◎会議に付した案件
日本国憲法に関する件(日本国憲法の制定経緯)
上記の件について参考人長谷川正安君及び高橋正俊君から意見を聴取した後、両参考人に対し質疑を行った。
(参考人)
名古屋大学名誉教授 長谷川 正安君
香川大学法学部教授 高橋 正俊君
(長谷川正安参考人に対する質疑者)
(高橋正俊参考人に対する質疑者)
◎長谷川正安参考人の意見陳述の要点
1 憲法とはなにか
2 憲法の歴史を見る基準について
- 主権の概念(意義、君主主権と人民主権の対立などについて)
- 国家権力の規制原理(権力の分立、議会主義などについて)
- 個人の自由と権利の保障
3 世界の憲法史について
- 17世紀 イングランドの憲法闘争(名誉革命に至る英国の憲法史について)
- 18世紀 アメリカ合衆国の独立と憲法制定及びフランス大革命について
- 19世紀 ヨーロッパ諸国の憲法(プロイセン憲法の制定及び明治憲法との関連などについて)
- 20世紀前半の2度の世界戦争と各国の憲法(ロシア憲法、世界戦争後の東欧諸国、アジア・アフリカなどの植民地の憲法制定について)
4 日本の憲法史について
(1)明治維新から明治憲法発布(1889年)まで- 無憲法状態、絶対主義天皇制の確立
- 明治憲法が天皇・軍等を規制の外においていたことの問題性
- 日本国憲法を作ったのは誰と考えるべきか
- 憲法の規定が守られていない現状の問題性
- 国家主権が日米安保体制下において制限されているに等しい状況下で、憲法改正を議論することの矛盾
◎長谷川正安参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等
自由民主党:石破 茂君
- 参考人が著作の中で述べていた占領下において制定された現行憲法の修正・廃止の必要性について、現在はどう考えるか。また、占領下という状況で制定された憲法の無効論についてはどうか。
- 占領終了後の国民の態度によって憲法制定の瑕疵が治癒し、いわば法定追認が行われたという見解についてどう考えるか。
- 参考人が、憲法制定の瑕疵を認めながら護憲の立場に立つのは、矛盾ではないか。また、社会主義憲法を支持している参考人が、資本主義憲法である日本国憲法を支持するのは矛盾ではないか。
- 日米安保条約の廃止・在日米軍の完全撤退がなされなければ、我が国は完全に主権を回復したとは言えないのか。また日米安保体制は我が国の存立・平和の維持にとって不可欠なものではないのか。
民主党:中野 寛成君
- 参考人は、我が国は主権を完全に回復していないと言うが、主権の回復を有権的に解釈するのは誰か。また、参考人の見解は政治的な解釈ではないのか。
- 憲法規範が守られているか否かの判断を行うのは誰か。
- 憲法問題について、ドイツ型の憲法裁判所のような有権的解釈を行う機関を設けるべきではないか。
公明党・改革クラブ:平田 米男君
- 極東委員会が「文民条項」(第66条第2項)の挿入を求めた経緯
- 極東委員会が、芦田修正により日本の再軍備が可能となると考えたというのは成り立ちうる見解か。
- 日米安保条約を破棄したのち、日本は再軍備すべきと考えるか。
自由党:二見 伸明君
- 安全保障に関し、汗を出すことは何もしないという消極的平和主義を堅持するのか。
- 憲法解釈の変更により現実問題に対処するよりも、改正を行う方が明快な態度ではないか。
- 前文に三大原則の一つである基本的人権の記述が見られないのは不備であると思うが、いかがか。
日本共産党:東中 光雄君
- 「押しつけ憲法論」などいわゆる改憲派の主張を参考人はいかに考えるのか。
- 改憲論が生じた歴史的経緯
- 沖縄の現状を憲法の観点からどう評価するか。
社会民主党・市民連合:保坂 展人君
- 我が国の基本的人権擁護の現状
- 1955年の保守合同の際の改憲論議と現在の改憲論議を比較して、参考人は如何なる感想を持つか。
- 参考人は、憲法制定の主体が誰であるかについて如何なる立場に立つのか。
◎高橋正俊参考人の意見陳述の要点
- 日本国憲法制定史をその法理的視角から考える
- 考え方の類型(ポツダム宣言の受諾及び講和条約の締結を中心にして考えた場合、従来、改正説・無効説・8月革命説・失効説の4説が挙げられている)
- 各説の問題点
- 日本国憲法の法的効力再考(法の効力とは制定手続・内容などから与えられる法の属性ではなく、それを支える意思と諸力というその環境から生じるものであり、占領終了後の日本国憲法についても明らかにその環境が存在している)
◎高橋正俊参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等
自由民主党:穂積 良行君
- 占領下に作られた憲法をどう評価するのか。
- 現行憲法には成文法としてあいまいな部分や、現状と適合しないものもある。これらを現状に合わせて変えていく必要があると思うが、いかがか。
- 国民の権利及び義務に関する現時点の問題について国民のコンセンサスを憲法にどう取り込むか。
- 共生社会を目指していく上で、人権の制限の基準を明確にするべきとの考えに対する所見を伺いたい。
民主党:土肥 隆一君
- 国民の憲法に関する間主観的意思(≒共同体におけるコンセンサス)の把握方法についてどう考えるか。
- 憲法改正に各議院の総議員の2/3以上の賛成と国民投票が必要とされていることに関してどう思うか。
- 国民の間主観的意思という観点から見た場合、「第1章天皇」について瑕疵はないか。
- 第89条についての意見を伺いたい。
公明党・改革クラブ:石田 勝之君
- 占領解除後も現行憲法が存続しているという事実は国民の意思によるものではなく、GHQの国家改造プログラムの成功を意味するのではないか。
- どのような状況にあれば憲法を改正してよいと考えるか。
- ある新聞の世論調査によると、国民の53%が憲法改正に賛同しているというが、これに対する意見を伺いたい。
- 第9条は天皇制存続を望む日本政府とGHQとの交換条件であり、その理由づけとして前文が作成されたのではないかと考えるが、いかがか。
- 占領期間中は大日本帝国憲法もGHQ等の管理法令に下位法として組み込まれていたとすると、その期間は本来の意味の憲法は存在せず、独立時まで無憲法状態であったと解するのか。
自由党:二見 伸明君
- 占領期間中の主権の源は連合国にあったと解すべきとする参考人の説は8月革命説の修正と解釈していいのか。
- 現行憲法は日本が二度とアメリカの脅威とならないために制定されたという見解に対する意見を伺いたい。
- 解釈改憲に対する見解を伺いたい。
- 恒久的平和主義と現実には隔たりがあり、その隔たりを埋めるには憲法改正が必要だと思うが、いかがか。
- 第9条第1項は重要な条文だと思うが、それによって自衛隊を日陰者扱いするのではなく、国際平和活動に参加させるなど積極的平和主義をとるべきである。この意見に対する見解を伺いたい。
日本共産党:佐々木 陸海君
- 無効説・失効説は学界ではほとんど消滅しているが、政界ではいまだに存続していることについてどう思うか。
- 参考人の説は、講和条約締結後、日本国憲法が国民の間に定着したことを出発点として制定過程を振り返り、実情に適合するように解釈したものと見てよいのか。
- 憲法の内容の正当性も憲法の有効性を支える重要な要素ではないか。
- ポツダム宣言の受諾から憲法改正の必要性を引き出すことが可能であったと考えるか。
- 憲法制定当時の政府は押しつけと感じたが、国民は押しつけとは感じなかったため現行憲法が定着したという見解についての意見を伺いたい。
社会民主党・市民連合:保坂 展人君
- 現行憲法は国内外の勢力によって動揺させられることはなかったというが、現状をどのように認識しているか。
- 最近公務員の不祥事が多いのは、現在も大日本帝国憲法の精神が存続しているためではないのか。現在の制度の中に存する大日本帝国憲法の精神についての見解を伺いたい。
- 戦後成立した憲法附属法については、骨格の議論が欠けているのではないか。
- 憲法だけではなく、憲法附属法についても制定過程を検討する必要があると解する。
- 公共の福祉と人権の制限との関係についての見解を伺いたい。
- 第25条第1項の規定が福祉国家に寄与したという意見に対する見解を伺いたい。