平成27年4月2日(木)(第1回)

◎会議に付した案件

1.幹事の補欠選任

補欠選任 後藤田正純君(自民)  平井たくや君(自民)委員辞任につきその補欠

補欠選任 河野 太郎君(自民)  寺田  稔君(自民)幹事辞任につきその補欠

補欠選任 平沢 勝栄君(自民)  江渡 聡徳君(自民)委員辞任につきその補欠

補欠選任 井上 英孝君(維新)  馬場 伸幸君(維新)幹事辞任につきその補欠

2.会長代理の指名

保岡興治会長(自民)が、「憲法審査会の運営に関する申合せ」について報告を行い、会長代理に、武正公一君(民主)を指名した。

   憲法審査会の運営に関する申合せ

憲法調査会以来の先例を踏まえ、次のように申し合わせる。

一 会長が会長代理を指名し、野党第一党の幹事の中から選定する。

二 幹事の割当てのない会派の委員についても、オブザーバーとして、幹事会等における出席及び発言について、幹事と同等の扱いとする。

3.保岡興治会長から、憲法調査会設置以降の経緯等について発言があった。

◎保岡会長からの発言

〔はじめに〕

この際、昨年末の解散・総選挙を経て新たに選任された幹事及び委員の皆様に、今後の審査会での運営や議論の土台について、基本的な御認識をいただくため、幹事会の協議に基づきまして、憲法調査会設置から当審査会設置までの経緯、活動経過と、今後の運営に関する私の所感について、一言申し上げさせていただきます。

〔1.憲法調査会の設置とその運営方法〕

(1)憲法調査推進議連と憲法調査会の設置

憲法論議を専門に行う機関である憲法調査会が国会に初めて設置されたのは、平成12年1月20日、今から15年余り前のことでした。調査会設置は、平成9年5月に自民党の元衆議院議員である中山太郎先生が立ち上げた憲法調査委員会設置推進議員連盟による積極的な働きかけと、議連に集まった与野党各会派の先生方による2年以上にわたる多大な努力の結果でありました。設置に反対された共産、社民の先生方も、設置されて以降の議論には熱心に御参加いただきました。

(2)憲法調査会の活動内容

中山会長のもと、衆議院憲法調査会は、約5年の歳月をかけ、憲法の制定過程の検証に始まり、21世紀の日本のあるべき姿をテーマにした大所高所からの調査、前文を含む憲法全体にわたるテーマ別、逐条的調査など、広範かつ総合的に調査を行いました。その調査時間は450時間を超え、招致した参考人は実に106人、また、5回にわたる海外派遣によって28の国と国際機関の調査を行い、諸外国の憲法とその実情についての理解を深めました。

平成17年4月に衆議院議長に提出された最終報告書は、国権の最高機関である国会における憲法論議にふさわしい、充実したもので、その後の衆議院における憲法論議の基礎となっています。

(3)憲法調査会運営の基本理念

その調査の詳細は最終報告書をごらんいただければと思いますが、ここではまず、それを導いた中山会長による特徴的な運営方法について述べることといたします。

中山会長による運営は、大きく二つの基本理念に基づいて行われました。一つは、憲法は全ての国民のものとの考え方、もう一つは、憲法論議は、国民代表である国会議員が主体性を持って行うべきとの考え方です。それはすなわち、憲法論議は、全国民を代表する国会議員が少数意見も含むあらゆる国民の意見をすくい上げながら、国権の最高機関である国会においてこそ議論すべきということであります。

このような考え方に基づき、調査会での議論は、委員同士の自由討議を中心として行われ、対政府質疑などは行わないことが原則とされました。また、少数会派の意見も尊重するため、各会派が意見表明を行う際は、各会派の所属議員数とは関係なく発言時間を均等にするとともに、各委員が自由討議を行う際は、その発言時間を均等とした上で、どの委員も何回でも発言できるという方式が採用されました。

(4)その他の運営上の工夫

それ以外にも、憲法調査会独自のシステムとして挙げられるものは幾つもあります。例えば、皆様方の机の上にあるネームプレートですが、これは、自由討議の際、事前の質問通告を要せず、発言したい委員がいつでも自由に発言できるようにという工夫ですが、同時に、発言に対していつ反論や質問が飛んでくるかもわからないという緊張感も生み出しました。また、発言時間の終了1分前等にブザーを鳴らしてお知らせしていますが、これも中山会長によって導入された独自のシステムの一つです。

以上の運営方法は、今なおよき伝統としてこの憲法審査会にも受け継がれており、憲法論議の礎となっております。

〔2.憲法調査特別委員会の設置と憲法改正国民投票法の制定〕

(1)憲法調査特別委員会の設置

さて、憲法調査会の5年にわたる調査の結果、平成17年4月に衆議院議長に提出された最終報告書の内容についてもお話ししたいと思います。

この報告書は、議論したあらゆる憲法の論点について類型化し、その論点ごとに述べられた意見の多数、少数を明記しています。そこでは、委員の3分の2以上が述べ、共通認識とみなすことができる意見を多数意見として整理しており、その概要はお手元にお配りしてある衆議院憲法調査会報告書抜粋をごらんいただければと思いますが、その中に、憲法改正手続法については、速やかに整備すべきという多数意見がありました。これに基づいて、直ちに、衆議院に、平成17年9月、憲法改正国民投票法制定のための憲法調査特別委員会が設置されたのです。

(2)憲法改正国民投票法の制定

同特別委員会の中山委員長と、私を含めた与野党の理事は、憲法改正国民投票法の整備に向けた論議が来るべき憲法改正のモデルケースになるようにとの考え方を共有いたしまして、3分の2を超える幅広い合意を得て法律を制定すべく努力をいたしました。

まずは、およそ8カ月をかけて諸外国の国民投票法制等の調査を含む丁寧な論点整理を行い、続いて、与野党がそれぞれ法案を提出した後も、全ての会派、委員の意見を聞きながら、その一本化に向けた努力を重ねました。その結果、委員会での議論を基礎に、両案をあわせて修正する併合修正案が提出され、最終的に成立したのは、当初の与党案にこの修正を加えたものでした。

〔3.憲法審査会の設置と活動開始までの経緯〕

残念ながら、衆議院での委員会採決は、その年の参議院選挙に向けた政局に巻き込まれ、必ずしも円満というわけにはいきませんでした。そのときの混乱が尾を引いていたことや、その後の政治情勢によって、改正国会法に基づく憲法審査会の始動は大幅におくれ、ようやく活動を開始することができたのは、同法の施行後4年2カ月余りを経た平成23年10月のことでした。

当審査会は、初代会長の民主党の大畠章宏先生のもとで活動を開始し、その後、平成24年末の衆議院解散・総選挙による政権交代を経て、二代目の保利耕輔会長にバトンタッチされました。昨年末には衆議院の解散・総選挙があり、12月末の第188回国会で、皆様の御推挙をいただき、私が三代目の会長として就任させていただいたところです。

〔4.今後の運営に関する所感〕

今後の審査会での議論は、会長代理、幹事、オブザーバーの皆様とよく相談をしながら進めてまいりますが、最後に、当審査会の運営に関し、私から若干の所感を述べさせていただき、今国会最初の憲法審査会開会に当たっての会長発言を締めくくることといたします。

(1)憲法調査会以来の基本理念の継承

私は、中山太郎先生が会長をしておられた憲法調査会、憲法調査特別委員会の時代から、幹事等の立場で憲法論議にかかわってまいりましたが、本日述べたように、憲法調査会時代から培われ、憲法審査会になってからも継承された運営上のよき伝統は数多くございます。そこでは、総選挙で示される民意の一つのあらわれである各会派所属議員の数の多寡にかかわらず、各会派、各議員の発言の機会を平等にすることを原則とすることによって少数意見を尊重する、公正公平な運営が大切にされてきました。その根底に流れているのは、先ほども述べましたように、まさに、憲法は全ての国民のものという精神であり、国家国民の最高規範である憲法についての論議は、政権や政策をめぐる対立からはある程度距離を置いて、国権の最高機関である国会の議員一人一人が大局的な見地に立って論議し、深化させていくべきものであるということであろうと思います。

私といたしましては、本日申し述べた憲法調査会以来のよき伝統を引き続き継承し、それを大切にして、これから憲法審査会において尽くされるであろう深みのある議論を基礎としつつ、公正公平なる運営を行ってまいる所存であります。

(2)委員各位へのお願い

これから、昨年末の総選挙を経て新たに選出された委員のもとで憲法論議が始まることになります。委員各位におかれましては、本日申し述べた当審査会に受け継がれているよき伝統を踏まえつつ、それぞれの所属政党の立場を考慮しつつも、議員としてのお考えを自由に述べていただき、当審査会における議論に積極的に御参加いただきますようお願いを申し上げるとともに、国民の負託を受け、国政に責任を持っておられる各党各会派や政府の皆様にも、このような憲法審査会のあり方に深い御理解をいただき、憲法審査会での論議がスムーズに進むよう、御配慮、御支援をいただければ幸いでございます。

(見出しは、便宜、事務局で付したものです。)