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平成二十年六月十一日提出
質問第五一二号

単親家庭への支援に関する質問主意書

提出者  佐々木憲昭




単親家庭への支援に関する質問主意書


 近年、離婚率の上昇に伴って単親家庭(一人親家庭)が増え、その生活の自立と安定のための公的支援があらためて重要となっている。この中で、母子家庭に支給される「児童扶養手当」は非常に重要な役割を担っている。今日の女性が置かれている諸状況を総体的に見るとき、かつてに比べて諸施策の実施、充実があるものの、女性の地位向上に向けてはいっそうの効果的措置が求められている。児童扶養手当についても改善すべき点が多々含まれており、それらの問題を積極的に解決する必要があると考える。
 また最近、父子家庭の増加傾向が続いていることは各方面で指摘されているが、現行の児童扶養手当の対象は母子家庭に限られている。もちろん母子家庭は、一般世帯との比較ではもとより父子世帯との比較においても置かれた状況の劣位性が明白であり、支援を必要とする家庭が多数存在することは明瞭である。しかし、そのことをもって、父子家庭を初めから支援の対象から除外していることには種々の面から問題が指摘されているところである。政府においても単親家庭がかかえる近年の新しい諸問題をふまえ、検討しなおす必要性が大きいのではないかと考える。
 以下、質問する。

一 「生計同一」について
 父親と離婚した母子が祖父母と同居しながら自立を目指して別世帯を構成しているとき、「生計同一」を理由に児童扶養手当が支給されない場合が多く見受けられる。その際、自治体が手当の支給を拒否する根拠に、厚生労働省発行の「事務処理マニュアル」が、公共料金を「自分名義で契約し、支払っているかどうか」や、同一敷地内で住んでいる場合には「玄関、廊下、風呂、トイレ、台所等が別々であるかどうか」などの項目をあげていることを援用している場合が多い。
 しかし、現行の「事務処理マニュアル」においてさえ、生計同一の判断にあたっては「個々の実態に即して、総合的に勘案」するとしており、例示された判断要件についても「すべてを満たさなければならないわけではなく」、「判断する上での留意点」として「参考にされたい」としている。また、厚生労働省も関係者からの問い合わせに対して、アパートでの祖父母との同居の場合などではトイレやガスメーターを別々にすることは無理があることを認めている。
 したがって、前掲のような自治体における機械的な取り扱いはあきらかに是正されるべきであるが、政府の姿勢は「自治体から問い合わせがあれば柔軟に対応するように答えている」というところにとどまっているのが現状である。
 そこで質問する。
 (一) 国から自治体に対してただちに、「事務処理マニュアル」使用の機械的援用を厳に戒め、児童扶養手当制度の本来の趣旨に照らした適切な運用に努めるよう周知をはかるべきではないか。
 (二) 「事務処理マニュアル」が機械的で不適切な取り扱いの根拠とされている事例が多いことに鑑み、その内容を適切に改定すべきであると考えるが、政府の考えはどうか。
二 父子家庭への支援について
 父子家庭も、母子家庭ほどではないものの一般家庭と比較した場合、収入が約六割程度と格差は相当に大きいものがある。さらに個々の具体的な状況を見るならば、父子家庭のすべてが母子家庭よりも恵まれた条件にあるわけではなく、むしろ母子家庭よりも困難が大きく、女親であれば児童扶養手当の対象になり得る場合も、父子家庭であるために初めから「対象外」となっている事例が決して少なくないと思われる。
 また、児童扶養手当の創設以後の社会状況として、近年、男性の雇用をめぐる状況に著しい変化が起きている事は、単親家庭支援のあり方を検討するにあたり特段に考慮されるべき問題である。
 第一に、一九九〇年代からの長期不況化で横行したリストラ・人減らしとあいまって、終身雇用の仕組みも劇的に変貌し、早期退職、出向、転籍、派遣労働など、かつては見られなかった雇用の不安定要因が急増している。また賃金制度の面でも、「業績評価」を導入する事業所が公務員の職場を含めて広がっており、基本賃金を抑制し、休日、時間外など諸手当ての占める比重を高くする傾向も顕著である。このような労働環境のもとにあって、自らが直接、子育てに当たらなければならない男親は、残業や休日出勤、就業時間帯の選択などで大きな制約をかかえているのが現状である。そのため、他の労働者との「競争」力において劣り、当然「業績評価」のうえでも非常に不利とならざるを得ず、残業や休日出勤ができなければ収入減に直結することになる。
 第二に、平成十八年の「全国母子世帯等調査」によれば、就業している母子家庭の母親の場合、常用雇用でも七五%近くが午後八時までには帰宅しているが、同じく常用雇用の父子家庭の場合、午後八時までに帰宅できる父親は五七%強である。このことは、前述したように単親家庭の親が仕事の面で種々の無理を押して働かざるを得ないとともに、何よりも、本来健全な生育環境を与えられるべき子どもが、きびしい条件下に置かれていることを示している。
 第三に、離婚と父子家庭化にともなって生活条件が激変した結果、父親が離婚前の職場を退職せざるを得なくなる場合も少なくない。しかし、前出の「全国母子世帯等調査」の結果でも、父子家庭となった父親の平均年齢は三七・四歳で、多くは三十代後半から四十代にかけての年代にあると見られる。そうした年齢層の父親が新たな職を得ようとする場合には、従前以上の条件を確保することはもとより、雇用契約を成立させること自体にもきわめて大きな困難をかかえることになる。
 第四に、前掲の調査では、母子世帯になる前の母親の七割近くが何らかの仕事に就いていたという結果が示され、ここからも現代では夫婦共働きによって生計を維持している世帯が多数であることが分かる。そのような状況下で、離婚後の単親世帯が陥る経済力低下の問題は、父子家庭においてもきわめて深刻であると推量される。
 こうした父子家庭の状況に鑑み、児童扶養手当の対象から父親を排除し続けていることは、わが国の社会の現状にそぐわなくなっているといわなければならない。すでにいくつかの地方においては、従来、母子家庭のみを対象としてきた福祉施策の対象に父子家庭も加えて実施する事例が生まれ、児童扶養手当に準じて父子家庭に手当を支給している事例もある。この際、国においても現行制度の見直しなど、父子家庭を含めた単親世帯の支援を発展させ、児童の健全な育成に努力を傾注すべきであると考える。
 そこで質問する。
 (一) 父子家庭の現状について、どのように把握しているか。世帯数と養育されている子どもの数、離婚後の転退職歴、雇用形態の変化、収入減の度合いなど生活条件の変化の実態などを示されたい。
 (二) 収入の点で、現行の児童扶養手当の受給基準に該当すると見られる父子家庭がどの程度存在していると考えているか。
 (三) 母子家庭の特別な困難さから、一般施策として母子家庭対策の必要性が認められるとしても、その一方で、個別認定をもとに給付される行政サービスである児童扶養手当制度において、単親という共通の境遇にあり、経済的条件においても同等で、児童扶養手当の基準に照らしても援助が必要な水準にあると認められるにも関わらず、親が男性であることのみをもって支給の対象から排除されることは、性による差別であると考えられるが、政府の見解はどうか。
 (四) 児童扶養手当が父子家庭にも支給されるよう、法改正も含めた対応を検討すべきであると考える。政府の見解を求める。

 右質問する。



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