平成29年5月18日(木)(第5回)

◎会議に付した案件

1.森英介会長から憲法審査会の運営等について発言があった。

2.日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(国と地方の在り方(地方自 治等))

自由討議を行った。


◎森会長からの発言

この際、一言申し上げます。

本審査会は、国会法第102条の6の規定により、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査するため、衆参両院に設置されたものであります。

平成12年に設置された憲法調査会以降、各会派が異なる意見にも耳を傾けながら、お互いの立場を超えて自由闊達に議論することができるよう、委員各位の御指導と御協力をいただきながら、公平かつ円満なる審査会運営に努めてまいりました。

また、改めて言うまでもなく、憲法改正の発議権を有しているのは、あくまでも国会であり、主権者・国民の負託に応えるべく、私どもの責任において、主体性をもって与野党で丁寧な議論を積み重ねていかねばなりません。

会長として、引き続き、これまで築き上げられてきた公正・円満な運営に努めてまいる所存ですので、改めて、御理解・御協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。


◎自由討議

●各会派の代表者からの意見表明の概要

上川 陽子君(自民)

  • 3月16日の自由討議では、「緊急事態における国会議員の任期延長」について議論を深めていくことや、「合区」の解消について更に議論の必要があること等について、各会派の間で認識がある程度共有されたのではないか。  
  • 「地方自治」がなぜ重要かと言えば、民主主義を地方レベルでも実現し、国民の自由と権利を保障することを目的としているからである。 
  • 人口の劇的な減少と東京への一極集中は、「一票の較差」をはじめとする様々な格差をもたらし、国と地方の権限分配の在り方など、「国と地方の在り方」にも大きな影響を及ぼしている。  
  • 「団体自治」においては、人口減少の中、行政サービスや住民のセーフティネットのレベルを維持するため、昭和・平成の大合併が行われたが、まだまだ不十分であるとの指摘もある。  
  • 一方で、人口減少と東京一極集中により住民が政治にアクセスしにくくなり、「顔の見える民主主義」を維持できなくなるという状態に陥りつつある。「身近なことは自分で決める」という地方自治の価値を再確認するとともに、国政レベルにおける「顔の見える民主主義」の復活のためにも、合区の解消を図らなければならない。
  • 明治以来120年を経て完全に定着している広域自治体と基礎自治体の二層制を維持し、その適切な役割分担を踏まえて「団体自治」の一層の充実を図ることが肝要。  
  • 他方、「住民自治」の理念を実現するためには、それを実現する「場」となる地域コミュニティが維持されていることが必要だが、それが揺らいでいる。 
  • 8章の「条文が簡素で抽象度が高いこと」をどのように考えるか、賛否両論の議論がある。
  • 憲法の規定の在り方や改正を検討するに当たっては、憲法規定だけではなく、附属する法規などを含めた総体としての法体系全体を検討しなければならない。  
  • 8章に関する論点について自民党として、@「住民自治」と「団体自治」について憲法上明記すること、A条例制定権について、現行の枠組みを維持しつつ、国会における立法の在り方などを改善するアプローチをとること、B自主的な財源や財政調整制度などについて憲法に明記すること、を検討すべきと考える。  
  • 「住民自治」の土台となる地域コミュニティの維持、「団体自治」の足腰となる基礎自治体の機能の維持・向上、広域自治体である都道府県について「顔の見える民主主義」維持のための「合区」の解消が必要。

中川 正春君(民進)

  • 安倍総理の一連の発言は、立法府のみに付与された憲法改正の発議権を著しく侵害すると同時に、議事の混乱を引き起こす行為だ。総理に厳重なる抗議と一連の発言の撤回を求めるべく、審査会での決議を求める。また、議長からも注意を促していただくために、会長から議長に進言をしていただきたい。
  • 戦後、新しい憲法になったにもかかわらず、明治憲法の中央集権体制が、現代日本の地方自治の現実の中に色濃く残っている。しかし、急速な高齢化社会に直面し、統治構造の根本的な改革が求められており、中央集権から地方分権に切り替えていく必要がある。
  • 地方分権、地域主権の精神の明示化を目指し、8章の加筆・改正を視野に入れた議論をすべきである。
  • 地方自治体の政治形態は、自ら決定できる裁量権を明示すべき。その際、現状の二元代表制だけでなく、議院内閣制などの選択肢も可能とすべきである。
  • 道州制に向けた積極的な議論を期待する。特に、国の出先機関の整理や、国と地方の協議の場に向け、有効な制度設計の議論を進めるべき。
  • 地方自治体の課税自主権、財政自主権を明示すべきである。地方交付税は、ナショナルミニマム保障機能と自治体財政の水平調整機能を分離し、前者は国で、後者は自治体間で基準を決めて、実行するのが望ましい。税源移譲が必要である。
  • 補完性の原理に基づき、住民自治を中心に据えるとともに、国家の機能分野を明示して、それ以外の権限逸脱に制限を加える必要がある。
  • 条例の「上乗せ・横出し」を大幅に認め、自治体の自主性を引き出すべきである。自治体組織による法令のスクリーニング委員会を構成し、既存の法令で条例化可能な内容を取り出して法律の改正を提起する制度の検討も必要である。
  • 地方裁判所の在り方など、司法分野の分権の議論も進めるべきである。
  • 住民自治について、補完性の原理を明示すべきである。コミュニティの範囲をボランティア、NPO、宗教、民族等の機能集団にも広げ、住民自治への参加を促す仕組みが必要である。
  • 在留外国人の住民としての権利を保障する総合的な手立てが必要。
  • 間接民主主義を補完する意味から、一般の政治課題についての国民投票、住民投票の制度を確立して、憲法に明示することを含めた法制化の議論が必要。
  • 国家緊急権を憲法に明示する必要はない。各事象に応じて国と地方の権限と役割分担を定める個別法律の整備が望ましい。自然災害時の危機対応では、具体的な対応の指揮権を現場に集中させ、国はそれをサポートする体制を構築すべき。

遠山 清彦君(公明)

  • 地方自治の原則は、日本の民主主義の発展の原動力と言っても過言ではない。地方における地域社会の活性化は、喫緊の課題である。公明党も「加憲」の議論の中で、地方自治の強化を一つの重要な視点として捉えてきている。  
  • 党内議論の中では、地方自治に関する憲法規定の規律密度が低いことや、「地方自治の本旨」の定義がないこと、地方と国との役割分担や地方公共団体の財政的自立の実現について憲法に位置付ける必要があるか否か等が検討されてきている。
  • 東京一極集中の是正へ向けた努力を強化すること、特に基礎自治体の足腰を強化する必要があることは、与野党を超えて認識が共有されているところであろう。
  • 党内には、住民自治や団体自治の明記により、国が地方自治体と地域住民の意思を尊重することや、地方自治体が自立と責任の原則に立つことを憲法の中ではっきりさせるべきとの意見がある。
  • 他方、「地方自治の本旨」の具体的内容は、憲法解釈や判例で相当程度明確化されてきており、更に規定する必要性があるならば、法律で手当てすれば良い、との意見もある。
  • 憲法に国と地方の役割分担を規定することを検討すべしとの指摘もあるが、既に地方自治法に規定があることに留意する必要がある。役割分担規定には、立法分野における国の地方に対する過剰介入への抑止効果があるとの主張もあるが、更なる検討を要する。
  • 地方自治権の強化を図る視点から、地方自治権の侵害に対し裁判所を使って是正できることを憲法に規定し、同時に国と地方の事前協議の義務付けを憲法に規定するという考え方もあるが、現在でも一定の事前手続の保障はあり、憲法改正の要否について党内の意見はまとまっておらず、引き続き議論を継続していきたい。  
  • 地方自治体の財政的自立は、地方自治の不可欠の要素である。どの地域でも一定の行政サービスが提供されるよう、自治体間の財源不均衡の調整による財政格差の縮小が不可欠である。
  • 党内には「地方自治体の財政的自立の確立、すなわち課税自主権や財政調整制度を憲法上より明確にすべき」との意見があるが、地方税財政に関する法体系の全体を見通した議論が必要であり、引き続き慎重に検討する。
  • 党内では「仮に道州制を導入するとしても、そのための憲法改正は必要ない」という意見が大勢である。道州制には検討すべき課題が多く、また、道州制導入は、国の形を大きく変える政策であり、国会のみならず地方を含めた国民的議論を喚起しつつ議論を前に進めていくべきである。

赤嶺 政賢君(共産)

  • 安倍首相の憲法改正に関する発言は、憲法尊重擁護義務を負う行政府の長による国会の権限への介入であり、三権分立に反するもので、容認できない。
  • 安倍首相の発言を受け、自民党は憲法改正の発議に向けた動きを加速化しているが、国民の多数は改憲を求めておらず、改憲案の発議に向かう憲法審査会を動かすべきでない。  
  • 9条1項、2項を維持し、自衛隊を明記する安倍首相の考えは、9条2項を改正し国防軍を規定する自民党草案が国民的議論に値しないと認めたもので、9条の改正自体を諦めるべきである。  
  • 自衛隊を憲法に明記する必要があるとすることは、自衛隊を合憲と解釈してきたこれまでの政府見解が誤りだったことになり、2年前の安保法制も、違憲の法律ということになる。
  • 9条に自衛隊を明記することは現状追認にとどまらない。改憲論者は9条3項に自衛隊を明記し、2項を空文化させるべきと公言している。9条が維持されるというのは全くの欺瞞である。
  • そもそも9条は、日本国憲法の核心であり、侵略戦争の反省の下、軍国主義を排し、平和国家として国際社会に復帰するための出発点であった。9条に手を加えることは、日本国憲法を根底から覆すことである。
  • 戦力不保持を定めた9条に反し、米国の求めに応じて解釈拡大を重ね、海外派兵の道を開いた。それでも9条は自衛隊の活動を制約し、政府を縛っている。国民が求めているのは、憲法改正ではなく立憲主義の回復、憲法の諸原則に合わせて現実政治を変えることであり、それと逆行する改憲論議は認められない。  
  • 沖縄では、復帰から45年が経ってもなお憲法の上に安保が置かれており、米軍基地のために法律の恣意的運用が重ねられ、地方自治も民主主義も踏みにじられている。日本国憲法で初めて規定された地方自治は、憲法の基本原則を地方政治においても貫くことを求めている。

足立 康史君(維新)

  • 本日の自由討議が三たび延期され、1カ月以上開催が遅れたことに関し、審査会の政局化を主導した民進党に改めて苦言を呈したい。審査会が政局の影響を受けないことは、憲法調査会以来の伝統である。会長代理の重責をも担う野党第一党に相応しい対応を強く求める。  
  • 我が党は憲法改正原案を公表し、自民党も憲法改正発議に向けた検討を本格化させている。民進党も速やかに党の考え方をまとめ、国政政党としての責任を果たしてほしい。
  • 我が党は、憲法改正原案の3本柱の一つに「国と地方の統治機構改革」を位置付けた。その背景には、明治維新以来140年続く府県制度の制度疲労がある。
  • 東京一極集中と地方の衰退に歯止めがかからない。東京一極集中は、待機児童問題など社会問題を招いている。こうした認識から、我が党は、「国と地方の統治機構改革」等を提案してきた。  
  • 戦後の国主導の地方振興政策はことごとく失敗し、第二次安倍政権における地方創生も充分な成果を上げているとは言えない。国と地方の権限と責任の在り方を根本的に変える憲法改正が不可欠である。  
  • 我が党は、8章につき、憲法改正原案を公表している。規律密度を大幅に高めており、具体的規範として機能することを期待する。以下、同案を説明する。
      92条では、基礎自治体と道州を憲法上の存在とし、二層制を定めた。
      93条1項では、住民自治の原則と団体自治の原則を具体的に定めた。2項では、補完性の原則を定めるとともに、国と自治体の役割分担を定めた。自治体の役割に属する事項については、国の法令では基本的な準則を定めるにとどまることになる。
      94条1項で、自治体の組織・運営については、自治体自身が条例で定めるという原則を定めた。ただし、2項では、基礎自治体の種類、区域等は、道州条例で決めることとしている。
      96条では、条例による上書き権を定めた。2項で一定の事項につき道州の立法権が国の立法権より上にあることを定める一方、道州所管事項の範囲を法律で規定することとし、国と道州の権限のバランスを図っている。
      97条1項では、自治体の課税自主権を定め、2項では自治体間の財政調整制度を定め、道州相互の水平的財政調整も道州内での水平的又は垂直的財政調整も可能とした。
      98条では、自治体同士あるいは国と自治体の争訟は、憲法裁判所で処理すると定めた。
  • なお、平成17年4月の「憲法調査会報告書」では、8章について、4条しかない現行規定を充実させるべきとの意見が「多く述べられた」と結論付けられており、道州制についても、導入すべきであるとする意見が「多く述べられた」とされていることを付言する。

照屋 寛徳君(社民)

  • 安倍総理は、9条に自衛隊の存在を明記し、2020年に改正憲法を施行する考えを示したが、立憲主義と平和主義の破壊、99条の憲法尊重擁護義務違反の暴言であり、強く抗議する。自民党総裁である安倍総理は行政府の長でもあり、改憲項目やその年限を国会や国民に示す権限はない。  
  • 予算委員会で読売新聞を熟読せよと強弁したが、不誠実で国会軽視なだけでなく、メディアを選別する非民主的手法であり、強く批判する。
  • 憲法改正の発議権を無視し、違憲の安保法制に基づく海外派兵の進展と戦争国家への暴走を加速させる安倍総理の改憲に抗い、不戦と護憲を貫く。
  • 明治憲法には地方自治に関する規定はなく、都道府県や市町村はあったが、独立した組織ではなく、長も公選ではなく、中央の出先機関に過ぎなかった。そして、中央集権体制の下、国家権力が暴走し、人権が侵害された。
  • 一方、戦争放棄を宣言した日本国憲法は、8章に地方自治を明確に位置付け、保障している。戦争をしないという国家的意思と地方自治の創設の狙いとが結びついている。92条を受け、地方自治法が憲法と同時に施行された意味は大きい。
  • 「地方自治の本旨」は、判例・通説では住民自治と団体自治とされるが、我が党も、中央と地方で権力を分散し、地方は中央から独立し干渉を受けない一方で、中央に抑止力を働かせるとの考え方に基づくものであると考える。憲法上重要な概念であり、8章の明文改憲に反対する。
  • 自民党憲法改正草案92条1項は、住民自治と団体自治を「住民に身近な行政」に限定し、地方自治体の国に対する意見表明を封じる。同95条は地方自治体の権能を事務処理のみとし、同93条3項は、法律の定めた役割分担を踏まえた国と地方の協力を規定する。つまり、地方自治体は国の法律の定める役割分担に従い事務処理のみをやればよいと言っている。
  • 自民党草案の理念に基づく地方自治の明文改憲は、「地方自治の本旨」を否定し、地方自治体の権限を限定・縮小するばかりか、地方自治体の独立性、自主性、創造性を否定し、戦前の中央集権体制への回帰、地方自治体の国の出先機関化を目論むものであり、認められない。
  • 道州制導入は、地方自治の形骸化を一挙に進め、格差の拡大をもたらすため、基本的に反対であり、慎重に対応すべきである。広域的行政需要は、都道府県間の協力や広域連合で対応が可能であり、中央集権構造を残して道州制を導入しても、国主導の府県合併が進むだけになりかねず、平成の大合併の二の舞となる。また、仮に道州制を導入する場合でも、地方自治法の改正で対応可能である。

●委員からの発言の概要(発言順)

武正 公一君(民進)

  • 会長所感は、@審査会の目的は三つあること、A発議権は国会にあること、B審査会では与野党の丁寧な合意形成に努めること、を確認した。幹事会冒頭、中谷筆頭幹事から、安倍総理発言は自民党総裁としての考えを自民党に向けて示したものであり、スケジュールは審査会自らが各党各会派の協議により決するものであって、「2020年」に縛られないとの発言があった。幹事会等での発言をもって今回の開会を決めたという経緯を胸に審査会に臨む必要がある。  
  • 審査会は政局に縛られないことを理想としつつも、これに左右されることを確認してきた。与党が国会状況を理由に1年5カ月の間審査会を開かなかったことも指摘したい。  
  • これまで、憲法改正の発議は野党第一党を含めて行うという意識が与野党の委員間で共有されてきた。
  • この間、憲法審査会の合同審査会での協議も議論されており、合同審査会規程等も作成する必要がある。
  • 国民投票と国政選挙は、考え方が異なるため、単独で行うことがコンセンサスとなっていた。
  • 国と地方の在り方について、民進党の昨年の参院選公約で、補完性の原理、基礎自治体を強化しつつ道州制移行を目指す、その際地域の選択を尊重する等に触れていた。国と地方を合わせて財政規律を図る必要があり、道州制移行等により問題の打開を図ることも肝要である。

中谷 元君(自民)

  • 憲法改正が必要な事項として「地方分権」、「地方自治の在り方」を公明党、日本維新の会、民進党が述べたが、この点は自民党と共通の認識がある。
  • 現行憲法に地方自治に関する規定が少ないため、地方分権が進んでいない。
  • 諸外国の憲法には充実した地方自治の規定があり、我が国でも地方分権を進める憲法改正を多角的で丁寧な議論を積み重ねて行っていく必要がある。
  • 憲法前文に国と地方の役割や地方自治の趣旨を書くことが考えられる。
  • その上で、住民自治、団体自治、地方財政(自主的な財源確保、財政調整制度)について憲法で規定することを検討すべきである。
  • 緊急事態において地方自治体が機能できないときや広域にわたるとき、迅速に国家が救援活動を実施できるように、国の緊急対処の在り方も憲法で規定することを検討すべきである。
  • 諸外国と比べても、例えば、一人別枠方式など、都道府県から少なくとも1名の参議院議員が選出されるという制度は認められるのではないか。参議院が地方代表の性格を併せ持てば憲法改正が必要となることも考えられる。地方分権や豊かな地方創生を実現するためにも、どのような手段をもってしても「合区」は解消すべきである。

辻元 清美君(民進)

  • 憲法改正には三つの原則がある。一つ目は、国民主権の実現、つまり国民の大多数が変えてほしいという点を審査会で議論することである。二つ目は、法律で対応できることは法律で対応する。三つ目は、国論が二分される課題は、国民の分断を招きかねず、憲法改正になじまないことである。  
  • 「憲法は国の未来・理想の姿を語るもの」という安倍総理の発言は、「憲法は権力者の権力行使を縛るもの」という近代立憲主義の考え方をわきまえていない。憲法改正を論じるに当たって、立憲主義の認識が違うと土台が異なってくる。  
  • 「自衛隊を違憲とする学者が多い」と言うが、安保法制では9割近くの憲法学者が違憲と言ったことを無視して強行採決しており、御都合主義である。
  • 安倍総理の「憲法改正の機は熟した」という発言についても、そうなのか否かよく考えてほしい。
  • 菅官房長官が、あたかも「国政選挙と憲法改正国民投票は同時にできる」ような見解を示したが、憲法改正国民投票法制定時に法案提出者は別個に行うことが適当と答弁しており、今までの憲法の議論の場での認識とは異なる。

船田 元君(自民)

  • 憲法改正は専ら国会議員が議論し、成案を得て発議するもので、行政府は抑制的であるべきだという考えに変わりはない。一方で、そろそろ憲法改正について具体論を議論すべき時期が来たとも考えている。
  • 地方自治は4カ条しか規定がなく、規律密度が低いことは否めない。地方自治の進展のため、記述の充実が必要である。
  • 「住民自治」と「団体自治」という地方自治の基本理念をしっかり明記すべきである。また、「近接性の原則」及び「補完性の原則」並びに「基礎自治体」及び「広域自治体」も憲法に明記すべきである。
  • 地方自治をより充実、深化させるために、国と地方の関係を憲法で整理すべきである。法律からの「上乗せ」や「横出し」を可能とする裁量権を地方に与えるべきである。
  • 4月20日の憲法審査会における齋藤参考人の「地方自治体の司法救済制度」及び大津参考人の「対話型立法権分有」という考え方も検討に値する。これらの考え方は、地方自治を柔軟に創造的に活性化させることに資する。

細野 豪志君(民進)

  • 国と地方は対等というが、「国会」の24カ条、「内閣」の11カ条、「財政」の9カ条と比べ、「地方自治」は4カ条と規律密度が低いため、どう改正するかを前向きに議論すべきである。
  • 92条は、補完性の原理、住民自治及び団体自治を明記する改正を行うべきである。  
  • 93条の「地方公共団体」という言葉は曖昧であり、定義を明確にすべきである。「地方自治体には、立法機関及び地方政府を設置する」と明記すべきで、これにより、条例や課税権にも議論が波及することとなる。
  • 地方自治体の種類について、道州制を明記すべきとの議論もあるが、地方の自由度を許容するため、法律で定めるべきである。
  • 高知県の大川村のように、地方議会を解散して町村総会を開くというのは、法律上認められているが、憲法上はギリギリの措置ではないか。地方自治体の実情に合わせて議会を柔軟にやり得る書き方にすべきである。そもそも、大規模な東京都から小規模の村まで一律の仕組みとするのは無理がある。
  • 課税権、条例制定権の拡充、住民投票の位置付けも行うべき。
  • 私は地方自治に関する具体的な提案を行ったものの、反応がなかった。本日は各党から前向きな発言があった。自由民権運動の時代に私擬憲法が地方から出てきたが、地方からの声を国会が受け止め、8章の改正の議論が前に進むことを期待したい。

平沢 勝栄君(自民)

  • 安倍総裁発言は、自民党総裁として国会外で自民党に向けて述べられたものであり、何が問題なのか理解に苦しむ。
  • 緊急時の国と地方の在り方について、緊急事態においてこそ現場が重要で、国から基礎自治体に権限を下ろすことに異論はないと思う。
  • 東日本大震災の際、基礎自治体に権限がなかったため権限を持つ行政主体との連絡調整に膨大な労力が割かれ、現場対応が滞るケースが見られた。
  • 首長に権限があっても、実際には、その行使に自信を持てない・躊躇してしまう、ということが見られる。
  • 「緊急時の対応は法律で可能」と言う人がいるが、法律で人権を制限することは、それこそ立憲主義に反するのではないか。緊急時の国・自治体の権限を憲法上明記しておくことこそ立憲主義に適う。  
  • 行政訴訟が起こされたとき、被告となるのは現場を預かる首長である。憲法上明確な根拠がない場合、自治体が訴訟リスクを恐れて権限発動に躊躇することは容易に想像できる。実際、東日本大震災では、法律があっても、必ずしも役に立たなかった。  
  • 現在、緊急事態条項は世界各国にあり、日本も憲法上明記すべきである。
  • 平時における国と広域自治体、基礎自治体の緊密な連携があってこそ、緊急事態における的確な権限行使が可能になる。

大平 喜信君(共産)

  • 安倍首相発言は、憲法審査会の在り方に指示を出し、三権分立を脅かすものである。また、憲法の非軍事、平和主義に風穴を開けるものであって、認められない。
  • 教育無償化は、憲法に規定すれば実現するものではない。現在、憲法で小・中学校の義務教育は無償と明記されているが、実態は無償となっておらず、学用品購入費や給食費など多くの負担がかかっている。むしろ、憲法が規定する「ひとしく教育を受ける権利」が侵害されている。憲法から乖離した現状を正すべきである。
  • 歴代自民党政権の政策により、高等教育が真に開かれたものになっておらず、高額な学費が進学を諦める大きな要因となっている。安倍首相の真の目的は、教育無償化をダシに9条を変えることだ。無償化実現のためには、憲法改正ではなく、教育予算を増やして学費を値下げすることが必要である。

太田 昭宏君(公明)

  • 8章は、条文が4条しかなく抽象度が高い。そのために国が優先してしまう。「地方自治の本旨」とは何か、条例制定権、財源、東京一極集中等の今行われている議論に違和感はない。
  • ただし、緊急の課題は、東京一極集中とともに全国の人口減少、過疎化の進行の中、過疎の町や地方都市がどう生き抜いていくかである。また、グローバリゼーションの進行の中、世界の都市間競争の激化への対応やICTの進展も課題となっている。
  • 私は、日本社会において「距離は死に、位置が重要になる」と思っている。ICTの進展により距離が短くなり、経済や国民の意識が一体化し、境界が取り払われている。また、ここでの「位置」は地方にとって「個性」を意味する。地方がそれぞれ個性をどう発揮するかが大事であり、個性ある都市間で物理学で言う対流現象が生まれるのである。
  • 道州制という制度を志向することは大事であるが、その前にそれぞれの道州あるいは都道府県の中で経済・文化をけん引することができる都市を作ることが、全力で注力すべき緊急の課題である。

根本 匠君(自民)

  • 現行憲法は規律密度が低く、国民が共有できる理念を書き加えるべきとの意見がある。しかし、規律密度が低い今の憲法下で、憲法と地方自治法等の実体法が一体となって体系を構成し、地方自治の本旨を実現してきた。むしろ、規律密度が低いがゆえに、実体法を改正することで、時々の課題に迅速かつ柔軟に対応できた面もあるのではないか。  
  • 一方で地方自治は考慮すべきことが多いため、観念的な議論になりがちである。現行憲法では対処できない不都合を見つけ、それに対応するための議論をすることが建設的ではないか。
  • 都道府県が憲法上位置付けられておらず、参議院選挙に合区が導入されていることは、不都合であると考える。県は国政、地方自治の両面で連邦制国家の州に相当する重要な位置を占めており、その枠組みを無視する合区制度は適切ではない。合区を設置することは、投票のためだけに都道府県を合併するようなものであり、地方区の本質が変わってしまう。合区を解消するには、都道府県を憲法上位置付けるとともに、国政選挙の区割りにおいて県代表という要素も考慮すべきであることを明記すべきと考える。

古屋 圭司君(自民)

  • 5月3日の安倍自民党総裁メッセージについて、ポイントを申し上げる。まず、「自民党総裁安倍晋三」というキャプションがある。そして、「憲法改正をするか否かは、国民投票によって主権者である国民が決め、発議は国会が行う。だからこそ、国会議員は、大きな責任をかみしめるべきである」というのが一番重要な部分である。9条や教育の問題への言及は、あくまでも、「国民的な議論に値するのだろう、その他にも未来を見据えて議論すべき課題はたくさんあるだろう」という趣旨に過ぎない。また、期限の提示についても、「立法府としての責任を果たすべく、国民的な議論が深まっていくことを強く願う」という趣旨であり、この発言は何ら問題ない。  
  • 中川委員から、冒頭の会長所感では不十分であり、審査会の総意に基づく意思表示が必要で、議長にも注意を促すべきとの発言があったが、全く必要ない。  
  • 細野委員は、憲法改正の考え方を発表しており、その中身は傾聴に値する。特に、緊急時に180日を超えない範囲内で各院の議決により国会議員の任期延長をすべきとの提案や、緊急事態において3分の1以上の定足数条項の適用除外の提案は、尊重すべきである。
  • 中川委員は危機状況でも現行法で対応可能との発言であったが、憲法上の居住権や財産権があるため知事自身が緊急指令を発令しなかった経緯がある。細野委員の提案についてどのように考えるか聴かせていただきたい。

古本 伸一郎君(民進)

  • 主権者は、自公政権の下で誰が憲法改正を発議するか、何を提案するかを見つめている。9条については今後議論を加速していかなければならない。 ・
  • 自民党・公明党から立法権は国会に置きながら国が地方に配慮する仕組み(国と地方の協議の場)や、財政の自立の観点からの発言、課税自主権に踏み込んだ発言があり、大賛成であるが、地方が自主財源を手にするためには、83条(租税法定主義)をどう議論するかがカギとなる。
  • 地方税であった法人住民税の国税化を議論した際、地方議会の議長や首長が国会で発言する機会はなかった。自治体政治の最前線に立つ方が、国会に議席を持つべきであり、国会議員の資格について定めた43条について、当審査会での議論を求めたい。
  • 合区について、一票の価値の平等をどう評価するかに答えがあるが、一県一議席の比例枠の概念を導入し、衆参の役割の見直しにも踏み込む覚悟をもって議論を行うべきである。また、地方財政については、市長や知事が議論に直接参加する中で決めるべきである。

細野 豪志君(民進)

  • 緊急事態において、国政選挙を行い得ないような状況であるにもかかわらず、憲法上の規定によって選挙を行わなければならない事態は避けるべきである。この議論が前に進むことを期待したい。  
  • 古屋幹事が中川委員との見解の相違を指摘したが、中川委員は国家緊急権の憲法への明記は必要ないとの主張であり、私の提案は国家緊急権ではなく、国政選挙の先延ばしであり、整合性がある。
  • 自民党の国家緊急時における私権制限の考え方を伺いたい。私は緊急事態における私権制限は明確に必要だと考えるが、22条(職業選択の自由)や29条(財産権)については「公共の福祉」の規定があるため、これらに関しては法律で相当程度の制限ができると考える。自民党は、22条と29条について、それを超える制限が必要と考えるのであれば、説明を求めたい。また、22条と29条以外の人権制限が必要と考えるのであれば、その説明を求めたい。

山田 賢司君(自民)

  • 総理が国家機関として立法府に対して期限を切って審査しろと命令したのであれば違憲の問題となるが、自民党総裁として、主権者たる国民に向けて国民的議論を喚起する意味でメッセージを発することや、自民党議員に対して検討を進めよと発することは当たり前のことである。何が問題なのか全く分からない。  
  • よく足立委員が言うように、各党が具体的な案を出して皆で審査すべきだ。意見交換等も重要だが、これまでの様々な議論を踏まえ、そろそろ我が党を含め各党が具体的な案をこの審査会に出し、少数会派も含め、幅広い議論を行った上で立法府として発議していきたい。  
  • 2020年という期限の明示が問題となっているが、それでも遅い。現衆議院議員の任期が終わる2018年までに、我々が責任を持って発議する。発議しないなら、発議しないとの結論を出すべきである。
  • 各委員から出ていない意見として、「地域間格差の是正」がある。力のある自治体は人も知恵もノウハウもあって発展していくが、力がなく人がいない自治体がある中で権限や財源を移譲していけば格差が拡がっていく。格差是正の仕組みを法律で設けると平等性の問題があるので、均衡ある国土の発展を目指すため、地域を超えた調整ができる機能を憲法に明記することが必要である。

中川 正春君(民進)

  • 国家緊急権については、これからの議論の中で、緊急時に国家権力をどういう形で使い、どこで定義をし、どのように運用するか、議論の余地はあるが、憲法で国家緊急権ありきと決めつけて議論すべきではない。
  • 安倍総理発言については、いくら自民党内への発言との説明があったとしても、総理からの国民や憲法審査会へのメッセージであることに変わりはない。今後、会長や幹事は総理の意思を忖度して、審査会を運営することになるだろう。
  • 審査会はこれまで、憲法改正原案を各党が持ち寄って対立するのではなく、コンセンサスを作りながら、原案を統一したものにしていく、そうして初めて憲法改正は国民に受け入れられるということを伝統としてきた。だが、今般の総理発言は、その審査会の歴史を真っ向から否定するものであり、今後、審査会においても、与党が原案を提出して多数決で決めるのではないかと懸念している。  
  • そういう意味で、総理発言は混乱をもたらしたと言える。森会長には、本件について整理をし、原点に戻って、憲法改正原案の作成プロセスの基本姿勢を明らかにした上で、これからの憲法論議の在り方を語ってもらいたい。

中谷 元君(自民)

  • 安倍総裁の発言は、総理ではなく総裁としての考えを自民党に向けて示したものである。総理としては、国会において、憲法は審査会において各党で議論して積み上げていくものと度々発言している。また、2020年施行に言及しているが、憲法改正には3分の2の賛成が必要であって、自民党だけで実現できないのだから各党の理解を得なければならない。加えて、国論が二分されないようにするためにも、野党の賛同を得ることを目指していく。筆頭幹事として、「2020年」に縛られるものではないことを申し上げておく。
  • 緊急事態における私権制限については、東日本大震災において、例えば自衛隊が道路啓開を行うに当たり、車やがれきの処理に関する自治体の判断を待たないといけないといったことがあった。また、家の解体の際に、家の中に入ってタンスや金庫を動かすような場合には、財産権の侵害といった問題が起こる可能性があった。自治体も手一杯となり能力を超える場合もあるので、緊急事態として、国が手続に従って対処できるようにする必要がある。

足立 康史君(維新)

  • 安倍総裁の発言に関し、野党は、自ら言いがかりをつけて会長所感を求め、何かを取ったように胸を張っている。まさにマッチポンプである。こういうお芝居はやめてもらいたい。  
  • 武正筆頭は、政局の影響を受けないという憲法調査会以来の伝統を理想だというが、理想と現実を使い分けず、伝統を守ってもらいたい。
  • 中川委員の発言は、まるで民進党として案を取りまとめて審査会の議論に乗せることはないかのようで、問題である。もし民進党がそのような立場であるならば、会長代理を引いてもらい、新しい会長代理を選ばなければ到底発議までまとまらない。
  • 辻元幹事が指摘した「法律で対応できることは法律で」などの「3つの原則」は、辻元幹事個人が考える原則である。今でも憲法には義務教育の無償化など法律でできることが書いてある。辻元幹事の原則は現行憲法を否定しているので、反立憲主義である。
  • 細野委員が地方自治を含む3項目の提言を公表している。ぜひ今後民進党の中での意見集約をしていただきたい。

奥野 総一郎君(民進)

  • 緊急事態条項については、憲法を変えるだけの立法事実はあるのか、きちんと検証すべき。我が党は、一般的な緊急事態条項には反対であり、国会議員の任期延長等については、慎重に議論をしていくスタンスである。
  • 地方自治についても、憲法改正の必要な問題点があれば、しっかりと議論をしていくべき。細かく規定すると自由な地方制度の設計ができないという問題があるが、現行憲法の規定ぶりでは抽象的すぎる。
  • 93条が定める二元代表制について、自治体の選択制によるシティーマネージャー制や議院内閣制の仕組みの導入は、憲法改正に馴染む。
  • 地方自治体は二層制と解釈されており、大規模都市に例外的に一層制を認める特別市制度を定めることも、憲法改正の項目としてあり得る。
  • 92条の地方自治の本旨は明確にすべきである。近接性の原則や権限配分の考え方、課税自主権及び財政自主権も憲法に規定すべきである。
  • 現在法律で規定されている国と地方の協議の場を憲法上に規定することは、検討に値する。
  • 改正項目の中では地方自治が一番重要であり、まず地方自治を議論すべきである。

赤嶺 政賢君(共産)

  • 首相発言は、「総裁としての発言で党内に向けたもの」との主張もあるが、紛れもなく首相としての発言であり、行政府の長の憲法審査会に対する不当な介入であり、三権分立を蹂躙するものである。
  • 自民党は、9条2項を変えて国防軍を創設すると主張していたにもかかわらず、総理の発言だけで方針転換するのは情けないことである。
  • 審査会の運営はそれぞれ違う党の主張があり、合意には時間がかかる。様々な意見に耳を傾ける運営を会長に求めたい。
  • 憲法は権力の側が守るものであり、その守るべきものを守らずに、現実政治との乖離が生まれている。本来の目的である憲法を基準にして現実の政治を行うべきである。

田畑 裕明君(自民)

  • 現行憲法制定時には、今日の少子化や長寿社会は予見されていなかったのではないか。
  • 4カ条のみの「地方自治」の章は、国と地方の対等な国家運営や国民の理解のために、改正を前提に議論すべきである。  
  • 地方自治の充実と地方分権の推進のためその理念を位置付けることが重要であり、「地方自治の本旨」を明確化し、住民自治及び団体自治を明記すべきである。  
  • 課税自主権の明確化とともに、人口減少や過疎化が進む中、財政力の弱い地方への財政的配慮措置も定義すべきである。
  • 地方自治体同士の相互協力について具体化すべきである。
  • 地方自治体の種類について、基礎的自治体とそれを包括する広域自治体を基本とし、地方の自主性に任せながら、それ以外は法律で定めるべきである。
  • 参議院の合区解消に関し、地方の多様な意見を国政に反映させるため、地域代表制の明文化と都道府県代表の法制化について、一定の結論を出すべきである。

安藤 裕君(自民)

  • 今日、他党・他会派への批判の議論が一部で始まったことは少し残念に思う。議題に沿って議論を進めていただきたい。
  • 道州制の議論もあるが、@東京一極集中や地方の人口減少が、今の地方自治制度が原因なのか必ずしも明らかでない、A債券発行による資金調達にも課税権の行使にも限界があり、道州制の導入は財源問題の解決にならない、B条例で法律の上書きができるとなると、国の秩序という面から相当疑問が出てくる、C道州間の競争により日本の一体感が損なわれる、といった理由から、道州制については少し慎重に考えていく必要がある。
  • 国会議員は地域の代表として仕事をしているが、参議院に限らず、衆議院も、なかなか地方の声が中央に届かなくなる。地方の再生のためには、地域代表の国会議員をある程度の数確保できる体制が必要である。
  • 住民投票の活用について意見があったが、住民投票は、地域間・住民間の分断を招く恐れがある。また、キャンペーンの上手い方に票が偏ることがあり、直接民主主義が常にあるべき結果を招くとは限らないので、慎重に考える必要がある。
  • 外国人の住民投票への参加を条例で認めているところもあるが、外国人の地方参政権を認めるべきではなく、これを憲法に規定すべきではないか。

北側 一雄君(公明)

  • 参議院選挙における合区の問題は、一票の価値の平等に起因するものである。国会議員は「全国民の代表」(43条)であるため、14条の下で、一票の価値は2倍未満に抑えるべきという考え方が出てくる。これに対応するため、合区が採用された。  
  • 参議院について、各都道府県から代表を選出する制度にすると、「全国民の代表」の部分を改正しなければならなくなる。また、今は両院の権限はほぼ同じだが、参議院について地域代表の性格を強めるならば、法律・予算・条約に係る憲法上の規定についても見直しが必要となる。
  • また、参議院の緊急集会は、地域代表の下では成立しないと考えられる。その他、内閣総理大臣の指名や国務大臣の任命についても、憲法上の規定の見直しが必要となる。  
  • 参議院選挙における合区の問題は、二院制の意義や両院の役割の見直しに直結する問題であることを認識すべきである。