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昭和五十二年二月二十六日提出
質問第九号

 弁護士会及び弁護士に対する登録免許税の不当課税の是正に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十二年二月二十六日

提出者  鈴木 強

          衆議院議長 保利 茂 殿




弁護士会及び弁護士に対する登録免許税の不当課税の是正に関する質問主意書


 日本弁護士連合会(以下単に日弁連という。)及び弁護士会(以下この両者を単に日弁連等という。)は、国の権限の委譲を受けた職能公共団体であるから、登録免許税法(以下単に登録税法という。)の別表第二に「非課税法人」として規定されなければならないところ、これが規定もれになつているため、その所有不動産の登記につき登録免許税(以下単に登録税という。)を不当に課税されており、また、日弁連は、弁護士法の施行の日から弁護士の登録に関する一切の権限の委譲を受けると同時に、旧登録税法第七条の定める弁護士登録税の課税権限も委譲されたので、右「登録税」を「登録料」という名称に変更して、これを徴収してきたのであるから、日弁連が同会がなす弁護士登録につき、更に弁護士登録免許税(以下単に弁護士登録税という。)を徴収することは、登録料のほかに、登録税を二重に課税することになつて不当であるところ、日弁連は、昭和三十八年四月一日から右登録税を不当に徴収してきたのであるが、同会の税務対策委員会は、昨年十月三十日同会会長に対し、「旧登録税法第七条の規定は、昭和二十四年の弁護士法の全部改正にあたつて、当然に削除さるべきであつたが、立法技術上の都合から、たまたま削除もれになつていたものであるから、右現行法の弁護士登録税の規定は削除されなければならない。」旨の答申をなし、右答申は昨年十二月二十七日大蔵省に提出された。
 従つて、政府は、登録税法の前記各規定を速やかに改正して、これが是正をしなければならないものと考えられるが、右不当課税の原因は、政府が弁護士法の規定に基づく行政に関する職務権限を有しないことに基因する同法の無理解によるものではないかと思料するところ、疑問の点があるので、政府の見解を伺いたい。
 しかして、政府及び弁護士の弁護士法に対する無理解は、弁護士法が衆議院の議員立法として成立したこと及び弁護士法についての解説書がなかつたことに基因するものと考えられるので、政府の親切な答弁を願いたい(なお、解説書については、当時、衆議院法制局にあつて、弁護士法の立法に参画した福原忠男弁護士著の「弁護士法コンメンタール」が昨年五月に発行されたので、私の質問は容易に理解されるものと考える。)。

第一 日本弁護士連合会及び弁護士会は、国の権限の委譲を受けた職能公共団体であるから、政府は、日弁連等を当然に登録税法第四条第一項の別表第二に「非課税法人」として規定しなければならないところ、これが規定をもらしたので、これを改正して、同会に対する不当課税を是正しなければならないものであると考えるが、どうか。
 一 弁護士法は、国民の基本的人権を擁護する手段として、弁護士に対し、職能公共団体である日弁連等を設立させ、これに弁護士自治権を与え、国家作用を縦割りして、日弁連に対し、行政機関の権限から、弁護士の登録権、監督権、懲戒権及び弁護士名簿管理権を、司法機関の権限から、弁護士の登録及び懲戒に対する第一審の準司法裁判権(弁護士法第十六条及び第六十二条)を移譲して、日弁連等が、内閣及び裁判所から独立した国の行政機関として、その権限を自治行政によつて執行することができるようにしたもので、いわゆる四権分立制度を確立したものであると解されているが、右のこと及び次のことは正しいと考えるが、どうか。
 (一) 弁護士法は、国家作用を立法権、行政権、司法権及び弁護士自治権の四権に分割して、いわゆる四権分立制度を確立したものである。
 (二) 日弁連の職務権限の質量は狭小であるが、その地位は、国の三権に対立して、国民の側に立つて、国会、内閣及び最高裁判所に対し、平等の高さにおいて並立することができる職務権限を有するものであつて、国が弁護士法で設立した自治行政機関である。
 (三) 日弁連等は、我が国唯一の職能公共団体として、地方公共団体と並立する自治団体であるが、日弁連が、全国にわたる権限を有すること及び第一審裁判権を有する点において、地方公共団体より高度の自治団体である。
 (四) 弁護士会がなした資格審査及び懲戒処分に対しては「行政不服審査法に基づき日弁連に対し、審査請求をすることができる。」(同法第十二条及び第五十九条)と規定されているが、右規定は、右処分が国の行政機関である弁護士会がなした行政処分であることを明確にした規定である。
 (五) 仮りに、前記の「四権分立制度」及び「職能公共団体」の考え方がおかしいのであるならば、どのように解釈することが正当であるか。
 二 日弁連等の会長、副会長、資格審査委員会委員及び懲戒委員会委員は、「法令によつて公務に従事する職員とする。」と規定されているが(同法第三十五条、第五十条、第五十四条及び第七十一条)、これは、日弁連等の右職員が、国から委譲を受けた権限に基づいて、国の行政を執行する職能公共団体の職員であるからであつて、弁護士法は右職員を「職能公務員」として規定されたものであると考えるが、右のこと及び次のことは正しいかどうか。
 (一) 我が国には、国家公務員、地方公務員及び職能公務員の三種の公務員が存在する。
 (二) 政府は、日弁連等に約一、五〇〇名の職能公務員がいること及び「職能公務員」と「みなす公務員」とを区別することを意識していなかつた。
 (三) 登録税法は、「みなす公務員」の法人である公社、公団等を非課税法人と規定しているのであるから、真正の「公務員」の法人である日弁連等を「非課税法人」と規定することは、当然の事理である。
 三 法人税法は、日弁連等を第二条の別表第二の「公益法人」に規定しているが、これは誤りであつて、同条の別表第一の「公共法人」に規定するのが正当であると考えるが、どうか。
   仮りに、日弁連等が「公益法人」であるならば、その理由は何か。
 四 政府は、各種税法において、日弁連と日本税理士連合会(以下単に日税連という。)とを並記して「同等の公益法人である。」と規定しているが、日税連が税理士名簿の管理をしているのは、「行政事務の委任」に基づいて管理しているのであるから、同会は公益法人であるが、日弁連は「国の行政権限の委譲」に基づいて弁護士名簿を管理しているのであるから、同会は公共法人であると考えるが、どうか。
 五 政府は、地方税法において、日弁連等につき、次のとおり、誤つた規定をなし、又は、これを非課税の範囲に規定していない(規定していないことは納税義務者であることである。)が、右は、政府が、日弁連等の存在及び日弁連等が「公共法人である。」ことを意識していなかつた結果に基づく誤りであると考えるが、どうか。
 (一) 道府県民税及び市町村民税で非課税の範囲に規定していない(第二十五条及び第二百九十六条)。
 (二) 法人事業税では、「公益法人」として収益事業の所得に対して課税すると規定している(第七十二条の五)。
 (三) 不動産取得税(第七十三条の三及び四)、自動車税(第百四十六条)、固定資産税(第三百四十八条)、軽自動車税(第四百四十三条)、自動車取得税(第六百九十九条の四)及び都市計画税(第七百二条の二)で非課税の範囲に規定していない。
 六 日弁連等は、前記のような事情で、公務所である日弁連等が所有する建物及び土地に対し、不動産登記の登録税、不動産取得税、固定資産税及び都市計画税等の納税を不当に強制されて、大変苦労してきたが、政府は、日弁連等から、右苦労の軽減につき申入れを受けたことがあつたか。
 七 そこで、政府は、差当り頭書のとおり、登録免許税法を改正して、日弁連等に対する不当課税を是正するのが相当であると考えるが、どうか。

第二 登録税法は、第九条の別表第一の二十三の(一)において、弁護士の登録につき一件二万円の登録税を課する旨を規定しているが、右規定は弁護士法が施行された昭和二十四年九月一日から、日弁連が登録税の課税権限に基づいて、従前の登録税と同額の登録料を徴収することにした結果、旧登録税法(以下単に旧法という。)第七条の弁護士登録税の規定は死文化したのに、同条が削除されることなく存置されていたため、これをそのまま、新登録税法で引き継いだものであるから、政府は、これを削除して、日弁連の登録料に対し、登録税が二重課税になつている不当な事実を是正しなければならないと考えるが、どうか。
 一 旧登録税法第七条の弁護士登録税の規定は、昭和二十四年の弁護士法の全部改正にあたり、その附則で当然に削除されるはずのものであつたが、弁護士法の改正が衆議院の議員立法として提出されたため、右登録税の改正を弁護士法の附則で改正するためには、その法律案を大蔵委員会にもかけなければならないという立法技術上の困難があつたため、ともかくも、弁護士法を成立させることを優先させることにしたものであつて、登録税法における弁護士登録税の規定の削除については、次期通常国会において、政府が改正することにしたとのことであるが、どうか。
 二 新弁護士法の制定によつて、昭和二十四年九月一日から、次のような事実があつたか、あつたとしても、政府はこれを認識しなかつたのか、どうか。
   このような質問は、誠におかしな質問であるが、弁護士登録税の二重課税が、誠におかしな事情で、昭和三十八年四月一日から発生したので、その不当を明らかにする必要上、質問する次第である。
 (一) 弁護士登録税の課税の権限は、昭和二十四年九月一日に国から日弁連に委譲されたので、日弁連は、同日から弁護士登録税の課税主体となつた。
 (二) 日弁連は、弁護士登録税の課税権限に基づき、前同日から、日本弁護士連合会会則第二十三条において、「登録税」を「登録料」という名称に変更して、旧登録税と同額の登録料を徴収することとして、新規登録三千円、登録換千二百円及び取消の請求百二十円を徴収することにした。
 (三) 旧登録税法第七条の弁護士登録税の規定(以下単に旧法第七条の規定という。)は、前同日から死文化した。
 (四) 仮りに、政府が「旧法第七条の規定は死文化したものでない。」と断定していたのであるならば、右断定の時期及び理由を伺いたい。
 (五) 政府は、昭和二十五年の第七回通常国会において、旧法第七条の規定を法律改正によつて削除することを失念した。
 (六) 大蔵省は、旧法第七条の規定が存在していたため、日弁連が弁護士登録税を徴収していたものと考えて、昭和二十九年ごろから、日弁連に対し、歳入予算見積書及び歳入決算報告書(以下これらを単に歳入報告書類という。)の提出方を請求した。
 (七) 日弁連は、弁護士登録税を徴収していなかつたので、大蔵省の請求に対し、歳入報告書類を提出しなかつた。
 (八) 日弁連は、大蔵省が、その後も歳入報告書類の提出を求めてきたので、会員岡部勇二君の要請により、昭和三十六年四月「登録税法研究委員会」を設置して審議した結果、右会員の主張する「旧法第七条の弁護士登録税の規定は、削除されるべきである。」との意見は採択されたが、日弁連は、政府に対し、これが改正の進達をしなかつた。
 (九) 弁護士岡部勇二君は、登録税を納付しないで登録をしたので、昭和三十七年八月、国を被告として東京地方裁判所に同庁昭和三十七年(行)第八九号登録税法無効確認等請求事件をもつて、登録税債務不存在等の確認の訴を提起したが、昭和三十八年十一月右訴は棄却された。
     右事件は、同君が上訴したので、昭和三十九年(行)(ツ)第五〇号上告事件で最高裁判所に係属したが、昭和四十二年八月二十四日に棄却された。
 (一〇) 前記訴訟において、国は「所轄の練馬税務署長は、日弁連からの通知がなくとも、原告から登録税法に従つて登録税三千円を徴収することができる。」というおかしな、かつ不当な主張をして勝訴したが、結局、原告から右三千円を徴収しなかつた。
 (一一) 日弁連は、大蔵省からの照会に対し、全体理事者会議の決議だけで、昭和三十八年四月一日から、登録料五千円のほかに、何等の権限なくして、弁護士登録税三千円を不当に徴収することにしたので、登録税の二重課税の事実が発生した。
 (一二) 日弁連は、前同日から登録税の不当徴収をはじめたが、当時から現在に至るまで、歳入報告書類を提出しなかつたので、大蔵省は、弁護士登録税の各年度額を認識できなかつた。
 (一三) 結局、日弁連は、はじめの十四年間は弁護士登録税を徴収しなかつたし、その後の十四年間はこれを徴収したのであるが、政府は、この事実を認識していたか。認識したとすれば、いつ頃、いかなる方法で認識したか。
 (一四) 弁護士登録税は、収入印紙をもつて日弁連に納付するため、政府は、これが納付については、全く関知しなかつた。
 三 日弁連は、昭和三十八年九月一日から昭和五十二年二月十五日までの間に、弁護士の新規登録において、六、八八三名の会員から、合計一億二三六万一千円の登録税を不当に徴収したが、政府は、この金額につき各年度の予算、決算の金額に計上したか。計上したとすれば、どこの省庁のいかなる科目に計上したか。
 四 現在の登録料は、増額されて、新規登録三万円、但し司法修習を終え引続き登録する者は一万五千円、登録換六千円、登録事項の変更三千円及び弁護士の請求による登録取消千円になつているところ、右登録料の増額は、国の機関の認可事項になつていないはずだが、政府は、右登録料の増額をいかなる方法で認識したか。また、その増額の適否につき判断したことがあつたか。
 五 以上の事実によると、弁護士登録税の課税権は、弁護士法によつて日弁連に委譲されたので、政府は全く関知しないでいたものと考えられるので、弁護士登録税の規定は削除されるのが、相当であると考えるが、どうか。
 六 仮りに、弁護士登録税の規定を削除することが相当でないとするならば、次のことについて伺いたい。
 (一) 昭和四十二年の登録免許税の制定のときに、旧法第七条の弁護士登録税のうち、「登録換」及び「取消の請求」の登録税を削除して、新規登録の登録税のみを残存させた理由は何か。
 (二) 建築士法第五条第一項の二級建築士の免許の登録に対し、登録免許税を課税しない理由は何か。
 (三) 司法修習生の新規登録の登録税については、司法修習制度の趣旨に従い、日弁連の登録料と同様、半額にするのが、相当であると考えるが、どうか。
 (四) 今年四月に、司法修習を終え引続き弁護士の登録をする者全員が、登録申請書提出のときに、登録税の二重課税を理由に登録税を納付しない場合には、日弁連は、登録税を徴収する職務権限も義務もないから、その登録申請を受理して登録しなければならないと考えるが、どうか。
 (五) 前項の場合において、政府は、これらの者の登録税の未納をマスコミで当然に知ることができるものであるところ、弁護士の登録については官報でその登録番号、法律事務所及び氏名が公示されるのであるから、前記二の(九)及び(一〇)記載のとおり、政府が主張し、最高裁判所がこれを認容した判例に従つて、所轄の税務署長をして、右未納の登録税を容易に徴収することができるものと考えるが、どうか。

 右質問する。





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