衆議院

メインへスキップ



第3号 平成26年4月22日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十六年四月二十二日(火曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   会長 保利 耕輔君

   幹事 齋藤  健君 幹事 中谷  元君

   幹事 平井たくや君 幹事 平沢 勝栄君

   幹事 船田  元君 幹事 武正 公一君

   幹事 馬場 伸幸君 幹事 北側 一雄君

      安藤  裕君    泉原 保二君

      上杉 光弘君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      菅野さちこ君    城内  実君

      河野 太郎君    佐藤  勉君

      鈴木 馨祐君    田中 和徳君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      土屋 正忠君    中谷 真一君

      西村 明宏君    野田  毅君

      馳   浩君    鳩山 邦夫君

      原田 憲治君    福井  照君

      星野 剛士君    松本 洋平君

      武藤 容治君    保岡 興治君

      山下 貴司君   山本ともひろ君

      枝野 幸男君    津村 啓介君

      中根 康浩君    長島 昭久君

      長妻  昭君    古本伸一郎君

      伊東 信久君    坂本祐之輔君

      西野 弘一君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    斉藤 鉄夫君

      三谷 英弘君    畠中 光成君

      笠井  亮君    鈴木 克昌君

    …………………………………

   参考人

   (特定非営利活動法人Rights代表理事)

   (中央大学商学部特任准教授)           高橋 亮平君

   参考人

   (一般社団法人リビジョン代表理事)

   (ティーンズライツムーブメント発起人)      斎木 陽平君

   参考人

   (日本大学法学部教授)  百地  章君

   参考人

   (弁護士)

   (元自由法曹団幹事長)  田中  隆君

   衆議院憲法審査会事務局長 阿部 優子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     中谷 真一君

  田中 和徳君     星野 剛士君

  棚橋 泰文君     田中 英之君

  土屋 正忠君     小田原 潔君

  山本ともひろ君    菅野さちこ君

  古本伸一郎君     中根 康浩君

  細野 豪志君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     土屋 正忠君

  菅野さちこ君     山本ともひろ君

  田中 英之君     安藤  裕君

  中谷 真一君     大塚 高司君

  星野 剛士君     田中 和徳君

  津村 啓介君     細野 豪志君

  中根 康浩君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     棚橋 泰文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(船田元君外七名提出、衆法第一四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

保利会長 これより会議を開きます。

 船田元君外七名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として特定非営利活動法人Rights代表理事・中央大学商学部特任准教授高橋亮平君、一般社団法人リビジョン代表理事・ティーンズライツムーブメント発起人斎木陽平君、日本大学法学部教授百地章君及び弁護士・元自由法曹団幹事長田中隆君に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、高橋参考人、斎木参考人、百地参考人、田中参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度会長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、まず高橋参考人、お願いいたします。

高橋参考人 それでは、ただいまより、特定非営利活動法人Rights代表理事並びに中央大学商学部特任准教授の高橋よりお話をさせていただきたいというふうに思います。

 本日お話をさせていただきます、まず第一点目につきましては、本改正案と確認書の位置づけについてお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 今般の改正案では、現行法の附則三条、この中に、「この法律が施行されるまでの間」というふうに明記をされておりましたけれども、この文面が、「この法律の施行後速やかに、」と改められました。現行法制定後七年近くが経過しながら法制上の措置が講じられず、改正案で新たな期限を定めなかったことは極めて残念だというふうに思っております。

 しかし一方で、この改正案と同時に八党で確認書が結ばれておりまして、この確認書の中で、選挙権年齢につきましては、改正法施行後二年以内に十八歳に引き下げることを目指し、各党間でプロジェクトチームを設置すると合意されております。

 しかしながら、残念なことに、この改正案の提案理由の説明の中で、「改めて、改正法の施行後速やかに、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずるものとする旨の検討条項を改正法附則に規定」としか述べられておりません。

 今般の改正案というのは、先ほど御紹介をした確認書を交わした政党の議員によって提出をされており、時期的なことから考えても、改正案と確認書は一体として、投票権、そして選挙権年齢の二年以内の引き下げを約束したものと位置づけられているのではないかと私たちは考えております。既に、先日の本審査会の中でも、こういった議員からの質疑、それから答弁等もされていますけれども、こういった内容に即しまして、二年後に確実に選挙権の年齢が十八歳に引き下げられるということを期待しているところでございます。

 二点目、投票権、そして選挙権年齢引き下げの背景についてお話をさせていただきたいと思っております。

 一つ目は、既に皆様御承知かと思いますけれども、十八歳選挙権というのは、既に国際標準になっているということでございます。

 既に、世界の八〇%以上、九〇%近くの国々、さらに、G8の中では、日本以外の全ての国が十八歳から選挙権を認めております。OECD三十四カ国の中でも、十八歳に選挙権を与えていないのは日本と韓国だけでございます。その韓国も、二〇〇五年の時点で選挙権を十九歳まで引き下げています。このことから考えても、日本の二十歳からの選挙権というのが国際標準から少しおくれている感があるというふうに私どもは考えております。

 次に、こうした選挙権十八歳から、欧州におきましては、さらに十六歳へ引き下げるという動きが起こっております。

 その象徴的なものが、二〇〇七年に引き下げられたオーストリアでございます。オーストリアでは、地方選挙を初め国政選挙においても、選挙権の年齢を二〇〇七年に十六歳に引き下げております。このオーストリアを初めドイツ、スイス、ノルウェーといった国々では、国政選挙ではまだ十六歳までの引き下げには至っておりませんけれども、特定の州、そして市町村等の選挙で選挙権年齢を十六歳に引き下げを行っているほか、英国、スウェーデン、デンマークといった国々でも、この選挙権の年齢を十六歳へさらに引き下げようという議論が起こっております。

 国際社会の中で、既に十八歳選挙権というのが標準なんだというお話をさせていただきましたけれども、EUでは既に十八歳から十六歳へとスタンダードが変わろうとしている、こういう状況であることを、本会の議員の皆様には御認識いただきたいというふうに考えております。

 また、引き下げにおきましては、実際に投票年齢、選挙権年齢を引き下げた際に、十代の若い人たちの政治判断能力等、また低投票率などが言われる中で、若い人の投票率はどうなるんだ、こういった御心配もあろうかと思います。そこで、先んじて十六歳まで引き下げているEU諸国での事例を御紹介させていただきたいと思います。

 十六歳、十七歳に選挙権が保障されているドイツ、オーストリア、ノルウェーでは、十六歳、十七歳の投票率が、十八歳、十九歳のそれを大きく上回っております。さらに、十代全体の投票率も、二十代前半の投票率を上回るという傾向がございます。

 例えば、二〇一一年、ドイツ・ブレーメン州議会の選挙では、十六歳から二十歳の投票率が四八・六%でございました。これに対して、二十一歳から二十五歳の投票率が三九・八%であり、十代の投票率はこれを大きく上回っていることが見てとれるというふうに認識をしています。

 必ずしも、こういったEUの数字がそのまま直接日本の状況に当てはまるというものではないかとも思います。しかしながら、日本におきましても、二十の投票率は二十代の前半の投票率より上回っていることなどを考えても、引き下げを行った場合、こういった二十代前半の投票率よりも十代の投票率が上がるということは、国内においても大きく可能性があるのではないかというふうに考えております。

 次に、成長戦略としての若者の参加についてお話をさせていただきたいと思います。

 選挙権というと、これまで、どちらかといえば、権利を拡大する、こういった側面で議論されることが多くございました。しかし一方で、昨今、成長戦略としてダイバーシティー、多様性が必要だと言われるようになり、特に女性や若者の力を活用していくことは大きな政策課題になっております。

 こうした政策課題が語られる際には、経済について話されることが多いわけでございますけれども、経済だけでなく、政治においても若者を積極的に活用していくことが求められるのではないかと考えております。

 こうした中で、今回肩書として提示をしているNPO法人Rightsでの活動ではございませんが、私自身、有識者と共同で、市町村議会などの選挙について選挙権や被選挙権年齢を市町村ごとに独自に設定できる、こうした若者の政治参加を通じた地域活性化に係る特区というのを国家戦略特区に提案させていただきました。

 この提案をさせていただきましたのは、当時任意団体だった万年野党という団体でございまして、会長をジャーナリストの田原総一朗氏、それから、当時はジャーナリストの磯山友幸氏、こういったメンバーともども、こういった提案をさせていただきました。

 この若者の政治参加を通じた地域活性化に係る特区につきましては、国家戦略特区ワーキンググループの中でも、ヒアリングの中で非常に高い評価を得たというふうに聞いております。

 十八歳選挙権におきましては、世代間格差を是正し、少子高齢化社会の担い手として若者が参加する仕組みを整える一環として重要な役割を果たすと認識をしており、これをしっかりと二年後に実施していただきたい、このように考えているところでございます。

 最後に、投票権、選挙権年齢と成年年齢の関係についてお話をさせていただきたいと思います。

 今般議論されている国民投票における投票権そして選挙権の年齢引き下げの問題と、成年年齢の問題を同時に議論される機会が多くございました。

 今回の改正案の中では、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案、こうした文句が追加されました。

 私たちは、現行法制定の際にも、公職選挙法上の選挙権の年齢と国民投票法にある投票権の年齢が一致することが望ましい、しかし、民法には民法の、少年法には少年法の立法目的があり、それゆえ、私どもは、国民投票法の投票年齢と選挙権年齢を一体とし、少年法といった他の法令、成人年齢については必ずしも一致する必要はないというふうに意見陳述をさせていただいたところでございます。

 改めて、私たちは、投票行為を伴う投票権年齢と選挙権年齢は速やかに十八歳に引き下げ、民法の成年年齢につきましては、選挙権年齢引き下げ後に期限を決めて引き下げをするように求めるところでございます。

 改めて、繰り返しになりますけれども、本日、意見陳述としてお話をさせていただきましたのは、改正法と確認書の位置づけについて、そして投票権、選挙権年齢引き下げの背景、国際状況について、さらには国民投票法の投票権、選挙権年齢、その二つと成年年齢の関係性について、お話をさせていただいたところでございます。

 以上でございます。(拍手)

保利会長 ありがとうございました。

 次に、斎木参考人、お願いいたします。

斎木参考人 一般社団法人リビジョン代表理事の斎木陽平と申します。

 ティーンズライツムーブメントという、十八歳選挙権の実現運動の発起人をしております。現在は慶応義塾大学の大学院の修士課程に在籍しておりまして、現在二十二歳ということで、非常に若輩者にこのような貴重な意見陳述の機会をいただきましたことを本当に皆さんに心から感謝申し上げて、意見陳述を始めさせていただきたいと思います。

 まず、ティーンズライツムーブメントというのが一体どういう活動をしているのか、皆さんにもわかっていただきたいなというところで、ティーンズライツムーブメントがどのような活動を行っているかということの説明をさせていただきます。その後に、十八歳選挙権、今回は公務員の政治活動のさまざまな議論もこの改正案の中では議論されていると思うんですけれども、私はぜひ、十八歳選挙権の引き下げのところについて中心に、重点的に意見陳述をさせていただければと思っております。

 早速なんですけれども、ティーンズライツムーブメントというのはどういう活動をしておりますかと申しますと、その名のとおり、十八歳選挙権の実現を目指して、さまざまなシンポジウムやイベント、あるいは街頭での未成年の模擬投票の活動などを行っております。私たちのミッションといたしましては、若者世代の社会参画の拡大、政治教育の普及、そしてその手段としての十八歳選挙権の実現というところをミッションとして活動させていただいております。

 次の三ページ目をめくっていただきますと、これまで一般社団法人リビジョンは、まさに政治家の方々と十代の方々が交わる機会が少ないというところを非常に問題意識として持っておりまして、さらに、こういった十八歳選挙権について議論する場として、まさに国会議員の当事者である皆さんとともに、そして十代、特に高校生たちが、例えば衆議院の第一議員会館の多目的ホールであったり、参議院会館であったり、国会議員の皆様の御協力を得ながら、さまざまなシンポジウムやイベント等を開催してまいりました。この場所にもティーンズライツムーブメントのシンポジウムに参加していただいた議員の方々もいらっしゃるようで、本当にこの場をかりて感謝申し上げたいと思っております。

 今まで七回以上イベントを行っておりまして、延べ千人以上の高校生がイベントに参加してまいりました。街頭での模擬投票は、先ほど意見陳述されたNPO法人Rightsの高橋様だったり、模擬選挙推進ネットワークの方々と協力しながら、実は、昨年の参院選模擬投票におきましては一万人の十代の模擬投票、参加されたということで、さまざまな活動を行ってまいりました。

 そういった中で、私としては、高校生たち、十代と交わる中で、ぜひとも、貴重な機会の中で、十八歳選挙権がどうしても必要なんだということを皆さんにお伝えしたいなというところを思って、きょう、この場に来させていただきました。

 まず、三つの理由というところに大きく分けて考えさせていただいております。四ページ目のところになっております。

 まず第一に、やはり選挙権というのは権利ということだと思うんですね。その権利と責任というものは、まさにセットで考えなければいけないというふうに思っております。権利だけをただ与えていくのではなくて、しっかり権利が与えられているのであれば、責任もきちっとセットで議論をされていかなければならないというふうに思っております。

 その中で、権利と責任はセットだからこそ、十八歳選挙権というのは認められないんだという考え方もあると思うんですね。例えば、就職している人もまだ二割程度だったりして、納税をしていなかったりとか、社会でそういう義務、納税の義務だったりさまざまな義務を果たしていないんだから、十八歳選挙権を認めるのは早過ぎるんじゃないかという意見もあると思うんですね。

 それはまさにごもっともな意見だと思うんですけれども、現在の日本国政府の国家予算は、かなりの部分で国債に依存している部分が非常に大きいというふうに思っています。例えば、赤字国債なんかは、建設国債と違って、完全に、まさに次世代のツケというのを使って、今まさに、国家予算を、国会を運営している、予算を運営しているということだと思うんです。

 であるならば、私たちは、その赤字国債から逃れることは絶対にできないわけですね。僕は二十二歳なんですけれども、私が生きている間に、必ずそれは逃れることのできない問題として重くのしかかってくると思っております。そういった問題から私たちは逃げるつもりもありません。私たちは、将来世代として、それをしっかりと負担していきたいというふうに思っております。

 ですから、本当にこれから、まさに少子高齢化というところで、さまざまな負担が、将来世代が負担するところも大きくなってくると思うんですね。それは、人口動態が急激に変化している以上は、やはり赤字国債の発行というのはやむを得ない部分もあるかもしれないと思うんですね。だからこそ、若い世代の意見をしっかりと取り入れて、権利と責任はセットということであるならば、ぜひとも、我々はしっかりと将来にわたって赤字国債とかさまざまな形で責任を果たしてまいりたいと思っていますし、それは逃れることができないことだというふうに思っております。

 ですから、やはり十八歳選挙権というものを早期に認めていって、若い世代の意見がこの国政の場に取り入れられていくということの一つのきっかけとして、ぜひとも十八歳選挙権の早期実現を目指していただきたいというふうに思っております。

 二つ目に、若者の政治的判断能力を育てていくためにこそ、十八歳選挙権を実現してほしいというふうに思っております。

 これも、十八歳選挙権とか、十八歳に選挙権年齢を引き下げたりするということによって、さまざまな問題点、そして、その中の大きな問題点の一つに、やはり政治的判断能力が足りないんじゃないかという御意見があると思うんですね。

 私も、先ほど述べさせていただきましたとおり、さまざま高校生と活動をしていく中で、なかなか不十分な政治的な判断能力というのもあるなというのはしっかり事実として感じました。衆議院と参議院の違いがわからなかったり、議員定数を聞いてもわからなかったりする高校生たちもやはり多いんですね。ただ、そういった判断能力とか政治離れが進んでいるからこそ、ぜひとも政治教育を拡充させていかなきゃいけないというところでは、皆さんと共通見解がとれるんじゃないかなと思っております。

 これは非常に若者感覚なんですけれども、十八歳選挙権が仮に実現いたしますと、引き下げが実現いたしますと、国民投票法も含めてですけれども、これが実現しますと、高校三年生が国民投票であったりあるいは国政に参加することができるようになってくるわけですけれども、高校というインフラ、若い人たちが一番行くインフラの中で、まさに、そういった選挙とか政治の話がおりてくると思っているんですね。そういった中で、高校に政治の話題がおりてくるということが非常に重要なのではないかなというふうに私は思っております。

 さらに、高校生は親との同居率が非常に高いんですね。住民票なんかも地元にありますため、選挙に非常に行きやすいことが挙げられます。例えば、二十歳になってしまいますと、私もそうなんですけれども、地元が福岡で、大学進学とともに東京に出てきたんですけれども、やはり最初の選挙のときに住民票のこととか非常に戸惑いました。

 ですから、そういったところで、なかなかそういう手続を、僕みたいに政治に興味がある人は、住民票の手続とかをお母さんと相談しながらやったりする人たちも多いとは思うんですけれども、大半の人たちは、住民票が地元にあるというところで、面倒くさいというところで諦めてしまって、最初の投票に行かない。行かないということを経験したまま、ずるずると行かないことを繰り返してしまって、二十代の投票率が下がってくるという問題も起こっているんですね。

 ですから、高校生とか、本当に、親との同居率が非常に高いときに一度選挙を経験しておく。そして、最初の選挙に行くときに、学校がサポートをしたり、親がサポートをしたりしてやっていくということをやっていくということが非常に大事になってくるのではないかなというふうに思います。

 三つ目なんですけれども、私は、改憲派とか護憲派とかさまざまな議論が、今まさに憲法改正を含めて行われていると思うんですけれども、何が絶対的に正しいかということではないというふうに思っております。

 だからこそ、若い世代を含めた国民的関心を喚起していくことが非常に重要だと思っております。だからこそ、やはり十八歳選挙、今回の改正案でも国民投票法の投票年齢が十八歳に引き下げられたことは非常に歓迎しておりますし、ぜひとも、それが選挙権の年齢とともに引き下げられていくことを求めております。

 やはり憲法に対してさまざまな考え方がありまして、それぞれが正当性を持っているというふうに思うんですね。だからこそ議論をしっかり深めていくことが非常に重要であって、そのためにも十八歳に選挙権を引き下げていく。

 そして、やはり日本国憲法というのは、まさに国家の最高法規でもあり、私たちの自由の基礎法でもあるわけですから、その議論の中に若い世代をしっかりと取り入れていく意味でも、ぜひ十八歳選挙権を実現していただきたいというふうに思っております。

 そして、次のページをめくっていただきまして、五ページの部分では、先ほどNPO法人のRightsの高橋さんが述べられていたブレーメンの選挙であるとかドイツの数値について、実際にこれは、時間もないので省かせていただくんですけれども、オーストリアとかドイツとかノルウェーでは、こういった選挙権の引き下げが有効に機能しているということをしっかりと実証分析されて、データとしてありますので、ぜひとも御参考にしていただきたいというふうに思っております。

 そして、六ページの最後に、これで最後になるんですけれども、先ほど、成人年齢と選挙権年齢を切り離して考えるべきだという意見もあったと思うんですね。私も、その意見に非常に賛成しております。やはり成人年齢と選挙権年齢というのは、さまざまな、少年法には少年法の、民法には民法の立法目的がございます。公職選挙法には公職選挙法の立法目的というものが考え得るというふうに思っております。

 ですので、やはり民主主義ということを考えたときに、親との同居率が高い十八歳のときに投票させた方がいいんじゃないかとか、政治離れが進んでいるときにどういった打開策があるかと考えるときに、公職選挙法は公職選挙法で独自に考えていくことができるんだというふうに思っておりますので、ぜひともその点を踏まえて考えていただきたいというふうに思っております。

 そして、若い世代に皆さんの頑張っている姿を伝えていく意味でも、ぜひとも十八歳選挙権というのを実現していただきたいと思います。

 一般的に、若い世代には、政治家というのはやはりダークなイメージとかあるんですね。お金に汚いんじゃないかとか、権力を欲しているんじゃないかとか、そういうふうに思われていることが多いんですね。ですけれども、私は、今回さまざまな活動をしていく中で国会議員の方々ともお話をさせていただく中で、本当に一生懸命、国政のために、朝から晩まで、歯を食いしばって努力されている姿というのを見てきました。本当に、そういう姿に心から尊敬をしております。そういった姿を、ぜひとも若い世代に見せていってほしいなというふうに思っております。

 やはり地元の会合とかでは、なかなか若い世代が足を運びづらかったりする部分もあるとは思うんですけれども、若い人たちに、ひとつ、皆さんの実態、皆さんのありのままの姿をアクティブに見せていくような取り組みが、今後は、国民投票法が十八歳に引き下げられて、四年後には必ず十八歳以上となるということは決まっておりますから、ぜひとも皆さんとも協力しながら、皆さんのありのままの姿を若い世代に伝えていっていただきたいと思います。

 そして、各党の確認書でも、二年後に十八歳に選挙権を引き下げるためのプロジェクトチームというのが立ち上げられるということを聞いております。ぜひとも、実行していただきたいというふうに思っております。

 こうしたプロジェクトチームがしっかりと進んでいきまして、そして、そのプロジェクトチームが活動していくことを、若い世代がそのプロジェクトチームに参画していくことを私としてもお手伝いしたいと思っておりますので、ここに連絡先等々も記させていただきましたので、若い世代を使ってぜひとも十八歳選挙権の実現を、そして若い世代が参画していく社会の実現を皆さんと一緒にやらせていただければよいかなというふうに思っております。

 きょうは貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

保利会長 貴重な御意見をありがとうございました。

 次に、百地参考人、お願いいたします。

百地参考人 日本大学の百地でございます。

 本日は、憲法審査会にお招きいただき、大変光栄に存じます。

 私は、憲法改正手続法の改正案のうち、国民投票運動と公務員の組織的運動の規制の問題につきまして意見を述べさせていただきます。お手元にかなり詳しいレジュメを用意いたしましたので、ごらんいただきましたら幸いです。

 初めに、憲法改正手続法の改正と公正なルールづくりの必要性についてお話し申し上げます。

 平成十九年に憲法改正手続法が制定されましてことしで七年になりますが、いわゆる三つの宿題のうち、投票年齢及び公務員の投票運動につきましてようやく改正案がまとまろうとしています。このことは大いに歓迎したいと思います。そして、これによって、今後、憲法改正に向けた審議が加速することを期待している次第です。

 とはいうものの、三つの宿題は、附則に明記されていましたとおり、同法が施行されるまでの間に、つまり平成二十二年までに解決すべきものでした。その宿題にいつまでもこだわり、憲法改正に着手する機会が先延ばしされることになったのは大変遺憾に思います。

 この点、今回の改正案では、公務員の組織的運動の規制のあり方については、改正法の施行後速やかに検討を加え、必要な法制上の措置を講ずることになっています。したがいまして、今度こそ、速やかに公務員の組織的運動を規制するための法整備に着手していただきたいと念願しております。

 言うまでもなく、憲法改正は我が国の将来を左右する重大な国家的事業であり、その改正手続につきましては、公正な上にも公正なルールづくりが必要です。憲法改正の手続は、スポーツなどのルールづくりとは本質的に異なると思われます。なぜなら、スポーツのルールであれば、もし問題があったとしても、つくり直せばそれで済みます。しかし、憲法改正手続となりますと、失敗は許されず、もし失敗したら重大な国家的損失を招き、取り返しがつかなくなるからであります。

 この点、公務員の組織的運動の規制のあり方は、公正なルールづくりを考える上で極めて重要な意味を持つと思われます。それゆえ、予想されるさまざまな事態を十分に想定した上で、法整備を行っていただきたいと思います。

 次に、国民投票運動と公務員の組織的運動の規制についてお話し申し上げます。

 第一に、国民投票運動のあり方ですが、これにつきましては、国民投票運動は、選挙運動と異なり、原則として自由とすべきであって、制約は最小限度に抑えるべしという見解があります。その根拠は以下のとおりです。

 すなわち、一、憲法改正の国民投票は、主権者国民による主権の行使であって、選挙権の行使とは異なる。二、憲法改正は国の将来にかかわる重大な問題であり、可能な限り多くの国民が運動に参加し、自由に意見を表明すべきである。三、規制は自由な意見の表明を萎縮させる。

 しかしながら、このような見解は疑問です。

 というのは、確かに、憲法改正は、国民が直接、主権を行使する唯一の機会ですが、主権の行使といいましても、憲法制定権力の行使とは異なるからです。すなわち、新たに国家を建設する際や革命後の混乱の中で憲法制定権力という裸の権力を自由に行使し、新憲法を制定する場合と、憲法典の定めるところに従って憲法改正権を行使する場合とでは、当然、行使のあり方も異なります。

 それゆえ、憲法改正のための国民投票運動におきましては、意見表明の自由を保障するとともに、政治的混乱を回避し、国民投票運動の公正性を維持することが憲法上要請されますから、国民投票運動は原則として自由であるべきだなどといった主張は疑問です。

 また、一、二週間という短期間の選挙運動と異なり、国民投票運動は二カ月から最長半年もの長期間にわたりますから、運動を原則として自由とした場合、どのような政治的、社会的混乱が生ずるか予想がつきません。それゆえ、そのような混乱を未然に防止し、国民投票運動の公正性を維持するためには、原則として公職選挙法に準じた規制を考えるのが自然ではないでしょうか。

 さらに、一般論として言えば、規制は自由な意見の表明を萎縮させることも考えられます。しかし、地方公務員や教員らによる違法な政治活動、選挙活動が公然と行われている状態の中で、わざわざ公務員に萎縮効果を与えることとならないように配慮をなどと言えば、誤解を招くだけでなく、現在の違法な政治活動まで正当化されかねないでしょう。したがって、国民投票運動は原則として自由にすべきだなどといった意見には反対です。

 第二に、公務員の国民投票運動ですが、これにつきましても、選挙運動と憲法改正のための国民投票運動とは異なりますから、公務員にも自由な国民投票運動を認めるべきであるとする見解があります。しかしながら、これも疑問です。というのは、公務員につきましても個人としての意見表明の自由は保障されるべきですが、組織的な勧誘運動等の組織的活動については規制すべきだからです。

 まず、国民の自由な言論を保障することと、公務員や教員まで巻き込んだ国民投票運動を認めることは別問題です。というのは、憲法改正は、文字どおり、直接国の命運を左右するものであり、国民投票運動は、選挙運動と比較して、はるかに高度な政治性を有するからです。この極めて政治性の高い国民投票運動に、国家公務員法や地方公務員法で政治的行為が厳格に制限され、全体の奉仕者として行政の政治的中立性を確保すべき公務員や教員を自由に参加させるというのは、明らかに矛盾していると思います。

 また、公務員の政治的活動の制限につきましては、最高裁大法廷が昭和四十九年の猿払事件判決の中で、行政の中立的運営を確保し、国民の信頼を維持するためのもので、合憲であると判示しています。判決は、政治的行為の禁止は、意見表明そのものの制約が目的ではなく、あくまで行動のもたらす弊害を防止することにあり、その意味で、間接的、付随的制約にとどまると説明しています。

 したがって、公務員や教員にも当然、意見表明の自由は認められなければなりませんが、全体の奉仕者としての立場や公務員、教員としての地位の特殊性などに鑑み、国民投票運動のもたらす弊害を防止するため、その組織的、党派的運動に制約が加えられることは、最高裁判決に照らしても当然であると思われます。

 さらに、もし、選挙運動以上に高度な政治性を有する憲法改正のための国民投票運動に、政治的、教育的に中立であるべき公務員や教員が自由にかつ組織的に参加することになれば、行政や教育の中立性は侵害され、行政や教育に対する国民の信頼は著しく失墜することになるでしょう。

 実際、公務員や教員の組織的な国民投票運動が自由とされれば、労働組合や教職員組合等の指令のもと、全国の都道府県庁や市役所、町役場、さらには校舎に憲法改正反対の垂れ幕やポスターが氾濫したり、あるいは、県庁や市庁舎前、さらに学校の前等で公務員や教員が連日にわたって改憲阻止のビラ配りをしたりといった事態も予想されます。この場合、行政や教育に対する国民の不信感は甚だしく増大するでしょうが、それでも構わないというのでしょうか。

 第三に、憲法改正手続法改正案をめぐる諸問題についてお話し申し上げます。

 改正案では、国公法、地公法などによって禁止されている政治的行為を伴わない限り、国民投票運動、憲法改正案に賛成または反対の投票をしまたはしないよう勧誘する行為及び憲法改正に関する意見の表明をすることができるとされています。

 そこで、以下、国民投票運動及び憲法改正に関する意見の表明と政治的行為の関係、及び両者間のグレーゾーンについてどう考えるべきか、二、政治的行為の制限が国家公務員と地方公務員とでは異なることから派生してくる問題点、三、公職選挙法との比較といった諸点について考察します。

 一の国民投票運動及び憲法改正に関する意見の表明と政治的行為の関係、及び両者間のグレーゾーンについてですが、これについてはどのように考えるべきでしょうか。

 まず、公務員にも許されるのはあくまで個人的な国民投票運動及び個人的な意見の表明だけであって、組織的な投票運動は許されません。それゆえ、組織を利用した投票運動や組織の支援なしには困難と思われるような投票運動は、たとえ個人的な運動であっても禁止されるべきでしょう。

 次に、公務員による国民投票運動及び意見の表明は、国公法、地公法などによって禁止されている政治的行為を伴わない限り許されますが、この場合、許されるのは賛否の呼びかけだけなのか、それとも、憲法改正に関する意見の表明という以上、理由を述べることは許されるのでしょうか。

 この点、国民投票を呼びかけたり、憲法改正について意見を表明する以上、なぜ憲法改正に賛成か反対かについて触れてはならないというのは不自然です。その場合、国民投票運動や意見表明に関連して、結果的に特定内閣の支持や不支持にまで言及したときはどうなるのでしょうか。また、憲法改正への賛成や反対が、憲法改正を支持ないし反対する内閣や政党への支持ないし不支持と重なる可能性も十分あり得るでしょう。

 このようなグレーゾーンについては、以下のように考えるべきだと思います。

 改正案では、「政治的行為禁止規定により禁止されている他の政治的行為を伴う場合は、この限りではない。」とあります。それゆえ、たとえグレーゾーンに属するものであっても、外形的に見て政治的行為を伴うものであれば全て規制の対象とするというのが、少なくとも改正案の文言及び趣旨に合致するのではないでしょうか。

 さらに、官公庁や学校の施設を利用した宣伝活動や周辺での宣伝活動も規制の対象とすべきです。

 すなわち、規制の対象となる公務員の組織的な国民投票運動として、改正案の附則には、「組織により行われる勧誘運動、署名運動及び示威運動の公務員による企画、主宰及び指導並びにこれらに類する行為」とありますが、これ以外に、例えば官公庁や学校の施設を利用した宣伝活動、例としてのぼり、垂れ幕、ポスターの掲示や、官公庁や学校の周辺で行う宣伝活動、例としてビラ配りの企画、主宰及び指導等なども規制する必要があるのではないでしょうか。また、このようなケースについては、たとえ個人的な投票運動であっても疑問です。

 二の国家公務員と地方公務員の政治的行為の制限をめぐってですが、第一に、国家公務員法の政治の方向に影響を与える意図と憲法改正への賛否表明です。

 国家公務員は国公法及び人事院規則において政治的行為が禁止されており、同規則では、政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張しまたはこれに反対することは政治目的とされています。国民投票運動を通して憲法改正に賛成したり反対することは、この政治目的に当たると考えられます。それゆえ、一見改正案との整合性が問題となるのではないでしょうか。

 また、同規則では、このような目的で行われる署名運動の企画、指導、示威運動の企画、集会における意見の表明、国の庁舎、施設への文書の掲示、文書図画の掲示、配布、さらに旗、腕章等の製作、配布などが禁止されています。それゆえ、賛否の勧誘や意見の表明にしても、このような形態の投票運動はできないことになるでしょう。例えば、国家公務員の組合が国の庁舎や施設に憲法改正反対の文書を掲示したり、庁舎や施設の前などで反対のビラ配りをする行為、あるいは庁舎や施設にのぼりを掲げたり垂れ幕を下げる行為などは、当然、許されないと解されます。

 第二に、地方公務員法と公の投票との関係です。

 地方公務員については、公の投票において特定の事件を支持または反対する目的で行われる投票勧誘運動や署名運動の企画、主宰や庁舎、施設への文書の掲示等が禁止されていますが、憲法改正国民投票は、ここに言う公の投票に当たると考えられます。それゆえ、憲法改正を支持したり反対する目的で地方公務員が署名運動を行ったり、庁舎、施設等に文書図画を掲示したりすることは許されないでしょう。

 第三に、地方公務員についても、国家公務員と同様、禁止事項を具体的に定め、ともに罰則を設けるべきだと思います。

 つまり、公務員の組織的な国民投票運動については、現在の国家公務員法と同様、地方公務員についても禁止される行為を具体的にわかりやすく示しておく必要があるのではないかと思われます。さらに、組織的な国民投票運動については、国家公務員、地方公務員ともに罰則を設け、実効性を担保する必要があるでしょう。

 三ですが、公務員や教育者による国民投票運動での地位利用についても、公職選挙法と同様に罰則を設けるべきだと思います。

 この点、罰則不要論ないし罰則困難論もありまして、地位利用の構成要件をどうするのか、範囲等が必ずしも明確ではないし、公職選挙法には地位利用に対する罰則があるが、判例の積み重ねがないと言われます。

 しかしながら、罰則不要論、困難論は疑問でして、公務員や教育者の地位利用がもたらす大きな弊害を考えれば、たとえ判例の蓄積がなく、構成要件をどうすべきか困難な課題があるとしても、罰則を設ける必要があると思われます。

 また、公職選挙法が、公務員や教育者による地位利用、候補者を推薦、支持もしくは反対する目的で、推薦に関与、投票を周旋勧誘、刊行物を刊行、利益供与等を禁止しているのに倣って、国民投票への投票を誘導するような行為を禁止することはできないでしょうか。

 以上、時間の関係で大変駆け足になりましたが、私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

保利会長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人、お願いいたします。

田中参考人 弁護士の田中と申します。

 全国二千百名の弁護士で構成しています自由法曹団という団体で活動しておりまして、改憲手続法と言いますが、この法律が制定された当時、幹事長をしておりました。

 あの当時、自由法曹団は、例えばイタリアに調査団を派遣するなどして検討を行いまして、繰り返して意見書を発表しました。制定後もたびたび意見書を発表しています。

 本日は、昨年十月の最後の文書だけ配付いただいておりますが、意見書は自由法曹団のホームページに掲載しておりますので、御参照いただければ幸いです。

 参考人として陳述する機会を与えていただきましたので、幾つか述べさせていただきます。

 最初の問題は、制定の経過と改正の本質をめぐる問題です。

 この改憲手続法が登場したのは、明文改憲、なかんずく九条改憲のレールを敷くためでございました。九条改憲の浮上に伴って手続法が登場したこと、改憲発議の予行演習のために国会議員の三分の二以上の賛成を求めていたことなどは、このことを物語っております。

 この本質は、当時の、今もそうですが、安倍晋三首相の、憲法を頂点とした戦後レジームの脱却、任期中に改憲をやるという叫びによって白日のもとに明らかになり、国民の大きな批判を受けました。二〇〇七年五月に採決が強行されながら今日まで凍結状態であったのは、その背景にこうした国民的な批判があります。

 あれから七年、改憲国民投票は行えない状態であったにもかかわらず、改憲手続法の起動を求める国民の声は全く上がりませんでした。それどころか、集団的自衛権行使容認など、解釈改憲、立法改憲の動きが強まるもとで、どの世論調査でも改憲反対の声が大きくなっています。にもかかわらず、今凍結を解いて起動させようとするのは、再浮上してきた九条改憲のレールを敷き直して、改憲を加速しようとするものと考えざるを得ません。立法改憲が進むと、明文改憲が不要になりかねないからとの声すら聞こえます。

 一方で解釈改憲、立法改憲を推進し、他方でそれを口実に明文改憲に誘導するなどは、それ自体が立憲主義を破壊するものと言わざるを得ません。このまま進めば、凍結が解除された改憲手続法は、制定当時以上に改憲に向けた政治の道具にされることになるでしょう。憲法改正手続は、政争や政局を離れて公正中立でなければなりません。政争の具に堕した改憲手続法は、本質的に廃止されるべきと考えております。

 次に、検討、審議の中で投げかけられた課題、論点をめぐる問題です。

 憲法調査特別委員会では、国民投票のあり方をめぐるさまざまな問題、論点が検討され、海外調査や参考人陳述も頻繁に行われました。一九五〇年の公職選挙法の制定以来、投票法制をめぐってこれほど本格的な調査検討が行われたことは寡聞にして知りません。

 こうした検討を経て、公務員の国民投票運動の自由、十八歳投票権の実現、国政重要事項国民投票の検討と措置が附則で規定されました。いずれも、政治参加を押し広げようとする見地を持ったもので、それ自体は貴重な意味を持ったものでした。これらを実現、実行することを条件として、改憲手続法は成立に至ったものと言わねばなりません。

 また、附則にこそ盛り込まれませんでしたが、少数による改憲を押しとどめる最低投票率の問題、資金力によって世論を誘導する有料意見広告の規制の問題、あるいは、公務員、教職員の地位利用の禁止の限定あるいは廃止の問題等は、研究、検討が続けられた重要な問題であり、これらの問題、論点は、参議院での十八項目の附帯決議に集約されています。

 これらの課題が、改憲手続法の凍結を解除しようとする今回の改正案で適正に実現されているかどうか、厳重かつ慎重な検討が必要になります。

 第一に、公務員の国民投票運動の自由をめぐる問題。

 現行附則十一条が要求していたのは、公務員法制による政治活動禁止から国民投票運動が除外されることを法文上明確にすることでありまして、改正案百条の二の本文を挿入すれば済む問題でした。なぜ七年かかったのか、全く理解できません。

 なお、憲法改正の賛否の勧誘や意見表明は、前提となっている政治認識の表明を含まざるを得ません。したがって、ただし書きにある、他の政治的行為を伴う場合はこの限りではないを不当に拡張すれば、理由を表明したら違法だとなりかねず、国民投票運動が何もできなくなることになりかねません。法の構造自体からして、ただし書きは限定的に解釈されねばならないものであることを念のため確認しておきます。

 問題は、その附則の射程を逸脱して、公務員への規制強化が盛り込まれているところにあります。

 制定に際しては、憲法改正国民投票の重要性から、できるだけ多くの国民の国民投票運動参加を実現しようとし、裁判官、検察官等を含めた国民投票運動の自由が盛り込まれました。にもかかわらず、いかなる理由も明示されないまま、これらの公務員の自由が剥奪されることになっています。しかも、組織によって行われる勧誘運動、署名運動等の公務員による企画等に対する規制について検討と必要な措置を行う旨の新しい附則が加えられました。

 こうなると、公務員の労働組合や公務員が加わった市民団体の憲法問題へのかかわりを遮断しようとしているとしか考えられません。これが強行されれば、現行法ですら規制の対象となっていない公務員労働組合の日常的な活動に、それ自体は適法とされる国民投票運動を理由に規制や干渉が加えられることになり、憲法が保障する結社の自由との関係、労働基本権との関係でも重大な問題をはらんでいます。

 また、法案には盛り込まれていないものの、四月三日の八党による確認書の合意には、公務員や教育者の地位利用による国民投票運動を刑罰禁止することの検討が盛り込まれ、地方公務員の政治的行為の禁止を、刑罰禁止のある国家公務員と同様の規制にすることにまで触れられております。

 これらは制定時の見地の大幅な後退であり、あるいは改憲手続法に一層の規制強化を持ち込み、あるいは、この問題を契機に公務員の政治活動一般への一層の規制強化が生み出される危険性をなしといたしません。

 公務員の政治活動の自由を拡大するのが世界の趨勢であり、この国でも、二〇一二年十二月七日の堀越事件最高裁判決は、公務員の政治活動を一律禁止した猿払事件判決を実質的に変更して、政治活動の自由を拡大しています。また、昨年行われたインターネット選挙の解禁などを含めて、政治活動、選挙運動の自由が広がろうとしているのが趨勢です。

 こうしたもとで公務員の国民投票運動の規制強化を図り、政治活動規制の拡大にまで道を開こうとすることは、制定時の確認のみならず、歴史の趨勢にも逆行するものと申し上げざるを得ません。

 第二に、十八歳参政権です。

 附則が要求していたのは、施行までの三年間、すなわち、二〇一〇年五月までに十八歳投票権を実現することでした。附則三条や附帯決議の二項目は、そうとしか読めません。

 しかし、その附則や附帯決議を推進した政党が、十八歳投票権を実現する公職選挙法改正案を提出したこともなければ、十八歳投票権を国民に訴える運動を積極的に展開した事実も確認できません。

 附則も拘束性を持った法規なのです。にもかかわらず、この点で、国会はみずからが制定した法規を無視し、じゅうりんし続けたと言わざるを得ません。国会の地位低下が指摘されるもとでこんなことが発生したことについて、議会制民主主義の再生や発展を願う立場からすれば極めて残念と言わざるを得ない。ですから、自由法曹団は、義務が履行できないなら、一旦廃止をして白紙に戻した方がいいと主張し続けたのです。

 では、今回の改正案はそれに応えるものになっているか。そうは言えません。

 二〇一〇年五月までに実施されるはずだった十八歳選挙権は、新しい附則では期限が明示されないものに引き下げられています。本則では十八歳以上になっているにもかかわらず、四年間は改憲国民投票を二十歳以上で行えることになっています。

 しかも、放っておくと立法改憲が進むから、九条改憲を急いでやるというのが、どうやら政権党自民党の御意向のようです。こうなれば、現行附則で確認した十八歳投票権を後送りしたまま、九条改憲を若者たちを参加させずにやってしまおうと言っていることにもなりかねません。十八歳選挙権を後送りした改憲手続法の見切り発車は認められてはなりません。

 第三に、その余の問題です。

 最低投票率の問題や有料意見広告の問題、地位利用の限定の問題等々は、法案の審議の経過を通じて問われ続けた問題でした。これらの検討を含めて改正案がつくられているか。残念ながら、その検討がされているとは到底思えません。

 これでは、適正かつ公正な国民投票を模索しようとしたこうした課題が改正案の検討過程で一顧だにされていないと言わざるを得ず、かえって公務員の地位利用については、与党原案にあった刑罰法規が復活されようとしています。これは、制定時の検討を裏切る重大な問題をはらんでいると言わざるを得ません。

 最後に、検討と審議のあり方について一言だけ申し上げておきます。

 あのとき、調査特別委員会で行われていた調査や検討の多くは、慎重かつ公正で、真摯なものだったと評価できるものでした。私たち弁護士が全員加入する日本弁護士連合会は、何度も参考人を送って意見陳述を続けました。自由法曹団は、改憲の道具としての改憲手続法は許されないという見地をとりながらも、イタリア調査などを行って議論に参加しました。弁護士も多くのものを学びました。

 そうした質を持った議論だったから、審議に当たった議員の方々の中には、あの戦後レジーム脱却の叫びで政局にされてしまったことを無念と思われている気持ちがあったと聞きます。そのことは私たちも理解できました。

 だから、あえて申し上げます。なぜか今回は、大変急いで審議を終えられようとしているそうです。なぜ今、これほど審議を急ぎ、見ようによってはアリバイ的と言わざるを得ないような進行に終始されようとするのでしょうか。それでは到底、あのとき投げかけられた問題を解決できず、公正中立であるべき改憲手続法を一層、政局、政治の道具におとしめることにしかならないのではありませんか。そう思えてなりません。

 政治の道具という烙印が刻み込まれた改憲手続法は、本来廃止されるべきです。しかし、それができないなら、せめて、あるいは少なくとも、あのときの原点、あるいはあのときの議論に立ち戻って、慎重かつ公正な国民的な検討をしていただきたい。そのことをお願いして、陳述といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

保利会長 ありがとうございました。

 以上で各参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

保利会長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古本伸一郎君。

古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎でございます。

 まずは、当審査会において諸先生方、参考人各位がこれまで積み重ねてこられました議論が大変とうといものでありまして、今般の改正案の提出に至っているというふうに承知をいたしております。

 先般、「僕らの一歩が日本を変える。」、高校生の皆さんたちが国会議員たちと議論をする場に参加をさせていただきまして、改めて皆さんの真剣な議論をつぶさに見聞した次第であります。言うならば、皆様の一言が日本を変えると思いますので、私も簡潔に質問したいと思いますので、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

 まず、国民投票年齢は、これは十八歳に下がる、遅くとも四年後には下がる、こういうことになるんだろうと思います。いわゆる国政選挙の選挙権年齢も十八歳に下がるべきであるかどうか、それぞれの参考人、一言ずつお願いします。順番にお願いします。

高橋参考人 国民投票法とそれから選挙権が十八歳に下がることについてということでお伺いをしたと認識をしています。その点についてお答えをさせていただきます。

 私ども、この法改正……(古本委員「一言でお願いします。申しわけない」と呼ぶ)選挙権が下がることの必要性については、このことが若者の政治参加にとっては非常に大きなきっかけになるというふうに考えています。特に、政治教育との関連、または若者が社会に対して意識を持つきっかけにつながるのではないかというふうに認識をしております。

斎木参考人 私は、冒頭の意見陳述でも述べさせていただきましたとおり、十八歳選挙権、二年後に引き下げられることであったり、憲法の国民投票の投票年齢が十八歳に引き下げられることは非常に重要な意義を持つというふうに思っております。非常に賛成という立場であります。

百地参考人 私は、選挙権の年齢を下げることについてはやはり慎重であるべきであると思っております。

田中参考人 お話がありましたように、十八歳もしくはそれ以下の投票年齢は世界の趨勢です。それで各国、混乱は起こっておりません。この国の若者だけがその能力がないと思えませんので、下げることに賛成です。

古本委員 ありがとうございました。

 けさの朝日新聞朝刊、直近の世論調査だと思いますが、この問題について、依然として賛成派と反対派が拮抗しております。これは恐らく、十八歳への引き下げが国民的な議論への広がりに、当審査会では盛り上がっていますけれども、国民的な広がりになり得ない理由の一つは、成人は二十である、二十が大人であるという観念、民法上の成人年齢等々の概念を持っておられるんだろうと思います。

 もう一つは、やはり高校生の恐らく七割から八割が高校三年生にして十八歳になる、早生まれでない限り、ということを鑑みますと、高等学校の教育の現場で政治に触れる、参考人のお言葉をかりれば、直接若い世代が政治にかかわる機会がないというようなことがまずはあるんじゃなかろうかと思います。

 ずばりお伺いしますけれども、高校生の授業、中高の授業のときに、高橋さんと斎木さんにお尋ねしますが、集団的自衛権とはと社会科の先生から教わったことはありますか。あるかないか。

高橋参考人 私自身は、授業の中でそのようなことを習ったことはございません。

斎木参考人 私は、おもしろい先生だったのかわからないですけれども、集団的自衛権をやりました。

古本委員 ありがとうございます。

 今回、特定公務員ということで、裁判官や公安委員等々が列挙されているんですけれども、実は、百地参考人とは真逆の提案になるかもしれないんですが、学校の先生がこのテーマに、政治ということについて直接触れるかどうか、タブーであると言われるのか、積極的に触れるのかにより、随分変わってくると思うんです。

 高橋さんと斎木さんにお尋ねします。

 振り返れば、高等学校の授業で、三権は分立しているというような授業は恐らくあるんでしょうけれども、集団的自衛権はこういうことなんだ、自分はこう思うというところまで、学校の先生から教わりたかったかどうかだけ伺います。

高橋参考人 委員がどういった意図でそういった質問をされているのかわかりませんけれども、そういったことは積極的に、社会状況については授業の中でも説明をされていくべきではないかというふうに思っています。

 先進的な国なんかの事例を見ますと、特にドイツなんかではそうですけれども、例えば、直近の社会問題についても授業で触れて政治教育を行ったりとか、また、EU諸国やアメリカにおきましては、現職の国会議員を初めとした政治家たちが学校に来るというような場をつくっています。

 こういったことが、若い学生たちにとっても政治に関心を持つ大きなきっかけになっておりますので、日本もそういったシチズンシップ、さらにはシチズンリテラシーを養成するような教育が必要であり、私は、そういう教育を推し進めていくためにも、高等教育の意識を変えるためにも、高校生から選挙権を与えるということは大きなきっかけになり得るというふうに考えております。

 以上でございます。

斎木参考人 私は、そういった集団的自衛権とか、本当に今現在、実際に政治で話題になっていることをまさに議論して、授業で取り扱うべきだと思います。

 やはり一方的に情報を伝えるということはきちっと留意しなければならないと思うんですけれども、集団的自衛権を認めることで平和を守っていくんだという立場と、集団的自衛権を認めないことによって平和を守っていく立場、これは平和を守っていこうというところで共通の目標があって、それに違うアプローチがあるわけじゃないですか。それをしっかりと説明した上で、自分がどういうふうに考えるかということをしっかりと話すということは、私は必要なことだというふうに思っております。

古本委員 ありがとうございます。

 ちょっと生臭いテーマですから、少し御持論を開陳したいのはよくわかるんですけれども。

 要は、裁判官とか公安委員、そういう方と高校生の方が触れ合う機会があるかといったら、めったにないと思っていまして、やはり学校の先生がどこまで何をしゃべれるかというのは、物すごくこれはタッチーなテーマであると同時に、皆さんがおっしゃったところの高校というインフラを活用するかどうかということの分かれ道になっていると思っているんです。

 そういう意味で、もう少しお尋ねしたいと思うんですが、多様な意見、もっと言うと、生の政治の意見を聞く機会がなかった、政治に関心を持てと言われても、触れ合うことがないという話もありました。したがって、「僕らの一歩が日本を変える。」といったような活動に皆さんが立ち上がっておられるんだろうと思いますけれども。

 教育職公務員という属人的な切り口ではなくて、学校という、まさに高校インフラという言葉をいただきました。高等学校という場、その場ということで申し上げますと、実は、皆さんとの触れ合いの機会の一つに学校行事というものがあります。例えば、運動会、文化祭、あるいは入学式、卒業式。現状では、恐らく、委員の先生方の実感として、特定の会派が呼ばれ、特定の会派は呼ばれていないというケースがあるのではないかというのが実感なんですけれども、いや、うちの選挙区は違うというのであれば、後日、また雑談としてぜひ伺いたいと思いますけれども、現状、全国的にそうなっているような気がいたします。

 だとするならば、そういう生の政治と触れ合う機会というのは、できるだけニュートラルに学校がオープンにした方がいいのかどうかということについて、高橋さんと斎木さんに感想を求めます。

高橋参考人 私は、できるだけ政治家にオープンにした方がいいと思います。

 これはヨーロッパの学校とかでもそうですけれども、超党派という言葉をよく我々は使いますけれども、政党色を全くなくして政治の生の議論を教育に持ち込むというのはなかなか難しいことだと思います。しかし、特定の政党や会派に偏るのではなくて、さまざまな政党がフラットに教育の現場に入り込んでいくということが重要だというふうに認識をしております。

斎木参考人 私も、できるだけオープンにしていくべきだと思います。

 それは、オープンにしていくということは開かれているということですから、そこに行くか行かれないかというのは、やはり議員の方々の判断によるところだと思うんですね。それを拒絶したりするのはやはりよくないと思うんですけれども、そういうことを決して拒絶したりするわけではなくて、開いていくわけですから、その開いていくということが、それはある種、中立的。全部を呼ばなきゃいけないということよりも、きちっと中立的に開いている、それに対して、来たいと言えば来れるというような環境をつくっていくことが私は非常に大事なんじゃないかなというふうに思います。

古本委員 ありがとうございます。

 実は、文科省の初等中等教育課の方に問い合わせたところ、一般に学校は政治的中立性が求められている、学校行事に来賓として誰を呼ぶか、あるいは修学旅行に際しどのような方に協力を要請するかは、各学校や学校の設置者が適切に判断するものであるという回答をもらっているんです。恐らく、根拠法は教育基本法十四条になるんだろうと思っているんですが。

 そうしますと、ここで議論されている、教育者の判断に、つまり学校長の判断に委ねられるとなると、すぐれて学校長は、苦しい判断が求められる局面に、高等学校三年生が選挙権を有することによって日々直面するんだろうと思うんです、いろいろなおつき合いがありますので。したがって、この問題があるということを少し惹起しながら、もう一問、参りたいと思います。

 地元の会合に若者は足を運びづらいという御意見もありました。言いかえると、接点としてよくあるのが、地域の行事というものがあるんです。自治区の主催のお祭り、そういう祭礼、夏祭り、そういったところも、誰を来賓として呼ぶかということで、実は我々も、ある意味では生存本能が働く職種でありますので、生き死にがかかってお祭りに行くということもあるわけです、現実問題。そうしますと、実は、裁判官や公安委員に何か特定職種で制限をかけるというよりも、町内会長さんや自治区長さんほど政治的に中立であってもらいたいという問題を極めて実感している。多分、小規模会派を中心に、手前どもも含めて、実感しているんです。

 そういう意味では、皆さんが触れ合う機会というのは、我々、生の政治に山ほどあるんです。ところが、主催者の意思によって制限されているという事実があるとするならば、それはもっとオープンにすべきかどうか。端的にお願いします、もう一問聞きたいので。

高橋参考人 先ほど教育基本法第十四条の話が出ましたので、若干この話についてお話をさせていただきたいと思うんですけれども、教育基本法第十四条の中では、良識ある公民として必要な政治的教養を義務教育の中で養うということが位置づけられています。それぞれの教育現場で判断するということではございますけれども、こういった政治的教養をつけることも義務教育ですら担っているわけですから、その観点から考えれば、よりオープンにして、教育現場においてはさまざまな政治的な立場の人たち等と接点を持つ必要性があるのではないかというふうに考えます。

 ただ、こういった教育現場の公平性の問題と社会のさまざまな場面においての政治的中立性を保障するべきだという話は若干色合いが違うのかなというふうに思っておりまして、この部分についてはおのおのの場面によって状況は異なってくるものというふうに私は考えます。

 以上でございます。

斎木参考人 政治的中立性に基づいて学校長であるとかそういった者が判断すると書かれているので、そこをしっかりと留意して、やはり義務教育の中でそういった政治的判断能力を養うというところが教育基本法にも書かれているので、そういった努力をまさに学校長がやるべきだと思います。

古本委員 ありがとうございます。

 最後に一問。民法上の成人年齢の議論は今回の射程に入っているようで入っていないんだろうと思っています。

 さりとて、就学中の十八歳と既に就職をしている十八歳とでは社会的に自立しているかどうかというところで彼我の差があると思うんです。同じ十八歳でも、将来的には二類型あってもいいのではないかという考え方もあっていいと思うんですけれども、感想をお述べいただきたいと思います。

高橋参考人 それぞれの法律におきましては、それぞれの立法趣旨等ございますので、それに適した適合年齢というのがあるのではないかというふうに思います。

 また、十八歳といってもそれぞれ分けるということ等があってもいいんじゃないかということでございますけれども、これは今後、例えば十八歳に引き下げた後、我々はさらに十六歳まで選挙権年齢を引き下げるべきだというふうに主張しておりますけれども、例えば地域ごとに選挙権年齢を引き下げるというような、行政マターで引き下げるという意味で差をつけるということもあり得るでしょうし、場合によっては、そういった形で、例えば十六歳の選挙権については欲しい人だけに上げるとか、例えばこういうことをやっている人たちには保障するとかということも議論の余地としてはあるのかなというふうには思います。

 以上でございます。

斎木参考人 私は、十八歳の中でも就学している人と就労している人というのは分けて議論すべきだという考え方は少しどうなのかなというふうに思っておりまして、就学しているということは、確かに、働いて税金を納めているということはやっていないですけれども、やはり学んでいくということは、自分のキャリアプランとかを考えて、自分自身がやるべきことを考えてまさに就学しているわけだと思うので、その部分は分けて考える必要性はないんじゃないかなというふうに思いました。

古本委員 ありがとうございました。終わります。

保利会長 次に、大塚拓君。

大塚(拓)委員 自由民主党の大塚拓でございます。

 きょうは、お四方の参考人の皆様、御多用中差し繰りいただきまして、まことにありがとうございます。心から感謝申し上げる次第でございます。

 さて、今、国民投票法、議題になっておりますけれども、先ほど百地参考人もおっしゃっておられたように、まさに、これが稼働していないということは国民の権利を制限するものでございます。可及的速やかにこれを成立させなければならないということで、私ども自民党も、また共同提出をされている各党各会派においても努力をしているところでございます。

 その中で、幾つか議論がございます。今、古本委員からも少し最後にございましたけれども、民法の成年年齢の問題というものが議論として残っているところがございます。選挙権年齢につきましては、提出各会派、この合意文書においても、十八歳に引き下げるべき、これは速やかに引き下げるべきだということで意見の一致を見ているところでございます。恐らく、お四方、参考人の皆様もその点については御異論のないところだろうというふうに、今までのお話を聞いて思っているところでございます。

 民法について、これは関係者の間でも、意見の多少のニュアンスのばらつきというものが見られるところがございます。そして、政府の中でも、従来、総務省は、この二つ、投票権年齢と民法の成年年齢は一致をしているべきである、それは、民法上の行為能力というものと、国政あるいは国民投票に参加する能力、責任能力というものが一致をしている、こういう観点からそういうふうに主張されているわけですけれども、法務省においては、立法趣旨が異なっていることから必ずしも一致をしなくてもよいと。世界じゅうを見渡してみても、一致をしている国が多いというところに総務省は着目をし、法務省は一致をしていない国も中にはあるということに着目する、こういう状況になっているわけでございます。

 少しほかの、例えば少年法でございますとか、飲酒、喫煙といった論点もございますが、これはまさに立法趣旨が異なるということで、ちょっと今回は捨象したいと思います。また、少年法については、民法の成年とはちょっと異なる定義が少年法の中でされているということで切り分けが可能だというふうに考えておりますので、民法に絞ってお伺いをさせていただきたいと思います。

 四人の参考人の皆様にお伺いをします。

 民法の成年年齢と国民投票権の年齢、これは一致をしているべきであるかどうか。先ほど、高橋参考人は、後から民法については追いつけばいいのではないかという御発言をされておりましたので、一致をせず時間がずれてもなぜいいかという、そこら辺をお伺いさせていただきたいと思います。高橋参考人から順番にお伺いをしたいと思います。

高橋参考人 まず、ここで、海外の事例として一つ紹介をさせていただきたいと思います。ドイツの事例なんですけれども、ドイツでは、まず最初に、選挙権年齢を十八歳に引き下げました。その後に、被選挙権年齢については成人年齢に一致させるように引き下げをしました。その後の段階になって、成人年齢を十八歳に下げたんですね。そうしたところ、選挙権年齢と成人年齢が一致して、成人年齢と被選挙権年齢は一致するようにしていたので、全部十八歳に並んだというような形をとりました。

 そもそも選挙権年齢はどういった年齢に合わせることが適正なのかというふうに考えた際に、我々NPO法人Rightsとしては、選挙権というのは権利でありますので、できるだけ多く、幅広く保障するべきだろうという考えに立っています。

 こういった考えに立った際には、選挙権、投票権を行使するのに即した教育が受けられた年齢に合わせるべきではないかというのが基本的な考え方でございまして、私たちRightsとしては、先ほど申し上げましたように、教育基本法の十四条で政治的教養をつけることが義務教育に義務づけられておりますので、そういった意味では、義務教育を終了した十六歳に合わせるのが適正なのではないかというふうに考えております。

 ただ、十六歳に一気に下げるというようなことになると、現状から大分ギャップもございますので、そういった意味でいうと、現行の高校三年生の教育を受けた段階に合わせて十八歳にするのが妥当ではないかという、教育との整合性で考えております。

 一方で、成年年齢というのは、こういったものとはまた別次元で議論する必要性があるというふうに考えておりまして、今審査会にかかっております国民投票法の投票権と選挙権につきましては、投票行動という似たような状況というのもございますので、ここについては一致させて、先に十八歳に引き下げるべきではないか。

 さらには、成人年齢についても、私ども引き下げるべきだというふうには思っておりますけれども、これは一緒に引き下げるのではなくて、選挙権年齢とは別に、成人年齢については、それに適合した年齢として引き下げるべきではないかというふうに考えているものですから、段階的に切り分けてはどうかという御提案でございます。

斎木参考人 民法の年齢と選挙権年齢というものをどう考えるかといった委員の御指摘に対して、私はやはり切り離して考えるべきではないかなというふうに思っております。

 それは、本当に選挙権というのは民主主義の根本を支える基本的な権利だと思うんですね。ですから、やはり性質が異なる部分が大きくあるのではないかなというふうに思っております。民主主義というものは、本当に日本国憲法の根幹的な、三大原則になっていますけれども、その国民主権を支える基本的な重要な権利だと思うんですね。その性質上、やはり幅広く認めていくということが今の日本国憲法からも要請されていることであって、そういった選挙権年齢ということを考えると、やはり一つ一つ考えていく必要性があって、今回は、まさに国民投票法の改正案の中で、投票年齢と選挙権年齢についてまず引き下げていくという議論がなされていいんだというふうに思っています。

 もう一つは、やはり現実の社会情勢を見たときに、高校生は親との同居率が高いとか、そういったことを考えると、十八歳というものに与えることによってさまざまな効果が期待できるだろう。実際に、引き下げた国を見ていても、やはり引き下げることによって政治的関心を高めたというデータが出ているわけですから、そういったことを考えても、現実の社会情勢、そして選挙権年齢の性質という観点から見て、民法と選挙権年齢を切り分けて議論していくということは可能なのではないかなというふうに思っております。

百地参考人 この成年の問題ですが、まず大前提として、私は、民法の成年年齢と選挙権の年齢については本来一致させるべきであるというふうに考えております。歴史的にも、我が国は戦後、普通選挙制度といいますか、全ての成年男女に憲法で選挙権が認められるようになりましたけれども、その選挙権の年齢は、民法上の成年が二十歳である、これを前提として選挙権も二十歳と定められたというふうに承知しております。

 他方、この国民投票法、憲法改正手続法の議論の中でこの十八歳の投票年齢は出てきたわけです。もちろんその積極的な理由もそれなりにわかるところはありますけれども、ただ、私は、さかのぼって考えますと、そもそも自民党の原案は二十歳だったと承知しております。それがいろいろな、私に言わせると妥協の産物として十八歳になってきてしまった。もともと、そういう理論的な問題よりも現実政治の中で妥協として生まれてきたようなところがあると思っておりますので、ややいかがわしいものを感じております。ちょっと言い方は、失礼、では控えます。いかがわしいというのはカットしてください。

 それからもう一つは、この議論も余りあれかもしれませんが、最近では、いわゆる徴兵制というのは世界的にも廃止の方向によりまして志願兵制になっておりますが、かつて、徴兵制を採用している国においては、徴兵年齢が二十歳だった国が十八歳に引き下げる、そこでそれに対応して選挙権も十八歳に下げたというような例も聞いております。つまり、国を守る義務とそれから国政に参加するというのはセットであるという国際常識を踏まえていると思います。

 それから三番目、さらに、我が国においては我が国なりの成年制度というのが存在するわけでありまして、そのような伝統を無視した形で、あるいは軽視した形で、見切り発車のような形で十八歳というのはどうなのか。民法の成年というのは、やはり責任能力とか権利義務の関係とか、さまざま考慮した上での二十歳ということだと思いますから、その辺の事情を無視して、ただ見切り発車的に十八歳に移行するというのは私は疑問であります。

田中参考人 まず、考え方の問題なんですが、参政権の基準になる選挙権年齢、これと国民投票の年齢とは一致すべきだと考えます。この年齢と、主には民事的な権利能力、責任能力の基準となる民法の成人とは、基本的な立法趣旨、考え方が違うんだということをはっきりさせてよろしいと思います。その意味で、この二つが仮にある時期違った年齢によって規律されたとしても、そこまで憲法十五条が禁止しているとは考えません。

 したがって、本件では、まず、投票年齢を十八歳に下げるというのに賛成します。ただ、将来的な社会的な安定を考えたときに、成人年齢に当たるものも下げていくべきではないかという議論は十分説得力があると思います。

 ただ、その際に、民法の成人で区画されているものは必ずしも一つではありませんで、場合によっては、社会的に保護を要する部分があれば十八歳に下げないで保護を続けるような措置も、これは立法論としては考えられる余地があるかと思います。そして、社会的にはなお保護を受けている年齢であるからということを理由にして参政権の低年齢化を否定することは正しくない、こう考えております。

大塚(拓)委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が迫っておりますので、少し簡潔にお答えいただければと思います。

 今、高橋参考人からもありました、教育をされた年齢との兼ね合いで考えておるのだということでございます。そうすると、選挙あるいは国民投票というものに参加をするための教育というのを、やはり学校教育課程でしっかりやっていかなければいけない。ただし、そこに、先ほど指摘もあったように、先生個人の思想信条が持ち込まれるということについては、非常に慎重にならなければならないと思うんです。特に公立義務教育という課程であれば、生徒には先生を選ぶ権利がそもそもないということになっておるわけでございます。

 このバランスを守るために、例えば資料を配付するにしても、その配付の仕方などで特定の方向に誘導するということは十分に起き得ることです。意図するとしないとにかかわらず起き得ることでございますので、学習指導要領などで公正中立な教育の仕方というものをしっかり定めるべきではないか、このように思うわけでございますけれども、高橋参考人と斎木参考人に、ちょっと簡潔にお伺いしたいと思います。

高橋参考人 今のところで参考になるかどうかわかりませんけれども、海外の先進事例でいうと、例えばドイツなんかでは連邦の政治教育センターというものがあって、さらに、ドイツの場合は連邦政府なものですから、各州ごとにも州の政治教育センターというのがあります。この政治教育センターが、いわゆる教育現場で政治教育を扱うためのツールだったりとか、またはそういう教育プログラムだったりということを開発していったりするというふうに聞いております。

 日本が政治教育を促進させるという際には、やはりこういった政治教育の現場を支えるような、サポートする仕組みというのを充実させていく必要性はあるかなというふうに考えております。

斎木参考人 私は、そういった政治教育というものを先生たちだけに押しつけてしまうと、やはり我々の意図しない方向に向かってしまうおそれもあると思うんですね。ですので、文部科学省だったりがそういったものをサポートしたり、ガイドラインを示したり、指導要領でそういった規定をするとかということも考えられると思いますし、同時に、政治教育を行っているNPOとかさまざまな市民団体もたくさんあるわけですね。だから、そういったところがしっかりとサポートするという機運は必然的に高まってくるのではないかなというふうに思っていて、そういったところがしっかりサポートをしていければ問題は解決するのではないかなというふうに思っております。

大塚(拓)委員 ありがとうございます。

 恐らく最後の質問になろうかと思いますけれども、違法な政治活動と国民投票運動の切り分けが極めて難しいということは、本日も既に指摘のあるところでございます。萎縮しないようにしなければいけないという合意がありますけれども、それと、違法行為を抑制するということは、これも対立関係にあると思うわけです。

 きょう、田中参考人から提出された資料を拝見いたしましても、この中で、安倍晋三の絶叫とか狂奔、断罪といったような形で、まさに憲法に関する議論と政治活動というものが密接に関係しているということの証拠になっているのではないかと思うわけでございます。

 やはり、罰則なしで曖昧にすると違法行為が横行してしまうのではないか、特に国政選挙と同時になったときに非常に混乱をしてしまう、実質、同時運用が難しいということにもなるのではないかと懸念をしております。

 百地参考人と田中参考人に、簡潔にお答えいただきたいと思います。

百地参考人 この政治的の意味をめぐりましては、公職選挙法に言う政治的というのは、内閣とか政党あるいは候補者を支持するという、いわば党派性を問題としている。それに対して、私は、国民投票においては高度に政治的なものであると言いました。その政治的意味は、やや異質のものかもしれません。しかし、現実に投票を行うときに、例えば憲法改正に賛成する、あるいは反対するということは、とりもなおさず、特定の政権を支持し、あるいは政党を支持し、あるいは反対するということにつながってくるわけであります。

 したがって、そういう形で公務員が国民投票運動に組織的に参加するということになれば、やはり行政の中立性、公平性、あるいは国民の信頼を失うことになると思いますから、これは厳しく、厳しくといいますか、規制すべきであるというふうに考えております。

田中参考人 選挙と国民投票の併存の場合に、これは、同じ投票であっても対象が違うわけですから、運動も、大変ですが二つに切り分けるしかないと思います。特定の投票に賛成するか、賛成しないか。その場合に、賛成すればそれを推進している政党を間接的には支持するんですが、これは選挙運動とは切り分けるしかない。ここは、切り分けることによって公選法と国民投票法の区分は可能だと考えます。

 なお、国民投票運動を自由としておきながら、その周辺の政治活動を過度に規制する立場をとると、先ほど申し上げたように、理由が言えないことや説明ができないことになって、何もできなくなります。これは国民投票運動の自由を軸にして考えるべきで、対象が改憲投票ですから、そのことによって混乱が起こることはないと考えております。

大塚(拓)委員 終わります。ありがとうございました。

保利会長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。本日は、どうもありがとうございます。

 私、伊東信久は、日本維新の会を代表いたしまして、本日意見陳述をしてくださいました四名の参考人の皆さんに質疑をさせていただきます。その際、お時間の関係上、一つの質問に関して全ての参考人の先生にお聞きできない可能性があることを、まずは御容赦いただきたいと思います。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 さて、公務員の国民投票運動に関しまして、組織により行われる勧誘活動について、最初は、自公案ではその行為を禁止しておりました。しかし、民主党との交渉の結果、附則に盛り込まれることとなりましたが、その中身については今後検討することになっております。

 我が党では、地方公務員の政治的行為に罰則を科す法案を出しております。組織により行われる勧誘活動の禁止ということを一文入れることによって、今回の法案に関して安心が担保できると思っているんですけれども、日本維新の会の案である、地方公務員の政治的行為に罰則を科すことに関しての御意見を、まず百地参考人に、先ほどからの意見陳述の確認でも結構ですし、追加事項があれば、お答えいただければ幸いです。

百地参考人 地方公務員法では、政治行為を制限しておりますけれども、罰則がない。私は、これは非常に問題であると思っております。

 地方公務員法では政治行為をさまざまに制限しているにもかかわらず、現実には、野放しのような、違法な選挙活動とか政治活動が行われている、これはいろいろなところで報道されているとおりであります。報道は氷山の一角だろうと思っております。

 私もこの前、名護の選挙にちょっと応援に行ってきましたけれども、もういわば野放し状態で、公務員による違法な選挙活動が行われている。そういう実態を前にしたとき、やはり、これを実効性あらしめるためには、きちんと罰則を設ける必要があるのではないかというふうに私は考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 地方公務員法では、公務員の政治的行為に関して、国家公務員並みの規制はありませんし、全く罰則も科されておりません。国家公務員の人事院規則でも、国民投票に関する規定もありません。

 今回の法案で最小限度の法準備がなされるということになると思うんですけれども、地方公務員と国家公務員で、ここでちょっと矛盾というか、ギャップというか、ジレンマがございまして、地方公務員の政治的行為について、先ほどから申しておりますように、国家公務員は人事院規則で厳しく規制され、罰則が付されている、地方公務員は、禁止されているが罰則はない、あるいは全く自由となっている。

 しかしながら、国民投票法に関しましては、具体的には憲法改正案に対する賛否の勧誘という部分では、国民投票を国家公務員法、人事院規則の体系において規定していませんので、これが禁止の対象になっていなく、一方、地方公務員法においては、専ら住民投票を念頭に置いた公の投票、そういう文言があるため、形式的には国民投票運動が地方公務員には禁止されるという逆転現象がございます。

 それでは、まず田中参考人にお尋ねしたいんですけれども、公務員の政治的行為の規制に関し、国家公務員と地方公務員の規制は同様に取り扱うべき問題であると我が党は考えているんですが、田中参考人の御意見をお聞かせください。

田中参考人 恐らく、立場が全然違う側からの議論になるのかもしれません。国家公務員も地方公務員も同じように扱って、そして政治活動の自由を拡大すべきだというのがむしろ私の主張なんです。

 ですから、確かに、公務員は、地方であろうと国家であろうと、職務との関係で、職務の公正や中立を害する職務上の政治活動は禁止されるべきです。しかしながら、そうではない、私人としての行為については、これは将来の課題になりますが、むしろ同じように自由化していくべきであるというふうに考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 政治の方向に影響を与える意図での特定の政策の主張、また、反対したり、国の機関等で決定した政策の実施の妨害、こういったものが国家公務員法、人事院規則の方では禁止をされて罰則も科されている、これが地方公務員法の方では全く何にも規制されていない、自由であるということに対して、我々日本維新の会は、地方公務員の政治的中立の確保のために、地方公務員法の一部改正について提出をさせていただいているわけなんです。

 先ほど田中参考人にお聞きしたことと同様の質問になるんですけれども、国家公務員と地方公務員の規制は同様に取り扱うべきであるという我が維新の会の考えに関して、百地参考人から意見をお伺いしたいと思います。

百地参考人 先ほど一つの私の意見を申し上げましたけれども、それに補足して。

 きょうの最初の参考人意見の中でも述べましたけれども、確かに、国家公務員と地方公務員では職務の性質も違うところがあるし、あるいは範囲も違ってきます。しかしながら、他方で、最高裁の昭和四十九年の猿払事件判決は、これは特に国家公務員、地方公務員ということを、事件は確かに国家公務員でしたけれども、しかし、一般論として、行政の政治的中立性と国民の信頼の確保ということを言っているというふうに私は理解できると思います。

 したがって、地方公務員についても国家公務員についても同じように行政の中立性を維持し、国民の信頼を確保するという立場に立って考えていけば、現在、国家公務員のみがきちんと罰則を設け、詳細に制約される行為を規定しているのに対して、地方公務員法は非常に大ざっぱであるし罰則もない、したがってこれではバランスを欠いているのではないか、同じように、もうちょっと詳細に定め、罰則を定めるべきである、これが最高裁の立場であろうというふうに考えます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。よく理解させていただきました。

 それでは、時間の関係上、ちょっと次の質問に移らせていただきたいと思うんですけれども、憲法教育についてです。

 憲法教育そのものの重要性というのは共通の認識だと思うんですけれども、まずは、お二人、高橋参考人と斎木参考人にお聞きしたいんですけれども、高橋参考人、最初の意見陳述で、欧州各国での選挙権は十八歳から十六歳になっていると。

 この憲法教育なんですけれども、学校教育でないところのサポートのお話もされていたわけなんですけれども、日本国憲法制定の過程を学習指導要領に加えて、また、憲法教育について学習指導要領で定めています。学校教育においてももっと具体的に充実を図っていく必要性もあるのではないかと思っておるのですけれども、そのあたりに関して御意見はいかがでしょうか。

高橋参考人 これは私の私見になってしまうかもしれませんけれども、先ほどから言われているように、ヨーロッパでアクティブシチズンという言われ方をしますけれども、市民として、例えば社会的なことであったりとか、さまざまな地域の活動であったりとか、それは政治的な活動も含めてですけれども、そういった行動がとれるような市民に育成していくことが非常に私は政治教育において重要なのではないかというふうに思っています。

 そういった中で、例えば法律について考えるだとか、地域においても条例について考えるということでいえば、日本の法体系というのは、憲法のもとにしか法律はつくれないですし、憲法と法律のもとにしか条例はつくれないということになっていますので、そういったものを認識するということは重要だと思います。

 ただ、そういった体系的な問題と、一方で、自分の実生活にかかわっている問題からこういったことを学ぶということも重要だと思いますので、そのあたりは、育成する力について、全体を見ながらウエートをかけていくのかなというふうに認識をしています。

 以上でございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 同様の質問になるんですけれども、斎木参考人にお聞きしたいんですけれども、斎木参考人は、十八歳の選挙権そのものは、権利であるとともに責任でもあるということですね。若者の政治的判断能力を育むと。やはりそこに憲法教育という概念が入っていました。

 先ほどの、前の答弁の中にも、先生に押しつけず、文科省のサポートとかNPOのサポートというのもあるんですけれども、憲法教育についてもっと充実を図っていこうと思えば、さらに具体的に、何か御意見がございましたらお聞きしたいんです。

斎木参考人 憲法教育ということについて考えますと、やはり憲法改正というと、どうしても九条のことばかりが取り上げられがちな部分もあると思うんですけれども、新しい人権にしっかり対応していくという意味でもやはり憲法の改正というのはすごく大切なことだと、個人的な意見になるんですけれども、私は思っております。

 やはり、プライバシー権とか環境権とかそういった権利、当時は考えられなかった、一九四五年とかそのあたりには考えられないような新しい権利というのが実際に出てきているわけですよね。そのことをディスカッションしたりとかワークショップで考えたりするということは、どっちかというと余り思想によるものではなくて、身近なプライバシーのことをどう考えるとか、身近な環境権のことをどう考えるかということは、非常に先生としてもやりやすいでしょうし、逆に、受ける学生の立場からしても、自分たちの身近なことなので考えやすい。

 そういうところからまず憲法教育で始めていけば、そこまで思想が偏るとかということにはならないんじゃないかなというふうに思うので、そういうことを、ワークショップとかディスカッションとかをやってみたらいいんじゃないかなというふうに思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 年齢の引き下げということになるんですけれども、やや法的な、テクニカルなことにもなると思うんですけれども、民法の成年年齢を引き下げずに公職選挙法の選挙年齢を引き下げるということに関しては可能かどうか、それに関しての御意見を、法曹界の立場として、田中参考人にお聞きします。

田中参考人 先ほどもお話しさせていただいたんですが、民法の成人年齢と公職選挙法あるいは国民投票法の投票年齢とはやはり趣旨が違います。したがって、その二つを切り分けることはあり得て、将来的にそれを続けるのがいいとは私は思わないんですが、ある時期、選挙年齢だけが十八歳、民法の成人が二十歳で仮にあったとしても、憲法十五条に抵触するものではない、こう考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 それでは、法学者の立場、そして先生の御意見として、百地参考人に、民法の年齢を引き下げずに公職選挙法の選挙年齢を引き下げることは可能か、それと御意見をお伺いします。

百地参考人 この問題につきましては、確かに、それぞれ法律、民法にしても公職選挙法にしても、趣旨が違うのはおっしゃるとおりでありますが、しかし、そのベースになっていたのが、民法の成年というものを前提として選挙権が付与されたという、そこがスタートになっていることは間違いありません。

 また、最近の世界の国々の動向はよくわかりませんが、従来はそういう考え方が一般的であったろうというふうに私は考えております。

 そこで、これを分ける場合、私は、憲法違反かどうかという議論ではなくて、むしろ政策の問題だと思っておりまして、分けることは法理論としては可能だろうとは思います。しかし、望ましくはないと思いますし、慎重であるべきだというのが私の考え方であります。

伊東(信)委員 ありがとうございました。

 ただいま時間となりましたので、以上で終わりたいと思いますけれども、各参考人の先生方、貴重な御意見、ありがとうございました。

保利会長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、四人の参考人の方々、本当にありがとうございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、十八歳投票権年齢について、主に高橋参考人、斎木参考人にお伺いいたします。

 私どもも、選挙権、投票権ともに十八歳というふうに主張してまいりましたけれども、その議論の過程で、こういう意見もありました。選挙権というのは人を選ぶ選挙であるけれども、投票権というのは長期にわたる政策、方針を選ぶ選挙だ、だから、投票権はより長期を見越しているので、若い人の将来ということにも深く関係するから、選挙権と投票権を分離したとしても、投票権を若いときから与えるべきだ、こういう議論もあったことは確かでございます。このことについてどのようにお考えでしょうか。

高橋参考人 先ほどから申し上げておりますけれども、それぞれに立法趣旨がありますので、そういったお考えをされる方もいらっしゃるのではないかなというふうには思いますけれども、ただ一方で、選挙権についても、できるだけ幅広い方々に拡大をしていくべき権利ではないかというふうに認識をしています。

 そのように考えたときに、必ずしも投票権と選挙権を分ける必要性がなくて、せっかく、長期的な問題について、さらに若い世代の意見を聞こうということでありましたら、政治に対する例えば不信感とか投票率の低下、こういったことが騒がれて非常に久しいわけでございます。こういった国民的な意識を、より政治に、もう一度高めていく。

 さらには、成長戦略等、今言われておりますけれども、国民全体が、この国をどうしていくのか、また地域をどうしていくのかということを必死に考えていかなければいけない、そういうフェーズにこの国は変わってきたんだと思うんです。そういう段階においては、国民一人一人がそういう意識を持っていただくきっかけとして、できるだけ若い段階からそういった機会を与える。

 さらには、今、政治教育をやっている、例えば高校での社会科における政治教育から実際に選挙権を得る二十までの間にブランクが出てしまっているんですね。その間に親元を離れ、そして政治教育の重要性を言う人が余りいなくなる状況なんかが政治に対して接点を持つきっかけをなくしているという側面がありますので、そういったことも考えて、できるだけ幅広い方々に選挙権を与えてみてはどうかというふうに考えております。

斎木参考人 選挙権と投票権のことについての御指摘だったと思うんですけれども、投票権というものは、憲法改正にどのように投票を、それをイエスかノーかということだと思うんです。選挙ということは、やはり人を選ぶというところで、そこは違いがあると思うんですね。

 ただ、広義の意味で見れば、やはり参政していくという意味だと思うんです。それぞれ少しアプローチが違うというところだと思うんですが、参政していくというところの広義の部分では一致していると思うんです。そのときに、やはりそれはどちらも長期的に考えていかなければならないことだと思うんですね。より若い世代の方が長く生きるわけですから、やはり長期的な目線で考える。それは、投票においても選挙においても、両方言えることだというふうに思うんです。

 なので、広義の意味で参政するんだというところの視点で考えていけば、ぜひ一緒に十八歳に下げていくということが大事なんじゃないかなというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。

 世論調査では、しかし、十八歳に引き下げることについて、賛成、反対、半々ということで、慎重な意見も世の中には多い。このことをどうお考えになるか。

 また、先ほどの調査によると、外国でも、若くした場合、若い人ほど投票率が高い、しかし、それがぐっと下がっていってしまう。これを維持させなくてはいけないと思うんですけれども、若い人ほど高いということはなぜなのか。そして、高い投票率を維持させるために、工夫か何か、お考えがおありかどうか。

 ちょっと三つの質問を一遍にしてしまいましたが、御両人にお伺いします。

高橋参考人 まず、選挙権を十八歳に引き下げることについて世論が割れているという話でございますけれども、本来であれば一番選挙権を欲しいと言うべき当事者というのがいわゆる十九歳だったり十八歳だったりという年齢に当たろうかと思いますけれども、彼らにとって、選挙権というものを得ることが具体的にどういうものになるかというイメージがほとんどないのではないかと思います。

 私は、大学の教壇に立ちながら、例えば世代間格差の問題で、生涯で得られる利益と負担の割合が、生まれる世代によって一億円ぐらい差があるんだよ、そういうことは皆さんは授業では習ってこなかったし、政治に参加しないことがこういった世代間格差を拡大しているんだよという話をすると、比較的学生たちも関心を持って、それは参加しなければいけないという話になるんですけれども、自分たちが参加しなければいけない意図であったりとか、また、さまざまな場面で社会参加をすると自分たちにとってメリットがある、そういう成功体験が極めて少ないということが当事者からの声を少なくしているのではないかというふうに思います。

 また一方で、ほかの世代におきましては、若い人が参加しない方がみずからの利益が大きいという世代もあります。そういう世代からすれば、当然、新たな意見を言う層というのはつくらない方がいいという話になりますので、やはり、若い人たちに対してなぜそういうものが必要なのかということをしっかりと提示した上での世論を信用する必要性があって、現段階での世論というのは、そういったものが行き渡っていない段階での世論になっているのではないかなというふうに感じております。

斎木参考人 世論調査についてだと思うんですけれども、半々というふうになっている。それは、数字としては、やはり政策を考えていく上では非常に重要な数値だと思うんですね。

 ただ、例えば二十代の投票率は三〇%台だったりとか、六十代であっても、高いと言われていますけれども七〇%台、やはり、あらゆる世代において、どうしても政治に関心がない層とか選挙に行かない層というのは必ずいるわけですよね。その中において半々になっているということは、その半分の人たちは、行きたい、自分の意思を表明したいと。

 行きたくないと思っている人の意見と、行きたいと思っている人の意見、どっちを民主主義の観点から重視するべきかといったら、私は、行きたいと言っている人が半分いるということは、やはり重視して考えるべきなんだというふうに思っています。

 ですので、そういった意味では、世論調査の数字で半々に割れているというふうに捉えられるかもしれないんですけれども、それは、政治ということを考えたときには、賛成したいと思っているところが半分もあるというふうに見ることもできるのではないかなと思うので、その部分を捉えていかれるといいのではないかなというふうに思います。

 実際に政治教育をやっていく際の工夫ということだと思うんですけれども、十八歳選挙権をまさに今議論していても、傍聴席に高校生の姿、制服の姿なんかが見えるんです。やはり、これをしっかりと議論していって、実際に実現していく過程の中で、こういうふうに関心を持って来ているというふうに思うんですね。だから、十八歳選挙権が実現していくということが、まさにそういった関心とか政治教育というのを普及させていく大きなきっかけづくりになると思うので、その部分をぜひとも考えられたらいいのではないかなというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。

 十八歳選挙権問題について百地参考人にお伺いいたします。

 御意見は今までの質疑の中でよくわかりました。私なりの理解でいえば、やはり民法、少年法との整合性というのを慎重に考えた方がいいという御意見だと思いますけれども、それでは、民法、少年法も将来は十八歳にしていくべきだ、このようにお考えでしょうか。

百地参考人 民法の成年年齢を十八歳にすべきかどうかといえば、すべきという立場はとりません。世論のいろいろな傾向とか支持、いろいろ考えた上でそういうことになればあり得るでしょうけれども、私はむしろ慎重論でありまして、二十歳でいくのがいいのではないか。

 それからもう一つ、人を選ぶ選挙と国民投票、要するに、選挙は人を選ぶ、それに対して国民投票は国の将来を考える、性質が違うんだからという話もありましたけれども、直接的にはそうでありますが、人を選ぶといいましても、我が国は政党選挙制度です。人を選ぶことが直接間接に政党を選び、さらには内閣の信任、不信任につながるわけでありますから、結局は国の将来に重大な影響を持ってくるということでありまして、私は、本質的には変わらないと考えております。

斉藤(鉄)委員 十八歳について、最後、ついこの間まで高校生だった斎木参考人に聞きたいんですが、十八歳にすると、一つの教室の中で選挙権ないしは投票権を持った生徒と持っていない生徒が分かれて教室が混乱するのではないかという議論はこの審査会の中でも随分出ました。このことについてどうお思いでしょうか。

斎木参考人 私は実は二月生まれなので、多分、高校三年生のときに得られない確率が極めて高い人に当たると思うんですけれども、だからといって、例えば、早生まれの人が、何でないんだと暴れ出すとかということなのかもしれないんですけれども、通常、教室の中でそういう混乱が起こるというのは非常に考えにくいんじゃないかなというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 次に、百地参考人に、公務員の運動規制についてお伺いします。

 我々、先ほどと同じように、人を選ぶ選挙と、この投票権については政策を選ぶ選挙、ですから、政策を選ぶのであるから、より自由に運動できるようにというのが基本的な考え方であったように思います。

 百地参考人の先ほどの御意見は、いや、非常に長期にわたる日本のあり方を決める法制度を選ぶからこそ、より規制が必要なんだというふうに私は理解したんですが、この二つの考え方の違いについてどのようにお考えでしょうか。

百地参考人 私の基本的な意見は述べたとおりでございますので、繰り返しにならないようにしたいと思いますけれども、やはり、国民投票は選挙と違うんだ、自由にという前提そのものをきちんと議論されているのかという気も私はするんですね。

 それから、規制の必要というのは、あくまでも国の将来を決める決定的な重要な意味を持つのが国民投票になります。したがいまして、これについては、公正な国民投票が行われるということが大事でありますから、公正さを保つために規制が必要である。つまり、公正さを保つためには、公務員が行政の中立性を維持し、あるいは国民の信頼を確保するというのが本来あるわけですが、それを否定する、あるいはこれに対する国民の不信感を抱くような形で参加していく、そのような形で果たして公正な国民投票が行われるんだろうかという思いがありますから、結論的に、きちんと規制すべきだということであります。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 最後に、田中参考人にお伺いいたします。

 御意見を伺って、国民投票法そのものが国民が今望んでいるものではない、こういう御意見だったかと思いますけれども、しかし、憲法九十六条には改正の手続が定められていて、それを担保するための法律がないということで、ある意味では、国民の主権を行使する道が閉ざされていたわけで、その主権を行使する道をきちんと決めるのは憲法を守るということになるのではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

田中参考人 その御指摘は、一般的にはそのとおりだと思うんです。日本国憲法に九十六条があり、そして改正手続が予定されている以上、制定後に、それこそ国会と国民的討議で手続法が生まれていて決しておかしくなかった。ただ、それが五十年生まれなくて来てしまった。

 私が問題にしているのは、生み出そうとしたのがちょうど明文改憲をやろうとした時期、しかも、国民の側がそのことを求めたのではなくて、政府の側が要求して進めた格好になっていること、ここについては、改憲手続法の制定過程に重大な問題がある。そして、その批判を受けて一遍凍結したんだから、本来、一度廃止しなさいというのが自由法曹団の主張でした。

 本当なら、憲法について波風が立っていない時期に、もっと冷静な議論をすることはあったと思います。残念ながら、また今回も、憲法改正論が動き出すと改憲手続法が動き出す。これは、憲法改正を規定した九十六条との関係でも、大変不幸なことではないかというふうに感じているところです。

 以上です。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 四人の参考人の方、ありがとうございました。

保利会長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、大変お忙しい中お越しいただきまして、非常に参考になる御意見をまことにありがとうございました。

 中でも、高橋、斎木両参考人におかれましては、本当に前向きな、そして非常にフレッシュな、そういう意見をありがとうございます。一方、百地、田中両参考人におかれましては、非常に鋭いといいますか、多少刺激的な表現も含まれてはおりましたけれども、非常に参考になる内容になっているのではないかというふうに考えております。

 時間の関係上、全ての参考人の皆様に御質問できるということではないかと思いますけれども、随時質問させていただきたいというふうに思います。

 それでは、まず、百地参考人にお伺いをいたします。

 このいただいている資料の中でも、地方公務員や教員らによる違法な政治活動、選挙活動が公然と行われているというふうな記載がございます。私に関しても、個人的に何となくそういう実感は持っているところはあるんですけれども、この点について、もう少し詳しく御説明いただけないでしょうか。

百地参考人 お答えします。

 ここに国立国会図書館立法調査局で調べていただいた資料を持っております。これはまさに氷山の一角だと思いますが、いわゆる四大紙と言われる朝日、読売、毎日あるいは産経といった、そういう記事がここにあるわけです。例えば大阪では、堺市長選挙のときに労働組合が選挙実動部隊をつくって運動しているとか、あるいは、これも毎日新聞の報道ですが、全国十九の政令市のうち、大阪市を含む十二市の労組が直近の市長選で特定の候補者を支援していることがわかった、こういった報道もあります。

 また、山梨県は例の山教組が強いところでありますけれども、あそこでも相当運動がなされている。さらには北教組も、これもよく知られているところでありますが、大々的な教員による票集めが行われている。こういう報道が現にあるわけでありまして、私自身は直接いろいろ聞いておりますので、それが実態だろうと思います。したがって、それを何とか規制する必要があると思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 今まさに百地参考人がおっしゃったとおり、いろいろな選挙に、地方公務員ですとかそういった教職員組合に属されている方々がそういう活動をされてきたというのは、これは報道されているとおり、そのとおりなんだろうというふうに思っております。

 また、特定の選挙ということでなくても、例えばさまざまな政治問題について、極めて偏った、そういうような教育というのを一方でされているような例も、実感値としてあるのではないかというふうに感じております。

 個人的な話をすれば、私は親が自衛官でございまして、小学校のときには、日教組と言われる、そういったところに属している先生方から割と疎まれていたというような経験がございます。中でも、社会科の先生は、例えば中世の話ですと、秀吉の朝鮮出兵、その中でも、耳塚というひどいことをやったんだということを延々と、一カ月ぐらいずっとやったというような経験もありますし、南京大虐殺ですとか、第二次世界大戦の中で日本軍がどれだけ残虐かということを延々と取り上げたというような、そういった経験というのが個人的にはございます。

 ですので、特定の思想に偏った教育がなされるということについては、やはりこれは非常に慎重にならなければいけないというところは正直あるのかなというふうに思っております。

 これは高橋、斎木、百地参考人、お三方にお伺いしたいというふうに思っているんですけれども、生の政治に触れさせるということと、政治的に偏った教育を行う、それを切り分けるということが可能かどうかということについて、お三方の御意見を伺えればというふうに思っております。

高橋参考人 ちょっと二つのことをお話ししようと思います。

 一つは、極端な例なんですけれども、私、中央大学で今学生に教えているんですけれども、学生に最初の授業で、先生の言うことが必ずしも正しいと思わない方がいいという話をします。

 これはクリティカルシンキングの考え方でもそうですけれども、表面的にある表現されたものの背景にはどういうものがあるかということをみずから探って、それを多角的に見ながら物事を判断する力をつけることが重要で、むしろ、先生の言っていることを常にうのみにしていくというようなことで教育というのはなされるべきではないんじゃないかというふうに私自身は考えています。

 そういった意味では、仮に御指摘のような教員がいたとしても、そうならないような土壌をつくっていく教育というのが本来は重要なのではないかというふうに思います。

 ただ、一方で、政治を取り扱う場合には気遣いがやはり必要だと思っておりまして、例えばドイツなんかでディベートをするときに、二つに分かれます。そのときには、先生はみずからが考える主張をするのではなくて、例えば少数になっている方を先生は応援するように位置づけするとか、そういった形で、みずからの主張とは違う形でディベートをファシリテートしていくというような役目を担うとか、そういったやり方というのはあるのではないかと思います。

 ただ、そうはいっても、先生も人間ですので、そういった中で、非常に閉鎖的な中で一人の大人が常に教えるという空間をつくることが、逆にリスクがあるのではないかと僕は思っておりまして、さまざまな大人を入れていくことで、先生が仮にどちらかに偏っていても、そうじゃない人たちがいるということを認識させるような教育現場をつくっていく必要性があるのではないか、このように考えます。

斎木参考人 私は、委員の指摘としては、思想の偏った教育と政治に触れ合う教育というものが切り離すことができるだろうかという御質問だったと思うんですけれども、できる限りそれを切り離していく努力はしていけるはずだと思うんですね。

 それはまさに、先ほど高橋さんがおっしゃられたように、先生が言っていることだけが全て正しいということではないということをしっかり伝えていくとか、まさに文部科学省のガイドラインを示していくとか、そういった形でうまくやっていけるというふうに思うんです。なので、そういう工夫をしっかりやっていくことがまず第一。

 第二に、やはり、そういった思想がどれぐらい極端か。どれぐらいかというのはおいておいて、何か話をするときにはある程度、完全に中立になるということはなかなか困難だと思うんですね。ただ、そういった極端な人が出てきたとしても、例えば三谷さんなんかは、そういった授業を受けたときに、それを完全に真に受けて、いいなと思ったというよりかは、どちらかというと辟易しているというふうな感想を抱かれていると思ったんです。

 やはり、それは我々としても、大学の授業でも、あの先生はこういうことを極端なことを言っているよねとか、この先生はこういう人だよねということは、学生同士でも話し合うわけなんですよね。だから、先生が言っていることを全部我々がうのみにしているかというと、決してそんなことはないですし、まさにそういう話が出てくることによって、あの先生はこういう意味ではちょっと極端だよねとか、こういう部分がちょっとおかしいんじゃないかと、逆に、それがまさに政治教育の一つでもあると思うんです。

 だから、中立的に中立的にということをこだわり過ぎてしまうことによって、それはやはり学生たちの考える力をまさに信用できていないと思うんですね。もう少し、若い人たちにも考える力があるんだということを信じていただいて。ぜひとも、偏った思想があったとしても、それを考えて、それがまさに政治教育の題材にもなり得るというところ、僕はテーマとしてあり得ると思うので。やはり、切り離していくということも必要だとは思うんですけれども、いろいろな工夫をして少なくしていくと同時に、それそのものが政治教育の機会になり得るということが私の私見です。

百地参考人 憲法教育とか政治教育の問題は、一般論としては私も大切だと思いますし、していく必要があると思います。

 しかし、今いろいろこちらで参考人の方がお話しなさっていますが、そういう方々ばかりというわけではありません。実際には、中学、高校あたりでは、まだまだ判断能力の十分でない子供たちもたくさんおります。また、義務教育化している中で、教育の中立性とか、そういったものがきちんと担保されないまま、直ちにそういった、積極的に政治教育を持ち込むということについては、私はやはりちゅうちょせざるを得ない。

 したがいまして、いかにして教育の中立性を維持するか、担保するかということが実は鍵になってくると思いますが、具体的には、やはりそういった問題についても、学習指導要領、この政治教育とか憲法教育についてどこまで書いているのかよく知りませんけれども、その辺で一定の方向性なり基準をきちんと定めていく。

 それから、教科書が少しずつ、私に言わせればよくなってきておりますけれども、現在のような教科書の現状のまま、これをもとにそれを子供たちに教えることについては、私は極めて危険だと思いますし、少なくとも中立性に反すると思いますので、現状では非常に疑問に思っております。

三谷委員 非常にさまざまな御意見、ありがとうございます。

 百地参考人に質問させていただきたいと思います。

 先ほど、参考人の御意見の中で、諸国の十八歳の例ということで、一つは、兵役の義務というのが一方で課されているんだという例を挙げていらっしゃいました。若干この議論というのは、非常にセンシティブというか、危険な議論ではないかというふうに思っております。

 日本ですと兵役というのはありませんから。日本国民の三大義務というのは、勤労、納税、そして教育を受けさせる義務。その義務を果たさないと、ある意味、参政権を与えないというような御趣旨ではないんだろうというふうに思っております。なので、そこの点について、参政権という権利に相応する義務というのは何だというふうに考えていらっしゃるでしょうか。

百地参考人 これはギリシャの昔から言われてきたとおりでありまして、ギリシャでは、成人に達すると、まず、武器をとって辺境の防備につく、そして、その一定の兵役を済ませて初めて参政権が与えられた、これは歴史的な事実として間違いありません。そして、そういう流れが外国においてあったことは事実だと思いますから、したがいまして、やはり、国をきちんと自分たちの手で守っていくということと、それから政治に参加するということは、まさに一体のものであろうと思います。

 徴兵制は、何も、日本の国を挙げたことじゃなくて、歴史的な流れの中でそういう考え方が出てきたのは自然ではないかなという、その例として紹介しただけでありまして、日本国憲法とは直接関係ありません。

三谷委員 お隣で首をひねっていらっしゃるので、恐らく言いたいことがあるんじゃないかと思っております。

 参政権という権利に相応する義務というのは何だというふうにお考えなのか、これは高橋、斎木両参考人から手短にお答えいただきたいと思います。

高橋参考人 私はですけれども、これはある部分私見になってしまいますけれども、日本国民であるということが、投票権を持つことにとっては非常に重要なのではないかなというふうに思います。

 ただ、先ほどお話しになられたようなこともございますけれども、一方で、選挙権の拡大ということを見ますと、例えば、納税が幾ら以上の人しか投票ができないという時代がありました。しかし、納税の義務というものは投票権にとって重要ではないということで規制が緩和されました。性別によって制限されていた時代もあります。これも、性別によって左右されるべきではないということで除外されました。

 こういうふうに考えると、一方で、こういった規制や義務をかけるべきものではないということでどんどんその権利が拡大されてきたというのも、この選挙権を担う環境の変化としての事実であります。

 そうした中で、最後に残っているのが、いわば年齢の規制でありまして、この規制についてもできるだけ緩和しようというのがこれまでの改正の流れでありまして、ではどこまで緩和ができるのかということを考えるのが、まさに選挙権の適正年齢を考えるという議論になるのではないかというふうに考えています。

斎木参考人 百地さんは恐らく歴史の話をされたんだと思います。その部分では確かにそうかなというふうに、まさにおっしゃるとおりだというふうに思います。

 今回の話というのは、やはり日本国憲法だと思っておりまして、今日的な、現代民主主義における参政権というものは、国民一人一人が幸福を追求する権利があって、その幸福を追求する権利を体現する一つの参画の手段として参政権があるんだというふうに思っていまして、何か、納税をしていないと与えられないとか、男性だからとかいう考え方は、やはり制限選挙の考え方だと思うんですね。

 現代の民主主義制度の考え方からすれば、そういった制限選挙の考え方ではなくて、広く国民の意思を、その幸福を追求する権利を行使していく手段として、広く日本国民に保障されるべき権利だというふうに認識しております。

百地参考人 ちょっと補足させていただいてよろしいですか。

 国を守るというのは、私はごく普通のことだと思いますけれども、人によっては刺激的に感じたかもしれません。もうちょっとわかりやすく言えば、国の将来に責任を持つということだと思います。

 この義務は、何も憲法あるいは法律等に明文化された義務ではなくて、国民としての当然の自覚であり、そういう精神的な義務であろうと思っております。それが参政権に対応するものではないかなというふうに考えます。

高橋参考人 では、補足で。

 逆にちょっと刺激的かもしれませんけれども、一方で、最近議論されている考え方にドメイン投票法という法律があります。

 これは実際に実現している国はないんですけれども、投票権を持たない、投票行動を行えない、赤ん坊だったり子供についても、生まれたときから権利としては投票権を持つべきであろうということで、赤ん坊から一票上げて、それを母親ないし父親が代理で投票するという法制度があってもいいんじゃないかということが世界では議論され始めています。

 こういったことから考えても、選挙権というのは拡大の一途にあるんじゃないかなというふうに思っております。

三谷委員 質問を終わります。ありがとうございました。

保利会長 次に、畠中光成君。

畠中委員 結いの党の畠中光成です。

 本日は、四名の参考人の皆様、大変参考になる意見陳述をありがとうございました。

 このたびの憲法改正手続に関する、いわゆる国民投票法案に関しまして、十八歳への年齢引き下げ、公務員の政治的行為、そしてもう一つ、国民投票の対象拡大という三つの宿題がありましたけれども、我が党は、この三つのいずれに対しても回答を提示させていただきました。

 三つ目の憲法改正以外の国民投票については宿題の期限というのがなかったとしても、一つ目の年齢引き下げ、そして公務員の政治的行為については期限があった中で、ようやく方向がまとまりつつあるというのは、我々、国政に携わる者として当然の責務だと考え、共同提出者に名を連ねさせていただいています。

 しかしながら、この年齢引き下げ、公務員の政治的行為、いろいろな議論がこれまでにもあった中で、私もその間主張させていただいたのが、全体のバランスを見たときに、若年層の権利よりも公務員の権利の方が大事なのかという全体のバランスの印象を申し上げさせていただいた経緯があるわけです。

 まず初めに、四名の方にお伺いしたいんですが、この改正案に対して、全体の印象をお聞かせいただけますでしょうか。

高橋参考人 私どもは選挙権の問題をやっている団体でして、その意味もあろうかと思いますけれども、基本的にこの問題にとって一番重要なのは、選挙権の年齢の拡大というのが一番私たちにとっては重要だというふうに認識をしています。

 NPO法人Rightsが選挙権の問題を掲げてから十四年になります。十四年前に我々しかいなかった問題がようやく社会問題になってきて、この国民投票法が成立した際に、ようやく選挙権も引き下がるんだということを確信していたわけです。

 しかし、皆さん御承知のとおり、私から言わせれば、いわゆる違法状態になりながらも選挙権が拡大されることがなかったことについてはひどく落胆をしました。

 その点から考えれば、今回の改正案というのは、残念ながら、法案の中には期限がなくなりました。それから、この間、選挙権の年齢引き下げをしようという政治的な原動力となった、憲法改正の議論のためには選挙権を引き下げなければならないという前提、いわゆるリンクと言われている部分がありましたけれども、これも切られてしまいました。

 そういった意味では、法改正を行って、メディアには二年後には十八歳になるというような報道をしているところがありますけれども、私たちとしては、法案が実現して、違法状態にしてもならなかったわけですから、それが法案に期限すら明記されていなくて、そして国民投票と独立されてしまったということについては、本当に大丈夫かという危惧を持っています。

 その意味でも、この憲法審査会の中では、改めて、八党合意のものとこのものをどれだけリンクできるかという議論を皆さんにしていただきたいなというふうに思っております。

斎木参考人 今回の改正案に対する全体の印象をということだったと思うんですけれども、私も、今、高橋さんがおっしゃられたように、前回の国民投票法案でも三年以内に必要な法整備をすると明記されていたにもかかわらず、それが実際実現しなかったということは非常に残念でありますし、実際、今回の改正案でもその期限が明記されていないというところは非常に残念な部分だなというふうには思っております。

 ただ、同時に、八党の確認書で、選挙権年齢については改正法施行後二年以内に十八歳に引き下げることを目指してプロジェクトチームを立ち上げられるということなので、私としては、単に、この改正案に対しては期限がないというところでは少し残念であるんですけれども、と同時に、こういったプロジェクトチームを設置するというふうに確認をしているわけですから、ぜひともそれを実際に行動に移していくというところをしっかりと注視していかなければいけないなというふうに思います。

 と同時に、やはり、我々も、一方的に批判をするだけではなくて、実際にそのプロジェクトチームが動きやすいような世論づくりであるとか、若年層がそういったプロジェクトチームにどうやってかかわらせてもらえるかどうかというところもしっかりサポートさせていただきながら、まさにこの改正案というものが違法状態にならないようなものになっていくということをしっかりとサポートしていきたいなというのが私のこの改正案に対する全体的な印象です。

百地参考人 まず、憲法改正手続法全般について率直な印象を申し上げますと、いわゆる護憲派と言われる人々の要求に対して、かなり妥協してここまで来てしまったのかなという率直な印象でございます。

 法律論を申し上げます。

 法律論としては、最初にも言いましたように、この国民投票法というのは国の将来を直接決める非常に重要なものですから、したがいまして、公正な上にも公正なルールが必要である、これが大前提であります。そういう視点から見ますと、現在の成立した手続法、そしてまた今の改正案にしましても、やはりまだまだ不備がある。

 基本的には、私は、公職選挙法に準じていくべきだろうと思っておりますし、例えば、先ほど言いましたように、公務員や教育者の地位利用について、この罰則がないということは、実は、実質、野放しになりかねないというふうに私は危惧しております。

 それから、直接はここでは問題になりませんが、私もかねてよりずっとこの問題に関心を持ってきましたから、その後のいろいろな動きを見てきたつもりですけれども、例えば、一時は放送法まで撤廃してしまおう、適用を撤廃しようというような動きもありました。でも、現在の報道を見ておりますと、もちろんすばらしい報道もありますけれども、しかし、一般的に言うと、かなり歪曲した一方的な報道がなされていることが多いと思います。そういうような中で放送法を撤廃するような動きさえもあった。とりあえず放送法、留意するという項目はたしか残ったと思いますけれども、例えば公職選挙法であれば、虚偽報道に対してもそれなりの対応を定めておりますね。でも、こういったことがなければ、虚偽報道でもやった方が勝ちということになりかねない。

 私はその辺を非常に危惧しておりますので、全体としては、もう少し慎重にきめ細かく議論してほしかったなという気持ちは持っております。

田中参考人 全体の印象を先に言いますと、二〇〇七年の五月に、三年議論されたんですよ、そしていろいろな修正を経て、一つの到達点で強行されたはず。その時点でのその到達点を大幅に後退させ、あるいは後送りする法制になっていると考えざるを得ない。この点は非常に残念です。

 具体的に言いますと、もうさっきから論点に出ていますが、公務員の国民投票運動は最大限の参加を保障しようというのが当時の確認でした。直接投票行為に関与するメンバー以外は、公務員であっても裁判官であってもお互い語り合っていいではないかというところまでこの国は踏み込もうとしたんです。それを戻し、組織的な規制や地位利用の刑罰化等をやろうとされているのであれば、大幅な逆行と言わざるを得ません。

 十八歳はもうこれまでに実現されるはずだったし、これは法の規定でした。残念ながら、七年間まともにやられず、そして後送りされる。

 それから、大きな議論になっていた最低投票率の問題や有料意見広告の規制問題、発議単位の問題、あるいは地位利用の限定の問題等々、この改正でほとんど検討されずに終わらせてしまうことになりはしないか。

 さっきも申し上げましたが、あのときの審議を結果において無にしてしまうことになりはしないかと懸念しております。

 以上です。

畠中委員 ありがとうございます。

 全体の印象を伺いましたが、年齢引き下げについて、法律以前の問題として、そもそも年齢と身体的な能力というのは実は関係ないというふうに私は思っていまして、若年層は判断能力がないというふうにおっしゃる方も多いわけですけれども、必ずしも、語弊を恐れずに申し上げれば、年齢が高いからといって判断能力が高いというわけでもないわけでありますから、その関連性というのをまずちょっと解く必要があるのではないかなというふうに思うのがまず一点です。

 そして、そもそも、日本国憲法制定時と比べて、今は人口構造が本当に大幅に変わっていて、先ほど斎木参考人も赤字国債の話や我が国の借金の話をされました。また、高橋参考人も一人当たりの借金の話も講義でされているというお話もありましたけれども、そもそも、日本国憲法が保障している基本的人権さえも、十八歳以上二十歳未満の方々の権利というのを、もしかしたら十分に尊重されていないとも言えるのではないかというような政治課題が今山積しつつあるのではないかというふうにも私は思っています。

 そこで、十八歳選挙権年齢賛成のお立場から、高橋参考人、斎木参考人、御両名にお伺いしたいんですが、賛成の立場で、十八歳に例えば選挙権を認めたときに、あえて懸念されていらっしゃることはどんなことかということをお二人にお伺いしたいと思います。

高橋参考人 まず、一つ事実として言えることは、例えばドイツやオーストリアなど先行で引き下げている国というのはありますけれども、必ずしも、例えば六十代、七十代に比べて、新しく与えた若い世代の投票率が高いかというと、そういうわけではありません。そういう意味では、投票権を与えたときに、やはり低かったじゃないかというような御指摘をされるということは当然あろうかというふうに思います。

 ただ、先ほども申し上げましたように、二十代前半よりも十代の方が高くなる傾向がある、与えた年齢が。高くなるということがございますので、そこに政治教育をしていくことで、そのまま、高いまま高年齢にシフトしていくことで全体が投票率が例えば上がるとか、また、政治教育の問題でいうと、必ずしも若年層だけが政治リテラシーをつければいいかというと、そうではないと思いますけれども、そういった政治的なリテラシー教育というのを受けた国民をふやすきっかけをつくるという意味でも、選挙権を引き下げるということは非常に有益なのではないかなというふうに思っております。

斎木参考人 私は、あえて懸念するところを発言させていただくとするならば、先ほどから百地参考人がおっしゃられているように、教育の現場でかなり意図的な、思想の非常に偏った教育がなされてしまって、そしてそれを本当にうのみにせざるを得ない状況が生まれてしまう可能性があるんじゃないか。だから、それはすごく懸念はしています。

 まさにそういったことが、実は今もう既に起こっていることでもあるとは思うんですよね、さまざまな例を百地参考人も先ほど述べておりましたけれども。ですから、十八歳選挙権を実現したときにそういったものがあらわになってくる可能性もあるのではないかなというふうに思っていて、実際に、高校三年生、実際に選挙に行く人たちに対する教育がこれでいいのかというふうに、それがまさに問題提起になる懸念も、もちろん問題点は必ず出てくると思うんですね、問題点が全くない政策案というのは考えられないというふうに思うんです。

 だからこそ、今起こっている問題も含めて一つ一つ、問題が起こったときに、懸念点が起こったときに、それをきちっと、では公務員法をこういうふうにしようとか、文部科学省でこういうふうにガイドラインをしっかりして徹底しようとか、罰則規定をつくった方がいいのか悪いのかということを、しっかりとまたそれを議論していくことにもつなげていくことによって、やはり懸念点、問題点はあると思うんですけれども、それをしっかりと修正していくということ、今後も、実現しただけではなくて、実現した後もしっかりと努力を続けていく必要性があるのではないかなというふうに思います。

畠中委員 ありがとうございます。

 時間もなくなってきましたので、最後に一点。

 我が党は憲法改正以外の国民投票についても道を開く設計図を提示させていただいたわけですけれども、残念ながら、さらに検討するという、まだ宿題として残るわけです。

 例えば道州制や一院制など、国会議員だけではなかなか決め切れない統治機構の問題とか、東日本大震災、福島の原発事故を受けて原発の是非を問う国民投票とか、こういった、憲法改正以外にも国民投票があってもいいんじゃないか、こういう立場であります。

 この国民投票について、時間も限られていますのでちょっと指名させていただいて、斎木参考人と百地参考人から簡単に一言いただきたいと思います。

斎木参考人 そういったさまざまな形で、国民投票とか、住民投票もありますよね。実際に、今、日本の場合は住民投票を十八歳が行っている例もあるんですね。ですから、そういったものも含めて、やはり十八歳とか十六歳、そういった若い世代の意見をいろいろな形で取り入れていくような仕組みがあるというのはすばらしいことだというふうに思っております。

百地参考人 この国民投票につきまして、私は二点申し上げたいと思います。

 一点は、そもそもこういった国家的な重大事項について全ての国民の投票にかけるという制度が果たして賢明なのだろうか。つまり、国民がそれぞれのそういった問題についてどれだけの判断能力があるかと考えますと、やはり国民投票そのものについては慎重であるべきだというふうに考えております。

 それから、現在の憲法の解釈として言えば、憲法は間接選挙制を採用しております。したがって、これを否定するような形での拡大はあり得ないと思いますから、法律でもって国民投票の場をどんどん拡大していくことは、むしろ憲法違反の疑いさえあるのではないかなというふうに思っております。

畠中委員 一点。過去の政府答弁や内閣法制局長官の答弁にもあったように、法的拘束力のない諮問的国民投票であれば間接民主制を害さないという答弁もあります。ヨーロッパ等では、こういったハイブリッドな国政の制度というのが大分主流になりつつあるわけですから、今後も憲法審査会で検討していきたいと思っております。

 ありがとうございました。

保利会長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

 そして、冒頭に私は一言申し上げたいんですが、せっかく貴重な機会、お越しいただいているんですが、特に法案を主導している自民党の中で空席が目立って、席を暖めていない状況、発議者の中にもそういう状況があること、これは、はっきり申し上げて、参考人の方々に対する礼を欠くと思いますので、会長におかれては、今後の委員会の設定を含めて、各委員の出席が確保できるような、そういう日程でやっていただきたいと強く申し上げておきたいと思います。

保利会長 御意見として承ります。

笠井委員 そこで、幾つか質問をいたします。

 まず、田中参考人に伺います。

 この改憲手続法、先ほど来議論がありますけれども、つまり、国民が必要としようがしまいが、憲法九十六条に基づいて整備しておく必要があるという主張がされるわけです。しかし、改憲手続というのは、改憲という問題が国民の側から具体的な問題になったときに、いよいよそういうときになったときに必要な手続を定めればいいというふうに私は思うんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。

田中参考人 先ほども出たんですが、抽象的に言えば、憲法制定後に改憲手続法を審議しておく方法はあったとは思うんです。しかし、五十年間それをやらずに来て何ら問題は起こらなかった、つまり、改憲論が必要とされなかった。

 そうなると、浮上するのは、必要性に応じて浮上することにはなるんです。問題は、一体どこからの必要だったかが現実の問題だと思います。

 きょうの議論でもそうなんですが、現実の護憲か改憲かという議論を背景に置いて、そうして改憲手続法を議論せざるを得ない。それは、率直に言って、政権党の方が、九条を主とする明文改憲を打ち出されて、そのために改憲手続法を提出されてきたというところにあると思います。

 もともと憲法というのは権力を縛る、そういう性格を持っているわけですから、縛られているその政権の側ないしは政権党の側から憲法を変えるために手続法をという持ち出し方があったことが今回の手続法の審議を不幸にしたんだ。あるとすれば、国民が求めるときにというのが正しいと思われます。

笠井委員 田中参考人にもう一つ伺いたいんです。

 先ほど指摘されたとおり、国民投票の投票権年齢にしても、現行法の審議の過程では、自公案でもともと二十歳だったのが併合修正案で十八歳に引き下げられて、法施行までの三年間に選挙権年齢も十八歳に合わせるというふうにしていたわけですが、それなのに、今回の改定案では、四年間、投票権年齢まで二十歳に戻してしまう、そして、選挙権年齢の引き下げについては検討するということだけになっております。ある意味、現行法の立法趣旨からも逆行するんじゃないかという改定案じゃないかと思うんです。

 ところが、この間、この改定案の内容について国民に対して、こうした経過抜きに、投票権年齢を十八歳に引き下げる法案だという言い方だけがいろいろなところでされたりして、あたかも前向きなように描いて、これに賛成か反対かを問うような説明や報道ぶりもあったりするんですけれども、このことについては率直にどのような感想をお持ちでしょうか。

田中参考人 今のような説明がされているとすれば、法案についての説明としては当を得ていないと思います。当を得ているとするならば、むしろ七年前の改憲手続法の方です、三年以内にやろうと法で規定をしていたんですから。しかし、それをやらないで凍結して、そして十八歳投票年齢の法律上の期限は削除をして、国民投票だけ二十歳で始動させてしまう。こういう法制ですから、これを十八歳投票を実現するための法制とは、法文を読む限りは読めません。

 もちろん、十八歳投票を期待する方々がここに期待をかけようとされるのはわかりますが、附則に三年と入ってもできなかった。当時、十八歳投票制は、与党の自民党、公明党、それから賛成されなかった野党の民主党も、十八歳は主張されておったんです。つまり、きょう提出されている全会派が、加わっておられる政党が一致していて、それでも、三年の法的期限があってもできなかった。よほど頑張らないと、期限がない附則のもとではできない可能性があるよという点は、逆に警告を発しておきたい。

 以上です。

笠井委員 今のにかかわって、高橋参考人、斎木参考人に伺いたいんです。

 私どもは、十八歳選挙権は、かねてより、この法律にかかわりなく、一刻も早く実現すべきだということを主張してきたわけですけれども、そういう中で、この改憲手続法というのが附則三条で、先ほどもありましたけれども、法施行までの三年間に選挙権年齢等の十八歳引き下げをある意味義務づけしていたわけです。そして、そういう状況で推移したわけですが、三年間はおろか、法が公布されてから七年間経過しても実現していない。

 先ほどお二人からも、残念である、今後サポートしていきたいというお話もあったんですが、同時に、では、今後確実にやれるのかと。そうすると、検討だというふうになっているわけなので、そういう大きな懸念もあるわけなんですが、その辺のところについてもう少し、お二人から一言ずつ伺えるでしょうか。

高橋参考人 法の体制としては、まさに今、田中参考人が言ったとおりだという認識であります。一方で、ほぼ同日に結ばれている八党合意というものがどういう意味合いを持つかというのが非常に重要なわけです。

 本日、資料の中に、国民投票法改正にともなう十八歳選挙権の取り扱いに関する要望書というのを提出させていただいたんですけれども、これは、我々としては、八党合意にすがるしかないというか、国民はそこの部分は与野党の国会議員の皆さんの良識に期待するしかないというような立場で、であれば、では、そこで合意されている党派間でのプロジェクトチームというのが実際にどうやってできるのか。

 二年間で下げるということを考えると、二年後には参議院議員選挙があります。恐らく、その直前に公選法を改正するということは極めて難しくなってくるわけですよね。そういうことを考えると、もはや次年度の通常国会あたりで議論しなければいけないぐらいタイトな状況の合意文になっているのではないかと思うんです。そういう認識をここにいらっしゃる皆さんがきっちり共有していただく。

 さらには、今後プロジェクトチームに参加する議員さんというのは、恐らくこの審査会の皆さんではない方々になろうかと思います。国会での議論をこれまで見ていますと、どうも、憲法審査会等で議論されている方は非常に良識的な方々ですし、今までの議論を見ても、各党、この問題を熱心に議論してくださってきたと思いますけれども、議論をする場所が変わった途端に、その議論の積み重ねがなく、ゼロベースにまた戻ってしまったりというようなことがあり得ると思っていまして、そういったことがないように、いわば、ここにいらっしゃる皆さんの議論が、党に持ち帰ったときに共有していただいて積み重ねになることも含めて、確実に二年以内に十八歳に引き下げるようなスキームについて各党間で共有をしていただきたい、このように思っているところでございます。

斎木参考人 私も、やはり高橋参考人だったり田中参考人がおっしゃっているように、前回の国民投票法案で施行後三年以内に十八歳に引き下げる必要な法整備をするということがあったにもかかわらず、それがなされずに違法状態になってしまったというところは本当に残念ですし、国会議員の皆様には、ぜひともそこの部分は反省をしていただきたいなというのが、本当に僣越ながら思っております。

 私は十八歳選挙権を目指す立場にあるんですけれども、その立場からすれば、高橋さんがおっしゃったように、この八党合意にすがるしかないという部分があると思うんですね。そういったもので、二年以内に十八歳に引き下げることを目指したプロジェクトチームというふうに書かれておりますが、二〇一六年には参議院の国政選挙が控えているということを考えますと、本当に実現するとするならば、八党合意が本当に真実で、本当に皆さんの信念に基づいたものであるならば、本当に今後一年間が非常に重要になってきますし、それに向けて実際に行動していかなきゃいけないフェーズに今入っているというふうに思うんですね。

 やはりそれは皆さんの良識をぜひとも信頼しておりますし、同時に、それを信頼しているというだけではなくて、本当に我々にできること、本当に私が何かできることがあるのであればもう本当に何でもしたいというふうに思っておりますし、それで、さまざまな懸念点もあるわけですよね。

 ですから、反対の意見の人たちも含めてさまざまな議論を喚起して、国民的な議論をしっかり深めて、そして、やはり一年をめどにそういったものがしっかり国会に出せるようなものになっていくというところをしっかりと、私も含めて、頑張っていきたいというふうに思っております。

笠井委員 附則三条で法律的な拘束力があってもできなかったのに、今度は八党合意ということで、そういう意味での非常に複雑な思いをお二人から伺ったような思いで受けとめております。

 さて、百地参考人と田中参考人に伺いたいんですが、公務員の国民投票運動の規制について、先ほど参考人の方々からもいろいろありましたが、この法案というのは公務員の国民投票運動について、より規制を強化しようというものだと思うんです。

 百地参考人には、私は公務員に求められるのは職務に対する公正性だというふうに思うんですけれども、公務員であっても一市民、一国民である、一市民としての国民投票運動を規制するということがどうも理解できないというか、わからないんですけれども、その辺についてどういうふうにお考えか。

 田中参考人には、規制強化ということになると、この改憲手続法を審議した際の法案提出者の立法趣旨にも逆行するものになると思うんですけれども、どのようにごらんになっているか。つまり、できるだけ多くの国民が参加をするというのがもともとあった、それに反するのではないかと思うんです。また、諸外国ではこうした問題はどういう流れになっていると認識されているか。そして、法案によって懸念される問題について、先ほど堀越事件や猿払事件ということにも言及もありましたが、含めて、御意見があれば伺いたいと思いますが、それぞれお願いします。

百地参考人 今の御質問でありますが、公務員にとって大事なのは職務の公正性であるとおっしゃいました。まさにそのとおりだと思います。

 しかし、実は、その公正性を確保するために何が必要かということでありまして、つまり、公務員が自由に政治活動していたとするならば、行政の中立性というものも十分担保できない。また、少なくとも国民はそのように見ないおそれが出てくる。そうなりますと、結局は、職務の公正性そのものに対する信頼がゆがんできてしまうわけであります。主観的には公正であっても、客観的に国民の目から見て本当に公正性が担保されているというためには、一定の政治活動の制限をすることによって初めて、客観的な信頼、公正さというものが確保できるのではないかというふうに考えますので、公正性というのは、いわばそれが結果としてそうなってくると。

 政治活動の自由を規制するということから、ひいては職務の公正性というものが、あるいはそれに対する信頼が生まれてくるというふうに理解すべきであろうというふうに思います。

田中参考人 まず、制定時のお話なんですが、制定時には、この憲法改正国民投票というものの重要性、改憲権の行使ですね、そのことからできるだけ多くの公務員の国民投票運動を保障するという見地がそれなりに貫かれていました。選挙運動や政治活動が禁止されている、例えば裁判官や検察官まで国民投票運動をやっていいといったのは、ある意味で画期的だったと私は理解しています。

 世界の話が出ましたが、ドイツでは、裁判官が平和運動の先頭に立っていると言われています。現にそういう人はいます。欧米では、広範な公務員の政治活動参加は当然のこととされておりまして、アメリカでも、ハッチ法の改正によって政治活動の自由化が図られました。そのことによって、それぞれの国々で行政や職務の公正が害されて国を危うくするような事態は起こっていないというのが歴史的事実だと思います。この国にもそのぐらいの見識は私はあるだろうと思っています。

 ところが、その流れを改正案は変えてしまう、それが改憲手続法制定のときの立法趣旨をも逸脱してしまうのではないだろうかと思われます。あのとき、裁判官を外していいと考えられたんですから、裁判官が運動をやったら司法に対する信頼が全くなくなると国会は考えられなかったんですよ。

 しかし、七年たったら外してしまう。ジャッジだからとおっしゃいます。ジャッジだからといっても、裁判官が憲法改正の判断をするわけではありません。違憲立法審査はするが、これは確定した憲法を適用するだけです。まさかと思いますが、国民投票法違反の審理をするからと、これは理由になりません。つまり、裁判官が国民投票運動をできなくなる具体的な理由は全くない。あるとすれば、やはり、裁判官にはやらせない方がいいという、一般的、抽象的な判断だと思います。

 これが実は、公務員の政治活動や選挙活動を諸外国に例がないほどに規制して禁止していた理由です。国際化が叫ばれている中、それこそ先進国並みに、この後進性を、この国は改憲手続法を機にこの点でも脱却すべきではないか、こう考えています。

笠井委員 最後に一言ですが、一問、田中参考人に伺いたいんです。

 この手続法がもともと審議された際に、憲法に係る法律ということで、法曹界、日弁連を初めとして弁護士会、いろいろなところから参考人、公述人として意見を伺ったりして、成立後も、抜本的見直しとか抜本的改正という会長声明や意見書などが寄せられていると思うんですけれども、この辺のことについて一言いただければと思うんですが、いかがでしょうか。

田中参考人 改めて記録をひっくり返してみたんですが、衆議院特別委員会の審議時間は百時間を超えているんです。その間に呼ばれた参考人が三十八名。その意見が修正案に反映した論点は少なくありません。弁護士だけではなくて、公務員労働組合やあるいはメディアの関係者、学者、研究者、多様な方々が参加し、ここで議論をし、そうしてまとめ上げていかれたのが、あの改憲手続法、失礼ですが、褒める気はないが、その審議過程は真摯だったと思います。

 日弁連も随分意見書を出し、それが附帯決議や附則に集約されていった。これは課題だったんです。その課題を残したまま成立し施行したから、日弁連や弁護士会は、このままではだめだと、続行を検討して、抜本的な見直しをしようということを提起し続けています。

 ぜひ、その議論を続けていただきたい。あのとき、参考人を呼んだ。日弁連もそうですし、メディア関係者あるいは公務員組合関係者等々をこの場に呼んで、もう一度きちんとした議論をすることが、この憲法調査会の使命ではないか、こう考えております。

笠井委員 ありがとうございました。終わります。

保利会長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党の鈴木でございます。

 きょうは、本当に、四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。いよいよ最後の質問ということでありまして、大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 限られた時間なものですから、なかなか多岐にわたっての御質問はできないかもしれませんが、まず高橋参考人にお伺いをしたいんです。

 昨年の二月に、新聞で「論点」に発表されました。そのときに、タイトルが「格差生むシルバー支配」、こういう大変衝撃的なタイトルだったんですね。読ませていただくと、要するに、若者の声が今の政治に反映されているのかという論調であったというふうに思います。特に、「世代間格差ってなんだ」というような御著書もお書きになっておるというふうに伺っておるんですが、その中で、スウェーデンの事例で、非常に若い人の投票率が高くなったということでございます。

 果たして、私ももちろん、この国民投票法案の提出者の一人で、そこに期待をしておるわけですが、実際に、十八歳からの投票権は、国民投票に対して投票率を上げる、そういうインセンティブといいますか、になっていくというふうに、そこに御期待をされておるのかどうか、ちょっとその辺をまずお聞かせいただきたいと思います。

高橋参考人 まず、率直に結論から申し上げますと、選挙権年齢を引き下げるだけでは、いきなり投票率が上がるということにはならないと私は思います。

 ただ、投票年齢を下げると、どうしてもその人たちに対する教育をしっかりやらなければという話になります。先ほど申し上げましたように、今、高等学校への進学率がほぼ九割近いというような状況の中では、高校の政治教育というのは非常に重要なんですけれども、ただ、選挙権を得るまでの間にブランクがありますと、どうしても、大学進学のための政治教育はやっても、実際に政治的な判断をするためのリテラシー教育という発想というのになかなか行き着かないというところがあるのではないかと私は思っています。

 そうした中で、選挙権を実際に十八歳に与えることで、学校現場においても、いわゆるアクティブシチズンだったりとか、有権者としての教育をしなければいけないという必然性が強くなることで、政治教育自体が変わっていくのではないかというふうに考えています。

 先ほど、スウェーデンの事例に興味、関心を持っていただいたので、若干御紹介をすると、スウェーデンで、例えば若者団体の代表、当時二十三歳の女性だったんですけれども、スウェーデンでは若者政策にかかわることを国会で決めようとすると、必ず彼女たちに相談しなければいけないというんですね。ということがもう法制化されていて、しかも、彼女たちが議論に出るときのカウンターパートは大臣だというんですよ。要は、若者団体のナンバーワンが出るんだから、政府としてもナンバーワンが相対して議論して当然だろうという考え方に立っているんですね。

 世界では、若者に対する政治の中での意識というのはここまで違うということを、やはり日本全体で、特に政治現場の皆さんには御認識をいただきながら、次の世代の政治家であったりとか、または皆さんの周りの有権者を育てるということをもって、この国をさらに未来あるものにしていただきたいというふうに考えております。

 また、若い人たちに対する教育についても、スウェーデンでは、例えば、幼少のころに、遊具が壊れたというと、小学校の低学年の子たちに、ではどういう遊具を買おうか、お金は君たちに判断させるから自分たちで決めなさいというようなことをやらせたりしています。

 こういった形で、いわゆる選挙における投票とは違うんですけれども、みずからにかかわる問題をみずから決めるとか、みずからのルールをみずからつくるというような体験を幼少からさせることが、非常にこういったことに結びついているのかなというふうに思っております。

 日本における政治教育についても、この選挙権年齢の引き下げを契機に、高校だけではなく、中学校、小学校、さらにはその下の年齢についても、政治教育、市民教育というのはどういうふうにしていくのかということを考える、まずきっかけにすることで、投票率が上がる、国民の民度が上がるというような風土をつくり上げていただきたいというふうに思っております。

鈴木(克)委員 関連で、斎木参考人にお尋ねしたいんですが、まさに教育ですよね、政治教育、憲法教育も含めてかもしれませんが、大切だということなんですが、では、実際にどういう形で教育をしていくか。

 先ほどもちょっと議論がありましたけれども、例えば学校ということになれば、それを教えるのは先生であるということになると思うんですが、本当にそういう形の教育で政治が進められていくということに対して、どういうふうにお考えなのかということ。

 もう一つは、もしそれでは不足であるということであるならば、どういうような形のいわゆる教育体制を考えていくべきか、どういうふうにお考えになるのか、その点を、もし高橋参考人もお考えがあれば、先に斎木参考人にお伺いしたいと思います。

斎木参考人 私の考え方としては、どういった政治教育が求められるかといったら、ディスカッションの授業をやはり積極的にやっていくべきだと思います。

 例えば十八歳選挙権の是非をまさにクラスで考えてみるとか、最初は身近なテーマから、例えば監視カメラを地域に設置することはどうかとか、そういったことをまずはディスカッションで。若い人でも、逆に、校則をどうするかとか、そういったルールを決める、自分たちのことを自分たちでルールを決めるといったことを、ディスカッションとかワークショップの形式を取り入れて、授業の中に取り入れていくことが非常に大事だと思いますね。

 だから、そういったことを、政経の授業だったり公民の授業、あるいは総合的な学習の時間で取り入れていくということをまずやっていくべきだというふうに思います。それを、当然、先生たちだけに押しつけるのではなくて、教材のサポートであるとか、そういったものを文部科学省も同時にしっかりとやっていく必要性があるのではないかなというふうには思っております。

 さらに、そういった政治の教育とかいうものを教育現場だけに押しつけていってはしようがないと思うんですね。英語教育だ、メディアリテラシーだ、何だかんだと、必要なことがあれば何でも全部学校の教員がやるということが言われがちですけれども、本当は教育というのは、やはり地域全体、市民全体で取り組むべきことだと思います。

 そういうことを踏まえて考えると、もちろん、私たちのティーンズライツムーブメントのような団体であったりとか、NPO法人のRightsの高橋さんの団体であるとかが、さまざまな政治教育のカリキュラムみたいなものは実際に提供していたりするんですね。だから、そういったものに対しての補助金であるとか、そういったものをしっかりと補助する仕組みなんかもできていくといいのではないかなと。

 そういった民間団体とかに頼っていくということも必要ですし、例えば日弁連であるとかさまざまな団体がございますので、その中で一つ一つ精査をしていって、本当に協力できるという団体に対してはそういった協力を要請するということも必要なのではないかなというふうに思っております。

高橋参考人 それでは、御発言させていただきます。

 一つは、多様な教育の仕組みをつくるということが非常に重要だというふうに思っています。

 例えば、授業においても、イギリスなんかはシチズンシップという教科をつくって教えるということをやっているんですけれども、スウェーデンでもアメリカでも、特にそういった市民科みたいなものをつくっているわけではなくて、各教科の中に物事を考えたりリテラシーをつけるということを入れ込んでいるということがございますので、そういったことをやるというのが一つです。

 もう一つは、GHQが日本に民主主義を根づかせるためにつくった仕組みとして、PTAと生徒会があるという話を聞いたことがあります。

 今現在、学校教育現場において生徒会というのは非常に形骸化しているところがあるんですけれども、私は、若い人たちがさまざまな意思決定だったりとか政治というものに関心を持たない、その原点には、物事を皆さんで合意形成したときの成功体験がないということが大きくあるというふうに認識をしています。

 そういう意味では、こういった生徒会活動みたいなものをもう一度見直しながら、例えば政治のきっかけになるような、物事を決めるとか自分たちのルールをつくり出すとか、こういった教育をしていくことも必要ですし、また、先ほどから述べさせていただいているように、きょうも議員の皆さんが大勢いらっしゃっておりますけれども、政党によらず、幅広い議員の皆さんが学校現場に入っていただいて、政治の現場を学生または子供たちに肌で感じてもらう、こういった場面をつくることも非常に重要なのではないかというふうに考えております。

鈴木(克)委員 本当に、十八歳からの選挙権、今回の国民投票制度で、日本の国が、ある意味でいいようにといいますか、どういう形がいいのかと言われるとまた議論に入りますが、いい形に変わっていくきっかけになってくれればいいなと私は思うんです。

 今のお二方のお話を伺っておって、確かにそれぞれだと思うんですが、例えば日本の場合、やはり都会と田舎がありますよね。そうすると、都会では仮におっしゃるような形の教育ができたとしても、地方で本当に同じような形でできるんだろうかというような問題もあると思います。したがって、その辺のところは、そして、特に政治家のかかわりとか先生のかかわりとか、そういう問題を本当にどういうふうにしていくのかというような制度設計といいますか、ここのところは、相当時間をかけ、しっかりと議論をしていく必要があるんじゃないかな、こんなふうに思っております。

 そこで、もう本当に時間があとわずかになりました。百地参考人、田中参考人にお伺いをしたいんですが、先ほど、ちょっと私、百地参考人の中で、公務員が過度に萎縮をしないようにというところについて、聞き間違いかもしれませんけれども、これはそんな必要はないんだ、おかしいというふうに私は聞いたわけですが、実は我が党がこれは非常にこだわったところでありまして、その辺のことをまず百地参考人から伺いたいと思います。

 それからもう一つ、田中参考人におかれましては、先ほど来の笠井委員とのやりとりの中で、やはり非常に慎重に進めるべきだというふうなお立場というふうに私は理解をしたんですが、その点を、いま一度御答弁をお聞かせいただければというふうに思います。

 それぞれ一つずつお願いいたします。

百地参考人 今おっしゃいましたように、萎縮しないようにという点ですが、一般論として言えば、公務員にも意見表明の自由がありますし、投票運動も認められております。それを萎縮させるようなことがあってはいけない、これは当然だろうと私は思います。

 他方で、現実の問題として考えた場合には、さまざまな法律、国公法、地公法等において、厳しい、いろいろ政治活動の制限があるにもかかわらず、それが破られ、野放し状態にある現実があります。そういう中でこういう言葉を持ってくると、いわばそれを正当化するように受け取る人たちも出てくる可能性があるんじゃないか、その危険性を述べたわけであります。

田中参考人 私が慎重にと言っているのは、とりあえずは、今回の改正案をこの調査会で審議、審査するのをぜひ慎重に進めていただきたい、こういうお願いです。

 さっきから申し上げていますように、改憲手続法の中に盛り込まれた論点、問題には、本当に多岐にわたるものがあります。しかも、委員の皆さんが世界各国を歴訪されて、各国の、有料意見広告もしかり、公務員もしかり、十八歳参政権もしかり、経験を持ち帰って集約されたものであることは、反対をしておった私たちもよくわかります。それを、この後生かさなきゃならない。

 かつ、そのとおりのものであるならまだいいんですが、公務員の部分を含めて、私の立場からいえば、その当時の議論を大幅にねじ曲げるようなものが盛り込まれています。そうすると、その当時、弁護士であろうと、公務員労働者であろうと、メディアの関係者であろうと、多分同じことじゃないかと思うんですが、ここで参考人として陳述をして関与をしました。彼らの議論を通じてつくられたものも多いはずです。少なくとも、その人々にもう一度その問題を戻して、法曹界や、あるいはメディアの世界や、公務員労働者の中で議論をしてもらって、その上でつくっていくことが、これはむしろ、進める皆さんにとって必要なのではないかという立場で申し上げております。

鈴木(克)委員 四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。終わります。

高橋参考人 きょうは、こういった意見を述べる機会をいただきまして、皆さん、本当にありがとうございました。

 日本社会、非常に閉塞感が漂っておりまして、政治に対する不信も広がっております。こういった中で、成長戦略を考えると、若い人の活用というのは不可欠でありまして、政治においても経済同様にダイナミズムをもってイノベーションを起こすためには、ぜひ、若い人たちの政治参加を促進させるために、この八党合意を実現させていただくことを皆さんに御期待申し上げまして、私からの意見陳述とさせていただきたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。

保利会長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。憲法審査会を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.