衆議院

メインへスキップ



第18号 平成24年6月11日(月曜日)

会議録本文へ
平成二十四年六月十一日(月曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      石井登志郎君    磯谷香代子君

      稲富 修二君    小野塚勝俊君

      岡田 康裕君    勝又恒一郎君

      金森  正君    川越 孝洋君

      岸本 周平君    工藤 仁美君

      篠原  孝君    白石 洋一君

      杉本かずみ君    田嶋  要君

      田中美絵子君    田村 謙治君

      道休誠一郎君    中屋 大介君

      永江 孝子君    長尾  敬君

      浜本  宏君    早川久美子君

      樋口 俊一君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    宮島 大典君

      室井 秀子君    谷田川 元君

      山崎  誠君    湯原 俊二君

      柚木 道義君    渡部 恒三君

      あべ 俊子君    石田 真敏君

      加藤 勝信君    金子 一義君

      鴨下 一郎君    田村 憲久君

      竹下  亘君    橘 慶一郎君

      永岡 桂子君    長島 忠美君

      額賀福志郎君    野田  毅君

      馳   浩君    町村 信孝君

      坂口  力君    竹内  譲君

      宮本 岳志君    豊田潤多郎君

      渡辺浩一郎君    服部 良一君

      江田 憲司君    山内 康一君

      中島 正純君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   文部科学副大臣      高井 美穂君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     磯谷香代子君

  稲富 修二君     山崎  誠君

  江端 貴子君     中屋 大介君

  岡田 康裕君     杉本かずみ君

  勝又恒一郎君     金森  正君

  田嶋  要君     谷田川 元君

  田中美絵子君     近藤 和也君

  三村 和也君     小野塚勝俊君

  柚木 道義君     樋口 俊一君

  加藤 勝信君     あべ 俊子君

  田村 憲久君     橘 慶一郎君

  竹内  譲君     坂口  力君

  豊田潤多郎君     渡辺浩一郎君

  中島 隆利君     服部 良一君

  山内 康一君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     石井登志郎君

  小野塚勝俊君     三村 和也君

  金森  正君     勝又恒一郎君

  杉本かずみ君     岡田 康裕君

  中屋 大介君     江端 貴子君

  樋口 俊一君     浜本  宏君

  谷田川 元君     道休誠一郎君

  山崎  誠君     川越 孝洋君

  あべ 俊子君     長島 忠美君

  橘 慶一郎君     永岡 桂子君

  坂口  力君     竹内  譲君

  渡辺浩一郎君     豊田潤多郎君

  服部 良一君     中島 隆利君

  江田 憲司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     稲富 修二君

  道休誠一郎君     工藤 仁美君

  浜本  宏君     柚木 道義君

  永岡 桂子君     額賀福志郎君

  長島 忠美君     加藤 勝信君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 仁美君     田嶋  要君

  額賀福志郎君     田村 憲久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長古谷一之君、厚生労働省老健局長宮島俊彦君、厚生労働省保険局長外口崇君、厚生労働省年金局長榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 本日は、各案の審査に関し、社会保障と税の一体改革について集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝又恒一郎君。

勝又委員 おはようございます。民主党の勝又恒一郎でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、与野党の皆様方、ありがとうございます。

 私は、神奈川県の湘南から出ている議員でございますけれども、この週末は大変天気がよくて、地びき網やさまざまな触れ合い祭りがいろいろ開催をされていて、地域の皆さん方と触れ合ってまいりました。その中で特に声が大きかったと思ったことについて、きょうは率直にお伺いをしてまいりたいというふうに思っております。

 今回の社会保障と税の一体改革のこの委員会、私は、大変いい議論ができているなということを思っております。特に、今回の社会保障と税の一体改革の重要な意義について、幾つか私自身も意を強めておりますけれども、特に私自身が今回感じておりますのは、今まで日本の社会保障というものは、高齢者のいわゆる年金、介護、医療、こういうものに重点を置いてきた、このことは私は間違ってはいないと思うんですけれども、一方で、人口動態や経済の状態が変わってきていて、このままでいいのかどうか。

 普通にしていれば、若い人たちから年配の皆さんに所得移転が行くというのが今の日本の社会保障制度のあり方であります。しかし、一方で、若い人たちはどんどん減っているということを考えると、このままでは若い人たちも疲弊してしまう、世代を超えた全世代の社会保障政策が必要である。私たちは、今、その改革に取り組もうとしていると思います。

 同時に、日本の経済も大変厳しい状態であります。

 先般も参考人質疑で、多くのエコノミストの皆さんから、このまま社会保障を充実させていくためにはどうしても経済の成長が必要である、経済が成長しないとどこまで増税してもお金が足らなくなってしまう、やはり経済というものをしっかり立て直して成長させて、そのことによって増税を最小限に抑えるという発想が必要ではないかという御指摘をいただいております。

 私は、まさにそのとおりだ、経済は極めて重要である、社会保障と経済、この両輪をしっかりと改革し、前進させていくのがこの委員会の議論の中心にあると思っています。

 そうした中で、三・一一以降、エネルギーの問題が我が国に極めて大きな影を落としています。そうした中で、総理は今、原発再稼働に向けて大きな決断をされようとしているのではないかと推察をいたします。しかし、一方で、私の地域の皆さんからも、安全性の問題はどうなんだ、あるいは、この夏、短期の問題と、中長期のエネルギーの問題と、一体どう考えているんだ、さまざまな声を国民の皆さんから聞いてまいりました。

 ぜひ、この際、総理に、原発再稼働の、総理自身の思っておられることを、国民にメッセージとして発していただければと思います。

野田内閣総理大臣 おはようございます。

 再稼働の問題、エネルギーの問題についての御質問をいただきました。

 先週の金曜日に、国民の皆様に向けての会見を行わせていただきまして、再稼働に対する私の基本的な考え方を御説明させていただいたつもりでございます。

 国民の生活を守るというのが、何といっても唯一、絶対の基準だと思います。国民の生活を守るということは、二度と福島のような事故を起こさない、そのためにもしっかりと安全性のチェックを行うということでございまして、昨年の三月十一日以来、IAEAであるとかあるいは安全委員会、そのほかさまざまな専門家の知見なども踏まえて、さまざまな対策も講じてまいりました。そういう中で、判断基準をまとめまして、福島のような地震やあるいは津波が発生をしても炉心溶融に至らないという判断の中での安全性のチェックをさせていただきました。

 もちろん、これはこれからも不断の努力をしていかなければいけない、上限はないと思いますが、現段階においても、少なくとも炉心溶融には至らないという中での判断をさせていただいているということと、今少し委員からも御指摘がございましたけれども、これは経済の問題、国民生活への影響等も判断をしなければなりません。

 少なくとも、関西地区は、いろいろ精査をしましたけれども、需給ギャップが一五%程度は出てくるだろうという中で、そうしますと、もし急に停電になった場合等々、相当な悪影響が出る可能性があると思います。そういうことにならないためにも、エネルギー安全保障あるいは国民の経済社会全般の安定等々、総合的に勘案をしながら判断をさせていただきたいというふうに考えております。

 当然のことながら、中長期の我々のエネルギーのあり方ということも考えなければなりません。極力、原子力、原発に依存をしない、そういう社会をつくっていくということは、これは多くの方のコンセンサスだと思います。その中で、どういう選択肢を示していくのか、選択肢を示して、国民的な議論に付して、八月までに、国民の皆様が安心できるエネルギー構成、エネルギーのベストミックスというものをまとめていきたいと考えております。

勝又委員 ありがとうございます。

 総理から、安全性はしっかりとするんだということ、そして、中長期は原発に依存していかない社会をしっかり築いていくんだという趣旨の御発言がありました。

 私は、この問題は、今も御苦労されている福島の皆さんを初め、多くのお父さんやお母さんたちがみずからの子供の心配をすることを考えれば、どれだけ説明しても、説明が十分ということはないと思います。今後も、総理みずから、そしてまた政府一体となって、与党としても、しっかりと説明していくことが私たちの責務だと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 社会保障の方に議論を戻したいと思います。

 今回、いろいろな議論が出ていて、私も本当にこの委員会は意義があるなと思っておりますけれども、近年の若者の厳しい現状というものにも、私たちは本当に目をやっていかなきゃいけないというふうに思っております。

 さまざまな統計から、いわゆる所得の再分配をした後に子供の貧困率が上がっているのは、先進国ではもはや日本だけという現状になっています。また、逆に、近年ユニセフで出された資料では、いわゆる子供の貧困率、十八歳未満、我が国は一四・九%、先進国三十五カ国中、低い方から九番目、二十七番目。まさに、今の世代、次の世代、その次の世代の厳しい現状が浮き彫りになっている。これでは社会保障は成り立たないというふうに私は思っています。何としても今回の改革はなし遂げなければならないという思いがあります。

 同時に、財政を考えても、毎年四十二兆円国債を発行して二十二兆円の返済をするような、まさに借りかえ借りかえのような財政をやっていて、持続可能なはずがありません。こうしたことを何としてもやらなければいけないと思います。

 同時に、私は、今回の議論を聞いていて、年金や医療制度のような、本当の意味で国民にとって中長期に影響を与える政策というものは、政党が一党単独で考えるのではなくて、主要政党、さまざま、与野党がしっかりと協議をして一つの合意をつくっていく政治をこれからは志していく必要があるんじゃないかという気がしています。

 確かに、私たちもマニフェストでいろいろなことを言いました。そのことについては、私たちは、国民に、責任があります。しかし、同時に、政権交代するたびに年金の制度が変わっていて国民はもつんでしょうか。私はもたないと思います。やはり、しっかりと与野党が話し合って結論を得る政治、このことを国民が求めているということを、今回の地元活動でも多くの人に言われました。与野党が大人になってしっかり話し合ってください、そんな声をたくさん聞いてまいりました。

 私たちは、そういう意味においては、野党時代のいろいろなことも含めて、反省も含めて、謙虚でなければならないと思います。それは、国民の皆さんに対して、私たちも率直に言っていかなければならない。

 その上で、何としても、今回は、法案の修正協議あるいは与野党協議、こういうもので結論を得る、政治がその知恵を出す、今後の社会保障協議のモデルになるような協議をぜひしていただきたいと私は思っていますし、ここで成案を得られなかったならば、もう国民は政治にも国会にも既成政党にも期待を持てないような、そういう時代が来てしまうと私は思っています。

 そういう意味で、野党時代も含めてこの問題にかかわってきた岡田副総理に、この与野党協議、どんな思いで見られているか、ぜひ御発言をいただきたいと思います。

岡田国務大臣 勝又委員今御指摘のように、年金、医療、介護、子ども・子育て、それぞれ国民の関心は非常に高い。そういう中で、どうしても政治的な、争点化しやすいという問題はあります。そういう中で、我々も、勝又さんも御指摘いただいたように、それを必要以上に強く言う、そういったことが過去にあったことは事実で、そのことについてはやはり我々は反省が必要である、そういうふうに考えております。

 ただ、一方で、年金についての協議をぜひしましょうと野党でありながら呼びかけたという歴史もございます。ぜひここは、今回、具体的になっているこの協議について、お互い胸襟を開き、そしてしっかりと国民の立場に立って結論を得ていくということは、私は非常に重要なことだと思います。

 与野党逆転もございます。ねじれもあります。したがって、どこかの党だけ単独でこういう制度を決めることはできないんです。国民の立場に立てば、やはりここは、お互いの知恵を尽くしてしっかりとした合意を見出していく、その努力が我々に求められているし、特に我々は与党ですから、その責任は重いというふうに考えております。

中野委員長 勝又君、あと一分少々ですので、おまとめください。

勝又委員 今、副総理からもお話ありました。私は、今回の協議というものは、非常に、この委員会、いい議論ができていると思っています。野党の先生方も本当にすばらしい質問、論点を出されていて、なるほどと思うことが非常にたくさんあります。私は、与党として、政府として、取り入れられるものは大いに取り入れて、そして、逆に、私たちの主張のいいところは堂々と主張をして、そしてお互いの知恵を尽くして、何としても今回成案を得ていただきたいというふうに思っています。

 同じように、私たち自身が身を切る定数削減の問題なども、それぞれの党、主張はあります。しかし、大きな方向性は国民の考えていることと同じだろうと私は思います。ぜひ、これは知恵をお互いが出して、そして、お互いのメンツだけではなくて、国民を見て、我々、自分たちのためではなくて、国民のために何としてもやらなきゃいけないと思っています。そして、当然、私たちは政府・与党ですから、まとめる責任は私たちにあるということを、強い自覚を持ってしっかりとやっていかなければならないというふうに私は思っています。

 これから、国民の皆さんは、私たちのこの社会保障と税の一体改革の行く末を注目しています。私の支持者のみならず、多くの国民の皆さんは、ともかく結果を出してほしい、前に進めてほしい、もうこれで何も決まらなかったということは勘弁してほしい、そんな声をたくさん聞いております。

 ぜひとも、私たちも与党として頑張りますので、政府としても全力を挙げていただくことをお願い申し上げまして、バトンを湯原議員に渡してまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて勝又君の質疑は終了いたしました。

 次に、湯原俊二君。

湯原委員 おはようございます。民主党の湯原俊二でございます。

 きょうは、貴重な時間、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、消費税における所得の低い方々への対応策、いわゆる逆進性対策について、まず質問をしたいと思っております。

 消費税は、所得の低い方、高い方にも同じ税率でかかりますので、その点で、所得の低い方々にどういう施策を打っていくかが大変重要になってまいります。現在も与野党協議が行われておりますけれども、税の分野では、これが一つの大きな争点であろうかというふうに私は思っております。

 一つの考え方として、食料品にかかる税率を下げる、軽減する、軽減税率を導入することが一つの方策だという考え方もあります。私ども政府・与党は、所得の低い方を対象として、ターゲットを絞って、その分、給付金を出していく給付つきの税額控除によって、所得の低い方々への支援策、負担を軽減していく、こういう考え方を持っているところであります。

 稲富議員、一つ目のパネルをお願いします。

 一つの考え方であります、食料品等の税率を下げる軽減税率を導入することの短所であります。先般も当委員会で私質問をいたしましたけれども、改めてこの点を指摘させていただいて、政府の見解を求めたいと思っております。

 一つ目が、逆進性対策としての効果が軽減税率の導入は高くないのではないかということであります。

 稲富議員、二つ目のパネルをお願いします。

 これは、消費税は今五%でありますけれども、五%から八%に上げたときに、食料品を五%に据え置いたときにどういうふうな形で負担の軽減が図られるかという棒グラフであります。

 一番左の棒が、所得が二百万円未満の方の、一年間の食料品五%に据え置いたときの負担の軽減でありますけれども、一万二千円ちょっと軽減されるというものであります。これが、棒グラフ、右に行って、一千五百万円以上になりますと、年間で三万八千円を超える金額が負担の軽減になるということであります。

 つまりは、食料品の税率を下げる、軽減税率を導入することによって恩恵を受ける、メリットを受けるのは、所得の低い方よりも所得の高い方の方が恩恵を受けるということが言えるのではないかと思います。結果的に、この軽減税率の導入、食料品の税率を据え置くことは逆進性対策として効果が少ないのではないかということを物語っていると思います。

 稲富議員、一つ戻ってください。

 そして、二つ目であります。軽減税率の適用範囲の線引きが難しいということでありますけれども、これも先般来当委員会で問題になっているところであります。

 ヨーロッパが先進事例として一つ挙げられるのでありますけれども、イギリスなどでは、この線引きについて大変困惑、混乱をしております。例えばお菓子でも、個数によって違う、あるいはレストランで食べるのとテークアウト、持ち帰って食べるのでは税率が違う、その持ち帰るのでも、食べ物の温度によって税率が違う、こういったことも言われております。また、イギリスで、あるお菓子で、軽減税率適用のケーキなのか、それとも標準税率適用のビスケットかで十三年間も法廷闘争している。国民には非常にわかりにくい、そういう線引きになっているところであります。

 食料品に軽減税率をかけている国では、食料品の加工ぐあい、あるいは形状の度合いによって、ちょっとの、わずかな違いで線引きされるために国民は非常にわかりにくい、こういう状況であろうかと思っております。

 三点目が、複数税率によって消費者や生産者が混乱をする。

 これは先ほどの問題と関連するわけでありますけれども、消費税は、御案内のように、お子さんからお年寄りまで、全ての方に、買い物をした時点等で御負担をいただく税率であります。これが、複数税率あるいは食料品によってこの税が違ってくることになりますと、買い物をした後にレシートをもらった段階で初めてその税率がわかるというような状況が生まれてくるわけであります。非常にわかりにくい状況であります。

 四番であります。一旦軽減税率が導入されると標準税率に戻すことは困難になる。

 五番、業界団体からの軽減税率の適用範囲拡大の要望に反対することは難しくなる。

 これは、ヨーロッパにおける事例でもわかりますように、一たびたがを外して標準税率の対象外のものをつくり始めますと、次から次に業界団体から、うちのものも税率を下げてくれという声が上がってまいりまして、どんどん拡大こそすれ、狭めることが困難な状況へ、一旦外してしまったらどんどんと広がっていく、取り返しがつかない状況が生まれてくるということ。

 そして、あげくの果てには、その税率を導入する時点において業界団体と政治との間に癒着の温床も生まれかねない状況が生まれてくる、これを懸念されるところでありますけれども、そういう状況が生まれてくるということであります。

 六番目でありますけれども、課税対象が狭くなり税収減になるということであります。

 イギリスでは、事例を見ますと、この軽減税率、食料品や生活必需品の税率を下げることによって、標準税率を全体にかけたのに比べると税収が約半分になっているということであります。

 先般、委員会で五十嵐副大臣に私は質問させていただきました。日本で適用したらどうなのか、今五%であるのを八%、一〇%に上げたとき、食料品を五%に据え置いたとき、どのぐらい税収が減収になるのかとお伺いしましたら、八%に上げたときに食料品を五%に据え置いたときは一兆円半ばから二兆円減収になる。これを一〇%に上げたときに食料品を五%で据え置いたらどうなるか。五十嵐副大臣の答弁では、二兆円半ばから三兆円の減収、おおよそ四分の一から五分の一は減収になるのではないかということでありました。これが六番目の問題であります。

 七番目でありますけれども、事業者の記帳や税務執行の調査など事務コストが上昇する。

 八番目、標準税率と軽減税率の適用を区別するためインボイスの導入が必要となる。

 これは、御案内のように、先ほど来申し上げておるように、税率が複数になるために、事業者では記帳の問題が出てまいります。そして、それをチェックする税務当局の仕事もコストがふえていく、こういう状況であるわけであります。

 一方、我々が提案している給付つきの税額控除でありますけれども、野党の皆さん方からも若干御指摘いただいておりますけれども、所得を捕捉する意味での番号制あるいはマイナンバー制度を導入しなければいけない。それで、制度を導入しても、資産の方、ストックの方が完全に把握できるかどうかという問題が上がっているわけであります。

 そこで、政府にお伺いしたいのでありますけれども、今、給付つきの税額控除と軽減税率の導入のお話をさせていただきました。政府として給付つきの税額控除を選んだ理由を、改めて見解をいただきたいと思います。

中野委員長 岡田担当大臣、残り時間がわずかですので、端的にお答えください。

岡田国務大臣 湯原委員、八点にうまく集約していただきました。

 これを少し言い方をかえれば、一つは、やはり税率が一〇%で足らなくなる、そういう問題が一つあります。

 もう一つは、先ほど委員御指摘のいろいろな点、これは政治のあるいは政府の関与が深まるということで、大きな政府というふうに私は言っていいと思うんですね。そこにつながる。

 そして三番目は、やはりインボイスの問題で、インボイスの導入については中小企業団体の皆さんは強く反対しておられる。そういう問題をどう乗り越えるかという課題がある。

 一方、我々の給付つき税額控除についても、野党の皆さんから御指摘いただくような難しい点もある。そこを協議によって各党間でどう乗り越えていただくか、こういう問題だと思っております。

湯原委員 私は、今、岡田副総理からお話ありましたけれども、特に、一から八の中で、一番、逆進性対策として効果が少ないということ。我々が提案している給付つきの税額控除の方が、所得の低い方にターゲットを絞って、そこに給付金を出すことによって支援をしていく方がはるかに効果が高いということをまず申し上げておきたいと思います。

 そしてもう一つは、四番と五番にあります、一旦軽減税率を導入し始めると、たがが外れたかのごとく、どんどんと政治に対して業界団体から、うちの品物も税率を下げてくれという声が上がっていって、一回決壊し始めるとどんどんどんどん広がっていくということが言えるのではないかなというふうに思うわけであります。

 そこで、野田総理に思いをお聞かせ願いたいと思っております。

 私、実は専業農家でありまして、政治信条は、緑肥の思いということでやっております。緑肥というのは、緑の肥やしと書きます。レンゲやクローバーや麦などがそうでありますけれども、緑で生い茂ったまま、そこでトラクターでこなし込んでいって、生きたままこなし込んでいって、次の作物のために肥料となっていく、これが緑肥であります。生きたまますき込まれて次の作物の肥料になっていく、これが緑肥であります。

 私は、今の時代に生きる弱い立場の人々が一つ、もう一つは、次の世代のためにいかによりよい社会を残すために努力していくか、これが本来ある政治の姿だというふうに思っております。

中野委員長 質問をおまとめください。

湯原委員 野田総理もその見解を持っておられますけれども、ヨーロッパの事例を見本とするのではなく、あくまでも反面教師として捉えて給付つき税額控除を推し進めていきたいと思いますけれども、思いをお聞かせ願いたいと思います。

野田内閣総理大臣 今の御指摘のとおり、緑肥というそのいわゆる一つの哲学は、大事にしていかなければいけないと思います。

 今回やろうとしている改革というのは、まさに将来世代をおもんぱかって社会保障を持続可能なものにしていくということが根底にございますので、そういう発想のもとで共通するところがあると思います。

 その上で、消費税の引き上げをお願いする際には、どうしてもこれは、いわゆる低所得者対策、というのは、逆進性対策というものが大事になります。

 先ほど来いろいろと御指摘がございましたとおり、軽減税率では、一番の問題は、やはり高所得者の方に有利であって、いわゆる所得再分配機能としての限界があるというところが私は一番大きな問題ではないかと思いますので、その意味では、給付つき税額控除、いろいろ議論がありましたけれども、私どもの議論の到達点としては、逆進性対策としては給付つき税額控除が望ましいということでございますので、これも与野党の協議の大きな議論の材料になるかと思いますが、真摯な議論を行っていきたいというふうに思います。

湯原委員 時間となりました。以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて湯原君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。

 本日は、総理にお越しいただいての質疑でございます。テレビ中継も入っておりますので、改めて、総理の一体改革にかける思いをお聞きしたいというふうに思います。

 総理にお伺いをいたします。

 一体改革を国民の皆様に御理解いただくためには、お願いをする側の姿勢として、まず、身を切る努力が必要であります。その中でも最も大きなものは、国会議員らが身を切る努力、すなわち、議員定数の削減であります。一票の格差の問題とあわせて与野党間で協議が行われているわけですが、国民の目から見ると、この定数削減問題の議論が少しも進んでいないうちに消費税の増税法案を採決しようと映っているのではないでしょうか。

 この定数削減問題を含めて、総理として、身を切ることへの決意を改めてお聞かせ願います。

野田内閣総理大臣 まず、議員定数の削減は、まさに身を切る改革の象徴的な、多くの国民の皆様が関心を有しているテーマだと思います。

 私どもが消費税を最初に引き上げるというのは二〇一四年の四月です。それまでに身を切る改革がもう実現されている状況をつくりたいと思います。そのためにも、早急に、一票の格差の問題と定数削減と選挙制度改革について、これまで実務者レベルでの協議が進んでまいりましたけれども、今、幹事長レベルでの政治判断の段階になりました。今週中に私どもの幹事長から提案をすることになっておりますので、その提案をもって成案を得るように、全力を尽くしていきたいというふうに思います。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは、続いて総理にお伺いをいたします。

 総理は、この一体改革に政治生命をかけるとおっしゃっております。そのお覚悟のとおり、これまで、民主党内の議論、大綱の閣議決定、法案の提出、そしてこの特別委員会での百時間にも及ぼうかという審議と、一歩一歩法案の成立に向けて進めてこられました。しかしながら、経済の力強い成長がなければ、国民の信頼を得ながら持続的に市場の信認を得ることはできません。これからどのように経済成長と財政再建を両立させていくのか、そして、デフレを脱却して三%の名目成長へ持っていくのか。策定されるという日本再生戦略の具体策が見えてこないと、消費税への国民の理解も進まないと思います。

 消費税議論と並行して、日本経済の再生について、総理から具体的に御説明をお願いいたします。

野田内閣総理大臣 経済成長と財政再建を両立させるというのは、先般のキャンプ・デービッドにおけるG8でも最重要の課題でございました。主要国が直面している大きな命題だと思います。

 私どもについては、一昨年の六月に新成長戦略と財政運営戦略を、同じ日に、閣議決定していますので、日本の目指している路線も、世界の主要国と変わりがございません。その中で、特に留意しなければいけませんのは、大震災の後、一時的にやはりどうしても景気自体は落ち込んだりしましたが、今緩やかに回復しつつあります。その中で、足元、一月から三月のQEにおいては、年率四・七%成長となりました。やはり、復興需要を顕在化させながらしっかりと回復の軌道に乗せていくということが、当面の足元が大事だというふうに思います。

 その上で、新成長戦略、一昨年六月にまとめたものを厳しく検証させてきております。検証を踏まえて、本当に有効な政策として効果が出るように、その検証結果を踏まえて日本再生戦略というものをつくっていきたいと思いますが、これまで柱であったグリーンイノベーションであるとかライフイノベーションという、エネルギー・環境分野、あるいは我が国が得意な医療・健康の分野等々に、一つ、今具体的な政策の積み重ねをやっています。

 新成長戦略の検証を踏まえた中での再生戦略を年央にまとめていきたいと考えております。

中島(正)委員 今、修正協議が行われておりますが、野党の皆様から、最低保障年金の問題そして後期高齢者医療制度の問題について、旗をおろせ、白紙にしろという声が上がっております。それに対して、いや、それはできないというような声も出ております。最初から百かゼロかということであれば、野田総理のおっしゃるように、本当に最初からこれでは議論が進まない、私自身もそう思います。

 ですから、お互いに、押すところは押す、引くところは引く、そして妥協し合って、一日も早く成案を得られることを御祈念いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子一義君。

金子(一)委員 衆議院の金子一義でございます。

 冒頭の民主党の議員の質疑の中で、何とか十五日までに修正協議をまとめてほしい、民主党として応援すると、まことに力強い正論の発言がありましたけれども、総理、一方週末、何があったのか。各地区で民主党の議員の皆様方が消費税反対運動をやっておられるじゃないですか。のぼりを立てて、消費税反対と街頭演説している。党議拘束をかけていないんですか。

野田内閣総理大臣 修正協議が調って、そして法案の採決という段階においては、当然のことながら党議がかかる、党議拘束がかかるということでございます。

金子(一)委員 修正協議を何とかまとめたいということで申し込まれたのは民主党の方なんですよね。野田総理の方なんですよ。それが、党内の足元が、外で活動する。これは、我々にとって、一体全体修正協議にどういう影響を与えるかということをやはり総理もよく考えていただいて、党内をしっかりグリップ、握っていただかなきゃいけないと思いますよ。

 総理は、今会期中、六月二十一日ですけれども、今会期中までに採決すること、これが政府・民主党の責務であると会見でおっしゃられました。二十一日までの衆議院の採決、通過をさせる、これが民主党政府の責務であるということをもう一遍改めておっしゃってください。

野田内閣総理大臣 政府として提出をし、御審議をお願いしている法案については、基本的にはその会期の中で成立を期すというのが基本中の基本ですが、特にこの社会保障と税の一体改革については、長い間議論を積み重ねてきた中で、そして待ったなしのテーマであるということでございますので、今、六月二十一日が衆議院の会期になっております、このことをしっかりにらみながら合意を得る、結論を得る、採決を目指す、最大限の努力をするということが基本だというふうに思っておりますし、そのための努力を今させていただいているところでございます。

金子(一)委員 会期をにらみながら最大限の努力というのは、ちょっとニュアンスが違う。私が、記者会見のこれは文章ですけれども、トーンが変わっちゃっているな、トーンダウンしているなという感じがします。

 ただ、総理が今、会期中、二十一日までに採決、責務ということに対して、自民党執行部は、輿石幹事長含めて、民主党の幹事長、本当に同じ思いなんだろうかというところに、失礼ですけれども、疑問、疑惑を持っていました。しかし、先週の三幹事長会談では、民主党執行部、輿石幹事長も含めて、十五日までに修正協議をまとめて、調えて、そして二十一日採決、総理と同じ思いである、こういうお話を伺ったものですから、自民党も、谷垣総裁以下役員会を開きまして、そして、十五日までに修正協議を調える、二十一日までに採決、これを前提として、今修正協議に応じているんです。

 自民党の考え方と違いますか。

野田内閣総理大臣 先般の幹事長会議などで、明確に我が党の幹事長から、認識は私と一緒ですということをお話をされていると思います。そのことは、二十一日がお尻であるという中で、実態としては、私は今回、G20にぜひ国会の御承認をいただいて出席をさせていただきたいと思います。というのも、十七日にはギリシャの選挙があって、その直後のG20で世界経済のあり方について日本の代表が議論しないということはおかしいわけでございます。

 そういうことを含めますと、実態としてはその出発前までに合意を目指すということが、これはやはり私どもの基本的な姿勢でございますので、それは、当然のことながら幹事長も認識は一緒だということをお話をし、そして協議のお願いをさせていただいたというふうに思います。

金子(一)委員 十五日というのは、いいですよ、十六日、メキシコ・G20に御出発になられる前までにと言いかえて結構なんです。

 ただ、基本的姿勢なんですか。十五日までに必ず調える、ここの、調うように努めたい、全力を挙げてほしいということを記者会見でも総理は言われているんですが、これは必ずまとめるという意思をオブラートに包んだものなんですか、それとも、まとまらなきゃしようがないという、どっちなんですか。

野田内閣総理大臣 何としても全力を挙げてまとめたい、まとめなければいけないという思いでございます。

金子(一)委員 十五日までに、我々は、谷垣総裁が役員会で一任を受けまして、一任を受けた今修正協議に臨んでいるメンバー、これまた全権を受けて今修正協議、きのうも夜遅くまで、きょうもまた夜遅くまで、今、お会いになっている最中です。十五日までに必ず終えるという強い意思があるのか。まとまらなきゃしようがないや、これは全然違いますよ、対応が。したがって、十五日までに、今おっしゃられた、全力を挙げてまとめる、必ずまとめる、そういう強い決意ということを期待します。

 総理は、仄聞でありますけれども、関係の皆さんに官邸からみずから電話をされていろいろ指示されている。したがって、協議を見守るという立場ではない。今置かれている立場は見守るという立場ではありませんし、直接に指示して、何としても十五日までにまとめる、これをもう一遍、総理、言ってください。

野田内閣総理大臣 何としても、G20に出発する前までにきちっと合意ができるように全力を尽くすという意味の中においては、必要な人には必要な指示を必ず行っていくということでございますし、事実、そういう指示をさせていただいております。

金子(一)委員 先ほど申し上げたように、今、自民党の、当委員会、伊吹先生含めて修正協議に臨んでいるメンバーというのは、党の一任を受けているんです。ですから、修正協議がまとまれば、党に持ち帰ってもまとまるんです、一任を受けていますから。

 民主党はどうなんですか。御党のことに手を突っ込むつもりはありませんけれども、輿石さんも前原政調会長も、協議がまとまったら党に持ち帰る。党に持ち帰るのは、同意ですか、協議ですか、どっちを想定されているんですか。

野田内閣総理大臣 それぞれの党において、さまざまな所要のプロセスがあると思います、意思決定の。御党は総裁一任という形で、もう既にそういう形で段取りを決めたというふうには承知をしていますが、私どもも所要の手続がございまして、協議が調った段階で党内の意見をよく聞いた上での判断ということになりますが、もちろん、それは党と、だから、どの段階での党内手続か等々もあります、どの段階での手続かとかいろいろやり方はあるかと思いますけれども、協議をして、協議をした中で、そこは相手との信頼もあります、それは、当然のことながら、できるだけ多くの方に御賛同いただき御理解いただくということに努めるということだと思います。

金子(一)委員 だから、御党の協議の中身まで私も言いません。しかし、我々自民党は、何遍も、決まったことが後になってひっくり返される苦い経験をしているんですよ。

 あした、あさっての公聴会もそうだったですよ。当委員会として、あした、あさっての公聴会の日程を決めようと、野党の理事の皆さんも与党の理事もみんなまとまった、あした採決しよう、当委員会でと。ところが、翌日になったら、あれはなかったことにしてくれと言われちゃったんですよ。そういういわば皆さん方の信頼に対して、非常に疑念を抱かざるを得ないんです。

 二十一日までに採決されるということについて、民主党の責務だ、政府の責務だとおっしゃるならば、協議がどういう形で民主党内、御党の中で行われようとも、二十日中には、協議は、民主党の中の手続は終わっているということでよろしいんでしょうか。

野田内閣総理大臣 これまでも、今ちょっと国会日程の話は詳しくは私もわかりませんけれども、子ども手当であるとか、そのほかの主要なテーマについての政党間の協議をやってまいりました。そのほかも、震災関連でも、三党での、いや、もっと多党間でも協議をやってきていました。それを踏まえて、しっかりと党内手続を経て今までも対応してきております。基本的にはそれらと変わりはございません。そこはぜひ信じていただきたいというふうに思います。

金子(一)委員 いずれ、自民党の谷垣総裁とも会われることになるんだと思っています。そのときには、十五日協議調う、そして二十一日採決、総理、言っていただかないと、はっきりしていただかないと、我々、総裁も会っていただくというわけにいかなくなっちゃう。

 私、予算委員会で野田総理に、野田総理が最も尊敬する政治家、大平正芳さん、あの大平正芳さんについて、あれだけの思いを持ちながら、一般消費税(仮称)というのを選挙に掲げて、残念なんだけれども失敗しました。私も、大蔵大臣秘書官としてその選挙のさまも見ていましたけれども、失敗の最大の理由は身内の反乱だったんです。そのことも、前にも御指摘も申し上げました。

 この身内の反乱、せっかく協議が十五日にまとまっても、今総理が言われた大事なG20、メキシコに行っている間にこの反乱が起こっちゃう。新聞で書かれていますよ。報道もあります。そういうことを絶対させちゃいけない。

 したがって、採決は決して引き延ばさせないということを今言明されたらどうですか。

野田内閣総理大臣 あくまで協議が調い、その上で所要の手続を経て意思決定をするならば、その後の採決というのは、これは自然の流れだというふうに思いますし、そういうことを目指していきたいというふうに思います。

金子(一)委員 今までのこの日程をめぐる総理とのやりとりの中で、修正協議に当たっている方々が今の総理の御発言というのをどういうふうに受けとめただろうか。本気になって必ずやる、その気がもう一つ伝わってこないな。

 だって総理は、今国会で一体改革に政治生命をかけるとおっしゃっているんですから。それは間違いないんでしょう。だったらば、今の日程、採決について、民主党の幹事長がどうこう、あるいは党内で週末に消費税に反対している議員がいようが何しようが、とにかく民主党野田政権としてはやるんですということを、ちょっともう一遍、覚悟のほどを示してください。

野田内閣総理大臣 今国会中で、この待ったなしの一体改革については結論を出す、成立を期す、そのことについて政治生命をかけると何度も申し上げてまいりました。その気持ちに全く揺るぎはございません。

 そのために、しっかりと修正協議で合意形成できるように、今、現場の責任者にも指示もさせていただいておりますけれども、全力を尽くさなければいけないというふうに思いますし、所要の党内手続もしっかり経て、しっかりと採決できるように全力を尽くしていきたいというふうに思います。

金子(一)委員 ちょっと繰り返しますけれども、我々が今修正協議に入っているのは、あくまでも十五日までに修正協議を調える、そして二十一日、会期末までに採決をさせる、そういう前提で今修正協議に入っている。これだけは、野田総理、そうじゃない状況というのは考えたくないですけれども、しかし、それができるように、党の協議、手続とおっしゃっても、党本部に出かけていって民主党議員を説得してくださいよ、総理、みずから出ていって。前回もやろうとされたじゃないですか。

 そういうことを含めて、全力を挙げていただきますことをお約束いただきたい。もう一遍答弁してください。

野田内閣総理大臣 まさに協議に応じていただき、本当に質の高い御議論をいただいていることに感謝を申し上げたいと思います。まさに、国民のために結論を出さなければいけないことでございます。まだいろいろな意見表明が党内にあることは事実でございますが、しっかりと結論を得て、そして、合意をした上には、全員一致で同じ態度で臨むということのために全力を尽くさせていただきたいというふうに思います。

金子(一)委員 あす、あさっての公聴会が終わりますと、ほぼ百時間、審議は行くんでしょうか。輿石幹事長も、時間が来れば採決するのは国会の不文律という、ある意味しっかりしたことを言ってくれていますので、我々は今申し上げた前提で進めさせていただきたいと思います。

 百時間に及ぶ議論の中で、相当突っ込んだ議論も今出てきていると思います。予算委員会とは違いまして、税一体改革に集中していますから、かなりの、二巡、三巡した議論になってきている。

 ただ、この経過、ずっと私はここに座っておりまして、社会保障と税の一体改革というんですけれども、どうも社会保障改革のところの議論が空回りしちゃっている。何が残ってくるかというと、結局、消費税の増税という増税法案になってしまうのではないかという意識がどうしても否めないんです。

 審議の中では、年金制度でいえば、現行の年金制度、これはもう再三、自民党の各委員からも、現行の制度は二十一年度の財政収支計算見直しでも十分健全である、したがって、現行制度を前提にしていくということを確認し、政府側も大丈夫ですと、小宮山さんも岡田さんも安住さんも大丈夫ですと言い、しかし一方で、来年は新年金制度へ移行しますというのが絶えず返ってくるんです。議論がかみ合っていないんです。

 最低保障年金、法案には書いていないんですけれども、しかし、ちょっとそれを一旦横に置いておきまして、今回提案されている消費税の増税の範囲内で社会保障がどういうふうに改善されるか。これは五項目を今議論していると思います。我々が責任を持つと言った年金の公費負担二分の一、低所得者、低年金者対策等々五項目でありますけれども、我々は、この最低保障年金は一旦横に置いておいて、今申し上げた五項目について、この修正協議の中でまとめられないか、成案が得られないかと。そのために、社会保障基本法案を提示させていただいております。

 この社会保障基本法案というのは、これまで百時間にも及ぶ審議の中で、自民党の委員から再三にわたりまして考え方の提示をさせていただいています。例えば、まず自助、その次に共助があって、さらに公助だ、こういうことも含めて再三主張させていただきました。総理はそれに対して、基本的には同意できる、大きな違和感はないという御答弁をいただいているんです。

 そこで、今もう始まっている修正協議でも、我々が出しています社会保障基本法をめぐって議論がされているようでありますけれども、ぜひ総理、この我々が出している基本法に賛成いただいて、与野党で今申し上げた五項目について成案を得ていくということができないだろうか。何とかこの社会保障基本法に賛成していただけませんか。

岡田国務大臣 少し議論を整理したいと思うんですが、我々、年金で二本、子ども・子育てで三本の法案をこの特別委員会に提出させていただいております。今までさまざまな御議論をいただきました。いい御指摘もいただきました。そういう中で、各党間の協議、特に御党と公明党と我が党の間で行われておりますので、ぜひ、この五法案について、それぞれ直すべきは直しながら、しっかりと成立をさせることについて御審議をいただきたいというふうに思っております。

 その上で、御党提出の基本法案につきまして、各論のところには最低保障年金取り下げとかいろいろなことが書いてありますので、そこはまさしく……(金子(一)委員「書いていません」と呼ぶ)総論の部分については、かなり共通する部分もございます。しかし、各党それぞれ御意見もおありだと思います。公明党さんの御意見もあります。

 したがって、そこはよく意見交換をして、その上で取り扱いについて御議論いただければいいのではないか、各党間で御協議いただければいいのではないかというふうに考えております。

金子(一)委員 これは、テレビが入っていますから、岡田副総理、ちょっと、全然違うことを言われちゃ困るんです。我々の社会保障基本法というのは、御党にとって一番タッチーな、最低保障年金を取り下げろと一言も書いていないんですよ。だから、のんでくださいよと言っているんですよ。だから、それに賛成していただいて、今おっしゃられた五項目について修正協議しましょうと言っているんです。これは再質問しません。

 これは安住さんに聞きます。

 我々、社会保障のこの五項目についての協議がまとまるまでは、消費税の方を先行させるつもりはないんですよ。多分、御党もそうだと思います。だから、社会保障、今提案されている五項目について、その協議がきちっとまとまるという前提で税率を引き上げる、税率引き上げ先行というのは絶対考えない。それは、安住大臣、どうですか。

安住国務大臣 この修正協議は、藤井先生と町村先生でやっていただいておりますが、もうこのお二方にお任せをしておりますので、そういう点では、そこで話し合われることを私どもとしては最大限尊重させていただくということです。

金子(一)委員 そこで、最低保障年金の扱いなんですけれども、法案に入っていませんから、旗をおろせとかおろさないとか、法案からおろせ、おろさないという話ではないんですね。岡田さん、そこがポイントなんです。だけれども、大綱には書いてあるんです。大綱に、来年法案を提出します、これは書いてあるんです。

 そうすると、我々今回、一〇%の法案、五項目と一緒に出しますよね。しかも、現行年金制度を前提にして国会で通す。国民はそれでおしまいかと思ったら、いやいや、来年はまた違う年金制度が出てきます、しかも、そのためにはまた新たな消費税、七%、八%ぐらいが必要ですと。そんなことをどうやって国民に説明できるんですか。我々は、これはそういう意味で白紙に戻していただきたい、趣旨はそういうことであります。

 特に、修正協議の場でも、マニフェストをおろす、おろさないというのがありますけれども、大綱に記されていて、しかも来年度法案を提出する、これが今、修正協議の皆さんが一番抱えちゃっている障害なんですよ。十五日までに何とかまとめようと思えば、この障害を取り除かなきゃいけないんです。

 これは総理にお伺いします。

 何とかこの障害を、これは御党全体の問題ですから、大事な問題ですから、しかし、修正協議のときに、障害です、進みませんよ。どうやって取り除くのか、あるいは、責任を持って取り除くということをおっしゃってください。

岡田国務大臣 まず、先ほどの答弁は失礼いたしました。私、後期高齢者医療制度とちょっと取り違えておりましたので、失礼をいたしました。

 そして、我々の年金の抜本改革、これは最低保障年金だけではないんですが、抜本改革について、来年度法案を提出するということについて書いていることは事実でございます。

 ここは前にもこの委員会で申し上げたわけですが、各党間でまさしくこれからの年金制度のあり方について御協議をいただくわけでございます。我々は、年金の抜本改革が必要だというふうに考えている。御党は、今の年金制度を前提に、それを改良していくことで、手直しをすることで対応が可能だし、その方が望ましいとお考えである。そこの違いがあるわけでございます。

 各党間で御協議いただいて結論が出れば、その結論が答えでありますので、そのときに、来年法律を必ず出す、そういうことにはならないわけでございます。

金子(一)委員 ちょっとよくわからなかったですね。

 各党協議で来年法案を出さないということになれば出さない。ということは、大綱から来年法案を出すということを削除してもいいということですね。

岡田国務大臣 大綱は閣議決定されたものであるという委員の御指摘です。

 いろいろな法案についても閣議決定をいたします。しかし、その後、各党間で話し合って議員修正するということは幾らでもございます。そのときに、何かもとの閣議決定に戻って取り消すとか、そういうことにはならないわけで、それは各党間で話し合って結論が出れば、その結論と矛盾するものについては効力を失うということでございます。

金子(一)委員 そうしますと、先ほど申し上げた、我が党が出させていただいています社会保障改革基本法、これをのんでいただければいいんですよ。

 この中にどういうふうに書いてあるかというと、この大綱の決定にかかわらずと書いてあるんですよ。今おっしゃられたことはもう既に入っているんです。よく読んでください。つまり、閣議決定をされていても、その閣議決定にかかわらずと。そこでオーバールールして、修正とお互いに合意すればできるじゃないですか。やったらどうですか。

岡田国務大臣 まさしくそういうことも含めて、各党間でもう議論は始まっておりますので、そこで御議論をいただければいいことではないかというふうに考えております。

 委員の御指摘もよくわかりますが、この基本法の取り扱いも含めて各党間で今議論されているというふうに私は認識をしております。

金子(一)委員 岡田副総理、各党各党とおっしゃるけれども、違うんですよ、今は。政府と民主党と野党、もう政党にお任せします、各党間にお任せをします、今、そういう見守りますという状況じゃないから申し上げているんじゃないですか。

 ですから、私は、岡田副総理に今の障害を何とか必ず取り除くと言っていただきたかったんだけれども、その答弁がなくて、事務的な答弁を岡田さんから、各党にお任せしますなんという答弁をされちゃって、何だよと思います。

 総理、もう一遍、今の問題についてちょっと答えてください。

野田内閣総理大臣 社会保障の全体像というものを明らかにするために大綱をまとめました。今回御審議いただいているのは七つの法案でありますけれども、大綱をまとめたときには、工程表も含めて、私どもが考えている、今までの議論の到達点である年金等々の考え方、社会保障全般についての全体像を示す中で最低保障年金等の記述がございます。これは、政府の覚悟を示せということで、閣議決定しろという、むしろ野党側の要求を踏まえて閣議決定をさせていただきました。

 これは閣議決定したわけですから、重たい事実だと思います。それを踏まえて今回法案を提出して、これも閣議決定して出しているわけでありますが、今、与野党の協議の中の進展を見ながら、それについての対応というものは考えなければいけないと思います。

金子(一)委員 具体的に与野党協議で今の閣議決定を修正していくという、先ほどの基本法というのを通していただくということが、のんでいただくということができれば、それはそれの一つの解決だと思います。

 次に、ちょっと話題を移します。

 この委員会が始まる前の本会議の代表質問を私と野田毅先生がやらせていただいたんです。景気条項、二%、三%、実質、名目という成長目標というものをあえて書き込んだ。これはあくまでも前提ではないというおっしゃり方であるんですけれども、本当にこの成長率、実質二%、名目三%というのが法案に書かれる指標として国民に対してフェアなんだろうか。

 GDPというのは、当委員会でも、いろいろな指標を組み合わせてでき上がっている、つまりデータを加工してでき上がった集合体である。経済成長率そのものは、岡田さんも何遍も答弁されました、総理も言われましたけれども、後になって振り返って遡及する、つまり、このときはこんな状況だったけれども、後で振り返ってみたら成長率はきちんとしていた、上がっていた、そういう質疑の答弁が随分ありました。そういう意味で、改めて景気条項というのを掲げておく意味は余りないんじゃないか。

 強いて言えば、これは何で景気条項を入れるかといったら、消費税を上げない条件は何か。つまり、もし入れるとすればネガティブ条項なんですよ。ネガティブ条項というのは何かといったら、成長率、実質二、名目三、そこから導き出されてくるのはインフレ率、物価上昇率プラス一%でしょう、安住さん。日銀もそれを言っているんですよね。日銀の白川総裁も、日銀レポート、今の物価上昇率プラス一%というのは、一四年も含めてそう遠からず実現するということを言っておられるんですよ。

 そうすると、もし数字として入れれば、この物価上昇率プラス一%ということになるんだと思いますけれども、これは安住大臣、いかがですか。

安住国務大臣 最初政府でまとめたときには、御存じのとおり、この附則十八条の一項、二項の書き方は違っていたわけですが、これは、与党の中で御審議をいただいている中では、名目三、実質二というものを目指す政策目標をやはり法律の附則のところで掲げるべきであるということでございましたので、私どもとしては、政府のデフレ脱却や経済活性化に向けた必要な施策を講じていくという目標を、これは先生御存じのように条件ではございませんが、掲げて、いわばこれを目指していきますよと。

 それで、二項めのところは実は先生が御指摘のとおりでございまして、経済の著しい変動はこうした経済指標に基づくものというよりは、リーマン・ショックや東日本大震災のような、むしろ消費税を引き上げることに対して、いわば変動が予期されるときには、政治判断としてこれはとめるという条項を掲げております。

 ですから、そうした二つ立てになっておりますが、これが必要かどうかということで十分この委員会でも御議論はいただいておりますが、私どもとしては、この一のところで掲げる目標というものを、二%、三%を掲げさせていただいたというところでございます。

金子(一)委員 総理、この景気条項、数値を入れるということに対してはいろいろな問題があるんだろうなと。

 菅総理がかつてデフレ宣言したんです。いろいろな指標を使って、機械的にこうだといって、ある指標はこうなって、こうなればデフレだといってデフレ宣言した。与謝野馨さんというのが大反対しました。あの経済論争を今でも覚えております。

 やはり、民主党が持たれている成長戦略の中の目標として二%、三%という数値は、これはいいんだと思います。しかし、最後は時の政治が判断する項目ですから、この法案からは削除をしたい、我々自民党はこれを修正協議で主張していくつもりでありますが、総理、どういうふうにお考えになりますか。

野田内閣総理大臣 平成二十三年度から三十二年度まで名目三%、実質二%の成長率、向こう十年間の平均ということでございますが、その実現をすることを政策の最大限の目標としております。これは一昨年六月の新成長戦略に基づいた数字でございますので、政府としてずっと目標に掲げている数字でございます。

 それをあらゆる政策努力を行いながら、消費税を引き上げる際には、いわゆる条件ではありませんが、政策総動員でその努力をしていくということでございますので、これを取り下げる、下げないという話ではなく、そういう目標はどなたもやはり、経済は好転をさせながら、こういう環境をつくりたいという思いはお持ちだと思いますので、ぜひその気持ちというのは御理解をいただければというふうに思います。

金子(一)委員 修正協議会で議論になると思います。

 一方で、ではその二%、名目三%をどうやって成長させていくのか。

 私、この問題について本会議で、分配を考えるだけじゃなくて、パイを大きくしていくことを考えるべきではないですかといって総理に御質問したら、御丁重な、だけれども木で鼻をくくったような答弁を受けちゃったんです。何かというと、新成長戦略で着実に実行しますと。では新成長戦略とは何ですかといったら、ことしの年央に出しますと。だから、まだ我々、新成長戦略を、どうやってこの二%、三%を進めていくのかよくわからない。当委員会でもなかなか議論ができていない部分なんです。

 そこで、お手元にあります「成長戦略」。これは自民党の統一見解ではありません。しかし、この考え方というのは極めて自民党的なんです。だけれども、安住さん、これは決して手あかはついていないんですよ、手あかがついた話じゃないんです。

 我々の認識は、名目のGDP、つまり我が国のパイというのが五百十二兆円から四百六十八兆円と、四十四兆円、二〇〇七年から一一年の四年間でおっこっちゃったねと。つまり、規模が小さくなっちゃっている。

 もう一つは、賃金がどんどん下がっちゃっている。何で賃金が。いろいろな指標がありますけれども、一つだけ取り出しました。製造業の平均賃金というのは四百六十六万なんですよ。サービス業、医療とか介護とかいろいろありますけれども、これを伸ばそうと民主党の方は言っておられますけれども、三百九万なんですよ。つまり、この間に百五十七万の格差があるんです。

 今このままいくと、製造業がどんどん海外に出ていっちゃう。サービス業は、公的な支出もふえてくるから伸びるだろう、ほっておいても伸びる分野でしょう。だけれども、結果として、賃金がどんどん下がっていく結果を招きかねない。デフレ、なかなか脱却できないという問題を我々は抱えている。だから、マクロ経済運営、今回の財政目標とあわせて短期のデフレ脱却対策というものを両方走らせなければいけないのではないか。

 中期財政健全化計画と短期のデフレ脱却対策なんて書いてあって、いかにも自民党的だな。だけれども、皆さんが金科玉条にしている財政運営戦略、二〇一〇年のもの、これに堂々と書いてあるんですよ。この中期財政健全化と、中長期と書いてあるんですけれども、短期の経済政策は整合性、一体的で、経済の状況に応じて弾力的に考える。逸脱していないんですよ。逸脱したのは、政府部内の赤字を安易につけかえてはいけないということにかかわらず、交付国債、俗に言う安住国債を発行しちゃったことなんです。

 我々の骨格では、通年度の予算のシーリングは一方でやはりきちんと守っていく必要があるよな、ですから、シーリングというのは一応堅持していこう。ただ、デフレ脱却としてやはり必要なことをやっていこう。具体的にちょっと書かせていただいた。いっぱい書きたかったんですけれども、一つだけ書きました。これは民主党の皆さんも言っていますよ。研究開発投資をやはりどんどんやって、企業の国際競争力をつけていこう。

 ただ、皆さん、法人税率を引き下げた。そのかわり、租税特別措置法を全部見直しちゃって、圧縮しちゃっておりますよね。

 今、研究開発型企業ってどんな思いをしているかといいますと、法人税は引き下げられると思ったけれども、しかし、それは東北の復興に持っていかれちゃった、だから法人税は引き下がらない、だけれども、租税特別措置の試験研究費、研究開発費は減らされちゃっている。国際競争力を大事にしなきゃいけないときに、こんな状況になっているんですよ。ですから、ペイ・アズ・ユー・ゴーという基本は、短期のデフレ対策の中では外していこうと。

 もう一つは、伊吹先生も含めて、町村先生も、みんな言われていましたけれども、財政出動を今の赤字国債の配分の中で進めていこう。これは、何でもかんでも公共事業をやるという話じゃないんです。首都直下、東海、東南海、今すぐそこにある危機に対応して、やる必要のある優先順位をつけていこう。

 岡田さん、浜岡原発をとめたでしょう。あれは、津波が来る可能性があったのでとめたんですよね。浜岡原発、さらに二メーター、三メーター高い塀をつくるということを要求されたんです。それでは、あのある地域の御前崎というのは何か津波対策はありますかと言ったら、何もないんですよ。何もないんです、予算もありませんから。あの浜岡の御前崎の地域、海岸べりには立派な道路が走っているんですよ。

 ところが、仙台の、宮城で恐縮でありますけれども、津波が来たときに奥に逃げる退避路がないんですよ。非常に乏しいんです。奥に逃げる、内陸部に逃げる退避路というのは、そんなにお金がかかるわけじゃないんですよ。万里の長城をつくるわけじゃない。やはりそういう、国道と県道をつけかえて避難路を確保するとか、いろいろな工夫がありますよ。

 中部地方整備局というのは、かなり絵を描いてくれていますよ。物すごく具体的に絵を描いています、予算はありませんけれども。だから、地方整備局は全部廃止だなんて、総務大臣は必死に、ひっちゃきになってやっているけれども、あんなものは無駄な話ですよ。やめた方がいい。

 余談でありますけれども、そういういわば経済対策というのを講じていきたい。

 これは法文に書く必要はありません。改めて二本立てで走らせていこうというのも、与野党協議なのかもしれません。本格的な国土強靱化の財政というのは、我々が政権をとってからやることだと思っていますけれども、総理、ぜひお考えを。

野田内閣総理大臣 成長と財政再建の両立をさせるという中で、どういう形での成長をさせていくかという中の一つの御示唆だというふうに思います。

 公共事業については、もちろん無駄なところは削らなければいけませんけれども、真に命にかかわるインフラの整備等々については、これは優先的に取り組んでいくべきという視点では、私どももその問題意識は共有をしているところでございます。

金子(一)委員 ぜひ、問題意識を共有されておられるので、これはこれから税制とあわせて、どうやって成長をさせていくのか、それから御党が出される新成長戦略の見直し、それが出てきたところで我々も議論をさせていただきたい点であります。

 世界で初めて、消費税を社会保障の目的税化しました。今法案で目新しいのが二つあったんです。一つは、消費税を完全に社会保障の目的税化するということ。幼稚園、バウチャー制を入れるということ、これも、目新しい機軸が今法案の中には入ってきたなと思いますけれども。

 この目的税化について、これは安住大臣にお伺いしますけれども、消費税の対象四経費、これは議論の中でも、制度としてでき上がった社会保障四経費と言っているんです。範囲が、児童手当は入るんですか、入らないんですか。

安住国務大臣 入ります。

金子(一)委員 今度の数字には入っていないですね、今度の試算の中には。確認してください。入っていないでしょう。今の、すぐ確認してくださいよ、イエスかノーかなんだから。小宮山大臣。

小宮山国務大臣 このたび消費税を上げさせていただく中の二・七兆円、そのうちの〇・七兆円を子ども・子育ての新システムに充てるということで、その中には児童手当は入っておりません。

金子(一)委員 安住大臣、入っていないんですよ。入っていない。制度として確立した社会保障四経費といいながら、児童手当は本来、制度としては確立されたんですよ。にもかかわらず、入っていないんですよ。入っていないんです。(安住国務大臣「やっぱり根には入っているんです」と呼ぶ)それは、政府不統一とかなんとか、そんな話じゃありません。

 我々がちょっとはっきりさせておきたいのは、どこまでを入れるのか。というのは、目的税ですから、目的税なんですから。

 安住さん、目的税と、今まで予算総則で目的税化してきたのとは、どこが違うんですか。

安住国務大臣 これまでは、平成十一年から総則に書いているということは、毎年の予算総則でこれを書きますということで、単年度予算ごとにこれは高齢者三経費ということになっておりました。

 しかし、今回は、税法においてそれを位置づけておりますから、私どもとしては、よりはっきりと、少子化を含めた予算の使い方というものをこの四項目に限定させていただくということでございます。

 ですから、法律上は、税法に書き込むということで目的税化というふうに私どもとしては捉えております。

金子(一)委員 目的税化したことによって、単なる制度として確立されたというのをどこまでに置くのかというのは、やはり改めて与野党議論しておかないと、何を入れて何を入れないという、財政運営に非常に影響を与えますので。

 安住大臣に質問させていただいたので、ちょっと振り返ります。

 お地元の仙台に帰りましたときに、(安住国務大臣「石巻です」と呼ぶ)石巻ですか。住宅ローンについては、住宅については消費税率が上がっても負担増加させませんとお地元でしゃべったという記事が出ていたんですけれども、そうなんですか。

安住国務大臣 いえ、そうではありません。私が申し上げたのは二つありまして、被災地に向けた住宅の問題と、それから、先生御存じのように、新しく五%上がったときの住宅に対する手当てをどういうふうにしていくか。

 私の問題意識は、住宅については、やはり人生にとって一番大きなお買い物であるという方が多いと思いますから、そういうことについて、今住宅ローン減税等行っておりますけれども、何らかのやはり軽減措置というのは必要であろう。しかし、単一税率を維持していますから、そういう点では、今回上がった分については何らかの軽減措置というものは考えなければならないということは七条にも申し上げていますので、私はその趣旨で申し上げました。

 それから、地元は、被災地の住宅再建の話も混同してお聞きになっておられたので、それは整理して申し上げたつもりなんですけれども、これは御存じのとおり、今さまざまな控除制度や資金も入っておりますから、そういう中で、できるだけ被災者の皆さんには特段御迷惑をかけないような工夫をしたいということで申し上げました。

金子(一)委員 住宅というのは、被災者だけじゃなくて、全国、非常に経済的な影響が大きいじゃないですか。やはり我々も、我々もというのは、我々は今野党ですけれども、やはり駆け込み需要とその反動というのはよく考えないと。ここで一番出てくるんです。

 我が国の国内需要の成長を支える物すごく大きな要因であることも事実なんです。これまで我々が消費税率を引き上げたときにも、駆け込み需要、そして一度反動があると、四年から五年かかるんですよ、回復してくるのに。二回経験しました。つらかったですよ。

 四年、五年かかっちゃいますと、やはり雇用に影響するんです。今度の消費税率、今は単一税率、我々は軽減税率を主張していますけれども、これも影響しますと、四、五年ダウンするとなると、二百万人の雇用に影響するという試算も出ているんです。間接的には四百五十万、そこまではどうかと思いますけれども。いずれにしても、そういうテーマなんですね。

 ですから、今おっしゃった従来の住宅ローン減税、これは空振りになるんです。空振りになるというのは、難しい言い方なんですけれども、国税で還付できる余地がもうないんですよ、御存じのとおり。

 安住大臣は年度改正でと前どこかでおっしゃったかもしれません。年度改正でといったら、もう安住大臣の手を離れちゃうじゃないですか。全て総務大臣に行くんですよ。つまり、住民税をどうするかという話。だけれども、総務大臣はそんなこと、うんと言うわけないですよ。住民税を政策経費に使うなんというのは冗談じゃない、これは伝統的な総務省の考え方ですから。

 ですから、各省が議論してもしようがないんです。こういう消費税を上げていったときに、経済全体としてどう対応するかということになりまして、デフレ対策を、どう脱却するかという観点に立って、年度改正ではなくて政治の世界で、ある意味別に決めておきたい。

 我々はそういうふうに主張しますけれども、安住大臣、ちょっと重ねて。

安住国務大臣 前回のときの統計を見ますと、たしか百六十万ちょっとあった建設戸数が、消費税が二%上がったところで百三十万戸台にまで落ちている。ですから、それはやはりふだんの落ち込みとは違って、非常にその変動が大きい。

 上がって下がってという急激な変動が経済に及ぼす影響は大きいではないかということで、私もその御指摘についてはごもっともだと思っておりますので、七条では、やはり住宅のことはしっかりやらないかぬということでやっておりますが、方向性について、修正協議等を踏まえて我々も柔軟に対応したいと思いますので、ぜひさまざまなお知恵はおかしいただければと思っております。

金子(一)委員 先ほどの目的税化。今回の税と社会保障の一体改革、これは、野田総理、急増する社会保障を安定財源としての消費税で賄おう、これはコインの表側。コインの裏側は、消費税で財政健全化をやりましょう。コインの表裏になっているんです。いずれも財政健全化。このコインに、二〇二〇年には財政の基礎収支を黒字化しましょうというターゲット、目標を入れたんですよね。大綱で入れたんです。

 そうすると、目的税化しましたから、さあ、一体全体足りるのか足らないのか、さらなる増税が必要なのか、必要じゃなくなるのか、必要なくてもいいのか。これに対しては、自民党の伊吹先生からも町村先生からも、どうするんだ、二〇一五年以降は、二〇一五年まではわかった、その先どうするんだということを質問をさせていただいたんですが。このグラフ、これは巡航軌道、二%、三%の成長に乗ると。だから、ここに税収は入っています、自然増収。それから、社会保障の自然増も入っています。それでもなお足らないんですよ。

 総理は、これまでずっと答弁で、歳出の削減、歳入改革、増税ですね、それから成長とおっしゃっていたんですけれども、成長も、これはもう入れ込んじゃった数字なんですよ。これ以上、歳出削減はもうできないねというのは、安住大臣が何回か言っていましたね。公共事業だって、自民党時代に四〇%削減しました。岡田さんの専売特許じゃないんですよ、公共事業。我々も四〇%、つらかったけれども、カットしてきたんです。防衛費も抑えてきた、文教も抑えてきた。政権をとれば十六・八兆円いつでもできますなんて、そんな状況じゃもうないということは、政権をとられたからよくわかっている。だから、歳出削減で大きな財源は出てこない。保険料も入っている。成長、税収も入っている。このたたずまいをどうするんだ。

 小宮山大臣は、政権をとった成果は何ですかと言われたときに、小泉内閣時代の二千億の医療費削減をやめましたと言って胸を張っておっしゃられたんですよね。椅子から転げ落ちそうになりました。厚生大臣としてはいいのかもしれませんけれども、国としては、それじゃ済まない。

 この差額について、やはり消費税を、改めて、歳出削減はできない、成長も税も入っている、したがって、国民に対して、二〇二〇年、一つの大きな、ギリシャにならないように、スペインにならないように、我が国はそこを目指します、そのためには、さらなる消費税の増加、これは目的税化したんですから、簡単に言えば、成長、税収を上回って、さらに医療費はふえる、医療費、社会保障はふえる、こういう話ですから、これはある意味、これを賄うために我々はこれをやらなきゃいけないねという、そこの二〇二〇年に向けた道筋は、これはいいですよ。法案、抜けたのはけしからぬと言いません。すぽっと抜けたと前に言いましたけれども、言いません。だけれども、この部分というのは、国民に対して説明をしておくということが大事なんではないでしょうか。

 最後に総理にお伺いします。

野田内閣総理大臣 これは金子先生御指摘のとおり、コインの裏表というお話がございましたけれども、社会保障を支えるための安定財源確保と財政健全化の両立というのが今回の改革の目的でございます。

 その上で、数字を出していただき、将来の見通しの話が出ておりますが、まずは、二〇一五年までについては、そのゴールを目指して、財政運営戦略に基づいて一定程度の達成可能の状況まで、まだ厳しさはありますけれども、情勢としてはあると思いますので、中期財政フレーム、これは毎年年央にまとめてまいりますが、それをローリングしながら、目標がクリアできるように全力を尽くしたいと思います。

 二〇二〇年になると、これはなかなか、今から明確に何か目標達成に向けてのお話ができる状況ではありませんが、まず、この一里塚の二〇一五年段階のところを達成した後に、歳出の削減がどれぐらいできるかも含めまして、検討するべきなんだろうというふうに思います。

金子(一)委員 最後に、十五日までに今の修正協議を必ずまとめる、二十一日までに採決、これは民主党の責務である、野田総理のその言葉を信じ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、永岡桂子さん。

永岡委員 自由民主党の永岡桂子でございます。

 きょうは、まず最初に、生活保護について質問をさせていただきます。

 厚生労働省の発表によりますと、生活保護受給者の増加は本当に大きく大きくふえておりまして、平成二十四年二月、ことしの二月ですが、受給者数が二百九万人を突破したということで、戦後の最高値を更新し続けているということでございます。また、今年度予算におけます生活保護費、これは総額が三・七兆円になっておりまして、国と地方の財政を大変圧迫している、そういう状況でございます。

 生活保護は、財産や収入、働く能力など、あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する方に対して最低限度の生活を保障する、最後の最後のセーフティーネットでございます。

 自民党は、手当より仕事を基本といたしまして、生活保護制度を見直すべきと考えております。その意味で、働くことのできる受給者に対しては、就労支援を強力に行いまして、みずからの努力で本当に生活していくことを支援するべきだと思っております。

 そこで、まず最初の質問になりますが、大臣は、近年、生活保護受給者の増加について、その要因、特徴をどのように分析していらっしゃるか、お聞きいたします。

小宮山国務大臣 近年、生活保護の受給者が急増しているその要因としては、一つは、今の厳しい経済状況の中で、失業をするなど生活が困窮する世帯がふえているということ、また、自立ができないような高齢者の世帯がふえている、そのことが要因だというふうに思っています。

 特徴としては、世帯ごとに見た場合に、高齢者世帯が大体半数を占めています。一方で、その他世帯、ここは、今言われた勤労が可能な世帯ですけれども、そこが、平成十二年に七・四%だったものが、平成二十二年、十年で一六・二%にふえていますので、その部分については、委員がおっしゃるように、就労をしっかり支援する必要があると考えています。

永岡委員 このように受給者が増加している現状におきましては、生活保護の現場を担当します地方自治体の負担というものが大変急増していると思います。

 本来であれば、実務を担当しますケースワーカーがきめ細やかに支援を行う必要があるわけですが、このケースワーカーの担当世帯数というものが本当にふえております。特に、就労、そして自立に向けました支援が十分に行き届かない状態が今現在であるということだと思います。

 こうした状態を変えるために、ケースワーカーの増員ですとか、また、負担軽減を図る必要があるわけですが、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

小宮山国務大臣 おっしゃるように、ケースワーカーの人員確保というのは大変重要だというふうに思っています。

 このため、ケースワーカーの確保に必要な人件費について、地方自治体全体の職員は減っている中で、受給者が増加している状況などを考慮して、平成二十一年度以降、毎年度、地方交付税算定上の人数をふやしています。また、就労支援を生活保護受給者に強化するために、ケースワーカーの業務負担を軽減するという意味もございまして、ハローワークに就職支援ナビゲーターを、また、福祉事務所には就労支援員の増員を行うなどしていますので、あわせて、必要な人数の確保を厚生労働省としても図っていきたいと考えています。

永岡委員 次の質問です。

 地方自治体の方に伺いますと、現在の福祉事務所の調査権限は必ずしも十分じゃない、そういうお声を伺います。生活保護受給者の状態をより正確に把握するために調査権限の拡大が必要なのではないかということでございますが、自民党の生活保護制度の見直しに五つの柱というものがあります。これでも、地方自治体の調査権限を抜本的に強化するべきだという考えがあるわけでございますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 生活保護の受給を申請した人のさまざまな状況を正確で効率的にしっかりと調査するということは、大変重要なことだと思っています。

 具体的な取り組みといたしまして、全国銀行協会の協力を得て、福祉事務所が本店などに照会を行うと国内の全店舗の口座の有無などが確認できることになりまして、ことしの十二月からこれを実施できるように今予定をしています。このことによって、地方の窓口の負担が今よりは軽くなるのではないかと思っています。また、ことしの秋をめどに生活支援戦略を策定することにしていまして、その中でも、地方自治体の調査権限についてもさらに検討を深めていきたいと考えています。

永岡委員 ありがとうございます。

 秋にでき上がるという生活支援戦略、これは就労支援のことが大分含まれていると思いますので、ぜひしっかりとした議論をしていただきたいと思います。

 地方自治体の調査権限の拡大というのは、やはり不正受給の防止にも効果があると思いますので、前向きに前向きに御検討をお願いしたいと思います。

 次は、保護費の不適正な使用の関係でございます。

 改めて言うまでもなく、生活保護では、最低生活の保障のためのお金を与えているわけですね。与えているというのはおかしいですね、給付しているわけです。そうしますと、いろいろと楽しいこと、普通ですと大酒を飲むなんということはちょっと考えられないわけなんですけれども、報道によりますと、生活保護費を過大にギャンブルに使ってしまったり、また、お酒に使ってしまったり、そういうことをしている人もいる、そういうふうに伺っております。

 そこで、質問なんですけれども、支給されました保護費を的確に保護の目的に沿ったものに充てられるようにするために、食費ですとかそれから被服費、そういうものの生活扶助、それから住宅扶助、また教育扶助などについて、現在の現金給付を改めまして現物給付にすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 御党がおまとめいただいている改善の方針の中にそうしたことが含まれていることはよく承知をしています。

 現物給付といいますと、確かに、扶助の目的に沿った現物を確実に給付ができるというメリットがあると思います。ただ、一方で、生活保護受給者であることが対外的にわかってしまうというプライバシーの問題ですとか、あと、導入のための初期費用、またランニングコストについても新たな財政負担が生じるという課題もあるというふうに思います。

 このため、今後の生活保護制度の見直しの中で、本人の意向などを尊重するように留意をしながら、どのような工夫ができるかは検討していきたいというふうに思います。

永岡委員 ありがとうございます。

 やはりこれは、もっともっとしっかりと議論をして、現物給付に向けての議論を進めていただきたいと思います。

 何も現物支給といいましても、はい、きょうの夕飯のトマトですとかお肉ですとか、そういうものを配るわけじゃないんですよね。やはり金券扱いになるわけですから、それを生活費に使うということが重要でございます。無理無理ちょっと聞くと、あの人、朝からパチンコなんだよねとか、朝から酒臭いとかという話もよく聞きますので、どうぞ、ぜひこのことは真剣に議論をしていただきたいと思います。

 では、次に移らせていただきます。

 平成二十一年十二月二十五日、この日、これは鳩山政権、もう民主党政権のもとでございましたけれども、厚生労働省の課長通知によりまして、速やかな保護決定の通知が出されております。これの撤回を考えていらっしゃいませんでしょうか、お聞きいたします。

小宮山国務大臣 御指摘の通知は、支援が必要な人が保護を受けられないといった事態が生じないように、地方自治体での対応に際して特に留意すべき事項を改めて徹底するために通知したもので、そこで今までの要件を緩和したりしたことは一切ございません。そういう意味で、特にこれを撤回するというつもりはございません。

 また、先ほど申し上げたように、いろいろな形で自立をちゃんと促していくことも含めて、秋に生活支援戦略をつくりますので、そうした中で、しっかりとまたさまざまなことを、御党からの御指摘も参考にさせていただきながら、また検討させていただきたいと考えています。

永岡委員 ちょっと残念でございました。

 この通知以降、平成二十二年、二十三年、そしてことしと、仕事のできる年代の方の生活保護者がふえているんですね。特にふえております。そこを考えますと、やはり身辺調査が非常に重要になってくるわけですよね。御高齢で働けない方に、何も生活保護を差し上げないんだという話ではないんです。身辺調査をするにはやはり時間もかかります。そして、なおなお丁寧にしなければいけないわけですよね。

 そこへ、若い人でもオーケーということで、速やかに決定を下すという通知が来たらば、結果としてどうなるかといえば、生活保護を受ける方というのは増すに決まっています。つまり、入りが多くなるわけですね、生活保護者がふえる。

 幾ら、この秋に策定します生活支援戦略、こちらで就労支援頑張るぞ、これを見てくれ、民主党は頑張っているんだといいましても、どんどん入ってくる人たちの中で、幾ら頑張ってお金をかけて就労支援施策を立てましても、これは本末転倒、もう少し考えてもいいのではないか、そういうふうに私は考えます。いかがですか。

小宮山国務大臣 やはり生活保護は最後のセーフティーネットでございますので、ただ、本当に必要な人にはこれが行かないと、先日来この委員会でも御指摘があった孤立死とか、いろいろなことにつながってはならないわけですので、本当に必要な人に行くように、その資産を含めた、きちんとした、どういう力があるのかということが調査できるように、先ほど申し上げたように、全国の銀行の口座が把握できるようにしたり、いろいろなことをしております。

 それから、先日来申し上げているように、本当に扶養ができる人がいるであろうと思われるときに、しっかりとそこのところを、今ある仕組みを、つくったり、あるいはまた今後、扶養できる人がいないということを、法的にそちらに説明責任があるような法改正もできるかということも含めて、今、これからのあり方も検討していますので、あわせて本当に必要な人に行く生活保護にしたいというふうに考えています。

永岡委員 国民年金よりも生活保護の額の方がはるかに多く、国民の不満は本当に拡大しております。これが現実なんですね。

 次に、総理にお伺いしたいんですけれども、先ほどから小宮山大臣とのやりとりも聞いてくださっていらっしゃると思いますけれども、生活保護受給者はここ数年で本当に急増しております。それに伴いまして、現場の地方自治体の負担も増大、本当に国の方のお金も大きく大きく負担が拡大しております。

 この生活保護制度というのは、調べましたらば、昭和二十五年でございますね、制定されたのが。それ以来、抜本的な改正というものがなされておりません。二十五年というのは、つまり私も生まれていなかった、それほど昔の法律が脈々と流れているというわけなんですね。これは、現代のこの日本の情勢に少々合わないところができているのではないかと思います。

 このような状態の中で、生活保護制度の抜本的な見直し、そのときが今である、そういう時期が来たのだということを思っていますが、総理はどういうふうにお考えでしょうか。

野田内閣総理大臣 先ほど来、永岡委員が御指摘をされていた、就労自立支援の強化という視点であるとか不正受給対策の強化であるとか、あるいは医療扶助の適正化、こういう視点で政府もこれまでも検討はしてきたというふうに思うんです。先般もこの委員会で、茂木政調会長から五つの視点の御説明をいただきまして、ざくっと見て、三・五から四ぐらいは一緒じゃないかというお答えもさせていただきました。

 そういう御意見なども参考とさせていただきながら、先ほど厚労大臣も答弁をさせていただきましたけれども、生活保護制度とあわせて生活困窮者対策という形で、本年秋をめどに生活支援戦略というものを総合的にまとめていきたいというふうに思いますので、これからもまた具体的な御提言を頂戴できればと思います。

 ありがとうございます。

永岡委員 それでは、次は一人親家庭対策についてお聞きいたします。

 母子家庭のお母さんは、子育てと仕事の両立が求められていることから、これまで仕事の経験が少なかったり、また、結婚、出産などによって就業を中断せざるを得なかったことなどに加えまして、事業主側の母子家庭に対します理解不足などもありまして、その就職というのは大変困難を伴うことが多い状況にあります。また、多くの母子家庭のお母さんは、職について働いております。その多くは、残念ながら、臨時、パートなど、低賃金で不安定な雇用状態であります。そのために、母子家庭の所得というのは極めて低い状態にございます。

 昨今は、社会経済の状況が悪化しておりまして、その中でも子育てと仕事の両立をしなければいけないというハンディキャップを背負った母子家庭のお母さんの置かれている立場ともなれば、ますます本当に厳しい現状があるということでございます。

 一方、父子家庭のお父さん、収入は母子家庭のお母さんよりも高いようでございます。しかしながら、子育て、そして仕事の両立が求められているということ、これは同じですし、また、なれない家事ですとか子供の養育など、さまざまな面で困難と直面しているわけでございます。

 こうした母子家庭、そして父子家庭の置かれる状況をどのように大臣は認識していらっしゃいますか、お聞きいたします。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるとおり、母子家庭、父子家庭、それぞれに違った課題を抱えていると思っています。

 母子家庭の母については、平成十八年度全国母子世帯等調査によりますと、おっしゃったように、八五%が就業しています。その内訳を見ますと、常用雇用がおよそ四三%、臨時、パートがおよそ四四%と多くなっています。それからまた、平成二十二年国民生活基礎調査によりますと、平均の年間所得が二百六十二・六万円と低い水準になっています。先日も委員とこの委員会で議論させていただいたように、ダブルワーク、トリプルワーク、二重、三重に仕事をしているお母さんもいるということはよく承知をしています。

 これに対しまして、父子家庭の父については、平成十八年度全国母子世帯等調査によると、およそ九八%が就業していて、内訳を見ると、常用雇用がおよそ七二%、事業主がおよそ一七%、臨時、パートがおよそ四%となっています。また、この調査によると、平均の年間収入は四百二十一万円になっています。

 このように、母子家庭は特に経済的に困っている、それから父子家庭は、おっしゃったように、家事とか養育に困っているという状況だと思っています。

永岡委員 母子家庭のお母さんや父子家庭のお父さんは、本当に一人で子育てと家庭を担うという厳しい状態に置かれておりますし、それに応じて十分な支援を行っていくことが必要だと考えます。

 母子家庭、父子家庭、これは一人親家庭といいますけれども、母子及び寡婦福祉法という法律がありますね。これは、もちろん一人親家庭を支援していくという法律なんですが、父子家庭については、この母子及び寡婦福祉法の対象には入っているんだけれども、全ての項目、母子家庭が入っている中で、父子家庭は一部しか対象となっていないという現実がございます。

 母子及び寡婦福祉法で、母子家庭と比べまして父子家庭の取り扱いはどのようになっているか、お聞きします。

小宮山国務大臣 御指摘の母子及び寡婦福祉法では、母子家庭と同様に父子家庭も対象になっているものが、目的、基本理念、親の扶養義務、養育費の履行、そしてヘルパーの派遣、保育所の優先入所、これは共通です。

 これに対しまして、福祉資金の貸し付けや就業支援事業、給付金などの規定は、これは父子家庭は対象になっていません。

永岡委員 ありがとうございます。

 平成二十二年国民生活基礎調査、先ほど大臣もお話しくださいましたけれども、母子家庭の所得は二百六十二・六万円、児童のいる世帯、これは一般の世帯ですけれども、六百九十七・三万円。普通の世帯の四割なんですね、母子家庭の所得というものが。その大きな要因は、働いて得られます所得が少ないという状況があります。このために、母子家庭のお母さんというのは経済的自立が重要であって、厳しい雇用情勢の中においても安心した収入が得られます就業支援の施策が重要だと思っております。

 平成十五年七月には、母子家庭の母の就業支援を推進することを目的といたしまして、超党派の議員によります母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法が制定されました。この特措法は五年間の時限立法でございまして、平成二十年に失効しております。

 このため、私は、母子家庭のお母さんの就業支援をさらに推し進めるために、新たな特措法の制定を目指しまして、現在、議員間で検討を進めております。その中で、いろいろと意見をお聞きいたします。母子家庭だけではなくて、父子家庭にもこの就業支援の特措法を位置づけてはどうかなどという意見もございます。

 これについては、母子家庭と父子家庭とでは、先ほど大臣もお話しいただきましたように、実態として収入が倍ぐらい違うんですね。そういうことであるとか、また、母子寡婦福祉法の基本的なことでございます、父子家庭の就業支援、実は母子寡婦福祉法では対象とはなっていないんですね。そういうことを考えますと、今私たちが考えております、議員立法で立てたいと思っております就労支援の特措法、これを母子家庭のみを対象にするということはいたし方がないのかなというふうにも実は思っているんですね。

 しかしながら、父子家庭も母子寡婦福祉法の中で貸付金の対象にしてほしいというような声もございますし、また母子福祉団体の方からも、父子家庭のお父さんの参加を望む声も実は聞かれております。

 そういう中で、母子寡婦福祉法で父子家庭の位置づけをもっと明確にしたらいいかと思うのですが、大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

小宮山国務大臣 政府といたしましては、平成二十二年の八月から児童扶養手当の支給対象を父子家庭にも拡大をいたしました。

 そのほかの、母子及び寡婦福祉法で、今も御紹介あったように、父子家庭の団体から母子寡婦福祉資金貸し付けの対象を父子家庭にも拡大してほしいといったような要望もいただいています。

 このような一人親家庭に対する支援施策のあり方につきましては、平成二十二年の児童扶養手当法改正法の附則に検討規定がございまして、施行後三年をめどに検討を加えて、その結果に基づいて措置を講ずるとされていますので、政府といたしましても、可能な検討は進めていきたいというふうに考えています。

永岡委員 ぜひ、しっかりと検討していただきたいと思います。

 それでは、総理にお伺いいたします。

 ただいま小宮山大臣との話にもありました父子家庭、母子家庭、それぞれ多くの問題を抱えて、困難を抱えて生きていらっしゃいます。その一人親家庭の対策の推進に向けた総理の御意見、御決意をお伺いいたします。

野田内閣総理大臣 一人親は、母子家庭であろうと父子家庭であろうと、子育てとそして生計の維持を一人で担い、さまざまな困難を抱えていらっしゃるというふうに思いますので、そのためにも、先ほどるる委員から御指摘ございましたが、きめ細かな支援を講じていくことが必要だろうというふうに思います。

 一人親家庭に対しては、子育て・生活支援、それから就業支援、経済的支援等に総合的にしっかりと取り組み、子供の健やかな育ちというものを確保しなければいけないというふうに考えております。

永岡委員 それでは次に、障害者の雇用対策についてお伺いいたします。

 ただいまいろいろと議論させていただきましたけれども、生活保護受給者も母子家庭のお母さんも自立のための就業支援の政策が必要であるわけでございますが、障害者の方につきましても就業支援が非常に重要であると考えます。

 現在の障害者の方々の雇用状況について、大臣にお伺いいたします。

小宮山国務大臣 最近の障害者雇用の状況ですけれども、年々、障害者の雇用者の数、これは増加をしています。平成二十三年六月現在で八年連続で過去最高を更新しまして、平成十八年に二十八・四万人だったものが、二十三年に三十六・六万人になりまして、これは着実に進んでいるというふうに思います。

永岡委員 次に、障害者雇用率について伺いたいと思います。

 障害者の雇用率は、法律によりまして、労働者そして障害者などの数の変化に基づきまして、少なくとも五年ごとに見直すことになっております。このたび労働者、障害者などの数の調査を行った結果、これを踏まえまして、五月の二十三日ですか、厚生労働省の審議会におきまして、民間企業の障害者雇用率、これを二%に上げたというお話でございます。また、公的機関の障害者雇用率を二・三%に上げたということを伺っております。

 民間企業の障害者雇用率を現行の一・八%から二%に引き上げることは、障害者にとっては非常にありがたい話でございます。しかし、企業にとりましては負担も大きくなるというのが事実でございます。施行は来年の四月ということをお聞きしておりますけれども、まずは、周知徹底、これに万全を期すということが必要であるかと思います。

 今後、政府としてはどのような周知徹底をしていらっしゃるおつもりか、お聞きいたします。

小宮山国務大臣 引き上げた後の雇用率は、御紹介いただいたように、来年の四月一日施行を目指していますので、このためにはいろいろな形をとって周知、広報に努めたいというふうに思っています。例えば、全国のハローワークや都道府県の労働局を挙げて周知、広報に取り組むのはもちろんのこと、経済団体や障害者団体などの関係者の協力も得ながら、万全を期していきたいというふうに考えています。

永岡委員 障害者の雇用が進んでいるということは本当によいことだと思います。やはり自立をするために仕事をするということは、どんな方、本当に誰でも必要なことですからね。これは重要であるということはもうわかっておりますが、政府全体を挙げて取り組むという今の大臣の御発言でございました。

 総理には、まず、政府全体のトップとしてどのように、雇用促進に向けたお気持ちか、お聞きしたいと思います。

野田内閣総理大臣 障害を持っている皆さんが、当たり前に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活できる社会を実現するためには、職業による自立を進めることがとても重要であると思います。

 今回の一体改革についても、全員参加型社会の実現というのが一つの理念になっておりますので、その理念に沿う一つの施策ではないかと思いますし、先ほど大臣も答弁しましたけれども、障害者雇用の促進に向けて、政府を挙げて万全を期していきたいと考えております。

永岡委員 ありがとうございました。終わります。

中野委員長 これにて永岡さんの質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。あべ俊子さん。

あべ委員 自由民主党のあべ俊子でございます。

 税と社会保障の一体改革、野田総理が政治生命をかけていらっしゃる。私は、野田総理、本当に頑張っていらっしゃるんじゃないかと拝見するわけでございます。姿勢は非常に低姿勢、誠実そうな感じもする。しかしながら、全国で、増税の前にやるべきことがあるといってのぼり旗を立てている議員たちがいる。党の代表である野田総理が政治生命をかけているにもかかわらず、このような行為が全国で行われていることに関して、総理、どのようにお考えですか。

野田内閣総理大臣 大事な、重要な改革であり、これは待ったなしの状況であるということは、多くの党員そして議員の皆様には御理解をいただいているというふうに私は思います。

 その中で、独自の意見表明をされている方もいらっしゃるようでありますけれども、今は、何よりも、真摯に与野党で修正協議が始まったところでございますので、その協議の状況をよく注視していただくということが基本であろうというふうに思いますので、私自身も、いずれにしても、これから党内のさらに採決に向けての意見集約の中では、全ての同志の皆さんが一緒に行動できるように全力を尽くしていきたいというふうに思います。

あべ委員 そうしますと、野田総理、十六日からG20のためにお出かけになる。十五日まで修正協議を行う。この修正協議が行われた後、メキシコにお出かけになって、二十日の朝に戻られるという中、クーデターが起きるのではないかという御心配はございませんか。

野田内閣総理大臣 まだ協議の途中でございますので、予断を持って何か申し上げることはできませんけれども、何といっても、協議を調えて、そして何としても全力で合意をして、採決に向けていくということが基本でございます。その際に、決まった暁には、クーデターなどということは起こることはないというふうに思います。

あべ委員 では、政治生命をかけた野田総理、この修正協議ができた後、二十日か二十一日に衆議院の本会議で採決をするということでよろしいでしょうか。

野田内閣総理大臣 基本的には、この国会中に成立を期すということでございますので、協議が調えば採決に至るということでございます。そうなるように全力を尽くしていきたいと思います。

あべ委員 そうしますと、今国会中、二十一日まででございますが、衆議院は可決するといたしましても、参議院が可決をしないわけでございます。二十一日までにできないということがどう考えてもわかるわけでございますが、そうすると、野田総理、政治生命をかけてこの国会を延長するということでよろしいですか。

野田内閣総理大臣 まずは衆議院でしっかりと結論が出るようにするということ、そして、それのみならず、今回、この一体改革だけではなくて、お諮りをしているさまざまな法案もございます。そういうものも含めての最後は判断をするということになると思います。

あべ委員 野田総理、命をかけている割には、文言が曖昧でございます。

 本当に命をかけて修正協議をし、衆議院で採決をし、さらに参議院に送らなければいけないということを考えたときに、延長は不可避であると考えますが、野田総理、これはお答えいただけないんでしょうか。

岡田国務大臣 これは、今、各党間、御党も含めて協議を行っているわけです。その協議の結果がどうなるかということは、我々は、ぜひまとめたい、こう思っておりますけれども、しかし、現に協議を行っているわけですから、余り仮定に仮定を重ねた御質問にお答えするのは非常に難しいというふうに思います。

あべ委員 そうしますと、修正協議でございますが、修正協議がもしまとまらなかったら、二十一日までに政府原案を採決するという理解でよろしいんでしょうか、野田総理。

岡田国務大臣 まず、我々、ぜひ協議をまとめたいというふうに考えているわけです。ですから、御党や公明党との協議がまとまらなかったら、そういう仮定にはお答えしたくないというか、ぜひまとめたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

あべ委員 この税と社会保障の一体改革の協議、ぜひともまとめたいという岡田副総理の言葉でございましたが、改めて確認させていただきます。

 野田総理、この税と社会保障の一体改革、その目的を一言でおっしゃってください。

野田内閣総理大臣 社会保障と税の一体改革の最大の目的は、まず社会保障、これを人口構成、家族形態等々含めて持続可能なものにするためには、相当な改革をしなければいけないと思っています。

 中身としては、給付、負担両面において、世代間、世代内の公平を図るという観点からの改革を行い、特に、今まで社会保障の恩恵を受けてこなかった支える世代、現役世代に対しての社会保障、恩恵を受けられるように、人生前半の社会保障の部分に光を当てていくということが大きな柱だろうと思います。

 そのためには、安定財源が必要であり、これも世代間の公平の確保、今は、どちらかというと、将来世代にツケ回しをしている現状があります。そういうことのないようにするために消費税の引き上げをお願いするというのが今回の改革の柱でございます。

あべ委員 今のお話でございますが、これにあわせて、昨日、総理、旗をおろせ、理念をおろせではなく、現実的な制度の議論が必要ではないかという発言をされましたか。

野田内閣総理大臣 今御審議をお願いしている七つの法案について、お互いに議論をしながら、そして歩み寄れるところは歩み寄って成案を得るというのが基本だと思います。そのことと中長期にわたることとは、整理をしながらの議論をする必要があるのではないかという観点からお話をさせていただきました。

あべ委員 野田総理、具体的に、旗というのは、どういう旗を指しておっしゃった発言なんでしょうか。(発言する者あり)

野田内閣総理大臣 のぼり旗ではありません。

 大綱に掲げている社会保障の全体像、私ども書いてあります、新しい年金制度改革等々、そういうことをまとめて申し上げたつもりでございます。

あべ委員 私ども自民党が具体的な制度の議論をしていく上において、やはり皆様方が変な旗を上げていることは事実であります。これは、消費税の前にやらなきゃいけないことがあるという旗ののぼり旗ではなくて、私が申し上げているのは、皆様の特におっしゃっている最低保障年金、後期高齢者医療制度の廃止ということに関して、やはり余りにも変な旗ではないかということであります。

 なぜかといえば、皆さんは、社会保障、特に保険制度をしっかり守るとおっしゃっている。しかしながら、保険を払っても払わなくても最後一緒じゃないかという思いをしてしまう、頑張らなくてもいいんじゃないか、そういう思いをしてしまう制度が後ろにのぼり旗で、お買い上げでなくても無料贈呈しますみたいな旗が立っているわけであります。

 私どもは、自助、共助、公助、この考え方に基づいているというふうに自由民主党はずっと申し上げています。特に、頑張った人が報われる社会にしなければいけない、そう思っているわけでありますが、私は、民主党の自助、共助、公助と意味がかなり違うのではないかと思いますが、野田総理、いかがですか。

岡田国務大臣 今各党で協議をしているわけです。そのときに、何かをおろさなければ議論ができないとか、そういったことになれば、これはなかなか協議が進まないわけですね。やはり虚心坦懐に議論して、その結果どうなるかということは、これは合意した中身によるわけですけれども、最初から何か条件のように言うことはなるべく避けるべきではないかというふうに思っております。

 今委員おっしゃった中で、恐らく年金の抜本改革の話をしておられると思います。我々、年金の抜本改革ということで、最低保障年金と所得比例年金ということをお願いしているわけでございます。

 しかし、その中の最低保障年金について、保険料が払える立場であるにもかかわらず全く払わない人に最低保障年金を給付するという発想は、我々にはございません。一定の条件を満たした場合に初めて最低保障年金の給付が受けられるわけで、そういう意味では、何もしなかった人がそのまま最低保障年金がもらえる、そういうことではないということは、この委員会の場においても何度も主張しているところでございます。

あべ委員 最低保障年金の部分が非常に誤解が多いがゆえに、自助をしなくてももう公助に入れるからいいんじゃないかと思っている方々がたくさんいらっしゃるわけであります。ですから、その変な、マニフェストの、約束したことはやはり撤回していただかなければ、制度上の話し合いの議論に入れないではないですか。

 ですから、私どもは、税と社会保障の一体改革、これは次世代に責任を持ってやらなければいけないと我々最大野党である自由民主党も思っているわけでございます。

 ところが、皆さん、増税の話しかしていない、社会保障の部分は全く手つかずで、これでは一体、自然増分で間に合うんだろうか。さらに言えば、最低保障年金、これをやるだけで七・一%の消費税が必要なんですが、野田総理、これは将来的にもやると言い続け、その分、消費税を上げるおつもりですか。

岡田国務大臣 今委員の言われた七・何%という話は、幾つかあるケースの試算の一つにすぎません。かつ、そのときには、今の年金制度でも三ポイントぐらいは消費税をプラスアルファしなければ、上げなければできない、そういう中での話だということをまず御理解いただきたいと思います。

 いずれにしても、年金制度についても、我々は我々の主張をさせていただいているんですけれども、ぜひ、そういうことについてもどうするかということを各党の間でしっかり協議をしていただきたい。我々は、年金の抜本改革について、これは重要なことだというふうに基本的には考えております。しかし、御党の考え方は違うわけですから、そういうことについて、どういう場でどういう議論をしていくべきかということを冷静に判断していただく必要があるというふうに思っております。(発言する者あり)

あべ委員 改めて、岡田副総理ではなく、野田総理にお聞きいたします。

 今の最低保障年金に関して、これはおろせない、自分たちはやるんだというお考えでしょうか。

野田内閣総理大臣 最低保障年金を含む新しい年金制度、抜本改革は、これまでの長い議論の経過での民主党の中での到達点であります。その到達点を踏まえて、現状で改善できるものはどうするかという議論を今させていただいておりますので、それをおろせという話ではなくて、私どもはこういう理念と考え方を持っているという中で、折り合えるところは折り合えるかということをぜひ議論させていただきたいというふうに思います。

あべ委員 では、改めて野田総理にお聞きします。岡田副総理ではございません。

 そうした中におきまして、最低保障年金、やはり、到達点であるとすれば、次の衆議院選挙のマニフェストにも民主党としてお書きになるということで、野田総理、よろしいですか。

野田内閣総理大臣 いずれにしても、制度設計、先ほど七・一のお話がございましたが、それは試みの計算で、いろいろなケースの中でやったことはございますが、その制度設計の詰めをこれからさせていただく中で、総選挙のマニフェストはやはりどこかでつくらなければいけませんけれども、そういうことも含めて、これから、考え方のまとまり次第によって書き方が変わってくると思いますが、そういう準備はしたいというふうに思います。

あべ委員 到達点という非常にきちんとした言葉の割には、迷いがまだまだおありになるという感じがしたわけでございます。

 では、野田総理、改めて、後期高齢者医療制度廃止となった中で、皆さん方が政権をとる前に差別だとおっしゃっておりましたが、後期高齢者医療制度、一体何が悪かったと総理は思っていらっしゃいますか。

野田内閣総理大臣 年齢で区分をしているということによって、年齢による差別感というのが残念ながら広がったというのは、やはり事実だったんじゃないでしょうか。その運用の改善等でいろいろな努力をしてまいりましたけれども、そういう問題があったというふうに思います。

 それから、国保財政の問題含めて問題意識を共有しているところはあると思いますので、そういう中での議論をこれからさせていただければというふうに思います。

あべ委員 ネーミングが悪かった、さらには、その政策に対しての私どもの説明が、また政府の説明が足りなかったというのは事実でございます。

 しかしながら、この後期高齢者医療制度、導入してよかったことも幾つか挙げられているわけでございます。これは、野田総理、承知していらっしゃいますか。

小宮山国務大臣 後期高齢者医療制度の利点といたしましては、一つは、高齢者の医療給付費について、公費、現役世代、高齢者の負担割合が明確になったということ、また、原則として同じ都道府県で同じ所得であれば同じ保険料になったことが利点かと思います。

あべ委員 おっしゃるとおりでございまして、この地域間の格差、特に国保におきましては地方の若い世代が一番大変な思いをしているわけであります。そこの問題を解決しなければいけない。さらには、この負担の割合を明確にしていかなければ、今非常にふえている高齢者を支えていくために現役世代が疲弊してはならない。この二点があってこの制度をつくったわけであります。

 野田総理、この点は知っていらっしゃいましたか。

野田内閣総理大臣 負担の割合が明確化になったということは、これはやはり一つの評価をすべき対象だというふうに思います。

あべ委員 私ども、本当に考えに考え抜いて行った制度であります。しかしながら、やはりネーミングが悪かった、私どもの、政府も含めた当時の与党の説明が足りなかったということは事実でございますが、しかしながら、余りにもメディアが、また余りにも皆さんが言ったがゆえに、その問題点だけを指摘し、一体、根本何をやろうかということに全く注視をしていただかなかったのは残念なことであります。

 悪口を言うのだけは得意で、制度をつくり込んだら結局自民党と同じになるというのは、本当に皆様方も腹が立って仕方がないか悔しいか私にはよくわかりませんが、思うところであると思います。

 与党になって見える景色が変わった、前の景色はどういう景色だったんだろうか。私は、野党になった自民党として思うわけでございますが、大変申しわけないが、私ども、与党をやった後に野党になりましたので、皆さんの野党をやり続けた景色は全く見ることができないわけであります。皆さんが政策を立てるときに、余りにも無責任な政策を立ててきたあの時代、それを振り返れば、私ども、野党として、余りにも尊厳を持った野党としてやっているのではないかと思うわけであります。

 また、分厚い中間層をつくると野田総理はおっしゃいました。この中間層、中間所得層というのは、先般安住大臣にお聞きしましたら、わけのわからない、二百万から千五百万の間ではないかという非常に曖昧な、最初から分厚い答えが出てまいりました。

 野田総理の想定では、中間層というのはどの所得者層なのか教えてください。野田総理です、安住大臣ではありません。

安住国務大臣 中間層についてということで、この間御質問いただいたときに、私も主税局長もはっきりと、所得税の課税最低限である所得二百万程度以下の層については、これは中間層とは考えられませんねと。また、平成二十四年度改正で給与所得控除の見直しを行った際に規定した一千五百万円以上の層については、これは富裕層と考えられるのではないかというふうに答弁しただけで、何も、わけのわからない話じゃございません。(あべ委員「では、中間層を言ってください」と呼ぶ)

 いや、中間層の定義は、ですから、そのときに言いましたけれども、法律で規定はできないんですと言っているんですよ。これを法律で規定していないと言ったら、あなたは、わけがわからないと。私の方から見れば、よくわけのわからないことでした。

 我が方は、課税の面で質問を受けましたので、そういうお答えをさせていただいたんです。(発言する者あり)いやいや、課税の面で私どもは線を引いたということです。(発言する者あり)中間層は、ですから……

中野委員長 混乱いたしますので、不規則発言は控え目に。大変いいお問いであることはわかりました。

安住国務大臣 多分、新聞に載って、また書けるんじゃないかと思っている人もいるかもしれないんですけれども……(発言する者あり)いや、アバウトじゃないんです。

 かつて、我が国は、一億総中流の国と呼ばれて、この分厚い中間層が存在したことは事実だと思います。それが経済発展や社会の安定基盤になってきた。この中間層というのは、家族形態や住む地域、それぞれの価値観などによって捉え方はさまざまであるので、当時から、単に所得の金額の多寡でこれを一律に定義は、難しいと言われてきたわけですね。(発言する者あり)そうですね。

 基本的には、普通の人が額に汗して働いて、普通に努力をしてみずからの生活を支えることができ、普通の平均的な暮らしができる層のことをいわゆる中間層と考えていいのではないかというふうに私どもは考えています。

 いずれにしても、この分厚い中間層が支える大きな格差のない社会が、全ての人の自立した生活の実現に向けて、今回の一体改革により、一人一人が能力を発揮して積極的に社会及び社会保障の支え合いの仕組みの中に参画ができて、必要な人に必要なサービス給付が適切に行われる社会保障制度を私どもは構築していきたい、そういう中で分厚い中間層をさらに充実させたいと思っております。

あべ委員 安住大臣、大変よく読めました。

 私どもが以前から考えていたことの答えでございまして、そのとおりでございますが、しかしながら、今皆さんが何を思っているかといえば、先ほども申し上げました自助、公助、共助の考え方、自分で頑張っている方に関して、自分で頑張って、自分がこれで、本当に真面目でよかったと思える方々が頑張れるような勤労インセンティブが私は余りにもないんじゃないかと思いますが、野田総理、それに関していかがですか。

岡田国務大臣 委員の御指摘もよくわかります。ただ、以前にもこの場で申し上げましたが、やはり時代の変化ということも考えなければならないというふうに思います。

 かつてのように、社会保障制度の支え手が多層になっていた、例えば大家族であったり地域社会であったりあるいは企業であったり、そういうかつての状況が、経済のグローバル化の中で変わってきた。核家族になり、地域のきずなも薄れ、そして、企業自身の支え手としての役割も低減してきた。そういう中で、やはり私は、公といいますか、国がもう少し前面に出て支えなければいけない時代が来ていると。それが私は社会保障制度の一つの流れだと思います。

 ですから、自助というのは大事ですが、自助でできない人たちがいるからこそ共助があり公助があるわけですから、そこのやはり役割分担というのを考える必要があるというふうに思っております。

あべ委員 岡田副総理には一切お聞きしていないのに、なぜ出てきて時間を消費するのか、私にはわかりません。

 野田総理、改めてお聞きいたします。

 分厚い中間層のための勤労インセンティブ、働いて頑張っている人がペナルティーにならない、そういう制度に関してはどうお考えでしょうか。

野田内閣総理大臣 真面目に働いている人たちが報われる社会というのが基礎だと思います、基盤だと思います。一方で、真面目に働きたいと思っている動機を持ちながら、そのチャンスに恵まれない人たちもいます。

 私は、自助という精神は大事だと思います。だけれども、自助を実現する環境が今あるのかどうか。残念ながら、正規よりも非正規の雇用がある中で、そこで家庭を持って、結婚したいという、自助の気持ちでこれまでは行われてきたことが実現できない環境が一方であります。

 あるいは、先ほど副総理もお答えになっていましたが、核家族化が進んでまいりました。子供はお母さんが育てる、基本だとおっしゃいます。そうでしょう。だけれども、その相談相手も今いない中で、自助の基盤が崩れているところをどうやって立て直すかということ、それができていなかったことが少子化に歯どめがきかなかったんじゃないでしょうか。

 そのことも真摯に反省をしながら、自助と共助、公助の組み合わせは大事だと思いますが、むしろ自助の実現ができるような環境整備、基盤整備をするという視点が大事ではないかと思います。

あべ委員 野田総理がおっしゃるとおりでございまして、今回の税と社会保障の一体改革、待ったなしではございます。そうした中、増税の議論が先行し、社会保障も共助が先行し、使う額の方がふえてしまっている。これでは将来不安を本当にあおるだけであります。

 若者も不安、高齢者も不安、そういう中にあって、私は、持続可能な社会保障制度、これの一番の根幹は、景気の回復と雇用の創出であると思います。野田総理、これに関して御意見をください。

野田内閣総理大臣 昨年の九月に内閣が発足して以来、震災からの復興と原発事故との戦いと日本経済の再生ということを最重要課題として言ってまいりました。

 経済の再生は、この消費税の議論とは別にしても、これは何としてもやり抜かなければいけないというふうに思っておりますし、特に、具体的に、消費税を引き上げる前にきちっと経済を好転させるということ、これは死に物狂いで、政策の総動員でやっていかなければいけない。景気の回復と雇用の創出ということは決して忘れてはいけない最重要の課題だというふうに思っております。

あべ委員 本当に、税と社会保障の一体改革の中で、景気回復さらには雇用の創出も一緒にしていかなければいけないわけでございますが、私ども、この議論は真摯に協議に応じてまいりました。

 そうした中、まだまだ社会保障部分が足りないということは確かでございまして、増税だけが先行している。この社会保障の制度改革、まだまだ議論しなければいけない部分に関しては、野田総理、これから先、どのように対応なさるおつもりでしょうか。

野田内閣総理大臣 今回、法案として御審議をお願いしているのは七法案でございまして、その五つについては社会保障にかかわるところでございます。決して増税先行の議論ではないと思いますし、既に修正協議においても、社会保障のところから今議論をさせていただいております。

 やはり国民の皆様に御理解いただくためには、社会保障と税の一体改革、一体改革だということが何よりも大事だと思いますので、そこは十分留意していきたいというふうに思います。

あべ委員 一体になっていないから私が申し上げているわけでございまして、医療部分、介護部分、ここの部分を放置することはできないわけであります。

 ですから、今回の修正協議の中で、残される課題に関して、野田総理、それは放置されるおつもりですか。修正協議の部分だけをとって一体改革とされるおつもりですか。残された課題に関してどう対応するかをお聞きします。

野田内閣総理大臣 まずは、御審議いただいている七つの法案について、きちっと協議が調って、成案を得ることが大事だと思います。ただし、社会保障については、まだいろいろな論点があることは間違いないと思います。そうした課題についても、引き続き議論をしていく場というものは必要ではないかと思います。

あべ委員 その議論の場とはどこか、具体的にお聞きしたいと思います。

野田内閣総理大臣 もちろん、これは国会という場が我々にとっては一番大事な場だと思いますので、こういう一体改革の委員会もありますし、関連する委員会等でそういう議論をどんどんやっていくということも大事だと思います。あるいは、政党間協議もやっておりますが、その中で、宿題で残ったものがあるとするならば、そういう議論もあるかもしれません。あるいは、今御党から御提起が出ている国民会議のような、そういう場所をつくりながら、そこで議論をするというやり方もあるかもしれません。

 やり方はいろいろあるんだろうというふうに思いますし、やらなければいけないと思います。

あべ委員 税と社会保障の一体改革、本当にやらなければいけないことが山積でございますが、やはり、国民の負担がどう変わっていくのか、国民の生活がどう変わるかという視点が私はもっともっとわかりやすく出るべきだと思っております。増税の部分だけが先行し、公助に充て過ぎ、自助を頑張ろうという方が減っていくのではないか、そのようなことがないようにぜひやっていただきたいと思うわけであります。

 時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 御苦労さまでした。

 これにてあべさんの質疑は終了いたしました。

 次に、額賀福志郎君。

額賀委員 自由民主党の額賀福志郎でございます。

 五月中旬以来、当委員会におきましては、中野委員長、そして鉢呂、伊吹両筆頭、それぞれの御努力によりまして、先ほど聞きましたら、もう既に九十何時間に及ぶ審議だ、こう聞いております。これまでの、消費税、社会保障問題についてのあらゆる問題点が浮き彫りになったと思っております。

 私は、既に多くの先生方から御指摘されておりますように、財政再建と社会保障の財源確保問題というのは避けては通れない問題であるということを強く認識しておるところであります。

 なぜならば、私が、二〇〇七年でしたか、財務大臣をしているときにサブプライムローン問題が顕在化をし、二〇〇八年秋のリーマン・ショックにつながっていったわけでございます。私の後に公明党の坂口先生が質問に立たれると聞いておりますが、その名前を聞いて思い出したんですが、その二〇〇八年の十二月に、自公両党で中期プログラムを作成いたしました。津島当時自民党の税調会長から依頼をされて座長を務めてこの問題に取り組んだわけでございます。

 経済が停滞している、いこうとしているときでありましたけれども、やはり、五年、十年、二十年先を見て、しっかりと社会保障と財源の問題に取り組んでいかなければならないということで、その上に立って百四条が出てきたわけでございます。

 民主党は、政権をとって、さまざまなマニフェストを提案なさいましたけれども、ほとんど財源の裏づけがなくて、この委員会でもそれぞれ猛烈な批判を受けました。それを今、最終的な取りまとめに当たりまして、非常に野田総理も苦労をなさっているということであります。

 野田総理、我々が国民の前に提示した中期プログラムと、百四条について決断した当時の我々の行動あるいはまた政治の意思決定について、民主党のこの三年間の歩みを踏まえて、今どういうふうに思っておられるのか、聞かせてください。

野田内閣総理大臣 二〇〇九年の総選挙の際にマニフェストを掲げて戦いましたが、そのときに、消費税の扱いについては明記をしておりませんでした。ましてや、こうした社会保障と一体となった改革を打ち出すということも書いてございません。その意味では、二〇〇九年の段階で国民の皆様にきちっと御説明をしていなかった、今日に至ったということについては、おわびを申し上げなければいけないと思います。

 でも、なおその上で、政権を預かる立場になり、毎年予算編成を行い、そして社会保障の持続可能性に危機感を持ち、あわせて財政健全化も同時達成しなければならないという思いは非常に強く持つに至ったし、それは、先生御指摘のとおり、待ったなしの状況だと思います。そのことを国民の皆様に、まさに国民のためにやらなければいけない改革であるということをしっかりお訴えをしながら、御理解をいただけるように努めていきたいと思いますし、結果的には、百四条に基づいて法案を提出いたしました。

 その意味では、問題意識を今共有させていただいているのではないかというふうに思います。

額賀委員 この国会でも、野田総理初め多くの閣僚の皆さん方から、見通しの甘さ、徹底していなかったことについておわびをいたしますと聞かされてまいりました。しかし、どうもそのおわびというのが空虚な感じなんですね。頭の上を通り抜けていきまして、国民の心の中にすとんと落ちない。だから、国民の皆さん方が、野田頑張れというコールにはならないんじゃないか。

 もうちょっと、総理、政治生命をかける、命をかけるということであれば、みずからの信念で、心を込めて、おわびするではなく、国民に謝罪をして、新たにこの消費税と社会保障の問題を解決していくということがあれば国民の意識も変わっていくんではないか、人間としてそういうふうに思います。政治家としてもそれが当然ではないかと思いますが、いかがですか。

野田内閣総理大臣 社会保障は、どなたでもどこかでそのサービスを受けなければいけないものだというふうに思います。特に、老後であるとか、困ったとき、ピンチになったときに出てくるのが社会保障だと思います。(額賀委員「そういう説明を聞いているんじゃないんだよ」と呼ぶ)よくわかります。

 その社会保障を支えるための財源が待ったなしの状況になってきたということを強く感じるようになりました。そのためにこの法案を出しています。そのことを二年半前に明確に言わなかったことは、これは深くおわびを、謝罪の仕方はいろいろあるかもしれませんが、これは心からおわびを申し上げなければいけないと思います。

 その上で、あのマニフェストは、国民の生活が第一が理念でした。今回は、国民の生活が第一という理念にもとる法案ではありません。国民の生活に直結した社会保障を支えるために、しっかりと財政の裏づけが必要である、まさにそのことを、ぜひ皆様の御理解を得ていきたいというふうに思います。ぜひこれは、国民の皆様の御理解が不可欠でございますので、粘り強く御説明をしていきたいというふうに思います。

額賀委員 私は、もうちょっと、みずからのメンツとかそういうものをかなぐり捨てて、やはり一人の人間として、国民にちゃんと立ち向かうためには、今までのことについて謝罪を申し上げるのが普通だな、こう思っております。それでこそ野田ドジョウの真骨頂じゃないかなという思いがいたしますので、そういう気持ちでこれから頑張ってほしい、こう思っております。

 我々は、あの後、やはりリーマン・ショックの経済の影響を打破していくために、集中三カ年の経済計画を立てて、成長産業を引きずり戻すという形で頑張ったんだけれども、途中半ば、二年ちょっとで政権交代がありまして、経済の元気さを取り戻すことができないでいることは、まことに残念な思いがいたしておるところであります。

 先ほど来からいろいろな話がありまして、野田総理は、この問題について、十五日までに何とか合意をしてG20に出発したい、こう言っております。その思いは共有するものでありますけれども、その前に、G20に行かれては、どういうメッセージを発信なさるのか。世界の中で注目をされておりますスペイン、それからギリシャの選挙もあります。我々の日常生活や経済にも大きな影響を及ぼすことは当然でありますから、日本の総理大臣としてどういう立場で発信をしていくのか、聞かせてください。

野田内閣総理大臣 ちょうど、御指摘のとおり、十七日がギリシャの選挙の日なんです。その結果を踏まえて多少やはり、議論の行方が少し変わるかもしれませんが、スペインの問題は今回EUの中で迅速な対応をしましたけれども、やはり、引き続き、ユーロゾーンの中でのさまざまな問題点、火種はたくさんございます。

 その議論をするときに、私どもは、先般のG20の財務大臣の会合でも発表しましたけれども、六百億ドルの資金をIMFに提供する用意があるということで、それをきっかけに今四千三百億ドルまでは固まってきたと思いますが、まだ態度未定の国が新興国も含めたくさんございます。そういうところに呼びかけて、まさに世界じゅうが、このユーロの危機を抑え込むんだ、そういう気構えを示すためのイニシアチブをつくることと、それから、やはりアジアの中で、チェンマイ・イニシアチブの強化等々、飛び火しないような努力をしております。

 そういうことの取り組みと、何よりも、やはり成長と財政再建ということを掲げざるを得ない国がふえました。それが主要国の責務です。我々のその取り組みの姿勢もきちっと説明をしていきたいというふうに思います。

額賀委員 しっかりと頑張ってきてほしいと思っております。

 午前中の審議で、政策協議がスタートしまして、先ほど来言っているように、十五日までに何とか合意を得たいという努力をしたいと。総理自身がみずからそれぞれの部署部署に電話をしたり、あるいは指導したりして局面打開を図っているということを聞いておりまして、その意味では、総理もようやく重い腰を上げたのかなという感じがいたしておるわけでございますけれども、最近、同じ党内の小沢代表は、三年前のマニフェストを守ることができなければ国民をだますことになり、これは民主主義を破壊することにつながる、そういうことを公然と言っておるわけでございます。

 私は、マニフェストの問題、大事なことは、中身が正しかったかどうかなんだろう、こう思うんですね。そういう意味では、三年前に書いたから、それが守られなければ民主主義を破壊するということはちょっと間違っていることではないのか、こう思っております。総理はいかがですか。

野田内閣総理大臣 基本的には、やはり、選挙の際に国民の皆様にお約束したことは大事なことだと思います。その実現のために全力を尽くすというのが基本だと思います。それについては、去年の八月の段階で中間検証を行いました。できていないこととできたこと、できたことも相当数あるんですが、できなかった理由についても、財政の見通しの甘さ等々、反省も踏まえながら総括をさせていただきました。

 一方で、マニフェストで書いていないことでも、やらなければならないことが生じることがあります。例えば、今回の震災なんかはそうだと思います。そのほか、後で気づいた大きな問題というのも出てきます。

 そういう問題は、マニフェストに書いていないけれども、でも、国民の生活が第一という理念に基づいた具体的な政策でございますので、書いていることが全てではなくて、書いていないこともやらなければいけない。そして、書いていることでも、間違いがあれば、それは、できないことは反省するという、いわゆる自然体でそれは考えるべきではないかと思います。

額賀委員 私は、そういう理屈を聞いているんじゃないんですよ。

 先ほども、国民に対する謝罪、そういうのが人間としての第一歩だろうと。論語だって、過ちて改めざるをすなわち過ちなりというんですね。そういうことをきっちりと国民の前に示さなければ、政治の信頼は取り戻せないんじゃないんですか。そういうことをきちっとやっておくことが大事なんだということを言っているわけであります。総理は、きちっと、小沢さんにそういうことを懇々と説得すべきじゃないでしょうか。

 午前中の審議で、総理は、できるだけ党内説得をしていきたいと。しかし、できるだけ多くの人ということは、幾らかの人は反対してもいいんだよねというふうにとりました。それくらいの、政治決断、政治生命をかけるというのは、そういう思いである、決意であるということと受けとめたわけでございます。また、それくらいでないとこの問題を解決することはできない、こう思っております。

 ローマ史を書いている塩野七生さんに、十年ぐらい前、ローマへ行ったとき会いました。日本の国が大きな転換期にあるときにどう思うかと言ったときに、こういうことを言いましたよ。百人いて百人が賛成するのは改革ではない、改革というのは、正しい方向を見て、恐らく既得権益だとかさまざまな利害関係があって半分ぐらいは反対する、しかし、それを乗り越えていくことが改革であると。

 そういう意味では、やはり野田総理も、この問題、社会保障とそして財源確保、消費税の問題、これは多くの人が困難を乗り越えてきたんですよ。そういう意味で、私は、民主党の中で小沢グループを初め一部反対があってもやり切るという覚悟があるのかどうか、聞かせてください。

野田内閣総理大臣 国論を二分するテーマ、重要なテーマとは、そうなってしまうと思います。万人が全て満足して賛成という状況は、残念ながら、そういう環境をつくることは難しいと思います。先般のあの原発の再稼働の方向も、まさにそういう決断でございました。

 同様に、今回の社会保障と税の一体改革も、これまでいろいろな経緯、歴史があります。ありますが、そして、いろいろな議論があることも間違いありません。いろいろなお立場で、どなたの御意見も、それぞれ国を思ってのお考えだと思います。だけれども、私はこれはもう待ったなしの状況だと思います。

 先ほどG20の話が出ましたが、スペインなんというのは、相当今までいろいろな改革をやってきたんです。やってきながらもああいう評価になってくるということもあるわけですので、我々、これは油断してはならないと思っています。

 したがって、これは待ったなしの状況です。結論を出したいと思います。結論を出さなければいけないと考えております。

額賀委員 野田総理が好きな司馬遼太郎がよく武士道というのを言っていますよね。鎌倉時代の武士道を起源とするものでしょう。その中でよく、名をこそ惜しめだということを言っております。私は、野田総理、今発言をしたことはあなたの名を高らしめることにつながるから、しっかりと頑張ってほしいというふうに思っております。正しいことには多くの人が賛意を送るでありましょう。

 あれは郵政改革のときでございました。小泉総理が、改革の本丸は郵政改革だと言って、それこそ無我夢中で取り組んでおられました。私は当時、自民党の政調会長でした。いよいよ大詰めの、採決の間際になったときに、官邸に行って三十分話をした。総理、この改革を実現するためには党内をまとめなければなりません、その上で与野党にのり代を残しておかなければなりません、調整をしなければならないことについては私に任せてくれという話をしましたところ、何と、小泉総理は、額賀君、そんなに無理してまとめなくてもいいと言うんです。私は瞬間的に、これは、小泉総理は、もしこの法案が否決されたときはみずからに対する不信任案と思って、国民に信を問う覚悟ができていたんじゃないかなと感じました。やはり、一つの物事をなす場合は、それくらいの決死の覚悟がないとできないということだと思っております。

 私は、郵政改革の方向は間違っていないと思っております。やり方は若干間違っていたな、こう思っております。そういう意味で、この社会保障とそれから消費税、財源確保は、方向は間違っていない。だから、しっかりと……(発言する者あり)やり方は、これは民主党の方が若干そういう嫌いがあるから、先ほどおわびしているということでありますから、よく、しっかりと前進をしていくように頑張ってほしいな、こう思っております。

 つまり、野田総理は、この法案がみずからの言っているようにできなかったら、国民に打って出て信を問う、それくらいの覚悟を持つべきなんですよ。どうですか。

野田内閣総理大臣 国民のために決断しなければいけない、その時期は迫っている、そして、私は政治生命をかけているということであります。もうそれ以上のことは言わなくても、十分先生にはおわかりいただけると思います。

額賀委員 言葉に出すと意味が薄れるということもありますから、よく、重く受けとめたいというふうに思っております。

 先日、茨城県の議長さんが新しく誕生しまして、パーティーがありました。私も出させていただきまして、そのとき、ある高名な学者先生が来られまして、こういう話をしておったんです。それはどういうことかというと、民主党政権にかわって、国民の多くの人は一定の期待感を持った、しかし、三年たって、みんなもう失望感に変わってしまったと言うんですね。私が言っているんじゃないよ、その学者先生が言っているんですからね。

 その上で、こういうことも言いましたよ。最低の鳩山さん、最悪の菅さん、最弱の野田さんだ。最低の鳩山さんというのは何だろうな、普天間なのかな。最悪の菅さんとは何だろう、原発事故の事故処理のミスリードだったのかな。最弱の野田さんとは何だろう。

 私は、つい先週あたりまで、野田さんのリーダーシップというのは余り見えていなかった。ところが、この政策協議のために、みずからが輿石幹事長に陣頭指揮をとったり、それぞれの部署部署で話をなさったりしている。だから、私は、野田総理は、この消費税と社会保障の問題を解決していくことができれば、先ほどのような覚悟で立ち向かっていくならば、きっと最強の総理になる可能性もあるんじゃないかな、こう思ったりしておりますが、これからの野田総理の行動いかんでありましょう。やはり世の中というのはそういうふうになっていくものですから、自信を持って、勇気を持って、頑張ってほしいというエールを送りたいというふうに思っております。

 そこで、法案修正の問題に話を移していきたい、こう思っております。

 きょうの午前中の我が党の金子先生の質疑等で、私は非常に中身のある議論があったかなと思ったりいたしました。

 我が党が提案している社会保障改革基本法案を総理も目を通しておられるし、それから実務的な現場の作業グループでも我々の考え方をちゃんと理解して受け取ってくれというふうに言っているわけでございます。

 私は、国民会議とか、この法案の中身を総理がどう受け取っているかによって、今度の問題の解決がうまくいくかいかないかだ、こう思っております。御感想を聞かせてください。

野田内閣総理大臣 社会保障にかかわるさまざまなテーマについての問題意識というのは、共有できるところもたくさんあると思います。

 その上で、この基本法の中の最後で御提起をいただいている社会保障制度改革の国民会議において、その構成をどうするかという議論は、私はいろいろあるのではないかと思うんです。有識者だけではなく、例えば、やはり政治家が入らなきゃいけないとか、そういう議論があるかもしれません。そういうところで中長期にかかわる課題について議論をするという提案は、私は前向きな御提案として受けとめさせていただいております。

額賀委員 今総理がお話しなされました国民会議、これは、自民党の場合は有識者会議的な存在で、言ってみれば、そこで政治が方向づけをしたものを議論していただくということになっているんだろう、こう思っております。

 その点について、私は、総理のリーダーシップで一定の合意をつくっていかないとこの話し合いの進展はないんじゃないか、こう思っておりますので、野田総理が言っている、これは茂木政調会長とのやりとりの中でも出てきたんじゃないかと思いますが、与野党間の協議の場のようなイメージで受け取っておられるのか、そこのところをもうちょっと明快にお話しください。

野田内閣総理大臣 今国会で提出している法案についての修正協議を今やっています。ここで成案を得ることは大事だと思いますが、当然のことながら、我々がまだ法案で出していないもの等々を含めて、あるいはお互いにもうちょっと中期的に考えているものについては、その会議体をどうするかなんですが、これは、単なる修正協議の延長線上だけではなくて、大きなテーマですので、やはりちゃんとした識見を持った人たちに集まってもらう有識者の会議のやり方があると思います。

 一方で、それぞれ政党としての到達点がありますので、それが全く度外視をされた会議というのもどうなのかという気がしますので、そこでどういう形の会議をつくるかというのは、お互いの知恵の出しようではないかというふうに思います。

額賀委員 やはり政治主導というのは、国会議員、政党、この国会の場で決めたことが大事だと思いますね。

 だから、与野党全体でなくても、今政策協議をしている民自公の政治家が一定の方向づけをした上で、こういう国民会議の有識者できちっとオーソライズをしてもらう、中身を精査してもらう、そういったことも含めてという意味でございましょうか。

野田内閣総理大臣 そういうことも含めて、これは、答えの出しようはお互いにあるのではないかなというふうに思います。

 いずれにしても、中期、長期の課題は残ることは間違いありませんので、それをどういう形で国民的な議論にしながら、そして集約をして、その場でも道筋、結論をどうやって出していくかということも含めて、それこそこれは、むしろ基本法の扱いのお話もありますので、御提案のある国民会議をどう持つかという議論も、これは修正協議の場でも議論すると思いますが、そういう知恵の出しようはあるのではないかと思います。

額賀委員 今この委員会に提出されている法案、それから提案されていない重要な課題、それぞれどういうふうに協議をし、そして合意を図っていくかということがこれからの課題ですね。

 その一環として、今言ったような国民会議というものがあれば、もちろんこの国会、委員会の場でその法案の修正協議ができる、そして、一方で、中長期というか、法案に出されていない問題についてはそういう場で議論がなされていくことができる、そういう大人の対応ができる形をぜひつくっていったらいいのではないかというふうに思っております。

 例えば、大震災が起きて、私も復興特別委員会の野党側の筆頭理事をしておりますが、十三本の法律がありましたけれども、これはほとんど議員修正でございます。政府案を修正して、そして、閣議決定だとか、政府が考えたことが事実上効力を失っていった。もちろん、効力も生かされている部分もたくさんあるわけでございますけれども、そういうことですよね。

 だから、立法府では、そういう作業が議員同士でしっかりと協議をしていけばできるわけでありますから、この社会保障と消費税の問題を解決するのもそういうのが一つの手だてになるんだろうな、こう思っております。

 したがって、今出されている法案について、今現場で、我々が提案をした基本法案も含めて議論をしていると思いますけれども、だから、それは、早急に解決できるもの、そして時間がかかるもの、それから基本的な理念ができるもの、いろいろな形で整理されていくのではないか、こう思っております。

 そういう中で、私は、今出されている法律の中で、我々がやっていた基礎年金二分の一にするというのが最も大事なことなのではないかな、こう思うんですよ。そういう意味では、交付国債とかいろいろなことをよく言っておりましたけれども、これもしっかりと政党協議の中で整理をして、我々の主張のように赤字公債でやって、そして、しかるべき法案は全部修正をして、レールを敷いていくということをまず最優先にしたらいいんじゃないですか。野田総理、どうですか。

安住国務大臣 交付国債につきましては、さきの予算委員会から、与党側としての提案に対して、自民党を含め野党の先生方からは大変御批判もいただいております。真摯に受けとめさせていただきますが、私も、何とか、二分の一の恒久化と安定財源の確保、これがやはり一番大事だと思っておりますし、そのための仕組みとしてつくりましたが、今先生の方からもそうした御意見もありますので、私は、これも与野党間でぜひ御議論いただいて、何よりも、とにかく国民の皆さんの年金の基礎部分をしっかり守っていく方向でぜひ話し合いをしていただければと思っております。

額賀委員 先ほど金子先生は安住国債と言っていましたけれども、ひとつ大局観に立って前進する形をつくっていったらいいんじゃないかな、こう思っております。

 もう一つ、懸案事項の子ども・子育ての問題でありますけれども、これも長年いろいろな議論をされてきております。

 やはり私は、本当に子供さんの立場、乳幼児の立場、それから父兄の立場、縦割りではなくて、その立場からきちっとやっていく。これは、革命的にがらっと変えるというのはなかなか難しいですよ。したがって、今までやってきた延長線上に一歩ずつ前進をしていく。それで、多くの人は待機児童ゼロを目指してくださいと言っているわけですから、そういうことにみんなが注意を向けて、その環境整備をしていく。

 そのためには、過ちとは言わないけれども、全体を前進させていくためには、先ほど言ったように、既存の法律の修正とか、いろいろなことを考えながら全体をまとめていかなければ、小さな利益を守って大きな利益を失ったのでは政治ではありませんから、小宮山大臣、きちっとそこは大局観に立ってやるべきだと思いますよ。例えば、児童福祉法だとか家庭何とかとか。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。それはやはり、子供たちのためにどうしたらいいか、そして子育てをしっかり応援するためにもっと財源が必要だということですとか、二重行政ではいけないということなど、そうしたところは、今までの審議の中でも皆様方と思いを同じにするところだと思っています。

 ですから、法形式をどうするかとか仕組みをどうするかということは、その目的を達するための手段でございますので、今修正協議も行われていますから、ぜひ知恵を出し合って、子供たちのために前進する合意が得られるようにというふうに思っております。

額賀委員 そういうことを一つ一つやっていくことによって、今度の一体改革は全く一体じゃないじゃないか、増税法案じゃないかなんて、我々の自民党からも、また多くの人からも指摘されていますけれども、そういうことをきちっと中身を一つ一つ積み上げていかなければ、国民に負担を強いる作業ですから、そこは誠意を持ってやっていかないと、これは途中で挫折することになりますので、現実的にきちっと対応していくことが大事だ、こう思っております。

 さて、次に、私は橋本政権のときに、村山政権で、あれは九四年でしたか、消費税を三%から二%上げて、九七年に橋本総理が実際に五%に上げた、その上げたのが九七年の四月一日、そして、アジア通貨危機が九七年の七月に来た、そういうときの官房副長官をしておりました。

 したがって、あのとき、一番の教訓は、それまでは財政構造改革法というのがありまして、キャップ制をしいて歳出削減をしてやっていけばいいんだというふうだったけれども、やはり日本は一国経済で動いているわけではありませんから、世界のショックで、財政とか税が硬直的でどうにも身動きがとれなかったという経験を持っております。それがその後の弾力条項でございます。やはり政治はいついかなるときも国家国民のためにフリーハンドを持っているということがつくづく大事だなということをそのとき感じたのでございます。

 パネル一なんですが、これはうちの野田税調会長の力もかりてつくったんですが、九七年が消費税が上がったときですよね。だから、その前年は、民間消費とか住宅とか設備投資というのはみんなプラスになっておりますよね。やはりこういう現象は今回も必ず起こってくると思います。駆け込み需要というのは必ずある。その反動がまず来ますよ。

 九七年は、消費については、プラス〇・四で、おっこちましたけれどもマイナスにはなっていない。翌年もマイナス〇・一ぐらいですから、案外堅調だったんですね。ところが、住宅投資は、金子先生もおっしゃっておりましたけれども、やはりその反動が急であります。それから、設備投資もそうですね。そういうことで、経済の歯車がなかなかうまく進まなかった。

 もちろん、九八年に橋本政権は選挙をやって敗れ去って小渕総理になるんですが、小渕総理は、当時、このショックを、アジア通貨危機を乗り切るために十数兆円の経済対策を講じたと思いますが、政府投資なんというのは、公共事業費をふやしても、結果的には、地方負担だとか、地方単独事業が余り多くないものだから、うまくいかなくて、減っています。

 やはり、こういう現象を見ていくと、私は、消費税だけではなくて、特にアジアの通貨危機の影響が設備投資だとかそういうところに大きく響いている、こう思っております。現状と照らし合わせても、今は、デフレ、円高、そして、なかなかサイクル的な力が湧き上がってこない、設備投資もうまくいかない、そういう状況でございます。

 例えば、パネル二、これは国内の設備投資ですが、六、七年のころ五十八兆円あったのが、今は三十八兆円ですよ。設備投資がこれだけ減っているだけではなくて、設備投資の中身も、大体、修繕費とか、本当に新しい競争力、新しい需要を生み出すための前向きの投資じゃないんですね。現状維持的な、減価償却内の話ですよ。そういうことですから、どうしても元気が出てきていないという感じを持つわけでございます。

 そこで、野田総理、一九九七年の経済、景気の落ち込み、そして今回の日本の経済の停滞、こういうことをよく見据えた上でこの消費税とかの問題を捉まえていかないと、やはり判断を誤ることになるだろう、こう思っております。しっかりとした経済政策、景気対策をしていかなければならないということだと思いますが、総理の所見を聞かせてください。

野田内閣総理大臣 当然のことながら、成長と財政再建のバランスをとるということが大事だと思いますが、九七年から九八年、資料として数字をお示しいただきましたが、消費税を引き上げる前後、当然これは、経済の影響というと、駆け込み需要があるし、反動減もあると思います。これは分野によって大きさは違うかもしれませんが、そういう傾向がある中で、ただ、全体として言えることは、このころは、やはり消費税の影響だけではなくて、官房副長官として在籍をされたころなのでよく御存じだと思いますけれども、アジア通貨危機であるとか、あるいは金融の問題等々の影響がこのときに大きく出たんだろうと思います。

 そういうもろもろの経済状況をよく見ながら判断をしなければいけないということは、これは間違いございませんで、今回も、二〇一四年に消費税を最初に引き上げる際にも、経済の好転等をよく勘案しながら判断をすることになっております。その目配りは十分していく必要があるというふうに思います。

額賀委員 橋本政権時代の消費税上げが経済の足を引っ張ったんじゃないかという意味のことを言う人もよくいるんですが、それは全然なかったとは言えないけれども、総理がおっしゃるように、アジア経済だとか、通貨危機だとか、金融の不良債権の影響とか、そういうことの問題も、これは大きな影響だったなということも私は実感として感じております。学者先生のようにきちっと分析はできないけれども、実感としてはそういう思いがあります。

 資料三をお願いします。

 この資料三でございますけれども、今のような日本の経済の停滞というのはどうして起こっているんだろうねと。昔から自民党は、政治の安定なくして経済成長なしとよく言ったんですよ。やはり、経済が不安定だと一貫した政策の継続性がない。

 だから、今我々が田舎へ帰ると、例えば農業政策なんか、自民党時代は、生産性を上げるために、後継者、農業で生きようとする人たちを中心に規模拡大を図って、どんどん前向きに行こうと思っていたら、民主党になって、戸別所得補償で規模の拡大がストップされたと。我々は、米つくりをやるのでも、野菜つくりをやるのでも、やはり三年なり五年なり十年なりの計画が見通せなければ種もまけないと。政治が不安定では、これは農家の人も、それから普通の経営者も、みんなそうなんですよね。だから、そういう意味で、この二十三年間の政治の不安定というのは、日本の経済に大きな足跡を残してきたんではないかなという思いがいたします。

 その上で、人口減少とか円高とか、そして企業マインドがなえていく。したがって、期待成長率は低下します。先ほど言ったように、その結果、設備投資は低迷する。その設備投資も、前向きの設備投資ではない。そして、設備は老朽化していく。その結果、生産性の上昇率は低下し、国際競争力も低くなっていく。そして、一方で、今のように燃料高になれば、価格を抑え込むために賃金を抑えて、輸出価格を何とか維持していく。そういうところにこういう今の停滞感があるわけでございます。

 そういう流れの中で社会保障と消費税の増税をやっていくわけでございますから、これは、政府がしっかりとした経済対策を安定した政治基盤の上につくっていかなければ、本当に日本が沈没するおそれがないわけではない。そういうことを、ぜひ、総理として、どういう対応策を、まあ、ことしの夏ごろにつくる、こう言っておるようでありますけれども、今私が言ったようなことに対する思いを聞かせてください。

野田内閣総理大臣 夏ごろ、年央につくるというのはいわゆる日本再生戦略でございまして、一昨年の六月にまとめた新成長戦略をしっかり、厳しく検証しながら、新たにしっかりとした戦略的なものをつくった中で経済対策を講じていくということでございます。

 ただ、その前にも、これまでも景気対策、雇用対策は随時行ってきたつもりでございますが、特に足元の状況にはよく注視をしながら対応していきたいと思います。一―三月期については、これはQEで年率四・七%で、先ほど指標で示していただいた設備投資低迷の悪循環、これは一番避けなきゃいけないんですが、設備投資も今ちょっと伸びてきている状況になってまいりましたので、この流れをしっかりと加速させていく方向で注意深い経済運営をしていきたいと思っております。

額賀委員 もう一つ、パネル四、研究開発投資ですね。これは金子先生も言及されておりましたけれども、法人税を下げて、研究開発資金の控除額を下げていくなんというのは、やはりこれはちょっと間違っているんじゃないかな、メッセージとしては。そういうことも含めて、やはり日本の将来のためにこの点について頑張っていかなければならないと思いますね。

 伊吹筆頭がこの消費税に絡めて、税収十三・何兆円のうち、ツケ回しの軽減に七兆円ぐらい行く、その分、一部をちゃんと産業政策というか競争力に回せというような趣旨できっとお話しなさったんだと思いますけれども、私も、やはりこういう局面の中で、時限的に、向こう三年間は数兆円そういう金を使うとか、そういう方向性を、具体的にメッセージを出して、日本の経済を活力させて、増税だけではなくて増収も図るというメッセージ、そういうこともきちっとすべきだろう、こう思いますが、総理。

野田内閣総理大臣 今回の消費税、基本的には社会保障に全て使途を充てるということですが、それは、その中で後世代へのツケ回しをなくしていくという分野が出てきますので、その中で財政の回復を図っていくことは可能になってくるというふうに思います。

 その使い方として、当然、経済成長、この観点でお金を使わなければいけませんが、先ほど、兆単位のいろいろ具体的な御提言がございましたけれども、基本的には、やはり予算編成の中でそういう視点で編成をしていくということが必要ではないかというふうに思います。

額賀委員 やはり、総理は、もちろん単年度主義だからいろいろ制約はあるけれども、基本的な方向づけをしてあげないと企業行動というのは起こってきませんよ。そういうことをしっかりとやってほしいと思っております。

 先ほどのデータにもありましたが、消費税の影響で、住宅投資とか設備投資とか、そういうものがありますよね。設備投資は今言ったようなことだ。住宅投資なんかも、やはりこれは経済に大きな影響を与えます。それから、我々もいろいろ議論してきたけれども、自動車産業ですよね。エコカーポイントとか補助金とか、我々は、要所要所でそういうことをきちっと裏づけをして景気を支えてきた実績があるわけでございます。

 そういう意味で、やはり住宅なんかも、これも金子先生が言及しておられましたけれども、しっかりと、住宅ローン云々じゃなくて、還元してあげるというような政策を考えるとか、あるいは自動車の車体課税等についても一定の方向性をつくっていかなければなりません。

 我が党は、しっかりと野田税調会長とかを中心にそういう考え方をまとめていきます。したがって、皆さん方にそういうものを突きつけていきますから、お互いに、この消費税問題がうまくいけば、連携した背景として、そういう経済政策も講じるという意味で、同じ思いを持って実行に移す必要がある、こう思っております。それは、返事は要りません、言っておきます。

 それから、総理、私はいろいろなことを言いましたけれども、政党政治の危機ですよね。大正デモクラシーのとき、確かに二大政党とかなんか言われたのでありますけれども、お互いに足の引っ張り合いをして、悪辣な権力闘争をし、そして統帥権の干犯まで活用して権力闘争を演じたんですよね。結果的に、政党政治の信頼を失い、軍部に支配権を握られていったわけでありますね。

 そういう思いからすると、我々の時代、今、決められない政治だとか決断ができない政治だとか言われております。既成の政党に対する批判が多いわけでございます。こういうことを繰り返していたのでは、第三極を利するだけにもなるわけでございます。

 本来、民主党と自民党がお互いに政策協定を結んでどうのこうのというのは、政党政治としては私は間違っていると思います。なぜならば、それぞれの思想、政策、同志を募って、日本の方向、日本の国づくりを目指すのが政党政治であります。

 しかしながら、余りにもこの二十数年間というものの政治の停滞がひど過ぎた。ねじれ国会等もあります。一番象徴的に思ったのは、伊吹幹事長、福田総理のときでありましたが、私が財務大臣で、世界の金融が混乱をしているときに、日銀総裁を決めることができなかったんですよ。

 こういう政治を見ていたときに、権力闘争とか足の引っ張り合いだとか、そういう次元で、この二十三年間、政治が動かされてきたとするならば、国民にとってこんな不幸なことはありませんよ。なぜ二十三年かというと、これは一九八九年、竹下さんが消費税をつくって、その後、宇野さんで選挙をやったときに、参議院選で敗退したんです。それ以来、参議院は、比較第一党が多数をとったことはありません。だから、日本の政治は、それから二十三年間、きちっとした理念と政策に基づいて、しっかりとした、一貫した政策が、全部とは言えないけれども、相当ゆがめられてきたというふうに思っております。

 しかしながら、国際情勢とか日本の国内の政治状況あるいは経済的な危機、いろいろなことを考えて、ここはやはり、政党間でも合意ができる政策は国家国民のためになし遂げて、一つのレールを敷いて、それで国家国民のために応えていく、その象徴がこの消費税の問題であるというふうに思っておりますが、そういう認識を持っていますか。

野田内閣総理大臣 二十三年間という振り返りでお話をいただきました。

 私自身も、ねじれとかいろいろあったと思いますし、また、私どもが野党だったときの挙措動作において反省すべき点は大いにあったのではないかということも踏まえてでありますが、そういうことも踏まえてですが、今御議論をいただいている一体改革は、先ほど来申し上げておるとおり、待ったなしです。国民のために、いろいろなことがあったけれども、お互いに知恵を出し合って、決めるべきときは決める政治というものをぜひ実現していきたいというふうに思っておりますし、そのことができれば、ほかの大きなテーマについても、胸襟を開いて成案を得るという可能性、道筋が見えてくるのではないかと思います。

 その意味では、日本政治にとっても分水嶺になる、そういう大事な局面ではないかということを、そういう思いを持ちながら、何としても結論を出していきたいというふうに思います。

額賀委員 日本の政治の置かれた状況、そのために一つの政策をもって成果を上げていくという意味は、私も、この際、野田総理が反対する者を除名してでもやってのけるという話でありましたから、それはいいことではないかと思っております。その上で、やはりそういう政治の意思決定のレールを、これを端緒にして切り開いていくということもできれば、それはすばらしい、新しい日本の政治の展望につながることになる、私はこう思っております。

 しかし、仮に、野田総理がそういう思いでこの消費税と社会保障の問題を解決することができたとするならば、野田総理は、自分の思いをやり抜いたときは国民に信を問うということを言っていますよね。やり抜きたいことをやり抜いたときには国民に信を問うと言っております。

 したがって、政治生命をかけてやる、命がけでやるということについて、それが国家国民のためになるということで、成功したときには、当然、これだけの大問題を国会の場でお互いの政党が協力し合ってやってのけたときは、これは、国民に信を問うのが憲政の大道ではないでしょうか。

野田内閣総理大臣 一体改革も含めて、やり抜くべきことをやり抜いたときに、しかるべきタイミングで国民の信を問うということでございます。

額賀委員 私は、今、野田総理とあるいはみんなと共有したいのは、特に民主党の皆さん方にぜひ思っていただきたいのは、やはり、政治は国家国民のためですよね、国益のためですよ。自民党のためにやっているわけではない、民主党のためにやっているわけではない。

 民主党では、この前の菅さんがやめるときも、最近の輿石幹事長の発言等を見ても、まずは党を割らない、自民党に政権を渡さない、解散・総選挙はしないとか、まあ、そこは除いておいてもいいですけれども、そういう次元で本当の政治というのはできないじゃないですか。

 だから、やはりキーワードは、野田総理、党益より国益ですよ。これをキーワードにしてこれからの政治運営をしなければいけない。野田総理一人の政治生命なんというのはちっぽけなものですよ。だから、国益のために、そういう大きな利益のために頑張るということを聞かせていただいて、私の質問を終わります。

野田内閣総理大臣 真に、日本そして国民のために決断をしなければいけないときであります。最優先の課題は国民のために結論を得る、それ以外のことは全部副次的なことだと考えております。

額賀委員 その言葉を信じます。

 つまらない党益には体を張って説得して、国益のために動いていただきたい。それをお願いして、終わります。

中野委員長 これにて額賀君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 この特別委員会の審議も、かなり大詰めを迎えてきたようでございます。そういう意味で、きょうは私も、今までの質問を総括しながら、もう一度、総理初め皆さんに御意見をお伺いしたいと思っているところでございます。

 実は私、土曜日から日曜日にかけまして、青森の弘前に行ってまいりました。それで、私は、弘前の市立病院の院長先生に会わせていただきまして、いろいろお話を伺いました。医師不足で大変なところでございますが、その院長先生の話を聞いて、私は、本当に我々、社会保障の問題を真剣にやらねばならないというふうに思いましたのは、三百六十五日、一日たりとも休むことはできませんと。朝から夜まで、緊急の患者が次々とやってくる。そして、周辺が、それを受けてくれる人たちがいない。だんだんとその受けてくれる病院が減ってくる。そうしますと、皆、その人たちはその市立病院に集まってくる。市立病院の中も、医師の中でやめていく人たちがいる。残った者がそれを全部しょっていかなきゃならないというので、大変ですということをおっしゃりながら、しかし頑張ります、こう言っていただいております。

 日本の中、これは医療だけではなくて、さまざまな分野で同じでございましょうけれども、そういう皆さんによって日本は支えられている、この皆さん方に何とかお応えをしなければならない、そんな思いで帰ってまいりまして、きょうの質問は、その帰りの飛行機の中で考えたものでございますので、十分にお聞きすることができないかもしれませんけれども、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 国民は今、この特別委員会の行方を注目していると思います。私は、注目している点が三つあると思っておりまして、一つは、民主党が一致協力してこの法案を通すことができるかどうか、もう一つは、総理が本当に政治生命をかけて、そしてこの法案をやり遂げることができるかどうか、そして三番目は、与野党協議で本当に国民のために妥協することができるかどうか、この三点をじっと見詰めているといいますか、見守っている、そんなふうに感じている次第でございます。

 東京に帰りまして、夕べ、NHKのニュースなどを見ておりますと、総理がいろいろなところで発言をされたのが放映されておりました。その中で、総理が、この社会保障の、社会保障といいますか、年金ですね、民主党が主張されます年金制度、あるいは医療保険制度、こうしたものについて、撤回するつもりはない、こういうふうにおっしゃったというふうに、報道ですから、報道は伝えておりました。

 それで、総理が撤回をしないというふうにおっしゃっているのはどういう意味かなと、しばらく考えておりました。与野党で協議をします以上、民主党としても、あるいは政府としても、譲るべきところは譲っていただかなければなりません。政府案に修正が加えられるといたしましても、それを党内でまとめてもらわなければなりません。

 私は、小泉政権のお話が先ほども出ましたけれども、ちょうど郵政改革のときに、小宮山先生のその厚生労働大臣をさせていただいておりまして、小泉内閣のそのすごさというものを目の前に見せつけられました。

 郵政の問題につきましては、よしあし、今議論はあると思いますが、しかし、小泉総理のそのすごさというのは、私はいまだにこの心に残っております。一度言ったら後ろへ引かない人でもありました。私も、医療制度につきましても、三方一両損だとかなんとかというようなお話があって、もう皆から袋たたきに遭いながらそれをやった経緯もございますけれども、一度言ったら、もし自分の党内で反対をする人があったら、それはもう、自分がそのときには国民に信を問う、そういう決意がみなぎっていましたね。私は、そのみなぎりを今思い出しております。

 総理がおっしゃる撤回しないというお言葉と、そして総理のその決意と、どんなふうにそこが結びついているのかな、そんなふうに実は思った次第でございますが、まずは、撤回をしないというふうにおっしゃったその総理のお気持ちを聞かせていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 社会保障改革にかかわる全体像を、特に大綱でこれまでお示ししてまいりました。これについては、新しい年金制度等々を含めて、その全体像には入ってございます。

 これは、長い間の党内における議論の集積の結果、積み重ねの結果、到達点として来ているものであって、私どもは、それを最善のものとして考えて、それを踏まえてのさまざまな制度改正の提起をさせていただいているということなんです。それは、御党においてもしっかりとした福祉ビジョンを持たれておられます。それを踏まえて個別の制度改正について当たっておられると思いますが、それぞれその議論の到達点があった、その中で議論をして何が折り合えるかということが、私は、基本にはお互いに認め合うことではないかなと思います。

 特に今回、一体改革にかかわる法案は七つでございまして、この七つの法案は提出をさせていただいております。そのための協議を、御党も含めて、今大変いい議論が行われつつあるというふうに思いますけれども、その協議がまとまることを強く期待したいと思いますが、そのほかの部分の、自分たちの掲げたこれまでの理念、旗をおろせと、この法案審議においてですね。出していない法案もあるんです。それを撤回しろという話はちょっと余りにも飛躍があり過ぎるのではないか、そういう問題意識をお話しさせていただいたということでございます。

坂口(力)委員 考えてみますと、民主党が掲げております年金制度にいたしましても、現在の後期高齢者の医療保険制度にいたしましても、法案は別に今出ていないわけでありますから、撤回も何もないわけでありまして、出ていないわけであります。

 ですから、そこは、出さないという意味なのか。それは、今も総理がおっしゃいましたように、民主党の考え方として撤回する意思はないという意味なのか。民主党が考えておみえになります、民主党の考え方として、今表に出ているその案を撤回する意思はないというふうにおっしゃっているのか、それとも、閣議決定をしたその内容を撤回する意思はない、こういうふうに言っておみえになるのか、そこがわかりにくい。だから、そこを少し明確にお答えをいただきたい、こんなふうに思います。

岡田国務大臣 撤回しろというお話は、私の受けとめ方では、これは、協議に入る前にまずそれを取り下げろ、こういうふうに言われたというふうに受けとめております。やはり協議に入るときに、何か、まずそれを全部やめてしまえと言われると、これは協議になりませんので、協議した上でいろいろ御相談して、そしてお互い合意に達すれば、それはその合意に達したものが案になるわけでありますので、協議する前から全部取り下げてしまえというのは、これはやはりちょっと、簡単なことではない。しかし、協議が相調えば、その結果というものが最優先になるということは当然だと思っております。

坂口(力)委員 岡田副総理には今から聞こうと思っておりましたが、先に立っていただきまして総理の代弁をしていただきました。

 岡田総理はまだちょっと早過ぎますので、そのうち岡田総理が誕生するかもしれませんが、その前に野田総理に、先ほど私が言いました二つの撤回の意味、前者か後者か、それだけで結構でございますが、前者といいますのは、民主党が現在考えているその考え方を撤回するという意味と、それから、そうではなくて、閣議決定をした内容を撤回しないという意味と両方あると思いますから、そのどちらかということを教えていただきたい。

野田内閣総理大臣 新しい年金制度、さっき申し上げたとおり、長い時間をかけて、そしていろいろな蓄積を踏まえて、私どもの到達点として打ち出している考え方でございますので、このこと自体を我々が今撤回ということを申し上げることはできません。

 そういう中で、修正協議等を行う中でどういう知恵を出すかということはあると思いますが、私どもは最善のものを法律として出している。出していないものはまだ出していないわけでございますが、それだからそもそも撤回はございませんけれども、出しているものについての協議はしっかりとさせていただきたいというふうに思います。

坂口(力)委員 わかりました。

 そうしますと、総理がおっしゃった言葉の中で、例えば一元化の年金の法案それから高齢者医療法案、両方ともこれは法案としては出ていないわけで、現在のところは、民主党のお考え、あるいは、中にはもう政府も共有しておみえになるものがあるかもしれませんけれども、その考え方をお持ちになっている、そのことを今撤回はしない、しかし、これから話し合いが進んでいけば、それは、その先までそれを撤回しないということまでは言っていない、こういうことに理解させていただいてよろしゅうございますか。

野田内閣総理大臣 私どもの考え方の到達点でありますので、最善のものだというふうに思っています。これをベースにいろいろな制度改正をお願いしていくということでありますけれども、その背景にある考え方を今私たちは撤回をするという考え方は持ちません。

 ただし、御提言をいただいている国民会議等で、それぞれが自分たちの理念や中長期的な考え方を持ち寄って、そこで整理をするという場においては、お互いにそこは胸襟を開いた議論というのはあり得るというふうに思います。

坂口(力)委員 それでは、岡田副総理にお聞きをしたいと思いますが、副総理が厚生労働委員会にお越しをいただきまして、そのときも私、質問をさせていただきました。そのときに岡田副総理は、来年の法案提出に固執する必要はないという趣旨のことをおっしゃった。

 これは、私が言っただけではいけませんので、その日の朝日新聞、毎日新聞の記事がございますので、ちょっと読ませていただきます。

 朝日新聞は、「岡田氏は会見に先立つ衆院厚生労働委員会でも、公明党の坂口力・元厚労相の質問に「大きな方向性で合意できれば、来年の法案提出に固執する必要はない。その方が合意に至る、より早い道では」と答えた。」これは朝日新聞の記事でございます。

 それから、毎日新聞の方は、「岡田克也副総理兼一体改革担当相は十七日の衆院厚生労働委員会で、民主党が主張する新年金制度について「法案を出すことが目的ではない。各党間で議論が進むなら必ずしも私はこだわらない」と述べた。」こう書いております。

 若干ポイントのつかみ方が違いますので中身は変わっておりますけれども、しかし、副総理としては、とにかく話し合いの場ができて、そこで議論が進み始めたら、それは、その議論が一方でされている最中に内閣としてその法案を出すということはない、そういうことをおっしゃったというふうに私は理解をしておりますけれども、それでよろしゅうございますか。

岡田国務大臣 私が先生と厚生労働委員会で議論させていただいたときに申し上げたことは、これは国民の立場に立って、やはり年金制度は非常に重要でありますので、しっかり議論する、そういう場を必要としているということを申し上げました。そして、そういう場で真摯な議論が必要だと。

 真摯な議論が行われて方向性が出る、あるいは一定の合意に達するということであれば、別に我々、何が何でも今の法案にこだわる必要はない。合意ができれば、その合意が優先するわけですから。あるいは、その合意に向かって議論が進んでいる最中に、やぶから棒に、いいや、我々はもう決めたから来年法律を出しますということで、来年になって、そういう協議を途中で一方的に打ち切って法案を出すとか、そういうことは、これは協議したことになりませんから。

 私としては、協議がなるべく早く調うことを期待しております。そんな、一年と言わずに、早く協議をして合意に達する。合意に達すれば、その合意に達したものを法案の形にして、共同で国会に出して、そして国民の皆さんに理解していただく、こういうことだと思います。

坂口(力)委員 厚労委員会での質疑と大体同じ内容だったというふうに思っておりますが、総理、この今副総理がおっしゃった厚労委員会での質疑の様子、そしてその趣旨を踏まえた今の答弁、これと総理のお気持ちとは一緒ですか、多少のずれがありますか、教えてください。

野田内閣総理大臣 別にずれはないと思うんです。

 今回の修正協議も、七つの法案を中心に御議論いただいて、私どもは、党内で議論してきてベストのものを出したつもりです。そうはいっても、各党それぞれの御意見がありますので、前進をさせるためにはどう折り合うかという議論をやります。

 同じように、次の段階の議論も、私どもは、自分たちが考えていることを、最善のものをまとめてきたつもりです。それを前進させるためには、各党の御意見もお伺いをしながら合意を形成するということですので、全く同じことの考え方ではないかと思います。

坂口(力)委員 わかりました。

 ただし、聞いているとちょっとニュアンスが違うなというふうに思いますのは、民主党として、あるいはまた政府としてお考えになってきたこと、それは最善のものだというふうに今思っておみえになる、それはよく理解できます。

 理解できますが、だからといって、その今手にお持ちになっているものを出して、これでひとつ議論をしてくれというふうに言われるのか、それとも、そうではなくて、各党がいろいろ考えていることを持ち寄って、そこから合意をしていこうというふうに思われるのか、そこのところが、総理のお気持ちとしては、自分たちが手持ちに持っているものをまず示すので、それを議論してくれということがやや先行しておるように私には聞こえましたけれども、そこはどうですか。

野田内閣総理大臣 今回は、まず、修正協議は私どもがまとめたものを御議論いただいて、今基本法という形でも出てきましたけれども、そういう形で議論をさせていただいています。

 次の段階の話をどうやるかは、今回の協議の成り立ちなども見ながら判断をさせていただきたいというふうに思います。

坂口(力)委員 現在協議されておりますのは、今この特別委員会にかかっております七法案をどうするかということと、それから税制をどうしていくかということでございましょう。これを今いろいろと議論している。

 しかし、これを詰めていくためには、その前提として、社会保障というものをこれからどんなふうに見ていくかとか、そこまで大きくいかなくても、例えば年金制度をどうするか、あるいは後期高齢者の問題をどうするかという、現在出ている七法案とは別に、そうした問題についても皆さん方がどういうふうにこれから進めようとされているのか、そこのところを決めないことにはこちらの七法案も決めにくいではないかということに話はなってきているというふうに思います。

 したがって、今おっしゃった七法案の審議は、それはそれとしてやっていくというふうにいたしましても、その前提となりますところのものを、今閣議決定されているわけでありますから、閣議決定されているからというので、それはもう譲れないんだというふうに言われてしまうと、こちらの七法案の話も進みにくいではないか。

 まず一遍、閣議決定はされてはいるけれども、それは少し先送りするよというぐらいなことは言ってもらわないとこちらは進まない。あるいは、もうはっきり一遍撤回してくれ、こういうふうにも言っておりますけれども、私は少し気が弱いものですからそこまでよう言わない。

 とにかく、一度ここは先送りをしてでも今の七法案をひとつ協議をお願いしますということなのか。それとも、閣議決定したことはもう譲れないんだ、これはこれでもうやるんだ、その後で、この七法案なら七法案、五法案なら五法案を解決してくれということをおっしゃろうとしているのか。そこのところはもう少し微妙に違うように思いますが、どうですか。

岡田国務大臣 委員の御指摘の点は、恐らく後期高齢者医療制度の廃止の問題、そして年金の抜本改革の問題、この二つの問題についての御指摘だと思います。

 御指摘のように、いずれもまだ法案は国会に出ておりません。したがって、今具体的に協議で御議論いただいている問題とは少し時差があります。ただ、いずれも国民にとっては非常に重要な問題ですから、先送りという言葉は私は使いたくありません。これはやはり各党間で真摯に議論していただかなくてはならない。

 しかし、議論するに当たっては、やはり我々の考え方、ベストだと考えております年金の抜本改革、あるいは後期高齢者医療制度の廃止、その考え方を私たちは出させていただきます。そして、御党なり、あるいは自民党は、例えば年金でいえば、今の年金制度を前提に、それを改良していくという考え方をお持ちであります。後期高齢者医療制度の廃止は必要ないというお考えであります。したがって、そういうお考えを出していただく。お互いにそれを机の上にのせて、そして真摯に議論していただくということだと思います。それで、議論の結果どうなるかということは、まさしく合意に至れば、それがその時点における案である、こういうことでございます。

 私は先送りという言葉は余り好きじゃありませんので、タイミングは少しずれますけれども、まず、この十五日までにはしっかり七法案について御議論いただくわけですから、それとは少しずれますが、これは真摯な努力、議論が必要だということはそのとおりでございます。

坂口(力)委員 先送りと言いましたのは、それは我々の話し合いを先送りしようということではありません。現在出してありますものをそのままにして、来年の三月には出しますよということを前提にして話をされると、我々は話に乗れませんねと。だから、そこは先送りをしてもいいという寛容な気持ちを持ちながら、どうぞひとつ話し合いをしようじゃないですか、こういうふうに言っていただくのなら、我々も、そこは人間ですから、わかりましたということになるんじゃないでしょうか。そこのところを今言うている。まことに易しい話。

岡田国務大臣 ですから、協議をしていただくわけですから、今国会に出すとか来年出すとか、いろいろなことが書いてありますが、それに優先するのが協議であるということは間違いないと思います。協議の結果がそれと異なることになれば、それは協議の結果を優先するということであります。

坂口(力)委員 大分煮詰まってきたように思いますしいたしますので、飛行機の中で考えましたのはこの辺でございますから、まあ、この話はこれだけにしておきたいというふうに思います。

 これは医療費です。この前も実は出させていただいたわけでございますが、医療費はだんだんとふえてまいりまして、七十五歳以上の医療費が二〇二五年には四九%、大体半分に達する、こういうことでございます。これはかなり大きな問題だというふうに思っておりますし、先ほど市立病院の院長先生のお話も申し上げましたけれども、今国会の中でこの医療の問題を抜きにして、何らここのことについて触れることなしにこの委員会を閉じるということでいいんだろうかというふうに思っております。

 もう一つ、これは社会保障給付の見通しの中で、年金、医療、福祉等を並べたものでございますが、医療は二〇二五年になりますと一五〇に伸びまして、かなり大きな伸びがある。

 私の持っておるものはこうなんですが、昨日も内閣府がお持ちになっている資料を見ましたら、この四十八兆円が五十三兆円に伸びているんですね。パーセントでいきますと、一五八になるんです。年金の方は、六十五兆円ですけれども、六十一兆円に下がっています、六十五から六十一に。それで、二〇一一年を一〇〇としました場合には一一六%になる。

 やはり、年金の方が下がったというのは、全体の賃金が下がっているとかいうようなこともあると思いますし、あるいはデフレが続いているというようなことも影響しているというふうに思いますが、これはそんなに伸びていない。やはり医療がどんどんと伸びてきている。

 そして、先ほどごらんいただきましたように、その医療の中身の半分は、後期高齢者の、後期高齢者という名前が悪いといって大分叱られましたけれども、これはしかし、そういう名前になっているんですから。六十五歳以上は高齢者、七十五歳以上は後期高齢者、八十五歳以上になりましたら超高齢者、こういう名前になっているんですから、そのある名前を使っているだけの話でありまして、七十五歳以上の医療費がどんどんと伸びてくる、こういう現状にあります。

 それで、先日も財務大臣に、今回、五%、十三・五兆円の消費税が伸びますが、この中で医療に回ります額はどれだけですかと言ったら、具体的なことは余り、はっきりわかりにくいというお話だったので、この委員会が終わりになりますまでに、その大体の目安と申しますか、これぐらいは回りますということを計算しておいてください、そして教えてくださいということを言ったわけでありますが、それはできていますか。

安住国務大臣 先生からの御指摘で、医療分野にどれぐらいかということでございましたので、急性期医療への医療資源の集中投入とか市町村国保の低所得者に対する保険料軽減等によって、二〇一五年度に最大一・六兆円程度を充てるということにしております。

 さらに、先生、七兆円の後代へのツケ回しの解消分の中では、この中では、医療・介護分野で、機械的に計算をさせていただきますと、これは四・七兆円程度になります。

 ですから、医療、介護の充実の一・六兆円弱程度にこの四・七兆を加えさせていただきますと、機械的な計算ではございますが、六・三兆円程度が見込まれるということになります。

坂口(力)委員 余り機械的過ぎても困るわけですが、この中で、いわゆる診療報酬、国民の皆さん方が医療を受けられる、それに対する診療報酬の側に回ると思われるのはどれぐらいになりますか。

安住国務大臣 これは、ちょっと先生、申しわけございません、機械的に計算をしているだけなので、そこまではじき出しておりません。

坂口(力)委員 ちょっとわからぬですか。

 そこが大事。例えば、どこどこに病院をつくりますとか、そうしたことに必要な額というものと、それから日々の診療にどれだけ要るかということとは別の話でありますので、これはひとつ、しっかりと計算をしてお示しをいただきたいというふうに思っております。

 医療に絡みましてはもう一つ先日お聞きをしましたが、ちょっとそれは時間があったらにしまして、先に小宮山大臣の方にお聞きをしましょうか。後期高齢者の話でございます。

 後期高齢者医療制度、これを、今のを廃案にして新しい案をつくると。大まかな言い方をいたしますと、新しい案というのは、国民健康保険でおやりになっている保険は、それは国民健康保険同士でひとつやってください、そして組合健保なんかに入っている皆さん方は、若いときに入っている皆さん方は、老後もその組合健保の延長線上で見ますよ、こういう分け方だと思うんですね。これは昔から突き抜け方式といいまして、よく言われたものでありまして、連合さんなんかが突き抜け方式にしてほしいということをいつも言っておみえになったわけでありますが、それを採用されたのではないかというふうに思っております。

 こうなりましたときに、国の財政上は、現在までよりも、医療の内容が変わらないというふうに仮定してで結構ですけれども、国としての出し分は多くなるんですか、変わらないんですか、減るんですか。

小宮山国務大臣 高齢者医療制度の見直しについては高齢者医療制度改革会議が取りまとめをしていますが、その取りまとめでは、今委員がおっしゃったように、七十五歳以上の人も現役世代と同じ国保か被用者保険に加入をします。国保でも被用者保険でも、現在の後期高齢者医療制度の財政上の枠組みは維持をするという形になります。

 具体的には、七十五歳以上の人の給付費は、所属する制度にかかわらず、四割を現役世代の支援金、五割を公費で負担いたしますので、現在の制度と比較して公費負担が大きく増加はしないというふうに考えています。どのぐらいかといいますと、平成二十五年度で七百億円、二十七年度で五百億円と見込んでいますので、一千億円単位の大きな財源を要するものではないというふうに考えています。

坂口(力)委員 組合健保などは、お若いときにかなり賃金も高かった。そして、組合健保にお入りになっている皆さん方は、年齢の若い層の皆さん方が多い。それに引きかえまして、国民年金にお入りになっている皆さん方は、高年齢層が多いし、しかも低所得者が多い。こういうことでありまして、今までは各保険の間で、相互扶助と申しますか、助け合いをしてきたわけですね。今度はそれを二つに割って、弱者同士でお互い助け合いをしてください、強い人はこのまま最後まで強い者同士でいきますよ、こういうことになるわけですよ。そうしましたら、国から出していただく分が、これは国といいますか、あるいは公費と言った方がいいのかわかりませんが、国が出すと仮定しまして、そうすると、国が出す分というのはふえるんですよ。これはもうふえる。

 だから、突き抜け方式というのも一つの方法ではあるが、これは国の負担が大きくなるからというので、今まで採用されてこなかった。それを今回採用されるということになったと私は思いますが、そこはその心配はありませんか。これは、財務大臣、どうですか。財務大臣に聞いても無理か。

安住国務大臣 それぞれの組合との話し合い等を含めて、それから、長期持続性がどうなのかということは、総合的に厚労省として考えられて出された案だとは思っております。

坂口(力)委員 いやいや、組合と話をして決めた話はぐあいが悪いんですね。それではいけないわけで、国民全体を含めて……(安住国務大臣「労働組合じゃなくて、健保です」と呼ぶ)労働組合でしょう。(安住国務大臣「いやいや」と呼ぶ)健康保険組合。健康保険組合も労働組合とコインの裏表みたいなものでありますから、それは労働関係の皆さん方の意見を尊重したということに私はなると思います。

 それで、総理、私が言いたいのは、年金にいたしましても、民主党が掲げられる一元化法案というのはなぜそんなにたくさんお金がかかるのかということですよ。基礎年金は取っ払って、二階だけになっているわけですから。だから、基礎年金のところに出していた分は出さなくてもよくなるんだから、かえって楽になるように思いますけれども、最低保障年金を上乗せするというのに大きな額がかかり過ぎるということだと思います。しかも、年金の額を減らさないように上乗せをしようと思うと多額の金がかかる。それで、少なく済まそうと思うと年金の額ががくっと下がる。

 一、二、三、四と四案示されまして、第二案あたりを見ましても、あれぐらいですと、四百万ぐらいの人で大体一〇%年金額が減るんです。六百万だったら二三%ぐらい年金額が減るんです。そんなに減っては困るから上乗せを多くしなきゃならぬというので、四案をつくられた。そうすると、四案をやろうと思いますと、今度はそれに対する財政が非常に大きくなってきて、消費税にして一一・二%もかかってくる、こういうことになっておるわけですね。

 それで、民主党がお考えになります制度、これは年金制度にしろ、高齢者の医療保険制度にしろ、内容を見ますと、先ほどあべ議員からも話がありましたが、自助、共助、公助と三つあります中で、今までの案というのは自助と共助の社会保険を中心にして、できるだけみんなで助け合おうという形で進んできた。ところが、民主党が掲げておみえになります案は、それよりも少し公助の方に寄っている。それで、共助よりも公助の方に重さがいくものですから、国にかかるこの話が出てきているということだと思うんですね。

 だから、今、消費税の話、消費税も将来どうしても必要になってくるというふうに私は思っておりますけれども、しかし、今申しましたように、社会保障の中の、社会保障はどんどんこれからも要るわけですね、医療なんかはどんどん進んでいくわけですね。そこは進んではいきますけれども、社会保障といえども、できるだけこれがふえるのを抑えていくということも考えていかなければならないんだろうと思うんですね。ここは効率的にやっていくということが必要になってくる。

 効率的にやっていくということをやりながら、足りないところを何とか消費税でならないかというお話を出しておみえになるんだと私は思うんですが、一方で消費税を示しながら、一方の社会保障の方の財源が、今までよりも公助の方が多くなって、たくさん要るような制度を次々とおつくりになって、消費税を一方で上げていくというのは少し話が違うんではないか。

 やはり要るものは要る、それはやむを得ないと思います。特に、今まで日本はこれだけ多くの借金をしてきたんですから、そこにこの社会保障の問題が、あるいは高齢社会があるわけですから、総理がおっしゃることも私は十分理解をしているつもりですけれども、しかし、その中にあって、これから先、消費税をどうしていくか。今は五%で、これは一〇%になるわけですよ。世界各国の消費税を見ますと、現在、日本は五%、他の国々は大体二〇%ぐらいになっている。しかし、今回一〇%にされて、そして民主党の方式の年金制度を採用すれば、将来、それでまたもう一〇%かかるわけですから、二〇%がかかるわけであります。

 そのほかに医療や介護があるではないか、ここが一番伸びが大きいではないか、この額を一体どこから持ってくるのかということになるわけですね。ですから、そのことも考えて今から手を打っていかなければならない。その手を打っていくためには、皆さんがお考えになっている年金制度、それは皆さん方からすれば立派な案だというふうに思われるかもしれない。あるいは、百歩譲って私もそれを認めるとしましょう。認めたとしましても、しかし悲しいかな、金がかかり過ぎる。いかにいい案であっても、金のかかり過ぎるものは何とか抑えなきゃならない。お金がかからないようなものを、できるだけ抑制できるものをつくって、そして、それは社会保障の理念が損なわれないという一方の範囲の中で、しかし、そこは抑えていかなきゃならないということではないかと思うんです。

 その中で、将来一〇%近くかかりますというこの年金制度を今認めるということは、ほかの医療や介護に回す金がなくなってしまうということを言っているわけですね。だから、それを入れたら三〇%になってしまう。そんなことになって日本の経済がやっていけるかといえば、それはもう大変な影響が及んでくる。その辺のところも考えながら、皆さん方はこの年金制度なり、そして高齢者医療制度なりも考えていただかなければならないと私は思うんですね。

 だから、そうしたことも含めて、先ほど撤回するかどうかの議論をいたしましたけれども、これはもう一度そうしたことも考慮に入れながら、よくよく検討をしてみればそう単純なものではないということを御理解いただいて、そしてもう一度総理の御答弁をお願いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 先ほど、我が党の試みの計算のお話が出ました。これはケースを四つで分けてやっておりますけれども、よく御存じだと思いますが、現行制度を維持していくことによっても、やはり消費税は一定額を引き上げざるを得ないんです、二〇七五年。そういうことはまた、その試みの計算というのはもっと精緻にこれからもやっていく中で、制度の改正をどうするかということを議論していきたいと思います。

 年金だけではなく、大事なことは、委員の御指摘のとおり、一番伸びるのは医療なんですね。そこをよく考えながら将来のことを考えなければいけないということは間違いないことだと思います。数字の上では、これから一番伸びるのは医療でございます。そこを十分に意識をしながら社会保障の全体像を考えていくということは大事な御指摘だというふうに思います。(発言する者あり)

坂口(力)委員 一番伸びるのは、今、伊吹先生がおっしゃったように、介護が一番伸びて、その次に医療なんですね。この二つが非常に伸びる。その医療や介護が伸びる背景には、七十五歳以上の人にたくさんかかるということがあって伸びるわけです。ここが医療費の半分を食い込むことになってくる。だから、高齢者医療のあり方というものをどうしていくかということは大変重大な問題であります。ですから、そこはできるだけ共助の精神で、そして、ここは保険料でお互いができるだけ支え合うということにしていかないといけない。

 組合健保の話も出ましたけれども、健保組合の中もさまざまでありまして、今でも一〇%近い保険料を出さなきゃならないところもあるし、五%で済むところもある。そうしたところは、できるだけみんながひとつ協力をしてやっていただくというふうにしていかないといけないというふうに思うんですね。

 そういう制度を導入するということを前提にしていかないと、これから国が出さなけりゃならない部分が多くなりますというものを並べて消費税の問題を見ていきますと、それは、政府の考え方も、少し考え直してもらわなければならないのではないか。初めはいいと思って導入はしたけれども、しかし、よくよく考えてみれば我々の考え方もいささか浅はかであったと思っていただくときを迎えているのではないかと私は思います。

 副総理が手を挙げておりますけれども、もうしばらくお待ちください。

 やはり、その辺のところを考慮に入れて、じっくりと今考えてみれば、我々がいいと思って言ったけれども、しかし、各般の事情を考えればそうもいかない、だからここはひとつ下がるべきところは下がって、そして協議を重ねるのならば協議をしましょうと、ここは謙虚になる方が野田内閣の支持率は上がると私は思う。支持率が上がる話までしてもなおかつ聞いてもらえないというのはまことに情けない話でありまして、私は野田内閣の支持率まで心配をして言っているわけですから、そこは十分に理解をしていただいて、そして私は、やはりもう少し謙虚な姿勢で話し合いに臨んでもらいたい。その謙虚な姿勢がちょっと足りないのが現状ではないか、こう思っております。

岡田国務大臣 坂口先生の今の御指摘、肝に銘じなければならないところがございます。限られた財源の中で年金にとり過ぎては医療、介護に回る金がなくなるではないかというのは、これは非常に厳しい御指摘でございます。

 ただ、その上で、先生は今、消費税の話を中心にお話をされたわけでありますが、例えば年金であれば、生活保護との関係というのもございます。

 もちろん、我々の最低保障年金も、保険料を払わない人に出すものではございません。しかし、最低保障年金のカバー率が上がれば、その分、生活保護の費用が減る、そういう関係にはあると思います。したがって、生活保護も含めて財源の問題というのは考えていった方がいいんじゃないかというふうに考えております。

 それからもう一つは、消費税だけではなくて、保険料の負担というのもございます。

 ここはやはり、保険になじむものと、そうではないものという基本的考え方を整理した上で負担というものを考えていかなくてはならないわけで、消費税の負担はそこそこに抑えられたけれども、その結果として保険料の負担がその分上がってしまったということではいけないわけで、やはりそこはきちんと考え方を整理した上で、保険になじむもの、そして税になじむもの、そういう考え方に立って整理をしていかなくてはならないのではないか、そういうふうに思っております。

 いずれにしても、限られた財源をどううまく使っていくか、そういう視点は非常に大事である、それは先生の御指摘のとおりでございます。

坂口(力)委員 時間が五分ということで、もうなくなってまいりまして、まだ一、二聞かなきゃならない問題があるので、急いで聞かせていただきます。

 これは、岡田副総理でございますが、子育ての問題で、本当は小宮山大臣にお聞きするのがよかったのかもしれませんが、どちらでも結構でございます。

 子育て支援の充実につきましては、これまでの特別委員会での審議において、各党各会派からさまざまな意見が出てきました。子育て支援にしっかり取り組むべきという認識では、党派を超えてこれはおおむね共有されていると考えております。個別の論点につきましてはこれから十分協議が必要でありますが、一番大事なことは、子供たちの立場に立ってよい結果を得るということでございます。

 特に、幼稚園、保育園、認定こども園など、どの施設に通っていても質の高い教育や保育が受けられるように、しっかりとした財政支援を行う共通の枠組みが必要と考えますが、岡田副総理の見解をお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 我々、総合こども園とかそういう提案もさせていただいていますが、問題は中身だと思います。要するに、子供の立場に立ってどう考えていくか。幼児の保育と教育というものを一体としてやっていくために、従来は認定こども園という考え方で取り組んできていただいた。我々は、それをかなり前に進める形で、方向は同じなんですが、総合こども園という考え方を提案させていただいている。

 何をどう盛り込むべきかということについてはよく協議をさせていただき、あくまでも、子供にとって何がいいか、そういう視点で結論を得るべきことではないかというふうに考えております。

坂口(力)委員 もう一問、岡田副総理にお聞きをしたいというふうに思います。

 今、公明党は、消費税引き上げを前提といたしまして、社会保障の全体像を示すように求めております。今まで示されなかったことは大変不本意だというふうに思いますが、しかし、事ここに至りまして、今から大きな議論をしているいとまもなくなってまいりました。現実問題としまして、限られた時間の中でこれはこれからやっていかなければならないわけであります。

 そこで、私は、私の個人的な考え方として次の三点を指摘して、少なくともこれぐらいのことは合意をしてもらうべきではないか、こう考えております。

 その一つは、今後、社会保障として議論をしなければならない範囲、どの範囲のことをこれからしていくかということについての合意が必要ではないか。それから二番目としましては、医療、介護のように大きな伸びが予想されます分野につきましては、どのような財源を考慮に入れて取り組むか、今後の検討を含めて合意する必要があるのではないか。三番目に、少子高齢社会が社会保障問題を困難にしている根源でありますから、さらなる子供の生まれやすい社会の構築について大枠の合意を必要とするのではないか。

 少なくともこれぐらいのところの合意は必要ではないかと私は個人的に考えておりますので、岡田副総理の個人的な所見でも結構でございますが、お伺いをして、終わりにしたいと思います。

 もう終わりの時間が参りましたので、簡潔に。

中野委員長 時間が参っておりますので、端的にお答えください。

岡田国務大臣 時間も限られておりますが、先生が今御指摘になられた三点、いずれも非常に重要な御指摘だと思っております。基本的には協議の場で議論されることかと思いますが、私は、先生の御指摘の三点について、しっかりと協議の中で取り組んでいくべきだというふうに考えております。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

中野委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 消費税の増税をめぐっては、この間、世論調査を見ましても、やはり反対の声の方が多いです。そこで、政府は、「明日の安心」対話集会というものを開いております。

 これは総理にお伺いするんですけれども、こういう集会を開いて、国民の理解が得られたというふうにお考えになりますか。

野田内閣総理大臣 多くの皆様に、なぜこの改革をやろうとしているか、そういう意義をお伝えするべく、岡田副総理筆頭に、関係閣僚が各地域に行って、膝突き合わせての対話集会をやっております。当然、私どもからの御説明もありますし、会場の皆様からさまざまな御意見、御指摘を頂戴する場でございますが、傾向としては、その集会に来ていただいている方の御理解は少なくとも進んできているというふうには思っております。

宮本委員 理解、やはりこれは国民にとっては理解しようのない増税だと思うんですね。

 それで、岡田副総理は、去る六月の二日に中央大学で対話集会を開き、感想をブログにこう書いておられます。「いろいろな調査結果を見ると、若い世代は、必ずしもこの一体改革や消費税の引き上げに賛成しない、その声が平均よりも多い、そういう調査結果もありますので、若い世代に対して、もっとしっかりと働きかけをしていかなければいけないと、改めて感じた」と。

 岡田副総理、それで、若い世代の理解ですけれども、これは進んだとお考えですか。

岡田国務大臣 私が私のブログで述べましたことは、本来、今回の社会保障・税一体改革は、若い世代のためにもやっているという意識が非常に強いわけでございます。

 例えば、消費税の御負担は、高齢者であっても負担能力のある方には御負担をいただくということになります、世代を超えて負担していただくということになります。それから、子ども・子育てについて力を入れた政策展開になっております。そして、財政の健全化を保ちつつ社会保障を持続可能にするという意味でも、これはやはり若い世代がその恩恵を最も受けるわけでございます。

 そういったことについて十分伝わっていないなというふうに考え、さらにしっかり説明が必要だというふうに考えたものでございます。

宮本委員 若い世代の理解がなかなか進まない。

 そこで、私、本当に重大だと思うんですけれども、今、財務省が大学に押しかけていって、正規の授業時間、講義時間まで使って、消費税増税の必要性などを訴える宣伝をやっている。財務大臣、これは事実ですね。そして、なぜこんなことをやっているんですか。

安住国務大臣 これまでに、政府の広報活動の一環といたしまして、何らかの講義や説明会などを実施した大学というのは五月末現在で四十三ほどございます。

 これらにつきましては、財務省が各大学当局に、学生への説明と対話の機会の提供をお願いして、大学側とのやりとりの中で、御協力をいただけることになった大学に対して実施をしたものでございます。

宮本委員 何でやったかと聞いているんです。何でこういうことをやったんですか。

安住国務大臣 若い学生の皆さんにこの消費税のことを理解してもらって、日本の財政の状況をわかっていただこうということでやらせていただきまして、何ら不思議なことではないと思います。

宮本委員 それでしたら、この四十三大学、大学名を全部公表できますね。

安住国務大臣 いや、もともとフェースブックに掲載されているものもありますし、それ以外の大学は、未公表にしているものもございますけれども、四十三でございます。

宮本委員 よいことだったらぜひ公表していただきたい。これも後でぜひ出していただきたいと思うんですね。

 報道によると、お茶の水女子大学には主税局調査課長が行き、二週連続で、大学院のゼミ、三年生向けの労働経済学総論の計二回の講義を行いました。和歌山大学には主税局税制三課審査室長が行き、二日続きで、経済学部と観光学部、それぞれの一こま九十分の授業時間全てを使って行いました。これ、間違いないですね。

安住国務大臣 お茶の水には二回、先生が行かれていた和歌山大学にも二回ほど行っていますけれども、もともと何がそんなに悪いのかというのがちょっと不思議なんですね。

 というのは、学生の皆さんにとりまして、財務省の現職の職員が行って、現実に財政運営や税の問題について説明をして、それで対話をして知識を深めてもらうというのは、何ら問題ないと私は思っています。

宮本委員 それは、押しつけたり強制したら大問題ですよ。そんなことはわかっているんですよ。

 ただ、では聞きましょう。お願いベースで合意ができて行ったというんだけれども、それでは、四十三大学のうちで、大学の側から来てくださいと申し出があって行ったものが一つでもありますか。

安住国務大臣 ですから、先ほどお話しさせていただきましたけれども、私の方からかねがね、いろいろな場で話を持てればいいのでということを言って、事務方も、そうしましょうということで、これはやりとりをさせていただいて、何か無理やり授業時間をよこせとかそんなことではなくて、財政や税の話で、こういう生々しい現職課長の声や何かを聞いてもいいよ、また、それは話をどうぞということで、お互いやりとりのあった上で決まったところに行かせていただいているということです。

宮本委員 四月の二十七日に主税局調査課長による特別セミナーを開いた千葉商科大学の島田晴雄学長は、御自身のブログで次のように書いております。「この勉強会はもともと関東財務局の千葉財務事務所所長の吉野孝志様が本学の太田三郎先生、齊藤壽彦先生に提案をし、それを本学全体で受け入れることにしたものです。」と内幕を明かしておられます。

 地方財務局も使って財務省の側から持ちかけて、確かに合意の上とはいえ、押しかけていってやっていると。向こうの側から、大学の側から、ぜひとも来てもらいたい、一つもないじゃないですか。

安住国務大臣 いや、今先生は多分赤旗をお読みになったと思うので、私も手元にあるんですけれども。それはそのとおりかもしれませんけれども、「本学全体で受け入れることにした」と、これは、赤旗が正しければ島田先生ですらそうおっしゃっているんですから、両者合意の上で、では伺いますという話で、何も別に強制して、あなたはうちの職員の説明会をその大学で受け入れなさいなんという話は全くございませんから。

宮本委員 強制なんかしたら大問題ですよ、学問の自由、大学の自治にかかわるんですから。

 それで、財務省、予算を握っている財務省から言われたら、なかなか大学は断れないんですよ。政府の広報を正規の授業でやること自体、暴挙ですよ。正規の授業なんですから、学生は欠席したら単位にかかわるんですよ。とんでもない話だと言わなければなりません。

 それで、聞くんですけれども、そうしたら、本省から大学に出かけていった大臣官房参事官あるいは主税局の調査課長や調査室長らは業務として行ったのか、あるいは旅費はどうなっているのか、謝礼は受け取った事実があるかどうか、お答えいただけますか。

安住国務大臣 説明者という意味でいえば、政府として、職員派遣については職員旅費の支出はしております。

 なお、大学に関しては、場所や機材の提供などをお願いしておりますけれども、特段の追加費用が生じているところはございません。

宮本委員 謝礼は受け取った事実はないですね。もう一回だけ。

安住国務大臣 申し上げているように、出張旅費というか大学に行った旅費は払っておるだけでございます。

宮本委員 こういうやり方というのは本当にひどいと私は思うんですよ。財務省が地方財務局まで使って大学に押しかけて、大学の演壇をまさに財務省の宣伝に使っている。しかも、それは講義なんですから。

 ところで、次は、そこでやっている中身ですよね。そこで説明している、講義で使っているのは、「明日の安心 社会保障と税の一体改革を考える」、このパンフレットですか。これですか。事実確認。

安住国務大臣 主にはこれを使って説明をしていると思います。それから、それぞれの所管課長の得意な分野について、質問を受けたらそれについてお答えをさせていただく。

 なお、先生、日本にはたしか大学というのは七百八十ぐらいあるんじゃないですか。そのうちの四十三の学校で、そういうことで来てもいいよというから伺ったということですから、何か組織的に、まるで何か悪いことをしているような話では全くないですから、誤解のないように。

宮本委員 そんなもの、財務局の側から、その合意をとるために働きかけたことは事実なんですから。全部でやっているわけじゃないのに、これだけの大学では現に単位にかかわる形でやったわけですから、それは申し開きできないですよ。

 それで、そもそもこの中身というのは、まだ決まったものじゃないですね。国会でまだ議論中のことなんですよ。こういう議論中のものを、出かけていって、大学の中で学生に宣伝する。これはおかしいんじゃないですか。

安住国務大臣 いや、そこに書いてあることの大半のものはファクトですよ、ファクト。現実を説明しているわけです。

 また、それをもとに現実の政策についていろいろ説明することは何ら問題ないと思いますし、大学の学生諸君にはそれぞれの自立した考え方があるわけですから、それに対してどういう御判断をするのかは全くそれは学生の自由であって、そういう説明の場を、我々はどこに行っても、仮に大学であっても職場であっても、来てほしいと言えばやらせていただくことですから、何ら問題ないと思います。

宮本委員 ここに書いていることは事実だと今おっしゃいましたね。

 では、ちょっと中身を聞きましょう。

 このパンフレットの五ページから六ページでは、「求められる「全世代対応型」の社会保障制度」というページが載っております。これは、皆さんのお手元に資料としてカラーのものをつけてございます。

 このグラフではピンク色の「税負担」というものが下にずっと並んでおりますが、まず聞くんですが、なぜ二十二歳以下のところの「税負担」はゼロということになっているんですか。

安住国務大臣 これは、保険料や税負担をわかりやすくグラフで描いてあるわけです。それで、要するに、大学を卒業してから、就職なさってスタートしたことを起点として書いてあると思います。

宮本委員 いや、消費税を払っているでしょう、この二十二歳以下の方々も。どうなっているんですか、そこは。

安住国務大臣 いや、だから、何が問題なのか、ちょっと私よくわからない。質問がよくわからないので。

宮本委員 「税負担」のピンク色の欄が二十二歳以下はゼロになっているのはなぜなのかと聞いているんですよ。(発言する者あり)

岡田国務大臣 これは一つの考え方でありますが、まず、所得税については、所得税というか直接税に関しては、二十三歳から所得を得るものという仮定を置いているところでございます。

 それから、消費税などの間接税につきましては、もちろん、議員御指摘のように、二十三歳未満の者も負担していることは事実でございます。しかし、勤労世代に比べて少額の負担であると考えられることから、割愛しているということでございます。

宮本委員 全然事実と違うじゃないですか。何でこの二十二歳以下のところは全く税負担がないかのようになっているんですか。

 先ほど、会場からは、親が負担しているんだという話もありましたけれども、もしそうだと仮定すると、この図表では「分娩費等」というのがあるでしょう。「分娩費等」だけはゼロ歳児のところに負担が、グラフがついていますね。そうしたら、分娩費は、生まれてきた赤ちゃん自身が、ゼロ歳の赤ちゃんが負担する、こういうことですか。説明になっていないじゃないか。

岡田国務大臣 こういう資料をわかりやすく描くというところもございます。それから、一定の前提を置かなければならないということもございます。ですから、個々の御指摘についていろいろいただくのであれば、それはもちろん議論していただくことにやぶさかではございませんが、しかし、事実でないとか、そういう言い方は私は適当ではないと思います。

 やはり一定のいろいろな前提を置かないと、こういう図は描けないわけでございます。

宮本委員 いや、押しかけ行為もひどいけれども、この載っているグラフだってでたらめじゃないですか。子供は一切負担しない、親が負担するからだと言ったら、今度は分娩費を赤ちゃんが払うと。こんなでたらめなグラフ、本当にないですよ。

 では、もう一つ聞きましょう。

 学生のところの十八歳から二十二歳のあたりを見てもらうと、教育関係の支出というものが、水色のグラフで、随分手厚くされるように描いていますね、「教育関係」と。

 聞きますけれども、今回の一体改革なるもので、消費税の増税分で大学の教育に回るお金というのはあるんですか、安住大臣。

安住国務大臣 大学に対してお渡しするお金というのは年金、医療、介護、子育ての中にはありませんが、これは、例えば今回、給付型の、出世型、所得連動型の奨学金とか、そうしたことも全部含めて絵でわかりやすく描いているからであって、それをもって、何か事実と違うというのは当たらないと思います。

宮本委員 いやいや、いろいろ言ったって、教育関係は四経費に入っていないでしょう、大学の教育は。入っていないでしょう。

安住国務大臣 年金、医療、介護、少子化対策と言っています、私は。

宮本委員 だから、入っていないんですよ。ですから、学生にとっては、大学教育に対してはゼロですよ。将来世代にツケ回しはしないためと言うけれども、実際、大学生に押しつけられるのは消費税の負担増だけなんですよ。それがこの資料の示している中身じゃありませんか。

 そもそも政府は、今の大学生、学生の状態を本当にわかっているのかということを次に論じたいと思います。

 かつての日本育英会、今、独立行政法人日本学生支援機構と呼んでおりますけれども、この学生支援機構が隔年で学生生活調査というものを行っております。平成二十二年度の結果がことし一月に発表されました。

 このパネル一をごらんいただきたいと思うんですね。これは、学生の家庭の年間平均収入額というものを二〇〇〇年度と二〇一〇年度で比較した資料です。十年前、二〇〇〇年度には、学生の親の平均年収は九百五十万円を超えておりました。それが、十年後、二〇一〇年度には、何と八百万円を切るところまで、百五十万円も親の平均年収は激減しているわけです。あなた方が学生の税金は親が負担していると説明している、その親の平均年収はここまで激減している。これは、文部科学副大臣、事実ですね。

高井副大臣 事実です。

宮本委員 事実なんですね。親の収入は激減している。

 そこで、その結果、どういうことが起こっているか。もう一枚、これは皆さんの手元にも資料をつけてあります。

 このパネル二は、家庭からの給付額の推移、学生に対する家庭からの給付額の推移です。つまり、親の仕送りですよ。十年前、二〇〇〇年度の百五十五万六千円から、十年後、二〇一〇年度の百二十二万七千五百円へ、同じ期間に三十三万円も激減したことになります。

 総理、親の平均年収がこの十年間で百五十万円減った、学生に対する親の仕送りが三十三万円も減らさざるを得なくなった。百五十万円減って仕送りが三十三万というのは、それはまさに親心だと思うんですけれども、学生を持つ親にとっては、いよいよ親心も限界というところまで来ている。こういう現状については、総理、おわかりになりますね。いや、総理です、認識ですから。

中野委員長 まず、安住財務大臣。

安住国務大臣 そのグラフは足をもっと長くちゃんとやってもらわないと、そんな極端な大きな差の部分だけ見せるのは、ちょっと何か誤解を受けるんじゃないかと思うんです。最初のグラフも、九百五十があって八百があるんだったら、差のところだけこんなに見せるのは、ちょっと私、どうかなと思いますよ、宮本さん。

 それと……(宮本委員「事実じゃないか。そんなことを言いに出てきたのか。もういいです。そんなことはいいですよ」と呼ぶ)いや、見せ方。(発言する者あり)静かにしてください。

 いいですか。仕送りが百五十五万円から三十三万円確かに減少する傾向にあることは、家庭の中でいろいろなことが、お父さん、お母さんの収入が減ったり、あるかもしれません。ただし、奨学金は、実は二十二万円ふやしています。(宮本委員「聞いていないじゃないか、そんなことは」と呼ぶ)いやいや、これは事実ですから。十八万円から四十万円までふやしていますから、二十二万円はその分補填をされていることも事実だということは申し添えておきます。

宮本委員 事実なんですよ。これは、グラフがどうかというより、このてっぺんに載っている数字に何の違いもないじゃないですか。

 総理に、とにかくこういう認識についてお伺いしているんです。総理、お願いいたします。

野田内閣総理大臣 数字は事実だと思いますので、そういう環境の中で、やはり私どもとしては、学生の皆さんに対する修学支援をしっかりやっていく。まだ給付型ではないことは御指摘のとおりでありますけれども、二十四年度に低所得世帯の学生等を対象に、所得連動返済型無利子奨学金を導入したり、貸与者数をふやしたりという努力をしておりますし、授業料減免支援なども拡充をするということで、こうした環境に対する対応はしっかりとやっていきたいというふうに思います。

宮本委員 奨学金の議論は後でするんです。

 こういう状況のもとで、次に、では、学生の生活がどうなっているか。これは三枚目のパネルであります。

 このパネル三は、同じ学生支援機構がやっている調査の結果から、学生の生活費の推移を、十年間のものを出したものです。このグラフは、足切りのない、全額が出ているものですね。(安住国務大臣「みんなそうすればいいじゃない」と呼ぶ)いや、全てがわかるようにしてあるんです、これは。これは全てがわかるようにしてあるんです。

 見ていただいてわかるように、赤は授業料。ここには、その他の学校納付金も含めてあります。この赤の部分は、二年前に比べて、この二年だけは微減しておりますけれども、一貫して授業料はふえてきたわけですね。それから、黄色は、修学費といいまして、課外活動費や通学費をこの中に含めてございます。これも、大体十六万から十七万前後でほとんど変わらず推移しているわけです。

 注目していただきたいのは、青いところですよ。これが生活費ですね。これは、食費、住居・光熱費、保健衛生費、その他の日常費、全部入るんですけれども、これが激減してきている。十年前の九十三万六千八百円からいよいよ六十六万へと、三分の二近くまで激減したわけですよ。二〇〇〇年からずっと、仕方ないから生活費を削ってきたのが、この二年間でいえば、もう本当に減らしようがないというところまで来ている。ここまで追い詰められているわけですね。

 財務大臣に聞くんですけれども、なるほど、この全てに消費税がかかるとは言いません。授業料には消費税がかからない。家賃や医療費も除かなければなりません。それでも、この調査から見たら、五十七万円という、まさに生活費、これにほぼ全て消費税五%分が乗っかってくると思うんですね。そうすると、学生の負担増というのはどれだけになりますか。

安住国務大臣 これは機械的に計算するしかありませんが、五十七万円程度ともしされているのであれば、五%ですから、機械的に計算すれば約二・七になりますね。ですから……(宮本委員「二・八五」と呼ぶ)それが倍ですから、五・四ぐらいかもしれませんが。

 ただ、先生、ここにおられる先生方はあらかた御苦労して大学に行って勉強をなさっているけれども、みんな苦労していますよ。だって、それはフォークソングの神田川なんかを聞いていたって、学生はそんなに豊かでないわけですよ。そういう中で苦学して、例えば大平総理だって、私は自伝を読みましたけれども、大学に入って初めて白い米を食べたとか、皆さん苦労してやっていますよ。

 そういう中で、できるだけ国としても、奨学金を出したり、今一生懸命支えておりますから、それはわかっていただきたいと思います。

宮本委員 関係ない答弁はしないでいいんですよ。

 二万八千五百円の負担増になるということなんですね、学生にも。しかも、教育費のプラスというのはないんですよ、四経費の中には。

 それで、あなた方は、低所得者に対して、負担軽減のために簡素な給付措置を創設するという議論をやっているでしょう。では、学生に対して給付措置はあるんですか。岡田副総理でもいいです。

岡田国務大臣 簡素な給付措置の制度設計はこれからでございます。ただ、基本的に、学生だけにというような形での給付措置というのは余り考えられないかなというふうに思っております。

 ただ、先生、学生だけで考えて消費税の負担があるかないかという御議論ですが、やはりこれは、学生もやがて大人になって、社会人になって、高齢者になっていくわけですから、やはりそれは全体で考えていかないと、断面だけ捉えて考えるのは、私は、さっきの、生まれた子供の出産費、全部ここに計上しているのはおかしいみたいな話と同じような話で、やはりもう少し時間をとって考えていくべき話ではないかというふうに思っております。

宮本委員 いやいや、このパンフレットのつじつまが合っていないことは事実なんですよ、さっき申し上げたように。

 それで、なるほど、このことを指摘すると奨学金をふやしたということをおっしゃるわけですよ。この調査結果でも出ていますよ。奨学金の比率は二年前に比べて五%上がっているんです、それは。しかし、奨学金がふえたということが本当に日本においてそれだけ救いになるかということを同時に論じなければなりません。

 なぜかといえば、日本学生支援機構が実施している奨学金は、その全てが貸与制であって、つまり借金ですよ。親の仕送りが減った分を借金で賄っているというのが今の状況なんですよ。そうじゃないですか。

 文部科学省に私確認しますけれども、世界で、ヨーロッパやアメリカが加入している経済協力開発機構、OECDですね、この三十カ国のうちで返済不要の給付制奨学金の制度がないという国は二カ国だと思うんですが、国名をお答えいただけますか。

高井副大臣 高等教育段階における教育費の負担への公的補助は、国によっていろいろな形態がありまして、単純に比較することは難しい部分もありますが、今御指摘あったOECDの調査によれば、データが確認されている国においては、三十四カ国中、返済不要の奨学金等の給付型の支援のない国はアイスランドとされていますが、アイスランドは授業料が無償となっております。(発言する者あり)

宮本委員 日本はその中に入りますから。アイスランドは授業料は無償なんですよ。だから、授業料が無償化されている国で給付制の奨学金のないというアイスランドがありますけれども、日本は、そもそも日本の大学の授業料というのは国立大学で初年度納入金八十二万円ですよ。私立の平均では百三十一万円ですよ。こんな負担を学生と家計に押しつけながら、全てが借金、給付制が一つもないというのは、本当にひどい状況だと言わなければなりません。

 しかも、日本の奨学金は、無利子というのは三割以下なんですよ。七割以上は有利子なんです。金を貸して利子をつけて返せという制度なんです、奨学金と名前はついているけれども。

 奨学金の最高月額、これは実は十二万円です。借りようと思えば十二万円、月に借りられる。十二万円を借りれば四年間で五百七十六万円ですよ。有利子なら返済総額七百七十五万千四百四十五円。学生支援機構のパンフレットに載っていますよ。これだけの借金を背負うことになります。

 総理、これは国のあり方として問いたいんですよ。社会人として、大学を卒業して社会に出るその初日に、社会人として羽ばたく初日に、七百七十五万の借金を若者に背負わせる国。日本がそんな国のままでいいと、総理、お考えになりますか。

 総理です、総理ですよ。あなたなんかに聞いていないじゃないか。

中野委員長 野田内閣総理大臣。

 これは感想ですから、基本的な。数字の問題ではないので。

野田内閣総理大臣 奨学金のあり方は、これは特に予算委員会等でもよく御議論ございました。給付型にすべきという御意見もございましたし、特に馳先生からもよくそういう御意見も頂戴をしております。

 これからもその議論を深めていかなければいけないと思いますが、ただ、大学生、高等教育に限っての御議論に限っていますけれども、我々は、高等教育の、高等学校の無償化等々含めてそういう流れをつくってきているということ、そこは前提として押さえておいていただきたいというふうに思います。

宮本委員 いや、高等学校の無償化をやってきたことはわかっていますよ。しかし、大学は別に学費が下がったわけでもないわけですし、給付制奨学金だって全然実現していないわけですよ。

 それで、文部科学省は、こういう状況ではやはりだめだと思うからこそ、平成二十四年度予算の概算要求で、初めて大学生、大学院生向けの給付制奨学金、百四十七億円でしたけれども、概算要求したわけですよ。

 これは文部科学省の副大臣に聞きますけれども、どういう理由でこの給付制奨学金を要求されましたか。

高井副大臣 もちろん、意欲と能力のある学生が経済的理由により修学を断念することがないよう、やはり国が経済的支援策の充実を図ることが重要というふうに思いまして、御指摘のとおり、概算要求において給付型奨学金を要求しました。

 しかしながら、いろいろ、政府・与党会議等の議論も踏まえた上で、卒業後に一定の収入を得るまでの間返済を猶予するという所得連動返済型の無利子奨学金制度というものを改めて新設して、無利子奨学金の大幅拡充を行ったということであります。

宮本委員 文部科学省も、さすがに、このままでは経済的貧困によって大学教育の機会均等が守れない、そういう現状認識を持って、返済の必要のない奨学金、給付制奨学金の概算要求を行ったわけですね。

 ところが、安住大臣、結果はどうなりましたか。

安住国務大臣 ちょっといろいろ話をさせてもらっていいですか。(宮本委員「いや、いいですよ。端的に答えてください」と呼ぶ)

 いや、要するに、そういう考え方も一方であると思いますが、今までの日本の奨学金制度というのは、返してもらったお金でまた貸し付けをするという仕組みでやってきているわけですよね。ですから、そういう点では、もちろん、苦学をしている皆さんにそうした支援を惜しみなくしたいと思います。一方で、出世をしてある程度お金を稼いできたら、やはりこれを返すというのは、私は、ある意味では美学だと思いますよ。

 そこで、私も、文科省の意向も意向ですから、考えて、先ほど副大臣からもありましたけれども、所得連動返済型というのをやったわけです。これは、大学を出た後に所得が三百万以下であれば、返済はまだいいですよ、しかし、三百万を超えたら返してくださいと。一言で言えば出世払い。

 そういうことで、やはり少しずつ、かなり教育環境に配慮して私なりにはやっているつもりなんです。いいですか。(宮本委員「いいですよ」と呼ぶ)はい。

宮本委員 出世払い奨学金をつくったから安心してくれ、そう言うんですか。

 では、文部科学副大臣に聞きますけれども、ことし三月の大学卒業生で、今安住大臣がおっしゃったような、三百万を超えなければいつまでも返済しなくていいという所得連動型が適用される卒業生が一人でもおりますか。

高井副大臣 済みません、ことしの予算要求ですので、制度が発足してすぐですので、まだちょっと今制度を整理中でありますけれども、これでも一歩、一里塚として次へ進んだと思っておりますので、ぜひ御理解いただければと思います。

宮本委員 適用される人はいないですね。副大臣、もう一度だけ。いないですね。

高井副大臣 始まったばかりですので、これから適用される人が出ると思います。

宮本委員 いやいや、そう言いますけれども、要するに、今から奨学金を借り始める人だけの話なんですよ。三百万以下だったら猶予されるなんという話は、もう既に借りてしまった人には、ただの一人も所得連動型なんか適用されないわけですよ。そうでしょう。

 それで、よくも先ほど、卒業してお金持ちになったら返してもらった方がいいと言ったもんだ。出世払いだと言ったけれども、では、今あなた方は、大学を卒業した大学生に、そんなお金持ちになるような就職先、就職状況を保障していますか。超氷河期というような大変な就職難、そして、あったって非正規で働く学生が大半じゃないですか。そのことが学生を経済的にも精神的にも追い詰めているということを私は指摘しなければなりません。

 そして、私は、もう時間が大体来ましたから、総理にちょっとお伺いするんですけれども、学生や若者にとって、就職できない、職が決まらないというのは、本当に大変な問題だと思うんですね。就職に失敗することほど、未来を暗くさせられることはありません。それは、経済的に生活がやっていけないというだけの問題じゃないですね。自分は社会にとって必要とされていないのではないか、まさに、みずからの存在意義を否定される精神的苦痛を若者に背負わせる問題だと言わなければなりません。

 だからこそ、政府自身も、ことしの自殺白書なんですけれども、八十ページに「若年層の自殺」という項目を掲げてあります。その中で、「特に二十歳代以下の若者の「就職失敗」による自殺者数が平成二十一年を境に急増していることにも注意が必要である。」これは政府自身が自殺白書の中で述べているわけですよ。

 総理、この就職難の問題を政府が責任を持って解決する、それから、せめて、就職に失敗しても、返済の心配のない給付制の奨学金制度を導入して学生から奨学金返済の不安を取り除く、こういうことが必要だと思うんですけれども、総理の御認識をお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 御指摘のとおり、自殺対策白書において、平成二十三年の二十歳代以下の若年層の自殺者数は平成二十二年に比べ増加したということ、そして、近年、若年層の自殺死亡率が上昇傾向にありますけれども、その背景として若年層の雇用情勢の悪化の影響も考えられるなど、こういう問題の深刻化についてはきちっと認識を示しているつもりでございます。

 その上で、政府では自殺総合対策大綱の見直しを進めているところでございますけれども、特に、若者の雇用対策の充実とあわせて、若年層の自殺対策を今後の自殺総合対策の最重要の課題の一つとして位置づけ、救える命を救っていくという努力に万全を期していきたいと考えております。

 その中で、今の給付型の云々が、それがストレートにこのことに響くかどうか、これはよくわかりませんけれども、何よりも、若者が雇用される、そういう環境をつくることが政府としては一番の責任ではないかと思います。

宮本委員 先ほど挙げた例ですけれども、七百七十万という借金になれば、月額三万二千円というものを二十年間返さなきゃならないわけですよ。だから、現に、職が決まらず、その返済が迫ってくる不安というのは本当に大きいんですね。だからこそ、私はそういう指摘も申し上げたわけです。

 今回の消費税の増税は、親の収入が減り仕送りが激減して生活に困窮している学生たちに、消費税の負担増だけを押しつけるものであります。しかも、取るだけ取って学生教育には使わないのだから、何の見返りもありません。就職が決まらず自殺者まで出ているというのに、奨学金は全部借金、数百万の借金を学生に背負わせ続けているというのが現状です。消費税増税は、将来世代にツケ回ししないなどと言いながら、将来世代の夢も希望も押し潰すものだということを厳しく指摘して、私の質問を終わりたいと思います。

中野委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、服部良一君。

服部委員 社会民主党の服部良一です。

 冒頭、総理、大飯原子力発電所の再稼働を表明されたことに強く抗議をさせていただきます。

 福島第一原子力発電所の事故の収束も解明も終わっておりません。国会に設置された事故調査委員会の検証作業も終わっておりません。新たな原子力規制組織もできていません。安全基準も暫定的で、今からが本格的検討です。どこまでが地元か、まだ結論がありません。万が一の重大事故のときの防災計画もまだできておりません。免震重要棟やフィルターつきベントの施設も三年後です。国のエネルギー政策をどうするのか、使用済み核燃料をどうするのか、まだ一切決まっておりません。

 総理は国民生活を守るための再稼働と言いますが、こんな状況で、国民の生活どころか、国民の命が守れませんよ。新たな安全神話の始まりであり、野田リスクと言わざるを得ません。

 大飯原子力発電所の再稼働の手続を即時中止していただきたい。総理、もう一回考え直すとおっしゃっていただけませんか。端的に一言。

野田内閣総理大臣 再稼働に対する私の考え方は、先週の金曜日、記者会見でお示しをしたとおりでございます。

 国民の生活を守るという視点で、その守るという意味においては、第一には、福島原発のような事故を二度と起こさないということであります。それは、まだ国会の事故調等の御議論はあります。ただし、この間、一年以上の間に、IAEAであるとかあるいは原子力安全委員会を含めて専門家のさまざまな御意見が出され、そうしたものをしっかり踏まえた中で安全対策は講じてきたと思いますし、そのためのチェックをしてまいりました。

 もう一つは、国民生活を守るということは、夏場の需給だけではなく、エネルギー安全保障、あるいは電力価格が高騰したときの国民経済への影響、生活への影響、そういう意味も込めて、国民生活を守るという判断の中で、先般の会見のとおり、私の考え方をお示ししました。これを、私は現時点で変えるつもりはございません。

服部委員 今、関西は、過酷事故が起きれば放射能被害が直接及ぶ地元、一千四百五十万人の命の水がめ、命の水源、琵琶湖が汚染される危険と直面する地元として、私も不安を表明してまいりました。

 口で安全と言ったから安全じゃないわけですね。対策をしての安全なわけです。後々野田リスクと言われないように、再稼働はしないという決断をぜひお願いして、本題に入りたいと思います。

 きょうは、社会保障と税の一体改革、今まで出た論点も含めて総括的に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 五月二十四日にもこの委員会で議論をさせていただきました。二〇一〇年十二月、社会保障改革に関する有識者検討会が安心と活力への社会保障ビジョンをまとめ、一体改革の出発点となりました。しかし、検討会の座長を務めた北海道大学大学院の宮本太郎教授が、一体改革が矮小化されたと苦言を呈されているわけです。

 前にも申し上げましたけれども、増税のための口実だ、あるいは、社会保障の機能強化なのか削減なのかも判然としない、それから、財政の持続可能性の前提となる社会の持続可能性そのものが危機に陥っている、一方で、肝心の社会の持続可能性を高めるための改革が見えないというふうに言われているわけです。総理、あれから宮本太郎先生の論文は読まれたでしょうか。いや、返事は後で結構です。

 今、修正協議をしているわけですけれども、もう国民の生活第一のマニフェストというのは放棄して、最低保障年金とか後期高齢者医療制度の廃止ももう撤回なんですか。国民会議をつくって一年かけて社会保障改革を議論しようというふうな話がありますけれども、何で税制のあり方も含めて一緒に議論しないんですか。税金だけ上げて社会保障改革は後からということであれば、これはもう一体改革じゃなくてばらばら改革じゃないんですか。いかがですか。

岡田国務大臣 我々は、社会保障制度の改革について先送りをするというふうには考えておりません。あくまでも、社会保障制度とそして税制の一体改革について各党と議論していただきたいということでスタートさせていただいております。

 委員の方で消費税引き上げについて御賛同いただける可能性があるということであれば、大いにそういったことも含めて議論、各党間、つまり御党と民主党の間で御議論させていただければというふうに考えております。

服部委員 いや、社会保障の全体像がどうしても見えないんですよ。老後の貯金を心配しなくても安心して生活できるというような安心感があるのであれば、まあ増税もしゃあないかと思う国民も多いかと思います。しかし、そういったものが見えない。

 今、民主、自民、公明の三党で修正協議が行われております。我々は、こういった国民不在の談合で増税だけを決めるということには断固として反対をいたします。

 きょうは、この委員会の議論を聞いていましても、野田総理ぶれるなとか、そういったエールの交換とか、何か褒め殺しにも聞こえるような議論がさっきから続いているなというふうに私は思っているんですけれども、やはり、一旦消費増税を撤回して、社会保障の全体像だけじゃなくて、税制のあり方も含めて国民的な合意をつくる努力をするべきだというふうに私は思いますけれども、総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 余り褒められている感じはきょうありません。いろいろと、やはり厳しい御指摘をいただいていると思います。

 その中で、この七つの法案のうち五本が社会保障です。子育てに関連するものが三つ、年金等で二本というように、そういうことを実現するための安定財源としての消費税の引き上げのお願いをしているわけでございますので、税だけ先行ではなくて、社会保障の安定と充実のために一体改革としてお願いをしているということは、これは何度でも言わなければいけないと思います。

 そこをばらけさせての議論だったら一体改革ではありませんが、今、修正協議も社会保障のところから御議論いただいておりますので、まさに、一体改革を与野党で胸襟を開いて結論を得るためのプロセスに入っているというふうに思いますので、ぜひそこは御理解を得ていきたいと思います。

服部委員 一体改革の出だしの、宮本先生がおかしいとおっしゃっているわけで、まあ、お読みになったかどうか知りませんけれども、私は、そういった全体像は全然見えていないということを強く申し上げておきたいと思います。

 社民党は、消費増税の前にやるべきことがあるということをいろいろ主張してきました。すなわち、不公正税制を変えること、それから、累次の改正で低下した再配分機能を回復することです。所得税の最高税率を、今回、所得五千万以上で上げるというふうにいいますけれども、二千万円とか三千万円から税率を上げるべきだったんじゃないかなというように思うんです。フラット化でいいのか、昔みたいにもっと細かく所得階層を区切るということも含めて、しっかりと累進強化をすべきです。

 そもそも、高額所得者ほど金融所得の割合が高く、軽減税率の恩恵で実際の所得税の負担割合は低くなっています。株式売却益などキャピタルゲインの軽減税率、一〇%から本則二〇%に戻すのは当然ですけれども、これを三〇%にするとか、あるいは、社民党は総合課税を求めているわけですけれども、富裕層が優遇されないように課税強化をすべきです。

 アメリカや新大統領が誕生したフランスを初め、富の偏りを放置してはいけない、富裕層への課税を強化すべきだというのは、これは世界的な認識として今広がっているわけですね。持てる者と持てない者との格差が固定化して拡大する一方の社会では、極めて問題だというふうに私は思います。

 総理、所得税、それから相続税、資産課税の抜本改革をまず優先させるべきではないでしょうか。いかがですか。

安住国務大臣 私はこの場でも先生に答弁したかもしれませんけれども、五千万で四五%ということについて、もう少し累進性を含めて考えたらどうだということについては、今後の検討課題だということは申し上げたと思います。

 なぜかというと、やはり、復興の所得税等御負担をお願いしておりますから、そういう点では、消費税のお願いも含めて、税負担という点でいえば、不十分かもしれませんが、さまざまな意味で今よりは御負担をお願いすることになりますので、今回はこういうことにいたしましたが、今後、累進率をどうするかについては、さまざまな議論を重ねていきたいと思っています。

 ただ、そのとき、所得の高い方の議論だけでなくて、ぜひ、これはそれぞれ党の考え方によりますけれども、所得税の累進性を考えるときにやはり一つ検討しないといけないのは、先生、所得税率の五%、一〇%という、税率の低い方が我が国では八〇%を超えているんですね、全体の。

 この方々に対しては、随分とフラット化は、所得税の配慮というか、税の点からいえば、以前よりはかなり考慮してきたんですが、逆にここの部分が、多分、再配分機能の、はっきり申し上げまして、やはり一つのネックになっている部分がありまして、諸外国では一〇%未満のところが大体二〇%とか、多くても四割なんですね。そういうところを見ると、全体の八割を超す方々がこうした所得税のエリアに入っているということも、ぜひもう一つの側面としてわかっていただきたいと思います。

 そういうことも含めて、累進税率を今よりも適正なものに、どういうふうにしていくか。フラット化以外にあり得るのであれば、下も含めて、上も議論をさせていただきたいと思います。

 それから、資産については、今百人お亡くなりになると、そのうち相続税を支払っていただくのは四人なわけですね。ですから、そういう意味では、今後これを改善するということで、今回さまざまな改正をさせていただきました。

 ただ、これにつきましても、今後、相続税のあり方、さらにもう一つ言えば、若い世代にどうやって高齢者の皆さんの持っている資産を、いわば相続をうまくやっていくということを考えなければなりませんから、そういう意味では、資産課税全体も高齢化社会の中で見直すということは必要だと思います。

 ですから、総合的にやれという御指摘かもしれませんが、今は消費税の水平的な税のお願いをしていますが、こうした問題が落ちついた段階では、ぜひそうしたものも含めて検討していきたいと思っています。

服部委員 野田総理は、中間層ということをよくおっしゃるわけですね。ということは、裏を返せば、日本の中間層がやはりここ十年、二十年で非常に崩れてきたという問題意識を多分お持ちだと思うんですね。潰れたということは、富裕層が一方でふえている、そしてまた貧困層が拡大している、こういう状況にあるということなんですよ。これは日本だけじゃなくて、世界的な流れとして。

 ですから、やはりそういったことは世界的な認識として今あるわけですから、ここにきちっとバランス感覚を持ってどう切り込んでいくかということが必要だ、私はそういう大局的な観点からも今意見を申し上げているんですけれども、総理、一言どうですか。

野田内閣総理大臣 今の御指摘は、全く問題意識として共有できると思います。やはり、残念ながら、日本もそうでありますけれども、世界全体として格差が広がりつつあるという状況の中、特に日本の場合はその中間層の厚みがだんだん薄くなってきているという懸念があります。その中間層の厚みを取り戻すために税制としては何を考えるかとすると、これは、所得税あるいは資産課税含めて、再分配機能を強化していくという視点だと思います。

 今回も、所得税については最高税率のところを変えていこう、それから、資産課税についてはさっき大臣から説明あったとおりのそういう改正をしようと。消費税だけではなくて、税制の抜本改革という位置づけの中で再分配機能の強化についての踏み出しは始まっているというふうに思います。

服部委員 私は、それが極めて不十分だということを申し上げているわけです。

 次に、法人税の問題です。

 日本は法人税は高いというふうに言われるんですけれども、それは表面上の税率の話であって、大企業優遇となるさまざまな優遇措置の結果、大企業の実際の負担率は非常に低くなっています。前回もやらせていただきましたけれども。これを見直せば、不公平是正はもちろん、年間数兆円単位の増収になるというふうに言われているわけです。

 それからまた、社会保険料を含めた日本企業の負担は国際的に低い。社会保障費が伸びる中での財政再建だというふうに危機感をあおられるわけですけれども、相対的に負担が軽い大企業に応分の負担を求める見直しがやはり必要だというふうに思うんですね。

 中小企業は消費税の転嫁はできません。私は機械メーカーで長年営業をやってきましたけれども、半値八掛けということがよく言われました。デフレなどの経済環境のもとで強烈に値引きを強いられているわけです。一方で、輸出大企業は、一旦納めた消費税は戻し税という形でしっかり還付される。その額は三兆円にも四兆円にも上ります。実質的に大企業優遇の不公平税制なんですね。

 大企業は、グローバル化であるとか、あるいは競争力強化のかけ声のもとで、法人税は極力回避しながら、正規雇用も賃金も抑える、福利厚生もカット。

 そして、先日は、世界的な法人税引き下げ競争をやめるイニシアチブを日本がとるべきだということを申し上げ、安住大臣からも共鳴する答弁をいただきましたけれども、やはり、安易に消費税に財源を求める前に、法人税のこういった不公平税制、優遇税制の見直し、それから大企業の社会保険料負担の強化、輸出戻し税の見直しとか、こういったことをきちっと検討する方が先なんじゃないでしょうか。どうでしょうか。

安住国務大臣 これは、ですから、残念ながら、やはり見解の相違なんですね。

 法人税は、昨年、民自公で引き下げを行いました。これは、韓国や、我が国が競争をしているそれぞれの国の税負担から見れば、日本の国、地方分の法人税の割合というのはやはり比較的高いということは、我々判断しています。

 ですから、そういう点では、企業負担をできるだけ低くして、何とか国内で基盤を持って企業活動をやってもらおうということなんですが、それに対して先生は、さまざまな角度から控除制度等を含めてやれば、日本の大企業は負担は軽いんだ、だからもっとそこは法人税を取った方がいいという御指摘なんですが、私どもはそういう考えではないんです。

 法人税を下げたから、では外国に行かないのか。統計から見たらそんなことはないぞという御指摘もありましたけれども、しかし、日本の企業が、内部留保が今そういう意味ではたまっているという御指摘もありますけれども、それがやはり、新たな設備投資、雇用の拡大なんかにつながる原資になっていくということを我々は経団連にも要請をしているわけです。

 ですから、そういう中で、やはり企業がある程度の蓄積を持って日本の中で展開をしてもらうためには、私どもとしては、法人税の引き下げというのは、残念ながら必要だと思っております。

 ただし、世界的に法人税の引き下げ競争みたいなことをやっていますと、本当に、それぞれの国の財政再建から見て果たしてどうなのかということが国際的な会議では常に最近問題として取り上げられるようになってきました。私もそういう点での認識は先生と同じように持っておりますので、我々としても、やはり法人税の引き下げ競争というものはそろそろ国際社会の中で考えなければならないということをここでお話しさせていただいたわけでございます。

服部委員 私が言いたいのは、とにかく消費税だということじゃなくて、社会保障の全体像もまだ明らかにされていない中で、税制だってまだまだ議論は消化不良だと思いますよ。もっともっといろいろな議論があってもいいし、本当に、絶対に、何が何でも消費税でなければならないのかということについては、何もそんな、採決を急がなくても、政治生命をかけるとまで言わなくても、政治生命をかけることはほかにもいっぱいありますよ。社会の持続性のための社会の再建をするとか雇用とかいろいろあるわけで、ぜひここは、やはりじっくり踏みとどまって議論をしていただきたいということを強く申し上げたいと思います。

 それから、逆進性対策の給付つき税額控除についてちょっとお尋ねします。

 これも、マイナンバーであるとか、むしろ納税者にとっては、メリットというよりかは、個人情報漏えいとか、監視、管理が強くなるんじゃないかというリスクを懸念する方も大勢いらっしゃいます。それから、給付を受けるためには、確定申告が必要でなかった人も税務申告が必要になるということも含めて、この仕組みによって本当に必要としている人たちのところに給付が届くのかという疑問も実はあるわけですね。その点についてはいかがでしょうか。

安住国務大臣 逆の見方をすると、こうした番号制度をちゃんと整備して機能強化していかなかったら、むしろ不公平な問題というのが出てくる可能性というのはあると思うんですよ。

 ですから、行政サイドにそこまで情報を持たれるのは嫌だという国民も現実にはいると思います。しかし、資産も含めて、今、法定調書は五十七ですね。その法定調書だけでは、この委員会でも、把握するのが難しい資産もあるよという御指摘もいただきました。現実に、我が国では、国民の皆さんの持っている銀行口座というのは、実は十二億口座あるんですよ。十二億口座ですよ、先生。

 だから、そういう点では、では、これを全部税務当局に把握されるのは本当は好まない人だっているんじゃないかという御議論があると思いますが、しかし、一方で、税の公平な配分や、本当に助けを必要とする、真に必要な人を、ターゲットをある程度絞り込んでいくには、そこそこの情報というのは我々知らせていただかなければそういうサービスはできないということで、このマイナンバー制度の充実ということを私どもは求めているわけです。

 そのことは、逆に言えば、こういう新しい時代になってワンストップサービスをしっかりできることにもなりますから、利便性は非常に上がるといういい面もあるということをぜひわかっていただきたいと思います。

服部委員 本来は、消費税の逆進性対策という狭い枠内で考えるんじゃなくて、大事なことは、税制、社会保障制度全体の中でどのように再配分や低所得者支援策を設計するかということだろうというふうに思うんですね。

 ただ、その一方で、陳情合戦になるからとか、高級食材、キャビアはどうだとか、いろいろそういう議論もあるようですけれども、どう考えても、庶民にとっての食料品だとか生活必需品に消費税のアップは押しつけるべきではないということを私は思っておるわけですね。

 それで、イギリスは食料品はゼロということなんですけれども、日本が一〇%上げると、イギリスのいわゆる平均税率より高くなるんですね。標準税率は二〇パーということなんですけれども、日本と置きかえると九・何%ということなんですね。ですから、日本の消費税を一〇パー上げるということは、これは世界的に見ても大変なことだという認識を持っていただいて、その中で本当に食料品まで上げていいのかどうか、やはりここは本当に真剣に議論をしていく必要があるというふうに思います。

 最後に、社会保障改革の理念について厚労大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、社会の持続可能性を高めるには、現役世代が高齢世代を支える力をいかに強めていくかということだというふうに思います。その観点から、特に最低賃金制度などもあわせた、いわゆるすき間のないセーフティーネットの再構築の問題。

 それからもう一点は、貧困格差については、ただ単に経済的な側面だけではなくて、やりがい、あるいは人間としての尊厳、自尊心、人とのつながり、社会的な居場所をどう持てるかという意味においては、パーソナルサポートサービスをもっと恒常的に制度化すべきではないかという問題意識を私は持っているわけですけれども、現役世代を元気にさせる、雇用を元気にする、そういう観点から答弁を求めたいと思います。

中野委員長 小宮山厚労大臣、三十秒でお答えください。

小宮山国務大臣 お尋ねの件ですけれども、年金、生活保護、そしてさらに、今おっしゃった最低賃金、そうしたものをあわせて社会保障に係る費用の将来推計の改定、これにつきましては、保険料の個人ごとの負担をお示ししているところですけれども、そういう三つのものを、今、それぞれ制度は別になっていますが、あわせて低所得者の方への対応として、研究会も発足をしたところでございますので、総合的に検討したいと思います。

 それから、パーソナルサポートとおっしゃいましたが、私ども伴走型の支援と言っていますけれども、これは、この秋をめどにつくります生活支援戦略の中でも、NPO法人などの民間機関の御協力も求めて、一人一人に寄り添ってしっかりと就労支援などもしていきたいと考えています。

服部委員 野田総理に、最後に一言。

中野委員長 ごめんなさい。時間、タイムオーバーです。テレビの関係もありますので、恐縮ですが、時間どおり、守らせてください。

服部委員 では、質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 これにて服部君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 みんなの党の江田憲司でございます。

 既に報道で流れておりますが、きょうの午前中の修正協議で、自民党、民主党の間で、消費税二段階増税については合意をした、一方で、社会保障のところは平行線に終わって、またあした以降協議するということが報道をされております。

 それから、きょう一日、これまでの委員会審議を聞かせていただきましたが、総理、こういう理解でよろしいですか。

 今、この委員会にかかっている七本の法案、二本は増税関係、五本は社会保障関係、これについての修正協議を十五日までに全力を挙げて合意に向けて努力すると。一方で、御党が政権交代選挙のときに掲げられた、例えば後期高齢者医療制度の廃止であるとか最低保障年金の創設であるとか、そういった問題については、名称はどうあれ、協議会、国民会議、そういった場で引き続き時間をかけて検討していく、こういう理解でよろしゅうございますか。

野田内閣総理大臣 ただいま協議をしていただいている修正協議というのは、基本的には、この特別委員会で御審議をお願いしている七つの法案、税法関係が二つ、社会保障関係が五つ、これについて成案を得るための協議だと思います。それ以外に、中期の問題等々派生して出てくる問題があるかもしれません。それについては、どういう協議の機関で、どういうタイムスパンでやっていくかという議論もあると思います。その整理も修正協議の場の中でも行われていくものというふうに思っております。

江田(憲)委員 それでは、きょうもいろいろ意見、質問が出ておりましたが、要は、自民党さんは、御党の提案、最低保障年金にしろ後期高齢者医療制度の廃止にしろ、反対の立場でおられますから、こういった問題についてもこの修正協議の対象になっているという理解でよろしいんですか。

野田内閣総理大臣 修正協議の直接の対象は、あくまで今般御審議いただいている法案、七つの法案、これをどうするかということだと思います。ただ、その七つの法案のよって立つ理念であるとか、あるいは私どもが大綱でまとめたその中身についての御議論も今あわせてしていただいているという状況の中で、まだ法案として提出していないものについて、中期的に取り組んでいくものについて、その扱いはどうするのかという議論も今、修正協議の場でも行われているというふうに思っております。

江田(憲)委員 我々みんなの党の立場をはっきり申し上げますと、今御提案のいわゆる総理がおっしゃる社会保障と税の一体改革法案なるものは、私どもは全く認めておりません。

 それは、なぜかといいますと、はっきり言えば、御党が提案をされているような最低保障年金、年金の抜本改革、後期高齢者医療制度の廃止を含む医療制度の抜本改革、こういったものの提案が法案の形でされていない、具体的な制度設計が提示されていない。後期高齢者医療制度の廃止は今国会に出されるんですか。

 最低保障年金はもう来年の国会だという中で、やはり一番国民が望んでいる医療や年金の持続的な、安定的な確保、昔の言葉で言えば、百年安心の医療制度や年金制度、こういったものが具体的に提案をされないままに消費税だけを二段階で増税するというのは、我々は、もともとこれは消費税増税先行だというふうな立場でいるんですけれども、それがまたこういう形で修正協議をされ、これはいずれ明らかになりますから、二十一日までに採決を目指して努力をされるというんですから、また来週こういった質問の機会があると思いますので、そこでも、修正合意が成るのか成らないのか、それは修正協議の結果を見てまた質問させていただきます。

 いずれにせよ、私どもが見ておりますと、今この委員会にかかっている七本の法案、それは五本の年金とかこども園の問題とか、それぞれ重要でないと言うつもりはありませんが、ただ、やはり国民が望んでいる医療や年金、本当に持続可能な、安心な制度と言うにはまだまだほど遠い、抜本改革というのが後ろで控えている。そういった中で、そういった抜本改革の部分は、どういう形であれ場を設けて、引き続き協議という形で先送りするということになれば、これはもうはっきり言って、全く認められないという立場でございますので、この点は、引き続き、来週、修正合意云々、成るのか成らないのか、しっかり見きわめた上でまた質問をさせていただきたいというふうに思うんです。

 我々は、ですから、これははっきり言えば、とにかく待ったなしと総理大臣がおっしゃる、それは、野田総理の意味するところは、増税待ったなしだ、財政再建待ったなしだという趣旨で受けとめておりますし、我々みんなの党は、いや、待ったありだ。しかし、単に待ったして何もしないのは無責任、それは当然でございますから、我々は、まだ余裕がある、待ったできる間にやるべきことをしっかりやる。

 一つは、やはり、何度も申し上げている、隗より始めよ、国民の皆さんに負担を求める前に国会議員や役人がしっかりと身を切る改革を断行すべきだろう。二つ目は、デフレが続いて景気が悪い、そこに大震災と原発事故が襲って国難にある、ですから、まず最優先課題は景気を回復させる、復旧復興に全力を挙げる、そして経済を成長させて税収を上げていく、その税収で持続可能な社会保障制度も確立していく、さらには財政再建もしていくという立場なんです。これはもうこの委員会で何度も申し上げました。

 その中で、一つ確認をきょうさせていただきたいのは、先般の私の五月二十二日の質疑で、総理は、この法案の採決までに定数削減を何としてでも実現したい、そういう発言をされているんですよ。

 採決といえば、二十一日、それまでに国会議員の定数削減、この前はおやりになるとおっしゃったので、もう一度再確認をいたします。

野田内閣総理大臣 国民の皆様が、今回の社会保障と税の一体改革、これに関連をして、委員御指摘のとおり、まずは隗より始めよというところを強い関心を持って見ていらっしゃることは間違いございません。

 その中で、国家公務員の給与削減等の、一定の行革の方はやってきているつもりでございますが、政治改革の部分については、残念ながら、実務者協議の段階で成案を得ることができませんでした。御指摘のとおりの定数削減の問題を含めて、一票の格差の是正の問題を含めて、選挙制度改革を含めて、これは今、一体で議論をして、どうやって成案を得るかというぎりぎりの段階だと思います。

 今は幹事長レベルのところに参りましたけれども、幹事長レベルで、今週中にも我が党の幹事長から新たな提案をさせていただき、それに基づいての御協議をいただいて、何とか成案を得たいというふうに思います。

 どっちが先かという、ちょっと時系列は難しいんですが、基本的には、私どもがこの一体改革の採決をするという前後においてしっかりと、政治改革の議論も大きく合意形成できる方向に進んでいることが望ましいと思いますし、そのための御提案をさせていただくことになると思います。

江田(憲)委員 それは早く提案をしてください。ほぼ二週間前に幹事長会談をやって、あとはナシのつぶてですからね。今週提案があるというなら私どもも積極的に対応いたしますから、ぜひ提案をしていただきたいんですけれども、ただ、総理、この前私におっしゃったことは、これは議事録を取り上げましたけれども、大変私は、大賛成だと思ったんですね。

 総理がおっしゃったことは、もう一つ大事なことは、やはり定数削減なんですね、定数削減。これは、でき得ればというか、何としてでもこの法案の採決の前には結論を出さなければいけないと強く思っていますと。

 私は、これはやはり、総理であり、かつ民主党代表でいらっしゃいますから、まさにリーダーシップを発揮された局面だと思ったのですが、ただ、今お聞きすると、望ましいとか、またあやふやになっている。こういうところは、国民の皆さんが見ていると、何だまた口先だったのかと言われかねないので、もう一度確認しますけれども、何としてでも採決前にやるとおっしゃっているんですから、やると今おっしゃっていただけませんか。

野田内閣総理大臣 今週中に幹事長から御提案をさせていただきます。それを踏まえて結論を得るように努力をさせていただきたいというふうに思います。

江田(憲)委員 まあちょっと、歯切れがまた悪くなって非常に残念ですけれども、いずれにせよ、これは努力をされるということですから、しっかりと。

 総理は、思い起こしていただきたい。私が私鉄のパスとかなんとか取り上げたときに、そういう多方面にやるよりも、これが一番大事なんだから、これを絶対やるんだとおっしゃったんですよね。私も、そんな戦線を広げるつもりはないけれども、これをやる。

 いや、これは本当にやらなきゃいかぬと思っていますからね。それで、非常にいいことを聞いたなとここで確認した覚えがあったんですが、今の言葉を聞くと、本当に残念だというふうに言わざるを得ません。

 そこで、この前も、先週、安住大臣といろいろ議論をした。今の日本の財政状況を見て本当に待ったなしかどうかが一番、我々みんなの党と総理との考え方の違いなんです。

 いろいろなデータを駆使してお話をされれば私も聞く耳を持つんですね。しかし、おっしゃることは二つしかないんですよ。ずっと注意深く聞いていても、とにかく今、国と地方の長期債務を入れれば一千兆円で、GDPの二倍で大変だ大変だ、累積債務が積み上がっているから大変だ大変だというのが一点。それから、九十兆円の一般会計の歳出規模なのに、税収はたった四十兆少々で、四十四兆も借金、新規国債を発行している、こんなものでもつわけないだろう、大体この二つしか聞かされないんです。

 それは私もよくわかっています。こんなデータというのはよくわかっています。それから、日本の財政が、決して安穏としているような状況じゃないということもわかっていますよ。しかし、問題は、この国難のときに、景気の悪いときに、今一番、手順として、最優先としてやるべきことは何でしょうか、本当に待ったなしなんでしょうか、増税をこうやって先行的に決めることが本当に必要なんでしょうか、こういうことを申し上げているわけですね。

 財務省のホームページ、よく私は使いましたのでもう見飽きたとおっしゃるかもしれませんけれども、総理、よく聞いてください、私もあえて言っているわけじゃないんですから。

 国と地方の長期債務、これがGDPの二倍もあるというのは確かに大変なことですよ。しかし、では、長期債務のGDP比率が何%を超えたら発散して財政破綻するのか、それともしないのかというのは、これは財政学の教科書を読んでも、経済学の教科書を読んでも、どこにも書いていないんですよ。要は、中身をちゃんと見ましょうということなんですね。要するに、債務の比率ではなくて、債務の中身を見たときにどうかという議論をしなきゃいかぬということなんです。

 そういう意味で、過去、財政破綻をした国の例を見ますと、例えば、二〇〇一年にアルゼンチンが破綻をしています。これは債務比率が六三・一%、低かったですね。九九年にエクアドルが破綻をした。このときは一〇一・二%ですね。ロシアが九八年に破綻をした。七五・四%なんですよ。日本のGDPの二〇〇%よりもかなり下回る数値で破綻をしている。

 これはなぜかといいますと、やはり、当時、これらの国が外貨建ての債務比率が多かったとか外国資本に依存していたとか、結局、通貨の信認が落ちて元利払いが負担増になって、それで破綻しているんですよ。一方で、よく言われることなんですが、戦後すぐのアメリカとイギリスの債務比率がどうだったかといいますと、アメリカは一二一・九%、イギリスに至っては二七五・四%もあったんですよ。

 ですから、私が申し上げたいことは、国と地方の長期債務のGDP比率だけで考えたら判断を誤りますよということなので、まさにこの債務、一千兆円の債務の中身を考えましょう。ギリシャだってそうでしょう、エクアドルだってアルゼンチンだってロシアだって、外国の人がいろいろな国債を買っていたから、いざ信認が落ちたら外国の人がばあっと売り払って逃げていく、そういう中で元利払いが急上昇して破綻していく、こういうパターンなんですね。

 一方で、では、イギリスが二八〇%もの巨額な債務を抱えながら事なきを得たかというと、これも歴史的ないろいろな論文がありまして、それは、簡単に言うと、その後、経済成長があり、インフレがあって、結果的に、名目のGDPが増大をして、債務比率が低下をして事なきを得たということなんですよ。

 ですから、私が申し上げたいことは、まさに財務省の土俵に乗っても今の日本の財政というのは決して待ったなしじゃありませんということを何度も何度も繰り返し言ってまいりました。

 財務省は正しいことを言ってきたんです。ここの二〇〇二年、このパネルに出しましたけれども、これは今でも残っていますよ。私が追及したからもう削除したのかと思ったら、今でも堂々と残っている。これはまさに、私は財務省と同じ意見なんですね。

 ここに書いてあることは、日本は世界最大の貯蓄超過国です、大体個人の金融資産は千五百兆円あります、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されておりますと。これも今、全然変わっていませんよ。一%どころか、もう〇・九%を下回るような金利になっておりますし、日銀がオペレーションで市場から国債を買おうと思っても銀行が売ってくれないぐらいの、今、日本国債は超人気ぶりですよね。そして、日本は世界最大の経常黒字国であり、債権国であり、外貨準備も世界最高というのが、財務省のおっしゃっている、これは、国債の格付が下げられたときに、まさに財務省が反論をされた。

 そして、私は、この土俵に乗っても、今のファンダメンタルズ、今のいろいろな数値を見ても、確かに債務はGDPの二倍あるけれども、こういった財務省みずから言っていたような数値、データに照らしても、ここ数年は大丈夫だから、その数年の間にデフレから脱却して経済を成長させる、復旧復興に全力を挙げる、まずはなりふり構わずそういうことをやりましょうというのがみんなの党の考え方なんですけれども、もう一度総理にその基本的なお考えをお聞きします。総理、お願いします。

安住国務大臣 まず、先生もお認めいただいているように、発散がいつなるかわからないというのは、確かにわからないわけですよ。ですから、対GDPのこれだけの累積赤字があるということは、やはりそれは決して楽観できる状況ではないと思います。

 ですから、そういう点でいえば、冷静な議論が必要だということで、私どもも、ファクトとして、そういう事実は挙げておりますが、一方で、CDSの傾向なんかをずっと見ておりましても、ギリシャだってそうですし、イタリアだってそうですけれども、やはり市場の信認が得られなくなった瞬間から発散が始まったりしています。

 では、市場の信認とは何ぞやということになりますと、私は、一つ先生のお話の中で、欠けていると言ったら恐縮ですが、ないのは、財政再建に対する意思というか、しっかりとした姿勢というのを示していかないといけないと思います。

 私どもは、社会保障が急増するので、それに対してやはり消費税を充てていきたい、これは結果的に財政再建にもつながるということを申し上げておりますから、そうした意思が日本にないとなったときには世界からどう見られるのかということは一つやはり考えないといけないということと、先ほど米英の例を出しましたけれども、これは、戦後の、太平洋戦争、第二次世界大戦のときに彼らが使った経費がそのまま赤字として計上されているわけですから、それと今の現時点を比較するのはちょっと私は難しいと思いますし、当時、ポンドにしてもドルにしても世界の信認があったんですね。世界の信認があって、その後、復興が世界じゅうで始まりましたから、そういう意味での事業が進んでいったのは、今とはちょっと状況が違うということだけ、まず私の方から申し上げさせていただきたいと思います。

江田(憲)委員 安住大臣はそうおっしゃるんですが、では、もう一つ財務省のホームページの資料。全く反対のことが書いてあるんですね。

 とにかく格付会社は「日本の政府債務が「未踏の領域」に入ると主張しているが、巨額の国内貯蓄の存在という強みを過小評価しており、また、戦後初期の米国はGDP一二〇%超の債務を抱えていたし、一九五〇年代初期の英国は、同二〇〇%近くの債務を抱えていたという事実を無視している。」と。要は、これだけ抱えていても安定をしていたという事実を無視していると。これは財務省が言っているんですよ。そして、「貴社の格付けは、日本政府の債務支払い能力に対する市場の信頼を反映した低い実質金利とどのようにして整合性をとっているのか説明がされていない。」と。

 まさに、今はもう歴史的な超低金利ですから、これは日本政府の支払い能力に対する市場の信頼を反映しているんですよ、私が言っていることは。それをまさに財務省は言っていたわけですから。それを今、手のひらを返して、増税せにゃいかぬからまた反対のことを言っているというだけですからね。

 安住大臣とは先週いろいろ議論したので、総理、やはり国家経営もこういうことを見た上で、未来へ、それは財政規律も大事だと思います。財政再建、それはもう私、橋本政権でそれに取り組んだ男ですから、内容は一緒にしていませんが。しかし、私が何度も申し上げたとおり、このデフレ下で増税しても、景気が悪くなって税収が下がるんですから、財政再建にならないんですね。社会保障の安定財源の確保にもならないんです。これが歴史の真実でしょうと。そして、こういった多角的なデータに基づいて私は申し上げているんですから。

 私、よく財務省のマインドコントロールと、これは片山善博さんも使っていたから、最近そういった名前の本も出して、おかげさまでベストセラーにならせていただきましたよ。ぜひ、こういったところにも光を当てて見ていただいて、総理大臣、トップリーダーですから、国家経営をしていただきたいと思うんですよ。ぜひ御回答をお願いします。

野田内閣総理大臣 格付会社に対するコメントというのは、まさに客観的な正当性を求めるための意見であって、決して財政健全化を否定している内容では私はないと思うんです。前は、そのころは一々格付会社へやっていたんですね、今は逐一コメントしないことになりましたが。その一環でのお話なので、私が今の姿勢と違うと言うのは、今の格付会社への物言いというのは十年ほど前のお話じゃないでしょうか。そのときと相当に私は今の世界経済、世界あるいは財政を見る目というのは大きく変わってきているというふうに思います。

 その中で、九十兆円ほどの予算の中で約二十兆を国債の償還に充てていて、今は半分ぐらいが利払いというときです。財政規律を守らないメッセージを出したときに、そこからはね返ったときの日本の予算への影響、財政への影響ということは十分に緊張感を持って語らなければいけないのではないかというふうに思っていまして、私は江田委員ほどそこに余裕があるとは全く思っていません。

 それで……(江田(憲)委員「委員長」と呼ぶ)ずっとお話しだったので、私にちょっとしゃべらせてください。

 財務省のマインドコントロールみたいなお話で、また本も書かれていますけれども、では、OBの方がマインドコントロールにかかっているかというと、全くかかっていないです。財務省のOBの方でまた自由にお話しされている方がいっぱいいます。何で私がそんなコントロールにかからなければいけないんでしょうか。私は、それは全く根拠のない話だというふうに思っております。

江田(憲)委員 いや、財務省のOBの方を言っているんじゃない。私が言っているマインドコントロールという意味は、これは片山善博さん、お身内だった総務大臣もおっしゃっていることで、結局、増税に都合のいい数字しか言わないんですね、さっき言ったように。増税に不都合なこういった数字、さっき出した数字は一切国民には言わない、こういうことなんですね。

 それから、九十兆で四十四兆の話は、では、早く削ってください、五年前、自民党政権時代には八十二兆円が一般歳出だったんですから。その後、リーマン・ショックがあって、特異要因があって麻生政権でふえましたけれども、特異要因も去ったんだから、ちゃんと削ってください。今、九十三兆円なんですから、八十二兆円が交付国債を入れると九十三兆円。十兆、何兆、全部がそうだとは言いませんが、しっかりと御党が約束されているようにやってください。

 それから、新規国債、私がよく言うように、国債整理基金みたいな伏魔殿みたいなような、六十年償還ルールみたいな、もう破綻しているようなルールを後生大事に守って、こんな危急なときに一・六%機械的に繰り入れをしているなんということはあり得ないことなんですよ。先週、安住大臣とこの議論をしたら、安住大臣もこの六十年償還ルールの非合理性の一部は認めた発言をされました。ですから、この減債制度を廃止すればいきなり新規国債発行高は四十四が三十四兆円になりますし、累積債務も十兆円減るんですよ。だから、財政規律とおっしゃるのであれば、もう少し減債基金であるとか国債整理基金であるとかを勉強してください。

 当時、取り崩した、財政制度審議会長の桜田武さんという日経連の会長は、こんな制度は民間にはありません、要は、わざわざ借金返済のために借金をして利子まで払って積み立てるなんというこんな慣行は一切民間には、あれはおかしな制度だなといって、過去十一回余裕金を使ってきたわけです。そういう意味で、増税の前にやるべきことがあるだろう、こういった十兆円を使えばいいだけの話なんですから、そういった知恵を出していろいろ私は申し上げているだけなんですね。

 ばんとはねつけるんではなくて、一円でもお金が必要なときなんですから、ぜひ、総理、そういう観点で見直していただけませんか。

中野委員長 恐縮ですが、時間が参りました。

江田(憲)委員 どうもありがとうございました。

中野委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺浩一郎君。

渡辺(浩)委員 新党きづなの渡辺浩一郎です。

 きょうは、二十一日までの間のこの特別委員会の審査がきょうでほぼ終わりに近いんではないかなという思いを持っています。しかも、私がきょう最後でございますので、そんな中で、今まで百時間ほどを目指して皆さんは多くの議論をされてきたと思いますので、そういう細かいことはまたさておき、特に政治的な判断というものをちょっときょうは大臣にお伺いしたいというふうに思っております。

 まず、今申しましたように、百時間近くの審議をやっている中で、この場の土壇場になってきまして三党の間で修正協議というのが始まったみたいですけれども、この三党による修正協議が今私どものやっております特別委員会での法案の審議とどういうふうに絡むのか、ちょっと見えていないところがあるわけですね。三党の協議をして、それでそれぞれが各党に持ち帰って、それによってまたこの法案を修正するのかどうか、あるいはまた、三党に持ち帰ったら、それぞれの党がうまくいかなくて、ちゃぶ台返しみたいなことがあってそのまま修正しないでいくのかとか、私どもにとってはちょっとそれが見えないわけですね。

 その辺はどういうふうにお考えなのか、ちょっとお聞きしたいと思います。これはどなたでも結構です。

岡田国務大臣 それは、これからの三党間の協議次第ということだと思います。

 私たちとしては、ぜひ、真摯な協議の結果、合意ができることを強く期待しているところでございます。また、そのことは、我々の責任、与党としての責任でもあるというふうに考えております。

渡辺(浩)委員 そうはいっても、もう日にちがないわけですよね。ですから、極端なことを言ったら、もしかしたら修正するかもしれないというんだったら、前提だったら、ここで審議をやってもしようがないわけですから、そんなことも含めて、ちょっとやはりこの辺はきちっとしていただきたいなというふうに思います。

 そういう前提の中で、いろいろと細かいことを先にちょっと伺いたいと思います。

 まず、この特別委員会の中での課題として、七つの法案の中で、消費税を二〇一四年に八%、それから二〇一五年に一〇%に上げるという中で、低所得者層に対する逆進性、この課題はもう多くの人たちが質問されていると思いますけれども、これに対して、安住大臣でいいですか、基本的にどういうふうに考えていらっしゃるのか、また、それをいつまでにやるのか、どういう形でやるのかというのを、まずちょっとお教えいただきたいと思います。

安住国務大臣 私どもは、やはり消費税は御存じのとおり水平的税でございますので、所得が比較的低い方々がその比率が高くなるという逆進性がある。ですから、そういう点からいえば、やはりそれの軽減対策をするということで、できるだけ生活の中で影響が出ないような工夫はしたいと思っております。

 そういう中で、給付つき税額控除制度というものを設けて、ある意味では、給付をすることによって、そのターゲットを絞って低所得者対策をしたいと思っております。ただ、そのためには、ターゲットを絞るためには、やはり番号制度の精度を上げていかないと水漏れが起きますので、その精度を上げてこれを実現したいというふうに考えておるわけであります。

 しかし、それには時間がかかりますので、その間は、簡素な給付措置、いわゆる現金給付等を行ってそれに対して対応していきたいということなんですが、当委員会では、もう一つの考え方として、軽減税率等もあるのではないかというふうな意見も出ました。これに対して、私どもとしては、品目の合理的な線引きというのはやはりなかなか難しいことがありますということは、何点かの例を出して紹介させていただいております。

 そうしたことを含めて、今、三党協議で議論をしていただいているというふうに私は認識しております。

渡辺(浩)委員 そうすると、二〇一四年に八%というとき、あるいはその次の年に一〇%と言っているときに、その八%のときに今言った給付つきの税額控除というのをする御意思というのはないんですか。そのことをちょっと伺います。

安住国務大臣 マイナンバー制度、番号制度がしっかりと動き出さないと現実には制度を稼働させるのはやはり難しいと思いますので、現時点で申し上げれば、八%の段階というのは簡素な給付措置が適当であろうというふうに思っております。

渡辺(浩)委員 聞くところによると、一〇%のときに給付つきのものをやるという形にもちょっと漏れ聞いているんですが、マイナンバーを前倒しするという考えはないのでございましょうか。

岡田国務大臣 まず、マイナンバー制度、この法案を内閣委員会にと思っておりますが、まだ議論は始まっておりません。法案が成立することが大前提になります。その上で、制度設計が必要です、大きな仕組み、システムですので。

 そういったことも考えますと、なかなか前倒しというのは簡単なことではないというふうに考えております。

渡辺(浩)委員 技術的な、時間との闘いになるかもしれませんけれども、私どもはこの消費税の増税については反対の立場ですけれども、万が一成った場合には、これはやはり八%のときから逆進性の問題は解決していく、きちっとするべきだというふうに私どもは思っています。そのことをつけ加えさせていただいて、次の質問に移らせていただきます。

 総合こども園のことでございますけれども、これがいろいろな議論があって、一つには、私どもからすれば、待機児童に対する解消にならないんじゃないかとか、あるいは株式参入によって教育の質のレベルを大変下げるんじゃないかとも思っておりますけれども、一方では、今ある法案を改正して皆さん方の意向を反映させるという考えも漏れ聞いているんですけれども、その考えはあるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 今ある制度とおっしゃった認定こども園、これは、幼児期の学校教育、保育を一体的に行う先駆的な取り組みで、保護者の方からも、認定を受けた施設からも高く評価をされています。

 ただ、一方で、思ったようには広がらないことには二つ大きな課題があって、一つは、幼稚園、保育所の制度をもとにしているので二重行政だということと、財政支援が少ないということです。そのことから、私たちは、認定こども園の趣旨はしっかりと引き継ぎながら、この課題を解決するために、総合こども園の創設による認可と指導監督の一本化、また、こども園給付による財政支援の一本化ということを含めた総合こども園法の法案を提出しています。

 それで、幼保一体化のあり方については各党いろいろな御議論があるところですけれども、やはりしっかりと子育て施策を充実させること、質の高い幼児期の学校教育、保育をするということは皆さん意見が一致するところですので、今、修正協議の中で、ぜひ各党が合意していただけるようにというふうに思っています。

渡辺(浩)委員 ということは、総合こども園の方に力を置いていくということと理解してよろしいんじゃないかと思うんですけれども、でも、やはり一つの方法としては、認定こども園法というものについて、それを修正していくこともあり得るかなという思いを私は持っております。そのことだけちょっとつけ加えさせていただきます。

 では、話をまたかえます。

 今、この七法案の中とはちょっと関係のない、新年金法案とか後期高齢者医療制度の廃止とかという課題が先ほど来から出てきておりますけれども、これは七法案とは関係していないので、とはいうものの、先ほど申し上げた三党間の協議の中で、この二つが、廃止しろ、取りやめろという話を漏れ聞いております。これを本当に廃止するのかどうか、まずそのことを伺いたいと思います。

岡田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、まず、協議の具体的対象は七法案ということでございます。しかし、そういう中で、後期高齢者医療制度の廃止と年金の抜本改革、この二つが議論の俎上に上るということは、当然あり得ることでございます。

 この一、二週間で結論が出る話ではございませんので、これからいろいろ協議をしていかなければならないと思いますが、そのときに、その前提としてこれを全部取り下げろとか、それでは協議になりませんので、そういうことにならないように、しっかりと内容について議論できる、そういう場をつくっていくことが重要かというふうに思っております。

渡辺(浩)委員 そうすると、これも聞き及んだ範囲ですけれども、では、他党の、国民会議の中で議論をするということも考えられるということで理解してよろしいのでございましょうか。

岡田国務大臣 それも一つの考え方かというふうに思います。いずれにしても、それはもう協議の中で決まってくることでございます。

 いずれにしても、我々は、我々の案がベストと思って提案させていただいております。しかし、それを主張するだけでは協議になりませんので、お互いそれを机の上に並べて議論できるような、そういう形をつくっていければというふうに考えております。

渡辺(浩)委員 ということは、やはり国民の目から見ると、ここらあたりがどうも見えないんですね。社会保障制度と税の一体化ということを言っている中で、後期高齢者の問題だとか、それから最低年金の問題だとか、そういったことをなしにしてこの社会保障と税の一体化という課題に取り組むのは、やはり国民には理解できないと思うんですね。

 だって、社会保障の制度がちゃんと充実して、なるほどなと思ったら、では、それに必要な税をきちっと検討する、あるいは、もっと譲ったとしても、社会保障制度と税が一緒になってやっているということが国民の理解を得やすいと思うんですけれども、そうじゃなくて、社会保障等の制度は例えば国民会議でもって、後で別のところでやるといったら、では増税を先に通すのか、そういうふうに国民は理解すると思うんですけれども、その辺はどうですか。

岡田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、協議の対象は基本的には七法案でございます。そのうちの二法案は税ですけれども、残りの五法案、つまり、子ども・子育て三法案、年金の二法案、これは社会保障制度でございます。したがって、それを全体として協議しているということでございます。

 そもそも、今回、この社会保障・税一体改革を議論していく中で、消費税五%引き上げということが中に入っているわけですけれども、例えば、年金の抜本改革に必要な財源というのはその外の話でありますので、一体改革という名前ではありますが、年金の抜本改革については基本的には五%とは別の問題として議論していくこと、そういうふうにそもそも考えてきたわけでございます。

渡辺(浩)委員 それではもう全然国民は理解できないと思います。

 やはり、多くの国民がこの問題についてはほとんど、今消費税を上げる必要はないんじゃないかというのがいろいろな、例えば新聞社の調査でも出てきています。その最大の原因は、やはり社会保障制度の全体像が見えていないというところに大きな欠点があるんだろうと思うんですね。ですから、私は、やはりこれは、社会保障制度をきちっとやった後に、では必要な金はどうするかという議論に持っていくべきだというのが、本当の意味での国民の理解を得るということだと思っております。

 そういうことを申し上げておきまして、時間がありませんので、ちょっと先へ進みます。

 一つは、先ほども質問が出ておりましたけれども、一票の格差、これを社会保障制度の一体化の議論の中で前もってきちっとやっていくという話でしたけれども、これは、この時間のない中でうまくいくのかしら。今週中に幹事長・書記長会談というのができるというふうに、やるというふうにおっしゃっていたみたいですけれども、私は、このままいったら社会保障制度の審議の中にぽんと、選挙制度のものをきちっとやっていくことは時間的に間に合わないだろうという思いがあるんですけれども、その辺をちょっと御答弁いただきたいと思います。

岡田国務大臣 選挙制度改革の話は、各党幹事長間で議論されているところでございます。

 我が党、私は閣内におりますからちょっと言い方は難しいんですが、輿石幹事長のところで提案をさせていただくというふうに聞いておりますので、そのことをきっかけに、しっかりと議論がまとまることを期待しているところでございます。

渡辺(浩)委員 非常に現実的な話で恐縮ですけれども、やはりこれはそろそろ、間に合うか間に合わないかということを真剣に考えていただきたいというふうに私も思っております。私どもは、基本的にこの消費税増税には反対だということをまた改めてつけ加えさせていただきます。

 少し話をかえます。

 先般、野田首相が、関西電力の大飯原発の再稼働を記者会見で発表されました。これについて、私は全然反対でございまして、まず、技術的にきちっとまだできるかどうかわからない中での大飯原発の再稼働というのは許されないことだと思っておりますけれども、もう一度、野田首相の決意を伺いたいと思います。

野田内閣総理大臣 先週の金曜日に、大飯の三号機、四号機の再稼働についての私の考え方を国民の皆様に御説明させていただきました。何よりも、これは安全性の確認が一番の大前提だというふうに思います。

 昨年の三月十一日の事故以来、緊急にとった対策もありました、あるいは、さまざまな専門家の知見も踏まえて講じてきた対策もございました。そういう一年以上の取り組みを踏まえて、IAEAであるとか原子力安全委員会とか、そのほかの専門家の方も交えて、オープンで四十回以上の議論をやってきた。その中で固めた判断基準でございますので、その判断基準に基づいて対応することは、福島における地震や津波、あの程度のものが起こったときに炉心溶融に至らないという安全性については十分に確認をしてきているということでございます。

 そのことを前提として、もうじき、本当にこれから真夏が来ますが、夏場の需給、これも大事です。でも、夏場の需給だけではなくて、エネルギーの安全保障であるとか、あるいは電力価格の高騰によって国民の負担がふえるような、そういうことを抑制しなければいけない等々、国民経済あるいは国民生活、そういうものを踏まえての総合的な判断のもとで、この時期に、私は、私の考え方をまとめさせていただき、お伝えさせていただきました。

 それを踏まえて、立地自治体である福井県の方がどういう御判断をするかということでございますが、所要の手続が始まるものというふうに思っております。

渡辺(浩)委員 時間がありませんので、ちょっと申しますと、これは、福島原発のときもそうですけれども、その福島原発の検証がまだ終わっていない中で、IAEAも含めて、いろいろな審査会の、いろいろな集まった技術系の人たちの話で、それは、技術的には安全かもしれません。例えば、極端に言えば、補助電源を切っていてもメルトダウンしないんだということがあったとしても、これはどんなことがあったって安全ということはありませんし、ましてや琵琶湖というところを抱えていますからね。一千万の人たちがその周辺に住んでいて、一旦何かがあったら水がやられるわけですね、放射能汚染はされるわけですから。

 これは、技術屋が、私も技術屋の端くれですけれども、技術でもってそれは大丈夫だと言ったって、それは一〇〇%大丈夫じゃないんですよ、今回の東日本大震災だってそうですから。

 だから、これはやはり政治的に判断するということがとても大事なんですね。技術的にはそうかもしれないけれども、国民の生活を考えたら、やはり政治的にきちっと判断しなきゃ、首相としての意思をあらわさなきゃいけないときに、私は、こうした判断は間違っているんじゃないかというふうに強い思いを申し上げさせていただきます。

 時間になってしまいました。以上で終わらせていただきます。(発言する者あり)まだありますか。

中野委員長 十九分までです。

 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十二日火曜日午前八時四十分理事会、午前九時公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.