衆議院

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第5号 平成27年9月25日(金曜日)

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平成二十七年九月二十五日(金曜日)

    午前十一時十五分開議

 出席委員

   会長 保岡 興治君

   幹事 後藤田正純君 幹事 河野 太郎君

   幹事 根本  匠君 幹事 平沢 勝栄君

   幹事 船田  元君 幹事 古屋 圭司君

   幹事 井上 英孝君 幹事 北側 一雄君

      安藤  裕君    池田 佳隆君

      江崎 鐵磨君    衛藤征士郎君

      木原  稔君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    佐藤ゆかり君

      高木 宏壽君    辻  清人君

      土屋 正忠君    寺田  稔君

      中谷 真一君    牧原 秀樹君

      松本 文明君    宮崎 謙介君

      務台 俊介君    村井 英樹君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      若狭  勝君    小沢 鋭仁君

      馬場 伸幸君    吉村 洋文君

      國重  徹君    斉藤 鉄夫君

      浜地 雅一君    赤嶺 政賢君

      大平 喜信君    園田 博之君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 阿部 優子君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十日

 辞任         補欠選任

  武藤 貴也君     辻  清人君

九月二十五日

 辞任         補欠選任

  棚橋 泰文君     黄川田仁志君

  宮崎 政久君     中谷 真一君

  山本 有二君     若狭  勝君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     棚橋 泰文君

  中谷 真一君     宮崎 政久君

  若狭  勝君     山本 有二君

    ―――――――――――――

六月十二日

 憲法九条を改正しないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八一三号)

 日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(斉藤和子君紹介)(第一八一四号)

 憲法九条の改正反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八五〇号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一八五一号)

 同(仲里利信君紹介)(第一八五二号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(斉藤和子君紹介)(第一八五三号)

 同(畠山和也君紹介)(第一九三〇号)

 閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(畠山和也君紹介)(第一九二九号)

同月十六日

 政府に集団的自衛権の行使容認の閣議決定を撤回させることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二一一三号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(斉藤和子君紹介)(第二一一四号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一一五号)

 集団的自衛権行使を容認する閣議決定を撤回し、日本国憲法九条を守り、生かすことに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第二一一六号)

 憲法九条を改正しないことに関する請願(大平喜信君紹介)(第二一一七号)

 憲法改悪に反対し、第九条を守り、生かすことに関する請願(畠山和也君紹介)(第二一九一号)

同月十七日

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(斉藤和子君紹介)(第二三一七号)

 同(畠山和也君紹介)(第二四二五号)

 同(池内さおり君紹介)(第二八一九号)

 同(大平喜信君紹介)(第二八二〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第二八二一号)

 同(本村伸子君紹介)(第二八二二号)

 憲法九条の改正反対に関する請願(斉藤和子君紹介)(第二三一八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三一九号)

 同(大平喜信君紹介)(第二四二六号)

 政府に集団的自衛権の行使容認の閣議決定を撤回させることに関する請願(大平喜信君紹介)(第二四二二号)

 日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(島津幸広君紹介)(第二四二三号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二六二一号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二八一三号)

 同(大平喜信君紹介)(第二八一四号)

 同(真島省三君紹介)(第二八一五号)

 同(本村伸子君紹介)(第二九〇六号)

 閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(畠山和也君紹介)(第二四二四号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二八一六号)

 同(大平喜信君紹介)(第二八一七号)

 同(真島省三君紹介)(第二八一八号)

 集団的自衛権行使を容認する閣議決定を撤回し、日本国憲法九条を守り、生かすことに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第二六二二号)

 憲法を改悪せず、第九条を守り抜くことに関する請願(池内さおり君紹介)(第二七七八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二七七九号)

 同(大平喜信君紹介)(第二七八〇号)

 同(清水忠史君紹介)(第二七八一号)

 同(藤野保史君紹介)(第二七八二号)

 同(真島省三君紹介)(第二七八三号)

 同(本村伸子君紹介)(第二七八四号)

 憲法を守り、生かすよう求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七八五号)

 同(池内さおり君紹介)(第二七八六号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二七八七号)

 同(大平喜信君紹介)(第二七八八号)

 同(笠井亮君紹介)(第二七八九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二七九〇号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二七九一号)

 同(志位和夫君紹介)(第二七九二号)

 同(清水忠史君紹介)(第二七九三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二七九四号)

 同(島津幸広君紹介)(第二七九五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二七九六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七九七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二七九八号)

 同(畠山和也君紹介)(第二七九九号)

 同(藤野保史君紹介)(第二八〇〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第二八〇一号)

 同(真島省三君紹介)(第二八〇二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二八〇三号)

 同(宮本徹君紹介)(第二八〇四号)

 同(本村伸子君紹介)(第二八〇五号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(池内さおり君紹介)(第二八〇六号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二八〇七号)

 同(大平喜信君紹介)(第二八〇八号)

 同(清水忠史君紹介)(第二八〇九号)

 同(藤野保史君紹介)(第二八一〇号)

 同(真島省三君紹介)(第二八一一号)

 同(本村伸子君紹介)(第二八一二号)

 日本国憲法を守り生かすことに関する請願(大平喜信君紹介)(第二八二三号)

 同(藤野保史君紹介)(第二八二四号)

 同(真島省三君紹介)(第二八二五号)

 同(本村伸子君紹介)(第二八二六号)

 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回することに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第二九〇三号)

 同(大平喜信君紹介)(第二九〇四号)

 同(真島省三君紹介)(第二九〇五号)

同月十八日

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(本村伸子君紹介)(第三〇五六号)

 同(島津幸広君紹介)(第三二二九号)

 同(本村伸子君紹介)(第三三四五号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回に関する請願(田村貴昭君紹介)(第三〇五七号)

 同(吉川元君紹介)(第三二三〇号)

 日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(穀田恵二君紹介)(第三〇五八号)

 同(島津幸広君紹介)(第三〇五九号)

 同(本村伸子君紹介)(第三一三三号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第三二三一号)

 同(藤野保史君紹介)(第三二三二号)

 同(吉川元君紹介)(第三二三三号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三三四六号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(本村伸子君紹介)(第三〇六〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三一三五号)

 同(島津幸広君紹介)(第三二三四号)

 同(藤野保史君紹介)(第三二三五号)

 憲法九条の改正反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第三〇六一号)

 憲法改悪反対に関する請願(畑野君枝君紹介)(第三一二九号)

 憲法九条を変えること反対に関する請願(穀田恵二君紹介)(第三一三〇号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三三四九号)

 日本国憲法九条を守り、生かすことに関する請願(穀田恵二君紹介)(第三一三一号)

 同(本村伸子君紹介)(第三一三二号)

 閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(畠山和也君紹介)(第三一三四号)

 同(本村伸子君紹介)(第三三四七号)

 憲法九十六条の改悪反対に関する請願(本村伸子君紹介)(第三三四二号)

 集団的自衛権行使を容認した閣議決定を撤回することに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三三四三号)

 集団的自衛権の行使を容認する閣議決定撤回に関する請願(本村伸子君紹介)(第三三四四号)

 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回することに関する請願(池内さおり君紹介)(第三三四八号)

七月九日

 日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(近藤昭一君紹介)(第三三七六号)

 政府に集団的自衛権の行使容認の閣議決定を撤回させることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三八七号)

 閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(本村伸子君紹介)(第三四六四号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(本村伸子君紹介)(第三四六五号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三五一九号)

 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回することに関する請願(藤野保史君紹介)(第三四八〇号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定の即時撤回に関する請願(阿部知子君紹介)(第三五一六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三五一七号)

 同(吉川元君紹介)(第三五一八号)

 憲法改悪に反対し第九条を守り生かすことに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三五二〇号)

 憲法九条を変えること反対に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三五二一号)

同月二十四日

 憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認を撤回することに関する請願(島津幸広君紹介)(第三五三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第三六〇七号)

 憲法を守り、生かすよう求めることに関する請願(池内さおり君紹介)(第三五四〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三五四一号)

 同(大平喜信君紹介)(第三五四二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三五四三号)

 同(清水忠史君紹介)(第三五四四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五四五号)

 同(島津幸広君紹介)(第三五四六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三五四七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五四八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三五四九号)

 同(畠山和也君紹介)(第三五五〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第三五五一号)

 同(堀内照文君紹介)(第三五五二号)

 同(真島省三君紹介)(第三五五三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三五五四号)

 同(宮本徹君紹介)(第三五五五号)

 同(本村伸子君紹介)(第三五五六号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(島津幸広君紹介)(第三五五七号)

 同(真島省三君紹介)(第三五八五号)

 同(藤野保史君紹介)(第三五九五号)

 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回することに関する請願(島津幸広君紹介)(第三五五八号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三七三六号)

 同(清水忠史君紹介)(第三七三七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三七三八号)

 同(畠山和也君紹介)(第三七三九号)

 同(藤野保史君紹介)(第三七四〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第三七四一号)

 同(真島省三君紹介)(第三七四二号)

 日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(宮本徹君紹介)(第三五七一号)

 同(岡本充功君紹介)(第三六〇六号)

 同(大西健介君紹介)(第三六二七号)

 同(岡本充功君紹介)(第三六二八号)

 同(本村伸子君紹介)(第三六三八号)

 同(清水忠史君紹介)(第三七三二号)

 同(島津幸広君紹介)(第三七三三号)

 同(真島省三君紹介)(第三七三四号)

 閣議決定を撤回し、日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(真島省三君紹介)(第三五八四号)

 同(藤野保史君紹介)(第三六二一号)

 同(笠井亮君紹介)(第三七三五号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三六〇五号)

 同(畠山和也君紹介)(第三七三一号)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、憲法九条を守り生かすことに関する請願(斉藤和子君紹介)(第三六二〇号)

 憲法九条を変えること反対に関する請願(吉川元君紹介)(第三六二二号)

 海外で戦争する国づくりに反対し、九条を守り、憲法を生かすことに関する請願(清水忠史君紹介)(第三七二九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三七三〇号)

 集団的自衛権の行使を容認する閣議決定撤回に関する請願(真島省三君紹介)(第三七四三号)

八月七日

 憲法を改悪せず、第九条を守り抜くことに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三七八八号)

 同(真島省三君紹介)(第三七八九号)

 同(宮本徹君紹介)(第三七九〇号)

 憲法を守り、生かすよう求めることに関する請願(真島省三君紹介)(第三七九一号)

 同(宮本徹君紹介)(第三七九二号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三七九三号)

 同(島津幸広君紹介)(第三七九四号)

 同(真島省三君紹介)(第三七九五号)

 同(宮本徹君紹介)(第三七九六号)

 日本国憲法第九条を守り、生かすことに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三七九七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三七九八号)

 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回し、日本国憲法を尊重・遵守することに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三七九九号)

 憲法改悪に反対し第九条を守り生かすことに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三八〇〇号)

 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回することに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三八〇一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三八〇二号)

 日本国憲法九条を守り、生かすことに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三八〇三号)

 憲法九条を守り生かすことに関する請願(真島省三君紹介)(第三八〇八号)

 日本国憲法第九条を守り、平和のために生かすことに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第三八〇九号)

 平和憲法を守り生かすことに関する請願(中川正春君紹介)(第三八一〇号)

 日本国憲法を守り生かすことに関する請願(宮本岳志君紹介)(第三八三九号)

 同(宮本徹君紹介)(第三八四〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第三八四一号)

 憲法改悪に反対し、第九条を守り、生かすことに関する請願(池内さおり君紹介)(第三八五八号)

 同(清水忠史君紹介)(第三八五九号)

 同(真島省三君紹介)(第三八六〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三八六一号)

 同(宮本徹君紹介)(第三八六二号)

 同(本村伸子君紹介)(第三八六三号)

 憲法改悪反対に関する請願(宮本徹君紹介)(第三八六四号)

 同(本村伸子君紹介)(第三八六五号)

 海外で戦争する国づくりに反対し、九条を守り、憲法を生かすことに関する請願(清水忠史君紹介)(第三八六六号)

同月二十六日

 憲法を守り、生かすよう求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三九二五号)

 解釈による集団的自衛権行使、立法による平和憲法の空洞化、憲法改悪と憲法改悪につながる憲法第九十六条改定反対に関する請願(宮本徹君紹介)(第三九八一号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三九八二号)

 憲法の改悪に反対することに関する請願(志位和夫君紹介)(第四〇二五号)

 憲法改悪に反対することに関する請願(志位和夫君紹介)(第四一二七号)

九月十四日

 憲法を改悪せず九条を守り生かすことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四一四七号)

 立憲主義、民主主義、平和主義を遵守することに関する請願(岸本周平君紹介)(第四一七八号)

 憲法を守り、生かすよう求めることに関する請願(真島省三君紹介)(第四二七八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四三一七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四三一八号)

 同(斉藤和子君紹介)(第四三一九号)

 同(清水忠史君紹介)(第四三二〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四三二一号)

 同(畠山和也君紹介)(第四三二二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四三二三号)

 同(本村伸子君紹介)(第四三二四号)

 現政権の進めている安全保障政策に反対し平和憲法を守ることに関する請願(福島伸享君紹介)(第四二八八号)

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四三二五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四三二六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第四三二七号)

 同(清水忠史君紹介)(第四三二八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四三二九号)

 同(畠山和也君紹介)(第四三三〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四三三一号)

 同(本村伸子君紹介)(第四三三二号)

同月十六日

 憲法の改悪反対、九条を守ることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第四三七八号)

 同(池内さおり君紹介)(第四四五五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四四五六号)

 同(畠山和也君紹介)(第四四五七号)

 同(藤野保史君紹介)(第四四五八号)

 同(堀内照文君紹介)(第四四五九号)

 同(真島省三君紹介)(第四四六〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第四四六一号)

 同(本村伸子君紹介)(第四四六二号)

 憲法を守り、生かすよう求めることに関する請願(池内さおり君紹介)(第四四四六号)

 同(志位和夫君紹介)(第四四四七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四四四八号)

 同(畠山和也君紹介)(第四四四九号)

 同(藤野保史君紹介)(第四四五〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第四四五一号)

 同(真島省三君紹介)(第四四五二号)

 同(宮本徹君紹介)(第四四五三号)

 同(本村伸子君紹介)(第四四五四号)

 日本国憲法を守り生かすことに関する請願(本村伸子君紹介)(第四四六三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五二五号)

 憲法改悪反対に関する請願(大平喜信君紹介)(第四四六四号)

 日本国憲法第九条を守り、日本と世界に生かし輝かすことに関する請願(畑野君枝君紹介)(第四五二四号)

 憲法九十六条の改悪反対に関する請願(本村伸子君紹介)(第四五二六号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 閉会中委員派遣に関する件

 閉会中参考人出頭要求に関する件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

保岡会長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ所属委員に対し、御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 この際、本件調査のため、去る六月十五日、高知県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、団長の私を含め、委員八名であります。

 会議は、六月十五日、高知市において、「改正国民投票法等の施行を受けて、これからの憲法審査会に望むこと」をテーマとして開催いたしました。

 会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと思いますが、今回の会議の開催につきましては、関係者多数の御協力により、円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 お諮りいたします。

 ただいま報告いたしました現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保岡会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

     ――――◇―――――

保岡会長 この際、御報告いたします。

 今会期中、憲法審査会に付託されました請願は四十種三百六十八件であります。各請願の取り扱いにつきましては、幹事会において慎重に協議いたしましたが、憲法審査会での採否の決定は保留することになりましたので、御了承願います。

 なお、お手元に配付いたしましたとおり、憲法審査会に参考送付されました陳情書は五件、また、地方自治法第九十九条の規定に基づく意見書は三十八件であります。念のため御報告いたします。

     ――――◇―――――

保岡会長 次に、閉会中、憲法審査会において、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保岡会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、その派遣地、派遣期間、派遣委員の人選等につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保岡会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十八分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

   派遣委員の高知県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十七年六月十五日(月)

二、場所

   ホテル日航高知旭ロイヤル

三、意見を聴取した問題

   改正国民投票法等の施行を受けて、これからの憲法審査会に望むこと

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 保岡 興治君

       平沢 勝栄君   古屋 圭司君

       中川 正春君   吉村 洋文君

       國重  徹君   大平 喜信君

       園田 博之君

 (2) 意見陳述者

    自営業者        土倉 啓介君

    主婦          竹田 昭子君

    高知大学人文学部准教授 岡田健一郎君

    高知自治体労働組合総連合執行委員長      筒井 敬二君

    高知県知事       尾崎 正直君

    翻訳者         佐野  円君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

保岡座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院憲法審査会会長の保岡興治でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 この際、高知地方公聴会派遣委員団を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、昨年十一月の盛岡地方公聴会に引き続き、憲法審査会として第二回目の地方公聴会をここ高知市で開催し、皆様方の御意見を伺う機会を得ましたことは、大変意義深いことでございます。

 本日お越しいただきました意見陳述者の皆様、開催に御協力をしていただいた高知県庁及びその他関係者の皆様に、心より御礼を申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営について御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願い申し上げます。

 なお、この会議においては、御意見をお述べいただく方々から委員に対しての質疑はできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 また、傍聴の方は、お手元に配付してあります傍聴注意事項に記載のとおり、議場における言論に対して賛否を表明し、または拍手をしないこととなっております。傍聴注意事項を遵守されない方は退場していただくことがありますので、御理解いただきたく存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、私から、衆議院憲法審査会の活動経過について御報告し、あわせて、憲法改正手続の概要を御説明いたします。次に、意見陳述者の皆様方から御意見をお一人十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党古屋圭司幹事、自由民主党平沢勝栄幹事、民主党・無所属クラブ中川正春委員、維新の党吉村洋文委員、公明党國重徹委員、日本共産党大平喜信委員、次世代の党園田博之委員、以上の方々でございます。

 次に、御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 自営業者土倉啓介君、主婦竹田昭子君、高知大学人文学部准教授岡田健一郎君、高知自治体労働組合総連合執行委員長筒井敬二君、高知県知事尾崎正直君、翻訳者佐野円君、以上六名の方々でございます。

    ―――――――――――――

保岡座長 それでは、これより議事に入ります。

 まず、簡単にこれまでの本審査会の活動経過の概要を申し上げます。

 本審査会は、衆議院における憲法論議を担う機関として設置されたものであり、会長である私以下五十名の委員から構成されております。

 平成二十三年十月から本格的に活動を開始し、平成十二年から約五年間にわたり設置されていた憲法調査会における議論などのおさらいをした後、具体的な調査に入りました。

 本審査会は、平成二十四年五月から約一年かけて、日本国憲法の第一章から第十一章について各条章ごとに議論を行い、前文、さらには緊急事態と憲法をめぐる諸問題など、憲法の条文にないものの、特に重要と考えられたテーマについても精力的に意見交換を行ってまいりました。

 続いて、憲法改正国民投票法制定当時に残された課題の解決にも取り組み、その改正法は昨年六月十三日に成立し、同月二十日に施行されたところであります。

 また、昨年十一月には盛岡市において第一回目の地方公聴会を開催し、国民の皆様からの御意見を聴取したほか、今後の憲法審査会で議論すべきテーマについての議論を重ねております。

 本日は、これらの経緯を踏まえて、「改正国民投票法等の施行を受けて、これからの憲法審査会に望むこと」というテーマのもと、幅広い観点から、意見陳述者の皆様の忌憚のない御意見を伺い、今後の活動の参考とさせていただきたいと考えております。

 次に、憲法改正手続の面に関して、国民の皆様に憲法改正手続のことを少しでも知っていただければという趣旨から、その概要、基本的な流れについて御説明したいと思います。

 その際、憲法審査会の活動の報告という意味で、昨年、憲法審査会で審査の上、同年六月に成立、施行された憲法改正国民投票法の改正法の概要についても御説明させていただきたいと思います。

 それでは、お手元にありますパンフレットの六ページと七ページにある憲法改正国民投票法における手続の概要の図をごらんください。

 憲法改正の手続全体を概観すると、左側の「ア 憲法改正の発議までの流れ」、すなわち、国会議員または憲法審査会が憲法改正原案を提出し、国会での議論を経て国民に提案するまでの段階と、右側の「イ 憲法改正国民投票の流れ」、すなわち、国会の発議を受けて国民投票に至る段階という二つの段階に分かれます。

 まず、前者の概要について御説明いたします。左側の六ページをごらんください。

 国会議員が憲法改正原案を提出するには、提出者のほか、衆議院では百人以上、参議院では五十人以上の賛成者が必要とされます。

 他方、憲法改正原案については、国民に開かれた形で、特に慎重かつ十分な審議が要請されます。この趣旨に鑑みれば、日本国憲法の調査を所管事項の筆頭に掲げている憲法審査会において、事前に、改正の必要性があるかないか、あるとした場合には、その具体的な内容及び論点に関する調査がなされ、衆参両院の意思の疎通を図りつつ、これらを踏まえて憲法改正原案が立案され、憲法審査会から提出されるというのが典型的な手続との認識が示されてきました。

 憲法改正原案は、内容において関連する事項ごとに区分して発議するものとされています。これが個別発議の原則です。

 憲法改正は、基本的に国家の基本ルールの変更ですから、これに当たっては民意を正確に反映させることが必要で、平成十八年十一月三十日の日本国憲法に関する調査特別委員会では、例えば、「第九条の改正と環境権の創設という全く別個の事項について、それを一括して国民投票に付するということは明らかに好ましくない」と答弁されています。このようにして、内容が異なる憲法改正案は、それぞれ別個に国民投票にかけられることになります。

 次に、このように提出された憲法改正原案は、提出された議院の憲法審査会で審査されます。憲法審査会では、一般の法律案よりも慎重な手続で議論することが想定されており、その一つのあらわれが、国民の意見を聞くための公聴会の開催の義務づけです。また、一般の法律と違い、会期をまたいで議論する場合でも、特別の手続は必要ありません。これは、提出された憲法改正原案が、その同じ国会の会期中に議決されることは想定されておらず、複数の会期にわたって継続して議論することが想定されているためです。

 憲法審査会で可決されれば、憲法改正原案は本会議へ移され、そこで総議員の三分の二以上の賛成があれば、もう一方の議院、すなわち、仮に衆議院が先に審査した場合は参議院に送られます。

 もう一方の議院でも同様の審査が行われ、憲法審査会の議論を経て、本会議での総議員の三分の二以上の賛成を得て可決されれば、その可決をもって憲法改正の国民への発議となります。

 国会が憲法改正案を発議し、国民に提案されると、その後は、憲法改正国民投票の段階に移ります。資料の右側の七ページに、その概要が掲載されています。

 まず、憲法改正国民投票の期日を定めなければなりません。その期日は、憲法改正の発議後速やかに国会の議決で定めるのですが、発議をした日から起算して六十日以後百八十日以内とされています。

 投票権者については、より多くの国民が国民投票に参加できるようにという観点から、日本国民で満十八歳以上の者とされています。ただし、経過措置として、平成三十年六月二十日までは二十歳以上の者となります。

 憲法改正案が発議され、投票日が決まれば、その投票日までに、憲法改正の内容について国民に十分に知ってもらうことが必要ですが、国民に対する広報、周知は、客観的かつ中立に行わなければなりません。

 そのために、国会に、衆参両院の議員おのおの十名、合計二十名で構成する国民投票広報協議会が設置されます。この広報協議会は、憲法改正案の内容について周知を行う国民投票公報の作成などを行う機関です。

 国民投票公報は、憲法改正案やその趣旨等について客観的、中立的に記載した部分と、賛成意見、反対意見の両方を公正かつ平等に記載した部分から成るものです。

 また、同じ情報は、インターネット上にホームページを開設して周知、広報に努めるほか、テレビや新聞などでも憲法改正案に関する広告を行うこととされています。

 憲法改正案に対し、他人に賛成、反対の投票を勧誘する行為を、国民投票運動といいます。憲法改正という最重要事項について判断することから、全ての国民の意見表明や国民投票運動は、原則として自由となっています。

 ただし、公務員や教育者の地位の利用及び大規模な買収行為を禁止するといった制限が設けられています。さらに、新聞等の活字メディアと異なり、テレビ等については一定の規制があり、国民投票が行われる日の二週間前に限って、スポットCMの放送を禁止しています。

 国民投票の具体的な進め方や投票方法などは、基本的には一般の国政選挙と似たようなものになりますが、幾つかの重要な相違点があります。

 お配りしたパンフレットは、裏表紙から、日本国憲法を初めとした関係法律が掲載されております。こちらから始まる漢数字の十八ページをごらんください。上段に投票用紙のイメージが掲載してあります。

 国民投票の投票方式は、投票人の意思を酌み取ることを重視し、また無効票をできるだけ少なくするよう、わかりやすい方式がとられています。投票は、あらかじめ投票用紙に印刷された賛成、反対のいずれかを丸で囲んで行うものとされています。白票や他事記載、例えば自分の名前を記載したりした票は無効とせざるを得ませんが、賛成または反対の文字をバツの記号、二重線等で消した投票も有効とすることとされています。

 先ほど述べた個別発議の原則ですが、これに対応して、賛否の投票も、提案されている憲法改正案ごとに投票を行うこととなっています。これは個別投票の原則といいます。

 先ほどの例を用いれば、憲法九条を改正する憲法改正案と、環境権の創設を目的とする憲法改正案との二つの憲法改正案が発議された場合には、それぞれの憲法改正案ごとに投票用紙を受け取って記入、投票をすることになります。すなわち、まず、九条改正案について投票用紙をもらい、賛否いずれかに丸をつけて、これを投票箱に投じ、その後、環境権創設の改正案の投票用紙をもらって、賛否いずれかに丸をつけて、これを別の投票箱に投ずるといったぐあいです。

 また、憲法改正案に対する賛成の投票数が投票総数の二分の一を超えた場合は、国民の承認があったものとなります。なお、この場合における投票総数とは、賛成投票数と反対投票数の合計数、すなわち有効投票の総数のことをいい、無効票や棄権は入りません。

 以上が、憲法改正の手続の概要です。

 これらの手続を定めるため、平成十九年に憲法改正国民投票法が制定されました。しかし、制定当時には解決に至らなかった課題が残されており、これらに対処するために、憲法審査会での審査を経て、昨年六月に改正法が制定されました。

 ここからは、昨年六月の改正内容について御説明いたします。

 お手元に配付いたしましたパンフレットの八ページを御参照ください。

 まず、選挙権年齢の十八歳への引き下げについてですが、この改正法施行後四年を経過するまでの間、つまり平成三十年六月二十日までの間は、憲法改正国民投票の投票権年齢は二十歳以上とし、それ以降は自動的に十八歳に引き下げることとしました。国民投票の投票権年齢が十八歳となるため、同じ参政権グループに属する選挙権年齢も十八歳に合わせていく必要があります。

 このため、選挙権年齢の引き下げについては、改正法の施行後速やかに、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずる旨の検討条項を改正法附則に規定しました。

 この規定を受けて、選挙権年齢を十八歳に引き下げるための公職選挙法改正案が、本年三月五日に国会に提出されました。同法案は、去る六月四日に衆議院本会議で可決され、今まさに参議院で審議中です。早ければ、来年の参議院選から選挙権年齢が十八歳に引き下げられることになります。

 第二に、公務員の政治的行為に係る法整備です。

 公務員であっても、国民としての立場で憲法改正に対する賛否の勧誘、意見表明を行うことは広く認められるべきであるという政策判断のもと、純粋な国民投票運動については、公務員もこれを行うことができることとしました。

 他方で、公務の中立や公正の確保の観点から、当該勧誘行為が公務員に係る他の法令により禁止されている他の政治的行為を伴う場合は、この限りでないとしました。

 また、組織により行われる勧誘運動、署名運動及び示威運動の企画、主宰及び指導並びにこれらに類する行為に対する規制のあり方について、改正法施行後速やかに、検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする旨の検討条項を改正法附則に規定しました。

 さらに、在職中、国民投票運動を行うことができない公務員として、新たに、裁判官、検察官、警察官などを加えました。

 最後に、国民投票の対象拡大についてですが、今回の改正では、憲法改正問題についての国民投票制度に関し、間接民主制との整合性の確保などに留意することから、改めて、その意義及び必要性について、さらに検討を加え、必要な措置を講ずる旨の検討条項を改正法附則に規定しました。

 また、衆議院憲法審査会における法案の採決に際しては附帯決議が付されており、それはパンフレットの漢数字二十三ページに掲載されています。そこでは、改正法の施行後二年以内をめどに、選挙権年齢を十八歳に引き下げるため、必要な法制上の措置を講じることとされていますが、選挙権年齢の引き下げ法案が国会で審議中であることは既に述べたとおりです。

 選挙権年齢の引き下げに伴い、今後、特に、高校などの教育機関における憲法教育、政治教育や、それらの前提となる歴史教育をしっかりと行う必要があります。

 以上、憲法改正の手続に関する基本的な流れと、憲法改正国民投票法の改正法の概要について御説明させていただきました。

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保岡座長 これより意見陳述者からの御意見の開陳を行います。

 発言時間は一人十分以内として、その経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず、土倉啓介君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

土倉啓介君 皆さん、こんにちは。

 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 時間が限られていますので、始めます。時間内に発言できない内容は、資料として配付しました文書に掲載しましたので、ごらんいただければ幸いです。

 平成二十七年五月十四日に、自衛隊の活動範囲を広げる安全保障関連法案が閣議決定されました。事実上の海外派兵と同様となりますから、命の危険にさらされる場面がふえるでしょう。紛争地域の平和の維持を図るPKOの警護でも、危険なところは他国の軍隊にお願いするのでは、迷惑になるだけでなく、邪魔になるので、他国の軍隊と同様の武器使用は認めるべきです。

 また、いわゆるグレーゾーン事態での必要最低限の自衛権の行使が曖昧なままでは、危険性が増します。イラク特措法と同様の安全が確保されている非戦闘地域だけしか行わないというのでは、机上の空論です。非戦闘地域にもロケット砲が飛んでくるものと考えるのは、普通のことです。

 国家非常事態や緊急事態でなくても、重要影響事態で後方支援をすれば、武力行使をする敵国とみなされて攻撃対象になりますし、限定的な武力行使では、その脆弱性をつかれ、被害を受けるだけでなく、撤退も余儀なくされることになります。自衛隊だけ一時中止するとか撤退するのでは、法に規定しているとしてアピールしても、逃げ腰だと誤認され、国際社会の信頼は得られないと思います。

 自衛隊のリスクを最小化するとか、極小化する、安全対策をとる、安全確保をすると一方的に言っても、相手は敵です。非戦闘地域を狙わないことはあり得ないです。武力行使できない自衛隊は狙いやすいです。楽観的な見直しである憲法解釈の変更は、迂遠な手法でびほう策を講じているとしか思えません。具体的危険性があるだけでなく、脆弱なもので、自衛隊員を破滅的、危機的状態に陥れることになりますから、反対です。

 私の意見の要旨をごらんいただいた方の中には、戦争を起こそうとしていると誤解された方がおられるかもしれません。そうではありません。私は、過去に何度も戦争はしてはならないと発言してきました。それでも、備えは必要です。保険のように、最悪の事態を考慮しなければならないと思います。

 戦後、日本人の多くは、戦争の反省と後悔をしてきました。核兵器の報復による消滅の危機感を経験した人類は、他国と同様の軍隊を明文化したところで、また同じことを繰り返す愚かな存在なのでしょうか。

 自称イスラム国のテロリズムの脅威が現実にあります。テロリストなどの掃討は必要です。警察権の行使では対処できない場合があります。

 例えば、国外で誘拐、監禁された邦人の問題では、自衛隊に救出をお願いするための問題解決策は必要なのです。その際には、丸腰で加害者等に立ち向かわせるわけにはいきません。憲法改正の反対者は、対案を話し合いのみにしていますが、拉致された邦人の救出はせず、長期間の話し合いで解決しない現状でいいのでしょうか。身内が誘拐されて、身の代金交渉だけでいいとお考えになるのでしょうか。加害者の要求をのめば、またぞろ誘拐されるでしょう。ですから、それなりの武力行使を認めないと、問題の解決には至らないと思うのです。

 事前の国会での承認とか必要最低限の装備や個別自衛権に限定した武力行使は、現場に過度の緊張をもたらし、危険度が増します。さらに、米軍の兵士が日本人を守ってくれるのに、米軍が攻撃されて助けに行かないのでは、日本人を今後守ってくれないことになります。両国の関係にも支障が出ることになります。ですから、米国に限らず、重要な関係国に対しては、集団的自衛権を行使できるようにすべきだと考えるのです。

 以下は、項目ごとに、こうした方がいいのではないかという意味で、私見を述べることにします。

 前文についてです。

 「これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。」「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」は、抽象的な原理の宣言といえども、わかりにくく、現実と乖離しています。また、必要と思わないので、削除すべきです。必要なら、侵略戦争並びに他国の占領はしないとの文言を入れるのもいいでしょう。

 財政については、国と地方の債務残高は一年間の国家予算の五倍以内とするを新設します。軍事費や集団的自衛権の行使による歳出の歯どめは、この規定により制限します。

 戦争の放棄です。

 九条があることにより、日本が紛争を起こさず他国にも侵略されていないとする意見がありますが、日米安全保障条約及び米軍の核抑止力、思いやり予算があったからこそ我が国は平和と経済的繁栄を享受してきたと考える方が、事実を正確に捉えていると思います。また、米国の核抑止力に依存しなければ、必要最小限度とされる自衛権の行使だけでは我が国の安全は確保できないとする意見がありますが、これはもっともなことだと思います。

 自衛隊は、憲法上、軍となっておらず、装備は不十分なので、個別自衛権の行使能力が乏しいのですから、自衛隊員を含めた国民の生命財産を守り切れないので、憲法改正が必要なのです。最近の政府の集団的自衛権行使に関する解釈変更や安全保障の関連法の整備は、憲法の形骸化あるいは憲法規範の軽視になります。憲法改正なしでは、欺瞞に満ちています。現状の喫緊の深刻な問題を真正面に捉えておらず、現実との乖離が指摘されている以下の条文は改正すべきです。

 戦争の放棄は、国土等の防衛及び自国民の救済とし、条文は、第九条第一項、日本国民は、国際平和を願うが、他国民の侵略行為等やテロリストの非人道的行為により日本国民の権利を侵害されたとき並びに我が国に対し宣戦布告した国等が弾道ミサイル等の発射準備に入った段階で自衛権の行使として武力を行使できるものとするにするのです。

 現状の自衛隊の装備では、化学兵器、生物兵器もしくは毒素兵器または対人地雷に対処できず、多大な被害を受けます。ミサイルは、短距離なら数分以内で届きます。判断する時間の猶予はありませんから、一定の要件において多大な被害を受ける前にミサイル基地を攻撃するのは、自衛権の行使です。自衛隊法八十二条の三の弾道ミサイル等に対する破壊措置では不十分なのです。

 なお、その改正時には、自衛隊法九十五条や周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律の二条二項並びに同法十一条三項も同様の規定を明記すること、並びにPKO法の改正など、同時に変更する必要があります。

 例えば、「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」を、対応措置の実施は、武力による威嚇に当たるものであってはならないにするのです。瞬時の判断を要する場合に備えなければなりません。

 九条二項は、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力を保持する、国の交戦権は認めるとします。自衛隊を国軍などに名称変更することはふさわしいでしょう。個別的自衛権の、自衛のための必要最小限度の武力の行使では、不測の事態に対処できません。加害者は弱点をつくものだからです。再軍備だとか軍国化と批判されますが、自衛権行使とはいえ、現状に対抗できるだけの武力を備える必要があると思います。この改正に反対意見を有する自衛隊員が退職するのは自由とします。

 国際紛争を解決する組織として国際連合があるので、「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」は削除すべきです。なお、国際連合にも問題が少なくないことは指摘しておきます。

 そして、三項を新設し、国際協力としての自衛隊の海外派遣と集団的自衛権は以下に挙げる限定的要件のもとに行使できるとします。現在話し合われている安全保障関連法案の限定的な集団的自衛権の行使の要件である存立危機事態は、わかりにくいです。集団的自衛権の行使は抑制的、限定的に行使すべきではないですが、反対の声が多いので、我が国が攻撃され、特定あるいは重要関係国が我が国に対して安全保障条約並びに集団的自衛権を行使している場合に限り、我が国が集団的自衛権を当該国の軍隊の部隊に対して行使できるとします。

 軍事費は、財政上の制限を設定するのは必要でしょう。その制限は、財政赤字の対GDP比は約七%以下としてはいかがでしょうか。

 地方自治についてです。

 地方議会を議院内閣制とし、議員から首長を選ぶという制度をとる意見は賛同します。

 道府県のある地域の市の人口が二百万人を超えるときは、住民投票で、投票者数の四五%以上の得票で道府県と市が合併し都に変更できる、都が複数ある場合で、非常事態が起こった際は、いずれかの都が首都機能を代替できるようにするを新設します。東京一極集中の危険性は、何度も指摘されてきました。やはり危険の分散は必要ですし、バックアップ機能は準備しておくべきです。

 議員を含めた公務員の人件費は、第三者機関で決めます。

 権利、義務。

 十四条には、障害により差別されないようにすることを加える必要があると思います。

 それから、宗教団体の構成員や定住外国人に地方参政権を付与すべきではありません。日本の参政権は、日本国民の固有の権利だからです。宗教の名をかりたカルトやテロリスト等が社会秩序を脅かすからです。

 環境権を憲法に明記する必要はないとする意見には賛同します。人類は、そんな当たり前のことを法制化あるいは明文化しないと守れないのでしょうか。疑問に思います。

 非嫡出子の法定相続分に関する民法規定は、そのままにした方がいいと思います。

 選挙人の投票価値の不公平、格差は第三者機関で是正内容を決め、直ちに是正する、従わないときは選挙無効とするを新設します。

 政教分離。

 神社等の特定の宗教施設に首相や国会議員が参拝するなどの行為は政教分離規定により制限されないを新設します。今こうして平和裏に過ごしていられるのは、命をかけて戦ってこられた方々のおかげなのです。そういう苦難に耐え、戦後日本の復興の礎になられた故人を弔ったり供養することを非難する方が、非人道的だと思います。

 家族、家庭に関する事項です。

 同性でも結婚できるようにし、民法等で、国民は婚姻届の提出の際、選択的夫婦別姓を選択できるを新設した方がいいと思いますから、憲法においても整合できるようにします。

 国会についてです。

 優位に立つ衆議院に対して、カーボンコピーとやゆされる参議院は不要です。違憲審査は裁判所の役割としてあるのですから、チェック機能は参議院の特権ではないのです。迅速な意思決定をするため、二院制を維持せず、憲法改正後の次回の参議院選挙時に参議院を廃止し、一院制を採用します。

 政党の比例候補で当選した議員が所属政党に除名された場合は、自動的に議員資格を剥奪することにします。

 最高裁判所裁判官の国民審査制度についてです。

 裁判員制度で、市民感覚と大きく乖離している二審と最高裁の判断が続いています。裁判員制度による判決が最高裁で覆されるように、一般人が審査するには困難な面があります。弾劾裁判所がありますし、判決文すら読まない人が行う国民審査制度は形骸化しているという意見に賛同しますから、廃止すべきであるとする意見に賛同します。

 憲法改正要件についてです。

 第九章「改正」の第九十六条の「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、」は、この憲法の改正は、議決に出席した各議院の総議員の二分の一以上の賛成とします。あるいは、二分の一以上を過半数とするのでもいいでしょう。

 国民投票法制についてです。

 特定の国民にとって重要な問題について是非を問う国民投票制度を導入します。議会制民主主義を優先すべきだとする意見や、国民の意見を反映するのは危険だとする意見がありますが、国民主権ですし、安全神話のように既得権益を守ろうとしたため、過度な安全に対する誤認があり、津波対策を講じることなく原発の事故が発生したのですから、客観的に判断できる国民投票制度は導入するべきです。

 議案を例示すると、日米安保を解消し、沖縄等の米軍基地を撤去するかどうかや、原発の稼働期間延長の是非、原発をベースロード電源にするか否かです。原子力規制委員会は、最新の知見でも安全を保証できないのです。沖縄等の米軍基地を撤去するかどうかについては、沖縄県内の有権者に限り投票できるようにします。実施は、衆議院議員選挙や知事選挙などと同時にできるようにします。全国一斉にする必要はないです。そして、その結論は、努力義務を政府に課すのではなく、施策に反映するよう取り組まなければならないことにします。

 自民党の日本国憲法改正草案についてです。

 以下に、与党自民党の日本国憲法改正草案対照表について言及します。

 目次を設けるのはわかりやすいと思います。

 前文の、我が国は……

保岡座長 いただいている原稿の残りも承知しておりますので、それも参考にさせていただきますので、発言は以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。

 次に、竹田昭子君にお願いいたします。

竹田昭子君 主婦の竹田です。

 余り詳しい憲法知識があるわけでもなく、深い知識があるわけではありません。ちょっと勘違いしていたところもあるみたいなので、済みません、軽い気持ちで聞いてください。

 私が今回の憲法改正草案を見て思うことは、条文のほとんどが改正されており、これは憲法改正ではなく、内容的に見ても新憲法の制定ではないかと思うことです。

 改正とは、条文個別の条項を審議して、例えば、九条二項を改正したり、十三条に新しい人権を書き足したりと、個別に条項を改正するのが憲法改正で、条文の全面改正や平和主義など憲法の基本原理を変えるのは、憲法改正ではなく、新憲法の制定ではないかと考えます。

 そうであれば、九十六条の範囲をはるかに超え、革命が起きなければできないような新憲法の制定を改正手続でやろうとしていることに疑問を感じます。憲法改正には法的な限界があると思います。全面改正は、この限界を超えていると思います。

 さて、憲法の改正には国会の発議と国民の承認が必要とされますが、国民の承認には、その過半数の賛成が必要とされています。有権者の過半数なら問題はありませんが、有効投票の過半数なら、最低投票率を設けるべきです。

 余りにも低い投票率では、国民の総意とかけ離れており、後世において、押しつけ憲法ならぬ最低投票率憲法として、またしても改正への口実にされかねません。憲法がたびたび改正されることは望ましいことではありません。

 また、低い投票率は、投票をボイコットした人の意思、つまり、改正に反対である人の意思表示と考えることもできます。憲法制定権者は国民であり、国民の意思表示は多種多様であり、低い投票率は、積極的に賛成しないことの意思表示だと考えます。

 ゆえに、最低投票率を設け、それを下回る投票率なら憲法改正は無効とするのが、国民主権にそぐうと考えます。

 少し話はかわりますが、今回、憲法の改正が認められ、新憲法が制定されたなら、反対した人もその結果には従わなければなりません。気に入らなくても、間違っていると思っていても、新憲法は私たちの憲法となります。

 改正された憲法が正しいかどうか、憲法の正当性を考えるとき、その憲法の下で暮らしていく者にとって、その手続の正当性、つまり、憲法がどのような手続によってつくられたか、それが問題になってくると思います。たとえその憲法が正しくなくても、正しい手順を踏み、正しい手続でつくられたなら、憲法の正当性は認められると思います。手続の正当性が憲法の正当性の根拠になると思います。

 平成二十二年に施行された国民投票法は、その意味では非常に大切な法律だと思います。手続は、厳格に、納得のいくように定めてもらいたいと思います。

 国民投票法の各論に入ります。

 まず、国民投票法では、投票期日を国会の発議後六十日から百八十日以内と定められていますが、憲法改正の重要性を考えると、少なくとも一年は必要です。国の根幹になる憲法を改正するのですから、もっとゆっくりじっくり考える時間を国民に与えるべきだと思います。

 次に、国民投票運動においてですが、投票期日前十四日間はテレビ、ラジオCMが禁止されますが、情緒に訴えるテレビ、ラジオCMは、最初から全面的に禁止した方がいいと思います。国民は情緒に流されやすく、そのときの雰囲気で投票しかねず、きちんとした判断ができるかどうか、テレビ、ラジオCMでは疑問です。新聞やポスターなど、紙面によるものの方がよいと思います。

 次に、投票方法ですが、賛成、反対を選んで丸をつける方法です。全面改正されている草案に、全面的に賛成なら当然賛成で丸でよろしいのですが、一部賛成、一部反対の国民も多いと思います。一部でも反対に丸とした方がいいと私は考えますが、その反対の人もいるでしょう。項目ごとに国民投票に付すという方法もあります。

 先ほど説明を聞いて、このことは私が誤解していたことだとわかりました。済みません。

 最後に、国民投票法が施行され、憲法改正が現実味を帯びてきました。憲法は権力を縛り、国民の権利と自由を守るものと教えられてきました。憲法改正を政府側から持ち出し、推し進めるのは、危険性を感じます。

 憲法の前文に、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。」とあります。私のお気に入りの憲法の一節ですが、政治家の方々にもう一度この意味を確認していただきたいと思います。

 憲法を法律に合わせと立憲主義を破壊するようなことをおっしゃった大臣、憲法は最高法規だと知ってください。安倍首相、あなたの総理大臣というその地位は、憲法によって与えられた地位だと知ってください。憲法を軽々しく扱わないでください。立憲主義をもっと、もう一度しっかり勉強し直してください。

 憲法を守らなければならないのは権力者側で、その人たちが自分たちに都合よく憲法を変えてはいけないと思います。

 これで私の意見陳述を終わります。

保岡座長 ありがとうございました。

 次に、岡田健一郎君にお願いいたします。

岡田健一郎君 高知大学人文学部で憲法を担当しております岡田と申します。

 本日は、発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 今回私がお話をしたいのは、昨年七月に政府が行った、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更についてです。私には、この解釈変更が、日本の平和主義だけではなく、憲法改正問題や立憲主義、そして憲法審査会に対しても深刻な影響を与えているように思われるからです。

 そこで、まず取り上げたいのが、憲法解釈の変更と憲法改正との違いです。

 実際に日本国憲法を見てみるとわかりますが、その条文は、その多くが抽象的な言葉遣いになっています。それは、憲法というものが、いわばこの国の形を定めるものであることに由来します。

 すなわち、国や社会の形をあらかじめ全て細かく決めておくことは難しい、したがって、ある程度形の大枠を抽象的に書いておく、そして、時代が変化しても、憲法の解釈を変えていくことによって、そのたびごとに憲法改正の手続を踏まなくても、社会の変化に対してある程度柔軟に対応していくというわけです。したがって、一般論として、憲法解釈の変更は、それ自体、絶対に許されないというわけではありません。

 しかしながら、ここには大事なルールがあります。それは、憲法解釈の変更には限界があるということです。条文から大きく逸脱した解釈は許されません。したがって、解釈の限界を超えて憲法の内容を変えたい場合には、憲法九十六条に従って憲法を改正せよというのが、現行憲法のルールなのです。このことは、憲法九十九条に定める憲法尊重擁護義務からも要請されると考えられます。

 先ほども述べたとおり、憲法は人権や統治機構など、国家や社会の基本原理を定めたルールですが、その内容が政府の解釈変更によって頻繁に変わることになれば、人々は一体どのように行動すればいいのかわからなくなってしまいます。これが、最近よく言われる法的安定性の問題です。

 さらに、憲法九十六条は、憲法改正のために、国会の議決に加え、国民投票をも要求しています。したがって、日本において憲法を改正する決定権は、最終的には有権者にあると考えられます。本来なら憲法改正手続を踏むべき場面なのに、政府が憲法解釈の変更によってその場面を切り抜けようとするいわゆる解釈改憲は、政府が有権者から憲法改正権を奪うことにほかなりません。

 しかも、今回の解釈変更は、数ある憲法の条文の中でも、平和主義という国家の基本原理というべき内容にかかわるものでした。

 自衛権に関する従来の政府解釈は、自国が攻撃を受けた場合にのみ反撃が可能になるというものでした。しかし、新しい政府解釈は、自国が攻撃されていなくても実力行使が可能であるという集団的自衛権の行使を認めるものです。これら新旧の政府解釈の間には、はっきりとした断絶があります。

 私は、自衛隊や個別的自衛権を認める従来の政府解釈自体、憲法九条の解釈として許される一線を越えていると考えています。しかしながら、今回の解釈変更は、それをさらに一層踏み越えたものであります。最近、政府・与党は、日本を取り巻く安全保障環境の変化や砂川事件の最高裁判決などを持ち出して解釈変更の正当性を主張していますが、いずれも説得力に欠けると言わざるを得ません。

 なるほど、確かに安全保障環境は変化しています。だから、私はそうは思いませんが、日本の平和のためには集団的自衛権を行使できた方がよいのではないかと考える方が少なからずいらっしゃるとしても、それは無理なことではありません。しかし、そうだとすれば、先ほども述べたように、解釈変更ではなく、憲法改正によって対応することが筋と言えます。

 さて、ここまでの話は最近よく議論されていると思います。ですが、私がさらに危惧するのは次のような問題です。すなわち、このような解釈変更が許されるのならば、もはや、どんな条文を、いかなる内容に解釈変更することさえ可能ではないかということです。

 例えば、従来の政府解釈は、徴兵制が苦役を禁じる憲法十八条などに反するため許されないとしてきました。しかし、集団的自衛権に関する解釈変更が許されるのならば、日本の安全保障環境の変化などを踏まえると、必要最小限度の徴兵制は憲法に反しないなどと政府解釈を変更し、徴兵制を導入することも可能ではないでしょうか。まさか、そんなことはあり得ないと思われるかもしれません。しかし、政府は昨年七月、国家の基本原理の解釈を、憲法の改正手続をとることなく変えたのです。もしそうだとすれば、徴兵制に関する解釈変更がどうして不可能だと断言できるでしょうか。

 最近では、憲法改正の候補として、環境権や国家緊急権などが議論されています。しかし、それらの改正を行っても、結局その時々の政府の望むように条文が解釈されてしまうのならば、そもそも憲法改正など無意味、あるいは有害ではないでしょうか。

 例えば、国家緊急権というのは、戦争や災害などの緊急時に、憲法の人権条項などを一時停止して、政府を中心とする国家権力の活動範囲を通常よりも拡大する仕組みです。そうしないと、いざというとき、政府が必要に駆られて憲法の枠組みを超えてしまいかねないというのがその理由です。

 確かに、これはこれで一理ある考え方です。しかし、ここには大事な前提条件があるのです。それは、平時であっても緊急事態であっても、政府ができるだけ憲法を守ろうと努力するということです。

 もしこの前提条件が成り立っていない場合はどうでしょうか。国家緊急権によって与えられた権限を政府はさらに踏み越えて活動し、国家緊急権に関する規定がない場合よりも結果として市民の人権がより広く侵害されてしまうというのは、私の考え過ぎでしょうか。

 要するに、憲法改正を考える際には、私たちの政府が憲法を守るということを私たちがどこまで信頼できるのかがポイントになるわけです。今ある憲法は守らないけれども、改正後の憲法なら守りますというのは、いささか都合のよい話と言わざるを得ません。

 そして、昨年の解釈変更を踏まえると、残念ながら、現在の政府にそのような信頼を置くことは、私にはいささか難しいように思われます。そうだとすれば、そもそも現在の日本は憲法改正を議論する環境にないと言わざるを得ません。これは、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議などを審査することをその使命とする憲法審査会にとっても、深刻な問題ではないでしょうか。したがって、少なくとも政府による昨年の解釈変更は撤回されるべきだと私は考えます。

 さて、ここまでの話をお聞きになって、憲法学者とは何と面倒くさいこと、あるいは融通のきかないことを言うのだろうと思われるかもしれません。しかし、この面倒くささ、融通のきかなさは、この日本国憲法がよって立つとされる、いわゆる近代立憲主義の性格に由来します。すなわち、人々の基本的人権を守るために国家権力を法で縛るという考え方です。

 私は、この近代立憲主義は一つの人間像を前提にしていると考えています。

 それが典型的にあらわれているのは、最近知人から教えてもらい、きょうの私の資料にも載せた、アメリカ憲法の制定時に活躍した政治家ジェームズ・マディソンの、人間は天使ではないという言葉です。人間は天使ではないからこそ政府をつくるわけですが、残念ながら、その政府で働く人間たちもまた天使ではありません。民主的に選ばれたどんなにすばらしい政治家も、天使ではない以上、時には間違えることもあるし、もしかしたら、時にはわざと悪事を働くことがあり得ます。したがって、その暴走を防ぎ、人権を守るために、憲法で国家を拘束する必要があるのです。

 この、ある種の人間に対する不信感、言いかえれば、自分自身も含めた人間の弱さ、不完全さに対する冷徹な認識は、トーマス・ジェファーソンの、信頼は、どこでも専制の親である、自由な政府は信頼ではなく猜疑に基づいて建設されるという言葉、さらには、その百年後、まさにこの土佐、高知の自由民権活動家植木枝盛が述べた、世に良政府なしという言葉にも見ることができると思われます。

 しかし、恐らく、彼らはいたずらに悲観主義に陥っていたわけではありません。一方で、彼らは確かに、人々の力や民主主義に希望を見ていたように思われます。そして、その民主主義を可能にする仕組みこそが、近代立憲主義だったわけです。

 だからこそ、権力を縛る法を権力がみずから緩めては困るのです。憲法学が憲法解釈の限界にこだわる理由はここにあります。

 本日はちょっと時間がないため、憲法九条の問題や、私の資料の最後につけた伊藤博文、吉田茂の言葉については省略し、後ほどもし御質問などがあればお話しさせていただきたいと思います。

 最後になりますが、現在国会で審議中の安保関連法案、並びに昨年の政府による憲法解釈の変更を撤回した上で、この憲法審査会が、今回の解釈変更の問題について、憲法、国際法、国際政治などを初めとする幅広い専門家、そして広範な市民が参加した上でじっくりと時間をかけて検証されることをお願いして、私からの意見陳述とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

保岡座長 ありがとうございました。

 次に、筒井敬二君にお願いいたします。

筒井敬二君 高知自治体労働組合総連合の筒井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 お手元に、当日配付の発言メモをお配りしているかと思います。それに沿って発言いたします。

 四つのパートに分けておりますが、冒頭、おわびです。右肩に、私の名前の横に所属を書いておりますが、自分でつくった資料であるにもかかわらず団体名を誤っておりまして、配付資料の私の肩書のとおりでございますので、御容赦願いたいと思います。

 まず一つ目でありますけれども、今般国会でも審議をされておりますが、安全保障関連法案にかかわって発言をしたいと思います。

 集団的自衛権の行使容認とその具体化としての安全保障関連法案ですけれども、私としては率直に、疑問と不安がございます。専守防衛についても、その定義づけといいますか、これは国会審議の答弁の中で新たな定義づけがされたのではないかというふうに受けとめています。

 これまでの専守防衛というのは、武力攻撃を受けたときに、自衛のために必要最低限度の防衛力を行使する、保持する防衛力も自衛のための必要最低限度のものに限られるということだったかと思います。

 これからの専守防衛というのは、集団的自衛権の行使を容認した上で、武力行使の新三要件への適合を条件というふうになっているかと思いますけれども、これは憲法九条との関係でいきますと、拡大変更というのは表現が適切ではないのかもしれませんが、解釈の見直しでとどまることができるのだろうか、転換、飛躍ではないかというふうに受けとめています。

 集団的自衛権というのは、基本的には日本の領土、領海、領空の外側で行使されるのではないかというふうに理解をしておりますけれども、憲法九条というのは、日本の外には出ていきませんよ、最低限の実力は持つにしても、外へは出ていきません、そこに線引きがあったのではないかというふうに理解をしています。

 そういう点で、安全保障関連法案は、海外での軍事活動というものを可能にする、しかも地理的制約も示されていないというふうに理解をしていますので、九条の容認する範囲を超えているのではないかというふうに受けとめています。

 例えば、日米同盟にかかわって発言すれば、アメリカ合衆国というのは我が国にとっては密接な関係にある他国ということになろうかと思います。例えば、アメリカ合衆国はイラク戦争のような先制攻撃の戦争も行ってきたわけですけれども、位置づけは自衛のための戦争であったかと思います。

 アメリカが自衛のためとして戦争を行い、そして日本政府がそれが武力行使の新三要件に適合すると判断すれば、地球上どこへでも自衛隊は派遣されるのかということに率直に懸念をしておりますし、日本が、憲法を変えることなく、自衛の名のもとに、九条を維持したままで海外での戦争に参加していく可能性を排除できないのではないかというふうに考えています。

 また、武力行使の新三要件も、その解釈を含めて都度変更される可能性があるのではないかというふうに思っています。

 したがって、安全保障関連法案が成立するようなことになってしまえば、これはもう憲法改正することなく憲法の枠を超えてどんなことでもできていってしまうのではないか。そういう意味では、立憲主義の根幹にかかわるというふうに受けとめていまして、大変危惧しているところです。

 抑止力というところでこういった議論がされてもいるかと思いますけれども、軍事力による抑止力というのは一方では軍拡にもつながるのではないかということもまた感じるところで、一国民としては大変不安なところです。

 我々、自治体の労働組合として、自治体を訪問して首長さんなりと懇談をする憲法キャラバン、こうしたことにも取り組みをしておりますけれども、そうした中でも、率直に、今回の憲法解釈や法整備について、不安や懸念の声が自治体の関係者からも出されているということもつけ加えておきたいと思います。

 二つ目です。

 憲法のハードル下げをやめてほしいという言い回しにしていますけれども、要するに、今の現実社会が憲法と合っていないんじゃないかというようなことにかかわって、日本も自衛隊を保有している、九条との関係でどうかというところであります。

 私は、九条にかかわって言えば、これは極めて規範性の高い条項だというふうに受けとめています。戦争はいけないものだ、なくすべきだというのは、今日、人類の普遍的な価値観だというふうに思っていまして、そこへ近づいていくためには、我々自身が、人類が意思を持ってそこに近づくよう努力をしていかなければ近づくことはできないんだろうというふうに思います。

 そういう点では、こういった規範性の高い条項については、安易に変えるということではなくて、今の目の前の現実から出発して、憲法の内容にどう近づけていくか、その努力をするのが我々の任務ではないかというふうに思っています。そういう点では、短期的な局面だけではなくて、やはり二十世紀の歴史、そうしたものにも学びながら人類の未来を展望したいというふうに感じているところです。

 そういう点では、私の立場は、九条の解釈変更や条文改正は望まない、そういうところです。

 三つ目です。

 憲法のPDCA、プラン・ドゥー・チェック・アクションという、仕事なんかでよく出てくるものですけれども、憲法の第九十九条、公務員に対して擁護遵守義務を課していますけれども、現実の世の中が憲法が書いているとおりになっていない場合は、なぜそうなっているのかということについての分析と対策が必要だろうというふうに思います。

 憲法の内容を豊かに実践して国民福祉の増進を図るということが、国会での議員の皆さんのお仕事、立法であろうし、国、地方公共団体の職員の仕事として行政がある、そんなふうに受けとめています。

 格差の問題や貧困の問題、非正規雇用の問題、こうした憲法の十三条、幸福追求権、十四条、法のもとの平等、二十五条、生存権、こうしたことにかかわっては実現がいまだできていると言い切れない課題がありますが、これは、国、県、市町村、各段階で考えなければならない問題だと思いますし、憲法は権力、公務員に義務を課すという点でいけば、その内容を充実させていくのが公務員の義務ではないか、そんなふうに思います。

 最後、憲法を国民の手にということで発言をして終わりたいと思います。

 憲法改正というのは、国の形を見直す、変えていくことだというふうに受けとめています。そういう点では、冷静で十分な国民的議論が必要だろうと思いますし、押しつけと言われることもございますけれども、一方で、主権在民、基本的人権の尊重、平和主義、こうしたことについては広く国民に受け入れられてきたということもまた事実ではないかというふうに思っています。

 また、国民投票の運動では、非常に重要度の高い運動になりますと、財政力が強い側の意見が有利になる可能性があるというふうに感じていまして、そういう点では、慎重な議論が必要だとは思いますけれども、量的規制等について検討も必要な場合があろうかというふうに思っています。

 それと最後に、何より、主権が国民にあって、権力に対して義務を課すという点では、憲法は国民のものだと思いますけれども、国民が憲法に触れる機会というのはこの間、非常に少なかったのではないかというふうに思っていまして、今般のこうした議論の中でいろいろと触れる機会が出てきたのかと思っていますけれども、同時に、こうした点では、学校教育や社会教育の果たす役割というものも、憲法をどう伝えていくのか、憲法をまず知ってもらうということが大事だと思いますけれども、そうしたことが求められてきているのではないかと思います。

 時間が来ましたので、終わります。

保岡座長 ありがとうございました。

 次に、尾崎正直君にお願いいたします。

尾崎正直君 高知県知事の尾崎正直でございます。

 きょうは、こういう発言をさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私からは、防災対応上の必要性について、そして地方自治に関係する点について、ぜひ論点として憲法審査会で大いに御議論いただきたい、そういう趣旨の発言をさせていただきたい、そのように思います。きょうは、防災大臣も御経験の古屋先生、中川先生、お二人においでいただいておりますので、ぜひ防災という観点から憲法についていろいろ御議論をいただきたい、そのように思います。

 お手元にお配りしております資料の一ページであります。

 こちらに、南海トラフ巨大地震が発生した場合のいわゆる想定被害、最悪のパターンと言われるものについての記載をさせていただいております。南海トラフ巨大地震、死者数約三十二万人、避難者数約九百五十万人、経済被害約二百二十兆円ということが想定をされているわけでありまして、死者数だけでも東日本大震災の約十六倍という巨大災害となる可能性がある災害であります。

 二ページを少しごらんいただきたいと思いますが、こちらに、南海トラフ地震が起こりました場合の想定被害につきまして、やや詳しく書かせていただいております。

 例えば高知県におきましても、最高波の津波高三十四メーターということが想定をされておりまして、こういう巨大な津波からどうやって県民を守るのかということについて、できる限りリアルに状況を想定して対応していこうと日々努力をしているところでございます。

 この南海トラフ巨大地震が発生いたしますと、左下にありますように、全国民の約五三%がこの地震により影響を受けることが想定をされております。さらには、製造品出荷額の約六六%が影響を受けるというわけでありまして、恐らく日本の製造業は全てとまってしまうなぞという事態が生じるのではないか、大変な事態が待っているということであります。

 このような地震はなかなか実際には起こらないのではないかというふうに言われてもいますけれども、歴史を振り返ってみますと、右側にありますように、大規模な巨大地震がいわゆる三連動型で発生をしてきたという現実がございます。

 例えば一七〇七年、宝永地震が発生をいたしましたときは、南海、東南海、東海地震が三連動型で発生をし、さらにその四十九日後に富士山が大爆発を起こすという非常に厳しい状況に日本は置かれたわけであります。

 現代においてもこういうことが起こり得ないわけではありません。いかに最悪の事態をリアルに想定してあらかじめの対応を考えておくべきか。

 その点から、私としては、一ページにお戻りいただきたいと思いますが、ぜひ、国民の生命財産を守るため、迅速に法整備、補正予算編成が行われる体制を整えていただきたい。その際、国会が正常に機能しない場合が考えられるのではないかという点について、ぜひ御議論をいただきたいと思っています。

 具体的には、国会議員の任期や選挙期日の特例、政府の権限の特例を憲法に規定する必要がないか、御議論いただきたいと思います。

 二番目でありますけれども、迅速な救助、応急活動などなどを実施するに当たって、どうしても憲法が保障する権利を制限せざるを得ない場合というのも考えられるのではないか、その現実論に立った御議論をぜひいただきたいと思います。このことは、緊急時を理由とした過剰な権利制限を防止するという観点からも非常に重要な点ではなかろうかと考えておるところです。

 少し詳し目に御説明させていただきます。三ページをごらんいただきたいと思います。

 こちらは、まず第一の論点であります国会が正常に機能しない場合の対応についてでございます。

 一番上にございますように、南海トラフ巨大地震が発生した場合には、新たな法整備や補正予算編成などを迅速に図っていくためにも国会が正常に機能することが求められますが、現行の憲法の規定では、幾つかの点において不安が残ります。

 まず、想定される事態でありますが、南海トラフ巨大地震が衆議院の解散中または任期満了前の選挙期間中に発生した場合、先ほどのような被害が発生する中、とてもではないですけれども、衆議院選挙を実施するということはできない、そういう事態に陥る可能性があります。この場合、国会議員が長期間不在になってしまうおそれがあります。

 日本国憲法第四十五条には、「衆議院議員の任期は、四年とする。」とはっきりと年限を画して書いてありまして、これは参議院でも同様であります。この期間を超えて選挙が行われない場合、長期間にわたって議員不在という状況になりかねません。

 この衆議院の解散中の対応については、参議院の緊急集会制度が定められておりまして、一定の対応は可能であります。

 しかしながら、先ほどのような広範な被災ということを考えますれば、南海トラフ巨大地震からの復興イコール国全体のグランドデザインを描く議論をしていただかなくてはならない状況であります。民意の反映という点で、特に衆参同一選の場合に、緊急集会のみの対応で本当に大丈夫なのだろうか、十分な御議論をいただきたいと思います。

 民意を代表する多くの国会議員の議論を尽くす必要があるのではないかと考え、国会議員の任期、選挙期日の特例について憲法に規定することを御検討いただきたい、そのように思います。

 さらに想定される事態といたしまして、南海トラフ巨大地震が発生し、その後、富士山が噴火し、さらにスーパー台風が全国を直撃するなぞという形での大規模複合災害が起こるおそれというのを否定できません。現実に、宝永地震では、三連動地震の直後に富士山が大爆発をいたした、そういうことがございました。

 こういう中において、全国的に交通網が寸断されていく中で、国会の迅速な参集が困難になるおそれがあります。さらに言えば、定足数を満たす議員を集めることができるかどうかという問題も出てくる可能性がございます。やはり補正予算の迅速な編成などなどを行っていくためにも、政府に一定の権能を持たせる必要はないかということであります。

 緊急時における政府への法律制定や補正予算決定と同等の効果を有する権限の付与について、国会の事後承認とあわせて憲法に規定する必要はないか、御議論いただきたいと思います。

 そして、四ページでありますが、緊急時の権利制限に関する規定についてであります。

 南海トラフ巨大地震の発生時に、憲法上の基本的人権、財産権、居住、移転の自由を制限してでも国民の生命身体を守らなければならない事態が生じ得ると考えます。

 諸外国のように、緊急時の権利制限に関する規定についてあらかじめ憲法に規定する必要はないか、御議論いただきたいと思っております。これは、緊急時に名をかりた過剰な人権制限が長期間継続することを防ぐことにもつながる、非常に人権擁護という観点から大事な観点だと思っております。

 想定される事態として二つのケースを挙げておりますが、例えば、財産権の侵害をどうしても図らないと避難場所、避難路を確保できない、そういう事態も想定されるわけでありますし、さらには、災害対策基本法で定める、人命を守るために退去を強制することができるという規定はございますけれども、しかしながら、非常時において、対応できる資源が極めて限られる中で効果的、効率的な援助等を行うためにやむを得ず退去を強制せざるを得ない場合などということも想定されるわけであります。

 そのような権利制限について、諸外国でもそのような例があります、あらかじめぜひ御検討をいただきたい、そのように思います。

 最後、五ページでございますけれども、地方自治の保障、地方分権の推進という観点から御意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 この五ページに掲げられておりますのは、全国知事会が平成十七年度に憲法問題に関する報告書として提出させていただいたものでございまして、日本国憲法において地方自治の基本原則をより明確に明記することなどの御検討をぜひお願い申し上げたい、地方分権を前提とするという形での憲法の規定の整備をお願いしたいと考えております。

 そして、最後でありますけれども、ぜひ私として御検討いただきたいと思っておりますのは、参議院議員についてであります。

 ぜひ、これは都道府県代表という性格も持たせていただきたい、そのように考えております。人口が多いところの議員の数が厚くなるという制度であれば、人口が多くなるところほど有利な政策が展開され続けるということになり、これがますます人口の過度の集中を招くということになりかねません。

 人口が少ない地域の発展のためにも、人口が少ない地域の意見を反映する議員代表という考え方も必要だ、そのように考えております。アメリカ合衆国でもそうでありまして、上院の制度はそうなっているわけでございまして、ぜひとも、参議院議員は都道府県の代表としての性格も持つ、そういう方向でもっての憲法上の御議論というのをお願い申し上げたい、そのように思います。

 以上であります。

保岡座長 ありがとうございました。

 次に、佐野円君にお願いいたします。

佐野円君 翻訳者の佐野円と申します。

 発言の機会を与えていただいたこと、心から感謝申し上げます。

 改正国民投票法等の施行を受けて、これからの憲法審査会に望むことをテーマとする意見陳述の申し出に当たり、私が提出させていただいた意見の概要は、次のような簡単なものでした。

 憲法審査会に求めたいことは、第一に透明性です。各会派の議員数の多寡にかかわらず、平等に発言時間を配分するという憲法調査会以来のよき伝統を受け継いでいただき、インターネットでの中継などを活用して、国民に開かれた議論をしていただきたいと思います。

 第二に、立憲主義や憲法改正の限界、最高法規性、遵守義務といった議論の前提となるであろう基本的価値観について、いま一度御確認いただきたいということです。オープンな議論は大切ですが、現行憲法の掲げる理念に異議を唱えられるような場合、特に、憲法をいたずらに軽視、無視するような乱暴な議論の仕方で憲法そのものをないがしろにするようでは、国民にとって建設的な議論とは映りません。

 第三に、集団的自衛権や国家緊急権、環境権など各論に入る前に、投票価値の平等について討議するべきだと思います。現在の国会議員の皆さんは、違憲状態と呼ばれるような選挙で選出されたことを御自覚いただき、これを解消する方法を最優先で討議していただくのが筋だと考えます。

 今読み返してみましても、特に目新しい視座に立つ指摘ではありません。当審査会はもちろん、あらゆる言論空間において既に提示されている観点であり、憲法から容易に導かれる理念に基づくものです。

 これらは、繰り返し指摘される観点ではありますが、昨今の政治情勢、特に憲法をめぐる状況を見ますと、全く陳腐なものではなくて、むしろこのような観点に立ち返ることがかつてないほどの重要な意味を持つ、そういう深刻な状況に直面しているのではないかと私は危惧しています。

 国会での審議、意思決定過程における透明性は、国民の知る権利を最大限保障することによって確保されるものです。ところが、昨今では、質問主意書に対して提供される資料が全面黒塗りであったり、そういう例が散見されます。黒塗りの資料に基づいて適正な審議、討論が可能でしょうか、国政調査権は十分に機能していると言えるでしょうか。特定秘密保護法の施行により、こうした懸念はさらに深刻の度を増しています。

 TPP交渉は、適正な手続に沿って行われていると言えるでしょうか。交渉の内容が開示されないのでは、協定というよりも密約です。漏れ伝えられるところでは、ISD条項やラチェット条項など、主権にかかわる内容が盛り込まれているとのこと。憲法にかかわる問題であり、秘密交渉は断じて許されないと考えます。

 この五月には、世界で初めてTPPに対する違憲訴訟が提訴されました。現職の国会議員八名も原告に名を連ねておられます。司法の場で判断されることになるわけですが、事態の深刻さに鑑みて、憲法審査会の場でも、こうした秘密交渉が憲法上許されるのか、広範かつ総合的に調査し、早急に討議する必要があるのではないでしょうか。

 次に、基本理念の再確認という観点から申し上げます。

 憲政の中枢を担う立場にある方々から、立憲主義や法の支配を軽視するような発言、あるいは改正の限界や最高法規性、遵守義務についての理解が不十分ではないかと疑念の生じるような発言が相次いでいます。

 日本人がつくったんじゃない、みっともない憲法と現行憲法を全否定するかのような党首の発言。立憲主義を昔からある学説ですかとうそぶく首相補佐官。憲法は不磨の大典ではない、法令の一つだ、日本国憲法と言うと立派そうだが、日本国基本法という程度のものだとおっしゃったのは幹事長代行です。そもそも国民に主権があることがおかしいとまでおっしゃる副幹事長。天賦人権論をとるのはやめようというのが私たちの基本的考え方だと言う参議院外交防衛委員長。

 個人の思想、信条の自由、言論の自由は何より尊重されるべきであり、オープンな議論は大変結構ですが、こうした重要な地位にある以上は、批判に対して相当の説明責任を果たすべきだと考えます。

 憲法審査会は、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議または国民投票に関する法律案等を審査するという職責を与えられ、その分、果たすべき説明責任も重くなったと言えます。国民主権や基本的人権の尊重、平和主義を含め、憲法の基本理念を尊重し、これを土台とするのでなければ、そのような憲法の根幹を損なうような改憲は改正の限界を超えるものであり、むしろクーデターに近づいてしまうのではないかという懸念さえ禁じ得ません。

 六月四日の憲法審査会では、参考人として出席された三名の憲法学者全員が、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案を憲法違反と断じました。憲法学界の趨勢からすれば、このことは驚くべきことではなく、至極当然のことと受けとめております。

 私が驚いたのは、その後の政府・与党の反応です。

 総理大臣を筆頭に、あくまで合憲との強弁を繰り返す。たくさんを数じゃないと開き直る官房長官。いざというときに国の安全を守るのは憲法学者ではなく私たち政治家だと、いざというときには政治家の判断が何より優越するかのような政調会長の危うい発言もありました。

 防衛大臣は、現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定を行ったという趣旨の、憲政史上に大きな汚点を残すような発言をようやく撤回しました。しかし、安全保障環境の変化に応じて再び憲法解釈を変更する可能性があるとの認識を示し、法的安定性が損なわれるという批判を受けています。

 枚挙にいとまがありませんが、専門家である研究者の大多数の見解を、全く当たらないと聞く耳を持たず、かたくなに拒絶しようとする姿勢で、果たして国民にとって建設的な議論、熟議ができるでしょうか。多くの憲法学者が支持しないような強引な法解釈に国民がどうして納得できるでしょう。

 憲法審査会では、国の最高法規にかかわる討議をされるわけですので、一層慎重かつ丁寧な、国民に開かれた熟議を切にお願い申し上げる次第です。

 最後に、憲法改正国民投票法について申し述べさせてください。

 多くの附帯決議が付されています。これは、審議が不十分であった証左ではないでしょうか。憲法解釈の変更に関する附帯決議もなされていました。ところが、一カ月もたたないうちに閣議決定がなされてしまいます。

 附帯決議に法的拘束力はないとはいえ、検討が不十分ではないか、余りに軽視されているのではないかと危惧します。

 また、私は、最低投票率もしくは絶対得票率を設けるべきだと考えています。

 憲法第九十六条が、発議につき、総議員を分母にしていること、国民に提案してその承認を経なければならないとの文言、並びに過半数の賛成を要するとの文言から、反対票や無効票は問題にされていないと読めますので、有権者の総数を分母として、賛成が過半数であることが求められているという見解を私は支持したいと思っています。

 以上です。御清聴ありがとうございました。

保岡座長 ありがとうございました。

 これにて意見陳述者からの御意見の開陳は終了いたしました。

    ―――――――――――――

保岡座長 これより意見陳述者に対する質疑を行います。

 質疑時間は一人十分以内とし、その経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 なお、この質疑時間には意見陳述者からのお答えの時間が含まれておりますので、進行に当たり、各位の御協力をよろしくお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古屋圭司君。

古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。

 ありがとうございました。

 この憲法審査会は、今会長の方からもありましたように、憲法の改正の原案をここで審議することになります。したがって、提案をされた場合には、例えば公聴会を必ず行うとか、継続審議が自動的にできるとか、相当丁寧な取り扱いをしていく。

 そして、もう一つは、昨年の十一月に開催されたときに、各政党から意見陳述をしていただきました。このときに共通点が一つありました。それは、憲法に危機管理の条項がない、これは必要だ。共産党さんはこの憲法審査会の設置そのものに反対でございましたので、共産党以外の政党ということになります。ということは、やはり最大公約数で丁寧な議論をしていくという必要があろうかと思います。

 その上で、きょうは、まず尾崎知事にお伺いをしたいというふうに思います。

 きょう、このペーパーでも、例えば国会議員の任期が憲法上四年あるいは六年になった後の状況についての言及が、それはそのとおりだと思いますね。三・一一のときには法律事項で市会議員の延期ができましたけれども、憲法ですから延期はできません。

 一方で、今、災害が起きたときに、個別の法律ではなくて、やはり憲法で包括的な根拠規定を置いて、想定外の危機に対応しておく必要がある。すなわち、私権制限のためには、法律だけではなかなか厳しい、それは憲法に規定される居住の自由とか移転の自由、あるいは財産権の問題が含まれているからだということがありました。

 私も同感ですが、知事として、災害の最前線を預かっている人間として、また私も、強靱化担当大臣あるいは防災大臣のときに一緒にこの議論をさせていただいた仲間として、現実に災害が起きたときに、こういった根拠規定がなければ、現場の責任者としてどんな苦労が想定をされるかということをまずお伺いしたいと思います。できるだけ簡潔にお願いします。

尾崎正直君 例えば、高知市は長期浸水をします。すると、マンション丸々その浸水域の中で孤立するという状況が起こります。この方々、残っておられる方々の生命財産を守っていくためにも、この方々にどう対処していくかというのは大きな問題になっていくわけでありますけれども、仮に、資源が限られて、ぜひ避難所に移っていただいて、みんなで集団的に対応できるようにさせていただければというふうなことを考えたとき、本人が、いや、私はマンションに残りますと言われたら、これに対処するすべがないというのが現実であります。

 しかしながら、本県なんかの場合、四十万人を超えるような避難者が場合によっては出るかもしれないという状況の中で、やはりいかにまとめて対応できるようにするかとか、そういうことは考えざるを得ないということであります。

 いろいろな形で、こういうふうに個別に考えていくと、いわゆる対応側の資源の限界に従って一定御不便をおかけせざるを得ないということが想定をされるわけでありまして、今の災害対策基本法なんかでも基本的には生命財産にかかわる場合のみ人権が制限され得るような条項になっていまして、多分これは憲法の限界上こうなっているんだと思いますけれども、やはりそこのところを、一定、財産権とか移動の自由なんかについて制限できるような条項が必要ではないかな、そのように考えているところです。

 ただ、もう一個言えるのは、大規模災害への対応というのは物すごく長期間を要する可能性がありまして、長期間要することで、そのような人権制限が長期間行われて当たり前になってしまうことも極めて危険だと思っておりまして、そういう意味において、諸外国でもありますように、災害時にはこういうものについては制限できるが、こういうことは絶対にしてはいけないとか、そういうことを定めておく、さらには上限を画しておくとか、いろいろな対応の制限をかけるための措置というのも必要ではなかろうかな、そのように考えます。

保岡座長 意見陳述者にお願いを申し上げますけれども、発言のときは挙手をして、お名前を述べてからにしてください。

古屋(圭)委員 今、知事指摘の緊急事態の始期と終期、明確にさせるということが必要でしょうね。それから、定義も必要なんでしょう。ありがとうございました。

 きょう、それぞれお越しになっているので、まず土倉さんから。

 土倉さんの御意見は、集団的自衛権の行使は限定的ではなくてもっと認めるべきだという内容ですが、ちょっとここのことは聞きません。しかし、意見の中に、地方自治の中で、バックアップ機能をつくれとか書いてありますが、これはある意味で危機管理だと思いますけれども、この視点から、やはり今私が尾崎知事に質問したような、憲法の中に危機管理条項を入れておく必要性があるのかどうか、これについてお伺いしたいと思います。

 竹田参考人には、一括して憲法を改正するのかどうかという趣旨の文言がございましたけれども、これは我々、あくまでも憲法はいわゆる個別の議論をしていく、個別投票の原則というのでやっていくというのが、先ほど調査会長が話したとおりでございますが、この個別という視点で見た場合に、私が今指摘をさせていただいている危機管理条項、どういう中身になるかはいろいろお考えがありますけれども、こういったものをつくっておく必要があるかどうか、憲法上に規定する必要があるかどうか、お伺いをしたいというふうに思います。

 岡田先生にも同様でございまして、トーマス・ジェファーソンの言及がございましたけれども、トーマス・ジェファーソンは、子供が成長するに伴って洋服も変えていかなきゃいけない、国の成長に伴って憲法も変えていく必要がある、こういうようなことを言及しているのは御存じだと思いますけれども、岡田先生にも、こういった緊急事態に対する対応をあらかじめ憲法でしておく必要があるのかをお伺いしたいと思います。

 それから、筒井参考人にも同様に、このペーパーでも、憲法を知り、知らせることから始めようと。だから、この憲法には実は危機管理条項が一切ありません、やはりこういったことを正しく知らせる必要があるのではないか、正しく知らせれば、危機管理条項が必要なのではないか、こういう考え方があろうかと思います。

 最後、佐野参考人にも同様な御意見を聞きたいというふうに思います。

 ちなみに、一九九〇年以降、憲法を改正したり、あるいは憲法を新しくつくった国、約百カ国あるそうですが、この国、一〇〇%全部憲法に、いろいろな形はありますが、危機管理条項が含まれているということを参考までに申し上げたいと思います。

 それでは、それぞれ、もう短いので、手短にお願いいたします。土倉さんから。

土倉啓介君 東北大震災では、地主が誰かわからないとか、相続人を検索するために人手と長期の時間がかかりました。そういったときにはやはり個人の権利の制限というのが必要だと思いますし、食料の安全保障についても、食料自給率が低いわけですから、危機管理の観点から憲法改正の必要があると思います。

 バックアップ機能も、これは東京都だけに一極集中していますから、人と金と公的機能がそちらに集約してしまいますと、そちらで大震災が起こればバックアップ機能はないということで大変な目に遭いますでしょうし、そういったことから、危機管理は必要だと思いますね。

古屋(圭)委員 時間なので、できるだけ簡潔に、一言ずつでお願いします。

竹田昭子君 竹田です。

 危機管理という項目は今の憲法にはない項目で、新しい項目だと思うんです。だから、これを憲法に設置するのは、どうでしょう、よくわかりません。

岡田健一郎君 ありがとうございます。

 基本的には、憲法五十四条の参議院の緊急集会と、それから憲法七十三条の政令への委任、これを使えば一応緊急事態には対応できるというふうに憲法制定者は考えていたんだろうと思います。

 具体的には、多分、災害対策基本法とかでどれぐらい効果的な仕組みをつくれるかというのがポイントなのかなと思います。

筒井敬二君 国民の権利の制限等にかかわる部分でいくと、第三章の「国民の権利及び義務」の部分だと思いますが、ここについては、憲法を守るべき立場の側に義務を課すものとして、条項として考え方の基本が示されていて、その内容を吟味して法律に置いていくというのが一つ筋かなと思っていますので、憲法の中で規定する必要があるかどうかというところでは、必ずしもそうではなくてもよいのではないかというのが考えです。

佐野円君 私も、緊急時の人権制限というのを憲法に規定してしまうと、ある程度抽象的な表現になってしまう、事細かなことを決められない。そうすると、やはり解釈の問題が出てくると思うんですね。

 ですから、なるべく法律で対処していただきたいというのが一つです。

保岡座長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 きょうは、陳述人の皆さん、本当にありがとうございました。

 それぞれ、やはり共通して安全保障法制、安保法制を取り上げていただいて、そして憲法との関係を議論していただきました。尾崎知事はちょっと別な課題だったんですけれども、この際、含めて、改めて皆さん一人一人にお聞きをしたいというふうに思うんです。

 基本的には、今の憲法は大事だという気持ちがあって、それを解釈でもって空洞化していくというか、いわゆる立憲主義が崩されていくということ。それに対して、今が限界なのか、それとももうちょっと先まで解釈が行けるのか、そんなところが違憲であるのか、今の安全保障法制がいわゆる憲法違反であるのか、それともまだ解釈でいけるのかということ。こんなことが私たちの間でも議論の対象になっているんだというふうに思っているんです。

 この間は、三人の憲法学者が全て、憲法に違反しているということ、これをはっきり述べられました。

 その上で、改めて、一度、皆さん自身の判断といいますか思い、今の解釈を変えていくということに基づいて安保法制が出てきているわけですけれども、これは皆さんにとって、やはり憲法違反だ、もう一度基本に戻って憲法を議論すべきだ、言いかえれば、この法案をもとに戻して出し直すべきだということにもつながっていくんだと思うし、では、憲法をどのように変えていくかという議論、これについては皆さんからもそれぞれ意見が出ましたけれども、そういうことを含めて、基本的なところをもう一度それぞれで表明していただけませんでしょうか。

 私の思いとしては、憲法違反なのか、それともこのまま解釈でいいのかということですね。

 お一人ずつお願いします。

土倉啓介君 違憲ではないかということで議論がありますけれども、砂川事件等では、最高裁が一部司法判断を避けました。立憲主義は法の支配を踏襲しなければならないですし、最高裁は、三権分立で、下級裁判所と同様、違憲審査を担うのですから、他国の圧力があっても、高度の政治判断を要するものでも避けないで、最高裁が時の政府の意向をそんたくせずに司法判断をするべきです。

 日米安保条約に基づく駐留米軍は我が国の戦力でないとしても、外部からの武力攻撃に対しては日本国民を守るよう求めることになります。私は、外国の軍隊に自国の防衛を依存するのは独立国にふさわしくないので、自国の軍により行うべきだと思います。

 高度の政治判断は司法審査の範囲外としても、明白に違憲の場合は無効ですし、人の支配を排し、法の支配が憲法の概念です。私は、憲法をないがしろにはできないので、自国の軍でやることを明記する必要があり、当該部分の憲法改正を求めています。

竹田昭子君 解釈憲法というのは、要は、今の現実と憲法がかけ離れているから、解釈憲法というか、憲法の変遷みたいなことで、要は、憲法を現実に近づけてやろうとしていることであって、何かそれは手前みそじゃないかなと思うんですよ。

 やはり憲法の趣旨というのはちゃんと守って、それが幾ら現実に追いついていなくても、憲法は憲法として守らなくてはいけないと思います。

岡田健一郎君 ありがとうございます。

 私は、先ほども申しましたが、憲法九条の解釈としては、現在の自衛隊の存在自体、極めて合憲性は怪しいと思っておりますが、仮に従来の政府解釈を前提とするならば、やはり今回の解釈の変更は許される範囲を超えていて、違憲と言わざるを得ないというふうに考えます。

 以上です。

筒井敬二君 先ほどの発言の中でも触れましたけれども、日本から外に出ていって、そこで武力行使が可能になるという点では、九条の枠を踏み越えているというふうに理解していますので、これは憲法違反ではないかと考えております。

尾崎正直君 私は、我が国の安全保障を守っていくためにも、諸外国との協調ということなくして我が国の安全は守れない、そういう状況になっているのではないかと考えているところであります。

 そういう意味におきまして、例えば集団安全保障の問題にいたしましても、私は一定容認されるべきだ、そのように考えておりますし、今までも、議会でも申し上げてまいりました。

 しかしながら、他方で、あくまでもこれは自衛目的に厳に限られるべきだということもあわせて私は今までも述べさせていただいてきたところであります。

 この自衛の目的に限るという点からいけば、憲法の九条についてさまざまな御議論がある中で、いわゆる旧三要件というものが今までもございました。この旧三要件の範囲内に入っていくということが大事なのだろうと考えられるところですが、この旧三要件の中で、いわゆる急迫不正の侵害があること、我が国に対する急迫不正の侵害があることということについては、いろいろな科学技術の発展などによりまして、これはやはり現代の実情というものも踏まえた解釈の変更ということは一定容認されるべきだ、そのように考えています。

 あくまでも我が国に対する急迫不正の侵害があることということが大事でありますが、例えば、諸外国に対する攻撃であっても、これがほぼ連鎖として我が国に対する急迫不正の侵害につながり得るというものであれば、それはもともとの急迫不正の侵害があるということと同義とみなすことはできるのではないか、そのように考えられるわけでありまして、そのように、旧三要件の精神に基づいて、連続的かつ合理的な範囲内での解釈の変更というのは求められる、そのように認められるのではないか。その新三要件に基づいて法律をつくっていくということは、一定容認されるのではないかと思います。

 ただし、個別の事例に即して、ぜひ詰めた議論を行っていただきたい。本当にこれが自衛の目的をそれぞれ超えてしまうようなこととなってしまってはいけないのでありまして、その点は、個別の事例に即して、本当に自衛の範囲に入るのかどうかということを国会で十分に御議論いただきたい、そのように考えます。

佐野円君 憲法は誰が読んでもわかるシンプルな最高規範であってほしいと思っています。ですから、解釈は限界だと思っています。

 つまり、違憲だと思っています。

中川(正)委員 岡田先生は憲法の御専門、いわゆる憲法学者だというふうにお聞きをしているんですが、憲法学者の皆さん、私の認識ではもうほとんどの皆さんが、憲法ということを前提に考えていったら、これは大切にしなきゃいけないというのは当然の考え方ですし、今回の安全保障法制は違憲だということを考え方としてはお持ちだというふうに聞いているんですが、先生から見て、学界の中の状況というのはどういう形になっていますか。

岡田健一郎君 ありがとうございます。

 今回の、昨年の解釈変更に関して言うと、やはり、さすがにあれは許される一線を越えたのではないかと言う方が多いのではないかなと思います。

 もちろん、いろいろな考え方はあって、あれが違憲ではないと言う方も少なからずいらっしゃるとは思っていて、それはそれで尊重されるべきだと思いますが、多くの学者は、やはりあれはちょっと無理があるのではないかと考えていると思います。

中川(正)委員 最後に、尾崎知事にもう一つ確認しておきたいんですが、緊急事態法制なんですけれども、災害、いわゆる防災の基本法をこれまで変えてきました。

 その中で、例えば人権ということについても、あるいは国が前に出ていってしっかり統率するということについても、法律の範疇の中で相当の部分がやっていけるという私の実感を持っているんですけれども、わざわざ憲法ということを出されたということ、ここは何か特別に理由があるんですか。

保岡座長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

尾崎正直君 長期間にわたって対応をしないといけない、長期間にわたって人権制限をせざるを得ないという状況が考えられるだけに、法律での対応がずっと続くということは危険だと思います。憲法によって歯どめをかけるということをしておくべきだ、そのように考える次第です。

 実際、諸外国の憲法でも、この点は制限していいがこの点については制限してはいけないとか、かなり細かく規定をしている憲法もあるわけでありまして、そういうことが一つ参考になるのでは、そのように考えております。

保岡座長 次に、吉村洋文君。

吉村委員 維新の党の吉村洋文です。

 本日は、陳述人の皆様、本当に貴重な御意見をありがとうございます。

 私からは、憲法改正手続、九十六条についてお伺いしたいと思います。

 九十六条の改正手続なんですけれども、国民の皆様に判断を問う前の段階としてやらなければいけないこと、その中で、衆議院の三分の二、それから参議院の三分の二、それぞれ、過半数ではなくて三分の二以上の賛成がないとそもそも国民に示すことができないというのが今の憲法のたてつけになっております。

 これを緩和すべきだという意見があります。つまり、衆議院、参議院、それぞれどちらの院も三分の二以上の賛成があって初めて国民に問うのではなく、例えばそれぞれの院の二分の一の賛成があれば国民に問うとか。国民に問う要件として、今のこの三分の二、それぞれの院の三分の二は厳し過ぎるんじゃないのかという意見と、それから、いや、これでいいという二つの意見がございます。

 我々維新の党の考え方は、この三分の二の要件というのは少し厳し過ぎるんじゃなかろうか、この要件を緩和すべき、例えば二分の一、それぞれの院の二分の一でもいいんですけれども、要件を緩和すべきというのが我々維新の党の意見でもございます。

 これは、簡単に憲法を変えよう、そういう趣旨ではなくて、憲法というのは硬性憲法、特に日本の憲法は硬性憲法で、簡単にこれを変えちゃいけないよというのが基本的な考え方になっていると思っています。それは我々もそういった考え方を持っておりまして、ほかの諸外国でも硬性憲法と軟性憲法というのがあるんですが、諸外国の憲法改正手続を見ても、日本の憲法改正手続というのは、国民に問うまでも非常に厳しい条件がかかっている。それぞれの院の三分の二プラス国民の過半数というような要件になっております。ですので、ちょっとこれは厳し過ぎるんじゃなかろうかということを思っております。

 例えば、衆議院で約五百人いて、例えば三百人の国会議員がこれを国民の皆さんに問いたいと言うても、それでは五分の三、つまり三分の二に達していないから問えないということになるんですね。つまり、三百人の国会議員が憲法改正を国民に問いましょうと言っても、二百人の国会議員が反対と言えば国民に問えないというのは、これは逆に、国民の憲法改正権を一方において侵害しているんじゃないんだろうかというような見方もできるのかなというふうに思っています。

 実体験で言うと、私、大阪選出の議員なんですけれども、ついこの間、皆さん御承知のとおり、大阪都構想の住民投票というのをやりました。これは、大阪市を廃止して、そして特別区と都をつくるという、まさに大阪における統治機構の改編という非常に大きな課題で、それによって、結論としては、二百十万人の有権者がいるんですけれども、約百四十万人、約六八%の有権者が票を投じて、そして七十万人が反対、六十九万人が賛成、非常に僅差ではあったんですけれども、都構想自体は否決されたという結論になりました。

 ただ、ここで明らかになったことが、大阪市民の皆さんが本当に大阪の課題を見詰めて、そして大阪の将来あるべき姿はどうあるべきかというのを真剣に考えて、そして議論して、一票を投じたということは非常に大きな意味があるというふうに思っております。課題が出てきたことによって、それを解決する動きが今大阪では出てきている。これも、やはり住民の皆様に問うて、そして意見を聞いたということが非常に大きなポイントだろうというふうに思っています。

 そういう意味でも、日本国憲法においてはまだ国民の皆さんに一度も発議されたこともないんですね。すなわち、逆に、この要件によって、国民の皆さんを憲法から遠ざけている一因にもなっているんじゃないのだろうかというふうにも思っています。

 そういう意味で、改正要件というのを、それぞれの院の三分の二というのを維持すべきかどうか、これをもう少し緩めて、少なくともそれぞれの院の過半数があれば、国民の皆様が最終判断権者なんだから、そこに問うというようなことができるような仕組みに変えるべきじゃないのかというふうに思っておるんですけれども、そのあたりについて皆さんの御意見をお伺いしたい。まず、政治家であったり行政の専門家でない一般の方から、土倉さん、竹田さん、佐野さんにお聞きしたいと思います。

土倉啓介君 私は、三分の二以上は厳し過ぎるので、二分の一以上がいいと思います。

 これまでの選挙は、選挙に行かない人が多く、投票率の要件が高いと何も決められない、改正できないことになりますので、投票者のうちの得票を尊重する必要があると思います。

 そして、関連で、最低投票率という論点があるんですけれども、最低投票率があると何も決められなくなります。地方議会議員選挙の投票率が低くて、最低投票率を仮に設けたりすると、何度もやり直し選挙を行わなければならなくなります。その枠によって、変えられない不利益を住民が受けるわけですから、住民の生命の危機をもたらすことにもなります。

 国民投票では反対票を投じられるのですから、最低投票率ではなくて得票数を基準にして決定すべきだと思います。

竹田昭子君 過半数なら、法律と同じことになりますよね。憲法はやはり最高法規だから、三分の二以上は必要だと思います。

佐野円君 私も三分の二は適当だと思います。

 前回の参考人質疑で、長谷部先生だったかが、総人口八十一人のモデル、わかりやすく説明しておられました。九区に分けて、九人ずつ選挙人がいる。三分の二をとるというのは六人の代表が発議すればいいんですが、その六人の代表を送り込むには、一区の中の九人の過半数、五人が投票すればいい。そうすると、六、五、三十で、総人口八十一人のうち三十人の賛成があれば発議ができるということになります。

 ですから、今のは投票率が一〇〇%の場合ですけれども、これが五〇%になればもっと要件は緩くなるわけで、今のままでもそんなに厳しくないと私は思っています。

吉村委員 済みません、引き続き、同じ質問を尾崎さん、それから筒井さん、岡田さんにお伺いしたいと思います。

尾崎正直君 この九十六条の問題については、私も現行の三分の二はやはり維持した方がいいのではないかなというふうに考えております。もっと思考を深めないといけないかなとは思っておりますけれども、今の段階ではそのように思っています。

 二分の一にしてしまうと、しょっちゅう憲法が変わるということになってしまうのではないか、国全体としての体制について、やはり安定性という観点からも、そしてまた守らなければならないものは守らなければならないという観点からも、私は硬性憲法は維持すべきではないかなと思います。

 諸外国でも、硬性憲法的な憲法であってもしっかり憲法改正を重ねてきている国もあるわけでありまして、私は、やはり三分の二、これは大事ではないかなと思っております。

筒井敬二君 私も、三分の二よりも高くても、ハードルが高くてもいいのではないかというふうに考えています。

 というのは、憲法というものは国を規定していくという点でいくと、国民的議論の結果により国民的合意の中で決めていくという点では、より多くの合意の中でやっていく、そのためのしっかりとした議論というものが必要だろう、そういうふうに思いますので、下げないということが望ましいと思います。

岡田健一郎君 ありがとうございます。

 アメリカとかドイツを見ても、一見、国民投票がないのでハードルが低そうに見えますが、あれはあれで結構大変なんですね。やはり彼らは必要だからこそ、そのハードルを乗り越えて改正してきたので、一概に日本国憲法の改正のハードルが高いとは私は考えていません。

 もう一度。やはり人は間違えることがあるわけです。憲法というのは人権とか統治機構のような基本原理を定めているわけですから、いっときの流れとか勢いで簡単に変えていいものではない、みんなが納得した上で変えることが大事だと思われますので、今の三分の二というハードルは、私は維持してよいのではないかなと思います。

吉村委員 御意見、ありがとうございます。

 できるだけ国民の目に憲法が触れて、真剣に考える機会というのをふやしていきたいと思いますし、投票率を上げるという、大阪では六八%ぐらい行きましたので、国民にしっかりと憲法が触れるような、国民の改正権がしっかりと実行できるような、そんな仕組みを目指していきたいと思います。

 ありがとうございます。

保岡座長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹でございます。

 意見陳述者の皆様、本日は御多用の中、地方公聴会に御出席いただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。

 先ほど来、昨年七月の閣議決定、また、今般の平和安全保障法制についての憲法適合性、これに関してのさまざまな御意見をいただきました。

 政府はもちろんですけれども、私ども国会議員も、皆様のお声を謙虚に受けとめた上で、より国民の皆様に丁寧でわかりやすい説明、このためにより一層の努力をしていかなければならないなということを改めて感じさせていただきました。本当にありがとうございます。

 先日、六月十一日の憲法審査会におきましても、このテーマを中心にして種々議論がされました。この模様につきましては、インターネット上の衆議院TVでアップをされております。きょう、私の持ち時間、十分ということで、非常に限られておりますので、もし可能でありましたら、ぜひ、そちらをごらんいただいたり、また我が党のホームページにも詳しくこのテーマのことが掲載されていますのでそちらの方もごらんいただければありがたく思います。

 その上で、一言だけ申し上げますと、昨年七月の閣議決定、また、今般の平和安全保障法制によりましても、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められておりません。憲法九条のもと、自衛の措置としての武力の行使が認められるのは、あくまで自国防衛を目的とするものに限定されております。

 つまり、新三要件におきましても、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃があったこと、それだけで自衛の措置が認められるのではなくて、これに加えて、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に限定されております。

 そして、この新三要件は、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される急迫不正の事態に限って自衛の措置が認められるという、これまでの政府の憲法解釈の基本的論理をしっかりと維持したものであるということをまず申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、尾崎知事にお伺いいたします。

 憲法の第八章には地方自治に関する規定が置かれておりますが、わずか四つの条文を置くだけの簡素な書きぶりとなっております。我が党の党内議論におきましても、地方自治の本旨を明確化して、国が地方自治体と地域住民の意思を尊重することや、地方自治体が自立と責任の原則に立つことを憲法に規定すべきだとの意見がございます。

 知事は、先ほどの冒頭の意見陳述におかれまして、憲法上の地方自治規定のあり方について述べられまして、配付いただいたこの資料の中に、地方公共団体の財政自主権の保障を憲法に明記することなど、こういったことにも触れられております。

 我が党内でも、地方財政につきましては、地方自治体の財政的自立を書き込むべきとの意見もありますけれども、知事は、地方公共団体の財政自主権などの規定を憲法に書き込むことが地方財政等のあり方にどのような影響を与えるとお考えか、改めて、自治体の行政を預かる首長としての御意見をいただければと思います。

尾崎正直君 御指摘のように、憲法の第八章「地方自治」については、例えば「地方自治の本旨に基いて、」という表現になっています。しかし、よりこれを明確にしていただいて、基本的には、まず、地方のことは地方で決めるのだ、地方分権なのだということの原則を明確にしていただくということが非常に大事なのかな、そのように思っています。

 フランスなんかは、国と地方の関係ではありませんが、地方について、何層かの地方自治体がある中、当該問題についてふさわしい自治体が対応すべきだという趣旨のことを明確に憲法に書き込まれていたりしていまして、やはり、ふさわしいレベルでふさわしいことを決定していく、そういう姿勢が大事かな、すなわち、これは地方分権を徹底するということにも相通ずる考えではなかろうかと思っています。

 地方分権を明確に貫き通していくためにも非常に重要なこととして、やはり固有の財源というものはしっかり確保されるべきだ、そのように考えておりまして、例えば地方交付税などにつきましても、本来、地方固有の財源として認められるべきものでありまして、これなどはしっかり地方に対して当然のように確保されるべきものであって、そういう考え方をしっかりと明記していくということが大事なのではないか。

 時々の政府の予算編成によって決まるというよりも、そもそも、地方には地方の固有の財源があるのだということをはっきりさせていただくような方向での御議論というのをぜひお願いしたいと思います。

 その地方の財源問題の大前提として、地方分権という考え方、これを明示していただくという方向が非常に大事ではないかな、そのように思っております。

國重委員 ありがとうございました。

 続きまして、意見陳述者で唯一の女性であり母でもある竹田昭子さんにお伺いしたいと思います。

 高知県は全国でも高齢化が進んでおりますが、高知県が抱える課題は将来の日本全体の課題であるとも言えます。若者の将来に大きな影響を与えるものだと思っております。

 憲法改正の国民投票権の投票権年齢、先ほど保岡座長の方からも、会長の方からもございましたけれども、この投票権年齢が、現在の二十以上から、平成三十年六月二十一日以降、十八歳以上に引き下げられることになっております。

 選挙権年齢につきましても、国政選挙、地方選挙の選挙権年齢につきましても、十八歳以上に引き下げられる法案が現在国会で審議中、実はまさにこの時間も、今、参議院でこの法案が審議をされております。早ければ来年夏の参院選から、十八歳、十九歳の方、新たな有権者が約二百四十万人ふえると言われております。高校生の一部も有権者になることになります。

 高校生の方というのは親と同居している場合が多いですけれども、そうしますと、十八歳選挙権が導入されると、初めての選挙を親元で迎えられる可能性というのがこれまでよりも高くなります。

 世界的に見ますと、十八歳以上の若者に選挙権を与えているというのが主流ですけれども、海外の研究によりますと、親との同居率が高い十代の投票率が二十代前半の投票率を上回る傾向にある、特に、十代の投票率は母親の投票率と連動すると言われております。

 そこで、竹田昭子さんに、若者の政治参加、投票率を向上させるために重要になると思われることが何かありましたら、御意見を賜りたいと思います。

竹田昭子君 やはり学校での教育ですよね。今以上に、憲法とか、社会というんですか、科目的にそういう時間もふやした方がいいと思います。

 多分、私が思うに、今の高校生の憲法の知識と小学生の憲法の知識はそんなに変わらないんじゃないかと思うんですよ。せいぜい憲法に関して言えることは、三大原則、平和主義と国民主権と基本的人権の尊重ぐらいのことしか高校生も言えないんじゃないかなと思って、だから、もっと高校でそういう憲法とか法律的なことを教える時間をふやした方がいいんじゃないかと思います。

國重委員 ありがとうございました。

 皆様からいただいた貴重な意見をもとに、党内でもしっかりと憲法論議を深めてまいりたいと思います。

 以上をもちまして私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

保岡座長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 六人の陳述人の皆さん、きょうは、大変御多忙の中貴重な御意見を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、私たち日本共産党の憲法審査会に対する立場を一言申し上げたいと思います。

 現在、そもそも、国民の多数は改憲を求めておらず、改憲のための憲法審査会は動かす必要がない、むしろ、国民は、日本国憲法の諸原則に反する現実の政治、これに対する批判を強めており、国会は、そうした政治を正し、憲法を守り、生かすというところにこそ役割を発揮すべきだというのが私たちの一貫した立場であるということを申し上げたいと思います。

 その上で、幾つか参考人の皆さんに伺っていきたいと思います。

 まず、筒井参考人にお聞きしたいと思います。

 先ほどの意見陳述の中で、皆さんの団体で憲法キャラバンに取り組まれたという御紹介がありました。県内の各自治体を回られて、首長さんなどのお話を伺い、意見交換をされたということを聞きました。

 簡単な紹介でしたので、その詳しい内容や、回ってみて、首長さんたちの御意見、反応、それからまた、そうした取り組みを受けての筒井さん自身の御感想などあれば、お聞かせいただきたいと思います。

筒井敬二君 私どもは自治体の訪問をしております。これは、憲法を地方自治に生かそうという観点で、地方自治の諸課題について、我々の要望も伝えながら意見交換をしていくというのがもともとの趣旨で取り組みをしてきておりますけれども、この間、集団的自衛権の問題、安保法制の問題が出てまいりましたので、あわせてそのことについても懇談を進めているというところです。

 いろいろと御意見を賜っておりますけれども、中には、確かに、領土問題といった、南シナ海あるいは竹島のことを事例に出し、そうした集団的自衛権の行使も必要だというような主張の首長さんもおいでます。ただ、我々が回る中で、全般的には、やはり慎重に議論すべきではないかという御意見が多いです。

 少し特徴的な発言を御紹介させていただければと思いますけれども、憲法改正について、憲法議論をするということ自体は否定しないという自治体関係者は多いです。ただ、憲法を変えるということについては、これは国の形を変える可能性があるんだ、そういう点では慎重に議論をすべき必要がある、そうした立場を表明される首長さん、おいでます。

 また、中には、今の政権の進め方に対して非常に手厳しい御意見もいただきました。ある自治体の首長さんは、今の総理は、憲法の、上位理念の上に自分の政策を置いていると。要するに、立憲主義なんだけれども、憲法の上に自分の考え方があって、これは具体的な言い方では、おじいさんの目指していたものを今、安倍さんが、お孫さんが実現しようとしているように見えるというような、政権の今の進め方に大変批判的な御意見もいただいたところです。

 こうした意見をいろいろ受けながら、我々も県民の立場から運動を進めていきたい、そんなふうに考えているところです。

 以上です。

大平委員 ありがとうございました。

 この間、時事通信が行った六月の世論調査でも、今審議されている安保法制について、廃案にすべきが一二%、今国会にこだわらず慎重に審議すべきが六八・三%。今国会での成立に反対あるいは否定的な声が八割強に上っているという調査もありました。今の筒井参考人のお話も、やはり首長さんの反応もそういった傾向にあるのかなということを改めて私は感じました。ありがとうございます。

 続いて、岡田参考人、筒井参考人、佐野参考人のお三方にお伺いしたいと思います。

 皆さん、表現の仕方はそれぞれだったと思うんですけれども、共通しておっしゃられていた、憲法改正を言う前に、今の社会あるいは国民生活において、現在の憲法が果たして守られてきたのだろうかと。佐野さんは、無視や軽視がされてきたのではないか、こういうお話もありました。

 私も同じような問題意識を持っております。今議論されている安保法制の問題を初め、暮らしや福祉の問題、また人権という角度もあるかと思います。

 皆さんは、具体的に今の日本社会において、現在の憲法と実態がかけ離れているというか無視をされているということもありました、どの辺に感じておられるか、それぞれの皆さんの御意見をお聞きしたいと思います。

岡田健一郎君 憲法九条の問題は先ほど述べましたのでここでは申し上げませんが、憲法九条に加えて、やはり一つは、政治的表現の自由の問題が大きいのではないかなと思います。

 特に、政治にかかわろうとするときに、いろいろなビラとかデモ行進とかをするわけですが、やはりその規制が日本は海外に比べると非常に厳しい。憲法二十一条があるにもかかわらず、かなり厳しい規制を加えられる。

 選挙運動に関しても、戸別訪問の禁止だとか、ビラ配りとか、かなり厳しい規制がありますので、そこはやはり条文と実態がかなり乖離しているのではないかなと思っています。

 あとは、公務員の労働基本権の制限に関しても、やはり同じような先進国にはなかなか見られないような規制が実態としてあるので、そこは非常に問題ではないかなと思っています。

 私からは以上です。

筒井敬二君 最初の発言の中でも少し触れましたけれども、私は、非正規雇用の問題について言及をしておきたいと思います。

 誰もが幸せに生きる権利があって、みずからの持つ労働力を一生懸命提供し、賃金を得、生活、暮らしを行うわけですけれども、非正規というだけで、非常に不当にといいますか、低い処遇に置かれて、年収で二百万にも満たないような状況の中で、結婚もなかなかできないというような状況が続いていますし、私は自治体の労働組合ですけれども、これは公務の職場であっても同様で、むしろ、そうした非正規で働かざるを得ない方がふえているというような状況もあります。

 そうした目の前の現実というのは、先ほども触れましたが、憲法の十三条や十四条、あるいは二十五条、そうしたところの実現ができていない状態の一つではないか、そういうふうに感じているところです。

 派遣労働についても、大変今懸念をしているところですけれども、そうしたものをどうなくしていくのかということが政治と行政に問われているのではないかと思います。

佐野円君 憲法を生かしていくのは法律であり、その手続だと思っています。憲法にどんな美しい言葉が書かれていても、それを実際に保障するシステムがないと、全く動いていかない、かけ離れたものになっていくんじゃないかと思っています。だから、一番大事だと思っているのは適正な手続です。

 ちょっと長くなってしまうので、この辺で終わります。

大平委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。皆さんの意見を参考に、今後も国会で議論していきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

保岡座長 次に、園田博之君。

園田委員 園田博之です。

 私も、皆さんにすごくいい意見を聞かせてもらったと思っています。ありがとうございました。

 時あたかも、憲法審査会をやっていると、すぐ国会の安保法制議論と一緒になって議論をすることもあるんですね。やむを得ないところもあるんですが。

 私は、安保法制について我が党の意見を言わせていただければ、憲法解釈といいましても、安全保障に関する国際情勢がこれだけ変わってきて、しかも、憲法の範囲内で検討してもらって、そのために、公明党さんなんかはいつも気の毒だと思うんですよね、嫌だ嫌だと思って一生懸命議論して抑制して。しかも、閣議決定だけじゃなくて、それを法律にして出しておりますから、政権がかわるごとに変わるというようなものではないと私は思うんですね。私は賛成なんですが。

 きょうは、そんなことよりも、この憲法審査会は、政党で意見は違いますが、そういう政党の利害を乗り越えて、これからの憲法、変えなきゃならぬところ、足らざるところを議論しようということになっておるわけで、何としてでもこの憲法審査会の議論が進んでいくように願っているわけです。

 そこで、私は、ずっと聞いておりますと、安全保障に関連することで議論していますと、これはもう各党対立してどうにもならないんですね。

 それで、例えば尾崎さんがさっき言われましたが、大災害時の緊急事態に対応することが憲法に全く書かれていないわけで、これで国が救えるのかという、まさに緊急的な課題ですね。それから、環境権は誰にもあるんだから書く必要はないとおっしゃった方もおられましたが、環境権は憲法上書き込む必要があるのかどうかとか、それから、地方自治と国との仕組みのことについて、やはり憲法にもうちょっと考えて書き込んだ方がいいんじゃないかとかとか、私は、そういう憲法に書かれていない課題、こういうものを早急に議論したらどうだろうかと。

 そうじゃなければ、三分の二がいいか悪いかという議論もありましたが、三分の二を二分の一でいいようにするなんて、なかなかこれは変えられないですよ。

 そうしますと、この三分の二の同意を得て国民に諮るという前提条件ができなくなるので、何としてでも、三分の二に達しようとしないことはちょっと後に置いておいて、こういう課題だけでも先にやったらどうか、こう思っているんですが、こういう私の意見についてどう思われるのか。全部聞くと時間が足りなくなっちゃうので、竹田参考人と尾崎参考人と佐野参考人に御意見を聞かせていただきたいと思います。

竹田昭子君 済みません。おっしゃる意味がちょっとわかりません。

園田委員 質問の意味がわからなかったんですか。(竹田昭子君「はい」と呼ぶ)

 意見が余り対立することはちょっと後に置いておいて、例えば、緊急事態とか、地方と国との関係とか、党の方針に余り影響しないもの、そういうものから国民投票にかける前の議論を先にしたらどうかという私の意見について、どう思われますかということを申し上げたんです。

 では、もしおわかりいただければ、尾崎さんと佐野さんにお願いしたいと思います。

尾崎正直君 正直なところ、ぜひこの憲法審査会において徹底して議論をしていただきたい事項というのは、安全保障の問題以外にもたくさんあると私は思っておりますし、きょうは、本当に防災大臣御経験者が二人もおいでになるのでいい機会だと思いまして、特に防災の話について力を入れてお話しさせていただきましたが、例えば参議院のあり方について、先ほども申し上げた都道府県代表にすべきではないかとか、こういうこともぜひ正面から御議論をいただきたい課題だなと思っております。

 正直、非常に危機感を持っておりまして、一票の平等性ということ、これも非常に大事な価値だと思います。ですから、衆議院はぜひそれは維持していただければと思いますけれども、そうなりましたときに、人口が多いところに有利な政策が結果として展開されて、ますます人口が過度に集中しというスパイラルがどんどん展開されていき、我々のような地方はどんどん状況が悪化する、政策的にも置いていかれるなぞということになってしまうのではないか。やはり、制度的歯どめを考えていくべきではないか、そういう中において都道府県代表制というのも考えるべきではないかとか、そういう点も非常に大きな、我が国の将来にかかわる重大問題だと考えております。

 ぜひ、多様な論点について取り上げての御議論というのをお願い申し上げたい、そのように思います。

佐野円君 私も、先ほど、私の意見陳述のときにも少し述べさせていただきましたが、投票価値の実現というのは、やはり今すぐに取り組むべき問題だと思っています。それは、もちろん、いろいろな問題があると思いますし、先ほどの都道府県代表にというような意見もございます。ありますが、とにかく取り組んでいかないことには、ずっと違憲状態を続けていくわけにはいかないわけですから、そこを何とか知恵を出し合って解決する方向に向かってほしいなというのが一つです。

 そして、皆さんの意見が重なり合うようなところから憲法改正に取り組んでいけばどうかというお話でしたが、それはもちろん、そういうやり方が正しいと思っています。それは、皆さんの必要性が要求するからです。

 ただ、先ほどの質問のときにも少し申し上げましたが、憲法というのは、具体的なことを書くわけではなくて、やはり抽象的な、概念的なものを取り上げていくものですから、先に概念だけぽんと取り出しておいて、後で細かいところは決めていこうというようなやり方でいくと、何やら最初の想定されたものからどんどん離れていくようなこともあり得るんじゃないかというところが心配なところです。

 憲法を保障するのは手続だと思っていますので、そこも含めて、やはり全体を通した議論があっての憲法改正だと僕は思います。

園田委員 今、最後の佐野さんの御意見ですけれども、これは当然おっしゃるとおりだと思います。

 したがって、憲法審査会では、立憲主義とは何かとか、それから、憲法を変えるわけですから、今までの憲法というのが間違いなく日本国の、平和を守った日本だとか、人権だとか民主主義だとか、こういうものを守ってきたことは事実でございますから、そこには憲法を変えるにも限界がある。そういう議論からずっとしておりますから、個別的にいきなり、これはいいか悪いかという議論をすることはないというふうに思っていただいていいと思うんですね。

 それから、尾崎知事と佐野さんがおっしゃった一票の格差、一票の平等性については、意見がちょっと違っているんですよね。地域性というのもやはり考えて新たな憲法では議論すべきだ、これは私は賛成です。

 しかし、現実には、最高裁でもう違憲状態であるという結論を出されてしまいましたから、これは、残念ながら、衆議院も参議院も、完全に一対一にしろとは言っていないんですね、最高裁も。せめて許されても二対一だよ、こう言われておりますので、その範囲内におさめるように改正案を我々はつくらなきゃならないんだろうというふうに思っていますから、参議院では高知のことがとやかく話題になっておりますので、知事のお気持ちはよくわかりますが、なかなか困難じゃなかろうかというふうに思います。

 では、以上で結構です。ありがとうございました。

保岡座長 これにて意見陳述者に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者各位におかれましては、御多忙の中、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時二十四分散会


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