衆議院

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第4号 平成24年5月21日(月曜日)

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平成二十四年五月二十一日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      石井登志郎君    稲富 修二君

      打越あかし君    江端 貴子君

      岡田 康裕君    金子 健一君

      川越 孝洋君    岸本 周平君

      篠原  孝君    白石 洋一君

      田嶋  要君    田中美絵子君

      田村 謙治君    高橋 昭一君

      中林美恵子君    永江 孝子君

      長尾  敬君    浜本  宏君

      早川久美子君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    室井 秀子君

      湯原 俊二君    柚木 道義君

      渡部 恒三君    石田 真敏君

      石原 伸晃君    小里 泰弘君

      加藤 勝信君    金子 一義君

      鴨下 一郎君    田村 憲久君

      竹下  亘君    丹羽 秀樹君

      野田  毅君    馳   浩君

      町村 信孝君    竹内  譲君

      宮本 岳志君    豊田潤多郎君

      中島 隆利君    山内 康一君

      中島 正純君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   国務大臣         自見庄三郎君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    山本 庸幸君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    真砂  靖君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     金子 健一君

  宮島 大典君     川越 孝洋君

  田村 憲久君     石原 伸晃君

  馳   浩君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     打越あかし君

  川越 孝洋君     浜本  宏君

  石原 伸晃君     丹羽 秀樹君

  小里 泰弘君     馳   浩君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     中林美恵子君

  浜本  宏君     宮島 大典君

  丹羽 秀樹君     田村 憲久君

同日

 辞任         補欠選任

  中林美恵子君     高橋 昭一君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 昭一君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     勝又恒一郎君

    ―――――――――――――

五月二十一日

 子ども・子育て新システムを導入せず保育・幼児教育・子育て支援・学童保育施策の拡充を求めることに関する請願(玉城デニー君紹介)(第一〇三二号)

 同(馳浩君紹介)(第一〇三七号)

 同(木内孝胤君紹介)(第一〇五九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇八八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一二九号)

 消費税増税反対、食料品など減税に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一〇三三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一三四号)

 消費税の増税反対、食料品など減税に関する請願(重野安正君紹介)(第一〇三八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇三九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇七三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一〇七号)

 中小業者の営業を破壊し、景気を悪化させる消費税増税反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第一〇四〇号)

 同(重野安正君紹介)(第一〇四一号)

 同(橋本勉君紹介)(第一〇四二号)

 同(松木けんこう君紹介)(第一〇四三号)

 同(渡辺義彦君紹介)(第一〇四四号)

 同(服部良一君紹介)(第一〇五五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇五六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇六〇号)

 同(田中康夫君紹介)(第一〇六八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇六九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇八九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一一一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一一二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一五一号)

 消費税増税をやめ、暮らしと経営を守ることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一〇六七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一一〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一五〇号)

 暮らしと経済を壊す消費税率一〇%への大増税反対に関する請願(吉井英勝君紹介)(第一一一三号)

 社会保障・税一体改革の撤回等に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一一三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局長真砂靖君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原伸晃君。

石原(伸)委員 自民党の石原伸晃です。

 きょうは、G8からお帰りになった総理に、税と社会保障の一体改革の法律案、並びに、その前にちょっと政治論を議論させていただきたい。

 G8も非常に、当初予定されていたように、外交案件、すなわち、北朝鮮のミサイルの問題やシリアの虐殺あるいはイランの核開発、こういう問題よりも、やはり経済セッションがかなり注目を浴びた。すなわち、欧州危機をどうやって再燃させないように食いとめていくか、総理もその中でいろいろ御提案をされたようでございますが、この話の前に、まず政治論、私が今一番気がかりな点についてお話をさせていただきたいと思っています。

 総理は、施政方針演説の中で、決められない政治からの脱却、こういうことを強く訴えられていた。しかし、決められないものがちょっと多過ぎませんか。その最たるものが、私は、衆議院における一票の格差の是正の問題だと思います。

 最高裁の違憲判決を無視して、選挙区画定審議会、いわゆる区割り審で定められた勧告期限、これは二月二十五日ですよね。三、四、五、三カ月たっちゃった。その根底にあるのは、民主党の皆さん方の、解散したくない、そんな思いじゃないか、こんなやゆまでされるようになってきた。こういうことを放置してきた責任というのは、実は政府・与党にあるんですよ。そこを野党にすりつけるようなことのないように、きょうは、この問題から議論させていただきたいと思います。

 ちょっとパネルを出してください。

 総理がアメリカに行かれた日の十八日の新聞に、藤村長官が自民に、ゼロ増五減、さらに比例の十減案を示したと。

 私は聞いていない。総裁も聞いていない。何だ、これは。すぐ輿石幹事長に電話しましたよ。

 輿石さんからは、ぜひ来週、幹事長・書記長会談を開いて、この問題を議論させてください、そう言われていたら、その翌日、この報道がなされた。

 うそか本当か、そういうことを私は言っているんじゃない。やはり、総理大臣は一人しかいない。こういう問題を、誰を現場の司令官にして、どういう日程でどういうふうにやっていこうかということを決めてもらわないと、私は輿石さんと話したんですよ、幹事長、これは二人で話してもしようがないですな。そのとおりだと輿石さんが言っていましたよ、これだったら石原さんと話す必要はないですなと。そういうことじゃ困るということをきょうは言わせていただくために、わざわざこのパネルを用意したわけであります。

 これから幹事長・書記長会談を受けます。一体、いつ、誰が、どの期限をもってこの一票の格差の問題を決めていくのか、総理のお考えを聞かせてください。

野田内閣総理大臣 一票の格差の問題についてのお尋ねでございましたが、先般の党首討論で御党の谷垣総裁とも議論をさせていただいたときに、これは、お互いの認識は共有できたと思ったのですが、やはり一票の格差是正、これは違憲であると同時に違法状態になりました。これを一日も早く解消しなければならない。いろいろな政治改革の課題がありますが、最優先であるという位置づけについての共通認識ができたというふうに思います。

 その上で、特に与党の責任は大きいと思いますけれども、野党第一党、それぞれ、各党に説得をしていきましょうというお話で終わりました。その気持ちは基本的には変わりません。やはり一票の格差是正は、特に与党の責任は大きいと思いますが、それと同時に、実務者の協議が行われている中で、一票の格差の問題と定数削減、我々は八十削減をずっと言ってまいりました。加えて選挙制度の話、それぞれいろいろなお立場があるという中で、これを一体的に決着しましょうということを、実務者の間では、御党の代表者も含めて、一体の合意があったと思います。

 その合意を踏まえて、丁寧な議論が行われてきたと思いますけれども、我が党の樽床座長の実務者協議のもとでの議論ではもう限界があるということで、今、石原幹事長のお話がございましたとおり、これはもう幹事長レベルに上げて政治判断をする時期であるということにお互い認識を共有できていると思いますので、我が党の輿石幹事長からお呼びかけをさせていただいていると思いますし、我が党の輿石幹事長には、早急に結論を得るように指示をしているところでございます。

 なお、そこで、今資料として御提示いただいたゼロ増五減、比例十減案を藤村官房長官がどなたかとお話をしたということでありますが、これは御本人も事実無根と明確に否定をされています。

 ゼロ増五減について、あえて言うならば、我が党はその案には賛成であるということは既に表明をしております。ただし、比例十なんという話は何の根拠もありませんし、誰も議論をしておりません。これは官房長官の職責の話ではありません。先ほど申し上げたとおり、幹事長レベルで今政治判断をすべきであるということを我が党の幹事長にも指示しておりますので、そこを軸に結論を出していただきたいというふうに思っております。

石原(伸)委員 今、総理は、我が党の谷垣総裁、二月二十九日ですよね、党首討論されたのは。三月、四月、五月、それからも、もう三カ月たっている。ゼロ増五減が最優先課題だと両党の総裁そして代表である総理大臣が決めたならば、その指示をおろして、ゼロ増五減を解決して、定数是正、抜本改革、それを時間軸を持ってやはり物を決めていかないと、全部一緒に打ち出の小づちのように名案なんか出るわけない、そういうことを私は言いたいから、こういうことを言わせていただいたのであります。

 総理は、十七日、与党の皆さん方の質問でしたけれども、本委員会でも、格差是正が一番優先するとおっしゃられておりますので、総理の言葉を私は信じていきたいと思います。

 もう一度、輿石幹事長並びに民主党としては、順番としては、格差是正をまずやる、そして時間軸を持って一体的にやっていくというような決意を示してください。

野田内閣総理大臣 格差是正は最優先、最重点、最重要という位置づけであるということは間違いありませんし、何回も申し上げたことであります。

 ただ、現実論で話をすると、ゼロ増五減だけ先行して決めたらいいというのは御党だけなんです。我が党はもちろんゼロ増五減自体は賛成だと申し上げておりますが、各党におかれましてはセット論が強いんです。そこでどう決着するかでちょっと時間がかかったというところがありましたけれども、でも、先ほど言ったように、幹事長レベルにおける政治判断の時期があると思いますし、これをだらだら延ばすことはできないという点については、全く認識は一緒でございます。

石原(伸)委員 決められない政治からの脱却というのは、私の言葉ではなくて、総理のお言葉でありますので、やはり物事には順番を決めて、打ち出の小づちはないわけですよ。総理と総裁が話してから三カ月たっちゃっている。そして会期末が一カ月になってしまった。ぜひ、この一票の格差を片づけて、その次の定数是正、抜本改革と、時間軸を持って決めていかない限り、総理の言われる決められない政治からの脱却というのは絶対できないと私は思いますよ。

 そして、もう一回たださせていただきたい。

 一票の格差が是正されなくても解散権は縛られない、これが政府の見解だと思いますが、そういう認識でよろしいのでしょうか。

野田内閣総理大臣 もちろん、格差是正は早急にしなければいけないという前提の上でありますけれども、解散権は縛られるものではないと思います。

石原(伸)委員 そうしますと、ぜひ輿石幹事長に言っておいていただきたいんですが、幹事長は、何もやらないで選挙をやれば最高裁に選挙無効と言われかねないと、一票の格差が是正されない限り解散権は縛られるという見解を示されている。総理の見解と輿石幹事長の見解は違うわけですから、ここは民主党として、ひとつ、一つの意見にしていただきたいと思います。

 私、幹事長・書記長会談、応じますよ。しかし、また、実務者のときと、皆さんと同じように、一年間ああでもないこうでもないというんだったら、総理の言われる決められない政治からの脱却にならない。何も決められないのであるならば、私はきょう、ちっとも法案も用意してくれませんから、ゼロ増五減の法案をつくってきましたので、これを総理に差し上げます。

 これをぜひ、民主党の側から、順番として、幹事長・書記長会談に示していただきたい、そしてそれに賛成していただきたい。総理、当然、このゼロ増五減の案については賛成していただけますね。

野田内閣総理大臣 まず、ちょっとさっきの解散権のところですが、これは、解散権については大衆討議をして決める話ではございませんので、自分の腹の中で必要なときに行うということが基本でございます。そこは前提として押さえていただきたいというふうに思います。

 その上で、輿石幹事長の御発言というのは、先ほど来の一票の格差の問題も含めて、政治改革で結論を出す当事者、責任者に今なったので、そのことの重さを語ったものだと私は理解をしております。

 今、法案としていただきましたけれども、先ほど申し上げたとおり、ゼロ増五減自体については、我が党としては賛成であることは既に表明をしているとおりでございます。

中野委員長 この際、石原君に申し上げます。

 資料を総理に直接お渡しになりましたが、今後は理事会を通じて御提出をいただきたいと思います。

石原(伸)委員 中野委員長の御命令に従わせていただきたいと思います。

 総理、私、何でこんな政治論からスタートしたかというと、司法から立法府の決意を問われているような、これは極めて重要な問題である、総理もそういうふうにおっしゃられている。そういう問題の解決策が、次へ、次へ、次へ先送りされている中で、国の命運、社会保障というのは、まさに、今暮らしている人、あるいはリタイアされた方、病気になられた方、その人の、全て国民の生活にかかわる重要案件ですよね。そして、これと消費税を上げるというような重要案件を議論することができるのか。またこの問題も先送ってしまうんじゃないか、この定数是正と一緒じゃないか、そういうふうに思われないためにも、私は、限られた日程を切って、一つ一つ問題に解決策を与野党で示していくという上でこれを提示したわけであります。

 外交に移りましょう。

 残念ながら、新聞の論調を見ますと、国際社会の中で日本の影が薄くなるばかりである。今回のサミット、先ほど冒頭お話をさせていただいたように、外交案件が中心になるかなと思いましたけれども、やはりギリシャの総選挙の結果、さらには、総理も会談されたフランスの新大統領、こちらがどうしても、緊縮財政あるいは財政再建一本やりだと国内がまとまらない、そして、経済成長というものが出てきて、経済成長と財政の規律のバランスをどうとるのか、こういうところが最大の課題だったんだと思います。

 消費税の増税と財政再建一本やりであった野田総理も、より成長を重視するという立場へ、外から見ていて、微妙に軌道修正された。これは、ある意味では当然だと思います。しかし、その具体策、二%の実質成長、言われていますけれども、何をやってこのデフレ下で経済成長を図っていくのか、示されていないと思います。

 ぜひ、国民の皆さん方、やはり、東日本の大震災のあったところには特需があるんですけれども、私も日本全国回っていますけれども、景気、よくないですよ。デフレも深刻だ。菅内閣になってデフレ宣言されて、まだこれを克服していない。それに対して、何を野田内閣として目玉でやろうとしているのか、お考えがあればお示しいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 G8では、石原幹事長御指摘のとおり、財政再建と成長をどう両立させるか、両立させなければいけないというところでの認識が共有できました。

 その中で、私が申し上げたことは、従来と異なったことを申し上げたわけではございません。一昨年の六月に、我が国は、財政運営戦略とともに、新成長戦略を同じ日に閣議決定をしているということ、ということは、財政再建と成長を両立させるべく努力をしている、その努力の取り組みについての説明をさせていただいた中で、一つは、一体改革の法案審議がこれから国会で本格的に始まるということ。

 あわせて、成長の方については、新成長戦略を加速させて、そしてこの年央に日本再生戦略をまとめて、それに基づいて中長期的には成長を促していきたいと思いますが、当面の話としては、復興需要の顕在化によって一―三月期に年率四・一%のいわゆるGDP成長が出ましたけれども、これに安心することなく当初の目標である二%台の成長を確保したい、そういう基本的な姿勢を御説明させていただいた次第であります。

 だから、これは、従来と変わったのではなくて、従来の姿勢を改めて御説明したということであります。

石原(伸)委員 私が聞きたかったのは具体策なんですけれども、具体策が示されなかったので、総理がG8で御提示されたIMFへの六百億ドルの資金拠出、欧州危機の拡大を防止するのに貢献するとおっしゃっておりましたけれども、本当にそうなのかな、私、一つ疑問に思いました。

 ある方がこんなことを言っている。

 現在の政権は国内基盤が揺らいでおり、諸外国の日本に対する視線は冷ややかです。その焦りから、国際社会においてもばらまき政策で存在感を示そうとしています。その象徴的事例が、IMFへの拠出です。国際機関への資金拠出よりも、本当に困っている個別国を直接支援する方が日本の存在感を高めることになり、生きたお金の使い方です。日本の総理は、バラク・オバマならぬ、バラマキ・オバカです。

 ちょっとパネルを出してください。この意見、これは野田総理が麻生政権のときにおっしゃっているんですね。

 リーマン・ショックに揺れる国際社会への対応策として一千億ドルの拠出を決めた、それを批判していたあなたが、今度、欧州危機になったから、金額こそ六百億ドルではございますけれども、拠出する。ということは、総理がバラマキ・オバカ、まあ、この言葉は訂正しましょう、やめましょう。

 どう違うのか。この拠出、麻生政権のときと野田政権のときのIMFの拠出の持つ意味はどう違うのか、ちょっと教えてください。

野田内閣総理大臣 よくお調べいただいているなと思います。表現については、私も妥当な表現ではなかったと思います。これは、おわびしなければいけないというふうに思っております。

 その上で、状況がどう違うのかということなんですけれども、これは、この議論が、この当時、私の「かわら版」というものに書いたときですが、リーマン・ショック後いろいろな心配がある中で、インドネシアとか個別国の危機が言われているときの御判断だったと思います。だからこういう書き方をしたんですね。個別国には個別国の対応をすればいいのではないかという考え方をお示しをしたつもりなんです。

 今回のEUの危機は、もちろん特定国のギリシャの問題とかありますが、欧州全体の危機になっています。個別国の信用不安が、これが全体に広がっていく、ユーロゾーンだけにとどまらず、世界経済全体に伝播する可能性があるという中で、だからこそ、マルチの枠組みのIMFの機能というものを、資金基盤を強化すべきではないかという議論がありました。その危機感から、我が国は六百億ドルの資金を提供する用意があるということを表明させていただいたわけで、状況としては若干違うのではないかというふうに思っております。

石原(伸)委員 この議論は、やってもいいんですけれども、リーマン・ショックの世界経済に与えた影響と欧州危機が与えた影響というのは似ているんですね、発端は違いますけれども。インベストバンクが潰れた話と一つの国が破綻をするかという話は違いますけれども、本質は一緒であります。資金需要が不足した、インドネシアの例を話されたように、あのとき新興国はドルが不足したんですね。ですからそういうことを言われたと思うんですけれども、問題の深刻さというのは、実は根本的には変わらないということだけを指摘させていただきたいと思います。

 G8はもとより、この間、五月の連休ですか、民主党政権になっての初めての日米首脳会談、あるいは中国で行われた日中韓のサミット、外交案件がメジロ押しです。しかし、残念ながら、私どもの国会で、こういうことがあった、そしてこれが重要なんだ、国会では実は検証できていません。

 日米首脳会談では、オバマ大統領からTPPについて、関心事項としてやはり出てきましたよね、牛肉、自動車、保険、この三項目。こういう話が出てきた。これは、いずれにしても、日本にとっては米以上に重要な案件ですよね。

 自動車なんというのは特にむちゃくちゃなことを言っていますよ。排気量が違うから税制が違うのがけしからぬ。それは、産油国で自由に安い油を使える国と全く油を産出しない日本とで違うに決まっている。保険というのは何か。郵政の簡易保険じゃないですか。ここにいわゆる第三分野をやらせたら、自分たちの保険業、まあ、個社の名前は言いませんけれども、おかしくなる、こういう話が出てきたわけであります。

 これに対して日本がどう対処するのか、本当に何が今話し合われているのかということは、役所に聞けども、国会で話を聞けども、真相は全く表に出てこない。

 日中韓の共同宣言でも、これは残念なことですが、北朝鮮に対する記述が中国の力の関係でなされなかった。

 また、韓国の李明博大統領から、慰安婦問題、またですよ、謝罪と賠償を求められましたが、総理は知恵を絞りたいとおっしゃったと言われている。これは相手からは誤解される言葉ですね。この真意は一体何なのか。

 こういう案件が山積みなんですけれども、残念ながら、野田政権の中にはお二人の問題の閣僚がいらっしゃる。

 ワシントンでも、問責されている二閣僚について、総理は、二人には緊張感を持って職務を果たしてほしい。そんなことじゃ、この二人に関係する委員会での審議というのはできませんよ。

 この問責閣僚、更迭するおつもりがあるのかないのか、いま一度お聞かせ願いたいと思います。

野田内閣総理大臣 参議院において二閣僚について問責決議が可決をされたということ、その事実としては、これは厳粛に重く受けとめなければいけないと思います。一つの院の御判断でありますので、そういう御判断が出たということに対して、大いに反省をしなければいけないと思います。

 全閣僚に緊張感を持って職責を果たすように言ってありますが、特に問責を受けた二閣僚については、大いに反省すべきところは反省をしながら対応するようにと申し上げているところで、そういう形での職責を果たしていただきたいというふうに思っております。

石原(伸)委員 総理、お認めになったとおり、二人の大臣が本当に職責を果たす適格性があるならば、問責というのは可決されないんですよ。

 防衛大臣、在日米軍の再編、トランスフォーメーションの見直しについて、日米の共同声明を出されました。私も読みました。辺野古移設以外の選択肢があるようにも受けとめられる表現、さらには、普天間の滑走路、あれは大分老朽化している部分がある、補修費の一部を日本が負担することも盛り込まれている。これはどういうことにつながるかというと、普天間基地の固定化なんですよ。

 そんな重大な声明を決めるために、では、防衛大臣はワシントンに行って国防大臣と話をしたのか。あるいは外務大臣も行って、トランスフォーメーションの変更が、私たちが政権にあるとき行われたときには、2プラス2、防衛大臣と外務大臣、国務長官と国防長官、ここでしっかりと声明、サインまでしている。そういうことが開けない。

 さらには、国土交通大臣、能力はおありになるかもしれない。しかし、最近やはり、ツアーバスのあの大きな事故、びっくりしましたよ。全くブレーキもかけずに突っ込んだ。白バスをやっていて、きょうもまた再逮捕されていた。あるいは、福山でのホテル火災。法令を軽視した結果、こういう事故、事件が起こっている。そして、自分自身が選挙違反の疑い、法律違反の疑いが濃厚で、あんたらしっかり法令を守りなさい、そんなことは通らないですよ。

 私たちは、そのような大臣が職務を果たすことが最適とは認めないということを、ハウスは違いますけれども、オール野党がそのようなことを言った。だから、問責決議が可決されたんです。

 そして、その大臣を、今、総理のお言葉を聞いていると、反省すべきは反省してやってくれというふうに聞こえるんですけれども、さっきから言っていますように、国会で十分な審議、あるいは国際社会で行われていることに対しての国会での検証、こういう状況を整えるのは、やはり政府・与党の責任であります。

 今真摯な態度を示すべきは、私は、総理、あなた自身だと思います。あなたの決断がない限り、何も実は前に進まない。何も前に進まなければ、これだけ重要な案件でありますこの審議というものも、私は、なかなかスムーズにはいかない、そういう事態に追い込まれるんじゃないか、心配しているから言っているんです。総理の一刻も早い決断を私は改めて求めたいと思います。

 さて、総理は、法案の成立に対して、我が党の大島副総裁への答弁で、掛け値なしに政治生命をかけるとおっしゃられました。しかし、五月二十一日、六月二十一日が会期末ですから一カ月しかない。総理は、さきの党首討論でも、一体改革案については会期の中で議論をして成立を期すと明確におっしゃられております。

 そこでお聞きしたいんですが、会期内での成立というものに掛け値なしに政治生命をかけられるという揺るぎなき信念を今もお持ちであると確認をさせていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 この国会中で、一体改革について与野党で真摯な議論を経た上で成案を得る、成立をさせるという思いは、これは揺るぎがございません。

石原(伸)委員 今、この国会と。私は、六月二十一日が会期末だという話をしたんですけれども、法案の成立を図るため、確たる見込みもないままに、ずるずるずるずる大幅に会期を延長するということは、時間稼ぎだけでしかないと思いますし、ましてや継続審査、法案が成立しないということは、非常に野田内閣にとっては国際公約もあり致命的になる。そういう場合、総理はやはり明確に責任をとると、この場で国民の皆さん方におっしゃっていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 この国会中に成立を期すということ、それは政治生命をかけるという言葉を何回か申し上げているわけでございますし、その言葉は自分自身でも重たいものだと思っているし、重たいものと受けとめていただいているというふうに思っております。ということで、この国会中に成立を期す、必死に頑張っていきたいというふうに思います。

石原(伸)委員 総理の言葉は格好いいんですよね、掛け値なしで、信じていただいてもいいと。しかし、今みたいなエネルギーでは、これだけの大きな法律案というのは通らないですよ、過去の例からもいって。それではよくないと、国際社会でもおっしゃっているわけだから、ぜひもっと率直に、そして国民の皆さん方に、なぜ、そういうことを機会があるごとに、例えば今度もG8の後、内外記者会見もないようですけれども、やはりメディアを通じて総理の生の声を伝えていくというのは私は総理の大きな仕事だと思います。

 総理、本会議でありましたけれども、これも我が党の大島副総裁への答弁の中で、現在の政権の任期中には消費税は引き上げない、引き上げの前には総選挙で民意を問うから選挙違反ではない。ここは一番やじが多かったところですよ。強弁にしか聞こえなかった。

 民意を問うというからには、国民がイエスと言うならやる、ノーと言ったらやらないということですよね。民主党が民意を問うて、総選挙で勝てばいいですよ。しかし、負けたら、消費税の増税を国民の皆さん方が否定したこと、民主党が総選挙で敗北したら消費税の増税を撤回する、こんなことはできませんよ。そうでしょう。だから、私たちは詭弁だと言ったし、ここの部分で非常に議場がざわざわしたわけであります。

 もう私が申すまでもありませんが、民主党のマニフェストというのはかなり総崩れ状態、重立ったものは総崩れ状態だと思います。

 そして、この社会保障と税の一体改革の法律案が成立するとしたら、その最低条件、私たちが賛成する最低条件は、もう何度も何度も申していますけれども、皆さん方が最低保障年金を諦める。これは無理ですよ、四十年後。まっさらなところに絵を描くならできますけれども、現行の保険料で行われている制度が動いているわけであります。

 あと、国民年金、厚生年金、共済年金の一元化、これも諦めて、申しわけなかった。今出ているこの被用者年金の一元化、これでいいですよ。

 そして、最近は話題にも出ないですけれども、皆さん方が主張されている後期高齢者医療制度の廃止、こういうものも撤回する。

 そして、子ども・子育て新システム、こういうものも善処する。

 すなわち、法案が私たちの賛成によって成立すると、民主党のマニフェストというのは完全破綻という状態になります。

 そこで、お聞かせ願いたい。

 法案の成立に、先ほどから、小さい声でしたけれども、政治生命をかけるということは、総理が総理の手で民主党のマニフェストを葬り去るということになります。

 すると、論理的に言って、直ちに国民の信を問い直す必要が生じる。その覚悟、先ほどは適時適切に、適切なときにというお話をされておりましたけれども、そこまで覚悟を持ってこの審議に臨まれていると理解してよろしいでしょうか。

野田内閣総理大臣 民主党は、社会保障に関するマニフェスト、さまざまな提起をさせていただいております。

 個別のことは、これは具体論のお話がこれから本格審議で出てくると思いますが、全体として、個別項目は別として、我々がやりたいことは、社会保障を安定させること。年金、医療、これは国民皆保険、皆年金、世界に冠たる制度だったと思います。だけれども、いろいろな変化があって、手直しをしなければいけない。安定化させること。加えて、子育ての部分など、充実させる部分がある。そのための安定財源を消費税を充てようということでございまして、骨格の考え方においては、私は、御党とその差はないと思うんですね。

 だから、その中で、マニフェストで書いている部分がどれぐらい生かされるのか。あるいは、善処というお言葉を使いましたが、善処の中で何ができるのかということは、真摯な議論を通じながら結論を導き出していきたいと思いますし、その結論を出すことによって、成立を期すことになります。

 成立を果たすことができなかった責任論が出ました。責任を、そのために果たしていきたいと思いますし、何度も言っているように、これは、自分は、どの政権でも先送りできない課題だと思いますし、決断する政治の象徴的なテーマだと思っていますから、ぜひ知恵を出し合って結論を出したいというふうに思っております。

石原(伸)委員 今、ちょっと率直に言われたような気がしたのは、現行制度の手直しをする、安定化を図る、そして足らざるところを充実するという案を出してくだされば、我々は賛成します。

 ですから、できもしない、ましてや国民の皆さん方も望んでいないんですよ。もうこれは予算委員会でも相当、小宮山大臣とも議論しましたけれども、国民年金、我々も国民年金加入で、月々一万五千円ちょっと払っています。これが年収四百万で計算したら、月々が五万円になるわけですね。五万円の負担、三倍以上。その一元化を望んでいる人がいるかと、皆さん政治家だから、地元で聞くわけですよ。いないんですよ、これ、申しわけないけれども。いや、よろしいです、もう五万円払いますなんて人はいませんよ、今の時代に。

 だから、今言われたようなことで党内をまとめてくださいというのが私どもの切なる願いであります。

 では、ちょっとパネルを。

 それで、賛成したくてもなかなか賛成できないんだな、この法律案は。きょうはちょっと時間が余りないので、二つ三つ話させていただこうと思うんですが、これは七条です、法律の七条、私も持ってきましたけれども。

 検討する、検討すると、三つ四つあるならいいんですけれども、ちょっと、二十八カ所あるんですね。ということはどういうことか。消費税をいついつ八%、いついつ一〇%ということは決まっているんですけれども、その後は白紙委任で我々に任せてくださいと言っているんですね。

 社会保障、さっき言いましたように、現行制度の手直し、安定化、充実だったら我々賛成できるんですけれども、何か、できもしないようなことが、頭でぶらぶら、ぶら下がっている。そこの社会保障については来年出されるという。本当に実現が可能なのかといえば、国民の皆さん方は、これはもう七万円、最低保障年金、保険料を払わなくてももらえるななんて思っている人はいませんよ。

 ということは何かというと、税制については、この中身を見てもわかるように、決まっていない。こんなことがあったら、賛成したくても賛成する余地がないわけであります。

 一つだけ話をしましょう。

 この検討項目の中に、歳入庁をつくってみようと書いてあるんですね。

 民主党は、日本年金機構、これは昔の社保庁ですよ、の一部と、社会保険庁と国税庁を一緒にするという。この案に対しては、岡田副総理も、多分、安住財務大臣も、どうかなと思っていらっしゃると思う。私もどうかなと思っている。

 悪貨は良貨を駆逐する、朱に交われば赤くなる、水は高いところから低いところに流れる。国税庁の職員、徴税義務に従事していますから、モラルが高い。そして、現場を必死に守っている。しかし、その人たちと、社会保険庁というのはつい四年前まで、私も視察してびっくりしたけれども、十二時から一時まで休んでいて、そういう時間帯に、働いている人は行って調べたいんだけれども、昼休みだといって店じまいしているんですね。

 そして、ちょっとパネルを出してもらいたいんですけれども、問題を起こしましたよ。過去のことをあげつらうつもりはないけれども、旧社会保険庁の職員は、業務目的外の閲覧、これは何かわかりますか、パソコンで人の年金記録をのぞいていた。二千六百九十四人処分されている。私もやられましたよ。きょう持っていこうかと思ったんだけれども、それをやった人の名前、全部私持っていますよ、本当に。

 年金記録をのぞき見する人たちが、どれだけこの人は税金を納めているのかなとのぞき見しないとは限らない。ましてや、国の根幹である税の分野を、そんなモラルの低い人たちが残っていてしたとしたならば、税の信頼性、徴税の現場というのは私はがたがたになると思いますよ。これは火を見るよりも明らかだ。

 税務情報を扱うのに本当に旧社保庁の方々が適しているのか。安住大臣、ちょっと本当のことを言ってください。

安住国務大臣 まず最初の、二十八項目の検討事項でございますけれども、確かにそうでございます。

 ただ、少しだけ反論させていただきますと、六年にお決めになって、九年に消費税を上げる段階においても、実は法案策定時から施行までの間に決めた項目というのがあります。ですから、そういう点では、法案が固まるときにはそういうことはしたいんでございますが、しかし、どうしても住宅の問題とか、石原幹事長御存じのように、検討して年度改正でやらなければならないものを方向性として示したということを御理解いただきたいと思います。

 今御指摘をいただいた点については、私も、国税庁の職員、国民からの信頼というのは大変高いものがあるというふうに思っております。本来、税金を取りに行くのは決して楽しい仕事ではございませんけれども、しかし、公平性をきちっと担保して長年そうしたことをやってきた信頼性は高いと思っております。

 社保庁の抱えているさまざまな問題はございますので、十分そこは認識をしておりますので、目下政府の中で三つの方向というものを出しまして、その中でさまざま検討をいただいているということでございますが、国税庁の考え方やこれまでの歴史というものは大切にしていかないといけないと思っております。

石原(伸)委員 最後の、大切にしていかなければならないというところだけを共有していると言いましょう。

 そして、税法の中で方向性を示したと。方向性を示すんだったら附則でいいんです。これは本則に入っているから問題なんです。

 何か言うことはありますか。

安住国務大臣 与党での協議の中で、最初はおっしゃるとおりでございました。しかし、それを七条の中で入れよという御指摘がございまして、入れるということについては法制局でも検討いたしましたが、今後の検討事項等、税法で片づけていかなければならない問題をこうして列挙させていただいたわけでございます。

石原(伸)委員 今、図らずも、党内の中から本則に入れろという声があったから、本当はおかしいと思っていたけれども、その中へ入れた、そういうふうに受け取らせていただきます。

 あと、税法の話もちょっとさせていただきたいんですが、余り時間がないので一方的になるかもしれませんが、今度の改正の中で、かなり乱暴な改正が含まれています。それは、一つは相続税ですね。

 これは東京プロブレムと言われるかもしれませんけれども、基礎控除を一気に六割にしちゃった。普通、そういうものは段階を追って、最終的な目的がどういう税制であるからどうなんだということで仕組んでいくけれども、これは乱暴ですね。だって、相続税というのは、明治三十八年のロシアとの戦争までなかったんですよ、日本で。今、アングロサクソンの国々は、相続税というものをなくしたり、軽くしたりする方向で動いています。

 やはり基礎控除を、五千万、一人一千万というものを三千万、六百万に引き下げたことでどういうことが生ずるかというと、例えば、基礎控除が、一億円の資産を持っていて八千万だった人は、四千八百万、四割引き下げられる。例えば、坪百万、二百万、そういう土地は東京はざらざらあるんですね。そういう人たちが、五十坪、百坪の家を持っていて、相続の平均発生年齢というのは、ちょっと調べてきたら、今東京で六十七歳、もうほとんどの方々が、六三%の人が公的年金、要するに年金収入を中心に生活している人たち。その分、資産に見合った、固定資産に見合ったフローを持っていて、そこで相続税を払えるならいいんですけれども、これは現に、地価高騰時代に起こって、物納がふえて困ったじゃないですか。財務省理財局が不動産屋みたいなことをやっていて、財務省、財務省、財務省というのが、東京じゅうに土地があふれた、そういうことが起こるわけですよ。

 ですから、そういうことは、やはり、どういう最終的な相続税のあり方にするのかというものがあって、そこにいきなり四割、ばんと減らすみたいなことじゃなくて、段階的にやるというのが税の世界の常識である、このこともまた後ほど議論をさせていただきたい。

 地方税でも一つ言わせていただきたいものがあるんです。

 地方法人特別税と地方法人特別譲与税、これは非常にマニアックな税なんですが、私どもが政権を持っていた二十年のときに、地域間の税源の格差、すなわち、この法人事業税というのは東京都に偏っているんですよ、これが偏在化した。法人事業税の税率を引き上げて、国税として特別税という形で地方に回したんですね。しかし、これは、恒久的な措置ではなくて、抜本的改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の緊急的な措置というふうにして話をつけた経緯があります。

 しかし、今回、ちょっともうしまっちゃったんですけれども、改革の中で解決すべき問題なんですが、七条の中には、抜本的に見直す、検討すると書いてあるんですね。何の具体策も示されていない。

 抜本的な改革というのは、まさにこの消費税を上げるという改革のときでありますから、この問題を解決すると約束しているのに、今回それが検討にとどめたということは、逆から言えば、今回の改革は抜本的改革じゃないよというふうに認めているということになりかねないんですね。そういうところがたくさんあるんです。

 これは、また、お時間をいただいたら、税の専門の集中審議があったら、私も立たせていただいて話をさせていただきたいと思います。

 もうあと三分ぐらいで、もう一問だけ行きたいんですけれども、安住さん、何かありますか。いいですか。

安住国務大臣 相続税については御議論のあるところだと思います。つまり、控除額を五千万から三千万に下げた。それで、相続人、子供も含めて一千万を六百万に下げた。

 ただ、幹事長、現在相続税を納めておられるのは、百人亡くなったとすれば四人なんですね。(石原(伸)委員「地域差がある、千代田区は五十人」と呼ぶ)いや、地域差はあるかもしれません。ただ、富は誰のものか。お父さんは一生懸命稼いで大金持ちになりました、そのお子さんも金持ちであっていいかどうかというのは、私は議論のあるところで、そういう点では、亡くなった時点で、その稼いだ方の富を社会にどういうふうに還元するかというのは、ぜひお時間をいただいて議論させていただければと思っております。(発言する者あり)

石原(伸)委員 今、やじが出ましたけれども、これは要するに、相続税はやはり半分、取っても五割だねということで大幅な改正をやったんです。その議論をずっと十年間やって、私、そのときの税制改革特別委員会の理事をやっていましたから質問させていただいた。

 最後に、もう時間がないので総理に伺わせていただきたいと思うんですけれども、今言ったように、この法律案というのはかなり乱暴だね、大臣が認めているように乱暴なところがたくさんある。こういうものにやはり政治生命をかけて、自民党にも協力を得て法案を通そうということに、これまでの議論を聞いていて変わりませんよね。そこだけ最後、お願いします。

野田内閣総理大臣 財務大臣は、乱暴な法律とは認めてはいないと思います。その都度御説明していると思いますけれども、現時点で政府・与党として、検討項目はありますが、合意形成できたものを法律としてまとめて御提示をいたしました。

 これは、我々が時間をかけて熟議を本当に尽くしてつくったものでありますけれども、当然のことながら、社会保障であるとか、あるいは財政の将来というのは、これは政権がかわるたびに変わってはならないものでございます。やはり、国民のために、あるいは将来世代のために、その大事な大局観に立って、与野党が、与野党のできるだけ多くが賛同を得る形が私は望ましいと思いますので、野党第一党の御党の御提起等はしっかりと受けとめて成案を得ていきたいというふうに考えております。

石原(伸)委員 最後にいたしますけれども、できるだけ多くの賛同を得てというのは、これは間違いです。与党は少なくとも一枚岩にならないと、これだけ大きな法案は通りません。

 一般消費税、売上税、そして消費税、三度目ですよ。全部党内の反対でついえた。そこを、総理、言葉はいいんですけれども、やはり党内をしっかりとまとめる、そしてそれがない限り、それはどうすればできるかといったら、簡単ですよ、できないと思ったマニフェストはこだわってはいけない。そのためにどういうことが起こっているかというと、民主党内の反対派につけ入るすきを、総理、結果として与えているんですよ。だから党内がまとまらない。

 そして、マニフェスト至上主義みたいなことを言うと、国民との約束だと大見え切っちゃった。そうすると国民は、約束を破っているんじゃないか、消費税を上げるなんて誰も言っていなかったぞ、おいとなると、国民からの信頼も得られない、だから支持率が下がる、与党の責任が結果として果たせない。

 総理、本法案を成立させるためには、やはりあなたのリーダーシップというのは大切です。そしてそれを、さっきゼロ増五減、幹事長、書記長に任せると言ったけれども、隗より始めろ、できることから一つずつ行動に移さなきゃなりませんよ。

 総理がこのまま何にも決めないで、いや、任せているんですよ、任せているんですよというようなことを言って会期末を迎えて、次、この法律案が通るか通らないかもわからないけれども、大幅延長だというようなことになるのであるならば、そのとき私たちは、今は協力を惜しまない、野田税調会長が、我々は足を引っ張るつもりは毛頭ないんだと本会議場で言った。きょう集まっている我が党の委員は、みんな同じですよ。その気持ちを総理もしっかりと受けていただいて、会期中にはしっかり衆議院は通すぞ、そしてできなかったら腹を切る、そのぐらいの気持ちを持って臨んでいっていただきたいと思います。

 そして、もし仮に総理、それができませんでしたら、私たちは今度は、次は総理の責任を追及せざるを得ない。そういうことにならないように、私は、知恵を出し合うということを、そして足らざるところを補うということであるならば議論を深めてまいりたいということを申し述べ、時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。

中野委員長 これにて石原君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊吹文明君。

伊吹委員 総理、お疲れでした。少しゆっくり休んでいただけましたか。

 皆さんが野党であれば、多分、九時から審議を始めろと言ったと思うんですよ。あなたは、きょう未明にお帰りになりましたよね。日本の命運を担って、やはり非常な緊張感を持って渡り合ってこられたと思います。そういうときには、やはり少し休んでいただく、これが野党として当然なんですよ。

 審議が細切れになりました。民主党が最初御質問になった後、やはり御出発までの間は少し勉強をされて、命運を担って頑張ってもらいたいというので、もちろん、我々も細切れの審議をするのは嫌だということもあるんですよ。だけれども、お互いに国運を担っているときは与野党は関係ないから、ぜひきょうはしっかり休んでもらいたい、それで午後から始まった。ですから私は、お休みになれましたかと伺ったんですよ。

 決して私は、あなたの今まで、あなたという表現はいけませんね、民主党が選挙のとき以来約束をしてきたこと、あるいは、民主党の代表者あるいはそのときのナンバーツーである当時の幹事長がいろいろなところで言ったこと、それを国民は信用して、信頼して投票しているんですよ。そのことはやはり大切にしなければならない。

 まず、我が党の大島副総裁、それから鴨下先生、そして野田聖子さん、それから馳さん、そして野田毅税制調査会長、それから金子一義先生、本会議の議事録をもう一度取り寄せて読んでいただけましたか。

野田内閣総理大臣 まずは、G8出席のために審議について大変御配慮いただきましたこと、冒頭、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 その上で、これまでの本会議での自民党を代表しての皆様からの御質問、改めてまだ読み返しているわけではございません。申しわけございません。

伊吹委員 私は、もう一度取り寄せて読んでみました。ずっと聞いているだけじゃ、なかなかやはり頭に入らないんですよね。大島副総裁や特に野田毅先生が質問されたことを、ぜひ、官邸にお戻りになったら、夜にでももう一度目を通していただきたいと思います。

 つまり、私たちの基本方針は、決して総理をとっちめたり、昔言っていたことはこうじゃないかということを言うんじゃないんですよ。ありていに言えば、国民には約束はしていなかったけれども、あなたが勉強された結果、必要だということに思いを至られて、我々と同じところへ来ていただいたということを我々は大歓迎しているんですよ。だからこそ、日本の主権者である国民にそのことをどう理解していただきながら、あなたのお言葉をかりれば、どの政党が政権をとっても避けられない課題をどう実現していけばいいかという、政治家としての議論をしたいと思っているんです。

 野田毅先生は、この委員会でいえば、後ろにいらっしゃる渡部恒三先生と同じぐらいの政治歴を持っておられるお方です。早く国会に出られましたから、人生の経験は渡部恒三先生よりずっと短いと思います。しかし、政治歴はほぼ同じです。

 この方は、やはり自民党の中でも、消費税について今回大変御苦労なさったように、民主党の中と同じような反対論がずっとあったんですよ。私は野田先生よりおくれて国会へ出てまいりましたけれども、国会に出てから、やはり消費税をやらなくちゃいけないなと。

 後ほどお話ししますが、これは決して社会保障のためにやるんじゃないんですよ。後世の国民の汗水垂らして納めた税金を、前の世代が決めた利払いと国債の償還のために使わせるということだけはやっちゃいけない。もう一つは、こういう不景気のときに財政の資源配分機能を取り戻さないとどうしようもないな。この二つでやるんですよ。

 社会保障はどんどん伸びてくるから、これを賄うためにということは、非常に国民にわかりやすいからそういうことを言っているだけであって、お金に色はついていないんですよ。これは後ほど御議論します。

 そのときに、野田毅さんのお言葉をかりれば、ちまちました弁解をやめてほしいということを再三言っておられます。先ほどの石原さんとのお話を聞いても、これをやっていく上には、国民に対して、やはりあのときは言わなかったことをやろうとしているんだから、ひとつ理解をしてくれないか。誰も、解散の約束をしなきゃ協力しないぞなんて子供じみたことが通るわけがないと私は思っていますよ。解散したら、ここにいる人はほとんど帰ってこられなくなるんだから、反対するのは決まっていますよ。

 それで、野田さん、あなたは党首なんだから、みんなの命運を握っているんだから、そんなことを表立って約束できるなんということはあり得ません。それは、私は大人だからそれぐらいのことはわかっています。

 しかし、やはり国民に対して、申しわけなかったなと。あのときとこのときは少し様子が違うんだとか、さっきも聞いていたら、ああだとかこうだとかじゃなくて、もう少し、日本の主人公である国民に、何というか、正直にそして謙虚に話しかけないと、我々は結果的にこのことの、皆さんが国民に対して不信行為を働いた片棒を担いでしまうことになるんですよ。

 そこをしっかりと政治家として押さえてもらいたいので、選挙のときにやや舌足らずだとか口が滑ったとかいうことを総理はよくおっしゃるけれども、そうじゃなくて、やはり無理があったということを率直に認められたらどうですか。

野田内閣総理大臣 先ほど、本会議で御質問いただいたいわゆる議事録は読んでいないと申し上げましたけれども、例えば野田毅先生からいただいた三つの壁などはしっかり胸に刻んで対応しなければいけないと思っていることは、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 その上で、確かに本会議の答弁では、マニフェストに消費税は書いていなかった、そして発言については、舌足らずであったとか、あるいは言い方を間違ったとか、しゃべり過ぎたとか、いろいろ言ったかもしれません。基本的には、消費税をどうするという話をちゃんとしていなかったということは事実であります。

 そして、今回は一体改革として国民の皆様に御負担をお願いする議論をするわけでございますので、その経緯からすると、選挙の前に明確に方向性を言っていなかったことについては、私は改めておわびをしなければいけないと思います。

 そのおわびの上で、なぜ必要なのかという議論をこれからしっかりやっていかなければいけないと思いますが、これはもう何度も申し上げているとおり、社会保障にお金を使う。色はついていないという御指摘もございましたけれども、やはり社会保障安定化と充実のために使っていきたい。その安定財源確保と財政健全化を同時達成するという理念のもとに、具体的に何をやりたいかということをしっかり御説明して、国民の皆様の御理解を得るべく努力をしていきたいというふうに思います。

伊吹委員 国民の皆さんが今の総理の御発言をどう受けとめられたか、これは国民の御判断だと思います。

 そして、あと、今おっしゃったようなことの必要性その他については追って議論をしたいと思いますが、まず、今、内閣総理大臣として日本の行政権を掌握してそこに座っておられるのは、どうしてなんですか。それをお答えください。

野田内閣総理大臣 これは、国会において御指名をいただいて、そのことによって天皇によって任命をしていただいたということによって、今私はこの立場にあるということでございます。

伊吹委員 そのとおりなんですね。

 私、この国会手帳というのは憲法と国会法が書いてありますから、いつもこれを持っているんですけれども、ここの内閣のところに、内閣は行政権の行使について国会に連帯して責任を負う、そして、行政権は内閣にある、内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決でこれを指名する。

 だから、もう釈迦に説法ですが、参議院も国会で、参議院本会議の御指名もありますが、憲法の規定によって、衆議院の指名、つまり、ここにいる民主党の皆さんの投票によって、国民新党もあるでしょう、あなたは総理大臣になられたということですね。

 そうすると、民主党の皆さんがバッジをつけているのは、どうしてバッジをつけているんですか。

野田内閣総理大臣 国民の皆様の審判によってバッジをつけているというふうに思います。

伊吹委員 憲法に書いてあるように、主権者は国民なんです。日本の主人公は国民です。そして、国民が国を決める権限を委ねるのが選挙ですね。これが代表民主制と言われる制度です。

 多くの場合は、権力を握るのは、近代までは、人を殺して、無辜の民を集めてけんかをさせて血を流させて、そして権力を手に入れたんですよ。これは、NHKがやっている平家物語がまさに今そういう状況ですよね。だけれども、近代国家においては、もうそれはやめようじゃないか。

 日本では、明治維新、このときも、しかし、戊辰戦争まで多くの血が流れました。そして、日本の立憲民主主義を安定させるために、西郷隆盛さんは不満を一身に背負ってああいう死に方をされたんじゃないかと私は思います。佐賀の乱もありましたね。その後は、ああいうことを経ずに、投票によって国民の民意を背負った者が権力を握ってやっていく。このプロセスが正当に動いたかどうかというのが今は一番の問題なんですよ。

 ここで、今、パネルを出しておりますから、どうぞごらんください。

 主権者は国民であります。選挙で主権を国民が委ねます。与党、野党が決まります。今回は皆さんが勝たれたから、皆さんが衆議院の与党になられたんです。

 だから、参議院のときにどう言ったとか、野田総理は時々、代表選挙のときに私は税と社会保障のことをきっぱりと党内で申し上げたとか、そんなことは民主党内のことですよ。国民と何の関係もありませんよ。

 国民との接点は総選挙なんですよ。総選挙のときに皆さんが勝った。勝ったから、皆さんは総理大臣を指名した。そして、総理大臣が内閣を組織した。そして、内閣は行政権を掌握して行使する。この行政権を動かすための一つの手段として、ぜひこの法案を通してくれというのが、今回提出されたことですよ。

 そして、あえて、石原さんもせっかく質問していたからフォローすると、問責の議決は四月二十日なんですよ。この法律は三月三十日、一元化法案は四月十三日に閣議決定をしておられます。だから、問責を受ける前の大臣が、連帯して責任を負うために花押しているんです。だから我々は、参議院が問責をしても大人の対応をして、衆議院のこの委員会ではこれをやっているんですよ。だけれども、憲法上の議論からいえば、四月二十日以降に問責二大臣が閣議決定に花押したものについて、参議院が受け入れるか受け入れないかは、あなたの決断にかかっているんですよ。

 憲法は、総理大臣が国務大臣を指名し、内閣を構成すると書いてあります。その点はぜひ御留意になって、今後の国政に当たっていただきたい。ここは人事権のことですから、これ以上詰めません。

 そこで、次のパネルを見てください。

 もうこれは何度も何度も申し上げて、皆さん嫌だと思っていると思うんですが、これは私の愛読書、民主党のマニフェスト。これをごらんになると、この左側に、二十二年度に何をやります、二十三年度に何をやります、二十四年度に何をやります、二十五年度に何をやりますということをずっと書いてあるんですよ。そして、その財源は、二十五年度にどうやって調達するかというのは右側に書いてあるんです。

 これは、今さらごらんにならなくたって、このマニフェストの傘の下で皆さん当選してきたんだよ。だから、これがほとんどできていなかったとかどうだとかということを言われる、今までさんざん皆さんやられてきた。

 問題は、左側ができなかったのは、結局、その右側の財源がうまくできなかったんですよ。野田総理は、このことを問われると、リーマン・ショックがあったり三・一一の地震があって税収が大幅に落ち込んだからという答弁をよくされますが、これはいただけませんよ。

 というのは、リーマン・ショックは、二十年の後半の麻生内閣のときに、既に麻生さんはそのことに対する対策をしているんですよ。二十一年の八月に総選挙があって、このマニフェストが出ているんですよ。だから、リーマン・ショックというのは織り込み済みでつくらなかったら、政権担当能力はありませんよ。

 それから、三月十一日、三・一一というのは、二十二年度予算と二十三年度予算の編成後に起こっているんですよ。そうでしょう。そうしたら、二十二年度と二十三年度はきっちりできておりました、だけれども二十四年度は三・一一の問題がありましたからできませんというんならいいけれども、東北の人に私は非常に失礼だと思う、東日本の人にね。

 やはり、ちまちましたことを言わずに、時々おっしゃる財源の見通しが甘かったとか、そういうことをはっきり認めて、無理なことを言って国民から票をとってしまったということをしっかりお認めにならないといかぬです。

 それで、かつて、言ったように、みんな血を流して権力をとったけれども、過去において、人類の歴史において、御承知のように、国民が選挙によって代表を選んで動いていたときが一時あるんですね。これはローマ時代ですよ。

 ローマも、一番最初は、これは、権力を人を殺して奪い取った。しかし、そのうちに、だんだん話し合いの中で共和制というのができたんですよ。これは、一部の限られた人たちではあったけれども、その人たちの投票によって元老院というものが形成されて、そして、元老院の人たちの投票によって皇帝という、私はローマ皇帝という呼び名は間違いだと思いますよ、あれは、軍司令官とそれから内閣総理大臣を兼任している人を、一定の期間を通じて独裁権を与えるという、国民から決められた行政統治官というんですかね、強力な大統領を選ぶことだったんですよ。

 これが失敗したのが、これがずっとうまくなぜ続かなかったかというと、やはり民主主義に固有の欠点をローマの人たちがなぞっちゃったんですね。一つは、多くの人たちの支持を得たい。だから、豊穣なエジプトのナイルのデルタからたくさん小麦を輸入して、そして、それをできるだけ安く、そのうちには福祉政策として国民に与えちゃった。それから、人間同士を戦わせて人気をとって、これは一種の衆愚政治ですよ。本来、国民をそこまでばかにしちゃいけないんですよ。それをやりながら、人気を得るということをやったんですね。

 そのために、にっちもさっちもいかなくなってきたということがまずあって、そして、そういうことをやっていると、今の日本もそうだけれども、先進国がみんな今そういう状態になっているのは、多党化になって、ちまちました意見をお互いにやり合って、物事が決まらない。そこで、クーデターが起こるんですね。あるいは武力を使ってやる。

 そして、統治官になった連中は、本人は立派でも、息子がどうしようもないぐず玉であるということもあるんですよ。権力を握ったときには立派な人であっても、権力を長く握っていると、本人の人間性が変わってくる人もいるんですよ。

 そこで、ローマは結果的に滅びて、その後、中国も、そしてヨーロッパも、日本も、権力を握るときは必ず流血ですよ。

 残念ながら、私は、民主党の皆さんの、あの選挙のとき、どうして民主党に票が入ったんだろうなと。明らかに自民党の失敗が二つあります。これは、マニフェストで人をつっただけではありません。公平に言っておかなければなりません。

 長い間政権を持っておりましたから、我々以外にないという思いがあって、自信を持っていたのはいいんだけれども、自信が過信になって、過信がうぬぼれになって、国民の目線と違ったというお叱りを受けた、これがまず一つ。

 それから、あえて言えば、私は、小泉内閣の際に、あれだけ人気がある間に、今野田総理がやるべきだとおっしゃっていた消費税を引き上げておくべきだったと思う。

 それは、その結果どういうことが起こったかというと、税を引き上げずに、そして一律にカットをかけましたね。これは、総理大臣の前に財務大臣をやっておられた、安住さんも財務大臣、だから、内容がどういうことになっているかというと、これは後ほど議論しますけれども、社会保障費だけはどんどん上がっているんです。上がっているけれども、一人一人の立場からすると、年金の給付額は落ちているんです、制限されているんです、自己負担が上がっているんです。保険料が上がっているんです。ただ、長寿者人口が圧倒的な勢いで毎年量がふえていくから、価額が下がっているにもかかわらず、価額と量とを掛けた社会保障費はどんどんふえているけれども、不平不満が充満した。この二つですよ、自民党の大失敗は。

 これでやはり自民党は反省をして、我々は、新しい綱領をつくり直して、党運営を透明化して、やり直そうという気持ちで今やっております。しかし、なかなか国民の皆さんに今それを御理解いただけないもどかしさがあります。

 それからもう一つ、あえて言えば、このマニフェストなんですよ。

 私はいつも十時ごろ投票に行きますが、そのときには、いつもは誰もおりません。さっと投票所に入れます。今回は、子供を抱いている若い夫婦、乳母車を押している若い夫婦が行列をしておりましたよ。ああ、これはだめだな、これは子ども手当だなと私は思いました。だから、ローマで民主主義が崩壊したのは、パンとサーカスということがよく言われるけれども、これと同じことを皆さんがなぞられたということなんですよ。

 だから、ここは、もう今さら済んだことをこれ以上追及して、ここは違うじゃないか、ああじゃないか、そんなことを言っていたって前へ進めないから、野田総理、これはもう鳩山内閣、菅内閣は済んじゃって、あなたのときに勉強して、勉強した結果、やはり普天間ももとへ戻った、これも自民党政権のときに考えていることにもとへ戻った、八ツ場ダムも始めるんだ、そして新名神も再開するんだ。

 与党というものになってみると、いろいろ現実を混乱させないためにはこれしかなかったんだということがわかりましたということを率直に認めて、そして、すぐに解散しろとかどうだとかという子供じみたことを言うんじゃないけれども、国民の皆さんに、やはり主人公なんだから、謙虚に御意見を聞く機会をできるだけ早く持ちますということをおっしゃったらどうですか。

野田内閣総理大臣 多岐にわたるアドバイスがたくさんあったというふうに思うんです。

 まず最初の、前半の部分のところで、余りちまちましたことを言うなという御指摘ございました。そのとおりだと思うんです。財源確保の見通しが甘かった部分がマニフェストはあったと思います。それは大きな要因だとは思います。

 ただし、政権担当の問題、政権をとる前ととった後で、それはやはり違うんですよね。だから、リーマン・ショックの後に、税収が、当初は平成二十一年度、四十六兆と見込んでいました。でも、選挙の前の国会でも、政府に税収どうなるんだと言ったときに、例えば、我が党だと仙谷さんが質問したと思うんですが、四十兆を割るような政府の答弁は全然なかったと思うんです。三十兆円台に行くとはよもや思っていなかったことは事実でございますので、それもちまちましていると言われてはしようがないんですが、やはりいろいろな要因はあったことは事実です。その中で、財源確保の見通しが甘かったということも、これは我々認めていることでございますので、それは率直に御指摘いただいたとおりだと思うんです。

 その上で、前回の選挙のお話も、これは大変バランスを持って評価をしていただいたと思います。自民党の中の敗因分析もありながら、我が党のマニフェストについても触れていただきましたけれども、その中でちょっと一つだけ僕は意見が異なるところがありました。

 というのは、前回の総選挙でお子さんを抱いた若い御夫婦がたくさん投票所に行ったということ、私は、そのことはいいことだと思うんです。それが子ども手当が呼び水なのか、これはわかりません。そうだったかもしれません。でも、私は、次の総選挙もそうあるべきだと思うんです。

 今回の社会保障と税の一体改革の一番我々がやりたいことは、社会保障の安定化と充実と言っていますけれども、要は、負担と給付の世代間の公平を図ることなんですね。給付の面においても、少子化対策、子育て、若い世代に人生前半の社会保障を強化することによって社会保障の実感を持ってもらいたいということ、負担面においては消費税で、これまでの現役世代中心の負担から、広く薄く消費税でお願いするという世代間の公平を訴える、そこで御理解をいただいて、今回も御負担をお願いする話でありますけれども、若い人たちに、あるいはお子さんを育てている世代には、たくさん投票所に行っていただいて審判を得たいという気持ちは、これは変わらないことはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

伊吹委員 おっしゃるとおりなんですよ。だけれども、野田さんがまさにおっしゃったように、私は、若い世代の方が子ども手当につられて投票に行ったか、あるいは自分の判断で選挙に参加されたのか、これは評価の分かれるところです。ただ、従来は選挙場に来ておられない世代の方が随分たくさん来ておられたという事実を申し上げているんです。

 本来、子ども手当などなくても、若い世代の方こそ、税制改正をやって、将来自分たちが汗水を垂らして納める税金を少しでも自分らの世代の判断で使いたいということをやってくれている自民党や民主党に投票しようとして来ていただくのが正しい姿じゃないですか。

 それで、税収見通しのことをおっしゃいましたけれども、あなた方のこの民主党のマニフェストは、税収をもって充てるということは一つもないじゃないですか。みんな書いてあることは、自公政権の無駄を省いたらできるということは書いてあるんですよ。税収を当てにしていれば、税収が落ち込んだということをおっしゃってもいいけれども、だから、それがちまちました言いわけだと言われるんですよ。どうですか。いや、ちょっと待った、総理に聞いているんだから。

野田内閣総理大臣 マニフェストの主要事項は、結果的には税収をもって充てているんですね。いわゆる税制改正で出した分と、行政刷新会議を中心とした事業仕分け等で出てきた無駄、それを合わせて大体年間三兆円ほど確保した中で、主要項目についてはこれまで実現をしてきました。

 ということで、基本的には、税収をもってマニフェストは実現をするという姿勢でありますということは御理解いただきたいというふうに思います。

伊吹委員 この議論は、国民に対して、もう少し言いわけをせずにありのままの謙虚な姿でお互いに対応しようじゃないですか。

 そして、今度は、出す方の約束違反じゃなくて入ってくる方の約束違反。まず私は、お手元にある自民党の選挙公約、これは総選挙のときの公約、昔、昔というかちょっと前に、安住さんは各党はみんな公約していないみたいなことを言って陳謝したけれども、自民党はちゃんとこうやって公約しているんですよ。

 読みましょう。

 消費税を含む税制の抜本改革について、平成二十一年度税制改正法附則による道筋に沿って、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講じ云々。

 だから、皆さんは三月三十日に出したんですよ。そして、皆さんは、野田さんが答弁をよくされるように、これは自公政権時代に決めたじゃないか、おまえらが決めたとおり俺たちはやっているのに何を文句言っているんだということをよく言外におっしゃるけれども、あなた方の選挙のときに言っておられたことは、本来、二十一年度税制改正法案の附則を否定することを言っておられたんですよ。

 だから、政権をとったときにこの所得税法の附則を改正しておくというのが、国民に対して一番正直な姿だったんですよ。それをやらずに、今ごろになって自民党と公明党が決めたとおりやっているというのは、ちょっと私は無理だと思うんだけれども、まず、民主党がどういうお約束をされたか、申し上げましょう。

 まず、ここのパネルにありますように、何の記述もマニフェストについてはありません。ただ、インデックスという附属文書的なものがありますね。この附属文書の二十ページ、これはもう皆さんよく御存じだけれども、「現行の税率五%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当します」、今回出てきている法案は、このマニフェストのインデックス違反ですよ。年金だけじゃないものに充当しているじゃないですか。

 そして、「税率については、」中途を略しますが、「引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化します」、この「引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化します」というのは、税率の引き上げ幅あるいはその使途あるいは実施日を決めてから国民の信を問うという意味ですか、決めるまでに信を問うという意味ですか、どちらですか。

野田内閣総理大臣 まず、これは資料で御指摘のとおり、〇九年マニフェストでは消費税の記述はございません。インデックスというのは、これは大体毎年出すんです。これはその年の党の議論の集大成という位置づけで出すものであって、これがいわゆる選挙公約イコールではないということ、これはちまちました話ではなくて、事実として申し上げたいと思います。

 この当時のインデックスにおいて、現行税率五%維持、すなわち、任期中には消費税を引き上げないということを、マニフェストに書いていませんが、みんなが口頭で言っていましたので、そういうことを踏まえて議論をしていたということでございます。

 したがって、税率について決めてから審判を受けるのか云々ということでございましたので、この当時の議論の集大成として、そこまで議論として決めていたとは……(伊吹委員「してなかったね」と呼ぶ)なかったというふうに思います。

伊吹委員 正直、そうだと思いますよ。いや、正直に総理はお答えになっていると思います。

 それで、ちょっとこの点は後で詰めます。岡田さんも答弁したいようだから、ちょっと岡田さんにも答弁……(発言する者あり)いやいや、そう言わずに、答弁をさせてあげたいと思いますが、次に、公職選挙法の規定によって全ての候補者が有権者に配る選挙公報というのがありますね。これは、私は、各選挙区選管にみんな問い合わせて調べてまいりました。

 これは、ずっと書いてありますように、失礼でございますが、中野委員長も記述は何らございません。だから、やるともやらないとも書いていないという、野田さんのいつもの一流のレトリックはここから出てくるんですよ、やるともやらないとも書いていないから、やったっていいじゃないかと。ただし、実施までに、法律は国会で通すけれども、税が動き出すまでには当然任期満了になりますから、みんなの審判を経るよと。これは、私はちょっと、国民に対してやはり不誠実だと思いますよ、この質問は。

 こういう表現はいけないのかな、結婚は完全な両性の合意によって成り立つものですから、親がどうこうということは言っちゃいけないのかもわからないけれども、やはり家族が仲よくやっていくためには、両方の両親も祝福してくれた方がいい、だけれども両方の両親は反対している。だけれども、できちゃったからどうするんだということを後で国のお父さん、お母さんである国民に突きつけるというのは、私は感心したことじゃないと思います。

 これは一つ、何というのか、私の野田総理に対する、失礼だけれども、人生と政治歴がやや長い者として、少し御忠告を申し上げておきたいと思います。

 次に、これはひどい、これから言うことはひどいことなんだけれども、なるほど、マニフェストはそうだし、それから選挙公報はそうだ。それで、野田総理は、あのとき、横に座っておられる岡田副総理が幹事長をしておられましたね、その幹事長代理ですよ。安住さんは国対の副委員長というか……(安住国務大臣「国対委員長代理」と呼ぶ)国対委員長代理。失礼だけれども、このレベルの人が選挙のときに、やはり、いろいろ応援に行ったり自分が当選するためにいろいろなことをおっしゃるのを、目くじらを立ててきいきい言う自民党というのは私はいかがかと思いますよ。しかし、岡田さんはそうはいかない、幹事長だったから。何より一番そうはいかないのは鳩山さんだ。

 鳩山さんは、ここに、どういうことをおっしゃっているかを少し一部だけ抜粋してありますが、「ニュース7」、七時のニュース、各党党首に聞く、これを聞きながら、国民は、やはり七時のニュースというのは一番視聴率高いんですよ。これを聞きながら、各党党首の、各党の状況を判断しながら投票をされたということも、我々は自民党に非があったということを認めているけれども、やはりそれも大切にしておかなければならない。

 ここに言っておられることは、まず、私たちは、国民の皆さんとの契約としてマニフェストを真剣に議論してつくり上げたものですから、必ず実現いたしますと。さっき言ったものは実現できていないということ、そして、政権与党、これは自公のことですね、財源はいろいろ批判されますが、一切気にすることはありません、十六兆八千億円全部行うとの試算をしております、そして、マニフェストの信頼性については安心していただきたい、消費税などという議論は政治に対する信頼がなければ絶対できないんだと。

 そして、最低保障年金と言っておりますが、最低保障年金は全額税で賄う、消費税で賄うということを決めております、そのためには、これが二十年かけて徐々に移行させることにしたいと思っておりますが、二十年後には当然消費税率を上げなければいけない。その中間ぐらいのところで消費税の議論を大いにしなければならないのに、十年で、まだ三年目であなたは今議論をしておられるんですよ。

 まあ、これはほかにもひどいことがある。これは、やはりNHKの著作権という問題がありますが、委員長にお願いしておきますが、ぜひ理事会でこのビデオを見て、全員で少し共通の認識を持つようにした方が私はいいと思います。

 それで、なおかつ、みんなが腑に落ちないことがあれば、鳩山総理をぜひ参考人として招致していただきたいと思います。

中野委員長 理事会で協議いたします。

伊吹委員 これはやはり、一国の総理が外国へ行って話したことは、必ずその国の意見になるんですよ。だから、総理も今回、非常に疲れて帰ってこられたと思いますよ。だから、私は、午前中は審議をやるのをやめろと言ったんですよ。

 それと同じで、一党の党首が言ったということは、その党のやはり方針だと国民は受けとめるんですよ。これは当然なんですよ。社長が十年間我が社の価格は引き上げませんからぜひ我が社の商品をお買いくださいと言ったから、みんなが買ったら、二年半目ぐらいのところで値段を引き上げますということを突然言い出しているということなんですよ。

 次に、それでは岡田さん、ぜひ答弁をしたいようだから、お聞きしましょう。

 岡田副総理は、二十一年七月二十六日、選挙が燃え立っているときですね、消費税をめぐって、同党の鳩山代表が五月の代表選で、四年間は議論の必要はないと主張していた、これについて岡田氏は二十六日、岡山市で記者団に対し、鳩山氏は最近はそうは言っていない、経済状況がこれだけ厳しい中で消費税引き上げの議論をすべきではないが、四年間議論をすべきではないということでは決してないと。

 あなたは非常に注意深くやっておられるんですよ。僕はあなたの能力というのはいつも高く評価しているんだけれども、その後のことについてちょっと伺いたい。

 岡田氏は、引き上げるときはあらかじめ政権公約(マニフェスト)に書いて、国政選挙で国民の審判を経る、この期間の間に上げることはないと。

 これは、税率をこの四年間に効果あらしめるということではないということを言っておられるのか、この四年間に税率を上げることを決めないということを言っておられるのか、決めるときはマニフェストに書いて、選挙の洗礼を受けてからやるということを言っておられるのか。後講釈ではいろいろ言えるでしょう。

 このときの心境はもう忘れておられると思うけれども、どんな気持ちでこういう発言をされたの。

岡田国務大臣 まず、この消費税の問題は、実は、五月に小沢代表が退任して、私が鳩山さんと代表選を戦ったときの大きな争点だったわけです。当時、鳩山さんは、消費税の引き上げの議論すらすべきではない。私は、それはない、やはりきちんと議論すべきだ。これが一つの大きな争点でありました。したがって、幹事長をお引き受けした後も、そのことはずっと言い続けてまいりました。

 今委員が引用された岡山での発言なんですが、七月二十六日、ここで、まず、ここにも引用していただきましたように、いや、鳩山代表も議論すらしないとは言っていないはずだ、今の経済状況の中で、今は議論できないけれども、四年間議論しないということではないということを申し上げました。

 それを受けて、その翌日、七月二十七日に、鳩山代表、これも読売新聞ですけれども、税率の引き上げに関する議論について、消費税の議論を一切行うべきでないと曲解されたことは訂正したい、こういうふうに言われているわけですね。

 その後、また、先ほど委員が引用された八月十九日の発言があるわけで、そこはちょっと私もよく関係はわかりませんし、これが果たして、八月十九日の読売がどのぐらい正確に鳩山さんの発言を反映されているかわかりませんので、それ以上のことは申し上げられませんが、期間を通じて、そういった議論すらすべきでないというのはおかしいということは、私は一貫して申し上げてまいりました。

 その上で、後段の部分でありますが、私も、よほど注意して発言しておりましたので、気になって議事録を確認してみました。このときの会見の議事録で、これは一部を切り取られて報じられているわけですが、私が申し上げたのは、消費税を現に引き上げるときには、あらかじめマニフェストに書いて、国政選挙においてそのことについて国民の審判を経て、そして引き上げをするということを必ず申し上げておりますのでということで、現に引き上げるということを申し上げているわけです、その現にというのはここには書いていないんですけれども。

 したがって、私の頭の中で、消費税の議論は、これはもう避けられないというふうに思っておりましたので、しかし一方で、四年間引き上げない、次の選挙までは引き上げないということも、これは党の方針でありましたので、その中で、どういう言い方をすれば国民に対して間違ったことを言わないかということで、こういった表現をさせていただいているところでございます。

 ただ、委員も御指摘のように、ですから、国民に対して何かうそを言ったとか、そういうことは全くございませんが、ただ、国民の中に、任期の間は上げないと言ったことをもって、決定すらしないというふうに受け取られた方が多かったとすれば、それは、まあ、マニフェストにはどうしても自分たちのいいことを書くという傾向はありますが、それにしても、そこは私自身、良心に恥じるところがないかと言われれば、そこは十分ではなかった点があるというふうに申し上げておきたいと思います。

伊吹委員 岡田さん、良心に恥じることは、あなたはないですよ。あなたの発言をずっと一貫して聞いていると、あなたの発言はぶれていないです。ただ、表現力が稚拙だったということですよ、あえて言えば。国民にうそをついた印象を与えちゃった。

 だから、これは国民の皆さんが、私が今ずっと議論していることが、我々が主権を持って国政の行政権を与えていた根拠というのは一体何だったんだろうというのは、これは今のやりとりを通じて国民の皆さんが判断されます。

 今、言葉足らずだということについて、それじゃ、もう一問お伺いしましょうか。

 まず、各新聞社が、特に地域地域で投票する人たちの参考のためにアンケートを要求してきます。これは、選挙の前にこれを書き入れるのは候補者としては本当に大変なんですよ、皆さん御記憶があると思うけれども。だから、秘書任せという人も中にはいないとは限らないけれども、後で変なことになると困るから、私はみんな自分で書いているんです。

 この中に、毎日新聞が非常に今日の事態を想定してきちっとした質問をしているんですよ。四年間の任期中に消費税率の引き上げを決めることに賛成ですか、反対ですかという質問をしていますね。それで、岡田さんは反対と答えています。それから、野田さんも反対と答えています。

 千葉や三重の有権者がこれを信用して当選された方に対して、今回法律を出されたことについてどういうふうな答弁をされますか。どちらか代表して、まあ、やはりそれは総理でしょうね。

岡田国務大臣 私、実は、これをよく覚えております。非常に悩んだ設問でした。

 つまり、消費税引き上げ、賛成か反対かという質問であれば、任期中には上げないということで、それは反対というふうに書いたわけですけれども、ここは、決めることにと書いてありますので、なかなかつらいところ。しかし、では、それに賛成するかというと、賛成するものでもないわけで、そういう意味で、二者択一で聞かれれば、それは反対の方がより近い、こういう判断をしたことをよく覚えております。

伊吹委員 これは最後に、テレビを見ていらっしゃる国民の御判断に委ねなくちゃいけないことだし、この次の選挙のときの民主党の議員、候補者の人たちの新聞のアンケート、あるいは、民主党がつくられるマニフェスト、代表である野田さんあるいは幹事長である輿石さんの発言というものをその程度のものだなというふうに判断されるかどうかは、これは国民に委ねましょう。ここでこれ以上詰めてもしようがない。

 そこで、次の、これはぜひ話をまとめていくために、私、これをあえて書いたんですよ。これは、委員会の理事会で民主党の理事の諸君が大変な憤怒をしまして、こんなものを国会へ出すのは絶対だめだと言われたんだけれども、まあ、委員長の御判断もあって、これは私が考えた、消費税に対する立ち位置はこういうふうになるんじゃないかと思うんですね。

 今までずっと議論してきたことでわかると思いますが、主権者である国民に正直に物を言っていたかどうかというと、これは総理、まことに申しわけないけれども、今の新聞に対するアンケート、そしてマニフェスト、それから代表をしている人たちの発言、こういうものを聞いていると、あなたはやはり、民意を少し甘く見ていたというか、選挙のときにはそれほど重大なものじゃないというふうに思っていたと言わざるを得ないんですよ。これは私の判断ですよ。そして、我が党は、先ほど来言っているように、衆議院選挙のときにああいう公約をしております。

 しかし、谷垣さんと野田さんは、このことが政策としてぜひ必要なんだということについて多分同じ考えだろうと思うんですね。問題は、国民に対して理解を得ずに権力の座に着いてしまったということと、必要だからぜひやらなくちゃいけないということとをどうバランスさせて、どういう話し合いの中でバランスをさせていくかというのが、この法案が実現できるか実現できないかの成否を握っていると思うんです。

 私は、話し合い成立後・前解散なんということを書いていますが、別に解散の約束が、文書による約束が賛成するための絶対の条件だなんというような、そんな子供みたいなことは言いませんよ。しかし、残念ながら、今、民主党と自民党の間に、どちらかというと民主党の中に、無駄な飯を食い、無駄な時間を費やし、無駄な酒を飲んで、この人となら信頼して話ができるという練達の政治家がおられないですよ。そして、民主党の中を誰がコントロールしているのかがわからない、これが先ほど石原さんがわあわあ言ったことだと思うけれども。

 ぜひ、これはお互いに、やはり間違っていたことは間違っているということを認めて、そしてお互いの主義主張をどういうふうに調整していくか。

 政策というのは、野田総理、一つしかないんですよ。だから、野党のときは、政党の理念、自分の価値観でいろいろなことを言えますよ。だけれども、与党になったら、政府が決める日本の税法は一つしかないんだから。日本の交通規則は、緑のときは必ず進んで、赤のときはとまる、黄色のときは注意する、左側を通る。これは世界みんなそうじゃありませんよね。右側を通っているのも左側を通っているのもある。だけれども、与党として行政権を掌握した場合は、ただ一つの結論しか出せないんですよ。

 これは、いろいろ異なる価値観、いろいろ異なる主張を調整しながら、現実を混乱させないように軟着陸をしなくちゃいけない。最後は、これは人間の信頼感がないとできないんですよ。自民党にも私は困ったことがあると思うけれども、岡田さんが心配して一生懸命歩いたりすると、いや、岡田君が来てねなんということを記者にしゃべる、こんな状況じゃお互いに話ができませんよ。いや、民主党にはもっと多いですよ、それはあえて言えば。

 だから、ぜひ、この位置取りを意地悪のために出したわけじゃないんですよ。私は、きょうはあなたに意地悪を言おうと思って一度もここで質問していません。何とか、党派を超えて、誰のときにでもやらなければいけないとおっしゃったあなたの言葉を、私もそのとおりだと思うし、党内で私もずっとその努力をしてきた。しかし、残念ながら、主権者に対してどう申し開きをするのかというこの一点、民主主義の原点と必要な政策とをどうすり合わせるのか、これがこれからの成否を握っていますから。

 自分で全てのことは人間はできません。いいスタッフを選んでいいチームをつくらないと、自民党の場合も、理念的に非常に立派な方だなと思っているんだけれども、チームのつくり方が悪くて早く政権の座を退いた人もいるし、いろいろな方がいます。やはりチームのつくり方ということをよく理解されて、これはあとは私が申し上げることじゃない、あなたが党首として決断されないといけないことですから。実現するのならば、ぜひそのことを考えてください。

 さて、政治論ばかりやっているといけないので、少し、財政再建の目的というのは何だと思われますか。

野田内閣総理大臣 我が国の今の財政状況は、もう伊吹先生に細かいことは申し上げません、釈迦に説法だと思います。国と地方の長期の債務残高が二十四年度末にはGDPに対して一九六%になろうという、主要国の中では残念ながら最悪の水準でございますし、加えて、償還の中には利払いもあります。

 今、約十兆円ほど利払い、この前の予算で入れておりますけれども、仮に日本が財政規律が緩んでいるというようなメッセージが出た場合には、これは気をつけなければなりませんが、国のトップの立場として余りマーケットのことは言いたくありませんけれども、金利が仮に一%上がった場合に、当該年度に利払いだけで毎年一兆円、二年後には二兆円台、三年後には四兆円台というような、そういうリスクがあるということをよく自覚しながら、ただ、財政再建というのは、少なくともこうした利払いに注意しながら財政規律を守っているということをメッセージとして出していくということ。

 それともう一つは、財政運営戦略を一昨年の六月にまとめております。これは、二〇一五年までに、自民党も同じだと思いますけれども、基礎的財政収支を、対GDP比、赤字を半分にしていく、二〇二〇年度からバランスをとって黒字化していくという、財政健全化責任法では御党はそうだったと思うので、そういうゴールをしっかりと目指しながら再建をしていくというのが基本的な姿勢だというふうに思います。

伊吹委員 私は、二つ大きな目的があると思うんですね。これは今おっしゃったことと重複するかもわかりませんが、一つは、やはり世代間の義務ですよ。次の世代の納税の使途を次の世代に決めさせる、これは我々、今に生きる者の責任なんですよ。

 だから、財政再建というのは若い方のためにやるという切り口がぜひ必要なので、将来、額に汗して納めた税金を、ほとんど何か前の世代が決めちゃった今おっしゃった利払いと償還費に取られちゃう、俺たちは税金を納めて、一体何だと。

 建設国債は、別荘を買ったけれども借金を残してやったということなんですよ。だけれども、これだって、あんな別荘なんか俺たちは要らないよ、そのかわり借金も要らなかったんだという人が出てきてもおかしくないんですね。ましてや、遊興費に使ったり、ぜいたくに使ったり、それから自分の身の回りのことに使ったりする借金で、一代限りで決まっちゃう借金を積み上げて、次の世代に払わせるというのは、これはやはりやってはいけない。これがまず一つですね。

 それから、一般会計の推移を見るとわかるんですが、これをごらんになると、平成九年度、十四兆六千億の社会保障費があったんだけれども、今年度予算編成では二十六兆四千億。ただし、ここには、国会のオリンパス事件と言われた例の交付国債の金額は入っておりませんので、これを入れると二十九兆になるわけですよ。

 これはずっとふえてきていますが、先ほど私が自民党はなぜ選挙に負けたかという大きな原因の一つがここにあるので、やはり社会保障の給付をどんどん切り詰めて、保険料を引き上げて、自己負担を引き上げてきたんだけれども、長寿者の増加のスピードの方がそれよりも大きくて、そして給付と高齢者人口を掛けたものが毎年ふえてきた。だから、一人一人の国民から見ると非常につらい思いをされたということですよ。

 それから、あとを見ると、公共事業費は半分になっていますよね。これは、会社に例えて言うと、今、自分たちの人件費やあるいは身の回りのことをするお金が入ってこないので、銀行から四十兆円を借りている会社なんですよ、日本は。そして、将来の会社の発展のための設備投資と技術開発費はわずかに四兆六千億しか借りていない、公共事業がみんなそうだとは言わないけれども。こういう会社は、これは誰が見たって将来性があるわけないんですよ。

 だから、野田さんが今考えておられる消費税をどの程度どういうふうに使うかということについて、ぜひ、きょうは主計局長に来ていただいているから主計局長に伺いたいんだけれども、この社会保障費の二十六兆四千億、オリンパスの件は横に置いていいですから、この中で年金と医療と介護に対する補助金、それから子育ての、主計局でいうと各種経費ですね、この金額の合計は二十六兆四千億のうちの幾らですか。これ以外に、例えば福祉関係の費用がみんな社会保障費の中へ入っていますね。簡単に答えてください、数字だけでいいから。

真砂政府参考人 お答えをいたします。

 年金が八・四兆円でございます。それから、医療が十・二兆円、介護が二・五兆円、少子化が一・八兆円という形になっております。

伊吹委員 みんな合計すると幾らですか。

真砂政府参考人 二十二・八兆円でございます。

伊吹委員 そうすると、ここに、交付国債分が含まれていないから、交付国債分を入れると約二十五兆円ですよ。将来、もちろん人口がふえていくからあれだけれども、今回消費税が仮に五%引き上げになったとすれば、地方消費税の分と、それから、地方に行く交付税特会に繰り入れる分、現行でいえば消費税の二九・何%でしょう。それから、五%で一%の地方消費税。これは、今回の五%についてはどうなりますか。

真砂政府参考人 消費税率換算で申し上げてよろしいでしょうか。(伊吹委員「いやいや、金額」と呼ぶ)金額で。

 五%上げた後の金額で申し上げますと、五%上げまして一〇%になった後の消費税収全体が二十四・三兆円でございます。うち、国が十七兆円、地方が七・三兆円でございます。

伊吹委員 そうすると、年金への三分の一から二分の一とか、医療の長寿者医療や国民健康保険の助成金とか、介護の国庫負担とか、少子化対策とか、合計すると二十四兆八千億、約二十五兆。そのうち、今幾らと言ったかな。(発言する者あり)いやいや、そうじゃなくて。ごめんなさい、主計局長、国の取り分は幾らでしたか。(発言する者あり)十七兆ね。では十七兆と。

 そうすると、今回五%上げても、二十四・八兆にはなかなか足りないんですよ。まだまだ足りないんですよ。そこへ、さらに、保険料を納めなかったのか納められなかったのかわからない人に最低保障として七万円ずつ上げるなんということをやったりなんかしたら、これは消費税率は幾らあったって足りないんですよ。現在のままいったって二十四兆八千億のお金が要るところへ、今回五%上がって一〇%になっても、十七兆円しか税収は国、国庫へ入ってこないんですよ。

 総理、今主計局長が答えた十七兆円と二十四兆八千億、これは財政を完全に立て直して、そして年金、医療、介護、少子化は消費税で基本的に賄うというのならば、あと七兆円相当の増税をしないとだめなんですよ。

 全てが消費税で賄わなければいけないとは書いてないですよね。消費税は全てこの経費に充てるということだけ書いてあるわけ。だから、この辺は将来の財政運営としてどうするかというのは大きな問題で、余り厳しく詰めると自民党が政権に戻ったときにえらいことになるからこれ以上これは詰めませんが、ここは非常に大きな問題が残っているということをぜひ自覚しておいてください。

 そして、先ほど言ったように、自分たちの食いぶち、人件費のために約四十兆も銀行借り入れをしているのを、今回社員が奮い立って、セールスに力を入れて、自助努力で売り上げを伸ばして回収しようじゃないかというのが消費税なんですよ。そして、消費税でそれだけ回収できれば、先ほど主計局長が言った増収分だけ赤字国債の枠が減るんです、赤字国債の枠が。

 ここでぜひ、誰が政権をそのとき担っているかわからないんだけれども、お互いに共通認識を持っておきたいことは、この枠を財政再建だといって国庫に取りきりにしちゃだめですよ。今、日本銀行がどれだけ金融緩和をしても、その受け皿がない、みんな海外に抜けていってしまっている。国内で、例えば京都大学の山中先生に一千億ぐらい渡したらいいじゃないですか。将来何兆円となって返ってくる。そういう投資的経費にせめてこの半分ぐらいは使うという財政運営をお互いに心してやろうじゃないですか。そうしないと、日本はデフレを克服できないです。それがまず一つ。

 それから、最後に、時間になりましたから申し上げておきますが、先ほど石原さんが非常に大切なことを質問したんだけれども、みんな笑いの中で、彼の意見が必ずしもみんなに認識をされなかったんだけれども、野田総理がよくおっしゃる、我々はマニフェストで、消費税はやらないとは言っておりません、しかし、やるとも言っておりません、何も書いてありません、だからやるんです。しかし、実施までに、今の法律なら実施時期は、景気条項やらいろいろついていますけれども、必ず任期満了までに、任期満了の向こうですよね、だから任期満了のときに意見を聞きます、こう言っておられるわけですよね。ずっとそういうロジックですよ。

 しかし、そのときに民主党が負けたらどうなるんですか。民主党が総選挙で負けたら、これは永久にできなくなるんですよ。あなたが政治生命をかける、国民の意向を大切にする限りはそういうことになるんですよ。

 だから、財務省はそこまで悪気があるとは思わないけれども、野田総理、ぜひ自民党と相談してください、自民党と協議してください、協力してくださいと。それで話し合いがついて自民党が賛成をしたら、もし自民党が勝てば、自民党が勝ったんだからやれということになってしまいますよ。これは、このロジックは、やはり僕は国民に対して非常に失礼だと思うな。

 覚えておられますか、第三次補正の締めくくり質疑を私がしたときに、誰のために政治生命をかけるんですかと。あなたのことだから、言うまでもなく、民主党が政権にいるために政治生命をかけるというような方じゃあなたはないですよ。私、教育基本法のときに一緒に、立場は違うけれども、随分いい質問をしてくださった。そして、ましてや、自分が総理大臣でいるために政治生命をかける、そんなことを言っている方じゃない。国民のために政治生命をかけると言っておられるんだと思います。であれば、ともかく通して、その後、主権者である民意を聞きます、民主党が負けたらできませんよ、これ。

 そして、私は、提案する権限があるのは、先ほど来ずっとお話ししてきたように、総選挙の際に国民にそのことを正直に申し上げてきた自民党だけだと思っているんですよ、提案する権限は。

 だから、自民党の改革案、いろいろこれから出てくると思います。ばらまきのために消費税を上げるんじゃない、年金も医療も介護ももっと、これから我が党のエースが質問しますけれども、きちっときれいな形にしたものでやりたいということを我々が提案したら、あなた方は、今のものを引っ込めて、政治生命を国民のためにかけるのなら、ぜひ賛成してください。そうしたらできます。皆さんがこのままやって、実施までに民意を問うという言い方をしたら、選挙で負けたらできなくなっちゃいますよ。

 だから、ここのところは、これから、質疑があり、そしてどういうことを言い合っているかということをお互いに夜しっかり静かにそしゃくして、そしていい着地点を見つけるようにしていこうじゃないですか。

 私は、勉強して正道に戻ってくださった野田さんを高く評価しております。できれば選挙のときに言ってほしかった。

 以上です。

中野委員長 これにて伊吹君の質疑は終了いたしました。

 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 きょうは、社会保障を中心に、約一時間お時間をいただいておりますので、その点を中心に議論させていただきたいと思います。

 今、伊吹委員との議論の中でも、政治生命をかけるという議論、先ほど私どもの石原幹事長ともございました。うまくいかなかった場合どうするかという話は、総理もやぼな話だとおっしゃっておりますし、それを聞くつもりはございません。

 むしろ、教えていただきたいのは、一体何に政治生命をかけておられるのか。新聞等の報道を見ておりましても、まさに消費税の法案を通すこと、ここに政治生命をかけているというふうに報道にはなされているわけでありますし、また、先日の御党の前原政調会長の質問でも、政調会長の意見というのではなくて、増税だけが総理のやりたいことと見られているよという話がございました。

 そこで、総理がまさに政治生命をかけてやらんとする、そのものは一体何なのか。まず、そのことを教えていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 消費税を単に引き上げたいだけの、そういう私の意図ではございません。それは目的があるわけでありまして、社会保障と税の一体改革という形で今回御審議いただいていますが、まさに社会保障を安定化させ、加えて充実させていかなければいけない部分があります。これは子育て等です。そういうものを実現するためには当然お金が要るわけですが、その安定財源を確保したい。

 こうした改革をするときに、この後、多分御議論があると思いますけれども、負担と給付、両方これは世代間の公平を確保していきたい。給付の面は、さっき申し上げた子育て等、人生の前半の社会保障が手薄だった部分を充実させていくということ。そして、負担の面においては、現役世代中心だったものを、広く多くの世代に助け合いの精神で支えていただくために消費税を導入する。

 そういう意味での消費税の引き上げのお願いをさせていただきたいということでございますので、全体として、パッケージとしての改革であるということでございます。

加藤(勝)委員 今のお話も聞きながら、お出しいただいております消費税法の法律案、お手元の方に抜粋を配らせていただいておりますけれども、この第一条の「趣旨」で、「社会保障制度の改革とともに不断に行政改革を推進することに一段と注力しつつ経済状況を好転させることを条件」として、税制の抜本的な改革の一環として消費税の税率の引き上げを行う、簡単に言えばこういうふうに規定されているわけでありまして、すなわち、ここでは、社会保障制度の改革をやります、そして行政改革をやります、そして経済状況を好転させることを条件として税制の抜本的な改革も行っていきます、多分こういうロジックだと思います。

 そうすると、今の総理の答弁をお聞きしておりますと、総理のお考えになっているここで言う「社会保障制度の改革」ということは、まず、社会保障のいわば財源を含めて制度そのものを安定させるということが一つ。そして、どちらかというとこれまで高齢者にその支出面がいわば重きを置かれていた部分について、特に若い世代、子育てに対して重点を移していく。この二つが総理のお考えになっている社会保障制度改革の大きな柱だ、こういうふうに認識してよろしいんでしょうか。

野田内閣総理大臣 社会保障の安定化と充実のお話だと思うんですけれども、前提として、日本の社会保障の根幹をなす国民皆年金、国民皆保険、これは私は基本的には世界に冠たる制度だというふうに思っているんです。

 この皆保険制度があったから、いわゆる、どこの診療所でもどこの病院でも一定の自己負担さえあれば医療サービスを受けることができるということは、これは大変すばらしいことです。だから世界一長生きの国になったし、新生児の死亡率も低い等々、改善すべき点もありますけれども、成果も上がっていると思うんです。

 年金についても、やはり高齢者世代の生活の基本は今、年金になっているという、これも欠かすことのできない制度になりました。ただ、人口構成とかあるいは家族構成とか、いろいろな点で変化が出てきていることについて対応していかなければ安定化につながらない。現実に、自然増で毎年一兆円出てくるとか、あるいは御議論をいただいているような、いわゆる基礎年金の国庫負担の部分であるとか、穴があいている部分がある。そういうものをしっかり埋めて安定化をさせていくということと、今まで視点の足りなかった少子化対策、子育ての部分にもスポットライトを当てていかなければいけないというのが社会保障改革の、個別の制度はいろいろありますけれども、根幹の考え方であります。

加藤(勝)委員 それからもう一点、これは大綱の方に書いておられる言葉なんですが、今のお配りしている第一条のところにも、最初の一文に「この法律は、世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築する」、こういうふうに書いてあります。そして大綱の中には、給付、負担両面で、人口構成の変化に対応した世代間、世代内の公平が確保された制度への改革、こういうふうに書いておられて、これは多分、日ごろ総理がおっしゃっておられる、今、肩車型になってきた、こういうことを想定しているんじゃないかと思うんですけれども、具体的にこの視点、人口構成の変化に対応した制度改革としてここでおっしゃっているのは、具体的にどういうものをお考えになっておられるんですか。

岡田国務大臣 ここで世代間それから世代内ということを申し上げているわけですが、世代内でいえば、この法案は消費税だけではなくて税制全体に対する法案でございます。最高税率、所得税、相続税についても引き上げるということにしております。つまり、高齢者の中にも所得の多い方はいらっしゃる、そういう方にはある程度、応分の負担もしていただこう。

 そういう考え方が一つあらわれているのは年金のところでありまして、所得の多い方の厚生年金、共済年金もそうですが、について、税負担に係る部分について、一定の割合でこれを削減させていただいて、より所得の少ない方に使わせていただくというふうに考えているところでございます。

加藤(勝)委員 要するに、所得再配分をされるという。

 ただ、その話と、私がお聞きしたいのは、人口構成の変化に対応したということなんですね。人口構成が変化したから所得再配分をもっとしよう、こういうことですか。

岡田国務大臣 もう一つの話は、人口構成が変化して、世代間の公平化というものを図らなければいけないということであります。

 持続可能な制度にすることによって、今、若い世代が、払った保険料に対応した給付が受けられないんじゃないか、そういう不安感も高まっているところですが、制度を持続可能にする、今回の改革によって、そういうことがないように強固なものにする、そういう意味も含まれております。

加藤(勝)委員 まさに世代間の公平も図っていく、こういうことだと思います。

 まず、基本的な考え方をちょっと確認させていただいて、そしてその中で、もう一つ、社会保障・税一体改革の大綱の中で、「社会保障の機能強化を確実に実施するとともに社会保障全体の持続可能性の確保を図る」、よく持続可能性という言葉が、これは私どもも使いますが、出てまいりますけれども、この持続可能性が確保された状況というのはどういう状況を想定されているのか。あるいは、今回の一連の法案あるいは大綱の中で、こうした施策を進めれば、そうした持続可能性は確保された状況になっていく、こういうふうに考えておられるのか。

岡田国務大臣 社会保障制度が持続可能であるためには、先ほどの伊吹先生のお話ではありませんが、借金をして社会保障をやるのではなくて、きちんとそのときの税及び保険料によって社会保障制度が成り立つ状況をつくり出さなければいけない、こういうことであります。

 したがって、今回それで全てできるわけではありませんが、消費税の引き上げをお願いして、そして、消費税というのはある意味では全世代型ということでありますから、所得の多い方であれば高齢者であっても御負担いただくわけで、そういった形で財源を得ることで社会保障制度の持続可能性を高めている、こういうことでございます。

加藤(勝)委員 多分その辺の、持続可能性の認識が少し私どもと違うのではないかと思うので、ちょっと先にいろいろ議論をさせていただきたいと思います。

 ここの表に出させていただいた、テレビを見ている方にはちょっと小さい字で申しわけないんですが、社会保障に係る費用の将来推計についてということで、これは厚生労働省の方でおつくりになって、最近見直しを、三月の段階で改定をされているものでございます。

 まず最初に給付費のところをごらんいただきたいと思うんですけれども、二〇一二年、平成二十四年の給付費は、今、百九・五兆円でございます。それが二〇二五年、平成三十七年には百四十八・九兆円、こういうことになるわけであります。

 ここでちょっと括弧書きがあるのは何か。下に百四十四・八兆円という数字があるんですが、これは、括弧書きが改革がない場合、上の数字が改革がある場合ということで、なぜか改革をすると四兆円ふえてしまうということ。これは後でちょっと議論させていただきたいと思うんです。

 そして、次に負担の方を見ていただきたいと思うんです。この数字は、それぞれの時点での数字でございますから、賃金が上がったり、物価が、今はデフレですけれども、上がれば当然変わってまいります。したがって、負担を見るときには、GDPに対してそれがどのぐらいな割合を持っているのか、こういうので見るのが一番いいのではないかと思うわけであります。

 そうやって見てみますと、負担額のところを見ていただきたいと思うんですが、年金のところは、平成二十四年はGDPに対して九・五%、そして二〇二五年でも九・五%になっているんですね。他方、医療は七・三%が八・九%ですね。そして介護は一・八%が三・二%。これは特に、医療の場合は二割、そして介護の場合には八割近い増加になるわけであります。

 そして、なぜ、これだけ高齢化が進む中で年金の負担がそれだけ進んでいないかというのは、やはり一つ、民主党の皆さん方は大反対されましたけれども、平成十六年のあの改革がこういうところにきいている、私はこういうふうに思うわけであります。

 そういう中で、ちょっと次のフリップを見ていただきたいんですけれども、この負担ということでございますけれども、負担は大きく、保険料とそして公費、すなわち税金によって賄い、もちろんこの欄外、外には、いわゆる医療機関の窓口負担、介護保険料の負担、あるいはさらには、そうしたいわゆる公的社会保障のない個人の負担、こういったものもございますが、ここでは社会保障給付の議論をしておりますから、保険料と公費ということになります。

 したがって、いわゆる年金、医療、介護を中心に、この間も与党の方が御議論されておりましたけれども、ほとんどの方は保険料を払っている、何で税金が要るんだ、こう言う方もいらっしゃると思うんですが、実際は保険料と税金によって賄われているということが二〇一二年でも言えるわけであります。例えば医療の国民健康保険は約五割ぐらいだとか、あるいは高齢者医療制度も五割が公費負担等々ございます。

 そして、今副総理がおっしゃったところ、一つは、まさにこの公費負担のところ、ここが今四十・六兆円、これは国と地方を合わせたということでありますけれども、四十・六兆円になっておりますけれども、例えばこの十年間、国のですよ、国の予算だけ見ても、社会保障費は十兆円増加していますよね。あるいは、税収は十兆円減少している。その結果として、これがという、お金には色がありませんから、今の赤字が一体何に結びつくかというのはなかなか言いにくいところはありますけれども、しかし、ここの部分がかなり増大をしていく中で、まさにそれが赤字国債の発行につながって、現在のいわば財政的な厳しさを生んでいる、そこを改善しなきゃならない、そこは私はそのとおりだというふうに思うんです。

 しかし、問題はそれだけじゃなくて、この二〇二五年というところに向かうわけであります。たかだか十数年後の世界であります。

 そして、まさに保険料も公費負担も、例えばGDP比で見ますと、GDP比については約一・数%ずつそれぞれ増加する、こういうことになってきている。まさにさらに、公費、税金の問題もあるけれども、実は、この上の保険料のところもこれから大変大きくなってくるわけでありますし、さらに、この間の、二〇一二年の保険料、今は、まさにさっきお話がありましたように、保険料部分はそれなりに賄われてはおりますけれども、しかし、総務省の家計調査によりますと、実収入が低下する中で保険料が引き上がってきた。そして、家計の実収入に占める社会保険料負担というのが、今、勤労世帯ではこの十年間で約一五%増加して、家計の実収入の一〇%が社会保険料の負担になっている。それがさらにこれからふえてきますよということが、ここでマクロ的に見えると思うんですね。

 しかし、これはまだ、八十五兆と言われてもなかなか見えないということで、先般の予算委員会で岡田副総理に御無理を言って、いろいろな仮定を置いてでもいいですから、我々が実際払う保険料率で示してほしいといってお出しいただいた数字をまとめたのが次のパネルであります。

 このパネルをぜひ見ていただきたいのは、まず医療保険。これは二十三年と比較させていただいておりますけれども、平成二十三年に国民健康保険が七千七百円、これが平成三十七年には九千三百円になります。しかも、この九千三百円というのは、平成二十四年度の賃金の換算ベース、割り戻した数字でありますから、今の我々の感覚で九千三百円になるということであります。協会けんぽも九・五%が一一・一%。後期高齢者医療制度も五千三百円が六千五百円。こういうことになるわけですから、全体として見ますと、医療保険については約二割ぐらいの増加にならざるを得ない。これがもう既に見えてきているわけであります。

 そして、もっと問題なのは介護保険であります。介護保険の第一号被保険者、ですから六十五歳以上の方であります。平成二十三年が四千百六十円。これは所得によって段階がありますから、もっと高い方、低い方がいらっしゃいますけれども、いわゆる標準が四千百六十円。これが、何と平成三十七年には倍の八千二百円。こういう状況になっていくということがここから見てとれるわけであります。

 これはいろいろな不確定要因があります。したがって、将来変わるところもいろいろあるとは思いますけれども、大きな流れとしては、むしろ、おつくりいただいたわけですから政府の方がよく御存じだと思いますけれども、大体こういう流れということについて、まず間違いがないのかどうか。

 そして、その上で、介護サービスの需要がこれだけ増大し、介護保険料が八千円、今から倍以上になる、こういう状況に対して、本当にこれが、負担ができる、こういうふうにお考えになっておられるのか。そこを教えていただきたいと思います。

岡田国務大臣 まず、今委員御指摘の数字ですけれども、私どもがお出ししたものを基本に御議論いただいているわけでございます。

 ただ、ここで二つのことをやはりきちんと分けて議論すべきだと思います。つまり、少子高齢化が進むことによって、これから、先ほど、平成二十三年度と三十七年度の保険料水準の見通しをお示ししたわけですが、少子高齢化が進むことによってふえる部分と、それから、追加的に我々の改革を入れることでふえる部分と、そこは違う話といいますか、二つあるということでございます。

 したがって、この保険料水準の見通しで、例えば介護保険にしても、あるいは医療にしても、かなり額がふえていますが、そのうちのかなりの部分は少子高齢化が進むことによってふえているということでございます。

 具体的に、我々の制度改革、まあ改善と言うべきか、それをすることによってどれだけふえるかというのは、委員お示しの資料の二枚目に書いてあるわけで、医療では〇・七兆円、つまり二〇二五年の括弧の外と括弧にしてあるものの差ですね。それから、介護は、十九・八と十六・四の差ですから三・四兆円。これが違いであるというふうに言えると思います。

 なぜこういう違いが出てくるかといいますと、これは、消費税を五%上げさせていただく中で、持続可能のために四%、一%は制度を改善するために使わせていただきたいということで、その内訳の話にもなるわけでありますけれども、基本的には、入院医療について、患者一人当たりのスタッフを増員すること、あるいは入院医療から在宅医療にシフトすること、それから介護についても、施設での介護から在宅介護にシフトする、そういった形で改革を進めてまいりますので、そのことによって医療や介護の質は上がるというふうに我々考えているわけですが、そのことによって若干の費用がふえる。しかし、同様に、五十八万人から八十四万人の介護、医療の雇用拡大も実現する、こういうことでございます。

加藤(勝)委員 今、私の質問は、上がったところ、さっき申し上げたけれども、改革の前と後の数字のことをとやかく言おうと思って言っているのではなくて、それらを含めようが含めなくても、大きな流れとして介護保険料がこんなに上がっていくんですよ。そこのところを、本当にこれが持続可能な、あるいは負担をする方から見れば本当に負担が可能な金額だというふうに考え得るかどうかと。

 そしてその上で、今、岡田副総理がおっしゃった一つ一つについては、全部とは言えなくてもかなりの部分、そういう方向への改革、改善、これはしていかなきゃいけないと思いますけれども、しかし、それも、負担をできる人たちがいて、保険料を納め、税金が払われるからこそそれが成り立つのではないんだろうか、これが私たちの基本的な理念であります。

 もうそれは多分言わずもがなだと思うんですね。まさに医療や介護のサービスというのは、実際は、そこで病気を患っている方や介護が必要な方がいる一方で、医療や介護のサービスを提供する方がおられて確かに一つ一つ成り立っておりますけれども、その後ろには、やはり、それを支える、税金や保険料を払っておられる方々がいて初めて回るわけであります。

 もちろん、患者さんであり、介護を受ける方も払っていることは間違いありません。しかし、医療を受けない、介護も受けていない、あるいは家族の誰もが介護を受けていない、それでも保険料を払い、税金を払っている方がたくさんおられるわけであります。そういう方々がしっかりと支えていくぞ、支えられるぞという見通しを示すということが社会保障改革の一丁目の一番地ではないのかな、私はこう思うわけであります。

 そして、もう一つ大事なことは、払っている方が納得できる姿でなければだめだということであります。よく生活保護のことが議論されます。これもその一つだと思います。さらに言えば、これから議論したいと思いますけれども、保険料を払っても払わなくても同じだよなんてことになれば、まさに真面目にきちんと保険料を払い、税金を払おうというその基盤が崩れていってしまったら、もう何もできなくなってしまう、そのことを強く懸念いたします。

 そして、保険料と税金を納めるためには、やはり雇用が確保され、経済が成長する、まさに経済や社会がしっかりしなきゃならないということであります。

 その基本は、私どもは、やはりこれまで日本がそうだったように、それぞれ一人一人が持てる力を一〇〇%発揮する、自助自立ということを基本に考えなければそれは達成できないし、また、社会保障も、当然自助自立を基盤に置きながら、共助あるいは公助、こういったものをうまく組み合わせていく、こういった取り組みをすべきだと思っております。

 ただ、皆さんの主張の中にも、あるいは巷間、家族の力が衰えてきた、地域の力が衰えてきた、それは事実だと思います。これは別に最近ではなくて、ずっとそういう指摘が出てきているわけでありますけれども。

 ですから、私どもは、そういう中で、自助自立でやりなさいと突き放すつもりは全くないんです。しかし、だからといって、すぐに子ども手当を二万六千円、子供は社会で育てるではなくて、やはり家族や地域の力がもう一回上がれるような施策をそこに組み合わせていくというところに主眼を置いて、まさに取り組んでいかなければならないというふうに思うんですね。

 そういう中で、我々はそういう視点から見ると、個々の話は後でさせていただきたいと思うんですけれども、民主党のおっしゃっている案の中には、我々の問題意識から見て、改革という姿がほとんど見えないわけであります。

 確かに、社会保障制度をいろいろいじれば、今までやれたものができなくなるという問題が出てくるかもしれません。しかし、将来的に見れば、多くの国民の方々にとってみれば、その分の負担というものを、増大がどんどん上がるものを抑制し、そして維持可能なものになり、最終的には、医療や介護サービスを受けている方にとっても大きなプラスになるんだというふうに思うわけであります。

 どうもその辺は横に置いておいて、とりあえず、こういうこともできますよ、ああいうこともできますよということを、まあ、いわばネタにしながら、消費税の増税についてどうか理解をしてくださいと言っているようにしか聞こえないんですけれども、しかし、それでは政治としての責任というものがないのではないかな、こう思います。

 もう少ししゃべらせていただきたいと思うんですね。

 それで、皆さんの中にも、ありますよと言うと思うんです。いやいや、一・二兆円効率化が入っていますよと。しかし、あの中を見ても、三千億ぐらいは保険料の方に分ける、保険料負担の方にシフトするような中身も入っているわけであります。それから、制度を根底的に見直すことによって削減できるというものはほとんど入っていない。本当にどこまで実現可能なのかなというものもほとんどであります。

 そういう意味で、もう一度、もっといろいろな意味での効率化、大綱の中に検討事項では入っていますね、それをもっときちんと実現できる、こういう社会保障の改革案をお出しになるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 委員いろいろおっしゃいましたので、少し発言させていただきたいと思います。

 まず、私は、自助がまずあるべきだということは、それはそのとおりであって、そこに大きな意見の違いはないというふうに思います。

 ただ、それだけではなかなかやっていけなくなっていることも事実で、もちろん、委員は、例えば地域の支えとか、大家族とか、あるいは企業が果たしてきた役割とか、そういうものがかなり減退している、それは、そうならないように努力すべきだというのはそのとおりですが、しかし、現実にそういう部分がある以上、やはり少し国が前面に出て支えなきゃいけない部分というのは、私はあるんだと思います。

 したがって、基本のところを強調するか、そういう変化のところを強調するかの違いであって、私は、大きな考え方に、自民党と民主党の間に違いはないというふうに考えております。

 例えば、子育てを例にとれば、やはり子育て、家庭がまず子供を育てることに責任がある、それはそのとおりであります。しかし、それだけではやっていけなくなっている現実があるからこそ、我々は、子ども・子育てについてしっかりとした制度が必要であるということを申し上げているわけであります。

 さて、そういう中で、介護のお話がございました。

 介護保険について、私はかつて厚生委員会の責任者をしていたときに、この法案を成立させた一人でありますけれども、そのときの予想と比べると、かなり金額が大きくなっているというふうに思います。

 しかし、そのことは、逆に言うと、それだけ役に立っているというか利用されているからこそ、そういうことになっているのであって、もし今介護保険なかりせば、私は、多くの方々が大変困った事態になったんじゃないかと。そういうところは、むしろ積極的に評価すべきところもある。

 しかし、金額的に余りにも大きくなると、おっしゃるように、持続可能じゃなくなる。したがって、いろいろな、介護保険制度についても、改革についてはしっかり議論する必要がある。

 御党は、たしか税の部分をもう少しふやすべきだという御提案があったように思いますけれども、いろいろな議論をこれからやっていかなければいけない、そういうふうに思っているところでございます。

 そのほかの改革についても、年金物価スライドをさせないでいたのをしっかりと物価スライド、今回、消費税の増をお願いしながら年金の削減を国民の皆さんにお願いする、これはなかなかつらいことですが、我々はしっかりやらせていただいているわけで、社会保障制度の効率化ということについて、また各党間でよく話し合いを行いながら知恵を出していく、その必要があるというふうに基本的に考えております。

加藤(勝)委員 何か、考え方が大体同じだ、こういうことでございますが、どうして同じ考え方なのに政策がこれほど違うのかなということは、後ほど、最低保障年金を含めて議論させていただきたいと思います。

 それから、役に立っている、おっしゃるとおりです。介護保険は、それぞれ介護をすべき立場にある方にとってみたら、いろいろな意味で支援になっていることは確かでありますし、また、それを通じて家族のきずなが高まっている部分も私はあるのではないかなと思いますが、だからこそ、これを維持していくために何をしていかなきゃいけないかということをもっと中心に置いて考えていただきたい、こう思います。

 ちょっと話がかわりますけれども、きょうは自見大臣においでいただいております。

 今回の消費税の使途について、先ほどからありますように、全て社会保障に使われるということでありまして、政府の支出においても、当然、消費税が上がればその分だけいろいろなものの支出が上がりますが、社会保障の分は見るけれどもあとは見ないというぐらい徹底してこの原則を維持する、こういう話であったんですが、五月十七日のこの特別委員会で、国民新党の代表代行でいらっしゃり幹事長である下地委員からの発言の中で、二十七、二十八、二十九、三十、この四年間の消費税を上げた分の一%を経済対策に回しましょう、そしてそのために、ことしと来年度、七兆二千億ぐらい経済対策をやりましょう、こういう発言が出ていたわけでありまして、私は、聞いていて驚いたわけであります。

 民主党の中にもいろいろ議論がありますけれども、与党間もなかなかあるな、こう思ったわけでありますが、自見大臣は国民新党の代表もお務めでございますから、国民新党として、そこはどうお考えになっているのか。

自見国務大臣 加藤議員にお答えをさせていただきます。

 先週の衆議院の社会保障と税の一体改革に関する特別委員会において、我が党の下地幹事長が、消費税増税分の一%を経済対策あるいはデフレ対策に回す旨総理に提案をしたということは承知しております。

 これは、国民新党としての、きちっと党で正式に決めたという意見でもなくて、下地さんの速記録の中でも、私の提案でございますけれどもと、こういうことを断っておりますので、これは下地幹事長の個人のお断りで発言されたものと承知しておりますが、国民新党は、やはり経済の活性化、このことが極めて党是として大事だと。三%、二%というのが入りましたけれども、このまま経済がきちっと回っていかなければ持続可能な社会保障というのは可能じゃございませんから、そのことは我々みんなしっかり熟知しておりますので、そういった個人の意見としての意見が出たんだろうというふうに思っております。

加藤(勝)委員 今、自見代表のお話を聞くと、個人の提案であるけれども、どうも国民新党として、具体的な提案は違うけれども、経済成長というのはもっとしていかなきゃいけないという、かなり流れとしては追認をしているように私には聞こえたんです。

 そして、先ほど伊吹委員のお話の中にも、いろいろな方が、私もここで質問させていただいております。しかし、党の代表とか幹事長の方がここで発言される話というのは、やはり私は党としての意見であるべきだ、こう思いますけれども、いかがですか。

自見国務大臣 我が党は、小さいといえどもやはり自由な政党でございまして、それぞれの国会議員は、党の立場、しかし同時に、憲法上選ばれた衆議院議員でございますから、それぞれ自由な意見あるいは自由な提案というのは当然私はあっていいだろうというふうに思っております。

加藤(勝)委員 与党と野党じゃないんです、与党の中なんですね。代表、幹事長ですから、それは与党間で、幹事長の間で議論されていると思いますから、もしそうであれば、与党間でしっかり調整してから持ってきてくださいよ。どう考えたって、これは与党の意見が違う、こういうふうに私には聞こえますけれども、総理として、与党全体の代表として、いかがでございますか。

野田内閣総理大臣 今回の法案は、それはもちろん民主党の中で、まずさまざまな議論をやりました。でも、その都度、国民新党の皆様にも御説明をいたしました。そういうプロセスを経ながら大綱をつくり、そして法案作成です。

 その前の素案から成案までさかのぼっても、随分長い時間をかけて、その上で国民新党の皆様にも御理解いただきながら進んで、そして、その法案については、代表である自見大臣が署名をされているわけでございますので、法案の骨格は社会保障をまさに使途とするということは十分おわかりをいただいているというふうに思います。

 その中で、特に経済をしっかりしろよと、もちろん我が党にもあります、国民新党にもそういう御意見があるということの中でいわゆる御意見が出てきたと思うので、骨格は御理解をいただいていると理解をしています。

加藤(勝)委員 何の骨格なのかというところがありますし、直接質疑をされておりました総理からは、今の、政府としての方針というものを貫く、こういう話がありましたけれども、しかし、我々野党に対してまさにいろいろ呼びかけをされているという中で、与党において、しかも要職にある方がある意味では異なる意見を持っているというのであれば、やはりそこはきちっと調整していただいて、それから働きかけていただかないと、一体どこに与党としての本意があるのかと、我々も混迷をし、また、協議をしろと言われてもなかなかできない、そのことを指摘しておきたいと思います。

 先ほど、基本的な考え方が同じだけれども、どうしてこれほど一つ一つの施策で変わるのかというその一例として、年金の問題を取り上げたいと思います。

 まず、現行の年金についていろいろ議論がございます。そういう中で、厚生労働大臣が、これは一つの事例ですが、読売新聞の中に、今までどおりの負担と給付ではやっていけなくなりますというようなニュアンスの話をされております。

 国会の質疑の中で、あるいは野田総理も含めてでありますけれども、今の年金の制度については、先般の財政検証も含めて、持続可能なものであり、破綻というものではない、こういうことは明言されておると私は認識しておりますが、それを一方で言いながら、他方で、今申し上げた、今までどおりの負担と給付ではやっていけなくなります、こういう発言が出てくる。非常に不信を持っているんですが、これはどういう御趣旨ですか。

小宮山国務大臣 これまでの審議の中でも、自公政権当時につくられましたマクロ経済スライド、人口推計とか賃金、それから経済の状況などで、百年後まで安心なようにつくられているということは十分承知をしておりますので、制度としてずっと維持が可能なものだということはわかっております、ちょっとそこが私の言葉足らずであれば申しわけなかったんですが。

 各地を対話集会などで歩いたときに、特に若い方を中心に、このままでは自分たちはもらえないのではないかとか、非常にそこが、国民の信頼をしっかりと得ているかどうかというところで、理解を得ていないということも含めて、このままの形でやっていけるのかどうかということが、特に国民年金が今、払っていらっしゃらない方が若い人を中心に半数以上いるというような状況の中で、もっといろいろな、信頼を得るための改革が必要ではないかというニュアンスで申し上げました。

加藤(勝)委員 ですから、何でそういうことになってきたのか。

 破綻している、破綻しているとおっしゃった方が相当おられたんじゃないんですか。だからこそ、国民の側から見れば、ああ、これはだめだな、こう思うわけであって、そこは、むしろ大臣がきっちりと、大丈夫ですよ、こう明言していただくということが私は一番大事じゃないかなと。その大臣が、いや、給付と負担、今までどおりではやっていけませんよと言ったら、ああ、やはりやっていけなくなるのかな、こう思ってしまう。

 やはりそこは、それぞれもっとこうしたらいいというお考えがあるというのは私は否定はしません。しかし、少なくとも今の制度については持続可能であり、破綻はしていないということは、どこに行っても堂々と、そしてもっと積極的に言っていただきたいと思うんですけれども。

小宮山国務大臣 それはいろいろな対話集会などでも私の方からもしっかり説明をしております。特に若い方が、自分が払っても将来もらえないのではないかという質問がかなり多いんですね、実際に。でも、そんなことはないということはしっかり話をしております。

 ただ、話をしても、その話をした限られた方以外のところでどうしても、それがもらえないだろうということが、今、やはり国民年金のところをどういう制度にしたら若い方も含めて信頼が得られるかどうか。そこについて、御党や公明党さんは今の制度を改善していけばいいというお考えだとわかっていますが、その中で、私どもは抜本改革が必要じゃないかということで提言をさせていただいているので、そういう意味で、将来どういう形にしたらいいかということは、そうした案をテーブルにのせて、どちらの政権が、誰が政権をとっても持続可能なように、ぜひそういう御議論もいただければと思っております。

加藤(勝)委員 今の大臣のお話を聞いていても、これをこういうふうに変えたいという話と、現行制度の持続可能性が、どうしても、これを変えたいというその論理の中で、現行制度が持続的ではない、こういうニュアンスがやはり出てきてしまうんですね。ですから、そこはやはりしっかりと、今もやっていただいているということでありますから、もっと一般の、特に若い方にも、大丈夫だよとわかりやすく説明をしていただきたいと思います。

 そして、今の新しい年金制度について申し上げたいと思うんですけれども、民主党の方から、これはどういうふうに言えばいいんでしょうか、考えていた途中のものということでありましょうか、示されたわけであります。

 四つのパターンがございましたけれども、一つ、年金がそれなりに支給される、こういう案でいきますと、消費税負担はさらに七%近く増加する。これは、岡田副総理から言われれば、今の制度でも上がるからとおっしゃいますけれども、差っ引きでも五%内外上がらざるを得ない。そして、一方で、真面目に保険料を納めてきた中堅サラリーマン、こういった年金の皆さん方は今より水準が下がってしまう、こういうことになる姿が示されていたわけであります。

 誰が考えても、四十年間真面目に働き続けて、今、基礎年金が六・五、六万円ぐらいだと思います、これが保険料を十分に納めなくても七万円もらえるということになれば、その財源の捻出のためには、相当な増税をするか、あるいは今もらっている方の年金を下げるかしかないというのは、これは自明のことではないか、こう思うわけであります。

 私どもは、やはりそういう、保険料に見合って年金というのは支給されるべきだというふうにまず思うわけでありますし、加えて、現在、所得の把握というのは決して十分と言えるような状況ではありません。

 そうなれば、むしろ、サラリーマンの皆さん方は給料から直接引かれるわけでありますけれども、そうでない方においては、できれば少し所得を隠しておこう、あるいは未納してしまおう、こういうことに、それでも七万円が支給されるということになれば、そうした所得隠しや未納が促進されることになってしまう。まさに、私どもが一番避けるべきだと思う、一生懸命やっていた人がばかを見てしまう、努力する者が報われない、こういうことにつながってしまうんじゃないかな、こういうことを強く懸念するわけであります。

 さらに、これまで何度も議論が出てきております、今の雇用者の方は、現在、一六%ちょっとの保険料でありますが、実際、御本人がお払いになるのが八%、そして会社側が八%。しかし、いざ自営業者ということになれば、全額を本人が負担するしかないわけであります。

 もちろん、今の国民年金における自営業者の方の割合はそれほど高くないことは承知をしておりますが、しかし、自営業者の方、農業をされている方というのは、定年があるわけではありませんね。引き続き働くこともできる。にもかかわらず、今の状況では、定年があるそうした被用者と同じようにその制度に取り組むというのは、そもそも私は無理があるのではないかなというふうに思うわけであります。

 むしろ、今の制度を、まさに今回の法案はそうでありますけれども、現行制度をベースに非正規の方々の適用を、それが経済に与える影響をしっかりと見きわめながらでなければなりませんが、それを広げていくとか、現行制度をベースに修正していく方がはるかに現実的であるし、そして、特に最低保障年金等、やはり保険料と見合いの年金というのがかなりアンバラになってしまうような制度というのはこの国には少なくともなじまないんじゃないか、こう私は思うわけでありますけれども、政府のお考えを教えていただきたいと思います。

岡田国務大臣 今、加藤委員の言われる問題意識というのは、私もかなり共有する部分はございます。

 そういう問題があることは十分に踏まえた上で、しかし他方で、いま一つは、自営業者は定年がない、こういうふうに言われましたが、実際に国民年金の加入者の中での自営業者の割合というのは今二、三割じゃないでしょうか。むしろ非正規の方がたくさん入られていて、年金の性格そのものが変わってきている。そこにどう対応していくのか。

 そして、そもそも国民年金に入っておられない方々の問題を、つまり無年金と言うべきだと思いますが、どう考えていくのかという、そこの問題意識が我々は非常にあるわけであります。結局は、放置しておけば、そういう方々はやがて高齢になれば生活保護ということに行く。そこでやはり税を使わざるを得ない。

 そういったことではなくて、基本的に皆年金というのが実質的に今問われているわけですから、きちんと皆年金制度が機能するようにする。そういう発想の中から我々の提案は来ているわけで、そういうことについても、委員のおっしゃることもよくわかります、そういう問題意識も持っておりますが、しっかりとした議論をお互い交わしていくべきではないか、そういうふうに思っております。

加藤(勝)委員 未加入の問題は、多分どちらの制度になってもなかなか解決し得ない、もちろん源泉で徴収すれば別ですけれども。例えば、一般の自営業者の方とか、そこの未加入というのはなかなか、私は、どちらの制度であったとしても、未加入である限りは年金が払われないというのは多分新しい年金制度でも一緒だと思いますから、未加入である以上は無年金にならざるを得ないというのは、これは変わらない。

 皆さんのマニフェストには国民全員がもらえるというふうに書いてありますけれども、実際問題としては、私は、未加入である限りは、多分どっちの制度だとしても、これは無年金にならざるを得ないということをまず指摘しておきたいと思います。

 それから、最初に申し上げた、今回の皆さん方の社会保障の改革の原点というのは、人口構成の変化に対応するという話をされておられました。

 しかし、今回の新しい年金制度というのは一体どこが人口構成の変化に対応できている年金なのか、私はなかなか理解できないんですが、今の制度と比べて、新しい年金制度になることによって一体どこが、今のように高齢化がどんどん進むという人口構成の変化に対応した形になっているのか、御説明いただきたいと思います。

小宮山国務大臣 先ほど、人口構成の変化というのが背景だというお話をいたしましたが、それだけではなくて、例えば働き方が、以前は終身雇用、正規雇用が当然だったものが、非正規が今四割近くになっている。そのような、働き方が変わっているところからも低年金、無年金の問題が出てきているということがあるかと思っています。

 そうしたことを含めて、全体の背景として、さまざまな今の現状の変化の中で、こういう新しい仕組みが、低年金、無年金があるということは皆さんも認識は同じだと思うので、そこをどうやって解決したらいいかということをぜひ知恵を出し合いたいと思います。

 あと一点だけ。

 全然払っていない、全く保険料を払わない人みんなに民主党の制度だと年金を支払うようにおっしゃっていますけれども、決してそうではなくて、収入がないなどで払えない方には出しますけれども、払えるのに払わなかった方にこの最低保障年金を出すという考え方は持っておりません。そのことについては、マイナンバーなどでしっかりと所得を捕捉して、また徴収する仕組みをきちんとするようなことの中で、こうした仕組みが働くようにしたいと考えています。

加藤(勝)委員 民主党のマニフェストでは「国民全員が受け取れる年金制度」と書いてありますから、そこは、おっしゃるように、もちろん保険料を納めた人ということがその前提なんだと思いますけれども。

 また、今、所得把握のことをおっしゃられましたけれども、これはなかなか難しい。特にマイナンバーは、金融資産については直接把握できないわけでありますから、何かそれができたら全てができるということではなくて、もっと現実的に議論すべきだと思います。

 それから、大臣は、先ほど申し上げた読売新聞の中でも、協議のテーブルにお互いの案を出しましょうとおっしゃるんだけれども、お互いの案が出てこないですね。

 民主党の皆さんは、やはり年金の案というのは、具体的でないと案ではないと思うんですね。やはりそれを出していただかないと。我々は現行制度を基本に変えましょうと。現行制度というのはもう既に動いているわけですから、国民の皆さんもそれなりに理解はしていただいている。将来について不安を持っている方もいらっしゃるかもしれないけれども、しかし、そこは我々は出していただいている。それならやはり皆さん方が、具体的な案を出していただいて、そこで協議をするならわかるんだけれども、それは来年だ、こうおっしゃる。しかも、我々から見たら、どう考えてもなかなか具体的な案にはならない。

 だから、私どもは、皆さんが言っている案をおろせと言っているんじゃないんですよ。具体化できない案を提出しようという、その姿勢をむしろ改めたらいかがですか。むしろ現実の案で一緒に行きましょう、こういうふうになればもっと話がとんとんとんとんと進むんじゃないか、こう思うんですけれども、総理、いかがですか。

岡田国務大臣 これは、今の年金制度を大きく変えるという提案は、我々の提案は一つですけれども、別に我々だけではないんですね。例えば、主要な新聞社などもそういったものを提案している。もちろん、その中には今の改善に重点を置いたものもありますが、そうではないものもあるわけで、やはり、そういう意味で、さまざまな案についてしっかりと、この政権、もちろん、政治に責任を持つ民主党と自民党あるいは公明党、そういった政党が真摯に話し合いをして答えを見出していくということは、私は、非常に重要なことだし、国民の望んでいることだ、そういうふうに考えているところでございます。

加藤(勝)委員 いや、ですから、それを具体的にするに当たってももう少し、例えば、先ほど既に、民主党の案と言われている中でも四パターンあるわけですよね。大体どの辺でいこうとされているのか、少なくとも。そして、それが具体的にどういう形で国民負担につながっていくのか。

 そして、私はもう一つ不思議なのは、ただでさえこれから、ちょっと議論を飛ばしましたけれども、今の社会保障、先ほど伊吹先生は高齢者三経費の話、年金、医療、介護。医療も高齢者の医療。しかし、皆さんの場合には、さらに医療も全体の医療、少子化も含めて、これで約三十兆円ぐらい現時点でお金が要りますねと。そして、これはほとんどが消費税を基本、主としてこれで賄うとおっしゃっているとすると、ここで上げても、全部じゃないのかもしれませんけれども、さらにまだ数%上げなきゃいけない。

 ここで五%上げても、さらに数%上げて、さらにその上にここにおける消費税を上げていくというのは、とてもじゃないけれども、先ほど表でお示しをしましたけれども、これから、年金というのはある程度今は抑制しているわけです、医療、介護はどんどんどんどん伸びていくわけですね。そういうことを考えても、とても私は現実的な案ではない、こう思うわけであります。

 いずれにしても、具体的な案を出していただかないと、これはもうみんな何回も何回もここで言っているわけでありますけれども、先に進まない。そして、それができなければ、総理が政治生命をかける、これもそこには到達し得ない、私はこう思うわけであります。

 また、現行制度をベースにと申し上げましたけれども、ただ、今、今回の出している案、これからまた議論をさせていただきたいと思いますけれども、低所得者等への加算については私はかなり議論があるのじゃないかということを一言申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、後期高齢者医療制度の廃止について。

 実は、この国会、今我々が議論しているところは、社会保障と税の一体改革に関する特別委員会という委員会なんですね。しかし、出てきている法案は、消費税、税の話を除きますと、現行制度をベースにした幾つかの改正と、そして、あした議論されます子ども・子育て新システムしかないんですね。医療と介護、先ほど申し上げましたけれども、これからどんどん広げていく、これをどうするかというのは大変大きな話。この法案が、何にもこれが出てきていない。だから、私も、いや、こういう委員会ですよと言うのがいささか面映ゆい感じがしないでもない。

 その中での一丁目一番地がこの後期高齢者医療制度であります。皆さん方はマニフェストで、廃止すると。そして、なぜか。年齢で差別するような制度は廃止するんだと。そして、具体的には、後期高齢者医療制度関連法は廃止し、廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する、こうマニフェストに書いておられますけれども、先般の成案、社会保障と税の一体改革の成案の中にはいろいろな数字が入っていましたね、こういう改革をしたら幾ら要りますよと。この中の数字には、まさに後期高齢者医療制度の廃止に伴ういわゆる国の支援増、この数字が一切入っていないんですけれども、これはもうマニフェストは撤回された、こういうことですか。

小宮山国務大臣 この後期高齢者医療制度の見直しにつきましては、二十二年の十二月に最終的な取りまとめが高齢者医療制度改革会議で行われまして、それについて今関係団体などからさまざまな意見が出されているところです。

 今回、関係者の理解を得た上でこの国会にということで、今、理解を得るべく努力をしておりますけれども、まだ得られていないということで、今、党も含めてそういう検討をしておりまして、引き続き、理解を得るために検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

加藤(勝)委員 要するに、皆さん方の成案のレベルでありましたけれども、そこには、マニフェストでやろうとしていることを実行するために必要な、いわゆる後期高齢者医療制度を廃止したら、それに伴って国民健康保険の負担増、それを国が支援するというお金は計上されていない、それでよろしいですね。

 その上で、今、高齢者医療制度改革会議の取りまとめがある、こういうお話がありました。しかし、これも厚生労働大臣と、たしか国民健康保険法の議論のときに議論させていただきましたけれども、その今皆さんが考えている案というのは、七十五歳以上の方と七十五歳未満の方については、医療給付の方も、そして保険料の負担も全く別個です、まさに財政的には全く別の制度です、こういう御説明であったというふうに理解しておりますし、そう確認をしたと思うんですが、間違いありませんか。

小宮山国務大臣 改革会議の案も、一度に将来の、そこで目指した形まで持っていくとすると、これは地方自治体の御理解もなかなか得られないので、段階を踏んでやっていくというようなことも今出させていただいているところでございます。

 先ほどの、今回の一体改革の財源に入っていないということについては、この改革会議の取りまとめでは、公費の所要額が、平成二十五年度七百億円、二十七年度で五百億円という、一千億円にならないぐらいの単位の大きさでございますので、今回、費用や財源も含めて、関係者の理解を得られるように調整を図っていきたいと思っています。

加藤(勝)委員 いや、それは大臣、違うんじゃないですか。マニフェストの議論のときには、たしか、医療の一体化を含めて、八千五百億円ぐらいの数字が出ていたと思うんですよね。ですから、それは皆さんが考え方を変えて、今御検討されている案でいえばその程度だということだと思うので、そこは違うと思います。

 その上で申し上げたいのは、先行きの話もありますけれども、今の消費税の五%、仮に引き上げたとしても、当初おっしゃっていたようなものはできないわけであります。そして、今議論されているのは、さっき申し上げた、給付、サービスを受けること、そしてそれに見合う負担も、これも全く別個の制度でやるというのであれば、これはもう現行制度を継続しているものそのものじゃないですか。それにもかかわらず、まだ関係者と調整がつかなくて出せないと。もう一体何なんだろうかという感じがするわけであります。

 これ以上議論を混迷させないためにも、廃止法案を提出するという、実質的には皆さんのマニフェストはもう撤回されているわけですから、あとは形式的な話だけですよ。それがいろいろな議論の妨げになっているわけですから。これは堂々と廃止法案を提出すべきだと思いますけれども、総理の決断をお願いしたいと思います。

小宮山国務大臣 今委員が御指摘いただいたように、マニフェストで約束したような八千億以上かかるような案ではなく、今進めているのは改革会議の案にしているということなので、現実的な路線を行くということで、そういう意味ではマニフェストと変わってきているということは、御指摘のとおりでございます。

 ただ、これについては、やはり健保の財政が非常に厳しいということも御理解はいただけると思うので、広域的にやることは恐らく合意もしていただけるところだと思いますから、何とか現実的に改善していく案ができないかということで、今関係者と検討しているところでございます。

加藤(勝)委員 現実的な案等々については、我々も議論していきたいと思いますけれども、ただ、おっしゃったように、別個の制度だからだめだ、だから廃止だとおっしゃったのがマニフェストの原点。そして、今皆さん方が議論しているのは、先ほど何回も言っているように別個の制度なんですよ。

 それだったら、もうそれにこだわることはないじゃないですか。総理、もう決断しましょうよ、この話は。廃止をするということはやめて、現行制度の見直し、それでいきます、そういうふうに方針を転換すれば、一つ大きな障害は消えると思いますが、これはもう総理の決断ですけれども、どうですか。

野田内閣総理大臣 私どもが廃止と言ったころの一番強い問題意識というのは、やはり年齢による差別感というものが非常に広がったということがあったと思うんです。それに対する運用の改善は相当に努力をしてきたと思います。

 その上で、どうやって現実的に対応するかということを、今関係者との調整をしているというお話がございましたが、判断をさせていただきたいというふうに思います。

加藤(勝)委員 もう時間が来たのでやめますけれども、その差別感ももう既に随分消えてきています。名前は確かにあるかもしれません、後期高齢者。もうこれは総理の判断一つだということを申し上げて、終わらせていただきます。

中野委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、鴨下一郎君。

鴨下委員 自由民主党の鴨下一郎でございます。

 きょうも年金の話でございます。

 きょうは、まず総理と岡田副総理にお伺いをしたいんですが、政権交代して三年になります。この三年の間、多分、政権交代してよかったなと思っている方々も国民の皆さんにはいるんでしょうし、政権交代したことによっていろいろな弊害も出たというふうに考えている人たちもいるんだろうと思います。

 ですから、少し、大枠で結構ですから、政権交代の意味、そして政権交代をしたというようなことの、いわば国民に対してこういうことがよかったよ、こういうような話を、今、三年を振り返って、総理、副総理、一言ずつで結構ですから、お話をいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 政権交代をして、やはり変わった部分というのは、先ほど伊吹先生も御指摘がありましたけれども、社会保障の部分で機械的に一律的に削減をされようと努力されたんですね、これまでの政権の中で。いわゆる二千二百億。ということではなくなって、必要なところにはやはりお金を入れていかなければいけないという中で、社会保障については随分と変化があったと思いますし、それは予算面でもあらわれたというふうに思います。

 それからもう一つは、やはり国の財政も厳しいんですが、厳しいのは地方も大変だということの中で、確実に地方交付税はふやしながら、三位一体改革のころに比べれば、地方を元気にするための方策は、政権交代によって随分と工夫をされながら充実をするようにしてきている等々、政権交代の意義はあると思います。

 ただし、先ほど来マニフェストのお話がありましたとおり、厳しい財政状況の中で、あるいは政策の優先順位も変えざるを得ないという変化の中で、お約束したマニフェストが全てできているわけではないし、できない。例えば暫定税率の廃止などはそういう御説明をしてまいりましたけれども、そういうものも出てきていると思います。

 いずれにしても、できている部分とできていない部分を、最終的には、いずれ民意を問うときに、我々にとってはいわゆる業績投票として、できたこと、できないことをどういうふうに国民の皆様が総合的に評価をされるかということの審判を受けざるを得ないというふうに思います。

岡田国務大臣 私も、できたもの、できないものがあるということであります。

 ただ、やはり、今までのしがらみにとらわれずに思い切ってできたものとして、例えば、これは恐らく各党で議論は分かれると思いますが、公共事業費を大幅に削減したこと。これは自民党から見るとけしからぬというお話もあるかもしれませんが、私は、政権交代したからこそ、これだけの思い切ったことができたというふうに思います。

 それから、教育面での三十五人学級とか高校無償化とか、そういったことも、今までの発想の中からは出てこなかった、そういうふうに思っております。

 一言で言えば、今までのしがらみがない分、思い切ってできたものがあるということでございます。

鴨下委員 政権交代の意味については、民主党になったからよかったということを聞いているんじゃなくて、政権交代そのものがどんな意味を持っていたんだろうか、こういう話であります。

 野田総理と私は同期でありますから、そういう意味でいうと、最初の志の中では、例えば、政官業の癒着がどうなったとか中央集権を地方に少し分権していこうとか、さまざまなことがありました。

 そういうような意味では、国民が政権交代を選択したわけであります。その国民の期待に応える政権交代はなし得たのか、こういうようなことについて、大局に立って総理から話を聞きたいので、例えば三十五人学級ができたとかできないとか、そういう話を聞いているわけじゃありません。むしろ、政権交代の意味、そして国民の皆さんが政権交代してよかったな、こういうことは一体何だろうか。

 私は、一つ言えることは、民主党が、学べば学ぶほど、政権というのは大変だな、そして政治というのは運営していくのに苦しいものだな、こういうことを学んだということは、これは意味があると思いますけれども、ただ、本来的に、国民は政権交代という即戦力を求めたわけでありますから、そんな、学んでいる暇はなかったはずです。

 この三年間に、政権交代の意味、これについてお話をいただきたい。

 そしてついでに、次に聞きますけれども、デメリットは一体何だったのか、このことも、もしお話しできるようだったら、続いてお願いします。

野田内閣総理大臣 政権交代の意義というのは、政権がかわることによって政策の優先順位が変わって、具体的にはお金の使い方が変わる、それによって国民の皆様が生活して実感をするというのが、本当は政権交代の意義だと思います。

 その意味では、マニフェストの主要項目、これは一定の財源でありましたけれども、つくり出したものの中で反映したものはあります。そのことによって政策の優先順位が変わってきたと実感できる部分は、さっき申し上げた社会保障であるとか地方であるとか、あるいは岡田副総理がおっしゃったチルドレンファーストの理念に沿った一連の政策だと思います。こちらに光が当たってきていることを評価する方はいらっしゃると私は思います。もちろん、それが十分、お約束していたとおりできていないということに対する不満もあると思いますので、それは真摯に受けとめなければいけないと思います。

 それから、もう一つは、やはり鴨下委員が御指摘のとおり、政権がかわった意義というのは、単に民主党の政権になった、民主党中心の政権になったという意味ではなくて、我々が政権与党になって見えてきた光景があります。それは、その中で、有権者の皆様に約束をしていなかったことでも、苦しいことでも、せつないことでも、やはりやらなければいけないと決断せざるを得ない立場になっているということ、これはやはり自覚を持たなければいけないと思います。逆に、ずっと与党が長かった自民党におかれても、野党になって見えてくる分、改めて、国民の皆様と膝突き合わせて、こういう民意が入っていなかったんだな等々、総括をされる部分もあると思います。

 お互いにこういう、光景が見えてくる、見えてくる光景が変わってきたというところは、これからの前進につなげていかなければいけないのではないかと思います。

鴨下委員 おっしゃることは大体理解するんですが、残念ながら、この三年間、国際状況は厳しい、あるいは我が国の財政状況も厳しい。そして、先ほど伊吹委員からもお話ありましたように、自民党は自民党なりに反省をすべきことはたくさんあるし、それについては、この三年間、昼夜反省をし、そして生まれ変わるために努力をしてまいりました。

 そういう意味においては、お互いに研さんをする、こういうようなことであったんだろうけれども、国民の皆さんにとってはそうじゃないですよ。政治が一体何をやっているのか、どっちだっていいんだから、政治がきちんと仕事をしてくれよ、決めることは決めてくれ、そして政権交代をしたということをエクスキューズに、いろいろなことでできませんということはしないでもらいたい、こういうことなんだろうと思っているんですね。

 そうなりますと、先ほどの議論の中にもありましたけれども、私は、政権交代をして、継続性を必要とするようなことが不連続になった、こういうデメリットが大きいことがいろいろとあると思います。外交の問題、安全保障の問題、そして、社会保障の、特に年金の問題であります。

 年金は、前からお話ししているように、八十年一クールですから、二十で払い始めて四十年間で満額、そして、その後寿命が終わるまで年金を受け取る。ざっと八十年間、同じ制度が安定して維持されるということが重要なわけであります。

 ですから、そういう意味でいうと、政権交代して、俺たちはこういうのがいいよといってそれに変わっていくということは、国民の皆さん、特に今までの制度にコミットしていた、関連していた人たちにとってみると、政権交代したら自分たちの年金はどうなっちゃうんだろうか、今まで払っていた年金は継続してくれるんだろうか、こういうことを大変心配しているんです。

 ですから、先ほどの議論のように、最低保障年金、あるいは国民年金まで含めた一元化、こういうことは、実現するのに四十年かかる話を今から始められても、自分たちはこれからあと十年、二十年、年金をもらい続けるのがありがたいわけだから、だから政治というのは、与野党あるいは政権がどうかわろうが、国民の皆さんが頼っている、よすがにしている年金をしっかりと守る、こういうことが重要なんだろうというふうに思います。

 ですから、多分、ここでいろいろな議論をしていて、やれ最低保障年金はだめだとか現行制度は破綻しているとか言われたら、もう国民の皆さんはたまらない。つらいです。

 ですから、今回、私は、いろいろなことで政権交代していいこともあったかもわからないし、お互い学び合うこともあったかもわからないけれども、事年金に関しては、継続性、安定性、こういうものを我々みんなが共有しないといけない、こういうふうに思っているんです。

 ですから、そういう意味で、これから四十年先に完成するような制度を、今政権交代したからといって、今決めてください、二十五年には法律を出します、それから四十年たったら完成しますって、もうこれじゃだめなんですよ。

 むしろ、今の現実を見て、国民の皆さんが関係しているものを守り続けます、こういうメッセージを総理が出すことが、多分、我々がいろいろな持続可能性をサポートしていく上での最も重要なことだと思っているんですが、総理、いかがでございましょう。

野田内閣総理大臣 いや、基本的な認識は私変わりません。

 政権がかわるたびに、まず冒頭委員がおっしゃったとおり、安全保障が百八十度変わるようなことがあってはいけないと思います。

 社会保障も、それはワンクール八十年というお話がありましたけれども、やはりこつこつと保険料を納めて、実際、老後を迎えて年金中心で暮らすということを考えればおっしゃるとおりでございますので、これもころころ変わってはいけないと思います。だからこそこれは、特にこの社会保障の部分は、与野党がかみ合った議論をしながら成案を得るという形が望ましいと思っています。

 ただ、そのアプローチの仕方は、現行制度、これは、だから我々は破綻をしているという言い方はしていません。現時点においてはこれはきちっと持続可能なものであるということを、若い人を含めて説明しなければいけないと思います。その上で、先ほど厚生労働大臣が心配な点を説明されたように、いろいろ課題もあるんですね。

 その課題を現行制度の改善で当面いかなければなりませんが、一つの方向性、ゴールを見ながら現行制度を改善するというやり方もあると思っておりますので、それはいずれにしても、委員御指摘のとおり、仮に今の制度を維持し、また新しい制度を決めたとしても、移行期間は何十年もあるわけでございますし、その間に、例えば二〇一五年をにらんだときに、今議論をしているこの一体改革の最初の安定財源確保のための引き上げの時期でありますが、そのときに激変という形ではありませんので、私はかみ合った議論はできるというふうに思います。

鴨下委員 総理は、言っていることは何かもっともらしいことを言っているわけだけれども、実際は国民の皆さんに対するメッセージというのは、四十年先に変えますよ、ここから現行制度を少しずつ変えていきますよ、でも、どこかで抜本改革しないと四十年先は違う制度になっちゃうんですよ、こういう話をおっしゃっているんだけれども、小宮山大臣、先ほど、現行制度も、例えば二十一年の再計算というか、あれは再検証ですか、をしたときにも、今の制度で持続可能であることは間違いない。ただ、年金にかかわっていらっしゃらない、あるいは未納の人とか未加入の人たちの救済については、これを今の年金制度の中でやろうと思えばいろいろな工夫が必要だという話です。

 それの一番の大きな大改革は、最低保障年金と年金全部の一元化をやれば、そういう人たちは助かるかもわからないけれども、でも、今やっている人たち、あるいは、今、四十年間払い続けてやっと年金をもらい始めた人たちにとってみると、そんなこと言われたって困るよ、俺たちは今の制度を頼りにして生きてきたんだから、こういう話があるので、だから、その二つは、ダブルスタンダードになってもいいけれども、分けた方がいいと思っているんですよ。

 ですから、まず大臣、さっきのお答えで結構ですから、今の年金制度は、実際に年金を納めている方あるいは給付を受けている人たちにとっては、安定して大丈夫な制度なんですか。

小宮山国務大臣 それは大丈夫な制度でございます。そのように設計をされています。ただ、マクロ経済スライドで、今までと同じ金額かというと、二十年で二割ぐらい下げていかないともたないというようなことはございますが、制度として安定してもらえるということでは、そのとおりでございます。

 ただ、先ほども申し上げたように、今の制度のままでずっと微修正というか改善をしていってもつということを、国民の皆様全体がそういうふうに思われるような制度として維持していければよいのですけれども、それは信頼感の問題からして、特に国民年金のところで、低年金、無年金という人たちが特に若い人を中心にいる。これから新しく年金制度に入って掛け続けようという人にも信頼を持っていただくためにはどうしたらいいかということの話をさせていただいているので、そういう意味では、確かに今、民主党の側のきちっとした案が出ていないというのは、私が申しわけないと言っていいのかあれですが、申しわけありませんが、基本的な考え方は出していますので、その中で議論をしていただいて、結論が出れば、それはその先、その法案を出す出さないの判断はまたあるんだというふうに思っています。

鴨下委員 大臣、私が言っているのは、今かかわっている人たち、そして、未納、未加入の方じゃなくて、全体的にいわば年金を払っている人たち、厚生年金を払っている人たち、共済年金、それで国民年金もつらいけれども毎月払っている方々、こういう人たち、あるいは、年金を払い終わって給付を受けている年金世代の人たち、こういう人たちが、今の制度が続く限り皆さんは大丈夫なんですということを、厚生大臣は年金を預かっているわけだから、きちんとそういう人たちには安心です、大丈夫ですと言い続けないといけないし、そういうことを言うのが多分あなたのお仕事なんだろう、こういうふうに思うんですよ。だから、いや、年金、危ないかもわかりません、破綻しているのかもわかりません、こういうふうに言っていた前任の大臣みたいなものは大臣失格。

 ですから、ぜひ小宮山大臣、もう一度、実際にかかわっている人たちにメッセージを出してください。

小宮山国務大臣 それは委員がおっしゃるとおり、今掛けている方、そして今既にもらっている方たちは、引き続き安心して受け取っていただけます。ですから、もしも新しい年金の制度にするとしても、それは二つの制度が並行して走っていく形になりますので、それがまた複雑だと言われると思いますが、今既にもらっている方は今のままでいきますし、今まで何年か掛けていらっしゃる方は、掛けた分はその形でいくということでございます。今の方たちが安心であるということは間違いございません。

鴨下委員 大臣、だから、具体的に言えば、今の制度にかかわっている人たちは、年金のメンバーですよね。年金メンバーの人たちは、例えばこれから高齢化がさらに進んでいけば、取り分は少しマクロ経済スライド等で伸び率が減るかもわからないし、経済の状況で調整をする必要があるかもわからない。あとは、我々が約束した所得代替率、こういうものも現行の給与よりは五〇%を切ってくるかもわからないけれども、少なくとも今メンバーになっている方々はしっかりと今の制度を守りますと言うのがこの政府の、あるいは厚労大臣の、あるいは総理の責任でもあるんだろうと思います。

 それを、具体的にいつも言うんだけれども、総理、今、四千万人の人が年金を受け取っていて、そして、約六千万人の方が保険料を払ってくださっているわけですよ。その一億人の皆さんに、あなたたちの入っている制度はぼろぼろですよとか、破綻しているかもわかりませんと言われたら、みんなせつないじゃないですか。だから、そのメンバーに入って真面目にやっている人たちは必ずその権利は守るんです、こういう強いメッセージを野田内閣として発してくださいよ。言ってください。

野田内閣総理大臣 現行制度の中に、おっしゃったとおり、トータルで一億人の方がこの年金制度にかかわっているわけでございます。この制度が破綻をしている、あるいは将来破綻をするということはございません。これは、二十一年の財政検証でも収支の長期の見通しは立っておりますので、破綻をすることはない。

 こういう制度は、基本的には、これは国民の老後の生活の根幹をなすものでございますので、しっかり守っていきたいと思います。その上で、改善をどうするかという議論を深めていきたいというふうに思います。

鴨下委員 それは、野田総理、いわば歴史的な発言だと思います。今までは、まず、今の年金制度はだめだから、最低保障年金をやります、年金の一元化をやります、こういう話から発しているんですよ、そもそもが。

 だから、きょうのこの法案、かかっている二法案は、現行制度を十全なものにして、そして、今の制度で安心できるようにという議論を今からしようとしているわけだから、現行制度が全部だめですという話になったら、この議論は始まらない。

 だから、今でいうと、この議論をきちんとする上では、まず現行制度を肯定する。しかし、残念ながら、いろいろと欠点もあるというのは、小宮山大臣がおっしゃっているように、未納、未加入の方もいるし、それから、働き方も変わってきた。だから、自営業者だけじゃなくて、パート、アルバイトの方、あるいはいろいろな非正規で働いている方々、こういう人たちが払いづらくなってきたのは間違いない。だけれども、それを、では、年金を真面目に払っている人たちの保険料から所得の再配分みたいな形をやったら、これは制度そのものが今度はもたなくなっちゃうんですよ。

 だから、そのことについて、例えば、未納、未加入、あるいは低年金、無年金の人たちの対策を別途財源を用意してやりますよという話だったら、私はとてもいい議論ができると思うんですけれども、いかがでございましょう。

小宮山国務大臣 御党の御議論の中では、別途とおっしゃいましたけれども、別に、例えば、本当に困っている人には生活保護とかいうお話もされているということは承知しています。

 ただ、今こちらで考えているのは、原則として、高齢になったときの生活の保障はなるべく年金でできるようにしたい。それは、自助ということをおっしゃっている御党にも御理解いただける部分だと思いますが、そのことと、やはり、私どもが最低保障と言っていること、それから生活保護の水準、さらにもう一つ言えば最低賃金とか、そうした制度が縦割りになっていますが、全体として、これから、今、低所得の方がふえている中でどういう対応をとるかということは、また一緒に知恵を出して考えていただければというふうに思います。

鴨下委員 知恵は幾らでも出しますし、やるべきところは国民の皆さんのために協力もいたしますけれども、ただ、今申し上げてきたように、年金制度を全部根っこからひっくり返して新たな制度にしないと今大臣がおっしゃっていたような問題は解決しないんだという話には、我々は賛同はできない。

 だから、そういう意味では、これからのこの議論の中では、少なくとも現行制度の人たちは権利は守る、真面目に頑張ってきた人、つらいけれども保険料を払ってきた人、こういう人たちの権利は守る、こういうようなことが我々の基本的スタンスですから、それは一歩も譲れないんですよ。

 それで、それ以外の、残念ながら保険料を払えなかった方々、こういう人たちをどういうふうに救済するかというのは、これはいろいろな政治の知恵があると思うし、場合によると、今これから議論をする消費税だとか何かの一部を充てるということになるのかもわからないけれども、そういうようなことの議論をしていただかないと、社会保障と税の改革といっても、今のここに出てきている法案二つは現行制度の修正ですから、だから、そういうようなことと五%消費税上げとを絡められると、我々はなかなか議論しづらくなる。

 総理、これからこの委員会で、最終的には、六月二十一日になるのか、それともさらに先に延びるのかわかりませんけれども、結論的に言えば、現行制度の修正をして、年金を無事なものにしていく、そして、片やそれ以外のさまざまな、さっき加藤委員からの質問もありましたけれども、医療とか介護とか年金、こういうものを持続可能で分厚いものにしていく上で消費税を充てていく。

 こういうようなことが多分この委員会の全体の議論だ、こういうふうに理解しているんですが、総理が、自分の今の政治生命をかけ、そして何のために総理になったか、こういうようないわば信念をかけ、この委員会の中で国民の皆さんに、自分がやりたいこと、そして、そのためには与党、野党、そして国民の協力を得てやっていきたいんだ、こういうような決意がほとばしり出ないと、この委員会は出口にまで行けない。

 そういう意味でいうと、今申し上げているような、まず最初の一歩は年金。この年金についての、かかわっている方々の権利を守りつつ、お気の毒で残念ながら保険料を払えなかった人、あるいは低年金になってしまった人の救済をどうしていくか、こういうようなこと。そして、それに加えて、申しわけないけれども、社会保障だけじゃないんだろうと思います。総理の心の奥底には、日本の財政再建だとか、これから日本が欧州の債務危機だとかこういうものに巻き込まれないためにも財政を健全化していこう、こういうようなことの大きな志が多分あるんだろう、こういうふうに思っている。

 ですから、それで今は苦しいけれども、頑張って、歯を食いしばって、こうして長時間我々の攻撃にも耐えているんだろう、こういうふうに思っているんです……(発言する者あり)我々のサポートにも耐えているんだろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、ぜひ、そういう意味で、いい機会でありますから、自分は総理になってこういうことをしたかったんだ、総理になるのは目的じゃないはずです、総理になって、今いろいろと外へ出て、いろいろな状況を見て、各国の首脳と話をして、日本はかくあるべし、そして、財政はどうしても俺の手で健全化するんだ、こういうような意味で語ってくれれば、我々はぐらぐらっとくるかもわからないから、ぜひ総理、しっかりと、そういうような意味において、お答えをいただきたいと思います。

中野委員長 野田内閣総理大臣、熱意のほとばしる御答弁をお願いいたします。

野田内閣総理大臣 はい。

 これは何回も申し上げてきたことですが、今回はやはり一体改革なんですね。基本は社会保障改革なんです。社会保障改革の中身は、安定化と充実化がある。

 安定化の中には、今の年金のお話がございましたけれども、アプローチの仕方はちょっと現時点で違いますが、年金の最低保障機能強化など、今、当面取り組まなければいけない課題をしっかり解決させること。それから、基礎年金の国庫負担三分の一から二分の一の問題とか、自然増とか、安定財源を確保しないと、世界に冠たる、そして守らなければできない日本の社会保障制度がやはり心配な状況になってしまうことは、これは間違いないんです。

 そこを何とかしようということと、あえて今ちょっとお触れになりませんでしたけれども、年金、医療分野だけではなくて、やはり人生の前半の社会保障を充実させようという充実の部分があるんです。これは、附則の百四条でも自公政権のときにもお示しいただいたとおり、やはり子育て、少子化対策、これは社会保障の中に位置づけていかなければいけません。そのことは明確にここで議論をしながら、この点については、大きな観点からいうと合意できる部分もいっぱいあると思うんですね。先ほど来出ている、自助、共助、公助って、私、全くこれは見解が違うとは思わないんです。

 ということも含めて、議論を深めることによって成案を得ることができるし、成案を得ないと、社会保障の持続可能性とともに、今委員みずから御指摘いただいたとおり、やはり国際会議に出ていると、たまたま日本の財政にはスポットライトが当たっていません。だけれども、今諸外国で起こっていることを対岸の火事だと見ては、これは極めてリスクがあると私は思います。

 したがって、財政健全化も同時達成するというのがこの議論の大事なポイントでございます。これはもう避けて通れない、時間をかけて延ばせば延ばすほどリスクは私は高まるというふうに思っておりますので、その思いを、危機感を有する議員は、これは多くの与野党議員に私は共通をすると思っています。

 したがって、何としても胸襟を開いて、現在生きている国民の未来をつくっていくためにも、未来世代のためにも、これは政治が責任を持って、もちろん私の責任が一番大きいと思います。私の責任が一番大きいから、ほとばしる情熱とかいろいろ言われます。政治生命をかけると言っているけれども、まだ足りないとも言われます。私はその先頭に立っていきたいと思いますが、これは私個人の問題ではなくて日本国民の将来のためでありますので、そのことはお互いに危機感を持って、決断しない政治が、先送りをする政治がここでまた露呈されたときのそのリスクが一番大きいと私は心配をしていますので、ぜひ御協力をいただきたいと思います。

鴨下委員 総理、私は、昨年の九月に総理になられて、三カ月ぐらいは安全運転だという話は、それはそのとおりだと思います。そして、党内のさまざまな意見を集約して、政権基盤を固めて、何をやりたいのか、日本国のためにどう貢献したいのか、国際社会のために何があるべきか、こういうようなことをお考えになったと思いますよ。

 そしていよいよ、これは結果を出さなければいけない時期に来ているわけであるから、だから、最終的にはこの委員会の中でできるかできないかというのが、まさに総理の政治生命がかかるわけだと思っているので、実現しなければ、こちらから申し上げるのはあれだけれども、まさに政治生命がどうなるかわからないような状況になるんだろうと思う。

 ですから、何が我々が協力できて、これについてはぜひ頼む、しかし、いろいろな状況の中で、例えば自助、共助、公助とお話しになったけれども、そういう趣旨の我々の全体のいわば位置づけ、価値観、こういうものに対して、相当いろいろな意味で共感してくれないと、そして譲るべきところは譲ってくれないと。

 それで、先ほど伊吹委員のお話もありましたけれども、マニフェストが間違っていたからそれを改めろということじゃなくて、今ここで、日本の国のため、国民のために最もいい選択は何なのか、これを総理はまず命を賭して訴えるべきなんだろうと思うんですよ。

 だから、学べば学ぶほどでも結構だし、それから、政権をとってみたら見る風景が違ったというのでも結構だ。しかし、国民のためにどうあるか、そして、今我々が、日本のこの社会保障あるいは税、財政、こういうことについて最も、いわば選択としてふさわしい最善の策は何なのか、こういうようなことで、マニフェストのいわば呪縛だとかマニフェストの建前だとか、こういうのはもうここでは議論しなくていいんですよ。我々だって、そういうのはある意味で織り込んだ上で議論しているんだから。

 それで、国民はみんな、ああ、うそをつかれたと思っている人もいる。でも、うそをつかれた人たちは、自分は悔しいからうそをつかれたと言わない。だけれども、みんなわかっていますから、その中で最善の方法を我々はここで議論しましょうよ。

 そういう意味で、背後にあるいろいろなマニフェストの呪縛、あるいはマニフェストを守れと言っているような人たち、さまざまおいでだろうけれども、だけれども、日本にとって最善なものは一体何なのか、こういうようなことの観点から、総理、議論をしてくださいよ。そして、最終的にそれが、野田総理ここにありき、こういうことなんだろうと思うから、私も友人の一人として、そういう意味でぜひエールを送りたいと思います。

 ここで語ってください。これから、残された、少なくともこの委員会の期間の中に、しっかりと、俺はこうやる、今までのいろいろなことは、誤ることもあるし、誤ったこともある、しかし、それについてはもうこの際だから自分が全てを背負って、そしてここから先は最善のものをつくりたい、こういうようなことをおっしゃってくれませんか。いかがですか。

野田内閣総理大臣 私は、〇九年のマニフェストは大事だと思っているんです。個々にお約束したことで、個々の判断で投票行動された方もいらっしゃると思うんです。個別の具体策、これが気に入った、これをやってほしい。そのパッケージがマニフェストでしたから、そのことによって、できたもので評価をしていただける方と、できないことによって離れる方がいると思います。

 ただ、もっと大きな話でいうと、あのマニフェストは国民の生活が第一なんですね。私は、この理念はどんな状況でも堅持しなければいけないと思っています。

 いろいろマニフェストの評価はありますけれども、今回のマニフェストの中で大宗を占めているのは、やはり社会保障の部分です。それらを実現するためには、財政がどうしても必要です。見通しが甘かった等の御批判は甘んじて受けます、財源確保については。その総括も含めて、社会保障をしっかりと支えて、しかも財政は規律を守りながら立て直しをしていくということも、これも大事。

 これは国民生活に直結することなんです。財政がだめになったら経済もだめになることは、今一連の動きを見ても、諸外国を見ても明らかなとおり。そして、一番国民が心配を持っている社会保障に対する不安をなくしていくということ、守り抜いていくということ、そのメッセージが私はここの議論で出せればと思います。

 国民の生活が第一だという理念のもとに、この社会保障と税の一体改革の議論を国民のためにしたいというふうに思います。

鴨下委員 それではお伺いしますけれども、最低保障年金あるいは年金の一元化も含めて、これから二十五年まで議論されるんでしょう。今出ている法案というのは、例えば年金を払っていない方々あるいは低年金の人たちに、たまたま所得が大きい、年金は払ったんだけれども所得がたくさんあるという方々から所得を移転しましょう、こういう話ですけれども、そんなのは、年金を払い始めたときに、たまたま高齢になって所得があるかないかなんというのは、知らないで一生懸命払ってきた人たちから半分ぐらいの年金を巻き上げてしまうというようなことが書いてあるんですよ。

 だからそれは、私は、総理に伺うのは、総理あるいは民主党内閣というのは、弱者の味方であるけれども、額に汗している人たちからはどちらかというと巻き上げる、こういうような政治をやろうとしているのかどうか。そうじゃないんだとすれば、きちんと真面目に働いて、真面目に税金を納めたり真面目に保険料を納めた人たちがきちんと報われるという制度になっていなければ、これは多分、年金制度全体が崩壊しますよ、求心力を失う。

 だから、そこの哲学は、総理、弱者に対しての救済というのは、この社会保障制度の中でやるのか、別のしつらえとしてやるべきだ、我々はそういうふうに思っているんだけれども。ですから、そういうようなことでいうと、年金ということにかかわってくださった人たちのメンバーの権利はきちんと守るのかどうかということについて、哲学でありますから、総理からちょっとお伺いします。

野田内閣総理大臣 基本は賦課方式、社会保険方式を基礎としておるわけですから、納めた保険料に見合って、すなわち努力した分、納めた分に見合って老後の生活が設計をされるというのが基本だというふうに思います。基本はそういうことだと思います。(鴨下委員「基本じゃなくて、そうなんじゃないの」と呼ぶ)そうなんです。

 一方で、低年金の問題とか無年金の問題等の課題をどうやって克服するかについての議論は、課題として受けとめて、これからしなければいけないというふうに思います。

鴨下委員 小宮山大臣、今のお話のように、今回の年金改革案の中では、現行制度の中で、例えば、所得が比較的高いような人たちの年金の半分を低年金の人たちに振り向ける、こういうようなことも制度の中に入っていますよね。これは、年金の保険料を払い始めたときに、まさか自分が、そういうような意味で、保険料を払っていたものの一部の権利を勝手に変えられちゃうと思って払った人はいないと思うんですよ。

 だから私は、年金は年金。それで、所得が高い人は所得税も払っているわけだし、他の税金も払っているわけですから、その分については十分に社会的ないわば義務は果たしている。それをまたさらに年金を巻き上げてしまうというのは、これはちょっと筋が違うんじゃないか、こういうふうに思っているんです。

 だから、税でやるというので、その税の部分については消費税を上げさせてください、その消費税の中でそういう弱者の皆さんの救済はしたいんだ、これは一つ理屈は通るけれども、保険原理からいって、自分たちが払った保険料を、残念ながら払えなかった人、あるいは少ししか払わなかった人に移転する話というのは、保険原理からして違うんじゃないんですかと言うんです。

小宮山国務大臣 それは、そこでそういう御議論があるということは承知をしております。

 低年金の方への増額については、多くの部分は税金で、福祉的にやらせていただきたいと思っていますが、一部、高所得者の方の基礎年金の国庫が入っている分について、千五百万以上の方から次第に減らしていくということで、一%ぐらいの方です、対象になるのは。そこのところもやはり、その財源のために御協力をいただきたいという仕組みを入れたいと考えているんです。

岡田国務大臣 これは考え方が二つに分かれるところだと思います。

 委員のおっしゃるように、一つの年金制度の中で、基本的に、既に保険料を払った方について、流用するといいますか、それを使うのはおかしいという見方もある。

 しかし、これは完全な保険原理ではなくて、税金が入っているわけですね。その税金が入っている範囲内においてそれを使わせていただくということは、私は、考え方としては成り立ち得る話だと思います。例えば、今、現に年金を受け取っておられる方も、従来は税金が三分の一だったわけですね。これが二分の一に上がったわけです。そういうことは昔予想しておられなかったと思うんですね。

 そういうところについて、税で賄っている部分についてのみそれを使うということは、私は、考え方としてはあり得るというふうに思っております。

鴨下委員 それは、保険料を納めたときに三分の一だったから二分の一分はいいでしょうみたいな話というのはなくて、やはり我々は、国民年金あるいは基礎年金を払ってくださっている人には国庫負担も含めて給付をしますよという約束をしているわけですから、だから、今さらそれを変えられるというのは困るわけです。小宮山大臣、それは保険料を払っている人たちの権利を損なうということなんですよ。

 そうすると、では、高所得の人たちは、どうせ俺たちはもらえないんだから、払うのはやめたという話になったら、全体の年金制度そのものが立ち行かなくなる可能性があるから、所得の高い人たちはそれなりに所得税も払っているし、ほかの税金を払っているわけだから、そっちから充当すればいいじゃないですか。

 保険は、ちゃんと保険料を払ったらしかるべき受給があるという約束をしているんだから、安住大臣、それは所得税で取ったらどうですか。それで、不公平というか、保険料を払っている人たちには保険料を払った分だけの給付をするというのは当たり前の話じゃないですか。それを勝手なことをやっちゃだめですよ。

小宮山国務大臣 失礼しました。先ほど千五百万と言ったのはそうではなかったので、そこはおわびして訂正をしたいと思います。

 老齢基礎年金の受給者、これは年収八百五十万相当を超えるときに老齢基礎年金額の一部の支給停止を開始して、所得が年収千三百万相当以上の人については、老齢基礎年金額の半額、最大三・二万円を支給停止するというのが今出させていただいているもので、その該当する方が一%ぐらいということです。

 ただ、このことについては委員がおっしゃるような御議論があるということも承知をしておりますので、またこの委員会の中で議論をしていただければというふうに思います。

安住国務大臣 所得税は先生おっしゃるように累進税率でございますから、今はフラット化をしておりますけれども、所得の高い人は比較的高い税金を納めていただく。それについて言えば、保険料の国民年金の部分というのは、そういう点では水平的な徴収ということになっているわけですね、一律ですから。

 ただ、岡田副総理が申し上げましたように、今回の場合は、国費投入の部分で調整をさせてほしいというところで意見の分かれるところだというふうに思っておりますので、そこは議論していただければと思っております。

鴨下委員 議論をしてくれじゃなくて、あなた方の考えとして、それについてどういうふうに今考えているんですか、これが妥当だと考えているのかどうかということを聞いているわけで、私は妥当でないと言っているんですよ。だから、こういう弱者対策に、本来保険原理で給付を受けるべき人たちの権利を奪っちゃだめだと私は言っているので、それについて皆さんはそれは妥当ですと言うんだったら、法律を出してきたんだから、そういうふうに言えばいいので。

 法律が固まっているんだから、それについては反対もするかもわからないし、あるいは、大いに議論をして、あなた方が、いや、それは申しわけございませんでしたと引っ込めるのかもわからないし、議論が最終的に煮え切らないでそのまま会期が終わるのかもわからないし、それはその法律の運命はあなたたちが握っているわけだから。

 だから、妥当かどうかということを今きちんとおっしゃってくださいよ。議論しましょうじゃないんだから。

岡田国務大臣 妥当だと思っております。

 それは、これだけいろいろな意味で少子高齢化が進む中で、同じ世代の中でも公平ということは大事なことで、やはり、同じ高齢者の中でもそれだけ余裕のある方には御負担いただくという考え方の中で、しかし、確かに、払った保険料についてそれを流用するというのはおかしいので、税の範囲の中でやっていただくという一つの考え方を私どもはお示ししているということでございます。

 そこはいろいろな考え方はあると思いますので、ぜひ今後も御議論させていただきたいというふうに思っております。

鴨下委員 国庫負担分の話じゃなくて、個人に着目して、そして、その個人がたまたま所得が高いから、本来、保険料を払ったら約束している給付があるのに、それを半分に削っちゃっていいんですか。そうじゃなくて、そういう人たちは所得があるんだから所得税も払っていますよ、社会的義務は負っていますよ。そっちの所得税の方をきちんと払っているんだから、こっちから削らないでくださいよと。それじゃないと、保険料を納めているときのいわばモチベーションといいますかそういうのは、いや、俺はもしかしたら収入が多くて、六万五千円をもらったってしようがないから保険料を払わないよという人たちがふえたら、まさに年金の未納者がふえてしまう。

 だから、小宮山大臣、大体分析しているでしょうけれども、未納、未加入の中では、割合、高所得の人も払わない人は多いんでしょう。それを、今度は例えば強制徴収しましょうというので国税庁と連携をするという話になったわけだけれども、そういう意味でいうと、これから、払う人たちの中で、どうせもらえないんだから払うのはやめたというような話になったら困るから、お金を少し持っている人たちにはもっと真面目にきちんと払ってもらって、それなりにきちんと給付をするというのが保険方式の原理じゃないんでしょうかという話ですから、もう一度だけ答えてください。

小宮山国務大臣 それは、今委員がおっしゃったように、払っていない方にはいろいろな形で、強制徴収ということも今考えてやろうとしているところでございます。

 ただ、一つ、若いときに、本当にこれから払い続けていったら最後の一%のところに自分が入るかどうかというのはなかなかわからないことですから、そのことが払うことを抑制するというふうには私どもは考えていません。

鴨下委員 それはもう全然違う。

 そして、それは制度からいえば、アリの一穴になる可能性があるんですよ。そういうふうに原理原則、保険原理を崩してしまうと、そうすると、そこからだあっと崩れていっちゃうということがあるので。さっき、政権交代をするということの意味、メリット、デメリットという話をしましたけれども、五十年、百年続く制度をあなたたちの思いつきで勝手にいじってもらいたくないんだよ。そうやって、そういうふうにやることによって制度全体が崩れちゃう可能性がある。マインドの問題ですからね。

 今、例えば国民年金というのは、二十五年払えば受給権をもらえるわけでしょう。そして四十年で満額。その二十五年から四十年の間の十五年間というのは、ある意味で強制徴収だけれども、でも幅があるんですよ。御都合によっては払わないでも、そのかわり給付は減りますよ、こういう制度でしょう。そうすると、四百八十カ月払って、四百八十カ月で四十年だけれども、それで、今、大体、給付を受けている人というのは、四百八十カ月分のどのくらい払っている人が平均値なんですか。

小宮山国務大臣 平均は大体三十年分です。

鴨下委員 三十年分ということは、大体そのくらいの幅は個人の選択で、任せましょう、そのかわりその分だけ給付も減りますよ、そういう、やややわらかいというか柔軟な制度なんですよ。それを四十年、びた一文まけないよという話になれば、それは全員満額で年金はもらえるけれども、すごく窮屈な制度になって、一〇〇%所得を把握して、そして一カ月でもおくれたら差し押さえに行く。こういう話じゃないところが国民年金のいいところだったわけであります。二十五年払ってもいいし、四十年払ってもいいし、この幅の範囲の中では認めましょうというぐらいの話なんです。

 ですから、そういう、三十年分ぐらい払ってちょうどいいですという人たちがたくさんいる。ちょうどいいとは思っていない、払えなかった人もいるけれども、だけれどもそういうようなことなんだから、だから、例えば今お話しになったように、全部が全部払い終わらなくてももらえる制度だということのよさというのは、小宮山大臣、どう思っていますか。

小宮山国務大臣 それは委員がおっしゃるように、そういう緩やかな制度であることのよさがあるということは、私もそのように思います。

鴨下委員 だから、年金制度というのはかなり個人の選択で、少し自由にしていいというようなことになっているわけでありまして、全部が全部ぎちぎちぎちぎちやられると、これは税金以上に厳しい制度になってしまって、年金のために何か全部所得も把握されるとか、こういうような話に結果的になってくる。

 実際には、例えば、この法案には出ていませんけれども、最低保障年金の場合には、所得を把握して、生涯の所得の中の一五%分ぐらいを徴収して、幾ら払ったかによって所得比例年金が決まるわけでしょう。そうすると、そのためには一人一人、子供のころから所得を把握しないといけなくなる。そのためには歳入庁をつくるという話になっていて、今回、七条の、二十八番目かな、歳入庁という話がありますけれども、歳入庁は、政府の中間報告というのと党の取りまとめと多少違っていて、政府の中間報告の中には歳入庁という言葉は出てきていないんです。これは、政府で取りまとめたのは長浜さんがまとめたんだけれども。

 所管大臣ですよね。ちょっと歳入庁について、政府とそれから党との見解の差みたいなものがあるのかないのか、答弁してください。

岡田国務大臣 見解の差が今あるわけではございません。

 中間的に取りまとめた政府の案は、これは一定の方向性について、三つの方向性を示したもので、まだ途中であります。したがって、これから党ともよく意見交換をしながら最終的なものをつくり上げていきたいというふうに考えております。今、何か党と政府の間で対立があるということではございません。

 それから、先ほどの委員のお話を私は非常に興味深く聞いておりましたが、実は、六十歳を超えた人の、所得があれば年金を減らすという話も、これは相通ずるような話だと私は思うんですね。ですから、そういったことについて、やはりそれは所得は所得として確定して、あとは所得税で取るべきだ、年金はちゃんと出すべきだという意見は当然あると思うんですね。それと同じような話なのかなというふうに思っております。

 ある市長は、いや、所得の多い人はもう年金は掛け捨てだということも言われているわけで、我々はそういう意見に立っているわけではございませんが、ある程度余裕のある方には、少し税金の範囲で我慢していただけないかということで申し上げております。

 いずれにしても、非常に興味深い議論だと思いますので、ぜひ、さらに議論を続けさせていただいて、どこかで合意点を見出したいというふうに考えております。

鴨下委員 後段の話は大いに議論すればいいと思います。

 確かに、保険の中でそれぞれ所得の再配分をするのは、私は余り筋がよくないと思っていて、むしろ、社会的な活動をなさっている人たちだから、所得税として、あるいはさまざまな税金としていただく、こういうようなことの方が健全だろうというふうに思います。

 歳入庁に関しては、これは今出ている税制の法案に書かれているわけでありますから、だから、この議論の出口がいつになるかわかりませんけれども、それまでには政府・与党の統一見解、そして、私は、この政府案の中に、設置しない場合には既存組織の連携強化で徴収を効率化できるという極めて穏当な、現実的な案だなというふうに思っていまして、歳入庁をつくらなくても、国税と日本年金機構が協力し合って、そしてきちんとやればできるんだろうというふうに思っておりますけれども、安住大臣は、国税庁は立派な組織でしょう。ですから、今さら歳入庁をつくらなくてもきちんと徴収すべきところはできるんだろうと思っておりますけれども、いかがでございましょうか。

安住国務大臣 国税庁が問題があるわけではないわけでございまして、社会保険庁の中で過去指摘されていた問題が、組織統合をすればよくなるということを前提にすればそれはいいと思いますが、ですから、三類型の中には、今、例示として、連携をした方が国税庁自身が本来持ち得ている徴税機能を維持できるという案もあるということだと認識しております。

鴨下委員 だから、最終的にこの議論が出口を迎えるまでに、政府・与党としてきちんとした見解、見解といいますか、統一した、私は政府案にくみするんです。だから、民主党案は非現実的だというふうに思うけれども、政府・与党でありますから、政府・与党の意見の相違をきちんと埋めて、そしてここに、今度我々が聞いたときに、歳入庁はこういうふうにいたします、こういうような明確な意見統一をしておいていただきたいというふうに思います。委員長にそれも要求をいたします。

中野委員長 理事会で協議いたします。

鴨下委員 それから、最後に総理に、冒頭申し上げましたように、政権交代して、民主党はこの三年間頑張ってこられたんだろうと思うけれども、社会保障に関して言えば、私は、政権交代して不連続になってはいけないと思います。特に、年金については殊さらそうであります。

 ですから、マニフェストで何を書いてあったかというのは問いませんけれども、国民の皆さんは、すぐにでも、あの選挙の後の次の年の四月に最低保障年金七万円をもらえると思っていた人も、私のところに手紙も何通もいただきました。そういう意味でいうと、そういう人たちのいわば純情を踏みにじった部分はあるんだろうと思うけれども、そのこととは別に、これから社会保障を継続、安定していく、こういう意味においては、マニフェストに拘泥しない、こういうようなことについて最後に総理の御見解をいただいて、終わります。

野田内閣総理大臣 私どもで積み上げてきた議論もあります。それも基本的には大事だと思っています。一方で、これは、社会保障は政権がかわるたびにころころ変わってはいけないという御指摘は、間違いなくそうでございますので、野党として積み重ねてきた議論もあると思います。特に自民党も蓄積があると思います。だからこそ、胸襟を開いて成案を得る、その努力を一生懸命やっていきたいというふうに思います。

鴨下委員 終わります。

中野委員長 これにて鴨下君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十二日火曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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