平成16年8月5日(木)(第1回)

◎ 会議に付した案件

日本国憲法に関する件

1.会長から挨拶があった。

2.論点整理、提言等を出した政党から発言を聴取した。

3.各会派を代表しての発言を聴取した。


(論点整理、提言等を出した政党の発言)

  保岡 興治君(自民)

  枝野 幸男君(民主)

  太田 昭宏君(公明)

(各会派を代表しての発言)

  近藤 基彦君(自民)

  山花 郁夫君(民主)

  赤松 正雄君(公明)

  山口 富男君(共産)

  土井 たか子君(社民)


◎論点整理、提言等を出した政党の発言の概要

保岡 興治君(自民)

1.はじめに

  • 自民党は、先の衆議院議員総選挙において立党50年を迎える平成17年11月までに新しい憲法草案を作ることを公約している。
  • 党内における議論は、国民の理解を得、また、国民世論を喚起するため、インターネット等を通じて公開してきた。

2.新憲法制定に当たっての基本的考え方

  • 新憲法が目指すべき国家像とは、国民誰もが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される「品格ある国家」である。新憲法では、基本的に国というものはどういうものであるかをしっかり書き、国と国民の関係をはっきりさせるべきである。そうすることによって、国民の中に自然と「愛国心」が芽生えてくるものと考える。
  • 新憲法は、戦後我が国に定着した国民主権、再び侵略国家とならないという平和主義及び基本的人権の尊重という三原則等を高く評価し、かかる人類普遍の価値を維持し、更に発展させるものでなければならない。
  • 新憲法は、現憲法の制定時、GHQの占領下において置き去りにされた歴史、伝統、文化に根ざした我が国固有の価値(「国柄」)や、日本人が元来有してきた道徳心など健全な常識に基づいたものでなければならない。同時に、日本国、日本人のアイデンティティを憲法の中に見出すことができるものでなければならない。
  • 新憲法は、21世紀の新しい日本にふさわしいものであるとともに、科学技術の進歩、少子高齢化の進展等新たに直面することとなった課題に的確に対応するものでなければならない。同時に、人間の本質である社会性が個人の尊厳を支える「器」であることを踏まえ、家族や共同体が、「公共」の基本をなすものとして、新憲法において重要な位置を占めなければならない。

3.現行憲法についての党内の共通認識等

  • 前文については、これを全面的に書き換えるべきである。
  • 象徴天皇制については、今後ともこれを維持すべきである。
  • 自衛のための戦力を保持することを明記することについては、大多数の合意が得られた。また、安全保障に関しては、(a)戦後の平和国家としての国際的信頼と実績を高く評価し、これを今後とも重視すること、(b)再び侵略国家とはならないという平和主義の原則が不変のものであること、(c)個別的・集団的自衛権の行使、(d)内閣総理大臣の最高指揮権及び文民統制の原則、(e)非常事態全般に関する規定等を盛り込むべきである。
  • 現憲法の定める基本的人権が、人類の普遍的な価値で、我が国が永久にこれを尊重することを基本としつつ、時代の変化に対応して新たな権利・新たな義務を規定するとともに、国民の健全な常識感覚から乖離した規定を見直すべきである。
  • 戦後の国民主権主義、民主主義が、我が国の国家社会の発展に大きく寄与したことを評価し、この原則を更に充実させるために、政治主導の政策決定システムをより強化するとともに、そのプロセスを大胆に合理化し、時代の変化に即応してスピーディーに政治判断を実行に移せるシステムとすべきである。
  • 現在の二院制については、両院の権限や選挙制度が似通ったものとなっている現状をそのまま維持すべきではなく、何らかの改編が必要である。
  • 司法に関しては、(a)最高裁判所による違憲立法審査権の行使の現状には、極めて不満があることから、(b)憲法裁判所制度等の民主的統制を確保しつつも政治部門が行う政策決定・執行に対する第三者的な立場から憲法判断をする仕組みについて検討すべきである。また、(c)裁判官の身分保障の在り方を見直すほか、(d)民事・刑事を問わず裁判の迅速化を図るべきである。
  • 財政民主主義については、より実質の伴うものとする方向で見直すべきである。
  • 地方分権をより一層推進する必要がある。なお、地方分権の基本的な考え方や理念を憲法に書き込む必要があることについても、大多数の同意が得られた。
  • 現憲法の改正要件については、比較憲法的に見てもかなり厳格であり、これが、時代の趨勢にあった憲法改正を妨げる一因になっていると思われることから、「3分の2以上」を「過半数」とする等の緩和策を講ずるべきではないか等の議論がなされた。

4.おわりに

  • 憲法論議に当たっては、「国家像」や「哲学」が必要と考える。私は、我が党の憲法構想の中にある究極の価値とは、「生命の尊重」であると考えている。これは、和を尊び、いのちを慈しむといった日本の伝統的な「国柄」等にも合致し、また、近代立憲主義の謳う「個人の尊厳」とも矛盾するものではない。
  • 国際貢献の在り方に関しても、実力行使の原理と「生命の尊重」及び過去の教訓とを踏まえ、我が国として積極的に貢献すべき分野と限定的な対応に止めるべき分野とを分け、能動的な貢献をなしていくべきである。
  • 我が党の論点整理は、公明党及び民主党のまとめた提言等と、安全保障の分野をはじめ、大まかな一致があるものと考える。

 

枝野 幸男君(民主)

1.はじめに

  • 民主党は、21世紀のこの国のかたちを構想する立場から、あらゆる問題について自由闊達に議論する「論憲」の立場を掲げている。
  • 国のかたちの骨格をなす憲法は、世界の変化に動じない普遍的な原理を打ち立てるとともに、新しい課題に対処できる対応力・応用力を有していなければならないと考える。
  • 民主党は、2006年までに党としての憲法改正草案を提出する予定であり、本年末を目処に、党憲法調査会としての憲法提案をまとめたい。
  • 「中間報告」は、憲法問題の主要な課題について党内議論の成果を紹介するために準備したものである。

2.「中間報告」に基づく民主党の憲法調査会の活動と議論の基本的方向性

(1)過去に向かった議論ではなく、未来の新しい日本の姿を構想し、憲法のあり方を検討すること。

  • 従来の憲法論議は、ややもすれば過去の歴史に足を止めたものであった。正面からの憲法論議を避け、その場しのぎの憲法解釈で既成事実を積み重ねる政府のやり方は、憲法の空洞化・形骸化を招くもので、国民の憲法に対する信頼を失わせるものである。
  • 場当たり的なものでなくスケールの大きな構想力に裏付けされた憲法論議が、今の日本の政治に求められている。

(2)現行憲法の根本規範である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を尊重し、深化を図ること。

  • 憲法は長い時間とともに深く国民生活に浸透し、社会規範として定着することが望ましい。
  • 新しいタイプの憲法は、(a)世界に対して国のあり方を示す「宣言」、(b)未来に向けた日本国民の「意志」や「精神」の明示、(c)国の活動を律する「枠組み」の三つのタイプを併せ持つ憲法を構想したい。

(3)現行憲法の「国際主義」の立場をさらに鮮明にすること。

  • 21世紀の世界の流れを受けとめ、EUのような「主権移譲」や「主権共有」といった考え方も含めた大胆な議論を進めていく。
  • 現行憲法の精神の重要な柱としての「国際協調主義」を更に推し進め、国際社会と共に行動する日本へと変換させていきたい。
  • 安全保障については、一国の枠組みでの自己完結的に捉えるのではなく、国際社会との協調を全面に押し立てていくことを検討すべきである。
  • 具体的には、なし崩し的な自衛隊の海外派遣を放置せずに、(a)国際協調主義の立場から、国連の集団安全保障活動に積極的に関与できることを明確にし、(b)「専守防衛」を明示した自衛権の行使に徹する。

(4)日本の統治システムを二重の意味で変革すること。

(ア)国民主権の徹底−あらゆる場面で国民の意志が自由に率直に反映される仕組みの追求

  • 司法制度改革における国民参加の促進や国民投票制度の検討、オンブズマン制度の整備などを行う。

(イ)政治主導の内閣、総理主導の政府の確立

  • 内閣の執行権の明確化を図り、政治と官僚システムを見直し、利益誘導政治の弊害を除去できる仕組みへと転換すべきである。

(5)この国のかたちに直結する「分権社会」を形成すること。

  • これからの日本は、国民のエネルギーに信頼を置いた自立社会の実現を目指すべきであり、それは市場の自由な企業活動の促進と地域での住民の自己決定をする意志の力を開花させることにより初めて可能になる。
  • 具体的には、(a)中央政府と地方政府の対等性、(b)補完性の原則、(c)課税自主権を憲法に明記し、「地方自治の本旨」をより具体化すべきである。

(6)人権について二つの視点から議論すること。

(ア)国際的な視点

  • 憲法について、国際社会の水準に合わせた人権保障のレベルの確立が必要であり、「環境権」「知る権利」「自己決定権」などを憲法に明記する。

(イ)国内的な視点

  • 個人の尊厳を守るために、独立した第三者機関としての「人権委員会」の創設など、憲法上の位置付けを持った人権保障・救済機関を設置する。

(7)憲法を国民生活の中に活かすということに戦後政治はあまりに無頓着すぎたことを反省すること。

  • 具体的な反省点として、(a)司法制度の中で違憲審査機能が十分機能しなかったこと、(b)はじめに行政ありきの風潮により、国民の生活・権利が二の次にされるという「お上」意識を克服することなく過ごしてきたことが挙げられる。
  • この反省に立ち、人権保障や憲法秩序の保護の下での法の支配を確立するため、憲法裁判所の創設などを検討すべきである。

3.おわりに

  • 憲法議論において重要なことは、国民の各界各層による国民的な議論に基づき今後の憲法のあり方が決められることである。
  • 国民的議論を展開する上で、本憲法調査会や民主党憲法調査会での議論がそのたたき台になることを期待する。

太田 昭宏君(公明)

1.はじめに

  • 公明党は、国民主権・平和主義・基本的人権の保障の憲法三原則を堅持した上で、新しい人権を加えるという「加憲」という立場を打ち出している。憲法を考えるに当たっては、未来志向の憲法論議が必要であり、国民憲法・平和憲法・人権憲法・環境憲法という視点から、公明党は議論を深めてきた。以下、議論の概要を簡単に紹介したい。

2.党内の議論の概要

  • 前文については、敗戦直後の歴史的背景の過度の反映、日本語らしからぬ表現にかんがみ書き直すべきとの意見及び憲法の三原則を明確に規定すべきであるという意見があった。その際、国際貢献・人間の安全保障についての理念も明記すべきであるとの意見があった。また、日本人のアイデンティティを共有できる記述が必要だとの意見もあった。
  • 天皇制については、象徴天皇制は維持すべきである。天皇を「元首」と呼んでもよいとの意見もあるが、国政に関する権能を与えるような強いものにはしない方がいいとの意見が強い。また、現行の国事行為について異論はない。女性天皇については、皇室典範の改正論議に委ねるが、方向性としては認める方向で検討したい。
  • 9条を堅持すべきとの党のこれまでの姿勢を覆す議論には至っていない。個別的自衛権については、その行使を明記すべきであるとの意見があるが、集団的自衛権の行使は認めるべきでないとの意見が大勢である。自衛隊について明記すべきとの意見と既に合憲として定着しているのであるから明記する必要はないとの意見があった。集団安全保障については、認められるべきとの意見及びその場合でも武力の行使は認められるべきではなく、法律レベルで処理すればよいとの意見があった。国際貢献については、明記すべきであるとの意見があった。
  • 国民の権利及び義務については、環境権、プライバシーの権利など新しい人権はより積極的に明示すべきとの主張があった。権利のインフレ等のおそれがあることから、慎重に検討する必要はあるが、未来志向の憲法論議に立つと、憲法に明記することが人権保障に資する。また、「権利」と「義務」を基本とする憲法に「責任」の概念を入れるという指摘は注目に値する。
  • 国会については、二院制は堅持すべきであることについては意見が一致した。その上で、両議院の役割分担を明確にし、特に、参議院の良識の府・再考の府としての位置付けを明らかにする必要があることが確認された。
  • 内閣については、内閣機能は更に強化し、政治主導の政治システムへと転換することが求められる。内閣総理大臣個人のリーダーシップよりも、合議体としての内閣の機能強化を図るべきである。首相公選制を支持する主張は少なかった。
  • 司法については、司法消極主義に傾いている最高裁の在り方は改善すべきであるが、憲法裁判所の設置までは必要ないとの指摘があった。また、国民の司法参加は重要である。
  • 財政については、地方の自主財源の確保が必要であること、課税自主権を憲法上明記すべきとの意見があった。また、私学助成と憲法との関係については、その重要性を踏まえ検討すべきであるとの意見があった。
  • 地方自治については、地方自治に関する規定を強く、明確にする必要がある。基礎的自治体の機能強化が重要であり、連邦制については否定的であった。
  • 憲法改正条項については、憲法改正の重さから現行のままで妥当であるとの意見が大勢であった。
  • 国民の憲法尊重擁護義務を定めることについては否定的であった。

◎ 各会派を代表しての発言の概要(発言順)

近藤 基彦君(自民)

  • 近年の対テロ戦争や北朝鮮の核問題など現実の脅威と対面する情勢においては、万一の場合、国民の生命・財産や国家の主権を守ることができるよう万全の防衛体制を敷き、リスク管理を行い、国民の不安を取り除くことは、政治の使命である。そのためには、国の基本法である憲法に、我が国が自衛権を保持していることを明記し、その行使の主体として自衛隊の位置付けを明確にする必要がある。
  • 現代では、人間の安全保障に基づいて国際貢献をなすことが必要であることが指摘される。人間の安全保障においては、政府、NGO、国際機関とが互いの協力の下、一人一人の豊かな可能性を引き出すヒューマンエンパワーメントの側面とそのヒューマンエンパワーメントを担保するための軍事力の提供を含めた治安維持などの援助体制の側面がある。この後者の面を考えると、人間の安全保障という国際貢献を進める上で、憲法改正は不可欠である。
  • 自民党の論点整理では、安全保障について、リスク管理という極めて明確な姿勢が見てとれるが、民主、公明の両党の安全保障に関しての論点整理等は、集団安全保障などに関し、不明確な点が多いと思われる。
  • しかしながら、三党の見解に違いはあるものの、三原則の堅持など政策や基本的方向性の一致はあると思われ、憲法改正の発議要件の3分の2を超える議席を有する会派間で憲法に対する共通の認識ができつつあることが確認でき、意義深い。来年は、最終報告書の作成もあり、今後は、各党で各論点の意見の集約や党派間での意見のすり合わせが重要である。
  • 与党内でも議論したのだが、憲法改正に関する手続法を早急に準備することが必要である。

山花 郁夫君(民主)

  • 自民、公明両党の見解を聞き、共感できる部分もあったが、民主党との憲法に対するスタンスの違いも感じた。
  • 自民党からは現憲法が個人主義的傾向に過ぎるとの指摘があったが、個人主義と利己主義とは区別すべきであり、現憲法にも12条や13条など権利の濫用を禁止する規定はあることに留意すべきである。
  • 公明党の環境に関し「国の責任」としての規定を設けるべきとの見解について、新しい人権は、権利主体やその法的効果など「権利」が一義的に確定できるかどうか疑義もあることから、国の責務・責任として規定することも検討に値すると考える。
  • 安全保障に関しては、憲法の空洞化が一番問題であり、時々の政府の憲法解釈により、憲法の規範的価値が低下することがあってはならない。国家権力の恣意的な解釈を許さない基本法の構造確立が必要である。
  • 新たな安全保障と国際協調の確立としては、日米安保一辺倒の外交・安全保障から、21世紀にふさわしいアジアの中の日本としての在り方を考えるべきであり、国際協調としては、国連中心の国際秩序の中で積極的な役割を果たすべきと考える。そのためには、EUの発展過程に見られる主権移譲といったグローバルな視点での憲法の組直しにも挑戦するような気概を持つ必要がある。
  • 民主党の安全保障に関して、不明確であるとの発言があったが、これに対しては、(a)憲法の中に、国連安保理もしくは国連総会の決議による正統性を有する集団安全保障活動を明確に位置付ける、(b)国連憲章上の「制約された自衛権」について明記すること等を挙げておく。
  • 法の支配の観点から、憲法規範の価値を守っていくために、憲法裁判所の設置も検討されるべきである。

赤松 正雄君(公明)

  • 一昨年11月の党大会において、国民主権、基本的人権、恒久平和主義の憲法三原則は不変のものとし、9条を堅持するとの基本姿勢に立った上で、時代の変化に対応して、環境権・プライバシー権などの新しい人権や地方分権の明確化を憲法に加えていく「加憲で護憲的な改革を目指す」こととなり、それ以降議論を続けてきた。
  • 9条について、1項は現状のままでよいというのが党内の認識である一方、2項は改正する必要はないとする立場から、3項を設けて自衛隊の存在を明確化すべきであるとの立場まで党内の意見は分かれている。ただ、3項を加える場合にも、専守防衛に徹し、集団的自衛権は認めるべきではないとする意見が支配的である。
  • 集団安全保障については、党内では認めるべきとの指摘がある。ただ、その場合も直接的な武力行使は避け、非軍事分野での後方支援に限定して参加すべきとの意見が強い。
  • PKOなどの国際貢献・国際協力活動については、前文などに積極的に書き加えるべきであるということで合意がなされている。
  • 党内の議論においては、世界に向かって9条が今日まで発信してきた意味合いを損なってはならないとの強い合意があるだけでなく、今日まで日本政府の展開してきた解釈に基づく行動をも最大限活かそうという連立与党としての考えがある。
  • 9条を全面的に変えることは計り知れないほど内外への影響が大きいが、9条を変えないことによりもたらされる問題もまた存在する。これらを勘案して、「現状追認的9条加憲」という意見も党内には存在するが、現行の9条の規定は堅持すべきであるとの姿勢を覆すまでの議論には至っていない。

山口 富男君(共産)

  • 本調査会は、衆議院憲法調査会規程1条において「日本国憲法について広範かつ総合的な調査を行う」ことを掲げて設置された機関であり、本日のように、改定を目的として出された自民・民主・公明の論点整理、提言を本調査会の調査対象として扱うことは、「調査会の目的」を逸脱するものである。
  • 日本共産党は、改憲ではなく、憲法を守り、活かす立場である。
  • 9条には、平和主義の先駆的な到達点が存在するとともに、国家権力を制約するという立憲主義の真髄も示されている。
  • 国連における活動と平和への貢献においても、日本は非軍事の立場に徹するということが制憲議会で確認された9条の基本的な考え方である。9条の下においては、どのような建前であろうと多国籍軍への参加や海外での武力行使などは認めることはできない。そもそも、国連憲章には、「国連総会の決議による正統性を有する集団安全保障活動」というあいまいな規定は存在しないことを指摘しておきたい。
  • 周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法などにおいて、「後方地域支援」「非戦闘地域」など世界では通用しない言葉を駆使し、つじつま合わせをしなければならなかったが、9条の存在が自衛隊の海外での武力行使に歯止めをかけ、アジア諸国民からの日本への信頼の基盤を作り出してきたことは明白な事実である。
  • 集団的自衛権の容認などの9条改定は、米国側からの強い要求であり、結局日本を戦争のできる国家へと導くものである。世論調査でも9条改定に反対する者は多数を占め、国民の中には9条改定と戦争のできる国になることを望む声は少ない。
  • 9条を日本の政治と社会にしっかり据えてこそ、日本は国際社会において名誉ある地位を占めることができ、世界の平和に貢献できる。

土井 たか子君(社民)

  • 改憲を内容とする三党の論点整理・提言等を取り上げた本日の調査会の進め方は、(a)衆議院憲法調査会規程1条に定める本調査会の趣旨及び(b)本調査会には議案提出権がないことなどを確認した1999年7月6日の衆議院議院運営委員会理事会における各党の申合せに照らして問題である。また、議長に対して提出する最終報告書が公平・公正であるべきである点から見ても問題である。本日の調査会ではなぜ三党の論点整理・提言等のみが取り上げられたのか。本日の調査会の在りように対しては反対の意思を表明したい。

<中山会長に対して>

  • 本日取り上げられた論点整理・提言等は、本調査会の調査対象として取り上げたのか、それとも参考資料にすぎないと考えてよいのか。

>中山太郎会長

  • 本調査会の設置当時に、本調査会に議案提出権がないとの合意がなされていることは重々承知している。また、各党からの論点整理・提言等が、いまだマスコミ等で報じられているのみで内容が固まっているわけではないことから、本日のように会議録として公的な形で残しておけば、将来からみて参考になると考えたものである。