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昭和四十八年十二月十八日提出
質問第三号

 私鉄運賃に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年十二月十八日

提出者  三浦 久

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




私鉄運賃に関する質問主意書


 現在、私鉄大手十四社より大幅運賃値上げの申請がなされ、既に運輸審議会において審議されているところである。しかし、異常な物価騰貴の続くなかで、その国民生活に及ぼす影響は極めて大きい。また、土地投機などにより大手私鉄が全体として多大な利潤をあげていることも周知の事実である。にもかかわらず、運賃算定基準も非公開のまま国会審議もなしに認可されようとしていることは納得できない。以下私鉄運賃に関し疑問の諸点を明らかにするため質問する。

一 田中総理は、十二月一日の所信表明演説において「物価の安定は、当面する最重要課題である。」と述べ、更に四日の衆議院本会議における日本共産党・革新共同、(注)長議員の質問に対し、「公共料金は極力抑制したい。」と答弁している。ところが、現実にはあくまでも大手私鉄運賃値上げの認可を強行しようとしているのである。最悪の事態となつている物価騰貴に更に拍車をかける大手私鉄運賃値上げは直ちに白紙撤回すべきである。政府の態度を明らかにされたい。
二 私鉄経営自体にも国民の疑惑を招かざるをえないさまざまな問題点が含まれている。次の諸点について政府の態度を明確に示されたい。
 (1) 私鉄大手各社はもちろん運輸省までも四十七年度「赤字」額が三百四十二億円であると宣伝しているが、この中には配当金・利益準備金・役員賞与など計百十二億円、法人税等五十五億円、あわせて百六十七億円が含まれている。値上げ申請の理由としては「鉄道部門が赤字であるから」と主張しながら赤字額計算上は、赤字の鉄道部門ではゼロとなるはずの巨額の利益金や法人税を含めるのは明らかに不当である。更に、このような計算方式を認めるのであれば、兼業部門で利益をあげればあげるほど鉄道部門の赤字がふえることになる。三百四十二億円の赤字発表を直ちに訂正するとともに、私鉄各社に対しても訂正を指導すべきであると考えるがどうか。
 (2) 自治省の発表によれば、運賃値上げを申請した昭和四十七年度下期において私鉄各社からの自民党(各派閥を含む)に対する政治献金が一億円を上回る巨額に急増しているが、不明朗とは考えないか。このような政治献金は運送原価から当然除かれるべきだと考えるがどうか。あわせて私鉄各社の四十七年度の寄附金、諸会費両科目による支出中、政治団体にわたつた金額を各社別に明らかにされたい。
 (3) 減価償却について、政府は電力料金の算定には定額法による計算を義務づけながら、私鉄の場合には費用が多額に計上される定率法を認めているのはなぜか。税法上の扱いはさておき、運賃計算上は定額法に改めるべきではないか。
     また、車両など鉄道用固定資産の法定耐用年数が実際の耐用年数に比し、著しく短く定められており、償却費の過大計上を容認することになつている。少なくとも運賃計算上は耐用年数を実際耐用年数に合致させるべきと考えるがどうか。
 (4) 地方鉄道業会計規則第十条によれば建設仮勘定にかかる支払利息は建設仮勘定に算入しうるとされており、このようにすれば支払利息の総額が相当減少することになる。しかし実際には全額鉄道部門の損金に算入している。税法上の扱いはともかく、運賃計算上は同条項を義務規定に改めるべきと考えるがどうか。
 (5) 私鉄資本の土地投機による利益は多大な額に達すると推定されるが、その実態を明らかにするため、子会社を含めた大手各社ごとに、四十一年度以降の各年度別の販売用土地買入面積と買入金額、販売面積と販売額及び四十七年度末の販売用土地保有面積とその買入額並びにその時価評価額を明らかにされたい。
     なお、私鉄各社、運輸省ともに、不動産事業と鉄道事業は全く別個のものであり、経営計算も完全に分離して行うべきだと主張している。しかし、例えば京阪電鉄は、枚方市・樟葉での大規模なニュータウン造成に伴う駅の移転新設を鉄道事業として行つている。この事実は、私鉄経営が鉄道部門も不動産部門も一体として行われていることを如実に示すものである。このような駅新設費は鉄道部門で負担すべきでなく、不動産部門で負担すべきことは明らかである。したがつて、鉄道部門費用の相当部分を不動産部門に振り分けることが妥当であると考えるがどうか。
三 政府認可の主な公共料金の決定基準中、電力については「供給規定料金算定要領」(三十五公局第三百十八号)、ガスについては「ガス料金算定要領について」(三十二公第四百三十六号)がそれぞれ公表されている。しかるに、私鉄運賃に限つてその算定基準が全く明らかにされないまま認可されてきたことは極めて遺憾である。運輸省に対する度度の要求にもかかわらず公表を拒否してきた理由を明らかにするとともに算定基準を直ちに公表されたい。
  なお、特に次の事項について詳細に明らかにされたい。
 (1) 定款上の各事業のほかに、運賃計算上「投融資事業部門」を仮定し、収益及び費用の配賦を行つているが、この費用には各事業の専属営業費に当たる人件費、印紙税その他の一般経費が全く計上されていない。その理由を明らかにされたい。
 (2) 支払利息、配当所要額、法人税の各事業部門への配賦はそれぞれの固定資産の比率によつて行つているが、不動産部門への配賦基準に含めるべき販売用土地建物はごく一部分しか計上されておらず、大部分は故意に計算から除外されている。この全額を配賦基準に含めれば、不動産部門の支払利息等が大幅にふくれあがる一方、鉄道部門のそれが大きく減少することになる。なぜ一部しか計上しないのか、その理由を明らかにするとともに各社別の計上金額を示されたい。
 (3) 私鉄大手各社の鉄道事業部門には日本開発銀行からの低利融資があり、他の事業部門に比較すると鉄道部門の支払利率は低くならなければならない。しかし実際には、他の事業部門と同じ利率で計算されているがなぜか。
 (4) 事業報酬の算定方法は運賃決定に大きな影響をもつものであるが、今回の各社の申請はどのような算定方法で、報酬率をどの程度見込んでいるのか、またその根拠は何か。更にそれは運輸省の指導によるものか、それとも私鉄各社独自の判断によるものか。
四 各社の運賃改訂申請書は、収益を過少に、費用を過大に見積る細工がなされている疑いを持たざるを得ない。次の事項について明確にするとともに、申請書(添附資料を含む)に不実記載がある場合には申請書を却下するのかどうか、政府の態度を明らかにされたい。
 (1) 阪神電鉄の申請値上げ率が定期外(普通運賃)二十八パーセント、通勤定期四十五パーセント、通学定期三十二パーセントであるにもかかわらず、運賃値上げによる増収見込率は定期外十九パーセント、定期三十三パーセントとなつているのをはじめ、各社とも値上げ率に比し増収見込率を著しく低く見積つている。その理由を各社ごとに定期外、定期に区分して明らかにされたい。
 (2) 配当金は各事業部門ごとに配賦されているが、各社の申請書を総括した運輸省作成の「大手私鉄収支実績(47年度)」によれば、京阪電鉄の鉄道部門配当所要額は十一億三千六百万円となつており、この金額は同社が実際に支払つた四十七年度総配当額十億六千万円を大幅に上回るものである。その他、小田急、阪急、近鉄各社も鉄道部門の配当所要額が総配当額の六割以上の高率を占めている。その理由をそれぞれについて明らかにされたい。
 (3) 申請書による四十八年度修繕費見込額が近鉄、阪神、小田急、京王の各社で四十七年度実績の五割以上の大幅増となつている。これは赤字をふやすためとしか考えられないので、各社別の具体的理由を明らかにされたい。
五 大都市住民の足は鉄道やバスなどの運賃値上げ、殺人的ラッシュ、路線の撤去や間引き運行などでますます不便になつている。大都市交通の中心を占めるべき公営交通機関の財政破たんが進行していることも周知の事実である。ところが政府は公営交通機関の充実、財政危機の抜
  本的改善のための措置はなおざりにする一方、大手私鉄に対しては金融、税制面で各種の優遇措置をとつてきた。特に四十七年度からはニュータウンなどの私鉄乗入れ路線を国の資金で肩代わり建設する制度さえ発足させている。政府が大都市交通をますます大手私鉄中心に編成しようとしていることは明白である。
  このような大手私鉄偏重の大都市交通政策を改め、公営や国営の交通機関を中心とした交通網の整備、拡充を行うことは、大都市住民の安くて便利な足を確保するうえで緊急の課題になつている。そこで、
 (1) さしあたり、国の資金で建設する路線を大手私鉄に譲渡することをやめ、それを無償で、地方自治体の管理に移すよう改めることが大都市交通問題の正しい解決のために欠かせないと考えるがどうか。
 (2) 今日、大手私鉄の路線の新・増設、ダイヤ編成などの認可権や運輸、営業の廃止などの許可権は運輸省がもつており、住民と地方自治体の意思が十分に反映されないしくみになつている。このため採算本位のダイヤがくまれたり、路線の切り捨てさえ行われてきている。住民の要求を十分に反映するためにはこれらの権限を地方自治体にうつすことが必要だと考えるがどうか。
     また、大手私鉄は陸上交通事業調整法に基づいて、東京の山手線・荒川放水路の外周地域で事実上路線の優先認可をうけている。公営交通事業を全面的に発展させるためには同法を廃止すべきであるがその考えはないか。
 (3) 大手私鉄の運賃値上げは、ほとんどが官僚出身者で占められている運輸審議会で形ばかりの審議ののち、国会が全く関与することなくほぼ申請どおりに認可されてきている。
     運輸審議会は、利用者代表、交通関係労働者の代表をふくめ、民主的に構成し、審議を公開する必要があると考えるがどうか。また、私鉄運賃は国鉄運賃と同じく国会の審議で決めるように所要の法改正を行うべきと考えるがどうか。

 右質問する。





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