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昭和三十二年一月二十九日提出
質問第一号

 自作農維持に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和三十二年一月二十九日

提出者  古島義英

          衆議院議長 (注)谷秀次 殿




自作農維持に関する質問主意書


一 政府は自作農維持に関し自作地をなるべく手離すことなく、耕作者が貧困その他耕作地を手離なさなければならないような悪条件にかかつた場合はその悪条件排除のため極力援助することはもちろん出来る限り農地を保有しえらるるよう努めなければならない。政府が自ら小作農に売り渡した土地を、財閥の手先きとなり該土地を取り上げ財閥の私用に供せしめるごとき行動は厳に慎しまなければならない。
  政府は、自作農維持にいかなる根本対策を有し、いかなる方策を講じつつあるか、具体的且つ率直に承りたい。
二 自作農創設特別措置法はいわゆる農地解放と称し、零細なる金をもつて地主農民より買収し、これを小作農民に売渡した。これひとえに小作農民を保護するための農地の革命で、地主の転落を犠牲に小作農民救済をしたことも、小作農民を自作農たらしめるべき政府の親心であつた。しからば政府はあくまでも自作農地を農民に維持させるためには特段の熱意を持たなければならない。政府は一度売渡せば後は野となれ山となれ式に放任し、はなはだしきは政府自ら自作地を取り上げる手先となつているようだが、同法第十六条に基き売渡し、すでに当時売渡代金まで徴収しながら、所有権の移転登記もせず放置することは自作農地維持に誠に冷淡であるといわざるをえない。政府はこれを正当であると思料するか、承りたい。
三 自作農創設特別措置法第十六条に基き売渡通知書を相手方に交付すれば、同法第二十一条の規定に基いて該農地の所有権は、その通知書に記載された売渡の時期に相手方に移転し、相手方は完全なる所有権を取得する。相手方が売渡代金を納入した以上は行政処分だからといつて、自由に取消すことは出来ないと信ずるが、政府は行政処分だからいつでも取消しうると解するか。
四 自作農創設特別措置法第十六条の規定に基き正規の手続を経て売渡した農地を同法廃止後の今日、同法第五条ノ八『収穫著しく不定』なることを口実に売渡しを取消すごときは許すべからざる専横の措置と信ずる。政府はかくのごとき理由をもつて売渡しを一方的に取消しえられるものと解するか、承りたい。
五 自作農創設特別措置法第五条ノ八は、新開墾地、焼畑、切替畑のような、又は地割慣行の農地、鉱山又は炭坑附近の農地で陥没の虞れのある農地等収穫の著しく不定な農地を指すので、十年余り一年も収穫が無い年はなく、従つて十年余り一年といえども小作料の減額も免除もなく年々小作料を完納したような土地は同法第五条ノ八のいわゆる『収穫著しく不定な農地』には該当しないと思うが、政府の所見いかん。
六 都道府県知事が買収令書、又は売渡通知書を発するのは都道府県知事固有の権限に基いて発するのではなく、同法施行令第十二条4に『所管大臣は前項の規定による職権を部局の長又は都道府県知事に行わせることができる。』という規定に因原するので、あくまでも所管大臣の代行機関にすぎないと信ずるが、政府は知事のかかる買収、売渡行為は、知事の固有独特の権利と解するか、所管大臣の代行機関と解するか、所見いかん。
  もし固有の権限なりと解するならば、よつて基く法律的根拠を示されたい。
七 私見のごとく知事の『買収令書』『売渡通知書』を発することは所管大臣の代行行為であると解することが正当ならば、自作農創設特別措置法、及び同法施行令の規定に基因するものであるから、同法の有効期間中は行使することが出来るが、同法が廃止された以上はその権限を喪失し、従つて代行権限を有せざるものと解せざるをえない、政府の所見いかん。
八 自作農創設特別措置法が廃止されてすでに六箇年を経過した今日、廃止された法律の第五条ノ八に該当するというへ理屈を附けて「収穫著しく不定」でもないものをことさら収穫著しく不定だと口実を設けて売渡行為を取消すことは死法を活用することで、法律的常識に反する違法である。知事が売渡通知書を発すれば知事は永久無限に売渡行為を取消す権能を有することとなり、法律が廃止されようが代行権限がなくなろうがそんなことはおかまいなしに農地の売渡は一知事によりきわめて不安定に取消されることとなるが、法律廃止後なおその法律の条項により売渡を取消すことが出来るか政府の所見を承りたい。
九 政府が自作農創設特別措置法により農地を農民に売渡すことは一個の行政処分であろう。行政処分なるがゆえにいつでも取消すことが出来ると主張することは現在俗吏の見解のようだ。
  しかしいかに行政処分でも取消の時期は限度がある。知事が農地委員会の決議が違法若しくは不当と思料したときは再議に附することが出来、再議の結果が違法か又は不当の場合には中央農地委員会にその決議の取消を求めることが出来る。それさえも決議後一箇月を経過しては取消を求めることは出来ない。売渡が不つごうだというならば売渡は売渡計画の決議が不当なのだから、知事はその決議を再議に附すればよい。再議の結果が不当ならば、中央農地委員会にその取消を求めればよい。再議も求めず、中央農地委員会に決議の取消も求めず、売渡して十年も経過した今日、売渡を取消すごときは、法律を正当に遵守すれば一箇月の期間しかないが、法律正常の扱いをしなければ永久無限同一の行動が採れることになり、実に法律の威信上容易ならん事態になる。
  政府は売渡は行政処分だからいつまでも取消が出来ると解するか、それとも法律廃止後六年、売渡より十年を経過したる今日は、時期すでに遅れたるがゆえに取消は出来ないと解するか、その所見を承りたい。
十 売渡後十年、法律廃止後六年を経過しても取消が出来るとすれば、自作農の維持も、農民の地位も安定せず、売渡された農地はきわめて不安定な状況下におかれ、現行農地法の目的たる『耕作者の農地の取得を促進し、その権利を保護し、その他土地の農業上の利用関係を調整し、もつて耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図る』という目的に真向より反対することになるばかりでなく、ひいては食糧事情を危たいに陥し入れる結果となり、自作農維持上きわめて寒心に堪えない。政府はかかる暴挙を認めるか、その所見を承りたい。
十一 農地の売渡は行政処分であるからといつて、その行政処分は国民に対し、利益処分である。従つて相手方の権利利益を侵害してはならぬ。もし売渡を取消すことにおいて相手方の権利利益を侵害する場合においては、その権利利益を侵害してもなお取消さなければならない。
  言葉をかえていうならば、該売渡行為を取消すことを正当化するだけの公益上の理由がなければならない。取消を正当化する公益上の理由があれば、公益優先の原理により取消しえるかも知れない。しかし単に『収穫著しく不定』の農地であるのゆえをもつて売渡を取消すことは、売渡の相手方即ち買取りたる農民の権利利益を侵害することはもちろんであるが、権利利益を侵害することを正当化するような公益上の必要があるとは認められない。
  『収穫著しく不定な農地』を買収対照としないことは、かかる農地は買収しても農民に売渡すことが出来ず、もし売渡しても農民に対し利益を与いえないからで、農民が従来該土地を十年以上も耕作し、年々相当の小作料を支払つてもなお、利益をあげえた農地ならば、政府又は知事が、ことさらに、おせつかいにも、その農地は『収穫著しく不定な農地だから』というような実情にそわない断定をして取消すことは法の目的にそわず、自作農創設特別措置法の精神をじゆうりんする暴挙だと思われるが、政府の所見いかん。
十二 自作農創設特別措置の第五条の八『収穫著しく不定の農地』とはいかなるものを指すか、これを例示しなんの必要があつてかかる規定を設けたか、その真意を承りたい。

 右質問する。





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