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平成二十二年四月二十六日提出
質問第四二六号

地球温暖化対策基本法案に関する再質問主意書

提出者  近藤三津枝




地球温暖化対策基本法案に関する再質問主意書


 地球温暖化対策基本法案(以下単に「法案」という。)第十条第一項に規定する温室効果ガスの削減に関する中期目標が設定されるための条件として同条第二項が定めている前提条件(@「すべての主要な国」が、A「公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みを構築する」とともに、B「温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をした」と認められる場合のことをいう。以下単に「三つの前提条件」という。)の具体的な意味内容及びその判断基準、そして当該条項の施行期日をこのような条件成就の認定にかからしめている法的構成の是非について、私は、本年三月二三日及び四月二日の衆議院環境委員会における二度の質疑において、また、本年三月一九日提出の質問主意書(第一七四回国会質問第二九二号。以下「先の質問主意書」という。)において、理を尽くして具体的に問い質したつもりである。
 ところが、小沢環境大臣及び梶田内閣法制局長官ら政府の答弁は、「委員の三段論法的な論理構成には本当に痛み入ります」(四月二日の衆議院環境委員会における小沢環境大臣答弁)などと前置きをしながらも、一貫して、「国際交渉事だから戦略的に決めないというところが大事だ」とか「国際交渉に携わっている政府が、その交渉の推移を踏まえながら適切に判断するのが適当だ」、さらには「主要な国の背中を押して、積極的な取組を促すためのものだ」といった曖昧かつ情緒的な答弁に終始し、国民生活に重大な影響を及ぼすこの問題について、国民を代表する国会に対する説明責任を誠実に果たそうという姿勢が全く見られない。これは、はなはだ遺憾なことである。
 右を踏まえ、改めて、先の質問主意書に対する答弁書(平成二二年三月三〇日受領。以下「先の答弁書」という。)における「答弁漏れ事項」、先の答弁書を受けての新たな疑義、さらには委員会答弁において払拭しきれなかった疑義について、以下の再質問を行うところである。
 なお、去る四月二日衆議院環境委員会において、「今回私になされたような答弁漏れという非常に不誠実な行為が発生しませんように、環境行政の長としてしっかりと対応をしていただきたい」との私の発言に対して、小沢環境大臣は「しっかりと、答弁漏れがないように全省一丸となって対応してまいりたいと思います」と述べておられるので、以下の各事項については、漏らすことなく逐一、誠実かつ丁寧な答弁をお願いするところである。

一 先の質問主意書における「答弁漏れ事項」についての再質問
 1 温室効果ガス削減の中期目標設定のための「三つの前提条件」が成就しているかどうかの判断に、どうして「国会」を関与させることとしなかったのか、その理由を示されたい(先の質問主意書一の4の後段関係)。
  先の答弁書では、「(国際)交渉に携わっている政府が、当該交渉の推移を踏まえつつ……総合的な観点から判断する(ことがふさわしいからである。)」と述べられているが、これだけでは、国会を「関与」させることとしなかった理由にはなっていない(あるいは、理由としてあまりに不十分である、と言わざるを得ない。)。なぜならば、交渉当事者である政府が第一次的に判断するとしても、その適正さ等を担保するために国会がそれを審議し承認・同意その他の形で「関与」することは、政府が第一次的判断を行うことと決して矛盾するものではないし、政府の第一次的判断と事後的な国会関与との組合せは排除されないからである。その政治的・政策的判断の根拠となった事情とともに、誠実に答弁願いたい。
 2 右の1と基本的に同趣旨の質問であるが、同じことが、法案附則第一条ただし書の施行期日規定においても言える。すなわち、法案附則第一条ただし書においては、法案第十条第一項の規定の施行期日を「三つの前提条件」が成就したと認められる日以後の日として、これを政令で定めることとされているが、このような施行期日規定とする政策判断に至る過程において、国会の関与(国会承認・同意など)を組み込んだ上で施行期日を定める方式について検討されたのかどうか、もし検討された場合には、そのような法形式が採用に至らなかったのはどうしてか、その理由も明らかにされたい(先の質問主意書二の2の後段関係)。
  これについて、先の答弁書では、「国際交渉にかかわるものであるため、あらかじめ確定的に定めることが困難であったことから、政令で定めることとした」と述べられているが、これは、先の質問主意書二の2の前段の「(なぜ)『法律』ではなくて『政令』で定めることとしたのか」との質問に対する答弁にしかなっていない。先の質問主意書二の2の後段で質問しているのは、そのような施行期日規定とする政策判断に至る過程で、例えば、「『三つの前提条件』が成就したと認められるときは、政府はその旨を国会に報告して、その承認(同意)を求めるものとする」等とした上で、施行期日政令については「右の国会の承認が得られた日から〇月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」といったような形で委任する法形式も考えられるのではないか、ということである。
  このようなことを念頭に、再度質問するのは、@国会が「関与」する仕組みの是非は検討されたのか、されなかったのか、そして、A検討された場合には、どのような案が検討されたのか、そして、結果的にどうしてそのような案が採用されなかったのか、その理由は何か、他方、B検討されなかった場合には、その理由は何か、それぞれ明らかにされたい、ということである。先の答弁書における明確な「答弁漏れ事項」に加えて、今回は、右のAのうち「どのような案が検討されたのか」との部分と、B「検討されなかった場合には、その理由」を付加しているので、ご留意願いたい。
  なお、念のため付言しておくが、右で言及した国会関与の事例はあくまでもその一つの例であって、このような関与例についてだけ、検討したかどうか等を問おうとしているのではない。他の法形式も含めて、国会が関与する事例一般についての質問であることに留意されたい。
二 先の答弁書を受けての新たな疑義についての質問
 先の答弁書の「二の3の@について」において、政府は、「法案第十条第一項の規定が施行されていない時点」においては、「同条第四項本文及び法案第十一条の規定のうち法案第十条第一項の規定に係る部分」(すなわち、「第一項……に規定する目標」(同条第四項本文)及び「前条第一項……に規定する目標」(法案第十一条)と規定されている部分)は、「その効力が発動せず、作用していないこととなる」との見解を明らかにされた。同時に、先の答弁書では、これに続く「二の3のAについて」において、「法案第十一条の規定のうち法案附則第一条ただし書が関係することとなるのは法案第十条第一項に係る部分であり、その他の部分については……公布の日から施行することとしたものである」とも述べている(この論理は、法案第十条第四項本文についても同様である。)。
 要するに、法案第十条第四項本文や法案第十一条の規定のうち「法案第十条第一項の規定に係る部分」については、公布の日から施行される「その他の部分」とは違って、「法案附則第一条ただし書が関係する(部分)」として法案第十条第一項と同じ施行期日となる、と述べているに等しいと言える。
 そうであるならば、現在の法制執務上、法案附則第一条ただし書は、次のように規定するべきではなかったか。すなわち、「ただし、第十条第一項並びに同条第四項本文及び第十一条(第十条第一項に係る部分に限る。)……の規定は、……政令で定める日から施行する」というように、丁寧に「並びに同条第四項本文及び第十一条(第十条第一項に係る部分に限る。)」という記述を追加して、その疑義を払拭しておくべきではなかったか、ということである。
 このようなことを踏まえてここで質問するのは、法案附則第一条本文において、法案第十条第四項本文及び第十一条の規定の施行不可能な部分(=第十条第一項に係る部分)まで含んで「公布の日から施行する」としているのは、条文ミスではないか、ということである。もし、「実質的に、効力が発動せず、作用しないことは、解釈上明らかなので、いわゆる『(規定の部分的)空振り』として処理した」などというのであれば、本法案における最重要事項について、あまりにもいい加減な法令審査であると思料するが、内閣法制局における法令審査は、これまでもこのような立案姿勢(丁寧に規定すれば解釈の余地のない明確な規定として定めることができる場合であっても、解釈で対応できるような場合には、労を惜しんでその記述を省略するような立案姿勢)によって行われてきたのか。
三 四月二日の質疑応答において払拭しきれなかった疑義についての再質問
 平成二二年四月二日の衆議院環境委員会において、私は、「日本国憲法第四十一条の趣旨に照らして、政令委任条項を定めるに当たっては、抽象的・包括的なものであってはならず、手続的・技術的な事項、あるいは事態の推移に応じて臨機に措置しなければならないことが予想される事項について、その委任の範囲等について個別的・具体的な形で委任する場合に限り、許される」とする趣旨のこれまでの内閣法制局長官の答弁(政府解釈)を引用しながら、附則第一条ただし書の施行期日を政令に委任するに当たっての法律上の「要件(縛り)」であるところの「三つの前提条件」について、その具体的な意味内容及び判断基準が明確に示されないような状態では、この政令委任条項は、これまでの政府解釈に照らしても憲法上許容される条件を満たされていないのではないか、との質問をした。
 これに対して、政府参考人として招致した梶田内閣法制局長官は、これまでの政府解釈を踏襲する答弁を繰り返した上で、「国際交渉にかかわるものであるということから、事柄の性質上あらかじめ確定的に施行期日を定めることが困難であったということから、政令に委任して定めるというふうにした」と述べるとともに、その政令委任の具体的規定である法案附則第一条ただし書について、「政令に委任する前提条件といたしまして、法律上附則の第一条ただし書におきまして明確にその条件を規定いたしまして、その上で施行期日を政令に委任している」と答弁された。要するに、法案附則第一条ただし書の規定は「(政令委任に当たっての)前提条件を明確に規定している」というのである。この答弁に対して、私は、再度、「三つの前提条件」の定義(具体的な意味内容)及びその判断基準が何ら明らかになっていない状態で、「前提条件として明確に規定している」とは到底言えないのではないか、と問うたのだが、梶田内閣法制局長官は、「法案附則第一条ただし書では、前提条件を明確に規定している」と繰り返すのみであった。
 そこで、再度、この点について別の観点から質問する。国会が「唯一の立法機関」であると定める日本国憲法第四十一条の趣旨に照らして、政令委任が許される条件としての「抽象的・包括的な委任でないこと」あるいは「個別的・具体的な委任であること」という要件は、当該委任規定において、委任の内容や範囲が実質的に明確になっていることを意味するのではなかったのか。それとも、単に、政令委任に当たって何らかの条件が「明記」されていればいい(「明確な字」が書いてあればいい。)とでもいうのか。もし、梶田内閣法制局長官のいう「明確性」の意味が後者だとすれば、あまりに国会を愚弄した「法匪」(仙谷国家戦略担当大臣が、宮崎礼壹前内閣法制局長官を称した表現(平成二一年一月八日の衆議院予算委員会))としか言いようがない解釈だと言わざるを得ないが、どうか。

 右質問する。



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