衆議院

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第4号 平成27年5月28日(木曜日)

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平成二十七年五月二十八日(木曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      青山 周平君    安藤  裕君

      井上 貴博君    岩田 和親君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大西 英男君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    大見  正君

      勝沼 栄明君    木原 誠二君

      工藤 彰三君    小島 敏文君

      笹川 博義君    白石  徹君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      長尾  敬君    野中  厚君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    藤井比早之君

      星野 剛士君    前川  恵君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山田 賢司君    若宮 健嗣君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      後藤 祐一君    辻元 清美君

      寺田  学君    長島 昭久君

      山尾志桜里君    青柳陽一郎君

      江田 憲司君    小沢 鋭仁君

      太田 和美君    丸山 穂高君

      伊佐 進一君    岡本 三成君

      北側 一雄君    佐藤 茂樹君

      浜地 雅一君    濱村  進君

      赤嶺 政賢君    志位 和夫君

      宮本  徹君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   外務大臣         岸田 文雄君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   秋葉 剛男君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    佐藤 雄二君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     大西 英男君

  笹川 博義君     青山 周平君

  白石  徹君     小島 敏文君

  武井 俊輔君     長尾  敬君

  橋本 英教君     前川  恵君

  宮川 典子君     井上 貴博君

  宮崎 政久君     野中  厚君

  宮澤 博行君     藤井比早之君

  大串 博志君     山尾志桜里君

  太田 和美君     江田 憲司君

  丸山 穂高君     小沢 鋭仁君

  伊佐 進一君     北側 一雄君

  佐藤 茂樹君     岡本 三成君

  浜地 雅一君     濱村  進君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     笹川 博義君

  井上 貴博君     宮川 典子君

  大西 英男君     小田原 潔君

  小島 敏文君     白石  徹君

  長尾  敬君     武井 俊輔君

  野中  厚君     宮崎 政久君

  藤井比早之君     宮澤 博行君

  前川  恵君     工藤 彰三君

  山尾志桜里君     大串 博志君

  江田 憲司君     太田 和美君

  小沢 鋭仁君     丸山 穂高君

  岡本 三成君     佐藤 茂樹君

  北側 一雄君     伊佐 進一君

  濱村  進君     浜地 雅一君

  宮本  徹君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     安藤  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     大見  正君

同日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     橋本 英教君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 集団的自衛権行使のための法改正など立法措置に反対することに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第一三〇三号)

 集団的自衛権行使を容認した閣議決定の撤回を求め、これに基づく全ての立法や政策に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三〇四号)

 同(池内さおり君紹介)(第一三〇五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一三〇六号)

 同(大平喜信君紹介)(第一三〇七号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三〇八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三〇九号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一三一〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三一一号)

 同(清水忠史君紹介)(第一三一二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三一三号)

 同(篠原孝君紹介)(第一三一四号)

 同(島津幸広君紹介)(第一三一五号)

 同(仲里利信君紹介)(第一三一六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 一言、私の方から申し上げさせていただきます。

 本委員会の審議は、国民も大変注視されているところであります。総理を初め、各大臣におかれましても、国民にわかりやすい簡潔な答弁をされるようお願いを申し上げます。

 この際、中谷国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中谷国務大臣。

中谷国務大臣 昨日の柿沢議員に対する私の発言は大変不適切なものでございました。この場をおかりしましておわびを申し上げます。申しわけございませんでした。

     ――――◇―――――

浜田委員長 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、外務省国際法局長秋葉剛男君、海上保安庁長官佐藤雄二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北側一雄君。

北側委員 皆さん、おはようございます。公明党の北側一雄でございます。

 限られた時間でございますので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 まず、私の方から、今回の平和安全法制、この全体像について簡略なパネルを用意させていただきました。上段の方が、日本の安全にかかわるところ、我が国の防衛にかかわる部分でございます。下段の部分が、国際社会の安全、国際平和協力に関する法制でございます。

 まず、上段の方からいきますと、これは我が国防衛にかかわるところでございますが、左の方は、事態の深刻度が比較的低い、そういう状況。ですから、平時であり、よく言われるグレーゾーンの場合。この場合に、今回、自衛隊法を改正して、武器等防護の規定、米軍等の部隊の武器等防護もできるようにしましょうと。自衛隊と連携をして我が国の防衛に資する活動に現に従事しているような米軍等の部隊についての武器等防護ができるようにしていこう、こういう規定でございます。

 さらに、右の方に行きますと、これは重要影響事態法。従来、周辺事態法と言っておった法律の改正でございます。そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に際し、米軍等への後方支援活動を実施する、こういう法律でございます。

 さらに右に行くと、これはもう有事でございまして、武力攻撃事態対処法また自衛隊法の改正によりまして、こういう武力攻撃事態、また、今回新たに存立危機事態、この点は後でまた詳しくやらせていただきますが、そうした有事への対処についての規定をしているところでございます。

 下段の方に行きますと、国際社会の安全。国際協力の場面では、PKO法の改正。このPKO法は一九九二年に成立した法律でございまして、今、二十三年たっております。これまでも多くの実績を残しているこのPKO法を改正していく。内容は、業務を拡大していく、安全確保業務等の業務ができるようにしていこう、さらには、PKO類似の活動についてもPKO五原則と同じ厳格な条件のもとで協力できるようにしていきましょう、こういう法律でございます。

 さらに、右の方に行きますと、これは国際平和支援法。従来、特措法で対処していたところ、ここを、新法という形で新しい法律をつくりまして、国際社会の平和と安全のために活動を行う外国軍隊への協力支援活動を実施していこう、こういう内容になっているわけでございます。

 この全体像を踏まえた上で質問させていただきたいと思うんですが、まず、この安全保障法制、今回、なぜ今整備をしていこうとしているのか、その目的と必要性について質問させていただきたいと思っているんです。

 昨日も一昨日も、総理からも詳しく御答弁いただいております。安全保障環境が厳しさを増している、そうした具体的な状況については昨日来詳しく答弁があるところでございます。こういう厳しさを増す中で、国民と国をどう守っていくのかということが問われているわけでございます。

 私なりに、この目的、必要性について、認識を少しお話しさせてもらいたいと思うんですが、今回の法整備の目的の大きな一つは、我が国防衛のための日米防衛協力体制の信頼性、実効性というものを高めていく、そして日米防衛協力体制というものを強化する、ここにやはり眼目があるんだろうと思うんですね。

 今全体像を示しましたから、平時から有事に至るまで切れ目のない法制を整備することによって、日ごろから日米間の連携や協力が緊密にできるようになるわけでございます。日ごろからこうした連携協力が緊密にできる、そしてまた、さまざまな想定のもとで、平時から共同訓練ができるようになるわけですね。

 私は、ここが大事だと思うんです。

 そもそも有事のような危機的な状況などつくってはならないわけでございまして、そうではなくて、切れ目のないこうした法制を整備することによって、日ごろから備えを十分にしていく、万全を期していく、そういうことができる。そこに大事なポイントがあるわけでございまして、結果として、抑止力を高めて紛争を未然に防止できる、これが大きな目的、狙いの一つだというふうに認識しています。

 もう一つ、この下段の方の国際の平和、安全に係るところでございますけれども、国際社会の平和とか安全というものがあってこそ、我が国の平和とか繁栄というのも維持できるわけですよね。今は国際間、経済の問題一つとってもグローバル経済になっています。人の行き来も、本当に世界を股にかけて人が往来をしている、こういう時代になっています。これは、ますますこれからもそういうことが続くでしょう。

 そういう中にあって、日本の平和とか繁栄というのも、国際社会の平和とか安全がやはり確保されていることによって維持、持続ができるわけなんですよね。だから、決して、国際協力といっても、何かどこかのほかの国のためにやるというだけではなくて、それは、結果として、我が国の平和とか安定とか、そのために貢献をすることになるわけでございまして、やはりできる限りの貢献はしていかねばならないわけなんですね。

 これまで、先ほど申し上げたとおり、日本は国際協力の場面でも、二十年余り、そうした活動を、日本の自衛隊の皆さん、頑張ってきていただきました。こうした経験とか実績を踏まえまして、国際平和協力のための法制を改めて整備していこうというところに狙いがある、私はこのように、二点、今申し上げましたが、認識をしております。

 総理の御認識を改めてお聞かせ願いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 質問にお答えする前に、冒頭、委員長より一般的な御指摘があったことを踏まえまして、私としては、国民にわかりやすく、丁寧に答弁をしているつもりでございますが、簡潔に答弁することの大切さを踏まえまして、今後とも留意してまいる考えであります。

 そこで、ただいま北側委員から基本的な考え方について御指摘がございました。極めてわかりやすくパネルで示していただいた、このように思います。まさに、この法制は、国民の命と幸せな暮らしを守る、ただ一点、それが目的であります。

 そこで、この上段の部分につきましては、今委員が御指摘になったように、自衛隊とそして米軍が、まさに我が国に対する事実上の事態、我が国の存立が脅かされるような事態において、しっかりと共同で対処をしていくわけでございますが、その上において、自衛隊も持てる力を十分に発揮できるように今後はなっていきます。

 つまり、その中において、いわば我が国が非常に狙われているという危険な状況においての公海で、米軍の艦船がもしミサイル攻撃を受けたとして、それは、我が国にまだ武力攻撃が発生していない段階でも、日本の艦艇はその艦艇を守ることができるようになるということになれば、それを想定した、まさにおっしゃったように、日ごろからの訓練、日ごろからのお互いのオペレーションに対するいわば協力がスタートするわけであります。

 この協力というのは、当然きずなを強くしていく。これはもう実際問題として、米軍の人たちと海自の人たちが信頼は非常に強くなっていく、お互いに助け合うことができるんですから。私は、これは大きな変化になっていく。つまり、日ごろからの訓練等でそうした変化が起こっていく中において、これはもう日米同盟は完全に機能するなという発信につながっていくわけでありまして、まさに、結果として、我々は、武力行使をしなくて済む、海外から侵略されなくて済む、未然に紛争を防ぐことにつながっていくことになるんだろう、このように思います。

 そして、この下段の部分においても、これもまさにそうでありますが、日本は多くの物資を、必要な生活必需品を海外から輸入しています。また同時に、すばらしい製品を海外に輸出している。近年は、この二年間でインフラ輸出は三倍の九兆円にふえていった。それは、まさにそういう地域が平和な地域になった、安定した地域になったから、これからインフラを頑張ろうということになってきているわけであります。

 我々はそうした物資を海外に輸出しながら、それによって得た富は、これは私たちの大切な社会保障の財源にもなっていくわけであります。

 つまり、こうした国際社会を平和で安定にしていく、国際社会の一員としての義務であると同時に、日本国民の生活にも未来にも大きな影響がある中において、我々はこの法整備をしっかりと進めていきたい、こう考えているところでございます。

北側委員 それでは、もう少し総論の話をさせていただきたいと思うんですが、今回の安全保障法整備、私は、やはりこの安全保障においては、原理、原則、そして視点、この三つがあるというふうに思っております。

 パネルを用意させていただきましたが、原理というのは憲法適合性のことを私は指しているんですけれども、憲法九条、また憲法十三条、こうした憲法適合性を当然持てないといけません。

 憲法九条では、武力による威嚇または武力の行使をしてはならない、こう規定がございます。ただ一方で、憲法十三条、国民の生命、自由、幸福追求の権利は国政上最大の尊重を要する、こういう規定があるわけですね。その十三条から自衛の措置というのは認められるんだろう。その自衛の措置の限界を示したのが、昨年の七月一日の閣議決定だ、新しい新三要件。後でまた詳しくやらせていただきますが、この憲法適合性の問題が一つあります。

 この憲法適合性があるからといって、では、全て自衛隊を憲法に適合すれば派遣するんだ、活動するんだということじゃないんですね。次にやるのは法制度なんです。自衛隊という実力組織を出す以上は、出す以上は、そこに法律上のできるだけ明確な根拠がないといけないわけでございまして、この法制度をしっかりつくっていかなければならない。今回の安保法制もここの部分でございます。

 この法制度をつくるに当たっては、今回の与党協議でも私どもから主張をさせていただいて、やはり原則というのがありますねということで、自衛隊の海外派遣三原則ということを主張させていただきました。

 この自衛隊海外派遣の三原則というのは、これは当然の話なんですけれども、一番目に国際法上の正当性の確保、そして国会の関与など民主的統制、三番目に自衛隊の安全確保、この三原則について、個々の法制の中でそれぞれについて具体的に法制化をしていく、これをしっかりやろうじゃないですかという提案をさせていただきました。自民党の皆さんも全くそのとおりだということで、この三原則のもとで今回の法制の検討を進めさせていただいたわけでございます。これについても、後で詳しくお話をさせていただきたいと思います。

 さらに、もう一つ、この法制度が仮にできたとします。できたとしても、では、制度があって要件が満たされれば必ず自衛隊を派遣するのかといえば、これまたそうじゃないんですね。そこで、その時々の政策判断、運用の問題と言ってもいいかもしれません、その時々の政策の判断があるわけでございます。その政策の判断を誰がするかといったら、そのときの内閣であり、我々国会でございます。内閣、国会が、そのときの政策判断がある。制度ができたからといって、要件に当てはまれば必ず自衛隊を派遣するということでは決してない。

 この三つのステージがあるということを私は確認していく必要があると思うんです、議論する中で。憲法に適合しているか、そして制度、そしてさらには、制度があったとしても政策判断、この三つの次元、三つのステージ、段階があると思うんですね。

 昨日来の議論を聞いておりますと、この三段階のどこを議論しているのかというのがやや不明なときがあるんですよ。

 例えば、一体化の問題です、武力行使との一体化の問題。

 武力行使との一体化、後でまた詳しくやりますが、これは憲法上の要請なわけですよ。憲法九条で、武力の行使をしてはならない。だから、当然、一体化と評価されるようなこともあってはならない。これは憲法上の問題なんです。

 そして、この一体化というのは何なのかということを、昨年七月の閣議決定で、現に戦闘行為が行われている現場でない場所での支援活動であるならば一体化しない、こういう整理を、憲法上ですよ、憲法上の解釈としてしたわけです。

 その問題と、制度として自衛隊員の安全をどう確保するかという問題とは別次元の話なんですね。この別次元の話を、何か一緒になったように議論をどうもされているように私には聞こえました。この問題については、ちょっと後で、大事な問題なので、さらにさせていただきたいと思います。

 それで、政策判断の問題、三つ目の政策判断の問題。

 これは制度ができ上がった後の話なんですけれども、この政策判断にも、私はやはり一定の視点というのがあると思うんですね、視点。どういう場合だったら政策判断として自衛隊の派遣をしていくのか。

 そこは、まず第一に、我が国の主体的判断だということですよね。

 よく、批判として、アメリカから要請があれば断れないんじゃないかだとか、そして、アメリカから言われれば地球上どこでも後方支援するだとか、こうした批判が今されております。しかし、ここはあくまで我が国の主体的判断、我が国の国益にとってどうなのかという判断があり、また、そのときの国際情勢がどうなのか、その事態に国際社会はどう対処しようとしているのか、我が国はどういう役割を果たしていくのがいいのか、やはりこういう判断をしないといけないんです。

 また、当然のこととして、国内の世論の支持がなければ自衛隊の派遣なんかできないわけですよね。そういう意味では、やはり国内世論がどうなのか、その動向についても見ないといけない。

 そういうことをさまざま総合的に考慮して、国が主体的に判断をしていくということだと思うんです。

 二番目に、やはり自衛隊にふさわしい役割というのがあると思うんですね。

 というのも、自衛隊の能力、それから人員、装備、これまでの経験、実績、そういうものを踏まえて、やはり自衛隊にふさわしい役割というのがあると思うんですよ。やはり、自衛隊の方々のこれまでの経験から、得意分野というのもありますよね。さらには、予算面だって制約があるわけですよ。何でもかんでもできるというわけじゃありません。自衛隊にふさわしい、そうした役割が何なのかということも、当然、時の内閣、国会は検討しなきゃいけないわけですね。

 さらに、三つ目、平和外交努力です。

 昨日も高村副総裁と総理との間で御議論ありましたけれども、この平和外交努力というのと今回の安保法制整備というのは目的は一緒なんですよ。紛争を未然に防止する、また、紛争があるならばそれを拡大させない、これがやはり、平和外交努力と、そして安保法制整備による抑止力の強化、この二つが相まって紛争未然防止につながってくるということなんだと私は思うんですね。そういう意味では、平和外交努力も大事。

 平和外交を総理も一生懸命展開をしていただいています。この平和外交と、平和外交をやっている中で、それと比較してこの自衛隊の派遣ということがどうなんだということも当然考慮していかないといけない。

 また、非軍事分野での貢献活動というのも、今、日本はしっかりやっているわけですよね。そうした貢献活動についてはどうなのか。こうしたことをやはり考えて政策判断をしていくことになるんだろうなというふうに思うんですね。

 総理、私、ちょっと総論の話を長々お話しさせてもらいましたが、総理の御意見を。

安倍内閣総理大臣 ただいま北側委員から極めて重要な御指摘があったと思います。

 昨年の五月十五日に安保法制懇から考え方についての取りまとめが提出をされました。そして、七月の一日に閣議決定をしたわけでございますが、その際にも、私は何回も御説明をしてきたわけでございますが、まさに委員の御指摘のとおり、安全保障については、憲法との適合性についての判断があります。その上において、法制度が整っていなければできません。まさに憲法の適合性につきましては、昨年の七月の一日にその判断をしたわけでございます。そして、今回、法律をつくって、いわば法制を整えていく。

 しかし、同時にそれは、これは憲法判断をしたときもそうなんですが、これは、そうしなければいけないということではなくて、まさに、憲法の判断はこうなりましたから、憲法との関係ではできますよ、原理的にはできますよというだけであって、しかし法律ができなければできませんねという話も当時からしていました。

 しかし、そこで法律をつくったとしても、これは、やらなければいけないということではもちろんありません、できるということだけでありまして、その上に立って慎重な慎重な政策判断があります。このいわば三段階になっているということははっきりとさせておく必要があるんだろう。

 残念ながら、これが混同された議論が横行しているわけでありまして、法理上は、法理上はこれはでき得るという答弁をすると、いきなりそれをやるんだという、紙面に躍る場合があるわけでありますが、そもそも能力も想定もしていないことは、これは起こり得ないわけであります。

 そこで、第一に、憲法適合性に関しては、自衛隊の活動が、武力の行使の一体化を防ぐ仕組みなどにより、武力による威嚇または武力の行使に当たらないことを確保しています。その例外は、第三要件を満たす場合の自衛の措置に限られる。

 そして、第二に、自衛隊の海外の派遣に当たっては、国際法上の正当性の確保、国会の関与等の民主的統制の確保、自衛隊員の安全確保のための措置、北側三原則と言われているものでありますが、平和安全法制において法律上の要件として明確に定めているところであります。

 第三に、この法制に基づいて、自衛隊が実際に活動を行う場合には、まず、我が国の主体的判断のもと、自衛隊の能力、装備、経験に根差した自衛隊にふさわしい役割を果たすが、その前提として、外交努力を尽くすことを重要な視点として政策判断を下してまいります。

 この三点において、いわば政策判断を下していく上において基本的な判断基準としていきたい、このように思います。

 多くの国民の皆様には、このような平和安全法制の内容をぜひ御理解いただきたい、このように思う次第でございます。

 もちろん、最後に第三番目として、外交努力。これは、外交努力はずっと引き続き続いていくわけであります。外交努力を行いながら、未然に防ぐ。しかし、残念ながらその後紛争が発生したとしても、それを少しでも早く終結すべく外交努力はずっと続いていくということでもあるわけでございます。

北側委員 それでは、各論の話をさせてもらいます。

 きょう、質疑させていただきたいのは二つです。

 一つは、この新三要件の問題ですね。新三要件がかかわっておりますのは、この全体像の中の日本の安全にかかわるところの一番右の、まさしく有事の部分ですね。この新三要件のところについて議論させていただきたい。

 もう一点は、この真ん中の重要影響事態法と国際平和支援法、いわゆる後方支援のところです。ここについて議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、新三要件について。新三要件のパネル、五枚目ですね。憲法九条のもとで許容される自衛の措置ということで、新三要件を昨年の七月一日の閣議決定で決めました。それを今回法制化したわけですね。

 この三つの三要件については、今回の法制の中で、自衛隊法もしくは武力攻撃事態対処法、この二つの法制の中でこの三要件は全て明記をいたしております。

 この新三要件なんですが、このパネルの赤い字になっているところというのは、これは新たに、昨年の七月の閣議決定で新たに加えられたところなんですね。黒字のところはもともとの旧三要件です。赤字のところは新たに加わったところですね。

 まず、第一要件でございます。我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、この後ですね、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、この赤字のところを存立危機事態というふうに法文上定義をしたわけですね。

 そもそも、国の存立が脅かされる、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険、これはどういう意味なんだ、どういう意義があるのか、その判断基準は何なのか、存立危機事態の判断基準は何なのかということについて、これは昨年の七月の閣議決定の直後の予算委員会で議論しているんですね。総理からも法制局長官からも御答弁いただいています。

 この一年近くの間、恐らくこの答弁をずうっとされていらっしゃるんだと思うんですが、このパネルは、総理や法制局長官が御答弁いただいている第一要件の解釈です。

 この明白な危険とは何なのかということについて、「そのままでは、」「国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということ」、まずこのように解釈をされまして、では、その判断するときの要素は何なのかという質問に対しては、「事態の個別具体的な状況に即して、」その後に五つ要素を挙げているんです。一番目に「主に攻撃国の意思、能力、」、二番目に「事態の発生場所、」、三番目に「その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、」、四番目に「我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、」、五番目に「国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することになります。」、このような御答弁をいただいています。

 さらに、「明白な危険というのは、」「単なる主観的な判断や推測等ではなく、客観的かつ合理的に疑いなく認められるというものである」、このような御答弁を、去年の七月十四日以来ずうっと総理も長官も同じ答弁をしていただいています。

 次に、第二要件なんですが、この第二要件については、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき、この赤字のところが新たに加わったんです。これが大変意味が重いと私は思っています。これまでは、これを排除し、他に適当な手段がないときとなっていたのを、我が国の存立を全うし、国民を守るために。

 この赤字の意味は、要するに自国防衛ですよということを改めて言っているわけですね。専ら他国防衛を目的としているものではありませんよ、自国防衛ですよと。そして、それが他に適当な手段がない、ほかに方法がないということを言っているわけですね。

 この第二要件についても、今回、法文に明記をしていただいたんですね。対処基本方針、武力攻撃事態対処法の第九条ですけれども、対処基本方針の中に、この第二要件についても、その要件が当てはまっているという事実をちゃんと記載するというふうに明記をされておるわけでございます。

 この第二要件の意義についても、昨年の七月の予算委員会で答弁をいただいておりまして、それはどういう答弁かというと、「他国に対する武力攻撃の発生を契機とする武力の行使についても、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置に限られ、当該他国に対する武力攻撃の排除それ自体を目的とするものではないということを明らかにしている」。非常に私は大事な答弁をしていただいたと思うんですね。

 当該他国、密接な関係のある他国に対する武力攻撃の、その排除それ自体を目的とするものではないんだ、あくまで目的は、我が国を防衛するためというところに目的があるということを改めて言っていただいている答弁であるわけでございます。

 そして、三番目の要件が、これがちょっと最近議論になっているんですね、第三要件が。必要最小限度の実力を行使するという第三要件ですね。海外派兵の一般的な禁止の論点に絡んで、この第三要件のところが議論をされているわけでございます。

 これはちょっと内閣法制局長官に御答弁いただきたいと思っているんですが、この第三要件というのは単なる均衡性、普通、この第三要件というのは均衡性を言っているというんですね。個別的自衛権でいいますと、我が国に対する武力攻撃があった、その武力攻撃を排除するための実力行使、これが、均衡性、バランスを持たないといけませんよという意味で理解されているんです。

 この三要件の場合には、当然、この第三番目の要件というのは、必要最小限度というのは、第一要件、第二要件を受けた必要最小限度なんです。第一要件、第二要件を受けた必要最小限度。要するに、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度ということなんです。

 ここが一番のポイントでございまして、長官、私はそのように思うんですが、この第三要件の、必要最小限度の実力を行使するというこの要件の意味について、改めて御答弁をお願いしたいと思います。

横畠政府特別補佐人 第三要件につきましては、お示しのパネルのとおり、文言上変更はございません。

 第三要件は、単に、相手から受けている武力攻撃と同程度の自衛行動が許されるという国際法上の自衛権行使の要件である均衡性ではなく、憲法上の武力行使の要件である新三要件の第一要件及び第二要件を満たした場合における、実際の実力行使の手段、態様及び程度の要件でございます。

 したがいまして、第三要件に言います必要最小限度とは、我が国の存立を全うし、国民を守るためとあります第二要件を前提とした、我が国を防衛するための必要最小限度ということであると理解されます。

北側委員 今の御答弁をもう少し、ちょっと私なりに解釈して言いますと、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃があるわけですね。他国に対する武力攻撃がある。その他国に対する武力攻撃を排除する実力行使をするんですが、その実力行使と他国に対する武力攻撃との均衡性という単純な話じゃないんですよという意味なんです。そこに目的があるわけじゃないんですから。目的は、国の存立、また国民の権利、これを守るために今回この自衛の措置を認めた、憲法九条のもとで例外的に許容されるというふうに我々は判断したわけですね。

 ですから、この必要最小限の目的というのは、目的から照らして、我が国の自国防衛のための、国民の権利を守るための、国の存立を守るための必要最小限という意味だというふうに私は理解しております。

 長官、もう一度、今の理解でよろしいかどうか。

横畠政府特別補佐人 御指摘のとおりでございます。

北側委員 新三要件について改めて総理にお聞きしたいんですが、これはきのうもおとついも御答弁いただいているんですが、やはりここは非常に大事なところなので、もう一度、国民の皆様に総理のお言葉を伝えていただきたいんです。

 日本という国は、これまで戦後七十年間、平和国家の道を歩んでまいりました。専守防衛という理念を堅持してまいりました。私は、今回の法制によっても、またこの新三要件によっても、専守防衛という我が国の大事な大事な理念、これについてはこれからも堅持をされているんだということを、ぜひ、もう一度総理の口から答えていただきたい。

 今のような解釈なわけですよ、新三要件といっても。専守防衛が堅持されていることは明らかだと私は思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま、北側委員の御質問、そして法制局長官の質問と答弁、やりとりから、これは極めて明らかだろうと思います。

 いわば、新三要件の中において、国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある、そのおそれとはということで、北側委員からも私と法制局長官の答弁も御紹介をいただいているわけでありまして、そこからも明らかにこれは専守防衛であるということではないかと思います。

 今般の平和安全法制の整備に当たっては、昭和四十七年に示された政府見解の基本的な論理は一切変更していません。この基本的な論理は、昭和三十四年の砂川事件の最高裁判決で示された考え方、すなわち、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」との考え方と軌を一にするものであります。

 また、三要件のもとで許容される武力の行使は、あくまでも自衛の措置としての武力の行使に限られており、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生が前提であり、また、他国を防衛すること自体を目的とするものではない。これは、三要件からも明らかであり、第一要件についての、第一要件とはどういう要件であるかということについての再三の答弁からも明らかであろうと思います。

 このような考え方のもとに行われる今般の法整備においては、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略である専守防衛について、その定義、そしてそれが我が国防衛の基本方針であることにいささかの変更もないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

北側委員 それでは、後方支援活動の問題について質疑をさせていただきます。

 先ほどの、御説明しましたこの全体像ですが、その中の真ん中の部分、重要影響事態法、国際平和支援法、これが後方支援にかかわるところの法制でございます。

 まずお聞きしたいのは、重要影響事態とは何なのかということなんですね。法文上の定義は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、これが重要影響事態なんですが、この重要影響事態の判断基準とは一体何なのか。私は、これは非常に大事だと思っています。

 今回、この法文をつくるに当たりまして、与党内でも相当議論をしたんですけれども、この重要影響事態法のところに書いてありますとおり、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」ということで、例示規定を残したんですね。これは、一九九九年に周辺事態法がつくられたんですが、そのときに議員修正で入ったところなんです。この例示を入れたんですね。それをそのまま今回も、今回の法制の中でも残しました。「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ですね。この例示をするという意味が、法制上どういう意義を持つのかというところなんです。

 いろいろな法制がある中で、こういう例示規定を設けている法制というのはたくさんあるんですね。この例示の意味というのは、単なる例示ではないんですね。やはりこうした例示と同等のもの、また匹敵するもの、こういうものの一つの例示として挙げているというふうに私は理解いたしますが、これは法制上の問題でございますので、長官、ちょっと御答弁いただけますか。

横畠政府特別補佐人 御指摘の現行周辺事態法第一条の例示は、御指摘のとおり議員修正の部分でございますので、一般論としてお答えいたします。

 周辺事態法第一条の「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」は、周辺事態、すなわち同条に規定されている我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態がどのような事態であるのか、どのような事態を法律が想定しているのかの理解を助けるために、代表的な具体的事態を例示したものであると考えられます。

 改正後の重要影響事態におきましても同じ例示をそのまま維持しているところであり、その意味においては変わりがないものと理解されます。

北側委員 法制上は、この例示というのは、単なる例示というだけの意味ではなくて、やはり我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態とは何なのかということを考えるときの一つの大事な要素になっているわけですね。ですから、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態というのが何か際限なく広がってしまうということにはならないんだというふうに私は理解をしております。

 この重要影響事態とはどういう基準で判断をしていくのか、ここのところがとても私は大事だと思うんですが、総理、ここのところを御答弁いただけませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いかなる事態が影響重要事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるわけでありまして、一概に述べることは困難ではありますが、その判断要素についてより具体的に申し上げれば、実際に武力紛争が発生しまたは差し迫っている等の場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に、当事者の意思、能力、そして事態の発生場所、また事態の規模、態様、推移を初め、当該事態に対処する日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍その他の外国の軍隊等が行っている活動の内容等の要素を総合的に考慮して、そして我が国に戦禍が及ぶ可能性、国民に及ぶ被害等の影響の重要性等から客観的、合理的に判断することとなると考えています。

北側委員 今の総理の御答弁も、私はこれから非常に大事な御答弁になるというふうに理解をしております。

 防衛大臣にお聞きいたしますが、前の周辺事態のときに、周辺事態とは何なのかということでやはり議論がありまして、周辺事態法のときでございますが、一九九九年の四月二十六日に政府統一見解というのが出ているんですね。皆様のお手元にも資料は行っておるかと思いますが、周辺事態が生起する原因に着目して、六つの事例というものをこの政府統一見解で出していただいています。

 この六つの事例、これはこれからも維持をされていくということで理解してよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 いかなる事態が重要事態に該当するかについては、事態の個々の具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観、合理的に判断することとなるために、一概に申し上げることは困難でございますが、その判断要素についてより具体的に申し上げれば、実際に武力紛争が発生し、また差し迫っている等の場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に、当事者の意思、能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移を初め、当該事態に対する日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍その他の外国軍隊等が行っている活動の内容の概要を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ可能性、国民に及ぶ被害等の考慮の重要性等から客観的かつ合理的に判断することと考えており、少なくとも、平成十一年四月二十六日の政府統一見解で示された六つの具体例、これは、事態が生起する原因に着目して説明したものとして、重要影響事態においても当てはまると考えております。

北側委員 この下の方の国際平和支援法、これは新法でございます。この国際平和支援法において、どんな事態に際して我が国が後方支援していくのかという、国際平和共同対処事態という定義をしているんですね。

 この国際平和共同対処事態という中身については、この法律の第一条で、「国際社会の平和及び安全を脅かす事態」、これが第一番目、そして「その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、」これが二番目、三番目に「我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要がある」、この三つの要素、要件のもとで事態認定をしていく、こういう構成になっているわけです。

 この法律の中身、きょうは詳しくできませんが、先ほど自衛隊の海外派遣の三原則というのをお話ししましたが、国際法上の正当性、そして国会の関与等の民主的統制、自衛隊の安全確保。この国際法上の正当性という観点から、国連決議の存在、国連決議があることというのを絶対条件にしたわけですね。さらに、国会の関与のところでは、ここは、例外なき国会承認というふうに、非常に厳しい縛りをこの第一番目、第二番目でかけさせていただいているわけですね。

 総理、これは、国連決議がどうしてもなきゃいけない、また、例外なき国会承認だというふうに厳しい要件にした、こちらの法制について、その理由についてお答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、本年三月に与党協議で合意された具体的な方向性を踏まえて、自衛隊の海外における活動の参加に当たっては、国際法上の正当性の確保、国会の関与等の民主的統制、自衛隊員の安全確保が重要であり、これらを関係する法律に規定する方向で検討してきたところであります。

 国際平和支援法においては、国際法上の正当性の確保について、我が国が協力支援活動等の対応措置を実施するのは、その措置が国際法上適法なものであることに加えて、我が国が支援する諸外国の軍隊等の活動を当該外国が行うことを決定等する国連決議や、問題となる事態に関連して国連加盟国の取り組みを求める国連決議がある場合のみとしています。

 また、国会の関与等の民主的統制については、国際平和支援法が国際の平和及び安全に寄与する目的で自衛隊を海外に派遣するための一般法であることに鑑みまして、国民の理解を十分に得つつ、民主的統制を確保する観点から、例外なく国会の事前承認を必要としているわけでございます。

北側委員 それでは、もう時間も余りございませんので。

 この重要影響事態法と国際平和支援法、ともに後方支援活動をやっていこうという中身でございますが、先ほどの冒頭の話に戻るんですけれども、武力行使との一体化、一体化してはならないんですね、後方支援ですから。武力の行使ではありません。武力の行使はしてはならない、それを大前提にして後方支援活動をやる、だから一体化してはならない。これは維持をされているわけですね。

 一体化するかどうかについては、先ほどお話ししたように、憲法論としては、現に戦闘行為を行っている現場でない場所での支援活動については一体化しないという整理を昨年したわけですね。そもそも輸送活動とか補給活動とかこうした後方支援活動というのは安全な場所でなきゃできないわけでございまして、この安全な場所を確保していくのは当然の話だと思うんです。

 それで、お答え願いたいんですが、今回、この安全確保の仕組み、先ほどの三つ目の原則ですけれども、安全確保の仕組みとして、実施区域の指定を防衛大臣がされるわけですね。自衛隊の皆さんが活動する実施区域を指定されます。この実施区域について、法文上は、私も調べてみたんですけれども、防衛大臣は自衛隊の部隊が円滑かつ安全に実施することができるよう実施区域を指定する、法文上はこう書いてあるんです。

 きのうの御答弁、一昨日の御答弁を聞いておりますと、これをさらに具体化されまして、活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を指定するんだ、こういう御答弁をいただいているんですね。

 ここは非常に大事なところなので、総理、改めて答弁をお願いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私どもが行ういわば後方支援活動は、他国の武力の行使と一体化することにより我が国自身が憲法上認められない武力の行使を行ったとの法的評価を受けることがないよう、支援対象となる他国軍隊により現に戦闘行為が行われている現場では支援活動は実施しないこととしております。これは、今委員が御指摘になったとおりであります。

 また、法律上、部隊等が活動を円滑かつ安全に実施することができるように活動の実施区域を指定することとしております。

 それはまさに法律に書いてあるわけでありますが、それはどういうことかといえば、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなく、部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなります。

 そして、万が一、状況が変化していく、その可能性はもちろん全く排除されないわけでありますが、部隊等が活動している場所が現に戦闘行為が行われている現場となる場合等には、活動の休止、中断を行うことになる。それはしっかりと定められているわけでございます。

北側委員 最後にもう一点聞いて終わりたいと思いますが、総理は、今回の閣議決定の後の記者会見の席で、これは記者さんからの御質問に答えられたんだと思うんですが、ISへの例えば空爆作戦、後方支援することはない、こういう趣旨の御発言があったかというふうに思っております。

 この御発言の理由といいますか、ちょっと総理の思いを改めてお聞かせ願いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本は、過激主義と相対峙している穏健派イスラム諸国を支援しております。それは例えば、難民、避難民支援。中身としては、食糧やあるいは医療品、そうしたものをしっかりと供給をしていくなどの非軍事的な人道支援を行っているわけでございますが、そのことによって我々は今高い評価を受けているわけでありますし、我々が最も得意とする分野と言ってもいいと思います。

 我が国は、これは政策判断として、政策判断として、今後も軍事的作戦を行う有志連合に参加する考えはありません。ISILへの空爆等への後方支援を行うことは全く考えていないということを、はっきりとこの場でも申し上げておきたいと思います。

 我が国は、今後とも、評価をされている難民、避難民に対する食糧人道支援など、我が国ならではの人道支援を拡充し、そして非軍事分野において国際社会における我が国の責任を毅然として果たしていく考えでございます。

北側委員 終わります。

浜田委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 おはようございます。民主党の長島昭久です。

 戦後最大の安保法制の大改革、こういうことでございまして、安全保障を専門にやろうと私も志してまいりましたので、感慨深いものもございます。ただ、やはり法案の中身はきちっと審議をしていかなければならない、こういう姿勢で質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど、冒頭総理から少しお話がありましたけれども、きのうの総理の御答弁はやはり少し長かった、かなり長かった。これから野党の質問が始まりますので、恐らく総理はついつい長目の答弁になろうかと思いますけれども、総理がフィリバスターをやっちゃいけませんので、フィリバスターというのは野党の抵抗手段でありまして、きのうも委員長から九回も注意をされたということがございますので、しっかり簡潔に答弁をしていただきたいと思います。

 まず最初に、国家安全保障の要諦とは何か、総理の御所見を承りたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国家安全保障の要諦とは、これは紛争等を未然に防ぐことであります。

 未然に防ぐとは、まずは外交努力によって未然に防ぐ努力をしていく。そうした紛争に日本が巻き込まれない、あるいは海外から武力攻撃が発生しないように、最大限の外交努力を行っていく必要があります。

 そしてまた、同時に、自国のみならず、地域や世界が平和で安定していることも大切でありますから、多くの国々とともにそういう状況をつくっていく努力をしていくわけでありまして、私も、地球儀を俯瞰する外交を展開しながら、地域の平和と安定のために努力を続けているわけであります。

 同時に、万が一への備えも怠ってはならないわけであります。備えを怠らないことによって、結果として紛争が起こらない、あるいは備えている実力を行使しなくても済むという状況をつくっていくわけでありまして、抑止力を高めることも国家安全保障の要諦の一つであろう、このように思うところでございます。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 私も、大体おおむね総理のおっしゃったことを首肯したいと思いますが、一言で言って、安全保障というのは、やり過ぎてもいけない、やらなさ過ぎてもだめなんですね。やり過ぎると、きのう長妻さんの方から問題提起があった、安全保障のジレンマに陥る、やらなさ過ぎても、相手からつけ込まれるすきをつくってしまう、そういうおそれがあるんですね。

 脅威というのは、よく言われますけれども、意図と能力を掛け合わせたものです。きのう、総理は、安全保障のジレンマを避けるために、能力を透明化しておくことが大事だと。これは一つの見識だろうというふうに思います。それに加えて、私は、非常に大事なのは、相手の意図の部分を和らげること、これがやはり外交力だと思います。ですから、安全保障というのは、単に軍事的な防衛力を高めるだけではなくて、軍事力と外交力、そして政治力、こういったものを組み合わせた概念なんだろう、このように思います。

 そういう意味でいうと、きのうずっと聞いていましたが、どうしても野党の議論というのは、やり過ぎじゃないかというところを追及するわけです。そうすると、政府の側は、いやいや、これはそうでも、大したことありません、こういう防御をするわけです。そうすると、いつまでたっても、私は本質的な議論は深まらないと思うんです。

 私たち追及する側も注意しなきゃいけないと思いますけれども、今、この安全保障環境の変化に対応して、我が国として何をやるべきなのか、何をやるべきでないのか、法律をつくって何ができるようになって、何が引き続き抑制的に臨まなければならないことになるのかということ、これをしっかり、はっきり、私は、国民の皆さんに理解をしていただくというのがこの質疑、この委員会の大変大事な使命だ、このように思っています。

 その意味で、総理、各種の世論調査を見ても、必ずしも、この法案に対する国民の理解、支持、深まってもいないし、広まってもいないんですね。なぜだとお考えですか。

安倍内閣総理大臣 まだ、まさにこの委員会がスタートしたばかりであるということでもございますが、同時に、我が国の安全保障議論というのは、政策的な議論よりも、むしろ、憲法の解釈との関係、法律上の正当性についての議論が非常に多くなってくるわけでございまして、その点、これはなかなか議論としてわかりづらいのは確かであろうと思います。

 つまり、法律上の整合性、正当性等々における議論、それとまた、法律論としての議論と政策判断としての議論がそれぞれあるわけでございますが、その中において、私どももわかりやすく議論を進めていきたい。政策的な必要性において我々はこういう法律をつくるんですよ、この法律をつくる上において、しかし、その法律が必要となっている安全保障環境はこういうふうに変わってくる中において、憲法の解釈を一部変えていますよという論理について、わかりやすく説明を繰り返していきたいと思います。

長島(昭)委員 私は、率直に言って、総理、ちょっと手を広げ過ぎたんじゃないかと思うんですよ。

 私、湾岸戦争以来ずっと、外務省の皆さん、防衛省の皆さん、頑張ってこられた経緯を多少存じ上げておりますから、気持ちはわかるんですけれども、湾岸戦争以来の宿題を安倍さんの支持が高いうちに一気にやってしまおう、そういうところがちょっと見受けられる。もう少し、本来喫緊に取り組むべき課題にフォーカスした総理の説明、あるいは法案の出し方をしないと、こんなにごった煮の、ごっちゃごちゃの法案を出されても、我々もなかなか議論しにくいし、国民の皆さんの理解は深まらないと思うんですね。

 ちょっと、一つパネルを出していただきたい。

 総理は繰り返しおっしゃっています、安全保障環境が変化した。大きく四つおっしゃっています。

 一つは、東アジアにおけるパワーバランスが崩れている、崩れかけている、これに対して対応しなきゃいけない。もう一つは、北朝鮮のミサイル、何百発もある、日本に向けられている、核の開発も進んでいる。そして三番目は、最近、南シナ海で、世界的に懸念が広がっている中国による海洋進出。そして四番目に、テロ、国境を越えるテロやサイバーや宇宙空間の脅威。

 こういう四つを総理はおっしゃっているんですけれども、二つに分けることができるんですね。

 最初の三つ、最初の三つは、まさに総理がおっしゃっているように、日本とアメリカが共同の抑止力、拡大抑止力と言ってもいいかもしれません、日本は日本の国だけを守っているだけではもうだめなんですね、シーレーンも安全を確保していかなきゃいけない、周辺の事態にもきちっと適応できるようにしておかなきゃいけない、地域の安定をアメリカと一緒に高めていかなきゃいけない、こういうことを通じて、恐らく、一、二、三番目の変化には対応できると思うんです。

 では、テロや宇宙やサイバーはどうか。

 今回の法案で出されているのは、どこでも地球上で脅威が起こるから、後方支援がやりやすいようにしよう。でも、それは処方箋じゃないですよね。テロに対する抑止力にならないですよね。テロは別のやり方で封じ込めなきゃならない、そういう問題ですね。

 ですから、これを、日本を中心とする、今皆さんがごらんになっている、世界の中でもホットスポットが集中しているエリアなんですよ、このアジア太平洋地域というのは。この地域における日本の貢献、存在感、こういうものをサポートするような法案なら、恐らく多くの野党の皆さんもこれは支持できる、そういう内容になると思うんです。それが、いきなりホルムズ海峡の話とか、あるいはイラク戦争がどうだとかアフガン戦争がどうだとか、こういう話になると、そこから先は国民はなかなかついていけなくなるんです。

 もちろん、一国平和主義でいいとは思いません。それをやらなくて済むと申し上げるつもりはありません。しかし、ここはやはり、我が国の平和と安全に直結するのかしないのか、こういうところからもう少し法案をフォーカスしていく私は必要があろうかと思います。

 そういう意味では、もう一回法案をつくり直した方が私はいいというふうに思うんですが、これは一回出されてしまいましたから、これを我々は審議するしかない。できる限り修正も求めていきたい、このように思いますので、ぜひ政府の皆さんは、その辺のところは広い視野でしっかり取り組んでいただきたい、このように思うんです。

 さてそこで、私たちは、こういう国際情勢、まさにホットスポットが集中する日本の周り、こういう情勢を踏まえて何をすべきか。一つは領域警備ですね。尖閣の問題を初めとして、日本の領域が侵されつつあるわけです。これにどう的確に対応するか。それから、国防ですね。日本の防衛、これも大事。そして、周辺で有事が起こったときにどう適切に対応するか、これも大事。そして、加えて言うならば、地域を安定化させるために日本とアメリカとの間でどういう協力関係を築いていくか、これがガイドラインを改めた、私は大きな目標なんだろうというふうに思っています。

 さあ、そういう中で、きょうはメーンで私がお伺いしたいのは領域警備。今まで一度も、この委員会でもその話題は出てきませんでした。自由民主党が平成二十四年の総選挙の際に法制化を国民の皆さんにお約束をした、その法律です。この法制度を今回の十一本出ているこの法案の中に見つけることはできませんでした。私は、非常に残念に考えています。残念に思っています。

 我々の民主党の案は、これから、後ほど詳しく説明をさせていただきたいと思いますが、端的に言って、現行法制度では領域警備に対する対応は不十分だ、このように考えています。解散のために廃案になりましたけれども、去年の暮れに、私どもは一度衆議院に法案を提出しておりますが、今国会で、できれば、下地さんを初めとして維新の党の皆さんの御理解をいただいて一緒に共同提案をしていきたい、このように思っております。

 昨年の閣議決定、皆さんお手元の二ページ目を見ていただきたいと思いますが、昨年七月の閣議決定、こう書かれています。後半のところ、赤にしました。「治安出動や海上における警備行動を発令するための関連規定の適用関係についてあらかじめ十分に検討し、関係機関において共通の認識を確立しておくとともに、手続を経ている間に、不法行為による被害が拡大することがないよう、状況に応じた早期の下令や手続の迅速化のための方策について具体的に検討することとする。」。新しい法制度をつくろうということは書いてありません。

 これは私、この文言、見覚えがあるなと思ったんです、この文言。法制度によらないで運用の改善で何とかしちゃおうという。

 もう一枚めくってください。

 今から十四年前の十一月の閣議決定です、これは不審船についての閣議決定。一番目、「関係省庁は、日頃より連携を密にし、不審船に係る情報の収集、交換に努める」「不審船事案発生時の迅速な連絡体制及び対応体制を整備する。」二番目、「必要に応じて内閣総理大臣が主宰する関係閣僚会議を開催し、基本的対処方針その他の対処に係る重要事項について協議する。」三番目、「迅速な閣議手続」「電話等により各国務大臣の了解を得て閣議決定を行う。」どこかで聞いたことがある。

 今回も、領域警備については、総理、政府は、電話閣議だけですね、決めたことは。あとは、十四年前からずっと言い続けている、この連絡体制の強化、関係省庁の相互連絡を密にする、これだけですよ。これで本当に足りるんでしょうか。

 もう一枚めくってください。四ページ目。

 これは、武力攻撃事態対処法の中に書かれている。第二十四条、緊急対処事態その他の緊急事態への対処のための措置、ここにも同じようなことが書かれているんです。緊急事態に的確かつ迅速に対処する、そして、次に掲げる措置その他の必要な措置を速やかに講ずる、最後の三番目、警察、海上保安庁と自衛隊の連携の強化。ずっと言ってきているんですよ。だけれども、体制は変わらないんです。

 だから、もう一枚めくってください、総理が肝いりでつくった有識者懇談会、安全保障法制に関する懇談会、足かけ六年議論をずっとして、安全保障法制の見直しに関して現状の問題点を全部洗い出したその報告書。

 六ページ目を見てください、一番最後の段落。るる説明した上で、「上記の例にもみられるように、武力攻撃に至らない侵害への対応について、現代の国際社会では、その必要性が高まってきており、各種の事態に応じた均衡のとれた実力の行使も含む切れ目のない対応を可能とする法制度について、国際法上許容される範囲で、その中で充実させていく必要がある。」法整備とはっきり言っているんです。「また、法整備にとどまらず、それに基づく自衛隊の運用や訓練も整備していかなければならない。」

 総理、なぜ法制度を整備されなかったんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 安保法制懇においても種々議論をしていただきました。一つの考え方として、法制度をつくっていくという御提示をいただきました。

 私も、官房副長官として三年、そしてまた官房長官として一年、そして総理大臣として三年半、官邸で仕事をしております。不審船のときも、不審船というか工作船のときにも、副長官として官邸におりました。

 その際、いわば連絡が悪い、これは、海保とそして海上自衛隊との連絡、さらには警察との連携にやはり問題があったと私は認識をしておりまして、そしてその後の閣議決定につながっていくわけでございます。

 そこで、大切なことは何かということでありますが、私たちは今切れ目のない平和安全法制を進めているわけでございますが、切れ目のないということはどういうことかといえば、いわば警察力で対処していて、それが対処できないとなれば直ちに自衛隊が対処するということが一番大切であります。

 不審船、工作船に対しても、彼らがああしたロケット弾等々の武器を持っているかわからないというときには、これは海保が対応していくわけでありますが、その段階でロケット砲を持っていれば、これは海保の船では対処できないとなれば、直ちに自衛艦が対応する。それが縦割りになっていて連携できないようではならない。速やかな判断、閣議決定が速やかにできれば私は問題ないと考え、種々議論した結果、今回、あらかじめしっかりと海保もそして自衛隊も連携をとっている。あらかじめ連携をとっていて、どのように……(発言する者あり)

 大切なことですからよく聞いてくださいよ。ここは連携をとりながら、確実に総理が判断し、閣議で決断ができるということがとても私は大切なんだろう。

 そこで、もう一つ、皆さんの出されている法律には、あらかじめ、いわば自衛隊が警察権を海保にかわって持って併存するという形においては、ミリタリー対ミリタリーの衝突が直ちに起こってしまうという危険性があるわけでありまして、あくまでも、相手がいわば海上保安庁に対応する組織であれば海上保安庁が出ていく、そしてそれが無理であれば自衛隊がかわって出ていく、この速やかなスイッチが可能になるということが大切だろう、このように思います。

長島(昭)委員 総理、大事なことをおっしゃっているんですよ。だけれども、最後、速やかなスイッチ、これができないんです。総理、認識がちょっと甘いと思います。これからそこを少し詰めていきたいというふうに思います。

 日本は海洋国家です、海洋国家。国土面積は三十八万平方キロ、これは世界で第六十一番目。しかし、ここで見ていただくように、日本が経済的な主権的権利を行使することのできるEEZ、排他的経済水域は四百四十七万平方キロ。これは世界で六番目です、広さとしては。アメリカ、カナダ、オーストラリア、ロシア、ニュージーランドに次いで六番目。しかも、日本海溝とか深いところがありますから、体積でいったら世界で四番目の海域、海を日本は管理しているわけであります。一番最南端の沖ノ鳥島まで一千七百四十キロ、東京からございます。我が国は六千八百五十二の島から成り立っている。

 ですから、明らかに、警備上手薄になってしまう場所は幾らでもあるんです、幾らでもある。これが前提です。そのことを再認識させられたのが、昨年の秋の小笠原諸島における中国の密漁漁船によるアカサンゴの乱獲というか、もう強奪ですよ、これがありました。

 ピーク時、十月三十日、小笠原海域に最大二百十二隻の中国漁船団が押し寄せました。漁船一隻に大体十人乗っているといいますから、二千人以上の規模に達していたんですよ、一時。父島の人口を上回る規模だ。

 私、当時の新聞記事を持ってまいりました。「密漁船 身構える小笠原」、上陸なら乗っ取られる、島を。密漁するぐらいなので、上陸して犯罪に手を染めないか心配だ。これは住民の声。上陸されれば、島もあっという間に乗っ取られる。あるいは、漁民の方、漁師の方、海が乗っ取られるんじゃないかとみんなで思っている。政府は領海を守る断固たる構えで中国側に対処してほしい。もう震撼したわけですよ。

 では、当時の小笠原諸島の警備体制がどんなものだったのか。まず警察から、国家公安委員長、お願いいたします。

山谷国務大臣 警察では、昨年、小笠原諸島周辺に相当数の中国漁船が確認されたことから、十月三十一日から本年二月五日までの間、小笠原警察署に所要の部隊を特別派遣したほか、二月二日付で小笠原警察署の定員を増員するなどしております。

 また、警視庁では、同様の事案が再び発生した場合に速やかに対応できるように必要な要員を指定して体制を整えているほか、緊急時には、海上保安庁の協力を得て、航空機で応援要員を派遣することとしております。

 また、六月二日には、第三管区海上保安部等の関係機関と連携して、小笠原諸島周辺海域における外国漁船を想定した合同訓練を実施することとしているところでございます。

長島(昭)委員 今、国家公安委員長、速やかにとおっしゃいました。もちろん速やかにやっていただかなきゃならぬのですけれども、これは、最初押し寄せてきたとき、父島、母島におられる住民は二千五百人、警察官は十七名だったわけですよ。対応できないですよ。少し増員して二十八名までされたんですか。しかも、増員部隊、空港がないんですよ、空港が。だから、東京から二十六時間もかけてようやく現地に到着するんですよ。しかも、しけになれば増派は不可能なんですよ。

 こういう状況の中で、メーンは海上保安庁。きょうは海上保安庁佐藤長官、お見えだと思います。現役制服組で初めての長官ということで、本当に頑張っていただきたいと思いますが、海上保安庁の当時の体制はどうだったんでしょうか。それから対応、御説明いただけますか。

 国家公安委員長はもう結構です、帰って結構です。

浜田委員長 どうぞ。

佐藤政府参考人 お答えします。

 昨年の九月中旬以降、小笠原諸島周辺海域におきまして、中国サンゴ漁船と見られる外国漁船を確認いたしました。この取り締まりに当たりまして、小笠原周辺海域が本州から約千キロメートルの遠方にあり、かつ領海の面積は約八千平方キロメートルと広大であるため、対応できる巡視船、航空機が限定されること、現地で燃料補給ができないことなどが課題でございました。

 こうした課題を踏まえ、全国規模での運用調整を行い、広大な現場海域に大型巡視船や航空機を集中的に投入した特別な態勢を整え、水産庁や東京都とも連携して中国サンゴ漁船の取り締まりを行ってきたところでございます。

 こうした取り締まりの結果、小笠原諸島周辺海域の領海内で、中国サンゴ漁船と見られる外国漁船は、昨年十一月下旬以降ほぼ確認されなくなりました。その後、一月二十二日を最後に確認しておりませんが、引き続き、警戒を緩めることなく、水産庁や東京都などの関係機関と連携して対応してまいります。

長島(昭)委員 海上保安庁は、洋上補給能力というのはないんですよね。父島に二見港というのがありますけれども、給油施設はないんですね。非常にオペレーションを進めていく上で制約があるんです。これが離島の現実です。

 防衛省・自衛隊は、何かサポートを当時考えておられなかったんでしょうか。

中谷国務大臣 第一義的には警察また海上保安庁が対応しておりまして、今回の場合は、その方からの要請というものはございませんでした。

長島(昭)委員 輸送とか、あるいはUS2という飛行艇も防衛省は持っているわけですよね。ですから、協力しようと思ったらできるんですよ。能力はあるんです、それがつながらないところが問題なんです。

 官房長官、きょうお見えいただいておりますので、今回のこの小笠原の事案で、いろいろな、もちろん警備上の課題も見えてきたんだろうと思います。官邸では、関係省庁を集めて、この小笠原の問題について検証したり、そして今後の対応をこうしていこうとお決めになったりされたんでしょうか。

菅国務大臣 この中国サンゴ漁船が確認された後に、官邸に関係省庁連絡会議を設置しました。その結果として、現場海域はとにかく遠方である、広い、さらに、確認された中国のサンゴ漁船が多数である、さらに、違法操業等に係る罰金の上限額が極めて低かった、そういうことでありましたので、関係省庁連携のもとに対応を検討しました。

 そして、緊急的な措置として、水産庁、海上保安庁、警察庁等が連携をして、現場海域に巡視船、航空機等を集中的に投入し、特別な態勢をとって厳正な取り締まりを実施しました。

 それと同時に、先ほど委員からも指摘がありましたけれども、外交ルートを通じて累次にわたって中国側へ強く申し入れを実施しました。

 さらに、与野党の皆さん、連携をいただいて、議員立法を早急に成立させていただいて、罰金の上限を最大三千万円まで引き上げることができました。

 その結果として今おさまっているところでありますけれども、こうした一連の検証を踏まえて、ことしの六月二日に警視庁、海上保安庁、水産庁の関係機関が参加して合同訓練を行うことにしております。

長島(昭)委員 二点申し上げたいと思います。

 検証されたということなので、私はそれはそれで多としたいと思いますが、今おっしゃっていただいたものは全部事後的な措置なんですよ。事前にこれを抑止することは不可能なんでしょうか。

 例えば、中国からえっちらおっちら漁船が来るわけでしょう。南西諸島の海域を通過してくるわけですよ。早期警戒情報があれば、それを途中で阻止することも可能だと私は思うんですね。そういう手だてをやはり講じる必要が出てきている。現場に来て、輸送も補給もままならないようなところで海上保安庁を中心にオペレーションをしたって、対応はたかが知れていますよ。それよりも、それを未然に防ぐこと。

 しかも、今回は単なる密漁、密漁だって重大犯罪ですけれども、単なる密漁だったからよかったですけれども、今南シナ海で出没しているような武装漁民みたいなケースだったら大変なことになっていたんですよ。まさに領域警備、国防の問題だと、私は、ぜひ政府には認識をして、今後対応をしていただきたい。

 もう官房長官は結構です。

 さて、総理、今見てきたように、領域警備というのは、一義的に、先ほど大臣もおっしゃったように一義的には警察機関。だから、小笠原の事例でも、おい、自衛隊は何をやっているんだという声もありましたが、それは、我が国の法制度のもとでは、まず警察機関が対応する。その対応が不可能か、もしくは著しく困難という場合に、自衛隊の、海上であれば海上警備行動、あるいは治安出動、陸上であれば治安出動、こういう発令を受けて、自衛隊が警察機関と協力をして対処する、こういう枠組みです。

 問題は、さっきまさに総理がおっしゃった、スムーズな移行ができるかどうかなんです。総理がさっき言われたように、電話による閣議決定のように、発令までの時間的なすき間。

 これは、私どもで考えた法案が下です。そして、上が現行の状況です。

 見ていただいてわかるように、一、下令までの時間のすき間がある。つまり、警察、海上保安庁で対処しているんだけれども、これがもう著しく困難になったというときには自衛隊が出てくるようになっているわけです。しかし、そこには、一々閣議決定したり何だり手続上のプロセスがありますから、時間的なすき間、これは恐らく今回の閣議決定によって縮まるんだろうと思います、完璧に縮まるとは思いません。

 しかし、問題は、権限と、武器の使用を含んだ対処行動の移行のすき間があるんですね。これは二と三です。これをどうやって埋めていくかというのがこの問題の本質なんです。

 例えば自衛隊の治安出動、防衛大臣、事態がエスカレートして一般の警察力ではもう持ちこたえられない、それを超える事態が発生した、自衛隊部隊が実際に動き出すまでにどんな手続が必要でしょうか。どのようなプロセスが必要でしょうか、治安出動の際の手続。

中谷国務大臣 自衛隊といたしましては、治安出動等の命令を受けて、警察機関と緊密に連携して対処するということでございます。

 ただし、治安出動等の発令を受けていないときであっても、平素から、自衛隊が行うことのできる活動の範囲内で関係省庁との連携等を行うことは可能でありますし、例えば、警察の部隊の移送支援や、海上保安庁と連携した我が国周辺海域における警戒監視を行うこともできます。

 防衛省といたしましても、関係省庁との連携を図りながら、我が国の防衛警備体制に間隙を生じさせないような体制をとって臨んでまいっております。

長島(昭)委員 いやいや、私が聞いたのは、治安出動が発令されるまでにどんな手続が必要ですかということを聞いたんですが、もう随分先の方までお答えになったんですが。

 まず事態認定が必要なんですよ、発生したという。そしてその後閣議決定が行われて、そしてようやく防衛大臣が治安出動待機命令を発令するんですよ。この時間的なすき間をどうするかというのが一つの問題。

 しかし、もっと問題なのは、今るる、大臣、事前にできますよみたいな説明をされましたけれども、治安出動あるいは海上警備行動が発令される前に自衛隊が準備的に活動、行動することは著しく制限されているんです、今の法制度は。ここが問題なんです。ここが、対処行動の移行がスムーズにいくかどうかの分かれ目なんです。

 では、もう一回防衛大臣に伺います。

 特に陸上の場合が問題なんです。陸上自衛隊の場合、治安出動が発令される前の部隊行動には制約があると私は申し上げましたが、事前準備としてどんなことが行われますか、具体的にお答えください。さっきのじゃだめですよ、さっきの答弁じゃ。

中谷国務大臣 現在の自衛隊法によりますと、自衛隊法第七十九条の二に規定する治安出動下令前に行う情報収集、これの発令を受けて、武器を携行して情報収集を行うことができます。

 また、自衛隊の施設または在日米軍の施設の区域に対しては、大規模なテロが行われるおそれがあり、かつ、その被害を防止するための特別な必要があると認める場合には、自衛隊は、自衛隊法八十一条二に規定する警護出動の発令を受けて、自衛隊の施設また在日米軍施設に警護ができる、こういう規定がございます。

長島(昭)委員 今、治安出動下令前の情報収集の話をされました。武器を携行してとおっしゃいました。しかし、これは部隊行動できるんですか。基本的には情報収集でしょう。

 例えば、ゲリラやコマンドみたいなのが入ってきて原発の施設を襲っている、機動隊では持ちこたえられない。その前の段階で下令前の情報収集をしているかもしれませんけれども、事態が急変したときに、自衛隊はその後直ちにそれに対応できますか。できますか、相手の火力が大きいときに。武器を携行していると言っていましたけれども、それで、部隊行動になっていない、そういう状況の中で、いきなり機動隊から頼むと言われて、スムーズにできますか。

中谷国務大臣 現在、官邸のもとに事態対処の部署等がありまして、情報を共有することによって、こういった事態に、防衛省に速やかに指示が行われるような体制ができていると思います。(発言する者あり)

長島(昭)委員 そうなんですよ。それじゃ本当に、防衛大臣、間に合わない。

 問題なことは、治安出動とかあるいは防衛出動が下令される前は、武装して、装備を持って自衛隊は駐屯地から出られないんですよ。これが今の、現行法の規定なんですよ。

 ですから、もうマックスで対応している機動隊と情報収集で来ている自衛隊との間には、もう天と地ほどの差の、対処能力の上で天と地ほどの差があるわけですよ。ですから、そのまま渡されても対応できないんですよ。これが実態。

 警護出動の話をされました。警護出動は、確かに事前展開できるんですよ。しかし、対象地域は限られていますよね。自衛隊施設や在日米軍の施設だけですよね。原発施設とか他の重要施設は、これは対象になっていないですよね。

 これを法のすき間というんじゃないんでしょうか。防衛大臣、お答えください。

中谷国務大臣 今回、この点も検討はいたしました。

 御指摘のケース等に対しては、まず、平素から自衛隊や警察などの関係機関がおのおのの対応能力を向上させる、また、情報の共有を含む連携を強化して、早期に事態を把握するように努めることといたしております。

 加えて、五月十四日に、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するために、治安出動等の命令に係る手続の迅速化のための閣議決定、これを行いました。これによって、自衛隊は、武力攻撃に至らない侵害に対して、状況の推移に応じて、治安出動命令等の下令を受けて、警察機関と迅速に連携して対応することができるということになっております。

長島(昭)委員 これは皆さんももうお気づきになっていると思いますし、テレビをごらんになっている皆さんもおわかりだと思いますが、閣議決定のタイミングを早めても、今私がるる申し上げた自衛隊法上の制約は取っ払われていませんので、適時適切に自衛隊は対応できないんですよ。これが致命的な欠陥なんです、現行法制度の。総理、これは本当に深刻に認識していただきたい。

 そこで、私たちは、対案を今国会に提出したいと思って、これは下を見てください。

 これは、現行法制度の制約を乗り越えるために私たちは一つアイデアをつくりまして、こういう離島とか平素の警備体制が手薄になりそうな、あるいは日本にとって非常に極めて重要な、そういう地域については、あらかじめ、これは閣議決定と国会の承認を得て、領域警備区域というものを定めるんです。この領域警備区域の中では、閣議決定を省略して、場合によっては、必要であれば治安出動、海上警備行動を発令することができるようにしたんです。

 しかも、警察が一義的に対応しています。この一義的に対応している警察機関が事態対処をしている間にも、その近傍まで行って、手は出しません、手は出しませんが、近傍まで行って情報収集活動をやる、あるいは、不法行為があればそれに対して対処する、そういう領域警備行動という、これはまさに事前展開です。

 先ほど、自衛隊法で大臣が制約があるとお認めになったこの部分を補うような手だてを講じて、そして、いざ海上保安庁やあるいは警察機関から、もうこれで持ちこたえられない、自衛隊出てきてほしいといったときには適時適切に現場に出ていけるような、そういう法的な枠組み、しかも、当然のことながら、NSCを中心として常時連絡会議を行って、関係省庁の連絡体制を整えていく、これを法律にしっかり書かせていただいた、こういうことであります。

 総理、これは、総理のお出しになった十一本の法案もいいですけれども、この領域警備法案、与野党で少し真剣に考えていただく、そういうおつもりはありませんか。

安倍内閣総理大臣 さきの国会で法案を出されて廃案になったというふうに承知をしておりますので、ただ、これは実際に提出をされていないわけでございますので、コメントは基本的には差し控えさせていただきたいと思います。

 先ほど来御説明をしているとおり、我々も相当の議論をしてまいりました、果たして法令が必要であるかどうか。法令が必要であれば、これは、まさに切れ目のない対応を可能とする今回の法制の中に入れているわけでありますが、我々も経験を重ねてきました、私自身もそうでありますが、要は、切れ目のない判断ができて、警察力で対応できないときに、警察や海上保安庁では対応できないときに直ちに海自等が対応できるように、なるべくスムーズにしていくということで、今度はかなりの迅速化ができるわけであります。

 確かに、先ほどおっしゃったように、治安出動については、安保会議そして閣議決定がございますが、これはそれぞれ電話で行うわけでございます。もちろんその際には、本当に警察力が足りないかどうか、これがかなりのポイントになるわけであります。ここは、まさに新しくつくったNSCもございます、そこで、本当に警察力で足りないのかどうかという判断抜きに、いきなり一足飛びにはもちろんいけないのは当然のことであって、これは長島委員もそうだろうと思います。

 ただ、今お伺いをしていて、区域を決めて、この区域は警察力が足りないんですよという区域を法律で決めるということは、これは、国際社会に対してここはそういう地域ですよと言うことになるという問題点もはらんでいるわけでございます。

 それと同時に、今私どもは、そういう中において、発令手続の迅速化と、それぞれの場合において、内閣官房を含む関係省庁が事案発生前においても連絡を密にして、訓練等を通じた対処能力の向上等を図ることについても規定しているわけでありますし、また、現在、海保、自衛隊の間で不審船対処に係る共同訓練も実施をしておりますし、警察と自衛隊の間では、治安出動命令が発令される事態を想定した共同訓練の実施を重ねてきている……(発言する者あり)

 ここがポイントなんですよ。今まではそういうことが余りなされていませんでしたから、スムーズな対応ができなかった。まさに、なぜスムーズな対応ができるかということの具体的なことを今私はお話をしているわけでありまして、このことを話さなければ、このことを話さなければ、なぜ我々は法制をしなかったということが理解されないと思うから今お話をさせていただいているわけであります。

 プラス、公船が接続水域あるいは領海に侵入するような事案、これは海警行動でございますが、そういう事案が発生するようなときには、適時適切に海自が、これははっきりと申し上げることは控えさせていただきたいと思いますが、適時適切に配備されるような対応をとっているということでございます。

長島(昭)委員 総理、経験とか、少しは迅速化したとか、かなり迅速化したとか、そういう形容詞の問題ではないんです。問題なのは、権限の問題なんです、権限の問題。

 今、海のお話をされました。海と空というのは、部隊が動くときには装備も全部ついているから、これは意外とスムーズなんですよ。問題は陸なんです、陸。大臣が出身になっておられる陸なんですよ。陸の警察と陸上自衛隊、この権限のスムーズな移行が図られなかったらこの問題は解決しないんです。法律でやらなきゃいけないと私は思います。総理に御理解いただけなかったのは大変残念です。

 これは、役所の権限争いなんです、実を言うと。

 高村副総裁はおもしろいことを言っているんですよ。これは去年の七月八日、閣議決定の後の読売新聞。「七月三日、自民党大島派の勉強会で、法整備が見送られたことが話題となった。」これは領域警備法の。「法整備が見送られたことが話題となった。 与党協議の座長を務めた高村正彦自民党副総裁は、「これは、軍と警察の百年戦争だ。今回の整理で五十年ぐらいに縮まったが、これ以上突っ込んだら大変なことになる」と語り、両者の調整が困難であることを率直に認めた。」(発言する者あり)うまいことを言うんですよ。

 これは、総理、副総裁だからこれでいいと思いますが、総理大臣はこれじゃ済まされないと私は思います。ぜひ、総理大臣のリーダーシップを発揮していただいて、法案に対する態度も、ぜひ積極的な、肯定的な姿勢を示していただきたいと思います。

 時間がもうないんですが、先ほど総理がお触れになられたので、政府公船への対処、これは実は悩ましい問題なんです。最後に残る課題なんです、これが。領海内における政府公船への対処、これは尖閣諸島ではいつ起こってもおかしくない、そういう事態です。

 現在、尖閣諸島の情勢、これをちょっと長官にお伺いしようかと思ったんですが、もう時間がないので。

 今、南シナ海の話題でもうヘッドラインは埋め尽くされていますが、尖閣周辺も、相変わらず、接続水域への侵入あるいは領海侵犯、年間で二百回のペースでずっと続いています。まさに危機と背中合わせ。常態化しているんです。尖閣に対する中国の意思は明白だと私は思っています。

 そこで、海上保安庁長官に伺います。

 外国の公船が、公船ですよ、公船。外国の公船が我が国の離島に向かって突進してきた。海上保安庁による警告を振り切って領海に侵入し、上陸を試みた。海上保安庁としては、どうやって上陸を阻止しますか。

佐藤政府参考人 委員御指摘のような事例におきまして、領海に侵入した外国公船に対してどのような措置が行えるかは、個別具体のケースに即して総合的に判断すべきであり、一概に申し上げることは困難でございます。

 ただし、一般論で申し上げれば、国際法上、公船は他国の管轄権から免除されているものの、外国公船が体当たりなどを行い、我が国船舶に危害を及ぼすような場合には、その行為を排除するために必要最小限の行使をしてこれに対処することは認められていると承知しております。

長島(昭)委員 今、免除権の話をされました。外国公船というのは、国際法上、執行権を免除されている、こういうことであります。

 これは外務大臣に伺いたいんですけれども、国連海洋法条約二十五条、「沿岸国の保護権」これが規定されています。「沿岸国は、無害でない通航を防止するため、」こちらが警告しても領海にどんどん入ってくる、これは無害でない通航ですね。これを防止するため、皆さんのお手元、最後のページ、十ページに資料がありますけれども、「自国の領海内において必要な措置をとることができる。」

 つまり、領域保全という重大な法益を守るために必要な措置がとれる、こう言うんですが、外務大臣、これはどういう措置まで許されているんでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の「必要な措置」の部分だけ端的にお答えいたしますが、必要な措置をとる場合、そのような措置は、当該外国公船の有する免除を侵害しない範囲で、かつ、当該外国公船による侵害行為との比例性が確保されたものでなければならない、このように解されております。

 どのような行為が許されるのかということについては、今の原則に基づいて、個別具体的な状況に応じて判断されるものだと考えます。

長島(昭)委員 長官にお伺いします、海保庁長官にお伺いしたいんですが、もう少し具体的なイメージが湧くような御答弁をいただけないですか。

 例えば強制接舷とか放水とか。進路規制とかそういうのができるのは私もわかっています。それを超えてさらにやってきたときに、強制接舷あるいは放水、もっと言えば立入検査、逮捕、警告射撃、ここまでいくのはどうでしょう。

佐藤政府参考人 先ほど御答弁しましたが、やはり中国の公船の態様に応じてその比例性というものを確保していく必要がございます。

 したがって、例えば相手が放水をしたりした場合には当然こちらも放水しますし、相手が進路を妨害するような行為に出た場合には、それと同じような行為を我々は行うことになるのではないかと思っておりますが、ただ、いろいろな、個別具体的なケースというのはさまざまでございますので、なかなか一概に申し上げることは困難でございます。

長島(昭)委員 今、盛んに国連海洋法条約の免除権、三十二条、ここに外務大臣も海保庁長官も配意されていると思うんですが、この三十二条の立法趣旨は何でしょうか。

 政府公船に対する執行管轄権の免除というのは、不法行為を働くような船にも適用されるんでしょうか。ここをお答えいただけますか。

岸田国務大臣 まず、基本的に、国際法上、領海には沿岸国の主権が及びます。そして、その中で、公船については、国際法上、一般に、他国の領海においても旗国以外の国の管轄権から免除を有しているという原則があり、その上で御指摘の国連海洋法条約があり、そして二十五条一によって、「沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる。」このように規定されています。そして、この規定が外国公船にも適用される、こういった全体の仕掛けになっています。

 そういった趣旨で、国連海洋法条約が規定されていると理解しております。

長島(昭)委員 総理、これを最後に聞いてください。こういう答弁が以前あるんですよ。

 平成十四年の四月四日、安全保障委員会議事録。外国公船を主張しながらもあえて不法行為をしてくる、現実に我が国の国民の生命財産に、あるいは秩序に危害を及ぼすような、そういう行動をとっている場合に、これは、国際条約に基づく政府公船としての免除を享有するかどうか、これはまた別の問題だ。こういう答弁もあるんですよ、政府で。

 ですから、確かに国連海洋法条約の免除権は大事、しかし、それと同時に、我が国、沿岸国の保護権というのが大事なんですよ。領域というのはきちっと守らなきゃいけないんだ、守り抜かないと。そういう政治的なマンデートを与えられるのは、私は、内閣総理大臣、安倍さんだけだと思います。

 ぜひ、この問題も含めて、私は、法体系をもう一度考え直して再提出していただくことを最後にお願い申し上げて、質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 我々民主党は、専守防衛に徹し、近くは現実的に、遠くは抑制的に、そして人道支援は積極的に、これを安全保障に対する基本方針としてこの審議に臨んでまいりたいと思います。

 ただいまの長島議員は、主に近くは現実的にということで、テレビをごらんの皆様も、我々民主党の方がむしろ現実的に近くを守るということについて非常に真剣に考えているんだということをおわかりいただけたんじゃないかなというふうに思います。

 私は、主に遠くは抑制的にということについて一つ一つ議論してまいりたいと思いますが、総理、一つお願いしたいと思います。

 きょう冒頭、きのう余りに総理の答弁が長いということで、謝罪というのかどうかわかりませんが、お言葉がありました。その割には、長島議員の答弁に対しても、三分を超える答弁もありました。三分近い答弁が結構あります。

 きょうは、主に安全保障担当大臣の中谷大臣を中心に聞いていきたいと思いますが、総理が答弁するときは、ぜひ質問に対して短目に答えていただきたいということと、ほかの大臣に対して聞いたときは、総理、遮って出てくるというようなことのないようにお願いしたいと思います。きのう、散発されました。

 まず、一つ目のホルムズ海峡について。

 まず、ホルムズ海峡の機雷掃海の話がよく出てまいりますけれども、テレビをごらんの皆様にちょっと簡単におさらいをしていきたいと思いますが、こちらのホルムズ海峡、拡大してありますが、イランとオマーンの間が一番短い距離で三十三キロ程度しかございません。そこを、約八割の原油が、日本の原油タンカーが通ってまいります。そこから、マラッカ海峡、ロンボク海峡ですとか、こういったところを通って日本に来るわけですね。

 ここを機雷封鎖されると日本の原油が滞ってしまうのではないかという懸念でございます。そして、石油が来なくなると、日本で例えば灯油がない、北海道で寒くて凍死者が出るんじゃないか、それが存立事態に当たるというような解釈をされているという案件でございます。

 まず、中谷安全保障担当大臣にこれはお聞きしたいと思いますけれども、どの程度の状況になればこの存立事態になるのでしょうか。

 先ほど北側先生の御質疑の中で、武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況までなった場合には、集団的自衛権が行使できる状況ということでございますが、石油が来なくなって、実際に寒いところで凍死者が続出するというところまでいかないとなかなか適用できないんだというようなことを高村自民党副総裁も「日曜討論」でおっしゃっておられました。

 これについての、わかりやすい、先ほどの話でいいますと、単なる主観的な判断や推測等でなく、客観的かつ合理的な基準で答えるということでございますので、ぜひわかりやすくお答えいただきたいと思います。

中谷国務大臣 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生をしたということが、まず前提になります。

 例えば、石油などのエネルギー源の供給が滞る、これによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足、電力の不足によるライフラインの途絶が起こるなど、国民生活に死活的な影響、すなわち、国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価をいたしまして、存立事態に該当するかを判断するものでございます。

後藤(祐)委員 死者が続出するぐらいまでいかないとだめということですよね。

 もう少し、先ほどの、客観的かつ合理的にお答えいただけますでしょうか。どのぐらい死者が出れば、つまり、日本が武力攻撃を受けたのと同じぐらいの被害ということなんでしょうから、どのぐらいの被害が出ることが想定された場合に発動されるのでしょうか。

中谷国務大臣 今お話をいたしましたが、国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響ということで、必ずしも死者が出るということを必要とするものではございません。

後藤(祐)委員 死者が出なくてもいいわけですね。それは一つ重要な御指摘だというふうに承ります。

 ここに今の話を簡単にまとめてみました。ホルムズでの機雷敷設があって、石油が途絶して、暖房ができなくなって凍死者続出という言葉が高村先生からあったので、これをあえてつくったんです。まあ、凍死者の続出までいかなくても存立事態だということだそうでございますが。

 いずれにせよ、これは、石油が来なくなったら凍死者が出るかもしれない、あるいは死者が出ないでもいいということでございますけれども、つまり、石油を求めて戦争をしていいということをこの法案では定義しているものだと考えますが、これを御確認いただきたいと思います。

 この法案は、石油を求めて戦争を可能にする法案でしょうか。だとすれば、これは、太平洋戦争のときに、地球の三分の一裏側まで行って、石油を求めて戦争をした、あれと、全く一緒とは言うつもりはありませんが、極めて近い。ここにやはり我々は懸念を持っているし、国民も懸念を持っているんです。中谷大臣に伺いたいと思います。

中谷国務大臣 どういう状況かというと、そのままでは国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な、非常に深刻な、重大な被害が及ぶということが明らかな状況です。

 いろいろと個々の事態に応じて、具体的な状況というものは変わると思うんですね。それぞれの事態の状況に応じて、まず、攻撃国の意思、能力、そして事態の発生した場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮いたしまして、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから、客観的かつ合理的に判断をすることになるわけでございます。

後藤(祐)委員 質問にお答えください。石油を求めて戦争を可能にする法案でしょうか。

中谷国務大臣 国民の命、そして平和な暮らしを守るための法案でございます。

後藤(祐)委員 否定をしないということは、少なくとも新三要件を満たした場合には、石油を求めて戦争を可能にする法案だというふうに理解しますし、ホルムズ海峡の事案というのは、まさに、我々が言うまでもなく、そう認めているというふうに理解します。

 これは何で問題かというと、通常、自分の国に武力行使がある、あるいは集団的自衛権でも、密接な他国に武力行使があって、それを助けるために集団的自衛権を行使して武力を行使するというのは、これまでも、きのうの話ですと、十四事例あったそうでございますが、石油がないからだとか経済的理由だとか、そういったことで集団的自衛権を行使するというのは、国際的に本当に恥ずかしいことじゃないのかなと。

 あるいは、PKOで頑張っておられる日本の方、自衛隊の方を含めていっぱいいらっしゃいます。こういった方々は、日本がこれまで戦争しない国だった、特に他国で戦争することはなかった、遠くで戦争することはなかったという日本の長い間築き上げてきたブランドというか日本の立ち位置、これゆえに仕事を、ある意味やりやすかった面、いろいろあると思うんです。そういったものを場合によってはなくしてしまう。

 そういったことも含めて、このホルムズにおける機雷掃海を本当に集団的自衛権の行使で認めるのかどうか、ぜひ考え直していただきたいというふうに思います。

 きょうは太田国土交通大臣にもお越しいただいております。

 公明党の中では、このホルムズにおける機雷掃海は、必ずしももろ手を挙げて賛成という状態でなかったというふうに伺っております。公明党の御見解を伺いたいと思います。ホルムズ海峡における機雷掃海、新三要件を満たすとしてもこれは行くべきではないというふうにお考えでしょうか。

太田国務大臣 大変申しわけないんですが、私は、公明党を代表するという現在立場ではありませんし、法案の主務大臣でもありませんので、お答えするという立場にはございません。

 あえて申し上げますと、自公の与党協議を経て合意が形成されて、今回の法律案が提出されている、このように承知しています。

後藤(祐)委員 このホルムズ海峡における機雷掃海が可能になる形で、例えば今の原案ではそうですが、このまま仮に法案が成立した場合、逆に言うと、もう既に国土交通大臣として閣議決定でサインされておられるわけですよね。つまり、ホルムズ海峡における機雷掃海を可能とする法案にサインをされたということは、これに賛成だということでよろしいでしょうか。

太田国務大臣 閣議決定で法案ということについて、私はそれを認め、サインをしたということでありますが、しかし、法案の審査という内容につきましては主務大臣が答えるというのがこの国政のルールだと思っております。

後藤(祐)委員 法案にはサインしたんでしょう。これからの運用で、これはやはりやめようという判断だって、これからのこの質疑で可能なんですよ。例えば、新三要件に違う表現を入れるとか、四要件目を加えるですとか、いろいろなやり方はあります。

 今までの数ある答弁の中で、この新三要件を判断する基準として、我が国に戦禍が及んでくる蓋然性がどれぐらいあるのかということも重要でありますと。これは総理の答弁でもありました。

 このホルムズの機雷掃海、石油途絶、これは明らかに経済的理由です。であり、かつ、これは我が国に戦禍は及びません。我が国に戦禍が及ぶ蓋然性というのがゼロであっても、この存立事態、新三要件を満たすことはあり得るんでしょうか。中谷大臣に聞きたいと思います。

中谷国務大臣 この大前提は、我が国と密接な国に対する武力攻撃が発生をしております。その上で、これが適用される場合は、まず第一要件としては、この状態が我が国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻かつ重大な被害が及ぶことが明らかな状況であり、そして第二要件における、他国に対する武力攻撃の発生を契機とする武力の行使においても、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置に限られて、当該他国に対する武力攻撃の排除、それ自体を目的とするものではないということ、そして第三要件の必要最小限度という中で判断をしていくということでございます。

後藤(祐)委員 質問にお答えいただきたいんですが、我が国に戦禍が及んでくる蓋然性はゼロであっても、この新三要件を満たすことはあり得るんでしょうか。

 中谷大臣に聞いております。先ほど、最初に申し上げたように、総理に対しては答弁を求めておりません。ぜひ、委員長。

中谷国務大臣 この場合の戦禍というのは災いでございまして、戦争の戦火ということではございません。戦禍というのは災いということでございます。

 そして、あくまでも三要件を満たすということで、個別具体的な状況につきましては、これによって判断をするということでございます。

後藤(祐)委員 委員長の英断に感謝したいと思いますが、今総理は中谷大臣に何を言ったんでしょうか。これは、今秘書官の方もレクしていますけれども、私は、安全保障法制担当大臣である中谷大臣とは特定秘密のときから十分議論させていただいておりますし、その真摯な姿勢を大変尊敬している政治家の一人であります。そして、自民党の中では極めてリベラルという言葉をはっきり使う、まさに今の自民党の中でバランスをとっていただくためにも、中谷大臣に答弁していただきたいんです。岸田大臣もそうだと思います。

 もう一回聞きます。我が国に戦禍が及んでくる蓋然性といったときに、今、戦禍とは災いであると。災いというのは、戦禍、戦いの災いと書いて戦禍なんですが、では、戦いは除いちゃうんですか。つまり、武力攻撃的な意味合いのない、軍事的な意味合いのない、全くない災いも、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性の戦禍の中に入ってしまうんですか。

中谷国務大臣 戦禍に対するお尋ねでございますが、我が国の事態が、いろいろな事態が考えられます。存立危機事態ということにつきまして、いろいろな個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合的に、客観的かつ合理的に判断するために、一概に申し述べることは困難でございます。

 実際に我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合において、主に判断する要素としては、攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移などを総合的に考慮して、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することになるわけでありまして、単に戦禍という言葉だけ捉えて判断せよと言われても、こういった、私が述べた、総合的なことを勘案して判断するということでございます。

後藤(祐)委員 質問に答えてください。

 戦禍というのは皆さんの使った言葉なんですよ。幾つかの基準の項目があります。その中の一つが、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性という言葉なわけですが、これはゼロであってもいいのか。この総合的判断において、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性はゼロであっても、ほかの要素が大きければ、存立事態に認定することがあるのかどうかということを聞いているのと、この戦禍という言葉は、戦いの要素のない災いも含まれてしまうのか、つまり、軍事的要素の全くない、純経済的な災いも含んでしまうのか。この二つについてもう一度答弁を、中谷大臣、お願いします。

中谷国務大臣 ただいまは要素として述べたものでございますが、最初にお話ししたように、これらの状況等を総合的に判断して、政府として、存立事態であるかどうかということを判断するわけでございます。

 何度も申し上げますが、実際に発生をした事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合的に、客観、合理的に判断するということで……(後藤(祐)委員「同じ答弁ですよ、質問に答えていないです、質問に答えてください」と呼ぶ)一概に述べるということは困難だということです。

浜田委員長 後藤祐一君、もう一度聞いてください。

後藤(祐)委員 質問に答えていません。三度目です。

 新三要件を満たすかどうかを判断する上で幾つかの基準がございますが、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性というものはゼロでもいいのかどうか。そして、この戦禍とは、先ほど災いだという言い方をしていましたけれども、軍事的な要素がない、純粋経済的な災いの場合も含むのか。この二つについて、わかりやすく答弁をいただきたいと思います。

中谷国務大臣 まず、発端は、我が国に密接な国に対する武力攻撃が発生した場合です、まずは。どういう事態が起こるかというのは、たくさんの状況がありますので一概に言えないということでありますが、我が国に密接な関係がある国に武力攻撃があったことを考え、そして、我が国の、まさに国の存立にかかわるかどうか、個人の権利が失われるかどうか、そういうことを勘案的に判断をするということでございます。(後藤(祐)委員「質問に答えていないです、委員長。時計をとめていただけますか」と呼ぶ)(発言する者あり)

浜田委員長 それでは、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 では、時計を起こしていただきます。

 それでは、中谷防衛大臣、お願いいたします。

中谷国務大臣 まず、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性がある、それから、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、総合的に判断をするということになるわけでありますので、あるとかないとかいうのではなくて、こういった要素を総合的に判断をして、この事態の認定を考えるということでございます。(後藤(祐)委員「全く答えていないですよ。委員長、全く答え変わっていないですよ」と呼ぶ)(発言する者あり)

浜田委員長 時計をとめてください。速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 それでは、内閣総理大臣安倍晋三君。

安倍内閣総理大臣 累次中谷大臣から答弁をさせていただいているとおりでありまして、これをそのまま読んでいただければいいわけでありますが、我が国に戦禍、この戦禍は災いで、火ではありませんから、戦争によって起こり得る災いでありますから、それが及ぶ蓋然性、それが及ぶ蓋然性というのは、まさに武力攻撃が発生したことによって戦禍が及ぶ蓋然性というのは、それはまずあると考えているわけであります。

 それは、まさに我々がそれによって直ちに攻撃されるということではなくて、戦いによる、武力攻撃が発生して、それによる、起因する災いが発生するということであります。そして、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性ということでありますから、単に石油がとまったらこれをクリアするということではなくて、この深刻性、重大性ということも総合的に判断をする、こういうことであります。

 石油を求めて戦争するなんということは全くないということは、これは明らかにしておかなければいけないわけでありまして、まさに、機雷で封鎖されたら、機雷で封鎖されたら、これは我々が能動的にどこかに攻め込んでいってその石油をとるということではなくて、そもそも我が国に運ぼうとするタンカーを守るために、守るためにその機雷を排除する、こういうことでありますが、それはもちろん第一要件にかかわらなければならないわけでありまして、そして、その判断におきましては、今申し上げたとおりでありまして、これを読んでいただければおわかりいただけるのではないかというふうに思います。

後藤(祐)委員 全く明快じゃありません。安倍総理はごまかしています。つまり、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性なんです。

 今、総理は二つに分けて戦禍という言葉を説明しました。まず最初の武力攻撃は、ホルムズで起きるんです、あるいは我が国に密接な関係のある他国に対して起きるわけです。でも、それがやがて日本において、災い、すなわち戦いを抜いた災いが日本において影響が及ぶという説明をされました。

 しかし、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性なんです。ですから、こっちの段階での、最初の段階でのホルムズでの機雷を敷設されたという武力攻撃は、我が国に戦禍が及んではいません。ですから、我が国に単なる災いではなく、我が国に軍事的な意味合いも含む戦禍が及ぶ蓋然性については何ら答えておりません。

 委員長にお願いしたいんですが、これについては大変重要な論点であります。今の基準について、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性というものがゼロでも新三要件を満たすのかどうか、そして、この我が国に戦禍が及ぶ蓋然性の解釈として、ホルムズ海峡での機雷敷設など、密接な関係にある他国に対する武力攻撃ではなくて、我が国に対して、単なる経済的災いではなく、軍事的な意味合いにおけるまさに戦いの災い、戦禍が及ぶという意味合いなのかどうか、この戦禍という言葉の意味合いも含めて、政府としての統一見解を文書でこの委員会に提出していただけるよう、委員長から要請をお願いしたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

後藤(祐)委員 随分時間がかかってしまいましたが。

 次に重要影響事態へ行きたいと思いますが、外務大臣にお伺いしたいと思います。

 この重要影響事態は周辺事態法から変わっている法案なわけですが、平成十年二月二十六日衆議院予算委員会で、我が党の岡田今の代表からこういう質問がありました。「中東の我が国が非常に依存度の高い産油国で何らかの軍事的な衝突が起きたと。もちろん、日本の経済安全保障には非常に大きな影響を及ぼします。しかし、軍事的な波及というのは日本にはない。」今と似ていますよね。「こういう場合にもこのガイドラインの適用になる、」か、日米のガイドラインの適用になるか。これに対して、外務省の北米局長は、「そういう事態は周辺事態には該当しないということでございます。」このように答弁しています。

 つまり、軍事的な波及が日本にない場合、周辺事態にはならないという答弁をされておられますが、まだ重要影響事態法は成立しておりませんから、周辺事態法が今あるわけですが、外務大臣、この答弁はこのままで現在でもよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 今も変わらないかというのは、重要影響事態確保法が成立した後と今の答弁の時点が変わらないという御質問でしょうか。(後藤(祐)委員「現時点です。成立する前です。現行」と呼ぶ)現時点は、まだ、今、現状は法律は変わっておりませんので、現法律のもとでのこの答弁は維持されていると考えます。

後藤(祐)委員 今、大変重要な答弁です。まだ周辺事態法が施行されている現時点において、軍事的な波及のない事態は周辺事態には該当しない。

 もう一回明確に答弁いただけますか。

岸田国務大臣 まず、結論は先ほど申し上げたとおりであります。新法は成立していないわけですから、現状の法律が適用される、これは当然のことであると考えます。

 そして、現状の法律を前提として答弁した答弁、これは現状も維持されている、これも当然のことだと考えます。

後藤(祐)委員 大変重要な答弁であります。

 周辺事態は、るる、地理的概念ではない、事態の性質に着目した概念だというふうに長年答弁されてこられました。これは、今でも恐らく政府としてはそうなんだと思いますが、今回、重要影響事態法になりますが、今の答弁、すなわち、軍事的な波及が日本にないような事態は重要影響事態にはならないという理解でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 今のは、新法が成立した後の御質問かと思います。

 新法につきましては、安保法制担当大臣から直接お答えするのが適切なのかもしれませんが、従来から、周辺事態という概念につきましては、事態の性質に着目した概念であって、地理的概念ではない、こう説明しました。この点につきましては、重要影響事態においても何ら変更はないと認識をいたします。

後藤(祐)委員 まさに事態の性質に着目した概念であって、今回、周辺事態法と重要影響事態法は、目的規定が、我が国周辺の地域におけるという言葉を除いて同じなんですよ、今の部分は。「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」というのが周辺事態法の目的規定にあって、それが今度の重要影響事態法では、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、これを「「重要影響事態」という。」となっていて、周辺という概念を除けば同じなんです。

 だとすると、この重要影響事態法においても、軍事的な波及がないものは重要影響事態にはならないという理解でよろしいでしょうか。もう一度、岸田大臣の答弁を求めます。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、地理的概念ではない、性質に着目した概念である、こういった点につきましては、現在の法律においても、また、改正された重要影響事態法においても、これは何ら変更もないと考えます。

後藤(祐)委員 もう一回はっきり答えてください。

 軍事的な波及のない事態というのは重要影響事態にはならない、これでよろしいでしょうか。もう一度、岸田大臣、明確に答弁ください。

岸田国務大臣 御指摘の軍事的な波及等においては、これは、種々の状況を総合的に判断し、判断するものであると考えます。

後藤(祐)委員 何か急に後ろへ行ってしまいましたね。周辺事態法のときの答弁は維持しなくなってしまうんでしょうか。

 先ほどの答弁と今の答弁、何か秘書官が今一生懸命レクされておられますが、先ほどの答弁と今の答弁は明らかに違います。もう一回整理して答弁していただけますか。

 軍事的な波及がない事態は重要影響事態にはならないということでよろしいでしょうか。明確に答弁いただきたいと思います。最初の答弁では、明確にそういう趣旨でおっしゃっておられました。

岸田国務大臣 私がお答えしたのは、まず、現在においては現在の法律が適用される、答弁は変わらないということと、そして、現在の法律においても、そして重要影響事態法においても、地理的な概念ではない、事態の性質に着目した概念である、こうした点については何ら変更もない、この二点について申し上げた次第であります。

後藤(祐)委員 そうしたら、はっきりお答えください。

 軍事的な波及のない事態というのは重要影響事態になるんでしょうか、ならないんでしょうか、なり得ないんでしょうか、どっちでしょうか。はっきりお答えください。

岸田国務大臣 まず、今申し上げたように、事態の性質に着目した概念であるということは重大影響事態も変わらないということを申し上げた上で、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるの意味するところ、これは、性質上、軍事的な観点を初めとする種々の観点から見たということについて変更はなく、軍事的な観点が全くなく、例えば経済面のみの影響が存在することのみをもって重大影響事態となることは全く想定しておりません。

後藤(祐)委員 最後のところでは、はっきり述べたようにも聞こえます。単に経済的影響のみ、経済面の影響のみでは重要影響事態にはならない、軍事的な波及がない事態は重要影響事態にはならないということでよろしいでしょうか。もう一度はっきり答えてください。

岸田国務大臣 これは今申し上げたとおりではありますが、軍事的な観点を初めとする種々の観点から「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える」ということの意味を考えていくわけであります。経済面のみによる影響の存在、これのみをもって重要影響事態となること、これは想定しておりません。

後藤(祐)委員 これはやはり周辺事態のときの答弁と変わっているんですね。前段を言わないと後段は言えない。つまり、そこに細いすき間を残しているんですよ。細いすき間を残しているんです。

 残していないと言うのであれば、もう一回はっきり答えてください。軍事的な波及のない事態というのは重要影響事態でないとはっきり言ってみてください。細いすき間がないと断言するのであれば、はっきり答えてください。

岸田国務大臣 軍事的な影響のない、経済面のみの影響が存在することのみをもって重要影響事態となることは想定はしておりません。

後藤(祐)委員 比較的明確な答弁がありました。これは、でも、重要な答弁だというふうに思います。

 次に参りたいと思いますが……(発言する者あり)いや、重要ですよ、これは。重要影響事態が一体どこまで含まれるのかは大変重要な答弁です。

 存立危機事態と重要影響事態の関係について、今度は中谷大臣に伺いたいと思いますが、存立危機事態になる前は必ず重要影響事態になるというふうに考えてよろしいでしょうか。

 つまり、重要影響事態というのは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であります。存立危機事態というもっと深刻な状態というのが、我が国の平和と安全に重要な影響を与えないような状態であるということは、私は論理必然的にあり得ないと思いますが、存立危機事態というのは必ず重要影響事態も満たしているというふうに考えてよろしいでしょうか。中谷大臣にお答えをいただきたいと思います。

中谷国務大臣 まず、重要影響事態と存立危機事態については、それぞれ別個の法律の上の判断に基づくものでございます。

 存立危機事態は、重要影響事態と異なりまして、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち武力を用いた対処をしなければ、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が国民に及ぶことが明らかな状況であります。

 では、お尋ねでございますが、両者は併存する場合もありますが、より重大かつ深刻な事態である存立危機事態を認定した場合は、当該事態への対処が優先して行われることになります。

後藤(祐)委員 存立事態になった場合に重要影響事態に基づく行動が行われないということは理解しますが、概念として述べているんです。

 重要影響事態を満たすような事態でない限り、存立事態にはならないということでよろしいでしょうか。明確にお答えいただけますでしょうか。

 今、はっきりそこについてはお答えいただいておりません。それに基づいた行動の話を言っているのではないんです。事態認定に当たって、存立危機事態になる状態というのは必ず重要影響事態にはなり得ている状態なんだということについて、明確な答弁をいただきたいと思います。

中谷国務大臣 それぞれ別個の法案でありまして、存立事態というのは、重要事態と異なりまして、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち武力を用いた対処をしなければ、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が国民に及ぶということであります。

 したがいまして、両事態が併存するということもありますが、より重大かつ深刻な事態である存立事態、これを認定した場合には、当該事態への対応が優先して行われるということでございます。

後藤(祐)委員 質問に全く答えていただけないんですが。

 四月二十一日に与党協議があった後、公明党の方が次のようにブリーフをされておられます。重要影響事態に当たらないけれども存立事態に当たるということはないですねという確認を、与党間、そして政府にしたところ、それはないと、本日共有したことはこの一つでありますというブリーフをプレスの方々にされておられるというふうに聞いておりますが、これはこういう理解でよろしいんですか。

 先ほどの、二度はっきり答えない答弁をされておられましたが、また三度目聞きますが、存立危機事態というのは必ず重要影響事態に至っているのでしょうか。中谷大臣、はっきりお答えください。

中谷国務大臣 概念といたしましては、存立危機事態は重要影響事態になるということでございます。

後藤(祐)委員 大変重要な答弁であります。

 そうしますと、先ほど、重要影響事態は、軍事的な波及のない事態というのは重要影響事態にならない、こういう答弁でございました。

 そうしますと、存立危機事態も、我が国に対して軍事的な波及がない事態というのは存立危機事態になり得ないということであります。論理的にそうなります。

 そうしますと、ホルムズ海峡における機雷敷設は、これは軍事的な波及が我が国にありませんから、存立危機事態としては認定できないということではありませんか。中谷大臣、お答えいただけますか。(中谷国務大臣「もう一度質問をお願いします」と呼ぶ)

浜田委員長 もう一度。

後藤(祐)委員 私、明確に質問しているつもりですが、重要影響事態は、それ、秘書官からレクをする時間を下さいという意味だとしたら、私、ちょっと納得いかないんですが。よろしいでしょうか、秘書官の方。

 先ほど、重要影響事態は、軍事的な波及が我が国にない場合は認定できないと。ちょっと表現ぶりは、岸田大臣、若干違ったかもしれませんが。存立事態は必ず重要影響事態だとすると、ただ単に、ただ単に経済的影響ではできない、我が国に対しての影響がですよ。頭のところでの機雷敷設の話じゃないですよ。我が国に対して戦禍が及ぶということについては、軍事的な波及がある場合だという趣旨の答弁は、岸田大臣、先ほどされました。

 そうしますと、重要影響事態が我が国への軍事的な波及がないと認定できないんだとすると、存立危機事態は全て重要影響事態に該当すると中谷大臣が今答えましたから、存立危機事態も我が国に対する軍事的な波及がなければ認定できないということではありませんか。

 そうしますと、ホルムズ海峡で機雷を敷設して、こういった仮定で存立危機事態というのは、これは認定できないということになるんじゃないかと思いますが、これは中谷大臣に質問をしております。安全保障法制担当の中谷大臣、お願いします。

浜田委員長 その前に、岸田外務大臣、先に。その後に、防衛大臣。

岸田国務大臣 済みません、今のは御質問の中身にかかわるものですので、ちょっと私の方から先に答えさせてください。

 今、委員の方は、私の先ほどの答弁を捉えて、重要影響事態について、我が国に対する軍事的影響がない場合は重要影響事態になることを想定していない、このように答えたように今質問されましたが、私が先ほど申し上げましたのは、軍事的な影響、軍事的な観点が全くない、経済面のみの影響がある、それをもって重要影響事態となることは想定していません、このようにお答えしたわけであります。

 ちょっと、私の申し上げたこの答弁、ぜひ正確に受けとめていただいた上で、次の質問に入っていただければと思います。

浜田委員長 中谷防衛大臣、どうぞ。(後藤(祐)委員「そこが変わるんだとすると、前提が変わるので」と呼ぶ)

中谷国務大臣 確認しますが、周辺事態というのは観点であります。観点であるということです。

後藤(祐)委員 岸田大臣、さっきのやりとりの中では、軍事的波及が全くなく、経済的理由のみで重要影響事態にはならないと答弁されたはずであります。これは議事録をちゃんと確認する必要がありますが。

 そうしますと、軍事的波及が全くなく、経済的理由のみで存立事態にもならないということでよろしいでしょうか。中谷大臣、お願いします。

岸田国務大臣 軍事的波及のない、例えば経済面のみをもって重要影響事態になることは想定していない、この答弁の趣旨は、我が国に対する軍事的な影響がないことで重要影響事態となることを想定していないと答えたわけではありません。ぜひそのまま、この答弁の文言をそのままにぜひ受けとめていただきたいと存じます。

 軍事的な影響、軍事的な観点のない、経済的な影響のみをもって重要影響事態となることは想定していない、そのようにお答えした次第であります。

後藤(祐)委員 ここは議事録を確認した上でさらに詰めていきたいと思いますので、ぜひ、また私はあしたも立ちますから、あるいはほかのメンバーを含めて、ここは確認をしていきたいと思います。

 軍事的波及が全くなく、経済的理由のみで重要影響事態にならないという趣旨の答弁をされていたんだとすれば、存立事態もホルムズは認められないんじゃないか。そうすると、かなり物事は変わってくるんじゃないか。もしそういうことで、石油を求めて戦争する法案じゃないとおっしゃるのであれば、それはそれで一つの見識かと思いますが。

 相当時間をとめられちゃっているんですが、最後に、非戦闘地域と現に戦闘が行われている現場、この関係についてお聞きしたいと思いますけれども、少し、現に戦闘が行われている現場以外という概念が変わってきております。

 きのうの岡田代表に対する総理答弁では、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することになりますという答弁をしておられます。

 一方で、現行の周辺事態法では、後方地域というものを「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」と定義されておられます。

 これは何が違うんでしょうか。つまり、重要影響事態法だけではありません、この表現は。現に戦闘が行われている現場でない地域というのは、もともとの後方地域と違う部分は、差分はどこにあるんでしょうか。

 自衛隊が現実に活動を行うの現実にが、文言としては違います。それと、発生しないと見込まれる場所の見込まれるというのが、「認められる」という表現が現行の条文の表現です。この二点が違うんですね。

 現実に活動を行うというのは、現行の後方地域の定義には確かにない。この現実にという言葉の定義を含めて、現行の後方地域、非戦闘地域と、現に戦闘が行われている現場についての、ここ数日の答弁でおっしゃっていることとの差を明確にお答えいただけますでしょうか。中谷大臣、お願いします。

中谷国務大臣 先ほど公明党の質疑もありましたけれども、後方地域というのは、まず憲法的に武力行使と一体化をすることがないということが前提でございまして、今回、その点で、憲法上は、現に戦闘行為が行われていない、現場でない場所で行う活動といたしております。

 これに対して、安全面の規定で、今回、防衛大臣が、この活動を行う区域において活動が円滑かつ安全に行われることという規定がございますので、これによって区域を指定するわけでございますが、その考え方は、自衛隊が活動する期間は戦闘が発生するとは見込まれない場所であるということでございます。

 非戦闘地域とどこが違うかということにつきましては、従来のいわゆる非戦闘地域も新たな仕組みも、現実に自衛隊が活動する期間は戦闘が発生するとは見込まれない場所であり、安全性においての相違はないということでございます。

後藤(祐)委員 重要な答弁ですが、安全性においての違いはないとおっしゃいましたが、安全性以外の面で違いがあるということなんでしょうか。全く違いがないのであれば、全く違いがないとお答えいただけますでしょうか。

中谷国務大臣 従来の非戦闘地域とは安全性においては違いがありませんが、憲法で言う武力の行使と一体化にならないという点におきましては、今回、これまでの活動の実績等を踏まえまして、憲法上、現に戦闘行為が行われていない、現場でない場所で行う活動としたわけでございます。

後藤(祐)委員 やはり差があるということなので、どこが差なのか、明確に答弁いただけますでしょうか。

中谷国務大臣 もう一度申し上げますが、後方地域は、我が国の活動が他国の武力行使と一体化をすることがない制度的な枠組みとして設けられておりまして、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域でございます。

 例えば、自衛隊が、事態に対応するために、後方地域支援の活動の期間を通じて戦闘が発生しないと見込まれる地域で活動するときは、実際に自衛隊の部隊等は一カ所にとどまらずさまざまな場所で活動しますが、ある地域で一週間でも活動するためには、そこでも、さきに述べた活動の期間を通じて戦闘がないと見込まれる必要がありました。これは、現行の周辺事態法制定当時、自衛隊による我が国領域外での活動経験がほとんどない中において、専ら憲法との関係を考慮して考え出されたものでございます。

 後方地域やいわゆる非戦闘地域の概念についてさまざまな議論があったことから、自衛隊による実際の活動経験や諸外国との活動の実態等の現実に即した検討を行った結果、現に戦闘行為が行われている現場以外の場所で行う補給、輸送の活動は他国の武力の行使と一体化するものではないと判断をしたわけでございます。

 その一方で、新たな重要影響事態等の仕組みにおいても、自衛隊の部隊の安全性を考慮して、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することといたしました。

 この後方地域の枠組みのもとでは、周辺事態に対応するための後方地域支援等の活動の期間、つまり一定の期間を想定して、固定的に区域設定をするとされていたことから、一たび設定すると柔軟な活動ができないという観点で今回こういったことを考えたわけでございまして、こういった違いがあるということでございます。

後藤(祐)委員 長くて何を言っているのかよくわからない説明です。もう一回聞きたいところですが。

 安全性については変わらないとおっしゃいましたが、実は条文上変わっているんです。

 現行の周辺事態法では、「当該輸送を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合」は、これは一時休止しなきゃいけなくなっていますが、重要影響事態法では、後方「支援活動を実施している場所」または「その近傍において戦闘」「が行われるに至った場合」はとなっています。実施している場所そのもので戦闘が行われることが新たに予定されているんです。

 これは、リスクが高まっているということではありませんか。中谷大臣に最後に聞きます。

浜田委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

中谷国務大臣 今回規定をいたしましたのは、円滑かつ安全に行うということでございます。実際に憲法上行わないところは、戦闘が現に行われている現場ということでございます。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 辻元清美です。

 今回、本委員会では、多くの皆さん、この委員会の質疑をお聞きになって、不安もお持ちだと思うんですね。というのは、やはり日本が戦後一貫として専守防衛、要するに、自国に武力攻撃があったときだけ戦争しますということで来たわけですけれども、これが……(発言する者あり)武力行使をするということですから。これをどういうように変えるのか、非常に皆さん不安もお持ちだと思います。

 そこで、中谷大臣にまずお聞きをしたいと思います。

 一昨日からこの委員会で始まった議論の本質というのは、特に集団的自衛権の行使についてというのが一つの大きな柱だと思うんですけれども、日本が戦争に踏み切る基準の変更について議論していると理解していいですか。

中谷国務大臣 この目的は、日本の国民の命を守り、そして平和な暮らし、この社会をしっかりと守っていくためにやるわけでございまして、従来の、国の存立また個人の権利、こういうものが失われないためにこの法律の改正をするわけでございます。

辻元委員 今、戦争と申し上げましたのは、結局、武力行使を受けたときに、こちらが専守防衛で武力行使をする、これは認められてきたわけですよね。でも、基準が変わるわけですね、今度。それは、例えば他国の、米国、米軍と密接な関係のある国というので例示がよくされますけれども、等が攻撃されたときに、ここで起こっている戦争に日本も参画するという意味で戦争と申し上げたわけです。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

辻元委員 なぜかというと、それは新三要件を満たした場合です。

 では、中谷大臣にお聞きします。

 今回のこの武力行使の基準、一体、今まで憲法九条のもとで、日本が攻められたとき、これしかだめだと言われていて、何が変わるんですか、具体的に。今回の法律変更で何が変わるんですか。

中谷国務大臣 変わるところは、我が国と密接な国が武力攻撃を受けたときでございますが、何のためにかといいますと、これは変わりません。我が国の存立が損なわれ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるといった明白な危険がある事態でありまして、何のためにというところは全く変わっておりません。

辻元委員 それでは、一つ一つちょっと具体的にお聞きをしたいと思うんです。

 今まで、他国から武力攻撃に遭ったときは、武力攻撃事態ということで、それに対しての、どういう段階で日本が武力行使できるかというのは対処法で決められておりました。

 そうすると、この武力攻撃事態に至るまでは、武力攻撃切迫事態と予測事態というのがありましたですね。でも、日本に直接攻撃がある武力攻撃に対しての予測や切迫では、日本はまだ、反撃といいますか、武力行使には至ることができないという理解でいいんですね。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

辻元委員 今度は、もう一つ、存立危機事態というのがこの対処法に加わりました。これは、日本が直接武力攻撃を受けていなくても、密接な国に対する攻撃、そして日本の存立が脅かされるということで、直接攻撃は受けていないけれども武力行使が可能になったという理解でいいですか。

中谷国務大臣 三要件を満たす場合でございまして、そのままでは国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であり、また、他に手段がなく、また、それも必要最小限であるという条件が満たされた場合でございます。

辻元委員 そうしますと、ちょっと私わからないんですけれども、もともとあった武力攻撃事態の切迫ですね、切迫事態、もう迫っている、武力攻撃がというのと、この存立事態の違い。一方は、武力攻撃が迫っていても、日本は武力攻撃をすることができない。禁じられているわけですよ、一方は、切迫の場合は。一方は、武力攻撃に踏み切れるわけです、存立事態の場合は。

 この切迫事態と存立事態の違いは何ですか。

中谷国務大臣 違いについてということでありますが、まず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生するということが前提です。それによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという明白な危険があるということで、これは、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況のもとで武力を用いた対処をしなければ、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻かつ重大な被害が国民に及ぶという観点から評価するものでございます。

 これに対して、武力攻撃事態等は、予測事態も含めまして、我が国に対する武力攻撃がどの程度差し迫っているかという観点から評価するものでありまして、他国に武力攻撃が発生したかどうかということと、我が国が直接武力攻撃を受けたときの判断基準、このような違いがあるわけでございます。

辻元委員 中谷大臣、自分の言葉でしゃべってください。

 というのは、私は日米新ガイドラインの周辺事態法のころから、中谷大臣も、委員でした。そして、かなり長く、周辺事態法や、イラク特措法のときは総理が官房副長官でいらっしゃったかもしれませんけれども、あのときも、中谷さん、大臣だったと思います。かなり議論してきている積み重ねの中での今回の、国是の変換にも近い私は重みがある、そんな議論だと思っております。

 もう一度聞きます。明白な危機とおっしゃいました、中谷大臣。なぜかというと、一方は、切迫しているけれども武力行使はできないんですよ。もう一つは武力行使できる。明確な違いがないと、武力行使をするかしないか、これは大問題ですよ。

 では、細かく分けてお聞きしましょう。

 まず、武力攻撃切迫事態でいう明白な危険とは、具体的にどういうことを指しますか。具体的に言ってください。というのは、国民の皆さんはわからないですよ、今だらだらだらだら読まれましたけれども、言うたら悪いけれども。どういう事態をいうんですか。この武力攻撃切迫事態の明白な危険を、まず具体的に、ちょっと一、二述べてください。

中谷国務大臣 武力攻撃切迫事態というのは、我が国に対する武力攻撃、これは発生はしておりません。しかし、それが差し迫っているという段階でありまして、ではどういう段階かというと、いろいろな状況があるわけでありますが、まさに武力攻撃が発生することが差し迫っているという判断をする事態であります。

辻元委員 今、武力攻撃が差し迫っているという判断、それが切迫なんですよ。だから、その差し迫っているのは、具体的にどういうことになったら切迫というのかと聞いているわけです。例えば国民生活はどうかとか、どういうことで判断するんですか。大臣が判断されるわけですよね。武力行使はこっちはするけれどもこっちはしないというのを大臣が判断されるから、切迫だと、どういう事態が起こっていることを予測していますかと聞いています。答えてください。

中谷国務大臣 もう一度言いますけれども、切迫事態というのは、当然、武力攻撃がまだ発生しておりません。それで、武力行使をするかしないかという判断をしなければなりませんが、武力行使はこの時点ではできないわけでございます。

 武力攻撃事態法の第二条の二号にこれが規定をされておりまして、「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」というのは、我が国に対する武力攻撃は発生していないが、これが発生する明白な危険が切迫しているということが客観的に認められるという事態です。

辻元委員 今、客観的に認められるという、では、客観的にどういうことを、だから、どういう基準で、大臣、判断されるでしょう、これは切迫だとか、これは存立危機事態だと。だから聞いているわけです。客観的な判断とおっしゃった、その客観的な大臣の基準をお聞きしているわけです。大臣にお聞きしております。大臣にお聞きしております。

中谷国務大臣 予測事態、切迫事態、攻撃事態と、三段階定めております。

 予測事態は、そういうことが予測をされ得る事態で、切迫事態というのは、それがかなりもう近づいてきました。要は、武力行使をするかしないか、これは国として大事な判断です。そのときに、認定をしてすぐ自衛隊は行動できるわけではなくて、やはりその前の段階から準備しなければいけません。部隊を招集したり、また準備をしたり、また地方に対してもお願いをしたり、こういったことで、いつ武力攻撃事態が起こってもいいように準備を始める時点というのが切迫事態ということで、こういった観点で判断するわけであります。

辻元委員 例えば具体的にどういうことか。

 そうすると、存立危機事態で言う明白な危機、他国に武力行使がある、あらないということじゃないんですよ、明白な危機ですよ、国民にとっての。存立危機事態と武力攻撃切迫事態の明白な危機の違いを具体的に述べてください。どこか基準がないと判断できないです。中谷大臣です。

安倍内閣総理大臣 これは重要なことでありますから、総理大臣として答弁をさせていただきたいと思います。(辻元委員「総理、ちょっと待って。中谷大臣に今聞いているわけです。中谷大臣にお聞きしているわけですから、ちょっとやめてくださいよ。中谷大臣にお聞きしているわけですよ。だめです。私は総理に聞いておりません」と呼ぶ)

 これはだって、総理大臣が切迫事態等についても、これは総理大臣としても判断をするわけでありますから、当然であります。

 今……(辻元委員「防衛大臣がちゃんと答えられないのは困るということで聞いているわけです」と呼ぶ)

浜田委員長 ちょっと一言説明させてください。

安倍内閣総理大臣 一言答弁させていただきます。(辻元委員「総理、大臣の後にしますから」と呼ぶ)

 ただいま委員長に指名をいただきましたので、答弁をさせていただきます。

 その上で……(辻元委員「何でですか。だめです、だめ」と呼ぶ)いや、だめって……(辻元委員「総理、指名していない、指名していないです。ちょっと、けりをつけてください」と呼ぶ)

 よろしいでしょうか。

 つまり、切迫事態と存立危機事態は、事態の性格がまず違います。存立危機事態というのは、まさに他国に対する武力行使であって、切迫事態というのは、我が国に対する武力行使が切迫しているという事態でありますが、では切迫しているかどうか、判断、具体的に示せということでありますが、まさに、防衛大臣としてそんなにつまびらかには説明できないわけでありますが、例えば、例えばある国が我が国に対して意図を表明している、我が国を攻撃するという意図を事実上表明している、そして予備役を招集している、艦船が集結をしている、これは切迫事態と言える可能性が高いわけであります。

 しかし、我々は、今、こういう事態に対して、こんな具体的な対応でなければできないということを明確にするのは、むしろこれは相手にそういう知見を与えてしまいますから、それ以上のことは申し上げませんが、例えばの、例えばのイメージとして、辻元さんがおっしゃっておられますからあえて申し上げれば、相手がそういう意思を事実上表明している、そしてまた予備役も集めている、そして船も集結しているとなれば、これは切迫になる事態、切迫と言える可能性というのは大変高いんだろう、このように思います。

 いわば、こういう観点も含めて、防衛大臣も、しかし、個々についてはある程度柔軟性を保つべきだということで答弁をしているわけであります。

辻元委員 では、防衛大臣にお聞きします。

 今総理がおっしゃった危機と存立危機事態の違いを言ってください。今お聞きになっていたと思いますよ。

 というのは、一方は武力行使ができるんですよ、踏み切れるんですよ。一方は踏み切れないんですよ。この明確な基準がはっきりしないと。

 だから、今もう一度中谷防衛大臣にお聞きします。総理が今おっしゃった事態と存立危機事態、違いを言ってください。明白な危険の違いを言ってください。

中谷国務大臣 違いというのは、まず、我が国が武力攻撃を受けているか、また、我が国と密接な国が武力攻撃を受けているかということであります。

 我が国が武力攻撃を受けているかの切迫に今お尋ねがあって、総理が例示をされましたけれども、意図があって、そして、物理的にいろいろな艦船とか航空機が近づいてきたというようなことを判断して、我が国の武力攻撃事態、切迫事態と判断をいたします。

 一方、存立事態というのは、我が国と密接な国に対する攻撃があった場合に、我が国の存立にかかわるような事態を勘案して認定をするというところが違うところでございます。

辻元委員 それは結局、この集団的自衛権の行使の問題点と言われてきたのは、明白な危機という、これは時の政府が判断するわけですね。その基準は、時の政府の判断、どう判断するかによって大きく変わってくるわけですよ。(発言する者あり)それはちょっと後で聞きますので。

 今までははっきりしていたんです。日本が武力攻撃に遭ったときは、日本は武力をもってそれを、これが専守防衛ですよ、防ぐということですよね。

 今聞いても、この切迫事態という、武力攻撃事態で、危機は切迫しているけれども武力行使はできない事態と、それから、今回入れられた、米軍等他国が、密接な関係のある他国が攻撃を受けたときに、これは外に出られるわけですよ、武力行使できるわけですよ。この明白な基準というのが曖昧だし、時の政府によって何とでも判断できる。

 今までは、武力攻撃を受けたときしかできないと明白だったわけですよ。これが急迫不正というものですよ。だから、専守防衛ではなくなったんじゃないですか。違いますか。

 そうしたら、もうちょっとお聞きします。大臣にもう一回お聞きしますね。

 国民生活から見れば、これは、武力行使に踏み切るか踏み切らないかというのは物すごく大きいでしょう。自衛隊のリスクもそうでしょう。物すごく大きいですよ、踏み切るか踏み切らないか。

 最後に、私はきょう十二時過ぎまで質問させていただいて、一時からまた私の質問時間がありますから続きをやりますけれども、明白な危険、もう一度、国民の側に立ったら、差し迫る危険にどういう違いがあるのか、大臣の言葉で答えてください。一方は武力攻撃ができる、一方はできないわけです。今までできなかったわけですよ。

 私、切迫と危機事態というのを、大臣の説明を聞いても、国民の側に立ったら、どういう危機が違うのか、わからないですよ。ここでわからない、国民の皆さんはもっとわからないですよ。大臣の言葉で説明してください。どう違いますか、明白な危機は。

浜田委員長 中谷防衛大臣、時間が来ておりますので。

中谷国務大臣 まず、二つの、法案に「明白な危険」という言葉がありますのでちょっと混同しやすいんですが、武力攻撃事態の切迫の「明白な危険が切迫している」、また、存立危機事態の「明白な危険がある」というのは、危険の内容とか評価の観点が異なるという意味では前提が異なるものでございますが、こういった言葉のみを切り出してお尋ねでありますが、いずれも、この言葉のとおり、明白な危険かどうかということで判断するという意味では、同じような内容ではないかと思います。

辻元委員 言葉を取り出してお聞きになっていると言うけれども、その言葉の中身がわからないから私はお聞きしているんですよ。それにちゃんと、何か、切迫な明白な危険が切迫しているとか、説明になっていないです。

 午後一時から引き続き質問を続行します。

 終わります。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。辻元清美君。

辻元委員 午前中に引き続き、質問させていただきます。

 私、総理に答えていただきたいときは御指名申し上げますので、そのように心得て、申しわけございませんが、答弁をしてください。

 というのは、やはり、これは防衛大臣が非常に重要だと思うんですね。先ほど、午前中にも申し上げましたけれども、どんなときに武力行使に踏み切るかという基準を私は変えることだと思っておりますので、ここは防衛大臣に、所管大臣としてやはりしっかりと議論を詰めていくということが日本にとって私はプラスだと思います。特に、厳しい意見をしっかりと受けとめる、そして、厳しい意見で質疑を闘わせることで曖昧な部分を残さない、それは物すごく大事なことですから、むしろ、私は、厳しい人たちと徹底的に議論するということをしていただきたいと思っております。

 さて、それでは次に、今度は、新三要件を満たせばどこに自衛隊を派遣できるかということをちょっと議論したいと思います。

 これは、二月二日の参議院の審議、私は、このときの安倍総理のある答弁はとても大事だと思っていて、実は、予算委員会でも私はこれを取り上げて質疑をいたしました。二月二日の参議院の審議で、集団的自衛権を行使するのは新三要件が当てはまるかどうかで決まるということで、地理的にどこだから当てはまらないということではないという答弁をされています。そして、三月三日、これは私と法制局長官との議論で、新三要件そのものに地理的制限はございませんと御答弁をされております。

 防衛大臣にお聞きします。ということは、新三要件が満たされれば、他国の領土、領海、領空でも武力行使ができるという理解でよろしいですね。

中谷国務大臣 まず、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限を超えるものであって、憲法上許されないと解しております。

 このような従来からの考え方は、新三要件のもと集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらず、新三要件から論理的に導かれるものでございます。

辻元委員 中谷大臣、よく質問を聞いてくださいね。中谷大臣も、先日の、五月二十二日の記者会見でこう答えていらっしゃいます。他国の領域における、この領域というのは領土、領海、領空です。領域における武力行使であって、新三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることは許されないわけではないと記者会見でおっしゃっています。

 もう一度お聞きします。新三要件が満たされれば、他国の領土、領海、領空でも武力行使ができるという理解でよろしいですか。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

辻元委員 安倍総理も同じでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 それはつまり、今まで答弁しておりますように、他国の領土、領海、領空における武力行使というのは、いわば海外派兵の一般禁止、海外派兵は、三要件における、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことにこれは反するということでありますから、一般に海外派兵は許されない、こういうことでございます。

 これは、個別的自衛権においてもそうでございますが、しかし、それは、一般にということの中において、例えばホルムズ海峡の機雷封鎖のようなものを、その機雷を除去するということについては、いわば受動的に、制限的に行うわけでございますから、必要最小限度の中にとどまる可能性はある。しかし、それは第一要件に当たるかどうかというのはまた別の判断でございますが。

 基本的には、一般に海外におけるいわば武力行使、海外派兵、これは禁じられているという考え方でございます。

辻元委員 質問にお答えになっておりません。

 それは、必要最小限度という新三要件の一つに当たらない場合のことを総理はずっとおっしゃっているわけです。これは当たらないのかどうかは後で検証したいと思いますが。

 もう一度申し上げます。中谷大臣が記者会見で、他国の領域における武力行動であって、武力行動とおっしゃっているんですけれども、新三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動は許されないわけではない。

 同じですね、総理も。

安倍内閣総理大臣 これは、昨日も累次答弁をさせていただいておりますが、基本的に、必要最小限度の実力行使にとどまらなければならない、これはもう明確に書いてあるわけでございます。そこから導かれる論理としては、一般に海外派兵は認められないというのは、これは基本であります、基本。

 この基本の中において、基本の中において、これは一般にでありますから、例外的にホルムズの例を挙げさせていただいておりますが、では、それ以外においてはこれはなかなか今念頭にはないということでございまして、かなりこれは個別的なことに今我々は限って議論をしているわけでございます。

 そこで、ただ、法理論上ですね、法理上においては、法理上においては、まさに一般の中において、一般の、いわば一般というのは大体、おおむねということでありますが、しかし、その外ということが一〇〇%ないわけではありませんから、それが例えばホルムズとしてあり得るということでありますから、これは法理上はその余地は残っておりますが、基本的にはほとんど、ほとんどはこれは一般にでありますから、それは認められないということであります。

 それをもって海外での武力行使が全面的に可能であるかのごとくの、海外というか、いわば領土、領海、領空における武力行使が可能であるかのごとくの誤解を与えてはならないというわけでございまして、極めてここは大切なところでありますから繰り返し申し上げますが、必要最小限度というのは、いわば他の領海に入っていって空爆を行ったり、上陸をしていって攻め込んだり、砲撃を行ったり、大規模な砲撃を行ったりということはできない、これは明らかにできないということは明確に申し上げておきたいと思います。

辻元委員 総理、それはずっとおっしゃっているので存じ上げております。必要最小限度に当たらなかったらできないのは当たり前の話なんです。

 中谷大臣が記者会見されているのは、新三要件だから、三つに当てはまった場合は他国の領土、領海、領空でも行けると記者会見でおっしゃったので、総理も、法理上は、法理上ですよ、法理上は行けるというたてつけですね、この今回の法案はと聞いています。(安倍内閣総理大臣「法理上ですよ」と呼ぶ)

 何言っているの、総理。指していないときに答えて、指したときに答えない。

安倍内閣総理大臣 法理上、法理上においては、そのために法制局長官がいますから、法理上の答弁をするのは法制局長官がふさわしいんですが、答弁の中身からいっても。いわば、答弁の中身からいっても、純粋法理上ですから、純粋法理上にはあり得るというのは先ほども申し上げたとおりですよ。それをもう少し詳しくだったら、法制局長官が答えた方がいいと思いますが。(辻元委員「わかりました。そこで結構です」と呼ぶ)

 しかし、繰り返しになりますが、それはいわば机上における、机上における法理上ですから……(辻元委員「法理上はいいって。もうそれでわかりました。ありがとうございます」と呼ぶ)法理上であるということは申し上げておきたい。政策上はホルムズ以外は念頭にないということは繰り返し申し上げておきたいと思います。

辻元委員 次に、もう一点伺います。

 岸田外務大臣、よく湾岸戦争とかイラク戦争というのがここでも出てきましたですね。これは集団的自衛権の行使ではなくて、いわゆる集団安全保障措置による多国籍軍で、これは実は質問主意書でも聞かれているんですけれども、多国籍軍による集団安全保障措置であるという理解でいいですか、イラク戦争と湾岸戦争。

岸田国務大臣 イラク戦争につきましては、国連で採択されました幾つかの国連決議に違反する、こういったことで事態が発生し、推移したと認識をしております。

 ただ、今御指摘のようなイラク戦争の引用ですが、いわゆるイラク戦争あるいは湾岸戦争のような大規模な空爆、砲撃、あるいは敵の国に攻め入る、こういったことは、新三要件との関係においてそれは認められない、そういった引用の仕方をしているわけです。

 ただ、イラク戦争につきましては、国連の安保理違反によって引き起こされたものであると認識をしております。

辻元委員 そんな難しい質問はしていないんです。湾岸戦争とイラク戦争は、集団的自衛権の行使ではなくて、多国籍軍による集団安全保障措置であると考えていいですねと聞いているわけです。

岸田国務大臣 イラク戦争もそして湾岸戦争も、ともに国連安保理決議に基づいて対応したものだと承知をしております。

辻元委員 これは集団安全保障措置なんですよ。

 中谷防衛大臣にお聞きします。

 それで、私が三月三日の、先ほどの予算委員会でこの点を取り上げたんです。そして、新三要件を満たせば集団安全保障措置としての多国籍軍に参加して武力行使ができるのかという問いに対して、横畠法制局長官は、新三要件を満たすということでありますならば、その範囲において我が国としての武力行使は可能という答弁をされたんです。法制局長官が言われていますから、議事録もありますけれども、中谷長官も同じでよろしいですね。

中谷国務大臣 あくまでも新三要件でございまして、我が国の存立を脅かし、そして国民の生命、自由の権利を根底から覆すような明白な危険があるという三要件に合致した場合でございます。

辻元委員 ということは、先ほどの答弁を総合すると、新三要件に合えば、一つは、他国の領土、領海、領域にも法理的には行ける、そして今の御答弁にあるように、集団安全保障措置としての……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。集団安全保障措置としての多国籍軍についても、要するに、イラク戦争や湾岸戦争は、岸田外務大臣は、集団安全保障措置の多国籍軍だとおっしゃった。そして、横畠長官は……(発言する者あり)やじに答えませんが、政府はちゃんと質問主意書で閣議決定をして、答えております。

 そうすると、私は、湾岸戦争やイラク戦争に行くべきじゃないと思うし、総理がずっと行かない行かないと言っているのはいいことだと思います。ただ、今までの答弁を総合していくと、法理的には行ける。でも、湾岸戦争やイラク戦争みたいなことは法理的には行けるんだけれども、三要件の一つに……。でも、長官は……。

 ちょっとこの間、政府は答弁を変えてきているんですよ。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

辻元委員 三月三日の段階では、行けると答えていたわけですよ。

 そこで、中谷防衛大臣にお聞きしたいと思いますが、先ほどからの、海外派兵は一般に許されない、これは新三要件の必要最小限度を超えるものであるということでずっと御答弁されている。武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限を超えるものであり、憲法上許されない。

 まず、一般にというのは、例外がその時代時代によってあるという理解でよろしいですか。(安倍内閣総理大臣「ちょっと、私が答えます」と呼ぶ)

 ちょっと待って。また、また。後で。落ちついて、総理。総理、落ちついた方がいいですよ。どっしりしてください、総理、本当に。

 ですから、私は、防衛大臣にお聞きしております。この一般にということは、その時々の状況によって例外が生じるという理解でよろしいですか。防衛大臣どうぞ。

中谷国務大臣 我が国において武力行使が許容されるのは、自衛のための必要最小限度でございまして、それを超えるものは海外派兵ということで、政府が言っていますように、海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないということでございます。

辻元委員 だから、一般にとついているので、先ほど機雷の掃海は例外みたいなことをおっしゃいましたね。そうすると、その時代、時々によって、このときは機雷かもしれないし、例外があるんですか、一般と書いてあるから、例外があるんですかと防衛大臣にお聞きをしております。

浜田委員長 整理のために、内閣法制局長官横畠君。(辻元委員「ちょっと、防衛大臣。長官は呼んでいないじゃない、あなた」と呼ぶ)

 とりあえず一回聞いてください。その後。

横畠政府特別補佐人 いわゆる海外派兵、すなわち武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきておりますし、現在も考えております。

 その上で、憲法上の理論としては例外もございます。

 従来から例外的に海外における武力の行使として認められる場合として申し上げておりますのは大変少のうございまして、昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会における政府答弁においてお答えしております。

  わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。

ということでございます。

 極めて例外的な場合のことについてお答えしているわけでございます。

辻元委員 長官、機雷の掃海、ホルムズ海峡のことを言っていますけれども、これは例外に入りますか。

横畠政府特別補佐人 機雷の掃海について申し上げれば、当該機雷の敷設がいわば海上封鎖に匹敵するような、我が国に対する武力攻撃であり、それを放置したのでは国民の生死にかかわるような深刻、重大な被害が生じ、他に手段がなく、まさに座して自滅を待つということになるのであれば、他国の領海に敷設された機雷を処理することは、先ほどお答えした誘導弾等の基地をたたく場合と同じことになると考えられます。

 また、当該機雷の敷設が我が国に対する武力攻撃であるとまでは認められないとしても、同様の状況にあり、新三要件を満たす場合であるならば、同じことになるであろうと考えます。

辻元委員 長官にお聞きします。海上封鎖と同等の影響ということですね。

横畠政府特別補佐人 海上封鎖によって我が国に対する糧道を断ち云々ということで、そのような手段を用いることも我が国に対する武力攻撃の手段たり得るということを従前からお答えしているところでございます。

辻元委員 中谷大臣にお聞きします。

 ホルムズ海峡に機雷をまかれた場合、日本に海上封鎖をされたことと同等とお考えですか。日本の周りの近海を海上封鎖されたことと同じような状況だとお考えですか。

中谷国務大臣 我が国周辺の海域の機雷封鎖は、先ほど法制局長官がお答えしたことだと思います。

 ホルムズ海峡の場合もどう考えるかということにつきましては、三要件の、いわゆる存立危機事態に当てはまるような、三要件によりまして、存立事態であるかという判断をするわけでございます。

辻元委員 だから、海上封鎖されるというのは相当な事態なんですよ。わかると思いますけれども。ホルムズ海峡に機雷をまかれたことが、日本を海上封鎖されて、その状況と防衛大臣として同等だとお考えかと聞いているわけです。

中谷国務大臣 いろいろな状況がございますが、まず前提として、我が国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃がまずあったという場合ですよね、お尋ねは。(辻元委員「例外が海上封鎖だと言ったから」と呼ぶ)だから、そういう事態に認定するかどうかということですか、存立事態に当たるかどうか。(辻元委員「質問を聞いてください」と呼ぶ)もう一回どうぞお願いします。

辻元委員 ホルムズ海峡に機雷がまかれた場合に、存立事態、武力行使ができる、機雷の除去に行けると言っているので、今、先ほど法制局長官は、機雷について、海上封鎖を一つ例に挙げられましたので、ホルムズ海峡の機雷掃海が、海上封鎖をされた場合と同等の日本にとって打撃かと聞いているわけです。

 打撃。違う、違う、防衛大臣に聞いています。

中谷国務大臣 いろいろな状況がありますが、辻元先生のお尋ねは、そういう、ホルムズ海峡に機雷がまかれた場合が、我が国の存立事態に当たるかどうかという御質問でございますでしょうか。(辻元委員「いや、違う。海上封鎖されたときと同等かと、認識が、ダメージが」と呼ぶ)

 まあ、ちょっと質問の趣旨がわかりませんが、我が国周辺に機雷がまかれた場合と……(辻元委員「海上封鎖されたときと、ホルムズ」と呼ぶ)海上封鎖された場合と。ちょっと、余りにもその二つの比較において、判断する要素として、いろいろな国際情勢もありますし、かなりのケースが考えられますので、一概にどうかということはお答えできません。

辻元委員 これは私が申し上げたんじゃなくて、法制局長官が先ほどそういう答弁をされましたので、それでお聞きしているわけですよ。

 そうしたら、違う角度からお聞きしたいと思いますが、中谷防衛大臣が、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合の掃海について、受動的かつ限定的な行為、性質上ですね。という答弁をされていますが、ここで言う受動的というのはどういう意味なんでしょうか。

中谷国務大臣 機雷を掃海する作業自体は、機雷を処理するということでありまして、これは通常の行動といたしましては、処理をするという意味では受動的であるというふうに思います。

辻元委員 ほかに、自衛隊の作戦行動で受動的、限定的と言っているものはありますか。(安倍内閣総理大臣「ちょっとよろしいですか」と呼ぶ)

 違う。

 ありますかと聞いている。ありますか、ほかの作戦行動で。今、機雷が受動的と、これは中谷大臣の答弁を私は引いて申し上げている。(安倍内閣総理大臣「もともと私の答弁だから」と呼ぶ)違う、違う、中谷さんもおっしゃっている。なので、ほかにあるかと。

 では、自衛隊法とか、いろいろ自衛隊の作戦行動を見ますと、ほかに自衛隊が受動的かつ限定的と言っている作戦行動は武器等防護なんですよ。そうしたら、機雷の掃海というのは、これは戦争の一環と見られていることと、武器等防護で受動的そして限定的と使っている、防衛大臣にお聞きします、これは全く違いますよね、概念が。それで、防衛大臣も、性質上、受動的、限定的とおっしゃっているんですよ。武器等防護と一緒ですか、機雷の掃海は。いかがですか。

中谷国務大臣 現行の自衛隊法においては、自衛隊の部隊に対して武力攻撃に至らない侵害が発生した場合に、我が国の防衛のために重要な手段である武器や装備品を防護するため、極めて受動的かつ限定的な必要最小限度の武器使用権限が定められているということで、九十五条は武器等防護という権限でございます。(辻元委員「だから、機雷の掃海と同じかと聞いている」と呼ぶ)

 機雷の掃海につきましては、受動的という意味におきましては、掃海自体は、あるものを処理する、これを敷設となりますとこれは私は受動的だとは思いませんが、あるものを処理するという意味においては、私は受動的という考えを持っております。

辻元委員 日本の同盟国は米国だとよく言われていますけれども……(発言する者あり)いや、中谷大臣がいつも同盟国だと。

 これは、アメリカの統合参謀本部の資料です。ここにちゃんと機雷作戦というのが出ているんですね、機雷作戦。これは戦争の一環ですよ、機雷作戦は。そして、この機雷作戦の中には、能動的なものと受動的なものがあるんです。そして、受動的なものは、脅威の特定とか、そういうのが受動的で、機雷の探索や、機雷の掃海や無力化、これは能動的行為なんですよ。それを、武器等防護と同じ受動的、限定的と。

 要するに、ホルムズ海峡の掃海を例外として、その根拠として受動的、限定的という言葉をずっとお使いになっているわけです。国際的に見たら通用しません。ですから、この言葉は今後お使いにならない方がいいと思う。能動的なんですよ。アメリカだって能動的と言っているわけですよ。

 それで、総理、なぜこれを言うかというと、機雷掃海というのは、今まで、湾岸戦争のときも、サウジアラビアは自分の領域に機雷が来るかもしれぬと掃海しました、停戦前に。あと、アメリカとイギリスなんですよ、だけなんですよ。これはどういうことかというと、戦闘当事国しかやっていないですよ。停戦前に行くということは、これは非常に危険度が高いんです。停戦後に行っても危険度が高いんです。

 ですから、これは、機雷の掃海だと行って、そして、相手から攻撃される可能性もあるわけです。もしも攻撃されたらどうするんですか、ミサイルで。そこから戦火が広がるんじゃないですか。

 そして、相手の、中東諸国も含めて、日本が機雷の掃海に行くということは、相手国から見れば敵国になるわけです。そうすると、私は、心配しているのは、日本国内や、日本人も敵国の国民になって、テロに狙われる可能性はふえると思いますよ。そして、自衛隊も任務がふえるわけですから、自衛隊員が死亡したり、被害が出る、このリスク、リスクの論理がありますけれども、ふえると思いますよ。

 ですから、受動的とか能動的とか、そんな言葉で言うのではなくて、そして、これは機雷の掃海、海の掃除に行くのと違うんです、軍事作戦行動の一環なわけです。ですから、日本人が、機雷の掃海に行ったことによって、世界じゅうでテロに狙われたり、日本国内もテロで狙われるということにもつながりかねないんです。

 なぜそのことを申し上げるかというと、総理はちょうど一年前のきょうの委員会で、大串委員の質問へなんですよ。「何らかの事態があり得ないというのは、それは全く、いわば現実から目を背けているダチョウの論理に近いわけでありまして、起こってもらいたくない論理は目を背けるということであります。」と。

 要するに、戦争というのはリアクションがあるんです。ちょっとだけよと言って行って、いつも大きな戦争に広がっていっているわけです。

 ですから、総理はこうもおっしゃっていますよ。(安倍内閣総理大臣「早く質問しろよ」と呼ぶ)絶対にないと言う政治家……(発言する者あり)

浜田委員長 控えてください、総理。

辻元委員 総理大臣が質問者に対して早く質問しろよと言って、御自身の答弁は延々とされてきたんじゃないですか。皆さん、そうでしょう。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 では、もう一度。時間が来ていますので、簡潔に願います。

辻元委員 答弁は結構です、もう。早く質問しろよと言う総理大臣に、今、もう答弁は結構です。

 私は、とても寂しい気分というか、情けない気分になりました。

 今、これは、人の生死とか戦争にかかわる話ですよ。ですから……(発言する者あり)

浜田委員長 静かにしてください。

 続行、辻元さん、質疑を。

辻元委員 私は先ほど、大げさなことを申し上げたのではないんです。実際に、この間ISILに二人捕まったり、邦人がテロに狙われているわけです。これは、世界じゅうで、例えば湾岸戦争などにちょっとでも参加している国は、非常にそこの国の国民が、誤解もありますよ、でも、テロに狙われたりする率はすごく高くなっている社会なんですよ。

 総理はこうおっしゃっています、起こり得るかもしれないことについて絶対ないと言い切る政治家は無責任。去年のきょう、ここでおっしゃったんですよ。

 ですから、起こり得るリスク、総理は目の前のことしか見ていない。その後に何が起こるかということをしっかり考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

浜田委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。初バッター立ちであります。

 まず、質疑に入ります前に、総理に一言申し上げたいと思います。

 今回の審議で、既に、答弁が長い、そして当ててもいないのに答弁に立つ。そして、今は何ですか、質問しろよと。反省の弁を求めたいと思います、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 指名権は委員にはありません。そのことをよく勉強した方がいいと思いますよ。指名権は基本的に委員長にあるわけでありまして、委員長がいわばこの委員会の議事進行を仕切るわけであります。指名権については委員長が持っているということは申し上げておきたい、このように思います。

 そのことを申し上げておいて、丁寧に答弁を私はしているわけでありますし、わかりやすく答弁をしているわけであります。

 その上において、先ほど辻元議員が、時間が来たのに延々と、延々と自説を述べて、自説を述べて、いわば私に質問をしないというのは答弁をする機会を与えないということでありますから、早く質問をしたらどうだということを言ったわけでありますが、しかし、言葉が少し強かったとすれば、それはおわび申し上げたいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 安倍内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。

安倍内閣総理大臣 まさに私は総理大臣として責任を持っておりますから、最終的に答弁をするのは私がやはり答弁をしなければいけないということで、再三手を挙げて委員長に指名していただこうと思ったわけでございます。そこで委員長から指名されたら答弁するのは、私は、委員会の運営として、議事運営については委員長が仕切るわけでありますから、当然のことではないかと思います。先ほどそういう趣旨のことを述べたところでございます。

 また、辻元委員につきましては、私としては、答弁によって国民に説明をしなければいけませんから、誤解を与えないように答弁をさせていただきたい、こう思っていたわけでございますが、言葉が過ぎたとすればおわびをしたい、このように思います。

緒方委員 民主党の持ち時間の範囲内なんですよね。総理が、さっさと質問しろとか、そんなことを言う権利ないですよ。反省を求めたいと思います。

 それでは、質問に入りたいと思います。

 これまで、他国の領土等における武力行使ということで何度も質疑がありました。今、辻元議員の方からもお話がありましたが、本当に、私も話を聞きながら、何が原則で何が例外なのかというのがよくわからない。本当によくわからなかったです。

 私が理解するところでは、基本的に海外派兵はやらない。やらないんだけれども、例外的に、あくまでも例外的に、新三要件にはまるものがあるのであれば、それはやる。そして、そのケースとして、それはホルムズでの機雷掃海である。そういうふうに理解しましたが、中谷大臣、これでよろしいですか。

中谷国務大臣 武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解しております。

 このような従来の考え方は、新三要件のもと、集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらず、新三要件から論理必然的に導かれるものでございます。

緒方委員 海外派兵が新三要件に当てはまらないというのは、これはきのうの質疑を聞いていて、二つのことを言っている人がいました。

 第一要件の存立事態に当てはまらないという人もいて、逆に、第三要件の必要最小限の武力を超えるものであるからだめなんだと、この二つを言っている人がいました。いずれですか。

中谷国務大臣 新三要件から論理的に導かれると思います。新三要件でございます。

緒方委員 大臣、物すごく私、簡単に質問したと思います。第一要件に当てはまらないからだめなのか、第三要件に当てはまらないからだめなのか、いずれですかと聞いています。

中谷国務大臣 三要件でございます。

緒方委員 ということは、海外派兵は、これがきのう岡田代表も使われたパネルですが、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されない。ここで必要最小限度を超えると書いてあるから、だから新三要件にはまらない、そういうふうに考えてよろしいですか、大臣。

安倍内閣総理大臣 これは、もう私は再三答弁をさせていただいております。

 ですから、いわば新三要件の三番目の第三要件は、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こう書いてあります。それはすなわち、そこからの論理的帰結として、海外派兵は一般に許されないということでございます。

 いわば第三要件においてそれは禁止されている、一般に禁止されているということは、繰り返し繰り返し答弁しているとおりであります。

緒方委員 ここまでは確認であります。

 これを見たときに、これは個別的自衛権であればこれでいいんですね。ここの武力行使の目的を持ってというところに、個別的自衛権行使の目的を持ってと。個別的自衛権行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されない。

 それは、個別的自衛権ですから、我が国に武力攻撃が生じたときに、その個別的自衛権を行使する目的を持って海外に、海外の領土、領海、領空に派遣することは、さすがにこれは憲法上許されないだろうということであります。

 けれども、ここで、もう一度、ここに、武力行使の目的を持ってのところに、集団的自衛権行使の目的を持ってと。集団的自衛権行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、自衛のための必要最小限度を超えないというふうに考えることができるんじゃないですか、大臣。

安倍内閣総理大臣 私が答弁してきたことでありますから私が答えますが、それは別に、それは書いてあるとおりでありまして、武力行使の目的を持って、これは私が再三答弁してきたことであります。

 それはいわば、個別的自衛権のための武力行使ということを申し上げたことは一回もございません。武力行使の目的を持ってということに尽きるわけでございます。

緒方委員 いや、武力行使にもいろいろなパターンがあって、集団的自衛権、個別的自衛権、そして例えば集団的安全保障と、いろいろなタイプの、武力の行使にも、違法な武力行使から、違法性阻却事由を満たす形での武力行使もある。いろいろな形の武力行使があり得るわけであります。

 集団的自衛権行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することについては、これは集団的自衛権行使の目的を持って行くわけですから、一般に自衛のための必要最小限度を超えないというふうに、むしろ文章的にそう読むことが可能じゃないですかと聞いているんです、大臣。

中谷国務大臣 武力行使でありますので、今回閣議決定したように、我が国に対する武力攻撃があった場合と、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃があって、我が国の存立を脅かし、また個人の権利を根底から覆すというような場合でございます。

緒方委員 もう一度言いますけれども、集団的自衛権行使の目的を持っているにもかかわらず、何で自衛のための必要最小限度を超えてしまうんですか、大臣。

安倍内閣総理大臣 いや、まさに武力行使は武力行使と素直に読んでください。もし武力行使の用語の解説が必要であれば、長官から詳しく御説明をさせていただきますが、まさにそこに書いてあるのは武力行使であります。別に、集団的自衛権の目的を持ってとか、個別的自衛権の目的を持ってなんというのは、一度も私は答えたことがないわけでございます。

 そこで、私として答えたのは、第三要件、つまり、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことの中において、そのことによって導き出される結論として、一般に海外派兵は認められない、こういうことであります。海外派兵は認められない、それはつまりということで、こういう説明をしているわけであります。

 そこで、例外として、先ほど来議論になっておりますホルムズ海峡の議論をしてまいりましたのは、まさにそこに機雷を敷設される、それを取り除くことは武力行使に当たり得る、そしてそれは集団的自衛権の行使にも当たり得る中において、三要件全てに当たれば、その機雷を取り除くこともあるわけでありますが、しかし、それは極めて受動的。

 なぜ極めて受動的かといえば、先ほど答弁させていただかなかったんですが、これはまさに、事実上、機雷を敷設するという武力行使ではなくて、事実上危険物がある、それを取り除かなければ我が国の艦船も航行できない、しかし国際法上には武力行使に当たり得るという中において、まさにまかれてしまったものを取り除くという、これは非常に受動的、かつ制限的に、制限的に行う。非常にこれは制限的になるということは、他国の領海や領空や領土になれば、非常にこれは慎重な判断になるということは、法制局長官も述べているとおりであります。

 非常に慎重になる中において、この行為については、かつ、実際のオペレーションとしては、事実上ですね、事実上、停戦合意が行われているような状況において行われるということにのみ、これは何が当てはまるかといえば、そういうことはあり得る。

 ですから、それは法理的にあり得るということを述べたわけであって、何でもかんでも法理的にあり得れば全部あるんだということでは、先ほど、まるで誤解を与えるような質疑があったから、私はぜひそういう答えをさせていただきたいということで、今お答えをさせていただいているところでございます。

緒方委員 よくわからなかったんですね。

 では、もう一度言いましょう。存立事態に当てはまるという用語を加えましょう。そして、集団的自衛権を行使するというのは、これはいろいろな形態があると思いますけれども、武力の行使であります。ここに置きかえるだけです。武力の行使のところを、集団的自衛権行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海に派遣するいわゆる海外派兵は、存立事態を満たすのであれば、存立事態に当たるのであれば、それは自衛のための必要最小限度を超えないんじゃないか、一般的にこういうふうに海外派兵ができるんじゃないかというふうに聞いているわけです。これは、では、中谷大臣。

中谷国務大臣 詳しくは法制局長官からお答えをいただきたいんですが、この場合は、武力行使の目的を持って他国の領土に行ってはだめだという文章でありますので、この場合の武力行使というのは、私は、一般的な武力行使だというふうに思っております。

緒方委員 一般的な武力行使と言われますけれども、武力行使は本当にいろいろな形態があるじゃないですか。

 個別的自衛権であればこの文章でいいわけですよ。個別的自衛権であれば、個別的自衛権行使の目的を持って武力した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、それは常識的に考えて、一般に自衛のための必要最小限度を超えるだろう、それは誰が考えてもそう思うわけですけれども、けれども、今回、集団的自衛権行使の目的を持ってということに、その目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、これは必要最小限度の範囲におさまってしまうというふうに読めるでしょうというふうに聞いているんです。

 何でそれが読めないんですか。読めない理由を言ってください。

浜田委員長 内閣法制局長官。(発言する者あり)

 一旦整理させていただきます。

 では、内閣総理大臣安倍晋三君。

安倍内閣総理大臣 これは非常に簡単なことなんですけれどもね。非常に簡単なことなんですけれども、三要件に反したら武力行使できません。これが全てであります。そして、その中の三要件目に、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことと書いてあります。

 そして、それはつまり、一般に海外派兵はできないということを明確にしているわけでありますから、一般にということは、ほとんどこれはだめだということであります。

 その中で、では、一般にというのであれば、例外があるかという中において、念頭にあるのは、事実上、ホルムズ海峡における機雷封鎖がされた場合に受動的、限定的に行う。しかも、それは、機雷の掃海作業をする上においては、戦闘行為が行われていたらなかなかできませんから、そういう状況の中においてやる。

 つけ加えれば、近年において、機雷掃海からいわば戦闘に発展した例はございません。先ほど、機雷掃海をすれば戦闘に発展するような議論がございましたが、そういう例は近年にはないということははっきりと申し上げておきたいと思います。

緒方委員 であれば、今回の新三要件の中で、存立事態に当たるような事態が起こったとしても、それを解消するための手段が、海外派兵をしなければ解消できないのであれば、日本は何もしないということですか、大臣。

中谷国務大臣 憲法上の理論で申し上げますが、他国の領域における武力行動であって新三要件に該当するものがあれば、まさに憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではありません。

 この点を含めて、海外派兵について、従来からの政府の立場は、新三要件のもとでも一切変更するものでもありませんし、また、ホルムズ海峡における機雷は、他国の領域における武力行使に該当しますが、新三要件に該当する場合には……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 外国の領域で武力行使を行うことは憲法上容認されるということでございます。

緒方委員 済みません、もう一度聞きます。

 第一要件に当てはまる事態が起きたとしましょう。第一要件の、存立事態に当てはまるような事態が起きたとしましょう。けれども、その事態を解決するために、このような海外派兵をしない限りその事態が解消できないときには、日本は何もしないということですね、大臣。

安倍内閣総理大臣 これは当然、当然、我々は憲法違反な武力行使はしません。それはまずはっきりと申し上げておきたいと思います。

 そこで、いわば一般に認められていないわけであります。一般に認められていない海外派兵の中で、例外的にホルムズの例を挙げました。これは第一要件にも当てはまり得ると考えておりますが、しかし、それは、国際情勢を見なければ、当てはまるかどうかということはわかりません。

 それ以外の事態が果たしてあり得るかということについては、今、私の念頭にはないわけでございまして、第一要件が起こるということは、事実上、多くは、我々に対する武力攻撃が発生した我が国事態がほとんどであろうと思いますが、しかし、それ以外において海外に派兵しなければいけない、それは第三要件に当てはまらないということであれば、いわば武力の行使はしないのは当然のことであります。

緒方委員 存立事態に当たったとしても、それは、今、ホルムズの話をされました。

 きのう、質疑を聞いておりましたら、高村正彦さんとの関係で、中東における限界事例だということを言っておられましたが、このホルムズの事例というのは、中東のみならず、世界全体を見たときでも唯一の例外事例だということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 今想定し得る、念頭にあるのは、なぜホルムズかといえば、あそこを通って八割の石油が入ってくる、多くの天然ガスが入ってくるわけであります。あそこがいわば封鎖されれば、かつて、あそこは封鎖には至っていませんが、イラン・イラク戦争のときですら三倍ぐらいに油価は上がったわけであります。

 しかし、経済的な理由だけでは私たちは三要件に当たるとは解していないということは、もう累次御説明をしているところでございますが、今念頭にあるのは、いわばホルムズの機雷封鎖に対する対応ということしか今は念頭にない、こういうことでございます。

緒方委員 ホルムズ海峡の件は、想定し得る限り、現時点ではそれが唯一の限界事例ということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 安全保障においては、これが全てだと言うことは差し控えた方がいいと私は思っておりますが、今念頭にあるのは、再三再四申し上げてきたように、ホルムズの例である、こういうことでございます。

緒方委員 では、例えば南シナ海にこの封鎖に近いような状態が生じたとき、これは存立事態ですか、大臣。

中谷国務大臣 御指摘の場合が新三要件に当たるかどうかにつきましては、慎重に判断していく必要があると思います。

緒方委員 あり得るということですね。

中谷国務大臣 どのような場合にどのような武力行使が想定をされるのか、実際に発生した実態に対して、個別具体的な状況を照らしまして総合的に判断をする必要がありますので、あらかじめ困難でございますが、外国の領域における武力行使については、機雷の掃海のほかに、現時点で具体的な活動を念頭には置いていないということでございます。

緒方委員 南シナ海でも機雷の掃海というのがあり得るということですかね。

中谷国務大臣 先ほど前段で言ったように、いろいろな、状況把握は、要素が加えられて判断いたしますので、その場所の地点をもって言えるということではございません。

緒方委員 そう考えてみると、今の答弁だと、今想定し得る限りは、具体的にはホルムズ海峡だけだと。

 けれども、これは国際情勢によっていろいろあるかもしれないということで、具体的なことを言わないということでありましたけれども、これはホルムズ海峡のみならず、世界じゅう、例えばシーレーンの、長いシーレーンのありとあらゆるポイントのところで、この機雷の掃海に当たり得る、それに相当するような事態が起これば、それは存立事態ということでいいんですよね、大臣。中谷大臣、中谷大臣。(発言する者あり)

 当てていないですよ。大臣。総理、やめてください。総理、さっき言ったじゃないですか。

浜田委員長 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 いや、委員長から指名されました。だって、委員長から指名されたんですから。(発言する者あり)いや、委員長に指名権があるというのは、これは委員会の基本だと思いますよ。

 そこで、お答えをいたします。

 なぜホルムズ海峡かといえば、あそこはまさにぎゅっと締まっていまして、ここを八割のいわば日本に来る石油が通るわけであります。今挙げられている南シナ海のどこかということでありますが、これは基本的に迂回できる、多くは迂回ができるわけでございまして、ホルムズ海峡のような集中している海峡ということは想定しにくいというふうに考えるわけであります。

 それに加えて申し上げますなら、なぜ中谷大臣から、特定の地域について一々お答えすることは差し控えたいということは、これは、今特定の地域について、アジア太平洋地域については、外務省におられたわけですから御理解いただけると思いますが、これは直ちに関係国との関係もあるわけでございますし、それと、やはり安全保障ということについては万全の備えが必要でありますから、現在においては、今私の念頭にあるのは、ホルムズ海峡が封鎖された際だけだということにとどめさせていただきたいと思います。

緒方委員 隣国でもあり得るかもしれないんだけれども、外交関係をおもんぱかる余り、口にするのが今ははばかられる。だけれども、隣国でもあり得る、日本の近隣でもあり得る、近傍でもあり得るということを言われたということですか。

安倍内閣総理大臣 いや、私が何と言ったかということを正確に聞き取っていただきたい、このように思いますが、基本的には、今申し上げましたように、ホルムズ海峡の場合は、あの狭い海峡を八割の、いわば日本にやってくるうち八割の石油があそこを通過するわけでありまして、あそこを封鎖されてしまったら、あそこ以外には出口がない、いわば迂回路がないということを申し上げているわけでありまして、南シナ海において、南シナ海のどこが封鎖されるかということについてはおっしゃってはおられませんが、しかし、迂回が、いわば石油においても、これはさまざまな迂回路ということはあり得るのではないかというふうに私は考えるわけでございます。

 しかし、基本的には、一々地域においてそれを今断定的に申し上げることは差し控えたいと思いますし、これから一々さまざまな地域について答弁していくことは外交上にも差しさわりもあることでありますし、基本的に、安全保障上の対応というのは、これは事細かに事前に設定してしまって柔軟性を全て失ってしまうということは避けた方がいいのではないか、このように思うところでございます。

緒方委員 国民の皆さん方に、この議論がリアリティーがないんですよね、ホルムズ海峡の話ばかりで。しかし、存立事態というのは恐らくこの日本の周辺でも起こるだろう、存立事態というのは起こるだろうと。その議論をしないから、そして日本からすごく遠く離れたホルムズ海峡の話でわあっと盛り上がっているから、だから国民にリアリティーがなくて、それで、存立事態というのは何なんだろう、集団的自衛権というのは何なんだろう、その疑念があるからこれを聞いているんです。

 総理、今、この集団的自衛権の議論はとても重要ですよ。けれども、国民の大半はわからないと言っている。わからないと言っている。そして、現実感がないと言っている。やはり日本を守るためにやっているんだろう、恐らく日本の周辺でもあるだろう、そう思っているからこの議論をしているわけでありまして、そして国民の大半の人はそう薄々感じている。

 一つ一つ事例を挙げて言っていただく必要はないですけれども、けれども、この存立事態というのは日本の周辺でも十分に起こり得ると、これだけ答弁ください、総理。

安倍内閣総理大臣 存立事態はまさに日本の周辺で十分に起こり得るわけでございまして、公海上で日本の警戒の任に当たっている米艦に対するミサイル攻撃があったというときにおいて自衛艦がそのミサイルを撃ち落とすということ、これはまさに典型的な例としての存立事態における集団的自衛権の行使であります。もちろんそれは三要件に当てはまっていくということが前提でございますが、それは十分にあり得るということでありまして、機雷封鎖だけではもちろんないわけであります。

 機雷封鎖においては、いわば領海等に入っていくということの例外事例として挙げさせていただいたということでありまして、日本の周りが機雷封鎖されれば、日本が機雷封鎖されれば、これは我が国事態ですから、我が国に対する武力攻撃でありますから、これはまさに個別的自衛権の世界に入っていくんだろう、このように思います。

緒方委員 日本の周辺で起こるものでも、海外の領海に入って、海外の領空に入って、領土に入って行使するものがありますよね。海外の、外国の領海、領空、領土に入って、そして集団的自衛権を行使すること、武力の行使をすることも大いにあり得ますよねということを聞いています、総理。

安倍内閣総理大臣 それは、大いにはないということはまず申し上げておきたいと思います。

 それと、繰り返し答弁をしておりますが、第三要件に必要最小限度の実力行使にとどまるべきことと書いてありまして、この第三要件から導き出される論理として、まさに論理的帰結として、一般に海外派兵は認められていないということでありますから、日本の近傍においてもそれは当然のことでありますし、それは、その中で何かあるか、例外的に何かあるかと言われても、今念頭にあるのはホルムズ海峡であるということを申し上げたわけでございます。

緒方委員 それでは、質問をかえてみたいと思います。

 昨日の議論の中でリスクの話がありました。昨日、ございましたね。中谷大臣が言われたことというのは、本法案によってもリスクは変わらないということを言われたんですか。いかがですか。

中谷国務大臣 今も自衛隊の任務にはリスクがあります。これからもリスクを有します。この法律の整備によって、そのようなリスクにおきましては極小化をして任務をさせるという趣旨を述べたものでございます。

緒方委員 リスクは変わらないということですか。もう一度お答えください。

中谷国務大臣 私は、今回の法整備によってリスクは増大するものではないという意味で申し述べております。

緒方委員 リスクというのは二つの要素から主に成り立っておりまして、リスクというのは、その危害の大きさ、英語でハザードと言いますね、それと、それが起こる可能性、この二つの要素から成り立っています。

 つまり、例えば飛行機というものが何でリスクが低いと言われているかというと、飛行機が例えば墜落したときに起こるその危害の度合いというのは物すごく高いけれども、だけれども、可能性が物すごく低いから、だからリスクが低いと言われている。そうですね。

 そうすると、今回、新たな任務が加わった、新たな任務が加わったことによって、この危害の度合いと可能性がそれぞれ動くはずです。

 私は、今回の法案が通ったことによって、例えば自衛官の方々が恒久法によってかなり戦場に近いところまで行く、さらには、改正PKO法によって安全保護業務をやる、そういった幾つかの事例を挙げるだけでも、恐らく、起こり得る危害の度合いというのは上がるというふうに思っています。

 にもかかわらず、リスク全体が同じだ、上がらないと。その理由は何ですか。

中谷国務大臣 今、飛行機の話をされましたが、同じフライトでも、リスクが高い場合もあれば低い場合もありまして、その中で操縦者は的確に判断しながら操縦を行うということでございます。

 今回、確かに種類はふえます、活動地域も広がります。そういう意味におきましては、リスクはないとは言いません。

 しかし、私が申し上げたのは、今回、法律をつくる際に、与党でも慎重に議論をして、安全対策、派遣される隊員の安全措置、そういうことも法案に盛り込んでいますので、派遣する際におきまして、この法案が成立すればリスクは増大するものではないと申し上げたわけでございます。

緒方委員 お答えになっていなかったんですけれども、危害の規模と可能性を掛け合わせて、これでリスクができ上がっているんです。そうである以上、何も変わらない、リスク全体が変わらないというのであれば、これがどう動いて、それで変わらないというふうに見ておられるのか。

 少なくとも、今回の法案ができたことによって新しいミッションが加わって、そして、可能性として起こり得る危害の度合いは間違いなく上がっているはずです。そうである以上、もしこれでリスクが変わらないというのであれば、それが起こる可能性が減っているということですね。本当にそう言えますか。

中谷国務大臣 リスク論というのはいろいろあります。派遣される隊員のリスクもあれば、国のリスクもある。

 一つ言えるのは、この安全保障の法案というのは、国のリスク、国民のリスクをこれは縮小させるということです。その中で、自衛隊はいろいろな活動をいたします。また、日米関係も強化するように努めてまいります。

 そういうことで、総合的に隊員のリスクも考える必要もあるわけでありますが、私が言いたいのは、確かに、量的にいろいろなメニューが入っておりますので、そういう意味においてはリスクがないとは申し上げませんが、派遣する段階において、数々の安全対策や、また派遣に対する準備、また訓練や装備、これなども講じておきますので、隊員を派遣する上において、この法案の数々の条項によってリスクが増大することはないということでございます。

緒方委員 若干、一部希望的観測が入っているんですよね。

 けれども、リスクというのは客観的に判断をしなきゃいけない。起こり得る危害のその水準と、それが起こる可能性なわけですよ。それが変わらない、少なくとも上がることはないと大臣は言われましたね。上がることはない、増大することはないと。けれども、起こり得る危害の度合いは確実に上がるわけですよ。そして、誰が見ても、それが起こる可能性も上がっているはずなんですよ。

 それがそうでないというのであれば、その理由を言ってくださいとさっきから言っているんです。

中谷国務大臣 派遣する者にとって能力以上のものをやらすことはいたしません。

 今でも自衛隊の任務の中に相当難易度の高い高度な任務があって、それにもかかわらず隊員が実施ができているということは、それなりの準備をし、また装備を構え、やらせております。

 したがって、今でもこういうリスクがある中で、例えば昨年の御嶽山の救助のように、もうぎりぎりの状況でやるかやらないか、これはやはりリスクに対する判断でありまして、今回確かにメニューがふえるかもしれません、しかし、やるかやらないかにおいては、今まで同様の判断をして、隊員が安全に活動し得るかどうか、こういうことを担保して派遣をするということでございます。

緒方委員 メニューはふえたけれども、メニューはふえたけれども、だけれども、その全体の量については選ばせてもらうみたいな言い方をされましたね。

 全体としての量が、活動の量がふえないということですか。

中谷国務大臣 いかなるときに対応をするかということは、そのときの状況もありますし、また自衛隊側の状態もありますし、そういう中で最善の措置をして派遣をするということでございます。

緒方委員 危険な任務がふえるという認識でよろしいですか、大臣。

中谷国務大臣 メニューはふえます、確かに。

 しかし、それがどういうミッションであるのか、それは十分に検討して、本当に自衛隊はできるのか、そういう判断をして、また、やる必要があるのか、これも当然判断をした上で、安全についてもしっかりこれは配慮をして派遣をする。そして、最終的には国会で御判断をいただきますので、そういった国会の承認がいただけるような体制を講じて出すということでございます。

 任務につきましては、いろいろなメニューがあります。そしてリスクについても、それぞれリスクはございますが、それぞれの中で判断をしていくということです。

緒方委員 一般的な危機管理、クライシスマネジメントというのは、リスクを計算して、そしてそれに基づいて対策を練るわけですよ。リスクが低いという前提で対策を練るときと、リスクが高いと思って対策を練るときに、大きな違いがあるんですよ。

 今のような大臣のリスク認識で、それで対策を組んでしまったら、自衛隊員の命が危ういじゃないですか。安全神話じゃないですか。大臣、おかしいでしょう。もう一度答弁ください。(発言する者あり)

浜田委員長 中谷防衛大臣。

 静粛に願います。

中谷国務大臣 今回の法案を作成する際は、与党での議論を踏まえて、特に隊員の安全、これについては、もう再三再四、何度も何度も政府と調整をした上でつくりました。

 したがって、隊員の安全に対する事項、項目、そして、送り出す側の防衛大臣の留意事項、また、しなければならない点、そういうことを勘案して法案をつくったわけでございます。

緒方委員 逆に、それだけレベルの高い安全措置を講じたと言っておられる。ということは、あくまでもそういう安全の措置というのは、リスクを見た上でそういうものをつくるわけです。結果から見ていけば、そういったレベルの高い安全措置を講じたということは、リスクが高いことの裏返しでしょう、大臣。

中谷国務大臣 リスクが高い低いと申し上げますが、現在の自衛隊の任務というのは、我が国を守る任務を持っております。有事に際しては、隊員は命がけで行動するんですよ。そういうリスクがあるんです。今でもそういう中で活動しております。

 ですから、今回の対応においても、確かに新たな分野はふえるわけでありますが、そういった任務を行う際においても、隊員の安全には十二分に検討し、また措置を講じたということでございます。

緒方委員 大臣、リスクを本当に認めた上で、その上でしっかりと隊員にも、そして国民にも説明していくことが、これが防衛大臣の責務ですよ。

 隊員に何と言うんですか。いや、皆さんがこれから行くところは、これまでやっていたミッションと何のリスクも変わらないと言うんですか、大臣。

中谷国務大臣 何度も申し上げますが、リスクがないとは申しません。当然あります。今でもあります。そして、新たな分野におきましてもリスクはありますが、そういった中でも隊員が安全に活動できるような、そういう措置、項目、そういったことを盛り込んでおりますし、また、実際派遣するときは、十分に準備をして、訓練をして、そして、本当にできるかどうか最終的に判断をして決定するわけですから、そういった部分における対応等を踏まえて考えます。

 申し上げますが、リスクはあるわけであります。

緒方委員 極めて不誠実な答弁だと思います。

 本当にそういった、リスクがあります、これからもありますじゃなくて、その前後の上がっているか、上がっていないかということを聞いているんです。それが今と変わらないということであれば、一人一人の隊員の心の中に、いや、きっとこれは上がると思うよと。テレビを見ても、いろいろな有識者が当然リスクが上がるでしょうと言っている。しかし、大臣の答弁では変わらないというふうに言っている。(発言する者あり)

浜田委員長 静かに、静かに。

緒方委員 それは、隊員の心の中に、隊員の心の中に迷いを生じさせるというふうに思いませんか、大臣。

中谷国務大臣 今でもPKOに活動しております。PKOは、これはいろいろなPKOがあって、非常に危険なPKOもあれば、各国が多く参加しているPKOもある。同じPKOの中でも千差万別ありますが、自衛隊が南スーダンで活動しているPKO、派遣しておりますが、防衛省としましても、隊員の安全はもう常々考えながら活動させております。

 今回も新しく、メニューとしては、項目としてはふえるかもしれませんが、これを派遣する際においても十二分に安全に留意をして派遣をするということでございます。

緒方委員 最後、時間が限られておりますので、もう一個、別のリスク論についてお聞きしたいと思います。

 今回の法案が実行されるときに、自衛隊員が外国で人を殺傷するリスクというのは高まりますか、大臣。

中谷国務大臣 我々は、安全ということに留意をして派遣をいたします。

 それぞれ御質問をいただいておりますが、新しい重要影響事態にしても、また国際平和支援法にいたしましても、これは戦闘行為を行うものではございません。あくまでも後方支援でございまして、そういった事態においては活動を中止、中断するなど、そういった事態に至らないように避けるということでございます。

緒方委員 改正PKO法でも、任務遂行型の武器使用が行われる、そして、ただ、危害を加えることができるのは正当防衛と緊急避難だというふうに書いてありますね。

 ただ、行く国によっては、私は、アフリカに住んでいたことがあります、そして、アフリカで今PKOが出ているマリという国を担当していたこともあります、さらには、自分自身が外務省に勤めているときに、まだかなり紛争地域であるタジキスタン、アフガニスタンにも行ったことがあります。現場の雰囲気はわかるんです。町中に銃があふれている、そして非常に不穏な空気が流れている、そういうところに行く。

 それは、自衛隊員にとっても、自衛隊員自身が負うリスクは、これは自分の肌感覚として高まるだろう、そう思っているし、仮に、ここに安全保護ということで今回法律に書いてありますけれども、治安維持に出ていけば、治安維持というのは格好いい言葉だけれども、だけれども、実際やることというのは相当に危ないことをやらなきゃいけない。そこで、緊急避難さらには正当防衛ということであれば、相当な自衛隊員が負うリスク、さらには自衛隊員が人を殺傷する蓋然性、可能性、そういうものが高まるだろうというふうに思うから、大臣に警句を鳴らしているんです。

 大臣、この件、本当に国民は心配していると思います。また今後質問していきたいと思いますので、本日はこの場で質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 維新の党、江田憲司でございます。

 維新の党も、安全保障環境の変化、特に核・ミサイル技術の進展、武器技術の発達等々によって、通常兵器しか持たなかった時代に比べて軍事オペレーションは大きく変容してきたわけですから、それに応じてしっかり国民の生命財産を守る、領土、領空、領海を守る、これは政治家の一番の責務だというふうに思っております。

 ただ、この安保法制につきましては、どの世論調査をしても、多くの国民の皆さんが不安や疑念をお持ちだ。この七十年、平和国家として歩んできた平和国家日本、さらには専守防衛という国是、こういったものがこの法案によって根底から揺るぐのではないか、揺らぐのではないか、こういう不安だと思います。

 維新の党は、膨大な法案ですから、十分な国会審議を通じて徹底的に問題点を洗い出して、そして反対だけの反対はしませんから、しっかり対案を、我々維新の考えを国会審議を通じてお示しして、自衛隊の海外活動、海外派遣についてはしっかりと歯どめをかけて、平和憲法の趣旨、専守防衛という国是という点に照らしてしっかり歯どめをかけるということで、国民の皆さんの不安を払拭していきたいと思うんです。

 そして、その際、これは憲法論争ですから、法律論争ですから、私は情緒的な議論は一切いたしません。政府の皆さんがよく言われるように、これまでの憲法解釈との論理的整合性、さらには最高法規たる憲法の法的安定性、こういった観点からしっかり憲法論議、法律論議をしていかないかぬ。

 これは、法律論議と言う場合に、国際法も含めた法律論議をしていく。その場合は当然、集団的自衛権についての有名な判決、国際司法裁判所のニカラグア判決、さらには国際法学界の通説、そういった考え方にのっとって、日本でしか通用しないような議論は絶対してはいかぬ、これは。これはもう、集団的自衛権、個別的自衛権というのは国際的な概念ですからね。

 きょうは、そういう意味での論理的整合性や法的安定性という観点から私なりに質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、このパネルをごらんいただきたい。

 これは、もう累次政府の皆さんが御答弁をされている、国民の幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険とはというのは、国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様の深刻な重大な被害が、戦禍、犠牲ともおっしゃっていますけれども、及ぶことが明らかであると。

 二で、これが私はポイントだと思っているんですが、第二項で、これは他に適当な手段がないというところだけよく引かれますけれども、そうじゃなくて、この第二項のポイントはあくまでも、我が国の存立を全うし、国民を守るためにということで、ここで、安倍総理もよく言われるように、これは他国防衛ではなくて自国防衛なんだ、日本の防衛なんだというふうにおっしゃいますよね。であれば、私が理解するところの国際法の常識では、これは個別的自衛権だと言わざるを得ないんです。

 それで、ちょっとおもしろいと言ったら語弊があるんですが、昨年七月、閣議決定をされたときの総理の会見では、こんなことをおっしゃっているんですね。この八ページに及ぶ閣議決定文の中で、集団的自衛権という言葉はたった一カ所しか出てこない。しかも、主文のところじゃなくて、判決でいえば傍論的なところに、「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。」というふうに書かれているだけですね。

 加えて、安倍総理はこうおっしゃっているんですね、会見で。集団的自衛権が現行憲法のもとで認められるのかといった観念論ではなく、それから、新三要件は、今までの三要件と基本的考えはほとんど同じですというふうに言われている。

 ですから、どうして安倍総理、これが集団的自衛権の限定要因になるんでしょうか。ちょっと私にわかりやすく説明いただけませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 個別的自衛権とは、一般に、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することが正当化される権利をいい、そして、集団的自衛権とは、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利をいう、このように解されてきております。

 日本国憲法のもとで、我が国による自衛の措置として武力の行使が許容されるのは、あくまで三要件が満たされる場合に限られるわけでございますが、そこで、今、江田委員は、そこにおいては、いわば第一要件、第二要件において、第二要件においてもそうなんですが、第一要件において、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険と書いてあり、そして、他にこれを排除するに、国の存立を全うし、そして国民を守るために他に適当な手段がない、こう書いてあるから、これは個別的自衛権ではないかという趣旨の御質問だと思います。

 しかし、現象として、我が国に対する武力攻撃が発生していない。そして、目的が、いわば事実上、もちろん我が国の存立のために行う武力行使であったとしても、現象としては、我が国に対して武力攻撃が発生していなくて、他国に対する、密接に関係ある他国に対して武力攻撃が発生している以上、国際法的には、これは集団的自衛権としての行使を行わなければ、個別的自衛権としては行使できない、このように我々は理解しているところでございます。

江田(憲)委員 今安倍総理がおっしゃったことは、まさにこれまでの日本政府がとってきた解釈でありまして、これがいかに国際法的に言うと必要以上に狭く解していた、日本特有の解釈だったということをちょっとこれから御説明したいと思います。

 国際法上の学説がありまして、一番目が通説。これがニカラグア判決が採用している、国際法学界でも通説ですけれども、集団的自衛権というのはあくまでも他国を防衛する権利だ。これはあたかも刑法、国内法でいえば刑法の正当防衛のところを読んでいただければわかりますが、これは、自己または他人を防衛する権利として正当防衛なんですね。したがいまして、これが集団的自衛権なんですよ。

 今、総理がおっしゃったのは、実はこの二なんですね。少数説。死活的利益防衛説というのがありまして、これは他国への武力攻撃の結果、自国の死活的利益が害された場合に行使できる、これを集団的自衛権だと解するのがこの第二説なんですが、これは、残念ながら少数説なんですね、通説じゃないんです。だから、今回の存立危機事態に書いてある要件というのは、まさにこの二を体している。よく似ているんですね、これは。ホルムズの問題だってそうでしょう。

 ですから、要は、この二説を採用して集団的自衛権だ自衛権だと言うのは、これは間違っているというのは一点申し上げたいと思います。

 こういう学説、通説に基づいて私は議論しております。

 それで、国際法の概念は、簡単に言うとこういうことなんですね。自国を守るための権利が個別的自衛権、他国を守るための権利が集団的自衛権。

 国際司法裁判所というのは、御承知のように、言うまでもなく、国際法の有権解釈をする唯一の機関ですから、これに異を唱えることは日本もできない、日本政府といえどもできないわけであります。

 それで、わかりやすくかどうかわかりませんが、こういうことなんですね。このパネルを見ていただくように、日本政府は、いろいろな事情はあったんですよ。私も政府にいましたからね。やむを得ない事情で、自国が攻撃されたか、他国が攻撃されたかという現象面を捉えて、自国が攻撃された場合は個別的自衛権、他国が攻撃された場合は集団的自衛権と言ったんですが、国際法的、司法裁判所的理解は、他国が攻撃されたといっても、結局それが自国を守るために発動されるものであればそれは個別的自衛権だというのが、これは確固とした国際法上の解釈なんですよ。

 以上のように、これは、安倍総理、私も、湾岸戦争、PKO法案で三日三晩徹夜したときも官邸におりました、国会への対応として。周辺事態法のときも、橋本龍太郎総理は非常に御熱心で、執務室に外務官僚、防衛官僚を呼び入れて、逐条でやりました。私も携わらせていただきました。

 なぜこういう日本政府の解釈になってきたかというと、それは、一番大きいのは憲法解釈ですよ。

 私は、大学時代、芦部信喜先生という、宮沢俊義先生、憲法の大家の一番弟子で、憲法の大家、芦部信喜先生に憲法学を教えてもらいましたけれども、今でも憲法学界の通説は、自衛隊は違憲ですからね。文言解釈上は違憲だというのが通説なんですね。それは安倍総理には釈迦に説法ですけれども、二項で戦力不保持や交戦権の否認がある。ですから、形式文言的なところは、私も、自衛隊というのはこれだけ国民に定着して、愛されて、しかもリスクをとって頑張っていただいている、こういうところをちゃんと位置づけていかなきゃいかぬと思っていますけれども、しかし、結局違憲だというところを、戦後の歴代内閣が知恵を絞って、必要最小限の自衛の措置だということでやってきたわけですね。

 ですから、こういう国際的な相場観からすると、スタンダードからすると、大変狭く解釈してきたということはやむを得ない面もあったと私は思っているんですね。

 ですから、維新の党というか、私は、今までの憲法解釈との論理的整合性というのであれば、最高法規の憲法解釈、憲法の法的安定性というのであれば、やはり今までとってきた、個別的自衛権は必要最小限認めるけれども集団的自衛権は認めないというその法理、この論理的整合性を逸脱しちゃ絶対だめだと思っているんですよ、絶対、絶対。

 その限りにおいて、我々維新の党は、個別的自衛権を必要以上に狭く解していたところを、さっき申し上げましたね、核・ミサイル技術の進展とか軍事オペレーションの変容によって、通常兵器しかない時代とは格段に変わっているわけですから、そのための万全の措置をとるために個別的自衛権の範囲を国際標準に合わせて適正化をするということで、辛うじて、今までの憲法解釈との論理的整合性を図っていくということなんです。

 それで、次、私が言っていることが維新の党だけが言っていることじゃないということで、よく私が引用させていただくのが、東大大学院の国際法の権威である中谷教授が書かれた見解なんですね。

 端的に言えば、現在のそういう軍事オペレーション下においては、個別的自衛権と集団的自衛権というのはくっきりはっきり区別できないんだ、通常兵器の時代には分かれていた概念が、一部その外縁が重なる部分があるというのが中谷教授の見解です。

 ここに書いてあるように、まさに安倍総理もよく例を出される、例えば、日本を守るために、あるいは警戒監視のために日本海に派遣されていた、例えばイージス艦、これに対して朝鮮半島から短距離ミサイル砲が放たれて当たったというときに、これは同時にノドンミサイルも二百発以上、これはもう、こういうアメリカのイージス艦を攻撃するということは、とりもなおさず在沖米軍から猛烈な反撃を受けるというのは当然発射した方にもわかっているわけですから、ノドンが二百発以上向いているとなれば、同時に発射するか、もしくは後に発射される蓋然性が極めて高いというふうに判断せざるを得ないんです、危機管理の責任を持つ総理大臣としては。

 ですから、これは、ちょっと次の図を絵で描きましたので、今の説明をわかりやすく言うと、確かに通常兵器の時代は、例えば対艦砲しかなかった、大砲しかなかった。それが、例えばアメリカの艦船が日本海に浮かんでいるとしましょう、そこのアメリカの艦船に大砲の弾がぼんと当たった。しかし、その弾は日本には届くはずがない時代ですから、この米艦船を守りに当時の日本の軍隊、戦前でいいですよね、守りに行くのは、これは明らかに集団的自衛権です。

 しかし、今、核・ミサイルの時代で、さっき言いましたね、短距離ミサイルで例えばアメリカのイージス艦が攻撃をされる、そうすれば、同時に、あるいはすぐ後に、ノドンで、日本本土に届くミサイルが二百発以上あると言われているわけですから、当然、日本本土に対する武力攻撃が切迫しているとも言えるわけです。

 これは、現象面だけ見れば、米艦船を守りに行くのは集団的自衛権の行使とも言えるし、一方で、それは日本を守るための、武力が切迫したときの、ある意味で米艦船への攻撃が日本への武力行使の着手だとみなして、それでそれに応戦するのが個別的自衛権の行使だとも言えるわけです。

 これは、実は秋山法制局長官時代に法制局の答弁があって、二〇〇三年五月十六日の衆院安保委員会の秋山法制局長官の答弁を読み上げますと、我が国を防衛するために出動して公海上にある米国の軍艦に対する攻撃が、我が国に対する武力攻撃の端緒、着手として判断されることがあり得ると。これはもう政府見解として出ているわけでございます。

 ですから、私どもは何を言いたいかというと、我々はあくまでも、従来の憲法解釈の論理的整合性を図るために、個別的自衛権は認めるという中の枠組みはしっかり歯どめとして維持した上で、その個別的自衛権の範囲は、当然、武器技術の進展、軍事オペレーションの変容によってこれは変わり得る、現代的に。それは何よりも国民の生命財産を守るために必要なんですから。

 武力攻撃が切迫している、切迫していないという判断も、さっき言ったように、対艦砲しか持っていない時代と、今、核ミサイル、弾道ミサイルを持っている時代と、全然その切迫判断は変わってくるわけですから、それに対して自衛権を行使するというのは、座して死を待つわけにいきませんからね、こういう時代に。ですから、それは我々は個別的自衛権の行使だという理解をして、これからは認めていこう。

 ただし、それは、輪っかで描きましたけれども、我々はあくまでも個別的自衛権の範囲で認めるんだけれども、それは一見、一見、今までの政府の必要以上に狭い解釈からすれば集団的自衛権にも踏み込んだと見られるようなケースかもしれません。だけれども、しかし、我々はあくまでも個別的自衛権の範囲内で認めるということで、これまでの憲法解釈の論理的整合性、さらには最高法規たる憲法の法的安定性を確保するという立場なんです。

 私は非常にロジカルに説明させていただいたと思いますけれども、安倍総理、ロジカルにもし反論があればお願いします。

岸田国務大臣 それでは、まず私の方から答弁させていただきます。

 御指摘のように、国際法の世界においては、集団的自衛権の性質について種々の学説がある、そのとおりでありますが、まず、我が国としまして、そのさまざまな学説の中で特定の学説を支持しているというわけではありません。

 そして、我が国の立場ですが、国連憲章上、個別自衛権とは、一般に、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することが正当化される権利といい、集団的自衛権とは、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利、このように我が国の立場を説明しております。

 そして、憲法との関係について御指摘がありました。日本国憲法のもとで、我が国による自衛の措置として武力行使が許容されるのは、あくまでも三要件が満たされる場合、国民の命や平和な暮らしを守るために他の手段がない、そして必要最小限度のもの、こういったものに限られる、こういった整理をさせていただいております。

 そして、その武力の行使が認められる範囲を国際法上説明するとしたならば、個別的自衛権で説明される部分もあり、そして、一部集団的自衛権として説明される部分がある、こういった説明をさせていただいています。

 そして、集団的自衛権と個別的自衛権、この区別ですが、先ほど申し上げました我が国の立場に立っておりますので、個別的自衛権は、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する、集団的自衛権は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止するということで、自国に対する攻撃がある、ないで、これは明らかに線が引かれております。

 こうした個別的自衛権と集団的自衛権の線引き、これは極めて大事だと思います。なぜならば、個別的自衛権を必要以上に拡大するということになりますと、他国の要請を受けないのに武力行使に踏み切る、こういった事態にもつながりかねません。

 このように、我が国としましては、集団的自衛権と個別的自衛権、先ほど申し上げました解釈に立って、明らかに線を引き、今申し上げましたような点においても不都合が生じないように、厳密に運用するべきであると考えております。

安倍内閣総理大臣 簡潔にお答えします。

 ただいま、国際法については有権解釈を外務省が行いますので、外務大臣からお答えをさせていただいたように、国際法としては、基本的に、国際法的には、発生したかどうか、我が国に対する武力攻撃が発生したかどうかということでありまして、他国に対する武力攻撃が発生した場合、これを個別的自衛権で片づけるというのは、国際法上、これはいわば違法ということが棄却されないというふうに考えるわけであります。

 確かに、江田さんがおっしゃる意味というのは、私もわからないわけではありませんし、随分それは実は議論をいたしました。安保法制懇でも実は、私もそういう考え方もあるのではないかということでありましたが、しかし、それはやはり、基本的に自国が攻撃されていないにもかかわらず、ただいま外務大臣が申し上げたように、他国から要請されていないにもかかわらず、これはいわば個別的自衛権をどんどん広げていくという誤解を、誤解というか、そういうふうに解釈される、国際的には。

 それよりも、やはり、正当に認められている集団的自衛権の行使、しかし、憲法上の要請があるからそれはまさに三要件というものがかかってくるわけでありますが、三要件がかかってもなおかつこれは、やはり国際法的には集団的自衛権とみなされるということから、そのような解釈をしたところでございます。

江田(憲)委員 いや、全く、申しわけないけれども、外務大臣に国際法の有権解釈権はないんですよ、国際司法裁判所なんですよ、何度も言いますけれどもね。もう日本の我田引水的な解釈が通ってきたことは私も言いましたよね、その背景もね。申しわけないけれども。政府がね。

 国際法は、ここに書いてあるように、ニカラグア判決を読みましたか、外務大臣、総理。ニカラグア判決は、まさに他国を防衛する。そんな、日本が攻撃されたか、他国が攻撃されたか、区別していないんですよ。そんなことをわざわざ答弁するというのが大体おかしい。

 あなたが、安倍さんと岸田さんが国際司法裁判所なんですか。私は何度も説明したよ、国際司法裁判所は、あなた方の説は珍説、奇説、少数説ですと。国際法学界の通説も違いますと言っているんです。教科書を読んでくださいね、有斐閣、東信堂、国際法の教科書を読んでください、書いていますから。それを否定するんなら、ちゃんと論拠を示してくださいよ。

 ですから、何度も言いましたように、こういうことなんですよ。国際法の常識というか、国際司法裁判所の有権解釈は、他国が攻撃されようが、結果的に、重要な、戦火が及ぶというか、犠牲が、武力攻撃が切迫した場合は、それを守るために自衛の措置を講ずるのは個別的自衛権だということなので、国際司法裁判所の判決や国際法の教科書を否定するなら、ちゃんと根拠を。

 私どもは説明しました、私ども日本政府は、何、個別的自衛権はこうだ、集団的自衛権、説明しました、そんなことが通ろうはずがないことは、法律学のホの字を勉強した方はわかるでしょう。

 法制局長官、法制局長官、ちょっと答えてください。(発言する者あり)

 指示権は委員長なので。委員長の指示権なので、法制局長官に。

浜田委員長 では、横畠内閣法制局長官。(発言する者あり)

 静粛に願います。

横畠政府特別補佐人 個別的自衛権及び集団的自衛権という概念は、いずれも国際法上の概念ではございますけれども、これまでも憲法上の武力の行使がどこまで許されるかという議論の中で用いてきた概念でございますので、その前提で御説明させていただきます。

 自国に対する武力攻撃の発生を契機とする、それを個別的自衛権、他国に対する武力攻撃の発生を契機とするもの、それを集団的自衛権と切り分けて理解しております。すなわち、武力行使の入り口の要件としては、それぞれ、自国に対する武力攻撃なのか、他国に対する武力攻撃なのかということで切り分けられておりまして、重なり合うということはないという理解でございます。

 その上で、では、その個別的自衛権を発動したときに、自国のみを守れるのかというと、必ずしもそうではなくて、自国を守るために必要な他国防衛も、それは可能であるというふうに理解しておりました。すなわち、従前の国会での御説明等でございますけれども、我が国に対する武力攻撃が発生した場合においては、当然、その我が国の防衛に従事する米艦などを防護するということも当然できるという前提で理解しておりました。その意味で、個別的自衛権というのは自国のみを守る権利ではございません。

 他方、集団的自衛権を行使した場合において、他国のみを守ることしかできないのかという問題がございますけれども、その点につきましては従前は余り議論はございませんでしたけれども、例えば、集団的自衛権の行使として公海上等に展開した自衛艦が攻撃を受けたときに、当然それに対して武力で反撃するということがございます。それは、やはりこの集団的自衛権を発動した場合に可能であるという意味で、集団的自衛権の行使というのは、他国のみを防衛することができるというものではございません。

 その段階に至りますと、発動後におきましては、集団的自衛権を行使した場合、個別的自衛権を行使した場合の対処としては重なり合う部分がございます。そのように理解しております。

浜田委員長 外務省秋葉国際法局長。

 先ほど、呼んでいらっしゃいましたね、江田先生。(江田(憲)委員「呼んでいない。この後」と呼ぶ)

 では、江田憲司さん。

江田(憲)委員 安倍総理や岸田外務大臣、法制局長官のおっしゃっていることは、それは私もずっと政府にいましたからわかっているんですよ。しかし、それは、申しわけないけれども日本でしか通用しないロジックであって、国際法的な通説や国際司法裁判所の見解ではないんですよと言っているので、その点、委員長、済みませんでした、国際法局長でした。

秋葉政府参考人 お答えします。

 まず、委員御指摘の有権解釈というところでございますが、ICJは、当該ケースについて最終的な国際法上の判断権限を有しているということでございまして、国際法上一般について世界で最終的な判断権限を持っているということではございません。日本国政府の国際法に関する立場は、外務省が有権的な解釈権限を有しているということでございます。

江田(憲)委員 あなた、本当に……。昔、条約局長といっていたんですね、それなりに私も尊敬していましたけれども。

 あなた、判決を読んだことがあるんですか。ちゃんと集団的自衛権について述べているんですよ、判決で。個別の案件、ニカラグア事件に判決するに当たって、集団的自衛権とは何か、集団的自衛権の要件まで言っているんですよ。集団的自衛権が発動されるためには、攻撃された国の攻撃されたという宣言と、それから助けてくれという要請も要件としている、きちっとこれは。

 申しわけないですけれども、そんなこと、やめてください、本当に、局長。こんな答弁ありますか、委員長。

 まあ、いいですよ。国際法局長たるものが、有権解釈のニカラグア判決も出て、判決文に明確に書いてあることを私は引用してやっているのに、それが個別案件であって、どうして……(発言する者あり)まさにそうです、砂川判決を挙げて法理を延長させてやっている自民党、政府。よく言えたもんだ。本当に、こういう、ロジカルに言っているのに通用しない。

 それで、もう一点重要な論点がありますから、次、だったら国連憲章。これが誰も否定できない国連憲章五十一条、これがいわゆる個別的自衛権、集団的自衛権を定めた規定です。いずれにせよ、これは、武力攻撃が発生した場合には、個別的自衛権、集団的自衛権の固有の権利を害するものではない。

 ちなみに申し上げますと、この武力攻撃が発生した場合というのは、直接発生した場合に限らず、武力攻撃の発生が切迫している場合も含むというのが通説的な解釈ですから、申し上げておきます。

 それから、次のパネル、政府の皆さんが、四十七年法理だと。これが、つまみ食い的に都合のいいところだけ出して集団的自衛権を演繹しているという。本当にどこをどうひっくり返したら内閣法制局長官の頭の中からそういうのが出てくるのか全くわかりませんけれども、四十七年法理、よく読んでくださいね、これ。

 四十七年法理というのは、「あくまで外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」、急迫不正の事態ですよ。これは自衛隊法の武力攻撃事態にも書いてある。まさに武力攻撃が行われる、あるいはそれが切迫している事態に対処して、これらの権利を守るために必要最小限でやるんだと書いてあるんですよ。最後に、「わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」と書いてある。

 言いたいことは、国連憲章も、政府の皆さんが援用している昭和四十七年法理も、全て、武力攻撃か武力攻撃が切迫しているという概念で捉えてこの法理が組み立てられているんですよ。それが何で、何で、安倍総理、何で、ホルムズ海峡だ何だ、電力不足だ、石油不足だ、経済的要因で、集団的であれ個別的であれ自衛権が行使できるんですか。国連憲章五十一条を見ても、皆さんが援用している昭和四十七年法理を見ても、そんな経済的要因がどうしたこうしたなんて書いていないんですよ。これこそ、法制局長官が苦労されたんでしょうね、ひねり出した、へ理屈なんですよ。

 どうですか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 まず、繰り返しになりますが、集団的自衛権か個別的自衛権かについては、いわば攻撃が発生しているかいないかで明確にこれは分かれるわけでありますし、そしてまた、いわばこれは個別的自衛権を拡大しているのではないかという疑義を持たれることは、決してこれは日本にとってはいいことではないわけでありまして、それは避けなければならないということで、我々は、まさに今回解釈を変更し、一部を認めたところでございます。

 そこで、ホルムズ海峡について今言及をされたわけでありますが、まさに、これは機雷が敷設をされるという武力行使が発生しているわけであります。いわば武力行使が行われた、武力攻撃がなされた、武力が行使されたという状況の中において、そして、この機雷を除去するということについても国際法的には武力行使と認められ得るということでありますし、集団的自衛権の行使と理解され得るということでもございます。

 そこで、まさに、この第三要件においては必要最小限度の実力行使にとどまるべきことと書いてありますが、これはまさに一般に海外派兵は禁じられているということでございますが、この例外に当たり得る。それはなぜかといえば、受動的かつ限定的なものであり、なおかつ、事実上のオペレーションをやる際には戦闘行為が現に行われていないところで行うわけでございます。ということでありますから、そこに当たり得る。

 しかし、もちろん、第一要件に当たり得るかどうかということは、これは慎重に考えていく必要があるわけでありますし、国際情勢等も見ていかなければいけない。単純にこれは経済上の理由から三要件に当たるということはないということは申し上げておきたいと思います。

江田(憲)委員 ですから、国民の大きな不安の最大の要因は、そういう経済的要因まで含めて自衛権を行使するか否かを決定するという条文になっているからなんですよ。

 国際社会、国際法、国際司法裁判所、どこをとっても、こんな経済的要因をもって、これはイエスかノーですからね、武力攻撃が確かにあった、それが起点になっている。しかし、日本が、集団的自衛権であろうが個別的自衛権であろうが、行使する、イエスかノーの発動基準ですからね。それに、どこの国も、どの国際社会も採用していないような経済的要因、これを要件にしてやるということ自体が本当に際限なく広がるんじゃないかということなんですよ。国民の不安はそこなんですよ。

 だから、私は、国連憲章五十一条をとってみても、昭和四十七年法理をもってみても、こんな経済的要因で自衛権を発動する、しないなんてことを一切考えていなかったわけですからね。ここは維新の党はもう絶対認めません。

 維新の党は、従来の国連憲章や国際司法裁判所、昭和四十七年法理にのっとって、武力攻撃か武力攻撃が行える明白に切迫した危険があるときに、国民の生命財産を守るために自衛権を行使する、そして、それは個別的自衛権だというロジックでこれからしっかり安倍政権と論陣を張っていきますよ。

 何度言ったって、唯我独尊、我田引水の解釈しか言わない。そんなものは、国連総会に行って今みたいな法制局長官の答弁なんかしたら、はあって言いますよ。国際司法裁判所、全く関係ない。こんなことじゃ、申しわけないけれども……(安倍内閣総理大臣「いやいや、秋葉局長に」と呼ぶ)ここはいいよ、もう。だって、これ以上ないんだから。

 それから、では、もう一点だけ言っておきましょう。

 きょうは、総理が秋葉さんと言っているから、もう一点だけ確認して、もうこれから言わせないために。必ず、個別、集団をやると国連報告がある、国連報告に、自衛権を行使したときは報告せないかぬ、だから個別と集団はちゃんと分けないかぬのだと。大うそですよ、大うそ。

 だって、私も国連報告を見てみましたけれども、みんなセルフ・ディフェンス・ライトですよ。コレクティブ、集団的とも、インディビデュアルとも書いていない。幾多の、全部見ましたけれども、フォークランド紛争からアフガンまで、ずっと全部セルフ・ディフェンス・ライトなんですよ。だから、ここはもう答弁は求めませんけれども、要は区別なんかないんで、みんなセルフディフェンスでやるんで、そこは個別と集団をきっちりくっきり区別、しかも、我田引水的なところでやったところで何も関係ないということだけは言っておきます。

 さて、二番目、周辺事態、重要影響事態に移りますけれども、これは先ほど申し上げましたとおり、小渕政権では成立しましたが、実はこれは橋本政権で、当時の橋本総理が逐条で立案した法律でございます。

 私も横から携わらせていただきましたけれども、これは、ざっくり言うと、これこそが前回のガイドラインの見直しに基づく法律だったわけですが、日米安保条約六条、極東条項に基づいて、米軍が日本周辺有事のために軍隊を展開するときに、それに対する自衛隊の協力のあり方というのが全く決まっていなかったんですね。簡単に言うと穴があいていた。そこの穴を埋めるということでつくった、まあ後方支援ですけれども、周辺事態法ということなんです。

 今回、それが、まさにその周辺事態概念というか、もっと本質的な議論をすると、日米安保条約の効果的運用というのが目的であったように、まさに、今言ったような、極東地域における日本周辺有事に米軍が展開をするときの自衛隊の後方支援を始めた協力のあり方なんですよ。

 何で周辺事態というのが地理的概念じゃないと言い募ったかというと、それは簡単に言うと、中国や韓国を刺激したくない、台湾を刺激したくない。

 これは安倍総理も御承知のように、どういう事件があったからこういうことになったかというと、九三年から九四年にかけて、北朝鮮の核開発危機がありましたよね。NPTを脱退して、一時は米国との戦争の間際まで行った。それをカーター特使がおさめて、もとに戻したという事件もありました。それから、九六年春には中台危機。独立機運を高める台湾に対して、台湾海峡に中国がミサイルを二発ぶち込んだ。それに対して、アメリカの空母が二隻展開したという。

 こういう事態を想定して、それだけじゃないですけれども、こういうことに対応するという法律を、今度は質的に、根本的に変えるというんですね、だから。はっきり言えば、論理的に言えば、重要影響事態であれば、地球の裏側まで論理的に排除されないという答弁もありますよね。

 ですから、こういうところまで広げられる、これは法制局長官に聞きますが、立法事実は何ですか、立法事実。私は、若いころ、もう二百回も三百回も法制局に通ったんですよ。必ず言われたのが、この法律の必要性、合理性、正当性、立法事実を示せ、立法事実を。極東の域内での立法事実はありますよ。しかし、では、それ以外に広げる立法事実というのは何ですか。ちゃんと審査されたと思いますから、お答えください。

横畠政府特別補佐人 立法事実そのものは立案当局から説明してもらいたいと思いますけれども、私どもの理解しているところで申し上げますと、現行の周辺事態安全確保法の主たる目的といいますのは、やはり我が国の平和と安全の確保ということでございまして、そこで捉えられている事象としては、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態である。

 それにどう対処するか。我が国が直接対処するのではなく、その事態にまさに対処する他国の軍隊、現行法では、安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍でございますけれども、これにどのような支援をするのか、そういう趣旨、目的の法律であると理解しております。

 この改正につきましては、全く同じように、我が国の平和と安全の確保に資する、そういうことが究極の目的でございまして、事態におきましても、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対して対処する。今度は米軍だけではなくて、その他の他国軍隊もありますけれども、それに対して我が国としてどのような支援をするのかということの要件、手続、内容を定める、そういう法律でございます。まさに、米軍だけではなくて、さらに他国の軍隊までそのような支援を広げる必要があるのか。

 また、周辺の問題につきましては、我が国周辺というのもそもそも地理的概念ではないという説明をされてきたわけでございますけれども、どのような場所においてそのような事態が起こり得るのかということの認識を前提として、誤解のないように「周辺」という言葉を削除する、そのような改正をするのだという説明を受けております。

江田(憲)委員 驚くべき答弁ですね。本当に内閣法制局の劣化が激しい、私がいたときより。

 立法事実というのは、法律の必要性、正当性を説明する社会的、経済的、文化的事実を指し示さないとだめなんですよ。あなたが言ったのは、定性的な法律の条文を言っているだけじゃないですか。そんなので改正を認めるんですか。

 しかも、これは本質的な性格を変えるんですよ、一部改正法で。新法でやるというならまだしも。一部改正周辺事態法で、極東以外にも広げるんでしょう。どこに立法事実があるんですか。そんなことも審査せずにこの法律改正をやっているというところが、もう本当に不安でしようがない、私は。

 法制局長官に幾ら立法事実を聞いてもしようがないですから、安倍総理、極東地域以外で重要影響事態というのは、何かなきゃだめですよ。架空の事例とか、万一起こるかもしれないとか、そんなことで法律は改正できないんですよ。

 ですから、具体的にどこにあるんですか。マラッカ海峡ですか、南シナ海ですか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 そもそも、周辺事態安全確保法自体、極東に地域を限定したものではないということは申し上げておきたい。それは、江田委員がよく御承知のとおりであり、そういう質疑もありました。極東なんですかという議論がありました。しかし、その際、いわば、これは地域に着目をしたことではなくて、事態に着目したものであると。我が国の平和と安全にとって重要な影響があるかどうかという事態にこれは着目をしているわけでありますから、そこは全く変わりがないということであります。

 その中におきまして、周辺事態という名称自体が、これはしかし、地域と密接にかかわっているかのような印象を与えるわけでありますから、そこは私たちは、これは変えたということであります。

 そういう意味におきましては、今回の周辺事態法の改正につきましては、我が国の平和及び安全の確保のために必要な法改正である、これがまさに我々の考え方でありまして、立法事実がないとは考えておりません。

 そしてまた、そもそも安全保障に関する法制につきましては、国民の命と平和な暮らしを守るためのものであって、現実に国民に国民の平和と安全が脅かされて被害が生じたから、ではつくろうということであってはならないということでありまして、まさに備えなければならない。いわば、そういうことを起こさせないためにあらかじめ法律をつくっておく、こういう認識であります。

江田(憲)委員 小渕総理は、国会答弁で明確に、中東やインド洋、地球の裏側は含まないと言っているんですね、答弁で。

 それから、周辺事態法の周辺事態は地理的概念ではないんだというんだから、変える必要はないじゃないですか、法律を。

 しかも、周辺事態以外、万が一起こる、それは当然ですけれども、しかし、法律のたてつけというのは、結局、ある意味では、一〇〇%可能性があるのだけにしろとは言いませんよ、私も。当然、国民の生命財産を守るために、例えば南シナ海で領有権の問題があって、そこで紛争が起きれば日本の国民の生命財産に重大な犠牲が及ぶ場合があるというのなら、まだわかりますよ。だけれども、そういうことも言わないんでしょう。

 ですから、どこに、極東地域とは言わぬけれども、周辺事態法という法律の性格、しかもオーストラリア軍まで入れて、質的な変更ですよ。これは日米安保体制の同盟強化のためにやった法案ですから、それに同盟条約もないようなオーストラリア軍も入れる、こういう質的な変化をやるだけの理由がどこにあるんですか。

 しかも、国民は、本当に地球の裏側まで行くんじゃないかという懸念を持って不安になっているから、それに対して明確な説明をしてくださいと言っているんですよ。してください、具体的事例をもって。

安倍内閣総理大臣 江田委員は、状況判断がまさにこの周辺事態安全確保法制定時の状況で停止をしているのではないか、このように思います。

 まさに、そのときの小渕総理の答弁は、当時の国際環境等々に基づきまして答弁をされているわけでありまして、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生起する地域にはおのずと限界があり、中東、インド洋において生起するとは現実の問題として想定されない、当時の現実の問題として想定されない、こういうふうに答えておられたわけであります。

 そして、今回法改正をするに当たりまして、国際社会の状況等をもう一度俯瞰する中において、先ほど江田委員も、いわば武器がまさに日進月歩で進歩して、大きく変容しているわけであります。そうした変容の中において、今回は、まさに安全保障環境が大きく変化をした現在においては、これらの地域においても重要影響事態が生起する地域からあらかじめ排除することは困難である、このように考えているわけであります。

 それはつまりどういうことかというと、国民の命と安全を守るためには、これは、今私が申し上げているところは、いわば今言った地域に必ず行くということではないんですよ。まさに国民の命や幸せな暮らしを守るためにもし必要であれば行く、必要なければ行かないということであって、絶対に必要がないんだということを言うことは、私は、むしろ無責任ではないか、このように思うところでございます。

江田(憲)委員 法律論をやっているんですからね、安倍さん。

 だから、私も小渕総理の答弁を金科玉条のように振りかざすことはしませんよ。その後にある、いろいろな状況変化、武器技術の進展によって、安倍総理、かくかくしかじかで具体的な危険が出てきたから、だから広げる、こういうふうに変える必要があるんだと、変える方に挙証責任があるんですからね。

 それに対して、いや、絶対起こらないとは限らないからといって、法律はどんどん改正できるんですか。どうですか、国民の皆さん。安全保障、危機管理なんというのは、それはもう絶対起こらないなんということはないんですよ。絶対起こらないことはないからその備えのために法律はどんどん変えていいんだ、そういうことじゃないですか、言っていることは。だから、私は、法的な、論理的な解釈の整合性とかを冒頭申し上げたんですよ。

 説明してくださいよ。では、マラッカ海峡なんですか、南シナ海なんですか、どこですか。インド洋ですか、どこなんですか。言ってください。説明してください、わかりやすく。

安倍内閣総理大臣 今、個別具体的な場所を言うことは差し控えさせていただきたいと思います。

 それは、今、事態が、さまざまなことが生起をしているわけであります。南シナ海においてある国が例えば埋め立てをしているわけですね。東シナ海の中においてさまざまな埋立行為を行っている等もございます。しかし、さまざまな出来事が起こっている中において、それを今具体的にこの法律の対象とするということについては言及を控えさせていただきたい、こう思うわけでございます。

 絶対ないからどこでも行くということではなくて、いわば、その可能性があれば、その可能性があればこの法律を使えるようにする。それは将来、五十年、百年、千年それが起こらなければそれにこしたことはないわけでございまして、安全保障というのはそういうものでございます。自衛隊を創設以来一度も個別的自衛権は行使をしていないわけでございまして、それは、その可能性がないから、では要らないのかということにはならないわけでありまして、いざというときに備えるということも大変重要であろう、こう思うわけでございます。

 それと、米国以外にも豪州ということを挙げたのは、今、あのときと比べて格段にこれは関係が進んでいるわけであります。それぞれ2プラス2も行われ、頻繁に行われ、相当の防衛協力が進んでいるわけでありますし、いわば情報の交換もさまざまな、これは情報分野の協力も進んでいるという中において、日米豪で行動することもあり得るという中において、米国とともに豪州が活動する中において、いわば日米安保条約の目的に資する場合もこれは当然ある、こういうことではないか、このように思うところでございます。

江田(憲)委員 万が一また起こるときにはこれまでどおり特措法云々の法律で対応するということもできるわけで、今までの周辺事態法、私どもは変える必要は全くないと思っています。それを変えるのであれば、しっかり立法事実、国民がわかりやすい事例、そうはいってもこういうことがあるんだから我々はこういうふうに広げたいんだ、論理的には地球の裏側まで行けるようにしたいんだ、オーストラリア軍も対象にしたいんだということがなければ、これは幾ら議論したって平行線ですよ。こんなことで国民の皆さんは納得するわけではありません。

 ですから、我々維新の党は、周辺事態法は今までどおりのところで十分対応できる、日本周辺事態、まさに地理的概念ではないという中で、十分手だては法律の中に詰め込んだつもりでありますから、それをぜひ運用していただきたいというふうに思います。

 時間もなくなってまいりましたので、最後、国際平和協力の方の論点に参ります。

 我々維新の党は、恒久法にするのであれば、恒久法にするのであれば、これまでのプラクティス、つまりイラク特措法であるとかテロ特措法の法的な枠組み、手法というものを、せいぜいそれを取りまとめる程度の恒久法にすべきだ、それ以上に欲張ってああだこうだするには反対ですからね。明確に言っておきますからね。

 そういう中で、一番大事なポイントは、国連安保理決議に基づく国際社会の一致した取り組みである、しかも、国連安保理決議であれば、第七章の、強制措置、武力行使の容認を含む、湾岸戦争時代のような安保理決議というものが必要だというのが我々の立場ですけれども、安倍総理が何か、どこかへ行っちゃったんですけれどもね。

 では、ちょっととめてください。これは総理に、大事な問題ですから、これは。(発言する者あり)断っても、全然僕はうんとも言っていないですよ。ちょっと時計をとめてください。トイレに行くのは全然構いませんから、とめてください、本当に。これは大事な話なので。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 江田憲司君。

江田(憲)委員 総理、済みません。

 要は、国際平和協力の大事な前提として、維新の党は、国連安保理決議、しかも第七章の、強制措置、武力行使容認を含む国連安保理決議が必要だと。なぜならば、そういう武力攻撃に対する後方支援を我々はするということと、それから、やはり、武力行使容認まで含めて国際社会の一致した対応だというところで初めて、日本が協力しても、いろいろなリスクを考えてみても、それが一番いい手だてだろうということです。

 ただ、政府の法案を読むと、それ以外の決議も含まれるように読めるんですけれども、そこをちょっと、ぜひ総理のお考えを、国連決議について伺えればと思います。

安倍内閣総理大臣 失礼しました。

 我が国が国際社会の平和及び安全の維持のために活動する外国に対して支援を行うためには、当該活動が十分な国際的な正当性を有していると判断することが重要であると考えています。

 この観点から、国際平和支援法は、当該外国がそうした活動を行うことを決定等する国連決議や、問題となる事態に関連して国連加盟国の取り組みを求める国連決議が存在することを要件とすることによって、国際的な正当性を確認することとしております。

 これらの決議は、必ずしも国連憲章第七章のもとでとられる措置の根拠を提供する安保理決議に限らないわけでありまして、なぜならば、国際社会の平和及び安全に対する脅威を除去する活動であって国際的な正当性を有するものの中には、そのような安保理決議に基づく措置のほかにも、例えば自衛権の行使や領域国の同意に基づいて行われる活動があり得るためであります。

 また、国際平和支援法が要件とする国連決議には総会決議も含まれる旨、規定をしています。

 これは、国連憲章上、国連総会も、国際社会の平和及び安全を含む国連憲章の範囲にある事項に関し、加盟国に対して勧告する権限を有しているためであります。国連憲章上、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を有しているのは安保理であるが、時として安保理は、常任理事国の不一致、いわば拒否権がございますから、一国が拒否権を発動する、あるいは不一致になれば決定を行えないということでございまして、国際平和支援法においては、そのような総会の権限に鑑みまして、同法に基づき我が国が対応措置を実施する条件となる国連決議に総会決議を含めることとしたものであります。

 そのような総会の権限は国連憲章の規定に基づくものであるということはもう御承知のとおりでございますが、総会決議が国際的な正当性を有していないわけではもちろんございません。

江田(憲)委員 安保理の機能不全はよく言われますが、私の調べたところ、九〇年以降で、武力行使容認を含む安保理決議はもう二十四回やられています、湾岸戦争の決議を含めて。それから、国連総会も、平和のための結集決議、これは武力行使の容認を含む、これは、朝鮮戦争のときに、拒否権の乱発を防ぐために、二十四時間以内に緊急集会を開いて、それで三分の二以上の賛成で対応したわけです。それは我々も認めていいのかなと思いますが、それ以外は、申しわけないですけれども、どういうイメージなんですか。

 例えば、有志連合への後方支援、これは多数決で決めましょうといって、オール・ネセサリー・メジャーズ、武力行使は含んでいない、加盟国に単に何か措置をとれというのでも認めるという御答弁でしたが、それであれば、結局これはどういうことかというと、日本が片方にくみする、このリスクを考えないかぬのですよ、これからテロとか考えるときに。

 しかし、安保理決議、武力行使容認であれば、国際社会の一致した取り組みなので、それについて協力したって、それはならず者国家とかいろいろなところに対する対応なので、それはよかろう。しかし、こういった武力行使の容認も含まない国連総会の決議まで含むと、これは大体多数決で決めますから、例えば世界を二分するような取り組みみたいになっちゃう可能性のときに、それに対してまで国連平和協力支援法で後方支援ができるというふうなことを安倍総理はお考えなんですか。今の答弁ならそう解せますけれども。可能性はあると思いますけれども。

安倍内閣総理大臣 国連総会における決議については、これは先ほど朝鮮戦争の例として挙げられましたが、三分の二ということでございまして、これはハードルが低いわけではないわけでございます。

 そしてまた、先ほど申し上げました自衛権に基づくものとしては、例えばインド洋における給油活動については、あれはテロ特措法で行ったところでございますが、まさにあのときには、NATOにおいては集団的自衛権の行使、米国においては個別的自衛権ということであったわけでありますが、その延長線上において、テロを食いとめるために我々は後方支援活動を行ったわけでございまして、ああした状況も考慮しつつ、今申し上げたような要件において国際的にも信任がある、こう考えているところでございます。

江田(憲)委員 もう時間がありませんので。

 我が維新の党は、冒頭申し上げたように、恒久法をつくるのであれば、今までテロ特措法、イラク特措法等で認められたような枠組みに限定すべきであって、余り欲張ってああだこうだ詰め込まないでほしいと思うんです。

 だから、国連決議も、本当に明確に国際社会の一致した取り組みだと認められるようにしていただきたいし、それから、これは重要影響事態もそうですけれども、後方支援、非戦闘地域という名称はどうあれ、後方支援をするときに、武器弾薬であるとか空中給油であるとか、そういった、まさにこれは、私もずっと政府の中で経験しているが、これはある意味では擬制なんですよね。だから、ここで皆さんが議論したように、兵たんをたたけというのは戦争の基本ですから、兵たんと前線を分けるなんということも本来ならおかしいのかもしれないけれども、しかしそこは、今までのいろいろな国会審議を通じて政治が知恵を出して、ある意味での擬制としてああいう後方地域であるとか非戦闘地域という言葉をつくり出してきたのも事実なので、だから、そうであるならば、抑制的に考えなだめなんですよ。

 そこが、今回、武器弾薬も含む、空中給油も含むんだとなるから、前線と一体化して武力行使と一体化するんじゃないかという懸念が出ているわけで、そこはぜひ安倍総理、お考え直していただきたいと思います。

 それが最後なので、委員長、済みません、よろしくお願いします。答弁だけ。

浜田委員長 では、簡潔に、時間が来ておりますので。安倍総理より。

安倍内閣総理大臣 考え直せということでございますが、私どもは、今までの活動経験の上に立って、弾薬の提供あるいは輸送等についても、今までの経験の中から積み上げてきたものでございます。

 例えば、これは活動は別でありますが、PKO活動で、南スーダンにおいて、私どもは、韓国に弾薬を提供、後で返されましたが、弾薬を提供してもらいたいという現地での要請に応えたこともあるわけでございます。さまざまな経験の上に今回の活動内容のメニューを考えてきたところでございます。

 きょうは、まさに江田委員からさまざまな御教示をいただいた、このように思うわけでございますが、今後とも建設的な議論をさせていただきたい、このように思いますので、よろしくお願いいたします。

江田(憲)委員 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 維新の党の小沢鋭仁でございます。

 時間がありませんので、早速質問に入らせていただきます。

 この安全保障法制に関して、国民の思いは、まず、日本の平和と安全を守るためには、これはもう徹底的にやってもらいたい、こういう思いがあると思うんですね。ただし、しかし、他国、特に、主に言えば米国ですね、米国の戦争に巻き込まれるようなこと、あるいはまた巻き込まれる可能性が高まるようなことは絶対に避けてほしい、これが国民の皆さんの大方の気持ちじゃないでしょうか。私は、そういう気持ちを代弁するつもりでこの後質問させていただきたいと思います。

 まず、自国を守る、こういう話の中で、幾つか総理にお聞きしたいんですが、総理の御説明の中でまず一番ひっかかるのは、これまた固有名詞で挙げていらっしゃいましたが、北朝鮮の数百発のミサイル、これを御説明になりましたね。日本はこのミサイルから本当に我が国の安全と平和を守れるんですか。まずそれを総理にお尋ねします。

安倍内閣総理大臣 我が国は、弾道ミサイルの脅威に対しては、我が国自身の弾道ミサイル防衛システムを整備するとともに、日米安保体制による抑止力、対処力の向上に努めることによって適切に対応することとしております。

 我が国の弾道ミサイル防衛システムについては、海上自衛隊のSM3ミサイル搭載のイージス艦四隻による上層、これは高度百キロメートル以上での迎撃と、そして航空自衛隊のPAC3ミサイルによる下層、これは高度十数キロメートルでの迎撃を組み合わせた多層防衛によって、我が国全域を防衛することが可能であると考えております。

 これに加えまして、弾道ミサイルの脅威の深刻化に対処するため、さらに二隻のイージス艦について、弾道ミサイル対処能力付与のための改修を今現在実施中であります。そうなりますと四プラス二で六になるわけでありますが、現行の中期防衛力整備計画においては、さらに二隻の追加建造を計画しているところであります。

 そして、新ガイドラインにおいては、自衛隊及び米軍は、日本に対する弾道ミサイル攻撃に対処するため、共同対処することを明記するとともに、引き続き米軍は、自衛隊を支援し及び補完するため、打撃力の行使を伴う作戦、つまり敵基地攻撃を実施することを、これは米軍が実施することを確認しています。

 また、米軍は、嘉手納飛行場などにパトリオットPAC3を、横須賀にSM3搭載イージス艦を五隻展開しているわけでございます。

 これらが総合的に日本の安全を守っている、こういうことでございます。

小沢(鋭)委員 装備は説明はわかりましたが、打率は大丈夫なんですか。

安倍内閣総理大臣 打率でございますが、これは、打率がどれぐらいだということについて、何発発射して何発迎撃できるかということについては、まさにこれは、いわば我が国の防衛力そのものを相手国に知らせることになりますので、これは発言は控えさせていただきたいと思います。

 私はかつて、第一次政権のときに、数発発射されたものに対するPAC3の迎撃の模擬訓練を視察させていただいたところでございますが、見事に発射したものは全弾的中をしたわけでございます。着弾する前に的中をしているわけでありまして、日本のオペレーター自体は米国で訓練しているわけでありますが、極めてレベルが高いということは折り紙つきではないか、このように思います。

小沢(鋭)委員 大変結構なことだと思います。

 それで、今お話があったように、まさにミサイルから日本を守るというような話に、法整備を徹底的にするとか予算をつけるとかいう話は、恐らくやったらば、国民の皆さん、世論は大賛成なんですよ。ただ、この安保法制そのものに関しては、これだけ反対がある。それはなぜか、こういうことをこれから何点か質問させていただきたいと思いますね。

 それで、ただ、今のミサイルに関して、敵地攻撃、敵基地攻撃の話が総理からありましたから、一点これをお尋ねしておきます。

 これは政府高官からも話がありましたけれども、準備をしていて、それが日本に向かっているという段階であればまさにそれが可能だ、こういう話があり得るんですか。これは先制自衛権の問題になりますけれども、これはあり得るんですか。先制自衛権ということを認めると、これは今までの専守防衛の概念を変えなきゃいけないんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 基本的に、いわば武力攻撃が発生したというのは、着手がなければ武力攻撃が起こったとは言わないわけでございますから、我々は、着手以降でなければ武力行使はしないということであります。

小沢(鋭)委員 総理、それはだめでしょう。ミサイルが発射されて、日本に着地をしなければ……(安倍内閣総理大臣「着手」と呼ぶ)着手。だから、着手は、発射の前の攻撃があり得ますね、こういう話を聞いています。

安倍内閣総理大臣 着弾ではなくて、着手ですね。着手も含めて、着手から武力攻撃が発生している、こういう状況で、いわばこれは武力攻撃が発生した段階、我々は武力行使できる、こういうことでございます。

小沢(鋭)委員 ですから、発射前ということでしょう。ですから、それは先制的自衛権の行使という話になるんじゃないですか。先制的自衛権の行使という話になると、まさに専守防衛の今までの概念とは違うんじゃないですかということを聞いています。

安倍内閣総理大臣 これは安倍政権で変えたわけではなくて、旧来から、着手、武力攻撃事態法において、武力攻撃の予測事態において、いわば防衛出動の待機命令が出せるわけですね。その後、いわば武力攻撃が発生して初めてこちらは武力攻撃ができるということでありまして、この武力攻撃の発生とは着手であるということになっているわけでございます。

小沢(鋭)委員 先ほど、我が党の江田委員の方からも、まさに科学技術の進歩でいろいろな、いわゆる武器の内容も変わってきた、こういう話があります。

 私は、これは本当に日本にとって物すごく重大な案件なので、まさにそういった意味では、専守防衛という概念が変わりつつある。専守防衛でいいんですよ。ただ、その範囲が変わっていくのではないか。今までと全く変わりませんという話では私は済まないと思っておりまして、きょうは時間がないのでまた今後議論させていただきたいと思いますが、だめだと言っているんじゃないんです。今までと同じだというようなことを言っていたら、それは違うんじゃないですかということを御指摘だけ申し上げておきたいと思います。

 それで、二番目の、他国の戦争に巻き込まれないようにしてもらいたいということで、そちらの方に論点を移させていただきたいと思います。

 ここに、皆さんにもお配りをしておりますが、パネルを用意させていただきました。

 今回の安保法制の話、焦点が、ある意味では集団的自衛権あるいは武力行使に行っていますので、そこに関しては、総理初め政府の皆さんも、新三要件、こういう話で歯どめをしています、こういう御説明がございますね。この新三要件も、我が党としては不十分だと思っています。ただ、歯どめの一つにはなっていると思います。

 ただ、問題は、そこではなくて、後方支援のところだと私は思っているんです。意外と総理もそう思っているんじゃないですか。地球全域の、まさに、何と言いましたかね、総理の言葉で言うと、安全保障、まさに後方支援の問題を四点、これから質問いたします。

 先ほど江田委員からもありましたけれども、まず周辺事態法案、これはまさに、日米安全保障条約に寄与することを目的としてという言葉を変えましたね。日米安全保障条約には、先ほど江田委員も言いましたけれども、極東という言葉が入っているんですよ。それを変えるということは、極東という言葉をなくした、一つの歯どめが消えたというふうに私は思うんですけれども、なぜこれを変えましたか。公明党は反対したんでしょう、与党協議の中で。

安倍内閣総理大臣 極東という概念は、まさにこれは安保条約の概念でございまして、安保条約の中における六条の考え方において、我が国が基地を提供する上において、これは極東の平和と安全のために米軍は基地を使用するということでございまして、日本側に義務がかかっているという、これは安保条約の六条の概念でございます。

 他方、周辺事態安全確保法におきましては、これは極東に限られているということについては、答弁等で、それは地理的概念ではなくて、我が国の平和と安全にかかわる重要な事態であるという事態に着目したものであるということでございまして、これは新しい重要影響事態安全確保法におきましても全く変わりはないということでございまして、むしろ、周辺という言葉は地域を連想させるものであることから、今度は整理をし直した、こういうことでございます。

小沢(鋭)委員 では、なぜ文言をお変えになったんですか。いわゆる日米安全保障条約の目的に寄与するためにというのを、中核という言葉をつけ加えましたね。なぜ変えたんですか、全く変わらないのであれば。

安倍内閣総理大臣 これはまさに、安全保障環境の大きな変化を踏まえまして、重要影響事態への対応については、日米安保条約の目的の達成に寄与する行動を行う米軍だけではなくて、国際社会の平和と安全の確保という国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っているその他の軍隊等との連携をも強化することが、我が国の平和と安全を確保するために不可欠との考え方のもと、そのような外国軍隊に対しても後方支援活動等を実施し得ることとしております。

 諸外国との連携の中核は日米安保条約の目的の達成のために行動する米軍との連携であることには変わりがない、こういうことでございます。

小沢(鋭)委員 今、秘書官からメモが行って、二番目の、合同作戦の相手国による歯どめの方まで説明をしていただきましたが、いずれにしても、私が申し上げたいのは、まず、いわゆる地域的な歯どめがなくなりましたね、それから、今総理が答弁をいただいたように、合同作戦の相手国も広がりましたねということです。

 それで、まず地理的な話をもう一点だけ、何度も出ていますが、総理の口から確認させてもらいたいんですが、これはまさに、法理論的には地球の裏側まで自衛隊を派遣できる、そういうことですね。それを総理の言葉で言ってください。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたのは、まさにこれは、周辺事態安全確保法においても極東に限られていたわけではないことは再度申し上げておきたいと思いますが、地理的概念ではないわけでございます。

 しかし、当時、小渕さんの答弁がありました。それは、想定していない、これは当時の安全保障環境においては想定していないということであったわけでありますが、安全保障環境も随分変わってくる中において、また、武器等の進歩、変化がある中において、また、我が国の多くの国々との関係の変化もあるわけでございます。

 そこで、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすという地域は限られるわけではないわけでありまして、いわば、この目的においては、日米安全保障条約の目的また国連憲章の目的もあるわけでありますが、それにかなうものであれば、まさに我が国の平和と安全に資する活動を行うべきだ、こう考えているわけであります。

小沢(鋭)委員 戦後の日本の、ある意味では法体系といいますか、安全保障政策というのは、まず国連憲章ができました、国連憲章をベースに日本国憲法ができました、そして日米安保条約がまさにその両方を視野に入れてつくられました。そのまさに安全保障政策が、先ほど江田委員も言っておりましたけれども、質的にここで大きく変わるんですよ、総理、極東から地球規模に。

 それから、相手国も、米軍から、あるいは、さっきはオーストラリアと言いましたが、例えば南沙諸島で紛争が起こったとき、オーストラリア以外の国、フィリピンとかベトナムとか、後方支援するんですか。

安倍内閣総理大臣 まず、地理的概念ではないということは申し上げましたが、しかし、ただ、さはさりながら、現実の問題として、我が国に近い地域で起こることの方が当然これは蓋然性が高い、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるということについては当然そうであるけれども、それ以外は排除はできないということでございますが、生起し得るということの蓋然性は相対的に高いと考えられるわけでございます。

 個別具体的な、まさに豪州においては、日米豪ということで、いわば安保対話を進めておりますし、共同のさまざまな訓練自体も行っておりますし、2プラス2も進めているわけでございますが、さまざまな国、個別について今お答えすることは差し控えさせていただきたい。東南アジア地域にもさまざまな課題もあるわけでありますから、ここでは差し控えさせていただきたい、こう思うわけでございます。

 いずれにせよ、重要影響事態ということにつきましては、もちろん、その要件というのは明確にしているわけでありますし、その要件の中で慎重に考えていくことになると思います。

小沢(鋭)委員 要は、一点突破、全面展開、こういう言葉がありますが、そうならないようにしてもらいたいんですよ。国民の皆さんはそこが一番不安なんですよ。ですから、今、政治的な配慮の中で固有名詞は避けるというのは、これは賢明な御判断だから、それは結構ですけれども。

 私が申し上げたいのは、地理的歯どめがなくなりましたね、さらにはまた、まさに国連憲章、日本国憲法、日米安保と歩んできた、ある意味では同盟国のそういった歯どめもなくなりましたね、そういう話を国民は大変心配をしている、こういう話だと思います。私は、日本の安全保障政策の大きな変質だと思います。

 元法制局長官の阪田さんが今回の改正に関して新聞で言っていますが、米軍支援を地球規模で行うということだ、こういう話を言っています。それが、私から言わせれば、ただ単に米軍だけではなくて、地球規模でまさにそういった後方支援が行われる、こういう話を大変国民は心配しているということを申し上げておきたいと思います。

 二番目に、武力行使一体化論の問題を申し上げたいと思います。

 法制懇は、答申の中で、武力行使一体化論というのは現在の日本の安全保障政策に大変大きな支障があるからやめるべきだ、こういう話を提言しましたね。政府は、そうではなくて、閣議の中でも、武力行使一体化論を前提としてこれからもやっていくんだ、こういうことを閣議決定しておりますが、それはそれでよろしいんですね。

安倍内閣総理大臣 そこは安保法制懇の提言をとらなかった点でございまして、我々は、一体化しないということによって、いわば我々は、武力行使と一体化しないことによって海外での武力行使とはならない、つまり、武力行使となることは必要最小限度の実力行使を超えるものであるという中から導き出されている理論であり、我々は安保法制懇の結論はとらなかった、こういうことでございます。

小沢(鋭)委員 私は、その判断は大変賢明であったと思って、評価を申し上げたいと思います。

 ただ、今回の法改正は、それをなし崩しにしているんですよ。そういう、まさに政府のおっしゃっている話とは違うことが行われているのではないですかということを、これから質問していきます。

 ただ、同時に申し上げておきたいのは、武力行使はしないというのは、これはもう当たり前の話ですが、憲法九条ですよね。まさに、我が国は国際紛争を解決する手段としての武力行使は永久に放棄する、この条文から来ているんですね。

 そして、なぜこういう憲法ができたかという話を考えると、これはまさに、さきの大戦の、我が国あるいはまたアジアの国々、大変大きな、つらい思いの中で、同時に、考えてみれば、全ての戦争というのは正義の名のもとにおいて行われる戦争だ、そういった反省に立って、いわゆる紛争を解決するための手段としての武力行使は永久に放棄する、こう決めたんですよね、我が国は。

 この考え方はいいですね、総理。

安倍内閣総理大臣 もちろん、現行憲法を我々は遵守するという義務を負っているわけでありますから、当然のことでございます。

小沢(鋭)委員 それでは御質問しますが、先ほども出ておりましたが、後方支援活動の中でいわゆる弾薬の提供ができるように今回の法案はしましたね。これまでの特措法の中ではこれはやっておりません。

 弾薬の提供というのは、これまたいろいろこの中でも議論になっていますが、兵たんであって、国際的な観点からは完全に武力行使ですよ、武力行使一体論ですよ。違うんですか。

安倍内閣総理大臣 弾薬の提供でございますが、弾薬の提供については、現行の周辺事態法や過去の特措法の制定時にはこのような支援を行うことが想定されなかったことから、自衛隊が実施する物品の提供の内容には含めないこととしたわけでございます。これは、当時も、憲法との関係ではなくて、そういうニーズがないということであったわけでございます。

 他方、先ほども少し紹介をさせていただきましたが、一昨年の南スーダンのPKOにおいて、韓国の隊への弾薬提供の事例がありました。実際に、実際の具体的なニーズが生じているわけでございます。

 また、日米防衛協力が進展し、ガイドラインの見直しに係る日米間の協議が進められる中で、米側から、弾薬の提供を含む自衛隊による幅広い後方支援への期待が示されたところでありまして、こうしたニーズを踏まえ、重要影響事態法及び国際平和支援法においては、武器の提供は除外する一方、弾薬の提供は除外しないとしたものでございます。

小沢(鋭)委員 まず、南スーダンの韓国に対する弾薬の提供は、これは全然本質的に違いますよ。なぜかといったら、PKOですから。先ほども申し上げましたように、PKOは紛争が終わった後行われる活動です。危険とか危険じゃないという話はまた別の問題です。

 先ほど憲法の話を申し上げたのは、紛争を解決するための手段としての武力行使は日本は永久に放棄すると言っているんです。今やろうとしているのは、紛争を行っている最中の弾薬の提供です。これは、ある意味では、その国に対する加担なんですよ。

 武力行使は一切しないということの意味は、紛争を解決するための手段としての武力行使はしないということの意味は、それを行っている国に加担することもしないというのがまさに日本の理念じゃないんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、後方支援の中において、では、どういうメニューを行ったら武力行使と一体化するかというさまざまな議論がありました。かつては、医療活動を行うこと自体が、これは武力行使と一体化するのではないかという議論すら実はあったわけでございます。

 しかし、冷静に議論していく中において、一体化するか、一体化しないかという、これは憲法上の要請の中における議論であるわけでございますが、そこで我々は、前の法律におきましても、弾薬の輸送はしたわけでありますが、提供は行わなかったわけでございますし、あるいは兵員の輸送もしているわけでございます。

 ですから、そこは、今回は、まさに弾薬が必要なことも起こり得る。今までは、自国の弾薬は十分に持っていくんだというふうに考えていたわけであります。実際、そういう要求もなかったわけでございます。PKOの場合は、確かにそれはおっしゃるとおりで、武力行使をしているわけではありませんが、しかし、部隊が十分必要な弾薬を持っていっていないということも起こり得るという事例として私は挙げたわけでございまして、そういうニーズもあるということから、今回加えたということでございます。

小沢(鋭)委員 メニューって、レストランのメニューをどうやって選ぶかというような話じゃないと思いますよ。

 これは、先ほど申し上げたように、本当に、日本の、まさに平和主義そのものをなし崩しにする、そういう話につながっていきかねない。だから、武器の提供はやめたんでしょう。武器の提供、普通、武器と弾薬の提供というのはセットですよ。武器の提供はしていないですよ。少しずつ少しずつやっているじゃないですか。これは、私どもは納得できないし、国民の皆さんも納得できないと思います。

 もう一点、戦闘行為地点との関連で、まさに政府の皆さんは、戦闘現場ではないということをずっと言っていますね。だけれども、今回のこの法案では、まさに戦闘に発進する戦闘機の給油、まさにサポート、それができることになっていますね。戦闘機なんというのは遠くから飛ぶんですから、当然戦闘現場じゃないんですよ。ただ、外国から見たらば、外国というか敵国、戦っている相手国から見たらば、当然それはその相手国の戦っている相手に加担している、こういう話になりますよね。日本の基地、いっぱいありますよ。基地の皆さんはどう考えるんですかね、これ。やめてもらいたいですね。

 これは何でこんなことをしたんですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも、加担という言葉をどう理解するかでありますが、そもそも支援をしているのは、今までも支援しているわけでありますし、今回も支援をするわけでありまして、支援をしていないと見られようとはしていないわけでありまして、まさに支援するために後方地域で支援をする、こういうことでございます。

 先ほどの武器につきましても、これは憲法上の要請ではなくて、そもそも武器についてはニーズがないわけでありまして、戦闘部隊は当然必要な武器は自分で持っていくということであろう、こう思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、重要影響事態について言えば、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすという事態であるということに鑑みれば、我々は支援をする必要がある、こういうふうに考えるわけでございます。

小沢(鋭)委員 いや、今までもしてきたといったって、今までしてきていないのを拡大している話として私はこの四点を挙げているんですよ。拡大しているから、それは心配です、こういう話を私は申し上げておりまして、時間もないので、また後に議論を続けさせていただきます。

 こういった、先ほども我が党の立場がありましたけれども、我々、恒久法を考えるというのは、基本的に考え方として悪くないと思っているんですよ。だけれども、これをきっかけに、憲法をなし崩し的にしていくとか、あるいはまた、まさに日本の安全保障そのものを質的に変える、こういう話は納得はできませんので、申し上げておきたいと思います。

 最後に一点、存立危機事態について御質問します。

 これは、武力攻撃事態においては、まさに国民保護法とのセットになっていますね。存立危機事態というのはどういう事態か、こういう話が出てきたときに、いわゆる国民生活に死活的な影響がある事態、こういう説明をしましたね、政府の皆さんは。当然、国民保護法の話を考えるべきじゃないんですか。何で武力攻撃事態においては考えられた国民保護法を今回はしなかったんですか。

中谷国務大臣 この国民保護法というのは、我が国への直接攻撃や物理的な被害からいかにして国民、その生活を守るかという視点に立って、そのために必要となる警報の発令、住民の避難や救援等の措置を定めるものでございます。

 他方、存立事態というのは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生して、これによって我が国の存立が脅かされて、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態ということであります。

 この存立危機事態において、警報の発令、住民の避難や救援が必要な状況とは、存立危機事態であると同時に、まさに我が国に対する武力攻撃が予測あるいは切迫している事態と評価をされる状況にほかならず、この場合は、あわせて武力攻撃予測事態または武力攻撃事態と認定をして、国民保護法に基づく措置を実施することになります。

 したがって、国民保護法について、存立危機事態の認定を新たに要件として定める必要はなく、武力攻撃事態等の認定について政府として判断を行い、国民保護法を適用することによって十分に対応できると考えたからでございます。

小沢(鋭)委員 答弁書を読んでいただいて、大臣、ただ、国民に対して死活的な影響がある、こういう説明をされているわけです、死活的な影響。死活的な影響があるという話であるとすれば、当然やはり国民保護法である程度対応するということが同時並行で考えられて僕はしかるべきだと思いますね。そこのところが何で抜け落ちちゃうんだろうと不思議で仕方ないんです。

 ですから、この集団的自衛権と政府が言っている話は、国民生活、どうってことなくたってやれるんだ、存立危機事態を宣言できるんだというふうに私なんかは受け取るんですけれども、そこが心配であります。

 終了しましたのでこれで終わりますが、今後とも議論を深めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 維新の党の太田和美でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 総理、先日の本会議でも私は指摘をさせていただきました。今回のこの法改正は、余りにも女性の理解が少ないと言わざるを得ません。女性は、妻であり、母であり、戦地に夫や子供を送り込みたくない、家族を戦争に巻き込みたくないという思いは、強く感情的に母性として持っていると思います。ましてや、この法案について、説明不足でなかなか理解が進んでいない状態では、本当に心配で心配でなりません。

 まず、冒頭にお尋ねをしたいのが、総理はなぜこの法改正が女性に支持をされていないのか、そのことについていかが思いますか。

安倍内閣総理大臣 これは、女性、男性にかかわらず、いわば日本人は、絶対に戦争に巻き込まれたくない、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない、こういう誓いのもと、戦後七十年の歩みを進めてきたわけでございます。まさに国民の命と幸せな暮らしを守るための法整備であります。

 しかし、この法改正自体の中には、例えば、集団的自衛権の一部行使容認というのは、これは憲法の解釈の変更でありまして、憲法との関係における法理的な説明がこれは多々あるということもあるわけでございまして、これは、女性ということに限らないわけでありますが、残念ながらまだ国民の理解が進んでいないという状況にあるわけでありますが、この委員会を通じて国民的な理解を深めていきたい、このように思っております。

太田(和)委員 今総理からお話がございましたように、この法整備によって、これまでできなかったとされていた集団的自衛権に基づく武力行使がこれからできるようになってくるわけです。

 すなわち、存立危機事態でございますが、この存立危機事態とは一体どういうものなのか、自衛隊は地球の裏側でも武力をこれから行使することになるのか、また、今回の改正によって拡大される自衛隊の武器使用によって、平和に貢献するつもりが紛争を助長することになってしまうのではないか、そういう疑問を国民の多くの皆さんが持っているわけです。

 この審議を通じて、ぜひ総理にお願いしたいのが、国民の皆さんにわかりやすいようにこの審議を進めていただきたいと思うんです。

 先日から始まった審議でありますが、我が党の議員に対しても、中谷大臣、おわびの言葉がございましたが、やはりそういう真摯な態度でこの審議に立ち向かっていただきたいということを冒頭まずお願いさせていただきたいと思います。

 そこで、本日は、他国領域における武力行使についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 他国領域における武力行使というと、一般の人からいえば、これはもう海外で戦争が行えるのではないか、そういうふうに捉えてしまう人もいるわけであります。今回の法整備の中でもこの不安が大きいところだと思いますが、ここはすごく大事なところなので、もう一度これまでの答弁を確認させていただきたいと思います。

 政府は、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されないとの答弁を繰り返されていますが、今後もこの答弁を変更されることはないでしょうか。これは確認なので、簡潔にお願いします。

安倍内閣総理大臣 今回のいわば武力行使、武力行使というのは集団的自衛権に伴う武力行使でありますが、これはまさに三要件の上における武力行使でありまして、それは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるか……(太田(和)委員「ここは確認だけなので、簡潔にお願いします」と呼ぶ)これは国民の皆様にわかりやすく御説明する必要がありますので、ここは大切なところでありますから、ここを述べなければいられないわけでございまして、ここが大切なところでございまして、つまり、その中において、かつ、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことというのがあるわけでございます。

 もちろん、第二要件は、他に適当な手段がないということがあるわけでありますが、その上にも、国の存立を全うし、国民を守るためということがついているわけでありまして、当然、これは繰り返し述べている、答弁したことは当然変わらないということでございます。

太田(和)委員 総理、答弁の確認だけなので、簡潔にお願いしますと言ったので、イエスかノーだけでよかったんです。済みません、これから真摯にお願いします。

 では、お伺いします。

 一般にということは、これは、総理、例外もあるわけですよね。

 中谷防衛大臣は、一般に海外派兵は禁じられているとした上で、しかし、武力行使の新三要件に合致すれば、他国の中で基地攻撃することもあり得るという例外を述べられています。

 さらに、今回の法改正では、存立危機事態の一事例として、ホルムズ海峡にまかれた機雷について、自衛の措置としての武力行使の新三要件を満たせば、自衛隊の部隊が例えばオマーンの領域内であっても掃海できる可能性があるということを例外として示されているわけです。

 では、ここで中谷大臣にお伺いをしたいんですが、この二つの事例について、海外派兵は一般に憲法上許されないのに例外とする理由について、それぞれ改めて、テレビを見ていらっしゃる国民の皆さんに御説明をしていただきたいと思います。

中谷国務大臣 海外派兵とは、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領域へ派遣することであり、これは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解してまいりました。

 その上で、他国の領域における武力行動であって新三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではありません。

 この点を含めて、海外派兵についての従来からの政府の立場は、新三要件のもとでも一切変更されることではございません。

 総理が例に挙げておられますホルムズ海峡における機雷掃海、これは他国の領域における武力行使に該当し得ますが、新三要件に該当する場合には、外国の領域で武力行使を行うことが憲法上容認をされるということでございます。

太田(和)委員 やはりわかりにくいですね。例外と一般の違いが何かということをお尋ねしていたわけであります。

 総理は、機雷掃海について、受動的、限定的であるとして、これを例外とされました。この受動的、限定的というのは、本日お二方の議員からも質問がありましたけれども、この新三要件にも入っていませんし、昨年七月一日の閣議決定にも含まれていませんでした。とても違和感があります。

 受動的、限定的というと何かいかにも法律らしく聞こえますが、これは、自衛隊法九十五条の武器等防護が合憲であることを説明するために、憲法解釈において使われた言葉だということです。その際は、破壊、奪取から武器を防護するので受動的と説明したのだと思います。しかし、領域内での停戦後の機雷掃海は、国際法上、武力行使とみなされているわけですから、日本が攻撃を受けていないのに機雷掃海をするということは、これは能動的な行動であって受動的ではないのではないでしょうか。

 このように勝手な解釈によって例外を認めると、どんどんどんどん例外がふえていってしまうんではないかなというふうに思います。この違いについて、総理、答弁をお願いします。

中谷国務大臣 九十五条で、受動的かつ限定的という言葉がございますが、これは武器等の防護と呼ばれる権限の話でございます。機雷の作業等におきましては、これは、やはり、私の考えといたしましては、機雷を埋設するということではなくて除去をするというわけでございますので、機雷の除去については受動的な、限定的な行動であると私は思っております。

太田(和)委員 アメリカでは機雷掃海は、これは能動的なものとしてとられていると思います。なぜ日本だけ受動的なんですか。

中谷国務大臣 機雷の掃海は、国際法上の分類に従えば、一般に武力の行使に該当するものでありますが、その実態は、純粋に水中の危険物から民間船舶を防護し、その安全な航行を確保することを目的とするものでありまして、その性質上もあくまでも受動的かつ限定的な行為であります。

 また、海上自衛隊の掃海艦艇は、機雷に反応しないように、船体は木またはプラスチック、これでできております。かつ、機雷処分用の機関銃を除けば、自己防護用の装備さえ持っておりません。このため、外部からの攻撃に非常に脆弱です。したがって、このような掃海艦艇による機雷掃海は、戦闘が現に継続しているような場所では円滑に実施することが困難でありまして、掃海活動での現場で、他国部隊と戦闘状態に入ることは想定をされません。

 ということで、近年においての機雷の掃海を行った直接のきっかけとしても、紛争がエスカレートしたといったような事例はないと承知をしておりますので、受動的、限定的なものだということでございます。

太田(和)委員 済みません。なかなかやはり、テレビを見ている国民の皆さんはわからないと思いますよ。

 先ほど私が指摘させていただいたように、一般には許されないけれども、今回、例外として機雷掃海は認める。この機雷掃海が、今までの、政府が言うには三要件は歯どめだというふうに言いましたけれども、その三要件の中にも入っていない、そして閣議決定の中にも入っていない。

 要は、総理は、おとといの本会議で、審議の中で、集団的自衛権の行使が可能となる存立危機事態の認定について、個別具体的な状況に即し、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断するとして、厳格な判断基準を示されませんでした。つまり、行使は政府の裁量に任されるということが明らかになったんではないでしょうか。例外の設定ともども、この基準が曖昧であり、どんどんどんどんと広がっていってしまうということを国民の皆さんは本当に心配に思っているんです。

 総理、答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 これはまさに明確な定義があるわけでありまして、それは、憲法との関係において、先ほど来申し上げておりますように、三要件でございます。

 三要件、集団的自衛権を、いわば自衛権を行使する場合、個別的自衛権もそうでありますが、この新三要件において武力が行使できるということになっているわけでありまして、これはまさに、我が国に武力攻撃が起こった、あるいは、我が国と密接な関係にある国に武力攻撃が起こり、かつ、そのことによって国の存立が脅かされ、そして国民の生命、そしてまた自由や幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある、こういうことであります。そして、これを排除し、国の存立を全うして、国民を守るために他に適当な手段がないとき、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、この三要件があるわけでございます。

 第一要件について、どのような状況がそれに当たるのかということにおいては、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ、国民に対して、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということをいうものでありまして、この要件に該当するか否かは、事態の個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、そして事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮して、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから判断をしていくことになるわけでございます。

太田(和)委員 総理、やはりわかりづらいです。国民の皆さんは、これで理解してくれる人なんかいないですよ。理解してもらって、皆さんの不安を払拭するための審議であると私は思っています。

 女性はもちろん、全ての国民に理解されて不安がなくなるような、解釈ではなく、客観的な基準で認定できるようにしていかなきゃいけないんですよ。小さくこの法案を法改正して大きく産むというようなことも漏れ聞こえてくるんです。

 そういうことをすごく皆さんは心配に思っていますので、この歯どめについて、真摯にこれから答弁に答えていただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、昨日に引き続いて、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。

 昨日は、武力行使を行っている米軍等への軍事支援、いわゆる後方支援の問題点の究明をいたしました。

 きょうは、引き続きまして、PKO改定法案の問題点、そして集団的自衛権の問題について、総理の基本姿勢をただしていきたいと思います。

 第二の問題に入ります。

 政府が提出したPKO法改定法案、国連平和協力法改定法案にも重大な問題点があります。とりわけ、この法改定によって、国連が統括しない、PKOとは関係のない活動にも自衛隊を派兵する仕掛けをつくろうとしているのは極めて重大であります。形式上停戦合意がつくられているけれども、なお混乱、戦乱が続いているようなところに自衛隊を派兵して治安活動させる。

 パネルをごらんください。

 具体的には、第一に、国連平和協力法の目的規定に、新たな活動として国際連携平和安全活動なるものを追加し、国連が統括しない人道復興支援活動や安全確保活動等に自衛隊が参加するようにする。

 第二に、自衛隊の業務内容を拡大し、安全確保業務、治安活動と、駆けつけ警護の二つの活動が新たにできるようにする。安全確保業務として、特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護などを行うとしております。

 そして第三に、武器使用基準を拡大し、自己保存型と武器等防護のための武器使用だけでなく、任務遂行型の武器使用、業務を妨害する行為を排除するための武器使用なども認めるとしております。

 総理に伺います。こうした法改定がなされれば、二〇〇一年から二〇一四年までの期間アフガニスタンに展開した国際治安支援部隊、ISAFのような活動に自衛隊を参加させ、安全確保業務などに取り組むことが可能となるのではありませんか。この質問は一昨日の本会議で行いましたが、総理から定かな答弁がありませんでした。お答えいただきたい。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 今般、PKO法の改正により新たに規定するいわゆる安全確保業務は、防護を必要とする住民等の生命、身体及び財産に対する危害の防止及び抑止、その他特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護を行うものであります。

 安全確保業務を実施する場合には、紛争当事者の停戦合意を初めとする参加五原則が満たされている、この参加五原則とは、今申し上げました停戦合意、そして領域国及び紛争当事者の受け入れ合意、中立的な立場の厳守、そして、今申し上げた原則が満たされない状況が生じた場合には撤収が可能であるということであります。そして、要員の生命等の防護のための必要最小限の武器使用が基本でございますが、こうした五原則が満たされており、かつ、派遣先国及び紛争当事者の受け入れ同意が業務を実施する期間を通じて安定的に維持されると認められることが前提となるわけでありまして、今申し上げましたように、例えば掃討作戦のような活動を行うことはできない、もちろん、戦闘に参加することはできないという仕組みになっております。

志位委員 私は、ISAFのような活動に参加することが可能になるのではないかと聞いたんです。

 この質問に対しては、総理は、既に本会議の答弁で、ISAFは既に活動を終了しており、今日の時点で、改めて当時のアフガニスタンの状況を再現して、新たな基準に基づいてその再評価を行うことは困難ですとお答えになっています。そういうことですね。それを聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 そういうことでございます。

志位委員 書いてあるように、再評価を行うことは困難だということをおっしゃいましたけれども、参加はできないということはおっしゃいませんでした。参加を否定しなかった。

 これは極めて重大であります。これはどうなるか、これは問題になってまいります。もちろん、せん滅、掃討作戦ができるのかと私聞いたんじゃない。安全確保業務ができることになるんじゃないかと聞いた。それを否定しなかった。

 これはどうなるかということを、具体的事実を示してただしていきたいと思います。

 ISAFというのは、治安活動を主任務にしておりましたが、二〇〇二年から一四年までの十三年間で約三千五百人が死亡しております。

 参加した各国の中でも、私はドイツの経験を取り上げたいと思います。

 ドイツの基本法、憲法は、侵略戦争を禁じ、ドイツ軍の活動を自国の防衛のみと制限しています。ところが、湾岸戦争後、ドイツ政府は、基本法はNATO域外への派兵を禁じていないと基本法の解釈を変え、域外派兵に踏み出していきました。

 ドイツは、アフガニスタン戦争に際して、NATOの一員として米軍などの軍事行動への後方支援に参加するとともに、ISAFに参加したのであります。比較的安全とされた北部で検問警備などの治安活動や復興支援活動を始めましたが、タリバンが攻勢を強め、戦後ドイツ史上初めての陸上での戦闘状態に陥ります。そういう中で、武器の使用基準を広げ、自衛のためだけでなく、任務遂行のための武器使用も認めていきます。

 ドイツ軍によりますと、アフガンに派遣された二〇〇二年から昨年六月初旬までに、帰国後の心的外傷後ストレス障害、PTSDによる自殺者も含めて兵士五十五人が死亡している。このうち三十五人は、自爆テロや銃撃など戦闘による犠牲者でありました。

 ドイツの公共テレビのZDFは、二〇一三年十月、「我々の戦争 アフガニスタンでの戦闘任務」と題するドキュメンタリーを放映し、ドイツ社会に衝撃を与えました。番組では、井戸を掘り、学校を建てるなど平和貢献を行うはずだったドイツ軍が、戦後初めての地上部隊による戦闘を行うようになった現実を生々しく描き出しました。

 次のように報じました。

 建設任務から、ドイツ地上部隊による一九四五年以来初めての戦争が生まれてきた、兵士たちにとっての日常は、落下爆弾の破裂や市街戦から成り立っていた、ほとんど毎週のように銃撃の応酬となった、五十名以上のドイツ軍兵士がこれまでにアフガニスタンで命を落とした、ドイツ軍の出動によって命を落とした敵の戦闘員やアフガニスタン市民がどれだけいるかは推定することしかできない、恐らくそれは数百人に上るだろう。

 こう報じました。

 今、安倍政権がやろうとしていることがどんな事態を招くか、その結果をアフガニスタンに派兵されたドイツ軍が示しているのではないでしょうか。憲法解釈を変更してNATO域外への派兵に踏み出した、ISAFに参加し、平和貢献、復興支援、治安活動のつもりだったが、戦闘状態に陥ってしまった、戦闘が頻発する中で、武器の使用基準を広げ、自衛のためだけでなく任務遂行のための武器使用も認める、それらの結果、活動は戦争と変わらないものになり、多数の戦死者を出すことになりました。まさに、安倍政権が今進めていることを先取り的に示しているのではないでしょうか。

 総理に伺いたい。

 政府のこの法案を通して、自衛隊を紛争地での安全確保業務、治安活動ですね、これに参加させれば、アフガンに派兵して多くの犠牲者を出したドイツ軍と同じ立場に日本の自衛隊を置くことになるんじゃありませんか。いかがですか。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 最初申し上げたとおり、まさに、停戦合意があって、ちゃんとそれが履行されているということが大切であります。

 今志位委員が言われた状態というのは、今ここで再現してそれを判断することが困難でありますから、すぐには一概には申し上げられませんが、このPKO五原則、果たしてこれが適用できるかということについては大いに疑問があるのではないか、このように思うわけでありまして、停戦合意があって、領域国と紛争当事者が受け入れ合意をしている、こういうことであります。そして、中立的な立場が厳守されているということが、これはある。我が国の場合はこの五原則があるわけでありますが、ドイツは違うということでありますから、ドイツと日本を一概にはもちろん議論できない。

 この五原則が極めて重要であるということは申し上げておきたいと思いますし、ドイツの部隊と違って、掃討作戦、この掃討作戦というのは、あらかじめ公共の安全と秩序の維持を害するおそれのある勢力を特定した上で、その構成員を殺傷することを目的とするような作戦をいうわけでありますが、そういう作戦は行えない仕組みになっているわけでございます。

 そもそも、武器の使用権限として、任務遂行型の使用はできますが、相手に危害を与えるためには、危害要件においては、危害を与える射撃が認められるのは正当防衛または緊急避難に該当する場合に限られるわけでありますから、この活動範囲というものは、そういう中においてはかなり限られてくるということは申し上げておきたいと思います。

志位委員 停戦合意があって履行されていることが前提だというふうにおっしゃいました。

 しかし、私が聞いたのは、ISAFのような活動に参加できる可能性を聞いたんですよ。それを否定されなかったわけですよ。ですから、この問題を提起しているわけです。

 そして、ドイツのように掃討作戦をやるわけじゃないんだと言いましたが、ドイツ軍は、せん滅作戦や掃討作戦の先頭に立ったわけじゃないです。ドイツ軍が始めたのも、治安活動あるいは復興支援、そこから始まった。しかし、それが結局、ISAFの中でたくさんの犠牲者を出すことになったわけです。

 安全確保業務と言いますが、例えば、これの内容は生易しいものじゃないですよ。重要施設の警護、検問所を設置しての検査、街路の巡回パトロール、どれも戦闘に至る可能性は極めて高いものばかりです。狙撃されたり、検問所が攻撃されたり、自爆テロが仕掛けられたりする。アフガンに派兵されたドイツ軍の場合、パトロール中にまさに狙撃され、銃撃戦になり、犠牲者となるケースが大変多かった。治安活動、これでもこういう犠牲者が出ているんですよ。

 私は、この問題、自衛隊員が殺される危険とともに、相手の民衆を殺してしまう、この危険も極めて深刻だということも言っておきたいと思います。

 アフガンに派兵されたドイツ軍にも、深刻な加害責任が問われることになりました。二〇〇八年八月には、検問警備のドイツ軍の兵士が、検査を避けようとしていた車に発砲して、市民三人が死亡する事件が起こりました。二〇〇九年九月、ドイツ軍の司令官が、米軍にタンクローリーの空爆を要請しましたが、誤爆となり、市民ら百四十名を超える人を殺害する結果となり、ドイツ社会に大きな衝撃をもたらしました。

 これは、やる活動は、あなた方が安全確保業務と言っている活動と同じ活動をドイツ軍はアフガンでやった。しかし、こういうことが起こったんですよ。

 ですから、私は、形式上停戦合意があるけれども、なお混乱、戦乱が続いているような、アフガニスタンのような地域に自衛隊を派兵し、自衛隊員から戦死者を出すだけではなく、他国の民衆も殺傷する、殺し、殺される、戦闘させる、私は、今度のPKO法の改定法案には、こうした極めて重大な危険があることを強く警告しておきたいと思います。

 政府の法案が、この点でも憲法九条に違反する、違憲立法であることは明瞭であり、絶対に認めるわけにはまいりません。

 次に進みます。

 第三の問題は、政府がこれまでの憲法解釈を大転換して、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、アメリカとともに海外での武力行使に乗り出すという問題であります。政府は、武力攻撃事態法の改定、自衛隊法の改定などでその根拠をつくろうとしております。

 ここでの最大の問題は、集団的自衛権の発動の要件である武力行使の新三要件、これを満たしているかどうかの判断が、時の政権の裁量に任されており、幾らでも、事実上無限定に広がるおそれがあるということであります。

 具体的に、私ただしていきたいと思います。

 私は、一昨日の本会議での代表質問で、米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、武力行使の新三要件を満たしていると判断すれば集団的自衛権を発動するのかと総理にただしました。総理からは定かな答弁がありませんでした。

 そこで、総理に重ねて伺います。米国が先制攻撃を行った場合でも、新三要件を満たしていると判断すれば集団的自衛権を発動することがあり得るのか否か。はっきりお答えいただきたい。

安倍内閣総理大臣 今の質問にお答えする前に、先ほどのアフガンの例で、誤解を持たれないようにもう一度申し上げておきますが、答弁をいわば行うに際しても、本会議において、アフガンの状況を今再現してそれを判断することは困難というふうに申し上げましたが、しかし、当然、五原則があるということも申し上げているわけでありまして、この五原則の中でいえば、治安状況が、ドイツが派遣されたような、アフガンのような治安状況であるということは一般に想定されないというのは、これは五原則から見て当然なことであるということは申し上げておきたいと思います。

 そこで、ただいまの御質問でございますが、憲法上、武力の行使が許されるのはあくまでも新三要件を満たす場合に限られるわけでありまして、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことを前提としているわけでありまして、いかなる場合に新三要件を満たすことになるかは、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになります。

 同時にまた、国連憲章上、武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮にある国が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力行使を行うことは国際法上認められていないわけでありますので、我が国が自衛権を発動してそのような国を支援することはないわけであります。

志位委員 アフガンの問題については、総理の答弁で、評価するのは困難だと言って、否定されなかったから、私はこれを聞いたわけです。否定されなかったんですよ、事実として。

 今の問題に戻りますが、今総理の御答弁は、仮にある国家が武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行うことは国際法上認められていない行為だから、そういう国を支援することはないという御答弁だったんですが、私が聞いたのは、仮にある国がじゃないんです。米国が先制攻撃の戦争をやった場合でも集団的自衛権を発動することがあるのか否かを聞いております。米国がです。

安倍内閣総理大臣 これは、今、一般原則として、原則として申し上げているわけでありますから、当然これは、対象となるのは、全ての国々が対象となっているということでございます。

志位委員 お答えにならないんですけれども、米国は違法な先制攻撃をやらないという認識ですか。

安倍内閣総理大臣 特定の国が違法なことをするということを前提に答弁するのは差し控えさせていただきたいと思いますが、私が申し上げているのは、いわば原則としてこのように申し上げているわけでありますから、そうした国連憲章上違法なことをした国に対して日本が武力行使をもって協力することはないのは当然のことでございます。

志位委員 それでは、米国の政策について聞いていきましょう。

 ブッシュ政権の二〇〇二年の国家安全保障戦略では、次のように述べております。

 米国は長い間、我が国の安全保障に対する十分な脅威に対抗するため、先制行動という選択肢を保持してきた、たとえ、いつどこを敵対者が攻撃するのか不確実であっても、我々自身を守るために先制行動をとらざるを得なくなる、敵対者によるこのような敵対的行動の機先を制し、あるいは阻止するために、必要とあらば米国は先制的に行動する。

 むき出しの先制攻撃論の宣言であります。

 では、最近のオバマ政権はどうでしょう。オバマ政権の二〇一五年の国家安全保障戦略では、次のように述べています。

 我々は、我々の核心的利益に対しては一方的に行動する、米国は、我々の永続的利益が求める場合、我が国民に脅威が及んでいる、我々の生活が危機に瀕している、同盟国の安全が危機にさらされている場合に、必要なら一方的に軍事力を行使する。

 先制的にという言葉こそありませんが、米国の核心的利益、永続的利益のために一方的に軍事力を行使すると宣言しています。今でも先制攻撃論を続けているわけであります。

 総理、米国は、先制攻撃戦略を一貫して国家の基本戦略に置いているじゃありませんか。そういう認識はないんですか。

岸田国務大臣 御指摘のような米国の安全保障政策は発表されているわけですが、いずれにしましても、我が国が武力行使を認める、許されるのは、再三申し上げておりますように、新三要件に該当したときのみであり、我が国が国際法に違反した行為に対して支援をすることはあり得ないと考えております。

安倍内閣総理大臣 他国の安全保障の基本的な考え方の個別な文言に対して論評することは差し控えさせていただきたい、このように思いますが、いずれにせよ、先ほど申し上げましたように、国連憲章に反する、国際法に反するいわば先制攻撃ということでございますが、武力攻撃が発生していないにもかかわらず武力攻撃を行使している、これは、国連憲章に反する行為に対して我が国が武力行使をもって協力することはないということは先ほど申し上げたとおりでございます。

志位委員 承知していないと言うんですが、同盟国の米国の国家安全保障戦略ぐらい読んでおきなさいよ。

 アメリカは戦後何をやってきたのか。国連憲章と国際法を踏みにじって、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。

 パネルをごらんください。

 そのうち、一九八三年のグレナダ侵略、一九八六年のリビア爆撃、一九八九年のパナマ侵略に対して、国連総会は、三回にわたって、アメリカを名指しで国連憲章違反、国際法違反と非難する決議を採択しております。

 国連総会は、一九八三年のグレナダ侵略では、米国の武力行使を、国際法及びグレナダの独立、主権、領土保全の重大な侵害と非難する決議を採択しております。一九八六年のリビア爆撃に際しては、米国の武力行使を、国連憲章と国際法の侵害と非難する決議を採択しております。一九八九年のパナマ侵略では、米国の武力行使を、国際法と諸国の独立、主権、領土保全の甚だしい侵害と非難する決議を採択しております。

 ここで外務大臣に確認します。

 国連総会決議に対する日本政府の態度は、グレナダ侵略問題では棄権、リビア爆撃問題では反対、パナマ侵略問題では反対だと思います。この事実関係は間違いありませんね。そしてもう一つ、この三つの事案について、日本政府はどういう態度表明をしたのか、簡潔に明らかにされたい。

岸田国務大臣 まず、三つの事例について御指摘をいただきました。

 まず、一九八三年のグレナダ派兵につきましては、質問主意書に対する答弁書という形で、「遺憾である」という遺憾の意を表明いたしました。そして、一九八六年、リビア攻撃に関しましては、外務大臣談話を発しまして、「事態の推移を重大な関心を持って見守る。」こうした意を表しました。そして、一九八九年のパナマの軍事介入についてですが、これも外務大臣談話を発しまして、遺憾の意を表明しております。

 その上で、今御指摘がありました国連総会の決議についてですが、日本政府は、グレナダの事案については棄権、リビアとパナマの事案については反対をいたしました。

 この反対につきましては、決議全体におけるパナマ等の情勢に対する判断、バランス等を考慮したと認識をしております。

志位委員 今、外務大臣が、グレナダの問題、パナマの問題、日本政府は遺憾の表明をしたというふうにおっしゃいました。

 私、ここに、あなたが今読み上げた文書を全部持ってきております。それぞれについての政府見解は次のようなものです。

 これは、まずグレナダ派兵についての、あなたが言った政府答弁書でありますが、そこでは次のように述べております。「政府としては、実力行使を含む事態の発生を見るに至つたことは遺憾であると考えている。他方、今回の米国の行動については、米国人の安全確保の問題や、関係諸国の強い要請等の事情があつたと理解している。」これが結論なんです。

 それからもう一つ、パナマの侵略の問題。あなたが言った外務大臣の談話、全文持っております。そこではこう述べております。「米国がパナマにおいて武力を行使し、多くの死傷者を出す事態となつたことを遺憾とするものであるが、同時に、同国が自国民を保護するために軍事行動を取らざるを得なくなつた背景は、理解する」と。

 両方とも理解なんですよ。両方とも政府声明の結論は、どちらも、米国が行った軍事行動そのものについては理解で終わっているんです。あなた、ちゃんと全部読まなきゃだめですよ。

 この三つだけじゃありません。アメリカは戦後、数多くの先制攻撃を実行してきました。

 私は、一昨日の本会議で、日本が国連に加盟してから今日まで、日本政府が、米国による武力行使に対して、国際法上違法な武力行使として反対したことが一度でもありますかと質問いたしました。総理は、日本は米国の武力行使に国際法上違法な行為として反対したことはありませんと。一度もありませんと明確に答弁されました。

 日本政府は、戦後ただの一度も、アメリカの戦争を国際法違反として批判したことはないんです。全部、賛成、支持、理解してきた。国連総会の三回のこの対米非難決議に対しても、日本政府は反対、棄権してきたんです。こんな異常な、米国への無条件追随の国は、世界の主要国の中でもほかにありませんよ。

 総理は、先ほどから再三おっしゃっております、国際法上違法な武力の行使を行っている国を支援することはない。しかし、米国が違法な先制攻撃を繰り返しても、これだけ国連総会で非難決議が上がっていても、ただの一度も違法と批判してこなかった日本政府が、そしてあなたが、違法な武力の行使を行っている国を支援することはないと言って、一体誰が信用しますか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 これは先ほども、遺憾の意は表明しておりますし、同時に、理解も示しておりますが、支持はしていないわけでありまして、支持をしていないわけでありますから、当然、後方支援とかあるいは集団的自衛権の行使としての武力行使とかいうことは、全くそれは考えられないわけでございます。

 これは、基本的に、先ほど申し上げましたように、国連憲章上認められているのは、まず、自国に対する武力攻撃が発生している場合になるわけでございまして、その関連から、国際法に認められていない武力の行使を行っている国に対する支援ということは行わない、これは再三申し上げているとおりでございます。

志位委員 いろいろおっしゃいましたけれども、反対したことは一度もないんです。賛成、支持、理解なんですよ。こんな国は主要国ではありません。

 米国の戦争に口が裂けても反対と言えない、このような政府が、米国から、武力攻撃されたから支援してくれ、支援しないと日本の存立にかかわるぞと言われて、どうして自主的な判断ができるか。米国が先制攻撃の戦争に乗り出しても、違法な戦争と批判できず、言われるままに集団的自衛権を発動することになることは明瞭であります。

 さらに聞いていきます。

 第二次世界大戦後の世界で起こった国際紛争の中でも、一九六〇年代から七〇年代にかけてのベトナム戦争、二〇〇三年から今日に至るイラク戦争は、その規模の大きさ、世界に与えた影響という点で、とりわけ重大な戦争でした。そして、この二つの戦争に、日本政府は首までつかって深く関与しています。

 ベトナム戦争に際して、日本政府は米国の軍事介入を全面的に支持し、在日米軍基地をベトナム攻撃の最前線の基地として使用させました。イラク戦争に際しても、日本政府は米国による先制攻撃を全面的に支持し、自衛隊をイラクに派兵し、この戦争の協力者になりました。

 第二次世界大戦後の世界で起こったこの二つの戦争に対して、日本政府が、そして総理が、どういう検証、総括を行ったのか。これは決して過ぎ去った過去の問題ではありません。これを明らかにすることは、今あなたが、そして安倍政権が、戦後半世紀にわたる政府の憲法解釈を大転換させ、戦後初めて集団的自衛権行使の道に踏み込もうとするもとで、避けて通ることはできない大問題であります。

 そこで、私は、立ち入って、きょうは問題点をただしていきたいと思います。

 まず、ベトナム戦争についてであります。

 我が党は、この戦争がアメリカによる侵略戦争だったということは、既に世界史によって証明された、動かしがたい歴史的事実だと考えております。アメリカは、第二次世界大戦で使った二倍半以上の爆弾、枯れ葉剤など残虐兵器を使用し、最大五十五万人という地上兵力をつぎ込みながら、ついにベトナム人民を屈服させることはできず、逆に全面的な敗北、撤退に追い込まれました。この事実そのものが、ベトナム戦争が米国による不正不義の侵略戦争だったことを示しています。

 ただ、私がきょうここでただしたいのは、ベトナム戦争の性格をどう見るかではありません。米国がベトナムに本格的な軍事介入を進める決定的契機となったいわゆるトンキン湾事件について、日本政府がどういう歴史的検証を行っているかについてであります。

 米国政府は、一九六四年八月、ベトナム北部のトンキン湾でアメリカの駆逐艦が二度にわたって一方的に北ベトナムの魚雷艇に攻撃されたと発表します。そして、それへの自衛権として、米空軍は北ベトナムの沿岸基地への爆撃を行いました。さらに、アメリカは、これを契機に北ベトナムへの爆撃、いわゆる北爆を開始し、地上部隊の大量派兵に踏み出していった。トンキン湾事件は、そういう決定的な契機とされた事件であります。

 しかし、米国政府の当時の発表は捏造だったことが今では明らかになっております。一九七一年に暴露された米国防総省のベトナム秘密報告、いわゆるペンタゴン・ペーパーズによって、アメリカはこの事件に先立つ一九六四年二月から北ベトナムに対する秘密の軍事作戦を開始しており、トンキン湾での衝突は米国の軍事的挑発によって引き起こされたものだということが明らかにされました。

 さらに、米国が北ベトナム攻撃の決定的口実とした八月四日の北ベトナムによる魚雷攻撃なるものが実際に行われていなかったことは、当時米国防長官を務めたマクナマラ氏が、ここに持ってまいりましたが、一九九五年に発表した回顧録でも証言していることは御承知のとおりだと思います。

 私、政府に伺いたい。政府は、このトンキン湾事件について、現在どのような認識を持っているんですか。外務大臣。

岸田国務大臣 一九六四年のトンキン湾事件についてどのような認識を持っているかということでありますが、まず、この点につきましては、平成二十六年三月四日、参議院予算委員会において、私自身、答弁をさせていただいております。トンキン湾事件について、日本政府は有権的な判定をする立場になく、コメントを控えさせていただく、これが我が国の立場であります。

 そして、御指摘のペンタゴン・ペーパーズに関する報道、あるいは米国高官が引退後に言及したということ、こういった報道等については承知をしておりますが、アメリカ政府自体はコメントはしていないと承知をしております。

志位委員 日本政府として有権的な判定をする立場にない、コメントは控えたい、ただ、アメリカ政府自体はコメントしていないという御答弁でした。

 確かに、アメリカ政府の公式のコメントはありません。しかし、私、指摘しておきたいのは、先ほどのペンタゴン・ペーパーズは、米国の国立公文書館が二〇一一年に秘密指定を解除して公開して、政府として公文書として認定しております。

 それからもう一つ、これは具体的なものを持ってまいりましたが、アメリカのNSA、国家安全保障局が、二〇〇五年、ここに持ってまいりましたが、トンキン湾事件についてのNSAの分析官の論文を公式に発表しているんです。これを見ますと、この論文では、当時の米軍側の電子情報を全面的に分析しまして、八月四日の北ベトナムによる攻撃はなかったことを証明しております。ですから、これはもう捏造は明瞭なんです。

 そこで、次の問題をお聞きしたい。

 あなたは有権的な判定をする立場ではないのでコメントを控えたいとおっしゃいましたが、それでは、トンキン湾事件が起こった一九六四年当時、日本政府はこの問題に対してどういう判定をしていたのか。

 これも、私、当時の議事録を持ってまいりました。一九六四年八月十日、衆議院の外務委員会で行われた質疑でありますが、当時の椎名外務大臣が次のように答弁しております。

 公海上においてベトナム側の攻撃があったものと考えておる次第であります。公海上で突如襲撃されたのでありますから、これを実力をもって排除する行為はやむを得ざるものであるという考え方でございます。その攻撃に対して武力をもって排除したのみならず、そのよって来る根拠地を攻撃したことは、やはり自衛行為の延長であると考えております。アメリカ側がとった行動が自衛権の範囲内のものであると私が考える理由は、アメリカが自衛権の行使として合法的に認められた範囲をまさか逸脱することはあるまいという信頼からであります。

 これは議事録に残っているんですよ。ベトナムの攻撃があったと断定しています。米国の自衛権の発動を、やむを得ざるものとして支持しています。米空軍による爆撃も、自衛行為として支持しています。その理由を問われると、米国を信頼しているからと答える。余りにもあからさまな米国追随の姿が議事録に残っています。

 今あなたは、今の政府の立場は、トンキン湾事件について、コメントを控えたい、判定する立場にないと言ったんですが、当時は明瞭に、アメリカが正しいと判定しているんですよ。

 この六四年の判定は間違いだったとお認めになりますか、外務大臣。

岸田国務大臣 私も、当時の議事録を手元に持っております。そうした発言があったことは承知をしております。

 ただ、米国政府自身はこの問題について正式なコメントを発しておりません。我が国政府として有権的な判定をする立場にはない、コメントは差し控えさせていただく、これが我が国政府の立場であります。

志位委員 六四年のときにはアメリカが正しいという声明を出したんですよ。それが、今は、コメントは控えたいと言っているんです。態度を変えているわけですよ。だから、当時のものは間違ったとはっきりお認めください。

岸田国務大臣 御指摘の当時の発言について、発言の背景、意図については十分承知しておりません。

 いずれにしましても、我が国の政府は有権的な判定をする立場にない、コメントは控えたい、これが立場であります。

志位委員 今に至るも誤りを認めない、反省がない、これは明瞭になりました。

 もう一問、聞きます。

 トンキン湾事件に関する当時の米国政府の発表が、その後、ペンタゴン・ペーパーズ、さらにマクナマラの回顧録などで捏造だと判明した段階で、日本政府として米国政府に説明を求めましたか。求めたのか、求めないのか。

岸田国務大臣 七一年にニューヨーク・タイムズに掲載されたペンタゴン・ペーパーズに関する報道、あるいは九五年のマクナマラ回顧録の公表後、米国側からどのような説明を受けたか、説明を求めたのかという御質問でありますが、そうした説明を求めた等の事実関係につきましては、確認中ではありますが、現時点では確認はされておりません。

志位委員 説明を受けたかどうか確認できないということは、公式な説明を求めていないということですよ。公式な説明を求めたら、確認できないということはないでしょう。文書が残っているはずです。

 これは、総理に今度は伺いたいと思います。総理に聞きます。

 これがベトナム戦争をめぐる日本政府の対応ですよ。米国政府の発表を無条件で支持する、捏造とわかっても説明を求めない、今に至るもまともな検証もしない、誤りだったという反省もしない。異常なまでのアメリカ追随と言うほかないじゃないですか。

 日本自身も深くかかわったベトナム戦争について、このような、検証もなければ反省もない姿勢でいいんでしょうか。総理、どうでしょうか。今、聞いていたでしょう、やりとり。

安倍内閣総理大臣 ベトナム戦争につきましては、トンキン湾の事件等について、当時の外務大臣が当時の認識について答弁をしているわけでございますが、もちろん、我々が今想定しているような協力あるいは武力の行使ということとはかかわりのないことでございまして、当時の外務大臣が、いわば外務大臣としての考え方を述べたものであります。

 そこで、今どうなのかということにつきましては、岸田大臣が現在の立場について御説明したとおりでございます。

志位委員 当時の態度表明と今の態度表明が異なっているから反省があるのかと聞いたんだけれども、反省がない。総理からも反省がない。これは本当に重大な問題だと思いますよ。日本外交、これでいいのか。アメリカのやることは何でも賛成、検証もしない、これでいいのか。

 いま一つ進みたいと思います。二〇〇三年に米英等によって引き起こされたイラク戦争についてであります。

 我が党は、この戦争もまた、国連憲章を乱暴にじゅうりんした、アメリカによる先制攻撃の戦争、侵略戦争だと考えております。そしてそれは、世界の圧倒的多数の声でもあります。この戦争に際しては、戦争が始まる前から、反戦平和の嵐のような運動が世界じゅうに広がりました。当時の世界人口の六十二億人のうち五十億人を抱える百三十以上の政府が、この戦争に反対または不同意の意思表示を行いました。

 ただ、私がここでただしたいのは、イラク戦争の性格をどう見るかではありません。米英等が戦争を開始する最大の口実にした大量破壊兵器の問題です。

 米国のブッシュ大統領、英国のブレア首相は、イラクへの軍事攻撃を開始する際に、イラクは大量破壊兵器を保有していると繰り返し断定し、それを戦争の最大の理由にしました。当時の小泉首相も、イラクは大量破壊兵器を保有していると断定し、それを最大の理由として、米英の軍事攻撃への支持を表明しました。当時官房副長官だった総理、あなた自身も、国会での答弁で、「大量破壊兵器を廃棄させるためには武力行使もやむを得ない、それに対する支持をした、」とおっしゃっておられます。

 にもかかわらず、大量破壊兵器は存在しなかった。これはもう事実であります。米国政府による捏造だったということは、今や誰も否定できない事実となりました。この事実に対して、日本政府はどういう検証をやっているんでしょうか。

 この事実を前にして、ブッシュ大統領は、イラクの大量破壊兵器に関する情報機関の分析は誤りであることが判明したと、情報の誤りを認めました。在職していた全ての期間中の最大の痛恨事とも述べました。ブレア首相も、情報の誤りについては責任を感じていると表明しました。

 総理、米英とも、当事者たちは、戦争を開始したことが間違ったとは認めていないものの、大量破壊兵器の保有という情報が誤っていた、認識の誤りがあった、これは明確に認めているんです。日本政府としても誤りをきっぱり認めるべきじゃありませんか、総理。総理、あなたが言っているんだから。

岸田国務大臣 御指摘の大量破壊兵器の有無については、二〇〇五年十二月、米国のブッシュ大統領が演説において、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの情報の多くは誤りであることが判明した、この旨述べておられます。米国自身が、イラクに大量破壊兵器の存在を確認できなかったことを対外的に明らかにしております。

 そして、イラク戦争に対する我が国の考え方ですが、イラク戦争において武力行使を支持するに至った当時の問題の核心は、クウェートに侵攻して、そして国際社会の信頼を失っている中、査察への協力を通じて大量破壊兵器の破棄をみずから証明すべき立場にあったイラクが、即時無条件査察受け入れを求める安保理決議、合わせて三つの決議が出されていますが、全てに違反をし続け、そして、大量破壊兵器が存在しないことをみずから積極的に証明しなかったことにある。こうした戦争に至った問題の核心はここにあると考えているのが我が国の立場であります。

志位委員 聞いていることに答えていません。

 大量破壊兵器の保有という認識が誤っていたことをきっぱり認めるべきじゃないか。今度は総理、答えてください。答えていないですよ。

浜田委員長 岸田外務大臣、もう一回答えてください。

岸田国務大臣 大量破壊兵器の存在が確認できなかった、これは米国自身、米国の大統領自身が表明をしております。

 そして、イラク戦争について、我が国として、そして外務省として、有識者を交えて検証いたしました。そして、その上で、イラク戦争における核心、これは、たび重なる違反、安保理決議にイラクが違反し続けた、ここにあるという認識を示しております。

志位委員 何度聞いても答えないんですが。

 政府が「検証結果」というものを、二〇一二年十二月二十一日、前の政権の時代でありますが、はっきり出しているんですよ。その中で、事後的に言えばイラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実について「厳粛に受け止める必要がある。」そう言っているだけでしょう。

 結局、誤りの反省をしていないんです。事実を受けとめる、こうしか言っていない。これは極めて重大ですよ。厳粛に受けとめると言うだけで、反省するとも、誤りだったとも言わない。米英等が情報の誤りを認めているのに、日本は言わない。

 そして、あなたは、イラクが安保理決議を受け入れなかったことが問題の核心だと繰り返しました。しかし、政府が今に至るも持ち出している国連安保理決議六七八、六八七、一四四一、どれも武力行使の根拠になり得ないということは、私、当時の国会で小泉総理ともさんざん議論して、明らかにしてきた問題であります。

 そして、あなたは核心がそこにあったと言うけれども、当時何と言っていたか。イラク戦争が開始された二〇〇三年三月二十日の深夜の衆議院本会議で、私の質問に対して、小泉首相は、武力行使なしに大量破壊兵器の廃棄を実現することが不可能な状況下では、米国等による行動を支持することは適切だと答弁しました。小泉総理はまた、私が党首討論で取り上げましたけれども、みずからのメールマガジンで、この問題の核心はイラクがみずから保有する大量破壊兵器を廃棄しないことにあります、はっきり言っていたんですよ。

 当初は、大量破壊兵器の問題を戦争支持の核心をなす問題と位置づけていたじゃないですか。そうしておいて、大量破壊兵器が存在しないことがわかると、安保理決議を受け入れなかったことが問題の核心だというすりかえをやる。こんな不誠実な態度はありません。

 一点聞きます。

 イラクに大量破壊兵器が存在していないことが明らかになった段階で、日本政府として米国政府に説明を求めましたか。当時首相官邸で安全保障・危機管理担当の官房副長官補を務められた柳沢協二氏が、その著書「検証 官邸のイラク戦争」の中で、アメリカに説明を求めなかったと証言しております。

 アメリカに説明を求めなかった、これは事実ですか。

岸田国務大臣 まず、先ほど委員の方から、イラク戦争における安保理決議、これは意味がなかった、こういった御指摘があったというような紹介がありました。

 しかし、イラク戦争に関しまして、先ほど、外務省として調査を行ったということを申し上げました。済みません、有識者を交えてという部分、今確認しましたら、これは外務省として独自の調査でありました。この調査におきましては、安保理決議六七八、一九九〇年十一月のこの決議、これによって武力行使が容認され、そして、安保理決議六八七、一九九一年四月、この決議によって条件つきの停戦決議が行われ、そして、安保理決議一四四一、二〇〇二年十一月の決議によって最後の機会を与えるとしたわけでありますが、結局、イラクは、この決議に従うことはなかった。これが核心であるという内容をまとめております。そして、大量破壊兵器の有無については厳粛に受けとめる、このような判断をしたところであります。

 大量破壊兵器の有無については確認したのかということでありますが、これは、二〇〇五年十二月にアメリカ自身がみずからの考え方を明らかにしております。これによって対外的には明らかになったと受けとめております。

志位委員 外交ルートできちんと確認したことはあるんですかと聞いているんです。

岸田国務大臣 今、現状、そういったやりとりについては確認はできておりません。

志位委員 確認していないんですよ。はっきりとその問題に限って外交ルートで問い合わせをしたということは確認していない。やっていないんです。アメリカの発表を聞いただけで、何にも問い合わせしていない。

 今、あなたはいろいろと国連安保理決議をるる言われました。しかし、決議六七八は、一九九〇年の湾岸危機の際に、クウェートからのイラク軍の排除のための武力行使を容認したものであり、戦争の根拠にはなりません。決議六八七は、湾岸戦争の停戦条件を定めたものですが、停戦協定違反をもって武力行使の根拠とすることも不可能です。停戦協定の当事者は国連であり、その違反と失効を決めることができるのは国連だけですが、国連安保理はそのような決定をしていません。そして、決議一四四一も、その決議に違反したからといって自動的に武力行使を行うことを授権したものではありません。

 だからこそ、米英は執拗に、あれだけ、武力行使にお墨つきを与える新しい決議の採択を安保理に迫ったのであり、それが失敗したことは、この戦争が国連を無視した無法な戦争であることをみずから証明したわけであります。これはトンキン湾事件と同じじゃないですか。

 総理に聞きます。

 米国政府の発表を無条件に支持し、捏造とわかっても説明を求めない。今に至っても検証もしない。誤りだったという反省もしない。総理、アメリカが行う戦争はいつでもどこでも常に正義だと信じて疑わない、米国政府の発表はいつでもどこでも事実だと信じて疑わない、捏造とわかっても説明も求めず、反省もしない、これが日本政府の基本姿勢ですか。こんなことでいいんですか。今ずっと明らかになったでしょう。総理、お答えください、総理。

安倍内閣総理大臣 先ほど、イラク戦争に対する我が国の立場については岸田大臣から答弁させていただいたとおりでありまして、当時、フセイン大統領は大量破壊兵器を所有していないことを証明できる立場にあったにもかかわらず、それを行わなかった。そして、累次の、三次にわたる国連決議に違反し続けたということでありまして、それがまさに核心であったというのが検証の結果でもあったわけでございます。

 これは今申し上げているとおりでございまして、同時に、武力行使を行った米国あるいは武力行使を行ったイギリス等は、また、情報収集を主体的に行ったこの両国がその情報が誤りであったということを認めているということでございます。

志位委員 私はこんな外交姿勢でいいのかということを聞いたんだけれども、反省がありません。

 こういう究極のアメリカ従属の政府が、集団的自衛権を発動し、アメリカとともに海外での戦争に踏み出すことはいかに危険か。第二のトンキン湾事件、第二の大量破壊兵器問題が起こったときに、あなた方は、これまでもそうだったように、米国政府の発表をオウム返しにし、無条件で支持し、協力することになるでしょう。

 ただし、ベトナム戦争の際には、日本の協力は在日米軍基地の使用にとどまりました。イラク戦争の際には、自衛隊を派兵しましたが、非戦闘地域での支援にとどまりました。

 しかし、この法案が通れば、根本的に事態は変わってきます。米国の無法な戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦することになります。日本が侵略国の仲間入りをすることになるわけでありまして、その危険性ははかり知れないと言わなければなりません。

 二日間の質疑を通じて、政府が平和安全法制の名で持ち出してきた法案は、武力の行使を禁止し、戦力の保持を禁止した憲法九条を幾重にも踏みにじる違憲立法であることが明らかになりました。

 戦後最悪の安倍政権による戦後最悪の戦争法案は廃案にすることを強く求めて、質問を終わります。

浜田委員長 次回は、明二十九日金曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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