衆議院

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第2号 平成25年10月28日(月曜日)

会議録本文へ
平成二十五年十月二十八日(月曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 額賀福志郎君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 中谷  元君 理事 大島  敦君

   理事 藤井 孝男君 理事 上田  勇君

      赤枝 恒雄君    秋本 真利君

      岩田 和親君    大塚  拓君

      大西 英男君    大野敬太郎君

      小池百合子君    鈴木 馨祐君

      薗浦健太郎君    津島  淳君

      辻  清人君    寺田  稔君

      中谷 真一君    中山 泰秀君

      野中  厚君    橋本  岳君

      星野 剛士君    牧島かれん君

      町村 信孝君    松本 洋平君

      宮崎 謙介君    山際大志郎君

      奥野総一郎君    近藤 昭一君

      長島 昭久君    渡辺  周君

      今村 洋史君    丸山 穂高君

      山田  宏君    大口 善徳君

      遠山 清彦君    畠中 光成君

      赤嶺 政賢君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   内閣官房副長官      世耕 弘成君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  北崎 秀一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  能化 正樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 良之君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総括審議官)           幸田 徳之君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     中山  亨君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  徳地 秀士君

   衆議院調査局国家安全保障に関する特別調査室長   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十五日

 辞任         補欠選任

  石原慎太郎君     今村 洋史君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     大西 英男君

  西銘恒三郎君     岩田 和親君

  近藤 洋介君     奥野総一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     秋本 真利君

  大西 英男君     赤枝 恒雄君

  奥野総一郎君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     池田 道孝君

  秋本 真利君     宮崎 謙介君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 謙介君     西銘恒三郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第七五号)


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     ――――◇―――――

額賀委員長 これより会議を開きます。

 第百八十三回国会、内閣提出、安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。菅内閣官房長官。

    ―――――――――――――

 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

菅国務大臣 ただいま議題となりました安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及びその内容の概要を御説明いたします。

 我が国の平和と独立を確保し、国民の生命及び財産を守ることは、政府の重要な責務の一つであり、その責務を果たすためには、正確かつ総合的な情勢判断に基づき、時代の変化に迅速かつ的確に対応した国家安全保障に関する政策を展開することが不可欠であります。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、外交・安全保障政策の司令塔として、国家安全保障に関する諸課題につき、内閣総理大臣を中心に、日常的、機動的に審議する場を創設し、政治の強力なリーダーシップを発揮できる環境を整えることが重要であります。

 そこで、現行の安全保障会議の審議体制等を見直し、もって我が国の国家安全保障に関する機能等を強化するため、安全保障会議の名称を国家安全保障会議に改め、その審議事項を国家安全保障に関する重要事項に拡充し、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針等の一定の事項について内閣総理大臣、外務大臣、防衛大臣、内閣官房長官により審議を行うことができることとするほか、内閣官房に国家安全保障局を設置すること等の措置を講ずる必要があります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、安全保障会議設置法の一部改正であります。

 まず、題名を国家安全保障会議設置法とし、会議の名称を国家安全保障会議とするものとしております。

 次に、会議は、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針等の国家安全保障に関する事項を審議し、必要に応じ、内閣総理大臣に対し、意見を述べるものとし、従来の安全保障会議への諮問事項については、これまでと同様の取り扱いとするものとし、武力攻撃事態等その他の一定の事態に関し、特に緊急に対処する必要があると認めるときは、迅速かつ適切な対応が必要と認められる措置について内閣総理大臣に建議することができるものとしております。

 この際、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針等については、議長である内閣総理大臣のほか、外務大臣、防衛大臣、内閣官房長官を議員として審議するものとし、従来の安全保障会議への諮問事項については、引き続きこれまでと同様の議員により審議するものとし、重大緊急事態への対処に関する重要事項については、内閣官房長官及び事態の種類に応じてあらかじめ指定された国務大臣により審議するものとしております。その上で、武力攻撃事態等及び周辺事態に関し、事態の分析及び評価について特に集中して審議する必要がある場合には、議長、外務大臣、防衛大臣、内閣官房長官及び事態の種類に応じてあらかじめ指定された国務大臣により審議を行うことができるものとしております。また、審議に際しては、議長の判断により他の国務大臣を臨時に会議に参加させることができるものとしております。さらに、議員が不在のときは、一定の場合に限り、副大臣がその職務を代行することができるものとしております。

 このほか、内閣官房長官及び関係行政機関の長は、会議に対し、国家安全保障に関する資料または情報を適時に提供するものとし、また、会議は、内閣官房長官及び関係行政機関の長に対し、資料または情報の提供及び説明その他必要な協力をするよう求めることができるものとし、議長及び議員並びにそれらの経験者に加え、副大臣として議員の職務を代行した者等は、その職務に関し知ることのできた秘密を他に漏らしてはならないものとしております。また、内閣官房副長官及び国家安全保障に関する重要政策を担当する内閣総理大臣補佐官は、会議に出席をし、議長の許可を受けて意見を述べることができるものとし、議長及び議員を補佐するために会議に幹事を置くものとし、会議の事務は、国家安全保障局において処理するものとしております。

 第二に、内閣法の一部改正であります。

 内閣官房に国家安全保障局を置くものとし、国家安全保障局は、内閣官房の事務の一部のうち国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針等に関するもの、会議の事務並びに会議に提供された資料または情報等を総合して整理する事務をつかさどるものとし、国家安全保障局に国家安全保障局長等を置くものとしております。

 また、内閣官房に少なくとも一名の内閣総理大臣補佐官を置くものとし、内閣総理大臣はその中から、国家安全保障に関する重要政策を担当する者を指定するものとしております。

 第三に、国家公務員法及び特別職の職員の給与に関する法律の一部改正であります。

 国家安全保障局長を特別職の国家公務員とし、その俸給を定めるものとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

額賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 この際、お諮りをいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣官房内閣審議官北崎秀一君、内閣官房内閣審議官能化正樹君、内閣官房内閣審議官鈴木良之君、内閣府大臣官房総括審議官幸田徳之君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長中山亨君、防衛省防衛政策局長徳地秀士君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

額賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 両大臣、きょうは朝からお疲れさまでございます。

 私は、先週の金曜日の本会議でも代表質問をさせていただきましたが、本日の特別委員会におきましてもトップバッターとして質問をさせていただくことになりました。委員会でのやりとりでさらに論点を明らかにしてまいりたいと思っております。

 私個人としても我が党としても、今回のこのNSCの設置、非常に大事なことであるというふうに認識をしているわけでございますが、今までも安全保障会議というものはあったわけでございまして、いわゆる今回のNSC設置法案の文脈で申し上げますと、九大臣会合というものが設置をされておりました。

 今回、それを発展的に改組する、そして四大臣、九大臣、緊急大臣という三つの形態の会合を設けるという、いわば抜本的な改革を行うということでございますが、そもそも今までの安全保障会議体制のどこに問題があったのか、どういう問題があったのかということをお伺いしたいと思いますし、また、今回のNSCの設置によりまして、国家安全保障会議の設置によりまして、それらの問題がどう改善されるとお考えなのか、官房長官の御見解をいただければと思います。

菅国務大臣 委員既に御承知のとおり、現行の安全保障会議は、九大臣が国防に関する重要事項について審議を行うことによって、文民統制の機能を果たしてきているというふうに考えております。しかし一方、我が国を取り巻く外交、安全保障の環境というのは極めて厳しくなっているということも御理解をいただけるというふうに思います。

 そうした中にあって、総理大臣を中心に関係閣僚も、平素から戦略的観点を持って審議を行って、政治が強力なリーダーシップを発揮する環境を整備していくことというのは、極めて大事になってきているというふうに思います。

 そういう中にあって、現行の安全保障会議を発展的に改組して、いわゆる四大臣会議を中核とする国家安全保障会議を設置することによって戦略的、機動的に我が国の安全保障というものについて進めていくことが必要だ、そういう判断の中で、今回、このような法案を提出させていただいたということであります。

遠山委員 組織論としては今官房長官がおっしゃったとおりだと思いますが、ぜひ、本会議でも申し上げましたけれども、さまざまな事態が惹起した際に、やはり官邸における政治的リーダーシップの強化、また省庁縦割りの弊害というものが政府の決断と行動に大きな障害とならないように運用を図っていただきたいということを要望申し上げたいと思います。

 さて、現在、有識者会議、安全保障と防衛力に関する懇談会におきまして、いわゆる国家安全保障戦略というものが議論されていると理解をいたしております。これは英語でナショナル・セキュリティー・ストラテジーですから、NSSとも略されているわけでございますが、私、先週申し上げましたように、こういった新たな組織がどういう戦略と理念のもとに動かされていくのかも大変重要だというふうに思っております。

 この国家安全保障戦略が、これから、ことしじゅうに策定をされて閣議決定される予定であるというふうに報道されているわけでございますが、今後どういう形で策定をされていくのか。もちろん、今議論されているのは有識者会議の場で議論されているわけでございまして、必ずしも政府の公式な場で議論されているわけではないわけでございまして、この懇談会の作業との関係も踏まえて、いつまでに、どのような形で、このNSS、国家安全保障戦略を策定されていく方針なのか、お答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 この国家安全保障戦略については、本年の九月に安全保障と防衛力に関する懇談会を実は立ち上げました。この懇談会によって、外交防衛政策について、さまざまな意見を有する有識者の皆さんから今御意見をいただいている状況であります。今後は、この懇談会の議論を踏まえて、当然、与党の皆さんの御意見も伺いながら、政府としては、今年中に結論を得るべく国家安全保障戦略を策定していきたい、そのように思っております。

遠山委員 官房長官、済みません、通告は厳密に言うとしてないんですが、この国家安全保障戦略の時間的な視野ですね。つまり、国際情勢というのは刻々と変化するわけでございまして、十年後を視野に入れて策定されるのか、それとも、思い切って二十年後、三十年後まで見通して策定をされるのかということをちょっとお聞きしたいんですね。

 というのは、きのうも私、沖縄で、自民党の中谷先生や民主党の長島先生と一緒に、外交、安全保障がテーマの討論会に出てきたわけでございます。その中でも私申し上げたのですが、今から三十年前といいますと、官房長官、一九八三年でございますから、実は米ソ冷戦真っただ中で、公式の場で国家指導者が相手の国を悪の帝国とののしり合っていたのが三十年前でございます。ですから、三十年たって大きく国際情勢は変化をいたしているわけでございます。

 そういったことも踏まえて、今、もう少し変化のスピードは速いかもしれませんし、この国家安全保障戦略というのは、どれぐらいの時間を視野に策定をされようと今の時点で考えておられるのか、簡単でも結構ですから御答弁いただきたいと思います。

菅国務大臣 現在、この懇談会における議論の整理としましては、本戦略の内容というのはおおむね十年程度までを念頭に置いたものである、そこで今議論をしていただいているというのが現状であります。

遠山委員 関連で伺いますというか、要望になりますけれども、私の先週の本会議質問で、先般、国連総会第一委員会におきまして、国連加盟国百二十五カ国が支持する形で、核兵器不使用の歴史的な共同声明が採択をされました。皆様御承知のとおり、日本も初めて支持をしたということで、私ども公明党は高く評価をしているわけでございますが、日本は唯一の被爆国でもありますし、この核兵器廃絶に向けた政府の方針というものをこの戦略の中にも、現時点で懇談会に出ている資料を見ますと出ておりません。ですので、ぜひ明記をすべきではないかと思っております。

 また、私、付言をさせていただきますと、本年、四回アメリカ合衆国に参りました。私がアメリカにことし集中的に四回参りまして感じたことは、アメリカ合衆国におきましても、有識者あるいは元政府高官の中で、もう核兵器というのは使える兵器じゃない、非常にアメリカの財政状況が逼迫している中で必要ないんじゃないかという議論が出ております。元国務長官のキッシンジャー博士、あるいはアメリカ連邦上院の軍事委員長を長く務められたサム・ナン元委員長、あるいはパウエル元国務長官も、最近になりましてそのような主張をされているわけでございます。

 アメリカの政権中枢、しかも民主党、共和党両政権で中枢におられた方々すら核兵器の実効性について疑問を呈しているという世論がアメリカで強まっている中で、私は、日本が堂々とそういう主張を国家戦略の中でしても余り問題はないのではないか、このように考えておりますが、官房長官の御見解をいただきたいと思います。

菅国務大臣 我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として、核兵器使用の悲惨さというものを最もよく知っている国であります。核兵器のない世界を目指すというのは、これは我が国の当然の責務であるというふうに思います。

 しかし、現実問題として、例えば北朝鮮の核開発、核テロ、多様化する核のリスクに対処する観点からも、我が国は、核兵器のない世界の実現に向けて引き続き国際社会で取り組んでいく必要があるというふうに思っています。

 そういう中で、国家安全保障戦略の内容について、今、審議の最中ですからまだ具体的に申し上げることはできませんけれども、総理が本会議でも答弁しました。今後、政府として、核兵器のない世界というのは当然目指すべきものでありますので、そこはしっかりと努力をしていきたいというふうに思います。

遠山委員 大変前向きな御答弁をいただいたと解釈をして、次の質問に参りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 もう一つこの戦略について伺いますが、今出されている資料を見ますと、また、総理のさまざまな場所での御発言では、国際協調主義に基づく積極的平和主義という言葉が出ております。

 私、先週はあえて総理に、平和主義の前に積極的とつけたのは何か意義があるんですか、真意は何ですかとお聞きをしたら、総理からは、積極的というのはより積極的に頑張るという、広辞苑でもないような簡単な御説明であったわけでございます。

 今までも日本は基本的に平和主義でやってきたわけですけれども、あえて今の今日的文脈の中で積極的ということを強調される意義は何なのか、もう一度官房長官からお伺いできればと思います。

菅国務大臣 まず、我が国を取り巻く安全保障の環境というのは極めて厳しく、先ほど申し上げました。特に、大量破壊兵器や弾道ミサイルの脅威は深刻度を増している。さらに、サイバー攻撃のような国境を越えてのこうした脅威も増大をしているわけであります。

 そういう中にあって、我が国一国のみで我が国の平和を守ることはできませんし、我が国の平和を守るためには、地域や世界の平和と安定を確保していく、このことが今必要な時代になってきているというふうに思います。

 そういう中にあって、総理は、我が国が、国際協調主義に基づき、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献をする国になりたい、強い思いであります。それが積極的平和主義、こう理解していただいてよろしいと思います。

遠山委員 わかりました。

 その上で、この積極的平和主義という大ぐくりの政策文書をざっと見ておりましたら、これは報道でも特出しでされているわけでございますが、武器輸出三原則の見直しという表現が出てまいりました。これは、以前の自公連立政権のもとでも大分議論をさせていただきましたし、民主党前政権時代もかなり大きなテーマで、私ども野党でございましたけれども、議論させていただきました。

 そういった今までの議論の積み重ねがあった上で、さらにこの表現が今出てきているわけでございますが、現時点でのこの政府の武器輸出三原則見直しについての方針というものはどういうものなのか、お答えいただければと思います。これは防衛大臣でよろしいですか。では、防衛大臣、どうぞ。

小野寺国務大臣 補足を後でしていただきたいと思います。

 まず、武器輸出三原則ですが、私が記憶しております、例えば官房長官談話は、平成九年、公明党のイニシアチブによりまして、人道的な対人地雷除去活動に必要な貨物等についてということで、まず適用除外にしていただき、これは今、地雷除去について大変重要な役割を持っております。まさしく平和に役立っているんだと思います。

 また、自公の連立政権時代、平成十六年ですが、弾道ミサイル防衛、BMDシステム分野においての官房長官談話というのがございます。今回の北朝鮮事案に対して、今このシステムが大変機能しているということだと思っております。

 その中で、三原則等については、先ほどお話ししましたように、これまで個別案件ごとに例外化措置を講じてきたほか、平成二十三年末には、防衛装備品等の海外移転に関する基準により、平和貢献・国際協力に伴う案件及び国際共同開発・生産に関する案件について、厳格な管理を行うなどを前提にしまして、原則によらないことを、これは前政権の中で決めていただきました。

 他方で、本年三月に例外化措置を講じましたF35の製造参画のような、世界規模で部品等を融通し合う国際的な後方支援システムに参加するケースなど、防衛装備品等の海外移転に関する基準作成時には想定されていなかった事案も既に発生をしております。

 先般、安全保障と防衛力に関する懇談会におきましていただいた御意見、国会における御議論を踏まえつつ、防衛省としましては、三原則等の運用の現状が近年の安全保障環境等に適応するものであるかどうかを検証し、必要な措置を講じていきたいと思っております。

遠山委員 そこまで防衛大臣が詳しくお答えいただいているので、もう答弁は結構でございます。

 その上で、防衛大臣に続けてお伺いをしたいと思いますが、日本の安全保障環境が厳しくなっている、これは官房長官も繰り返しおっしゃっているわけでございますけれども、この一つの背景には、いわゆるグレーゾーン事態というものの存在が専門家から指摘をされてきております。これは今に始まったわけではなくて、ここ十年ぐらいの安全保障議論の中で出てきているわけでございまして、このグレーゾーンというのは、いわば平時と有事の間に位置づけられるような事態が起こり得る、その蓋然性が高まっているという現状認識だと思います。

 私が質問通告をしたら、どういう事態を遠山議員は想定しているんですかと逆に役所から言われたので、あえて一つ例示をすれば、特定の国を指しているわけではありませんけれども、我が国の国民でない方々が、民間人が武装して日本の領海に入ってきて何らかの侵害行為を行った際には、そして何の宣戦布告も、国家としての意思表明がない、けれども、こちら側としては対応せざるを得ない。そういったときには、これはグレーゾーン事態と呼べるのではないかと私は思っておりますし、我が方の対応としても、いきなり自衛隊が出るわけではなくて、恐らく海上保安庁が海の場合は一義的に対応するわけでございますが、その事態の進展いかんによっては、その後の対応というものをどうしていくか、非常に難しい判断を迫られますし、正確な情報収集が必要になってくると思います。

 こういったグレーゾーン事態の現状というのをどういうふうに防衛省として分析、評価されているのかというのが一点と、また、今般の法改正によってNSCが設置されることによって、このグレーゾーン事態への対処というのがどう変化すると想定されているのか、お答えいただければと思います。

小野寺国務大臣 今、遠山委員の御指摘されました、例えば、武装した日本人ではない者が領海に侵入し、さまざまな行為を行うことについては、個別事案ごとに、例えば海賊と認定できるのか、あるいは今回のグレーゾーンということで対応するのか、さまざま具体的な事例によって対応されるんだと思っております。

 実は、このグレーゾーンにつきましては、防衛省におきましても、今回の大綱見直し等に向けた検討の中で、中間報告として七月にまとめた中で、例えば、各国の軍事力の近代化や軍事活動等の拡大、活発化がより一層顕著になっており、領土や海洋における経済権益等の対立をめぐる、純然たる平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーンの事態が顕在化、長期化、そしてより重大な事態へと先鋭化、深刻化する可能性が懸念されるということを共通認識としております。

 このことを踏まえまして、今、このアジアにおいてのさまざまな環境を踏まえても、防衛省としては、認識をさらに新たにし、同盟国との連携を強化しまして、国際社会の安全保障環境の改善に積極的に取り組むとともに、関係省庁が密接に連携して、いわゆるこのグレーゾーン事態への対処を含め、各種事態への推移にシームレスに対応していくことが重要だと思っております。

 今回の法改正によりまして設置されます国家安全保障会議は、外交、安全保障に関する諸課題について、総理を中心に関係閣僚が平素から戦略的な視点を持って審議し、さまざまなことに関して、多少やはり予見的なこともする中で議論をし、安全保障環境を整えていくことが大切だと思っております。

 このようなグレーゾーンに対しても、平素から四大臣会合を定期的に、機動的に開催しまして、戦略的な観点から基本的な方向性を示していくということが大事だと思っております。

遠山委員 ぜひ、NSC設置後は、そこの、国家安全保障局ですか、事務局を中心に、シームレスな対応をすると大臣がおっしゃったことについて、事前のシミュレーションをいろいろなバリエーションでやはりやっていただいておくことが大事だと思っております。もちろん防衛省内では既にいろいろなシミュレーションをやっておられると思いますけれども、政府一体となって、省庁を飛び越えて対応するということになりますと、なかなかうまくいかない。それを解消するために今回やはりNSCを設置するんだと思いますので、ぜひその点、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、官房長官に伺います。

 このNSC設置後に重大緊急事態が発生した際の対応の流れについて、一般論というか一つのイメージでも結構ですけれども、御説明をいただきたいと思っております。

 というのは、本会議の質問でも少し御指摘申し上げましたが、日常的な司令塔として四大臣会合があり、そして文民統制機能維持としての九大臣会合があり、はたまた事態によっては、総理が指定する大臣のみを集めての緊急大臣会合というものがあり、そして、本会議の質問でも御指摘申し上げましたように、憲法や内閣法に基づけば、内閣の意思というのは最終的には閣議で決定をしなければいけない。

 そうすると、四大臣会合があって、緊急大臣会合があって、九大臣会合があって、閣議もやらなきゃいけなくて、そして既存法に基づく対策本部というのも事態によってはつくられるという状況でございますから、私の一つの懸念は、たくさんつくっていろいろなことに対応できますよというのはいいんですけれども、組織の乱立を招いてしまって、実際、緊急事態の危機的な状況の中で指揮系統が乱れるということがあってはならないというふうに思っておりまして、あえてこういった質問をさせていただきます。お願いいたします。

菅国務大臣 国家安全保障会議の設置の意義というのは、冒頭申し上げましたけれども、まさに機動的、戦略的にそうした国家危機に対して対応できる、そういう組織でありますから、それが屋上屋を重ねるようになってはならないわけであります。

 今、委員から御質問をいただきました。例えば緊急事態が発生をする。そのことが、例えば放射能物質のテロ事案であったとしますよね。そこに、緊急事態に対応する、まず大臣の会合が開催をされます。そこによって、政府がとるべき措置、そうしたものをそこの会合で総理大臣に建議することができます。内閣官房を初めとする関係機関は、この建議を十分尊重し、それに対応できるようにいたします。

 それと同時に、このことが、例えば、防衛、外交上、国家に影響を与えるような可能性がある、そういう判断をする必要も当然ありますから、そういうときは常日ごろの四大臣会合が随時開かれるということも事実だと思いますね、そうした会合もありながら、外交、防衛上必要であるかどうかという判断をするために。

 そこで、そのことによって判断され、さらに、発生した事態が武力攻撃事態及び周辺事態に当たるようであれば、九大臣会合を開催して対処等を決めていく、その上で、対処方針を決定する必要がある場合は閣議にかける、そういう流れになっていくというふうに思います。

 いずれにしろ、政府一丸となって機動的に戦略的に行うことができるように、そうした仕組みを考えています。

遠山委員 官房長官が今お答えになったことは、現時点でそれでよろしいと思いますが、実際の運用上のことでもございますので、法律が無事成立をした後に、しっかりその辺を詰めていただきたいと思います。

 時間がなくなりましたので、次の質問をはしょりまして、最後に、これも本会議の質問で取り上げたんですが、国家安全保障担当総理補佐官の役割について、改めて説明を求めたいと思います。

 もう官房長官御承知のとおり、先行的にNSCを設置して運用しております米国やイギリスにおきましては、この補佐官は閣僚級の待遇を受けており、かつ、我が方と同じ議院内閣制の国ということでいいますと、英国、イギリスの場合は、国家安全保障担当の補佐官が、同時に官邸の事務局の国家安全保障局の局長を兼任しているわけでございます。ですから、スタッフ組織を自分で持っていますから、そこに直接的な指示権限を持った人が補佐官として総理を補佐して、そしてNSCの会議にも出て発言をする。

 こちらの方が、冷静に考えれば、こういうことを言うと、また野党の皆さんから事前に何をやっていたんだと言われるんですが、いずれにしても、なぜ補佐官に国家安全保障局長を兼任させないのかということについて御答弁をいただきたいと思います。

菅国務大臣 まず、考え方としまして、常設化される国家安全保障担当総理補佐官は、総理直属のスタッフとして、その命を受けて、国家安全保障に関する重要施策に関し、総理に対し助言を行い、その判断を助ける役割を果たす、このようになっております。

 一方、政府における総合調整権限を有する私のもとに国家安全保障局長を置くことによって、そこで役所の縦割りを排し、機動的、戦略的に国家安全保障に関する重要事項について総理をサポートする体制をつくりたいというふうに思います。

 総理の命を受け、総理補佐官と安全保障局長が緊密に連携をしながら総理をサポートしていく、そういう体制を考えています。

 国家安全保障局長は、国家安全保障政策のラインの事務方の責任者である。一方、総理補佐官は、総理の判断を助ける直属のスタッフである。これらを兼任させる、こういうことも一つの考え方かもしれませんが、これはあくまで人事にかかわることでありますので、総理の判断に委ねる、そういうことになっております。

遠山委員 そうすると、今の御答弁を理解しますと、先日の総理の御答弁もほぼ同じような形であったかと思いますが、この日本のNSCのもとでの総理補佐官というのは、どちらかというと、総理大臣直属の補佐官というか秘書官というか、そういう位置づけであって、総理のスタッフの一人ということで、機構としてのNSCの事務局は、官房長官のもとに国家安全保障局があって、そこに国家安全保障局長がいてスタッフ組織を動かしていく、こういう整理をされているんだなということが今の答弁でよく理解できました。

 それが本当に有効に機能するのかどうかということは、もしかすると、どういう方が国家安全保障局長になり、補佐官になるかということにも左右されるような気がしますので、逆に言うと、そうすると、なる人によって決まるということになると、少し属人的な制度設計に最初からなっているなという気もします。この点は、本当にどういう形がいいのかということは、これからの審議の中でもいろいろ議論になるかもしれませんし、また、必要があれば運用の中で必要な変化を加えていくべきではないかと思います。

 最後に、官房長官、一言。

 この担当総理補佐官とか国家安全保障局長に民間からの登用というのはあり得るんでしょうか、法律上許されるんでしょうか。その点だけ確認して終わりたいと思います。

菅国務大臣 国家安全保障担当総理補佐官、さらには国家安全保障局長については、特別職の国家公務員でありますから、総理が人選をすることになります。そして、具体的な人選は総理の判断でありますけれども、両ポストとも民間からの登用は可能であります。

遠山委員 終わります。ありがとうございました。

額賀委員長 次に、岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋毅です。

 官房長官、外務大臣、防衛大臣、お疲れさまでございます。官房長官は記者会見があるということで、お留守の際には副長官にお伺いしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 私ども自民党は、安保を立て直す、防衛を取り戻すということをさきの国政選挙で国民の皆さんにお約束をして、おかげさまで、御支持をいただいて政権に戻ることができ、また安定した基盤をいただくことができました。ただ、安保を立て直す、防衛を取り戻すというのは、何も前政権を批判しようとしているわけではなくて、過去三年間以外は自民党政権が安保も外交、防衛も担ってきたわけであって、我々の経験、我々の反省に基づいて、やはりやるべきことをしっかりやらなくちゃいかぬ、こういう決意でそういうことをうたってきたわけでございます。

 私は、党においてこのNSC法案を取りまとめる特命委員長を仰せつかっておりましたので、今さら何をか言わんやというところもありますが、やはり国民の皆さんはこの議論に非常に注目しておられます。また、NSCの後には当委員会で特定秘密保護法についても審議をするということで、非常に注目されている委員会であり質疑でもございますので、確認の意味で、できるだけ国民の皆さんにわかりやすい説明を各大臣にはお願いしたいと思います。

 そこで、まず一丁目一番地の質問をさせていただきますが、なぜ、こういう仕組み、つまり四大臣会合を中心とする新たな国家安全保障会議が必要だというふうに考えたのか、我が国を取り巻く安全保障環境のことも含めて、まず官房長官にお伺いをしたいと思います。

菅国務大臣 現在の我が国を取り巻く外交、安全保障の環境は、極めて厳しいものがあります。北朝鮮による核、弾道ミサイル開発の脅威、さらには、中国の透明性を欠いた軍事力の増強や我が国周辺海空域における活動の急速な拡大、活発化といった、そうした懸念事項を初め、我が国の安全保障環境というのは厳しくなってきているというのが現実だというふうに思います。

 そうした中にあって、官邸において外交、安全保障の司令塔機能を強化するために国家安全保障会議を設置する、このことはまさに不可欠であると考えたわけであります。

岩屋委員 さっきも遠山委員から質問がありましたですね。四大臣会合がもちろん中核なんだけれども、必要に応じてその他の大臣も入った会合もあるとか、また九大臣会合もある、最終的には内閣の意思は閣議において決定をされる。ある意味重層的な仕組みにはなっているんですが、しかし、この四大臣会合というのがまさにNSCの肝になるわけですね。

 九大臣会合という前の安保会議というのも残っているわけでありますが、四大臣会合と九大臣会合の違い、四大臣会合にどういう役割を担わせようとしているのか、そこをもう一回官房長官に説明をしていただきたいと思います。

菅国務大臣 総理大臣を中心に関係閣僚が平素から戦略的観点を持って国の方針というものを意見交換して決めていくというのは、極めて大事だというふうに思っています。政治が強力なリーダーシップを発揮する、そのために、国家安全保障会議の中核に四大臣会合を置いて、外交防衛政策の司令塔としての役割を果たしていきたいというふうに考えます。

 それと、九大臣会合でありますけれども、九大臣会合は、防衛大綱、あるいは武力攻撃事態等、周辺事態等への対処等の国防に関する重要事項については、従来の安全保障会議が果たしてきた文民統制機能というものをやはりここは維持していく必要があるというふうに考えています。

岩屋委員 やはり四大臣会合というのは、我が国の安全保障を脅かすおそれのある事態にまさに機動的に迅速に対応するというところに本来の使命があると思うんですね。

 思い起こしますと、三・一一のときに、結果、安保会議は開かれずに終わったわけですね。その点を我々は何度か国会でも指摘をさせていただきました。あのときは、自衛隊も十万人を超える態勢をとった。在日米軍の主力もみんな東北に向かっていただいたということでございました。まず一つには、そういう態勢を迅速に進めるためにどうしたらいいかということ。

 それから、それだけの兵力が動くわけですから、ある意味でいうと、日本の防衛体制に一時的に空白が生じた、また生じるおそれがあったということは否めなかったと思うんですね。

 両方の観点から、この事態にどう対応するかというのは、もしNSCという組織があれば、すぐさま会合が持たれて、方針を迅速に決定することができたのではないか。あの時期、各国から、偵察も含めて、日本の領空、領海にいろいろな接近があったということも事実ですね。

 だから、そういうことも考えると、やはりこの四大臣会合の最大の目的というのは、そういう事態に迅速に機動的に対応する、そういう役割を担わせるということではないかなと思っているわけであります。

 ところで、官房長官、基本は四大臣会合ということなんですが、今は、安倍内閣は麻生副総理というポジションを置いているわけですね。内閣によって副総理を置いたり置かなかったりということになろうかと思うんですが、副総理が置かれている場合、四大臣会合に参画をしていただく、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。

菅国務大臣 四大臣の構成は、議長である総理のほかに、防衛大臣、外務大臣、そして官房長官でありますけれども、総理は、必要があると認めたときは、関係大臣を出席させ、意見を述べることができるということにもなっています。

 現在、副総理が置かれています。そういう中で、四大臣会合への出席については、副総理の担う役割というのは現在の内閣で極めて大事だ、これは総理が常々そう思っておりますので、そうしたものを踏まえて、私は総理が判断をされるんだろうと思います。

岩屋委員 私、何も麻生先生に御機嫌をとろうと思っているわけじゃないんですよね。そういうことではなくて、副総理が置かれているということは、総理の次にキャビネットを代表するポジションがある、そういう人が置かれている場合は、麻生先生であれどなたであれ、この四大臣会合という重要な会議にやはり参加をしていただいておく必要がある、こういうふうに思ったので聞かせていただいたところでございます。

 それから、これも一丁目一番地というかイロハのイですが、今回、安全保障会議という名称が国家安全保障会議という名称に変わっております。そして、取り扱う範囲が、国防に関する重要事項から国家安全保障に関する重要事項に変わったわけでございます。

 この国家安全保障という言葉の概念というか意味というか、それをしっかり国民の皆さんにも説明しておく必要があると思うのですが、この点について御説明をお願いしたいと思います。

菅国務大臣 まず、我が国を取り巻く環境、外交、安全保障の環境というのは、まさに極めて厳しくなってきている。そういう中で、政府全体として、外交政策、防衛政策を中心として国家安全保障政策にまさに一層戦略的に対応する必要があるということからここはスタートしているわけでありますけれども、これまでも、広い視野で積極的な議論を行って、政治の強力なリーダーシップを発揮していく仕組みというのが必要だと。

 そういう中で、従来の安全保障会議の審議というんですか、事項は維持しながらも、本法案では、国防に関する重要事項及び重大緊急事態に対処する重要事項から、「我が国の安全保障に関する重要事項」という形に改めて、拡大をさせていただいて、現行のこの厳しい状況の中に対応していこうと考えておるところであります。国の存立にかかわる国家レベルのもの、そういうふうに考えていますので、国家というものをつけさせていただいたということです。

岩屋委員 そうですね。まさに我が国の存立に重大な影響を与えかねない、そういう事態に迅速、機動的に対応するためにこの国家安全保障会議があるということだと思います。

 さらに言えば、国防という観点からだけではなくて、外交も含め、あるいはエネルギー等々、我が国の安全保障を脅かしかねない事態というものはさまざまなものがあるわけですから、そういった包括的な安全保障問題に迅速、機動的に対応する、こういう趣旨で、今回、名称も改められ、取り扱う範囲も改められたということだと思います。

 私は、今回のこの措置というのは極めて画期的なことだと思うんですね。つまり、NSCができて、ここがまさに我が国の安全保障の基本戦略というものをこれからつくっていくわけですね。戦後日本にこういう仕組みはなかったわけであります。

 冷戦時代は、ともすれば、平たく言えば、アメリカの顔をうかがいながら方針を決めていかざるを得なかった。冷戦が終わった、平和になるかと思えば湾岸戦争が起こった。その後、どんどん起こってくる事態に、ある意味でいうと、我々は慌てふためいて対応してきたと言っても決して過言ではないと思います。

 そういう経験や反省に基づいて、ここらで我が国が主体的、自主的に国防、外交、安全保障の方針をしっかりと打ち立てる。それをもとに防衛計画の大綱ができ、中期防衛力整備計画ができていく。アメリカなんかはそういう体系になっていますよね。ようやく日本がそういう体系的な安全保障戦略をつくっていくことになるということは、私は極めて意義深いことだと思うんですね。そして、日本の方針というものが内外に示されていくということによって、信頼を得られることにもなるだろうし、それが抑止力の一部を構成することにもなっていくのではないかと期待をしているところでございます。

 そういう意味でいうと、国家安全保障戦略をつくるというのがこのNSCのもう一つの極めて重要な使命、役割だというふうに思うわけでございます。

 先ほども御説明がありましたように、今、安防懇、安全保障と防衛力に関する懇談会において審議が進められております。やがて政府がその意見を聞いて戦略をつくられるということだと思います。党の方も議論の経過を逐一御報告いただいて、党としても意見を申し上げているところでございます。

 そこで、少し気になるのは、どうしても学者さん中心の議論になっていくので、少しとんがりぎみなのかなということを党としても少し心配しているところでございます。私思いますに、この日本が初めてつくる国家安全保障戦略は、もちろん力強いものでなくてはなりませんけれども、一方で、これが余り挑戦的、独善的、排他的なものであってはならないというふうに強く思うわけでございます。

 政府においていよいよ戦略をつくるときには、そういう点にもしっかりと私は配慮していただきたい、こう思っておりますが、官房長官のお考えを聞かせていただきたいと思います。

菅国務大臣 まさに我が国の外交、安全保障に必要なのは、体系的に物事をしっかりと決め、対応していくことだというふうに思います。

 そういう中で、安倍内閣では、国際協調主義に基づく積極的な立場から、世界の平和と安定、繁栄の確保にこれまで以上に関与していく、そういう中で、我が国で初めて、外交政策及び防衛政策を中心とした国家安全保障戦略を策定することになったわけであります。

 その具体的な内容というのは、有識者の皆さんで今議論をいただいていますから、与党の皆さんと相談させていただきながら方向性を出していくというのは当然のことでありますから、まして委員は党の責任者でもありますから、そういう過程の中でしっかりとしたものにつくり上げていきたいというふうに思います。

 いずれにしろ、政府としては、与党の皆さんとしっかり呼吸を合わせながら、国民の安全のために必要なものを体系的につくり上げていきたいということです。

岩屋委員 国家安全保障戦略ですから、我が国周辺の、潜在的な脅威とまで言っていいのかな、不安定要因に対してしっかりと構えていくぞという決意もなければいけませんが、中長期的な我が国の大方針でございますから、アジアのみならず、アジア太平洋全体の平和と安定、ひいては世界の平和と安定のために、まさに総理が言われる積極的な平和主義をもって日本は対応していきますよ、こういうことを高らかにやはりうたったものでなければならないというふうに思います。そういう観点をしっかり持って立派な戦略をつくっていただきたい、党としてもしっかりと意見を申し上げていきたいと思っているところでございます。

 その大方針の中に、先ほど遠山委員も触れられた核軍縮、究極的には核廃絶といいますか、そういう目標を我が国がしっかりと持っておくということは大切なことだと思いますが、一方、官房長官が答弁されましたように、当面、核抑止の政策というのは、日本の安全保障にとって極めて重要な課題の一つでございます。

 そこで、ちょっとこの間気になったのが、国連の第一委員会で、いわゆる核不使用宣言というステートメントに我が国が初めて署名をしたということがございました。

 これは、国連の決議とかいう重たいものではなくて、拘束力のあるものでもない、とある国の演説に対して賛意を表するという形の署名をするかしないかということだったと承知をしておりますが、それでも、過去三回、日本は署名してこなかった。なぜか。これは、いわゆる核不使用宣言ということになっているからだ。いかなる場合においても核を使用してはいけない、アンダー・エニー・サーカムスタンシーズというところに我が国の核抑止政策と整合しないところがあるということで、署名をしなかったわけでございます。今回、この文言が残っているわけですが、これに外務大臣の判断で署名をされたということです。

 そこで、確認をしておきたいのは、これに署名をしたということで、我が国の核抑止政策に変更があったということではないことを確認させていただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の共同ステートメントですが、従来から、この共同ステートメントにおける核兵器使用の人道的影響に対する認識、すなわち、核兵器が使用された際に、その使用された世代のみならず、将来の世代にも大きな影響をもたらす、また、健康のみならず、社会的にも、あるいは経済的にも大きな影響をもたらす、こうした人道的な影響に対する認識につきましては、従来から我が国は一致をしておりました。

 ただ、御指摘のように、核抑止を含む我が国の安全保障政策、この厳しいアジア太平洋地域における戦略環境の中にあっての我が国の安全保障政策との整合性につきまして、従来から議論を行ってきたところであります。

 私も、この共同ステートメント取りまとめの中心になっている国々、ニュージーランドですとかマレーシアですとか、こういった国の外務大臣と直接会い、議論を重ねてきました。また、事務方におきましても、さまざまな国との議論を積み上げてきました。

 その結果、共同ステートメントの文言、修正が行われ、我が国の核抑止を含む安全保障政策あるいは核軍縮アプローチ、こういったものとの整合性がとれたというふうに認識をいたしまして、今回賛同したということであります。

 よって、我が国の核抑止を含む安全保障政策、変更されるものではないと認識をしております。

岩屋委員 同様に、防衛大臣にもお伺いしたいと思います。

小野寺国務大臣 今、外務大臣からお話もありましたが、今回の共同ステートメントについては、我が国の安全保障政策や核軍縮アプローチと整合的な内容に修正されたということで支持をすることだというふうに承っております。したがって、拡大抑止を含む我が国の安全保障政策と矛盾するものではなく、また、何ら変更するものでもないと私どもは理解しております。

岩屋委員 ちなみに、防衛大臣は、今般の件で具体的に御相談にあずかりましたか。

小野寺国務大臣 大臣レベルというわけではありませんが、基本的には、外務省の方針について防衛省にも報告があるというふうに理解をしております。

岩屋委員 いや、あえて聞いたのは、だからこそ私はNSCというのは必要なんじゃないかなと思うんですね。NSCがもし立ち上がれば、四大臣会合というのはかなり定期的に開催され、安全保障に関する情報に基づいて適宜いろいろな判断をしていくということになるんだと思うんですね。

 そのときに、例えばこういうステートメント、それほど、何といいますか、さっき申し上げたように、国連の決議でもないというものであっても、やはり日本の方針を内外に打ち出すということになるわけですから、それが果たして、全体の我が国の防衛政策、安全保障政策に照らして適切なのかどうかという判断は、このNSCの中で、総理、官房長官、外務大臣、防衛大臣、やはりきちんと相談をして判断をしていくということが必要なのではないかなと思いますので、そういう観点からも、私は、ぜひこういう会議体があるということが必要だなということを感じたものですから、あえて質問をさせていただいたような次第でございます。

 ちなみに、外務大臣、同盟国米国とは十分に調整をされたということでよろしいですね。

岸田国務大臣 米国に対しましては、さまざまなレベルを通じて我が国の立場を説明し、そして意思疎通を続けております。

岩屋委員 誤解のないように重ねて申し上げておきますが、我が国が唯一の被爆国として最終的に核軍縮、核廃絶を目指していくべきことは当然だと思います。

 しかし、我が国周辺、残念ながら、核武装した国々にある意味取り囲まれている、また北朝鮮の不穏な動きもあるという中で、やはり、国家の安全を考えれば、核抑止政策というものはしっかり持っていなきゃいかぬということでございますので、それを踏まえた上でしっかりとした戦略をつくっていただきたいと思います。

 それから、もう一回NSCの組織の話に戻りますが、先ほどからありますように、国家安全保障局長というのが極めて重要な役割を果たしてもらうことになるわけでございます。官房長官のもとで、ラインのトップとして危機管理監とともに官房長官を支え、総理を支えるということになるわけでございます。

 この国家安全保障局長の人選は非常に大事だなと思うわけですけれども、この際の人選の基準について今どういうふうにお考えか、聞かせていただきたいと思います。

菅国務大臣 委員の御指摘にありましたように、この局長は国家安全保障政策の中で極めて重要な役割を果たすわけであります。

 各省庁の横断的な課題についても、平素から、総理の指示のもとに国家安全保障会議に関する業務というものを日常的に処理する、さらには、総理から求めがあれば国家安全保障に係ることについては総理にブリーフィングを行う、そういう準備をして、極めて大事な役割だというふうに思っています。

 さらに、米国の国家安全保障担当大統領補佐官を初め、各国のNSCの責任者と緊密に意思疎通も図っていく必要があるというふうに考えています。

 国内で緊急事態が発生した際には直ちに対応するのもこの局長、そういうポストでありますので、このポストについては、国家安全保障に関する高度な専門性を有し、また実務に精通した人、そうした人を専従させる必要があるというふうに考えます。

岩屋委員 おっしゃるとおり、対外的な事柄にも十分対応できる、それから、内においては、我が国のそれぞれのインテリジェンス組織といいますか、そこにオーダーを出して、適切に情報を集めてくるという役割を果たしてもらわなきゃいけないわけで、これは非常に重要なポストだと思います。これは、本当にしっかりした人を、この法案が成立すれば選んでいただきたいというふうに思っております。

 それから、事務局体制についてですが、おおむねまず六十人ぐらいの規模でスタートするのではないかというふうに言われております、総理の答弁にもあったと思いますけれども。

 では、仮に六十名とした場合に、今全部をつまびらかにはできないかもしれませんが、おおむね、どういう組織体制というか班の体制というか、受け持ちの分担を考えておられるのか、お話しできる範囲で教えていただきたいと思います。

菅国務大臣 まず、ここの国家安全保障局では、平素から、総理の意向の中で、国家安全保障政策の企画立案、さらに総合調整を行うことであります。また、この組織が機動的に政策決定を進めていくためには、その規模、少ないと言う方もたくさんいらっしゃいます。とりあえず六十人程度でスタートしたい。各国のNSCを見ても、さまざまな試行錯誤の歴史の中で今日があるわけですから、考え方としては、そうした考え方でスタートをしていきたいというふうに思います。

 局の体制ですけれども、総括、調整を行う班とか、あるいはインテリジェンスコミュニティーとの連絡調整に従事する班、あるいは地域や各種の安全保障政策をテーマに応じて企画立案、総合調整、そういう班をしっかり分けながら、そこで専門的なことを常日ごろ行うことができるようにしたいと思います。

岩屋委員 この事務局、官房長官がおっしゃったように、習熟、修練していくためにはやはりある程度一定の時間が必要だと思いますが、ぜひ立派な組織をつくっていかなくちゃいけないと思うんですね。まさに、おっしゃったとおり、ここが情報を集め、企画立案をする。もっとわかりやすく言えば、総理の判断を助けるための政策オプションというものを、日ごろから、想定される事態に備えて用意をしておくということ、その役割をここがしっかり果たしてもらわなくちゃいかぬということだというふうに思います。

 企画立案をする、政策オプションをつくるために最も大事なのは、やはり情報収集ですよね。我が国の情報は、なかなか回らないとか、上がらないとか、漏れるとか、こう言われてきたわけですが、今回、こういう体制をつくる以上は、本当にしっかりしたインテリジェンスの仕組みをつくっていかなくちゃいけないと思います。外務省、防衛省、警察、公安調査庁、経産省等々、各省が持っている情報というものを、そこにオーダーを出してしっかりと集めてきて、さらに分析をするということがここにおいてできなきゃいけないわけでございます。

 しかし、私どもも党内で町村先生を中心に長らく勉強を続けてまいりましたが、やはり将来的には対外情報というものに特化した情報機関というものがないと、なかなか機微な安全保障に関する情報というものをとってくるということは難しいのではないかなと。これは将来課題でありますけれども、やはり将来的にはそういうことも考えていってしかるべきではないかなというふうに思うわけでございますが、この点については、現段階でどういうお考えでしょうか。

菅国務大臣 まず、現在、我が国の安全保障、国民の安全に直接かかわる情報の収集というのは、これは極めて大事で、喫緊の課題だというふうに政府は考えています。とりわけ、国際テロ、さらに大量破壊兵器拡散等について、関係する国や組織の内部情報の収集は極めて重要であります。

 一方で、それらの国の組織というのは閉鎖的でありますから、情報収集というのは現実的には非常に困難の伴うものであるというふうに思います。

 こうした認識の中で、専門的、組織的な対外人的情報収集の手段及びその体制についてでありますけれども、現段階においては、研究を深めている、そういう状況であります。

岩屋委員 この問題についてはこれ以上は突っ込みません。ただ、将来の課題として、やはりこれから、NSCができる、それから事務方ができる、そしていろいろやってみてもなかなかこれは難しいところがあるなということに直面するかもしれない。そういう経験を積み重ねていく中で、その必要性についてしっかり検討を進めていっていただきたいと思います。

 それから、先ほども出ましたが、国家安全保障担当総理大臣補佐官、これは、自民党の会議の中で、必置しなさい、必ず置きなさいというふうにさせていただいたんですね。これまでの仕組みは、内閣総理大臣補佐官のうち、国家安全保障担当に命ずることができるみたいな、極端に言うといてもいなくてもいいみたいなことだったので、それではだめよ、NSCをつくる以上は必ず担当の総理大臣補佐官を置くべきだというふうに、党の会議を通じて改めさせていただいたところでございます。

 本来、この人がラインにいなきゃいけないんじゃないかという議論がありましたが、私どもがよくよく検討してみた結果、やはり、官房長官のもとにそういう組織が包含されて総理を支えるという仕組みの方が我が国によりふさわしいのではないかという結論に達したところであります。

 しかし、総理大臣が幅広い視点というものを持って物事を判断していくためには、総理大臣のスタッフもやはり必要だ、必ず置かれていなければいけないということで、この国家安全保障担当総理大臣補佐官を必ず置きなさい、必置にしなさいということにさせていただいたわけでありますが、いま一度、この補佐官の役割を説明していただきたいと思います。

世耕内閣官房副長官 この国家安全保障担当の補佐官というのは、今回の法案の中で、今、岩屋委員御指摘のとおり、必置ということになりました。あくまでもこの補佐官は、総理に対して助言と進言を行っていくという関係でありますので、ラインではなくてスタッフということになります。

 ただし、この補佐官と国家安全保障局長というのは、平素から緊密に力を合わせて、そして情報共有、情報交換を行った上で、総理を国家安全保障の観点からお支えをしていくという役割になるというふうに思っております。

岩屋委員 そうですね。この国家安全保障担当総理大臣補佐官、それから国家安全保障局長、もちろん日ごろから緊密に連携をしてもらわなきゃいけないわけですが、ただ、対外的にNSCの事務方を代表するのは国家安全保障局長の方である、こういうふうに理解しておいてよろしいですね。

世耕内閣官房副長官 これは、法案上、国家安全保障局長は国家安全保障局の局務を掌理するという形になっております。当然、ラインの局長でもありますので、国家安全保障局を対外的に代表するのは国家安全保障局長ということになろうかと思います。

岩屋委員 そうですね。そこの役割分担が明確でないと、組織が非常に混乱しているように見える。誰が対外的に代表しているのかわからないということではいけないと思うんですね。

 一方、私は、補佐官の役割も極めて重要だと思うんですよ。この補佐官も、政治家が任用される場合もあるし、そうでない場合もあるんでしょうけれども、特に政治家の場合は、与党との連絡調整であるとか、あるいは国会との連絡であるとか、やはり、国家安全保障に関する問題で、補佐官でなければできない役割をしっかり果たしてもらうということになろうかと思いますので、私は、この補佐官の役割も非常に重要だというふうに思っているところでございます。

 それから、国家安全保障会議というものをつくるので、やがてこの委員会で議論もさせていただく特定秘密保護法というような仕組みもこれから必要になってくるのではないかというのが私どもの考え方でございます。これはいよいよ法案が出てきてから本格的な議論をさせていただきたいと思っておりますが、現段階で、国家安全保障会議内における情報保全の仕組みはどうつくるべきだというふうに考えておられるでしょうか。

世耕内閣官房副長官 国家安全保障会議において、実質的な議論、質の高い議論を行っていく必要があります。そしてまた、国家安全保障局において国家安全保障政策の企画立案、総合調整を行うに当たっては、やはりそれにふさわしい質の高い情報が必要不可欠だというふうに思っております。

 国家安全保障会議と国家安全保障局に関係省庁から質の高い有益な情報がしっかり集約をされるためには、やはり一方で、適切な情報保全措置というものが、これは情報保護法ができるとできないとに限らず必要だというふうに思っておりますから、必要な措置をしっかり講じていきたいと思います。

 具体的には、まず国家安全保障会議の正規メンバーであります議長、議員等に加えて、この会議には、場合によっては、議員の職務を代行するような副大臣が出席をされるというようなことも考えられますので、こういう人たちにも幅広くまず守秘義務を課す規定を既に置いております。これを厳格に適用していきたいというふうに思っております。

 また、国家安全保障局においては、特定秘密保護法の施行の前であったとしても、国家安全保障会議や国家安全保障局の資料の管理保全に関しては厳格なルールづくりを行っていきたいというふうに思っておりますし、そもそも資料そのものを物理的にしっかりと管理する措置もとってまいりたいというふうに思っております。

岩屋委員 まさに国家の存立を脅かしかねないような事態にしっかりと備えるためにこのNSCを立ち上げるわけでございますから、副長官おっしゃったように、このNSC内での情報保全というものは極めて重要なテーマでございます。だから、特定秘密保護法、我々はぜひこれはあわせて成立をさせていただくべきことだと考えておりますけれども、それ以前に、まずこのNSC内の情報保全の体制というものをしっかりとつくっていただくようにお願いをしておきたいというふうに思います。

 それから、さきに総理は、答弁の中でしたか、閣議の議事録作成に関して前向きな答弁をなされました。その趣旨は私もよく理解をするところでありますが、今までは、閣議というのは必ず官房長官が、まさに会見のためにこの委員会からもいなくなるわけでございますが、必ず官房長官からブリーフをするということで、情報提供をしっかり図ってきたわけでございますね。

 しかし、議事録をつくるということになると、非常に前向きなことだとは思うんですけれども、直ちにこれが情報公開の請求にどんどんさらされるみたいなことになると、これはこれで行政の執行に極めて不都合が生じるおそれもあるのではないか。だから、やはりこれは、検討はしていただきたいと思いますが、慎重に検討していただく必要があるのではないかなと思います。

 ましてや、より機微な、シビアな情報を扱うNSCに関しては余計、この問題については慎重の上にも慎重に検討していただく必要があるのではないかな、こう思っているんですが、この点については今どういうふうに考えておられるでしょうか。

世耕内閣官房副長官 今、岩屋委員御指摘の総理の国会答弁でございますが、これは、十月十八日の参議院本会議で、公明党の山口代表の、公文書管理法の改正案を早急に成立させることが重要ではないかという御質問に対しまして、総理が、公文書管理法改正案については、閣議のあり方ともかかわる問題であるため、政府部内で必要な調整、検討を行った上で提出することとしたいと明確に答弁をされたところであります。

 今、岩屋委員御指摘の点も踏まえながら、今後、閣議のあり方も含めて、十分な調整、検討を行った上、提出をしてまいりたいというふうに思っております。

 また、今既に安全保障会議というのがあるわけですけれども、この安全保障会議につきましては、審議内容が非常に機微にかかわる部分があるということで、また、関係閣僚の活発な意見交換を確保する必要があるという観点などから、議事録は現状では作成をしておりません。ただし、この議事の内容については、事後的に官房長官が記者会見において、可能な限り、支障のない範囲で公表しているというのが現状であります。

 今御質問の、では、今度新たに設置される国家安全保障会議においてはどうなるのかということでありますが、岩屋委員御指摘のとおり、この会議の審議内容も非常に機微な情報を含むことになりますので、公表のあり方とか関係文書の作成及び取り扱いについては、国家安全保障会議の性質を十分に勘案しながら、国家安全保障を損なわない形でしっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

岩屋委員 そうですね。後の世において、どういう意思決定がどういうふうにされたのかというのが検証されるということも大事なんですが、自由闊達に、まさに閣議においてもNSCにおいても議論をしていただかなくちゃいかぬ。そのときに、一々、どの大臣がどう言った、ああ言ったということまで子細に逐一報告する必要があるのかどうか。そこは、ちょっと私、疑問のあるところであって、その点も十分に勘案して、今後検討していただきたいと思います。

 もう最後の質問になりますが、特定秘密保護法、これはまだ議論はこの後になるわけですけれども、当初は、政府から出てきた原案は、自民党の会議で随分とたたいて修正をさせていただきました、町村先生のもとで。最初は何か無限更新ができるみたいな話だったわけですけれども、それではだめだと。法文の中で、やはり基本的に一定の期間が過ぎれば原則公開というルールをつくっていくべきだということで、党の中でもしっかりともませていただいたものでありますので、ぜひこれは国民の皆さんの理解を得て成立せしめたい、こう思っているわけでありますが、NSCと関連してこの特定秘密保護法がどうして必要かということについて、最後にもう一度しっかり説明をしていただきたいと思います。

世耕内閣官房副長官 国家安全保障会議において実質的で質の高い議論を行っていく上で、あるいは、国家安全保障局が国家安全保障政策の企画立案、総合調整をレベルの高い形で行っていくに当たっては、やはり質の高い情報というのが必要不可欠だというふうに思っております。そういう意味で、特定秘密保護法案が成立をすれば、まず、外国の関係機関等から非常に秘匿度の高い情報がより適切な形で、より迅速に提供されるんじゃないかということが期待できるというふうに思っておりまして、国家安全保障会議の審議の質の向上につながっていくというふうに考えます。

 ですので、特定秘密保護法案の成立は、国家安全保障会議の効果的な議論に大きく影響してくるというふうに思っておりますし、会議の機能、質を高める上で非常に重要だというふうに認識をしております。

岩屋委員 まずはこのNSC法案をしっかり審議した後、また、国民の皆さんの関心も非常に高い特定秘密保護法案についても十分な議論をして、御理解をいただくように私どもも頑張ってまいりたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

額賀委員長 次に、小池百合子君。

小池(百)委員 おはようございます。自民党の小池百合子でございます。

 岸田外務大臣、小野寺防衛大臣、そして世耕副長官、よろしくお願いを申し上げます。

 昨日は、朝霞で自衛隊の観閲式が行われました。その場で、安倍総理は、最善の安全保障政策を絶えず追求していかなければならない、そして、その司令塔が国家安全保障会議だ、このように述べられました。戦略的に取り組むための見取り図が国家安全保障戦略だとして、厳しい現実を踏まえれば、これ以上立ちどまっている余裕はないと決意を示されたものと受けとめております。

 さて、このNSCの成立につきまして、国会での真剣な審議を経て、一刻も早く本法案が成立して、真に機能するNSCとなりますことを願っている一人でございます。

 私は、第一次安倍政権において国家安全保障問題担当の補佐官を約十カ月務めました。安倍総理の強い思いを受けて、NSCを創設するんだということで、各国を回り、さまざまなNSC、そしてそれに類似した組織の研究なども行いました。そして、官邸には、国家安全保障に関する官邸機能強化会議という会議体に有識者の皆様方に御参加いただきまして、大所高所、そしてまた歴史的な観点からも、官邸機能をどうするべきかということでお話をいただきました。

 それをベースにいたしまして、平成十八年に、NSC設立に向けての法案を準備させていただいたわけでございます。国会提出には至りましたけれども、残念ながら、安倍政権総辞職ということから、その後は廃案となりまして、ただ、その後は、民主党の方でもこのNSCについての御検討をいただいた、このように承知をしております。

 平成十八年から考えますと、七年間の月日が流れたわけでございますが、当時と比べましても、日本を取り巻く環境は、残念ながら、ますます厳しさを増しております。さらには、サイバー、宇宙、海洋といったような、これまでの国を守るという観点、安全保障の観点からは、コンベンショナルな対策だけでは間に合わないというような複雑化した国際情勢となっているわけでございます。

 一度はこのように安倍政権で法案作成をいたしましたけれども、このままいくと、もうずっと日の目を浴びないのではないだろうかと心配をし、また、冷凍保存されてしまうのかなというような思いでございましたけれども、いよいよこの国会において改めてこの法案が審議をされるということ、解凍するためにチンをするというような状況に至りましたことについて、私は大変感慨深い思いを抱いているところでございます。

 また、今回は、以前のこの法案を整理していただいて強化していただいたこと、心から敬意を表したいと思います。緊急事態大臣会合設置、そして、情報を総括する機能を追加されたこと、ラインとしての国家安全保障会議事務局の設置、それから、副大臣を会議にも参加させる場合があるということなど、これらが主な変更の箇所だと理解をいたしております。関係者の皆様方の御労苦に対して、まず敬意を表したいと存じます。

 ただ、NSCといっても国民の皆様方にはなかなかわかりにくい、何が変わるんですか、そんな思いだと思います。また、ネットで検索しますと、NSCと引きますと、いまだに吉本興業の新人養成機関の方が真っ先に出てまいりまして、まだまだこのNSC、ここで国会審議を通じて、よく国民の皆様方が御理解いただいていない点を、ぜひともこの審議を通じましてお示しをしていくのも一つの責任ではないか、このように思っているところでございます。

 そこで、具体的にお伺いをしたいんですけれども、このNSCの創設の意味と効果、先ほども既に御質問ございましたけれども、例をとってわかりやすく御説明いただけないかと思います。

 さまざまございますが、例えば、ことしの一月、アルジェリアで多くの邦人の方々が殺されるという悲惨な事件が発生をいたしました。副長官からお答えいただくのが適当かと思うんですが、例えば、NSCがあったならばどのような効果が期待できたのか、具体的に御説明をいただければと存じます。

世耕内閣官房副長官 アルジェリアの邦人殺害事案は、あれは本当にたくさんの方々が亡くなって痛ましい事件だったというふうに思っております。

 我々も、あの時点で、ことし二月に、その反省に立って、有識者の皆さんからも御意見をいただいて、あの事案に関する報告書をまとめております。その事件の教訓、反省に基づいて実は今回の法案も作成をされているといった背景もございます。

 具体的に、あのとき国家安全保障会議があればこうなったというのを申し上げるのは非常に難しいというふうに思いますけれども、今回、これから国家安全保障会議ができれば、いろいろな事態の兆候を事前に迅速に把握をして、予防策などというのを平素から検討していくということも可能になってくるというふうに思います。そういう意味で、司令塔たるこの四大臣会合というのが機能してくるというふうに思います。

 そしてまた、ああいう事態が起こったときには、今度は、事前に決めてある緊急事態大臣会合というものが招集をされて、関係閣僚が集まって、とるべき措置を極めて迅速に建議できる、そういう権限が、今回、この国家安全保障会議法が成立すれば与えられるという面もあるかというふうに思います。

 そしてまた、あのときは、かなり情報がいろいろな形で錯綜した面もはっきり言ってあったと思います。これを官邸で集約をして一生懸命対応していったわけでありますけれども、この国家安全保障会議、そして国家安全保障局ができていれば、関係行政機関からのいろいろな情報とか資料といったものもしっかり法律に基づいて提供してもらって、そして、国家安全保障局が法律に基づいてそれを全部集めて整理していくということができるようになるわけでありますので、大分機能は変わってくると思います。

 そして、国家安全保障会議が、平素から、特に中東情勢、小池委員は御専門でありますが、なかなか難しい、専門性の要求されるところでありますけれども、この中東情勢を含めて世界各地の安全保障情勢を常日ごろからしっかりとフォローして、そして、今後も、この類似の事件が起こったときには、起こってほしくないと思いますけれども、そういった事案が発生した場合には効果的に対応できるのではないかというふうに考えております。

小池(百)委員 きのうたまたま、先ほど申し上げた官邸機能強化会議のメンバーであった佐藤謙元防衛事務次官とお会いをいたしまして、あの東日本の大震災にしても、尖閣をめぐるさまざまな出来事、NSCがあったらなと。たらればを言うわけではありませんけれども、これらの機能する機関を持つということは本当に重要だなと改めて感じているところでございます。

 ところで、通告していなくて申しわけないんですけれども、外務大臣、防衛大臣、それぞれ、愛読書というか座右の書というのはおありでしょうか。

岸田国務大臣 愛読書についての御質問ですが、学生のころからなれ親しんだ本としましては、吉川英治の「宮本武蔵」、あるいはドストエフスキーの「罪と罰」、このあたりかと存じます。

小野寺国務大臣 西郷隆盛の南洲遺訓を時々読ませていただいております。

小池(百)委員 済みません、突然伺いましたが。

 四大臣会合に臨まれるわけでありますから、どのような日本にするのか、いろいろ歴史などからも学ばれたことも多いと思います。参考にさせていただければと思いました。

 私自身は、これは日本軍がなぜ負けたかということを客観的に分析した、「失敗の本質」、日本軍がいかにして負けたか、大変有名な本でございますけれども、ここから大変学ぶことが多いと思うんです。

 ガダルカナルとかミッドウェーなどの六作戦の問題点を客観的に分析して、その共通項というと、陸軍と海軍の縦割りの問題、情報が共有できていなかった問題、これはしばしばこの中でも取り上げられて、ほかには、精神主義であるとか、曖昧な戦略目的であったとか、情実人事などがあったということで、これはどうも日本の現代の状況にも通じているところもあるのかなと思うんですけれども、改めて、ぜひこの本もお読みいただければと思っております。

 さて、先ほど申し上げましたように、国家安全保障問題担当補佐官時代に、各国の組織が一体どうなっているのかということを研究させていただいたわけでございます。当然、大統領制であったり、それから議院内閣制であったり、それぞれ各国で、政治組織そのものが、意思決定の組織そのものが変わっていることは当然でございます。

 ちなみに、今回も礒崎補佐官が各国を回られたとお聞きをしているわけでございますけれども、どの国からどのような点を学んで、そして今回のこの法案の作成に生かしてこられたのか、お伺いをいたします。

世耕内閣官房副長官 今回の法案作成に当たりましては、今御指摘のとおり、諸外国の制度を学びました。特に、大統領制であるアメリカ、そして議院内閣制のイギリス、それぞれのNSCの組織とか機能というのを参考にしながら、しかし一方で、日本独特の政治行政制度に合った、独自の国家安全保障会議を設計いたしました。

 ですから、学んだ各国の制度と今回の法案が完全に一致しているわけではありませんけれども、例えば、省庁間の連携が非常に重要で、それを確保しなければいけないという点で、閣僚級の会議の下に各省庁の幹部から構成される幹事会を開催するなんということは、各国の制度を参考にさせていただきました。

 また、この法案のかなり肝であります、会議を支えるための国家安全保障局自体を設置するといったあたりは、諸外国の例を勉強した成果として、参考にさせていただきました。

小池(百)委員 ありがとうございます。

 私自身、各国の例を参考に法案づくりに臨んだわけでございますが、一方で、現実にそれぞれの組織を訪問したことによって、とても単純な話なんですけれども、共通することがあり、そして、今回のNSCを創設するに当たって、ぜひとも取り入れてほしいことがございます。

 それは、組織のトップが、日本の今回の法案では国家安全保障局長でございますけれども、大統領とか首相に極めて近い距離におられるということなんです。これは、政治的のみならず、物理的に近いということでございます。

 私、当時、アメリカのNSCを訪問させていただきましたところ、ハドレー国家安全保障担当の補佐官でありましたけれども、この方のお部屋はホワイトハウスの中にあるんですね。小さな部屋です。意外と小さな部屋でした。ただ、それは、そのほか、ホワイトハウスの周りにさまざまなビルがございますね、しかし、そういうところではなくて、ホワイトハウスの中にあるということであります。

 それから、イギリスでは、内閣委員会の方ではなかったんですが、シャインワルドという、その後に駐米大使になられた方が外交担当の顧問を務めておられましたが、この方とお会いしたときはダウニングテンだったんです。

 これからどの場所に設置をしていくのか、この法案が成立をいたしましたら、すぐ、もう既にその準備もできているのではないかと思いますが、この安全保障局長はぜひとも官邸の中に置くべきである、これが全てを象徴することにもなるのではないか、このように思っております。

 ですから、こういう、これからも御質問させていただきますけれども、情報をどうやって集めるんだ、各省庁の縦割りの問題をどう解決するんだというようなことを、国家安全保障局長の居場所がどこであるかということを通じて知らしめるというのも一つの効果ではないだろうか、このように思うわけでございまして、ぜひともそのことをお考えいただきたい、このように思います。

 また、この国家安全保障局長でございますけれども、物理的に近いというだけでなくて、多分、これから任命されるであろうという方は、安倍総理にとっても、考え方の面でも近い方になろうかと思うんですが、ということは、逆に言えば、政権交代であったりすると、この局長人事というのはどのような扱いになるのか。それはそのときの任命権者がお決めになるのかもしれませんけれども、その辺で継続性についてはどういうふうにお考えになるのか、お答えいただければと思います。

世耕内閣官房副長官 小池委員先ほど御指摘のとおり、やはり、トップとの物理的距離がトップをサポートする仕事の質に影響するというのは、私も、前の内閣、安倍内閣で補佐官をやり、今も副長官をやっている立場で、そこは非常に痛感をいたします。

 ただ、具体的にどういう場所にするかというのは、これは最終的に総理がお決めになることかと思います。

 また、局長の人事については、これは次の、あくまでもその時々の総理大臣がお決めになることだというふうに思います。

 私は、個人的には一定の継続性があった方がいいとは思いますが、政権交代したときに、それぞれの内閣あるいは総理大臣の考え方に基づいた人事が、継続性を大切だと思われればそのまま継続されると思いますし、やはりかえたいということであればかえられるということになるのではないかというふうに思います。

小池(百)委員 アメリカなどの場合も、大統領がかわれば国家安全保障担当の補佐官がかわるということでございますが、日々の対処だけでなくて、今回のNSCをつくるということは、中長期の立案をするということが、私はここが肝だと思っているんです。

 いざ何かが起こったときに、官邸はそのことだけでもう本当にばたばたとするということも現実でございます。そのために、日々、中長期、そして国家のビジョンなどを含めて研究をした上で、むしろバックキャスティングして今何をすべきかを決めるということが一番望ましいのではないだろうかと思いますので、ある意味での継続性が必要ではないか、このように思います。

 先ほど、愛読書について伺わせていただきましたが、私は、「失敗の本質」だけでなくて、もう一つございまして、それは、現在東京都知事を務めておられます猪瀬直樹さんがお書きになりました「昭和十六年夏の敗戦」という本でございます。

 これは、太平洋戦争に突入する直前、昭和十五年に総力戦研究所が設立をされたということで、その歩みといいましょうか、そして大きな課題が何であったかを今の私たちにも知らしめてくれる大変な好著である、このように思っておりますけれども、お読みになっていますか。(岸田国務大臣「はい。読んでいます」と呼ぶ)

 ちなみに、この本について、私も大変、NSCの法案を作成する際も、こういう歴史から学ぶことも多いというふうに思いまして、改めて読み直してみました。

 ちなみに、この総力戦研究所というのは今のキャピトル東急ホテルのあたりにあったと言われるものでございます。当時は、戦争突入のまさに直前でございますけれども、若手官僚とか、当時でございますから軍人など、民間の研究者も含めて約四十名が、日米もし戦わばという命題でシミュレーションを重ねていくわけであります。

 特に、その当時でございますから、石油禁輸などということに直面しているわけでございまして、石油の備蓄量が一体幾らなのか、一体国際情勢はどうなっているのか、兵たんはどこまで可能なのかということ、ロジスティクス、そういったことをこの四十名の若手官僚がシミュレーションをしていくわけでございます。そして、その中で出てきた答えというのは、日本は必ず負ける、日本必敗というのが結論であったというわけでございます。

 当時の東条英機陸軍大臣にそのシミュレーションの答えを持っていったならば、これは机上の空論だということで、一顧だにされなかったか、まあ、怒らせたわけですから読まれたわけでございますけれども、結論とすれば、もう既に御承知のとおりでございまして、日本は負けてしまったわけでございます。

 当時の東条英機陸相は、そのときに、日露戦争も我が大日本帝国は勝てるとは思わなかった、しかし、勝ったじゃないか、勝てる戦争だからと思ってやったのではない、戦というものは計画どおりにはいかないということを言い放ったと言われており、また、このシミュレーションの結果については口外をするなと命じた、このように言われております。

 あと、有名なところでは孫子の兵法というのがございますけれども、これも、彼を知り、敵を知りおのれを知れば百戦危うからずやという有名なくだりがあるわけで、日本の強みと弱みを鳥の目をもって、俯瞰して見詰める作業から始めていかなければなりませんよということを説いているわけでございます。

 今、総力戦研究所の話をさせていただきましたけれども、こういった歴史的な日本の、また世界の戦略、そしてまた将来の予測等についてどのようにお感じになり、また、そこから何を学ばれてきたのでありましょうか。お読みになったという岸田大臣、いかがでございましょうか。

岸田国務大臣 私も、御指摘になられました「昭和十六年夏の敗戦」、大変興味深く読ませていただきました。

 その中から学ぶことは大変多いと感じております。さまざまな情報を得ることの大切さ、その情報をどう分析するかということの大切さ、そして、その分析をどう判断するかというリーダーの判断、決断、そして、そうした情報ですとか分析等を、今度どう扱うのかという組織のあり方など、本当にさまざまな課題、問題点を私たちに突きつけてくれているのではないか、こんなことを感じながら読ませていただきました。

 おっしゃるように、歴史から学ぶことは大変多いと存じます。この本のみならず、さまざまな課題において、分野において、謙虚に歴史から学ぶ姿勢を大事にするべきだと改めて感じております。

小池(百)委員 ありがとうございます。

 さて、先ほど、国家安全保障局長の居場所のことについてお話をさせていただきました。アメリカの場合、イギリスの場合、お話をさせていただきました。アメリカの場合はホワイトハウスの中にあるということを申し上げましたけれども、多くのスタッフは別のビルにおります。

 今回のNSCの法案が成立いたしますと、約六十人規模でスタートしますという旨のこと、先ほど官房長官からお話がございました。

 よく、小さく産んで大きく育てるという言葉がございますけれども、私は、六十人がベストかどうかはわかりませんけれども、大きくすることを余り考えてはいけないのではないかとむしろ思っているんです。小さく産んで賢く育てることこそが重要であって、ただ、ここの分野の専門者を入れたいとか、もっとこの分野をというふうにどんどん膨らんでいくことは、むしろ意思決定などに阻害要因となるのではないかとさえ思っております。

 そしてまた、各省庁との連携をうまく進めていくことによって、この霞が関そしてまた地方にもいる国家公務員であったり、国家としての組織を総動員して、それこそ総力戦で、情報など、知恵などを集める、それができればいいのであって、NSCそのもののずうたいが大きくある必要性は全くないというふうに思っております。

 ただし、情報と同時に、NSCについては、そのために必要な経費は十分つけるべきだ、その点については応援をさせていただきたいと思っておりますが、規模についてはどうお考えでしょうか。

世耕内閣官房副長官 質の高い仕事をしてもらうためには一定以上の人数は必要だろうということ、そして一方で、今委員御指摘のとおり、余り多過ぎると機能低下を招くということを踏まえて、今回、六十人という規模で判断をさせていただいたところであります。

 私も、余り組織の膨張というのはよくないと思っています。こういう司令塔機能というのは、やはり司令塔として、各省庁からしっかり情報を吸い上げて、ある程度限られた人数で質の高い議論、仕事をしていくということが、御指摘のとおり、非常に重要だというふうに思っております。

小池(百)委員 そのとおりだと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それから、法案の中で、緊急事態大臣会合について、あらかじめ指定した国務大臣が出席できる、このように定められているようでございますが、どういうイメージになるんでしょうか。

世耕内閣官房副長官 今、指定する範囲については鋭意検討中でありますけれども、具体的な例として幾つかイメージを申し上げますと、例えば、弾道ミサイルが飛んできたという事態が発生した場合は、外務大臣、防衛大臣に加えて総務大臣、国土交通大臣、国家公安委員長が議員に入ってくるのではないかと思います。

 あるいは、領海侵入とかあるいは不法上陸事案というのが発生した場合には、法務大臣、国土交通大臣、国家公安委員長あたりが議員として入ってくるのではないかというふうに思っています。

 それぞれの緊急事態の種類に応じて、あらかじめ過不足のないように関係閣僚を議員として指定して、迅速な対応ができるようにしてまいりたいと思っております。

小池(百)委員 私はあくまでも、フレキシブル、これをキーワードにしていただきたいと思うんですね。

 私は気候変動についてもこれまで担当してきたわけでございますけれども、この気候変動がもたらす安全保障への影響というのも非常に大きいんです。北極圏の氷が解けて航行ができるようになったということで、今、世界は大変活発に動いております。

 そしてまた、各国のこの気候変動の問題に対しての会議などは、例えば、イギリスから出てくるのは軍人が出てきます。デンマークなどもそうであります。特に、北極圏の場合もそうなんです。それから、地球温暖化ならぬ寒冷化が起こったときはどうなるかという研究をしているのは、これはペンタゴンが研究の熱心さにおいては世界一ではないかと私は思っているわけでございます。

 だから、こういう、これから想定される安全保障の課題というのは極めて大きい。鳥インフルエンザが起こったときは、どのようにして法務省、入管でチェックするのか。ですから、このあらかじめ指定する国務大臣というのは、私は、もう全員しておいた方がいいのではないか。

 むしろ、そのときに、先ほどおっしゃったテーマに応じて呼び込むという方針だけれども、徹底して、各省庁、いつでも危機管理対応、そして安全保障に対応するんだということ、まあ、当たり前の話なんですけれども、そのためには、あなたのところは外れていますよと言わない方が逆にいいんじゃないかと思っておりますので、全国務大臣とあえてした方がいいのではないか、このように思っております。

 それから、情報の関係でございますけれども、NSCとは両輪の関係になるわけでございます。

 NSC自体が情報収集を行うとは承知をいたしておりませんけれども、言ってみれば、情報コミュニティーが漁師であるとすれば、釣ってきた魚をどのようにして吟味をして料理をするのかというのが、これがNSCではないか、私はこのように理解をしているんですね。それだけに、とれとれの魚にせよ、大きな魚にせよ、釣り上げてくる情報コミュニティーとNSCの連接と申しましょうか連携というのが今回の大変重要な肝になってくるわけです。

 現在、情報コミュニティーの中に合同情報会議というのがあるんですけれども、この辺の関係性は一体どうなるのか、副長官からお答えください。

世耕内閣官房副長官 この合同情報会議というのは、平成二十年三月の内閣官房長官決定で、今、設置をされております。まさに、インテリジェンスコミュニティーの実務者、責任者が集まっている会合であります。

 まだこれは法案成立を待ってということになりますが、NSC局長もここのメンバーには入るという方向になろうかというふうに思っております。そして、この場で、やはりNSC側の関心事項を伝えていく、あるいは逆に、各インテリジェンスコミュニティーの方から、こういうテーマがありますよということを、みんなの前で議論をしていくということも、情報の質を高めるという上で非常に重要だというふうに思っております。

小池(百)委員 情報について改めて伺うんですが、現状を見ましても、この合同情報会議に各治安機関の情報が集約されているかどうかというと、疑問があるんですね。また、重要な情報になればなるほど、各機関が御注進、御注進と官邸に情報を上げるという事案、これはアメリカのNSCでもそうですし、ほかの国々でも、ここはもう本当に微妙なところであるわけでございます。

 さきの本会議で総理が既に御答弁なさっていたと思うんですけれども、各情報機関に総理みずからがまた個別に連絡されて情報を上げられるんですかと言ったら、そういうこともあり得るというふうに御返事されていたように思うんですけれども、このあたりの個別の情報提供について、どのような整理、どのような流れを考えておられるのか、副長官、お願いします。

世耕内閣官房副長官 合同情報会議を初めとするインテリジェンスコミュニティーの機能というのは、国家安全保障会議の設置後もしっかりと機能を果たしていきたいというふうに思います。

 情報のやりとりというのは、やはり単独で上げた場合もいいこともあろうかと思いますし、あるいは、それをみんなのいる前で、関心を伝えてやっていった方がいいという場合もあろうかと思います。それはそれぞれ、その都度、事態に合わせてやっていくのかなというふうに思っております。

 この法律が成立をすれば、少なくとも、国家安全保障会議がトップダウンで各省庁に対して必要な情報要求を行えるようになって、そして、各省庁はそれに応える義務があるということになりますから、そういう意味で、一段と情報機能というのが高まるのではないかというふうに思っております。

小池(百)委員 今、義務というふうにおっしゃいましたけれども、では、義務を怠った場合はどのようになるんでしょうか。

世耕内閣官房副長官 これは、法律上、要求があった場合は応えなければいけないという義務になっていますから、義務を怠ることは組織の議論としてあり得ないというふうに思っております。

小池(百)委員 この問題は、この情報を上げるか上げないか、誰が判断するかというところにもかかわってくるんだと思うんですね。

 私も大臣をやらせていただいたわけですけれども、大臣のところに上がってこない情報が何かがわからないわけでございまして、そこの判断がなかなか難しい。それから、事務方とすれば、こんな瑣末なことも大臣に上げて、日々の運営にむしろ支障になるのではないだろうかという、この辺のあんばいのところが私は難しいのだろうというふうに思うんです。

 ですから、情報を上げさせるということは、全体的な、後でも話をさせていただこうと思うんですけれども、情報を上げることも国家を守るんだという、その意識に頼るしかないという部分、最終的にはそういうところもあろうかと思うんですけれども、この辺のところは工夫された方がいいのではないだろうか、このように思います。

 それからあと、情報の上げ方なんですが、アメリカの場合を見ますと、例えばライス国務長官が、その前は安全保障の担当補佐官をやっておられた。その時期は毎朝五時起きをして、とにかく世界じゅうからの集まった情報、アメリカの場合ですから、まさに世界じゅうからの情報を集めて、そしてそこから仕分けをして、何を大統領に伝えるかということに、毎日それを繰り返していったということでございます。

 この安全保障局長というのは、それをなさるお役になろうかと思うわけなんですけれども、また一方で、これもアメリカのさまざまな書物にも出てまいりますけれども、この大統領にこの情報を何としてでも理解してほしいというときに、スポーツ好きの大統領には、スポーツ紙、東京スポーツにはならないと思いますけれども、スポーツタッチの文章の書き方をするというようなことで、どうやって、このことを知ってもらいたい、まあ、このことは伝えたくないというのもあるでしょうし、また、このことは伝えなければならない、そんな工夫もされていると聞きました。逆に言えば、このことをぜひとも伝えたいという意味では、恣意的になるわけですね。

 このような情報の流れを督促するためには、どのような工夫をされるべきなのか、もう一度副長官からお答えをお願いできますでしょうか。

世耕内閣官房副長官 今回の法律で、国家安全保障会議、そして国家安全保障局長という流れで、ある程度、情報要求と、そしてそれに対する提供の義務というのが整理をされるというふうに思います。

 さらにそれをきちっとワークするものにするために、当然、この法律ができた場合には、各省庁にもそれぞれ政治家がおります、政務三役あるいは事務方のトップである事務次官に対して、こうした国家安全保障会議の趣旨、仕組み、そしてトップに上げていく情報の質の高さの大切さといったことを徹底させて、しっかり緊張感を持って職務を遂行してもらうようにしたいというふうに思っております。

小池(百)委員 さて、情報に関しまして、情報の漏えいということ、これもこの後、特定秘密保護についての法案が審議されるわけでございますが、私自身が直接関係したということで言うと、二〇〇七年のイージス艦の情報漏えいが問題となりました。ちょうど武器調達云々の話もございまして、なかなか機微な、微妙な状況にもなったわけでございます。

 そして、私が防衛大臣を務めさせていただいたときには、大臣室へ入室する人の携帯電話を預けるようなボックスをつくるなどといったようなこともし、そのことによって防衛省内に、機密に対しての取り扱いをもっと真剣にやらなくてはだめだということを伝えたつもりでございます。

 その後、防衛省においてはどのような改善策がとられたのか、お伝えください。

小野寺国務大臣 「しらね」の事件でしょうか。イージス艦システムに係る特別防衛秘密漏出事案。

 平成十九年一月、護衛艦「しらね」の乗組員であります二等海曹の自宅から、秘密の疑いのある情報を記録したハードディスクが発見され、当時の捜査の結果、同年十二月、艦艇開発隊に所属していた三等海佐がイージスシステムに係る特別防衛秘密を漏えいした容疑で逮捕、起訴され、最高裁にて懲役二年六カ月が確定、また、自衛官四名が書類送致され、起訴猶予処分となった事案ということであります。

 そのことについて、当初、特別行動チームということで、現場部隊レベルまで再発防止対策の実施を徹底するということが行われました。

 そして、現在、特別検査チームによりまして、これは毎年、大臣通達を出しまして強化し、特別検査チームという中で、今、例えば、抜き打ちではありますが、そのチームのチーム長が、所持品の検査、執務室の出入りの際の、執務室勤務中に対する抜き打ち調査、あるいは、パソコン内でのデータ検査、秘密等の取り扱いを許されていないPC内の検査等、調査をしております。

 現在も、抜き打ち等でこの特別検査チームが活動をしております。

小池(百)委員 もうここは徹底をしてほしいんですね。これから情報の共有、これは官邸内そして政府内だけではございません、各国との共有を進めていくにおいても、この漏えいの部分、特に防衛省、これを気をつけていただきたいと思います。

 一方で、先ほど愛読書の話をさせていただいたわけですけれども、私が好きな映画がございまして、それは「陸軍中野学校」という市川雷蔵が演じているものなんですけれども、ここでは、例えば、非常に信頼していた女性に対して、日本のためだから頼むよと言うと、突然その女性が、私は日本人じゃありませんと答えるシーンがあるんですね。

 このようなことを考えると、誰と結婚しちゃいかぬとは言いませんけれども、最近、外国人との結婚が結構ふえているんですね、御時世ということもこれありですけれども。ぜひともこれらのことも、政府、特に機密を扱う分野においては、もう一度しっかりとそのあたりを言い聞かせておく、もしくはルールを定めるというようなことをやっていただきたいと存じます。

 さて、官房長官が戻られましたので、質問をさせていただきたいと思うんです。

 官邸の機能強化というのは、これまでも累次重ねられてきました。特に大きな変化は、後藤田官房長官のときに、五室を設けるということで行われたのが一つの大きな転換点になっているのではないかと思います。

 八六年の七月に、後藤田長官が総合調整機能を強化するということで設けたのが五室でございまして、これはすなわち、内政審議室、外政審議室、安全保障室、情報調査室、そして広報官室、これを合わせて五室ということでございます。

 その後もいろいろな、試行錯誤といいましょうか、進化を遂げていったわけですけれども、この五室からさらに拡充して発展させるというのが今回のNSCと捉えるのかどうか、長官からお答えいただきます。

菅国務大臣 これは、官房長官として内閣に入った場合、さまざまな縦割りの中で、いかに総合的に物事を判断するさまざまな情報を集約するかというのは、歴代の官房長官も非常に悩んできたことだろうというふうに思います。

 そういう中で、後藤田元官房長官は、五室制度という形で、多分、そこで全体を集約して、そのことによって情報を集約しようということを考えたんだろうというふうに思います。どちらかといえばボトムアップ型ですよね。

 今回はトップダウンによってそうした情報を集約しようという考え方であります。これは、時代も変わってきたと思いますし、また官邸を取り巻く組織や環境も変わってきているというふうに思いますので、とにかく、いかに必要な、そして正しい情報が的確に上がってくるかということが一番大事なことでありますので、そうしたことを十分考えに考えた末に、今回はトップダウンの形の体制をつくらせていただこうと考えたところであります。

小池(百)委員 そもそも、後藤田長官が五室を設置するなど官邸機能の強化に乗り出したことと、きのうも総理が大島の方に現地にいらっしゃっておられますけれども、伊豆大島の三原山の噴火とは無縁ではないと思います。

 七月一日にこの五室ができて、その後で三原山の噴火ということでございますけれども、今回も多数の死傷者、行方不明者がいるわけですが、当時は、三原山の噴火ということで、一万三千人の住民、特に元町地区というのが溶岩が流れてくるというので危険だったわけです。

 その当時のことを私は佐々さんからよく伺うんですけれども、当時は、五室はできた、ただ、国土庁が当時の災害の司令塔になるという話になっていたので、国土庁の方に、どうなっているんだというふうに官邸から電話を入れた。官邸から電話を入れたのは、もう噴火して、その後大丈夫か、多くの方々が亡くなってしまうような危機的な状況で、国土庁は一体何しているんだと連絡を入れましたら、十九省庁の課長たちが集まってずっと会議をしているというんですね。

 その会議の中身は何かといったら、災害対策本部の名称を、大島災害対策本部にするのか、三原山の噴火対策本部にするのかでもめた。それから、元号にするのか、それとも西暦にするのか。昭和の最後の方でございますので、西暦を使っておいた方がいいんじゃないかといったような議論があった。それから、臨時閣議を招集するのか、稟議にするのかということで、大体これで二時間はかかっていたという話なんですね。

 そこで、これではいかぬということで、国土庁任せにしないで、官邸が直接動くようにされたということでございます。

 ですから、五室をつくられても、その部分の指示命令系統、多分、五室を創設したときのマンデートがまだ明確ではなかったのかもしれない。それが証拠に、国土庁はその後、官邸は余りにも独善的で横暴だというふうにコメントしたというふうに残っているんですね。

 ですから、このように、今回のNSCも、つくることによって、将来起こるかもしれないことについての事態を想定した上で、今何をするかというバックキャスティングの方法と同時に、四大臣会合や、それからまた事態によって九大臣会合、そして事態に対処するための会合、これを機能的に、フレキシブルに動かしていくということが何よりも肝要だということを、この後藤田五室ということが教えてくれていると思います。

 と同時に、ちょっと机上にお配りをさせていただきました後藤田五訓というのがございます。

 これは昭和六十一年でございますけれども、後藤田内閣官房長官が内閣の五室の室長らに与えた訓示でございます。「一 省益を忘れ、国益を想え」「二 悪い本当の事実を報告せよ」「三 勇気を以て意見具申せよ」「四 自分の仕事でないと言う勿れ」「五 決定が下ったら従い、命令は実行せよ」、この五訓を、五室もしくは六室なのかな、スタートさせるときに、この訓示を垂れたということでございます。

 官房長官、NSC創設のときは、菅五訓といいましょうか、ぜひ訓示をされたらいかがでしょうか。そして、このことをしっかりと職員に伝えて、国家安全保障局長を初めとするスタッフにもぜひとも徹底させていただきたいと思います。さもなければ、よく批判されます屋上屋になる危険性はあります。このことをしっかりと菅五訓、これにまた加えていただいてもいいかと思うんですけれども、徹底されることが一番重要なのではないか、このように思う次第でございます。

 これは全て省庁の縦割りの話とか、役人が会議のための会議をやっているという、そのわかりやすい例なんですけれども、例えば、あと、ちょっとおもしろ過ぎるんですが、佐々さんのお話で、ソ連のミグ25が、ベレンコ中尉という、亡命騒ぎが七六年に起こったときの話でございます。

 防衛庁は、領空侵犯とは空を飛んでいるときにのみ適用されるから、今は函館に着陸しているので密入国で、法務省の入国管理局の仕事で、我々の仕事ではないと言った。それから法務省は、冗談じゃない、パイロットはトカレフ銃を持っているので警察庁の仕事だと言った。外務省は、パイロットがアメリカに亡命したいと言ったので、これは外務省の仕事だと言う。飛行機は停泊しているのだから、飛行機は落とし物だから、現時点では落とし物として遺失物法で警察が担当すべきだ。ミグ25は密輸品なのだから大蔵省の関税局だ。航空機に関することだからやはり運輸省だ。軍用機だからやはり防衛庁だ。ミグ25を送り返すのは輸出だから通産省だといって、たらい回しにするという話を佐々さん節でおもしろくおっしゃっているんですが、しかし、初めての内閣安全保障室長を務められた佐々さんの話は傾聴に値すること多々あるのか、このように思います。

 その上で、先ほどボトムアップからトップダウンの方式というお話をされたわけでございます。五室ができたけれども、その後、課題も多かった。そして、日本を取り巻く環境は一層厳しさを増している。さらには、コンベンショナルな安全保障だけでなくて、先ほども申し上げたサイバーとか宇宙空間、海洋もございますね、これらの新しい課題が安全保障として捉えられなければならない時代になっているということでございまして、五室の時代もまさにボトムアップなんですね。役所なんですね。それも縦割りなんです。出向組なんです。

 ここは出向にするのか、片道にするのか、自衛官が何人か入られると思いますが、自衛官は現場で、復帰してまた戻ってくるなどということは可能だと思うんですが、私は、ここは考えどころだと思うんですね。

 出向組は、やはりもとの役所の方を見るわけであります。これまで新しくいろいろな役所をつくったけれども、なかなか出向組のいるところ、出向組でできているところというのは、結局、役所をつくるときは、組織をつくるときはみんな一生懸命なんだけれども、そのうち、何かマンデートとか、それから情報とかがもとのふるさとの方ばかりを向いているところもなきにしもあらずだと思います。

 ですから、出向組で固める最初の六十人、私は先ほど、小さく産んで大きく育てよではなくて、小さく産んで賢く育てるということで、むしろ人数は制限した方がいいのではないかということを申し上げました。それは、すなわち、霞が関という大きな機能体を持っているわけですから、それを酌み上げるのがNSCであって、全ての事項に対しての担当者を呼んでいたら切りがありません、また新しい霞が関をつくる話になってしまうので。

 ですから、規模の問題は私はこのように思っておりますけれども、と同時に、出向組ではなくて片道で、そして、そこに骨を埋めるつもりで頑張ってもらう職員を有していただきたいと思うんですが、長官はいかがお考えでしょうか。

菅国務大臣 まず、後藤田五訓というのは私は今も生きているというふうに思っています。ここはやはりしっかりとその精神で行っていく必要があるというふうに思います。

 それと、片道、出向でありますけれども、私の今までの経験からすれば、両方あっていいのかなと正直思います。出向の人も、例えば防衛省へ、あるいは外務省にまた出向したり、そういう経験の中で生かされることも大事だろうというふうに思います。

 委員、私、かつて、当選二回のときですかね、北朝鮮の万景峰という船がありました、あれの入港を禁止する法律を議員立法でつくったものですけれども、当時、小池委員が言われたように、各役所も全部、自分のところじゃないと言うところばかりだったんですけれども、国益の必要性というものがだんだんわかってくると、みんな協力してくれるんですよね。ですから、そういう意味合いにおいて、やはり日本の官僚をいかに国益のために働いてもらう方向に、これは、政治家、そこの役職についた者がやっていくことも大事だろうというふうに思っています。

 先ほど来の委員の説というのは、私ども、政治主導で物事を決めていくについて、極めて傾聴に値する言葉ばかりであるというふうに思いますので、肝に銘じて、しっかり頑張っていきたいと思います。

小池(百)委員 さて、最後に、この後、審議に入るであろう特定秘密保護の問題にもかかわってくるんですが、知る権利ということ、これをぜひとも担保せよというお話でございます。それも一つもっともだ、このように思います。

 一方で、日本は、秘密であるとか機密に対する感覚をほぼ失っている平和ぼけの国でございます。毎日、新聞に、首相の動静とか、何時何分、誰が入って、何分に出てとか、必ず各紙に出ていますね。私は、あれは知る権利を超えているのではないだろうかと思いますし、また、中には、自分は首相に近いから、そのことを見せつけるためにわざわざ総理官邸に行って書いてもらったりとか、ぜひこのレストランには来てくださいみたいな、そんなふうに使われているようなところもなきにしもあらずでございますけれども。

 各国はどうなっているのかというのをちょっと調べてみて、お手元にお配りをいたしました。

 「諸外国の首相、大統領の動静」ということで、国会図書館にお調べをいただいたんですが、余り出ていないじゃないかと思われるかもしれませんが、これは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの主要な新聞十五紙を調べていただいたものでございまして、結果は、いわゆる首相動静のような記事を日々掲載しているものは確認できなかったんです。

 アメリカでは、ワシントン・ポストがウエブサイトで日々のオバマ大統領の動向を掲載しているというのがあるんですが、いわゆる日本のような詳細なものはございません。そして、かつ、二〇一二年の、昨年の六月二十日を最後に更新をされていないということでございます。

 これはもう当たり前過ぎて、首相の動向、一日というのを日課にしておられる方もおられるかもしれません。海外もこのことはチェックしています。非常に日本に厳しい対応をしているある議員は、毎日これを読んで、何がどうなっているかをチェックしているということでございます。

 私は、知る権利ということもございますでしょうけれども、もう少し、何を知り、何を伝えてはいけないのかということの精査もこの後しっかりしていただきたいと思います。

 これから国家の安全保障、今回は国家という言葉がついているわけでございまして、国を守るためにはありとあらゆる事象についての危機に備えるということでございますので、ぜひともフレキシブルな機能をふんだんに発揮できるような体制をおつくりいただきたい。

 それから、最初の第一次の政権のときに準備をしたNSC法案は、その後、廃案になって、自民党時代もそれが復活することはなかったことを考えれば、そのときの総理大臣がこのNSCをどれぐらい重要に思うかどうか、ここをもっと活用しようと思うかどうかによって変わってくるわけでございます。かなり属人的な部分も出てくるわけでございます。

 ですから、せっかくつくるのであるならば、これは本当に国家として欠かすことのできない、そのような機関になるように、ぜひとも安倍政権においてその範を示していただければ、このように思っております。

 また、もう時間がございませんので申し上げませんけれども、国家安全保障問題担当補佐官の必置ということでございます。スタッフもマンデートもなくこの補佐官を務めるのは、かなりその人の力量次第にかかってくるのではないかと思うわけでございます。この点を一つ指摘させていただきまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 この際、参考人出頭要求に関する件につきましてお諮りをいたします。

 本案審査のため、来る三十一日木曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

額賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る三十日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。

    午前十一時五十八分散会


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