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答弁本文情報

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令和元年十二月三日受領
答弁第九六号

  内閣衆質二〇〇第九六号
  令和元年十二月三日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員前原誠司君提出災害損失控除の創設等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員前原誠司君提出災害損失控除の創設等に関する質問に対する答弁書


一について

 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十二条に規定する雑損控除は、災害などの異常かつ不可避な事由によって住宅や生活に必要な資産など生活の基盤に損失が生じた場合における直接的な担税力の減殺を調整するものであり、その損失は世帯構成等にかかわらず生ずるものであって必要経費に近い性格を持つと考えられる。このことから、雑損控除については収入金額から必要経費を差し引く際と同じように人的控除よりも先に控除するのが自然であると考えられ、所得控除の順序について規定する同法第八十七条において、まず雑損控除を行うことが定められている。所得控除の順序を変更し、雑損控除を他の所得控除よりも後に行うことについては、例えば同じ所得金額、同じ損失の金額を有する納税者の間で世帯構成によって雑損失の繰越額が異なることとなるなど不合理な点が生ずることから、適切ではないと考えている。
 また、お尋ねの「災害損失控除」の「前年分への遡及適用」については、その意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、雑損失の繰越控除ができる年数の延長については、災害による損失について雑損控除を適用するための確定申告書を提出する際には、その損失の金額を証明することは困難であるため、災害に直接関連したやむを得ない支出(以下「災害関連支出」という。)を除く損失についてはその金額を証する書類の添付等が義務付けられておらず、あまり長期にわたって雑損失の繰越控除を認めることとすると納税者間の公平性が損なわれるおそれもあることから、慎重に検討する必要があると考えている。
 さらに、お尋ねの「移転費用等」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、災害関連支出である蓋然性が高い支出を所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)第二百六条第一項第一号から第三号までにおいて個別に定めているところであり、災害関連支出として雑損控除の対象にすることは慎重に検討する必要があると考えている。
 こうしたことから、お尋ねの「「災害損失控除」の創設」については、慎重に検討する必要があると考えている。

二について

 贈与税においては、相続時精算課税制度の選択のいかんにかかわらず、その年中において贈与により取得した財産の当該贈与の時における価額の合計額をもって贈与税の課税価格とすることとされている。また、同制度を選択した場合、同制度の適用に係る贈与者(以下「特定贈与者」という。)の死亡に係る相続税の計算においては、特定贈与者からの贈与により取得した財産の当該贈与の時における価額を相続税の課税価格に加算すること等とされている。
 これは、贈与により財産を取得した者は、贈与の時において、当該財産の価額に相当する利益を得ており、また、贈与の時後、自らの判断と責任の下、当該財産を運用しており、その効用を得ることができる状況にあるため、贈与の時後における当該財産の運用の成果は当該取得した者に帰属すべきものと考えられること等によるものである。したがって、同制度を選択した場合における特定贈与者の死亡に係る相続税の計算上、相続税の課税価格に加算すること等とされている特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額について、贈与時の価額又は相続時の価額のいずれかを選択できるようにすることは考えていない。
 なお、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)においては、贈与税の納税義務者で災害により贈与により取得した財産について贈与税の申告書の提出期限前に甚大な被害を受けたものの納付すべき贈与税については、当該財産の価額は、被害を受けた部分の価額を控除した金額により計算することとされている。また、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)においても、特定非常災害(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成八年法律第八十五号)第二条第一項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいう。)が発生した日の属する年(当該発生した日が一月一日から贈与税の申告書の提出期限までの間にある場合には、その前年)の一月一日から当該発生した日の前日までの間に贈与により取得した財産で当該発生した日において所有していたもののうちに、一定の土地等がある場合には、当該一定の土地等については、贈与税の課税価格に算入すべき価額は、当該特定非常災害の発生直後の価額とすることができることとされており、災害等による被害に対しては、一定の配慮がなされているところである。

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