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平成三十年十月二十四日提出
質問第五号

原発から三十キロメートル圏内の放射線防護施設の約四分の一が危険区域にあることに関する質問主意書

提出者  阿部知子




原発から三十キロメートル圏内の放射線防護施設の約四分の一が危険区域にあることに関する質問主意書


 超党派の議員連盟「原発ゼロの会」では、七月二十日に中川雅治内閣府特命担当大臣(原子力防災)に「原子力防災の抜本是正を求める申し入れ」を、十月二日には「原発再稼働をめぐる『無責任構造』からの脱却を求める二度目の提言」を原子力規制委員会に行ったが、こうした提案が反映される兆しが現時点までに見られない。
 七月と十月に行った提案の共通項は、内閣総理大臣が平成二十七年に決定、平成二十八年度に改正した「原子力災害対策事業費補助金交付要綱」が遵守されていないことについて、改善を求めたものだ。
 この要綱では、原発から三十キロメートル圏内にある放射線防護施設の対策強化事業への補助金の交付基準として「人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがないと認められる土地の区域に立地すること」が原則であることが書かれている。
 ところが、内閣府にその基準が満たされたか否かを示す資料を公開させたところ、平成三十年六月現在、十七道府県五十九市町村にある二百五十七施設のうち六十九施設がその基準を満たしていなかった。ほぼ四分の一の放射線防護施設が、「土砂災害特別警戒区域」、「土砂災害警戒区域」、「浸水想定区域」、「津波浸水想定区域」等いわゆる「危険区域」に立地している。
 このような原子力防災のありようを放置して原発の再稼働を認めることは、行政府および立法府の怠慢である。そこで質問する。

一 安倍内閣は、「土砂災害特別警戒区域」、「土砂災害警戒区域」、「浸水想定区域」、「津波浸水想定区域」等いわゆる「危険区域」は、立地の原則である「人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがないと認められる土地の区域」に相当すると考えているのか。
二 世耕弘成大臣は平成三十年五月二十三日の参議院本会議で「原子力発電所については、高い独立性を有する原子力規制委員会によって、科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針です」と答弁しているが、危険区域に放射線防護施設があることは、政府の一貫した方針の中で、どのように勘案するのか。
三 伊方原発から三十キロメートル圏内にある放射線防護施設は十四件中十二件が危険区域にあるが、政府は、「原子力災害対策事業費補助金交付要綱」で求めた原則が遵守されないまま、再稼働を容認するのは何故か説明されたい。
四 平成三十年九月二十五日には広島地裁の伊方原発三号機の運転差し止め仮処分を高裁が取り消し、同月二十八日には大分地裁が仮処分を却下した。これは、周辺住民の安全を確実に確保するための法的根拠が欠如したなかでの判断に過ぎない。司法判断によっても周辺住民の安全が確保されるために、「原子力災害対策事業費補助金交付要綱」が求めたように、放射線防護施設は「人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがないと認められる土地の区域に立地すること」を、さらに法律でも義務付けるべきではないか。
五 平成二十四年六月二十日、参議院環境委員会は、原子力規制委員会設置法案の審議で政府に附帯決議を課した。
 1 附帯決議第十は「緊急時の原子力規制委員会と原子力災害対策本部の役割分担や連携については、縦割りの弊害が新たに生じないよう、国民の生命・健康の保護及び環境の保全を第一に、十分に検討すること。また、平時からの防災対策の強化が重要であることから、原子力規制委員会と原子力防災会議は、それぞれの明確な役割分担の下、平時から緊密な連携関係を構築し、防災体制の一体化を図ること」とした。この附帯決議は、原子力規制委員会の規制基準だけでは「国民の生命・健康の保護及び環境の保全を第一に」考えたことにならないことを示唆している。国会が指摘した縦割りの弊害を排した原子力防災体制の一体化を、政府はいつまでに実現するのか。すでに実現したと考えているのか。
 2 附帯決議十九は「防災対策を確実に実施するため、実施機関及び支援機関の役割、責任について、法令、防災基本計画、地域防災計画、各種マニュアル等において明確にするとともに、これに必要な人員を十分確保すること。また、これらについて、その妥当性、実効可能性を確認する仕組みを検討すること(略)」とした。危険区域に放射線防護施設が立地していることは、地域防災計画を確実に実施する上で妥当性、実行可能性が確認できている状態だと政府が考える根拠を明らかにされたい。
 3 附帯決議二十は「原子力発電所事故による周辺環境への影響の度合いや影響を与える時間は、異常事態の態様、施設の特性、気象条件等により異なることから、原子力発電所ごとに防災対策重点地域を詳細に検討し、地方公共団体と連携をして地域防災計画等の策定に活かすこと」とした。
  伊方原発から三十キロメートル圏内にある伊方町十件、八幡浜市三件、宇和島市一件、計十四施設のうち十二施設は先述したように危険区域にあるが、安倍内閣はこれら地方公共団体とこの立地問題の解消について協議を行ったことはあるか。協議を行ったことがあるとすれば、いつ行ったのかを明らかにされたい。また協議の目的と結果を明らかにされたい。
 4 附帯決議二十一は「原子力事業者が行う防災訓練は、原子力事故の際に柔軟な危機対応能力を発揮して対処することの重要性に鑑み、抜き打ち訓練、想定外も盛り込んだブラインド訓練を含め、重大事故の発生を含めた厳しい条件を設定して行い、その実効性を確保すること」とされている。
  東海第二原発の三十キロメートル圏内六市村では、計二十二施設のうち、特別養護老人ホームMAO(日立市)と障害者支援施設ピュア里川(常陸太田市)が「浸水想定区域」に、久慈茅根病院(日立市)が「土砂災害警戒区域」に区分されている。自治体が原発事故と豪雨災害など複合被害の訓練を行うとしたら、逃げる訓練となるのか、避難せずに浸水や土砂災害に屋内で備える訓練を行うのか。複合被害の避難訓練はどのように成立するのか政府の見解を明らかにされたい。
 5 附帯決議二十三は「本法附則に基づく改正原子炉等規制法の見直しにおいては、速やかに検討を行い、原子力安全規制の実効性を高めるため、最新の科学的・技術的知見を基本に、国際的な基準・動向との整合性を図った規制体系とすること。特に、審査・検査制度については、諸外国の例を参考に、これが形骸化することがないよう、原子力規制委員会が厳格かつ実効的な確認を行うとともに、事業者が常に施設の改善を行わなければならないような規制体系を構築すること」とした。放射線防護施設が危険区域に立地されているにもかかわらず、それが審査対象とならず、原発を稼働させている国はあるのか。避難の実効性の確保は、原子力安全規制の実効性を高めるために不可欠であるため、政府が知りえる範囲で明らかにされたい。

 右質問する。



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