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令和元年十月二十五日提出
質問第五六号

令和元年台風第十九号による長野県東部・東信地域の被災状況から見る、山間部・上中流域の河川災害被害と、復旧課題に関する質問主意書

提出者  井出庸生




令和元年台風第十九号による長野県東部・東信地域の被災状況から見る、山間部・上中流域の河川災害被害と、復旧課題に関する質問主意書


 令和元年十月十二日より全国を襲った台風第十九号で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。政府におかれては、これまでの復旧への尽力に深甚なる敬意を表し感謝申し上げます。引き続き、国民の安全、暮らしの復旧を最優先にお取り組みいただきますようお願い申し上げます。
 さて、この度の台風第十九号により、七県で二十水系の七十一河川が決壊し、その中には長野県の千曲川をはじめ、吉田川、阿武隈川、久慈川など、国が管理する一級河川が多く含まれている。長野県では、五千八十六世帯が浸水した長野市(十月二十三日午前十時時点長野県災害対策本部まとめより)、全国的には、宮城県丸森町、福島県郡山市など、河川幅の広い地域での越水は広範な住宅被害をもたらしている。
 長野県東部・東信地域は、千曲川の源流を含む上中流域にあたる山間地であり、他の地域と同様、年間降水量の五割近くにあたる大雨が、二十四時間から四十八時間以内に降ったことが確認された。
 山間部・河川上中流域の被災地を回ると、長野市などの広範な被害が出た地域とは異なり、局所的に甚大な被害が発生した箇所が分散して多数確認された。こうした被害は長野県に限らず、他の一級河川の上中流域、急流箇所のある山間部でも、同じような被害が出ているのではないかと考えられる。
 そこで、長野県東部・東信地域の被災現場で確認された被害や問題意識が、全国の各被災地の復旧、また、山間部・河川上中流域での河川災害における今後の防災政策の一助になることを願い、以下質問する。

一 越水にとどまらない大きな被害について
 山間部・上中流域では、越水のみにとどまらず、急流によって護岸などが削られたことにより、橋や道路に甚大な被害が多数出たことが特徴の一つと考える(佐久市入沢、佐久穂町大日向、長和町、上田市真田、北相木村等)。また、土砂災害も多数発生している。長野県によると、十月二十三日午前十時時点で四十九戸の住宅が、土石流や崖崩れによって全壊や半壊、浸水等の被害があったとのことだが、土砂災害による住家被害の全てが、上田市、佐久市、佐久穂町、長和町、筑北村、麻績村などの山間部、河川上中流域で発生している。
 また、山間部・河川上中流域では、単なる溢水・越水ではなく、土砂や岩石で河川や用水路が埋め尽くされて水が溢れ、土砂や岩石が隣接する住宅にまで流れ込み、道路を川のように水が流れ続ける被害が多数確認されている(佐久市常和、上田市平井、佐久穂町大日向等)。これらの被害地域は、今台風に限らず、大雨に見舞われた際に、度々被害が出たか、被害の可能性が指摘された地域であり、今後の再発防止策も含めた復旧対策の検討が必要と考える。今回の台風で流出した土砂岩石の除去のみならず、今後大雨の時には、水だけでなく再び土砂岩石が堆積する可能性を考慮した抜本的な復旧対策が必要と考えるが、こうした被害に対する国の復旧方針、県や市町村に対する助言等について、政府の考えを伺う。
二 山林の被害について
 今台風では、山間部、河川上流部で山崩れが多数確認された。川からの水と、山からの水・土砂にサンドイッチされる形で住宅が埋まる被害もあった。今後の復旧にあたっては、河川の修復のみならず、山林の復旧、地形の回復や、地形変化に応じた治山事業を検討する必要があると考える。また、山林の復旧にあたっては、被害のあった山林の所有者とすぐに連絡をとる必要があるが、近年問題となっている所有者が不明の山林が復旧の妨げになることが予想される。今後の山地災害対策について、政府の方針を伺う。
三 停電、断水被害について
 今台風でも改めて住民生活の大きな脅威となったのが、停電、断水である。停電、断水の原因は様々だが、特に山間部では、倒木が原因となる停電が発生し、復旧に長時間を要したことが顕著だった。長野県軽井沢町と御代田町では、停電が発災後十日前後におよび、その主な原因とみられる倒木の除去作業に、自衛隊の力を借りる事態となった。倒木が原因とされる停電の長期化は、先月の台風第十五号で大規模停電が発生した千葉県内でも確認されている。災害発生時の復旧作業や、倒れると電線に影響を及ぼすおそれのある木の事前伐採について、電力事業者と自治体の間で協定を締結している例もあるが、倒木による停電の防止や、停電発生時の早期復旧のための関係機関の連携についてどのような取組を進めていくのか、政府の方針を伺う。
 また、停電、水道管の破損、浄水場への土砂の流入等による断水も、徐々に解消してきているが、今なお、解消のめどが立っていない地域もある。水道管等の復旧工事や、断水が解消するまでの間の給水等について、自治体に対してどのような支援を行っていくのか、政府の方針を伺う。
四 住民福祉について
 台風第十九号により、長野県内では、長野市など広範囲で住宅浸水被害があった地域で、発災から十日以上が過ぎてもなお、多くの方が避難所での生活を余儀なくされ、暮らしの安心、被災者の健康状態を守ることなどが課題になっている。
 一方、山間部・河川上中流域においては、台風が上陸した十月十二日は多くの避難者が出たものの、翌日以降、大半の被災者が自宅に戻った。これは、住宅浸水の数が、下流域と比べて少なかったこと、多くの被災者が自宅での生活や、親戚宅等に身を寄せるなど、避難所にとどまらないことを選択したためと考えられる。避難所生活の被災者が少ないことは望ましいと考えることができる。しかし、避難所であれば保健師が常駐などする一方、避難所にとどまらずに被災住宅等へ戻った被災者については、保健師、医師とのアクセスや、物資の備蓄・供給、電気、水道などライフラインが確保されていない場合、暮らしの状況や健康状態の確認を継続的にする必要があると考える。
 通常であれば、各自治体の社会福祉協議会等が、こうした役割を担うと考えるが、被災地の社会福祉協議会は、ボランティアセンターの運営をはじめとする災害対応業務に追われている。また、被災箇所が、分散して多数あること、山間部は車社会であるにもかかわらず、道路被害により交通に重大な支障をきたしていることから、在宅の被災者や親戚宅等に身を寄せた被災者の安否確認、健康状態確認を継続することが、平時より困難ではないかとも考える。
 災害関連死は、発災後一ケ月までが多いとされているが、発災後一ケ月といえば、被災地の自治体は復旧対応で多忙を極めている時期であり、人的な応援が必要であると考えるが、中央省庁からの応援、被災しなかった自治体から職員を派遣するなどの施策を政府はどのように検討し、自治体に呼びかけや周知をするか、見解を伺う。
五 復旧の人手、ボランティアについて
 被災地の復旧には、ボランティアの支援が欠かせないが、今台風で甚大な被害を受けた山間部・河川上中流域が抱える問題として三つのことを挙げたい。
 まず、広範囲に及ぶ浸水被害があった下流域と比べると被害報道が少なく、ボランティアの希望者が少ないことがある。次に、山間部・河川上中流域の自治体は、小規模自治体が多く、役場職員の総力で復旧・復興に当たらなければならないため、ボランティアの受け入れのために十分な態勢を整えることができないという問題がある。さらに、被害箇所が分散して多数あるため、ボランティアの交通手段も課題として挙げられる。
 一方で、阪神・淡路大震災、東日本大震災等これまで多くの災害を通じて、全国各地の被災地で活躍するボランティア団体や、個人のボランティアの中には、災害対応のプロともいうべき貴重な人材が数多く存在する。また、自治体職員の中にも、全国の被災地への応援、長期出向を通じて、被災地域にかかわらず、復旧復興の優れた知見を有する職員が各地に存在する。
 長野県は、小規模自治体が多く、もともと人材が少ないことに加え、少なくともここ十数年間は、大きな災害が少ない地域とも言われてきた。これまで全国の被災地に貢献してきたボランティアや自治体職員の応援を早期にいただき、ボランティアを多く受け入れる態勢を整えることが必要であると考える。小規模自治体や大災害を長年経験していない自治体であっても、ボランティアの受入態勢を速やかに整えることができるように、政府として全国の自治体に指導する通知やガイドラインの作成が必要だと考える。大災害に備えて物資を備蓄しておくことは大事だが、災害への即応体制、早期復旧の知見を普段から備えておくことも、物資に勝るとも劣らず重要と考えるが、政府の見解を伺う。
六 交通について
 今台風では、交通の要となる多くの橋、道路の通行が不可能となった。特に山間部・河川上中流域はもともとバスや鉄道などの公共交通機関が脆弱である。長野県東部では、東信地域を東西に走るしなの鉄道が、軽井沢、御代田、小諸方面から上田地域に至る高校生の、唯一ともいうべき通学手段となっているが、東御市で、線路上の橋が崩落したことにより、現在も不通となっている。発災から十日経って、バスや新幹線を代替手段とすることとなったが、車社会の地方における災害時の在来線の復旧、代替輸送手段の確保は、もともと公共交通機関が少ない分、非常に大きな課題である。電車の代替交通として想定されるバス業界も、地方ではそもそも本数が少なく、さらには、慢性的な人不足、運転手不足もあるという指摘も伺った。災害時の協定を、地域の公共交通機関同士であらかじめ締結する、また、それを徹底することが、特に地方、山間部においては極めて重要であると考えるが、政府の見解と今後の取組を伺う。
七 報道格差、被害周知格差について
 山間部・河川上中流域の被害は、千曲川本流のみならず、中小河川、集落を流れる用水路の決壊により、局所的に甚大な被害が多数箇所で発生したことにあると考える。被害箇所が分散しているため、甚大な被害にもかかわらず報道されない、被害の長期化が多くの人に伝わらないという問題もある。発災直後は、被災地の住民が自らSNS(ソーシャルネットワークサービス)で発信し、被害を心配する多くの人たちによって拡散されたが、SNSでの発信や拡散も、日が経つにつれて少なくなると考える。政府及び自治体は、山間部・河川上中流域の被害状況等を継続的に把握し、積極的に情報を発信することにより、被災地に関心を持ち続けてもらい、ボランティア等による継続的な支援活動に繋げていくことが必要であると考えるが、政府の見解と今後の取組を伺う。
八 予算について
 今台風による被害は、広範囲に及んでおり、複数の省庁が関係している場合もあれば、被害が発生した場所によって施設等の管理者が異なる場合もある。今後、復旧・復興事業を進めるに当たっては、省庁の所管や、国の機関・自治体の管轄区域にとらわれることなく、関係機関が一体となって十分な予算を確保していくべきと考えるが、政府の見解を伺う。

 右質問する。

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