平成17年2月10日(木)(第2回)

◎ 会議に付した案件

日本国憲法に関する件

1.国民の権利及び義務

上記の件について、委員間で自由討議を行った。

2.国会・内閣等

上記の件について、委員間で自由討議を行った。


《国民の権利及び義務》

●各会派一巡目の発言の概要

保利 耕輔君(自民)

  • 明治憲法が教育に関する規定を持たなかったことと比べれば、現憲法が「教育を受ける権利」の規定を持つことの意味は大変重く、若干の修正は考えられるとしても、現在のこの規定は維持する必要がある。
  • 子どもの教育を受ける義務を、訓示規定として憲法に明記すべきである。
  • 憲法の規定における「子女」「普通教育」という文言が妥当か、その意味は何か等の点は議論されるべきである。
  • 教育を受ける権利の規定は、国家からの干渉の排除と国家による配慮という矛盾する要請が含まれることを念頭において議論する必要がある。
  • 中教審が教育基本法に、国を愛する心や公共心を明記することを提言しているが、こうした事項は、憲法前文の内容から大きな影響を受けるものであることを指摘したい。


園田 康博君(民主)

  • 昨年発表した民主党の中間提言は、日本における国際人権法の活用を提言している。社会の国際化や時代の変化に対応する生きた憲法のために創造的な憲法論議を行うことが必要である。
  • 良好な自然環境が国民の健康の前提であり、環境破壊の流れを止めるために、環境権について、権利の主体、内容、範囲を特定して明記する必要がある。
  • 情報の探知・伝達技術の進展を受けて、名誉感情やプライバシーなど私事に関する権利の侵害が問題となっており、幸福追求権の観点からもこれらの保護は必要である。ただ、プライバシー権を憲法に明記する際、公人のプライバシーは原則的に保護されないと位置付ける必要がある。
  • 福祉国家現象によって行政権が優位に立つ現状では、知る権利の保障や情報公開制度の整備は正当かつ重要な手段であり、知る権利を憲法に明記する必要がある。しかし、行政効率の阻害や行政情報の流出を防ぐためにも、それが国民の受益権であり、他の人権よりも合理的な制限に服するとされる必要がある。
  • 憲法の理念が個人の尊厳であり、中心的な原理が基本的人権の尊重であることを再確認して憲法論議を進める必要がある。


福島 豊君(公明)

  • 新しい人権については、環境立国の視点及び知る権利やプライバシーの権利を憲法に明記する必要がある。
  • 平等規定に関連して、障害者の差別禁止の規定を憲法上に設けるとともに、障害者差別禁止法などの法整備を行うべきである。
  • 生命倫理に関しては、法律による規制のみでなく、普遍的な生命の尊厳、生命操作の禁止、遺伝子情報へのアクセスの制限などの根拠となる規定を憲法に設けるべきである。
  • 25条については、1項をナショナルミニマムとしての生活扶助の規定、2項を共助による年金や介護制度の根拠規定とし、社会福祉や公衆衛生の規定については時代の変化も考慮して見直すことが検討されるべきではないか。
  • 定住外国人の地方参政権については、国政への参加とは明確に区別して認めるべきである。外国人の権利については、少子化とグローバリゼーションの動向を踏まえて、活力維持のための明確な戦略が必要である。
  • 義務規定の強化や家族・共同体の明記などを指摘する意見があるが、人権規定の本質は「国家からの自由」であり、これから外れることは人権を変質させるとの批判に耳を傾けるべきである。
  • 現在の人口減少社会において、次世代育成のための規定や子どもに関する規定を設けることが必要であると考える。家族規定の明記なども次世代育成という観点からであれば賛同できる。
  • 教育を受ける権利の規定は変える必要がなく、むしろ教育システムの評価を行うことで、子どもの健全な成長を確保することがより重要である。


高橋 千鶴子君(共産)

  • 現行憲法に規定される基本的人権は、97条で「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」と述べるように、明治憲法下の人権抑圧に対する反省、あるいは自由権・社会権の広がりといった現代の立憲主義の流れを受けて定められたものである。
  • これからは自立と共生の時代であるとして、国民への社会保障等の費用負担の義務を明記しようとする動きがあるが、これは生存権を保障すべき国の責任を放棄するものである。
  • 環境権は、憲法とそれに根差した国民の運動が生み出した権利として、世界にも通用する普遍的な権利となっており、あらためて明記する必要はない。
  • 企業の経済活動の自由を明記すべきとの主張は、よりいっそう企業優先の社会になるおそれがあるため、受け入れられない。
  • 国民に国防の責務を課すべきとの主張は、国民の自由と権利よりも軍事を優先するものであり、現行憲法の基本的人権の考え方とは相容れない。
  • 憲法調査会は、我が国の人権保障の現状や問題点等について調査すべきである。
  • 現行憲法の人権規定は、現在のみならず将来生起する人権についても対応し得る懐の深い構造をもっており、国民はこれをさらに活かし、豊かに発展させていくことができる。


土井 たか子君(社民)

  • 日本国憲法の人権規定は、「前国家的権利」といえるものであり、その内容を承認し、尊重し、不当に侵害されないことを保障するという考え方を採っている。
  • 日本国憲法は、基本的人権獲得のための人類の長い戦いと成果を97条で評価し、11条で「侵すことのできない永久の権利」として宣言するとともに、12条で「国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と規定している。このような基本的人権に対する考え方は、前文とともに、日本国憲法が人間の英知を信頼したものと考えなければならない。
  • 日本国憲法の特徴として、(a)平和的生存権を人権として保障していること、(b)13条の個人の尊重、幸福追求権を重視していることが挙げられる。
  • 憲法上に「新しい人権」を明記すれば、その権利が保障されると考えるのは、浅はかである。むしろ立法措置を講じて、その権利の実践に努力することが先決である。
  • 当調査会の最終報告書に係る編集方針等については、全委員出席の下、調査会において検討すべきである。

●各会派一巡後の発言の概要

枝野 幸男君(民主)

  • 憲法にもっと義務を書くべきであるとする意見があるが、憲法が公権力行使の限界について定める法であることを考えると、的外れな意見であると言わざるを得ない。義務を課す必要があるのならば、憲法ではなく、立法によって課せば済む問題である。
  • それでも憲法に義務を書けば訓示的意味を持つではないかとする意見もあるが、訓示規定は何らの法的効果を有するものではなく、その義務の実現には影響を及ぼすものではない点を指摘したい。重要なのは、どのような手段で実現するかということである。
  • 現行憲法の人権規定の存在が個人を利己主義に走らせたとする意見があるが、基本的人権の概念とは、お互いの価値を認め、その人権を相互に尊重しあうというものであり、利己主義とはまったく異なるものである。
  • 憲法論議を行うに当たっては、上記の点について誤解のないよう、共通の理解の下に議論をしなければならない。


池坊 保子君(公明)

  • (a)昨今の生命科学技術の急速な進展、(b)我が国が科学技術立国を目指していくことを考えると、我が国の人間の生命に対する考え方というものを明確に示していく必要がある。よって、13条の個人の尊重の規定に加えて「人間の尊厳」あるいは「生命の尊厳」について明記すべきである。
  • 「人間の尊厳」を明記することによって、自由な学問の研究が阻まれることを危惧する意見もあるが、医学・人類の貢献に即するような研究は、むしろ「人間の尊厳」に資するものであるから、危惧するようなことにはならない。


早川 忠孝君(自民)

  • 国際人権法と憲法の人権規定との関係については、国会の場で十分な議論を行う必要がある。
  • 昨今の人権状況は、(a)生命に対する意識が希薄化していること、(b)社会的弱者に対して不寛容になりつつあること、(c)晩婚化や少子化の進展が自己中心的な社会をつくり出していること等、危機的な状況にある。
  • 環境の問題については、地球的視野に立ち、「持続可能な地球」という観点から憲法を考えていくべきである。
  • 個々の人権の対立については、従来の公共の福祉による調整以外の新たな原理が必要である。


保岡 興治君(自民)

  • 憲法の解釈において、個人と国家とを対立的に捉えるのは歴史の所産である。
  • むしろ憲法を、個人の尊厳が最高の価値であるものとして体系化したものと捉え直し、その上で、個人相互間の人権の調整や国家による一定の人権制限の必要性を明記すべきである。
  • また、25条の規定を発展させて「健康を守ること」を明確にすることや教育の基本理念及び家庭の保護についての規定を明記することは重要と考える。


葉梨 康弘君(自民)

  • 私は、現在の人権規定を評価する。我が国が人権大国としての地位を確立していくため、人権侵害の問題を極小化していくべきと考える。
  • 国家による人権侵害を防止するため、個人が行政情報にアクセスできる権利の明記やオンブズマン制度の導入が必要である。また、人権の私人間適用については、児童や女性を暴力から保護することが重要である。
  • 公共の福祉の概念については、制定過程における議論等を踏まえ、再定義をなすべきである。


野田 毅君(自民)

  • 人権については、公権力対個人の関係ばかりでなく、報道の自由とプライバシーとの関係等の私人間の人権の衝突をどう調整するのかが重要である。
  • 家族制度は、GHQによって封建的とされて解体されたが、親が子どもを養育する義務を明記する等封建的なものの復活を図るのとは異なった観点からの見直しを図るべきである。
  • 新しい人権といわれるもののうち、環境権については、権利というよりも責務として捉えていくべきである。また、犯罪被害者の人権は明記されるべきである。
  • なお、人権とは公権力が侵害してはならないというだけではなく、個人レベルでもお互いに尊重し合わなければならないということを明記すべきである。


船田 元君(自民)

  • 公共の福祉については、その概念が曖昧なままであるので明確にすべきである。
  • 政教分離原則を定める20条は、厳格に過ぎるのではないか。いわゆる「目的効果基準」に基づく判断を導入し、一定の許容範囲を設けるべきである。
  • 表現の自由については、児童に悪影響を与えるような有害情報の規制を明記すべきである。
  • 財産権については、環境保護や景観保護の観点から一定の制約を設けるべきである。
  • その他、知る権利や犯罪被害者の権利について、明文規定を設けるべきである。


高木 陽介君(公明)

  • 知る権利については、21条の規定を根拠にし、立法によって措置することが重要である。
  • 表現の自由とプライバシー権との衝突に関し、報道の自由と報道に対する規制の問題があるが、この問題の解決は、法規制によるべきではなく、報道する側の自主規制やオンブズマン制度の導入等によって図られるべきである。
  • また、報道によってプライバシーを侵害された個人を救済するため、懲罰的損害賠償請求の制度を創設することも考慮すべきである。


永岡 洋治君(自民)

  • 近代立憲主義は近代市民革命を通じて人々が勝ち取ってきたものであり、日本国憲法もこの系譜の中にある。
  • しかし、近年生じている数々の社会問題の解決のためには、家族や共同体の重視及び家族や共同体の国による保護を憲法に規定すると同時に、義務規定の増設が必要である。特に、私は、投票の義務の明記を要望する。
  • このような主張に対しては、特にリベラリズムの立場から、近代立憲主義の流れから外れ、人権を変質させる危険性があるとの批判が予想される。しかし、近代立憲主義から一歩踏みだし、国民と国家の協働を規定するものとして憲法を再構築する試みを行う時期が来たものと私は確信する。


鹿野 道彦君(民主)

  • 環境の保全及び平和の確保によってはじめて生存が成り立つことにかんがみれば、ドイツ基本法が環境に対する国家の責務を規定するように、環境に関する規定を憲法に設けるべきである。
  • 国民に対して行政の保有する情報を開示するシステムの構築を進めていくためにも、憲法に知る権利を明記すべきである。
  • 科学技術立国、知財立国としての我が国の在り方を明確にするため、財産権とは別途、知的財産権についての規定を憲法に設けるべきである。


高橋 千鶴子君(共産)

  • 知る権利、環境権等新しい人権を憲法に明記せよという見解が主張されたが、それらの権利は、既に憲法に包括的に規定されており、現在の規定で十分に対応できることを改めて主張したい。大切なのは、立法などにより、これらの今ある規定をしっかりと担保することである。


三原 朝彦君(自民)

  • 憲法には犯罪の被疑者や刑事被告人の権利は明確に規定されているが、犯罪被害者の権利について規定されていない。犯罪被害者の権利について規定すべきである。


鈴木 克昌君(民主)

  • 憲法施行以来60年近くが経過し、当時は想起できなかった権利が主張されるようになっている。そのような権利を憲法に明記して保障していくことは、憲法の趣旨に合うものである。特に、環境権は、環境主義の理念を謳うためにも必要である。
  • 近時、権利の裏に内在する義務が希薄になっていることを実感する。そこで、権利ではなく義務という形で、生命の尊厳や人間の尊厳を国民共通の規範として示すべきである。そのためには、憲法を国民と政府が協働するための契約と解する見解に賛成する。


赤松 正雄君(公明)

  • 新しい人権を規定することに対して慎重な見解は、人権のインフレ化を憂慮する。しかし、新しい人権の中でも環境権は、いわば忘れ去られた古い権利とも言うことができ、その憂慮は当たらないのではないか。
  • 新しい人権を実現するためには立法で十分であるという意見も理解できるが、もし仮に、一つだけ国民的合意が可能な、あるいは早急に合意を得る必要があるものを挙げるならば、それは環境権である。


保岡 興治君(自民)

  • 小泉総理の靖国参拝について議論があるが、国家のトップが行うことについて見解が分かれることのないように、政教分離原則を見直すべきであるし、また私学助成との関係でも89条を見直すべきである。
  • 我が国が活力を持って生きていくためには、知的財産の保護が不可欠であり、財産権とは別に、知的財産に関する規定を憲法に明記すべきである。
  • 我が国が世界から信頼されるためには、教育が重要な意味を持ってくる。26条とは別に、教育の重要性を前文に明記するか、条文を起こし明記する必要がある。


園田 康博君(民主)

  • 実定法上の積み重ねは非常に重要であるが、時の権力によって実定法がねじ曲げられることがあってはならない。国民的合意が得られている事項については、そのようなことを防ぐために憲法に明記していくべきである。
  • 13条は包括的な規定であるが、極論すれば現行憲法の個別規定も13条から導かれる一規定に過ぎないことになる。個別に規定された人権の歴史的経緯を重視しつつ、新たに国民的合意が得られている事項については、憲法に明記する必要がある。


枝野 幸男君(民主)

  • 公権力は国民からの委任を受け、権力を行使しており、その意味では国民と国家は一体であるといえる。そのような観点から、国民が憲法典に自分たちの意思で公権力行使の指針を宣言的に明記することには意味がある。ただし、生命倫理や自然環境等、根本的な重要問題に限るべきである。
  • 公共の福祉を可能な限り具体的に憲法に明記することは重要である。例えば、新しい人権としてプライバシー権を憲法に明記することで、報道の自由との関係で具体的な調整が図られることになる。
  • 「家族的価値を享受できるような国民の権利」や「家族的価値を享受できるようにする公権力の責務」であれば、規定することもあり得るのではないか。


大出 彰君(民主)

  • 戦争が一番の人権侵害、環境破壊であることから、戦争を放棄するということが人権保障の点からは最も重要である。
  • 新しい人権は、憲法典に明記することで裁判規範性がより明確になるとも考えられるが、喫緊の課題ではないともいえる。
  • 労働基本権のように現行憲法に規定されながら十分に機能していない権利もあることに留意する必要がある。
  • 究極的に人権保障を担保するために憲法裁判所を認める必要がある。また、人権に関する訴訟の長期化を避けるため、憲法訴訟法等の手続法を設けることも一つの案ではないか。


中川 正春君(民主)

  • 国家のみならず、コミュニティーも含めた地方自治体すべてが、社会権のナショナルミニマムを保障していかなければならない。
  • あらゆる面で国際的な規範が我が国に押し寄せてきており、我々はどのように国柄を描いていくかをもう少し議論する必要がある。


平井 卓也君(自民)

  • ドイツ基本法20a条は、「国家を構成していくことについての国民の基本的合意」をあらわしたものとも評価することができる。我が国の歴史や伝統からすると、国家と個人を対立するものとして捉える憲法観は日本人に馴染まず、同条は我が国の憲法を考える上でも参考になる。
  • 権利の行使にも、個人のための行使と社会のための行使がある。優先されるべきは社会のための行使であり、国民全体の利益のためには、個人のための行使も制限されるべきである。
  • 権力対私権という二項対立では、公共の利益が見えてこない。公共の利益の背後には不特定の私権が存在しているのであって、そのような意味で、全体の利益の比較衡量というシステムを考えていく必要がある。


大村 秀章君(自民)

  • 11条、12条、97条等にも謳われているように基本的人権の尊重は、大変重要であると認識しているが、社会において他者との権利の調整は必要である。この点、公共の福祉について解釈を重ねるのではなく、憲法に具体的に書き込み、権利の調整をなすべきである。
  • また、時代の流れに即して、国のありようとして環境権など新しい権利についても憲法に書き込むべきである。その際、プライバシー権も知る権利と対応して、憲法に謳われるべきだが、報道の自由の観点から、規制は自主規制で行われるべきである。


加藤 勝信君(自民)

  • 国家権力の制限規範とする近代立憲主義の憲法観にとらわれず、憲法に、新しい時代に即応した我が国についての国民の共通理解としての意味を持たせるべきではないか。
  • その意味で、憲法解釈上、新しい権利等を憲法に「読み込む」ことは、学問的に可能であるとしても、国の在り方に関する国民の共通理解という観点からは望ましくない。将来世代に向けた我が国のありようを示すためにも、権利義務の在り方など権利調整の観点、環境権や環境保全義務等の新しい人権の観点、家族・共同体等の中間団体の重要性の観点等を憲法に謳うべきである。


松野 博一君(自民)

  • 人権調整・人権制約は、議会の立法によることが予定されているが、現実には、司法の判断により「公共の福祉」による制約の範囲が短期間に変化している。
  • 現代では、犯罪歴のある者のプライバシーの保護と地域住民の安全との調整等複雑な人権調整・人権制約の場面が多い。
  • これらの点にかんがみ、「公共の福祉」による制約は、個別・具体的であることが望ましく、また、時代の価値観による変遷を反映させるシステム作りが必要であると言える。


保利 耕輔君(自民)

  • 子どもの就学義務は規定しても訓示的規定にしかならないとの批判は理解できるが、率直に子どもに、学校に行かなければならないことを教えるためには、規定があってもよいのではないかとの所感がある。
  • 89条の「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」の文言は、分かりづらいため、改める必要がある。
  • 地方分権の議論において、教育における地方公共団体の役割と国の役割との調整は、旭川学力テスト事件の判例に見られるように、司法も苦慮しており、重要な検討課題である。
  • 教育基本法の前文には、「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示」とあり、教育基本法の検討においては、この「憲法の精神」とは何かが考えられなければならない。
  • 教育基本法3条の「門地」の文言は、現代にはそぐわない表現であり、改めるべきと考えたが、憲法14条に「門地」の文言があるため法体系の統一上、教育基本法単独では改めることが難しい。このような時代にそぐわない文言は見直されるべきである。


稲見 哲男君(民主)

  • UNHCR(国連高等難民弁務官)が認定したマンデート難民を強制送還したのは先進国において日本のみで前例がない。これは、国際的難民認定基準と日本の難民認定基準との間に乖離があることによる。
  • 難民は、外国人の人権に関する最大の問題である。世界に信頼される国として内なる国際化を進めるためにも、個別法等による対応ではなく、憲法に外国人の生存権等を規定すべきである。

《国会・内閣等》

●各会派一巡目の発言の概要

古屋 圭司君(自民)

  • 二院制を維持すべきであり、衆参両院の役割分担の明確化を図るなど、参議院の独自性・正当性を十分に発揮できるようにすべきである。
  • 道州制の導入を憲法上明記し、参議院の選挙制度は、道州代表として構成すべきである。また、参議院は、憲法上に規定のない問責決議は行わないなど、権限の行使を自主的に抑制する慣行を持つべきである。
  • 政党は、議会制民主政治において、国民の政治的意思を国政に媒介する機能を持つことから、その本質に関する条項や、その結成及び活動の自由を明記すべきである。
  • 議事の定足数の規定は削除し、国会の会期制は廃止すべきである。
  • 法律案の提案権は国務大臣を含めた国会議員に限定する旨を憲法に規定すべきである。
  • 現行の議院内閣制を維持しつつ、政策決定と執行責任の明確化のため、与党と内閣の一元化を行う英国流の議院内閣制的運用を行うべきである。
  • 首相の権限を憲法上明確に規定するなど、首相のリーダーシップ強化に関する憲法規定を置くべきであるが、首相公選制の導入は必要ない。
  • 国務大臣は、すべて国会議員の中から選ぶものとし、その国会への出席義務を緩和すべきである。
  • 最終報告書には、憲法改正を視野に入れた議会の多数意見を反映させるとともに、議案提出権を有する機関の設置を盛り込むべきである。また、憲法改正のための国民投票法案を直ちに整備する必要がある。


鹿野 道彦君(民主)

  • 我が国の統治機構については、国民主権を徹底し、首相主導型の政府を確立する必要がある。そのためには、意思決定権の所在、責任の明確化を図る必要がある。
  • 首相主導型の政府が本来の議院内閣制の在り方であり、そのためには、65条の「行政権」を、行政をコントロールして政治目的に向けて指揮監督するという「執行権」に改めるべきである。
  • 政権運営の二元構造を排し、政府与党の一体化、責任の明確化を図るべきである。
  • 政策決定の官僚主導から政治主導への転換を図る一方で、強力な内閣総理大臣の暴走のおそれに対しては、国会によるコントロール機能の強化により対処すべきである。国会の争点提起機能を重視し、立法府の在り方の見直し、立法補佐機構の強化を図るべきである。
  • 政党は、現代政治に不可欠であることから、憲法上の地位を与える必要がある。ただし、その活動はできるだけ自由であるべきであるので、必要最小限の規定にとどめるべきである。
  • 国民投票制度については、代議制民主主義を基本とする現行憲法では限定的であるが、諸外国で行われており、主権移譲、特別立法などについてその拡充を検討すべきである。特に憲法改正のための国民投票の手続を検討すべきである。
  • 議院法制局の拡充・内閣法制局の縮小を行うと同時に、憲法裁判所の設置を検討すべきである。


高木 陽介君(公明)

  • 一院制には、一院の多数派のみによる専断のおそれがあること、二院制には、他院の審議を補完し、再考を促す等の機能があることから、二院制を堅持すべきである。
  • 両院の役割分担を明確にする等のため、参議院を良識の府として明確に位置付け、行政監視機能を強化する点から、(a)衆議院が予算審議、参議院が決算審議に重点をおくこと、(b)基本法を参議院先議とすること、(c)国会同意人事については参議院の専権とするか優越権を与えること等を明確にすべきである。また、首相の指名、内閣不信任の権限は衆議院のみに属することとすべきである。
  • 衆議院の法律案に対する再議決要件の緩和について、党内に議論があるが、参議院の影響力を弱めることは認められない。
  • (a)衆議院の小選挙区比例代表並立制は、民意の反映の点で欠陥があると考えられること、(b)参議院の選挙区は原理原則を欠いていること等から、選挙制度を再考すべきである。公明党は、中選挙区制を提案しているが、定数削減・一票の格差の解消を視野に入れることが望ましい。
  • 連立政権と議院内閣制の在り方は今後検討すべきであり、(a)モンテスキュー的三権分立を目指すべきこと、(b)政治主導型システムへの転換、(c)内閣総理大臣ではなく合議体としての内閣の機能強化等が必要である。
  • 首相公選制は、(a)人気投票となるおそれ、(b)国会と首相の対立のおそれ、(c)首相の暴走のおそれ等から望ましくない。
  • 国民主権を深める見地から、住民投票について議論すべきである。


塩川 鉄也君(共産)

  • 憲法は、戦前の反省から国民主権に基づく議会制民主主義をとるが、国民主権が徹底されていないため、政治とカネ、政官の癒着などの問題が生じている。議会制民主主義は基本的人権の保障に資する近代立憲主義の原理であり、その内容を豊かにしていくべきである。
  • 小選挙区制の採用は、国政への多様な民意の反映を阻害し、人為的な二大政党制を作り出していることから、比例代表制に改めるべきである。
  • 政治腐敗は企業団体献金により生じているが、政治改革においては、それが選挙制度の問題にすり替えられてしまった。
  • 党首討論の導入により内閣総理大臣が国会の委員会に出席する回数が減少していることは、国会軽視である。
  • 参議院の権限縮小は、国会を政府の賛同機関とするものである。
  • 内閣総理大臣への権限集中は、国会によるコントロールが利かず、軍事国家体制に繋がるおそれがある。


土井 たか子君(社民)

  • 国会は、主権者である国民の民意を反映するために、内閣の政策を審議するだけにとどまらず、自ら立法活動を行うべきである。議員立法や内閣提出法律案の修正により、その機能を発揮すべきである。
  • 41条の「唯一の立法機関」の意味は、単に法律を採決することだけでなく、法案の提案、審議、議決を含む。
  • 1996年6月の議長在職中に提案した議員立法の活性化についての改革案において、議院補佐機構の責任者が行政府からの出向者で占められているという問題点を指摘したが、近年は改善されてきている。
  • 国政調査権に基づく資料要求等の議決要件や、議員提出法律案の提出要件を見直すべきである。
  • 議員立法の件数が増加してきたことは評価できるが、国会における法案審議をさらに活性化すべきである。

●各会派一巡後の発言の概要

早川 忠孝君(自民)

  • 行政の企画・立案能力が従来に比べ低下していると感じることから、各政党の立法能力の向上のため、各党に法制に関するシンクタンクが必要である。
  • 国務大臣を国会議員に限ることには反対であり、むしろ専門的能力を有する多様な人材を期限を定めて登用すべきである。
  • 法律案の提案権を国会議員のみに限定すると、行政の知見を利用しづらくなることから反対である。
  • 省庁横断的な政策の実施に資するよう行政の総合性を重視するとともに、行政・立法の制度改革を行うべきである。
  • 憲法上の規定は不要であるが、国民が政治参加する手段・機会を増やすべきである。
  • 参議院が、衆議院と類似の選挙制度の下、重複した審議をしていることは国民の理解を得られないため、憲法改正を行う際は、一院制とすべきである。
  • 条例の憲法・法律適合性を審査するための機関を設置すべきである。


葉梨 康弘君(自民)

  • 主権在民に基づく民主的コントロールを強化するため、閣僚はすべて国会議員や国会議員になろうとする者で構成すべきである。
  • 内閣、衆参両院間で適切なチェック・アンド・バランスを行うべきであり、現在は参議院が法律案の否決を通じて、事実上内閣の政策をストップさせる力を持つ一方、内閣は参議院に対して何ら対抗手段を持たないことから、内閣に参議院に対する拒否権のような権限を与えるべきである。
  • 二院制を維持すべきだが、参議院議員は地域代表として各県2名ずつとするなど衆参両院の代表原理を異ならせるべきである。


辻 惠君(民主)

  • 行政権が肥大化する中、行政をどのように統制していくかが課題である。
  • 議員立法を通じて国会の権能を発揮していくため、政策スタッフの数を増やすべきである。
  • 与野党が法案をめぐって切磋琢磨していくべきであり、現在のような与党の官僚任せは解消すべきである。
  • 国政調査権の十分な活用が図れるように、少数野党も行使できるようにすべきである。
  • 国会審議の活性化、議院内閣制の機能強化のためには、委員会審議における議論が深まるように、内閣総理大臣の出席を増やすなどの改革が必要である。


山花 郁夫君(民主)

  • 与野党を超えて、政治主導の強化については一致できる。野党提出の議員立法について審議されるように配慮をお願いしたい。
  • 直接民主制的な手法をとり入れるために、41条の「唯一の立法機関」の文言にこだわるべきではない。
  • 参議院の問責決議を問題とする意見もあったが、それを規範的に禁止するということであれば穏やかではないし、運用の問題とすれば、参議院の自律の問題ではないか。


中川 正春君(民主)

  • 二院制は維持すべきだが、参議院の機能をどのように変えていくかが問題である。
  • 地方公共団体においては、いわば大統領制がとられており、議会が承認機関のようになっているので、議院内閣制やカウンシル制等をとりうるように見直す必要がある。
  • 内閣提出法律案の提出までの過程の不透明さが問題であり、国会において実質的に修正するなど、そのプロセスを明らかにすべきである。
  • 政党は、定義が難しく、我が国の政党は「議員政党」であるが、これが「国民政党」に変わっていけば、首相の決定方法の問題も解決するのではないか。


枝野 幸男君(民主)

  • 65条は現行憲法の欠陥である。閣議で決定すべきことと行政官庁が行うべきことを整理すべきである。そのためには、意思決定部門としての内閣と執行部門としての行政各部を憲法上明確に位置付ける必要がある。
  • 内閣は、国務大臣により構成されることとなっているが、副大臣や政務官も憲法上位置付けるべきである。そうでないと、大臣に代理して国会に出席するということの説明がつかない。


土井 たか子君(社民)

  • 「数がすべて」という最近の風潮や、ドント式による時間配分などを考え直さなければ、真の国会の活性化は望めない。
  • 立法の不作為は、国民の生活や利益に重大な影響を及ぼすような場合を指すのであって、憲法改正のための国民投票法が法制化されていないことは、立法の不作為には当たらない。その議論の前に、国会議員や閣僚が99条の憲法尊重擁護義務を守ってきたかどうかを問うことが必要である。
  • 改憲より、諸施策の充実を図る必要があり、その際の判断基準として憲法が存在する。法律案の審議の中身や審議の方法が重要である。


柴山 昌彦君(自民)

  • 積極国家化現象や、民主的統制の観点から、首相のリーダーシップの向上が必要であり、そのために65条、内閣法6条を改正すべきである。
  • 首相のリーダーシップが保たれるのであれば、民間の能力を最大限に活用する意味から、国務大臣への民間人の登用は、むしろ大いに行うべきである。
  • 衆参両院の意思の不一致は問題であり、その際の再議決要件を過半数に緩和し、両院協議会の開催を義務付けるべきである。
  • 73条1号の規定や、内閣の法案提出権は認められるべきである。


太田 昭宏君(公明)

  • 法律案の提案、審議、議決の過程のうち、審議と議決を充実させるためには議員立法が重要となる。また、法律案の提案権は、内閣にも認められるべきである。
  • 行政監視機能を十分に発揮するために、二院制を維持すべきである。
  • 衆議院には解散があり、長期的視野に立って審議できないという主張は妥当ではなく、これは選挙制度等に問題があるのではないか。


松宮 勲君(自民)

  • 二院制は存在意義がある。しかし、現在、衆参ともに同じ政党構成となっており、任期が長く解散がないにもかかわらず、事実上、内閣を不信任することができるので、二院制、特に参議院の在り方を抜本的に見直す必要がある。具体的には、参議院の決算審議を重視し、行政監視機能を強化すること等が考えられる。
  • 縦割り行政では国家の方向性を指し示すことができず、議員立法の強化の必要があるが、個々の議員のスタッフが米国と比べて不十分であり、強化が望まれる。


永岡 洋治君(自民)

  • 現在の我が国では、内閣総理大臣のリーダーシップが必要であり、英国の議院内閣制に倣い、与党幹部が政府に入って、一元的に政策決定をする必要がある。
  • 内閣総理大臣が国民の広範な支持を背景に政策を実施するため、総選挙に際して、首相候補と政策プログラムを一体のものとして提示して、国民が明確に政権選択をする制度とすべきである。これにより、人気投票のおそれ、首相と国会の対立のおそれという首相公選制の難点もクリアしうる。
  • 参議院において少数与党となった場合に国政の停滞のおそれがあることから、参議院の否決があったときの再議決要件を一定期間をおいた後の単純多数決に引き下げるべきである。


柴山 昌彦君(自民)

  • 与党と首相の一体性を憲法が想定しているため、首相候補が指名選挙に際して全国会議員にマニフェストを提示するような運用が必要である。
  • 議院内閣制は、首相が大臣をコントロールする点で株式会社と異なり、そのために首相のリーダーシップが求められる。
  • 二院制の下、衆参両院において異なった選挙制度をとるべきである。参議院については、道州を選挙区とするか大選挙区制をとることが考えられる。


塩川 鉄也君(共産)

  • 二院制は、国会における慎重な審議と国民の多様な意思の反映に意義がある。参議院の役割を縮小すべきとの意見は、参議院の役割を軽視し、迅速な議決により政府の政策を追認することと同じであり、国会の役割を自ら否定するものである。


大村 秀章君(自民)

  • 国際社会の急激な変化の中においては迅速な判断が必要であり、一院制を導入すべきである。多くの国が一院制を採用していることも参考にすべきである。
  • 二院制の下では、衆参両院の選挙の間隔が短い場合に、選挙の争点が不明確になること、財政再建のために国会でも組織のスリム化が要請されていること、参議院の政党化により、両院で似た議論がなされる上に、審議時間が十分に持てないことなどの問題がある。一院制の導入が国民の意思であり、両院を廃止して、新たに一院を設けるべきである。


枝野 幸男君(民主)

<大村委員の発言に関連して>

  • 二院制に対して、同様の問題意識はあるが、現実的対応としては、二院制を維持しつつ、その弊害を防止すべきである。
  • 両院の選挙の間隔が短い場合の問題については、7条解散を限定し、3年ごとに同時選挙を行うこととし、衆議院は政権選択のために小選挙区制で、参議院は少数意見の反映のために比例代表制か大選挙区制で選挙を行うべきである。その上で両院の役割分担と内閣との関係を整理すべきである。

<発言>

  • 議員立法の活性化の問題については、与党内での審査を経ずに内閣提出法律案を提出し、与野党がともに内閣や行政府に国会で質疑すること、あるいは、政府と与党が合意した法案を、所管大臣等を提出者とする議員提出法律案として提出した上で、国会での野党の質疑に対して与党と政府が一体となって答弁するという方向で考えるべきである。


三原 朝彦君(自民)

  • 内閣及び内閣総理大臣のリーダーシップの強化は、立法府の制度の問題というよりも、むしろ党内の規律の問題である。
  • 議員の政策立案能力の強化のために政策秘書制度が創設されている。まずは各党がそれぞれ党内の政策秘書を十二分に活用することが求められる。


野田 毅君(自民)

  • 参議院が法律案を否決した場合の衆議院による再議決要件は、現行の特別多数決から過半数による多数決とすべきである。
  • 政党を憲法上位置付けるべきである。
  • 国政レベルと、地方レベルの選挙制度の整合性についても検討すべきである。また、地方に権限を移譲するほど、国と地方の役割分担が難しくなるのではないか。
  • 選挙権という基本的人権を登録制にしている国もあることから、高齢化社会を迎える日本においても、これを検討すべきではないか。


早川 忠孝君(自民)

  • 国会の行政チェック機能と立法機能の重要性が増していることから、国会議員の責務は一層重くなっている。
  • 法律案の専門性の高さと複雑さのため、与党内においても、十分な立法審査ができない現状にあり、立法上の不備等が見られることから、国会議員のチームとしての能力が問われている。
  • 解散があるために十分な国会審議ができないことから、衆議院の解散は69条による場合のみとすべきである。
  • 議員定数の削減を検討すべきである。


田中 眞紀子君(民主)

  • 閣議の実態は、議題が各省で起案されていることなど官主導で行われている。このような閣議の在り方を変えなければ、官主導から政治主導への改革は進まない。


保岡 興治君(自民)

  • 道州制など新しい地方の在り方は、国のかたちに関わる問題である。また、年金制度など今の時代の変化に合わなくなってきた「日本の資源」を再配分することは、官僚任せではできない。このように、21世紀の統治機構を考えるに当たっては、官主導から政治主導への改革なしには語れない。
  • 道州制の導入に伴い、国会議員の権限が縮小されることも想定される。そして、二院制の是非は別にして、国会議員の定数削減など国会の効率化が問題となる。国会がトータルに物事を考えていく必要がある。


野田 毅君(自民)

  • 官主導から政治主導への改革は制度論的な側面もあるが、まずは政治家の資質、政治家としての在り方に尽きる。


中山 太郎会長

  • 一院制には、解散時に国家緊急事態が発生した場合における代表者不在という問題がある。