、いささか国民の間に戸惑いもあるだろうし、また、その憲法改正のテーマの選び方や内容に国民の意思が十分に反映されていない場合もあるかもしれない、むしろ、あらかじめ国民の意思を推しはかるという意味で、まずは予備的にアンケート的な国民投票を行い、しかる後に、国会は、それを踏まえて憲法改正原案の立案に着手し、その後に、憲法九十六条で要求されている正式の国民投票を行うといった慎重な手続が有効な場合もあるのではないかといった御説明でございます。

 また、二つ目の、憲法改正の対象となり得る問題とは、例えば女性天皇問題などは、法律的には皇室典範の改正でも済むわけですが、憲法問題ともなり得るものであり、このような問題についても、憲法予備的国民投票に準じて、国民投票の対象として検討するに値するのではないかというものでございました。

 いずれも、九十六条の周辺に位置する問題と言うことができ、そうであれば、現行憲法の枠内でもぎりぎり合理化される可能性はあるのではないかとして、両者をあわせて憲法改正問題と略称されたのでございました。

 これに対して、当時の民主党も、資料の右の欄にありますように、A案として、国政重要問題を何らかの方法で限定する案、B案として、今述べましたような二つの憲法改正問題に限定するという自民、公明の御提案を受けた案、そしてC案としては、そもそも具体的な制度設計自体を先延ばしし、そのあり方を憲法審査会で検討するというさらなる妥協案の三案を検討中である旨の発言がなされたところでございました。

 しかし、その後の与野党の修正協議は、二〇〇七年七月に控えた参議院通常選挙に向けてのさまざまな政治的、政局的な争いの中で合意が困難な状況となり、その結果、B案、C案の線は消えて、結局、民主党が提出された最終修正案はA案を具体化したものとなったところと拝察しております。

 すなわち、国政重要問題のうち、まず、憲法改正の対象となり得る問題のほか、二つ目として、統治機構に関する問題、これは、例えば両院制の問題など、国会による発議が必ずしも機能しない可能性があることを想定された問題でありますが、このような問題、三つ目として、生命倫理に関するような、政党政治を超えた、国会議員、国民の死生観などに関するような問題、この三つを例示として掲げた上で、その具体的な対象範囲は、国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定めるとされたのでございました。

 他方、当時の与党、自民、公明両党の先生方は、修正協議自体は決裂したけれども、そこで提示した範囲の国民投票であれば検討に値するとして、それを法案の附則に盛り込む併合修正案を提出され、これが現在の附則第十二条になったものでございます。

 以上、附則十二条の概要と経緯について御報告させていただきました。ありがとうございました。

保利会長 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

保利会長 これより自由討議に入ります。

 この際、委員各位に申し上げます。

 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。御発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようにお願いをいたします。

 発言は自席から着席のままで結構です。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただきますようお願いいたします。

 なお、幹事会の協議により、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。委員各位の御協力をお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前及び終了時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

篠原委員 おはようございます。民主党の篠原です。

 橘さんの方にお伺いしたいんですが、今、我が国の経緯についていろいろお話しいただきました。しかし、国民投票というのは、欧米先進国、アメリカは余りないんですけれども、ヨーロッパでは盛んに行われているはずなんです。

 今の二十六ページのところにも、諸外国の国民投票制度の概略というのが出ておりますけれども、最近の、我々みんなが知っている記憶では、イタリアで原発の再稼働について国民投票をして、九五%の人が反対して再稼働を取りやめた。それから三十ページに、イタリアの例で、ここに書いてあるとおりですけれども、新たな原子力発電所の計画、建設の廃止というのがあります。それから、ほかには、欧州憲法を受け入れるかどうかというので、フランスやオランダが拒否して、そしてもめてというのがあったはずですし、古くはノルウェーなんかも、EUに加盟するかどうかというのを国民投票でやって、否決されて入っていないというので、いろいろ例があると思うんです。

 それで、憲法に関係するというものだけじゃなくて、国家の体制ですね。統治機構といったって、大統治機構ですよ。統合すると安全保障なんかもかかわるんだろうと思いますけれども、それから通貨の問題等もあるんだろうと思います。そういう大きなものは国民投票にかけているのが普通なんですね。

 我々が見本としているイギリスだって、結局やらなかったとは思いますけれども、欧州憲法のときにブレア首相が、主導権争いもあったんだろうと思いますけれども、国民投票をやると言って、たしか、フランスが先にやって国民投票で否決されて、シラク大統領がちょっとしぼんでいくという原因になったりした。だから、それでやらなかった。

 大問題については、相当柔軟に国民投票をやっているはずなんですね。だから、日本もそれを考えたりした方がいいんだろうと思いますけれども、それは、憲法上の規定がきちんとあるんでしょうか。

 限定してと、民主党の案で三つというふうにありましたけれども、例えば、EUに入るか入らないかというのは大問題ですし、憲法問題、我々やっているわけですけれども、欧州憲法、自分の国の憲法を超えたEU全体の憲法というのは大問題ですよね。そういうのがあって、だから、どこの国も、ちょっと国内の法体系は違いますけれども、どの部分が国民投票に付されるかというのはきちんと規定があるはずなんです。

 我々、憲法改正を考えるときに、この前、三分の二とか、二カ月過ぎたとか、内容を変えてとかいうのがありましたけれども、ヨーロッパの例が参考になると思うんですが、ヨーロッパの憲法は国民投票についてどのように規定しているんでしょうか。そして、それに基づいてどのように実施されているのかというのを、一部ここにあるんですけれども、ちょっと定かでないので、この点について詳細な説明をしていただきたいと思います。

橘法制局参事 篠原先生、御質問ありがとうございます。

 先生御指摘のように、先生方、お手元配付の衆憲資七十五号二十六ページ以下に、決して網羅的ではございませんが、諸外国における国民投票制度の概略とその実施例を掲載させていただいてございます。

 この資料は、諸外国の憲法規定の字面を眺めまして、その中にある国民投票制度の概略をまとめたものでございまして、篠原先生御指摘のように、例えば、イタリアの例が挙げられましたが、イタリアの例ですと、三十ページに、二〇一一年六月に行われました新たな原子力発電所の計画、建設の廃止といった国民投票制度の実施例がございます。この根拠規定はイタリア憲法の七十五条にあるものであり、いずれも憲法上の根拠規定を持つ国民投票制度でございます。

 衆議院の憲法調査会及び憲法調査特別委員会による海外調査を行った国でも、ほかに憲法にこのような国民投票制度が規定されている例としては、エストニア、スロバキア、デンマーク、ポーランドなどもございます。

 他方、先生御指摘のように、このような憲法の規定に基づくもの以外に、法律や命令、日本流に言うと政令でしょうか、そのような規定に基づいて、国民が重大な関心を抱く案件について国民投票を実施する国も少なからずございます。ヨーロッパの国に多いのは、先生御指摘のとおりでございます。その中には、一般的な国民投票法制、法律に基づいて実施するだけではなくて、個別の案件ごとに特別の国民投票法を制定して、それに基づいて国民投票を実施するという国も少なからずあるようです。

 例えばオランダは、憲法上、国民投票制度に関する規定はございませんが、二〇〇五年、特別に制定された法律に基づいて、先生御指摘のEU憲法条約の批准に関する国民投票が行われたということでございました。この国民投票の結果は反対多数というものであり、その効果は法的には拘束力のない諮問的なものであったということのようでありますけれども、この結果を尊重して、オランダ政府は条約の批准をしなかったと報じられています。

 また、これまた先生言及されましたイギリス。イギリスは成文憲法がございませんが、最近、我が国のマスメディアでも注目を集めた例として、一昨年五月のイギリスの国民投票がございます。保守党と自由民主党の連立政権の連立合意の中に盛り込まれました自由民主党の選挙制度改革、これに基づいて、現在の小選挙区制を優先順位つき連記投票制、AV制度と略されているようですけれども、これに変更することの是非を問う国民投票が実施されたというものでございますが、このときも特別の国民投票法がつくられた。ちなみに、この結果も反対多数というものであったと思います。

 ただ、翻って考えますと、我が国の御議論では国民投票制度の通則法をつくるという御議論が一般的でございましたが、地方自治体の住民投票の傾向を見ましても、個別の住民投票条例をつくる場合と、一般的な住民投票条例に基づいて住民投票を行う場合と、論理的に二つのあり方があり得るわけで、そのような考え方で、先生御指摘のように、一般的国民投票法に基づいて国民投票法制を整備する場合と、個別の案件ごとに国民投票法を整備するといったやり方と、論理的には二つ考えられるのは御指摘のとおりかと存じます。

 以上です。

船田委員 自民党の船田でございます。

 この国民投票の対象の拡大ということについては、かつて私もその議論に加わっておりまして、民主党、枝野氏との協議の中でかなり苦労した部分ではなかったかというふうに記憶をいたしております。

 確かに、今、篠原先生からも御指摘があり、法制局から説明がありましたように、ヨーロッパの多くの国では、いわゆるレファレンダム、国政の重要案件に関して国民投票を行う、その中には義務的なものもあれば任意的なものもある、つまり、そのレファレンダムの結果に国会が拘束されることはない、こういうような設計をしているところもございます。

 ただ、私は、そのときも今も考えているのは、このような国政の重要問題、現在の我が国に当てはめて考えると、例えばTPP賛成か反対か、それから原発再稼働賛成か反対か、あるいは生命倫理の問題、こういうことについて国民投票を行うということについては、たとえそれが任意的であり拘束力がないものでありましても、いわゆる議会制民主主義あるいは代議制民主主義の根幹から見てやはり問題が残っている、このように思っております。

 一方で、私どもが、自民党、公明党が途中で提案をいたしましたのがいわゆる諮問的な国民投票ということでありまして、これはあくまでも憲法に関する問題、先ほど法制局の説明もありましたように、憲法に関係をした物事についてその国民投票を予備的に行う、こういう諮問的な国民投票というのはある程度考えられるんじゃないかということで、当時提案をした記憶がございます。

 なぜこのようなことを我々が述べたかといいますと、やはり、憲法改正原案を国民に発議した場合、これまで国民投票というのは一度も行われておりませんでした。したがって、初めてのこと、あるいは、国政の、憲法の大変重要な問題についていきなり国民投票にかけるということは非常にリスクが大きいのではないか、あるいは、国民の間で戸惑いが大きいのではないか、こういうことを考えたわけであります。

 であるならば、そういった問題を解消するためにも、予備的に、これはちょっと言葉に語弊はあるかもしれませんが、公的な世論調査というような意味づけで諮問的、予備的国民投票を行うということは、これはある程度効果があるんじゃないかな、そういうことで提案をさせていただいたわけであります。

 当時、一般的国民投票と諮問的国民投票の間はなお溝があったものですから、これが附則第十二条で検討課題ということで取り上げられましたけれども、現状では、当時我々が考えていたこと、それから、多分民主党さんが考えていること、それぞれの距離は余り縮まっていないんじゃないか、こう考えておりますので、これはまた議論を続けていかざるを得ない問題である、そういうふうに認識をいたしております。

 以上です。

畠中委員 みんなの党の畠中光成です。

 国民投票の対象拡大については、みんなの党内では検討を行っているところです。したがって、現時点で最終的な結論には至っておりませんが、憲法改正の予備的国民投票や、原発問題などの重要政策における諮問的国民投票の実現に向けた議論を真摯に行っているところであります。

 国民投票に関する批判には、戦後の我が国における安保闘争の経験や、冷戦構造下の保革対立の中の例えば市民運動などに対する抵抗から、間接民主主義の破壊という言葉で直接民主主義的なものへの批判があるだけではなかろうかと思います。

 あくまで一例ですが、昨今の市民運動では、尖閣問題のデモにも原発反対のデモにも共通して見られるのは、普通の母親がベビーカーを押しながらも参加する姿であります。それは、かつての保守、革新を超えて、純粋に子孫のためにこの国を憂えている国民の姿が見られるのではなかろうかと感じます。こういった声を拾い上げる仕組みが、現在の国会では十分ではないのではないかとも思います。

 むしろ、国民の負託を受けた代議士で構成される国会の方が、政局に明け暮れ、本質的な我が国の問題を解決できずにいるのではないかとも感じます。政治家自身が仕事を手放したくないことや、選挙制度の問題もあって、政治家のマーケティング力が残念ながら弱ってきているのではないか、真に国民の意思を反映し切れていないようにも思います。

 こういった国民の意思を、選挙以外にも反映させることができる仕組みも必要ではないでしょうか。

 そこで、橘部長に二点質問をさせていただきたいんですが、古代ギリシャから現代に至るまでの歴史上、直接民主主義やそれに類するものに対する批判はありましたでしょうか。また、問題点が噴出した例はありましたでしょうか。そして二問目なんですが、国民投票を導入している諸外国の例や、その効果について教えていただけますでしょうか。

 以上です。

橘法制局参事 畠中先生、御質問ありがとうございました。

 二問御質問を頂戴いたしました。

 一問目は、直接民主制に対する批判についてはどのようなものがあるのかという御質問であったかと存じます。

 大変生意気ですけれども、若干申し上げさせていただきますと、民主主義というのは、デモクラシー、すなわち、デモスによるクラティア、民衆による統治ということでございますので、これを別の言葉で言えば、みずからを統治する自治、自己統治ということになると思います。そういたしますと、理念的には、人民みずからが直接にみずからを統治する、統治行為に参画するということになるわけですから、直接民主制がその基本となるべきことが導かれると思います。

 しかし、現実には、これに対してさまざまな批判があるということが先生の問題意識そのものであるかと存じます。古代ギリシャ以来の御議論を御紹介申し上げるような知見は持ち合わせておりませんので、衆議院憲法調査会での御議論を中心に御紹介させていただくことでお許しください。

 まず、代表的な憲法の教科書の一つであります清宮四郎先生の教科書によりますと、次のように述べられております。直接民主制は、国民による統治の原則が最も高度に実現されるものであるが、しかし、団体が小さく、社会条件が単純な国家の場合は比較的実行しやすいが、団体が大きく、社会的分業が進化している近時の国家では実際にこれを行うことは難しいとした上で、さらに、そもそも、全ての国民がさまざまな国政問題を判断し、処理するだけの政治的素養と時間的余裕を持つわけではないから、直接民主制を高度に実現することは妥当でもないとして、結局、国民は、国政をみずから決することはできなくても、国政を担当するに適した人を選出することはできると述べられているわけであります。これが、恐らく最も標準的な現代国家における直接民主制の批判であるかと存じます。

 また、同趣旨のことは冒頭の御報告でも述べましたけれども、基本的には、間接民主制を基本とする日本国憲法のもとにおいても、多様な価値観やニーズを国政に反映させていくためにも、代議制民主制、議会政治を補完するためにも、国民投票のような直接民主制の要素を国政においても導入すべきであるという積極論には十分な理由があるという論もふえつつあると思います。

 これに対しても、さらに、次のような根強い批判があることも確かです。

 一つは、民主主義の本質は討論にあり、ほとんど審議することなく大勢の住民、国民に突然イエスかノーの問いかけをし、結論を求めるやり方は民主主義に反するというものです。つまり、民主主義の制度的な要素がなく、そもそも民主主義に反するという原理的な直接民主制批判かと存じます。

 もう一つは、政策的な一貫性に欠け、政策を決定するために必要な情報を提供する手段を有しない一般国民が、どれほど意味のある判断ができるか危惧を抱かざるを得ないというものです。これは、原理的な批判ではなく、例えば、十分な情報提供のツールが現代社会において用意されているのかといったような、いわゆる制度設計論における批判かと存じます。

 さらには、次のような批判もございます。外交、防衛上の問題や、条約、税制などの分野については、諸外国におきましても一般に国民投票の対象から外されていることが多いわけですけれども、これらは国民投票に付するにはなじまない問題なのだ、そういう一部の論点があるのだということであります。

 衆議院憲法調査会で述べられたユニークな批判では、一般国民の多数決で物事を決める直接民主制、あるいは国民投票制を導入した場合、少数者の人権を侵害するおそれがあるが、このようなことに対する防波堤、例えば憲法裁判所のような制度装置が必要となってくるのではないか、あるいは、国民投票により成立した法律については最高裁判所は違憲立法審査権を行使して違憲判断ができなくなるのではないのかといったような御指摘もございます。いずれも、その制度設計の際には留意を要する論点かと存じます。

 もう一つは、諸外国における一般的国民投票の事例についての御質問でございました。

 衆憲資七十五号の二十六ページの一覧表及び二十七ページ以下に詳細なデータを掲載してございますけれども、特にそれに付言して御報告申し上げますと、衆議院の憲法調査特別委員会での海外調査でイタリアを訪問した際に、この資料の二十八ページ目に掲げている法律廃止に関する国民投票制度について、次のような説明を受けたことに対して、訪問団の先生方は大きくうなずかれたのを拝見しておりました。

 すなわち、あくまでも法律制定は議会の役割だ、だから、法律制定に関するような国民投票制度を設けることは我々は適切でないと考えた、ただ、国民は議会の決定に対して拒否権を行使することはできるのだ、だから、議会が制定した法律の廃止の是非という場面においてだけ国民投票制度を導入したのだということでございました。

 先ほどの原発導入の是非に関するものは、まさしくこの法律廃止に係る国民投票なのだ、ですから、国民投票制度導入に当たってはそのような詳細な制度設計が必要であるという示唆になるかと存じます。

 また、先生御下問の、一般的国民投票制度の政治的、社会的な効果といった言及もございましたが、これについては、大変に難しい問題でございますけれども、先ほど来御紹介申し上げているヨーロッパ各国の国民投票の実施例に鑑みて、次のような指摘も受けてまいったところでございます。

 一般に、国民投票においては、当該国民投票に付されている案件の是非というよりは、その時々の政府や与党に対する信任の有無といった政治的意味合いを持った投票になりがちであるといった御指摘です。

 実際にも、先ほど来先生方からも言及があるフランスやオランダでは、議会において圧倒的多数で可決されたあのEU憲法条約草案が、国民投票においては逆に多数で否決される、そのような結果を招いたことは、この国民投票制度の持つ効果に対して賛否両論からいろいろな評価があり得るのだと思います。

 必ずしも、政治的、社会的効果いかんという御質問に対するお答えではないかもしれませんが、先生方の御議論に供するために付言させていただいたところです。

 以上です。

保利会長 非常に重要な答弁をいたしておりますので、制限時間等については、会長において弾力的に扱わせていただきます。

葉梨委員 自由民主党の葉梨康弘でございます。

 私も、憲法調査特別委員会が設置をされまして、国民投票に関する調査で外国、ヨーロッパに行かせていただきました。中山太郎先生を団長として、ここにいらっしゃいます保岡先生、笠井先生もたしか御一緒だったと思います。オーストリア、スロバキア、スイス、スペイン、フランスと、各国を調査して勉強させていただきました。

 三つほど申し上げたいと思います。

 一つは、国民投票というのは、そういうところを調査してみますと、単純に、大変おもしろいものだということでございます。

 スイスなどは、こちら衆憲資の資料にもありますけれども、相当、こんなところまで国民投票をやるのかということまで国民投票をやる。そして、国民投票ということになりますと、それぞれの課題についていろいろな形での議論がちまたでも行われるというようなことで、これはなかなか楽しいものだなというのが率直な印象ではございました。それが一つです。

 ただ、二つ目。しかしながら、国民投票にはやはり、今も答弁にもございましたけれども、危険性、さらには政治との本当に密接な、大きなかかわりというものがあるということです。

 危険性ということでは、この資料の二十一ページにも書かれておるわけですが、歴史上、私が記憶している限りでは、レファレンダムという国民投票を政治的に多用して、多分、フランスのナポレオン三世だったと記憶しておりますが、彼の国民投票のやり方というのは、特にボナパルティズムという形で、非常に議会の基盤というのが彼は弱かった、そういう中で、彼の人気ということに依拠する形で独裁的な政策を遂行するためにレファレンダムを多用して、これはレファレンダムではなくプレビシットである、政治的な国民投票の多用であるというような批判を受けた。彼が国民投票を、独裁政治を補完するものとして使ったというような例が歴史上言われております。

 それから、これは危険ということではなくて、まさに政治の判断ということでございますが、戦後イタリアにおいて、王制の存続を問う国民投票というのが行われました。僅差で否決をされて、民主政体になりました。しかしながら、王党派については、やはりこれは間違いだというようないろいろな批判が当時もありまして、私の記憶ですけれども、今のイタリアの憲法は、共和制を王制に変えることを、憲法改正はできないというような条項にしております。

 この国民投票という制度を導入するに当たっては、このような歴史的、政治的な経緯をしっかりと踏まえた上で我々としても検討していくことが必要だというふうに考えています。

 三点目でございます。

 そしてその中で、この附則で、諮問的国民投票を、憲法改正を要する事項に限定する、あるいはその周辺に限定するという形にいたしましたのは、当時も議論をさせていただきましたけれども、九十六条で、国民投票が憲法改正についてはございます。そして、その前に一回、熟議の国民投票というか、熟慮の国民投票といいますか、諮問的に憲法改正ということについては国民投票を行って、この部分を変えるということを、国民の意思として、国会にやれ、そして国会として発議をしろという形であれば、熟慮の国民投票という形ができるんじゃないか。この限りにおいては、その危険性あるいは政治的な問題というのも払拭されるのではないかというところがぎりぎりの判断であったというふうに私は記憶をしております。

 しかし、この点をずっと詰めてまいりますと、先般の九十六条改正のことで私もここで発言をさせていただいたんですが、果たして、二回、憲法改正について国民投票をやるという制度設計がなされたときに、国会の発議の要件が両院で三分の二というのが本当に妥当なのかという問題につながってまいります。二回の熟議の国民投票を行うという制度設計がなされた場合には、やはり国会というのは一歩引いて、三分の二ではなくて、例えば二分の一というような発議要件にするということもあわせて検討課題になってくるのではないかというふうに私は考えております。

 以上です。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 民主党が、国政の重要問題、一般的国民投票も含めるということで提案をしたのは、やはり、その考えの基本に国民主権というものがあるからでございます。

 先ほど橘さんから御説明があったように、直接民主主義の制度は、憲法では七十九条二項、九十五条、九十六条の場合に限定されているということで、衆憲資七十五号一ページの方にも記載をされているとおりでありますが、しかし、やはりこの国民主権については、間接民主制そしてまた直接民主制、さまざまな形で主権者の意見を表明する場があってしかるべきというふうに考える中、ただ、残念ながら、例えば地方自治特別法、九十五条については、戦後何例かがあって、その後ないといったことも含めまして、なかなか直接意思を表明する形というのがとりにくい形になっております。

 そういった中では、民主党として、この間、法律案あるいは修正要綱、そして修正案という形で提起をさせていただきました。修正要綱では、三案ということで、国政重要問題の対象を何らかの方法で限定するA案、憲法改正問題に限定するB案、そして、具体的制度設計を憲法審査会で検討するC案の三案を提示し、先ほどお話にあったように、予備的な国民投票は諮問的なものに限るということでの与党からの歩み寄りも行われた中で、結果とすれば、修正案は、民主党は、憲法改正の対象となり得る問題、統治機構に関する問題、生命倫理に関する問題その他の国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題を対象とするという形で対案を出した経緯がございます。

 しかしながら、この問題もやはり、この憲法審査会なりで与野党が真摯な議論、そして丁寧な合意形成に努める一つの対象になり得るのではないかというふうに考えております。そのよって立つすべは、やはり国民主権、主権者は国民であるといったところから進めるべきではないかというふうに考えます。

 以上です。

衛藤委員 自民党の衛藤征士郎です。

 国民投票については憲法問題に限定すべきではないか、私はこう思っています。

 衆参両院の中で両院が真に機能すれば、私は、チェック・アンド・バランス、よく機能が働くはずなので、あえて、二院制にあって、他の重要法案について国民投票に付すということについてはいかがなものか、このように思っております。

 法制局にお尋ねしたいんですが、EU加盟国二十七カ国の中で一院制をとっている国が過半数以上ありますが、一院制の国で、国民投票法、これはほとんど導入していると思うんですね。それはチェックのために当然のことだと思いますが、一院制の国で国民投票法を導入していない国がありますか。

 これは非常に重要なので、調査しておいてください。お願いします。

保利会長 それでは、後でよく調べておいていただきたいと存じます。

篠原委員 それでは、先ほどちょっと質問させていただいて、いろいろ考えて、皆さんの意見も承って、ちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。

 今、葉梨委員からありましたとおり、国民投票というのは政争の具に使われたりするんじゃないか、そのとおりだと思いますが、イタリアは、二十八ページから、二十八、二十九、三十と、もう何回も国民投票をやっていますし、たしかベルルスコーニ首相は、わざと国民投票にかけて、低投票率で、最低投票率があって、そして、何だ、関心がないだろうという感じで、もうチャラにしてというか、そういうふうに使われているので、私は、抑制的にすべきだとは思いますけれども、国民投票というのはきちんとやっていったらいいんじゃないかと思います。

 一つは、憲法改正のときに、三分の二を二分の一にする、九十六条問題のときによく出てきましたけれども、国民の声を聞くんだと。国民は憲法改正していいんだと言っている、これはそのとき申し上げましたけれども、具体的なことを言っているわけじゃなくて、してもいいよというのを言っているだけだというふうに申し上げました。しかし、国民の声を聞くということを貫徹するならば、何から何までというのじゃないですけれども、やってもいいのではないかと思います。大事な問題について国民の声を聞く。

 それからもう一つ、二番目の理由は、それと同じなんですが、政治への関心を高めるために、重要な問題については絶対やるべきだと思います。

 なぜかといいますと、これは畠中さんがちょっと冗談ぽいことをおっしゃいました。失業しないためにというふうに言われましたけれども、この重要な問題について国民の信を問うというのは、一々国民の信を問うために解散されていてはたまりません。我々が賛成か反対かというのを国民に全部示して選挙をやるんだったらいいですけれども、そういう仕組みになっていない。例えば、TPPと原発については僕は両方とも反対なんですが、そういうのがわかって、国民が、有権者がそれを見て投票する、そういう仕組みになっていないですから、重大問題についてはやっていってもいいんじゃないか。

 それで、ここを見ましたら、おもしろいんですね。投票率が、頻繁にやっているところは低いんですよ。何でもかんでもやっているところ、イタリアとか、直接民主制の代表的な国スイスとか、スペインとか、低いはずです、よく見ていただくとわかるんですが。めったにやらないスウェーデンとかフランスとかオーストリアは、物すごく投票率が高いんですよ。

 ですから、私は、国民投票法のところで議論していますけれども、憲法の中に、どういう問題を国民投票にしたらいいのかということを、憲法改正するのなら書き加えるべきだと思います。

 法制局の橘さんは、先ほどちらっと、条約とかいうものについては対象にしないと言っていましたけれども、逆なものもあって、超国家的な、さっき、EU憲法ですか、そういったものはむしろ逆でして、対象にする、すべきだというふうになっているんですね。だから、憲法にちゃんと規定してあるはずですから、そこでもって歯どめをかけ、かつ、これについては国会議員の二分の一の賛成、これは両院なんでしょうけれども、そういうような歯どめをかけて、大事な問題については聞いていくべきじゃないかと思います。

 それで、法的拘束力を持たすか諮問的なものにするかというのはまた別の問題があるかと思いますけれども、少なくとも国民の関心は呼びますし、そういった政治参加を求める、関心を持ってもらうといういい機会になってくるんじゃないかと思います。

 そういう点では、四十二ページのところを見ていただくとわかるんですが、皆さん御存じだと思います、フランスの投票率というのは、一般の選挙の投票率、高いんですね、八〇%前後なんです。これで見ていただきますと、低いのもあります。どうでもいいなんて言っちゃ悪いんですけれども、四十二ページの法律案に関する国民投票なんて、みんな七〇%になっていますよね。それから、その前の四十一ページの、憲法改正国民投票なんかも結構高いんですね、大統領の任期とかいうのを除けば。

 ですから、私は、日本でも同じように、国民投票法というのをきちんと決めて、ルールを決めて、抑制的ではあるんですが、やっていった方がいいんじゃないかと思います。

衛藤委員 今、フランスの話が出ましたけれども、御案内のとおり、フランスは二院制ですけれども、フランスの上院議員のいわゆる選挙権、投票権というのはフランスの一般国民にはありません。御承知のとおりです。ですから、フランスの上院議員の選挙権がないわけですから、一般国民は投票権がないんです。いわゆる国会議員と地方議員だけによって上院議員を選ぶわけですね。そういうところに、つまり国民投票における投票率の高さというのが出ておるんじゃないかな、私はこのように思うんですが、この点いかがでしょうか。

保利会長 御質問ですか。(衛藤委員「いやいや、結構です」と呼ぶ)

 ちょっと時間も経過いたしておりますので、もし特に御発言がなければ、この問題についてはここでピリオドを打ちたいと思います。よろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

保利会長 次に、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 この際、委員各位に申し上げます。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたしております。

 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたしまして、その経過につきましては、終了時間一分前及び終了時にブザーでお知らせをいたします。

 発言は自席から着席のままで結構です。

 発言の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷(元)委員 自由民主党の中谷元です。

 この二年に及ぶ憲法審査会の審議を通じて、現行憲法を各章ごとに検証し、各党の委員から意見が表明され、真摯に議論ができたことは、大変有意義なことでありました。委員の皆さんの御意見は多岐にわたっております。いずれも傾聴に値するものであり、その見識の高さに心から敬意を表するものであります。

 現行憲法には、尊重し、追求しなければならない理想の理念があるということは言うまでもありませんが、時代の変遷とともに生じる現実との乖離にどう対応するのか、解釈では乗り越えられない限界点、矛盾について、自由民主党は、その論点を指摘し、日本国憲法改正草案を提案しました。これをもとに、早期に国会発議の憲法改正案について政党間協議に入るべきであると考えます。

 以下、改正での主要なポイント、論点について、自民党の意見を総括し、述べてみます。

 まず、現行憲法の前文については、全体が翻訳調であり、その原案が、アメリカの憲法やマッカーサー・ノートなど、占領時代に西洋の思想や歴史的文章から取り入れられたと見られる文章が並んでいます。中でも、自国の安全保障について、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とは、まさにユートピア的発想による自衛権の放棄にほかなりません。現行の憲法の前文を全面的に書きかえ、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの原則を継承しつつ、日本国の歴史や文化、国や郷土をみずから守る気概など、国家の基本原理を簡素にわかりやすく述べたものにするべきであります。

 天皇については、憲法で象徴と定義された我が国の天皇制は既に国民から支持されていますが、さらに、天皇が元首であることを明記する必要があります。それは、元首は、象徴的権威であるとともに、世俗的な権威も兼ね備えたものであるからです。

 九条については、現行憲法には、主権独立国としての自衛権の記述がなく、自衛隊の位置づけも規定されておりません。解釈による自衛隊の運用は限界に来ております。そこで、草案は、平和主義を継承するとともに、自衛権を明記して、集団的自衛権の行使を憲法改正により認め、国防軍の保持を規定いたしました。

 国民の権利及び義務については、これまでの権利偏重の憲法論でありましたが、国民も国家に対して何らかの義務を負っているものと考えます。

 第一に、国民は国家を構成する一員として国家に対しての責任と義務を負うものであります。国家は国民の団体であり、国家の命運は国民につながっており、国民は国家の存立とその進運に貢献することをその本分となすものであります。

 第二に、国民は社会生活の一員として社会の安寧秩序を保持し、その秩序を乱すべからざる義務を負うものであり、さらに進んで積極的に社会の福利に寄与すべき義務を負っております。

 第三に、国民は個人として各自が自己の存立の目的の主体であり、他の人の自由及び権利を尊重し、これを侵害してはならぬ義務を負うものであります。

 以上によりまして、自民党改正草案では、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。」と規定しました。

 また、家族の尊重、家族はともに助け合うなどの共助、共同の理念や、環境保全の責務、犯罪被害者等への配慮など、新しい人権規定が必要であります。

 一票の格差については、司法の違憲判決などが相次いでおりますが、現行の憲法においても、議員の選挙に関する事項は基本的に立法府の裁量に委ねられており、都道府県などの地方自治体の発言権の確保など、人口以外の要素も総合的に勘案して選挙制度は定められるべきであり、選挙区は単に人口のみによって決められるものではないことを憲法上明示いたしております。

 また、内閣の章では、内閣総理大臣の専権事項として、衆議院の解散決定権、行政各部の指揮監督権、国防軍の最高指揮権を明記いたしております。

 憲法改正の手続について、現行の国会の発議要件は余りに厳格で、国民の憲法についての意思を表明する機会を狭める結果となっているため、衆参それぞれの過半数に緩和することにいたしました。

 以上のほか、現行憲法にはない新たな章として緊急事態の章を設け、外部からの武力攻撃、地震等による大規模な自然災害などの法律で定める緊急事態において、内閣総理大臣に一時的に緊急事態に対処するための権限を付与する規定を盛り込みました。

 さらに、憲法改正実現のための手続について、憲法改正国民投票法の三つの宿題についても議論されましたが、選挙権年齢に関しては、政府の検討が遅々として進まない場合、国民投票制度とその他の法令を切り離して、国民投票の十八歳投票権を先行させるべきであり、現在の六・三・三の教育制度、内容、教職員の政治活動等についてもあわせて検討を行うと同時に、公務員の政治的行為についても、今後、各党間で議論をして、合意を形成する必要があると考えます。

 自民党の草案は、憲法全体についての検討、見直しを行ったものですが、実際には、憲法改正の発議は項目ごと、個別に行うと定められていることからすれば、まずは各政党間でおおむね了解を得られた事項から、個別テーマごと、シングルイシューとして国民投票にかけていくことになると考えております。

 他党と改正に向けた協議会を立ち上げ、各党で改正案を持ち寄り、それぞれの草案をたたき台に修文をしていく手法が考えられます。憲法改正は国民の意思でできることを早く国民に実感してもらうためにも、各党で憲法改正の一致点を見出す努力をすることがまず必要です。

 最後に、国会が憲法改正案を提示し、しっかり国民に説明をし、改正の手続を踏んで、その承認を得ることは、丁寧で、正直で、誠実に憲法に向き合うことであり、まさに立憲主義、国民主権の精神に基づくものであります。憲法は国民の手で今の日本にふさわしい内容としなければなりません。これからも、堂々と憲法改正を推進するため、自由民主党は全力で取り組む所存でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 どうもありがとうございました。

保利会長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 昨年の通常国会から始まった現憲法の検証を一通り終えたところで、改めて民主党の考え方を申し述べたいと思います。

 国民とともに憲法対話を進め、未来志向の憲法を構想します。近代立憲主義においては、憲法は国民の自由や権利を保障するために国家権力を制限するルールであり、決してそのときの政権がみずからの価値をうたい、あるいは国民に義務や道徳を課すものではないと考えます。

 民主党は、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という基本理念及び象徴天皇制など日本社会に定着し、国民の確信にしっかりと支えられている諸原則は、これを尊重し、堅持します。その上で、現行憲法の基本理念を具現化し、真の立憲主義を確立すべく、以下の視点を中心に国民とともに憲法対話を進め、補うべき点、改めるべき点への議論を深め、未来志向の憲法を構想します。

 基本的人権でありますが、人間が人間として生まれてきたがゆえに誰もが当然に享有する権利であり、基本的人権は他人の基本的人権との衝突を回避するために調整されることはありますが、公益や公の秩序に劣後するものではないと考えます。この基本原理を踏まえて、環境権、知る権利など新しい人権を憲法にどのように位置づけるかの議論を深めます。

 二院制については、これを維持しつつ、例えば衆議院は予算、参議院は決算と行政監視など、役割分担を明確にするための議論を深めてまいります。

 平和主義と安全保障につきましては、国連憲章上の制約された自衛権に基づき、平和主義、専守防衛、徴兵制禁止の原則及び自衛隊に対する国会のチェック機能、民主的統制を明確にするための議論を深めます。

 地方分権については、国と地方の役割を明確にするための議論を深め、中央政府は外交・安全保障、全国的な治安の維持、社会保障制度などを担い、住民に身近な行政は地方自治体が行うこと。住民に身近な行政も、地方自治体間においては基礎的自治体が優先的に担い、基礎的自治体では担えないことを広域自治体が、広域自治体が担えないことを中央政府が担う、いわゆる補完性の原理を尊重すること。

 そして、改正手続でありますが、憲法の役割は、国家権力の暴走、多数決の横暴などから国民の自由や権利を守ることにありますので、憲法の改正に当たっては、丁寧な議論を積み上げ、広範な合意の成立を目指すべきであり、その発議に衆参両院の総議員の三分の二以上の賛成を必要とする考え方には合理性があります。憲法の議論を深める前に改正の中身を問うこともなく改正手続の要件緩和を先行させることには、立憲主義の本旨に照らして賛成できません。

 そしてまた、二〇〇五年憲法提言には言及はありませんが、国民に定着している象徴天皇制については堅持をします。諸外国から元首の扱いを受けていることもその理由の一つであります。

 一方、首相公選制については立場はとりません。首相を選ぶ選挙である小選挙区制度が定着していること、まずは首相及び内閣の力を高め、縦割り行政の弊害を正すことが必要だからであります。

 また、補完性の原理をうたっておりますが、憲法提言でも、道州制にも言及をしております。

 緊急事態法制については、その必要性を認識し、特に衆議院解散時や参議院選挙時における対応が必要であると考えます。

 また、安全保障についても議論の深掘りを避けることはいたしません。集団的自衛権などの議論も党安全保障調査会役員会で始めておりますし、この通常国会の自衛隊法改正でも、地域を限定した上での武器使用の緩和を提案いたしました。

 重ねて、九十六条改正について申し述べますと、当憲法審査会、そして憲法調査特別委員会、憲法調査会は、この十三年間の議論が、憲法九十六条を前提に、与野党間の真摯な議論と丁寧な合意形成に努めてまいりました。その結果が、例えば憲法改正国民投票法の投票年齢、これが、民主党が主張した十八歳投票年齢に二十を主張した自民党が歩み寄ることにつながったと言えます。

 なお、九十六条そのものについては、両院に固有の条文については三分の二を緩和しても構わないのではないのかと述べたこと、その考えから、憲法五十九条二項の見直しに触れたことも付言しておきます。

 三つの宿題については、十八歳投票年齢、国民投票について切り離すということも選択肢のうちの一つと申し述べております。公務員については、原則、国民投票については認めていくということも申し述べ、きょう、一般的国民投票の拡大について触れたところでございます。

 最後に、当憲法審査会は、引き続き真摯な議論と丁寧な合意形成に努めるべきであり、国民の望む国政の諸課題全体のバランスを見つつ取り組む必要があることを申し述べたいと思います。

 以上です。

保利会長 次に、馬場伸幸君。

馬場委員 日本維新の会、馬場伸幸でございます。

 日本維新の会が考える憲法の見解について申し上げさせていただきます。

 日本維新の会は、前例と既得権益に縛られずに決定でき、責任を負う、新しい統治機構をつくり直すための大改革が必要だと考えており、そのためにも憲法の大幅な改正が必要だと考えています。

 日本維新の会が憲法改正を必要だと考える理由は、現在の統治機構を大幅に改革し、また国民が安心できる安全保障体制の構築を行うため、現代の日本に合った憲法にするためであります。それにはまず、憲法第九十六条を改正し、統治機構を規定している憲法のゆがみを正していく必要があります。

 九十六条の改正は、ちまたで言われているような発議要件の緩和ではありません。九十六条が規定する改正手続の中で一番のポイントは、発議要件ではなく、最後に国民投票にかけて国民の判断に委ねるということです。日本国憲法は国民を信じる憲法であり、九十六条の改正は、国民の皆さんが憲法改正の是非を直接判断できる、すなわち、真の国民主権を実現するために行うものであります。

 以下、統治機構の大幅な改革並びに国民が安心できる安全保障体制の構築の二点に絞って意見を申し上げます。

 統治機構の大幅な改革には、現在の中央集権型国家から地方分権型国家へ移行するための道州制の確立と、日本を覆う閉塞状況を打破し政治の力強いリーダーシップを生み出すための首相公選制が必要です。

 道州制の導入は、政治や行政が身近になるとともに、受益と負担の関係が明確になり、重複行政の解消等により行財政改革が実現し、道州の地域経営による広域経済文化圏を確立させ、国家戦略や危機管理に強い中央政府を確立させることができます。しかし、今の日本国憲法のもとでは、道州制のように現在の日本が必要とする統治機構改革は行えない状態であります。

 また、国民が安心できる安全保障体制を構築するには、他国に頼り切るその考え方を改め、自分の国は自分で守ることを自覚し、自衛権を持つという原則に立たなければいけません。そのために、自衛隊を憲法にしっかりと位置づけ、我が国の主権と領土を確実に守る必要があります。

 さらには、資源に乏しい我が国の安全保障上、我が国の生存に必要な資源を国際協調のもとに確保することによって、国民が安心できる安全保障体制を多角的に構築する必要があります。

 しかし、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼することをもって安全と生存を保持している今の日本国憲法のもとでは、安全保障体制の構築も他国に頼らざるを得ない状況になっています。日本を取り巻く状況が目まぐるしく変化する今日において、我が党は、憲法改正にもスピード感を持って取り組むことが必要だと考えています。

 日本維新の会は、憲法を改正できるために必要なことは全て行うべきであるという考え方であり、言葉だけで憲法改正を唱える無責任な態度はとりません。

 具体的に申し上げますと、平成十九年五月に成立した日本国憲法の改正手続に関する法律は、法はできたものの、現時点では実際に憲法改正のための国民投票を行うことができない状況となっています。それは、法案成立時に、三年以内に措置するとなっていた国民投票に関する要件二つについて、法案成立から六年が経過した現在でも措置がなされていないからであります。この要件は、三年以内の措置が必要ない一つの要件を含め、いわゆる三つの宿題と呼ばれています。

 日本維新の会では、不作為状態となってから三年が経過している国会を正常化し、国民が直接的に主権を行使し、この国の方向性を決める国民投票がいつでも行えるように、本年五月十六日に、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案を提出させていただきました。しかし現在、議運の方で、この審査会に付託をさせない、いわゆるつるしという、全く理解のできない、しかも国会法第五十六条に違反のおそれがあるのではないかと思われる状態が続いています。

 本題から少し離れますが、この審査会のメンバーでもあられます衛藤征士郎先生が、昨年、一院制に関する法律を発議されました。これは、発議要件に基づいて発議をされたわけでありますが、この法案についても一度も審査がされたことがありません。その理由は、国対委員長の判こが押していないから、そういう理由だそうでありまして、私は、これに対して非常に大きな疑念を持っております。

 憲法審査会の委員の皆さん、日本維新の会は、現在、国会のおかしなルールについても改革を求めています。ぜひ、国民のための政治が実現されるよう、強く協力をお願い申し上げたいと思います。そして、三つの宿題は、我々国会議員がみずからつくった宿題であります。党派の垣根を越えて早急に結論を出そうではありませんか。

 ここで、改めて三つの宿題の方向性について具体的に御説明させていただきます。

 一つ目の、投票年齢の引き下げについては、国民投票を行う年齢は十八歳以上とします。我が党の案では、憲法改正のための国民投票は、できるだけ多くの国民の考えを聞く特別なものであり、他の成人年齢の議論とは分けて考えるべきだと考えています。

 二つ目の、公務員の政治的行為の制限についてであります。日本維新の会では、公務員の純粋な国民投票に関する意見表明を認めます。また、それにあわせ、国民投票を行う国家公務員も地方公務員も同じ条件で意見表明できるように整備をいたします。

 三つ目の、国民投票を憲法改正以外に活用すべきかどうかについては、三つの宿題の中で、この件に関しては、三年以内に措置をすべきとはなっておりません。国民投票を憲法改正以外に活用すべきかについては、性急に答えを出す必要はないと考えております。

 憲法改正による統治機構改革と安全保障体制の構築を最重要課題として位置づけている我が党は、まずは憲法改正を行える状況を整えることが最優先課題だと考えております。日本維新の会の憲法改正に関する見解は、まずは憲法九十六条を改正して発議要件を現実的なものに変更し、国民の皆様に憲法改正の是非を直接判断していただく機会を整えた後に、現在の日本に適した統治機構改革と安全保障体制の構築についての改正を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

保利会長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 この衆議院憲法審査会におきまして、我が党は、憲法の各章、各条ごとに課題を検証するいわゆる逐条審査を行うことを提案し、前国会、今国会で熱心な議論が行われてきたところでございます。大変有意義であったと評価をしております。

 この審査を通じ、我が党は、現行憲法は国民に定着していること、特に、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義の三原則は、立憲主義の立場からも堅持すべきであることを表明してまいりました。

 その上で、時代の進展に伴い提起されている新たな理念を加えて補強する加憲という憲法改正の方法もあるのではないか、また、加憲方式こそ最も現実的な、妥当な方式ではないかとも提案してまいりました。

 本日は、これまで逐条審査で述べてきたことをまとめて、どのような加憲の項目が党内で議論されているかについて申し述べさせていただきます。もちろん、まだ議論途中であり、決定されたものは一つもありません。また、ほとんどの意見にはその反対意見も党内に存在し、議論が交わされているという段階であるということを前もって御承知おきいただければと思っております。

 まず、前文についてですが、憲法三原則の明確化ということで、前文に記載のない基本的人権の尊重を含めた憲法全体を貫く三原則を明確に盛り込むべきであるという点です。

 また、人道復興支援など国際貢献については、国際社会で名誉ある地位を占めたいとの記述では不十分であることから、もっと明確に打ち出す必要があり、その際に、人間の安全保障についての理念がさらに一層強く反映されるべきである等の、国際貢献の明文化が必要という点がございます。

 そのほか、地球環境、生命倫理といった人類普遍の原理に準ずるような価値については、加憲するにふさわしいとともに、日本人のアイデンティティーを共有できる記述が必要であるという意見もございます。

 次に、第一章ですが、国民主権の明記です。象徴天皇制と国民主権の関係をより明確にするため、独立した条文で主権在民を明記するかという意見が大勢でございます。

 次に、第二章戦争の放棄ですけれども、九条一項、二項を堅持の上、自衛隊の存在について、専守防衛、個別的自衛権の行使主体としての自衛隊の存在を認める記述を置くべきであるという意見と、既に実態として合憲の自衛隊は定着しており、違憲と見る向きは少数派であるゆえ、あえて書き込む必要はないという考え方、二つの意見が存在しているというのが実情でございます。

 国際貢献については、明確化を望む指摘がございます。ただし、九条に書き加えるか、前文に盛り込むか、別建てで起こすか、あるいは法律で対応すれば済むと意見が分かれております。

 核廃絶について、唯一の被爆国として、何らかの規定が憲法に盛り込まれてしかるべきと考えております。

 次に、第三章国民の権利及び義務についてでございますが、新しい人権全般については、より積極的に明示すべきである、憲法に明記することによって事前の人権保障を可能とし、時代の変化に対応した積極的な立法措置を可能にすることが望ましいという考え方でございます。

 特に、環境権、環境保全の責任について、かつての人間中心主義ではない、自然との共生も含んだエコロジカルな視点に立った環境権を定めるべきであると同時に、国と国民の環境保全の責任を定める必要があるということでございます。

 また、生命倫理については、生殖医学、遺伝子技術の発展に伴う生命倫理のあり方については、二十三条の学問の自由との関係において、二十三条に規定する学問の自由と匹敵するだけの命題は法的にはどこにもないため、憲法に生命倫理の条項を加える必要があると考えております。個人の尊重を超えた生命の尊厳という概念を憲法に明記することは重要であると考えております。

 そのほか、プライバシー権、名誉権、知る権利、犯罪被害者の権利、生涯学習権、裁判を受ける権利等についても検討が必要であると考えております。

 次に、第四章国会関係です。二院制について、両議院の役割分担を明確にし、特に参議院の良識の府、再考の府としての位置づけを明らかにする必要があると考えております。国政調査権の拡大については、国政調査権を議員個人の権能とすべきとの意見もありましたが、これは少数意見でございました。

 第七章財政では、私学助成の重要性を踏まえて憲法上の表現について検討すべきであるということ、また、財政規律や財政の健全化を憲法に明記することを検討すべきという意見のほか、複数年度予算、企業会計の導入、決算についての意義づけ、会計検査院について明記すべきであるという意見もございました。

 次に、第八章でございます。第八章につきまして、地方自治の章がわずか四条しかないことは極めて抽象的で脆弱な規定であり、地方自治の本旨として団体自治と住民自治を規定しているが、具体的な内容を明確にすべきであるという意見でございます。また、財政的自立についても、地方自治の財政基盤を確保するため財政的自立を明確にすることを規定すべきであるという点でございます。

 第九章改正につきましては、三分の二という発議要件は高過ぎるということは決してないが、これを、例えば三原則以外については、一定程度緩和することについては議論の余地があり得るとしております。

 また、緊急事態についても、何らかの規定が必要だという意見が大勢でございます。

 以上、加憲の対象となるのではないかということで議論されている項目を紹介させていただきました。今後、党内での議論をなお一層加速させていきたいと考えております。

 以上です。

保利会長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 みんなの党の小池政就です。

 みんなの党は、これまで憲法に対して、基本理念は維持しつつ、統治機構の改革を主とする改正の内容につき当審査会で述べてまいりました。本日は、幾つか補足という点で述べさせていただきます。

 まず、自衛権につきましては、侵略戦争を放棄し、平和を追求するという前提において、我が国の国民と国土はとことん守るという立場から、我が国を防衛し、また、国際平和に貢献するため、自衛権のあり方について明確化していくとしてきました。これは、自衛権については、当然、我が国は、国連憲章第五十一条で定めるように、個別的及び集団的自衛権を保有するものという前提に基づいております。

 集団的自衛権の検討に当たっては、まずは、今現実に直面している我が国が自衛権を行使する前の段階での対処や自衛権に基づく行動の中身を規定したガイドラインの検討、例えば周辺事態法等を通しての検討が必須と考えます。

 また、仮に集団的自衛権行使を認めるとした際の手続としても、憲法解釈の変更は、過去の国会審議における内閣法制局からの答弁にあるように、政府の憲法解釈の権威を著しく失墜させ、ひいては内閣自体に対する国民の信頼を著しく損なうおそれもあるとの懸念も拭えないことから、結局、法制局長官のみならず当時の安倍晋太郎外務大臣、谷川和穂防衛庁長官が答弁しているように、憲法改正という手段をとらざるを得ないという前提も含めて検討しなければならないと考えております。

 次に、第九十六条についてであります。

 みんなの党は、国会の発議要件を緩和し、国民投票は維持すると主張してきました。発議要件として国会両院での三分の二の賛成を要し、後に国民投票の過半数をもって決するというハードルは、見直す必要があると考えます。

 米国でも、確かに議会の上院、下院の三分の二を条件としているものの、地方議会の州の四分の三の賛成があれば効力を持つものとし、国民投票はありません。また、議会の両院の三分の二の賛成についても、日本の規定にある総議員の三分の二ではなく、出席議員の三分の二であり、一万件を超える修正案の提出により過去二十七回改正が行われた決議の中では、結果として総議員の半数を少し超える得票で可決された例も見受けられます。

 それでは、軟性化するにしても、果たして二分の一が適当なのでしょうか。これは、国民投票の過半数を要件とする規定に合わせたものと考えますが、言いかえれば、憲法改正に対する国民の意思と同等の国会の意思を要件とすべきで、現状では、国民の意思をはるかに超える国会の意思が必要であるという前提に基づいていると考えます。

 安倍総理は、本国会において、同様の趣旨の答弁を何度も行っております。

 例えば、平成二十五年二月八日の衆議院予算委員会では、「幾ら国民の五〇%、六〇%、例えば七〇%の方々が憲法を変えたいと思っていたとしても、三分の一をちょっと超える国会議員が反対をすれば、それは指一本触れることができないということはおかしいだろうという常識であります。」と答弁しております。

 ただし、現行の選挙制度では、国民の投票による政党の得票率と実際の議席獲得数が大きく異なることもあり、特に、衆院の小選挙区制、また、参院の選挙区制では、得票率を大きく超える議席数が得られるということも過去の選挙結果が示しています。国民の意思が過小でなく過大に反映され得る点も、留意する必要があります。

 選挙では、確かに、複数の争点が重なり、憲法改正だけに国民の意思が反映されているとは限りませんが、憲法は国の根幹であり、各政党がどのような方針を示しているかは有権者にはある程度周知の事実であり、その点では、政党政治を基礎とし、候補者の所属政党を判断基準に投票される選挙結果が有権者の憲法に対する一定の意思を示しているとも言えます。

 我が党は、一人一票比例代表制による選挙制度の改革ということも訴えておりますが、これは、一票の格差の抜本的是正のみならず、政党の得票率をより正確に国会の議席数に反映させることになり、この場合の総議員の二分の一という要件には根拠が備わります。

 国会の発議要件の緩和には、選挙制度のあり方を踏まえた上で、どの程度の軟性化を求めるかという考慮も必要と指摘しておきます。

 また、国民投票に関しては、当審査会でも審議されたいわゆる三つの宿題が争点となってきましたが、実際に国民投票を実施する際の広告、宣伝、報道等の活動についても、再考する余地があると考えます。

 国民投票は、テーマが具体的に示されることもあり、これまでの郵政選挙や政権交代選挙同様、そして、それ以上に世論が一定の方向に流れやすいという性質を含んでおります。そうであるからこそ、投票に当たっては、より広告や報道の中立性が要求され、国民が賛否の両方の意見に触れることができるよう配慮すべきであります。

 この精神に基づき、各議院において組織される国民投票広報協議会は、憲法改正案の内容や、賛成、反対の意見、そのほか参考となる情報を国民に提供するものとしています。

 しかしながら、現状は、国民投票広報協議会以外の広告、宣伝、報道等の活動の対象と内容については、全く規制がありません。例えば新聞広告についても、掲載する団体や個人、枠の大きさや内容等が規制されることはありません。放送法第四条の一般的規制はありますが、罰則はありません。唯一の例外として、発議をした日から起算して六十日以後百八十日以内において実施される国民投票の期日十四日前からは、国民投票広報協議会が行う広告放送を除き、国民投票運動のためのラジオ、テレビの広告放送が制限されるという点のみです。果たして冷静な判断がなされるか、懸念は残ります。

 最後に、我々国会議員には、国会法に規定された憲法改正案提出の条件を満たすことは必ずしも困難ではなく、真に必要な改正案であれば、第九十六条に限定することなく、廃案となる可能性も恐れず、国会内でその意思を表明すること、審議を通して意義や課題を明らかにするという役割もあることを忘れてはならないと考えます。

 以上です。

保利会長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今国会を振り返って、幾つか意見を述べます。

 この国会では、憲法九十六条改定を先行させる、これを参議院選挙の争点にするなどという発言が、安倍総理を初め自民党、そして改憲を主張する政党、委員から繰り返しなされたことが特徴でありました。これに対して、憲法が憲法でなくなる、邪道だという批判が、改憲の立場の人々からも出てくるなど立場の違いを超えて広く沸き起こりました。世論調査でも改定反対が急速にふえて、今や相次いで過半数となっているのであります。

 なぜか。これは単なる手続論ではないからです。審査会でも述べたとおり、主権者である国民が、その人権を保障するために憲法によって国家権力を縛る、そのために、改憲発議の要件も、時の権力者が都合のいいように簡単に憲法を変えることができないようにされているのであります。憲法改正の発議要件を緩和し一般の法律並みにしてしまうことは立憲主義を根底から否定するものだ、主権者国民自身が、そのことを今、声を大にして上げているのです。

 自民党の古賀誠元幹事長が我が党のしんぶん赤旗のインタビューに応じ、九十六条改定は絶対にやるべきでないと強く反対の意を表明されたことが大きく注目されています。古賀氏は、憲法は我が国の最高法規、他の法規を扱う基準と違うのは当然と強調し、平和主義、主権在民、基本的人権という崇高な精神は尊重しなければならない、中でも平和主義は世界遺産に匹敵すると評価しています。戦争を知る世代の重い言葉として、感銘を持って受けとめられています。

 五月二十三日には、憲法や政治などの有力な研究者が発起人となって九十六条の会も発足し、宗教者の間でも、仏教、キリスト教など宗派、教派を超えて共同が広がっています。九十六条改定反対、九条を守れの署名も数十万規模で集められています。我が党は、九十六条改定反対の一点で一致する全ての政党、団体、個人との共同を広げ、国民的な力でこのたくらみを断念に追い込むため、力を尽くすものであります。

 今国会での八回にわたる日本国憲法の検証に、我が党は、現行憲法の諸原則に照らして現実がどうなっているかを徹底的に検証する立場で臨んできました。これに対して、改憲を唱える政党や委員からは、憲法制定後一度も変えていない、時代に合わなくなっているなどと、条章ごとに繰り返し改憲の主張が述べられました。

 そうした中で、都議選、参議院選を目前にした今、国民の世論はどうか。例えばNHKが発表した直近の世論調査でも、憲法を改正する必要があると思うが二七%に対し、必要ないは三一%、どちらとも言えないが三四%で、三分の二が必要とは言っていないわけであります。

 従来、抽象的に改憲に賛成か反対かを問えば、賛成が反対を上回ることはありましたが、それが今や逆転しています。国会で具体的に改憲が声高に主張されればされるほど、国民は改憲の必要なしとの意思表示をしているのであります。

 憲法検証の中で繰り返し強調してきたように、日本国憲法の先駆性は、九条はもちろんですが、生存権を定めた二十五条、幸福追求権をうたう十三条を初め、憲法は三十条にわたって、世界でも先駆的で豊かな人権条項を持っています。憲法が時代に合わないのではなく、憲法のこうした先駆的原則を踏みにじり続けてきた歴代政権の政治こそ時代おくれになっているのです。この憲法を守り抜くとともに現実の政治に生かすことこそが国民的な要請なのであります。

 本審査会では、北朝鮮や中国との関係を考えても憲法の改定が必要という主張も出されました。しかし、北朝鮮の問題にしても、中国との領土問題などにしても、何よりも求められているのは、道理に立った外交交渉によって解決を図ることであります。

 北朝鮮問題の解決に当たっては、核、ミサイル、拉致、過去の清算などの両国間の諸懸案を日朝平壌宣言に基づき包括的に解決すること、六カ国協議を再開し、その枠組みを地域の安定と平和の機構にしていくことが必要です。

 尖閣諸島周辺の日本領海内での中国の監視船の航行や航空機による領空侵犯は許されません。力によって日本の実効支配を脅かす動きは国際法上認められない行為です。この問題では、日中双方が、領土にかかわる紛争問題の存在を認め、冷静な外交交渉による解決を図るとともに、現状を変更する物理的対応、軍事的対応を厳しく自制し、両国の経済関係、人的、文化的交流に影響を与えないよう努力を図ることであります。

 専ら力対力の立場からこれらの問題を軍事力の強化、軍事同盟強化、憲法九条改悪に利用するというのは、日本国民を危険にさらす最悪な姿勢だと言わなければなりません。

 紛争を戦争にしない、紛争の対話による解決は、今、世界が真剣に取り組んでいる課題です。東南アジア諸国連合、ASEANの国々では、軍事に頼らない平和的安全保障の考え方を取り入れ、それを実践しています。このASEAN方式を北東アジアにも広げようというのが、我が党の提案です。

 その際、最も力強いよりどころとなるのが憲法九条です。九条改憲反対の世論は多数であり、九条の会は全国に七千五百もつくられています。九条を生かした平和外交でこそ、アジアと世界の平和に貢献する日本にできると確信するものであります。

 国民は今改憲を望んでおりません。本審査会での国民からかけ離れた改憲の議論はきっぱりやめるべきであります。我が党は、憲法の前文も含む全条項を厳格に守り、憲法の平和、人権、民主主義の諸原則を国政の各分野に生かす、この立場で全力を挙げるものです。

 以上、意見表明とします。

保利会長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党の鈴木克昌です。

 本日は、憲法の基本的な考え方について意見表明をさせていただきます。

 まず、憲法の本質であります。

 まず、憲法とは何か、何のために存在するか。憲法とは、私たち国民がより幸せに、より安全に生活するためにみんなで定めた共同体のルールであります。したがって、憲法は、まず、国民生活の安定と向上のためにあるのでなければなりません。

 国民の一人一人が、社会の中で、他の共同体のメンバーと協力し合いながら、自由に自分の人生を生きていけるようにする、これが基本的人権の尊重ということであります。そして、この基本的人権の尊重を貫徹するためには、共同体のルールとして、国家を運営するための組織と権限、すなわち国家権力に対し、しっかりとした制限を設けておかなければなりません。憲法は国家権力を縛り、国家権力は憲法の定める範囲内でのみ行使することができる、これが立憲主義の考え方であります。

 基本的人権の尊重と立憲主義は憲法にかかわる全ての者にとって基本中の基本ともいうべき事柄ですが、昨今の憲法議論を拝見する中で、あえて強調させていただきました。

 続いて、生活の党の基本的な考え方であります。

 我が党では、こうした基本的人権の尊重と立憲主義という基本をきちんと押さえた上で、将来の日本の国家像をしっかりと思い描きながら、党内で冷静に、理性的に憲法議論を行っております。そして、この議論をもとに、党として「憲法についての考え方」をまとめ、去る五月九日に発表いたしました。

 この「憲法についての考え方」では、一つ、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、国際協調という憲法の四大原則は、現在においても守るべき普遍的価値であり、引き続き堅持すること。二つ、国民主権から発する諸原理の安易な改正を認めないという憲法の趣旨から、現行の改正手続規定は堅持する。そして三つ目として、憲法の基本理念、原理を堅持した上で、時代の要請を踏まえ、国連の平和活動、国会、内閣、司法、国と地方、緊急事態の関係で一部見直し、加憲すること。以上の三点を基本的な考え方としています。

 順次、御説明申し上げます。

 憲法の四大原則の堅持であります。

 まず、日本憲法の理念、基本原則とは、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、国際協調、この四つであります。この四つの理念は、まさに人類普遍の価値であって、いかに時代が変わろうとも変えてはならない理念であります。これを否定するような改正は憲法の否定であり、到底認められるものではありません。この四原則は今後とも堅持していくべきであります。

 憲法改正手続の堅持についてであります。

 憲法九十六条の改正手続規定について申し上げます。この条項は、憲法の硬性憲法としての性格を位置づける条項ですが、これは、先ほど申し上げた憲法の四原則の堅持との関係でも重要な意味があります。これらの理念は、人類普遍の価値であり、改正できないはずの条項ですが、改正手続が緩やかになってしまうと、これを否定するような憲法改正が形の上では容易になってしまいます。私たちは、これを許容することはできません。現行九十六条はあくまで堅持すべきであります。

 一方で、加憲すべき項目もございます。時代の要請を踏まえ、現行憲法には、見直し、足らざるを補うべき部分もあると考えます。

 第一に、国際社会の平和の重要性がますます増していく中で、国際平和のために我が国が積極的に貢献していくため、国連の平和活動に自衛隊が参加する根拠となる規定や、国連の平和維持活動への参加に際しては、実力行使を含むあらゆる手段を通じて世界平和のために積極的に貢献する旨の規定が必要であります。

 第二は、統治機構の問題です。特に、ここ数年、政治の混迷、決められない政治と言われる事態が生じた原因は、突き詰めれば、やはり現行の二院制に内包された問題ではないかと思われます。そのほかにも、司法制度、国と地方の関係のあり方など、統治機構には数多くの改善すべき点があります。

 第三に、緊急事態の関係です。現行憲法には、緊急事態に対処するための規定がありません。緊急事態に際しては、政府による超法規的措置に頼るのではなく、あらかじめ緊急事態宣言の根拠規定を設けておき、立憲主義の枠内で対処できるようにしておくべきです。

 最後に、もう一度申し上げます。

 憲法とは、私たち国民がより幸せに、より安全に生活するためにみんなで定めた共同体のルールであります。みんなで定めたルールでありますから、必要なら変えればいいし、必要がなければ変えなくてよいのです。

 昨今の憲法論議を伺っておりますと、何やら、現在の我が国を覆うこの閉塞感の諸悪の根源が憲法であるかというような、憲法を変えれば全てうまくいくのだとか、果ては、憲法をどんどん変えやすくするために改正要件を緩和しようだとか、極めて情緒的な議論が横行しているようであります。しかし、憲法は共同体のルールであり、必要なら変える、そうでないなら変えない、それだけであります。

 現在の我が国が直面する数々の問題を解決するために憲法のどこを改正する必要があるのか、また、将来の日本国のために憲法はどうあるべきなのか。今こそ冷静で理性的な議論が求められていることを指摘して、意見表明といたします。

 ありがとうございました。

保利会長 これにて各会派を代表する委員の発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

保利会長 次に、委員各位による自由討議に入ります。

 この際、委員各位に申し上げます。

 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。発言が終わりましたら、ネームプレートはもとへ戻していただきますようにお願いいたします。

 この自由討議におきましては、委員の発言後に会長において、適宜、関連発言の有無を確認いたしますので、その際、関連の発言を希望される方は、ネームプレートを立て、あわせて挙手をお願い申し上げます。

 発言は自席から着席のままで結構です。また、発言の際には、所属会派及び氏名を述べていただくようにお願いいたします。

 なお、幹事会の協議により、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。委員各位の御協力をお願いいたします。

 ブザーで、終了時間一分前と終了時にお知らせをいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

船田委員 自民党の船田でございます。

 この我々の憲法審査会は、去る三月十四日から、第一章から四章までの検証のレビューを行いました。四月四日から、第五章以下、各章ごとの検証を行いました。最後に、憲法前文、そして非常事態に関する考え方の議論をいたしました。最近では、三つの宿題についての議論もいたしました。ほぼ毎週の審議を行ってきましたが、委員の皆様の御協力に私からも改めて感謝を申し上げる次第であります。大変真摯で極めて熱心な議論が展開されたことを大変高く評価しておりまして、議論が深まってきたなという印象を強く受けました。

 今後何をすべきかということでは、まず、私は、やはり三つの宿題についてはできるだけ早く処理をする必要があると思っております。維新の皆様からも改正案が出ているわけでありますが、付託されておりませんけれども、これは注目をしなければいけないことと思っております。

 十八歳の投票権年齢につきましては、公選法、民法の改正と同時に行われることが望ましいのでありますが、やはり民法改正には、そのための条件、例えば憲法教育や消費者教育などが充実する、そういう条件が整うまでにはなお時間がかかるわけでありますので、国民投票について十八歳に下げるということを先行することはやむを得ないことと思います。

 公務員の国民投票運動につきましては、特定の政治目的あるいは地位利用に当たらない意見表明、勧誘までは認めたい、認めるというつもりでございますが、国家公務員と地方公務員でずれが生じております。これを整えるには、なお、政治的行為の規制全般にかかわる問題でもございますので、今後の検討課題とせざるを得ないと思っております。

 一般的あるいは諮問的国民投票制度につきましても、制度設計に相当な時間がかかると思いますので、中期的な課題とせざるを得ないと考えております。

 この三つの宿題が解決をする後には、いよいよ憲法改正原案を作成していくという作業にかかっていくことになると思います。その前提として、私は四点ほど指摘をしておきたいと思います。

 一つは、各党がどこをどう改正するのか、あるいは改正をしないのか、具体的に条文で示していただきたいということが一つであります。

 次に、原案の協議につきましては、やはり、幹事会でその素案をまとめ、そして審査会で審査をしていく、場合によっては参議院との合同審査も順次行っていくということが必要であろうと思います。

 また、三つ目には、改正につきましては、先ほど中谷幹事からもお話がありましたように、何回かに分けて行う必要が出てきます。その場合、合意のできたところから順次発議をしていくということになると思いますが、ここで注意をしなければいけないことは、一部改正が実現したとしても、それが全体のバランスを崩すということにならないように細心の注意が必要である、このように思っております。

 最後に、九十六条、発議要件の緩和についてでありますが、この点につきましては、緩和をすべきであるという考え方でありますが、なお十分な国民のコンセンサスを得る必要があると思っております。したがいまして、九十六条につきましては、先行、単独ではなくて、他の改正案とあわせて審議をし、そして国民に問いかける、このような姿勢が重要ではないかと思っております。

 以上でございます。

    〔会長退席、武正会長代理着席〕

土屋(正)委員 まず、憲法を改正した方がいいと思う理由を申し上げます。

 この憲法が成立をした時代には、例えば、原爆、原子爆弾はアメリカしか持っておりませんでした。今は、想定される国だけでも八カ国、九カ国に上るわけであります。北朝鮮のような極めて全体主義的体制の強い国であっても核実験を行っている、こういう時代になったわけであります。当然、当時は、その運搬手段であるミサイルもありませんでした。

 また、それぞれの国における社会の管理といったようなものは比較的単純で、今のような、いわゆるICTと言われるようなものが高度に発達をして、それによって管理をするというような状況にはなっておりませんでした。今は、サイバー攻撃という言葉が普通に言われるような、そのような社会の本質的変化というものがあるわけであります。

 このように、現憲法を制定したときとは全く、安全保障の観点や社会のあり方、あるいはさまざまな国家間の往来、こういったことが根本的に変わってきているわけでありますので、私は、これらを反映して、いずれの党も、どのような憲法が必要なのか、足らざるは何なのか、あるいは改正すべきことは何なのかを、この際、きちっと向き合っていく、これが憲法改正の、あるいは改正しないということも含めて、根本的な議論ではなかろうかと思います。

 それから、第二点目に申し上げたいのは、憲法論議をすると、必ず、憲法は国家権力を抑制し国民の権利を守るんだ、こういう立場のみから語られることが多いわけであります。しかし、現憲法下でも国民に義務を課している条項が幾つかあるわけであります。例えば、保護する子弟に教育を受けさせる義務、あるいは勤労の義務、あるいは納税の義務、これは憲法が国民に義務を課している具体的な条項であります。

 ですから、国民に義務を課すのは憲法ではないというような意見は、現憲法も否定していることになる、このように思います。何を国民の義務とするかはこれから論議をいたしましょう、そういうことを申し上げているわけであります。今までの三つでいいのか、あるいはもう少し幅広くした方がいいのかという、こういうことを申し上げているわけであります。

 それから、憲法というのは一般に使われているわけでありますが、広く外国で使われている言葉の中に基本法という表現があります。例えば、現在のドイツの以前の、いわゆる西独の憲法に当たるものはボン基本法と呼ばれたわけであります。

 この基本法という言葉の中に示されるように、いわゆる権力から国民を守り人権を尊重するというだけではなくて、基本法である以上、統治のあり方に関する根本的な仕組みが明示されているわけであります。議院内閣制にするのか、大統領制にするのか、その選挙方法はどうなのか、地方自治のあり方はどうするのか、あるいは司法のあり方はどうなのかというような国家の統治機構が明示をされているわけであります。

 したがって、大きくいって、権力の抑制を図り国民の人権を守るという側面、それから国民に国家の形成者として必要な負担をしてもらうという義務を記した部分、そして国家の統治の基本的なあり方を示す、こういう三つの要素から成り立っているのが憲法でありますから、基本法として、これからも大いにこの三つの側面から議論すべきだと存じます。

 なお、最後に、九十六条だとかそういうことばかりが先行して、一体何を自民党はやりたいのかというような批判がありますが、我々が憲法第九十六条の改正を先行させようとしたとき、自民党の中で、保利先生が、手続だけではだめだ、国民に改正手続の先にあるものは一体何なんだということは必ず問われるから、そのこともあわせてきちっとやるべきだという議論になり、そういう議論を重ねた結果、現在の自民党改正案ができたわけであります。したがって、そういうことも含めて、お互いにこれからも建設的な、前向きな憲法論議をやろうではありませんかと申し上げたいと思います。

 なお、長時間にわたる真摯な御議論に対しては、本当に勉強になりました。

 最後に会長にお願いしたいのは、今まで出された衆議院法制局の資料というのは相当立派ですから、これがまとめられて、広く誰でも手に入れられるようなお計らいをお願いできないかということをお願いいたしておきます。

    〔武正会長代理退席、会長着席〕

保利会長 ただいまの御提案については、幹事会で協議をいたしたいと存じます。

河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 二つ申し上げたいと思います。

 多くの国民が、歴史を通じて、憲法という手段をもって政府あるいは国家の権力にたがをはめてきたということを考えれば、憲法の名をかりて国民の権利を制限したり義務を課したりするというのは、今の日本にはふさわしくないと思います。

 現在の憲法でも、教育ですとか納税ですとか勤労ですとか、国民の義務と称されるものは確かにございます。しかし、それで私は十分であって、それ以上のことを、憲法改正の名をかりて国民の権利を制限するような方向に安易に行くことには断固反対を申し上げたいと思います。

 二つ目に、家族が助け合うというのは、個人的には私も賛成でございます。しかし、それは道徳であって、道徳を憲法の中に持ち込むべきではないと思います。

 何年か前に、私も肝臓を切って、おやじを、命を助けました。それは、いいことをしたと私は思っておりますけれども、いろいろな環境を考えれば、それができる人もいればできない人もいる。やれるならやるべきだという人もいればやるべきでないという環境の方もいらっしゃる。そういうことを考えれば、それは、家族が助け合うというのは、確かに私はそうあるべきだろうと思いますけれども、そうしたことを国家の最高法規である憲法の中で定義をするというのは、少し違うのではないか。

 むしろ、道徳はそれぞれ個人に任せられるべきものであって、多くの人間がそういうことを信じているならば、それはその国の多くの国民が信じる道徳になるでありましょうし、しかし、全て例外なくそうしなければいけないという道徳を憲法の中に書き込むべきではないと思います。

 以上です。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今の河野太郎議員の二点については非常に共感すると思って受けとめましたので、自民党の中でもいろいろ議論があるんだなということを改めて感じました。

 土屋委員に、改めて僕も反論する必要なしということを今思ったので、その辺は省きます。

 その上で、船田幹事から、憲法調査特別委員会のときにも、区切りで必ずそういう今後についての話があって、そういうやり方で路線を引こうということでやられたので、今度もまたそういう提起かなと思って聞いたんですが、いきなり今後どうするかということを、平場でこういう形でやられるというのは、非常に私は遺憾であるというふうに思います。

 きょうは、これまでやってきたことを踏まえて、つまり、どうだったかというのをそれぞれ述べているわけで、それを踏まえて、やはり本来ならば幹事会の場で、今後の進め方をどうするかということを、各党各会派の意見も踏まえてやるべきであって、フライングだと率直に私は申し上げたい。

 一つ申し上げたいと思うのは、十八歳選挙権を初めとする三つの宿題の問題がありましたが、私も前回申し上げましたが、これは前回の議論でも明確に申し上げたように、我が党としては、この手続法自身は、経過から見ても廃止が筋だと。つまり、公選法や民法の規定を変えることが大前提ということで、最低限の条件ということで、三年間で結論を出すからということで手続法を強行したのが経過でありまして、前提と条件が崩れている中で、手続法は廃止するのが筋だということを明確に申し上げております。それについては、そういう立場であるということを改めて申し上げたい。

 十八歳選挙権と民法の成年年齢については、この手続法とかかわりなく十八歳にすべきというのはかねてより申し上げているとおりです。

 それから、その後にということで、憲法の原案作成をここでやっていく作業をやるというのも、これも本当に唐突な話で、少なくとも、先ほど私申し上げたように、国民との関係はどうなのか、いろいろなことを含めて、各党各会派の議論も吟味して、幹事会でまず議論すべきであると思いますし、私が先ほど冒頭の発言で申し上げたとおり、国民が今改憲を具体的に望んでいないということですので、この審査会での改憲の議論、ましてや、その原案作成の議論をここでやっていくということはやるべきでない、やめるべきだということをきっぱり申し上げておきたいと思います。

 いずれにしても、今後については幹事会の場で、会長にぜひお願いしたいんですが、この審査会をやるのかやらないのかということを含めて、きちっと議論して、またやっていただきたい。それぞれの立場があると思いますので、よろしくお願いします。

保利会長 ただいまの御意見については、また幹事会の中でいろいろ協議をさせていただきたいと思います。

 今、この審査会には具体的な法案が出ておりません。しかし、正当な手続で法案が出てきて、それが議運のさばきでこの審査会におりてきた場合には、その法案を優先的に協議しなければならないだろう、私はそんなふうに考えております。

船田委員 今、笠井委員から若干お叱りをいただいたと思います。これにつきましては、私は、この自由討議というのは、やはり制限を加えないで、自由な立場から発言をしてもよろしい、こういう取り決めでやってきたと思いますので、私、確かに与党の筆頭の幹事はやっておりますが、一国会議員としてこれまでこの議論にずっと参画をしてきました。率直な感想、その感想の一つのまとめとして、どうしてもこれは、これから先のことについても皆様にちょっとお話をして、そして今後の議論の参考にしてもらえればよろしいのかな、そういうことで発言をしたわけであります。

 もちろんこれを実際にやっていくのは、まさに幹事会あるいは審査会そのものでありますので、そういうものに私が影響を与える、与えようと思って議論しているつもりではございませんので、ぜひとも冷静にお聞きをいただきまして、また今後自由に発言のできる環境をつくってほしい、また、私もそうしたいと思っております。よろしくお願いします。

衛藤委員 自民党の衛藤征士郎です。

 河野太郎委員がおるときに発言したかったんですけれども。

 私ども自民党は、憲法に家族を守る義務というものを書き込むという方向なんですね。河野太郎議員は、そういったことを書くことは、何か憲法が国民を押さえつけるとか、あるいは憲法が国民を拘束するとか縛るとか、そういうような観念が非常に強いんじゃないかと思うんですが、憲法というのはそういうものじゃなくて、国民を救済する、国民を守るのが憲法そのものであって、感じ方がちょっと違うのではないかな、私はこう思っていますので、あえて発言しておきたいと思います。

西野委員 維新の会の西野弘一です。

 まさに私も今の衛藤先生と同感でございまして、私も憲法に家族を守るとか家族という価値観をしっかりと書き込むべきだと思っています。

 これは、例えば婚姻制度であったり、家族を大事にするといった、こういった価値観は国民の普遍的なものでありまして、それを国家権力によって、例えば夫婦別姓のような法律ができたりして、こういう日本の家族という価値観を根底から覆すような法律を国家権力がつくらないように、むしろ、国に対して、家族という価値観をしっかり守れという意味で、書き込むということは大事なのではないかと思っております。

土屋(正)委員 今まで議論された中に、それぞれの国民が生きる価値観のようなものといわゆる憲法との緊張関係が議論されているわけであります。

 前に、各国の憲法を衆議院法制局に調べていただいたときに、前文が書かれたのが、その時点で調べられた範囲の中で五十九、そして、その前文の中に神に言及したのが二十ありました。イスラム共和国などはみんなそのような形をとっております。キリスト教国もそうであります。

 さらに、中国の憲法の前文のように、孫文、毛沢東、マルクス・レーニン、こういう個人名まで入れて記された憲法もあるわけであります。国の成り立ちを担うそれぞれの歴史なり価値観が反映されている憲法が多いわけであります。

 さらに、一神教の国々と我が国との違いというものが、私たちの心理やあるいは法意識の背景にあるだろうと思います。宗教法があり、いわゆる宗教裁判所まであって、それに従って生きていく、その上で世俗の憲法がある、こういう国と我々のような国とは成り立ちが違うわけですから、どこまで共通の、国民が合意できる価値観を書き込むかということは、別に憲法上何ら否定されるべきものではないと思います。どういう価値観を書き込むかということについては、種々議論をしていけばいいというふうに思います。

 つまり、私が申し上げたいのは、律法のある国、ラビのいる国、そして宗教裁判所がある国と日本国の違いといったようなものがあるのではないでしょうか。そのことを法意識の前提として申し上げたいと思います。

保利会長 ほかに御意見ございますか。しばらく待ちますから、どうぞ御意見のある方、手を挙げていただきたいと思います。

 それでは、他に発言がないようでございますので、以上で自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることといたしますが、会期末も迫っていることでございます。会期末には、会期末処理ということでお集まりをいただくことがあろうかと思いますので、お含みおき願いたいと思います。

 次回は、公報をもってお知らせすることといたしまして、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時八分散会


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