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答弁本文情報

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昭和四十三年二月十三日受領
答弁第四号
(質問の 四)

  内閣衆質五八第四号
    昭和四十三年二月十三日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員川崎秀二君提出ベトナム戦争収拾への方途と政府の対外政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員川崎秀二君提出ベトナム戦争収拾への方途と政府の対外政策に関する質問に対する答弁書



一、外務省は、情勢判断にあたつては、広く各方面から情報を聴取し、これを総合した上で、慎重に判断を下しており、また、かくして得られた国際情勢一般に関する判断は適宜新聞発表、政府刊行物等の形で国民に対し発表されている。

二、(1) 政府はこれまで和平の問題に関し広く関係諸国の意向を積極的に打診することに努めるなど種々和平への努力を行なつて来ている。

  (2) 何人といえども北爆が望ましいことであるとは思つていないであろう。しかし、紛争のそもそもの原因である北からの浸透や介入にふれることなしに北爆の停止のみをとり上げることは公正な態度とはいえない。米国は従来から北ヴィエトナムが建設的な話合いに応じ、かつ北爆停止を浸透のために利用しないのであれば北爆の停止の用意がある旨を明らかにしているが、米国がこのような立場をとつていることは従来、北ヴィエトナムが北爆停止中、南に対する浸透を継続あるいはかえつて強化さえして来た事実及び御指摘のチン外相の声明もこの浸透問題に触れていないことにかんがみれば、一方的な北爆の停止に慎重である米側の立場も無理からぬことと思われる。いずれにしても政府としては、一日も早く、和平のために当事者双方の意向が合致し、その結果、北爆をふくむすべての戦闘行為が停止されて、ヴィエトナムに平和がよみがえる日の来ることを強く望んでいる。

三、北爆停止の問題に関する上記二、の如き日本政府の考えは、あくまでも和平を望むわが国独自の判断にもとづくものであり、対米追随云々ということはあたつていない。

四、(1) ヴィエトナムにおける事態が今日のように深刻化するに至つた背景には、国際的、国内的要因、あるいは政治的、軍事的要因が互いに複雑に錯綜しているので、この戦争の性格を一がいに規定することは困難であるが、米国の南ヴィエトナム支援は南ヴィエトナムの自由と独立の擁護を基本目的としていると承知している。

  (2) 南、北ヴィエトナムとも紛争の当事者である以上、ヴィエトナム戦争の終結にあたつては、ヴィエトナム人が主動的役割を果すべきであり、またそこにはヴィエトナム人の意向が十分に反映さるべきことはいうまでもない。いずれにせよ、ヴィエトナム人の運命は本来、ヴィエトナム人自身が決めるべきものであり、さすれば、北ヴィエトナムも、ヴィエトコンもまた南ヴィエトナム政府自体も一日も早くヴィエトナムにおける平和を実現し、彼等が他国の制肘をはなれて民族の将来を決定しうる環境の回復をはかるべきであると考えている。

五、わが国としては、米、中武力衝突の如き事態は何としても回避しなければならないことは御指摘のとおりである。米国としてもかかる事態に立ち至ることを回避したいとの意向からも戦争がヴィエトナム内に局限されるよう極度に慎重な態度を持して来ており、他方中共の側においても、言論の上ではともかく実際の行動は極めて慎重であり、現在真向から米国と実力で対決せんとするが如き動きは認められないように思う。いずれにせよ、万一このような由々しい事態となることを防止するためにもヴィエトナム戦争は速やかに終結されねばならない。

六、紛争の局外にあるものとして、またアジアの一国として、わが国はヴィエトナム紛争において、米国とは自ら異つた立場に立つこともありうるのは当然である。
  われわれはこれまでも米国政府首脳に対しいろいろな機会において、われわれのアジア問題一般に対する見方を伝えるとともに、アジアの平和と安全の回復のために一日も早い戦争の終結が望ましいこと、そのためには米国としても、あらゆる機会をとらえ、和平の緒口探究のための努力を、おこたるべきでないことを直言し、さらに、紛争の早期解決を求める日本国民の願望を率直に伝えて来ている。

七、(1) ヴィエトナム戦争においては、当事者間相互の抜き難い不信感、あるいはお互いの意思疎通の欠如が和平への一つの大きな障害となつていると思われるところ、わが国は、ヴィエトナム戦争においては軍事的に圏外に立つ国として、また同じアジアの一国としての立場から北ヴィエトナム側の考え方を打診し、これを米国に伝えることにより、右障害の緩和に何らかの寄与をなしうるのではないかと考えている。

  (2) 和平実現のためには、ソ連をふくめた各国の建設的な努力が期待されること御指摘のとおりであるが、これまでのところ、関係各国の主張の間には大きな隔りがあり、そのためこれら関係諸国が和平のために結集しうる状況には必ずしも至つていないことは遺憾である。

  (3) 和平後の問題は、御指摘の諸事項もふくめ、関係当事者間において決められるべき問題であると思う。

八、(1) わが国は近隣諸国との協力関係を確立し、国際緊張の緩和をはかるなどの外交施策を講じ、また国の安全保障政策については日米安全保障条約を基調として、平和と安全を確保してきたが、政府としては今後も安保条約体制を堅持するとともに、わが国自らも国力国情に応じ、有効な防衛力を保持すべきものと考えており、国際情勢の冷静かつ客観的な判断に立つときかかる政策が最もわが国の国益に沿うものであると確信している。国の安全を確保することは責任ある政府としての厳粛な責務である。この責務を果すため、政府はかねてから政府の安全保障政策に対する国民の理解と支持を求めてきており、今後もその面で一層の努力を尽す所存である。

  (2) エンタープライズ寄港を繞ぐり一部学生が良識を欠く暴力行為を行なつたことは誠に遺憾である。エンタープライズ等米国の原子力水上軍艦は推進力に原子力を使用している以外は米国のその他の通常の軍艦と異なるところはなく、また核持込みの点については、特にその寄港申入れの際、米側は安全保障条約に基づく事前協議事項については、日本政府の意に反して行動する意図のないことを明確にしていることは繰返し説明したところである。政府としては、原子力水上軍艦の本邦寄港に異議ない旨米側に回答した際に、関連文書を公表するとともに、機会ある毎にその安全性、米軍艦の本邦寄港の意義を説明し、国民の理解を得るよう努めてきたが、今後一段と広報活動を積極化し国民の理解に資したいと考えている。

  (3) 政府としては先に述べたとおり、国の安全保障問題については国民の支持と理解を得て国の安全を確保すると言う国民に対する責務を果すことを考えているが、このため、防衛問題に対する堅実な認識の普及に努めるとともに、今後とも、自由を守り平和に徹する外交の基本方針を堅持しつつ、わが国のおかれた環境の現実に即して外交を積極的に展開して行く考えである。

 右答弁する。




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