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昭和四十九年七月三十一日提出
質問第九号

 危険な土壌凝固剤を使用した新東京国際空港公団の営為に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年七月三十一日

提出者  金瀬俊雄

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




危険な土壌凝固剤を使用した新東京国際空港公団の営為に関する質問主意書


 新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)は、成田空港暫定パイプラインの埋設工事に当たり、人の健康被害が発生する恐れのある薬液注入工法を実施し、千二百トンにものぼる危険な土壌凝固剤(尿素系及び水ガラス系)を成田市の市営水道の地下水源地帯に打ち込んだ。既に、去年の公害対策並びに環境保全特別委員会において土井たか子委員から、暫定パイプラインの埋設される予定の根木名川周辺は、軟弱地盤地帯であり、かつ成田市の市営水道の地下水源地帯であると指摘されていたのであり、かかる事実は、同委員会に参考人として出席していた空港公団も十分承知していたはずである。
 ところで建設省は、五月二日と七月十日の二度にわたり建設事務次官通知(以下「次官通知」という。)を送付し、安全性重視の立場から一部の水ガラス系土壌凝固剤以外のすべての土壌凝固剤の使用を禁止した。これは、人の健康被害の発生と地下水の汚染を防止することを目的とするものである。しかしながら空港公団の現地での対応をみるに周辺住民の健康や地下水汚染防止に意を払つていないように思える。
 そこで薬液注入工法の危険性を明らかにし、空港公団の営為の問題点を指摘すべく以下質問する。

一 空港公団の監督官庁である運輸省の薬液注入工法の危険性に対する認識について
 (1) 運輸行政の根幹は、安全性にあるとしてよいか。その理由は何か。
 (2) 運輸省による安全行政は、「疑わしきは罰す」又は「フェイル・セルフ」なる観点からなされるとしてよいのか。その理由は何か。
 (3) 運輸省は、薬液注入工法の危険性について、どのような認識をもつているのか。
 (4) 運輸省は、さきに述べた次官通知をふまえ運輸省所管の土木建設工事に対し、どのような処置を講じたか。その理由は何か。
 (5) 運輸省は、次官通知の内容を空港公団に通知したか。通知していないとすれば、その理由は何か。
 (6) 運輸省は、「疑わしきは罰す」という安全性重視の立場からなされた次官通知を、どのように評価するのか。その理由は何か。
 (7) 暫定パイプラインの埋設工事は、現在どのような条件の下に中止しているのか。
   (イ) 千葉県は、どのような条件をつけているのか。
   (ロ) 成田市は、どのような条件をつけているのか。
   (ハ) 千葉地方裁判所は、どのような条件をつけているのか。
   (ニ) 周辺住民は、どのような条件をつけているのか。
 (8) 運輸省は、現在中止されている暫定パイプライン埋設工事の再開について、どのような条件をつけているのか。それは安全性重視の立場からなされているのか。
 (9) 成田市が日本検査株式会社に行わせた水質検査によると定量限界以下としながらも、成田市営水道の第一水源と第二水源は、ホルムアルデヒドにより汚染していることが指摘されているが、運輸省は、この事態に対してどのように対処するつもりか。
 (10) 運輸省は、飲用水に含まれるホルムアルデヒドの許容限界(水質基準)について、どのように定めているのか。また、その毒物学的根拠は何か。併せて明らかにされたい。
 (11) 運輸省は、ホルムアルデヒドの毒性が慢性であれ急性であれ、尿素、メチロール尿素により増幅されるということを知つているか。
 (12) 運輸省は、尿素系土壌凝固剤の硬化剤である工業用希硫酸が、地下水中ではほとんどすべて溶出してしまうということを知つているか。
 (13) 運輸省は、尿素系土壌凝固剤が凝固してできる尿素、ホルムアルデヒド樹脂からメチロール尿素やホルムアルデヒドが絶えず分解して溶出するということを知つているか。
 (14) 次官通知によれば、薬液注入工法の実施に当たつては、現場注入試験を義務付けているが、運輸省は、何故かかる現場注入試験が義務付けられていると判断するのか。
二 薬液注入工法と環境アセスメントについて
  高分子注入剤メーカー会による「薬液取扱い上の注意」や今回の次官通知でも明らかなように、薬液注入工法の実施には、それに先だつてなされるべき事前調査(環境アセスメント)は、必須であるが、空港公団はこれを完全に履行していないように思われる。
 (1) 空港公団は、地下水の流向及び流量を調査することなく、何故付近の井戸を汚染する恐れがないと判断できたのか。
 (2) 空港公団は、ボーリングによる土質、地下水位の調査及び付近の井戸の位置の調査だけで、何故地下水の地域的な挙動(流向と流量)を掌握できたとするのか。
 (3) 地下水の地域的な挙動を掌握していたとするならば、何故たて坑掘削時に予期せぬ出水事故に遭遇したのか。また周辺民家の浅井戸を枯渇させるような事態を招来したのか。
 (4) 地下水の地域的な挙動を掌握していなかつたとするならば何故周辺民家の井戸を汚染する恐れはないと判断できたのか。
 (5) 次官通知は何故地下水系に対する事前調査の必要性を定めていると運輸省は判断するのか。
三 水質検査について
  成田市及び千葉県は、周辺民家の井戸及び成田市営水道の水源の水質検査を実施した。
 (1) 五月二十八日に成田市と千葉県は、それぞれ水質検査結果を厚生省水道環境部水道整備課に提示したが、水道整備課はどのようなコメントを与えたか。ノーコメントのままにしたとするならば、その理由は何か。
 (2) かかる千葉県の水質検査結果の中には、水道法の水質基準に抵触するものが五件あるが、厚生省には成田市や千葉県に安全であると判断するような印象を与えるようなことはなかつたか。その理由は何か。
 (3) 水質検査の結果、根木名川のたて坑から高濃度のホルムアルデヒドが検出されているが、このホルムアルデヒドはどこからきたと運輸省は考えるか。その根拠は何か。
 (4) 資材輸送道路わきのたて坑周辺から、やはりホルムアルデヒドが検出されているが、このホルムアルデヒドはどこからきたと運輸省は考えるか。その根拠は何か。
    ちなみに空港公団の発表によると資材輸送道口のたて坑では、尿素系土壌凝固剤を使用してはいないということである。
四 水道工事について
  現在暫定パイプライン沿線地域で成田市が水道工事を行つている。
 (1) 山の作地区等における水道工事は、空港公団がその経費の全額を負担すると聞くが、それは事実か。
 (2) 何故空港公団が、かかる経費を負担しなければならないのか。
 (3) 空港公団は、どのような名目でかかる出資を行うのか。それは法的に許されたことなのか。
 (4) 国道五十一号線のたて坑に近い大高幸一氏宅の井戸は、水質基準に抵触して使えないと聞くが、何故水道施設の敷設を行わないのか。
 (5) 大高幸一氏宅の井戸から弗素が水質基準のおよそ三倍の量が検出されているが、運輸省はこの弗素がどこからきたと考えるか。けい弗化ソーダの成分としてはいけない理由は何か。
五 現行の暫定輸送計画の是非について
 (1) 運輸省・空港公団は、暫定輸送計画の是非について全面的に再検討したことがあるか。あるならその内容を明らかにされたい。
 (2) 運輸省・空港公団は、現行の暫定輸送計画の是非について全面的に再検討する考えはないか。その理由は何か。
 (3) 運輸省・空港公団は何故成田市営水道の地下水源地帯に危険な土壌凝固剤を注入せざるをえないがごとき計画を立案実施したか。
 (4) 危険な暫定輸送計画しか企画立案できないということは、空港公団の発想力、技術力の限界を示しているものと解釈してよいのか。その理由は何か。
 (5) 運輸省は、周辺住民に生命の危険や健康被害を及ぼす恐れがないような計画を企画立案し、実施できるような機構を何故空港公団に配しておかなかつたか。
 (6) 運輸省・空港公団は、人命の尊重、健康被害の発生防止と空港建設とのどちらを優先させるのか。その理由は何か。
 (7) 千葉港頭・成田空港間の本格パイプラインは、去年九月末日以降どれだけ進捗しているか。
   次の問いについて明らかにされたい。
   (イ) 用地の取得状況(全体に対する取得長の割合)について去年の九月三十日現在の分と本年七月三十一日現在の分について各工区ごとに
   (ロ) 千葉市内の工区について、千葉市、千葉県、沿線住民との問の了解取付け作業について
   (ハ) 千葉市内ルートの選定について
六 空港公団の新人事が公表されたが
 (1) 政府は、緊急を要する公共事業といえども、法律のわくの中で、その業務を処置しなければならないと認めたが、空港公団の人事選定に当たつては、法律を遵守する人材が選任されたとしてよいか。
 (2) 同じく人命の尊重、健康被害の発生防止等の安全性を重視する人材が選任されたとしてよいか。
 (3) 新人事による空港公団に、今までの空港計画全体を再検討させる考えはないか。

 右質問する。





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