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平成二十九年二月十六日提出
質問第七三号

消費が増えなくても激しいインフレが起きるのかという疑問に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




消費が増えなくても激しいインフレが起きるのかという疑問に関する質問主意書


 先の答弁書(平成二十九年二月三日内閣衆質一九三第三〇号、以下答弁書という)の一から八までについてで、コンバートによって消費・需要が大きく拡大することはないが、通貨の信認が損なわれ激しいインフレが起きると述べた。通貨の信認が損なわれるとよく言われる例としては、政府貨幣が発行されたとき、日銀の国債引き受けが行われたとき、財政ファイナンスが行われたときなどであり、政府はこれらの際には、消費は拡大しないが激しいインフレが起きるという矛盾に満ちた主張をする。
 平成十四年五月九日の日経新聞でのノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ氏の政府貨幣発行に関する発言に注目して頂きたい。「増発された紙幣は消費を刺激せず、インフレにつながるだけだとする、矛盾に満ちた主張も一部で見受けられる。消費に回らなければ、どうやってインフレを促進することになるのか。」このような矛盾に満ちた考えが財政拡大を妨げ「失われた二十年」と言われる世界に類を見ない大不況に日本を陥れている。
 特にコンバート時ではあるが、もっと一般に通貨の信認が失われた時に何が起きるかに関して質問する。
 ただし後半はそれ以外の質問も行う。

一 消費は拡大しないままで、激しいインフレが突然現在の日本で起きるのか。
二 消費が拡大しない時、一企業あるいは一商店が全製品・全商品の大幅な値上げを行ったとすると、それらが売れなくなるのは明らかで倒産に追い込まれるのではないか。
三 全企業、全商店が一斉に同率で値上げしても、やはり消費者は購買力の低下のため売れなくなり、結局値下げに追い込まれるだけではないか。
四 例えば、トヨタや東京電力、郵便局、百円ショップ、ガソリンスタンド、書店などが本当に突然大幅値上げをするのか。それ以外に具体的に大幅値上げをすると言っているところを政府は一箇所でも把握しているのか。もし一箇所も把握できていないとしたら、通貨の信認が失われると激しいインフレが起きるという政府の主張は間違いだと結論できるのではないか。
五 コンバートで激しいインフレになったとき、消費性向はどのような影響を受けるのか。我が国における消費性向は年金を取り崩して生活する世帯の増加のためゆるやかに増加する傾向があるもののほぼ〇.八程度である。例えば物価が二倍になり消費性向が〇.八のままだと消費は実質的に半減するのか。それとも可処分所得も一気に二倍になると主張するのか。
六 例えば政府が通貨を大規模に増発すれば激しいインフレになるのは明らかである。あるいはデフォルトの際、一気に通貨安が進み、輸入が滞り深刻な物不足になった際にも激しいインフレになることは知られている。また、戦後の極端な物不足の際にも激しいインフレが起きる。デフォルト、通貨安、あるいは通貨の増発、戦後の物不足などの場合を除くとしたとき、消費の拡大もない時に突然激しいインフレに見舞われた例はあるのか。
七 円の信認が失われたら円が暴落し、輸入物価が上昇しインフレになるという主張か。アベノミクスが始まって一ドルは八十円台から百二十円台へと円は急落したが、インフレ率の上昇は僅かだった。円がどれだけ下がれば激しいインフレになるというのか。ベネズエラは通貨急落から激しいインフレになったが、これには外貨不足から輸入が途絶え、それを代替する国内産業がなかったため深刻な物不足が引き起こされた結果であり、巨額の外貨を保有する日本の現状とは全く異なるが同意するか。現状を放置すれば、景気が回復し金利が上昇に転じたとき、国債価格の下落で日銀資産が毀損し、円への信認が失われ過度の円安を招く。それを防ぐためにもコンバートが有効なのではないか。
八 答弁書ではコンバートによって金利が急騰するとしている。一方で、中曽日銀副総裁は二月九日に高知市内で記者会見し、日銀がゼロ%程度への誘導を目標としている長期金利の操作について「長期金利をコントロールすることは十分可能だ」と述べた。また二月三日には日銀があらかじめ決めた利回りで無制限に国債を買い入れる指し値オペを日銀が実施している。無制限の指し値オペを続ければ金利は固定され急騰するわけがないが同意するか。
九 答弁書の一から八についてで無利子・無期限の債券は無価値だとしているが、日銀券(紙幣)や政府貨幣(硬貨)も無価値だと主張するか。
十 トランプ米大統領は日本の為替政策を厳しく批判している。金融緩和で円安誘導を行って輸出を伸ばそうとしているとの批判をしており、かつての貿易摩擦が再燃する可能性がある。一九八九年〜一九九〇年の日米構造協議ではアメリカは日本に内需拡大を要求した。日本に対しGNPの十%を公共事業に配分することを要求した。海部内閣はこれに応え、十年間で総額四百三十兆円という「公共投資基本計画」を策定した。
  もちろんアメリカの要求をすべて飲む必要はないが、デフレが続き消費が落ち込み、輸入が減って経常黒字が続くのがよいわけはない。ゼロサムゲームであり、黒字国があれば赤字国もある。日本が黒字を続けることで赤字国を苦しめることになる。そうであれば、日本は財政を拡大し、景気を良くし、消費を伸ばし、輸入を増やせば、アメリカなど赤字国にとっても、日本にとっても良いことであり世界経済の健全な発展にも貢献すると考えるが同意するか。
十一 答弁書の十及び十一についてで「財政状況を一つの数量的基準を用いて測ることは困難である」と述べているが、これは国・地方の債務残高のGDP比だけで、財政が厳しいかどうかを言う事はできないという意味か。
十二 平成二十九年一月二十五日に内閣府より発表された「中長期の経済財政に関する試算」(以下内閣府試算という)によれば、「二〇一七年現在、国・地方の債務残高のGDP比は一八八.五パーセントであるが、この比は今後次第に減少し二〇二五年には一六九.六パーセントにまで下がると見込まれている」ということで間違いないか。そうであれば、「国・地方の債務残高がGDPの二倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれている」などという、わざと誤解を招き、明らかに国民を騙そうとする意図が見える表現は今後答弁書では使うべきではないと思うが同意するか。
十三 内閣府試算ではGDP推計の抜本的な変更が行われた。この試算で使われた計量経済モデルの変数・方程式リストや乗数はいつ公表されるのか。
十四 内閣府の「今週の指標No.一一五九 基準改定等を反映した二〇一六年七〜九月期四半期別GDP速報(二次速報)を踏まえたGDPギャップ及び潜在成長率について」では研究開発への支出が含められたために約三十兆円だけGDPが上振れした。これは総需要が研究開発で二十兆円、他の要因も含めると三十兆円増加した場合の試算をした事に相当している。つまりこの試算では、これらを増やす前と後では潜在成長率は〇.四から〇.八に増加することを示す事となった。ということは総需要を増やせば潜在成長率は増えることを示したことになった。これは「潜在成長率を増やすには構造改革によって供給サイドを強化するしかない」「現在の低成長は、潜在成長率が低いためであるから致し方ない」という従来の考え方が間違いだったことを証明した。つまり財政を拡大すれば、潜在成長率が低くても経済は発展する事が出来ることが証明されたと考えるが同意するか。
十五 内閣府は前述の「今週の指標」で用いた方法に従って、財政を拡大した場合としない場合で全要素生産性をそれぞれ計算し、国民に示すべきである。内閣府試算では全要素生産性が高い場合に相当する「経済再生ケース」と低い場合に相当する「ベースラインケース」を示しているが、そもそも全要素生産性は財政規模に依存するのだから、この二つのケースを示すことは意味がない。むしろ、財政を拡大した場合と拡大しない場合を計算し比較し「中長期の経済財政に関する試算」を国民に示すべきだと考えるが同意するか。
十六 日米政府の政策は対照的である。アメリカ政府は様々な形で国内産業の後押しをしている。トランプ大統領は企業が国内から海外へ移転するのを阻止し大規模減税や公共投資で需要を喚起し国内産業の発展を目指している。一方で日本政府は逆に国内産業の足を引っ張っている。デフレから脱却できていないのにも拘らず、増税で消費を停滞させているし二年後に更なる消費増税を予定している。これでは消費が低迷し、国内企業の経営を悪化させ発展を阻害する。発展しない国に企業は投資したくない。しかも総理が企業に賃上げを求めることにより、企業の採算を更に悪化させ、もっと賃金の安い海外への工場移転を促す結果となる。アメリカは「アメリカ第一」という政策だが、日本は「日本は二の次」という政策になっているのではないか。日本もアメリカに倣って大型減税、財政拡大を行って経済を発展させ「日本第一」という政策に転換してはどうか。
十七 答弁書の十五についてで、日本銀行の行っている国債買い入れは、二パーセントの物価目標の実現という金融政策を目的にするものであり、公債の引受には当たらないとのことである。しかし物価目標が達成されていない現状を考えれば、国債の買い入れ増加や財政拡大などあらゆる手段をつくして目標達成の努力をすべきではないか。政府の見解を求める。

 右質問する。



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