平成12年5月25日(木)(第10回)

◎会議に付した案件

1.日本国憲法に関する件(戦後の主な違憲判決)

 上記の件について最高裁判所当局から説明を聴取した後、質疑を行った。

(質疑者)

 中山 太郎 会長

 保岡 興治君(自民)

 仙谷 由人君(民主)

 倉田 栄喜君(明改)

 佐々木 陸海君(共産)

 中村 鋭一君(保守)

 伊藤  茂君(社民)

 二見 伸明君(自由)

2.中山会長から、今国会における調査会の経過について報告があった。


最高裁判所当局の説明の要点

1 最高裁判所の違憲判決等

  • 警察予備隊違憲訴訟判決は、我が国の違憲審査権の性格が具体的違憲審査制(付随的違憲審査制)であることを明示した。
  • 昭和20年代から40年代にかけては、新憲法や新刑事訴訟法の解釈が定着していなかったこともあり、自白調書有罪認定違憲判決等のように刑事事件をめぐる違憲判断が比較的多かった。
  • その後、新憲法が国民生活の中に行き渡り、尊属殺重罰規定違憲判決、薬事法距離制限規定違憲判決、森林分割制限規定違憲判決のように平等原則や人権規定について憲法判断を求める訴訟が多く見られるようになった。
  • さらに、ほぼ同じ時期に、議員定数訴訟や愛媛玉串料訴訟違憲判決のように権利侵害を受けた個人等からの訴えにとどまらず、公の制度が抱える憲法問題なども広く指摘されるようになった。

2 諸外国の憲法裁判制度の概要 

3 我が国の訴訟事件数、平均審理期間等の推移


◎最高裁判所当局に対する主な質疑事項等

中山 太郎会長

  • 我が国の違憲審査制度及びその運用の実態の特色は何か。
  • いわゆる「統治行為論」等を理由とし、憲法判断をしなかった判例はどの程度あるか。また、どのような理由で憲法判断をしなかったのか。
  • これまでの憲法訴訟において、憲法のどのような条項に関する訴訟が多いか。
  • 我が国における裁判の長期化の原因は何か。また、その改善策として、どのようなことが議論されているか。
  • アメリカやドイツにおける違憲審査制度及びその運用の実態はどのようなものか。

自由民主党:保岡 興治君

  • 抽象的違憲審査制の導入を検討するべきではないか。
  • 昭和32年に、最高裁の機能を上告審としての役割と違憲審査権の行使の役割とに分化すること等を内容とする最高裁の組織改革に関する法律案が提出されたが、これについてどのように考えるか。

民主党:仙谷 由人君

  • 地方自治体の財務会計処理の問題を裁判で争う場合には住民訴訟(地方自治法第242条の2)の手段が用意されているが、国のこのような行為について裁判で争う手段が用意されていないのは問題ではないか。
  • 国の行為について国民が裁判で争える手段を用意するよう、裁判所が判決において国会に立法を促すべきではないか。

公明党・改革クラブ:倉田 栄喜君

  • 最高法規であり、かつ、根本規範である憲法の解釈には、変化する状況に対応することができるよう、一定の幅があってしかるべきではないか。
  • 憲法に義務条項を盛り込むことの是非、それを規定すべき箇所等の問題を含めた人権と義務との関係及び人権と国家との関係について、一般的な所見を伺いたい。

日本共産党:佐々木 陸海君

  • 明治憲法との比較において、違憲審査制を定めた第81条の意義及びその制定の背景をどのように考えているか。
  • 最高裁は「憲法の番人」であるとの評価があるが、その評価についてどう考えているか。
  • 統治行為論を理由に憲法判断を回避することは「逃げ」に過ぎないとの批判があるが、この批判についてどのように考えるか。

保守党:中村 鋭一君

  • 参議院議員定数合憲判決(58年判決)の概要はどのようなものか。
  • 直近において、最高裁は衆参それぞれの議員1人当たりの選挙人数の最大格差をどのように判示したか。
  • 議員定数に関する最高裁の違憲判決は、国会に対していかなる効力を持つのか。

社会民主党・市民連合:伊藤  茂君

  • 裁判所が機敏かつ的確に憲法判断を行うために、(1)ドイツ型憲法裁判所を設置する、あるいは(2)裁判所法を改正し抽象的違憲審査権を認める等の措置を講ずべきではないか。
  • 最高裁裁判官に対する国民審査等の既存の方法以外に、裁判所に対する国民の信頼を獲得するためにいかなる方法が考えられるか。

自由党:二見 伸明君

  • 我が国の違憲審査制が具体的違憲審査制であるとの解釈は、アメリカの影響によるものなのか。
  • 具体的違憲審査制であるとの解釈が、将来において変更される可能性はあるのか。
  • 抽象的違憲審査制の導入は憲法改正を伴わないとできないと解してよいか。