衆議院

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第13号 平成24年6月1日(金曜日)

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平成二十四年六月一日(金曜日)

    午前九時六分開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      網屋 信介君    石井登志郎君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      江端 貴子君    大西 健介君

      岡田 康裕君    柿沼 正明君

      勝又恒一郎君    岸本 周平君

      近藤 和也君    斉藤  進君

      篠原  孝君    白石 洋一君

      田嶋  要君    田中美絵子君

      田村 謙治君    玉木 朝子君

      永江 孝子君    長尾  敬君

      初鹿 明博君    花咲 宏基君

      早川久美子君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    宮島 大典君

      室井 秀子君    森山 浩行君

      湯原 俊二君    柚木 道義君

      吉川 政重君    和嶋 未希君

      石田 真敏君    加藤 勝信君

      金子 一義君    鴨下 一郎君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      野田  毅君    馳   浩君

      平井たくや君    町村 信孝君

      松野 博一君    稲津  久君

      竹内  譲君    佐々木憲昭君

      宮本 岳志君    豊田潤多郎君

      中島 隆利君    山内 康一君

      中島 正純君

    …………………………………

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   古川 元久君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     森山 浩行君

  稲富 修二君     花咲 宏基君

  岡田 康裕君     玉木 朝子君

  勝又恒一郎君     網屋 信介君

  田村 謙治君     磯谷香代子君

  永江 孝子君     近藤 和也君

  長尾  敬君     柿沼 正明君

  渡部 恒三君     和嶋 未希君

  金子 一義君     橘 慶一郎君

  田村 憲久君     平井たくや君

  馳   浩君     松野 博一君

  竹内  譲君     稲津  久君

  宮本 岳志君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     初鹿 明博君

  磯谷香代子君     田村 謙治君

  柿沼 正明君     吉川 政重君

  近藤 和也君     永江 孝子君

  玉木 朝子君     岡田 康裕君

  花咲 宏基君     稲富 修二君

  森山 浩行君     大西 健介君

  和嶋 未希君     渡部 恒三君

  橘 慶一郎君     金子 一義君

  平井たくや君     田村 憲久君

  松野 博一君     馳   浩君

  稲津  久君     竹内  譲君

  佐々木憲昭君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     石井登志郎君

  初鹿 明博君     勝又恒一郎君

  吉川 政重君     斉藤  進君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤  進君     長尾  敬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長古谷一之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 本日は、特に税制等について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯原俊二君。

湯原委員 おはようございます。民主党の湯原俊二であります。

 きょうは、消費税の逆進性対策、特に、野党の皆さん方もおっしゃっておりますけれども、食料品への軽減税率の導入と、我々が申し上げている給付つきの税額控除について、この論点で質問をさせていただきたいなというふうに思っております。

 この問題は、予算委員会から含めますと、きのうの稲富議員まで含めて、民主党だけで数えますと大体八人、九人ぐらいが質問しておりまして、重複になることはお許しいただきたいと思いますけれども、今後、私が思うに、与野党協議をもし始めるのならば、この問題が非常に大きな問題であって、将来に対して禍根を残したらだめだという思いの中で質問させていただきたいと思っております。

 お手元に資料をお渡ししておりますけれども、国会図書館から文献を幾つか集めて、私なりに、軽減税率導入の短所、デメリットということで一ページ目は挙げさせていただいております。

 これに基づいて質問をまずさせていただきたいと思いますけれども、おめくりいただいて、裏面が、軽減税率の導入というのが果たしてどの程度逆進性対策があるのかということであります。

 先般の我が党の前原政調会長も最後のところで折れ線グラフを使って質問をされておりましたけれども、私はきょう、表と棒グラフ、同趣旨のものでありますけれども、各所得層においての一カ月当たりの食料費、そして軽減税率、つまり五%にもし据え置いた場合、据え置かずに食料品を八%にした場合、そしてその差額は幾らかという表であります。

 下の棒グラフはそれをわかりやすく棒にしたものでありますけれども、これを見てもわかるように、食料品への軽減税率を導入した場合、金額ベースでは、所得の高い方の方がメリットがある。低い方よりも高い方の方が金額的にはメリットがある、こういうふうに言えるのではないかなというふうに思うわけであります。

 そういう意味では、給付つき税額控除は所得の高い方より所得の低い方に直に行くわけでありますので、まあ、ボリューム感はありますけれども、逆進性対策としては給付つきの税額控除の方が効果が大きいのではないかと思います。

 御所見をいただければと思います。

五十嵐副大臣 お答えいたします。

 湯原委員御指摘のとおりでございまして、所得の高い方は比較的多く買い物をされる、高いものを買い物をされるということでございますけれども、そういうことですから、軽減税率はこうした方々にも適用されますので、相対的に大きなメリットが中高所得者の方にあるということで、一方では、給付つき税額控除の方は低所得者の方に対象を絞った対策になりますので、より効果的だということは言えると思います。

湯原委員 ありがとうございます。

 二点目として、ずっと問題になっている線引きの難しさということが言えるのではないかなというふうに思っています。

 次の表は、イギリスからドイツ、各国の軽減税率あるいは複数税率の一覧表であります。

 ここでも何度か議論になっておりますけれども、例えばイギリスの場合をごらんいただければわかると思いますけれども、食料品でも、ケータリング、レストランでの飲食、その次は例えば温かい食べ物のテークアウトは除くといった、まあ、食料品全体にかければいいのかということはあると思いますが、問題は、線引きの難しさをあらわすために申し上げているんですが、温かい食べ物のテークアウトは除く、あるいはその下にジャガイモ製品とか、いろいろあるわけであります。

 それから、ずっとめくっていただいて、カナダなどでは、基礎的飲食料品として、その後に、農水産業品、これもゼロ税率であります。例えば畜産、あるいはその先の、畜産に与える餌、飼料も複数税率をつけているという線引きの難しさを申し上げているわけであります。

 イギリスでは、文献によりますと、あるお菓子が軽減税率適用のケーキかあるいは標準税率適用のビスケットかで十三年間法廷闘争をしている、こういう実態、つまり、線引きが非常に難しいということが言えるのではないかなというふうに思うわけであります。

 そういう意味では、国民が納得する線引きの難しさがあると思いますけれども、この点について御所見をいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 この点もおっしゃるとおりでございまして、二〇一〇年のOECDの報告書におきましては、軽減税率の対象とする品目の合理的な線引きは難しい、行政の執行コストはかかり、また、事業者が法令を遵守するためのコストが高まるという問題点が指摘をされております。

 フランスでは、マーガリンには標準税率、そしてバターには軽減税率ということになっていますけれども、これは酪農家に対する保護政策だと言われていますが、これは不平等だということで、裁判、訴訟が起きているところでございます。

 カナダでは、五つまではそこで食べられるから課税、六つ以上はうちへ帰って食べるから非課税というようなものがありますけれども、これも果たして平等かどうかという問題があります。

 おっしゃったように、イギリスでは、温かい食べ物はそこでサービスされるので標準税率、冷たいものはうちへ持って帰ってチンをするので軽減税率ゼロ%というようなことで、これも業界では大きな不満になっておりまして、すぐ隣にチンを、レンジをかけられるところが出てきたりして、極めて難しいことになります。

 日本でも、牛乳は非課税で、コーヒーは嗜好物だから課税、ではコーヒー牛乳はどうなんだというような議論があの売上税のときに起きたことを覚えております。

 また、あのときにも不思議だったのは、売上税のときですけれども、冷凍庫に品物を預かる業者さんは課税、それから運送業者さんも課税、しかし、保冷車は非課税だということが起きました。これも理屈がなかなかつかないことでございまして、そういうものは新たな行政裁量や政治家の裁量権のもとになって、いろいろな問題が生じるということは言えると思います。

湯原委員 今、線引きの難しさを御表明いただいたわけでありますが、これと関係するわけでありますけれども、消費税は、御案内のように、お子さんから、例えば子供がお菓子を買うところからお年を召した方まで、本当に全国民が関係する税制であると思っています。

 私自身は、やはり税はわかりやすく、そして、事前に納める税額がわかることの方がいいのではないかなというふうに考えるわけであります。

 そういう意味で、複数税率、軽減税率導入によって、消費者が買い物をした後でレシートを見て初めて税金を幾ら払ったかわかる、あるいは生産者の段階で、加工する段階で、今ここに税金が幾ら入っているかわからないような状況は、混乱するということが言えるのではないかと思いますけれども、この点について御所見をいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 全く御指摘のとおりだと思います。税は、公平、透明、納得という三つの原則が大事だと思っておりまして、わかりやすく、透明性があって、納税することが納得できるという必要があるので、その面からも、単一税率であることの方がわかりやすいという面があると思います。

 単一税率の方が望ましいということをきのうも申し上げましたけれども、ECの指令においてもそのような方向性が打ち出されております。

湯原委員 今、五十嵐副大臣から、ECもその方向でということがありましたけれども、次に関係するのが四番と五番であります。

 同趣旨のことでありますけれども、ヨーロッパは食料品に非課税あるいは軽減税率導入というお話があって、日本でもどうかという論調でありますけれども、実際は、先ほどのECの話もあるように、本来であれば複数税率を絞り込みたい。逆を言えば、一旦軽減税率を導入されると、標準税率に戻すことが非常に困難になってくる。

 なぜならば、業界団体からの軽減税率導入、範囲を拡大してくれ、あるいは、この生産物には適用範囲を拡大して軽減税率にしてくれという声が大きくなってきて、結局そこで政治がなかなかそれに反対できなくて適用範囲を拡大していっている。イギリスなどはそういうことが言えるのではないかなというふうに考えているわけであります。

 この点が、これから先、いろいろな協議に入るときに非常に問題になってくると思いますけれども、この四番と五番についてどのような御所見をお持ちか、お伺いしたいと思います。

五十嵐副大臣 この点もおっしゃるとおりでございまして、イギリスに有名な研究で、マーリーズ・レビューというのがございます。これはイギリス政府に提言をしているんですけれども、この中で、軽減税率とは、一度認められると見直しが困難という弊害が見られると明記をされておりまして、そういう意味で、入れるときは慎重に制度設計をしていかなければいけない一つの問題点であるということはあると思います。

 それから、軽減税率よりも給付つき税額控除の方がコストがかからないという面がございます。

 仮に食料品の税率を五%に据え置いた場合、八%と一〇%の引き上げにどの程度の減収差が生じるかということを見ますと、食料品の割合とか統計のとり方によって異なることはありますけれども、おおむね五分の一から四分の一と推計をされ、これをもとに税率を試算していきますと、八%に引き上げた場合は、おおむね一兆円台半ばから二兆円、一〇%に引き上げた場合は、おおむね二兆円台半ばから三兆円台前半と推計をされるところでございます。そうすると、より大きく税率を上げないと同じ税収効果を上げられないということが出てくると思います。

 また、最終的な消費者にとっての値段が問題なわけですけれども、食料品そのものはパーセンテージが抑えられても、その前の段階の消費税が入ってくるわけですから、それをその業者さんがかぶらない限り転嫁をされるということでありますから、必ずしも最終価格が上がらないということにはならないんだと思います。

湯原委員 ありがとうございます。

 五十嵐副大臣からありましたけれども、まず、軽減税率を一旦導入すると、標準税率に戻すことはなかなか困難である。そして、次に、減収のこともありました。おおむね五分の一から四分の一減収するということで、八%に引き上げた場合、減収額は一兆円台半ばから二兆円というお話でありました。一〇%に上げた場合、二兆円台半ばから三兆円とありました。

 資料をごらんいただければわかると思いますが、その次のページでありますけれども、主要国における税率構造に起因する税収減ということであります。

 先ほどの表をごらんいただいてもわかるように、イギリスでは幅広く軽減税率導入、複数税率にしておりますので、このイギリスのところの下から二番目をごらんいただければわかると思いますけれども、付加価値税収比で、どの程度税収減になっているかというと、半分以上が税収減になっている。そのうち食料品分は一四%である。

 ドイツ、フランス、スウェーデンがあって、カナダが二三・六%であります。これは、軽減税率を導入することによって税収減にもなりますし、カナダの場合は給付つき税額控除もとっていますので、これの給付金のことも入れると、大体三六・九%という数字が出ておりますけれども、四割弱が結局税収減、あるいは財源が必要になってくるということが言えるのじゃないかなというふうに思っているところであります。

 あと、先ほど副大臣からも若干言及がありましたけれども、改めてお伺いしますけれども、事務コストの件ですね。

 ですから、納税事業者の方もいろいろなコストがふえてくる。あるいは、税務執行の方、税務署の方も、実際そこに、複数税率、軽減税率で、どの程度囲いの中へ入っているかチェックをしなければならなくなってくる。あるいは、インボイスの話もありますが、この辺の事務コストについてどのようにお考えか、御所見をいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 この点についてでございますが、事業者は適用税率ごとの区分経理をしなければいけないということで、インボイス制度の導入が必要になってくると思います。当然、事務的なコストがかかってまいりますので、今でも中小企業者の団体は、なるべくインボイスを入れないで今の簡易な帳簿方式を残してほしいという強い御要望がございます。

 また、税務当局の方ですけれども、こちらも、軽減税率の対象範囲について納税者からの照会にも対応する必要がありますし、消費税に係る税務調査の事務量も膨大に増加してくるということが予想されます。執行体制の見直しも必要になってまいりますので、大変なコストがかかってくる。コストがかかれば、これを転嫁する、もし業者さんの方にコストがかかるということになれば転嫁をするということになりますから、これも最終的には製品の値段のアップにつながるということがありますので、必ずしも、そういう面での効率もどうか。

 それから、先ほど御指摘ありましたように、どんどん業者さん、いろいろな業種から、うちも軽減税率にしてくれという話が出てくると、際限がなくなって、その意味でも、穴が大きくなってくる、コストがかさんでくるということが予想されるので、その点も含めて、慎重に検討しなければいけないということだと思います。

湯原委員 ありがとうございました。

 今、一から八に挙げたのは、私なりに文献とかを見ながら挙げさせていただきました。軽減税率を導入することのデメリット、短所であるわけであります。

 一方で、給付つき税額控除を導入するに当たっても課題があると私は考えております。

 最後の資料が、これは自民党の皆さん方が今日まで給付つき税額控除について検討を挙げておられる一枚紙でありますので、またごらんいただければいいなというふうに思っておりますけれども、本委員会でも幾つかありまして、一つが、給付つき税額控除で不正申請、不正受給が生まれてくるのではないか、その温床になるのではないかという話がありました。

 そのとき出たのはアメリカの話でありまして、アメリカは、社会保障番号が定着しているにもかかわらず、勤労税額控除、児童税額控除の不正受給が、推計でありますけれども、二三%から二八%、四分の一ぐらいはそうではないかという話が出ております。また逆に、四人に一人の割合で、申請資格があるにもかかわらず申請をせずに未受給ということもあります。しかし、私は、一概には言えないと思いますけれども、アメリカの場合、戸籍もありませんし、家族構成のあり方も日本とは違うのではないかなということであります。

 もう一つは、一方、カナダの場合はどうかといいますと、GSTの税額控除の場合ですと、社会保険番号を利用して、九八%の方が適正に受給をされている。きのう、公明党の遠藤議員からもありましたけれども、税務体制とかいろいろな問題、日本とは違う問題はあるにしても、こういった適正受給がある。

 つまり、私が申し上げたいのは、給付つきの税額控除という制度が不正受給の温床になるのではなく、制度という問題ではないのではないか、逆に言うと、カナダのように、ちゃんと適正に受けているところもあるわけですから、そういうふうに考えているところであります。

 この点について、御所見をいただければと思います。

五十嵐副大臣 給付つき税額控除について、諸外国の例を見ますと、制度の適正かつ効率的な運用を確保するために、番号制度を用いた所得把握の仕組みなどが整えられております。

 御指摘のカナダにおける給付つき税額控除でございますけれども、児童を有する世帯の負担軽減を目的とした児童手当、これは給付のみでございます。それから、付加価値税の負担軽減を目的としたGSTクレジットというもの、これも給付のみでございます。それから、就労インセンティブ付与を目的とした勤労所得手当、これは税額控除と給付の組み合わせがありまして、その三つがございます。

 これらの制度を調査した平成二十一年の政府税調の海外調査報告書がございまして、これによると、児童手当及びGSTクレジットについては、所得が一定額までの方については受給が定額であるといった簡素な制度設計となっておりまして、確定申告時期と給付時期との間に所得情報等を確認するための十分な時間をとっている、そういう工夫等により、御指摘のとおり、九八%は適正な給付であったと報告をされているところでございます。

 制度の設計の仕方ということがあると思いますし、また、不正受給はあってはいけないので、不正受給が見つかったときには厳罰を処すのような制度が外国ではあるということを考えるべきだ。これは別にクレジットに限りませんけれども、いろいろなところで、改札口じゃないけれども、電車に乗って、不正乗車があると大変大きな罰があるというような自律的に規制をしていただく制度によって担保をするという、いろいろな方法が考えられると思います。

湯原委員 ありがとうございます。

 あともう一つ、この委員会で出る話として、給付つき税額控除、その前の段階として、所得の把握をちゃんとしなきゃいけないという話がありまして、この所得情報、日本においては国税庁と地方自治体が情報を持っているわけでありますけれども、とりわけ、所得の低い方の情報となりますと、地方自治体が多く持っております。この辺の一元化をどうしていくかという課題が一つあるのではないかと思っています。

 それから、先ほど申し上げたように、日本における確定申告者の割合、きのうも若干数字が出ておりましたけれども、あとは、税務の執行体制、税務職員の人員の話とか、こういった課題もあるのではないかなというふうに思っています。

 金融資産の把握を本当に完全にやろうとするならば、今まで出ておりますけれども、どこまで国家が管理、その金融資産まで追っかけていくのか、こういった課題もあり、国民の理解がどこまでできるかということもしていかなければいけないのかなというふうに思っているわけであります。

 しかし、私が思うに、金融資産が完全に把握できないから給付つき税額控除を導入できない、その理由にはならないのではないかなというふうに思っています。つまり、持っていくと、金融資産の把握ができないから給付つき税額控除は導入できない、だから複数税率、軽減税率だという論法には私はならないのではないかなというふうに思うわけであります。

 給付つき税額控除のための所得の把握、よく言われるのは、資産があって、でも、フローのお金がない、その人たちも給付の対象になるかということはよくおっしゃるわけでありますけれども、最低限要るのは、本当に所得がなくて困っていらっしゃるところの把握さえできれば、私は、この目的を達成できるのではないかなというふうに思うわけであります。

 先ほど副大臣からもありましたように、要件として、ストックの、資産のある人は要件外ですよということを事前に申し上げて、そして、ヨーロッパでは申請主義に立っておりますので、その上で、先ほど若干話がありましたように、不正受給したときには罰しますよということをやれば、一定程度の歯どめになり、所得の低い方への把握ができて、そこには給付つきの税額控除ができるのではないかなというふうに私は思うわけでありますけれども、この点について、御所見を求めたいと思います。

五十嵐副大臣 ただいま、番号法の整備法案が御審議をいただいていると思いますが、税制上の措置として、現行税制を前提として、今の五十七種類の全ての法定調書等に番号の記載を求める等の措置を講じることにより、個人が受け取る利子を除いては、現状に比して、金融所得等についても所得の把握、適正化、効率化が図られるものと思われます。

 資産所得について言えば、番号制度を有する諸外国においても、金融資産から生じる金融所得を考慮した上で給付つき税額控除を現に実施しているところでございますので、これは、制度の仕組み方によってかなり把握ができるということであろうと思います。

湯原委員 ありがとうございました。

 あと、給付つき税額控除の本来の逆進性対策の筋とはちょっと違うのでありますけれども、この委員会で生活保護の話がよく出ているわけであります。

 私、いろいろな文献を読んでいる中で、イギリスのブレア政権が、セーフティーネットからトランポリンへということでありまして、給付つきの税額控除、逆進性対策も一つの政策としてありますけれども、もう一つは児童へのものもあります。そしてもう一つ、今ブレア政権の話をしたのは、セーフティーネットからトランポリンへというのは、給付つきの、弱い立場の人々が就労の場へトランポリンのようにまた再度上がっていくという勤労税額控除、こういったものもあるわけであります。

 今の段階ではすぐにというわけにはならないと思いますけれども、今後の検討課題として、こうしたブレア政権でやられたセーフティーネットからトランポリンへ、勤労税額控除について検討する必要性もあるんじゃないかなと思いますけれども、この点について所見を求めたいと思います。

五十嵐副大臣 この点もおっしゃるとおりで、御意見に私は大賛成でございます。

 まず、何のために税額控除を入れるかということの目的をはっきりさせることが必要で、そのうち極めて重要な要素というのが勤労の促進、就労の促進であると私は思っておりまして、今、税調の専門家委員会にお話をして、検討していただいていますけれども、私の意思としては、このイギリスの例を十分参考に、就労促進としての税額控除制度の検討をしていただきたいというふうに既に申し述べているところでございます。

 こうした制度を参考に、今後検討をさらに進めていきたい、こう思っておるところでございます。

湯原委員 ありがとうございました。

 今、食料品への軽減税率あるいは線引きの難しさ等をるる申し上げてきました。そして給付つきの税額控除の課題も、今、五十嵐副大臣との間に確認をさせていただきました。

 その上で、安住大臣に一言御所見を求めたいのは、比較をしてまいりましたけれども、これから野党の皆さん方といろいろな協議等が始まるとは思います。ただ、特に、先ほど申し上げたように、四番目、五番目ですかね、一旦、複数税率、軽減税率を始めると、標準税率に戻したくてもなかなか戻せない。ヨーロッパの状況はそうです。現実的にヨーロッパは食料品等に軽減税率をやっていますけれども、本当はできるだけ標準税率に絞り込んでいきたいけれども、なかなか業界団体の声があってもとに戻せないから、今、現状がそうなっている。

 私は、政治と業界団体の関係を見ると、やはりこの点は気をつけなきゃいけない、将来的にはともかくとして、現段階では、今に生きる我々の世代がはなから軽減税率、複数税率を持つことによって、将来に禍根を残してはだめだ。つまり、将来の政権、次の世代の国民たちが標準税率に戻したくても戻せないような状況、選択肢を狭めるようなことはやはりすべきではないというふうに私は思うわけでありますけれども、大臣の一言を頂戴したいと思います。

安住国務大臣 三十分間聞かせていただきましたけれども、軽減税率のいわゆるデメリットというものがやはり諸外国であるということを丁寧に説明をいただいたと思います。

 現に、イギリスの首脳ともいろいろな意見交換をしておりますと、ゼロを上げていくということについては非常に難しいんだけれども、やはり、標準税率というものを念頭に置けば、できれば、そうした軽減税率というものは、歴史的な経緯があったとしても、是正をする方向の方が正しかろうということを主張する方々は多うございます。ですから、ヨーロッパでの話し合いの中でも、軽減税率の問題というのは、やはり今御指摘のあったように、同じような視点で取り上げられていると思います。

 給付つき税額控除につきましては、そういう点からいえば、資産の完全な把握というのは難しいということは御指摘のとおりですが、私は、さまざまな工夫、例えば土地の資産というものを固定資産税の場合であればある程度推知することはできたり、そうしたいわば穴があると言われているものに対してしっかりと制度設計をしていくことによって、できるだけ、やはり低所得者の、いわば逆進性で、サポートしないといけない方々を特定できる可能性は高いのではないかなと思っておりますので、こうした給付つき税額控除の精度を高める方向で今回はしっかりやっていきたいというふうに思っております。

湯原委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 これにて湯原君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮島大典君。

宮島委員 民主党宮島大典です。

 きょうは、貴重な質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。きょうの審議が終われば、多分、都合六十三時間ばかりの審議になろうかと思います。ここまで私も委員会に参加をさせていただいて、非常に充実した議論が重ねられているなというふうに拝聴いたしておりました。特に野党側の先輩方の含蓄のある御質問を聞いておりまして、何とかそういう思いというものも含めながら、この法案というものが一日も早く成立することを心から念願したいというふうに思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、一体改革と格差問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 近年、格差社会の拡大ということが非常に社会問題というふうになってまいりました。特に、政権交代に対してこの格差社会の是正というものが非常に望まれておりまして、今、現政権の大きな課題になっているというふうに認識をいたしております。

 言うまでもなく、我が国の所得格差というものは八〇年以降に拡大というものが進んでまいって、高齢者世帯の増加や、あるいは低所得者層の増大、また単身世帯の増加などで拡大傾向にあります。また、その一方で、再配分機能というものが年金や医療に偏っておりまして、現役世代から高齢世代への所得移転によって成立しているというふうに思います。OECD加盟国の中では、所得格差というものはOECD平均よりも若干大きいわけでありますが、再分配後も大半のOECD諸国を下回っている。このことを受けて、日本の所得再分配の方法というものが適切ではないというような指摘もあります。

 特に昨今は、世代間格差あるいは相対的貧困率という現象が取り沙汰されております。特に相対的貧困率は、二〇一〇年調査では一六・〇%、これは〇七年の前回調査よりも〇・三ポイント上昇しておりまして、一九八六年の調査以来、最悪の数字となっております。また、OECD諸国の中でも四番目の高さとなっております。

 こうした状況を踏まえまして、特に政権交代後、政府はこの格差是正という問題について取り組んでこられたと思いますけれども、格差に対する現状認識、また対策をお聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 今委員から言っていただきましたように、日本の社会は、分厚い中間層が安定をさせてきたものが、このところ貧困、格差の問題が大変大きくなっています。

 そうした中で、政権交代後、一つは、今御紹介がありました相対的貧困率を公表したということ、また、非正規労働者に対するセーフティーネット機能の強化などを図るために雇用保険法を改正して適用の範囲を広げたということ、また、ハローワークによるフリーターの正社員化への支援、職業訓練や訓練期間中の生活支援などによって雇用保険を受給できない人たちの就職を支援する求職者支援制度の創設、そして、生活保護受給者に対する社会的自立、就労支援の充実など、貧困、格差対策に取り組んできているところです。

宮島委員 この問題についてしっかりと取り組んでいただいていることについて、評価を申し上げたいと思います。

 なお、この一体改革、これが格差是正に及ぼす影響をお尋ねしたいと思います。

 政府は、この一体改革で、消費税の引き上げによって社会保障財源を確保すれば、充実させていけば、世代間格差の緩和にもつながる、このようにおっしゃっておられます。具体的には、この改革の中で、いろいろな面というものが寄与するんじゃないかなというふうに見受けられますけれども、具体的にこの改革のどこが格差是正につながっていくのか、そのことをお聞かせください。

小宮山国務大臣 今回の一体改革の中では、全員参加型社会を目指して就労促進などを図る、また、低所得者対策の強化ですとか重層的なセーフティーネットをつくりまして貧困、格差対策の強化を図っていきたいと考えています。

 一つは、低所得者対策として、国保とか介護保険料の軽減措置の拡充ですとか、基礎年金の低所得者への加算などを行うことにしています。

 また、非正規雇用の問題が非常に貧困、格差につながっているので、この是正に対しましては、働き方に中立な社会保障制度を目指しまして、短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用を拡大するということ、また、生活支援戦略を秋をめどに策定したいと思っていますが、生活困窮者対策を推進することによって重層的なセーフティーネットをつくるということ、また、有期労働契約の法整備などによって、ディーセントワーク、人間としてしっかりと尊厳のある働き方ができる。

 そうしたことに取り組むことで貧困、格差対策を強化していきたい、そのように考えています。

宮島委員 ありがとうございました。

 この一体改革も重要でありますが、さらなる所得再分配について、やはりしっかりと取り組んでいく必要があるというふうに思います。

 四月に出されましたOECDの日本再生のための政策、これについての提言というものがありますが、ここにも、主な提言といたしまして、正規労働者と非正規労働者の雇用保護の格差縮小、また、今回も、この法案にも取り上げられておりますけれども、非正規労働者への社会保障の適用拡大をすることによって待遇改善をして、いわゆる雇うことの費用の優位性を減らしていくなど、いろいろな提言というものもなされております。

 また、過去に、一橋大学の小塩教授が新聞の論説の中で、再分配の方法を見直せというような実は御主張をされております。

 この中で、先ほど申し上げましたとおりに、今、現状においては、いわゆる現役世代が高齢化世代を支える、所得を移転させるという形で再分配を行っているわけでありますが、このことについては一つ自然な状況だというふうに言われながらも、その前提といたしましては、やはり、現役世代というものが人口再生産をずっと続けていくというようなこと、そして、経済力というものが高まり続けなければならない、これが一つの条件になっているというふうに思います。

 したがって、小塩教授はその中で、結論からいえば、世代間の所得移転を縮小すべきではないか、圧縮していくべきではないかというような実は御主張もされておるところであります。

 今後、厚労省におかれましては、そうしたことも含めて、ぜひ再分配のさらなる取り組みというものをやっていただきたいということを要望させていただいていますが、何か御所見があればお伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 今委員から御紹介いただきましたOECDの日本再生のための政策提言にもありますように、労働市場が二極化をしていることを是正することがまた所得格差を改善することにつながるというふうに考えています。

 日本の場合、この社会保障制度だけじゃなくて、税制、社会保障、両方とも今再分配機能が低下をしていまして、一人で働いている女性の場合などは、税と社会保障をかけたことによってかえって格差が開くという、本来あってはならないような形になっていますので、社会保障の中でももちろんそういう努力をしていきますし、税制とあわせて再分配機能をしっかりと回復していくということが格差是正にもつながると考えています。

宮島委員 ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 なお、この再分配の取り組みにつきましては、社会保障だけではなく税制面、これでやはりしっかりと組み合わせをして効率的にやっていくということが、先ほど言いました小塩教授のお話にもあります。例えば、「所得に応じた年金給付の削減よりも、年金所得とそれ以外の所得を合わせて税負担を設定するほうが合理的だ。」というような御主張もされておりますけれども、やはりそうした、税と組み合わせながらこの再分配を進めていく必要があるというふうに思います。

 昨日も、大野先生等の質疑の中にいわゆる最高税率のお話があって、大臣からもその点についての御所見をお伺いいたしておりましたけれども、やはりこうした最高税率の問題もしっかりと取り組む必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 資料をお配りしておりませんけれども、ここにメリルリンチのウェルス・マネジメントという機関が発行いたしました昨年のワールド・ウェルス・レポートというものがあります。詳しくはもう時間がないので申し上げませんけれども、要は日本の中でも、〇九年から一〇年まででも、いわゆる富裕層と言われる方、富裕層という定義は百万ドルの資産を所有している方というものが定義をされておるようでありますけれども、そうした方も百六十五万から百七十四万ぐらいにふえているというようなレポートも実は出ております。

 したがって、そういうようなことを見ておれば、やはり確実に格差というものは広がっていることも見受けられますので、そこを是正するためにも税制を含めた再分配に対する取り組みが必要ではないかなと思いますけれども、お考えをお聞きしたいと思います。

安住国務大臣 宮島さんおっしゃるとおりで、特に、一千五百万以上の高額所得者といいますか、その中でも五千万円以上の所得者がふえております。これをさらに億円以上で見てみますと、実は、株式等の金融資産、そうした保有率が高い方々が多いんですね。

 そんなこともありますから、証券優遇税制については、二十六年には、今一〇%になっているものを本則に戻させていただいて二〇%にすることによって、そうした方々に改めて御負担をお願いするとか、やはり、今おっしゃっているように、再配分機能を少し強化した方がよろしいのではないかという意見が、今のこの国会での御議論を聞いていると与野党の先生方から多うございますので、そうした意向も受けまして、どういう累進税率が、フラット化を続けてまいりましたけれども、過度な負担になるのも問題だと思います、率直に言って。というのは、復興に関しては、これは特別所得税もまた今おかけをさせていただいたりしておりますので、そういう全体のバランスの中で、しかし累進税率をどう高めていくかということについて、本格的に政府税調等で検討を始めていきたいと思っております。

宮島委員 ありがとうございます。

 申し上げましたとおり、ぜひ、社会保障と税制一体となってこの所得再分配機能を高め、格差是正に取り組んでいただきたいと、重ねてお願いを申し上げたいと思います。

 さて、次に消費税についてお聞きをしたいと思います。

 私、地元に帰りまして今回のこの消費増税を説明する際に、四つの前提をつけているんだということをお話しさせていただいています。

 改めて言うまでもなく、一つは、この消費増税を社会保障目的化するということ。二つ目には、いわゆる逆進性というものに配慮をいたしまして、低所得者対策、そしてまた中小零細企業の皆様方への配慮というものもやっていくということ。そしてまた三つは、景気弾力条項をつけて、上げるときには景気に悪影響を与えないように極めて慎重に判断をしていくということを訴えているということ。そして最後に、これをやる前に、国会議員の定数削減を初めとする、いわゆる政治・行政改革というものをしっかりとやっていくということ。こうした四つのことをお話しさせていただいています。

 これをお聞きになられた方は、ある程度納得をしてもらう部分もあるかなというふうに思うわけでありますが、そういう意味でも、この四つの前提というものをきっちりとやはり私は充実させていく必要があるというふうに思います。

 この件につきましては、これまでの議論の中でそれぞれに随分議論が重ねられたとは思いますけれども、重複もするかと思いますが、私からも何点かお尋ねをしたいというふうに思います。

 まず、社会保障目的化についてでありますが、この社会保障目的化というのは、世界の中でも、消費税をこうした目的税に充てる、社会保障に充てるということは珍しいそうであります。しかし、私はやはり、世界の中でも日本がこれから突出して少子高齢化社会を迎えていく、そういう意味では、ある意味、世界のモデルケースというものをつくっていかなければならない。そうした意味では、先駆けといたしまして消費税というものを社会保障に目的化させていくということは、非常にいいことではないかなというふうに考えております。

 また、昨日の議論にもありました。大臣は、いわゆる社会保障費の足らない部分、いわゆる消費税で足らない部分についてはほかの財源でしっかりと充てていくという話をされておりまして、私も得心したところでありますが、その点でちょっと一つ確認をさせていただきたいというふうに思います。

 今回、消費増税を五%する中で、四%、いわゆる維持をする部分、そしてまた一%、機能強化というような形になっております。したがって、消費税というものは非常に景気の影響を受けにくいということで税収はある程度確保できると思いますが、やはり年次において若干の多寡があろうかなというふうに思います。

 その中で一%、四%というふうに振り分けているわけでありますが、もしその部分でいわゆる目減りができたときに、その部分というものはちゃんとほかの財源から手当てをされるものなのか、その点について確認をさせていただきたいと思います。

五十嵐副大臣 昨日もお話がありましたけれども、別に一対一対応ということではございませんので、効率化は必要ですけれども、必要な財源について必要な手当てをするというのは当然のことだと思います。

宮島委員 ありがとうございます。

 次に、価格転嫁対策についてお聞かせをいただきたいと思います。

 この価格転嫁対策、そしてまた価格の表示のあり方については、既に我が党のワーキングチームにおきまして、五月の十四日に一つの取りまとめ、提言がなされております。それを踏まえて、今、政府の方でも検討本部の中で鋭意御検討をいただいているというふうに思うわけでありますけれども、その検討状況、そしてまた対策についてお聞かせをいただきたいと思います。

岡田国務大臣 委員御指摘のように、五月二十二日の民主党における報告を受けて、政府の中で検討を進めております。実は昨日、政府の検討本部において中間整理を取りまとめたところでございます。

 その中では、第一に、原則として消費税の転嫁の拒否あるいはこれに類する行為を行えないような立法措置のあり方の検討を行う。第二、必要に応じ、転嫁カルテルを独禁法の適用除外とするための法的措置を検討する。第三に、優越的地位の濫用等に関する調査を、消費税導入時、前回税率引き上げ時を大幅に上回る規模で実施をし、時限的な人員の拡大などの体制整備を図る。第四に、業界ごとに価格の表示方法を統一する決定が独禁法に違反しないことをガイドラインで明らかにするとともに、必要に応じて、表示カルテルを独禁法の適用除外とするための法的措置を検討する。最後ですけれども、第五、値札のつけかえ作業など、事業者の事務負担に配慮し、書籍における例などを参考に、総額表示義務を弾力的に運用することを検討するといった方針を示しているところでございます。

 政府としては、この方針に沿って、必要とされる対策のさらなる具体化について検討を進めたいと考えているところであります。

宮島委員 ありがとうございます。

 きょうの新聞にも、転嫁カルテルを容認というような記事が大分載っておりましたし、また、副総理が、消費増税、不正監視へ人員を増ということも載っておりました。

 行革の中で大変厳しい状況であろうかと思いますけれども、やはりそうした重要なところには適正に人員を配置しながら、この問題というものの対策をしっかりととっていただきたいというふうに要望を申し上げたいと思います。

 また、今回、益税対策、損税対策というのがあろうかと思いますけれども、益税対策というものがとられていると思いますが、その内容についてお聞かせをいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 消費税の課税の適正化については、これまで累次の税制改正によりまして、事業者免税点制度、簡易課税制度の適用上限の引き下げ、これらの中小特例の大幅な見直しを行ってまいりました。

 これにより、制度の信頼性や透明性は相当程度向上したものと考えておりますが、今回の改革では、中小事業者の事務負担に配慮する観点から、免税点制度及び簡易課税制度は維持することとしているものの、制度を悪用した租税回避などに対しては厳正に対処していく必要があると考え、そうした観点から制度の見直しを行うこととしております。

 具体的には、資本金一千万円未満の新設法人にあっても、課税売上高五億円を超えるような大規模な事業者が設立した新設法人については、設立当初から免税点制度を適用しないということにしております。

 簡易課税制度については、昨年実施した平成二十年度分の実態調査におきまして、業種によってはみなし仕入れ率の水準が実際の仕入れ率を大幅に上回っている状況にあることが確認されました。現在、さらなる実態調査を行い、そして、二十一年度分と二十二年度分の調査を進めているところでございますが、今回の改革においては、この三年分の実態調査の結果を踏まえた上で、みなし仕入れ率の水準について必要な見直しを行うところといたしております。

宮島委員 益税対策をしっかりととっていただいている。ということであれば、当然、損税の方にもしっかりと取り組んでいただかなければならないと思います。

 この法案の中にも盛り込まれてありますけれども、特に医療機関の仕入れに係る消費税負担、こうしたものについてはしっかりと取り組んでいただきたいということを強く要望しておきたいというふうに思います。

 それと、延滞税の話について少しお話をさせてください。

 これは党の中でも随分強い声というものがありまして、延滞税につきましては、これだけ低金利の時代に、二カ月超えると一四・六%ですか、そういうような高い率というものがどうなのかというような話も随分ありました。

 したがって、この問題は、いわゆる法案の提出後に対応する課題の中に組み込まれているわけでありますけれども、この延滞税率についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 延滞税につきましては、優先徴収権がある国税の収納を確保する観点から、滞納を防止し、滞納国税の早期納付を促すと同時に、期限内に納付した者とそうでない者との間の公平を確保するというような意義を有しているところでございます。

 現在の延滞税の割合、利率は、税の納付遅延に対する遅延損害金として、市中金利とは異なり、納期限から二カ月以内は四・三%、納期限から二カ月経過後は御指摘のとおり一四・六%。ただし、これは複利ではございません、単利でございます。

 ただ、この一四・六%の利率については、利息制限法等に基づく民間の銀行借り入れやカードローン、公的な保険料の納付遅延に係る遅延損害金の水準と比べてもほぼ同水準ということでありますし、また、納税の猶予等の緩和措置が適用された場合は四・三%にまで軽減される仕組みとなっています。これは、災害とか事業の休廃業とか大規模な損失というような場合に適用されます。

 いずれにしても、延滞税の利率を含めた負担の見直しについては、今後、税制抜本改革法案の国会提出に伴う今後の対応について、これはことし三月三十日の閣議決定でございますが、これに沿って、二十五年度税制改正の際に成案を得られるように検討を行っていきたいと考えております。

宮島委員 ありがとうございます。

 そのほかにも、低所得者対策、こうしたものにもしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。時間もありませんので、割愛をさせていただきたいと思います。

 二十二日の質疑の中で、竹下亘先生が、税に対する敏感性のお話をされました。これは、竹下元総理の御経験をもとにお話をされたものだというふうに拝聴いたしておりましたが、まさにそのとおりだなというふうに私も思っておりました。

 私の父は、竹下総理御在職のときに参議院議員をしておりまして、そして、平成元年の選挙で落選をいたしました。それだから言うわけじゃありませんけれども、税金というものは本当に国民の生活を大きく左右するものだな、ある意味、税は国民の生活そのものだと言っても言い過ぎではないというふうに思います。したがって、そうした生活の機微をしっかりと酌み取った形で、細心の注意を払って、これをつかさどる方はしっかりと対応していただかなければならないというふうに思っております。

 特に、今回の場合は、消費税分だけ増税であります。平成元年はトータルで二・六兆円の減税、あるいは、平成九年もレベニュー・ニュートラルでプラス・マイナス・ゼロという形で、今回初めて増税だけだということになります。もちろん、この法案に書いてありますいろいろな税、あるいは自動車関係税、こうしたものにしっかりと取り組んでいただかなければならないと思います。しかし、そうしたことを考えるときに、やはりそれ相応の環境の整備、対策というものをとる必要があるというふうに思います。

 したがって、先ほど申し上げましたいわゆる四つの前提、これをしっかりと充実させてもらうというのが一つでありますし、また、やはり不断の行政改革あるいは財政の見直しというものもやっていただかなければならないと思いますし、そして何よりも、やはり景気対策、ここに全力を挙げていただきたい。景気を上げて国民の生活をよくする、税収を上げていくということを、しっかりと取り組んでいただく、そのことが一番重要であろうかというふうに思いますので、強く要望を申し上げたいと思います。

 時間もありませんので、次の問題に移りたいと思います。

 実は、話はがらっとかわりますけれども、私、先日、ある大きな書店に行きまして、経済関連の本のコーナーに行きました。そこには、いわゆる財務省を批判するような本がいっぱい山積みされておりまして、私もちょっとびっくりしたわけであります。財務省を応援するような本はないかなというふうに思いましたけれども、これはもう霞が関の政府刊行物センターに行かないとないんじゃないかなと思うぐらい、ちょっと数も見当たらないような状況でありました。

 そこには、お察しのとおり、財務省は悪だ、あるいは、増税は財務省の謀略だなどというような趣旨のことが書かれているものが多いようでありました。その考え方の背景には、一つ、今の財政に対する認識、ここがあるというふうに思っているんです。それは、今の日本の財政というものは大丈夫だというような話であります。

 これは、中身はもう御存じのとおりでありますので申し上げませんけれども、今やはり学者の中でもこの問題というものは考え方が分かれておるようでありますし、また、この永田町の中でもそうした考えをお持ちの方はいらっしゃるというふうに思います。

 世論調査を見ておりますと、御承知のとおり、消費税は将来的には必要だという方が七割いらっしゃるのに、今回のこの法案については約四割の方しか賛成をしない。その一因が、ひょっとしたらこの部分の考え方が広がっているんじゃないかなというような感じもするんです。したがって、今のこの財政、日本の財政に対する的確な認識というものをやはりきちっと国民の皆様方に伝えていただかなければならないなということを強く感じます。

 このことを安住大臣にというふうに思うわけでありますが、大臣に言えば、また財務省のお手盛りだというふうに言われかねませんので、ここは我が党で一番シビアな政治家であります岡田副総理に、今の日本の財政についての御所見をびしっとここでお話をいただきたいと思います。

岡田国務大臣 今の財政の状況は、まず、今年度の予算は税収よりも借金の方が大きい、こういう状況が正常であるとは私は思いません。それからもう一つは、今までの蓄積で見ても、GDPの倍以上の借金を持つ。これは過去二十年間、ほぼ一貫してふえ続けているということであります。そういう状況がいつまでももつというふうには、私は思いません。

 それから、すぐだめになるか、何年もつかという議論は、これは横に置いたとしても、こういう状況が次の世代に対して公正であるとは、私はとても思えないわけであります。それは全て次の世代の負担になってくるということはよく考えなければいけない。今さえよければいいという考え方ではだめだと思います。

 そういう意味で、ぜひ消費税の増税を含む歳入の増を認めていただいて、同時に社会保障制度の持続可能性というものを確保していく、これは今の世代にとっても大事なことだ、そういうふうに思っているところでございます。

宮島委員 これから、副総理も大臣も、各地でまたこうした説明会をされると思うわけでありますが、今度、副総理も我が地元に来ていただくようでありますけれども、一体改革の中身の前の、このそもそもの話をきちっとやはり国民の側に説明していただきたい。このことを強く要望させていただいて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて宮島君の質疑は終了いたしました。

 なお、委員長からおわびを申し上げます。

 現在、開会が七分おくれましたので、お手元の日程の七分おくれで進んでおりますこと、おわびを申し上げます。

 続きまして、平井たくや君。

平井委員 自由民主党の平井たくやです。

 委員の先生方も各大臣も、六十時間にも及ぶこの特別委員会の審議、御苦労さまでございます。

 川端大臣におかれては、しばらくお会いしていませんね、総務委員会は全然開かれていませんし、そういう意味で。

 私、きょうは、マイナンバーの話がこの六十時間の中に何度も出てきている。給付つき税額控除の話とセットになって出てきている。マイナンバーというのは内閣委員会の方で審議する予定ということでございますが、けさ、新聞を見て、私、ちょっとびっくりしちゃったんですが、職権で公務員制度改革法案をきょう強引に本会議でやっちゃうんですね。

 これは一体、物事の優先順位というものをちょっときょう副総理にお聞きしたいんですが、これは一国の総理が政治生命をかけて、我々も協力してこの委員会がスタートしているわけですよね。六十時間、そしてこれからもこの委員会は続くんだと思います。ところが、職権で本会議を立てる、しかも公務員制度改革法案というのは、マイナンバーが審議されるはずの内閣委員会ですよ。これを職権で立ててというのは、これは与野党の協力というより、もうちゃぶ台をひっくり返すに等しい話だと私は思うんです。

 そこで、物事の優先順位を、ぜひ、まずお聞きしたいんですよ。

 総理が政治生命をかけておられて、我々もこうして前向きに協力をしているこの委員会よりも、連合との約束を優先させて職権で本会議を立てるというような、これは一体どなたが判断しているのか。政府の中に野党がおられるのか。私は、もうあえて政府・野党と言う。お聞きをしますが、そのあたりのところは一体どのようになっているのか、ぜひ御解説をいただきたいと思います。

岡田国務大臣 まず、この特別委員会で社会保障・税一体改革について協力しながらいい審議ができておりますことを、自民党初め各党の御協力に対して心からお礼申し上げたいというふうに思います。

 その上で、公務員四法の関係ですけれども、これはこれでまた重要な法案でございます。我々、既に随分前から御提案させていただいているところで、中身としていろいろな御議論はあることは承知しておりますけれども、それはまさしく国会の中で御議論いただければいい話で、審議そのものをしないということでは私はないというふうに思います。

 ずっと長らくお願いしておりましたけれども、なかなか前に進まないということで、きょうの本会議の審議ということになりましたけれども、内容についていろいろな御批判は、これは甘んじてお受けしますし、我々、言うべきことはしっかりと御説明したいと思いますけれども、ぜひ、審議については御協力いただきたいと思います。

 社会保障・税一体改革、これは野田政権にとって非常に重要なことでありますが、ほかの法案もたくさんございますので、それぞれについてぜひ御審議をお願いしたいと思っております。

平井委員 それは民主党のトータルの立場で、あれもこれも大事だというのはわかりますよ。しかし、今のこの事態は、あれもこれもじゃなくて、あれかこれかということでしょう。要するに、物事の優先順位は総理は明確に言っておられるわけだよ。それを何でこんなややこしいことを、しかも、我々がやめてくれというのに職権で本会議を立てるのか。

 今ごろになって、報道によりますと、この十五時半からですか、代表と幹事長がお会いになるんですよね。はっきり言って、そんなものは早くやっておいてほしいですよ。そうじゃないと、審議に物すごく影響してしまうじゃないですか。

 今の話、どっちも大事だというのは、それはもう建前の話としてはお聞きしますが、本気でどっちが大事だと思っておられるんですか。

岡田国務大臣 そういう二者択一の問題ではないと思います。しかし、社会保障・税一体改革、私は担当でございます。これはぜひ御審議をお願いしたいと思います。

 それから、誰が決めているんだというのは、これは政府・与党で、特に民主党と政府で決めているということでございます。もちろん、私も含めて輿石幹事長とはよくコミュニケーションはとれておりますし、御心配になるような、そういう食い違い、そごがあるということでは全くございません。

平井委員 食い違い、そごがなければこんなことはやらないでしょう、常識で考えて。これはもう本当に、おたくの党内の中に、審議を邪魔する、もしくは、要するに採決をおくらせたいという方々がたくさんいらっしゃるというのがこういう事象にあらわれてくるんですよ。そのことは、やはりちょっと、もっと突っ込んだ答弁をしないと総理がかわいそうですよ。要するに、総理を支えるのはあなたたちなんだから。違いますか。それはびしっと言わなきゃ。輿石さんとちゃんと意思疎通ができていたら、こんなことは起きないでしょう。どう思いますか。

岡田国務大臣 私は、幹事長とはしょっちゅう会って、意思疎通はよくしているところでございます。もちろん、国会の運営は一義的には幹事長の責任でやっておられることですけれども、意思疎通はきちんとできているというふうに考えております。

平井委員 いや、この税と社会保障の一体改革、御担当なんですから。

 では、よもや、要するに、今度は内閣委員会、所管じゃないから、そういうところに余り口を出せないかもわからないけれども、マイナンバーよりも公務員の改革法案を先に審議するというような段取りでお進めになるとしたら、マイナンバーは完全に死にますよ。これはそう思いますよ。

 このあたりのことを、要するに、毎日お会いになっているんだったら、輿石幹事長と十分腹をすり合わせてお進めになっているということでよろしいんですか。

岡田国務大臣 内閣委員会の進め方は、基本的にはそれは現場で御相談になることであって、私から言及すべきことではないというふうに思っております。

平井委員 これは職権で立てている話であるし、担当の副総理としてはもっと……(岡田国務大臣「内閣委員会」と呼ぶ)いや、内閣委員会だけれども、では、このマイナンバーは諦めたということでよろしいんですか、安住さん。

安住国務大臣 マイナンバーはとても重要な法案でございますので。

 また、国会対策のことは私もよく存じ上げませんので、ぜひ聞いていただきたいと思います。

平井委員 もう会期末が迫っているんですよね、二十一日。その中で、我々は、少なくとも政府・与党で物事の優先順位を明らかにしてほしいと言っているんです。おかしいことを言っていますか。その優先順位が決められないで、物事を前に進められるはずがないじゃないですか。

 そのあたりのところは、あなたは普通の閣僚じゃない、副総理。しかも一番重要なことを担っているわけですから、そのあたりの物事の優先順位、あれもこれもやという答弁じゃなくて、自分の思いをぜひ答弁してください。

岡田国務大臣 いろいろな考え方はあると思いますけれども、幹事長と私の間にいろいろな意見の違いはございません。

平井委員 大体これは私も、この答弁を続けていると、私が聞きたかったマイナンバーの時間がなくなっちゃうのでやめますけれども、きょう、ぜひこの後、物事をはっきりさせるように動いてください。もう答弁は要りませんから。そうじゃないと、このままいっちゃうと全部できませんよ。全部できない。ほかの委員会も動いていません。

 そういうことを考える中で、それでは本題にそろそろ入らせていただいてよろしいでしょうか。

 それでは、まず岡田副総理、それときょうは古川さんも久しぶりに来ていただいていますので、まず、マイナンバーを導入する目的について、それぞれ短く御答弁ください。

古川国務大臣 短くということでございますので簡潔にお答えをさせていただきますが、番号制度は、より公平な社会保障制度の基盤となるものであります。

 これは、さまざま、社会保障制度のあり方については、各党やあるいは議員の間でも、御議論は、意見の違い、相違はあろうとも、共通のやはり情報化時代のインフラとして極めて重要なものであるというふうに考えておりますし、これを導入することによりまして、国民にとって大変さまざまなメリットがあると思っております。

 また、行政の効率化が図られる、そうしたメリットもございまして、さまざまな観点から申し上げて、これは非常にメリットも大きいものであるし、社会保障制度、これを、新しくさまざまな取り組みを行う上でも非常に基盤となる、そうした社会的なインフラであるというふうに考えております。

岡田国務大臣 今古川大臣言われましたことに尽きると思います。

 基本的に、国民にとっては利便性、行政にとっては効率的な行政ということだと思います。

平井委員 それをあえてお聞きした上で、私がきょうお配りしている日本政府のITシステムの歴史という一枚紙、これは国会図書館の資料とかいろいろなものからつくらせていただきました。

 実は、この番号の話というのは、さかのぼること一九七〇年にさかのぼって、皆様方は認識していただかなければならないんです。

 国民総背番号とか政府による国民監視社会につながる、またコンピューターによって仕事がなくなるという当時の野党、今の民主党の中にも同じような考え方はおられるでしょうし、社民党などからはずっと猛烈な反対があって、頓挫をしてきたんですよ。政府のシステムは国民IDがないままばらばらに進んでしまったんです。

 私は、当選以来ずっとITシステムを担当していて、いろいろなぶち当たる問題で行き着くのは、何で当時の自民党政権は野党の反対を押し切ってでも番号を振っていなかったのかと。実は、それが最終的に消えた年金にもつながってしまったんです。この歴史を全部踏まえた上で今度のマイナンバーを考えなければ、結局またぐらついてしまうのではないかということで、資料をつくらせていただきました。

 それで、特に御指摘をさせていただきたいのは、九七年の基礎年金番号を導入するまでは、実は年金というのは、要するに、個人に番号を振っているんじゃなくて年金手帳に番号を振ったんです。だから三億件を超えてしまったということになるんですよね。この時点で三億件の年金記録が宙に浮いて、これは社保庁で十年間かけて名寄せをやっていたんですよ。残り五千万件まで来たときに、当時の長妻さんに消えた年金といって我々やられて、これは本当に厳しく追及をされました。いわば、政権交代の一つの理由にもなったのではないかと私は今にして思います。

 結局、年金をオンライン化するときに、個人番号をベースに年金情報を一元化するシステムをもし構築することができていたら、年金は全く消えていないんですよ。全く消えていない。この消えるということ自体、本当にばかばかしい話なんです。

 そこで、二〇〇九年の衆議院選の皆様方のマニフェストで、平成二十二年、二十三年の二年間で、二千億円の予算で記録問題への集中対応を実施するというふうになっていますが、その後、この年金記録問題がどのような状況になって、完全に突合が終わって解決したのかどうか、厚労大臣にお聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 いわゆる宙に浮いた年金記録およそ五千万件の問題につきましては、御自身の年金記録を記載したねんきん特別便をお送りするなど、着実に対策を進めてきています。

 その結果、直近の平成二十四年三月時点では、およそ千六百三十一万件の記録が基礎年金番号に統合済み、また、既に亡くなられているなど一定の解決がなされた記録がおよそ千五百四十三万件、特別便などによって解明作業が進展中の記録がおよそ九百五十八万件で、今後さらに解明を進める必要がある記録は、およそ九百六十四万件まで減少しています。

 また、記録問題対策経費の平成十九年度から二十二年度までの実績と、平成二十三年度、二十四年度の予算額の合計は、六年間でおよそ三千八百億円です。

 一方、記録が回復した額は、調査を開始した平成二十年五月から平成二十四年三月までの総計で、およそ一・六兆円になっています。

 まだ統合されていない記録については、紙台帳などとコンピューター記録との突き合わせの取り組みを進めまして、引き続き記録の解明に努めていきたいと考えています。

平井委員 残り五千万件になって以降なんですけれども、年金未統合記録の突合に住基ネットを活用されましたね。その成果について、今度は総務大臣にお聞きします。

川端国務大臣 平成十九年の七月に、住民基本台帳法の別表の改正を踏まえて、この件に関してデータが使えるということになりました。

 五千万件のいわゆる年金の未統合記録問題を解決するために、同年八月に住民基本台帳法別表省令を改正いたしまして、平成二十年度と二十一年度にわたって、年金の未統合記録と住基ネットの本人確認情報、いわゆる氏名、生年月日、性別、住所、これとの突合を実施いたしました。

 この結果、日本年金機構による解明作業で判明しなかった未統合記録のうち、約五百万件については住所情報等が判明するなどに至りまして、住基ネットは年金記録問題の解決に貢献をしたものと認識しております。

平井委員 確かに、住基ネットはプラスになりました。だけれども、それでもできなかった。

 これからもやっていくんだろうと思いますけれども、これはもう与党だ野党だという話じゃないので、最後はいつになるのかです。やはり最終的な総括も必要で、その総括というのは、どんどんさかのぼると、要するに、年金を、個人に番号を振っていなかったというところに行き着きますよ、その認識は、皆様方、一緒でしょうか。そのことについて、一言だけお聞きしたいんです。

川端国務大臣 年金の記録の問題は厚労大臣がメーンでありますけれども、私の知る範囲でいいますと、転記するときに誤りをしたとか読み間違えをしたとかいうこともありますが、やはり、手帳じゃなくて個人の名前で整理するということが行われていたら、こういうことは基本的には防げていたという認識は、私は先生と一緒でございます。

平井委員 厚労大臣にも念のため確認しておきますが、要するに、このときに個人に年金番号を振っておればよかったとお思いになりませんか。

小宮山国務大臣 そのように思います。

平井委員 ですから、当時反対をされていた方々も、やはり、こういうようなコンピューター等々の歴史とかいろいろなものを踏まえて、大分考えが変わってきたということだと思います。

 そのあたりのことをもっと確認させていただきたいんですが、今ある住基ネットというのは、所管する総務省のホームページにも書いてありますが、全国的な本人確認システムと言われているわけです。つまり、既に全国民に番号は付番されているんですよ、既に皆さんに。まず、そのことを知っている国民が要するに何%いるかというのは、私調査していないからわからないけれども、意外と知らない人は多いですよ。カードの普及は四%。古川大臣はカードをとりに行かれたらしいですけれども。まあ、あとは聞きません、持っていなかったら困るでしょう。

 そういう意味で、本当のことを言うと、今回の共通番号はマイセカンドナンバーでしょう、番号はあるんですから。違いますか。それから新しい番号を付番するわけですね。

 この住基カードの議論というのは、もう随分皆様方に、皆様方は直接じゃないかもわかりませんので、そうはちょっと言いづらいところがあるんですが、当時の野党が、個人情報保護やプライバシー侵害ということで物すごく騒ぎ立てたので、結局、議論が後退して、都道府県、市町村システムの連携のみに使うということになっちゃったんですね。

 ですから、民間利用は禁止だし、住基カードの保有は任意というところになってきた。そこで、要するに普及率は低い、なおかつ使い勝手が悪い。これは川端大臣も以前お認めになった、使い勝手が悪いから皆さんに普及しないんだろうと。

 そこで、もう一度確認をさせていただきたいんですが、民主党さんは、このペーパーで見ていただいてもわかるように、九九年から、住民基本台帳法の廃止法案を四回出されているんです。そのうち、三回、岡田副総理は提出者になっておられる。安住大臣は賛成者に四回なっておられるんですね。

 この住民基本台帳法の一部を改正、つまり、住基を廃止と当時思われてこの法案を出されていたという趣旨は、それぞれどのようにお考えだったんでしょうか。

岡田国務大臣 まず、私は、二回は賛成者、二回は提案者ということでございます。

 当時、私は、党の政調会長とかいろいろな立場におりましたが、やはりプライバシーの保護ということは非常に重要で、そこのところが十分に手当てできているかどうかということで、党の中で議論した結果、これは反対するということになったわけでございます。

 今回も、私、マイナンバーは非常に重要だと思いますけれども、プライバシーの保護には十分配慮しなければいけないというふうに考えているところです。

安住国務大臣 私の場合は、あいうえお順の「あ」なものですから、必ず賛成者のところに名前は入れられてしまうという運命にありました。ただ、住基台帳法の廃止については、党内に当時、大変熱心に、今の名古屋の河村という人たちとかがいまして、本当にそういう点では、私自身は、プライバシーの問題等が、十分充実できればよかったんですが、そういうことに懸念があったものですから、そうなったということでございます。

平井委員 聞きようによっては、野党だから反対していたみたいなところもあるんでしょうね。もう正直にお認めになられたらいいと思います。

 しかし、今回のナンバーは、皆さんが反対した、潰そうとした番号から生成する十一桁の番号ですよ。そのことを忘れないでくださいよ。あなたたちがやめようとしていた番号から十一桁の番号を生成するんですよ。ですから、過去は反対だったけれども、今は賛成であるしそういうものが必要だという立場をまず明確にしてもらって進めないと、この話はおかしなことになるんです。

 なので、そこのところをもう一度、副総理、財務大臣、総務大臣、厚労大臣、全大臣に。なぜ私がこれにこだわっているかというのは、多くの方々が言うんですよ、民主党が野党になったらまた反対するんじゃないかと。そういうことがないようにしたいから、要するに政権交代しようともこういうものが前に進むようにするためには、今そのことを確認しておかなきゃいけないんです。

 ですから、かつて住基法を改正、住基を廃止しようとした皆さん方が、あえてその住基を使って新しい番号をつくるということに、総理も含めて政治生命をかけて前に進んでおられるということの意味をもう一度確認したいという趣旨で、それぞれの大臣にお聞きしたいと思います。

古川国務大臣 担当大臣として、まず最初に御答弁させていただきます。

 これは前にも平井委員にも申し上げたかと思うんですが、民主党は野党時代から、税調とかあるいは社会保障の厚労部会などでは、税や社会保障共通の番号制度、これは早急に導入しなきゃいけないということはずっと一貫して言ってきておりました。住基ネットというものには反対をいたしましたが、番号制度の必要性については、これは調べていただいてもわかりますけれども、結党以来ずっと必要であるというふうに言ってまいりました。

 そういう意味で、今回、番号制度を導入することになりました。そこで、二重投資、これは平井議員からも前も御質問いただいておりますけれども、やはりできるだけコストは減らしていかなければいけない。そういうことを考えていいますと、なるだけ費用を減らして早期に番号を導入する、そうした観点から、既存の住基ネットのインフラを活用してやらせていただくということにさせていただいたということでございます。

岡田国務大臣 まず、番号制度について、民主党としてこれが必要であるということをずっと党として掲げてきたことは、それは資料をごらんいただければわかることだと思います。しかし、住基ネットについては反対ということであります。

 マイナンバー制度については、私はもちろん賛成ですが、昨年、幹事長の折に、この話は大分中身が進展してまいりました。私は、必ずプライバシーの保護には十分配慮してもらいたいということを申し上げてきたところでございます。結論を言えば賛成であります。

安住国務大臣 私も賛成でございます。

川端国務大臣 前もお答えをさせていただきましたけれども、導入当時は、成果はまだ具現化されていないと同時に心配が非常に多いということで、反対という党の立場を私もとっておりましたけれども、十年たって、実績としては、人権とかそういうのに非常に配慮するという進め方も含めて大きな成果を上げてきているということで極めて重要な制度であるということで、私は今認識をしているところでございます。

小宮山国務大臣 住基ネットの議論があった当時、例えば宇治市で医療の情報が流出したとか、そのようなこともある中で、プライバシーの問題に懸念があると考えていました。今回も、税と社会保障のまず非常に必要なところから導入をして、医療などについては別に改めて法律をつくるというふうに段階を追ってやっていこうとしていますので、今のマイナンバーで提案しているものは必要なものだと考えています。

平井委員 何と言おうと、この番号は住基からつくるんですよ。ですから、要するに、住基を廃止した立場は捨ててもらわなきゃいけないということを言っているんです。もし住基を廃止するという立場を貫くんだったら、新しい番号を振り直したらいいじゃないですか。コストの問題だけじゃないですよ。これはやはり政治姿勢、基本的な理念の問題なんですね。

 私は、そう考えたときに、今の答弁では不十分ですけれども、もう皆さん方が野党に回っても番号には反対しないというそんな感覚を今持ちましたので、ここらでそのことはもう追及をしませんが、そういう意味で、要するに国民の利便性とは何かと考えたときに、番号というのはやはり一元管理してあげなきゃいけない部分も当然あるんですよ。それは、プライバシーの問題とかは当然あります。最近はサイバーセキュリティーの問題もありますから、もっといろいろ考えなきゃいけない。

 しかし、あなた方が今回やろうとしていることというのは、また一方で非常に不思議なんですね。今回、これはまだ内閣委員会で議論されていませんが、法律は出ているんですよね。法律は出ているので、その中身を見ると、三つのことしか書いていないんですよ、三つのこと。

 この三つのことは何が書いてあるかというと、住基コードを変換してマイナンバーをつくる。要するに、マイナンバーからマイセカンドナンバーをつくるということが一つ。今度、システム連携をするときには、そのマイナンバーを使わずに連携をするということが二番目。三番目は、その処理をするための符号連携というのをやるための組織を、要するに地方公共団体情報システムというところ、誰がやるかを決める。この三つしか書いていないんですよ。

 法律としては、皆さん方が長く時間をかけてつくった大綱とかにいろいろ書いてあったことなんかは全然なくて、法律事項としてはこのぐらいしか書いていない。要するに、中身がすかすかなんですよ。後で考えようという法律だと思います。

 私は、ここでもう一回確認しておきたいなということは、結局、何をやるかは十分に決まっていないけれども、誰がやるかということは決まっているんですよね。これは、要するに、総務省が財団法人を一つ潰して、よそからの財団法人をつくってきて、地方共同法人をつくって、そこにやらせるというのが書いてある。

 今、この住基ネットを運用しているのが財団法人地方自治センター、LASDECというところですよね。ですから、まず、今の住基が一体どんな状況にあるのかということを含めて、このシステムの構築費と年間の運用経費を川端大臣にお聞きしたいと思います。

川端国務大臣 住基ネットの導入経費は、平成十一年度から平成十五年度の間の合計で約三百九十億円、これは全国センター、都道府県、市町村の計であります。運用経費は、平成二十四年度の全国計で約百二十億円になっております。

 このうち、住基ネット全国センターに関する経費は、導入経費が約五十六億円、運用経費は平成二十四年度で約三十六億円となっております。

平井委員 考えてみると、これは結構高いですよね、年間経費にしても。

 そして、要するに、四情報しかありませんから、トータルで約十ギガバイトレベルの情報量なんですよ。十ギガバイトの情報量というと、六十円で市販されているDVD一枚におさまる情報量ですよね。セキュリティーの問題とか回線の問題とかあるけれども。

 そんなことがあって、このコストを見直せと言ったのは実は民主党さんなんですよ。民主党さんはLASDECを事業仕分けしました。LASDECの本人確認情報処理事業が事業仕分けの対象となって、OBの再就職の自粛、役員の報酬の見直し。この後しばらくしてLASDECは解消されるということになったんですが、このあたりの事業仕分けとLASDECの解消に至った経緯は私の理解で正しいか。岡田副総理、いかがですか。

岡田国務大臣 事業仕分けの第三弾、平成二十二年十一月、ここで、財団法人地方自治情報センターについて見直しを行うという結論となりました。

 その中身は、今委員言われたとおり、公務員OBの再就職の自粛、役員報酬の見直し、それに加えて、調達を改善してコストの削減を図ること、こういった指摘がなされたところでございます。地方自治情報センターの業務の必要性そのものについて否定的な意見というものはございませんでした。

 そういったことを受けて、いろいろな改革も取り組んでいただいたわけでありますが、一財団法人に委ねるのではなくて、地方によるガバナンスを強化すべきという意見もあり、番号制導入に伴い地方共同法人に移行するということになったと承知をしております。

平井委員 また来週から仕分けもされるわけでしょう。始めるんですよね、民主党さん。違いましたっけ。

岡田国務大臣 委員がイメージしておられる仕分けではなく、各省庁が自主的に行うものでございます。これを公開プロセスでやるということです。

平井委員 これは、財団法人を解散して地方共同法人をつくるという初めての事例なんですよね。ないんですよ、こんなことは。

 そこで、いろいろな仕分けした内容とかそういうものを踏まえて新しい地方共同法人をつくる大義の説明は今ありましたけれども、結局、先ほど、今幾らかかっているかということで、今の地方自治情報センターの予算規模というものは決算を見てもわかるんですが、要するに、今度つくる新しい組織、地方共同法人の予算規模というのは相当なものになると思うんですよ。それを大体、概算でも結構ですから、川端大臣、お聞かせ願えますか。

川端国務大臣 新しく今度地方と一緒になってということですが、ちょっと手元に今資料がございません。

平井委員 私がこれをずっと指摘しているのは、要するに、ざっと考えても今度の新しいところは、公的個人認証もやる、住基ネットもLGWANもマイナンバーも運営管理するというと、前の組織の十倍以上の予算になるんですよ。

 だから、私が前に総務委員会でいろいろ言わせていただいたのは、このマイナンバーというのは、もしかしたら総務省の総務省による総務省のためのナンバーではないかというふうに言われかねないよと言ったのはそこなんですよ。何でもかんでもそこでやってしまう。

 岡田副総理、今度つくる法人が、まさか十倍に焼け太ったなんという話を民主党が認めるわけにはいかないはずなんですよ。ですから、その法人をつくるときには、前に仕分けしたいろいろなコストの問題もあります、今度のシステム開発なんてとんでもないコストがかかるわけですから、ということも全部含めて、相当にこれはやはりガバナンスをきかせていかないと、役所の暴走をとめないと大変なことになりますよ。

 だから、そういう意味で今予算規模をお聞きしたんですが、わかりましたか。

川端国務大臣 総務委員会で前回も同じ御指摘をしていただいたのは記憶しております。

 つくるときの費用という、システムの費用はちょっと今手元にないんですけれども、今度の、将来の収支ということの試算でいいますと、歳出に関しては、運営経費が、今の三十四億円が四十四億円程度、公的個人認証サービスの運営が、十八億円が二十億円程度、LGWANの運営が、二十八億円が三十六億円ということで、平成二十二年八十億円が百億円程度という単年度の歳出規模になるという試算を持っております。

平井委員 まず、これはいろいろな報道で私も見たんですが、トータルのシステム開発費が五千億になるというような報道もありました。その後、いろいろな数字がひとり歩きしたのでわかりません。結局、やってみなきゃわからないんですよ。要するに、やり方がちゃんと決まっているわけでもない。そこで私は、これはまだ委員会の質疑に入っていないんですが、また同じようなこういうようなシステム構築をしたら絶対失敗するなと思うんです。

 そこで、古川さんはIT担当でもあるわけですよね。結局、何でこんなことになるかというと、まして今回のシステムなんというのは、省庁横断でまたがっていかなきゃいけない、最終的には。大型、国民に一番関係の深い密接なシステムですよ。失敗は許されない。しかし、さっき言ったセキュリティーの問題とかいろいろある。それを一つの単純な役所に任せて発注させるなんということを絶対にやっちゃいけないんです。絶対やっちゃいけない。

 私は、ずっと、政府CIOをつくるべきだし、政府は直接そういうものを民間の知恵も含めてきっちりやらなきゃいけない。そうやらないと、これは本当に、自民党時代からもそうだったんですが、役所任せにしていてうまくいったケースというのはないんですよ。財務省さんぐらいです、うまくやったのは。ほかはないです。ほかはいろいろな問題がある。

 そして、もしこの法案が通ってマイナンバーをつくるということになった場合は、ぜひ今までとは違ったシステム構築のやり方をやってほしいんです、政府を挙げて。総務省に投げるんじゃなくて。

 そこで、政府CIOなんというのを何で政権交代して三年もたつのにつくっていないのか。過去はもう責めません。早くつくってください。古川大臣、いかがですか。

古川国務大臣 委員御指摘のように、このマイナンバーに対する国民の皆様方の信頼をきちんと獲得するためには、システム調達にゆめゆめ疑義があるようなことはあってはいけないというふうに思っております。やはりそこはしっかりとやっていかなければいけないという思いがあります。

 その上で、今御質問がございました政府CIOにつきましてでございますが、ことし三月に、IT戦略本部と行政改革実行本部のもとに政府情報システム刷新有識者会議を設置いたしまして、岡田副総理と私が一緒になりまして、政府CIO制度の制度設計などについて検討に着手しております。

 今後、この有識者会議におきまして検討を進めるとともに、政府CIO制度の早期実現に向けて積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

平井委員 岡田副総理、この話は物すごく大事な話だと思うので、副総理にぜひここで前向きな答弁をいただきたいんです。

 今までのやり方ではなくて、ちゃんとした政府CIOをいずれつくってそこで見るというのではなくて、このシステムをつくるに当たっては、政府CIOを中心としてつくる。つまり、つくりかけて途中からCIOができるんじゃなくて、要するに、政府CIO中心の新しいシステム構築の第一号にしなきゃいけないと私は思っているんです。それは恐らく同じような思いを持たれると思うんですが、いかがですか。

岡田国務大臣 先ほど古川大臣が言及されました、内閣府の中に置かれました情報戦略会議でも、委員の御指摘のように、政府CIOを早く設けるべきだという御意見もいただいております。私も同じ意見でありますので、そのための作業はもう既に指示が出してありまして、なるべく早くそういった形をとりたいというふうに思っております。

 いずれにしても、情報戦略会議の方で、これからのそういう、今回のマイナンバーに関する情報システムだけではなくて、今、全体のレガシーシステムをもう一回見直して、それから独法のシステムにまで範囲を広げて見直し作業をやっているところでございますので、マイナンバー制度についても、政府CIO、あるいはこの情報戦略会議におけるしっかりとした議論を経てつくっていきたいというふうに考えているところでございます。

古川国務大臣 若干、簡単にだけ補足説明させていただきたいと思いますが、委員と同じような問題意識を私ども共有しておりますので、既に今、一般公募によりまして番号制度推進管理補佐官二名を採用いたしまして、調達手続の透明性及び公平性を確保するための方策、技術面もそうでありますけれども、そうした助言もいただきながら、システムの調達については今考えております。

 今後とも、これは今、党の中でも、システム調達小委員会というのでも御議論をいただいておりますが、委員と問題意識はしっかり共有していきながら、システム調達についての透明性の確保、そして公平性の確保をしっかり行ってまいりたいというふうに考えております。

平井委員 補佐官とか、CIOなんかが助言するとか、そういうレベルじゃないんですよ。誰が責任を持つか、そのプロジェクトのマネジメントも含めて。そうじゃないと、また同じことが起きますよと言っているんです。ですから、相当強い組織を持ってやらないと、今回のこのマイナンバーにかかわるシステムは初めてやることが多過ぎます。

 きょうは十分いけなかったんだけれども、何でこんな複雑怪奇なシステムになるかというと、住基と、その住基の訴訟の最高裁判決やいろいろなものから援用した結果、要するに、そのことを正面から受け取らないがためにシステム開発に負荷をかけるというふうに私は認識しているんですよ。

 なので、これは法案審議が始まったら、住基にさかのぼった、要するに最高裁判決がなぜそんな複雑なシステム投資につながったか、これをちゃんと、今は答えられないと思いますので、十分に勉強して、来るべき委員会があるのなら、私の質問に答えるべく今から勉強しておいてほしいと思います。

 そうじゃないと国民に説明がつかないんですよ、費用対効果、何でこんなややこしいシステムをつくるんだというようなことを。要するに、国民は今番号を持っているわけだから、番号があるものを何で新しい番号にして、また見えなくしてというようなこと、ここも絶対に突かれますので。費用対効果の問題とかいろいろ考えると、これは一省庁の役人が発注できるようなものではないんですよ。その認識を持って、ぜひそれは進めていただきたいと私は思っています。

 そこで……(発言する者あり)もしできたらですね、できない可能性も十分あると思いますが。

 もう一つ、この番号制度について、もう余り時間がないので、ちょっと皆様方の認識を問いたいんです。

 要するに、番号という問題に関して言うと、IDとオーセンティフィケーションというのがあるんですね。それは何かといいますと、個人に振られているのが、例えば簡単に言うと、IDがあって、パスワードがオーセンティフィケーションですよ。クレジットカードの番号があって、サインとか認証番号というのがオーセンティフィケーション。IDとオーセンティフィケーションというのは非常に重要な概念だと思います。

 その番号の話になると、例えば我々が国会に、議員会館等々に顔パスで入れる理由というのは、胸につけているバッジがIDなんですよ。顔がパスワードのかわりなんです。衛視さんが覚えているから入れる、そうなっているんですよ。そういう概念でいくと、今、本人確認というのは、新しいマイナンバーとその関連法案の中では、さらに進化するという方向が十分に見えていないんですね。

 私は、今回、東日本大震災で被災地に行ったときに多くの方々から聞きました。着のみ着のままで逃げちゃうと、自分が自分であることを証明する手段というのはないんだと。要するに、免許証、パスポートを持参するか、さっき言っていた住基カードを持っているというようなことになるんですよね。やはり、このあたりの本人確認の将来像というものも視野に入れていかなければならないと私は思うんですよ。

 例えば、住基カードの写真、写真つきの住基カードをつくる。その写真は、役所で保管するかしないかというのも決まっていないでしょう。必ず保管するんだったら顔パスでいける。要するに、一般の方々は顔パスというのはないんです。例えば岡田副総理にしても安住大臣にしても、カードがなくていけるわけですよ、顔パスで。どこへ行っても、自分が自分であることを証明できる。そうじゃなくて、市井のそうじゃない方々にそういう道を開くということをぜひ検討していただきたいんですが、川端大臣、いかがですか。

川端国務大臣 かねてから先生の御持論でもありますし、私も、その部分は基本的には本当にそのとおりだなと。特に、この間の震災を含めて、何もないときに自分が自分であるということをどうして証明するんだということは極めて根源的な問題だと思います。

 大変大きなテーマでありますので。余り猶予もない。今回の部分も含めて、大きな検討テーマとして私は認識をしておりますので、いろいろと研究してまた取り組んでいきたいと思いますし、また、いろいろな部分ではアドバイスもいただければありがたいと思っております。

平井委員 実は、番号に関しては、今出されておる法律に対していろいろな具体的な提案もさせていただきたいんですね。さっき言った、IT調達のガバナンスも含めた法案改正というものを我々の方から申し出る、そんな気持ちでいるんですよ。

 それを受けていただけるのは古川大臣ということですが、先ほど私がお話しした基本的な考え方、例えばマイポータル等々についても、何ができるのか法案を見たって何にもわからないというような法案を出されたのでは、国民は、一体この番号は何に使えるんだということを具体的にイメージできません。大綱にはいろいろ書いてあったけれども、法案には何にもないんですよ。

 ですから、そういうことや、このシステムを開発していくときのプロセスや第三者委員会における監視とか。その監視の中にはシステム開発も入れてほしいんですよ。例えば、個人情報の保護の観点の監視だけじゃなくて、そのシステムの投資が暴走しないように、失敗しないように監視する。

 そんなようなことを前向きに御提案させていただくのは内閣委員会だというふうに私は思っていたんですが、いかがですか、古川大臣。

古川国務大臣 委員におかれましては、番号制度の必要性そして導入に対して大変御理解をいただいております。

 これは、最初に申し上げましたけれども、どのような社会保障制度とかを考えるに当たっても、この情報化時代に社会インフラとして重要なものだというふうに思っていますので、そこについて建設的な御提案をいただけることは、私どもとしても大変ありがたいものというふうに考えております。

平井委員 ここの委員会での議論だと、給付つき税額控除でマイナンバーという話ですけれども、結局、マイナンバーできっちりした給付つき税額控除なんてできないんですよ。これはもう議論の中のやりとりで見ていたら。それと、低所得者という定義、聞いていても誰もされないから、これもよくわからない。その線の引き方によっていろいろな問題も起きてくるだろうし、マイナンバーの限界もそこにいろいろあるということですよね。そう考えてくると、私は非常に重要な法案だと思うんです。

 冒頭の話に戻りますけれども、結局、そういうマイナンバーだって、我々は審議に応じる、そして前向きに進める用意があるにもかかわらず、ちゃぶ台をひっくり返すような、要するに公務員制度改革法案を職権できょう立てるようなことをぜひやめるべきだと思うんです。これははっきり言っておかしいですよ。要するに、何がやりたいかわからない。きょうは三時から総理と輿石幹事長がお会いになっていろいろお話もするというふうに聞いておりますので、これは来週からは物事の優先順位をすっきりさせて進めていただかないと、時間の無駄になったら本当にかわいそうなことになります、我々も、みんな。

 ぜひ、そういう意味で、皆様方に政府・野党じゃなくて政府・与党として方針を明確にしていただくことを最後にお願いさせていただきまして、質問を終わります。

中野委員長 これにて平井君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従って順次質問してまいりますが、きょうは、消費税の引き上げについてということ、それから地方税について伺っていきたいと思っていますが、本題に入る前に二点ほどお伺いをさせていただきたいと思います。

 一つは、デフレ脱却に向けた景気回復に必要な予算措置をどうするのかということについてお伺いをまずさせていただきたいと思います。

 社会保障と税の一体改革を議論していく中にあって、そもそも増税先行でいいのかという話。社会保障の全体像をしっかり示して、その上で必要な財源を求めていくというのが当然の考え方である、こう思っております。

 我が党といたしましても、国民に新たな負担をお願いするのであれば、社会保障の全体像をしっかり示していく、それから景気回復の実現を図っていく、また行革の徹底はしっかりやっていく、そのようなことを前提としてお話をさせていただいているところでございます。

 それから、財政健全化と消費税増税は経済戦略と一体化させていかなければいけない、こういう議論ですとか、あるいは、増税するとしても、デフレを脱却する、中には、四%程度の名目成長率になることが前提条件だ、こんな意見もあったりして、私も幾つか同感するところがあります。

 したがって、デフレからの脱却にしっかりと手だてを打って、景気回復に必要な事業と予算を集中させていくということが必要だという考え方に対して、まず、このことについての所見を担当大臣からお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 これまでも政府は、財政健全化と経済成長、特に足元のところ、ベースですね、デフレ脱却を行っていく、早期に実現をしなければいけない、そうした思いでずっと政策運営をやってきております。

 二年前に新成長戦略をまとめたときに、同時期に財政運営戦略をまとめた。これは、経済成長と財政健全化を車の両輪として一緒に進めていく、そうした姿勢の一つのあらわれでございます。

 そうした中で、現在、政府は、大震災からの復興と景気の下振れ回避に万全を期すとともに、デフレ脱却に断固として取り組む、このことをマクロ経済政策運営の基本スタンスとしておりまして、この点については御党のお考えと大きな違いはないというふうに考えております。

 そして、これまでも、昨年度も、累次にわたる補正予算や、また今年度の本予算におきまして、そうした視点からのさまざまな取り組みというものを行っているところであります。

 こうしたことを行うことが、需給ギャップの縮小を通じてデフレ脱却にも寄与するものというふうに考えております。

 また、ことし四月以降、閣僚級のデフレ脱却等経済状況検討会議というものを開催いたしまして、ここにおきまして、デフレ脱却に向けて国民の潜在需要を実現するという観点から、住宅等の耐震性強化等を重視すべき政策分野として検討課題の一つに挙げております。

 デフレになりやすい今の構造というもの、そこを変えていく、需給ギャップだけでなくて、期待インフレ率やあるいはデフレマインド、そうしたものも変えていく、そうした総合的な取り組みを今、政府、日銀一体となって行っているところでございます。

 今後とも、御党からいただいている御提言なども踏まえながら、デフレ脱却と経済活性化に向けて全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、古本委員長代理着席〕

稲津委員 今大臣から、財政健全化と経済戦略というのはまさに車の両輪だというお話があって、私もなるほどと思います。

 それから、今の御答弁の中に、昨年の震災からの復興についても触れられました。また、これは当然、経済戦略ということを踏まえてのお話だと思いますけれども、いわゆる耐震化のインフラ補強の話もありました。これは同感するところです。

 それで、もう一点、関連して伺いたいんですけれども、私どもは昨年の三・一一の震災からいろいろなことを学んできたと思います。その中で、やはり我が国は元来、非常に震災の多い国であるということ、それから、防災や震災の対策を今本当にしっかりやっていかなきゃいけないなということを国民ひとしく皆さんわかったというか、そういう状況があると思います。

 それで、今後のことを考えていくと、言われるところの東海、東南海、南海、これらの地震の発生の危険が高まる中において、では、地域の防災力を高めていこうじゃないかという考え、それから、老朽化した港湾、河川、道路等々、こうしたものの社会資本、インフラをどう整備していくのか、要するに、災害に強い国づくりをしていかなければいけない、これが大きな流れではないかなというふうに思うわけでございます。

 こうしたインフラ整備、本当に必要な社会資本の整備を行って、その上で、結果としてこれが景気対策につながっていく、これを我々は公明党として、防災・減災ニューディール政策、そういう言い方をしておりますけれども、要するに、必要な社会資本整備を行った上で、それが結果として景気対策につながっていくという考えについて、この点については、大臣、どうお考えでしょうか。

古川国務大臣 御党から、防災・減災ニューディールということで御提言いただいております。先ほど申し上げました昨年度の補正予算やまた今年度の予算においても、そうした同じような考え方に立った予算を組んでおりまして、こうしたものは、需給ギャップの縮小等にもつながっていくというふうに思っております。

 当然、今、御存じのように財政状況が大変厳しいわけでありますから、限られた状況の中でありますが、その中で重点的にこうした分野に予算を振り向けていく、そのことが防災、減災につながり、それがまた経済にも、需給ギャップを埋めるというところにも効果があるところはあるというふうに考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 大臣から、非常にバランスがとれていると言ったら言い方が失礼かもしれませんけれども、総合的に見ていただいている話をいただいたと思っています。

 そこで、繰り返しの質問になって本当に恐縮なんですけれども、もう一点だけこのことについて伺いたいんですが、こういう社会資本、インフラのいわゆるコンクリートの耐用年数、これは減価償却資産の耐用年数といいますけれども、大体五十年と言われている。建築後五十年以上経過する日本の社会資本の割合というのは、橋、それから高架の道路、河川管理施設、港湾岸壁等々、大体七年後には二五%程度、それから十七年後には五〇%程度になるだろう、こういうことが言われております。

 私も調べてきましたら確かにそのとおりで、例えば港湾岸壁でいうと、建築後五十年以上経過する、これは二〇二九年に、全体四千九百十五のうち二千三百七十八、約五〇%です。それから、河川の管理施設、これは堰とか水門、排水施設等々、これも国の直轄でいうと大体一万二百ぐらいあるんですけれども、これは十年後に四十年経過するというのが全体の六〇%の六千以上あるという現実。

 こういったことを踏まえていくと、今大臣が御答弁いただいたように、まさにそこをしっかりやっていくことが必要であるし、そのことによってそれが経済効果につながっていくということは自明の理だというふうに思うわけでございます。

 再度お伺いしますけれども、今大臣は、そういったことの予算化は必要であるということをお話しされましたけれども、私は、必要であるのはもう当然として、むしろ、集中的、効果的にこういった事業をやっていくことが経済対策につながるんだ、このように認識していますけれども、大臣の所見はどうでしょうか。

古川国務大臣 私が申し上げたのは、限られた予算の中で重点配分をどういう形でやっていくのか、やはり、そうした形でやっていく、しかも、今委員からも御指摘がありましたように、それが防災、減災につながるものになっていく、そうした形が経済にもそして社会にも好ましいということになるんじゃないかということを申し上げたわけでございます。

 今後とも、予算のめり張りをつけていく中で、そうした視点からの取り組みということは行っていきたいというふうに考えております。

稲津委員 もちろん、限られた予算の中でどうセレクトしていくのかということが大前提であって、その上で、真に必要な事業について予算化、重点化を図っていくということが、恐らくは、要するにプラスアルファの部分ですよね、そこが大きな経済効果を生むんじゃないかということを私は触れさせていただきました。

 今、そうおっしゃるのであれば、もう一点だけ、これは質問じゃないです、私の方から意見だけ言わせていただきますけれども、今私が申し上げたのは、これからやらなきゃいけない社会資本整備、インフラ整備のことを言いました。ところが、現状の例えば維持管理ということを考えても、大変恐縮ですけれども、今の皆さん方の政権になってから、こういった公共施設等々のいわゆる維持管理費については大胆に予算を削ってしまって、一〇%ぐらい削っているんですね。

 例えば、これは直轄道路の維持管理費ですけれども、平成二十一年には二千三百六十二億円、これが平成二十二年の予算では、約一〇%ほど削って、二千八十九億円になっているのです。今まであるものを、必要なものをいろいろ計算して切り詰めてやってきた中で、要するに、それすらも切ってしまった。

 私は何を言いたいかというと、これは、極めて必要なものを削ってしまったのと同時に、一〇%削ったということはそれなりの、いわゆるマイナスの経済効果があったんじゃないだろうかなということなんです。ですから、そういったことも踏まえて物事を考えていかなければならないだろうということを私はこの機会に申し上げたいと思います。

 次の質問に移ります。

 次は、これは厚生労働大臣に御答弁いただきたいと思うんですが、二十四時間定期巡回・随時対応サービスということについてお伺いしたいと思います。

 社会保障のテーマの中でこの一点だけをお伺いしていきたいと思うんですけれども、政府の肝いりで今年度から介護保険に導入された定期巡回・随時対応サービス、これは説明するまでもありませんけれども、時間帯を問わず、定期的にヘルパーが自宅などを訪問して短時間の介護を行うほか、利用者からの要請で随時駆けつける仕組みを設けるということでございますが、これがなかなか問題が多い、私はそのように思っております。

 そのことを示すかのように、四月末までに、一体型、連携型合わせて、このサービスが実施されることになったのは何と二十七保険者、要するに二十七市町村、三十四事業所だけです。この実態をどう見るのか、大臣、お答えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 この定期巡回・随時対応サービス、これは介護保険法の改正によって創設されました新しいサービス類型で、委員がおっしゃったように、ことしの四月から始まったものです。

 平成二十四年四月末日現在で、今御紹介いただいたように、二十七保険者、三十四事業者が事業を開始している。これが少な過ぎるという御指摘はいただいています。

 制度がスタートして間もないので、現時点で検討中、準備中というところが多いのかと思いますが、二十四年度に百八十九保険者、利用者六千人、これが介護保険の事業計画として立てられていまして、また、二十六年度に三百二十九の保険者、利用者一万七千人分の実施を見込んでいます。これはもともとの見込みが低いという御批判をいただくかもしれないんですが、平成二十七年に一万人という見込みを立てておりましたので、そういうペースでは整備が進んでいくのだと思っています。

 ただ、もっと早く整備をしなきゃいけない、これでは少な過ぎるという声はいただいていますので、今後、厚生労働省といたしまして、備品などの購入に対する補助ですとか、先進事例を集めまして市町村や事業者に御紹介をするなど、なるべくサービスの普及が早く進むように努めていきたいというふうに考えています。

稲津委員 大臣、今、見込みの話をされましたけれども、私はそれはかなり現実と乖離していると思いますよ。だって、これは、お示ししますけれども、厚労省さんから資料をいただきましたけれども、今答弁のあったところです。今年度中実施見込みが百八十九保険者。しかし、二〇一四年度でも三百二十九保険者ですよ。要するに二〇%足らず。それから、宮崎県とか沖縄県は三年後でもゼロですよ。三年後にあっても一桁以下という見込みの県は、何と三十九道府県ですよ。

 大臣、このことの要因をどう見ていますか。そして、解消策をどうするのか。これを具体的にお示しされないと、今の答弁との整合性は合わないと思いますので、ぜひお願いします。

小宮山国務大臣 御指摘のように、なかなか、先ほど申し上げたように、もともと立てた予定の中では進んでおりますけれども、このスピードではとても間に合わないという皆様の率直な御意見があるということは承知していますので、もっと進めていくために何が欠けているのか、どこをもっとフォローしなければいけないかということはしっかりと検討させていただきたいと思います。

稲津委員 これは、そもそも問題が多過ぎるんだと思うんですよ。

 どういうことかというと、どこにでもいっぱい書いているんですけれども、例えば問題点として、深夜に働く看護、介護の職員の確保が難しい。それから、そもそも看護師不足という現実がある。それから、潜在的ニーズが少ないんじゃないか。あるいは、別なサービスの方が汎用性があっていいとか、手がける民間事業者の大半が小規模で負担が大きい。それから、ここがポイントですけれども、大都市の人口密集地域にしか適さない、こういうことが挙げられてきています。

 これが一つですけれども、それから、大臣、今答弁の中で、何が欠けているのか、そこをしっかり見きわめていきながら予算の措置もと言いましたけれども、予算の措置はむしろ逆ですよ。

 例えば、私も調べましたけれども、平成二十四年度予算で、地域介護・福祉空間整備推進交付金、これはソフト交付金ですけれども、十三億円。この十三億円は、今私が申し上げました二十四時間の巡回型のサービス以外に、軽費老人ホームとかあるいは小規模の養護老人ホームとか全部入っているんですよ。十三億円でこの事業ができるのかというと、これは到底できるはずもない。

 私が知り得ている範囲では、そもそも定期巡回・随時対応サービス、この実施だけでも、実は十億円ほどの予算要求をされたんじゃないですか。それが、残念なことながら、結果として、その予算の中身を見ると、事業の展望すら見えないという現実になっている。私は、本当にこのサービスがこれから普及していくかどうか、非常に不安を持っております。

 このことについてはこれ以上質問しませんけれども、もう一点だけ。

 一方で、実はニーズが非常にあるものもありまして、これを申し上げたいと思うんですけれども、どういうサービスがニーズがあるのかというと、小規模多機能型の居宅介護、これは平成十八年から実施されて、順調に拡大してきています。

 サービスの受給者、平成十八年のスタート時は百十八人だったのが、平成二十四年一月時点で何と六万人。事業所の数も、スタート時は十八だったのが、今は三千三百。

 この小規模多機能型の居宅介護について、この評価と今後の方向性について、大臣に御答弁いただきたいと思います。

小宮山国務大臣 この小規模多機能居宅介護、通い、訪問、泊まりなどのサービスを柔軟に組み合わせて、御高齢な方が在宅生活されるときに包括的に支援をする。これは今御紹介いただいたように、非常にニーズが多くて、実際にサービスも提供されている。

 今御紹介いただきましたが、平成十八年度に創設されて、現在、事業者が三千二百九十一、利用者が五万九千六百十四人ということで、非常に地域生活を支える大きな柱になっていると私の方も認識をしています。

 今年度から、訪問看護と組み合わせて提供する複合型サービスを創設するなど、中重度の要介護者への対応も強化をしていますので、これは非常にうまく回ってきている仕組みだと思いますから、さらにこれが進められるように努めていきたいというふうに思います。

稲津委員 そうしますと、この小規模多機能型居宅介護の事業については、大臣も評価をされていて、これからもその拡大に向けてしっかり手を打っていきたい、そういうことでよろしいですね。

 先ほどの前段の方の二十四時間の方は、努力をしていきたいということですけれども、これはもう質問しませんけれども、この二十四時間の定期巡回・随時のサービスというのは本当にニーズに合ったものなのかどうなのかということを十分検証して、できるだけ早く、ある一定程度の方向性や結論をつけた方がいいんじゃないだろうかな、私はこのことを、質問いたしませんけれども、指摘をさせていただきたいと思います。

 さて、本題の方に入っていきたいと思いますけれども、まずは消費税率の引き上げについてということで、順次伺っていきたいと思うんです。

 政府は、日本は財政赤字が深刻だ、しかも高齢化で今後社会保障費が急増するから、消費税を引き上げて、全世代対応型の社会保障制度で持続可能なものとして、財政の健全化を図る。そして、野田総理は、重ねて言っていますけれども、次の世代にツケは残さない、こうおっしゃっています。

 増税することは、本当に将来にツケを残さないのかどうか、まず、そこに一つの疑問もあります。なぜ今消費税を増税する必要があるのか、ほかの税も含めて消費税でなければだめなのかというそもそも議論もあります。

 よく政府が使うのが、ワニの口に例えるグラフのこと。これは何回も話がありますので詳しいことは申し上げませんけれども、税収と歳出総額のギャップ、これが一九九〇年代から開き始めていって、二〇一二年度の一般会計予算は九十・三兆円だけれども、税収は四十二・三兆円だ。その差額の穴埋めに四十四・二兆円の新規の国債を発行して、三年連続で税収を借金が上回っている、これが今の状態でございます。

 ストックで見ると、国債の残高というのは六百六十七兆円まで積み上がって、国それから地方の長期の債務残高は八百九十四兆円程度に達する、こういうふうに見込まれているわけですけれども、加えて、毎年一兆円ペースでふえていく社会保障費を維持していくためにも消費税は避けられないんだ、これが政府のお考えだ。

 しかし、冒頭私申し上げましたように、我が党といたしましては、このことに関して、やはり増税の前提条件としては五つの条件が必要だということで、先ほどもお話ししたとおり、一貫してこのことを主張してきております。これまでの本会議や各種委員会でもこれは議論をしてきました。それから、他会派の方々も既にもう御質問されていますので、一部重複するかもしれませんけれども、確認の意味も含めてさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 最初は、景気弾力条項についてお伺いしたいと思うんですが、名目三%、実質二%の成長は引き上げの前提条件なのかどうかということでございます。

 この景気弾力条項のことですけれども、法案の附則の第十八条で、平成二十三年度から三十二年度までの十年間の平均で名目三%、実質二%程度の経済成長を目指し、経済成長のためのデフレ脱却、経済活性化に向けた総合的な施策を講ずる、こういうものがありますけれども、この名目三%、実質二%の成長率というのは消費税引き上げの前提条件なのかどうかということ、このことについてまずお伺いしたいと思います。

安住国務大臣 結論からいえば、前提条件としての数値目標を規定しているものではないのであります。

 ただ、この十八条第一項は、今先生に読んでいただきましたように、十年間の平均において、目下の緩やかなデフレ状態にある我が国の経済状況を何とかプラスにしていく、政府としては、名目成長率三%、実質成長率二%程度の成長を目指すんだ、こういう政策努力目標を掲げて、成長戦略については必要であれば古川担当大臣から御説明していただきますけれども、さまざまな努力をして、その努力の上に、やはり消費税の問題について、二項において、そうしたものを見ながら総合的に指標を判断して引き上げをさせていただく。

 私は、肝心なことは、消費税を上げるときにやはり景気に非常に配慮をしないといけないということをいわばにじませて、しっかりとそれは書いたというふうに思います。ですから、いろいろな意味で反動があったり、これは国民の皆様に五%の引き上げをお願いするわけですから、先生初め公明党の皆さんからも御指摘あるように、そんなに軽い増税ではなくて、とても負担は大きくなるのではないかという御指摘は、私は、国民生活を考えればやはりそうだと思います。

 しかし一方で、最初の先生の御指摘に少しお答えさせていただくと、やはり、年金、医療、介護を含めた、保険料と税で賄っている今の制度の中で、保険料収入が頭打ちになって、いわば今の水準を維持するには、どうしてもこれは税の御負担というものをお願いしないといけないというのは、私以上に御認識はあると思います。

 そういう意味において、消費税は、お預かりをしたものはそのまま年金、医療、介護、子育てという方に、少子化対策にも行きますから、私としては、所管大臣として一番心がけておりますのは、税負担は重くはなりますが、このお金は、払っていただいた分、例えばおじいちゃんの年金に行きます、奥さんたちの小さなお子さんの子育てにも行きます、やはりそういう払いがいのある税にこれをしっかりしていくというのが私どもの責任だと思っておりますので、そういう説明をしっかりやっていきたいと思っております。

稲津委員 今大臣から、払いがいのある税を目指していきたいという、ちょっと新しい言葉を聞きましたけれども、本当に国民の皆さんがこれは払いがいのある税だなと思っていただけるような仕組みになっているかどうかということを今ここでさまざま議論をしているという話でございまして、少し詰めていきたいと思います。

 そこで伺いますけれども、引き上げの判断をする基準の明確化の必要性についてなんですけれども、政府は、経済状況の好転について、成長率、物価動向等の種々の経済指標を確認し、デフレ脱却や経済活性化に向けた施策を踏まえた上で、増税の停止も含めた措置を総合的に判断する、こう言っております。

 引き上げる平成二十六年、二十七年の前に判断するということじゃないかなというふうには思うんですけれども、そもそも前提条件でもない二十三年度から三十二年度までの平均成長率をこの条項に盛り込むことが一体どういう意味があるのかということを非常に思うわけです。

 これはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、さも、この名目三%、実質二%の成長がなければ何か増税をしないように聞こえてくる。実際ははっきりしない指標をもとに総合的に判断するというのは、これは一体どういう状況なんだろう。理由をつければいろいろな理由があって、それによって引き上げることができるような形にしたい、そういうふうに受けとめてしまうんですけれども、要するに、政府にとっては非常に都合のいい法律の内容になっているんじゃないだろうかな、そういうことを思ってしまうんです。

 これは、例えば、デフレの脱却、経済成長が見込めないというのであれば消費税は上げません、こうはっきり明記した上で、引き上げの判断をする、そういう基準を明確にすべきじゃないかと思いますが、この点はどうでしょうか。

安住国務大臣 十八条の一項は、やはり政府の目指すべき道しるべをしっかり描いていると思います。ですから、政府は十年のアベレージで三%、二%という目標に向かっていきますよという意味では、目指すべき道を示してその軌道に乗っていく、そういうことは、イコール経済の回復過程、好転ということに私はつながると思うんです。

 そういう中にあって、この消費増税を、総合的にさまざまな指標、つまり、雇用の問題はどうなのか、それからCPIはどうなのか、さまざまな経済的な指標というものを総合的に時の政府は勘案して決めるということを第二項で盛り込み、一方、第二項ではもう一つ、停止条項というのは、やはり急激な、例えば東日本大震災が三月にありました。では、もし仮に四月に消費税を上げるとあったらどうなるのかというと、やはりそこで時の政権は、そういう状況で政治判断をして、最終的には、議会に法律を出してそういう停止をするかどうかというのを決められますよという条項をつくっているわけですね。ということは、全ての面にわたって景気というものを最大限に配慮した項目をここに並べたということだと思います。

 なお、ちょっとデフレの問題で申し上げますと、私は、この長期間にわたるデフレというのは何としてもやはり解消したい、しなければならない。そういう意味での金融、財政両面にわたっての努力と、それから、やはり本当は、デフレの犯人を突きとめて構造的な問題を解決しないといけないと思います。

 なぜこういうことを申し上げるかというと、十年間、自公政権で随分頑張って公共投資をやられました。それでも、実は、そういう意味ではデフレギャップは根本的には解消できなかったということは、日本社会のどこかに何らかの構造的な問題もあります。

 ですから、そういう点では、デフレは解消しないといけませんが、しかし、デフレ下の中でも、スパイラルと、それから緩やかなデフレの中で好景気を生んでいるときと、さまざまあります。ですから、デフレだから全部とにかく不景気で税を上げられないんだという議論をする方も、それは説得力のある一方での意見ですけれども、ちょっと逆の見方をすると、先生、では、狂乱物価になった、インフレのときは増税していいのかという話になるんですね、経済学で。それはないと思うんですよ。

 ですから、そういう点からいえば、安定的な国民生活を見ながら、やはり景気の動向を見て総合的に判断するということになると私は思っております。

稲津委員 大臣、丁寧な御説明をされてこられるのかなと思ったら、それと同時に、何かちょっと違うお話もされた。

 今の話の中で幾つかポイントがあったんですけれども、一つだけ言いますけれども、デフレ解消が大前提だというお話に今触れられました。私もそうだなと思います。であるならば、そのことをもっとはっきりと明文化すればよかったんじゃないですか。

 先ほど私が質問した中では、大臣も今言いましたけれども、十年間のアベレージの中でどう見るかという話があったけれども、でも、もう一方で、私はやはり、デフレ対策、景気対策をしっかりまずやるということが一番最初の入り口じゃないのかなということを申し上げておきたいと思います。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次は、名目の成長率と消費税との関係ということでございますけれども、新成長戦略の名目三%成長ではなくて、なぜ慎重シナリオ一%成長で試算するのかという話でございます。

 政府は、五%増税による十三兆円の増税の前提として、今後五年間の名目成長率を一%、いわゆる慎重シナリオとして計算している。二〇一〇年発表の政府の新成長戦略、これも先ほどから話がありますけれども、名目三%、実質二%。なのに、なぜ、わざわざそれより低い名目一%を前提に試算をされるのかということです。

 これは、これまでも議論がありますので、それなりの御答弁になると思いますが、財政再建と言われているのは、これは当然世界の国々の急務の問題で、アメリカでも三・五%、イギリスでは五・三%の名目成長率を前提にしている。日本は一%を前提にしている。財政再建の本質は、増税ではなくて経済の活性化ではないかということなんです。だから、そういうことを考えていくと、経済がよくなれば増税しなくても財政再建はできるというのは、本来的なあり方じゃないかなという見方もあります。

 先ほど財務大臣から自公政権の話をされましたから、私も自公政権のことをちょっと振り返ってみたいと思うんですけれども、自公政権の時代の二〇〇三年から二〇〇七年までの四年間の間で、基礎的財政赤字が二十八兆円から六兆円まで縮小している。これも事実です。わずか五年間、財政再建は目の前だった。増税ではなくて、歳出を抑える一方で不良債権処理など経済を活性化して税収をふやしたからだと言えると思います。二十二兆円の削減を消費税で換算すれば九%ぐらいになるんでしょうか、そういうことがありますので、これはあえて触れさせていただきたいと思います。

 そこで、新成長戦略で名目三%ということを目指していながら増税の前提を一%とするのは、これは、先ほどの大臣のお話と関連するかどうかわかりませんけれども、まるでデフレ脱却をできません、やりませんと言っているようにも聞こえてくるわけでございまして、仮に名目三%を前提にするのであれば、五年後の税収は政府の想定よりも十数兆円ふえることになって、増税の根拠が一気に崩れてしまう。

 一方で三%成長と言って、一方でこの増税の試算のときは一%成長だ、こういう言い方というのは矛盾しているんじゃないか、こういう声に対してどうお答えしますか。

古川国務大臣 まず、委員に申し上げたいと思いますが、多分これは御党も、皆さんの多くも同じ考え方だと思いますが、経済成長はもちろんしなきゃいけないですけれども、経済成長だけすれば、それだけで財政健全化に進んでいくというような今の日本の財政の状況かといえば、やはりそれは違うんだと思います。

 まず成長が先だと言われる方も、成長した後では、やはりこれは財政健全化に向けて消費税の引き上げも行わなきゃいけないというふうにおっしゃっておられるわけでありまして、そういった意味では、経済成長だけで今の日本の財政の置かれている状況がよくなるということではない。しかし、では一方だけでいいかといったら、これは当然、経済成長もなければ財政の健全化も進まない。そういった意味だからこそ、先ほど申し上げましたけれども、経済成長と財政の健全化、これは車の両輪として進めていかなければいけないというものであります。

 そうした考え方のもとで、経済財政の中長期試算におきましては、今御指摘があった慎重シナリオだけでなくて、成長戦略シナリオに基づいたそうした中長期の経済財政の姿も示しております。

 ただ、この慎重シナリオを示しておりますのは、財政運営戦略におきまして、財政健全化の道筋の信頼性を高める等の観点から、財政健全化の道筋を示すに当たりましては、慎重な経済見通しを前提とすることを基本とすべき、そのようにされております。こうしたことを踏まえて、世界経済の成長率、生産性上昇率、労働参加率について慎重な前提のもと、試算を行ったものであります。

 ちなみに、こうした慎重シナリオに基づかないで、成長戦略シナリオに基づく成長が実現すれば、こういう中であれば財政収支のさらなる改善が見込めるわけでありまして、そういう状況になれば、委員が御指摘になっていた防災ニューディール、減災ニューディール、そうしたものへ回す資源というものも出てくるわけであります。

 まさに、それが将来の安心、安全にもつながって、成長にもつながるという好循環につながっていくわけでございますので、私どもは、試算としては成長戦略シナリオと慎重シナリオ、両方を立てた上で、財政についてはそうした慎重な見通しのもとに行ってまいりますけれども、一方で、名目三%、そして実質二%、この成長戦略の実現、これに全力を尽くしていくということでございます。

稲津委員 私も、何も経済成長だけがあればいいという話をしているわけじゃなくて、冒頭の最初の質問の中にもありましたけれども、大臣と意は同じです。いわゆる経済成長と財政健全化が車の両輪、これはもう当然、そのことを踏まえて聞いておりますけれども、しかし、この三%と一%のお話は、今御答弁をいただいたけれども、非常にわかりづらい。これで本当に国民の皆さんに十分な御理解をいただけるような仕組みになっているかどうかということを私はあえて言いたいんです。

 さらによくわからないことが一つありますので、これは聞いておきたいんですけれども、政府広報のパンフレットです。「明日の安心 社会保障と税の一体改革を考える」、これを見ますと、この中のQアンドAの中にこんなことが書いてあるんですね。

 増税すれば景気が悪くなってしまうのではないですか、こういう質問に対して、増税すると物の値段が上がって、消費者が物を買わなくなるために、景気が悪くなるのではないかという御意見がありますが、現状でも、年金はもらえないのではないか、保険料はどんどん上がっていくのではないかといった将来への不安から、貯金をして物を買うのを控えようという動きが見られる。

 こういうふうに書いておきながら、一方でこう書いてあるんですね。

 消費税増税で社会保障の充実・安定化と財政健全化を達成すれば、将来への不安が取り除かれることにより、逆に消費がふえる、こう答えています。

 いわゆる非ケインズ効果のことをおっしゃっているのかと思いますけれども、本当にこれで、この政府広報の中身を見て国民の皆さんが納得できるかどうかということは、ちょっと疑問なんですね。

 先ほどからも、この委員会の中でも若干触れた方もいらっしゃいますけれども、過去に消費税を上げた時点で、一時的とはいえ個人消費が落ち込んでいく、そういったことの影響も、懸念がこれまでもされたということの話もありました。

 私が言いたいのは、この非ケインズ効果のことを政府広報のパンフレットにあえて掲載してまで景気への影響は大丈夫だと言うのは、これは少し言い過ぎじゃないかと思いますけれども、この点に対しての見解をお伺いしたいと思います。

    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

古川国務大臣 この記述自体がいわゆる非ケインズ効果を書いたというものではございません。

 これは、先ほどもちょっと委員からも御指摘がございましたけれども、やはり国民の皆さん方が社会保障の先行きに対して不安を持っている、そのことが過剰な貯蓄につながったり、そうしたことにもつながっている。そうした意味では、国民の皆さん方の不安を和らげる。その意味では、やはり社会保障制度についての持続可能性、そうしたものについての安心感を持っていただくことが大事である。今回の改革は、まさにそういった意味で、社会保障の安定財源を確保して、そして同時に財政健全化を進める、そうしたことを考えて取り組んでいるわけであります。

 今、特に高齢者の皆さん方に多くの資産が集中しているとも言われております。本当にお金を必要としている若い世代のところに回っていない、そうした話もあります。これが一つの成長の阻害要因とも言えるわけでありますから、安心を提供していくことがこうした阻害要因を減少させて、人々が将来、安心して消費や経済活動を行うことが可能となって、それが新たな成長の基礎を導いていく、そうした意義を有するもの、そのように考えている、そうした視点をこれは述べているということでございます。

稲津委員 よくわからないんですよね。私が今質問をさせていただいたのは、この政府広報の中に書いていることがちょっと行き過ぎじゃないかという質問をいたしました。るるお話をされて御答弁されましたけれども、到底これは理解ができません。

 例えば、社会保障が充実すれば、将来の不安がなくなるというのはわかりますよ。だけれども、そのことによって経済効果があるんだみたいな、消費につながるんだみたいなことは、これはちょっとまた少し別の次元の話ではないかなということも言えると思うんですよ。

 今ふっと思い出しましたけれども、子ども手当の話のときに、たしか、当時の民主党の皆さんが、経済成長戦略はと尋ねられたときに、子ども手当を導入していくことによって、それが経済効果につながっていくという話をされたことを私は記憶しておりますけれども、何かその延長線じゃないかなというぐらい思ってしまうんです。

 いずれにしても、ここのところは、国民の皆さんに本当に十分理解をしていただけるのか、もっと丁寧な説明をしなければ、なかなか理解が進まないんじゃないだろうかということを私は指摘させていただきたいと思います。

 この後、今度、行政改革、無駄排除の徹底についてということで、これは岡田担当大臣にお聞きしたいと思います。

 そもそも民主党は、二〇〇九年の総選挙のマニフェストでこんなふうに書いていますね。

 国の予算二百七兆円を徹底的に効率化、無駄遣い、不要不急な事業を根絶する。それから、九・一兆円節約した上で、平成二十五年度に十六・八兆円もの財源を生み出す。

 これは、もう何回も何回も出ていますのであれですけれども、あえて今お示しをさせていただきました。

 考えてみたら、そもそも十六・八兆円の財源があれば、今すぐ何も消費税を上げる必要性というのは、これは根拠が薄れてくるわけなんですね。

 特にその中でも、天下りの在籍する独立行政法人、特殊法人、公益法人などへの支出や、国の契約を見直して、国の政策コスト、調達コストを削減する。それから、補助金関連の事務費、人件費を削減。地域の実情に合った基準を認めることで、低コストで質の高い行政サービスを可能にする。天下りのための独立行政法人、公益法人を廃止、補助金は削減等で六・一兆円の財源を生み出す、このようにしたわけですね。

 これは本会議でも質問がありまして、そのときの答弁がちょっと十分ではなかったなという私の認識なんですが、これはあえて伺いますけれども、この天下り法人への毎年の支出十二兆円の削減とか、いわゆる天下り法人の削減、その削減額の問題、この辺について大臣の御答弁をいただきたいと思います。

岡田国務大臣 私、竹内委員の御質問に対してお答えをいたしましたが、まず、天下り法人というのは独法のことを言っておりますが、十二兆円のお金がそこに行っている。つまり、役人OBが天下っている、そういう独法を中心とする団体、そこに十二兆円のお金が行っているというのは、これは一定の仮定を置いているものの、事実であります。

 その十二兆円を全部なくすというようなことはもちろん言っておりませんので、そこにいろいろな無駄がある、その無駄について、それをなくしていくということを申し上げてきたところで、例えば独法でいえば、大体、年のベースでいうと三兆円程度の年間の予算が行っているわけですが、一割、三千億円程度削減を今年度予算でもしているところでございます。

 それから、独法にあった二兆円程度のお金を引き揚げて、一般会計で財源として使ったということで、かなり無駄の削減は進んでいるということでございます。

稲津委員 これは、大臣、到底そういう御答弁では、やはりよく理解できないですね。

 たしか、あのときの本会議答弁では、額の話はされないで、数の話をされたというふうに認識しています。今、額の話もされましたけれども、要するに三千億円程度ですよ。だから、最初に掲げていたものと全然違うわけですよ。努力したけれどもできませんでした、こういうことになるのではないかなと私は思うんですね。

 要するに、結局、官僚の天下り先を温存するような、結果としてそういうことになっている状況の中でありながら、一方で消費税増税を国民に求めていくということが、これは何回も私は言っていますけれども、本当に国民の皆さんに理解をいただけるのかな。だから、ここはやはり丁寧な説明をまず第一段階としてする必要があるだろう、こう思うわけです。

 そこで、このことに関連して、行革、無駄の削減ということで一点伺いますけれども、そもそも我が国の財政を見るときに、これはグロスじゃなくて、資産をしっかり差し引いたいわゆる純債務、ネットで評価をすべきじゃないかな、こういう御意見もあります。

 ちょっとこの後の例は非常に刺激的かもしれませんけれども、消費税を増税する前に資産を圧縮するべきじゃないかな、こういう御意見に対して、二十二年度の決算ベースでの国の財務処理を見ても、貸付金が百四十八兆円、出資金が五十七兆円もあるのではないか。

 野田総理は、二〇〇九年の総選挙の折に、街頭演説でこんなことをおっしゃっていますね。

 消費税一%は二兆五千億円です、消費税五%分の皆さんの税金に天下り法人がぶら下がっているんです、これはもう皆さんも何回も聞いたかもしれませんけれども、シロアリがたかっているんです、それなのに、シロアリ退治をしないで今度は消費税を引き上げるんですか。

 税金が天下り役人に無駄遣いされている状態での消費税増税、これを批判していたわけですよ、批判をしていた。

 さらに、消費税の税収が二十兆円になるのなら、またシロアリがたかるかもしれません、鳩山さんが四年間消費税を引き上げないと言ったのはそこなんです、シロアリを退治して、天下りをなくす、そこから始めなければ、消費税を引き上げする話はおかしいんです、ここまで続けているんです。

 すばらしい演説です。しかし、今となっては全く正反対じゃないですか。

 だから、私、さっきから何回も言っていますように、国民の皆さんに負担を求めるのでしたら、なぜ消費税を上げる前にこういったことに手をつけていないかだ。特に資産の圧縮とか、こういうことで財源をつくれないのか。また、そういったやり方じゃ足りないというのであれば、それをしっかりやった上で、国民の皆さんに御理解いただけるように負担をお願いする、これがやはり何といっても手順だと思うんですけれども、どうでしょうか。

岡田国務大臣 先ほども申し上げましたように、例えば独法について、それが全て要らないなどということは我々は言っておりません。そこにいろいろな無駄があるので、そういうものを何とかすべきだということであります。

 現に我々は、例えば震災対応でURとか、あるいは中小企業対策で政策投資銀行とか、そういうところの需要はあるにもかかわらず、全体として見れば、一割に当たる三千億円を削減しているわけです。そのことはしっかりと申し上げておきたいと思います。一割は少ないという見方もありますが、一方でそういう震災の需要なども出てきておりますので、そういう中で一割削減しているということは、私は大きなことだというふうに思っております。

 なお、独法についての天下りについては、役員の公募ということに取り組んでまいりました。

 具体的な数字で申し上げますと、政権交代前、平成二十年十月一日時点で、八十八の法人の役員に百八十九名の国家公務員OBがついておりました。政権交代後、例えば平成二十三年十月一日時点では、三十六法人四十五名と、百八十九名が四十五名ということで、激変しているわけでございます。そういうことについては、しっかりと国民に伝わるように我々もPRしていきたいというふうに考えております。

稲津委員 三千億、一割という話があって、それをやったからできたんだという認識は違うと思いますよ。それは、約束ができていないのか、あるいは、今約束の途中にあるのかという話ですよ。何かやりましたということには聞こえないですよ。本当にそれで国民の皆さんに説明できるんですかね。

 これはやはり、十六・八兆円のことだとか無駄の削減とか、それから天下り根絶とか、要するに、国民の皆さんに約束したことがまだできていないんじゃないですか。だったら、しっかり謝って、大変申しわけないけれども十六・八兆円は無理でした、そういうことをきちっと謝った上でこういう議論に入ってくるんだったらわかると思うんですが、どうですか。

岡田国務大臣 委員も十分御承知の上で言っておられるんだと思いますが、昨年の夏、私が幹事長のときにマニフェストの中間検証を行いました。なぜできていないものがあるのか。できたものもあるが、できていないものもある。そのことについて、もちろん大震災とか事情の変化というものもあるけれども、同時に、当初から見通しが甘かった部分もある、そのことについては大変申しわけないというふうに私は幹事長として申し上げたところでございます。

稲津委員 ですから、最初からそういうふうに明確に言っていただいたらわかりやすいんですけれども、とにかく説明をした後に、そして再質問したら、いやいや見通しが甘かった、申しわけないということをこれまでも話していた。これはちょっと違うと思いますよ。

 何回も言っていますけれども、国民の皆さんに、本当にそういうような御説明やそういう御答弁で、この五%もの消費税を上げるという大きな問題を説明ができますかと言っているんです。そのことを私は強く主張させていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 もう一つのテーマ、地方消費税についてお伺いしたいと思いますけれども、社会保障の財源化を技術的にどう行うのかという、少しテクニカルな話ですけれども、伺いたいと思います。

 消費税は社会保障の目的に使う、このことを明確にするために、税率を一〇%に引き上げた段階で、九%を国、それから地方の社会保障財源、現行の一%の地方消費税は地方の自由な財源、こういう仕組みになっています。これは、地方交付税として地方に回る分と合わせれば、地方のいわゆる取り分は、現行の二・一八%から三・七二%になる。

 国税の社会保障の財源化というのは理解できるんですけれども、地方消費税について、果たしてこれが本当にベストなのか、あるいはベターなのか、これが非常によくわからないところがあります。

 政府は、地方分については、現行分の地方消費税を除き、現行の基本的枠組みを変更しないことを前提として社会保障財源化を図る、こうしているわけで、では、これをどのようなシステムで具体的に行うんですかということになってくるんですが、現状の一%分以外の上乗せ分と交付税分を社会福祉目的税化するのであれば、技術的にどうやろうとしているのか、このことについて見解を伺いたいと思います。

川端国務大臣 今お触れいただきました部分でありますが、現行の一%を除いた部分に関して、地方消費税分と交付税手当て分とがございます。

 まず、引き上げ分の地方消費税税収一・二%分につきましては、「消費税法第一条第二項に規定する経費その他社会保障施策(社会福祉、社会保険及び保健衛生に関する施策をいう。)に要する経費に充てるものとする。」という法の条文で明記していることで、一応、技術的にと言われる部分の法的な部分の歯どめにしております。

 ただ、御案内のとおり、地方交付税は、法的に言えば、地方交付税法の第三条第二項において、それぞれの地方団体への交付に当たっては、使途を制限してはならないという形になっております。それをどう目的化するのかということのお問いだと思います。

 そういう意味で、今お触れいただきました法定分の一・五二%とそれから地方消費税の増額分の一・二%総額を、社会保障施策に要する経費及び社会保障四経費にのっとった範囲の社会保障給付の総額と、決算や地方財政計画の段階において比較して、出口ベースになるんですけれども、比較をして、それぞれの範囲内であることを確認して、その中で使われているのにプラスして一般財源が使われているということで明らかにしていこうということであります。

 現行の地方消費税を除いて、全額が社会保障財源化され、官の肥大化には使われずに、国民に還元されていることが国民にわかりやすくなるようなことに努めてもらいたいと思いますし、当然ながら、このことに関しては、地方公共団体の役割、御努力も必要でございますので、その分を含めて要請をし、また御協力いただくようにしているところでございます。

稲津委員 それで、このことに関連してもう一点お伺いしたいと思うんですけれども、これは地方分権という観点から見た場合の話ですが、今回の措置は、これは地方の自主決定権を制約することになるのではないかという懸念です。

 要するに、社会保障の財源化が地方分の税収に及ぶことになったために、税収をどう使うかということについては、これは地方分権の観点から見ると、それは地域の実情に応じて決める、そういうことが制約されないのかということを、今若干、大臣からも御答弁の中で触れられましたけれども、地方分権の関係で見たときに、今回の地方消費税の増額分及び地方交付税の社会保障財源化、これをどう見るのか、このことについてお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 御指摘のように、基本的には、地方団体の財政運営の自由化を担保するという意味では、一般的には、使途を制限しない形で地方税の充実強化を図ることが大原則であることは御指摘のとおりでございます。

 そして、これまで、知事会を含めいろいろな地方自治団体からは、地方消費税の充実を含めて、地方の一般財源の確保をしてほしいという要望は毎年のようにいただいてきた経過がございます。

 そういう中で、地方の財政支出の中で実はかなりのウエートを占めて社会保障の財源がある、そして、この財源の手当てにも大変御苦労されているということがありますので、今回、社会保障の安定財源の確保と財政健全化の同時達成を目指す第一歩として、消費税及び地方消費税の段階的な引き上げを行うものでございますけれども、こうした今回の改革の趣旨とか引き上げ分の地方消費税の社会保障財源化の必要性については、これは国と地方の協議の場でも随分御議論をさせていただきました。地方団体に十分説明をし、地方団体からは理解をいただいているところでございます。

 そういう意味で、地方税財源の充実という点では、これまでの地方税制の目指す基本的な方向に逆行するものではない、方向は私は同じものだというふうに思いますが、今後とも、課題としては、やはり地域主権改革の基本である地方税の充実強化、そしてその他の、今、財政調整、偏在性の調整とかいう、いろいろな税制がありますけれども、これの抜本的な見直しを含めて、偏在性が小さくて安定的な税源には引き続き精力的に取り組んでいく必要があると思っております。

稲津委員 今回、国と地方の協議の場においてさまざまな御意見があって、ある一定程度の理解も示していただいたというようなことも、私もいろいろな意見交換の中で聞いてはおります。

 ただ、問題はもっと根本的な、理念的な話でございまして、例えば、ことし四月から本格施行されました地域主権一括法ということがあって、そもそもやはり、権限をどんどん地方に移譲していこう、そして地域のことは地域で決めていくんだ、こういう全体の流れがあって、本来的に言うと、権限も移譲するし財源も移譲していくというのが基本的なあり方だと思うんですよ。ですから、そのことをしっかり目配りしなきゃいけないということを申し上げておきたいと思います。

 次は、地方消費税の引き上げと地方財政計画についてということで、何点か少し伺っていきたいと思うんです。

 現在、消費税法の改正案の中で、法案では、増収分のうち地方消費税分一・二%、それから消費税の交付税率分が〇・三四%とされている。このことによって、では具体的に地方の増収額というのはどのくらいになるのかということ、これはまだ今国会の中では明示されていないと思いますので、あえて伺いたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 今回の引き上げで、総額的に、二〇一五年時点で一%当たり二・七兆円、五%では十三・五兆円程度ということを見込んでいることになっております。そのうちの地方分であります一・五四%の増収分は、四・二兆円程度になると見込まれております。

 なお、地方分の一・五四%については、地方消費税の充実を基本としつつ、財政力の弱い地方団体の財源確保の観点から、地方消費税分一・二%、地方交付税分〇・三四%ですので、地方消費税の増収額は三・二四兆円程度、地方交付税法定率分の増収額は〇・九二兆円程度になるというふうに試算をしております。

稲津委員 そうすると、地方全体での増収額というのは今の三・二プラス〇・九ですから、四・二、三ぐらいですか、それはわかりました。

 この地方消費税には各県ごとの清算制度というのが設けられておりまして、現状では、これは小売の年間販売額とか人口とか、それから従業者数といった指標で清算されているというふうに承知をしております。

 これは、引き上げ分を社会保障の財源化にしていくというのであれば、例えば、この社会保障に多く使われるのはやはり高齢者の方々のところが大きいと思います。そういうことを勘案していきますと、例えば、この清算のところの一つの指標の中に高齢者人口を指標にするとか、福祉にかかわる費用とか、あるいは負担の実態に合わせた、そういう制度の改正が必要ではないかということについてはどう思いますか。

川端国務大臣 御指摘のように、今の消費の部分の配分は、小売年間販売額プラスサービス業対個人事業収入額で八分の六、人口で八分の一、従業者数で八分の一で配分をしております。

 これは、いわゆる名前のとおり、消費税ということでありますので、地方消費税は消費者が消費を行った地域において最終的に負担を求めるということでありますので、国として全部集めたときに、どこで消費をされたかという指標として今申し上げたようなことを取り入れまして、最終消費地に税収を帰属させるということで、消費に相当する額を基準として都道府県間の清算を行っているという仕組みでございます。

 委員御指摘のように、清算に当たって、高齢者人口のような消費と直接関係ない指標を、財政調整的な意味でそういう指標を用いることは、地方消費税という、消費税というものの清算には基本的にはなじまないと考えております。

 ただ、今言われた財政調整的には、そういう意味で、地方交付税においては、高齢者人口、六十歳以上人口等をもとに、高齢者の医療あるいは介護に要する経費に係る基準財政需要を算定しておりますので、高齢者人口の多い地方団体の実態に合わせて交付税措置で調整しているということでございます。

稲津委員 交付税措置をされているという話があって、そこはよく理解できるんです。

 結局、何を言いたいかというと、この現行の清算方法というのは、結果として都市部に税収が多く行く仕組みになってしまうところがある。福祉にかかわる費用としては、やはり、都市部ももちろんそうですけれども、地方の高齢者の多い地域がたくさんありますので、そういうことになると、どちらかというと地方の方の負担が大きい、よって、この清算方式にそういったことを勘案することもどうですかと今質問しました。ぜひ、今御答弁いただいた別途の対策をしっかり進めていくことを視点としてお願いしたいと思います。

 次は、地方財政計画上、消費税率の引き上げの見合い分の税収が増加しても、増収相当額分の地方の歳出がふえなければ、これは単に財源不足分が減少することになる。これは、地方財政計画上のいわゆる極めてテクニカルな話ですけれども、これでは交付税とか臨時財政対策債の減少となる。地方に社会保障財源を保障すると言いながら、結果として国の財政の補填であってはならない、こういう意見がいろいろ寄せられていますけれども、大臣はこの点についてはどうお思いですか。

川端国務大臣 現実には、国もそうですけれども、地方も巨額の財源不足が生じているということで、平成二十四年度でも十三・七兆円あります。

 基本的には財源不足をそういうふうなことで補っているということで、その補い方は、いわゆる国と地方の折半ルールで、国からは一般会計の臨時財政対策特例加算、それから地方は特例債での臨時財政対策債の発行で、いわゆる折半ルールというものでやっております。

 そういう意味では、今回、この社会保障で手当てをしたということで四・二兆円程度の増収が見込まれるということは、社会保障の充実等による影響を除いた分の交付団体の増収分だけ、結果としては、御指摘のように、財源不足が解消されるということに、整理の仕方によっては計算できる。

 ただ、それは半分国で半分地方という形になりますので、地方の財政の健全化と社会保障の安定財源の確保ということは両方とも図られるので、御指摘のように、必ずしも国の財源不足を全部肩がわりしているだけだということではないということは御理解をいただきたいというふうに思っています。

稲津委員 次の質問は、消費税の増収分の国と地方の配分の基礎となった地方単独事業、二・六兆円、ここには、乳幼児とか障害者の医療費の助成制度の事業も入っております。これらの経費は、現行の地方財政計画ですとか交付税の算定の基準財政需要額に具体的には計上されていない。

 まず、地方財政計画等に確実に全額計上していく必要があるんじゃないか、このことについてどうですか。

川端国務大臣 今回、二・六兆円ということを計上する経過は、この委員会でも前から申し上げていて、時間の関係もありますからもうあえて申し上げませんが、地方の単独事業分を整理する中で比率で案分をしたということにいたしました。

 そういう中で、二・六兆円の計算は、これは地方の単独事業であるという部分を四経費にのっとる部分として四経費に加えた部分で、トータルの比率で見て算定した額を、人件費を除いて、八割にする、それから制度として確立されたものとして七五%にするということで二・六兆円を出しましたので、個々のものを積み上げて、この事業をこう計算するから二・六兆円というふうになったのではなくて、事業の対象の項目を挙げて総くくりの計算をしたということになっております。

 地方財政計画においては、給与関係経費の一部として計上されている保健師さんの人件費は別のところで計上されていますから、それを除いた分として、個々の事業の積み上げではなくて、地財計画の中で枠として計上されている社会保障関係費の地方単独事業分の五兆九千五百三十億円の一部として計上されているという形になっております。

 あわせて、個々の事業内容の内訳、いろいろあると思うんですけれども、基準財政需要額についても、定量的にはさまざまな算定経費の中にその一定額が計上されていることになっておりますが、今御指摘のような乳幼児の健診とかいうのは入っておりません。これは、いわゆる国の仕組みという制度等の整合性を図るという観点に今まで整理ができております。それで、入れないという整理になっております。

 ただ、今回、きのうも御答弁したんですが、こういう整理をしていく中で、相当程度の地域でやられているものは、減額とかいう措置はやめて、きちっと認めるべきではないかという議論が随分出ていることは事実でありますので、厚生労働省ともしっかりとこの点については議論をしていきたいと思います。

 今の整理はそうなっていることは御理解いただきたいと思います。

稲津委員 時間ですのでこれで終わります。

 最後に一点だけ。消費税が上がることによって地方の団体も負担をする消費税の額も増加するということですので、一つの県でいうと数百億円ぐらいということもあります。そういったことをぜひ勘案していただきたい。

 以上で終わります。

中野委員長 これにて稲津君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十分開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、子ども手当と税の問題についてただしたいと思います。

 民主党がマニフェストで初めて子ども手当を打ち出したときの民主党代表は岡田さんだったと思いますが、それでよろしいですか。

岡田国務大臣 私の記憶では、そうだと思います。

佐々木(憲)委員 そのときは、日本刷新八つの約束の三番目に、こう書かれておりました。公立高校改革に着手し、月額一万六千円の子ども手当を支給します。

 このときは、どのような考えで子ども手当を打ち出したのか、お聞きをしたいと思います。

岡田国務大臣 まず、子ども・子育てをしっかり支援する、そういった政策を打ち出そうというふうに考えました。

 その際に、そういったお金の面、つまり手当ですね、それから保育所の整備といった両面でやっていかなきゃいけないということで、従来、児童手当があったわけですが、それを抜本的に拡充しようということで、子ども手当を打ち出したところであります。

 これは民主党になって議論を続けてきたものですが、実は、その前、新進党の時代にそういう議論をしておりまして、そういう意味では、その後いろいろな党に分かれましたが、根っこはそこにあったというふうに私は思っております。

佐々木(憲)委員 その後、小沢一郎さんが代表になって、二〇〇七年の参議院選挙で、子ども手当は三つの約束の二番目に格上げされたわけです。そして、支給額が一人月額二万六千円とされました。そして、二〇〇九年の総選挙では五つの約束の二番目に掲げられて、目玉政策として一躍注目を浴びたわけであります。

 小宮山大臣にお聞きしますけれども、最初は一万六千円だったですね。その額が二万六千円、こういうふうに一万円ふえたわけですが、その理由について説明していただきたいと思います。

小宮山国務大臣 子ども手当につきましては、民主党としまして、子供の育ちに必要な基礎的な費用の相当部分をカバーするということ、また、諸外国の手当制度と比較して遜色ない水準にするということ、そしてまた、日本の子育てに係る予算の対GDP比は、先進諸国の中でアメリカに次いで低い水準にあるということから、総合的に勘案いたしまして、二〇〇九年の衆議院選挙のマニフェストで、子供一人当たり二万六千円としたところです。

佐々木(憲)委員 これは、二〇〇六年、小沢さんが代表だった当時に、子ども手当をマニフェストの上位に入れてくれるように頼んだのが小宮山大臣だったんじゃないですか。

 そのときに小沢さんは、女性に子供の話をすると目の輝きが違うというような話をされて、若い人は自分の子供、高齢者は孫のことで、子育て政策は大事だねというお話をされていたと思いますが、そういう記憶はありませんか。

小宮山国務大臣 それはそのとおりでございます。

佐々木(憲)委員 その上で、二〇一〇年の一月、政権について以後ですけれども、第百七十四国会の施政方針演説で鳩山元総理はこう言っておりました。

 若い夫婦が経済的な負担を不安に思い、子供を持つことを諦めてしまう、そんな社会を変えていきたい、未来を担う子供たちがみずから無限の可能性を自由に追求していける、そんな社会を築いていかなければなりません、こう述べたわけであります。

 この理念は今でも引き継がれているのか、確認をしたいと思います。

小宮山国務大臣 それは、民主党はずっと子ども・子育て政策を大事な政策の柱としていまして、子供はやはり未来をつくる力で、チルドレンファーストという理念に立っていますので、その中で総合的に政策を推進していくことが重要だと考えています。

 その点では、鳩山元総理の施政方針演説で述べた理念、これはずっと続いていると思っています。

 現在、この委員会で御審議いただいている新システムの法案も、そういう理念のもとで提出をさせていただいています。

佐々木(憲)委員 後でも検証しますけれども、この理念が本当に続いているのかどうか、私は根本的な疑問を持っているところであります。

 それでは、この子ども手当法案を提案したとき、長妻厚生労働大臣は二〇一〇年二月二十三日の本会議でこう述べております。

 子ども手当は未来への投資だというのが大前提でございます。我々政治家として国家百年の計に立つ政策を打たなければならない。これも一つの大きな理由でございます。今回の子ども手当の支給において、結果として子供の生活、教育の質を向上させる、そして、結果として子供の貧困率の改善にもつながるということでございます。

 こういう答弁をされています。

 つまり、子供一人当たり月額二万六千円の子ども手当は、子育ての経済的負担を軽減する現金給付策であって、また、未来への投資ともいうべき、民主党の子育て支援の柱である、国家百年の計だ、この述べていたことは事実ですね。

小宮山国務大臣 それは事実です。

佐々木(憲)委員 このように、民主党政府の発言に一貫して流れておりますのは、子育ての経済的負担の軽減というのが一貫しているわけであります。

 その背後にありますのは、若い世帯の厳しい生活実態というのがあったわけですね。子育て世帯の家計がどれほど大変なものか、議論の前提として確認をしておきたいと思うんです。

 内閣府にお聞きしますけれども、この十年間で、二十代それから三十歳代の子育て世代の所得、これはどう変化しているか。一九九七年と二〇〇七年、この数字を紹介していただきたいと思います。

中野委員長 小宮山厚労大臣。(小宮山国務大臣「少子化担当です、内閣府」と呼ぶ)ごめんなさい。少子化対策担当大臣小宮山洋子さん。

小宮山国務大臣 済みません、一人二役でございまして、今度は少子化担当大臣として内閣府の方の答弁をさせていただきます。

 二十代、三十代といった子育て世代の所得分布を見ますと、二十代では、一九九七年、平成九年ですが、このときは年収が三百万円台の雇用者の割合が最も多いという状況でした。それが、十年後、二〇〇七年には、二百万円台の前半の雇用者が最多になっています。

 また、三十代では、一九九七年には、年収が五百万から六百九十九万円の雇用者の割合が最も多くなっていましたが、二〇〇七年には、三百万円台の雇用者が最も多くなっています。

 このように、二十代、三十代の所得分布が十年間で低所得層にシフトをしているということがわかります。

 この背景には、バブル崩壊以降の厳しい経営環境のもとで、正規雇用の割合が非常に減りまして、相対的に賃金水準が低い若年層の非正規雇用の割合が上昇したことなどが要因だと考えられます。

佐々木(憲)委員 少子化白書の中で今言われたようなことが書かれているわけであります。

 十年間で低所得層にシフトしているということは、若い子育て世代の家計は総じて急速に悪くなっている。

 配付資料を見ていただきたいんですが、これが、今小宮山大臣が説明をしたものでございます。

 その理由ですけれども、この白書にはこう書かれております。

 若年者の雇用をめぐる環境を見ると、完全失業率及び非正規雇用割合ともに、全年齢計を上回る水準で推移している。また、非典型雇用者の有配偶率は低い。非典型雇用者というのは、パートタイム、有期雇用などの正社員以外の雇用でありまして、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員、こういうものが入りますね。

 白書はこう言っております。三十歳から三十四歳の男性においては、非典型雇用の人の有配偶率は正社員の人の半分程度、つまり、結婚をされている方々は、非正規社員は正社員の半分だというんですね。就労形態の違いによって家庭を持てる割合が大きく異なっている。

 非正規雇用の人々は配偶者のいる比率が非常に低い、これも大変大きな問題だと思いますが、こういう実態だと思うんですが、どうですか。

小宮山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、これはやはり、非正規雇用で所得が低いと結婚ができない、だから子供も持てない、そういう若い人の比率がふえているということは事実でございまして、今、何とか若い人たちの正社員としての就職に結びつけるように努力はしているんですけれども、現状はそういう状況であるということは事実でございます。

佐々木(憲)委員 それから、子育て世代の貧困化の問題についてはほかの資料でも確認できるわけですが、総務省の家計調査ではどうなっているかというと、二〇〇〇年から二〇一〇年の十年間、これを確認したいんですが、二十九歳以下と、三十歳から三十九歳、それから四十歳から四十九歳、それぞれの階層で可処分所得はどう変化しているか、御紹介をいただきたいと思います。

川端国務大臣 総務省の家計調査によりますと、勤労者世帯一世帯当たり一年間の可処分所得の減少額が、二〇〇〇年から二〇一〇年の十年間で、世帯主の年齢が二十九歳以下では、名目で三十七万九千円、実質二十五万三千円の減、三十歳から三十九歳では、名目で三十七万五千円、実質で二十一万九千円の減、四十歳から四十九歳では、名目で三十九万円、実質二十万五千円となっております。

佐々木(憲)委員 この数字、皆さんにお配りした二枚目がその数字でございますけれども、ともかく、これは大変な所得の低下であります。可処分所得が二十九歳以下で三十八万円の減少、実質でも二十五万円ということですから、生活が非常に厳しくなっていることはもう明らかであります。

 岡田大臣、この減り方をどのようにごらんになっていますか。

岡田国務大臣 非常に厳しい状況かというふうに思います。

 そして、多くの夫婦が子供二人を望みながら実質的にはそこに届いていないということの大きな理由の、二つ理由はあると思うんですが、やはり、経済的な理由が数からいえば一番多い。もう一つは、仕事との両立ができない。二つの理由がありますが、経済的理由というのが最大のものであるというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 この経済的な、深刻な家計の実態にどう対応するかというのが政治に求められてきたわけであります。子ども手当もそのための大変大事な柱として民主党政権としては位置づけていた。

 もう一つ、国際的な角度からこの実態を確認したいんですけれども、内閣府は、日本、韓国、フランス、アメリカ、スウェーデンの五カ国で、子育て世代に対し、少子化についての国際意識調査を行っております。二〇一一年三月に公表された、少子化社会に関する国際意識調査というものであります。

 この中で、さらに子供をふやしたいかとの設問に対してどういう回答があるか、紹介をしていただきたいと思います。

小宮山国務大臣 今委員からございました、二〇一一年の少子化社会に関する国際意識調査、これは、希望する子供の数と実際の子供の数について、各国、御紹介いただいたとおり、日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデンですが、今いる子供の数の平均が一・一から一・四人、希望する子供の数の平均が二・二から二・四人で、これは各国で大きな差は見られません。

 しかし、子供をふやすかということについては各国で大きな違いが見られまして、日本では、今より子供はふやさない、または、ふやせないと回答した人の割合が四七・五%で、そのほかの国と比べ、最も高くなっています。

佐々木(憲)委員 私も、この今の数字を確認してみましたが、日本の場合は約半分ですね、ふやさない、または、ふやせない。ところが、フランスは一七・七、アメリカは一三・五、スウェーデン七・四、これは日本が断トツなんですよ、子供がこれ以上ふやせないというのは。現状では、二人目、三人目の子供を諦めているという傾向があります。

 何で日本がこんなに高いのか、その理由を説明していただきたい。

小宮山国務大臣 この調査の中で、希望する子供の数になるよう子供をふやさない、または、ふやせないその理由は、一番目が、子育てや教育にお金がかかり過ぎるから、これを挙げる人が最も多く、男性で四四・六%、女性で三九・五%になっています。そして二番目が、自分または配偶者が高年齢で産むのが嫌だからということを挙げる人が多くなっていて、これは男性二六・八%、女性三五・一%で、三番目が、働きながら子育てできる職場環境がないを挙げる人が多く、男性一四・三%、女性二六・三%となっています。

佐々木(憲)委員 配付資料を見ていただきたいんですけれども、先ほど紹介した国際意識調査では、子供をふやさない理由、または、ふやせない理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎるから、今御答弁がありました、男女とも四〇%前後ですね。多くの子育て世代が経済的要因で子供をつくることをためらっている。これは、フランス、アメリカ、スウェーデンと比較しても非常に高い回答なんです。

 このように、日本では経済的要因というのが少子化の大きな原因になっているということであります。

 このような背景があったからこそ、二〇〇九年の総選挙で、多くの子育て世代が民主党の子ども手当月額二万六千円というものに大いに期待をして投票し、民主党が政権についた、こういう経過だったんじゃありませんか。

小宮山国務大臣 そのとおりだというふうに思います。ずっとどの調査を見ても、持ちたい数の子供が持てない最大の原因が経済的な負担ということでしたので、総合的に、もちろん今提案している法案のように、居場所もつくらなきゃいけない、働き方も変えなければいけない。でも、まずその経済的負担を何とか少なくしようということで、子ども手当の提案をいたしました。

佐々木(憲)委員 それは結果としてどうなったかという点であります。

 次のページを見ていただきたいんですけれども、四枚目ですね。児童手当、子ども手当制度の比較です。

 自公政権時代の児童手当が、民主党政権になって子ども手当となって、月額二万六千円の半額が当初支給されました。しかし、その後、民自公の三党合意によりまして、月額一万円の児童手当を、三歳未満や三人目には一万五千円、こうなったわけです。

 岡田大臣はしばしば、新たな児童手当制度につきまして、政権交代前と比べますと金額では抜本的に拡充されたと、いわば手放しで評価されていますけれども、この新たな制度で、子育ての経済的負担を軽減したと言えるほど抜本的な拡充がされたと言えますか。

岡田国務大臣 この新しい児童手当、これと従来の自公政権時代の児童手当を比較してということですが、ゼロ―三歳未満で一万円が一万五千円、それから、三歳以上は五千円が一万円、中学生はゼロが一万円ということで、そういう意味で、額は非常にふえたということは言えると思います。

佐々木(憲)委員 では、具体的な数字の実態についてお聞きをしていきたいと思います。

 今度の新しい児童手当と、それから子ども手当が導入される前の旧児童手当、この実質手取り額についてお聞きしたいと思うんです。

 夫婦と小学生の子供一人の世帯で、年収三百万、五百万、八百万、一千万、一千五百万、それぞれの階層の実質手取り額はどうなったか、お答えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 平成二十四年六月以降の児童手当の支給額を、月額で平成二十一年度の児童手当のときと比較いたしますと、夫婦と児童一人のサラリーマン世帯のうち、小学生までの児童を持つ世帯については、年収三百万でプラス六百六十七円、年収五百万円でマイナス三百七十五円、年収八百万円と年収一千万円でマイナス四千八十三円、年収千五百万円でマイナス八千二百円。中学生の児童を持つ世帯では、年収三百万円でプラス五千六百六十七円、年収五百万円でプラス四千六百二十五円、年収八百万円でプラス九百十七円、年収一千万円でマイナス四千八十三円、年収一千五百万円でマイナス八千二百円と試算をしています。

 これは、残念ながら、年少扶養控除を外した額と、それからその後、申しわけないことに財源が確保できないで子ども手当が上げられていないことから、ここの点は私も非常に、お約束と違いますし、一番何とかしなければいけないと考えているところでございます。

 ただ、全体として、以前の児童手当に比べると、子供に注目したので、児童養護施設など施設の子供にも出したということと中学生までに出したということで、もとが総額で二・一兆円だったものが二・二兆円になって、一千億円だけですけれどもふえているということも申し添えさせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 かなり、だんだん答弁が苦しくなってきたようでありますが、配付資料の五枚目を見ていただきたいんですね。

 実質手取り額の変化がここに出ておりますが、これは厚労省が作成したものですよ、給付額はふえたけれども、子ども手当の財源として年少扶養控除が廃止されて、所得税、住民税が増税になりました。そのため、中間的な所得世帯以上では、実質手取り額はマイナスになっているわけであります。

 今、三歳から小学生、一行飛ばした説明をされましたけれども、これを見ますと、全体としてマイナスが圧倒的に多くなっているわけであります。これは抜本的拡充というよりも、先ほど申しわけないという答弁をされましたが、大変な後退なんですね。

 子ども手当が導入されて初めての給付の日に、多くの若い子育て世代の方々が、その手当を受けまして、政権交代の実感を得た、こういうふうに言っておりました。子供二人なら、四カ月分で十万四千円が振り込まれたわけです。それが思い思いの子育ての費用に使われました。

 しかし、それもつかの間、翌年から所得税が増税になる。実質手取り額が差し引き減少になります。さらに、三党合意で手当の額が引き下げられる。実質手取り額がまたまた減少する。そして、最終的に、子ども手当が児童手当に戻される。その結果、子供がゼロ歳から小学校の家庭で、年収四百万円中ごろより上の世帯では、旧児童手当と扶養控除があったときに比べまして実質手取り額がマイナス、つまり負担増になっているのであります。

 これは、政権交代前と比べて抜本的に拡充されたという説明は成り立たないわけですね。標準的な年収以上の子育て世帯では経済的負担が、軽減されるのではなくて逆に重くなっている。これが実態なんじゃないですか。

岡田国務大臣 全体の額は、法律を成立させるためには各党との話し合いが必要になったわけで、何とかもう少しという気持ちは非常に強く持っておりましたが、最終的に、旧児童手当に戻さないためにはどこかで合意しなければならないという中で、こういう数字になっております。

 私も非常に残念に思う点はありますが、ただ、控除から手当にということで、例えば、三百万円層であれば明らかにふえているし、五百万円層でも、小学生まではマイナスですけれども、中学校三年間は大きなプラスですから、差し引きすれば恐らく辛うじてプラスになっているのではないかということで、それ以上の層についてはマイナスになっていて、そこは残念ですが、ある意味での再配分ということにはなっているということは言えると思います。

 所得の少ないところに厚目に手当が行っていて、差し引きした手当がですね、多いところ、一千万とか一千五百万というところは明らかにマイナスになっているということであります。

佐々木(憲)委員 そういう説明を幾らしても、実際に子ども手当を受けていた人たちは、二、三年たったら、プラス、もらう方が多かったのに、出す方が多くなっているんですから。

 しかも、小学生まではマイナスだけれども、中学生になったらもらえるんだ。小学生の子育て世帯の家計から見ると、中学生といっても、いつまで待てばいいんだ、小学生のときに大変なんだから、そのときに実際に支給されていないわけですね。

 そういうことになると、これは完全に政策目的が破綻したということじゃないんですか。

岡田国務大臣 実は、いろいろな意味でのそういったお金がかかるのは、むしろ中学生や高校生、そして高校生には授業料無償化があるわけで、そこも含めて考えると、状況は大分違うと思います。

 いずれにしても、批判は甘んじて受けますけれども、これは制度を改善、よりよくするために、我々としても非常に厳しい中で決断をせざるを得なかったということであります。

佐々木(憲)委員 制度をよりよくすると言うけれども、より悪くしているんですよ、実際には。

 赤字の世帯が発生するのは事実ですから、その場合に、財源の手当てがきちんとできていなかったと小宮山大臣も答弁されていますけれども、赤字世帯をこれだけ埋めるのにどのぐらい財源が必要なんですか。

小宮山国務大臣 実質手取り額のマイナス分を補填するための所要額、これはどのような形で手当額を引き上げるかによって異なります。全年齢で一律に上げるのかとか、特定の年齢階層や収入階層で引き上げるのかなどによって異なりますが、仮に、所得制限額未満の人について、実質手取り額のマイナス分を補填するため、マイナス分として最大の月額四千八十三円を小学生以下の子供に関して一律に上乗せをするとしますと、給付費ベースの所要額がおよそ六千億円になります。

佐々木(憲)委員 一つ一つ確認をしていきます。

 かつて、前の児童手当のとき、二〇〇九年度の給付総額は幾らでしたか。それから、年少扶養控除等による減税額、これは幾らでしたか。

小宮山国務大臣 平成二十一年度には、児童手当の給付総額がおよそ一兆円、年少扶養控除等による税負担の減少額がおよそ一・一兆円であり、合計でおよそ二・一兆円でした。

佐々木(憲)委員 二・一兆円だったんですね。これが旧児童手当の必要額でありました。

 新しい児童手当制度の給付総額、平年度ベースで幾らになりますか。

小宮山国務大臣 これは、年少扶養控除等を見直して手当額を増額した結果、新たな児童手当の給付総額は二・二兆円強になるため、総額で見れば、少しですが充実をしていると申し上げたところです。

佐々木(憲)委員 所得制限を超える世帯への特例給付を除くと幾らになりますか。

小宮山国務大臣 所得制限額以上の人に対する手当については、子供一人当たりの支給額は五千円、平年度ベースの給付総額がおよそ九百億円になります。

佐々木(憲)委員 要するに、それを除くと二・一兆円から二・二兆円程度ということですね。旧児童手当のときは二・一兆円の必要額でありました。今は二・一兆円から二・二兆円というわけですから、ほとんど変わらないわけですね。

 昨年、二〇一一年度予算案の時点で、政府が提出した子ども手当法の給付額は幾らと想定していたでしょうか。その場合は、赤字世帯はどの程度発生することになっていましたでしょうか。

小宮山国務大臣 平成二十三年度の子ども手当に関する政府案では、平成二十二年度に一律一万三千円であった子ども手当に対し、三歳未満で七千円を上乗せして二万円にすることを提案していましたので、給付総額はおよそ二・九兆円と見込んでいました。

 この案では、平成二十一年度の児童手当のときと比較をすると、年少扶養控除廃止後の実質手取り額が、三歳から小学生までの子供を持つ年収八百万円前後の一部の世帯で若干マイナスにはなりますが、大半の世帯でプラスになっていました。

佐々木(憲)委員 この二・一兆円の場合は赤字世帯が先ほどみたいに発生するんですけれども、二・九兆円なら赤字世帯はほとんど発生しない。要するに、八千億円程度の財源があれば赤字になる世帯がない。先ほどは六千億円という数字も言われました。

 ところで、安住大臣、昨年の秋に法人税を三〇%から二五%に引き下げましたね。この税収減というのは年間幾らぐらいなんでしょうか。

安住国務大臣 八千億円です。

佐々木(憲)委員 ほとんど同じ金額で、これはペイ・アズ・ユー・ゴー原則を無視して、ペイ・アズ・ユー・ゴー原則というのは、簡単に言えば、減税をする場合にはその財源を手当てして減税をするというのがペイ・アズ・ユー・ゴー原則。安住さんはずっと最初から、それが大事だ、それが大事だと言ってこられたわけですが、この法人税率引き下げは、財源はペイ・アズ・ユー・ゴー原則にのっとって見つけていたんでしょうか。

安住国務大臣 これは、そういうふうな見方をする方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではございません。やはり特異な要因がありまして、先生、復興のための財源を確保するためにどうするかということで、まず八千億円ありきではありません。これは、一旦下げたものに対してもう一回、一〇%、三年間上げさせていただくことで、二兆四千億円を三年間で出す。

 これは復興のための財源としてそうしたことをやらせていただきましたから、そういう点では、通常で言われているペイ・アズ・ユー・ゴーの原則にのっとってという話ではございませんでした。

佐々木(憲)委員 要するに、ペイ・アズ・ユー・ゴー原則にのっとっていないということなんですよ。

 簡単に言うと、年間八千億円の減税をしました、ところが復興増税という理由で三年間はその分上げました、したがって、とんとんになります。三年間だけですよ。四年たちましたら減税が実際に実行されます。

 これは、期限あるんですか、この減税は。いつまでやるんですか。

安住国務大臣 世界の中で競争している日本企業の法人減税ですから、時限を決めてやっているわけではございません。

佐々木(憲)委員 ずっと減税じゃないですか。

 そういうことを一方でやりながら、子ども手当を削減したら家計が赤字になっているところが逆に出てきた。そっちは、六千億から八千億あれば赤字が解消できる。そっちの方から、いわば増税はそのままにしておいて、何で大企業の減税だけやるんですか。こんなおかしな話はない。

 これは、どう考えても逆立ちしていると思います。チルドレンファーストとか言うけれども、大企業ファーストと言わざるを得ない、そういうことになるんじゃありませんか。

岡田国務大臣 委員、金額が同じだからといって、法人税の減税と児童手当の問題を同列に論じるというのは、ちょっと乱暴な議論だと思うんですね。

 そして、児童手当、旧子ども手当ですが、この件について言えば、確かに赤字のところがあるという御指摘はそのとおりですけれども、限られた財源の中でやっていくという考え方に立てば、年収一千万や一千五百万のところが赤字といったって、別に、旧児童手当の時代と比べて手取りが減っているということであって、そういう所得の多いところが旧児童手当の時代と比べて年少扶養控除が廃止になったことによって全体の額が減ったからといって、私は、より所得の少ないところに厚く配分されたということであれば、それだけでも価値のあることである、そういうふうに思っております。

安住国務大臣 先生、反論をちょっとだけ、もうささやかな反論ですけれども。

 先生、三百万とか五百万とか八百万というのは、これは、大企業であっても中小零細企業であっても、多分お月給をいただいて子供さんをお育てになっている方のことですよね。その会社に対して我々としては倒産されたり日本から出ていってもらっては大変困るから、そういう意味では、その給料を維持しないといけないし、その母体である企業というのはやはり元気でなきゃいけないと思うんです。それが一つ。

 もっとさかのぼると、先生がおっしゃるとおりで、最初にお示しになった収入階級別雇用者数の構成も、これはデフレもあるでしょうけれども、企業がもし元気でもっともうかっていれば、お給料に反映したり雇用がふえていくということがありますから、そういう意味では経済主体の一つである企業が、国際的に比較したとき、まあ、これはまた控除のこととかいろいろお叱りはあるかもしれませんが、日本の法人税はやはり私どもから見れば企業負担が大きいということで判断をしましたけれども、それは、企業というよりも、企業に勤めているこういう先生がお示しになったお月給をもらっている方々に反映しているということだけ私はわかっていただきたい。

 それから、副総理がおっしゃいましたけれども、日本の場合、例えば所得税のお支払いをいただいておりますけれども、税負担が五%、一〇%という比較的低い階層の方が全お給料をもらっている方の八五%ですから、そういう点では、この一千五百の方がマイナスになっていると言いますけれども、実質八五%近い方々にとっては、この新たな児童手当でもプラスになっている方が多いということだけ申し添えさせていただきます。

佐々木(憲)委員 いろいろ反論したような形をとっておりますが、反論になっておりません。大体、会社が倒れるかのような、そんな赤字のところに税金を取っていますか。取っていないじゃないですか。

 我々が言っているのは、黒字の大企業に減税してやるのは必要ないと言っているんですよ。そうでしょう。(安住国務大臣「中小零細も」と呼ぶ)中小零細なんていうのは七割が赤字だ。そういう状況で、減税は当然だ、減税は当然だと、大企業に対して。

 大企業に減税したら賃金が上がりましたか。春闘でどれだけ賃金が上がったと思っているんだ。でたらめなことを言っちゃいけないよ。減税してそれが全て賃金に回れば、それは景気がよくなるでしょう。なっていないじゃないか。そういう状況だから、本当にこれまでも減税してきて実際そうだったんだ。そういうでたらめなことを言っちゃいけない。

 それから、何か金額が同じだからどうこうと岡田大臣は言われたけれども、姿勢がここにあらわれているわけです。どちらを大事にするのか。黒字の大企業に減税してやって内部留保が膨らむ方が大事なのか、それとも、大変苦労して、所得が減り、負担がふえ、そういう中で子供たちを育てている子育て世代、これを経済的に支援する方が大事なのかという選択なんですよ。

 そういう問題を、何か金額が同じだから乱暴な議論だ、そんなことはありません。乱暴なのは民主党の方なんだ。そういう姿勢が問題だと私は言っているわけです。

 民主党政権になりまして、子育て世代に対する仕打ちというのはこれにとどまらないんですよ。復興増税、まあ冷たい仕打ちだ。復興増税によって経済的負担がふえ、さらには消費税増税による負担増がこれに加わるんですよ。この部分で、若干黒字になっている家計は、その次に今度は増税が来るんですよ。

 まずお聞きしますけれども、年収三百万、五百万、八百万の子育て世帯で、復興増税による負担増、これ、まず幾らになりますか。

安住国務大臣 夫婦と小学生一人の世帯の場合は、給与収入三百万で年間千九百円、国税は九百円です。給与収入五百万で年間三千五百円で、国税分で二千五百円。給与収入八百万の方では国税九千六百円となります。

 しかしながら、いいですか、もう少しつけ加えさせていただきますと、もし夫婦と高校生一人と大学生一人の世帯にこれを置きかえた場合はどうなるかというと、三百万で年間千円でございますが、国税はゼロでございます。それから給与収入五百万で年間二千二百円ですが、国税は千二百円。八百万だと年間六千四百円で、国税分五千四百円というふうに、世帯をとりますと、減っていったり、分類によってはそんなに御負担が、復興の重荷がぐっと来るということだけではないということだけ言わせていただきます。

佐々木(憲)委員 それは、世帯によっては濃淡があるだけで、全部増税じゃないですか。そうでしょう。プラスになるところがありますか。ないでしょう。全部増税じゃないですか。そんなの反論にも何にもなっていないんだ。

 大体、所得税と住民税、これは両方来るんですよ。しかも、消費税増税による負担増がさらにその上に来るわけです。これは、所得の非課税世帯にも重くのしかかるわけです。

 収入階級十分位のそれぞれの税負担はどうなるか。例えば、消費税一〇%の年間の負担は、一番低い実収入第一分位の階層では幾らか、それから、第四分位、第八分位、第十分位、それぞれの負担は幾らか、数字を示していただきたい。

安住国務大臣 消費税を一〇%に引き上げた場合の一年当たりの消費税負担の増加額、これは総務省の家計調査をもとに機械的な推計でよろしゅうございますか。(佐々木(憲)委員「はい」と呼ぶ)

 収入の階級の第一分位の世帯では約八万六千円、収入の第四分位の世帯では約十二万。それから、これは収入はどんどん高くなっていくという意味ですから、八分位の世帯では十七・二万、それから最後の十分位の世帯では二十一・八万円ということになります。

佐々木(憲)委員 これだけ負担が、消費税率が一〇%になると、子育て世帯の家計を直撃するわけですよ。

 配付資料を見ていただきたいんですが、六枚目、最後のページですけれども、これは財務省が試算したもので、今、安住大臣が言われたものがこれに当たると思います。

 これは、消費税増税がいわば全ての子育て世帯の経済負担を増加させるというものでありまして、お聞きしたいんですけれども、児童手当制度に戻ることによって、実質手取り額の減少が起こる。それから、復興増税による所得税、住民税の負担増がある。そして、消費税増税の負担増、これもある。これを全部足すと、子育て世帯の年収三百万、五百万、八百万で、年間それぞれどのくらいの負担増になるんですか。

安住国務大臣 ちょっとこれは少し長くしゃべらせていただきたいんですけれども、復興のための税制措置、それから消費税率五%上げ、負担増ですね。それから、児童手当への移行による手取り額の変化。これを、要するに一定の仮定を置いて算出して、合計合算、単純に合算すると、負担増は幾らになるのかということですね。

 夫婦と小学生お一人の世帯では、三百万円の年収で年間八万円でございます。それから、年収五百万円で年間十二万円程度でございます。年収八百万円で年間二十二万円程度と見込まれます。

 しかしながら、これらの負担増は世帯構成によって大きく変化いたします。

 夫婦と仮に中学生お一人の世帯にこれを当てはめますと、三百万の年収の方は年間二万円、年収五百万の方で六万円程度、これはみんな程度です、年収八百万円の方で十六万円程度と見込まれますので、これは減っていきます。

 また、夫婦と中学生二人にこれを置きかえた場合はどうかというと、年収三百万の方では、むしろ年間三万円程度の負担減に逆転をいたします。

 さらに、高校生のお子様がいる世帯において、高校の実質無償化の導入等による負担の変化も加味して考えますと、例えば年収五百万円の夫婦と中学生お一人、高校生一人の世帯を例にとりますと、扶養控除の縮減と児童手当及び高校実質無償化によるネットで十五・五万円の負担減になるということもあります。

 ですから、先生、例をとりますと、いろいろ家計を直撃だ直撃だとお叱りを受けますが、例えば、今私が申し上げましたように、五百万円の方で、夫婦、それに中学生と高校生のお子様を持っている方なんかから見れば、十五万五千円の負担が軽くなるという例もあるわけでございます。そういうことから考えますと、先生の御指摘は当たらないのではないかと思います。

佐々木(憲)委員 部分的にプラスになるところを無理に合わせると、そういうふうな家計もある。しかし、もっと負担の重い家計もある。押しなべて言いますと、負担が全体としてぐっと重くなる、これが実態なんじゃないですか。

 ですから、いろいろ数字を拾ってきて、大体、中学生、高校生という、普通そういうふうには出さないんですね。大体、小学生とかゼロ歳児とか三歳未満とか、そういう計算をするわけなんです、子育て世帯という場合は。

 ですから、そういう点を考えますと、一番若くて子育てのために大変な負担のかかる世代に対してぐっと重くかかってくるということは、これは事実であります。そういう点をよく見ないと、何かいいところばかりとってきて説明しても、それは通用しません、現実は。

 子育て世代がこういう形になってきますと、なかなか将来明るい見通しが立たないというのが現状であります。

 大体、あなた方も、こう言っていたんじゃないですか。子供の育ち、子供を持ちたい人を阻害しているのは経済的負担だということで、経済的手当てが必要と言っていたんだけれども、結局、今議論をしてきた経緯を見ましても、マニフェストに掲げていた子ども手当は半分しか実行しなかった。それがもとの児童手当に戻って、結局は増税だけが圧倒的に残る世帯がふえた。その上、消費税の大増税、これが追い打ちをかける。こうなってきますと、全体として国民の負担は大変な事態になるわけであります。

 野田内閣がこれからやろうとしているのは、二〇一五年までに消費税の増税で十三・五兆円。さらに年金、介護、医療などの負担増、給付減、これを合わせますと、国民負担が新たに二十兆円なんですよ。これは歴史上かつてないほどの国民大負担路線であります。

 GDPの六割が家計消費ですから、これだけ家計負担がふえると消費が全体として冷える方向に作用する、そういうふうには思いませんか。

岡田国務大臣 先生、お言葉ですけれども、まず、復興増税とか消費税の問題は、これは別に、子ども・子育て世代だけではなくて全体に及ぶわけですから、子ども・子育て家庭だけ集中的にということではないんですね。全体としての負担。

 それは、歳入の方だけ考えればそういうことですが、同時に歳出ということも考えなければいけないということであります。いや、それはいいんだ、どんどん借金してやればいいんだということであれば、それは次の世代に対して負担をかぶせているわけであります。

 先ほど委員が言われた年金の物価スライドの調整の問題などはその典型であって、それは、今その調整をせずにやっていけば、現世代はいいかもしれませんが、しかし、その分は全部次の世代の保険料を先食いしているということになるわけでありますから、やはりそこは、世代間のバランスということはしっかり考えていかなければいけないというふうに私は思います。

 それから、子ども・子育て家庭に関しても、そういった消費税の引き上げもありますが、同時に七千億円の子ども・子育てについての新しい政策の充実ということもあるわけで、それこそトータルで見てやっていかなければいけないというふうに思います。

 根本的には、やはり借金をしてどんどんやっていくのか、次の世代のことを考えて一定の歳入増もあわせやっていくのか、そこで基本的に分かれるんだろうと私は思っております。

佐々木(憲)委員 トータルで見て全体がマイナスになる、こういうことですよ。

 何か子ども・子育て世代に集中して衝撃がいくと私は言いましたが、今の説明だと、全体に衝撃がいくわけですね、全体が負担するわけだから。結局子ども・子育て世代に重い負担がかかっていく、そういうことなんですよ。

 ですから、こういう経済的な負担増ということを実際に押しつけているわけで、申しわけないとさっき小宮山大臣は言いましたね。申しわけないほど負担をふやしたわけだから、反省も何もなしに当たり前のことをやっているかのような言い方は、根本的に間違っていると言わざるを得ません。

 大体、二十兆円の負担を、消費税の増税が十三・五、年金の減額が、もうこれは決まっているんでしょう、二〇一二年六月に二千億円、二〇一二年十二月に五千億円、二〇一三年六月に四千億円、二〇一四年六月に四千億円、さらに次の年に五千億円、特例水準の解消などという理由で、ずっと年金の減額が続いていくわけですよ。

 その上に、子ども手当の減額がことしの二月に四千億円。年少扶養控除の廃止など、これによってことしの六月から四千億円。所得税、住民税、この復興増税の名目で四千億円。年金保険料の引き上げ、毎年十月に行われまして、二〇一五年度までには二兆四千億円。医療・介護保険料の引き上げ、二〇一二年の時点で一兆円程度を行う。こういうことになっているんじゃありませんか。

 こういうことを全部決めておいて、二十兆円の負担をさせて、それで何か展望があるかのような、消費が冷え込まないというような、それは余りにも開き直り過ぎまして、これはどう考えたって説明がつきませんよ。

 これからどういう事態になるか、各種の予想が出されております。

 大和総研のレポートでは、これらの増税あるいは一体改革によって家計の負担が今後どうなるかを試算しておりまして、例えば、ことしの税制改正大綱試算編というのを見ますと、これは五類型を想定しておりまして、四十歳未満単身世帯でマイナス四・七八からマイナス四・八七、四十歳以上片働き四人世帯、六・四三%から九・二三%のマイナス、四十歳以上共働き四人世帯、五・七五%のマイナスから七・〇九%のマイナス、さらに高齢者も、七十五歳以上夫婦世帯、マイナス七・〇三%からマイナス七・一六%、七十五歳以上単身女性世帯、七・二九%のマイナスから七・四三%のマイナスですよ。全ての世帯で、これだけの負担増をしたら家計がマイナスになるという試算が既に出ているわけであります。

 したがって、これだけの負担をふやせば消費を引き下げるという方向になることは明らかじゃないんですか。

安住国務大臣 まず最初に、私の方から二十兆のことについてちょっと反論させていただいて、後で副総理の方からお話しさせていただきたいと思います。

 例えば、先生、十三・五兆は全部負担だと言いますけれども、そのうち、例えば二・七兆、これは保育の充実等、子育て世代等を含めて充実に回ります。

 それから、七兆、これは本当に孫子の借金をそのままツケ回していいわけがないですよねということで使うわけですよね。

 それから、四・四兆のマクロ経済スライドの話は、むしろ若い人たちのためにこそ、大変申しわけないんですけれども、やはりこれはやらざるを得ないんじゃないでしょうか。それを次の世代に大きな借金を残したままで、高齢者の皆さんがこれをそのままにしろというふうなことは、日本人の方は思っていらっしゃらないと私は思います。ですから、そういうこともぜひ考えていただかなければなりません。

 それから、年少扶養控除の廃止などの四千億の御指摘についても、これは子ども手当の給付財源に充てられていますから、そういう意味では負担増になるという考え方は、私は少しどうかなと。

 それから、医療・介護保険料の一兆円の引き上げ、これは高齢化に伴う医療、介護の負担増に対応した保険料増でありますから、見合いの給付増がそのまま行きます。

 それから、子ども手当のことについては、八千億円は被害を受けた被災地にこの財源を回しましょうということで三党合意をいたしまして、そういう点からいえば、そういう使い方は私は国民の皆さんに御理解をいただいていると思っております。

佐々木(憲)委員 しかし、消費税増税プラス負担増をこれだけやっておいて、何かいいことをやったかのようなことを言いますけれども、全然違いますよ。これで消費が全部マイナスなんですよ。

 大体、消費税の増税十三・五兆円が、七兆円分ほかの財源に回る、赤字の穴埋めにも使うという話でしょう。全額社会保障に回すと言っていながら、それは国民だましじゃないですか。そのうちの半分以上がほかのところに回る、それだけの話じゃないですか。しかも、それは結局、お金に色がついていないから、例えば軍事予算にも使われる、大型公共事業にも使われる、そういう形でこういうものが消えていくわけですよ。

 だから、この前、私もこの場でやりましたけれども、消費税増税分の六・五兆円が回るんだと言いますけれども、今説明にあったように、消費税引き上げに伴って増加するというのが八千億円あるんじゃないですか。

 しかも、年金の国庫負担二分の一、二・九兆円がこれに入る。これは本来、所得税、住民税の定率減税の廃止によって埋めなければならなかった。あのときの財源は一体どこに消えたんですか。それをどこかに使っちゃって、また今度は消費税を使うなんというのはとんでもない話だ。

 しかも、社会保障の充実に二・七兆円というけれども、この中の七千億円は何に使うんですか。子ども・子育て支援だ。あれは、公的な保育に対する責任放棄じゃないですか。しかも、自分で保育所を探しなさい、自分で契約しなさい、そんな国の責任を放棄するようなことが、何でプラスなんですか。やっていることが全部だめ。本当にこんなことをよくやるもんだと私は思いますよ、二十兆円も負担させて。

 そういう状況で、消費が冷えるんじゃないかと聞いているのに、消費が冷えるともふえるとも何とも答えない。質問に全く答えないで、そんなことを幾ら言ったってだめですよ。消費が冷えるのかふえるのか、どっちなんですか。

安住国務大臣 これは本当に国民の皆さんに誤解を与えるといけませんので、先生、戦車なんか、これで買いません。お金に色がついていないといっても、私が言っているんですから、間違いありませんから。(佐々木(憲)委員「だって、一般会計に入るじゃないか」と呼ぶ)使いません、これは目的税ですから。いや、目的税ですから、お預かりしたお金は、年金、医療、介護と子育てだけなんです。それから……(佐々木(憲)委員「違います。七兆円もあると言ったでしょう」と呼ぶ)いや、天地神明に誓って、そんなことは一切いたしません。ですから、それはちょっと言い過ぎだと思いますね。そうではないんですよ。(発言する者あり)いや、ちょっと、本当に論理飛躍だと思います。

 それから、八千億というのは、それは消費税を上げれば、社会保障関係の公的な経費もやはり値上がりしたりしますから、その分を言っているだけで……(佐々木(憲)委員「プラスにならぬだろう」と呼ぶ)いや、プラスになる、ならないではなくて、それは必要経費としてやむを得ない分はあるわけですよ。

 ですから、そういうことなので、やはりみんなで助け合っていかないと世の中は成り立たないわけですよ、先生。ですから、それはちょっと、やはり目的税の意味というものをぜひ御理解いただきたいと私は思います。

佐々木(憲)委員 質問に答えないで、全く関係ないことをべらべらしゃべって。

 大体、その七兆円がどこに行くか。お金に色はついていないじゃないですか、そうでしょう。

 十三・五兆円を社会保障に使うと言うけれども、今まで社会保障に使っていた七兆円分がところてん方式にぽんとどこかに行ってしまって、それが赤字の穴埋めだとか戦車だとか、そういうものにみんな使われるんですよ。一般会計に入るんですよ。あなた方の数字自体がそういうことを物語っているわけです。

 ですから、ともかく、余り無理な答弁をしても、それはだめです。(安住国務大臣「無理じゃない」と呼ぶ)国民には通りませんよ、そんなことは。消費が冷えるのか、プラスなのかと聞いているんですよ。何でそれに答えないんだ。

岡田国務大臣 まず、今のお話を聞いていまして、例えば所得税について、復興増税のお話をされました。それは、復興増税自身はかなり長期間ですけれども、復興のために短期間で使われるんです。経済という観点から見れば、むしろプラスであります。

 それから、消費税の話もされましたが、社会保障費の支出が、税ベースでも毎年一兆円ずつふえていくわけです。一年目には一兆円、五年目には五兆円ふえるわけです。そういった支出もふえるということもぜひお考えいただいて、それはトータルで考えなきゃいけないと思います。

 そして、御質問にお答えするとすれば、確かに、消費税を入れれば物価が上がります。したがって、その分、消費がマイナスになるという場面はあります。しかし、その前に、まず駆け込み需要は恐らくある、前回を見ても。そこが少し上がる。しかし、それが反落する。そういうでこぼこはあると思いますが、前回の例を見ても、実は消費の水準というのはそう落ちていない、ほとんど落ちていないというのが前回の教訓でございます。

佐々木(憲)委員 復興増税については、これは被災者にもかかるんですよ、増税分が。そのことを無視して、何かいいことだ、いいことだと言うのはいかがなものか。その財源は別なところから見つけなさいと言っているわけです、無駄の削減だとか、あるいは下げ過ぎた法人税を下げるのをやめなさいとか。我々の言っていることに何にも耳を傾けないで、何で国民の暮らしを直撃するような増税をやるんですかということを言っているわけです。

 それから、駆け込み需要があって確かに一時はふえる。しかし、その反動減が起こる。反動減が起こった後はどうなるんですか。ぽんともとに戻るんですか。そんなことはありません。それは、反動減になったら、消費税増税分、負担増分、二十兆円分の国民からの所得移転が起こって、それがずっと固定化するわけですよ。

 したがって、例えば日興証券の増税影響試算によりますと、消費税増税の経済産業へのインパクトということしの二月のレポートですけれども、二回の消費税率引き上げで二〇一四年から経済成長はマイナスに落ち込んだまま戻らない、二〇一三年度は確かに駆け込み需要が発生するけれども、二〇一四年、二〇一五年と反動減が発生し、その後は消費税引き上げなどで恒常所得が減り、それはその後も続く、こういうふうに言っているんです。

 だから、何か楽観的なことを言っていますけれども、これはもっと深刻な事態になる。政府はマクロ経済についてのいろいろなシナリオというのを出していますけれども、これは大体楽観的過ぎますよ。

 例えば成長戦略シナリオというのを見ますと、二〇一一年度から二〇二〇年度の平均成長率は、名目三%程度、実質二%程度とされております。とてもこうなるとは思えない。どうですか。

安住国務大臣 ですから、駆け込みがあった後にがくんと落ちるじゃないかという話なんでしょう、先生。(佐々木(憲)委員「もちろんですよ。もとに戻らない」と呼ぶ)しかし、実はそれは、一定期間をならしてみればお互いの効果が相殺されるという意見もあるんです。だから、その経済学者の方がおっしゃっている話と、例えば九七年のときのことを例にとれば、それは、お互いそのプラスマイナスはならされて、一定の安定を保つという意見もあるんです。

 おっしゃるとおり、所得の効果はマイナスの効果になります。それは私も全く否定はしません。ただ、その分、社会保障の充実という効果もあるんですよ。(佐々木(憲)委員「充実にならないよ」と呼ぶ)ありますよ。だってここでは、それでさらに、非ケインズ効果の議論もさんざんここでやっているわけですね。

 ですから、そういう点では、マイナスの面だけを取り上げるのも逆に私はどうかと思うし、もう一つ言わせていただくと、では、財政が悪化して金利が上昇したら、企業経営そのものも圧迫されるんですよ、先生。そういう状況にならないためにも、やはり、社会保障は一番多い歳出なんだから、その部分の財源を手当てすることは財政再建にもつながるわけだから、そういうところの大きな点も見ていただかないといけないということです。

佐々木(憲)委員 大きな点を見たらマイナスだと言っているんですよ。大体、社会保障は充実だ、充実だと言うけれども、年金はふえるんですか。医療の負担は減るんですか。医療だって、窓口負担がふえるじゃないか。そういう計画でしょう。年金もどんどん毎年下げていく計算じゃないですか。何でそれがプラスになるんだ。全然だめだよ、それは。

 それから、見通しの点について言うと、全く、政府の見通しというのは全部外れですよ。

 例えば、二〇〇五年に発表された名目GDP予測、これを一つ取り上げますと、二〇一〇年度が五百九十七兆円となっていたんです。二〇一二年度が六百四十五兆円になるはずだったんです。

 実際はどうだったか。二〇一〇年度の名目GDPは四百七十九兆円で、百二十兆円少なかった。二〇〇二年度から二〇一二年度までの十一回の予測を見ますと、全て名目GDPは大きく上昇することになっていたんですけれども、これらの予測は一度でも当たったことがありますか。

古川国務大臣 委員もおわかりになって聞いていらっしゃると思うんですけれども、経済見通しというのは、別に何か、数字が当たらないと外れだ、当たりくじと外れくじがあるとか、そういうものではないというものであります。

 その時点の経済状況からどれくらいのものが予測できるかという見通しを立てていく。その結果が実際の数値とどうであったかということは、それは当然、確かに全く同じになったことは、今御指摘の十一年間ではございませんけれども、前後〇・一ぐらいで非常に近いところであったということもあります。

 ただ、これは見ていただくとわかりますけれども、国内もそして世界も、経済のトレンドが比較的安定している、そういう状況のときには、大体見通しと実際の実績にそれほど大きな差はないというので出ています。しかし、リーマン・ショックがあるとか、大きな変動が起きたときには、それはやはり、どうしてもずれが出てくるというものであります。

 もちろん、私どもとしては、できるだけこうした見通しが実際に近いようになるように精査、努力はいたしておりますけれども、そもそも、何か当たりとか外れとか、そういう話ではなくて、今のこの時点の状況から見通して、どういう経済の状況になるだろうか、私どもがやっている政策の効果、そういったものを踏まえて見通しというものを示しているものでありますので、そうした視点で考えていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 十一回の予測は全部外れたわけですが、確かに見通しですから、当たったり外れたりするというのがあるのは、一般的にはわかりますよ、一般的には。しかし、極端に予測の方が上振れしているわけですよ。現実は、必ず予測よりも低いんです。

 大体、予測よりも実態はそれより上だったという事例は、この十一年、一回でもあるんですか。

古川国務大臣 二〇一〇年で申し上げますと、見通しは一・四%、これは実質ですけれども、実績は三・二%ということであります。ですから、実績の方が上回っている、そういう例はございます。

佐々木(憲)委員 名目ですか、実質ですか。

古川国務大臣 名目であれば、二〇一〇年は見通しが〇・四%、実績が一・一%で、上回っております。

佐々木(憲)委員 一回だけですね。では、ほかはどうですか。

古川国務大臣 先ほど言われました二〇〇二年から二〇一一年まで言いますと、三回でございます。

佐々木(憲)委員 だから、予測はほとんどが上振れしているわけでありまして、名目GDPが変われば税収は大きく変わるということで、大体、政府の予測というのは、政策的な、あるいは政治的な意図を非常によく反映しておりまして、そういう意味では、税収を高く高く見積もるために、現実の経済の実態と全く違う予測が行われ、実際には税収が減っていく。

 根本的に言いますと、政策の中心が家計消費をどう温めるかというところに置かれていないというのが最大の問題であります。

 大体、大企業に減税したら賃金が上がって消費が上がるなんということはあり得ないんだよ、実際に。今、賃上げの率だって非常に低いわけですよ。この十年間、実質的には、統計上、労働者の所得は下がっております。大幅に下がっているんです。

 ですから、減税を大企業に続ければ続けるほど、大企業の内部留保がたまる一方でありまして、白川日銀総裁も、手元資金は大企業の場合は大変潤沢である、潤沢であるんだけれども、問題は使い道がないことだ、こういうふうに言っているわけであります。

 したがって、そういうところに着目をして、ちゃんと資金のあるところに税金を払ってもらう、そして、お金のないところからはむしり取らないということが必要だということを最後に申し上げまして、質問を終わります。

中野委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本会議が入りまして、五時以降のきょうの最後の質問になりましたが、委員の皆さん、また政府の皆さん、大変お疲れでしょうが、よろしくお願いしたいと思います。

 最初に、厚生労働省がことし三月に行った社会保障に係る費用の将来推計の設定に関連してお尋ねをいたします。

 この改訂版の将来計画によりますと、年金、医療、介護、子ども・子育て支援の社会保障四経費の公費負担が、二〇一二年で四十・六兆円になります。今議論しています一体改革の諸施策を実施いたしますと、二〇一五年には公費負担が四十五・四兆円、二〇二五年には六十・五兆円にまではね上がります。消費税は社会保障四経費の目的税化し、公費負担分を全て消費税で賄うとすれば、消費税率は二〇二五年には二二・四%まで引き上げなければならないわけであります。

 安住大臣、この社会保障の将来推計でふえ続ける公費負担にどのように対応すべきか、あるいは対応したいと考えていらっしゃるのか、お答え願います。

安住国務大臣 御指摘のとおりでございまして、推計を見ますと、現時点で、これは、百九兆五千が先生御指摘の二五年には百四十八・九兆と、約一・五倍ほどになります。これはもう言うまでもなく、高齢化の進展が急速にこれから加速をしていきますので、やはりその点からいえば、保険料の御負担も上がりますけれども、公費負担の増加も避けられないと思います。

 御指摘のように、四十・六兆が六十・五兆になりますので、そういう点では、制度の持続可能性を確保するためにも、ここの二十兆円の安定財源の確保というのがやはり大変重要になります。

 しかし、そうはいっても、では、これは全部消費税分に換算したらその分でやるのかというお話でございますが、消費税は目的税化いたしますけれども、だからといって、それを全部消費税でということにはなりません。やはりあらゆる努力をして、そしてまた一般会計の中からも入れるものも出てくると思います。

 やはり、国民の皆さんにクオリティーの高い今の年金、医療、介護のサービスを提供するために、この足らず前のところをどうするかということは、もちろん、柱は消費税もありますし、保険料をいただくこともありますけれども、そのほかの財源等も考えて、中長期的に効率化の努力もしながら賄っていかなければならないと思っております。

中島(隆)委員 五月の二十二日の本委員会でも質問をいたしましたが、そのときに総理に、毎年一兆円ずつふえる社会保障にどう対応するのか、消費税の五%引き上げでは間に合わないのではないかとお聞きいたしました。総理は、財源に所得税や保険料を充てると現役世代に負担が集中して世代間の不公平を招く、だから、社会保障の安定財源としては消費税が妥当だと思うと答弁されました。

 こういう答弁を聞いておりますと、五%の消費税の引き上げ後に、さらに税率アップという路線が敷かれているのではないかというふうに思います。今安住大臣が述べられましたが、やはり、消費税に頼らないといいながらも、財源は、一〇%、今回引き上げられますけれども、この路線でまた消費税を目安にされるのではないかという危惧をいたします。

 改定の将来計画でありますが、保険料も大幅にふえています。二〇一二年度の六十・六兆円が、二〇二五年には八十五・七兆円、実に二十五・一兆円も保険料の上積みが必要になります。例えば、健康保険組合に加入する年収五百万円のサラリーマンの場合は、極めて単純に計算しても、保険料の本人負担が、年金、医療、介護合わせて、現在で一三・一%の負担率が二〇二五年には一五・一%、年間で約十万円の保険料が負担増になります。

 小宮山大臣にお尋ねいたしますが、この将来推計に基づく大変な保険料負担を国民に強いるわけでありますが、大臣はこの保険料負担の増大にどう対応されるか、お尋ねいたします。

小宮山国務大臣 今後、人口の高齢化が急速に進んでいきます。ですから、年金、医療、介護などの給付費が増大をしてきますし、また必要な社会保障の充実をこれは子育ても含めて行っていきます。そうなりますと、給付費の伸びに見合った形で保険料水準も引き上げざるを得ない状況だと思います。とにかく、賄うのは税か保険料か自己負担しかないので、それの割合の問題だというふうに思うんですね。

 今回の一体改革では、保険料の負担が過度に重くなり過ぎないように、一つは後発医薬品をさらに使用促進するということ、それから七十歳から七十四歳の医療保険の患者負担、これは平成二十五年度の予算編成過程で見直しを検討していますので、やはり給付の重点化、効率化ということもしていきたいと思っています。

 さらに、国民健康保険ですとか介護保険の低所得者の保険料軽減など、低所得者対策を強化いたしまして、本当に手を差し伸べなければいけない人のところの負担にも配慮をしてやっているつもりでございます。

 今後、社会保障の費用というのは伸びることはもう必然ですので、これは負担能力に応じてその費用を支え合う仕組みを持続的につくっていくことが大事だというふうに考えています。

中島(隆)委員 続いて小宮山大臣にお尋ねいたしますが、税と社会保険料の国民負担率について次にお尋ねいたします。

 私の持っている、これは政府が提出した資料でありますが、二〇〇八年度国民負担率の国際比較をいたしますと、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、フランスと比較いたしましても、国民負担率の国際比較を見ますと、特徴的なのは、日本の場合は、個人所得課税の割合が大変に低い一方で、社会保障負担率の割合は北欧の福祉国家であるスウェーデンよりも高くなっています。

 少子高齢化により老年人口比率が際立って高い日本にとって、国民負担率の数字はどこかで引き上げなければならないと私も思っているんですが、所得の再配分機能がききやすい所得税の割合が大変低く、社会保障の負担割合が際立って高くなっている国民負担率の構成について、どのように認識をされているのか、お尋ねいたします。

小宮山国務大臣 また、税については安住大臣にも聞いていただければと思いますが、日本の社会保障制度は、社会保険方式を基本といたしまして、低所得者の保険料が高くなり過ぎないように公費を組み合わせているという仕組みになっています。

 お尋ねの社会保障負担率の水準につきましては、各国の社会保障制度の財源のあり方が異なりますので、一概に何がよいか悪いかということは論じるのが難しいと思いますけれども、日本は社会保険方式を基本としているので、比較的、社会保障負担率が高いのではないかというふうに考えています。

 ただ、税も含めて、先ほどの議論でもありましたように、日本の特に再分配機能が税、社会保障をかけたことによってかえって逆に格差が開くというようなことも起こっていますので、これは税の方も含めて、その点は再分配機能を高めていく必要があるというふうに考えています。

 あとは、税のことを安住大臣の方にお聞きいただければと思います。

安住国務大臣 国民負担率のお話は先生御指摘のとおりでございまして、我が国の社会保障制度の特徴というのは、やはり平成の六、七年までの間は保険料収入を中心にずっと来ましたから、そこで、そういう点では、公費ベースで負担をしていたのが、大体平成の五、六年あたりからワニの口のように公費負担がふえて、保険料収入が少し頭打ちになってきた。ですから、結果的には社会保障負担率は比較的高くなっています。

 スウェーデンの場合、そこがやはり税負担が五〇・二%で、その租税負担率でいえば、我が国は二二・〇なんですね。

 先ほど共産党の佐々木先生から、法人税は高い高いと言われましたが、例えば、ちなみに法人税でいうと、我が国の租税負担率は三%で、スウェーデンでも四・三、ドイツに至っては一・八、イギリスでも三・五なんです。

 それからあと、消費課税だけ見ますれば、日本は七・一に対してスウェーデンが一九・四でございますから、所得課税のところも七・五が一九・二ということで、ここらあたりは意見が分かれるところもありますが、国民負担率に占める租税負担率はやはり私どもは低いと思っておりますので、ここの部分を何とか御負担いただくことで持続可能性というものを確保したいと思っております。

中島(隆)委員 今、数字だけ申されましたが、特に北欧、スウェーデン等については、ほとんど社会保障、税の負担が多いんですけれども、高校、大学授業料無償化とかあるいは医療無償、こういう社会保障的な部分に回されているわけですね。

 日本の場合は、御存じのとおり、今比率を言われました、所得が七・九%、それから社会保障が一六・三%と、負担率が、物すごく所得に反映する負担が多いんですよ。ですから、そういう面では、ただ数字だけの比較ではありませんけれども、そういう社会保障制度の充実が非常におくれているということも一つ認識をしていただきたいというふうに思います。

 そこで、なぜこのようなことを尋ねるかというと、今申しましたように、社会保険料あるいは厚生年金、協会けんぽに加入している場合は定率負担ですから、収入に占める保険料負担の割合は低所得者層に重くなります。国民年金は定額負担、国民保険も定額部分があります。子供がいれば負担がふえる、そういう仕組みになっているわけであります。

 要するに、社会保険料の負担の側面だけをとりますと、逆進性を持っているわけです。このことが保険料の未納あるいは未加入を上昇させ、制度の空洞化を招いているという指摘もあります。逆進性を持ったまま、二〇二五年度、二十五・一兆円も社会保険料負担が上昇すると極めて問題であります。

 まず、小宮山大臣にお伺いいたしますが、現在の社会保険の負担は逆進性を持っているという認識に立っておられるのかどうか。その上で、今回の一体改革で、社会保険料の持つ逆進性対策をどう検討されてこられたのか、その点についてお答え願いたいと思います。

小宮山国務大臣 社会保険制度では、給付を行うためには保険料として広く加入者に御負担いただくというのが基本的な仕組みです。

 具体的に、保険料の設定方法につきましては、サラリーマンなどが加入する厚生年金、健康保険などでは所得に応じた負担となっていますが、一方で、今委員御指摘の、所得の把握が必ずしも容易ではない自営業者などを対象とする国民年金、国民健康保険では、原則として定額の負担としています。この定額の保険料負担、これは現在の仕組みでも、低所得者については免除ですとか軽減措置によってかなり逆進性が緩和されていると思います。

 その上で、今回の一体改革では、貧困、格差対策が重要な課題の一つとなっていますので、それに対応して、今後の高齢化などに伴う保険料水準の上昇ですとか、消費税引き上げに伴う低所得者対策強化の必要性も考えまして、介護保険ですとか国民健康保険の保険料率の軽減を強化することにしています。

 さらに、低所得者への年金額の加算ですとか、今検討している総合合算制度の創設、こうしたことで低所得者へのきめ細かな配慮を行いたいと考えています。

中島(隆)委員 次に、岡田副総理にお尋ねいたしますが、今回の改革では、確かに、今おっしゃったように、低年金者や給付加算や年金受給資格の短縮、あるいは短時間労働者に対する厚生年金あるいは健康保険の適用拡大など、措置はとられております。また、低所得世帯に過重な負担をかけないため、医療、介護、保育など自己負担の合計額に上限を設定する総合合算制度の検討も始まったことは承知をいたしています。

 これは一定の低所得者対策であることは認めますが、極めて福祉的な要素も強く、現在の社会保険料の納付システムの持つ逆進性に手をつけていません。この点、検討が必要なのではないかと指摘をさせていただきます。

 そこで、岡田大臣は、五月二十二日、私は本委員会で質問に立ちました。消費税五%引き上げでは社会保障四経費を賄い切れないではないか、さらに、二〇二五年のプライマリーバランス黒字化の財源としても不足をしている点を指摘した際に、岡田大臣は、歳出削減、経済成長による増収、それと増税の三つの道があるが、それは今決めることではないと答弁されております。

 そうすると、今回の一体改革は、社会保障制度の安定を目指すといいながら、年金制度、高齢者医療、介護保険の将来像は示さない、消費税を五%引き上げても財源は足りないが、それはそのとき政権がどうするか決めればいい、とにかくそれでも五%税率を上げてくれ、こう言っているように聞こえるわけであります。社会保障の将来像も、財源確保も、実際はほとんど先送りされている現状であります。社会保障制度の安定を目指す改革といえば、言えないのではないかと思います。

 多くの委員が指摘されているように、社会保障の将来像、改革の設計図を提示して初めて、必要な経費の負担のあり方の議論が成り立つと思いますが、この点についてどうでしょうか。

岡田国務大臣 まず、ビジョンの件ですけれども、例えば子ども・子育てについては、子ども・子育てビジョンを示して、所要の金額も目標も示させていただいていると思っております。

 それから、医療・介護サービスにつきましても、一体改革の成案、平成二十三年度ですが、この中で、二〇二五年のあるべき姿を示して、そのための具体的な改革案と工程も示しているところでございます。

 委員御指摘の新しい年金制度とかそういったところについてはこれからの議論にまたなければならないということですが、大体のおおむねの社会保障の姿については、私どもはお示しをさせていただいているところであります。

 それから、歳入の方も、消費税を一〇%に上げた後、なおプライマリー黒字にはならない、そこの姿を示すべきだ、そういう御意見ですけれども、それはまさしく、数年先にそのときの国会を構成する議員の中で御議論いただくことではないか。今全部を決め切るというのは無理だと思います。経済成長がどのぐらい達成されるのか、あるいは歳出削減はその間どのぐらい進むのかということによっても違ってくるわけで、しかも、増税という中にも、消費税もあれば、所得税もあれば、あるいはその他の税もあるわけですから、それを全部決め切らないと何か今の目の前の消費税五%引き上げはできないというのは、私はそれは違うんだろうというふうに思います。

中島(隆)委員 ビジョンは示されているということでありますけれども、将来の年金の問題も含めて、具体的に、今回十三・五兆円という増税になるわけでありますが、そういう具体的な財源措置、あるいは具体的な社会保障の内容、これを十分やはり国民に提示して、そして議論をすべきだというふうに思っております。

 そこで、次に、消費税の持つ逆進性の対策についてお伺いをいたします。

 今回の消費税引き上げに際しまして、八%へ引き上げの時点で簡素な給付措置を実施し、一〇%への引き上げの際に給付つき税額控除を導入するのが政府の考え方であります。制度としての給付つき税額控除について反対するわけではありませんが、給付つき税額控除は、欧米では就労や子育て支援をする制度として導入されているのであります。消費税の逆進性対策と言われると違和感があります。

 そもそも、増税が避けられないとするのであれば、もともと逆進性を消すことのできない消費税に依存するのではなくて、所得の再配分機能を最も発揮しやすいのにその機能を喪失している所得税の抜本改革を先行すべきではないかというふうに思います。

 今回政府が打ち出しているように、課税所得五千万円超の税率を五%引き上げても、対象者は給与所得者のわずか〇・一%、四百億円程度の税収増では、再分配機能の回復とは言えないというふうに考えますが、この点についてお尋ねをいたします。

安住国務大臣 まず、給付つき税額控除を否定するものではないと言っていただきました。ただ、課題が多いことは私も十分認識をしておりますので、本当に国民の皆さんから見て公平感を持っていただけるような給付をするために、やはりこの制度の導入というのはいいのではないかと私は提案をさせていただいておりますが、なお、さまざまな課題については、克服するため努力したいと思っております。

 カナダのこととか、いろいろな例がありますので、確かに子供支援とかそういう例はあるけれども、しかしこれを逆進性対策に使うのは違和感があるという御指摘でございましたが、そうした点も踏まえて対応をしてまいりたいと思います。

 さて、そこで所得税でございますけれども、やはり今回、先生御指摘のように、累進税率の問題がここでも随分取り上げられました。私どもとしては、今回の提案で、最高税率は四〇から四五、対象人員は〇・一%で約三万人でございます。増収の見込み額は四百億程度でございますので、その点からいえば、所得再配分機能が全く足りないのではないかということについては、私どもとしても、今後、ではこれをどういうふうな累進性にすればいいのかということは、十分考えなければならないと思います。

 一つだけ考慮しないといけないのは、昨年、復興の増税をお願いしております。ですから、所得税全体で、やはり二十五年間のこの課税がありますね。それにさらに、二十六年から証券の優遇税制も本則に戻しますから、そういう意味では、比較的所得の高い方に対しての課税については、控除そのものも上限をしっかり決めまして、一千五百万円以上の方については対応をやらせていただいておりますので、徐々にではございますが、累進率が戻ってくるようにしております。

 むしろ一方で、所得税のもう一つの問題として、負担水準が全体に低いことも、私はあえて言わせていただきたいと思っております。

 我が国の場合、先生、所得税の適用税率が一〇%以下である納税者が、実は全体の八割を超える状況にあります。これは、諸外国に例をとっても、アメリカであれば二九%、イギリスに至っては一四%、一番高いと言われているフランスでも四〇%なんです。つまり、日本の場合、所得税を納めている方で一〇%税率の方が全体の八四%にも達しております。では、ここの累進性はどうするのかという議論は、一方でやはり、なかなか負担が増すような話になる可能性がありますけれども、しかし、私は、避けて通れない議論として、こういう点も指摘をさせていただきたいと思っております。

 いずれにしても、幅広い所得税の累進性をどうするかということについては、議論をこれから本格的にやっていきたいと思っています。

中島(隆)委員 累進課税を若干是正したということですが、最高税率を若干上げた程度でありまして、これまでの所得課税の推移を見ますと、大変な暫定税率の引き下げがあっているんです。しかも、先ほど来追及されておりますように、法人税等はまさに引き下げ、またさらに今回も五%、こういう形で、ほとんどウエートが、消費税が二五%、今度十三・五兆円上がったら、もう税収所得の五〇%近くになるんですね。大変な不公平な税制をやるわけであります。ですから、そういう面では、所得税の累進性をもっともっと拡大していく、こういうことが必要だというふうに思っております。

 そこで、安住大臣に、検討中ということでありましたが、消費税を八%へ引き上げたときの簡素な給付措置で、この対象の範囲についてお聞きしたいと思います。

 住民税非課税世帯とする案が民主党内で論議されているものの、決定できていなかったと聞いておりますが、党内の議論は別にいたしまして、安住大臣はどのように考えておられるか、お尋ねします。

安住国務大臣 まだ、どの範囲でどういうふうにさせていただくのかということは、率直に言って、固まっておりません。

 どういうふうに考えているのかという御指摘でございますけれども、やはり、消費税の引き上げによる影響をできるだけ、逆進性があるということは、水平的税としては当然そういうことはあるわけですから、そういう点では、やはり所得の低い方々に対する負担が比較的出てきますので、そこを中心に対応したいと思っております。

 ちなみに、二回の引き上げのときには臨時給付金という形で、一年に限り、それぞれ六百億、あと約一千億程度給付をさせていただいております。今回の場合はまだ、そういう点では、どの範囲でどれだけするかということは決まっておりませんが、率直に申し上げて、多くやればいいということでもないと思っております。やはり、税収に余りめり込み過ぎますと、これはこれで問題が起きますので、どういう範囲でするかということは、よくよく考えながら提案をさせていただきたいと思っております。

中島(隆)委員 住民税の非課税を一つの境界線とした場合でも、世帯単位なのか、あるいは個人単位なのかで大きく変わるわけであります。例えば世帯単位にした場合、少額でも住民税を払っている人が世帯に一人でもいれば給付の対象ではなくなる。これで公平な制度なのか、疑問でもあります。

 それはさておきまして、給付つき税額控除を導入しているカナダ、これはGSTクレジットと呼ばれていますが、導入目的が、低所得者層に限らず、中所得者層の税負担軽減まで視野に入れております。給付つきの総額も、付加価値税の税収の約一割に達しています。消費税は、低所得者層にとどまらず中所得者層の家計にも大きな打撃を与えますから、中所得者層まで給付の対象に加えることは、よく考えられたシステムだと思っております。

 翻って、政府が検討している簡素な給付措置の性格ですが、これを専ら、逆進性対策というよりは、低所得者対策と受けとめていいでしょうか。その点についてお尋ねいたします。

安住国務大臣 まず、カナダのGSTクレジットについては、カナダ・ドルを日本円に換算しますと、夫婦、お子様お二人の場合で、世帯所得で約三百七十万以下が給付対象となっております。我が国の共働きをしている住民税非課税世帯とほぼ同水準にあるということは事実でございます。

 ただ、基本的な考え方ということは、これは参考にはなりますけれども、私どもとして、先ほどから申し上げているように、決まっているわけではないわけであります。そして、カナダの場合は、これは生活保護的な意味合いも含めて給付をしているということですから、何か消費税の逆進性対策というよりは、やはり低所得者対策ということになると思います。

 簡素な給付措置は、やはり消費税の逆進性の緩和を基本に置いた給付ということになるのではないかというふうに私は思っております。

中島(隆)委員 本委員会でもたびたび議論になっているんですが、軽減税率ではなくて、なぜ今回、この簡素な給付措置あるいは給付つき税額控除を選んだのでしょうか。

 ヨーロッパでは、あるいは先進国では、生活必需品を非課税あるいは税率を低くする軽減税率を導入している国が非常に多いわけであります。ヨーロッパの先進諸国は、一見すると消費税率が高いわけですが、均一で生活必需品にまで一〇%以上の消費税率をかけている国は見当たりません。

 よく、軽減税率を導入すると高額所得者にまで恩恵が及んでしまい、逆進性対策にならないという声も耳にするわけでありますが、高額所得者は、所得税でもっと負担していただく選択肢もあるわけであります。低所得者層だけを対象にした給付システムでは、総理もたびたび口にする分厚い中間層に逆行し、中間所得層に大きな負担がかかると思います。

 なぜ軽減税率を適用しなかったのか、その理由についてお聞かせいただきたいと思います。

岡田国務大臣 軽減税率の問題というのは、きょう午前中も随分議論になりました。

 まず、どこを対象にするかというその境目が非常に難しい議論がある。ヨーロッパの国々はみんなその問題に直面をしております。どこまでを対象にするかという問題です。

 それからもう一つは、全体にかかりますので、委員もおっしゃいましたけれども、やはり所得の多い方はよりその恩恵を受けるということですから、逆に言いますとかなり減税になる。逆に言うと、税率をその分は引き上げないとつじつまがつかなくなるという問題がございます。

 給付つき税額控除ですと、ある意味で所得の少ない層にピンポイントで手当てすることができる、こういうことでございます。ただ他方で、給付つき税額控除については、所得の捕捉がきちんとできるかどうか、そういう問題は残る。

 一長一短あるわけですけれども、我々は、全体を議論した結果、給付つき税額控除の方が望ましいという判断をしているわけでございます。

 それから、先生御指摘の中堅所得層まで消費税の引き上げの影響をある意味で相殺するようなということになりますと、これは相当税率を上げないといけませんし、消費税というのはそもそも広く浅くということであるわけですから、やはり本当に困っているところにしっかり手当てをするというのが基本的な考え方だというふうに考えております。

中島(隆)委員 その点については、軽減税率を適用すると税収がかなり減る、こういう状況に恐らくなると思うんですが、一部の低所得者世帯に限定して給付を行った方が財政支出が少なく済む、こういう考えではないかなというふうに思います。

 そこで、消費税の非課税取引の対象となっている品目があります。この非課税品目ですが、私は見直しが必要だというふうに思います。例えば、電気、ガス、水道などの公共料金、それから電車、乗り合いバスなど公共交通機関、これはライフラインの基礎となる分野でありますが、課税対象から外すことを検討すべきではないかというふうに思っております。

 他方、日本の場合は、住宅の取得は課税対象なのに、土地取引は非課税、さらに有価証券の譲渡や金融取引は非課税品目であります。恐らく、これらは消費ではなく取引だから非課税だという理屈なのだと思いますが、土地や有価証券の取引ができるのはかなり高額所得の人たちだと思います。

 逆進性を緩和させるのであれば、公共部門の料金は非課税にして、土地や有価証券取引は課税対象にする、このような見直しがあっていいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

安住国務大臣 これは先生も御存じのとおりですが、土地は取引で、課税にはなじまないということでずっとやってまいりました。これからもそれは維持をする方針でございます。それから、家賃等についても、同じように非課税にする。それから、教育、医療の関係についても、政策的配慮ということでそういうことをやってまいりました。ただし、例えば水道、公共交通等の料金、こういうものについては、今回も、非課税ではなくて課税をさせていただく方針でございます。

 これはさまざまな理由がありますけれども、非課税とした場合には、ほとんど全ての事業者に、課税仕入れと非課税仕入れの区分経理等、相当面倒な事務負担が生じることも予想をされます。それから、公共料金を非課税とする場合、事業者は、仕入れ税額控除はできませんので、課税の蓄積というのは必ず生じてまいるのではないかと思っています。

 事業者の負担が重くなるか、事業者が販売する商品の価格が高くなるなど、ある意味では、経済のゆがみ、経済活動のゆがみを生じること等もありますので、そうした点では、こうした公共料金については、非課税にすることは現時点では適当ではないというふうに私は思っております。

中島(隆)委員 もう一点、安住大臣にお聞きいたします。

 政府は、軽減されている金融所得課税について、二〇一四年一月から本則の二〇%に戻すことを決めています。

 これまで、金融所得を持つ高額所得者を優遇し過ぎであると私は考えています。特に、税制によって所得の再配分機能を回復するのであれば、分離課税で本則の二〇%に戻すことにとどまらず、この際、利子、配当、証券取引に加え、土地の譲渡による所得を分離課税ではなくて総合課税にすべきではないかと思います。

 この点についてどのように検討されてきたのか、また、安住大臣はどのようにお考えか、お尋ねいたします。

安住国務大臣 今御指摘ありましたように、本則に二十六年から戻しますので、その点では一〇%の解消をやらせていただきたいと思っております。

 金融所得については、世界的にも分離課税を採用している国が多いわけでございまして、そうした点では、いわゆる一般の投資家も簡単でわかりやすい税制を望んでいるということもあるので、これは分離課税にしております。

 土地の譲渡所得については、多分、総合累進課税にしたら、一回で相当多額の税負担が生じる可能性があると私は思います。ですから、そういう点では、それにたえられなくなるといいますか、超過累進課税を行えば、税負担を小さくするために土地の切り売りを招くおそれ等もありますので、これまで、そういうことも踏まえて、一回でどんと来るのではなくて、分離課税で、いわば、たえられる範囲でやっていきましょうということでやっています。そういうことを勘案すれば、私は、土地についても分離課税はやはり適当であるというふうに考えております。

中島(隆)委員 税の負担公平でいけば、やはり、所得の多い人、資産の多い方々に税を負担してもらう、そして、所得の低い人たちを支えるというのが税の仕組みだと思うんですね。特に今、大変な所得格差があります。貧困の状態。ですから、そういう面では、一気にはいきませんけれども、こういう累進課税の是正、あるいは所得の上限を引き上げる、こういう取り組みをやはり取り組んでいくべきではないかというふうに思っております。

 次の質問に移りますが、岡田副総理にお尋ねいたします。

 来年度の国家公務員の新規採用方針について岡田大臣にお聞きしますが、去る四月三日に、政府は、二〇〇九年度と比べ、国家公務員の新規採用を五六%削減する閣議決定をいたしました。きょうの本会議の質問もあったとおりであります。

 閣議決定された採用抑制方針を見ますと、社会保障・税一体改革において国民負担をお願いする中、政府としても、公務員人件費削減など、身を切る改革を実施する必要があると書かれています。増税するための手段として、公務員の採用を控え、公務員数を削減するということにしか読めません。

 私も、与党時代の二〇一〇年、政府の事業仕分けのメンバーとして、天下りや天下りを媒介にした事業の不適切な受注関係などを問題にしてきました。

 行政の無駄を解消しようとする改革自体に反対するものではないわけでありますが、しかし、行革を行う際には、どのような公共サービスが今必要とされ、どのようなサービスの必要性が低下しているのかを見定めた上で、組織や人員配置の見直しを行うべきであると思います。行政組織の職員の年齢構成がいびつになることを懸念しますし、国民生活に密着するサービスが低下する可能性も否定できません。

 岡田大臣、新規採用抑制の理念や目的について改めてお聞かせいただきたいと思います。あわせて、拙速に走らず、行政全般の見直しの中で職員の配置を考えるよう、今回の採用抑制を見直す考えはありませんか。お尋ねいたします。

岡田国務大臣 きょうは本会議でも公明党の高木先生の御質問に対してお答えいたしましたが、今回の採用の削減は、もちろん、社会保障・税一体改革、そこに国民の御理解をいただくということもありますが、同時に、財政の現状ということを考えたときに、公務員総人件費の削減ということは避けて通れない、そういう基本的認識に立って行ったところでございます。

 もちろん、若い世代に一方的にしわ寄せをするというつもりは毛頭ございません。そういう意味で、全体の人員構成がこれからいびつにならないように、しかも、これからは六十歳以降も再雇用、定年延長ではありませんが、再雇用するという方針も決めたところでありますので、全体にバランスのとれた人員構成にしなければいけないというふうに考えているところでございます。

 そういう観点から、例えば、早期退職に対するインセンティブを付与する措置や、あるいは早期退職に係る再就職支援などの具体化に向けて同時に取り組むということにしているところでございます。

 見直す予定はございません。

中島(隆)委員 極端な新規抑制は、恐らく、各省庁において世代間の年齢構成がいびつになったり、あるいは人事バランスを大きく損なうことになる、こういう影響があるのではないかというふうに心配いたしています。

 本来、増税は公共サービスを充実させるために行うのでありまして、必要な公共サービスの質や量を落とすようなことになれば、何のための増税かということになります。

 そこで、岡田大臣に具体的にお聞きいたしますが、まさに本委員会で、現在、消費税増税の是非について審議しているわけでありますが、税制の基本は何といっても適正、公平な課税であります、その徴収でもあります。

 安住大臣を持ち上げるわけではありませんが、この間、国税の職員の皆さんが懸命に努力をして、滞納税額も減りつつあります。他方、FX取引などIT化や国境を越えた経済投資活動によって、国税庁が行う調査、徴収事務は質、量ともに増しているものと推測をします。

 この折に、財務省の新規採用数は全省庁の中でも最大の削減幅で、国税庁は新規採用数が約七百六十人にとどまり、このままでは来年度は職員数が純減になるのではないかと心配をいたしています。また、新規に発生する税金の滞納のうち、消費税が占める割合が約半分に達します。これから消費税が引き上げられようとしているときに、徴税に当たる職員が、数が減ってしまえば、滞納税額を減らしてきたこれまでの職員の方々の努力が水泡に帰す可能性があります。

 岡田大臣、必要な部分には必要な人員を確保すべきではないかというふうに思いますが、国税庁の職員はまさにそれに当たります。国税庁職員の新規採用をかくも大幅に抑制することは、増税を控えて問題だとは思いませんか。お答えいただきたいと思います。

岡田国務大臣 今回の採用抑制に当たりまして、業務遂行に大きな支障が生じることのないよう、各府省の実情を踏まえつつ、一律ではなく、めり張りをつけることとしたところでございます。

 各府省においても、必要な業務分野への採用者数の重点化、業務の見直し、工夫などによって、行政サービスの質を大きく落とすことなく対応いただきたいと考えており、そういう意味で、今回の決定を見直すつもりはございません。

 確かに、人数が減ったところは大変だというふうには思いますけれども、いろいろな工夫の余地というのは私はまだ十分にあるというふうに考えております。

中島(隆)委員 岡田副総理は、政府全体の立場もあり、そのような答弁になるだろうと思いますが、消費税を議論するに当たっては、国民から適正、公平な課税と徴収が国税庁に対して求められていると思います。そういうことに十分配慮して、ぜひひとつ考えていただきたいと思います。

 総務大臣の発言でも、治安や国民の安全確保には一定の配慮を行う、こういうことも言われていますし、特に消費税増税に当たっての税務担当の仕事というのは大変なことだというふうに思いますので、ぜひひとつ、安住大臣も一緒に力を入れていただきたいと思います。

 それでは、小宮山大臣にお聞きいたします。

 来年度の厚生労働省の新規採用枠、わずか二百九十八人。ここ数年では、定年退職や自己都合退職で毎年三百から四百人近くの職員が退職されていると聞きます。職員数は純減になるものと思います。

 これは二〇一〇年の数字ですが、職員一人当たりの失業者数の国際比較をいたしますと、イギリスが二十三人、ドイツが三十七人、フランスは四十六人なのに対して、日本の場合は、イギリスの十倍以上、二百八十三人に達しています。

 失業者の全てがハローワークに相談に行くわけではないわけでありますけれども、職員一人で二百八十三人の失業者をケアしなければならず、ハローワークの職員数は極めて少ないわけです。それなのに、来年度ハローワークなどに従事する労働局一般職の採用枠は、わずか四十三人であります。

 若者の雇用が大変厳しい状況にあり、労働行政の新規施策はこの間大変ふえてきました。さらに、政府は、今月中に若者雇用戦略を取りまとめようとしているとき、職業紹介活動の核になるハローワークの職員採用数まで減らされて、充実した雇用対策を打ち出すことが可能なのでしょうか。被災地の雇用対策もこれからが本番なのではないですか。既にハローワークでは、正規職員と非正規職員の比率が一対二になっているとお聞きいたします。人減らし、非正規化を進めておいて、民間企業に正規雇用の求人枠をふやしてくれ、こういう言い方を行っておりますが、小宮山大臣の御答弁をお願いいたします。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃったことは、私も共通の思いを持つものでございます。

 今回の新規採用抑制の際にも、先ほど副総理からも、各省庁のいろいろな実情にも応じてという話がございましたが、そういう中で決まった抑制枠でございますので、政府の一員としてこれに取り組んでいるということです。

 今委員御紹介いただいたように、都道府県労働局の採用者の数の枠は、二十五年度は四十三人。ただ、二十四年度は、震災からの復興ということもございまして、そのために、百四十八人という非常に多い数を採りましたが、その前の二十三年度は二十三人でございますので、その二十二年度と二十四年度、これは常勤職員と相談員数を比べますと、二十二年度よりは少し多い数に全体としてはなっておりますので、業務の効率化など、業務運営のあり方をしっかりと見直す中で、何とかその窓口業務をしっかりとやっていけるように努めていきたいというふうに思っています。

中島(隆)委員 業務の見直しで対応ということですが、私ども社民党では、さきに、若者の雇用対策の問題で全国を調査いたしました。ハローワークあるいは高校、大学を調査しまして、若者の雇用対策の状況を把握したんですが、そのときにハローワークの実態を見たんですけれども、窓口で実際雇用の相談を受けている方は、ほとんど非正規です、嘱託の方ですね。そして、若者の雇用開拓で企業を回っている人も非正規です。

 先ほど一対二と言ったのは、一が正規職員で、二が非正規という実態ですよ。こんな雇用状態の中で、雇用対策を進める実態の職場がこういう状況では、私は、国の方針だから、あるいは業務を見直していくからということでは改善できないのではないかというふうに思っています。特にこの問題については、先ほど税務担当のところでも述べましたが、特にそういう状況をぜひひとつ理解していただきたいと思います。

 それから、もう一つ、小宮山大臣にお聞きいたします。

 来年度の労働基準監督署の採用数ですが、これも四十六人という極めて厳しい数字であります。

 労働法制がしっかり守られているかどうかは、働く人の生命や健康とともに、消費者の安全にまで強く影響を及ぼします。

 最近では、御存じのとおり、高速道路での事故で最大の被害をもたらしましたあの関越道高速ツアーバス事故、さらには、四人の死者を出しました新潟でのトンネル爆発事故がありました。高速ツアーバス事故でいえば、さまざまな法令違反の実態が明らかになっていますが、運転手の過労や日雇い運転など、労働行政に関係する問題も浮き彫りになっています。また、新潟トンネル事故では、労働安全衛生基準に違反している疑いが極めて濃くなっています。

 このようなときに、労働基準監督の採用数も抑制されることについて、大臣、どのようにお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 労働者の労働条件をしっかり確保するということは、もちろん非常に重要な問題です。

 労働基準監督官の採用、これは御指摘のように非常に減っています。そうした中で、例えば、労務管理に問題のある全国展開企業については、本社を中心に監督を実施することで効果的に全社的な改善を指導するとか、労働基準法に違反する事業場の情報をメールで受け付けて、その情報をもとに効率的に監督対象事業場を選定するとか、創意工夫も十分に生かして、効果的な監督を実施するよう最大限努力をしていきたいというふうに考えています。

中島(隆)委員 あと、法人税問題で三点ほど予定しておりましたが、時間がございませんので次に回したいと思いますが、最後に申し上げたいと思います。

 政府・与党の今回の一体改革は、あるべき社会保障の姿を描いて、そのためにどれだけの財源が必要なのか、その負担はどうするのか、公正なのかというのではなくて、社会保障の部分的な手直しに終わっています。しかも、消費税増税を図るために、議員定数削減や公務員人件費削減など、みずからを切る改革を口実にしています。

 社民党は、消費税に手をかける前に、税金の無駄遣いの一掃をし、所得税や法人税、資産課税など不公平税制の是正を行い、賃上げと雇用の充実、格差と貧困の解消、国民の可処分所得の向上、消費の拡大を通じて、安定した経済成長を実現し、国民生活を立て直す、こういうことに全力を挙げるべきではないかというふうに思っております。

 そういう面で、今回の消費税に反対であるという立場を申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 なお、政府参考人主税局長古谷君、残っていただきましたが、御苦労さまでした。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十八分散会


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