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平成二十年六月十七日受領
答弁第四八四号

  内閣衆質一六九第四八四号
  平成二十年六月十七日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員前原誠司君提出淀川水系の治水対策および淀川水系流域委員会に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員前原誠司君提出淀川水系の治水対策および淀川水系流域委員会に関する質問に対する答弁書



一の@について

 国土交通省近畿地方整備局(以下「近畿地方整備局」という。)が平成十七年七月に公表した「淀川水系五ダムについての方針」(以下「五ダムの方針」という。)においては、淀川水系における治水対策として、まずは、一級河川淀川水系淀川のうち同水系宇治川(以下「宇治川」という。)及び同水系瀬田川を除いた区間(以下「淀川本川」という。)、宇治川、同水系桂川(以下「桂川」という。)、同水系木津川(以下「木津川」という。)等の堤防強化を実施することとし、洪水時に下流の流量の増加をもたらす狭窄部の開削や河道掘削等の河川改修は基本的に実施しないことを前提としたこと等から、淀川本川及び宇治川に対する大戸川ダムの洪水調節効果は小さいと判断したものである。
 近畿地方整備局が平成十九年八月に公表した淀川水系河川整備計画原案(以下「原案」という。)においては、堤防詳細点検等の結果、五ダムの方針の公表後に淀川本川の堤防強化がおおむね五年間で完了することが判明したことを踏まえ、宇治川、桂川及び木津川については、昭和二十八年九月の洪水時の降雨量及び降雨パターン(以下「昭和二十八年九月洪水」という。)を基に計算した流量を計画高水位以下で流下させるため、河道掘削等を行うこととしているが、その結果、下流の淀川本川については、洪水時に流量が増加することとなり、平成十九年八月に策定した淀川水系河川整備基本方針における計画規模の洪水(以下「計画規模洪水」という。)が生起した場合に、計画高水位を超過することから、計画高水位以下で流下させる現況の安全度を保持するためには、大戸川ダムの洪水調節効果が必要であると判断したものである。

一のAについて

 五ダムの方針においては、大戸川ダム建設事業から利水者である大阪府(上水)、京都府(上水)及び大津市(上水)が撤退し、治水単独目的の事業となる見込みであったことから、「治水分の事業費が増加し経済的にも不利になる」と示したものである。大戸川ダム建設事業が治水単独目的の事業となることは、現時点においても変わりはないが、一の@についてで述べたとおり、大戸川ダムが必要であると判断しているところであり、また、事業費が三百四十億円増加した場合においても、大戸川ダムは天ヶ瀬ダム再開発と一体となって淀川本川及び宇治川に対して効果を発揮することから、両者を一体として算出した洪水調節に係る費用便益比が約一・四となることを確認している。

二について

 近畿地方整備局には、お尋ねの文書を作成したという記録はない。

三について

 近畿地方整備局は、計画規模洪水に基づく流出計算等により大戸川ダムがない場合に淀川本川の約三・六キロメートルの区間の水位が計画高水位を最大で約十七センチメートル超過するとの結果を踏まえ、三・六キロメートルの区間の計画高水位を十七センチメートル高くする等の条件を仮に設定し、この場合に必要となる安全性を確保するための堤防の嵩上げ等に要する概算の事業費(用地買収、橋梁の架替工事等に要する費用を含む。)を約千百二十億円と試算しており、平成二十年四月に開催された第七十七回淀川水系流域委員会において説明したところである。
 なお、盛土により築造された河川の堤防は、一般的に、洪水時における水位が上昇するに従って破堤する危険性が高くなり、また、計画高水位を更に上げることにより、破堤した場合の被害が大きくなること等から、淀川本川において計画高水位を上げることは適切でないと考えている。

四について

 天ヶ瀬ダム再開発事業は、洪水時における淀川本川及び宇治川の洪水調節のための貯留並びに洪水後の琵琶湖の水位低下のための放流をより効率的に行うため、洪水調節時の放流量を現行の毎秒八百四十立方メートルから毎秒千百四十立方メートルに増加させるものである。これにより、昭和二十八年九月洪水を基に算出した宇治川の水位は、平成十九年十一月に開催された第六十六回淀川水系流域委員会(以下「第六十六回委員会」という。)で配付された審議資料二−三の五頁上段「宇治川水位縦断図(現況河道)」及び同資料の七頁下段「宇治川水位縦断図(河道改修+天ヶ瀬ダム再開発+大戸川ダム+川上ダム後)」で示したとおり、現状より高くなるものの、計画高水位以下になっていることを確認している。

五の@について

 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条第一項に規定する河川整備基本方針においては、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第十条の二第二号の規定に基づき、主要な地点における計画高水流量及び計画高水位に関する事項等を定めなければならないこととされており、また、河川管理施設等構造令(昭和五十一年政令第百九十九号)においては、堤防、橋、堰等の構造の原則として、計画高水位以下の水位の流水の通常の作用に対して安全な構造とするものとすること等が定められており、計画高水位は、河川整備の実施に当たっての重要な基準として位置付けられている。

五のAについて

 御指摘の「近畿地方整備局が行ったシミュレーション」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、近畿地方整備局としては、昭和二十八年九月洪水を基に算出した宇治川、木津川及び桂川の水位は、第六十六回委員会で配付された審議資料二−三の七頁下段「宇治川水位縦断図(河道改修+天ヶ瀬ダム再開発+大戸川ダム+川上ダム後)」、同資料の十頁下段「木津川水位縦断図(河道改修+天ヶ瀬ダム再開発+大戸川ダム+川上ダム後)」及び同資料の十三頁下段「桂川水位縦断図(河道改修+天ヶ瀬ダム再開発+大戸川ダム+川上ダム後)」で示したとおり、今後具体的な整備の内容を検討することとなっている桂川の一部区間を除き、計画高水位以下になっていることを確認している。

六について

 平成十二年六月に作成した「河川堤防設計指針(第3稿)」は、耐越水機能に関すること等検討中の内容を含めて直轄管理区間における河川管理者の部内資料として暫定的に示したものであるが、「河川堤防の設計について」(平成十四年七月十二日付け国河治第八十七号国土交通省河川局治水課長通知)における「河川堤防設計指針」においては、一連の堤防で確保すべき耐越水機能に関する技術的知見が明らかになっていないことから、耐越水機能について記載していない。

七の@について

 建設省(当時)が平成九年八月に作成した「平成十年度重点施策」においては、計画規模を超える洪水が発生しても被害を最小限に食い止めるため、越水しても急激には破堤しないよう従来の堤防に比べて断面拡幅等の強化対策を実施した堤防(以下「フロンティア堤防」という。)の整備を目指したものである。

七のAについて

 お尋ねの「三重県雲出川で整備された耐越水堤防」が一級河川雲出川水系雲出川(以下「雲出川」という。)で整備したフロンティア堤防を指すのであれば、その延長は約一・一キロメートル、事業費は約四十八億円である。

七のBについて

 雲出川で整備したフロンティア堤防の後背地は、昭和三十四年九月の洪水や昭和五十七年八月の洪水で被害を受けた地域であり、水害に強いまちづくりを目指していたことから、越水しても急激には破堤しないような機能の確保を目指し、試験的に整備したものである。

八及び九について

 一連の堤防で耐越水機能を確保する技術的知見が明らかになっていないため、国土交通省としては耐越水機能を確保するための堤防の整備を行うことはできないと考えており、また、お尋ねのような耐越水機能を確保した堤防の整備を前提とした計画について、お示しすることは困難である。
 また、お尋ねの「堤防の計画高水位以上の強化」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、三についてで述べたとおり、淀川本川において計画高水位を上げることは適切でないと考えていることから、計画高水位を超えた水位を前提とした堤防の整備を行うことは考えていない。

十について

 近畿地方整備局は、河川法第十六条の二第三項の規定に基づき淀川水系河川整備計画の案(以下「計画案」という。)を作成するため、たたき台として原案を作成し、学識経験者、関係住民及び関係自治体の長に対し、淀川水系の河川整備の内容について河川管理者の考えを説明し、意見を聴いてきたところである。計画案については、原案に対する意見を踏まえて作成するものと考えていることから、改めて原案を作り直す必要はないと認識しているものである。

十一について

 近畿地方整備局は、原案に対する学識経験者、関係住民及び関係自治体の長の意見を踏まえて計画案を作成することとしている。
 また、近畿地方整備局としては、平成十三年二月に淀川水系流域委員会を設置して以来、平成十九年一月までの約六年間にわたり、原案の作成に資する幅広い意見を聴くことができたものと考えており、また、平成十九年八月に原案を提示して以降、淀川水系流域委員会が近畿地方整備局に対し意見を提出した平成二十年四月までに、二十回に及ぶ淀川水系流域委員会が開催され、延べ約九十時間にわたり様々な内容について議論していただいたことから、計画案の作成に資する幅広い意見を聴くことができたものと考えている。



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