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令和三年六月二日提出
質問第一五九号

住民の視点から考えた避難計画に必要な情報に関する質問主意書

提出者  阿部知子




住民の視点から考えた避難計画に必要な情報に関する質問主意書


 原子力規制委員会は、原子力災害対策特別措置法第六条の二に基づいて、原子力事業者、国の行政機関、地方公共団体やその長などによる原子力災害予防対策、緊急時対応対策および原子力災害事後対策(以後、原子力災害対策)が円滑に実施されるための原子力災害対策指針を定めている。
 原子力災害対策指針に基づいて避難計画を作るのは地方公共団体だが、東京電力福島第一原子力発電所(以後、一F)事故を経験した住民の経験が活かされているとは思えない。
 そこで、以下質問する。

一 避難に必要な情報について
 一F事故における住民避難で最も重要な教訓は、避難に必要な情報を住民が得られなかったことであると考える。この点について、政府の見解を明らかにされたい。
二 避難に必要な情報の考え方について
 東日本大震災後に成立した津波防災地域づくりに関する法律に基づいて定める「津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針」では、避難に関しては、「『災害には上限がない』こと、津波災害に対する備えの必要性を多くの国民があらためて認識し、最大規模の災害が発生した場合においても避難等により『なんとしても人命を守る』という考え方で対策を講ずることの重要性、歴史と経験を後世に伝えて今後の津波対策に役立てることの重要性などが共有されつつある」としている。
 「最大規模の災害が発生した場合」を考えることは、原子力災害対策指針においても採用すべきだが、実際には、原子力規制委員会の新規制基準では、原子力災害における環境への放射性物質放出の量が、最大でも一F事故の約百分の一しか想定していない。
 避難計画を考える上での出発点は、最大規模の災害が発生したときに、どのような情報があれば、住民が安全に避難できるかを考えることではないか、政府の見解を明らかにされたい。
三 避難に必要な情報とは何かについて
 1 原子力災害対策指針は「原子力災害とは、原子力施設の事故等に起因する放射性物質又は放射線の異常な放出により生じる被害を意味する」としているが、「異常」な放出とはどのようなレベルのことを言うのか。
 2 原子力災害による被ばくを住民が避けるには、個々の住民が、最大限どこまで避難すればよいかを、予め知っておく必要があると考える。しかし、どのような場合にどのように放射性物質が放出されるかを最も具体的に予想できるのは原子力事業者であるはずである。
  そこで、政府は、原子力事業者に対し、自らが設置した原子力施設で原子力災害が起きた場合に、放射性物質が拡散し得る最大限の範囲を、気象条件も考慮した最悪のケースで公開させるべきではないか。
 3 新潟県の事故検証を通して、二〇一六年二月になってようやく、一F事故では、当時、東京電力社内にあった原子力災害対策マニュアルに炉心溶融の定義が書かれていたことが明らかにされた。全電源を喪失してから環境中への放射性物質の放出までの時間を想定し得たことを示している。
  原子力発電所周辺に暮らす住民にとっては、原子炉に異常が起きた場合に、異常が起きた時点から環境中への放射性物質の放出が起きるまでの時間は、予め知るべき不可欠な情報ではないか、政府の見解を明らかにされたい。
 4 環境中への放射性物質の放出の始まりからの経過予想は、原発五キロメートル圏内(PAZ)の住民がいつ避難を始め、三十キロメートル圏内(UPZ)の住民がいつまで屋内退避をし、いつ避難を開始したらよいかの判断に必要不可欠な情報だと考えるが、政府の考えるところを明らかにされたい。
四 情報を得る手段について
 1 原子力災害が起きた場合に原発周辺住民が避難に必要な情報を得るための手段は、地方公共団体の策定する地域防災計画(避難計画)の中で、十分に整備されていると政府は考えているのか。
 2 原子力災害が起き、避難する際、地域防災計画(避難計画)で予定されていた通信手段が失われ、情報途絶状態に陥った場合、住民は何ができると政府は考えているのか。
五 避難に必要な燃料について
 一F事故からの避難では、避難路が渋滞し、また避難に必要なガソリンの入手が困難で無用な被ばくをした、させたとの悔しい思いや不安が多くの住民に残っている。
 内閣府原子力防災の「よくある御質問」ウェブサイトには、「Q十四.ガソリンが不足した場合、どのように対応しますか」との質問に、「ガソリンなどの燃料に関しては、その物資所管官庁である経済産業省が、あらかじめ燃料の調達体制を整備し、災害時には関係事業者、関係業界団体などの協力等により、供給を確保することにしています」と回答している。しかし、ガソリンスタンドまでの供給が確保されることと、個々の利用者が調達できるかどうかは別問題である。
 1 政府は、再稼働している大飯原発、高浜原発、川内原発、伊方原発の緊急時対応を確認した原子力防災会議で、経済産業省による燃料の調達体制の整備と関係事業者および関係業界団体との協力供給体制を確かめたのか。また、どのように確かめたのか。
 2 政府は、右の原子力防災会議で、個々の住民が避難に必要な十分なガソリンをどこでどのように得られるのかの具体的な情報が、地域防災計画(避難計画)に含まれているかどうかを確認したのか。
 3 原子力災害が起きて、どこへ行けば避難に必要なガソリンを迅速に得ることができるのかを予め周知徹底されていなければ住民は安心ができないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
六 避難時間シミュレーションについて
 地域防災計画を策定する地方公共団体の中には、避難時間シミュレーションを行っている地域があるが、避難にかかる時間を推計しているだけで、被ばくとの関連性がない。住民が必要とするのは、どの程度被ばくするかを関連づけた被ばく時間シミュレーションではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
七 避難に必要な情報に関する公聴会等について
 「原子力施設の事故等に起因する放射性物質又は放射線の異常な放出により生じる被害」を避けるために、現在の避難計画で安心を感じるかどうか、さらにどのような情報があればより安全な避難ができると感じるかについて、公聴会を開いたり、意見募集をしたりすることが必要だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。

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