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平成二十八年十一月十七日提出
質問第一五〇号

米軍のヘリコプターに使用されている放射性物質やジャングル戦を想定した訓練で使用している枯葉剤等の環境汚染物質から沖縄県民の命の水がめと希少生物・絶滅危惧種の住処である「やんばるの森」を守ることに関する質問主意書

提出者  仲里利信




米軍のヘリコプターに使用されている放射性物質やジャングル戦を想定した訓練で使用している枯葉剤等の環境汚染物質から沖縄県民の命の水がめと希少生物・絶滅危惧種の住処である「やんばるの森」を守ることに関する質問主意書


 国土面積の僅か〇.六%しかない狭隘な沖縄県内には、全国の米軍専用面積の約七十四%にのぼる広大な米軍基地が存在し、沖縄県民にとって過重な基地負担となっている。その中でも、沖縄本島の北部地域は県民が「やんばるの森」と呼び親しむ自然豊かな地域であり、沖縄県民の命の水がめであるダムが数多く存在する地域として、さらにここだけでしか生息が確認されていないノグチゲラや、ヤンバルクイナ等多くの固有種、固有亜種、その他様々な野生動植物が生息する地域として極めて重要な地域となっている。
 しかし、米軍はこの地域においても国内法規を無視して、ジャングル戦を想定した、空と陸と海が一体となった訓練を自由に行っており、豊かな自然環境を損なっている。
 ところで、二〇〇四年八月十三日に沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学構内での米軍ヘリコプターの墜落・炎上事故は、県民の生命と財産が脅かされる重大な事故であったことから未だに記憶に新しい事故であるが、事故直後から米軍が現場を封鎖し、事故を起こした機体や周辺の土壌を搬出するまで理由を全く示さずに沖縄県の警察や消防、行政、大学関係者の立ち入りを一切認めなかったことに対して、地元では主権の侵害であるとして強く反発するとともに、有無を言わさない排除や物々しい警備状況から汚染物質の気化や流出を懸念した対応ではなかったのかとの疑惑を抱き、真実の公表を強く求め続けているところである。
 また、二〇一三年八月五日に沖縄県宜野座村の米軍基地キャンプ・ハンセン内での米軍ヘリ墜落事故では、現場近くにある村民の水がめである大川ダムの汚染が懸念されたが、米軍が放射性物質汚染及び墜落現場の調査を拒否したため、宜野座村は取水を一年余にわたって停止し、村民の生活に大きな支障を来すとともに、不安を与えたところである。さらに、国管理の福地ダムではペイント弾が発見され、県民の水道水への汚染が懸念されたこともあった。
 そこでお尋ねする。

一 沖縄国際大学構内でのヘリ墜落・炎上事故の際に米軍が警察や消防等の立ち入りを拒んだことの法的な根拠や理由について政府の承知するところを明らかにした上で、私有地である大学構内で米軍が所有者の大学関係者や警察等の立ち入りを拒むことが我が国の法令に照らしてなぜ可能であったかについて政府の見解を答えられたい。
二 質問一に関連して、米軍がヘリの墜落・炎上した箇所やその周辺まで含めて掘り起こした上で、その土壌を搬出した理由について政府の承知するところを明らかにされたい。
三 米国大使館は、ヘリの墜落事故後に報道機関に対して、墜落したヘリに装着・使用していた「ストロンチウム九十が機体の燃焼、溶解で気化した可能性が高い」と回答した。この回答及び内容について政府の承知するところを明らかにした上で、米軍が行った土壌の回収と搬出がストロンチウム九十の気化や拡散、流出等の汚染対策として適正であったかについて政府の見解を答えられたい。
四 宜野座村の米軍基地キャンプ・ハンセン内での米軍ヘリ墜落事故の際に、宜野座村が放射性物質汚染及び墜落現場の調査を求めたのにもかかわらず、米軍が理由を示さずに拒否したが、その理由と法的な根拠について政府の承知するところを明らかにした上で、村民の水がめの安全確認を求める宜野座村の要求を米軍が理由も示さずに拒否したことについて政府の見解を答えられたい。
五 米海兵隊太平洋基地環境課は二〇一四年二月十八日、宜野座村内のヘリ墜落事故地点で土壌調査を実施したところ「日本の土壌汚染対策法で定める環境基準値の七十四倍の鉛や二十一倍のヒ素を検出した」と発表した。このように我が国の環境基準を大幅に超える汚染が確認されたことについて政府の承知するところを明らかにした上で、鉛やヒ素が人体に与える影響について政府の見解を答えられたい。
六 米軍ヘリコプターや新型輸送機のオスプレイ(以下「米軍ヘリ等」という)には天然物ではなく、人工的に作られた放射性同位元素であるストロンチウム九十が装着・使用されているとのことであるが、ストロンチウム九十が米軍ヘリ等に装着・使用されている目的と理由は何か、また鉛やヒ素が使用されている目的と理由は何か、その他米軍ヘリ等に装着使用されている物質で機体が破損・墜落・炎上した際に環境中に流出して人体に悪影響を与える汚染物質があるかについて政府の承知するところを明らかにされたい。
七 質問六に関連して、ストロンチウム九十を保管している容器の材質は何か、機体が燃焼、溶解した場合の耐久性や気化の可能性はどうか、燃焼・溶解の防止策としてどのような対策を講じているかについて政府の承知するところを明らかにされたい。
八 質問六及び七に関連して、気化したストロンチウム九十の放射線量の測定方法、監視体制、被曝の可能性と対処策について政府の承知するところを明らかにされたい。
九 米軍ヘリ等に積載・使用されているストロンチウム九十が環境中に放出されたり、飲料水や農畜産物等を通して人間が摂取したりという場合の影響について政府の承知するところを明らかにされたい。
十 識者によれば、ストロンチウム九十が人体に入ってしまうと長期間体内に留まるので、少量でも体に悪影響を及ぼすとのことであるが、なぜこのような危険なものが米軍ヘリ等の部品として使用され続けているのかについて政府の承知するところを明らかにした上で、ストロンチウム九十や鉛、ヒ素を積載・使用している米軍ヘリ等の運行を直ちに禁止することについて政府の見解を答えられたい。
十一 識者によれば、ストロンチウム九十の汚染対策としては外部に放出しない努力や、人体に入らないようにする努力しかないとのことであるが、政府はこれまで米軍ヘリ等に積載・使用されたストロンチウム九十の安全対策としてどのような対策を講じてきたのか。
十二 米軍がベトナム戦争で使用した猛毒のダイオキシンを含む枯葉剤が一九六一年から六二年にかけて北部訓練場で散布され、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定され、証言も行っているが、政府はこのことを承知しているか。
十三 質問十二に関連して、政府は、米軍及び米国政府に対してダイオキシンを含む枯葉剤の散布に関する履歴や土壌の汚染状況、水質の汚濁状況、枯葉剤を使用した訓練・土地の使用の履歴等必要な事項について照会や請求、調査を行うべきではないか。
十四 政府は、米軍及び米国政府に対して北部訓練場における訓練の履歴や土地の使用履歴、不発弾と廃棄物の状況等について調査を行うよう求めるべきではないか。
十五 水質や土壌汚染の蓋然性が高いと考えられる過去の米軍ヘリ等や固定翼機の墜落地点について政府の承知するところを明らかにした上で、それらの地点における汚染の実態と今後の対策について政府の見解を答えられたい。
十六 米軍ヘリ等や固定翼機が墜落・炎上した場合、放射性物質の気化や拡散による動植物への汚染が生じる他、鉛やヒ素等の有害物質による土壌汚染、水質汚濁等も生じることが明らかになっているが、このことについて政府の承知するところを明らかにした上で、今後調査を行う必要性、その予定、実施時期、除去の具体的な方法等について政府の見解を答えられたい。
十七 政府は、米軍の新型輸送機オスプレイの配備計画として、配備済みと併せて今後何機沖縄に配備されるのか、そのうち北部訓練場でどのような訓練を一日当たりどの程度の頻度で何機が行うのかについて政府の承知するところを明らかにした上で、オスプレイの大規模な配備と過密で危険な訓練が沖縄県民への基地の負担をさらに過酷なものとするのではないかという県民の不安について政府の見解を答えられたい。
十八 政府は、米軍ヘリ等や最新鋭機のF三十五ステルス戦闘機等の固定翼機が北部訓練場内で墜落・炎上し、汚染物質を気化・流出させた場合に自然環境にどのような影響や汚染、汚濁が生じるかについて政府の承知するところを明らかにした上で、そのような環境汚染を防止するためにはどのような対策を講じるべきかについて政府の見解を答えられたい。
十九 沖縄本島に居住する県民の水源として、その約五十五%が「やんばるの森」にある国管理の五ダムが賄っている。しかもそれらの五ダムは調整水路で繋がっているため、いずれかのダム及びその周辺で米軍ヘリ等や固定翼機が墜落・炎上すると、そのダムは当然汚染されることになるが、残りの全てのダムも汚染されることになる。そうなると二〇一三年の宜野座村の大川ダムでの一年余の取水停止どころではなく、沖縄本島全域での断水となり住民及び県内産業の死活問題となる。政府は北部訓練場での米軍ヘリ等や固定翼機の国内法規を無視した訓練が何時かは墜落・炎上を招き、ひいては沖縄県民の命の水がめの汚染に繋がり、県民の生活や安心、安全、産業に大きな支障を来すことになることを承知しているかについて政府の見解を答えられたい。
二十 質問十九に関連して、米軍は北部訓練場でジャングル戦を想定した訓練を日常的に行っているが、その訓練で使用したと思われるペイント弾や不発弾、廃棄物等が相次いで発見されている。また、埋設廃棄物についてはこれまでに返還された米軍跡地で地中からドラム缶入りの有害物質が掘り起こされるという事例が数多く生じている。政府は米軍が行ったこのような土壌汚染や水質汚濁、環境汚染に対してどのように取り組む考えなのか、米軍に対して責任を追及する考えはあるのか、原因者負担の原則に基づき米軍に除去の責任と経費の負担を求める考えはあるのか、米軍の訓練及び土地の使用の履歴に関して調査を求める考えはあるのかについて政府の見解を答えられたい。
二十一 質問十九及び二十に関連して、米軍ヘリ等や固定翼機の訓練や墜落・炎上、さらにはジャングル戦を想定した訓練等が「やんばるの森」を住処とする希少生物や絶滅危惧種、固有種、固有亜種、その他野生の動植物に与える影響について政府の承知するところを明らかにした上で、「やんばるの森」の自然環境を保全するため米軍の訓練を直ちにやめさせるとともに、北部訓練場を全面返還することについて政府の見解を答えられたい。
二十二 去る十一月十五日、沖縄県は政府に「駐留軍用地の返還に関する実施計画の案について(回答)」を提出した。これは米軍北部訓練場の過半返還に関する沖縄防衛局の返還実施計画に対して、土壌汚染除去や不発弾撤去の徹底等三十三項目の要望事項を盛り込んだ意見書であるが、地元である東村や国頭村も賛同した内容であり、沖縄県民の総意として提出したものである。加えて意見書に盛り込んだ内容は、これまで政府と米軍、米国政府が沖縄県民の民意を無視して自由に沖縄県内の自然環境や県土をないがしろにしてきたことに対する回復の要求であるが、政府は沖縄県からのこのような最低限の要求に対してどのように対処する考えか政府の見解を答えられたい。
二十三 政府は、主権国家として、駐留軍である米軍と外国政府である米国に対して自国の土地でどのような訓練や活動を行ったかということを調査・把握することは当然のことであるとの考えや気概を持ち合わせているか政府の見解を答えられたい。
二十四 政府は、これまで北部訓練場での米軍の訓練の状況や、「やんばるの森」の自然環境の保全についてお座なりの対応に終始している。今回沖縄県から発出した意見書についても相も変わらずに「相手がある」とか「検討したい」とかの回答になるものと思われる。しかし、安倍総理の「真に建設的な議論をするべきである」とか「沖縄に寄り添う」、「できることは全て行う」とかの言葉が真実であるならば、今回の沖縄県からの意見書を契機として政府の対応を改めるべきであると本職は考えるが、政府の見解を答えられたい。

 右質問する。



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