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平成二十三年八月二十二日提出
質問第四一一号

上場企業の倒産処理に関する質問主意書

提出者  松木けんこう




上場企業の倒産処理に関する質問主意書


 最近における経済情勢の悪化を背景として、昨年(二〇一〇年)は上場企業が九社倒産した。上位二社は、日本航空と武富士であり、負債額の三、四、五位は不動産業であった。
 ちなみに、〇八年の上場企業の倒産件数は三十三社、〇九年は二十社となっており、そのうちサブプライム問題の余波を受けた不動産及び建設業は〇八年で二十五社、〇九年で十一社にものぼっている。
 負債総額の推移をみると、〇八年は上位十社で九千三百億円、〇九年は同じく上位十社だけで一兆千五百億円を超え、昨年は上位二社だけで負債総額は一兆千億円を超えるなど深刻な状況にある。
 このような上場企業の倒産は、膨大な失業者を生み出すばかりでなく、取引先は広範に及ぶため倒産した企業以外にも多大な損害をもたらすことは必至である。さらに、株式市場に与える影響も甚大である。大型倒産により、毎年、株式に投じられた資金が千億円単位で失われるようでは、一般投資家の株式市場そのものへの信頼がゆらぎ、健全な直接金融市場の形成が進まない一因になっているとも思われる。
 倒産処理に際しては、倒産に至った経営判断や、情報開示の適否などは、会社法や民事・刑事上の責任が厳しく問われるべきであるが、同時に、破綻直前の時期に行われる財産隠匿行為や、インサイダー取引、あるいは親会社や人的あるいは資本的関係の深い会社等による抜け駆け的債権回収などについても厳しくチェックすることが必要である。
 残余財産の適切な回収と分配が、労働者や債権者、場合により株主にとっての最後の砦だからである。
 ところが、最後の砦は守られているのかという疑念を持たざるを得ない。
 一例を挙げると、一昨年二月に民事再生を申し立てたSFCG(商工ファンドカンパニーグループ)では、破綻に瀕し、次のような様々な違法行為が行われたとされる。
 まず、約三十八億円の税金滞納で、銀行預金の差し押さえを受けた。次に、二〇〇八年七月期決算につき粉飾決算による違法配当を行っていた疑いがあるとして、被害対策弁護団が、旧経営陣を東京地方検察庁に、会社法違反で告発した。
 さらに、破綻直前のSFCGでは、@二〇〇八年十月以降、貸付債権約千四百二十億円分を、関連会社や元代表の親族会社などに無償譲渡か、安値売却した。A二〇〇九年二月に行った民事再生手続開始の申立て直前に、子会社株式など約千二百三十八億円分の財産を、関係会社等に譲渡した。B都内にある元代表自宅は、元代表の妻が代表取締役である親族会社所有とされSFCGが月千五百二十五万円の家賃を支払っていたが、二〇〇八年十月から月三千百五十万円に引き上げた。C二〇〇八年八月に、役員報酬を、元代表のみ月額二千万円から月額九千七百万円に増額した(ちなみに、他の役員は全員月額三十万円)。といった財産流出行為が行われていた、と破産管財人の弁護士が明らかにし、会社法違反(特別背任)や民事再生法違反(詐欺再生)の被疑事実で、元代表ほか旧経営陣を告発した。
 また、日本振興銀行に七百億円相当の保有債権を二重譲渡していたことも発覚している。
 この例は氷山の一角に過ぎず、隠匿行為は他の倒産例でも存在する可能性がある。
 債権者や株主の保護のために、会社財産を保全すべきとの観点から、広く上場会社の倒産処理に関わるすべての救済措置を把握し、立法機関の一員として、企業倒産法制の一層の改善の余地がないか確認したい。
 そこで、以下の点につき、詳細かつ具体的な答弁を求める。

一 管財人が、会社財産の流出行為に対して採りうる措置には何があるか。
 民事上、刑事上および行政上の監督など、いかなる機関に対して、何を求めることが可能か、考えうる措置をすべて列挙していただきたい。
二 管財人が看過したとしても、債権者あるいは株主による財産流出が防止できる可能性がある。
 そこで、債権者が採りうる措置と株主が採りうる措置について、それぞれすべて列挙していただきたい。
三 仮に、管財人が財産流出を看過し、債権者や株主も気付かぬままに、破産手続きなり民事再生手続きが終了した場合、救済の可能性は一切無くなってしまうのか。管財人が求めることのできる救済、及び債権者や株主が求めることができる救済方法として考えられるものをすべて列挙していただきたい。
四 粉飾決算等により、破綻時には既に公表されていただけの財産が存在しなくなっていたような場合、財産流出行為と同様の損害を債権者や株主に与えることになる。そこで、破産または民事再生手続きが済んでしまったとしても、破綻会社において粉飾決算を行った取締役など役員の会社法上の責任は、時効完成まで残ると考えるが、民事責任や刑事責任は消滅してしまうのか、回答していただきたい。
 責任が消滅しないならば、債権者や株主は取締役等の民事責任や刑事責任を追及しうることになるが、考えうる法的責任を網羅的に列挙していただきたい。
 また、刑事責任を問う場合は、どこに告訴すべきかを明らかにされたい。
五 上場廃止前の最新の有価証券報告書等における財産評価と、破綻処理時における財産評価額あるいは譲渡価格とに著しい開きがある場合、破綻前の評価額が正しければ、詐欺再生の疑いが生じ、破綻後の譲渡価格が正しいとなれば粉飾決算や虚偽事実の公表など多大な損害が生じる可能性があるが、それぞれのケースについて、どのような責任が生じうるか。
 民事上、刑事上の責任として考えうる責任を網羅的に回答していただきたい。
六 例年、不動産業が大型倒産の上位を占めている現状に照らし、倒産会社が保有していた不動産の評価をいかに適切に行うかということが、重要と考えられる。
 そこで、
 1 不動産の評価額は、鑑定者により様々であるが、もし恣意的な安価で任意売却が許されるとしたら、例示したSFCG事案において債権を無償譲渡か安値売却した行為と同様に、財産隠匿が可能となる。
  債権者や株主保護の見地から、任意売却においても不動産の評価額の適正が要求されると考えるが、どうか。
  また、適正額の目安として考えられるものがあれば例示していただきたい。
 2 財産目録が不備な場合、適切な評価は不可能であるし、また裁判所においても評価額が適切であるか否かのチェックが十分になされない可能性がある。財産目録の不備が看過されたまま破綻処理が終了した場合は、当該手続きは有効と言えるか。
 3 不備な財産目録を作成した者にはどのような責任があるか。
七 上場会社においては、親子会社の関係であったり、出資や貸付等の資本関係や役員などの人的関係の深い企業も多数存在しうる。SFCGの例では、子会社を利用した財産隠匿行為や、関係の深い日本振興銀行への二重譲渡などが問題とされたが、こうした行為は一般債権者や一般株主の犠牲の上に自利を図る行為であり、債権者平等、株主平等に反する行為である。
 そこで、
 1 子会社が倒産したとき、親会社、あるいは親会社の役員が財産隠匿行為などに加担し、または隠匿行為を知りうる状況にあった場合には、何ら責任を負わないのか。
 2 隠匿行為と見られるような価格で財産を譲り受けた者は、本来の適正価格との差額分に相当する超過利益を得ることになる。いかに迅速な破綻処理が必要であったとしても、不公正な破綻処理は許されないと言うべきである。
  例えば、財産譲受後一年を待たずに転売し、取得価格に比して著しく高価に転売した場合は、不公正な破綻処理による超過利益を得た可能性が高いと考えるが、どうか。
  また、そうした超過利益が生じた場合、一般債権者や株主に還元する手立てはないのか。

 右質問する。



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