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平成九年十二月十二日提出
質問第二〇号

大蔵省不祥事と紀律保持に関する質問主意書

提出者  保坂展人




大蔵省不祥事と紀律保持に関する質問主意書


 大蔵省不祥事と紀律保持について、十一月五日、七日の法務委員会における質疑、ならびに十一月二十八日に行われた予算委員会における泉井純一証人に対しての証人喚問で、明らかになった事実をふまえて、以下の点を質問する。

一 仙台港防潮堤工事と平成五年度補正予算について
 予算委員会における証人喚問の場で泉井純一証人は、「地元大物議員に口利きを頼んだ上で親しい大蔵幹部に電話を入れた、そうしたら、電話を受けた大蔵幹部は『なぜ最初から僕に頼まなかったの』と言って部下に電話を入れ、景気対策の予算をつけることができた」という事実を認め、その大蔵幹部とは田谷廣明元主計局総務課長であると官界工作を自ら語った。
 すでに『文藝春秋』十一月号の同証人の手記にも、田谷主計局総務課長に宴会の席で話をすると「ああ、いい話だ。担当に話をしておく」ということで結果的に例年の倍以上の予算がついたとある。また、石油取引に絡む詐欺罪に問われた東京地裁第十一回公判(十一月二十日・安広文夫裁判長)で同証人は、この件について三菱石油山田菊男社長より「工期内で完成するよう泉井人脈ではたらきかけてほしい」との依頼があり、「知人の大蔵官僚に頼んだ結果、『運輸省に話をしてきちんとしておいた』との返事があった」旨の証言をしている。
 泉井証人は田谷元大蔵省主計局総務課長に対して、その全額を費用負担をして高級料亭での、四〜五回から七〜八回の接待をつづけていたことも同時に認めている。国家公務員に対して、このような「泉井工作」が行われたことに対して、政府の見解を問い、質問を列挙する。
 1 大蔵省はすでに退官した田谷元主計局総務課長に対して、泉井工作の実態を調査し、事実確認をする用意はあるか。
 2 大蔵省はすでに退官した職員が在職中に行った重大な紀律違反について、不問に付す方針をつらぬくのか。
   それとも、国民世論にこたえて厳正な調査をするのか。
 3 大蔵省内にもうけられた紀律保持委員会は本件を議題に会議をひらき、大蔵省に対しての信頼回復につとめる努力をしたか。
 4 大蔵省渡辺秘書課長は「防波堤を担当した主計、主査に対して、何らかの口きき、あるいは陳情があったかどうかについての聴取をおこない、直接にも、田谷経由でも受け取っていないと調査を行った」(十一月五日法務委員会)と述べているが、その聴取の対象者の人数、役職、氏名を明らかにせよ。また、予算委員会の証人喚問の泉井証言をふまえて、本件を再調査する用意はあるか。
 5 一連の金融機関の破綻に際して、銀行・証券会社の情報開示・ディスクロージャーが不行き届きだったことが指摘されている。大蔵省は省内の不祥事調査にあたって、過去の慣例を断ち切って徹底したディスクロージャーをするつもりはあるのか。
 6 先の法務委員会で渡辺秘書課長は、一連の大蔵省不祥事について「調査を行い文書で報告をすることについては消極的に考えております」との答弁をくりかえしたが、本件について厳正な調査を行い、文書で報告する用意はあるか。
 7 大蔵省には、議員から指摘を受けた不祥事や疑惑について、「文書では報告できないが口頭でなら説明できる」という慣習があるのか。口頭で説明できることを文書にできない合理的な理由を述べよ。
 8 法務当局は、本件を公正かつ厳密に調査・検証する用意はあるか。国家公務員に対して、いわゆる高級料亭を使用しての接待が続けられ、その職務に関して請託が行われてきた事実と、補正予算が例年の倍つけられたことの関連をどのように見るのか。また、仙台港の堤防の建設が進んだことで、とりわけ三菱石油が担当の輸送コスト削減を実現したことをあわせて、見解を示されたい。
二 涌井洋治主計局長に対しての絵の贈与と返送について
 1 官房長当時の結婚祝いに贈与された絵について、泉井証人はピカソのものであることは間違いないと証言しているが、贈られた側の涌井主計局長は「ピカソの絵」であることを認めるか。
 2 十一月十八日、この絵の作者・絵柄を文書にて回答せよとの求めに対して、大蔵省秘書課企画官は、文書回答を不可能とした上で口頭で「涌井主計局長は『絵はピカソではないと思う。ピカソに特徴的な図柄ではなかった。デッサンではなく版画、リトグラフである」と説明している。贈与側の泉井証言をふまえて、大蔵省の口頭説明と証人喚問の証言内容がいちじるしく違うが、「ピカソの絵でない」との根拠はあるのか。
 3 法務委員会の質疑を通して、一九九五年秋の結婚後にいったん絵を受領した涌井官房長(当時)が、翌年に贈与人が脱税で告発を受けたのを知り返送した。宅急便の配送記録から、十月二十七日に返送したことが確認できるとの経過を聞いている。
   現在も所持されている宅急便の配送記録には、内容物やその金額を記入する欄があるはずだが、どのように記載されていたのか。美術品送付にあたって、特別の扱いを依頼したり、また輸送時に保険はかけなかったのか。
 4 保険をかけたのなら、絵の価格と保険金額を明らかにされたい。また、かけなかったのであればその理由を明示されたい。「価格の判然としない美術品」を返送するにあたって、その価格を確認し、保険をかけた上で慎重かつ丁寧な扱いをするのが社会常識であると考えるが、如何か。
 5 昨年十月、涌井官房長は紀律保持の責任者であり、大蔵省の綱紀粛正を統括する立場であった。返送にあたって、疑惑をもたれることのないようにいったん受領した絵を省内の第三者に見せるなり、写真撮影をして客観的に示しうる努力を行ったのか。
 6 絵の種類について、泉井証人は「デッサンというものではありません」と言いつつも、「鉛筆画で書いて何枚もあるものを何というのか、そのようなもの」としか答えていない。「版画、リトグラフ」という説明に間違いはないのか、再度確認したい。
 7 いわゆる「二信組問題」で、一九九五年九月八日に当時の涌井洋治官房長は文書による厳重注意処分を受けている。その処分から数ヵ月ののちに「さして親しくもない人物から美術品という価格の判然としないものを受け取る」ことが、大蔵省への信頼回復を指揮・統括する立場として、若干の危惧や懸念も持たなかったのか。
 8 五月二十五日に当時の小村官房長は「大蔵省職員として、いやしくも外部からの批判を招かないように常に公私の区別を明確にすること」「職務上の関係者以外との交際について ― 交際のきっかけ、相手方、形態等によっては社会の批判を招く可能性があること」などの点を挙げて、綱紀の厳正な保持を図ることを呼びかけている。後任の涌井官房長は、この文言や姿勢を真摯に継承したのか。
 9 昨年十二月二十六日に三(注)大蔵大臣の訓令第五号「大蔵省職員倫理規程」の中に、処分の条項がある。
   「規定に違反するおそれがあると認められる場合においては、当該職員の上司は、服務管理官と連絡を取りつつ、ただちに実情調査を開始するとともに、服務管理官は、必要に応じ、第十四条で定める総括服務管理官に報告する」
   本件が問題となった昨年十一月から今年の一月にかけて、涌井官房長を監督する服務管理官、ならびに総括服務管理官とは誰だったのか。
   また本件について、前条項に従っていかなる「実情調査」が行われ、どのような「総務服務管理官への報告」があったのかについても開示されたい。
三 第一勧業銀行の大蔵検査時における接待について
 1 この件で戒告処分となった当時の検査部管理課長と上席金融証券検査官の二名が都内のホテルや小料理屋で接待をうけ、また神奈川県内のゴルフ場で第一勧銀の支払いによる接待ゴルフを行っていた件について、紀律保持委員会は開催されたのか。
 2 開催されていないのであれば、この不祥事について大蔵省はどのような機関をもって事実関係を調査し、また事実の把握にあたったのか。
 3 第一勧銀以外の銀行について、大蔵検査時の同様の接待があったかどうか省内の調査を行ったか。いかなる機関によって、どのように調査がなされたのか。
   また、調査をしていないのであれば、その理由を明示されたい。
 4 今後とも、「大蔵検査時の接待」について調査をし、事態を解明する予定はあるか。
 5 国民の不信、疑惑をまねくようなかかる事態に対し、文書による情報開示を行い、また不明な点はくまなく調査して信頼回復にこたえる努力を始めないのか。

 右質問する。





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