衆議院

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第5号 平成25年5月16日(木曜日)

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平成二十五年五月十六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 森  英介君

   理事 伊藤信太郎君 理事 塩崎 恭久君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 高鳥 修一君

   理事 牧原 秀樹君 理事 古川 元久君

   理事 足立 康史君 理事 江田 康幸君

      青山 周平君    大久保三代君

      大島 理森君    神山 佐市君

      川田  隆君    菅家 一郎君

      菅野さちこ君    北川 知克君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      國場幸之助君    佐々木 紀君

      笹川 博義君    白石  徹君

      白須賀貴樹君    末吉 光徳君

      田所 嘉徳君    高木  毅君

      中村 裕之君    額賀福志郎君

      星野 剛士君    細田 健一君

      細田 博之君    宮澤 博行君

      宮下 一郎君    玄葉光一郎君

      篠原  孝君    馬淵 澄夫君

      小熊 慎司君    木下 智彦君

      西田  譲君    伊佐 進一君

      斉藤 鉄夫君    柿沢 未途君

      椎名  毅君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   文部科学副大臣      福井  照君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   経済産業大臣政務官    平  将明君

   環境大臣政務官      秋野 公造君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            戸谷 一夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   森本 英香君

   政府参考人

   (原子力規制庁審議官)  櫻田 道夫君

   政府参考人

   (原子力規制庁審議官)  山本 哲也君

   政府参考人

   (原子力規制庁審議官)  大村 哲臣君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力地域安全総括官)       黒木 慶英君

   参考人

   (独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長)   鈴木 篤之君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役副社長)       相澤 善吾君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      仲川 勝裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     青山 周平君

  菅野さちこ君     熊田 裕通君

  佐々木 紀君     白須賀貴樹君

  田中 良生君     星野 剛士君

  宮澤 博行君     神山 佐市君

  簗  和生君     笹川 博義君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     菅家 一郎君

  神山 佐市君     宮澤 博行君

  熊田 裕通君     菅野さちこ君

  笹川 博義君     田所 嘉徳君

  白須賀貴樹君     佐々木 紀君

  星野 剛士君     工藤 彰三君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     國場幸之助君

  田所 嘉徳君     簗  和生君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     末吉 光徳君

同日

 辞任         補欠選任

  末吉 光徳君     田中 良生君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

森委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長鈴木篤之君、東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君及び東京電力株式会社代表執行役副社長相澤善吾君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として文部科学省研究開発局長戸谷一夫君、経済産業省大臣官房審議官中西宏典君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君、原子力規制庁次長森本英香君、原子力規制庁審議官櫻田道夫君、原子力規制庁審議官山本哲也君、原子力規制庁審議官大村哲臣君及び原子力規制庁原子力地域安全総括官黒木慶英君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田健一君。

細田(健)委員 おはようございます。自由民主党の細田健一でございます。

 改めまして、森委員長、それから我が党の塩崎筆頭理事を初め、このような機会を与えていただいた関係者の皆様方に深く感謝をいたします。また、田中委員長、極めてお忙しいと思いますが、御出席をいただいたことを改めて御礼を申し上げます。

 私自身は経済産業省の職員でございまして、原子力安全・保安院あるいは原子力安全委員会の事務局の勤務経験がございます。その経験あるいは反省を踏まえて本日質問をさせていただきたい、こういうふうに考えております。

 簡単に基本的な考え方を申し上げたいと思いますが、今回、推進側から分離した形で、独立した、また政府の関係部局を一元化した規制委員会が発足したということは、これは極めて喜ばしいし、また望ましいことであるというふうに考えております。ぜひ、田中委員長を初め委員の先生方には頑張っていただきたいと思っております。

 また、国会に設置されたこの委員会の目的ですが、審議を通じて、規制委員会の透明性、公正性、あるいは説明責任を向上させる、これを通じて、結果的に規制委員会のクレジビリティーといいますか信頼性を高めるということであるというふうに思っております。規制委員会の信頼性が高まるということで、結果として、国民の皆様に安心していただく原子力政策が達成できるというふうに考えております。

 一方で、まだまだ規制委員会はよちよち歩きといいますか、やはり、できたばかりでございますのでさまざまな問題があるというふうに考えておりますし、また、やや失礼ながら、委員長を初め委員の皆様方、私から見ると、まだまだなれておられないなというふうに考えられる点もございます。

 本日、これらについて指摘をさせていただきますが、私の指摘を踏まえて、より信頼性の高い規制委員会の業務が行われるように期待また希望をしておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 まず、原子力発電所の再稼働についてお伺いをしたいと思っております。

 現在、再稼働の新しい規制基準についてパブリックコメントが行われているということで、私も一覧を見ましたが、これは本当に膨大な量で、大変な作業であると思っております。改めて、規制委員会あるいは規制庁の事務方の方には敬意をあらわしたいと思います。

 一方で、この規制基準が制定された後で何がどうなるのか。事業者にとっても、あるいは地域の住民の方にとっても、さまざまなステークホルダーがいるわけですが、予見可能性を高めるということが非常に重要であると考えておりまして、この予見可能性が高まることで、規制委員会に対する一層の信頼性の向上も高まるというふうに考えております。

 まずお伺いしたいんですが、この再稼働の審査について、七月十八日以降、各事業者から再稼働の申請が行われると思いますが、これはどれくらいの時間がかかるというふうに委員長は考えておられるのか。また、行政手続の原則からして、その審査にかかる標準的な処理期間を公表すべきという行政手続法の規定でございますが、この標準的な処理期間を公表することについてどうお考えであるのか。御見解を伺いたいと思います。

田中政府特別補佐人 審査に要する期間ですけれども、事業者からどういった申請が出てくるかというところにも、その内容にもかなり依存するというふうに考えています。特に今回の場合には、大幅な規制基準の改定がありますので、どの程度それに合致するような申請が出てくるかということに相当左右されると思います。

 その後、一般論として、行政手続法として標準的な期間を定めるよう努めるということは、私どもも承知しております。

 一般的には、今回のパブリックコメントでも、旧来の原子炉規制法等に基づいて、新しい原子炉の設置基準、設置許可ですと二年とか、設置変更許可ですと二年というようなことについても、含めて御提案させていただいています。

 しかし、今回の新規則、シビアアクシデント対策の規制要求とか非常に新しい要素が含まれておりますし、設置許可、工事計画認可、保安規定認可、地震、津波対策の確認等を同時並行的に行うという、今までにないような極めて新しい試みでありますので、今現時点で実際にどれくらいかかるかと言うことは困難でありますが、私としても規制庁に申し上げているのは、職員の皆さんに申し上げているのは、やはり、規制施行後できるだけ速やかに事業者の申請については審査を進めるように最大限の努力を払っていきたい、そういうふうに申し上げているところでございます。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 できるだけ速やかに最大限の努力をするという力強い御決意をいただきましたので、本当にありがたいというふうに考えております。

 これに関連して規制庁の人員についてぜひお伺いしたいんですが、私の理解ですと、アメリカのNRC、これは四千人の職員数がいるというふうに承っておりますし、また、フランスの規制機関、これはどうも規制側と執行側の二つの組織に分かれているようですが、合わせてほぼ二千人の職員がいるというふうに理解をしております。

 一方で、規制庁の人員というのは今は大体五百名弱ぐらいの定員だというふうに思うんですが、これはやはりいかにも少ないという感じがしております。

 今理解をしておりますのは、新しい再稼働の審査については、三チームでやるというふうに委員長はおっしゃっているというふうに理解しているんですが、これをふやして例えば六チームにすれば、審査にかかる時間は半分になりますし、当然、審査は厳格に、適正に行っていただければと思いますが、時間だけを考えれば、単純に三チームを六チームにふやせば、時間は半分になると考えられるわけでございますね。

 今申し上げたように、諸外国、特に原子力を日本と同レベルで使用している国の規制機関に比していかにも規制庁の人員の水準というのは少ないと思うんですが、二つあります。一つはまず、人員について望ましい水準というのはどれくらいだというふうに考えておられるのかということと、さらに、人員をふやすという前提で、三チームを例えば六チームにするというような、審査のチームをふやすということはお考えにならないのかということを、ぜひ御見解をお伺いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 大変ありがたい御指摘をいただいたと思っております。

 それで、私どもは今、手持ちの陣容で最大限どれぐらいの審査チームをつくれるかということで、ほかのさまざまな業務を考えまして、そういうことをできるだけ検討しまして、八十名で三チームぐらいで対応するということで準備をさせていただいております。

 御指摘のように、それを六チームにしたらということ、本当に私もそういうことができれば一番いいなと思うんですが、今私どもが持っているリソースではなかなかそこまではいかないということです。ただし、今後、どういった程度の申請が出てくるか、どのくらいの件数が出てくるかということにもかかると思います。そういったことを踏まえて、必ずしも三チームにこだわるということではないということだけは申し上げておきたいと思います。

 ただ、実は審査というのは、御承知のように、相当専門的な、法的な知識も要りますので、人の数だけをふやせばというよりも、その能力を持った方をどうやって集めるかというのも非常に大きな課題であります。そういうことを含めまして、最大限努力をさせていただきたいと思います。

 望ましい人員はどれくらいかという御指摘ですけれども、私の方からこれこれぐらいというふうに今申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、ぜひとも、引き続き御支援いただければと思います。

細田(健)委員 ぜひこれは、御回答のときに望ましい数字についてまたおっしゃっていただきたいと思います。

 これに関連して、委員長御存じのとおり、規制委員会設置法の附則の六条四項で、原子力安全基盤機構、JNESと規制庁の統合について法定されております。私の理解では、JNESと規制庁の統合を、「法制上の措置を速やかに講ずる」というふうにされておられます。附則でこう規定されているにもかかわらず、いまだ行われていない。

 これについては、ぜひ速やかに統合していただいて、そうすれば、私の理解では、一挙に規制庁の人員が倍ぐらいになるという理解なんです。JNES、ある程度の専門的な知識を持った職員も多数いるというふうに理解をしておりますし、この統合によって専門的知識を持った人員をふやして、先ほどおっしゃったように、チームもふやしていくということが考えられると思うんです。

 実際、これは法定されているにもかかわらずまだ行われていないんですが、いつごろ実際に統合される見通しなのか、また、この統合に向けて委員長としてどのようなリーダーシップをおとりになるおつもりなのか、ぜひお伺いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 御指摘のように、私どもの仕事を進めていく上で、JNESの機能、専門性を最大限に活用するというのは極めて重要なことだというふうに認識しております。

 既にJNESとの関係においては、先ほど申し上げました審査チームの中にも相当数参画していただくと同時に、定例の委員会にも理事、委員の方に参加していただいて、随時私どもの意向が伝わるようにして、全面的な協力関係にあります。

 法的に定められたその統合の問題につきましては、専門性とか、そういったJNESの特色を生かしつつ、かつ、私どもの行政組織としての仕事がスムーズにいくように、今、設置附則の趣旨を踏まえて、官房等とも相談させてもらいながら検討を進めているところでございます。

細田(健)委員 いろいろな問題があると思いますが、私ども政治としては、ぜひこの辺については委員長あるいは規制庁を本当に応援したいというふうに思っておりますし、また、法律の附則をさらに実現するというのは、ある意味政治の責任でもございますので、これは、私どもとしても速やかな統合に向けて努力をしたいと思っておりますし、また、そのために規制委員会あるいは規制庁としても最大限の努力を払っていただきたいというふうに思っております。

 次に、規制庁あるいは規制委員会の説明責任についてちょっとお伺いしたいと思うんですが、委員会に求められている説明責任、これは具体的に何をどうすべきというふうにお考えなのか、ぜひ御見解をお聞かせいただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 説明責任をどう果たすかということですけれども、私の認識としましては、今回の福島原子力発電所の事故後の対応を含めて、これまでの原子力規制行政の反省から、規制に関する十分な透明性を確保して国民に説明責任を果たしていくことが重要であるというふうに認識しております。

 具体的には、そのための取り組みとして、本委員会で開催する会議は、いろいろな有識者会合と定例会だけではなくて、全ての会議を原則公開としておりますし、そのときに使う資料も全て公開しております。さらに、ユーチューブで生中継をすることによって、その議論の過程についても、全ての国民に見ていただけるように図っているところでございます。またあわせて、私は週に一回、それから報道官が週に二回、合わせて三回、メディアレクをやりまして、メディアを通して広く国民に情報提供を行っているところでございます。

 説明責任がこれで十分かということですが、これはなかなか、相手のあることなので、十分かどうかということを私どもからすぐに判断することはできませんが、できるだけこういった取り組みを丁寧に行うことによって、国民の信頼が得られるように、先ほど御指摘いただきました規制のクレジビリティーというのを向上させるために努力していきたいと思っております。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 ちょっと私の経験から申し上げますと、先ほど申し上げたように、私は原子力安全委員会の事務局総務課総括課長補佐というポストについておりました。当時の委員長は松浦先生あるいは鈴木先生だったわけなんですが、私は事務屋でございますので工学的な専門性というのは基本的にはありませんので、基本的には、その事務局の中でいわゆる事務屋として予算、人事、あるいは広報を担当していたわけなんですが、そのときの経験から申し上げますと、当時、原子力安全委員会では、外部から寄せられた質問には、その発信者が特定できれば、全て回答しておりました。全てです。全てについて回答しておりました。

 これは、インターネットで質問を受け付けておりまして、その質問を受け取って、当然その原案、回答案をつくりまして、最終的には、原子力安全委員会決定という形で、原子力安全委員会で審議をした上で公表するという手続をとっておりました。これは、基本的に全てについて受け付けて公表をしていたわけでございます。確かに、当時は比較的落ちついた時期でございましたので、一応こういうことが可能でありました。

 ただ、今そういう同じことをやろうとすれば、多分数千、場合によっては数万の質問事項というのが寄せられて大変だということは理解できるんですが、少なくとも、その質問のうち主要なものあるいはよく寄せられるものについては、やはり委員会の意思としてこれはきちんと回答する、あるいは、そういう回答をウエブに載せて、よくある質問集なんというのがありますが、それを委員会として、国民、あるいは事業者、あるいは各種のステークホルダーから寄せられた質問についてはきちんと回答する姿勢を示すということが必要だと思うんですが、この点について、今私が申し上げたようなことをやるという意思表示をぜひしていただきたいと思っているんですが、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 御指摘のように、説明責任を果たすという観点は、そういう意味で、質問に答えることは大変重要だというふうに私自身も認識しております。ただいま御指摘のように、実は直接私自身に来るものだけでも、日々いろいろな御質問があります。そのほか、全体を入れますと相当膨大な数になります。

 その中で、これをどういうふうに処理するかということについては少し検討させていただきまして、先日、四月十日の委員会ですが、規制庁の方に、とりあえず主要な質問に対しての答え、いわゆるQA集をつくって、まずホームページなり何なりに掲載するということで対処していただくようお願いしたところでございます。

 ただ、十分かと言われると、これも、今は私ども、限られた陣容でさまざまな仕事を同時並行的に進めているということもぜひ御理解いただきまして、努力はしていきたいと思いますが、そういうことで御了承願いたいと思います。

細田(健)委員 非常に限られた人員で頑張っておられるというのは理解いたしますので、ぜひ、引き続きそういう努力をしていただきたいと思うんです。

 ただ、例えば事業者から公開質問状のようなものが審査の過程で寄せられている、あるいは、例えば私の地元である新潟県知事が一種の質問状のようなものを規制庁に送付をする。こういうものについて回答しない。忙しいのはよくわかります、大変なのも非常によくわかりますが、こういうものについて回答しないということであると、結果として、規制庁あるいは規制委員会のクレジビリティーが低くなるわけです。なぜ回答しないんだ、回答できないのか、回答するつもりがないのか、あるいは回答できないんじゃないかということになってしまうわけなんですね。あらゆるもの全てに答えるというのは、確かにこれは非常に難しいと思います、現実問題として。それは理解いたします。

 しかし、例えば審査の過程において事業者から寄せられた公開質問状あるいは立地県の知事から寄せられた要請書あるいは公開質問状的なもの、これについては、やはりきちんと委員会決定という形で委員会の意思あるいは見解を示すべきではないかと思います。これは最低限の説明責任だと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生が言う事業者というのは、ちょっと想像ですけれども、日本原電から寄せられていることかと思いますが、それにつきましては、今、特に活断層の問題について有識者会合において検討していまして、そこには、これまでも三回、事業者の方に来ていただいて、公開の場で議論をさせていただいていまして、その中で、私自身の認識としては、相当質問に対するやりとりはやられているというふうに認識しております。

 それから新潟県知事の件については、一度前に質問をいただきまして、文書で回答しております。その後さらに質問が来ておりますが、実は、福島第一原発の事故の解明が進まないうちは規制ができないのではないかというようなそういったこともありまして、ちょっと答えに窮するところもありますので、今そういう状況になっております。

細田(健)委員 個別にというよりか一般論として、済みません、事例がやや特定し過ぎたかもしれませんが、基本的に私が申し上げたのは、一般論として、少なくとも主要なステークホルダーからの公開質問状的なものについては回答するという原則で対応していきたいということなんですけれども、これについてはいかがでしょうか。一般論としてです、あくまでも。

田中政府特別補佐人 一般論としては、おっしゃるとおり、そういった主要なステークホルダー、国民を含めてですけれども、きちっと説明責任を果たすということは大事だと思っています。

 そういう観点では努力をしていきたいとは思っておりますので。

細田(健)委員 ありがとうございました。前向きな答弁をいただいたというふうに理解をしております。

 時間がないので次に参ります。

 次に、IAEAあるいはNRC等々に過去勤務されていた国際機関の関係者とのさまざまな意見交換を行っておられるというふうに理解をしております。それで、その国際アドバイザーの方々が私の理解では異口同音におっしゃっておられるのは、事業者とのコミュニケーションが非常に重要なんだということを国際アドバイザーが異口同音に指摘しておられるというふうに私は理解をしております。これについては細かく例を挙げませんが、そういう指摘がるる行われたというふうに理解をしております。

 それで、これはある意味当然のことでございまして、今でも規制庁のホームページを見れば、事業者は原子力の安全について一義的な責任を有し、必要な措置を迅速に講ずる義務があると書いてあるわけですね。実際に日々のオペレーションに携わっているのは事業者なわけですから、当然、彼らに一義的な責任がある。したがって、この一義的な責任を有している事業者と緊密にコミュニケーションをとること、高い専門性、あるいは規制委員会のプロセスの透明性、公正性、あるいは十全な説明責任に基づいて規制委員会と事業者がお互いにきちんと信頼し合っていること、これは、なれ合いとかあるいは事業者の言うことを全部聞けとかそういうことでは全くありませんが、そういうことが当然必要だと思います。

 仮に、規制委員会と事業者がお互いにばかにし合っているとかお互いに反目し合っているとか、どうも言うことを聞いてもらえないとか、全然意思の疎通がないとか、こういうことだと、むしろ実体的な原子力安全の安全性というのは低くなるということを私は本気で憂慮をしております。

 この意味から、昨年の十二月中旬に国際アドバイザーの方々から、事業者とのコミュニケーションをもっときちんとやれという指摘を規制委員会が受けているというふうに理解しているんですが、そのような指摘を受けてこの十二月中旬以降に、具体的に委員会あるいは規制庁としてどのような行動をおとりになっておられるのか。何らか、内規あるいは文書、あるいは委員長の訓示のようなものを出しておられるのか出しておられないのか。もしないとすれば、今後どのように対応されていくおつもりなのか。ぜひお伺いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 事業者との意思疎通をきちっと図っていくということは大変重要だということは、もう私どもも十分承知しておりまして、今回の新規制基準策定あるいはいろいろな有識者会合に含めまして、半年ばかりの間に二十数回、延べにすると一回三時間とか四時間の時間になりますけれども、そういった、事業者からおいでいただいていろいろな御意見を伺う機会をつくっております。それはユーチューブ等で全部公開しております。

 そのほか、規制庁に各事業者がいろいろな相談に来たりいろいろなことで来た場合には、一応複数人できちっと会って、ただし、どなたが来てどんな話があったという簡単なメモは公開するということで、そういったルールに基づいて、できるだけ事業者とのコミュニケーションを図るということをして努力しているところでございます。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 さらにぜひこの点については努力をしていただきたいと思います。いずれにせよ、高い専門性に基づいた相互信頼というのが必要だと思っておりますので、ぜひこの点については引き続き努力をしていただきたいと思いますし、また、必要に応じていろいろな提言をさせていただきたいと思っております。

 ちょっと時間が押してまいりましたので、私の質問通告の四番の質問に移ります。

 先ほど説明責任の問題がありましたが、私の理解では、あくまでも規制委員会という合議制の意思決定機関でありまして、そこでその後行われたこと、規制委員会が決定したことについては、どのような正当性があるのか、あるいはどのような科学的根拠があるのかについては、十全に、決定した後には十分御説明をいただきたいと思います。また、それが説明責任を果たすということだと思いますが、規制委員会が正式な決定を行う前に、その決定に携わるそれぞれの委員あるいはその委員長が、これは私の私的な見解なんですけれどもこうなると思いますよとか、これについては多分こうでしょうねというようなことをおっしゃるのは、これは明らかにフライングだと思いますし、また、これが大きく報道されることによって、結果として、規制委員会のクレジビリティーが相当程度低まっているというふうに思います。

 これについても一々個別の例は挙げませんが、実際に、委員長あるいは委員長代理のマスコミに対するさまざまな単独インタビューというのが行われて、そこで、まだ決まっていませんけれども私の印象ではこれはこうなりますよ、あるいは、私の個人的な見解ですが、まだ決まっていないですけれどもこうなります、こういうことが大きく当然報道されるということで、相当いろいろな利害関係者が混乱する、あるいは、結論を先取りして結論ありきで委員会の議事が進められているんじゃないかという疑念が生じるというような現象も生じております。

 これは私は累次事務方にはお話をしているんですが、正式決定が行われれば、その科学的根拠、正当性については十全に御説明をいただきたいんですが、正式決定がされる前の事項について各委員が公に私的見解を述べるというのはこれは慎んでいただきたいですし、ぜひそういう内規なりルールをつくって、各委員あるいは審査に携わる専門家がこれを遵守するということをぜひ履行していただきたいと思うんですが、これについてはいかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 原子力規制、今、私どもに対する社会の関心は非常に高い中で、私を含めて各委員はいろいろなインタビュー等の申し込みに応えているところでございます。そこである一定の専門性とか個々の見解において説明とか解説を述べているものというふうに思います。

 こういった取材活動に対してきちっと説明をするということは、原子力規制委員会の活動全体についての理解を深める上で非常に重要なことであるし、そのことによって信頼が高まるものと私は思いますので、それをいかに活用するかということについては、今後とも、御指摘のようなマイナスのことがないようにするということはもちろんですけれども、そういうことで努力していきたいと思っています。

 私自身の認識では、決してうそを言ったりオフレコの話をしたりそんなことをしているということではなくて、言うなれば、専門的な解釈とか説明を求められて、それについて話をしているということであります。

 個々の発言には触れられないということでしたけれども、多分、私について、これは間違っていたらあれですけれども、いわゆる敦賀の活断層のときに出席していたんですが、有識者会合の後に、私も大変関心が重要なこと、そのときにどう思いますかと言われて、今聞いている限りにおいては非常に難しい状態にある、ただし、事業者にもいろいろ言い分があるだろうし、いろいろ事業者も調査を継続しているところだから、十分にそれを継続していただきたいということを申し上げたと思います。

細田(健)委員 私は昔広報の仕事もしておったんですが、委員長にはぜひノーコメントの活用をお勧めしたいと思います。

 とにかく、記者は非常に老獪ですから、これどうなんですか、あれどうなんですかといろいろ聞いてきますけれども、基本的には、委員長は公人でいらっしゃいますし、今は委員長のお一言お一言が非常にさまざまなところに大きな影響を及ぼします。

 ですから、何回も申し上げますが、規制委員会で決まったこと、最終決定が行われたこと、正式決定が行われたこと、これを事後的にきちんと説明していく、これは一二〇%やっていただかねばなりません。

 しかし、正式決定が行われる前のものについて私的な見解であってもいろいろおっしゃるのは、これは議論を誘導しているんじゃないかとか、あるいは結論ありきじゃないかとか、そういう揣摩臆測、あるいは、報道あるいは利害関係者からの反論が容易に出てくるわけです。当然、その記者がいろいろ言いますから、困難というのは私も理解はいたしますが、ノーコメントの活用ということをぜひお考えいただきたいと思います。

 済みません、もう時間がありません。最後に一言だけ。

 資料をいろいろ配らせていただきました。これについては、敦賀の破砕帯の審議の進め方あるいは内容について専門家からさまざまな批判が出ているわけです。また、済みません、これはちょっと通告にはありませんが、私の理解では、きのう、原電が抗議文を出したと。これは何かすさまじいことが書いてありまして、規制委員会の決定というのは全く非科学的である、こういうふうに事業者が言っているわけですね、私の理解では。これは原電の抗議文にそう書いてあります。

 それで、これは規制委員会としては看過できないと思うんですよ、非科学的であると事業者に面と向かって言われているわけですから。ですから、これは当然きちんと反論する、そして、規制委員会のよって立つ科学的根拠を明らかにする、そういうことをきちっとやらなければならないと思います。ある意味、これは本当に科学者として侮辱ですね。ですから、そういうことをきちっとやっていただきたい。

 もしそれをやらないと、黙殺するということであれば、さらに規制委員会のクレジビリティーは落ちると私は考えています。

 ですから、一つの提案として、例えばこういう方々も呼んで公開の場で議論をしてみるとか、あるいは、原電からのさまざまな科学的な指摘については、きちんと明確に文書で答える、あるいは公開の場で答えるという姿勢が必要だと思いますが、最後に、この点についていかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 ノーコメントをもう少し上手に使えという御指摘については、それなりに有効に活用するよう心がけたいと思います。

 いわゆる日本原電からのあれについては、有識者会合の結論がきのう出たということは私は承知しておりますけれども、委員会に報告されてきた段階で、今御指摘のようなことについても、委員会としてきちっと検討して対処していきたいと思っています。

細田(健)委員 いずれにせよ、さらなる原子力規制行政の透明性、公正性、そして説明責任をきちんと果たしていただくよう心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

森委員長 次に、塩崎恭久君。

塩崎委員 自由民主党の塩崎恭久でございます。

 きょうは、田中委員長に初めて質問をさせていただくことになっているんだろうと思います。

 今、細田議員からもお話がありましたけれども、やはりこの原子力規制というのは、私も、国会事故調査委員会の法律をつくり、それから、規制委員会の設置法を仲間とみんなで一緒につくる中で学んだことというのは、これはイギリスのウェイトマンさんが言っておられましたけれども、国民からの信頼と信認、トラスト・アンド・コンフィデンスだ、こう言っていました。これを繰り返し言っていて、ああ、それだけやはり大事なんだなと。

 そのトラスト・アンド・コンフィデンスを裏打ちするものは何かというときに、我々がさんざん議論した独立性、あるいは専門性とか一元化とか、そういうようなものがある。ですから、大事なことは、この原子力規制、正直言って、地に落ちてしまった国民からの評価でありますから、どうやってこれを皆で、委員長も、私どもこの法律をつくった国会の側も、ともに力を合わせて、トラスト・アンド・コンフィデンス、信頼と信認を国民からもう一回かち得るように努力をしていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 この委員会も、黒川委員会が提案をしてくださってできたものであって、それは別に、監視をしてぶったたこうとかいうことではなくて、むしろ、いい原子力規制をすることによって国民に安心してもらえるようにするということが大事なので、その大もとは信頼と信認ということではないかというふうに思います。

 初めての、言ってみれば新しい組織をつくるわけですから、委員長も大変御苦労をいただいていることは私もよく理解しております。したがって、これは、ここにいる、あるいは国会にいる者みんなが一緒にいろいろな意見を出し合いながらつくっていかなきゃいけないと思います。

 大変な量の仕事を今こなさなきゃいけないということで、委員会あるいは規制庁の皆さんも大変だろうと思います。世界の原子力の先進国みたいなところからは、かなり懸念の声も聞こえています。それは、量的に大変だということもあれば、質的にもいろいろな注文がついているように聞いているわけでありますので、先ほどJNESの話とかいろいろありましたが、私もこの五月の連休、イギリスに行ったり、あるいはアメリカの人から話を聞いたりとか、いろいろなことを聞いてみると、まだまだこれは道半ばというか、これからだなというふうに思いました。

 そういう意味で、一緒につくり上げるということで多少厳しいことを申し上げるかもわかりませんが、ひとつ御容赦いただいて、一緒に作業させていただければと思います。特に、独立性がある委員会でありますので、この場しか委員長にはお話をする機会がない。お願いしても会ってくださらないということになっているようでありますから、そういうことでお願いしたいと思います。

 まず、議事録あるいは記者会見録なんかを見ますと、時々、委員長はみずからを研究者と言っておられるときもありますが、今は行政官ということでよろしいですね。

田中政府特別補佐人 身分は行政官ですので、そのつもりでやっています。ただし、私自身の中身としては、研究者としてのマインドも持っているということです。

塩崎委員 立場としては行政官ということであります。

 そうすると、委員長、行政の本分というか責務というのは何だと思われますか。

田中政府特別補佐人 与えられた任務をきちっと果たして、国民に対して責任を果たすということだというふうに認識しております。

塩崎委員 与えられた任務というのは、どこから与えられると思いますか。

田中政府特別補佐人 法律に書かれて、規制委員会発足の法律ですね、それから関係する法令、そういったことについて、きちっと書かれていることを果たすことが任務だと思っています。

塩崎委員 そのとおりだと思うんですね。

 きょうお配りをした資料の中に、竹尾さんという学者の先生が、行政とは、「政治体系における権威ある意思決定者」つまりこれは国会のことだと思いますね、「によって行われた公共政策決定」、主に法律だと思うんですね、「を実行することに主として関連する活動」だ、こう言っているわけです。

 それよりも何よりも、憲法の七十三条に、「内閣は、」つまりこれは行政のことですよね、「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」こういうふうに書いてあるわけであります。

 そういうことで、今お話があったとおり、法律を誠実に執行するということが行政官としての委員長のお仕事だ、責務だ、こういう理解でよろしいですよね。

田中政府特別補佐人 そのように理解しております。

塩崎委員 となれば、行政官として、法律に書いてあることを粛々と執行していただかなきゃいけないというふうに思うんです。

 ということになれば、先ほど細田議員から話が出ましたけれども、JNESの問題です。原子力安全基盤機構、これを原子力規制庁に統合すべきと思うんですね。

 これは、お配りをしております五ページ目に、法律と、それからこの法律を審議した環境委員会の決議というのを載せております。

 これをごらんいただくと、附則六条四項に、アンダーラインを引いてありますけれども、「可能な限り速やかに」JNES「を廃止するものとし、」「このために必要となる法制上の措置を速やかに講ずる」こう書いてあります。

 そして、委員会決議には何て書いてあるかというと、JNES「の統合は、一体的な原子力安全規制行政の確保に不可欠であることに鑑み、」「可能な限り速やかに行えるよう、関係の行政機関が一体となって取り組むこと。」こう書いてあります。

 関係する行政機関の中に規制委員会は入りますか。

田中政府特別補佐人 入っています。

塩崎委員 となれば、先ほど委員長みずからがおっしゃったように、法律にのっとってその法律を執行する、あるいは、国会が決めたことで、つまり、この環境委員会の決議というのは、普通の附帯決議じゃなくて決議なんです。それも、全会一致の決議です。それだけ重たい立法府の意思なんですね。先ほど、法律等によって粛々とそれを実現していくということをおっしゃったわけでありますから、当然、この決議にも従ってやっていただかなきゃいけないというふうに私たちは思うわけです。

 そこで、実は、次の六ページに三月二十七日の委員長の記者会見がございますが、これを見る限りは、先ほど来お話をいただいている基本行動原則とは全く違うことが語られています。

 何が書いてあるか。

 私が原子力規制委員会に決まる前に決まった法律ですから、余り細かいことは申し上げたくないと。決まる前の法律だから私は余りよく知りません、こうおっしゃっているようにも聞こえちゃう。

 「もともとも違うもの」というのはJNESと規制庁ですが、「を一緒にしてしまうところにかなり問題がありますということを、JNESの統合については申し上げてきたんです。」つまり、一緒にすることには反対だというふうに聞こえるわけですね、これを見ている限りは。

 そして、真ん中以下に、「単に法律に書いてあるから、すぐに統合、そのままくっつけてしまえばいいというわけではないんです。」これはもう明確に、一緒にする必要なんかないんだ、あるいは、私はそれに反対だというふうにも聞こえるんですね。

 「余り拙速に決めないで、きちっと地に足の着いたというか、足が地に着いたというか、そういうことを根本から議論する機会をいただきたい」、つまり、法律でもう決まって、委員会で全会一致で決まっていることをもう一回、こんな拙速じゃだめだ、委員会決議も法律も拙速だ、全然地に足がついていない、こういうふうに聞こえるんですね、これは。

 おまけに、「根本から議論する機会をいただきたいということで、今、いろんな方にお願いをしている」と。法律を変えるのは、いろんな方といっても、国会議員しか変えられません。この「いろんな方にお願いをしている」というのは、どなたに何をどうしてほしいとお願いしているんですか。

田中政府特別補佐人 JNESの統合につきましては、先生御指摘のとおり、法律に書いてあることですから、基本的にその方向で進めていくということで努力をしております。

 ただ、今、私の発言を引用していただいたわけですけれども、実際に、JNESの専門性というのを最大限に生かして、私たちに与えられているミッションをいかに果たしていくかという観点から見たときに、実は、JNESには相当年配の方がおるとかそういうこともあって、いろいろな問題がございます。そういったことも配慮して、もう一つは、法律を守るという観点と、法律に書かれている仕事をきちっと速やかに進めるという観点も含めて、ぜひそういう御検討をお願いしたいということで、私が直接ではございませんけれども、塩崎先生にもそういったお話で事務方から行っているかというふうに認識しております。

塩崎委員 この発言を見る限りは、そういう方向で検討しているというふうには見えないんですね。

 おまけに、三月二十七日に配られたペーパーを見ると、確かに、統合前にもできることがあります、こう書いてありますね、この紙には。

 連携をやればいいんだ、順次やっているということで、これはこれで大事なことなんですよ。そうなんですが、先ほどの細田代議士に対する答弁でも、JNESの専門性を生かしつつというお言葉を挟みました。

 実は、皆さんにもはっきりしておかなきゃいけないのは、この統合を決めるのは決して田中委員長じゃないんですね。これは政府が決めることなので、内閣官房の方でやることであることは確認をしておきたいと思います。ですから、みずから統合を図るということではなくて、実際にお困りになっている、つまり、人数が少なくて困っている、専門性が低くて困っているというお立場から本当は発言してもらいたいと思っているんです。

 これで、既に連携しているし、専門性を生かしつつ考えていくんだということでありますが、例えば、高齢者が、六十以上の方がたくさんおられるからというような今のお話がありますけれども、こんなものは別に統合できない理由になんか何にもならないのであって、霞が関の人たちは頭がいいですから、幾らでもいろいろなやり方をわかっていますよ。実際、優秀な人たちは、実はもう六十を超えている方が多い。しかし、この方々にいてもらわないわけにはいかないんですから、何らかの形でやってもらわなきゃいかぬし、このことが理由には私は全くならないと思う。

 委員長が、やはり統合に本気だ、そういうふうにやってもらいたいんだという意思がありあり出てきて、困っているということを言っていただかないと、政府はなかなか本気になりませんよ。いや、本当はそれはいかぬので、同じように、法律に書いてあるんだからやらないかぬのです。今私が申し上げたとおりですから。

 だけれども、それでは連携だけでしのごうというふうに見えるんです。事務方から私の方に話が来ていると言っていますけれども、十年たっても何百人もまだJNESに残すという案を私のところに持ってきているんですよ。これが統合と言えるんですか。

 我々は、修正協議をしたときに、もともと去年の九月のスタートのときから統合しろということを自民、公明はすごく強く言ったんです。政府・民主党は、残念ながらそれを受け入れてくれなかった。それで、だったらというのでさんざん議論した末で、この四月一日からだなということで大体のコンセンサスができて、だったらもうしようがないということで我々もそこでおりたわけですけれども、全然そんな状況じゃないし、十年たってもまだ何百人も残すような案を我々のところに提示してきて、何が本気だと。

 これだけの事故を起こしておいて、その理由がさっきの規制のとりことかいうのは、専門性がないがゆえに独立性もなかったけれども、専門性がないがゆえに規制のとりこになっていたわけですから、その専門性を取り返すつもりが日本はないんだな、世界はそうとっていますよ。どうですか。

田中政府特別補佐人 御指摘のように、私どもの仕事をする上で、先ほど細田先生からも御指摘ありましたように、国民の信頼をいかに回復するかという観点からいうと、独立性それから専門性というのは非常に大事なことだということは、もう私自身もつくづく感じております。

 そういう意味で、今御指摘いただいたように、JNESとの統合というのを図っていくわけですけれども、JNESを統合したから、では専門性がそれで十分かというと、実は私自身はそういうふうには感じていません。

 まだまだほかの諸外国、先生も御承知のように、NRCは内部に四千人もおりますし、その周りに原子力関係の国立研究機関、それも非常にたくさんいて、数万人おるわけですが、我が国はそういった状況がありません。それからフランスも、ASNという規制行政を支えるIRSNという、いわゆるテクニカルサポートオーガニゼーションというような形で千七百人の専門スタッフが支えているわけです。

 ですから、JNESの統合ももちろんそうですけれども、そういったことを含めて、ぜひ広く国会の方でも御議論いただいて、御支援いただければありがたいと思います。

塩崎委員 NRCは四千人、中にいるとおっしゃいましたよね。フランスは、さっき細田さんも言ったけれども、二つに分かれているというお話です。

 我々は、お手元にあるこの決議、さっき申し上げたように、ここにあるように、JNESの統合は、「一体的な原子力安全規制行政の確保に不可欠である」、こう言っているんです。これは何かといったら、フランス型かアメリカ型か、我々は随分議論したんです。それで、アメリカ型でいこう、だからJNESは統合しようということになったからこうなっているんです。

 いいですか、我々は議論したんですよ。それでこちらの道を選んだんです。それが決議になって全会一致で決まっているんです。ですから、今さらそんなことを議論するとかしないとかいうレベルの話じゃないんですよ、これは。

 もちろん、統合したら全てうまくいくなんということは申し上げません。これは、メザーブさんと話をしたときも、日本の規制行政の文化を変えるにはドラスチックなチェンジが必要だと言っていましたよ。だから、そんな簡単じゃないのは私もよくわかっています。しかし、統合すればよくなるわけではないとおっしゃると、ああ、では統合したくないんだな、そういうふうに聞こえちゃうんですよ。

 研究者としてはどうのこうのとおっしゃっているのはよく読んでいますよ。しかし、それは国会の意思として法律と決議で示しているんです、もう既に。そして、先ほど委員長みずからおっしゃったように、行政官は法律、立法府の意思に従ってそれを執行していく。だから、独立行政委員会という三条委員会は、独立行政委員会で執行を担うんですね。法律は担当大臣が見ますよ。だけれども、執行は法律に書いてあるとおりにやるんだと御自身おっしゃったじゃないですか。だったら、ここに書いてあるとおりやらなきゃいけないんじゃないんですか。これはもちろん、何度も言いますけれども、これをやるのは内閣官房ですから、統合自体の作業は。

 だから、もともと定員が少ないからと言っているんです。行革だと言っているんです。しかし、では、行革と、福島の十六万人のまだ避難している人たち、そして世界に心配をかけているこの原発事故の原因が専門性の欠如というところにあるんだということがはっきりしているときに、なぜそこの対応をしないのか。連携だけでうまくいかないから、我々はこの道を選んだんじゃないですか、国会が。いいですか。

 あの事故の直後、菅直人リスクという話がありましたけれども、事故対応でJNESで百提案をしたときに、保安院で理解がよくできないから十ぐらいになっちゃって、結果として官邸で実行されたのは一つ。百提案しても一つしか実行されない。こんなんじゃ、やはり三層構造じゃだめなんだ、だから我々はここを、JNESも一緒にして、さらに、おっしゃるように、人材を育成して、新しい血を入れて新しい体制をつくろう、こういうことだったんですね。

 ですから、今おっしゃっているようなことは我々も議論しました、もう既に。だから、もうこれはやらなきゃいけない。御自身がその気が余りないということが見え見えなものですから、はっきり記者会見でもおっしゃっているし。でも、御自身の基本中の基本である科学者じゃないんですから。研究者じゃないんですから、今は。さっき御自身でおっしゃったように、お気持ちの中にはあったとしても、行政官ですよ、あなたは。行政官は、法律と国会の意思に従って淡々と、粛々とやってもらわなきゃ困るんです。いかがですか。

田中政府特別補佐人 私は、JNESとの統合をやらないとは一言も言っていなくて、その統合に向けてどういう形が一番いいのかということをいろいろ検討していただいて、今官房等とも調整をしていただいていると思っています。

 それに加えて、先生御指摘のように、専門性という観点を見ていったときに、今後、長期的にサステーナブルな原子力の利用を図っていく上で、どういったことにも配慮しなきゃいけないかということも含めて、ぜひ一緒に議論していただくようお願いしているところでございます。

塩崎委員 我々は、去年の九月から統合すべきだと申し上げました。それだって十分じゃないんですから、委員長おっしゃるように。だから、我々としては、では四月一日からだなと思ったら、もう五月、終わりそうですね。こんなペースで今からおっしゃるようなことをゆっくり議論していたら、いつになったらできるんですか。

 三チームしかできないという話がさっき出ていたじゃないですか。委員会が大丈夫だと言うものは、あとは政治的に判断して再稼働するかどうかを決めるわけですから、それはもうこちらの問題ですね。ですけれども、何しろその能力を上げてもらわなきゃいけないわけです。専門性を上げてもらわなきゃいけない。それをやはりもっと委員長から発信していただいて、早く政府やってくれよと。我々はそれに触れることはできないんだから。早く有能な人たちを我々の仲間として、この委員会の決議にあるように、一体的にやらせてくれ、それをみずから発信していただかない限りは、やらないなんて言っていませんなんてことを言ったって誰も信用しませんよ、残念ながら。そこのところをちゃんとやってもらわなきゃいけないと思います。

 あとちょっとしか時間がないので、今のことはもうそういうことで、委員長みずからが本気度を示すということが政府もさらに本気度を増してやるということにつながりますので、現場で困っているということをはっきり言っていただいて、そして一緒に、専門性を高めることで信頼と信認をもう一回かち得ていこうということをやってもらいたいと思います。

 余り時間がないので、またこの次のことも改めてやろうと思っていますが、行動規範というか、皆さん方は活動原則、組織理念と言っています。きょう、お手元に、NRCのプリンシプルズ・オブ・グッド・レギュレーション、「良い規則の原則」というものをお届けして、二つ、両方比較できるようにしてあります。

 量が多ければいいというものじゃないことはわかりますが、残念ながら、この原則の中で、もう少し言葉を足した方がいいんじゃないかなと感じることが多々あります。

 そのことについてはまたやりたいと思いますけれども、一番僕らが心配になっているのは、NRCの方に「開かれたコミュニケーション・チャネル」という言葉がありますね、これを維持しなければならないと。先ほど委員長もコミュニケーションということをおっしゃいました、事業者とのコミュニケーション。そうなんだろうと思いますけれども、では、この皆さんのおつくりになられたということになっている、「透明で開かれた組織」のところに何て書いてあるかというと、「意思決定のプロセスを含め、規制にかかわる情報の開示を徹底する。また、国内外の多様な意見に耳を傾け、孤立と独善を戒める。」こう書いてあります。

 私は、コミュニケーションというのは、委員長もコミュニケーションという言葉を使いましたけれども、実はこれは双方向なんだと思うんですね。コミュニケーションのもとは、ラテン語でコムとユニオというので、コムというのがともに、ユニオというのが一致という言葉なんですね。ですから、意思の疎通、両方の、双方向のものがなければだめだということだろうと私は思うんです。

 つまり、一方的に情報開示をしたり、多様な意見に耳を傾けるという受け身の姿勢だけじゃなくて、やはりインタラクティブな意思疎通がなければいけない。そして、何よりも、信頼と信認というのは事業者との間でもなきゃいけない。そういう意味で、先ほどのような、非科学的だなんと言われるような関係をつくっていること自体が問題なので、そこでけんかをしたってしようがないので、議論をしていって、お互いを理解することが私は大事だと思うんですね。

 それで、私はきょう最後にちょっとだけ申し上げたいのは、これをどう決めたのかということをいうと、実は、たしか一月九日だったですか、決めているんですけれども、これは、大島委員に投げて、大島委員がつくったものを委員会で議論して決めたことになっています。私は、その議事録を読みました。しかし、余り深い議論はなされていないというのが正直な印象であります。

 ちょっとそれで心配になったのが、その次の、緊急参集のルールというのを、これは実は九月十九日の第一回目の原子力規制委員会で決めているんです、緊急参集の体制。

 これがさっき言った菅直人リスクの最たるもので、官邸に班目さんが来て、海水注入をとめろ、ベントをやれ、いろいろなことを大きな声で言ったわけですね、菅さんが。それで大混乱。そして、本店に細野さんが行っていろいろやったということになっています。

 これを見ると、緊急のときどうなるかというと、委員長と中村委員は官邸総理周辺、更田委員は事業者の本店、そして島崎委員と大島委員は官邸。これは、規制委員会には委員がゼロになるんですね。おまけに、それをどうするんだ、規制庁はどうなんだと言ったら、いや、規制庁もちゃんと、それからいろいろな機器も全部官邸にありますと。ということは、二つに分けるということですね。つまり、大緊急事態のときに組織をばかっと二つに分けて、司令塔である五人の委員は全部規制庁の上にはいない。誰が一体指揮をするのか、司令塔になるのか。全く理解できないことを決めているんですね。

 それで、問題は決め方であります。議事録を私も読みました。そこにつけてあります。何て書いてあるかというと、時間がないからあれですけれども、一番最後に「では、三」、三というのは、緊急事態のときとかを含めて三つのことが議論されたうちの第一番目がこれなんですね。ちょうど「緊急参集の体制でございます。」と資料の七ページで、文書の中では上から三パラグラフ目ぐらいに書いてあるんです。それから、二と三と本当はあるんですけれども、はしょっています。

 それで、問題は、これは九月の十九日にやりながら、委員長も正直といえば正直なんですけれども、「十四日に」つまり、まだ委員になっておられない十四日、これは十九日に委員会スタートですから、十九日の前は内閣参与だったんですね。そのときに「一応、事前に議論をしていただきましたが、本日、委員会発足の時点で早速それをオーソライズするというか、正式なものにしていくということがございます。」これは、まさに規制の最も大事な緊急時の対応の話であります。

 さっきの行動原則みたいなところ、そこで意思決定のプロセスを含めオープンにすると書いてあるにもかかわらず、このやり方については全く議論なしで、十四日という、委員にもなっていない、委員会がスタートしていないときの議論が、もちろん議事録も何もオープンになっていないまま、これで実は決められちゃったんですね。

 「御説明」とかいう言葉が出てきます。この真ん中に「この間の御説明と変わって」と。昔の霞が関、今までの霞が関と同じじゃないですか。役人の御説明を受けて、もうこのままでいいですねといって、第一回目の会合で議論なくこれが決められた。我々は、民主党流のやり方というのは大反対だ、おかしいということを随分言ったんですね。国会で議論しましたよ、菅直人リスクを含め。しかし、それはいとも簡単に決められてしまった。

 もう時間が終わったのであれですけれども、私としては、議論をもう一回やり直してほしい。緊急時の対応というのは本当にこれでいいのか。これをやり直して、ルールを変えてほしいと私は思います。

 もう一つは、こうした形骸化した決定プロセス、開示をしたことになっているけれども、実はどういう議論があったか全然わからない。さっきの行動原則でもそうですよ。これだって、深い議論がなければ、皆さんの全ての行動の原則を議論しているのに、あれだけの議論で決まっちゃうのかなというふうに私はちょっと寂しい思いをしたので。ドラスチックチェンジをしなきゃいけない、日本の規制文化の最たる例だと思うんです。

 こういうところで、申し上げたように、今の緊急参集を含めてもう一回議論をやり直してほしいということと、こうした形骸化した議論並びに開示の方法を改めてほしいということを最後に申し上げて、一言、その感想、考えを聞きたいと思います。

田中政府特別補佐人 一つお断りしなきゃいけないのは、行動原則を決める過程においては、実は内部で、規制庁職員一人一人にも参加していただいて、さんざん議論して……(塩崎委員「国民に見えていないんです」と呼ぶ)はい。それは私どもの行動倫理みたいなものですから。そういうことで、最終的なところで委員会に諮って、その担当は大島委員にやっていただいたということでございます。

 それから、緊急時の体制については、一日たりとも、やはり緊急時というのはいつ起こるかわからない、それに対応できるものということで、第一回の規制委員会で一応決定したものであります。

 御指摘もありますように、今後とも、訓練とかいろいろな検証を通じて必要に応じて体制を見直すとか、そういったことをして、より実効性の高い体制を整備していくことにしたいと思います。

塩崎委員 終わります。

森委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 おはようございます。民主党の古川元久でございます。

 まず、私は、原子力政策に関して考えるに当たりまして最大の問題は、これはバックエンドの問題だというふうに考えております。

 仮に、これは絶対安全という原発ができたとしても、今のようにバックエンドの問題について何の解決策も示せていない状況の中では、この問題に関する解決策が何らかの形で見出されない限り、いつか原発が動かせなくなる。トイレなきマンションと言われているわけでありますから、まさにそういう状況になるわけであります。

 そういった意味でも、原子力政策を考える上では、このバックエンドの問題というのは避けて通れない。しかしながら、こうした現実については、これにしっかりと向き合わず、問題解決に向けての真剣な取り組み、こうしたものでもいたずらに将来に先送りしてきたというのが、この福島原発事故以前の我が国の原子力政策ではなかったかと思います。しかし、事故によって、この問題はもはや向き合わないわけにはいかなくなった、これはもうパンドラの箱があいたというふうに考えなければいけないと思っています。

 これに加えて、昨年九月十一日に日本学術会議が原子力委員会からの審議依頼に対する回答として「高レベル放射性廃棄物の処分について」という報告書を発表して、その中で六つの提言をしています。

 アカデミズムのまさに中心である学術会議がこういう報告をしたのは極めて大きいと思うんですけれども、その中では、「日本は火山活動が活発な地域であるとともに、活断層の存在など地層の安定性には不安要素がある。さらに、万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界がある」として、従来の高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策を抜本的に見直し、暫定保管及び総量規制を柱とした政策枠組みを再構築すべきであるとの考え方を示しました。私は、これは極めて大きなインパクトのある報告書だというふうに、当時、私は学術会議も所管している大臣でありましたけれども、そのように感じました。

 こうしたことも踏まえて、私は、当時のエネルギー・環境会議の議長として、昨年九月十四日に決定した革新的エネルギー・環境戦略では、核燃料サイクルについて、国が責任を持って議論することとして、引き続き従来の方針に従って当面再処理事業には取り組むものの、国が関連自治体や電力消費地域と協議する場を設置し、使用済み核燃料の直接処分のあり方、中間貯蔵の体制、手段の問題、最終処分場の確保に向けた取り組みなど、結論を見出していく作業に直ちに着手するということを決めさせていただきました。

 また、この学術会議の回答を受けた原子力委員会は、昨年の十二月十八日に、「今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組について」という見解を示しています。その中で、「高レベル放射性廃棄物処分に関する政府の「基本方針」を見直し、法・制度の見直しを含めた取組の再構築作業を開始すべきである。」というふうに見解は示しているんですね。

 こういう一連の流れを考えてみますと、このバックエンド問題は、今後の原子力政策を考える上で、原発をどうするかというその立場にかかわらず、これは避けて通れない、あらゆることにかかわる問題である。だからこそ、私は、国を先頭にして、早急かつ全力でこの問題に取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

 先ほど来から、田中委員長、研究者としての、個人としてはそういうところもあるというお話がありました。原子力の問題について専門家である田中委員長、このバックエンド問題について、どのように原子力政策の中で位置づけされるというふうに考えておられるか、田中委員長の御認識をお伺いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 バックエンド問題は、我が国の原子力政策を進める上で大変重要な課題だというふうには認識しておりますが、今、私はそれについてコメントする立場にはないので、発言はここまでにさせていただきたいと思います。

古川(元)委員 さっきの自民党議員のアドバイスを早速受け入れているようでありますけれども、研究者として見識は持っておられるわけでありますから、別にこれは規制委員会にかかわる話ではないと思いますから、やはりそこはきちんとお話をしていただきたいというふうに思います。

 ただ、ここで別に委員長を責めることが私の目的ではございません。委員長も同じような認識を持っているというふうに私も思いますけれども、その上で、ここまで我々民主党政権のもとで決めてきた、そして進める方向でしてきたバックエンドの問題に関する現在の政府における取り組みについて教えていただきたいと思います。

赤羽副大臣 お答えさせていただきます。

 古川委員御指摘のとおり、もう既に、現在、約一万七千トンの使用済み燃料を保管中でもございますし、既に再処理された分も合わせますと、ガラス固化体約二万五千本相当の高レベルの放射性廃棄物があるわけでございまして、これらの最終処分問題を、次世代まで先送りすべき問題ではない、大変重要な問題だ、こう考えております。

 しかしながら、この処分制度を創設して以降十年以上経た現在も、処分地選定の調査にすら着手できていない状況が今の実態だということでございます。

 こうした中、古川委員今御指摘のように、これまで日本学術会議や原子力委員会から、国民の合意形成に向けた取り組みや立地選定プロセスの改善等について提言をなされておりますので、こうした提言を踏まえつつ、今後必要な取り組みについて、今月中に、総合資源エネルギー調査会のもとで放射性廃棄物小委員会を立ち上げて、検討を開始するということになっております。

 以上でございます。

古川(元)委員 踏まえてということは、これまでの高レベル放射性廃棄物処分に関する政府の基本方針を見直す、そういうことで理解してよろしいですか。

赤羽副大臣 見直すというか、これまでさまざまな反省があったというふうに考えております。

 将来の選択の余地を担保する観点から、処分後も一定期間の回収可能性の維持を制度上明確にすることですとか、調査受け入れを前提とした住民説明を行っていくことは地元自治体にとって余りにも負担が大きいということで、調査受け入れを前提とせずに、地元住民がオープンな場で理解を深められるような仕組みを整備することですとか、また、もう少し政府が主体的な対応をとるとか、こういったことも踏まえて総合的に検討していきたい、こう考えております。

古川(元)委員 この学術会議の報告書や原子力委員会の見解などを見ても、また、原子力委員会でまさに核燃サイクルについては昨年来議論もされてきたわけでありますけれども、そういうことを考えると、その一連の流れを受ければ、これまでの方針自体、全量再処理を行っていくとか、そういうこれまでの考え方自体はもう根本的に見直せというのがやはり専門家の方々の意見ではないかというふうに思います。

 そういった意味では、これはやはり抜本的に基本方針を見直すということをぜひやっていかなければいけないことだと思いますし、国が本当に先頭に立ってやっていかなければいけない話だと、そこは我々、政権時代に決めました。そこから政策を変えられたというなら別でありますけれども、そうでないならば、これは国が先頭に立ってやるということを、見直しを行うということを決めていっているわけでありますから、そうした決めたところに従ってやっていっていただきたいと思っています。

 その上で、その中の一つ、革新的エネルギー・環境戦略の核燃サイクル政策のところで、まず、当面着手することとして、直接処分の研究に着手するということとしておりましたけれども、現在、この直接処分の研究というものはどうなっているでしょうか。

赤羽副大臣 文科省からも答弁があるかと思いますが、直接処分につきましては、核燃料サイクル政策に継続的に取り組みつつも、将来的な政策の柔軟性を確保するという観点から、今年度より、文科省と連携をいたしまして、直接処分を可能とするための研究開発に着手することとしております。

 ただ、直接処分につきましては、もう御承知だと思いますが、使用済み燃料をそのまま容器に封入して地層処分を行うことになるために、ガラス固化体に比べまして放射性物質の閉じ込め性能に劣ることですとか、また、ウラン、プルトニウムを含んだ状態であるために、有害度が高く、再臨界の可能性も考慮する必要があること等、ガラス固化体の地層処分とは異なる追加的課題が存在すると承知をしております。

 したがって、このような課題について研究評価を行い、我が国の地質環境において直接処分が技術的に実現可能であるかどうか確認を行う必要があると考えまして、具体的に、まず経済産業省といたしまして、今年度、三億円の予算を計上して、新材料の開発や処分施設の設計技術の開発等の応用的な部分での研究を実施する予定になっております。

 以上でございます。

福井副大臣 文部科学省でございます。

 文科省といたしましては、将来的な政策の柔軟性を確保するという観点から、今年度より、経済産業省と連携して、直接処分の技術的信頼性を示すことを目的とした研究開発に着手したところでございます。

 今、赤羽副大臣の方から御答弁がありましたように、放射性物質の閉じ込め性能に劣るなどの特性があることから、処分に当たっては、使用済み燃料特有の研究開発が必要だということからでございます。

 文科省も、平成二十五年度予算三億円を用いまして、使用済み燃料の直接処分に関する基盤的な研究開発を実施する予定でございます。

 以上でございます。

古川(元)委員 今お二人の話を聞いていますと、将来の柔軟性だとか、これが本当に可能かどうかというお話をしていらっしゃいますけれども、そもそも今までの方針の全量再処理というのは、この事故を受けて、しかも、皆さん方も原発をよもやこれからまたふやそうなんというふうには考えているわけじゃないわけですよね。そういう中でいったら、そもそも全量再処理というもの自体がもう論理的に成り立っていないんじゃないですか。

 そうであれば、直接処分というのを、選択肢の柔軟性を確保するという観点からとか適当かどうかということじゃなくて、とにかくやはり直接処分できるような状況をつくっていかなければいけないんじゃないかと思いますけれども、まだ全量再処理は可能だというふうに考えていらっしゃるんですか。どうですか。

赤羽副大臣 可能かどうかということではなくて、繰り返しになって恐縮ですけれども、選択肢を広げるという意味も含まれて、しかし、中途半端にやるという意味ではなくて、古川委員からのかねてからの御指摘もありますし、直接処分についてしっかりと取り組んでいこうということでございます。

古川(元)委員 とにかく、そもそも全量再処理という選択肢自体が、今我が国が置かれている状況の中ではないんだと私は思います。だからこそ、去年の原子力委員会でもそうした議論が出てきたんだと思います。そういった意味では、この直接処分の研究というのはやはりしっかりやっていただかなければいけないことだということを申し上げておきたいと思います。

 その上で、核燃サイクルといえば「もんじゅ」のことに触れないわけにはいきませんし、まさに今「もんじゅ」が問題になっているわけでございますから、「もんじゅ」の話に移りたいと思います。

 革新的エネルギー・環境戦略の中では、「もんじゅ」について、「国際的な協力の下で、高速増殖炉開発の成果の取りまとめ、廃棄物の減容及び有害度の低減等を目指した研究を行うこととし、このための年限を区切った研究計画を策定、実行し、成果を確認の上、研究を終了する。」そういうふうに決めさせていただきました。

 現在でもこうした考え方に変わりはないというふうに理解してよろしいですか。

福井副大臣 ありがとうございます。

 「もんじゅ」につきましては、まず第一に、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえるとともに、今回の原子力規制委員会における評価も重く受けとめるということが大事だと思います。安全の確保のための方策に万全を期することが何よりも重要でございます。

 現在、より効果的、効率的に研究を推進すべきという観点から、科学技術・学術審議会のもとのもんじゅ研究計画作業部会におきまして、いつまでにどのような成果が得られるかについての、改めて専門家による技術的な検討を行っているところでございます。これは、古川先生よく御存じのとおりでございます。ことしの夏を目途に、新たな研究計画を取りまとめる予定でございます。

 文部科学省といたしましては、この検討の結果を踏まえまして、今後のエネルギー政策、原子力政策の検討の中で、「もんじゅ」の位置づけを明確化してまいりたいというふうに考えてございます。

古川(元)委員 計画が終わったら、研究は終了するんですね。そのことは変わっていないということの理解でいいですか。

福井副大臣 「もんじゅ」につきましては、ことし夏までに研究計画を策定する、今申し上げたとおりでございます。

 今後のエネルギー政策の検討の中で、位置づけを明確化した上で、研究を実行し、成果を上げていくということが当面の課題でございます。

 その後につきましては、それらの成果を確認して、その時点での状況の検証も踏まえて、研究計画に基づく研究を終了した上で、「もんじゅ」をどのように扱うか、検討することになるというふうに考えてございます。

古川(元)委員 それはちょっと我々の考え方から変わっていると思うんですね。

 私が大臣のときには、当初、私の方からは、「もんじゅ」をこの機会に廃止しよう、そういうことを提案しました。しかし、文科省が強く抵抗しまして、調整した結果、最終的にはこういう文言になったんですけれども、これは、研究が終了した時点で、その後は廃炉に向かっていく、そういう認識であったからこそ私も納得したんです。

 今の話を聞くと、研究が終了して、またそこで次を考えるというふうになると、これは政策変更しているというふうに私としては受け取るんですが、そういうふうに認識してよろしいんですか。

福井副大臣 文科省といたしましては、廃止をするというふうに申し上げたことは一切ございません。

 もう一度繰り返しになりますけれども、研究を実行し、成果を上げていくことが当面の課題であるという課題認識は共通していると思います。

 その後につきましては、それらの成果を確認して、その時点での状況の検証も踏まえて、研究計画に基づく研究を終了した上で、その上で「もんじゅ」をどのように扱うか検討するということにつきましては、従前と何ら変更はございません。

古川(元)委員 文科省はそう言うかもしれませんけれども、政府として決めたのは、研究を終了するということなんです。いわば、ここで終わるということなんですよね。ですから、そういった意味では、これはもう政策変更していると言わざるを得ないと私は思います。

 この問題はまたやらせていただきたいと思いますけれども、私は、当時は今すぐやめてもいいと思ったんですけれども、研究計画をということだったので、そこまではというふうに思ったんです。しかし、そういう状況の中でまたもや、これは一万件にも及ぶような点検漏れが見つかって、こういう問題が起きた原因が、これは安全文化の劣化を示す重大な問題だというふうに指摘されて、規制委員会から「もんじゅ」の試験運転再開の準備停止命令が出された。こういう状況を見ますと、年限を区切った研究計画の策定自身ももうやめて、すぐ廃炉にした方がいいんじゃないかと私は思うんですね。

 これまで「もんじゅ」というのは約一兆円の国費を投入しながら所期の成果を上げることもできずにおりまして、これまでもさまざまな方面から、そういうやり方に対して大変厳しい目が向けられてきていたわけです。そういう中で今回の不祥事、しかもその原因が、これは安全第一でやらなきゃいけないところが安全文化の劣化というふうに言われては、もう「もんじゅ」を続けることについて、これ以上国民の理解を得ることはできないんじゃないか、私はそういうふうに思っています。

 今回の規制委員会からのこの指摘、決定、これを鈴木理事長はどう受けとめておられますか。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、国を挙げて、福島第一事故以降、原子力安全に係る信頼回復に取り組んでいるところ、このような事態を招き、大変申しわけなく、深くおわび申し上げます。

 先生御指摘の、昨日、原子力規制委員会において示されました評価結果及びその場での各委員の御意見につきましては、私ども機構としては、これを極めて深刻に受けとめ、猛省しているところでございます。

 当機構におきましては、「もんじゅ」の保守管理の不備に対し、昨年十二月の原子力規制委員会からの保安規定違反の指摘を受けまして、経営の最重要課題として、未点検機器の点検の実施、有効性評価を踏まえた保全計画の見直し、原因分析に基づく再発防止策等の検討を実施してまいりましたところです。

 例えば、その結果として、この四月からは担当理事を「もんじゅ」の所長に任命し、経営が直接「もんじゅ」の運営及び安全管理に責任を持つ体制にするとともに、膨大な点検機器、系統がございますので、それに対応できるだけの点検要員の増員も行ったところでございます。

 このようなことは、本年一月に規制委員会の方に御報告した報告書の中の改善の取り組みに記載した内容を具体化したものでございます。

 さらに、今回、原子力規制委員会から厳しい御指摘がございますので、それを踏まえまして、さらなる再発防止策、体制の強化等を図り、一日も早い信頼回復に努めてまいりたいと思います。よろしくお願いします。

古川(元)委員 理事長は猛省しているというふうにおっしゃるんですけれども、きのう原子力規制委員会で出された資料を見てみましても、直接的原因についての対応については、再発防止対策に対する評価については、「これら再発防止対策を確実に実施することにより、本法令違反の直接的な原因は除去することが可能であり、本件の再発を防ぐことができるものと判断する。」そういうふうに評価されていますけれども、そもそも安全文化の劣化を示すというところに関して言うと、組織的要因に対する再発防止策に対する評価、そこを見てみますと、組織的要因等根本原因に係る分析が不十分であって、また、過去からの組織的背景要因がいまだ解決されず残っていると。大変厳しく評価を受けているわけですよね。

 今、「もんじゅ」がこの間ずっと置かれている状況、そして、特に事故以降の原子力に対する国民の不信、不安というのが高まっている中でこういう指摘を受けるというのは、どこまでどういうふうに猛省して、猛省していてどうしてこういう厳しい指摘が出てくるのかな、それくらいの再発防止策しか打てないのかなと思うんですけれども、この組織的な要因に対する再発防止策に対する厳しい評価について、どのように考えておられますか。

鈴木参考人 安全文化の劣化といいますか、その不十分な点の御指摘、これは、実は私、機構の理事長に就任するまで、原子力安全委員会というところに九年間おりました。その中でも、「もんじゅ」についてはいろいろな事象が発生し、原子力安全委員会としては、安全文化の徹底、安全意識の醸成等、そういうことの必要性を数次にわたって指摘したことがございます。

 したがいまして、私としては、理事長をお引き受けするに当たりまして、その経験ないし知見を活用し、それを具体的に注入するのに少しでもお役に立てればという気持ちでお引き受けいたしました。

 そういう中で、安全文化の問題、安全意識の問題は先生御指摘のとおりだと思いますが、これはなかなか、一朝一夕でそういう問題が一切ないような姿に変わるというのは大変難しいと実感しております。

 しかしながら、日々必死で努力することによって、安全文化、安全意識の向上を図っていくのが私の役割でありますし、また、それを職員に求めていくことだとこれまでやっておりました。にもかかわらず、このような事態になったわけでございます。

 これは、私が理事長に就任してからももちろん関係ございますが、理事長就任前からの保全計画あるいは保守管理の問題にさかのぼるわけでございます。

 新聞等で報道されているように、点検漏れが約一万件ある、そのとおりなんですが、これは約四万件の中の一万件ということで、全体では約四万件もございます。これの点検漏れがないかどうかを見直したわけでございますが、これは、過去数年間にわたってこれを見直し、かつそれを、規制委員会の措置命令によれば、私どもがいただいたものによれば、昨年十一月の半ばからことしの一月まで約二カ月半ぐらいでそれを全て点検しなきゃいけない、こういう事態になりました。私はそこで、その作業は大変だということで、改めて責任者を、担当理事を駐在させ、取り組んできたところでございます。

 それで、いろいろ手を打ってきているつもりでございますが、今回、それでもまだ不十分だという御指摘で、それについてはこれを真摯に受けとめ、先ほど、その猛省とは言葉だけじゃないかというようなお話もございましたが、私は、猛省して、それを実際に実行するほかに道はない、このように考えております。

古川(元)委員 今の話を聞くと、ますます反省していないんじゃないかというふうに私には聞こえたんですけれども、どうでしょうか、皆さん。

 今、理事長は、原子力安全委員会の経験、知見を生かして注入すると。そもそも、あの福島の事故が起きて、このチェックができなかった原子力安全委員会、今はこういう委員会もできて、規制委員会もできている、そのもとをつくっていたのは原子力安全委員会じゃないですか。きちんとチェックしていれば、安全第一でやっていれば、ああいう事故は起きなかったんじゃないですか。そのことを問われているわけでしょう。

 何か今の理事長の話を聞いていると、要は、ちゃんとあの福島原発事故を防げなかった原子力安全委員会、そこでの経験、知見をここに注入してというふうに聞いたら、ますます私は不安になってきましたよ。それで本当に安全文化の劣化というこの指摘をちゃんとクリアできるのかと。

 先ほどの話を聞いていますと、膨大なものがあって、一朝一夕にできないというお話がありました。理事長は、規制委員会の事情聴取に対して、形式的なミスが出るのはやむを得ないとおっしゃったというふうに報道されていますけれども、これは事実ですか。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 形式的なミスだと私の口から申し上げたことはないと思います。

 私、今先生御指摘の、安全委員会の経験は、事故のことを考えればもともと意味がないといいますか、御指摘ございましたが、一つ申し上げたかったことは、原子力安全には実体的安全性と手続的安全性があるということを常日ごろから感じ、また指摘してきました。この事故は、その実体的安全性がまさに崩壊したわけでございます。それをもたらした遠因の中に、手続的安全性の不備もあったと思います。安全委員会の役割は、主としてその手続的安全性に係ることでございました。

 今回、保守管理に係るこの指摘も、手続的安全性に係ることでございます。「もんじゅ」は今動かしておりませんので、実体的安全性については、今既に実体的には確保されているのが現実だと思います。しかし、それでは不十分で、手続的安全性を進めていかなきゃいけない、そういうことによって安全文化の劣化を防がなきゃいけない、こういう状況だと理解しています。

 それはそのとおりで、私は、したがって、規制委員会からの御指摘に対して、実体的安全性は満足されているけれども、手続的安全性が不十分といいますか極めて問題があるという御指摘だと理解しているということをプレスに対して答えた内容が、その後、規制委員会で議論される過程で、理事長は今回の点検漏れは形式的ミスと認識しているようだ、けしからぬという御指摘があったと記憶しております。

 私の口から形式的ミスということは決して申し上げておりません。そんなことが原子力安全にあってはならないと思います。

古川(元)委員 今の御発言を聞いても、実体的安全性と手続的安全性というお話がありましたけれども、それをそもそもそうやって分けて考えること自体が、私からすると、今回の事故の教訓というのは、どんなことであっても、いささかも安全性に疑念が生じるようなものであればそれを防いでいく、それが今回の事故の教訓だと思うんです。

 何かそれを、現場をやっていらっしゃる理事長としては、ちょっと私は今の発言を聞いていてびっくりするんですけれども、そんな評論家みたいに、実体的安全性は確保されているから手続的安全性はそれほどでもないみたいな、そういうふうに聞こえてくるんですね、今の発言を聞いていると。そういう認識だからこそ、こういう問題が起きているんですし、そういう認識だからこそ、こうやって厳しい指摘を受けている。この見方が甘過ぎるんじゃないかと思うんです。

 先ほど、現場の理事の人を新しい所長にされたというふうにおっしゃいました。その新しい所長さんが毎日新聞の五月十二日付の福井の地方版でインタビューを受けていて、そこで「我々は、土俵際にいるという意識を組織で共有しないといけない。これ以上、大きな失敗をしたら、もんじゅの研究開発がなくなってしまうという危機感がある。」そういうふうに語っているんですけれども、もうここまでで十分大きな失敗を何回も繰り返しているんですよ。まだこれ以上失敗したら、このときには本当に大変なことが起きかねないと我々は思うんです、あの事故を経験した者からしたら。そういう認識だからこそ、やはりこんな問題が起きているんじゃないかと思います。

 そういった意味では、理事長、ここまで厳しい指摘を受けた御自分の責任というのは極めて大きいと思いますけれども、御自分の責任はどのように考えていますか。

鈴木参考人 私どもとしては、規制委員会から、私どもに対する文書の伝達をまだいただいておりません。したがいまして、私としては、まず、正式に規制委員会からどのような文書をいただくのか、それに基づいて適切に対処したい、このように考えております。

古川(元)委員 そういう認識だから、こういう問題が繰り返して起きているんじゃないか、こういう厳しい指摘がされているんじゃないかと私は思います。

 先ほどのお話の中でも、問題は御自分が理事長就任前からあったような、そういうようなお話をしていましたけれども、就任前にあったことだからといって、責任がないというわけにはならないと思うんですね、今この時点でこういう問題が起きているんですから。

 やはりその責任というのは、まだ正式に受けていないから、受けてから考えますということじゃなくて、もうこれは、これだけ報道もされて周知されているわけでありますから、そういう中で自分の責任というものをどのように考えているのかということは、そのとき考えますということでは、まさにそれこそが、そういう意識で大丈夫なのか、そういうところが問われているんじゃないですか。いかがですか。

鈴木参考人 私は、組織の責任者ですので、先生の御指摘については十分考えなきゃいけないともちろん思っております。

 先生から、私の認識が、実体的な安全性が確保されているので手続的安全性の方は大したことないというふうに聞こえるというお話なんですが、本当に私は、これは残念といいますか、マスコミ等もそういう論調になっているようでございます。しかし、過去のいろいろな原子力関係の事故は、ほとんどがもともとは手続的安全性に起因しています。ですから、手続的安全性を重視することがこれからは極めて重要です。規制委員会がわざわざ独立機関になったのも、それが理由だと私は思っています。

 原子力安全の一義的責任は事業者にあるとよく言われます。したがって、私は、事業者の責任者なので、それについては必死で頑張って、日々職員と、「もんじゅ」にもしばしば出かけまして、現場と意見交換しながらやっております。

 これはまさに、規制を仮に受けていないとしても、原子力安全を確保する責任は我々にあるんですね、事業者に。これは非常に重要な考え方です。しかし、それでもなおかつ社会的な説明責任を負っておりますので、手続的安全性を踏んで説明責任を果たしていくというのが原子力を進めるやり方だと私は思っています。

古川(元)委員 その手続的安全性が踏まれていなかったということなんですから、これは極めて大きな問題だ、その責任は極めて重いということを改めて申し上げたいと思います。

 その上で、ちょっと田中委員長にお伺いをしたいと思いますけれども、今回の問題を委員会で扱って、どういう意見が出て、また委員長自身どのようにお考えになられたか。この場でもう一度、記者会見等もされていらっしゃいますけれども、この国会の場で所感をお述べいただけますでしょうか。

田中政府特別補佐人 この問題につきましては、昨年十一月に、いわゆる保安検査で義務づけられている点検がなされていないということがありまして、その後いろいろ規制庁の方で詳細を検査したところ、一万件近い件数が見つかったということです。

 今までも「もんじゅ」に関しては、こういったいろいろな事例があるたびに、根本原因分析をして、今後こういうふうにしますといういろいろな対策が繰り返し行われてきたところでありますけれども、それが実質、どうも生きていない、それが果たされていない、そういう報告を受けまして、私どもとしては、これはかなり深刻な事態であるということで、安全文化というものが少し欠けているというような認識をさせていただいたというところでございます。

古川(元)委員 安全文化の劣化を示す重大な問題だ、ここまで指摘しているわけでありますから、これはやはり、この命令を解除する条件として、安全文化がきちんと確立された、そういうふうに理解されるような、そういうことになることを条件にすべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

田中政府特別補佐人 今回のいわゆる運転の準備の停止命令というのは、原子炉規制法上の、法律に基づくものでございます。安全文化というのは、これは法律的な要件ではございません。

 ただし、安全文化というのは、もうこれでいいんだとかそういうふうに考えた瞬間から劣化が始まります。だから、絶えざる向上努力というのが必要ですので、それについては、条件にするのではなくて、私どもとしても、きちっとそういう努力がなされているかどうかということについて、十分に監視、点検していきたいというふうに思っています。

古川(元)委員 法律ではそこまで求めていないかもしれませんけれども、やはり規制委員会は原子力について、とにかくこれは安全第一で規制をしていく、そういった立場にあるわけです。

 そういった意味では、これは、今回の福島のように事故が起きてから、あそこをこうしておけばとか言っていても、もう本当に後の祭りなわけであります。実際に、これだけ多くの被害者の人たちが今もいて、そしてまた将来不安にさらされている。そして、さまざまな風評被害であるとか、事故が起きればどれだけ大きな影響が出るか、将来にわたっても出るかということを考えれば、ここのところはやはり相当厳しく見ていかなければいけない問題だというふうに考えています。

 そういった意味では、ここは規制委員会としてもしっかりそこの部分、厳密な条件というところまでは言えないかもしれませんけれども、やはりちゃんとそこは、安全文化が定着した、劣化が防止されたというところまで、劣化がなくなったというところが一般的に見えるような状況になるまで、これは条件とすべきだというふうに私は思います。

 そもそも、この間の規制委員会なんかの議論を聞いておりますと、中で出ております意見などを聞いていると、この組織の存在自体が問題がないか、そういう厳しい声も出たようであります。

 そういった意味では、そもそも、そうした今の組織で本当に安全文化の劣化が解消されるような状況になるのか。そのことについては、これからも私どもはしっかりチェックをしてまいりたいと思っておりますし、規制委員会としてもその部分はしっかり監視していただきたい、そのことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

森委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。

 田中委員長、御苦労は多いと思いますけれども、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思っています。特に、この原子力規制委員会、まさに規制庁の実力が問われる場面というのが多々ありますけれども、権威ある機関たり得るかどうか、独立性と透明性を保てるかどうかということが肝要かというふうに思いますので、ぜひ、信念を持って、ぶれずに、体に気をつけて頑張っていただきたいというふうに思っています。

 私の実家も福島第一原発から四十キロのところにございまして、この事故は人生観を変える出来事、事態であったわけであります。なぜこの事故が起きたのか。これは、今回の原子力規制委員会、規制庁、これができたまさに原点だろう、私はそう思っています。

 国会事故調というものができて、独立性を持って調査した。その結果として、国会事故調は何と言っているかといえば、あの三・一一の事故の根源的な原因というのは、規制する立場とされる立場が逆転現象となってしまった、その結果として、原子力安全についての監視、監督機能の崩壊が起きた、これが根源的な原因である、こういうふうにいわば結論づけているわけであります。

 二度とあのような原発事故を起こさないというのが原子力規制委員会の原点だろうというふうに私は思いますが、その点を確認したいと思います。

 また、あわせて、国会事故調のような、こういう報告を読めば、先ほど申し上げたような、権威ある、独立性の高い規制機関がしっかりと機能していれば、あのような原発事故は起きなかったというふうになるわけでありますが、そういう認識でよろしいですか。

田中政府特別補佐人 先生御指摘のとおりでございまして、私の認識も同じでございます。私も福島出身ですし、ああいった事故は二度と起こしてはいけない、そういう強い思いで今取り組んでいます。

 それで、私ども原子力規制委員会は、三条委員会として、独立性というのを持たせていただきました。また、規制の実効性という意味でも、バックフィットということも入れていただきましたので、そういったものをきちっと適正に活用して、皆さんの、国民の負託に応えられるように努力していきたいと思っております。

玄葉委員 まさに、あの原発事故が原点である。

 もう一度確認をしたいんですけれども、あわせて、独立性の高い、透明性の高い規制当局がしっかり機能していれば、あのような事故は防げた、そういうふうにお考えですか。

田中政府特別補佐人 仮定の問題、過去に起こったことですから、それは防げたというふうに申し上げるのはちょっとはばかるところがありますけれども、そういうことが、国際的にも、今回のさまざまな事故調からも御指摘されているというふうに認識しております。そうであるべきであったということの反省で、私どもは発足したというふうに認識しております。

玄葉委員 やはり、原点を常に確認しながら進まないと、ぶれてしまう懸念があるんですね。だから私はあえて聞いているんですけれども、やはり、ここがぶれてしまうと、何だったのかということになりますので、委員長、先ほども申し上げましたけれども、ぜひ信念を持って取り組んでいただければというふうに思っています。

 その上で、最初の質問なので、抽象的なことを一つだけお願いしたい、あるいは要望したいと思っております。

 いわゆる福島第一原発の廃炉の問題というのは、原子力規制委員会にとっては、これは特定原子力施設というものに指定して安全管理を行っている、そういうことになると思うんですけれども、この廃炉プロセスというのは世界が注視をしています。国家の威信をかけたプロセス、戦いでもあります。目の前にあるリスクでもあります。したがって、この第一原発の廃炉プロセスについては、原子力規制委員会にとって最も重要な任務であるというふうに認識をしていただきたいというふうに思っていますが、いかがですか。

田中政府特別補佐人 御指摘のとおり、福島第一原子力発電所をいかに安全に廃炉に導くかということについては、私ども大変重要な任務を負っているというふうに思っています。

 そのために、廃炉対策推進会議においても、廃炉に向けた中長期のロードマップが出てまいりますが、これについても、その進捗状況あるいは内容については、私どもの方で福島県からの代表者にも四人ほど入っていただいていますけれども、そこで十分に議論して、それをチェックしていくということでございます。

 また、現場においても、このところトラブルが少し続いております関係で、現場の駐在員も四月に一名ふやしまして、五月にもまた、間もなくもう一名ふやすという格好で、私どもとしては、その安全確保をしながらきちっとリスクを下げていくという点について、最大の努力を払っていくつもりで取り組んでおるところでございます。

玄葉委員 三月十八日だったかと思いますけれども、ネズミによる停電のときというのは、私はあの日、眠れなかったですね。あの報道を夜の七時か八時ぐらいに聞いて、一日眠れなかったんですよ。いまだに仮設であったということも率直に言うとわからなかったんですけれども、残念なことに、規制庁も指摘せずというところがあったわけですよね。

 ですから、この第一原発の廃炉プロセスが最も重要な任務であるというふうにお考えになっているのであれば、やはりそれに見合う体制をしいてもらいたいと思うんです。これは、すぐ人員の体制強化を実現するのは大変なことだというのはわかっているんですけれども、委員長としての強い意向としてそういう体制強化を図ってもらいたい、そう思っていますが、いかがですか。

田中政府特別補佐人 先ほど申し上げましたように、とりあえず二名増強するということでありますし、今、福島の現地の所長には、どういったことをすればいいのかということについて具体的に提案をしてくださいということで、先日もお会いしてお願いしています。

 それから、三月十八日の停電というのは、皆さんに御心配をかけて本当に申しわけないと思います。

 その後、私も再度現地視察をさせていただきました。残念ながら、仮設というか、事故から二年たちましたけれども、実際に、少し落ちついていろいろな手当てができるようになったのはそんなに古くはなくて、少しずつ、まず耐震が大丈夫かとか、そういった手当てをしてきておりまして、その点で、ネズミによってああいう停電が起こってしまった。私が現地に行きまして、東京電力の社長、副社長とも話をしまして、全体的に、全てのそういった仮設的なものを再点検していただくようにお願いしてきたところでございます。

 最大限、安全確保に取り組んでいきたいと思います。

玄葉委員 とりあえずの人員確保というお話をされましたけれども、本当に必要な人員はスピーディーに確保するという体制で、また姿勢でぜひ臨んでほしい。これは絶対間違いは許されないことなので、規制庁のまさに権威にも強くかかわることだというふうに思います。

 ちなみに、直接委員長がお答えする話ではないと思いますけれども、やはり気になるのは、国の関与をもっと強めるべきだという意見がこの場でもよく出されていて、確かに、どうしても東電主導だと、財源の問題というのが常に経営者の中には存在をすると私は思っているんですね。ですから、必要な措置だなと思っていても、必要な措置がとられない可能性というのが常に存在をするというのが私の見立てなんです。ですから、やはり国がより直接関与する方法、すべというのを考えるべきだというふうに私は考えています。

 その上で、もう一点。

 文科省、原子力の損害賠償の担当省庁でございますけれども、国会事故調の報告書によれば、「依然として事故は収束しておらず被害も継続している。」こういう報告書を出しているわけでありますが、被害が継続しているという状況の中で、民法の規定がそのまま適用されると、今回の事故による原子力損害の被害者は、最短で来年三月十一日に損害賠償請求ができなくなる。つまりは、時効が来てということになるわけでありますけれども、その点について、文科省としてはいかに対応するつもりですか。

福井副大臣 ありがとうございます。

 実は、明日、衆議院の文科委員会で法律を審議していただきます。今般、東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律案というものを出させていただいておりまして、和解仲介を申し立てた者が和解仲介の打ち切りの通知を受けた日から一カ月以内に裁判所に訴えを提起した場合には、和解仲介の申し立てのときに訴えを提起したものとみなすということで、自動的に来年の三月に時効が来るということを防いでいただくような法案を明日から審査していただくことになっております。

 二分ぐらいかかりますけれども、事実経過を御説明させていただきます。

 文科省といたしましては、東京電力に対しまして、和解仲介の申し立てを行っていない方々も含む被害者の方々に対しまして、消滅時効について柔軟な対応を行うように要請をしてきたところ、東京電力としては、総合特別事業計画というものを改定いたしました。二つございます。事故発生時ではなくて、東電が請求受け付けを開始したときから三年間請求を受け付けること、そして二つ目は、被害者が請求書類またはダイレクトメールを受領した時点から三年間請求を受け付けるというふうに表明をしてございます。

 事実経過としては、以上でございます。

玄葉委員 一言で言うと、不十分なんですよ。不十分であることを認識してもらいたいというふうに思っています。

 つまり、政府の提出法案は法案で、私は一定の評価はいたします。ただ、先ほど説明の中にもありましたけれども、一カ月までに申し立てをしなきゃいけないというのが要件になっているわけです。そんなこと、みんなできるはずないじゃないですか。常識で考えたってわかる話でありまして、そんな状況のまま時効を迎えるというようなことが絶対にあってはならないというふうに思っていますし、先ほど、東電にも要請をし云々という話がありましたけれども、私は、東電の見解でも不都合は十分には解消されないというふうに考えているんですね。

 ですから、まず文科省として、法案は出したけれども、これはこれで私も一定の評価はします。ただ、まだまだ十分ではないな、救えない被害者が存在するなということをきちっと認識してもらいたい。その点だけ確認をしたいと思います。

福井副大臣 ありがとうございます。

 ちょっと、法案の中身はまた別途先生に御説明をさせていただきたいと思いますけれども、先ほどおっしゃいました一番重要なところを。

 文科省といたしましては、東京電力に対して、損害賠償請求をされていない被害者をきめ細かく把握することに努めるなどの丁寧な対応をするように求めております。文書も出させていただいております。

 今回の事故の損害賠償につきましては、適正な賠償が円滑かつ迅速になされることが最優先という共通認識を持ちまして、まずは、請求をまだされていない被害者の方のきめ細かな把握を行った上で、その実情もよく見きわめた上で、関係省庁とも連携をして必要な対応を検討してまいりたいということで、行政行為を行っている最中でございます。

玄葉委員 だから、今まさにおっしゃったように、政府の提出法案だけでは十分ではないなということをわかっているわけですよね。ですから、東電に要請もしているし、もし東電の見解でも不十分ということであれば必要な対応を別途とる、こういうことでよろしいですね。

福井副大臣 もちろん、現場の情報そして実情、被害者の皆さん方の実情、これが一番重要と考えておりますので、また先生の御指導もよろしくお願いしたいと思っております。

玄葉委員 この三年の時効というのは、余りにも実態に合っていないというふうに思うんですね。ですから、実態に即した形で、これは、場合によっては政府というよりは党派を超えた与野党の立法措置ということがあってもいいのかもしれません。

 その場合、三年という時効を何年にするかとか、なかなか難しい問題ではあるんですけれども、必要なことは、現時点では、とにかくこの政府提出法案だけでは不十分である、今の東電の見解でも不十分である、そのことをしっかりと政府として認識することです。その上で、国会も含めて、次なる措置というものをよく考えていく、最終的に、全ての被害者ができるだけ早く完全な形で賠償されるという形にしていくということだと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

森委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 今、玄葉委員の質疑において田中委員長が、今回の福島第一原発の事故、こうした事故は二度と起こしてはならないんだ、こういう思いを改めておっしゃってくださいました。これは、福島出身の玄葉委員、あるいは我が党の、本会議の後、きょう午後一番で質問に立たせていただきます小熊慎司議員も福島出身、私は大阪出身でございますが、そうした福島出身の議員の方々と全く同じように、今回のこの事故、二度と起こしてはいけないこの思いを同じくして、今、仕事に取り組んでいるところでございます。

 そうした中で、先ほども田中委員長から確認をいただきましたように、この福島第一原発の収束をさせ、そして安全に廃炉をしていく、この作業が、玄葉委員の言葉をかりれば、これは国家の威信をかけた戦いだと。私も全く同感でございます。

 しかしながら、この原発の廃炉、そして原子力発電事業を推進する、原子力事業を推進する今の推進の体制、これを見ると、本当に心もとないものがございます。

 四月十九日にこの委員会で私は汚染水の問題を取り上げさせていただいて、そして、きょうおいでの廣瀬社長にも二〇〇二年の原発のトラブル隠しのことも取り上げて、本当に覚悟を持って事業の推進そして福島の廃炉に取り組んでいただきたい旨お願いをいたしたところでございますが、その後も、汚染水の問題に加えて、今も再三指摘があります「もんじゅ」の点検漏れの問題、いずれをとっても、今の日本の官民、今の日本の行政府とそして電力事業者に原子力事業を推進していくその力が本当にあるのかな、こういうふうに懸念をしているところでございます。

 そうした中で、参議院で予算委員会等を開催してまいりましたが、今週にも総理の方から、この廃炉の問題を含めて、安倍政権としては、東京電力に押しつけるのは間違いだと考えている、もっと国が前面に出て、とるべき責任を果たしていくんだ、また茂木経産大臣も、再三、一歩前へ、前面にということを繰り返しておっしゃっています。この、前面に立つとおっしゃっている趣旨について御答弁をお願いします。

赤羽副大臣 赤羽でございます。

 私も、昨年十二月二十七日に経済産業副大臣また原発の現地対策本部長の任命を受けまして、直後から第一原発の四号機の中にも入りました。毎週定期的に福島入りをさせていただいて、できるだけ一F、二Fの現場には足を運ぶようにしておりますが、今、足立委員御指摘のように、まさに今回の一Fの廃炉というのは、世界に例を見ない、大げさに言うようでありますけれども、人類史上初めての挑戦というぐらいの気概でやらなければ、とてもなし遂げることができない難事業だというふうに認識をしております。

 であるがゆえに、単に東電関係者に任せるのではなくて、国が前面に出て、しっかりとした、必要なことは予算をつけ、ロードマップも政府の責任としてつくっていかなければいけないという思いで事を進めさせていただいております。

 その中には、放射性物質の分析ですとか、遠隔操作ができるロボット等に関する開発、実証、また、それの研究開発拠点の整備等の研究開発の推進におきまして国が主導的な役割を果たし、平成二十四年度の補正、また、昨日成立をいたしました当初予算にも計上させていただいておりまして、そういった意味でも、国としても全力で廃炉に取り組んでいくということが一つでございます。

 また、廃炉に向けました中長期ロードマップにつきましても、茂木大臣が一月の頭に現地に行きまして、やはりこれは、一号機から四号機までそれぞれ号機によって異なる状況をもう一度精査して、そして燃料デブリ取り出しスケジュールをできる限り前倒しにするなど、六月中をめどに、中長期ロードマップを政府の責任として見直すこととしておるところでございます。

 そして今御指摘がございました、昨今問題となっております汚染水の問題につきましても、廃炉対策推進会議のもとに汚染水処理対策委員会を設置いたしまして、政府、原子力規制委員会、東電、産業界が一体となって検討を行っているところでございまして、この地下水の流入対策につきましては、五月中を目途に、今後の対応方針の第一弾を取りまとめることとしております。

 これらの取り組みを通じまして、安全維持に万全を期して、安定的に、また速やかに廃炉を完了できるように、これが福島再生の大前提であるというふうに考えておりますので、全力で取り組んでいきたいと思いますので、御指導のほど、よろしくお願いしたいと思います。

足立委員 今、赤羽副大臣から御答弁いただきましたが、本当に大事なところなのでもう一言ちょっと確認しておきたいんですけれども、茂木大臣であれ、あるいは総理であれ、研究開発、研究開発と言うんですね。研究開発、研究開発と言っている一方で、今おっしゃったように、廃炉推進体制をつくってロードマップをつくる。これでしっかりやるのかなと思って、廃炉推進体制の強化についてということで、福島第一原発の廃炉推進会議の設置の要綱を見ますと、また研究開発と書いてあるんですよ。「燃料デブリ取り出し等に向けた研究開発体制の強化を図るとともに、現場の作業と研究開発の進捗管理を一体的に進めていく」と書いてあるんですよ。

 これは、経産省は研究開発以外のことには手が出せないということですか。

赤羽副大臣 原子炉の中の作業、直接に今入れる状況じゃありませんし、その遠隔操作ができるロボットの技術開発ですとか、炉内の状況の把握、解析、そういったものも進めていかなければいけない、そういったことを所掌しているのは私たち経済産業省だということ、中でそういうことを言っているんだというふうに認識をしております。

足立委員 四月十日の経済産業委員会において民主党の馬淵委員が、そもそも所管しているのは経産省だよなと、ついては、所管する立場から茂木大臣はどういう責任を負っているんだ、こういう質問をされて茂木大臣は、いや、所管する立場からやり得ることは全てやっていくんだ、こうおっしゃっています。

 研究開発に全く関係のないこともやる覚悟があるのか、おっしゃってください。

赤羽副大臣 今御質問の、研究開発と関係ないことを全てやるかというと、ちょっと御質問の趣旨が明確ではない、理解が明確ではないかもしれませんが、私どもの心構えとして、冒頭申し上げましたように、人類史上初めての挑戦だ、それに対して立ち向かっていくんだという意気込みである以上、政府の責任としてしっかり全てに取り組んでいくという決意でおります。

足立委員 原子力事業を所管している、あるいは電力事業者を監督している立場から、あるいは、この福島の事故に一定の責任を持って総理自身が前面に出るとおっしゃっているその前面という点について、研究開発以外のことでどのような御努力をされておられ、これからもされる決意なのか、お聞かせをください。

赤羽副大臣 先ほどの御答弁した中に申し上げたと思っておりますが、例えば今の汚染水の問題、現在当面する深刻な課題の一つでございます。

 このことにつきまして、先ほど申し上げましたように、廃炉対策推進会議のもとに汚染水の処理対策委員会を設置いたしまして、ここは原子力規制委員会にも入っていただいて、政府と原子力規制委員会、そして東電、また建設業界等々の産業界が一体となって検討を行っていく、この立ち上げもさせていただきましたし、きょうも二回目の会議をさせていただいております。

 五月中を目途に今後の対応方針を、第一弾でございますけれども、取りまとめを発表することとしております。

足立委員 ちょっと時間がなくなってしまうんですが、おっしゃったように、今、廃炉対策推進会議のもとに汚染水処理対策委員会が設置されていますが、これは、経産省の設置法のどの条項に基づく事務でありますか。確認させてください。

赤羽副大臣 電気事業を所管する法律のもとに設置されております。

足立委員 ありがとうございます。

 まさにこれが大事なところなんです。これまで国会の答弁、何度もさまざまな党派から、国が前面に出る、先ほど玄葉委員からもお話がございましたが、国がもっと前面に出ないとこれは大変だとみんな思っているんです。研究開発、研究開発、それは、研究開発で一歩前に出る、当たり前ですよね。先ほどもあったように、赤羽副大臣御自身がおっしゃっているように、この問題というのは、日本全体の問題であり、またさらに言えば、世界の問題なんです。そういった研究開発等について国が前面に出るのは当たり前なんです。

 我々国会が今求めているのは、もっと前なんですよ。当たり前のことを粛々とやっているんじゃないんです。これまでと違う、場合によっては法律改正したらいいですよ。もともとの原子力賠償法の枠組みを一切超えていないんですよね、今は。私は、今の原子力事業者あるいは機構の見るにたえないこの惨状を見るにつけ、やはり、もう一度法律改正に取り組んで国が本当の意味で前面に出る必要がある、そう思っています。

 今、国会答弁で安倍総理あるいは茂木大臣が、前面に出る、前に出る、これは単なるリップサービスですよ。本当の意味で、法律に基づく前面に出るということについてやはりしっかりとやっていただく必要がある。ちょっと赤羽副大臣、ぜひこの御決意をお願いします。

赤羽副大臣 十九年前、私自身、阪神・淡路大震災で家を失った。そのときが政治家の原点であります。そのときの悔しい思い、つらい思いを忘れずにいながらこの今の職務についております。福島に毎週のように足を運んで、本当にこの原発の災害の大変さ、深刻さということを改めて認識をしながら、先ほど何回も申し上げました、人類史上初めてなんということは軽々しく言うべき問題ではないと思っておりますので、委員の御指導もいただきながら、やれることは全てやっていくんだ、リップサービスではなくて、政治家としてしっかりと取り組んでいきたい、こう決意をしております。

足立委員 ありがとうございます。

 まさに今赤羽副大臣がおっしゃったように、原子力事業というものを所管する立場からやり得ることは全てやっていく、必ずこれは実行をしていただきたいと思います。

 今、国と事業者の役割ということを申し上げましたが、もともと原子力事業についての国の責任ということを一番重く規定しているのは、いわゆる原賠法、原子力損害の賠償に関する法律です。

 事故が起こった直後に、これは一体誰がどう責任をとるんだということで、相当国会においても議論があったと承知をしています、私はまだ議員ではございませんでしたが。第三条に、一義的には原子力事業者なんだが、損害が異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じた場合はこの限りじゃない。

 ただ、この福島については、今、赤羽副大臣がおっしゃったように、大変重たい事故ではあるけれども、ただし書きには該当しないという整理をされて、ちょっと条文をお配りしていなくて恐縮ですが、国の措置、第十六条、あくまでも国は、東電が賠償し切れないときに東電に対して必要な援助を行う。これは後ろに立っているんですよ。後ろで援助するんですよ。こういう枠組みに立っている、これが今の国の現状だ、そう思います。これは法律ですから仕方ない。

 しかし、原子力損害賠償支援機構法をつくりました。つくった支援機構法のその附則でこの原賠法に言及しているんですね。この法律の施行後できるだけ早期に賠償法の改正等の抜本的な見直しをするんだ、こう書いてあります。そして、附帯決議で、できるだけ早期にと書いてあるのは「一年を目途とする」、こう書いてあります。もう一年たちましたがどうなっているでしょうか、文科副大臣ですね。

福井副大臣 原賠法第三条一項ただし書きの取り扱いにつきましては今先生おっしゃったとおりでございますが、もう一度繰り返しますと……(足立委員「もう繰り返さなくていいです」と呼ぶ)そうですか。

 今、十六条はおっしゃいましたが、十七条もございまして、同法十七条におきましては、政府が、「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするもの」という旨が規定されているところでございますので、その趣旨にのっとり行政行為が行われるというふうに承知をいたしております。

足立委員 まさに今副大臣がおっしゃったように、第十七条には、仮に先ほどのただし書きに該当した場合には、被災者の救助及び被害の拡大の防止のために必要な措置を講ずるということとしていますが、今回はこれに該当していないんですね。今回はこれに該当していない、あくまでも十六条。

 私が質問しているのは附則ですよ。附則の実施はしたんですか、附則に書いてある抜本見直し。

福井副大臣 失礼しました。

 附則第六条第一項におきましては、できるだけ早期に、今般の原子力事故の原因等の検証や、原子力損害の賠償の実施状況を踏まえて、原子力損害賠償制度における国の責任のあり方等について検討を加え、そして、これらの結果に基づき必要な措置を講ずるものとされております。

 これらにつきましては二つございまして、大前提となる我が国エネルギー政策における原子力の位置づけ等の検討を踏まえる必要がある、これが境界条件の一つでございます。

 もう一つは、被害者への賠償支払いが当面継続する見込みであるということで、損害賠償の全体像、これがいまだ明確になっていないという状況にあること、これも境界条件その二でございます。したがって、必要な措置を講ずるための検討の途上にあるというところでございます。

 政府といたしましては、まずは、現行の枠組みのもとで、被害の方々に対する適切な賠償支払いを着実に実施していくことを最優先としております。

 同時に、現在進行中の福島の賠償の実情を踏まえながら、現行制度や賠償実務上の課題の抽出を行いまして、原子力損害賠償制度の見直しに資する情報の収集、整理などを、関係省庁と連携して引き続き行ってまいりたいということでございます。

足立委員 副大臣も大阪出身だと伺っているので、大阪人としてもうちょっと、役人のあれを読むんじゃなくて、私が申し上げているのは、一年をめどに抜本見直しするんじゃなかったんですかと言っているんですよ。あるいは、副大臣がおっしゃっているのは、この「できるだけ早期に、」はここにかかっていないんですか。この附則をどう読んでいるんですか。

福井副大臣 ありがとうございます。

 同じたこ焼きを食べたその血液が私の体に流れている、その肉声で今申し上げたところでございまして、もう繰り返しませんけれども、原子力の位置づけと損害賠償全体像、この二つが境界条件になって、いまだ検討の途上にあるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

足立委員 しっかりこの附則で書いた一年をめどに抜本見直しがされることをみんなが期待しているんですよ。なぜならば、もともとある原賠法の枠組みの中に国がとどまっているからなんですよ。今回の福島第一原発事故は、これまでの原賠法が想定していなかった、まさにインパクトというか、我々、本当に大きな、重い宿題を背負ったんです。

 政府としてこの機構法の附則をしっかり実施をする、原賠法の抜本見直しをする。いつまでにやるか、お答えください。

福井副大臣 繰り返しになって恐縮ですが、その境界条件を御理解いただいた上で、検討の途上にあるということも御理解いただいた上で、情報収集を図る。一番大事なのが、被害者の方々に対する適切な賠償支払いを着実に進めていくということでございます。それを、一番大事なこと、最優先ということで今行っておりますので、御理解をいただきたいと思います。

足立委員 条文のことでやり合っていても仕方ないので、これで次の話題に移ります、あと十分だけしかございませんが。

 この特別委員会の、あるいは田中委員長を初めとする規制委員会の重大な任務の一つは、今申し上げた、安全に廃炉を進める、それを監督する、これは当然ですが、事故究明、原因の究明、これが第一であるかと思います。この原因究明の現状、見通し、田中委員長、お願いします。

田中政府特別補佐人 御指摘のように、今回の事故の分析をきちっと行って、その知見を原子力規制委員会の所掌事務の一つであります安全規則に取り入れていくということは、大変重要なことであります。

 これまで、国会事故調とか政府事故調等において事故調査の報告書がまとめられていますけれども、そのいろいろな分析についても技術的な評価の違い等もございまして、引き続き、それについてまだ今後詰めていく必要があるということでございます。

 このため、私どもとしては、先日、事故調査委員会を発足させました。事故調査といいましても、これから私どもが行うべき事故調査は、廃炉を進めながら適宜行っていくということになりますので、相当長期にわたるかと思います。

 そういったことを踏まえまして、当面は月に一回ぐらい、個別の論点になっているところを明確に解析するような形で事故調査を進めていくということで進めておるところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたように、検討会をつくられて、五月一日に初会合を開かれたということで報道もされています。更田委員が担当委員として取りまとめていらっしゃるようですが、更田委員は、この事故原因の検証は十年、二十年間続くものになるだろう、こういうふうにこの会合でおっしゃっていると報じられております。

 一方で、きょう廣瀬社長においでいただいていますが、これは事前に東京電力にと申し上げていなかったので、可能であればで結構ですが、十日に、電源喪失の原因について、国会事故調は津波によるものではない可能性があると指摘していたのに対して、いや、これは津波が原因だったんだ、二年以上たったけれども、よく考えたらデータがあった、それを解析してみたらやはり津波が原因だったとわかったという発表を東京電力のクレジットでされています。

 これはそういう事実でよろしいですか。

廣瀬参考人 東京電力の廣瀬でございますが、お答え申し上げます。

 この事故原因につきましては、これまでも私どもの社内の事故調査報告も出しておりますし、また、その調査報告を受けて、私どもの原子力の改革プラン等々についてもこれまで解明に努めてきたところでございます。

 その結果、私どもが持っておりますパラメーター等々から判断をして、また、その後の目視の点検等々も判断して、特に今問題となっております幾つかの機器については津波によってその機能を逸したということは、これまでも申し上げているところでございます。

 今、足立先生の御指摘の、十日に発表させていただいたものは、そうした膨大なデータの中でかなり細かいデータについてまだまだ全部一つ一つ見切れていないものがあって、これはまたこれで一生懸命やらなければいけないところでございますけれども、今回、そうしたデータが見つかって、そのデータをまた解析したところ、それはむしろ私どもの主張を裏づける、津波によってその機能がそこの時点でとまってしまっているというデータがまた改めて出たということで、発表させていただいたということでございます。

 この後も十年、二十年続くかどうかは別といたしまして、まだまだわからないことも当然ありますし、先ほどのお話のように、ロボットで中に入ってみたらこういうことがあったというようなことも今後も当然起こり得る話でございますので、引き続き、そうしたことも踏まえて、そうしたそれぞれのタイミングで我々なりの考え方をお示ししていくべきだというふうに考えております。

足立委員 まさに、いわゆる東電の事故調査、これにおいては、今廣瀬社長からおっしゃっていただいたように、当初からそういうお立場をとっておられる。それが改めてデータで補強されたということかと思います。

 こういう内容について、国会事故調は当初から、いや、それは違う、こういう報告書を出しているわけですが、事故原因についての国会事故調の報告、すなわち、津波以外に原因がなかったかどうかわからないというこの国会事故調の指摘、それから今回の十日の東電の発表、これを規制委員会としてどのように評価をされているか、田中委員長、お願いします。

田中政府特別補佐人 今回見つかったというデータは、今、事故の論点を解明する上で大変大事なものでありまして、非常用の電源がいつとまったかというようなことに関するものでございますけれども、こういったデータは客観的に私どもの事故調査委員会できちっとそれを分析した上で、私どもとしては、東京電力とか国会事故調とかの分析にとらわれないで、私どもとしてきちっと分析を進めていきたいというふうに思っています。

足立委員 ぜひよろしくお願いします。この原因究明については、二十年、三十年、百年続くかもしれないこの原因究明、必ずやり遂げねばならないと思っております。

 その何十年とかかる原因究明の中で、収束に係るさまざまなデータ等が散逸をしていっているんじゃないか、一部、そういう懸念を指摘する声がございます。先ほど来ありますように、今回の収束作業は、日本のみならず、世界の原子力事業にとって大変重要なデータがいろいろある。ところが、国会事故調の報告書は国会図書館に保存され、政府事故調の報告書は内閣官房、そして、日々の現場のデータは全て東電が今持っている。私は、この収束過程でのさまざまな知見、データ、ノウハウ、これはやはり国としてしっかり保全に取り組んでいく必要がある、このように考えております。

 そうした観点から廣瀬社長に、今、東電においてそういう記録の保全という観点でどのような取り組みになっているか、御説明をお願いします。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 私ども、あの事故を起こしてしまった当事者といたしまして、二度とこのような事故を起こさない、そうするためにも大変貴重なデータ等々の資料だというふうに認識しておりますので、その散逸を防ぐべく、万全に保全をしていくということを徹底しております。

 そうした中で、さきに御指摘がありましたような、新たなデータの解析等々で新たな事実が判明するということもあろうというふうに思っております。

足立委員 そういう記録の保全という観点で、東電の中で、事故前の規定にプラスして、何か記録の保全についての内規等はございますでしょうか。

廣瀬参考人 御存じのように、私どもは訴訟も抱えておりますので、そうした観点からも、しっかり保存をしておきませんとそうしたことにたえられないということで、社内でそうした指示を徹底して、保存をしておくようにということを徹底させていただいております。

足立委員 別に揚げ足取りをするつもりは全くございませんが、今は廣瀬社長がおっしゃったように、民間事業者ですから、当然、民間事業者としての利益に資するデータは大事にするけれども、反対に、訴訟においてマイナスになるデータは廃棄をする可能性だって、一般論ですよ、ある。

 赤羽経産副大臣、これは東電に任せておいて大丈夫ですか。

赤羽副大臣 そのようなことはないと思っておりますが、そういった懸念をなくすためにも、本年四月四日に開催をいたしました廃炉対策推進会議の事務局の打ち合わせにおきまして、資源エネルギー庁の担当管理職から東京電力の担当部長に対しまして、廃炉を進める中で、損傷した機器や瓦れき等の廃棄物を動かす場合には、記録を残す等の対応をしっかり行うようにと改めて指示を行ったところでございます。

足立委員 私は、今おっしゃったような形では、とても東京電力がその記録の保全をなし得る、端的に言えば、信頼が十分できない状況に今あります。国会でこうして活動する身として、やはりこの記録の保全については、私あるいは維新の会、あるいはさまざまな各党との連携の中でまたしっかりと法的な措置にも取り組んでまいりたい、そのように一言申し上げておきます。

 もう時間が最後になりますが、あと最後に一点、どうしても聞いておきたいことがございます。

 福島第一原発の原子炉建屋の耐震安全性です。二十三年の五月、二十四年の八月からまたこの春にかけて、さまざまな検証を東電としてされておられること、これは報道でも承知をしております。しかし、東電の報告書を見ると、十分な安全性を有している、耐震性に問題ない、このような言葉がずっと並んでいます。どういう基準に照らして十分な安全性とおっしゃっているのか、御答弁ください。

廣瀬参考人 私ども、御指摘のように、地震以降、当然壊れておる部分がございますので、そうしたことを織り込んだデータをもとにした解析を行って、現在申し上げているのは、二年前の地震と同程度のものが発生したとしても耐震性に問題はないという結論をつけているところでございます。

足立委員 もう時間が来ましたので最後にしますが、今、廣瀬社長は、先般の東日本大震災と同等の地震が来ても大丈夫だ、こういうことをおっしゃいましたが、こういう認識で経産省そして規制委員会、大丈夫ですか。震度六強の揺れに耐えられる等の言及も一部にございます。

 いわゆる東日本大震災級の地震でも今の福島第一原発四号機を含め大丈夫だということを経産省、規制委員会に確認をさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

赤羽副大臣 安全基準につきまして、規制委員会の判断に委ねるという立場でございます。

田中政府特別補佐人 福島第一は水素爆発等でかなり傷んでおりまして、それを踏まえた上で、まさに御指摘のように、震度六強に耐えられるように、特に一番問題になりますのは使用済み燃料プールを支えるところでございますので、それについては重点的に補強をしていただいて、一応今は六強ということになっております。

 これについては、四半期に一回ずつ、その状況を確認しながら安全を確保していくということをしております。

足立委員 六強以上の地震が来ると大変なことになる、私はこの福島第一原発の現状については厳しい認識を持っていますので、ぜひ皆様方も共有をしていただいて、全力でこの安全の確保に努めていただきたい、こう申し上げて質問を終わります。

 ありがとうございました。

森委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三分開議

森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 田中委員長は、私の尊敬すべき高校の先輩でもありまして、会津高校というところで、本当に重責を担って御尽力されていることに深く敬意を申し上げる次第であります。

 私も、国会議員になる前は福島県の県会議員をしておりました。何度か国会の、参議院の方から今は衆議院ですけれども、参議院のときにもお話をさせていただきましたけれども、私が県会議員になったのは、ちょうど東電のトラブル隠し、データ改ざんを検証する年でありました。

 そのとき、当時の東電の役員、また従前の組織であった保安院の方々も呼んで、二年にわたって検証したんですけれども、それを振り返ると、やはり安全神話に自分自身が寄りかかっていたなということがありましたし、検証しながらも、東電は、小出しにデータを出してくる、そして後から、あり得ないことが起きたという言葉で全て締めくくっていたようなことがたびたびありました。今回のこの原発事故災害においても、その後の対応を見ていれば、あのときと何ら変わっていないというのが私の印象でもあります。

 当時の福島県としては、早く原発を動かして、地域の雇用をしっかり支えていこうという推進の立場にもありましたけれども、もはや福島県、福島県議会も、全党派を挙げて、全基廃炉という決定もしているところでもあります。

 そういう状況の中で、先ほど尊敬する塩崎先輩が信頼と信認という言葉を使いましたけれども、今の東電、この二年にわたる事故処理の状況を見ても、到底信頼と信認を与えるわけにはいかない状況にあります。十年前のデータ改ざん、トラブル隠しから何ら進展も見ていない、企業体質が変わったとも言えていないという状況であります。

 やはり、そのような東電の体質改善の取り組み、これは、原子力行政、電力行政全般にかかわる信頼、信認の問題でもあります。こうした状況において、信頼、信認をどう取り戻していくのか、田中委員長にお伺いをいたします。

田中政府特別補佐人 先生御指摘の信認、信頼というのはちょっと幅広いもので、私どもが担当している分野だけに限って申し上げます。

 安全についての意識を持つというか、安全文化を向上させるということについては、今後も廃炉の問題とかございますので、そういった点においては、引き続ききちっと、安全文化の向上、たゆまざる安全性の向上について努めていただくよう、改善を求めていくこととしております。

小熊委員 これは本当は東電の人に聞くのが筋だったんですけれども、田中委員長に聞いたというのは、当時、保安院もちゃんとやっていくと言っていたんですよ。ところが、何の機能も果たさなかった。当時、福島県も、原発は推進の立場でしたけれども、保安院は分離してくれということを申し入れしていて、いや、ちゃんとそれは組織として対応していきますから大丈夫ですと言って、大丈夫じゃなかったわけですよ。

 東日本大震災が想定の範囲を超えていたのかもしれませんけれども、ちゃんと保安院がやっていれば、あそこまでの深刻な事故は起きなかったかもしれないという可能性も推測されますし、国会の事故調でも、人災と明確に報告書に書いてあるわけです。そういう意味で、私自身も、チェックをし得なかった当時の県会議員としては、大きな十字架を背負って、万死に値するものだと思っていますよ。

 その経験を生かせば、今、保安院から規制委員会にかわりましたけれども、福島県内においては、規制委員会にかわって、果たして本当に安全がしっかりと確保されていくのかということの、まだ信頼は得られていないと思っています。ゼロからのスタートじゃないんですよ。はっきり言えば、マイナスからのスタートなんですね。何の信頼もないんです、政治に対しての。

 そういう状況の中で、基本的には東電がしっかり、自分たちが変わることなんですけれども、過去の例を見れば、変わらないですよ。この間の漏水事故のとき、停電になったとき、あのときも、いろいろあって報告がおくれましたと理由をつけていましたけれども、当時の社長は、データを隠すことも罪だけれども情報がおくれることも罪だという意識で体質改善を図っていきますと言ったんですよ、十年前に。それを保安院の人も聞いているんですよ。組織がかわったとしても、これは、規制をかけていくという意味では、十年前言っていて、何も今も変わっていないんですよ。我々福島県民からすれば、もう東電はオオカミ少年のような状況で、何を言っても信頼できません。

 そういう意味では、規制委員会の役割というのは非常に重要なんですね。この東電の体質というものをしっかり見抜いてほしいんですよ、委員長には。福島県出身だから、わかるところはいっぱいあると思います。ずっと言葉を重ねて重ねて、糊塗していっているんですよ、この企業は。

 そういう観点から、もっと厳しく原子力行政にかかわる信頼をかち得ていくというのはやっていかなければ。規制委員会そのものも信頼ないですから。だめ出しはしていませんよ、福島県民。どうしてくれるのかなと見ていますけれども、今、全幅の信頼を置いているわけではないんですね。そういう厳しい状況の中で仕事をしていくというのは大変だと思いますけれども、そうした立脚点に立ってしっかりやっていただきたい。

 その上で、質問に移っていきます。

 きょう、午前中、復興特もちょっと並行してやって、私も復興特のメンバーなので出入りしていましたけれども、そのときにも質問の中に出ていましたが、いわゆる子ども・被災者支援法の基本方針の策定、そして一定の基準の地域というのが決まらなければ、この法律は動いていかない。

 一定の基準というのは、今、見直しということで、対策本部の中で、規制委員会にその検討を任されているところであります。年内にとは言っているんですが、明確な計画、時系列が示されていないということは非常に、これも、だから、被災者からすれば何をやっているんだということになっているんですね。それは科学的知見でしっかりやっていかなければいけませんから、精神論で言うわけにはいきませんけれども、せめてもの大まかなスキームが、これからの計画が、いついつぐらいまでをめどにこれをお示ししますよというのがなければいけないと思うんです。

 この基準見直しに係るこれからのスケジュールについて、明示をいただきたいと思います。

森本政府参考人 先生御承知のとおり、三月七日の復興推進会議で、復興大臣の方から、避難指示の解除に向けて線量水準に応じて講じるきめ細かな防護対策の具体化ということを原災本部に対して指示を受けまして、規制委員会もそれに協力するという形になってございます。

 現状でございますが、そのきめ細やかな防護措置の具体化については、現在、関係省庁の担当者が集まりまして、どのような進め方で行うのか、どのような課題があるのかというのを議論している状況でございます。

 今先生御指摘のような、その具体的な検討手順とかスケジュールは、実は、残念ながら、明確には決まってございません。決まっておりませんけれども、原災本部でしっかり議論を行って、そして年内を目途にとにかく一定の見解をまとめていく。そのために、規制委員会として、関係省庁と連携してしっかりやっていきたいというふうに考えてございます。

小熊委員 何で決まっていないんですか。何か物理的な要因があるんですか。

森本政府参考人 まだ検討が、関係省庁の担当者が集まってやっているという状況でございます。いわゆる原子力災害対策本部の関係省庁の担当者レベルでまだ議論をしている段階でございますので、大変申しわけございませんが、今の段階でまだ決まっておらないという状況でございます。

小熊委員 その検討手順、やり方も決まっていなくて年内というのは、だから、それは精神論になっちゃうんですよ。これこれこういうことをやるから年内に出すんですというのがなければ、これも、だから、政治が信頼を失ってくるんですよ。

 被災者のためにと言っていながら、ところが、法律、秋野さんとも一緒に努力させていただきましたけれども、もう法律をつくってからも大分時間がたっているんですよ。科学的知見を出すのに、検討の段階でそんなにもめることはあるんですか。

森本政府参考人 先ほど申し上げましたように、原災本部のメンバー、関係省庁、例えば復興庁、生活支援チーム、あるいは環境省、それから規制委員会、みんなが集まって、今まだ知恵を出している段階でございます。また、先般は担当の者がチェルノブイリを視察して、そのときの対応なども今勉強しているところでございます。大変申しわけございませんが、今の段階はそういう状況でございますので、御理解いただきたい。

 いずれにしても、急いでやらなくちゃいけないという認識のもとに、関係省庁は頑張ってございます。ぜひ御理解いただきたいと思います。

小熊委員 基準の見直しに関しては、環境省も除染のことにもかかわってきますから、こんなスケジュール感でいいと思っていますか、秋野さん。政治家として、政務官として。

秋野大臣政務官 御通告をしていただいておりませんけれども、できるだけ早くしたいというのが私の思いでもあります。

小熊委員 もう抽象的な言葉は要らないんですよ、はっきり言って。この二年間、聞き飽きているんですよ。

 精神論だったら、そんなのは誰だってできるし、民主党政権から自民党政権で、決められる政治と言っているんじゃないですか。これじゃ、何ら変わらないんですよ。誰がやったって同じになっているんですよ。

 秋野政務官も被災地に入られて、その思いはわかると思いますけれども、これはそんなに難しいことなんですか。

森本政府参考人 私どもも、地元の方々のお気持ちというのは十分わかります。それを踏まえて頑張りたいと思います。

 いずれにしても、年内を目途ということがございますので、とにかくそれにゴールを向けて頑張りたいというふうに考えてございますので、御理解いただきたいと思います。

小熊委員 基準見直しは、とにかく科学的にです。その後、地元のいろいろな意見を聞いて、やるのは政治判断です。科学的なことなんですから、ルーチンワークですから、しっかりやってほしいですよ。

 年内にと。年内でも本当は遅いんですよ。それで、決まった後に、やっと子ども・被災者支援法もその地域を決めてやっていくということですから、恐らく、年内に決めた後、この支援法も動いていくのはまた一年後ぐらいになっちゃうわけですよ、今から考えると。だから、そうした状況を考えて、これは年内ということではなくて、前倒し前倒しでやれるようにしっかりやっていただきたいというふうに思います。これは除染の話にもつながってきますし。

 ただ、そこで、科学的な、しっかりとした判断もあるんですけれども、これは田中委員長も使っている言葉ですけれども、被曝ストレスということを考えれば、科学的には大丈夫なんだけれども、そのおそれから、被曝をしているんじゃないかと、本当は大丈夫なところでも、おそれから、さまざまなストレスを抱える、風評被害ができるということになってくるわけですよ。それを考えると、リスクコミュニケーションとかしっかりやっていかなきゃいけないということになっているんですが、こういう基準見直しも明示されないから、やはりそれは信頼されないので、心理的ストレスはふえていくというふうに思っています。

 さらにもう一つ、しっかり明示されていないものに最終処分場の話があります。これは福島県外にということで、私も、福島県民としては、福島県外にできたらいいなというふうには思いますよ。でも、逆の立場でいえば、これを受け入れるところはあるのかなと。結局、中間貯蔵が恒久化してしまって、なっちゃうんじゃないのかなというのが今我々が危惧しているところであります。

 そういう意味では、最終処分場について、選定基準と明確な日程が明示されていないんですね。ただ、これは何とか努力して、理解を得ながらやりますと。これも、だから、抽象的な、努力目標みたいな、精神論でしか言っていないんですよ。では、決めるときになって、定量的な基準がなければ、ここにしますというのが、説明責任を果たせないわけですよ。

 この選定基準と明確な日程を明示するということに関して見解を求めます。

秋野大臣政務官 今、小熊委員からおっしゃっていただきましたこと、福島県外における指定廃棄物の最終処分場も同時に検討を行っているところであります。

 これについては、昨年十二月の政権交代を受けて、前政権下での候補地の選定に係る取り組みについて検証を行いまして、二月二十五日にそれを発表させていただいたところであります。

 この結果につきまして、直ちに五県の知事さんのところに井上副大臣と回らせていただきまして、御説明をさせていただいたところでありますが、これについては一定の御理解を得ているところであります。それを踏まえて、三月二十八日の宮城県を皮切りに、五県で市町村長会議を開催させていただきまして、その各県ごとの市町村長との対話も今始めているところであります。

 一方、並行して、環境省で、指定廃棄物処分等有識者会議を開催いたしまして、科学的に、そして技術的な観点から検討を行っているところでありまして、今、最終処分場の選定手順や、地すべり、水源の安全、安心に関する評価項目、評価基準について御議論をいただいて、これについてまとまったものを各県に提示させていただこうと思っています。

 今御答弁申し上げているのは、あくまで福島県外の五県における指定廃棄物の最終処分場の建設でありますけれども、こういった形で、一つ一つ物事を前に進めてまいりたいと思っています。

小熊委員 私は、中間貯蔵にやったものを持っていく最終処分場の話をしていますから、その答弁をお願いします。

秋野大臣政務官 中間貯蔵を今しっかり進めているところでありますので、どうかもう少しお待ちいただきたいと思います。

小熊委員 秋野さんは、現場に行っていて、だからわかっているはずです。中間貯蔵と三十年後にそれをほかのところに持っていく最終処分場がセットでなければ、結局、中間貯蔵が恒久化してしまうんじゃないの、こういう不信を置いておいたままになるんですよ。これも一つのストレスです。そこを言っているんです。中間貯蔵をつくるのは当たり前です。でも、それは出口が見えるから、県民だって納得するんですよ。

 それを踏まえて、もう一度お願いします。

秋野大臣政務官 実態としては、中間貯蔵についても、今、中間貯蔵をつくるということが受け入れられたわけではありませんで、調査をするということが受け入れられた状況であります。

 そういった意味では、一つ一つ積み重ねていきたいと思っておりますので、御理解をお願いしたいと思います。

小熊委員 県民もいろいろな意見がありますけれども、もちろん中間貯蔵もセンシティブな問題にはなっていますが、それをつくらないから仮仮置き場みたいなことになっているわけですよ。ここと決めたら反対する人もいるけれども、総意としては、やはりつくらなきゃいけないよね、なきゃいけないよねとなっているわけです。時間をかければかけるほど、帰れる地域、帰れない地域、あと、中間貯蔵ができたら帰らないという判断も住民に出てきますよね。中間貯蔵なら三十年後になくなるからいいけれども、これが恒久化してしまったら帰るつもりにならないという判断にもなるわけです。

 だから、中間貯蔵と最終処分はセットで決定をしなければ信頼が得られませんというのが私の見解だし、地元の人としゃべっていると、そのとおりなんですよ。

 その状況を踏まえて、中間貯蔵を一生懸命つくるなんて当たり前ですよ、最終処分場はどうなるんですかという話。鋭意努力して、決まらなければ十年も二十年もかけるんですか。何年以内にと、ある一定の時限を決めなきゃいけないと思いますよ。人生選択ができないんですよ。それがどこにできるかできないかで選択が変わるんですから、住むところの決定が。

 それを踏まえて、もう一度お願いします。

秋野大臣政務官 同じ答弁になりますが、中間貯蔵をしっかりつくるということ。これがありませんと除染が前に進みませんので、中間貯蔵をしっかりつくるということ。まずは、調査をしっかりやってまいりたいと思います。

小熊委員 だから、これが決められない政治なんですよ。

 今、我々日本維新の会でもいろいろな議論をしていますけれども、中間貯蔵が恒久化するのであれば、福島県外ということを民主党政権で言って、それを自公政権でも踏襲していますけれども、これは逆に幻想なんじゃないか。あちこちで反対運動が起きて、いや、議会で決定すれば決定しますという、そんな仕組みもない。あちこちで反対運動ができて、つくれない。中間貯蔵が三十年にも四十年にもなっちゃう。

 であるならば、断腸の思いで福島県内に最終処分場をつくって、そのかわり補償をしっかりして、被災者においても、本当に涙をのむ思いで新しい人生選択を早期にしてもらう。自立して、しっかりと自分の力で家族を守り、地域を守っていく、そういうもとの福島県にもう一度戻ってもらうということを考えれば、私は、長くやっていまだに、二年たっても、とにかくまずは中間貯蔵なんと言っているということは、蛇の生殺しになっているなというふうに思いますよ。これは、福島県議会のある会派でも、最終処分場を県内に、それでしっかり除染も進めて補償もしましょうという申し入れも出たところです。

 これが、決められる政治の一つじゃないですか。県外につくるというのは幻想だと思いますよ。福島県民も幻想だと思っています。それは、できたらいいですよ。引き受ける人がいますか。引き受ける地域がありますか。全国会議員で、福島県の隣県の人で、うちの県で引き受けようよなんてしゃべったことがある人、聞いたことがないですよ。逆に、今回の事故が福島県じゃなくて新潟の原発がなって、そこで、最終処分場を会津の山奥に、国有林がいっぱいあるから、人も余り住んでいないから持ってこようといったら、私は反対しますよ。それが現実じゃないですか。

 先日、予算委員会の公聴会でいわきに行って、いわきの市長さんが言っていました。避難生活も、三宅島の五年というのも一つあったけれども、やはり五年ぐらいがマックスじゃないのかなと。

 五年以内に県外につくれないのであれば、これは一つの決断をすべきだというふうに私は思います。反対者もいっぱい出ますよ。でも、決めないことが、今の福島県の被災者、福島県内の状況を最大限に悪くしている。私は政治の不作為だと思っています。

 百年後に最終処分場をつくりましたといったって、そんなので百点とったってだめですよ。数年内に三十点でも四十点でも、決断して、結果を出すというのが本当の政治じゃないですか。秋野さん、お願いしますよ。

秋野大臣政務官 今、中間貯蔵をつくることに全力を挙げるというのが何度も申し上げているとおりでありますが、一方で、福島県外の五県についても、最終処分場というのはつくらなくてはならないわけであります。こういったものについて、うちでつくってくれという話は一切ありません。しかしながら、二年間回らなかったものを、一生懸命、物事を前に進めようとして、今五県においても合意形成を図っているところであります。

 そういった意味では、遅いと言われるところはあるのかもしれませんが、除染後の仮置きがずっと続いている状況、指定廃棄物の保管が逼迫している状況を少しでも前に進めるために、福島においては中間貯蔵施設をしっかりつくるということ、周辺の五県においては最終処分場をしっかり合意形成を図りながらつくっていくということを今進めているということで、御理解をいただきたいと思います。

小熊委員 だから、被災者がしっかり決断するためには、それが足りていないということを自覚していただきたいと思います。中間貯蔵をつくっただけでは不安が払拭されないんです。不信が払拭されないんですよ。原発施設はトイレのないマンションだと言っていますけれども、除染作業も、最終処分場がどこになるかということが見えていない限り、不安や不信は払拭されないんです。それを踏まえて、各県に今やっているということは、それはそれで了としますけれども、やはりこれは時限を切ってもらわなきゃだめです。

 私の想像ですけれども、これは受け入れるところはないと思っていますよ。県外に最終処分場をつくりますと言っているのは、幻想を抱き続けさせて、余計な避難生活を長引かせるだけの結果になりやしないかということを私は危惧しています。

 時間軸をしっかり意識して、結果を出していくということをやらない限り、本当の自立の復興というのはないですし、ある意味では、決断するということは、断腸の思いになるときはありますけれども、それを引き受けるのが政治家ですよ。

 そうしたしっかりとした責任感を持って、とりあえず中間貯蔵という答弁は、福島県民としてははっきり言って受け入れられないんです。最終処分場もこうしますという言及がなければ、とりあえず除染を進めますからと言っても、何の不安の払拭も、信認を得る形にもならないということを申し伝えまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

森委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、原子力規制委員会の立法にかかわった一人として、この規制委員会ができてから、また、この特別委員会ができてから初めて私は質問させていただきますので、これまでの議論と重複するところがあるかもしれませんが、基本的な田中委員長のお考えを聞かせていただければと。また、国会事故調を受けて、我々国会も大きな役割を担っております。そういう役割を確認しながら質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ちょっと個人的な話になりますが、田中委員長と私はいつも、原子力に大きな事故が起きたときに出会いがありました。

 最初は、原子力船「むつ」でございます。昭和四十九年に原子力船の放射線漏れ事故が起きたわけですけれども、当時、原子力の世界では大変大きな問題になりました。

 私は民間企業におりましたが、その原子力船「むつ」を遮蔽改修、漏れないようにしようという遮蔽改修モックアップ実験を原研の四号炉、JRR4で行ったわけですが、私も外来研究員としてJRR4に行ったときに、そのJRR4にいらっしゃったのが田中研究員でございました。そのときから一緒に仕事をさせていただいて、本当に真摯な研究者の方だな、このように思っておりました。

 二回目が、ジェー・シー・オー事故でございます。

 一九九九年九月三十日にジェー・シー・オー事故が起きたわけでございますが、その直後に、私は科学技術庁の総括政務次官、現地対策本部長として東海村に行きました。そのときに、原研の、当時は東海研究所長でいらっしゃったんでしょうか。(田中政府特別補佐人「副所長」と呼ぶ)副所長でいらっしゃったんでしょうか、まさにこのジェー・シー・オー事故の収束に向けて、本当に先頭に立って原子力安全委員会の住田委員長代理とともに奮闘されていた田中さんを見て、そこでも大変お世話になったわけでございます。

 そういう意味で、原子力の大きな事故があるたびに一緒に仕事をしてきた人間として、今回、その田中さんが規制委員会の委員長になられたことは大変感慨深く思っております。

 しかしながら、我々原子力に携わってきた者として、今回の事故、原子力船「むつ」やジェー・シー・オー事故のような大きな事故の経験をして、ある意味では、そこで何らかの対策を施さなくてはいけなかった。今回の事故が起きるようなことのない、未然の措置をとらなくてはいけなかった。それができなかったのは、我々原子力に携わってきた人間の大きな罪だと思っております。そういう意味で、今回の新しい体制については、国民の皆さんから信頼を取り戻すべく頑張っていかなきゃいけない、このように思っております。

 これまでこういう事故を日本は体験しながら、しかしながら、今回、福島第一原子力発電所の事故を防ぎ得なかった、その根本的な原因はどこにあるのか。田中委員長、どのようにお考えでしょうか。

田中政府特別補佐人 斉藤先生とはいろいろな形で今までおつき合いいただきまして、また今後も御指導いただくことをよろしくお願い申し上げます。

 まず、今回の事故の原因は、逆に言うと、私ども規制委員会が三条委員会として独立したというところでもあると思います、やはり推進と規制がきちっと分離されていなかったということです。それで、世界の安全規制のレベルから見ても、バックフィットというような、新しい基準を積極的に取り入れていくというところに少し欠けていたところがあったのかと思っております。

 今後、私どもとしては、法律的にもそういった権限を持たせていただきましたので、それを十分に活用して、二度とこういった事故を起こさないという覚悟で取り組んでいきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 ジェー・シー・オー事故を受けての議論の中で、一つは、原子力災害対策特別措置法という新しい法律をつくりました。それまで、原子力施設に事故はないという、それこそ安全神話の塊のような考え方だったんですが、ジェー・シー・オー事故を受けて、原子力には事故はあり得るという前提のもとで原子力災害対策特別措置法をつくったわけですが、現実には、また再び大きな事故が起きてしまった。

 あのときも、実は、いわゆる規制組織を行政組織から切り離して三条委員会にすべきだという議論があったんですけれども、国会の中でも随分議論をしたわけですが、そのときにそういう決断がとれなかった。当時与党におりました我が公明党としても、じくじたる思いがございます。

 あのときに本当に三条委員会、今の体制をあのときにとっていればという思いがあるのも正直な私の今の気持ちですが、田中委員長はいかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 ジェー・シー・オー事故が起きたときにそういった議論が国の中でやられていたのは、私もかなりつぶさにかかわってきましたので、よく承知しております。

 確かに、おっしゃるとおり、御指摘のとおり、そのときに規制と推進はきちっと分離すべきだということを随分議論されたと思いますが、それが実現しなかったということは大変残念だったと思うし、そのことが今回の事故の一つの背景にあったのかもしれないという思いはございます。

 そういうことを踏まえて、これからのことになりますけれども、私としましては、そういったことのないように、皆様の国会での御議論とかの趣旨を踏まえて、きちっと対応していきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 それでは、改めまして、これまで何度もこういう質問が出ておりますけれども、原子力規制行政の最高責任者として、これから仕事を進めていく上に当たっての基本的な哲学と、国民の信頼を回復していくために今何が一番重要かということについて、お考えを伺います。

田中政府特別補佐人 今回の事故の最大の問題は、やはり、原子力規制行政に対する信頼を失ったということでございます。

 それを回復するため、私どもとしてもいろいろ議論をさせていただきまして、まず、独立性を持つ、判断については中立でなければいけない、それから、判断のプロセス等においては透明性を確保することが大事であるということであります。

 独立、中立という意味では、科学的、技術的な見地を非常に重視して、それに基づいた判断をするということを行動原則として決めて、規制委員会、規制庁、一人一人の意見を踏まえてそういう行動原則を決めて、今取り組んでいるところでございます。

斉藤(鉄)委員 独立、中立、透明という基本原則ということです。

 しかし、独立といっても、孤立してしまっては意味がないわけで、この辺がなかなか、バランスの問題ではない、何の問題といったらいいんでしょうか。今、最先端の原子力の現場の知識また技術ということを常に取り入れていく必要がある。そういう最先端の専門家の声も聞いていかなきゃいけないという、独立を保ちながら、しかし、孤立しないということが非常に重要なかじ取りになるかと思うわけですけれども、これらの最先端の技術、情報をもとに、いわゆる世界最高の原子力安全規制基準をつくっていただきたい、このように思っております。

 我が党の基本的な考え方は、こういう基準をつくって、その基準にのっとって判断をし、国民の理解を得て再稼働を認めるというのが我が党の基本的な考え方でございます。そのためには、国民から信頼される、世界トップの新基準を策定していただく必要があるわけですが、委員長の決意を伺います。

田中政府特別補佐人 独立と孤立というのは、まさに孤立であってはいけない、御指摘のとおりでありまして、いわゆる最先端の知見あるいは経験というのを国内外からきちっと学ぶということがまず大事だろうと思っております。その上で、最終的に、私ども原子力規制委員会として判断するというプロセスがきちっと見えるようにしていきたい。今、そういう努力をしているところであります。

 ステークホルダーというか事業者との間においては、そこは難しいところもありますけれども、これまでの新しい基準の策定あるいはいろいろな判断の中で、もう二十数回、一回に二時間から四時間ぐらいの議論をさせていただいて、ぜひ現場としての生きた知識で新しい規制基準が効果的に現実性を持ってできるようにというような意見聴取もやっておりますが、そこは一遍にはなかなかいかないということも十分味わっているところであります。

 世界最高レベル、言葉ではあれですが、我が国の場合は自然条件が、世界の一般的なところ、特にヨーロッパ等から比べると大変厳しいものがございます。地震、津波だけではなくて、台風もあるし、それから火山とかそういったこともございますので、そういったこと、いわゆる外的事象によるいろいろなシビアアクシデントということについてもきちっと対策をとれるように新しい規制基準では求めております。

 どの国もそういうことは要求していますけれども、特に日本の場合はそれが厳しい、特に厳しいものですから、それに対する対策はその分少し重くなると思いますけれども、ぜひそれは事業者の方にも受け入れていただくようにお願いしていきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 自然条件が厳しい、いわゆる外的なバウンダリーが厳しいので、当然、基準も厳しくなる、結果的に、世界一厳しい基準、こういう認識もあるわけですが、それ以上に、こういう事故を経験した日本として、ある意味では世界の原子力安全文化に貢献をするというぐらいのプラスアルファといいましょうか、その厳しさということもあれば、国民は、今の規制体制また基準、そしてそれに伴う再稼働ということについても理解していただきやすくなるのではないかと思います。

 プラスアルファの厳しさということについては、何かお考えがありますでしょうか。

田中政府特別補佐人 特に私どもが求めていますのは、安全を第一に考えるという、俗に言う安全文化ですね。私がいろいろなところで申し上げているのは、安全を第一に考えることによってトラブルが少なくなって、結果的に稼働率が上がるとかということで、事業者にとっても必ずいいことなんだ、だから、ぜひ一緒に安全のレベルを上げるように努力していただきたいということを申し上げています。

 それから、世界的には、今回の事故は、これを踏まえて我が国が相当きちっとした、そういった意識を持つことができなければ、世界に顔向けできないと言ったら変ですが、そういうことになるかと思いますので、ぜひそういう点については、私どももそうですけれども、事業者にもそういう要求をしていきたいと思っています。

斉藤(鉄)委員 それからもう一つ、これは言わずもがなですが、規制委員会の所掌する仕事、使命の中に、今回の福島第一原発の事故原因の究明に努めていくということもございます。

 この事故原因につきましても、中立的そして科学的な見地から、国会事故調では、最終的な原因というのはまだ確定的に言えないというのが国会事故調の結論でございます。

 それを受けて、規制委員会が今回の事故の原因についても究明をしていく。そこにも最高級の中立的、技術的、また科学的知見を生かしてもらいたいと思うんですが、このことについての委員長としての御方針をお伺いします。

田中政府特別補佐人 福島の事故の原因を解明していくというか、それをきちっと明らかにしていくというのが私どもの重要な使命だということで、先日、事故調査委員会を、外部の有識者、特にプラント等についても豊富な知識を持った方にも入っていただきまして、事故調査に着手したところでございます。

 国会事故調、政府事故調、幾つかの事故調からの報告を拝見いたしますと、幾つかまだ未解明の問題がございます。そういったことを一つ一つ科学的に説き起こして、原因を明らかにして、御報告させていただきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 そこはしっかりお願いします。

 次に、人材ということで質問させていただきます。

 ことし四月から、それまで文科省が所管しておりました、いわゆる放射性同位元素、アイソトープ関係の規制、放射線モニタリングの実施機能、それから核不拡散の保障措置ということもこの原子力規制委員会で所掌するということになりました。元科学技術庁の政務次官をやった私としては、これらが文部科学省から切り離されるというのは、ある意味で大変大きな原子力行政の大転換だったわけで、文科省の中でもいろいろな意見があったというのはもう御存じかと思います。

 しかし、今、それは原子力規制委員会で所掌されることになりました。しっかりやっていただかなくてはならないわけですが、それでも定員が四百七十三人から五百二十七人になったという程度でございます。

 片一方、アメリカは、よく言われますが、NRC、原子力規制委員会は四千人のスタッフ。向こうは百四基の原子力発電所を監視している。こちらは五十基ですので、向こうの方が倍とはいえ、しかし、人数は向こうは十倍いるということで、スタッフの充実度が違うと思います。

 原子力規制委員会が発足してから八カ月が経過しましたが、これまで業務の中で、これは困ったというようなことはありましたでしょうか。また、人材的な面で課題が生じているでしょうか。

田中政府特別補佐人 昨年九月に私ども発足して、法律上、原子力発電所について見れば、七月十八日までに新しい基準をつくるとか、幾つかの要求事項がありまして、それに向けて、規制庁の皆さんにも本当に昼夜を問わず働いていただいて、今手持ちのリソースというか陣容で何とかかんとかここまで来ているということでございます。そういう意味では、まだ決して十分であるとは思ってはいませんけれども、どこをどうすればいいのかということについては、まだ具体的に申し上げる段階ではございません。

 ただ、ざっくり言いますと、やはり全体として、今の陣容だけでは、長期的にこういう仕事をしていく上では不足していると思っておりますので、またいろいろ御相談させていただければと思います。

斉藤(鉄)委員 それでは、原子力規制庁の定員の大幅増を図っていく、それを要求されるおつもり、もし本当に必要なのであれば、日本の原子力安全を保っていくために原子力規制委員長が今の人員では足らないというふうにおっしゃるのであれば、日本の原子力安全文化を育てるためにも、国民の信頼を得るためにも、我々はそれを全面的にバックアップしていきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 ありがとうございます。

 実際に、先ほどの文科省の方から移ってきた放射線障害防止法の関連の施設だけでも、我が国には約八千の施設がございます。そういったところの安全規制も、医療機関から学校までたくさんあるわけですが、そういったところをきちっと見ていかなきゃいけないということもございますし、今回の事故が起きた後に、モニタリングも、平常時のモニタリングではなくて、やはり福島県民を初めとした、実際これからああいった汚染された地域で生活していく上でどういったモニタリングをしていけばいいのかということについても、もっと血の通ったモニタリングはできないかということで、今検討を進めています。いろいろなことを考えます。

 それから、原子力発電所の、これから実際に安全規制、新しい基準に基づいた審査をするとなると、午前中にもお答え申し上げましたけれども、どういうふうにこれから五十基の炉の申請が出てくるかによりますけれども、今のところ三チームだけしか準備できない状況でございますので、そういったことを踏まえまして、現実にそういった問題が起きることも先々予測されますので、私がここで言うのもあれですけれども、ぜひ先生方の御支援をお願いしたいと思います。

斉藤(鉄)委員 きょう委員長から、今の人員では不足しているという明確な答弁がありましたので、しっかり我々も、原子力安全を明確にするために定員を拡充すべきだということで、まだ党の方針というわけにはなかなか、今ここで決断できませんが、我々はしっかり党の方針になるように頑張りたい、このように思います。

 それから、先ほどもございましたけれども、新しい規制基準が七月十八日をめどに策定されるということです。この新しい基準に基づいて、原子力発電所の運転再開に向けての審査を行っていくわけですが、一度に審査できる原子力発電所が三カ所までに限られるという趣旨の御答弁だったかと思いますが、原子力発電所が安全確認されないまま長期に放置されるということも、これは安全ということから見ても余り好ましいことではない、このように思います。

 審査の要員不足ということがもう今から明らかなのであれば、事前に対策を講ずるべきだ、委員長として何らかの方針を示されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 大変ありがたい御指摘と申し上げた方がいいんですけれども、今、とりあえず私どもができるところでは、手持ちの陣容の中で最大限いろいろ工夫して、三チーム審査体制をつくらせていただいたということでございます。

 今後、七月になってどういった状況で出てくるかということによっては、またそのチーム数を増強させるための工夫というのは、相当早急に立てていく必要があろうかとは思っております。

斉藤(鉄)委員 今はそういうお答えしかできないのかもしれませんが、この点について、何らかの規制委員会としての方針を示されることを望みます。

 一つのプラントを長期に停止させておくことが安全に与える影響、これはハードの面と、それからそれを運転するソフトの面、この両方あるかと思いますが、これについての委員長の御見解を伺いたいと思います。

田中政府特別補佐人 ハードの面においても、もちろんそうです。原子力プラントはいろいろな複雑な状況がありますし、水の管理一つとってみても、動いているときはきちっとしているけれども、それじゃ、とまっていると安全かというと、そういったいろいろな条件を、運転に当たってはいろいろな準備をしていかないと、本当に安全な稼働にはつながっていかないというふうにも認識しています。そういう意味では、長くとめておくことは、さらに安全上注意をしなければいけないというところが出てまいります。

 それから、運転員を初めとしてソフトの面では、やはり何でもそうですけれども、日々やっていることと何年もとまっているということでは、状況が大分、意識しないうちに能力が少しなまってしまうというところがございます。特に今回は、シビアアクシデント対策というのが現場のオペレーターに求められます。私どもとしては、どれだけそのスキルがあるかどうかということを確認して安全の判断をしていきたいと思っておりますけれども、そういったことを含めて、決して長くとまっていることが望ましいことではないというふうに思っています。

斉藤(鉄)委員 次に、若い人の原子力離れ、これからの日本の原子力を支えていく人たちをどのように養成するかということについて、委員長がどのようにお考えかをお伺いしたいと思います。

 若い人がこのように原子力から離れているということをここではもう繰り返しません。また、この委員会の中でももう既に議論があったところでございますが、我々も若いころ、原子力というと、炉物理と安全があって、炉物理の方が格好いい、安全というとちょっと格好よさが落ちるというような感覚を学生がみんな持っていたという感覚を私は持っております。今回の事故が起きて、その安全というのが実は本当に日本を支えるほど大切なことだったんだということを改めて痛感したわけですが、当時、そういう教育はされていなかったような気がいたします。

 そういうことも含めまして、これから廃炉、安全ということですと、なかなか優秀な人が集まってこないというようなこともございますが、ここをどう考えていらっしゃるか。また、そういう意味では、規制行政も、諸外国に負けない規制行政をするためには、ある意味で、若い人たちを引きつけるアピールを規制委員会としてもしていただく必要があろうかと思いますが、この点についてはいかがでしょう。

田中政府特別補佐人 人材確保についての懸念は、今先生に御指摘していただきましたように、私自身も大変心配しております。やはり、夢のある仕事というのをどうしても若い優秀な人は求めます。現状の原子力、今我が国を取り巻く原子力の状況では、そういった人材を相当数まとまって集めるのは大変難しいというふうに思っています。これはぜひ、国、先生方、それから行政一体となって、やはり意識的に若い人材の確保に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 それから、廃棄物とかデコミ、炉の解体というのはこれから重要な仕事になると思いますが、これにつきましても、やはりそれを目的として学生が入ってくるような状況というのはなかなかつくりにくいところがございます。ですから、こういったことは、民間の力もぜひ、官民一体となってそういうことに取り組んでいけるような状況をつくっていただきたいと思いますし、その中で育った優秀な人材は私どもの方にも来ていただけるように、私どももしっかりと仕事をしていきたい、そんなふうに思っています。

斉藤(鉄)委員 日本の若い人の人材育成を図るということ、これは非常に大事ですので、我々も政治の面でも一生懸命頑張っていきたいと思っております。

 もう一つ、原子力規制行政にいわゆる海外の優秀な人の知見を活用するという点はいかがでしょうか。

 アメリカのNRCの規制行政に携わっている人は、いわゆる原子力発電所の現場にいた人だけではなく、軍の原子炉関係にいた人、それから、これも軍の中ですが、いわゆる船の原子力、舶用炉をやっていた人、それから潜水艦の原子炉をやっていた人、ありとあらゆる分野があって、そういうところから、キャリアパスの一つの頂点としてNRCがあるということで、優秀な人が、それも現場のことがよくわかった優秀な人が集まってくるということがございます。

 日本にはそれだけの幅広い原子炉、原子力の現場がありませんので、なかなかそこまではいかないかと思いますが、逆に、アメリカやフランスやヨーロッパやそういうところの優秀な人に日本に来てもらって、原子力規制行政を頑張ってもらう。それは、ある意味で日本の若者を刺激するでしょうし、それから日本の規制行政そのもののレベルアップにもつながっていく、魅力ある仕事。アジアの諸国からも、ぜひ日本に行って日本の原子力規制行政に携わって自分のレベルアップをしたいという人も出てくるかと思いますが、海外から優秀な人材を集めるという考え方はいかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生御指摘のとおりであります。

 急に我が国において現場経験を持った優秀な人を集めるということが、客観的に見てやや難しいところもございます。先日も、黒川先生がおいでになりまして、もっと外国の人材と交流することによって、日本にとってもプラスになるし、規制庁でそうやって働いていただければ、黙っていても国際的に日本の状況が発信できるし、いいことだらけだということで、随分きっちりと御指導いただいたので、そういったことも含めまして、マクファーレン委員長とかとも、ちょっとそういうことについての可能性もサウンディングして始めたところでございます。

 なかなか具体的に何人というまとまった数まで行くのは難しいかと思いますが、少しずつそういう方向で努力をさせていただきたいと思っています。

斉藤(鉄)委員 もしそこに規制の壁等があれば、その壁を取り払うのは我々の仕事でございますので、我々も頑張っていきたい、このように思っております。

 原子力規制委員会が、先ほどありました独立、中立、透明、そのことでレベルの高い規制をつくっていただいて、国民の信頼をかち取るということが大変日本の将来にとっても重要だと思いますので、頑張っていただきたい、このように思います。

 質問を終わります。

森委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 こんにちは、みんなの党の椎名毅です。

 本日、四十分間の質疑時間を頂戴いたしました。格別の御高配、本当にありがとうございます。

 本日もさまざまな先生方から国会事故調に関する言及というものがございましたが、私自身も国会事故調の事務方として仕事をしておりました経緯もございますので、本委員会での議論を踏まえた上で、この国会事故調の提言の実現に向けて一生懸命頑張ってまいりたいというふうに思っております。

 本日は、昨日の原子力規制委員会での決定を踏まえまして、いろいろ伺ってまいりたいと思います。

 現在、安倍政権の中で、再稼働に向けて新安全基準の策定、これを七月十八日をめどということで急いでいるところだというふうに思います。それで、原子力発電所を再稼働するということになりますと、やはりバックエンドとの関係でいろいろ考えていかなければならないということだと思います。

 その中で、今までどおりずっと全量再処理という方向性でいくのか、それとも全量直接処分ということでいくのか、この使用済み核燃料をどうするかという話について、大きな方向性を政治で決めていかなければならないというふうに私自身は考えております。

 これに関連しまして、きのう、原子力規制委員会で、「もんじゅ」の点検おくれに関する保全措置命令というものが出されたかと思います。

 さらには、あとは時間の許す限りですけれども、同じくきのうの規制委員会で、原電の敦賀二号機の下に活断層があるという問題につきまして言及がなされたこと、こういったことに関連して、高速増殖炉の実用化に関する問題点、それから核燃料サイクル事業について、こういったところについて伺っていきたいと思います。

 それで、時間の許す限り、福島第一原発の事故収束に関連する汚染水の問題、それから、再稼働に関する地元の了解を取りつけるという問題について伺っていきたいというふうに思います。

 高速増殖炉という問題ですけれども、古くは、原子力開発利用長期計画というこれに書かれていたと思います。一番最初、昭和五十年代後半には実現化するというふうな話だったかと思いますけれども、この利用長期計画が改定されるたびごとにだんだん遅くなってきて、昭和七十年代とか二〇一〇年代とかいう話になっていって、現在の原子力政策大綱、これは平成十七年だったと思いますけれども、二〇五〇年ごろに商業ベースで実用化、こういう方向性で今議論がされているんだと思います。

 この高速増殖炉、御承知だと思いますけれども、今話題となっている「もんじゅ」というのは、第二ステージの原型炉でございまして、実験炉、原型炉、それから実証炉、実用炉という中のあくまでも第二ステージということなんだと思います。しかし、この第二ステージの原型炉というところでございますが、ナトリウム漏れの事故があって以来、試運転をもう一回やりましたけれども、基本的にはずっととまっているということだと思います。

 そんな状況の中で、昨年の九月ですけれども、「もんじゅ」の保全計画に定められた機器の点検、これが未点検だったということで、それが確認されたと。それで、きのうの規制委員会において、炉等規制法三十六条に基づいて保全措置命令というのが出されたということであるわけでございます。

 こんな中で、まず事実関係の一応確認ということでございますが、一月三十一日の報告書の内容を踏まえた上でということになるかと思いますけれども、JAEAの参考人、鈴木さんからお伺いしたいんですけれども、まず事実関係の確認として、何があったのかということを教えていただければと思います。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 その前に、今回、「もんじゅ」に係る不祥事によりまして、現在、日本では国を挙げて原子力安全に係る信頼回復に取り組んでいるところ、このような事態を招いたことに関しまして、深くおわび申し上げます。

 先生お尋ねの事実関係でございますが、今回、点検漏れ等が指摘されるに至った経緯は、まず最初に、平成二十四年度、第二回の保安検査において、これは昨年の九月ですが、検査官から、保全計画の変更をせずに点検間隔が変更された事例一点の存在を指摘されたことを受け、機構として自主的に、保全計画に定める全ての機器、約三万九千機器でございますが、を対象に調査を行ったわけでございます。

 そして、平成二十四年十一月二十七日、九千六百七十九の機器について、保全計画を変更しないまま点検間隔の変更を行い、保全計画に定められた点検時期を超過した事例があることを、調査の結果、確認いたしました。

 それが経緯でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 その未点検の機器の総数、九千八百四十七個ということでよろしいでしょうか。この機器の未点検ということに関して、結局、なぜこういった事態が起きたのかということについて、引き続き鈴木参考人にお伺いできればと思います。

鈴木参考人 直接的原因といたしましては、点検計画に点検頻度だけが記載されておりまして、具体的な点検時期が記載されておりませんでした。それから、点検業務が各課に任せているような状況になっておりまして、課にまたがった把握が十分できていなかった。次いで、点検の実施状況を毎月レビューする仕組みを持っておりましたが、前回いつ点検を行ったのか、それと、その点検間隔を確認しておりませんで、点検期限の超過を認識しておりませんでした。また、組織内の各会議体において、個々の点検業務についてチェックする機能が十分図られておりませんでした。

 なお、これらの直接的原因につきましては、本年一月に再発防止対策を規制委員会の方に御報告しており、昨日の原子力規制委員会の資料において、「これら再発防止対策を確実に実施することにより、」「直接的な原因は除去することが可能」との御判断をいただいております。

 また、別に組織的要因についてもこういう事態に至ったことが関連していると思っておりまして、例えば、点検実績の管理や保全の有効性評価等のマネジメントが不十分であった、品質保証や技術調整の観点からチェックする機能がなかった、本格運転に備えた保全プログラムの改善への取り組みが明確でなかった、工程変更等に係る経営層と現場とのコミュニケーションが不十分だった等の問題があったと私どもも認識しております。

 ありがとうございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 さまざまな理由をおっしゃっていただきましたけれども、究極的なところ、最終的には、やはり安全文化というところでこういった文化が根づいていないと言わざるを得ないのかなというふうに私自身は聞き取れました。

 結局、安全文化という意味でいうと、その組織の中で組織の中にいる人間が常にこれで安全なのかということを問い続けるという、それによって、現状、規則を守っていればそれで足りるということではなく、常に最高水準の安全を問い続けるという姿勢を組織全体で持っておくということが一番重要なのかなというふうに思います。

 こういった中で、安全性につきまして、あくまでも機器の点検漏れだから大丈夫ということなのか。先ほど、古川先生とのやりとりで、形式的な安全性とそれから実質的な安全性の二分法で語られていたかと思いますけれども、安全性に対する評価という意味で、それぞれ、鈴木参考人それから田中俊一規制委員長から御意見を賜れればと思います。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 安全性について私、午前中、参考人としてのお答えの中で申し上げたのは、実体的安全性と手続的な安全性があると申し上げました。形式的な安全性ということではないと私は思っています。

 その実体的安全性と手続的安全性は相互に関連がございまして、実体的安全性というのは、原子炉の場合でいえば、とめる、冷やす、閉じ込めると俗に言われますが、福島第一事故のようなことが起きないように物理的に安全を確保するということが、主としてその実体的安全性に相当するものだと。

 「もんじゅ」の場合は、先生最初にお話しございましたように、運転を停止しておりますので、したがいまして、とめる、冷やす、閉じ込めるということが直接的に今問題を生ずるということには現状ではなっていないと思っています。

 しかしながら、それだからもう安全だということではなくて、「もんじゅ」につきましては、特に一九九五年の「もんじゅ」の漏えい事故以降、安全文化の不備等々、安全意識が不十分だという指摘をいただいてきているわけで、そういうことについて、現在、建設期間であり試験運転を目指しているわけですが、そういう期間においてそのような不備を是正し充実化していくことを求められている。私が理解するに、そのことは、ほとんどが手続的安全性の部分でございます。

 つまり、規制の基準に照らして十分であるか、あるいは、みずから定めた品質保証の基準に照らして現状が、それぞれの機器が正しいかどうか等々、これは膨大な作業になりますが、そういうことを求められている。特に、社会に対して安全であることを説明する責任がございますので、その説明する際の基準がいわば手続的安全性になっているわけでございます。

 その点で、依然として「もんじゅ」は、なかなか安全文化あるいは安全意識はこれで十分だということは、むしろそういうことを言った途端に安全文化が劣化するというのを、午前中、田中委員長もおっしゃっていましたけれども、私も全く同感でございます。

 ですから、我々は不断に安全文化、安全意識の向上に努めていく責務があるということで、したがって、「もんじゅ」については、今後とも、御指摘を踏まえまして、今まで以上にその点についての努力が必要だ、このように思っております。

 ありがとうございます。

田中政府特別補佐人 私どもは新しい基準を今つくっております。それによって基準に適合しているかどうかという判断もするわけですが、それに基づいて、実際には現場にいろいろな機器等が備えられます。

 そういったものがきちっと予定したとおりに、期待したとおりにいつも動くかどうか、そういうことを担保するのが点検とかそういうことですので、安全を守るという意味では、規制の厳しさだけじゃなくて、規制をきちっと守っていただくと同時に、それに基づいて設置されたものがきちっと動くか、逆に、もう一歩踏み込めば、そういった現場がそれをいざというときにも動かすことができる能力が準備されているかということ、これが安全を守る大きな二本柱になっているというふうに申し上げております。

 そういう意味で、こういった点検、いろいろな機器がございますので、私どもも、安全上の重要度に分けて一、二、三というふうにクラス分けしております。安全上重要なクラスワンの機器につきましては、特にそういった点について注意深く点検をしていただく必要があると思っています。

 同時に、安全文化の劣化ということをこのたび指摘させていただいておりますけれども、これは、今鈴木理事長からもお話がありましたように、一朝一夕でそれが達成できるものではなくて、引き続き、絶え間なくそれに向かって努力するものだ、そのことによってようやく安全は担保できるというふうに思っています。

椎名委員 ありがとうございます。

 まず、鈴木参考人からいただいた話に関連してですけれども、要は、現在「もんじゅ」は停止しているので実体的な安全性には影響がないということなんだというふうに理解できましたが、手続的な安全性という意味でミスがあったという点についてはおわび申し上げる、大きくくくるとそういう趣旨なのかなというふうに思いました。

 ちょっと確認なんですけれども、「もんじゅ」なんですが、今、基本的に圧力容器の中にMOX燃料が入っているという理解でいいんですよね。停止はしているという意味でいうと、発電ということは行っていないけれども、燃料自体は装填されたままということでよろしいですか。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 燃料自身は原子炉の中に装填されたままでございます。

 ただ、圧力容器という表現が委員の方からございましたが、高速炉と軽水炉の大きな違いは、圧力容器と称するほどの、軽水炉ではそれが非常に重要な構造物でございますが、そういう圧力を必要としないのが高速炉の特徴でございまして、したがって、原子炉の中に燃料は入っておりますが、その点は軽水炉とは大分状況が違うと思っています。

 しかも、今からだと一九九五年は約十八年ぐらい前になりますが、四〇%程度の出力で、ある期間動かしたことがございますので、そのときにできた核分裂生成物、これを原子炉の中の放射能といいますが、それが今でも原子炉の中に若干ですが残っております。なかなか消えてなくならないものがございますので、そういうものが残っております。

 そのことについては十分注意しながら我々は運転管理に努めておりますし、格納容器といいまして、原子炉をさらに覆っている大きなドームの建物がございます。私が例えば原子炉の様子を見に行く場合はそこに入るわけですが、そういうときに線量計をつけて入りますが、線量計の検出にはかからないほどの微弱な放射線レベルで現状はあるという状況でございます。

椎名委員 ありがとうございます。いろいろ勉強になりました。

 燃料が装填されているということは、基本的には、要は、冷却系のための一次系、二次系でナトリウムが回っている、冷やしているんだと思いますけれども、ナトリウムを回しているというだけで、それ以外は基本的には動いていないということなんだと思います。

 プラントは動いていないから、要するに定期的に点検をしないから、手続的な安全性は確保されていなかったけれども実体的な安全性は大丈夫と言っているのは、ちょっといまいち、私の中ではぴんとこなかったということが一点。

 さらに言うと、先ほど来、日本全国に動いていない軽水炉が五十基近くあるという文脈の中で、さまざまな先生が、要するに、とめているとプラントの劣化が早いんじゃないかというような指摘をしていましたが、私自身もそれは完全に同意をするところでございます。

 ナトリウムの冷却系については動かしている、それ以外についてはとめているという認識の中で、プラントをとめているのであれば劣化が早いということであれば、要するに、運転を前提とした保全点検のスパンというのと比べると、それをきちんと実行していくか、または、もうちょっとちゃんと点検をしていくことの方がずっと重要なんじゃないですか。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 ナトリウムは、ある程度温度を上げておかないと固まってしまいますので、液体状で冷却機能をもたせるためには、ある程度温度を高めてあります。したがって、そういう意味では動力をもちろん必要としますし、動力源も必要としています。

 ただ、原子炉は若干崩壊熱はないわけじゃないんですが、いわゆる冷却を要するほどの崩壊熱ではございませんので、そういう意味では、先生がちょっとイメージとしてお持ちかもしれませんが、いわゆる炉心を冷却するというようなことで、そういうことが特段に重要だという状況に今はなっておりません。

 それで、実体的安全性は、もう確保されているというか、要するに、福島第一事故のような事故が発生する可能性は今の状況では限りなく低いということを私は申し上げたかったわけで、しかも、制御棒は入りっ放しになっておりますので、そういう状況だと思っています。

 あと、使わない方がむしろ劣化するんじゃないかという御指摘ですが、そういうような側面ももちろんございます。ございますが、「もんじゅ」の場合は、今現在は建設期間中なんです。それで、いろいろな機器類はメーカーが我々に製造したものを納めてくれていますが、それが本当に初期の設計どおりの仕様を発揮するかどうかというのは、実は、最終的に一〇〇%運転に入る前に、使用前検査と申しますが、その検査を受けなきゃいけない状況。したがって、我々は今、「もんじゅ」の機器類は全部新品同様に維持しなきゃいけないというのが法律上の理解のされ方でございます。

 そういう意味では、ナトリウムで冷却していますが、例えば水・蒸気系といいまして、本来はナトリウムの熱を蒸気に変える必要がございます、タービンを回すために。二次系といいますか、炉心とは接触しないんですが、その水・蒸気系というループがございます。それは実は今使えない状態ですので、分解して、そういう状態で管理しています。

 ですから、使った方がいいという面がないわけじゃないですが、しかし、「もんじゅ」の場合は、その点は、原子力発電所が運転をしていたものを長期にとめて次に稼働するときにいろいろ心配が生ずるというような点でいえば、それほどでもないというふうに考えております。

椎名委員 ありがとうございます。

 ではそうすると、まさにそういう形で、ある程度安全性が確保されているという認識のもとで、結局、その保全点検というもののスパンというものをもともと規定していたものからきちんとやれてこなかったという意味でいうと、恐らく、やはり安全文化というものの劣化ということにつながっているのかなというふうに、聞いていて思いました。

 なので、やはり、今後とも引き続ききちんと定期点検を行っていくという形は必要なのかもしれないなというふうには思います。

 続いて、文部科学省の参考人の方に伺いたいと思います。

 「もんじゅ」の今までの研究開発費というのは、昭和五十五年から平成二十四年までで九千六百五十六億円かかっているということだと思います。実際に運転するつもりで動かそうとしているんだと思いますけれども、今後どの程度の予算がかかる予定なのかということと、今のところ高速増殖炉計画というのは、見直し自体はかかっていないという理解をしております。

 そうだとすると、実証炉、それから実用炉というふうにそれぞれ進めていくとすると、どのぐらいの国家予算を使う、どのぐらいのコストがかかるものなのか、教えていただければと思います。

戸谷政府参考人 「もんじゅ」につきましての今後あるいは今後の予算の見通し等についてということでございますが、今現在、「もんじゅ」は停止中ということでございますけれども、「もんじゅ」を安全に維持をするということの必要性から、この施設の維持管理に必要な経費といたしまして、二十五年度予算におきましては百七十四億円を計上させていただいております。

 ただ、この二十五年度の予算の百七十四億円の内訳といたしましては、安全対策費といたしまして、安全性の向上という観点から三十四億円、それからあと、純粋な維持管理、先ほど来御議論になっております、点検等をしっかりやるという意味でのことも含めました維持管理費につきましては、百四十億円ということでございます。

 それで、今後の、「もんじゅ」を用いました研究計画にどの程度の経費をこれから使うのかということでございますが、この「もんじゅ」につきましては、昨年から、研究計画につきまして、もう一遍新たな視点から効果的、効率的に推進するという観点からの、今、研究計画の見直し作業を進めているところでございます。

 これは、要すれば、これまで第一義的な目標として掲げてきました高速増殖炉としてのまず成果をどこまで「もんじゅ」から刈り取るのかという問題と、それから、新たに世界的に今関心を集めているところでございますけれども、高レベル放射性廃棄物の中のかなり重要な部分となる、いわゆるマイナーアクチナイド等を中心といたしました長寿命の放射性核種を、この高速増殖炉、場合によっては高速炉というふうに申し上げてもよろしいかもしれませんが、その中で、どこまでたたいて減容化することができるのか、そういったことにつきましても、これをどこまで活用できるのかという観点も新たにつけ加わっているということでございます。

 昨年、一旦、中間的な取りまとめを行っておりますけれども、ことしの夏以降に向けまして、今、研究計画の再度練り直しをやっているということでございまして、そういった中で、全般的な経費等につきましても、その研究計画に沿った形で積み上げまして、また改めていろいろ御議論いただきたいというふうに今考えている次第でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうすると、「もんじゅ」の見直しの方向性ですけれども、どういった方向性なんでしょうか。これをそのまま最終的には稼働しないで、廃炉に向けて動かしていくべきだという方向性で見直しがなされるということも検討対象にはなっているという理解でよろしいんでしょうか。

戸谷政府参考人 今申し上げました研究計画の見直しでございますが、これはあくまでも、今ある「もんじゅ」をどこまで本当に費用対効果の点も含めまして活用できるのかということを今見きわめるということをやっているということでございます。

 この成果を出しました後に、今度は政府全体の中で、特に資源エネルギー庁、経済産業省さんが中心となって今エネルギー政策の見直しが行われておりますので、そういった中でこういった材料につきましてもお出しをして、エネルギー政策全体の中での「もんじゅ」の位置づけといったものも政府として明確化していただきたいということかというふうに思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 「もんじゅ」についてもこういった形で費用対効果の見直しがなされているというと、さらに実証炉、実用炉という方向に行くこともなかなか難しいんだろうなというふうにとれます。

 経済産業省の参考人に伺いますが、高速増殖炉計画、これが実用化して核燃料サイクルの事業について実用化する方向性に議論が進んでいるのか、教えていただければと思います。

糟谷政府参考人 二〇〇五年に策定された原子力政策大綱、これが政府として決めた一番新しい原子力政策大綱でありまして、ここでは、先ほど御指摘ありましたように、高速増殖炉の実用化の時期として、二〇五〇年ごろから商業ベースでの導入を目指すということにされておるところでございます。

 この原子力政策大綱につきましては、二〇一〇年の十二月から見直しの議論を始めておりましたけれども、その後、震災が起きました。現在、新たなエネルギー政策の検討を進めておりまして、その中で、あの福島での事故を含め、二〇〇五年以降の状況の変化を踏まえて、今後、高速増殖炉について議論をしていくということになろうかと思います。

 ちなみに、海外の状況を御紹介申し上げますと、高速炉について、フランスとかロシア、中国、インドといった国で研究開発を進めておりまして、これらの国々では、二〇二〇年から二〇四〇年ごろの実用化を目標としておる。

 それに対して日本は、二〇五〇年ごろから商業ベースでの導入を目指すということにしておったわけでありますが、最近の状況を踏まえて今後議論をしていくということになろうかと思います。

椎名委員 どうもありがとうございます。

 ぜひとも、高速増殖炉計画それそのものまで見直しをする方向性で検討していただきたいなというふうに思う次第でございます。

 その話の流れの中でもう少し核燃料サイクル事業の話について伺いたいんですが、福島の三号炉というのは、MOX燃料を使ってプルサーマル計画の中でやっていたことだと思います。玄海三号機それから伊方の三号機という、これらの軽水炉でもプルサーマルが行われていたところでございます。

 当初の核燃料サイクル計画というのは、基本的には、再処理工場とMOX燃料加工工場で国産のMOX燃料加工技術をつくって年間八百トンということだと思いますけれども、それで再処理をしていく、高速増殖炉を使ってエネルギーの自給に向けて努力をしていくというような話だったと思いますけれども、現実的には、六ケ所の再処理工場自体がガラス固化技術というのが実用化できていないというところで、結局、使用済み核燃料自体は外国でMOX燃料にしているわけでございます。

 海外に委託してまでMOX燃料をつくって、それでプルサーマル計画というものを行っているこの理由と、それから、それがそもそもどのぐらいコストがかかっていて、要するに費用対効果という面でどのぐらい効果があるのかという点について、経済産業省の参考人に伺えればと思います。

糟谷政府参考人 我が国はこれまで、使用済み核燃料について全量再処理をするという方針をとってきたわけでございますけれども、その背景としましては、ウラン資源の有効利用でありますとか高レベル放射性廃棄物の減容、有害度の低減といったようなことが理由でございます。

 具体的に申し上げますと、プルサーマルを進めることで、つまり、高速増殖炉に至らず、今はMOX燃料を軽水炉で燃やすというプルサーマルをやっておるわけでありますが、これをやることで、ウラン資源を約一、二割節約することができます。また、高レベル放射性廃棄物につきましても、再処理、プルサーマルをやらない場合に比べまして、体積を減らしたり、それから、放射能の有害度が天然ウラン並みになるまでの期間についても十分の一以下にすることができる、そういうことに鑑みて行っております。

 コストでありますが、二〇一一年の十二月にエネルギー・環境会議で試算が行われておりまして、ここでは、現在のような形で再処理をし、MOX燃料をプルサーマルするという場合の核燃料サイクルコストは、キロワットアワー当たり約一・四円とされております。

 ちなみに、原子力発電のコストは、このときの試算では、一キロワットアワー当たり八・九円以上、この以上といいますのは、賠償とか事故のリスクをどう見るかによって変わるということで八・九円以上とされたわけでありますが、そのうちの一・四円が、プルサーマルのときのサイクルのコストということでございます。

 ちなみに、再処理それからプルサーマルをしない場合の燃料費等についてはキロワットアワー当たり約一・〇円ということで、全量再処理を現在のような形でやる方がキロワット当たり〇・四円高いということになるわけであります。

 ただ、先ほど申し上げましたように、ウラン資源の節約ですとか高レベル放射性廃棄物の減容、有害度の低減というようなことに鑑みまして、我が国としてはこれまで、経済性だけではなくて、こういった観点から総合的に勘案をして、全量再処理をするという核燃料サイクルの確立を国の基本方針としてきたところでございます。

椎名委員 済みません、ありがとうございます。

 全量再処理なんですけれども、仮にこのガラス固化技術というのがどうにかなったとしても、基本的には年間八百トンなんですよね。

 それで、今現在ある使用済み核燃料というのが、容量として入っているのが一万七千トン。それで、今、大体この何割か、一万トンを超える、一万一千トンから一万二千トンぐらいかもしれませんけれども、そのぐらいまでは既に中間貯蔵庫の中に入っているということでございます。

 要するに、全量再処理というのが本当に可能なんですかという話ですけれども、経済産業省の参考人に伺えればというふうに思います。

糟谷政府参考人 これまで、原子力発電所で使用された使用済み燃料、国内で一万七千トンございます。そのうち、約三千トン近くが六ケ所の再処理工場にございます。

 これを、先ほど御指摘のように、六ケ所の再処理工場ができますと年間八百トン処理をしていくということで、四十年間稼働するという計画でありましたので、四十年間八百トンで稼働いたしますと三・二万トン稼働するということで、その中で、今ある一万七千トンのもの、それから、今後生まれてくるものも含めて処理をしていくという計画を立てて進めてきておったところでございます。

椎名委員 再稼働しないのであれば、これから要するに使用済み核燃料がふえないでしょうから、まだそれでも現実感があるのかもしれませんけれども、再稼働した上で、さらに四十年間で三万二千トンというと、ちょっと何となく現実感を持たないなという印象を私自身は思います。

 再処理それから高速増殖炉というところにつきましては、先ほど私自身も指摘しましたけれども、「もんじゅ」を廃炉にして、直接全量処分という方向性で議論を進めていく見直しをしていった方がよろしいのではないかというふうに私自身の所見だけ申し述べて、時間もないですが、次の質問をさせていただきたいと思います。

 事故収束の過程において汚染水処理の問題ですけれども、この汚染水処理の問題、一日四百トンの水が圧力容器を冷やすために回っている、さらには一日四百トンの地下水が原子炉建屋に入ってくるということで、一日八百トンの水が原子炉建屋の中に入ってきているわけでございます。このうちの一部を保管するということで、今回、汚染水の漏えいの問題があった地下貯水槽というものがあるわけでございます。

 この地下貯水槽というのは、遮蔽措置がとられているということで、安全評価自体も原子力規制委員会からなされたということでございますが、このたび汚染水が漏えいした一部の地下貯水槽については、水位が下がるということで、百二十トンだったと思いますけれども、結構漏れているということです。

 なぜ汚染水が漏えいして、汚染水が漏えいしたということについての安全性評価についてどのように考えているのかということについて、規制委員長に伺えればと思います。

田中政府特別補佐人 汚染水が漏れてしまったということについては、当時は原子力安全・保安院でしたけれども、少し十分なチェックが足らなかったという面はあろうかと思います。

 ただ、当時は非常に状態がまだ不安定な状況で、ああいった、何というんでしょうか、大量の放射能水をためるにしては通常ではあり得ないような施設にためざるを得なかった、そういう準備をしたというところもあります。今回、それが非常に悪い結果として漏れてしまったということであります。

 漏れたということがわかった時点で、私自身の方からも、すぐに現地の規制官等からも指示を出しまして、直ちにその汚染水をきちっとしたタンクに移すようにという指示を出させていただいていますし、翌日には、私の方からも、汚染した漏れた水がどういうふうに拡散していくかモニタリングをして、それから、決して敷地外に出ないように対策をとるようにという指示を出させていただきました。

 また、四月十三日だったと思いますが、私自身も、その前のいろいろなトラブルもございましたので、全体としてどういう状況かを視察して、現地へ行って廣瀬社長以下幹部とも会って、暫定的にいろいろな対策をとっていることによっていろいろなトラブルが起きておりますので、それについてきちっと全体を見直して、恒久的な、より安定な対策をとっていただくようにと指示をしてきたところでございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 先ほどございましたけれども、要するに、当座の措置として安全性評価をしたということと、恒久措置としてその安全性を見ていくということは全然別の話なんだとやはり思いますので、改めて、この汚染水の保管と、それを含めて事故収束についても、きちんと一定程度落ちついた段階でもう一回その安全性を再度評価するという形で見直していただきたいというふうに思うところでございます。

 これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

森委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 この七月から施行されるとされている原子力規制委員会規則、いわゆる新規制基準にかかわって田中規制委員長に質問いたします。

 昨年の秋に原子力規制委員会は、福島第一原発事故で放出した総放出量と同じ量の放射性物質が一度に放出したという仮定で、全国の原発でメルトダウンが起きた場合の放射性物質の拡散シミュレーションというのを行われました。

 田中委員長は、昨年、二〇一二年の十一月七日の衆議院経済産業委員会で、我が党の吉井英勝衆議院議員の質問に対して、福島の事故のような放出量を仮定しなければいけないようであると、御指摘のように、原子炉を動かすということはなかなか困難だろうと思うというふうに答弁されました。今でもその考えに変わりはありませんか。

田中政府特別補佐人 変わりありません。

笠井委員 そこで伺いますが、では、これまで旧原子力安全委員会は、原子炉立地審査指針というのを定めて、敷地境界での線量目安というのを定めてまいりました。これは何のために設けられたのか、伺いたいと思います。

田中政府特別補佐人 これまでの立地指針は、いわゆるシビアアクシデント、重大事故とか仮想事故というのを想定しまして、その場合にも周辺住民に重大な放射線障害が起きないようにということで、ある程度離隔距離をとるという精神がありまして、敷地境界で、全身でいいますと二百五十ミリシーベルトというそういう評価をしてきた。そのための指針であります。

笠井委員 立地するに当たっては一定の距離がなければいけないということでありますが、今、成人で全身二百五十ミリシーベルトというお話がありました。

 では、この値というのは、今の時点では引き続き効力を持っているということで認識はよろしいでしょうか。

田中政府特別補佐人 新しい基準ではそういった重大事故とか仮想事故という考え方ではなくて、さまざまな起因事象に基づくシビアアクシデントのシナリオを考えまして、それに対する対策を求めています。

 その結果として、敷地境界の線量というよりは、今、私どもがその基準の基本として量的に求めているのは、セシウムで百テラベクレル、基本的にはゼロなんですけれども、それでも、最悪の場合には百テラベクレル以下になるようにきちっとさまざまな対策をとるということを申し上げています。

 百テラベクレルというのは、今回の福島の事故から見ますと、大体百分の一ぐらいになるというふうに想定しています。

笠井委員 それは、施行するというのが七月ですから、それ以降ということに正式になりますので、現時点、五月ですので、つまり今は七月以前の段階、今で言われると、結局、二百五十ミリ全身という話は今この瞬間効力がある、そういうことを聞いたんです。

田中政府特別補佐人 まだ旧指針は生きておりますので、御指摘のとおりでございます。

笠井委員 では、福島第一原発事故の場合に、この敷地境界における全身線量の積算値といいますか、累積の線量というのは幾らだったということで今認識されているんでしょうか。

田中政府特別補佐人 福島第一のときの敷地境界の線量については、実は私自身は、いろいろなモニタリングとか何かがとまったりして正確な評価ができていないというところがありまして、正確な値は認識しておりません。

笠井委員 原子力工学の研究者が福島県のモニタリングの結果をもとに敷地境界線量を算出した結果では、一昨年の三月の事故当日から、その三月月末までということで、二百三十四ミリシーベルトという研究の結果の値を出したりされていますが、私は、モニタリングポストを洗いざらい調べて、民間研究者の成果も集めて公表すべきだというふうに思います。

 そこで、そもそも、原子炉の設置許可申請時における福島第一原発の敷地境界線量の資料を見ますと、ここにございますけれども、原子炉冷却材の喪失の仮想事故、旧指針ではという話を言われましたけれども、その事故の場合の外部ガンマ線による全身に対する線量というのは、一号機は〇・七四ミリシーベルト、二号機は一・四ミリシーベルト、三号機は一・二ミリシーベルト、四号機は一・四ミリシーベルトということで、桁違いに低いことで申請しているということでありまして、この程度で済むと申請をして許可を得ていたけれども、いずれにしても、はるかに上回ったということだと思うんです。

 田中委員長も、ICRPの国際基準では、二百五十というのに対して百ミリシーベルトが基本になると考えているというふうにもおっしゃったりしている。つまり福島第一原発の立地というのは、事故を経て、結果的には立地的には適合していなかったということにはなりませんか。

田中政府特別補佐人 結果的には適合していなかったんだと思います。

笠井委員 昨年十月の拡散予測シミュレーションの試算結果というのがございます。これを見ても、日本全国の全ての原発がずっとありますよね、半径でありますけれども、こういうふうに、十キロ以遠の地点でも七日間の積算で百ミリシーベルトを超えているということであります。例えば泊なんかでいうと、十九・六キロというところもそういうふうに超えているという状況です。

 つまり、今の立地審査指針を使って福島第一原発と同程度の重大事故が起きると仮定すれば、全ての原発が立地審査不適合となる。ところが、今回、先ほど委員長言われました規制基準、規則案ということでいうと、事故が起きた場合の敷地境界での放射線量を百ミリシーベルトなりに抑えるという目安線量というのは、一切入っていないわけですよね。なぜですか。改めてそこの点を説明してください。

田中政府特別補佐人 今後、敷地境界でどの程度になるかということの評価は一応しておくべきだろうとは思っていますけれども、目安線量というのは、現在の立地指針で、その立地の適否を判断する場合の線量として全身二百五十ミリシーベルトというような考え方で決められておりますので、今回は、先ほどの繰り返しになりますけれども、そういったことを基準にして安全の規制を求めているということではございませんので、そういった目安線量という考え方はとっておりません。

笠井委員 これまで、重大事故も仮想事故も要するにそういう意味では起きないというか、シビアアクシデントは起きないという前提だった。その考え方を改める、今度はシビアアクシデントが起こったことを前提にしてということで対策をとるんだということで、改めるのは私は当然だと思うんですが、問題は、格納容器の破損を防止するために外部に放射性物質を出すという、規制基準でこれをやっていいのかという問題になると思うんですよ。先ほど、百分の一で百テラベクレルと言われたけれども、それで本当に百分の一でとどまるという保証があるのかという問題が出てきます。

 一たびメルトダウンのような大事故が起きたら、福島第一原発事故で現実のものとなったように、最悪、敷地境界では百ミリシーベルトをはるかに超える放射線量となり得る。原子炉等規制法というのは、設置許可を受けた過去にさかのぼって、規制基準に合わないものは許可を取り消すというふうにしております。

 原子炉立地指針を規制の項目に入れて法令上の規制対象とすると、既存の全原発の許可が取り消されてしまう。そうならないように規制基準に入れない、そういうことじゃないんですか。

田中政府特別補佐人 そういうことではございません。

 従来は、先ほどの繰り返しになりますけれども、原子炉から敷地境界までの距離を確保して、敷地周辺における線量を一定水準以下にするということを求めていたわけでございます。

 これは今回の重大な反省でございますけれども、具体的なシビアアクシデント、特に、外部要因に基づくアクシデントを想定せずに、距離のみでその安全を確保するという考え方をとっていたわけです。それが今回の福島事故で不十分であるということが明確になりましたので、新しい基準においては、そういったことをつぶさに検討いたしまして、アクシデントが起こるシナリオについて一つ一つ検討した上で、それに対応するような対策を求めております。

 したがいまして、立地の不適とかそういうことのために目安線量を設けているとか設けていないということではございません。

笠井委員 ことし七月から施行される原子炉等規制法で原発設置の許可の基準を定めていて、その中で四十三条の三の六の一項四号ですけれども、原発の位置について、原子力災害、原発から放出される放射性物質の災害などを防止するということで、その防止する上で支障がないというふうに適合していなければ、原子力規制委員会は原発の原子炉の設置許可ができないということを定めております。

 原子炉を設置していいか、位置の適否を判断してきた物差しが立地審査指針だと思うんです。立地審査指針による評価を規制基準に入れないとなりますと、今私が読み上げた原子炉等規制法の規定に反しているということにならないか。法律に反した規則があってはならないと思うんですけれども、その点はどうですか。

田中政府特別補佐人 現行の立地審査指針はそのまま採用しておりませんけれども、具体的には、先ほど申し上げましたように、事故が起きたときに、最悪の場合でも百テラベクレル以上の放出がないようにということにしてあります。

 ですから、線量基準ということではなくて、百テラベクレルぐらいですと、実際、評価すれば百ミリシーベルトとかそんなものよりもずっと低くなるというふうに想定しておりますが、いずれそれについても一応評価をしておきたいとは思っております。

笠井委員 では伺いますけれども、この七月に施行するという新規制基準では、メルトダウンが起きても格納容器を破損させないために、フィルターつきベントを使って、管理放出という名のもとで、今委員長が言われた最大百テラベクレルもの放射性物質を原発の外に放出するというものがありますが、そもそも、フィルターつきベントでどれだけの放射性物質の放出を減らすことができるという性能を評価されているんでしょうか。

田中政府特別補佐人 通常に考えますと大体千分の一以上減らせると思っておりますが、評価の上では百分の一ぐらい減るということで今想定しております。

笠井委員 事故によっていろいろなケースがあると思うんです。原子炉の規模もありますし、どういう事故になるかもいろいろ多様なわけですけれども、百テラベクレルに抑えられる保証というのはありますか。百テラベクレルを超えた場合にはどうするんですか。

田中政府特別補佐人 基本的に放出をさせないということが原則でありまして、最悪の場合に、百テラベクレルを超えないようにするということを規制基準として、いろいろな対策を求めていくということでございます。

 ですから、百テラベクレルを超えるかどうか、超えた場合はどうなるかと言われても、これは、超えないようにするということを求めていくということで御理解いただきたいと思います。

笠井委員 超えないようにするというのは安全目標であって、それを目指していくという話ですよね。超えるかもしれないということで、超えた場合どうするかという問題になりませんか。だってそういう問題でしょう。そうですよ、だって福島の事故はそういうことなんだから。

田中政府特別補佐人 もう一つ、安全の深層防護には、仮にそういった住民の被曝等のおそれがある場合には、いわゆる避難等の防災対策をとることになっておりますので、そういった点についてもきちっと今回は、そういう可能性が出た時点で、五キロ以内の住民については避難あるいは屋内退避といったようなことをしていただくように、今、そういった保護の面についても準備させていただいているところでございます。

笠井委員 私、それは無責任な話だと思う。別の話です。無責任きわまりない答弁だと思うんですが、ベント時に住民避難を考慮に入れるということは、原子炉施設の安全評価の基本的考え方に反する。万一の重大事故、仮想事故に対して、避難しなくても周辺住民に放射線障害を与えない離隔距離、原子炉の位置があることを審査するのが立地評価の基本であります。防災対策とは切り離してやるべきことであって、大体、完全な住民の避難なんということはあり得ないというのを示したのが福島事故だったんじゃないですか。住民避難は、災害の影響をでき得る範囲で軽減するための行政措置として位置づけるものであります。

 しかも、今、フィルターベントという話がありましたけれども、これも、今度でいえば五年間猶予という話ですよね。五年以内に、まだできていないときに事故があったら、百分の一におさまりますか。

田中政府特別補佐人 フィルターベントを五年猶予というのはPWRについてですが、BWRについてはそういう猶予は設けておりません。これは、技術的にいろいろ検討していただいて、PWRの場合は格納容器が大きいということで、格納容器に閉じ込めることができるだろうということで評価していただいたものでございます。

 先ほど、防災について無責任だということですけれども、万が一に百テラベクレルを超えた場合というお話がありましたので、その万が一に備えて対策をとるのが防災の考え方でございますので、そういうことで御説明させていただきました。

笠井委員 猶予期間の問題だって、これは問題があるわけです。しかも、百テラベクレルと言っているのはセシウム137ですよね、規制委員会の資料を見ると。キセノンとかクリプトンなどの希ガスについては含んでいない。希ガスを含めれば百テラベクレルに抑えることはできないんじゃないかと思うんだけれども、なぜそれを評価対象にしていないんですか。

田中政府特別補佐人 どこまでの核種を考慮するかということは一つの議論の観点でございますけれども、希ガスは、どこにも反応しないで、空気の流れとともにどこかに飛んでいくというところがございます。もっと重要なのは、やはり沃素の問題だと思っております。

 沃素については、そういった状況が起きたときには、沃素剤の服用とか屋内退避とか、さまざまな手だてで沃素による甲状腺被曝を抑えるような方法も防災計画の中には入れていただくようにして、そのための手当ても、今私どもとしても最大限努力しているところでございます。

笠井委員 防災計画だって訓練だって、四苦八苦しているんですよ、現場では。しかも今、希ガスのことは大したことないとおっしゃいましたけれども、キセノン133の半減期というのは五日間、クリプトン85というのは十年以上あります。

 ベントは、これはもちろんタイミング、どこでやるかというのがあります。圧力上昇があって、それをどうするかということで、できる限り閉じ込めておくということでやるわけですから、余り早くやらないということでしょうけれども、しかし、そのタイミングはいろいろな場合がある。これはもう本当に危なくなったら早くやらなきゃいけないとなれば、まだ半減していないどころか、影響が大きいうちに出ちゃうことだってあるわけですよ。それは問題ないと言われるんですか、そういう問題については。

田中政府特別補佐人 事象が非常に急激に進む、いわゆるアーリーベントをやらなきゃいけないという事態も全く想定していないわけではございませんで、そういった点についても含めまして今検討を進めているところでございます。

笠井委員 そうすると、結局百テラベクレルで全体がおさまるから大丈夫です、大したことないんです、だから敷地境界の話はなくてもいいんですという話にならないと思うんですよ。

 これまで、どんなことが起きても原子炉から放射性物質が出ない、出さないというのが前提だと言ってきた。ところが、福島事故があって今度は、シビアアクシデント、これは起き得るけれどもできる限り抑制するというだけであって、相当な量、例えば、安全目標で百分の一も目指すわけですから、百分の一かもしれないし、それがもっと多くて福島並みかもしれないし、それより多いかもしれない。

 どういう事故か、ベントのタイミングはどうか、原子炉の規模までも違うということで、さまざまなことを前提にしないといけないと思うんだけれども、結局、そこのところが、できるだけ通れるようにという話になった上に、周辺住民に被曝とともに避難という負担を強いるということになる。私は、これは再稼働ありきの規制基準じゃないかと言わざるを得ないと思います。

 そういう形で新基準による再稼働というのは論外だ、許されないということを重ねて申し上げて、質問を終わりたいと思います。

森委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、原子力問題に関する特別委員会ということで種々質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、高速増殖原型炉「もんじゅ」の件につきまして伺いたいと思います。

 この「もんじゅ」は、プルトニウム・ウラン混合酸化物、通称MOX燃料を使用する、国の核燃料サイクル計画を進める高速増殖型の原子炉ですね。確認をしながら質問をさせていただきますが、この「もんじゅ」は、昭和五十八年設置許可、六十年本体工事着工、平成三年試運転の開始、平成七年の八月に初めて送電開始という経緯で建設、使用されてまいりました。

 ところが、発電を開始した平成七年の十二月に、冷却材であるナトリウム漏れによる火災事故が発生、一時運転が停止した後、平成二十二年五月、漏えい対策を行って運転を再開したものの、この年の八月には、燃料交換装置、重さ約三・三トンもの装置落下の事故により再び運転休止となり、復旧できないまま現在に至りました。

 これらのほかにも、非常用ディーゼル発電機の故障などの事故が発生しているという状況も報告されています。

 「もんじゅ」を運営している独立行政法人日本原子力研究開発機構は、昨年十一月、九千八百四十七個、約一万点にも及ぶ点検漏れがあったことを公表し、本年一月には原子力規制委員会へ点検漏れに関する報告書を提出して、規制委員会が立入検査を行ったというこの経緯があります。

 なぜこのような一万点近い点検漏れが生じたのか、これまでの日本原子力研究開発機構の対応についてまずお答えいただきたいと思います。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 その前に、現在、日本では原子力安全に係る信頼回復に向けて国を挙げて取り組んでいるさなか、このような不祥事を機構が引き起こしましたことについて深くおわび申し上げます。

 先生お尋ねの、このような保安管理の不備がなぜ生じたかについてでございますが、直接的な原因としては、点検計画に点検頻度だけが記載されておりまして、具体的な点検時期が記載されていなかった。点検業務が各担当の課任せになっていて、課をまたがった取り組みがなされていなかった。点検の実施状況を毎月レビューする仕組みはございましたが、前回の点検がいつだったのか、点検間隔を確認しておりませんで、点検期限の超過を認識できなかったような状況でございました。また、組織内の各種会議体において、個々の点検業務についてチェックする機能が働いていなかったということもございます。

 さらに、直接的原因以外にも組織的原因がございます。

 ただ、この直接的原因につきましては、本年一月に既に機構から規制委員会の方に再発防止策を御報告しておりまして、昨日の規制委員会の資料においても、「これら再発防止対策を確実に実施することにより、」「直接的な原因は除去することが可能」との御判断はいただいております。

 組織的原因でございますが、例えば、点検実績の管理や保全の有効性評価等のマネジメントが不十分であった。品質保証や技術調整の観点からチェックする機能がなかった。本格運転に備えた保全プログラムの改善への取り組みが明確でなかった。工程変更等に係る経営層と現場とのコミュニケーションが不十分だった等々も大いに関連があると私どもは認識しております。

 以上でございます。

玉城委員 今のお話を伺っていると、極めて、通常行われているべきはずの点検作業がもう行われていなかったということで、国策としてMOX燃料を使用する燃料サイクル計画に取り組む重要な研究施設であるはずの「もんじゅ」がこういう状況で運営されていたということは、国民にとっても、本当に、我が国の原子力政策とはこのようなものなのかという大変大きな不安がこの間ずっと続いてきているのではないかというふうに思います。

 規制委員会の調査でも、非常用発電など重要な機器で耐震安全上の新たな点検漏れが発覚したということも報道されていますし、鈴木理事長、きょうの委員会で、報道による形式的ミスはやむを得ない旨の発言は訂正なさいましたね。これは、形式的ミスとは言っていない、手続的な安全性の問題と実体的な安全性の問題であるというふうに考えているということなんですが、つまりそういうことではなくて、今答えていただいたような基本中の基本的なことができていなかったということは、どの安全というふうな話ではないというふうに思うわけです。

 そこで田中委員長に伺います。原子力規制委員会は、これらの新たな問題や機構側の対応あるいは対策についてどのような判断がなされるものと考えられるでしょうか。そのことについて伺います。

田中政府特別補佐人 規制委員会としましては、原子炉等規制法に基づいて、日本原子力研究開発機構に対して、未点検機器の点検実施、点検計画の見直し、再発防止に係る仕組みや体制の再構築を命じております。また、これらに係る対応の完了を原子力規制委員会として確認するまでは、運転に向けた活動を停止していただくよう決定したところでございます。

 こういったことがきちっとできた段階で、今回の指示を解除するかどうかを判断するということになろうかと思っております。

玉城委員 まさに報道にもありますとおり、再発防止に向けた安全管理体制の再構築ができるまで運転再開の準備作業を行わないよう命じるということですよね。つまり、ほとんどとまってきている「もんじゅ」、さらに、この間また安全対策をするためにはとめなければいけないというそういう状況があるわけですが、たび重なる事故とその対応に追われるまま、「もんじゅ」の運転再開への目途も定まらない。

 もしこのまま運転が再開されず、あるいは長期にわたって運用停止となった場合、この現状維持のままで計上される経費は莫大なものになると思います。それをどのぐらい見込んでいるのかについてお答えいただきたいと思います。

福井副大臣 文部科学省でございます。

 まず、「もんじゅ」につきまして、先生おっしゃるとおりでございます。まず第一に、安全の確保のためにその方策に万全を期する、これが重要であると。

 現在、「もんじゅ」は停止中ではございますけれども、今回の事故を踏まえて、安全対策の着実な実施及び施設の安全な維持管理に必要な経費といたしまして、平成二十五年度予算として百七十四億円、ちなみに、平成二十四年度は百七十五億円を計上しているところでございます。

 今回の原子力規制委員会による点検時期超過事案にかかわる評価を重く受けとめて、さらなる安全確保の徹底が必要であるというふうに考えておりまして、そのための安全対策及び維持管理として所要の経費が必要になるというふうに考えているところでございます。

玉城委員 つまり、我が国の莫大な予算がこれからもかかっていくということを考えると、これはもう停止する、廃炉するというふうな方向もしっかりと定めなくてはいけないのではないか、そういう法律を早期に我々は考えるべきではないかということも、やはり思うわけです。

 さて、田中委員長は、安全文化の欠如はやはり福島第一原発の事故に学ぶべきであるということをおっしゃっておりますが、安全文化の欠如について、続いて、日本原子力発電の敦賀原発の活断層の件について伺いたいと思います。

 敦賀原発の二号機の真下を走る断層の一種、D―1破砕帯が活断層であるという見方が報道されています。もしそのように判断された場合、国の指針では活断層の上に原子炉を設置することが認められていないため、現実的に稼働できないことから、廃炉も選択せざるを得なくなると思われます。

 実際に調査した専門家からの活断層に関する意見はどのようなことであったか。また、原子力規制委員会は、この件に関してさらなる報告があった場合、再稼働の判断もしくは運用の停止などどのように行っていくのか。伺いたいと思います。

田中政府特別補佐人 敦賀発電所の敷地内破砕帯の調査については、昨年十一月から有識者会合によって、約半年にわたって、専門的な現地調査あるいは評価を行っていただきました。その間、事業者等にも三度ほど来ていただいて、議論をさせていただいています。

 昨日開催された第五回の評価会合において、敦賀二号炉直下のD―1破砕帯については、「耐震設計上考慮する活断層である」という評価をされたということは承知しております。

 その結果については今後規制委員会の方に報告があるものと思いますが、そこはいつどのような形でされるかは、まだ私の方には伝わってきておりません。それが報告された段階で委員会としての対応を決めさせていただきたいと思っています。

 ただし、委員会の任務はあくまでも安全を確保することで、廃炉にするかどうかということについては、これは事業者の専決事項だと私どもは認識しております。

玉城委員 その廃炉をどうするかということについては、これはやはり政府、政治側の責任でもありますので、そういうことも含めてしっかり検討をしていかないと、では、安全文化の確立というのは一体何をもとにして言っているのかということが、ますます根底が崩れていくというふうに思います。

 さて、ちょっと急ぎ足ですが、次に、福島第一原発の汚染水問題について質問をさせていただきます。

 事故からいまだに原発事故の放射性物質の飛散がとまっていない福島第一原発では、溶けた核燃料を冷却するために、原子炉建屋内に注水する作業が続いています。そのため、当然ですが、冷却水は放射性物質を含む汚染水となってしまい、その汚染水の処理と保管が大きな問題となっています。

 さらに、破壊された建屋内へは一日四百トンもの地下水が流れ込み、混合された汚染水への対処はますます厳しいものになるであろうということが思われるわけですね。

 これまで東京電力側が行ってきた汚染水対策の状況についてまず伺いたいと思います。

相澤参考人 お答えいたします。

 一から四号機の汚染水の対策といいますと、基本的には、格納容器あるいは圧力容器内の燃料デブリを冷やした四百トンと、地下水が建屋に流入してきた四百トン、合わせて八百トンを毎日処理をしなくてはいけないということになります。

 この八百トンにつきましては、セシウム除去装置でセシウムを除去した後、淡水化装置で四百トンの淡水と四百トンの塩分の濃い塩水に分けるわけであります。この四百トンの淡水を再び冷却用の水、冷却水として活用して循環をしている。すなわち、塩分の濃いものはたまっていく。こういう構図になっているわけであります。

 そういった意味で、まずはセシウム除去装置、それからさらに、現在確認運転中でございますが、残りの核種、多核種除去装置につきましても、セシウム以外の核種につきましても除去をする装置、これを建設いたしまして、現在確認運転中であります。

 さらに、今申し上げました、地下水が流入してくる。その流入を抑えるために、できるだけ地下水のレベルを下げるというために、地下水は山側から海側に向かって流れておりますので、建屋の山側の高台から地下水をくみ上げまして、そして、少しでも地下水のレベルを下げて流入を防ぐということをやっております。これにつきましても、現在確認運転をしているところであります。

 さらに、最悪、万が一漏れたということに対するために、海側に遮水壁を現在建設中でありまして、これにつきましては、いざというときに役に立つ、処理をすることもできるということでございます。

 概略、以上でございます。

玉城委員 日に八百トンもの水を処理しているということになるわけですが、よく、たくさんのタンクが並んでいる映像が国民の皆さんのやはり目に映るようになると、国民の皆さんにとっては、あの量たるや、本当に大変な不安をかき立てられるものがあると思います。

 そこで、ちょっとそのことについて伺いたいんですが、現在までに処理、保管されているその汚染水の量、できれば保管タンクの収容トン数別に、どのぐらいになっているのかということを聞かせてください。

相澤参考人 お答えいたします。

 現在、一から四号機に係る汚染水で、タンクに貯留している量は二十九・四万トンございます。この二十九・四万トンのうち、先ほど申し上げました、塩分を除いて循環をするつもりで淡水化したものの少し残りが二・七万トン、あとは、セシウムだけが除去されて塩分が強い水ということになります。

 その水を貯水しているタンクは三種類のタンクに分けられまして、鋼製の円筒タンク、これが二百六十九基、容量が二十六・二万トン、これに対して二十三・八万トン、既に貯水しております。それから、やはり鋼製の角型タンクというのが二百六十二基ございます。容量が〇・六万トンで、このうち〇・五万トン、既に貯水している。それからもう一点、やはり鋼製の横置きタンクというのが三百七十基ございまして、容量が全部で三・六万トンに対して三・五万トン、既に貯留しているという状況でございます。

 以上でございます。

玉城委員 今の説明を聞いても、二百六十九基の円筒型のタンク二十六・二万トンが既に二十四万トン近く、もう満水状態ですね。そして、そのほかのタンクにしましても〇・六万トンが〇・五万トン、そういうふうにもうある程度限界が見えてきているということを考えると、この汚染水の処理については、やはりもっとしっかりと対策を講じるということと、絶対に海に流さないということが挙げられるのではないかと思います。

 政府は、この汚染水問題を検討、対処するための汚染水処理対策委員会を設置して、先月二十六日に初めての会合が開催されたと報道されています。報道によると、複数の計画などの有効性を検討、検証した上で、新たな対策を五月中にも示すとのことであります。

 建屋内の汚染水処理がスムーズに進まなければ、当然、核燃料の状況や原子炉細部の漏水対策なども立てられません。また、敷地内においても、原子炉からこぼれあふれる汚染水と地下からの水の流入を防ぐ対策を二重、三重に立てることによって、海洋に漏れていこうとする流水対策をとることができるのではないかと思うわけですね。

 この建屋内への地下水の流入対策、それから敷地内における二重、三重の対応、対策についてどのように計画されていらっしゃるか、お聞かせください。

平大臣政務官 経済産業省でございます。

 まず、福島第一原発の汚染水は、建屋に流入する地下水により、現在、毎日四百立米ずつ増加をしているということでございます。

 この汚染水増加の原因である山側からの地下水の流入を抑制するため、建屋手前で井戸を掘ってくみ上げ、直接海に放出する地下水のバイパスを準備しており、四月末に工事を完了し、水質に問題がないことを順次確認いたしました。現在、稼働開始に向けて関係者への説明を行っているところでございます。その必要性や環境への影響について、国としても説明をしっかり尽くしていきたいと思っております。

 また、建屋地下に滞留している汚染水については、その水位が一定となるようにポンプで水をくみ上げており、地下水の流入とバランスをさせております。建屋内の方の水位が上がってしまうと、逆に汚染水が地下水側に流れてしまうということでございますので、バランスをさせるということでございます。

 このため、ポンプで移送するわけでありますが、この移送能力は、これまでの運転実績から、一日当たり一千九百二十立米まで移送が可能であり、現在移送している一日四百立米の原子炉注水と一日四百立米の地下水流入の合計量である八百立米と比べても、相当程度の余力があるものと考えております。

 いずれにせよ、地下水の流入の抑制のために、抜本対策について、現在、汚染水処理対策委員会のもとで検討をしておりまして、まずは地下水流入抑制策について、五月中をめどに今後の対応の方向性を取りまとめる予定でございます。

 なお、貯蔵タンクについては、五月十四日時点で貯蔵容量約三十二万立米であり、実際の貯蔵量は約二十九万立米ということでございますが、今後、二〇一五年の中ごろまでに、七十万立米まで増設をする計画でございます。

玉城委員 一点、政務官に確認をさせていただきたいと思います。

 今、山側からの建屋内に向かう地下水を、井戸を掘って、それをバイパスで海へ流すというふうに答えていらっしゃいますが、この水は、あくまでも自然水、つまり全く汚染されていない水ということで、それを海に流しているという確認でよろしいですか。

平大臣政務官 原子炉の敷地の手前で水を食いとめて、井戸で吸い上げて、それをバイパスで海へ流すということでございますので、その原子炉の敷地内の汚染されたところは通らずにバイパスで流す。

 ただ、実際に汚染されていないかどうかのモニタリングも、当然のことながらしっかりやっていくということになろうかと思います。

玉城委員 ありがとうございました。

 時間になりましたのでこれで終わりたいと思います。ニフェーデービタン。

森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十五分散会


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