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平成六年二月十六日提出
質問第一号

義歯の診療報酬の適正評価に関する質問主意書

提出者  志位和夫




義歯の診療報酬の適正評価に関する質問主意書


 近年、「保険でよい入れ歯を」の要望が高まり、その実現を求める地方議会決議も干五百を超えています。その背景には、高齢者が増え、入れ歯人口が一〇〇〇万人を超えていながら、入れ歯が合わず、「噛めない」「話せない」「笑えない」といった深刻な悩みを持つ人々がますます広がっているという現状があります。同時にその主な原因が、個々の歯科医師の技術にあるのではなく、歯科診療報酬が低いことにあり、国の歯科政策の問題として、多くの国民が認識するようになってきたことの反映でもあります。
 政府・厚生省は、これまでも国民の健康維持・増進、病気予防を重視すると説明してきました。しかし、問題は、病気予防を大きな視野に立ってとらえることです。そして「合わない入れ歯」の放置がいかに国民の健康維持に否定的な影響を与えているのかを直視しなければなりません。合わない入れ歯が、食物の咀嚼を遠ざけ、人との会話も消極的にするなど、食生活面でも悪影響を及ぼし、健康被害の要因となることは、体験的にも最近の各種調査でも実証されています。このことを考えるなら、十分に手間・ひまをかけて良く合う入れ歯を製作するのに相応しい診療報酬に改善することが、国民の健康を維持し、病気予防にも貢献することになることは明らかです。
 また、入れ歯をはじめとした歯科医療問題を解決するために、歯科診療所が経営維持のため収入の一部を患者の保険外負担に求めざるを得ないという歯科医療政策の長年の構造的矛盾を改めることが重要です。
 義歯等の診療報酬の引き上げについては、国会でも再三の質疑が行われ、各議員から多くの質問主意書が提出されています。しかし、政府の回答はいずれも真正面から答えたものとはいえません。
 そこで、以下の点についてあらためて質問し、回答を求めます。

一 「保険でよい入れ歯を」の国民の世論が広がり、自治体の半数に迫る地方議会で意見書採択が相次いで行われていますが、このような現状を政府はどのように受けとめ、対応しようとしているのか、明確な回答を示していただきたい。
二 「合わない入れ歯」の主要な原因は、入れ歯の設計・製作・調整が精緻な技術と時間を要するにもかかわらず、その技術に対する評価(診療報酬)が極めて低いことが指摘されています。厚生省は「適正に評価している」としていますが、診療に携わる歯科医師の大半が、いまの保険点数ではあまりにも低すぎて、手間・ひまをかけるほど赤字になると答えています。この現実をどのように考えているのか。報酬は適正であり、問題なしというならば、合わない入れ歯の主要な要因は何であると考えているのか、その見解を述べていただきたい。
三 「入れ歯」にかかわる保険点数を、設計・製作・調整などに費やす平均労働時間をもとに換算すると到底正当な報酬とはいえません。にもかかわらず、「適正に評価している」というならば、歯科医師の入れ歯の設計・製作・調整に関する平均的労働時間をどれくらいにみているのか。そして、時間報酬に換算するなら、一時間当たり金額にして何円の報酬になるとみているのか、明確に示していただきたい。
四 熟練した技術をもつ歯科技工士が、低コストの技工料によって長時間労働を強いられ展望がもてず、転職する事態が相次いでいます。そもそも義歯の製作にかかわる報酬が低いうえ、技工士の技術料は義歯製作料に含まれるという現行体系は、専門職の労働を正当に評価しようとしないものです。厚生省は技工士の技術料については「歯冠修復等の行為と一体的に評価することが適切との考えであり、細分化しない」として、この不合理に固執していますが、それはそもそも義歯を歯科医師が製作していた時代の考え方であり、技工士の専門技術を否定する暴論です。「製作料に技術料は含まれる」というならば、一体いくら含んでいるのか明確にしてください。また、これについて今後どのように改善していく考えがあるのかどうか、お答えしていただきたい。
五 中医協の「医療経営実態調査」報告の公表は、四月の診療報酬改定後となり、多くの医師から批判が集中しています。「医療経営実態調査」の結果をふまえた診療報酬の改定を、本当に行うのであれば、そのもとになる調査報告を診療報酬改定論議の前に、国民や関係者に公表すべきであると考えますが、政府の見解を示していただきたい。
六 厚生省の「保健福祉動向調査」(八七年)によれば、国民の歯科医療に対する要望の第一に「保険の範囲をひろげてほしい」との項目があげられます。不況、国民の生活悪化のひろがりのもとで、その要求はますます切実になっています。この問題の背景に、日進月歩の歯科医療技術を保険に導入せず、患者負担にするのは当然という歯科医療軽視の考えが、長年にわたって踏襲されてきたことと結びついています。これをあらため基礎的技術料の適正評価を前提にして、新しい歯科医療技術も特定療養費としてではなく、全部保険で給付するという基本にたつことが必要と考えます。この点について見解を明らかにしていただきたい。
七 「八十歳で二十本の歯を残そう」という「八〇二〇運動」に厚生省も取り組んでいますが、これを実効あるものにするため、老人保健法、労働安全衛生法にもとづき地域や職場での歯科健診の創設、ブラッシング指導など歯の健康と予防に対する適正な報酬制度に見直す必要があると考えます。この点での見解を示していただきたい。

 右質問する。





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