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平成十一年一月二十六日提出
質問第五号

残虐な刑罰に関する質問主意書

提出者  保坂展人




残虐な刑罰に関する質問主意書


 最高裁は現行の絞首による死刑について「火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑のように残虐な執行方法を定めれば、死刑は残虐な刑罰といえるが、刑罰としての死刑そのものを直ちに残虐な刑罰ということはできない」(一九四八年三月十二日大法廷判決)「現在わが国の採用している絞首刑は、他の方法に比して特に人道上残虐であるとは認められないから本条(憲法三六条)に違反しない」(一九五五年四月六日大法廷判決)との判断を示してきた。
 こうした判例は法令に従った絞首刑を前提にした判断であり、執行の現場で法令を逸脱し、死刑確定者に対して人道上許されないふるまいがあった場合などは想定していない。度重なる委員会質問や質問主意書などで、法務省が死刑執行に関する情報公開を頑なに拒み続けているのは、死刑執行を担当させられたことのある刑務官の証言などから、執行の現場で残虐な刑罰に相当する過酷な取り扱いがあってもそれを表沙汰にしないためと推認される。今回の主意書では執行の現場はどうなっているのかをただしたい。

一 死刑執行の命令
 (1) 刑事訴訟法四七五条では、死刑の執行は法務大臣が命令すると規定されているが、法務大臣は執行命令を出すことについて、総理大臣や各閣僚に報告、相談もしくは連絡しているか。
 (2) 執行命令はどのような書式でなされているか。法務大臣は署名、押印するのか。
 (3) 法務大臣は刑事局が判決や確定記録などを精査し、刑の執行停止や再審、非常上告の事由、恩赦相当の情状などがあるかないかを検討した結果について、十分にチェックした上で、執行を命じているか。
 (4) 法務大臣が刑事局から上がった死刑執行命令の決裁を拒んだケースは現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、何件あるか。
 (5) 法務大臣は刑事局から上がった死刑執行命令の決裁に平均どのくらいの時間をかけているか。
 (6) 法務大臣が死刑執行命令の決裁で、刑事局が精査、検討した結果を全く読まずに執行を命じたケースはあるか。
 (7) 刑訴法四七六条では、法務大臣が執行を命じたときは、五日以内に執行しなければならないと規定されているが、現行の刑事訴訟法が施行された一九四九年以降、法定の五日以内に執行されなかったケースはあるか。
二 死刑の立ち会い
 (1) 刑事訴訟法四七七条一項によると、死刑執行には検察官、検察事務官及び監獄の長又はその代理人が立ち会わなければならないが、現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、立会人を欠いた執行や検察官、検察事務官及び監獄の長又はその代理人が立ち会いを拒んだケースはあるか。
 (2) 検察官や検察事務官が死刑執行に立ち会うのはなぜか。また、死刑執行に立ち会う検察官、検察事務官はどのようにして決めているのか。
 (3) 同条二項によると、検察官又は監獄の長の許可を受けた者以外は刑場に入れないが、現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、許可なく刑場に入った者はいるか。
 (4) 検察官又は監獄の長が刑場に入ることを許可するのは、どのような人か。
 (5) 現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、執行される死刑確定者が引き起こした殺人事件の被害者の遺族に許可を与えたことはあるか。また、司法修習生や報道関係者に許可を与えたことはあるか。
三 執行始末書
 (1) 刑訴法四七八条に定められた死刑の「執行始末書」は、どのような理由から作成されるのか。始末書は永久保存か。
 (2) どこに保存されているのか。
 (3) 現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、執行始末書が盗まれたり、紛失したことはあるか。
 (4) 死刑執行に立ち会った検察官及び監獄の長又はその代理人は執行始末書に署名押印しなければならないが、現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、署名押印が欠けていたケースはあるか。また、検察官及び監獄の長又はその代理人のいずれかが署名押印を拒んだケースはあるか。
 (5) 執行始末書の書式はどのようなものか。
 (6) 法務大臣は自分が執行を命じた死刑の執行始末書を必ず読んでいるか。現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、読まなかった法務大臣はいるか。
四 執行の停止
 (1) 刑訴法四七九条一項によると、死刑の言い渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるとき、法務大臣の命令によって執行が停止されるが、執行前に当該死刑確定者が心神喪失の状態にあるかないか、検査しているか。
 (2) 現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、心神喪失の状態にあるために執行を停止された死刑確定者は何人いるか。
 (3) 現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、心神喪失の死刑確定者に刑を執行したケースは何件あるか。
 (4) 同条二項によると、死刑の言い渡しを受けた女子が懐胎しているときは、法務大臣の命令によって執行が停止されるが、執行前に死刑確定者が懐胎しているかどうか、検査しているか。
 (5) 現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、懐胎している死刑確定者に刑を執行したケースは何件あるか。
 (6) 現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、刑を執行された死刑確定者は何人で、うち女子は何人か。年ごとに明らかにされたい。
 (7) 同条三項によると、死刑確定者が心神喪失状態から回復したり、懐胎していた女子が出産した場合、法務大臣の命令がなければ刑は執行できないが、現行の刑訴法が施行された一九四九年以降、死刑確定者が心神喪失の状態から回復した後、刑を執行されたケースは何件あるか。その場合、法務大臣の命令はあったか。
 (8) 同様に懐胎していた女子が出産後、刑を執行されたケースは何件あるか。その場合、法務大臣の命令はあったか。
五 過酷な執行
 (1) 刑法一一条及び監獄法七一条によると、死刑は監獄の刑場で執行しなければならないが、現行憲法が施行された一九四七年五月以降、監獄の刑場以外で執行されたケースはあるか。
 (2) 刑法一一条で死刑は絞首刑と定められているが、現行憲法が施行された一九四七年五月以降、絞首刑以外の方法で死刑が執行されたケースはあるか。
 (3) 死刑執行に際し、無実を叫んだり、恐怖の余り半狂乱になったりして、舎房の鉄格子や刑場のどこかにしがみつき、多数の刑務官で取り押さえて無理やり絞首のためのロープを首に巻き付け、処刑したケースは現行憲法が施行された一九四七年五月以降、何件あるか。
 (4) 死刑確定者が暴れたため、刑務官が暴行を加えて取り押さえたケースは現行憲法が施行された一九四七年五月以降、何件あるか。
 (5) ガス銃を使用し、暴れ回る死刑確定者を取り押さえたケースは現行憲法が施行された一九四七年五月以降、何件あるか。
 (6) 死刑の執行に際し、死刑確定者が暴れるなどしたため、絞首のためのロープが切れたことは現行憲法が施行された一九四七年五月以降、何件あるか。その場合、どのようにして刑を執行したのか。刑務官が別のロープで首を絞めて処刑したケースはないのか。
 (7) 絞首の後、死刑確定者に何らかの薬品を投与することはあるか。
六 死刑執行後
 (1) 監獄法七一条二項では、死刑は大祭祝日、一月一日二日及び十二月三十一日には執行されないと定められているが、現行憲法が施行された一九四七年五月以降、死刑が大祭祝日、一月一日二日及び十二月三十一日に執行されたことはあるか。
 (2) 監獄法七二条では、絞首後は死相を検視し、五分間縄を解いてはいけないと定められているが、現行憲法が施行された一九四七年五月以降、死相を検視しなかったり、縄を五分経過前に解いたり、あるいは逆に数十分にわたって絞首のままの状態を続けたケースは何件あるか。
 (3) 監獄で死亡した者の取り扱いを定めた監獄法七三条、七四条、七五条と監獄法施行規則一七七条、一七八条、一七九条、一八〇条、一八一条、一八二条は監獄の刑場で処刑された死刑確定者についても適用されるか。
七 国会会期中の死刑
 死刑廃止条約の批准を求めるNGOや報道関係者の間では、法務省は国会会期中、死刑は執行できないので、今通常国会が開かれている六月十七日までは執行はないと言われているが、安心していいか。

 右質問する。





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