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平成十一年五月七日提出
質問第三〇号

事務次官の適性に関する質問主意書

提出者  保坂展人




事務次官の適性に関する質問主意書


 政治家と官僚の関係が問い直され、新たな行政が模索されている。政治家側は問題把握や調査、政策立案、関係者調整などの能力を高め、政策実現のために努力を続けることが課題だが、官僚側にはどのような姿勢が求められているのだろうか。
 大蔵省の元官房長(現主計局長)は、旧二信用組合の乱脈融資事件などで大蔵官僚の接待漬けが次々に明らかになり、省内の綱紀粛正が叫ばれている最中、脱税や贈賄罪で後に起訴される石油卸商から絵画のプレゼントを受け取った。その時、元官房長は大蔵省の綱紀粛正の総括責任者だった。さらに続いて、大蔵省の金融検査官や証券局課長補佐らが相次いで逮捕、起訴された接待汚職が起こった。大蔵官僚への国民の信頼は地に堕ちたが、それでも絶望の果てに省内改革の行方を注目してきた。ところが、人事の季節をむかえてこの元官房長が次期事務次官の最有力候補というのだからあきれて物が言えない。
 朝日新聞は四月十七日付け朝刊で、元官房長の事務次官昇格に疑問を投げかける社説を掲載した。政府はこうした世論に十分耳を傾けているだろうか。
 犯罪被害者対策に大きな影響を与えた片山隼君の交通事故死問題で、問題を大きくしたのは、隼君の両親に対応した東京地検事務官の不遜な態度だったが、この事務官はその後昇進し、何の処分も受けていない。当時の下稲葉法務大臣だけが部下の不始末を深々と陳謝したにもかかわらず、法務、検察で隼君問題に関わった官僚は誰一人として何のとがめもなく、客観的に彼らにとっては何もなかったのと同じだ。
 接待汚職摘発当時、法務省の刑事局長だった現事務次官は新大臣の認証式も終わっていないのに、新大臣の事務所に大きな樽酒を届けた。「ポケットマネー」と言いながら、樽酒は法務省の職員に届けさせた。「これまでの習慣」という抗弁は、接待汚職の裁判で検査官や課長補佐が供述した内容と同じだった。責任の所在が明確でないからこそ、検察高官のスキャンダル、放言が相次いだ。
 官僚のトップである事務次官の適性を問い、現在の官僚機構が本当に国民を見て仕事をしているかどうかを検証するために以下の点を質問する。

一 大蔵事務次官
 (1) 二月十二日の衆院予算委員会で、「大蔵省の事務次官にはどういう適性あるいは品性が必要だと思われるか」と質問したところ、宮澤喜一大蔵大臣は「人格が高く、また有能であることが大事です」と答弁した。ここでいう「人格」とは何か。また「人格」をはかる基準があるのか。「品性」は問わないのか。具体的に明らかにされたい。
 (2) 公務員として、納税者に疑惑を持たれないように常に自らを律することは、大蔵事務次官に必要な適性か。
 (3) 大蔵省の事務次官を務めた人で、事務次官就任前に何らかの懲戒処分あるいは懲戒外処分を受けた人はいるか。いるとすれば、具体的に明らかにされたい。
 (4) 前述の朝日新聞四月十七日付け社説(以下「社説」という)では、大蔵省の元官房長涌井洋治氏が大蔵事務次官に昇格することは「霞が関の組織と意識、政治と役所の関係について、旧来の有り様を変えていこうとする機運に水を差すだろう」と指摘している。政府はどのように受け止めているか。
 (5) 社説は「大蔵官僚の不祥事は、主計人脈への過剰接待の発覚から始まった。権力に慣れ、高額の接待を当たり前のように受けていた堕落ぶりが赤裸々に示された」と指摘しているが、政府はどのように受け止めているか。
 (6) 社説は大蔵省主計局について「予算編成を通して、膨大な情報と権限がごく一部の官僚に集中する土壌は変わっていない」と指摘しているが、政府はどのように受け止めているか。
 (7) 社説は「主計局とそのOBの間で『涌井次官』を待望する声が強い。幹部人事の流れを旧に復そうというのである」と指摘しているが、事実か。社説に指摘されている内容を踏まえ、政府は主計局幹部とそのOBに事実関係を聞き取り調査した上で、その結果を具体的に示されたい。
 (8) 社説は大蔵官僚が「時に政権の意を受け、時に政権を誘導して、政策の形成にとどまらず、その決定にも影響力を行使してきた」として、細川政権下の「国民福祉税」構想を例示し、「国民の目に触れにくいところで影響力を及ぼしてきたことが、問題なのである」と指摘している。政府はどのように受け止めているか。
 (9) 社説は「大蔵省に代表される『官治』を改め、国民への責任が明確な『政治』に変える。官僚は政策のプロ集団として、選択肢を示す一方、理不尽な利益誘導を防ぐといった役割に徹するべきだ」と指摘している。政府はどのように受け止めるか。現在「官治」が横行していると考えるか。
 (10) 社説は「大蔵官僚でも、中堅や若手の間には『涌井次官』誕生にこだわらない向きが少なくない。人事政策の一新を出直しの契機にしよう、というのである」と指摘している。政府はどのように受け止めるか。
 (11) 大蔵省の接待汚職やその後の内部調査結果などを踏まえ、今後の大蔵省の人事に求められているものは何か。接待汚職を再び引き起こさないために、政府が大蔵省の人事で注意しなければならないことは何か。
二 法務事務次官
 (1) 法務事務次官に必要な能力、適性は何か。
 (2) 公務員として、納税者に疑惑を持たれないように常に自らを律することは、法務事務次官に必要な適性か。
 (3) 辞職した前東京高検検事長の則定衛氏は前法務事務次官だったが、事務次官就任当時は(1)で政府が答弁した能力、適性を備えていたのか。
 (4) 西日本新聞の報道によると、中村前法務大臣が辞任し、後任に陣内法務大臣が内定した三月、参院議員会館にある陣内氏の事務所に「御祝法務事務次官原田明夫」と木の札の立った樽酒が法務省の職員によって運び込まれた。歴代の法務事務次官は新大臣就任時にいつも樽酒を贈ってきたのか。
 (5) 法務省の職員によって運び込まれているところを見ると、樽酒を贈ることは公務なのか。その費用(人件費、車両費、燃料費等)は税金でまかなわれたのか。
三 政治家と官僚
 (1) 政府は政治家と官僚との関係、付き合い方について、どのように考えるか。
 (2) 大臣と各省庁の官僚との関係、付き合い方について、どのように考えるか。
 (3) 中村前法務大臣が検事総長や法務省刑事局長らに対し、「指揮権」にことさら言及したり、石垣島のリゾート施設に関する捜査を促したり、シュワルツェネッガーの顛末書を手元に保管したりしたとされる問題の事実関係はどうだったのか。それぞれについて、具体的に明らかにされたい。
 (4) 参院の予算委員会で照屋寛徳議員が行った中村前大臣への質問について、「内閣の責任」で調査を約束したのは事実か。「内閣の責任」をもっての調査はいつ行われたのか、中村前大臣辞任で中断したのかを明らかにされたい。辞任をもって中断したのであれば、判断の根拠となった相当な理由を示されたい。
 (5) 厚生省、大蔵省、防衛庁と汚職などが相次ぎ、取り締まる側の検察幹部までもがスキャンダルで辞職に追い込まれた。政府はこうした官僚の現状をどのように考えるか。
 (6) 政府は一連の汚職などで、官僚の「おごり」が問われていると認識しているか。認識しているとすれば、官僚がおごる原因は何か。
 (7) 政府は汚職などを再び引き起こさないために、綱紀粛正をどのように進めていくのか。具体的に明らかにされたい。

 右質問する。





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