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平成十二年五月十六日提出
質問第二八号

米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業に関する再質問主意書

提出者  濱田健一




米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業に関する再質問主意書


 在日米軍岩国基地滑走路の沖合移設事業は、瀬戸内海でも数少なくなった藻場・干潟の消滅を伴うため、瀬戸内海の環境を保全し、次世代に豊かな海を残していくためにも、その対策は緊急を要すると考える。そこで、私は、質問第一二号(平成一二年三月二日)により、一九項目にわたる質問主意書を提出したところ、三月三一日付で答弁書を送付されたところである。答弁書は、多くの箇所において、私の質問の趣旨を無視するか、または誠意のない回答になっている。
 従って、次の事項について再度質問する。

一 藻場・干潟の回復に関する問題
 1 答弁書のエッセンスは、以下の文章に込められている。「藻場等回復委員会の検討結果を得て、岩国沖合移設事業の計画地周辺海域において、最大限回復が可能となるよう、新たな藻場及び干潟の造成に努めることとしており、岩国沖合移設事業を停止又は凍結する考えはない。」(五ページ)
   このような記述は、肝心な質問(一の6、7、二の2、三の4、5、6)への答弁として四回も出てくる。例えば一の7「防衛施設局は、本気で各々四〇ヘクタール強の藻場と干潟(合計約八五ヘクタール)を回復し、代償措置を取る覚悟はあるのか」に対しては、直接的には答えていない。間接的に「最大限回復に努める」としているだけで、「四〇ヘクタール全体の代償となる措置を取るとは決して言明していない」と受け止めていいのか。
   これらを全体的にまとめると、以下のようなことになると判断するが、これで正しいか。
   <藻場・干潟を消滅させようが、埋め立ては凍結せず、とにかく続ける。並行して、藻場・干潟の回復措置を「最大限」進めることとし、具体的には、「新たな藻場・干潟を造成することとしている」。しかし、その規模や方法は不確定で、「あくまでも最大限」としか言えない。>
 2 ということは、現存するアマモは、埋め立てに伴って自動的に消滅していく。その際に、消滅する場に現存する海藻を移植する手法は初めから選択しないということか。代償措置の可能性自体が具体的に示されない中では、現存するアマモを移植するのが、最も現実的な方法と思うが、そのような方法は採らず、藻場・干潟は消滅させ、それと並行して、どこか別の場所に、「人工的に干潟を造成し、そこにアマモ(どこから持ってくるのか)を植えてみる」というわけか。とすれば、なぜ、初めから最も成功への確率の高いと見られる移植という選択を放棄するのか説明してほしい。
 3 「新たな干潟の造成」はイメージできる(その実現可能性の如何にかかわらず)が、「新たな藻場の造成」とはどういうことか、具体的に説明してほしい。近隣のどこか別の場所に、人工的に干潟を造成し、そこにどのように手を加えるかという問題になる。例えば、「新たに造成した干潟」にどこかから持ってきたアマモを移植してみる。もう一つは、人工的な干潟を造成し、自然にまかせ、アマモが生育するかどうかを見ていく。
 4 ミチゲーションが盛んなアメリカやカナダなどでは、藻場の移植などを検討する場合でも、代償措置を講ずる規模は、消滅させるものの二倍は確保するのが常識といわれているが、これと比べると、岩国で「最大限」としているのは、「消滅面積」に対して、それよりも少ないのか。それとも、アメリカやカナダと同様、消滅面積よりも数倍は大きい規模を想定しているのかのいずれかは明らかにすべきである。最大限とは、例えば、面積という基準だけでみても、消滅面積に対してどのくらいのことを「最大限」と称するのか。四〇ヘクタールの数倍、全部、半分、それとも一割を指すのか。まさか一割というようなことはないと断言すべきであることは当然のことである。
   最大限、努力した結果、「消滅するものの一割しか造成しない」ということになれば、回復などというおこがましいことは言えるはずがない。いずれにしても「最大限」の規模についての目安くらいは明らかにすべきである。
 5 新たに人工的な干潟を造成してみたところで、そこにアマモが定着し、かつ天然の藻場が持っている役割に匹敵する機能を果たすかどうかの保証はどこにあるのか。これらの問題は、多分に試行してみないと判断できないのではないか。だからこそ、アメリカやカナダなどでは、消滅する面積の二倍などの面積を新たに創造することが常識になっているのであり、この点について政府としてどう認識しているか。政府の行う事業であるにもかかわらず、消滅させる面積に対してどのくらいの藻場・干潟を新たに造成するのかの目安すら示さないまま、「最大限回復」させるなどと曖昧な答弁をすることは、国際的に見ていかに日本政府が環境保全にうとく、また無責任であるかを象徴している。そんなおぼつかない状態にもかかわらず、工事を進めることだけは、頑として変更しない日本政府の姿勢は強く批判されてしかるべきである。
 6 山口県知事が出した「最大限、新たに藻場及び干潟の造成に努める」よう求めた曖昧な意見をいいことにして、そのレベルでしか「回復措置」を取るつもりはないという回答と受け止めるが、それでいいのか。藻場は重要なので回復に努めるとしながら、何とも無責任な政府を持っていることが嘆かわしい限りである。政府が率先して、大規模な藻場・干潟の消滅を推進しているとしか言えず、これで瀬戸内海の環境を後世に残していけると考えているのか。
 7 <藻場および干潟の機能を回復するための造成>については「各地でその事例が見られるなど、個々の環境に応じた実証的な調査及び研究が進められていると承知している」(二ページ)というが、どのような場所で、どの程度の規模で、どのような事例があり、しかもどの程度成功しているのか(天然の藻場・干潟が持つ自然浄化機能や産卵・成育などの機能を、そのまま回復・補償することはできているのかなど)を具体的に示してほしい。また私は、初めの質問書で、広島市出島の事例を示したが、出島に関する具体的な見解は何も示されていない。とりあえず出島での事例に関する政府としての見解を示してほしい。さらに岩国のように消滅する藻場や干潟の面積が四〇ヘクタール以上もある広さに対応した実例は日本においてあるのかどうかも明確にしてほしい。これらの各地での事例をどのように検討し、岩国に関して「最大限回復」させる道筋についてどのような見通しを持っているのか示すべきである。
 8 一九九五年から「基地沖のアマモ場の裸地に約四五〇株のアマモを移植する実験」を行ってきているとのことだが、どこのアマモを、どの地点に、どのように移植し、活着状況の把握をどのように行ってきているのか。実験を行った裸地の面積、水深はどのくらいか。このような具体的な資料をこそ市民に公開すべきである。
 9 回復調査研究委員会の検討状況の公開は要旨の公開などで行っているというが、これでは肝心なことは何一つわからない。例えば「現存するアマモの移植はしない」ということが今回の答弁書でわかっただけで、答弁書にある「最大限の回復の可能性」についてどのような視点から検討をしているのかを明らかにすべきである。
二 その他
 1 「一の2」藻場や干潟の現状把握などに関する質問では、CODという指標で見る限り、横ばい程度と見えないことはないが、生物相について、元来有していた状況が維持または回復したといえるのかどうか明らかにしてほしい。また藻場及び干潟の問題は、「消失速度の鈍化」ではなく、藻場・干潟の現時点における面積や状態であり、過去から現在までの変遷である。この間に藻場・干潟の多くが消失し、健全な状態で藻場・干潟が残存している海域は、極めて希少になっている点をどう現状認識し、どの程度深刻に受け止めているのかを明らかにしてほしい。例えば広島湾においても、広島県側のアマモ場は壊滅状態であり、まとまって残存しているのは岩国周辺に限られており、岩国周辺の藻場・干潟が、広島湾全域の生態系や生物資源の維持においてどのような位置づけを持っているのかに関する評価を明らかにしてほしい。
 2 これだけ広大な藻場・干潟は一度つぶしてしまったら、その同じ場所に人為的に回復させることは不可能であり、長い時間的見通しで見ると極めて大きな損失である可能性があることについて政府としてどのように受け止めているのか。「基地を拡張せねばならない理由」として「北側の工場群との関係の危険性や騒音の低減」をあげているが、これだけであれば、何も広大な埋め立てをしなくてもすむ選択<は可能である。当初、現滑走路の角度を二五度ほど右にずらすという案もあった中で、あえて埋め立て案を採用した理由は何なのか。浅海域、特に藻場・干潟を守るということは、海にとっては第一義的に重要であり、それを回避できる案について、より前向きに検討することをしなかった理由と根拠を明らかにしてほしい。
 3 「三の8」に関わって、「藻場・干潟は激減している。それを承知の上で、さらに藻場・干潟をまとまった形で消滅させる埋め立てが、国の手によって推進されること」が、「埋め立ては厳に抑制すべし」とする瀬戸内法の精神と照らして「やむを得ず、埋め立てを認める」要件になるのかどうか納得がいくように説明していただきたい。「総合勘案」する際、海側の損失、特に藻場・干潟の消滅という事態を一方的に軽視していることは不当である。また「埋立承認に際しては、環境保全に十分配慮がなされた」というが、「消滅する藻場・干潟と同等、ないしそれ以上の藻場・干潟の形成を保証する」のならともかく、埋め立てて藻場・干潟をつぶす行為だけは先行させておいて、回復については「最大限努力する」というだけの姿勢のどこが、「十分配慮した」ことなのか、具体的に説明していただきたい。

 右質問する。





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